(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】プリズム-PET検出器モジュールを有する高分解能および高感度PETスキャナ
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20230329BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G01T1/161 A
G01T1/161 C
G01T1/20 G
G01T1/20 C
G01T1/20 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550825
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 US2021019463
(87)【国際公開番号】W WO2021173708
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ピーターセン
(72)【発明者】
【氏名】アミール・エイチ・ゴールダン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ラベラ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・ホーワンスキー
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB04
2G188BB07
2G188CC12
2G188CC23
2G188FF07
2G188FF16
2G188FF30
4C188EE02
4C188FF07
4C188GG03
4C188GG19
4C188JJ05
4C188JJ23
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK35
(57)【要約】
本開示は、陽電子放出トモグラフィ(PET)画像を取得するためのPETスキャナ(デバイス)およびPET画像を生成するためのシステムに関する。本開示は、1つまたは複数の移動可能部分を有してもよいデバイスについて説明する。デバイスは、上部と下部とを備えてもよい。上部と下部とは患者用のキャビティを画定する。上部または下部の少なくとも一方は移動可能であってもよい。上部および下部はそれぞれ、キャップおよびウイングを備える。キャップおよび/またはウイングの少なくとも1つは、1つまたは複数の検出モジュールを備えてもよい。ウイングはまた、対応するキャップに対して移動してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部と下部とを備えているデバイスであって、
前記上部が、
上部の第1のウイングと、
前記上部の第1のウイングに動作可能に接続された上部キャップと、
前記上部キャップに動作可能に接続された上部の第2のウイングと、
を備え、
前記下部が、
下部の第1のウイングと、
前記下部の第1のウイングに動作可能に接続された下部キャップと、
前記下部キャップに動作可能に接続された下部の第2のウイングと、
を備え、
前記上部と前記下部とがキャビティを画定し、前記上部または前記下部の少なくとも一方が移動可能であり、前記上部の第1のウイング、前記上部キャップ、前記上部の第2のウイング、前記下部の第1のウイング、前記下部キャップ、および前記下部の第2のウイングのうちの少なくとも1つが1つまたは複数の検出モジュールを備えるデバイス。
【請求項2】
前記上部は前記下部に対して移動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記キャビティに挿入すべき患者の少なくとも1つの被検対象の測定値および決定された臨床用途に基づいて前記上部キャップの位置が特定される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記上部の第1のウイングは、ヒンジを介して前記上部キャップに動作可能に接続され、前記上部の第1のウイングは回転可能であり、前記上部の第2のウイングはヒンジを介して前記上部キャップに動作可能に接続され、前記上部の第2のウイングは回転可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記下部の第1のウイングは、ヒンジを介して前記下部キャップに動作可能に接続され、前記下部の第1のウイングは回転可能であり、前記下部の第2のウイングはヒンジを介して前記下部キャップに動作可能に接続され、前記下部の第2のウイングは回転可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
各回転角度が、前記キャビティに挿入すべき患者の少なくとも1つの被検対象の測定値および決定された臨床用途に基づいて決定される、請求項4または5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記臨床用途は、脳スキャンおよび全身スキャンからなる群から選択される、請求項3または6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記臨床用途は脳スキャンであり、前記少なくとも1つの被検対象は、患者の頭部の測定値である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記臨床用途は全身スキャンであり、前記少なくとも1つの被検対象は、胸部厚径および前腕間幅である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記1つまたは複数の検出モジュールは、
複数のシンチレータ結晶を備えるシンチレータアレイと、
前記シンチレータアレイの底端部上に設けられた複数の検出器と、
前記シンチレータアレイの頂端部上に設けられた複数のプリズマトイドと、
を備え、
前記複数のプリズマトイドの各プリズマトイドは、前記シンチレータアレイのシンチレータ結晶の頂端部間において粒子の方向を変更するように構成され、
前記シンチレータアレイのシンチレータ結晶の第1の群の底端部は、粒子を前記複数の検出器の第1の検出器に向けるように構成され、
前記シンチレータアレイのシンチレータ結晶の第2の群の底端部は、前記第1の検出器に実質的に隣接する第2の検出器に粒子を向けるように構成され、
前記少なくとも1つの粒子検出デバイスの各々の前記複数のプリズマトイドは、前記キャビティの方へ向けられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは第1の辺部と第2の辺部とをさらに備え、前記第1の辺部または前記第2の辺部の少なくとも1つは、1つまたは複数の検出モジュールを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の辺部と前記第2の辺部とは、互いに接近し互いに離れるように移動可能であり、前記第1の辺部および前記第2の辺部は、挿入されたときに前記デバイスが患者を実質的に囲むように前記上部と前記下部との間を移動するように構成される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
請求項2から12のいずれか一項に記載のデバイスを備える、陽電子放出トモグラフィ(PET)画像を取得するためのPETシステムであって、前記上部キャップの位置を制御するように構成されたプロセッサをさらに備えるシステム。
【請求項14】
請求項2から12のいずれか一項に記載のデバイスを備える、陽電子放出トモグラフィ(PET)画像を取得するためのPETシステムであって、前記上部キャップの各角度および位置を制御するように構成されたプロセッサをさらに備えるシステム。
【請求項15】
前記上部キャップの前記位置は、複数の事前に設定された位置から選択される、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、胸部厚径または頭囲の測定値に基づいて前記複数の事前に設定された位置から前記位置を選択するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
各角度は、複数の事前に設定された角度から選択される、請求項14から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
各角度は、前腕間幅に基づいて選択される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記上部キャップについての利用可能な位置および/または角度ならびに被検対象の関連する測定値を含むテーブルを有するメモリをさらに備える、請求項13から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記位置および/または角度は、前記テーブルおよび前記キャビティに挿入すべき患者の被検対象の実際の測定値を使用して、前記実際の測定値を前記テーブル内の前記被検対象の前記関連する測定値と比較することによって選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記テーブルは、前記上部キャップおよび/または角度用の利用可能な位置に関連するシステム行列をさらに含む、請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサは、画像再構成に使用される選択された位置および/または角度に関連する前記システム行列を選択するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記1つまたは複数の検出モジュールと動作可能に通信し、前記プロセッサは、3次元(3D)ガンマ線局在化を実行するように構成された教師付き機械学習アルゴリズムを処理するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサは、相互作用位置(DOI)情報を使用してコンプトン散乱回復を実行することによってコンプトン散乱に起因する同時計数線(LOR)の位置ずれを補正するようにさらに構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
上部と下部とを備えるデバイスであって、
前記上部は、前記下部に回転可能に接続され、前記上部と前記下部とは、1つまたは複数の検出モジュールを備え、前記上部と前記下部とは、閉じられたときに、患者および患者支持体用に構成されたキャビティを形成し、デバイスを回転させて開いたときに、前記患者は前記デバイスに挿入可能であるデバイス。
【請求項26】
前記上部は、
上部の第1のウイングと、
前記上部の第1のウイングに動作可能に接続された上部キャップと、
前記上部キャップに動作可能に接続された上部の第2のウイングと、
を備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記上部の第1のウイングおよび前記上部の第2のウイングの各々が、前記上部キャップに回転可能に接続される、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
陽電子放出トモグラフィ(PET)スキャンを実行する方法であって、
請求項1に記載のデバイスが患者に一致する形状を有するように前記キャビティに挿入すべき前記患者の少なくとも1つの被検対象の実際の測定値に基づいて前記上部キャップの位置および/または少なくとも1つのウイングの角度を決定するステップと、
前記決定に基づいて請求項1に記載のデバイスの少なくとも一部を移動させるステップであって、前記デバイスの前記少なくとも一部が、前記上部キャップに対して前記上部の第1のウイングを移動させることと、前記上部キャップに対して前記上部の第2のウイングを移動させることと、前記下部キャップに対して前記下部の第1のウイングを移動させることと、前記下部キャップに対して前記下部の第2のウイングを移動させることと、前記下部キャップに対して前記上部キャップを移動させることとからなる群から選択される、ステップと、
前記決定された位置に基づいて画像再構成に使用されるシステム行列を選択するステップと、
PETスキャンを取得するステップと、
前記PETスキャンおよび前記システム行列からの情報に基づいて画像を生成するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年2月24日に出願された米国仮出願第62/980,591号および2021年1月15日に出願された米国仮出願第63/138,023号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して放射線イメージングの分野に関し、詳細には陽電子放出断層撮影(PET)に関する。
