(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】エッチング速度または堆積速度をin-situで計測するシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/305 20060101AFI20230329BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/317 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549911
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021052552
(87)【国際公開番号】W WO2021165043
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502239900
【氏名又は名称】ビューラー アルツェナウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Buehler Alzenau GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 88, D-63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ギュアトラー
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ベアリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シュペアリング
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA31
5C101GG02
5C101GG18
(57)【要約】
本発明は、イオンビームエッチング速度または堆積速度をin-situで計測するシステムであって、真空室と、真空室内に配置された試料の第1の表面にイオンビームを配向し、試料の第1の表面をエッチング速度でエッチングするように構成されたイオンビーム供給源、または真空室内に配置された試料の第1の表面に材料を堆積速度で堆積させるように構成された材料供給源と、真空室内に少なくとも部分的に配置され、試料の第2の表面に光を配向し、試料から反射した光に基づいてイオンビームのエッチング速度または堆積材料の堆積速度をin-situで決定するように構成された干渉計測装置と、を備えるシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームエッチング速度または堆積速度をin-situで計測するシステム(100)であって、
真空室(110)と、
前記真空室(110)内に配置された試料(113)の第1の表面(113a)にイオンビーム(112)を配向し、前記試料(113)の前記第1の表面(113a)をエッチング速度でエッチングするように構成されたイオンビーム供給源(111)、または
前記真空室(110)内に配置された試料(113)の第1の表面(113a)に材料を堆積速度で堆積させるように構成された材料供給源(111a)と、
前記真空室(110)内に少なくとも部分的に配置され、前記試料(113)の第2の表面(113b)に光(115)を配向し、前記試料(113)から反射した光に基づいてイオンビーム(112)の前記エッチング速度または前記堆積材料の前記堆積速度をin-situで決定するように構成された干渉計測装置(114)と
を備える、システム。
【請求項2】
前記干渉計測装置(114)が、前記試料(113)の前記第1の表面(113a)をエッチングしている間に前記エッチング速度を決定するか、または前記試料(113)の前記第1の表面(113a)に前記材料を堆積させている間に前記堆積速度を決定するように構成されている、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記エッチング速度は、前記試料の前記第1の表面(113a)から経時的に除去される材料の量であり、前記堆積速度は、前記試料の前記第1の表面(113a)に経時的に堆積される材料の量である、請求項1または2記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記干渉計測装置(114)が、高精密光低コヒーレンス干渉計HP-OLCIである、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記試料(113)の前記第2の表面(113b)は、前記試料(113)の前記第1の表面(113a)とは反対側にある、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記干渉計測装置(114)が、前記試料(113)の厚さを経時的に決定し、前記試料(113)の前記厚さの経時的変動に基づいて前記エッチング速度または前記堆積速度を決定するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