(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ウイルス封入のためのプログラム可能な殻
(51)【国際特許分類】
C12N 15/00 20060101AFI20230329BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C12N15/00 100Z
C12N7/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550176
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021054307
(87)【国際公開番号】W WO2021165528
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517068553
【氏名又は名称】テクニッシェ ウニベルシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック ディーツ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065CA23
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、ウイルス又はウイルス粒子を封入するための、DNAに基づくナノ構造などの、高分子に基づくナノ構造、本発明によるこのような高分子に基づくナノ構造によって封入されたウイルス又はウイルス粒子を含む組成物、及びこのような高分子に基づくナノ構造を用いることによりウイルス又はウイルス粒子を封入する方法に関する。
【選択図】
図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子に基づくナノ構造であって、
前記高分子に基づくナノ構造は、DNAに基づく構築ブロックを自己組織化することにより形成されるDNAに基づくナノ構造であり、
前記ナノ構造は、空洞にアクセスするための開口を有する殻であり、
前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの各々は、1本の一本鎖DNAテンプレート鎖及び前記一本鎖DNAテンプレートと相補的な一組のオリゴヌクレオチドにより形成され、
前記オリゴヌクレオチドの各々は、前記一本鎖DNAテンプレートの1つの近接DNA配列区間か少なくとも2個の非近接DNA配列区間のいずれかと相補的であり、
前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの各々は、三角形及び/又は四角形角柱、特に三角形角柱であり、並びに
1~10か所の抗体に基づく結合部位が前記高分子に基づくナノ構造によって形成された前記空洞の内側部位に付着している、
高分子に基づくナノ構造。
【請求項2】
少なくとも1MDaの分子量を有し、ウイルス又はウイルス粒子を封入するための少なくとも20nmの直径の空洞を包む、高分子に基づくナノ構造であって、前記高分子に基づくナノ構造は特にDNAに基づくナノ構造である、高分子に基づくナノ構造。
【請求項3】
前記高分子に基づくナノ構造は、DNAに基づく構築ブロックを自己組織化することにより形成されるDNAに基づくナノ構造であり、特に自己組織化する前記DNAに基づく構築ブロックの各々は、1本の一本鎖DNAテンプレート鎖及び前記一本鎖DNAテンプレートと相補的な一組のオリゴヌクレオチドにより形成され、前記オリゴヌクレオチドの各々は、前記一本鎖DNAテンプレートの1つの近接DNA配列区間か又は少なくとも2個の非近接DNA配列区間のいずれかと相補的である、請求項2に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項4】
前記高分子に基づくナノ構造は、封入される前記ウイルス又はウイルス粒子の存在下その場で形成される、特に封入される前記ウイルス又はウイルス粒子の存在下で前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックからその場で形成される、閉じた三次元幾何学的形状、特に球形、球面円柱形、及び多面体、特に四面体、八面体又は正二十面体から選択される閉じた三次元幾何学的形状である、請求項2又は3に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項5】
前記高分子に基づくナノ構造は、前記空洞にアクセスするための開口を有する殻である、請求項2又は3に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項6】
前記高分子に基づくナノ構造は、それぞれ第1及び第2の内部空洞にアクセスするための開口を有する第1及び第2の殻の組み合わせであり、前記第1及び第2の内部空洞はともに、前記空洞を形成し、特に前記第1及び第2の殻は、少なくとも1つのリンカーにより結合される、請求項2又は3に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項7】
前記高分子に基づくナノ構造は、正二十面体構造に基づく、請求項2~6のいずれか一項に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項8】
前記高分子に基づくナノ構造は、DNAに基づく構築ブロックを自己組織化することにより形成されるDNAに基づくナノ構造であり、前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの各々は、三角形及び/又は四角形の角柱、特に三角形の角柱である、請求項7に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項9】
各前記三角形及び/又は四角形の角柱は、それぞれm個の三角形、又は四角形の平面から形成され、mは、4、5、6、7及び8から独立して選択される、特に5、6及び7から独立して選択される整数であり、さらに特に前記整数は6であり、
前記m個の平面の各々の、それぞれ3個、又は4個の辺は、DNA二重らせんのn個の平行区間により形成され、nは、1、2、3、4、5及び6から独立して選択される、特に2、3、4及び5から独立して選択される、さらに特に3及び4から独立して選択される整数であり、
各平面は、前記平面上の平面及び/又は前記平面下の平面と、(i)前記平面を形成する前記DNA二重らせん間のスタッキング相互作用により、及び(ii)前記平面の少なくとも2個を架橋する前記DNAに基づく構築ブロックを形成する前記一本鎖DNAテンプレート及び/又は前記オリゴヌクレオチド内部のDNA区間により部分的に結合され、並びに
それぞれ前記3個又は4個の側部の台形のうち少なくとも2個は、前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定のパターンのくぼみ及び/又は突出を含む、
請求項1又は8に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項10】
前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの少なくとも一部については、前記m個の平面の各々の少なくとも1つの辺の長さは、第1の平面から第mの平面まで減少しており、その結果前記第1の平面に垂直な平面と前記m個の辺によって形成される台形平面の各々との間に斜角が生じる、請求項9に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項11】
それぞれ全ての3個、又は4個の側部の台形は、前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定パターンのくぼみ及び/又は突出を含む、請求項9又は10に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項12】
前記殻の、又は前記第1及び第2の殻のそれぞれの縁を形成する自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの側部の台形は、前記自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定パターンのくぼみ及び/又は突出を含まない、請求項9又は10に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項13】
前記高分子に基づくナノ構造は、DNAに基づくナノ構造であり、前記DNAに基づくナノ構造は、
(a)1組の4コピーの三角形切頭体から成る、半分の八面体であって、前記三角形切頭体の三角形の辺の1つに対する塩基対スタッキングが、鎖短縮によるか不対のチミジンを加えることによるかのいずれかにより不活性化される、半分の八面体、
(b)各々の場合において2組の5コピーの2種類の異なる三角形切頭体から成る、半分のT=1殻であって、第1の組の5コピーが閉じた5量体を形成し、そして第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合する、半分のT=1殻、及び
(c)各々の場合において3組の5コピーの3種類の異なる三角形切頭体から成る、五角形の1つの頂点が欠けた「捕捉」T=1殻であって、第1の組の5コピーが閉じた5量体を形成し、第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合し第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合し、そして第3の組の5コピーが前記第2の組の5コピー間の間隙へと結合する、「捕捉」T=1殻
から選択される殻である、請求項1~12のいずれか一項に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項14】
(a)1つ又は複数の種類のDNAブリック構築物であって、このようなDNAブリック構築物の各々の種類は、前記DNAに基づくナノ構造の外面上の三角形又は四角形切頭体の平面上に存在する1つ又は複数の相補的相互作用部位との辺対辺のスタッキング接触による特異的相互作用をするための1つ又は複数の相互作用部位によって特徴づけられ、前記DNAブリック構築物は、前記平面のそれぞれ3個、又は4個の辺間の自遊空間を覆う、1つ又は複数の種類のDNAブリック構築物、
(b)前記三角形又は四角形切頭体の1つの内部の、及び/若しくは前記三角形及び/若しくは四角形切頭体のうち2個の間の1つ又は複数の架橋結合、並びに/又は
(c)前記ウイルス又はウイルス粒子と特異的に相互作用する少なくとも1つの部分
をさらに含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の高分子に基づくナノ構造。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の高分子に基づくものによって封入されたウイルス又はウイルス粒子を含む組成物。
【請求項16】
ウイルス又はウイルス粒子を封入する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の高分子に基づくナノ構造を提供するステップ、及び前記高分子に基づくナノ構造を前記ウイルス又はウイルス粒子を含む、又は含むと疑われる培養液と接触させるステップを含む、ウイルス又はウイルス粒子を封入する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス又はウイルス粒子を封入するための、DNAに基づくナノ構造などの、高分子に基づくナノ構造と、本発明によるこのような高分子に基づくナノ構造などによって封入されたウイルス又はウイルス粒子を含む組成物、及びこのような高分子に基づくナノ構造を用いることによりウイルス又はウイルス粒子を封入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症は、世界的に毎年数百万人の死亡や、計り知れない苦痛及び罹患率を引き起こし、社会及び経済に医療費の巨額の失費を課し、休業や、そして両親、子供、及び介護者を亡くすこと又は非難と結びつくメンタルヘルスの問題などの他の容易に測定できない負担を引き起こしている。気候変動及び世界規模の移動が、ウイルスの大流行の脅威を増大させると予想されるのは、従来寒すぎて生き延びることができなかった地域にも媒介物が伝搬するからである。ウイルス感染症の負担は、ヒトによる生息地の浸食、人口密度の増加による都会化及び巨大都市、地方的だけでなく遠方への旅行の増加、並びに疾患出現の多数の他の推進物によりさらに増えるだろう(1)。ウイルスは、その短い世代時間及び遺伝的変動が急速な進化を助けるため、新しい環境条件にとても適応しやすい病原体クラスである(2)。大多数のウイルス性疾患では(現在のWHO記載ウイルスの~70%)、有効な治療が得られない。少数の現存している抗ウイルス療法は、ほとんど独占的に特定のウイルスを標的にし、新しく出現する病原体に対する適用はない。加えて、抗ウイルス療法は典型的には、効果的であるためには感染後早急に、ウイルス量が高くなりすぎて病徴を引き起こす前に開始される必要があるという課題に直面している。新興のウイルスの脅威には、迅速な応答が必要とされるが、広く適用できる既製の抗ウイルス薬は存在しない。
【0003】
これに関して、現代の抗ウイルス療法の働き方がどのようになっているかを最初に検討するのは有用である。現存している抗ウイルス薬は、ウイルスの複製及び伝播を可能とするウイルス特異的タンパク質、主にポリメラーゼ、又は必須ウイルス又は細胞構造のいずれかを標的とする。ウイルス増殖サイクルにおける主要な標的とすることができるステップは、(1)ウイルス粒子が宿主細胞の細胞膜に結合すること;(2)宿主細胞への取り込み;(3)ウイルスカプシドの細胞質への放出及びウイルスゲノムの複製スポットへの輸送;(4)ウイルス核酸及びタンパク質の合成並びにウイルスタンパク質の翻訳後プロセシング;(5)ウイルス成分の新しいウイルス粒子への集合;(6)新しく形成されたウイルスの感染細胞からの放出である。多くの臨床的に利用可能な抗ウイルス薬は、ある一定のウイルス酵素に特異的であるポリメラーゼ阻害剤である。例としては、単純ヘルペスウイルス及び水痘・帯状疱疹ウイルスに対して活性がある、アシクロビル(3)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びHIVに対して活性がある、テノホビル及びC型肝炎ウイルス(HCV)に対して活性がある、ソホスブビルが挙げられる。ウイルス生活環の異なる段階を標的とする薬物の例は、HIV融合(段階2)を阻害する、エンフビルチド(4)、A型インフルエンザウイルス脱穀(段階3)を阻害する、アマンタジン(5)又は宿主細胞からのインフルエンザウイルス放出(段階6)を妨害する(6)、ノイラミニダーゼ阻害剤オセルタミビル(6)である。これらの薬物は、しかしながら、ウイルスが増殖し、伝播している場合にのみ作用することができるが、ウイルスを死滅させたり中和したりすることはできない。これらの抗ウイルス薬で広く適用できるものはない。
【0004】
近年、星型デザイナーDNAナノ構造が、空間パターン認識特性を有する複数の結合モチーフを示すためのテンプレートとして示されており、これはデング熱(DENV)ウイルス表面を感知し、ウイルス抑制能力を与える(Kwonら、(56))。分子プラットフォーム設計戦略は、カスタマイズされたDNAナノ構造に基づいて必要なリガンドパターンを作成することにより他の疾患発症性の病原体を検出し、戦うよう適合される可能性があると述べられるが、必要とされるヘアピン相互作用が形成されるのを防ぐための最適な形状同一性がなければ、感知及び抑制能力が低下するので、正確で、多価のパターン認識特性を有する既定のDNAナノ構造が必要とされるとも述べられる。したがって、この提案は、このごろコロナウイルスで見られる、新しいウイルスが出現する場合に必要とされるなどの、異なる又はまだ性質不明のウイルス粒子を標的とする一般的に適用できる手法を提供しないように思われる。その上、いくぶん開いた構造のナノ構造は、ウイルスカプシドタンパク質がまだ突出できるかもしれず、免疫学的に活性である及び/又はウイルス感染プロセスの引き金を引くことができるかもしれない危険を帯びる。
【0005】
従来特定の空洞を含有する多くのさらなるオリゴヌクレオチドに基づくナノ構造が開発されてきた。中国特許第110 272 980号明細書は、三叉神経(trigeminal)構造を有するDNAモノマーから作製されたコア殻構造を記載し、作成された球状構造は、miRNA分子を検出するために用いられる。米国特許第2018/016569号明細書は、空洞、いわゆるナノケージを含むDNAに基づくナノ構造を記載する。国際出願2017/049136号明細書は、核酸又はペプチド用の結合配列を含む空洞を有する球形状を有する、円柱状核酸ナノ構造を記載する。国際出願2013/148186号明細書は、治療薬を封入するために用いられる脂質コーティングを有する完全な核酸コアナノ構造を記載する。国際出願2017/189870号明細書は、さまざまな幾何学的形状を有する核酸ナノ構造を記載する。Liら(57)は、DNAの球状ナノ構造を記載する。これらの全ての場合において、これらの構造に含まれる空洞は、はるかに小さすぎてウイルスを完全に首尾よく封入することを可能にしない及び/又は構造が開きすぎて、その結果ウイルスの表面タンパク質がまだ宿主の標的細胞構造と相互作用できるかもしれない。
【0006】
過去の2、3週間でCovid-19のゲノムなどの、ウイルスのゲノムは頻繁に変異を示すことが分かり、ワクチン接種などの治療選択肢の成功が減少する、又は潜在的に消滅しさえすることができる。したがって、例えば一定のウイルスの感染力に関して新しい新興の発生に対する迅速な適応を可能にする治療介入の必要性が高い。上で述べた手法はいずれも、ウイルスの変異的変化に対する構造の迅速な適応を可能にするのに充分モジュール式かつ柔軟ではない。
【0007】
したがって、今までウイルス感染症の治療のためのさまざまな戦略が開発され、提案されてきたが、多様なウイルス病原体を標的とする一般的な抗ウイルス薬プラットフォームの概念の開発に対する必要性がまだある。特に、標的ウイルスの遺伝学及び特性についての事前の詳細な知識に依存しない概念は非常に望まれる。
【発明の概要】
【0008】
ウイルス又はウイルス粒子の封入を可能にする構築物を提供することが、本発明の目的である。この問題の解決策、すなわち、DNAに基づくナノ構造などの、高分子の構築ブロックの使用は、従来技術によってまだ教授されておらず、提案されていない。
【0009】
したがって、1つの態様において、本開示は、ウイルス又はウイルス粒子を封入するための少なくとも20nmの直径を有する空洞を囲む高分子に基づくナノ構造を提供する。
【0010】
