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  • 特表-スパンボンド不織布を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20230329BHJP
   D04H 3/11 20120101ALI20230329BHJP
   D04H 3/05 20060101ALI20230329BHJP
   D04H 3/013 20120101ALI20230329BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/11
D04H3/05
D04H3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550724
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021054497
(87)【国際公開番号】W WO2021170609
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159095.7
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ザゲレル-フォリク,イブラヒム
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA12
4L047BA04
4L047BA08
4L047CA05
4L047CA12
(57)【要約】
本発明は、スパンボンド布帛(1)を製造する方法(100、101)及びエンボス模様(10)を備えた装置(200、201)に関する。本方法では、紡糸原料(2)は、繊維(4、40)を形成するために、少なくとも1つの紡糸口金(3、30)の複数のノズル孔を通って押し出され、繊維(4、40)のそれぞれは引き伸ばし気流(5、50)を用いて、押し出し方向に引き伸ばされ、繊維(4、40)はスパンボンド布帛(1)を形成させるために搬送装置(8)の穿孔ラック(7)に堆積される。本発明の目的は、スパンボンド布帛へエンボス模様を導入する効率的な、技術的に簡単な、且つ安価な方法を可能にすることである。これは、穿孔ラック(7)がエンボス模様(10)を備えたエンボス構造(9)を有し、繊維(4、40)が引き伸ばし気流(5、50)を用いてエンボス構造(9)へ押しつけられ、このように形成されたスパンボンド布帛(1)に、エンボス模様(10)が付与されることによって達成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス模様(10)を備えたスパンボンド不織布(1)を製造する方法であって、紡糸塊(2)が、少なくとも1つの紡糸口金(3、30)の複数のノズル孔を通って押し出されて繊維(4、40)を形成し、繊維(4、40)が引き出し気流(5、50)によってそれぞれの場合に押し出し方向に引き出され、繊維(4、40)が搬送装置(8)の穿孔トレー(7)上に堆積されてスパンボンド不織布(1)を形成する、方法であり、穿孔トレー(7)がエンボス模様(10)を備えたエンボス構造(9)を有し、繊維(4、40)が引き出し気流(5、50)によってエンボス構造(9)へ押しつけられ、このように形成されたスパンボンド不織布(1)には、エンボス模様(10)が付与されていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
スパンボンド不織布(1)がその形成の後に少なくとも1つの処理工程にかけられ、エンボス模様(10)が、少なくとも1つの処理工程の後にスパンボンド不織布(1)の中で本質的に保存されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの処理工程が洗浄(14)及び/又は乾燥(15)からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エンボス模様(10)を備えたスパンボンド不織布(1)が、その形成の後に更に水流交絡(17)を受け、スパンボンド不織布(1)が、水流交絡(17)の際に第2のエンボス模様(20)を付与されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