記干渉計測装置(114)が、前記試料(113)の前記第2の表面(113b)に光(115)を配向し、前記試料(113)から反射して戻る光を収集するように構成されたセンサ(117)を備える、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記センサ(117)が、前記試料(113)の前記第2の表面(113b)に光(115)を配向し、前記試料(113)から反射して戻る光を収集するための光学部品(116)を備え、好ましくは、前記センサ(117)が、前記真空室(110)内に配置されており、好ましくは、前記センサ(117)が前記試料(113)を含む、請求項7記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記センサ(117)が筐体を備え、前記試料(113)が前記筐体の内部に配置されており、好ましくは、前記筐体が開口部を備え、イオンビーム(112)が前記開口部を通って前記試料の前記第1の表面(113a)に到達できるように、前記試料(113)が前記開口部に配置されている、請求項8記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記筐体がグラファイトの外面を有する、請求項9記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記干渉計測装置(114)が、前記試料(113)と接触し、かつ前記試料(113)を冷却するように構成された冷却装置を備える、請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記干渉計測装置(114)が、前記試料(113)の前記第2の表面(113b)の少なくとも1つの所定の位置に光(115)を位置決めするように構成された位置決め装置を備え、好ましくは、前記システム(100)が、イオンビーム(112)のピークエッチング速度を決定するために、イオンビーム(112)の中心に対応する位置で前記試料(113)の前記第2の表面(113b)に光(115)を位置決めすべく前記位置決め装置を制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項13】
イオンビームのプロファイルのエッチング速度を決定するために、イオンビームのプロファイル内の位置に対応する複数の位置で前記試料(113)の前記第2の表面(113b)に光(115)を位置決めすべく前記位置決め装置を制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項12記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記試料(113)の前記第1の表面(113a)に対してイオンビーム(112)を位置合わせするように構成された位置合わせ装置をさらに備え、前記位置合わせ装置は、好ましくは、ファラデーカップおよび位置カメラまたはポイントスキャンによってイオンビームを特性評価し、初期開始点に対するオフセットを計算するように構成された特性評価装置を備える、請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム(100)。
【請求項15】
イオンビームエッチング速度または堆積速度をin-situで計測する方法であって、
真空室(110)内に配置された試料(113)の第1の表面(113a)にイオンビーム(112)を配向して、試料(113)の第1の表面(113a)をエッチング速度でエッチングすること、または
前記真空室(110)内に配置された試料(113)の第1の表面(113a)に材料を堆積速度で堆積させることと、
前記真空室(110)内に少なくとも部分的に配置された干渉計測装置(114)の光(115)を前記試料(113)の第2の表面(113b)に配向することと、
前記試料(113)から反射した光に基づいて、イオンビーム(112)の前記エッチング速度または前記堆積材料の前記堆積速度をin-situで決定することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング速度または堆積速度をin-situで計測するシステムおよびその方法に関する。
【0002】
イオンビームエッチングは、様々な材料の試料、例えば、光学部品や薄膜を研磨し、成形するための一般的な手段である。特に、イオンビームは、イオンからなる荷電粒子ビームの一種である。イオンビーム供給源には様々なものがあり、最も一般的なイオンビームは、単一荷電イオンによるものである。
【0003】
イオンビームは試料表面へ配向され、そこでイオンの衝突によって試料表面が腐食されて一定量の材料が削り取られる(エッチングされる)。イオンビームによって削り取られる材料の量は、例えば、イオンビームのパラメータ、試料の材料組成、露出時間に依存する。エッチング速度は、試料表面から経時的に除去される材料の量として定義される。
【0004】
