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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20230329BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20230329BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B21/20 C
B23Q17/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550857
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 GB2021050445
(87)【国際公開番号】W WO2021170990
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2002562.3
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン チャールズ オウルド
(72)【発明者】
【氏名】ローズ クロスランド
【テーマコード(参考)】
2F062
2F069
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA51
2F062EE01
2F062EE09
2F062FF02
2F062FF25
2F062FF28
2F062FG07
2F062HH04
2F069AA66
2F069GG01
2F069GG04
2F069GG62
2F069HH02
2F069HH09
2F069JJ04
3C029BB01
(57)【要約】
人工物の湾曲した特徴に対する形状測定を判定する方法である。本方法は、湾曲した経路に沿って第1の方向に相対的に人工物および測定デバイスを動かし、湾曲した特徴の表面に沿って第1のデータポイントのセットを取得する位置決め装置を備え、当該位置決め装置は、他の湾曲した経路に沿って第1の方向と反対の第2の方向に相対的に人工物および測定デバイスを動かし、湾曲した特徴の表面に沿って第2のデータポイントのセットを取得する。本方法は、第1および第2のデータポイントのセットを用いて、人工物に対する形状測定を判定することをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工物の湾曲した特徴に対して形状測定を判定する方法であって、前記方法は、
i)位置決め装置が、前記人工物および測定デバイスを第1の方向に湾曲した経路に沿って相対的に動かして、前記湾曲した特徴の表面に沿って第1のデータポイントのセットを取得することと、
ii)前記位置決め装置が、前記第1の方向と反対の第2の方向に湾曲した経路に沿って前記人工物および前記測定デバイスを相対的に動かして、前記湾曲した特徴の表面に沿って第2のデータポイントのセットを取得することと、
iii)前記第1および第2のデータポイントのセットを用いて、前記人工物に対する形状測定を判定することと、を備える、
方法。
【請求項2】
前記第1および第2のデータポイントのセットを用いることは、そこから、前記第1および第2のデータポイントのセットによって表現される表面間に存在する中間表面の表現を取得することと、前記中間表面の表現から前記形状測定を判定することとを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間表面は、前記第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線間で等距離である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
中間表面の前記表現は、第3のデータポイントのセットを含む、
請求項2または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の方向に前記湾曲した経路に沿って前記相対的に動かすことは、前記第1および第2の方向のそれぞれにおける前記湾曲した経路に沿って動かす間に逆転される前記位置決め装置の少なくとも1つの線形動作軸の運動によってもたらされる、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2のデータポイントのセットは、前記測定デバイスおよびワークピースの同一の相対的な角度方向で取得される、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2のデータポイントのセットは、前記湾曲した特徴の表面の実質的に同一のターゲット走査線に沿って取得される、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のデータポイントのセットを取得するために前記人工物および測定デバイスが相対的に沿って動く前記湾曲した経路は、前記第1のデータポイントのセットを取得するために前記人工物および測定デバイスが相対的に沿って動く前記湾曲した経路と同一である、
請求項1ないし7にいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記位置決め装置は、前記人工物が以前に機械加工された、または前記人工物が機械加工されることになる工作機械を備える、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記湾曲した特徴は、円弧状の特徴を含む、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記湾曲した特徴は、円形の特徴を含む、
