(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】改良された抗老化化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20230329BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230329BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20230329BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230329BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230329BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230329BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230329BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230329BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230329BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230329BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230329BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230329BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C07K14/47
C12N15/12 ZNA
C07K7/08
C07K14/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
A61P35/00
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P13/12
A61P11/00
A61P21/00
A61P19/02
A61P19/00
A61P25/28
A61K45/00
A61K38/16
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549834
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021054338
(87)【国際公開番号】W WO2021165538
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519326611
【氏名又は名称】クリラ バイオテック ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】デカイザー,ペテルス,レナードゥス,ヨセフス
(72)【発明者】
【氏名】タイフェル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】マドル,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ブールジョア,ベンジャミン,ミシェル,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】シュプレーツァー,エミル
(72)【発明者】
【氏名】アンジェル,イボンヌ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】バール,マージョレイン,ペトロネラ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045BB14
2G045BB24
2G045CB01
2G045FA16
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ36
4B063QR48
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA26X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA02
4C084BA09
4C084BA18
4C084CA56
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞の除去が有益である疾患又は病態、例えば、癌の治療に使用される改良された化合物に関する。本発明はまた、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞の除去が有益である疾患若しくは病態に罹患している、又は罹患している疑いのある個体を治療する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下
i)アミノ酸配列
X
3X
2X
4X
5X
7X
5X
4X
4X
6X
18X
8X
3QNX
9X
8X
10X
10X
11X
12S
*X
13X
14X
11X
11(配列番号1)
(配列中、
S
*は、Sが可能であり、又は存在せず、
X
2は、存在しない、又はK、E、R、及びHから選択され、
X
3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X
4は、I、Z、及びLから選択され、Zは、シクロ-ヘキシル-アラニンであり、
X
5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X
6は、E及びDから選択され、
X
7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X
8は、B、W、Y、及びFから選択され、Bは、2-メチル-トリプトファンであり、
X
9は、存在しない、又はA及びGから選択され、
X
10は、存在しない、又はA及びNから選択され、
X
11は、R及びKから選択され、
X
12は、存在しない、又はRから選択され、
X
13は、存在しない、又はG及びSから選択され、
X
14は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X
18は、A及びEから選択され、
ただし、ステープルを形成するJは存在しないか、又は2つ存在するかのいずれかである)と少なくとも70%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸配列を含むペプチド、
ii)非天然アミノ酸、及び/又はD-アミノ酸を含むi)に記載のペプチド、又は、D-アミノ酸を少なくとも80%含む又は少なくとも80%のD-アミノ酸からなるi)に記載のペプチド、並びに、
iii)i)又はii)に記載のペプチドのレトロインバースペプチド、
並びにその薬学上許容される塩、
から選択される化合物であって、
老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞にアポトーシスを誘導する、
化合物。
【請求項2】
前記ペプチドは、アミノ酸配列
X
1X
17K
*X
2X
16X
3X
3X
2X
4X
5X
7X
5X
4X
4X
6AX
8X
3QNX
9X
8X
10X
10X
11X
12S
*X
13X
14X
11X
11X
15(配列番号2)
(配列中、Z、B、J、S
*、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、及びX
18は、請求項1に記載のとおりであり、
K
*は、Kが可能であり、又は存在せず、
X
1は、存在しない、又はアミノ酸配列LTLを表し、
X
15は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X
16は、A及びPから選択され、
X
17は、存在しない、又はR及びSから選択される)と少なくとも70%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸配列を含み、
前記化合物は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞でアポトーシスを誘導する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アミノ酸モチーフX
3QNX
9X
8は、SQNAW(配列番号43)、SQNGW(配列番号44)、及びSQN-W(配列番号45)から選択され、配列中「-」は、アミノ酸が存在しないことを示す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アミノ酸モチーフX
2X
4X
5X
7X
5は、KIAAA(配列番号46)、KIEAA(配列番号47)、KIAAE(配列番号48)、及びKIEAE(配列番号49)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記アミノ酸モチーフX
4X
5X
7X
5X
4X
4X
6AX
8X
3QNX
9X
8(配列番号3)は、
一般式
IX
5X
7X
5ILX
6AFX
3QNX
9W(配列番号4)
(配列中、
X
3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X
5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X
6は、E及びDから選択され、
X
7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X
9は、存在しない、又はA及びGから選択される)から選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、
LTLRKEASSEIAQSILDAYSQNGWANRRSSCKRP(配列番号7)、
LTLRKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号8)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRP(配列番号9)、
RKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号10)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号11)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRP(配列番号12)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号13)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号14)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKR(配列番号15)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号16)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号17)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号18)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号19)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号20)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号21)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号22)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号23)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号24)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号25)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号26)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号27)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号28)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号29)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号30)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号31)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号53)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号54)、
AKIEAAILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号55)、
AKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号56)、
AKIEAAILDEFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号57)、
RKKASJKIAJAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号58)、
RKKASSKIAAAZLDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号59)、
AKIEAAILDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号60)、
AKIEAEILEAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号61)、
AKIEAAZLDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号62)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号63)、
RKKASSKIEAEZLDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号64)、
RKKASSKIEAEIZDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号65)、
(式中、J、B、及びZは、上記のとおり定義される)と、
配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つと少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列と、
配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号55、60、63、64、若しくは65のいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるペプチドと、
から選択される、
アミノ酸配列若しくはD-アミノ酸配列を含むペプチドである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
細胞透過性特性、細胞小器官を標的とする特性、核局在化、ミトコンドリア局在化、血液脳関門透過性、細胞膜局在化、及び/又はペプチダーゼ切断を付与する配列、又は、HIVのTAT配列(GRKKRRQRRRPP、配列番号41)、若しくはARKKRRQRRRPPP(配列番号66)を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
天然には生じないアミノ酸若しくは天然のアミノ酸の所望の特性と同じ又は実質的に同じものを有する天然には生じないアミノ酸を、前記化合物のその位置に含み、修飾アミノ酸、又は、リンカーアミノ酸、ステープル、システイン架橋、グリコール化部位、ユビキチン化及び/又はペグ化部位を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、p53に結合する、又は、p53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
p53に結合する、又は、p53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する方法であって、
a)請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物を用意する工程と、
b)a)の前記化合物を適切に修飾する工程と、
c)b)の前記少なくとも1種の化合物とp53又はその断片との結合、前記少なくとも1種の化合物の安定性、及び前記化合物の不在下でのFOXO4若しくはその前記断片とp53若しくはその前記断片との結合と比較した前記少なくとも1種の化合物の存在下でのFOXO4若しくはその前記断片とp53若しくはその前記断片との結合のうち少なくとも1つを特定する工程と、
