(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】メタマテリアル遮音デバイス
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20230329BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B3/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550233
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021054522
(87)【国際公開番号】W WO2021170630
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】102020000003769
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522330902
【氏名又は名称】アドラー エヴォ エッセ.エッレ.エッレ.
(71)【出願人】
【識別番号】522330913
【氏名又は名称】フォノニック バイブス エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルサージェ、ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】タレッロ、マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ティエンゴ、マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ダレッサンドロ、ルカ
(72)【発明者】
【氏名】カペラッリ、ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】メドゥーリ、シモーネ
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AJ01B
4F100AK03B
4F100AK15B
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100BA02
4F100DD04B
4F100DG00B
4F100DG15B
4F100DJ01A
4F100GB32
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JH01
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100YY00A
4F100YY00B
5D061AA07
5D061AA09
5D061AA22
5D061AA26
5D061BB07
5D061BB17
5D061BB21
5D061BB24
(57)【要約】
同等のサイズと重量とを有する旧来の遮音デバイスと比較して、それを横切る音響透過を減衰させる際の効率が改善された、メタマテリアル遮音デバイスが説明される。本デバイスは、特に、自動車分野における遮音に適応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1kPaから1MPaまでの静的ヤング率と、1kg/m
3から500kg/m
3まで、好ましくは50kg/m
3から100kg/m
3までの範囲内の密度とを有する第1の材料の第1の層(11、51、61、71、81、111、121)と、
前記第1の層の表面に付着された第1の表面と、前記第1の表面から離れる方に向く第2の表面(13)とを有し、10MPaから2500MPaまで、好ましくは50MPaから300MPaまでの静的ヤング率と、0.5kg/m
2から20kg/m
2まで、好ましくは2kg/m
2から7kg/m
2までの単位面積当たりの重量とを有する第2の材料の第2の層(12、112)と、
前記第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面のうちの少なくとも一方に付着されるか、又はそれと一体の、10MPaから2500MPaまでの静的ヤング率と、500kg/m
3から8000kg/m
3までの密度と、0.5kg/m
2から20kg/m
2までの単位面積当たりの重量とを有する材料から製造された、網目の形態の1つの突出部又は複数の個別の突出部(14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、31、41、52、91、101、114)であって、前記個別の突出部の各々の接触面積が、前記第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面の面積の2%よりも大きくなく、前記1つの突出部又は前記複数の個別の突出部の総接触面積が、前記第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面の前記面積の10%から60%である、網目の形態の1つの突出部又は複数の個別の突出部(14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、31、41、52、91、101、114)と
を備える、メタマテリアル遮音デバイス(10、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)。
【請求項2】
前記第1の材料が、ポリウレタン・フォームである、請求項1に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項3】
