(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 283/01 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C08F283/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549872
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2021054481
(87)【国際公開番号】W WO2021170596
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520060025
【氏名又は名称】エーシーアール ザ サード ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ACR III B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100109793
【氏名又は名称】神谷 惠理子
(72)【発明者】
【氏名】ポステュムス,ヴィレム
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB041
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4J127BB251
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4J127FA48
(57)【要約】
本発明は、(メタ)アクリレート化合物と、少なくとも下記試薬から形成されるポリエステルとを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
a)イタコン酸および/または無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;及び
d)少なくとも1つの二官能性または多官能性アルコール、好ましくは少なくとも1つのジオールを含む試薬;
前記試薬a)の合計重量(すなわち、イタコン酸および/またはイタコン酸無水物の合計重量)が、不飽和ポリエステル樹脂組成物で使用される二塩基酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。本発明はさらに、構造部品およびゲルコートのための前記不飽和ポリエステル樹脂の用途に関する。本発明はまた、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する製造方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物と、
少なくとも下記試薬から形成されるポリエステルとを含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
a)イタコン酸及び/又は無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;及び
d)少なくとも1種の二官能性または多官能性アルコールを含む試薬;
前記試薬a)の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される二塩基酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルが形成される前に、試薬b)、試薬c)、および所望により試薬a)から反応混合物が形成される、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
揮発性有機化合物(VOC)の重量が、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満である、請求項1又は請求項2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、および/またはメタクリル酸メチルの合計重量が、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物の総重量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリレート化合物の重量が、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の5~95重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%、例えば40重量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
イタコン酸エステル化合物、好ましくはイタコン酸ジアルキル、より好ましくはイタコン酸ジメチル(DMI)をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート化合物とイタコネート化合物との合計重量は、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の5~95重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%、例えば40重量%である、請求項6に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記DCPDの添加量が、前記ポリエステルの総重量の10重量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
遷移金属塩又は遷移金属錯体をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
コバルト塩又はコバルトポリマーをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
構造体の一部を構成するために用いられる材料としての、請求項1~10のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の使用。
【請求項12】
ゲルコート用組成物またはコーティング用組成物としての、請求項1~10のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の使用。
【請求項13】
開放型における、請求項11又は請求項12に記載の使用。
【請求項14】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法、好ましくは請求項1-10のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、該製造方法は、
少なくとも下記試薬からポリエステルを形成する工程、
a)イタコン酸及び/又は無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、及び/又はフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;及び
d)少なくとも1つの二官能性または多官能性アルコールを含む試薬;
並びに得られたポリエステルを(メタ)アクリレート化合物と混合することにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得る工程を含み、
前記試薬a)の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される二塩基酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である製造方法。
【請求項15】
前記ポリエステルを形成する前に、試薬b)、試薬c)、および所望により試薬a)から反応混合物を形成する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の分野および当該組成物を製造する方法に関する。特に、本発明は、低臭気で放出物が少ないポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、とりわけ閉じられていない型(開放型)内で、複合部品および製品を製造するために使用される。複合部品および製品では、樹脂組成物に、強化繊維を添加することはよくある。最終製品の効率的な製造および満足できる性能のために、樹脂組成物は多くの要件を充足する必要がある。
