(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】光重合性組成物、これから形成された光学部材および表示装置
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20230329BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230329BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20230329BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F2/44 A
G02B1/118
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549590
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2021002049
(87)【国際公開番号】W WO2021167358
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020844
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0020811
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イ サンフン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヒョクミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ テフン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンヒョク
【テーマコード(参考)】
2K009
4J011
【Fターム(参考)】
2K009BB01
2K009BB11
2K009CC03
2K009CC21
2K009CC24
2K009CC32
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD05
4J011PA07
4J011PA69
4J011PB06
4J011PB22
4J011PC02
4J011QA03
4J011QA13
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4J011QA46
4J011RA03
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4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA61
4J011SA65
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
(57)【要約】
本発明は、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性を示す光学部材の形成を可能にする光重合性組成物、これから形成された光学部材および表示装置に関する。前記光重合性組成物は、光硬化性官能基を有する1種以上のオレフィン系単量体;金属酸化物粒子;アミン基および光硬化性官能基を有するアミン化合物;および光重合開始剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性官能基を有する1種以上のオレフィン系単量体;
金属酸化物粒子;
アミン基および光硬化性官能基を有するアミン化合物;および
光重合開始剤を含む光重合性組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系単量体または前記アミン化合物の光硬化性官能基は、(メタ)アクリレート基を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記オレフィン系単量体は、炭素数6~20の脂肪族モノ(メタ)アクリレート、炭素数6~30の脂環族モノ(メタ)アクリレート、炭素数8~30の芳香族モノ(メタ)アクリレート、炭素数6~30の脂肪族ジ(メタ)アクリレート、炭素数6~40の脂環族ジ(メタ)アクリレートおよび炭素数8~40の芳香族ジ(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系単量体は、絶対粘度(25℃で測定)が1cP~30cPの単量体を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記オレフィン系単量体は、絶対粘度(25℃で測定)が1cP以上7cP以下の第1オレフィン系単量体、および絶対粘度(25℃で測定)が8cP以上30cP以下の第2オレフィン系単量体からなる群より選択された1種以上を含む、請求項4に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記第1オレフィン系単量体は、ベンジル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上を含む、請求項5に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記第2オレフィン系単量体は、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレートおよびトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上を含む、請求項5に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