前記第2の材料が、天然繊維若しくは合成繊維のフェルト、又は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリアミドの中から選択されるポリマーである、請求項1又は2のいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項4】
前記突出部が、接着によって前記第2の層に付着された、請求項1から3までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項5】
前記突出部が、前記第2の層と一体である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項6】
複数の個別の突出部(14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、41、52、114)が、規則的で周期的なパターンに従って、前記第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面のいずれかの上に配設された、請求項1から5までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(10、40、50、60、70、80、110、120)。
【請求項7】
複数の個別の突出部(31)が、前記第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面のいずれかの上にランダムな配置で配設された、請求項1から5までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(30)。
【請求項8】
正方形、矩形、三角形又は六角形のパターンを画定する、規則的な構成をもつ網目の形態の単一の突出部(91)を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(90)。
【請求項9】
不規則な形状をもつ網目の形態の単一の突出部(101)を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(100)。
【請求項10】
前記第1の層が、その全厚さにわたる開口、又は前記第2の層(12)の前記第1の表面と接触している前記表面の凹部、又は前記第2の層(12)と接触している前記表面の反対側の表面のキャビティを有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項11】
前記開口(62)、前記凹部(72)又は前記キャビティ(82、122)が、規則的で周期的なパターンに従って、前記第1の層(51、61、71、81、121)中に配置された、請求項10に記載のメタマテリアル遮音デバイス(50、60、70、80、120)。
【請求項12】
第1の層(51)が、前記第2の層(12)と接触している前記表面に、前記第2の層(12)の前記第1の表面上に存在する突出部(52)によって完全に占有された凹部を有する、請求項11に記載のメタマテリアル遮音デバイス(50)。
【請求項13】
前記開口、前記凹部又は前記キャビティが、前記第1の層中にランダムな配置で配置された、請求項10に記載のメタマテリアル遮音デバイス。
【請求項14】
前記デバイスの上面図において、前記第2の層(12)上の前記突出部(14、52)が、前記第1の層(51、61、71、81、121)中の前記開口(62)、前記凹部(72)又は前記キャビティ(82、122)の前記位置に本質的に対応する位置にある、請求項10から13までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(50、60、70、80)。
【請求項15】
前記第1の層(11)が、均一な厚さを有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(10、30、40、90、100)。
【請求項16】
前記第1の層(51、61、71、81、111、121)が、均一でない厚さを有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載のメタマテリアル遮音デバイス(50、60、70、80、110、120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音デバイス、すなわち、デバイスを横切る音響透過を減衰させる効果を有するデバイスに関する。本デバイスは、特に、自動車分野における遮音に適応する。
【背景技術】
【0002】
遮音は、いくつかの静止適用例又は移動適用例において人々の快適さを保証し、及び/又は向上させるために必要とされる。たとえば、建築物内の隣接するフラット、事務所内の隣室、又は製造工場の区画を隔離することが望ましいことがあり、通常、エンジン室、タイヤ騒音又は空力(空気伝搬)騒音などの異なる騒音源から、車及びトラック並びに輸送手段の運転室又は乗員室を隔離することが必要である。
【0003】
自動車分野における遮音に対する要件は、他の領域におけるよりも厳しく過酷であるので、以下の説明は、特に前者に関するものになるが、本発明は、騒音からの遮断を必要とするいかなる状況においても一般的な適用性がある。
【0004】
自動車分野において良好な遮音を達成することは、音響隔離構成要素のために利用可能な空間と質量とが限定されるので難しい。
【0005】
自動車適用例のための隔離構成要素は、一般に、(天然のような綿、高分子繊維又は無機のようなガラス繊維であり得る)繊維の集合体、発泡体、密な高分子層、及び高分子膜(場合によってはそれぞれが多層)などの異なる材料の層を、構造の幅広い多様性に応じて結合することによって製造され、これらの層のうちの1つ又は複数には、基材の特性を変更するために鉱物粉末などの充填材が加えられ得る。
