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特表2023-514272水蒸気及び酸素に対して高いバリア性を有するリサイクル可能な紙製包装材
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  • 特表-水蒸気及び酸素に対して高いバリア性を有するリサイクル可能な紙製包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】水蒸気及び酸素に対して高いバリア性を有するリサイクル可能な紙製包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230329BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549123
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020083727
(87)【国際公開番号】W WO2021164913
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】A50116/2020
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519005196
【氏名又は名称】コンスタンティア・ピルク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】グレフェンシュタイン・アヒム
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ・ダドリー
(72)【発明者】
【氏名】ビュットナー・シュテファン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB55
3E086BB58
4F100AA19D
4F100AA20D
4F100AB01D
4F100AK03C
4F100AK04B
4F100AK04E
4F100AK07B
4F100AK07E
4F100AK46D
4F100AK69D
4F100AL07C
4F100AT00B
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00C
4F100CB00E
4F100CB03E
4F100DG10A
4F100EC182
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4F100EH66D
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4F100EJ37D
4F100EJ37E
4F100GB15
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4F100JD03D
4F100JD04D
4F100JL16
4F100YY00A
(57)【要約】
水蒸気、酸素及び/または芳香に対して高いバリア性を有する、リサイクル可能で、簡単に製造できる紙製包装用積層材であって、
・バリアフィルム(3)は、少なくとも一つの基材層(4)、接合層(5)及びバリア層(6)を含み、ここで接合層(5)は、基材層(4)とバリア層(6)との間に配置されていること、
・基材層(4)は、基材層(4)の少なくとも60重量%のポリエチレン割合またはポリプロピレン割合を持って、ポリエチレンまたはポリプロピレンから主に構成されていること、
・少なくとも、バリアフィルム(4)の前記少なくとも一つの基材層(4)は延伸されていること、
・紙層(2)の割合が、紙製包装用積層材(1)の50重量%と90重量%との間であること、及び
・バリアフィルム(3)は、親水性接着層(9)を用いて紙層(2)と接着されていること、但し、この際、紙層(2)は、バリアフィルム(3)側ではコーティングされていないこと、
を特徴とする、紙製包装用積層材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30から360g/mまでの坪量を有する紙を用いた紙層(2)、及びそれに接合されたバリアフィルム(3)から構成されるリサイクル可能な紙製包装用積層材であって、
・バリアフィルム(3)は、少なくとも一つの基材層(4)、接合層(5)及びバリア層(6)を含み、ここで接合層(5)は、基材層(4)とバリア層(6)との間に配置されていること、
・基材層(4)は、基材層(4)の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%のポリエチレン割合またはポリプロピレン割合を持って、ポリエチレンまたはポリプロピレンから主に構成されていること、
・少なくとも、バリアフィルム(4)の前記少なくとも一つの基材層(4)は延伸されていること、
・紙層(2)の割合は、紙製包装用積層材(1)の50重量%と90重量%との間、好ましくは70重量%と90重量%との間であること、及び
・バリアフィルム(3)は、親水性接着層(9)を用いて紙層(2)と接合されていること、但し、この際、紙層(2)は、バリアフィルム(3)側ではコーティングされていないこと、
を特徴とする、リサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項2】
バリアフィルム(3)が、接合層(5)を介してバリア層(6)と接合された基材層(4)を備えて、非対称的に設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項3】
バリア層(6)が、紙層(2)側に配置されており、及び接着層(9)を介して紙層(2)と接合されていることを特徴とする、請求項2に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項4】
バリアフィルム(3)が、両側でそれぞれ接合層(5)を介して基材層(4)と接合されたバリア層(6)を備えて、対称的に設計されており、及びこれらの基材層(4)のうちの一つが、接着層(9)を介して紙層(2)と接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項5】