【0003】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、例えば、強化繊維間の空間を充填するように良好に流動する必要があるが、過度に希薄になると、硬化前に組成物が再び流出してしまうので、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が低くなりすぎないように、バランスさせる必要がある。
【0004】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化時間は、液状不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを型内で結合させるのに十分な処理時間を確保できるように、調整する必要があるけれども、硬化が開始したならば、硬化時間が長くなりすぎて、製品硬度が脱型可能な程度に到達できないようなことがあってはならない。樹脂硬化が脱型に十分であるかどうかを評価するための一般的な方法は、Barcol934.1試験装置を用いてASTM-648に従って硬度を測定することである。硬度スケールの値は、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。
【0005】
完成した製品では、硬化した樹脂は、製品寿命の間に予想される機械的負荷および温度に対して耐性を有する必要がある。従って、硬化した樹脂の熱変形温度(HDT)は十分に高くなければならない。
【0006】
反応性希釈剤としてスチレンを含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物は、これらの要件のいくつかを満たすことができる。しかしながら、処理中にかなりのVOCを放出する。さらに、スチレンは発癌性、突然変異原性、又は生殖毒性(CMR)に分類される。このことは、高濃度のスチレン環境に作業者が暴露されることを避けるために、適切な換気(および換気空気の任意処理)が必要であることを意味する。この理由のために、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、好ましくは低臭気で、好ましくはCMRでない不揮発性反応性希釈剤を用いる必要がある。しかしながら、このような既存の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、一般に、表面硬化が不十分であったり、強度または耐熱性が劣っていたりする。
【0007】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、ラジカル重合によって硬化される。ラジカル重合は、一般に、酸素によって強く阻害される。開放型に適用される不飽和ポリエステル樹脂組成物については、樹脂の空気側が硬化しにくいということが知られている。スチレンのような揮発性反応性希釈剤を用いた樹脂の場合、物理的に乾燥すると、表面にほとんど固体であるポリエステルリッチ層が残る。この(ほとんど)固体であるポリエステルリッチ層は酸素に対してバリヤー層を形成し、これにより、表面直下の樹脂が適切に硬化できるようになり、手触りで乾燥していると感じられる(タックフリー)表面を形成する。不揮発性希釈剤を用いると、ラジカル重合だけで固化が起こり、空気に暴露している表面では酸素により硬化が強く阻害される。不揮発性の反応性希釈剤を用いた樹脂の表面では、硬化開始の1日後であっても、依然として液体であるかまたは粘着性を有したままであることが多々ある。他の場合には、表面硬化が不十分なために表面が柔らかいという場合もある。
【0008】
US2004/0220340には、不飽和ポリエステルとウレタン(メタ)アクリレートとを組み合わせて製造されたスチレンを含まない樹脂組成物が記載されている。この出願の特許請求の範囲では、適切な性能を達成するために、不飽和ポリエステル樹脂をヒドロキシル(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートと混合する必要があるとしている。これらの樹脂は、ヒドロキシル基濃度が高いために吸水しやすく、このことが、材料本来の特性として、耐加水分解性を低下させることになる。さらに、これらの樹脂の製造は比較的複雑である。クレームされた樹脂組成物は、異なる手順に従って2つの異なる樹脂を合成し、これらを組み合わせることを必要とする。両方の樹脂を同じ反応器で製造する場合、中間で洗浄工程が必要となる。あるいは、異なる樹脂毎に、専用の別個の反応器を使用する場合、2種類の樹脂用に別々の混合タンクが必要である。いずれの方法も、必要な設備および工程計画および物流のために、標準的な不飽和ポリエステル樹脂の製造よりもかなり複雑になる。複雑になるほど、生産コストが増大し、生産時のエラーの機会も増加する。従って、1つの反応器および単一のバッチで製造することができる樹脂組成物が非常に好ましい。
【0009】
US2015/0018479には、表面硬化を改善するための希釈剤としてジアリルトリメチロールプロパンメタクリレートを使用することが記載されている。この溶液は合理的な硬化を提供するが、別の欠点がある。開放型の用途では、通常、硬化は過酸化物によって開始される。過酸化物は、促進剤によって活性化される必要がある。最もよく使用される促進剤はオクタン酸コバルトである。コバルトおよび他の酸化型乾燥剤は、ジアリルトリメチロールプロパンメタクリレートからアリルエーテル基の酸化を触媒し、アクロレインの生成をもたらす。アクロレインは揮発性であり、毒性が高く発癌性であるので、この副反応がおこることは非常に望ましくない。この副反応は、一般にコバルトおよび酸化型乾燥剤を用いて行うことが知られている。このように、コバルトまたは他の遷移金属と組み合わせてアリルエーテル基を使用することは、開放型の用途では避けることが好ましい。
【0010】
UV硬化性樹脂は、典型的には、低揮発性アクリレートまたはメタクリレート希釈剤を用いて製造される。このような樹脂では、表面硬化が不十分であることは、よく知られた欠点である。表面硬化を改善することができる異なる添加剤のリストは、Progress in Organic Coatings 77(2014)pl789-1798に記載されている。記載されている添加剤は、いずれも不飽和ポリエステル樹脂、毒性、異様な臭気、黄変、および入手困難性等の欠点を有する。これらの添加剤のいずれも、貯蔵安定性および安全な使用が必須である開放型の用途の不飽和ポリエステルに適していない。
【0011】
表面硬化を改善する別の方法としては、不飽和ポリエステル樹脂組成物を高温、例えば60~80℃で後硬化する方法である。この後硬化はエネルギー集約的であり、サイクル時間が増大し、特別な装置を必要とする。これらの欠点は、製品が大型化するときに、最も顕著になる。
【0012】
好ましくは、硬化された樹脂は、製品において予期される荷重及び温度に耐えることができるべきである。種々の適用にあたり、最小値は広範に変化し得る。しかしながら、構造物への用途の場合には、典型的には、以下の最小の要件が設定される。樹脂のHDTは好ましくは55℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。破断時の伸び(破断伸度)は好ましくは1.5%以上、より好ましくは2.0%以上、最も好ましくは2.5%以上である。樹脂のモジュラスは、2.0GPa以上、好ましくは2.5GPa以上、より好ましくは3.0GPa以上、最も好ましくは3.5GPa以上である。引張強度は、好ましくは30MPa以上、好ましくは40MPa以上、より好ましくは50MPa以上、最も好ましくは60MPa以上である。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、上記課題の1つまたは複数に対処する樹脂組成物を提供する。本発明の好ましい実施態様はまた、上記課題の1つまたは複数を解決する。
【0014】
本発明の目的は、硬化物の硬化および機械的性質に関して十分な性能を維持しながら、VOC放出に関して改良され得る硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、特にこれらの樹脂組成物が開放型の用途に使用する場合、VOCまたは有害な空気汚染物質(HAP)からの放出が少なく、スチレンを含まないまたはスチレン含有率が低い不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、硬化がとても速い不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。好ましくは、Barcol934.1試験装置を使用するASTM-648による製品の硬度は、該装置のスケールの値で10超であり、より好ましくは20以上である。十分な硬度に到達すると、製造された部品を金型から取り外すことができる。要求される硬度は、所望の脱型時間に応じて、好ましくは24時間後、より好ましくは16時間後、さらに好ましくは4時間後、最も好ましくは2時間後に達成される。
