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特表2023-514418横流誘導により製品を加熱するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】横流誘導により製品を加熱するための装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20230329BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20230329BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20230329BHJP
   H05B 6/42 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
H05B6/10 381
H05B6/06 393
H05B6/44
H05B6/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550667
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 FR2021050321
(87)【国際公開番号】W WO2021170954
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2001787
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522260492
【氏名又は名称】フィブ セル
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トニー ケゼル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル パタード
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB09
3K059AB26
3K059AC33
3K059AD13
3K059CD14
3K059CD48
3K059CD55
3K059CD76
(57)【要約】
インダクタ(20)は、横流誘導によって平坦な製品(1)を加熱することを意図しており、その製品は、上面(1fs)および下面(1fi)を有し、そのインダクタは、相互に実質的に平行である複数の平面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)に亘って拡がる複数の表面(S2as、S2ai、S2bs、S2bi)と、これらの平面に対して垂直な方向に沿った厚さ(Eas、Eai、Ebs、Ebi)とを有する複数のコイル(2as、2ai、2bs、2bi)を含み、そのインダクタは、製品(1)を受け入れることを意図する複数のコイルの間における中央領域(3)も含む。少なくとも二つのコイル(2as、2ai)は、中央領域(3)の第一の側に配置され、少なくとも二つのコイル(2bs、2bi)は、第一の側に対向する中央領域(3)の第二の側に配置される。中央領域(3)の同じ側において、製品の面(1fs、1fi)に最も近い複数のコイル(2ai、2bi)が、その面から第一の距離(Dai、Dbi)だけ離間しており、他方の複数のコイルが、第一の距離(Dai、Dbi)に、その他方の複数のコイルと製品の面との間に配置された複数のコイルの厚さ(Eai、Ebi)を加えた距離に少なくとも等しい、製品の面からの距離に配置されている。複数のコイルの表面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)は、少なくとも部分的に重なり合っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横流誘導によって平坦な製品(1)を加熱することを意図したインダクタ(20)であって、
前記製品は、上面(1fs)および下面(1fi)を有し、
前記インダクタは、相互に実質的に平行である複数の平面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)に亘って拡がる複数の表面(S2as、S2ai、S2bs、S2bi)と、前記複数の平面に対して垂直な方向に沿った厚さ(Eas、Eai、Ebs、Ebi)とを有する複数のコイル(2as、2ai、2bs、2bi)を含み、
前記インダクタは、前記製品(1)を受け入れることを意図する前記複数のコイルの間における中央領域(3)も含み、
少なくとも二つのコイル(2as、2ai)は、前記中央領域(3)の第一の側に配置され、
少なくとも二つのコイル(2bs、2bi)は、前記第一の側に対向する前記中央領域(3)の第二の側に配置され、
