(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】血餅除去遠位保護方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A61F2/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550141
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021054103
(87)【国際公開番号】W WO2021165443
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516326368
【氏名又は名称】シーラス エンドバスキュラー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM37
4C160NN04
(57)【要約】
本明細書では、吸引中に遠位血管を塞栓から保護するための方法が提供され、方法は、塞栓保護デバイスの送達及び留置を含み、塞栓保護デバイスは、血餅負荷よりも遠位に、その後、デバイスが留置されると、血管の壁に完全に対抗して、血管を横切る円周方向シールを形成するまで、脳血管床の深部に前進させられて配置される。塞栓保護デバイスを利用する方法は、脆弱な血餅塞栓から遠位の血管系を保護し、これにより、血餅塞栓が血餅除去及び/又は吸引中に取り除かれ、かつ塞栓保護デバイス内に捕捉されることとなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り除かれた塞栓から遠位血管を保護するための方法であって、
a.吸引カテーテル(90)を血餅負荷(60)よりも近位まで前進させることと、
b.マイクロカテーテル(70)及びガイドワイヤ(80)を、前記吸引カテーテル(90)を通して、治療すべき血管(40)内の前記血餅負荷(60)を通しかつ前記血餅負荷(60)よりも遠位まで前進させることと、
c.前記ガイドワイヤ(80)を除去することと、
d.弾性メッシュ本体を備える塞栓保護デバイス(20)を、前記マイクロカテーテル(70)を通して留置し、かつ前記塞栓保護デバイス(20)が前記血管(40)の壁に完全に対抗するまで前記デバイスを前記血餅負荷(60)よりも遠位に配置することであって、それによって、前記血管(40)を横切る円周方向シールを作成し、前記塞栓保護デバイス(20)が、交換長送達ワイヤ(110)に取り付けられている、留置すること及び配置することと、
e.前記マイクロカテーテル(70)を除去し、かつ前記塞栓保護デバイス(20)及び前記交換長送達ワイヤ(110)を前記血管(40)内の適所に残すことと、
f.前記血餅(60)の吸引を開始し、それによって、吸引が、脆弱な血餅塞栓(100)が取り除かれかつ前記塞栓保護デバイス(20)内に捕捉されるようにすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記塞栓保護デバイス(20)が、植込み型デバイスであり、前記塞栓保護デバイス(20)が、
a.近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカ(50)と、
b.前記弾性メッシュ本体であって、前記弾性メッシュ本体が、前記マーカ(50)の前記遠位端に取り付けられており、前記弾性メッシュ本体が、送達形状(15)及び血管(40)の壁に適合することができる留置形状(20)を有し、前記弾性メッシュ本体が、弾性メッシュの二重層(30)であり、前記弾性メッシュ本体が、それ自体の上に折り重ねられて、前記本体の円周の周りの円周方向の折り目と、前記弾性メッシュの折り重ねられた端部と、を作成し、前記メッシュの二重層の前記折り重ねられた端部の全てが、前記マーカ(50)内にある、前記弾性メッシュ本体と、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記実質的に中実のマーカ(50)が、前記交換長送達ワイヤ(110)に取り付けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
g)前記吸引カテーテルが吸込み(60)を適用させるにつれて、前記吸引カテーテル(90)を前記血餅まで前進させること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
h)前記塞栓保護デバイス(20)を除去しながら引き戻すことと、吸引を継続することとの組合せを更に含み、それによって、全ての捕捉された塞栓(100)が前記血管(40)から安全に除去されることを保証する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
i)ガイドワイヤを前記吸引カテーテル(90)内部で使用して、大口径ルーメンデバイスを所定の位置にナビゲートすること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記塞栓保護デバイス(20)が、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカ(50)と、(b)前記マーカ(50)の前記遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を備える植込み型デバイスであり、前記本体が、送達形状(15)及び血管(40)の壁に適合することができる留置形状(20)を有し、前記本体が、治療すべき血管(40)の直径よりも大きい直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイス(20)の前記弾性メッシュ本体(30)が、薄型の高さと幅との比率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイス(20)の前記弾性メッシュ本体(30)が、その幅の約10~20%の高さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記塞栓保護デバイス(20)の前記弾性メッシュ本体が、二重又は二つ折り層メッシュ(30)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記メッシュの二重層(30)が、円周方向に折り畳まれたメッシュの単一層を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塞栓保護デバイス(20)の前記マーカ(50)の前記近位端が、交換長送達ワイヤ(110)に、前記塞栓保護デバイス(20)を前記交換長送達ワイヤ(110)から取り外すことができないような様式で取り付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記交換長送達ワイヤ(110)が、前記デバイス(20)の前記マーカ(50)内部にダブテール部分(120)端部を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マーカ(50)が、放射線不透過性マーカである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記マーカ(50)が、剛性部材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記マーカ(50)が、中実リングである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血餅負荷を血管から除去するための方法であって、