特定の実施形態において、本開示は、DNAに基づくナノ構造である、高分子に基づくナノ構造を提供する。
【0011】
別の態様において、本開示は、本発明による高分子に基づくナノ構造によって封入されるウイルス又はウイルス粒子を含む組成物を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、ウイルス又はウイルス粒子を封入する方法であって、この方法は、本発明による高分子に基づくナノ構造を提供するステップ、及びこの高分子に基づくナノ構造をこのウイルス又はウイルス粒子を含む、又は含むと疑われる培養液と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0013】
本開示は、前述の態様及び/又は実施形態のいずれか1つ又は複数の全ての組み合わせ、並びに詳細な説明及び実施例に記載されている実施形態のいずれか1つ又は複数との組み合わせを想定する。
【0014】
本明細書の組成物及び方法の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、及び請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、設計原理を示す。(A)正二十面体殻の三角形分割数。各々の有色の三角形は、正二十面体を形成する20個の面の1つを表す。小さな三角形は、三角形の構築ブロックを表す。(h,k)は、殻内部の5量体の位置を示す。(Aa)ウイルスカプシドを封入する正二十面体殻。(B)自然の正二十面体ウイルス殻。左、同一のサブユニットから構築されたT=1殻(MVM)(22)。右、3種類の様々なサブユニットの複数のコピーから構築されたT=3殻(CCMV)(23)。(C)シミュレーションの開始時(左)及び終了時(右)の例示的な殻サブユニット設計プロトタイプのENRG-MDシミュレーション(38)。(D及びE)。DNAオリガミ三角形の円柱モデル及び対応する殻。三角形の側部は、突出(明)及びくぼみ(暗)で修飾される。矢印は、形状相補的な側部を示す。各殻の設計については、20個の正二十面体の面の1つが置換されている((A)を参照)。αは、側部の斜角であり、#は、殻を構築するDNAオリガミ三角形の数である(設計の詳細は、
図36~39を参照)
【
図2】
図2は、殻及び殻サブユニットの構造を示す。(A)独立した氷中の(O,T=1)及び炭素サポートを備えるレースカーボングリッド上の(T=3,T=4)集合した殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B~E)殻サブユニット及び完全に集合した殻のCryo-EM再構成画像(八面体からT=4殻)。二次元クラス平均は、様々な配向からの集合した殻を示す。(F)T=9殻設計のEM検証。左上、3個の三角形をT=9殻に集合したcryo-EM再構成画像。右上、集合した殻のネガティブ染色EM顕微鏡写真。下、モデル殻によるスライスのEM傾斜シリーズから算出した断層像のスライスに対する比較。矢印は、殻内部の5量体の位置を示す。
【
図3】
図3は、殻の収率及び安定性を示す。(A)様々な時点でモノマー濃度5nM、40℃での八面体、T=1、T=3及びT=4殻の集合体を示す0.5%アガロースゲルのレーザー走査蛍光画像。実線は、1dサンプルからの断面レーン強度プロファイルを示す。(B)三角形変換実験。シアン:FRETペア標識T=1殻。オレンジ:非標識の殻。記号は、測定されたFRETシグナル対指示された濃度のMg
2+の存在下のインキュベーション時間を示す。エラーバーは、2回測定値のSEMである(設計詳細は
図44を参照)。(C)左:塩基対スタッキング部位に配置されたCNVK部分を用いた殻の共有結合的安定化の模式図。右:殻サンプルを、殻不安定化条件下(低い塩、5mM Mg
2+)で電気泳動した0.5%アガロースゲルのレーザー走査蛍光画像。左から右:マーカーレーン、非照明T=1殻(分解)、365nm光で30分間照明したサンプル(未変化のまま)、共有結合を元に戻すために310nm光で1分間さらに照明した365照明サンプル(分解)。S=サブユニット。C=完全な殻。P=ポケット。(D)オリゴリジンとオリゴリジン-PEGの1:1混合物でコーティングされ、37℃の55%マウス血清中で1時間及び24時間インキュベートされた八面体殻のネガティブ染色TEM画像。
【
図4】
図4は、部分的殻集合体のプログラミング及びウイルスカプシドの捕捉を示す(ここで:B型肝炎ウイルスコア粒子(HBV))。(A~C)DNAオリガミ三角形の円柱モデル及び対応する部分的殻。三角形の側部は、突出及びくぼみで修飾される。矢印は、形状相補的な側部を示す。白い十字形は、不活性化された相互作用部位を示す。(D~F)五角形の1つの頂点を取り除いた半分の八面体(D)、半分のT=1殻(E)及びT=1殻(F)のCryo-EM3D再構成画像。矢印は、ウイルス結合部分を取り付けるための固定部位から生じる密度を示す。(G)HBVコア粒子のCryo-EM再構成画像(Electron Microscopy Data Bank識別子EMD-0271)。(H)左:HBVコア粒子が捕捉された八面体DNA殻のcryo EMマップの切断。HBVコア粒子周囲の密度は、HBVコア粒子を八面体殻に結合する抗体の層に起因する。右:捕捉されたB型肝炎ウイルス粒子を配位する2個の八面体半分の殻のCryo-EM再構成画像。(I)左:(H)と同様のマップの切断。電子密度の閾値が異なり、これにより半分の八面体に捕捉された場合と比較して、T=1半分の殻中のHBVコア粒子は厚く見える。右:HBVコア粒子を飲み込む半分のT=1殻のCryo-EM再構成画像。最大3個のHBVコア粒子を飲み込む五角形の1つの頂点が欠けたT=1殻のネガティブ染色TEM画像。(K)あらかじめ集合された1nMオリゴヌクレオチド結合捕捉抗体と様々な濃度の半分のT=1殻の混合物とインキュベートした2.5pM HBVコア粒子の生体外ウイルス遮断ELISA実験。エラーバーは、3回の実験の標準偏差である。
【
図5-1】
図5は、三角形サブユニットの設計原理を示す。(A)斜角αを有するT=1三角形設計の模式図。(B)斜角無し(左)及び有り(右)での正方格子充填の4x6らせんから成る三角形側部の断面図。側部は、「0」で示される最長らせん周囲に回転される。Dは、2個の隣接するらせん(2.6nm)の中心間の距離であり、xはいずれかのらせんとらせん「0」とのラジアル距離である。塩基対のnmを変換するために、塩基対あたり0.34nmの増加を用いた。(C及びD)らせん長の計算を示す模式図。左、三角形の円柱モデル。中央、らせん「0」までの距離xに応じた三角形内部の様々ならせんの長さa(x)及びb(x)の模式図。右、個別のらせんの長さの差を計算するための公式。(E)三角形構造を経由するスキャフォールド。左、スキャフォールドは、次の層に結合する前に三角形全体周りにループを形成する。右、各角は、特定のスキャフォールドドメインによって構築され(様々な青)、1回のクロスオーバーによってのみ隣接する角に結合される(赤)。(F)(46)による初期折り畳み選別を示す0.5xTBE緩衝液及び5.5mM MgCl
2を含有する1.5%アガロースゲル。(G)(B)において点線の四角によって示される2個のレーンの統合レーン特性。T=1
loopは、多くの凝集体を形成し、三角形はあまり良く形成されない。スキャフォールドをT=1
cornerを経由するよう変更すると、折り畳み収率が明白に改善される。したがって、本研究で示される全ての三角形は、T=1
cornerを経由させてスキャフォールドを改善して設計される。A:奇形の凝集体、M:正しく折り畳まれたモノマー。(H)+(I)第1の4個のらせんのためにスキャフォールド鎖を例示的に経由するT=1三角形の円柱モデル。(H)スキャフォールドは、次のらせんに結合する前に三角形全体周りにループを形成する。(I)各角は、特定のスキャフォールドドメインによって構築され(様々な青)、1回のクロスオーバーによってのみ隣接する角に結合される(赤)。
【
図5-2】
図5は、三角形サブユニットの設計原理を示す。(A)斜角αを有するT=1三角形設計の模式図。(B)斜角無し(左)及び有り(右)での正方格子充填の4x6らせんから成る三角形側部の断面図。側部は、「0」で示される最長らせん周囲に回転される。Dは、2個の隣接するらせん(2.6nm)の中心間の距離であり、xはいずれかのらせんとらせん「0」とのラジアル距離である。塩基対のnmを変換するために、塩基対あたり0.34nmの増加を用いた。(C及びD)らせん長の計算を示す模式図。左、三角形の円柱モデル。中央、らせん「0」までの距離xに応じた三角形内部の様々ならせんの長さa(x)及びb(x)の模式図。右、個別のらせんの長さの差を計算するための公式。(E)三角形構造を経由するスキャフォールド。左、スキャフォールドは、次の層に結合する前に三角形全体周りにループを形成する。右、各角は、特定のスキャフォールドドメインによって構築され(様々な青)、1回のクロスオーバーによってのみ隣接する角に結合される(赤)。(F)(46)による初期折り畳み選別を示す0.5xTBE緩衝液及び5.5mM MgCl
2を含有する1.5%アガロースゲル。(G)(B)において点線の四角によって示される2個のレーンの統合レーン特性。T=1
loopは、多くの凝集体を形成し、三角形はあまり良く形成されない。スキャフォールドをT=1
cornerを経由するよう変更すると、折り畳み収率が明白に改善される。したがって、本研究で示される全ての三角形は、T=1
cornerを経由させてスキャフォールドを改善して設計される。A:奇形の凝集体、M:正しく折り畳まれたモノマー。(H)+(I)第1の4個のらせんのためにスキャフォールド鎖を例示的に経由するT=1三角形の円柱モデル。(H)スキャフォールドは、次のらせんに結合する前に三角形全体周りにループを形成する。(I)各角は、特定のスキャフォールドドメインによって構築され(様々な青)、1回のクロスオーバーによってのみ隣接する角に結合される(赤)。
【
図6】
図6は、八面体三角形のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中の八面体三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図7】
図7は、T=1三角形のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT=1三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図8】
図8は、T=3三角形のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT=3三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図9】
図9は、T=4三角形T
equiのcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT
equi三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図10】
図10は、T=4三角形T
isoのcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT
iso三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図11】
図11は、T=9三角形T
pentのcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT
pent三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図12】
図12は、T=9三角形T
hex1のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT
hex1三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図13】
図13は、T=9三角形T
hex2のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT
hex2三角形のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図14】
図14は、T
hex1の折り畳み欠陥の修正を示す。(A)角を固定したT
hex1三角形の設計図。(B)設計図の2個のバージョン間の差を示す壊れた角の位置での拡大図。(C及びD)2個のT
hex1三角形のバージョンのCryo-EMマップ。矢印は、壊れた角の位置を示す。(E)T
pent及びT
hex1三角形の二量化を示す異なるMgCl
2濃度の1.5%アガロースゲル。2個の三角形の結合に関与しない全ての側部は、スタッキング接触でポリT伸長により不動態化された。壊れた角は、スタッキング接触の欠損により2個の三角形が互いに結合するのを妨げたが、角を修復した三角形はT
pentと結合し、二量体に集合する。レーン1:T
pent+T
hex1(壊れた角)、レーン2:T
pent+T
hex1(修復した角)。D:二量体、M:モノマー。
【
図15】
図15は、17.5mM MgCl
2で集合した八面体のCryo-EM再構成画像を示す。(A)17.5mM MgCl
2での独立した氷中の八面体のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)relion3での3d分類後のクラス。(E)いかなる対称性も使用しない(C1)微調整。(F)4回、3回及び2回対称軸(左から右)から示される電子密度マップ。
【
図16】
図16は、20mM MgCl
2でのT=1殻のCryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のT=1殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)relion3での3d分類後のクラス。(E)いかなる対称性も使用しない(C1)微調整。(F)5回、3回及び2回対称軸(左から右)から示される電子密度マップ。
【
図17】
図17は、25mM MgCl
2でのT=1殻のCryo-EM再構成画像を示す。(A)炭素サポートを備えるレースカーボングリッド上のT=1殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)5回、3回及び2回対称軸(それぞれ、左から右)から示される電子密度マップ。
【
図18】
図18は、20mM MgCl
2でのT=3殻のCryo-EM再構成画像を示す。(A)炭素サポートを備えるレースカーボングリッド上のT=3殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)5回、3回及び2回対称軸(左から右)から示される電子密度マップ。
【
図19】
図19は、25mM MgCl
2でのT=4殻のCryo-EM再構成画像を示す。(A)炭素サポートを備えるレースカーボングリッド上のT=4殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)5回、3回及び2回対称軸(左から右)から示される電子密度マップ。
【
図20】
図20は、斜角-5°でのT=1三角形のネガティブ染色EM断層像を示す。(A)左上:両方向に5°斜角を修正した(最初の斜角20.9°)T=1三角形設計の模式図。右上:全ての3種類の設計変異体の殻集合反応物が電気泳動したアガロースゲルのレーザー走査画像。下:殻集合産物の例示的なネガティブ染色TEM顕微鏡写真及び二次元クラス平均。(B)35mM MgCl
2での斜角を-5°小さくした集合したT=1三角形のネガティブ染色TEM画像。点線の四角は、断層像が(C)及び(D)に示される集合体を示す。(C)集合したT=1殻の断層像の4枚のスライス。白い矢印は、誤った斜角のために蓄積された応力解放の位置を示す。(D)完全に閉じていない集合体の断層像の4枚のスライス。
【
図21】
図21は、T=1、T=3及びT=9殻のTEM及びHIMデータを示す。(A)0.5x TBE緩衝液及び20mM MgCl
2を含有する0.5%アガロースゲル。ゲルを90Vバイアス電圧で1.5時間電気泳動した。45分後に緩衝液を交換した。八面体三角形は三角形折り畳み反応中、全ての試験したMgCl
2濃度で殻に集合するが、T=1三角形は20mM以上のMgCl
2でのみ閉じた殻に集合する。溶液中にステープル鎖があるのは、三角形がスキャフォールド鎖より4倍過剰なステープルで折り畳むからであり、それらをアガロースゲルにロードする前は精製しない。折り畳み反応混合物は、様々な量のMgCl
2(15~30mM)を含有し、1時間あたり1℃で温度を減少させて60℃から45℃の熱的アニーリング勾配を受けた。sc:スキャフォールド基準pas:不動態化された三角形、15-30:折り畳み反応物に存在するmM単位のMgCl
2濃度、P:ポケット、C:殻、M:モノマー、S:過剰ステープル。(B)それぞれ20及び25mM MgCl
2で三角形の折り畳み反応中に集合した八面体及びT=1殻のネガティブ染色TEM画像。一本鎖過剰ステープル鎖は全て目に見える。(C)25mM MgCl
2で集合した集合したT=1三角形のネガティブ染色TEM画像。(D)5nm層のAuPdでコーティングしたT=3殻のHIM画像。(E)集合したT=9殻のネガティブ染色TEM画像。上:完全に又は部分的に集合した殻の例示的な画像。白い矢印は、集合体内部の5量体の正しい位置を示す。下:3個の完全に集合したT=9殻を示す断層像の4枚のスライス。
【
図22】
図22は、アガロースゲルから完全な殻の収量を抽出する例示的な手順を示す(Igor Pro 7で行った)。サンプルを含有するレーン(オレンジ)並びにバックグラウンドシグナルを取得するための空のレーン(青)のレーンプロファイルを抽出した。その後、バックグラウンドを減算し、グラフを正規化し、そしてGaussianを殻のピークにフィットした。ガウス曲線下の面積は、完成した殻の収量である。
【
図23】
図23は、サブユニット交換実験を示す。サブユニット交換実験のFRET比を抽出するためにアガロースゲルを用いた。ゲルを25mM(A)、22.5mM(B)及び20mM MgCl
2(C)で電気泳動した。全てのゲルは、様々なMgCl
2濃度を有し、0.5x TBE緩衝液を含有する0.5%アガロースゲルであり、90Vバイアス電圧で1.5時間電気泳動した。45分後に緩衝液を交換した。同一のゲルをCy3(左)及びFRET(右)チャネルでスキャンした。適切な位置にCy3及びCy5標識オリゴヌクレオチドを有する三角形(
図43を参照)並びに非標識の三角形を、集合した殻を混合し、MgCl
2濃度を調整する前に25mM MgCl
2で別々に集合した。混合物を40℃で最大14日インキュベートした。指示された時点でアリコートを取り、液体窒素で凍結し、-20℃で保存した。完全に交換されたサブユニットの基準として、標識した及び非標識の三角形を25mM MgCl