前記中央領域(3)の同じ側において、前記製品の前記面(1fs、1fi)に最も近い前記複数のコイル(2ai、2bi)が、前記面から第一の距離(Dai、Dbi)だけ離間しており、他方の前記複数のコイルが、前記第一の距離(Dai、Dbi)に、当該他方の前記複数のコイルと前記製品の前記面との間に配置された前記複数のコイルの厚さ(Eai、Ebi)を加えた距離に少なくとも等しい、前記製品の前記面からの距離に配置されていることと、
前記複数のコイルの表面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)は、少なくとも部分的に重なり合うことと
を特徴とする、インダクタ。
【請求項2】
前記複数のコイル(2as、2ai、2bs、2bi)が、前記複数の表面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)に対して垂直になる中心軸(4as、4ai、4bs、4bi)を有しており、
相互に対する前記複数のコイルの相対的位置は、前記複数の表面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)に対して平行となる方向に沿って、前記複数のコイルの前記中心軸(4as、4ai、4bs、4bi)が全て一致するように、前記複数のコイルの前記中心軸が全て異なるように、または、幾つかが一致して、残りが異なるように、調整可能であること
を特徴とする、請求項1記載のインダクタ。
【請求項3】
相互に対する前記複数のコイルの相対的位置は、前記製品の幅に基づいて、および/または、前記製品の長さに基づいて、調整可能であることを特徴とする、請求項2記載のインダクタ。
【請求項4】
相互に対する前記複数のコイルの相対的位置が、前記複数のコイルが拡がる実質的に平行な二つの表面(P2as、P2ai、P2bs、P2bi)の間の距離を変更するように、調整可能であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項5】
前記複数のコイルの相対的位置が、前記複数のコイルに最も近い前記製品の前記面からの前記複数のコイルの前記距離を変更するように、調整可能であることを特徴とする、請求項4記載のインダクタ。
【請求項6】
少なくとも一つの、請求項1ないし5のいずれか一つに記載のインダクタ(20)と、
前記インダクタに電気的に接続された少なくとも一つの電源(10)と
を備えることを特徴とする、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項7】
コイルに最も近い前記製品の前記面からのコイルの前記距離を変更することが可能である手段(21)を備えることを特徴とする、請求項6記載の、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項8】
前記製品の幅に基づいて、および/または、前記製品の長さに基づいて、第二のコイルに対して第一のコイルの相対的位置を変更することが可能である手段(22、23)を備えることを特徴とする、請求項6記載の、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項9】
インダクタ(20)における前記中央領域(3)の一方の側に配置された前記インダクタにおける前記複数のコイル(2as、2ai、2bs、2bi)が、前記少なくとも一つの電源(10)の第一の電源(10)によって給電され、前記中央領域(3)の他方の側に配置された前記複数のコイルが、前記少なくとも一つの電源の第二の電源(10)によって給電されることを特徴とする、請求項6記載の、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項10】
前記中央領域に最も近い前記複数のコイル(2ai、2bi)が、前記少なくとも一つの電源(10)の第一の電源(10)によって給電され、前記製品から最も遠い前記複数のコイル(2as、2bs)が、前記少なくとも一つの電源(10)の第二の電源(10)によって給電されることを特徴とする、請求項6記載の、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項11】
前記製品の長手方向に沿って連続する少なくとも二つのインダクタ(20)を備えることを特徴とする、請求項6ないし10のいずれか一つに記載の、製品(1)の横流誘導加熱用設備。
【請求項12】
前記請求項6ないし11のいずれか一つに記載の設備によって、製品(1)を加熱する横流誘導のための方法であって、
相互に対して、かつ、前記製品に対して、前記インダクタ(20)における前記複数のコイル(2as、2ai、2bs、2bi)の相対的位置が、前記インダクタの出口において目標とする前記製品の温度プロファイルにしたがって調整されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連する技術分野の指定]