a.吸引カテーテル(90)を前記血餅負荷(60)よりも近位の位置まで前進させることと、
b.マイクロカテーテル(70)及びガイドワイヤ(80)を、治療すべき血管(40)内の前記血餅負荷(60)よりも遠位の位置まで前進させることと、
c.前記ガイドワイヤ(80)を除去することと、
d.弾性メッシュ本体を備える塞栓保護デバイスを、前記血餅負荷よりも遠位の場所の所定の位置に配置し、かつ前記血管(40)の壁に完全に対抗させて、前記血管(40)を横切る円周方向シールを作成することと、
e.前記マイクロカテーテル(70)を除去し、かつ前記塞栓保護デバイス(20)を前記血管(40)内の適所に残すことと、
f.前記血餅負荷(60)の吸引を開始することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記デバイス(20)の前記弾性メッシュ本体(30)が、その幅の約10~20%の高さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスの前記弾性メッシュ本体(30)が、二重又は二つ折り層メッシュ(30)である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記メッシュの二重層(30)が、円周方向に折り畳まれたメッシュの単一層を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
塞栓保護デバイスの使用であって、前記塞栓保護デバイスが、
近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、
前記マーカの前記遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を備え、
前記弾性メッシュ本体が、送達形状及び血管の壁に適合することができる留置形状を有し、前記弾性メッシュ本体が、メッシュの二重層であり、前記弾性メッシュ本体が、それ自体の上に折り重ねられて、前記本体の円周の周りの円周方向の折り目と、前記弾性メッシュの折り重ねられた端部と、を作成し、血管から血栓を吸引するときに、前記メッシュの二重層の前記折り重ねられた端部の全てが、前記マーカ内にあり、かつガイドワイヤを含んでいる、
使用。
【請求項22】
前記デバイスが、吸引カテーテル及びガイドワイヤを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項23】
塞栓保護デバイスであって、
弾性メッシュ本体と、
吸引カテーテルと、
マイクロカテーテル及び
前記吸引カテーテルを通過するように構成されたガイドワイヤと、
近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、を備え、前記弾性メッシュ本体が、送達形状及び血管の壁に適合することができる留置形状を有し、
前記弾性メッシュ本体が、弾性メッシュの二重層であり、前記弾性メッシュ本体が、それ自体の上に折り重ねられて、前記本体の円周の周りの円周方向の折り目と、前記弾性メッシュの折り重ねられた端部と、を作成し、
前記メッシュの二重層の前記折り重ねられた端部の全てが、前記マーカ内にある、
塞栓保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は、概して、血餅除去保護デバイス及び/若しくは血餅除去保護デバイスシステム、並びに/又は血餅除去保護を用いるための植込み型デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血性脳卒中事象を患う患者における血餅物質のより安全な除去のための塞栓保護デバイスの開発に対する大きな需要がある。現在、より長期の病的状態及び長期にわたる患者のリハビリテーションにつながり得る臨床的続発症を防止しながら保護バリアを提示する手段を提供するこのようなデバイスに対する、満たされていないニーズが存在する。血餅のより安全な除去は、虚血性脳卒中の影響を受けた患者の治療に関連する医療費の削減に寄与する。近位保護デバイスは頸動脈で使用されるが、そのようなデバイスは、脳血管床の、特に脳内の遠位に送達するためのより深い保護を提示することができない。
【0003】
したがって、本明細書に開示される発明の方法は、動脈瘤及び血管閉塞治療に使用される植込み型デバイスの設計を、脳深部及び/又は血管塞栓保護のための革新的な治療技術に適合させる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第10,130,372号明細書の動脈瘤治療/閉塞デバイスを参照されたい。
【0004】
本明細書及び参照される特許文献に引用される全ての文献及び参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、メッシュシールドとして機能する塞栓保護デバイスを使用して、血餅吸引又は機械的血餅摘出中に取り除かれた塞栓から遠位血管を保護し、それによって、塞栓を捕捉し、それにより塞栓を吸引カテーテルを通して回収及び除去することができる方法が開示されている。
【0006】
一実施形態では、遠位血管を塞栓から保護するための方法が、吸引カテーテルを血餅負荷よりも近位の位置まで前進させることと、マイクロカテーテルを、吸引カテーテルを通しガイドワイヤに被せて、治療すべき血管内の血餅負荷の遠位端まで通して送達することと、ガイドワイヤを除去することと、塞栓保護デバイスを交換長送達ワイヤを介し、マイクロカテーテルを通して送達及び留置し、かつ塞栓保護デバイスが血管の壁に完全に対抗するまで留置されたデバイスを血餅負荷よりも遠位に配置して、血管を横切る円周方向シールを作成することと、マイクロカテーテルを除去し、かつ塞栓保護デバイス及び交換長送達ワイヤを血管内の適所に残すことと、交換長送達ワイヤに被せて吸引カテーテルを装填し、かつ血餅負荷よりも近位まで吸引カテーテルを前進させることと、血餅の吸引を開始し、それによって、吸引が、脆弱な血餅塞栓が取り除かれかつ塞栓保護デバイス内に捕捉されるようにすることと、を含む。
【0007】
本明細書に開示されている方法の一実施形態では、塞栓保護デバイスが、植込み型デバイスであり、塞栓保護デバイスが、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を備え、本体が、送達形状及び血管の壁に適合することができる留置形状を有し、本体が、弾性メッシュの二重層であり、本体が、それ自体の上に折り重ねられて、本体の円周の周りの円周方向の折り目と、弾性メッシュの折り重ねられた端部と、を作成し、メッシュの二重層の折り重ねられた端部の全てが、マーカ内にある。
【0008】
別の実施形態では、実質的に中実のマーカが、交換長送達ワイヤに取り付けられている。一実施形態では、マーカを交換長送達ワイヤから取り外すことができない。すなわち、送達ワイヤに恒久的に取り付けられている。
