(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】添加物存在下でのポリエチレンテレフタレート(PET)からのカーボンナノチューブ(CNT)の生成
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20230329BHJP
B01J 35/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J35/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549433
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021018776
(87)【国際公開番号】W WO2021168247
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592233750
【氏名又は名称】ノースイースタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤニス エー レベンディス
(72)【発明者】
【氏名】アイディン パナヒ
(72)【発明者】
【氏名】チュアンウェイ チュオ
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC03B
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD24
4G146AD28
4G146BA13
4G146BB06
4G146BB22
4G146BC23
4G146BC24
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC34A
4G146BC42
4G146BC44
4G146DA02
4G146DA26
4G146DA30
4G169AA02
4G169AA11
4G169BA17
(57)【要約】
カーボンナノ構造体が、ポリエチレンテレフタレートを含む原料から合成される。第1炉においてポリエチレンテレフタレートを含む原料及び酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が熱分解されて1以上のガス分解生成物が得られる。任意選択的にガス分解生成物が濾過されて固体粒子が除去される。1以上のガス分解生成物が第2炉においてステンレス鋼基材の全域に流通されてカーボンナノ構造体が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ構造体を合成する方法であって、
a)600℃~1200℃の温度の第1炉における非酸化環境において、i)ポリエチレンテレフタレートを含む原料、及び、ii)酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)を熱分解して1以上のガス分解生成物を得る工程と、
b)600℃~1200℃の温度の第2炉において、1以上の前記ガス分解生成物をステンレス鋼基材の全域に流通させて前記カーボンナノ構造体を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステンレス鋼基材がワイヤーメッシュである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の前記ガス分解生成物が、複数のワイヤーメッシュの全域に流通される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステンレス鋼基材がステンレス鋼チップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非酸化環境が不活性ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガスが窒素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非酸化環境が水蒸気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1以上の前記ガス分解生成物を前記第2炉において前記ステンレス鋼基材の全域に流通させる前に、1以上の前記ガス分解生成物を酸化ガスと混合する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化ガスが酸素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化ガスが空気である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
工程a)から工程b)を実行する前に、前記ステンレス鋼基材を酸で洗浄し、前記ステンレス鋼基材を少なくとも600℃に加熱し、前記ステンレス鋼基材を急冷する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1以上の前記ガス分解生成物を前記第2炉において前記ステンレス鋼基材の全域に流通させる前に、1以上の前記ガス分解生成物を濾過して1以上の前記ガス分解生成物から固体粒子を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月19日出願の米国仮特許出願第62/978606号の利益を主張する。本出願は、2020年2月19日出願の米国仮特許出願第62/978609号の利益も主張する。上記出願の教示全体が、参照によりここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ構造体は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されるように、有機材料の熱分解によって生成可能である。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートのカーボンナノ構造体への変換は、困難であるとされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/111624号