【0006】
これらの構成要素は、弾性特性を有する、すなわち、圧縮又は膨張の後にそれの初期形状とサイズとを回復することが可能な前記層のうちの少なくとも1つと、少なくとも、硬い、本質的に非圧縮性の層とを含み得る。これらの構成要素はばね-質量原理に従って動作し、ばね-質量原理においては、弾性層(しばしば「分離層(decoupling layer)」とも呼ばれ、一般に、存在するときは発泡体)がばねとして働き、硬い層が質量として働く(それは、したがって、当該分野では「質量層」と呼ばれる)。
【0007】
これらの構成要素の1つの問題は、それらの遮音特性を改善する必要があるとき、唯一の可能な方策は、画一的な方法で質量層の厚さと重量とを増加させることであるので、関連して構成要素の重量増加をもたらす。この手法は、たとえば米国特許出願公開第2004/0150128(A1)号において従われており、米国特許出願公開第2004/0150128(A1)号では、硬い層は、最初に熱可塑性材料の箔又は平坦な平板を熱成形し、次いで、形成された箔又は平板の選択された領域上に(好ましくはキャビティ中に)さらなる量の同じ熱可塑性材料を追加して、硬い層中に厚さが増加した領域を形成することによって作製される。この文献では、熱可塑性材料のこれらの追加物の形状的特徴、すなわち、(絶対的な、又は初めの箔若しくは平板に対する)それらの厚さ、硬い層の面積と比較したそれらの面積、又は硬い層の上のそれらの分布についての教示が与えられていない。さらに、この文献は、説明されたプロセスを用いて得られた完成した遮音構成要素の音響特性についてのデータを与えていない。
【0008】
自動車産業は、車両の重量をできる限り低減して、それらの電力消費を最小にし、それによってそれらの環境影響を最小にするために苦闘している。同じバッテリー・パックとともにより低い質量が移動されるおかげで、或いは、重量利得がより大きいサイズのバッテリーを取り付ける際に活用され得るので、より低い重量がオートノミー(autonomy)を高める機会を与える、電気自動車では、重量低減の傾向がより一層感じられる。
【0009】
騒音減衰構成要素の総重量を低減するために、それらの層のうちの少なくとも1つに貫通穴、凹部、くぼみなどの形態の空所を作ることを、いくつかの文献が提案している。この手法に従う構成要素は、たとえば、米国特許第5,013,597号、米国特許第7,182,172(B2)号、及びWO2018/091301A1に記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2012/0155688(A1)号は、異なる構成の種々様々な音響吸収器と音響変換器とを開示している。文献の
図5を参照しながら説明されているこれらのうちの1つは、ばね層上に直接不連続な硬い層を加える。硬い層は、格子(文献の
図5A)として、又は一連の平行な当接するひし形(
図5B)としてパターニングされ得る。
【0011】
知られている騒音減衰構成要素の問題は、それらは一般に高周波数範囲において良好な遮断性能を有するが、自動車適用例に関係する騒音源に対して極めて重要である約200Hzから1000Hzまでの範囲内で遮断特性がそれほど良好でないことである。
【0012】
現在、音響快適性について重要である周波数の質量-ばね-質量機構におけるスペクトル全体にわたって重量低減と良好な遮断との間の良好な妥協点を達成する構成要素は、共鳴周波数帯域に関してまだ利用可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0150128(A1)号
【特許文献2】米国特許第5,013,597号
【特許文献3】米国特許第7,182,172(B2)号
【特許文献4】WO2018/091301A1
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0155688(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の問題を克服する、特に自動車分野において使用するために有用な、遮音デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、
必ずしも一様な厚さとは限らない、1kPaから1MPaまでの静的ヤング率を有する第1の材料の第1の層と、
第1の層の表面に付着された第1の表面と、前記第1の表面から離れる方に向く第2の表面とを有し、10MPaから2500MPaまでの静的ヤング率と、0.5kg/m2と20kg/m2との間の単位面積当たりの重量とを有する第2の材料の第2の層と、
第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面のうちの少なくとも一方に付着されるか又はそれと一体の、10MPaから2500MPaまでの静的ヤング率と、0.5kg/m2と20kg/m2との間の単位面積当たりの重量とを有する材料から製造された、網目の形態の1つの突出部又は複数の個別の突出部であって、前記個別の突出部の各々の接触面積が、第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面の面積の2%よりも大きくなく、前記1つの突出部又は前記複数の突出部の総接触面積が、第2の層の前記第1の表面又は前記第2の表面の面積の10%から60%である、網目の形態の1つの突出部又は複数の個別の突出部と
を備える、メタマテリアル遮音デバイスに関する、本発明により達成される。
【0016】
以下で、図を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備える、本発明の遮音デバイスの第1の可能な実施例を、断面図(図の上側部分)と上面図(図の下側部分)とで示す図である。