【0017】
本発明の別の目的は、硬化開始から24時間以内にタックフリーの表面、開放型が使用されるときでも、好ましくは、型と接触している面および大気と接触する面の両方でタックフリーの表面を提供できる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、十分に高いHDTを有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することであり、好ましくはHDT55℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。
【0019】
本発明の他の目的は、構造用樹脂およびゲルコート用樹脂のための不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、CMRに分類されない不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明にて明らかにされる。
【0022】
本発明の一態様は、以下を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する。
(メタ)アクリレート化合物、及び任意成分としてのイタコネート化合物と:
少なくとも以下の試薬から形成されるポリエステルとを含み、
a)イタコン酸および/または無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;及び
d)少なくとも1つの二官能性または多官能性アルコールを含む試薬;
試薬a)の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用されるジカルボン酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリエステルが形成される前に、試薬b)、試薬c)、および所望により試薬a)から、反応混合物が形成される。反応混合物が試薬b)および試薬c)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と、試薬a)および試薬d)とから形成される。反応混合物が試薬b)試薬c)および試薬a)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と試薬d)とから形成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、揮発性有機化合物(VOC)の重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。いくつかの実施形態では、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンおよび/またはメチルメタクリレートの合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の10重量%未満であり、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。好ましくは、希釈剤の蒸気圧は100Pa未満(20℃)、より好ましくは10Pa未満(20℃)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレート化合物の重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の少なくとも5~95重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%、例えば40重量%である。メタクリレートは、皮膚感作性における有利な相違点を考慮すると、アクリレートよりも好ましい。
【0026】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物中の(メタ)アクリレート化合物は希釈剤、好ましくは反応性希釈剤として機能する。
【0027】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物はイタコネート化合物、好ましくはジアルキルイタコネート、より好ましくはジメチルイタコネート(DMI)を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、好ましくは希釈剤として、より好ましくは反応性希釈剤として、ジメチルイタコネートまたは他のイタコネートモノマーを含む。イタコネートモノマーは、単独で、またはメタクリレートおよび/またはアクリレート希釈剤と組み合わせて使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、イタコネート化合物および(メタ)アクリレート化合物の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全重量の少なくとも5~95重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%、例えば40重量%である。イタコネートと(メタ)アクリレート化合物との比率は特に限定しないが、希釈剤の重量の少なくとも1/4は(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、希釈剤の重量の少なくとも1/3は(メタ)アクリレート化合物であり、最も好ましくは希釈剤の重量の少なくとも1/2は(メタ)アクリレート化合物である。
【0030】
いくつかの実施形態では、DCPDの添加重量は、ポリエステルの総重量の少なくとも10重量%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、遷移金属塩または遷移金属錯体を含む。いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、コバルト塩またはコバルトポリマーを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、光開始剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、無機充填剤を含んでもよい。
【0033】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の使用、またはその実施態様、好ましくは開放型で成形される構造部品用の構造材料としての使用を提供する。本発明のさらなる態様は、ゲルコート用組成物またはコーティング用組成物として、好ましくは開放型内での、本明細書に記載の樹脂またはその実施形態の使用を提供する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、好ましくは、本発明の実施形態による不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
少なくとも以下の試薬からポリエステルを形成する工程:
a)イタコン酸および/または無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;及び
d)少なくとも1つの二官能性または多官能性アルコールを含む試薬;
得られたポリエステルを、(メタ)アクリレート化合物と、場合によりイタコネート化合物とを混合して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得る工程を含み、
前記試薬a)の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用されるジカルボン酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0035】
いくつかの実施形態では、この方法は、ポリエステルを形成する前に、試薬b)、試薬c)、および所望により試薬a)からの反応混合物を形成する工程を含む。反応混合物が試薬b)および試薬c)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と試薬a)および試薬d)から形成される。反応混合物が試薬b)試薬c)および試薬a)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と試薬d)とから形成される。
【0036】
