(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】再生金属触媒を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の高収率生成
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20230329BHJP
B01J 35/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J35/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549429
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021018775
(87)【国際公開番号】W WO2021168246
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592233750
【氏名又は名称】ノースイースタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤニス エー レベンディス
(72)【発明者】
【氏名】アイディン パナヒ
(72)【発明者】
【氏名】チュアンウェイ チュオ
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC16B
4G146BA12
4G146BA15
4G146BC23
4G146BC24
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC34A
4G146BC42
4G146BC44
4G146DA02
4G146DA26
4G146DA30
4G169AA02
4G169AA11
4G169BA17
(57)【要約】
カーボンナノ構造体が、有機材料を熱分解することによって合成される。カーボンナノ構造体は、再使用されるステンレス鋼基材上で合成される。カーボンナノ構造体を合成した後に、ステンレス鋼基材は、カーボンナノ構造体の合成のために、酸に接触され、加熱され、急冷され、再使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ構造体を合成する方法であって、
a)ステンレス鋼基材を酸に接触させる工程と、
b)前記ステンレス鋼基材を少なくとも600℃に加熱する工程と、
c)前記ステンレス鋼基材を急冷する工程と、
d)600℃~1200℃の温度の第1炉における非酸化環境において、有機材料を熱分解して1以上のガス分解生成物を得る工程と、
e)600℃~1200℃の温度の第2炉において1以上の前記ガス分解生成物を前記ステンレス鋼基材全域に流通させて前記カーボンナノ構造体を形成する工程と、
f)前記ステンレス鋼基材から前記カーボンナノ構造体を除去する工程と、
g)工程a)から工程f)を少なくとも1回反復する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記ステンレス鋼基材は、ワイヤーメッシュである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の前記ガス分解生成物が、複数のワイヤーメッシュ全域に流通される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステンレス鋼基材は、ステンレス鋼チップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸は、塩酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステンレス鋼基材を加熱する工程は、空気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非酸化環境は、不活性ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスは、窒素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非酸化環境は、水蒸気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2炉において1以上の前記ガス分解生成物を前記ステンレス鋼基材全域に流通させる前に、1以上の前記ガス分解生成物を酸化ガスに混合する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化ガスは、酸素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化ガスは、空気である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記有機材料は、ポリエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機材料は、ポリスチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記有機材料は、ポリプロピレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有機材料は、ポリアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程a)から工程f)が、合計2回から7回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程b)は、前記ステンレス鋼基材を600℃~1200℃の温度に加熱することである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第2炉において1以上の前記ガス分解生成物を前記ステンレス鋼基材全域に流通させる前に、1以上の前記ガス分解生成物をフィルタ処理して1以上の前記ガス分解生成物から任意の固体粒子を除去する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月19日出願の米国仮特許出願第62/978606号の利益を主張する。上記出願の教示全体が、参照によりここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ構造体は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されるように、有機材料の熱分解によって生成可能である。しかし、有機材料の熱分解によるガス分解生成物は、カーボンナノ構造体に完全には変換せず、それにより無駄が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/111624号
【特許文献2】米国特許第9051185号明細書
【特許文献3】米国特許第9738524号明細書
【発明の概要】
【0004】
ここに記載される方法は、浸炭性ガスを生成する原料として用いられるポリマー(使用前又は使用後)又はバイオマスなどの炭素/水素含有有機材料の熱分解又は穏やかな酸化分解を伴う。これらのガスは、600~1200℃の範囲の温度において、触媒基材上のカーボンナノチューブの成長のための供与体として用いられる。
【0005】
ステンレス鋼材料(固定又は浮遊)などの前処理された金属は、CNT成長のための触媒として作用するように用いることができる。触媒の前処理は、所定時間(例えば、10分間)の酸洗浄、続いて所定時間(例えば、1分間)の高温(例えば、800℃)下の空気中での酸化、続いて室温への速い急冷を伴う。
【0006】