前記オレフィン系単量体の全体100重量部に対して、第1オレフィン系単量体の10~90重量部および第2オレフィン系単量体の10~90重量部を含む、請求項5に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物粒子は、媒質分散状態の二次粒径を基準として、25~45nmの平均粒径(D50)を有し、
Zn、Zr、Ti、HfおよびCeからなる群より選択された金属元素を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記アミン化合物は、下記の化学式1の化合物、エチルジメチルアミノベンゾエート、ブトキシエチルジメチルアミノベンゾエート、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロエチル)-トルイジン、エチルヘキシル-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル2-(ジブチルアミノ)メチルアクリレートおよび4,4-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ)ビス(ジメチルアニリン)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の光重合性組成物:
【化1】
前記化学式1において、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示し、R
3は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のエーテル基、炭素数6~30のアリール基、アミン基または(メタ)アクリレート基を示す。
【請求項11】
前記光重合開始剤は、トリアジン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系、キサントン系、オキシムエステル系およびアセトフェノン系化合物からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項12】
アクリル系分散剤、エポキシ系分散剤およびシリコーン系分散剤からなる群より選択される1種以上の分散剤をさらに含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
前記光重合性組成物全体の100重量%を基準として、
オレフィン系単量体5重量%~88重量%;
金属酸化物粒子10重量%~70重量%;
アミン化合物0.1~10重量%;
分散剤0.1重量部%~30重量%;および
光重合開始剤0.1重量%~10重量%;を含む、請求項12に記載の光重合性組成物。
【請求項14】
絶対粘度(25℃で測定)が5cP~30cPである、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項15】
基材と、
請求項1~14のいずれか1項に記載の光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜とを含む光学部材。
【請求項16】
前記硬化物は、前記オレフィン系単量体およびアミン化合物の光硬化性官能基が架橋結合した単位を含む重合体と、前記重合体上に分散した分散剤および金属酸化物を含む、請求項15に記載の光学部材。
【請求項17】
前記硬化膜は、1.6以上の屈折率と、3%以下のヘイズを有する、請求項15に記載の光学部材。
【請求項18】
光学フィルムとして使用される、請求項15に記載の光学部材。
【請求項19】
前記硬化膜は、多面体形態にパターン化されている、請求項15に記載の光学部材。
【請求項20】
請求項15に記載の光学部材を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性を示す光学部材の形成を可能にする光重合性組成物、これから形成された光学部材および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造化されたプリズムを有する光透過性光学フィルムの場合、プリズム構造をなしている樹脂の屈折率によって輝度上昇率が変化する。一般に、プリズムを構成する樹脂の屈折率が増加するほど輝度上昇率が増加する。したがって、前記光透過性光学フィルムに関しては、プリズム構造をなす樹脂の屈折率を上昇させる方向に研究開発が進められている。
【0003】
しかし、一般に、プリズムをなす樹脂は有機化合物で形成され、このような有機化合物で調節可能な屈折率の範囲は、理論上、上限値が約1.65程度と知られていて、無機化合物に比べると、調節可能な屈折率の範囲は狭い。また、有機化合物で形成される樹脂の屈折率を高めようとする場合、単量体組成物の粘度が高くなって工程性が低下したり、UV安定性が低下するなどの問題点を示して、技術的に多くの制約を有する。
【0004】
