(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】3D複合材料用高速化学線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/34 20060101AFI20230329BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230329BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230329BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230329BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230329BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230329BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230329BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230329BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230329BHJP
【FI】
C08F220/34
C08F2/44 Z
C08F2/50
C08F290/06
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
B29C64/209
B29C64/106
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550793
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021019603
(87)【国際公開番号】W WO2021173795
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】519444409
【氏名又は名称】コンティニュアス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】セアン アー.ヌニェス
(72)【発明者】
【氏名】アミリア ダベンポート
(72)【発明者】
【氏名】ニール ブライアン クレイマー
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
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4J100AL08S
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4J100AL67Q
4J100AL67R
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4J127CC291
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】
化学線硬化性組成物は、(a)式(I)の少なくとも1種のモノマー、(b)式(II)の少なくとも1種のモノマー、(c)任意選択的にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(d)光開始剤を含み、R
1、R
2、R
3、R
7、R
8及びR
9は、定義したとおりである、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHである。上記化学線硬化性組成物から3次元印刷複合材料を製造する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む化学線硬化性組成物:
(a)20~80質量%の、下記式(I)の少なくとも1種のモノマー:
【化1】
(b)10~60質量%の、下記式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化2】
(c)0~30質量%の1種以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の1種以上の光重合開始剤、
ここで、
R
1は、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
2及びR
3は、H、C
1-C
3アルキル、CH
2-CH(OH)C
1-C
3アルキル及び(CH
2)
mXからなる群からそれぞれ独立に選択されるか、
あるいは、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子とともに、3~6員飽和複素環を形成しており;
Xは、OR
4、SR
4、NR
5R
6、OP(=O)(OR
4)
2、CH
2P(=O)(OR
4)
2、又は芳香族基であり;
各R
4は、H及びC
1-C
4アルキルからなる群から独立に選択され;
R
5及びR
6は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
mは1、2、3、4又は5であり;
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、
ここで、
R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり;
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【請求項2】
式(I)について、R
1はHであり、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子とともに5又は6員飽和複素環式環を形成している、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
式(II)について、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも1つは、(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり、ここで、nは2である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
式(II)について、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは、(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり、ここで、nは2である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
式(II)について、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも1つは、(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり、ここで、nは2であり、R
10はHである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
式(II)について、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは、(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり、ここで、nは2であり、R
10はHである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
式(I)のモノマーが、下記のモノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化3】
【請求項8】
式(I)のモノマーが、下記のとおりのACMOである、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化4】
【請求項9】
式(II)のモノマーが、下記のとおりのM370である、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化5】
【請求項10】
式(I)のモノマーがACMO:
【化6】
であり、式(II)のモノマーがM370:
【化7】
である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、補強材を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記補強材が、ファイバーグラス、チョップド炭素繊維、連続炭素繊維及びケブラー繊維からなる群から選択され、任意選択的に、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)及びポリカーボネートのうちの1種以上が存在していてもよい、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記補強材がファイバーグラスである、請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記補強材が連続炭素繊維である、請求項12に記載の硬化性組成物
【請求項15】
前記ウレタン(メタ)アクリレートが存在する、請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項16】
前記開始剤は、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アルコキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド;2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン及び1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1;2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル)-フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン;並びに2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項18】
さらに、下記式(III)のモノマーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化8】
ここで、
各R
11は、独立に、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
12は、以下からなる群から選択される:
R
11がHである場合、N、O又はSのうちの少なくとも1つを含む3~7員複素環、及びR
11がC
1-C
3アルキルである場合、N、O又はSのうちの少なくとも2つを含む4~7員複素環;
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
10アルカン鎖であって、R
11がHである場合にアルカン鎖の少なくとも1つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
10アルカン鎖;
任意選択的に分岐していてもよいC
3-C
10アルカン鎖であって、R
11がC
1-C
3アルキルである場合にアルカン鎖の少なくとも2つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
3-C
10アルカン鎖;及び
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
20アルカン鎖であって、アルカン鎖の1つ以上の炭素原子が任意選択にN、O、S又はPで置換されていてもよく、アルカン鎖がアクリレート基(-O-C(=O)-CH=CH
2)又はメタクリレート基(-O-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
20アルカン鎖。
【請求項19】
R
11はHであり、R
12は、以下からなる群から選択される、請求項18に記載の硬化性組成物:
【化9】
【請求項20】
モノマー(I)として20~50質量%のACMO;
モノマー(II)としての30~60質量%のM370;
5~20質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
0.1~5質量%の光重合開始剤;
を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項21】
前記組成物は3D印刷可能である、請求項1~20のいずれか一項に記載の硬化性組成物
【請求項22】
前記硬化性組成物を硬化させるのに十分な化学線に前記硬化性組成物を曝露することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させる方法。
【請求項23】
連続繊維3Dを使用して3次元印刷された炭素結合複合材料物品を製造する方法であって、
連続炭素繊維の存在下で、請求項1~10及び15~20のいずれか一項に記載の化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した3次元印刷された炭素結合複合材料物品を形成すること、
を含む方法。
【請求項24】
以下を含む、3次元印刷された複合材料物品の製造方法:
請求項1~10及び15~20のいずれか一項に記載の化学線硬化性組成物をプリントヘッドから吐出させること、ここで、前記化学線硬化性組成物は補強材を含む;
前記化学線硬化性組成物の吐出中に前記プリントヘッドを移動させること;及び
前記化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した3次元印刷された複合材料物品を形成すること。
【請求項25】
前記組成物は、単一の堆積物として適用される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物は、単一の堆積物として適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化した複合材料物品が低い光学的透明性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか一項に記載の硬化性組成物を収容しているプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年2月25日に出願された「FAST ACTINICALLY CURABLE COMPOSITIONS FOR 3D COMPOSITES」と題された米国仮出願第62/981,512号の優先権を主張し、その内容はあらゆる目的のために参照によりその全体が本書に援用される。
【0002】
発明の分野
本開示は、概して、組成物(マトリックス)に関し、より詳細には、組成物が化学線硬化性組成物である、付加製造(additive manufacturing)システム用の組成物に関する。一実施形態において、化学線硬化性組成物は、式(I)の少なくとも1種のモノマー、式(II)の少なくとも1種のモノマー、任意選択のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び光開始剤を含む。当該硬化性組成物は、式(III)の少なくとも1種のモノマー及び1種以上の補強材を含んでもよい。
【0003】
本発明はまた、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタル光プロジェクション(DLP)、バインダージェッティング(BJ)又は連続繊維3D(CF3D(登録商標))を含む技術(Arillaga et al., Additive Manufacturing 2021, 37, 101748)を使用して、任意選択的に1種以上の補強材と共堆積される化学線硬化性組成物から3次元印刷複合材料物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
加速ラジカル光重合(accelerated radical photopolymerization)は、典型的には、光開始剤濃度を増加させることによって達成される。しかしながら、そのような戦略は、しばしば、分子量分布の減少、架橋事象の増加、変色、硬化生成物の光分解、及び光開始剤の溶出に起因する材料特性の低下をもたらす。ラジカル光重合速度を増加させるための他の戦略は、本来速い重合速度を備えた新規なエチレン系硬化性モノマー及びオリゴマーを同定し、さらには設計するために、ここ数十年間にわたって検討されてきた。
【0005】
速硬化性エチレン系モノマー及びオリゴマーのラジカル光重合反応性は、それらの分子構造によって変化するとして、様々な定量的な構造物性関係を用いて説明されている(Stansbury, J. Mol. Graph. Model. 2011, 29, 763-772)。いくつかの構造物性関係が提案されているが、市販の(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドの光重合速度を予測する総合的なモデルに対する結果は様々である。例えば、Bowmanは、ニッチアクリレート(niche acyrlates)中のエチレンスペーサーのα位及びβ位の可変の置換度が重合反応性に大きな影響を与えることを見出した(Bowman, Macromolecules 2005, 3093-3098)。Jansenは、エチレン系の硬化性モノマー及びオリゴマー並びにそれらの混合物の最高重合速度とボルツマン平均双極子モーメントとの間の、興味深いが、議論のある相関関係を報告した(Jansen, Macromolecules, 2002, 35, 7529-7531;Bowman, Polymer 2005, 4735-4742)。また、(メタ)アクリレートオリゴマー側鎖にヘテロ原子硫黄を含めると反応性が高まること(Andrzejewski, Polymer Chemistry 2000, 665-673)、及び、より一般的には、ヘテロ原子に富んだ極性側鎖が動力学的活性(kinetic activity)の向上をもたらすことも報告されている(Aviyente, Macromolecules 2007 40(26), 9560-9602)。
【0006】
したがって、このような高速反応性が時間とコストの節約、光開始剤濃度の低減による特性の向上、さらには新規な製造方法を可能にする特殊な用途のための高速硬化性モノマー及びオリゴマーを迅速に特定する包括的な規則が必要であることが明らかである。高速ラジカル重合性モノマーは、従来のエチレン系硬化性モノマー及びオリゴマーと比較して、暗状態で広範な重合を示すことが示されている(Bowman, Polymer (Guidf.) 2007, 48(7), 2014-2021)。この付加的な変換は、不透明又は高フィラー含有量が光の透過を弱め又は散乱させて硬化の望ましくない減少をもたらす複合材料用途において特に有益である。したがって、高速ラジカル重合性のエチレン系硬化性モノマーの硬化は、ガラス繊維及び炭素繊維などの非光学構造複合材料用に設計された樹脂配合物に特に有用である。本発明は、ほぼ即時のグリーン強度を付与して3次元物品の構造的健全性(structural integrity)を提供する硬化速度が必要とされる強化構造複合材料の付加製造においてさらに有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
組成物を硬化させるために化学線(actinic radiation)を使用する付加製造システムに適した従来の組成物の使用は、硬化の程度を低下させる複合材料組成物中に存在する不透明で光散乱性の補強材の存在に起因して、製造し利用することに課題がある。従って、高速の化学線硬化性組成物及びそれらを製造するためのより有効な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、硬化性組成物を提供する。
【0009】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下を含む(又は代わりに、以下からなる)化学線硬化性組成物(actinically curable composition)である。
(a)20~80質量%の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド又はメタクリルアミド)であって、(1)2.5以上の平均双極子モーメントを有すること;(2)アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子に対するα位に水素もしくはメチル基又はメチレン基が存在し、窒素原子に対するβ位に水素、メチル基、メチレン基、メチン基、ヘテロ原子又は芳香族基が存在すること;及び(3)アクリルアミド又はメタクリルアミド1分子あたりヘテロ原子が2個以上であること、という基準を満たす少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド;
(b)10~60質量%の式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化1】
(c)0~30質量%の1種以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の1種以上の光開始剤、
ここで
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、ここでR
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり、
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは1、2、3又は4である。
【0010】
一実施形態において、上記硬化性組成物は、以下のものを含む(又は代わりに、以下のものからなる)、化学線硬化性組成物を包含する:
【化2】
(b)10~60質量%の、式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化3】
(c)0~30質量%の1種以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の1種以上の光開始剤、
ここで、
R
1は、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
2及びR
3は、H、C
1-C
3アルキル、CH