本発明は、横流誘導によって製品、特にスラブ(slab)、薄スラブ、およびストリップ(strip)のなどの平坦な製品を加熱するための装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
[発明によって対処される技術的課題]
横流誘導によって製品を加熱するための装置は、主に、電源、インダクタ(inductor)、および、これらの設備機器の間を電気的に接続する要素から構成される。
【0003】
横流誘導加熱は、低い透磁率を有する製品を効率的に加熱することを可能とする。例えば、従来は最大約2,500kW/m2の高い電力密度を用いて、炭素鋼をそのキュリー点を超えて加熱することが可能となる。
【0004】
それにもかかわらず、この電力密度は、寸法または方法の制約によって制限される長さに亘って、所望の温度上昇を達成するには不十分となり得る。
【0005】
鉄鋼業界において、連続鋳造は、取鍋に含まれる溶融した金属から連続的かつ直接的に平坦な製品を生産することを可能とする。調達される製品は、通常厚さ35~80mmのスラブ、通常厚さ5~35mmの薄スラブ、または、通常厚さ5mm以下のストリップにすることができる。金属の凝固を可能にする鋳塊鋳型の中で、金属が急速に冷却された後に、誘導加熱の手段は、鋳塊鋳型が通常1100℃から1250℃までの温度において圧延に適切な条件をもたらすことを可能とすることにより、圧延後に所望の製品断面および製品冶金を入手する。連続鋳造の生産能力に応じて、製品を圧延温度に至らせるために必要な電力は、数メガワットになることがある。圧延温度のレベルおよび必要な電力を考慮すると、加熱手段は横流誘導の設備であることが知られている。しかしながら、既知である高磁束量の横流インダクタによると、約1.5MWに制限された電力のみが許容される。必要とする有用な電力を導入するためには、幾つかのインダクタが順番に直列に配置される。その結果として得られる全長は、大きく、例えば20mになる。鉄鋼業者は、この長さを可能な限り低減することを要望する。さらに、加熱の終了時における製品の温度プロファイルは、圧延の品質を決定する要因となる。現行の横流加熱装置は、特に、鉄鋼業者の要求を十分に満たさない限定された調整範囲内でしかないが、エッジの過熱を制限するために、この温度プロファイルを調整することを可能にする。
【0006】
本発明は、製品に投入される電力密度が非常に高いインダクタおよび加熱設備を用いて、これらの課題に対する解決をもたらし、製品のためにより良質な温度均質性を取得することを可能として、製品の温度プロファイルに対してより広い調整範囲を提供する。
【発明の概要】
【0007】
[発明の開示]
本発明における第一の態様によると、横流誘導によって平坦な製品を加熱することを意図するインダクタが提案されており、その製品は上面および下面を有し、そのインダクタは、相互に対して実質的に平行となる表面と、これらの平面に対して垂直な方向に沿った厚さとを有する複数のコイルを備え、そのインダクタは、製品を受け入れることを意図する、複数のコイル間における中央領域も含む。少なくとも二つのコイルが中央領域の第一の側に配置され、少なくとも二つのコイルが第一の側に対向する中央領域の第二の側に配置され、中央領域の同じ側において、製品の外面に最も近いコイルがその面から第一の距離だけ離間し、他方のコイルが第一の距離にその他方のコイルと製品の外面との間に配置されたコイルの厚さを加えた距離に少なくとも等しい、製品の外面からの距離において配置され、複数のコイルの表面は少なくとも部分的に重なり合っている。
【0008】
製品の各側で少なくとも部分的に重なり合う少なくとも二つのコイルの存在は、生成される磁力線を変化させて、製品における単位面積当たりの温度上昇を制御することを可能にする。
【0009】
本発明は、高磁束量の複数のコイルを備えたインダクタ、すなわち、本出願人によって仏国特許公開第2989817号明細書に記載されているように、例えば、冷却流体が通過するコアを形成するチューブの周囲に配置された複数の素線(strand)を含む、特定の導体で製造されたインダクタに対して、特に有用である。
【0010】
本発明によると、製品における同じ側に配置された複数のコイルが、その複数のコイルが拡がる表面に対して垂直な方向に沿って、相互に対して可能な限り近接し、好ましくは相互に接触することにより、寄生加熱と複数のコイル間の領域から生じることになる導体の効率低下とを制限する。
【0011】