イオンビームは典型的に、試料表面に集束され、ピーク(イオンビームのガウス分布の最大値)および半値全幅(FWHM)を有するガウス分布を有する。よって、試料表面のエッチングプロファイルも、ピークエッチング速度およびFWHMによって特性評価することができる。
【0005】
先行技術のシステムでは、特定の試料についてイオンビームのエッチング速度を決定するために、試料プローブ(基準試料)が、表面形状干渉計測に基づく干渉計測装置を使用して、例えばフィゾー干渉計を使用して、予め特性評価される。その後、試料プローブは真空室に挿入される。試料プローブは、後でイオンビームに露出される実際の試料と同じ材料であることが理想的である。試料プローブは、所定のビームパラメータを使用して、所定の時間にわたってイオンビームに露出される(いわゆるフットプリントエッチング)。試料プローブは、真空室から取り出され、エッチングされたプロファイルは、その後、表面干渉計測に基づいて干渉計装置によってex-situで計測される。よって、ピークエッチング速度、FWHMおよびエッチング体積を決定することができる。その後、実際の試料が、真空室に挿入され、イオンビームの決定されたエッチングパラメータに従って加工される。
【0006】
しかし、先行技術のシステムは、イオンビームエッチングの前後に前述の干渉計測を行うことに加えて、試料プローブを真空室に挿入し、真空室から取り出す必要があるため、イオンビームのエッチング速度パラメータを決定するために時間のかかる処理を必要とする。
【0007】
加えて、試料プローブの使用期間には限りがあり、これは、表面形状干渉計測の干渉縞を、エッチングプロファイルの一定の深さしか分解できないためである。すなわち、試料プローブ上で一定量のエッチングが行われた後には、先行技術の干渉計測装置によって、エッチングされたプロファイルの深さをもはや分解することができない。そのような試料プローブは定期的に交換するかまたは新たに研磨する必要があり、コスト高である。
【0008】
その上、完全なイオンビームのプロファイルを決定するために、先行技術のシステムはイオンビーム直径のサイズの3~4倍の試料プローブを使用しなければならず、干渉計測のために大きな基準対象物を必要とし、計測が制限され、しかもコスト高である。
【0009】
従来の成膜法でも、堆積速度をex-situで計測する場合、すなわち材料堆積のために試料を真空室に挿入する前および試料を真空室から取り出した後に計測する場合には、同様の問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、先行技術のシステムの上述の不備を克服することである。本発明は、各独立請求項によって定義される。各従属請求項は、本発明の好適な実施形態に関する。
【0011】
本発明の一態様によれば、イオンビームエッチング速度または堆積速度をin-situで計測するシステムであって、真空室と、真空室内に配置された試料の第1の表面にイオンビームを配向し、試料の第1の表面をエッチング速度でエッチングするように構成されたイオンビーム供給源、または真空室内に配置された試料の第1の表面に材料を堆積速度で堆積させるように構成された材料供給源と、真空室内に少なくとも部分的に配置され、試料の第2の表面に光を配向し、試料から反射した光に基づいてイオンビームのエッチング速度または堆積材料の堆積速度をin-situで決定するように構成された干渉計測装置と、を備えるシステムが提供される。
【0012】
すなわち、システムは、イオンビームエッチング速度または材料堆積技術の堆積速度のいずれかを決定するために使用することができる。堆積技術は、化学蒸着法CVD、物理蒸着法PVD、低圧化学蒸着法LPCVD、プラズマ強化化学蒸着法PECVDまたはプラズマ支援CVDのうちのいずれか1つであることができる。
【0013】
堆積速度の決定では、材料供給源からの材料を試料表面に堆積させ、厚さの経時的変動(増大)として堆積速度を決定することができる。対照的に、イオンエッチング速度の決定では、試料表面から材料を除去し、厚さの経時的変動(減少)としてエッチング速度を決定することができる。
【0014】
上述したように、干渉計測装置は、真空室内に少なくとも部分的に配置することができ、例えば、センサおよび光ファイバを真空室内に配置することができ、干渉計測装置の電源、コントローラ、他の部品などの他の要素を真空室の外側に配置することができる。
【0015】
干渉計測装置は、試料の第1の表面をエッチングしている間に、好ましくは所定の安定化時間の後に、好ましくは2分超、より好ましくは3分超、さらに好ましくは4分超、最も好ましくは4~5分以上の後に、エッチング速度を決定するように構成することができる。すなわち、エッチング速度の計測は、エッチングの実施と同時に行うことができる。
【0016】
干渉計測装置は、試料の第1の表面に材料を堆積させている間に堆積速度を決定するように構成することができる。すなわち、堆積速度の計測は、堆積の実施と同時に行うことができる。
【0017】
エッチング速度は、試料の第1の表面から経時的に除去される材料の量として定義することができる。
【0018】
堆積速度は、試料の第1の表面に経時的に堆積される材料の量として定義することができる。
【0019】