d)工程c)で前記特定したものに基づき、工程a)で提供されるとおりの化合物と比較した場合に、p53に結合する、又は、p53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の化合物の前記結合は、p53又はその前記断片に特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
同定されたとおりの前記化合物を、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する及び/又は前記細胞を殺傷する活性について試験することを更に含む、又は、カスパーゼ3/7活性の上昇、ミトコンドリアシトクロムCの減少、TUNEL陽性度、細胞外アネキシンV陽性度、及び/又は細胞によるヨウ化プロピジウム取り込みである細胞死マーカーの上昇、及び/又はカルセインAMの組み込みの減少である生存度の低下の特定、又はMTS生存度アッセイを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記FOXO4又はその前記断片、及び/又はp53又はその前記断片は、細胞中で組換えにより発現する、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞は、癌細胞、瘢痕細胞、老化細胞、ヒト非胚性幹細胞、酵母菌細胞、細菌細胞、FOXO4又はその前記p53結合断片を発現する組換え宿主細胞の群から選択され、前記組換え宿主細胞は、任意選択で、p53又はその前記FOXO4結合断片を発現する、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記FOXO4又はその前記p53結合断片、p53又はその前記FOXO4結合断片、及び/又は前記化合物は、蛍光標識、質量標識、及び/又は安定同位体標識で、検出可能に標識される、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
p53に結合する、若しくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する化合物をスクリーニングするスクリーニングツールであって、FOXO4を発現する単離細胞、及び/又はそのp53結合断片を発現する細胞、前記細胞は任意選択でp53を発現する、及び/又はそのFOXO4結合断片を発現する細胞を含む、スクリーニングツール。
【請求項17】
前記FOXO4又はその前記断片、及び/又はp53又はその前記断片は、前記細胞中で組換えにより発現する、請求項16に記載のスクリーニングツール。
【請求項18】
前記細胞は、癌細胞、老化細胞、瘢痕細胞、ヒト非胚性幹細胞、酵母菌細胞、細菌細胞、FOXO4又はその前記p53結合断片を発現する組換え宿主細胞の群から選択され、前記組換え宿主細胞は、任意選択で、p53又はその前記FOXO4結合断片を発現する、請求項16又は17に記載のスクリーニングツール。
【請求項19】
前記FOXO4又はその前記p53結合断片、p53又はその前記FOXO4結合断片、及び/又は前記化合物は、蛍光標識及び/又は質量標識で、検出可能に標識される、請求項16~18のいずれか1項に記載のスクリーニングツール。
【請求項20】
FOXO4の前記断片は、配列
PRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTLAQIYEWMVRTVPYFKDKGDSNSSAGWKNSIRHNLSLHSKFIKVHNEATGKSSWWMLN(配列番号32)又はPRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTL(配列番号33)に記載のペプチドであり、p53の前記断片は、配列
AMDDLMLSPDDIEQWFTEDPGP(配列番号34)に記載のペプチドである、請求項16~19のいずれか1項に記載のスクリーニングツール。
【請求項21】
対象において老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞を処理する又は予防する医薬組成物を製造する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程、又は請求項10~15のいずれか1項に記載の方法を実行する工程と、同定されるとおりの前記化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程とを含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法により得られる、対象において老化細胞を処理又は予防する医薬組成物。
【請求項23】
化合物の混合物、及び/又は前記化合物のうち少なくとも1種と追加の薬学的活性成分との混合物を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬に使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物、又は請求項22若しくは23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の使用のための少なくとも1種の化合物又は医薬組成物であって、予防しようとする及び/又は治療しようとする疾患病態は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、変形性関節症、COPD、筋骨格系疾患、認知機能障害、及び癌を原因とする疾患又は病態から選択される、少なくとも1種の化合物又は医薬組成物。
【請求項26】
前記治療は、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬との併用療法であるか、又は前記治療は、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬で前処理されて、前記処理を生き延びた老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞に施される、請求項24又は25に記載の使用のための少なくとも1種の化合物又は医薬組成物。
【請求項27】
老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、変形性関節症、COPD、筋骨格系疾患、認知機能低下、又は癌を原因とする疾患又は症状の治療又は予防を必要としている対象において、前記治療又は予防を行う方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物、又は請求項22若しくは23に記載の医薬組成物を有効量で、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記治療は、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬との併用療法であるか、又は前記治療は、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬で前処理されて、前記処理を生き延びた老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞に施される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化細胞、瘢痕細胞(scarred cells)、及び/又は癌性細胞の除去が有益である疾患又は病態、例えば、癌の治療に使用される改良された化合物に関する。本発明はまた、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞の除去が有益である疾患若しくは病態に罹患している、又は罹患している疑いのある個体を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシス(プログラム細胞死)は、損傷細胞の殺傷をもたらす。アポトーシスの最終段階にある死にゆく細胞は、食作用分子を提示し、これが印となって、こうした細胞はマクロファージ等の適切な受容体を持つ細胞により貪食される。
【0003】
老化細胞は、組織機能を損なうと考えられ、それらの遺伝的消去は、加齢の特徴を遅らせる可能性がある。老化細胞は、細胞周期から永久的に離脱しており、一般的に、細胞老化関連分泌現象(Senescence-Associated Secretory Phenotype)すなわちSASPと呼ばれる持続性炎症促進性形質を発達させる。SASPは、細胞微小環境に影響を及ぼし、これは、生涯の初期、又は創傷治癒の急性状況においては有益となる可能性がある。しかしながら、永久排除されるアポトーシス細胞とは異なり、老化細胞は、長期間にわたってはびこり加齢とともに蓄積する可能性がある。持続性老化細胞は、その低いけれど慢性のSASP故に、加齢及び加齢性疾患の発症を加速すると考えられる。
【0004】
老化細胞は、加齢とともに、及び加齢性病的状態の部位で、蓄積することが示されてきている。さらに、老化細胞は、増殖段階に再突入することを可能にする変異を獲得する可能性がある。したがって、良性老化病変は、悪性になる可能性を保持する。実際、老化は、大量の(加齢性)病的状態と関連するとされてきており、逆に言うと、老化細胞の遺伝的消去は、加齢の特徴を遅らせる可能性がある。
【0005】
実際、加齢促進マウスモデルにおいて、老化細胞を遺伝子様式で消去することが、顕著にフィットネスを改善するとともに加齢のパラメーターを低下させる可能性があることが、最近示された。これらのマウスは、脊柱後弯(過剰な骨湾曲)、筋肉の強さ、脂肪沈着、及び白内障で測定される加齢兆候の低下を示した。このことは、細胞老化及びSASPに、加齢性形質及び癌との因果関係があることの更なる証拠を提供した(非特許文献1)。この概念実証証拠は、治療応用性に乏しい遺伝子様式で得られたものである。
【0006】
研究では一貫して、FOXO(フォークヘッドボックスO)転写因子が、加齢及び長寿の重要な決定因子であることが明らかにされてきている。FOXOタンパク質は、インスリン及びインスリン様成長因子シグナル伝達の下流の長寿の重要なレギュレータとして作用する転写因子のサブファミリーとなっており、これらはカエノルハブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)から哺乳類まで保存されている。無脊椎動物ゲノムは1つのFOXO遺伝子を有するのに対し、哺乳類は4つのFOXO遺伝子:FOXO1、FOXO3、FOXO4、及びFOXO6を有する。哺乳類では、このサブファミリーは、ストレス耐性、代謝、細胞周期停止、及びアポトーシスを調節する広範囲の重大な細胞プロセスに関与する。長寿の決定におけるそれらの役割は複雑であり、完全には解明されていない。
【0007】
Bourgeois及びMadlは(非特許文献2において)、この10年間で、FOXO及びp53の両方を、加齢の中心的存在であるとして同定し、それらの誤制御が癌をはじめとする多数の疾患と関連していることを開示している。しかしながら、基盤をなす分子機構の多くは、FOXO及びp53による加齢の調節も含めて、謎のままであると言われている。FOXOとp53との間では、細胞老化の調節におけるそれらの中心的役割をはじめとして、複数の活動が共有されているように思われる。Bourgeois及びMadlは、最近の進展において、FOXOとp53との間の関係性に注目しており、特に、細胞老化におけるFOXO4-p53軸及びFOXO4/p53の役割に注目している。加齢性疾患の治療及び罹患性における薬物標的として、細胞老化を調節するためにFOXO4-p53相互作用を標的とする戦略の可能性が、検討されている。
【0008】
特許文献1は、個体での癌の治療及び/又は老化細胞の除去における、Junキナーゼ及び/又はFOXO4を阻害する作用剤の使用に関する。幾つかの実施の形態においては、作用剤は、SP600125等の小分子である。幾つかの実施の形態においては、作用剤は、AS601245等の小分子である。幾つかの実施の形態においては、作用剤は、開示されるとおりのペプチドである。
【0009】
特許文献2は、FOXO4機能を阻害する作用剤、並びに個体での癌の治療及び/又は老化細胞の除去におけるそれらの使用に関する。幾つかの実施の形態においては、FOXO4を阻害する作用剤は、細胞中でFOXO4機能を阻害するペプチドであり、このペプチドは、開示されるとおりのFOXO4断片と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
特許文献3は、アミノ酸配列LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRP(配列番号5)を含むペプチドであって、上記アミノ酸配列中のアミノ酸はD-アミノ酸残基である、ペプチド、及び加齢性障害の治療におけるこのペプチドの使用法に関する。このペプチドは、老化細胞において、又は対照細胞と比べた場合にFOXO4発現が増加しているとともにSer15リン酸化p53(pSer15-p53)を発現する細胞において、アポトーシス誘導活性を呈する。
【0011】
特許文献4は、老化細胞を標的とする条件付活性タンパク質、及びそのような条件付活性タンパク質を生成する方法に関する。
【0012】
当該技術分野には、老化細胞においてアポトーシスを選択的に誘導する化合物の需要が依然として存在することが、上記から明らかである。なぜなら、細胞老化は、変性(機能喪失)疾患及び癌(機能獲得)と関連しているからである。現在のところ、in vivoで老化細胞にアポトーシスを選択的に誘導することができる治療応用可能な化合物として適切なものは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2013/152038号
【特許文献2】国際公開第2013/152041号
【特許文献3】国際公開第2016/118014号
【特許文献4】国際公開第2018/129007号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Baker et al., 2011. Nature 479(7372):232-6
【非特許文献2】Regulation of cellular senescence via the FOXO4-p53 axis. FEBS Lett. 2018 Jun;592(12):2083-2097
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、治療のため老化細胞を標的とし、細胞老化と関連した疾患の治療に効率的に使用することが可能な、新規の改良された化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、
i)アミノ酸配列
X3X2X4X5X7X5X4X4X6X18X8X3QNX9X8X10X10X11X12S*X13X14X11X11(配列番号1)
(配列中、
S*は、Sが可能であり、又は存在せず、
X2は、存在しない、又はK、E、R、及びHから選択され、
X3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X4は、I、Z、及びLから選択され、Zは、シクロ-ヘキシル-アラニンであり、
X5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X6は、E及びDから選択され、
X7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X8は、B、W、Y、及びFから選択され、Bは、2-メチル-トリプトファンであり、
X9は、存在しない、又はA及びGから選択され、
X10は、存在しない、又はA及びNから選択され、
X11は、R及びKから選択され、
X12は、存在しない、又はRから選択され、
X13は、存在しない、又はG及びSから選択され、
X14は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X18は、A及びEから選択され、
ただし、ステープルを形成するJは存在しないか又は2つ存在するかのいずれかである)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、同一であるアミノ酸配列を含むペプチド、
ii)非天然アミノ酸、及び/又はD-アミノ酸を含むi)に記載のペプチド、好ましくはD-アミノ酸を少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%含む又は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のD-アミノ酸からなるi)に記載のペプチド、並びに、
iii)i)又はii)に記載のペプチドのレトロインバースペプチド、すなわち、アミノ酸配列が逆にされ、天然タンパク質配列と比較したときにL-アイソフォームの代わりにD-アイソフォームに配置されたペプチド、
並びにその薬学上許容される塩、
から選択される化合物であって、
老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞にアポトーシスを誘導する、
化合物を提供することでこの問題を解決する。
【0017】
上記ペプチドは、アミノ酸配列
X1X17K*X2X16X3X3X2X4X5X7X5X4X4X6AX8X3QNX9X8X10X10X11X12S*X13X14X11X11X15(配列番号2)
(配列中、Z、B、J、S*、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、及びX18は、上述のとおりであり、
K*は、Kが可能であり、又は存在せず、
X1は、存在しない、又はアミノ酸配列LTLを表し、
X15は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X16は、A及びPから選択され、