【0009】
本明細書に開示されている方法の更なる実施形態では、追加の又は変更されたステップは、限定されるものではないが、血餅を通して吸引カテーテルを前進させるステップ、ガイドワイヤを吸引カテーテル内部で使用して大口径ルーメンデバイスを所定の位置にナビゲートするステップ、及び/又は塞栓保護デバイスを除去しながらかつ吸引を継続しながら/引き戻し、それによって、全ての捕捉された塞栓が血管から安全に除去されることを保証するステップを含む。
【0010】
本明細書に開示されている方法の別の実施形態では、塞栓保護デバイスが、植込み型デバイスであり、塞栓保護デバイスが、(a)近位端及び遠位端を有する実質的に中実のマーカと、(b)マーカの遠位端に取り付けられた弾性メッシュ本体と、を備え、本体が、送達形状及び血管の壁に適合することができる留置形状を有し、本体が、治療すべき血管の直径よりも大きい直径を有する。別の実施形態では、弾性メッシュ本体が、薄型の高さと幅との比率を有する。別の実施形態では、弾性メッシュ本体の高さが、その幅の約10~20%である。
【0011】
別の実施形態では、デバイスの弾性メッシュ本体が、二重又は二つ折り層メッシュである。更なる実施形態では、メッシュの二重層が、円周方向に折り畳まれたメッシュの単一層を含む。
【0012】
別の実施形態では、塞栓保護デバイスのマーカの近位端が、交換長送達ワイヤに取り付けられている。
【0013】
更なる実施形態では、マーカが、放射線不透過性マーカであり、マーカが、剛性部材を含み、かつ/又はマーカが、中実リングである。
【0014】
本明細書に開示されている塞栓保護デバイスと、デバイスを留置するための送達手段と、を備えるキットもまた本明細書に開示されている。
【0015】
他の実施形態では、前の段落中のデバイスは、前に又は後に開示されている実施形態のうちのいずれかを組み込んでもよい。
【0016】
「発明の概要」は、特許請求の範囲を定義することを意図しておらず、また決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面、「発明を実施するための形態」、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本明細書に開示されている血餅除去保護デバイスの一実施形態の斜視図であり、自由大気中のその直径及び高さに関するデバイスの薄型能力を示す図である。
【
図2】血餅除去保護デバイスの一実施形態の断面斜視図であり、マーカ内で終端する弾性メッシュの二重層の端部の実施形態、及びマーカ内部の交換送達のダブテール端部の実施形態の両方を示す図である。
【
図3】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、血餅負荷よりも近位に配置するための吸引カテーテルの前進、次いで血餅負荷よりも近位に位置付けされた吸引カテーテルを通るマイクロカテーテル及びガイドワイヤの前進、及び血餅負荷を通り血餅負荷よりも遠位の位置までのマイクロカテーテルの継続的な前進を示す図である。
【
図4】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、ガイドワイヤの除去、及びマイクロカテーテルを通り血餅負荷よりも遠位の場所までの塞栓保護デバイスの送達前進を示す図である。
【
図5】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、血管を横切る円周方向シールを作成するために開いて血管の壁に対抗し始めるときの、血餅負荷よりも遠位の塞栓保護デバイスの留置を示す図である。
【
図6】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、塞栓保護デバイス(交換送達ワイヤに取り付けられている)を血餅負荷よりも遠位の場所の適所に残す交換送達ワイヤに被さった、マイクロカテーテルの除去を示す図である。
【
図7】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、吸引開始のために血餅負荷よりも近位の場所にある吸引カテーテルを示す図である。
【
図8】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、血餅負荷が吸引されていると同時に、脆弱な血餅塞栓が取り除かれかつ塞栓保護デバイス内に捕捉されることとなることを示す図である。
【
図9】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、血餅負荷及び塞栓の吸引の継続と同時に、脆弱な血餅塞栓が取り除かれかつ塞栓保護デバイス内に捕捉されることとなることを示す図である。
【
図10】本明細書に開示されている塞栓保護方法の一実施形態の斜視図であり、全ての捕捉された塞栓が血管から安全に除去されることを保証する目的のために、塞栓保護デバイスを吸引カテーテル内部に引き込みながら吸引を続ける組合せを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示されている発明は、図面及び説明に示されており、そこでは同様の要素には同じ参照番号が割り当てられている。しかしながら、特定の実施形態が図面に示されているが、本発明を開示された特定の1つの実施形態又は複数の実施形態に限定する意図はない。むしろ、本明細書に開示されている発明は、本発明の趣旨及び範囲内にある全ての修正、代替構造、及び均等物を網羅することを意図している。したがって、図面は例示を意図しており、限定を意図するものではない。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本技術が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
本明細書に開示されている発明の例示的な実施形態が
図1~
図10に示されている。
【0022】
本明細書に開示され、かつ
図1~
図10にある本発明の例示的な実施形態は、以下のとおりである。
【0023】
15:送達形状のデバイス
【0024】
20:留置形状のデバイス
【0025】
26:円周方向の折り目
【0026】
28:EDWのコイルが巻かれたコア
【0027】
30:二重層弾性メッシュ
【0028】
32:メッシュの高さ
【0029】
40:血管
【0030】
50:マーカ
【0031】
60:血餅負荷
【0032】
70:マイクロカテーテル
【0033】
80:ガイドワイヤ
【0034】
90:吸引カテーテル
【0035】
100:塞栓物質
【0036】
110:交換送達ワイヤ
【0037】
120:交換送達ワイヤのダブテール部分
【0038】
本明細書に開示されている発明の目的に対して、「に対応する」という用語は、互いに対応する物体間に機能的かつ/又は機械的関係があることを意味する。例えば、塞栓保護デバイス送達システムは、その送達及び留置のための塞栓保護デバイスに対応する(又は互換性がある)。
【0039】
本明細書に開示されている発明の目的に対して、「塞栓保護デバイス」又は「遠位保護デバイス」という用語は、限定はされないが、「デバイス」若しくは「デバイスシステム」若しくは「システム」若しくは「デバイスインプラント」若しくは「インプラント」などの用語を意味し、かつ/又はそれらと交換可能であり得る。