【特許文献2】米国特許第9051185号明細書
【特許文献3】米国特許第9738524号明細書
【発明の概要】
【0004】
ここに記載される方法は、浸炭性ガスを生成する原料として用いられる、使用前又は使用後のポリエチレンテレフタレートの熱分解又は穏やかな酸化分解を伴う。これらのガスは、600~1200℃の範囲の温度において、触媒基材上のカーボンナノチューブの成長のための供与体として用いられる。
【0005】
ステンレス鋼材料(固定又は浮遊)などの前処理された金属は、CNT成長のための触媒として作用するように用いることができる。触媒の前処理は、所定時間(例えば、10分間)の酸洗浄、続いて所定時間(例えば、1分間)の高温(例えば、800℃)での空気中の酸化、続いて室温への速い急冷を伴う。
【0006】
通常、成長したカーボンナノチューブは、アルコール中での超音波処理によって除去される。
【0007】
カーボンナノ構造体を合成する方法をここに記載する。その方法は、600℃~1200℃の温度の第1炉における非酸化環境において、i)ポリエチレンテレフタレートを含む原料及びii)酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を熱分解して1以上のガス分解生成物を得る工程を伴う。方法はまた、任意選択的に、1以上のガス分解生成物を濾過して1以上のガス分解生成物から固体粒子を除去する工程と、600℃~1200℃の温度の第2炉において、1以上のガス分解生成物をステンレス鋼基材の全域に流通させてカーボンナノ構造体を形成する工程とを伴う。
【0008】
ステンレス鋼基材は、ワイヤーメッシュであり得る。1以上のガス分解生成物が、複数のワイヤーメッシュ全体に流通され得る。ステンレス鋼基材は、ステンレス鋼チップであり得る。
【0009】
非酸化環境は、窒素などの不活性ガスを含み得る。非酸化環境は、水蒸気を含み得る。
【0010】
方法は、第2炉において1以上のガス分解生成物をステンレス鋼基材全域に流通させる前に、1以上のガス分解生成物を酸化ガスと混合する工程をさらに含み得る。酸化ガスは、酸素を含み得る。酸化ガスは、空気であってもよい。
【0011】
方法は、熱分解の前に、ステンレス鋼基材を酸で洗浄し、ステンレス鋼基材を少なくとも600℃に加熱し、ステンレス鋼基材を急冷する工程をさらに含み得る。
【0012】
上記は、添付図面に示すように、以下の例示実施形態のより詳細な説明から明らかとなる。添付図面において、同様の符号は、様々な図を通じて同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、実施形態を説明するにあたり強調が施されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aおよび
図1Bは、廃プラスチックの熱分解及びカーボンナノチューブ(CNT)の合成のための実験研究機器を示す図である。
図1Aは、純粋熱分解環境(例えば、N
2)又は酸素が混合ベンチュリ管に導入される穏やかな酸化環境におけるCNTの生成を示している(領域1:熱分解段階、領域2:燃料豊富な燃焼段階*、及び領域3:CVD合成段階)。セラミック(SiC)ハニカムフィルタを示し、CNT成長のための触媒基材として使用されるステンレス鋼ワイヤークロスの一部分も示す。酸素含有ガスがベンチュリ管に添加される場合にのみ燃焼段階において火炎が存在する。
【
図2A】
図2Aは、成功した条件1による結果を示すSEM画像である。
【
図2B】
図2Bは、成功した条件1による結果を示すSEM画像である。
【
図2C】
図2Cは、成功した条件1による結果を示す単一のCNTのTEM画像である。
【
図3A】
図3Aは、成功した条件2による結果を示すSEM画像である。
【
図3B】
図3Bは、成功した条件2による結果を示すSEM画像である。
【
図3C】
図3Cは、成功した条件2による結果を示す単一のCNTのTEM画像である。
【
図4A】
図4Aは、成功した条件3による結果を示すSEM画像である。
【
図4B】
図4Bは、成功した条件3による結果を示すSEM画像である。
【
図4C】
図4Cは、成功した条件3による結果を示す単一のCNTのTEM画像である。
【
図4D】
図4Dは、成功した条件3による結果を示す単一のCNTのTEM画像である。
【
図5A】
図5Aは、成功した条件4による結果を示すSEM画像である。
【
図5B】
図5Bは、成功した条件4による結果を示すSEM画像である。
【
図6A】
図6Aは、成功した条件5による結果を示すSEM画像である。
【
図6B】
図6Bは、成功した条件5による結果を示すSEM画像である。
【
図7A】
図7Aは、成功した条件6による結果を示すSEM画像である。
【
図7B】
図7Bは、成功した条件6による結果を示すSEM画像である。
【
図8A】
図8Aは、成功した条件7による結果を示すSEM画像である。
【
図8B】
図8Bは、成功した条件7による結果を示すSEM画像である。
【
図9】
図9は、これらの実験において使用された触媒基材を示す写真である。右上:未使用のメッシュ試験片。中央上:その上に成長したCNTを有する試験片。左上:サイズ基準のための25セントコイン。下:巻き取られたメッシュ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
略語
CNT:カーボンナノチューブ
PET:ポリエチレンテレフタレート
PE:ポリエチレン
LPM及びlpm:リットル/分
SEM:走査電子顕微鏡法
TEM:透過型電子顕微鏡法
ID:内径
【0015】