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記形状測定は、真円度測定を含む、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記測定デバイスは、接触走査プローブを含み、前記第1および第2のデータセットは、前記湾曲した特徴の表面に沿って継続的に接触して走査することによって得られる、
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記中間表面の表現は、湾曲を含む、
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピューター実装方法は、
位置決め装置によって第1の方向に湾曲した経路に沿って測定デバイスおよび人工物が互いに相対的に動かされ、前記位置決め装置に取り付けられた前記測定デバイスによって取得された第1のデータポイントのセットをとることと、
前記位置決め装置によって第2の方向に湾曲した経路に沿って前記測定デバイスおよび前記人工物が互いに相対的に動かされ、前記測定デバイスによって取得された第2のデータポイントのセットをとることと、
前記第1および第2のデータポイントのセットを用いて、前記人工物に対する形状測定を判定することと、を備える、
方法。
【請求項16】
装置に、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法を実行させるように構成される命令を含むコンピュータープログラムコード。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータープログラムコードを含むコンピューター可読媒体。
【請求項18】
位置決め装置によって第1の方向に湾曲した経路に沿って測定デバイスおよび人工物が互いに相対的に動かされ、前記位置決め装置に取り付けられた前記測定デバイスによって取得された第1のデータポイントのセットをとり、前記位置決め装置によって第2の方向に湾曲した経路に沿って前記測定デバイスおよび前記人工物が互いに相対的に動かされ、前記測定デバイスによって取得された第2のデータポイントのセットをとり、前記第1および第2のデータセットを用いて前記人工物に対する形状測定を判定するように構成される、
処理デバイス。
【請求項19】
装置であって、測定デバイスおよび人工物が配置される位置決め装置を備え、
i)前記位置決め装置に、前記人工物および測定デバイスを第1の方向に湾曲した経路に沿って相対的に動かして、前記湾曲した特徴の表面に沿って第1のデータポイントのセットを取得させ、
ii)前記位置決め装置に、前記人工物および測定デバイスを前記第1の方向と反対の第2の方向の他の湾曲した経路に沿って相対的に動かして、前記湾曲した特徴の表面に沿って第2のデータポイントのセットを取得させ、
iii)前記第1および第2のデータポイントのセットを用いて、前記人工物に対する形状測定を判定するように構成される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め装置に対するワークピースの特徴を検査する方法、特に湾曲した特徴の形態を評価する方法(例えば、円形の特徴のための真円度の値を判定する方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特徴が所望の公差に適合することを確認すべく、および/または特徴および/またはワークピースの位置および/または向きを判定するために、生産前、生産の間、または生産後にワークピースの特徴を測定することは、周知である。これは、典型的に、測定デバイス(「プローブ」)およびワークピースが装置を介して互いに相対的に動かされることを伴うことによって、ワークピースに対する異なるポイントの測定が行われる。機械加工された(または機械加工される)工作機械上のワークピースを測定するための製品および技術が利用可能である一方で、専用の座標測定機(CMM)上で非常に高い公差を必要とするコンポーネントのそれらの部品を測定することが未だに一般的である。特に、特徴の形態、例えば、エンジンシリンダーブロックおよびバルブシートは、厳密に制御されることが必要となるわけで、それらの測定は、よく専用のCMMに対して実行される。形状測定の例示は、円形の特徴の「真円度」または「丸さ」である。理解されることとなるように、そして十分に確立された幾何学的な寸法および公差(GD&T)システムによって画定されるように、形状測定は、表面の位置またはサイズ(例えば、直径)とは異なる具体的な測定である。
【0003】
CMMは、主にワークピースを測定するために作製されているため(工作機械は、主にワークピースを機械加工するために作製されているのに対して)、CMMは、従来、より高いレベルの測定精度を提供することが可能であり、工作機械よりも少ない誤差にさらされる。これは、たいていCMMと工作機械との機械構成の違いのためである。例えば、工作機械の駆動メカニズムは、工作機械の駆動システムが、負うことを要求される機械動作のために、大きい力に耐えることが可能であることが必要であるため、CMMとは大きく異なる(動作の間に、小さい力を要求する測定デバイスだけを携行する必要があるCMMとは異なる)ことがよくある。
【0004】
しかしながら、1つまたは複数のワークピースの測定をあるがままの状態で、工作機械上で実行する要求が増加しているのは、大幅な時間およびコストを節約することが可能であるためである。
【0005】
しかしながら、本願発明者は、具体的には、工作機械装置上で、湾曲の正確な形状/真円度測定を実現することが困難であると見出した。
【発明の概要】
【0006】