X17は、存在しない、又はR及びSから選択される)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸配列を含み、
上記化合物は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞でアポトーシスを誘導する、本発明による化合物が好ましい。
【0018】
より好ましくは、本発明による化合物は、SQNAW(配列番号43)、SQNGW(配列番号44)、及びSQN-W(配列番号45)から選択されるアミノ酸モチーフX3QNX9X8(例えば、配列番号2の18位から開始する)を含み、配列中「-」は、アミノ酸が存在しないことを示す。更に好ましくは、本発明による化合物は、KIAAA(配列番号46)、KIEAA(配列番号47)、KIAAE(配列番号48)、及びKIEAE(配列番号49)から選択されるアミノ酸モチーフX2X4X5X7X5(例えば、配列番号2の8位から開始する)を含む。
【0019】
更に好ましくは、本発明による化合物は、
一般式
IX5X7X5ILX6AYX3QNX9W(配列番号4)
(配列中
X3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X6は、E及びDから選択され、
X7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X9は、存在しない、又はA及びGから選択される)から選択されるアミノ酸モチーフX4X5X7X5X4X4X6AX8X3QNX9X8(配列番号3、配列番号2の9位から開始する)を含む。
【0020】
好ましくは、本発明による化合物は、D-アミノ酸からなる。アミノ酸の指定は標準一文字表記に従う。
【0021】
最も好ましくは、本発明による化合物は、
LTLRKEASSEIAQSILDAYSQNGWANRRSSCKRP(配列番号7)、
LTLRKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号8)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRP(配列番号9)、
RKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号10)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号11)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRP(配列番号12)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号13)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号14)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKR(配列番号15)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号16)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号17)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号18)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号19)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号20)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号21)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号22)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号23)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号24)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号25)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号26)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号27)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号28)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号29)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号30)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号31)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号53)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号54)、
AKIEAAILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号55)、
AKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号56)、
AKIEAAILDEFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号57)、
RKKASJKIAJAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号58)、
RKKASSKIAAAZLDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号59)、
AKIEAAILDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号60)、
AKIEAEILEAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号61)、
AKIEAAZLDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号62)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号63)、
RKKASSKIEAEZLDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号64)、
RKKASSKIEAEIZDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号65)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号67)、及び、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号68)、
(式中、J、B、及びZは、上記のとおり定義される)と、
ペプチド、特に、配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドと、
配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるペプチド、並びにその薬学上許容される塩と、
から選択される、アミノ酸配列を含むペプチドである。これらのペプチドは、特に、D-ペプチドである。
【0022】
第2の態様において、本発明は、p53に結合する、又は好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する方法であって、
a)本明細書に記載する本発明による少なくとも1種の化合物を用意する工程と、
b)a)の上記化合物を適切に修飾する工程と、
c)b)の上記少なくとも1種の化合物とp53又はその断片との結合、上記少なくとも1種の化合物の安定性、及び上記化合物の不在下でのFOXO4若しくはその上記断片とp53若しくはその上記断片との結合と比較した上記少なくとも1種の化合物の存在下でのFOXO4若しくはその上記断片とp53若しくはその上記断片との結合のうち少なくとも1つを特定する工程と、
d)工程c)で上記特定したものに基づき、工程a)で提供されるとおりの化合物と比較した場合に、p53に結合する、又は好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する工程と、
を含む、方法に関する。
【0023】
上記少なくとも1種の化合物の上記結合がp53又はその上記断片に特異的である、本発明による方法が好ましい。好ましい方法は、同定されたとおりの上記化合物を、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する活性及び/又はこれら細胞を殺傷する活性について試験する工程を更に含み、好ましくはカスパーゼ活性の特定を含む。
【0024】
第3の態様において、本発明は、p53に結合する、好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する化合物をスクリーニングするスクリーニングツールであって、FOXO4を発現する単離細胞、及び/又はそのp53結合断片を発現する細胞、上記細胞は任意選択でp53を発現する、及び/又はそのFOXO4結合断片を発現する細胞を含む、スクリーニングツールに関する。
【0025】
FOXO4の上記断片が、配列
PRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTLAQIYEWMVRTVPYFKDKGDSNSSAGWKNSIRHNLSLHSKFIKVHNEATGKSSWWMLN(完全なフォークヘッドドメイン)(配列番号32)又はPRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTL(配列番号33)に記載のペプチドであり、p53の上記断片が、配列
AMDDLMLSPDDIEQWFTEDPGP(配列番号34)に記載のペプチドである、本発明によるスクリーニングツールが好ましい。
【0026】
第4の態様において、本発明は、対象において老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞を処理する又は予防する医薬組成物を製造する方法であって、本発明による化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程、又は本発明による方法を実行する工程と、同定されるとおりの上記化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程とを含む、方法に関する。本発明による医薬組成物は、薬学上許容される賦形剤を含むことができ、賦形剤としては、例えば、特に制限なく、安定剤、増量剤、緩衝剤、キャリア、希釈剤、ビヒクル、可溶化剤、及び結合剤がある。当業者なら分かることだが、適切な賦形剤の選択は、投与経路及び剤形、並びに活性成分及び他の要因次第である。本発明による医薬組成物は、好ましくは、非経口投与に適合している。
【0027】
第5の態様において、本発明は、本発明による方法により得られる、対象において老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞を処理する又は予防する医薬組成物に関する。
【0028】
第6の態様において、本発明は、医薬に使用される、本発明による少なくとも1種の化合物又は本発明による医薬組成物に関する。好ましくは、本発明に従って使用される少なくとも1種の化合物又は医薬組成物であって、予防される及び/又は治療される上記疾患又は病態が、老化細胞、瘢痕細胞、加齢性疾患、腎疾患、変形性関節症、COPD、筋骨格系疾患、認知機能障害、及び癌を原因とする病態から選択される、少なくとも1種の化合物又は医薬組成物である。
【0029】
第7の態様において、本発明は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞、加齢性疾患、腎疾患、変形性関節症、COPD、筋骨格系疾患、認知機能障害、又は癌を原因とする疾患又は症状の治療又は予防を必要としている対象において、上記治療又は予防を行う方法であって、本発明による少なくとも1種の化合物、又は本発明による医薬組成物を有効量で、上記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0030】
他の態様及び利点は、以下の説明及び限定ではない例を読むことで容易に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】ヒトFOXO4(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))の配列を示す図であり、TP53相互作用ドメインの配列には下線を付してある。
【
図2】例示ペプチドCL04009(配列番号11)が、細胞から単離された組換えTP53-TAD2及び全長TP53との結合において強力であり、参照化合物(FOXO4-DRI)より優れていることを示す図である。A)15N標識化TP53-TAD2単独(下段)、CL04009(配列番号11)が存在する場合(上段)、又は参照化合物(中段)のNMR化学シフトの相対的摂動を示す。参照化合物により誘導されるNMR化学シフトの摂動を、100%と設定した。B)ストレプトアビジンビーズを用いたHEK293T細胞のライセートからの内因性TP53プルダウンを、どのようなペプチドも存在しない場合、ビオチン化CL04009(配列番号11)、又はビオチン化参照ペプチド(FOXO4-DRI)のいずれかで示している。
【
図3】ペプチドCL04009(配列番号11)が、老化IMR90肺線維芽細胞に対しては強力かつ選択的であるのに、健康な対照IMR90肺線維芽細胞に対してはそうではないことを示す図である。この図は、修飾してTP53との結合を改良したCL04009(配列番号11)が、老化IMR90肺線維芽細胞ではカスパーゼ3/7活性化によるアポトーシスを優れて選択的に誘導したのに、健康な対照IMR90肺線維芽細胞ではそうしなかったことを示す。そのうえさらに、このペプチドはより少ない濃度で有効であり、このことは、効力の改善を示す。上段のグラフは、カスパーゼ活性を示し、下段のグラフは細胞生存度を示す。FOXO4-DRIは、対照として使用した。
【
図4】CL04022(配列番号12)が、参照化合物であるFOXO4-DRIよりも強力に、TP53-TADと結合することを示す図である。ペプチド濃度を上昇させながら存在させて、FITC標識化TP53-TAD2(250 nM)の蛍光偏光を測定したものを示す。
【
図5】ペプチド中のアラニン交換に基づいて、ペプチドCL04022(配列番号12)が、数日間の長期にわたりCL04009(配列番号11)よりも安定であることを示す図である。両ペプチドを、H
2Oに溶解させ、室温に維持した。表示される時点のペプチド濃度を測定した。
【
図6】ペプチドCL04022(配列番号12)が、投与の24時間後、古典的アポトーシスの指標であるカスパーゼ3/7活性化の誘導を開始することを示す図である。全カスパーゼ3/7活性化は、60時間後に完了する。上段の列は、対照である。
【
図7】選択的TP53結合を改良するためのペプチドCL04009(配列番号11)の変更が、老化IMR90細胞においてアポトーシスを誘導する(上段青線)が、健康な対照IMR90細胞では誘導しない(下段黒線)非常に強力かつ選択的な能力ももたらすことを示す図である。下段図は、ペプチドCL04088(配列番号13)がペプチドCL04022(配列番号12)より優れていることを示すが、ペプチドCL04022はそれでもなお対照より優れている。
【
図8】ペプチドCL04009((配列番号11)、この図では、CL05055として示す)の修飾が、異なる臓器の老化細胞を排除する効力を更に改良することができることを示す図である。RPE=網膜色素上皮細胞。CL03001は、対照として使用したFOXO4-DRIと同じである。
【
図9-1】CL04022(配列番号12)が、神経膠芽細胞腫細胞にアポトーシス細胞死を誘導するのに、FOXO4-DRIより優れていることを示す図である。A)CL04022(配列番号12)は、カスパーゼ3/7活性化(アポトーシス)の誘導において、FOXO4-DRIよりも強力であり、B)GBM8神経膠芽細胞腫細胞においてLDH(細胞死)は減少する。C)は、CL04022(配列番号12)が、GBM8神経膠芽細胞腫細胞ではアポトーシスを誘導するが、健康なWI38細胞では誘導しないことを示す。CL04022(配列番号12)は、GBM8神経膠芽細胞腫と健康なWI38細胞との対比において、アポトーシスの誘導についても選択的である。
【
図10】CL04022(配列番号12)が結腸癌に対して有効であることを示す図である。A)ペプチドCL04022(配列番号12)は、2種のマイクロサテライト不安定性(MSI)結腸癌3Dオルガノイド培養物に対して有効である。ペプチドは、1種のマイクロサテライト安定性(MSS)株に対しては無効である。B)CL04022(配列番号12)が、患者由来の結腸直腸癌と健康な対照試料との対比において、選択的であることを示す。CL04022(配列番号12)は、正常な野生型結腸オルガノイドに対して(上記のA)に比べて)効力が弱いことを示す。このペプチドは、そのようなオルガノイドがAPCを枯渇させている場合に有効である。
【
