(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】針シールド取り外し部が組み込まれた注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A61M5/32 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550181
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021054546
(87)【国際公開番号】W WO2021170647
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ベク, ウィレム
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066FF05
4C066NN01
(57)【要約】
ハウジング(10)と、針シールド(5)で覆われた注射針(4)を有するシリンジ(2)と、キャップ組立品(3)と、を備える注射装置(1)であって、キャップ組立品(3)が、シリンジの遠位端を覆うキャップ本体(15)と、針シールド(5)と係合するように適合されたシールド取り外し部(9)と、を備え、シールド取り外し部(9)が、キャップ本体(15)に対して軸方向に固定されている、注射装置(1)。キャップ組立品(3)は、キャップ本体(15)に対して回転方向および軸方向に移動できる上昇部材(12)であって、上昇部材(12)が、ハウジング(10)に対して上昇部材(12)が回転するのを防止するように構成された第1の回転防止幾何学的形状(18、28、31)を備える、上昇部材(12)と、上昇部材(12)およびキャップ本体(15)の上にそれぞれ配置された係合カム表面を有するカム境界面(20)と、をさらに備え、カム表面は、キャップ本体(15)の回転時に、ハウジング(10)に対して摺動式に係合し、それにより、上昇部材(12)の近位に面する表面(17)を、ハウジング(10)に対して固定して配置された遠位に面する表面(16)に対して軸方向に押し込む一方、キャップ本体(15)、シールド取り外し部(9)、および針シールド(5)をハウジング(10)に対して遠位に移動させるように構成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジから薬剤を排出するための注射装置(1)であって、前記注射装置が、
-対象ユーザーによって把持されるように形成されたハウジング(10)であって、前記ハウジングが、中央長手方向軸に沿って延在し、遠位針端および反対側の近位端を規定する、ハウジング(10)と、
-シリンジ保定手段(11)と、
-前記シリンジ保定手段(11)に対して装着されたバレル(7)、注射針(4)、および前記注射針の上に配設された針シールド(5)を備える、シリンジ(2)と、
-前記シリンジの遠位端を覆うキャップ本体(15)、および前記針シールド(5)と係合するように適合されたシールド取り外し部(9)を備えるキャップ組立品(3)であって、前記シールド取り外し部(9)が、前記キャップ本体(15)に対して軸方向に固定されている、キャップ組立品(3)と、を備え、
前記注射装置(1)が、
-前記ハウジング(10)に対して軸方向に固定して配設された遠位に面する表面(16)と、
-前記ハウジング(10)に対して前記キャップ本体(15)が回転すると、前記針シールド(5)を前記注射針(4)から軸方向に分離するように適合されたカム境界面(20)を備えるシールド取り外し機構と、を規定し、
前記キャップ組立品(3)が、前記キャップ本体(15)に対して回転方向および軸方向に移動できる上昇部材(12)をさらに備え、前記上昇部材(12)が、前記遠位に面する表面(16)と係合するように構成された近位に面する表面(17)を備え、前記上昇部材(12)が、前記ハウジング(10)に対して前記上昇部材(12)が回転するのを防止するように構成された第1の回転防止幾何学的形状(18、28、31)を備え、
前記カム境界面(20)が、前記上昇部材(12)および前記キャップ本体(15)の上にそれぞれ配置された係合カム表面を備え、前記カム表面が、前記キャップ本体(15)の回転時に、前記ハウジング(10)に対して摺動式に係合し、それにより、前記上昇部材(12)の前記近位に面する表面(17)を前記遠位に面する表面(16)に対して軸方向に押し込む一方、前記キャップ本体(15)、前記シールド取り外し部(9)、および前記針シールド(5)を前記ハウジング(10)に対して遠位に移動させるように構成されていることを特徴とする、注射装置(1)。
【請求項2】
前記注射装置(1)が、第2の回転防止幾何学的形状(19、29、32、33)を備え、前記第2の回転防止幾何学的形状(19、29、32、33)が、前記上昇部材(12)の前記第1の回転防止幾何学的形状(18、28、31)に係合するように構成されており、かつ前記キャップ本体(15)が前記ハウジング(10)に対して回転するときに、前記上昇部材(12)が前記ハウジング(10)に対して回転するのを防止するように構成されている、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
針シュラウド(6)をさらに備え、前記針シュラウド(6)が、前記ハウジング(10)に対して伸縮自在に移動できるが、前記ハウジングに対して回転方向に移動することが防止されており、前記針シュラウド(6)が、前記第2の回転防止幾何学的形状(19、29)を備える、請求項2に記載の注射装置。
【請求項4】
前記ハウジング(10)、または前記ハウジングに固定して取り付けられた構成要素が、前記第2の回転防止幾何学的形状(19、29)を備える、請求項2に記載の注射装置。
【請求項5】
前記上昇部材(12)の前記第1の回転防止幾何学的形状が、1つ以上の軸方向に延在するレッジ(18、31)を備え、各々が、前記第2の回転防止幾何学的形状(19、32、33)のそれぞれの軸方向に延在するレッジに対して回転方向に係止される、請求項3または4に記載の注射装置。
【請求項6】
-前記第2の回転防止幾何学的形状(19、33)が、半径方向外方に面する表面上に形成されており、前記上昇部材(12)の半径方向内方に面する表面上に配設された前記第1の回転防止幾何学的形状(18)と協働するか、または
