(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法および生成物
(51)【国際特許分類】
C12P 19/34 20060101AFI20230329BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230329BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230329BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C12P19/34 A ZNA
C12N15/10 Z
C12N15/63 Z
C12M1/00 A
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550707
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021054557
(87)【国際公開番号】W WO2021170656
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345855
【氏名又は名称】モリゴ・テクノロジーズ・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥカニ, コジモ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナーディネッリ, ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘーグベリ, ビョルン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029AA27
4B029BB16
4B029BB20
4B029CC01
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4B029GB10
4B064AF27
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4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法を提供する。特に、本発明は、切断されて、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドをもたらすことができる生成物を形成するための、酵素が関係するローリングサークル増幅(RCA)反応において親ミニサークルプラスミドから得られたDNAミニサークルを鋳型として利用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法であり、前記方法は、
(a)親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルを準備するステップであって、前記DNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象の前記ポリヌクレオチド配列を含む、準備するステップと、
(b)(a)の前記DNAミニサークルを鋳型として用いてローリングサークル増幅(RCA)反応を実施して、切断ドメインと隣接する生成対象の前記ポリヌクレオチド配列の複数のコピーを含むRCA生成物を生成するステップと、
(c)前記RCA生成物を前記切断ドメインで切断して、前記複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、前記親ミニサークルプラスミドを含む宿主細胞を準備するステップを含み、前記宿主細胞は、前記親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素を発現することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部位特異的なリコンビナーゼ酵素が、任意に誘導性プロモーターの支配下において、前記宿主細胞ゲノムによってコードされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記部位特異的なリコンビナーゼ酵素が、任意に誘導性プロモーターの支配下において、前記宿主細胞中のプラスミド(例えば、前記親ミニサークルプラスミド)によってコードされる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記宿主細胞中において前記部位特異的リコンビナーゼの発現を誘導して、前記細胞における前記DNAミニサークルの形成を促進するステップをさらに含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主細胞から前記DNAミニサークルを単離するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、前記親ミニサークルプラスミドを、前記親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素とインビトロで接触させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、前記DNAミニサークルの一本鎖を切断して、前記RCA鋳型を準備するステップを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、プライマーを前記DNAミニサークルとハイブリダイズさせるステップを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プライマーが、前記親ミニサークルプラスミドの組み換えによって形成される前記DNAミニサークル中の配列とハイブリダイズする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記切断ドメインが、前記ポリヌクレオチド配列と直接接している、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記切断ドメインが、切断酵素によって認識される配列を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記切断ドメインが、ヘアピン構造を形成することができる配列を含むか、またはそれからなる、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘアピン構造の二本鎖部分が、切断酵素によって認識される配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記切断酵素が、II型制限エンドヌクレアーゼまたはホーミングエンドヌクレアーゼである、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチド配列と隣接する前記切断ドメインが、同じ酵素によって切断される、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記DNAミニサークルが、複数のポリヌクレオチド配列を含み、各ポリヌクレオチド配列が、切断ドメインと隣接する、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド配列が、異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記RCA反応が、1つ以上の官能化ヌクレオチド(dNTP)の存在下において実施される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の一本鎖ポリヌクレオチドを単離または精製するステップをさらに含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルの使用であって、前記DNAミニサークルが、切断ドメインと隣接する生成対象の前記ポリヌクレオチド配列を含む、使用。
【請求項22】
前記DNAミニサークルが、前記親ミニサークルプラスミドを含む宿主細胞中において、前記親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素の発現を誘導することによって得られる、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記DNAミニサークルが、前記親ミニサークルプラスミドを、前記親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素とインビトロで接触させるステップによって得られる、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記切断ドメインが、請求項11から16のいずれか1項で定義されるとおりであり、および/または前記DNAミニサークルが、請求項17で定義されるとおりである、請求項21から23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
親ミニサークルプラスミドであり、前記親ミニサークルプラスミドが、
(i)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列、または
(ii)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列に対する挿入部位
を含む(a)第1のドメインと、
(i)2つ以上のニッカーゼ切断ドメインであって、前記プラスミドDNAの各鎖が、少なくとも1つのニッカーゼ切断ドメインを含む、2つ以上のニッカーゼ切断ドメイン、および/または
(ii)前記第1のドメイン中の前記リコンビナーゼ結合部位を認識するリコンビナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列
を含む(b)第2のドメインと
を含む、親ミニサークルプラスミド。
【請求項26】
(i)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列、または
(ii)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列に対する挿入部位
を含む(a)第1のドメインと、
(b)2つ以上のニッカーゼ切断ドメインを含む第2のドメインであって、前記プラスミドDNAの各鎖が、少なくとも1つのニッカーゼ切断ドメインを含む、第2のドメインと
を含む、請求項24に記載の親ミニサークルプラスミド。
【請求項27】
前記第1のドメインが、ニッカーゼ切断ドメインを含み、任意に、前記親ミニサークルプラスミドの前記第1のドメイン中の前記ニッカーゼ切断ドメインが、前記親ミニサークルプラスミドの前記第2のドメイン中の前記ニッカーゼ切断ドメインと同じである、請求項25または26に記載の親ミニサークルプラスミド。
【請求項28】
前記リコンビナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列が、誘導性プロモーターの支配下にある、請求項25または27に記載の親ミニサークルプラスミド。
【請求項29】
前記誘導性プロモーターが、アラビノース誘導性プロモーターである、請求項28に記載の親ミニサークルプラスミド。
【請求項30】
前記親ミニサークルプラスミドが、配列番号1、27もしくは28に記載のヌクレオチド配列または配列番号1、27もしくは28に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項25から29のいずれか1項に記載の親ミニサークルプラスミド。
【請求項31】
(i)親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルであって、前記DNAミニサークルが、切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列を含む、前記DNAミニサークル、または
(ii)請求項25から30のいずれか1項で定義されるとおりの親ミニサークルプラスミドと、
(iii)請求項1から20のいずれか1項に記載の方法に使用するための1つ以上の追加の成分であって、任意に、前記1つ以上の追加の成分が、(a)(i)の前記切断ドメインを切断する1つ以上の切断酵素、および/または(b)官能化dNTPである、1つ以上の追加の成分と
を含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
【請求項32】
前記切断ドメインが、請求項11から16のいずれか1項で定義されるとおりであり、および/または前記DNAミニサークルが、請求項17で定義されるとおりである、請求項31に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法に関する。特に、本発明は、親ミニサークルプラスミドから得られたDNAミニサークルを、酵素が関係するローリングサークル増幅(RCA:rolling circle amplification)反応において鋳型として利用して、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチド(例えば、複数の異なる一本鎖DNAポリヌクレオチドを含むライブラリー)を形成する方法を提供する。本発明はまた、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における親ミニサークルプラスミドの使用も提供する。親ミニサークルプラスミド、(例えば、親ミニサークルプラスミドを含む)方法に使用するためのキット、および本方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチドも提供される。さらに、本発明は、本方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチドの混合物(例えば、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチド)を含むライブラリーを提供する。
【背景技術】
【0002】
一本鎖DNAポリヌクレオチドは、ワトソン・クリック塩基対合により相補的な配列と、例えば分子間でハイブリダイズするその能力のため、広い範囲の用途において有用である。さらに、一本鎖ポリヌクレオチドは、アプタマーとして知られている二次構造を含む、複雑な幾何学的配置および分子集合体を形成するよう、それ自体にハイブリダイズ(すなわち、分子内相補性)することができる。こうしたアプタマーは、非共有結合性相互作用により高い親和性で生物学的標的と結合して、さまざまな異なる機能を生じさせることができる。
【0003】
現在のところ、一本鎖DNAポリヌクレオチドは、固相合成を使用して生成することができ、この場合、ヌクレオチドは、固体支持体に結合した成長する鎖に段階的に付加される。ただし、この方法は、生成されるポリヌクレオチドの長さおよび正確さに関して大幅に限定される場合がある。固相合成によるポリヌクレオチドの生成におけるエラー率は、自然界で観察されるポリメラーゼ酵素のエラー率よりも顕著に高く、ポリヌクレオチドの長さに伴い劇的に増加するため、およそ50ヌクレオチド長の市販のポリヌクレオチドではわずか70%の純度が一般的である。このエラー率により、固相合成法は、長いポリヌクレオチドの生成に適さないものになる。
【0004】
そのような固相合成法の代案として、本発明者らは、配列検証済み鋳型からの「モノクローナル化学量論的」(MOSIC:monoclonal stoichiometric)一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの酵素的生成のための方法を以前に示した(非特許文献1)。代表的な例では、このMOSIC法は、それぞれが制限酵素部位を含むヘアピン配列と隣接する生成対象の1つ以上のオリゴヌクレオチド配列を含む直鎖配列の設計および調製を伴う。その後、直鎖配列は、二本鎖ローリングサークル増幅(RCA)鋳型に環状化され、それにニックが入れられ、RCAによって増幅されて、生成対象の一本鎖オリゴヌクレオチドの複数のコピーを含む、部分的に一本鎖の直鎖コンカテマーを生成する。最後に、上記のヘアピン領域にある制限部位を認識し、コンカテマーを切断する制限酵素でRCA生成物が処理されて、複数の一本鎖オリゴヌクレオチドを放出される。直鎖配列が2つ以上のオリゴヌクレオチド配列を含む場合、切断反応は、所望のオリゴヌクレオチドの混合物をもたらす。混合物中のオリゴヌクレオチドの比率は、元の直鎖配列中の各オリゴヌクレオチド配列の数によって決定される。
【0005】
直鎖配列を環状化して、環状RCA鋳型を生成するMOSIC反応のステップは、一般にリガーゼ酵素を使用した従来のライゲーション反応によって行われる。しかしながら、本発明に至る研究において、本発明者らは、従来のライゲーション反応は、環状化される直鎖分子の長さが増すにつれ、環状化RCA鋳型を生成する効率が低下することを確認した。例えば、従来のライゲーション反応を使用した約1キロベース(kb)以上の長さを有する直鎖分子の分子内環状化は、非常に非効率である。こうした長い直鎖の鋳型を用いると、ライゲーション反応は、分子内よりむしろ、主に分子間のライゲーションをもたらすため、環状化DNA分子よりむしろ圧倒的に直鎖コンカテマーを生成する。この結果として、RCA鋳型を生成するために使用される直鎖配列が長い(およそ1kb以上の長さの)場合、例えば、長いポリヌクレオチドおよび/または異なる配列を有する多数のオリゴヌクレオチドを生成することが望まれる場合、この方法は、ライゲーション反応後に、直鎖コンカテマーから環状DNA分子を単離し、RCA鋳型として使用できるよう環状DNA分子を濃縮するさらなるステップを含まなければならない。これらの追加ステップは、プロセスをさらに時間のかかるものにするため、さらに高価になる。場合によっては、RCA反応のための鋳型にするために充分な環状DNA分子を生成することには適していない場合もある。
【0006】
こうした問題に鑑み、一本鎖ポリヌクレオチドを生成する代替的な方法、特に(例えば、約1kb以上の)長いポリヌクレオチドおよび/または異なる配列を有する多数のオリゴヌクレオチドを形成するために有効な方法が望まれている。
【0007】
遺伝子治療と関連して、優れたトランスフェクション率および宿主細胞における導入遺伝子の長期間の発現が、目的とする導入遺伝子を含む組み換えプラスミドからの細菌遺伝子カセット(例えば、複製開始点、抗生物質耐性遺伝子など、これらは、プラスミド自体の増殖に主に必要とされる)の除去によって達成可能であることが示された(非特許文献2)。
【0008】
したがって、導入遺伝子発現カセットを含むDNAミニサークルとして知られている小さなプラスミドを生成するために、プラスミドを増殖させること、およびプラスミドから上記の望ましくないDNAフラグメントを切除することの両方をする細菌の機構を利用するように、いわゆるミニサークル系が設計された(参照によって本明細書に組み込まれる、非特許文献3)。したがって、最初のプラスミドは、DNAミニサークルを生じさせる「親ミニサークルプラスミド」と考えることができる。
【0009】
これらのミニサークル系は、一般に親ミニサークルプラスミドに存在する2つのリコンビナーゼ結合部位間の組み換え反応を媒介するリコンビナーゼ酵素(「インテグラーゼ」と呼ばれることもある)の使用を伴う。親ミニサークルプラスミドは、リコンビナーゼ結合部位に近接する(flanked)(隣接する(bordered))導入遺伝子発現カセットを含むように設計される。2つのリコンビナーゼ結合部位間の組み換え反応は、介在導入遺伝子を含むDNAミニサークルを形成する。したがって、DNAミニサークルは、より大きな親ミニサークルプラスミドから効果的に切除され、ここで不要な細菌遺伝子カセットを捨て去る。DNAミニサークルは、細胞をトランスフェクトするために使用することができ、したがって、それに続く遺伝子治療の効率を向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】デュカーニ(Ducani)ら、2013年、ネイチャー・メソッド(Nature Methods)、p.647~652
【非特許文献2】マイアホーファー(Mayrhofer)ら、2009年、ジーン・セラピー・オブ・キャンサー(Gene Therapy of Cancer)、p.87~104
【非特許文献3】ケイ(Kay)ら、2010年、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、p.1287-1289
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、ミニサークル系が、一本鎖DNAポリヌクレオチド、特に(例えば、約1kb以上の)長いポリヌクレオチドの効率的な生成に適した環状化RCA鋳型を生成するよう適合させることができることを確認した。この関連で、本発明者らは、pM1、pM2およびpM3(それぞれ、配列番号1、27および28)として知られている親ミニサークルプラスミドを開発した。これらは、一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するためにMOSIC法に使用するためのRCA鋳型の形成に特に有用であることがわかる。
【0012】
ミニサークル系を使用した一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成のためのRCA鋳型の形成は、元のMOSIC法を超える多くの利点を有する。MOSIC法は、一般に生成対象のオリゴヌクレオチド配列を含む直鎖配列の生成を伴い、これは、(例えば、シーケンシングによって)その配列が確認可能であるように、かつ細菌細胞における増殖により増幅可能であるように、プラスミドに挿入される。その後、プラスミドは、細菌から精製され、生成対象のオリゴヌクレオチド配列を含む配列が、プラスミドから切除され、精製された後、再環状化されて(この再環状化プロセスは、一般に上記のとおり精製のさらなるステップを含む)、RCA鋳型を形成する。
【0013】
ミニサークル系を本方法での使用に適合させることによって、本発明者らは、このプロセスにおけるステップの数を劇的に減らすことができた。MOSIC法においてRCA鋳型として働くDNAミニサークルは、切除、精製および再環状化を必要とせずに、親ミニサークルプラスミドを含む細菌培養物から直接単離することができる。特に、DNAミニサークルは、インビトロにおいても親ミニサークルプラスミドから生成することができる。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、任意のインタクトな親ミニサークルプラスミド(すなわち、組み換えされていないプラスミド)および骨格プラスミド(すなわち、リコンビナーゼ結合部位の外側の親ミニサークルプラスミドの領域)の分解に続いてDNAミニサークルの切除を可能にするよう配置または構成されてもよい。これにより、切除されたDNAミニサークルのみが、確実にRCAのための鋳型として機能できるようになる。いくつかの実施形態において、RCA反応は、切除されたDNAミニサークルの領域のみに相補的なプライマーを利用してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、親ミニサークルプラスミドからの切除に続いてDNAミニサークルを分離する必要がない。それゆえに、本方法は、追加の精製ステップの必要性を低減し、RCA鋳型をさらに高い収率で生成することを可能にする。
【0014】
このように、本発明者らは、ミニサークルアプローチが、大きな環状化RCA鋳型、例えば、約1kb以上の長さである鋳型の効率的な生成を可能にすることを確認した。これは、長い(例えば、約1kb以上の長さである)一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成および/または単一の反応における異なる配列を有する多数のオリゴヌクレオチドの生成に特に有利である。
【0015】
それに応じて、最も広くは、本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における親ミニサークルプラスミドから得られたDNAミニサークルの使用であって、DNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む、使用を提供することがわかる。DNAミニサークルは、切断されて、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成することができるRCA生成物を形成するためのRCA反応に使用される。
【0016】
特に、本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における、複数の親ミニサークルプラスミドから得られる複数のDNAミニサークルの使用であって、各DNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む、使用を提供することがわかる。前記DNAミニサークルは、切断されて、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成することができるRCA生成物を形成するためのRCA反応に使用される。
【0017】
別の見方をすれば、本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における親ミニサークルプラスミドの使用であって、前記親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む、使用を提供することがわかる。
【0018】
特に、本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成における複数の親ミニサークルプラスミドの使用を提供し、前記親ミニサークルプラスミドから得られる複数のDNAミニサークルはそれぞれ、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む。
【0019】
別の見方をすれば、本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法を提供し、前記方法は、
(a)親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルを準備するステップであって、前記DNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む、準備するステップと、
(b)(a)の前記DNAミニサークルを鋳型として用いてローリングサークル増幅(RCA)反応を実施して、切断ドメインと隣接する生成対象の前記ポリヌクレオチド配列の複数のコピーを含むRCA生成物を生成するステップと、
(c)前記RCA生成物を前記切断ドメインで切断して、前記複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出するステップと、を含む。
【0020】
このように、特に本発明は、複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するための方法を提供し、前記方法は、
(a)複数の親ミニサークルプラスミドから得られる複数のDNAミニサークルを準備するステップであって、各前記DNAミニサークルは、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列を含む、準備するステップと、
(b)(a)の前記DNAミニサークルを鋳型として用いてローリングサークル増幅(RCA)反応を実施して、それぞれが切断ドメインと隣接する生成対象の前記ポリヌクレオチド配列の複数のコピーを含む複数のRCA生成物を生成するステップと、