図11】溶液でFOXO4-DRI(CL03001)との対比においてCL04183(配列番号55)及びCL05114(配列番号60)の優れた安定性を示す図である。表中、CL02001は、ペプチドCL03001の「L」型を指定し、CL02015は、ペプチドCL04183(配列番号55)の「L」型を指定する。
【
図12-1】A)ペプチドCL04022(配列番号12)が、化学療法(5'フルオロウラシル又はオキサリプラチン)を生き延びた場合の結腸癌3Dオルガノイドにおいてより有効であることを示す図であり、B)CL04022(配列番号12)が、標準治療である5FUとは対照的に、細胞周期の停止を引き起こすだけではなく、細胞死も誘導することを示す図である。
【
図13】CL04009(配列番号11)に曝露させてから14日後、3D結腸オルガノイドにそれ以上の腫瘍成長が存在しないことを示す図である。このことは、この図で結腸癌の例として示されるとおり、CL04009(配列番号11)が、結腸オルガノイドに対して、単に細胞増殖抑制性であるのではなく、細胞傷害性であることを示す。
【
図14】1つの実験内で、老化ヒトRPE1細胞と対照ヒトRPE1細胞との対比において、ペプチドCL04183(B)(配列番号55)が、当初のFOXO4-DRI(CL03001)(A)に比べて優れた選択性及び効力を示すことを示す。
【
図15】結腸オルガノイドにおける結腸直腸癌関連変異が、p53に依存して、FOXO4に基づくペプチドに感作することを示す図である。WT結腸オルガノイド及び異なる腫瘍進行(TPO)オルガノイドを、濃度を上昇させながらCL04124(配列番号68)又はCL04183(配列番号55)を用いて処理した。5日後、細胞生存度を測定した。
【
図16】CL04183(配列番号55)が、患者由来結腸直腸癌オルガノイドにおいてアポトーシスを強力に誘導することを示す図である。A)患者由来結腸直腸癌オルガノイド株CRC29を、5'-フルオロウラシル(5-FU)又はCL04183(配列番号55)いずれかで処理した。3日後、細胞を、カルセインAM及びヨウ化プロピジウムで処理した。これらはそれぞれ、生細胞及び死細胞を染色する。EVOS撮影システムでオルガノイドを撮影した。B)CRC29オルガノイドを、アポトーシス用にカルセインAM及びカスパーゼ3/7赤色色素とともにインキュベートしてから、CL04183(配列番号55)で処理した。LSM880顕微鏡を用いて、直ちにライブ撮影を開始し、1時間ごとに画像を撮影した。C)CRC29を、濃度を上昇させながらCL04183(配列番号55)で処理した。5日後、細胞生存度を測定した。
【
図17】ペプチドCL04009(配列番号11)は、参照化合物であるFOXO4-DRI/CL03001よりも強力に、老化ヒト乳房上皮細胞でアポトーシスを誘導することを示す図である。MCF10細胞を、濃度を上昇させながらCL04009(配列番号11)及びFOXO4-DRで処理し、2日後、カスパーゼアッセイを行ってアポトーシスの誘導を特定した。
【
図18】CL04183(配列番号55)が、自然に加齢したマウスにおいて、白髪を減少させることを示す図である。24ヶ月齢のC57BL/6Jマウスを、PBS又はCL04183(配列番号55)いずれかを3回の用量でi.v.注射により投与される前に写真撮影し、最初の処置から4週間後、マウスを再び写真撮影した。
【
図19】ペプチドCL04183(配列番号55)が、in vivoで、ルシフェラーゼ発現結腸直腸癌細胞を減少させることを示す図である。A)ホタルルシフェラーゼを有する結腸直腸癌オルガノイド株CRC29を、免疫不全マウスの盲腸に移植した。移植の2週間後、生物発光レベルを特定し、マウスを、3回の用量のCL04183(配列番号55)又はPBSで処置した。最終用量から2日後、全ての動物を再度撮影し、発光値をベースラインと比較した。B)マウスに、ルシフェリンを注射してから屠殺した。個々の臓器を撮影し、M3ビジョンソフトウェアを用いて、ルシフェラーゼシグナルを定量した。
【
図20】ペプチドCL04183(配列番号55)が、肝臓及び肺の結腸直腸癌転移を減少させることを示す図である。結腸直腸癌オルガノイド株CRC29を、免疫不全マウスの盲腸に移植した。移植の2週間後、動物を、3回の用量のCL04183(配列番号55)又はPBSで処置した。A)肺及び肝臓を、ヒト核小体について染色し、マウス臓器中のヒト癌細胞を検出した。B)CellProfilerソフトウェアを用いて、肺中の転移性細胞の量を定量した。マウス1匹あたり6枚のタイルスキャンを分析した。全ての計数値を、PBS処置群の平均と比較した。染色した切片あたりの肝臓転移の数を、目視で計数した。
【
図21】CL04183(配列番号55)が、in vivoで、転移性癌細胞のアポトーシスを誘導することを示す図である。PBS又はCL04183(配列番号55)で処置されたCRC29肺転移でTUNELアッセイを行い、アポトーシス誘導を特定した。1群あたり3匹のマウスが含まれており、TUNEL陽性癌細胞のパーセンテージは、FIJIを用いて定量した。
【
図22】三種陰性乳癌株が、オープン立体配置のp53を呈し、このことはCL04183(配列番号55)感度と相関することを示す図である。表示されるヒト乳癌細胞株を、濃度を上昇させながらCL04183(配列番号55)を用いて処理し、2日後、MTSアッセイを行って、細胞生存度を特定した。GraphPad Prismを用いてEC50値を計算した。
【
図23】NRAS変異した黒色腫及びBRAF変異した黒色腫に対するCL04183(配列番号55)有効性を示す図である。
図14も参照。
【
図24】NMRペプチド結合データを示す図である。p53-TAD2単独で(下部円、赤色)、参照ペプチドFOXO4-DRI/CL03001(黒色)の添加に際して、又は試験ペプチド(上部円、青色)の添加に際して得られた
1H,
15N HSQC NMRスペクトルから抽出したp53-TAD2 T55の
1H,
15N交差ピークの拡大図。A)ペプチド配列番号22、B)ペプチド配列番号23、C)ペプチド配列番号24、D)ペプチド配列番号25、E)ペプチド配列番号26、及びF)ペプチド配列番号27である。
【
図25】NMRペプチド結合データを示す図である。p53-TAD2単独で(下部円、赤色)、参照ペプチドFOXO4-DRI/CL03001(黒色)の添加に際して、又は試験ペプチド(上部円、青色)の添加に際して得られた
1H,
15N HSQC NMRスペクトルから抽出したp53-TAD2 T55の
1H,
15N交差ピークの拡大図。A)ペプチドCL04022、配列番号12、B)ペプチドCL04121、配列番号67、C)ペプチドCL04183、配列番号55、D)ペプチドCL04180、配列番号54、E)ペプチドCL04230、配列番号56、及びF)ペプチドCL04231、配列番号57である。
【
図26】NMRペプチド結合データを示す図である。p53-TAD2単独で(下部円、赤色)、参照ペプチドFOXO4-DRI/CL03001(黒色)の添加に際して、又は試験ペプチド(上部円、青色)の添加に際して得られた
1H,
15N HSQC NMRスペクトルから抽出したp53-TAD2 T55の
1H,
15N交差ピークの拡大図。A)ペプチドCL04235、配列番号61、B)ペプチドCL05114、配列番号60である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に関して行われるとおりの実験の状況において、本発明者らは、驚いたことに、FOXO4とp53との相互作用を更に慎重に分析した後、化合物に変更を導入することで、実質的に相当な機能的改良を更に達成することが可能であることを見出した。
【0033】
したがって、本発明の主な態様は、
i)アミノ酸配列
X3X2X4X5X7X5X4X4X6X18X8X3QNX9X8X10X10X11X12S*X13X14X11X11(配列番号1)
(配列中、
S*は、Sが可能であり、又は存在せず、
X2は、存在しない、又はK、E、R、及びHから選択され、
X3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X4は、I、Z、及びLから選択され、Zは、シクロ-ヘキシル-アラニンであり、
X5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X6は、E及びDから選択され、
X7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X8は、B、W、Y、及びFから選択され、Bは、2-メチル-トリプトファンであり、
X9は、存在しない、又はA及びGから選択され、
X10は、存在しない、又はA及びNから選択され、
X11は、R及びKから選択され、
X12は、存在しない、又はRから選択され、
X13は、存在しない、又はG及びSから選択され、
X14は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X18は、A及びEから選択され、
ただし、ステープルを形成するJは、存在しないか、又は2つ存在するかのいずれかである)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、同一であるアミノ酸配列を含むペプチド、
ii)非天然アミノ酸、及び/又はD-アミノ酸を含むi)に記載のペプチド、好ましくはD-アミノ酸を少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%含む又は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のD-アミノ酸からなるi)に記載のペプチド、並びに、
iii)i)又はii)に記載のペプチドのレトロインバースペプチド、すなわち、アミノ酸配列が逆にされ、天然タンパク質配列と比較したときにL-アイソフォームの代わりにD-アイソフォームに配置されたペプチド、
並びにその薬学上許容される塩、
から選択される改良された化合物であって、
老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞にアポトーシス及び/又は細胞死を誘導する、
化合物に関する。好ましくは、上記化合物は、D-アミノ酸からなる。
【0034】
好ましくは、p53に結合する、又はより好ましくはp53に結合して細胞中でFOXO4とp53との相互作用を阻害する化合物であり、この化合物は、現行の技術水準によるアッセイ、及び/又は本明細書中に開示されるとおりのアッセイで検出されるとおりのものである。これらのアッセイとして、NMR(このアッセイでは、上記ペプチドのTP53(の断片)に結合する能力が測定される);プルダウンアッセイ(このアッセイでは、ペプチド(のビオチン化体)を(ストレプトアビジン)ビーズに結合させる。これを、TP53を含有する細胞ライセートに注ぎ、上記ペプチドに結合するTP53の割合を調査する);及び、FRET/HTRFアッセイ(このアッセイでは、ペプチドのTP53(の断片)とFOXO4との相互作用を摂動する能力が評価される)が挙げられる。
【0035】
FOXO1/3/6とFOXO4との間の進化的差異は、所望の阻害活性を示す改良された化合物を作り出す目的において、幾つかのアミノ酸を更に修飾することが可能であることを示した。
【0036】
FOXO4は、FOXO1/3及び6、並びに下位生物種のFOXO相同分子種と、幾つかの独自残基において進化的に異なっている。本発明者らは、FOXO1又はFOXO3フォーカス(foci)をこれまでまったく見つけたことがなく、FOXO1及び3が老化細胞生存度において重要であるという証拠も全く持っていない。したがって、これらのアミノ酸が老化細胞の排除におけるFOXO4-ペプチドの効力を少なくとも部分的に説明づけるかどうか、分析した。FOXO4のものと同様なドメインに基づくD-レトロインバースペプチドは、老化細胞の排除において選択性を示したが、FOXO1又はFOXO3の配列に基づくものでは、老化細胞の排除において選択性を示さなかったということが確認された。
【0037】
FOXO4-FH断片及びTP53-TAD2ドメインの分析から、TP53の負電荷、並びに疎水性Tyrが、FOXO4との結合に介在することが示された。したがって、Glu→Lys及びTyr→Pheのような正のアミノ酸への変異は、相互作用の強度に有益であることが予想された。NMRからは、N末端アミノ酸LTLが、相互作用に必要ではないことも示された。最後に、NMRは、TP53の負に荷電したアミノ酸が、SQモチーフ(部位)周囲でのFOXO4との相互作用の一因であることを示した。NGアミノ酸部位は、分子の安定性を改良する目的で修飾することができる。これらの修飾全てが、新規戦略を提供するものであり、これら修飾のうちのいずれか1つ又はその組合せが、本発明の文脈において使用される改良された分子の合理的設計を招く。
【0038】
同じく見出されたこととして、本発明の文脈における活性ペプチドは、現行の技術水準において既に存在する提案と比較した場合に、かなり短いことが可能であり、それでいて強力な活性を依然として維持している。それにも関わらず、より長くより活性なペプチドも可能であり、したがって、本発明による好ましい化合物は、アミノ酸配列
X1X17K*X2X16X3X3X2X4X5X7X5X4X4X6AX8X3QNX9X8X10X10X11X12S*X13X14X11X11X15(配列番号2)
(配列中、Z、B、J、S*、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、及びX18は、請求項1に記載のとおりであり、
K*は、Kが可能であり、又は存在せず、
X1は、存在しない、又はアミノ酸配列LTLを表し、
X15は、存在しない、又はA及びCから選択され、
X16は、A及びPから選択され、
X17は、存在しない、又はR及びSから選択される)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸配列を含み、
上記化合物は、老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌性細胞でアポトーシスを誘導する、ペプチドである。
【0039】
そのうえさらに見出されたこととして、本発明による特定の活性ペプチドは、或る特定のアミノ酸モチーフを含み、好ましくは、SQNAW(配列番号43)、SQNGW(配列番号44)、及びSQN-W(配列番号45)から選択されるアミノ酸モチーフX3QNX9X8(例えば、配列番号2の18位から開始する)であり、配列中の「-」は、アミノ酸が存在しないことを示す。
【0040】
予期せず見出されたこととして、X9がアラニン(A)である場合、ペプチドは、溶液中での安定性の改善を示し、これは配列番号12及び配列番号23のペプチドの場合に例証されるとおりである(実施例を参照)。したがって、本発明による化合物に更なる安定性をもたらす目的で、この交換は好ましい。
【0041】
更に好ましくは、本発明による化合物は、KIAAA(配列番号46)、KIEAA(配列番号47)、KIAAE(配列番号48)、及びKIEAE(配列番号49)から選択されるアミノ酸モチーフX2X4X5X7X5(例えば、配列番号2の8位から開始する)を含む。
【0042】
更により好ましくは、本発明による化合物は、一般式
IX5X7X5ILX6AFX3QNX9W(配列番号4)
(配列中、
X3は、存在しない、又はA、J、及びSから選択され、
X5は、A、G、S、E、及びDから選択され、
X6は、E及びDから選択され、
X7は、J、G、Q、A、S、及びPから選択され、
X9は、存在しない、又はA及びGから選択される)から選択されるアミノ酸モチーフX4X5X7X5X4X4X6AX8X3QNX9X8(配列番号3、配列番号2の9位から開始する)を含む。
【0043】
本発明の文脈において、見出されたこととして、アミノ酸モチーフLTLRKEASSE(配列番号35)は、ペプチドの全般的な機能改良に不要であり、このモチーフは、単一のAlaへと縮小させる、Ala、「中性」アミノ酸、又は正に荷電したアミノ酸で置き換えることが可能である。対照的に、「コアモチーフ」であるX4X5X7X5X4X4X6AX8X3QNX9X8(配列番号3、配列番号2の9位から開始する)は、最も重要であり、このコアモチーフは、一般式IX5X7X5ILX6AFX3QNX9W(配列番号4)から選択することが可能である。そうは言うものの、このモチーフ中、アミノ酸「SQNG」(配列番号50)は、構造的リンカーとして機能するように思われ、折り畳みにより「W」が疎水性コア中へと戻るように機能する。幾つかの残基は削除可能であり、1つ又は2つの「G」で十分であり、AANG(配列番号51)又はSQ-G若しくはSQAG(配列番号52)を用いても、ペプチドは機能する。末端のWは必須であり、天然AAで置き換えることは困難である。最初の「I」は必須であり、疎水性アミノ酸である必要があり、好ましくはI/Lであるが、非天然のものも可能である。IX5X7X5IL(配列番号36、例えば、IAQSIL、配列番号37)部分において、「I」の間の間隔は、2つ~3つの残基であることが必要である。幾つかの変更があっても、それらが螺旋又は疎水性コアを破壊しない限りは、許容される。同様に、末端の「IL」は必須であり、疎水性アミノ酸である必要があり、好ましくはI/Lであるが、非天然のものも可能である。そのうえさらに、続く「L」と「Y」との間の間隔は、好ましくは、2つの残基であるが、単一アミノ挿入が許容される。同じく、変更があっても、それらが螺旋又は疎水性コアを破壊しない限りは、許容される。「Y」は必須であり、疎水性アミノ酸である必要があり、好ましくはF/Yであるが、非天然のものも可能である。上記のN末端部分と同様に、モチーフANRRSSCKRP(配列番号38)は、ペプチドの全般的な機能改良に不要であり、このモチーフは、少なくとも3つの正に荷電した残基へと縮小させることが可能であるが、それより少なくした場合でさえ、このペプチドは依然として活性である。