2-CH(OH)C
1-C
3アルキル及び(CH
2)
mXからなる群からそれぞれ独立に選択されるか、
あるいは、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子とともに、3~6員飽和複素環式環を形成しており;
Xは、OR
4、SR
4、NR
5R
6、OP(=O)(OR
4)
2、CH
2P(=O)(OR
4)
2、又は芳香族基であり;
各R
4は、H及びC
1-C
4アルキルからなる群から独立に選択され;
R
5及びR
6は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群からからそれぞれ独立に選択され;
mは1、2、3、4又は5であり;
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、ここで、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり;
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【0011】
硬化性組成物の一実施形態において、R1はHであり、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子とともに、式(I)のモノマーの5又は6員飽和複素環式環を形成している。
【0012】
硬化性組成物のさらなる実施形態では、式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、nが2である(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2である。
【0013】
硬化性組成物のさらなる実施形態では、式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも2つは、nが2である(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2である。
【0014】
硬化性組成物のさらなる実施形態では、式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、nが2であり、R10がHである(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2である。
【0015】
硬化性組成物のさらなる実施形態では、式(II)のモノマーに対して、R7、R8及びR9のうちの少なくとも2つは、nが2であり、R10がHである(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2である。
【0016】
一実施形態において、アクリルアミド/メタクリルアミド又は式(I)のモノマーは、以下のものからなる群から選択される:
【化4】
【0017】
一実施形態において、式(I)のモノマーは、アクリロイルモルホリン(ACMO)である:
【化5】
【0018】
一実施形態において、式(II)のモノマーは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(M370)(本開示においてSR368とも称される)である:
【化6】
【0019】
硬化性組成物の一実施形態において、式(I)のモノマーは、ACMO:
【化7】
であり、式(II)のモノマーはM370である:
【化8】
【0020】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0021】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0022】
一実施形態において、硬化性組成物は、さらに、補強材(フィラー)を含む。
【0023】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、補強材及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0024】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、補強材及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0025】
さらなる一実施形態において、補強材は、不透明な補強材(不透明なフィラー)又は光散乱性の補強材(光散乱性のフィラー)である。
【0026】
一実施形態において、補強材は、ガラス繊維、ファイバーグラス、チョップド炭素繊維、連続炭素繊維、ケブラー(登録商標)繊維、セラミック繊維、アスベスト、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリスルホンアミド繊維、ポリ(フェニレンオキシド繊維)、植物繊維、木材繊維、鉱物繊維、プラスチック繊維、金属ワイヤ及びアラミド繊維からなる群から選択され、任意選択的に、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)及びポリカーボネートのうちの1種以上が存在していてもよい。
【0027】
一実施形態において、補強材はガラス繊維でない。
【0028】
一実施形態において、補強材はファイバーグラス又は連続炭素繊維である。
【0029】
一実施形態において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(SARTOMER(登録商標) CN989(PHOTOMER(登録商標) 6008)、SARTOMER(登録商標) CN9005(PHOTOMER(登録商標) 6010)、SARTOMER(登録商標) CN964(PHOTOMER(登録商標) 6019)、SARTOMER(登録商標) CN989(PHOTOMER(登録商標) 6184)、PHOTOMER(登録商標) 6630、SARTOMER(登録商標) CN929(PHOTOMER(登録商標) 6892)、SARTOMER(登録商標) CN963、SARTOMER(登録商標) CN945、SARTOMER(登録商標) CN944、SARTOMER(登録商標) CN989、SARTOMER(登録商標) CN959及びSARTOMER(登録商標) CN981として市販されている)からなる群から選択される。
【0030】
一実施形態において、光開始剤は、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アルコキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィン(酸化物)からなる群から選択される。
【0031】
一実施形態において、光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標) IC-184);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO);2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO-L);ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標) 819);2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(IRGACURE(登録商標) 907)及び1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 2959);2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE(登録商標) 369);2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル)-フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 127)及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 379)からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態において、硬化性組成物は、さらに、(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート又はメタクリレート)であって、(1)2.5以上の平均双極子モーメントを有すること;(2)アクリレート又はメタクリレートの酸素原子に対するα位にメチル又はメチレンが存在し、酸素原子に対するβ位に水素、メチル、メチレン、メチン、ヘテロ原子又は芳香族が存在すること;及び(3)1つのアクリレート分子あたりヘテロ原子が3個以上であり、1つのメタクリレート分子あたりヘテロ原子が4個以上であること、という基準を満たす(メタ)アクリレートを含む。
【0033】
一実施形態において、硬化性組成物は、さらに、1~30質量%の、式(III)の(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート又はメタクリレート)モノマーを含む:
【化9】
ここで、
各R
11は、独立に、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
12は、以下からなる群から選択される:
R
11がHである場合、N、O又はSのうちの少なくとも1つを含む3~7員複素環、及びR
11がC
1-C
3アルキルである場合、N、O又はSのうちの少なくとも2つを含む4~7員複素環;
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
10アルカン鎖であって、R
11がHである場合にアルカン鎖の少なくとも1つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
10アルカン鎖;
任意選択的に分岐していてもよいC
3-C
10アルカン鎖であって、R
11がC
1-C
3アルキルである場合にアルカン鎖の少なくとも2つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
3-C
10アルカン鎖;及び
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
20アルカン鎖であって、アルカン鎖の1つ以上の炭素原子が任意選択にN、O、S又はPで置換されていてもよく、アルカン鎖はアクリレート基(-O-C(=O)-CH=CH
2)又はメタクリレート基(-O-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
20アルカン鎖で。
【0034】
式(III)のアクリレートモノマーの実施形態では、R
11はHであり、R
12は、以下からなる群から選択される。
【化10】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である(シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる)。
【0035】
式(III)のモノマーの一実施形態において、R
11はC
1-C
3アルキル基であり、R
12は以下からなる群から選択される:
【化11】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である(シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる)。
【0036】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、式(III)の(メタ)アクリレートモノマー及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0037】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、式(III)の(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0038】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、式(III)の(メタ)アクリレートモノマー、補強材及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0039】
一実施形態において、硬化性組成物は、ACMO、M370、式(III)の(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、補強材及び光開始剤を含む(又は代わりに、これらからなる)。
【0040】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下のものを含む(又は代わりに、以下のものからなる):
モノマー(I)として20~80質量%のACMO;
モノマー(II)として10~60質量%のM370;
コーティング剤として0~30質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;及び
光開始剤として0.1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819。
【0041】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下のものを含む:
モノマー(I)として20~50質量%のACMO;
モノマー(II)として30~60質量%のM370;
コーティング剤として5~20質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;及び
光開始剤として1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819。
【0042】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下のものを含む(又は代わりに、以下のものからなる):
モノマー(I)として20~80質量%のACMO;
モノマー(II)として10~60質量%のM370;
コーティング剤として0~30質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;
光開始剤として0.1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819;及び
補強材。
【0043】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下のものを含む:
モノマー(I)として20~50質量%のACMO;
モノマー(II)として30~60質量%のM370;
コーティング剤として5~20質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;
光開始剤として1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819;及び
補強材。
【0044】
一実施形態において、硬化性組成物は、以下のものを含む:
モノマー(I)として28.8質量%のACMO;
モノマー(II)として52.9質量%のM370;
コーティング剤として14.4質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;及び
光開始剤として3.8質量%のIRGACURE(登録商標) 819。
【0045】
一態様において、本開示に記載の硬化性組成物は、3次元(3D)印刷可能である。
【0046】
さらなる態様は、以下を含む構造体である:
不透明な又は光散乱性の補強材;及び
不透明な又は光散乱性の補強材を少なくとも部分的に被覆する、本開示に記載したとおりの硬化性組成物(マトリックス)。
【0047】
一実施形態において、構造体は、以下を含む:
不透明な又は光散乱性の補強材;及び
不透明な又は光散乱性の補強材を少なくとも部分的に被覆する硬化性組成物(マトリックス)であって、以下を含む硬化性組成物(マトリックス):
20~80質量%のACMO;
10~60質量%のM370;
0~30質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;及び
0.1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819。
【0048】
一実施形態において、組成物は、以下を含む:
28.8質量%のACMO;
52.9質量%のM370;
14.4質量%のPHOTOMER(登録商標) 6019;及び
3.8質量%のIRGACURE(登録商標) 819。
【0049】
さらなる態様は、本開示に記載した硬化性組成物を、当該硬化性組成物を硬化させるのに十分な化学線に曝露することを含む、硬化性組成物を硬化させる方法である。一実施形態において、硬化性組成物は、さらに、補強材を含む。
【0050】
さらなる態様は、付加製造システムによって製造される構造体であり、当該構造体は、補強材と、補強材を少なくとも部分的に被覆する組成物(マトリックス)とを含み、当該組成物は、ACMO;M370;PHOTOMER(登録商標) 6019;及びIRGACURE(登録商標) 819を含む。
【0051】
一実施形態は、付加製造システムによって製造される構造体であり、当該構造体は、不透明な補強材と、不透明な補強材を少なくとも部分的に被覆する組成物(マトリックス)とを含み、当該組成物(マトリックス)は、20~80質量%のACMO;10~60質量%のM370;0~30質量%のPhotomer(登録商標) 6019;及び0.1~5質量%のIRGACURE(登録商標) 819を含む。
【0052】
さらなる態様は、以下を含む3次元印刷複合材料物品の製造方法である:
本開示に記載したとおりの化学線硬化性組成物をプリントヘッドから吐出させること、当該化学線硬化性組成物は補強材を含む;
化学線硬化性組成物の吐出中にプリントヘッドを移動させること;及び
化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した3次元印刷複合材料物品を形成すること。
【0053】
さらなる態様は、以下を含む、連続繊維3D(CF3D(登録商標))を使用して3次元印刷カーボン結合複合材料物品の製造方法である:
連続炭素繊維の存在下で本開示に記載したとおりの化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した三次元印刷カーボン結合複合材料物品を形成すること。
【0054】
一実施形態において、硬化性組成物は、単一の堆積物(single deposition)として適用される。
一実施形態において、硬化した複合材料物品は、低い光学的透明性を有するか、又は光を散乱させる。
【0055】
さらなる態様は、本開示に記載したとおりの硬化性組成物を含むプリントヘッドである。
【0056】
図は、本発明の特定の実施形態を反映したものであり、本開示に記載したとおりの本発明の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、例示的な付加製造システムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の付加製造システムで使用するのに好適な組成物(マトリックス)の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
加速ラジカル光重合は、典型的には、光開始剤濃度を増加させることによって達成されるが、ラジカル光重合を加速させるための他の方法としては、光開始剤濃度、照射強度を増加させること、あるいは、窒素若しくはアルゴン等の不活性ブランケットの利用が挙げられる。これらの方法は、いずれも重合を加速させるという点では、リターンが限られている。連続複合材料の場合、本発明の1つの目的は、高い照射強度を用いることである。この目的を達成するために、新規な「速い(fast)」モノマーが必要であった。本発明は、3D印刷材料の付加製造用の化学線硬化性樹脂組成物に向けられており、この組成物は速硬化性モノマー(本開示では速いモノマーとも称される)を含む。本開示に記載の化学線硬化性組成物に含まれるのに好適な速硬化性モノマーとして認定することのできるアクリルアミド及びアクリレートモノマーの特定を容易にするために、本発明者らは、「官能基置換」、「ボルツマン平均双極子モーメント」及び「1分子あたりのヘテロ原子数」に基づく3要件セットを開発した。これらの3つの要件は、総称して「3要件試験」と呼び、「置換要件」、「平均双極子モーメント要件」及び「1分子あたりのヘテロ原子」要件を含む。
【0059】
置換要件
3要件試験の「置換」要件は、(メタ)アクリレートの場合に、エステル官能基の酸素原子に対するα位がメチル基(-CH
3)又はメチレン基(-CH
2-)であり、β位が水素、メチル基(-CH
3)、メチレン基(-CH
2-)、
【化12】
ヘテロ原子又は芳香族基であることが好ましいとの観測結果に基づいている。本開示において、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート(-O-C(=O)-CH=CH
2)及びメタクリレート(-O-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)化合物の両方を指す。(メタ)アクリルアミドの場合、α位が、無置換、メチル基(-CH
3)又はメチレン基(-CH
2-)であり、β位が水素、メチル基(-CH
3)、メチレン基(-CH
2-)、
【化13】
ヘテロ原子又は芳香族基であることが好ましい。本開示において、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド(-NR-C(=O)-CH=CH
2)及びメタクリルアミド(-NR-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)化合物の両方を指す。これらの選好性については、以下のとおりである。
【化14】
R
1=H又はCH
3
R
2=N又はO
規則:(メタ)アクリレートにおいて、エステルの酸素に対するアルファ位及びベータ位に、以下を含む:
- アルファ=メチル又はメチレン.
- ベータ=メチル、メチレン、メチン、ヘテロ原子、又は芳香族.
【化15】
規則:(メタ)アクリルアミドにおいて、アミドの窒素に対するアルファ位及びベータ位に、以下を含む:
アルファ=水素、メチル又はメチレン.
ベータ=水素、メチル若しくはメチレン、メチン、ヘテロ原子、又は芳香族.