2で1:1の比率で集合した(混合した)。
【
図24】
図24は、半分の殻の三角形サブユニットの設計原理を示す。半分の八面体(A+D)、半分のT=1殻(B+E)又は五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻(C+F)に集合するDNAオリガミ三角形の円柱モデル。三角形の側部は、突出(明)及びくぼみ(暗)で修飾される。矢印は、形状相補的な側部を示す。特定の側部の活性化に依存して、三角形は様々な種類の集合体を形成する。三角形の結合に関与しない全ての側部をスタッキング接触でポリT伸長により不動態化された。
【
図25】
図25は、半分の八面体殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中の半分の八面体殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)relion3での3d分類後のクラス。(E)いかなる対称性も使用しない(C1)精密化。(F)C4対称性で再構築された半分の八面体殻の電子密度マップ。
【
図26】
図26は、半分のT=1殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中の半分のT=1殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)relion3での3d分類後のクラス。(D)いかなる対称性も使用しない(C1)微調整。(E)C5対称性を用いる精密化。(F)relion3中色で示される6個のボディーを用いたMultibody精密化。
【
図27】
図27は、五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中の五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)relion3での3d分類後のクラス。(E)いかなる対称性も使用しない(C1)精密化。(F)C5対称性で再構築された五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻の電子密度マップ。
【
図28】
図28は、半分の八面体(A)、半分のT`=1殻(B)及び五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻(C)を用いて封入されたHBVコア粒子のネガティブ染色EM画像を示す。全ての殻を30mM MgCl
2で集合し、DNAを修飾した17H7抗体と共に一晩インキュベートし、その後1~4時間又は一晩HBV粒子と共にインキュベートした。
【
図29】
図29は、HBV結合のネガティブコントロールを示す。(A)HBVコア粒子及び17H7抗体が存在しない半分のT=1殻のネガティブ染色画像。(B)4D06 HBsAg抗体を備えた半分のT=1殻及びHBVコア粒子のネガティブ染色画像。
【
図30】
図30は、捕捉されたHBVコア粒子を含む半分の八面体殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中のHBVコア粒子を含む半分の八面体殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)relion3での3d分類後のクラス。クラス1及びクラス2の2分の1は、第2の半分の殻の複数の立体構造を平均したため、明確ではない。(D)(C)のクラス3及びクラス4の粒子を用いる3個のボディー(2個の半分の殻及びHBVコア粒子)でのMultibody精密化。(E)第2の半分の殻の回転運動を示すMultibody精密化の第1の固有ベクトル。(F)第2の半分の殻のスライド運動を示すMultibody精密化の第2の固有ベクトル。
【
図31】
図31は、捕捉されたHBVコア粒子を含む半分のT=1殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)独立した氷中の捕捉されたHBVコア粒子を含む半分のT=1殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)relion3での3d分類後のクラス。(E)C5対称性を用いない(左)及び用いる(右)精密化。
【
図32】
図32は、生体外ウイルス遮断ELISAを示す。(A)生体外遮断ELISAの模式図。HBVコア粒子は独力で固定化されたCAgHB抗体と結合することができ、その後ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗CAgHBを流すことにより可視化することができる。HBVコア粒子を半分のT=1粒子により飲み込む場合、殻はコア粒子が表面に結合するのを立体的に妨害し、HRPのシグナルは低下する。(B)1nM オリゴヌクレオチド結合捕捉抗体と様々な濃度の半分のT=1殻のあらかじめ集合した混合物でインキュベートした2.5pM HBVコア粒子の生体外ウイルス遮断ELISA実験。エラーバーは、3回の実験の標準偏差である。(C)(B)の番号によって示される生体外遮断ELISAから選択されたサンプルのネガティブ染色TEM画像。半分のT=1殻濃度は、(1)3.1pM、(2)12.5pM、(3)50pM、(4)100pMだった。
【
図33】
図33は、設計戦略T=1三角形及び三角形ブリック構造を示す。(A)上面図及び側面図中の突出したブリック(青で示される)を備えるT=1三角形二量体化(オレンジで示される)の略図。各円柱は、2本鎖DNAらせんを表す。三角形内部の赤で色付けされた円柱及び尾部内部の濃青色で色付けされた円柱は、2個の対象を結合するそれらのらせんを示す。2個の構造間の薄い線は、三角形からブリック様構造に延びる一本鎖DNA粘着末端を示す。(B)二量体化構造のネガティブ染色TEM画像の視野(左)及び上面図及び側面図中の2量体の二次元クラス平均(右)。
【
図34】
図34は、三角形ブリックのcryo-EM再構成画像を示す。(A)5mM MgCl
2での独立した氷中の三角形ブリックのCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)様々な視野角から示される電子密度マップ。
【
図35】
図35は、22.5mM MgCl
2でのスパイク付きの殻のcryo-EM再構成画像を示す。(A)22.5mM MgCl
2での独立した氷中のスパイク付きの殻のCryo-EM顕微鏡写真。(B)様々な配向を示す二次元クラス平均。(C)解像度推定のために用いられた異なるFSC曲線を示すグラフ。(D)5回、2回及び3回回転軸(それぞれ左から右)から示される電子密度マップ。(E)(D)に示される電子マップの切断。
【
図36】
図36は、caDNAno v0.1で調製したOcta及びT=1三角形の設計図を示す。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する。 この文脈において、
図36~43及び50に関して、これらの図面はナノ構造を形成する異なるオリゴヌクレオチドの複合体配置の模式図を示すことに注目すべきである。
図36~43及び50に示されるこれらのナノ構造を形成するのに用いられる全てのオリゴヌクレオチドは、表1に記載され、配列表に含まれる。したがって、表1は、例示の目的のみで含まれる、
図36~43及び50に模式的に示されるナノ構造を生成するために必要とされる全ての配列情報を含む。それらの図面には追加の配列情報は含まれない。
【
図37】
図37は、caDNAno v0.1で調製された斜角が変わったT=1三角形及びT=3三角形の設計図を示す。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する。
【
図38】
図38は、caDNAno v0.1で調製されたT=4三角形及びT
pentの設計図を示す。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する。
【
図39】
図39は、caDNAno v0.1で調製されたT=9三角形T
hex1及びT
hex2の設計図を示す。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する
【
図40】
図40は、caDNAno v0.1で調製された半分の殻のT=1三角形の設計図を示す。(A)+(B)T
pent三角形は、半分のT=1殻をT
ring三角形と共に集合するために又は五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻をT
ring1及びT
ring2三角形と共に集合するために用いることができる(
図42)。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する。全ての側部は、抗体を付着するための3個のハンドルを備える(配列:GCAGTAGAGTAGGTAGAGATTAGGCA-オリゴヌクレオチド)。(C)+(D)(A)及び(B)中のT
pent及びT
ring三角形のくぼみ及び突出の拡大。くぼみを構築する6個のオリゴは、結合強度を高める目的で突出のスキャフォールドの部分に相補的なオーバーハングで修飾された。
【
図41】
図41は、caDNAno v0.1で調製されたOcta及びT=1半分の殻の設計図を示す。2個の異なる側部を結合するオリゴヌクレオチドは、角に5個の追加の一本鎖チミジンを有する。全ての側部は、抗体を付着するための3個のハンドルを備える(配列.:GCAGTAGAGTAGGTAGAGATTAGGCA-オリゴ)。T
ring1及びT
ring2三角形は、T
pent三角形と共に五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻を集合することができる(
図40)。
【
図42】
図42は、caDNAno v0.1で調製された修飾されたT=1殻の設計図を示す。(A)突出するオリゴヌクレオチドを有するT=1三角形。(B)結合部位を有する三角形ブリック構造。(C)三角形(灰色)用の20個のハンドル及びCy5(赤)付着用の1つのハンドルを備える一本鎖スキャフォールド。
【
図43】
図43は、caDNAno v0.1で調製された修飾を有するT=1三角形の設計図を示す。5’末端にCy3(緑の星)及びCy5(赤の星)修飾を有するT=1三角形。
【
図44】
図44は、正二十面体カンバス上の彫刻を示す。(a-e)様々な部分的殻の三角形ネット投影及び模式図:半分の八面体殻(a)、5量体(b)、半分のT=1殻(c)、リング(d)及び五角形の1つの頂点を欠いたT=1殻(e)。(i~k)
図4(A~C)に示される部分的殻のCryo-EM 3D再構成画像。挿入図は、様々な配向からの集合した殻を示す典型的な二次元クラス平均を示す。
【
図45】
図45は、B型肝炎ウイルス(HBV)コア粒子の捕捉を示す。(a)半分の八面体殻に捕捉されたHBVコア粒子のネガティブ染色TEM画像。挿入図:捕捉されたHBVコア粒子(赤)を有する抗体(シアン)を備えた2個の半分の八面体殻(灰色)の模式的表現。(b)半分のT=1殻に捕捉されたHBVコア粒子のネガティブ染色TEM画像。挿入図:半分のT=1殻を有する(A)と同じ。(c)テンプレートとしてのHBVコア粒子周囲に自己組織化した9個の抗体で修飾されたT=1三角形のネガティブ染色TEM画像。挿入図:単一の三角形を有する(A)と同じ。(d)左:二次元EMクラス平均。中央:捕捉されたB型肝炎ウイルス粒子を配位する2個の八面体の半分の殻のCryo-EM再構成画像。右:HBVコア粒子が捕捉された八面体-DNA殻のcryo EMマップの切断。HBVコア粒子周囲の密度は、HBVコア粒子を八面体殻に結合する抗体から生じる。赤い矢印:HBVコア粒子。シアンの矢印:殻をHBVコア粒子に結合する抗体。(e)半分のT=1殻に対して(d)と同じ。電子密度の閾値が異なり、これにより半分の八面体(右)と比較して、T=1半分の殻中のHBVコア粒子は厚く見える。(f)最大3個のHBVコア粒子を飲み込む五角形の1つの頂点が欠けたT=1殻のネガティブ染色TEM画像。(g)生体外ウイルス遮断ELISA実験。上:ELISA実験の模式的表現。下:全ての実験は、抗体(Ab)対HBV比400:1でなされる。半分の殻は、90か所の抗体結合部位を有する。中身が充填された点は、1nM オリゴヌクレオチド結合捕捉抗体と様々な濃度の半分のT=1殻のあらかじめ集合された混合物でインキュベートされた2.5pM HBVコア粒子を示す。挿入図(i)は、抗体が半分の殻の結合部位を飽和させ、過剰な抗体が溶液中にある低濃度の半分の殻を示す。挿入図(ii)は、抗体濃度が半分の殻の結合部位の濃度と等しく、そして半分の殻は、抗体を溶液中にほとんど残さずに、抗体で飽和される場合を示す。挿入図(iii)は、半分の殻あたり平均して4個の抗体が結合する場合を示す。半分の殻の濃度の機能としてウイルス遮断効率を定量化するために、400:1 Ab:HBVの同じ化学量論比(stochiometric ratio)で2回のコントロールを実行した。白丸は、HBVコア粒子、抗体及び機能を持たせていないT=1半分の殻の混合物を示す。白い四角は、半分の殻無しのHBV+抗体を表す。緑色の点は、Ab:半分の殻比がわずか5:1で約80%の遮断効率を示す。エラーバーは、3回の実験の標準偏差である。
【
図46】
図46は、DNA-オリガミ半分の殻によるAAV2の中和を示す。(a)HEK293T細胞をAAV2で首尾よく感染させるとeGFPが発現するが、DNA半分の殻に捕捉されたAAV2に曝露した細胞はeGFPを発現しないことを示す模式図。黄色い円=AAV2、青いY=抗AAV2 IgG抗体、灰色の斜めのブロック:DNA半分の殻。(b)AAV2ウイルス粒子のDNA-オリガミ半分の殻内部への捕捉を実証するTEM画像。血清及びBSAの存在下で、捕捉は成功した。血清の細片をTEM画像中に見ることができる。(c)条件:AAV2のみ、IC50濃度(1nM)で適用される抗AAV2、及び内部に抗AAV2が結合したDNA-オリガミ半分の殻でのフローサイトメトリーによる感染細胞の定量化。抗AAV2及びDNA半分の殻をそれぞれ、AAV2とあらかじめインキュベートした。半分の殻を、殻あたり~36個のン抗体、及びウイルス粒子あたり~7個の半分の殻の、抗AAV2のみの条件と全体的に見て同一の抗体濃度で用いた。フローサイトメトリーを用いてデータを定量化し、平均±s.d.、n=3回の生物学的に独立した実験として表した。コントロールと比較した有意な抑制を調べるために1元配置分散分析(One-way ANOVA)を実行し、抗AAV2単独と半分の殻オリガミ+抗AAV2の両方がAAV2のみのコントロールと比較して有意な中和を示した(p≦0.0001)。抗AAV2をDNA-オリガミ半分の殻に結合すると、遊離抗AAV2より著しく高い中和能力を示した(p≦0.001)。(d)感染細胞によるeGFPの発現を実証する代表的な落射蛍光顕微鏡画像。条件の各々について、eGFP発現(緑)、細胞核(青)及びオーバーレイを示す。スケールバーは、100μmを表す。
【
図47】
図47は、八面体及びT=1殻の三角形折り畳み反応中のワンポット集合を示す。(A)0.5x TBE緩衝液及び20mM MgCl2を含有する0.5%アガロースゲル。ゲルを90Vバイアス電圧で1.5時間電気泳動した。45分後に緩衝液を交換した。八面体三角形は三角形折り畳み反応中、全ての試験したMgCl
2濃度で閉じた殻に集合するが、T=1三角形は20mM以上のMgCl
2でのみ閉じた殻に集合する。溶液中にステープル鎖があるのは、三角形がスキャフォールド鎖より4倍過剰なステープルで折り畳むからであり、それらをアガロースゲルにロードする前は精製しない。折り畳み反応混合物は、様々な量のMgCl
2(15~30mM)を含有し、1時間あたり1℃で温度を減少させて60℃から45℃の熱的アニーリング勾配を受けた。sc:スキャフォールド基準pas:不動態化された三角形、15-30:折り畳み反応物に存在するmM単位のMgCl
2濃度、P:ポケット、C:殻、M:モノマー、S:過剰ステープル。(B)それぞれ20及び25mM MgCl
2で三角形の折り畳み反応中に集合した八面体及びT=1殻のネガティブ染色TEM画像。一本鎖過剰ステープル鎖は全て目に見える。(C)40℃で2日間、20mM MgCl
2でPEG精製三角形から集合したT=1殻のネガティブ染色TEM画像。DNAオリガミ三角形を精製するためにゲル精製を用いる代わりに、以前(1)に記載したPEG精製を用いた。
【
図48】
図48は、Tring1及びTring2のネガティブ染色TEM画像を示す。(A)10個の三角形を含有するDNA-オリガミリングの円柱モデル。(B)40℃で1日間集合したTring1及びTring2によって形成されるリングのネガティブ染色画像(ctriangle=10nM,cMgCl
2=25mM)。白い数字は、リング内部の三角形の数を示す。(C)8、10又は12個の三角形を有するリング並びに完全に閉じていないリングを示す例示的な粒子。
【
図49】
図49は、中和能力及び細胞生存率の用量反応特性。遊離抗体(抗AAV2、A)及びオリガミ半分の殻+抗AAV2(B)の両方の完全なIC50曲線。(B)の半分の殻+抗AAV2の濃度を抗AAV2の濃度に対して正規化する。オリガミ緩衝液のみ及び半分の殻のみの条件では抗AAV2は含まれないが、可視化を容易にするためにそれぞれのデータ点を配置した。半分の殻のみの濃度は、最高の半分の殻+抗AAV2条件で用いられるものと同一である。以下の各々のグラフは、AAV2ウイルス粒子あたりの抗AAV2抗体のおよその数、及び半分の殻の数である。全ての比率は、ウイルスの総数に基づく。(C)C1~C8と表される、IC50曲線の濃度の各々についての(A及びB)、抗AAV2抗体のオリガミ半分の殻に対する結合によって達成される中和能力の倍の増加。(D)抗AAV2が結合していないオリガミ半分の殻に対して感染した細胞によるeGFPの発現を実証する代表的な落射蛍光画像。スケールバーは、100μmを表す。(E)半分の殻のオリガミ構造に24時間及び48時間曝露したHEK293T細胞の生存率。半分の殻の濃度は、IC
50特性(B)に用いられたものと同一である。HEK293T細胞をDNAオリガミ半分の殻に曝露しても用量反応毒性は生じなかった。データは、平均±s.d.、n=3回の生物学的に独立した実験として表した。
【
図50】