(c)前記RCA生成物を前記切断ドメインで切断して、前記複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出するステップと、を含む。
【0021】
「プラスミド」という用語は、宿主細胞、例えば、原核細胞または細菌細胞中で自律的に複製することができる染色体外の環状DNA分子を指す。
【0022】
「親ミニサークルプラスミド」という用語は、部位特異的なリコンビナーゼ酵素の存在下(および適した条件下)において組み換えて、ともに元のプラスミドよりも小さい2つの環状DNA分子を形成することができるプラスミドを指す。一般に、親ミニサークルプラスミドは、リコンビナーゼ酵素が作用するリコンビナーゼ結合部位と隣接する、目的とするポリヌクレオチドを含む第1のドメインと、プラスミドの宿主細胞内における、複製、増殖および保持に必要とされるエレメント、例えば、複製開始点、選択マーカー(例えば、抗生剤耐性遺伝子)などを含む第2のドメインとを含む。下で述べるとおり、親ミニサークルプラスミドは、特に第2のドメイン中に、追加のエレメントを含んでもよい。このように、親ミニサークルプラスミドの組み換えは、目的とするポリヌクレオチドを含む第1の環状DNA分子(サークル)、いわゆる、「ミニサークル」と、宿主細胞内における、複製、増殖および保持に必要とされるエレメント、すなわち、プラスミド骨格を含む第2の環状DNA分子(サークル)とをもたらす。したがって、親ミニサークルプラスミドは、「ミニサークル産生プラスミド」または「ミニサークルプラスミド」と見ることもでき、これらの用語は、本明細書では同義に使用される。
【0023】
本発明において、親ミニサークルプラスミドの第1のドメイン中の目的とするポリヌクレオチドは、切断ドメインと隣接する、生成対象のポリヌクレオチドを含む。切断ドメインと隣接する、1つ以上の所望のポリヌクレオチド配列を含むこの配列は、「偽遺伝子」と呼ばれる。
【0024】
したがって、本方法のステップ(a)で準備されるDNAミニサークルは、組み換え反応により親ミニサークルプラスミドから生成される。この組み換え反応は、リコンビナーゼ酵素が媒介し、リコンビナーゼ酵素は、親ミニサークルプラスミド中のリコンビナーゼ結合部位を認識し、その結合部位の間には、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチドを含む配列がある。
【0025】
したがって、本発明の方法において、DNAミニサークルを準備するステップは、いくつかの段階を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、親ミニサークルプラスミドからDNAミニサークルを得るステップを含んでもよい。
【0026】
親ミニサークルプラスミドからDNAミニサークルを得るステップは、任意の適した手段によって達成されてもよい。上述のとおり、DNAミニサークルは、組み換え反応に適した条件下で、結合部位を介して親ミニサークルプラスミドを組み換えることができるリコンビナーゼ酵素と親ミニサークルプラスミドとを接触させることによって生成される。したがって、組み換え反応は、インビトロで行われてもよい。ただし、好適な実施形態において、DNAミニサークルは、例えば、親ミニサークルプラスミド中のリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素を発現することができる宿主細胞(例えば、細菌細胞)中において親ミニサークルプラスミドを増殖させることによってインビボで生成される。したがって、いくつかの実施形態において、ステップ(a)は、親ミニサークルプラスミドを含む宿主細胞を準備するステップを含んでもよく、この場合、宿主細胞は、親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素を発現することができる。特に、ステップ(a)は、それぞれが親ミニサークルプラスミドの複数のコピーを含む複数の宿主細胞を準備するステップを含んでもよく、この場合、宿主細胞は、親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位に作用する部位特異的なリコンビナーゼ酵素を発現することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本方法は、親ミニサークルプラスミドを増幅するステップ、例えば、親ミニサークルプラスミドを含む宿主細胞(例えば、細菌細胞)を増殖させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、本方法は、親ミニサークルプラスミドを組み換えて、DNAミニサークルを形成するよう働くリコンビナーゼ酵素の発現を宿主細胞(例えば、細菌細胞)中において誘導するステップを含んでもよい。別の見方をすれば、宿主細胞中における部位特異的リコンビナーゼの発現は、細胞中におけるDNAミニサークルの形成を促進する。使用される特定の細菌宿主に応じて細菌を増殖させることができるために適した条件は、当該技術分野において周知であるため、当業者は、そのような条件を選択することができるであろう。
【0028】
適した宿主細胞(例えば、細菌細胞)の選択は、親ミニサークルプラスミドの構造によって決まることになる。上述のとおり、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、さまざまな機能を有する多くの追加のエレメントを含んでもよい。
【0029】
例えば、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、DNAミニサークルを形成するための組み換え反応に使用されるリコンビナーゼ酵素をコードする配列を含んでもよい(例えば、pM2およびpM3)。あるいは、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、リコンビナーゼ酵素をコードする配列を含まなくてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、親ミニサークルプラスミドは、親ミニサークルプラスミドに存在するリコンビナーゼ結合部位を認識するリコンビナーゼ酵素をコードする配列をゲノムに、または別個のプラスミドに含む宿主細胞(例えば、細菌細胞)中で増殖させられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ酵素をコードする配列は、誘導性プロモーターと機能可能に連結される。誘導性プロモーターの使用は、本発明の方法に使用されるために充分な量のDNAミニサークルを得るために、親ミニサークルプラスミドを含む充分な細胞が増殖させられるまで、確実にリコンビナーゼが発現されない(または最小限しか発現されない)ようにする。したがって、宿主細胞(複数可)中においてリコンビナーゼ酵素の発現を誘導するステップは、細胞(複数可)を、リコンビナーゼ酵素の発現を直接的または間接的に促進する(例えば、増加させる)物質と接触させるステップを含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドからDNAミニサークルを得るステップは、親ミニサークルプラスミドをリコンビナーゼ酵素とインビトロで(例えば、反応容器中の溶液中で)接触させるステップを含み、リコンビナーゼ酵素は、結合部位を介して親ミニサークルプラスミドを組み換えることができる。親ミニサークルプラスミドをリコンビナーゼ酵素と接触させるステップは、組み換え反応に適した条件下で行われる。
【0032】
親ミニサークルプラスミドからDNAミニサークルを得るステップがインビトロで行われる場合、親ミニサークルプラスミドは、リコンビナーゼ酵素をコードしないことが好ましいこともある。したがって、いくつかの実施形態では、親ミニサークルプラスミドは、リコンビナーゼ酵素をコードしない。
【0033】
当業者は、どのインビトロ条件(例えば、バッファー、温度、反応体濃度)が組み換え反応に適しているか容易に判断でき、これらの条件は、反応で使用されるリコンビナーゼ酵素により異なることになる。いくつかの実施形態において、適した条件としては、親ミニサークルプラスミドからのDNAミニサークルの少なくとも約30%の収率、例えば、DNAミニサークルの少なくとも約40%、50%、60%または70%の収率をもたらす条件が挙げられる。別の見方をすれば、適した条件下においてインビトロで親ミニサークルプラスミドをリコンビナーゼ酵素と接触させるステップは、インビトロ反応において少なくとも約30%、例えば、少なくとも約40%、50%、60%または70%の親ミニサークルプラスミドからDNAミニサークルが生成される。
【0034】
「リコンビナーゼ」または「リコンビナーゼ酵素」という用語は、それぞれのリコンビナーゼに特異的な標的部位配列(「結合部位」と呼ばれる場合が多い)間の部位特異的なDNA交換反応を触媒する酵素を指す。プラスミド上の結合部位を使用してDNAミニサークルを得る組み換え反応に関与することが可能な任意の適したリコンビナーゼ酵素が、本発明の方法に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼは、セリンインテグラーゼ、例えば、PhiC31インテグラーゼまたはParAリゾルバーゼである。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼは、チロシンインテグラーゼ、例えば、Creリコンビナーゼ、バクテリオファージλインテグラーゼまたはFLPリコンビナーゼである。したがって、適したリコンビナーゼ酵素としては、PhiC31インテグラーゼ、ParAリゾルバーゼ、Creリコンビナーゼ、バクテリオファージλインテグラーゼ、Hinリコンビナーゼ、TreリコンビナーゼおよびFLPリコンビナーゼが挙げられる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「リコンビナーゼ」という用語は、天然に存在する酵素だけでなく、天然に存在するリコンビナーゼ酵素の誘導体も含む、すべてのそのような改変誘導体も含む。
【0036】
本発明に使用するための特に好適なリコンビナーゼ酵素としては、PhiC31インテグラーゼ、ParAリゾルバーゼ、FLPリコンビナーゼおよびその誘導体、例えば、配列改変誘導体、または変異体が挙げられる。
【0037】
リコンビナーゼ酵素の配列改変誘導体または変異体としては、野生型配列の機能活性のうちの少なくともいくつかを保持する変異体が挙げられる。変異は、例えば、温度、基質濃度、pHなどのさまざまな反応条件下で酵素の活性プロフィールに影響を及ぼす、例えば、組み換え率を高めるか、または低下させることもある。変異または配列改変はまた、酵素の熱安定性に影響を及ぼす場合もある。
【0038】
いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ酵素は、PhiC31インテグラーゼ(例えば、UniProtKB受託番号Q9T221)であってもよい。この酵素は、phiC31バクテリオファージ由来の部位特異的リコンビナーゼであり、これは、リコンビナーゼ結合部位attBおよびattP(配列番号4および5)を認識する。したがって、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、PhiC31インテグラーゼをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞ゲノムは、PhiC31インテグラーゼをコードする配列を含むか、または宿主細胞は、PhiC31インテグラーゼをコードする配列を含むプラスミドを含む。いくつかの実施形態において、PhiC31インテグラーゼをコードする配列は、誘導性プロモーターと機能可能に連結される。
【0039】
いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ酵素は、ParAリゾルバーゼ(例えば、UniProtKB受託番号P22996)である。この酵素は、大腸菌(E.coli)のIncP-アルファRP4プラスミド上にコード化された部位特異的リコンビナーゼであり、これは、リコンビナーゼ結合部位mrs_lおよびmrs_r(配列番号29および30)を認識する。したがって、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、ParAリゾルバーゼをコードする配列を含む(例えば、pM3、配列番号28)。いくつかの実施形態において、宿主細胞ゲノムは、ParAリゾルバーゼをコードする配列を含むか、または宿主細胞は、ParAリゾルバーゼをコードする配列を含むプラスミドを含む。いくつかの実施形態において、ParAリゾルバーゼをコードする配列は、誘導性プロモーターと機能可能に連結される。
【0040】
いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ酵素は、FLPリコンビナーゼ(例えば、UniProtKB受託番号P03870)である。この酵素は、サッカロマイセス・セレビシエ(S.cerevisiae)によってコードされる部位特異的リコンビナーゼであり、これは、リコンビナーゼ結合部位FLPrおよびFLPl(配列番号31および32)を認識する。したがって、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、FLPリコンビナーゼをコードする配列を含む(例えば、pM2、配列番号27)。いくつかの実施形態において、宿主細胞ゲノムは、FLPリコンビナーゼをコードする配列を含むか、または宿主細胞は、FLPリコンビナーゼをコードする配列を含むプラスミドを含む。いくつかの実施形態において、FLPリコンビナーゼをコードする配列は、誘導性プロモーターと機能可能に連結される。
【0041】
上述のとおり、親ミニサークルプラスミドは、任意の適切な宿主細胞中で増殖させられてもよい。宿主細胞は、プラスミドの複製を、好ましくは、高コピー数で維持することができる原核(例えば、細菌)または真核(例えば、酵母菌)細胞であってもよい。好適な実施形態において、細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌などの細菌細胞である。
【0042】
いくつかの実施形態において、適切な宿主細胞(例えば、細菌細胞)は、親ミニサークルプラスミドからのDNAミニサークルの生成を容易にする特徴を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、宿主細胞は、適したリコンビナーゼ、すなわち、親ミニサークルプラスミド中のリコンビナーゼ結合部位を認識することができるリコンビナーゼを発現することができる場合もある。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼをコードする核酸は、上記のとおり、誘導性プロモーターと機能可能に連結される。好適な実施形態において、リコンビナーゼをコードする遺伝子が、宿主細胞ゲノムに組み込まれる。ただし、リコンビナーゼをコードする遺伝子は、宿主細胞内のプラスミド上に設けられてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、本方法に有用であるとわかるエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよび/またはニッカーゼ)、例えば、親ミニサークルプラスミド中の1つ以上の切断ドメインを認識し、切断することができるエンドヌクレアーゼを発現することができる場合もある。いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼをコードする核酸は、上記のとおり、誘導性プロモーター、例えば、リコンビナーゼの発現を制御するために使用されるのと同じ誘導性プロモーター系と機能可能に連結される。好適な実施形態において、エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、宿主細胞ゲノムに組み込まれる。
【0044】
宿主細胞は、本発明の方法における親ミニサークルプラスミド系の使用を容易にする他の特徴を含んでもよい。例えば、宿主細胞は、下でさらに詳細に記載されているとおり、本方法に有用であるとわかるポリメラーゼ酵素、すなわち、DNAポリメラーゼを発現することができる場合もある。DNAポリメラーゼの発現は、誘導性プロモーター系の支配下にあってもよい。誘導性プロモーター系は、宿主細胞において他の遺伝子、例えば、リコンビナーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼの発現を制御するために使用される系と同じであっても、または異なってもよい。
【0045】
本発明の方法に有用であるとわかる酵素を発現することができる宿主細胞が、所望の働きを実現するために充分な量でそうした酵素を発現することができなければならないことは明白であろう。これは、任意の適した手段によって達成されてもよい。例えば、コード配列は、強力なプロモーターと機能可能に連結されてもよく、および/または宿主細胞は、複数のコピー、例えば、2、3、4、5コピー以上のコード配列を含んでもよい。
【0046】
上述のとおり、いくつかの実施形態において、宿主細胞における、例えば、親ミニサークルプラスミドによってコードされる酵素、別個のプラスミドによってコードされる酵素、および/または宿主細胞ゲノム中の酵素の発現は、酵素の発現が容易に制御され得るよう、誘導性発現系によって制御されてもよい。当該技術分野において既知の任意の適した誘導性発現系が使用されてもよく、適した発現系の選択は、当業者の認識範囲内である。当然のことながら、誘導性発現系は、宿主細胞および親ミニサークルプラスミドと適合していなければならない。例えば、いくつかの実施形態において、誘導性発現系は、アラビノース誘導系(例えば、L-アラビノース誘導性araCBAD系)であってもよい。したがって、宿主細胞は、インデューサーが検知され、発現が引き起こされ得るよう、アラビノーストランスポーターを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、大腸菌株、例えば、L-アラビノース誘導性araCBAD系を含む大腸菌株である。好適な実施形態において、大腸菌株は、ZYCY10P3S3Tである(参照によって本明細書に組み込まれる、ケイら、2010年、ネイチャー・バイオテクノロジー28(12)、p.1287-1289を参照)。いくつかの実施形態において、大腸菌株は、DH10B、Top10またはLMG194である。
【0047】
偽遺伝子を含む親ミニサークルプラスミドが生成されたら、特許請求される方法に使用するためのDNAミニサークルを生成するために、プラスミドが繰り返し使用できるよう、プラスミドのストックが生成されてもよいことは明らかであろう。言い換えると、偽遺伝子を含む親ミニサークルプラスミドを毎回新たに形成する必要はなく、偽遺伝子によってコードされる複数の一本鎖ポリヌクレオチド(複数可)を生成することが必要とされる。
【0048】
それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、DNAミニサークルを準備するステップは、親ミニサークルプラスミドを調製するステップを含む場合もある。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、その結果、例えば、インシリコで偽遺伝子配列を設計するステップを含んでもよい。したがって、本方法は、偽遺伝子を設計するコンピュータ実装方法を利用してもよい。そのような方法は、当該技術分野、例えば、デュカーニら、2013年、上記において示されている。「偽遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、切断ドメインと隣接する1つ以上の所望のポリヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を指す。あるいは、この配列は、本明細書では「核酸構築物」と呼ばれる場合もある。
【0049】
インシリコで設計される偽遺伝子配列は、商業的に利用可能な遺伝子合成方法、または当該技術分野において既知の任意のその他の適した手段、例えば、アセンブリーPCRを使用して生成(例えば、合成)することができる。したがって、本方法は、偽遺伝子を生成するステップを含む場合もある。
【0050】
次に、偽遺伝子が増幅され、続いてDNAミニサークルに変換され得るよう、偽遺伝子が親ミニサークルプラスミドに導入される。したがって、本方法は、偽遺伝子を親ミニサークルプラスミドに挿入するステップを含んでもよい。偽遺伝子の親ミニサークルプラスミドへの挿入は、当該技術分野において既知の任意の適した手段を使用して行うことができる。例えば、偽遺伝子は、下に示されるとおり、リガーゼ酵素を使用して親ミニサークルプラスミドに連結されてもよい。ライゲーションが行われるのを可能にするために、偽遺伝子の少なくとも1つの5’末端がリン酸化されることはこの関連で理解されるであろう。偽遺伝子を生成するステップが、5’末端がリン酸化されていないDNA分子をもたらす実施形態において、本方法は、例えば、T4ポリヌクレオチドキナーゼなどのキナーゼ酵素を使用して、偽遺伝子の5’末端(複数可)をリン酸化するさらなるステップを含んでもよい。当然のことながら、組み換え反応後にDNAミニサークル中に偽遺伝子配列が保持されるために、偽遺伝子配列は、リコンビナーゼ結合部位の間に位置するよう、親ミニサークルプラスミドに導入されなければならない。したがって、偽遺伝子は、結合部位と隣接するよう、親ミニサークルプラスミドに導入され、組み換え反応により、偽遺伝子を含むDNAミニサークルがもたらされる。この状況において、「隣接する」は、リコンビナーゼ結合部位が偽遺伝子配列と直接的または間接的に近接することを意味する。
【0051】
偽遺伝子配列を含む親ミニサークルプラスミドは、その後、上記のとおり適した宿主細胞(例えば、細菌細胞)に形質転換される。これは、例えば、任意の適した方法を使用した、シーケンシングおよび変異誘発の反復により、偽遺伝子の配列が(例えば、シーケンシングによって)チェックされることを可能にし、配列中のあらゆるエラーが修正されることを可能にする。さらに、親ミニサークルプラスミドを含む細菌を増殖させるプロセスは、有用な増幅ステップであり、これは、著しいコピー数の親ミニサークルプラスミド、よって最終的にRCA反応のための鋳型として働くDNAミニサークルの形成を促進する。
【0052】
増幅に加えて、偽遺伝子を含む親ミニサークルプラスミドを細菌にトランスフェクトするプロセスは、細菌のグリセロールストックを生成することも可能にする。所望の偽遺伝子プラスミドを含む細菌は、グリセロール中で調製され、凍結され、安定して長期間保存することができる。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態において、本方法のステップ(a)は、
(i)親ミニサークルプラスミドに切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列を含む直鎖DNA分子をクローニングするステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた親ミニサークルプラスミドを宿主細胞(例えば、細菌細胞)にトランスフェクトするステップと、
(iii)前記親ミニサークルプラスミドを増幅するステップ(例えば、親ミニサークルプラスミドを含む宿主細胞を増殖させるステップ)と、
(iv)組み換え反応を実施して、前記切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列を含むDNAミニサークルを生成するステップ(例えば、宿主細胞においてリコンビナーゼ酵素の発現を誘導するステップまたは単離された親ミニサークルプラスミドをリコンビナーゼ酵素とインビトロで接触させるステップ)と、任意に、
(v)ステップ(iv)で得られたDNAミニサークルを単離するステップと
を含む。
【0054】
上述のとおり、偽遺伝子を含む親ミニサークルプラスミドが先に生成された場合、DNAミニサークルを得るために、ステップ(i)は必要とされない。同様に、親ミニサークルプラスミドが先に宿主細胞にトランスフェクトされて、例えば、グリセロールストックを生成した場合、DNAミニサークルを得るために、ステップ(ii)は必要とされず、例えば、親ミニサークルプラスミドを増幅するために、宿主細胞がグリセロールストックから直接増殖させられてもよい。
【0055】
ステップ(iv)がインビトロで行われることがあるため、本方法は、親ミニサークルプラスミドを、例えば、プラスミドを増幅するために使用された宿主細胞から単離するステップをさらに含んでもよい。プラスミドを宿主細胞から単離する任意の手段が単離ステップに使用されてもよく、適した手段は当該技術分野において周知である。
【0056】
DNAミニサークルを単離するステップは、任意の適した手段を使用して達成することができ、これは、本発明の方法の次のステップ、すなわち、RCA反応を実施するために必要とされる純度のレベル、およびDNAミニサークルが生成された方法によって決まることになる。例えば、DNAミニサークルが宿主細胞において生成される実施形態では、DNAミニサークルを単離するステップは、宿主細胞を溶解させて、DNAミニサークルを放出させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、宿主細胞ライセートが、直接RCA反応に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、宿主細胞ライセートは、DNAミニサークルを含む、濃縮または精製された調製物を得るために、精製ステップに供されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、組み換え反応の他の生成物、すなわち、プラスミド骨格、およびあらゆる未反応の(インタクトな)親ミニサークルプラスミドから、DNAミニサークルを分離することが必要な場合もあり、または有利な場合もある。いくつかの実施形態において、本発明の方法の次のステップを妨げる可能性のある成分(例えば、切断酵素、リコンビナーゼ酵素)から、DNAミニサークルを分離することが必要な場合もあり、または有利な場合もある。他の成分からのDNAミニサークルの分離は、任意の適した手段を使用して達成されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、分離は、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィー法を使用した物理的な分離、およびそれに続くDNAミニサークルの単離を伴ってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、分離は、成分の分解および/または変性を伴ってもよい。例えば、下でさらに述べられるとおり、親ミニサークルプラスミドは、RCA鋳型として働けないよう、組み換え反応後にプラスミド骨格および未反応の(組み換えされていない)親ミニサークルプラスミドが(例えば、ニッカーゼなどの切断酵素によって)分解または切断されることを可能にする切断ドメイン(例えば、ニッカーゼ切断ドメイン)を含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態において、他の成分(例えば、プラスミド骨格および未反応の(組み換えされていない)親ミニサークルプラスミド)からのDNAミニサークルの分離は、成分の切断をもたらす条件下で成分を切断酵素と接触させるステップを伴ってもよい。この接触させるステップは、インビボにおいて(例えば、切断酵素の発現を誘導することによって宿主細胞において)でも、あるいはインビトロにおいて(例えば、成分、例えば、宿主細胞ライセートまたはインビトロ組み換え反応の生成物を切断酵素と接触させることによって)でもよいことは明らかであろう。分解(例えば、切断)ステップの生成物は、DNAミニサークルを分離するためにさらに精製されてもよい。