しかも、既存の一般的な光重合性組成物を単量体組成物として用いて前記樹脂および光学フィルムを形成する場合、前記単量体組成物を光硬化する過程で空気中の酸素などの影響で表面硬化が十分に起こらない場合が多かった。その結果、前記樹脂および光学フィルムはヘイズが増加し、紫外線透過率などの光透過性や、視認性が低下する問題が発生した。このために、窒素などの不活性気体雰囲気下、硬化工程を進行させる方策が考慮されたが、これは製造単価の大きな上昇をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、硬化過程でのヘイズ増加などを抑制して、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性を示す光学部材の形成を可能にする光重合性組成物を提供する。
本発明はまた、前記光重合性組成物で形成されて、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性を示す光学部材を提供する。
また、本発明は、前記光学部材を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光硬化性官能基を有する1種以上のオレフィン系単量体;
金属酸化物粒子;
アミン基および光硬化性官能基を有するアミン化合物;および
光重合開始剤を含む光重合性組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、基材と、前記光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜とを含む光学部材を提供する。このような光学部材において、前記硬化物は、前記オレフィン系単量体およびアミン化合物の光硬化性官能基が架橋結合した単位を含む重合体と、前記重合体上に分散した分散剤および金属酸化物を含むことができる。
また、本発明は、前記光学部材を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に記載の光重合性組成物は、高い屈折率を満たす硬化膜およびこれを含む光学部材の形成を可能にする。また、前記光重合性組成物に含まれているアミン化合物の作用によって、酸素の影響による減少した表面硬化度の問題を大きく低減することができ、その結果、低いヘイズ、優れた紫外線透過率などの光透過性および高い視認性を示す光学部材の形成が可能になる。
【0009】
これに加えて、前記光重合性組成物の硬化過程において、窒素雰囲気などの適用を必要としなくなるので、全体的な工程上の経済性も大きく高めることができる。
【0010】
したがって、前記光重合性組成物で形成された光学部材は、低い製造単価を有しながらも、低いヘイズ、高い屈折率、優れた光透過性および視認性などを示して、表示装置の特性向上に大きく寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則って本発明の技術的な思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0012】
また、本発明の明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む意味である。
【0013】
以下、本技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実施例について詳細に説明する。実施例は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する具体的な実施例のみに限定されない。
【0014】
発明の一実施形態によれば、光硬化性官能基を有する1種以上のオレフィン系単量体;
金属酸化物粒子;
アミン基および光硬化性官能基を有するアミン化合物;および
光重合開始剤を含む光重合性組成物が提供される。
【0015】
一実施形態の光重合性組成物は、金属酸化物粒子とともに、オレフィン系単量体を含む。このようなオレフィン系単量体の使用により、前記光重合性組成物は、塗布およびフィルム形成などの工程性に優れる。また、前記オレフィン系単量体を金属酸化物粒子などとともに使用することによって、透過性光学フィルムなどの光学部材に要求される高い屈折率を満たす硬化膜およびこれを含む光学部材の形成を可能にする。
【0016】
そして、前記光重合性組成物に含まれている所定のアミン化合物の作用によって、酸素の影響による表面硬化度減少の問題を大きく低減できることが確認された。これは硬化過程で、前記アミン化合物の光硬化性官能基が前記オレフィン系単量体とともに硬化反応に参加しながら、前記アミン化合物のアミン基が空気中の酸素ラジカルを捕獲することによって、重合開始剤の反応性をより高められるためと見られる。
【0017】
したがって、一実施形態の光重合性組成物を光硬化して硬化膜および光学部材を形成すると、空気雰囲気下でも高い表面硬化度を達成して、前記硬化膜などが低いヘイズと、優れた紫外線透過率などの光透過性および高い視認性を示すようにする。これに加えて、前記光重合性組成物の硬化過程で、窒素雰囲気などの適用を必要としなくなるので、全体的な工程上の経済性も大きく高めることができる。
【0018】
そのため、前記光重合性組成物を用いると、低い製造単価を有しながらも、低いヘイズ、高い屈折率、優れた光透過性および視認性などを示す光学部材の形成が可能になることにより、表示装置の特性向上に大きく寄与できる。
【0019】
具体的には、以下、前記光重合性組成物に使用される各成分について説明する。
一実施形態の光重合性組成物は、硬化膜マトリックスを形成するための基本的な単量体として、光硬化性官能基を有する1種以上のオレフィン系単量体を含む。