本願発明は、円形の特徴の丸さまたは真円度などの湾曲した特徴の形状測定を改善するための技術に関しており、これは、このような特徴が工作機械上で測定される場合に、具体的な価値であることが可能であり、これは、十分に正確な測定データを提供することが可能ではないことがよくある。
【0007】
本願発明の第1の態様によって、人工物の湾曲した特徴に対する形状測定を判定する方法が提供され、方法は、i)位置決め装置が、人工物および測定デバイスを第1の方向に湾曲した経路に沿って相対的に動かして、湾曲した特徴の表面に沿って第1のデータポイントのセットを取得すること、ii)位置決め装置が、第1の方向と反対の第2の方向に湾曲した経路に沿って人工物および測定デバイスを相対的に動かして、湾曲した特徴の表面に沿って第2のデータポイントのセットを取得すること、およびiii)第1および第2のデータポイントのセットを用いて、人工物に対する形状測定を判定することを備える。
【0008】
本願発明者は、湾曲した特徴の測定における誤差が、機械の動作によって引き起こされる(具体的には、機械のいわゆる「ロストモーション」に起因する)ことが可能であると見出した。このような(機械の動作によって引き起こされる)測定誤差は、小さいが(例えば、数ミクロン程度)、それらは、本願発明者が要求される正確な形状測定を実現することから妨げていた。本願発明者は、本願発明の技術が誤差の影響を低減して、より正確/信頼性の高い形状測定を取得することを可能にしたと見出した。
【0009】
第1および第2のデータポイントのセットを用いることは、(第1および第2のデータポイントのセットから)第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線/表面間にある中間表面の表現を取得することを含むことが可能である。理解されることとなるように、中間表面および第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線/表面の表現は、概念的であることが可能である。例えば、中間表面の表現は、(概念的な中間表面に存在する)データポイントの第3のセットを含むことが可能である。つまり、「第1および第2のデータポイントを用いること」は、第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線/表面間に等距離の(概念的な)表面上にある第3のデータポイントのセットを取得することを含むことが可能である。次に、形状測定は、中間表面の表現から(例えば、第3のデータポイントのセットから)判定されることが可能である。当業者によって理解されることとなるように、中間表面の表現は、中間表面が構築されることが可能である何かを含むことが可能であり、例えば、中間表面の表現は、例えば、1つまたは複数のスプライン(例えば、Bスプラインまたは非一様有理Bスプライン「NURBS」表面)の機能を含むことが可能である。また、当業者によって理解されることとなるように、中間表面の表現は、例えば、2D湾曲の2次元(2D)表現を含むことが可能である。これは、第1および第2のデータポイントのセットが3次元(3D)データセットを含む場合であっても可能である。また、当業者によって理解されることとなるように、中間表面の表現は、例えば、3D湾曲の3次元(3D)表現を含むことが可能である。
【0010】
データポイントは、非位置情報(例えば、温度情報など)というよりはむしろ位置情報に関連するため、「位置」データポイントと称される(したがって、第1および第2のデータポイントのセットは、第1および第2の位置データポイントのセットと称されることが可能である)ことが可能である。理解されることとなるように、位置データポイントは、位置決め装置についての位置データ/情報(人工物および測定デバイスの相対的な位置など)を、測定デバイスからのデータ/情報(例えば、接触プローブの場合において、スタイラス偏向データ)と組み合わせることによって取得することが可能である。以下でより詳細に説明されるように、位置決め装置についての位置データ/情報(例えば、人工物および測定デバイスの相対的な位置について)が想定されることが可能であるか、またはそれが(例えば、位置決め装置上の1つまたは複数の位置エンコーダーを介して)周知されることが可能である。さらに、以下でより詳細に説明されるように、測定デバイスによって取得される測定の方向(例えば、スタイラス偏向の方向)が想定されることが可能であるか、またはそれが周知されることが可能である。
【0011】
データポイントは、測定デバイスおよび人工物の相対的な位置についての情報をその位置から測定される表面までのベクトルと組み合わせることによって取得されることが可能である。測定デバイスおよび人工物の相対的な位置は、(例えば、位置決め装置上の1つまたは複数の位置エンコーダーを介して)周知されることが可能であるか、または想定されることが可能である。測定される表面へのベクトルの方向は、周知されることが可能であるか、または推定されることが可能である。
【0012】
本願発明は、湾曲した特徴が人工物の湾曲した面(例えば、円筒/円錐の端部というよりはむしろ、円筒または円錐の湾曲した面)である場合に特に有益であると見出されている。
【0013】
本願発明は、測定デバイスが、測定ポイントでの湾曲した経路の曲率半径に沿って実質的に伸びる次元で人工物の測定を行うように用いられる場合に、特に有益であると見出されている。したがって、好ましくは、第1および第2のデータポイントのセットは、測定ポイントでの湾曲した経路の湾曲に対して実質的に半径方向に取得される/取られる/測定される測定データ(例えば、測定ポイントでの湾曲した経路の曲率半径の少なくとも45°以内、より好ましくは、測定ポイントでの湾曲した経路の曲率半径の少なくとも30°以内、特に好ましくは、測定ポイントでの湾曲した経路の曲率半径の15°以内、例えば、測定ポイントでの曲率経路の曲率半径の10°以内)を含む。
