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特表2023-514405非反応性熱可塑性ポリマーと反応性熱可塑性ポリマーの混合物および複合材料を調製するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】非反応性熱可塑性ポリマーと反応性熱可塑性ポリマーの混合物および複合材料を調製するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230329BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550179
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 FR2021050311
(87)【国際公開番号】W WO2021170946
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2001818
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サヴァール, ティボー
(72)【発明者】
【氏名】デベス, リズ
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB27
4F072AD41
4F072AD44
4F072AD54
4F072AH05
4F072AH23
4F072AK16
4F072AL01
4J002AA01W
4J002AA01X
4J002BB03X
4J002BB12X
4J002BE02X
4J002CF07X
4J002CF18X
4J002CG00W
4J002CH09X
4J002CL00W
4J002CL00X
4J002CM04W
4J002CN03W
4J002GK00
(57)【要約】
Tg>40℃、とりわけ>100℃、特に>120℃の少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーの混合物を含む組成物を含浸させた繊維材料を調製するための、前記組成物と繊維材料の使用であって、前記組成物が、1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定した場合に、同じ条件下で測定した、反応性プレポリマーを欠く同じ組成物の粘度よりも低い含浸中の初期溶融粘度、ならびに/あるいは含浸中および含浸後の前記組成物中の前記反応性熱可塑性プレポリマーのin situ重合後に、非反応性熱可塑性ポリマーを欠き、前記反応性熱可塑性プレポリマーが同じ数平均分子量(Mn)まで重合されている同じ組成物の延性と少なくとも等しい、特にそれよりも大きい延性を有する、使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を含浸させた繊維材料を調製するための、前記組成物と繊維材料との使用であって、前記組成物がTg≧40℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃の少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーとの混合物を含み、非反応性熱可塑性ポリマー/反応性熱可塑性プレポリマーの重量比が5/95~95/5であり、非反応性熱可塑性ポリマーが非晶質ポリマーであり、反応性熱可塑性プレポリマーが半結晶性ポリマーであるか、あるいは非反応性熱可塑性ポリマーが半結晶性ポリマーであり、反応性熱可塑性プレポリマーが非晶質ポリマーであり、
非晶質の前記非反応性熱可塑性ポリマーまたは非晶質の前記反応性熱可塑性プレポリマーが、ポリアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU);およびポリカーボネート(PC)から選択され、
半結晶性の前記非反応性熱可塑性ポリマーまたは半結晶性の前記反応性熱可塑性プレポリマーが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特にポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK);ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、特に芳香族ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK);ポリアミド(PA)、特に尿素単位で修飾されていてもよい半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド);ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびアタクチックポリプロピレンを除くポリプロピレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにこれらの混合物、とりわけPEKKが優勢である、好ましくは90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%である、PEKKとPEIの混合物から選択され、
前記組成物を含浸させた繊維材料を調製するために、前記組成物が、1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定した場合に、同じ条件下で測定した、反応性プレポリマーを欠く同じ組成物の粘度よりも低い含浸中の初期溶融粘度、ならびに/あるいは含浸中および含浸後の前記組成物中の前記反応性熱可塑性プレポリマーのin situ重合後に、非反応性熱可塑性ポリマーを欠き、前記反応性熱可塑性プレポリマーが同じ数平均分子量(Mn)まで重合されている同じ組成物の延性と少なくとも等しい、特にそれよりも大きい延性を有する、使用。
【請求項2】
非反応性熱可塑性ポリマー/反応性熱可塑性プレポリマーの重量比が5/95~95/5、とりわけ20/80~80/20、特に30/70~70/30、好ましくは40/60~60/40である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
半結晶性の前記反応性熱可塑性ポリマーがポリブチレンテレフタレート(PBT)および半芳香族ポリアミドから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
非晶質の前記非反応性熱可塑性ポリマーまたは非晶質の前記反応性熱可塑性プレポリマーがポリカーボネートおよびポリアミド(PA)、特に尿素単位で修飾されていてもよい脂環式ポリアミドまたは半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記非反応性熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnが10000~40000、好ましくは14000~25000、より優先的には15000~21000g/molであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記反応性熱可塑性プレポリマーの数平均分子量Mnが500~10000未満、好ましくは2000~8000であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の混合物を含む組成物を含浸させた含浸繊維材料。
【請求項8】
炭素繊維用の前記繊維材料中の繊維の数が3Kより大きいかまたはこれと等しい、特に6Kより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ12Kより大きいかまたはこれと等しく、特に12K、24K、48K、50Kおよび400K、とりわけ12K、24K、48Kおよび50Kから選択される、あるいはガラス繊維の坪量が1200texより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ2400texより大きいかまたはこれと等しい、または4800texより大きいかまたはこれと等しいことを特徴とする、請求項7に記載の含浸繊維材料。
【請求項9】
体積による繊維の含有量が含浸繊維材料の体積の少なくとも70%、とりわけ含浸繊維材料の体積の少なくとも80%、特に含浸繊維材料の体積の少なくとも90%、さらに特に含浸繊維材料の体積の少なくとも95%で一定であることを特徴とする、請求項7または8に記載の含浸繊維材料。
【請求項10】
前記含浸繊維材料の多孔度が10%未満、とりわけ5%未満、特に2%未満であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項11】
単層含浸繊維材料であることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項12】