【0020】
このようなオレフィン系単量体は、後述する光硬化工程によって、前記光硬化性官能基が光重合開始剤の媒介で架橋重合されて硬化膜をなす基本的な樹脂を形成することができる。
【0021】
好ましい一例において、前記オレフィン系単量体は、絶対粘度(25℃で測定)が1cP~30cP、あるいは2cP~25cPになる。前記オレフィン系単量体がこのような絶対粘度の範囲を満たすことによって、一実施形態の組成物がインクジェット塗布工程に適した絶対粘度、例えば、5~30cPの絶対粘度を有するようにする。したがって、これを含む一実施形態の組成物は、インクジェット塗布工程などによる工程性が非常に優れており、耐熱性および機械的物性に優れ、良好な塗膜特性を有する硬化膜の形成を可能にする。また、前記オレフィン系単量体と、後述する金属酸化物粒子などの相互作用によって、一実施形態の組成物で形成された硬化膜および光学部材は1.6以上の高い屈折率を有することができる。
【0022】
万一、前記オレフィン系単量体の絶対粘度が1cP未満であれば、光重合性組成物の耐熱性や機械的物性などの低下をもたらすことがあり、例えば、インクジェット塗布工程などで、インクジェットノズルを乾燥させて組成物の吐出不良を起こすことがある。また、前記オレフィン系単量体の絶対粘度が30cPを超えると、インクジェットから吐出が行われなかったり吐出量の低下を起こして、インクジェット塗布工程などの進行が非常に困難になりうる。
【0023】
参照として、本明細書に記載のオレフィン系単量体または光重合性組成物の粘度は、25℃で測定された絶対粘度値を意味し、このような絶対粘度はこの分野にてよく知られた粘度測定器、例えば、ブルックフィールド粘度測定器を用いて測定することができる。
【0024】
一方、上述したオレフィン系単量体の例は特に制限されず、適切な粘度特性や、硬化特性などを考慮して、(メタ)アクリレート基を含む光硬化性官能基を有するオレフィン系単量体を適切に使用することができる。
【0025】
このようなオレフィン系単量体の例としては、モノ(メタ)アクリレート系化合物またはジ(メタ)アクリレート系化合物が挙げられ、より具体的には、炭素数6~20の脂肪族モノ(メタ)アクリレート、炭素数6~30の脂環族モノ(メタ)アクリレート、炭素数8~30の芳香族モノ(メタ)アクリレート、炭素数6~30の脂肪族ジ(メタ)アクリレート、炭素数6~40の脂環族ジ(メタ)アクリレートおよび炭素数8~40の芳香族ジ(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0026】
また、さらに好ましい一実施例によれば、前記一実施形態の単量体組成物がインクジェット塗布工程などにさらに適した粘度特性を示しかつ、これから形成された硬化膜が所望する範囲の高い屈折率などを示すことができるように、前記オレフィン系単量体は、絶対粘度(25℃で測定)が1cP以上7cP以下の第1オレフィン系単量体、および絶対粘度(25℃で測定)が8cP以上30cP以下の第2オレフィン系単量体からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0027】
前記粘度特性および屈折率達成の観点から、より好ましい一例によれば、前記オレフィン系単量体は、低粘度の第1オレフィン系単量体および高粘度の第2オレフィン系単量体とともに含むことができる。より具体的には、前記オレフィン系単量体の全体100重量部に対して、第1オレフィン系単量体の10~90重量部、あるいは20~80重量部および第2オレフィン系単量体の10~90重量部、あるいは20~80重量部を含むことができる。
【0028】
このように、オレフィン系単量体として、低粘度の第1オレフィン系単量体および高粘度の第2オレフィン系単量体を一定の比率でともに使用することによって、これを含む光重合性組成物のインクジェット塗布工程などによる工程性がさらに向上する一方、これから形成された硬化膜および光学部材が、より向上した耐熱性や、低いヘイズなどの光学特性を示すことができる。
【0029】
前記第1または第2オレフィン系単量体としては、すでに上述したオレフィン系単量体の範疇で、一定の粘度を満たすことが知られた化合物を特別な制限なく選択して使用可能である。
【0030】
例えば、前記第1オレフィン系単量体の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他にも低い粘度を有すると知られた多様な(メタ)アクリレート系単量体を使用することができる。
【0031】
また、前記第2オレフィン系単量体の具体例としては、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレートおよびトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他、上述した範囲の高い粘度を有すると知られた多様な(メタ)アクリレート系単量体を使用することができる。
【0032】
上述したオレフィン系単量体は、光重合性組成物全体の100重量%を基準として、5重量%~88重量%、あるいは15重量%~85重量%の含有量で含まれる。オレフィン系単量体の含有量が過度に低くなると、塗膜形成後、金属酸化物粒子の均一性が低下し、粘度が高くなってインクジェット吐出が困難になりうる。また、前記オレフィン系含有量が過度に高くなると、硬化膜および光学部材の高い屈折率の達成が困難になりうる。