例示実施形態の説明は以下の通りである。
【0016】
ここに記載する方法は、廃プラスチックを付加価値のある製品、すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボンナノ構造体又はナノ材料にアップサイクリングすることに関する。一般に、ナノチューブの成長のための触媒として使用される金属製(例えば、ステンレス鋼)基材(固定又は浮遊)が、その方法に関与する。
【0017】
原料は、ポリエチレンテレフタレートを含み得る。原料は、不活性ガス雰囲気において熱分解され、又は燃料豊富な(酸素不足の)雰囲気において部分的に酸化される。酸化カルシウム(CaO)及び/又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が、原料に添加される。CNTは、炭化水素豊富な熱分解又は酸化生成物を炭素供与体として用いて生成される。このプロセスには600~1200℃の範囲の高温が好適である。
【0018】
ステンレス鋼基材は、ステンレス鋼基材の保護クロム層を破壊するとともにステンレス鋼基材の表面を活性化してナノカーボンを生成するために、酸浴槽に浸漬され、その後に酸化及び熱処理に曝され得る。それに応じて、後続の熱分解物ガスが、基材を流通されてそれらの表面にCNTを触媒成長させる。その後、CNTは、アルコール中での超音波処理によって基材から除去される。
【0019】
装置及び方法
図1A~
図1Bは、カーボンナノ構造体を生成するのに有用な、一次炉101及び二次炉102を含む装置100を示す。ある実施形態では、一次炉101は層流マッフル炉であり、二次炉102は層流反応器であり得る。
【0020】
図1Aに示すように、一次炉101は、一次炉チャンバ1012を加熱する一次炉加熱要素1011を含む。一次炉チャンバ1012内には、有機材料(ポリエチレンテレフタレート)1014を含む磁製ボート1013cが装填可能なハーフ管1013bを形成するように切断された石英管1013aのような、原料装填構成要素1013が設けられ得る。有機材料(ポリエチレンテレフタレート)1014は、熱分解物又はガス分解生成物1015を形成するようにそこで熱分解を実行する一次炉チャンバ1012内の所望の又は最適な位置に配置され得る。
【0021】
ある実施形態では、一次炉チャンバ1012は、熱分解が不活性雰囲気下などの所望の条件下で起こり得るように、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)のガスが一次炉チャンバ1012に進入することを可能とする入口1016を含み得る。
【0022】
一次炉101は、ガス分解生成物1015がベンチュリ部分1017に進入できるように、一次炉チャンバ1012の一端付近にベンチュリ部分1017をさらに含み得る。当業者であれば理解するように、ベンチュリ部分1017とは、流体圧力の低下をもたらし、同様に流体速度の増加をもたらす一次炉チャンバ1012の括れた部分のことをいう。さらに、ベンチュリ部分1017は、一次炉101の部分である必要はなく、一次炉101に接続された別個の構成要素として設けられてもよい。
【0023】
ベンチュリ部分1017には、ベンチュリ部分1017に進入するガス分解生成物1015と混合する1以上のガス(例えば、酸素ガス、塩素ガス、二酸化炭素、他の何らかの酸素含有ガスなどのような酸化剤)などの追加の材料を導入可能な1以上の入口1018がさらに設けられ得る。ある実施形態では、入口1018は、ガス分解生成物1015と、入口1018に流入する1以上のガスとの間で混合が起こるように位置決め可能である。ある実施形態では、混合は、ベンチュリ後段部分1019内での煤火炎となる発火(例えば、自己発火)をもたらし得る。他の実施形態では、混合は、発火をもたらし、ベンチュリ後段部分1019における層流火炎となり得る。
【0024】
ベンチュリ後段部分1019は、二次炉102に、特に二次炉チャンバ1022の第1端1022aに接続可能である。二次炉102は、二次炉チャンバ1022を所望の温度に加熱する二次加熱要素1021を含み得る。
【0025】
セラミックフィルタなどの任意選択的なフィルタ1023が、二次炉チャンバ1022の第1端1022a付近に含まれてもよい。ただし、フィルタ1023は、二次炉102の部分である必要はなく、一次炉101と二次炉102の間の任意の所望の場所に設けられ得る。ベンチュリ後段部分1019における火炎が微粒子(例えば、すす又は他の微粒子)を含む実施形態では、フィルタ1023は、微粒子の少なくとも一部、大部分又は全部が二次炉チャンバ1022に進入しないようにフィルタ除去するように作用し得る。1以上のフィルタが、利用可能である。例えば、複数のフィルタが、フィルタ効率をさらに高めるように並列又は直列に配置されて相互に積層されてもよい。
【0026】
二次加熱要素1021は、充分な加熱を与えて二次炉チャンバ1022内でのカーボンナノ構造体の生成を可能とし得る。二次炉102には、二次炉チャンバ1022内に大気圧以下の条件を与えるように真空ポンプ(不図示)及びその適宜のコネクタ(不図示)などの他の適宜の構成要素がさらに装備されてもよく、それらはカーボンナノ構造体の形成をさらに容易化、促進又は増強することができる。
【0027】
ある実施形態では、二次炉チャンバ1022は、カーボンナノ構造体の形成を補助可能な触媒1024を含み得る。ある実施形態では、ベンチュリ後段部分1019からのガス分解生成物が、二次炉チャンバ1022に進入して、二次炉チャンバ1022内部に含まれる触媒1024と接触し得る。ガス分解生成物が触媒1024と接触すると、カーボンナノ構造体の生成が開始し、促進され又は増強され得る。ある実施形態では、触媒1024は、触媒、及び、カーボンナノ構造体収集容器又は基材1025(不図示)の両方として作用する支持された触媒であり得る。他の実施形態では、触媒1024は、基材1025とは別個の構成要素であってもよい。