本明細書に記載される樹脂の好ましい実施態様はまた、使用および方法のための好ましい実施態様であり、その逆もまた同様である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下で使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈が他意を明確に示していない限り、単数および複数の両方を含む。
【0038】
用語「comprise又はcomprises(含む)」は、以下に使用されるように、「including又はinclude(包含する)」又は「contain(含有する)」と同義であり、「含有する」は、包括的またはオープンであり、言及されていない部分、要素または方法のステップの付加を除外しない。本明細書において、特定の特徴、部品または工程を「含む」製品またはプロセスを参照するとき、他の特徴、部品または工程も存在する可能性を意味するが、列挙された特徴、部品または工程のみを含む実施形態を参照することもできる。
【0039】
数値範囲による数値の例は、これらの範囲内のすべての値および断片的範囲、並びに引用された端点を含む。
【0040】
パラメータ、量、期間などの測定可能な値を参照するときに使用される用語「約」は、ここに開示された本発明に適用された改変である限り、特定の値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下の変動を含むことを意図している。用語「約」がそれ自体を意味する値も開示されている値であると理解すべきである。
【0041】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、その全体が参考として援用されると考えられる。
【0042】
特に限定されない限り、技術的用語および科学的用語を含む本発明に開示された全ての用語は、当業者が通常それらを与える意味を有する。さらなるガイダンスのために、定義は、本発明の説明において使用される用語をさらに説明するために含まれる。
【0043】
本発明は、表面硬化特性に関して改良された不飽和ポリエステル樹脂組成物を、広範に提供する。本発明の樹脂組成物は、特に周囲温度の空気雰囲気下でも、薄い積層体において効率的な硬化を示すことができる。さらに、本発明は、引張強度、破断伸度、HDT、表面硬度、加工特性、および製造容易性のバランスが良好な不飽和ポリエステル樹脂を、広範に提供する。
【0044】
さらに、本発明は、特にこれらの樹脂組成物が開放型での用途のように、開放空気中で使用される場合に、VOCまたは有害な空気汚染物質(HAP)からの放出を少なくできるように、スチレンを含まない又はスチレン含有率が低い不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0045】
本発明の一態様は、以下を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する。
(メタ)アクリレート化合物;及び
少なくとも下記試薬から形成されるポリエステルを含む
a)イタコン酸および/または無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;および
d)少なくとも1種の二官能性または多官能性アルコール、好ましくは少なくとも1種のジオールを含む試薬。
ここで、試薬a)の合計重量(すなわち、イタコン酸および/または無水イタコン酸の合計重量)は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用されるジカルボン酸および無水物の合計重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0046】
不飽和ポリエステル中にDCPD残基が存在することは、表面硬化に有益である。DCPDは、反応性希釈剤として(メタ)アクリレート化合物を有する樹脂組成物の表面硬化を助けるが、それ自体では、スチレンを多く含む樹脂組成物と比べて、不揮発性の反応性希釈剤を用いた場合の樹脂組成物の硬化開始がはるかに劣っていることを十分に補償するのには有効ではない。24時間後に、樹脂表面は、手触りで乾燥したと感じることができるが、トップ層はまだ硬化しておらず、柔らかいままである。驚くべきことに、DCPD-ポリエステル樹脂中のイタコン酸残基およびマレイン残基またはフマル酸残基が組み込まれることで、樹脂表面の硬度を有意に改良する相乗効果を発揮することが見出された。
【0047】
さらに、ポリエステルは、未硬化樹脂組成物の状態での粘度に有益であることが見出され、硬化後の樹脂硬化物の機械的特性、熱変形温度を改善し、さらに、吸水率の低減を可能にする。前述の特性は、反応性希釈剤の選択にも依存するが、本発明で使用されるポリエステルは、同じ反応性希釈剤中での従来のポリエステル主鎖と比較して、前述の特性との間でより良好にバランスできることが見出された。
【0048】
「イタコン酸と無水イタコン酸との合計重量」という用語は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を形成するために使用される場合の全てのイタコン酸および使用される場合の無水イタコン酸の重量の合計を意味する。
【0049】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、ポリエステルが形成される前に、試薬b)、試薬c)および任意の試薬a)から形成される。
【0050】
ある実施形態では、ポリエステルは4種類の試薬a)、b)、c)およびd)から形成されるが、反応混合物は、試薬b)およびc)のみでも形成される場合があることに留意すべきである。反応混合物が試薬b)及び試薬c)の2つの試薬と試薬a)の3つの試薬から形成される場合には、試薬d)を反応混合物に添加してポリエステルを形成する。
【0051】
いくつかの実施形態では、反応混合物は以下から形成される。
試薬b)及び試薬c);または
試薬a)、試薬b)及び試薬c)
【0052】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、特に試薬が無水物を含む場合、水の存在下で形成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、反応混合物を形成する前に、試薬a)および/または試薬b)中に存在する無水物は加水分解される。好ましくは、無水物を含む試薬に水を添加して、試薬を加熱する。
【0054】
いくつかの実施形態では、ポリエステルの形成中に、蒸留により水が除去されることが好ましい。
【0055】
希釈剤として(メタ)アクリレートおよび/またはイタコネート含有化合物を含む以下の樹脂の組み合わせは、(i)イタコン酸残基、マレイン残基およびDCPD残基を含む不飽和ポリエステル樹脂、(ii)イタコン酸残基、フマル酸残基、およびDCPD残基を含む不飽和ポリエステル樹脂である。
【0056】
DCPD-マレイン酸ポリエステルの製造は当業者に公知である。しかしながら、本発明の方法は、イタコン酸がDCPD添加工程または重縮合工程で添加される形態において、標準的な実施とは相違し得る。いくつかの実施形態では、DCPDの添加重量は、ポリエステルの総重量の10重量%以上である。
【0057】
いくつかの実施形態では、好ましい方法は、無水マレイン酸、水、および任意にイタコン酸の混合物を約130~140℃に加熱し、その間に無水マレイン酸が水と反応してマレイン酸を形成することを含む。好ましくは透明な溶液が形成されるが、固体のイタコン酸とともに良好に流動するスラリーであってもよい。この混合物にDCPDを添加すると、発熱反応が始まる。DCPDの添加速度は、危険な分解反応を避けるために、好ましくは150℃を超えない温度、より好ましくは140℃を超えない温度に調節する。別の方法では、DCPDは出発混合物の一部であり、水または無水マレイン酸を、速度を調節しながら添加する。酸、水、およびDCPDを全て添加した後、混合物を130~150℃でさらに1時間以上反応させて十分な転化率とする必要がある。
【0058】
好ましくは、DCPDが添加される最初の混合物は、マレイン酸、水、およびイタコン酸を含む。
【0059】
より好ましくは、マレイン酸とイタコン酸との比は1:4~2:1であり、最も好ましくは、当該比は1:2~1.5:1である。
【0060】
あるいは、最初に、DCPD-マレイン酸を標準的な手順で製造し、次に、マレイン酸とイタコン酸の比が1:4~2:1となるように、イタコン酸を添加する。最も好ましい比率は1:2~1.5:1である。
【0061】