【背景技術】
【0003】
PETによるイメージングは、主としてがんおよび精神神経疾患における診断、治療選択、治療監視、および研究に使用される有力な技法である。PETは、その高い分子特異性、定量的性質、および臨床利用可能性にもかかわらず、主として空間分解能が比較的不十分であり、現在3mm~6mm程度であることに起因して有力な分子イメージングモダリティとしての潜在性を十分に実現できていない。この種の空間分解能では、現在のデバイスは、病因および病態生理に関連する小結節ならびに多くのヒトおよび齧歯類の脳領域において目標密度をおそらく測定することができない。
【0004】
長いシンチレータ結晶についての視差エラー(同時計数線の位置ずれ)を軽減するために深度符号化PET検出器モジュールが開発されている。これによって、検出器リング当たりの構成要素コストを削減し、感度を高めるために大きい立体角カバレージを有し、断面積の小さい結晶を使用するときに空間分解能に対する消滅ガンマ線非共線性の寄与を低減する、小直径PETリングが実現可能になる。さらに、相互作用位置(DOI)情報を使用して長い結晶における光学光子輸送の逆畳込みを行うことができ、したがって、時間分解能が向上する。デュアルエンド読出しに基づく深度符号化検出器が実現する最良の連続DOI分解能は<2mmである。
【0005】
デュアルエンドDOI読出し検出器を使用するマンモグラフィ専用クリアPEMなどの高分解能PETシステムが開発されているが、このようなシステムは、標準的なシングルエンド読出しPETスキャナと比較して読出し電子機器の数が多いことに起因して非常にコストがかかり市販化することが困難である。このような検出器の最近開発された高分解能変形例は、エネルギー分解能および時間分解能が比較的不十分であることを示す。代替シングルエンド読出し検出器モジュールが提案されているが、すべてのこれらの構成において、深度符号化、コスト、シンチレータ対読出し結合比、結晶同定精度、エネルギー分解能、および時間分解能のトレードオフが存在する。このようなトレードオフを軽減するには、複数の画素を横切って下方に移動するシンチレーション光子の共有を最低限に抑え、良好な時間分解能を保持するために、結晶アレイが中間ガラスライトガイドなしでシリコン光電子増倍管(SiPM)画素に直接結合される、シングルエンド読出しが可能な深度符号化検出器モジュールが適切である。さらに、上方に移動する光子は、タイミング情報に寄与しないので、良好なエネルギー分解能およびDOI分解能を保持し、デュアルエンド深度符号化読出し検出器の挙動を模倣するために、このような光子の経路を180°屈曲させることによって直近の近傍SiPMに向かうように方向を変更すべきである。
【0006】
したがって、実際的で費用効果の高い高分解能飛行時間型(TOF)PETスキャナを開発するとともに、シングルエンド読出しを使用して連続DOI局在化を実現するために、一方の側でSiPM画素に4対1の割合で結合され反対側で一様なガラスライトガイドに結合された非研磨多結晶シンチレータアレイからなる検出器モジュールが検討されている。Frazaoらの米国特許第10,203,419号を参照されたい。米国特許第10,203,419号の内容は参照により本明細書に組み込まれている。これらの検出器モジュールでは、それぞれ1.53×1.53×15mm3結晶および3×3mm2SiPM画素を使用して9%のエネルギーおよびDOI分解能ならびに3mmの半値全幅(FWHM)を実現するために結晶同定にエネルギー加重平均法が利用される。しかし、これらのアレイは、光共有近傍SiPMがないことに起因して縁部および角部に沿った結晶同定が不十分であり、縁部および角部の画素はそれぞれ、4×4SiPM読出しチップの75%および8×8SiPM読出しチップの44%を含むのでこの問題に対処しなければならない。さらに、一様なガラスライトガイドを使用すると、上方に移動する多数の光子が反射されて一次柱に戻り、残りの光子がガウス強度分布によって近傍SiPM間で等方的に共有されるので結晶間光共有が不十分になる。等方的光共有に関する問題は、多くのSiPMにわたって低強度信号が分散することであり、SiPMの完全性が暗計数によって顕著な影響を受け、その結果エネルギー分解能およびDOI分解能が低下する。
【0007】
さらに、DOI分解能を向上させるために他のPET検出器が作製されているが、このような検出器は、剛性の高い円筒形状を必要とし、そのような形状は、ヒトの体における任意の部分の上方を延びるのに十分な大きさの一定の直径を有さなければならない。それによって、読出しが幾何学的アーチファクトを受ける。
【0008】
さらに、現代のPETスキャナの形状は、技術的制限によって顕著な影響を受ける。具体的には、費用効果の高いDOI対応検出器モジュールがないことに起因して、一定の円筒形状および非常に大きいリング直径を有するPETスキャナが作製される。その結果、スキャナは、より体が小さい小児の患者に与えられる分解能および感度を犠牲にして最も体の大きい患者を収容するように設計しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第10,203,419号
【特許文献2】米国特許出願第16/899,636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上部と下部とを備えるデバイスが開示される。上部は、上部キャップと上部ウイングとを備えてもよい。上部キャップは、上部ウイングに動作可能に接続されてもよい。上部ウイングの少なくとも1つは、第1の面に動作可能に接続されてもよく、上部ウイングの少なくとも1つは、第2の面に動作可能に接続されてもよい。第2の面は第1の面の反対側であってもよい。下部は、下部キャップと下部ウイングとを備えてもよい。下部キャップは、下部ウイングに動作可能に接続されてもよい。下部ウイングの少なくとも1つは、第1の面に動作可能に接続されてもよく、下部ウイングの少なくとも1つは、第2の面に動作可能に接続されてもよい。第2の面は第1の面の反対側であってもよい。上部と下部はキャビティを画定する。上部または下部の少なくとも一方は移動可能であってもよい。キャップおよび/またはウイングの少なくとも1つは、1つまたは複数の検出モジュールを備える。
【0011】
本開示の一態様では、上部は下部に対して移動可能である。
【0012】
本開示の一態様では、キャビティに挿入すべき患者の少なくとも1つの被検対象の測定値および決定された臨床用途に基づいて上部キャップの位置が特定される。
【0013】
本開示の一態様において、上部ウイングおよび/または下部ウイングの一方または両方はそれぞれ、少なくとも一方のウイングが回転可能になるようにヒンジを介することなどによって動作可能にキャップに接続されてもよい。回転角度は、キャビティに挿入すべき患者の少なくとも1つの被検対象の測定値および決定された臨床用途に基づいて決定されてもよい。
【0014】
本開示の一態様では、臨床用途は、脳スキャンまたは全身スキャンであってもよい。
【0015】
本開示の一態様では、少なくとも1つの被検対象は、患者の頭部、胸部厚径、および/または前腕間幅のうちの1つまたは複数であってもよい。
【0016】
本開示の一態様では、検出器モジュールは、複数のシンチレータ結晶を備えるシンチレータアレイと、シンチレータアレイの底端部上に設けられた複数の検出器と、シンチレータアレイの頂端部上に設けられた複数のプリズマトイドとを備える。各プリズマトイドは、シンチレータアレイのシンチレータ結晶の頂端部間において粒子の方向を変更するように構成されてもよい。シンチレータアレイのシンチレータ結晶の第1の群の底端部は、粒子を複数の検出器の第1の検出器に向けるように構成されてもよい。さらに、シンチレータ結晶の第2の群の底端部は、第1の検出器に実質的に隣接する第2の検出器に粒子を向けるように構成されてもよい。
【0017】
本開示の一態様では、デバイスは辺部をさらに含んでもよい。辺部のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の検出モジュールを備えてもよい。
【0018】
本開示の一態様では、辺部は移動可能であってもよい。本開示の一態様では、辺部は、デバイスが、挿入されたときに患者を実質的に囲むように、上部と下部との間を移動してもよい。
【0019】
陽電子放出トモグラフィ(PET)画像を取得するためのPETシステムも開示される。PETシステムは、上部キャップもしくは下部キャップの位置をおよび/またはウイングの角度のそれぞれを制御するためのプロセッサを含んでもよい。
【0020】
本開示の一態様では、上部キャップまたは下部キャップの位置は、複数の事前に設定された位置および/または角度のうちの1つであってもよい。
【0021】
本開示の一態様では、位置および/または角度は、胸部厚径、頭囲、および/または前腕間幅のうちの1つまたは複数などの測定値に基づいてプロセッサによって選択されてもよい。
【0022】
本開示の一態様では、システムは、被検対象の利用可能な位置および/または角度ならびに関連する測定値を含む1つまたは複数のテーブルを有するメモリをさらに備える。
【0023】
本開示の一態様では、1つまたは複数のテーブルは、患者の1つまたは複数の被検対象の実際の測定値に基づいて位置および/または角度を選択するために使用されてもよい。
【0024】
本開示の一態様では、1つまたは複数のテーブルは、上部キャップの利用可能な位置および/または角度に関連するシステム行列をさらに備える。プロセッサは、画像再構成において使用される選択された位置および/または角度に関連するシステム行列を選択してもよい。
【0025】
本開示の一態様では、プロセッサは、検出モジュールと動作可能に通信してもよい。プロセッサは、三次元(3D)ガンマ線局在化を実行するように構成された複数の教師付き機械学習アルゴリズムを処理してもよい。プロセッサは、相互作用位置(DOI)情報を使用してコンプトン散乱回復を実行することによってコンプトン散乱に起因する同時計数線(LOR)の位置ずれを補正してもよい。
【0026】
本開示の他の態様では、デバイスは、上部と下部とを備えてもよく、上部は、下部に回転可能に接続され、上部と下部とは、1つまたは複数の検出モジュールを備える。上部と下部とは、閉じられたときに、患者および患者支持体用のキャビティを形成してもよい。デバイスを回転させて開いたときに、患者をデバイスに挿入してもよい。
【0027】
本開示の一態様では、上部は、それぞれ上部キャップに動作可能に接続されたウイングを備えてもよい。ウイングは、上部キャップに回転可能に接続されてもよい。
【0028】
本開示の他の態様では、陽電子放出トモグラフィ(PET)スキャンを実行する方法が開示される。この方法は、デバイスのキャビティに挿入すべき患者の少なくとも1つの被検対象の実際の測定値に基づいてキャップの位置および/または少なくとも1つのウイングの角度を決定するステップと、少なくとも1つのウイングを移動させならびに/または上部キャップおよび/もしくは下部キャップを移動させるステップと、決定された位置に基づいて画像再構成に使用されるシステム行列を選択するステップと、PETスキャンを取得するステップと、PETスキャンおよびシステム行列からの情報に基づいて画像を生成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】本開示の態様によるPETスキャナの形状を示す図である。キャップの横断長a
capおよびウイングの横断長a
wing、キャップに対するウイングの回転角度q、各キャップと中心線との間の距離h
capを示す横断図であり、ここで、a
capおよびa
wingは、検出器モジュールによって覆われたプレートの横断長を指し、オレンジスターは、立体角を算出するために使用される等方点源を表す。
【
図1b】本開示の態様によるPETスキャナの形状を示す図である。各プレートの長手方向長さbを示す、前頭面の投影図である。
【
図2】点源(オレンジスター)に対する汎用プレートの立体角カバレージを算出するために使用される幾何学的パラメータの図である。
【
図3】本開示の態様によるスキャナの相当半径R
Arcを算出するために使用される用語を示す横断図である。ウイングプレートの角度範囲は、φ
2・φ
1によって与えられ、キャッププレートの角度範囲は、π-2Φによって与えられる。