【0028】
ある実施形態では、1以上の触媒1024が利用され得る。例えば、複数のステンレス鋼ワイヤーメッシュなどが、触媒表面積をさらに増加させるように、並列又は直列に配置されて(例えば、折り畳まれ、巻き取られるなどして)相互に積層されてもよい。一部の実施形態では、触媒の表面積は、利用可能な二次炉チャンバ1022及び装置100の設計に応じて1000~数百万倍増加し得る。
【0029】
生成されたカーボンナノ構造体は、当業者には直ちに明らかであるように、その後に基材1025から収集可能となる。
【0030】
装置100に対する変更例及び変形例は、当業者には直ちに明らかとなり、本開示の範囲内にある。例えば、ある実施形態では、装置100は、一次部分及び二次部分を含む単一の炉であってもよく、
図1A及び
図1Bに例示するように2つの別個の炉として実現される必要はない。他の変更例及び変形例も可能である。
【0031】
熱分解物又はガス分解生成物を形成するのにポリエチレンテレフタレートが熱分解されてもよい。熱分解は、熱分解物又はガス分解生成物の発火及び燃焼を防止するように窒素、アルゴンなどの1以上の不活性ガスの存在下で行われてもよい。
【0032】
ある実施形態では、熱分解は、有機材料(ポリエチレンテレフタレート)からガス分解生成物への80%、85%、90%又はさらに95%超の変換を可能とする条件下で実行され得る。ある実施形態では、熱分解は、ガス分解生成物の量を最大化するように、600℃以上、700℃以上、800℃以上、900℃以上又はさらに1000℃以上の温度で実行され得る。第1及び第2炉の各々の温度が独立して調整可能である。通常、第1及び第2炉の各々の温度は、600℃~1200℃である。一部の実施形態では、第1炉の温度は600℃~1000℃である。一部の実施形態では、第2炉の温度は600℃~1000℃である。一部の実施形態では、第1炉の温度は800℃~1000℃である。一部の実施形態では、第2炉の温度は800℃~1000℃である。
【0033】
ガス分解生成物は、1以上のガス、例えば、酸素含有ガスと混合されて火炎を形成し得る。火炎は、煤火炎又は非煤火炎であり得る。
【0034】
ある実施形態では、火炎を形成するために、ガス分解生成物は、目的に応じて設計されたデバイス(例えば、連続供給システム、流動床など)を用いて準均一に放出され、1以上のガスとの混合を実行するように
図1Aに示すベンチュリ部分1017などの領域に流通されてもよい。ガス分解生成物と混合する適切なガスは、空気など、酸素含有ガスを含む。混合に応じて又は混合中に、自己発火が起こり、予混合火炎を形成し得る。
【0035】
一部の実施形態では、1以上のガスが、燃料/酸素比が燃料リッチ(すなわち、酸素欠乏)となり得るように、所定量で添加され得る。理論に拘束されないとすると、そのような酸素欠乏条件は、充分な量のCO、水素、又は小炭化水素などの他の適宜の原料を火炎内に維持することによってカーボンナノ構造体成長の成長を促進し得る。
【0036】
ある実施形態では、1以上のガスは、酸素を含まなくてもよく、酸素に加えて追加のガスを含んでいてもよい。例えば、これに限定されないが、窒素、アルゴンなどのような不活性ガスが、ガス分解生成物に添加されて混合されてもよい。ある実施形態では、これらの他のガスの存在は、火炎の形成を阻害し得る。火炎を形成するのではなく、ガス分解生成物が、微粒子フィルタに流通されてカーボンナノ構造体を形成した後に、
図1A及び
図1Bに示す二次炉チャンバ1022などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域に流通してもよい。
【0037】
火炎が立つ実施形態では、予混合火炎は、部分的に後続の二次炉1022へ通り抜ける。一部の実施形態では、予混合火炎流出物は、火炎に含まれる1以上の微粒子をフィルタ除去するようにフィルタ1023を通過可能である。
【0038】
そして、火炎の流出物は、フィルタ1023などのフィルタ、又は高温条件下で動作可能な他の任意のフィルタを通過し得る。フィルタは、
図1A及び
図1Bに示す二次炉チャンバ1022などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域に火炎の流出物が導入される前に、少なくとも一部の固体粒子(例えば、すす)を捕捉することができる。ある実施形態では、フィルタはさらに、火炎の流出物が二次炉チャンバ1022に進入する前の整流器として作用し得る。
【0039】
一部の実施形態では、含酸素ガスの欠如及び非煤燃焼条件によって、フィルタの省略が可能となり得る。
【0040】
カーボンナノ構造体を生成可能な領域への進入に応じて、カーボンナノ構造体が形成し得る。ある実施形態では、二次炉102などのカーボンナノ構造体を生成可能な領域は、600℃~1500℃を範囲とする合成温度範囲、装置100との関連で0.1cm/s~10cm/sを範囲とする流出速度など、カーボンナノ構造体の生成を促進する条件に維持され得る。
【0041】
ある実施形態では、カーボンナノ構造体を生成可能な領域は、カーボンナノ構造体の生成を促進する1以上の触媒を含み得る。一部の実施形態では、触媒は固定又は支持された触媒であり、カーボンナノ構造体を生成可能な領域に予め挿入される。ある実施形態では、カーボンナノ構造体は、その後の収集のために支持触媒の上部で成長可能とされる。
【0042】
あるいは、ガス分解生成物は、これらに限定されないが、化学気相成長法(CVD)、フロー反応器、浮遊又は支持触媒を用いる流動床などの他のナノ構造体製造プロセスにおけるカーボンナノ構造体の生成のための開始原材料として使用可能である。このような実施形態では、ガス分解生成物がナノ構造体製造プロセスに提供される前に、熱分解において形成するいずれの凝集微粒子も凝集微粒子の濾過を介して除去可能である。濾過された凝集微粒子は、それらが環境汚染物として放出されないように回収され得る。