-前記第2の回転防止幾何学的形状(28)が、半径方向内方に面する表面上に形成されており、前記上昇部材(12)の半径方向外方に面する表面上に配設された前記第1の回転防止幾何学的形状(18)と協働するかのいずれかである、請求項2~5のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項7】
前記注射装置が、遠位に面するフランジを備え、前記遠位に面するフランジが、前記遠位に面するフランジに配設された少なくとも1つの凹部(19、29、32)または突出部によって提供された前記第2の回転防止幾何学的形状を備え、前記上昇部材(12)の前記第1の回転防止幾何学的形状(18、28、31)が、前記遠位に面するフランジにある前記少なくとも1つの凹部または突出部と係合して、前記上昇部材(12)とハウジング(10)との間の回転方向の係止を提供する、請求項2~5のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項8】
前記上昇部材(12)が、前記キャップ本体(15)内に完全に含まれている、請求項1~7のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項9】
前記上昇部材の遠位部分が、前記キャップ本体(15)内に含まれており、前記上昇部材(12)の近位部分が、前記キャップ本体(15)から近位に延在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項10】
前記カム境界面(20)が、前記キャップ本体(15)と前記ハウジング(10)との間の回転終了ブロック位置を規定する、一対の協働する回転終了ブロッカー(21)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項11】
前記カム境界面(20)が、前記キャップ本体(15)と前記ハウジング(10)との間の回転開始ブロック位置を規定する、一対の協働する回転開始ブロッカー(22)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項12】
前記注射装置が、前記ハウジング(10)に対する前記キャップ本体(15)の回転を示す第1のインジケーター(23)と、前記キャップ本体(15)が前記ハウジング(10)に対して軸方向に引かれていることを示す第2のインジケーター(24)と、を備え、前記注射装置が、前記キャップ本体(15)の回転に応答して、前記第2のインジケーター(24)を見せるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項13】
前記キャップ組立品(3)が、前記キャップ本体(15)と前記上昇部材(12)との間に提供されたラチェット機構(25、26)をさらに備え、前記ラチェット機構が、前記ハウジング(10)に対する前記キャップ本体(15)の回転中に、前記上昇部材(12)に対する前記キャップ本体(15)の遠位移動に対する触覚フィードバックを提供するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項14】
前記上昇部材(12)の前記近位に面する表面(17)が、前記遠位に面する表面(16)と軸方向に係合するときに、前記遠位に面する表面は、前記上昇部材(12)が近位に移動することを防止する、請求項1~13のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項15】
前記シールド取り外し部(9)が、前記キャップ本体(15)に対して自由に回転できるように装着されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1回分以上の用量の液剤を注射するための注射装置に関する。特に、本発明は、注射針によって、保持された薬剤貯蔵部から1回分以上の用量の薬剤を注射するための注射装置、ならびに保管、取り扱い、および薬剤投与中の注射装置の安全性に関する改善に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の疾患に関して、患者は、一週間に一度、一日に一度、またはさらには一日に複数回など、定期的なベースで医薬を注射する必要がある。患者が針の恐怖を克服するのを助けるために、一部の注射装置には、用量投与の前または後のいずれかで注射針を覆うための、針シールドまたは針シュラウドが組み込まれている。かかる針シールドまたはシュラウドは通常、ユーザーの視界から注射針を隠し、かついくつかの形態では、個人が偶発的に注射針にアクセスするのを防止する機械的ブロックをさらに提供する。
【0003】
一部の注射装置には、予め充填されたシリンジ(PFS)が組み込まれており、注射針は通常、針シールドまたは「ブート」によって、使用前に密封された滅菌状態で維持されている。異なるタイプの針シールドが提案されており、これらのうちのいくつかは、針の上に嵌められ、シリンジのバレルのネック部分に対して取り付けられている、エラストマープラグを含む。シリンジバレルから針シールドを取り外すために必要な力は、かなり高い場合があり、特に器用さに障害のある人にとって、針シールドの取り外しを煩雑なプロセスにする。
【0004】
予め充填されたシリンジが、自動注射器のハウジングなどの注射装置ハウジングに組み込まれており、外部キャップが針シールドに連結されて、針シールドを取り扱うための工具として機能する状況であっても、取り外す力を克服するのは困難な場合がある。通常、針シールドは、シリンジバレルに対して軸方向に引き抜かれる。力は、部品の寸法および様々な状況下での材料特性の差により変動し得る。これらの問題を緩和するため、シールドタイプの注射装置が提案されており、これらのシールドタイプの注射装置は、針シールドの取り外しを容易にするために、キャップをひねって外すことができる上昇特徴を有する。1つの実施例が、EP2255842(A1)に開示されている。これらのシールドタイプの注射装置は、ハウジング上にある視認可能なかなり複雑な外見の技術的上昇特徴、およびキャップを回転させながら、キャップをハウジングに対して上昇させることができるキャップによって特徴付けられる。かかる視認可能な上昇特徴は、非技術的な、人間の外観を有するシールドタイプの注射装置を生産したいという潜在的な願望と矛盾する。関連する解決策が、外側キャップ内にねじ付きのシールドを引く構成要素を伴うWO2009/019440(A1)に開示されている。さらなる参照文献WO2017/029515(A1)は、注射装置であって、キャップに関連付けられた機構が、組み合わされたプライミングおよび針シールド解放機能を実施する、注射装置の開示を提供する。
