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特表2023-514315逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化
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  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図1
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図2
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図3
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図4
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図5
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図6
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図7
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図8
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図9
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図10
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図11
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図12
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図13
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図14
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図15
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図16
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図17
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図18
  • 特表-逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化 図19
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20230329BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230329BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230329BHJP
   C08L 63/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08L33/14
C08F2/44 B
C08L63/00 A
C08L63/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549420
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 US2021018547
(87)【国際公開番号】W WO2021230940
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】62/977,986
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/014,932
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518138871
【氏名又は名称】ローワン・ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】513004560
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ジ アーミー
【氏名又は名称原語表記】THE UNITED STATES OF AMERICA AS REPRESENTED BY THE SECRETARY OF THE ARMY
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラ スカラ ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バセット アレキサンダー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】スタンツィオーネ ザ サード ジョセフ エフ.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4J002BG071
4J002BG07W
4J002CD172
4J002CD17X
4J011AA05
4J011AC04
4J011GB08
4J011PA35
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA18
4J011QA37
4J011QA46
4J011SA01
4J011SA21
4J011SA84
4J011UA01
(57)【要約】
ビニルエステル官能基およびエポキシ官能基の両方を有する個々の単量体の樹脂および調合物が、光誘起性フリーラジカル重合により重合可能なビニルエステル成分と、逐次硬化を促進する段階成長エポキシ-アミン系とが混合されるように合成または調合された。ビニルエステル成分はバット光重合(VPP)を使用して光重合された。さらに、調整可能な熱的特性および機械特性を有するバイオベースの光硬化性の熱硬化性樹脂の調製が提供される。本明細書に記載のすべての単量体およびポリマーは、付加製造用途を含む種々の用途において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のエポキシ硬化基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物との反応生成物を含み、
該少なくとも1個のビニルエステル官能基が光誘起性フリーラジカル重合により重合されており、
該少なくとも1個のエポキシ官能基および該架橋剤が段階成長熱重合により重合されている、
相互侵入ポリマー網目構造(IPN)。
【請求項2】
前記化合物が式Iまたは式I-Aの構造を有する、請求項1記載のIPN:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R’’は独立してHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である。
【請求項3】
RがCH3である、請求項1記載のIPN。
【請求項4】
R'がCH3である、請求項1記載のIPN。
【請求項5】
式Iの化合物が下記構造を有する、請求項1記載のIPN:
【請求項6】
前記化合物が式III-Aの構造を有する、請求項1記載のIPN:
式中、
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
各Yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。
【請求項7】
ビニルエステル官能基が、バット光重合(VPP)を使用して光重合されている、請求項6記載のIPN。
【請求項8】
ビニルエステル官能基が、VPPを使用して光重合されている、請求項1記載のIPN。
【請求項9】
架橋剤がエポキシ硬化剤である、請求項1記載のIPN。
【請求項10】
エポキシ-架橋剤重合が、熱的後処理を使用して促進される、請求項1記載のIPN。
【請求項11】
下記またはその架橋物をさらに含む、請求項1記載のIPN:
【請求項12】
相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を調製する方法であって、
少なくとも1個のアミン官能基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を有する単量体、オリゴマー、またはポリマーとの混合物に、ビニルエステル官能基が光重合される条件下で、VPPを適用する工程; ならびに
得られた混合物を、エポキシ-アミン重合が行われる熱的条件に曝露する工程
を含む、方法。
【請求項13】
単量体が式I-Aの構造を有する、請求項12記載の方法:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
RはH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R'はH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R''はHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である。
【請求項14】
前記ポリマーが式Iの構造を有する、請求項12記載の方法:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R''は独立してHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である。
【請求項15】
適用する工程が溶媒の非存在下で行われる、請求項12記載の方法。
【請求項16】
曝露する工程がインサイチューで行われる、請求項12記載の方法。
【請求項17】
架橋剤がエポキシ硬化剤である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
請求項1記載のIPNを含む、複合材料。
【請求項19】
下記からなる群より選択される少なくとも1つの単量体を含む、組成物:
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、および任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各Xは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である。
【請求項20】
式IIの単量体が、下記からなる群より選択される、請求項19記載の組成物:
式中、mは0、2、4、または6である。
【請求項21】
式IIIの単量体が下記である、請求項19記載の組成物:
【請求項22】
式IVの単量体が下記である、請求項19記載の組成物:
【請求項23】
少なくとも1つの重合開始剤をさらに含む、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
重合開始剤が、光開始剤、熱開始剤、およびレドックス開始剤からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
光開始剤が、赤外スペクトル、可視スペクトル、または紫外スペクトル内の光に曝露される際に反応性を示す、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
光開始剤が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-(4-メチルチエニル)-2-モルホリニル-1-プロパン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、
からなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
熱開始剤が、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ペルオキシ安息香酸tert-アミル、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシド、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、および過硫酸カリウムからなる群より選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
レドックス開始剤が、ヨウ化ナトリウム/過酸化水素、ヨウ化カリウム/過酸化水素、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン、過酸化ベンゾイル/N,N-ジメチルp-トルイジン、過酸化ベンゾイル/4-N,N-ジメチルアミノフェネチルアルコール、過酸化ベンゾイル/4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、グルコースオキシダーゼ/酸素/硫酸鉄(II)、および硫酸銅(II)/アスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
式IIIの単量体が組成物の重量の約50%~約85%を構成する、請求項19記載の組成物。
【請求項30】
式IIの単量体が組成物の重量の約15%~約30%を構成する、請求項19記載の組成物。
【請求項31】
式IVの単量体が組成物の重量の約0%~約40%を構成する、請求項19記載の組成物。
【請求項32】
約0~20秒以内に光硬化性である、請求項19記載の組成物。
【請求項33】
室温で粘度約250~約5000cPsを有する、請求項19記載の組成物。
【請求項34】
請求項1または19記載の組成物と、キットの該組成物を使用してポリマー網目構造を形成するための説明用資料とを含む、キット。
【請求項35】
式II、式III、式III-A、または式IVを含む単量体:
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月18日出願の「逐次硬化相互侵入ポリマーによる付加製造高ガラス転移温度材料の網目構造強靭化(NETWORK TOUGHENING OF ADDITIVELY MANUFACTURED, HIGH GLASS TRANSITION TEMPERATURE MATERIALS VIA SEQUENTIALLY CURED, INTERPENETRATING POLYMERS)」と題する米国仮特許出願第62/977,986号、ならびに2020年4月24日出願の「バイオベース付加製造樹脂ならびにその作製方法および使用方法(BIO-BASED ADDITIVE MANUFACTURING RESINS AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME)」と題する米国仮特許出願第63/014,932号の優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の後援による研究に関する記載
本発明は、米国陸軍研究所が授与した助成金番号W911NF 14-2-0086、W911NF 17-2-0227、W911NF-16-2-0225、およびW911NF 19-2-0152に基づく政府支援により行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
相互侵入ポリマー網目構造(IPN)は、少なくとも1つのポリマー網目構造が他のポリマー網目構造の存在下で形成される2つ以上の個々のポリマー網目構造の組み合わせとして定義される。IPNは医用材料、消音材料および制振材料、ならびにイオン交換樹脂などの広範な用途に利用されている。逐次IPN、同時IPN、ラテックスIPN、勾配IPN、および熱可塑性IPNを含む数多くの種類のIPNが存在しており、これらは異なる重合方法によって、かつ/またはIPN調合物中で異なる初期ブレンド成分を利用することで形成される。興味深いことに、IPNは種々の付加製造(AM)用途において有用性がある。
【0004】