干渉計測装置は、高精密光低コヒーレンス干渉計HP-OLCI(high precision optical low-coherence interferometer)であることができる。
【0020】
分析ユニットとしてのHP-OLCIは、インターレース式干渉計であることができ、光干渉トモグラフィOCT(optical coherence tomography)技術に基づくものであることができる。これは、2本の内部アームおよび2本の外部アームを備えることができる。一方の内部アームは、そのスロー(throw)によって作用磁場を提供するボイスコイルを備えることができる。別の内部アームは、スキャンレンジ(好ましくは0~135mmの厚さ)を提供するために移動可能であることができる。
【0021】
一方の外部アームは、イオンビーム加工IBF(ion beam figuring)の真空室内のセンサ自体によって構成することができる。別のアームは、調整可能な基準部であることができる。この基準部は、エアギャップによって形成することができる。両方の外部アームが信号を供給することができ、厚さは、両方の信号間の距離を決定することによって計測される。例えば、1550nmのDFBレーザーがスケールとして機能することができる。
【0022】
基準アームは、試料の光学的厚さを伴うエアギャップを設定するために使用することができる。エアギャップは、(例えば135mm)移動可能であり、ミラーであるガラス板(例えば溶融シリカ)から生成することができる。HP-OLCIは、界面の干渉バーストのみを考慮することができ、これをエアギャップ(溶融シリカから空気への遷移部)の界面の干渉バーストと比較することができる。両方の信号が重なり合う場合、厚さの差はゼロである。試料表面がイオンビームによってエッチングされている場合、干渉バーストは基準バーストから遠ざかる。両者の距離は、2つのバーストの最大値およびDFBレーザーの干渉信号(スケール)によって高精密に決定される。経時的変化はnm/秒で出力することができ、0.1nm/秒よりも高い精度で計測することができる。
【0023】
言い換えれば、HP-OLCIは、高精度の比較厚さ計測装置である。基準信号は通常、厚さが正確に既知である試料から生成され、この基準試料との差を決定することになる。本発明にとって、厚さの絶対値は重要ではない。むしろ、経時的変化が決定される。よって、可変であるという利点を有するエアギャップを使用することができる。
【0024】
試料の第2の表面は、試料の第1の表面とは反対側にあってよい。すなわち、イオンビームを使用して試料の一方の面をエッチングすることができ、反対側の面を使用してエッチング速度を計測することができる。同様に、試料の一方の面に材料を堆積させることができ、反対側の面を使用して堆積速度を計測することができる。
【0025】
干渉計測装置は、試料の厚さを経時的に計測し、試料の厚さの経時的変動に基づいてエッチング速度または堆積速度を決定するように構成することができる。
【0026】
干渉計測装置は、試料の第2の表面に光を配向し、試料から反射して戻る光を収集するように構成されたセンサを備えることができる。
【0027】
センサは、試料の第2の表面に光を配向し、試料から反射して戻る光を収集するための光学部品を備えることができる。
【0028】
センサは、真空室内に配置することができる。
【0029】
センサは、試料を含むことができる。すなわち、好適な実施形態によれば、試料は、センサの内部に配置することができる。
【0030】
センサは、筐体を備えることができ、試料は、筐体の内部に配置することができ、好ましくは、光学部品も筐体の内部に配置することができる。
【0031】
筐体は、開口部を備えることができ、試料は、イオンビームまたは堆積される材料が開口部を通って試料の第1の表面に到達できるように、開口部に配置することができる。言い換えれば、試料の第1の表面は、筐体の開口部に配置することができる。
【0032】
筐体は、グラファイトの外表面を有することができる。よって、イオンビームまたは堆積される材料に対して試料のみを露出させる。
【0033】
干渉計測装置は、試料に接触する冷却装置、例えば、銅製の冷却装置を備えることができ、試料を冷却するように構成することができる。
【0034】
干渉計測装置は、試料の第2の表面の少なくとも1つの所定の位置に光を位置決めするように構成された位置決め装置を備えることができる。位置決め装置は、光学部品を3次元で移動できるように光学部品を載せることができるx,y,zステージであることができる。幾つかの実施形態では、光学部品を2次元で、好ましくは試料の第2の表面に対して平行に移動させるには、2次元のx,yステージで十分であることもある。
【0035】
コントローラは、イオンビームのピークエッチング速度を決定するために、イオンビームの中心に対応する位置で試料の第2の表面に光を位置決めすべく位置決め装置を制御するように構成することができる。
【0036】
ピークエッチング速度は、イオンビームの最大強度におけるエッチング速度として定義することができ、イオンビームは、実質的にガウス形状を有する。
【0037】