【化16】
【0060】
置換要件について定義する場合、「ヘテロ原子」は、N、O、S又はPである。
置換要件について定義する場合、「芳香族」は、任意の芳香族炭素環式部分、例えばフェニル又はナフチルなど(これらに限定されない)、並びに窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、少なくとも1つの炭素原子を含む5~10員の任意の芳香族複素環式環であり、これらの任意の芳香族炭素環式部分及び任意の芳香族複素環式環には、単環系及び二環系の両方が含まれるが、これらに限定されない。代表的な芳香族複素環化合物としては、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シノリニル、フタラジニル及びキナゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
一方の(メタ)アクリレート官能基が必要な置換基を有し、他方がそうでない多官能性非対称分子の場合、官能基のうちの1つが適格であれば分子全体が適格となるが、3要件試験のすべての面で適格でないことはありうる。
【0062】
アクリレートとアクリルアミドの光反応性の傾向を一般的に比較すると、以下のようになる。
【化17】
【0063】
ボルツマン平均双極子モーメント要件
3要件のうちの「ボルツマン平均双極子モーメント」要件は、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドについて、ボルツマン平均双極子モーメントが、2.5以上、例えば2.6以上、例えば2.7以上、例えば2.8以上、例えば2.9以上、例えば3.0以上、例えば3.1以上、例えば3.2以上、例えば3.3以上が好ましいという観測結果に基づく。例示的な範囲としては、2.5~7.5、例えば2.5~7.0、例えば2.5~6.5、例えば2.5~6.0、例えば2.5~5.5、例えば2.5~5.0、2.7~7.5、例えば2.7~7.0、例えば2.7~6.5、例えば2.7~6.0、例えば2.7~5.5、例えば2.7~5.0、例えば2.9~7.5、例えば2.9~7.0、例えば2.9~6.5、例えば2.9~6.0、例えば2.9~5.5、例えば2.9~5.0が挙げられる。
【0064】
ボルツマン平均双極子モーメントの計算は周知であり(C. Rowley, J. Chem. Phys. A 2014, 118, 3678-3687;米国特許出願公開第20160068467号明細書(A1))、以下の従来法を採用することにより、本開示において決定される:Wavefunction Spartan 18 Parallel Suite、Equilibrium Conformer、密度汎関数、B97M-V、6-311+G(2df,2p)(6-311G*)、B3LYP及びGlobal Calculations。Wavefunction Spartan 18 Parallel Suiteは、分子構造の決定や化学特性の計算に使用される分子モデリングソフトウェアであり、産業界や学術界で広く使用されている。Equilibrium Conformerは、分子の最低エネルギーコンフォーマーを特定する。密度汎関数理論は、多数の電子を含む原子や分子のエネルギー及び波動関数を計算するために使用される量子力学的モデリング法である。B97M-Vは特定の密度汎関数モデルである。6-311+G(2df,2p)(6-311G*)は、基底セット、又はモデルの偏微分方程式をコンピュータ上で効率的に実行するための代数方程式に変換するための電子波動関数を表す関数のセットである。B3LYPは、指定された基底セットを用いてエネルギー、波動関数、平衡状態及び遷移状態の配置、並びに振動周波数を計算するために用いられる密度汎関数モデルである。Global Calculationsでは、すべての原子及び分子が、指定されたとおりに計算される。これらの方法を組み合わせて、検査対象の原子又は分子の平衡組成のボルツマン加重双極子モーメントを提供する。注目すべきは、当業者は、HF(ハートリー・フォック)、MP2(メラー・プレセット)、B3LYPハイブリッド関数理論、又は線形応答結合クラスタ-シングル及びダブル計算(linear-response coupled cluster-singles and doubles calculations)(LR-CCSD)及びソフトウェアなどの学界及び業界で広く認められている代替モデルを採用して同様の値を取得し得るという点である。本発明で採用される上記の結合法は、現在の基準では厳密とされ、高い精度が得られるので好ましい。
【0065】
1分子あたりのヘテロ原子数要件
3要件のうちの「1分子あたりのヘテロ原子数」要件は、アクリレートの場合に、1分子中に3個以上のヘテロ原子が存在することが好ましいという観測結果に基づく。(メタ)アクリレートの場合、1分子中に4個以上のヘテロ原子が存在することが好ましい。(メタ)アクリルアミドの場合、1分子あたり2個以上のヘテロ原子が存在することが好ましい。1分子あたりのヘテロ原子数要件について定義する場合、「ヘテロ原子」は、N、O、S又はPである。
【0066】
一実施形態において、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーは、本発明の硬化性組成物に含まれるのに適しているとみなされるには、3要件のすべてを満たす必要がある。別の実施形態では、3要件のうちの2つを満たすモノマーも、本発明の硬化性組成物に含まれるのに適しているとみなすことができる。一実施形態では、少なくとも平均双極子モーメント要件と置換要件を満たすモノマーは、硬化性組成物に含まれるのに適している。別の実施形態では、少なくとも平均双極子モーメント要件とヘテロ原子要件を満たすモノマーが、硬化性組成物に含まれるのに適している。多官能性(メタ)アクリレート中に存在するヘテロ原子は、単官能性成分と比べて特別な扱いはされず、そのため、多官能性(メタ)アクリレート中のヘテロ原子の総数は通常通り集計される。
【0067】
硬化性組成物
一実施形態において、硬化性組成物は、以下を含む:
(a)20~80質量%の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド又はメタクリルアミド)であって、(1)2.5以上、もしくは2.7以上、もしくは2.9以上、又は2.5~7.5の範囲と、この要件について本開示に記載した範囲を含む平均双極子モーメントを有すること;(2)アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子に対するα位に水素、メチル又はメチレンが存在し、窒素原子に対するβ位に水素、メチル、メチレン、メチン、ヘテロ原子(N、O、S又はP)又は芳香族基が存在すること;及び(3)アクリルアミド又はメタクリルアミドの1分子あたりヘテロ原子が2個以上であること、という基準を満たす少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド;
(b)10~60質量%の、式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化18】
(c)0~30質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の光開始剤、
ここで、
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、ここで、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり;
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【0068】
一実施形態において、硬化性組成物(補強材なしで)は、少なくとも80℃、例えば少なくとも100℃、少なくとも150℃、例えば少なくとも200℃、例えば少なくとも80℃から230℃、例えば少なくとも100℃から230℃、例えば少なくとも150℃から230℃などのTgを有する。
【0069】
別の実施形態において、硬化性組成物は、以下を含む:
(a)20~80質量%の式(I)の少なくとも1種のモノマー:
【化19】
(b)10~60質量%の式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化20】
(c)0~30質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の光開始剤。
【0070】
成分(a)としての式(I)のモノマーについて:
R1はH又はC1-C3アルキルであり、ここで、C1-C3アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが挙げられ;
R2及びR3は、H、C1-C3アルキル(ここで、C1-C3アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが挙げられる)、CH2-CH(OH)C1-C3アルキル(ここで、C1-C3アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが挙げられる)及び(CH2)mXからなる群からそれぞれ独立に選択されるか、
あるいは、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子とともに、3~6員飽和複素環式環(ここで、3~6員飽和複素環式環は、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン及びチオモルホリンからなる群から選択される)を形成しており;
Xは、OR4、SR4、NR5R6、OP(=O)(OR4)2、CH2P(=O)(OR4)2、又は芳香族基であり;
R4は、H及びC1-C4アルキル(ここで、C1-C4アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル及びイソブチルが挙げられる)からなる群から選択され;
R5及びR6は、H及びC1-C3アルキル(ここで、C1-C3アルキルは、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルである)からなる群からそれぞれ独立に選択されるか、あるいは、R5はHであり、R6は-NH-C(=O)-CH=CH2又は-NH-C(=O)-C(CH3)=CH2であり;
mは1、2、3、4又は5である。
【0071】
成分(a)としての式(I)のモノマーの別の実施形態では、
R1は、H又はメチルであり;
R2はHであり、R3は、H、メチル、CH2-CH(OH)C1-C3(ここで、C1-C3アルキルはメチル又はエチルである)及び(CH2)mXからなる群から選択されるか、
あるいは、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子とともに、5~6員飽和複素環式環(ここで、5~6員飽和複素環式環は、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン及びチオモルホリンからなる群から選択される)を形成しており;
Xは、OR4、SR4、NR5R6又は芳香族基であり;
R4は、H及びC1-C4アルキル(ここで、C1-C4アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル及びイソブチルが挙げられる)からなる群から選択され;
R5及びR6は、H及びC1-C3アルキル(ここで、C1-C3アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが挙げられる)からなる群からそれぞれ独立に選択されるか、あるいは、R5はHであり、R6は-NH-C(=O)-CH=CH2又は-NH-C(=O)-C(CH3)=CH2であり;
mは、1、2、3、4又は5である。
【0072】
式(I)のモノマーは、組成物全体を基準にして、20~80質量%、例えば20~70質量%、例えば20~60質量%、例えば20~50質量%、例えば20~40質量%、例えば25~60質量%、例えば25~50質量%、例えば25~45質量%、例えば30~60質量%などの量で存在することができる。
【0073】
式(I)のモノマーがACMOである場合、ACMOは、25質量%以上、例えば35質量%以上、例えば45質量%以上、例えば50質量%以上の量で存在し、上限は80質量%である。
【0074】
成分(b)としての式(II)のモノマーについて:
R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、-(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2又はHであり、ここで、R7、R8及びR9のうちの少なくとも2つは-(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2である。
【0075】
R10は、H及びC1-C3アルキル(ここで、C1-C3アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが挙げられる)からなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【0076】
様々な実施形態において、
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、nは1であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、nは1であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、nは2であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり、R10はHであり;
【0077】
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、nが3であり、R10がHであり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり、R10はHであり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、nが4であり、R10がHであり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは1であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは3であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり、R10はCH3であり;
R7、R8及びR9のうちの2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり、R10はCH3であり;又は
R7、R8及びR9の3つすべてが(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは4であり、R10はCH3である。
【0078】
式(II)のモノマーは、組成物全体を基準にして、10~60質量%、例えば20~60質量%、例えば20~50質量%、例えば20~40質量%、例えば25~60質量%、例えば25~50質量%、例えば25~45質量%、例えば30~60質量%などの量で存在することができる。
【0079】
成分(C)としての任意選択のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーについて:
本発明の硬化性組成物に使用可能なウレタン(メタ)アクリレート(「ポリウレタン(メタ)アクリレート」と称されることがある)としては、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールと、(メタ)アクリレート末端基でキャップされた脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートとをベースにしたウレタン類が挙げられる。
【0080】