【0005】
公知の上昇特徴は通常、針シールドの制限された軸方向の移動を提供するだけであり、それによって、満足のいく程度の針シールドの取り外しに達しないか、または完全な取り外しを可能にするためにキャップの広範な旋回を必要とする。上記の参照文献は、シリンジから針シールドを取り外すための取り外しプロセスを容易にすることを目的としたキャップ構成の開示を含むが、依然として、シリンジから針シールドを取り外すための改善された機能を有する注射装置に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP2255842(A1)
【特許文献2】WO2009/019440(A1)
【特許文献3】WO2017/029515(A1)
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、遮蔽されたシリンジのキャップを外すことが改善されていることを特徴とする注射装置を提供することである。
【0008】
本発明は、任意の上昇特徴がユーザーに対して隠されているので、シールドタイプの注射装置の外部を設計するための実質的な自由を提供する。本発明はまた、装置の審美的な外観を損なうことなく、隠された上昇特徴の機能を最適化するための自由を含む。さらに、本発明は、既存の部品の設計変更が制限され、かつ組み立てプロセスへの影響が制限されている、いくつかの既存のシールドタイプの注射装置に実装され得る。
【0009】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または例示的な実施形態の説明と同様に下記の開示から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0010】
第1の態様では、本発明は、シリンジから薬剤を排出するための注射装置であって、注射装置が、
-対象ユーザーによって把持されるように形成されたハウジングであって、ハウジングが、中央長手方向軸に沿って延在し、遠位針端および反対側の近位端を規定する、ハウジングと、
-シリンジ保定手段と、
-シリンジ保定手段に対して軸方向に保定されているバレル、注射針、および注射針の上に配設された針シールドを備えるシリンジと、
-シリンジの遠位端を覆うキャップ本体、および針シールドと係合するように適合されたシールド取り外し部を備え、シールド取り外し部が、キャップ本体に対して軸方向に固定されている、キャップ組立品と、を備える、注射装置に関する。
【0011】
注射装置は、ハウジングに対して軸方向に固定して配設された遠位に面する表面、およびシールド取り外し機構を規定し、シールド取り外し機構は、ハウジングに対してキャップ本体が回転すると、針シールドを注射針から軸方向に分離するように適合されたカム境界面を備える。キャップ組立品は、キャップ本体に対して回転方向および軸方向に移動できる上昇部材をさらに備え、上昇部材は、遠位に面する表面と係合するように構成された近位に面する表面を備え、上昇部材は、ハウジングに対して上昇部材が回転するのを防止するように構成された第1の回転防止幾何学的形状を備える。上記カム境界面は、上昇部材およびキャップ本体の上にそれぞれ配置された係合カム表面を備え、カム表面は、キャップ本体の回転時に、ハウジングに対して摺動式に係合し、それにより、上昇部材の近位に面する表面を遠位に面する表面に対して軸方向に押し込む一方、キャップ本体、シールド取り外し部、および針シールドをハウジングに対して遠位に移動させるように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、注射装置は、シリンジによって保持された1回分以上の用量の薬剤を排出するように構成された排出組立品をさらに備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、シリンジ保定手段が、ハウジングに対して近位に移動することが防止されている。他の実施形態では、シリンジ保定手段が、ハウジングに対して近位および遠位に移動することが防止されている。シリンジ保定手段は、シリンジのシリンジバレルを部分的または完全に収容するように形成され得、かつシリンジホルダーまたはシリンジ搬送部として提供され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、シリンジのバレルは、シリンジ保定手段に対して軸方向に固定されて装着されており、その結果、例えば、シリンジが、遠位に移動することが防止されており、かつ任意選択で、シリンジ保定手段に対して近位および遠位に移動することが防止されている。
【0015】
他の実施形態では、シリンジは、保管条件では、ハウジングに対して軸方向に固定された位置に保定されており、シリンジは、針がハウジングから突出していない第1の位置から、針が所定の距離だけハウジングから突出している第2の位置まで、ハウジングに対して軸方向に移動するように構成されている。かかる実施形態では、シリンジは、排出組立品の動作時など、用量投与の過程で、第1の位置から第2の位置まで移動するように構成され得る。
【0016】
さらなる実施形態では、ハウジング、またはハウジングに対して固定して装着された構成要素は、遠位に面する表面を形成する。
【0017】
注射装置は、保管状態から注射準備完了状態まで動作可能であるように構成され得、キャップ本体および上昇部材は、注射装置が保管状態をとるときに、それぞれの軸方向の保管位置をとり、キャップ本体および上昇部材が、キャップ本体および上昇部材の保管位置に対して近位に移動することが防止されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、注射装置は、上昇部材の第1の回転防止幾何学的形状と係合するよう構成されており、かつ注射針から針シールドを軸方向に分離するために必要な少なくとも回転移動の一部の間に、キャップ本体がハウジングに対して回転するときに、ハウジングに対して上昇部材が回転することを防止するように構成されている、第2の回転防止幾何学的形状を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、注射装置は、ハウジングに対して伸縮自在に移動できる針シュラウドをさらに備え得る。