【
図2】
図1のデバイス中に存在し得る個別の突出部の可能な代替形状を上面図と断面図とで示す図である。
【
図3】第2の層の第2の表面上にランダムに配置された複数の個別の突出部を備える、本発明の別の可能な遮音デバイスを、側面図(図の上側部分)と上面図(図の下側部分)とで示す図である。
【
図4】第2の層の第1の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備え、突出部が異なる形状を有する、本発明の別の可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図5】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備える、本発明の別の可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図6】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備え、第1の層が、前記突出部と同じ配置をもつ凹部又は貫通穴を有する、本発明の他の異なる可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図7】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備え、第1の層が、前記突出部と同じ配置をもつ凹部又は貫通穴を有する、本発明の他の異なる可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図8】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備え、第1の層が、前記突出部と同じ配置をもつ凹部又は貫通穴を有する、本発明の他の異なる可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図9】規則的な網目の形態の1つの突出部を備える、本発明の1つの可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図10】不規則的な網目の形態の1つの突出部を備える、本発明の1つの可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図11】第2の層の第2の表面上に2次元周期的アレイに配置された複数の個別の突出部を備え、第1の層及び第2の層が、平坦でなく、一定でない厚さを有する、本発明の可能な遮音デバイスを、
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す図である。
【
図12】実例においてテストされた、本発明の特定のデバイスの形状を示す図である。
【
図13】本発明のデバイスの遮音特性と従来技術のデバイスの遮音特性とが比較されたグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の遮音デバイスは、従来技術のばね-質量システムの変更形態である。本発明者らは、局在化された個別の突出する要素、又は網目の形態の単一の突出する要素を質量層に追加することによって、旧来のシステムの遮音特性を改善することが可能であることを観測した。これは、騒音減衰システムの総質量の増加なしに行われ得る。
【0019】
成形によって、それの固有特性と比較して、変更された特性を有する材料は、材料科学及び工学において「メタマテリアル」と呼ばれる。この定義を、上記で説明した第2の層と突出部とによって構成されるアセンブリを指すために本明細書及び特許請求の範囲において採用する。
【0020】
また、第1の層及び第2の層は、以下の説明において、それぞれ「分離層」及び「質量層」と呼ぶ。
【0021】
質量層の表面「と一体の突出部」は、前記突出部及び層が、たとえばモールド鋳造又は射出成形によって得られる単一部品として形成されることを意味する。
【0022】
本発明のメタマテリアル遮音デバイスは、質量層が、それの表面の少なくとも一方の上に、網目の形態の連続する突出部又は複数の個別の突出部を有することを特徴とする。
【0023】
網目の形態の単一の突出部の場合、これは、たとえば正方形、矩形、三角形又は六角形のパターンを画定する規則的な構成を有し得るか、或いは、構成は、網目線の交差(又はノード)が質量層表面上にランダムに分散された不規則なものであり得る。
【0024】
同様に、複数の個別の突出部は、規則的で周期的なパターンに従って(したがってアレイを画定する)又はランダムに質量層表面上に配設され得る。
【0025】
個別の突出部の各々は、質量層の表面上に前記表面の最大2%の接触面積を有し得る。網目の形態の単一の突出部の、又は複数の個別の突出部の、質量層の表面上での総接触面積は、前記表面の10%と60%との間である。
【0026】
分離層は、1kPaから1MPaまでの範囲内の静的ヤング率と、1kg/m3から500kg/m3まで、好ましくは50kg/m3と100kg/m3との間の範囲内の密度とを有する材料から製造される。この材料は、たとえば疎なフェルトであり得る。好ましくは、この材料は、発泡体、特に触媒の存在下でのジオール又はポリオールモノマーとのジイソシアネート又はポリイソシアネートモノマーの反応によって、又は紫外光による活性化によって、好適な形状のモールド中で製造されるポリウレタン(PU)フォームである。
【0027】