【0060】
したがって、いくつかの実施形態において、DNAミニサークルを単離するステップは、他の成分、特に、他の核酸成分もしくは分子(例えば、プラスミド骨格および未反応の(組み換えされていない)親ミニサークルプラスミド)からDNAミニサークルを分離または精製するステップを含む。この単離、分離または精製は、当該技術分野において既知の任意の適した方法によって行われてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、単離ステップ(例えば、分離および精製ステップ)後、DNAミニサークルは、DNAミニサークルを得るステップまたは調製するステップに使用された材料または成分由来のあらゆる混入成分(例えば、核酸成分および/または分解生成物)を実質的に含まない場合もある。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、w/w(乾燥重量)で評価される場合、約95もしくは99%超の純度などの約50または60%超、例えば、約70、80もしくは90%超の純度の程度に精製される。そのような純度レベルは、DNAミニサークルの分解生成物を含んでもよい。
【0062】
本発明の他のステップを実施する前に他の成分(例えば、プラスミド骨格および未反応の(組み換えされていない)親ミニサークルプラスミド)からDNAミニサークルを分離することは必須ではない。下で述べるとおり、DNAミニサークルのみとハイブリダイズするRCAプライマーを準備するステップは、確実にDNAミニサークルのみがRCA反応における鋳型として機能するようにすることができる。あるいは、プラスミド骨格および未反応の(組み換えされていない)親ミニサークルプラスミドが分解されたら(例えば、RCAのための鋳型として働けないよう、切断されたら)、分解生成物からDNAミニサークルを分離することは必須ではない(が、いくつかの実施形態では分離が好ましい場合もある)。
【0063】
このように、いくつかの実施形態において、例えば、w/w(乾燥重量)で評価される場合に約50%未満、例えば、約40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%以下のDNAミニサークルを含む、純度が低いDNAミニサークルの濃縮調製物を調製することが有用な場合もある。
【0064】
別の態様において、本発明は、リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列(すなわち、本明細書中で定義される偽遺伝子)を含む親ミニサークルプラスミドを提供する。いくつかの実施形態において、切断ドメインは、下で定義されるとおりのヘアピン構造を形成することができる配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、親ミニサークルは、上で定義されるリコンビナーゼ酵素、例えば、PhiC31インテグラーゼ、ParAリゾルバーゼまたはFLPリコンビナーゼをコードする。
【0065】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)(i)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列(すなわち、例えば、ヘアピン切断ドメインを含む本明細書中で定義される偽遺伝子)、または(ii)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列の挿入部位を含む第1のドメインと、
(b)任意に誘導性プロモーター、例えば、アラビノース誘導性プロモーターの支配下において、リコンビナーゼ酵素(すなわち、第1のドメインのリコンビナーゼ結合部位を認識するリコンビナーゼ酵素)をコードする第2のドメインと
を含む親ミニサークルプラスミドを提供する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、PhiC31インテグラーゼをコードし、PhiC31インテグラーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号4および配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、ParAリゾルバーゼをコードし、ParAリゾルバーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号29および配列番号30に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、配列番号28に示されるヌクレオチド配列または配列番号28に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、該プラスミドは、上記の機能的ドメイン、例えば、挿入部位、結合部位、リコンビナーゼコード配列、および下で詳細に記載される1つ以上の機能的ドメイン、例えば、複製開始点、選択配列、ニッカーゼ切断ドメインなどを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、FLPリコンビナーゼをコードし、FLPリコンビナーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号31および配列番号32に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0070】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、配列番号27に示されるヌクレオチド配列または配列番号27に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、該プラスミドは、上記の機能的ドメイン、例えば、挿入部位、結合部位、リコンビナーゼコード配列、および下で詳細に記載される1つ以上の機能的ドメイン、例えば、複製開始点、選択配列、ニッカーゼ切断ドメインなどを含む。
【0071】
別の実施形態において、本発明は、以下の(a)および(b)を含む親ミニサークルプラスミドを提供する。
(a)(i)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列(すなわち、例えばヘアピン切断ドメインを含む、本明細書中で定義される偽遺伝子)、または(ii)リコンビナーゼ結合部位と隣接する切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列の挿入部位を含む第1のドメイン
(b)2つ以上のニッカーゼ切断ドメインを含む第2のドメインであって、該プラスミドDNAの各鎖は、少なくとも1つのニッカーゼ切断ドメインを含む(すなわち、該プラスミドを、切断ドメインを切断することができるニッカーゼと接触させるステップがプラスミドの両鎖の切断をもたらすよう)、第2のドメイン
【0072】
いくつかの実施形態において、第2のドメインは、3、4、5、6、7、8、9、10以上、例えば、15、20または25以上のニッカーゼ切断ドメインを含み、プラスミドDNAの各鎖は、少なくとも1つのニッカーゼ切断ドメインを含む。いくつかの実施形態において、第2のドメインは、4~8、例えば、6つのニッカーゼ切断ドメインを含み、プラスミドDNAの各鎖は、少なくとも1つのニッカーゼ切断ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ニッカーゼ切断ドメインは、各鎖が複数回切断されるよう構成され、例えば、プラスミドが6つのニッカーゼ切断ドメインを含む場合、各鎖が3回切断されるよう構成される。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つ(例えば、2、3または4つ)のニッカーゼ切断ドメイン(切断ドメイン認識配列)は、結合部位の1つと近接しており、例えば、結合部位の1つの120、110、100、90、80、70、60、50、40もしくは30ヌクレオチド以内など、結合部位の1つの150ヌクレオチド以内にある。例えば、プラスミドの配列が直鎖分子(例えば、配列番号1)として表される場合、近接とは、第1の結合配列(例えば、attB)の最初(5’末端)、または第2の結合部位配列(例えば、attP)の末端(3’末端)の(上で定義されたとおり)150ヌクレオチド以内の配列を指す。いくつかの実施形態において、プラスミドは、各結合部位と近接した2つのニッカーゼ切断ドメイン、すなわち、第1の結合部位(に対して5’)の上流の2つおよび第2の結合部位(に対して3’)の下流の2つを含む。いくつかの実施形態において、2つのニッカーゼ切断ドメインは、結合部位の約50(例えば、約40)ヌクレオチド以内(例えば、上流)にあり、好ましくは、該ドメインは、両鎖の切断を可能にするように構成される。さらにまたは代わりに、いくつかの実施形態において、2つのニッカーゼ切断ドメインは、結合部位の約120(例えば、約110)ヌクレオチド以内(例えば、下流)にあり、好ましくは、該ドメインは、両鎖の切断を可能にするように構成される。
【0074】
任意の適したニッカーゼに対する切断ドメインが、プラスミドに含まれてもよい。いくつかの実施形態において、該切断ドメインは、ニッカーゼ酵素Nt.BspQIもしくはNb.BsrDI、またはその組み合わせに対するものである。いくつかの実施形態において、ニッカーゼNt.BspQIに対する切断ドメインは、配列GCTCTTC(配列番号25)を有してもよい。いくつかの実施形態において、ニッカーゼNb.BsrDIに対する切断ドメインは、配列GCAATG(配列番号26)を有してもよい。
【0075】
好適な実施形態において、プラスミドは、2、3またはそれ以上の異なるニッカーゼ切断ドメインを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、異なるニッカーゼが、各鎖を切断するために使用される、すなわち、2つ以上のニッカーゼ切断ドメインは、異なるニッカーゼ酵素、例えば、上記の酵素の組み合わせによって認識される配列を含む。したがって、いくつかの実施形態において、切断は、ニッカーゼ酵素の混合物を利用してもよい。ただし、いくつかの実施形態において、すべてのニッカーゼ切断ドメインが同じ、すなわち、同じニッカーゼ酵素に対する基質である。これは、単一のニッカーゼ酵素によるインタクトな親ミニサークルプラスミドおよび骨格プラスミドの切断(すなわち、分解または破壊)を可能にする。
【0076】
いくつかの実施形態において、プラスミドは、互いに、例えば、40、30、20、15、10または5ヌクレオチド以下などの50ヌクレオチド以下以内の、互いに近接した少なくとも1組のニッカーゼ切断ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラスミドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のそのようなニッカーゼ切断ドメインの組を含んでもよい。いくつかの実施形態において、各組内のニッカーゼ切断ドメインは、互いに異なってもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1組(例えば、2組)のニッカーゼ切断ドメインは、結合部位との近接に関する上記の要件を満たす、すなわち、その組内の両切断ドメインは、結合部位と近接している。
【0077】
いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第1のドメインは、例えば、切断ドメインとリコンビナーゼ結合部位の間に位置する、すなわち、リコンビナーゼ結合部位が、切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列と間接的に隣接するよう、ニッカーゼ切断ドメインを含む。いくつかの実施形態において、第1のドメイン中のニッカーゼ切断ドメインは、第2のドメイン中のニッカーゼ切断ドメインのうちの少なくとも1つと同じである。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミド中のすべてのニッカーゼ切断ドメインは、同じである。
【0078】
ミニサークルプラスミドの第1のドメイン中の切断ドメインは、「第1のドメイン切断ドメイン」と呼ばれる場合もあり、該ミニサークルプラスミドの第2のドメイン中の切断ドメインは、「第2のドメイン切断ドメイン」と呼ばれる場合もある。このように、ミニサークルプラスミドの第1のドメインは、ポリヌクレオチド配列、すなわち、本方法によって生成されるポリヌクレオチドをコードする配列と隣接する切断ドメインに加えて、追加の切断ドメイン、例えば、ニッカーゼ切断ドメインを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、上で定義される1つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)切断ドメインを含んでもよい。1つ以上のエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)切断ドメインは、ニッカーゼ切断ドメインに加えて、またはその代替物としてであってもよい。いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)切断ドメインは、I-SceIに対するものである。
【0080】
いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、上で定義されるリコンビナーゼをコードする配列を含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、上で定義されるエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)をコードする配列を含んでもよい。
【0082】
親ミニサークルプラスミドの第1のドメイン中の「挿入部位」は、切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列が導入され得る部位を指し、例えば、マルチクローニングサイトまたは複数の(例えば、2~20、2~15もしくは2~10)のマルチユニーク制限酵素切断部位を含むポリリンカーを指す。いくつかの実施形態において、挿入部位は、上で定義されるニッカーゼ切断ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ニッカーゼ切断部位が存在する場合、ニッカーゼ切断部位は、親ミニサークルプラスミドに挿入される偽遺伝子の一部として設けられてもよい。
【0083】
「リコンビナーゼ結合部位」という用語は、リコンビナーゼ酵素によって認識され、ゲノム、例えば、ファージ(ファージ結合部位、attP)および細菌(細菌結合部位、attB)ゲノムの内部に位置する、短い(例えば、約40~60bpなどの約30~150bp)DNA配列を指す。部位特異的リコンビナーゼ(SSR)は、DNA骨格を切断する結合部位を認識し、それと結合することによってDNAセグメントの再構成を行い、含まれる2つのDNAヘリックスを交換し、DNA鎖を再結合する。本発明の親ミニサークルプラスミドは、任意の適したリコンビナーゼ結合部位を含んでもよい。一部の好適な実施形態では、本発明の親ミニサークルプラスミドは、PhiC31インテグラーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号4および配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、ParAリゾルバーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号29および配列番号30に示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、FLPリコンビナーゼに対するリコンビナーゼ結合部位を含む。したがって、いくつかの実施形態において、リコンビナーゼ結合部位は、配列番号31および配列番号32に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0084】
当然のことながら、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、親ミニサークルプラスミド自体の増殖に必要とされる配列、例えば、複製開始点も含む。そのような配列は当該技術分野において周知であり、該プラスミドに使用するために任意の適した配列を選択することができる(例えば、ColE1配列)。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、該プラスミドを含む宿主細胞の選択を可能にさせる配列を含んでもよい。このために適した配列は当該技術分野において周知であり、そのような任意の適した配列を使用することができる。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメインは、抗生物質耐性遺伝子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、抗生物質耐性遺伝子は、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子であってもよい。
【0085】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の親ミニサークルプラスミドは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列または配列番号1に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、該プラスミドは、上記の機能的ドメイン、例えば、挿入部位、結合部位、ニッカーゼ切断ドメイン、複製開始点、選択配列などを含む。
【0086】
核酸配列同一性は、例えば、デフォルト値および可変PAMファクター、ならびに6ヌクレオチドのウィンドウで12.0に設定したギャップ挿入ペナルティおよび4.0に設定したギャップ伸長ペナルティを用いてGCGパッケージを使用したFASTA Searchによって決定されてもよい。好ましくは、上記比較は、完全長の配列にわたって行われてもよいが、それより小さな比較のウィンドウ、例えば、600、500、400、300、200、100または50未満の連続するヌクレオチドにわたり行われてもよい。
【0087】
「機能可能に連結される」という用語は、2つ以上のエレメント間の機能的な連結を指す。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、リコンビナーゼまたはエンドヌクレアーゼなどの酵素)と制御配列(すなわち、プロモーター)の間の機能可能な連結は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現を可能にさせる機能的な連結である。機能可能に連結されたエレメントは、隣接していても、または隣接していなくてもよい。
【0088】
本発明は、有利にも、任意の配列を含むポリヌクレオチドを生成するために使用することができる。したがって、任意の適した配列は、本発明のDNAミニサークル中のポリヌクレオチド配列として使用されてもよい。適した配列とは、ポリヌクレオチド配列ドメインがRCA生成物の生成または切断を妨げてはならない(すなわち、阻害してはならない、または歪めてはならない)ことを意味する。例えば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、RCA反応を行うポリメラーゼの進行を阻害するか、またはその排除をもたらす場合のある二次構造の形成を回避するよう設計されてもよい。それでも、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、アプタマーであってもよく、またはアプタマーをコードしてもよい。
【0089】
さらに、ポリヌクレオチド配列は、RCA生成物中の切断ドメインと特異的にハイブリダイズしないよう、設計されてもよい。別の見方をすれば、ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインは、RCA生成物中のポリヌクレオチド配列(複数可)と特異的にハイブリダイズしないよう、設計されてもよい。
【0090】
DNAミニサークルが複数のポリヌクレオチド配列を含む実施形態において、各配列は、RCA生成物中の他のポリヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズしないよう、設計されてもよい。ただし、いくつかの実施形態では、例えば、特にRCA生成物から放出された後にそのポリヌクレオチドが相互作用するのを可能にするために、相補性の領域を含むポリヌクレオチドを生成することが望ましい場合もある。したがって、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、そのような相互作用がRCA生成物の生成または切断、すなわち、ポリヌクレオチドの生成を妨げない限り、本方法によって生成されるポリヌクレオチドの相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)を促進するよう設計されてもよい。
【0091】
したがって、いくつかの実施形態において、DNAミニサークルのポリヌクレオチド配列の核酸配列は、切断ドメイン中の核酸配列および/または該DNAミニサークル中の他のポリヌクレオチド配列と80%未満の配列同一性を有する。好ましくは、DNAミニサークルのポリヌクレオチド配列は、切断ドメイン中の核酸配列および/または該DNAミニサークル中の他のポリヌクレオチド配列と70%未満、60%、50%または40%未満の配列同一性を有する。配列同一性は、当該技術分野において既知の任意の適した方法によって、例えば、BLASTアライメントアルゴリズムを使用して、求めることができる。
【0092】
このように、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、特に限定するものではなく、本発明の一本鎖DNAポリヌクレオチド、またはその相補鎖を生成するために使用される鋳型配列を指す。これに関して、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは二本鎖であり、よってステップ(b)で得られるRCA生成物中の反復配列およびその逆相補鎖の両方を含む。したがって、本方法は、DNAミニサークルを処理して、RCA鋳型を準備するステップを含む。処理するステップは、RCA生成物において反復されることになる配列を含むDNAミニサークルの鎖を切断するステップを含む。いくつかの実施形態において、切断は、RCA鋳型およびRCA反応のためのプライマーの両方をもたらす。いくつかの実施形態において、切断された鎖は、例えば、切断された鎖の変性および/または分解によって、切断されていないRCA鋳型鎖から分離されてもよい。変性および/または分解は、当該技術分野において既知の任意の適した手段、例えば、熱、アルカリによって達成されてもよい。RCA鋳型を準備するためには、DNAミニサークルの切断された鎖を完全に変性させるか、または分解する必要はない場合もあり、例えば、プライマーがハイブリダイズできるよう、部分的な変性および/または分解で充分な場合もある。
【0093】
本発明は、任意の所望の長さの一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するために使用することができる。上記のとおり、および実施例において示されるとおり、本方法は、有利にも、約1kb以上の長さの一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するために使用することができる。別の見方をすれば、本方法は、偽遺伝子が約1kb以上の長さである場合に特に有利である。偽遺伝子が、切断ドメインと隣接する2つ以上のポリヌクレオチド配列を含むこともあるため、本方法は、同様に、より短いポリヌクレオチドの生成にも適用できる。ただし、本方法がより短いポリヌクレオチド、すなわち、約0.5kb以下のポリヌクレオチドの生成に使用される場合、偽遺伝子が生成対象の2つ以上のポリヌクレオチド配列をコードすることが好ましい。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは、少なくとも約0.5kbの長さ、例えば、少なくとも約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5kbの長さである。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは、少なくとも約2kbの長さ、例えば、3、4、5、6、7、8、9または10kbの長さである。例えば、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは、約1~100kb、例えば、約1~50kb、2~45kb、3~40kb、4~35kbまたは5~30kbであってもよい。DNAミニサークルのサイズが、下で定義される方法によって生成される異なるポリヌクレオチドのサイズおよび数により決まることになることは明らかであろう。
【0095】
したがって、本方法によって生成されるポリヌクレオチド配列は、約6から約50000ヌクレオチド長の間であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、オリゴヌクレオチドの生成と見ることができる。これに関して、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」のサイズの境界は、当該技術分野において明確には定義されていない。例えば、400ヌクレオチド未満の配列は、オリゴヌクレオチドと呼ばれる場合もある。したがって、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドという用語は、本明細書では同義に使用されて、上で指定したサイズ範囲内のヌクレオチド配列を指す。ただし、「ポリヌクレオチド」という用語が使用される場合、一般に400を超えるヌクレオチドを含む配列を指すことになる。したがって、いくつかの実施形態において、本方法および使用は、複数の一本鎖DNA分子を生成することと見ることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、約100から約25000ヌクレオチド長、例えば、約100から約10000ヌクレオチド長、約100から約8000ヌクレオチド長、例えば、約200から約7500ヌクレオチド長、例えば、約300から約6000ヌクレオチド長、約400から約5000ヌクレオチド長、約500から約4000ヌクレオチド長、約500から約3000ヌクレオチド長、約500から約2500ヌクレオチド長、約600から約2000ヌクレオチド長、約600から約1500ヌクレオチド長、約750から約1250ヌクレオチド長、約1000から約1250ヌクレオチド長などを含む、約50から50000ヌクレオチド長であってもよい。
【0097】
