(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ヒス束感知及びペーシングを行う為の多方向性バルーン先端カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549638
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021017528
(87)【国際公開番号】W WO2021167825
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520034646
【氏名又は名称】イースト エンド メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】マイーニ,ブリジェシュワー,エス.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053CC03
4C053JJ13
4C053JJ23
4C053KK02
4C053KK08
(57)【要約】
ヒス束ペーシング(HBP)の採用は、心臓の損傷又は穿孔を引き起こさずに良好な導線位置を達成する処置の困難性により妨げられていた。処置の成功率は、露出したらせんによりヒス束電位をマッピングし、ペーシングらせんが固定される間位置を維持することの困難性により、伝統的な右心室(RV)ペーシング処置に比べてかなり低くなっている。複数のカール部及び屈曲点を有するカテーテル体と、前記カテーテル体の遠位端に取り付けられた固定バルーンと、を含む多方向性バルーン先端カテーテルシステムの使用は、慣習的なシステムと比べて、改善された処置の成功率及び位置的正確性を増加する。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒス束感知及びペーシングを行う為の多方向性バルーン先端カテーテルシステムであって、前記多方向性バルーン先端カテーテルシステムは、
近位端及び遠位端を有し、多方向性偏向の為の複数のカール部及び屈曲点を含む多方向性カテーテル体と、
前記カテーテル体の前記遠位端の近くに取り付けられた固定バルーンと、
前記カテーテル体の遠位端部に取り付けられた1以上のマッピング電極と、
前記カテーテル体のペーシング導線管腔内に配置されたペーシング導線と、
を含み、
前記カテーテル体は複数の管腔を含み、前記複数の管腔は、
前記遠位端に出口ポートを含む前記ペーシング導線管腔と、
前記遠位端の近くにバルーンポートを含む少なくとも1つのバルーン管腔と、
を含み、
前記固定バルーンは、前記バルーンポートと流体連通し、前記固定バルーンが膨張されると前記カテーテル体の前記遠位端から所定の距離にわたって張り出し、
前記1以上のマッピング電極は、ヒス束電位を感知するように構成され、
前記ペーシング導線は、前記ペーシング導線の使用時に、前記カテーテル体の前記遠位端を超えて突出するように構成されることを特徴とする多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項2】
前記固定バルーンは、空気、食塩水、又は造影剤を含む流体により膨張されることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項3】
前記固定バルーンは、様々な寸法に膨張されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項4】
前記固定バルーンは、前記固定バルーンが収縮した時に、前記1以上のマッピング電極を露出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項5】
前記固定バルーンは、前記固定バルーンが膨張した時に、前記カテーテル体の前記遠位端から2、3mm張り出すことを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項6】
前記1以上のマッピング電極は、
前記カテーテル体の前記遠位端に配置された第1のマッピング電極と、
前記第1のマッピング電極から間隔をあけて前記カテーテル体上に配置された第2のマッピング電極と、
を含み、
前記第1及び第2のマッピング電極は、二極センサを形成することを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項7】
前記ペーシング導線管腔の直径は、0.91mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項8】