質量層は、50MPaと2500MPaとの間、好ましくは50MPaから300MPaまでの範囲内の静的ヤング率と、0.5kg/m2と20kg/m2との間、好ましくは2kg/m2から7kg/m2までの単位面積当たりの重量とを有する材料から製造される。この層の製造のための材料は、(天然繊維又は合成繊維の)フェルト、又は、好ましくは濃厚ポリマーの中から選択され得る。この層の製造のための好ましいポリマーは、濃厚PU(すなわち、発泡体の形態でない)、PVC、ポリエステル(PET)、ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、並びにポリアミド(PA、総称的にナイロンとも呼ばれる)である。
【0028】
突出部は、10MPaから2500MPaまでの静的ヤング率と、500kg/m3から8000kg/m3までの密度とを有する材料から製造される。突出部の製造のための材料は、質量層の製造のために有用な同じ材料の中から好都合に選択される。
【0029】
質量層と突出部とは、別個に製造され、その後、たとえば接着によって付着され得る。本発明の好ましい一実施例では、しかしながら、質量層及び突出部は、射出成形によって固有の部品として製造され、したがって同じ材料によって構成される。
【0030】
本発明のメタマテリアル遮音デバイスの様々な可能な実施例が
図1~
図12に表されている。図面では、突出部は、質量層と接触する別個の要素として提示されているが、これらの図面は、突出部及び質量層が単一部品として製造された対応する構造のデバイスをも表すことを理解されたい。さらに、図において同じ数字によって示された要素及び特徴はすべての実施例において同じである。
【0031】
図1は、本発明のデバイス10を上面図(図の下側部分)と上面図のラインA-A’に沿った断面図(図の上側部分)とで示す。デバイス10は、分離層11と、質量層12と、質量層12の第2の表面13上の、まとめて14aとして示されている突出部とから製造される。この実施例では、質量層及びばね層は、平坦であり、一定の厚さを有する。突出部14aは、互いに別個の個別の要素であり、規則的で周期的なパターン、この場合は矩形の格子に従って、表面13上に配置される。2次元(2D)の規則的なパターンのベース・セルは、しかしながら、正方形、ひし形、六角形又は三角形でもあり得る。
【0032】
図2は、
図1のデバイス中の突出部14aの代わりに使用され得る、突出部の可能な異なる形状14b~14fを示す。図において、上側列は突出部の上面図を示し、下側列は、上面図に示された破線に沿った対応する要素の断面図を示す。ごく手短に言えば、突出部14bは中実円柱であり、突出部14cは中空円筒であり、キャビティが突出部の全厚さにわたって延在し、突出部14dは、凹部をもつ円柱であり、突出部14eは、一定の厚さであるが、不規則な形状の中実体であり、突出部14fは、一定の厚さであり、規則的であるが、複雑な形状の中実体である。
【0033】
図3は、本発明の別の可能なデバイス30を上面図(図の下側部分)と側面図(図の上側部分)とで示す。デバイス30は、デバイス10と同じ構造を有するが、突出部31が表面13上にランダムに配置されていることのみが異なる。突出部31は、図では上面図において円形断面を有するものとして表されているが、これらは、明らかに、任意の形状、たとえば、
図2に示された形状のうちの1つを有し得る。
【0034】
本発明のデバイスの質量層上の突出部は、すべてが等しいものである必要はない。
図4は、この種類の本発明のデバイスの実例を
図1のものと同様の断面図と上面図とで示す。この実施例40のデバイスは、デバイス10と同じ全体形状を有するが、数字41でまとめて示されている突出部が異なる形状と高さとを有する。
【0035】
図5は、本発明のデバイスの別の可能な実施例50を、上面図(図の下側部分)と上面図のラインA-A’に沿った断面図(図の上側部分)とで示す。デバイス50は、質量層12と接触している表面中に凹部をもつ分離層51から製造される。突出部52は、質量層の第1の表面53に付着されるか、又は質量層の第1の表面53と一体であり、分離層中の凹所と正確に嵌合する。上面図中の破線の矩形は、質量層12の第2の(上側)表面上への突出部52の投影を表す。
【0036】
図6、
図7及び
図8は、分離層が開口を有する、本発明のデバイスの他の可能な実施例を概略的に示す。これらの3つの図では、上面図中の破線の矩形は、分離層中の開口の質量層上への投影を表す。
【0037】
デバイス60(
図6)は、質量層と突出部との構成がデバイス10と同様である。分離層61は、代わりに、それの全厚さにわたって開口62を有する。
【0038】
デバイス70(
図7)はデバイス10と同様であるが、分離層71が、質量層と接触している表面中に凹部72を有することのみが異なる。
【0039】
デバイス80(
図8)はデバイス70と同様であるが、この場合、分離層81が、質量層と接触している表面の反対側の表面中にキャビティ82を有する。
【0040】
上記で提示された他の実施例の場合のように、
図6~
図8では、質量層上の(全体的に要素14として示されている)突出部は中実円筒として表されており、分離層中の開口(62、72又は82)は矩形断面を有していたが、両方の要素が任意の形状を有し得ること、たとえば、突出部は、
図2に表された形状のいずれかを有し得、分離層中の開口は、上面図において、任意の形状、たとえば正方形、六角形、円形、楕円形・・・を有し得ることは明らかであろう。さらに、デバイス50、60、70及び80は、
図5~
図8では、質量層の中/上の突出部と分離層中の開口との規則正しい周期的な配置とともに表されていたが、これらの実施例の場合も、上面図におけるこれらの要素の配置は、デバイス30の場合と同様にランダムであり得る。最後に、上面図の図面(
図6、
図7及び
図8の下側部分)では、質量層中の突出部は分離層中の開口と同心として表されているが、このことは本発明の本質的な条件ではなく、本発明の可能なデバイスの上面図において、突出部を表す形状(矩形、円、・・・)の中心は、開口を表す形状の中心と一致しないことがある。