【0040】
本明細書に開示されているように、「薄型」という用語は、自由大気中で、弾性メッシュ本体がその幅の約10~20%の高さを有することを意味する。
【0041】
本明細書に開示されている発明は、血餅(60)が脳から又は身体の他の場所の血管(40)内で除去されている間、血餅(60)閉塞の遠位又は下流の血管を保護する方法である。典型的には、血餅が機械的な血餅摘出又は吸引のいずれかによって除去されるときに、血餅の小さな断片が脱落して下流に進み、更なる閉塞及び臨床的続発症を引き起こす可能性がある。本明細書に開示されている発明は、血餅(60)の破砕を最小限に抑えながら血管(40)内の血餅負荷(60)を通して小型カテーテル(70)をナビゲートすることによって、血餅負荷(60)よりも遠位に送達されかつ留置される(20)、本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(15)を利用する。血餅負荷(60)が除去されているとき、留置されたデバイス(20)は、血餅負荷(60)から取り除かれた脆弱な塞栓物質(100)の危険性から遠位血管を保護するように機能する。塞栓保護デバイス(20)は、弾性メッシュが血管(40)に円周方向に対抗するカップ状構造に開口する、弾性メッシュ(30)の二つ折り(又は二重)層で構成されており、それにより、血餅負荷(60)の吸引中、又は代替的に、機械的血餅摘出中に、取り除かれた血餅破片(100)を捕捉する。血餅負荷(60)が除去されると、デバイスの弾性メッシュ本体内に捕捉された破片(100)を含むデバイス(20)は、吸引カテーテル(90)の開口部に引き戻され(遠位血管系から、すなわち遠位の血管系の反対方向に)、その結果、捕捉された破片(100)は、デバイスがカテーテル(90)ルーメン内に引き込まれると
同時に吸引される。
【0042】
本明細書では、メッシュシールドとして機能し、それによって吸引カテーテル(90)を通して回収及び除去することができる塞栓(100)を捕捉するデバイス(20)を使用して、血餅吸引中に取り除かれた塞栓(100)から遠位血管を保護する方法が開示されている。本明細書に開示されている方法は、織られた弾性メッシュ材料から構成されたデバイス(20)を利用し、その端部は、放射線不透過性マーカなどの実質的に中実のマーカ内を起点とし、かつ終端し、そのポイントにおいてデバイスを標的部位に前進させるための交換長送達ワイヤ(110)がそこに固定されている。
【0043】
本明細書に開示されている発明の方法は、血餅負荷(60)を含む血管(40)からありとあらゆる脆弱な塞栓(100)を捕捉しかつ除去するためのメッシュシールドを作成するように、円周方向に折り畳まれた(それ自体の上に折り返された)弾性メッシュから本体が構成されている、塞栓保護デバイス(20)の使用を必要とする。一実施形態では、塞栓保護デバイス(20)本体は、弾性メッシュ(30)の二重層であり、本体が、それ自体の上に折り重ねられて、本体の円周の周りの円周方向の折り目と、弾性メッシュの折り重ねられた端部と、を作成し、メッシュの二重層の折り重ねられた端部の全てが、マーカ内にある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第10,130,372号明細書の動脈瘤治療/閉塞デバイスを参照されたい。
【0044】
一実施形態では、遠位血管を塞栓から保護するための方法が、a)吸引カテーテルを血餅負荷よりも近位の位置まで前進させ、かつマイクロカテーテル(70)を、吸引カテーテルを通しガイドワイヤ(80)に被せて、治療すべき血管(40)内の血餅負荷(60)の遠位端まで通して送達することと、b)ガイドワイヤ(80)を除去することと、c)塞栓保護デバイス(20)をマイクロカテーテル(70)を通して送達及び留置し、かつ塞栓保護デバイス(20)が、血管(40)の壁に完全に対抗するまでデバイス(20)を血餅負荷(60)よりも遠位に配置することであって、血管(40)を横切る円周方向シールを作成し、塞栓保護デバイス(20)が、交換長送達ワイヤ(110)に取り付けられている、送達及び留置すること並びに配置することと、d)マイクロカテーテル(70)を除去し、かつ塞栓保護デバイス(20)及び交換長送達ワイヤ(110)を血餅負荷(40)よりも遠位の場所の適所に残すことと、e)血餅(60)の吸引を開始し、それによって、吸引が、脆弱な血餅塞栓(100)が取り除かれかつ塞栓保護デバイス(20)内に捕捉されるようにすることと、を含む。
【0045】
別の実施形態では、遠位血管を塞栓から保護するための方法が、追加の又は変更されたステップを含み、ステップが、限定されるものではないが、g)血餅(60)を通して吸引カテーテル(90)を前進させるステップ、h)ガイドワイヤ(80)を吸引カテーテル(90)内部で使用して大口径ルーメンデバイスを所定の位置にナビゲートするステップ、及び/又はi)塞栓保護デバイス(20)を除去しながらかつ吸引を継続しながら/引き戻し、それによって、全ての捕捉された塞栓(100)が血管(40)から安全に除去されることを保証するステップを含む。
【0046】
本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)の一実施形態では、実質的に中実のマーカ(50)の遠位端の位置は、弾性メッシュ本体の下側のほぼ中央に取り付けられており、すなわち、マーカ(50)は、デバイス(20)の上側の折り重ねられたメッシュに対抗する。メッシュ本体上のマーカのそのような位置決めは、本明細書に開示されている方法で使用されるデバイス(20)の交換長送達ワイヤ(110)に完全な連結能力を与える。一実施形態では、交換送達ワイヤ(110)は、マーカ(50)内に存在するそのダブテール部分(120)を介してデバイスに取り付けられているため、デバイス(20)を交換送達ワイヤ(110)から取り外すことはできない。
図2を参照されたい。
別の実施形態では、弾性メッシュの全ての折り重ねられた端部は、マーカ(50)内にある。
図2を参照されたい。別の実施形態では、弾性メッシュ(30)の二重層の折り重ねられた端部は全て、マーカ(50)内を起点とし、かつ終端とする。
図2を参照されたい。別の実施形態では、本明細書で使用される塞栓保護デバイス(20)は、治療すべき血餅負荷(60)を含む血管(40)に対して「大型」である。この場合、デバイス(20)の直径(x)は、デバイス(20)の本体が、血管(40)の壁に対抗して血管(40)を横切る円周方向シールを作成することによって血管(40)の壁に適合することができるほど、治療すべき血餅負荷(60)を含む任意の血管(40)の直径よりも大きい。
【0047】
一実施形態では、本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)は、DFTニチノール(NiTi)(DFT=Drawn Filled Tubing(引抜充填管))で構成されて、デバイスをその予め形成されたディスク状の構成に復元することを可能にし、それが留置されたときに血管(40)に円周方向に対抗するように拡張し、それによってあらゆる脆弱かつ取り除かれた血餅破片(100)を捕捉することを確実にする。一実施形態では、デバイス構造のワイヤの数は、24~32本のワイヤ端部の範囲であり、互いの上に折り返されて弾性メッシュの二つ折り層を作成して、デバイスの弾性メッシュ本体に48~64本のストランド相当を与える。一実施形態では、デバイスの本体は、血管(40)内にカップ状の外観を作成するように比較的平坦又は湾曲しており、これは、デバイス(20)が血管(40)の壁に対抗すると保護バリアを与える。