コントローラは、イオンビームのプロファイルのエッチング速度を決定するために、イオンビームのプロファイル内の位置に対応する複数の位置で試料の第2の表面に光を位置決めすべく位置決め装置を制御するようにさらに構成することができる。
【0038】
例えば、イオンビームのプロファイル内の位置に対応する異なる位置で複数の計測値を得ることにより、イオンビームのプロファイルの体積エッチング速度を決定するために、ガウスフィッティングを使用することができる。
【0039】
コントローラは、複数の位置における堆積速度を決定するために、複数の位置で試料の第2の表面に光を位置決めすべく位置決め装置を制御するようにさらに構成することができる。
【0040】
システムは、試料の第1の表面に対してイオンビームを位置合わせするように構成された位置合わせ装置をさらに備えることができる。
【0041】
位置合わせ装置は、ファラデーカップおよび位置カメラまたはポイントスキャンによってイオンビームを特性評価し、初期開始点に対するオフセットを計算するように構成された特性評価装置を備えることができる。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、イオンビームエッチング速度または堆積速度をin-situで計測する方法が提供される。方法は、真空室内に配置された試料の第1の表面にイオンビームを配向して、試料の第1の表面をエッチング速度でエッチングすること、または真空室内に配置された試料の第1の表面に材料を堆積速度で堆積させることと、真空室内に少なくとも部分的に配置された干渉計測装置の光を試料の第2の表面に配向することと、試料から反射した光に基づいて、イオンビームのエッチング速度または堆積速度をin-situで決定することと、を含む。
【0043】
通常、本明細書で説明する試料(試料プローブともいう)は、イオンビーム加工または堆積が最終的に実行される実際の試料に関するものであっても、イオンビームエッチング速度または堆積速度を決定するためのテスト試料に関するものであってもよい。このテスト試料は、イオンビーム加工または堆積が最終的に実行される実際の試料と同じ材料であることが理想的である。
【0044】
特に、試料が十分に薄い場合、本発明は、テスト試料を使用する必要なしに、試料をエッチングしている間または試料に材料を堆積させている間に、試料の計測に使用することができる。例えば、エッチング中または堆積中の実際の試料に関するこの「ライブ」計測は、光学レンズの中心厚さを決定することによって、エッチング速度または堆積速度を決定するために使用することができる。高温になることが予想される場合、例えば135mmまでの光学的厚さを有する薄い試料は、厚い試料と比較して放熱が容易であるため、有利となる場合がある。言い換えれば、光学材料は得てして熱伝導性が悪いため、薄い試料から試料の熱をより効果的に除去することができる。
【0045】
なお、試料内部の温度が一定である場合には、試料の厚さは制限されない。いずれの場合も、試料内部の温度が一定であることが好ましい。
【0046】
本発明の上記の説明から明らかなように、本発明は、試料の干渉計測をin-situで実行できる点で加工時間を短縮できるシステムおよび方法を提供する。よって、時間のかかる真空室に対する試料の挿入および取り出しを回避することができる。加えて、イオンビームエッチングまたは材料堆積の前後に試料を計測する必要がないため、さらに時間が節約される。
【0047】
加えて、本発明により、厚さベースの干渉計測の使用に起因する、試料の交換または新たな研磨を行う必要なしに、試料をより頻繁に使用(再使用)できるため、コストを節約することができる。
【0048】
また、本発明では、厚さベースの干渉計測の使用に起因して、イオンビームのエッチングプロファイルを決定するために試料をイオンビーム直径のサイズの3~4倍にする必要がないため、コストが節約される。
【0049】
さらに、本発明は、非直交の衝突角度でのエッチング速度の計測を可能にする。これは、それぞれの位置合わせシステムが試料の全範囲にわたって完全直交の衝突角度を許容できない可能性がある、高度に湾曲した試料に対して特に有利である。
【0050】
特に、エッチング速度は、衝突角度に大きく影響され、異なる材料間で異なる。このような非直交の衝突角度に関するエッチング速度の決定の可能性は、本発明の利点の1つである。
【0051】
本発明のこれらおよび他の特徴、利点ならびに態様は、本発明の例示的な実施形態を概説する図面の以下の説明から明らかとなるであろう。本発明の例示的な実施形態の以下の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。むしろ、例示的な実施形態は、本発明を実施する方法の幾つかの非網羅的な例を提供することを意図している。本発明は、以下の例示的な実施形態の特徴の組み合わせによって限定されないことは、当業者にとって明らかであろう。むしろ、異なる例示的な実施形態の特徴は、明示的な別段の記載がない場合、他の例示的な実施形態の特徴と組み合わされてもよい。すなわち、本発明の範囲は、各独立請求項の特徴によってのみ定義される。
【0052】