バリア層(6)が、金属被覆の形または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングとして形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項6】
バリア層(6)が、バリアポリマー、好ましくはポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコールコポリマーからなる層として形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項7】
金属被覆の形または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングがバリアポリマーからなる層に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項8】
バリアフィルム(3)が延伸されていることを特徴とする、請求項6に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項9】
バリアフィルム(3)が、紙層(2)とは反対側で、シーリング層(7)と接合されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項10】
基材層(4)が主にポリエチレンからなる場合に、シーリング層(7)がポリエチレンからなり、または基材層(4)が主にポリプロピレンからなる場合に、シーリング層(7)がポリプロピレンからなることを特徴とする、請求項9に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項11】
シーリング層(7)が延伸されていることを特徴とする、請求項9または10に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30から360g/mまでの坪量を有する紙を用いた紙層、及び前記紙層に接合されたバリアフィルムから構成される、リサイクル性の他に、高い酸素、水蒸気及び/または芳香バリア性を同時に有する、リサイクル可能な紙製包装用積層材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材工業では、用途に応じて様々な特性を有する紙製の包装用積層材が使用されている。このような紙製包装用積層材は、通常は、押出方法、共押出方法(これらの両方の場合では、フラットフィルム方法でもブローフィルム方法においても)または積層方法(積層接着剤を用いた個々の層の接合)、並びにこれらの組み合わせで製造される多層型プラスチックフィルムと積層されている。紙製包装用積層材では、プラスチックからなるものではない層、例えばアルミニウムまたは更に別の紙からなる層も組み込まれていることができる。この紙製包装用積層材は、通常は、これを熱シーリングによって所望の包装材、例えばバッグ、サック、紙袋等々に加工するために、外側のシーリング層も有する。
【0003】
紙製包装用積層材への典型的な要求の一つは、水蒸気、酸素及び芳香物質に対するバリア機能である。その目的のために、紙製包装用積層材は、一般的に、アルミニウムまたは適切なバリアポリマー、例えばエチレン-ビニルアルコール-コポリマー(EVOH)またはポリアミド(PA)でできたバリア層を含む。
【0004】
同様に、紙製包装用積層材は、通常は、これを熱シーリングによって包装材に加工できるようにするために、シーリング層も含む。シーリング層は、典型的には、ポリオレフィン、通常は、LLDPE、LDPE、MDPEまたはHDPEといった様々な密度のポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)から作られる(同じまたは異なるタイプを用いたブレンドまたは多層型も含まれる)。
【0005】
その他、靱性、剛性、耐引き裂き性などの所望の特性を紙製包装用積層材に付与するために更に別の層も含まれ得る。
【0006】
紙製包装用積層材を簡単に加工できるようにするためには、紙製包装用積層材は、その加工時に、当然ながら、反ったりまたは巻き上がったり(いわゆるカーリング)もするべきではなく、そのため、積層プラスチックフィルムでは、通常は、対称的な層構造が使用される。
【0007】
更に、紙製包装用積層材の特性を、紙製包装用積層材のプラスチック層の単軸もしくは二軸配向によって変化させることも知られている。このような配向は、押出プロセスによって、例えば、マルチプルバブル押出プロセス(multiple bubble process)において、または押出プロセスの後になって初めて、プラスチックフィルムを機械方向(紙製包装用積層材の長手方向)および/または横方向(長手方向に対して垂直)に延伸することによって行うことができる。プラスチックフィルムのこの配向によって、中でも、剛性、引張強度及び靱性を改善することができる。
【0008】
しかし、ここで、ブローフィルム押出及びフラットフィルム押出では、押出間隙(ブローフィルムでは1.5~2.5mm)または押出ダイの間隙は、押し出しされるフィルムの最終厚(典型的には10~200μm)よりも明らかに大きいことを述べておく。このためには、押し出しされる溶融物は、押し出しされるポリマーの融点より明らかに高い温度において伸張され、それによって最終的な厚さが得られる。ブローフィルム押出では、溶融物は、例えば典型的には横方向には約2~3倍(いわゆるブローアップ比)及び長手方向には1:10~1:100倍(いわゆるドローオフ比)伸張される。しかし、押出時の伸張は、プラスチックフィルムの延伸とは比較できない。なぜならば、無秩序のポリマー及び部分結晶性領域を延伸によって延伸方向に永続的に整列させるために、延伸は、通常は、ポリマーの融点より僅かに低い温度(典型的には5℃から20℃まで低い温度)において行われるからである。いわゆるMDO延伸(機械方向でのみの延伸)では、通常は、40から100mmまでの伸張間隙(ロールの間隔)で加工される。二軸延伸では、次いで、加熱されたオーブン中で横方向での延伸が行われる。
【0009】