【
図4】最新のSiemens(登録商標)Biograph Vision(登録商標)Scannerの現在の形状に挿入された、本開示の態様によるPETスキャナの形状の横断スケール表現である。
【
図5】本開示の態様によるPETシステムの一部の図である。
【
図6a】本開示の態様による検出器モジュールの一例の図である。
【
図6b】本開示の態様による2つの互いに隣接する検出器モジュールを示すプレートの一部の図である。
【
図6c】本開示の態様によるキャップまたはウイング上の検出器モジュールの行列を示す図である。
【
図7】本開示の態様による第1の位置における
図5のPETスキャナを示す図である。
【
図8】本開示の態様による第2の位置における
図5のPETスキャナを示す図である。
【
図9】本開示の他の態様によるPETスキャナのキャップおよびウイングを示す横断図である。
【
図10a】ある位置における本開示の他の態様によるPETシステムの一部の図である。
【
図10b】異なる位置における本開示の他の態様によるPETシステムの一部の図である。
【
図11】本開示の他の態様によるPETシステムの一部の図である。
【
図12a】本開示の他の態様によるPETシステムの一部の図である。
【
図12b】本開示の態様によるPETスキャナの斜視図である。
【
図13】本開示の態様による方法のフローチャートである。
【
図14】本開示の態様によるウイング用のモータ駆動ヒンジを示す図である。
【
図15】本開示の態様によるPETシステムのブロック図である。
【
図16a】本開示の態様によるルックアップテーブルの一例の図である。
【
図16b】本開示の態様によるルックアップテーブルの一例の図である。
【
図18】本開示の態様によるPETスキャナの特徴とBiograph Vision(登録商標)のPETスキャナとの特徴の対比を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の態様についての以下の詳細な説明では添付の図面を参照する。本開示の態様を明確に理解して不要な詳細によって本開示を曖昧にするのを回避するために、当技術分野において公知の関連する機能および構成に関する説明を省略する。
【0031】
本明細書の説明および特許請求の範囲では、「約」という用語は、変更によってプロセスまたはデバイスに不適合性が生じない限り、列挙された値がいくらか変更されることがあることを示す。たとえば、いくつかの要素では、「約」という用語は±0.1%のばらつきを指すことができ、他の要素では、「約」という用語は±1%もしくは±10%のばらつき、またはその範囲内の任意の点を指すことができる。
【0032】
本明細書では、「実質的に」または「実質的な」という用語は、ある動作、特性、属性、状態、構造、項目、または結果が完全にないかまたはほぼ完全にないことを指すために否定的な意味合いにおいて使用されるときにも同様に適用することができる。たとえば、「実質的に」平坦な表面は、完全に平坦であるか、または効果が完全に平坦である場合と同じになるようにほぼ平坦である。
【0033】
本明細書では、「a」、「an」、および「the」などの用語は、単一のエンティティをのみを指すことを目的としたものではなく、例示のため特定の例が使用される場合がある一般的な種類を含む。
【0034】
本明細書では、単数形で定義される用語は、複数形で定義されるそれらの用語を含むことが意図され、逆についても同様である。
【0035】
本明細書における「一態様(one aspect)」、「いくつかの態様(certain aspects、some aspects」、または「態様(an aspect)」の参照は、説明する態様が特定の特徴または特性を含み得ることを示すが、あらゆる態様が必ずしも特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らない。さらに、そのような句は必ずしも同じ態様を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性についてある態様に関連して説明するとき、明示的に説明しているか否かに関わらずそのような特徴、構造、または特性に対して他の態様に関連して影響を与えることは当業者の知識の範囲内であると考えられる。以下の説明の都合上、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」という用語、およびそれらの派生語は、床に対するスキャナおよび図中のスキャナの向きに関係する。
【0036】
本明細書における任意の数値範囲に対する参照は、その範囲によって包含される各数値(小数および整数を含む)を明示的に含む。一例として、本明細書における「少なくとも50」または「少なくとも約50」の範囲の参照は、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60などの整数および50.1、50.2、50.3、50.4、50.5、50.6、50.7、50.8、50.9などの小数を含む。さらなる例において、本明細書における「50未満」または「約50未満」の範囲の参照は、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40などの整数および49.9、49.8、49.7、49.6、49.5、49.4、49.3、49.2、49.1、49.0などの小数を含む。
【0037】
図1aおよび
図1bは、本開示の態様によるPETスキャナ100の形状を示す図である。スキャナ100はPETシステムの一構成要素とすることができる。PETシステムは、図に図示されていない追加の構成要素をさらに備えてもよい。本明細書ではいくつかの追加の構成要素についてさらに詳しく説明する。
【0038】
図1aは、左上ウイング2の横断長awing、上部キャップ4 の横断長a
cap、および右上ウイング6の横断長を示す横断図である。左上ウイング2、上部キャップ4、および右上ウイング6は集合的に上部を形成する。本開示の一態様では、左上ウイング2は上部キャップ4に回転可能に接続される。左上ウイング2は、ヒンジ3を介して上部キャップ4に接続されてもよく、ヒンジ3は、左上ウイング2と上部キャップ4との間の相対回転を可能にする任意の適切な構造とすることができる。本開示の一態様では、右上ウイング6を上部キャップ4に回転可能に接続してもよい。たとえば、右上ウイングは、ヒンジ3を介して上部キャップ4に接続されてもよく、ヒンジ3は、右上ウイング6と上部キャップ4との間の相対回転を可能にする任意の適切な構造とすることができる。
【0039】
図1aには、左下ウイング8、下部キャップ10、および右下ウイング12の横断図も示されている。左下ウイング8、下部キャップ10、および右下ウイング12は集合的に下部を形成する。本開示の一態様では、左下ウイング8を下部キャップ10に回転可能に接続してもよい。たとえば、左下ウイング8は、ヒンジ3を介してキャップに接続されてもよく、ヒンジ3は、左下ウイング8と下部キャップ10との間の相対回転を可能にする任意の適切な構造とすることができる。本開示の一態様では、右下ウイング12を下部キャップ10に回転可能に接続してもよい。たとえば、右下ウイング12は、ヒンジ3を介して上部キャップ4に接続されてもよく、ヒンジ3は、右下ウイング12と下部キャップ10との間の相対回転を可能にする任意の適切な構造とすることができる。回転可能に接続されることは、支持体またはカバー(可動上部支持体505と固定下部支持体510を含む)を介することなどの直接接続または間接的接続、たとえば介在を含む。回転角度は水平に対する角度であってもよい。他の態様では、角度は余角であってもよい。回転可能に接続されることは動作可能に接続されることの一例である。
【0040】
図を見るとわかるように、上部キャップ4は中心線14から距離hcapに位置する。中心線14は、上部キャップ4からも下部キャップ10からも実質的に等距離に位置する。オレンジスター16は、立体角を算出するために使用される等方点源を表しており、また長手方向軸も表す。
【0041】
本開示の一態様では、
図1aに示されているスキャナ100は5自由度を有し、それによって、スキャナ100が、哺乳類の患者の形状および/またはその哺乳類の患者の特定の器官/領域にほぼ一致することが可能になる。哺乳類には、限定はしないが、霊長類(たとえば、ヒトおよび非ヒト霊長類)、実験動物(たとえば、マウス、ラットなどの齧歯類)、家畜(牛、豚、羊、馬など)、およびペット(犬、猫など)を含めることができる。5自由度は、(1)上部キャップ4に対する左上ウイング2の回転、(2)上部キャップ4に対する右上ウイング6の回転、(3)下部キャップ10に対する左下ウイング8の回転、(4)下部キャップ10に対する右下ウイング12の回転、および(5)上部キャップ4および/または下部キャップ10の互いに近づく方向または離れる方向への垂直移動であってもよい。
【0042】
図5は、追加の詳細およびシステムのいくつかの支持体を示す
図1aのスキャナの横断図である。
図5に示すように、上部はまた、可動上部支持体505を備え得る。可動上部支持体505は、上部キャップ4に取り付けられてもよい。本開示の一態様では、上部キャップ4は冷却板またはコールドプレートなどのプレートであってもよい。可動上部支持体505は、上部キャップ4、ならびに上部ウイング2、6およびそれぞれの検出モジュール520を支持することのできる任意の機械的構造であってもよい。
図5は、可動上部支持体505および上部キャップ4(プレート)を互いに取り付けられた別個の要素として示しているが、本開示の他の態様では、上部キャップ4が可動上部支持体505にもなるように上部キャップ4をより厚くしてもよい。本開示の一態様では、PETシステム1550用の配線および回路は、可動上部支持体505上または可動上部支持体505内に組み込まれてもよい。スキャナ100はまた、塔支持体530と1つまたは複数の制御アーム500とを備えてもよい。塔支持体530は円柱構造を有してもよい。制御アーム500は、円柱構造から延びてもよい。塔支持体530および制御アーム500は、可動上部支持体505を支持し、一方、移動を可能にする。
【0043】
本開示の他の態様では、塔支持体530を省略してもよく、スキャナ100が位置する部屋の天井に制御アーム500を直接接続してもよい。本開示の他の態様では、制御アーム500は壁に取り付けられてもよい。
【0044】
制御アーム500は、上部、たとえば上部キャップ4および上部ウイング2、6(および可動上部支持体505)の位置を制御する。
【0045】
本開示の一態様では、制御アーム500は、上部の垂直位置を変更するためにオペレータによって手動で移動させてもよい。本開示の一態様では、制御アーム500は、移動に利用可能な複数の設定位置を有してもよい。たとえば、制御アーム500は、オペレータが制御アームを各点の間を移動させ、その後ラッチしてもよい複数のラッチポイントを有してもよい。本開示の一態様では、制御アーム500は、上部が(可動上部支持体505を介して) 1つまたは複数の取付け具に取り付けられる取付け具を含むレーリングシステムを備えてもよい。レーリングシステムは、複数の開口部を備えてもよく、各開口部は異なる高さを有する。制御アーム500は、ノブまたはピンをさらに備えてもよく、ノブまたはピンは、所定の位置にラッチまたはロックするために開口部に押し込むかまたはねじ込むことができ、あるいは異なる位置に移動できるように開口部から取り外すことができる。
【0046】
本開示の他の態様では、制御アーム500は、任意の位置への移動を可能にしてもよい。たとえば、制御アーム500は、任意の位置にロックされてもよい1つまたは複数の取付け具を含むスライドまたはレーリングシステムを有してもよい。上部(可動上部支持体505を介する)を1つまたは複数の取付け具に取り付けてもよい。設定位置を監視しプロセッサ1500に報告してもよい。
【0047】
本開示の他の態様では、制御アーム500をモータ駆動してもよい。モータは、DCまたはACモータであってもよく、モータコントローラ1515によって制御されてもよい。使用されるモータコントローラ1515の種類は、モータの種類によって決まってもよい。本開示のこの態様によれば、プロセッサ1500は、モータコントローラ1515に位置を複数の事前に設定された位置のうちの1つ(たとえば、hcap)に制御するよう命令してもよい。他の態様では、位置を中心線14と上部キャップ上の検出モジュールの底部との間の距離として定義してもよい。他の態様では、位置を可動上部支持体505と中心線14との間の距離として定義してもよい。本開示の他の態様では、位置を下部キャップと上部キャップとの間の距離または上部キャップ上の検出モジュールの底部と下部キャップ上の検出モジュールの頂部との間の距離として定義してもよい。本開示の他の態様では、位置を可動上部支持体505と固定下部支持体510との間の距離として定義してもよい。