ここで、幾つかの好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明のシステムの好適な一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明のシステムの別の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の方法の好適な実施形態のフローチャートを示す図である。
【
図4】異なるイオンビームパラメータを使用して、異なるようにエッチングされたフットプリントを有する試料プローブを示す図である。
【
図5】異なるイオンビームパラメータを使用した試料の生のエッチング速度in-situ計測値を示す図である。
【
図6】試料の生のエッチング速度in-situ計測値を説明する図である。
【
図7a】毎時間計測された供給源安定性の48時間計測を示す図である。
【
図7b】毎時間計測された供給源安定性の48時間計測を示す図である。
【
図7c】毎時間計測された供給源安定性の48時間計測を示す図である。
【
図7d】毎時間計測された供給源安定性の48時間計測を示す図である。
【
図7e】毎時間計測された供給源安定性の48時間計測を示す図である。
【
図8】ジオメトリ決定中の試料厚さを示すグラフである。
【
図9】ジオメトリ決定中の試料厚さを示すグラフである。
【
図10】本発明のシステムの好適な別の実施形態を示す図である。
【0054】
図1を参照して、本発明のシステムの好適な一実施形態について説明する。
図1は、イオンビームエッチング速度をin-situで計測するシステム100を示す。システムは、真空室110、イオンビーム供給源111および干渉計測装置114を備える。
【0055】
イオンビーム供給源111は、真空室110内に配置された試料113の第1の表面113aにイオンビーム112を配向し、試料113の第1の表面113aを一定のエッチング速度でエッチングするように構成されている。
【0056】
干渉計測装置114は、真空室110内に少なくとも部分的に配置され、試料113の第2の表面113bに光115を配向し、試料113から反射した光に基づいてイオンビーム112のエッチング速度をin-situで決定するように構成されている。
【0057】
干渉計測装置114は、低コヒーレンス干渉計、例えば、約400マイクロメートルの走査レンジを有する変調器アームと、計測レンジアーム(0~135mmの厚さ間で調整可能なレンジ)と、基準試料に関して調整される実計測アームと、厚さ計測用の基準信号を供給する調整可能な基準アームとを有する、エンタングルド(entangled)型の2つのマイケルソン干渉計のビルドアップであってよい。光供給源は、中心波長が1280nmおよび1310nmのスーパールミネセンスダイオードの組み合わせであってよい。1つの手段として、光路の干渉計測のために、波長1550nmの分布帰還型(DFB)レーザーが結合される。これは、本発明によって使用できる干渉計測装置の一例にすぎない。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。試料113の厚さを決定できるいかなる干渉計測装置114も本発明とともに使用することができる。しかし、干渉計測装置114の前述の構成は、精密度の点で他のそのような干渉計測装置よりも有利である場合がある。
【0058】
図2は、本発明のシステム100の別の実施形態を示す。特に、
図2は、
図1を参照して既に説明した特徴、およびシステム100のさらなる任意選択的な特徴を示している。
【0059】
特に、
図2は、真空室110、イオンビーム112、試料113、光115、光学部品116、センサ117、光ファイバ118、高精密光低コヒーレンス干渉計HP-OLCIラック119、表示および入力装置120、イオンビーム加工IBF制御コンピュータ121、ネットワーク装置122および調整可能な厚さ基準モジュール123を示している。
【0060】
イオンビーム112、試料113、光115、光学部品116、センサ117、および光ファイバ118の一部は、真空室110内に配置されている。試料113および光学部品116は、センサ117内に配置されている。
【0061】
イオンビーム112は、例えば、センサの筐体の開口部(図示せず)を通して、試料の第1の表面113aへ配向される。光115、例えば赤外光は、光学部品116によって試料113の反対側の表面(第2の表面113b)へ配向され(集束され)、光ファイバ118を通して光学部品116に供給される。
【0062】
試料113は、センサ117の内面、すなわちセンサ筐体内に配置されている。センサの筐体の開口部(図示せず)は、試料の第1の表面113aがイオンビーム112に部分的に露出されるように設けられている。
【0063】
光学部品116は、試料の第2の表面113bに光115を集束させ、試料表面113a,113bから反射した光を収集するように構成されている。試料表面113a,113bから反射して戻る光は、固有の干渉パターンを生じさせる。この干渉パターンを、調整可能な厚さ基準モジュール123内の比較試料からの干渉パターンと比較することにより、試料113の厚さを決定することができる。