特にエロコジーの理由から、包装材料としては紙が多くの場合に使用される、というのも紙はリサイクル性に優れるためである。しかし、包装材料への通常の要求、例えば水蒸気、酸素及び/または芳香に対するバリア機能、または包装材を製造するためのシーリング性のために、紙はそれだけでは包装材料としては使用できない、なぜならば、紙単独では有意なバリア特性を持たないからである。それ故、フレキシブルな包装材の分野では、バリア要求を満たすために、紙は、大概は、プラスチックまたは金属からなる層などの他の層と組み合わされる。しかし、このような紙製包装用積層材、例えば多く使用される紙/アルミニウム/ポリエチレン構造物は、通常は、使用される材料が原因で、リサイクルが困難であるかまたは全くできない。
【0010】
最近、薄いバリア層とシーリング層のみを備えた紙製包装材が益々上市され、それにより、EN643.1に従って許容される、紙リサイクルにおける外来成分/不純物が、そこで指定された包装材の総重量の最大5%を超えないようになっている。例えば、CPI(Condederation of Paper Industry)の「Design Tips for Recycling」、 www.wrap.org.uk/packagingを参照されたい。
【0011】
この際、一部のコーティング材料、例えばシリコーン及びワックスは、並びに一部の着色剤もまた、5%未満でも、リサイクルプロセスにとって危険であると見なされている点にも注意するべきである。
【0012】
WO2013/086950A1(特許文献1)は、接着剤として「水分散性アイオノマー(WPI)」を用いたリサイクル可能な積層材を開示しており、この接着剤により、熱可塑性物質が、紙またはアルミニウムからなるベース材料と接合される。紙層及び熱可塑性物質をWPIを介して分離できるために、前記積層材はリサイクル可能であるものの、リサイクルステップは、殊に80℃の高い水温度及び殊に1時間の作用時間を必要とする。
【0013】
EP3194164B1(特許文献2)は、材料層として紙、ガス遮断層としてアルミニウム及び積層材料としてポリマー層を備えた、食品用の積層構造体を記載している。そこでは、特に、ポリマーの表面処理の際のオゾン処理の省略による、改善された環境適合性が取り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2013/086950A1
【特許文献2】EP3194164B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題の一つは、簡単に製造できかつ良好にリサイクル可能な、水蒸気、酸素及び/または芳香に対して高いバリア性を有する、紙でできたリサイクルフレンドリーな紙製包装用積層材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題は、バリアフィルムが、
・少なくとも一つの基材層、接合層及びバリア層を含み、ここで前記接合層は、前記基材層とバリア層との間に配置されていること、
・基材層が、基材層4の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%のポリエチレン割合またはポリプロピレン割合を持って、ポリエチレンまたはポリプロピレンから主に構成されてること、
・少なくとも、バリアフィルムの前記少なくとも一つの基材層が延伸されていること、
・紙層の割合が、紙製包装用積層材の50重量%と90重量%との間、好ましくは70重量%と90重量%との間であること、及び
・バリアフィルムが、親水性接着層を用いて紙層と接着されていること、但し、この際、紙層は、バリアフィルムの方を向いた側ではコーティングされていないこと、
によって解決される。それにより、10から50重量%まで、殊に10から30重量%までのポリオレフィン割合(PEまたはPP)、すなわち従来必要と考えされていたよりも明らかに多いポリオレフィン割合、及び紙製包装用積層材中の優勢な紙割合を用いて、(高い)バリア性及びリサイクル性の機能が達成される。このようにして、水蒸気、酸素及び/または芳香に対する依然として高いバリア作用を有するリサイクル可能な紙包装材を製造することができる。
【0017】
バリアフィルムは、接合層を介してバリア層と接合されている基材層を備えて、非対称的に設計できる。非対称的なバリアフィルムはより薄く設計でき、それにより、紙製包装用積層材中のポリマーの割合を減らすことができる。この場合、バリア層は、好ましくは、紙層側に配置され、そして接着層を介して紙層と接合される。
【0018】
代替的に、バリアフィルムは、両側でそれぞれ接合層を用いて基材層と接合されたバリア層を備えて対称的に設計され、この際、基材層のうちの一方は、接着層を介して紙層と接合される。対称的なバリアフィルムはより簡単に加工できる、というのも、対称的なフィルムは比較的カールし難いからである。また同様に、対称的な構造におけるバリア層は良好に保護される。
【0019】
バリア層は、金属被覆または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングとして設計できるか、あるいはバリアポリマー、好ましくはポリアミドもしくはエチレンービニルアルコールコポリマーからなる層として設計できる。追加的に、バリア作用をより一層高めるために、金属被覆または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングを、バリアポリマーからなる層に設けることもできる。これは、バリア作用を、紙製包装用積層材の個々のバリア要求に非常に良好に適合させることを可能にする。
【0020】
好ましくは、バリアフィルムは延伸される。これは、例えば、バリアフィルムを全体として共押出し、次いで延伸することによって達成できる。追加的に、バリアポリマーの延伸によって、それのバリア作用も高められ得る。
【0021】
多くの包装用途にとって、紙層とは反対側でバリアフィルムと接合されていることができる、シーリング層が必要である。紙製包装用積層材のリサイクル性を高めるためには、基材層が主にPEからなる場合に、シーリング層がPEからなる時、または基材層が主にPPからなる場合に、シーリング層がPPからなる時が有利である。それにより、格別に純粋なポリマー分を有する紙製包装用積層材を製造でき、これは、リサイクル性にとっては有利である。
【0022】
有利には、シーリング層も同様に延伸される。それにより、一方では、シーリング層の厚さを薄くすることができる。他方で、それにより、該シーリング層を、バリアフィルムと一緒に共押出及び延伸することもでき、これは製造を簡素化する。