いくつかの実施形態では、次の工程は、ジオールおよび/またはグリコール、および任意に追加のイタコン酸または他の二塩基酸または無水物が添加される重縮合工程である。重縮合プロセスとしては、当該技術分野では種々の方法が知られている。
【0062】
いくつかの実施形態では、全ての反応物は、150~250℃まで加熱することで、好ましくは蒸留により、水が除去され、ポリマーが形成される。
【0063】
いくつかの実施形態では、この方法は、重縮合中に混合物を、窒素のような不活性ガスでフラッシングすること、および/または反応器内の圧力を低下させることを含む。これにより、より効率的に水を除去できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、共沸蒸留による水の除去を促進するためにトルエンが添加される。この方法は、熱不安定性成分との重縮合を促進する100~120℃のようなより低温で実施することができる。水と共沸混合物を形成する他の不活性溶媒も使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、DCPDおよびヒドロキシル基の合計量は、モル基準での酸基の量にほぼ等しくなければならない。ほぼ等しいとは、DCPD+ヒドロキシル基の量が、酸基の量の80~120%、好ましくは110~90%、最も好ましくは110~100%であることを意味する。
【0066】
いくつかの実施形態では、円滑な処理のための、不飽和ポリエステル樹脂の粘度は23℃で好ましくは100~2000mPa・s、より好ましくは150~1000mPa・s、最も好ましくは200~600mPa・sである。ある態様では、チキソトロピー性付与のために、粘性ある添加剤が用いられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、硬化を開始するために、当該技術分野で知られている方法を採用することができる。例えば、過酸化物-促進剤系、UV硬化、熱開始剤、および/または電子ビームが挙げられる。より具体的な例としては、MEKP過酸化物と、コバルトおよび/または他の促進剤およびBPO-アミン開始剤との組み合わせである。
【0068】
いくつかの実施形態では、重縮合は、触媒の添加によって促進される。
【0069】
いくつかの実施形態では、全転化に達する前に重縮合を停止する。転化率を決定する一般的な方法は、ISO2114-2000に従って酸価を測定することによるものであるが、いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは10~100mgKOH/g樹脂、より好ましくは15~60mgKOH/g樹脂、最も好ましくは20~50mgKOH/g樹脂の範囲である。
【0070】
いくつかの実施形態では、上記の二塩基酸以外に、他の二塩基酸を樹脂組成物に含めることができる。適当な二塩基酸および無水物の典型的な例としては、フマル酸、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸が挙げられる。明示的に言及していない二塩基酸も同様に使用することができ、本発明の組成物は、当業者にだけ案内される、列挙された二塩基酸に限定されるものではない。さらに、一塩基酸、三塩基酸、およびより多塩基酸も組成物中に含まれてもよい。好適な一塩基酸の典型的な例としては、(メタ)アクリル酸、乳酸、安息香酸などが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、二官能性または多官能性アルコールが重合プロセスに使用される。好ましくは、ジオールは、例えば、1,2-プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロピレングリコール、イソソルビド、2,3-ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、水素化ビスフェノール-A、またはエトキシル化/プロポキシル化ビスフェノールA等のジオールである。いくつかの実施形態では、二官能性または多官能性アルコールに加えて、2-エチルヘキサノールまたはベンジルアルコールのようなモノアルコールおよびグリセロールまたはトリメチロールプロパンのようなポリオールを使用することができる。いくつかの実施形態では、他のモノ、ジ、および多価アルコールも同様に使用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、ポリエステルは、ジオール単独、またはジオールおよび/またはモノアルコールおよび多価アルコールの組み合わせを用いて製造することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ラジカル重合を防止する抑制剤を重縮合中に添加することができる。例えば、不飽和ポリエステル樹脂は、抑制剤としてヒドロキノン、2-メチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2-メチルベンゾキノン、または他の置換ヒドロキノンまたはキノンの存在下で調製することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、エステル化触媒および/または異性化触媒を重縮合の間に使用することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、不揮発性希釈剤はアクリレートおよびメタクリレートの群から選択される。これらの2つのうち、メタクリレートはアクリレートとして好ましいが、メタクリレートも、通常、強い皮膚感作性を有することから、結果的に作業者の保護は必要となる。
【0076】
いくつかの実施形態では、DCPD改質ポリエステルの合成後、この改質ポリエステルを反応性希釈剤中で希釈することができる。適当な希釈剤としては、上市されている全ての(メタ)アクリレートを使用することができる。このような(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、グリセロールホルマール(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びその異性体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび/またはテトラエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。好ましい二官能性反応性希釈剤は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG400ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび/またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0077】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートに加えて、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ-n-プロピル、およびイタコン酸ジブチルのようなイタコネート希釈剤を使用することができる。これらの希釈剤のうち、イタコン酸ジメチルが好ましい。好ましくは、イタコネート希釈剤は(メタ)アクリレート希釈剤と組み合わせて使用される。より好ましくは、イタコネート希釈剤はメタクリレート希釈剤と組み合わせて使用される。
【0078】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートおよびイタコネート希釈剤の合計量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の総量の少なくとも5~95重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、最も好ましくは30~50重量%、例えば40重量%である。本発明における多官能(メタ)アクリレートの好ましい濃度は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の全量の5~95重量%、好ましくは5~85重量%である。より好ましくは5~80重量%、さらに好ましくは5~75重量%、よりさらに好ましくは5~70重量%、よりさらに好ましくは5~65重量%、さらに好ましくは5~60重量%、さらに好ましくは10~60重量%、さらに好ましくは20~60重量%、例えば20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%である。これらの量は、1種類の反応性希釈剤または2種以上の反応性希釈剤の組み合わせの総量である。