図50は、環状ssDNA及び金ナノ粒子のT=1殻中への封入。(A)左から、ssDNAハンドルを備える修飾したT=1モノマーの模式図。中央、相補的なハンドルが付着し、CY5でタグされた環状ssDNA。右、T=1殻に封入されたssDNA。図解は半分の殻を示すが、完全な殻を意味する。(B)左から、空の殻、封入された環状ssDNA、封入された単一の金ナノ粒子、及び封入された金で標識された環状ssDNAの模式図。(C)(B)の各殻のネガティブ染色TEM断層像のスライス。(D)カーゴの有り無し両方の、T=1殻のレーザー走査蛍光ゲル。両方のゲル画像は、同じゲルから取得されるが、異なる波長で取得される。ゲルの各カラムは、セクション(C)及び(D)の対応する粒子で色分けされる。左のゲル画像は、スキャフォールド及び集合した殻用のバンドを見るSYBR safe発光を示す。右のゲルについては、CY5の発光により、カーゴが集合した殻と同じ位置にあることが示される。
【
図51】
図51は、caDNAno v0.1で調製されたスタッキング接触でのUV溶接の設計図。突出及びくぼみは、細胞培養液中の部分的な殻を安定化する目的で、UV溶接するための粘着性オーバーハング及び1つの任意の、追加のチミン塩基(黄色い円)を有する。(A)半分の八面体の突出及びくぼみ(
図41Aを参照)。(B)+(C)半分のT=1殻三角形Tpent及びTringの突出及びくぼみ(
図40C、Dを参照)。側部1は側部2に(B)、そしてTpentの側部3はTringの側部3に(C)結合する。
【
図52】
図52は、フローサイトメトリーサンプル処理のための代表的なゲートを示す。左から右:細胞集団を最初に前方散乱―面積(FCS-A)対側方散乱―面積(SSC-A)についてゲートし(ゲート「R1」)、SSC-A対側方散乱高さ(SSC-H)をゲートすることにより単一の細胞を選択し、(ゲート「R2」)、eGFP発現を評価した(ゲート「R3」)。(A)未処理の細胞をネガティブコントロールとして用いた。(B)及び(C)は、
図49のC4に対応する濃度で、抗AAV2のみ及びオリガミ半分の殻+抗AAV2でそれぞれ処理したサンプルのための代表的なゲートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、ウイルス又はウイルス粒子の封入を可能とする構築物を提供する。
【0017】
別段の規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当該技術分野において当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は本明細書で、別段の注記がないかぎり、オープンエンド(open-ended)及び非限定的な意味で用いられる。このような後者の具体的表現に関して、用語「含む(comprising)」にはしたがって、範囲の狭い用語「から成る(consisting of)」が含まれる。
【0019】
用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「1つの(the)」並びに本発明を記載する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)類似する言及は、本明細書で別段の指示がない限り又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。例えば、用語「1つの細胞」には、細胞の混合物を含む、複数の細胞が含まれる。複数形が化合物、塩、及び同種のものに用いられる場合、これは単数の化合物、塩、又は同種のものも表すと考えられる。
【0020】
したがって、1つの態様において、本開示は、ウイルス又はウイルス粒子を封入するための少なくとも20nmの直径の空洞を包む高分子に基づくナノ構造を提供する。
【0021】
本開示の文脈において、用語「高分子に基づくナノ構造」とは、一組の高分子によって形成されるナノ構造を指し、この高分子は、DNA、RNA、タンパク質及びこれらのハイブリッド、特にDNA-(タンパク質リンカー)-DNAハイブリッドを含む、DNA-RNAハイブリッド及びDNA-タンパク質ハイブリッドから選択されるハイブリッドから選択される。
【0022】
本開示の文脈において、用語「DNA」とは、ヌクレオチドと呼ばれる一本鎖のモノマーユニットから成るデオキシリボ核酸を指し、各ヌクレオチドは、窒素含有核酸塩基、2-デオキシリボース糖部分、及びリン酸基から成り、それぞれのヌクレオチドは、2-デオキシリボース糖部分の5’位のOH基を隣接する2-デオキシリボース糖部分の3’位のOH基をと結合するリン酸基によって一本鎖に結合される。特定の実施形態において、窒素含有核酸塩基は、シトシン[C]、グアニン[G]、アデニン[A]及びチミン[T]から独立して選択される。特定の実施形態において、1つ又は複数の核酸塩基は、特に、具体的にはN6-カルバモイル-メチルアデニン又はN6-メチルアデニンである、修飾アデノシン;具体的には7-デアザグアニン又は7-メチルグアニンである、修飾グアニン;N4-メチルシトシン、5-カルボキシルシトシン、5-ホルミルシトシン、5-グリコシルヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシシトシン、又は5-メチルシトシンである、修飾シトシン;具体的には、α-グルタミルチミジン又はα-プトレシニルチミンである、修飾チミジン;具体的にはウラシル、base J、5-ジヒドロキシペンタウラシル、又は5-ヒドロキシメチルデオキシウラシルなどのウラシル又はその修飾体;デオキシアルカエオシン及び2,6-ジアミノプリンのリストから選択される非標準塩基である、非標準塩基である。DNAの一本鎖の区間は、相補的な核酸塩基の相互作用によりDNAの相補的な区間と相互作用してよく、シトシン及びグアニン、並びにアデニン及びチミンは、核酸塩基間に2個(A/T)及び3個(G/C)の水素結合を形成することにより、それぞれ互いに相補的である。ゲノムDNAの場合のように、2本の一本鎖のDNAは互いに完全に相補的であってよく、又は一本の一本鎖のDNAが2本以上の他の一本鎖DNA鎖と部分的に相補的である状況を含んで、互いに部分的に相補的であってよい。2本の相補的な一本鎖DNA配列の相互作用は、2本鎖DNA二重らせんを形成する。
【0023】
周知のように、DNAは本来、タンパク質をコードする遺伝情報のキャリアとして進化してきた。DNAはさらに、調節機能を有する領域を含む非翻訳領域を含む。したがって、全てのDNAに基づく応用は通常、特定のDNA配列に決定的に依存し、ほとんどいつも特定のDNA配列を指名することによりのみ可能となる。対照的に、本発明の文脈において、根底にあるDNA配列は、望ましい配列の二重らせんサブユニットを形成するように設計され、そして選択されるだけなので、このようなコード及び/又は調節機能は、いかなる役割も果たさず、存在してもしなくてもよい。したがって、1つの実施形態において、自然起源のDNA(バクテリオファージのDNAなど)であろうと合成的に作製されたDNAであろうと、任意の形状の長い一本鎖DNA配列をテンプレートとして選択してよく、且つ一組の短い一本鎖DNA配列を設計してよく、この場合各配列はテンプレートの1つ又は複数の異なる部位と相補的であり、したがって1つ又は複数の二重らせん区分を形成する。まとめると、全てのこのような二重らせん区分は、フルセットの短い一本鎖DNA配列のテンプレートとの相互作用により作製され、望ましい三次元配列を形成する。ある一定の一本鎖テンプレート配列から始め、一組の相補的配列の設計を、例えば、構造的に明確な3D形状を有するメガダルトンスケールの別々の物体の合成用に記載された方法(18,24-35)などの、既知の技術を用いて組み立てることができる。特に弾性ネットワーク誘導分子動力学シミュレーション(38)と対にされるcaDNAno(37)による反復設計を用いることができる。
【0024】
水素結合による一本鎖DNAの異なる区間の相補的核酸塩基の相互作用に加えて、2本の二本鎖DNAらせんの平滑末端間のスタッキング相互作用を含む、異なるDNA鎖間のさらなる相互作用が可能であり(36)、したがって二重らせんサブユニットの形状相補性を介した複雑なDNAに基づくナノ構造の設計及び形成が可能となる。したがって、前の段落により形成された2個の三次元配列は、例えば、
図7~13Dに示される、相補的な突出及びくぼみ(又はノブ及びへこみ)を有する2個の三次元配列間の特異的相互作用を含む、2個の三次元配列上に存在する二重らせんサブユニット間のスタッキング相互作用により互いに相互作用してよい。
【0025】
本開示の文脈において、用語「RNA」とは、ヌクレオチドと呼ばれる一本鎖のモノマーユニットから成るリボ核酸を指し、各ヌクレオチドは、窒素含有核酸塩基、リボース糖部分、及びリン酸基から成り、それぞれのヌクレオチドはリボース糖部分の5’位のOH基を隣接するリボース糖部分の3’位のOH基と結合するリン酸基によって一本鎖に結合される。特定の実施形態において、窒素含有核酸塩基は、シトシン[C]、グアニン[G]、アデニン[A]及びウラシル[U]から独立して選択される。特定の実施形態において、1つ又は複数の核酸塩基は、特にプソイドウリジン、リボチミジン、及びイノシンのリストから選択される非標準塩基である、非標準塩基である。DNAとは異なって、RNAはほとんどの場合一本鎖形だが、相補的な核酸塩基の相互作用により二本鎖形の形成も可能であり、この場合核酸塩基間に2個(A/U)及び3個(G/C)の水素結合を形成することにより、シトシン及びグアニン、並びにアデニン及びウラシルがそれぞれ互いに相補的である。特定の実施形態において、本開示は、高分子に基づくナノ構造を提供し、これはRNAに基づくナノ構造である。
【0026】
特定の実施形態において、この空洞は、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm又は少なくとも250nmの直径を有する。
【0027】
特定の実施形態において、この空洞は、多くとも1,000nmの直径を有する。
【0028】
本発明の文脈において、用語「直径」とは、高分子に基づくナノ構造の面によって取り囲まれる最小円の直径を指す。明確さのために、カプセル形(又は球面円柱形)の高分子に基づくナノ構造の場合、直径は、半球状端部の直径及び/又は円柱状中央部の直径である。
【0029】
特定の実施形態において、高分子に基づくナノ構造は、少なくとも1MDa、具体的には少なくとも10MDa、具体的には少なくとも20MDa、より具体的には少なくとも30MDaの分子量を有する。他の特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、少なくとも50MDa、少なくとも80MDa、少なくとも100MDa、少なくとも200MDa、又は少なくとも500MDaの分子量を有する。特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、多くとも1,500MDaの分子量を有する。
【0030】
特定の実施形態において、高分子に基づくナノ構造の分子量の数値(MDa)とこの高分子に基づくナノ構造によって包まれる空洞の容積の数値(nm3)との間の比は、10,000未満、特に9,000未満である。特定の実施形態において、この比は、1,000~10,000の値、特に2,000~9,000の値を有する。例えば、特定の八面体ナノ構造の場合、分子量は、約40MDaであり、包まれる容積は、約113,000nm3であり、この比は、約2,800である。
【0031】
特定の実施形態において、高分子に基づくナノ構造を形成する高分子によっておおわれる高分子に基づくナノ構造の外面とこの高分子によっておおわれない外面(殻形の高分子に基づくナノ構造の開口の面積を除く)との比は、少なくとも1、具体的には少なくとも2、具体的には少なくとも4、具体的には少なくとも6、具体的には少なくとも8である。他の特定の実施形態において、比は、少なくとも10である。特定の実施形態において、比は、1~20、具体的には2~18、4~16、6~14、及びより具体的には8~12である。例えば、高分子に基づくナノ構造が半球形の殻である場合、開口の面積、すなわち、半球形の平らな面の面積でなく、湾曲した面の面積のみがこの比を算出するために用いられる。
【0032】
特定の実施形態において、本発明は、DNAに基づくナノ構造に関する。
【0033】
特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、DNAに基づく構築ブロックを自己組織化することにより形成される。
【0034】
特定の実施形態において、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの各々は、一本鎖DNAテンプレート鎖及びこの一本鎖DNAテンプレートと相補的な一組のオリゴヌクレオチドによって形成され、このオリゴヌクレオチドの各々は、この一本鎖DNAテンプレート上の1つの近接DNA配列区間か少なくとも2個の非近接DNA配列区間のいずれかと相補的である。
【0035】
特定の実施形態において、各自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの分子量は、4.5~5.5MDaである。
【0036】
特定の実施形態において、各自己組織化するDNAに基づく構築ブロックは、7,500~8,500塩基対を含む。
【0037】
特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、4~180個のこのような自己組織化するDNAに基づく構築ブロックから成る。
【0038】
特定の実施形態において、この一本鎖DNAテンプレートは、糸状バクテリオファージの一本鎖DNAである、又は糸状バクテリオファージの一本鎖DNAに由来する。
【0039】
本発明の文脈において、用語「繊維状バクテリオファージ」とは、ある種類のバクテリオファージ、又はバクテリアのウイルスを指し、これは、通常環状一本鎖DNAのゲノムを含有する繊維状形状によって特徴づけられ、且つグラム陰性細菌に感染する。繊維状ファージは、M13、f1及びfd1ファージなどのFfファージ、及びPf1ファージを含む。
【0040】
特定の実施形態において、この一本鎖DNAテンプレートは、配列番号1(M13 8064)及び2(M13 7249)から選択される配列を有する(表1を参照)。特定の実施形態において、この一本鎖DNAは、環状である。
【0041】
本発明の文脈において、「繊維状バクテリオファージの一本鎖DNAに由来する」一本鎖DNAテンプレートとは、(i)環状構造の直鎖状配列への開口;(ii)1つ又は複数のヌクレオチドの欠失;(iii)1つ又は複数のヌクレオチドの挿入;(iii)1つ又は複数のヌクレオチドの置換;(iv)1つ又は複数のヌクレオチドの追加;及び(v)1つ又は複数のヌクレオチドの修飾の1つ又は複数による繊維状バクテリオファージの自然起源の公表されたDNA配列に由来するDNA構築物を指す。任意のこのような変動は、バクテリオファージの生物学、感染力及び増殖能力に対して有害な、又は少なくともある程度予想外な効果を有してよいが、上述したように、この一本鎖DNAテンプレートは、いかなる機能特性を有するいかなる要件もない裸のテンプレートとしてのみ用いられ、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの3次元形状の正確な形成などの、全ての構造的側部は、この一組の相補的オリゴヌクレオチドの適切な選択によって実行されるので、このような効果は本発明の文脈において、いかなる役割も果たさない。
【0042】
特定の実施形態において、この一本鎖DNAテンプレートは、特にM13、f1又はfd1ファージに対する、繊維状バクテリオファージの自然起源の又は公表された配列の配列、特に配列番号1(M13 8064)及び2(M13 7249)に対して少なくとも80%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の配列相同性を有する。
【0043】
特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、包まれるこのウイルス又はウイルス粒子の存在下この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックからその場で形成される、球形、球面円柱形、及び多面体、特に四面体、八面体又は正二十面体から選択される閉じた三次元幾何学的形状である、閉じた三次元幾何学的形状である。
【0044】
別の特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、この空洞にアクセスするための開口を有する殻である。
【0045】
本発明の文脈において、用語「殻」とは、閉じた三次元幾何学的形状、特に球形、球面円柱形、及び多面体、特に四面体又は八面体から選択される閉じた三次元幾何学的形状の一部である構造を指す。
【0046】
さらに別の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、それぞれ第1及び第2の内部空洞にアクセスするための開口を有する第1及び第2の殻の組み合わせであり、この第1及び第2の内部空洞はともに、この空洞を形成する。
【0047】
特定の実施形態において、この第1及び第2の殻は、少なくとも1つのリンカーにより結合される。
【0048】
特定の実施形態において、このリンカーは、DNAリンカー、RNAリンカー、ポリペプチドリンカー、タンパク質リンカー及び化学リンカーから選択されるリンカーである。
【0049】
本発明の文脈において、用語「DNAリンカー」とは、DNAから形成されるリンカーを指し、このDNAリンカーの配列は、この一本鎖DNAテンプレートのDNA又はこの一本鎖DNAテンプレートに相補的なこの一組のオリゴヌクレオチドのいずれかと相補的でなく、このDNAリンカーは、一方の終端でこの第1の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合し、且つ他方の終端でこの第2の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合する。
【0050】
本発明の文脈において、用語「ポリペプチドリンカー」とは、ペプチド結合によって結合された少なくとも2個、具体的には少なくとも5個、少なくとも10個、又は少なくとも20個のアミノ酸残基から形成されるリンカーを指し、このポリペプチドは、一方の終端でこの第1の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合し、且つ他方の終端でこの第2の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合する。
【0051】