【0023】
本発明を、例示的、概略的かつ非限定的に有利な本発明の実施形態を示す図1~3に関連して以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による紙製包装用積層材の第一の形態を示す。
図2】非対称的なバリアフィルムの一設計を示す。
図3】対称的なバリアフィルムの一設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、水蒸気、酸素及び/または芳香に対する必要なバリア作用を実現する、紙層2及びそれに接合されたバリアフィルム3を備えた本発明による紙製包装用積層材1を示す。紙製包装用積層材1には、紙層2とは反対側に、シーリング層7を設けることができる。紙層2は、親水性積層接着剤からなる接着層9を用いて、バリアフィルム3と接合されている。紙製包装用積層材1の典型的な厚さは、50μmから150μmまでである。
【0026】
紙製包装用積層材1の個々の層については、以下により詳しく説明する。
【0027】
紙層2は、30から360g/mの坪量、殊にフレキシブルな包装材の場合には30~100g/mの坪量を有する紙からなる。紙は、既知のように、繊維材、例えばセルロース、木材パルプまたは古紙材から製造されている。本出願の意味では、ペルガミン紙も紙として理解される。
【0028】
紙層は、少なくともその一面では(紙製包装用積層材1における、バリアフィルム3の方を向いた面)はコーティングされていない。コーティングされていないとは、紙が、前記の面において実質的にコーティングされていないこと、特に、紙中に侵入し、紙繊維に染み通り及び紙繊維と結合できるプラスチック材料が、紙上に施用されていないことを意味する。このようなプラスチックコーティングは、この面での、紙層と分離不能に接合したコーティング層となろう。それ故、具体的には、前記の面は、例えば、バリア塗料、シーリング塗料またはその他の塗料で塗工されてもいないし、プラスチック層と押出コーティングもされていない。それに対して、製紙工業でしばしば施用される層状ケイ酸塩または鉱物(クレー・コーティング)からなる層は、これらは、通常は紙のリサイクルを妨げないので、全くもって存在することができる。
【0029】
該紙製包装用積層材1において、接着層9に使用される積層接着剤は親水性である。親水性積層接着剤は、水と強い相互作用を持ち、そして通常は(但し、必ずではないが)水溶性でもある。本発明による紙製包装用積層材1において使用される親水性積層接着剤は、化学的機序、例えば水素結合の断裂に基づいてまたは積層接着剤が水中に溶解することで、水によってそれの付着性を失う。
【0030】
親水性積層接着剤は、デンプン、糖誘導体、セルロース、アミノ樹脂、(ポリ)アクリレート、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、マレイン酸変性エチレンコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシ官能性ポリエステル、ポリエチレン-スクシネート、ポリブチレン-スクシネート、アイオノマーまたは親水性ポリウレタンをベースに製造されていることができる。
【0031】
同様に、押出積層用の親水性積層接着剤、例えば(但し全てではないが)、極性基含有コモノマーを有するエチレンコポリマー、例えばエチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン-ブチルアクリレート(EBA)、エチレン-アクリル酸コポリマー(EAA)、または無水マレイン酸がグラフトしたポリエチレン/ポリプロピレン(PE-G-Mah、PP-G-Mah)も使用可能である。
【0032】
前記積層接着剤は、当然ながら、使用時の紙製包装用積層材1の望ましくない層間剥離を防ぐために、紙層2とバリアフィルム3との間に十分な付着が生じるように選択される。接着層9を用いて、好ましくは、少なくとも1N/15mm、好ましくは少なくとも1.5N/15mmの、紙層2とバリアフィルム3との間の接着が達成されるべきである。
【0033】
その接着力は、剥離試験で求められる。剥離試験では、紙製包装用積層材1の試験ストリップを、紙層2及びバリアフィルム3のフリーの端部で互いから引き離す。この際、これらのフリーの端部を、引っ張り試験機に挟み込み、そして所定の剥離角度(例えば90°)で互いに引き離し、そしてこの際のその力を測定する。前記試験ストリップの幅が15mmである場合は、xN/15mmで接着力の値が得られる。この場合、接着力の値は、おおよそ一定の剥離値(ピール値)であり、剥離試験の開始時に力のピークとして生じる最大の剥離初期時の値ではない。一般的に、接着力を求めるためには、複数回の剥離試験が行われ、そして実測値としての接着力は、個々の測定からの平均値として求める。剥離試験は、例えば、ASTM規格 F904に従って行われる。
【0034】
該紙製包装用積層材1には紙が使用されているため、紙層2とバリアフィルム3との間に接着層9を形成するためには、液状の積層接着剤、特に水中または適当な溶剤中に溶解された積層接着剤を使用できる。液状積層接着剤を施与しそして紙層2とバリア層3とを一体化した後は、積層接着剤を乾燥し、この際、水または溶剤が紙中に拡散し得る。乾燥後には、紙層2とバリアフィルム3との間に接合が生じつつ、接着層9が後に残る。しかし、接着層9を形成するためには、親水性である限りは、非液状の積層接着剤も使用することができる。
【0035】
同様に、押出積層法も考慮でき、この場合、溶融した積層接着剤を、紙層2もしくはバリアフィルム2上にまたはこれらの両方に、180℃超の高温下に溶融状態で押出し、そしてその後、紙層2及びバリアフィルム3を一体とする。積層接着剤の硬化後に、これは、接着層9を形成する。
【0036】
バリアフィルム3は、主としてポリエチレン(PE)からまたは主としてポリプロピレン(PP)からなる延伸された少なくとも一つの基材層4、接合層5及びバリア層6から構成される(図2)。バリアフィルム3の厚さは、典型的には10から40μmまでである。
【0037】