本発明における一つの実施形態によると、複数のコイルが拡がる表面に対して垂直となる複数のコイルの中心軸が全て一致するように、これらの複数のコイルの中心軸が全て異なるように、または、その表面に対して平行な方向に沿って、一部の中心軸が一致して、残りの中心軸が異なるように、相互に対して複数のコイルの相対的位置は調整可能である。
【0012】
一つの可能性によると、相互に対して複数のコイルの相対的位置は、製品の幅に基づいて、および/または、製品の長さに基づいて調整可能である。
【0013】
本発明によると、被加熱の製品の同じ側に配置された複数のコイルは、相互に中心を外して偏位することができる。この偏位は、製品に対して横方向のみに沿って、製品に対して縦方向のみに沿って、または、製品に対して縦方向および横方向の両方に沿ってであることが可能である。
【0014】
同様にして、製品の各側に配置された複数のコイルは、相互に対向することができ、または、それらは、製品に対して横方向のみに沿って、製品に対して縦方向のみに沿って、もしくは、製品に対して縦方向および横方向の両方に沿って、中心を外して偏位することができる。その偏位は、複数のコイルの部分のみに関係し得る。例えば、製品の各側に二つのコイルを有する本発明に係るインダクタにおいて、製品に最も近い二つのコイルは、相互に対向することができ、一方、その二つのコイルは中心を外して偏位することができ、または、その逆の場合も同様である。複数のコイルが対向する位置は、最も効率的となる位置である。複数のコイルの偏位は、特に製品の温度プロファイルに影響を与えるために実施することができるが、その設置の効率を低下させる結果をもたらすことになる。
【0015】
本発明によると、インダクタにおける複数のコイルの相対的位置は、製品の何れの側においても、複数のコイルが拡がる実質的に平行となる複数の表面間の距離を変更するように、すなわち、空隙を変更するように、調整可能でもある。
【0016】
このように本発明によると、複数のコイルと製品との間の距離を変更すること、すなわち、空隙を増加または減少させることが可能である。そのため、製品に伝導される電力密度を低下させることが望まれる場合、空隙を増加させることにより、例えば、過度に大きい電力密度から生じることになる製品の温度不均質性を低減することが可能である。好都合なことに、製品が複数のコイル間の中心にあるように、すなわち、製品と製品の各側に配置される第一のコイルとの間の距離が実質的に同一であるように、複数のコイルの動作が実行される。
【0017】
製品の同じ面において、製品の面を起点とする第二のコイルは、第一のコイルが配置される距離に、その第一のコイルの厚さだけ増加される距離に少なくとも等しい、製品からの距離に位置する。本発明によると、被加熱の製品の同じ側に配置される複数のコイル間の距離を変更することが可能である。そのため、製品に伝導される電力密度を変更するように、第一のコイルから離間して第二のコイルを移動させることが可能である。製品の一方の面に三つ以上のコイルを有する構成において、相補的な複数のコイルの位置は、製品から離してそれらを移動させるように、または、製品にそれらをより接近させるように、他方のコイルに対して相対的に調整可能とすることでもある。
【0018】
本発明における第二の態様によると、上述の実施形態の変形の一つに係る少なくとも一つのインダクタと、そのインダクタに電気的に接続された少なくとも一つの電源とを備える、製品のための横流誘導加熱設備が提案される。
【0019】
インダクタの特性および電源の特性に応じて、これら二つの設備機器の間を電気的に接続するものは、現行の昇圧もしくは降圧の変圧器および/またはコンデンサを含み得る。
【0020】
その設備は、コイルに最も近い製品の面からのコイルまでの距離を変更することが可能となる手段を含み得る。
【0021】
一つの可能性によると、その設備は、製品の幅に基づいて、および/または、製品の長さに基づいて、第二のコイルに対する第一のコイルの相対的位置を変更することが可能となる手段を含み得る。
【0022】
本発明における代替的な実施形態によると、インダクタの中央領域における一方の側に配置されたインダクタの複数のコイルは、少なくとも一つの電源における第一の電源によって給電され、その中央領域における他方の側に配置された複数のコイルは、少なくとも一つの電源における第二の電源によって給電される。
【0023】
本発類における別の実施形態によると、中央領域に最も近い二つのコイルは、少なくとも一つの電源における第一の電源によって給電され、中央領域から最も遠い二つのコイルは、少なくとも一つの電源における第二の電源によって給電される。インダクタが五つ以上のコイルを含む場合において、中央領域に最も近い二つのコイルと中央領域から最も遠い二つのコイルとの間に配置された複数のコイルは、その二つの電源における一方または他方の電源によって給電される。
【0024】