【0044】
最も好ましくは、本発明による化合物は、
LTLRKEASSEIAQSILDAYSQNGWANRRSSCKRP(配列番号7)、
LTLRKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号8)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRP(配列番号9)、
RKKASSKIAQSILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号10)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRP(配列番号11)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRP(配列番号12)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号13)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号14)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKR(配列番号15)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号16)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号17)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKR(配列番号18)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKR(配列番号19)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKR(配列番号20)、
LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号21)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNGWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号22)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号23)、
RKKASSKIAAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号24)、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号25)、
RKKASSKIAAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号26)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号27)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号28)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号29)、
AKIAAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号30)、
AKIEAAILDAFSQNWRRKRRRRQRRKKRG(配列番号31)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号53)、
RKKSKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号54)、
AKIEAAILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号55)、
AKIEAEILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号56)、
AKIEAAILDEFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号57)、
RKKASJKIAJAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号58)、
RKKASSKIAAAZLDAFSQNAWANRRSSCKRPPPRRRQRRKKRA(配列番号59)、
AKIEAAILDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号60)、
AKIEAEILEAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号61)、
AKIEAAZLDAFSQNBRKRRRRQRRKKRG(配列番号62)、
RKKASSKIEAEILDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号63)、
RKKASSKIEAEZLDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号64)、
RKKASSKIEAEIZDAFSQNBRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号65)、
RKKSKIAAAILDAFSQNWRKRRRRQRRKKRG(配列番号67)、及び、
RKKASSKIEAAILDAFSQNWRRKRPPRRRQRRKKRG(配列番号68)、
(式中、J、B、及びZは、上記のとおり定義される)と、
配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドと、
配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるペプチド、好ましくは配列番号55、60、63、64、又は65のいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるペプチドと、
その薬学上許容される塩と、
から選択される、
アミノ酸配列を含むペプチドである。
【0045】
本発明の化合物では、アミノ酸の1文字表記に従って、X1は、存在しない、又はアミノ酸LTLを示す。なぜなら、N末端アミノ酸LTLは、相互作用に必須ではないからである。X2は、正に荷電したアミノ酸、好ましくは、K、E、R、及びHから選択される。X3は、小型無極性アミノ酸、好ましくは、A及びSから選択され、本明細書中に定義されるとおりのJを用いてステープルを形成することができる。X4は、疎水性アミノ酸、好ましくはI及びL、並びに修飾アミノ酸Zから選択され、Zは、シクロ-ヘキシル-アラニンである。X5は、小型の正又は負に荷電したアミノ酸、好ましくはA、G、S、E、及びDから選択される。X6は、負に荷電したアミノ酸、好ましくはE及びDから選択される。X7は、小型又は極性アミノ酸、好ましくはG、Q、A、S、及びPから選択され、本明細書中に定義されるとおりのJを用いてステープルを形成することができる。X8は、芳香族アミノ酸、好ましくはW、Y、及びF、並びにBから選択され、Bは、2-Me-トリプトファンである。X9は、小型の極性又は無極性のアミノ酸、好ましくはA及びGから選択される。X10は、A及びN並びに電荷中性の極性アミノ酸、好ましくはQから選択される。X11及びX12は、正に荷電したアミノ酸、好ましくはR及びKから選択される。X13は、G及びSから選択され、X14及び/又はX15は、A及びCから選択され、X16は、A及びPから選択され、X17は、R及びSから選択され、X18は、A及びEから選択される。好ましくは、化合物は、本明細書で示されるとおりの天然アミノ酸の所望の性質と同じ又は実質的に同じものを有する天然に生じないアミノ酸を、本明細書中の式で示されるとおりの上記化合物の関連する位置に有することができる。同じく可能であるのは、修飾アミノ酸、例えば、リンカーアミノ酸、ステープル、システイン架橋、グリコール化部位、ユビキチン化、及び/又はペグ化部位等を、希望どおりに導入することである。
【0046】
ステープル化(stapled)ペプチドとは、合成固定具(「ステープル(staple)」)により束縛された短いペプチドであり、典型的にはアルファ螺旋構造をしている。ステープルは、2つのアミノ酸側鎖間の共有結合により形成され、ペプチド大環状分子を形成する。したがって、ステープルは、概して、2つのそれまでは独立した実体の共有結合を示す。応用の中でも特に、ペプチドステープル形成(stapling)は、ペプチドの薬理学的性能を向上させるのに著しく使用される。
【0047】
本発明のペプチドは、その化合物が、p53に結合する及び/又はp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する若しくは実質的に阻害する機能を有する限り、どのような長さでも可能である。好ましくは長さが100~19、より好ましくは75~19、更により好ましくは50~19アミノ酸長である化合物である。特に好ましくは、配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちの1つで与えられるとおりの長さから選択される長さを有する本発明のペプチドである。
【0048】
本発明による化合物は、好ましくは、配列番号1~4、及び7~31、及び53~65、並びに67及び68のうちのいずれか1つと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むレトロインバースペプチドである。
【0049】
「ペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、好ましくは、合成的に合成されたペプチド、好ましくはペプチド模倣物、より好ましくはD-ペプチドを示す。「ペプチド」という用語は、ペプチド類似体を包含し、ペプチド類似体は、例えば、そのペプチドが体内にある間の安定性を高める、又は細胞への浸透性を高める修飾を有することができる。そのような修飾として、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、及び骨格修飾が挙げられるが、これらに限定されず、ペプチド結合修飾として、CH2-NH、CH2-S、CH2-S=O、O=C-NH、CH2-O、CH2-CH2、S=C-NH、CH=CH、又はCF=CHがあるが、これらに限定されない。ペプチド模倣化合物の調製法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)に開示されている。
【0050】
更に好適な修飾は、アミノ酸自身に関するものであり、天然には生じないアミノ酸、好ましくは天然アミノ酸の所望の性質と同じ又は実質的に同じ性質を有するものを、好ましくは、上記化合物の同じ又は実質的に同じ位置に導入することを含む。好ましい例は、2-Me-トリプトファン又はシクロ-ヘキシルアラニンである。更なる修飾として、修飾アミノ酸、例えば、リンカーアミノ酸、ステープル、システイン架橋、グリコール化部位、ユビキチン化、及び/又はペグ化部位等を挙げることができる。ステープル形成は、ペプチド内でiとi残基+4残基又はi残基とi+7残基を架橋させるために2つのa-ペンテニルグリシン残基又はa,a'-ペンテニルアラニン残基を導入することにより達成可能である。これらの残基を用いて、全炭化水素、アルケン含有、デスメチル拘束、すなわちステープルを作り出す。好ましくは、Fmoc-L-2-(4'-ペンテニル)アラニン及び閉環メタセシス(RCM)である(例えば、Kim YW, Kutchukian PS, Verdine GL. Introduction of all-hydrocarbon i,i+3 staples into alpha-helices via ring-closing olefin metathesis. Org Lett. 2010 Jul 2;12(13):3046-9. doi: 10.1021/ol1010449を参照)。ペプチドを架橋する又は拘束するのに使用可能な他の戦略として、ラクタム架橋、水素結合代用物、光スイッチ、チオエーテル、及び「クリック」化学反応により導入されるトリアゾールが挙げられる。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、本発明による化合物は、細胞浸透特性、細胞小器官を標的とする特性、核局在化、ミトコンドリア局在化、血液脳関門透過性、細胞膜局在化、及び/又はペプチダーゼ切断を付与するペプチド配列を更に含む。細胞浸透配列としては、例えば、HIVのTAT配列(GRKKRRQRRRPP、配列番号41)、又はARKKRRQRRRPPP(配列番号66)がある。他の好適な配列は文献から既知であり、例えば、Ramaker et al. (Ramaker et al. (2018) Cell penetrating peptides: a comparative transport analysis for 474 sequence motifs, Drug Delivery, 25:1, 928-937)を参照することで採用することができる。核局在化については、例えば、Kim YH, Han ME, Oh SO. The molecular mechanism for nuclear transport and its application. Anat Cell Biol. 2017;50(2):77-85. doi:10.5115/acb.2017.50.2.77)を参照。上記ペプチド配列は、好ましくは、上記ペプチドのN及び/又はC末端部分で縮合させることができる。
【0052】
「D-アイソフォーム」という用語は、本明細書中で使用される場合、配列中のアミノ酸残基の少なくとも一部が、「D」(ラテン語dexter;右)と称する分子空間配置を有するアミノ酸配列を示す。本発明の化合物は、D-アミノ酸を少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%、又は100%含む(すなわち「全D」である)。本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又はそれより多いD-アミノ酸残基を有する。同じく、本発明のペプチドは、好ましくは、D-アミノ酸残基を少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、95%、98%、又は99%、最も好ましくは100%含む。
【0053】
「DRI」という略号は、本明細書中で使用される場合、D-レトロインバースアイソフォーム又はそのペプチド断片を示し、D-レトロインバースアイソフォームでは、特にヒトFOXO4タンパク質の配列に関して、アミノ酸配列が反転しており、L-アイソフォームの代わりにD-アイソフォームが配置されている。当業者なら分かるだろうが、本発明によるDRIペプチドは、L-アミノ酸残基とD-アミノ酸残基との組合せを含む場合もあれば、例えば上記で開示されるとおり、完全にD-アミノ酸残基からなる(全D)場合もある。
【0054】
「配列同一性%」又は「%同一である配列」という用語は、配列アラインメントを行い、必要であれば任意選択でギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、関心対象の核酸又はアミノ酸配列中のヌクレオチド、アミノ酸それぞれと同一である、核酸配列中のヌクレオチド、又はアミノ酸配列中のアミノ酸のパーセンテージとして、本明細書中に定義される。アラインメントの方法及びコンピュータープログラムは、当該技術分野で既知である。配列同一性は、関心対象のアミノ酸配列の実質的に全長、好ましくは全長(完全長)にわたり計算される。当業者には当然だろうが、一方のアミノ酸配列中の連続アミノ酸残基を、他方のアミノ酸配列中の連続アミノ酸残基と比較する。好ましくは、アミノ酸残基の立体配置、例えば、D又はLは、アミノ酸配列同一性の決定に関係しない。例えば、D-Ala(D-A)は、本発明の文脈において、L-Ala(L-A)と配列同一性を示す。
【0055】
当業者なら、細胞及び/又は細胞培養物中のアポトーシスの程度を特定するin vitroの標準アッセイ、例えば、細胞質シトクロムC(アポトーシスのマーカー)のレベル及びTUNEL(アポトーシスのマーカー)のレベルを評価する検査の存在にも更に気づく。こうした標準アッセイを使用して、当業者なら、様々な化合物について、異なる細胞型ごと又は細胞の異なる発達段階ごとの、例えば老化細胞と非老化細胞との比較で、アポトーシス誘導活性を評価及び比較することが容易にできる。他の標準アポトーシスアッセイは、アネキシンVアッセイ及び切断型カスパーゼ3染色である。細胞生存度は、本質的にアポトーシスとは反対のものであり、これを検出するため、MTTアッセイ(細胞生存度を評価する比色アッセイ)、ATP検出アッセイ、リアルタイム細胞密度(例えば、xCELLigence)アッセイ、又はコロニー形成アッセイが利用可能である。使用されるアッセイについての更なる情報は、文献から、例えば、Elmore S. Apoptosis: a review of programmed cell death. Toxicol Pathol. 2007;35(4):495-516から得ることができる。アッセイは、好ましくは、カスパーゼ3/7活性の上昇、ミトコンドリアシトクロムCの減少、TUNEL陽性度、細胞外アネキシンV陽性度、及び/又は細胞によるヨウ化プロピジウム封入等の細胞死マーカーの上昇、及び/又はカルセインAMの組み込みの減少等の生存度の低下の特定、又はMTS生存度アッセイを含む。
【0056】