【0079】
低揮発性希釈剤が好ましいが、いくつかの実施形態では、少量の揮発性希釈剤が存在してもよい。少量とは、全配合物の10.0%未満、より好ましくは5.0%未満、さらにより好ましくは2.0%未満、さらにより好ましくは1.0%未満である。揮発性希釈剤としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、およびメチルメタクリレートが挙げられる。従って、いくつかの実施形態では、揮発性有機化合物(VOC)の量は不飽和ポリエステル樹脂組成物の総量の10重量%未満である。好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。より詳細には、いくつかの実施形態では、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、および/またはメチルメタクリレートの量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の総量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。
【0080】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、阻害剤、促進剤(accelarator)、活性剤(promotor)、充填剤、顔料、染料、UV安定剤、チキソトロピー剤、消泡剤、光開始剤および/または他の添加剤等の種々の添加剤をさらに含有してもよい。適切な化合物を、さらに下記に列挙する。
【0081】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、促進剤を含んでもよく、促進剤としては、典型的には遷移金属化合物、例えばバナジウム、鉄、マンガン、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト及びクロム化合物が使用される。好ましい遷移金属は、V、Cu、Co、Mn及びFeである。遷移金属は、カルボン酸塩として存在してもよく、ポリマーであってもよい。また配位子と複合体化されていてもよい。そのような錯体としては、Borchi OxyCure(登録商標)、DriCat(登録商標)2700FおよびNuodex DryCoatが挙げられる。促進剤は、1つの遷移金属または複数の遷移金属の組み合わせに基づくことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、活性剤を含有してもよい。活性剤としては、アセチルアセトン、N,N-ジメチルアセトアセタミド、N,N-ジエチルアセトアセタミド、アセチルエステル、およびN,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジイソプロパノール-パラ-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン等のトルイジン、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)キシリジン、N,N-ジメチル-p-キシリジン等のキシリジンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、アルカリ及びアルカリ塩を含有してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、ラジカル阻害剤をさらに含んでもよい。ラジカル阻害剤としては、好ましくは、フェノール化合物、ベンゾキノン類、ヒドロキノン類、カテコール類、安定なラジカル及び/又はフェノチアジン類からなる群から選択される。添加できるラジカル阻害剤の量は、かなり広範囲であり、達成されることが望まれるゲルタイムを第1の指標として選択すればよい。
【0084】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の実施形態で使用できるラジカル抑制剤の好適例としては、例えば、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール、4,4′-チオ-ビス(3-メチル―6-t―ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンジフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、6,6′-ジ-t-ブチル-2、2′-メチレンジ-p-クレゾール、ヒドロキノン、2-メチルハイドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン,2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、4,6-ジ-t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-l,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、l-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOLとも呼ばれる化合物)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPONとも呼ばれる化合物)、l-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPOとも呼ばれる化合物)、l-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、l-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシピロリジン(3-カルボキシ-PROXYLとも呼ばれる)、ガルビノキシル、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジン及び/又は誘導体、またはこれらの化合物の組み合わせが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルおよび反応性希釈剤の総量に対する、ラジカル阻害剤の量は、0.0001~10.0重量%の範囲であり、より好ましくは、0.001~1.0重量%の範囲である。選択された阻害剤のタイプにもよるが、阻害剤の含有量が本発明による良好な結果につながることは、当業者であれば理解することができる。
【0086】
本発明はさらに、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物をラジカル硬化させる方法であって、上記のように樹脂組成物に開始剤を添加して活性化することにより硬化を行う方法に関する。好ましくは、硬化は-20~+200℃の範囲、好ましくは-20~+100℃の範囲、最も好ましくは-10~+60℃の範囲(いわゆる低温硬化)の温度で行われる。
【0087】
いくつかの実施形態では、開始剤は、光開始剤、熱開始剤またはレドックス開始剤、および/またはそれらの組み合わせであり得る。
【0088】
本明細書で意味するように、光開始剤は、照射により硬化を開始することができ、光開始は、適当な波長(光照射)の光の照射を用いて硬化することを意味する。これは光硬化とも呼ばれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、光開始系を形成する光開始剤に増感剤を添加してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、所望により1種以上の増感剤と組み合わせて、光開始剤との混合物として使用することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、光開始系は、当業者に公知の多数の光開始系から選択することができる。膨大な数の適切な光開始系が、例えば、「Chemistry and Technology of UV and EB formulation」第2版、第3巻、K.DietlikerおよびJ.V. Crivello(SITA Technology、London; 1998)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、熱開始剤は、アゾ化合物、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)、C-C不安定化合物、例えばベンゾピナコール、過酸化物、およびそれらの混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、熱開始剤は、好ましくは有機過酸化物、または2種以上の有機過酸化物の組み合わせである。