非可撓性であることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか一項に記載の混合物を含む組成物を事前含浸させた繊維材料。
【請求項14】
請求項7から12のいずれか一項に記載の含浸繊維材料、または請求項13に記載の事前含浸繊維材料を調製する方法であって、前記繊維材料に請求項1から6のいずれか一項に記載の混合物を含む組成物を事前含浸させる工程または含浸させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記含浸させる工程が、溶融経路によって、とりわけ高速で、特に溶融経路について少なくとも0.3~10m/分、特に少なくとも2m/分の速度で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下の工程:
i)溶融ポリマーの溶融経路によって、とりわけ引抜によって、クロスヘッド押出によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を含浸させて、含浸繊維材料を得る工程と、
ii)場合により、前記含浸繊維材料を成形および較正して、0.05~5mmの厚さ、好ましくは0.15~1.3mmの厚さを有する薄いストリップの形態のリボンからなる含浸繊維材料を得る工程と
を含むことを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
請求項14に記載される含浸繊維材料または事前含浸繊維材料を調製する方法であって、前記繊維材料に粉末形態の前記混合物を含む組成物を事前含浸させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記事前含浸が、流動床、ガン噴霧、とりわけ高速での前記非反応性熱可塑性ポリマーの粉末の水性分散体または前記熱可塑性ポリマーの粒子の水性分散体または前記非反応性熱可塑性ポリマーの水性エマルジョンもしくは懸濁液を通した繊維の連続通過、から選択されるシステムを用いて行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記事前含浸繊維材料の非引張加熱の少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱の少なくとも1つの工程を含み、1つまたは複数のロービングが、前記少なくとも1つの張力装置(E)の表面の一部または全部と接触し、加熱システムの近くで、加熱システムで、または加熱システムの後で、前記少なくとも1つの張力装置(E)の表面上を部分的または完全に走行することを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
加熱システムが、赤外線ランプ、UVランプ、対流加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱および高周波(HF)加熱から選択されることを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
以下の工程:
i)少なくとも1つの張力装置(E’)を備えていても備えていなくてもよいタンク内の流動床によって、少なくとも1つの張力装置(E’)を備えていても備えていなくてもよいタンク内の乾式経路によるノズルまたはガン噴霧によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を事前含浸させて、事前含浸繊維材料を得る工程と、
ii)前記事前含浸繊維材料を非引張加熱して、溶融ポリマー(一又は複数)およびプレポリマー(一又は複数)の前記混合物を事前含浸させた繊維材料を得る工程と、
iii)請求項23または24に記載の、少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱をして、含浸繊維材料を得る工程と、
iv)場合により、前記含浸繊維材料のロービングまたは前記平行ロービングを成形および較正して、薄いストリップの形態のリボンからなる含浸繊維材料を得る工程と
を含むことを特徴とする、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
以下の工程:
i)乾燥ポリマー粉末、ポリマー粉末の水性分散体またはポリマー粒子の水性分散体またはポリマーの水性エマルジョンもしくは懸濁液の流動床を通した繊維の連続通過によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を事前含浸させる工程と、
ii)前記事前含浸繊維材料を非引張加熱して、溶融ポリマー(一又は複数)およびプレポリマー(一又は複数)の前記混合物を含浸させた繊維材料を得る工程と、
iii)場合により、少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱をして、含浸繊維材料を得る工程と、
iv)場合により、前記含浸繊維材料のロービングまたは平行ロービングを成形および較正して、薄いストリップの形態のリボンからなる、ポリマー(一又は複数)および部分または完全重合プレポリマー(一又は複数)の前記混合物を含浸させた繊維材料を得る工程と
を含むことを特徴とする、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の張力装置(E’’)が含浸または事前含浸工程の上流に存在することを特徴とする、請求項14から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
5~30m/分の間の速度で乾燥粉末経路について、および少なくとも5m/分の速度で水性分散体について行われることを特徴とする、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ロボットを使用したリボンの自動レイアップによる三次元複合部品の製造に適したリボンを調製するための、請求項7から13のいずれか一項に記載の含浸繊維材料の使用。
【請求項27】
熱成形性シートを調製するための、請求項7から13のいずれか一項に記載の含浸繊維材料の使用。
【請求項28】
含浸繊維材料が、小片に事前切断され、前記小片が、熱成形性シートを調製するためにランダムに会合されるかまたは配向されることを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非反応性熱可塑性ポリマーと反応性熱可塑性ポリマーの混合物、および前記混合物を含浸させた、よって、複合材料を構成する繊維材料を調製するための繊維材料とのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料を作製するための熱可塑性ポリマーの使用は、とりわけ熱可塑性ポリマーが高いTgを有する場合、その高い溶融粘度のために繊維材料を含浸させることの困難に直面する。これらのポリマーのモル質量が過度に減少すると、これらのポリマーは脆くなり、これらの樹脂から作製された複合材料は低い性能を示す。
【0003】
この困難を回避するために、いくつかの解決策が考えられてきた。例えば、国際公開第2013/060976号パンフレットは、繊維材料の含浸のための鎖延長剤と反応するプレポリマーで構成された反応性プレポリマーまたは反応性混合物の使用を記載している。
【0004】
国際公開第2014/064376号パンフレットは、例えば、テープを作製するため、またはCRTMによって複合部品を成形するための、高分子量熱可塑性ポリマーマトリックスを含む複合材料を作製するための、非反応性ポリマーまたは反応性プレポリマーまたは鎖延長剤と反応するプレポリマーで構成された反応性混合物または互いに反応性である2種のプレポリマーの使用を記載している。しかしながら、この第2の国際出願に記載される解決策は、高いTg(すなわち、Tg>80℃、好ましくは>100℃)を有する熱可塑性ポリマーを使用する場合、それらが非常に粘性であり、よって、繊維の良好かつ迅速な含浸に適さないため、繊維材料の繊維の良好かつ迅速な含浸を可能にしないか、または繊維の含浸が1種もしくは複数のプレポリマーに基づく反応性混合物に基づいて実施される場合、良好な機械特性を達成するために高分子量までの完全な重合を必要とする。
【0005】
米国特許第4764397号明細書は、反応性架橋性芳香族ポリエーテルプレポリマーおよび非反応性ポリスルホンポリマーによる繊維材料の含浸を記載している。
【0006】
国際公開第2014/013028号パンフレットは、繊維材料に(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系ポリマーの混合物を含浸させる方法を記載している。
【0007】
国際公開第2016/207553号パンフレットは、引抜成形による複合材料の調製のための、互いに反応性であるプレポリマーまたは互いに反応性である2種の異なる反応性官能基を含むプレポリマーの使用を記載している。