3Dプリントとしてさらに一般的に知られている層毎のプロセスであるAMの利用は、効率的な材料使用、迅速な製造時間、および従来の方法に通常存在する製造上の制約を取り払いながら複雑な部品をオンデマンドで作り出す能力が理由で、産業界、軍、および学界において大きく勢いを増している。バット光重合(VPP)は、紫外光/可視光による液体樹脂の光重合によって層を形成するAM法である。樹脂表面上の特定位置のレーザービーム走査またはデジタルライトプロセッシングにより樹脂の局所的硬化を行った後、材料を25~200ミクロンの範囲である所望の層厚まで垂直に高く/低くすることで、樹脂を埋め戻し、新たな層を硬化して既製の層に対して重合することを可能にする。通常、VPPによってプリントされた部品は、より高い硬化度に到達するように後処理に供される。通常、VPPの結果としての積層造形によって機械的異方性が生じるが、VPPプリント部品は、光重合中に形成される層間架橋によって実質的に等方性になる。通常、容易に入手可能なVPP樹脂は(メタ)アクリレート官能基および/またはエポキシ官能基の両方を含み、いずれの官能基も光によって重合される。(メタ)アクリレート系樹脂が、通常は部品の正確性低下および全体的なひずみを生じさせることで、機械特性を弱体化させるものの、高い硬化速度が理由で速やかに重合可能であるということから、両方の官能基が通常は存在する。さらに、エポキシ樹脂は、極めて低い硬化速度を示す一方で、より低い収縮性を示し、より正確な幾何形状を生じさせることで、機械性能を増加させる。結果として、大部分のVPP樹脂は、両者の独自の利点を併せ持つように(メタ)アクリレート官能基およびエポキシ官能基の両方で構成される。
【0005】
エポキシ樹脂およびビニルエステル樹脂を含む熱硬化性ポリマーは、高いガラス転移温度(Tg)、弾性率、強度、耐薬品性、および靭性を含む顕著な特性が理由で、商業用途および軍事用途において広範に使用されている。エポキシ樹脂はオキシラン部分を特徴とし、オキシラン部分は、イオン重合、および、より高性能な材料向けでさらに一般的には、エポキシ-アミン段階成長重合を含む、複数の機構により重合可能である。一般に、ビニルエステル樹脂は、ラジカルベースの重合機構によって重合可能なビニル部分を組み込むようにエポキシ樹脂をエステル化することで生成される。通常、エポキシ樹脂およびビニルエステル樹脂はいずれも従来の熱的手順によって硬化および成形されるが、エポキシ-アミン樹脂およびビニルエステル樹脂が示す特性、ならびに両樹脂の重合汎用性によって、両樹脂はAM全般向けの魅力的な選択肢となっている。
【発明の概要】
【0006】
開示の簡単な概要
本開示では、VPP法を使用して逐次硬化により調製された、図1に非限定的に例示のビニルエステル成分およびエポキシ-アミン成分で構成される相互侵入ポリマー網目構造(IPN)が記載される。ビニルエステル成分を光重合し、エポキシ単量体およびアミン単量体をメタクリレート系ポリマーマトリックス内に封入するために、VPPを利用した。続いて、IPNを形成するためのエポキシ-アミン網目構造の逐次熱硬化を促進するように、試料を後処理した。
【0007】
様々な態様では、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)が提供される。IPNは、少なくとも1個のエポキシ硬化基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物との反応生成物を含む。少なくとも1個のビニルエステル官能基は光誘起性フリーラジカル重合により重合され、少なくとも1個のエポキシ官能基および架橋剤は段階成長熱重合により重合される。
【0008】
様々な態様では、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を調製する方法。様々な態様では、本方法は、少なくとも1個のエポキシ硬化基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を有する単量体、オリゴマー、またはポリマーとの混合物に、ビニルエステル官能基が光重合される条件下で、VPPを適用する工程; ならびに得られた混合物を、エポキシ-アミン重合が行われる熱的条件に曝露する工程を含む。
【0009】
様々な態様では、化合物は単量体またはポリマーでありうる。様々な態様では、単量体またはポリマーは、下記構造を有する、式I、式I-A、式II、式III、式III-A、もしくは式IVの化合物、および/またはそれらの組み合わせでありうる:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R''はHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である; あるいは、
式中、
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
各Yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である; あるいは、
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、および任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各Xは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は、本出願の様々な態様を一般的に、例示として、但し限定としてではなく示す。
【0011】
図1】様々な態様による、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を作製するために使用されるポリマーおよび単量体の化学構造を示す。
図2】様々な態様による、ビニル官能基およびエポキシ官能基の両方を有するポリマーを作製するために使用される反応スキームを示す。
図3】a) PM-EM828網目構造、b) PM-VE828 - Epon828ブレンド網目構造、c) PM-EM828_025VE828網目構造、およびd) PM-EM828_05Epon828_025VE828網目構造の視覚表現を示す。
図4】PM-EM828樹脂、ならびに本明細書に定義のAM、FC、およびPC硬化段階の該樹脂の近赤外スペクトルを示す。わかりやすくするために、スペクトルは垂直にオフセットされている。
図5】本明細書において特徴づけられるすべてのIPNのN2中でのTGAサーモグラムおよびそれぞれの一次微分値を示す。
図6】本明細書において特徴づけられるすべてのIPNのE'およびE''のDMAサーモグラムを示す。
図7】本明細書において特徴づけられるすべてのIPNのtanδサーモグラムを示す。
図8】本明細書において特徴づけられるすべてのIPNの応力/ひずみ曲線を示す。
図9】本明細書において特徴づけられるすべてのIPNの荷重-変位曲線を示す。
図10】様々な態様による式IIIの化合物の2工程ワンポット合成を示す模式図である。
図11】様々なIM含有量(モルパーセント単位)を有するベースPM-NC514sVE未硬化樹脂系の25℃での粘度を示す。得られたデータに関連する誤差を表1Aに示す。
図12】PM-NC514sVE 20% IM樹脂系の検量線を示す。
図13】プリントおよび洗浄(AMとして示す)直後の、続いて後処理後の調合樹脂の近赤外スペクトルを示す。
図14】様々な態様によるVPPプリントポリマーの写真である。
図15】様々なIM重量パーセントを有するPM NC514を含む後処理試料のN2中でのTGA(熱重量分析)サーモグラムを示す。
図16】PM-NC514sVEを含むプリントならびに完全処理(洗浄および後処理)された各樹脂系の代表的DMA(動的機械分析)E'およびE''サーモグラムを示す。
図17】様々なIM重量パーセントを有するPM-NC514sVE硬化樹脂系の代表的tanδサーモグラムを示す。
図18】様々なIM重量パーセントを有する硬化PM-NC514sVE樹脂系の応力-ひずみ曲線を示す。
図19】様々なIM重量パーセントを有する調製されたPM-NC514sVEポリマーの荷重変位曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示の詳細な説明
ここで、開示される主題の特定の態様に詳細に言及する。開示される主題を番号付きの請求項との関連で説明するが、例示される当該の主題が特許請求の範囲を開示される当該の主題に限定するようには意図されていないことが理解されよう。
【0013】
本文献全体を通じて、範囲という形で表される値は、範囲の限界値として明示的に記載される数値を含むだけではなく、該範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も、あたかも各数値および部分範囲が明示的に記載されるかのように含むように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、指示された範囲内の個々の値(例えば1%、2%、3%、および4%)ならびに部分範囲(例えば0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むものと解釈されるべきである。別途指示がない限り、「約X~Y」という記載は「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、別途指示がない限り、「約X、Y、または約Z」という記載は「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0014】
本文献では、文脈上別途明らかな指示がない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」という用語は1つまたは2つ以上を含むように使用される。別途指示がない限り、「または」という用語は、非排他的な「または」を意味するように使用される。「AおよびBのうち少なくとも1つ」または「AもしくはBのうち少なくとも1つ」という記載は「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。さらに、本明細書において使用され、かつ他の箇所で定義されていない語句または用語は、記述のみを目的としており、限定を目的としていないものと理解されるべきである。節の見出しの任意の使用は、本文献の読解の助けとなるように意図されており、限定的なものと解釈されるべきではない。節の見出しに関連する情報は、その特定の節の内側または外側で生じうる。本文献において言及されるすべての刊行物、特許、および特許文献は、個々に参照により組み入れられるかのように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
本明細書に記載の方法では、時間順序または操作順序が明示的に記載されている場合を除き、行為を任意の順序で行うことができる。さらに、特定の行為が別々に行われなければならないと請求項の明示的な文言に記載されていない限り、それらを同時に行うことができる。例えば、Xを行うという請求項記載の行為およびYを行うという請求項記載の行為を1つの操作内で同時に行うことができ、結果的なプロセスは請求項記載のプロセスの字義通りの範囲内である。
【0016】
定義
本明細書において使用される「約」という用語は、記載される値または記載される範囲限界値の例えば10%以内、5%以内、または1%以内での値または範囲の変動率を可能にしうるものであり、記載される正確な値または範囲を含む。
【0017】
本明細書において使用される「実質的に」という用語は、「~の大部分(a majority of)」または「大部分は(mostly)」を、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上、または100%と同様に意味する。本明細書において使用される「実質的に含まない」という用語は、まったく有さないこと、または些少な量で有することを意味しうるものであり、したがって、存在する材料の量は、該材料を含む組成物の材料特性に影響せず、したがって、該材料は該組成物の約0重量%~約5重量%、または約0重量%~約1重量%、または約5重量%以下、または約4.5重量%未満、約4.5重量%と同等、もしくは約4.5重量%超、または4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001重量%以下である。「実質的に含まない」という用語は、些少な量で有することを意味しうるものであり、したがって、材料は組成物の約0重量%~約5重量%、または約0重量%~約1重量%、または約5重量%以下、または約4.5重量%未満、約4.5重量%と同等、もしくは約4.5重量%超、または4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001重量%以下、または約0重量%である。
【0018】
本明細書において使用される「有機基」という用語は、任意の炭素含有官能基を意味する。例としてはアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基などの酸素含有基; カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基; アルキルスルフィド基およびアリールスルフィド基などの硫黄含有基; ならびに他のヘテロ原子含有基を挙げることができる。有機基の非限定的な例としてはOR、OOR、OC(O)N(R)2、CN、CF3、OCF3、R、C(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、C(=NOR)R、および置換または非置換(C1~C100)ヒドロカルビルが挙げられ、ここでRは水素(他の炭素原子を含む例において)または炭素系部分であることができ、炭素系部分は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0019】
本明細書に定義の分子または有機基に関して本明細書において使用される「置換された」という用語は、そこに含まれる1個または複数の水素原子が1個または複数の非水素原子で置き換えられた状態を意味する。本明細書において使用される「官能基」または「置換基」という用語は、分子または有機基上で置換を行いうるかまたは置換を行う基を意味する。置換基または官能基の例としてはハロゲン(例えばF、Cl、Br、およびI); ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基などの基の中の酸素原子; チオール基、アルキルスルフィド基およびアリールスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、ならびにスルホンアミド基の中の硫黄原子; アミン、ヒドロキシアミン、ニトリル、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、アジド、およびエナミンなどの基の中の窒素原子; ならびに様々な他の基の中の他のヘテロ原子が挙げられるがそれに限定されない。置換された炭素原子(または他の原子)に結合可能な置換基の非限定的な例としてはF、Cl、Br、I、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、およびC(=NOR)Rが挙げられ、ここでRは水素または炭素系部分であることができ、例えばRは水素、(C1~C100)ヒドロカルビル、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであることができ、あるいは、窒素原子または複数の隣接する窒素原子に結合した2個のR基は、1個または複数の該窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができる。
【0020】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、1個~40個の炭素原子、1個~約20個の炭素原子、1個~12個の炭素、またはいくつかの態様では1個~8個の炭素原子を有する、直鎖および分岐アルキル基、ならびにシクロアルキル基を意味する。直鎖アルキル基の例としては1~8個の炭素原子を有する基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、およびn-オクチル基が挙げられる。分岐アルキル基の例としてはイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、および2,2-ジメチルプロピル基が挙げられるがそれに限定されない。本明細書において使用される「アルキル」という用語は、n-アルキル基、イソアルキル基、およびアンテイソアルキル(anteisoalkyl)基、ならびに他の分岐鎖形態のアルキルを包含する。代表的な置換アルキル基は本明細書に列挙されるいずれかの基、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、およびハロゲン基で1回または複数回置換されていてもよい。