成長したカーボンナノチューブがアルコール中での超音波処理によって除去されると、触媒は、今回は、所定時間(例えば、10~20分間)の高温(例えば、800℃)下の空気中での酸化、続いて室温への速い急冷、その後の所定時間(例えば、40分間)の酸洗浄によって再度処理される。成長したナノチューブが再度除去されると、再生プロセスが複数回反復され得る。
【0007】
CNTの収率は、プラトーに達するまで(触媒の再処理による)再生をする毎に劇的に増加した。最終的には、触媒を数回再生した後に触媒はもろくなり、二度と再生することはできなくなった。
【0008】
カーボンナノ構造体を合成する方法をここに説明する。方法は、ステンレス鋼基材を酸に接触させる工程と、ステンレス鋼基材を少なくとも600℃に加熱する工程と、ステンレス鋼基材を急冷する工程と、600℃~1200℃の温度の第1炉における非酸化環境において、有機材料を熱分解して1以上のガス分解生成物を得る工程と、任意選択的に、ガス分解生成物をフィルタ処理してガス分解生成物から任意の固体粒子を除去する工程と、600℃~1200℃の温度の第2炉において1以上のガス分解生成物をステンレス鋼基材全域に流通させてカーボンナノ構造体を形成する工程と、ステンレス鋼基材からカーボンナノ構造体を除去する工程と、を含む。方法は、少なくとも1回反復される。
【0009】
ステンレス鋼基材は、ワイヤーメッシュであり得る。ガス分解生成物は、複数のワイヤーメッシュ全域に流通されてもよい。ステンレス鋼基材は、ステンレス鋼チップを含んでいてもよい。
【0010】
酸は、塩酸(HCl)又は硫酸(H2SO4)であり得る。
【0011】
ステンレス鋼基材を加熱する工程は、空気中で行われ得る。
【0012】
非酸化環境は、窒素などの不活性ガスを含み得る。非酸化環境は、水蒸気を含み得る。
【0013】
方法は、第2炉において1以上のガス分解生成物をステンレス鋼基材全域に流通させる前に、1以上のガス分解生成物を酸化ガスに混合する工程をさらに含み得る。酸化ガスは、酸素を含み得る。酸化ガスは、空気であってもよい。
【0014】
有機材料は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリアミドの1以上を含み得る。
【0015】
方法は、合計2~7回行われ得る。
【0016】
ステンレス鋼基材を加熱する工程は、600℃~1200℃の温度までとなり得る。
【0017】
上記は、添付図面に示すように、以下の例示実施形態のより詳細な説明から明らかとなる。添付図面において、同様の符号は、様々な図を通じて同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、実施形態を説明するにあたり強調が施されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aおよび1Bは、廃プラスチックの熱分解及びカーボンナノチューブ(CNT)の合成のための実験研究機器を示す。
図1Aは、純粋熱分解環境(例えば、N
2)又は酸素が混合ベンチュリ管に導入される穏やかな酸化環境におけるCNTの生成を示す(領域1:熱分解段階、領域2:燃料リッチな燃焼段階*、及び領域3:CVD合成段階)。セラミック(SiC)ハニカムフィルタを示し、CNT成長のための触媒基材として使用されるステンレス鋼ワイヤークロスの部分も示す。酸素含有ガスがベンチュリ管に添加される場合にのみ燃焼段階において火炎が存在する。
【
図2】
図2は、原料として市販LDPEを用いてSS-316触媒上に成長したCNTの収率を示すチャートである。y軸:CNTの質量/触媒の質量、x軸:触媒の使用回数である。
【
図3A】
図3Aから
図3Cは、400メッシュサイズのSS-316触媒上に0.1lpmでLDPE原料から成長したMW-CNTのSEM画像である。
図3Aは、触媒の初回使用によるワイヤーのCNTカバレッジを示す。
【
図3B】
図3Bは、触媒の初回使用によるワイヤーのCNTカバレッジを示す。
【
図3C】
図3Cは、触媒の2回目の使用によるワイヤーのCNTカバレッジを示す。
【
図4A】
図4Aは、Bシリーズ再使用処理の異なる工程において熱処理された触媒ワイヤー表面のSEM画像である。
【
図4B】
図4Bは、Bシリーズ再使用処理の異なる工程において熱処理された触媒ワイヤー表面のSEM画像である。
【
図4C】
図4Cは、Bシリーズ再使用処理の異なる工程において熱処理された触媒ワイヤー表面のSEM画像である。
【
図4D】
図4Dは、Bシリーズ再使用処理の異なる工程において熱処理された触媒ワイヤー表面のSEM画像である。
【
図5】
図5は、原料として市販LDPEを用いてSS-316触媒チップ(旋盤削屑)上に成長したCNTの収率(Yc及びYp)を示すグラフである。
【
図6】
図6は、旋盤削屑からのチップの形態でSS-316触媒上に0.1lpmでLDPE原料から成長したMW-CNTのSEM画像である。
【
図7A】
図7Aは、再使用サイクルT=800C、mp/mc=2の間のワイヤークロス触媒の処理のための条件を最適化する実験の結果を示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、再使用サイクルT=800C、mp/mc=2の間のワイヤークロス触媒の処理のための条件を最適化する実験の結果を示すグラフである。
【
図8A】
図8Aは、処理を受けた際の、400メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Ycの収率を示すグラフである。
【
図8B】
図8Bは、処理を受けた際の、400メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Ypの収率を示すグラフである。
【
図8C】
図8Cは、処理を受けた際の、400メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Yfinalの収率を示すグラフである。
【
図9A】
図9Aは、メッシュ400の基材上に生成されたCNTのSEM画像である。上から下へ:1段目:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:500、右列:2.5K。
【
図9B】
図9Bは、メッシュ400の基材上に生成されたCNTのSEM画像である。上から下へ:1段目:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:15K、右列:30K。
【
図10A】
図10Aは、メッシュ400の基材から分離されたCNTのTEM画像である。上から下へ:1段目:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:27.2K、右列:54.4K。
【
図10B】
図10Bは、メッシュ400の基材から分離されたCNTのTEM画像である。上から下へ:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:109K、右列:163K。
【
図11A】
図11Aは、処理を受けた際の、200メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Ycの収率を示すチャートである。
【
図11B】
図11Bは、処理を受けた際の、200メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Ypの収率を示すチャートである。
【
図11C】
図11Cは、処理を受けた際の、200メッシュのワイヤークロスステンレス鋼触媒基材の初回使用及び同じ基材の多数回の再使用の双方の後でのCNT:Yfinalの収率を示すチャートである。
【
図12A】