【0093】
いくつかの実施形態では、レドックス開始剤は、好ましくは、有機過酸化物と上記共開始剤の少なくとも1つとの組み合わせである。好適な過酸化物としては、ヒドロペルオキシド、パーオキシカーボネート(式-OC(O)OO-)、ペルオキシエステル(式-C(O)OO-)、ジアシルペルオキシド(式-C(O)OOC(O)-)、ジアルキルペルオキシド(式-OO-)など)が挙げられる。
【0094】
本発明はさらに、上記のような開始剤で硬化することにより、上記のような不飽和ポリエステル樹脂組成物から調製された硬化物または構造部品にも関する。
【0095】
いくつかの実施形態では、表面硬化は、開放型を用いた成形に利用するためなどの理由から、露天で行われる。
【0096】
本明細書で使用される「構造用樹脂」または「構造用樹脂組成物」は、構造体に適用するのに適した構造部分(構造部品)を提供することができる。好ましくは、このような樹脂組成物は非水系である。ただし、主に樹脂調製中の反応から生じる水を、好ましくは5重量%以下で含有していてもよい。本明細書において、「構造部分(構造部品)」とは、硬化後の厚さが0.5mm以上であり、適切な機械的特性を有すると考えられる。
【0097】
本発明による樹脂組成物を適用できる端部セグメントは、例えば、自動車部品、ボート、化学アンカー、屋根、構造、容器、ライニング、パイプ、タンク、床材、風車ブレードである。
【0098】
本発明はさらに、上記のような不飽和ポリエステル樹脂組成物から調製されたゲルコート用組成物に関する。ゲルコートは、開放型内に適用することができる。
【0099】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、またはその実施形態を提供し、開放型で構造部分(部品)を製造する。
【0100】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて調製された構造部品、またはその実施態様、好ましくは開放型内の構造部品である。
【0101】
本発明のさらなる態様は、ゲルコート用組成物を製造するために、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物またはその実施態様を提供する。
【0102】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、またはその実施形態を提供し、開放型内にゲルコートを適用することを提供する。
【0103】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、またはその実施形態を含むゲルコート用組成物を提供し、好ましくは開放型に適用される。
【0104】
本発明のさらなる態様は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、好ましくは、本明細書に記載の実施形態に係る不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
少なくとも下記からポリエステルを形成する工程:
a)イタコン酸および/または無水イタコン酸を含む試薬;
b)マレイン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸を含む試薬;
c)ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む試薬;および
d)少なくとも1種の二官能性または多官能性アルコールを含む試薬;
得られたポリエステルを(メタ)アクリレート化合物と、所望によりイタコネート化合物とを混合し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得る工程を含む製造方法であって、
前記試薬a)の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される二塩基酸および無水物の総重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0105】
いくつかの実施形態では、この方法は、ポリエステルを形成する前に、試薬b)、試薬c)および所望により試薬a)から反応混合物を形成する工程を含む。反応混合物が試薬b)および試薬c)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と試薬a)および試薬d)とから形成されることができる。反応混合物が試薬b)試薬c)および試薬a)から形成される実施形態では、ポリエステルは、得られた反応混合物と試薬d)とから形成されることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、試薬a)および/またはb)に水が添加される。特に試薬a)またはb)が無水物を含む場合、水が添加される。
【0107】
いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物の実施形態として挙げた任意の適切な化合物を含んでもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、反応混合物は阻害剤を含んでもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、1つの試薬が試薬a)の不在下で反応混合物を形成し、試薬a)と共に試薬d)を添加してポリエステルを形成することができる。また、これらの実施形態では、イタコン酸および無水イタコン酸の合計重量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される二塩基酸と無水物との合計重量の10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0110】
いくつかの実施形態では、試薬a)および/またはb)が無水物を含む場合には、試薬c)は試薬a)および/またはb)に添加されて反応混合物を形成し、好ましくは試薬a)および/または試薬b)は、試薬c)が添加される前に加水分解される。これにより、反応を制御し、反応中に発生する熱を制御することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、試薬a)および/またはb)が無水物を含む場合には、試薬a)および/または試薬b)を試薬c)に添加して反応混合物を形成し、好ましくは試薬c)に加える前に、試薬a)および/または試薬b)を加水分解する。この方法は、類似の化学的および物理的性質を有する樹脂を提供できるが、安全性の点からは好ましくない。
【0112】
いくつかの実施形態では、試薬a)および/または試薬b)は、反応混合物を形成する前に水の存在下で、少なくとも130℃から140℃、好ましくは135℃の温度に加熱することによって加水分解される。
【0113】
いくつかの実施形態では、1つ以上のジオールは、例えば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、および/またはジエチレングリコールである。
【0114】
いくつかの実施形態では、上記の方法による形成された構造単位は、以下のものであってもよい。
【化1】
【0115】
以下に実施例に基づいて、さらに説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【実施例】
【0116】
使用方法
硬化した樹脂の機械的性質およびHDTを試験するために、以下の方法に従って試料を調製し、ワックスを塗布した2枚のガラス板と厚み4mmのゴムスペーサーとからなる型を用いて、成形品を作製した。被試験樹脂は、0.1%Byk555(空気離型剤)、1.0%Accelerator NL-49P(Nouryon)、および1.5%のButanoc M-50とよく混合し、脱気した後、型に注入した。24時間後に、樹脂硬化物を脱型し、さらに、80℃で24時間、後硬化した。
【0117】
引張り特性はISO527-2に従って測定した。
熱変形温度(HDT)はISO75-Aに従って測定した。
【0118】
実験1:DCPD-ポリエステルAの調製(実施例1)
主鎖Aは、以下の手順に従って調製した。