【0008】
単一成分反応性プレポリマー(すなわち、互いに反応性である2種の異なる反応性官能基を含む)に基づく上記の開発された解決策、またはプレポリマーおよび鎖延長剤に基づく、もしくは2種のプレポリマーに基づく反応性組成物の場合、ポリマーが極めて剛性であるので、最終的なポリマーが延性になるために達成されるべき臨界モル質量がなおいっそう重要であり、これは高Tg芳香族ポリマーに特に当てはまる。とりわけ複合材料を作製するために、使用のための高い流動性を可能にするために出発モル質量が低くなければならない限り、良好な機械特性を有する延性ポリマーおよび/または複合材料を得るための唯一の選択肢は、in situ重合中に十分なモル質量を達成することを可能にするために複合部品を製造するためのサイクル時間を長くすることであり、これは工業的観点からは逆効果である。
【0009】
ポリマー繊維に基づくフィルムまたはウェブを製造する場合、このポリマーは、フィルムまたはウェブを製造する方法と適合性となるために十分な溶融粘度を有さなければならない。このフィルムまたはこのウェブのホットプレスからの乾燥繊維材料または補強材を乾燥繊維補強材に容易かつ迅速に含浸させることができることが望まれる場合(フィルムスタッキングと呼ばれるプロセス)、このフィルムまたはこのウェブを作製するための反応性組成物を、その溶融粘度をその使用に十分で、繊維の良好な含浸を可能にするのに高すぎない値に制限するよう使用することが有利である。しかしながら、プレポリマーのみで構成されるフィルムまたはウェブを作製することは、非常に脆い製品をもたらす危険性があり、これは、ホットプレス前に乾燥繊維とのアセンブリを形成するための常温での必要とされる取り扱いには適さない。
【0010】
したがって、上で詳述した欠点を克服する必要がある。
【0011】
よって、本発明は、Tg≧40℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃の少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーの混合物を含む組成物を含浸させた繊維材料を調製するための、前記組成物と繊維材料の使用であって、前記組成物が、1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定した場合に、同じ条件下で測定した、反応性プレポリマーを欠く同じ組成物の粘度よりも低い含浸中の初期溶融粘度、ならびに/あるいは含浸中および前記含浸後の前記組成物中の前記反応性熱可塑性プレポリマーのin situ重合後に、非反応性熱可塑性ポリマーを欠き、前記反応性熱可塑性プレポリマーが同じ数平均分子量(Mn)まで重合されている同じ組成物の延性と少なくとも等しい、特にそれよりも大きい延性を有する、使用に関する。
【0012】
したがって、本発明者らは、予想外にも、少なくとも1種の非反応性ポリマーと少なくとも1種の反応性ポリマーの混合物を含む組成物が、良好かつ迅速な含浸、とりわけ混合物中に高Tg非反応性ポリマーを有する前記組成物を含浸させた繊維材料を調製することを可能にし、よって、高性能複合材料、すなわち、良好な機械特性を有する複合材料をもたらすことを見出した。1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定した、前記組成物による前記繊維材料の含浸中および含浸後の前記組成物の初期溶融粘度が、前記非反応性熱可塑性ポリマーを含むが、反応性プレポリマーを欠く同じ組成物の粘度よりも低い場合に、ならびに/あるいは反応性プレポリマーが含浸中および含浸後にin situ重合された前記組成物の延性が、非反応性熱可塑性ポリマーを欠き、前記反応性熱可塑性プレポリマーが含浸後に達成されるのと同じ平均分子量まで重合されている同じ組成物の延性より大きいかまたはこれと等しい場合にのみ良好かつ迅速な含浸が達成され得る。
【0013】
換言すれば、組成物が、反応性プレポリマーを欠く、同じ条件下で測定した同じ組成物の粘度よりも低い、1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定される、含浸中および含浸後の初期溶融粘度を有する、あるいは反応性プレポリマーが含浸中および含浸後にin situ重合された前記組成物の延性が、非反応性熱可塑性ポリマーを欠き、前記反応性熱可塑性プレポリマーが同じ平均分子量まで重合されている同じ組成物の延性より大きいかまたはこれと等しい、あるいは粘度と延性の両方が、含浸が良好かつ迅速であり、よって、高性能複合材料、すなわち、良好な機械特性を有する複合材料をもたらすように、上記のように変化する。
【0014】
「初期溶融粘度」という表現は、含浸の開始中の組成物中のプレポリマーの数平均モル質量Mnが、含浸前の初期モル質量と比較して1.5~2倍を超えて変化していないことを意味する。
【0015】
TgはISO 6721-11:2019に従ってDMAによって決定される。
【0016】
ポリマーの数平均(Mn)および重量平均(Mw)モル質量は、以下の条件を使用して、ISO規格16014-1:2012、16014-2:2012および16014-3:2012に従ってサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した:
装置:Waters Alliance 2695機器
溶媒:0.05Mトリフルオロ酢酸カリウムで安定化したヘキサフルオロイソプロパノール
流量:1ml/分
カラム温度:40℃。
【0017】
直列の2つのカラム:1000Å PFGおよび100Å PFG(PPS)
試料濃度:1g/l(常温で24時間溶解)
直径25mmおよび多孔度0.2μmのACRODISC PTFEフィルタを取り付けたシリンジを使用した試料の濾過
注入量:100μl
228nmでのUV検出を用いた40℃での屈折計検出
1900000~402g.mol-1のPMMA標準による較正。5次多項式によってモデル化された較正曲線。
【0018】
溶融粘度は、直径25mmの2つの平行プレート間のPhysica MCR301装置で、300℃の温度で振動レオロジーによって測定される。
【0019】
粘度は、10分の最大時間にわたって測定される。
【0020】
「非反応性熱可塑性ポリマー」という表現は、熱可塑性ポリマーがもはや有意に変化する可能性がない分子量を有すること、すなわち、その数平均分子量(Mn)が処理される前に20%未満しか変化しないことを意味する。
【0021】
非反応性熱可塑性ポリマーがその処理中に組成物中で反応することができることは極めて自明である。
【0022】
「反応性熱可塑性プレポリマー」という表現は、前記反応性プレポリマーの分子量Mnが、その後の組成物の処理中に、反応性プレポリマーの互いの反応もしくは反応性プレポリマーとそれ自体との反応によって、水の放出による縮合によって、または置換によって、または揮発性副産物を排除しない重付加による反応性プレポリマーと鎖延長剤の反応によって変化して、その後、使用後に最終的な非反応性熱可塑性ポリマーをもたらすことを意味する。
【0023】
処理中のMnのこの変化は、反応性熱可塑性プレポリマーの架橋を排除して上に示されるように起こる。
【0024】
反応性プレポリマーと非反応性ポリマーを混合して組成物を形成し、繊維材料に前記組成物を含浸させた後、後者は熱可塑性のままである。
【0025】
「延性」という用語は、材料が破壊することなく塑性変形する能力を表す。
【0026】
規格ISO 179 1eAに従って決定される、TDBは、材料が延性挙動(材料の部分破壊)から脆性挙動(材料の完全破壊)に移行する温度に対応する延性-脆性遷移温度である。したがって、延性-脆性遷移は、50%の脆性破壊(試料の脆性挙動)および50%の部分破壊(試料の延性挙動)ならびに延性挙動と脆性挙動との間の競合が存在する温度範囲として見ることができる。
【0027】
規格ISO 179 1eAに従って行われるシャルピー衝撃試験は、組成物の弾性を得ることを可能にする。
【0028】
したがって、延性-脆性遷移(TDB)は、温度の関数としての弾性の曲線の変曲点に対応する。
【0029】
したがって、含浸中および含浸後の前記組成物中の前記反応性熱可塑性プレポリマーのin situ重合後の組成物のTDBは、前記反応性熱可塑性プレポリマーが含浸後と同じ平均分子量まで重合されている非反応性熱可塑性ポリマーを欠く同じ組成物のTDBより大きいかまたはこれと等しい。
【0030】
一実施形態では、in situ重合後の前記延性が、ISO 527-1/2に従って測定した場合、10%超の23℃での破断伸びに対応する。
【0031】
非反応性熱可塑性ポリマーおよび反応性熱可塑性プレポリマーについて
非反応性熱可塑性ポリマーおよび反応性熱可塑性プレポリマーは混合物を構成する。混合物は、少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーおよび少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーを含有し得る。