【0021】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重結合が2個の炭素原子の間に存在すること以外は本明細書に定義の通りである、直鎖および分岐鎖ならびに環状アルキル基を意味する。したがって、アルケニル基は2個~40個の炭素原子、または2個~約20個の炭素原子、または2個~12個の炭素原子、またはいくつかの態様では2個~8個の炭素原子を有する。例としては特にビニル、-CH=C=CCH2、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、およびヘキサジエニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0022】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の三重結合が2個の炭素原子の間に存在すること以外は本明細書に定義の通りである、直鎖および分岐鎖アルキル基を意味する。したがって、アルキニル基は2個~40個の炭素原子、2個~約20個の炭素原子、または2個~12個の炭素、またはいくつかの態様では2個~8個の炭素原子を有する。例としては特に-C≡CH、-C≡C(CH3)、-C≡C(CH2CH3)、-CH2C≡CH、-CH2C≡C(CH3)、および-CH2C≡C(CH2CH3)が挙げられるがそれに限定されない。
【0023】
本明細書において使用される「アシル」という用語は、カルボニル炭素原子を通じて結合する、カルボニル部分を含む基を意味する。カルボニル炭素原子は、「ホルミル」基を形成する水素に結合するか、またはアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基などの一部でありうる別の炭素原子に結合する。アシル基は、カルボニル基に結合した0個~約12個、0個~約20個、または0個~約40個のさらなる炭素原子を含みうる。アシル基は、本明細書における意味の範囲内の二重結合または三重結合を含みうる。アクリロイル基はアシル基の一例である。アシル基は、本明細書における意味の範囲内のヘテロ原子を含んでもよい。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は本明細書における意味の範囲内のアシル基の一例である。他の例としてはアセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ピリジルアセチル基、シンナモイル基、およびアクリロイル基などが挙げられる。カルボニル炭素原子に結合した炭素原子を含む基がハロゲンを含む場合、基は「ハロアシル」基と呼ばれる。一例はトリフルオロアセチル基である。
【0024】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などであるがそれに限定されない環状アルキル基を意味する。いくつかの態様では、シクロアルキル基は3個から約8~12個までの環員を有することができ、一方、他の態様では、環炭素原子の数は3から4、5、6、または7までの範囲である。さらに、シクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、ボルニル基、カンフェニル(camphenyl)基、イソカンフェニル(isocamphenyl)基、およびカレニル(carenyl)基などであるがそれに限定されない多環式シクロアルキル基、ならびにデカリニルなどであるがそれに限定されない縮合環、などが挙げられる。シクロアルキル基は、本明細書に定義の直鎖または分岐鎖アルキル基で置換された環も含む。代表的な置換シクロアルキル基は、2,2-、2,3-、2,4-、2,5-、もしくは2,6-二置換シクロヘキシル基または一置換、二置換、もしくは三置換ノルボルニル基もしくはシクロヘプチル基などであるがそれに限定されない、一置換のまたは2回以上置換された基であることができ、これらは例えばアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、およびハロゲン基で置換されていてもよい。単独のまたは組み合わせでの「シクロアルケニル」という用語は環状アルケニル基を意味する。
【0025】
本明細書において使用される「アリール」という用語は、環中にヘテロ原子を含まない環状芳香族炭化水素基を意味する。したがって、アリール基としてはフェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基、およびナフチル基が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、アリール基は、基の環部分に約6個~約14個の炭素を含む。アリール基は置換されていなくてもよく、本明細書に定義のように置換されていてもよい。代表的な置換アリール基は、フェニル環の2位、3位、4位、5位、もしくは6位のうちいずれか1つもしくは複数において置換されたフェニル基、またはその2位~8位のうちいずれか1つもしくは複数において置換されたナフチル基などであるがそれに限定されない、一置換のまたは2回以上置換された基でありうる。
【0026】
本明細書において使用される「アラルキル」という用語は、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。代表的なアラルキル基としてはベンジル基およびフェニルエチル基、ならびに4-エチル-インダニルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基が挙げられる。アラルケニル基とは、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルケニル基のことである。
【0027】
本明細書において使用される「ヘテロシクリル」という用語は、そのうち1個または複数がN、O、およびSなどであるがそれに限定されないヘテロ原子である3個以上の環員を含む芳香環および非芳香環化合物を意味する。したがって、ヘテロシクリルはシクロヘテロアルキル、またはヘテロアリール、または多環式であれば、それらの任意の組み合わせでありうる。いくつかの態様では、ヘテロシクリル基は3個~約20個の環員を含み、一方、他の同様の基は3個~約15個の環員を有する。ヘテロシクリルという用語は、例えば環状ケトン、ラクトン、およびラクタムに見られる環中のCH2基が1個または複数のC=O基で置き換えられた環を含む。C=O基を含むヘテロシクリル基の例としてはβ-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、およびε-カプロラクタム、ならびに対応するラクトンが挙げられるがそれに限定されない。C2-ヘテロシクリルと呼ばれるヘテロシクリル基は、2個の炭素原子および3個のヘテロ原子を有する5員環、2個の炭素原子および4個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。同様に、C4-ヘテロシクリルは、1個のヘテロ原子を有する5員環、2個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。炭素原子の数およびヘテロ原子の数は環原子の総数に等しい。ヘテロシクリル環は1個または複数の二重結合を含んでもよい。ヘテロアリール環はヘテロシクリル基の一態様である。「ヘテロシクリル基」という語句は、縮合芳香族基および非芳香族基を含む種を含む縮合環種を含む。例えば、ジオキソラニル環およびベンゾジオキソラニル環系(メチレンジオキシフェニル環系)はいずれも、本明細書における意味の範囲内にあるヘテロシクリル基である。この語句は、キヌクリジルなどであるがそれに限定されない、ヘテロ原子を含む多環系も含む。ヘテロシクリル基は置換されていなくてもよく、本明細書において説明のように置換されていてもよい。ヘテロシクリル基としてはピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、インドリル基、ジヒドロインドリル基、アザインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、アザベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、イソオキサゾロピリジニル基、チアナフタレニル基、プリニル基、キサンチニル基、アデニニル基、グアニニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、キノキサリニル基、およびキナゾリニル基が挙げられるがそれに限定されない。代表的な置換ヘテロシクリル基は、一置換のまたは2回以上置換されているピペリジニル基またはキノリニル基などであるがそれに限定されない基であることができ、これらは本明細書に列挙される基などの基で2-、3-、4-、5-もしくは6-置換または二置換されている。
【0028】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、そのうち1個または複数がN、O、およびSなどであるがそれに限定されないヘテロ原子である5個以上の環員を含む芳香環化合物を意味し、例えばヘテロアリール環は5個から約8~12個までの環員を有しうる。ヘテロアリール基とは、芳香族電子構造を有する種々のヘテロシクリル基のことである。C2-ヘテロアリールと呼ばれるヘテロアリール基は、2個の炭素原子および3個のヘテロ原子を有する5員環、2個の炭素原子および4個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。同様に、C4-ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を有する5員環、2個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。炭素原子の数およびヘテロ原子の数の合計は環原子の総数に等しい。Cx~yと呼ばれるヘテロシクリル環は、「x」と「y」との間のすべての中間の整数を含む「x」~「y」個の環員を含み、かつ本明細書に定義の1個または複数のヘテロ原子を含む、任意の環でありうる。Cx~yと呼ばれる環中で、すべての非ヘテロ原子の環員は炭素である。Cx~yと呼ばれるヘテロシクリル環は多環系、例えば二環系または三環系であってもよい。ヘテロアリール基としてはピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、アザインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、アザベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、イソオキサゾロピリジニル基、チアナフタレニル基、プリニル基、キサンチニル基、アデニニル基、グアニニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、キノキサリニル基、およびキナゾリニル基などの基が挙げられるがそれに限定されない。ヘテロアリール基は置換されていなくてもよく、本明細書において説明される基で置換されていてもよい。代表的な置換ヘテロアリール基は、本明細書に列挙される基などの基で1回または複数回置換されていてもよい。
【0029】
アリール基およびヘテロアリール基のさらなる例としてはフェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、N-ヒドロキシテトラゾリル、N-ヒドロキシトリアゾリル、N-ヒドロキシイミダゾリル、アントラセニル(1-アントラセニル、2-アントラセニル、3-アントラセニル)、チオフェニル(2-チエニル、3-チエニル)、フリル(2-フリル、3-フリル)、インドリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、キナゾリニル、フルオレニル、キサンテニル、イソインダニル、ベンズヒドリル、アクリジニル、チアゾリル、ピロリル(2-ピロリル)、ピラゾリル(3-ピラゾリル)、イミダゾリル(1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル)、トリアゾリル(1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-2-イル、1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサゾリル(2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、チアゾリル(2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリミジニル(2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル)、ピラジニル、ピリダジニル(3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル)、キノリル(2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル(1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル)、ベンゾ[b]フラニル(2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[b]チオフェニル(2-ベンゾ[b]チオフェニル、3-ベンゾ[b]チオフェニル、4-ベンゾ[b]チオフェニル、5-ベンゾ[b]チオフェニル、6-ベンゾ[b]チオフェニル、7-ベンゾ[b]チオフェニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル、(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、インドリル(1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、インダゾール(1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、8-ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(1-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチアゾリル(1-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、カルバゾリル(1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル)、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)などが挙げられるがそれに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、本明細書に定義のアルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のヘテロシクリル基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。代表的なヘテロシクリルアルキル基としてはフラン-2-イルメチル、フラン-3-イルメチル、ピリジン-3-イルメチル、テトラヒドロフラン-2-イルエチル、およびインドール-2-イルプロピルが挙げられるがそれに限定されない。
【0031】
本明細書において使用される「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のヘテロアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。