【0043】
一部の実施形態では、酸素、水素、チオフェンなどの硫黄含有化合物又はこれらの組合せは、水蒸気などのように、触媒の活性化を促進して高い触媒活性を維持するように、一次炉チャンバ1012、ベンチュリ部分1017又は二次炉チャンバ1022に添加され得る。添加されるガスの範囲は、約0.0001体積%(すなわち、1ppm)~約80体積%であり得る。
【0044】
ポリマーの高温熱分解は、ごく少量の液体(オイル及びタール)とともに大部分でガス(炭化水素及び水素)を生成する。オイルは、更なる使用のために凝集及び除去され得る。
【0045】
残余の未反応の熱分解炭化水素ガスは、プロセスのための熱を生成するように燃焼されてもよいし、他の目的(発電又は化学原料)のための原料として市販されてもよい。さらに、燃焼中に放出される熱は、熱分解のために使用される熱として再生可能である。
【0046】
金属製基材
ここで使用される金属製基材は、ワイヤークロス、粒子、廃チップ又は破片など、様々な構成を有し得る。通常、金属製基材は、少なくとも部分的にステンレス鋼からなる。
【0047】
ステンレス鋼は、鉄、クロム、場合によってはニッケル、モリブデン、マンガン又は他の金属の合金である。通常、ステンレス鋼は、少なくとも10~11%のクロム及び2%未満の炭素を含有する。一部の種類のステンレス鋼はまた、窒素、アルミニウム、ケイ素、硫黄、チタン、ニッケル、銅、セレン及び/又はニオブを含む。
【0048】
オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼及び析出硬化系ステンレス鋼など、様々なステンレス鋼ファミリーが公知である。ステンレス鋼は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼などのように3桁の数字で分類されることが多い。
【0049】
ステンレス鋼基材は、酸浴槽に浸漬され、その後に酸化及び熱処理に曝されてステンレス鋼基材の保護クロム層を破壊し、ナノカーボン生成のためにステンレス鋼基材の表面を活性化する。酸浴槽は、塩酸(HCl)又は硫酸(H2SO4)を含み得る。熱処理は、通常、基材を少なくとも600℃(例えば、約800℃)に加熱することを伴う。加熱後、ステンレス鋼基材は、その温度を低下させるために急冷され、これは空気急冷(空気焼入れ)又は水急冷(水焼入れ)によるものであればよい。
【0050】
CNTを生成した後、基材は酸で再洗浄され、残存炭素を基材から除去するとともに表面の凹凸を増加させるように加熱される。
【0051】
酸化カルシウム(CaO)及び/又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)によるポリエチレンテレフタレートの熱分解
ポリエチレンテレフタレート(PET)の熱分解については限定的な数の研究しか報告されていない。それらは全て、その熱分解生成物が大量の安息香酸を含むことで一致している。
【0052】
PET熱分解物は、液体、気体及び固体からなる。Leeら(世宗大学、韓国、2017)は、PET質量の85%が熱崩壊(熱分解)によって380~670℃で分解することを報告した。吉岡ら(東北大学、日本、2004)の研究は、510~630℃の範囲の温度において、PETの質量の37~39%が気体となることを突き止めた。一方、Artetxeら(バスク大学、スペイン、2010)は、PETの質量の43~49%が気体に変換することを報告した。熱分解物の残余の部分は、液体及び固体の形態である。吉岡ら(2004)及びArtetxeら(2010)によると、ガス熱分解物のほとんどは、CO(ポリマー質量の10~20%)及びCO2(ポリマー質量の13~30%)並びに少量(約4%)の軽炭化水素(エチレン、メタン、プロパン、シクロブタンなど)からなる。熱分解生成物の安息香酸は、ポリマー質量の12~21%も占めている。
【0053】
触媒基材上のナノチューブの成長のための炭素供与体として作用するのは炭化水素(ある程度のCOも)であるので、PETからのガス熱分解物の低い収率、特に気体における炭化水素(HC)の非常に低い含有率(約4%)はナノチューブの生成に最適ではない。
【0054】
網羅的な文献調査は、安息香酸はCNT生成のための適当な炭素供与体物質ではないことを明らかにした。Yuら(上饒師範大学、中国、2015)の研究を参照。その研究者らは、ベンゼン及び複数のフェノールからCNTを生成したが、安息香酸からCNTを生成することはできなかった。彼らは、この問題を(a)電子求引基の間の相乗効果がベンゼン環の脱水素化を阻害することによってそれらを安定状態に維持すること、及び(b)触媒毒が触媒を不活性化することとして説明した。したがって、我々は、PETの熱分解における安息香酸の生成を抑制することがCNTの生成を可能とするという仮説を立てた。
【0055】
東北大学、日本(吉岡ら(2005)、熊谷ら(2015)、熊谷ら(2018))における研究は、酸化カルシウム(CaO、石灰)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2、消石灰)の添加物の存在下でのPETの熱分解が結果として生成されるテレフタル酸の脱炭酸をもたらし、さらに安息香酸ではなくベンゼンの増量をもたらすことになることを実証した。ベンゼンは、CNT成長のための有効な炭素供与体であると考えられる。石灰及び消石灰を用いることのさらなる利点は、安価な商品(年間世界生産量は約3.5億トン)であることとは別に、双方とも熱分解プロセスの全体を通じて消費されることはなく、双方とも長期使用のために再生成可能であることである。
【0056】
したがって、我々は、原料とともに石灰(CaO)又は消石灰(Ca(OH)2)を含有させることは、CNTの生産量を増加させることになるという仮説を立てた。したがって、実験を、水酸化カルシウム(消石灰)又は酸化カルシウム(石灰)の粉末をPETに添加してPET及び添加物の混合物を熱分解することにさらに集中して行った。