図12Aは、メッシュ400の基材上に生成されたCNTのSEM画像である。上から下へ:1段目:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:500、右列:2.5K。
【
図12B】
図12Bは、メッシュ400の基材上に生成されたCNTのSEM画像である。上から下へ:1段目:初回使用、2段目:再使用1回目、3段目:再使用2回目、4段目:再使用3回目、5段目:再使用4回目、6段目:再使用5回目、7段目:再使用6回目。倍率:左列:15K、右列:30K。
【
図13A】
図13Aは、基材の400メッシュのワイヤー表面のSEM画像である(初回、倍率3.5K)。
【
図13B】
図13Bは、基材の400メッシュのワイヤー表面のSEM画像である(再使用5回目、倍率3.5K)。
【
図13C】
図13Cは、基材の400メッシュのワイヤー表面のSEM画像である(初回、倍率50K)。
【
図13D】
図13Dは、基材の400メッシュのワイヤー表面のSEM画像である(再使用5回目、倍率50K)。
【
図14A】
図14Aは、再使用5回目の後の200メッシュの基材のワイヤー表面のSEM画像である。
【
図14B】
図14Bは、再使用5回目の後の200メッシュの基材のワイヤー表面のSEM画像である。
図14A、
図14Bは2つの異なる倍率を示す。大きな表面孔食及び凹凸が確認される。
【
図15】
図15は、触媒基材の初回使用により生成されたCNT及び6回目の再使用により収集されたCNTのラマンスペクトルである。
【
図16】
図16は、エタノールにおける超音波処理に応じて400メッシュのステンレス鋼基材上に生成されたナノ材料の熱重量分析:触媒の初回使用、再使用6回目の後、及び再使用6回目とイオンを除去するための酸における精製の後、を示すグラフである。
【
図17A】
図17Aは、再使用済み触媒基材のSEM画像であり、ワイヤーは剥離及びチッピングの証拠を示す(左上角のチップを参照)。
【
図17B】
図17Bは、6回目の再使用後のワイヤークロス基材上でのCNT成長のSEM画像である。幾らかの不純物が確認可能であり、それらは触媒の粒子であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
略語
CNT:カーボンナノチューブ
LDPE:低密度ポリエチレン
LPM及びlpm:リットル/分
PE:ポリエチレン
SEM:走査電子顕微鏡法
SS:ステンレス鋼
TEM:透過型電子顕微鏡法
TGA:熱重量分析
【0020】
例示実施形態の説明は以下の通りである。
【0021】
ここに記載する方法は、廃プラスチックを付加価値のある製品、すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボンナノ構造体又はナノ材料にアップサイクリングすることに関する。一般に、ナノチューブの成長のための触媒として使用される金属製(例えば、ステンレス鋼)基材(固定又は浮遊)が、その方法に関与する。
【0022】
原料は、ポリマー、又はバイオマスなどの他の有機材料を含み得る。原料は、不活性ガス雰囲気において熱分解され、又は燃料リッチな(酸素不足の)雰囲気において部分的に酸化される。CNTは、炭化水素リッチな熱分解又は酸化生成物を炭素供与体として用いて生成される。このプロセスには600~1200℃の範囲の高温が好適である。
【0023】
ステンレス鋼基材は、酸浴槽に浸漬され、その後に酸化及び熱処理に曝されてステンレス鋼基材の保護クロム層を破壊し、ナノカーボン生成のためにステンレス鋼基材の表面を活性化する。それに応じて、後続の熱分解物ガスが、基材を流通されてそれらの表面にCNTを触媒成長させる。その後、CNTは、アルコール中での超音波処理によって基材から除去される。成長したCNTを触媒基材から除去した後、基材が回収され、酸により洗浄され、加熱され、急冷され、その後にCNTの生成のために再使用される。触媒基材は、CNTの生成のために多数回にわたって再使用され得る。
【0024】
驚くべきことに、CNTの収率はステンレス鋼基材を再使用することによって増加して当初の何倍もの収率を達成することを発見した。理論に拘束されないとすると、鉄粒子がCNTの成長中に触媒表面から除去されるものと考えられる。さらに、触媒を酸洗浄すること、触媒を空気中で加熱すること及び触媒を急冷することのプロセスは、触媒表面の凹凸を増加させ、それにより、CNT成長に一層適したものとなると考えられる。
【0025】
触媒は複数回再使用可能であり、高い収率のCNTの生成に大きな成功を収めている。複数回の再使用後に、触媒はもろくなり、再使用できなくなる。同じ触媒を複数回再生することで、CNT収率が向上するだけでなく、触媒の購入に関連するプロセスの運用コストが大幅に減少し、廃水流の体積が減少する。
【0026】
触媒基材の再使用を試験するために実験を行った。触媒、特にステンレス鋼ワイヤークロスは高価なものとなり得るので、その潜在的な再使用はプロセスのコストを低下させ得る。市販のPEを用いて行った実験は、触媒基材の再使用がCNT収率を劇的に高めることを実証する。
【0027】
装置及び方法
図1A~
図1Bは、カーボンナノ構造体を生成するのに有用な、一次炉101及び二次炉102を含む装置100を示す。ある実施形態では、一次炉101は層流マッフル炉であり、二次炉102は層流反応器であり得る。
【0028】
図1Aに示すように、一次炉101は、一次炉チャンバ1012を加熱する一次炉加熱要素1011を含む。一次炉チャンバ1012内には、有機材料1014を含む磁製ボート1013cが装填可能なハーフ管1013bを形成するように切断された石英管1013aのような、原料装填構成要素1013が設けられ得る。有機材料1014は、熱分解物又はガス分解生成物1015を形成するようにそこで熱分解を実行する一次炉チャンバ1012内の所望の又は最適な位置に配置され得る。
【0029】
ある実施形態では、一次炉チャンバ1012は、熱分解が不活性雰囲気下などの所望の条件下で起こり得るように、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)のガスが一次炉チャンバ1012に進入することを可能とする入口1016を含み得る。
【0030】
一次炉101は、ガス分解生成物1015がベンチュリ部分1017に進入できるように、一次炉チャンバ1012の一端付近にベンチュリ部分1017をさらに含み得る。当業者であれば理解するように、ベンチュリ部分1017とは、流体圧力の低下をもたらし、同様に流体速度の増加をもたらす一次炉チャンバ1012の括れた部分のことをいう。さらに、ベンチュリ部分1017は、一次炉101の部分である必要はなく、一次炉101に接続された別個の構成要素として設けられてもよい。
【0031】
ベンチュリ部分1017には、ベンチュリ部分1017に進入するガス分解生成物1015と混合する1以上のガス(例えば、酸素ガス、塩素ガス、二酸化炭素、他の何らかの酸素含有ガスなどのような酸化剤)などの追加の材料を導入可能な1以上の入口1018がさらに設けられ得る。ある実施形態では、入口1018は、ガス分解生成物1015と、入口1018に流入する1以上のガスとの間で混合が起こるように位置決め可能である。ある実施形態では、混合は、ベンチュリ後段部分1019内での煤火炎となる発火(例えば、自己発火)をもたらし得る。他の実施形態では、混合は、発火をもたらし、ベンチュリ後段部分1019における層流火炎となり得る。
【0032】
ベンチュリ後段部分1019は、二次炉102に、特に二次炉チャンバ1022の第1端1022aに接続可能である。二次炉102は、二次炉チャンバ1022を所望の温度に加熱する二次加熱要素1021を含み得る。
【0033】