【0033】
一方、一実施形態の光重合性組成物は、金属酸化物粒子を含む。このような金属酸化物粒子は、前記オレフィン系単量体が光硬化して形成された硬化膜上に分散して、前記硬化膜およびこれを含む光学部材の高い屈折率の達成を可能にする。
【0034】
このような金属酸化物粒子としては、例えば、媒質分散状態の二次粒径を基準として、25~45nm、あるいは30~40nmの平均粒径(D50)を有し、Zn、Zr、Ti、HfおよびCeからなる群より選択された金属元素を含む酸化物粒子を使用することができる。
【0035】
この中でも、高い屈折率達成の観点から、ジルコニウム(Zr)酸化物粒子をより好ましく使用することができる。また、金属酸化物粒子が上述した平均粒径の範囲を満たすことによって、一実施形態の光重合性組成物がインクジェット塗布工程などに適した粘度範囲を有するように調節されやすくなる一方、硬化膜などのヘイズがより低くなるなど光学特性が向上できる。
【0036】
上述した金属酸化物粒子は、光重合性組成物全体の100重量%を基準として、10重量%~70重量%、あるいは10重量%~65重量%の含有量で含まれる。金属酸化物粒子の含有量が過度に低くなると、高い屈折率の達成が困難になり、逆に、その含有量が過度に高くなると、塗膜形成後、金属酸化物粒子の均一性が低下し、粘度が高くなってインクジェット吐出が困難になりうる。
【0037】
一方、一実施形態の光重合性組成物は、アミン基および光硬化性官能基を有するアミン化合物を含む。このようなアミン化合物は、一実施形態の組成物を光硬化して硬化膜および光学部材を形成する過程で、これに含まれているアミン基が空気中の酸素ラジカルなどを捕獲して開始剤の反応を促進することができる。ひいては、前記アミン化合物中の光硬化性官能基が単量体とともに硬化反応に参加して架橋結合を形成することができる。このようなアミン化合物の作用によって、一実施形態の組成物で形成された硬化膜および光学部材は、高い表面硬化度を示すことができ、これに伴う低いヘイズおよび向上した光透過性など優れた光学特性を示すことができる。
【0038】
このようなアミン化合物としては、分子中のアミン基とともに、光硬化性官能基、例えば、上述した単量体の光硬化性官能基と架橋結合を形成可能な官能基、より具体的な例において、前記単量体と同種の光硬化性官能基である(メタ)アクリレート基を有する任意の化合物を使用することができる。また、前記酸素ラジカルなどをより効果的に捕獲して硬化膜などの表面硬化度を一層高められるようにするために、前記アミン化合物は、分子内に3級以上のアミン構造を含むことがより好ましい。
【0039】
このようなアミン化合物の具体例としては、下記の化学式1の化合物、エチルジメチルアミノベンゾエート、ブトキシエチルジメチルアミノベンゾエート、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロエチル)-トルイジン、エチルヘキシル-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル2-(ジブチルアミノ)メチルアクリレートおよび4,4-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ)ビス(ジメチルアニリン)からなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他にも、アミン基および光硬化性官能基を有する多様な化合物を使用してもよいことはもちろんである:
【0040】
【0041】
前記化学式1において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示し、R3は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のエーテル基、炭素数6~30のアリール基、アミン基または(メタ)アクリレート基を示す。
【0042】
また、商用化されたアミン系光硬化性化合物を前記アミン化合物としても使用することができ、このような商用化された化合物の例としては、P115(SK Cytec社製)、MIRAMER AS2010(ミウォン商社製)またはMIRAMER AS5142(ミウォン商社製)などが挙げられる。
【0043】
上述したアミン化合物は、光重合性組成物全体の100重量%を基準として、0.1重量%~10重量%、あるいは0.5重量%~9重量%の含有量で含まれる。アミン化合物の含有量が過度に低くなると、表面硬化度が低下して硬化膜および光学部材のヘイズが高くなり、逆に、その含有量が過度に高くなると、光重合性組成物の粘度が過度に高くなって工程性が低下したり、硬化膜などの屈折率が低くなりうる。
【0044】
上述した一実施形態の光重合性組成物は、光重合開始剤を含む。このような光重合開始剤は、上述したオレフィン系単量体およびアミン化合物の光硬化反応を開始および促進することができる。また、前記アミン化合物の作用によって、このような光硬化反応の開始などがより効果的に行われる。
【0045】
このような光重合開始剤としては、以前から(メタ)アクリレート基などの光硬化性官能基の光硬化反応を開始および促進できると知られた任意の開始剤を使用することができる。
【0046】