本発明の文脈において、用語「タンパク質リンカー」とは、ペプチド結合により結合された少なくとも20個、具体的には少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個のアミノ酸残基、少なくとも500個のアミノ酸残基、又は少なくとも1,000個のアミノ酸残基、具体的には1,500個未満のアミノ酸残基から形成されるリンカーを指し、このポリペプチドは、三次及び/又は四次構造を有し、このタンパク質リンカーは、一方の終端でこの第1の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合し、他方の終端でこの第2の殻の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するDNA配列と結合する。特定の実施形態において、このタンパク質リンカーは、このDNA配列と共有結合的に結合される。特定の他の実施形態において、このタンパク質リンカーは、このDNA配列と非共有結合的に結合され、特にこのタンパク質リンカーは、特に二重特異性抗体及びIgG抗体を含む、完全抗体から選択される、抗体に基づくタンパク質リンカーである。
【0052】
本発明の文脈において、用語「化学リンカー」とは、その骨格が1~30(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の原子であり、したがって、本発明の文脈において、用語「間(between)」は、言及される境界が含まれるように用いられる)個の原子の連続鎖を指し、すなわち、リンカーの長さは、この化学リンカーによって結合される2個のDNA配列間の原子又は結合の数によって測定される最短の結合として定義される。本発明の文脈において、化学リンカーは好ましくは、C1~20-アルキレン、C1~20-ヘテロアルキレン、C2~20-アルケニレン、C2~20-ヘテロアルケニレン、C2~20-アルキニレン、C2~20-ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基であり、これらは任意選択的に置換されてよい。リンカーは、カルボキサミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分及び同種のものなどの1つ又は複数の構造用を含んでよい。リンカーは、これらの構造要素の2つ以上の組み合わせを含んでよい。これらの構造要素の各々の1つは、このリンカーに1回超、例えば、2回、3回、4回、5回、又は6回存在してよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、ジスルフィド結合を含んでよい。リンカーは、この化学リンカーによって結合された2個のDNA配列に1回のステップか2回以上の続くステップのいずれかで結合される必要があることが理解される。その目標に向かって、あるべきリンカーは、2個の基を好ましくは近位端及び遠位端に保有し、これは、(i)結合される予定の2個のDNA配列の一方に存在する基に対して共有結合を形成することができる、又は(ii)2個のDNA配列の一方との共有結合である又は共有結合の形成を活性化することができる。
【0053】
特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、正二十面体構造に基づく。
【0054】
特定の実施形態において、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの各々は、角柱である。
【0055】
本発明の文脈において、用語「角柱」とは、全ての頂点が2個の平行な平面に位置する、多面体を指す。
【0056】
特定の実施形態において、この角柱は、三角形の角柱である。他の実施形態において、この角柱は、四角形の角柱である。
【0057】
特定の実施形態において、DNAに基づくナノ構造は、三角形及び四角形の角柱の混合物に基づく。
【0058】
特定の実施形態において、本発明は、DNAに基づくナノ構造であって、
各々のこの三角形、又はこの四角形の角柱は、それぞれm個の三角形、又は四角形の平面から形成され、mは、4、5、6、7及び8から独立して選択される、特に5、6及び7から独立して選択される整数であり、さらに特にこの整数は6であり、
このm個の平面の各々の、それぞれ3個、又は4個の辺は、DNA二重らせんのn個の平行区間により形成され、nは、1、2、3、4、5及び6から独立して選択される、特に2、3、4及び5から独立して選択される、さらに特に3及び4から独立して選択される整数であり、
各平面は、この平面上の平面及び/又は下の平面と、(i)この平面を形成するこのDNA二重らせん間のスタッキング相互作用により、及び(ii)この平面の少なくとも2個を架橋するこのDNAに基づく構築ブロックを形成するこの一本鎖DNAテンプレート及び/又はこのオリゴヌクレオチド内部のDNA区間により部分的に結合され、そして
それぞれ3個又は4個の側部の台形のうち少なくとも2個は、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定のパターンのくぼみ及び/又は突出を含む、
DNAに基づくナノ構造に関する。
【0059】
特定の実施形態において、それぞれ三角形又は四角形の角柱のm個の平面中のDNA二重らせんのn個の区間の各々の平均長は、80~200塩基対である。
【0060】
特定の実施形態において、この三角形の角柱は、三角形切頭体である。特定の実施形態において、この四角形の角柱は、四角形切頭体である。
【0061】
本発明の文脈において、用語「三角形切頭体」とは、三角錐形の三次元幾何学的形状を指し、用語「四角形切頭体」とは、四角錐形の三次元幾何学的形状を指し、錐体の先端は除去されており、上端に錐体の基礎と平行な平面を生じる。
【0062】
特定の実施形態において、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの少なくとも一部については、このm個の平面の各々の少なくとも1つの辺の長さは、第1の平面から第mの平面まで減少しており、その結果この第1の平面に垂直な平面とkのm個の辺によって形成される台形平面の各々との間に斜角が生じる(
図5を参照)。特定の実施形態において、それぞれ全ての3個、又は4個の台形平面は、斜角を示す。
【0063】
特定の実施形態において、斜角は、16°~26°、具体的には18°~24°、より具体的には20°~22°、最も好ましくは約20.9°である。
【0064】
特定の実施形態において、このDNAに基づくナノ構造は、少なくとも1組の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを備え、それぞれ全ての3個、又は4個の側部の台形は、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定のパターンのくぼみ及び/又は突出を備える。
【0065】
特定の実施形態において、特にDNAに基づくナノ構造が閉じた三次元幾何学的形状を形成する場合、全てのこの自己組織化するDNAに基づく構築ブロックは、同一である。
【0066】
特定の実施形態において、このDNAに基づくナノ構造は、2個以上の組の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを備える。
【0067】
特定の実施形態において、このDNAに基づくナノ構造は、桿状である。
【0068】
特定の実施形態において、このDNAに基づくナノ構造は、2個以上の組の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを備える。
【0069】
特定のこのような実施形態において、この桿状のDNAに基づくナノ構造は、少なくとも第1及び第2の組の自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを備え、この第1及び第2の組は、少なくとも斜角に関して異なる。特定の実施形態において、少なくとも一方の組は、2個のみの斜角を示す自己組織化するDNAに基づく構築ブロックから成る。特定の実施形態において、この少なくとも一方の組は、2個の対向する台形の各々に斜角を含む、四角形の切頭体から成る。
【0070】
特定の実施形態において、この殻の、又はこの第1及び第2の殻のそれぞれの縁を形成する側部の台形は、この自己組織化するDNAに基づく構築ブロックの別の1つの側部の台形上の相補的パターンと特異的相互作用をするための欠損した又は追加のDNA二重らせん区間により形成される特定パターンのくぼみ及び/又は突出を含まない。
【0071】
特定の実施形態において、このDNAに基づくナノ構造は、
(i)1組の4コピーの三角形切頭体から成る、半分の八面体であって(
図4A)、三角形切頭体の三角形の辺の1つに対する塩基対スタッキングが、鎖短縮によるか不対のチミジンを加えることによるかのいずれかにより不活性化される、半分の八面体(
図4A、
図24A、Dを参照。)
(ii)各々の場合において2組の5コピーの2種類の異なる三角形切頭体から成る、半分のT=1殻であって(
図4B)、第1の組の5コピーが閉じた5量体を形成し、そして第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合する、半分のT=1殻(
図4B、
図24B、Eを参照)、及び
(iii)各々の場合において3組の5コピーの3種類の異なる三角形切頭体から成る、五角形の1つの頂点が欠けた「捕捉」T=1殻であって(
図4C)、第1の組の5コピーが閉じた5量体を形成し、第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合し第2の組の5コピーが前記5量体の辺上に結合し、そして第3の組の5コピーが前記第2の組の5コピー間の間隙へと結合する、「捕捉」T=1殻(
図4C、
図24C、24Fを参照)から選択される殻である。
【0072】
特定の実施形態において、本発明は、1つ又は複数の種類のDNAブリック構築物をさらに含むDNAに基づくナノ構造であって、このようなDNAブリック構築物の各々の種類は、このDNAに基づくナノ構造の外面上の、それぞれこの三角形又は四角形切頭体の平面上に存在する1つ又は複数の相補的相互作用部位との辺対辺のスタッキング接触による特異的相互作用をするための1つ又は複数の相互作用部位によって特徴づけられ、このDNAブリック構築物は、この平面のそれぞれ3個、又は4個の辺間の自遊空間を覆う、DNAに基づくナノ構造に関する。
【0073】
特定の実施形態において、本発明は、それぞれこの三角形又は四角形切頭体の1つの内部の、及び/又はそれぞれこの三角形又は四角形切頭体のうち2個の間の1つ又は複数の架橋結合をさらに含むDNAに基づくナノ構造に関する。
【0074】
本発明の文脈において、用語「架橋結合」とは、それぞれこの三角形、又は四角形切頭体の1つの内部の、及び/又はそれぞれこの三角形、又は四角形切頭体のうち2個の間の任意の永久の又は断続的な結合を指す。任意のこのような結合は、組立て前に事前に自己組織化するDNAに基づく構築ブロックを形成するために用いられているオリゴヌクレオチドのうち2個を結合することにより、又は事前に三次元ナノ構造の異なる部分間に結合を化学的又は光化学的に加えることにより達成されてよい。永久の結合は、例えば、共有結合性シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)結合(41)の形成下この構造に適切に位置した光化学的に架橋するT残基によって作製されてよく、且つ断続的な結合は、例えば、第1の平滑末端に位置する3-シアノビニルカルバゾール(cnvK)部分と他の平滑末端に位置するチミン残基(T)の間の2個の二重らせんサブユニットの平滑末端を光化学的に架橋することにより作製されてよい。
【0075】
特定の実施形態において、本発明は、このウイルス又はウイルス粒子と特異的に相互作用する少なくとも1つの部分をさらに含む高分子に基づくナノ構造に関する。
【0076】
特定の実施形態において、この高分子に基づくナノ構造は、本発明によるDNAに基づくナノ構造であり、この少なくとも1つの部分は、DNAに基づくナノ構造を形成するそれぞれこの三角形、又は四角形角柱の1つと、この少なくとも1つの部分がこのDNAに基づくナノ構造の内部上に位置し、且つこのDNAに基づくナノ構造によって形成される空洞を指すように、結合する。
【0077】
特定の実施形態において、この少なくとも1つの部分は、このウイルス又はウイルス粒子と特異的に結合することができることによりこのウイルス又はウイルス粒子と特異的に相互作用している。特定の実施形態において、この少なくとも1つの部分は、抗体又は抗体の少なくとも1つの抗原結合部位、具体的には抗体の少なくとも1つのVH領域又は抗体のVHとVL領域との少なくとも1つの組み合わせ、を含む抗体に基づく結合部分である。
【0078】
特定の実施形態において、この少なくとも1つの部分は、不活性化されたこのウイルス又はウイルス粒子と結合することができることにより、このウイルス又はウイルス粒子と特異的に相互作用している。
【0079】
特定の実施形態において、この高分子に基づくナノ構造は、平均的に、この高分子に基づくナノ構造によって形成される空洞の内側部位に結合した0~10か所の抗体に基づく結合部位、具体的には4~10か所の、具体的には4,5,6,7,8,9,又は10か所の実施形態の、抗体に基づく結合部位を含む。
【0080】
特定のこのような実施形態において、この抗体に基づく結合部位は、単鎖Fv(scFv)断片である。
【0081】
特定のこのような実施形態において、この高分子に基づくナノ構造は、オリゴヌクレオチドに基づくナノ構造であり、この抗体に基づく結合部位、具体的にはこのscFv断片は、このオリゴヌクレオチドに基づくナノ構造によって形成された空洞の内側に存在するオリゴヌクレオチド区間と相補的である、又は部位特異的相互作用に入ることができる配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドと結合する。
【0082】
別の態様において、本開示は、本発明による高分子に基づくナノ構造によって封入されたウイルス又はウイルス粒子を含む組成物を提供する。
【0083】
特定の実施形態において、この組成物は、このウイルス又はウイルス粒子をこのウイルス又はウイルス粒子を含有する培養液から除去するプロセス中で形成される。特定の他の実施形態において、この組成物は、カーゴとしてのこのウイルス又はウイルス粒子をこの高分子に基づくナノ構造に組み込むプロセス中で形成される。
【0084】
別の態様において、本開示は、ウイルス又はウイルス粒子と異なるカーゴを含む組成物を提供し、複合高分子などの、このカーゴは、本発明による高分子に基づくナノ構造によって封入される。
【0085】
さらに別の態様において、本開示は、ウイルス又はウイルス粒子を封入する方法であって、この方法は、本発明による高分子に基づくナノ構造を提供するステップ、及びこの高分子に基づくナノ構造をこのウイルス又はウイルス粒子を含む、又は含むと疑われる培養液と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0086】
特定の実施形態において、この方法は、このウイルス又はウイルス粒子をこの培養液から除去するためである。特定の実施形態において、この方法は、このウイルス又はウイルス粒子を輸送する目的でこのウイルス又はウイルス粒子を封入するためである。
【0087】
さらに別の態様において、本開示は、複合高分子などの、ウイルス又はウイルス粒子と異なるカーゴを封入する方法であって、この方法は、本発明による高分子に基づくナノ構造を提供するステップ、及びこの高分子に基づくナノ構造を、このカーゴを含む、又は含むと疑われる培養液と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0088】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【0089】
明確にするために、別々の実施形態の文脈において記載される、本発明の特定の特徴はまた単一の実施形態における組み合わせで提供されてよい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記載される、本発明の種々の特徴はまた、別々に、又は任意の適したサブコンビネーションで提供されてよい。本発明に属する実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって特異的に包含され、あたかも各々及び全ての組み合わせが個々に且つ明瞭に開示されるように本明細書に開示される。さらに、これらの種々の実施形態及び構成要素の全てのサブコンビネーションはまた、本発明によって特異的に包含され、あたかも各々及び全てのこのようなサブコンビネーションが個々に且つ明瞭に本明細書に開示されるように本明細書に開示される。
【0090】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によってある範囲に限定されるものではない。それどころか、本明細書に記載されるものに加えて本発明の種々の変形は、前述の記載から当業者にとって明らかになるだろう。このような変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0091】
それぞれの特許庁の下で可能な範囲で、本明細書で引用される全ての特許、出願、公開公報、試験方法、文献、及び他の試料は、本明細書に参照により援用される。
【0092】
以下の実施例は、上述した本発明を説明するが、いずれの方法でも本発明の範囲を限定することは意図されない。関連技術分野の当業者などに既知の他の試験モデルはまた、特許請求される発明の有利な効果を判断することができる。
【実施例】
【0093】
序論
幅広いファミリーのウイルスの大きさの正二十面体殻に自己組織化する自然によって呼び起こされた一式の分子構築ブロックの好結果の計画を報告する。DNAオリガミから構築されたブロックは、正二十面体殻あたりの異なる結合の最小数を規定する対称性原理にしたがって設計され、プログラム可能な鍵と鍵穴相互作用パターン及び強度を有する。これらのプログラム可能な殻は、ウイルスと宿主細胞との間の分子的相互作用を効果的に遮断するためにあらかじめ設計された高分子殻中にウイルス全体を捕捉する概念を仮定すると、ウイルス非活性化の新規経路を提供できる可能性がある。この殻は、低温電子顕微鏡法及び電気泳動移動度シフト解析(electrophoretic mobility shift assays)で検証すると、欠陥がほとんどなく、且つ高収率で、頑強に形成される。ウイルス補足及び相互作用遮断概念の実現可能性を実証するために、B型肝炎ウイルスコア粒子を用いた。ウイルス感染症と戦う新規方法の将来性を実現することには、現在治療不能なウイルス性疾患によって引き起こされる疾患、医療費を低減し、経済的負担を軽減する可能性がある。そのうえ、発明者らの方法はいかなる特定のウイルス構造又は宿主―ウイルス相互作用にも依存しないので、発明者らの方法には、新たに出現し、且つまだ記述されていないウイルスに対する特別な可能性がある。「洗練された」抗原応答薬を創作する目的で殻の機能性をさらに拡張するための実施例を示す。抗ウイルス薬に加えて、これらの殻の潜在的な応用には、ワクチン接種、薬物送達担体、保護的貯蔵容器及び合成オルガネラ用の抗原担体として使用するための構築物区画化システムが含まれる。