セラミックフィルタなどの任意選択的なフィルタ1023が、二次炉チャンバ1022の第1端1022a付近に含まれてもよい。ただし、フィルタ1023は、二次炉102の部分である必要はなく、一次炉101と二次炉102の間の任意の所望の場所に設けられ得る。ベンチュリ後段部分1019における火炎が微粒子(例えば、すす又は他の微粒子)を含む実施形態では、フィルタ1023は、微粒子の少なくとも一部、大部分又は全部が二次炉チャンバ1022に進入しないようにフィルタ除去するように作用し得る。1以上のフィルタが、利用可能である。例えば、複数のフィルタが、フィルタ効率をさらに高めるように並列又は直列に配置されて相互に積層されてもよい。
【0034】
二次加熱要素1021は、充分な加熱を与えて二次炉チャンバ1022内でのカーボンナノ構造体の生成を可能とし得る。二次炉102には、二次炉チャンバ1022内に大気圧以下の条件を与えるように真空ポンプ(不図示)及びその適宜のコネクタ(不図示)などの他の適宜の構成要素がさらに装備されてもよく、それらはカーボンナノ構造体の形成をさらに容易化、促進又は増強することができる。
【0035】
ある実施形態では、二次炉チャンバ1022は、カーボンナノ構造体の形成を補助可能な触媒1024を含み得る。ある実施形態では、ベンチュリ後段部分1019からのガス分解生成物が、二次炉チャンバ1022に進入して、二次炉チャンバ1022内部に含まれる触媒1024と接触し得る。ガス分解生成物が触媒1024と接触すると、カーボンナノ構造体の生成が開始し、促進され又は増強され得る。ある実施形態では、触媒1024は、触媒、及び、カーボンナノ構造体収集容器又は基材1025(不図示)の両方として作用する支持された触媒であり得る。他の実施形態では、触媒1024は、基材1025とは別個の構成要素であってもよい。
【0036】
ある実施形態では、1以上の触媒1024が利用され得る。例えば、複数のステンレス鋼ワイヤーメッシュなどが、触媒表面積をさらに増加させるように、並列又は直列に配置されて(例えば、折り畳まれ、巻き取られるなどして)相互に積層されてもよい。一部の実施形態では、触媒の表面積は、利用可能な二次炉チャンバ1022及び装置100の設計に応じて1000~数百万倍増加し得る。
【0037】
生成されたカーボンナノ構造体は、当業者には直ちに明らかであるように、その後に基材1025から収集可能となる。
【0038】
装置100に対する変更例及び変形例は、当業者には直ちに明らかとなり、本開示の範囲内にある。例えば、ある実施形態では、装置100は、一次部分及び二次部分を含む単一の炉であってもよく、
図1に例示するように2つの別個の炉として実現される必要はない。他の変更例及び変形例も可能である。
【0039】
熱分解物又はガス分解生成物を形成するのに有機材料が熱分解されてもよい。熱分解は、熱分解物又はガス分解生成物の発火及び燃焼を防止するように窒素、アルゴンなどの1以上の不活性ガスの存在下で行われてもよい。
【0040】
ある実施形態では、熱分解は、有機材料からガス分解生成物への80%、85%、90%又はさらに95%超の変換を可能とする条件下で実行され得る。ある実施形態では、熱分解は、ガス分解生成物の量を最大化するように、600℃以上、700℃以上、800℃以上、900℃以上又はさらに1000℃以上の温度で実行され得る。第1及び第2炉の各々の温度が独立して調整可能である。通常、第1及び第2炉の各々の温度は、600℃~1200℃である。一部の実施形態では、第1炉の温度は600℃~1000℃である。一部の実施形態では、第2炉の温度は600℃~1000℃である。一部の実施形態では、第1炉の温度は800℃~1000℃である。一部の実施形態では、第2炉の温度は800℃~1000℃である。
【0041】
ガス分解生成物は、1以上のガス、例えば、酸素含有ガスと混合されて火炎を形成し得る。火炎は、煤火炎又は非煤火炎であり得る。
【0042】
ある実施形態では、火炎を形成するために、ガス分解生成物は、目的に応じて設計されたデバイス(例えば、連続供給システム、流動床など)を用いて準均一に放出され、1以上のガスとの混合を実行するように
図1Aに示すベンチュリ部分1017などの領域に流通されてもよい。ガス分解生成物と混合する適切なガスは、空気など、酸素含有ガスを含む。混合に応じて又は混合中に、自己発火が起こり、予混合火炎を形成し得る。
【0043】
一部の実施形態では、1以上のガスが、燃料/酸素比が燃料リッチ(すなわち、酸素欠乏)となり得るように、所定量で添加され得る。理論に拘束されないとすると、そのような酸素欠乏条件は、充分な量のCO、水素、又は小炭化水素などの他の適宜の原料を火炎内に維持することによってカーボンナノ構造体成長の成長を促進し得る。
【0044】
ある実施形態では、1以上のガスは、酸素を含まなくてもよく、酸素に加えて追加のガスを含んでいてもよい。例えば、これに限定されないが、窒素、アルゴンなどのような不活性ガスが、ガス分解生成物に添加されて混合されてもよい。ある実施形態では、これらの他のガスの存在は、火炎の形成を阻害し得る。火炎を形成するのではなく、ガス分解生成物が、微粒子フィルタに流通されてカーボンナノ構造体を形成した後に、
図1に示す二次炉チャンバ1022などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域に流通してもよい。
【0045】
火炎が立つ実施形態では、予混合火炎は、部分的に後続の二次炉1022へ通り抜ける。一部の実施形態では、予混合火炎流出物は、火炎に含まれる1以上の微粒子をフィルタ除去するようにフィルタ1023を通過可能である。
【0046】
そして、火炎の流出物は、フィルタ1023などのフィルタ、又は高温条件下で動作可能な他の任意のフィルタを通過し得る。フィルタは、
図1に示す二次炉チャンバ1022などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域に火炎の流出物が導入される前に、少なくとも一部の固体粒子(例えば、すす)を捕捉することができる。ある実施形態では、フィルタはさらに、火炎の流出物が二次炉チャンバ1022に進入する前に整流器として作用し得る。
【0047】
一部の実施形態では、適切な有機材料の選択、含酸素ガスの欠如及び非煤燃焼条件によって、フィルタの省略が可能となり得る。
【0048】
カーボンナノ構造体を生成可能な領域への進入に応じて、カーボンナノ構造体が形成し得る。ある実施形態では、二次炉102などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域は、600℃~1500℃を範囲とする合成温度範囲、装置100との関連で0.1cm/s~10cm/sを範囲とする流出速度など、カーボンナノ構造体の生成を促進する条件に維持され得る。
【0049】
ある実施形態では、カーボンナノ構造体を生成可能な領域は、カーボンナノ構造体の生成を促進する1以上の触媒を含み得る。一部の実施形態では、触媒は固定又は支持された触媒であり、カーボンナノ構造体を生成可能な領域に予め挿入される。ある実施形態では、カーボンナノ構造体は、その後の収集のために支持触媒の上部で成長可能とされる。
【0050】
あるいは、ガス分解生成物は、これらに限定されないが、化学気相成長法(CVD)、フロー反応器、浮遊又は支持触媒を用いる流動床などの他のナノ構造体製造プロセスにおけるカーボンナノ構造体の生成のための開始原材料として使用可能である。このような実施形態では、ガス分解生成物がナノ構造体製造プロセスに提供される前に、熱分解において形成するいずれの凝集微粒子も凝集微粒子の濾過を介して除去可能である。濾過された凝集微粒子は、それらが環境汚染物として放出されないように回収され得る。
【0051】