【0032】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、本明細書に定義のシクロアルキル基を含むアルキル基に接続された酸素原子を意味する。直鎖アルコキシ基の例としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。分岐アルコキシの例としてはイソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。環状アルコキシの例としてはシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。アルコキシ基は、酸素原子に結合した約1個~約12個、約1個~約20個、または約1個~約40個の炭素原子を含むことができ、二重結合または三重結合をさらに含むことができ、ヘテロ原子も含むことができる。例えば、アリルオキシ基またはメトキシエトキシ基も本明細書における意味の範囲内のアルコキシ基であり、構造の2個の隣接する原子がそれで置換されるという文脈ではメチレンジオキシ基もそうである。
【0033】
本明細書において使用される「アミン」という用語は、各基が独立してH、またはアルキル、アリールなどの非Hでありうる式N(基)3を例えば有する第一級、第二級、および第三級アミンを意味する。アミンとしてはR-NH2、例えばアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン; 各Rが独立して選択されるR2NH、例えばジアルキルアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン、ヘテロシクリルアミンなど; ならびに各Rが独立して選択されるR3N、例えばトリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、トリアリールアミンなどが挙げられるがそれに限定されない。「アミン」という用語は、本明細書において使用されるアンモニウムイオンも含む。
【0034】
本明細書において使用される「アミノ基」という用語は、各Rが独立して選択される形態-NH2、-NHR、-NR2、-NR3 +の置換基、および、プロトン化されえない-NR3 +を除く各形態のプロトン化形態を意味する。したがって、アミノ基で置換された任意の化合物をアミンと見なすことができる。本明細書における意味の範囲内の「アミノ基」は第一級、第二級、第三級、または第四級アミノ基でありうる。「アルキルアミノ」または「アミノアルキル」基はモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、およびトリアルキルアミノ基を含む。2個以上の炭素のアミノアルキル基中のアミンは例えば-CH2CH(NH2)CH3などのアルキル鎖上で、または例えば-CH2-NH-CH2-CH3などのアルキル鎖中で置換されていてもよい。
【0035】
本明細書において使用される、それ自体でのまたは別の置換基の一部としての「ハロ」、「ハロゲン」、または「ハロゲン化物」基という用語は、別途記載がない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。
【0036】
本明細書において使用される「ハロアルキル」基という用語は、モノ-ハロアルキル基、すべてのハロ原子が同じでも異なっていてもよいポリ-ハロアルキル基、およびすべての水素原子がフルオロなどのハロゲン原子で置き換えられたペル-ハロアルキル基を含む。ハロアルキルの例としてはトリフルオロメチル、1,1-ジクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、1,3-ジブロモ-3,3-ジフルオロプロピル、ペルフルオロブチルなどが挙げられる。本明細書において使用される「ハロアルコキシ」基とは、ハロアルキル基におけるように1個または複数のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基のことである。
【0037】
本明細書において使用される「エポキシ官能性」または「エポキシ置換」という用語は、エポキシ置換基である酸素原子が炭素鎖または炭素環系の2個の隣接する炭素原子に直接結合した官能基を意味する。エポキシ置換官能基の例としては2,3-エポキシプロピル、3,4-エポキシブチル、4,5-エポキシペンチル、2,3-エポキシプロポキシ、エポキシプロポキシプロピル、2-グリシドキシエチル、3-グリシドキシプロピル、4-グリシドキシブチル、2-(グリシドキシカルボニル)プロピル、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル、2-(2,3-エポキシシクロペンチル)エチル、2-(4-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシル)-2-メチルエチル、および5,6-エポキシヘキシルが挙げられるがそれに限定されない。
【0038】
本明細書において使用される「一価の」という用語は、置換された分子に置換基が単結合によって接続されることを意味する。置換基が一価、例えばFまたはClである場合、置換基は、単結合によって、それが置換している原子に結合している。
【0039】
本明細書において使用される「炭化水素」または「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子および水素原子を含む分子または官能基を意味する。この用語は、炭素原子および水素原子の両方を通常含むが、すべての水素原子が他の官能基で置換されている、分子または官能基を意味することもある。
【0040】
本明細書において使用される「ヒドロカルビル」という用語は、直鎖、分岐、または環状炭化水素から誘導される官能基を意味するものであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アシル、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。ヒドロカルビル基は(Ca~Cb)ヒドロカルビルとして示されることがあり、ここでaおよびbは整数であり、a~bのいずれかの数の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C4)ヒドロカルビルとは、ヒドロカルビル基がメチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、またはブチル(C4)でありうることを意味し、(C0~Cb)ヒドロカルビルとは、特定の態様においてヒドロカルビル基が存在しないことを意味する。
【0041】
本明細書において使用される「溶媒」という用語は、固体、液体、または気体を溶解させうる液体を意味する。溶媒の非限定的な例としてはシリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン性液体、および超臨界流体がある。
【0042】
本明細書において使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、少なくとも1個のメタクリレート官能基、少なくとも1個のアクリレート官能基、およびそれらの任意の組み合わせを含む化合物を意味する。特定の態様では、メタ(アクリレート」は、複数の(メタ)アクリレート官能基および/もしくは複数のアクリレート官能基、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0043】
「単量体」という用語は任意の分子量の任意の個別の化合物を意味する。
【0044】
本明細書において使用される「ポリマー」という用語は、共有化学結合によって通常は接続される繰り返し構造単位で構成される分子を意味する。「ポリマー」という用語は、共重合体およびオリゴマーという用語も含むように意図されている。特定の態様では、ポリマーは骨格(すなわち、様々な重合された単量体単位間の化学結合を含む、ポリマーの中心鎖を規定する化学的接続状態)および側鎖(すなわち、骨格から伸びる化学的接続状態)を含む。特定の態様では、「オリゴマー」という用語は0~20個、0~1個、または0~2個の繰り返し単位を意味する。
【0045】
本明細書において使用される「重合」または「架橋」という用語は、少なくとも2個の別々の分子間の少なくとも1個の化学結合(例えば分子間結合)、同じ分子内での少なくとも1個の化学結合(例えば分子内結合)、またはそれらの任意の組み合わせを作り出すために単量体分子(もしくは単量体)、オリゴマー分子(もしくはオリゴマー)、またはポリマー分子(もしくはポリマー)中の少なくとも1個の官能基を消費する少なくとも1つの反応を意味する。重合反応または架橋反応は、系中で利用可能な少なくとも1個の官能基のうち約0%~約100%を消費しうる。特定の態様では、少なくとも1個の官能基の重合または架橋によって少なくとも1個の該官能基が約100%消費される。他の態様では、少なくとも1個の官能基の重合または架橋によって少なくとも1個の該官能基が約100%未満消費される。
【0046】
本明細書において使用される「反応条件」という用語は、反応を促進するために必要であるかまたは場合によって必要である、物理処理、化学試薬、またはそれらの組み合わせを意味する。反応条件の非限定的な例としては電磁放射線(可視光および紫外光などであるがそれに限定されない)、熱、触媒、化学試薬(酸、塩基、求電子剤、または求核剤などであるがそれに限定されない)、ならびに緩衝液がある。
【0047】
本明細書において使用される「説明用資料」という用語は、キット中の、本開示の組成物および/または化合物の有用性を伝達するために使用可能な刊行物、記録、図表、または任意の他の表現媒体を含む。キットの説明用資料は、例えば本開示の化合物および/または組成物を収容する容器に取り付けることができ、あるいは該化合物および/または組成物を収容する容器と共に輸送することができる。
【0048】
本明細書において使用される「~から独立して選択される」という用語は、文脈上明らかに別途指示されない限り、言及される基が同じ基、異なる基、またはそれらの混合物であることを意味する。したがって、この定義に基づけば、「X1、X2、およびX3は希ガスより独立して選択される」という語句は、例えば、X1、X2、およびX3がすべて同じであるというシナリオ、X1、X2、およびX3がすべて異なるというシナリオ、X1およびX2が同じであるがX3が異なるというシナリオ、および他の類似した順列のシナリオを含むであろう。
【0049】
本明細書において使用される「室温」という用語は約15℃~28℃の温度を意味する。
【0050】
本明細書において使用される「標準温度」および「標準圧力」という用語は20℃および101kPaを意味する。
【0051】
相互侵入ポリマー網目構造の組成
A. ビニルおよびエポキシ二重官能性単量体およびポリマー
式Iもしくは式I-Aの化合物または本明細書に別途記載の化合物を、本明細書に記載の一般的スキームによって、当業者に公知の合成方法を使用して調製することができる。いくつかの態様では、式Iの化合物はポリマーまたは樹脂である。以下の例は、本明細書に記載の化合物およびそれらの調製の非限定的態様を示す。
【0052】
式Iおよび式I-Aの化合物中、独立して、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R''はHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である。
【0053】
「ペルフルオロC1~3アルキル」とは、C1~3アルキル基中の各水素がF(フッ素)原子で置き換えられていることを意味する。様々な態様では、AはCH3である。様々な態様では、XはOである。様々な態様では、RはCH3である。様々な態様では、「p」は0~1、0~2、0~20、100~100,000、または1000~100,000の整数である。様々な態様では、R'はCH3である。様々な態様では、式Iの化合物は下記構造を有する。
【0054】
様々な態様では、式I-Aの化合物は下記構造を有する。
【0055】
様々な態様では、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)は、少なくとも1個のアミンと、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物との反応生成物を含む。少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物は単量体、ポリマー、またはそれらの組み合わせでありうる。少なくとも1個のビニルエステル官能基が光誘起性フリーラジカル重合により重合され、少なくとも1個のエポキシ官能基およびアミンが段階成長熱重合により重合される際に、IPNが形成される。
【0056】
様々な態様では、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物は式I、式I-A、もしくは式III-Aの構造、およびそれらの組み合わせを有する。様々な態様では、式I、式I-A、または式III-Aの化合物中のビニルエステル官能基は、VPPを使用して光重合される。様々な態様では、少なくとも1個のアミンは芳香族ジアミンである。様々な態様では、エポキシ-アミン重合は、本明細書に記載の任意の熱的条件下での熱などの熱放射に対する曝露による熱的後処理を使用して促進される。様々な態様では、IPNは破断時の引張応力約32~約40MPaを示す。様々な態様では、IPNは破断時の引張ひずみ約0.85~約0.97%を示す。様々な態様では、IPN組成物は
またはその架橋物をさらに含む。
【0057】
IPNの形成中、形成前、または形成後に、IPN中でIMが任意の他のビニル(二重結合)基に架橋されうる。したがって、例えばIMはそれ自体に、かつ式I、式I-A、式II、式III、または式III-Aの化合物、およびそれらの組み合わせに架橋されうる。
【0058】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
様々な態様では、式II、式III、式III-A、または式IVの単量体を重合することで、調整可能な処理特性、熱的特性、および機械特性を有するバイオベースポリマーを形成することができる。これらの単量体はリグニン、カルダノール(カシューナッツ殻液に由来)、およびイソソルビドなどの炭水化物などの天然生物分子に由来する。バイオベースポリマーは、ワンポット2工程手順を使用して好都合に合成可能である(図10)。一態様では、本明細書に記載のバイオベースポリマーの合成では溶媒を使用しないかまたは溶媒を実質的に使用しない。様々な態様では、本明細書に記載のバイオベースポリマーの合成は、副生成物の形成をもたらさず、ワークアップを必要としない。様々な態様では、本明細書に記載のバイオベースポリマーの合成は少なくとも98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%の、約98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%の、または約98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%より大きい、原子効率を示す。様々な態様では、本明細書に記載のバイオベースポリマーの合成は100%の原子効率を示す。一態様では、ワンポット合成スキームを行うことで、フェニルメタクリレート(PM)およびNC-514sVE(NC-514sビニルエステル)を1対0.5のモル比で含む樹脂を調製した。
【0059】
一態様では、式II、式III、式III-A、および式IVの単量体は下記構造を有する:
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、および任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各Yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である。
【0060】
特定の態様では、式IIの単量体は下記からなる群より選択される:
式中、mは0、2、4、または6である。
【0061】
特定の態様では、式IIの単量体はフェニル(メタ)アクリレートまたは置換されていてもよいフェニルメタクリレートである。
【0062】
特定の態様では、式IIIの単量体は下記である:
【0063】
特定の態様では、式IIIの単量体は2-ヒドロキシ-3-(3-(8-(4-(2-ヒドロキシ-3-(メタクリロイルオキシ)プロポキシ)フェニル)ペンタデシル)フェノキシ)プロピル メタクリレートである。
【0064】
特定の態様では、式IVの単量体は下記である:
【0065】