バリアフィルム3は、基材層4、バリア層6及びそれらの間に配置された接合層5を備えて(図2に示すように)非対称的に設計でき、この場合、接合層5は、基材層4及びバリア層6と直接接合されている。非対称的なバリアフィルム3の場合は、バリア層6は、紙製包装用積層材1において、好ましくは、紙層2の側に配置され、そして接着層9を用いて、紙層2のコーティングされていない面と直接接合されるが、シーリング層7の側であってもよい。しかし、バリアフィルム3は、(図3に示すように)対称的に設計されていることもできる。この場合、バリア層6は、それの両側で、それぞれ接合層5を介して、それぞれ基材層4(これらは異なるものであってもよい)と接合されることとなろう。対称的な設計では、紙層2のコーティングされていない面が、接着層9を介して、バリアフィルム3の一つの基材層4と直接接合されている。
【0038】
可能な実施形態の一つでは、バリア層6は、金属被覆、例えばアルミニウムを用いた金属被覆、または酸化ケイ素(SiOx)もしくは酸化アルミニウム(AlOx)からなるコーティングの形の、接合層5上に施用されたバリアコーティングである。この実施形態は、好ましくは、非対称的なバリアフィルム3の場合に使用される。このバリアコーティングによって、接合層5上に、小ナノメータ(典型的には約10から50nmまで)のみの薄いバリア層6が形成する。金属被覆は、例えば既知の真空金属被覆によって行うことができる。SiOxまたはAlOxコーティングは、例えば、化学気相堆積法または真空蒸着法によって施用することができる。当然ながら、バリアコーティングを形成するための他の方法も可能である。バリアコーティングは、バリア機能を損ねる虞があるマイクロクラッキングに対する保護として、追加的に保護塗料で覆うこともできる。このようなバリアコーティングを用いることで、2cm/m/d未満の低い酸素透過率(oxygen transmission rate,OTR)(23℃、75%相対湿度、両面)及び3cm/m/d未満の低い水蒸気透過率(water vapour transmission rate,WVTR)(38℃、90%相対湿度、両面)を達成することができ、ここでdは一日、すなわち24時間を表す。
【0039】
更に別の可能な実施形態の一つでは、バリア層6は、バリアポリマーからなる層であり(非対称的及び対称的バリアフィルム3の両方で使用される)、すなわち特に酸素及び/または芳香に対して十分なバリア特性を有するポリマーからなる層である。該バリアポリマーは、好ましくはポリアミド(PA)またはエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である。好ましくは、バリアポリマーとしては、EVOHが使用される。バリアポリマーは、バリアフィルム3の総厚の最大20%、好ましくは5から10%までの厚さを有し、すなわち例えば、バリアフィルムの厚さが10から40μmまでである場合は、最大で2から8μmまでである。バリア層6としてバリアポリマーを用いると、(先に記載のものと同様かまたはより良好な)低い水蒸気透過率を達成できるだけでなく、2cm/m/d未満の低い酸素透過率(oxygen transmission rate,OTR)(23℃、75%相対湿度、両面)及び高い芳香バリアも達成することができる。芳香バリアに関しては、客観的な尺度はなく、芳香バリアとしての作用は、臭気試験により主観的に決定される。
【0040】
バリアフィルム3において、バリアポリマーからなるバリア層6が設けられる場合には、バリア層6は、非対称的または対称的バリアフィルム3において、追加的にバリアコーティングでコーティングされていることができ、特に、金属被覆、例えばアルミニウムで金属被覆、または酸化アルミニウムもしくは酸化ケイ素でコーティングされていることができる。それにより、バリアフィルム3のバリア作用を更に一層を高めることができ、特に、それにより、OTR及びWVTRを、更に一層大きく低めること、すなわちそれぞれ1cm/m/d未満にすることができる。この実施形態においても、バリアコーティングは、追加的に保護塗料で覆ってもよい。
【0041】
基材層4は、それぞれ、基材層4の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%のポリエチレン割合またはポリプロピレン割合として、主に、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)から製造される。ポリエチレン割合またはポリプロピレン割合が高いほど(すなわち、基材層4の純粋性が高いほど)、リサイクル性が良好になる。基材層4の厚さは、好ましくは5から35μmまでであり、この際、対称的なバリアフィルム3では、異なる厚さの及び/または異なって構成された基材層4も使用することができる。しかし、対称的な構造では、好ましくは、両方の基材層4が、同じ主成分としてPEまたはPPを用いて設計される。基材層4には、通常の添加剤(例えばスリップ剤、アンチブロッキング剤、充填剤など)を加えることができる。基材層4には、それぞれ、混合物または共押出物として、異なるポリエチレン種またはポリプロピレン種も使用することができる。同様に、基材層4は、それぞれの主成分PEまたはPPの他に、それぞれそれらに適合するポリオレフィン材料を含むことができる。
【0042】
基材層4のポリエチレン種としては、例えばHDPE(0.94~0.97g/cmの間の密度を有する高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、LDPE(0.915~0.935g/cmの間の密度を有する低密度ポリエチレン)、LLDPE(0.87~0.94g/cmの間の密度を有する線状低密度ポリエチレン)またはmLLDPE(線状低密度メタロセンポリエチレン)が考慮される。好ましくは、HDPEまたはMDPEが使用される。基材層4のポリプロピレン種としては、例えば、アタクチック、シンジオタクチックまたはアイソタクチックPPが考慮される。
【0043】
PEに適合性のポリオレフィン材料としては、基本的に如何なるタイプのポリエチレンも考慮され、特にエチレンコポリマー、例えばエチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、メタクリル酸エチルエステル(EMA)、エチレン/アクリル酸コポリマー(MAA)またはエチレン-ブチルアクリレートコポリマー(EBA)も考慮される。同様に、プロプロピレン(PP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)もPE適合性ポリオレフィン材料として最大20体積%の程度で使用できる。PPの場合は、少なくとも限定されたリサイクル性を達成するためには、好ましくは、線状PEタイプ、例えばmLLDPE、LLDPEもしくはHDPEと十分に適合性の、コノモマー(通常、5~15%)としてエチレンを有するポリプロピレンランダムコポリマー、エチレン含有ポリプロピレンコポリマーまたはポリプロピレンホモポリマーが使用される。