通常、好ましくは、老化細胞は、マーカーであるLMNB1及び/又はHMGB1の存在/染色の減少、p21Cip1及び/又はp16INK4aの増加、及び/又はDNA-SCARSマーカーであるyH2AX及び/又は53BP1及び/又はPMLの存在、及び/又はSASPのマーカーであるIL1及び/又はIL6及び/又はMMP1の存在を伴う細胞として同定することができる。細胞は、TP53又はその変異体の完全な不在を示す必要もない。通常、好ましくは、癌細胞は、p21Cip1の増加、及び/又はDNA-SCARSマーカーであるyH2AX及び/又は53BP1及び/又はPMの存在、及び/又はSASPのマーカーであるIL1及び/又はIL6及び/又はMMP1の存在を伴う細胞として同定することができる。細胞は、TP53又はその変異体の完全な不在を示す必要もない。通常、好ましくは、瘢痕細胞は、DNA-SCARSのレベルの上昇:53BP1及び/又はyH2AX、及び/又はPML/FOXO4核内小体クラスターの巨大化を伴う細胞として同定することができる。
【0057】
別の態様において、本発明は、本発明によるペプチドをコードする核酸を提供する(生物学的に可能な範囲において、任意選択で発現ベクター等のベクターに含まれている)。核酸は、DNA、RNA、cDNA、PNA、又はそれらの組合せであることが可能である。更なる態様において、本発明は、本発明による核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の種類の適切な原核生物細胞又は真核生物細胞が可能であり、例えば、癌細胞、老化細胞、瘢痕細胞、ヒト非胚性幹細胞、酵母菌細胞、細菌細胞、及びFOXO4及び/又はそのp53結合断片を発現する組換え宿主細胞、及び任意選択でp53及び/又はそのFOXO4結合断片を発現する組換え宿主細胞の群から選択されるもの等である。
【0058】
同じく上記で記載したとおり、本発明は、FOXO1/3/6とFOXO4との間の進化的差異から、幾つかのアミノ酸については、改良された阻害化合物を作り出す目的でなおも変更又は修飾が可能であることが示されたことを理由として設計された、改良された阻害化合物に関する。これらの修飾全てが、新規戦略を提供するものであり、これら修飾のうちのいずれか1つ又はその組合せが、最終的に本発明の文脈において使用される改良された分子の「合理的設計」を招く。本発明は、部分的にしか「定方向進化」又は「指方向突然変異誘発」を起こさなかった化合物を更に改良する目的の戦略も含む。
【0059】
したがって、本発明の他の重要な態様は、p53に結合する、又は好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する方法であって、
a)本発明による少なくとも1種の化合物を用意する工程と、
b)a)の上記化合物を適切に修飾する工程と、
c)b)の上記少なくとも1種の化合物とp53又はその断片との結合、上記少なくとも1種の化合物の安定性、及び上記化合物の不在下でのFOXO4若しくはその上記断片とp53若しくはその上記断片との結合と比較した上記少なくとも1種の化合物の存在下でのFOXO4若しくはその上記断片とp53若しくはその上記断片との結合のうち少なくとも1つを特定する工程と、
d)工程c)で上記特定したものに基づき、工程a)で提供されるとおりの化合物と比較した場合に、p53に結合する、又は好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する改良された化合物を同定する工程と、
を含む、方法である。
【0060】
上記少なくとも1種の化合物の上記結合が、p53又はその上記断片に対して、特異的である及び/又は特異的であるとして特定される/検出される、本発明による方法が好ましい。
【0061】
更に好ましくは、同定されるとおりの上記化合物を、老化細胞、瘢痕細胞、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する及び/又はこれら細胞を殺傷する能力について試験することを更に含む、本発明による方法であり、好ましくは、カスパーゼ活性を特定することを含む。
【0062】
本発明の文脈において使用される改良された分子の「合理的設計」の過程において、及び部分的にしか「定方向進化」又は「定方向突然変異誘発」を起こさなかった化合物を更に改良する目的で、化合物に、上記方法を何回か連続して行うことが可能である。
【0063】
化合物(例えば、ペプチド)の提供に続いて、例えば、化合物の適切な化学合成後、その化合物を修飾することができる。一般に、本発明の化合物をどのように修飾するかについては、多くの方法が当業者に既知であり、文献に開示されている。化合物の修飾は、通常、幾つかのカテゴリー、例えば、a)アミノ酸を異なるアミノ酸へと変異させる/変更すること、b)アミノ酸を、例えば、更なる化学基の付加を通じて化学修飾すること、c)アミノ酸の構造の修飾(例えば、L型からD型へ)又は結合の修飾(例えば、レトロインバース結合の導入)、d)化合物の長さの変更、及びe)分子に更なる基(マーカー基、標識、リンカー、又はキャリア、例えばキレーター等を含む)を付加させることに分類される。
【0064】
FOXO1/3/6とFOXO4との間の進化的差異から、所望の結合活性、及び最終的には阻害活性をも示す改良された阻害化合物を作り出す目的で、幾つかのアミノ酸については、なおも修飾が可能であることが示された。FOXO4-FH断片及びTP53-TAD2ドメインの分析から、TP53の負電荷、及び疎水性Tyrが、FOXO4との結合に介在することが示された。したがって、本発明によるペプチドのアミノ酸は、相互作用の強度に有益であるように、正のアミノ酸へと変異させることができる。例としては、リシン(K)、アルギニン(R)、及びヒスチジン(H)がある。NMR実験は、TP53の負に荷電したアミノ酸が、SQモチーフ(部位)周囲でのFOXO4との相互作用の一因であることも示した。この部位は、リン酸化状態になる可能があり、これを防ぐため、この部位を、アラニン(A)、グリシン(G)、又はセリン(S)のような小型アミノ酸に変異させることができる。そのような変異を導入する方法は、当業者に既知であり、そのような方法として、ペプチドの化学合成中に変更を導入すること、又は遺伝子的な方法で、例えばオリゴヌクレオチドに基づく突然変異誘発、PCRを含む突然変異誘発等により、結果的にヌクレオチド配列をコードするペプチドを改変することが挙げられる。同じく、ランダム突然変異誘発も可能である。予測アミノ酸変更に関する更なる案内は、上記のX1~X12に関する定義の文脈で見つかり、これらは、残りのX13~X18の定義にも容易に応用可能である。
【0065】
そのうえさらに、アミノ酸は、化学修飾により、例えば、合成中の更なる化学基の付加を通じて又は翻訳後若しくは合成後修飾を介して、改変することができる。アミノ酸を修飾する方法は、現行の技術水準で既知であり、例えば、Christopher D. Spicer & Benjamin G. Davis. Selective chemical protein modification Nature Communications volume 5, Article no.: 4740 (2014)又はSakamoto S, Hamachi I. Recent Progress in Chemical Modification of Proteins. Anal Sci. 2019 Jan 10;35(1):5-27に要約されている。
【0066】
同じく、アミノ酸構造の修飾(例えば、L型からD型へ)又はアミノ酸間の結合の修飾(例えば、合成中にレトロインバース結合を導入する)を行うことが可能である。NMRは、3つのN末端アミノ酸LTLが、相互作用に必要ではないことも示した。したがって、化合物の長さは、例えば、これら3つのアミノ酸を除去することにより、修飾することができる。
【0067】
最後に、分子に付加される化学基及び/又は官能基、例えば、マーカー基、標識、リンカーアミノ酸、ステープル、システイン架橋、グリコール化部位、ユビキチン化及び/又はペグ化部位、リンカー又はキャリア、例えば、キレーター等。同じく、FOXO4由来DRIペプチド二量体又は多量体を作ることを可能にするアミノ酸(ステープル)の導入又は付加が含まれる。そのうえさらに、FOXO4由来DRIペプチドの安定性及び/又は老化細胞を排除する効力を向上させる目的の安定化修飾を、含めることができる(例えば、いわゆるエンドキャップ化)。上記FOXO4ペプチドの安定化は、ペプチドが通常切断される部位(複数の場合もある)、例えばNG部位を変異させることによっても達成可能である。ステープル形成は、ペプチド内でi残基とi+4残基又はi残基とi+7残基を架橋させるための2つのa-ペンテニルグリシン残基又はa,a'-ペンテニルアラニン残基を導入することにより達成可能である。これらの残基は、全炭化水素、アルケン含有、デスメチル拘束、すなわちステープルを作り出すのに使用される。ペプチドを架橋する又は拘束するのに使用可能な他の戦略として、ラクタム架橋、水素結合代用物、光スイッチ、チオエーテル、及び「クリック」化学反応により導入されるトリアゾールが挙げられる。
【0068】
次の工程では、修飾された化合物は、上記少なくとも1種の化合物とp53又はその断片との結合のうち少なくとも1つについて試験される。本明細書中で検討されるとおり、p53又はその(TP53のような)結合断片と結合する化合物の特性は、化合物の全ての用途について、それらが治療用又は診断用化合物であるために、必須である。本発明の文脈において、「改良された」結合は、修飾された化合物が、修飾された(例えば、二量体化により、又はマーカー若しくは他の基の付加により)にもかかわらず、未修飾(すなわち、出発)化合物と同程度に結合する両シナリオを包含する。好ましくは、標的、すなわちp53又はその結合断片への結合をより強く呈するように修飾された化合物である。同じく好ましくは、例えば、上記修飾された化合物のin vitro又はin vivoでの安定性が改良されているため、標的、すなわちp53又はその結合断片に対する結合をより長く示す化合物である。更に好ましくは、上記修飾された化合物のリン酸化の減少を示す化合物である。同じく含まれるのは、これらの特性のうち少なくとも2種の組合せである。
【0069】
化合物と標的(すなわちp53及び/又はその結合断片)との結合を検出するアッセイは、当業者に既知であり、そのようなアッセイとして、好ましくは、質量分析、NMRアッセイ、プルダウンアッセイ等が挙げられる。
【0070】
そのうえさらに含まれるのは、競合アッセイ、すなわち、上記少なくとも1種の化合物の存在下での上記修飾された化合物の特性について、上記化合物の不在下でのFOXO4若しくはその上記断片とp53若しくはその上記断片との結合と比較する試験である。
【0071】
上記少なくとも1種の化合物の上記結合が、p53又はその上記断片に対して、特異的である及び/又は特異的であるとして特定される/検出される、本発明による方法が更に好ましい。上記に記載されるとおり、化合物がp53又はその結合断片(例えば、TP53)に結合する特性は、化合物の全ての用途について、それらが治療用又は診断用化合物であるために、必須である。理想的には、結合は、意図する標的、すなわちp53又はその結合断片に対しても、特異的である、又は少なくとも実質的に若しくは本質的に特異的である。このことは、化合物の医薬用途においてどのような望ましくない副作用も低減又は回避することになり、診断用途においてどのようなバックグラウンド又は偽陽性結果も低減又は回避することになる。
【0072】
本方法の最後の工程では、改良された化合物は、本発明の好ましい態様において、工程a)で提供されるとおりの化合物と比較した場合に、工程c)での上記特定に基づき、p53に結合する、又は好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害すると同定される。この機能は、本発明による化合物の老化細胞排除による治療機能にとって必須であると思われるものの、本発明による改良された診断用分子にとっては、そのような特性/機能が、強制的に要求されない場合がある。
【0073】
そのような改良された化合物の同定は、これら化合物(FOXO4-ペプチド等)の、TP53に結合し老化細胞を排除する効力を検出し、任意選択で、この特性を決定づける構造的必要条件を同定すること;及び/又はこれら化合物(FOXO4-ペプチド等)の、老化細胞排除の選択性を検出し、同じく任意選択でこの特性を決定づける構造的必要条件を同定することを含む場合がある。FOXO4は、FOXO1/3及び6、並びに下位生物種のFOXO相同分子種と、幾つかの独自残基において進化的に異なっている。本発明者らは、FOXO1又はFOXO3フォーカスをまったく見つけたことがなく、FOXO1及び3が老化細胞生存度において重要であるという証拠も全く持っていない。したがって、これらのアミノ酸が老化細胞の排除におけるFOXO4-ペプチドの効力を少なくとも部分的に説明づけるかどうか、分析した。FOXO4のものと同様なドメインに基づくD-レトロインバースペプチドは、老化細胞の排除において選択性を示したが、FOXO1又はFOXO3の配列に基づくものでは、老化細胞の排除において選択性を示さなかったということが確認された。
【0074】
更に好ましくは、同定されたとおりの上記化合物を、老化細胞、瘢痕細胞、癌細胞、又は腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する及び/又はこれら細胞を殺傷する活性について試験することを更に含む、本発明による方法であり、好ましくはカスパーゼ活性の特定を含む。既に上記で記載したとおり、当業者なら、細胞培養物中のアポトーシスの程度を特定するin vitro標準アッセイ、例えば、細胞質シトクロムC(アポトーシスのマーカー)のレベル及びTUNEL(アポトーシスのマーカー)のレベルを評価する検査の存在にも更に気づく。こうした標準アッセイを使用して、当業者なら、様々な化合物について、異なる細胞型ごと又は細胞の異なる発達段階ごとの、例えば老化細胞と非老化細胞との比較で、アポトーシス誘導活性を評価及び比較することが容易にできる。他の標準アポトーシスアッセイは、アネキシンVアッセイ及び切断型カスパーゼ3染色である。アッセイは、好ましくは、カスパーゼ3/7活性の上昇、ミトコンドリアシトクロムCの減少、TUNEL陽性度、細胞外アネキシンV陽性度、及び/又は細胞によるヨウ化プロピジウム封入等の細胞死マーカーの上昇、及び/又はカルセインAMの組み込みの減少等の生存度の低下の特定、又はMTS生存度アッセイを含む。細胞生存度は、本質的にアポトーシスとは反対のものであり、これを検出するため、MTTアッセイ(細胞生存度を評価する比色アッセイ)、ATP検出アッセイ、リアルタイム細胞密度(例えば、xCELLigence)アッセイ、又はコロニー形成アッセイが利用可能である。使用されるアッセイについての更なる情報は、文献から、例えば、Elmore S. Apoptosis: a review of programmed cell death. Toxicol Pathol. 2007;35(4):495-516から得ることができる。好ましくは、本発明によるペプチド又は改良されたペプチドは、老化細胞培養物中、細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%で殺傷、消去、除去、又は細胞生存度の低下を起こすならば、そのペプチドは老化細胞においてアポトーシス誘導活性を呈すると見なされる。好ましくは、本発明によるペプチドは、老化細胞においてアポトーシス誘導活性を選択的に呈する、すなわち非老化細胞では呈さない。本発明によるペプチドは、非老化細胞でのアポトーシスよりも老化細胞でのアポトーシスを、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、又はそれより高い倍数で優先する。
【0075】
本発明によるペプチドは、好ましくは単離されている。本発明によるペプチドは、好ましくは、適切なペプチド合成を用いて生成されている。
【0076】
本発明による方法の1つの態様において、上記FOXO4又はそのp53結合断片、p53又はそのFOXO4結合断片、及び/又は化合物(ペプチド)は、例えば、蛍光標識、検出可能標識、安定同位体標識、及び/又は質量標識で、標識される。そのような標識は、文献で既知であり、標識として、FITC、Alexa、Dylight、FAM、及び他のものが挙げられる。検出可能な標識は、抗体、ストレプトアビジン/アビジンで認識されるものである場合があり、又は検出可能な生成物をもたらす酵素反応に基づくものである。質量標識化は、同位体、又は他の適切な質量マーカーを付加させることにより達成可能である。原則として、実験及び治療/画像化目的で使用可能なあらゆる標識が、同様に使用可能である。
【0077】
上記FOXO4又はその上記断片、及び/又はp53又はその上記断片が、組換えにより細胞で発現する、本発明による方法が更に好ましい。ペプチドを組換えにより発現させ、上記組換えで産生された産物を単離及び精製する方法は、当該技術分野で既知であり、それぞれの文献に記載されている。一般に、上記FOXO4又はその上記断片、及び/又はp53又はその上記断片を組換えにより産生させるために任意の適切な細胞が使用可能であり、好ましくは、癌細胞、老化細胞、ヒト非胚性幹細胞、酵母菌細胞、細菌細胞、FOXO4又はそのp53結合断片を発現する組換え宿主細胞の群から選択される細胞であり、上記組換え宿主細胞は、任意選択でp53又はそのFOXO4結合断片を発現する、すなわち使用しようとする構築物の両方又は複数を発現する。
【0078】
次いで、本発明の更に別の態様は、p53に結合する、好ましくはp53に結合して細胞中のFOXO4とp53との相互作用を阻害する本発明による化合物をスクリーニングするスクリーニングツールであって、FOXO4を発現する単離細胞、及び/又はそのp53結合断片を発現する細胞、上記細胞は任意選択でp53を発現する、及び/又はそのFOXO4結合断片を発現する細胞を含む、スクリーニングツールに関する。