前記カテーテル体の前記遠位端から前記固定バルーンの遠位端までの距離は、前記固定バルーンが収縮した時に、10mmから20mmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項9】
前記ペーシング導線は、ネジらせんを含むことを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項10】
前記固定バルーンは、親水性バルーンであることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項11】
前記カテーテル体は、鎖骨下静脈又はヒス束にアプローチする他の血管アクセス内に挿入可能であるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項12】
前記複数の管腔はさらに、前記1以上のマッピング電極に接続された電線を収容する1以上のワイヤ管腔を含むことを特徴とする請求項1に記載の多方向性バルーン先端カテーテルシステム。
【請求項13】
多方向性カテーテル体を含む多方向性バルーン先端カテーテルシステムによりヒス束感知及びペーシングを行う方法であって、前記方法は、
鎖骨下静脈又は血管アクセス内に前記カテーテルシステムを挿入し、
ヒス束に向かって前記カテーテルシステムを案内し、
前記カテーテル体の前記遠位端の近くに配置された1以上のマッピング電極によりヒス束電位を感知し、
前記カテーテル体の前記遠位端をペーシングに適切であると測定された前記ヒス束の位置に配置し、
膨張された固定バルーンにより前記適切な位置に前記カテーテル体の前記遠位端を固定し、そして、
前記ヒス束の前記適切な位置内にペーシング導線を移植する、
ことを含み、
前記カテーテルシステムは、前記カテーテル体の遠位端部に取り付けられた前記固定バルーンを含み、
前記固定バルーンは、前記カテーテル体内に形成された少なくとも1つのバルーン管腔を通して供給された流体により膨張され、
前記ペーシング導線は、前記カテーテル体内に形成されたペーシング導線管腔内に配置され、前記ヒス束の前記適切な位置内に移植される間に、前記カテーテル体の前記遠位端を超えて前進することを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法がさらに、
前記ペーシング導線が前記ヒス束内に移植される間に、前記カテーテル体を除去することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固定バルーンは、空気、食塩水、又は造影剤を含む流体により膨張されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記固定バルーンは、前記固定バルーンが収縮した時に、前記1以上のマッピング電極を露出するように構成されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記固定バルーンは、前記固定バルーンが膨張した時に、前記カテーテル体の前記遠位端から2、3mm張り出すことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記1以上のマッピング電極は、
前記カテーテル体の前記遠位端に配置された第1のマッピング電極と、
前記第1のマッピング電極から間隔をあけて前記カテーテル体上に配置された第2のマッピング電極と、
を含み、
前記第1及び第2のマッピング電極は、二極センサを形成することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ペーシング導線は、ネジらせんを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記固定バルーンは、親水性バルーンであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記カテーテル体は、多方向性偏向の為の複数のカール部及び屈曲点を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年2月18日に出願された米国仮出願第62/977,973号に基づく優先権を主張し、この出願は、参照によりその全体が本願に援用される。
【背景技術】
【0002】