【0044】
PP適合性のポリオレフィン材料としては、PPコポリマー、例えばランダムコポリマー及びブロックコポリマーが考慮される。20%までのポリエチレンの添加も同様にリサイクル性を損なわせることは殆どない。
【0045】
PEまたはPP適合性のポリオレフィン材料が基材層4に含まれる場合には、リサイクル性を向上するためには、基材層4における主成分たるポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)の割合は、好ましくは(基材層4をベースに)少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%である。この際、PEまたはPP及びそれぞれに適合性のポリオレフィン材料は、基材層4中に混合物として存在することができる。
【0046】
しかし、基材層4は、一つ(または複数でもよい)PEまたはPP層及び適合性ポリオレフィン材料からなる一つの(または複数でもよい)層を備えて、(押出または共押出されて)多層状に構成されていることもできる。
【0047】
基材層4の主成分のPEまたはPPには、空洞形成剤(Kavitierungsmittel)を加えることもでき、この際、空洞形成剤は、基材層4の5から30重量%までの量、好ましくは15から25重量%までの量で加えられる。空洞形成剤としては、PEもしくはPPに不適合性のポリマー(すなわち、PEまたはPPマトリックス中に孤立した状態で残るポリマー)、例えばポリアミド(PA)、ポリエステル(例えば、PETまたはPBT)、ポリラクチド(PLA)が考慮される。同様に、殊に、鉱物性の空洞形成剤、例えば炭酸カルシウムまたは雲母を使用することができる。空洞形成剤は、通常は微粉末として存在し、これは、押出の前に、マスターバッチとしてPEまたはPPマトリックス中に埋設し、そしてPEまたはPPグラニュールと混合される。
【0048】
空洞形成されたPEまたはPP層を基材層4中に使用する場合には、これは、好ましくは、空洞形性されていないPEまたはPP層によって片面または両面が囲まれる。ラミネート層3の基材層4の考慮可能な構造の一つは、例えば、空洞形成されていないPE層と片面が接合された(例えば共押出された)、空洞形性されたPE層であろう。この場合、空洞形性されたPE層は、該紙製包装用積層材1において、紙層2の側にある。該基材層4の他の好ましい構造の一つは、例えば、空洞形成されていないPE層と両面が接合された(例えば共押出された)、空洞形成されたPE層であろう。同様に、基材層4中の主成分としてPPを用いたこのような構造もある。基材層4中の空洞形成された層の使用は、該紙製包装用積層材1のシーリング性も向上することができる。
【0049】
基材層4におけるPEまたはPP、空洞形成剤、場合により存在する添加剤、及び存在し得る適合性ポリオレフィン材料の合計は、当然ながら、合わせて100重量%としかならない。この場合、主成分であるポリエチレンまたはポリプロピレンの割合が重要であり、他の割合は、それらに合わせる必要がある。
【0050】
少なくともバリアフィルム3中の基材層4は、一方向にまたは二方向に、すなわち機械方向に(MDO)(通常は、長手または押出方向)及び/または横方向(TDO)(機械方向に対して90°回転)に延伸されている。バリアフィルム3中のバリア層6としてバリアポリマーを使用する場合には、好ましくは、バリアフィルム全体が延伸される。接合層5またはバリア層6をコーティングする場合には、コーティングの前に延伸される。この場合、機械方向及び横方向の延伸比は同じである必要はない。この際、機械方向の延伸比は、好ましくは少なくとも4:1から8:1までである。この際、横方向の延伸比は、好ましくは少なくとも5:1から10:1までである。一方向MDO延伸が好ましい、というのも、一方向延伸の方が、二方向延伸よりも簡単だからである。
【0051】
バリアフィルム3を延伸するか、またはバリアフィルム3のうちの少なくとも基材層4を延伸することにより、紙製包装用積層材1中のポリオレフィン(PEまたはPP)の重量割合を低く抑えることができる、というのも、この延伸によって初めて、薄いが依然として堅いフィルムを製造できるからである。
【0052】
既知のように、バリアポリマーの延伸によって、それのバリア作用を明らかに高めることができる。バリアポリマーの延伸によって、未延伸の同種のバリアポリマーと比べて約3乃至4倍高められたバリア値が達成され、それによって比較的費用の安いバリアポリマーを、同じバリア作用を保ちつつ使用できる。それによって、該紙製包装用積層材1のコストを大きく低減できる。
【0053】
接合層5は、バリア層6と基材層4とを接合するために使用される。この場合、特にバリアフィルム3の望ましくない層間剥離を防ぐために、十分な接着を達成するべきである。適当な極性接合層5は、好ましくは、高められた極性を持つポリマー、例えば無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン(例えばPEまたはPP)、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-ブチルアクリレート(EBA)または類似のポリオレフィンコポリマーをベースとするポリマーからなる。接合層5の材料は、好ましくは、基材層4の主成分に合わせて選択される。接合層5の厚さは、バリアフィルム3の総厚の最大で10%、例えばバリアフィルム3の厚さが10から40μmまでである場合には、1から5μmまでである。
【0054】