【0032】
「ポリマー」という用語と「プレポリマー」という用語の間の区別は、異なるそれぞれの数平均分子量Mnのレベルで行われる;すなわち、非反応性熱可塑性ポリマーは、10000~40000g/molである数平均分子量を有し、反応性熱可塑性プレポリマーは、500~10000g/mol未満、好ましくは2000~8000である数平均分子量を有する。
【0033】
有利には、混合物が単一非反応性熱可塑性ポリマーおよび単一反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0034】
前記非反応性熱可塑性ポリマーはTg≧40℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃を有する。
【0035】
一実施形態では、(メタ)アクリル系ポリマーが前記非反応性熱可塑性プレポリマーから除外される。
【0036】
一実施形態では、前記反応性熱可塑性プレポリマーがTg<40℃を有する。
【0037】
一実施形態では、前記反応性熱可塑性プレポリマーがTg≧40℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃を有する。
【0038】
別の実施形態では、前記非反応性熱可塑性ポリマーおよび前記反応性熱可塑性プレポリマーがTg≧40℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃を有する。
【0039】
一実施形態では、芳香族ポリエーテルが前記反応性熱可塑性プレポリマーから除外される。
【0040】
一実施形態では、(メタ)アクリル系モノマーが前記反応性熱可塑性プレポリマーから除外される。
【0041】
一実施形態では、芳香族ポリエーテルが前記反応性熱可塑性プレポリマーから除外され、(メタ)アクリル系モノマーが前記反応性熱可塑性プレポリマーから除外される。
【0042】
一実施形態では、非反応性熱可塑性ポリマー/反応性熱可塑性プレポリマーの重量比が5/95~95/5、とりわけ20/80~80/20、特に30/70~70/30、好ましくは40/60~60/40である。
【0043】
非反応性熱可塑性ポリマーおよび反応性熱可塑性プレポリマーはそれぞれ半結晶性または非晶質であり得る。
【0044】
したがって、半結晶性ポリマーと半結晶性プレポリマーの混合物、または半結晶性ポリマーと非晶質プレポリマーの混合物、または非晶質ポリマーと半結晶性プレポリマーの混合物、または非晶質ポリマーと非晶質プレポリマーの混合物を有することが可能である。
【0045】
本発明の目的のために、半結晶性ポリマーまたはプレポリマーは、ISO 6721-11:2019規格に従って動的機械分析(DMA)によって決定されるガラス転移温度、およびISO 11357-3:2013規格に従って決定される融点(Tm)、および10J/g超、好ましくは30J/g超、さらにより好ましくは30~40J/gの間である2013年のISO 11357-3規格に従って測定されるDSCにおける20K/分の速度での冷却工程中の結晶化エンタルピーを有するポリマーまたはプレポリマーを表す。
【0046】
本発明の目的のために、非晶質ポリマーまたはプレポリマーは、ガラス転移温度のみを有する(融点(Tm)なし)ポリマーまたはプレポリマーを表す。
【0047】
第1の変形例では、前記混合物が非晶質ポリマーである非反応性熱可塑性ポリマーおよび半結晶性である反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0048】
第2の変形例では、前記混合物が半結晶性ポリマーである非反応性熱可塑性ポリマーおよび非晶質である反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0049】
第1または第2の変形例の一実施形態では、前記半結晶性非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記半結晶性反応性熱可塑性プレポリマーがポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特にポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK);ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、特に芳香族ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK);ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(PA)、特に尿素単位で修飾されていてもよい半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド);ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびアタクチックポリプロピレンを除くポリプロピレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにこれらの混合物、とりわけPEKKが優勢である、好ましくは90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%であるPEKKとPEIの混合物から選択される。
【0050】
有利には、前記半結晶性非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記半結晶性反応性熱可塑性プレポリマーがポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特にポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK);ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、特に芳香族ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK);ポリアミド(PA)、特に尿素単位で修飾されていてもよい半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド);ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびアタクチックポリプロピレンを除くポリプロピレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにこれらの混合物、とりわけPEKKが優勢である、好ましくは90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%であるPEKKとPEIの混合物から選択される。
【0051】
第1または第2の変形例の一実施形態では、前記非晶質非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記非晶質反応性熱可塑性プレポリマーがポリアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU);ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリカーボネート(PC)から選択される。
【0052】
有利には、前記非晶質非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記非晶質反応性熱可塑性プレポリマーがポリアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU);およびポリカーボネート(PC)から選択される。
【0053】
有利には、前記半結晶性反応性熱可塑性ポリマーがポリブチレンテレフタレート(PBT)および半芳香族ポリアミドから選択される。
【0054】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、規格ISO 1874-1:2011、「プラスチック-ポリアミド(PA)成形および押出材料-第1部:命名」、特に3頁(表1および表2)に記載されており、当業者に周知である。
【0055】
ポリアミドは、特に、欧州特許第1505099号明細書に記載されている、式X/YArのもの、とりわけ式A/XTの半芳香族ポリアミド(式中、Aはアミノ酸から得られる部分、ラクタムから得られる部分および式(Caジアミン).(Cb二酸)に対応する部分から選択され、aはジアミンの炭素原子の数を表し、bは二酸の炭素原子の数を表し、aおよびbはそれぞれ4~36の間、有利には9~18の間であり、(Caジアミン)部分は直鎖または分岐脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、(Cb二酸)部分は直鎖または分岐脂肪族二酸、脂環式二酸および芳香族二酸から選択され;