相前後して配置されたいくつかの紡糸口金(3、30)の複数のノズル孔を通って紡糸塊(2)が押し出されて繊維(4、40)を形成し、繊維(4、40)がそれぞれ引き出し気流(5、50)によって押し出し方向に引き出され、紡糸口金(3、30)のそれぞれの繊維(4、40)が、穿孔トレー(7)上に互いに重ねて堆積させられて多層のスパンボンド不織布を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
スパンボンド不織布(1)がセルローススパンボンド不織布(1)であり、紡糸塊(2)が直接溶媒、特に第三級アミンオキシド含有水溶液のセルロースの溶液であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
紡糸口金(3、30)からの押し出しの後、繊維(4、40)が好ましくは更に凝固液を含む凝固気流(11)によって特に少なくとも部分的に凝固させられることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エンボス模様(10)を備えたスパンボンド不織布(1)を製造する装置であって、紡糸塊(2)を繊維(4、40)に押し出すための少なくとも1つの紡糸口金(3、30)と、引き出し気流(5、50)によって押し出された繊維(4、40)を引き出すための引き出し装置(6)であり、紡糸口金(3、30)に割り付けられている、引き出し装置(6)と、更に繊維(4、40)を堆積させスパンボンド不織布(1)を形成させるための穿孔トレー(7)を有する搬送装置(8)とを含み、穿孔トレー(7)が、繊維(4、40)を引き出し気流(5、50)によってエンボス構造(9)へ押しつけ及び形成されたスパンボンド不織布(1)の中へエンボス模様(10)を付与するための、エンボス模様(10)を備えたエンボス構造(9)を有することを特徴とする、装置。
【請求項9】
装置(200、201)が、スパンボンド不織布が形成された後スパンボンド不織布(1)を洗浄するための洗浄(14)と、洗浄(14)の後にスパンボンド不織布(1)を乾燥するためのドライヤー(15)とを含むことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
引き出し気流(5、50)の排出のために、装置(200、201)が穿孔トレー(7)の真下に吸引設備を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
装置(200、201)が、洗浄(14)とドライヤー(15)の間のコンベヤーベルト(18)の上の水流交絡(17)と、第2のエンボス模様(20)を備えた第2のエンボス構造(19)を有するコンベヤーベルト(18)とを含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス模様を備えたスパンボンド不織布を製造する方法であって、紡糸塊が、少なくとも1つの紡糸口金の複数のノズル孔を通って押し出し方向に押し出されて繊維を形成し、繊維が、引き出し気流によって、それぞれの場合に、押し出し方向に引き出され、繊維は搬送装置の穿孔トレーに堆積されてスパンボンド不織布を形成する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパンボンド不織布又は不織布の製造は、一方では、スパンボンドプロセスにより、また他方では、メルトブローンプロセスにより、先行技術から公知である。スパンボンドプロセス(例えば、英国特許出願公開第2114052(A)号又は欧州特許出願公開第3088585(A1)号では、繊維はノズルを通って押し出され取り外され、真下に位置決めされた引き出しユニットによって引き出される。対照的に、メルトブローンプロセス(例えば、米国特許第5,080,569(A)号、米国特許第4,380,570(A)号又は米国特許第5,695,377(A)号)では、押し出された繊維は、繊維がノズルを出るとすぐに、高温高速のプロセス空気によって同伴され引き出される。どちらの技術においても、繊維は、堆積物表面、例えば、穿孔されたコンベヤーベルトにランダムな配向で堆積されて不織布を形成し、後加工工程へ搬送されて、最終的に不織布のロールとして巻き取られる。
【0003】