【0079】
本発明のスクリーニングツールは、本発明による方法を行う目的で重要な部分であり、化合物の薬学的活性をin vivoで検証する第一工程としても使用可能である。好ましくは、上記FOXO4又はその上記断片、及び/又はp53又はその上記断片は、上記細胞で組換えにより発現する。ペプチドを組換えにより発現させ、上記組換えで産生された産物を単離及び精製する方法は、当該技術分野で既知であり、それぞれの文献に記載されている。一般に、上記FOXO4又はその上記断片、及び/又はp53又はその上記断片を組換えにより産生させるために任意の適切な細胞が使用可能であり、好ましくは、癌細胞、瘢痕細胞、老化細胞、ヒト非胚性幹細胞、酵母菌細胞、細菌細胞、FOXO4又はそのp53結合断片を発現する組換え宿主細胞の群から選択される細胞であり、上記組換え宿主細胞は、任意選択でp53又はそのFOXO4結合断片を発現する、すなわち使用しようとする構築物の両方又は複数を発現する。本発明によるツールの1つの態様において、上記FOXO4又はそのp53結合断片、p53又はそのFOXO4結合断片、及び/又は化合物(ペプチド)は、例えば、蛍光標識、検出可能標識、及び/又は質量標識で、標識される。上記で記載したとおり、そのような標識は、文献で既知であり、標識として、FITC、Alexa、Dylight、FAM、及び他のものが挙げられる。検出可能な標識は、抗体、ストレプトアビジン/アビジンで認識されるものである場合があり、又は検出可能な生成物をもたらす酵素反応に基づくものである。質量標識化は、同位体、又は他の適切な質量マーカーを付加させることにより達成可能である。
【0080】
好ましくは、配列RKK PRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTLAQIYEWMVRTVPYFKDKGDSNSSAGWKNSIRHNLSLHSKFIKVHNEATGKSSWWMLN(配列番号32)又はPRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTL(配列番号33)に記載のペプチド、好ましくは全D-ペプチドであるFOXO4の断片、及び配列AMDDLMLSPDDIEQWFTEDPGP(配列番号34)に記載のペプチドであるp53の断片を含む本発明によるスクリーニングツールである。
【0081】
次いで、本発明の更に別の重要な態様は、診断における、例えば診断用化合物としての、本発明による化合物の使用に関する。明らかに、本発明による化合物は、p53又はp53断片に結合させる、好ましくは細胞中でFOXO4とp53との相互作用を更に阻害する目的で、同定/使用される。これらの特性は、診断の状況でも利用される。より好ましくは、上記少なくとも1種の化合物の結合は、p53又はp53断片又はその上記断片に特異的である、及び/又は特異的であると特定/検出される。このことは、診断用途においてどのようなバックグラウンド又は偽陽性結果も低減又は回避することになる。本発明による化合物(ペプチド)は、好ましくは、例えば、蛍光標識、検出可能標識、及び/又は質量標識で、標識される。上記で記載したとおり、そのような標識は、文献で既知であり、標識として、FITC、Alexa、Dylight、FAM、及び他のものが挙げられる。検出可能な標識は、抗体、ストレプトアビジン/アビジンで認識されるものである場合があり、又は検出可能な生成物をもたらす酵素反応に基づくものである。質量標識化は、同位体、又は他の適切な試料マーカーを付加させることにより達成可能である。とは言うものの、診断法は、標識なしでも実行可能であり、結合は、直接又は間接的に、例えば、NMRを使用して、検出することができる。
【0082】
診断使用又は診断法の1つの具体例として、細胞中のp53又はその断片の発現を検出する方法が考えられ、この方法は、本発明による化合物を用いてp53又はその上記断片を検出することを含み、p53又はその上記断片を発現しない対照細胞に比べて結合が増加している場合は、上記細胞中でp53又はその上記断片が発現していることを示す。本発明による化合物の高い特異性故に、本化合物は、診断用の改良された分子を提供する。診断は、p53関連疾患又は病態、例えば、癌、又は老化細胞を原因とする病態により引き起こされる他の病態、例えば、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、変形性関節症、COPD、筋骨格系疾患、及び認知機能の低下等を検出することを更に含むことができる。
【0083】
本発明の文脈において、「約」という用語は、特に記載がない限り、所定の量の±20%、好ましくは±10%を含むことを意味するものとする。
【0084】
好ましくは、本発明による方法は、自動化に適しており、好ましくは、自動化及び/又は高処理様式で行われる。通常、これには、チップ及びそれぞれの機械、例えば、ロボット等の使用が関与する。自動化は、改良された化合物の同定及び/又はスクリーニングの場合に、特に好ましい。同じく、本発明のスクリーニングツールの使用も、同様に自動化に含めることができる。
【0085】
次いで、本発明の更に別の重要な態様は、対象において老化細胞を処理する又は阻止する医薬組成物を製造する方法に関し、本方法は、本発明による化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程、又は、細胞中のFOXO4とp53との相互作用を好ましくは阻害する改良された化合物を同定する本発明による方法を実行する工程と、同定されたとおりの上記化合物を配合して適切な医薬組成物にする工程とを含む。本発明はまた、本発明による上記方法により得られる、対象において老化細胞を処理する又は阻止する医薬組成物にも関する。
【0086】
「医薬組成物」という用語は、本明細書中で使用される場合、哺乳類、好ましくはヒトへの投与に適切であるものになるような条件下で作られる組成物を示し、例えば、医薬組成物は、GMP条件下で作られる。本発明による医薬組成物は、薬学上許容される賦形剤を含むことができ、賦形剤としては、例えば、特に制限なく、安定剤、増量剤、緩衝剤、キャリア、希釈剤、ビヒクル、可溶化剤、及び結合剤がある。当業者には当然のことながら、適切な賦形剤の選択は、投与経路及び剤形、並びに活性成分及び他の要因に左右される。本発明による医薬組成物は、好ましくは、非経口投与に適している。
【0087】
好ましくは、化合物の混合物及び/又は上記化合物の少なくとも1種と更なる薬学的活性成分との混合物を含む、本発明による医薬組成物である。「薬学的活性成分」という用語は、本明細書中で使用される場合、細胞の生存度及び/又は機能を阻害又は予防する、及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こす、及び/又は抗腫瘍/抗増殖効果を発揮する、例えば、腫瘍細胞の発生、成熟、又は拡散を直接又は間接的に予防する、化合物を示す。この用語は、細胞分裂停止効果のみを引き起こし、単なる細胞傷害性効果をもたらさない作用剤も含む。この用語は、アルキル化剤、例えば、白金薬物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン)等、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ)、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(Ara-C)、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ヒドロキシウレア、及びメトトレキサート等、抗腫瘍抗生物質、好ましくはドキソルビシン、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、コルチコステロイド、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼA阻害剤、サイトカインファミリーのメンバー、放射性同位元素も含む。本発明の文脈において化学療法薬として同じく含まれるのは、タキサン、例えば、パクリタキセル又はドセタキセル等である。
【0088】
別の態様において、本発明は、医薬に使用される、又は医薬として使用される、又は病態若しくは疾患若しくは障害の治療に使用される、本発明による少なくとも1種のペプチド、医薬組成物、又は核酸を提供する。
【0089】
「老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞を原因とする疾患又は病態」という用語は、本明細書中で使用される場合、哺乳類、好ましくはヒト対象における任意の疾患又は症状であって、哺乳類、好ましくはヒト対象における老化細胞の存在、すなわち細胞老化の存在が、上記対象における上記疾患又は症状と関連している、疾患又は症状を示す。
【0090】
正常及び病的変性加齢形質(機能喪失)及び癌(機能獲得)は、細胞老化と因果関係にあることが確立されている。老化線維芽細胞は、乳房の母乳産生の減少に関係があるとされてきており、老化肺動脈平滑筋細胞は、肺高血圧に関係しており、老化皮膚細胞は、表皮菲薄化及びコラーゲン含有量の低下に関連しており、老化星状細胞は、アルツハイマー病及びパーキンソン病に関係しており、老化軟骨細胞は、変形性関節症と関係があるとされてきた。
【0091】
細胞老化と関係があるとされてきた病態及び疾患として、更に以下が含まれる:粥状動脈硬化、肺肺気腫、糖尿病性潰瘍、腎疾患(例えば、Valentijn FA, et al. Cellular senescence in the aging and diseased kidney. J Cell Commun Signal. 2018 Mar; 12(1): 69-82を参照)、脊柱後弯、骨粗鬆症、黄斑変性症、COPD及びインスリン抵抗性、糖尿病、肥満、ラミノパチー、例えば、ハッチンソン・ギルフォード早老症等、ヘルニア、サルコペニア及び悪液質、関節炎、脊柱側弯症、並びに癌。したがって、遺伝子様式で老化細胞を消去することは、加齢促進マウスモデルにおいて示されるとおり、顕著にフィットネスを改善するとともに加齢のパラメーターを低下させる(Baker et al., 2011. Nature 479(7372):232-6)。この概念実証証拠は、実際、治療応用性に乏しい遺伝子様式で得られたものである。本発明は、治療のため老化細胞を標的とし、細胞老化と関連した疾患の治療に使用可能である、新規の改良された化合物及びそれら化合物を同定する方法を提供する。
【0092】
別の態様は、本発明に従って予防又は治療に使用される少なくとも1種の化合物又は医薬組成物に関し、予防される及び/又は治療される上記病態は、老化細胞、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎、変形性関節症(like osteoarthritis)、COPD、筋骨格系疾患、認知機能障害、粥状動脈硬化、肺肺気腫、糖尿病性潰瘍、脊柱後弯、骨粗鬆症、黄斑変性症、COPD及びインスリン抵抗性、糖尿病、肥満、ラミノパチー、例えば、ハッチンソン・ギルフォード早老症等、ヘルニア、サルコペニア及び悪液質、脊柱側弯症、並びに癌を原因とする病態から選択される。
【0093】
上記治療が、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬との併用療法であるか、又は上記治療が、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬で前処理されて、上記処理を生き延びた老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞に施される、本発明による使用のための少なくとも1種の化合物又は医薬組成物が好ましい。
【0094】
その結果として、別の態様は、老化細胞、瘢痕細胞、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎、変形性関節症(like osteoarthritis)、COPD、筋骨格系疾患、認知機能の低下、粥状動脈硬化、肺肺気腫、糖尿病性潰瘍、脊柱後弯、骨粗鬆症、黄斑変性症、COPD及びインスリン抵抗性、糖尿病、肥満、ラミノパチー、例えば、ハッチンソン・ギルフォード早老症等、ヘルニア、サルコペニア及び悪液質、脊柱側弯症、並びに癌を原因とする疾患又は症状の治療又は予防を必要としている対象において、そのような治療又は予防を行う方法に関し、本方法は、上記対象に、少なくとも1種の本発明による化合物、又は本発明による医薬組成物を有効量で投与することを含む。
【0095】
上記治療が、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬との併用療法であるか、又は上記治療が、抗癌化学療法薬又はそれぞれの疾患若しくは病態用の他の標準治療薬で前処理されて、上記処理を生き延びた老化細胞、瘢痕細胞、及び/又は癌細胞に施される、本発明による方法が好ましい。
【0096】
「治療」は、疾患の症状の低減及び/又は寛解を意味するものとする。有効な治療は、例えば、老化細胞の除去、腫瘍量及び癌細胞数の縮小を達成する。治療は、老化細胞の回避(予防)及びその数の減少、癌の拡散の減少も行うことができ、例えば、転移及び/又はその形成に影響を及ぼすこともできる。治療は、ナイーブ治療(naive treatment)(疾患の他のどのような治療もまだ開始されたことがなかった)の場合もあれば、初回治療後(例えば、手術後又は再発後)の治療の場合もある。治療は、併用療法であることも可能であり、併用療法には、例えば、化学療法、手術、及び/又は放射線治療が関与する。老化細胞の除去が有益である疾患又は病態に罹患している、又は罹患している疑いがある対象、特にヒトを治療することができる。
【0097】
本発明の文脈において、予期せず見出されたことは、本発明による化合物が、本発明の実施例及び図面で例示されるとおり、有利に使用することができ、特に治療耐性癌の場合に、最も有効であることである。有効であることに加えて、本発明の化合物は、細胞分裂抑制性なだけではなく、実際に、癌性細胞に対して細胞傷害性であることも示された。本ペプチドは、化学放射線治療として傷害性作用剤で前処理されており、この治療を生き延びた細胞において、最も有効である。したがって、本ペプチドを使用する治療は、細胞傷害性の第1の治療、例えば、化学/放射線治療、食事ストレス、外因性ストレス、酸化ストレス等の後/それに続いて、行うことも可能であれば、上記のとおり、併用療法として行う、すなわち逐次ではなく一緒に施薬する又は一緒に作用するように施薬することも可能である。これは、例えば、BRAF阻害剤等の小分子阻害剤と併用する場合に効率的である。
【0098】
本発明は、更に、本発明による化合物の入った第1の容器と、化学療法薬の入った第2の容器とを備えるキットに関する。キットは、哺乳類、好ましくは、ヒト対象への投与に関する説明書を適切に含むことができる。ヒト対象は、好ましくは、老化細胞、瘢痕細胞、加齢性疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、突発性肺線維症(IPF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎、変形性関節症(like osteoarthritis)、COPD、筋骨格系疾患、認知機能の低下、粥状動脈硬化、肺肺気腫、糖尿病性潰瘍、脊柱後弯、骨粗鬆症、黄斑変性症、COPD及びインスリン抵抗性、糖尿病、肥満、ラミノパチー、例えば、ハッチンソン・ギルフォード早老症等、ヘルニア、サルコペニア及び悪液質、脊柱側弯症、並びに癌を原因とする疾患又は病態に罹患している、又は罹患している疑いがある。本発明の化合物と化学療法薬は、単一剤形、例えば、医薬組成物に配合することができるものの、これは、好ましくは、複数の剤形に配合され、本発明の化合物は1つの容器に入っており、化学療法薬は別の容器に入っている。本発明に従って使用するためのキットにおいて、本発明の化合物と化学療法薬は、好ましくは同時投与される。好ましくは、上記ペプチドは、上記化学療法薬の投与後又は投与に続いて投与される。好ましくは、本発明の化合物は、化学療法薬を用いた治療の結果として老化してしまった細胞を、消去する、殺傷する、又はその生存度を低下させることが可能なやり方で、アジュバントとして投与される。予期せず見出されたこととして、本発明による化合物は、現行の化学療法薬のオフターゲット効果を低減させることが可能である。本発明によるキットは、好ましくは、本発明による化合物と化学療法薬との最適な組合せ効果を得る投薬レジメンの説明書を備える。
【0099】
本発明の別の態様において、次いで、本発明は、診断キットに関し、本キットは、本明細書のとおりの本発明による方法を行うための材料を、任意選択で助剤と一緒に、1つ又は別個の容器に入れて備え、及び/又は本発明による上記方法を行うための説明書を備える。キットは、化合物及び/又は本明細書中に同定されるとおりの化合物を含むことができる。そのうえさらに、含まれるものとして、色素、抗体、及び上記で開示されるとおりの検出アッセイ用の他の構成要素が可能である。キットは、化合物及び/又は本明細書中に同定されるとおりの化合物を、上記で開示されるとおりの標識化形で含むことができる。
【0100】
ここで、本発明を以下の実施例において添付の図面を参照して更に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本発明の目的で、本明細書中に引用する参照文献は全て、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0101】
配列番号1~4、及び7~31、及び43~66は、本発明のペプチド、又はその一部分を示す。
【0102】
配列番号5、6、及び42は、対照ペプチド、例えばFOXO4-DRI/CL03001を示す。