特定の態様では、式IVの単量体は(3R,3aR,6S,6aR)-ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3,6-ジイル ビス(2-メチルアクリレート)である。式IVの単量体はイソソルビドジメタクリレート(IM)としても知られている。
【0066】
式III-Aの化合物は、本明細書に記載の方法および当技術分野において認識されている方法によって調製可能である。様々な態様では、式III-Aの化合物は、式Iの化合物の調製の様式と類似した様式で、例えば反応スキーム1に従って調製可能である。
スキーム1
【0067】
本明細書に記載の化合物は、商業的供給源から入手可能な化合物から出発する任意の好適な手順を使用して合成されるか、または本明細書に記載の手順を使用して調製される。
【0068】
特定の態様では、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、チオ基、またはカルボキシ基などの反応性官能基が、反応に対するそれらの望ましくない関与を回避するために保護される。保護基は、一部または全部の反応性部分をブロックして、当該の基が化学反応に関与することを保護基が除去されるまで防止するために使用される。他の態様では、各保護基は異なる手段によって除去可能である。完全に異なる反応条件下で開裂する保護基によって、差次的除去の必要性が満たされる。
【0069】
特定の態様では、保護基は酸、塩基、還元条件(例えば水素化分解)、および/または酸化条件によって除去される。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタール、およびt-ブチルジメチルシリルなどの基は、酸不安定性であり、また、水素化分解で除去可能なCbz基で保護されたアミノ基、および塩基不安定性のFmoc基で保護されたアミノ基の存在下でカルボキシ反応性部分およびヒドロキシ反応性部分を保護するために使用される。カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分は、t-ブチルカルバメートなどの酸不安定性基でブロックされたアミンの存在下でメチル、エチル、およびアセチルなどであるがそれに限定されない塩基不安定性基でブロックされるか、または酸安定性かつ塩基安定性であるが加水分解で除去可能なカルバメートでブロックされる。
【0070】
特定の態様では、カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分はベンジル基などの加水分解で除去可能な保護基でブロックされ、一方、酸との水素結合が可能なアミン基はFmocなどの塩基不安定性基でブロックされる。カルボン酸反応性部分は、アルキルエステルへの変換を含む本明細書に例示される単純エステル化合物への変換によって保護されるか、または2,4-ジメトキシベンジルなどの酸化で除去可能な保護基でブロックされ、一方、同時に存在するアミノ基はフッ化物不安定性シリルカルバメートでブロックされる。
【0071】
アリルブロッキング基は酸保護基および塩基保護基の存在下で有用である。というのも、前者が安定であり、引き続き金属触媒またはπ酸触媒によって除去されるためである。例えば、アリルブロッキングカルボン酸は、酸不安定性t-ブチルカルバメートまたは塩基不安定性アセテートアミン保護基の存在下でパラジウム触媒反応によって脱保護される。保護基のさらに別の形態は、化合物または中間体がそこに結合する樹脂である。残基が樹脂に結合する限り、その官能基はブロックされて反応しない。樹脂から放出されたときに官能基は反応に利用可能になる。
【0072】
通常、ブロッキング基/保護基は以下より選択されうる:
【0073】
他の保護基は、保護基の創製および除去に適用可能な技術の詳細な説明と併せて、その開示が参照により本明細書に組み入れられるGreene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999およびKocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994に記載されている。
【0074】
IPNを作製する方法
A. IPN前駆体としてのビニルおよびエポキシ二重官能性単量体、ポリマー、および樹脂
様々な態様では、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を調製する方法が提供される。本方法は、
架橋剤と少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を有する単量体、オリゴマー、またはポリマーとの混合物に、ビニルエステル官能基が光重合される条件下で、バット光重合(VPP)を適用する工程; ならびに
得られた混合物を、エポキシ-アミン重合が行われる熱的条件に曝露する工程
を含む。
【0075】
様々な態様では、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を有する単量体またはポリマーは式I、式I-A、式III-Aの化合物、およびそれらの組み合わせを含む。本方法は、ビニル基のフリーラジカル重合を促進する光開始剤、ならびにエポキシ基およびアミン基の熱重合を促進する熱開始剤などの追加の剤を含んでもよい混合物に対してステレオリソグラフィーを行う工程を含む。混合物は式II、式III、および式IVの化合物、またはそれらの混合物をさらに含んでもよい。様々な態様では、ステレオリソグラフィーは溶媒の非存在下で行われる。有利なことに、本明細書に記載の方法を行う上で溶媒は必要ではない。様々な態様では、曝露工程はインサイチューで行われる。したがって、IPNの形成は、光開始重合(ステレオリソグラフィー)が完了した後に反応成分が別の容器に移されないか、または別途精製されない、いわゆるワンポット2工程プロセスで行われうる。様々な態様では、本明細書に記載のIPNの形成は、副生成物の形成をもたらさず、ワークアップを必要としない。
【0076】
様々な態様では、本明細書に記載のIPNを含む複合材料が提供される。本明細書に記載のIPNを好適に含みうる複合材料としては自動車用複合材、ボーティング用複合材、航空機用複合材、自動車用コーティング、粉体コーティング、放射線硬化性コーティング、水性コーティング樹脂、工業用および保護用仕上材、アプライアンス用およびハードウェア用仕上材などが挙げられるがそれに限定されない。
【0077】
様々な態様では、式Iまたは式I-Aの化合物の第1の架橋物が提供される。第1の架橋物は、例えばVPPを使用して得ることができる。いくつかの態様では、式Iまたは式I-Aの化合物の第1の架橋物は、光開始剤による光重合によって得ることができる。特定の態様では、光開始剤は、赤外(700~1,000,000nm)範囲、可視(400~700nm)範囲、または紫外(10~400nm)範囲内の光に曝露される際に反応性を示す。様々な態様では、光開始剤は、アシルホスフィン、ケトン、ジイミダゾール、アシルゲルマニウム、チオケトン、ジチオカーボネート、トリチオカーボネート、カンファーキノン、およびカンファーアミンからなる群より選択されるクラスに属する化合物である。好適な光開始剤としては1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(HMPP)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-(4-メチルチエニル)-2-モルホリニル-1-プロパン-1-オン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル ホスフィネート、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、
などが挙げられるがそれに限定されない。光開始剤は、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物(formulated mass)に対して約0.01~約5重量%の量で使用可能である。様々な態様では、光開始剤は、式Iの化合物を含む調合物に対して約0.01、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、または約5重量%の量で存在する。様々な態様では、光開始剤はTPOである。様々な態様では、光開始剤は、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物に対して約1.0~約3.0重量%の量で存在する。
【0078】
様々な態様では、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物は、式Iまたは式I-Aの化合物と、少なくとも1つの光開始剤と、エポキシ基を架橋可能な少なくとも1つのアミン架橋剤とを含む。様々な態様では、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物は溶媒を含まない。様々な態様では、式Iまたは式I-Aの化合物は、調合物中に、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物に対して約1~約99重量%、または少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%の、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%の、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%より大きい、量で存在する。
【0079】
いくつかの態様では、架橋剤は少なくとも1個のエポキシ硬化基を含む。好適なエポキシ硬化基としてはアミン、チオールなどが挙げられる。いくつかの態様では、架橋剤は1個、2個、3個、または4個のアミン基を有しうる。いくつかの態様では、架橋剤は1個、2個、3個、または4個のチオール基を有しうる。架橋剤は同じ分子中に2種以上のエポキシ硬化基を有してもよく、例えば、架橋剤は同じ分子中にアミン基およびチオール基を有してもよい。様々な態様では、アミンはエポキシ硬化剤である。様々な態様では、架橋剤は芳香族ジアミンである。好適なアミン架橋剤としては2,4-ジエチル-5-メチルベンゼン-1,3-ジアミン(商品名EPIKURE(商標)Wで販売)、4,4-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-キシリレンジアミン(m-XDA)など、またはそれらの組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。好適なチオール架橋剤としてはペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)、2,2'-(エチレンジオキシ)ジエタンチオールなど、およびそれらの組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。様々な態様では、好適な架橋剤として(4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン)、フェナルカミン、ポリエーテルアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、置換ジアニリン、無水物エポキシ硬化剤など、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。様々な態様では、アミン架橋剤は式Iまたは式I-Aの化合物中のエポキシド部分を架橋可能である。アミン架橋剤は、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物に対して約1~約50重量%の量で存在しうる。様々な態様では、アミン架橋剤は、式Iの化合物を含む調合物に対して約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または約50重量%の量で存在しうる。
【0080】
様々な態様では、第1の架橋物は、式Iまたは式I-Aの化合物中のビニル(アルケン)部分間の架橋を含み、式Iまたは式I-Aの化合物中のエポキシ部分間の架橋を実質的に含まない。様々な態様では、ビニル部分の架橋は波長約200nm~約400nmを示す光によって開始しうる。
【0081】
様々な態様では、式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物を熱に曝露することで該調合物を熱硬化することにより、最終樹脂を形成することができる。様々な態様では、熱は約80~約220℃の温度である。様々な態様では、熱は約80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、または約220℃である。様々な態様では、熱硬化は式Iまたは式I-Aの化合物を含む調合物を熱に約0.5~約4時間、または0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは約4時間曝露することを含む。
【0082】
様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張ひずみ少なくとも約0.85%を示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張ひずみ約0.85~約0.97%を示す。様々な態様では、最終樹脂は、破断時の引張ひずみ約または少なくとも約0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、または約0.97%を示す。
【0083】
様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張応力少なくとも約32MPaを示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張応力約32~約40MPaを示す。様々な態様では、最終樹脂は、破断時の引張応力約または少なくとも約32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、または約40MPaを示す。
【0084】
様々な態様では、本明細書に記載の式Iまたは式I-Aの化合物のVPP前の樹脂は室温での粘度約250~約5000cPs、または室温での粘度約250、500、750、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、もしくは約5000cPsを示す。
【0085】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
本明細書に記載の、式Iの化合物で使用されるものと同じ手順、量、条件、および試薬を使用することで、式III-Aの化合物を使用してIPNを調製することができる。
【0086】
特定の態様では、本明細書に記載の単量体、ポリマー、およびそれらの組み合わせは、例えば自動車用複合材、ボーティング用複合材、航空機用複合材、自動車用コーティング、粉体コーティング、放射線硬化性コーティング、水性コーティング樹脂、工業用および保護用仕上材、アプライアンス用およびハードウェア用仕上材、接着剤、電気積層板、プラスチック改質剤(PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、エンジニアリング熱可塑性プラスチック、ゴム)、3Dプリント樹脂、VPPプリント樹脂、ならびに付加製造などの多種多様な用途に有用である。他の態様では、本明細書に記載の単量体、ポリマー、およびそれらの組み合わせは、単官能性オリゴマーおよびポリマーの製造における添加剤として、該オリゴマーおよびポリマー上で末端封止を形成することで該オリゴマーおよびポリマーに二重官能性を付加するように使用可能である。
【0087】