上述のとおり、本発明は、例えば、約800ヌクレオチド以上、例えば、約900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000ヌクレオチド以上などを含むより長いポリヌクレオチドの生成に特に効果的である。例えば、本発明によって生成されるポリヌクレオチドは、例えば、約2500、3000、3500ヌクレオチド以上を含む、約1000~50000、1000~40000、1000~30000、1000~20000、1000~10000、1000~9000、1000~8000、1000~7000、1000~6000、1000~5000または1000~4000ヌクレオチドを含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、複数のポリヌクレオチド配列を含み、各ポリヌクレオチド配列は、切断ドメインと隣接する。ポリヌクレオチド配列は、互いに同じであっても、もしくは異なってもよく、またはその組み合わせであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、下で定義されるとおり、同じポリヌクレオチド配列を2コピー以上、例えば、2、3、4、5コピー含んでもよい。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、下で定義されるとおり、複数の異なるポリヌクレオチド配列、例えば、2、3、4、5つなどの異なるポリヌクレオチド配列を1コピーずつ含んでもよい。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、複数の異なるポリヌクレオチド配列を1コピー以上含んでもよい。下でさらに述べられるとおり、本発明は、DNAミニサークル中のポリヌクレオチド配列のコピー数に基づいて制御された化学量論にしたがって複数のポリヌクレオチドを形成するために使用されてもよい。
【0099】
DNAミニサークル中の複数のポリヌクレオチド配列は、任意の順序で存在してもよいことは明白であろう。例えば、複数のコピーの同じポリヌクレオチド配列が、DNAミニサークル中で互いに直接接していてもよい(ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインによってのみ隔てられている)。あるいは、複数のコピーの同じポリヌクレオチド配列の間に異なるポリヌクレオチド配列が散在していてもよい。DNAミニサークル(すなわち、DNAミニサークルをもたらす親ミニサークルプラスミド中の偽遺伝子)は、上で定義されたとおり、RCA生成物の生成または切断を妨げる可能性のあるRCA生成物中の反復配列間の相互作用を回避するか、または最小限にするよう設計されてもよい(例えば、複数のポリヌクレオチド配列の順序)。
【0100】
本明細書中で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上、例えば、本発明の文脈に応じて50、100、150、200、250以上などの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20または30以上を意味する。例えば、DNAミニサークルは、2~100、3~90、4~80、5~70、6~60、7~50、8~40、9~30もしくは10~20のポリヌクレオチド配列などの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20または30以上のポリヌクレオチド配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、50、100、150、200、250以上などの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20または30以上の一本鎖DNAポリヌクレオチド、すなわち、異なる配列および/または構造を有するポリヌクレオチドを生成することができる。DNAミニサークルが複数の異なるポリヌクレオチド配列を含む場合、各鋳型が複数の異なる一本鎖DNAポリヌクレオチドをもたらすことになることがわかる。さらに、RCA反応が複数のDNAミニサークルを利用できるため、この反応は、各一本鎖DNAポリヌクレオチドを複数、例えば、各一本鎖DNAポリヌクレオチドを103、104、105、106、107、108、109、1010コピー以上もたらすことになる。
【0101】
「異なる」という用語は、1つ以上の異なるヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列または一本鎖DNAポリヌクレオチドを指す。したがって、異なるポリヌクレオチド配列は、1つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のヌクレオチド、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90以上のヌクレオチドだけ異なってもよい。差異は、ポリヌクレオチド配列の長さおよび/または配列であってもよい。別の見方をすれば、異なるポリヌクレオチド配列は、互いに99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、70%、60%、50%未満など互いに100%未満の配列同一性を有する。
【0102】
したがって、本発明は、多くの異なる一本鎖DNAポリヌクレオチドを同時に生成するために使用することができる。とりわけ、DNAミニサークルの配列を変えることによって、特に、存在する異なる各ポリヌクレオチド配列のコピー数を制御することによって、本方法によって最終的に生成される一本鎖DNAポリヌクレオチドの化学量論を制御することが可能である。
【0103】
「切断ドメイン」という用語は、本明細書中で使用される場合、一般に(例えば、切断ドメイン内もしくはそれに近接した)プラスミドおよび/またはミニサークルの切断を促進するか、あるいは特異的に切断して一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出することが可能なRCA生成物内のドメインをもたらす親ミニサークルプラスミドおよび/またはDNAミニサークル内のドメインを指す。したがって、親ミニサークルプラスミドおよび/またはDNAミニサークル中の切断ドメインは、直接(例えば、適した条件下で適合したエンドヌクレアーゼと接触させたときに切断ドメイン内もしくはそのすぐ側で切断をもたらすエンドヌクレアーゼ認識部位)切断することができてもよく、またはRCA生成物においてのみ機能的な、もしくは特定の条件下で、例えば、補因子と接触させたときに機能的な切断ドメインを単にコードしてもよい。
【0104】
好適な実施形態において、親ミニサークルプラスミドの第2のドメイン中の切断ドメインは、直接切断することができる。すなわち、それは、切断ドメイン内またはそのすぐ側のエンドヌクレアーゼが関係する一本鎖または二本鎖切断を誘導する。同様に、親ミニサークルプラスミドの第1のドメイン中(すなわち、DNAミニサークル中)のニッカーゼ切断ドメインも、直接切断することができる。すなわち、それは、切断ドメイン内またはそのすぐ側のニッキングエンドヌクレアーゼが関係する一本鎖切断を誘導する。
【0105】
いくつかの実施形態において、生成対象のポリヌクレオチドと隣接する切断ドメイン(すなわち、偽遺伝子中の切断ドメイン)は、RCA生成物中でのみ機能的な、または特定の条件下で、例えば、補因子と接触させたときに機能的な切断ドメインをコードする。
【0106】
「切断」は、共有結合を破壊するあらゆる手段を含む。よって、本発明の文脈において、切断は、例えば、リン酸ジエステル結合の切断によるヌクレオチド鎖中の共有結合の切断(すなわち、鎖切断または鎖分割)を含む。
【0107】
したがって、いくつかの実施形態において、切断ドメインは、核酸分子を切断することができる、すなわち、2つ以上のヌクレオチド間のリン酸ジエステル結合を破壊することができる1つ以上の酵素によって認識される配列を含んでもよい。例えば、切断ドメインは、制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)認識配列を含んでもよい。制限酵素は、二本鎖または一本鎖DNAを制限部位として知られている特異的認識ヌクレオチド配列で切断し、適した酵素は当該技術分野において周知である。例えば、DNAミニサークル中のポリヌクレオチド配列(複数可)の設計を容易にするため、例えば、ポリヌクレオチド配列(複数可)内に生じる切断認識部位が含まれるのを回避するために、低頻度切断制限酵素、すなわち、(少なくとも8塩基対の長さの)長い認識部位を有する酵素を使用することが特に有利な場合もある。
【0108】
いくつかの実施形態において、切断ドメイン(特にDNAミニサークル中の切断ドメイン、すなわち、ポリヌクレオチドと隣接する切断ドメイン)は、II型制限エンドヌクレアーゼ、より好ましくは、IIs型制限エンドヌクレアーゼによって認識される配列を含んでもよい。任意の適した切断ドメインおよび切断酵素が本発明に使用可能であるが、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインを認識する切断酵素は、BseGI、BtsCIまたはそれらのアイソシゾマー、例えば、BstF5IもしくはFokIであってもよい。使用可能な他の代表的な酵素としては、BsrDI、BtsI、BtsIMutI、MlyIまたはそれらのアイソシゾマーが挙げられる。
【0109】
上記のとおり、本方法は、より長い一本鎖ポリヌクレオチド、例えば、少なくとも約800ヌクレオチド長の生成に際だって有用であるとわかる。当然のことながら、長い配列程、エンドヌクレアーゼ、特にIIs型制限エンドヌクレアーゼによって認識される配列を含む可能性が高くなる。したがって、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドと隣接する切断ドメインは、上で定義されたとおりのホーミングエンドヌクレアーゼ切断ドメインであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、切断ステップで使用される切断酵素は、上で定義されたとおりのホーミングエンドヌクレアーゼであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドと隣接する切断ドメインは、メガヌクレアーゼ切断ドメインであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、切断ステップで使用される切断酵素は、メガヌクレアーゼであってもよい。
【0110】
「メガヌクレアーゼ」という用語は、大きな認識部位、例えば、12から40塩基対の二本鎖のDNA配列を特徴とするエンドヌクレアーゼを指す。したがって、I-SceIなどの多くのホーミングエンドヌクレアーゼを、メガヌクレアーゼと見ることができる。異なるタンパク質由来の、核酸結合ドメインとエンドヌクレアーゼ切断ドメインを融合することによって、キメラメガヌクレアーゼが生成されてもよい。例えば、上記のとおりDNA配列の部位特異的な認識(結合)が可能な任意のタンパク質ドメインが、エンドヌクレアーゼによって認識される配列の外側、例えば、認識配列から特定の距離において切断するエンドヌクレアーゼ由来の切断ドメインと融合されてもよい。当該技術分野において既知の任意の適したメガヌクレアーゼが、本明細書に記載されている方法、例えば、RCA生成物を切断するステップに使用されてもよい。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態において、RCA反応の生成物を切断するステップは、適した条件下でRCA生成物を切断酵素と接触させて、切断ドメインにおいてRCA生成物を選択的に切断するステップを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、切断ドメインは、別の成分の添加によってRCA生成物において、機能的にされてもよい(活性化されてもよい)、すなわち、RCA生成物が、機能的切断ドメイン、例えば、エンドヌクレアーゼ認識配列を含むよう操作されてもよい。例えば、これは、オリゴヌクレオチド(本明細書中で「制限オリゴヌクレオチド」または「切断オリゴヌクレオチド」と呼ばれる)をRCA生成物の切断ドメインとハイブリダイズさせて、二重鎖を形成することによって達成されてもよい。形成された二重鎖の少なくとも一部は、エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことになり、これが、切断されて、一本鎖DNAポリヌクレオチドの放出をもたらすことができる。これは、RCA生成物、特に切断ドメインに組み込まれるヌクレオチド(例えば、下で述べられる官能化ヌクレオチド)が切断酵素の活性を妨げる(例えば、効率を低下させる)可能性のある実施形態において特に有利な場合もある。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態において、RCA反応の生成物を切断するステップは、RCA生成物を切断オリゴヌクレオチドおよび切断酵素と接触させるステップを含んでもよい。切断オリゴヌクレオチドおよび切断酵素は、同時にまたは連続的にRCA生成物と接触させられてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、切断ドメインは、切断酵素以外の手段によって切断されてもよい。例えば、切断ドメインは、DNAザイムヌクレアーゼなどの自己切断型オリゴヌクレオチド配列を含んでもよい。適した自己切断型配列は、当該技術分野において知られている。自己切断型配列を利用する実施形態において、切断ドメインは、RCA生成物中でのみ機能的(活性がある)であってもよい。あるいは、自己切断型配列は、特定の条件下で機能的である場合もあるため、本方法は、切断ドメインにおいてRCA生成物の切断を促進する条件、すなわち、例えば、自己切断活性に必要とされる金属イオンなどの補因子と、RCA生成物を接触させて、自己切断型配列を活性化する条件にRCA生成物を供するステップを含んでもよい。別の見方をすれば、RCA反応の生成物を切断するステップは、切断ドメインにおいてRCA生成物の切断を促進する条件、すなわち、例えば、自己切断活性に必要とされる金属イオンなどの補因子とRCA生成物を接触させて、自己切断型配列を活性化する条件にRCA生成物を供するステップを含んでもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、切断ドメインは、ヘアピン構造を形成することができる配列を含むか、またはそれからなる。ヘアピン構造は、ヘアピンループまたはステムループとしても知られている場合もあり、これらの用語は本明細書では同義に使用される。ヘアピンは、一本鎖DNAまたはRNA分子中に生じることがある分子内塩基対合パターンである。通常、反対方向に読み取られる場合にヌクレオチド配列において相補的である、同じ鎖の2つの領域が、塩基対を形成して(ハイブリダイズして)、二本鎖ステム(二重鎖)および対合していない、すなわち、一本鎖のループを形成するとヘアピンが生じる。得られる構造は、棒付きアメ形状(lollipop-shaped)と示すことができる。
【0116】
このように、切断ドメインがヘアピン構造を形成することができる配列を含むか、またはそれからなるいくつかの実施形態において、切断ドメインは自己相補的な配列を含む。RCA生成物が伸長するにつれ、これらの自己相補的な領域のハイブリダイゼーションがヘアピン構造をもたらし、該ヘアピン構造の二本鎖部分は、切断酵素によって認識される配列を含む。したがって、RCA生成物中のヘアピン構造の二本鎖部分の切断により、一本鎖DNAポリヌクレオチドおよびヘアピン構造(すなわち、ヘアピン構造を形成するオリゴヌクレオチド)が放出される。
【0117】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」という用語は、本明細書中で使用される場合、ワトソン・クリック塩基対合により二重鎖を形成する程、充分に相補的なヌクレオチド配列間の二重鎖の形成を指す。2つのヌクレオチド配列は、それらの分子が塩基対構成相同性を共有する場合に互いに「相補的」である。「相補的な」ヌクレオチド配列は、適切なハイブリダイゼーション条件下で特異性を持って結びつき、安定した二重鎖を形成することになる。例えば、2つの配列は、第1の配列の部分が逆平行の方向で第2の配列の部分と結合することができる場合に相補的であり、各配列の3’末端は、他方の配列の5’末端と結合し、その後、一方の配列の各A、T(U)、GおよびCは、それぞれ、他方の配列のT(U)、A、CおよびGと並ぶ。RNA配列は、相補的なG=UまたはU=G塩基対を含むことができる。したがって、2つの配列は、本発明の下で「相補的」であるために完全な相同性を有する必要はない。通常、2つの配列は、ヌクレオチドのうちの少なくとも約90%(好ましくは、少なくとも約95%)が分子の規定の長さにわたり塩基対構成を共有する場合に充分に相補的である。
【0118】
RCA生成物の切断時に、一本鎖DNAポリヌクレオチドが放出される。放出されるポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチド配列のみからなる(すなわち、追加のヌクレオチドを伴わない)場合もあり、またはそのポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインからの1つ以上の追加のヌクレオチドを一端もしくは両端に含む場合もある。したがって、いくつかの実施形態において、一本鎖DNAポリヌクレオチドは、切断ドメインからの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上のヌクレオチドを一端または両端に含む場合もある。好ましくは、DNAミニサークルの配列は、RCA生成物が切断されたときに、放出されるポリヌクレオチドが切断ドメインからのいかなる追加のヌクレオチドも含まないよう設計される。別の見方をすれば、ポリヌクレオチド配列(複数可)と隣接する切断ドメインは、RCA生成物におけるその切断が、切断ドメインからのいかなる追加のヌクレオチドも含まないポリヌクレオチドを放出させるよう、DNAミニサークル中に配置されてもよい。
【0119】
切断酵素は、核酸分子を切断酵素認識配列の外側の位置で切断する場合があるため、切断ドメインとポリヌクレオチド配列の間に1つ以上のヌクレオチドが存在することがある。別の見方をすれば、切断ドメインは、切断が、好ましくは、いかなる追加のヌクレオチド(例えば、切断ドメインの一部を形成するヌクレオチド)も含まない完全な一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出させることを確実にするために、切断酵素認識配列に加えてヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0120】
したがって、切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列と関連した「隣接する」という用語は、ポリヌクレオチド配列と直接的または間接的に近接する切断ドメインを指す。別の見方をすれば、切断ドメインは、ポリヌクレオチド配列のいずれかの末端に配置される。すなわち、切断ドメインは、ポリヌクレオチド配列の上流および下流(5’および3’末端)にある。いくつかの実施形態において、切断ドメインの切断部位(例えば、切断酵素が切断ドメインを切断する部位)は、それが隣接するポリヌクレオチド配列の末端と直接接する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列および切断ドメイン配列は、重複する場合もある。すなわち、例えば、切断部位が切断ドメイン内の内部部位である場合、ポリヌクレオチド配列の末端が切断ドメインの一部を形成する場合もあり、すなわち、切断ドメインがポリヌクレオチド配列の末端または末端の一部を形成することもある。したがって、いくつかの実施形態において、切断ドメインとポリヌクレオチド配列の間に(すなわち、配列の末端間に)1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上のヌクレオチドが存在する場合もある。いくつかの実施形態において、切断ドメインおよびポリヌクレオチド配列は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上のヌクレオチドが重複する場合もある。
【0121】
DNAミニサークル中の切断ドメインのサイズは特に限定されず、上記のとおり、切断ドメインのタイプによって決まることになる。ポリヌクレオチド配列および切断ドメインの相対的な長さは、RCA生成物が切断ドメインで切断されたら、一本鎖DNAポリヌクレオチド配列を容易に精製できるように、互いに異なるよう設計または選択されることが好ましい。したがって、切断ドメイン(複数可)は、DNAミニサークル中のポリヌクレオチド配列(複数可)よりも短くなるよう選択されてもよい。DNAミニサークルが、異なる長さの複数のポリヌクレオチド配列を含む場合、切断ドメイン(複数可)は、DNAミニサークル中の最も短いポリヌクレオチド配列よりも短くなるよう選択されてもよい。あるいは、切断ドメイン(複数可)は、DNAミニサークル中のポリヌクレオチド配列(複数可)よりも長くなるよう選択されてもよい。DNAミニサークルが、異なる長さの複数のポリヌクレオチド配列を含む場合、切断ドメイン(複数可)は、DNAミニサークル中の最も長いポリヌクレオチド配列よりも長くなるよう選択されてもよいが、これは、あまり好ましくない。いくつかの実施形態において、切断ドメイン(複数可)およびポリヌクレオチド配列の長さは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドなど少なくとも2ヌクレオチド異なる。本方法がより長いポリヌクレオチドを生成するために使用される場合、切断ドメインおよびポリヌクレオチド配列の長さは、大幅に、例えば、少なくとも約100、150、200、250、300ヌクレオチド異なることになる。
【0122】
いくつかの実施形態において、切断ドメインは、約4~50ヌクレオチド長、例えば、約5~45、6~40、7~35または8~30ヌクレオチド長であってもよい。いくつかの実施形態において、切断ドメインは、約12から22または約14から20を含む、約10から25ヌクレオチド長に及ぶ場合もある。ただし、上記の機能的要件を満たす限り、任意の適した長さの切断ドメインを本発明に使用することができることは明白であろう。
【0123】
ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインは、互いに同じであっても、または異なってもよい。すべての一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出するために単一の切断ステップで充分であるよう、ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインは同じであることが有利である。ただし、上述のとおり、一部の切断酵素は、核酸分子を切断酵素認識配列の外側の位置で切断する場合もあり、または2つ以上の配列を認識する場合(例えば、酵素認識配列内の変化が許される場合)もある。したがって、切断ドメインが同じ酵素によって切断されるために切断ドメインの配列全体が同じである必要はない。例えば、いくつかの実施形態において、RCA生成物を切断するステップは、RCA生成物中の切断ドメインを切断するために適した条件下でRCA生成物を単一の切断酵素と接触させるステップを含む。
【0124】
RCA生成物中の切断ドメインを切断するために適した条件は、切断を達成するために使用される手段によって決まることになる。例えば、切断が制限エンドヌクレアーゼまたはホーミングエンドヌクレアーゼなどの切断酵素を使用して達成される場合、条件は、選択される酵素に応じて異なることになり、適した条件は当該技術分野において周知であり、例えば、切断ステップは、製造業者の説明書に従ってもよい。同様に、切断がDNAザイムなどの自己切断型配列を使用して達成される場合、特定の配列に適した条件が使用されてもよい。切断ステップに使用可能な、適した範囲条件の例を以下に示す。
【0125】
例えば、切断酵素、例えば、制限またはホーミングエンドヌクレアーゼは、その切断認識部位と特異的に結合し、EDTAを伴い、および伴わず、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES:4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、HEPES緩衝生理的食塩水(HBS:HEPES buffered saline)、およびトリス緩衝生理的食塩水(TBS:Tris buffered saline)などのさまざまなバッファー中で核酸を選択的に(例えば、特異的に)切断することができる。切断は、広い範囲の温度、例えば、0~70℃にわたり、約3.0~10.0、例えば、4.0~9.0、5.0~8.0のpH範囲で生じる場合もある。当業者は、その他の適した条件を容易に決定することができるであろう。
【0126】
本発明の方法は、鋳型としてDNAミニサークルを使用してローリングサークル増幅を実施するステップを含む。ローリングサークル増幅(RCA)は、当該技術分野において周知であり、参照によってその開示が本明細書に組み込まれるディーン(Dean)ら、2001年(Phi29 DNAポリメラーゼおよび多重プライムドローリングサークル増幅を使用したプラスミドおよびファージDNAの迅速増幅(Rapid Amplification of Plasmid and Phage DNA Using Phi29 DNA Polymerase and Multiply-Primed Rolling Circle Amplification)、ゲノムリサーチ(Genome Research)、11、p.1095-1099)に記載されている。簡単にいうと、RCAは、ローリングサークル鋳型(RCA鋳型)として環状の一本鎖核酸分子、例えば、円形または環状オリゴヌクレオチドと、鋳型にハイブリダイズしたプライマーを伸長するための鎖置換ポリメラーゼとを使用した核酸分子の合成に関する。ポリメラーゼおよびヌクレオチドの添加により合成反応、すなわち、重合が開始される。ローリングサークル鋳型は終わりがないためため、結果として生じた生成物は、ローリングサークル鋳型と相補的なタンデムリピートから構成される長い一本鎖核酸分子である。
【0127】
一般的なRCA反応混合物は、鋳型として働くDNAミニサークルと、プライマー伸長反応に利用される1つ以上のプライマーとを含み、例えば、RCAは、単一のプライマーによって鋳型にされて、単一のコンカテマー生成物を形成してもよいし、または、複数のプライマーによって鋳型にされて、それぞれが環状鋳型の異なる領域にアニーリングして、1周毎に複数のコンカテマー生成物を生成してもよい。環状核酸が接触させられ得るオリゴヌクレオチドプライマーは、アニーリング条件下におけるDNAミニサークルとのハイブリダイゼーションをもたらすために充分な長さになる。いくつかの実施形態において、プライマーは、ステップ(a)で得られる二本鎖DNAミニサークルの一本鎖を切断すること(例えば、ニックを入れること)によって得ることができる。
【0128】