様々な実施形態において、ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート)を、OH基末端ポリエステルポリオール(芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、及び脂肪族/芳香族ポリエステルポリオール混合体を包含する)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、もしくはポリブタジエンポリオール、又はこれらの組み合わせと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次に、これをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどと反応させて末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製することができる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子あたり2個、3個、4個又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含んでもよい。当該技術分野で知られているように、ポリウレタン(メタ)アクリレートを調製するために他の付加順序を実施してもよい。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを、最初にポリイソシアネートと反応させてイソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得てもよく、次に、これをOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポロール又はこれらの組み合わせと反応させることができる。さらに別の実施形態では、ポリイソシアネートを、最初に、上記のタイプのポリオールのいずれかを含むポリオールと反応させてイソシアネート官能化ポリオールを得、これを、その後、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させてポリウレタン(メタ)アクリレートを得てもよい。あるいは、全成分を同時に組み合わせて反応させてもよい。
【0081】
上記のタイプのオリゴマーのいずれかを、当該技術分野で知られている手順に従って、アミン又はスルフィド(例えば、チオール)により修飾してもよい。かかるアミン修飾オリゴマー及びスルフィド修飾オリゴマーは、例えば、ベースオリゴマー中に存在する(メタ)アクリレート官能基の比較的少量(例えば、2~15%)をアミン(例えば、第二級アミン)又はスルフィド(例えば、チオール)と反応させることによって調製することができ、変性用の化合物は、(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合にマイケル付加反応で付加する。
【0082】
好適なウレタンオリゴマーの例としては、Henkel Corp.から商品名PHOTOMER(登録商標)で市販されているもの(例えば、PHOTOMER(登録商標) 6008、PHOTOMER(登録商標) 6010、PHOTOMER(登録商標) 6019、PHOTOMER(登録商標) 6184、PHOTOMER(登録商標) 6630及びPHOTOMER(登録商標) 6892)や、UCB Radcure Inc.からEBECRYL(登録商標)で市販されているもの(例えば、EBECRYL(登録商標) 220、284、4827、4830、6602、8400及び8402)、RXO(登録商標)で市販されているもの(例えば、RXO(登録商標) 1336)、及びRSX(登録商標)で市販されているもの(例えば、RSX(登録商標) 3604、89359、92576)が挙げられる。他の有用なアクリル化ウレタンは、Sartomer Co.から商品名SARTOMER(登録商標)(例えば、SARTOMER(登録商標) 9635、9645、9655、963-B80、及び966-A80)、及びMorton Internationalから商品名UVITHANE(登録商標)(例えば、UVITHANE(登録商標) 782)で商業的に入手することが可能である。あるいは、ポリオール、例えばジオールを、多官能性イソシアネート、例えばジイソシアネートと反応させ、次に、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートでエンドキャップすることによって、従来のウレタンアクリレートオリゴマーを形成してもよい。硬化膜に硬度を付与する目的で、ウレタンオリゴマーは、好ましくは(メタ)アクリレート基を3個以上含み、例えば、ウレタンオリゴマーは(メタ)アクリレート基を6個以上有する。ウレタンオリゴマーは、単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。
【0083】
ウレタンオリゴマーは、組成物全体を基準として0~30質量%、例えば、1~25質量%、例えば5~25質量%、例えば5~20質量%、例えば10~25質量%、例えば10~20質量%などの量で存在することができる。
【0084】
成分(d)としての光開始剤について:
本発明の特定の実施形態において、本開示に記載の化学線硬化性組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含み、放射エネルギー(可視光、紫外線)により硬化可能である。光開始剤は、放射線(例えば、化学線)に曝露されると、当該硬化性組成物中に存在する重合性有機物質を硬化させる所望の反応を開始させる化学種を形成する任意のタイプの物質とみなすことができる。好適な光開始剤としては、フリーラジカル光開始剤が挙げられる。
【0085】
フリーラジカル重合開始剤は、光照射されるとフリーラジカルを形成する物質である。フリーラジカル光開始剤の使用が特に好ましい。
【0086】
非限定的な例としては、光開始剤として、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)が挙げられる。好適なアシルホスフィンオキシドの非限定的な例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ビスペンチルオキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の硬化性組成物における使用に好適なフリーラジカル光開始剤の非限定的なタイプとしては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、ベンジル、ベンジルケタール類、アントラキノン類、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート類、α-アミノケトン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、キサントン類、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体及びトリアジン化合物が挙げられる。特に好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン(Michler’s ketone)、アセトフェノン類、例えば2,2-ジアルコキシベンゾフェノン類、1-ヒドロキシフェニルケトンなど、ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、ベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン50/50ブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン50/50ブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン、フェナンスレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
一実施形態において、光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標) IC-184);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO);2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO-L);ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標) 819);2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(IRGACURE(登録商標) 907)及び1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 2959);2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE(登録商標) 369);2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル)-フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 127);及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 379)からなる群から選択される。
【0089】
光開始剤は、組成物全体を基準にして、0.1~5質量%、例えば0.5~5質量%、例えば1~5質量%、例えば2~5質量%などの量で存在することができる。
【0090】
式(III)の任意選択のモノマー
本発明の一実施形態において、硬化性樹脂は、本開示に記載の成分(a)、(b)、(d)、及び任意選択的に(c)に加えて、少なくとも1種の(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート又はメタクリレート)モノマーを含み、ここで、アクリレート又はメタクリレートモノマーは、以下の基準を満たす:
(1)2.5以上、もしくは2.7以上、もしくは2.9以上、又は2.5~7までの範囲と、この要件について本開示に記載した範囲を含む平均双極子モーメントを有すること;
(2)アクリレート又はメタクリレートの酸素原子に対するα位にメチル又はメチレンが存在し、酸素原子に対するβ位に水素、メチル、メチレン、メチン、ヘテロ原子(N、O、S又はP)又は芳香族基が存在すること;及び
(3)アクリレートの場合、1分子当たりヘテロ原子が3個以上であり、メタクリレートの場合、1分子当たりヘテロ原子が4個以上であること。
【0091】
本発明の別の実施形態では、硬化性樹脂は、本開示に記載の成分(a)、(b)、(d)及び任意選択的に(c)に加えて、式(III)の少なくとも1種のモノマーを含む:
【化21】
ここで、
各R
11は、独立に、H又はC
1-C
3アルキル(ここで、C
1-C
3アルキルは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである)であり;
R
12は、以下からなる群から選択される:
R
11がHである場合、N、O又はSのうちの少なくとも1つを含む3~7員複素環、及びR
11がC
1-C
3アルキルである場合、N、O又はSのうちの少なくとも2つを含む4~7員複素環;
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
10アルカン鎖であって、R
11がHである場合にアルカン鎖の少なくとも1つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
10アルカン鎖;
任意選択的に分岐していてもよいC
3-C
10アルカン鎖であって、R
11がC
1-C
3アルキルである場合にアルカン鎖の少なくとも2つの炭素原子がN、O、S又はPで置換されており、アルカン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
3-C
10アルカン鎖;及び
任意選択的に分岐していてもよいC
2-C
20アルカン鎖であって、アルカン鎖の1つ以上の炭素原子が任意選択にN、O、S又はPで置換されていてもよく、アルカン鎖がアクリレート基(-O-C(=O)-CH=CH
2)又はメタクリレート基(-O-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)で終端し、任意選択の分岐基がC
1-C
3アルキル基である、C
2-C
20アルカン鎖。
【0092】
式(III)のモノマーの実施形態では、R
11はHであり、R
12は、以下からなる群から選択される:
【化22】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である。
【0093】
式(III)のモノマーの一実施形態において、R
11はC
1-C
3アルキル基であり、R
12は以下からなる群から選択される。
【化23】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である(このシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる)。
【0094】
式(III)のモノマーは、組成物全体を基準にして、1~30質量%、例えば1~25質量%、例えば5~25質量%、例えば5~20質量%、例えば10~25質量%、例えば10~20質量%などの量で存在することができる。
【0095】
補強材
補強材(フィラーともいう)は、特に限定されず、補強材としては、例えば、炭素繊維、植物繊維、木材繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、金属ワイヤなどが挙げられる。「補強材」という表現は、構造タイプの材料と非構造タイプの材料の両方を包含することを意図することに注意されたい。
【0096】
一実施形態において、補強材は不透明である。補強材に関して本開示で使用される「不透明」という用語は、紫外(UV)及び可視波長にわたる全ての又は実質的に全ての放射線を遮断する材料を意味すると理解されるべきである。別の実施形態では、補強材は光散乱性である。
【0097】
当業者は、物理的形態又は合成方法などの要因に応じて、特定のフィラーが紫外線に対して不透明であるか、紫外線に対して透明であるかを認識するであろう。2種以上のフィラーの混合物は、いくつかの不透明フィラー及びいくつかの透明フィラー及び/又はいくつかの部分的に透明なフィラーを有する本発明の実施形態を含む、本発明の範囲内である。当業者は、物理的形態又は合成方法などの要因に応じて、特定のフィラーが、紫外線に対して不透明であるか、紫外線に対して透明であるか、又は部分的に紫外線に対して透明であるかをを認識するであろう。2種以上のフィラーの混合物は、本発明の範囲内である。
【0098】
例示的な不透明フィラーとしては、トウ、編組物、一方向性、織物、編物、スワール生地(swirl fabric)、フェルトマット、巻物などの任意の従来の形態で入手できる、チョップド又は連続炭素繊維が挙げられる。このような炭素繊維は、通常、ポリアクリロニトリル又はピッチ系をベースとする。
【0099】
炭素繊維は、プラズマ、硝酸もしくは亜硝酸、又は同様の強酸で表面処理されてもよく、及び/又は、硬化ポリマーマトリックスへの炭素繊維の接着を強化するであろうジアルデヒド、エポキシ、ビニル及び他の官能基(これらに限定されない)などの作用因子によるさらなる表面官能化(しばしば「サイズ処理」又は「サイジング」と称される)がされていてもよい。
【0100】
他のUV不透明フィラーの非限定的な例としては、カーボンブラック、グラファイト、グラファイトフェルト、グラファイトフォーム、グラフェン、レゾルシノール-ホルムアルデヒドブレンド、ポリアクリロニトリル、レーヨン、石油ピッチ、天然ピッチ、レゾール類、カーボンナノチューブ、炭素すす、クレオソート、SiC、ホウ素、WC、ブチルゴム、窒化ホウ素、ヒュームドシリカ、ナノクレー、炭化ケイ素、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリケート、例えばタルク、マイカ又はカオリンなど、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は有機フィラー、例えばポリマーパウダー、ポリマーファイバーなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0101】