【0094】
抗ウイルス概念を発展させるために、哺乳類の免疫防御が侵入するウイルス病原からどのように発明者らを保護することができるかを検討した。他方で、抗体を中和することは、ウイルス上の特定の抗原に結合する抗体で現れることができ、例えば、ウイルスと宿主細胞受容体との相互作用を抑制することにより、又はゲノムの脱殻を抑制するためにウイルスカプシドに結合することにより、感染症を阻止することができる。残念ながら、病原体に応答して発明者らの体内で発生する抗体の多くは、中和活性を有していない。そのうえ、宿主が有効な中和抗体を産生するには時間がかかる。この期間中に、ウイルスは野放しで増幅し、伝搬するか又は持続性さえ確率することができ、且つ他の個人に伝染してよい。ウイルス侵入者には、抗体中和を回避する機構を進化させてきたものもある。例えば、HIVは、柔軟なタンパク質鎖によって感受性表面領域を遮蔽し、そしてHCVは自身を脂質中に飲み込ませる(7、8)。
【0095】
抗体はウイルスよりずっと小さく、概して抗体当たりウイルスの表面上の小部分しか覆わない。他方、哺乳類細胞も、インターフェロン及び、HIV-1レトロウイルスカプシド全体を囲む六角形殻に集合する、自然の抑制因子TRIM5αによって例示される(9、10)、ウイルスの侵入を阻止することができる(レトロ)ウイルス抑制因子を産生することができる。TRIM5αの例は、ウイルス封入は原則として有効な治療方針となる可能性があるが、自然のTRIM5α格子は特異性が高く、容易に改変することができず、異なるウイルスに適合することもできない。
【0096】
ウイルス不活性化の手段は、中和抗体及びTRIM5αなどの格子形成する自然の抑制因子のものの機能的側部を合成的に再形成し、統合することを前提とする。ウイルスと宿主細胞との分子的相互作用を効果的に遮断する目的で高面積のウイルス表面を覆うために、ウイルスを新規に設計された高分子殻中に補足することを想定する。内部が、ウイルスに釣り合った対称性でウイルス認識部分をモジュール方式で非常に多価に結合できる殻を想定する。同じ種類の殻「プラットフォーム」を、多様なウイルスを標的とするようモジュール式に用いることもある。形成される結合の数が増えるにつれ、親和性は指数関数的に増加するので(11)、多価結合は、ウイルスを、個々に弱いウイルス結合分子で機能を持たせた殻内に効果的に捕捉するアビディティーの活用を可能とする。結合される予定のウイルス結合分子として、抗体、抗体断片又はアプタマーを想定し、これらの全てを、原則として標的ウイルスについての詳細な知識なしで作製することができ、これらはいずれも事前のいかなるウイルス中和機能も必要としない。これは、発明者らの概念では、ウイルスに直接接触する部分よりむしろ、殻材料がウイルス表面への接近を阻止するからである。したがって、発明者らの概念を用いると、非中和抗体、弱く結合するアプタマー、又は幅広い様々はウイルスクラスと結合するヘパリンなどの他の分子を含む、任意のウイルスバインダーを効果的な抗ウイルス薬を作製するために殻上の内部コーティングとして利用することができる。
【0097】
ここで、ウイルス全体を収容することができる使用者が定義する大きさの厚くて頑強な高分子殻を作製する設計原理を報告する。このような人工的なウイルスサイズの高分子殻の構築を構造的品質高く、高収率で成し遂げた。標的ウイルスを飲み込むための開口を特徴とする既定の部分的殻を構築するために発明者らの計画をさらに修正した。ウイルスを捕捉し、且つ相互作用を遮断する概念の実現可能性を実証するためにB型肝炎ウイルス(HBV)コア粒子を用いた。本論文ではまた、「より洗練された」抗原応答薬を創出するために殻の機能性をさらに拡張する手段も記載する。
【0098】
手短に言えば、発明者らの高分子殻の構築は、いくつかの理論的概念に依存している。第1に、ウイルスカプシドなどの分子複合体の自己組織化は典型的には、外部からの誘導又はエネルギーの投入なしで進行する。したがって、望まれた標的殻についての全ての情報は、殻サブユニットの形状によって、及びそれらの間の局所的相互作用によってコードされる必要がある(13)。タンパク質の設計者は以前、適したオリゴマー化対称性を示す自然の非ウイルスタンパク質スキャフォールドを組み合わせ、修正することにより人工的高分子ケージを創出することに成功した(14~17)。しかしながら、これらの人工的に設計されたタンパク質ケージは、大多数の自然のウイルスよりずっと小さく、容易に修正することができず、したがって発明者らの目的に適していない。DNAナノ加工の技術者は以前、頂角を変えることにより異なるワイヤフレーム多面体に集合するようプログラムされた、頂点を第1に構築することによりDNAオリガミ法に基づく多様な多面体構造を作製した(18)。収率は低かったが、その理由は頂点の柔軟性により標的構造への特異性が制限されたからであった。経時的により強固な頂点及びより大きな高次のワイヤフレーム多面体に経時的に集合するブロックを構築した(19)。ブロック及び生じる多面体についての収率は高かったが、経時的で段階的な集合は長ったらしく、生じるワイヤフレーム多面体はいまだにあまりにも骨格のようであり、穴だらけすぎてウイルスの表面を効果的に覆うことはできない。本研究においては、精巧な制御可能性、ウイルスに釣り合った大きさ及び対称性、並びに高収率の集合を実証する人工的なDNAに基づく殻を構築することについに成功し、したがってウイルスなどの大きな自然の高分子集合体と干渉する強力なプラットフォームを提供する。
【0099】
実施例1:殻設計原理
Caspar及びKlugは1962年、12個の6回対称頂点と5回対称頂点との系統的置換により、タンパク質位置の2D三角形分割ネットを正の曲率を有する3D表面にマッピングすることにより自然のウイルスカプシドの構造を決定する幾何学的原理を解明した(20)。近年拡張されたCasper及びKlugの理論によると(21)、正二十面体カプシド内のタンパク質によって占有される別々の環境の数は、ウイルスの三角形分割数(T-number)によって説明され、これを正二十面体カプシド内の5量体及び6量体の配置の三角形ネット投影によって計算することができる(T=h2+hk+k2、
図1A)。自然のカプシドを構築するために必要とされるタンパク質の総数は、T×60である。この理由は、自然のタンパク質サブユニットは初期値で非対称であり、20個の三角形の面を有する正二十面体殻に集合することができる3回対称サブユニットを構築するためのホモ三量体形成は必要最小限だからである(
図1B、左:T=1マウスの微小ウイルス(22))。大きなゲノムを収容するための大きなカプシドを構築するために、ウイルスは異なる立体構造をとることができる1つ超のカプシドタンパク質又は複数のカプシドタンパク質を使用する。例えば、ササゲクロロティックモトルウイルス(cowpea chlorotic mottle virus)カプシド(23)は、合計180個の同一配列のタンパク質からこのタンパク質が3個の異なる立体構造で生じるT=3カプシドに集合する(
図1B、右)。
【0100】
正二十面体殻に必要とされる局所的対称性に適応するために、DNAオリガミの方法を用いて強固な擬対称性三角形サブユニットを作製した(
図1C、左)(24~29)。DNAオリガミは、構造的に明確な3D形状を有するメガダルトンスケールの別々の物体を作製することができる生体分子設計法である(30、31)。生じる物体は、高次多面体(18)、及び格子(32~35)へのハイブリッド形成により集合することができる。発明者らのサブユニットは、ハイブリッド形成の代わりに塩基対スタッキング(36)を用いる側部辺対辺相互作用を介して高次物体に自己組織化するよう設計され、これによりタンパク質の鍵と鍵穴相互作用を模倣する。側部辺対辺塩基対スタッキング相互作用は、モジュール式に活性化及び不活性化することができ、部分的殻を構築する能力を活用した。作製した三角形サブユニットの全ての側部は、自然のカプシドの1つのタンパク質サブユニットに相当する。殻形状全体は、三角形サブユニットによって提供される幾何学的命令により制御される。これらの命令は、各三角形の辺の特定の長さの選択により、一組の異なる三角形ユニット内の対での辺対辺相互作用を制御するための辺当たりの固有の形態的パターンにより、及び辺の斜角の特定の選択により与えられ、これが殻の有効曲率を制御することとなる。頂点の三角形の辺のらせん状結合性を調整することにより標的斜角を実現し、これにはデフォルトの多層DNAオリガミ結合規則からの大幅な逸脱が必要とされた。望まれる幾何学的仕様を満たした候補設計解決法を生み出すために、弾性ネットワーク誘導分子動力学シミュレーション(38)と対にされるcaDNAno(37)による反復設計を用いた(
図1C)。
【0101】
発明者らのシステムにおいては、各三角形の辺は、1つのタンパク質を表すので、Casper及びKlugの三角形分割数は、特定の殻を構築するために必要とされる固有の三角形の辺の数を示す。したがって、T=1及びT=3殻はともに、T=1のための3個の同一の辺(
図1D、右)及びT=3殻のための3個の異なる辺(
図1E、左)を有する単一の三角形で構築されてよい。T=4殻は、例えば、3個の固有の辺を有する一方の三角形及び3個の同一の辺を有する別のものなどの、2個の別々の三角形サブユニットを必要とする(
図1E、中央)。T=9殻は、各々が3個の固有の辺を有する、3個の異なる三角形を必要とする(
図1E、右)。T数が大きくなるにつれ、20Tで与えられる、標的殻あたりの三角形の総数も大きくなる。特定の標的殻のための全ての三角形の斜角が同一である設計解決法を用いた。T=9は発明者らが構築しようとした最大の殻だったが、小さな八面体容器(「O」)のための三角形サブユニットも設計した(
図1D、左)。
【0102】
実施例2:サブユニット及び殻構造
DNA配列に異なる三角形設計をコードし(以下の方法を参照)、対応する一組のオリゴヌクレオチドを産生し、そして以前記載した手順にしたがってワンポット混合物の三角形変異体を自己組織化した(39)。ゲル電気泳動折りたたみ品質解析から、三角形サブユニット集合体の収率を改善するために何回か設計反復が必要だった(
図5)。設計された三角形の3D構造を確認するために、低温透過型電子顕微鏡(cryo-EM)単粒子解析を用いて全ての三角形サブユニットを調べた(
図2)。生じる3D電子マップは、13~22オングストローム(Å)に及ぶ解像度を有し(
図6~13)、これにより全体の3D形状、斜角、全てのらせんの正確な位置決め、辺対辺ドッキング用の設計された側方突出及びくぼみの正確な形状、並びに系統的な折りたたみ欠陥の発生を評価できた。例えば、T=9殻(Thex1)のための三角形の1つは、頂点の1つで側部辺対辺相互作用を形成する能力を低下させる系統的な構造欠陥を有した(
図14)。cryo-EMデータに基づいて、設計を洗練させ、欠陥を除去した。
【0103】
その後反復して改善した三角形変異体を、cryo-EMを用いる直接画像化(direct imaging)により確認した、予想される寸法を有する閉じた殻に首尾よく集合した(
図2A、追加画像については
図15~19を参照)。2Dクラスの平均(
図2B~F)及び個別の粒子(
図2A)の検査から、粒子が設計された対称性を示すことが明らかになった。例えば、八面体(4回、3回、2回、
図2B)及びT=1殻(5回、3回、2回、
図2C)の3個の対称軸を明瞭に見ることができる。T数が大きい殻の粒子は、粒子あたりの三角形の数が多いので、より環状の外観を有し、且つCaspar及びKlugの表現から予測される根底にある三角形ネットが明瞭に見えるようになった(
図2D~F)。個別の粒子は設計された対称性を示したので、それぞれの対称性を課すことにより殻の3Dマップを再構築した(
図2B~E)。生じるマップは、20~40オングストローム(Å)に及ぶ解像度を有した。この八面体及びT=1殻マップの解像度は、個別のDNA二重らせんを見分けるのに充分だった。T=1殻については、いかなる事前の対称性も課さない3Dマップも計算し、このマップは低い解像度だが、充分に正二十面体であり、対称性を課して再構築した同系統のものと良く重なった。本研究により、正二十面体対称性の概念が首尾よく証明された(
図16E)。
【0104】
サブユニットーサブユニット相互作用の配向特異性の効果を解明するために、T=1サブユニットの斜角を理想的な幾何学(α=20.9°)から変化させた。斜角を正二十面体の理想的なものから+5°又は-5°偏向したT=1三角形の2個の追加の変異体を設計した。斜角を減少又は増加させると、T=1殻又は八面体に加えて、それぞれ大きな殻様構造の外観が生じた(
図20)。これらのデータに基づいて、発明者らは正しい標的斜角は、+-5°の範囲内に適合する必要があると結論付ける。
【0105】
発明者らはまた、対称性を課すことの有無の両方で八面体cryo EMマップを首尾よく構築した(
図15E)。1つ又は複数の三角形を欠いた殻マップを別々に再構築し(
図15D、16D)、標的品質の定量評価を可能にし、且つ設計された対称性全体も表示した。ネガティブ染色EM断層撮影法で最大のT=9殻を調べた(
図2F、
図21E)。集合したT=9殻の断層像による断面から、充分に閉じた殻、並びに設計されたT数にしたがった5量体の正しい配置が示される(
図2F及び
図21Eの矢印)。示される一組の殻は、~50nmから~280nmに及ぶ内部空洞を有する。この大きさの範囲は、多くのウイルス病原体の寸法に対応する。
【0106】
実施例3:殻の収率及び安定性
低密度電気泳動移動度シフト解析(Low-density gel electrophoretic mobility analysis)(
図3A、
図22)から、三角形モノマーの消失により進行された殻集合体オリゴマー化学種の存在を示すスメアの出現、その後主要な高強度のバンドの出現が明らかになり、これらは全ての場合において完全に形成された殻に対応した。八面体及びT=1殻は、それぞれ15分及び60分以内に形成され、これは、これらの殻をワンポット三角形折り畳み反応中に直接自己組織化することを可能にするのに充分速い(
図24)。八面体は、~95%の最終的な完全な殻収率で生じた。T=1殻は、最大70%の収率で生じた。T=3及びT=4殻は、約40%の収率で生じた(
図3A)。全体として、分子量が43~925メガダルトンに及ぶ場合(設計に応じて、8~180個の三角形サブユニット)、殻集合体は、任意の他の以前報告されたワンポットで集合した既定の大きさの人工高分子集合体よりかなり大きかっただけでなく、発明者らの殻はまた、以前構築された核酸多面体と比較して桁で改善された収率で生じた(18,19)。
【0107】
蛍光標識したサブユニットでのサブユニット交換実験から、殻に好都合な条件下で閉じた殻に組み込まれた三角形は、溶媒と交換しない(
図3B、
図23A、B)。平衡条件下(
図3B、
図23C)、三角形は交換する。意図した応用では、殻は、サブユニットが生理液中に回転せず安定であるべきであり、これを集合後安定化により達成した。例えば、最初に殻を塩基対スタッキングが効果的なイオン強度が高い条件で集合し、その後三角形サブユニットの辺に位置する戦略的に配置されたシアノビニルカルバゾール(CNVK)部分を用いて辺対辺スタッキング接触を共有結合的な光架橋を行い、これにより365nm光での照明時に共有結合的な三角形間架橋が形成される(
図3C)(40)。UVで照明し、CNVKで就職した殻の電気泳動移動度シフト解析(Gel-electrophoretic mobility analysis)から、非照明の殻は低塩電気泳動条件下でばらばらに壊れたが、照明した殻は安定したままであることが明らかになり、したがって三角形間共有結合を確信させた(
図3C)。生理的条件に移動するために、以前記載したUV点溶接による内部共有結合を有する殻三角形サブユニットを安定化することも首尾よく調べた(41)。その上、この殻をオリゴリジンとPEGオリゴリジンの混合物でコーティングすると(42)、殻が未変化のままの条件で、殻をマウスの血清に移動させることができる(
図3D)。
【0108】
実施例4:ウイルスを捕捉し、中和する
発明者らの殻システムが、ウイルス表面が潜在的なウイルス細胞相互作用することを阻止する複数の戦略を想定する。1つの戦略は、三角形構築ブロックから保護殻をウイルスの表面上に自己組織化することにある。第2の戦略は、ウイルスが中央にあるままで、2個の対向する半分の殻により単一のウイルスに配位する又は飲み込むことである。第3の戦略は、嚢状葉植物が餌食を捕獲する方法と同様に、充分大きな侵入門を特徴とするあらかじめ作られた殻内部にウイルスを飲み込むことにある。後者の2個の戦略を実証する。この課題を達成する目的で、自己集合体を、半分の八面体(
図4A)、半分のT=1殻(
図4B)、及び五角形の頂点を欠いた「捕捉」T=1殻(
図4C)を含む、使用者が規定する殻断片を形成することに導くよう三角形サブユニットの新規な変異体を設計した。完全な八面体の代わりに半分を調製するために、鎖短縮か不対のチミジンを加えることのいずれかにより対応するサブユニットの三角形の辺の1つ上の塩基対スタッキング接触を不活性化した(
図4A、
図24A、Dを参照)。半分のT=1殻を作製するために、閉じた5量体を形成する一方のもの、及び5量体の辺上に結合する別のものの、2個の三角形サブユニットが必要とされる(
図4B、
図24B、Eを参照)。五角形の頂点を欠いたT=1殻変異体を構築するためには、3種類の三角形サブユニット変異体が必要とされる(
図4C、
図24C、Fを参照)。修飾した殻は、cryo EM溶液構造によって検証され、三角形構築ブロックから首尾よく自己組織化した(
図4D~F、
図25~27を参照)。生じる2Dクラス平均及び3D電子密度マップから、期待される構造特徴が明らかにされた。発明者らは既に、cryo EMマップ中で「突起物(spikes)」として現れた、ウイルス結合部分を修飾した殻サブユニット上に固定するための三角形の辺あたり9か所の部位を含んでいたこと記述する(
図4D、E、矢印)。
【0109】
ウイルス捕捉能力を実証するために、上述した殻変異体の各々の内部にB型肝炎ウイルスコア粒子(
図4G)を捕捉した。特異性を与えるために、ssDNA標識抗体の三角形サブユニット上の一組の固定点へのハイブリッド形成により粒子状ウイルスカプシドを殻の内部に結合し、認識する抗HBc 17H7(アイソタイプIgG-2b)抗体を結合し、これにより殻の内部が標的ウイルスにとって特異的に粘着性になると予想した。実際に、HBVコア粒子をこのように調製したDNA殻と約1:1の化学量論でインキュベートすると、ネガティブ染色TEM撮像法によって見られるように、全ての遊離ウイルス粒子は殻粒子により効果的に取り込まれた(
図28)。殻内部に結合したHBV抗体の非存在下では、いかなるHBV結合も観察せず(
図29A)、他の標的に特異的な抗体の存在下でも観察しなかった(