自然な房室(AV)伝導心室収縮は、心伝導系を利用する。この伝導系は、心臓の壁内の特殊な心筋細胞群であり、心筋に信号を送信して心筋を収縮させる。心伝導系の主要素は、洞房(SA)結節、房室結節、ヒス束、束枝、及びプルキンエ線維である。洞房結節(身体構造上のペースメーカー)は、心房筋を収縮させることによりシーケンスを開始する。そこから信号は房室結節に移動し、ヒス束を通って、束枝(左脚及び右脚)を下り、プルキンエ線維を通って、心室を収縮させる。房室結節疾患を有する患者は心房及び心室間の伝導に問題を示す。しばしば、この伝導の問題は、ヒス束より上で発生し、心房及び心室の非同期性をもたらす。ヒス束より下で左脚(LBB)及び右脚(RBB)の1つだけで伝導ブロックが発生した場合、もう1つの無事な束枝を通して本来の房室伝導が発生するが、両方ではないので、患者は左脚ブロック(LBBB)又は右脚ブロック(RBBB)を示す。束枝ブロックは、本来の心室への電気的伝導時間の遅れにより識別される。完全な束枝ブロック(左脚ブロック又は右脚ブロック)は、120msよりも大きな電気的活性化時間を有すると識別される。束枝ブロックは、完全に良性ではなく、特に左脚ブロックは悪い結果をもたらし得る。
【0003】
現在、房室伝導疾患を有し、心室ペーシングを必要とする患者の標準的なペーシング治療は、三尖弁を通して右心室(RV)内に経静脈導線を配置することである。この右心室導線は、心室心筋をペーシングし、心室にわたって細胞毎の遅波脱分極を引き起こす。右心室内の導線を使用した心室の「細胞毎の」脱分極は、心室が不自然な方法で収縮することを引き起こす。慣習的な右心室ペーシングでは、心室の活性化シーケンスは自然な房室伝導収縮と同じではなく、右心室がまず脱分極し、その少し後に左心室も脱分極する。患者が高割合で右心室でペーシングされている時は、心不全及びペーシング誘発性心筋症の大変な進行がみられる。ペーシング誘発性心筋症(PICM)は、慢性的高負荷右心室ペーシングによる左心室駆出率(LVEF)の低下として最も一般的に考えられている。約20%の患者が3年から4年の右心室ペーシングの後にペーシング誘発性心筋症を発症していると報告されている。これらの負の効果は、不自然な収縮動力及び右心室ペーシングの結果としてもたらされる心室の非同期性の直接的な結果であると考えられる。
【0004】
ヒス束ペーシング(HBP)は、伝統的な右心室ペーシングの代替として出現した。ヒス束を直接ペーシングすることにより、ヒス束ペーシングは、自然な心臓伝導系を通してプルキンエ線維網により両心室の電気的活性化に従事する。このタイプの心臓ペーシングは、心臓の非同期性を回避し、心臓の駆出率を維持する。最近の研究により、潜在的な左脚ブロックを治し、伝統的な右心室ペーシングにより引き起こされた心筋症を元に戻すヒス束ペーシングの可能性が論証されている。ヒス束ペーシングは、生理学的ペーシングを達成する魅力的なモードを約束する。この技術の広範囲の適応は技術の向上に依存する。
【0005】
ヒス束は、ほとんどの人において心室中隔の膜部分内に存在し、中隔の右心房部分上に存在している近位束の割合が、三尖弁の輪よりも多い。ヒス束は、心筋よりは繊維状の結合組織により囲まれており、その後、筋肉の隔壁に入り、分離して左脚及び右脚を形成する。経静脈ヒス束ペーシングは、QRS波の期間を減少し、束枝ブロックを有する患者の心電図の状態を正常化することが論証されている。現在では、ヒス束ペーシングの利益に関して幅広い共通認識が存在し、そして、この治療法は患者の治療結果を証明することができるとの熱意が存在する。
【0006】
ヒス束ペーシングを達成する現在の処置方法は、固定の為の固定ネジらせんを有する導線及び導線の位置を達成する為の2つのカテーテルの1つを必要とする。固定らせんペーシング導線は、手動カテーテル操作の間、カテーテルの遠位端を超えて前進し、露出したらせんを使用した単極マッピングが実行され、ヒス束電位信号を位置付けする。露出した固定らせんにより心臓内部をマッピングする時には注意が必要である。このらせんは完全に露出され、ヒス束電位を覆い隠す表面マッピング中に局所的心臓内表面浮腫を引き起こし得る。露出したらせんによるマッピングのプロセスはしばしば、時間経過により解消されるか解消されない急性束枝ブロックを生成し得る。他の避けるべき落とし穴は、露出した導線のらせん内に組織がはまり込む可能性であり、その場合、導線のらせんの固定及び十分なマッピングが妨げられる。ヒス束ペーシングの目標領域は、比較的頑丈であり、現在のカテーテルはむしろもろいので、カテーテル穿孔の可能性を回避するが、カテーテルが間違った場所に意図せずに前進した場合、穿孔の危険性は存在する。
【0007】