【0057】
本開示においては、燃焼又はCVDプロセスのために高価でかつ高純度の上質な燃料を用いるのではなく、開始材料としてペレット、チップ、チャンクなどの形態の固体プラスチックを含む固体廃材などの固体有機材料を用いてカーボンナノ構造体を生成する方法及び装置を説明する。ここで使用される有機材料はポリエチレンテレフタレートであり、それはポリエチレンなどの他の有機材料に混合可能である。
【0058】
一部の実施形態では、固体有機材料(ポリエチレンテレフタレート)は、ペレット、チップ、チャンク又はこれらの組合せの形態であり得る。さらに他の一部の実施形態では、固体有機材料は、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族、アクリレート、セルロース又はこれらの組合せなどの種々の基を含有していてもよい。これに限定されないが、バイオマス、トウモロコシ、綿、ゴム、タイヤ、石炭、木材、リグニン又はこれらの組合せなどの他の固体有機材料が、使用されてもよい。
【0059】
一部の実施形態では、液体有機材料(ポリエチレンテレフタレート)が利用され得る。
【0060】
酸化カルシウム(CaO、石灰)及び/又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2、消石灰)が、ポリエチレンテレフタレートに添加される。酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムは、ポリエチレンテレフタレートに混合され得る。他の実施形態では、酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの粉末が、水中に懸濁され、ポリエチレンテレフタレートに噴霧され得る。
【0061】
カーボンナノ構造体
カーボンナノ構造体は、これらに限定されないが、中空キャビティを有する又は有さないカーボンナノファイバー、及び球状多層オニオンカーボンを含む。ファイバー層は、アモルファスカーボン又は完成度の異なるグラファイト構造を含み得る。平行な層を含むグラファイト層構造を有する中空カーボンナノファイバーをカーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、三層ナノチューブなど、平行な層の数に基づいて規定される。一般的に、複数の層を有するカーボンナノチューブを、多層ナノチューブという。
【0062】
用途
ここに記載する方法によって生成されたカーボンナノ構造体は、様々な用途に使用可能である。
【0063】
電気的エネルギーから機械的エネルギーへの変換及びその逆の変換を行う際の以下のナノチューブ製品並びにそれらのアクチュエータを含む主な対象分野は、ロボティクス、光ファイバースイッチ、ディスプレイ及び補綴デバイスにおいて使用される。他の用途は、エネルギーハーベスティング、電池、複合材、静電気散逸(ESD)及びタイヤの調製を含む。
【0064】
例えば、カーボンナノ構造体は、単体で又は添加物として、電池の電極材料として使用可能であり、例えば導電性を上昇させる。
【0065】
それらの熱伝導性に起因して、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ構造体は、電子デバイスにおける放熱のために使用可能である。
【0066】
他の例では、酸素などのガスの吸着とコンダクタンス及び熱電能との間の相関が観察されているので、ナノチューブはセンサとして使用可能である。更なる例は、強度性能の向上が観察されるポリマーとナノチューブの組合せでの複合材としてのナノチューブの使用を含む。ナノチューブが高分子構造体に固定可能となるようにナノチューブ層を機能化することによって、更なる強化を得ることができる。
【0067】
さらに、それらの物理的寸法はタンパク質やDNAなどの生物学的に活性な高分子のものと同様であるため、CNTは、これらに限定されないが、検出、薬剤送達、酵素固定及びDNAトランスフェクションを含む生物学関連の用途において有用である。
【0068】
構造的特徴に応じて、CNTは金属性又は半導体性となり得る。トランジスタ及び論理デバイスのサイズは、CNTを用いて大幅に減少可能となる。例えば、論理デバイスは、その長さに沿うキラリティー間の転位を有する単一のナノチューブから構成可能となる。さらに、高秩序化カーボンナノチューブアレイは、データストレージ、ディスプレイ及びセンサから、より小型のコンピューティングデバイスまで及ぶ様々なエレクトロニクス用途に使用可能である。フラットパネルディスプレイ(FPD)の分野におけるカーボンナノチューブの商業的応用も有望である。
【0069】
CNTは、水素貯蔵材料としても有用である。例えば、単層ナノチューブは、水素自動車において必要な水素貯蔵システムに適する。
【実施例】
【0070】
例示実施形態の説明は、以下の通りである。
【実施例1】
【0071】
90%のPET及び10%のPEを含有する再生トナーカートリッジパッケージを原料として用いた。
【0072】
トナーカートリッジ原料を粉砕してから既存の研究室規模のバッチ反応器に供給した。反応器は、石英ガラス器からなり、
図1A及び
図1Bに示すように2つの電気炉によって加熱された。実験装備は、4つの段階:(a)不活性ガス中でのポリマー熱分解、(b)必要であれば、他の投入ガスとの混合を可能とするベンチュリ、(c)高温セラミックフィルタ、及び(d)触媒基材上でのCNT合成のためのステージを含む。供給材料の粉砕サンプルを磁製ボートに装填し、反応器のパージ及び予熱された熱分解部分に挿入した。窒素は不活性キャリアガスとして作用して、確実に非酸化条件がポリマー熱分解部分では優勢となるようにした。熱分解物ガスをベンチュリ(内径8mm)に流通させ、幾つかの条件で酸素と混合させた。