様々な態様では、式III-Aの化合物でのVPP前に、式III-Aの化合物を含む調合物であって、式III-Aの化合物と、少なくとも1つの光開始剤と、エポキシ基を架橋可能な少なくとも1つのアミン架橋剤とを含む調合物が提供される。様々な態様では、式III-Aの化合物を含む調合物は溶媒を含まない。様々な態様では、式III-Aの化合物は、調合物中に、式III-Aの化合物を含む調合物に対して約1~約99重量%、または少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%の、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%の、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%よりも大きい、量で存在する。式III-Aの化合物を含む調合物は式II、式III、式IVの少なくとも1つの化合物、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。調合物は熱開始剤、レドックス開始剤、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0088】
様々な態様では、光開始剤はアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-(4-メチルチエニル)-2-モルホリニル-1-プロパン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル ホスフィネート、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、
からなる群より選択される。
【0089】
様々な態様では、熱開始剤は4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ペルオキシ安息香酸tert-アミル、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシド、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、および過硫酸カリウムからなる群より選択される。
【0090】
様々な態様では、レドックス開始剤はヨウ化ナトリウム/過酸化水素、ヨウ化カリウム/過酸化水素、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン、過酸化ベンゾイル/N,N-ジメチルp-トルイジン、過酸化ベンゾイル/4-N,N-ジメチルアミノフェネチルアルコール、過酸化ベンゾイル/4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、グルコースオキシダーゼ/酸素/硫酸鉄(II)、および硫酸銅(II)/アスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択される。
【0091】
様々な態様では、式IIIの単量体は調合物の約1~約99%、または組成物の重量の約50%~約85%でありうる。様々な態様では、式IIIの単量体は、式III-Aの化合物を含む調合物に対して少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%でありうるか、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99重量%よりも大きくてもよい。
【0092】
様々な態様では、式IIの単量体は調合物の約1~約99%、または組成物の重量の約15%~約30%でありうる。様々な態様では、式IIの単量体は、式III-Aの化合物を含む調合物に対して少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%でありうるか、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%よりも大きくてもよい。
【0093】
様々な態様では、式IVの単量体は調合物の約1~約99%、または調合物の重量の約1%~約40%でありうる。様々な態様では、式IVの単量体は、式III-Aの化合物を含む調合物に対して少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%でありうるか、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、もしくは99重量%よりも大きくてもよい。
【0094】
様々な態様では、式III-Aの化合物を含む調合物は約0~20秒以内に、または約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20秒以内に光硬化性である。様々な態様では、本明細書に記載の式III-Aの化合物のVPP前の樹脂は室温での粘度約250~約5000cPs、または室温での粘度約250、500、750、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、もしくは約5000cPsを有する。
【0095】
様々な態様では、式III-Aの化合物、および場合によっては式II、式III、式IVの化合物、またはそれらの組み合わせを含む最終樹脂は破断時の引張ひずみ少なくとも約0.65%を示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張ひずみ約0.65~約0.97%を示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張ひずみ約または少なくとも約0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、または約0.97%を示す。
【0096】
様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張応力少なくとも約25MPaを示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張応力約32~約40MPa、または約25MPa~約40MPaを示す。様々な態様では、最終樹脂は破断時の引張応力約または少なくとも約25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、または約40MPaを示す。
【0097】
キット
さらなる局面では、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含むキットが提供される。特定の態様では、キットは、式Iの少なくとも1つの単量体、式I-Aの単量体、式IIの単量体、式IIIの単量体、式III-Aの単量体、および式IVの単量体からなる群より選択される少なくとも1つの単量体、ならびにそれらの組み合わせを含む組成物と、その使用のための説明用資料とを含む。特定の態様では、組成物は少なくとも1つの重合開始剤をさらに含む。
【0098】
特定の態様では、キットは、光重合開始剤を活性化するために十分な光を生成可能な光源をさらに含む。他の態様では、キットは、赤外(700~1,000,000nm)範囲、可視(400~700nm)範囲、または紫外(10~400nm)範囲内の光を発光可能な光源をさらに含む。さらに他の態様では、キットは、熱重合開始剤を活性化するために十分な熱を生成可能な熱源をさらに含む。他の態様では、キットは、本開示の組成物を温度約30℃~約200℃に加熱可能な熱源をさらに含む。
【0099】
当業者は、本明細書に記載の具体的な手順、態様、請求項、および実施例の数多くの等価物を認識するであろうし、または単なる日常的な実験を使用してそれらを確認することができるであろう。これらの等価物は、本開示の範囲内にあると見なされ、かつ本明細書に添付される特許請求の範囲によって網羅されると見なされた。例えば、反応時間、反応サイズ/体積、溶媒などの実験試薬、触媒、圧力、雰囲気条件、例えば窒素雰囲気、ならびに還元剤/酸化剤を含むがそれに限定されない反応条件を、当技術分野で認識されている代替物によってかつ単なる日常的な実験を使用して修正することが、本出願の範囲内にあると理解すべきである。
【0100】
本明細書において値および範囲がどこに示されようとも、これらの値および範囲に包含されるすべての値および範囲は本開示の範囲内に包含されるように意図されていると理解すべきである。さらに、これらの範囲内にあるすべての値、および値の範囲の上限または下限も、本出願によって想定される。
【0101】
以下の実施例は本開示の局面をさらに示す。しかし、それらは、本明細書に記載の本開示に関する教示または開示を限定するものでは決してない。
【実施例
【0102】
例示として提供される以下の実施例を参照することで、本出願の様々な態様をより良く理解することができる。本出願の範囲は以下に示される実施例に限定されない。
【0103】
材料
フェノール(99.5%)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、99%)、およびNMR用クロロホルム-d3をAcros Organicsから購入した。無水メタクリル酸(94%)をAlfa Aesarから購入した。AMC-2触媒(クロム(III)系触媒)をAMPAC Fine Chemicalsから購入した。ジフェニル(2,4,5-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)をTCIから購入した。イソプロピルアルコール(IPA)をVWRから購入した。圧縮窒素(N2、99.998%)および圧縮アルゴン(Ar、99.999%)をAirgasから購入した。EPON(商標)樹脂828(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、DGEBA)およびEPIKURE(商標)W硬化剤(ジエチルトルエンジアミン)をHexionから得た。NC-514sをCardolite Corporation(米国ペンシルベニア州ブリストル)により提供された。イソソルビドジメタクリレート(IM)を文献記載のように調製した。EPON 828を文献記載の方法を使用して同様の化学的および物理的特性評価結果を示すビスフェノールAのビスメタクリルグリシジルエーテルに変換した。これをビニルエステル828(VE828)として示す。すべての化学物質を受け取ったまま使用した。
【0104】
樹脂の合成および調合
A. ビニルおよびエポキシ二重官能性ポリマー/樹脂
図2に示すワンポット2工程反応方法論によって樹脂を合成した。メカニカルミキサーを備えた三つ口丸底フラスコにフェノール(200.00g)およびDMAP(13.11g)を加えた。混合物をアルゴンで10分間掃流した後、無水メタクリル酸(330.91g)を加えた。反応混合物を攪拌し続けながら50~55℃に加熱した。24時間後、反応混合物を室温に冷却し、化学量論的量のEPON(商標)828(804.75g)をAMC-2触媒(1.00g)と共に加えることで、Epon828を部分メタクリル化する合成手順の第2の工程を行った。次に混合物を70℃に加熱し、酸価滴定によって完了(遊離酸数が酸約3%に対応する10未満になるとき)までモニタリングした。最終合成PM-EM828はモル比1:1の単官能性単量体であるフェニルメタクリレート(PM)および二重官能性架橋剤としての部分メタクリル化ビスフェノールAエポキシ(EM828)で構成された。PM-EM828系と類似した完全メタクリル化ビニルエステル樹脂も比較目的で調製した。ここで、Epon828から対応する二官能性ビニルエステルVE828への完全変換を促進するためにEpon828をメタクリル酸に対して0.5のモル比で加えた。
【0105】
エポキシ部分を含む樹脂を化学量論的量のEpikure W(すなわちエポキシド1個当たり1個のアミン窒素)とブレンドしてエポキシ-アミン網目構造の硬化を促進した。さらに、Thinkyの遠心ミキサー中のすべての成分を表1に示す特定のモル組成で混合することで樹脂調合物を調製した。単独のPM-VE828樹脂を本研究用の比較の基礎として利用した。
【0106】
(表1)樹脂の組成
【0107】
網目構造の接続状態による効果を、PM-EM828とPM-VE828 - Epon828ブレンドとを比較することで評価した。この比較を行ったのは、これら2つの系がまったく同じモル濃度の反応性エポキシ基およびメタクリレート基を有するという事実が理由である。しかし、PM-EM828系では、両官能基を同じ分子上に有するEM828単量体によってビニルエステルおよびエポキシ-アミン網目構造が互いに化学的に接続され、一方、PM-VE828 - Epon828ブレンドではこれらの分子レベルでの接続が可能になる。
【0108】
さらに、全体的なポリマー特性に対するビニルエステルとエポキシ-アミン網目構造との接続間の分子距離の効果を評価するために、PM-EM828とVE828、またはVE828およびEpon828とを表1に記載のモル量でブレンドした。形成された網目構造の視覚表現を図3に示す。
【0109】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
本発明者らの以前の研究に記載のワンポット反応方法論を一部改変することで樹脂を合成した。メカニカルミキサーを備えた三つ口丸底フラスコにフェノール(50.00g)およびDMAP(3.28g)を加えた。混合物をアルゴンで10分間掃流した後、無水メタクリル酸(82.73g)を加えた。反応混合物を攪拌し続けながら50~55℃に加熱した。24時間後、反応混合物を室温に冷却し、NC-514s(224.47g)をAMC-2触媒(0.27g)と共に加えた。次に混合物を70℃に加熱し、酸価滴定によって完了(遊離酸数が酸約3%に対応する10未満になるとき)までモニタリングした。合成された樹脂(PM-NC514sVE)はモル比1:0.5の単官能性単量体フェニルメタクリレート(PM)および架橋剤NC514sVEで構成された。完全な反応スキームを図10に示す。PM-NC514sVE樹脂を単独の樹脂として利用し、また、樹脂特性に対するIM含有量の増加の効果を確定するために10重量%および20重量%の両方のIMとブレンドした。
【0110】
樹脂の特性評価
合成された樹脂を1H-NMR(400.15MHz、298Kで32回のスキャン)によってVarianの400MHz FT-NMR分光計を使用して特性評価した。樹脂および調合物の粘度を、TA InstrumentsのDiscoveryハイブリッドレオメーター(DHR-2)を使用して温度25℃で1°40mm円錐形状によって得た。剪断速度を対数的に傾斜させ、傾斜は1秒-1から100秒-1に上昇し、100秒-1から1秒-1に下降した。
【0111】
樹脂の付加製造
すべての樹脂、ポリマー、および単量体を、VPPによるフリーラジカル光重合用に、TPOを光開始剤として樹脂調合物全体の2重量%の量で加えることで調製した。樹脂をTPOと共にプラネタリーミキサー中で15分間混合し、2分間脱泡した。デジタルモデルを粘弾性試験、引張試験、および破壊試験用に調製した。最終モデルをSLA 3Dプリンターにアップロードした。層厚100μmを選択した。プリントを行った後、プリント試料をイソプロピルアルコールで20分間洗浄してプリント試料の表面からあらゆる未反応樹脂を除去した。これらの試料をAM試料として示す。さらに、試料を紫外光/可視光(λ=405nm)および熱(80℃)で2時間さらに後処理し(FC)、次にサーマルオーブン中、180℃で2時間さらに後硬化した(PCとして示す)。
【0112】
ポリマー特性
熱重量分析を熱重量分析計550を使用して行った。試料10mgを白金パン上に置き、N2(不活性)雰囲気および大気(酸化)雰囲気(バランスガス流量40mL/分-1、サンプルガス流量25mL/分-1)の両方において速度10℃/分-1で700℃に加熱した。初期分解温度(IDT)、50重量%分解時の温度(T50%)、最大分解時の温度(Tmax)、および木炭含有量を報告する。
【0113】
動的機械分析計(DMA)を使用してすべての硬化樹脂の粘弾性を評価した。周波数1.0Hz、ポアソン比0.35、およびたわみ振動振幅7.5μmの1つのカンチレバー形状を使用した。加熱傾斜は1分当たり2℃で0℃~250℃とした。
【0114】
レオロジー
A. ビニルおよびエポキシ二重官能性単量体、ポリマー、および樹脂
すべての樹脂組成物はニュートン挙動を示した。各樹脂の粘度を異なる剪断速度での3つの定常状態点の平均により確定した。表2に示す。
【0115】
(表2)25℃での樹脂の粘度
【0116】
架橋剤であるEM828、Epon828、またはVE828の全体的モル濃度が増加するに従って、各樹脂系の粘度が増加した。興味深いことに、PM-EM828樹脂およびPM-VE828 - Epon828ブレンド樹脂はまったく同じモル量のPM、架橋剤、およびビスフェノール内容物、ならびに同一モル量のメタクリレート部分およびエポキシ部分を含むが、PM-EM828系はブレンド対応物に比べて有意に減少した粘度を示す。これは、EM828単量体が単独で粘度1.1x105cPを示す一方で、VE828(6x107cP)とEpon828(1.3x104cP)との等モルブレンドが対数的単純複合則に基づく粘度約3x107cPを示すことが理由である。したがって、多官能性EM828の調製によって、同じモル含有量の反応性官能基に関して樹脂粘度が減少し、したがって処理性が潜在的に増加する。