【0020】
注射装置は、中空針および針シールドを取り囲むように構成された皮膚接触部材とともに形成され得、皮膚接触部材は、薬剤排出中にユーザーの皮膚に対して保持されるように構成されている。皮膚接触部材は、注射針と同軸に配設された管状の細長いセクションを備えるように形成することができ、管状の細長いセクションは、遠位リム部分を有する。いくつかの形態では、皮膚接触部材は、上記針シュラウドを形成または規定する。いくつかの変形例では、針シュラウドは、保持された注射針を、針シュラウドの中央の針開口部を通して突出させるように軸方向に移動できる。他の形態では、皮膚接触部材は、注射装置のハウジングの最も遠位の面を形成する。かかる変形例では、シリンジバレルは、保持された注射針を皮膚接触部材の中央の針開口部を通して突出させるように、ハウジングに対して軸方向に摺動可能である。
【0021】
針シュラウドを含む実施形態では、針シュラウドは、針シュラウドがハウジングに対して回転方向に移動することが防止されるように、ハウジングと協働し得、針シュラウドは、上記第2の回転防止幾何学的形状を備える。
【0022】
代替的な実施形態では、ハウジング、またはハウジングに固定して取り付けられた構成要素は、上記第2の回転防止幾何学的形状を備える。
【0023】
上昇部材の第1の回転防止幾何学的形状は、1つ以上の軸方向に延在するレッジを備えることができ、各々は、第2の回転防止幾何学的形状のそれぞれの軸方向に延在するレッジに対して回転方向に係止される。
【0024】
いくつかの変形例では、第2の回転防止幾何学的形状は、半径方向外方に面する表面上に形成されており、上昇部材の半径方向内方に面する表面上に配設された第1の回転防止幾何学的形状と協働する。他の変形例では、第2の回転防止幾何学的形状は、半径方向内方に面する表面上に形成されており、上昇部材の半径方向外方に面する表面上に配設された第1の回転防止幾何学的形状と協働する。さらに他の変形例では、第2の回転防止幾何学的形状は、遠位に面する表面上に形成されており、上昇部材の近位に面する表面上に配設された第1の回転防止幾何学的形状と協働する。かかる変形例は、遠位に面するフランジを備えることができ、遠位に面するフランジは、上記遠位に面するフランジに配設された少なくとも1つの凹部または突出部によって提供された上記第2の回転防止幾何学的形状を備え、上昇部材の第1の回転防止幾何学的形状は、上記遠位に面するフランジにある少なくとも1つの凹部または突出部と係合して、上昇部材とハウジングとの間の回転方向の係止を提供する。
【0025】
いくつかの変形例では、上昇部材は、シールド取り外し部とキャップ本体との間に同軸に配設されたスリーブ形状の部材として形成されている。針シュラウドを含む実施形態では、スリーブ形状の部材は、いくつかの実施形態において、針シュラウドとキャップ本体との間に同軸に配設され得る。
【0026】
特定の実施形態では、上昇部材は、注射装置が保管状態をとるときに、キャップ本体内に完全に含まれている。いくつかの実施形態では、キャップ本体が上昇部材に対して完全に回転したときに、上昇部材は依然として、キャップ本体内に完全に含まれている。他の実施形態では、上昇部材に対してキャップ本体が回転すると、上昇部材がキャップ本体から突出する場合がある。
【0027】
なおもさらなる実施形態では、上昇部材の遠位部分は、キャップ本体内に含まれており、上昇部材の近位部分は、注射装置が保管状態をとるときであっても、キャップ本体から近位に延在する。
【0028】
回転停止の制限を提供するために、キャップ本体、およびカム境界面などの上昇部材の幾何学的形状は、キャップ本体とハウジングとの間の回転終了ブロック位置を規定する、一対の協働する回転終了ブロッカーを備え得る。
【0029】
回転開始制限位置を提供するために、キャップ本体、およびカム境界面などの上昇部材の幾何学的形状は、キャップ本体とハウジングとの間の回転開始ブロック位置を規定する、一対の協働する回転開始ブロッカーを備え得る。
【0030】
注射装置の適切な使用をユーザーに指示するのを助けるために、装置は、ハウジングに対するキャップ本体の回転を示す第1のインジケーターを備えるように形成され得る。任意選択で、キャップ本体がハウジングに対して軸方向に引かれていることを示す第2のインジケーターが提供され得る。かかる実施形態では、注射装置は、キャップ本体の回転に応答して、上記第2のインジケーターを見せるように構成され得る。
【0031】
キャップ組立品は、なおもさらなる実施形態では、キャップ本体と上昇部材との間に提供された、クリック機構などのラチェット機構を備え、ラチェット機構は、ハウジングに対するキャップ本体の回転中に、上昇部材に対するキャップ本体の遠位移動の過程において触覚フィードバッククリックを提供するように構成されている。かかるラチェット機構は、一方向ラチェット機構として、または二方向ラチェット機構として構成され得る。
【0032】
上昇部材の近位に面する表面が、遠位に面する表面と軸方向に係合するときに、遠位に面する表面は、上昇部材が近位に移動することを防止する。このようにして、キャップ本体がハウジングに対して回転するときに、キャップ本体がハウジングに対して螺旋状の移動を実施することが保証される。
【0033】
キャップ組立品の一部の形態では、シールド取り外し部は、キャップ本体に対して自由に回転できるように装着されている。他の実施形態では、シールド取り外し部は、キャップ本体に対して固定して装着されているか、またはキャップ本体とともに単一の一元的な構成要素として形成されているかのいずれかである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができる任意の薬剤含有流動性医薬品または別個に保たれた複数の薬剤含有流動性医薬品の組み合わせを包含することを意味する。