米国特許第9,394,637(B2)号から、短繊維ベースの不織布の製造の方法は公知であり、不織布の特性は水流交絡によって修正される。そのような水流交絡は、例えば、欧州特許第2462269(B1)号及び欧州特許第1873290(B1)号に述べられている。本方法では、例えば、不織布のいくつかの層は水流交絡によって連結することができ、機械的性質又は不織布の三次元構造は、不織布の穿孔により、又はエンボス模様の導入により変更することができる。
【0004】
更に、紙ウェブの製造では、エンボス模様をコンベヤーベルトによって紙ウェブに直接組み入れることができ、後の乾燥工程によって凝固させることができることは公知である(米国特許第10,273,635号、欧州特許第1616052(B1)号及び欧州特許第1567322(B1)号)。セルロース繊維は、コンベヤーベルト上で希薄な懸濁液中に浮かび上がり、液体はコンベヤーベルトを通って排出され、一方セルロース繊維はコンベヤーベルト上に残るので、コンベヤーベルトの三次元構造が紙ウェブに伝えられる。
【0005】
熱可塑性のスパンボンド不織布の製造用の市販のシステムでは、スパンボンド不織布の層がカレンダーによってともに融合されるので、水流交絡設備は通常必要ではない。
【0006】
更に、スパンボンド技術(例えば、米国特許第8,366,988(A)号)、及びメルトブローン技術(例えば、米国特許第6,358,461(A)号及び米国特許第6,306,334(A)号)によってセルローススパンボンド不織布を製造することは、先行技術から公知である。それによりリヨセルの紡糸塊は、公知のスパンボンドプロセスかメルトブローンプロセスに従って押し出され引き出されるが、不織布の中への堆積の前に、セルロースを再生し、かつ寸法的に安定した繊維を製造するために、繊維を、凝固剤と更に接触させる。湿った繊維は、不織布としてランダムな配向で最終的に堆積される。
【0007】
リヨセルのスパンボンド不織布の水流交絡は、例えば、米国特許第8,282,877(B2)号に述べられている。リヨセルのスパンボンド不織布は連続フィラメントであるので、製紙業でのように省エネルギーの懸濁液を用いて三次元構造をエンボス加工することができない。湿った重い繊維は、互いに強く連結されているためこのようなことはできない。したがって、架橋されたセルロース繊維を組み立てるために水流交絡は高エネルギー投入でしか起こらず、これによって、セルローススパンボンド不織布の製造用の設備のエネルギーコストにマイナスの影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、最初に言及したタイプのスパンボンド不織布を製造する方法であって、スパンボンド不織布にエンボス模様を、効率的に、技術的に簡単に、したがって安価に導入することを可能にする、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、穿孔トレーにエンボス模様を備えたエンボス構造があり、繊維は引き出し気流によってエンボス構造へ押しつけられ、このように形成されたスパンボンド不織布に、エンボス模様が付与されるという目的を達成するものである。
【0010】
穿孔トレーにエンボス模様を備えたエンボス構造がある場合には、エンボス模様を備えたスパンボンド不織布を直接に構造化することが、搬送装置のトレー上で繊維を堆積させる間に既に起こることが示された。繊維を、引き出し気流によってエンボス構造に押しつけることができるので、このように形成されたスパンボンド不織布に、エンボス模様を直接付与することができる。ウェブ形成の下流でエンボス模様を導入するための技術的に複雑な処理工程を、このように省略することができる。したがって、効率的で安価な方法を提供することができる。
【0011】
本発明による方法は、このように三次元のエンボス構造の助けによってセルローススパンボンド不織布の直接の構造化を特に可能にする。この方法を行うと、エンボス構造は、任意のエンボス模様を有することができる。
【0012】
エンボス構造を付与する搬送装置の穿孔トレーは、搬送装置の一体化部品として特に設計されてもよい。この場合、例えば、コンベヤーベルト、回転ドラム又は同等な装置は、搬送装置として好適なものとすることが可能である。
【0013】