【0014】
形状測定は、湾曲した特徴のプロファイル公差を含むことが可能である。任意選択で、形状測定は、円形の特徴の丸さ公差または「真円度」を含む。任意選択で、形状測定は、円筒の円筒度公差を含む。形状測定は、値(形状値)を含むことが可能であり、例えば、形状測定は、丸さ値、真円度値、または円筒度値を含むことが可能である。
【0015】
好ましくは、中間表面は、第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線/表面間で等距離である。第1および第2のデータポイントのセットによって表現される線/表面間に等距離である中間表面の表現を判定することは、より正確な形状測定がそこから判定されることを可能にすると理解される。
【0016】
第1および第2の方向の相対的な動作は、第1および第2の方向のそれぞれにおける動作の間に逆転される位置決め装置の少なくとも1つの動作可能である軸の動作によって、少なくとも部分的にもたらされることが可能である。動作可能である軸は、線形軸であってよい。したがって、第1および第2の方向の相対的な動作は、少なくとも部分的に、位置決め装置の少なくとも1つの線形動作軸の動作によってもたらされることが可能である。具体的には、第1および第2の方向の相対的な動作は、第1および第2の方向のそれぞれにおける動作の間に逆転される位置決め装置の少なくとも1つの線形動作軸の動作によって、少なくとも部分的にもたらされることが可能である。第1および第2の方向の相対的な動作は、位置決め装置の非平行、線形動作軸のうちの少なくとも2つの組み合わせ動作によってもたらされることが可能である。具体的には、第1および第2の方向の相対的な動作は、第1および第2の方向のそれぞれにおける動作の間に逆転される少なくとも1つの位置決め装置の非平行、線形動作軸の組み合わせ動作によってもたらされることが可能である。形状測定に重大な悪影響を与え得る測定誤差の1つの発生源は、少なくとも1つの線形軸に沿った動作が逆転していること(軸逆転誤差)に起因して生じ、これは、工作機械上の具体的な問題である。これは、少なくとも部分的に、機械/軸のバックラッシュに起因し得ると見出されている。例えば、モーターが制御/電力の方向を逆転させる場合に、モーターが実際に制御する軸が動き始める前にわずかな遅延が生じることが可能である。理解されることとなるように、バックラッシュ問題を解決に役立てるために、位置決め装置の同一の動作軸は、ステップi)およびii)における相対的な動作をもたらすことに用いられるべきである。理解されることとなるように、相対的な動作は、人工物を動かし、測定デバイスを静止させて保持することを含むことが可能であり、または測定デバイスを動かし、人工物を静止させて保持することを含むことが可能であり、または人工物および測定デバイスを同時に動かすことを含むことが可能である。
【0017】
工作機械は、その動作可能である軸の位置を直接測定するための位置測定エンコーダーを有さないのが普通であり、その代わりに、工作機械コントローラーは、軸の駆動/モーターに対するエンコーダーを介してその軸の位置を監視することが可能である(これは、軸の実際の位置の正確な表現を必ずしも提供しない)。工作機械がその動作可能である軸の位置を直接測定するための位置測定エンコーダーを有する場合であっても、このような位置情報は、形状測定を判定するためのプロセスに利用できないことがある。実に、工作機械は、軸位置情報を別個の測定プロセスに継続的に報告するように設計されていないことが多い。したがって、測定プロセスに対して(例えば、工作機械上のエンコーダーから判定されるというよりはむしろ、工作機械を駆動するための命令に基づいて)軸の位置を想定して、想定される位置情報をプローブからのデータと組み合わせて表面位置情報を判定することが工作機械の分野で周知である。また、特徴についての計測情報は、測定デバイスの(例えば、プローブの)出力からだけで(つまり、それを報告されたまたは想定された軸位置情報と組み合わせることなく)判定され得る可能性がある。したがって、特に工作機械の分野において、軸位置に対する軸逆転バックラッシュの影響が直接測定/知られることとならないことが多く、工作機械に取り付けられる測定デバイスがどれだけよく較正され、正確で、且つ誤差がない場合でも、誤差は、工作機械自体の構造および/または構成に起因する部品の形状を判定するために用いられる測定データに導入されることが可能である。
【0018】
機械メーカーは、バックラッシュの問題に対処するために、例えば、バックラッシュを補償するために試みる駆動をサーボ化することによって、ステップを進めてきたが、このような解決策自体は、さらに、例えば、現場において周知であるような「軸逆転スパイク」の測定誤差を導入することが可能である。軸逆転は、形状測定における誤差の1つの発生源である一方で、機械の加速度によって引き起こされる動的構造変形などの他の発生源/原因が存在する。このような軸の逆転および動的構造の変形は、いわゆる「ロストモーション」または機械の非変換の動作によって引き起こされる誤差をもたらすことが可能である。
【0019】
本願発明者は、本願発明の技術を用いることによって、形状測定に対するこのような誤差の影響は、低減されることが可能であり、工作機械の予期される能力を超えるレベルの精度を有する形状測定をもたらすことが可能であると見出した。
【0020】