【0064】
例えば、干渉パターンは、干渉バーストを含む場合があり、この場合には、干渉バーストの包絡線を使用して試料113の厚さを決定することができる。厚さ決定の精度を高めるために、干渉バースト間の距離を使用して試料113の厚さを決定してもよい。
【0065】
さらに精度を高めるために、バースト全体そのものを評価することがさらに好ましい。
【0066】
HP-OLCIラック119は、光ファイバ118を介して光学部品116に接続されており、別の光ファイバを介して調整可能な厚さ基準モジュール123に接続されている。HP-OLCIラック119は、HP-OLCI用の電源、光源、およびそれぞれの制御手段を備える。制御手段は、干渉計測装置114の機能を制御するために使用され、干渉計測に基づいて試料113の厚さを決定し、その後にエッチング速度、すなわち厚さの経時的変動を決定するように構成されうる処理装置、例えばプロセッサを備えることができる。
【0067】
システム100は、干渉計測装置の異なる機能、例えば、試料の第2の表面113bへの光115の増幅および強度を制御するためのユーザ入力を受け取り、かつ/または調整可能な厚さ基準モジュール123の調整を行うために、エッチング速度の前記決定の結果を表示する、表示および入力装置120を提供することもできる。
【0068】
試料表面から反射した光、したがって、強度が試料の材質によって異なるため、光115の増幅および強度を制御することが有利である。加えて、強度は、試料の使用期間が長くなるほど減少する場合がある。よって、十分な強度の反射光を供給するために、試料の第2の表面113bへ配向される光115の増幅および強度を調節することができる。
【0069】
イオンビーム112は、すなわちイオンビーム112のパラメータおよび試料に対するイオンビーム112の位置は、IBF制御コンピュータ121を使用して制御される。
図2には詳細に示していないが、IBFマシンは、イオンビーム112を供給し、真空室110を備える。
【0070】
IBF制御コンピュータ121とHP-OLCIラック119は共に、ネットワーク122に接続されて、イオンビーム112および干渉計測装置114の集中制御をもたらす。
【0071】
図3は、本発明の方法の好適な実施形態のフローチャートを示す。特に、
図3は、真空室110内に配置された試料113の第1の表面113aにイオンビーム112を配向して試料113の第1の表面113aをエッチング速度でエッチングする第1のステップS10を示している。
【0072】
第2のステップS20では、真空室110内に少なくとも部分的に配置された干渉計測装置114の光115を、試料113の第2の表面113bに配向する。
【0073】
ステップS30では、試料113から反射した光に基づいて、イオンビーム112のエッチング速度がin-situで決定される。
【0074】
図4は、異なるイオンビームパラメータを使用して異なるようにエッチングされたフットプリントを有する試料プローブを示す。特に、試料プローブの表面は、試料を真空室に挿入する前に特性評価され、すなわち、試料プローブに関する干渉表面計測が行われる。その後、フットプリントは、イオンビームを使用して試料プローブの表面にエッチングされる。イオンビームパラメータは、次のように変動する。a)1000Vおよび50W(
図4の左上のフットプリント)、b)1000Vおよび70W(
図4の右上のフットプリント)、c)1000Vおよび100W(
図4の左下のフットプリント)、d)800Vおよび50W(
図4の右下のフットプリント)。さらなるステップでは、試料プローブが真空室から取り出され、干渉表面計測は、異なるフットプリントのエッチング速度を決定するために再度行われる。これは、先行技術の手順に対応する。
【0075】
比較のために、同じ材料、この場合は溶融シリカの試料が、本発明を使用して、すなわちin-situで計測されるが、同じビームパラメータが使用される。in-situ計測によって得られた生の値、すなわち、厚さの経時的変化を(移動平均値とともに)
図5に示している。各計測は20分間にわたって行われ、前回の計測から5分後に新たな計測が開始された。
【0076】
図5からわかるように、厚さは、最初に、例えば最初の4~5分間にわたって増大しており、これは、熱膨張と温度上昇に伴う光学指数の変化との影響によるものである。試料の能動的な冷却を使用することにより、中和剤およびビーム出力に応じて、4~5分後に安定状態に到達することができる。
【0077】
ビームジオメトリは、ポイントスキャン、すなわち、試料表面の複数の異なる位置での計測を実行することによって得ることができる。最初の計測点では、初期加熱時間(4~5分)が必要となり、他の全ての点では、計測を安定させるために1~2分の加熱時間のみが必要となる。計測点は、中心から外側に向かってらせん状に走査されることが好ましい。よって、エネルギ入力をほぼ一定に保つことができ、各計測点のための所要時間を短縮することができる。
【0078】
【0079】