本発明による方法に従ったセルローススパンボンド不織布の製造により、経済効率と操業の点から非常に多くの改良及び利点がもたらされる。スパンボンド不織布へエンボス模様を導入するための下流の水流交絡を省略できるので、コストと製造設備の複雑さをともに削減することができる。更に、電力と水の消費量を削減することができ、したがって、方法の経済効率を増大させることができる。更に、水流交絡の撤廃により、洗浄されるべき、又は交換されるべきノズル一片も又はフィルターも無いので、方法の運転保守コストも削減することができる。
【0014】
特に、本方法によるセルローススパンボンド不織布を製造する際に使用される大量の引き出し空気の結果として、その引き出し空気は特に熱可塑性のスパンボンド不織布と比較してほぼ10倍増加するが、トレー上への引き出し気流の運動量が非常に高いので、押し出された繊維はトレーのエンボス構造に確実に押しつけられることが示された。実際、押し出され引き出された繊維は、まだトレー上のスパンボンド不織布の形成中に高い変形能を示し、エンボス構造の隆起部と窪み部にこのように確実に追従することができ、それによって形成されたスパンボンド不織布に、持続的にエンボス構造のエンボス模様を付与している。
【0015】
穿孔トレーの真下に、前記トレーを通ってトレーを叩く引き出し気流を効率的に排出するために、吸引設備を穿孔トレーに負圧をかけるよう装備してもよい。トレーの領域の望ましくない乱流の形成を回避することができるので、方法の信頼度をこのように更に高めることができる。
【0016】
エンボスプロセスの信頼度及び特性は、多数のパラメーターによって影響を受ける場合がある。例えば、引き出し気流圧を増加させるか減少させることによって、トレーの真下の負圧を増加させるか減少させることによって、及びトレー中のエンボス構造の変更、例えば、エンボス構造の深さの変更によって、スパンボンド不織布に備えられたエンボス構造のエンボス模様の深さを制御することが可能である。
【0017】
本発明によれば、搬送装置のトレー中のエンボス構造に応じて、スパンボンド不織布の表面上の多種多様のエンボス模様及び/又は多種多様の穴部穿孔を生成することができ、これによって、特に、製造されたスパンボンド不織布の厚さ、外観、触感、及び柔軟さに影響を及ぼすことが明らかになっている。したがって、本発明によるエンボス模様を付与された後、スパンボンド不織布は、例えば、坪量は同一であるがエンボス模様のないスパンボンド不織布よりも著しく大きな知覚可能な厚さを有することが可能である。
【0018】
エンボス構造に加えて、トレーを通ってガス及び/又は液体を排出することとして役立ち、スパンボンド不織布へエンボス模様を導入することがその機能であるエンボス構造と識別されることになっている穿孔は、トレーの中に設けられている。したがって、穿孔、又は穿孔トレー自体は、本質的にスパンボンド不織布中のエンボス模様の形成を引き起こさない。
【0019】
エンボス構造の高さ、すなわち、エンボス構造中の隆起部と窪み部の間の高さの差が、0.1mm以上である場合、スパンボンド不織布の中へエンボス模様を確実に導入することができる。本発明の好ましい実施形態では、エンボス構造の高さは、少なくとも0.5mm、特に少なくとも1mmであることが好ましい。更に、エンボス構造の高さが10mm以下、本発明の好ましい実施形態では5mm以下、又は特に好ましくは3mm以下である場合に、エンボス模様の確実な導入に有益な効果とすることができる。
【0020】
更に、スパンボンド不織布がその形成の後に少なくとも1つの処理工程にかけられる場合、エンボス模様は、少なくとも1つの処理工程の後にスパンボンド不織布の中で本質的に保存され、方法の信頼度及び簡潔さを、更に改善させることができる。そのような処理工程には、例えば、洗浄又は乾燥があり、エンボス模様を備えたスパンボンド不織布が洗浄にかけられ、続いて、乾燥にかけられる。残存溶媒は、実際に、洗浄によってスパンボンド不織布から確実に取り除くことができ、したがって、持続的に安定な、溶媒を含まないスパンボンド不織布を作成することができる。この場合、洗浄は、好ましくは向流洗浄として設計されてもよい。
【0021】