【0048】
本開示の他の態様では、位置が事前に設定されない場合があり、モータ駆動制御アーム500は、第1の高さから第2の高さまで(最大運動範囲)の任意の高さに移動させてもよい。本開示のいくつかの態様では、スキャナ100は、上部の実際の位置をプロセッサ1500に報告するためのエンコーダまたは位置検出器を含んでもよい。
【0049】
図5に示すように、2本の制御アーム500があり、1本は左側に、別の1本は右側に位置する。この構成では、プロセッサ1500は、モータコントローラ1515を制御して両方の制御アーム500の位置を同時に移動させてもよい。同じモータコントローラ1515を両方の制御アーム500に使用してもよい。他の態様では、各制御アーム500はそれ自体のモータコントローラ1515を有してもよい。
【0050】
他の態様では、1本の制御アーム500のみを使用してもよい。制御アーム500を上部キャップ4(可動上部支持体505)の中心に配置してもよい。
【0051】
上述のように、上部ウイング2、6を上部キャップ4(可動上部支持体505)に対して回転させ、ヒンジ3を介して上部キャップ4に接続してもよい。
図5に示すように、上部ウイング2、6の一部、たとえば延在部は、検出モジュール520によって覆われていない。これによって、検出モジュール520によって覆われない点を最低限に抑えつつ、上部ウイング2、6は上部キャップ4に対して移動することが可能になる。延在部は、スキャナの長手方向軸に対してウイング2、6の端部上にのみ存在してよい。
【0052】
本開示の一態様では、ヒンジ3は、スキャナの長手方向軸に対して可動上部支持体505のそれぞれの端部(または端部支持体もしくはカバー)に取り付けられ(それによって、ウイング2、6が上部キャップ4に動作可能に接続され)てもよい。本開示の一態様では、ヒンジ3は、上部キャップ4(および可動上部支持体505)に対して上部ウイング2、6の角度を変更するために手動で作動させてもよい。たとえば、ヒンジ3は、ラッチヒンジであってもよい。それぞれ、ヒンジの一方のプレートを可動上部支持体505に結合し、別の可動プレートを上部ウイング2、6に結合してもよい。ラッチヒンジは、ヒンジを解放/ロックするためのプッシュボタンを有してもよい。この態様では、オペレータは、上部キャップ4に対する上部ウイング2、6の角度を手動で制御してもよい。本開示のいくつかの態様では、上部ウイング2、6の重量をさらに支持するために端部間に追加のヒンジを配置してもよい。本開示の他の態様では、ラッチヒンジは、制御可能な角度を有するバーヒンジであってもよい。それぞれ、バーヒンジの固定部を可動上部支持体505に結合し、可動部を上部ウイング2、6に取り付けてもよい。
【0053】
本開示の他の態様では、ヒンジ3はトルクヒンジであってもよい。
【0054】
開示の他の態様では、ヒンジ3は2つのプレート、すなわち、可動上部支持体505に結合した固定プレート、および上部ウイング2、6に結合した可動プレートを備えてもよい。可動プレートは可動プレートを固定プレートに接続するねじを回すことによって、回転させてもよい。
【0055】
本開示の他の態様では、ヒンジは、
図14に示すようにモータ駆動ヒンジ1400であってもよい。
図14は、可動上部支持体505の端面図を示す。本開示の一態様では、モータ駆動ヒンジ1400は回転段であってもよい。この段の基部を可動上部支持体505のそれぞれの端部に固定してもよい。上部ウイング2、6をそれぞれ、回転段に固定してもよい。回転段が回転すると、上部ウイング2、6が回転する。モータ駆動段は、ニュージャージー州ニュートンのThorlabs, Incから市販されている。モータ駆動段は、マイクロステッピングモータなどのモータを含む。ニュージャージー州ニュートンのThorlabs, Incから市販されているベンチトップステップモータコントローラなどのモータコントローラ1510によって回転段の位置を制御してもよい。本開示の一態様では、プロセッサ1500は、モータコントローラ1510にコマンドを発行し、回転段を複数の事前に設定された角度から特定の角度まで移動させるよう命令してもよい。他の態様では、角度を事前に設定しなくてもよい。ウイングレベルを維持するためにウイングごとの各モータ駆動ヒンジ1400を同時に制御してもよい。本開示の一態様では、モータ駆動ヒンジ1400はエンコーダを含んでもよく、エンコーダは、ウイングの実際の角度を検出してモータコントローラ1510およびプロセッサ1500のうちの1つもしくは複数にフィードバックする。上記と同様に、必要に応じてウイングの重量に応じてそれぞれ、各ウイング(たとえば、上部ウイング2、6)の端部と可動上部支持体505との間に追加のヒンジを配置してもよい。
【0056】
スキャナの下部は固定下部支持体510をさらに備えてもよい。下部キャップ10(プレート)を固定下部支持体510に取り付けてもよい。
【0057】
図5は、固定下部支持体510および下部キャップ10(プレート)を互いに取り付けた別個の要素として示しているが、本開示の他の態様では、下部キャップ10が固定下部支持体510にもなるように下部キャップ10をより厚くしてもよい。本開示の一態様では、PETシステム1550の配線および回路を固定下部支持体510上または固定下部支持体510内に組み込んでもよい。固定下部支持体510は、部屋の床の上に配置される。固定下部支持体510はまた、患者がスキャナ100内に位置するときに患者のベッド515および患者525を支持する。
【0058】
下部ウイング8、12は、下部キャップ10(下部固定支持体510)に対して回転させ、ヒンジ3を介して(同じく下部固定支持体510、たとえば、下部キャップに動作可能に接続された下部ウイング8、12を介して)下部キャップ10に接続してもよい。接続部およびヒンジは上部ウイング2、6について上記で説明したものと同じである。
【0059】
上部と下部とは、患者525用のキャビティ18を形成する。
【0060】
上述のように、スキャナ100の形状は、上部の高さ(上部キャップ4の高さなど)ならびに上部キャップ4に対する上部ウイング2、6の角度および下部キャップ10に対する下部ウイング8、12の角度を調整することによって患者の形状(サイズ)に適応させてもよい。たとえば、
図7に示すように、小柄の患者525A(目標位置)については、上部キャップ4を降ろし、ウイング2、6、8、12を垂直に向かって回転させてもよい。しかしながら、
図8に示すように、大柄の患者525B(目標位置)については、上部キャップ4を持ち上げ、ウイング2、6、8、12を水平に向かって回転させてもよい。上部キャップ4はまた、患者525をスキャナ、たとえばキャビティに挿入するのを可能にするように持ち上げ、その後目標位置に降ろしてもよい。
【0061】
本開示の他の態様では、ウイング2、6を上部キャップ4に対して固定してもよい(固定角度)。本開示のこの態様では、ウイング2、6をコネクタ3Aを介してキャップ4に接続してもよい(
図10aおよび
図10b参照)。
【0062】
図9は、キャップ4、10およびウイング2、6、8、12の横断図である。この図では、図を簡略化するために検出器モジュール520が省略されている。しかしながら、検出器モジュール520は、キャップ4、10およびウイング2、6、8、12の陰影のある部分を取り付ける。陰影のない部分では、キャップ4、10およびウイング2、6、8、12がそれぞれ接続されているところである。本開示の一態様では、キャップ4、10およびウイング2、6、8、12の各々がプレートを含む。本開示の一態様では、キャップ4およびウイング2、6を形成するようにプレートを屈曲させてもよい(キャップ10およびウイング8、12を形成するように別のプレートを屈曲させてもよい)。言い換えれば、キャップ4およびウイング2、6は、一体であり、単一のプレートから形成されてもよい。本開示の他の態様では、ウイング2、6およびキャップ4のプレートを互いに溶接してもよい(同様にキャップ10およびウイング8、12のプレートを互いに溶接してもよい)。本開示の別の態様では、上部と下部とはそれぞれ、(長手方向軸に対して)端部支持体またはカバーを有してもよく、各プレートを(
図12bの例に示されているように)端部支持体またはカバーにねじ込むかまたは取り付けてもよい。本開示の別の態様では、上部は、上部が別個のウイング2、6およびキャップ4を備える代わりに、連続的な弧状プレートを備えてもよい。同様に、下部は連続的な弧状プレートを備えてもよい。本明細書で使用される「動作可能に接続される」という用語は、上記の例のいずれかを指す。固定角度は、
図9では「角度(Angle)」として識別されている。
【0063】
本開示の他の態様では、上部の高さ(相対距離)(上部キャップ4の高さなど)のみを上述のように調整してもよい。たとえば、
図10Aに示すように、上部(上部キャップ4の高さなど)は、患者525を挿入して配置するのを可能にするように上昇させ、その後
図10bに示すように目標位置に下降させて、患者525との一致を最大にしてもよい。
【0064】
他の態様では、スキャナ100は、2つの位置、すなわち、開位置および閉位置のみを有してもよい。開位置の一例は
図10aに示されている。スキャナ100を閉じると、スキャナ100は、横断方向から見て閉じた六角形状を有してもよい(六角キャビティ)。本開示の一態様では、辺長(横断長)は約26cmであってもよい。水平に対するウイング2、6、8、12の角度は約25°から約55°の間であってもよい。他の態様では、角度は約35°から約45°の間であってもよい。本開示の他の態様では、角度は約40°であってもよい。
【0065】
この閉じた形状は、視野を有するキャビティの正中線における水平開口部が約65.8cmであり、中心における垂直開口部が約33.4cmであるときに胸部厚径の95%測定値が約28.2cmであり、前腕間幅が約61.5cmである男性を収容できるように設定されてもよい。
【0066】
他の態様では、スキャナ100はそれぞれ、辺114、116(左辺および右辺)を備えてもよい。辺114、116を支持塔530Aに結合してもよい。辺114、116を支持塔530Aに移動可能に取り付けてもよい。本開示の一態様では、辺114、116を制御アーム500Aを介して取り付けてもよい。制御アーム505Aは、上記の説明と同様であってもよい(手動で移動させるかまたはモータ駆動によって移動させる)。本開示の一態様では、制御アーム505Aは、テレビジョン用の壁取付け具と同様であってもよい。
【0067】
いくつかの態様では、検出モジュール520が患者525を実質的に囲むようにキャビティ18を閉じるために、辺114、116を大柄の患者に使用してもよい。たとえば、大柄の患者の場合、上部を持ち上げ、上部と下部との間に大きい隙間ができるようにウイング2、6、8、12を水平に向かって回転させてもよい。隙間によってカバレージを低下させてもよい。本開示のこの態様では、辺114、116を実質的に360°のカバレージを実現するように隙間内に配置してもよい。
図11に示すように、辺114、116を患者に隣接するように移動させてもよい。スキャンにおいて辺114、116を使用しないときは、辺114、116を支持塔530Aから離れるように(支持塔530Aの方へ)移動させてもよい。本開示の一態様では、辺114、116は、2つの位置、すなわち係合位置または離脱位置のみを有してもよい。本開示の他の態様では、辺114、116を必要に応じて任意の事前に設定された位置、たとえば目標位置へ移動させてもよい。他の態様では、位置は事前に設定されなくてもよい。
【0068】
本開示の他の態様では、スキャナ100の上部を下部に対して回転させてもよい。上部をヒンジ1200を介して下部に回転可能に接続してもよい。ヒンジ1200を可動上部支持体505Aのそれぞれの端部(
図12bの1220に示すような辺カバーまたは支持体)に接続してもよい。ヒンジ1200は肘コネクタまたはジョイントであってもよい。いくつかの態様では、ヒンジ1200は、一方の端部がねじなどの接続手段を介して固定下部支持体510Aに接続され、別の端部が可動上部支持体505Aに接続されたプラスチックジョイントであってもよい。
【0069】
本開示の一態様では、プレート(キャップ4、10およびウイング2、4、8、12)をカバーまたは支持体1220にねじ込んでもよい。プレート(キャップ4、10およびウイング2、4、8、12)は、