表1は、3インチプローブの溶融シリカの従来の干渉計測と、本発明による計測装置の1インチ1mm試料との9つの比較計測(in-situエッチング速度計測ISERM(in-situ etch rate measurement))を示す。材料の製造プロセスに応じて、エッチング速度が著しく変動することがある。したがって、計測装置の基準試料は、加工される試料と同じ材料で作ることが望ましい。そうでない場合、それぞれの変動を考慮するために補正係数を予め決定してもよい。
【0080】
図6は、本発明を使用した、経時的な信号およびエッチング速度の平均値を示すビームスキャングラフである。試料の初期加熱の後に、エッチング速度は連続的に減少する。
【0081】
図7(a)~
図7(e)は、供給源の安定性の48時間計測を示す。特に、経時的なピークエッチング速度(
図7(d)参照)、全幅半値(FWHM)の安定性(
図7(b))およびそれぞれの偏差(
図7(c)および
図7(e))を得るために、1時間毎の計測値を取った。
図7(a)は、48時間計測の一計測例である。図からわかるように、本発明を使用した長時間の計測中も、安定したピークエッチング速度およびFWHMが得られた。
【0082】
図8は、ジオメトリ決定中の試料厚さを示すグラフである。ここでも、試料厚さが増大する試料の初期加熱の後、試料の相対的な厚さは経時的に減少する。
【0083】
図9は、試料表面の異なる位置のエッチング速度計測値と、イオンビームのプロファイルのエッチング速度、すなわち体積エッチング速度を得るためのそれぞれのガウスフィッティングとを示す。
図9では、y軸は、正規化されたエッチング速度値を示しており、x軸は、中心からのそれぞれのスキャンの変位を示している。
【0084】
イオンビームのガウス分布に対応する体積エッチング速度を得るために、ガウスフィッティングが使用される。このように、本発明は、体積エッチング速度をin-situで決定するために使用することができる。
【0085】
本発明のポイントスキャン機能は、設定された位置からのオフセットを計算することにより、試料表面へ配向された光をイオンビームに対してセンタリングすることを可能にする。加えて、ファラデースキャンによる電気的ジオメトリの可視化と同様に、イオンビームのエッチング速度ジオメトリを可視化することができる。3次元ガウスフィッティングを使用することにより、体積エッチング速度を計算することができる。ポイントスキャンは、ピークエッチング速度の計測と同じ制約を受けるため、各ポイントの露出時間は、プロセス要件に合った偏差等級において選択する必要がある。
【0086】
上記の説明から明らかなように、in-situ計測を使用して、エッチング速度をプロセスに合った精度で短時間にin-situで決定することができる。コスト高となる基準プローブが必要とされず、ロック手順が省略される。試料は、交換が必要となるまで何度も再使用することができ、試料材料を容易に交換することができる。
【0087】
図10を参照して、本発明のシステムの好適な別の実施形態が説明される。
図10は、堆積速度をin-situで計測するシステム100を示す。システムは、真空室110、材料供給源111aおよび干渉計測装置114を備える。
【0088】
材料供給源111aは、真空室110内に配置された試料113の第1の表面113aに材料112aを配向し、試料113の第1の表面113aに材料112aを一定の堆積速度で堆積させるように構成されている。
【0089】
干渉計測装置114は、真空室110内に少なくとも部分的に配置され、試料113の第2の表面113bに光115を配向し、試料113から反射した光に基づいて堆積材料112aの堆積速度をin-situで決定するように構成されている。
【0090】
干渉計測装置114は、エッチング速度の決定を参照して説明したのと同じものであってよい。よって、この点については、不要な繰り返しを避けるために、さらなる説明を省略する。
【0091】
本発明は、その範囲または本質的な特徴から逸脱することなく、幾つかの形態で具体化されうるので、上述した実施形態は、特に指定しない限り、前述した説明の詳細のいずれにも限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲において定義した範囲内で広く解釈されるべきであり、したがって、本発明に入る全ての変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されることを理解されたい。
【0092】
さらに、特許請求の範囲では、単語「含む(備える)」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞“a”または“an”は、複数を除外しない。単一のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の特徴の機能を果たす場合もある。属性または値に関連する「実質的に」、「約」、「凡そ」などの用語はそれぞれ、特に、正にその属性または正にその値も定義に含む。特許請求の範囲における参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】