補強材は、連続繊維を含むか、又は連続繊維からなることができる。本開示において、「連続」とは、長さlを直径dで割った値(l/d)として定義されるアスペクト比(V)が100、100、3500、1,000,000又はそれよりも大きいことを意味する。補強材は、チョップドファイバー、すなわち連続繊維のアスペクト比よりも小さいアスペクト比を有するものを含んでもよく、任意の適切な形状又は形態をとっていてもよい。例えば、補強材は、粉末、ビーズ、微小球、粒子、顆粒、ワイヤ、繊維、又はそれらの組み合わせの形態をとってもよい。粒子状の形態をとっている場合、粒子は、球状、平坦、不規則、又は細長い形状のものであってもよい。例えば、高アスペクト粒状材料が使用されてもよい。中空材料及び中実材料が本発明において有用である。本発明の様々な実施形態によれば、材料は、1:1以上のアスペクト比(すなわち、粒子又は繊維などの個々のフィラー要素の長さの、その個々のフィラー要素の幅に対する比)、例えば、1:1超、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも100:1、少なくとも1000:1;少なくとも10,000:1、少なくとも100,000:1、少なくとも500,000:1、少なくとも1,000,000:1のアスペクト比、又はさらに高いアスペクト比(すなわち、事実上無限のアスペクト比)を有していてもよい。他の実施形態によれば、補強材は、2:1以下、3:1以下、5:1以下、10:1以下、100:1以下、1000:1以下;10,000:1以下、100,000:1以下、500,000:1以下、又は1,000,000:1以下のアスペクト比を有していてもよい。
【0102】
補強材の表面は、当該技術分野で知られている方法又は技術のいずれかに従って修飾されてもよい。そのような表面処理方法としては、サイジング(例えば、1種以上の有機物質によるコーティング)、シリル化、酸化、官能化、中和、酸性化、他の化学修飾など、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
光硬化性組成物の硬化によって得られる製品に特定の特性又は特徴を付与するために、補強材の化学的性質を所望に応じて変化させ、選択することができる。例えば、材料は無機又は有機の性質を有するものであることができる。有機/無機混合補強材も使用することができる。炭素系補強材(例えば、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ)や、鉱物系材料も採用することができる。
【0104】
補強材としては、炭素繊維、ガラス繊維、ファイバーグラス、天然繊維(ケナフ繊維)、トワロン繊維、ダイニーマ(Dyneema)繊維、セラミック繊維、アスベスト、ケブラー(Kevlar)繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリスルホンアミド繊維、ポリフェニレンオキシド繊維、植物繊維、木材繊維、鉱物繊維、プラスチック繊維、金属ワイヤ及び/又はアラミド繊維を挙げることができる。炭素繊維が好ましく、連続炭素繊維が最も好ましい。炭素繊維又は他の繊維(1種以上)は、表面処理(プラズマ)されるか、あるいは、例えば硝酸、グルタルジアルデヒド又はシランなどの適切なカップリング剤で「サイジング」されてもよい。炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、又はレーヨン繊維は、ストレートなものであっても、又は織られたものであってもよく、様々な繊維径及び密度を有し得る。繊維又は共繊維は、20~90%、例えば25~80%、例えば30~75%、例えば30~70%の変化した繊維体積分率を有していてもよい。連続繊維であれチョップド繊維であれ、繊維の混合物が企図される。例えば、炭素繊維は、セラミック繊維、アスベスト繊維、ケブラー繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリスルホンアミド繊維、ガラス繊維、植物繊維、木材繊維、鉱物繊維、プラスチック繊維、金属ワイヤ及び/又はアラミド繊維を併用して商品化されたものであってもよい。
【0105】
ケブラー防弾アーマーで使用される典型的な樹脂のタイプは、アミン硬化剤を含むBPA-エポキシ混合物である。ニート樹脂特性は、1~285℃のTg平均範囲、1~2900MPaの引張強さ平均範囲、及び76~1890MPaの曲げ強さ平均範囲を含む。一実施形態において、Tgは120~130℃であり、引張強さは85MPaであり、曲げ強さは112MPaである。
【0106】
粒子状の補強材が含まれてもよい。非限定的な例としては、グラファイト、セラミック(例えばSiC/ホウ素などの高温セラミックスを含む)、ナノシリカ、窒化ホウ素、ナノクレー、炭素すす、フライアッシュ、コークス、炭素、グラファイト、ガラス状炭素、非晶質炭素、ピッチ、非黒鉛粉末、カーボンブラック及びこれらの混合物である。
【0107】
補強材は、粒子を含んでもよく、硬化前に硬化性組成物の少なくとも0.50質量%の量で存在してもよい。例えば、化学線硬化性組成物は、少なくとも0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%又は少なくとも90質量%の粒子状フィラーを含んでもよい。粒子状充填材は、存在する場合、最高で1質量%までが好ましい。
【0108】
補強材は、繊維を含んでもよく、硬化前に硬化性組成物の少なくとも0.50質量%の量で存在してもよい。例えば、化学線硬化性組成物は、少なくとも1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%又は少なくとも90質量%の繊維を含んでもよい。
【0109】
補強材は、連続繊維を含んでもよく、硬化前に硬化性組成物の少なくとも0.50質量%の量で存在してもよい。例えば、化学線硬化性組成物は、少なくとも1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%又は少なくとも90質量%の連続繊維を含んでもよい。
【0110】
補強材は、連続炭素繊維を含んでもよく、硬化前に硬化性組成物の少なくとも0.50質量%の量で存在してもよい。例えば、化学線硬化性組成物は、少なくとも1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%又は少なくとも90質量%の連続炭素繊維を含んでもよい。
【0111】
他の添加剤
硬化性組成物は、添加剤を含んでもよく、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡防止剤、流動化剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、滑剤、耐衝撃性改良剤、艶消し剤、熱可塑性樹脂、ワックスや、あるいは、コーティング、シーラント、接着剤、及び成形又はインク用途で一般的に使用されている添加剤などの、フリーラジカル重合性官能基を含まない種々の添加剤が挙げられるが、これらに限られない。
【0112】
好適な耐衝撃性改良剤としては、任意選択的に第3の共重合可能なジエンモノマーを含んでいてもよいエチレン/プロピレンコポリマー、例えば1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルン、エチリデンノルボルン及びテトラヒドロインデンが挙げられる。他の好適な耐衝撃性改良剤は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンランダムコポリマー、スチレン/イソプレンランダムコポリマー、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート)、エチレン/アクリレートランダムコポリマー及びアクリルブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/(メタ)アクリレート(SBM)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー(スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)及びそれらの水添物、SEBS、SEPS)、及び(SIS)ならびにアイオノマーである。エラストマーの市販例は、Shell製のKraton(SBS、SEBS、SIS、SEBS及びSEPS)ブロックコポリマー、LOTRYL(登録商標)エチル/アクリレートランダムコポリマー(Arkema)及びSurlynアイオノマー(Dupont)である。任意選択的に、エラストマーは、例えばエポキシ、オキセタン、カルボキシル又はアルコールなどの反応性基を含むように修飾されてもよい。この修飾は、反応性グラフト化又は共重合によって導入することができる。後者の市販例としては、Arkema製のLOTADER(登録商標)ランダムエチレン/アクリレートコポリマーAX8840(グリシジルメタクリレート/GMA修飾)、AX8900及びAX8930(GMA及び無水マレイン酸修飾/MA)などが挙げられる。
【0113】
一実施形態において、硬化性組成物は、加熱されたときに分解する過酸化物及び/又はアゾ系熱開始剤を含み、したがって、化学的に硬化可能でもある(すなわち、硬化性組成物を放射線に曝露することに加えて)。好適な過酸化物としては、少なくとも1つのペルオキシ(-O-O-)部分を含む任意の化合物、特に任意の有機化合物、例えば、ジアルキル、ジアリール及びアリール/アルキル過酸化物、ヒドロペルオキシド、過炭酸塩、パーエステル、過酸、アシル過酸化物などが挙げられる。少なくとも1種の促進剤は、例えば、少なくとも1つの第3級アミン、及び/又は金属含有塩(例えば、鉄、コバルト、マンガン、バナジウムなどの遷移金属含有塩のカルボン酸塩及びそれらの組み合わせなど)に基づく1種以上の他の還元剤を含んでもよい。促進剤(1種以上)は、硬化性組成物を加熱又はベークする必要なく硬化性組成物の硬化が達成されるように、室温又は周囲温度でフリーラジカル開始剤の分解を促進して活性フリーラジカル種を生成するように選択することができる。他の実施形態では、促進剤は存在せず、硬化性組成物は、フリーラジカル開始剤の分解を引き起こすのに有効な温度まで加熱され、硬化性組成物中に存在する重合性化合物(1種以上)の硬化を開始するフリーラジカル種を発生させる。理論に束縛されるわけではないが、いくつかの実施形態によれば、光誘起重合によって提供される発熱は、そのような化学(熱)フリーラジカル開始剤を分解させるのに十分な熱を提供する。
【0114】
本開示に記載される化学線硬化性組成物中の熱開始剤の濃度は、数ある考えられる要因の中でも、選択される個々の化合物(1種以上)、化学線硬化性組成物中に存在する重合性化合物(1種以上)のタイプ、利用される硬化条件、及び所望の硬化速度に応じて、所望のとおりに変化させることができる。しかしながら、典型的には、化学線硬化性組成物は、補強材を除く硬化性組成物の総質量に基づいて、0.05質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~2質量%の熱開始剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、熱開始剤の典型的な濃度は、補強材を除く硬化性組成物の総質量に基づいて最大で約15質量%までであることができる。例えば、化学線照射硬化性組成物は、補強材を除いた硬化性組成物の総質量に基づいて、合計で0.1~10質量%の熱開始剤を含むことができる。
【0115】
特定の一実施形態において、過酸化物は過酸化ベンゾイルであり、アゾ系熱開始剤は2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0116】
硬化性組成物は、任意選択的に、当該組成物の粘度を調節するのに役立ち、可塑剤として作用することができ、強度又は耐衝撃性を高めることなどによって材料特性を改善することができる、1種以上の増粘剤(粘度調整剤、増粘剤又は増粘付与剤としても知られる)を含んでいてもよい。組成物に好適な増粘剤は、それが組み合わされるモノマーと混和性であるものから選択することができる。増粘剤は当該技術分野において周知であり、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、アシル化セルロースポリマー(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート)、ポリビニルアセテート、部分加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリオキシレート、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、酢酸ビニルコポリマー(例えば、塩化ビニルとのコポリマー)、(メタ)アクリレートとブタジエン及びスチレンとのコポリマー、塩化ビニルとアクリロニトリルのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ[ブチレンテレフタレート-コ-ポリエチレングリコールテレフタレート]、及び乳酸とカプロラクトンのコポリマーなどであることができる。このような高分子増粘剤は、一般的に光硬化性組成物の光硬化性樹脂成分に可溶性であることに加えて、光硬化性樹脂成分が硬化したときに形成される高分子マトリックスにも可溶性であるという事実によって、補強材と区別することができる。しかしながら、補強材として本開示で教示した物質のうちのあるものは、光硬化性樹脂成分中に不溶性のままでありながら、増粘剤としてもある程度機能し得ることが認められている。
【0117】
特定の実施形態によれば、硬化性組成物は、補強材成分の質量を除く硬化性組成物の質量を基準にして、最大で15質量%、最大で12質量%、又は最大で10質量%までの量の増粘剤を含む。例えば、硬化性組成物は、補強材成分の質量を除く硬化性組成物の質量を基準にして、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.5質量%、又は少なくとも1質量%の増粘剤を含むことができる。硬化性組成物は、その流動挙動を調節するためにチキソトロピー剤を含んでもよい。ここで、チキソトロピー剤は、有機又は無機であることができ、特定の実施形態では、水素添加ヒマシ油、アミンとの反応により修飾された水素添加ヒマシ油、ポリアミド及びシリカ(例えば、疎水性ヒュームド又は沈降シリカ)からなる群から選択される。しかしながら、チキソトロピー剤が存在する場合、その濃度は、典型的には、硬化性組成物の総質量を基準にして5質量%以下に制限される。
【0118】
付加製造方法
硬化性組成物は、様々な所望の成分を所望の割合で単に混ぜ合わせることを含む、任意の適切な方法によって調製することができる。本発明の特定の実施形態によれば、硬化性組成物の硬化性樹脂成分は、補強材成分とは別に調製及び保管され、その後、硬化性組成物の硬化の直前又は同時に2つの成分が組み合わされて光硬化性組成物を形成する。硬化性樹脂成分及び硬化性組成物は、硬化性樹脂成分又は硬化性組成物の硬化を開始させるのに有効な波長を有する光から遮蔽される包装に保管されることが好ましい。例えば、パッケージ又は容器は、300nm~750nmの波長から遮光されたものであることができる。また、硬化性組成物を未硬化の安定した形態で長い保存期間にわたって維持することに適合するようにパッケージ又は容器の内面を選択することが好ましい。例えば、パッケージ又は容器の内面は、低エネルギー表面プラスチック又は不動態化ガラスもしくは金属で構成することができる。
【0119】
硬化性組成物は、硬化性樹脂成分を光硬化させてポリマーマトリックスを形成することによって複合材料を調製するのに有用である。硬化したポリマーマトリックスは、硬化性組成物の補強材成分を内包し、結び付ける。補強材成分は、フィラー成分の不在下で光硬化性樹脂成分を硬化させて得られる硬化型ポリマーマトリックスの化学的性質と比較して、機械的性質を向上させる役割を果たす。例えば、補強材が繊維の形態にある場合、本発明に係る硬化性組成物を光硬化させることによって、繊維強化複合材料を得ることができる。
【0120】
一般的に、複合材料は、バインダー材料によって支持された補強材を含む任意の材料として定義することができる。したがって、複合材料は、連続的なバインダー(マトリックス)相よりも硬い及び/又は強い不連続な補強材相を有する二相材料を含み得る。本発明に従って調製された複合材料の文脈において、補強材は剛性付与剤として機能することができ、一方、光硬化性組成物の光硬化性樹脂成分を光硬化させることによって形成されたポリマーマトリックスはバインダー材料として機能することができる。