図12bでは点線によって識別されている。
【0070】
上部をショックおよびピストン1210を介して下部に接続してもよい。上部を下部に対して開位置などの固定位置で回転したままに維持するためにショックおよびピストン1210を使用してもよい。
【0071】
ウイング6、12もカバーまたは支持体(前部カバーなど)に取り付けてもよい。同様に、ウイング2、8もカバーまたは支持体(後部カバー(
図12bに示されている)など)に取り付けてもよい。
【0072】
図12aに示すように、上部(可動上部支持体505Aを含む)を逆時計回りに回転させ、それによって、可動上部支持体505Aを実質的に垂直にして患者525をスキャナ100に挿入するのを可能にしてもよく、その後時計回りに
図12aに示す位置まで回転させてもよい。
【0073】
さらに、
図12aに示すように、上部ウイング2、6は、上部キャップ4に対して固定角度を有し、下部ウイング8、12は、下部キャップ10に対して固定角度を有し、コネクタ3Aを介して取り付けられてもよい。しかし、本開示の他の態様では、ウイング2、6、8、12は上記で説明したように回転することが可能であってもよい。本開示の別の態様では、上部は、別個の上部ウイング2、6および上部キャップ4を備える代わりに、連続的な弧状プレートを備えてもよい。同様に、下部は、連続的な弧状プレートを備えてもよい。
【0074】
さらに、
図12aに示すように、ヒンジ1200は左側に位置する。しかし、本開示の他の態様では、ヒンジ1200は、反対側に位置してもよく、回転が逆であってもよく、たとえば、時計回りで開き、逆時計回りで閉じてもよい。
【0075】
左上ウイング2、上部キャップ4、右上ウイング6、左下ウイング8、下部キャップ1010、および右下ウイング12の各々は複数の検出モジュール520を有する。各検出モジュール520は、図において矩形として表されている。
【0076】
任意の深度符号化検出モジュールをDOI情報を提供することができる検出モジュール520として使用してもよい。本開示の一態様では、検出モジュール520は、約511keVの光子を検出し、3次元における光子のシンチレータ結晶との相互作用を局在化することができる。
【0077】
図6aは、本開示の態様に従って使用され得る検出モジュール520の一例を示す。検出モジュール520は、電子コネクタボード(PCB)600と、SiPM画素(SiPMアレイ)605、シンチレータ結晶(シンチレータアレイ)610、およびライトガイド615などの検出要素とを含んでもよい。電子コネクタボード600は、プレート、たとえばキャップ4、10およびウイング2、6、8、12に直接取り付けられてもよい。ライトガイド615は患者525に対向する。したがって、上部では、ライトガイドは下を向き、下部では、ライトガイドは上を向く。本開示の一態様では、各検出モジュール520はそれ自体の電子コネクタボード(PCB)を有する。
【0078】
使用され得る検出モジュール520の一例は、米国特許出願第16/899,636号においてより詳細に説明されており、米国特許出願第16/899,636号の内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。米国特許出願第16/899,636号に記載されているように、検出モジュール520は、少なくとも以下の構成要素、すなわち、複数のシンチレータ結晶610を備えるシンチレータアレイと、シンチレータアレイ(SiPMアレイ605など)の一端に設けられた複数の検出要素と、(ライトガイド615である)シンチレータアレイの他方の端部上に設けられた複数のプリズマトイドとを含んでもよい。複数のプリズマトイドの各プリズマトイドは、シンチレータアレイのシンチレータ結晶の端部間において粒子の方向を変更するように構成される。たとえば、シンチレータアレイにおけるシンチレータ結晶の第1の群の端部は、複数の検出要素のうちの第1の検出要素に粒子を送るように構成され、シンチレータアレイにおけるシンチレータ結晶の第2の群の端部は、第1の検出要素に実質的に隣接する第2の検出要素に粒子を送るように構成される。これらの構成要素の各々は、米国特許出願第16/899,636号においてより詳細に説明されており、米国特許出願第16/899,636号の内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0079】
本開示の一態様では、1つまたは複数の検出モジュールの各検出モジュールにおける複数のプリズマトイドは、図に示すように(
図1a参照)軸16と実質的に同軸のキャビティ18に向けられ、周方向において実質的に左上ウイング2、上部キャップ4、右上ウイング6、左下ウイング8、下部キャップ10、および右下ウイング12によって囲まれる。
【0080】
図6aは、2つの隣接する検出モジュール520を示すプレートの一部を示す。同様の検出プレートをキャップ4、10および/またはウイング2、6、8、12に使用してもよい。各電子コネクタボード600をプレートに直接取り付けてもよい。プレートは、銅管を備えた金属板などのコールドプレートであってもよい。プレートの反対側には、電気読出しボード(PCB)650を取り付けてもよい。本開示の一態様では、同じ電気読出しボード(PCB)650を同じプレート上の検出モジュール520のすべてに使用してもよい。言い換えれば、キャップ4は、1枚の電気読出しボード650を有してもよい。他の態様では、複数の検出モジュールが電気読出しボード(PCB650)を共有する(すべての検出モジュール520のサブセット)ように、各プレートに複数の電気読出しボード(PCB)650を取り付けてもよい。しかし、本開示の他の態様では、各検出モジュール520はそれ自体の専用読出しボード(PCB)を有してもよい。読出しボード650は、ワイヤレスであってもよく、またはプロセッサ1500に配線されてもよい。可動上部支持体505/505Aまたは固定下部支持体510Aなどの支持体があるとき、これらの支持体に読出しボードを取り付けてもよい。プレートを貫通して延びる配線を介して電子コネクタボード600と読出しボード650を電気的に接続してもよい。配線は可撓性のコネクタ内に位置してもよい。
【0081】
図6cは、検出モジュール520の行列670を有するプレートの一例を示す。行列670は、検出モジュール520の2次元アレイであってもよい。アレイ内の検出モジュール520の数は、用途に基づいてもよく、
図6cに示す例に限定されない。図示のように、行列670は、横断方向に8つの検出モジュールを有する。これは、図においてウイング2、6、8、12について示した検出モジュールの数と同様である。
【0082】
図5における例に示すように、キャップ4、10用のプレートは、横断方向においてウイング2、6、8、12よりも多くの検出モジュール520を有する。しかし、本開示は、キャップ4、10内の検出モジュール520の方がウイング2、6、8、12内の検出モジュール520よりも多いことに限定されない。
【0083】
本開示の他の態様では、検出モジュール520をウイング2、6、8、12およびキャップ4、10の各々に取り付ける代わりに、それらのサブセットのみに取り付けてもよい。さらに、他の態様では、検出モジュール520を任意の位置とすることができ、任意の適切なパターンとすることができる。
【0084】
図1bは、スキャナ100の上面図であり、左上ウイング2、上部キャップ4、および右上ウイング6の各々が示されている。この前頭面では、スキャナ100の長手方向長さがbとして示されており、bは任意の適切な長さとして形成することができる。
【0085】
図15は、本開示の態様によるPETシステム1550のいくつかの構成要素を示すブロック図である。システム1550は、プロセッサ1500と、メモリ1505と、検出器520とを備える。プロセッサ1500はFPGAであってもよい。本開示の他の態様では、プロセッサ1500は、マイクロコントローラもしくはマイクロプロセッサまたはCPUもしくはGPUなどの任意の他の処理ハードウェアであってもよい。メモリ1505をプロセッサ1500から分離してもよい(またはそれと一体化してもよい)。たとえば、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサは、限定はしないが、RAM、ROM、および永続記憶装置などの少なくとも1つのデータ記憶デバイスを含む。
【0086】
いくつかの態様では、上部キャップ4とウイング2、6、8、12の両方の動きをモータ駆動する際、システム1550は、ウイング用のモータコントローラ1510と制御アーム500用のモータコントローラとを有してもよい。システム1500は、辺114、116(制御アーム500A)用のモータコントローラを備えてもよい(辺用のモータコントローラは
図15には示されていない)。ウイング2、6、8、および12を固定したときは、ウイング用のモータコントローラ1510を省略してもよい。プロセッサ1500は、検出モジュール520から情報を受信し、メモリ1505に記憶された再構成アルゴリズムを使用して画像を再構成するように構成されてもよい。いくつかの態様では、再構成アルゴリズム内のモジュールおよびシステム行列は、スキャナ100に形状依存してもよい。形状依存情報は、メモリ1505に記憶されてもよい。
【0087】
本開示の一態様では、メモリ1505は1つまたは複数のルックアップテーブルを有してもよい。各ルックアップテーブルは用途固有であってもよい。たとえば、システム1550は、用途として脳スキャンにのみ使用されてもよい。他の態様では、システム1550は全身スキャンに使用されてもよい。脳スキャン用と全身スキャン用に異なるルックアップテーブルが記憶されてもよい。
【0088】
図16aは、本開示の態様による脳スキャン用のルックアップテーブル1650の1つの図を示す。ルックアップテーブル1650は、頭囲を含んでもよい。このような頭囲は患者の一般的な頭囲であってもよい。頭囲は、テーブル1650では、円周が互いに異なるH1およびH2として表されている。たとえば、予期される患者の5パーセンタイル~95パーセンタイルについての頭囲をテーブル1650に含めてもよい。患者に対するより高度の一致についてはより多くの頭囲を有するルックアップテーブル1650を使用してもよい。たとえば、テーブル1650は、5%から95%まで5%ごとの測定値を含んでもよい。他の態様では、テーブル1650は10%ごとの測定値を含んでもよい。テーブル1650はまた、測定値に関連する上部キャップ4についての目標位置を含む。たとえば、頭囲H1の場合、キャップ4についての目標位置はP1であってもよく、一方、頭囲H2の場合、キャップ4についての目標位置はP2であってもよい。テーブルはウイングの位置を含んでもよい。脳スキャンの場合、ウイングが最大角度に設定され、たとえば、各測定値について垂直に近い位置に設定され、ウイングが頭部に最も近い位置に移動し得るように、位置を設定してもよい。
【0089】
いくつかの態様では、テーブル1650は、測定値ごとに形状依存システム行列を含んでもよい。形状依存システム行列は、テーブル1650ではH1についてのSM1およびH2についてのSM2として表されている。したがって、システム行列は、スキャナのそれぞれに異なる幾何学的形状について異なってもよい。
【0090】
いくつかの態様では、テーブル1650は、形状依存正規化パラメータなどの再構成アルゴリズムについての形状依存モジュールを含んでもよい。
【0091】
他の態様では、テーブル1650は、システム行列および形状依存モジュールを含まなくてもよく、システム行列および形状依存モジュールは、形状、たとえばP1およびV1またはP2およびV1....に基づいてリアルタイムに算出されてもよい。
【0092】
同様のルックアップテーブル1660を全身スキャンに使用してもよい。しかし、頭囲の測定の代わりに、患者の他の要素を全身スキャンに使用してもよい(他の測定要素)。たとえば、全身スキャンに関連する1つまたは複数の要素は、胸部厚径および前腕間幅であってもよい。胸部厚径を使用して上部キャップ4の位置を特定してもよく(いくつかの態様では、辺114、116を使用するかどうかを決定してもよく)、前腕間幅を使用して(胸部厚径とともに)ウイング2、6、8、12の位置を特定してもよい。この例では、胸部厚径はB1およびB2(それぞれに異なる測定値)によって表され、前腕間幅はF1およびF2(それぞれに異なる測定値)によって表され、上部キャップの目標位置はPXおよびPYによって表され、ウイングの目標位置はVA-VDによって表される。それぞれに異なるシステム行列はSMW-SMZによって表され、それぞれに異なる形状依存モジュールはMA-MDによって表される。