上記の成分に加えて、本発明に使用される反応混合物は、一般にポリメラーゼ(さらに下で定義される、例えば、phi29DNAポリメラーゼ)、1つ以上のヌクレオチドおよび下に示されるDNAポリメラーゼ反応に必要とされるその他の成分を含む。所望のポリメラーゼ活性は、1つ以上の異なるポリメラーゼ酵素によってもたらされてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、反応混合物中に存在するヌクレオチドは、従来のヌクレオチドである。「従来のヌクレオチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、DNAに見られる4つの塩基、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンのうちの1つを含む、デオキシヌクレオチドを指す。したがって、「従来のヌクレオチド」という用語は、例えば、dATP、dGTP、dCTPおよびdTTPを包含する。ウラシルは一般に、天然ではDNAに見られないが、dUTPを、dTTPの代わりに、またはそれに加えて容易に使用することができる。したがって、本発明の文脈では、dUTPを「従来の」ヌクレオチドと見る場合もある。本方法が、標準的な(無修飾の)一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するために使用される場合、反応混合物は、一般に存在する4つの天然に生じる塩基と対応する4つの異なるすべてのタイプのdNTP、すなわち、dATP、dTTP、dCTPおよびdGTPを含むことになる。ただし、上述のとおり、dUTPが、dTTPの代わりに、またはそれに加えて使用されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、反応混合物は、5つのdNTP、すなわち、dATP、dCTP、dGTP、dTTPおよびdUTPを含んでもよい。当然のことながら、反応混合物は、本方法によって生成されるポリヌクレオチド(複数可)に存在するヌクレオチドしか含む必要がなく、すなわち、いくつかの実施形態において、反応混合物は、3つ以下のタイプのdNTPを含んでもよい。主題の方法において、各dNTPは、一般に約10から5000μM、通常、約20から1000μMの範囲の量で存在することになる。各dNTPは、異なる量で存在してもよく、または等しい量の各dNTPが使用されてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、本方法は、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成するために使用することができる。したがって、いくつかの実施形態において、RCA反応は、1つ以上の官能化ヌクレオチドの存在下において行われてもよい。すなわち、反応混合物は、1つ以上の官能化ヌクレオチドを含んでもよい。「官能化ヌクレオチド」または「官能化dNTP」という用語は、無修飾の従来のヌクレオチドに対して修飾を含むヌクレオチドを指し、前記修飾は、すなわち、対応する従来のヌクレオチドと比較して、付加的または代替的な特性または特徴を有する少なくとも1つの官能化ヌクレオチドを含む前記官能化ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドをもたらす。例えば、修飾は、ヌクレオチドを、例えば、標識の組み込みによって、検出可能にするか、あるいは別の成分、すなわち、対応する従来のヌクレオチドが相互作用または反応しない成分と相互作用および/または反応可能にする場合もある。いくつかの実施形態において、修飾は、ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを分解、例えば、化学的および/または酵素的分解(例えば、ヌクレアーゼ分解)に耐性のあるようにする場合もあり、あるいはヌクレオチドの代謝を変える場合もある。
【0131】
修飾(例えば、官能化)ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを生成するための酵素反応において以前より使用されてきたが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはプライマー伸長(PE)反応により官能化DNAを生成する状況においてのみであった。これらの反応は、後で除去されなければならない特定のプライマーの使用を必要とし、修飾ヌクレオチドがポリメラーゼによって組み込まれるだけでなく、PCRの場合には、官能化生成物が鋳型として認識される必要がある。これは、一部の修飾の場合に問題がある可能性があるため、これらの方法の有用性を制限する。さらに、プライマーは、固相法によって合成され、配列検証されず、これが、新たに合成されるDNAにおいてエラーの増幅につながる。さらに、PCRベースの方法は、圧倒的に二本鎖DNA生成物をもたらすため、官能化一本鎖オリゴヌクレオチドを得るために、溶出および精製の追加のステップが必要である。
【0132】
本発明者らは、官能化ヌクレオチドは鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによってRCA生成物に効率的に組み込むことが可能で、ヘアピン構造の形成を妨げない、またはその安定性もしくは効果的な切断を妨げないことを発見した。さらに本発明者らは、官能化ヌクレオチドはさらなる増幅のための鋳型として認識される必要がないため、本方法と関連付けられる有益な特徴を維持したままで官能化ヌクレオチドが利用可能であることも発見し、これは、さらに多数の官能化残基を組み込むことができることを意味する。
【0133】
したがって、本発明の方法によって生成される一本鎖DNAポリヌクレオチドは、官能化ポリヌクレオチドであってもよく、すなわち、官能化ヌクレオチドを含んでもよい。したがって、「ポリヌクレオチド」、「一本鎖ポリヌクレオチド」、および「一本鎖DNAポリヌクレオチド」という用語は、本発明の方法によって生成されるポリヌクレオチドに関して本明細書中で使用される場合、従来のヌクレオチドを単独で含むポリヌクレオチド、または官能化ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指す場合もあることが理解されるであろう。
【0134】
官能化ヌクレオチドが同等の従来のヌクレオチドと組み合わせて使用される場合、官能化ヌクレオチドは、RCA反応によって生成されるコンカテマーにランダムに組み込まれる可能性があるため、コンカテマーの切断が複数(例えば、ライブラリー)の一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドをもたらし、すなわち、官能化ヌクレオチドが、ポリヌクレオチドのさまざまな位置に組み込まれることが明らかであろう。それぞれが切断ドメインと隣接する複数のポリヌクレオチド配列を含むDNAミニサークルを使用することによって、生成される官能化ポリヌクレオチドの多様性(すなわち、ライブラリーの多様性)が高まる可能性があることがさらに明らかであろう。ポリヌクレオチド配列は、配列および/または長さが異なる場合もある。さらにまたは代わりに、官能化ポリヌクレオチドの多様性は、RCA反応に官能化ヌクレオチドの組み合わせを使用することによって高まる場合もある。合成後にポリヌクレオチドを修飾することによって、例えば、ポリヌクレオチド中の官能化ヌクレオチドに分子または成分を結合させることによって、さらに一層多様性が官能化ポリヌクレオチドのライブラリーに組み込まれ得る。
【0135】
したがって、いくつかの実施形態において、従来のヌクレオチドの1つ以上(またはそのある割合)が、対応する官能化ヌクレオチドで置換されてもよい。例えば、下でさらに詳細に記載されているとおり、dATPが、フルオロフォアと結合したdATPで置換されてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、反応混合物は、3つのタイプの従来のヌクレオチドおよび1つのタイプの官能化ヌクレオチドを含んでもよい。
【0136】
RCA反応混合物は、一価イオンの供給源、二価カチオンの供給源および緩衝剤を含む水性バッファー媒体をさらに含んでもよい。KCl、酢酸K、酢酸NH4、グルタミン酸K、NH4Cl、硫酸アンモニウムなどの任意の都合のよい一価イオンの供給源が利用されてもよい。二価カチオンは、マグネシウム、マンガン、亜鉛などであってもよく、該カチオンは、一般にマグネシウムである。MgCl2、酢酸Mgなどを含む、任意の都合のよいマグネシウムカチオンの供給源が利用されてもよい。バッファー中に存在するMg2+の量は、0.5から10mMの範囲であってもよいが、好ましくは、約3から6mMの範囲になり、理想的には約5mMになる。バッファー中に存在してもよい代表的な緩衝剤または塩としては、トリス、トリシン、HEPES、MOPSなどが挙げられ、緩衝剤の量は、一般に約5から150mM、通常、約10から100mM、より一般には、約20から50mMの範囲になり、特定の好適な実施形態では、緩衝剤は、約6.0から9.5の範囲のpHをもたらすために充分な量で存在することになる。バッファー媒体中に存在してもよいその他の薬剤としては、EDTA、EGTAなどのキレート剤が挙げられる。
【0137】
本方法のステップ(a)で準備されるDNAミニサークルは、二本鎖DNA分子である。したがって、RCA鋳型として働くために、DNAミニサークルは処理されなければならない。したがって、いくつかの実施形態において、本方法のステップ(b)は、DNAミニサークルの一本鎖を切断して、RCA鋳型を得るステップを含む。
【0138】
二本鎖DNAミニサークルの一本鎖が切断されて(例えば、ニックが入れられて)、RCA鋳型(およびRCA反応のためのプライマー)を得る実施形態において、RCA反応混合物に一本鎖結合タンパク質を含むことが有用な場合もある。例えば、プライマー伸長反応およびPCR反応の収率および特異性を高めるために、大腸菌一本鎖DNA結合タンパク質が使用されてきた。(米国特許第5,449,603号および同第5,534,407号)。ファージT4遺伝子32タンパク質(一本鎖DNA結合タンパク質)は、より大きなDNAフラグメントを増幅する能力を明らかに向上させ(シュワルツ(Schwartz)ら、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research)、18:p.1079(1990年))、DNAポリメラーゼの正確さを高め(ファン(Huang)、DNA・アンド・セル・バイオロジー(DNA and Cell Biology)、15:p.589-594(1996年))、最も重要には、DNAポリメラーゼが鋳型を、例えば、既に生成された一本鎖DNAに転換すること、および二本鎖DNAを合成することを妨げる(デュカーニら、ヌクレイック・アシッド・リサーチ、42:p.10596(2014年))。利用される場合、そのようなタンパク質は、約1ng/μLから約10ng/μLを含む、約0.1ng/μLから約100ng/μLなどの約0.01ng/μLから約1μg/μLの範囲の反応混合物中の濃度を達成するように使用されることになる。
【0139】
RCA反応は、最終的にDNAミニサークルの相補配列の近接する(タンデムな)リピートを含むポリヌクレオチド生成物を生成する。この生成物は、コンカテマー、RCA生成物または「RCP」として知られている場合もある。したがって、RCA生成物は、切断ドメインと隣接するポリヌクレオチド配列(または特にDNAミニサークル鋳型のポリヌクレオチド配列の逆相補鎖)からなる直鎖配列を含む。
【0140】
RCA反応のためのプライマーを形成するためにニッカーゼを使用することの代案として、RCA反応混合物が、1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを含んでもよく、これがRCA重合反応を開始する。プライマーは、アニーリング条件下でDNAミニサークルとのハイブリダイゼーションをもたらすために充分な長さにされる。プライマーは、一般に少なくとも10ヌクレオチド長、通常、少なくとも12ヌクレオチド長、より一般に、少なくとも14ヌクレオチド長にされ、30ヌクレオチド長以上ほど長い場合もあり、プライマーの長さは、一般に14から50ヌクレオチド長、通常、約15から35ヌクレオチド長に及ぶ。
【0141】
プライマーは、DNAミニサークル内の任意の領域にアニーリングしてもよい。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、プライマーがハイブリダイズすることが可能な特定のドメイン(RCAプライマー結合部位)を含んでもよい。代表的な実施形態において、DNAミニサークルは、ポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメイン間に、ポリヌクレオチド配列ではなく、RCAプライマー結合部位として機能することができる配列を含んでもよい。RCAプライマー結合部位は、確実にRCA生成物の切断時に容易に一本鎖DNAポリヌクレオチドから分離可能にするために、上記の切断ドメインのように、ポリヌクレオチド配列と異なる長さになるよう設計されてもよい。切断ドメインと隣接する複数のポリヌクレオチド配列を含むDNAミニサークルにおいて、RCAプライマー結合部位は、任意の2つの切断ドメインの間にあってもよいことが明らかであろう。
【0142】
さらに代表的な実施形態において、DNAミニサークルは、切断ドメインと結合部位の間にRCAプライマー結合部位(すなわち、下で定義される接合配列)を含んでもよい。したがって、親ミニサークルプラスミドの第1のドメインは、RCAプライマー結合部位を含んでもよい。RCAプライマー結合部位は、親ミニサークルプラスミドの組み換え時にRCAプライマー結合部位がDNAミニサークルに保持されるよう、結合部位と直接的または間接的に近接して配置されてもよい。
【0143】
上述のとおり、DNAミニサークルは、親ミニサークルプラスミドに存在する2つのリコンビナーゼ結合部位間の組み換えによって生成される。この組み換え反応は、結合部位の融合を伴うため、組み換えの部位に、いわゆる、「接合配列」が生成される。この接合配列は、成功した組み換え反応を経ると、DNAミニサークル中にのみ存在し、元の親ミニサークルプラスミドまたは骨格プラスミドには存在しない。これは、組み換えされていない(インタクトな)親ミニサークルプラスミドまたは骨格プラスミドからDNAミニサークルを分離する必要なくRCA反応を行うことを可能にするため、特に有利である。
【0144】
したがって、いくつかの実施形態において、RCA反応のためのプライマーは、接合配列においてDNAミニサークルとハイブリダイズするよう設計されてもよく、その結果、プライマーは、DNAミニサークルの形成時にのみRCA反応を開始することができる。すなわち、プライマーは、DNAミニサークルと特異的および選択的に結合する(ハイブリダイズする)。別の見方をすれば、RCAプライマーは、組み換えされていない(インタクトな)親ミニサークルプラスミドまたは骨格プラスミドとは結合しない。別の言い方をすれば、接合配列は、RCAプライマー結合部位を含んでもよく、またはRCAプライマー結合部位の一部を形成してもよい。この様式で接合配列とハイブリダイズすることができるプライマーは、「ブリッジプライマー」と呼ばれる場合もある。
【0145】
接合部分は、親ミニサークルプラスミド中の結合部位の配列およびDNAミニサークルを生成するために使用される対応するリコンビナーゼによって決まることになる。いくつかの実施形態において、接合配列は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0146】
したがって、いくつかの実施形態において、RCAプライマーは、例えば、本明細書中の別の場所で定義される長さおよび配列同一性の特徴を有する、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と特異的および選択的に結合すること(ハイブリダイズすること)ができるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、RCAプライマーは、配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0147】
したがって、親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルは、結合部位の組み換えによって形成される接合配列を含む。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる接合配列を含む。
【0148】
したがって、本発明は、切断ドメインと隣接する生成対象のポリヌクレオチド配列(すなわち、本明細書中で定義される偽遺伝子)と、接合配列、特に配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる接合配列とを含むDNAミニサークルを提供することもわかるであろう。
【0149】
「アニーリング条件」という用語は、相補的なヌクレオチド配列を含む2つの核酸分子が互いに特異的にハイブリダイズする条件を指す。温度、塩濃度、核酸濃度、組成および長さ、ならびにバッファー組成を含む、さまざまなパラメーターがハイブリダイゼーションに影響を及ぼす。当業者は、通常のこととして、RCA反応のための特定のプライマー/鋳型の組み合わせに適したアニーリング条件を容易に決定することができる。
【0150】
上述のとおり、DNAミニサークルは二本鎖であり、本方法は、RCA反応が行われる前に、DNAミニサークルの一本鎖を切断して、RCA鋳型を準備するステップを含む。DNAミニサークルの一本鎖を切断するステップが、RCA反応を開始するためのプライマーを準備するステップに取って代わることができ、すなわち、切断された鎖がRCAプライマーとして機能することは明らかであろう。したがって、別の見方をすれば、ステップ(b)は、DNAミニサークルの一本鎖を切断して、RCA鋳型およびプライマーを準備するステップを含み、すなわち、DNAミニサークルへの一本鎖切断の導入がRCA反応のためのプライマーとして働くことができる3’末端を作り出す。ただし、いくつかの実施形態において、例えば、一周毎に得られるRCA生成物の数を増加させるために、二本鎖DNAミニサークルの一本鎖を切断することに加えて、反応混合物に1つ以上のRCAプライマーを供給することが有利な場合もある。
【0151】
いくつかの実施形態において、DNAミニサークルの一本鎖を切断して、RCA鋳型を準備するステップは、切断酵素でDNAミニサークルの一本鎖を切断するステップを含む。このDNAミニサークルの一本鎖の切断は、一本鎖切断(ニック)をもたらす。
【0152】
いくつかの実施形態において、切断によって生成された3’末端とDNAポリメラーゼとの結合を促進するために、DNAミニサークルの一本鎖を近接した位置で複数回切断することが有利な場合もある。したがって、DNAミニサークルの一本鎖は、互いに近接した位置で2回以上切断されてもよく、すなわち、2つ以上のニックが生成されてもよい。好ましくは、ニックは、互いに20ヌクレオチド以内、より好ましくは、10ヌクレオチド以内、より好ましくは、5ヌクレオチド以内、例えば、互いに1、2、3、4または5ヌクレオチド以内に形成される。
【0153】
いくつかの実施形態において、二本鎖DNAミニサークルの一本鎖を切断するために使用される切断酵素は、ニッカーゼである。ニッカーゼは、DNA二重鎖の一本鎖のみを切断するエンドヌクレアーゼである。一部のニッカーゼは、特定のヌクレオチド認識配列に結合し、認識することによって、DNA分子上の特定の部位にのみ一本鎖のニックを導入する。天然に生じる多くのニッカーゼが発見されてきた。ニッカーゼについては、全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,867,028号に記載されており、任意の適したニッカーゼを本発明の方法に使用することができる。いくつかの実施形態において、切断酵素(ニッカーゼ)は、Nb.BsrDI、Nt.BspQIまたはその組み合わせであってもよい。
【0154】
ニッカーゼ酵素を利用するいくつかの実施形態において、RCA生成物の望ましくない切断を防ぐために、ニッカーゼ酵素は、DNAミニサークルの切断後にアッセイから除去されてもよく、または不活性化されてもよい。
【0155】
上述のとおり、いくつかの実施形態において、DNAミニサークルが生成される親ミニサークルプラスミドは、プラスミドの第2のドメイン、すなわち、プラスミド骨格が、各鎖上に1つ以上のニッカーゼ認識配列を含むよう、配置されてもよい。したがって、そのような実施形態において、反応混合物へのニッカーゼの添加は、RCA反応のためのプライマーを形成するためにDNAミニサークルの一本鎖の切断をもたらすだけでなく、組み換え反応後に残されている親ミニサークルプラスミドの骨格、および混合物中に存在する可能性のあるあらゆる組み換えされていない(インタクトな)親ミニサークルプラスミドの切断ももたらし、よって、望ましくない汚染を防ぎ、次に続くさらなる精製ステップの必要性を低減する。いくつかの実施形態において、親ミニサークルプラスミドは、各鎖上に複数のニッカーゼ認識部位を含んでもよい。
【0156】
DNAミニサークルの一本鎖を切断する切断酵素(例えば、ニッカーゼ)は、DNAミニサークル内の任意の部位で切断することができる。いくつかの実施形態において、DNAミニサークルは、切断酵素が作用することができる特定のドメイン(一本鎖切断部位またはドメイン、例えば、ニッカーゼ部位)を含んでもよい。代表的な実施形態において、DNAミニサークルは、切断ドメイン間または切断ドメインと接合配列の間に、ポリヌクレオチド配列ではなく、一本鎖切断部位またはドメインとして機能することもできる配列を含んでもよい。切断酵素によって認識される配列(一本鎖切断部位またはドメイン)がポリヌクレオチド配列内ではないという事実は、RCA生成物の5’末端から生成されるポリヌクレオチドが確実に切り捨てられないようにする。一本鎖切断部位またはドメインは、確実にRCA生成物の切断時に容易に一本鎖DNAポリヌクレオチドから分離可能にするために、上記の切断ドメインおよびRCAプライマー結合部位のように、ポリヌクレオチド配列と異なる長さになるよう設計されてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、RCAプライマー結合部位は、一本鎖切断部位またはドメインとしても機能し、逆もまた同様である。
【0157】
少なくともいくらか鎖置換活性を有する任意のDNAポリメラーゼが、本発明のRCA反応に使用されてもよい。鎖置換活性は、ポリメラーゼがDNAミニサークルに沿って一周延長したら、プライマー配列および伸長生成物を取り除き、鋳型の周りを「回り」続けることが確実にできるようにする。DNAミニサークルのニックの入った鎖がRCA伸長のためのプライマーをもたらす実施形態において、鎖置換活性は、ポリメラーゼがニックの入った鎖を取り除くことが確実にできるようにする。少なくともいくらか鎖置換活性を有する、適したDNAポリメラーゼ酵素としては、phi29 DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、Bsu DNAポリメラーゼ(大きなフラグメント)、Bst DNAポリメラーゼ(大きなフラグメント)およびKlenowフラグメントが挙げられる。本明細書中で使用される場合、「DNAポリメラーゼ」という用語は、天然に存在する酵素だけでなく、天然に存在するDNAポリメラーゼ酵素の誘導体も含む、すべてのそのような改変誘導体を含む。例えば、いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を除去するために改変されていてもよい。
【0158】
本発明に使用するための特に好ましいDNAポリメラーゼ酵素としては、phi29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼおよびその誘導体、例えば、配列改変誘導体、または変異体が挙げられる。
【0159】
DNAポリメラーゼ酵素の配列改変誘導体または変異体としては、野生型配列の少なくともいくらかの機能活性、例えば、DNAポリメラーゼ活性および少なくともいくらかの鎖置換活性を保持する変異体が挙げられる。変異は、さまざまな反応条件、例えば、温度、鋳型濃度、プライマー濃度などにおいて、酵素の活性プロフィールに影響を及ぼす、例えば、重合の率が増すか、または低下する場合もある。変異または配列改変はまた、酵素のエキソヌクレアーゼ活性および/または熱安定性に影響を及ぼす場合もある。
【0160】
上述のとおり、本方法のRCA反応は、従来のヌクレオチド、官能化ヌクレオチド、または従来のヌクレオチドおよび官能化ヌクレオチドの混合物を使用して行われてもよい。
【0161】
「官能化一本鎖DNAポリヌクレオチド」、「一本鎖官能化DNAポリヌクレオチド」および「官能化DNAポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では同義に使用され、少なくとも1つの官能化ヌクレオチドを含む一本鎖DNAポリヌクレオチドを指す。したがって、官能化DNAポリヌクレオチドは、従来のヌクレオチドのみを含む対応するポリヌクレオチドと比較して付加的または代替的な特性または特徴を有する。例えば、1つ以上の官能化ヌクレオチドの組み込みは、ポリヌクレオチドを、例えば、標識の組み込みによって、検出可能にするか、あるいは別の成分、すなわち、従来のヌクレオチドのみを含む対応するポリヌクレオチドが相互作用または反応しない成分と相互作用および/または反応可能にする場合もある。いくつかの実施形態において、修飾は、ポリヌクレオチドを、分解、例えば、化学的および/または酵素的分解(例えば、ヌクレアーゼ分解)に耐性があるようにする場合もあり、あるいは、ポリヌクレオチドの代謝を変える場合もある。いくつかの実施形態において、修飾は、オリゴヌクレオチドの安定性を向上させる、例えば、二重鎖の熱安定性(例えば、融点)などのオリゴヌクレオチドによって形成される二重鎖の安定性を向上させる場合もある。いくつかの実施形態において、1つ以上の官能化ヌクレオチドの組み込みは、ポリヌクレオチドを、従来のヌクレオチドのみを含む対応するポリヌクレオチドによっては形成されない二次または三次構造を形成可能にする場合もある。
【0162】
したがって、当然のことながら、官能化一本鎖オリゴヌクレオチドと関連した、「一本鎖」という用語は、変性条件下で、例えば、熱または適した化学変性剤の適用後に一本鎖であるオリゴヌクレオチド、すなわち、1つの連続的な骨格のみを有するオリゴヌクレオチド(一本鎖)を指す。上述のとおり、これは、官能化一本鎖オリゴヌクレオチドが二次または三次構造を形成するのを妨げない。例えば、官能化一本鎖オリゴヌクレオチドは、自己相補性の領域を含んでもよいため、同じオリゴヌクレオチドの他の場所の相補的な領域とハイブリダイズしている官能化一本鎖オリゴヌクレオチドの1つの領域が関係する、ヘアピンまたはステムループ構造を形成することができる場合もある。
【0163】
従来のヌクレオチドの官能化は、ヌクレオチドの任意の部分の構造に対する変更または修飾によって達成される場合もある。したがって、官能化ヌクレオチドは、核酸塩基、糖またはヌクレオシド間結合に関与する基に修飾、例えば、化学修飾を含んでもよい。一部の好適な実施形態において、官能化ヌクレオチドは、核酸塩基に修飾、例えば、化学修飾を含んでもよい。
【0164】
さまざまな位置での修飾は、下でさらに詳細に記載されており、下に記載される任意の特定の位置が下に記載される任意の官能基により修飾されてもよいことが想定される。
【0165】
例えば、小さな堅い(rigid)疎水性基によるピリミジン(すなわち、シトシン、チミンおよびウラシル)のC5位の置換は、置換ピリミジンを含む官能化ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基スタッキング相互作用を向上させることができ、および/またはそれによって形成される二重鎖を安定させることができる。小さな堅い疎水性基は、アルキニル基、例えば、メチル、エチニル、プロピニル、またはハロゲン基、例えば、フルオロ、クロロまたはブロモであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、C5位に置換、例えば、本明細書中で定義されるアルキニル基またはハロゲンを有するピリミジンを含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドを検出可能にできる修飾は、ヌクレオチドへの標識の組み込みを伴ってもよい。いかなる標識も本発明に有用であるとわかり、直接的または間接的にシグナルを与える分子であってもよい。例えば、直接的にシグナルを与える標識は、蛍光分子であってもよく、すなわち、官能化ヌクレオチドは、蛍光標識ヌクレオチドであってもよい。間接的にシグナルを与える標識は、例えば、ビオチン分子であってもよく、すなわち、標識ヌクレオチドは、ビオチン標識ヌクレオチドであってもよく、これは、シグナルをもたらすためにさらなるステップ、例えば、検出可能なシグナル、例えば、目に見えて検出可能な色の変化をもたらすために化学基質に作用することができる酵素と結合したストレプトアビジンの添加を必要とする。いくつかの実施形態において、標識は、核酸塩基に組み込まれる(それと結合している)。