シーリング層7は、好ましくは、基材層4の主成分がPEである場合には、ポリエチレン、例えばLLDPE、LDPE、MDPEまたはHDPEである。同じまたは異なるPE種からなる多層型シーリング層7の場合と全く同様に、シーリング層7における異なるPE種の混合物も考慮できる。基材層4の主成分がポリプロピレンである場合には、シーリング層7は、好ましくはポリプロピレン、例えば未延伸PP(CPP)である。この場合もまた、シーリング層7は、異なるPPの混合物であることができ及び/または多層型に構成されていることできる。シーリング層7の厚さは、改良されたリサイクル性の意味で、できるだけ薄いのがよく、特に、50μm未満、殊に30μm未満であるのがよい。
【0055】
バリアフィルム3とシーリング層7との間にも、必要に応じて、付着性を改善するために、例えば先に記載したような(図3に示唆される)接合層8が設けられていることができる。
【0056】
紙製包装用積層材1が良好にリサイクル可能であるようにするためには、紙製包装用積層材1のポリマー成分(本質的に、バリアフィルム3及び存在する場合にはシーリング層7)は、該紙製包装用積層材1の10重量%と50重量%の間、好ましくは最大で30重量%、特に好ましくは最大で20重量%を占めるのがよい。従って、本発明による紙製包装用積層材1は、ポリマー割合を5重量%未満に保つことが要求される従来技術における推奨とは異なる方策に従うものである。それにもかかわらず、良好なリサイクル性を達成するために、紙層2は、バリアフィルム3側ではコーティングされておらず、そして親水性接着層9を用いてバリアフィルム3と接合されている。
【0057】
該紙製包装用積層材1をリサイクルする場合は、これらを、通常は、機械的な細化の後に、規定の水温でかつ規定の時間、水中で浸水軟化する(パルププロセス)。本発明による紙製包装用積層材1の特性の故に、紙層2が、リサイクル時のパルププロセスの間に、全ての層及び紙のリサイクルの潜在的な不純物込みでバリアフィルム3から剥がれる。親水性接着層9は、パルププロセスの間に水と反応して、その際、付着特性を失うかまたは完全に水中に溶解し、その結果、紙層2が、バリアフィルム3から分離される。それ故、紙層2は水中に溶解して、パルプを形成することができ、それから、再び、リサイクル紙を製造することができる。該紙製包装用積層材1のリサイクルのためには、接着層9が、40℃の水温で、最大20分間、好ましくは最大10分間、特に好ましくは最大5分間内に、その付着性を十分に失うかまたは溶解して、その結果、紙層2、及びシーリング層7を持つバリアフィルム3が簡単に分離する時に有利である。
【0058】
金属被覆(備えている場合に限る)は、紙リサイクルル中のパルププロセスの間の分離後に、剥離したバリアフィルム3上に残るために、紙表面をバリア金属被覆した時に必然的に起こるであろうリサイクル紙の黒ずみを招かない。
【0059】
紙のリサイクル中に紙層2から分離された(場合によりシーリング層7を備える)バリアフィルム3は、それに含まれるポリオレフィン(主成分のPEまたはPP)を再利用できるようにするために、更なるリサイクルプロセスに供給できる。PEまたはPPのいずれかの主成分及びそれらに適合性の材料を用いたバリアフィルム3の及びシーリング層7のできるだけ純粋な設計によって、場合によりシーリング層7を備えたバリアフィルム3も、通常の方法を用いて機械的リサイクルにおいて簡単にかつ費用効果高く再利用することができる。バリアフィルム3中のバリア層6が薄い場合には、紙のリサイクルのパルプから排出されるポリオレフィン流のリサイクル適合性は損なわれない。
【0060】
バリアフィルム3は、有利には、共押出によって形成される、というのも、これは、特に簡単で費用効果の高い製造を可能にするためである。好ましくは、既知のブローフィルム法またはフラットフィルム押出法が使用される。この場合、場合により存在し得るコーティングは除いて、バリアフィルム3の先に記載したような対称的なまたは非対称的な層構造の個々の層(すなわち、基材層(複数可)4及び接合層(複数可)5、場合により及びバリアポリマーからなるバリア層6)は、好ましくは一回の工程で共押出される。この積層材は、共押出の後に、一方向または二方向に延伸される。この延伸後には、接合層5上のまたはバリア層6のバリアポリマー上のバリア層6として、更にもう一つのバリアコーティングを施すこともできる。
【0061】
該バリアフィルム3は、一回の工程で、シーリング層7と共押出することもできる。この場合、シーリング層7も、バリアフィルム3と共に延伸される。代替的に、シーリング層7を、押出積層法(バリアフィルム3上へのシーリング層7の押出)によってまたは積層法(積層接着剤を用いた、バリアフィルム3とシーリング層7との接合)において、延伸されたバリアフィルム3と接合することができる。シーリング層7の積層の際には、延伸されたシーリング層7を使用することもできる。
【0062】
特に好ましくは、シーリング層7は、バリア層6とは反対側でバリアフィルム3上に形成する時に、例えば共押出によりバリアフィルム3中に直接統合される。それにより、後になって施用されるシーリング層7の場合と比べて、シーリング層7をより薄く設計でき、及び該紙製包装用積層材1中のポリマーの総割合をより少なくすることができる。これとは別に、それにより、製造が簡素化される。
【0063】
この際、(場合によりシーリング層7を備えた)バリアフィルム3の延伸は、インラインで(すなわち、共押出後に直接)またはオフラインで(すなわち、共押出からより後の時点で)行うことができる。この場合、二方向延伸の際には、先ず機械方向に、次いで横方向に延伸するか、または両方向に同時に延伸することも同様に考慮できる。この延伸は、典型的には、バリアフィルム3中または場合によりシーリング層7中のプラスチックの最も低い溶融温度よりも約10℃から30℃まで低い温度、典型的には約20℃低い温度(HDPEの場合は、おおよそ128℃から130℃まで)で行われる。この延伸は、いずれの場合も、バリア層6及び/または接合層5の場合により行われるコーティングの前に行われる。
【0064】
一方向または二方向延伸によって、基材層4中の空洞形成したPEまたはPPの場合には、既知のように空洞形成剤に起因してマイクロキャビティがPEまたはPP中に生じる。この際、このマイクロキャビティによって、基材層4の密度を、0.4から0.85g/cmの値まで大きく小さくできることが確認された。それ故、バリアフィルム3をより軽量にすることができ、これはポリマー割合を更に低下させる。
【0065】