【0093】
他の態様では、テーブル1660は、システム行列および形状依存モジュールを含まなくてもよく、システム行列および形状依存モジュールは形状に基づいてリアルタイムに算出されてもよい。
【0094】
予期される患者の5パーセンタイル~95パーセンタイルについての胸部厚径および前腕間幅をテーブル1660に含めもよい。患者に対するより高度の一致についてはより多くの測定値を有するルックアップテーブル1660を使用してもよい。たとえば、テーブル1660は、5%から95%まで5%ごとの測定値を含んでもよく、または10%ごとの測定値を含んでもよい。
【0095】
【0096】
上部キャップ4とウイングの両方を移動させ得るときはルックアップテーブル1650および1660を使用してもよいが、上部キャップ4のみを移動させ得るときは他のルックアップテーブルを使用してもよい。さらに、辺114、116を移動させ得るときは他のルックアップテーブルを使用してもよい。
【0097】
図13は、本開示の態様による方法についてのフローチャートを示す。この方法は、患者の1つまたは複数の測定される要素および用途に従ってスキャナ100の幾何学的形状を決定するステップを含む。
【0098】
S1300において、PETシステム1550の用途を決定してもよい。上述のように、用途は脳スキャンまたは全身スキャンであってもよい。しかし、PETシステム1550の用途を脳スキャンまたは全身スキャンに限定しなくてもよく、下半身スキャンなどの他の用途を使用してもよい。この態様では、それぞれに異なる測定済みパラメータをそれぞれに異なるルックアップテーブルとともに使用してもよい。用途が専用脳スキャンであるとき、S1305において患者の頭囲を測定する。本開示の一態様では、患者の医療記録にすでに頭囲の測定値が含まれている場合、プロセッサ1500は、電子患者記録から測定値を取り込んでもよい。他の態様では、患者の医療記録にすでに紙形態で測定値が含まれている場合、オペレータはユーザインターフェース(図示せず)を介して測定値を入力してもよい。本開示の一態様では、オペレータは任意の公知の測定デバイスを使用して患者の頭囲を測定してもよい。測定値をプロセッサ1500に入力してもよい。
【0099】
他の態様では、患者の静止画像を撮り、プロセッサ1500によって画像処理および推定を介して頭囲を決定してもよい。
【0100】
S1310において、プロセッサ1500はメモリ1505からルックアップテーブル1650を取り込む。ルックアップテーブルは、キャップ4ならびにウイング2、6、8、および12についての利用可能な位置を含んでもよい(較正してもよい、事前に設定された位置)。S1315において、最も近い形状を特定する。本開示の一態様では、プロセッサ1500は、テーブル1650をディスプレイ(図示せず)上に表示させ、オペレータは、頭囲の測定値を使用してテーブル1650を見て最も近い形状を特定する。測定された頭囲とルックアップテーブル1650内の行項目が一致する場合、対応する目標位置が選択される(キャップ位置および/またはウイング)。測定された頭囲とルックアップテーブル1650内の2つの行項目がどれも一致しないときは、最も近い行項目が選択され、選択された行項目における対応する位置が目標位置として選択される(キャップ位置および/またはウイング)(選択された事前に設定された位置)。上記で説明したように、スキャナはそれぞれに異なる運動範囲、すなわち、キャップ4の移動のみと、キャップ4の移動とウイング2、6、8、および12の移動と、キャップ4、ウイング2、6、8、および12、ならびに辺114および116の移動とを有してもよい。したがって、目標位置は、どのスキャナ100が使用されるかに基づいてもよい。
【0101】
本開示の他の態様では、ルックアップテーブル1650が表示されなくてもよく、プロセッサ1500が、頭囲の測定値に基づいてルックアップテーブル1650を使用して最も近い形状を決定してもよい。測定された頭囲とルックアップテーブル1650内の行項目が一致する場合、プロセッサ1500は、対応する目標位置を選択してもよい(キャップ位置および/またはウイング)。測定された頭囲とルックアップテーブル1650内の2つの行項目がどれも一致しないときは、プロセッサ1500は最も近い行項目を選択してもよく、選択された行項目における対応する位置が目標位置として選択される(キャップ位置および/またはウイング)(選択された事前に設定された位置)。
【0102】
他の態様では、キャップ4またはウイングについての他の位置が利用可能であるとき、測定された頭囲とルックアップテーブル1650内の2つの行項目の間に一致がないときは、プロセッサ1500は2つの行項目から得た位置の比を使用して所望の目標位置を補間する。
【0103】
S1320において、プロセッサ1500は、スキャナの目標形状についての再構成アルゴリズムにおいて使用するシステム行列および形状依存モジュールを決定する。本開示の一態様では、プロセッサ1500は、ルックアップテーブルを使用して選択された行項目についての対応するシステム行列および形状依存モジュールを取得してもよい。他の態様では、プロセッサ1500は、スキャナの目標形状に基づいてシステム行列および形状依存モジュールを算出してもよい。他の態様では、プロセッサが目標位置を補間する際、プロセッサ1500は、2つの行項目に対応するシステム行列および形状依存モジュールからシステム行列および形状依存モジュールを調整してもよい。
【0104】
S1325において、スキャナ100を開位置まで移動させ(まだ開位置に位置していない場合)、患者525をベッド515上に配置し、その後スキャナ100を目標幾何学的位置まで移動させる。
【0105】
本開示の一態様において、制御アーム500をモータ駆動する際、プロセッサ1500は、モータコントローラ1515にコマンドを発行し、上部キャップ4を目標位置まで移動させるように制御アームを移動させるよう命令してもよい。モータコントローラ1515は、制御アーム500が目標位置まで移動するように制御アーム内のモータに適切な電力を供給する。いくつかの態様では、制御アーム500は位置センサーを備え、位置センサーは、モータコントローラ1515および/またはプロセッサ1500に実際の位置を報告する(フィードバック)。
【0106】
本開示の一態様では、ウイング2、6、8、および12が回転することができ、ヒンジがモータ駆動される(1400)とき、プロセッサ1500は、ウイング2、6、8、および12を目的位置まで移動させるようにウイング用のモータコントローラ1510、たとえば、ステッパモータコントローラにコメントを発行してもよい。モータコントローラ1510は、各ウイング2、6、8、および12を目標位置まで回転させるように回転段内のモータに適切な電力を供給する。
【0107】
いくつかの態様では、回転段1400はエンコーダを備え、エンコーダは、モータコントローラ1510および/またはプロセッサ1500に実際の位置を報告する(フィードバック)。
【0108】
他の態様では、移動が手動で行われるとき、オペレータは、選択された行項目に対応する目標位置まで可動上部支持体505を移動させてもよい。本開示の一態様では、制御アーム500は、上部キャップ4が目標位置に配置されているかどうかをオペレータがわかるように位置を示すマークを有してもよい。他の態様では、制御アーム500は位置センサーを備え、位置センサーは、実際の位置をプロセッサ1500に報告し(フィードバック)、プロセッサ1500はディスプレイ上に実際の位置を表示する。他の態様では、プロセッサ1500は、キャップ4の位置が目標位置になったときに通知を発行してもよい。
【0109】
同様に、移動が手動で行われるとき、オペレータは、選択された行項目に対応する目標位置まで各ウイングを移動させ、たとえば、ウイングを回転させてもよい。本開示の一態様では、ヒンジ3は、角度を検知し、実際の位置をプロセッサ1500に報告する(フィードバック)センサーまたはエンコーダを備えてもよく、プロセッサ1500は、ウイング2、6、8、および12が目標位置に配置されていることをオペレータがわかるようにディスプレイ上に実際の位置を表示する。他の態様では、プロセッサ1500は、キャップ4の位置が目標位置になったときに通知を発行してもよい。
【0110】
本開示の一態様では、S1320とS1325の順序を逆にしてもよい。
【0111】
用途が全身スキャンであるときは、S1330において患者の胸部厚径および前腕間幅を測定してもよい。本開示の一態様では、患者の医療記録にすでに測定値が含まれている場合、プロセッサ1500は、電子患者記録から測定値を取り込んでもよい。他の態様では、患者の医療記録にすでに紙形態で測定値が含まれている場合、オペレータはユーザインターフェース(図示せず)を介して測定値を入力してもよい。本開示の一態様では、オペレータは任意の公知の測定デバイスを使用して患者の胸部厚径および前腕間幅を測定してもよい。測定値をプロセッサ1500に入力してもよい。
【0112】
他の態様では、患者の静止画像を撮ってもよく、プロセッサ1500によって画像処理および推定を介して胸部厚径および前腕間幅を決定してもよい。S1310において、プロセッサはルックアップテーブル1660を取り込んでもよい。次に、全身スキャンについて、上記で説明したように、S1315~S1325を同様に実行する。
【0113】
さらに、必要に応じて、プロセッサ1500は、上記で説明したように辺114、116の位置を制御してもよい。
【0114】
上記で説明したように、スキャナ100の一部を患者の形状にほぼ一致させるための必要に応じて選択的に目標位置まで移動させてもよい。スキャナ100の一部の移動は、スキャンすべき患者の部分にほぼ一致する構造を実現するように行うことができ、したがって、分解能を高め、および/またはイメージング効率を向上させる助けになる。そのように移動すると、スキャナ100は次いで、患者のPETスキャンを取得することができる。
【0115】
図では、上部が移動され、下部が固定されたが、本開示のいくつかの態様では、下部が移動してもよく、上部が固定されてもよい。本開示の他の態様では、上部と下部の両方が移動してもよい。
【0116】
さらに、上記で説明したように、各ウイングを対称的に移動させるが、他の態様では、ウイング2、6、8、12はそれぞれに異なる角度を有してもよい。たとえば、上部ウイング2、6は上部キャップ4に対して第1の角度であってもよく、下部ウイング8、12は、下部キャップ10に対して第2の角度であってもよい。
【0117】
図は、上部キャップ4の各辺上の1つのウイング(たとえば、左上ウイング2および右上ウイング6)と下部キャップ10の各辺上の1つのウイング(たとえば、左下ウイング8および右下ウイング12)のみを示しているが、本開示の他の態様では、各辺上に複数のウイング部分が存在してもよい。各ウイング部分の長さは、図に示されている長さよりも短くしてもよく、各ウイング部分をキャップおよび他のウイング部分に対して角度付けしてもよい。たとえば、スキャナ100の形状が患者525の形状にさらに一致し得るように、2つのウイング部分を互いに回転可能に取り付けてもよい。
【0118】
本開示の一態様では、スキャナ100を適切なハウジング内に配置し、患者の1つまたは複数の選択された領域をPETスキャンにさらすことができる。PETスキャンは、いくつかの領域において取得することができ、スキャンすべき領域を含めるのに必要な患者支持位置の数に応じて、完全なPETスキャンを完了するには約1分、約2分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約60分、またはそれ以上かかる場合がある。
【0119】
本開示の一態様では、プロセッサ1500は、スキャナ自体のハウジング内に含まれてもよく、またはスキャナ100および検出モジュール520に十分に接続された(ワイヤレスもしくは有線)状態で含まれてもよい。
【0120】
プロセッサ1500は、複数のシンチレータ結晶の少なくとも1つのシンチレータ結晶内の少なくとも1つの相互作用部位の3次元(3D)ガンマ線局在化を実行するように構成された複数の教師付き機械学習アルゴリズムを処理するように構成される。
【0121】