このような光重合開始剤の例としては、トリアジン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系、キサントン系、オキシムエステル系およびアセトフェノン系化合物からなる群より選択された1種以上が挙げられる。前記光重合開始剤のより具体的な例としては、2,4-ビストリクロロメチル-6-p-メトキシスチリル-s-トリアジン、2-p-メトキシスチリル-4,6-ビストリクロロメチル-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-4-メチルナフチル-6-トリアジン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオルフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、p-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ビス-2-クロロフェニル-4,5,4,5-テトラフェニル-2-1,2-ビイミダゾール、(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)ブタノン、(E)-1-(9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-yl)エタノンO-アセチルオキシム、(Z)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)プロパノン、Irgacure369、Irgacure651、Irgacure907、Darocur TPO、Irgacure819、OXE-01、OXE-02、OXE-03、OXE-04、アデカ社のN-1919、NCI-831およびNCI-930からなる群より選択された化合物が挙げられ、その他にも、当業界にて知られた光重合開始剤を特別な制限なく幅広く使用可能である。
【0047】
上述した光重合開始剤は、光重合性組成物全体の100重量%を基準として、0.1重量%~10重量%、あるいは0.5重量%~7重量%の含有量で含まれる。前記光重合開始剤の含有量が過度に低くなると、光硬化がうまく起こらないことがあり、逆に、その含有量が過度に高くなると、硬化膜などの積算透過度が、例えば、90%以下に低下しうる。
【0048】
一実施形態の光重合性組成物は、上述した各成分のほか、分散剤をさらに含むことができる。このような分散剤は、上述した光重合性組成物に含まれて金属酸化物粒子など他の成分の分散安定性を向上させることができる。
【0049】
このような分散剤の種類は特に制限されず、以前から金属酸化物粒子などの分散性向上のために使用可能と知られた任意の分散剤を使用することができる。このような分散剤の例としては、アクリル系分散剤、エポキシ系分散剤およびシリコーン系分散剤からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0050】
前記分散剤は、光重合性組成物全体の100重量%を基準として、0.1重量%~30重量%、あるいは0.5重量%~20重量%の含有量で含まれる。前記分散剤の含有量により、金属酸化物粒子などが均一に分散して所望する硬化膜の屈折率の範囲などがより効果的に達成できる。ただし、分散剤の含有量が過度に高くなると、光重合性組成物の粘度が高くなって工程性が低下しうる。
【0051】
一方、一実施形態の光重合性組成物は、追加要求物性や工程性などを考慮して、他の添加剤をさらに含んでもよい。非制限的な例として、前記光重合性組成物が塗布された時、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させたり、あるいは光重合性組成物と基板との密着性を向上させることができる添加剤が追加的に含まれる。このような添加剤としては、界面活性剤、シラン系カップリング剤および架橋剤化合物の中から選択された1種以上が挙げられる。
【0052】
例えば、前記光重合性組成物の全体含有量100重量部を基準として、メラミン架橋剤化合物0.1重量部~30重量部が含まれるか、シラン系カップリング剤0.1重量部~30重量部が含まれるか、あるいは界面活性剤0.1重量部~5重量部がさらに含まれてもよいし、これらのうち2種以上の添加剤が組み合わされて含まれてもよいことはもちろんである。
【0053】
また、上述した一実施形態の組成物は、別途の溶媒または液状媒質を含まない無溶剤タイプで製造できる。前記組成物は、前記オレフィン系単量体などが他の成分を溶解または分散させる媒質として作用して、このような無溶剤タイプの製造が可能になる。これによって、塗布後、溶媒などを除去するための乾燥工程などが省略または最小化できるので、前記一実施形態の組成物を用いた工程性がさらに向上できる。
【0054】
上述した各成分を含む一実施形態の光重合性組成物は、絶対粘度(25℃で測定)が5~30cPあるいは11cP~30cPであってもよい。前記絶対粘度は、すでに上述したオレフィン系単量体と同様の方法で、よく知られた粘度測定器、例えば、ブルックフィールド粘度測定器などを用いて測定することができる。一実施形態の光重合性組成物がこのような粘度範囲を満たすことによって、耐熱性および機械的物性に優れた硬化膜の形成が可能になりつつも、インクジェット塗布工程などによる工程性に優れるだけでなく、インクジェット塗布工程による良好な塗膜形成が可能になる。
【0055】
万一、最終組成物の粘度が過度に低ければ、ノズル乾燥、詰まりの発生で吐出特性の低下が発生しうる。また、組成物の粘度が過度に高ければ、吐出量の低下や、パターンおよび面形成がなされない問題がある。