【0035】
以下では、本発明を、図面を参照しながらさらに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】
図1aは、初期使用前の装置の保管中の、本発明による注射装置1の第1の実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の注射装置1の部分的に分解された斜視図を示しており、キャップ組立品3およびシリンジ2は、ハウジング10から分離されている。
【
図3】
図3は、
図1および
図2の注射装置1の斜視図であり、キャップ組立品3は、ハウジング10から分離されている。
【
図4】
図4は、
図2に対応する図であるが、キャップ組立品3およびシリンジは、分解されて示されている。
【
図5a-5c】
図5a、
図5b、および
図5cは、キャップを取り外す間の3つの状態における、第1の実施形態の注射装置1の斜視図を示す。
【
図7】
図7は、注射装置1の第1の実施形態のキャップ組立品の2つの異なる詳細な斜視断面図を示す。
【
図8】
図8は、
図1~
図7に示される注射装置1の、キャップ組立品3および前方部分の構成要素の部分的に切断された分解組立図を示す。
【
図9a】
図9aは、組み立てられた状態にある
図8の構成要素の部分的に切断された斜視図を示しており、構成要素は、保管状態で示されている。
【
図9b】
図9bは、
図9aに対応する図であるが、構成要素は、キャップを取り外す間の状態で示されている。
【
図11】
図11は、
図1~
図10に示される注射装置1の、キャップ組立品3および前方部分の構成要素のさらなる斜視分解組立図を示す。
【
図12a-12b】
図12aおよび
図12bは、本発明による注射装置の第2の実施形態の、キャップ組立品3および前方部分の構成要素の2つの斜視分解組立図を示す。
【
図13】
図13は、本発明による注射装置の第3の実施形態の、キャップ組立品3および前方部分の構成要素の斜視分解組立図である。
【
図14a】
図14aは、本発明による注射装置の第4の実施形態の、キャップ組立品3および前方部分の構成要素の斜視分解組立図である。
【
図14b-14d】
図14b、
図14c、および
図14dは、
図14aに示される第4の実施形態の注射装置の斜視図を示しており、装置は、キャップを取り外す間の3つの状態で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
対応する参照文字は、いくつかの図全体を通して対応する部品を示す。図面は本発明の実施形態を表すが、本発明をより良く図示し説明するために、図面は必ずしも縮尺に従っておらず、一部の図面では、ある特定の特徴が誇張または省略されている場合がある。
【0038】
本開示の文脈において、添付の図面における「遠位端」という用語は、通常注射針を搬送する注射装置の端を指すことを意味するのに対して、「近位端」という用語は、注射針から遠ざかる注射装置の反対の端を指すことを意味すると定義するのが便利であり得る。示される図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成だけでなく相対的寸法も、例示的な目的のみで機能することが意図される。
【0039】
図1は、針4および保護用針シールド5を備える予め充填されたシリンジ2を収容する、シールドタイプの注射装置1の第1の実施形態を示す。注射装置1は、保管状態で示されている。装置は、中央長手方向軸に沿って延在し、近位端および遠位端を有する、細長いハウジング10を備える。キャップ組立品3は、ハウジング10の遠位端に取り付けられる。
【0040】
図2は、シリンジ2およびキャップ組立品3がハウジング10から分離されて示されている図の中の注射装置1を示す。組立の異なるレベルで、
図3および
図4は、注射装置1の部分組立品および構成要素のさらなる図を提供する。
【0041】
図2および
図4は、業界で幅広く使用されている標準的な予め充填されたシリンジ(PFS)を示す。シリンジ2は、遠位に位置するネック部分8を有する管状バレル7を備え、ネック部分は、バレル7の直径と比較して減少した直径を有する。注射針7がネック部分8に装着され、剛直な針シールド(RNS)5の形態で提供されている取り外し可能なキャップがネック8に取り付けられ、その結果、針シールド5が、針4を密封可能に、かつ滅菌した状態で密封する。バレル7の内部には、摺動可能に配設されたピストン14が配設されている。薬剤が、ピストン14と針4との間のバレル内に収容され得る。示されるシリンジは単一のピストン14のみを組み込んでいるが、その他の構成は、投与前に再構成される薬剤を含めた1つ以上の薬剤の収容および排出のために複数のピストンを組み込み得る。
図2に描かれるシリンジ2は、バレルの壁から半径方向に延在する、近位に配設されたフィンガーフランジをさらに含む。示されるシリンジの場合、シリンジのバレル7と針4を覆う針シールド5との間に円周方向の隙間が存在する。
【0042】
示される実施形態では、注射装置1のシリンジ保定特徴11(
図6a~
図6cにのみ示される)は、ハウジング10内に収容されたときにシリンジ2を固定して保定するように構成されている。ハウジング10内に収容されたばね駆動式排出機構(図示せず)などの排出機構は、装着されたシリンジのピストンを遠位に押すように構成されており、一方、シリンジ保定機構11は、シリンジバレルが遠位に移動するのを防止する。簡略化のために、排出機構は、さらに考察されることはないが、手動排出機構、またはばね駆動式もしくは電気駆動式排出機構などの自動排出機構のいずれかとして構成され得る。また、シリンジ保定機構は、本開示内ではさらに考察されることはないが、ハウジング10の一部として、またはハウジングに対して装着された別個のシリンジホルダーとして構成され得る。WO2019/081578(A1)およびWO2013/089620(A1)に開示されるものなど、異なる例示的なシリンジホルダーの原理が用いられ得る。ハウジング10または別個のシリンジホルダーは、シリンジバレルの遠位端に配設された、減少した直径のネック部品と協働すること、および/またはシリンジバレルの近位端に配設されたフランジと協働することによって、遠位移動に対してシリンジ2を保定し得る。さらなる実施形態では、シリンジ保定特徴は、シリンジ搬送部に対する遠位移動に対してシリンジを保定するシリンジ搬送部の一部として提供され得、シリンジ搬送部は、WO2009/019440(A1)に開示されるように、ハウジングに対して軸方向に移動できるように装着されている。