【0167】
したがって、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、核酸塩基と結合したビオチン基を含む。いくつかの実施形態において、ビオチン基は、間接的に、例えば、リンカーまたは連結ドメインを介して核酸塩基に結合していてもよく、適したリンカーは、当該技術分野において周知のものから容易に選択できる。例えば、リンカーは、ビオチンとストレプトアビジンの間の相互作用を促進するよう、すなわち、立体障害を最小限にするか、または防ぐように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、ビオチン基は、C5位でピリミジンに結合している。代表的な実施形態において、官能化ヌクレオチドを含むビオチンは、ビオチン-16-アミノアリル-2’-dUTP、ビオチン-16-アミノアリル-2’-dTTPまたはビオチン-16-アミノアリル-2’-dCTPであってもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、ステロール基で標識されてもよく、すなわち、ヌクレオチドは、ステロール基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、コレステロール基で標識されてもよく、またはそれを含んでもよい。
【0169】
直接的に検出可能な標識は、追加の試薬を使用せずに直接検出可能なものであるが、間接的に検出可能な標識は、1つ以上の追加の試薬を使用することによって検出可能なものであり、例えば、標識は、2つ以上の成分からなるシグナル生成系の要素である。多くの実施形態において、標識は、直接的に検出可能な標識であり、対象の直接的に検出可能な標識としては、蛍光標識、着色標識、放射性同位体標識、化学発光標識などが挙げられるが、これらに限定されない。任意の分光光度的または光学的に検出可能な標識が使用されてもよい。他の実施形態において、標識は、間接的にシグナルをもたらしてもよく、すなわち、シグナルを形成するためにさらなる成分の添加が必要とされてもよい。例えば、標識は、シグナルを与える分子と結合した分子と結合することができてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、蛍光標識ヌクレオチドである。蛍光標識は、検出可能なシグナルをもたらすために励起が必要とされるが、励起の供給源はシグナルを検出するために使用される機器/装置から得られるため、蛍光標識は、直接的にシグナルを与える標識と見ることができる。
【0171】
ヌクレオチドを標識するために使用することができる蛍光分子は、当該技術分野において周知である。フルオロフォアは、UVから近IR波長の範囲の励起および発光スペクトルと関連付けられてきた。したがって、フルオロフォアは、UV、可視またはIRスペクトルの範囲の励起および/または発光波長を有する場合もある。
【0172】
フルオロフォアは、タンパク質、ペプチド、小さな有機化合物、合成オリゴマーまたは合成ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、小さな有機化合物、例えば、5000Da以下の分子量を有する有機化合物である。したがって、いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、4000Da以下、例えば、3500Da、3000Da、2500Da、2250Da、2000Da、1900Da、1800Da、1700Da、1600Da、1500Da以下の分子量を有する。
【0173】
したがって、フルオロフォアは、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシン、テキサスレッド)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン)、スクアライン誘導体(例えば、環置換スクアライン、Seta、SeTau)、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシルまたはプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾールおよびベンゾオキサジアゾール)、アントラセン誘導体(例えば、DRAQ5、DRAQ7およびCyTRAKオレンジを含むアントラキノン)、ピレン誘導体(例えば、カスケードブルー)、オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)またはテトラピロール誘導体(例えば、ポルフィリン、フタロシアニン、ビリルビン)であってもよい。
【0174】
本発明において有用であるとわかるフルオロフォアまたはフルオロフォアシリーズの具体的な例としては、Alexa Fluor(例えば、Alexa Fluor488、Alexa Fluor647など)、Atto、シアニン(Cy)、インドシアニン、スルホシアニン、DyLight、Abberior STAR、Chromeo、オレゴングリーン、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、シリコンローダミン(SiR)、スクアライン、FluoProbes、テトラピロール、Bodipy、HiLyte、Quasar、CAL fluor、クマリン、Seta、CF、Tracy、IRDye、CruzFluor、Tide Fluor、Oyster、iFluor、Chromisおよびブリリアントバイオレットならびにその蛍光誘導体または類似体が挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、Cy3などのシアニン蛍光標識を含む。いくつかの特定の実施形態において、官能化ヌクレオチドは、Cy3で標識されたdATP、例えば、7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-ATP-Cy3である。
【0176】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、atto蛍光標識、例えば、atto-488を含む。いくつかの特定の実施形態において、官能化ヌクレオチドは、atto-488で標識されたdATP、例えば、7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-ATP-Atto-488である。
【0177】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドを反応性にできる修飾は、反応基、例えば、別の化学基、例えば、本明細書中で定義される標識などの、官能化DNAポリヌクレオチドと結合している分子または成分上の化学基と共有結合を形成することができる基の組み込みを伴う。可能性のある反応基としては、求核官能基(アルキン、アルケニル、アミン、アルコール、チオール、ヒドラジド、アジド)、求電子官能基(アルデヒド、エステル、ビニルケトン、エポキシド、イソシアナート、マレイミド)、環化付加反応が可能な官能基、ジスルフィド結合を形成することができる官能基、または金属と結合することができる官能基が挙げられる。具体的な例としては、エチン(アセチレン)、プロピン、1-ブチン、2-ブチンアザイド、ビニル(エテニル)、プロペニル、1-ブテニル、第1級および第2級アミン、ヒドロキサム酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルカルボナート、オキシカルボニルイミダゾール、ニトロフェニルエステル、トリフルオロエチルエステル、グリシジルエーテル、ビニルスルホン、アジドおよびマレイミドが挙げられる。
【0178】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドを反応性にできる修飾は、別の化学基、例えば、クリックケミストリーにより官能化DNAポリヌクレオチドと結合している分子または成分上の化学基と反応することができる反応基の組み込みを伴う。本明細書中で使用される場合、「クリックケミストリー」という用語は、一般にモジュール式で範囲が広く、高い収率を示し、クロマトグラフィーではない方法によって除去可能なものなど無害な副生成物しか形成しない、立体特異的な(必ずしもエナンチオ選択的ではない)反応を指す。例えば、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie Internatinal Edition)、2001年、40(11):p.2004-2021を参照。ある場合には、クリックケミストリーは、穏やかな水溶液条件で互いに選択的に反応することができる官能基の組を示すことがある。したがって、クリックケミストリー基は、本方法のポリヌクレオチドへの追加の官能基の結合に適している。一般的なクリックケミストリー反応としては、アジド・アルキン環化付加、アルキン・ニトロン環化付加、アルケン・テトラジン反応およびアルケン・テトラゾール反応が挙げられる。したがって、官能化ヌクレオチドは、アジド基、アルキン基、アルケン基、ニトロン基、テトラジン基またはテトラゾール基を含んでもよい。
【0179】
クリックケミストリー反応の具体的な例としては、アジドおよびアルキンのヒュスゲン1,3-双極子環化付加、すなわち、1,2,3-トリアゾールと呼ばれる5員ヘテロ原子環を形成するアジドのアルキンとの銅触媒反応が可能である。この反応は、Cu(I)触媒アジド・アルキン環化付加(CuAAC)、Cu(I)クリックケミストリーまたはCu+クリックケミストリーとしても知られている場合がある。クリックケミストリーのための触媒としては、Cu(I)塩、または還元試薬を用いてCu(II)試薬をCu(I)試薬に還元することによってその場で生成されたCu(I)塩が可能である(ファーマシューティカル・リサーチ(Pharmaceutical Research)、2008年、25(10):p.2216-2230)。クリックケミストリーのための既知のCu(II)試薬としては、Cu(II)(TBTA)錯体およびCu(II)(THPTA)錯体を挙げることができるが、これらに限定されない。トリス-(ベンジルトリアゾリルメチル)アミンとしても知られている、トリス-[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミンであるTBTAは、Cu(I)塩に対する安定化リガンドであり得る。トリス-(ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミンであるTHPTAは、Cu(I)に対する安定化剤の別の例であり得る。歪み促進型アジド・アルキンクリックケミストリー反応(SPAAC:Strain-promoted Azide-Alkyne Click chemistry、例えば、それぞれが参照によって完全に本明細書に組み込まれる、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)、2011年、47:p.6257-6259およびネイチャー(Nature)、2015年、519(7544):p.486-90)を参照)によってなど銅を含まないクリックケミストリーを使用してアジドおよびアルキン(例えば、シクロオクチンまたはシクロノニンなどのシクロアルキン)から1,2,3-トリアゾール環を構築するための他の条件も達成可能である。
【0180】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、糖基に反応基、例えば、水素をフルオロ、クロロ、ブロモまたはアジド基で置換するなど、デオキシリボース糖の2位に修飾を含む。いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、2’-アジド-dNTP、例えば、2’-アジド-dATPである。
【0181】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、特に、アルキン、アルケニル、チオまたはハロゲン基から選択される反応基を核酸塩基に含む。上述のとおり、官能化ヌクレオチドは、C5位に置換を含むピリミジンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、アルキン基は、エチンであり、例えば、官能化ヌクレオチドは、5’-エチニル-dUTPなどのエチニル-dNTPである。あるいは、アルキン基は、プロピニル基であってもよく、例えば、官能化ヌクレオチドは、5’-プロピニル-dUTPなどのプロピニルdNTPである。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、ビニル(エテニル)であり、例えば、官能化ヌクレオチドは、5’-ビニル-dUTPなどのビニル-dNTPである。いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、4’-チオ-dTTPなどのチオ-dNTPである。いくつかの実施形態において、ハロゲン基は、臭素であり、例えば、官能化ヌクレオチドは、5’-ブロモ-dUTPなどのブロモ-dNTPである。官能化オリゴヌクレオチドへのハロゲン基の組み込みは、芳香族求核置換反応、またはUVが関係する、例えば、タンパク質との架橋を促進するために使用することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本方法によって生成される官能化オリゴヌクレオチドは、芳香族基を含むようにさらに修飾されてもよく、またはUVが関係する架橋により、他の分子、例えば、タンパク質もしくはペプチドと結合していてもよい。
【0182】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、別の成分と相互作用すること、例えば、非共有結合を介して相互作用することができる基を含んでもよい。例えば、ヌクレオチドは、関連する結合ペアの一部または成分を組み込むために修飾されてもよく、関連する結合ペアは、例えば、その結合パートナー、すなわち、関連する結合パートナー(例えば、ストレプトアビジンまたは抗体)と結合することができる親和性結合パートナー(例えば、ビオチンまたはハプテン)である。そのような官能化ヌクレオチドは、例えば、固体支持体に固定されていてもよい官能化DNAポリヌクレオチドの生成に有用であるとわかる。
【0183】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを分解、例えば、化学的および/または酵素的分解(例えば、ヌクレアーゼ分解)に耐性があるようにする修飾を含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、フルオロ、クロロ、O-メチルまたはO-エチル基で水素を置換するなど糖基に修飾、例えば、デオキシリボース糖の2位に修飾を含む。したがって、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、2’-フルオロ-dNTP、例えば、2-フルオロ-UTPである。いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、O-Me基、例えば、2’-O-メチル-ATPを含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、硫黄で酸素を置換するなどヌクレオシド間結合を形成するリン酸基に修飾を含み、例えば、ヌクレオチドは、ホスホロチオナート基を含む。したがって、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、ヌクレオチドチオ三リン酸、例えば、2-デオキシチミジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)、2-デオキシシチジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)、2-デオキシウリジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)、2-デオキシアデノシン-5’-O-(1-チオ三リン酸)または2-デオキシグアノシン-5’-O-(1-チオ三リン酸)である。いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、核酸塩基にアミノ、メチル、エチルまたはプロピニル修飾などの修飾を含み、例えば、2-アミノ-dATP、5-メチル-dCTP、C-5プロピニル-dCTPまたはC-5プロピニル-dUTPである。
【0184】
いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの熱安定性に影響を及ぼす修飾を含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、ロックリボース糖(locked ribose sugar)を含み、すなわち、ペントース環の2’酸素と4’炭素の間に追加の共有結合を含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、LNA(ロック核酸、locked nucleic acid)ヌクレオチド、すなわち、LNA-ATPなどのLNA-NTPである。ロックリボース立体構造は、塩基スタッキングを強化するため、LNAヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの融点を上昇させる。
【0185】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明に使用することができる官能化ヌクレオチドとしては、以下のものが挙げられる:(内在する)アルキンもしくはアジド基を含むヌクレオチド、蛍光標識ヌクレオチド、ステロール基を含むヌクレオチド、ポリエーテル基を含むヌクレオチド、金属錯体を含むヌクレオチド、ビニル基を含むヌクレオチド、チオール基を含むヌクレオチド、チオール化ヌクレオチド、ヌクレアーゼ耐性を増加させるよう修飾されたヌクレオチド、クリックケミストリーに関与することができる化学基を含むヌクレオチド、オリゴヌクレオチドの熱安定性に影響を及ぼす(例えば、高める)ヌクレオチド(例えば、LNA・ヌクレオチド)またはそれらの組み合わせ。これらの官能化ヌクレオチドの本発明の一本鎖ポリヌクレオチドへの組み込みにより、さまざまな有用な機能がもたらされる場合がある。例えば、フルオロフォアを含む一本鎖ポリヌクレオチドは、配列特異的な蛍光プローブとして使用することができる。一本鎖ポリヌクレオチドにチオール化ヌクレオチドを含めることにより、ポリヌクレオチドがチオール反応性分子で標識され、そのようなチオール反応性分子の分子検出のためのプローブとして使用可能になる。
【0186】
いくつかの実施形態において、本発明に使用することができる官能化ヌクレオチドは、ジゴキシゲニン基を含むヌクレオチドを含まない。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、ジゴキシゲニン標識ヌクレオチドではない。特に、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、ジゴキシゲニン-11-dUTPではない。
【0187】
好適な実施形態において、官能化dNTPは、アルキン基またはビニル基、例えば、アルキン(例えば、エチニル)基またはビニル基を含む修飾核酸塩基を含むヌクレオチド、例えば、C5位にアルキンまたはビニル基を有するピリミジンを含むヌクレオチドである。好適な別の実施形態において、官能化dNTPは、アジド基を含むヌクレオチドであり、例えば、アジド基を含む修飾糖を含むヌクレオチド(例えばデオキシリボース糖の2位にアジド基を含むヌクレオチド)である。
【0188】
RCA反応のための反応混合物は、鋳型DNAミニサークルからRCA生成物を形成することができる成分の組み合わせを含まなければならない。例えば、反応混合物中に存在するヌクレオチド(例えば、従来のヌクレオチドおよび官能化ヌクレオチドの混合物)は、ローリングサークル増幅を可能にするためにDNAミニサークル(RCA鋳型)中のそのそれぞれのヌクレオチドとハイブリダイズできなければならない。反応混合物中に存在する官能化ヌクレオチドおよび従来のヌクレオチドの相対量は、官能化ヌクレオチドの同一性およびポリメラーゼに応じて変化する場合もある。さらに、反応混合物中に存在する各ヌクレオチドの相対量は、RCA生成物への官能化ヌクレオチドの組み込みを制御するために使用されてもよい。例えば、官能化ヌクレオチドの濃度を増加させる(または従来のヌクレオチドの割合を低下させる)と、RCA生成物中の官能化ヌクレオチドの割合を大きくすることができる(例えば、官能化ヌクレオチドが対応する従来のヌクレオチドと組み合わせて使用される場合)。反対に、官能化ヌクレオチドの濃度を低下させる(または従来のヌクレオチドの割合を増加させる)と、RCA生成物中の官能化ヌクレオチドの割合を低くすることができる。
【0189】
したがって、官能化ヌクレオチドは、鋳型DNA中の同じDNA塩基(ヌクレオチド)とハイブリダイズする従来のヌクレオチドに加えて、または完全にその代わりに使用されてもよい。いくつかの実施形態において、反応混合物は、1つのタイプの官能化ヌクレオチドのみを含んでもよい。いくつかの実施形態において、異なる官能化ヌクレオチドの組み合わせが、同じ反応に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、反応混合物中のすべての官能化ヌクレオチドは、同じタイプの官能基、例えば、アルキン基を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物中の官能化ヌクレオチドは、異なるタイプの官能基を含む。例として、異なるタイプの官能化ヌクレオチド、例えば、フルオロフォアで官能化されたdATPヌクレオチドおよびステロール基で官能化された第2のdATPヌクレオチドは、同じDNA塩基(ヌクレオチド)とハイブリダイズ可能であってもよい。別の代表的な例において、異なるタイプの官能化ヌクレオチド、例えば、フルオロフォアで官能化されたdATPヌクレオチドおよびステロール基(またはdATPヌクレオチド上のフルオロフォアとは異なるフルオロフォア)で官能化されたdTTPヌクレオチドは、異なるDNA塩基(ヌクレオチド)とハイブリダイズ可能であってもよい。したがって、官能化ヌクレオチドおよび従来のヌクレオチドの任意の組み合わせを本発明に使用することができる。好適な実施形態において、RCA反応混合物は、1つのタイプの官能化ヌクレオチドのみを含む。
【0190】
反応混合物中に存在する官能化ヌクレオチドの量は、特定のDNA塩基(ヌクレオチド)とハイブリダイズすることができる全ヌクレオチドのうちの相対的なパーセンテージとして見積もることができる。あるいは、この値は、官能化ヌクレオチドで、対応する従来のヌクレオチドを置換したパーセンテージと見なすことができる。例えば、従来のdATPとフルオロフォアで修飾されたdATPとを等量で使用することは、全dATPヌクレオチドのうちの50%が修飾(官能化)されている、または従来のdATPヌクレオチドの官能化dATPヌクレオチドによる50%の置換と表すことができるであろう。
【0191】
RCA反応混合物中の官能化ヌクレオチドの相対量は、最終的な一本鎖ポリヌクレオチド中の官能化ヌクレオチドの頻度を制御するために変更されてもよい。いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、特定のDNA塩基(ヌクレオチド)とハイブリダイズすることができる全ヌクレオチドのうちの最大約5%、例えば、約1%、2%、3%、4%または5%であってもよい。あるいは、いくつかの実施形態において、官能化ヌクレオチドは、特定のDNA塩基(ヌクレオチド)と結合することができる全ヌクレオチドのうちのさらに高い割合、例えば、25%、50%、75%または100%であってもよい。
【0192】
存在する官能化ヌクレオチドの相対量は、数々の理由のために変更されてもよい。例えば、Cy3で修飾されたdATPなどの一部の官能化ヌクレオチドは、高濃度で商業的には利用できない。さらに、実施例において示されるとおり、本発明者らは、官能化ヌクレオチドを含めることが、本発明によって生成される官能化一本鎖DNAポリヌクレオチドの収率に影響を与える場合もあり、例えば、高い相対量の官能化ヌクレオチドの使用は、RCA反応に関与するDNAポリメラーゼの活性を阻害する(例えば、RCA生成物が合成される効率を低下させる)場合があること、またはRCA生成物の切断および一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドの放出に関与する切断酵素の活性を阻害する(例えば、RCA生成物が切断される効率を低下させる)場合があることを確認した。したがって、制限(切断)オリゴヌクレオチドをRCA生成物の切断ドメインとハイブリダイズさせて、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む二本鎖を形成するステップは、官能化ヌクレオチドが、切断酵素の活性を妨げる(例えば、効率を低下させる)こともあるため、官能化ヌクレオチドがRCA生成物、特に切断ドメインに組み込まれる実施形態において特に有利な場合もある。
【0193】
しかしながら、特に、本発明者らは、驚くべきことに、高い相対量、例えば、75%まで、例えば、約70%、65%、60%、55%または50%までの官能化ヌクレオチドを使用する場合でも、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチドの高い収率が達成され得ることを確認した。いくつかの実施形態において、75%を超える、例えば、約80%、85%、90%、95%または100%の官能化ヌクレオチドを使用することができる場合もある。特に、本発明者らは、予想外にも、RCA生成物に効率的に組み込むことができるため、核酸塩基にアルキンまたはビニル基を含む官能化ヌクレオチドが本発明に特に有用であることを発見した。さらに、下で述べるとおり、いくつかの実施形態では、従来のヌクレオチドのみを含む対応するRCA生成物を切断するために必要とされる量と比較してそれよりも多い量の切断酵素が必要とされる場合もあるが、RCA生成物が、容易に切断されて、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチドを得ることができるであろう。
【0194】
同様に、本発明者らは、RCA反応において、デオキシリボース糖にO-メチル基を含む官能化ヌクレオチドは、完全に、従来のヌクレオチドの代用となり、依然としてRCA生成物をもたらすことができることを発見した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、これらのヌクレオチドのRCA生成物への組み込みが、切断ドメインの形成(例えば、ヘアピン切断ドメイン)または(例えば、制限エンドヌクレアーゼによる)その酵素切断に影響を及ぼさないことを確認した。
【0195】