X.TはCxジアミンとテレフタル酸の重縮合から得られる部分を表し、xはCxジアミンの炭素原子の数を表し、xは6~36の間、有利には9~18の間である)、とりわけ式A/6T、A/9T、A/10TまたはA/11Tのポリアミド(Aは上に定義される通りである)、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 5T/10T、PA 11/BACT、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10T、PA 11/MXDT/10T、11/5T/10Tから選択されるポリアミドである。
【0056】
Tはテレフタル酸に対応し、MXDはm-キシリレンジアミンに対応し、MPMDはメチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。
【0057】
半芳香族ポリアミドA/XTがその状態図全体にわたって半結晶性でない場合、A/XTがその半結晶画分において選択されることは極めて自明である。
【0058】
第1または第2の変形例の別の実施形態では、前記少なくとも1種の非晶質非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記非晶質反応性熱可塑性プレポリマーがポリカーボネートおよびポリアミド(PA)、特に尿素単位で修飾されていてもよい脂環式ポリアミドまたは半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)から選択される。
【0059】
同様に、脂環式または半芳香族ポリアミドA/XTがその状態図全体にわたって非晶質でない場合、これがその非晶質画分において選択されることは極めて自明である。
【0060】
脂環式ポリアミドは、特に、式XYのポリアミド(式中、Xはビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンまたは一般的に(BMACM)もしくは(MACM)と呼ばれる(および以下Bと表される)3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、一般的に(PACM)と呼ばれる(および以下Pと表される)ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、特にDicykan(登録商標)、一般的に(PACP)と呼ばれるイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン(以下IPDと表される)および一般的に(BAMN)と呼ばれる2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、特に1,3-BACまたは特に1,4-BACから選択され得、有利にはビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンまたは一般的に(BMACM)もしくは(MACM)と呼ばれる(および以下Bと表される)3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、一般的に(PACM)と呼ばれる(および以下Pと表される)ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、特に1,3-BACまたは特に1,4-BACから選択され得る少なくとも1種の脂環式ジアミンであり、
Yは少なくとも1種のC4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12、脂肪族ジカルボン酸、または芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸およびテレフタル酸である)である。第1または第2の変形例のさらに別の実施形態では、前記混合物が、上に定義される化合物から選択される前記半結晶性非反応性熱可塑性ポリマーおよび
上に定義される化合物から選択される前記非晶質反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0061】
別の実施形態では、前記混合物が、上に定義される化合物から選択される前記非晶質非反応性熱可塑性ポリマーおよび
上に定義される化合物から選択される前記半結晶性反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0062】
一実施形態では、前記非反応性熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnが10000~40000、好ましくは14000~25000、より優先的には15000~21000g/molである。
【0063】
別の実施形態では、前記反応性熱可塑性プレポリマーの数平均分子量Mnが500~10000未満、好ましくは2000~8000である。前記反応性熱可塑性プレポリマーの平均分子量は初期平均分子量、すなわち、繊維材料の含浸前に対応する。
【0064】
さらに別の実施形態では、前記非反応性熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnが10000~40000、好ましくは14000~25000、より優先的には15000~21000g/molであり、前記反応性熱可塑性プレポリマーの数平均分子量Mnが500~10000未満、好ましくは2000~8000である。
【0065】
上に定義される前記混合物の実施形態が何であれ、熱可塑性ポリマーは熱可塑性プレポリマーとは異なるタイプのものであり得る、すなわち、例えば、非反応性ポリマーがポリブチレンテレフタレート(PBT)であり得、プレポリマーがポリカーボネート(PC)であり得る、またはその逆であり得る。
【0066】
熱可塑性ポリマーは、熱可塑性プレポリマーと同じタイプのものであり得る、すなわち、例えば、
非反応性ポリマーが脂肪族ポリアミドであり得、プレポリマーが半芳香族ポリアミドであり得る、もしくはその逆であり得る、または
非反応性ポリマーが脂肪族ポリアミドであり得、プレポリマーが異なる脂肪族ポリアミドであり得る、または
非反応性ポリマーが脂肪族ポリアミドであり得、反応性プレポリマーが同一の脂肪族ポリアミドであり得る。
【0067】
有利には、非反応性熱可塑性ポリマーが反応性熱可塑性プレポリマーと同じタイプのものであり、特に非反応性熱可塑性ポリマーが半芳香族ポリアミドであり、反応性プレポリマーが半芳香族または脂肪族ポリアミドであり、特に非反応性熱可塑性ポリマーおよび反応性熱可塑性プレポリマーが共に半芳香族である。
【0068】
組成物について
前記組成物は少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の熱可塑性プレポリマーの混合物を含む。
【0069】
一実施形態では、前記組成物が、
33重量%~100重量%の、少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーの混合物と、
0重量%~20重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤と、
0重量%~20重量%の少なくとも1種の可塑剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の可塑剤と、
0重量%~25重量%の少なくとも1種の難燃剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の難燃剤と、
0重量%~2重量%の少なくとも1種の添加剤、特に0.1重量%~2重量%の少なくとも1種の添加剤と
を含み、
様々な構成成分の合計が100%に等しい。
【0070】
有利には、前記混合物が単一非反応性熱可塑性ポリマーおよび単一反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0071】
一実施形態では、前記組成物が、
33重量%~100重量%の、少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーの混合物と、
0重量%~20重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の衝撃改質剤と、
0重量%~20重量%の少なくとも1種の可塑剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の可塑剤と、
0重量%~25重量%の少なくとも1種の難燃剤、特に1重量%~20重量%の少なくとも1種の難燃剤と、
0重量%~2重量%の少なくとも1種の添加剤、特に0.1重量%~2重量%の少なくとも1種の添加剤と