【0043】
示される実施形態では、針シュラウド6は、注射前および注射後に針4を覆う。注射装置の保管状態および用量投与後では、キャップ組立品3は、針4および針シュラウド6を覆う。上述のように、示される実施形態では、針4は、保護用針シールドおよび予め充填されたシリンジ2のシリンジバレル7部品が接続されているエリア内で、細菌がシリンジバレル7と保護用針シールド5との間を通過することから保護するように、予め充填されたシリンジ2のシリンジバレル7のネック部分8の周りにぴったりと嵌められた、剛直な針シールド(RNS)などの保護用針シールド5によって覆われている。
【0044】
キャップ組立品3は、ユーザーの指によって把持されるように形状決めされ、かつ針シールド5および針シュラウド6の上に嵌められるようにサイズ設定されている、キャップ本体15を備える。キャップ組立品3は、ユーザーが開始した用量投与の際に、キャップ組立品3を注射装置1から取り外すことによって、保護用針シールド5がシリンジバレル7から取り外され、それに伴って、針4がむき出しになったままになる様式で保護用針シールド5を把持する、シールド取り外し部9をさらに特徴とする。キャップ本体15が回転することを可能にするために、シールド取り外し部9は、キャップ本体15内で自由に回転できるが、キャップ本体15とシールド取り外し部9との間の軸方向の移動が妨げられるような様式で装着されている。したがって、シールド取り外し部が針シールド5に連結されるときに、ハウジング10に対するキャップ本体15の軸方向の移動が、シリンジ2のバレル7に対する針シールド5の軸方向の移動をもたらすことになる。
【0045】
本発明の最も広い態様に関連して必須ではないが、示される例示的な注射装置1は、針4を、針が視界から概ね覆い隠される様式で保護する、針シュラウド6を含む。針シュラウド6は、ハウジング10内に伸縮自在に装着されており、その結果、初期保管状態では、針シュラウド6の遠位部分がハウジング10から延在する。
図10を参照すると、針シュラウド6およびハウジング10は、スプライン特徴6a、10aを含み、その結果、針シュラウド6は、ハウジングに対して軸方向に移動できるが、回転することは防止されている。針シュラウド6は、針4が覆われて隠されている延在位置から、針が針シュラウドの遠位端面から所定の距離だけ延在するように針4が露出している折り畳まれた位置へと、ハウジング10に対して軸方向に移動できる。示される実施形態では、針シュラウド6は、針シュラウドが延在位置から折り畳まれた位置へ、かつさらに再び延在位置に移動できるように、ハウジングに対して可逆的に移動できる。
【0046】
使用時に、針シュラウド6を本体に対して押して、注射を可能にする、例えば、注射をトリガする。針シュラウドのばね13により、針シュラウド6を本体に対して押す圧力が軽減されたときに、針4が再び覆われる延在位置に戻るように針シュラウド6を押し込むことができる。
【0047】
キャップ本体15およびシールド取り外し部9に加えて、キャップ組立品3は、ハウジング10に対してキャップ本体15をひねって外すときに、保護用針シース5からキャップ組立品3をひねって外し、針4を引き抜くことができる、上昇部材12を備える。シールド取り外し部9は、キャップ本体がひねって外されると、シールド取り外し部9を、針シュラウド6、シリンジバレル7、およびハウジング10に対して静止回転位置にとどめることができる一方で、キャップ本体15がキャップ本体15の回転位置および軸方向位置を変化させる様式で、キャップ本体15に永久的に取り付けられた別個の部品として例示されている。シールド取り外し部9は、キャップ本体がひねって外されると、キャップ本体15と同じ軸方向位置にとどまる。したがって、シールド取り外し部9は、回転移動のみを可能にするようにキャップ本体15に取り付けられたキャップ組立品3の別個の部品である。回転方向に取り付けられたシールド取り外し部9の目的は、キャップ本体15をひねったときに、保護用針シース5を、針4およびシリンジバレルのネック8から軸方向に取り外すことを可能にすることである。示される実施形態では、上昇部材12は、シールド取り外し部9とキャップ本体15との間に同軸に配設されたスリーブ形状の部材として、すなわち、上昇部材がキャップ本体15内に完全に収容される様式で、形成されている。示される実施形態では、図では識別できないが、上昇部材12は、キャップ本体内に、軸方向の両端間で軸方向に摺動可能に装着されている。
図4を参照すると、上昇部材12の近位リムは、ハウジング10の遠位に面するリム部分として提供されている遠位に面する表面16と係合するように構成された近位に面する表面17を形成する。
【0048】
カム境界面20が、キャップ本体15と上昇部材12との間に配設されている。カム境界面は、示される実施形態では、キャップ本体15および上昇部材12の上にそれぞれ配置された螺旋状のカム表面として提供されている、上昇トラックとして形成されている。カム境界面20は、ユーザーによってキャップ本体15が旋回する過程で、キャップ本体15が遠位方向に上昇することを可能にする。上昇部材12が、上昇部材12の内側にある隆起部18によって針シュラウド6に回転方向に係止され、針シュラウド6の外表面にある陥凹19内に嵌められるとき、螺旋状のカム表面は、ハウジング10に対してキャップ本体15がひねられ、かつ結果として、上昇部材12がキャップ本体15に対して近位に押し込まれるにつれて、互いに摺動式に係合するように押し込まれる。上昇部材12上の近位に面する表面17が、ハウジング10の遠位に面するリム部分に向かって押圧されると、キャップ本体15は、ハウジング10およびシリンジ7に対して遠位方向において軸方向に押し込まれる。結果として、シールド取り外し部9および針シールド5は、シリンジ2のバレルのネック部分8から軸方向に切り離される。
【0049】