【0048】
一実施形態では、本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第10,130,372号明細書に開示されている血管植込みデバイスである。別の実施形態では、本明細書に開示されているデバイスは、取り除かれた塞栓(100)から遠位血管を保護するために本明細書で使用されるデバイスが、デバイスマーカ(50)と交換送達ワイヤ(110)の端部との間に分離点を有さないことを除いて、米国特許第10,130,372号明細書に開示されている血管植込みデバイスと同様である。代わりに、デバイス(20)が取り付けられており、交換送達ワイヤ(110)から取り外すことはできない。一実施形態では、交換送達ワイヤ(110)は、マーカ(50)内に存在するそのダブテール部分(120)を介してデバイスに取り付けられているため、デバイス(20)を交換送達ワイヤ(110)から取り外すことはできない。一実施形態では、交換送達ワイヤは、約0.014インチの直径を有する。適切な直径は、本明細書に開示されている方法の最終ステップにおいて吸引カテーテル(90)の内部に回収されているときに、デバイス(20)と交換送達ワイヤ(110)との間の十分な結合強度を保証するように決定される。
【0049】
本明細書に開示されている方法は、方法で使用するための塞栓保護デバイス(20)の固有の構造のためであるが、それに加えて、血餅負荷(60)に対するデバイスの遠位の配置のために、脳血管床のより深い(すなわち、例えば、脳内の血餅負荷を越えたより遠位の血管系の、より深い)保護を提供する。本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)は、より大きな血管を治療するために拡大縮小でき、その薄型送達(15)及び留置(20)形状と組み合わせられた、マーカ(50)内を起点としかつ終端とする端部を有する弾性メッシュのその特定の構造は、血餅負荷を越えて脳内の遠位の血管系内のより深い遠位に送達される能力を独自に与える。特に、本明細書に開示されているデバイス(20)は、直径約2.5mm~最大約4mmまでほどしかない範囲の様々な直径の血管(40)に適合するのに十分な可撓性を有する。
【0050】
本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)及び使用方法の目的に対して、「薄型」という用語は、自由大気中で、弾性メッシュ本体が、その幅の約10~20%の高さ(32)を有し、したがって、その留置形状において、デバイス(20)の弾性メッシュ本体が、血管(40)の壁に対抗して血管(40)を横切る円周方向シールを作成する
ことによって血管(40)の壁に適合することができることを意味する。本明細書で開示されている方法で使用されるデバイス(20)の別の実施形態では、デバイスの弾性メッシュ材料の単一層又は二重層(30)は、限定はされないが、32本のニチノール(NiTi)ワイヤメッシュストランド編組構成などのワイヤメッシュストランド又は編組の比較的均一な分布を含む。他の実施形態では、デバイスは、24~64本のNiTiストランド編組構成の範囲のワイヤメッシュストランド又は編組を含む。別の実施形態では、デバイス構造のワイヤの数は、24~32本のワイヤ端部の範囲であり、互いの上に折り返されて弾性メッシュの二つ折り層を作成して、デバイスの弾性メッシュ本体に48~64本のストランド相当を与える。一実施形態では、デバイスの本体は、血管(40)内にカップ状の外観を作成するように比較的平坦又は湾曲しており、これは、デバイス(20)が血管(40)の壁に対抗すると保護バリアを与える。
【0051】
別の実施形態では、本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)は、円周方向に折り畳まれ(円周方向の折り目(26))、したがってそれ自体の上に折り返されて弾性メッシュ(30)の二重層を作成するワイヤメッシュの構成である。二重の又は折り返された層(30)の端部は、デバイス(20)の本体のほぼコアに配置されたマーカ(50)と交差する。これに関して、デバイスは、特恵的な(又は円周方向の)折り目上でメッシュ材料の単一層をそれ自体の上に円周方向に折り返すことによって構成され、ワイヤメッシュ材料の二重層(30)を備えるデバイス(20)を効果的にもたらし、すなわち、メッシュの二重層(30)は、円周方向に折り畳まれた(円周方向の折り目(26))メッシュの単一層を含む。ワイヤメッシュ材料の二つ折り又は二重層(30)は、以前の動物研究におけるデバイス(20)の高まった急性血栓形成性に寄与する。これはまた、血管系の深部にかつ血餅負荷(60)よりも遠位に留置されると、血管(40)の壁に完全に対抗して血管(40)を横切る円周方向シールを作成する能力を、デバイス(20)に提供すると考えられる。
【0052】
その薄型の留置形状(20)において、弾性メッシュの非留置(15)の折り返された二重層と比較した場合、血管系内のより深いその配置と組み合わされた、折り返された二重層(30)を有する弾性メッシュ本体は、約15%の幅の変化を占め、これは、マーカ(50)で圧力が加えられたときにデバイス(20)の直径(x)の増加につながる。この幅の変化/直径(x)の増加は、血管(40)を横切って広げられたメッシュ本体に血圧が加わるときの、留置されたデバイス(20)の効果的なアンカー機能である。そのような構成はまた、血管(40)の壁に対するデバイス(20)のメッシュ本体の十分な並置を提供する。
【0053】
図1~
図10は、本明細書に開示されている発明の塞栓保護デバイス(20)上の、近位端及び遠位端を有するマーカ(50)の位置を示している。一実施形態では、マーカ(50)の遠位端は、塞栓保護デバイス(15、20)の弾性メッシュ本体に取り付けられている。別の実施形態では、マーカ(50)の近位端は、交換長送達ワイヤ(110)に固定されており、交換長送達ワイヤ(110)から取り外すことができない。別の実施形態では、交換送達ワイヤ(110)は、交換送達ワイヤ(110)のダブテール部分(120)端部によってデバイス(20)に取り付けられているか又は固定されている。
【0054】
一実施形態では、本明細書に開示されているデバイスのマーカ(50)は、限定はされないが、金、白金、ステンレス鋼、及び/若しくはそれらの組合せなどの材料で構成された中実リングなどの、実質的に中実のカラー又は剛性部材である。別の実施形態では、限定はされないが、金、白金、白金/イリジウム合金、及び/又はそれらの組合せなどの放射線不透過性材料を使用することができる。そのようなマーカ(50)は、送達及び配置中のデバイス(20)の視覚化を提供する。一実施形態では、マーカ(50)は、マーカ(50)の近位端が交換長送達ワイヤ(110)に連結されるようにデバイス(20)内