図17は、患者のPET画像を生成するプロセスを示す。プロセスは、S1300から決定される臨床用途に依存する。上記で説明したように、患者525の1つまたは複数の被検対象の実際の測定値および臨床用途を使用して、(同時計数線の長さを短くすることによって非共線性に起因するエラーを低減させることによって)感度を高め空間分解能を向上させる一致したPETスキャナ100(S1315において説明した)を形成してもよい。PET画像を生成するために使用されるスキャナ形状に対応するシステム行列はS1320から取得され、形状依存モジュールはS1320から取得される(幾何学的正規化など)。
【0122】
システム行列は、画像空間と投影空間との間の関係を表す。システム行列は、幾何学的成分およびボケ成分などのいくつかのファクタを含む。上記で説明したように、すべての利用可能な形状についてシステム行列を事前に算出してもよい。(患者測定値および臨床用途に基づいて)PETスキャナ100の形状を完成した後、ルックアップテーブルを使用して対応するシステム行列を選択してもよい。
【0123】
陽電子放出トモグラフィ(PET)における正規化は2つの態様、すなわち差分検出モジュール応答に対する補正(S1700)と幾何学的影響に対する補正(S1320)とを含む。幾何学的正規化では、PETスキャナ100の不規則な一致形状について生じる幾何学的アーチファクトが補正される。たとえば、モンテカルロシミュレーションを使用して幾何学的正規化を行ってもよい。上記で説明したように、幾何学的正規化をメモリ内のルックアップテーブルに記憶してもよい。
【0124】
検出モジュール正規化(S1700)では、スキャナ全体にわたって一様な性能を実現するためにすべての検出モジュールの差分応答が補正される。正規化スキャンを使用して(点線源または棒状線源を用いて)検出モジュール正規化を実験的に行ってもよい。S1720において患者をスキャンし、放出同時計数データを取得する。
【0125】
同時計数線(LOR)の位置ずれは、DOIおよびコンプトン散乱によって生じる。LORの位置ずれを補正するには、DOI補正およびコンプトン散乱回復を実行する(S1730)。S1730において、プロセッサは、シンチレータ結晶内で相互作用するガンマ線の相互作用位置(DOI)情報を使用して視差効果(すなわち、同時計数線(LOR)の位置ずれに起因する幾何学的ボケ)を補正するDOI補正を実行する。さらに、S1730において、プロセッサ1500は、複数のシンチレータ結晶間で散乱する少なくとも1つのコンプトンイベントを回復することにより相互作用位置(DOI)情報を使用してコンプトン散乱回復を実行することによって、コンプトン散乱に起因するLORSの位置ずれを補正し、少なくとも1つの検出モジュール520の各々についての3Dガンマ線局在化に基づいてシンチレータレベルで少なくとも1つのコンプトンイベントを局在化するように構成されてもよい。プロセッサ1500は、複数のシンチレータ結晶において吸収される少なくとも1つの相互作用の分解されたエネルギーに基づいて少なくとも1つのコンプトンイベントを局在化するようにさらに構成することができ、分解されたエネルギーは、少なくとも1つの光共有パターンに基づき、少なくとも1つの光共有パターンは、複数の検出器および各検出器520のライトガイドに対する複数のシンチレータ結晶の位置に基づく。
【0126】
S1735において、プロセッサ1500は減衰補正を実行する。減衰は、真同時計数イベント(すなわち、バックツーバックガンマ線)が体内で吸収されることに起因して真同時計数イベントの検出を喪失することである。減衰に起因して計数が喪失すると、画像の雑音、画像アーチファクト、画像の歪みが増大する。減衰補正は、そのような喪失した計数を補償し、PETスキャン上で生じる場合がある顕著なアーチファクトを除去する。
【0127】
S1740において、プロセッサ1500は、形状依存システム行列、正規化係数(検出モジュールおよび形状)、DOI補正、コンプトン散乱補正、ならびに減衰補正および取得された患者に基づいて最尤推定期待値最大化(MLEM)アルゴリズムを使用して画像再構成を実行する。
【0128】
プロセッサ1500の様々なプロセスに基づいて、任意の適切な再構成アルゴリズムを使用して患者の関心領域の2次元画像と3次元画像の両方の断層画像を再構成するようにプロセッサ1500を構成することもできる。
【0129】
S1745において、スキャナ100の一部であるかまたはスキャナ100に接続された(有線/ワイヤレス)ディスプレイ(図示せず)上に再構成された画像を示すことができる。ディスプレイの一使用例として、プロセッサ1500は、TOFデータからスキャンされている患者または対象の領域を再構成することができる。再構成は次いで、患者の組織の機能の3次元レンダリング、多断面再構成、または2次元イメージングに使用することができる。次いで、画像をディスプレイ上に表示することができる。ディスプレイは、CRT、LCD、プラズマ画面、プロジェクタ、プリンタ、または画像を示すための他の出力デバイスとすることができ、プロセッサ1500に十分に接続することができる(ワイヤレスまたは有線)。
【0130】
スキャナはまた、制御情報、たとえばイメージングパラメータおよび検査パラメータを入力するための入力と、制御情報および再構成された画像を出力するための出力とを有することができる。
【0131】
本明細書では、「プロセッサ」という用語は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、単一のデバイス内に配置された複数のプロセッサ、または互いに有線通信またはワイヤレス通信し、デバイスのネットワーク、インターネット、またはクラウド上で分散された複数のプロセッサを含んでもよい。したがって、本明細書では、「プロセッサ」によって実行されるかまたは「プロセッサ」によって実行されるように構成された動作、機能、特徴もしくは命令は、シングルコアプロセッサによる動作、機能、もしくは命令の実行を含んでもよく、マルチコアプロセッサの複数のコアによる集合的または協調的な動作、機能、もしくは命令の実行を含んでもよく、または複数のプロセッサによる集合的または協調的な動作、機能、もしくは命令の実行を含んでもよく、この場合、各プロセッサもしくはコアがあらゆる動作、機能、または命令を個々に実行する必要はない。たとえば、単一のFPGAを使用するかまたは複数のFPGAを使用して本明細書で説明する動作、機能、または命令を実現してもよい。たとえば、複数のプロセッサが負荷バランシングを可能にしてもよい。さらなる例では、サーバ(リモートまたはクラウドとも呼ばれる)プロセッサがクライアントプロセッサに代わって一部またはすべての機能を実現してもよい。
【0132】
本明細書では、「プロセッサ」という用語または「コントローラ」という用語を「回路」という用語に置き換えてもよい。「プロセッサ」という用語は、コードを実行するプロセッサハードウェア(共有、専用、またはグループ)、およびプロセッサによって実行されたコードを記憶するメモリハードウェア(共有、専用、またはグループ)を指すか、プロセッサハードウェアおよびメモリハードウェアの一部であるか、またはプロセッサハードウェアとメモリハードウェアとを含んでもよい。
【0133】
プロセッサ1500は、1つまたは複数のインターフェース回路を含んでもよい。いくつかの例では、インターフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、またはそれらの組合せに接続された有線またはワイヤレスインターフェースを含んでもよい。本開示の任意の所与のプロセッサの機能は、インターフェース回路を介して接続された複数のプロセッサ間で分散されてもよい。
【0134】
さらに、本開示のいくつかの態様では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、電気的に読取り可能な制御情報が記憶されており、記憶媒体がプロセッサにおいて使用されるときに、本明細書で説明する機能の態様が実施されるように構成される非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0135】
さらに、いずれの前述の方法もプログラムの形で具現化してもよい。プログラムは、非一時的コンピュータ可読媒体上に記憶されてもよく、コンピュータデバイス(プロセッサを含むデバイス)上で実行されたときに前述の方法のいずれか1つの方法を実行するようになっている。したがって、非一時的有形コンピュータ可読媒体は、情報を記憶するようになっていて、データ処理ファシリティまたはコンピュータデバイスと相互作用して上記で説明した実施形態のうちのいずれかのプログラムを実行し、ならびに/または上記で説明した実施形態のうちのいずれかの方法を実行するようになっている。
【0136】
コンピュータ可読媒体または記憶媒体は、コンピュータデバイス本体内部にインストールされた内臓媒体であってもよく、またはコンピュータデバイス本体から分離できるように構成された取外し可能媒体であってもよい。本明細書で使用するコンピュータ可読媒体という用語は、媒体内を(搬送波上などにおいて)伝播する一時的電気信号または電磁信号を包含せず、したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形でありかつ非一時的であると見なされる。非一時的コンピュータ可読媒体の非制限的な例には、限定はしないが、書換え可能な不揮発性メモリデバイス(たとえば、フラッシュメモリデバイス、消去可能プログラム可能な読取り専用メモリデバイス、またはマスク読取り専用メモリデバイスを含む)、揮発性メモリデバイス(たとえば、スタティックランダムアクセスメモリデバイスまたはダイナミックランダムアクセスデバイスを含む)、磁気記憶媒体(たとえば、アナログもしくはデジタル磁気テープまたはハードディスクドライブを含む)、および光学記憶媒体(たとえば、CD、DVD、またはBlu-ray (登録商標) Discを含む)が含まれる。内臓書換え可能不揮発性メモリを有する媒体の例には、限定はしないが、メモリカード、および限定はしないが、ROMカセットを含む内臓ROMを有する媒体などが含まれる。さらに、記憶された画像に関する様々な情報、たとえば属性情報を任意の他の形で記憶してもよく、または他の方法で提供してもよい。
【0137】
メモリハードウェアという用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。コンピュータ可読媒体という用語は、本明細書では、媒体内を(搬送波上などにおいて)伝播する一時的電気信号または電磁信号を包含せず、したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形でありかつ非一時的であると見なされる。非一時的コンピュータ可読媒体の非制限的な例には、限定はしないが、書換え可能な不揮発性メモリデバイス(たとえば、フラッシュメモリデバイス、消去可能プログラム可能な読取り専用メモリデバイス、またはマスク読取り専用メモリデバイスを含む)、揮発性メモリデバイス(たとえば、スタティックランダムアクセスメモリデバイスまたはダイナミックランダムアクセスデバイスを含む)、磁気記憶媒体(たとえば、アナログもしくはデジタル磁気テープまたはハードディスクドライブを含む)、および光学記憶媒体(たとえば、CD、DVD、またはBlu-ray Discを含む)が含まれる。内臓書換え可能不揮発性メモリを有する媒体の例には、限定はしないが、メモリカード、および限定はしないが、ROMカセットを含む内臓ROMを有する媒体などが含まれる。さらに、記憶された画像に関する様々な情報、たとえば、属性情報を任意の他の形で記憶してもよく、または他の方法で提供してもよい。
【0138】
本開示を以下の非制限的な例によってさらに例示する。
【0139】
実施例1
3つの重要数値指標がPETスキャナの性能および実施可能性評価を決定している(かつこのPETシステムの性能および実施可能性評価を決定している: 感度、空間分解能、およびコスト)。PETスキャナの実現可能な感度、空間分解能、およびコストには、物理学、数学、および経済学の法則によって決定される基本的限界がある、したがって、本開示のいくつかの態様ではスキャナの基本的な限界を円筒形のSiemens(登録商標)Biograph Vision(登録商標)Scannerによって代表される最先端の基本的な限界と比較することによって、本明細書で説明するようにスキャナを評価することができる。
【0140】
感度
PETスキャナの感度は、患者線量および画像品質の重要な決定要素であり、スキャナの形状および検出器の効率によって制御される。
感度≦幾何学的効率*検出器効率
【0141】