好ましくは、測定デバイスおよび人工物の相対的な角度方向は、第1のおよび第2の測定の両方に対して同一である。つまり、好ましくは、測定デバイスおよび人工物の相対的な角度方向は、第1および第2の測定間で変化しない。これは、測定デバイスおよび人工物の相対的な角度方向が形状測定に対する影響を考慮する必要性を回避する。例えば、接触プローブの場合において、プローブ先端オフセット誤差がある場合、測定デバイスおよび人工物の相対的な角度方向を変更することは、形状測定に対して影響を与えることが可能である。測定デバイスおよび人工物の相対的な角度方向が、第1および第2の測定の両方で同一であることを確実にすることは、プローブ先端オフセット誤差を知る/判定する必要性を回避する。
【0021】
位置決め装置は、座標測定機(CMM)などの専用の測定装置であることが可能である。位置決め装置は、工作機械を含むことが可能である。具体的には、位置決め装置は、人工物が以前に機械加工された、または人工物が機械加工される工作機械を含むことが可能である。
【0022】
湾曲した特徴は、円弧状の特徴を含むことが可能である。湾曲した特徴は、円形の特徴を含むことが可能である。例えば、湾曲した特徴は、円筒形のボスまたはボアを含むことが可能である。したがって、第1および/または第2のデータポイントのセットを取得することは、例えば、部分的または完全円形の経路に沿って、人工物および測定デバイスを互いに相対的に動かす位置決め装置を含むことが可能である。湾曲した特徴の測定は、平面に制約され得るが、必ずしもそうである必要性はない。例えば、位置決め装置は、人工物および測定デバイスを螺旋または螺旋経路に沿って互いに相対的に動かすことが可能である。
【0023】
人工物および測定デバイスの相対動作は、測定デバイスが静止している間の人工物の動作を含むことが可能であり、またはその逆もまた同様である。人工物および測定デバイスの相対的な動作は、また、測定デバイスおよび人工物の両方の動作を含むことが可能である。
【0024】
好ましくは、第1および第2のデータポイントのセットは、湾曲した特徴の表面上の実質的に同一のターゲット走査線(または「公称測定線」)に沿って取得される。
【0025】
人工物および測定デバイスが互いに相対的に動かされ、データポイントのセットを取得する湾曲した経路は、事前画定/事前判定されることが可能である。
【0026】
理解されるように、特に、バックラッシュ問題の解決策を探す場合に、位置決め装置の同一の動作軸は、ステップi)およびii)における相対的な動作をもたらすことに用いられるべきである。
【0027】
ステップi)およびii)の湾曲した経路は、必ずしも同一である必要性はない。例えば、ステップi)およびii)の湾曲経路は、同一のターゲット走査線(または「公称測定線」)が湾曲した特徴の表面上で測定されるが、位置決め装置の動作空間内の異なる位置で測定されるように構成されることが可能である。しかしながら、好ましくは、第2のデータポイントのセットを取得するために人工物および測定デバイスが互いに相対的に動かされる湾曲した経路は、第1のデータポイントのセットを取得するために人工物および測定デバイスが互いに相対的に動かされる湾曲した経路と同一である。好ましくは、第1および第2のデータポイントのセットは、位置決め装置によって、同一の湾曲した経路に沿って人工物および測定デバイスを互いに相対的に動かすことによって取得されることが可能であるが、ここで、異なるデータセットは、異なる方向に同一の湾曲した経路に沿って動作することによって取得される。したがって、i)およびii)の湾曲した経路は、第1および第2のデータポイントのセットが、ステップi)およびii)に対する湾曲した特徴の表面上の同一のターゲット走査線(または「公称測定線」)に沿って取得されるように同一であることが好ましく、位置決め装置の動作空間内のターゲット走査線の位置は、ステップi)およびii)に対してと同一であり、人工物および測定デバイスが相対的に動かす湾曲した経路の外形/形状は、同一であることが好ましい。
【0028】
i)およびii)の湾曲した経路を同一にすることは、位置に依存する位置決め装置の性能(例えば、バックラッシュの大きさ)の任意の差が位置決め装置によって取得される第1および第2のデータポイントのセットに影響を与えることを防止するのに役立つことが可能である。これは、また、接触プローブの場合において、第1および第2のデータポイントのセットの取得の間に、名目上同一のプローブ力が用いられることを確実にするのに役立つことが可能である。
【0029】
さらに、また、位置決め装置に対する人工物の回転位置/向き、および/または人工物に対する測定デバイスの回転位置/向きが、ステップi)とii)との間で変化しないことが好ましい。したがって、つまり、人工物および測定デバイスの物理的配置および構成は、ステップi)およびii)に対して実質的に同一に維持されることが好ましい。
【0030】
さらに、また、ステップi)およびii)における湾曲した経路に沿って測定デバイスおよび人工物が互いに相対的に動かす速度が実質的に同一であることが好ましい。
【0031】
したがって、ステップi)およびii)のそれぞれの態様は、測定デバイスおよび人工物が湾曲した経路に沿って互いに相対的に動かす方向を除いて、実質的に同一であることが好ましい。
【0032】
測定デバイスは、接触または非接触測定デバイスを含むことが可能である。測定デバイス装置の分野において一般的な場合であるように、測定デバイスは、また、プローブと称されることが可能である。本願発明と共に用いるのに適した測定デバイス(または「プローブ」)は、一般に、走査プローブ(「アナログプローブ」とも称される)と称されるものを含む。走査プローブ(または「アナログプローブ」)は、継続的に表面をインタラクトする一方で、(例えば、接触プローブの場合において、表面に継続的に接触しながら)表面に沿って一連の/測定ポイントのセットを得るように、表面に沿って/対して走査されることが可能であるプローブである。これは、測定されるそれぞれのデータポイントに対するプローブを表面に向かって前進させ、表面から後退させることを要求されるタッチトリガープローブとは対照的である。