【0117】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
VPPでのバイオベース樹脂の実行可能性を確定するために、未硬化樹脂の粘度を得た。結果を図11および表1Aに示す。図11中では、対数的単純複合則に基づく予測粘度と比較するために、IMの重量%をmol%に変換した。各未硬化樹脂調合物の粘度を様々な剪断速度での3つの定常状態点の平均を使用して確定した。得られたレオロジーデータに基づけば、すべての樹脂はニュートン挙動を示した。樹脂をVPPで処理するには、室温で3000cPを下回る粘度が一般に推奨される。したがって、表1Aに見られるように、樹脂ブレンドはVPPの粘度要件に適合する。様々な態様では、IMの濃度が増加するに従って樹脂系の粘度が減少した。理論に拘束されるものではないが、これは、室温でそれ自体が粘度約157cPを示すIMが反応性希釈剤として作用することが理由であると考えられる。実験で得られる粘度は、PM-NC514sVE(単独でPM = 3.1cP、NC514s = 2.9x107cP)およびIMの個々の粘度の対数的単純複合則に基づいて予想されるものである。
【0118】
検量線パラメータであるEC(樹脂がそのゲル点に到達するために必要な単位面積当たりの曝露量)およびDp(放射照度が、レーザーが樹脂に接触する界面における放射照度の13.5%になる深さ)を、Emaxの自然対数の関数としての硬化深さのOLS回帰によって推定した。すべての樹脂系パラメータの推定値を表2Aに示す。
【0119】
(表1A)様々なIM重量パーセントを有するベースPM-NC514sVE未硬化樹脂系の粘度
【0120】
(表2A)様々なIM重量パーセントを有するPM NC514sVE樹脂系の検量線パラメータDPおよびEC
【0121】
図12に見られるように、検量線モデルはデータとよく一致している。樹脂ブレンドは、IM含有量の増加により検量線パラメータが減少するという一般的傾向を示す。IMの添加により樹脂調合物中の全体的なメタクリレート濃度が増加し、最終的に、ECの低下により観察されるように、全体的な感光性が減少する。同様に、IM含有量が増加することでDpが減少し、メタクリレート濃度が高くなることで熱硬化性ポリマー網目構造の架橋密度が高くなり、したがって硬化樹脂表面を通じた光の侵入深さが減少する。
【0122】
硬化度
A. ビニルおよびエポキシ二重官能性単量体、ポリマー、樹脂
プリント(AM)、後処理FC、および後硬化(PC)の後の材料の硬化度を近赤外(近IR)分光測定によって確定した。未硬化樹脂を厚さ3mmのガラス容器に収容した。分解能2cm-1での64個の累積的スキャン値を収集した。硬化樹脂は厚さ2.5mmを有しており、それらの近赤外スペクトルを未硬化樹脂と同じ方法で取得した。メタクリレートピークを硬化前および硬化後に約6165cm-1で測定し、重合に影響されない5900cm-1での基準ピークと比較した。存在する場合、エポキシのオキシラン環を約4530cm-1で測定し、アミンピークを約5000cm-1および約6600cm-1で測定した。図4は硬化樹脂および未硬化樹脂の代表的な近赤外スペクトルを示す。
【0123】
(表3)室温で取得した様々な硬化段階での近赤外分光測定による樹脂の硬化度
【0124】
樹脂内で唯一の光重合可能な基は、6165cm-1で近赤外吸収を示すメタクリレート官能基である。硬化工程前のメタクリレートピークと硬化工程後のメタクリレートピークとの間の比を5900cm-1での未反応対照ピークと比較することでメタクリレート網目構造の硬化度を計算した。同様に、エポキシ上のオキシラン環、およびアミンは約4530cm-1、約5000cm-1、および約6600cm-1で近赤外吸収を示し、これらを利用してエポキシ-アミン網目構造の硬化度を確定した。プリント後、すべての樹脂でのメタクリレート官能基の硬化度は75~90%であった。また、VPPプリント中にエポキシ-アミン反応が開始されないことから、すべてのエポキシ変換率は0%であった。したがって、エポキシ単量体およびアミン単量体はメタクリレート系網目構造のシェル内で可塑化される。
【0125】
プリント部分の周囲での紫外光/可視光の照射による80℃でのFC後処理の追加によって、メタクリレートの硬化度が約90%にさらに増加する。さらに、80℃でのFC段階によってエポキシ-アミン硬化が開始し、この温度は典型的なエポキシ-アミン硬化の範囲内である。全体的なエポキシ硬化度がすべての試料について65~83%に増加することが示されており、このことは、熱的後硬化を伴うVPPによる段階的硬化を使用するアプローチによって、エポキシ-アミン単量体がVPPプリントメタクリレート系ポリマーマトリックス内で最初に可塑化され、続いてFC中に硬化が開始するという、インサイチューでのIPN形成が可能になることを実証している。180℃での伝統的な後硬化をさらに使用してエポキシ-アミン網目構造の変換を促進した。
【0126】
完全メタクリレート系PM-VE828に対しては、エポキシ-アミン反応性が存在しないことから、この後硬化を使用しなかった。興味深いことに、まったく同じモル量のPM、架橋剤、およびビスフェノール内容物、ならびに同一モル量のメタクリレート部分およびエポキシ部分を含む、PM-EM828およびPM-VE828 - Epon828ブレンドは、同様のメタクリレート硬化度を示すが、エポキシ-アミン網目構造の硬化度の差が約16%である。2つの網目構造がPM-VE828 - Epon828ブレンド中では接続されていないことから、完全メタクリル化部分はAM後にすべての他の調製されたIPNよりも高いTgを有するポリマーをおそらく生じさせ、したがって網目構造のガラス化の発生が早くなり、これによりこの試料中のエポキシ-アミン網目構造の硬化度が低下する。PM-EM828_025VE828およびPM-EM828_05Epon828_025VE828は、おそらくAM後にポリマーのTgに作用することでガラス化に変化を生じさせる、メタクリレート官能基およびエポキシ官能基の追加調合の結果として、PM-EM828とPM-VE828 - Epon828ブレンドとの中間の、両成分において同様の硬化度の値を示す。
【0127】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
プリントおよび洗浄(AMとして示す)直後の、続いて後処理後の調合樹脂について、近赤外分光測定を使用して硬化度を確定した。代表的な近赤外スペクトルを図13に示し、得られた硬化度の値を表3Aに列挙する。
【0128】
(表3A)様々なIM重量パーセントを有するPM-NC514sVE樹脂系のプリント試料のFC前およびFC後の硬化度
【0129】
重合可能なメタクリレート基は6165cm-1で吸収を示す。硬化段階前のメタクリレートピークと硬化段階後のメタクリレートピークとの間の比を基準ピーク(5900cm-1)と比較することで硬化度を計算した。一般に、すべての樹脂調合物はプリントおよび洗浄後ならびに後処理後の両方において同様の硬化度を示した。紫外光での材料の照射も行いながら伝統的な後硬化として作用するFC(後処理)の追加によって、全体的な硬化度が約16%増加して完全変換に近づき、したがって、本明細書において提示および説明されるポリマー特性に対する硬化度の影響が間違いなく取り除かれる。
【0130】
ポリマー特性
A. ビニルおよびエポキシ二重官能性単量体、ポリマー、樹脂
得られたポリマーは硬いガラス状の灰緑色/褐色の試料であった。すべての硬化樹脂の熱分解を分析した。TGAサーモグラムを図5に示す。IDT、T50%、Tmax、および木炭含有量の値を表4に報告する。
【0131】
(表4)N2中でのすべてのIPNの熱重量特性
【0132】
一般に、すべてのIPNは同等の熱重量特性を示し、IDT値は約320℃であり、T50%値およびTmax値は約400℃であり、木炭含有量は5~12%の範囲である。完全メタクリレート系PM-VE828が、IDTの減少を示した唯一の試料であった。メタクリレート系PM-VE828のIDTの低下は、IPNのIDT値の増加およびバルク材料の早期分解の防止におそらく寄与している二次網目構造が存在しないことの結果である可能性がある。同様の熱重量傾向が酸化環境において観察され、唯一の差は、高温での木炭の燃焼により木炭含有量が低下することであった。
【0133】
すべてのIPNの粘弾性をDMAを使用して評価した。図6は、すべてのIPN試料の代表的な貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E'')サーモグラムを示す。図7は、各IPNのtanδサーモグラムを示す。表5は、すべての硬化IPNの特定の熱機械特性を示す。
【0134】
(表5)すべてのIPNの粘弾性
【0135】
25℃でのE'の差は、すべての試料に関して統計的に有意ではなく、これらの試料が示したE'値は、25℃で従来のスチレン希釈ビニルエステルと同等であって、これらの網目構造のメタクリレート性が理由で典型的なエポキシ-アミン熱硬化性樹脂(約2.5GPa)よりも大きかった。E''のピークおよびtanδのピークを両方とも使用することでTg、すなわちポリマーがガラス状態からゴム状態になる温度を確定した。まったく同じモル量のPM、架橋剤、およびビスフェノール内容物、ならびに同一モル量のメタクリレート部分およびエポキシ部分を含むPM-EM828とPM-VE828 - Epon828ブレンドとを比較することで、PM-EM828が、PM-VE828 - Epon828ブレンドに比べて、より高い硬化度を実現することから、約10℃高いTgを有する材料を生じさせるということが実証される。さらに、PM-EM828樹脂中にVE828を追加調合することで、系全体中の架橋剤含有量が増加することから、TgがE''のピークに対して約11℃さらに増加するが、VE828およびEpon828の両方の調合(すなわちPM-EM828_05Epon828_025VE828)によってTgのさらなる増加は生じない。したがって、メタクリレートとエポキシ-アミン網目構造との接続間の分子距離の増加はTgに対して有意な影響を示さない。にもかかわらず、すべての調製されたIPNはスチレン希釈ビニルエステル樹脂と同様のTg値を示す。
【0136】
tanδピークの幅はポリマー網目構造の不均一性に関連している。ピークの幅がより広いことは、網目構造がより不均一であること、および緩和モードの分布がより広いことを示す。すべてのIPNのtanδサーモグラムは同様の幅を示し、このことは、すべてのIPNが同様の均一性レベルを示したことを示す。tanδの最大値を使用することで、ピークが高くなることが連鎖移動性が高くなることを示すという、全体的なポリマー鎖のセグメント移動性に関する見識を得ることができる。一般に、調製されたIPNは、おそらくはIPN組成および得られるMc値の差が理由で、ポリマー鎖のセグメント移動性のわずかな差を示す。tanδの最大値はMc値の増加により減少するが、例外はPM-VE828 - Epon828ブレンドであり、おそらくはこの系の硬化度が低下した結果である。したがって、2つの網目構造の相互接続の差、および分子間隔の差はポリマー鎖のセグメント移動性にわずかな影響しか示さない。
【0137】
Mcをゴム弾性理論を使用して計算した。表5に示す。完全メタクリレート系PM-VE828と調製されたすべての他のポリマーとを比較することで、PM-VE828がすべての調製されたポリマーのなかで最低のMcを示したことが観察される。PM-VE828 - Epon828ブレンドはすべての試料のなかで最高のMcを示した。これはおそらく、エポキシ-アミン網目構造の硬化度の低下の結果である。
【0138】
PM-EM828、PM-EM828_025VE828、およびPM-EM828_05Epon828_025VE828のすべての相互接続IPNは同様のMc値を示す。この結果は、すべての架橋剤(EM828、VE828、およびEpon828)が同様の分子量を有することが理由である。メタクリレートとエポキシ-アミン網目構造との接続間の分子距離の増加はMcに影響しない。というのも、2つの接続されたポリマー網目構造の間で分子量が変化しているが、数値上のMcがIPN接続とは無関係に存在するものであり、この場合はすべて同様の規模である個々の網目構造内のMcを意味するからである。
【0139】
引張試験を行うことで、ポリマーの結果的な機械特性に対するIPN接続の効果を確定した。図8は、すべての試料の応力-ひずみ曲線を示す。すべての試料は破断まで線形挙動を示した。表6は、すべての硬化ポリマーの引張特性のデータを示す。
【0140】
(表6)すべてのIPNの引張試験値
【0141】
ポリマーの剛性の尺度であるヤング率は、全体的な単量体構造、架橋度、およびポリマー網目構造の高分子構造と直接的な相関関係にある。ヤング率の差は、大部分の試料において統計的に有意ではないが、PM-EM828_05Epon828_025VE828は例外である。これはおそらく、VE828およびEpon828の追加調合の結果としてエポキシ性が増加し、したがって2つの形成された網目構造間の分子距離が増加するためである。完全メタクリレート系PM-VE828は破断時に概して最低の引張ひずみおよび引張応力を示した。PM-VE828 - Epon828ブレンドIPNは完全メタクリレート系PM-VE828とほぼ同一の結果を生じさせた。
【0142】
予想外にも、相互接続IPNであるPM-EM828は、まったく同じモル量の樹脂構成成分および反応性種を含むPM-VE828 - Epon828ブレンドよりも有意に改善された引張特性を有する材料を生じさせた。したがって、ビニルエステルとエポキシ-アミン網目構造との相互接続により、おそらくは硬化度の上昇の結果として引張強度が有意に向上したことが実証された。しかし、VE828をPM-EM828樹脂中に加える(PM-EM828_025VE828)ことで、得られるIPNの引張特性が全体的に減少した。これは、メタクリレート網目構造内の架橋数が増加し、続いて網目構造レベルの接続間の分子距離が減少したことの結果である。
【0143】
しかし、Epon828の追加(PM-EM828_05Epon828_025VE828)がこれを相殺することにより、エポキシ性および形成される2つの相互接続網目構造間の分子距離の両方が増加する。先に記載のように、分子距離のこの増加によりヤング率がわずかに減少するが、網目構造の接続状態の変化により、最大力時のエネルギー、破断時の力、破断時の引張ひずみ、および破断時の引張応力を含む測定されるすべての他の引張特性が有意に改善される。このことは、IPN内での相互接続および分子距離増加により靭性が増加することを示している。
【0144】
さらに、引張試験により得られた結果を破壊靭性実験によって確認する。図9に示すように、すべての試料は破損に至る線形変形を示した。平面-ひずみ破壊靭性K1Cおよび臨界ひずみエネルギー放出速度G1Cを得た。表7に示す。
【0145】
(表7)すべてのIPNの破壊靭性K1C値およびG1C
【0146】
完全メタクリレート系PM-VE828系はスチレン希釈ビニルエステルと同様の破壊靭性を示した。PM-VE828 - Epon828ブレンドは、調製されたすべてのIPNのなかで最低の破壊靭性を示した。興味深いことに、PM-VE828 - Epon828ブレンドは網目構造の個々の成分に対して中間的な破壊特性を示し、ここでPM-VE828成分は表7に示される通りであり(G1Cは222J m-2)、Epon828-EPIKURE(商標)WのG1Cは135J m-2であることが文献に示される。
【0147】
この中間的な破壊靭性は、非相互接続のメッシュ状IPNの形成および低い硬化度の結果である。しかし、PM-VE828 - Epon828ブレンドとまったく同じモル量のPM、架橋剤、およびビスフェノール内容物、ならびに同じモル量のメタクリレート部分およびエポキシ部分を含む相互接続IPNであるPM-EM828では、EM828単量体の二重官能性によるビニルエステルとエポキシアミン網目構造との相互接続の結果として、破壊靭性が有意に増加しており、G1Cは668J m-2に増加している。
【0148】