したがって、反応混合物中に存在する官能化ヌクレオチドの相対量は、所望の官能化一本鎖ポリヌクレオチドの収率を最適化するため、またはRCA生成物の形成を最適化するために調節されてもよい。そのような改変は、下の実施例に記載されている方法に基づいて当業者の認識範囲内にある。したがって、いくつかの実施形態において、反応混合物中の官能化ヌクレオチドの相対量は、約1~5%、1~10%、1~25%、5~25%、10~25%、25~50%、25~75%、25~100%、50~75%、50~100%、または75~100%であってもよい。
【0196】
反応混合物中の官能化ヌクレオチドの相対量に加えて、ヌクレオチド(従来のヌクレオチドおよび官能化ヌクレオチドの両方)の絶対量も、所望の官能化一本鎖ポリヌクレオチドの収率を最適化するため、またはRCA生成物の形成を最適化するために調節されてもよい。そのような改変は、下の実施例に記載されている方法に基づいて当業者の認識範囲内にある。
【0197】
ステップ(b)でのRCA生成物の形成の後に、本方法は、RCA生成物を切断ドメインで切断して、一本鎖DNAポリヌクレオチドを放出するステップを含む。上記のとおり、RCA生成物を切断するステップは、適した条件下でRCA生成物を切断酵素と接触させて、切断ドメインにおいてRCA生成物を選択的に切断することによって達成されてもよい。
【0198】
「放出する」という用語は、本文脈では、切断ドメインからポリヌクレオチドを切り離すか、または分離するようにRCA生成物をポリヌクレオチド配列と隣接する切断ドメインで切断することを指すために使用される。所与のポリヌクレオチドの放出がポリヌクレオチド配列と隣接する両切断ドメインにおける切断を伴うことが望ましい。
【0199】
一本鎖DNAポリヌクレオチドを形成するために、RCA生成物中のすべての切断ドメインで切断が起こる必要はない。切断ドメインの一部の切断でも、一本鎖DNAポリヌクレオチドの一部を放出させることになる。したがって、いくつかの実施形態において、RCA生成物を切断するステップは、RCA生成物中の切断ドメインの少なくとも約30%、例えば、少なくとも約35%、40%、45%、50%、60%、70%または80%の切断をもたらす。いくつかの実施形態において、RCA生成物を切断するステップは、RCA生成物中の切断ドメインの少なくとも約90%、例えば、95%以上の切断をもたらす。
【0200】
別の見方をすれば、いくつかの実施形態において、RCA生成物を切断するステップは、RCA生成物中に含まれる一本鎖DNAポリヌクレオチドの少なくとも約30%、例えば、少なくとも約35%、40%、45%、50%、60%、70%または80%の放出をもたらす。いくつかの実施形態において、RCA生成物を切断するステップは、RCA生成物中に含まれる一本鎖DNAポリヌクレオチドの少なくとも約90%、例えば、95%以上の放出をもたらす。
【0201】
一本鎖DNAポリヌクレオチドが放出されたら、他の用途に使用するために切断反応混合物(例えば、反応成分および/または分解生成物、例えば、切断ドメイン、未切断のRCA生成物など)から一本鎖DNAポリヌクレオチドを単離、分離または精製することが望ましい場合もある。
【0202】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、一本鎖DNAポリヌクレオチドを単離、分離または精製するステップをさらに含む。この単離、分離または精製は、当該技術分野において既知の任意の適した方法によって行われてもよい。
【0203】
いくつかの実施形態において、単離、分離または精製ステップの後、一本鎖DNAポリヌクレオチドは、好ましくは、単離手順またはその調製に使用される材料または成分由来のあらゆる混入成分(例えば、反応成分および/または分解生成物、例えば、切断ドメイン、未切断のRCA生成物など)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、一本鎖DNAポリヌクレオチドは、w/w(乾燥重量)で評価される場合、約50または60%超の純度、例えば、約95もしくは99%超などの約70、80もしくは90%超の純度の程度に精製される。そのような純度レベルは、一本鎖DNAポリヌクレオチドの分解生成物を含んでもよい。
【0204】
いくつかの実施形態において、例えば、約50%未満、例えば、約40または30%未満の対象の一本鎖ポリヌクレオチドを含む、純度が低い一本鎖DNAポリヌクレオチドの濃縮調製物を調製することが有用な場合もある。
【0205】
上記のとおり、本発明は、例えば、偽遺伝子が異なるポリヌクレオチド配列を含む場合、および/またはRCA反応が官能化ヌクレオチドをRCA生成物に組み込む場合、一本鎖DNAポリヌクレオチドの混合物(例えば、ライブラリー)をもたらす場合もある。したがって、いくつかの実施形態において、特定の一本鎖DNAポリヌクレオチドを得るため(すなわち、特定の一本鎖DNAポリヌクレオチドを単離するため)または一本鎖DNAポリヌクレオチドのサブグループまたはサブライブラリーを形成するために、一本鎖DNAポリヌクレオチドの混合物を、例えば、サイズによって、さらに分離することが望ましい場合もある。特定の一本鎖DNAポリヌクレオチドまたは一本鎖DNAポリヌクレオチドのサブグループもしくはサブライブラリーを単離するために、一本鎖ポリヌクレオチドの混合物を分離するための任意の適した手段が利用されてもよい。
【0206】
したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、特定の一本鎖DNAポリヌクレオチドまたは一本鎖DNAポリヌクレオチドのサブグループを単離するために、上記の方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチドの混合物(例えば、一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドのライブラリー)から一本鎖DNAポリヌクレオチドを分離するさらなるステップを含む。
【0207】
例えば、切断反応の生成物は、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルを使用したゲル電気泳動を使用してサイズによって分離されてもよい。その後、所望のポリヌクレオチドは、必要に応じて、当該技術分野において既知の方法によりゲルから単離され、さらに精製されてもよい。本発明のポリヌクレオチドを精製、単離または分離するための他の方法は、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、サイズ排除、イオン交換、アフィニティー、疎水性相互作用、逆相)またはキャピラリー電気泳動を利用する。
【0208】
上述のとおり、上記の方法によって生成される官能化ポリヌクレオチドは、別の化学基、例えば、クリックケミストリーにより、例えば、官能化ポリヌクレオチドと結合している分子または成分上の化学基と反応することができる反応基を含んでもよい。例えば、(それ自体が官能基を含んでもよく、もしくは官能基と見ることができる)追加の分子または成分を一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドと結合させることは、RCA反応に使用される官能化ヌクレオチド中に存在する場合に、本方法の効率を抑制するか、または低下させる可能性のある基などの大きな、またはかさ高な基を組み込むために特に有用な場合もある。したがって、例えば、RCA反応の間にポリメラーゼによって直接組み込まれないであろう、または低い効率もしくは収率でしか組み込まれないであろう分子または成分を含む官能化ポリヌクレオチドを生成することができる。さらにまたは代わりに、本方法によって得られる官能化ポリヌクレオチドをさらなる結合ステップに供することにより、官能化ポリヌクレオチドライブラリーに存在する構造の多様性を高めることができる。
【0209】
したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、クリックケミストリーなどによりポリヌクレオチド中の官能(例えば、反応)基を介して分子または成分を官能化ポリヌクレオチド(複数可)と結合させるステップをさらに含む。一部の好適な実施形態において、分子または成分は、アルキン、ビニルまたはアジド基(すなわち、本明細書中で定義される方法においてRCA生成物に組み込まれる官能化ヌクレオチド中のアルキン、ビニルまたはアジド基)を介して官能化ポリヌクレオチドと結合している。
【0210】
分子または成分の官能化ポリヌクレオチド(例えば、前記官能化ポリヌクレオチド中のアルキン、ビニルまたはアジド基)との連結または結合に関する本発明の文脈における「結合」という用語は、共有結合による、前記分子または成分の前記ポリヌクレオチドとの結合を指す。特に、この結合は、クリックケミストリー反応により生じてもよい。
【0211】
1つ以上のアルキン基を含む、本発明の一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドと追加の分子または成分を結合させるために使用することができる具体的なクリックケミストリー反応の例は、アジド・アルキン環化付加である。所望の結合を達成するために、アルキン基を含むポリヌクレオチドは、アジド基を含む分子または成分(例えば、フルオロフォアなどの標識)とともに適切な時間インキュベートされてもよい。アジド・アルキン環化付加反応は、一般的に銅触媒、特に銅(I)触媒を使用する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドおよびアジド含有分子または成分は、硫酸銅の存在下でインキュベートされてもよい。活性な銅(I)触媒を形成するために還元剤も使用される場合がある。還元剤は、例えば、アスコルビン酸ナトリウムであってもよい。
【0212】
1つ以上のビニル基を含む、本発明の一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドとの追加の分子または成分の結合に関するさらなる代表的な例は、アルケン・テトラジン反応を利用することであり得る。この反応は、銅を含まないという利点を有する。さらに、これは、上記のアルキン・アジドクリックケミストリー反応と完全にオルソゴナルである。したがって、アルキン基およびビニル基の両方を含む一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドは、2つのクリックケミストリー反応に独立して関与して、2つの異なる追加の分子または成分を同じポリヌクレオチドに結合させることが可能であろう。
【0213】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法を使用して(例えば、クリックケミストリー反応に関与することができる基などの反応基、例えば、アルキン、ビニルまたはアジド基を含む)官能化ヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込む第1のステップと、該官能化ヌクレオチド中の官能基を介して追加の分子または成分を一本鎖ポリヌクレオチドに結合させる第2のステップとを含む、一本鎖官能化DNAポリヌクレオチドを生成するための二段階の方法を提供するものと理解することができる。
【0214】
任意の望ましい分子または成分(すなわち、要素)が本方法によって生成される一本鎖ポリヌクレオチド中の官能基と結合していてもよいことは明白であろう。そのような分子または成分は、単に、ポリヌクレオチド中の官能基と反応して共有結合を形成することができる基(例えば、反応基)の存在を必要とする。いくつかの実施形態において、分子または成分は、核酸分子、タンパク質、ペプチド、低分子有機化合物(例えば、コレステロールなどステロール)、フルオロフォア、金属・リガンド錯体、多糖、ナノ粒子、ナノチューブ、ポリマー、細胞、細胞小器官、ベシクル、ウイルス、ウイルス様粒子またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0215】
細胞は、原核細胞または真核細胞であってもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞である。
【0216】
いくつかの実施形態において、官能化ポリヌクレオチドは、治療または予防効果を有する化合物または分子、例えば、抗菌、抗ウイルス、ワクチン、抗腫瘍薬剤、例えば、放射性化合物もしくは同位元素、サイトカイン、毒素、オリゴヌクレオチド、遺伝子をコードする核酸もしくは核酸ワクチンと結合または融合させられてもよい。
【0217】
いくつかの実施形態において、官能化ポリヌクレオチド(例えば、アプタマー)は、標識、例えば、放射標識、蛍光標識、発光標識、発色団標識ならびに検出可能な基質を形成する物質および酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼと結合または融合させられてもよい。この検出は、ウエスタンブロッティング/イムノブロッティング、組織化学、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、またはフローサイトメトリー(FACS)方式を含む、抗体が従来使用される数々のアッセイにおいて利用することができる。磁気共鳴断層撮影のための標識、陽電子放射断層撮影プローブおよび中性子捕捉治療のためのホウ素10も、本明細書に記載の官能化ポリヌクレオチドと結合していてもよい。
【0218】
いくつかの実施形態において、分子または成分は、フルオロフォア、ステロール(例えば、コレステロール)、ポリエーテル、金属錯体、チオール含有分子、ヌクレアーゼ耐性を高める基を含む分子およびクリックケミストリー反応に関与することができる基を含む分子からなる群から選択されてもよい。
【0219】
官能化ポリヌクレオチドと結合した分子または成分が他の分子と相互作用する場合もあり、そのような相互作用は共有結合性または非共有結合性相互作用であり得ることは明白であろう。例えば、ポリヌクレオチドと結合したペプチドは、抗体などのその関連する結合パートナーと非共有結合的に相互作用する場合もある。さらなる例において、クリックケミストリー反応に関与することができる基を含む分子は、前記分子または成分の反応基との反応により、上で定義された別の分子または成分と結合して、共有結合性複合体を形成する場合もある。
【0220】
別の態様において、本発明は、
(i)親ミニサークルプラスミドから得られるDNAミニサークルであって、該DNAミニサークルは、切断ドメインと接隣するポリヌクレオチド配列を含む(例えば、上で定義されたDNAミニサークル)、または
(ii)上で定義される親ミニサークルプラスミドと、
(iii)本発明の方法に使用するための1つ以上の追加の成分であって、任意に、該1つ以上の追加の成分は、(a)(i)の切断ドメインを切断する1つ以上の切断酵素、および/または(b)本明細書中で定義される官能化dNTPである、
を含むキット、特に一本鎖DNAポリヌクレオチドを生成する際に使用するためのキットを提供する。
【0221】
いくつかの実施形態において、本キットは、本明細書中で定義されるとおり、ローリングサークル増幅を実施することができるDNAポリメラーゼ酵素、すなわち、少なくともいくらか鎖置換活性を含むDNAポリメラーゼ酵素を含んでもよい。例えば、本キットは、phi29ポリメラーゼまたはその誘導体を含んでもよい。
【0222】
いくつかの実施形態において、本キットは、本明細書中で定義されるDNAミニサークルを形成するために親ミニサークルプラスミドを組み換えることができるリコンビナーゼ酵素を含んでもよい。
【0223】
いくつかの実施形態において、本キットは、dNTPの形態のヌクレオチドを含んでもよい。
【0224】
いくつかの実施形態において、本キットは、例えば、親ミニサークルプラスミドを増殖させるため、および/またはDNAミニサークルを生成するための、上で定義される宿主細胞を含んでもよい。
【0225】
本キットのポリヌクレオチド配列、切断ドメイン、DNAミニサークル、親ミニサークルプラスミドのリコンビナーゼ結合部位、宿主細胞、切断酵素およびdNTPは、上記のとおりである。
【0226】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載の方法によって得られる複数の一本鎖DNAポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチドは、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチドである。
【0227】
さらに別の態様において、本発明は、複数の異なる一本鎖DNAポリヌクレオチド(好ましくは、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチド)を含むライブラリー、すなわち、本明細書に記載の方法によって得られる一本鎖DNAポリヌクレオチド(好ましくは、官能化一本鎖DNAポリヌクレオチド)の混合物を提供する。
【0228】
ここで、上記の図を参照して、以下の非限定的実施例において本発明をさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【
図1】
図1は、親ミニサークルプラスミドpM1の略図を示す。マルチクローニングサイト(MCS)は、切断ドメインと接するポリヌクレオチド配列(poly)、すなわち、偽遺伝子がプラスミドに挿入されるのを可能にするために複数の制限酵素切断部位を含む。偽遺伝子は、2つの組み換え部位attPおよびattBの間に配置される。Sce-Iは、I-SceI認識部位(切断ドメイン)を表す。KanRは、カナマイシン耐性遺伝子を表す。ColE1は、複製開始点を表す。
【0230】
【
図2】
図2は、組み換え反応後の厳密な組み換え部位におけるpM1プラスミドから得られたDNAミニサークルのサンガーシーケンシングの結果を示す。組み換え反応は、attP部位とattB部位の間で起こり、接合配列5’-GGGTAACCTTT/GGGCTCCCC-3(配列番号2)を形成する。
【0231】
【
図3】
図3は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、T4リガーゼを使用した直鎖の偽遺伝子のライゲーションの結果を示す(レーンφはリガーゼなし、レーン+はリガーゼあり)。反応の生成物(分子間ライゲーションから得られる直鎖コンカテマー、または分子内ライゲーションから得られる環状DNA分子のいずれか)と、元の直鎖の偽遺伝子も示される。
【0232】
【
図4】
図4は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、3つの異なる偽遺伝子(CRC1、CRC2、およびオリゴミックス)を含む親プラスミドpM1、ならびに対応するミニサークル(MC)組み換え生成物を示す。各組み換え生成物は、ミニサークルモノマー(偽遺伝子プラス接合配列)および複数のミニサークルポリマー(環状の形態の複数の偽遺伝子プラス接合配列)を含むミニサークルの混合物を含む。
【0233】
【
図5】
図5は、SybrGold染色後にCy2光を使用して可視化された変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ゲルの写真のネガ像を示す。ポリアクリルアミドゲルは、本発明の方法を使用したポリヌクレオチドの混合物の酵素的生成を示す。切断ドメインと隣接する、81から91ヌクレオチド長に及ぶ8つのポリヌクレオチド配列を含む偽遺伝子を親ミニサークルプラスミドpM1にクローニングした。偽遺伝子配列を含むDNAミニサークルを、組み換え反応後に回収した細菌培養物から得て、RCA反応のための鋳型として使用した。このRCA反応の生成物の酵素消化は、ヘアピン配列(切断ドメインの残物)、所望のポリヌクレオチドおよび150ヌクレオチド長の組み換え瘢痕配列を放出した。瘢痕配列は、制限酵素XbaI、EcoRV、BamHI、HindII、PstI、StuI、およびDraIIに対するマルチクローニングサイトの残物によって両側を囲まれた、重なり合ったattB/attP配列(すなわち、接合配列)の組み換え生成物を中心に含んでいた。
【0234】
【
図6】
図6は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、本発明の方法を使用した、2つの「長い」ポリヌクレオチドの酵素的生成を示す。得られた一本鎖DNAポリヌクレオチドの長さは、1316ヌクレオチド(A)および1969ヌクレオチド(B)であった。したがって、それらは、ラダーに従って、700bpおよび1000bpの二本鎖のポリヌクレオチドと整合した様式で2%アガロースゲル上を泳動した。
【0235】
【
図7】
図7は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲル(上)、およびフルオロフォアの発光波長と対応する波長を使用した蛍光画像化(下)の写真を示す。アガロースゲルは、フルオロフォアATTO-488(A)またはCy3(B)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物(378のヌクレオチドを含む)を示す。
【0236】
【
図8】
図8は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%の5-EdUTP/dTTPヌクレオチドおよびphi29 DNAポリメラーゼ(A)またはBst DNAポリメラーゼ(B)を使用して生成された5-エチニル-dUTP(5-EdUTP)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物(420のヌクレオチドを含む)を示す。
【0237】
【
図9】
図9は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲル(左)、およびCy3フルオロフォアの発光波長と対応する波長を使用した蛍光画像化(右)の写真を示す。アガロースゲルは、続いてCy3フルオロフォア-アジド分子(N3-Cy3)と反応させられた5-エチニル-dUTP(5-EdUTP)または従来のdTTPを含む本発明の一本鎖オリゴヌクレオチド生成物(420のヌクレオチドを含む)を示す。影付きのボックスは、示した種の存在を示す。
【0238】
【
図10】
図10は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、さまざまな相対量の官能化を使用して生成された、(A)2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(2’F-dUTP);(B)2’-デオキシチミジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)(α-チオール-dTTP);ならびに(C)2-dNTP アルファSヌクレオチド(アルファS-dATP、アルファS-dTTP、アルファS-dCTP、アルファS-dTTP、およびアルファS-dNTP混合物)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物(420のヌクレオチドを含む)を示す。AおよびBの右側のパネルは、RCA生成物と対応するバンドを示すために過度に露出した100%官能化ヌクレオチドと対応するレーンを示す。Cの右側のパネルは、RCA生成物と対応するバンドを示すために過度に露出したアルファS-dNTP混合物と対応するレーンを示す。
【0239】
【
図11】
図11は、臭化エチジウム染色後にUV光を使用して可視化されたアガロースゲルの写真のネガ像を示す。アガロースゲルは、さまざまな濃度のDNaseIに供された本発明によって生成されたオリゴヌクレオチドを示し、(A)は、従来のヌクレオチド(天然のODN)のみを含むオリゴヌクレオチドの反応生成物を示し、(B)は、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸官能化ヌクレオチド(2’F-dUTP)を含むオリゴヌクレオチドの反応生成物を示し、(C)は、2’-デオキシチミジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)(S-ODN)を含むオリゴヌクレオチドの反応生成物を示す。
【0240】
【
図12】
図12は、SybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%の5-ビニル-dUTPヌクレオチドを使用して生成される5-ビニル-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5-ビニル-dUTP)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0241】
【
図13】
図13は、SybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%の5-ビニル-dUTPヌクレオチドを使用して生成された4-チオチミジン-5’-三リン酸(4-チオ-dTTP)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0242】
【
図14】
図14は、配列番号9~21に対応する配列を有するオリゴヌクレオチドの生成に使用した偽遺伝子配列の注釈付き版を示す。切断およびニッキング酵素によって認識される配列、ヘアピン配列、および最終的なオリゴヌクレオチド配列が特定される。
【0243】
【
図15】
図15は、2’-アジド-dATPの構造(A)およびSybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像(BおよびC)を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%の2’-アジド-dATPヌクレオチドならびにphi29 DNAポリメラーゼ(B)またはBst DNAポリメラーゼ(C)を使用して生成された2’-アジド-dATPを含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0244】
【
図16】
図16は、ビオチン-16-アミノアリル-2’-dUTPの構造(A)およびSybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像(B)を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%のビオチン-16-AA-dUTPヌクレオチド、ならびにphi29 DNAポリメラーゼを使用して生成されたビオチン-16-アミノアリル-2’-dUTPを含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0245】
【
図17】
図17は、5’-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’三リン酸ヌクレオチド(A)および5’-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸ヌクレオチド(B)の構造;SybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像(C、D、EおよびF)を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%のそれぞれの官能化ヌクレオチドならびにphi29 DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼを使用して生成された5’-Br-dUTP(CおよびE)または5’-プロピニル-dCTP(DおよびF)を含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0246】
【
図18】