からなり、
様々な構成成分の合計が100%に等しい。
【0072】
有利には、前記混合物が単一非反応性熱可塑性ポリマーおよび単一反応性熱可塑性プレポリマーからなる。
【0073】
衝撃改質剤
衝撃改質剤は当業者に周知であり、衝撃改質剤は、有利には、ISO 178規格に従って測定される100MPa未満の曲げ弾性率および0℃未満のTg(DSCサーモグラムの変曲点で11357-2:2013規格に従って測定される)を有するポリマー、特にポリオレフィンからなる。
【0074】
一実施形態では、PEBAが衝撃改質剤の定義から除外される。
【0075】
衝撃改質剤のポリオレフィンは、官能化されていても官能化されていなくてもよい、または官能化された少なくとも1種および/または官能化されていない少なくとも1種の混合物であってもよい。
【0076】
難燃剤
前記難燃剤は、米国特許出願公開第2008/0274355号明細書に記載されるハロゲンフリー難燃剤、およびとりわけホスフィン酸の金属塩、ジホスフィン酸の金属塩、ホスフィン酸の少なくとも1種の金属塩を含有するポリマー、ジホスフィン酸の少なくとも1種の金属塩を含有するポリマーから選択される金属塩、または赤リン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、またはホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩、またはメラミンピロホスフェートおよびメラミンシアヌレートであり得る。これらはまた、臭化またはポリ臭化ポリスチレン、臭化ポリカーボネートまたは臭化フェノールなどのハロゲン化難燃剤であってもよい。
【0077】
添加剤
前記組成物はまた、添加剤を含んでもよい。
【0078】
添加剤は、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、核形成剤、可塑剤、着色剤、炭素系充填剤、特にカーボンブラックおよび炭素系ナノ充填剤から選択され得る。
【0079】
一実施形態では、前記組成物が、好ましくはグラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィブリル、またはこれらの混合物から選択される、炭素系充填剤、特にカーボンブラック、または炭素系ナノ充填剤をさらに含む。
【0080】
繊維材料について
前記繊維材料を構成する繊維に関して、これらはとりわけ鉱物、有機または植物起源の繊維である。
【0081】
有利には、前記繊維材料が、サイズ処理されていてもサイズ処理されていなくてもよい。
【0082】
したがって、前記繊維材料は、最大0.1重量%のサイズと呼ばれる有機性の材料(熱硬化性または熱可塑性樹脂タイプ)を含み得る。
【0083】
鉱物起源の繊維の中でも、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩または玄武岩系繊維、シリカ繊維または炭化ケイ素繊維を挙げることができる。有機起源の繊維の中でも、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維またはポリオレフィン繊維などの熱可塑性または熱硬化性ポリマーに基づく繊維を挙げることができる。好ましくは、これらは非晶質熱可塑性ポリマーをベースとし、事前含浸マトリックスが非晶質である場合、事前含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のガラス転移温度Tgより上、または事前含浸マトリックスが半結晶性である場合、事前含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のTmより上のTgを有する。有利には、これらは半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとし、事前含浸マトリックスが非晶質である場合、事前含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のTgより上、または事前含浸マトリックスが半結晶性である場合、事前含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物の溶融温度Tmより上のTmを有する。よって、最終的な複合材料の熱可塑性マトリックスによる含浸中に繊維材料を構成する有機繊維が溶融するリスクはない。植物起源の繊維の中でも、亜麻、麻、リグニン、竹、絹、とりわけスパイダーシルク、サイザル、および他のセルロース繊維、特にビスコース繊維に基づく天然繊維を挙げることができる。これらの植物起源の繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着および含浸を容易にする目的で、純粋なもの、処理されたもの、またはコーティング層でコーティングされたものを使用することができる。
【0084】
繊維材料はまた、繊維で編まれた、または織られた織物であってもよい。
【0085】
これはまた、支持糸を有する繊維に対応し得る。
【0086】
これらの構成要素繊維は、単独でまたは混合物として使用することができる。よって、熱可塑性ポリマー粉末を事前含浸させ、事前含浸繊維材料を形成するために、有機繊維を鉱物繊維と混合することができる。
【0087】
有機繊維のロービングは、いくつかの坪量を有し得る。さらに、これらはいくつかの幾何学を示すことができる。繊維材料の構成要素繊維はまた、様々な幾何学のこれらの補強繊維の混合物の形態であってもよい。繊維は連続繊維である。
【0088】
好ましくは、繊維材料が、炭素もしくはガラスの連続繊維、またはこれらの混合物、特に炭素繊維によって形成される。これは、ロービングまたはいくつかのロービングの形態で使用される。
【0089】
有利には、炭素繊維用の前記繊維材料中の繊維の数が3Kより大きいかまたはこれと等しい、特に6Kより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ12Kより大きいかまたはこれと等しく、特に12K、24K、48K、50Kおよび400K、とりわけ12K、24K、48Kおよび50Kから選択される、あるいはガラス繊維の坪量が1200texより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ2400texより大きいかまたはこれと等しい、または4800texより大きいかまたはこれと等しい。
【0090】
事前含浸繊維材料および含浸繊維材料について
別の態様によると、本発明は、上に定義される混合物を含む組成物を含浸させた繊維材料に関する。
【0091】
さらに別の態様によると、本発明は、上に定義される混合物を含む組成物を事前含浸させた繊維材料に関する。
【0092】
前記含浸繊維材料を調製する方法の様々な実施形態において以下に示されるように、前記含浸繊維材料は、前記繊維材料に上に定義される前記混合物を含む前記組成物を含浸させることによって、溶融経路によって、または前記繊維材料に粉末形態の上に定義される前記混合物を含む前記組成物を事前含浸させる前工程によって得ることができる。
【0093】
したがって、2つのタイプの繊維材料を区別する必要がある:
前記反応性プレポリマーの重合前に事前含浸させた繊維材料であって、粉末形態の前記混合物を含む前記組成物を事前含浸させている繊維材料、および溶融経路によって、したがって前記反応性プレポリマーの重合後に、前記混合物を含む前記組成物を含浸させた繊維材料。
【0094】
その場合、前記含浸繊維材料は、非反応性熱可塑性ポリマー、それ自体と重合した反応性熱可塑性プレポリマー、およびまた1種または複数の反応性プレポリマーと重合した非反応性熱可塑性ポリマーの混合物を含む。
【0095】
その場合、それ自体と重合したプレポリマーのMnは、いずれかの重合前のプレポリマーの初期Mnと比較して少なくとも20%、特に少なくとも50%、とりわけ少なくとも100%、さらに特に少なくとも200%大きい。
【0096】
前記含浸または事前含浸繊維材料は、3Kより大きいかまたはこれと等しい、特に6Kより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ12Kより大きいかまたはこれと等しく、特に12K、24K、48K、50Kおよび400K、とりわけ12K、24K、48Kおよび50Kから選択される炭素繊維用の前記繊維材料中の繊維の数、あるいは1200texより大きいかまたはこれと等しい、とりわけ2400texより大きいかまたはこれと等しい、または4800texより大きいかまたはこれと等しいガラス繊維の坪量を有する。
【0097】
有利には、前記含浸繊維材料が、含浸繊維材料の体積の少なくとも70%、とりわけ含浸繊維材料の体積の少なくとも80%、特に含浸繊維材料の体積の少なくとも90%、さらに特に含浸繊維材料の体積の少なくとも95%で一定である体積による繊維の含有量を有する。