【0073】
結果として得られたガスは、装置の第3段階に流通され、そこでは、そのガスが高温セラミックSiCフィルタ(イビデン株式会社製)を通過していずれの生成固体粒子(すすなど)も除去した。濾過は、触媒上のすすの堆積による触媒不活性化を防止する。このフィルタは、1μmよりも大きなすす粒子に対して97%の保持効率を有し、高温空気を流通させることによって周期的に熱再生成された。その後、濾過されたガスを、ガスのフローに垂直に配置された多数の(通常は4個の)金属製スクリーン試験片に流通させた。
【0074】
原料熱分解の開始及び完了並びに同時のCNT合成反応を、反応器の流出物における視認可能なヒュームの放出をモニタリングすることによって推定した。各処理が終了すると、炉をオフし、反応器を室温まで冷却させた。その後、スクリーンを除去し、そこから切片を切り出して走査電子顕微鏡法(SEM)による分析のために準備した。他のスクリーン切片をエチルアルコールで短時間(10分間)超音波処理して、透過型電子顕微鏡法(TEM)による更なる分析のためにCNTを除去した。
【0075】
3種の触媒基材スクリーン:タイプ316ステンレス鋼、ニッケル及び/又は普通炭素鋼を試験した。前者が最も成功した。316ステンレス鋼を用いた場合、それは最初に希釈塩化水素溶液で酸洗浄し、脱イオン水でリンスし、空気中で800℃で1分間加熱し、その後に圧縮空気の噴流において速やかに急冷した。Panahiら:「Influence of Stainless-Steel Catalyst Substrate Type and Pretreatment on Growing Carbon Nanotubes from Waste Postconsumer Plastics」 Ind.Eng.Chem.Res.2019、58、3009-3023を参照。
【0076】
以下の反応器作動パラメータを、記載の範囲において変化させた。
【0077】
ポリマー熱分解温度:600~800℃、CNT合成温度:800~1000℃、サンプル量:バッチあたり2~4グラム、窒素パージ流量:1~3リットル/分。
【0078】
一部の実験を、石灰、すなわち、酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の存在下で行った。これらの場合において、パッケージの破片を、熱分解チャンバに装填する前に添加物と物理的に混合/被覆した。
【0079】
実験マトリクス
これらの材料を研究室規模のバッチ反応器への原料として用いて30通りを超える試験を行った。一部の作動条件はカーボンナノチューブをもたらしたが、他はカーボンナノチューブをもたらさなかった。CNTを生じた条件を表1にまとめる。CNTを生じなかった条件は、ニッケル基材及び炭素鋼基材の使用を伴うものであった。
表1 原料からCNTを生じさせるのに成功した実験条件についての実験マトリクス
【表1】
【0080】
これらの実験の全てにおいて、3個の触媒メッシュ試験片の合計重量は、約0.6gであった。対応する実験設定及び結果として得られたCNTのSEM画像を、結果及び考察の章に記載する。
【0081】
結果
以下の成功した条件1~7では、粉末状のCaOをポリマー床上のコーティングとして散布した。
【0082】
成功した条件1
原料:90%のPET+10%のPE
触媒:SS316、窒素ガス
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に空気急冷
プロセス温度:熱分解炉:800℃、合成炉:800℃
【0083】
図2A及び
図2Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
図2Cは、この実験により生成された単一のCNTのTEM画像である。
【0084】
成功した条件2
原料:90%のPET+10%のPE
触媒:SS316
15%のO2を添加した窒素ガス、合計流量:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に空気急冷
プロセス温度:熱分解炉:600℃、合成炉:1000℃
【0085】
図3A及び
図3Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
図3Cは、この実験により生成された単一のCNTのTEM画像である。
【0086】
成功した条件3
原料:90%のPET+10%のPE+Ca(OH)2
触媒:SS316
窒素ガス:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:600℃、合成炉:1000℃
【0087】
図4A及び
図4Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
図4C及び
図4Dは、この実験により生成された単一のCNTのTEM画像である。
【0088】
成功した条件4
原料:90%のPET+10%のPE+Ca(OH)2
触媒:SS316
窒素流量:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:700℃、合成炉:1000℃
【0089】
図5A及び
図5Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
【0090】
成功した条件5
原料:90%のPET+10%のPE+CaO
触媒:SS316
窒素流量:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:700℃、合成炉:1000℃
【0091】
図6A及び
図6Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
【0092】
成功した条件6
原料:90%のPET+10%のPE+CaO
触媒:SS316