一部の実施形態では、酸素、水素、チオフェンなどの硫黄含有化合物又はこれらの組合せは、水蒸気などのように、触媒の活性化を促進して高い触媒活性を維持するように、一次炉チャンバ1012、ベンチュリ部分1017又は二次炉チャンバ1022に添加され得る。添加されるガスの範囲は、約0.0001体積%(すなわち、1ppm)~約80体積%であり得る。
【0052】
ポリマーの高温熱分解は、ごく少量の液体(オイル及びタール)とともに大部分でガス(炭化水素及び水素)を生成する。オイルは、更なる使用のために凝集及び除去され得る。そのガスは、再生ステンレス鋼触媒がプロセスに導入される際に極めて高い効率で付加価値のあるカーボンナノチューブに変換可能となる。
【0053】
残余の未反応の熱分解炭化水素ガスは、プロセスのための熱を生成するように燃焼されてもよいし、他の目的(発電又は化学原料)のための原料として市販されてもよい。さらに、燃焼中に放出される熱は、熱分解のために使用される熱として再生可能である。
【0054】
金属製基材
ここで使用される金属製基材は、ワイヤークロス、粒子、廃チップ又は破片など、様々な構成を有し得る。通常、金属製基材は、少なくとも部分的にステンレス鋼からなる。
【0055】
ステンレス鋼は、鉄、クロム、場合によってはニッケル、モリブデン、マンガン又は他の金属の合金である。通常、ステンレス鋼は、少なくとも10~11%のクロム及び2%未満の炭素を含有する。一部の種類のステンレス鋼はまた、窒素、アルミニウム、ケイ素、硫黄、チタン、ニッケル、銅、セレン及び/又はニオブを含む。
【0056】
オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼及び析出硬化系ステンレス鋼など、様々なステンレス鋼ファミリーが公知である。ステンレス鋼は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼などのように3桁の数字で分類されることが多い。
【0057】
ステンレス鋼基材は、酸浴槽に浸漬され、その後に酸化及び熱処理に曝されてステンレス鋼基材の保護クロム層を破壊し、ナノカーボン生成のためにステンレス鋼基材の表面を活性化する。酸浴槽は、塩酸(HCl)又は硫酸(H2SO4)を含み得る。熱処理は、通常、基材を少なくとも600℃(例えば、約800℃)に加熱することを伴う。加熱後、ステンレス鋼基材は、その温度を低下させるために急冷され、これは空気急冷(空気焼入れ)又は水急冷(水焼入れ)によるものであればよい。
【0058】
CNTを生成した後、基材は酸の中で再洗浄され、いずれの残存炭素も基材から除去するとともに表面の凹凸を増加させるように加熱される。
【0059】
有機材料
本開示では、燃焼又はCVDプロセスのために高価でかつ高純度の上質な燃料を用いるのではなく、開始材料としてペレット、チップ、チャンクなどの形態の固体プラスチックを含む固体廃材などの固体有機材料を用いてカーボンナノ構造体を生成する方法及び装置を説明する。
【0060】
多数の異なる種類の固体有機材料が、本発明において利用可能である。ある実施形態では、固体有機材料は、これに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエンゴム、ポリアミド又はこれらの組合せなどの固体プラスチックを含み得る。
【0061】
一部の実施形態では、固体有機材料は、ペレット、チップ、チャンク又はこれらの組合せの形態であり得る。さらに他の一部の実施形態では、固体有機材料は、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族、アクリレート、セルロース又はこれらの組合せなどの種々の基を含有していてもよい。これに限定されないが、バイオマス、トウモロコシ、綿、ゴム、タイヤ、石炭、木材、リグニン又はこれらの組合せなどの他の固体有機材料が、使用されてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、液体有機材料が利用可能である。例えば、液体有機材料は、これらに限定されないが、石油精製工程における各種部分(例えば、ガソリン、ディーゼルなど)を含み、それらが使用可能である。
【0063】
カーボンナノ構造体
カーボンナノ構造体は、これらに限定されないが、中空キャビティを有する又は有さないカーボンナノファイバー、及び球状多層オニオンカーボンを含む。ファイバー層は、アモルファスカーボン又は完成度の異なるグラファイト構造を含み得る。平行な層を含むグラファイト層構造を有する中空カーボンナノファイバーをカーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、三層ナノチューブなど、平行な層の数に基づいて規定される。一般的に、複数の層を有するカーボンナノチューブを、多層ナノチューブという。
【0064】
用途
ここに記載する方法によって生成されたカーボンナノ構造体は、様々な用途に使用可能である。
【0065】
電気的エネルギーから機械的エネルギーへの変換及びその逆の変換を行う際の以下のナノチューブ製品並びにそれらのアクチュエータを含む主な対象分野は、ロボティクス、光ファイバースイッチ、ディスプレイ及び補綴デバイスにおいて使用される。他の用途は、エネルギーハーベスティング、電池、複合材、静電気散逸(ESD)及びタイヤの調製を含む。
【0066】
例えば、カーボンナノ構造体は、単体で又は添加物として、電池の電極材料として使用可能であり、例えば導電性を上昇させる。
【0067】
それらの熱伝導性に起因して、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ構造体は、電子デバイスにおける放熱のために使用可能である。
【0068】
他の例では、酸素などのガスの吸着とコンダクタンス及び熱電能との間の相関が観察されているので、ナノチューブはセンサとして使用可能である。更なる例は、強度性能の向上が観察されるポリマーとナノチューブの組合せでの複合材としてのナノチューブの使用を含む。ナノチューブが高分子構造体に固定可能となるようにナノチューブ層を機能化することによって、更なる強化を得ることができる。
【0069】
さらに、それらの物理的寸法はタンパク質やDNAなどの生物学的に活性な高分子のものと同様であるため、CNTは、これらに限定されないが、検出、薬剤送達、酵素固定及びDNAトランスフェクションを含む生物学関連の用途において有用である。
【0070】
構造的特徴に応じて、CNTは金属性又は半導体性となり得る。トランジスタ及び論理デバイスのサイズは、CNTを用いて大幅に減少可能となる。例えば、論理デバイスは、その長さに沿うキラリティー間の転位を有する単一のナノチューブから構成可能となる。さらに、高秩序化カーボンナノチューブアレイは、データストレージ、ディスプレイ及びセンサから、より小型のコンピューティングデバイスまでに及ぶ様々なエレクトロニクス用途に使用可能である。フラットパネルディスプレイ(FPD)の分野におけるカーボンナノチューブの商業的応用も有望である。
【0071】
CNTは、水素貯蔵材料としても有用である。例えば、単層ナノチューブは、水素自動車において必要な水素貯蔵システムに適する。
【実施例】
【0072】
例示実施形態の説明は、以下の通りである。
【実施例1】
【0073】
原料を第1段階の反応器(原料熱分解炉)内で不活性雰囲気において高温で熱分解し、結果として得られた熱分解物ガスを第2段階の装置(CNT合成炉)へ流通させた(
図1A~
図1B)。ここで、その熱分解物ガスは、最初に高温セラミックSiCフィルタ(イビデン株式会社製、日本)を通過して、いずれの生成固体粒子(すすなど)も除去した。そのような濾過は、場合によって生成され得るすすの堆積による触媒不活性化を防止する。このフィルタは、1μmよりも大きなすす粒子に対して97%の保持効率を有し、高温空気を流通させることによって周期的に熱再生成された。流出ガスがフィルタを出ると、その流出ガスはワイヤークロスに流通された。