エンボス模様を備えたスパンボンド不織布が、その形成の後に更に水流交絡を受け、スパンボンド不織布は、水流交絡の際に第2のエンボス模様を付与され、複雑なエンボス模様を技術的に簡単な方式でスパンボンド不織布へ導入することができ、それは、例えば、2つ又はいくつかのエンボス模様を重ね合わすことにより作成される。あるいは、スパンボンド不織布に水流交絡によって第2の側に第2のエンボス模様を付与すると考えることもできる。この方式を行うと、どのような場合にも、トレーのエンボス構造へ繊維を押しつけることにより、スパンボンド不織布の中に付与された第1のエンボス模様が水流交絡の際に本質的に変化しないように、スパンボンド不織布の中への第2のエンボス模様の導入を行うことができる。
【0022】
本発明による更なる一変形実施形態では、多層のスパンボンド不織布を製造する方法であって、相前後して配置されたいくつかの紡糸口金の複数のノズル孔を通って紡糸塊が押し出されて繊維を形成し、繊維がそれぞれ引き出し気流によって押し出し方向に引き出され、紡糸口金のそれぞれの繊維が穿孔トレー上に互いに重ねて堆積させられ多層のスパンボンド不織布を形成する、方法を提供することができる。これを行うとき、このように作成された多層のスパンボンド不織布に、前述のエンボス模様を確実に付与でき、更に、層の所望する多層構造(例えば、重ね合わされた異なる特性を備えたスパンボンド不織布による)を有することができる。
【0023】
多層のスパンボンド不織布中のスパンボンド不織布の個々の層の坪量に応じて、それゆえに、エンボス模様は、スパンボンド不織布層のすべてによって、スパンボンド不織布層の一部によって、又は第1のスパンボンド不織布層の中でのみ形成することができる。
【0024】
本発明による方法は、リヨセルの紡糸塊からのスパンボンド不織布の製造に特に有利に使用することができる。次いで、このように製造されたスパンボンド不織布は、直接溶媒、特に、第三級アミンオキシド含有水溶液中のセルロースの溶液であるリヨセルの紡糸塊を用いて、セルローススパンボンド不織布になることになる。
【0025】
この場合、直接溶媒は、第三級アミンオキシド、好ましくはN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)含有水溶液、又はセルロースを化学誘導体化することなく溶解することができるイオン性液体であってもよい。
【0026】
この場合、紡糸塊中のセルロースの含有量は、4%から17%の間、好ましくは5%から15%の間、特に好ましくは6%から14%の間の範囲であってもよい。
【0027】
スパンボンド不織布のノズルあたりのセルロースの流量は、5kg/h/mノズル長から500kg/h/mノズル長までの範囲であってもよい。
【0028】
更に、引き出し気流は、20℃から200℃の間、好ましくは60℃から160℃の間、特に好ましくは80℃から140℃の間の温度を有することができる。
【0029】
引き出し空気圧(すなわち、引き出し空気ノズルから出ていく間の引き出し気流の空気圧)は、0.05バールから5バールの間、好ましくは0.1バールから3バールの間、特に好ましくは0.2バールから1バールの間であってもよい。
【0030】
引き出し空気の必要量は、セルロース1kg当たり20Nm(標準立方メートル)から900Nmの間であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、引き出し空気の必要量は、好ましくはセルロース1kg当たり40Nmから500Nmの間、特に好ましくはセルロース1kg当たり60Nmから300Nmの間であってもよい。
【0031】
更に、紡糸口金から押し出された繊維が少なくとも部分的に凝固させる場合、スパンボンド不織布の内部構造は確実に制御することができる。この目的のために、繊維には、凝固液を含む凝固気流を流すことができることが好ましい。この場合、凝固気流は、好ましくは水を含んでいる流体及び/又は凝固剤、例えば、ガス、ミスト、蒸気等を含んでいる流体であってもよい。
【0032】
NMMOがリヨセルの紡糸塊の中で直接溶媒として使用される場合、凝固液は、脱塩水と、0重量%~40重量%のNMMO、好ましくは10重量%~30重量%のNMMO、特に好ましくは15重量%~25重量%のNMMOと、の混合物であってもよい。これによって特に押し出された繊維の確実な凝固を達成することができる。
【0033】