窒素流量:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:600℃、合成炉:1000℃
【0093】
図7A及び
図7Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
【0094】
成功した条件7
原料:90%のPET+10%のPE+CaO
触媒:SS316、窒素流量:3lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:600℃、合成炉:1000℃
【0095】
図8A及び
図8Bは、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
【0096】
より高い収率を達成する調査実験
この実験では、大型片の触媒基材メッシュを用いた。合計重量約0.6グラムの3個の丸いメッシュ試験片を用いるのではなく、
図9に示すように14.6gの巻き取られたメッシュを用いた。2グラムのポリマーを熱分解し、触媒基材上で0.2グラムの材料を収集した。したがって、収率は、ポリマー原料の重量の約10%であるが、SEM分析は、多量のCNTが基材上で成長した一方で、他の何らかの材料、おそらくはタールもそこに凝集されたことを示した。
プラスチック:PET+CaO、触媒:SS316、窒素流量:2lpm
基材処理:HClによる酸洗浄、空気中での1分間の加熱処理、その後に急冷
プロセス温度:熱分解炉:600℃、合成炉:1000℃
【0097】
図10は、この実験により生成されたCNTのSEM画像である。
【0098】
参考文献
Lee他(2017):「Enhanced energy recovery from polyethylene terephthalate via pyrolysis in CO2 atmosphere while suppressing acidic chemical species」、J.Lee、T.Lee、YF Tsang、JI.Oh、EE.Kwon-Energy Conversion and Management、148(2017)456-460.
吉岡他(2004):「Pyrolysis of poly(ethylene terephthalate) in a fluidised bed plant」、吉岡敏明、Guido Grause、Christian Eger、Walter Kaminsky、奥脇昭嗣 -Polymer Degradation and Stability、86(2004)499-504.
Artetxe他(2010):「Operating Conditions for the Pyrolysis of Poly-(ethylene terephthalate) in a Conical Spouted-Bed Reactor」、Maite Artetxe、Gartzen Lopez、Maider Amutio、Gorka Elordi、Martin Olazar及びJavier Bilbao、Industrial Engineering and Chemistry Research、49(2010)2064-2069.
Yu他(2015):「Synthesis of Carbon Nanotubes by Using a Series of Phenyl Derivatives as Precursors」、Leshu Yu、Yingying Lv、Keyan Wu及びChungen Li Fullerenes、Nanotubes and Carbon Nanostructures、23(2015)1073-1076.
吉岡他(2005):「Effects of metal oxides on the pyrolysis of poly(ethylene terephthalate)」、吉岡敏明、半田智彦、Guido Grause、Zhigang Lei、猪股宏、溝口忠昭、Journal of Analytical and Applied Pyrolysis、113(2015)584-590.
熊谷他(2015):「Thermal decomposition of individual and mixed plastics in the presence of CaO or Ca(OH)2」、熊谷将吾、長谷川格、Guido Grause、亀田知人、吉岡敏明、Journal of Analytical and Applied Pyrolysis、113(2015)584-590.
熊谷他(2018):「Aromatic hydrocarbon selectivity as a function of CaO basicity and aging during CaO-catalyzed PET pyrolysis using tandem μ-reactor-GC/MS」、熊谷将吾、山崎僚太、亀田知人、齋藤優子、渡辺壱、渡辺修一、寺前紀夫、吉岡敏明、Chemical Engineering Journal、332(2018)169-173.
Panahi他(2019):「Influence of Stainless-Steel Catalyst Substrate Type and Pretreatment on Growing Carbon Nanotubes from Waste Postconsumer Plastics」、Ind.Eng.Chem.Res.2019、58、3009-3023.
【0099】
参照による取込み、均等物
ここに引用される全ての特許、公開された出願及び文献の教示は、それらの全体において参照によりここに取り込まれる。
【0100】
例示実施形態を特に図示及び記載したが、形態及び詳細の種々の変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなくここになされ得ることは、当業者には理解されるはずである。
【国際調査報告】