紙層2は、場合によりシーリング層7を備えたバリア層3と積層される。この目的のためには、親水性積層接着剤を、紙層2上またはバリアフィルム2上のいずれかにまたはそれら両方上に、液状の形態で、例えばローラー塗布もしくは印刷塗布によって、または噴霧することによって、施用することができる。その後、紙層2及びバリアフィルム3を、例えば二つのローラー間で互いに押し付けて、紙製包装用積層材1を製造する。次いで、必要に応じて、接着剤層9の形成のために、例えばヒートトンネルに通すことによって、積層接着剤を乾燥することができる。
【0066】
代替的に、紙層2及び延伸したバリアフィルム3を、適した積層接着剤を使用して、押出積層法を用いて接合することができる。この押出積層法では、溶融した積層接着剤を、紙層2もしくはバリアフィルム3上にまたはそれらの両方上に押出し、そしてその後、紙層2及びバリアフィルム3を、例えば二つのローラー間で互いに押し付けて、紙製包装用積層材1を製造する。その後、積層接着剤を冷却でき、これは、通常は、冷却したローラーによって補助することができる。
【0067】
紙製包装用積層材1のシーリング層7は、紙層2及びバリアフィルム3の積層の後でも、積層してもよい。
【0068】
例示的な実施形態の一つでは、延伸したバリアフィルム3の厚さの少なくとも60%を占める主成分としてPE(PEの割合は少なくとも60重量%)、好ましくはHDPEを含む基材層4を用いた、10から40μmまでの厚さを有するバリアフィルム3が使用される。接合層5としては、(基材層4の主成分に応じて)極性PEまたはPP材料が使用される。EVOH(バリアポリマー)からなるバリア層6がこの接合層5と接合される。バリアフィルム3は共押出され、その後、一方向または二方向に延伸される。追加的に、バリアポリマーは、延伸後に、バリアコーティング(金属被覆、SiOxまたはAlOx)でコーティングされていてもよい。代替的な実施形態の一つでは、接合層5を備えた延伸された基材層4上に、バリアコーティングが施される。少なくとも部分的に延伸されたバリアフィルム3は、親水性積層接着剤からなる接着層9を用いて、紙層2と接合されている。追加的に、該紙製包装用積層材1は、紙層とは反対側に、PE材料からなるシーリング層7を備えていてもよい。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30から360g/mまでの坪量を有する紙を用いた紙層(2)、及びそれに接合されたバリアフィルム(3)から構成され
・バリアフィルム(3)は、少なくとも一つの基材層(4)、接合層(5)及びバリア層(6)を含み、ここで接合層(5)は、基材層(4)とバリア層(6)との間に配置されており
・基材層(4)は、基材層(4)の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、非常に特に好ましくは少なくとも80重量%のポリエチレン割合またはポリプロピレン割合を持って、ポリエチレンまたはポリプロピレンから主に構成されており
・少なくとも、バリアフィルム(4)の前記少なくとも一つの基材層(4)は延伸されている
リサイクル可能な紙製包装用積層材であって、
・紙層(2)の割合、紙製包装用積層材(1)の50重量%と90重量%との間、好ましくは70重量%と90重量%との間であること、及び
・バリアフィルム(3)、親水性接着層(9)を用いて紙層(2)と接合されていること、但し、この際、紙層(2)は、バリアフィルム(3)側ではコーティングされていないこと、
を特徴とする、リサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項2】
バリアフィルム(3)が、接合層(5)を介してバリア層(6)と接合された基材層(4)を備えて、非対称的に設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項3】
バリア層(6)が、紙層(2)側に配置されており、及び接着層(9)を介して紙層(2)と接合されていることを特徴とする、請求項2に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項4】
バリアフィルム(3)が、両側でそれぞれ接合層(5)を介して基材層(4)と接合されたバリア層(6)を備えて、対称的に設計されており、及びこれらの基材層(4)のうちの一つが、接着層(9)を介して紙層(2)と接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項5】
バリア層(6)が、金属被覆の形または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングとして形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項6】
バリア層(6)が、バリアポリマー、好ましくはポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコールコポリマーからなる層として形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項7】
金属被覆の形または酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウムのコーティングの形のバリアコーティングがバリアポリマーからなる層に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項8】
バリアフィルム(3)が延伸されていることを特徴とする、請求項6に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項9】
バリアフィルム(3)が、紙層(2)とは反対側で、シーリング層(7)と接合されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項10】
基材層(4)が主にポリエチレンからなる場合に、シーリング層(7)がポリエチレンからなり、または基材層(4)が主にポリプロピレンからなる場合に、シーリング層(7)がポリプロピレンからなることを特徴とする、請求項9に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【請求項11】
シーリング層(7)が延伸されていることを特徴とする、請求項9または10に記載のリサイクル可能な紙製包装用積層材。
【国際調査報告】