【0056】
一方、発明の他の実施形態によれば、上述した光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜およびこれを含む光学部材が提供される。このような光学部材は、基材と、基材上に形成された前記硬化膜とを含むことができる。また、前記硬化膜は、一実施形態の光重合性組成物がインクジェット塗布工程で基材上に塗布された後、光硬化して形成されることによって、前記オレフィン系単量体およびアミン化合物の光硬化性官能基が架橋結合した単位を含む重合体と、前記重合体上に分散した分散剤および金属酸化物を含む硬化物とを主に含むことができる。
【0057】
より具体的には、前記硬化物は、オレフィン系単量体の硬化で架橋形成されたオレフィン樹脂を含み、前記オレフィン樹脂は、前記アミン化合物の光硬化性官能基と追加架橋可能である。また、このような架橋構造を有するオレフィン樹脂マトリックス上には、すでに上述した金属酸化物粒子、および選択的に分散剤および光重合開始剤由来成分などが分散できる。ただし、前記光重合開始剤は、硬化過程で大部分分解されて前記硬化物および光学部材内に実質的に残留しなくてもよい。
【0058】
このような硬化物において、前記オレフィン樹脂は、1種以上のオレフィン系単量体などから架橋重合された重合体であって、その形態は特に制限されず、単量体の種類および重合反応のメカニズムによって、ホモ共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体またはグラフト共重合体などの多様な形態を有することができる。
【0059】
このような硬化物を含む硬化膜は、インクジェット塗布工程に適した粘度を有する一実施形態の光重合性組成物で形成されることによって、優れた耐熱性および機械的物性と、良好な塗膜特性を示すことができる。また、前記硬化膜は、オレフィン系単量体および金属酸化物粒子などの相互作用によって、例えば、1.6以上、あるいは1.6~2.0、あるいは1.6~1.65の高い屈折率を有することができ、アミン化合物の作用で高い表面硬化度を示して、例えば、3%以下、あるいは1%以下、あるいは0~1%、あるいは0.01~0.8%、あるいは0.1~0.3%の低いヘイズおよび優れた紫外線透過率などの光透過性および視認性を示すことができる。この時、前記屈折率は、エリプソメータを用いて555~575nm(平均)の波長に対して測定された値を意味することができる。
【0060】
上述した光学部材において、前記基材としては、ベアガラスのような、よく知られた基材が使用できる。
【0061】
また、前記光学部材は、Mayer bar、コーティング用アプリケータまたはインクジェット装置などを用いて、前記基材上に上述した一実施形態の光重合性組成物を塗布し、例えば、空気雰囲気で、LEDランプまたはメタルハライドランプなどを用いて露光して光硬化を進行させる方法で製造できる。この時、前記光重合性組成物は、単膜形態で塗布された後、光硬化して、一般的な光学フィルム形態の光学部材に形成されてもよいが、必要に応じて、前記インクジェット装置を用いて一定のパターン形態を有するように塗布された後、光硬化してもよい。この場合、前記光学部材は、基材上に、例えば、プリズム構造などの多面体形態にパターン化された硬化膜が形成されているパターンフィルムの形態になってもよい。
【0062】
上述した光学フィルムまたはパターンフィルムなどの光学部材は、その種類や適用される表示素子の構造による一般的な厚さを有することができ、例えば、0.01μm~1000μmの範囲内で調節される厚さを有することができる。
【0063】
また、前記光学部材は、感度値が3J以下であり、光透過度は90%以上であってもよい。前記感度の測定は、FT-IR spectrophotometerを用いて露光前後の吸光度の測定結果を比較して測定することができる。より具体的には、1650~1750cm-1のC=Oピークと780~880cm-1C=Cピークとを積分して転換率を求め、感度は転換率が80%以上で飽和する露光量を意味することができる。また、前記光透過度は、光学フィルムなどの光学部材に対してUV-VIS spectrophotometerを用いて380~780nmの波長で測定した平均透過率を意味することができる。
【0064】
そして、前記光学フィルムは、常温から900℃まで1分あたり10℃ずつ昇温してTGAで測定された、5重量%Loss温度が270℃以上になり、優れた耐熱性を示すことができる。
【0065】
上述した光学フィルムまたはパターンフィルムなどの他の実施形態の光学部材は、優れた光学特性、耐熱性および機械的特性などを満たすので、各種表示装置に適用されてその特性の向上に大きく寄与できる。
そこで、発明のさらに他の実施形態によれば、前記光学部材を含む表示装置が提供される。
【0066】
前記光学フィルムまたはパターンフィルムなどの光学部材が適用された表示装置の構成は、上述した他の実施形態の光学部材が適用されることを除けば、当業界にてよく知られた通常の構成によることができるので、これに関する追加的な説明は省略する。
以下、発明の理解のために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するものではない。
【0067】
比較例1~3、参考例1~16および実施例1~54:光重合性組成物および光学フィルムの製造