VE828をPM-EM828樹脂中に加えることでG1Cが283J m-2に減少した。これは、メタクリレート網目構造内の架橋数が増加し、結果として網目構造レベルの接続間の分子距離が減少したことが理由である。しかし、Epon828の調合によってVE828の添加による靭性の減少が相殺され、ここでPM-EM828_05Epon828_025VE828系は790J m-2という高い破壊エネルギーを有することが示される。これは2つの相互接続網目構造間の総分子距離の増加の結果である。付加製造PM-EM828_05Epon828_025VE828 IPNのG1C 790J m-2は、熱硬化されたゴムおよび/または粒子強靭化ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂に匹敵する。また、この高い破壊靭性がTgの減少なしに実現されることに留意することが重要である。これは、粒子が可塑効果を示すことから、ゴム強靭化系に特有のことである。
【0149】
B. バイオベース単量体、ポリマー、および樹脂
得られたVPPプリントポリマーは室温でガラス状であり、また、樹脂合成において利用されたNC-514sの色が主に理由で、色が褐色であった。試料の代表的な写真を図14に示す。
【0150】
TGAをすべての後処理試料に行ってそれらの熱安定性を確定した。後処理試料のN2中でのサーモグラムを図15に示す。IDT、T50%、Tmax、および木炭含有量の値を表4Aに示す。
【0151】
(表4A)様々なIM重量パーセントを有するPM-NC514sVE硬化樹脂系のN2中での熱重量特性
【0152】
一般に、すべての試料は、互いに誤差の範囲内であるIDT、T50%、Tmax、および木炭含有量の値を有する。したがって、ベースPM-NC514sVE樹脂中へのIMの添加は熱安定性に有意な影響を示さない。粘弾性をDMAを使用して評価した。各試料の代表的な貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E'')サーモグラムを図16に示し、tanδサーモグラムを図17に示す。表5Aは、プリントならびに完全処理(洗浄および後処理)された各樹脂系の熱機械特性値を含む。
【0153】
硬化PM-NC514sVE樹脂系は、CNSL由来NC514sVEの可撓性が理由で、-40℃で3.5GPa、25℃で1.0GPaという最低のE'を示す。単独の硬化IMが25℃で4GPaというE'を示すことから、IMの添加により-40℃および25℃でE'が予想通り増加する(表5A参照)。E''のピークおよびtanδのピークを両方とも使用することで試料のTg、すなわちポリマーが加熱時に剛性状態から可撓性がより高いゴム状の状態になる温度を推定した。一般に、E''のピークによって比較的控えめなTgの値が得られ、一方、tanδのピークによって上限値が得られる。NC514sVEの長いアルキル鎖の断続的なβ緩和によるピーク重複が懸念されることから、tanδのピークを比較目的でTg値として利用した。全体的に、TgはE'と同じ傾向に従っており、ここでベースPM-NC514sVE硬化樹脂系は63℃のTgを示し、10重量%および20重量%のIMを加えることでそれぞれ91℃および109℃のTgを有する硬化樹脂系が得られた。
【0154】
(表5A)様々なIM重量パーセントを有するPM-NC514sVE試料の熱機械的結果
【0155】
tanδピークの幅は熱硬化性ポリマー網目構造の不均一性に関連しており、ここでピークの幅が広くなることは、網目構造がより不均一になること、および緩和モードの分布が広くなることを示す。IMをPM-NC514sVE樹脂系に取り込むことで、ポリマーマトリックス内に大きく異なった分子構造を有する3つの異なった成分が存在するようになることから、調合物の不均一性の増加によりtanδピークの幅が増加する。ポリマー鎖のセグメント移動性はtanδの最大値により規定され、ここでピークが高くなることは鎖セグメント移動性が高くなることを示す。樹脂調合物中のIM含有量が増加するに従って、IM構造の剛性により鎖移動性が熱硬化性ポリマー網目構造全体の内側に制限され、したがってtanδのピーク高さが図17に示すように減少する。
【0156】
ゴム弾性理論を使用して計算されたMc値を表5Aに示す。様々な態様では、IM濃度が増加するに従って、Mc値が減少する。これは、IMの分子量が低いこと、およびIMが硬化時に架橋剤として作用することで得られるポリマーマトリックスの架橋密度が高くなる(Mc値が低下する)ことが理由である。同様に、IM含有量が増加する際に、架橋密度の増加およびMcの減少はバルクポリマー密度の増加に直接相関している(表5A参照)。
【0157】
引張試験を行うことで、VPPプリント熱硬化性ポリマーの引張特性に対するIM含有量の増加の効果を確定した。図18は、調製されたポリマーの代表的な応力-ひずみ曲線を示す。最大力時のエネルギー、ヤング率、破断時の力、引張ひずみ、および引張応力を含む引張試験特性を表6Aに報告する。
【0158】
(表6A)様々なIM重量パーセントを有する硬化PM-NC514sVE樹脂系の引張試験結果
【0159】
硬化PM-NC514sVE樹脂系は最低のヤング率543MPaおよび最高の破断時の引張ひずみ9.44%を示した。低いヤング率および高い破断時のひずみの値は、弾性挙動を示しかつ低弾性率材料を生じさせることが知られているNC514sVE成分の化学構造によるものである。しかし、IM添加時に、ヤング率は有意に増加し、一方、破断時のひずみは有意に減少する。表5Aおよび表6Aに見られるように、また一般的に、Mcが減少するに従って、ヤング率の増加が予想される。結果に示されるように、硬化樹脂系はこの傾向に従っており、ここでIMの添加は、Mcの減少を生じさせ、したがってヤング率の増加および破断時のひずみの減少に直接相関している。しかし、IMの添加は全体的な材料強度を実質的に増加させたが、最大力時のエネルギーの有意な減少により示されるように、IMの添加は材料を脆化した。
【0160】
また、引張試験結果を破壊靭性実験において確認する。図19に示すように、すべての試料は破損に至る線形変形を示した。平面-ひずみ破壊靭性K1Cおよび臨界ひずみエネルギー放出速度G1Cを得た。表7Aに報告する。一般に、IM含有量が増加するに従って、K1CおよびG1Cはいずれも減少した。IMを有さない硬化PM-NC514sVE樹脂系はK1C値0.55MPa m1/2およびG1C値729J m-2を示した。このことは、プリントおよび試験された熱硬化性ポリマーのなかで該樹脂系が最も強靭であったことを示す。最も脆弱な硬化樹脂系はPM-NC514sVE 20% IMであり、K1Cは0.50MPa m1/2、G1Cは160J m-2であった。
【0161】
靭性の減少は、IM含有樹脂が、DMA結果(表5A参照)が示す架橋密度の上昇(Mc値の低下)、および通常は強靭化をもたらす脂肪族含有量の全体的な減少を示す、熱硬化性マトリックスを生じさせることが理由である。3つのSLAプリントバイオベース樹脂の性能を比較したとき、硬化ポリマー網目構造中にIMを加えることで、Tgおよびヤング率の増加を通じて示されるように可撓性が減少し、また、靭性が減少した。
【0162】
(表7A)様々なIM重量パーセントを有するPM-NC514sVEの破壊靭性K1CおよびG1C
【0163】
番号付きの態様
以下の番号付きの態様が示されるが、その番号付けは重要度のレベルを示すものと解釈されるべきではない。
態様1は、
少なくとも1個のエポキシ硬化基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を含む化合物との反応生成物を含み、
該少なくとも1個のビニルエステル官能基が光誘起性フリーラジカル重合により重合されており、
該少なくとも1個のエポキシ官能基および該架橋剤が段階成長熱重合により重合されている、
相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を提供する。
態様2は、前記化合物が式Iまたは式I-Aの構造を有する、態様1のIPN:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R’’は独立してHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である
を提供する。
態様3は、RがCH3である、態様1のIPNを提供する。
態様4は、R'がCH3である、態様1のIPNを提供する。
態様5は、式Iの化合物が下記構造を有する、態様1のIPN:
を提供する。
態様6は、前記化合物が式III-Aの構造を有する、態様1のIPN:
式中、
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
各Yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である
を提供する。
態様7は、ビニルエステル官能基が、バット光重合(VPP)を使用して光重合されている、態様6のIPNを提供する。
態様8は、ビニルエステル官能基が、VPPを使用して光重合されている、態様1のIPNを提供する。
態様9は、架橋剤がエポキシ硬化剤である、態様1のIPNを提供する。
態様10は、エポキシ-架橋剤重合が、熱的後処理を使用して促進される、態様1のIPNを提供する。
態様11は、下記またはその架橋物をさらに含む、態様1のIPN:
を提供する。
態様12は、相互侵入ポリマー網目構造(IPN)を調製する方法であって、
少なくとも1個のアミン官能基を含む架橋剤と、少なくとも1個のビニルエステル官能基および少なくとも1個のエポキシ官能基を有する単量体、オリゴマー、またはポリマーとの混合物に、ビニルエステル官能基が光重合される条件下で、VPPを適用する工程; ならびに
得られた混合物を、エポキシ-アミン重合が行われる熱的条件に曝露する工程
を含む、方法
を提供する。
態様13は、単量体が式I-Aの構造を有する、態様12の方法:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
RはH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R'はH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
R''はHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である
を提供する。
態様14は、前記ポリマーが式Iの構造を有する、態様12の方法:
式中、
AはH、C1~3アルキル、CN、F、Cl、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
XはOまたはN-R''であり;
各Rは独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R'は独立してH、C1~3アルキル、F、およびペルフルオロC1~3アルキルからなる群より選択され;
各R''は独立してHまたはC1~3アルキルであり;
pは0~100,000の整数である
を提供する。
態様15は、適用する工程が溶媒の非存在下で行われる、態様12の方法を提供する。
態様16は、曝露する工程がインサイチューで行われる、態様12の方法を提供する。
態様17は、架橋剤がエポキシ硬化剤である、態様12の方法を提供する。
態様18は、態様1のIPNを含む、複合材料を提供する。
態様19は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの単量体を含む、組成物:
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、および任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各Xは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である
を提供する。
態様20は、式IIの単量体が、下記からなる群より選択される、態様19の組成物:
式中、mは0、2、4、または6である
を提供する。
態様21は、式IIIの単量体が下記である、態様19の組成物:
を提供する。
態様22は、式IVの単量体が下記である、態様19の組成物:
を提供する。
態様23は、少なくとも1つの重合開始剤をさらに含む、態様21の組成物。
態様24は、重合開始剤が、光開始剤、熱開始剤、およびレドックス開始剤からなる群より選択される少なくとも1つである、態様21の組成物を提供する。
態様25は、光開始剤が、赤外スペクトル、可視スペクトル、または紫外スペクトル内の光に曝露される際に反応性を示す、態様24の組成物を提供する。
態様26は、光開始剤が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-(4-メチルチエニル)-2-モルホリニル-1-プロパン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、
からなる群より選択される、態様25の組成物を提供する。
態様27は、熱開始剤が、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ペルオキシ安息香酸tert-アミル、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシド、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、および過硫酸カリウムからなる群より選択される、態様24の組成物を提供する。
態様28は、レドックス開始剤が、ヨウ化ナトリウム/過酸化水素、ヨウ化カリウム/過酸化水素、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン、過酸化ベンゾイル/N,N-ジメチルp-トルイジン、過酸化ベンゾイル/4-N,N-ジメチルアミノフェネチルアルコール、過酸化ベンゾイル/4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、グルコースオキシダーゼ/酸素/硫酸鉄(II)、および硫酸銅(II)/アスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択される、態様24の組成物を提供する。
態様29は、式IIIの単量体が組成物の重量の約50%~約85%を構成する、態様19の組成物を提供する。
態様30は、式IIの単量体が組成物の重量の約15%~約30%を構成する、態様19の組成物を提供する。
態様31は、式IVの単量体が組成物の重量の約0%~約40%を構成する、態様19の組成物を提供する。
態様32は、約0~20秒以内に光硬化性である、態様19の組成物を提供する。
態様33は、室温で粘度約250~約5000cPsを有する、態様19の組成物を提供する。
態様34は、態様1または19の組成物と、キットの該組成物を使用してポリマー網目構造を形成するための説明用資料とを含む、キットを提供する。
態様35は、式II、式III、式III-A、または式IVを含む単量体:
式中、
R1
であり;
Lは、結合、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、およびC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され、ここで置換基は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;
各R3は独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニルからなる群より選択され;
R4
であり;
各yは独立して、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、任意でC2~C6アルキニル、任意でC1~C6アルコキシ、任意でC1~C6アミノアルキル、任意でC1~C6ハロアルコキシ、および任意でC1~C6ハロアルキルからなる群より選択され;
nは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり;
mは0、2、4、6、または8である
を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
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【国際調査報告】