【0074】
触媒を以下のように前処理した。触媒を最初に希釈塩酸溶液(35%)で酸洗浄し、その後にその触媒を脱イオン水でリンスし、続いてその触媒を空気中で800℃で1分間熱処理し、その後にその触媒を室温まで速やかに空気急冷した。
【0075】
原料熱分解の開始及び完了並びに同時のCNT合成反応を、第2反応器の出口において可視ヒュームの放出をモニタリングすることによって推定した。各処理が終了すると、炉をオフし、室温まで冷却させた。その後、触媒基材スクリーンを除去し、そこから切片を切り出して走査電子顕微鏡法(SEM)による分析のために準備した。他のスクリーン切片をニートエチルアルコールで1時間超音波処理して、透過型電子顕微鏡法(TEM)及びラマン分光法による更なる分析のためにCNTを除去した。
【0076】
2つのシリーズの実験を行い、各シリーズにおいて同じ触媒基材を3回使用した。プロセスを、流量0.1lpmの窒素キャリアガスの存在下で両炉において800℃で行った。触媒を最初に使用した後、成長したCNTを超音波処理によって除去した。その後、触媒を再度オーブン内で空気中に10分間にわたって配置していずれの残存CNTも除去した。その後、その触媒を10分間酸洗浄した。実験条件及び結果を表1に示し、
図2にプロットした。触媒の質量及びポリマーの質量の双方に基づいて、触媒が再使用された場合にCNT収率が大幅に増加したことが分かる。収率は、56%にまで達した。
【0077】
SS-316の400メッシュのワイヤークロスを触媒として用いた。それらの微細ワイヤーは、酸化、酸処理及びCNT成長の反復サイクル後にもろくなった。結果として、その微細ワイヤーは多くの場合、次の実験を実行するために扱われると崩壊した。結果的に、触媒の重量は、各再使用後に一致しなかった。2つのシリーズの実験(A及びB)を表1に示す。
【表1】
【0078】
窒素キャリアガスにおける低密度ポリエチレン(LDPE)原料からの上記SS-316触媒表面上で成長したCNTのSEM画像を
図3に示す。触媒ワイヤーは、2回目の再使用実験によりSS-316上で生成されると、より高密度に存在して見える。
【0079】
2回目の再使用後のSS-316の400メッシュのワイヤークロス表面のSEM画像を
図4A~
図4Dに示す。各使用後に、これらSS-316の400メッシュのワイヤークロスを800℃の高温に10分間曝していずれの残留炭素も焼失させ、その後にそのワイヤークロスを10分間の酸洗浄及び800℃で1分間の酸化にも曝した。結果として、そのワイヤークロスは大きく浸食されて孔食形成された。最終的に、3回使用後に、ワイヤークロスは崩壊した。
【0080】
ワイヤークロス触媒は数回再使用後に崩壊したので、今度はステンレス鋼チップ(金属削屑)に注目した。これらのチップは、ステンレス鋼ロッドを回転させて生成され得る。廃チップは、合理的なプロセスにおいて市場に出回ることもある。1つの手段は、スクラップ金属を購入してそれをチップとすることである。インターネットでのある情報源は、スクラップのSS-316金属を0.45$/lbで広告している。
【0081】
2つのシリーズの実験を、機械チップ及び押出し加工された使用済みPEを用いて行った。チップを使用し、4回再使用した。ワイヤークロスと同様に、チップも、経時的に顕著な収率の向上を示した。旋盤上の金属ロッド削屑の長いチップは束となり、それらは長い触媒基材(9.5g)及びより短い触媒基材(5g)となった。触媒対ポリマー質量比を1に維持したので、ポリマー質量は触媒の質量と概ね同じであった。各使用後、触媒を酸(HCl)で1時間洗浄し、空気中(800℃)で8分間加熱した。結果を
図5に示す。
【0082】
これらの実験において触媒の質量及びポリマーの質量は概ね同じであったので、ポリマー質量に基づくCNT収率(Yp)及び触媒質量に基づくCNT収率(Yc)も同じとなった。チップ(削屑)の直径がワイヤークロスにおけるワイヤーよりも非常に太く、それゆえ触媒の合計表面積はワイヤークロスの場合よりも非常に小さいため、初回の収率は低かった。しかし、注目すべきことに、収率は、再使用実験によって10倍増加した。これらチップはワイヤーよりも太いため、崩壊し難くい傾向にあり、4回目の再使用を達成した。
【0083】
SS-316チップの表面における収集ナノチューブのSEM画像を
図6に示す。SS-316チップの使用及び再使用のプロセスはこれらの予備実験では最適化されなかったが、それは市販用途の運用コストを低減するための確証を示した。
【実施例2】
【0084】
実施例2は、ワイヤークロス触媒基材が再使用される場合のCNT収率が、アルコール中での超音波処理による成長CNTの除去に応じて増加する程度を実証する。この検討について、ほとんどのテストに対して400メッシュを選択したが、基材の有効性及び耐久性を比較するために200メッシュもテストした。不活性ガス流量は、0.1lpmであった。アルコール中での超音波処理によって触媒からCNTを除去すると、同じ触媒基材を複数回再使用し、CNT収率を重量測定法で測定し、プロットした。収率を、超音波処理による基材からの除去に応じて収集されたCNTの量に基づいても評価した。316ステンレス鋼クロスの供給については、Cleveland Wire Cloth & Manufacturing Company(米国、クリーブランド、オハイオ州)から調達した。この316ステンレス鋼クロスは、実施例1において使用したものよりも高い耐久性が見込まれたためである。
【0085】
実施例2も、生成ナノチューブ(MWCNT)の特性及び品質を、走査電子顕微鏡法(SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、ラマン分光法及び熱重量分析(TGA)によって評価した。
【0086】
概要
カーボンナノチューブを、使用済みポリエチレンプラスチックから生成した。ガスに対する高温原料熱分解、及び同様に高温でのステンレス鋼ワイヤークロス触媒に対する化学気相成長法(CVD)によるCNTの後続の合成を伴うプロセスを用いた。この実験は、ワイヤークロス基材が再使用される場合にナノ材料の収率が劇的に増加可能であることを実証した。ただし、その基材は、再使用されるためには、酸で洗浄され、水でリンスされ、熱処理され、その後に室温まで空気急冷される必要がある。充分な量の触媒が存在した場合、ポリマー原料の量に基づいて、触媒に付着したCNTの50%もの質量収率を達成した。SEM及びTEM画像を取得してCNTの構造を同定した。ラマン分光法によって、CNTの多層ナノチューブ含有量を調査した。ワイヤークロス触媒表面のSEM画像を再使用の間でも取得し、再使用数が増加すると凹凸及び粗さが増加することを明らかとした。それは、基材の生産性の増加を促進したものと考えられる。触媒からCNTを除去した際のCNTの最終質量収率は、ポリマー原料の量に基づいて、25~50%もの高さであった。ただし、それらは金属製であるため、鉄不純物を含有していたようであった。最後に、酸処理を施して、収集したCNTを精製し、鉄を除去した。
【0087】
手法
原料を第1段階の反応器(原料熱分解炉)内で不活性雰囲気において高温で熱分解し、結果として得られた熱分解物ガスを第2段階の装置(CNT合成炉)へ流通した(
図1)。ここで、その熱分解物ガスは、最初に高温セラミックSiCフィルタ(イビデン株式会社製、日本)を通過して、いずれの生成固体粒子(すすなど)も除去した。そのような濾過は、場合によって生成され得るすすの堆積による触媒不活性化を防止する。このフィルタは、1μmよりも大きなすす粒子に対して97%の保持効率を有し、高温空気を通すことによって周期的に熱再生成された。流出ガスはフィルタを出ると、その流出ガスを、複数ロールのワイヤークロスからなる手製ハニカム構造、又は加工処理により束となったステンレス鋼ストラップ及びスチールウール若しくはスチールチップを含むカートリッジに流通した。