スパンボンド不織布の中へのエンボス模様の確実で、且つ技術的に簡単な導入を可能にする、請求項8の前文によるスパンボンド不織布を製造する装置を提供することを、更に本発明の目的とする。
【0034】
本発明は、設定された課題を、請求項8の特徴部分の特徴によって達成するものである。
【0035】
穿孔トレーにエンボス模様を備えたエンボス構造がある場合、エンボス模様を用いてスパンボンド不織布を確実にエンボス加工することを可能にする技術的に、且つ、構造的に、簡単な装置を作成することができる。繊維は、まず紡糸口金を通って押し出され、次いで、引き出し装置の引き出し気流によって引き出される。次いで、引き出され加速された繊維は、エンボス構造を備えたトレーを、直接叩くことができる。この場合、押し出され引き出された繊維がトレーのエンボス構造へ押しつけられるように、引き出し気流の流れ方向を配向させ、スパンボンド不織布にエンボス構造のエンボス模様が付与される。
【0036】
本発明によって、スパンボンド不織布の直接の構造化、すなわち、スパンボンド不織布の中へのエンボス模様の導入、並びにスパンボンド不織布の三次元構造、外観、触感、及び柔軟さにおける関連した変化を可能にする装置が、このようにもたらされる。これにより、特に装置は水流交絡等の更なる手段を含む必要がなく、スパンボンド不織布に対応するエンボス模様が付与される。水流交絡の省略によって、水流交絡に関連する電力と水の消費量が削除されるので、一方では、大規模なスパンボンド設備の投資コスト、他方では、スパンボンド不織布の製造ランニングコストもまた削減することができる。エンボス模様を備えたスパンボンド不織布の製造用の設備の収益性は、このように改善される。水流交絡に関する、投資コスト及び運転コストは完全に省くことができるか、又は著しく削減することができる。このような水流交絡がウェブ形成を一層強固なものにするために下流に配置されることになっている場合、そのような水流交絡は著しく低い電力で運転できるので、運転コストを本質的に削減することができる。
【0037】
前述の利点は、特に装置が、スパンボンド不織布が形成された後にスパンボンド不織布を洗浄するための洗浄、及び洗浄の後にスパンボンド不織布を乾燥するためのドライヤーを含む場合に、効果を現わす。
【0038】
装置が引き出し気流の排出のために穿孔トレーの真下の吸引設備を更に有する場合、トレーのエンボス構造の中への繊維の押しつけを、更に改善させることができ、また、装置の信頼性を更に向上させることができる。このことは、特に、引き出し気流が穿孔トレーを通って更に引き出される場合にあてはまる。
【0039】
装置が第2のエンボス模様を備えた第2のエンボス構造を有するコンベヤーベルトを用いて、洗浄とドライヤーの間のコンベヤーベルト上に水流交絡を含む場合、トレー上のスパンボンド不織布の本発明による直接の構造化と、水流交絡中のスパンボンド不織布の付加的な直接の構造化との組み合わせが技術的に簡単な方式で起こり、このようにして、複雑な多層のエンボス模様を備えたスパンボンド不織布の製造が可能になる。
【0040】
本発明の好ましい変形実施形態について、添付の図面を参照して以下に更に詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1の変形実施形態に関わる本発明による方法の概略図である。
図2】第2の変形実施形態に関わる本発明による方法の概略図である。
図3図1で示された方法による繊維の押し出し、引き出し及び堆積についての模式的詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、エンボス模様10を備えたスパンボンド不織布1の製造のための本発明による方法100、及び本発明の第1の変形実施形態による方法100を実施するための装置200を示す。第1のプロセス工程では、紡糸塊2を、セルロース原料から製造し、装置200の紡糸口金3に供給する。この場合、紡糸塊2を製造するためのセルロース原料、その製造については、更に詳細に図に示されていないが、木又は他の植物系の出発物質からなるパルプであってよく、それはリヨセル繊維の製造に適している。しかしながら、セルロース原料が、スパンボンド不織布の製造からの製造廃物若しくは再利用された織物から成るか、又は含むことも想定可能である。この場合、紡糸塊2は、セルロースを含有するNMMO及び水の溶液であり、紡糸塊のセルロース含有量は3重量%から17重量%の間の範囲である。