の中央に位置決めされている。マーカ(50)の中実構造は、血管(40)内のデバイス(20)に安定性を与えるのに役立ち、弾性メッシュ本体中の力の移動又は伝達を防止し、それによって、デバイス(20)の誤った配置又は偶発的な移動を防止する。一実施形態では、マーカ(50)は、限定はされないが、送達マイクロカテーテル(70)、カテーテル、交換長送達ワイヤ(110)、ガイドワイヤ(80)、及び/又はプッシャワイヤ技術などの適切な対応する送達手段と協働し、かつそこから解放する/そこに取り付ける、又はそこに連結するための接合部によって構成されている。
【0055】
別の実施形態では、実質的に中実のマーカ(50)は、送達、配置、及び/又は留置中に蛍光透視法下でデバイス(20)の視覚化を容易にするための放射線不透過性材料(例えば、限定されないが、白金、金、白金/イリジウム合金、及び/又はそれらの組合せなど)を含む。マーカ(50)は、近位端及び遠位端を備える。弾性メッシュ本体が遠位端に取り付けられており、マーカ(50)の近位端は、本明細書に開示されているデバイス(20)の拡張時に弾性メッシュ本体の形状、直径、及び/又は曲率に影響を及ぼすように構成される場合がある。マーカ(50)は、塞栓保護デバイス(20)の全体的なプロファイルに影響を及ぼして、血管(40)内の拡張された/留置されたデバイス(20)の正確なフィットを保証するように、様々な形状に設計されてもよい。
【0056】
図2~
図10は、血管内の血餅負荷を通る送達及び/又は留置のための例示的な方法を示している。一実施形態では、デバイス(15)は、薄型の弾性メッシュ本体が、マイクロカテーテル(70)内のプッシャワイヤ機構を介して、それ自体の内側に閉じ込められるか又は圧縮されるように、
図3及び
図4に示すように閉じ込められた、ぎっしりと詰まった状態(送達形状)で送達される。デバイス(20)が血餅負荷(60)よりも遠位の場所に押し込まれ、かつ/又は配置されると、薄型の弾性メッシュ本体の端部はカップ状構成の開口部のように外側に開き、カップの開口端は、血餅(60)とは反対側又は血餅(60)から見て外方に面し(
図5~
図9に示すように)、次に開いた本体は、血管(40)の壁に適合し、血管の壁に完全に対抗し、血管(40)を横切る円周方向シールを作成する。一実施形態では、
図6~
図8に示すように、弾性メッシュ(30)のその二重層を備えるデバイス(20)は、マーカ(50)に圧力が加えられたときにデバイス(20)の幅の変化及び直径の増加を考慮して、その深さを深くする又は増加させることができる。この幅の変化/直径の増加は、血餅負荷(60)よりも遠位の血管(40)を横切るように広げられてシールしている弾性メッシュ(30)本体に血圧がかかるときの、留置されたデバイス(20)の効果的なアンカー機能である。本明細書で提供される動物研究の結果は、弾性メッシュ(30)の二重層のカップ状構成によって作成された円周方向シールが、血管(40)の壁に対するメッシュ本体の効率的な並置を提供することを裏付ける。
【0057】
他の実施形態では、本明細書に開示されているデバイス(20)は、コイル化技術、フレーミングコイル、塞栓剤、追加のマーカ、ポリマー、再吸収性ポリマー、及び/又はそれらの組合せなどの、別個の若しくは組み合わせた補助的要素及び/又は部材を更に組み込んでもよい。
【0058】
本明細書に開示されているデバイスの設計及び/又は製造のための弾性メッシュ材料は、容易に入手可能であり、当業者に周知である。したがって、弾性メッシュ材料は、限定はされないが、ニッケルチタン(ニチノール又は他にNiTiとして知られている)、ステンレス鋼、ポリマー、及び/又はそれらの組合せなどの多種多様な利用可能な材料に及ぶ。例示的な既知のバイオメディカルポリマーファミリーには、限定されないが、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリカーボネート、ポリアミド、及び/又はそれらの組合せなどのポリマーが含まれる。(例えば、J Polym S
ci B Polym Physを参照されたい。著者最終稿;2012年6月15日付PMCで入手可能。)
【0059】
1つの例示的な実施形態では、弾性メッシュ材料は、限定はされないが、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリエステルなどのポリマー材料の織物ストランドで形成されている。ポリマーストランドは、動脈瘤を治療する医師が血管系内のデバイスの場所を蛍光顕微鏡で視覚化することを可能にする放射線不透過性材料で充填することができる。放射線不透過性充填材には、好ましくは、三酸化ビスマス、タングステン、二酸化チタン、若しくは硫酸バリウム、又はヨウ素などの放射線不透過性染料が含まれる。弾性メッシュ材料は、放射線不透過性材料のストランドによって形成することができる。放射線不透過性ストランドにより、医師及び/又は放射線科医は、充填されたポリマー材料を使用せずにメッシュの場所を蛍光顕微鏡で視覚化することができる。そのような放射線不透過性ストランドは、限定はされないが、金、白金、白金/イリジウム合金、及び/又はそれらの組合せなどの材料で形成されてもよい。一実施形態では、弾性メッシュ材料は、10%~20%の白金コアNiTiで構成されている。別の実施形態では、弾性メッシュ材料は、10%の白金コアNiTi、15%の白金コアNiTi、又は20%の白金コアNiTiで構成されている。10%の白金コアNiTi構造は、X線下でデバイスのゴースト像を提供するのに十分である。
【0060】
放射線不透過性コア及び非放射線不透過性外層又はケーシングを有するそのような構成された組合せワイヤ又は複合ワイヤは、容易に入手可能であり、DFT(登録商標)(drawn-filled-tube(引抜充填管))ワイヤ、ケーブル、又はリボンとして医療デバイス及び金属技術において周知である。DFT(登録商標)ワイヤは、2つ以上の材料の所望の物理的及び機械的属性を組み合わせて単一のワイヤにするように構成された金属-金属複合材である。より放射線不透過性であるがより延性の高い材料をワイヤのコアに配置することによって、NiTi外層は、100%のNiTiワイヤと同様の機械的性質を有する、結果としてもたらされた複合ワイヤを提供することができる。DFT(登録商標)ワイヤは、米国インディアナ州フォートウェインのFort Wayne Metals Corp.から入手可能である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Schafferによる「Biocompatible Wire」と題されたAdvanced Materials&Processes、2002年10月、51~54頁のジャーナル記事も参照されたい。
【0061】
弾性メッシュ材料が放射線不透過性金属ストランドで形成されている場合、ストランドはポリマーコーティング又は押出成形によってコーティングされてもよい。放射線不透過性ワイヤストランド上のコーティング又は押出成形は、蛍光透視視覚化を提供するが、ストランドの曲げ疲労に対する耐性も高め、かつストランドの潤滑性も高め得る。ポリマーコーティング又は押出成形は、一実施形態では、ヘパリンなどの凝固に抵抗する傾向がある薬剤でコーティング又は処理される。このような凝固耐性コーティングが一般に知られている。ポリマーコーティング又は押出成形は、任意の適切な押出可能ポリマー、又はTeflon(登録商標)若しくはポリウレタンなどの薄いコーティングで塗布することができる任意のポリマーとすることができる。