【0033】
走査プローブは、プローブおよび表面のインタラクションの程度に対して依存して変化する(つまり、非バイナリ方式で、つまり、範囲にわたって)1つまたは複数の出力信号を提供することが可能である。これによって、走査プローブの信号は、プローブが表面に沿って/対して走査されるにつれて、プローブ本体および表面に対する位置を継続的に判定されることを可能にすることが可能である。
【0034】
接触走査プローブは、典型的に、位置決め装置上に取り付け/取り付け可能である本体、および本体から伸びるスタイラスを含む。典型的に、接触先端(例えば、「スタイラスボール」)は、人工物に接触するためにスタイラスの自由端で提供される。接触走査プローブは、スタイラスがその静止位置から偏向する量(および任意選択でスタイラス偏向の方向に応じて変化する)に応じて変化する1つまたは複数の信号を出力するように構成されることによって、スタイラス偏向の範囲(および任意選択の方向)が周知である。これは、対照的にいわゆる「接触トリガープローブ」であり、これは、スタイラスが静止位置から閾値量が偏向した場合にトリガー信号を出力するように構成される。
【0035】
したがって、本願方法は、湾曲した経路に沿って(第1および次の第2の方向に)人工物および測定デバイスを相対的に動かす位置決め装置を備えることが可能であることによって、湾曲した特徴の表面に沿って/相対的に測定デバイスを継続的に走査する(これによって、湾曲した特徴の表面に沿って第1および次に第2のデータポイントのセットを取得する)。したがって、接触走査プローブの場合において、第1および第2のデータポイントのセットは、接触走査プローブが湾曲した特徴の表面と継続的に接触している間に、接触走査プローブを動かすことによって得ることが可能である。
【0036】
したがって、本願は、複数の線形軸を備える位置決め装置に取り付けられる計測デバイスにより得られる計測データを用いて、ワークピースの湾曲した特徴に対する形状測定を判定する方法を説明し、計測デバイスによる計測データの収集処理は、測定デバイスおよびワークピースが事前画定の湾曲した経路に沿って相対的に動かす間に逆転される位置決め装置の少なくとも1つの線形軸の動作によってもたらされる事前画定の湾曲した経路に沿った計測デバイスおよびワークピースの相対的な動作を伴い、方法は、位置決め装置が、第1の方向に事前画定の湾曲した経路に沿って人工物および測定デバイスを互いに相対的に動かして、第1の測定データのセットを取得すること、位置決め装置が、第1の方向と反対の第2の方向に同一の事前画定の湾曲した経路に沿って人工物および測定デバイスを互いに相対的に動かして、第2の測定データのセットを取得すること、第1および第2の測定データのセットからの湾曲した特徴に対する形状測定を判定することを備える。
【0037】
理解されることとなるように、上記の方法は、コンピューターが実装されることが可能である。したがって、方法の上記のステップのいずれかまたはすべては、例えば、コンピューターコントローラー、数値コントローラー(NC)、例えば、コンピューター数値コントローラー(CNC)などのコンピューター/プロセッサ/処理デバイスの制御下で実行されることが可能である。適切な処理デバイスは、CPU(セントラルプロセッサユニット)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)などを含むが、これらに限定されない。理解されることとなるように、ステップi)、ii)および/またはiii)は、異なるコンピューター/プロセッサ/処理デバイスの制御下で実行されることが可能である。具体的には、例えば、ステップiii)は、ステップi)およびii)で用いられるものとは異なるコンピューター/プロセッサ/処理デバイスの制御下で実行されることが可能である。例えば、ステップiii)は、ステップi)およびii)で用いられるコンピューター/プロセッサ/処理デバイスとは異なる、例えば、物理的に遠隔のコンピューター/プロセッサ/処理デバイスによって実行されることが可能であり、および/またはステップi)およびii)とは実質的に異なる時間で実行されることが可能である。
【0038】
本願は、また、上記の方法を実行するように構成される装置を説明する。例えば、本明細書で説明される装置は、測定デバイスおよび人工物が配置される位置決め装置(工作機械など)を備える装置であり、この装置は、位置決め装置が人工物および測定デバイスを第1の方向に湾曲した経路に沿って相対的に動かし、湾曲した特徴の表面に沿って第1のデータポイントのセットを取得するように構成される。この装置は、位置決め装置が第1の方向と反対の第2の方向に湾曲した経路に沿って人工物および測定デバイスを相対的に動かし、湾曲した特徴の表面に沿って第2のデータポイントのセットを得るようにさらに構成される。装置は、また、第1および第2のデータポイントのセットを用いて、人工物に対する形状測定を判定するように構成される。例えば、PCなどのコンピューター/プロセッサ/処理デバイスは、第1および第2のデータポイントのセットを用いて、人工物に対する形状測定を判定するように構成されることが可能である。
【0039】
したがって、本願は、また、コンピュータープログラムコードを含むコンピューター/プロセッサ/処理デバイス(例えば、PC)を説明し、これは、測定デバイスおよび人工物が、位置決め装置によって第1の方向に湾曲した経路に沿って互いに相対的に動かしていた間に、位置決め装置に取り付けられる測定デバイスによって取得された第1のデータポイントのセットをとり、測定デバイスおよび人工物が第2の方向に湾曲した経路に沿って互いに相対的に動かしていた間に、測定デバイスによって取得された第2のデータポイントのセットをとり、第1および第2のデータセットを用いて人工物に対する形状測定を判定するように構成される。