本開示のいくつかの態様およびSiemens(登録商標)Biograph Vision(登録商標)Scannerなどの現在の円筒形PETスキャナの幾何学的効率を定量化する解析方法を開発した。
【0142】
幾何学的効率の定義
幾何学的効率は、任意の放射線検出デバイスの重要性能数値指標であり、放出された放射線の、検出器に当たる部分を表す。この測定基準は、検出器に対する放射能源の位置および特性に依存するので、放射線は検出器アセンブリの中心に位置する点源から等方的に放出されると仮定される。数学的には、幾何学的効率Eは、検出器によって放射線源に対して定められる立体角Ωに関して定義される。
【0143】
【0144】
立体角は、検出器の表面s全体にわたって一体的な表面として定義され、原点は本開示の点線源によって定義される。
【0145】
【0146】
請求されるデバイスの設計の幾何学的効率
図1aのスキャナ100の形状の対称性を利用すると、キャップの立体角カバレージ(上部キャップ4または下部キャップ10のいずれか)ならびにウイングプレート(左上ウイング2および右上ウイング6または左下ウイング8および右下ウイング12)に関する完全な6プレートアレイ(左上ウイング2、上部キャップ4、右上ウイング6、左下ウイング8、下部キャップ10、および右下ウイング12)の幾何学的効率Eは次のように書くことができる。
【0147】
【0148】
キャップおよびウイングプレートの立体角カバレージを決定するために、プレートによって定められる立体角の一般式を展開し、次いでその式を適用してΩcapおよびΩwingを決定した。
【0149】
プレートの立体角
点源に対する一般化されたプレートの形状は
図2に示されている。この形状は、4つのパラメータ、すなわち、プレートの平面に垂直な単位ベクトル
【0150】
【0151】
、点源をプレートの中心に接続する半径方向ベクトルRc、およびプレートの縁部を指定するベクトルA,Bのみによって指定される。ベクトルHは、好都合な数量であり、点源からプレートの平面までの最短距離を表す(なお、ベクトルHはプレート自体に当たる必要はない)。このベクトルは次のように定義される。
【0152】
【0153】
プレートが点源よりも上方で心合わせされる場合の数式、すなわち、
【0154】
【0155】
を展開した。
【0156】
【0157】
がベクトルRcに沿った向きであり、
【0158】
【0159】
がベクトルAに沿った向きであるデカルト座標系を使用し、数式2に適切な置換を適用すると、次の数式が得られる。
【0160】
【0161】
【0162】
が成立する。この積分を次いで、次のように評価することができる。
【0163】
【0164】
上式において、α≡a/(2h)であり、β≡b/(2h)である。
【0165】
次に、プレート中心がベクトルAに沿って
【0166】
【0167】
だけオフセットされるより一般的なシナリオにおける立体角カバレージについての数式を展開した。対称性を利用することによって、この立体角Ω1を心合わせされたプレートによって定められる立体角の線形結合として、Ω1=ΣiciΩ0(ai,bi,hi)のように表すことができる。2つの考えられる幾何学的シナリオの各々について、すなわち(1)ベクトルHがプレートと交差する場合、(2)ベクトルHがプレートと交差しない場合について、別個に数式が与えられる。
【0168】
【0169】
の場合に、w<a/2によって定義されるシナリオ1では、幾何学的推論から次のことを示すことができる。
【0170】
【0171】
同様に、w>a/2によって定義されるシナリオ2では、次のことが示されてもよい。
【0172】
【0173】
全体として、これらの数式は、Ω1(a,b,h,w)を算出するための完全なアルゴリズムを与える。
【0174】
構成要素の立体角カバレージ
プレートの立体角についてのこの一般式を用いて、本開示の態様による開示された設計の文脈内でΩ
capおよびΩ
wingを算出することができる。
図1に開示された設計の幾何学的パラメータに関して以下の変数a、b、h、wを決定することができる。
【0175】
まずΩwingでは、
【0176】
【0177】
が横断面を定義するデカルト座標系を利用して形状を定義するベクトルは次の通りである。
【0178】
【0179】
【0180】
ベクトルHが数式4によって定義される場合、ウイングの立体角は次のように与えられる。
【0181】
【0182】
さらに、キャッププレートの立体角は次のように与えられる。
【0183】
【0184】
したがって、数式4~数式11は、acap、awing、b、hcap、θのすべての妥当な組合せについて開示された設計の幾何学的効率の解析計算を可能にする。
【0185】
円筒形PETの幾何学的効率
標準的な円筒形PET形状に勝る本開示の態様による開示された設計の利点を定量的に示すために、直径Dおよび軸方向長さLの円筒形PETの幾何学的効率についての解析数式を構築する。円筒座標を使用し、適切な置換を施すことによって、立体角についての面積分は次のように書かれる。
【0186】
【0187】
上式は次式のように評価することができる。
【0188】
【0189】
δ=D/Lの場合、円筒形の幾何学的効率は次のように書くことができる。
【0190】
【0191】
感度
空間分解能は、任意のスキャナシステムについての画像品質の基本測定基準である。しかし、空間分解能は、PETでは特に問題であり、代表的なシステムの空間分解能(3mm~4mm)は他のモダリティ(たとえば、CT、MRI)よりも劣り、PETの臨床利用を著しく制限する。空間分解能に対する基本的上限Γは、シンチレータ結晶幅d、陽電子範囲s、および検出器リング半径Rに関して与えられてもよく、半径項は非共線性の寄与を表す。
【0192】
【0193】
陽電子範囲は使用される放射性同位元素の関数であるので、結晶寸法はスキャナ形状の制約内で最適化されてもよい。
【0194】
開示された設計の相当半径の推定
空間分解能の上限に対する幾何学的寄与は(代表的な、円筒形状と仮定する)検出器リングの半径に関して与えられるので、開示されたデバイスでは相当半径R
Arcが推定される。非共線性項内のこのRは、検出器アセンブリの中心から等方的に出現する光子間の検出器要素までの平均走行距離と見なすことができる(スキャナの軸方向長さを無視する)。この点では、検出器プレートdlの各要素までの平均半径方向距離rを算出し、要素dφ(
図3)により定められる角度で重み付けすることによってR
Arcを決定することができる。立体角計算と同様に、R
Arcは区分的に導出され、まずウイングプレートR
wingおよびキャッププレートR
capの相当半径を決定し、次いでR
wingとR
capとの適切な線形結合によってR
Arcを構築する。
【0195】
まず、各プレートまでの平均半径方向距離を次のように積分する。
【0196】
【0197】
上式において、rcap(φ)およびrwing(φ)はそれぞれ、極座標においてキャッププレートおよびウイングプレートによって定義される線の数式である。
【0198】
【0199】
φ1、φ2はウイングプレートの端点の角度位置を定義する。
【0200】
【0201】
次に、プレートの各クラスによって定められる全角度に対応する適切な重みによりRwingとRcapを組み合わせることによってRArcを決定する。
【0202】
【0203】
上式において、Φ=2π-4φ1は、開示されたデバイスの6枚のプレートによって定められる全角度を表す。
【0204】
コスト
シンチレータ結晶は、PETシステムについてのコストの最大の因子であり、このような結晶の単位コストは依然として高く、代表的な検出器アセンブリ全体を設置するには非常に多数個(~105)の結晶が必要である。したがって、検出器表面積σは、コストの下限を推定するための妥当な基準である。単純な形状では、開示されたデバイスと円筒形設計の両方について表面積が得られる。
σArc=b+(4awing+2acap)、σcyl=π*D*L (20)
【0205】
上式において、awing、acapは開示されたデバイスのウイングプレートおよびキャッププレートの横断長を表し、bは軸方向長さを与える。代表的な円筒形の場合、Dは検出器リングの直径を与え、一方、Lは軸方向長さを表す。
【0206】
使用事例
感度、空間分解能、およびコストを定量化するための上記の解析ツールを用いて、たとえば
図1aに示す開示されたデバイスを最先端のPETシステム、すなわちSiemens(登録商標)Biograph Vision(登録商標)Scannerと比較する実際的な例が実現される。比較を目的として、開示されたデバイスの閉じた六角形状が使用され、a
cap=a
wing=25cm、b=26cm、h
cap=17.7cm、およびθ=π/4である。これらの寸法は、Siemens(登録商標)Biograph Vision(登録商標)Scanner(リング直径82cmおよび軸方向長さ26cm)と比較して、
図4に示されている。
【0207】
これらの寸法を用いて、たとえば
図1aに示す開示された設計は、幾何学的効率が約73%向上し、Biograph Vision(登録商標)の30.2%に対して51.8%になる。陽電子範囲(0.54mm fwhm)および結晶幅(3mm)に共通のパラメータを利用することによって、空間分解能の下限は、開示されたデバイスではBiograph Vision(登録商標)と比べて少なくとも約0.5mm向上する。
【0208】
この向上は形状の違いによってサポートされ、開示されたデバイスでは相当半径が約21.7cmであり、これに対してBiograph Vision(登録商標)では真リング半径が41cmである。最後に、たとえば、
図1aに示すように開示されたデバイスの寸法を小さくすると、PETシステムについてのコストの最も顕著な因子であるシンチレータ結晶材料を約42%減らすことが可能になる。これらの値は以下の表にも示されている。
【0209】
開示されたデバイス
本開示の説明した態様および実施例は、制限ではなく例示を意図したものであり、本開示のあらゆる態様または実施例を表すことを意図していない。本開示の様々な特定の態様に適用される本開示の基本的な新規の特徴について図示し、説明し、指摘したが、当業者によって、本開示の趣旨から逸脱せずに、例示したデバイスの形態および詳細ならびに例示したデバイスの動作の様々な省略、置換、および変更が施され得ることも理解されよう。たとえば、実質的に同じ機能を実質的に同じように実行して同じ結果を実現するそれらの要素および/または方法ステップのすべての組合せが本開示の範囲内であることが明示的に意図される。さらに、一般的な設計上の選択の問題として、本開示の任意の開示された形態もしくは態様に関連して図示しおよび/もしくは説明した構成ならびに/または要素ならびに/または方法ステップが任意の他の開示もしくは説明もしくは示唆された形態または態様に組み込まれてもよいことを認識されたい。さらに、文字通りの以下の特許請求の範囲と法律によって認識される均等物の両方に記載された本開示の趣旨または範囲から逸脱せずに様々な修正および変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0210】
2 左上ウイング
3 ヒンジ
3A コネクタ
4 上部キャップ
6 右上ウイング
8 左下ウイング
10 下部キャップ
12 右下ウイング
14 中心線
16 オレンジスター
18 キャビティ
100 スキャナ
114、116 辺
500 制御アーム、モータ駆動制御アーム
500A 制御アーム
505 可動上部支持体
505A 可動上部支持体
510 固定下部支持体
510A 固定下部支持体
515 患者のベッド
520 検出モジュール、検出器モジュール、検出器
525 患者
525A 小柄の患者
525B 大柄の患者
530 塔支持体
530A 支持塔
600 電子コネクタボード(PCB)
605 SiPM画素
610 シンチレータ結晶
615 ライトガイド
650 電気読出しボード(PCB)
670 行列
1200 ヒンジ
1210 ショックおよびピストン
1220 カバーまたは支持体
1400 モータ駆動ヒンジ
1500 プロセッサ
1505 メモリ
1510 モータコントローラ
1515 モータコントローラ
1550 PETシステム
1650 ルックアップテーブル
1660 テーブル
d シンチレータ結晶幅
dl 検出器プレート
dφ 要素
D 直径
L 長さ
E 幾何学的効率
Ω 立体角
R 検出器リング半径
RArc 相当半径
Rwing ウイングプレート
Rcap キャッププレート
s 陽電子範囲
Γ 空間分解能に対する基本的上限
【国際調査報告】