【0121】
本発明に係る硬化性組成物は、コーティング、接着剤、シーラント、ポッティングコンパウンド、封入材、及び他のそのような製品として使用できるが、バルクでの硬化、及び光硬化によるバルク物体又はモノリスの製造に対して特に有意義である。
【0122】
光照射を用いて本発明の光硬化性組成物を硬化させる方法は、任意の好適な放射線源、例えば長波長紫外線灯、低輝度アーク灯、高輝度アーク灯、高圧水銀灯、ハロゲン灯、発光ダイオード(LED)、キセノン灯、又は太陽光などを使用して、電子ビーム、紫外線、可視光又は近赤外線を硬化性組成物に照射することを含むことができる。
【0123】
一般的には、紫外線(UV)及び可視光が好ましい。照射される光の有効波長は、使用される特定の光開始剤系及び/又は光開始剤系中に存在する光分解性化合物に依存して変わる。
【0124】
したがって、使用される光源は、使用される特定の光開始剤系によって規定される波長範囲の光を提供する必要がある。理想的には、光源(LEDなど)から放射される光の波長は、光硬化性樹脂組成物の光開始剤系の吸収と強くカップルするべきである。不要ではあるが、特定の光開始剤系に対して所望の光重合範囲外の波長の光を、フィルターにかけて除いてもよい。さらに、使用される光源は、製造される複合材料部品の1つ以上の面又は側面を透過するように光を放出することができる。
【0125】
本発明の特定の実施形態によれば、硬化性組成物は、350nm~490nm、もしくは365nm~465nm、又は380nm~410nmの波長を有する光への曝露によって硬化させることができるように、配合することができる。光強度は、例えば、20mW/cm2~150mW/cm2、又は40mW/cm2~90mW/cm2であることができる。硬化性組成物は、光に曝されたときに静止していてもよい。あるいは、硬化性組成物は、光に曝されるときに動いていてもよい(例えば、ベルトコンベア上)。複合材料又は物品を形成するために本発明に従って光硬化される光硬化性組成物の一部に、一方向から又は複数方向から光を照射してもよい。しかしながら、本発明の1つの際立った利点は、入射光の透過を遮断することができる補強材又は光が組成物内の光硬化性樹脂成分の全ての領域に到達しないように入射光を散乱させることができる補強材の存在にもかかわらず、一方向のみからの光照射が複合材料又は物品全体に硬化性組成物の完全硬化を引き起こすのに有効であることができるということである。
【0126】
本発明の光硬化性組成物を使用して複合材料物品を形成するために様々な手法を使用することができる。例えば、光硬化が起こるように光が十分に透過できるように開始光に対して透明な少なくとも1つの面又は側面を有する所望の複合材料物品のための型、適切な光源、及び型を満たすのに十分な量の所望の光硬化性組成物自体を採用することができる。実際に使用される手順の特定の順序は、所望により変えることができる。例えば、型への充填は、使用する光源の点灯前又は後のいずれでも可能である。光硬化性組成物は、組み合わされた形態で型に導入されてもよい。例えば、硬化性組成物の残りの成分中に補強材(1種又は複数種)を分散させ、得られた混合物を型に充填することができる。しかしながら、補強材(1種又は複数種)は、硬化性組成物のその他の成分とは別に型に導入されてもよい。例えば、型に導入される際の補強材は、例えば繊維マット(織られた又は織られていないもの)などのプリフォームであってもよい。一実施形態によれば、型に導入されるときの補強材成分は、硬化性組成物のその他の成分のある分量の液体混合物で予め湿潤又は予め含浸されていてもよく、そのような混合物の追加量が、その後、型に導入されて、混合物の追加量が予め湿潤した補強材成分と組み合わされる。また、構造化又は層状複合材料物品を形成することも可能であり、この複合材料物品は、フィラーをほとんど又は全く含まない1つ又は複数の領域又は層と、比較的高い濃度の補強材を含む1つ又は複数の領域又は層とを有することによって特徴付けられることがある。
【0127】
本発明の1つの際立った利点は、光を遮断又は散乱させる相当量の補強材の存在にもかかわらず、比較的厚い複合材料物品を効率的に製造することを可能にすることである。例えば、特定の実施形態において製造される複合材料物品の厚さは、約0.1センチメートル~約10センチメートルの範囲内、又はそれ以上であることができる。本発明は、この厚さ範囲の複合材料物品を形成するのに非常に有用であるが、本発明は、0.1~10センチメートルの範囲よりもかなり厚い複合材料物品を形成するのにも同様に実施可能である。
【0128】
しかしながら、本発明の光硬化性組成物は、比較的薄い複合材料フィルム又はコーティングを形成するのにも適している。そのような硬化した複合材料フィルム及びコーティングは、例えば、少なくとも10ミクロン、少なくとも50ミクロン、又は少なくとも100ミクロンで、最大で0.5mm又は1mmの厚さを有していてもよい。本発明の範囲内で、光硬化性組成物を使用して物品を層ごとに構築することも可能であり、例えば10ミクロン~500ミクロンの厚さを有する光硬化性組成物の第1の薄層を形成して露光し、次に、光硬化性組成物の第2の薄層を第1の薄層上に堆積させて露光し、その後、光硬化性組成物の1又は複数の後続の薄層を堆積させて露光する。かかる後続の薄層も次の薄層を堆積させる前に露光される。
【0129】
本発明は、任意の用途のための任意の物品、賦形物又は部品を形成するために使用できることが理解されるべきである。「物品」が意図するものは、意図した用途用に構成された三次元賦形物である。本発明を使用して、複合材料物品の1つ以上の部分が、本発明による硬化性組成物の硬化によって得られる複合材料と、硬化性組成物に由来しない材料(例えば、金属、セラミック、プラスチック)の1つ以上の部分からなる複合材料物品を製造することも可能である。例えば、複合材料物品は、本発明による複合材料と接触している(例えば、接着又は結合している)少なくとも1つの表面を有する第1の材料(本発明による硬化性組成物に由来しない)の基材を含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物はまた、付加製造(三次元(3D)印刷を含む)及び引抜成形などの方法によって有用な物品を作製するために使用することもできる。そのような方法は、モールドレス法及び/又は脱オートクレーブ(OOA)法であることができる。好適な3D印刷システムとしては、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタル光処理(DLP)、ホットリソグラフィー、及び連続液体界面製造(CLIP)が挙げられる。一例として、光源を備えた分配ヘッドを用いて、繊維ストランド又はトウに光硬化性樹脂成分(繊維を除く、本発明に係る光硬化性組成物の構成成分で構成される)を含浸させて、分配ヘッド内で硬化性組成物を形成し、次いで、材料堆積直後に光を用いて硬化性組成物を硬化させて硬化した複合材料を提供することができる。このようにして、配向した強化繊維を含む三次元複合材料物品を、型又は他の支持材料なしで、作製することができる。
【0130】
3D印刷に関連するよく知られたASTM規格には、以下のものがある:
【表1】
【0131】
本発明に係る光硬化性組成物は、自動繊維配置(AFP)及び自動テープ・レイアップ(ATL)プロセスにおける使用にも適している。
【0132】
光硬化性組成物が、硬化を開始するのに有効な方法で露光される間、硬化性組成物は、好適にはおおよそ室温(例えば、約10℃~約35℃)であることできる。しかしながら、硬化性組成物が露光される間、硬化性組成物を高温(例えば、35℃超~約100℃)に維持することも可能である。必要に応じて、こうして製造された複合材料物品に対して光硬化後の操作を行うことができる。例えば、加熱オーブンにおける熱硬化を用いることができる。
【0133】
本発明の硬化性組成物は、インク(食品包装用を含むグラフィックアート用途)、成形用樹脂、3D印刷用樹脂、コーティング(繊維コーティングなど)及びシーラント及び接着剤(例えばUV硬化型ラミネート接着剤、UV硬化性ホットメルト接着剤など)としても使用することが可能である。
【0134】
本開示に記載の硬化性組成物から調製された硬化性組成物は、例えば、三次元物体(ここで、三次元物体は、実質的に硬化した組成物からなっていてもよい)、被覆された物品(すなわち、基材の1つが硬化した組成物の1つ以上の層で被覆されている)、第2のコンポーネントに結合又は接着されたラミネート又は接着された物品(すなわち、第1のコンポーネントの1つに硬化した組成物が重ねられている)、又は印刷された物品(紙、プラスチック又は金属基材などの基材にグラフィックなどを印刷するために硬化性組成物が使用されたもの)である。
【0135】
硬化前に、硬化性組成物は、任意の既知の従来の手段、例えば、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、ディップコーティングなど、及びそれらの組み合わせによって、基材に適用することができる。転写法を用いた間接的なコーティングも使用することができる。基材は、商業的に関連する任意の基材、例えば高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材など、例えば、それぞれ金属基材又はプラスチック基材などであることができる。基材としては、金属、紙、段ボール、ガラス、熱可塑性プラスチック、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びそれらのブレンドなど、複合材料、木材、皮革、及びそれらの組み合わせが挙げられる。接着剤として使用される場合、硬化性組成物は、2つの基材の間に配置することができ、その後、硬化され、それによって硬化した組成物が基材を結合させる。
【0136】
本発明による組成物の複数の層を基材表面に適用することができ、複数の層は同時に(例えば、一回照射の放射線への曝露によって)硬化されてもよいし、組成物の別の層をコーティングする前に層を続けて硬化させてもよい。
【0137】
本件に記載の硬化性組成物は、3D印刷用樹脂配合物、すなわち、3D印刷技術を使用して3次元物体を製造することを意図した組成物として特に有用である。そのような三次元物体は、自立型/自己支持型のものであることができ、硬化した硬化性組成物から実質的になっていてもよい。また、三次元物体は、前述の硬化した組成物から実質的になる、又は前述の硬化した組成物からなる少なくとも1つのコンポーネントを含み、1種以上の材料の少なくとも1つのさらなるコンポーネント(例えば、金属コンポーネント又は熱可塑性プラスチックコンポーネント)を含む複合材料であってもよい。
【0138】
本発明による硬化性組成物を用いて三次元物体を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
a)本発明による硬化性組成物の第1の層を表面に適用すること;
b)第1の層を硬化させて、硬化した第1層を提供すること;
c)硬化した第1の層に、第2の層の硬化性組成物を適用すること;
d)第2の層を硬化させて、第1の層のうちの1つの硬化した層への、硬化した第2の層の接着を提供すること;及び
e)ステップc)及びd)を必要に応じて繰り返して、3次元物体を構築すること。
【0139】
本発明のいくつかの具体例において、硬化性組成物の硬化は、硬化性組成物を有効量の放射線(例えば、電子ビーム放射、紫外線、可視光など)に曝露することによって達成される。
【0140】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、以下のステップを含む方法を提供する:
a)本発明による硬化性組成物の第1の層を液体形態で表面上に適用すること;
b)第1の層を化学線に曝露して、第1の露光イメージング断面を形成すること、ここで、化学線は、露光領域内の層の少なくとも部分的に硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%硬化)させるのに十分な強度及び時間のものである;
c)硬化性組成物の追加の層を、先に露光されたイメージング断面に適用すること;
d)追加の層をイメージング方式で化学線に露光して、さらなるイメージング断面を形成すること、ここで、化学線は、露光領域内の追加の層を少なくとも部分的に硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%硬化)させ、追加の層を先に露光されたイメージ断面に付着させるのに十分な強度及び時間のものである;及び
e)ステップc)及びd)を必要に応じて繰り返して、三次元物体を構築すること。
【0141】
従来の3D印刷技術を使用して3次元印刷物品を作製する際に硬化性組成物を使用する方法は特に限定されず、デジタル光投影、ステレオリソグラフィー、並びにマルチジェット及びバインダージェット印刷が挙げられる。
【0142】
補強材として連続繊維を含む硬化性組成物の一実施形態では、連続繊維3D印刷(通称、CF3D(登録商標))が好ましい方法である。CF3D(登録商標)は、移動可能なプリントヘッドから吐出される材料中に埋め込まれた連続繊維の使用を含む。マトリックスが、プリントヘッドに供給され、1本以上の連続繊維とともに同じヘッドを通じて同時に吐出される(例えば、押出成形及び/又は引抜成形など)。マトリックスは、従来の熱可塑性樹脂、液体熱硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂及び/又は二液性樹脂)、又はこれらのうちのいずれかと他の公知のマトリックスとの組み合わせであることができる。プリントヘッドを出ると、硬化エンハンサー(例えば、紫外線、レーザー、超音波エミッター、熱源、触媒供給など)が作動して、マトリックスの硬化を開始、促進、及び/又は完了させる。この硬化はほぼ即座に起こるため、自由空間において支持されていない構造体を作製することができる。繊維、特に連続繊維を構造体内に埋め込められた場合、構造体の強度がマトリックスに依存する強度を超えて倍加されることがある。この技術の一例が米国特許第9,511,543号に開示されている。
【0143】
硬化の一実施形態において、硬化性組成物を硬化させる方法は、硬化性組成物を硬化させるのに十分な化学線に曝露することを含む。
【0144】
一実施形態において、3次元印刷された複合材料物品の製造方法は、以下を含む:
化学線硬化性組成物をプリントヘッドから吐出させること、ここで、化学線硬化性組成物は補強材を含む;
化学線硬化性硬化可能な組成物の吐出中にプリントヘッドを移動させること;及び
化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した、3次元印刷された複合材料物品を形成すること。
【0145】
別の実施形態では、連続繊維3D(CF3D(登録商標))を使用して3次元印刷された炭素結合複合材料物品を製造する方法は、以下を含む:
連続炭素繊維の存在下で化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した、3次元印刷された炭素結合複合材料物品を形成すること。
【0146】
様々な実施形態において、硬化性組成物は、単一の堆積物として適用される。
【0147】
様々な実施形態において、硬化した複合材料物品は、低い光学的透明性を有する。
【0148】
一実施形態において、プリントヘッドが硬化性組成物を収容する。
【0149】
本発明の特定の非限定的な態様を以下にまとめた:
態様1. 以下を含む、化学線硬化性組成物:
(a)20~80質量%のアクリルアミド又はメタクリルアミドであって、(1)2.5以上の平均双極子モーメントを有すること;(2)アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子に対するα位に水素もしくはメチル基又はメチレン基が存在し、窒素原子に対するβ位に水素、メチル基、メチレン基、メチン基、ヘテロ原子又は芳香族基が存在すること;及び(3)アクリルアミド又はメタクリルアミド1分子あたりヘテロ原子が2個以上であること、という基準を満たすアクリルアミド又はメタクリルアミド;
(b)10~60質量%の、式(II)の少なくとも1種のモノマー;
【化24】
(c)0~30質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の光開始剤、