複数の電源は、製品に対して横方向に沿って、または、製品の各側におけるこの横方向に沿って、製品の同じ側に配置することができる。
【0025】
このように、中央領域の各側に二つのコイルを有する本発明の実施形態によると、第一のコイル対を構成する、中央領域に最も近い二つのコイルは、製品の一方の側に配置された第一の電源によって給電することができ、第二のコイル対を構成する、中央領域から最も遠い二つのコイルは、製品の他方の側に配置された第二の電源によって給電することができる。
【0026】
本発明の代替的な実施形態によると、その二つの電源は異なる電力を有するが、二つのコイル対によって製品に伝導することができる電力の最大流量は様々となる。
【0027】
本発明の代替的な実施形態によると、横流誘導加熱設備は、製品の縦方向に沿って少なくとも二つの連続するインダクタを備える。そのため、第一のインダクタは、例えば、製品温度の第一の上昇を確保することを意図し、第二のインダクタは、製品温度の相補的な上昇を確保することを意図する。その二つのインダクタは、インダクタの出口における製品の温度プロファイルに同一の効果を有することかでき、または、インダクタにおける複数のコイルの相対的位置に応じて様々な効果、例えば、逆の効果を有することができる。結果として、例えば、第一のインダクタは、製品の二つのエッジの一方における温度の激しい上昇につながる複数のコイルの作用位置を、製品の横方向に沿って有することができ、一方、第二のインダクタは、製品の他方のエッジにおける温度の急な上昇につながる複数のコイルにおける反対側の作用位置を有する。したがって、各インダクタの後で製品の温度プロファイルを調整することにより、最終のインダクタの出口において所望の温度プロファイルを取得することが可能である。例えば、二つの連続するインダクタと、その中心よりも低温であるエッジを有して第一のインダクタに入る製品とを含む解決策を用いて、第一のインダクタは、製品の第一のエッジにおける温度レベルを上昇させることができ、第二のインダクタは、製品の第二のエッジにおける温度を上昇させることにより、第二のインダクタの出口において、製品は、所望の温度上昇に到達済みになると同時に、均質な温度プロファイル、または、所望の温度プロファイルを有する。
【0028】
本発明における第三の態様によると、上述された実施形態の一つに係る設備によって、製品を横流誘導加熱するための方法が提案され、インダクタにおける複数のコイルの相対的位置が、相互に対して、かつ、製品に対して、インダクタの出口において目標とする製品の温度プロファイルにしたがって調整されることを特徴とする。
【0029】
複数のコイルの位置は、オペレータによって手動で調整することができ、オペレータは、複数のコイルを配置して、それから作動位置にその複数のコイルを固定させる。その調整は、機械的な手段、例えば、ラック式またはスライド式の移動システムを使用して実施することができる。それは、電気的、空気圧的、または、油圧的な手段によって、例えば、ジャッキによって、引き起こすこともできる。その調整は、動作を電動化することにより、自動化することもできる。
【0030】
複数のコイルの位置に関する調整は、オペレータの行動により、または、製品の特性、特に、製品の幅、および/または、インダクタの出口における製品の所望の温度プロファイルにしたがって自動的に、実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明における他の特徴および利点は、添付図面を参照して理解を深めるための、後続する詳細な説明から明らかにされることになる。
【0032】
図1】本発明における一つの実施形態に係る、第一の作動位置におけるインダクタの模式的な縦断面図である。
図2図1と同じ作動位置における、図1に示されたインダクタの模式的な横断面図である。
図3図1および2と同じ作動位置における、前出の図面に示されたインダクタの模式的な上面図である。
図4】第二の作動位置における、前出の図面に示されたインダクタの模式的な上面図である。
図5図4と同じ位置における、前出の図面に示された模式的な横断面図である。
図6】第三の位置における、前出の図面に示されたインダクタの模式的な上面図である。
図7図6と同じ位置における、前出の図面に示されたインダクタの模式的な縦断面図である。
図8】第四の位置における、前出の図面に示されたインダクタの模式的な縦断面図である。
図9】シリンダーヘッドに関する二つの実施形態による、本発明に係るインダクタの模式的な縦断面図であり、図形の上部分は第一の例を説明し、図形の下部分は第二の例を説明する。
図10】本発明に係るインダクタにおける複数のコイルの接続に関する第一の例を説明する典型的な電子回路図である。
図11】本発明に係るインダクタにおける複数のコイルの接続に関する第二の例を説明する典型的な電子回路図である。