ヒス束ペーシングの採用は、心臓の損傷又は穿孔を引き起こさずに良好な導線位置を達成する処置の困難性により妨げられていた。処置の成功率は、露出したらせんによりヒス束電位をマッピングし、ペーシングらせんが固定される間位置を維持することの困難性により、伝統的な右心室ペーシング処置に比べてかなり低くなっている。現在使用されている器具は、現在過度に単純化されており、変化する解剖学的相違に順応する能力、又は移植手術中に脈打つ心臓内で正確に位置を維持する能力を欠いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
開示された発明の実施形態は、感知能力を有する多方向性バルーン先端カテーテルを通して解決策を提供し、処置の成功を増加させ、以前はあまり使用されていなかったヒス束ペーシング(HBP)のより幅広い採用を導き、この問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの及び他の利点は、例えば、ヒス束感知及びペーシングを行う為の多方向性バルーン先端カテーテルシステムによって提供される。カテーテルシステムは、近位端及び遠位端を有する多方向性カテーテル体を含む。カテーテル体は、多方向性偏向の為の複数のカール部及び屈曲点を含む。カテーテル体はさらに複数の管腔を含み、複数の管腔は、遠位端に出口ポートを含むペーシング導線管腔と、遠位端の近くにバルーンポートを含む少なくとも1つのバルーン管腔と、を含む。カテーテルシステムはさらに、カテーテル体の遠位端の近くに取り付けられた固定バルーンと、カテーテル体の遠位端部に取り付けられた1以上のマッピング電極と、ペーシング導線管腔内に配置されたペーシング導線と、を含む。固定バルーンは、バルーンポートと流体連通し、固定バルーンが膨張されるとカテーテル体の遠位端から所定の距離張り出す。1以上のマッピング電極は、ヒス束電位を感知するように構成される。ペーシング導線は、ペーシング導線の使用時に、カテーテル体の遠位端を超えて突出するように構成される。
【0010】
固定バルーンは、空気、食塩水、又は造影剤を含む流体により膨張され、様々な寸法に膨張されるように構成される。固定バルーンは、固定バルーンが収縮した時に、1以上のマッピング電極を露出するように構成される。固定バルーンは、固定バルーンが膨張した時に、カテーテル体の遠位端から2、3mm張り出すことができる。固定バルーンは、親水性バルーンである。
【0011】
1以上のマッピング電極は、カテーテル体の遠位端に配置された第1のマッピング電極と、第1のマッピング電極から間隔をあけてカテーテル体上に配置された第2のマッピング電極と、を含むことができる。第1及び第2のマッピング電極は、二極センサを形成する。ペーシング導線管腔の直径は、0.91mm以上であることができる。カテーテル体の遠位端から固定バルーンの遠位端までの距離は、固定バルーンが収縮した時に、10mmから20mmの範囲内であることができる。ペーシング導線は、ネジらせんを含むことができる。カテーテル体は、鎖骨下静脈又はヒス束にアプローチする他の血管アクセス内に挿入可能であるように構成される。複数の管腔はさらに、1以上のマッピング電極に接続された電線を収容する1以上のワイヤ管腔を含むことができる。
【0012】
これらの及び他の利点は、例えば、多方向性カテーテル体を含む多方向性バルーン先端カテーテルシステムによりヒス束感知及びペーシングを行う方法によって提供される。方法は、鎖骨下静脈又は血管アクセス内にカテーテルシステムを挿入し、ヒス束に向かってカテーテルシステムを案内し、カテーテル体の遠位端の近くに配置された1以上のマッピング電極によりヒス束電位を感知し、カテーテル体の遠位端をペーシングに適切であると測定されたヒス束の位置に配置し、膨張された固定バルーンにより適切な位置にカテーテル体の遠位端を固定し、そして、ヒス束の適切な位置内にペーシング導線を移植することを含む。カテーテルシステムは、カテーテル体の遠位端部に取り付けられた固定バルーンを含み、固定バルーンは、カテーテル体内に形成された少なくとも1つのバルーン管腔を通して供給された流体により膨張される。ペーシング導線は、カテーテル体内に形成されたペーシング導線管腔内に配置され、ヒス束の適切な位置内に移植される間に、カテーテル体の遠位端を超えて前進する。
【0013】
本明細書に記載され、以下の図面によって示される好ましい実施形態は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、ここで、同様の符号は同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】ヒス束を感知し、ペーシング導線を配置する為の開示の発明の多方向性バルーン先端カテーテルシステムの実施形態を示す図である。
【