図29B)。殻に標的ウイルスが適当に捕捉されたことを確かめるために低温電子顕微鏡観察を実行し、捕捉されたHBVコア粒子を含む八面体及びT=1殻の3Dマップを再構築した(
図4H、I、
図30、31を参照)。発明者らの見解ではこれらのマップは提案したウイルス補足システムの実現可能性を鮮やかに実証する。
【0110】
半分の八面体の変異体では、大部分の粒子は単一のHBVコア粒子を配位する2個の半分の八面体から成る(
図4H)。共通のHBVコア粒子上に多様な相対的立体構造の2個の半分の八面体殻を観察する(
図30)。cryo-EMマップはまた、DNA殻を捕捉されたHBVコア粒子と結合する抗体の痕跡も明らかにする(
図4H、左)。同様の抗体の痕跡は、高密度の閾値ではあるが、半分のT=1殻-HBV複合体を有するマップ中にも見出すことができる(
図4I、左)。五角形の頂点を欠いたT=1殻に捕捉されたHBVコア粒子のcryo-EMマップを再構築できなかったのは、HBVコア粒子の位置がばらつき過ぎていたからである。代わりに、ネガティブ染色TEM画像から、これらの「嚢状葉植物」様殻変異体が1個超のHBVコア粒子でさえ飲み込む能力があることが立証される(
図4J、
図28E、Fを参照)。
【0111】
そして、殻のウイルス表面相互作用―抑制能力の概念実証として、HBV結合抗体を細胞表面を模倣する固相上に固定化して生体外ウイルス遮断アッセイを実行した(
図4K、
図32)。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合した直交HBVコア特異的レポーター抗体の結合を介してHBVコア粒子が固相に結合する程度を評価した。従来の酵素結合免疫吸着測定法と同様に、表面に結合し、且つ結合に利用できる残留HBVコア粒子が比色シグナルのHRP触媒産生により検出されることになる。ウイルスを飲み込む殻(半分のT=1殻)の存在下、ウイルスの固相との相互作用は、最大99%遮断され、したがって殻のHBVコアに対する強い結合及び殻の望ましい相互作用―抑制能力が確認された。HBV捕捉抗体(抗HBc 17H7)なしの殻及び殻なしで捕捉抗体(抗HBc 17H7)で直接インキュベートしたHBVコア粒子のコントロールは全て、0%のウイルス遮断率を表す裸のHBVコア粒子により生成されたシグナルと比較して最小限のウイルス遮断率にしかならなかった。注目すべきことに、殻あたりたった4個の捕捉抗体で80%を超えるウイルス遮断効率を達成し、発明者らの殻が立体的妨害によりウイルスを外部から遮蔽する能力が示される。
【0112】
実験例5:殻の機能性を拡張する
現在の殻変異体は、捕捉されたウイルス粒子周囲に~15nm厚さのDNA層を加え(ウイルスバインダーの層によって作成された内部空間は計数しない)、このような厚いエンベロープを介してどのように細胞―ウイルス相互作用がまだ起こることができるのか想像するのは難しい。しかしながら、発明者らの現在の設計は、特に三角形サブユニットの空洞である、いくつかの開口を特徴とし、これにより残留相互作用が許容されることができる。三角形サブユニットの空洞を密封する手段の証明として、殻サブユニット中の三角形の空洞の寸法におよそ一致する三角形断面を有するDNAブリックを構築した。複数の付着点を介してこのブリックをT=1殻三角形の外面に固定し(設計の詳細については
図33、ブリックのcryo-EM溶液構造については
図34を参照)、このブリックを殻サブユニット中の空洞に部分的にはめ込んだ。ブリックはまた、細胞表面を殻に捕捉されたウイルスの表面からもう40nmさらに分離するスペーサーとして働くこともできる。ブリックをすでに集合した殻に加えることができ、あるいは三角形及びブリックユニットを最初に二量体化し、その後殻の集合を引き起こすこともできる。両方の手段は、未修飾のT=1殻と同一の条件下で完全に集合した「スパイク付きの(spiky)」T=1殻をもたらす。cryo-EM単粒子解析を用いてスパイク付きのT=1殻の構造を解析した(
図5A、
図35)。生じたマップは未修飾のT=1殻のマップと容易に重なるが、三角形殻サブユニットの中心開口は今では加えたチャネルモジュールにより封鎖されている(
図35E)。DNAブリックによる空洞―はめ込みが容易に働いたという事実から、殻の頑強さ及び構造的モジュール方式が実証される。ブリックはまた前述したDNAに基づく膜チャネル(43)又は殻に結合したいと望む任意の他の機能モジュールの模倣物とみなされてよい。
【0113】
ウイルス捕捉実験において(
図4)三角形あたり最大9個の抗体を取り付けた、すなわち、半分のT=1殻は潜在的に、90個のウイルス結合部分を特徴とすることができる。ずっと多い結合部位を作製することも可能であるが、90はすでに非常に大きな数である。これらの部位のいくつかを、特異性を高める目的で追加のウイルス結合部分を取り付けるために、又は捕捉されたウイルスの表面タンパク質をそり落とすことにより殻にさらなる殺ウイルス活性を与えることもある、トリプシン又はプロテイナーゼKなどのタンパク質分解活性を有する分子を結合するために用いることもできる。
【0114】
実施例6:ウイルス捕捉
ウイルスを、充分に大きな開口を特徴とするあらかじめ集合した正二十面体殻セグメント中に捕捉、又はこれによって配位することができる(
図45a、45b、
図28)。あるいは、保護殻をウイルス粒子の表面に直接形成することができる(
図45c)。両方の手段を、B型肝炎ウイルスコア粒子(HBV)を用いて実行した実験で説明する(
図45a~c挿入図、赤)。HBVに対する特異性を与えるために、ssDNA標識抗体の三角形サブユニット上の一組の固定点へのハイブリッド形成により抗HBc 17H7(アイソタイプIgG-2b)をDNA殻に結合した(
図45a~c挿入図、シアン)。HBV抗体の非存在下ではいかなるHBV結合も観察せず(
図29)、他の標的に特異的な抗体の存在下でも観察しなかった(
図29)。
【0115】
捕捉されたHBVコア粒子を有する八面体及びT=1半分203殻の3D cryo EMマップを測定した(
図45d、45e、
図30~31)。半分の八面体変異体では、大部分の粒子は、中央に単一のHBVコア粒子を配位する2個の対向する半分の八面体から成る(
図45d、
図30)。顕微鏡写真及びcryo EMマップはまた、DNA殻を捕捉されたHBVコア粒子に連結する抗体を示す痕跡も明らかにする(
図45d、右)。同様の抗体の痕跡を半分のT=1殻-HBV複合体での画像データに見出すことができる(
図45e、右)。内部空洞に複数のHBV粒子を収容することができる(
図45f、
図28)5量体の頂点を欠いた大きなT=1殻変異体中にもHBVコア粒子を捕捉した(
図45f)。
【0116】
捕捉されたウイルスが表面との相互作用を受けるのを防ぐ殻の能力を調べるために、HBV結合抗体を固体表面上に固定化して生体外ウイルス遮断アッセイを実行した(
図45g、
図32)。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合した直交HBVコア特異的レポーター抗体の結合を介してHBVコア粒子が表面に結合する程度を定量化した。表面に結合する残留HBVコア粒子が比色シグナルのHRP触媒産生により検出される。
【0117】
ウイルスを飲み込む殻(半分のT=1殻)の存在下では、ウイルスの表面との相互作用は最大99%遮断され(
図45g下)、したがって殻の相互作用―抑制能力が確認された。HBV捕捉抗体を欠いた殻でのコントロール実験は、ベースラインのウイルス遮断率0%を表す裸のHBVコア粒子により生成されたシグナルと比較して最小限のウイルス遮断率にしかならなかった。
【0118】
抗体と直接インキュベートされたが、殻が存在しないHBVコア粒子は、表面との結合をごくわずかしか遮断しなかった。この知見から、たとえ抗体をHBV粒子より400倍過剰に加えたとしても、抗体単独ではHBVカプシド表面を充分に不動態化しないことが示される。しかしながら、対照的に、平均してわずか5個の抗体で機能を持たせた殻を用いると、80%を超えるウイルス遮断効率を達成した。殻に5個超の抗体を用いると、遮断はほとんど完全だった(最大99%)。したがってこのデータから、殻捕捉法は、ウイルス表面と周囲の殻との間にわずか少数の物理的相互作用しか形成されなかった場合でさえも、非常に有効であってよいことが示される。発明者らのデータから、殻内部にウイルスを保持するために用いられる抗体ではなく、殻が立体的妨害によりウイルスを外部から遮蔽することが示される。
【0119】
実施例7:ヒト細胞中のウイルスの中和
発明者らは、顕微鏡法とフローサイトメトリーを用いて、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)発現カセット(59)を保有するアデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2)(46)ウイルス粒子を用いてDNA-オリガミ半分八面体殻の中和能力を調べた(
図46a)。DNA殻を上述したUV点溶接及びPEG242―オリゴリジン/オリゴリジンで安定化した。TEMでの直接画像化(direct imaging)により見られるように、ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下血清中で、殻内部を抗AAV2抗体で機能を持たせたDNA半分殻中にAAV2粒子を首尾よく捕捉した(
図46b)。AAVはHBVと全く異なるウイルスファミリーに属するので、このデータはまた、異なる種類のウイルスを捕捉するウイルス結合部分を交換することにより、殻のモジュール方式も確立する。
【0120】
半分の殻あたり平均して36個の抗AAV2抗体で機能を持たせたDNA半分殻及び基準としての遊離抗AAV2抗体の用量反応曲線を測定することによりウイルス中和の有効性を定量化した(
図49)。eGFP陽性細胞の数は、フローサイトメトリー解析を用いた感染有効性の読み取りとして役立った。DNA半分殻は、AAV2を推定最大半量阻害濃度(IC50)~0.3nMで中和した(
図49)。発明者らの条件では、IC50は感染性ウイルス粒子あたり約2.5個の半分殻に対応した。DNA半分殻の中和能力は、遊離抗AAV2の活性と比較して増加した(
図46c、46d、
図49)。この中和の強化は、蛍光顕微鏡画像で最も良く認められ(
図46d)、eGFP陽性細胞はAAV2捕捉DNA半分殻を含むサンプル中にはほとんど残っていないが、溶媒中に遊離している同一用量の抗AAV2抗体に曝露されたサンプル中には多くのeGFP陽性細胞が見える。この実験から、殻は生細胞を含む生理的条件で機能することが実証される。この実験からはまた、殻は既にかなり強力な抗AAV2抗体の中和能力をさらに増大させることができることも示される。
【0121】
上の
図4の生体外HBV遮断実験で説明したのと同様に、中和能力の増強は、殻がウイルスを多価で捕捉し、殻材料はさらにウイルス表面妨害剤として寄与することを示唆する。
【0122】
結合した抗体がないDNAオリガミ半分殻が効果を有するかどうかも調べて、試験した最高オリガミ濃度で低いが無視できない中和活性を見出した(
図49)。この活性は、PEG-オリゴリジン/オリゴリジンコーティングDNA殻とAAV2粒子との間の静電相互作用から生じることを示唆する。そして、DNA半分殻への曝露が細胞生存率に効果を有するかを調べ、本研究で用いられた濃度のいずれにもわたり有意な効果は見出されなかった(
図49)。
【0123】
考察
高収率及び高い忠実度で様々な大きさのウイルス様殻を自己組織化するための対称性に基づく手法を首尾よく実験的に実証した。この能力は、幾何学をサブナノメートルの精度で設計し、実現することができる特異的な鍵穴と鍵の相互作用を特徴とするパッチ状の粒子(44)に相当する強固な構築ブロックによって可能となる。殻の構築ブロックを精巧にプログラムできると、侵入門を有する半分殻又は殻などの、規定サイズの部分的な殻をさらに構築することができ、このものを、ウイルスを捕捉し、不活性化するためのウイルス中和剤として提案する。この概念をモデルウイルス粒子としてのHBVコア粒子で、試験し、そして発明者らの実験において、HBVを周囲の殻で飲み込むことにより最大99%の不活性化を達成した。
【0124】
発明者らの概念においては、全ての認識要素は、複数の拡散する構成成分間のカスケード反応に頼るよりナノ粒子上に統合される。これにより発明者らの概念は、潜在的な将来の生物医学的応用の重大な要件である、希釈の影響を受けない。ウイルスを捕捉し、不活性化するためのウイルス中和剤としての提案された応用以外に、発明者らの殻の変異体はまた、ワクチン接種用の抗原キャリア、遺伝子治療又は遺伝子改変用のDNA又はRNAキャリア、薬物送達担体、保護的貯蔵容器として、又は合成オルガネラなどの区画化されたシステムを構築するために用いられることもある。殻は広範な内部空洞寸法を覆い、また例えば、一般的な遺伝子治療ベクターである、アデノ随伴ウイルス(AAV)(45,46)で送達することができるゲノム情報よりもずっと大きいものを収容することができる別の遺伝子導入ベクターとしての機会を提供してよい。送達される核酸を、例えばCRISPR/Casに基づく遺伝子サイレンシング又は遺伝子改変手法をより安全で効率的にするタンパク質又はタンパク質複合体と結合することもある。
【0125】
自然のウイルスはタンパク質サブユニットから構築されるが、発明者らは純粋にDNAから成る正二十面体殻を構築し、これによりウイルス構築原理をタンパク質化学から核酸の領域に取った。核酸は、耐久性があり、市販されており、且つやはり本研究で示したように容易に機能を持たせ、且つ改変される。ウイルス病原体を飲み込むために核酸を用いることにより、ウイルスの脅威と戦う薬物を開発する新しい領域を開拓してきた。核酸に基づく薬剤を用いると、タンパク質構造を標的とする自然及び適応免疫系の経路による中和、食作用及び分解を避ける利点を潜在的に与える。最近、規模を拡大してDNAに基づく物体を作製する方法(47)が現れた。これらの方法は、ウイルス性疾患と戦うための発明者らの概念を臨床用の候補治療法に変えるのに役立つことができる。
【0126】
方法
1.殻サブユニットの自己組織化
全ての自己組織化実験は、pH8の5mM Tris塩基、1mM EDTA、5mM NaClに加えてxmM MgCl2を含有する標準「折り畳み緩衝液」(FoBx)中で実行された。単一スキャフォールド鎖状DNAオリガミ物体を、50nM スキャフォールドDNA及び200nMの各ステープル鎖を含有するワンポット折り畳み反応で自己組織化した。多数のスキャフォールドを含有するDNAオリガミ物体を、10nm濃度の各スキャフォールドDNA及び200nMの各ステーブル鎖を使用して自己組織化した。個々のスキャフォールドは配列直交であり、以前記載したように設計され作製される(48,49)。x=20mM MgCl2の折り畳み緩衝液(FoB20)を用いた。全ての反応混合物は、Tetrad(Bio-Rad)熱サイクル機器中で表2に記載される熱的アニーリング勾配を受けた。ステープル鎖は、IDT(Integrated DNA Technologies)から購入した。
【0127】
【0128】
2.殻サブユニットの精製及び殻の自己組織化
全ての殻サブユニットをゲル精製を用いて精製し、必要な場合、サブユニットを殻に自己組織化する前に限外濾過(分子量100kDaカットオフのアミコンウルトラ(Amicon Ultra))で濃縮した。両手順は、以下を変更して、以前記載したように実行した(39):ゲル精製については、0.5xTBE及び5.5mM MgCl
2を含有する1.5%アガロースゲルを用いた。限外濾過についてはフィルターから回収される対象の濃度を増加させるために、同一のフィルターをゲル精製したサンプルで複数回満たした(約2~5回、ステップ毎に~400μl)。このフィルターを新しいフィルターチューブに逆さまに載せる前に、殻集合体に対して明確に定義された緩衝液条件を達成するために1xFoB5(~400μl)で2回の洗浄ステップを実行した。精製した(及び濃縮した)殻サブユニットを殻に集合させるために、適切な量の1xFoB5及び1.735M MgCl
2を加えることにより、サブユニット及びMgCl
2濃度を調整した。典型的なサブユニット濃度は、5nM~最大100nMの範囲だった(cryo-EM測定で、表3を参照)。殻自己組織化のための典型的なMgCl
2濃度は、10~40mMの範囲だった。殻自己組織化は、40°Cで実行した。反応時間は、殻の種類に応じて変わった(
図3Aを参照)。全ての殻サブユニット及び集合した殻の両方は、室温で数か月保存することができる。
【0129】
3.半分の殻及びHBVコアの結合
三角形の内部上の9個のステープルを5’末端の26個の一本鎖塩基(配列:‘GCAGTAGAGTAGGTAGAGATTAGGCA-オリゴヌクレオチド’、設計の詳細については、
図40、41、表1及び配列表を参照)を有するハンドルで修飾した。三角形を精製し、上述したとおり集合した。ハンドル配列に相補的で3’末端をチオール基で修飾したオリゴヌクレオチドをSulfo-SMCC(スルホスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸)架橋剤を用いてHBcore 17H7抗体と結合した。産物をその後Dynamic BiosensorsのproFIRE(登録商標)を用いて精製した。DNA修飾抗体を集合した殻に加え、25℃で一晩インキュベートした。HBVコア粒子を修飾した殻ととともに25℃で1~4時間インキュベートした。
【0130】
4.八面体のオリゴリジンによる安定化
八面体殻を35mM MgCl2で集合し、(41)に記載されるようにAsahi Spectra Xenon Light source 300W MAX-303を用いて1時間UV架橋した。(42)に記載されるのと同様に室温で1時間、殻をK10オリゴリジンとK10-PEG5Kオリゴリジン(1:1)の混合物と比率0.6:1でインキュベートした。
【0131】
5.T=1殻の外側の修飾
T=1三角形及び三角形ブリック(
図5A)をT=1三角形から突出する一本鎖DNA粘着末端を用いて二量体化した。突出配列は、柔軟性のための3個のチミジン及びブリックの一本鎖スキャフォールドドメインと直接相補的な7塩基長の配列モチーフを含有した(
図42)。二量体化反応は、11mM MgCl
2の存在下モノマー濃度40nMを用いて室温で一晩実行した。
【0132】
6.ゲル電気泳動
折り畳み反応又は殻集合体のサイズ分布を、アガロース電気泳動を用いて調べた。殻サブユニットのみを含む溶液については、0.5xTBE緩衝液(22.25mM Tris塩基、22.25mMホウ酸、0.5mM EDTA)及び5.5mM MgCl2を含有する1.5%アガロースゲルを用いた。殻などのオリゴマー集合体を含む溶液については、アガロース濃度0.5%を用いた。ゲル電気泳動を、殻をインキュベートした溶液と同じMgCl2濃度で補充した0.5xTBE緩衝液中で実行した。15mMより大きいMgCl2濃度では、ゲルを冷却するために周囲の氷水浴を用いた。ゲル電気泳動を、90Vバイアス電圧で1.5~2時間実行した。アガロースゲルを画素サイズ50μm/pixのTyphoon FLA 9500レーザースキャナー(GEヘルスケア)でスキャンした。