ここで
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、ここで、R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり;
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【0150】
態様2. 以下を含む、化学線硬化性組成物。
(a)20~80質量%の、式(I)の少なくとも1種のモノマー:
【化25】
(b)10~60質量%の、式(II)の少なくとも1種のモノマー:
【化26】
(c)0~30質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び
(d)0.1~5質量%の光開始剤、
ここで、
R
1は、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
2及びR
3は、H、C
1-C
3アルキル、CH
2-CH(OH)C
1-C
3アルキル及び(CH
2)
mXからなる群からそれぞれ独立に選択されるか、
あるいは、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子とともに、3~6員飽和複素環式環を形成しており;
Xは、OR
4、SR
4、NR
5R
6、又は芳香族基であり;
R
4は、H及びC
1-C
4アルキルからなる群から選択され;
R
5及びR
6は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され;
mは1、2、3、4又は5であり;
R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2又はHであり、
ここで、
R
7、R
8及びR
9のうちの少なくとも2つは-(CH
2)
nO(C=O)-CR
10=CH
2であり;
R
10は、H及びC
1-C
3アルキルからなる群から選択され;
nは、1、2、3又は4である。
【0151】
態様3. 式(I)のモノマーについて、R1はHであり、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子とともに、5又は6員の飽和複素環式環を形成している、態様2に記載の硬化性組成物。
【0152】
態様4. 式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2である、態様1~3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0153】
態様5. 式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2である、態様1~3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0154】
態様6. 式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はHである、態様1~3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0155】
態様7. 式(II)のモノマーについて、R7、R8及びR9のうちの少なくとも2つは(CH2)nO(C=O)-CR10=CH2であり、ここで、nは2であり、R10はHである、態様1~3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0156】
態様8. アクリルアミド/メタクリルアミド又は式(I)のモノマーが、以下からなる群から選択される、態様2~7のいずれかに記載の硬化性組成物:
【化27】
【0157】
態様9. 式(I)のモノマーがアクリロイルモルホリン(ACMO)である、態様2~8のいずれか1つに記載の硬化性組成物:
【化28】
【0158】
態様10.式(II)のモノマーがトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(M370)である、態様2~9のいずれか1つに記載の硬化性組成物:
【化29】
【0159】
態様11. 式(I)のモノマーがACMO:
【化30】
であり、式(II)のモノマーはM370:
【化31】
である、態様2~10のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0160】
態様12. 硬化性組成物が、さらに、補強材(フィラー)を含む、態様1~11のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0161】
態様13. 補強材が不透明な補強材(不透明なフィラー)又は光散乱性の補強材である、態様1~12のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0162】
態様14. 不透明なフィラー又は光散乱性のフィラーが連続繊維を含む、態様1~13のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0163】
態様15. 不透明なフィラーが連続炭素繊維を含む、態様1~14のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0164】
態様16. 補強材が、ガラス、ファイバーグラス、チョップド炭素繊維、連続炭素繊維及びケブラー(登録商標)からなる群から選択され、任意選択的に、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)及びポリカーボネートのうちの1種以上が存在していてもよい、態様1~15のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0165】
態様17. 補強材がガラスでない、態様1~16のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0166】
態様18. 補強材がガラス繊維又は連続炭素繊維である、態様1~17のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0167】
態様19. ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、PHOTOMER(登録商標) 6008、PHOTOMER(登録商標) 6010、PHOTOMER(登録商標) 6019、PHOTOMER(登録商標) 6184、PHOTOMER(登録商標) 6630及びPHOTOMER(登録商標) 6892からなる群から選択される、態様1~18のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0168】
態様20. 光開始剤が、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アルコキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィンからなる群から選択される、態様1~19のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0169】
態様21. 光開始剤が、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標) IC-184);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO);2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(登録商標) TPO-L);ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標) 819);2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(IRGACURE(登録商標) 907)及び1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 2959);2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE(登録商標) 369);2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル)-フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 127);及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(IRGACURE(登録商標) 379)からなる群から選択される、態様1~20のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0170】
態様22. 硬化性組成物が、さらに、アクリレート又はメタクリレートであって、(1)2.5以上の平均双極子モーメントを有すること;(2)アクリレート又はメタクリレートの酸素原子に対するα位にメチル又はメチレンが存在し、酸素原子に対するβ位に水素、メチル、メチレン、メチン、ヘテロ原子又は芳香族が存在すること;及び(3)1つのアクリレート分子あたりヘテロ原子が3個以上であり、1つのメタクリレート分子あたりヘテロ原子が4個以上であること、という基準を満たすアクリレート又はメタクリレートを含む、態様1~22のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0171】
態様23. 硬化性組成物が、下記式(III)のモノマーをさらに含む、態様2~22のいずれかに記載の硬化性組成物:
【化32】
ここで、
各R
11は、独立に、H又はC
1-C
3アルキルであり;
R
12は、以下からなる群から選択される:
R
11がHである場合、N、O又はSのうちの少なくとも1つを含み、R
11がCH
3である場合、N、O又はSのうちの少なくとも2つを含む複素環;
C
2-C
6アルキレン鎖であって、R
11がHである場合、アルキレン鎖の少なくとも1つの炭素原子がN、O又はSで置換されており、アルキレン鎖はC
1-C
3アルキル基で終端している、C
2-C
6アルキレン鎖;
C
2-C
6アルキレン鎖であって、R
11がCH
3である場合、アルキレン鎖の少なくとも2つの炭素原子がN、O又はSによって置換されており、アルキレン鎖は、C
1-C
3アルキル基で終端している、C
2-C
6アルキレン鎖;及び
C
2-C
6アルキレン鎖であって、アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が、任意選択的に、N、O又はSによって置換されていてもよく、アルキレン鎖は、アクリレート基(-O-C(=O)-CH=CH
2)又はメタクリレート基(-O-C(=O)-C(CH
3)=CH
2)で終端している、C
2-C
6アルキレン鎖。
【0172】
態様24. 式(III)のモノマーについて、R
11がHであり、R
12が以下からなる群から選択される、態様2~23のいずれか1つに記載の硬化性組成物:
【化33】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である。
【0173】
態様25. 式(III)のモノマーについて、R
11がCH
3であり、R
12が以下からなる群から選択される、態様2~24のいずれか1つに記載の硬化性組成物:
【化34】
ここで、Cyは、3~7個の環炭素を有するシクロアルキル基である。
【0174】
態様26. 硬化性樹脂が、さらに過酸化物を含む、態様1~25のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0175】
態様27. 硬化性樹脂が、さらにアゾ系熱開始剤を含む、態様1~26のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0176】
態様28. 硬化性組成物を硬化させるのに十分な化学線に硬化性組成物を曝露することを含む、態様1~27のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化させるための方法。
【0177】
態様29. 3次元印刷複合材料物品を製造するための方法であって、以下を含む方法:
態様1~27のいずれか1つに記載の化学線硬化性組成物をプリントヘッドから吐出させること、ここで、化学線硬化性組成物は補強材を含む;
化学線硬化性組成物の吐出中にプリントヘッドを移動させること;及び
化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した3次元印刷複合材料物品を形成すること。
【0178】
態様30. 連続繊維3D(CF3D(登録商標))を使用して3次元印刷されたカーボン結合複合材料物品を製造する方法であって、
連続炭素繊維の存在下で、態様1~27のいずれか1つに記載の化学線硬化性組成物に光照射して、硬化した、3次元印刷された炭素結合複合材料物品を形成すること、
を含む方法。
【0179】
態様31. 硬化性組成物が単一の堆積物として適用される、態様28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
態様32. 硬化した複合材料物品が低い光学的透明性を有する、態様28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
態様33. プリントヘッドが硬化性組成物を収容する、様相28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
本明細書中で、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を記載することを可能にするように説明されているが、実施形態は、本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分けたりできることが意図されており、また、そのように理解されるであろう。例えば、本開示に記載した全ての好ましい特徴は、本開示に記載される本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0183】
いくつかの実施形態において、本開示における発明は、化学線硬化性組成物、化学線硬化性組成物の製造方法、化学線硬化性組成物の使用方法、及び化学線硬化性組成物から製造される物品の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本開示に規定されていない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。
【0184】
本発明は、特定の実施形態を参照して本開示に図示され、説明されているが、本発明は、示した詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲及び特許請求の範囲と等価な範囲内で、本発明から逸脱することなく、細部において様々な変更を行うことができる。
【実施例】
【0185】
実施例1. 製造プロセス
図1は、任意の所望の形状、サイズ、構成、及び/又は材料組成を有する複合材料構造体12を製造するために使用することができる例示的なシステム10を示す。システム10は、少なくとも支持体14及びヘッド16を含んでもよい。ヘッド16は、複合材料(Cとして示される)の吐出の間、支持体14に結合され、支持体14によって移動可能であってもよい。
図1の開示された実施形態では、支持体14は、構造体12の作製中に、結果として生じる吐出の長手方向軸(例えば、軌道)が三次元的であるように、ヘッド16を多方向に移動させることができるロボットアームである。支持体14は、代わりに、構造体12の作製中にヘッド16を多方向に移動させることができるガントリー(例えば、オーバーヘッドブリッジガントリー、シングルポストガントリーなど)又はハイブリッドガントリー/アームを具現してもよい。支持体14は、6軸運動が可能であるとして示されているが、同じ又は異なる方法でヘッド16を動かすことができる任意の他のタイプの支持体14も利用できることが企図される。いくつかの実施形態では、駆動装置又は連結器が、ヘッド16を支持体14に機械的に結合し、ヘッド16の部分を動かし、及び/又はヘッド16に電力及び/又は材料を供給するために協働するコンポーネントを含んでもよい。