【0088】
パラメータ設定:
原料:破砕PEポリマー
熱分解炉温度:800℃
合成炉温度:800℃
キャリアガス及び流量:0.1lpmの窒素
ポリマー対触媒の質量比:調査作業では2(実施例2.1)、スクリーン再使用作業では0.1(実施例2.2)
【0089】
質量毎の成長CNTの収率を、以下に列記する式に基づいて3個の異なる態様で計算した。
触媒に基づくCNTの収率(Y
c):
【数1】
ポリマーに基づくCNTの収率(Y
p):
【数2】
ポリマーに基づく分離後のCNTの収率(Y
final)
【数3】
【0090】
1番目のCNTの収率Ycは、基材上に残ったCNTについて触媒の質量あたりで計算される。2番目の収率Ypは、基材上に残ったCNTについてポリマー原料の質量あたりで計算される。3番目の収率Yfinalは、基材から除去されて収集されたCNTについてポリマー原料の質量あたりで計算される。
【0091】
実施例2.1 触媒基材再使用サイクル間でのワイヤークロス触媒の効果的な処理を特定する調査実験
まず、CNTをアルコール中での超音波処理によって除去した。
【0092】
その後、基材のエアクリーニング(AC)を800℃の炉において10又は20分間実施して、確実にいずれの残存CNTも焼失させた。
【0093】
そして、基材のアルコール超音波処理(AS)を更なるクリーニングのために30分間実施した。
【0094】
最後に酸洗浄(AW)を10~40分間実施して表面の凹凸を増加させ、酸化鉄を除去した。結果を表2及び
図7に示す。
【表2】
【0095】
これらの調査実験に基づいて、ワイヤークロス触媒基材の再使用に対する最も効果的な処理は、以下の通りであると特定された。(1)800℃で10分間のエアクリーニング、(2)アルコール中での10分間の超音波処理、(3)40分間の酸洗浄。
【0096】
実施例2.2 メッシュ400及びメッシュ200の双方について何回再使用可能かを特定する、当初及び再使用基材に対する系統的CNT成長実験
【0097】
実施例2.2.1 メッシュ400基材上に生成されたCNT及びそこから分離されたCNTの収率
6回の再使用実験を400メッシュSS-316基材で行った。各使用後に、基材を希釈塩酸溶液(35%)で酸洗浄し、脱イオン水でリンスし、空気中で800℃で1分間熱処理してから、室温まで速やかに空気急冷した。
【0098】
以下に、3個の異なる収率Y
c、Y
p及びY
finalを
図8A~
図8Cにプロットする。詳細な結果は、表3に含まれる。ナノカーボンの収率はプラトーに達するまで基材の再使用によって劇的に増加したことが分かる。ポリマーの質量あたり50%もの収率Y
pが達成された(
図8Bの緑の線を参照)。超音波処理によってワイヤークロス基材からCNTを除去した後に、ポリマーの質量あたり50%もの収率Y
finalも得られた。ただし、エタノールの蒸発後にCNTがビーカーから除去される際の損失があるため、これらの数値は若干楽観的である。これをさらにTGAによって調査した(実施例2.5)。
【表3】
【0099】
実施例2.2.2 メッシュ400基材上に生成されたCNTのSEM画像
メッシュ400基材上に生成されたCNTのSEM画像を
図9に示す。全7行は、基材の初回使用及び6回の各再使用実験に対応する。全4列は、4個の異なる倍率:500、2.5K、15K、30Kに対応する。これらの画像の全てにおいて、生成ナノ材料は、ほとんどカーボンナノチューブのように見える。触媒基材が再使用されると、ナノ材料の成長が大規模となり、触媒の個々のワイヤー及びその間の空間はナノ材料に完全に覆われていることが分かる。
【0100】
実施例2.2.3 メッシュ400基材から分離されたCNTのTEM画像
メッシュ400基材から分離されたCNTのTEM画像を
図10に示す。全7行は、基材の初回使用及び6回の各再使用実験に対応する。全4列は、4個の異なる倍率:27.2K、54.4K、109K、163Kに対応する。これらの画像の全てにおいて、生成ナノ材料は、ほとんどカーボンナノチューブのように見える。
【0101】
実施例2.2.4 メッシュ200基材上に生成されたCNT及びそこから分離されたCNTの収率
6回の再使用実験を200メッシュSS-316基材で行った。各使用後に、基材を希釈塩酸溶液(35%)で酸洗浄し、脱イオン水でリンスし、空気中で800℃で1分間熱処理してから、室温まで速やかに空気急冷した。以下に、3個の異なる収率Y
c、Y
p及びY
finalを
図11A~
図11Cにプロットする。詳細な結果は、表4に含まれる。メッシュ400基材の場合のように、ナノカーボンの収率は基材の再使用によって劇的に増加したことが分かる。収率は、再使用数3において最大に達し、その後の再使用数に伴い減少した。ポリマーの質量あたり50%もの収率Y
finalが達成された。最後の2点については、ここでも、ビーカーによる収集損失を考慮すると、高い数値には疑問がある。全ての実験を2回、又は最初の2回の実験が一致しない場合には3回反復した。したがって、
図11A~
図11Cにおける点のいずれかにおいて誤差バーが現れない場合には、それは最初の2回のテストが一致したことを意味する。
【表4】
【0102】
実施例2.2.5 メッシュ200基材上に生成されたCNTのSEM画像
メッシュ200基材上に生成されたCNTのSEM画像を
図12に示す。全7行は、基材の初回使用及び6回の各再使用実験に対応する。全4列は、4個の異なる倍率:500、2.5K、15K、30Kに対応する。これらの画像の全てにおいて、生成ナノ材料は、ほとんどカーボンナノチューブのように見える。ここでも、触媒基材が再使用されると、ナノ材料の成長が大規模となり、触媒の個々のワイヤー及びその間の空間はナノ材料に完全に覆われていることが分かる。
【0103】
実施例2.2.6 再使用6回目の後、基材の変形及び軟化
再使用6回目の後、基材は変形され、軟質過ぎて更なる再使用を支持できなかった。400メッシュステンレス鋼基材の6回目の使用後には実験を行わなかった。その基材は、カートリッジに適合されるほどの充分な剛性を有さなかった。200メッシュステンレス鋼基材は、予想通り、400メッシュ基材よりも高い剛性を有していたので、おそらくは更なる再使用を受けることができたはずである。200メッシュステンレス鋼基材の写真は、予想通り、それらのワイヤーが太いので、より堅強であることを示す。
【0104】
ステンレス鋼ワイヤーの詳細な調査は非常に有効であり(
図13A~
図13D)、ここではSEM画像が示される。
図13A及び
図13Cは、CNTの初回成長後の400メッシュのワイヤーの表面を示す。低倍率(
図13A)では、ワイヤーの表面は幾らか滑らかに見えるが、より高い倍率(
図13C)では、表面の凹凸が明らかとなる(このワイヤーは2回の酸処理を受け、その1回はCNTの初回成長前であり、他の1回は1回目の再使用のためにそれを調整した後である)。これらの2回の酸処理及びCNTの成長によって表面孔食が形成された。
【0105】
図13B及び
図13Dは、5回の再使用後の400メッシュのワイヤーの表面を示す。低倍率(
図13B)では、ワイヤーの表面は非常に粗く見え、ワイヤーの径は18%減少した。これは、ワイヤーの質量が33%減少したことを意味する。そのような減少は注目すべきであり、(a)酸処理及び(b)基材から金属を除去するCNTの先端成長メカニズムに起因し得る。より高い倍率(