【0043】
次の工程では、紡糸塊2は、次いで紡糸口金3中の複数のノズル孔を通って押し出されて繊維4を形成する。これに関係して、図3は、方法の順序の詳細な概略図を示す。押し出された繊維4は、次いで引き出し気流5の中で加速され引き出される。引き出し気流5の生成のために、引き出し装置6は紡糸口金3に装備されており、それにより繊維の押し出しの後に繊維4を加速するために引き出し気流5が紡糸口金3を出ることを確実にする。
【0044】
1つの変形実施形態では、引き出し気流は紡糸口金3のノズル孔間に出現する場合がある。更なる一変形実施形態では、引き出し気流は、これとは別にノズル孔の周囲で出現する場合がある。しかしながら、これは、更に詳細に図に示されていない。引き出し気流を生成するための引き出し装置を含むそのような紡糸口金3は、先行技術から公知である(米国特許第3,825,380(A)号、米国特許第4,380,570(A)号、国際公開第2019/068764(A1)号)。
【0045】
例示した好ましい実施形態では、押し出され引き出された繊維4には、凝固装置12によって提供される凝固気流11を更に吹きつける。凝固気流11は、通常凝固液を、例えば、蒸気、ミスト等の形態で含む。繊維4と凝固気流11及びその気流の中に含まれる凝固液との接触により、繊維4は少なくとも部分的に凝固させ、それにより特に、個々の押し出された繊維4間の付着を減少させる。
【0046】
次いで、図3から更に分かるように、引き出され、少なくとも部分的に凝固させられた繊維4は、搬送装置8のトレー7上にランダムな配向で堆積される。この場合、搬送装置8のトレー7にはエンボス模様10を備えたエンボス構造9がある。押し出され引き出された繊維4は、次いで引き出し気流5によりトレー7へ押しつけられそこにスパンボンド不織布1を形成する。スパンボンド不織布1が形成された後、スパンボンド不織布はエンボス構造9からのエンボス模様10を示す。エンボス模様10、又はスパンボンド不織布1の三次元構造は、このようにトレー7中のエンボス構造9により本発明によってエンボス加工することができ、本発明による直接構造化したセルローススパンボンド不織布1は、追加の下流の工程がなくても製造することができる。
【0047】
図1に示すように、本発明による装置200、及び方法100において特に水流交絡を、省略することができ、その結果として、装置200の長さ、投資コスト及び運転コストを、有利に削減することができる。
【0048】
形成に続いて、スパンボンド不織布1は、スパンボンド不織布から溶媒、すなわち紡糸塊2に含有されるNMMOの残留物を取り除くためにスパンボンド不織布1が洗浄される洗浄14を通ってコンベヤーベルト13を横切って誘導される。好ましい一変形実施形態では、洗浄14は、この場合、多段の向流洗浄であるが、向流洗浄については図の中で説明されなかった。次の工程で、次いで、洗浄されたスパンボンド不織布1は、残存する水分を除去し、仕上がったスパンボンド不織布1を得るためにドライヤー15の中での乾燥に供される。
【0049】
最後に、方法200は、場合により仕上がったスパンボンド不織布1を巻き取り16且つ/又は包装することにより完了する。
【0050】
図2では、本発明による方法101、及び本発明の第2の変形実施形態による装置201を説明する。図1と3を参照して第1の変形実施形態について上述したのと同様に、押し出し、引き出し、凝固及びエンボス構造9を示すトレー7上の堆積を含む、スパンボンド不織布1の形成が起こる。
【0051】
更に、第2の変形実施形態による方法201に、トレー7上の本発明による直接の構造化に加えて、水流交絡17を設ける。この場合、スパンボンド不織布1を、洗浄14の後に更にコンベヤーベルト18に堆積させ、このコンベヤーベルト18は第2のエンボス模様20を備えた第2のエンボス構造19を有している。スパンボンド不織布1は、既にエンボス模様10を示しており、次いでコンベヤーベルト18の全面にわたって水流交絡される、すなわち、高圧で水が吹きつけられ、スパンボンド不織布1は、それによってコンベヤーベルト18の第2のエンボス構造19に押しつけられ第2のエンボス模様20が、スパンボンド不織布1に転写される。
【0052】