図1B】ヒス束を感知し、ペーシング導線を配置する為の開示の発明の多方向性バルーン先端カテーテルシステムの実施形態を示す図である。
【
図1C】ヒス束を感知し、ペーシング導線を配置する為の開示の発明の多方向性バルーン先端カテーテルシステムの実施形態を示す図である。
【
図2A】多方向性バルーン先端カテーテルシステムの遠位端部の側面図である。
【
図2B】多方向性バルーン先端カテーテルシステムの遠位端部の側面図である。
【
図2C】多方向性バルーン先端カテーテルシステムの遠位端部の側面図である。
【
図2D】
図1Cに図示された多方向性バルーン先端カテーテルシステムの遠位端部の断面A-A’の断面図である。
【
図3】多方向性バルーン先端カテーテルシステムの遠位端部の偏向を制御する為に採用することができる偏向メカニズムの例示的実施形態を示す図である。
【
図4】多方向性バルーン先端カテーテルシステムによりヒス束感知及びペーシングを行う方法のワークフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、説明される実施形態又は説明される実施形態の用途及び使用を限定することを意図するものではない。ここで使用する用語「例示的」又は「例証的」は、「例、具体例、又は例証として用いられる」ことを意味する。「例示的」又は「例証的」として記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であるとは解釈されない。以下に記載する実施形態の全ては、当業者が本開示の実施形態を作成又は使用することを可能にするために提供される例示的な実施形態であり、特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を制限することを意図しない。更に、上記の技術分野、背景技術、発明の概要又は下記の詳細な説明において提示する何れかの明示的又は黙示的な理論の何れかに拘束される意図もない。添付の図面に示し、以下の説明に記載する特定のデバイス及びプロセスは、特許請求の範囲に定義する発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、本明細書に開示する実施形態に関連する特定の寸法及び他の物理的特性は、特許請求の範囲で別段の明示的な記載がない限り、限定的には解釈されない。
【0016】
図1A~
図1Cには、ヒス束を感知し、ペーシング導線を配置する為の開示の発明の多方向性バルーン先端カテーテルシステム100の実施形態が図示されている。
図2A~
図2Cには、多方向性バルーン先端カテーテルシステム100の遠位端部の側面図が図示されている。
図2Dには、多方向性バルーン先端カテーテルシステム100の遠位端部の断面A-A’の断面図が図示されている。
【0017】
多方向性バルーン先端カテーテルシステム100は、近位端101及び遠位端102を含む多方向性又は偏向可能な可撓性のカテーテル体110を含む。カテーテル体110はフレンチサイズであり、多方向性又は偏向可能である為のカール部及び屈曲点を含む。例えば、カテーテル体110は、多方向性の偏向又は湾曲を容易にする複数の屈曲点103、104を含むことができる。カテーテル体110は、患者の心臓構造の選択された位置に達するのに十分な長さを有する。カテーテル体110は、鎖骨下静脈又はヒス束にアプローチする他の血管アクセス内に挿入可能であるように構成される。カテーテル体110は、複数の管腔を含む。複数の管腔は、ペーシング導線113に接続されたコード112の為のワイヤ管腔111と、少なくとも1つの固定バルーン115を膨張及び収縮する為のバルーン管腔114と、を少なくとも含む。ワイヤ管腔111は、カテーテルの近位端101で操作者によりアクセス可能な(不図示の)ワイヤアクセスポートと、可撓性のカテーテルの遠位端102に配置されたワイヤ出口ポート111aと、を含む。バルーン管腔114は、カテーテルの近位端101で操作者によりアクセス可能なバルーン制御装置に接続する(不図示の)バルーン制御ポートと、多方向性カテーテルの遠位端102の近くに配置されたバルーンポート114aと、を含む。複数の管腔はさらに、マッピング電極121、122に接続するワイヤ123、124の為の管腔125、126等の他の管腔を含むことができる。
【0018】
多方向性バルーン先端カテーテルシステム100は、カテーテル体110の遠位端102の近くで多方向性カテーテル体110上に取り付けられた柔軟性又は非柔軟性固定バルーン115を含む。
図1A及び
図2Aには、収縮した固定バルーン115が図示されており、
図1B及び