図13D)では、表面の大きな凹凸が明らかとなる(このワイヤーは6回の酸処理を受け、その1回はCNTの初回成長前であり、他の5回は1回目の再使用のためにそれを調整した後である)。これらの6回の酸処理及びCNTの成長によって表面に著しい程度に孔食が形成された。
【0106】
図13及び
図14A~
図14Bに示した画像から分かるように、再使用されたワイヤークロス触媒基材の表面形態は著しく変化した。これは、2つの相乗的メカニズム:(a)表面に対して非常に摩耗的な、過酷な処理の組合せ(酸洗浄、酸化及び速い急冷)の反復的作用による表面層の孔食形成及びひび割れ、並びに(b)これらのナノチューブの、金属粒子がワイヤークロスから分離されて成長中のナノチューブの先端に移動する「先端成長」メカニズム、の結果である。この金属粒子の分離によって、さらに、著しい程度で表面孔食が形成される。これらのメカニズムの組合せによって、表面の凹凸及び粗さが劇的に増加し、それにより、ナノチューブの成長に利用可能なその有効表面が増加する。想像のイメージとして、結果は、植物を成長させるために耕作者が耕作又は耕耘して種を蒔いた結果と似たものとなる。
【0107】
実施例2.3 収集したCNTのラマン分光法による特徴付け
CNTの特徴付けのためにラマン分光法を用いた。sp2混成炭素における無秩序性の存在は、sp2混成炭素の共鳴ラマンスペクトルにおける豊富な現象をもたらすので、ラマン分光法はsp2炭素材料における無秩序性を特徴付けるのに有益な技術となる。1350cm-1周辺のピークは、Dバンドと呼ばれ、炭素原子のsp2配列における無秩序性の程度を表す。Dバンドの強度は、sp2混成炭素網における無秩序性を反映し、サンプルにおける欠陥であるアモルファスカーボンナノ結晶不純物の量についての定量的推定値を与える。1590cm-1周辺のピーク(Gバンド)は、SWCNTのsp2グラファイトシートにおける炭素原子の面内振動に対応する。2690cm-1周辺のピークである2D(すなわちG´)バンドは、2フォノン二重共鳴ラマンプロセスから生じ、サンプルにおける長距離秩序を表す。グラフェン単層における無秩序性を定量化することは、通常はピークの比を分析することによって行われる。Dバンド強度に対するGバンド強度IG/IDが強く存在することは、ナノ材料についての高度の構造的秩序及び純度を示す。比I2D/IGは、平行グラファイト層の存在を示す。これらの比についての高い値は、ナノ材料における強度の構造的秩序及びMWCNT含有を示す。
【0108】
実施例2.3.1 メッシュ400基材の再使用6回目により生成されたナノ材料におけるMWCNT含有量の表示
計算された比をインジケータとして用いると、それらのナノ材料内の多層CNT(MWCNT)含有量(すなわち、MWCNT純度)は、初回合成処理中に高くなるようにみえる。最終処理中、そのようなインジケータは低くなる。これは、理論的には、純粋にチューブ状ではないナノカーボンなどの他の炭素は、何らかの不連続性若しくは欠陥、ヘテロ原子(hetero atoms)の混入物を有すること、又は他の炭素は、ナノロープが存在するなど、他の形状及び形態のものであることを意味する。
図15において、触媒基材の初回使用により生成されたCNT及び触媒の6回目の再使用によって収集されたCNTのラマンスペクトルを重ねる。
図15では、I
D、I
G及びI
2Gピークが、良好に規定されている。
【表5】
【0109】
実施例2.4 収集されたCNTの精製
アルコール中に懸濁されたCNTを含有するバイアルに対して、ハンドヘルドマグネットによって誘起された磁界をかけた。生成ナノ材料は磁性を有することが分かり、これはその生成ナノ材料が鉄混入物を含有するためである可能性が最も高い。これらの混入物を、ナノチューブの「先端成長」メカニズム中にステンレス鋼ワイヤークロス基材から取り出した。前述したように、このメカニズムでは、金属粒子は、ワイヤークロスから分離されて成長中のナノチューブの先端に移動する。支持側における炭素原子の連続的形成は、CNTの先端に上昇した金属粒子によってCNTを成長させる。このような金属製混入物を除去し、基材からチップ化されて離れたいずれの遊離した鉄も除去するため、収集されたナノチューブを35%の塩酸溶液に浸漬し、超音波処理を5時間行った。この処理が終了すると、マグネットは、ナノ材料をマグネット側に引き寄せることができなくなっていた。したがって、生成ナノ材料の磁性は存在しなくなった。鉄粒子はCNTから除去されたと結論付けられた。その後、材料を微細多孔質フィルタによって溶液からフィルタ除去し、蒸留水でリンスし、TGA分析のために乾燥させた(実施例2.5)。
【0110】
実施例2.5 収集されたCNTの熱重量分析
生成CNTの炭素純度を熱重量分析(TGA)によって得た。これらの実験では、400メッシュのワイヤークロス基材の初回使用中にPE熱分解物から生成されたナノ材料を試験した。サンプルの結果を
図16に示す。ここでは、ナノ材料は、(a)初回使用の触媒を空気中で燃焼させ、(b)再使用6回目によるもの(除去されたもの)も空気中で燃焼させ、(c)再使用6回目によるもの(酸精製されたもの)も空気中で燃焼させたことによるものである。これらの制限的なテストに基づくと、触媒の初回使用により生成されたCNTは幾らかの無機含有物を有していたことが分かる。これは、このようなCNTでは、我々が通常10%のオーダーで確認するものである。これは、金属粒子を分離してCNTの先端に上昇させる金属混入物の「先端成長」に基づくチューブ内の金属混入物に主に起因する。
【0111】
再使用6回目により生成されたCNTは、ほとんどは鉄である40%の残渣を含有していた。初回処理による差(すなわち、40%-10%=30%)のほとんどは、追加混入物ではなく外部からの金属粒子に起因し得るものと考えられる。したがって、収集された材料は鉄からの遊離した微細チップを含有する場合があり、それらは超音波処理中に触媒表面から除去された。これはこの特定の、多い残渣の結果を説明することになり、
図8A~
図8C及び
図11A~
図11Cに示した高い収率Y
final(50%まで)の一部も支持し、これは驚くべきことに収率Y
p(これも50%まで)に匹敵する。
図17A(左上角)は再使用スクリーン上の触媒のその小さなチップを示し、
図17Bは、触媒の粒子であり得る不純物を示す。より積極的な精製は、そのような不純物を除去するはずである。実際には、35%塩酸による5時間の精製によって鉄を除去した後に、サンプル中の金属残渣は、わずか数パーセントにまで低下した(
図16)。
【0112】
参考文献
「Influence of Stainless-Steel Catalyst Substrate Type and Pretreatment on Growing Carbon Nanotubes from Waste Postconsumer Plastics」、Aidin Panahi、Zixiang Wei、Guangchao Song、及びYiannis A.Levendis、Ind.Eng.Chem.Res.2019、58、3009-3023
DiLeo、R.A.;Landi、B.J.;Raffaelle、R.P.「Purity assessment of multiwalled carbon nanotubes by Raman spectroscopy」、2007、101(6)、064307
【0113】
参照による取込み、均等物
ここに引用される全ての特許、公開された出願及び文献の教示は、それらの全体において参照によりここに取り込まれる。
【0114】
例示実施形態を特に図示及び記載したが、形態及び詳細の種々の変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなくここになされ得ることは、当業者には理解されるはずである。
【国際調査報告】