【0040】
したがって、本出願は、また、コンピュータープログラムコード(例えば、コンピューター可読媒体に格納される)説明をし、これは、それが実行されるプロセッサデバイス(例えば、コントローラーおよび/またはPC)に、測定デバイスおよび人工物が、位置決め装置によって第1の方向の湾曲した経路に沿って互いに相対的に動かしていた間に、位置決め装置に取り付けられる測定デバイスによって取得された第1のデータポイントのセットをとることを実行させ、測定デバイスおよび人工物が第2の方向の湾曲した経路に沿って互いに相対的に動かしていた間に、測定デバイスによって取得された第2のデータポイントセットをとることを実行させ、第1および第2のデータセットを用いて、人工物に対する形状測定を判定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照して、例示としてだけここで説明されることとなる。
【0042】
図1】工作機械装置の等角図を概略的に示す図である。
図2】(a)は、アナログ/走査プローブによる円形の特徴の測定の間に、予想されるネットプローブのたわみ対実際のネットプローブのたわみに対する軸逆転誤差の影響を示す図であり、(b)は、工作機械装置のテーブルを円形に動かすために経時的に要求されるx軸およびy軸の軸方向位置を示す図である。
図3】円形の特徴のために取得されたデータセットに対する軸逆転誤差の影響を示す図である。
図4】本発明の例示的な実施形態にかかるプロセスのためのフローチャートである。
図5】反対(例えば、時計回りおよび反時計回り)方向で取られる円形の特徴の取得されたデータセットを表現する線を含むグラフである。
図6図5のグラフの部分の拡大図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1を参照すると、工作機械4、数値コントローラー6(NC)(例えば、コンピューター数値コントローラーまたは「CNC」)、PC8、および送受信装置9、およびインターフェース10を備える工作機械装置2が図示されている。工作機械4は、モーター11を介してz次元で可動アーム17に取り付けられるスピンドル12、およびモーター13、15を介してx次元およびy次元で動かすことが可能である可動テーブル14を備える。ワークピース16が作業(例えば、機械)するために用いられる場合に、ワークピース16は、可動テーブル14に取り付けられて、ツール(図示せず)は、スピンドル12に取り付けられる。NC6は、ツールとワークピースを一緒にして、ツールをワークピースに作用させるべく、スピンドル12の回転、アーム17のzの動作、および可動テーブル14のx/y動作を制御する。NC6は、例えば、PC8を介して、機械加工動作と共にプログラミングされることが可能である。
【0044】
ワークピース16を検査するために用いられる場合に、プローブ20などの検査デバイスがスピンドル12に取り付けられる。再び、NC6は、アーム17のz動作および可動テーブル14のx/y動作を制御することが可能であり、プローブ20にワークピース16をインタラクトさせ(例えば、プローブが接触プローブである場合、ワークピースに接触することによって)、ワークピース16を測定する。NC6は、例えば、PC8を介して、検査動作と共にプログラミングされることが可能である。
【0045】
説明される実施形態において示されていないが、工作機械4は、テーブル14を回転させるための1つまたは複数の回転軸(例えば、x軸、y軸および/またはz軸の周り)を含むことが可能である。追加的/代替的に、工作機械4は、スピンドル12が他のさらなる回転軸を中心に回転可能であるように(例えば、中に取り付けられるプローブがx軸および/またはy軸を中心に回転することが可能であるように)構成されることが可能である。追加的/代替的に、工作機械4は、スピンドル12がx軸および/またはy軸で可動であるように、および/またはテーブルがz軸で可動であるように構成されることが可能である。
【0046】
この実施形態において、プローブ20は、スピンドル12に取り付けられる本体22、本体22から伸びるスタイラス24、および本体22の遠位のスタイラス24の端部にあるスタイラス先端26を含む接触プローブである。記載される実施形態では、スタイラス24は、(例えば、スタイラス先端26が表面に接触する場合に)本体22に対して偏向することが可能であり、このような偏向は、本体22のセンサーによって検出されることが可能である。具体的に、説明される実施形態において、プローブ20は、静止位置からのスタイラス偏向の範囲/量/程度がプローブ20によって感知および報告され得るという点で、(スタイラスが、例えば所定の閾値量だけ偏向した場合にだけ報告するタッチトリガープローブとは対照的に)走査プローブ(当業者において、アナログプローブとしても周知)である。プローブ20は、プローブに対して異なる方向にスタイラス偏向の範囲を示す別個の値(例えば、x方向の偏向の範囲の値、y方向の偏向の範囲の別個の値、および/またはz方向の偏向の範囲の別個の値は、すべてプローブに対して測定される)を出力することが可能であり、および/または集約される偏向値を出力することが可能である。工作機械用の走査プローブは、周知であり、例えば、Renishaw plc.から入手可能なSPRINT(登録商標)プローブがある。理解されることとなるように、他のプローブおよび他の技術は、用いられることが可能である。
【0047】