まず、下記表1~3に示された単量体の組成で各化合物を混合して、実施例、参考例および比較例の光重合性組成物の製造に使用されたオレフィン系単量体をそれぞれ製造した。また、下記表4~6の組成で、前記オレフィン系単量体と、残りの成分とを混合して、比較例、参考例および実施例の光重合性組成物をそれぞれ製造した。
【0068】
インクジェット装置に各組成物を投入した後、ベアガラス(Bare Glass)に塗布して、厚さが20μmとなるように単一膜を形成した。
【0069】
以後、空気雰囲気で、330~440nm UV Filterを適用したベルト型(Belt type)メタルハライドUV照射装置(120W/cm2)を用いて、1.5J/cm2の露光量で前記単一膜に照射して、光重合性組成物の硬化膜を含む光学フィルムを製造した。この時、光学フィルムに形成された硬化膜の厚さは20μmを維持した。
【0070】
それぞれの比較例および実施例の光学フィルムに対して、次の方法で屈折率、ヘイズおよび粘度などの物性を測定して、その結果を表7~9に示した。
【0071】
*光学フィルムの物性測定方法
1)感度
FT-IR spectrophotometerを用いて露光前後の吸光度の測定結果を比較して測定した。1650~1750cm-1のC=Oピークと780~880cm-1C=Cピークとを積分して転換率を求め、感度は転換率が80%以上で飽和する露光量で測定および算出した。
判定
○:感度値が3J以下の場合
X:感度値が3J超過の場合
【0072】
2)屈折率
前記光学フィルムに対して、エリプソメータを用いて屈折率(555~575nm平均)を測定した。
判定
○:光学フィルムの屈折率測定値が1.6以上の場合
X:光学フィルムの屈折率測定値が1.6未満の場合
【0073】
3)光透過度
光学フィルムに対して、UV-VIS spectrophotometer(Cary4000、Agilent)を用いて380~780nmでの平均透過率を測定した。
判定
○:平均透過度値が90%以上の場合
X:平均透過度値が90%未満の場合
【0074】
4)ヘイズ
NIPPON DENSHOKU社のヘイズメーターCOH400を用いてヘイズを測定した。
判定
○:ヘイズ測定値が1.0%以下の場合
△:ヘイズ測定値が1.0%超過3.0%以下の場合
X:ヘイズ測定値が3.0%超過の場合
【0075】
5)粘度(絶対粘度)
前記比較例および実施例の各光重合性組成物と、オレフィン系単量体に対して、25℃の温度で粘度測定器(商品名:Brook Field viscometer)を用いてそれぞれの絶対粘度を測定した。
判定
○:絶対粘度値が5~30cPの場合
X:絶対粘度値が前記範囲を外れる場合
【0076】
6)インクジェット工程性
インクジェット装置のノズル温度を変更し、面形成になるかを確認した。
判定
ノズル温度25~50℃で面形成=○
ノズル温度25~50℃で面形成にならず=X
【0077】
7)耐熱性
耐熱性はTGA装置を用いて測定した。感度測定時に形成されたパターン(Pattern)膜をサンプリングした後、TGA装置を用いて常温から900℃まで1分あたり10℃ずつ昇温しながら測定した。この時、TGA装置はTA Instruments社の装置を用いた。
判定
O:TGA 5wt% Weight loss Temp.270℃以上の場合
X:TGA 5wt% Weight loss Temp.270℃未満の場合
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【表4】
注)光重合開始剤の種類
A:[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)
B:OXE-01
C:Darocure TPO
D:(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)ブタノン
E:Irgacure819
F:Irgacure369
G:Irgacure907
注)アミン化合物の種類
A:エチルジメチルアミノベンゾエート
B:ブトキシエチルジメチルアミノベンゾエート
C:ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート
D:P115(SK Cytec社製)
E:MIRAMER AS2010(ミウォン商社製)
注)分散剤:アクリル系重合体含有分散剤(商用品)
【0082】
【表5】
注1)金属酸化物粒子:実施例および比較例1~3はすべてZrO
2使用。
注)光重合開始剤、アミン化合物および分散剤の種類は表4の注)と同一。
【0083】
【表6】
注1)金属酸化物粒子:参考例1~13はすべてZrO
2使用。参考例14~16は各組成に別途記載する。
注)光重合開始剤、アミン化合物および分散剤の種類は表4の注)と同一。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
前記表7および8の結果をみると、実施例1~54は、比較例1~3に比べて、屈折率および粘度が良好でありながらも、低いヘイズを示すことが確認された。また、前記実施例は、比較例に比べて、感度、透過度および耐熱性だけでなく、インクジェット塗布工程による工程性がすべて優れ、表示装置において光学部材に適用時、性能の改善に寄与できるものと見られる。
【0088】
一方、表9の参考例1~16は、比較例に比べて低いヘイズを示し、表示装置の光学部材形成のために適用可能であることが確認された。
【国際調査報告】