隆起部18および陥凹19は、上昇部材12を含むキャップ組立品3を、組立品中に針シュラウド6に軸方向に相互接続すること、およびまた、キャップ本体15を十分に回転させた後、またはキャップ組立品3をひねって外す代わりに、キャップ組立品3を引き抜くことをユーザーが望む場合に随時、上昇部材12を含むキャップ組立品3を軸方向に引くことによって注射装置1の残りの部分から完全に取り外すことを可能にする様式で形成されている。示される第1の実施形態では、ハウジングに対してキャップ本体15をひねったときに上昇部材12が回転方向に係止される前提条件が、針シュラウド6がハウジング10に回転方向に係止されるという事実である。
【0050】
ここで、キャップを取り外す間の3つの連続した状態にある、注射装置およびキャップ組立品を示す
図5a~
図5cへの参照を行う。付随する断面図を
図6a~
図6cに示す。キャップ組立品3を取り外す間、一方の手で注射装置のハウジング10を保持し、もう一方の手の指の間にキャップ組立品3を保持する場合、キャップ組立品の取り外しは、ハウジングに対してキャップ本体15をひねることによって行われることが意図される。示される実施形態の場合、上昇部材12は、針シュラウド6に対して回転方向に係止され、かつさらにハウジング10に対して回転方向に係止される。針シュラウド6をハウジング10に対して回転方向に係止する一般的な方法は、
図10に示されるように、針シュラウド6およびハウジング10の内表面にそれぞれある、トラックおよびスロットである(逆もまた同様)。キャップ組立品3をひねるときに力を均等に分配するために、キャップ本体15および上昇部材12は、回転方向に180度離れて、すなわち、対称的な様式で位置付けられた二組の上昇トラック20によって、互いに離れる方向に押し込まれる。キャップ本体15および上昇部材12内の上昇トラック20は、針4およびシリンジバレルのネック8から保護用針シース5を移動させるために必要な力を克服するように最適化された上昇幾何学的形状で形成されている。キャップ組立品3は、一方向にひねられる。したがって、二組の上昇トラック20を、部品を製造するための単純な工具類を考慮に入れ、かつ保護用針シース5を取り外す力を克服するための可能な限り最良のギア類には、上昇トラック20の長さと上昇勾配との間の良好なバランスが必要であることを考慮に入れ、必要に応じて長くすることができる。
【0051】
キャップ組立品3が十分に回転しているということ、およびキャップ組立品3をハウジング10から単に引き離すことによってキャップ組立品3が取り外されるタイミングであるということの触覚フィードバックをユーザーに提供するために、カム境界面は、回転終了ブロッカーを含み得、回転終了ブロッカーは、示される実施形態では、協働する、軸方向に延在するレッジ21として形成されている(
図9bを参照)。キャップ組立品3が、ひねる行為の開始時に一方向にのみひねられることを可能にするために、カム境界面20は、さらに回転開始ブロッカーを備えて提供されることになり、回転開始ブロッカーは、示される実施形態では、協働する、軸方向に延在するレッジ22として形成されている(
図9aを参照)。
【0052】
さらに、キャップ組立品3およびハウジング10は、キャップ組立品3を取り外すために行われる工程にユーザーを誘導するための視覚的指標特徴を示すことができる。キャップ本体15の前方の上、またはキャップ本体15の前方および後方の両方の上にある回転矢印23が、キャップ組立品3をどのように回転させるかをユーザーに告げる。第1の実施形態に示されるように、引く矢印24が、ハウジング10の半径方向外表面上に配設され得る。キャップ本体15が、キャップ本体の軸方向の移動を伴ってキャップ本体15の端の位置まで回転すると、初期ではキャップ本体15によって見えなくされている、ハウジング10上の引く矢印24が現れ、回転矢印23のより長い水平方向の線部分の端と整列する。これは、キャップ組立品3を注射装置1の残りの部分から引き離すことによって、キャップ組立品3を完全に取り外すタイミングであるという、ユーザーに対する指標である。上昇部材12を常に、明確に規定された様式で、キャップ組立品3の下に位置付けることができるように、キャップ本体15の内側上には支持リブ25が形成されており、上昇部材12を定位置に保持するように、対応する上昇部材の上部リム26が形成されている。キャップ組立品3が回転すると、上昇部材の上部リム26が支持リブ25の上を摺動することになるため、支持リブ25は、ユーザーに触覚フィードバックを与え、2つの要素が互いに対して移動しているという視認不可能な指標として機能する(
図7を参照のこと)。
【0053】
上述したように、キャップ組立品3は、上昇部材12を備えて提供されており、上昇部材12は、上昇部材12と針シュラウド6との間の物理的係合によって針シュラウド6に対して回転方向に係止され、物理的係合は、2つの部品間の回転方向の係止を提供するが、上昇部材12の針シュラウド6からの軸方向の係脱も可能にする。第1の実施形態では、上昇部材12は、上昇部材12の半径方向内方表面上にある隆起部18によって針シュラウド6に回転方向に係止され、針シュラウド6の半径方向外方に面する表面内にある陥凹19内に嵌められる。例えば、1つの隆起部18および1つの陥凹19に対して、構築物の健全な運動学を得るために、記載されるように2つの隆起部18および2つの陥凹19がある。しかしながら、代替的な実施形態では、例えば、三組以上の隆起部18および陥凹19を作製することによって、幾何学的形状を提供することができる。隆起部18および陥凹19の代替物は、正三角形、正四角形、正五角形、もしくは正六角形、またはその他の等辺形、あるいは上述の回転方向の係止および軸方向の係脱を可能にする任意の他の形状の変形例であってもよい。また、針シュラウド6の外表面にある陥凹19内に嵌められる、上昇部材12の内側上にある隆起部18の選択は、隆起部18が針シュラウド6の外表面上に配置され得るように、異なる方法で行われ得る。針シュラウド6の外側上に好適な幾何学的形状を作製する代わりに、回転方向の係止および軸方向の係脱を可能にする任意の幾何学的形状を、針シュラウド6の半径方向内方表面上に置くことができる。
図12aおよび
図12bは、遠位に面する表面12aの内側縁部27の幾何学的形状が、上昇部材12の内側上にある2つの立ち上げられたフランジ28と協働する2つの陥凹29とともに形成されており、2つの立ち上げられたフランジ28が近位方向に尖っている、注射装置1の第2の実施形態を示す。