図12】本発明に係るインダクタにおける複数のコイルの接続に関する第三の例を説明する典型的な電子回路図である。
図13】本発明に係るインダクタにおける複数のコイルの接続に関する第四の例を説明する典型的な電子回路図である。
図14】本発明に係る四つの連続するインダクタの出口における製品の横方向温度プロファイルの展開にともなって、本発明に係る方法の実装例を説明するダイアグラムである。
【0033】
以下に記述される実施形態は、全く限定するものではないことから、特に、記述された特徴の選択のみを含む発明の変形を検討することは可能であるが、この特徴の選択が、技術的な利点を付与し、または、従来技術から本発明を区別するのに十分である場合に限られる。この選択は、構造的な詳細をともなわない、少なくとも一つの望ましくは機能的な特徴を含み、または、構造的な詳細の一部分のみをともなって、この部分が技術的な長所を付与し、もしくは、従来技術から本発明を区別するのに単独で十分である場合、少なくとも一つの望ましくは機能的な特徴を含む。
【0034】
本記述の残りの部分において、同じ構造、または、類似の構造を有する要素は、同じ参照によって指定されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[発明の詳細な説明]
図1ないし8は、様々であり得る作動位置における、本発明に係るインダクタ20に関する同じ実施形態を模式的に例証する。そのインダクタは、平坦な製品1を加熱することを可能にする。この製品は、製品の長手方向に沿って縦方向を規定し、製品の幅方向に沿って横方向を規定する。
【0036】
横流インダクタは、通常、製品を加熱する起点において電磁界を発生させる複数のコイルと、この電磁界を伝導することにより、インダクタの効率を向上させることを意図する複数のシリンダーヘッドとから構成される。被加熱の製品の各側において、複数のコイルおよび複数のシリンダーヘッドは、平板上に固定される。そのインダクタは、通常、製品からの放射に対する障壁を構成する熱保護を含む。空気以外の雰囲気において、例えば、製品を酸化させない雰囲気において、製品を配置する必要がある場合、この熱保護は気密性にすることもできる。変形として、気密性は、熱保護とは別にして達成することができる。本発明の表現を単純にするため、複数のコイルのみが図面に示される。
【0037】
図1ないし3は、作動位置に関する第一の例において、インダクタ20を模式的に例証する。図1は、インダクタの縦断面図であり、図2は、インダクタの横断面図であり、図3は、インダクタの上面図である。
【0038】
インダクタ20は、被加熱の製品1が位置する中央領域3の何れかの側に配置された二対のコイル2as、2ai、2bs、2biを含む。この作動位置の例において、四つのコイルが完全に重ね合わせられ、それらの中心軸4as、4ai、4bs、4biは、縦方向および横方向において一致していることが、これら図1ないし3において理解することができる。この構成は、例えば、複数のコイルが重ね合わせられる際に、複数のコイルの寸法が被加熱の製品の幅を覆うことを可能にする場合に適合している。
【0039】
被加熱の製品1の上面1fsから、第一のコイル2aiは、距離Daiにあり、すなわち、コイル2aiの表面S2aiが位置する平面P2aiは、製品の上面1fsから長さDaiだけ離間している。この距離Daiは、コイルによって製品に伝導される電力密度に強く影響する。ストリップに伝導される電力の調整が可能であるために、この距離は、図2に示される手段21によって調整することができる。
【0040】
この手段21は、例えば、縦軸が製品の面1fsに対して垂直であるウォーム(worm)と、そのウォームが協働するコイルに固定されたナット(nut)とを含む。そのため、コイルの位置は、ウォームの回転によって調整される。手段21は、ラック、リニアモーター、ジャッキ、または任意の他の既知の手段とすることもできる。
【0041】
第二のコイル2asは、製品の上面1fsから距離Dasに配置され、すなわち、コイル2asの表面S2asが位置する平面P2asは、製品の上面1fsから長さDasだけ離間している。この距離Dasは、第一のコイルが配置される距離Daiに、第一のコイルの厚さだけ増加される距離に少なくとも等しい。この距離Dasも、コイルによって製品に伝導される電力密度に強く影響する。ストリップに伝導される電力の調整が可能であるために、距離Dasは、図2に示される第二の手段21によって調整することもできる。
【0042】
非加熱の製品1における面1fiから、第一のコイル2biは、距離Dbiにあり、すなわち、コイル2biの表面S2biが位置する平面P2biは、製品の下面1fiから長さDbiだけ離間している。この距離Dbiは、コイルによって製品に伝導される電力密度に強く影響する。ストリップに伝導される電力の調整が可能であるために、この距離は、図2に示される手段21によって調整することができる。