【0098】
より有利には、前記含浸繊維材料が10%未満、とりわけ5%未満、特に2%未満の多孔度を有する。
【0099】
一実施形態では、前記含浸繊維材料が単層含浸繊維材料である。
【0100】
別の実施形態では、前記含浸繊維材料が非可撓性である。
【0101】
さらに別の実施形態では、前記含浸繊維材料が非可撓性単層含浸繊維材料である。
【0102】
「単層」という用語は、繊維材料の含浸が行われる場合、含浸が特に均一な方法でコアに対して、特に含浸中に少なくとも1回の延展を用いて、行われ、前記繊維材料およびポリマーが互いに分離不可能であり、繊維およびポリマー混合物に基づく単一層からなる材料を形成することを意味する。
【0103】
換言すれば、「単層」という用語は、体積による繊維の含有量および繊維の分布が、前記繊維材料の全長にわたって繊維材料の正中面の両側で平均して実質的に同一であることを意味する。
【0104】
「実質的に」という用語は、体積による繊維の含有量および繊維分布が、前記繊維材料の全長にわたって繊維材料の正中面の両側で平均して少なくとも70%、とりわけ少なくとも80%、特に少なくとも90%、さらに特に少なくとも95%同一であることを意味する。
【0105】
方法について
別の態様によると、本発明は、上に定義される含浸繊維材料、または上に定義される事前含浸繊維材料を調製する方法であって、前記繊維材料に上に定義される混合物を含む組成物を事前含浸させる工程または含浸させる工程を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0106】
本方法の第1の変形例では、前記含浸工程が、溶融経路によって、とりわけ高速で、特に溶融経路について少なくとも0.3~10m/分、特に少なくとも2m/分の速度で行われる。
【0107】
有利には、前記方法が以下の工程:
i)溶融ポリマーの溶融経路によって、とりわけ引抜によって、クロスヘッド押出によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を含浸させて、含浸繊維材料を得る工程と、
ii)場合により、前記含浸繊維材料を成形および較正して、0.05~5mmの厚さ、好ましくは0.15~1.3mmの厚さを有する薄いストリップの形態のリボンからなる含浸繊維材料を得る工程と
を含む。
【0108】
一実施形態では、含浸中の少なくとも1回の延展が、とりわけ含浸システムの上流または含浸システム内の少なくとも1つの張力装置のレベルで行われる。
【0109】
方法の第2の変形例では、繊維が含浸システムの上流のオーブンによって、好ましくはIRによって加熱される。
【0110】
方法の第3の変形例では、前記方法が、前記繊維材料に粉末形態の前記混合物を含む組成物を事前含浸させる工程を含む。
【0111】
有利には、前記事前含浸が、流動床、ガン噴霧、とりわけ高速での前記非反応性熱可塑性ポリマーの粉末の水性分散体または前記熱可塑性ポリマーの粒子の水性分散体または前記非反応性熱可塑性ポリマーの水性エマルジョンもしくは懸濁液を通した繊維の連続通過から選択されるシステムを用いて行われる。
【0112】
この事前含浸プロセスは、流動床については国際公開第2018/115736号パンフレット、水性分散体については国際公開第2018/115737号パンフレット、および国際公開第2018/115739号パンフレットに記載されているように行うことができる。
【0113】
一実施形態では、事前含浸中の少なくとも1回の延展が、とりわけ含浸システムの上流または含浸システム内の少なくとも1つの張力装置(E’)のレベルで行われる。
【0114】
よって、含浸工程は、特にポリマーマトリックスのクロスヘッド押出、およびこのクロスヘッドを通した前記1つまたは複数のロービングの通過、および次いで加熱されたダイを通した通過によって行われ、クロスヘッドにはロービングが走行する固定または回転張力装置(E’)が提供されており、よって、前記繊維材料(「ロービング」とも呼ばれる)の延展を引き起こし、前記ロービングの事前含浸を可能にする。
【0115】
張力装置(E’)は、ロービングがタンクを通り抜ける可能性を有する任意のシステムを意味すると理解される。張力装置(E’)は、ロービングが上を走行することができる限り、任意の形状を有することができる。
【0116】
有利には、これが円筒形である。
【0117】
この第2の変形例の一実施形態では、前記方法が前記事前含浸繊維材料の非引張加熱の少なくとも1つの工程を含む。
【0118】
この第2の変形例の別の実施形態では、前記方法が、少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱の少なくとも1つの工程を含み、前記1つまたは複数のロービングが、前記少なくとも1つの張力装置(E)の表面の一部または全部と接触し、加熱システムの近くで、加熱システムで、または加熱システムの後で、前記少なくとも1つの張力装置(E)の表面上を部分的または完全に走行する。
【0119】
この第2の変形例のこの他の実施形態の前記方法は、加熱システムに関する張力装置のある特定の位置を除いて、国際公開第2018/234439号パンフレットまたは国際公開第2018/234434号パンフレットに記載されるように行われ得る。
【0120】
実際、張力装置(一又は複数)(E)は、加熱システムの環境内にある、すなわち加熱システムの外側にないか、または全て加熱システムの後に位置するかもしくは含まれ、したがって1cm~100cmの距離で加熱システムの外側にある。
【0121】
後者の場合、繊維材料を事前含浸させた前記ポリマーは、そのTgより高いかまたはこれと等しい温度である。
【0122】
複数の張力装置が使用される場合、張力装置は5~15cm離れている。
【0123】
1つまたは複数の張力装置(E)が、加熱システムの近くにおよび加熱システムにおよび加熱システムの後に、または加熱システムの近くにおよび加熱システムに、または加熱システムの近くにおよび加熱システムの後に、または加熱システムにおよび加熱システムの後に位置する場合、本発明の範囲からの逸脱を構成しないことは極めて自明である。
【0124】
引張装置(E)は、(E’)について記載される通りである。しかし、(E)と(E’)は同一であっても異なっていてもよい。
【0125】
繊維材料の延展は、前記張力装置(一又は複数)(E)上でのその部分的または全体的な走行中に行われる。
【0126】
これには、ロービングが加熱システムを通過する間、前記張力装置(一又は複数)(E)上で部分的または全体的に走行する前に、前記ロービング上のポリマーの溶融によるロービングの収縮が先行する。
【0127】
加熱システムによる前記混合物を含む前記組成物の溶融と組み合わされ、ロービングの収縮と組み合わされたこの延展は、事前含浸を均一にし、含浸を完了させ、よって、コア含浸を有し、特に繊維材料の体積の少なくとも70%、とりわけ繊維材料の体積の少なくとも80%、特に繊維材料の体積の少なくとも90%、さらに特に繊維材料の体積の少なくとも95%で一定である体積による繊維の高い含有量を有し、また多孔度を減少させることを可能にする。
【0128】
有利には、加熱工程中の延展の割合がおよそ0%~300%、特に0%~50%である。
【0129】
熱可塑性ポリマーの溶融および前記加熱工程中のロービングの収縮と組み合わされた加熱工程中の延展の様々な例は、45体積%~64体積%、好ましくは50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%の加熱工程後に含浸された繊維の含有量を得ることを可能にし、体積による繊維の含有量および繊維の分布は、前記繊維材料の全長にわたって繊維材料の正中面の両側で平均して実質的に同一であり、よって、特に単層の繊維材料を得ることをもたらす。
【0130】
繊維の45%未満では、補強材が機械特性に関して重要ではない。
【0131】
65%を超えると、プロセスの限界に達し、機械特性が再び失われる。
【0132】
有利には、加熱システムが、赤外線ランプ、UVランプ、対流加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱および高周波(HF)加熱から選択される。
【0133】
一実施形態では、上に定義される前記方法が以下の工程:
i)少なくとも1つの張力装置(E’)を備えていても備えていなくてもよいタンク内の流動床によって、少なくとも1つの張力装置(E’)を備えていても備えていなくてもよいタンク内の乾式経路によるノズルまたはガン噴霧によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を事前含浸させて、事前含浸繊維材料を得る工程と、
ii)前記事前含浸繊維材料を非引張加熱して、溶融ポリマー(一又は複数)およびプレポリマー(一又は複数)の前記混合物を事前含浸させた繊維材料を得る工程と、