図18は、2’-O-メチルアデノシン-5’-三リン酸ヌクレオチドの構造(A)およびSybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像(B)を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%の2’-OMe-ATPヌクレオチドならびにphi29 DNAポリメラーゼを使用して生成された2’-OMe-ATPを含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0247】
【
図19】
図19は、LNA-アデノシン-5’-三リン酸ヌクレオチドの構造(A)およびSybrGold染色後にUV光を使用して可視化された変性PAGEゲルの写真のネガ像(BおよびC)を示す。PAGEゲルは、さまざまな相対量、すなわち、25%、50%、75%および100%のLNA-ATPヌクレオチドならびにphi29 DNAポリメラーゼ(B)またはBst DNAポリメラーゼ(C)を使用して生成されたLNA-ATPを含む本発明の官能化一本鎖オリゴヌクレオチド生成物を示す。
【0248】
【
図20】
図20は、2%アガロースゲルの写真を示し、レーン1aおよび2aは、実施例に記載されているCRC1偽遺伝子を含む、それぞれプラスミドpM3(配列番号28)およびpM2(配列番号27)を示し、レーン1bおよび2bは、それぞれpM3およびpM2プラスミドから回収された組み換え生成物を示し(ミニサークルDNAは「*」で印がつけられている)、レーン1cおよび2cは、それぞれpM3およびpM2ミニサークルから生成された一本鎖ポリヌクレオチドを示す。
【実施例】
【0249】
実施例1 T4リガーゼを使用した長い偽遺伝子の環状化の効率
T4リガーゼを用いた2つの長い偽遺伝子の環状化効率を調べるために、MOSICアプローチ(デュカーニら、ネイチャー・メソッド、2013年)を使用した。ここではCRC2(配列番号8)と呼ぶ、最も長い偽遺伝子を、1969塩基長の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成のために設計した(切除後の偽遺伝子の合計長さは2041塩基対であった)。ActEVEN(配列番号6)と呼ぶ、それより短い偽遺伝子を、76から81塩基長の間の11の一本鎖オリゴヌクレオチドのプールを生成するために設計した(切除後の偽遺伝子の合計長さは1159塩基対であった)。
【0250】
直鎖の偽遺伝子(最終濃度5ng/μl)を、1×ラピッドライゲーションバッファー中、22℃でT4リガーゼ(0.25U/μl)と30分間混合し、続いて、65℃で10分間不活性化ステップを行った。対照として、同じ反応混合物をT4リガーゼなしで調製した。すべての反応混合物を、臭化エチジウム(1μg/ml)を入れた1.5%アガロースゲルにロードし、150Vで90分間泳動させ、画像をUVトランスイルミネーション(UVITEC)により取得した。アガロースゲル(
図3)は、T4リガーゼによる長い直鎖の偽遺伝子の環状化が非効率であること、およびライゲーション反応が単一の環状DNA分子よりもコンカテマーの生成を促進したことを示した。なお、短い方の偽遺伝子、ActEVEN(配列番号6)に関しては、単一の環状DNA分子と対応するかすかなバンドが見えるが、長い方のDNA偽遺伝子、CRC2に関してはコンカテマーしか見えなかった。
【0251】
実施例2 pM1プラスミドにクローニングされた偽遺伝子からのミニサークルの形成
3つの偽遺伝子を設計し、以前(デュカーニら、ネイチャー・メソッド、2013年)に記載されたとおりに合成した。それぞれの偽遺伝子を異なる長さの以下の一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成のために設計した:1316塩基長の単一のポリヌクレオチドのためのCRC1(配列番号7);1969塩基長の単一のポリヌクレオチドのためのCRC2(配列番号8);および81から91塩基長の間の長さの8つのオリゴヌクレオチドのプールのためのオリゴミックス。
【0252】
すべての偽遺伝子を、親プラスミドの結合部位attBとattPの間に位置するXbaIおよびBamHI制限部位を使用してpM1(配列番号1)にクローニングした。偽遺伝子を含む親プラスミドの配列検証をし、大腸菌(ZYCY10P3S2T)を形質転換するために使用した。形質転換細菌培養物を一晩増殖させて、プラスミドを増殖させた後、アラビノース(0.01%の最終濃度まで)による誘導時に組み換えプロセスを誘発し、そのプロセスを完了するためにさらに6時間のインキュベーションが必要であった。ミニサークル(MC)を標準的なプラスミドプレップによって回収し、分析管理のために臭化エチジウムを含む1.5%アガロースゲル(1μg/ml、Sigma Aldrich)上にロードした(
図4)。すべての組み換え反応が環状生成物の混合物を生成し、これは、環状モノマーミニサークル(MCモノマー)および多重結合ミニサークル(MCポリマー)を含んでおり、それらのすべてが本明細書に記載の方法に使用するために適した基質(DNAミニサークル)である。
【0253】
実施例3 単一のミニサークル鋳型からのオリゴヌクレオチドプールの形成
実施例2のオリゴミックスミニサークルを伴う組み換え反応の生成物に、Nb.BsrDIおよびNt.BspQIを使用して酵素的にニックを入れて、3’OHを得て、RCA反応を誘発した。phi29 DNAポリメラーゼを使用してRCA反応を一晩行った。その後、増幅生成物をBtsCI(0.5U/μl)で消化して、所望のオリゴヌクレオチド配列を放出させ、消化生成物を、SybrGold 1×中で染色した10%変性ポリアクリルアミドゲル上を泳動させた(
図5)。ゲル抽出ミニサークルモノマーから生成を開始した場合も、同じ結果が達成された。
【0254】
実施例4 ミニサークル鋳型を使用した長い一本鎖DNAポリヌクレオチドの形成
実施例2のCRC1およびCRC2ミニサークルを伴う組み換え反応の生成物を、一本鎖DNAポリヌクレオチドの生成のための鋳型として使用した。両組み換え生成物に酵素的にニックを入れて(Nb.BsrDIおよびNt.BspQI)、3’OHを得て、RCA反応を誘発した。phi29 DNAポリメラーゼを使用してRCA反応を一晩行った。その後、増幅生成物をBtsCI(0.5U/μl)で消化して、所望のDNAポリヌクレオチド配列を放出させ、消化生成物を、分析管理のために臭化エチジウム(1μg/ml、Sigma Aldrich)を含む2%アガロースゲル上を泳動させた(
図6)。
【0255】
実施例5 蛍光ヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
378ヌクレオチド長の一本鎖蛍光オリゴヌクレオチド(配列番号9)を、phi29 DNAポリメラーゼを使用して酵素的に生成した。これは、1つがフルオロフォアCy3(7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-ATP-Cy3)を含み、1つがフルオロフォアATTO-488(7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-ATP-ATTO-488)を含む、2つの異なる官能化dATP核酸塩基の組み込みにより行った。
【0256】
配列番号9およびヘアピン切断ドメインを含む二本鎖環状DNA鋳型を、デュカーニら、2013年、ネイチャー・メソッド、p.647~652に記載されているとおりに調製した。鋳型(1ng/μL)にNb.BsrDIおよびNt.BspQI(0.25U/μl)でニックを入れ、ローリングサークル増幅反応(0.1~0.25ng/μL 鋳型DNA、phi29 DNAポリメラーゼ 0.25U/μl、0.1μg T4遺伝子32)を、それぞれの反応において天然のdATPおよび官能化dATPの異なる比率(すなわち、官能化dATPの異なる相対量、2%、3%または5%)で数回行った。得られたRCA生成物を、脱イオン化水および1×消化バッファー(50mM 酢酸カリウム、20mM 酢酸トリス、10mM 酢酸マグネシウム、100μg/ml BSA、pH7.9、25℃)で5倍希釈した後、BtsCI制限酵素(0.5U/μL)で50℃において一晩消化し、消化生成物を、アガロースゲル上を泳動させた。画像化は、2つのフルオロフォアと対応する発光波長を使用して、臭化エチジウム染色後のUV視覚化によって行った。
【0257】
得られた画像を、ATTO-488およびCy3に関してそれぞれ
図7AおよびBに示す。dATP-ATTO-488ヌクレオチドのパーセンテージを増加させると、より高い蛍光のオリゴヌクレオチドが得られたことがわかる。しかしながら、dATPヌクレオチドの5%がdATP-ATTO-488である場合、RCA生成物の総量がおよそ60%減少した。
【0258】
驚くべきことに、dATP-ATTO-488の使用とは対照的に、存在するdATP-Cy3ヌクレオチドのパーセンテージは、phi29 DNAポリメラーゼの効率に影響を及ぼさないようであり、RCA混合物中に5%のdATP-Cy3を用いた場合も一本鎖DNA生成物が見えた(
図7B)。さらに、修飾ヌクレオチドの組み込みは、BtsCI制限酵素の効率、ひいては切断ドメインを含む設計されたヘアピンの放出を妨げない、または低減しない。
【0259】
配列番号9:CCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTG
【0260】
実施例6 内在するアルキン基を有するヌクレオチド、すなわち、核酸塩基中にアルキン基を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
アルキン基を有するヌクレオチドを含む、420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)を、phi29 DNAポリメラーゼを使用して酵素的に生成した。
【0261】
配列番号10およびヘアピン切断ドメインを含む二本鎖環状DNA鋳型を、デュカーニら、2013年、ネイチャー・メソッド、p.647~652に記載されているとおりに調製した。実施例1に記載されている条件を使用するが、5’-エチニル-dUTP(5’-EdUTP)の相対量を増加させて、すなわち、5’-EdUTPの相対量が0%(対照反応)、25%、50%、75%または100%になるよう、dTTPを5’-EdUTPで置換して、RCA反応のための鋳型にニックを入れた。増幅後、実施例5に記載されているとおりに、RCA生成物をBtsCI制限酵素によって消化し、アガロースゲルにロードした。
【0262】
図8Aの結果は、驚くべきことに、100%に達するdTTPヌクレオチドがアルキン官能化dUTPで置換された場合でも、RCA収率は15~20%しか低下しなかったことを示す。したがって、
図8Aはまた、RCA生成物が首尾よく、効率的にBtsCIによって切断されたことも示す。アルキン官能化dUTPヌクレオチドの組み込みは、官能化オリゴヌクレオチドの低い移動度が観察されたという事実によって裏付けられた。
【0263】
phi29 DNAポリメラーゼをBst DNAポリメラーゼで置き換えて追加の実験を行った。ゲル電気泳動は、50%の官能化dUTPまで増幅収率に変化を示さず、最終生成物は、修飾dUTPを25%有するものと比較してシフトし、これは、その対応する天然のヌクレオチド(dTTP)よりも高い分子量を有する修飾ヌクレオチドの組み込みを裏付ける(
図8B)。
【0264】
配列番号10:ATTGAAGCATGCGGCGTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATGCGTAAGATACCACCACACCCGCATTCGCCATTCAGGCGGCCGCCACCGCGGTGGAGCTCCAGCTGCTGTTTCCTGTGTAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGTCATATTTGTTCCCTTTAGATCCGCCTCCATCTACAGGGCGCGTCCCCGCGCTTAATGCGCGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGGACTTACCTTCGGAAAAGAAATTGTTATCCGCTCACAAAAGCCAGAGTATTTAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGGGTTATTGTCTCATCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCTTATCAGACCCTGCCGCTTACAAGTGGTCGCCAGTCTATTAACAGCACTCAATACGGGATAATTTTTCAATATT
【0265】
実施例7 内在するアルキン基を含む一本鎖ヌクレオチドにアジド・フルオロフォアを結合させるためのクリックケミストリー反応
実施例6で生成されたオリゴヌクレオチドへの官能化5-エチニル-dUTPヌクレオチドの組み込みの成功が、クリックケミストリー反応を実施することにより、さらに証明された。
【0266】
75%のアルキン官能化dUTPヌクレオチドを用いた反応からの官能化オリゴヌクレオチドをCy3-アジド(50μM)とともにインキュベートした。クリックケミストリー溶液はまた、触媒として硫酸銅(50μM)、アスコルビン酸ナトリウム(50mM)およびTHPTA(250μM)を含んでいた。陰性対照として、同じ鋳型から同じ方法によってであるが、従来のdNTPを用いて生成されたオリゴヌクレオチドもCy3-アジドとともにインキュベートした。さらに、内在するアルキン基を含む官能化オリゴヌクレオチドをCy3-アジドの非存在下でインキュベートした。3つの反応からの反応混合物を、アガロースゲル上を泳動させ、画像化した(
図9)。予想される長さの蛍光一本鎖オリゴヌクレオチドは、官能化オリゴヌクレオチドおよびフルオロフォア・アジドを含む反応に対してのみ観察された。さらに、硫酸銅の存在による目に見えるDNA分解は観察されなかった。
【0267】
実施例8 エンドヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(2’F-dUTP)または2’-デオキシチミジン-5’-O-(1-チオ三リン酸)(ホスホロチオエートdTTP)は、ヌクレアーゼ安定性を付与するその能力のために、生物医学および治療用途でDNAおよびRNAオリゴヌクレオチドを修飾するために以前より使用されてきた。これらの修飾ヌクレオチドを、上記の実験的スキームを使用したRCAによって一本鎖DNAオリゴヌクレオチドに組み込んだ。従来のdTTPヌクレオチドを0から100%までパーセンテージを増加させて、官能化ヌクレオチドによって置換した。次に、タンデムリピートRCA生成物を、BtsCI制限酵素で消化して、個々の420塩基の一本鎖官能化オリゴヌクレオチド(配列番号10)にした。
【0268】
2’F-dUTP官能化ヌクレオチドを用いて行ったこの実験では、0%から75%までの官能化ヌクレオチドで同様のRCA収率が見られ、100%の官能化ヌクレオチドを用いると収率の劇的な低下が観察された(
図10A)。
【0269】
ホスホロチオエートdTTP実験では、官能化ヌクレオチドの量が増加するにつれ、RCA収率が徐々に低下し、75%の官能化ヌクレオチドを用いると、従来のヌクレオチドのみを用いた収率と比較して、最大およそ65%低下した(
図10B)。
【0270】
ただし、過度に露出したアガロースゲルは、100%の官能化核酸塩基を用いても、どれだけ官能化一本鎖オリゴヌクレオチドが生成されたかを示した。
図10AおよびBの右側のパネルを参照のこと。
【0271】
1つずつまたは組み合わせのいずれかで添加した追加の実験において、他のホスホロチオエートdNTP(Alpha S-dNTPと示した)を試験した(
図10C)。すべての従来のヌクレオチドの75%を、その対応するアルファS官能化ヌクレオチドで置換した最後の事例でも、RCA生成物が合成され、酵素的に切断されて、アガロースゲル上に目に見えるオリゴヌクレオチドを得た。
【0272】
従来のヌクレオチドのみを用いて生成された対照オリゴヌクレオチドと比較して、官能化オリゴヌクレオチドのエンドヌクレアーゼ耐性を調べた。従来のヌクレオチドのみを用いて生成された対照420nt長のオリゴヌクレオチド、2’-F-dUTP官能化オリゴヌクレオチドおよびホスホロチオエートdTTP官能化オリゴヌクレオチド(ともに75%の相対量の官能化ヌクレオチドを使用して生成した)を、増加する濃度のDNaseIとともにインキュベートした(
図11A~C)。対照オリゴヌクレオチドは、18mU/mlのDNaseIで完全に消化されたが、酵素的に生成された2’-F-dUTPおよびホスホロチオエートdTTP官能化DNAオリゴヌクレオチドは両方とも、同じ濃度のエンドヌクレアーゼとのインキュベーション後も依然としてアガロースゲル上に見えた。
【0273】
実施例9 ビニル基を有するヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
チミジン類似体5-ビニル-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5-ビニル-dUTP)で官能化された、76~81塩基の長さを有する一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(配列番号11~21)を、上記の実験スキームに従ってRCA反応により酵素的に生成した。すべてのオリゴヌクレオチドは、単一の偽遺伝子(配列番号24)にコードされた。そのような官能化ヌクレオチドを一本鎖オリゴヌクレオチドへ組み込むことにより、銅を含まないクリックケミストリー反応を、テトラジン様分子をオリゴヌクレオチドに結合させるために使用することが可能になる。このアルケン・テトラジン反応は、先に行われたアルキン・アジドクリックケミストリー反応とは完全にオルソゴナルであり得る。
【0274】
従来のヌクレオチドdTTPに対して、RCA反応混合物中の官能化ヌクレオチドの量を増加させると、5-ビニル-dUTPの一本鎖のRCA生成物への組み込みの成功およびヘアピン構造の消化の成功につながる。しかしながら、RCA生成物を切断するために使用されるphi29 DNAポリメラーゼおよびII型エンドヌクレアーゼの両方の活性レベルは、官能化ヌクレオチドの非存在下においてよりも低下した、したがって、これは、官能化ヌクレオチドが従来のdTTPヌクレオチドを完全に置換した場合、未分解のヘアピン構造を有するより高分子量のバンドをもたらした(
図12)。
【0275】
【0276】
実施例10 チオール化ヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
チオール化dTTP(4-チオチミジン-5’-三リン酸)で官能化された一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを、上記の反応スキームおよび鋳型(配列番号11~21)を使用したRCA反応により酵素的に生成した。すべてのオリゴヌクレオチドは、単一の偽遺伝子(配列番号24)にコードされた。
【0277】
phi29 DNAポリメラーゼ組み込みによるチオール化ヌクレオチドの一本鎖オリゴヌクレオチドへの組み込みは、対応する従来のヌクレオチド(dTTP)の75%までの置換、すなわち、官能化ヌクレオチドの75%の相対量までの官能化ヌクレオチドの量で非常にうまくいった(
図13)。
【0278】
RCA生成物を、上記のII型制限酵素によって消化したが、官能化RCA生成物の完全な消化には、従来のヌクレオチドのみを含むRCA生成物に使用される濃度よりも10倍高い酵素濃度が必要とされた。従来のdTTPヌクレオチドが官能化チオール化ヌクレオチドで完全に置換された場合、II型制限酵素による処理後にいかなる一本鎖オリゴヌクレオチドも観察されなかったが、未分解のRCA生成物の非常にわずかな蓄積のみそのウェルに観察され、これは、ポリメラーゼの活性も影響を受けたことを示唆する。
【0279】
実施例11 アジドヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
対応する従来のdATPヌクレオチドを置換する、増加するパーセンテージの官能化2’-アジド-dATPヌクレオチドを含む420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)(
図15A)を、phi29 DNAポリメラーゼ(
図15B)およびBst DNAポリメラーゼ(
図15C)を使用して酵素的に生成した。
【0280】
新たに合成されたDNA鎖中の高密度のアジド基は、Cu(I)触媒ヒュスゲン環化付加(「クリック」ケミストリー)、またはアジドおよびシクロアルキン、例えば、シクロオクチンもしくはシクロノニンの歪み促進型[3+2]環化付加のいずれかによる、アルキン分子による合成後官能化を可能にする。
【0281】
鎖置換活性を有する2つの異なるポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼまたはBst DNAポリメラーゼを増幅ステップに使用した。両ポリメラーゼは、官能化ヌクレオチドを増幅生成物に組み込むことができ、それを、その後、消化し、アガロースゲル上を泳動させた。
【0282】
phi29 DNAポリメラーゼを用いて生成されたDNA生成物は、修飾ヌクレオチド75%までゲル中に見えた(
図15B)一方で、Bst DNAポリメラーゼ生成物は100%まで見えた(
図15C)が、(0%の2’-アジドdATPと対応するレーンでも)Bst増幅緩衝塩がスメアの影響をもたらした。官能化ヌクレオチドは首尾よく組み込まれ、増幅生成物の切断を可能にするヘアピン構造の形成に大きな影響を及ぼさなかった。
【0283】
実施例12 ビオチン化ヌクレオチドを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
対応する従来のヌクレオチドdTTPを置換する、増加するパーセンテージ(25%~100%)の官能化ビオチン-16-アミノアリル-2’-dUTP(
図16A)を含む420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)を、phi29 DNAポリメラーゼを使用して酵素的に生成した(
図16B)。
【0284】
ビオチン化ヌクレオチドの組み込みは、DNA増幅反応にわずかにしか影響を及ぼさず、驚くべきことに、大きなサイズの官能化ヌクレオチドのために立体障害の可能性があるにもかかわらず、RCA生成物の切断を可能にするヘアピン構造の形成を妨げなかった。複数の内部のビオチンの官能化ポリヌクレオチドへの組み込みは、ストレプトアビジン官能化分子との結合を可能にする。
【0285】
実施例13 5-修飾ピリミジン;5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸および5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
対応する従来のヌクレオチドdTTPおよびdCTPをそれぞれ置換する増加するパーセンテージ(25%~100%)の非天然の5-修飾ピリミジン;5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(
図17A)および5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸(
図17B)を含む420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)を、phi29 DNAポリメラーゼ(
図17Cおよび17D)ならびにBst DNAポリメラーゼ(
図17Eおよび17F)を使用して酵素的に生成した。驚くべきことに、両官能化ヌクレオチドは、RCA生成物中におけるヘアピン構造の形成に影響を与えることなく、新たに合成されたDNA配列に首尾よく組み込まれ、したがって、切断反応が起こるのを可能にした。
【0286】
実施例14 2’-O-メチル-ATPを含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
対応する従来のヌクレオチドdATPを置換する、増加するパーセンテージ(25%~100%)の2’-O-メチル-ATP(
図18A)を含む420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)を、phi29 DNAポリメラーゼを使用して酵素的に生成した(
図18B)。100%の官能化ヌクレオチドが存在する場合でも、増幅生成物は依然として見えた。この結果は、既知の天然のポリメラーゼがこれらの修飾基質を効率的に受け入れることができないことを示した以前の研究とは反対であった(ロムズバーグ(Romesberg)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、2004年、10.1021/ja038525p)。
【0287】
さらに、高分子量の未分解のDNAバンドはゲル中に見えず、これは、官能化ヌクレオチドの存在がヘアピン構造の形成および制限酵素によるその消化に影響を及ぼさなかったことを示す。これは、O-メチル基によってDNA分子に付与されるヌクレアーゼ耐性を考慮すると驚くべき結果であった。
【0288】
実施例15 LNA-アデノシン-5’-三リン酸を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの酵素的生成
対応する従来のヌクレオチドdATPを置換する増加するパーセンテージ(25%~100%)のLNA-アデノシン-5’-三リン酸(
図19A)を含む420ヌクレオチド長の一本鎖オリゴヌクレオチド(配列番号10)を、phi29 DNAポリメラーゼ(
図19B)およびBst DNAポリメラーゼ(
図19C)を使用して酵素的に生成した。
【0289】
LNAモノマーはRNAを構造的に模倣するが、100%の官能化ヌクレオチドを用いても、ポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼおよびBst DNAポリメラーゼの両方の効率は大きな影響を受けなかった。さらに、官能化ヌクレオチドは、増幅生成物の消化を可能にするヘアピン構造の形成を妨げなかった。
【0290】
実施例16 ParAリゾルバーゼおよびFLPリコンビナーゼを使用して生成されたミニサークルからの一本鎖DNAの形成
上記の一本鎖DNAポリヌクレオチド、CRC1(配列番号7)の生成のために偽遺伝子を設計した。
【0291】
それぞれの親プラスミドのリコンビナーゼ結合部位FLPrとFLPl(pM2)およびmsr_lとmsr_r(pM3)の間に位置する制限部位を使用して、偽遺伝子をpM2(配列番号27)およびpM3(配列番号28)にクローニングした。pM2およびpM3は、アラビノース誘導性プロモーターの支配下においてそれぞれFLPリコンビナーゼおよびParAリゾルバーゼをコードする。偽遺伝子を含む親プラスミドの配列検証をし、大腸菌(DH10B)を形質転換するために使用した。形質転換細菌培養物を一晩増殖させて、プラスミドを増殖させた後、アラビノース(0.02%の最終濃度まで)による誘導時に組み換えプロセスを誘発し、そのプロセスを完了するためにさらに4時間のインキュベーションが必要であった。ミニサークル(MC)を標準的なプラスミドプレップによって回収し、分析管理のために臭化エチジウム(1μg/ml、Sigma Aldrich)を含む2%アガロースゲル上にロードした(pM3およびpM2に関して、それぞれ
図20、1bおよび2b)。単離したミニサークルを上記のssDNAの酵素的生成のために使用した。
図20(1cおよび2c)は、ミニサークルがRCAのための鋳型として機能し、それに続くRCA生成物の切断が正しいサイズのssDNAをもたらすことを示す。
【配列表】
【国際調査報告】