【0043】
第二のコイル2bsは、製品の下面1fiから距離Dbsに配置され、すなわち、コイル2bsの表面S2bsが位置する平面P2bsは、製品の下面1fiから長さDbsだけ離間している。この距離Dbsは、第一のコイルが配置される距離Dbiに、第一のコイルの厚さによって増加される距離に少なくとも等しい。この距離Dbsも、コイルによって製品に伝導される電力密度を強く影響する。ストリップに伝導される電力の調整が可能であるために、距離Dbsは、図2に示される第二の手段21によって調整することができる。
【0044】
図4および5は、作動位置に関する第一の例よりも大きな製品幅に適合している、第二の作動位置におけるインダクタ20を例証する。図4は、インダクタの上面図であり、図5は、インダクタの横断面図である。インダクタの縦断面図は、図1と同一であることになり、縦方向に沿った複数のコイルの位置は、これら二つの作動位置の例に対して同じである。この第二の作動位置において、複数のコイルは、製品の幅全体を覆うように横方向に中心を外して偏位する。
【0045】
コイルの縦方向の位置は、図4に示される手段22によって調整可能である。この手段22は、例えば、縦軸が製品の面1fsに対して平行であるウォームと、そのウォームが協働するコイル上に固定されるナットとを含む。そのため、コイルの位置は、ウォームの回転によって調整される。手段22は、ラック、リニアモーター、ジャッキ、または、任意の他の既知の手段とすることもできる。図4における実施形態において、製品の同じ面に配置された二つのコイルは、それらの横方向の位置を調整するための手段22を備えている。本発明における別の実施形態によると、一つのコイルのみが、その縦方向の位置を調整するための手段22を備えている。
【0046】
図6および7は、第三の作動位置におけるインダクタ20を例証する。図6は、インダクタの上面図であり、図7は、インダクタの縦断面図である。インダクタの横断面図は、図5と同じであることになり、横方向に沿った複数のコイルの位置は、第二および第三の作動位置の例に対して同じである。
【0047】
コイルの縦方向の位置は、図6に示された手段23によって調整可能である。この手段23は、コイルの横方向の位置を調整するための手段と類似してよいし、または、異なってもよい。図6における実施形態において、製品の同じ面に配置された二つのコイルは、その二つのコイルの縦方向の位置を調整するための手段23を備えている。本発明における別の実施形態によると、一つのコイルのみが、その縦方向の位置を調整するための手段23を備えている。
【0048】
図8は、縦断面図において、第四の位置におけるインダクタ20を示す。この例は、被加熱の製品に対して複数のコイル間において非対称性がある、作動位置を例証する。このように、コイル2asは、コイル2bsに対向していない。非対称性に関する任意の他の変形は、本発明にしたがって可能である。
【0049】
コイルは、好都合なことに、導体の集合体によって作られる。各導体は、冷却流体が通過するコアを形成する、電気絶縁性の材料からなるチューブの周囲に配置されて、導電性の材料、例えば銅からなる複数の素線を含む。複数の素線は、複数の素線およびチューブの間における良好な熱伝導を確保するために、良好な熱伝導率を有する電気絶縁性のペーストによって含侵されている。コイルは、例えば、コイルの同じ平面に並置された導体の集合体によって作られている。各端部において、複数の導体は、接続要素において電源に対して相互に電気的に接続されている。同様にして、各端部において、絶縁性材料からなる複数のチューブは、その端部に応じて、冷却流体の供給または排出の多様体を形成する空隙に開口している。
【0050】
好都合なことに、コイルは、上述した通りに重ね合わせて並置された二つの集合体、すなわち、二つの平行な平面上にある二層の導体を含む。代替的な実施形態において、電源に接続するための要素、および/または、冷却流体に接続するポイントは、二層の導体に対して共通である。
【0051】
複数のコイルを例証する図面を単純化するため、その複数のコイルへの電気的または油圧的な接続は、図示されていない。
【0052】