図2Bには、カテーテル体110の遠位端102部の膨張した固定バルーン115が図示されている。固定バルーン115は、バルーン管腔114のバルーンポート114aに接続され、バルーン管腔114を通して流体連通している。近位端101のバルーン制御ポートで注入又は除去される流体が、バルーン管腔114を通して固定バルーン115を膨張又は収縮させる。
【0019】
固定バルーン115は、空気、食塩水、造影剤及び他の溶液により膨張され、様々な寸法に膨張される。固定バルーン115は、カテーテル体110の遠位端102から選択された距離に配置される。例えば、固定バルーン115が収縮された時、カテーテル体110の遠位端102から固定バルーン115の遠位端までの距離L1は、10mmから20mmの範囲内であることができる。固定バルーン115が膨張された時、固定バルーン115は、2、3mmである距離L2にわたって、カテーテル体110の遠位端102から張り出すことができる。
【0020】
多方向性バルーン先端カテーテルシステム100は、カテーテル体110の遠位端102の近くに少なくとも1つのマッピング電極121を含む。マッピング電極121は、ヒス束電位の非外傷性マッピングを可能にする。マッピング電極121は、ヒス束電位を検出及びマッピングする為の単極センサとして作用する。他の実施形態において、カテーテルシステム100は、第1のマッピング電極121から(近位端101に向かって)数ミリ後方に配置された第2のマッピング電極122を含むことができる。この構成において、マッピング電極121、122は共に、ヒス束電位の非外傷性マッピングの為の二極センサとして作用し、二極感知を可能にする。固定バルーン115は、固定バルーン115が収縮された時、カテーテル体110の遠位端102でマッピング電極121が露出するように構成され、それにより、電極121及び/又は電極121、122を使用してヒス束電位のマッピングが実行され、ヒス束ペーシングの為の心臓組織140の適切な位置が発見される。
【0021】
カテーテル体110は、マッピング電極121、122に接続された電線123、124を収容するワイヤ管腔125、126を含むことができる。カテーテル体110の近位端101のワイヤ123、124は、マッピング電極121、122から信号を受信し、又は、マッピング電極121、122に信号を送信することができる外部装置に接続することができる。
【0022】
多方向性バルーン先端カテーテルシステム100は、管腔111内に配置されたコード112に接続されたペーシング導線113を含む。カテーテル体110は、カテーテル体110の近位端101で操作装置にアクセス可能な(不図示の)コードアクセスポートと、カテーテル体110の遠位端102に配置された出口ポート111aと、を含むペーシング導線管腔111を含む。ペーシング導線管腔111は、
図2Dに図示されているように、カテーテル体110の断面の中心に配置することができる。ペーシング導線管腔111の直径は、0.91mm以上であることができる。ペーシング導線113は、ヒス束電位をマッピングして心臓組織140に対してカテーテルシステム100を配置する間、ペーシング導線管腔111内に配置される。ペーシング導線113は、心臓組織140上に配置又は移植する為に、カテーテル体110の遠位端102を超えてペーシング導線管腔111の外部に前進することができる。ペーシング導線113は、ネジらせんの形状を有することができる。
図1C及び
図2Cには、カテーテル体110の遠位端102の外部に前進したペーシング導線113が図示されている。
【0023】
固定バルーン115は、心臓構造にわたって非外傷性の方法で使用することができる。固定バルーン115は、導線移植の為の最高の箇所を得る為にマッピング電極121、122を使用して感知を実行している間、心臓構造にわたって滑走することができる。ヒス束ペーシングの為の心臓組織140の適切な位置が測定されると、カテーテルシステム100は、ペーシング導線113の移植の為の導管として使用される。固定バルーン115は、心臓組織140の適切な位置でカテーテル体110の遠位端102を固定する為に膨張されることができる。膨張された固定バルーン115を有するカテーテル体110の遠位端102が適切な位置に配置されて固定されると、ペーシング導線113は心臓組織140内に移植する為に前進される。ペーシング導線113が配置されると、カテーテル体110は、カテーテル体に切れ目を入れて分離することを含む様々な方法を使用して除去することができ、又は、導線移植において一般的な方法により除去することができる。
【0024】