【0062】
更に別の実施形態では、弾性メッシュ材料のストランドは、金属及びポリマーの両方の編組ストランドを使用して形成されている。金属ストランドをポリマーストランドと組み合わせて編組にすると、メッシュの可撓性特性が変化する。そのようなメッシュ部分を留置及び/又は折り畳むのに必要な力は、金属メッシュストランドのみを含むメッシュ部分に必要な力よりも大幅に低減される。しかしながら、蛍光透視視覚化のためのメッシュの放射線不透過特性は保持される。そのようなデバイスを形成する金属ストランドには、限定はされないが、ステンレス鋼、金、白金、白金/イリジウム、ニチノール、及び/又は
それらの組合せが含まれる。デバイスを形成するポリマーストランドは、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、Teflon(登録商標)、及び/又はそれらの組合せを含むことができる。更に、メッシュ材料のポリマーストランドは、限定はされないが、ポリマーストランド上への金堆積を用いることによる、又はポリマーストランド上への適切な金属イオンのイオンビームプラズマ堆積を用いることによる、既知の技術を用いて、それらを放射線不透過性にするように化学修飾することができる。
【0063】
弾性メッシュ材料はまた、様々な直径及び/又は様々な可撓性のフィラメント又はストランドで形成することができる。ポリマーストランドのサイズ又は可撓性を変化させることにより、留置時のメッシュの可撓性特性も変化させることができる。可撓性特性を変化させることにより、弾性メッシュ本体の留置及び折り畳み構成の両方を、実質的に任意の所望の形状に変化させ又は変更することができる。
【0064】
メッシュは、ポリマーストランド又はフィラメント、及び金属ストランド又はフィラメントの両方で形成することができるだけでなく、異なるポリマー材料のフィラメントを使用して形成することができる。例えば、異なる可撓性特性を有する異なるポリマー材料をメッシュの形成に使用することができる。これにより、可撓性特性が変質して、留置位置及び折り畳み位置の両方でメッシュ本体の結果として生じる構成が変化する。そのようなバイオメディカルポリマーは、当技術分野で容易に知られ、かつ利用可能であり、限定されないが、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリカーボネート、ポリアミド、及び/又はそれらの組合せなどのポリマーファミリーに由来し得る。
【0065】
メッシュ本体内での使用に適した弾性メッシュ材料は、平織シート、編物シート、又はレーザ切断ワイヤメッシュの形態をとってもよい。一般に、材料は、2組以上の実質的に平行なストランドを含むべきであり、一方の組の平行なストランドは、他方の組の平行なストランドに対して45度~135度のピッチである。いくつかの実施形態では、メッシュ材料を形成する2組の平行なストランドは、互いに実質的に垂直である。メッシュ材料のピッチ及び一般的な構造は、デバイスの性能のニーズを満たすように最適化され得る。
【0066】
本明細書に開示されている発明で使用される金属織物のワイヤストランドは、弾性であると同時に所望の形状を実質的に設定するために熱処理することができる材料で形成されるべきである。この目的に適していると考えられる材料には、医療デバイスの分野でElgiloy(登録商標)と呼ばれるコバルト基低熱膨張合金、Haynes InternationalからHastelloy(登録商標)の商品名で市販されているニッケル基高温高強度「超合金」、International NickelからIncoloy(登録商標)の名称で販売されているニッケル基熱処理可能合金、及びいくつかの異なるグレードのステンレス鋼が含まれる。ワイヤに適した材料を選択する際の重要な要素は、ワイヤが、所定の熱処理を受けたときに金型表面(又は以下に記載されるような形状記憶)によって誘発される適切な量の変形を保持することである。
【0067】
これらの必要条件を満たす材料の1つのクラスは、いわゆる形状記憶合金である。このような合金は、温度によって誘発される相変化を有する傾向があり、これにより、材料は、特定の転移温度を超えて材料を加熱して材料の相の変化を誘発することによって固定することができる、好ましい構成を有することとなる。合金が冷却されると、合金は、熱処理中にそうであった形状を「思い出す」こととなり、そうすることから、制約されない限り同じ及び/又は同様の構成をとる傾向になることとなる。
【0068】
本明細書に開示されている発明で使用するための1つの特定の形状記憶合金はニチノールであり、これはニッケル及びチタンのほぼ化学式どおりの合金であり、所望の性質を達
成するために他の少量の他の金属もまた含んでもよい。適切な組成及び取扱い要件を含むニチノールなどのNiTi合金は当技術分野で周知であり、そのような合金はここで詳細に説明する必要はない。例えば、その教示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,067,489号明細書及び第4,991,602号明細書は、ガイドワイヤをベースとする技術における形状記憶NiTi合金の使用を論じている。そのようなNiTi合金は、市販されており、かつ他の既知の形状記憶合金よりもそのような合金の取扱いについてより多く知られているため、少なくとも部分的に好ましい。NiTi合金もまた非常に弾性的である。実際、それらは「超弾性」又は「擬弾性」として知られていると言われている。この弾性は、本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)がその留置のために以前の拡張構成に戻るのを助けることとなる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ワイヤストランドは、選択された材料の標準的なモノフィラメントを含み、すなわち、標準的なワイヤストックが使用される。いくつかの実施形態では、24本のワイヤストランド及び/又は24本のストランド編組構成が使用される。他の実施形態では、デバイスは、24~48本の範囲のNiTiストランド編組構成のワイヤメッシュストランド又は編組を含む。しかしながら、必要に応じて、個々のワイヤストランドは、複数の個々のワイヤでできている「ケーブル」から形成されてもよい。例えば、いくつかのワイヤが中心ワイヤの周りに螺旋状に巻かれた金属ワイヤで形成されたケーブルが市販されており、0.003インチ以下の外径を有するNiTiケーブルを購入することができる。特定のケーブルの1つの利点は、それらが同じ直径を有しかつ同じ材料で形成されたモノフィラメントワイヤよりも、「柔らかい」傾向があることである。更に、ケーブルの使用によりワイヤストランドの有効表面積を増加させ、これにより血栓形成を促進する傾向になることとなる。
【0070】