【0186】
ヘッド16は、連続的な補強材とともに、ヘッド16から吐出される複合材料を構成するマトリックスを受容するか、さもなければ収容するように構成されていてもよい。マトリックスは、硬化可能な任意のタイプの材料(例えば、不揮発性有機化合物樹脂などの液体樹脂、粉末金属など)を含んでもよい。例示的な樹脂としては、熱硬化性樹脂、一液又は多液型エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、カチオン性エポキシ樹脂、アクリル化エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、熱可塑性樹脂、フォトポリマー、ポリエポキシド、チオール類、アルケン類、チオール-エン類などが挙げられる。一実施形態では、ヘッド16内部のマトリックスは、例えば、対応する導管(図示せず)を介してヘッド16に流体接続された外部装置(例えば、押出機又は別のタイプのポンプ-図示せず)により加圧されてもよい。しかしながら、別の実施形態では、圧力は、同様のタイプの装置によってヘッド16の内部全体に生成されてもよい。さらに他の実施形態では、マトリックスは、ヘッド16に及び/又はヘッド16を通して重力により供給されてもよい。例えば、マトリックスは、ヘッド16内に供給され、1種以上の連続的な補強材とともにヘッド16から押し出され又は引き出されてもよい。場合によっては、ヘッド16内のマトリックスは、冷及び/又は暗状態に保たれること(例えば、早期硬化を抑制するため、又はそうでなければ吐出後の所望の硬化速度を得るため)で利益を得ることができる。他の場合、マトリックスは、同様の理由で温かく保たれる必要がある場合がある。いずれの状況においても、ヘッド16は、これらの必要性を提供するために特別に構成されてもよい(例えば、断熱、温度制御、遮蔽など)。
【0187】
任意の数の連続的な補強材(例えば、別々の繊維、トウ、ロービング、ソックス、及び/又は連続的な材料のシート)を被覆し、補強材とともに、複合材料構造体12の一部(例えば、壁)を構築するためにマトリックスが使用されてもよい。補強材は、ヘッド16内(例えば、1つ以上の別個の内部クリールに-図示せず)に保管されてもよく、あるいは、ヘッド16を通過してもよい(例えば、1つ以上の外部スプールから供給-図示せず)。複数の補強材が同時に使用される場合、補強材は、同じ材料組成のものであっても、同じサイズ及び断面形状(例えば、円形、正方形、長方形など)を有していてもよく、あるいは、異なる材料組成で異なるサイズ及び/又は断面形状を有するものであってもよい。補強材としては、例えば、炭素繊維、植物繊維、木材繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、金属ワイヤなどが挙げられる。「補強材」という用語は、ヘッド16から吐出されるマトリックスに少なくとも部分的に包含される連続材料の構造的及び非構造的タイプの両方を包含することを意図することに留意されたい。
【0188】
補強材がヘッド16の内部にある間、補強材がヘッド16に送られる間、及び/又は補強材がヘッド16から吐出される間に、補強材がマトリックスに曝露されてもよい(例えば、少なくとも部分的にコーティングされてもよい)。マトリックス、乾燥した補強材、及び/又は既にマトリックスに暴露された補強材(例えば、予め含浸された補強材)は、当業者に明らかな任意の方法でヘッド16内に搬送されてもよい。いくつかの実施形態では、マトリックスが連続補強材を被覆する前及び/又は後に、充填材(例えば、チョップドファイバー)がマトリックスと混合されてもよい。
【0189】
以下により詳細に説明されるように、1種以上の硬化エンハンサー(例えば、紫外線、超音波エミッター、レーザー、ヒーター、触媒ディスペンサーなど)18は、ヘッド16に近接して(例えば、ヘッド16内、ヘッド16上、又はヘッド16に隣接して)取り付けられ、ヘッド16から吐出される際のマトリックスの硬化速度及び/又は品質を高めるように構成されてもよい。硬化エンハンサー(1つ以上)18は、材料吐出及び構造体12の形成中に、構造体12の部分をエネルギー(例えば、紫外線、電磁放射線、振動、熱、化学触媒などに)に選択的に曝すように制御することができる。エネルギーは、マトリックス内で起こる化学反応を誘発し、化学反応の速度を増加させ、マトリックスを焼結させ、マトリックスを硬化させ、あるいは、別な方法で、ヘッド16からマトリックスが吐出される際にマトリックスを硬化させることができる。硬化エンハンサー(1つ以上)18によって生成されるエネルギーの量は、構造体12がヘッド16から軸方向に所定の長さを超えて成長する前にマトリックスを硬化させるのに十分なものであることができる。一実施形態では、構造体12は、軸方向成長長さがマトリックス被覆補強材の外径に等しくなる前に硬化される。
【0190】
マトリックス及び/又は補強材は、少なくとも2つの異なる動作モードによりヘッド16から吐出されてもよい。第1の動作モードでは、マトリックス及び/又は補強材は、ヘッド16が支持体14によって移動して吐出材料の長手軸内に3次元軌道を形成する際に、ヘッド16から押し出される(例えば、圧力及び/又は機械力の下で押し出される)。第2の動作モードでは、少なくとも補強材は、吐出中に補強材に引張応力が生じるように、ヘッド16から引き出される。この動作モードでは、マトリックスが補強材にくっつき、それによって補強材と共にヘッド16から引っ張られ、及び/又はマトリックスが引っ張られた補強材と共に圧力下でヘッド16から吐出されてもよい。マトリックスが補強材とともにヘッド16から引き出される第2の動作モードでは、補強材において結果として生じる張力は、構造体12の強度を増加させ(例えば、補強材を整列させ、座屈を抑制するなどにより)ると同時に、支持されていない構造体12のより長い距離がより真っ直ぐな軌道を有することを可能にしうる。すなわち、マトリックスの硬化後に残る補強材の張力は、重力に逆らって(例えば、重力に対抗するモーメントを作り出すことによって直接的及び/又は間接的に)作用し、構造体12の支持を提供することができる。
【0191】
ヘッド16が支持体14によってアンカーポイント(例えば、プリントベッド、テーブル、床、壁、構造体12の表面など-図示せず)20から離れるように動かされる結果として、補強材がヘッド16から引き出されてもよい。特に、構造体形成の開始時に、ある長さのマトリックス含浸補強材をヘッド16から引き出し及び/又は押し出し、アンカーポイント20上に堆積させ、少なくとも部分的に硬化させて、吐出された材料をアンカーポイント20に付着(又は他の方法で結合される)させることができる。その後、ヘッド16は、アンカーポイント20から離れるように移動されてもよく、相対的な移動によって、ヘッド16から補強材を引き出すことができる。ヘッド16を通る補強材の移動は、必要に応じて、(例えば、1つ以上の内部供給機構により)補助されてもよいことに留意されたい。しかしながら、ヘッド16からの補強材の吐出速度は、主として、補強材内に張力が生じるような、ヘッド16とアンカーポイント20との間の相対的な移動の結果であってよい。ヘッド16がアンカーポイント20から遠ざかる代わりに、又はそれに加えて、アンカーポイント20がヘッド16から遠ざかることがあることが企図される。
【0192】
コントローラ26を提供し、支持体14、ヘッド16、及び任意の数の硬化エンハンサー(1つ以上)18と通信可能に結合させてもよい。各コントローラ26は、システム10の動作を制御するように特別にプログラム又は構成された、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを実装してもよい。コントローラ26は、1つ以上の汎用又は特殊目的のプロセッサ又はマイクロプロセッサを備えていてもよい。コントローラ26は、さらに、例えば、設計限界、性能特性、動作命令、ツールパス、及びシステム10の各コンポーネントの対応するパラメーターなどのデーターを記憶するためのメモリを備えるか、又はそれに関連付けられていてもよい。電源回路、信号調整回路、ソレノイドドライバ回路、通信回路、及び他の適切な回路などの様々な他の公知の回路がコントローラ26に関連付けられていてもよい。さらに、コントローラー26は、有線及び/又は無線伝送を介してシステム10の他のコンポーネントと通信可能であってもよい。
【0193】
1つ以上のマップが、コントローラ26のメモリに格納され、構造体12の製作中にコントローラ26によって使用されてもよい。これらのマップの各々は、ルックアップテーブル、グラフ、及び/又は方程式の形態でのデータの集まりを含んでもよい。開示される実施形態では、コントローラ26は、マップを参照し、構造体12の所望のサイズ、形状、及び/又は輪郭を作り出すために必要なヘッド16の動きを決定し、支持体14、硬化エンハンサー(1つ以上)18、及びヘッド16の他の構成要素の操作を応答的に調整するように特別にプログラムされてもよい。
【0194】
システム10において、特に、幾分不透明な補強材(例えば、炭素繊維)とともに使用できる例示的なマトリックスが、
図2及び以下の表T-1、T-2、及びT-3に開示されている。
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
V1.1の2つのバッチのバルクについて、二重結合変換をFTIR(フーリエ変換赤外)分光法によって追跡調査した。
図2は、第1バッチ及び第2バッチについての変換率を示す。試験は、10mW/cm
2 405nm LEDライトの下で5分間行なった。反応速度にほとんど差はないように見える。325~425nmの波長を有するLED光を代わりに利用することもできることに留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0199】
開示されたシステム及びマトリックスは、任意の所望の断面サイズ、形状、長さ、密度、及び/又は強度を有する複合材料構造体を連続的に製造するために使用することができる。複合材料構造体は、それぞれが共通のマトリックスでコーティングされた、同じ又は異なるタイプ、直径、形状、構造及び構成の任意の数の異なる補強材を含むことができる。以下、システム10の動作について詳細に説明する。
【0200】
製造イベントの開始時に、所望の構造体12に関する情報をシステム10(例えば、支持体14及び/又はヘッド16の動作を調節する役割を担うコントローラ26に)にロードすることができる。この情報は、特に、サイズ(例えば、直径、壁厚、長さなど)、形状、輪郭(例えば、軌跡)、表面特徴(例えば、リッジのサイズ、位置、厚さ、長さ;フランジのサイズ、位置、厚さ、長さなど)及び仕上げ、接続形状(例えば、カプラ、ティー、スプライスの位置及びサイズなど)、位置特異的マトリックス規定、位置特異的補強規定、圧縮要件、硬化要件などであることができる。この情報は、必要に応じて、代替的に又は追加的に、製造イベント中に異なる時間及び/又は連続的にシステム10にロードされてもよいことに留意されたい。
【0201】
コンポーネント情報に基づいて、1つ又は複数の異なる補強材及び開示されたマトリックスが、選択的にヘッド16にロードされてもよい。例えば、補強材はクリール(例えば、内部ヘッドマウントクリール及び/又は外部オフボードクリール-両方とも図示せず)に装填されてもよく、ヘッド16にマトリックスを供給してもよい。補強材(1種以上)は、次に、製造イベントの開始前に、ヘッド16に通されてもよい。補強材は、ヘッド16の内部でマトリックスで濡らされ、所望の方式で吐出させることができる(例えば、ヘッド16から引っ張られ、及び/又は押し出される)。
【0202】
次いで、ヘッド16は、コントローラ26の規制下で支持体14によって移動され、マトリックスで濡れた補強材が対応するアンカーポイント20に対して又はその上に配置されるようにしてもよい。次に、硬化エンハンサー(1つ以上)18を選択的に活性化して、マトリックスをエネルギーに曝露し、それによって、補強材を取り囲んでいるマトリックスの硬化を引き起こし、補強材をアンカーポイント20に結合させることができる。その後、ヘッド16を任意の軌道で動かして、濡れた補強材をヘッド16から既存の表面及び/又は自由空間に引き込み、構造体12を形成することができる。
【0203】
一実施形態において、硬化性組成物から製造された硬化した複合材料物品(いかなる補強材も存在しない場合)は、以下の物理的特性を有する。
130℃より大きいTg
1.4GPa~2GPaの曲げ弾性率。
6.8MPa~9.6MPaの引張強さ;及び
34MPa~69MPaの曲げ強さ。
【0204】
別の実施形態では、Tgは150℃より高く、曲げ弾性率は1.7GPaを超え、引張強さは7.3MPaを超え、曲げ強さは45MPaを超える。
【0205】
実施例2.AMOC濃度を変化させることの効果
ピンニング試験:ピンニング試験は、繊維を樹脂で濡らし、花崗岩スラブ上に敷き詰めた。余分な樹脂はスキージで除去した。繊維を、LEDの下で、特定の速度のコンベアシステム上で硬化させた。繊維の第2のストランドを濡らし、最初の硬化した繊維の上に、重なりが一定で約70mmになるように敷き詰めた。重なり合った繊維を、次に、前と同様にLEDの下で硬化させた。最初に、繊維をぐいと引っ張って引き離して繊維が保持されるかどうか、あるいはどれくらい強く引っ張れば引き離されるかを定性的に観察する試験を行った。さらに定量的な試験として、この重なり合った繊維を材料試験機で一定速度(150mm/min)で既知の力で引っ張った。
【0206】
硬化条件:CC3Dから提供されたLEDを使用し、花崗岩スラブの上にある繊維が、コンベアシステムによって制御された速度でLEDの下を移動できるような装置を構築した。スポットサイズが小さいため、強度を測定することはできなかった。「良好」と「非常に良好」という指標は、ピンニング試験で硬化したストランドがどの程度一緒に留まっているかを定性的に測定したものである。「良好」の場合、ストランドは手で分離することができたが、力が必要であった。「非常に良好」の場合、数回引っ張ると分離するか、あるいは分離しなかった。
【0207】
表4は、表5のピンニング試験で使用した2種類の配合物を特定したものである。表6は、配合の一般的な説明である。さらに、表7は、40質量%のACMOが良好な結果であることを示している。
【0208】
30質量%及び40質量%のACMOを有する配合物は、両方とも良好な結果を示した。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
実施例3. Tg>200℃の例示的な硬化性組成物
50% ACMO
35% SR833S(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)
15% SR368(イソシアヌレートトリアクリレート)
0.5% Omnirad 819(ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO))
【0214】
この組成物は、反りが少なく(目視による)、25℃で3ヶ月以上の安定性を示した。反りの評価のために、15~20の層を、積層して、コンベアを用いて一度に硬化させた。部品の長さは約12インチ(30.48cm)であった。花崗岩スラブから取り外し、部品を反りかえり可能にした。片方の端を押し下げると、もう片方が持ち上がる。この浮き上がりの尺度を、様々な配合物で比較した。
【0215】
実施例4. 様々なアクリレート/アクリルアミドに対する3要件分析の適用
様々な(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドを、3要件分析の結果に基づいて、本発明の硬化性組成物に含めることについて試験した。トリプルプラス(+++)を示した化合物のみを、速いモノマー、すなわち高速硬化時間を示すモノマーとして使用することを考慮した。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
実施例5
表9中の項目は、本開示に記載される本発明での使用に適していると予想される例示的な硬化性組成物を表す。組成物A~Kの各成分(1、2、3及び4)について示した質量%は、その特定の組成物の特定の実施形態におけるその成分の量を表し、他の実施形態に適しているであろう他の質量%を除外することは意図していない。
【0222】
【国際調査報告】