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、無水マレイン酸(10.0モル)、イタコン酸(10.0モル)、水(10モル)および阻害剤の混合物をいれて、135~140℃に加熱した。この混合物に、DCPD(8.0モル)を、速度を調節しながら添加することで、発熱反応による温度上昇を回避した。添加は約30分かけて行った。これらの条件下で、DCPDはマレイン酸およびイタコン酸の酸基と反応してDCPD-マレイン酸エステルおよびDCPD-イタコン酸エステルを形成する。DCPDの添加が完了した後、混合物を135~140℃で1時間放置し、続いてネオペンチルグリコール(13.0モル)およびプロピレングリコール(4.0モル)を加えた。この混合物を140℃にまで加熱し、続いて2時間半で190℃まで昇温した。水の蒸留を停止するまで、混合物を190~200℃の温度に維持した。充填されたカラムを除去し、酸価が約30~35mg KOH/g樹脂の値に達するまで、混合物を減圧下(約100mbar)に維持した。次いで、真空を不活性ガスで緩和し、混合物を冷却した。
【0119】
実験2:DCPD-ポリエステルBの調製(比較例1)
主鎖Bを以下の手順に従って調製した。
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、無水マレイン酸(20.0モル)、水(10モル)および阻害剤の混合物をいれて、135~140℃に加熱した。この混合物に、DCPD(8.0モル)を、速度を調節しながら添加することで、発熱反応による温度上昇を回避した。添加は約30分間かけて行った。これらの条件下でDCPDはマレイン酸の酸基と反応してDCPD-マレイン酸エステルを形成する。DCPD添加が完了した後、混合物を135~140℃で1時間放置し、続いてネオペンチルグリコール(13.0モル)およびプロピレングリコール(4.0モル)を加えた。この混合物を140℃まで加熱し、続いて2時間半加熱して、温度を190℃まで上昇させた。水の蒸留を停止するまで、混合物を190~200℃の温度に維持した。充填されたカラムを除去し、酸価が約30~35mg KOH/g樹脂の値に達するまで、混合物を減圧下(約100mbar)に維持した。次いで、真空を不活性ガスで緩和し、混合物を冷却した。
【0120】
実験3:ベンジルアルコール-ポリエステルCの調製(比較例2)
主鎖Cを以下の手順に従って調製した。
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、無水マレイン酸(10.0モル)、イタコン酸(10モル)および阻害剤の混合物をいれて、135~140℃に加熱した。この混合物に、ベンジルアルコール(8.0モル)を加え、約1時間反応させた。続いて、ネオペンチルグリコール(13.0モル)およびプロピレングリコール(4.0モル)を添加した。この混合物を140℃まで加熱し、続いて2時間半加熱して、温度を190℃まで上昇させた。水の蒸留を停止するまで、混合物を190~200℃の温度に維持した。充填されたカラムを除去し、酸価が約30~35mg KOH/g樹脂の値に達するまで、混合物を減圧下(約100mbar)に維持した。次いで、真空を不活性ガスで緩和し、混合物を冷却した。
【0121】
実験4:DCPD-ポリエステルDの調製(実施例2)
主鎖Dを以下の手順に従って調製した。
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、無水マレイン酸(8.0モル)、イタコン酸(12.0モル)、水(10モル)および阻害剤の混合物をいれて、135~140℃に加熱した。この混合物に、DCPD(8.0モル)を、速度を調節しながら添加することで、発熱反応による温度上昇を回避した。添加は約30分かけて行った。このような条件下で、DCPDはマレイン酸およびイタコン酸の酸基と反応してDCPD-マレイン酸エステルおよびDCP-イタコン酸エステルを形成する。DCPDの添加が完了した後、混合物を135~140℃で1時間放置し、続いてネオペンチルグリコール(8.8モル)およびプロピレングリコール(8.8モル)を加えた。この混合物を140℃になるまで加熱し、続いて2時間半で温度を190℃まで上昇させた。水の蒸留を停止するまで、混合物を190~200℃の温度に維持した。充填カラムを除去し、酸価が約30~35mg KOH/g樹脂の値に達するまで、混合物を減圧下(約100mbar)に維持した。次いで、真空を不活性ガスで緩和し、混合物を冷却した。
【0122】
実験5:DCPD-ポリエステルEの調製(実施例3)
主鎖Eを以下の手順に従って調製した。
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、無水マレイン酸(4.0モル)、イタコン酸(16.0モル)、水(10モル)および阻害剤の混合物をいれて、135~140℃に加熱した。この混合物に、DCPD(12.0モル)を、速度を調節しながら添加することで、発熱反応による温度上昇を回避した。添加は約30分かけて行った。これらの条件下で、DCPDはマレイン酸およびイタコン酸の酸基と反応してDCPD-マレイン酸エステルおよびDCP-イタコン酸エステルを形成する。DCPD添加が完了した後、混合物を135~140℃で1時間放置し、続いてネオペンチルグリコール(12.0モル)およびジエチレングリコール(4.0モル)を加えた。この混合物を140℃まで加熱し、続いて2時間半で温度を190℃まで上昇させた。水の蒸留を停止するまで、混合物を190~200℃の温度に維持した。充填カラムを除去し、酸価が約30~35mg KOH/g樹脂の値に達するまで、混合物を減圧下(約100mbar)に維持した。次いで、真空を不活性ガスで緩和し、混合物を冷却した。この実験は、マレイン酸の量と比べて、大過剰量のDCPDを使用できることを示している。
【0123】
実験6(比較例3)
充填カラム、温度測定装置および不活性ガス導入口を備えた容器に、イタコン酸、阻害剤および水の混合物をいれて、135~140℃に加熱することを試みた。等モル量のイタコン酸及び水では、混合物は固体のままであり、効果的な攪拌を行うことができなかった。水の量を増加することにより、攪拌可能な懸濁液を製造することができるが、この場合、水は110℃未満で沸騰し始めた。従って、イタコン酸、阻害剤および水だけで開始すると、安全なDCPD添加のために必要な条件に達することができなかった。
【0124】
実験7(比較例4)
充填カラム、温度測定装置及び不活性ガス導入口を備えた容器に、5モルのイタコン酸、1モルのネオペンチルグリコール、1モルのジエチレングリコール、阻害剤、および水の混合物を135~140℃に加熱した。この懸濁液に、約40分かけて、DCPDを3モル添加した。マレイン酸が存在する実験とは異なり、反応中に発熱は観察されなかった。添加が完了した後、混合物をいれて、135~140℃でさらに2時間維持した。マレイン酸が存在する実験とは異なり、混合物は濁ったままであった。攪拌を停止した後は、混合物は2層に分離した。そのうちの一層は未反応のDCPDの層であり、実験を停止した。この実験は、イタコン酸にDCPDをうまく添加するためには、マレイン酸の存在が必要であることを示している。
【0125】
実験8
実験1~3で調製した主鎖をトリエチレングリコールジメタクリレート(TRGDMA)とジメチルイタコネート(DMI)との組み合わせで希釈した。これらの樹脂を硬化させるために、それらを0.3%のオクタン酸コバルト溶液(10%Co)、0.1%のナフテン酸銅溶液(8%Cu)、0.5%N,N-ジエチル-アセトキシアセトアミド、および2.0%のButanox LPT-INと混合した。これらの配合物を開放型内に注ぎ、厚さ約4mmの層を形成した。24時間後、手で触ることにより、表面の粘着性を評価し、Barcol硬度を測定した。結果を表1に示す。主鎖Aを有する樹脂だけが、24時間後に適切に硬化した。
【表1】
【0126】
実験9
実験1~5で調製したDCPD-ポリエステルを、異なるメタクリレート化合物及びイタコン酸ジメチルとの異なる組み合わせを希釈剤として希釈した。これらの樹脂の粘度を測定し、次いで樹脂を1.0%Accelerator NL-49Pおよび1.5%Butanox M-50(両方ともNouryon)で硬化させ、そして80℃で24時間、後硬化した。続いて、これらの樹脂のHDTおよび引張特性を測定した。表2の結果は、本発明の樹脂(主鎖A、DおよびE)が適切な粘度、HDTおよび引張特性を有することを示している。比較例の主鎖Bを有する樹脂は、粘度が高く、HDTが低すぎる。比較例の主鎖Cを有する樹脂は、HDTが低くて低弾性率である。主鎖のこれらの傾向は、試験した希釈剤のすべての組み合わせで観察された。
【表2】
【国際調査報告】