【0133】
7.ネガティブ染色TEM
サンプルを、構造及びMgCl2に応じて30~120秒間グロー放電コロジオン支持炭素コーティングCu400TEMグリッド(社内生産)上にインキュベートした。グリッドを25mM水酸化ナトリウムを含有する2%ギ酸ウラニル(uranyl formiate)水溶液で染色した。10000x~42000xの倍率で画像化を実行した。T=3三角形を、AMT 4Mpx CCDカメラを備えたPhillips CM100で画像化した。他の全てのネガティブ染色データをTietz TEMCAM-F416カメラと共に120kVで操作されるFEI Tecnai T12顕微鏡で取得した。TEM顕微鏡写真を高域フィルター処理して長距離の染色勾配を除去し、コントラストを自動平均化した(Adobe Photoshop(登録商標) CS6)。個別の粒子の詳細な情報を取得する、及び成功した封入を調べるために、可視化技術としてネガティブ染色EM断層撮像を用いた。上述したグリッドを調製し、傾斜シリーズをFEI Tecnai 120を用いて15000x~30000xの倍率で取得した。ステージを-50°~50°傾斜させ、顕微鏡写真を2°きざみで取得した。
【0134】
断層像を取得するために全ての傾斜シリーズを引き続きIMOD(50)で処理した。連続する傾斜シリーズ画像の相互相関を計算することにより顕微鏡写真を互いに整列させた。その後フィルター補正逆投影法を用いて断層像を生成した。ガウスフィルターは、0.25~0.5のカットオフ及び0.035のフォールオフを用いた。
【0135】
8.低温電子顕微鏡(Cryo electron microscopy)
cryo-EMグリッドを調製するために用いられるDNAオリガミ濃度を表3に要約する。100nMより高い濃度のサンプルは、グロー放電C-flat1.2/1.3又は2/1厚さのグリッド(Protochip)に適用した。モノマー濃度30nM未満の殻を含有するサンプルを400mesh銅グリッド(Ted Pella)上にレースカーボンフィルムによって支持された超薄カーボンフィルムを備えたグロー放電グリッド上でインキュベートした。PEG沈殿すると全ての単一の三角形の濃度は500nM以上に増加した(39)。折り畳み反応1ml(~50nMモノマー濃度)をPEG1mlと混合し、21k rcfで25分間遠心分離し、50~100μlの1xFoB5に再懸濁した。殻を集合するために用いられるDNAオリガミ三角形を全て生成させ、MgCl2濃度を増加させる前に上述したように限外濾過で濃縮させた。液体エタン中でのプランジ凍結を22°C、湿度95%下blot time1.5~2秒、blot force-1及びdrain time0秒でFEI Vitrobot Mark Vにより実行した。モノマー濃度100nM未満のサンプルをブロッティング前に60~90秒間支持層上にインキュベートした。全てのcryo-EM画像は、300kVで操作され、Falcon III 4k 電子直接検出カメラ(direct electron detector) (Thermo Fisher)を備えた収差補正Titan Krios G2電子顕微鏡(Thermo Fisher)により取得された。自動単粒子取得用のEPUソフトウェアを用いた。全ての個別のデータセットの顕微鏡設定については表3を参照する。全ての取得のためのデフォーカスを-2μmに設定した。画像処理は、最初にRELION-2(51)で、その後RELION-3(52)で行った。記録された動画は、動画アラインメントについてはMotionCor2(53)を、且つCTF推定についてはCTFFIND4.1(54)を受けた。参照像無しでの2Dクラス分類後、目視検査で判断された、最良の2Dクラス平均をさらなる処理のために選択した。初期モデルを計算するためにこれらの粒子のサブセットを用いた。1~2回の3D分類後、最も多くの特徴又は完全に集合した殻を示す分類を3D自動微調整(auto-refinement)及び後処理(post-processing)用に選択した。対応する殻については、八面体(O)又は正二十面体(I1)対称性を最後の2個のステップに用いた。
【0136】
【0137】
9.生体外ウイルス遮断ELISA
種々の濃度の集合した半分のT1殻を室温で一晩、FoB30-T(FoB30+0.05% Tween(登録商標)-20)中の2nMオリゴヌクレオチド結合捕捉抗体(抗HBc 17H7、アイソタイプIgG-2b)とともにインキュベートした。次の日、あらかじめインキュベートした混合物を5pM HBVコア粒子に加え、室温で一晩インキュベートし、1nM捕捉抗体、2.5pM HBVコア粒子及び0~200pM半分のT=1殻を得た。平底透明96穴マイクロプレート(Nunc MaxiSorp)を4℃で一晩、100μl/穴抗CAgHB抗体(PBS中1μg/ml)で処理した。200μl/穴PBS-T(PBS+0.05%Tween(登録商標)-20)で4回洗浄後、穴の表面を室温で2時間、PBS中の200μl/穴5%ウシ血清アルブミンでインキュベートすることによりブロックした。200μl/穴FoB30-Tで4回洗浄後、あらかじめインキュベートしたサンプル90μlを穴に加え、室温で2時間インキュベートし、その後洗浄し、引き続き1時間、100μl/穴ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合検出抗体(FoB30-T中抗CAgHB-HRP)でインキュベートした。FoB30-Tで洗浄号、100μl/穴のHRP基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、Life Technologies)を加え、産物の形成を、あらかじめ30℃に平衡したプレートリーダー(CLARIOstar, BMG LABTECH)中650nmの吸収を60秒間隔で測定することにより時間内に監視した。線形回帰勾配を速度データの線形領域(典型的には最初の5分)にフィットさせることによりHRP活性を算出した。HBVコア粒子のみのコントロール及び空測定に対するウイルス遮断効率を算出した。全ての実験を三通り行った。ELISAに用いられた抗体は親切にも、キューバのCentro De Ingenieria Genetica y Biotecnologia de sancti spiritusにより提供された。
【0138】
10.ヘリウムイオン顕微鏡像(HIM)
画像化は、ORION Nanofab (Zeiss)中のQuorum Q150Tスパッタコーターを用いて5nm層のAuPdでコーティングされたネガティブ染色TEMグリッドで実行された。加速電圧30kV及びビーム電流0.3~0.4pAを用いた。画像は、Everhart-Thornley 2k検出器の走査モードで取得した。
【0139】
11.HBVコア粒子の作製
遺伝子型D(サブタイプayw2)のB型肝炎ウイルスコア粒子をE.coli K802及びBL21細胞(Latvian Biomedical Research and Study Centre, Riga, Latviaから購入)中組換えで作製した。手短に言えば、粒子を細菌タンパク質抽出物の超音波処理及び清澄により取得し、硫安沈殿並びにその後記載された陰イオン交換及び分子ふるいクロマトグラフィーによって精製した(55)。最終製品を従来のPBS(0.05%NaN3、1mM DTTを含む)中暗がりで常に4℃に保った。
【0140】
12.抗HBc抗体の作製
抗HBVコア(抗HBc)抗体17H7(アイソタイプIgG-2b)をミュンヘンのHelmholtz Zentrum MunchenのMonoclonal Antibody Core Facility(HMGU)で作製した。手短に言えば、マウスHBc認識B細胞を一般的なハイブリドーマ技術によって作製した。マウスにペプチドNLEDPASRDLVVC(HBV coreのaa75-86)を曝露した。マウスハイブリドーマクローンを選択し、分泌された抗体をHBcAgの免疫染色及び沈殿並びに天然抗原認識用のELISAにより、並びに変性抗原の検出用のウエスタンブロット解析により解析した。最終17H7製品をタンパク質A/Gカラムを用いる標準的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、0.8mg/ml(5.33μM)のタンパク質に濃縮し、従来のPBS(137mMNaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KCl、pH7.4)中暗がりで4℃に保った。
【0141】
13.T=1殻中のカーゴ封入
T=1殻サブユニットの9個のステープルを5’末端に16個の塩基を加えることにより修飾した。これらの9個の修飾されたステープル及び未修飾のT=1ステープルをp8064スキャフォールドとともに折り畳んで9個のssDNA「ハンドル」を有するT=1三角形を作製する(
図50A、左)。16塩基のssDNAハンドルをモノマーの殻の内側に面する面に配置する。それらの9本の鎖のうち8本はモノマーの内側に向かって内側に面して配向し、したがってカーゴに接近できなかったかもしれない。一本鎖DNAカーゴを、ステープル鎖を殻サブユニット上のハンドルと相補的である16塩基長のオーバーハングを有するp8064 ssDNA環状スキャフォールドに付着させることにより調製した。CY5色素を含有するオリゴも、アガロースゲルのレーザー走査による蛍光読み取りを可能とするためにハイブリッド形成した(
図50A、中央及び
図42C)。モノマーを不動態化するであろう、カーゴ溶液中に非結合のステープルを有することを避けるために、20種類の異なるステープルをスキャフォールドと1:2の比率で混合する。ステープルを環状ssDNAにアニーリングするために、FOB15緩衝液を65°Cで15分間、60℃から44°Cで1時間/1℃の温度傾斜で用いる。金ナノ粒子を封入するために、モノマーのハンドルの相補的なハンドルを直径30nmの金ナノ粒子に付着した(Cytodiagnostics, OligoREADY Gold Nanoparticle Conjugation Kit)。模式的なネガティブ染色TEM断層像のスライスを
図50、B及びCに示す。TEM画像の封入された環状ssDNAの可視度を高めるために、直径20nmの金ナノ粒子(Cytodiagnostics, OligoREADY Gold Nanoparticle Conjugation Kit)を環状ssDNAスキャフォールドに付着した(模式的なネガティブ染色TEMを
図50、B及びCの右から最後の画像に示す)。カーゴ有り無しの両方の、T=1殻を40℃で3日間、1xFoB20緩衝液中で集合させた。集合前に殻サブユニットをゲル精製した。三角形の濃度は16nMだった。カーゴ(全ての種類の)の濃度は、0.8nMだった。
【0142】
14.半分の殻とHBVコアの結合
抗HBVコア(抗HBc)抗体17H7(アイソタイプIgG-2b)をミュンヘンのHelmholtz Zentrum MunchenのMonoclonal Antibody Core Facility(HMGU)で作製した。手短に言えば、マウスHBc認識B細胞を一般的なハイブリドーマ技術によって作製した。マウスにペプチドNLEDPASRDLVVC(HBV coreのaa 75-86)を曝露した。マウスハイブリドーマクローンを選択し、分泌された抗体をHBcAgの免疫染色及び沈殿並びに天然抗原認識用のELISAにより、並びに変性抗原の検出用のウエスタンブロット解析により解析した。最終17H7製品をタンパク質A/Gカラムを用いる標準的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、0.8mg/ml(5.33μM)のタンパク質に濃縮し、従来のPBS(137mMNaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KCl、pH7.4)中暗がりで4℃に保った。
【0143】
15.殻オリゴリジン安定化
完全な八面体殻を35mM MgCl2で集合し、(33)に記載されるように朝日分光キセノン光源300W MAX-303を用いて波長310nmで1時間UV架橋した。この殻を(34)に記載されるのと同様に室温で1時間、K10オリゴリジンとK10-PEG5Kオリゴリジン(1:1)の混合物と共に比率0.6:1のN:P中でインキュベートした。八面体を55%マウス血清中37℃で1時間及び24時間インキュベートした。ネガティブ染色での画像化を可能にするために、ネガティブ染色グリッドに適用する直前にサンプルをPBSで最終マウス血清濃度5%に希釈した。
【0144】
生体内ウイルス中和実験に用いられる部分的な殻を、60mM MgCl2で集合し、(33)に記載されるように朝日分光キセノン光源300W MAX-303を用いて30分間UV架橋した。全てのスタッキング接触で3種類の塩基長の粘着性オーバーハングを導入し、三角形サブユニットを共有結合的に架橋するために両オリゴヌクレオチドの末端に1つのチミジンを加えた(
図51を参照)。粘着性オーバーハングは、UV点溶接のためのチミジンの添加によって誘導される平滑末端スタッキングの減少を補償するために必要だった。殻を(34)に記載されるのと同様に室温で1時間、K10オリゴリジンとK10-PEG5Kオリゴリジン(1:1)の混合物と共に比率0.6:1のN:P中でインキュベートした。DNA改変抗体を集合した殻に加え、室温で一晩インキュベートした。
【0145】
16.細胞培養及び中和アッセイ
HEK293T(ヒト胎児腎細胞株、DSMZ)細胞を10%熱失活ウシ胎児血清(FBS, Sigma-Aldrich, cat. no. F9665)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM, Gibco, cat. no. 31966047)中で培養した。細胞を37℃、5%CO2で加湿インキュベーター中で常に培養した。形質導入実験のためにeGFPを保有するAAV2(Biocat, cat. no. AA002-GVO-GC)を利用し、感染粒子の濃度は、製造業者のプロトコルにより滴定により測定した。手短に言えば、形質導入の16~24時間前に細胞を80,000細胞mL-1で24穴プレートに播種し、形質導入の72時間後にフローサイトメトリーによる形質導入効率の定量化のために収集した。AttuneTM NxTフローサイトメーター及びソフトウェア(Thermofisher)をそれぞれ用いてサンプルを取得し、分析した。側方散乱面積対高さでゲーティングした、20,000個の単一細胞イベントを解析用に記録した。eGFPを488nmレーザーによって励起し、発光を530/30nmバンドパスフィルタで測定した。ネガティブコントロールとして未処理の細胞を用いた。感染粒子の濃度は、1.23×109 IFU mL-1であると測定された。AAV2ウイルス粒子の総数は、製造業者のプロトコルによりELISAにより測定し(Progen, cat. No. PRATV)、2.24×1012 VP mL-1であると測定された。中和実験については、細胞を上のように培養した。48穴プレートをポリ-L-リジンでコーティングし(Sigma Aldrich cat. no. P2636, 0.1mg mL-1,10分間室温でインキュベーション)、H20で2回、ついでPBSで洗浄した。形質導入の16~24時間前にHEK293T細胞を80,000細胞mL-1で播種した。結合した抗AAV2を半分の殻オリガミに一晩結合させるための原液を調製した。0.1mgmL-1ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下結合が生じた。同様に結合した抗AAV2及び抗体なしの半分の殻も同一の方法で調製した。次の日、半分の殻を2時間の室温インキュベーションによりPEG-オリゴリジン/664オリゴリジンでコーティングした。次に、異なる滴定条件の各々を調製し、PBSで条件当たり合計33.5μLに希釈した。4μLの希釈したAAV-2サンプル(1/100、PBS中)を加え、混合し、そしてサンプルをインキュベートしたままにした(2時間、室温)。細胞をPBSで洗浄し、2%FBSを含む62.5μLのDMEMを各穴に加えた。混合物(37.5μL)を各穴に滴加した。18%FBS及び1×抗生物質/抗真菌薬を含む100μLのDMEMを加える前に、細胞を2時間インキュベートした。培地を除去する前に細胞をさらに22時間インキュベートし、細胞を1×PBSで洗浄し、そして10%FBS及び1×抗生物質/抗真菌薬を含む250μLのDMEMを加えた。形質導入後48時間で、細胞をトリプシン処理し、フローサイトメトリーのために調製した。形質導入効率を上のように定量化し、代表的なゲートを表52に示す。統計解析をGraphpad Prism(GraphPad Software Inc.)で実行した。落射蛍光撮像法については、手順は細胞を8部屋の穴のスライド(NuncTM Lab-TekTM, Thermofisher)に播種したことを除いて上と同一だった。合計48時間後の時点で、細胞を1×PBSで洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。細胞を再度洗浄し(1×PBS)、細胞核を染色した(Hoescht 3342、PBSで希釈、5分間、室温)。細胞をPBSで洗浄し、このサンプルをFluoromount-G水溶性封入剤を用いて乗せた。サンプルを、Tikon Eclipse Ti2-E倒立顕微鏡を用いて、10×対物レンズを用いて撮像した。画像をNIS-Elements ARソフトウェアを用いて収集し、ImageJを用いて処理した。
【0146】
17.生存率アッセイ
細胞傷害性を、細胞を半分の殻の混合物と24又は48時間インキュベーションした後細胞生存率により定量化した。HEK293T細胞をポリ-L-リジン処理96穴プレートに80,000細胞mL-1で播種した。細胞を一晩定着させ、培地を除去し、中和(neutralisation)アッセイと同一の手順で細胞を半分の殻の混合物に曝露した。細胞をさらに24時間又は48時間、半分の殻の溶液とインキュベートし、アラマーブルー試薬t(Invitrogen、穴あたり10μL)を加えた。プレートを混合し、プレートリーダー(CLARIOstar)で読み取る前に4時間インキュベートした。製造業者のプロトコルにより570nm及び600nmでの吸光度読みを行った。測定値を、同様に処理されたが、オリガミ構造を含まないPBSを受けた、コントロール穴に対して正規化した。全ての条件を少なくとも三通り測定した。
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