本明細書に開示されている塞栓保護デバイス(20)は、血管内の内皮細胞の足場として機能するのに十分なメッシュ密度の薄型弾性メッシュ材料によって構成されている。本明細書に開示されている発明の目的に対して、「メッシュ密度」という用語は、メッシュ本体の多孔性のレベル又は金属と開口面積との比率を意味する。メッシュ密度は、メッシュの開口部又は細孔の数及びサイズ、並びに開口部又は細孔の開口状態が送達と留置との間で変化する状況において細孔が開放又は閉鎖されている程度に関係する。一般に、弾性メッシュ材料の高メッシュ密度領域は、ほぼ約40%以上の金属面積及び約60%以下の開口面積を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、デバイス(20)の弾性メッシュ本体は、同じ材料で均一に形成されている。しかしながら、そのような材料は、異なる編み、ステッチ、編組、及び/又は切断構造を有してもよい。
【0072】
吸引カテーテルの主な用途は、患者の動脈に形成された血栓を除去して、脳卒中又は閉塞症による血栓が形成された血管の閉塞を防止することである。本明細書の遠位保護方法で使用される吸引カテーテル(90)は、当技術分野において容易に入手可能である。吸引カテーテル(90)は、通常、遠位の放射線不透過性先端マーカと、血栓を除去するための手動吸込み式のシリンジ又は機械式/吸引ポンプに取り付けられた近位のルアーロックポートと、を備えた、オーバー・ザ・ワイヤのシングル・ルーメン・システムからなる。カテーテルは、負圧源が取り付けられる吸引ポートを更に含む。一実施形態では、吸引カテーテル(90)は、約95~135cmの長さである。吸引カテーテルにおける吸込みは、ポンプ、例えば真空ポンプ、又はシリンジなどの装置によって提供することができる。いくつかの実施形態では、吸引カテーテル(90)は、大口径吸引カテーテルである。いくつかの実施形態では、吸引カテーテル(90)は、吸引ポンプである。本明細書に開示されている遠位保護方法で使用される吸引カテーテルは、標準的なサイズの吸引カテーテルである。放射線不透過性マーカをカテーテルの遠位端に位置付けして、カテーテル
を体内に位置決めするのを支援することができる。吸引カテーテルは、一般に、シャフトの長さに沿って様々な可撓性で構成され、損傷を引き起こすことなく患者の血管系を通って操作されるように十分に可撓性があるが、カテーテルを正確な場所に配置しかつ吸引圧力に耐えるのに必要な、軸方向の押込みを可能にするのに適当な剛性を保持するように、シャフトの長さに沿って様々な可撓性で構成されている。本明細書で使用される吸引カテーテルは、サイズが様々であってもよく、典型的には5~8フレンチ(Fr.)の範囲である(1Fr.=0.013インチ)。(当技術分野で周知のように、フレンチスケール又はフレンチゲージシステムは、カテーテルのサイズを測定するために一般的に使用される。)
【0073】
本明細書で使用されるマイクロカテーテル(70)は、典型的にはサイズが標準的であり、当技術分野において容易に入手可能である。例えば、一般的に使用される017(内径17/1000インチ)、及び021などのマイクロカテーテルのプロファイルは周知であり、容易に入手可能である。特定の実施形態では、017のマイクロカテーテルは、それを血餅負荷(60)を通して前進させたときに、臨床医(又は術者)が血餅(60)の攪乱を最小限にする、すなわち、血餅負荷(60)の攪乱を防ぐのに十分小さい。本明細書で使用されるマイクロカテーテルは、解剖学的構造、血管サイズ、圧力変動、外傷が起きないようにする能力、及びシステム適合性などの基準に基づいて選択される。
【0074】
本明細書に開示されているデバイス(20)及び方法は、医療デバイスの分野の当業者には容易に明らかとなる合理的な設計パラメータ、特徴、修正、利点、及び変形を組み込んでもよい。
【実施例】
【0075】
動物研究を行って、処置の仕組み及び血餅吸引処置で使用される他のデバイスとのデバイスの相互作用を評価した。この研究は、獣医及び経験豊富な神経介入放射線科医の監督下で、オーストリア、ザルツブルグのResearch Institute of Neurointervention,Animal Labで実施された。
【0076】
視覚化を容易にするためにタンタルでドープされた血餅を調製し、動物の血管系に導入した。
【0077】
血餅除去遠位保護処置の最初のステップは、血餅負荷を通して0.014”のガイドワイヤを前進させ、続いてマイクロカテーテルを血餅の遠位端まで前進させることであった。次いで、マイクロカテーテルを戦略的に位置決めして、血餅負荷よりも遠位に塞栓保護デバイスを留置した。したがって、塞栓保護デバイスをマイクロカテーテルを通して前進させ、血餅負荷よりも遠位に留置させた。デバイスが首尾よく留置され、マイクロカテーテルが適所に配置された状態で、吸引カテーテルをマイクロカテーテルに被せて血餅負荷よりも近位の場所まで前進させた。次いで、血餅を吸引する前に、塞栓保護デバイスの交換長ワイヤに被さったマイクロカテーテルを除去した。
【0078】
血餅負荷は、2つの方法によって首尾よく吸引された。
【0079】
血餅が吸引されていた間、遠位保護デバイスは適所に留まっており、吸引カテーテルはデバイスまで前進させられ、最終的にルーメン内部に引き込み、吸引中に取り除かれた全ての収集された塞栓を除去した。
【0080】
血餅負荷の約50%が吸引された後、術者は遠位保護デバイスを近位に引っ張り、吸込みを依然として適用しながら吸引カテーテル内部に残りの血餅負荷を引き込んだ。
【0081】
この研究で使用されたデバイスは、機械的血餅摘出のためにステントリーバが通されて送達されるものと同様に、021のマイクロカテーテルを通して送達された。最適なデバイス構成は、治療される各患者に応じて可変である。一実施形態では、遠位保護デバイスは、デバイスを留置するために血餅の遠位端を通って前進するときに血餅負荷の攪乱を最小限に抑えるために、更に小さい、例えば、017のマイクロカテーテルを通して送達される。別の実施形態では、デバイスは、0.001”のDFTニチノールの48本のワイヤストランドで構成されており、これによって、術者は、デバイスが首尾よく留置され、血餅の向こう側に開いているのを観察することができることとなる。
【0082】
特定の実施形態では、デバイス構成は直径2.5~4.5mmの範囲であり、デバイスのサイズは、良好な壁並置及び遠位保護を提示するために、デバイスがその中に留置されている血管のサイズに応じて選択されることとなる。
【0083】
閉塞デバイスの操作及び留置制御は、カテーテル先端に関連するデバイスの放射線不透過性マーカを視覚化しながら実行された。デバイスの開発は、視認性を援助するために白金コアNiTiワイヤの放射線不透過性支柱の組込みを伴うこととなる。
【0084】
デバイスの操作及び留置は、特に血管及び血餅負荷を通す誘導、並びに処置された動物の血餅負荷より遠位へのデバイスの配置に関して、ピンポイントの精度で操作するのが容易であった。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。本明細書に開示された本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、特許請求される装置の合理的な特徴、修正、利点、及び設計変形は、前述の詳細な説明及び実施形態に記載された指針に従うことによって当業者に容易に明らかになるであろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。