【0054】
図面のシールド取り外し部9は、キャップ組立品3がひねって外されると、シールド取り外し部9を、針シュラウド6、シリンジバレル7、およびハウジング10に対して静止回転位置にとどめることができる一方で、キャップ本体15がハウジング10に対するキャップ本体15の回転位置および軸方向位置を変化させる様式で、キャップ本体15に永久的に取り付けられた別個の部品として例示されている。シールド取り外し部9は、キャップ本体3がひねって外されると、キャップ本体15と同じ軸方向位置にとどまる。したがって、シールド取り外し部9は、シールド取り外し部をキャップ本体15に対して自由に回転させることができる方法で、キャップ本体15に取り付けられた別個の部品である。シールド取り外し部9に関する回転機能の目的は、キャップ組立品3をひねったときに、保護用針シース5を、針4およびシリンジバレル7のネック8から軸方向に取り外すことを可能にすることである。このタイプのシールド取り外し部9は、当該技術分野でよく知られている。注射装置1の他の実施形態は、キャップ組立品3とともに形成され得、シールド取り外し部9は、組立中に保護用針シース5上にひっかけられ、かつキャップ組立品3が回転するか、または単に引き抜かれたときに、シリンジバレル7のネック8および針4から保護用針シース5を引き抜く方法で形成された、キャップ本体15に一体化された非別個の部品である。かかる実施形態では、キャップ組立品3を取り外し、かつそれに応じて、キャップの軸方向移動の後に保護用針シース5を取り外す間、一体化されたシールド取り外し部9を含むキャップ本体15を保護用針シース5に対して回転させることが可能である。したがって、この場合もまた、保護用針シース5は軸方向に取り外されることになる。
【0055】
シールド取り外し部9がキャップ本体15の一体化された部品であるか、またはキャップ本体15に取り付けられた別個の部品であるかにかかわらず、上昇部材12は、いずれの概念においても、統合され得る。図は、互いに180度回転して位置付けられた二組の上昇トラック20、および注射装置1の中央長手方向軸に平行な終了停止壁21を有する上昇トラック20の端を示す。キャップ組立品3をひねり始めたときに、キャップ組立品3を一方向にのみひねることができるように、開始停止壁22は、かかる回転ブロックを提供する。終了停止壁21を除外して、あまり好ましくないユーザーフィードバックをもたらすように選ぶことができる。上昇トラック20を、キャップ本体15内のみ、または上昇部材12内のみのいずれかのみに形成することも可能である。この場合、キャップ本体15または上昇部材12のいずれかの中にある隆起部は、キャップ組立品3を注射装置1から押し外すために、キャップ組立品3を回転させると、上昇トラックおよび20に従い得る。2つの上昇トラック20または二組の上昇トラック20の代わりに、3つの上昇トラック20または三組の上昇トラック20を有する代替的な実施形態を提供することが可能である。V字形状を形成するミラーリングされたトラックとしてトラックを形成することも可能である。この場合、キャップ組立品3は、時計回り方向または反時計回り方向のいずれかの方向の回転によって取り外すことができる。
【0056】
回転方向の係止および相対的な軸方向の変位を可能にするために、上昇部材12を針シュラウド6につなげる代わりに、上昇部材12を、ハウジング10に直接つなげることができる。
図13は、注射装置1の第3の実施形態を示しており、フランジ31は、上昇部材12の近位端リムから近位に延在する。フランジ31は、ハウジング10の内部表面上にある陥凹32と協働して、回転方向の係止を提供し、上昇部材を、ハウジング10に対して軸方向に引くことを可能にする。
【0057】
図14aは、上昇部材12が、ハウジング10の遠位端部分の上に嵌められるセクションを有する、注射装置1の第4の実施形態を示す。上昇部材12のこのセクションは、キャップ本体15から近位に延在することになり、ひいては、視認可能であることになる。したがって、キャップ組立品3は、2部品からなるキャップとして現れる。
図14bは、キャップ組立品3を取り外す前の保管状態にある装置を示しており、キャップ本体15から上昇部材12への自然な移行があることを見せている。針シールド5がシリンジ2のネック部分8から少なくとも部分的に軸方向に分離される初期回転の後(
図14c)、キャップ本体15は、所定の距離だけ上昇部材12から軸方向に分離されていることになる。通常、特定の実施形態に応じて、この軸方向の距離は、針シールドをシリンジのネック部分8から完全に係脱するのに十分な距離であることになる。しかしながら、他の実施形態では、所定の距離は、ネック部分から完全に係脱するために必要な軸方向の移動の大部分にのみ対応する。続いて、ハウジング10に対してキャップ本体15を軸方向に引くと、上昇部材12は、キャップ本体の軸方向の移動に従うことになり、キャップ本体15、上昇部材12、シールド取り外し部9、および針シールド5が、単一の実体として装置の残りの部分から取り外されることになる(
図14d)。
【0058】
回転方向の係止は、ハウジング10に対する上昇部材12の回転方向の係止を保証し、一方で、間の軸方向の移動を可能にする、幾何学的形状によって確保される。
図14a~
図14dでは、ハウジング10の半径方向外方に面する表面上にある隆起部33は、上昇部材12の内部側に配置された陥凹(図示せず)と協働する。
図14a~
図14dに例示されるように、主ハウジングの上に嵌められる上昇部材は、ハウジングの外部幾何学的形状33と協働する代わりに、代替的にハウジング10の内側上にある陥凹に嵌められるフランジを有し得る。
【0059】
図に関する上記の説明は、本発明で使用するために適用可能な例示的な注射装置の使用に関する背景情報を与えるために提供されている。しかしながら、記載される注射装置は、本発明による原理で利用され得る、多くの異なる利用可能な注射装置のうちの1つである。本発明は、示される実施形態および記載の変形例に限定されるものではないが、以下の特許請求の範囲内および残りの開示内に規定される主題内のその他の方法で具現化され得ることが強調されるべきである。
【国際調査報告】