【0041】
図9は、本発明の別の可能なデバイス90を表す。デバイス90は、上面図(図の下側部分)と上面図のラインA-A’に沿った断面図(図の上側部分)とで図中に示されている。この実施例では、分離層11及び質量層12はデバイス10のものと同様であるが、この場合、層12の第2の表面上には、複数の突出部14a(又は14b~14f)ではなく、規則正しい網目の形態の単一の突出部91が存在する。図面に示された場合では、網目91は矩形の格子を画定しているが、それは、たとえば正方形、三角形又は六角形であり得る。
【0042】
図10は、本発明の別の可能なデバイス100を示す。このデバイスはデバイス90と同様であるが、この実施例では、突出部101が不規則な格子の形態であることが異なる。
【0043】
最後に、
図11は、本発明のデバイスの別の可能な実施例を概略的に示す。デバイス110は、厚さと形状とが不規則である。分離層111及び質量層112の厚さは一定でなく、デバイスの断面は平坦でない。図面では、突出部114は、すべて等しく、規則的なパターンに従って配置されて示されているが、この場合も、これらは、すべてが等しいとは限らず、
図3の場合と同様に不規則に配置され得る。その上、この図の例では、突出部114は質量層の第2の表面13上に示されているが、これらは、
図5に示されているように質量層の第1の表面上に存在し得る。また、質量層のどちらの表面上の突出部も、デバイス60、70及び80の場合と同様に分離層中の開口と組み合わせられ得る。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の実例によってさらに説明する。
【0045】
「実例1」
図12に示された形状と、以下で説明する寸法的及び物理的特徴とを有する、本発明による遮音デバイスを製造した。デバイスは横方向サイズ1000mm×1200mmを有したが、
図12では、デバイスの代表的な部分のみが示されている。
【0046】
デバイス120を、10mmの厚さと80kPaの静的ヤング率とを有する、ポリウレタン・フォームで製造された分離層121から製造した。分離層は、(デバイスの上面図において)正方形であり、正方形の周期的なアレイに従って配置された一連の凹部122を有していた。凹部は、横方向サイズ15mm×15mmと深さ8mmとを有し、すなわち、分離層の厚さを貫通しておらず、2つの隣り合う凹部の中心間の距離は30mmであった。
【0047】
質量層12を、厚さ0.6mm、密度2000kg/m3及び、300MPaの静的ヤング率を有する、鉱物の充填材が加えられた熱可塑性ポリマーから製造した。分離層から離れる方に向く質量層の表面13上に、質量層と同じ材料で製造された突出部14が存在していた。質量層と突出部とを射出成形によって単一の部品として一緒に製造した。突出部14は、横方向サイズ7mmの正方形底面と高さ10mmとをもつプリズムの形状を有し、図に示されているように、凹部122のトレースと同心の正方形アレイに従って配置した。
【0048】
「実例2」(比較)
実例1のデバイスと同じ横方向サイズを有する、従来技術の遮音デバイスを製造した。
【0049】
このデバイスは、実例1のものと同じポリウレタン・フォームで製造された、10mmの一定の厚さ(凹部なし)をもつ分離層を備えていた。この比較デバイスの質量層は、実例1のものと同じポリマーで製造したが、1mmの一定の厚さを有し、突出部はなかった。このようにして得られたデバイスは、実例1において説明したように製造された本発明のデバイスとほとんど等価な単位面積当たりの総重量を有していた。
【0050】
「実例3」
実例1及び実例2で説明したように製造されたデバイスの遮音特性を測定した。
【0051】
テストは、ISO規格15186-1に従って実行した。この規格によれば、測定は、音源が配設される残響室(reverberation room)と、音検出器が存在する受音室(reception room)とに分割された室内に、テストするべきサンプルを配置して実行される。2つの室は、受音室が残響室の上にある状態で垂直方向に配設される。2つの室は、テストするべきサンプルと本質的に同じサイズの開口を有する支持フレームによって分割される。サンプルの縁部は、フレーム上に置かれ、2つの室の間の音の漏れを回避するためにマスチック(mastic)でフレームに対して密封される。
【0052】
dBで測定される、残響室中の励振の音圧レベルと受音室中のレベルとの差が、以下の公式に従って計算される伝送損失Rである。
R=Lexcitation-Lreception+10・log(S/A)
式中、
Lは測定されたレベルであり、
Sはテスト・ウィンドウ面積(支持フレーム中の開口)であり、
Aは受音室中の等価吸音面積である。
【0053】
測定は、異なる周波数値、すなわち、200Hz、250Hz、315Hz、400Hz、500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz及び2000Hzにおいて実行した。測定された値を、周波数の関数としての伝送損失TLとして、
図13において報告する。本発明のサンプルに対して測定された値は実線によって表され、従来技術のサンプルに対して測定された値は点線によって表されている(上記の周波数のスペクトルは所与の値においてのみサンプリングされるが、結果は折線で表されている)。
【0054】
図13中の2つの曲線から、本発明のデバイスが、周波数スペクトルの一部において従来技術のデバイスの遮音特性と同等の遮音特性を有し、630Hzと1000Hzとの間の周波数の範囲内では、改善された特性を有することは明らかである。
【国際調査報告】