【0103】
配列番号39及び40は、それぞれ、ヒトFOXO4及びp53のアミノ酸配列を示す。
【実施例】
【0104】
本発明の文脈において、FOXO4-DRI又はCL03001という用語は、ペプチド及び/又は対照ペプチドに関する場合は、D-アミノ酸配列LTLRKEPASEIAQSILEAYSQNGWANRRSGGKRPPPRRRQRRKKRG(配列番号6)又はL-アミノ酸配列PRKGGSRRNAWGNQSYAELISQAIESAPEKRLTL(配列番号42)を持つペプチドを示す。
【0105】
細胞培養:
ヒトIMR90、WI38、及びRPE細胞を、10%FCS及び1%ペニシリン/ストレプトアビジンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Lonza)中、37℃で、3.0%O2及び5.0%CO2を用いて成長させた。老化を誘導するため、細胞に10 Gyの電離放射線(Gammacell 1000)を照射し、細胞を最短でも10日間放置して、老化させた。
【0106】
GBM8細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12(DMEM F-12)中で培養した。ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12は、高グルコース、L-グルタミン含有、フェノールレッド不含であり、1%(10 mM)HEPES、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2%B-27(50X)、5 μg/mlのブタ腸粘膜由来ヘパリンナトリウム塩グレードI-A、20 ng/mlの組換えヒト線維芽細胞増殖因子(rhFGF)、及び20 ng/mlの組換えヒト上皮成長因子(rhEGF)が補充されていた。細胞を、マトリゲルマトリクス(DMEM F-12に20倍希釈)でコーティングしたプラスチックウエアに入れ、加湿インキュベーター中37℃、5%CO2、及び3%O2で培養した。
【0107】
生存度アッセイ及びアポトーシスアッセイを行うため、細胞を分割して96ウェルプレートに入れ、2日後、ペプチドで処理した。非老化細胞及び癌細胞は、1500細胞/ウェルで播種し、一方、老化細胞は、8000細胞/ウェルで播種した。
【0108】
オルガノイド培養:
オルガノイドは、加湿インキュベーター中37℃及び5%CO2で成長させた。全てのオルガノイドは、advanced DMEM/F12(Lonza)中のマトリゲル(Corning)液滴中で培養した。advanced DMEM/F12には、1%glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%(10 mM)HEPES、10%ノギン条件培地、2%B-27(50X;(Thermo/Life Technologies)、N-アセチルシステイン((Sigma-Aldrich、1.25 mM))、A83-01(Tocris、500 nM)、及びSB203580(Invitrogen/Life Technologies、3 μM)が補充されていた。生存度アッセイ及びアポトーシスアッセイを行うため、オルガノイドを氷冷した培地に再懸濁させることで継代培養し、続いて15 ml試験管中4℃で遠心した。得られるペレットを、37℃で5分間トリプシン処理して、単一細胞を得て、続いてadvanced DMEM/F12培地で2回洗った。次いで、細胞をマトリゲルに再懸濁させ、5 μlの液滴で96ウェルプレートに播種した。15分後、ウェルに新鮮な培地100 μlを加えた。播種から2日後、オルガノイドに、ペプチド及び化学療法処理を加えた。
【0109】
カスパーゼアッセイ:
カスパーゼアッセイについては、処理の2日後、培地にカスパーゼ-Glo3/7アッセイ試薬(Promega)を加えた。次いで、プレートをアルミニウム箔で包んで、シェーカー上室温で1時間インキュベートし、続いて発光プレートリーダーで測定した。
【0110】
MTSアッセイ:
処理から6日後、細胞を、10 μlのCellTiter 96(商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega)とともに、37℃で1時間インキュベートして、MTSアッセイを行った。続いて、Spectramax M5eを用いて、490 nmで吸光度を測定した。
【0111】
オルガノイドで行う生/死アッセイ:
ペプチド及び/又は化学療法処理から3日後の大きい方のオルガノイド両方で、又は単細胞として処理し、アッセイを行う前に2週間成長させたオルガノイドで、生/死アッセイを行った。アッセイを行うため、オルガノイドの培地に、カルセインAM(1:1000)及びヨウ化プロピジウム(PI;1:100)を加え、生細胞及び死細胞をそれぞれ検出した。次いで、オルガノイドを、Zeiss Cell Observer顕微鏡で撮影し、FIJIを用いてシグナルを定量した。
【0112】
ライブ撮影:
オルガノイド及びIMR90細胞を、96ウェル細胞培養プレート中で成長させ、488IncuCyteカスパーゼ3/7試薬アポトーシス用(Sartorius)又はIncuCyteカスパーゼ3/7レッドアポトーシスアッセイ試薬(Essen Bioscience)いずれかをウェルに加えた。ペプチドを直接加えてから、プレートを、熱及びCO2制御コンパートメントを備えるZeiss Cell Observer顕微鏡に移した。続いて、ライブ撮影を開始した。ライブ撮影では、画像を、60時間の間、2時間ごとに記録した。画像は、Zen画像処理ソフトウェア(Zeiss)を用いて処理した。
【0113】
あるいは、ライブ撮影は、LSM880共焦点顕微鏡で行った。この実験の場合、オルガノイドを、ガラス底細胞培養皿に播種し、細胞生存度を測定するためのカルセインAM(Sigma-Aldrich)及びIncuCyteカスパーゼ3/7レッドアポトーシスアッセイ試薬(Essen Bioscience)とともにインキュベートした。ペプチドを直接加えてから、撮影を開始した。
【0114】
マウス
マウス実験は、オランダ動物倫理委員会の承認後に行った。これらの実験には、オスNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ/Jマウス(Charles River)を使用した。ホタルルシフェラーゼを有するヒトCRC29結腸直腸癌オルガノイドを盲腸に移植して、この部位で原発腫瘍を形成させた。移植は、ケタミン及びデクスメデトミジンの麻酔下で行った。また、動物には、手術の30分前及び翌日に、カプロフェンを投与した。移植から14日後、イソフルランを用いてマウスを鎮静させ、BioSpace Imagerで撮影した。続いて、動物を、PBS又は5'-フルオロウラシル(5-FU)を用量50 mg/kgのいずれかでi.p.注射することにより処置した。初回用量のCL04183(2.5 mg/kg)は、5-FU処置の1週間後に、i.v.注射により投与し、この処置を2日後及び4日後に繰り返した。移植から4週間後、再度マウスを撮影して治療効果を特定し、続いて屠殺した。全ての臓器を収集し、再度BioSpace Imagerで撮影し、M3ビジョンソフトウェアを用いてルシフェラーゼシグナルを定量した。
【0115】
免疫組織化学
肝臓及び肺のパラフィン切片を、エタノール濃度を下げながら再水和させてから、TBSで洗い、抗原をアンマスクするため10 mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6)中で20分間煮沸した。スライドを30分間放冷した後、0.2%TX-100含有TBSを用いて、組織を、室温で5分間、透過処理した。続いて、切片をTBSで洗い、2%w/v二次抗体対応血清(例えば、ロバ又はヤギ)及び0.1%魚ゼラチン含有1%BSAを含有するブロック緩衝液中で1時間インキュベートした。次いで、切片を撥水性ペンで取り囲み、TBS/1%BSAで希釈した一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。翌日、組織を、TBSで3回洗ってから、ブロック緩衝液で希釈した蛍光標識化二次抗体とともに1時間インキュベートした(ヘキスト33342による核染色を含む)。続いて、スライドをTBSで2回洗い、Sudanブラック溶液中で20分間インキュベートしてバックグラウンドを低下させ、脱塩水で洗った。次いで、Vectashieldを用いて切片をマウントして、LSM880 Zeiss共焦点顕微鏡を用いて撮影した。
【0116】
アポトーシス染色
肺転移についてTUNELアッセイを行って、処置後のアポトーシス誘導を特定した。再水和させた切片を、20 μg/mlのProtKのPBS溶液で15分間処理し、0.1%Triton X-100含有0.1%クエン酸ナトリウムで透過処理した。続いて、10%TUNEL酵素の標識化溶液(ROCHE)を用いて、37℃で1時間、組織を標識した。核をヘキスト33342(ThermoFisher)で標識してから、スライドを、ソフトセット封入剤(Vectashield)(soft set mounting medium (Vectashield))を用いてマウントした。LSM880共焦点顕微鏡(Zeiss)を用いて画像を撮影し、FIJIを用いてTUNEL陽性細胞のパーセンテージを分析した。
【0117】
タンパク質発現及び精製:
ヒトp53の1~312断片(p53-TADBD)、94~312断片(p53-DBD)、1~94番アミノ酸断片(p53-TAD)、及び37~57番アミノ酸断片(p53-TAD2)の発現構築物を、該当する最適化p53 cDNA構築物の合成により生成させ、NcoI/BamHI制限部位(Genscript)を用いてpETM11-ZZ-His6ベクターに挿入した。本発明者らは、ヒトFOXO4の86~208番アミノ酸の断片(FOXO4-FH)についても、pETM11-ZZ-His6ベクターに挿入された最適化cDNA発現構築物(Genscript)を生成させた。本発明者らは、3種の異なる化学的にコンピテントなE.コリ(E.coli)株(タンパク質発現用にE.コリBL21(DE3)及びE.コリBL21-(DE3 Star)並びにプラスミドDNAの増幅用にE.コリTOP10)を使用した。
【0118】
公開されるとおりの当業者に既知であるプロトコルを用いて、タンパク質発現及び精製を行った。
【0119】
蛍光偏光:
116 μlの特定ペプチドの溶液(1 μM~100 μMの範囲)を調製した。続いて、4 μlのFITC標識化p53ペプチド(原液濃度15 μM、最終濃度を500 nMとする)を加えた。次いで、35 μlを、384ウェルプレートの各ウェルに移した。測定は、3つ組で行った。
【0120】
ClarioStar Plusプレートリーダーでデータを得た。終点測定は、1ウェルあたり200回フラッシュして行った。波長482 nmの励起フィルター及び530 nmの蛍光フィルターを用い、測定ごとにゲイン調節及び焦点高さ調節を行った。蛍光強度、並行蛍光偏光、及び垂直蛍光偏光を記録した。
【0121】
MARS Version 3.4(BMG)、Microsoft Excel、及びGraphPad Prism Version 8を用いて、データ分析を行った。
【0122】
NMR化学シフトマッピング:
100 μMのp53-TAD2を500 μl入れた5 mm NMR管を調製し、1H,15N HSQC NMRスペクトルを記録した。次いで、段階的に量を増加させながらペプチドを加え、続いて、各段階後に別途1H,15N HSQCスペクトルを測定した。NMRスペクトルは、TXI 600S3プローブヘッドを備えた600 Mhz Bruker Avance NOE NMR分光計で取得した。データの取得及び処理は、Topspin3.5及びTopspin4.0(Bruker)で行った。データ分析、ピーク選出、及び帰属は、ccpNMRを用いて行った。
【0123】
表1:本発明によるペプチドの選択
【表1-1】
【表1-2】
【符号の説明】
【0124】
図2A)
% p53 binding p53結合%
Unbound 未結合
図2B)
HEK293T lysate HEK293Tライセート
Streptavidin beads ストレプトアビジンビーズ
図3
% Caspase activity カスパーゼ活性%
Ctrl + FOXO4-DRI 対照+FOXO4-DRI
Ctrl + CL04009 対照+CL04009
Sen + FOXO4-DRI 老化細胞+FOXO4-DRI
Sen + CL04009 老化細胞+CL04009
Concentration in μM 濃度(μM単位)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Sen - FOXO4-DRI 老化細胞-FOXO4-DRI
Sen - CL04009 老化細胞-CL04009
Concentration in μM 濃度(μM単位)
図4
TAD2 peptide binding TAD2ペプチド結合
Signal (a.u.) シグナル(任意単位)
図5
Time in days 時間(日数単位)
図6
Start 開始
24h 24時間
60h 60時間
Red = Active Caspase-3/7 赤色=活性カスパーゼ3/7
(=apoptosis) (=アポトーシス)
図7
% Caspase activity カスパーゼ活性%
Ctrl + CL04022 対照+CL04022
Ctrl + CL04088 対照+CL04088
Sen + CL04022 老化細胞+CL04022
Sen + CL04088 老化細胞+CL04088
Concentration in μM 濃度(μM単位)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Concentration in μM 濃度(μM単位)
図8
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Concentration in μM 濃度(μM単位)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Concentration in μM 濃度(μM単位)
図9A)
% Caspase activity カスパーゼ活性%
図9C)
% Caspase activity カスパーゼ活性%
図10A)
MSI CRC line 1 MSI CRC 株1
MSI CRC line 2 MSI CRC 株2
MSI CRC line 3 MSI CRC 株3
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
[CL04022 in uM] [CL04022(μM単位)]
図10B)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
図11A)
Amount Peptide [%] ペプチド量[%]
Time (h) 経過時間(時間)
図11B)
Compound 化合物
Matrix マトリクス
図12A)
Oxaliplatin オキサリプラチン
Caspase カスパーゼ
図12B)(続き)
5'-Fluorouracil 5'-フルオロウラシル
Alive 生
Dead 死
図13
% Organoid outgrowth オルガノイド増殖%
[Compound (μM)] [化合物(μM)]
図14A)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Non-senescent 非老化
Senescent 老化
図14B)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Non-senescent 非老化
Senescent 老化
図15
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
Viability (AqueousOne) 生存度(AqueousOne)
図16A)
Alive/Dead 生/死
Untreated 未処理
High dose '5-FU 高用量5'-FU
図16B)
Relative expression 相対発現
Hours 時間
Calcein-AM カルセインAM
Caspase カスパーゼ
図16C)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
[Compound] (μM) [化合物](μM)
図17
% Caspase activity カスパーゼ活性%
[Compound] (uM) [化合物](μM)
図18
Before 投与前
Side view 側面図
Top view 上面図
Crop 拡大
図19A)
CL04183 (1 wk) CL04183(1週間)
Tumor luminescence 腫瘍発光
(Fold change vs. baseline) (ベースラインに対する変化倍数)
図19B
Lung 肺
% luminescence compared to PBS PBSと比較した発光%
図20A
Lung 肺
Liver 肝臓
図20B
Lung 肺
% tumor load in lung (relative to PBS) 肺の腫瘍量%(PBSとの比較)
Liver 肝臓
#Number of metastases 転移数
図21
% Apoptotic cells (TUNEL) アポトーシス細胞%(TUNEL)
図23A)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
図23B)
% Viability (AqueousOne) 生存度%(AqueousOne)
【配列表】
【国際調査報告】