本発明における代替的な実施形態によると、インダクタは、製品の各側に少なくとも一つのシリンダーヘッドを備える。シリンダーヘッドは、電気絶縁体によって分離された珪素鋼板を積層して作られている。この積層は、シリンダーヘッドが、そのシリンダーヘッドに電流が流れることを妨げながら、複数のコイルによって生成された電磁界を伝導することを可能にする。図9は、実際のインダクタにおいて、複数のシリンダーヘッドがインダクタの両側で同一であることを意識して、製品1の中間幅における縦断面図においてシリンダーヘッド5に関する二つの実施形態を例証する。図面の上部分において、シリンダーヘッドは、複数のコイルの内側にある位置に付いている中央の延長部を有する。これは、図面の下部分に示される実施形態の変形には存在していない。シリンダーヘッドの効率性は、それが中央の延長部を含む場合により優れるが、これにより、複数のコイルにとって可能である横方向の移動が制限される。逆に、中央の延長部を有しないシリンダーヘッドを備えるインダクタは低効率を有することになるが、それにより、複数のコイルの相対的位置に対する調整範囲がより広くもたらされる。
【0053】
図10ないし13は、非限定的な例として、本発明に係る二対のコイルを備えるインダクタを接続するための様々な変形を例証する単純化された電子回路図である。
【0054】
図10は、電源6がインダクタにおける四つのコイルに給電する直立/並列の集まりを例証するが、製品の同じ側に配置された二つのコイル2as、2aiは並列に接続され、製品の反対側に配置された他方の二つのコイル2bs、2biも並列に接続され、その二対のコイルは直列に接続されている。その回路は、直列に配置されたコンデンサ7を備える。
【0055】
図11は、インダクタが二つの電源6によって給電される直列の集まりを例証する。一方の電源6は、製品から最も遠い一対のコイル2as、2bsに給電し、これらのコイルは直列に接続されている。第二の電源6は、製品に最も近い一対のコイル2ai、2biに給電し、これらのコイルも直列に接続されている。各回路は、直列に配置されたコンデンサ7を備える。
【0056】
図12も、二つの電源6を有する構成を例証するが、それらのコイルは並列に接続されている。そのため、一方の電源6は、製品から最も遠い一対のコイル2as、2asに給電し、これらのコイルは並列に接続されており、第二の電源6は、製品に最も近い一対のコイル2ai、2biに給電し、これらのコイルも並列に接続されている。この場合もまた、各回路は、直列に配置されたコンデンサ7を備える。
【0057】
図11および12に示された変形において、二つの電源6を製品の同じ側面に配置することができ、または、一つの電源を製品の各側に配置することができる。
【0058】
図13は、インダクタは、二重出力の電源6によって給電される、図12に示された配置に最も近い配置を例証する。電源6における一方の出力は、製品から最も遠い一対のコイル2as、2bsに給電し、これらコイルは直列に接続されている。電源6における第二の出力は、製品に最も近い一対のコイル2ai、2biを給電し、これらのコイルも直列に接続されている。この場合もまた、各回路は、直列に配置されたコンデンサ7を備える。
【0059】
連続鋳造によって薄鋼スラブを製造する場合に適用する本発明における例によると、四つの連続する設備は、900℃から1000℃までに製品温度を上昇ざせることを可能にする。各設備は、製品の各側に配置された二つのコイルを有するインダクタに接続された電源を備える。複数のコイルは、図10における模式的なダイアグラムにしたがって電気的に接続されている。それらは、電圧2500Vおよび周波数1000Hzにおいて最大4000Aの電流によって給電される。四つの設備における複数のコイルの相対的位置は、所望の横方向温度プロファイルを有する1000℃の製品を出力時に得るように調整される。
【0060】
図14は、薄スラブの再加熱に適用するこの例のために、本発明に係る方法の実施形態を例証する製品の横方向温度変化のダイアグラムを示す。このダイアグラムのy軸には製品の温度が示され、x軸には製品幅が示される。曲線Aは、第一のインダクタの入口における製品の横方向温度プロファイルを表すが、製品のエッジは中央よりも著しく低温である。曲線Bは、第一のインダクタの出口における製品の温度プロファイルを表す。第一のインダクタにおける複数のコイルの相対的位置は、ダイアグラムの左側に位置する製品のエッジに対する強い加熱を促進するように対応する。曲線C、第二のインダクタの出口における製品の温度プロファイルを表す。第二のインダクタにおける複数のコイルの相対的位置は、ダイアグラムの右側に位置する製品のエッジに対してより大きい加熱を促進するように対応する。曲線Dは、第三のインダクタの出口における製品の温度プロファイルを表す。第三のインダクタにおける複数のコイルの相対的位置は、ダイアグラムの左側に位置するエッジに対してわずかに大きい加熱を促進するように対応する。曲線Eは、第四かつ最終のインダクタの出口における製品の温度プロファイルを表す。最終のインダクタにおける複数のコイルの相対的位置は、製品の均質な温度プロファイルを得るために、ダイアグラムの右側に位置するエッジに対してわずかに大きい加熱を促進するように対応する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】