図3には、カテーテルシステム100の遠位端部の偏向を制御する為に、カテーテル体110の近位端101部において採用される機械的偏向装置130の例示的実施形態が図示されている。機械的偏向機構は、カテーテルシステム100の長手方向軸(近位端101から遠位端102まで)に対して様々な角度にカテーテル体110の遠位端を偏向又は角度付けすることを可能にする。機械的偏向装置130は、カテーテル体110に固定されたプルワイヤアンカ131と、(不図示の)プルワイヤによりプルワイヤアンカ131に接続されたプルワイヤアクチュエータ132と、を含むことができる。図示されているように、プルワイヤアクチュエータ132の回転は、プルワイヤアンカ131に力を加え、カテーテル体110の遠位端を偏向又は角度付けすることができる。プルワイヤアクチュエータ132は、プルワイヤアクチュエータ132に接続された(不図示の)ハンドルにより回転することができる。機械的偏向装置130は、カテーテル体110に形成されたカール部及び屈曲点と共に、心臓構造にわたってカテーテル体110を容易に操縦することを可能にする。同じ発明者により2020年10月2日に出願された米国特許出願番号17/061,761には、偏向を提供する為に開示の発明のカテーテルシステム100に使用することができる改良されたハンドルが開示されている。
【0025】
図4には、多方向性カテーテル体110を含む多方向性バルーン先端カテーテルシステム100によりヒス束感知及びペーシングを行う方法200のワークフロー図が図示されている。カテーテルシステム100は、鎖骨下静脈又は血管アクセス内に挿入される210。カテーテルシステム100は、ヒス束に向かって案内される211。カテーテルシステム100は、カテーテル体の遠位端部に配置された1以上のマッピング電極121、122によりヒス束電位を感知する212。カテーテル体110の遠位端は、ペーシングに適切であると測定されたヒス束140の位置に配置される213。カテーテル体110の遠位端は、膨張された固定バルーン115により適切な位置に固定される214。ペーシング導線113は、ヒス束の適切な位置内に移植される215。ペーシング導線113が移植された後、収縮された固定バルーン115を有するカテーテル体110は、ペーシング導線113を残したまま除去されることができる。
【0026】
固定バルーン115は、非外傷性であり、より頑丈なカテーテル設計の使用を可能にする。カテーテル体の強度の増大は、位置的正確性の増加及び改善された処置成功率を促進する。実施形態において、固定バルーン115は、親水性の表面を有する親水性バルーンであることができる。開示の発明のカテーテルシステム100は、慣習的な装置に対する利点を提供する。慣習的な装置とは違い、カテーテルシステム100がヒス束ペーシングの為の心臓組織の適切な位置を発見する為にヒス束電位をマッピングする間、開示の発明のカテーテルシステム100のペーシング導線113は露出していないので、慣習的な装置における露出したネジらせんにより引き起こされる問題を防止する。開示の発明のカテーテルシステム100は、非外傷性固定バルーンを使用し、心臓組織の傷害又は損傷を引き起こすことなく心臓構造にわたってカテーテルシステム100を操作することを可能にし、その上、より剛性の多方向性カテーテル体を使用することを可能にし、それにより、変化する解剖学的相違に順応する能力及び移植手術中に脈打つ心臓内で正確に位置を維持する能力を増加する。
【0027】
ここに記載した本発明の好ましい実施形態には、多くの修正、変形、及び変更を詳細に行うことができるため、前述の説明及び添付の図面に示す全ての事項は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈される。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びこれらの法的等価物によって決定されるべきである。
【符号の説明】
【0028】
100 多方向性バルーン先端カテーテルシステム
101 100の近位端
102 100の遠位端
103 屈曲点
104 屈曲点
110 カテーテル体
111 ワイヤ管腔、ペーシング導線管腔
111a 出口ポート
112 コード
113 ペーシング導線
114 バルーン管腔
114a バルーンポート
115 固定バルーン
121 マッピング電極
122 マッピング電極
123 ワイヤ
124 ワイヤ
125 ワイヤ管腔
126 ワイヤ管腔
130 機械的偏向装置
131 プルワイヤアンカ
132 プルワイヤアクチュエータ
140 心臓組織
200 方法
L1 距離
L2 距離
【国際調査報告】