iii)請求項23または24に定義される、少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱をして、含浸繊維材料を得る工程と、
iv)場合により、前記含浸繊維材料のロービングまたは前記平行ロービングを成形および較正して、薄いストリップの形態のリボンからなる含浸繊維材料を得る工程と
を含む。
【0134】
別の実施形態では、上に定義される前記方法が以下の工程:
i)乾燥ポリマー粉末、ポリマー粉末の水性分散体またはポリマー粒子の水性分散体またはポリマーの水性エマルジョンもしくは懸濁液の流動床を通した繊維の連続通過によって、繊維材料に前記混合物を含む組成物を事前含浸させる工程と、
ii)前記事前含浸繊維材料を非引張加熱して、溶融ポリマー(一又は複数)およびプレポリマー(一又は複数)の前記混合物を含浸させた繊維材料を得る工程と、
iii)場合により、少なくとも1つの張力装置(E)および少なくとも1つの加熱システムによって行われる加熱をして、含浸繊維材料を得る工程と、
iv)場合により、前記含浸繊維材料のロービングまたは前記平行ロービングを成形および較正して、薄いストリップの形態のリボンからなる、ポリマー(一又は複数)および部分または完全重合プレポリマー(一又は複数)の前記混合物を含浸させた繊維材料を得る工程と
を含む。
【0135】
一実施形態では、1つまたは複数の張力装置(E’’)が、上に定義される前記方法の含浸または事前含浸工程の上流に存在する。
【0136】
別の実施形態では、上に定義される前記方法が、5~30m/分の間の速度で乾燥粉末経路について、および少なくとも5m/分の速度で水性分散体について行われる。
【0137】
別の態様によると、本発明は、ロボットを使用した前記リボンの自動レイアップによる三次元複合部品の製造に適したリボンを調製するための、上に定義される含浸繊維材料の使用に関する。
【0138】
さらに別の態様によると、本発明は、熱成形性シートを調製するための、上に定義される含浸繊維材料の使用に関する。
【0139】
有利には、含浸繊維材料が、小片に事前切断され、前記小片が、熱成形性シートを調製するためにランダムに会合されるかまたは配向される。
【実施例
【0140】
実施例1:BACT/10Tの合成
以下の手順は、調製方法の一例であり、限定するものではない。これは本発明による全ての組成物を代表するものである:
5kgの以下の出発物質を14リットルのオートクレーブ反応器に導入する:
-500gの水、
-ジアミン、
-アミノ酸(場合により)、
-テレフタル酸および場合により1種または複数の他の二酸、
-35gの次亜リン酸ナトリウム溶液、
-0.1gのWacker AK1000消泡剤(Wacker Silicones)。
【0141】
閉じた反応器から残留酸素をパージし、次いで、材料の280℃の温度まで加熱する。これらの条件下で30分間撹拌した後、反応器内で形成された加圧蒸気を、大気圧でTm+10℃になるように材料温度を徐々に上昇させながら、60分間にわたって徐々に減圧させる。
【0142】
プレポリマーを得るためには、圧力降下をおよそ15バールで停止するか、またはポリマーの成長を停止するようにポリマーを大幅に制限しなければならない。
【0143】
その後、ポリマーまたはオリゴマー(プレポリマー)を底部バルブを介して空にし、次いで、水槽で冷却し、次いで粉砕する。
【0144】
実施例2:非反応性ポリマーまたは反応性プレポリマーまたは2種の混合物の粉末による繊維材料(炭素繊維)の含浸
繊維材料(1/4インチ Toray、12K T700S 31E炭素繊維)を流動床に事前含浸させ、次いで、
非反応性ポリマー(20000g/molのMnに対応する、Tg=150℃および溶液粘度1.2(Schott型538-23 IICマイクロウベローデ管を使用して、ISO 307:2019に従って、20℃でm-クレゾール中で測定)のRilsan(登録商標)Clear G850 Rnew(登録商標)(Arkema)またはMn=20000g/molおよびTg=160℃のBACT/10T(重量により51.9/48.1)またはXenoy(商標)(PC/PBT SABIC)(1103もしくはHX5600HP));または
Mn=6300g/molおよびTg=160℃の反応性プレポリマーBACT/10T(重量により51.9/48.1);または
20000g/molのMnに対応する非反応性ポリマー(Tg=150℃および溶液粘度1.2(Schott型538-23 IICマイクロウベローデ管を使用して、ISO 307:2019に従って、20℃でm-クレゾール中で測定)のRilsan(登録商標)Clear G850 Rnew(登録商標)(Arkema)とMn=6300g/molおよびTg=160℃の反応性プレポリマーBACT/10T(重量により51.9/48.1)の60/40混合物
の粉末を国際公開第2018/234439号パンフレットに記載される加熱によって含浸させた。
【0145】
実施例3:非晶質または半結晶性ポリマーおよびプレポリマーおよびこれらの混合物の様々な組成物の粘度および延性の比較
粘度は1Hzおよび2%歪み下、300℃の温度でプレート-プレートレオロジーで測定し、延性はISO 527-1/2:2012に従って測定される23℃の温度での破断伸びによって決定する。
【0146】
INSTRON(登録商標)5966型機を使用する。クロスヘッド速度は5mm/分である。試験条件は23℃、乾燥であり、ISO 527 1A幾何学の試料は23℃、50%RHで2週間事前に調整されている。歪みは接触式伸び計によって測定される。
【0147】
結果を表1に示す。
[表1]
【0148】
結果:
I1:非晶質非反応性ポリマーG850と半結晶性反応性プレポリマーBACT/10Tの重量により60/40の混合物(質量6300g/mol)は、BACT/10Tプレポリマーのin situ重合前には純粋なG850よりも流動性が高く、混合物は純粋なG850と同様にin situ重合後に延性である。
【0149】
I2:非晶質非反応性ポリマーG850と半結晶性反応性プレポリマーBACT/10Tの重量により20/80の混合物(質量6300g/mol)は、BACT/10Tプレポリマーのin situ重合前には純粋なG850よりも流動性が高く(100Pa.s)、最大で15000g/molのBACT/10Tプレポリマーのin situ重合後に純粋なBACT/10T(Mn 20000g/mol)よりも延性である。
【0150】
I3:非晶質PCポリマーとPBTプレポリマー(プレポリマー質量5000g/mol)の重量により40/60の混合物は、重合前は市販のPC/PBT混合物より流動性が高く、PBTの重合後は、混合物は市販品と同様に延性であり、市販品に匹敵する220℃のTmを有する。
【0151】
実施例4:画像解析による多孔度の決定
多孔度は、上流の張力装置を備えた流動床にMPMDT/10Tを含浸させ、引き続いて上に定義される加熱工程を行った1/4インチの炭素繊維ロービングの画像解析によって決定した。
【0152】
これは5%未満である。
【0153】
実施例5:多孔度の決定-理論密度と実験密度との間の相対偏差(一般的方法)
a)必要なデータは以下である:
-熱可塑性マトリックスの密度
-繊維の密度
-補強材の坪量:
例えば1/4インチテープ(単一ロービングに由来する)の線密度(g/m)
例えば幅の広いテープまたは織布の表面密度(g/m
【0154】
b)実施される測定値:
試料の数は、結果が試験した材料を表すように少なくとも30でなければならない。
【0155】
実施される測定値は以下である:
-採取した試料のサイズ:
長さ(線密度が既知の場合)。
長さおよび幅(表面密度が既知である場合)。
【0156】
-採取した試料の実験密度:
空気中および水中の質量の測定値。
【0157】
-繊維の含有量の測定値は、ISO 1172:1999に従って、または例えば文献B.Benzler、Applikationslabor、Mettler Toledo、Giesen、UserCom 1/2001で決定されるように熱重量分析(TGA)によって決定される。
【0158】
炭素繊維の含有量の測定値は、ISO 14127:2008に従って決定され得る。
【0159】
繊維の理論重量含有量の決定:
a)繊維の理論重量含有量の決定:
[数1]
(式中、
はテープの線密度であり、
Lは試料の長さであり、
Meairは空気中で測定された試料の質量である)。
【0160】
繊維の重量含有量の変動は、補強材中の繊維の量の変動を考慮することなく、マトリックスの含有量の変動に直接関連すると考えられる。
【0161】
b)理論密度の決定:
[数2]
(式中、dおよびdはマトリックスおよび繊維のそれぞれの密度である)。
【0162】
このようにして計算された理論密度は、試料に多孔性がない場合に利用可能な密度である。
【0163】
c)多孔度の評価:
したがって、多孔度は、理論密度と実験密度との間の相対偏差である。
【国際調査報告】