エンボス構造9を備えたトレー7と第2のエンボス構造19を備えた水流交絡上の直接の構造化とを組み合わせることによって、エンボス模様10及び20を備えたスパンボンド不織布1のなお一層の製品のバリエーションを製造することが可能になる。水流交絡17が設けられるにも拘わらず、スパンボンド不織布1の三次元の構造化の大部分が、既にトレー7上で起こるので、装置201の投資コスト及び水流交絡17の運転コストの両方を、先行技術からのシステムと比較して本質的に削減することができる。
【0053】
更なる一変形実施形態では、それは図で示されているだけであるが、装置100及び方法200は少なくとも第1の紡糸口金3、及び第2の紡糸口金30を有し、紡糸塊2は第1の紡糸口金3及び第2の紡糸口金30を通って同時に押し出されて繊維4及び40を形成する。その際、繊維4及び40はそれぞれ、引き出し気流5及び50によって押し出し方向に引き出され、少なくとも部分的に凝固させられ、第1の紡糸口金3の繊維4は、搬送装置8に堆積して第1のスパンボンド不織布1を形成し、第2の紡糸口金30の繊維40は、搬送装置8に堆積して第2のスパンボンド不織布を形成する。
【0054】
第2の紡糸口金30の繊維40は、多層のスパンボンド不織布を得るために、搬送装置8に堆積して第1のスパンボンド不織布1の上に第2のスパンボンド不織布を形成するが、これは更に詳細に図に示されていない。本発明による多層のスパンボンド不織布では、エンボス模様10は、トレー7を通って第1のスパンボンド不織布1へ導入されたものであるが、驚くべきことに、更に多層のスパンボンド不織布全体に複写することができる。
【0055】
第1のスパンボンド不織布1及び第2のスパンボンド不織布は、多層のスパンボンド不織布の形態で、洗浄14及びドライヤー15を一緒に受けることが好ましい。
【0056】
更なる一変形実施形態では、更に詳細に図に示されていないが、多層のスパンボンド不織布は次の工程で、特に洗浄14に続いて少なくとも第1のスパンボンド不織布1と第2のスパンボンド不織布とに、分離することができ、そこにおいては、第1のスパンボンド不織布1及び第2のスパンボンド不織布は、分離後に水流交絡17及び/又は乾燥15等の更なる工程を別々に受けてもよい。
【0057】
あるいは、更なる一変形実施形態では、第1のスパンボンド不織布1及び第2のスパンボンド不織布は水流交絡17を一緒に受けてもよく、それによってそれらは持続的に相互に連結して多層のスパンボンド不織布を形成する。
【0058】
最後に、多層のスパンボンド不織布は任意選択の巻き取り16に供することができる。
【0059】
同様に、第1のスパンボンド不織布1及び第2のスパンボンド不織布は各々、異なる内部特性、例えば、異なる坪量、異なる通気性を有してもよく、したがって、横断面内で特性が可変である多層のスパンボンド不織布を形成してもよい。
【実施例
【0060】
本発明による方法を、実施例を用いて以下に説明する。各場合では、スパンボンド不織布は本主題を形成する方法に従って製造され、スパンボンド不織布の厚さは、DIN EN ISO9073-2:1997-02(不織布の試験方法、第2部:厚さの測定)に従って決定された。
【0061】
実施例において、セルローススパンボンド不織布を、それぞれの場合に、紡糸塊として使用されているセルロースを含有する水とNMMOの混合物の溶液を用いて、リヨセルの紡糸塊から製造した。
【0062】
紡糸口金1つ当たりのセルロースの流量はすべての実施例において300kg/h/mであった。引き出し気流の引き出し空気圧は、実施例のそれぞれにおいて0.5バールであった。
【0063】
実施例において、スパンボンド不織布を本発明による方法を用いて上述のように製造した。その際、製造されたスパンボンド不織布の坪量は、10~40g/mであった。表1に記した情報により、その方法によって、エンボス構造を備えた本発明によるトレー又は従来の(構造不定の)トレー上に、スパンボンド不織布を形成させた。
【0064】
表1は、製造されたスパンボンド不織布の測定された厚さを示す。これにより、スパンボンド不織布の厚さの重要な変化を、堆積の際にエンボス構造を備えながらスパンボンド不織布を直接構造化することによって、その他は同一のプロセスパラメーターで達成することができることが明白である。
【0065】
【表1】

図1
図2
図3
【国際調査報告】