検査されるワークピースの特徴は、スタイラス先端26をワークピース16の特徴に接触させることによって測定されることが可能である。プローブ20からのスタイラス偏向データは、例えば、有線接続を介して、または本願例示において、受信機9およびインターフェース10を介して無線で、PC8に瞬間的且つ継続的にストリーミングされることが可能である。プローブ20と受信機9との間の接続は、例えば、光学的または無線であることが可能である。理解されることとなるように、他の技術は、スタイラス偏向データを転送することに用いられることが可能である。例えば、データは、間隔を置いて(定期的にまたは不定期で)、または、例えば、要求された場合にだけ、伝送されることが可能である。他の例示的な実施形態において、スタイラス偏向データは、プローブ20におけるメモリ内に局所的に格納されることが可能であり、後で、例えば、有線または無線のリンクを介して、PC8にダウンロードされる。
【0048】
任意選択で、プローブ20からのデータは、例えば、プローブ20およびテーブル14(これ故に、ワークピース16)の相対的な位置に関するデータと組み合わせることが可能である。例えば、PC8上で動作するプロセスは、プローブ20からのデータとスピンドル12およびテーブル14の位置データとを組み合わせるように構成されることが可能である。このようなスピンドル12およびテーブル14の位置データは、(例えば、工作機械上のエンコーダーから判定されるというよりはむしろ、工作機械を駆動するための命令に基づいて)想定されることが可能であるか、またはx軸、y軸、およびz軸のいずれかまたはすべてにおけるスピンドル12およびテーブル14の位置を監視する測定デバイス(図示せず)から取得されることが可能である。このような測定デバイスは、例えば、x軸、y軸、およびz軸におけるスピンドル12およびテーブル14の位置を制御するモーター11、13、15の一部の回転位置を監視するリゾルバまたはエンコーダーであることが可能である。部品の形状を判定するプロセスが、スピンドル12およびテーブル14の位置を監視する測定デバイスからのデータを用いる場合において、クロック/同期信号(例えば、インターフェース10によって発行される)は、用いることが可能であり、同時にスピンドル12およびテーブル14の位置データおよびプローブデータ(例えば、米国特許第US7970488号に記載されているように)を判定することに役立つ。
【0049】
したがって、データポイントは、測定デバイスおよび人工物の(周知であるか、想定される)相対的な位置についての情報をその位置から測定される表面までのベクトルと組み合わせることによって取得されることが可能である。上記のように、プローブ20は、例えば、x方向の偏向の範囲の値、y方向の偏向の範囲の別個の値、および/またはz方向の偏向の範囲の別個の値のプローブに相対的に異なる方向にスタイラス偏向の範囲を示す別個の値を出力することが可能である。このような場合において、測定デバイスが人工物に対して保持されている周知/想定される相対的な位置からのベクトルの方向、および測定されている表面は、周知であることが可能である。また、上記のように、プローブ20は、集約される偏向値を出力することが可能であり、ここで、測定デバイスが人工物に対して保持される周知/想定される相対的な位置からのベクトルの方向、および測定されている表面は、想定されることが可能である。
【0050】
図1の例示の設定を用いて、円筒形ワークピース16がプローブによって測定される場合、スピンドル12は、垂直に(z軸に沿って)動かす必要があり、テーブル14は、プローブの先端26を円筒形ワークピース16の表面へと接触させるように(x軸および/またはy軸に沿って)横方向に動かす必要がある。次に、テーブル14は、例えば、プローブ先端26をターゲット走査線(または「公称測定線」)19に沿って走査させるように、ワークピース16を円の中で動かすように、x軸およびy軸に沿って同時に(例えば、同期した方法で)動かす必要がある。このような円形運動を実現するために、x軸およびy軸に沿ったテーブル14の動作方向を多様な回数逆転させることが必要となる。任意選択で、z軸は、また、ワークピース16のスパイラル走査をさせるために同時に動かすことが可能である。
【0051】
図2(b)のグラフに図示されるように、円形にテーブル14を駆動するために、x軸およびy軸のそれぞれが正弦波運動に従って前後に動かすように命令することが要求され、x軸およびy軸の動作は、90°位相シフトされる。図2(b)において、経時的なx軸に沿ったテーブルの要求/命令/指示位置は、点線34によって図示され、経時的なy軸に沿ったテーブルの要求/命令/指示位置は、破線および二重点線36によって図示される。
【0052】
本願発明の説明に役立てるために、ワークピース16は、完全な円筒であると想定されることとなり、テーブル14およびワークピース16は、円筒形ワークピース16の中央を中心とする完全な円形運動でテーブル14を駆動することを意図する命令に従って、x軸およびy軸に沿って動かすことが想定される。このような状況において、プローブの半径方向/合計の偏向は、ワークピース16上のターゲット走査線19の周りのすべての位置で一定となることが予想される。この一定の偏向は、図2(a)のグラフの破線30によって概略的に図示され、ここで、「D」は、プローブの偏向を表現して、θは、円形の特徴についての位置を表現する。
【0053】
しかしながら、このような状況において、プローブのスタイラス24の偏向は、テーブルが動くにつれて、変化する傾向があることが見出されることによって、プローブは、ワークピース16の円形の表面を測定し、図2(a)のグラフに実線のギザギザ線32によって概略的に図示されている。図2(a)および(b)に図示されるように、プローブ偏向のこのような変化は、ワークピース16を駆動する線形軸が方向を逆転する位置/時間と一致することが見出される。これは、例えば、モーターバックラッシュによって少なくとも部分的に引き起こされることが可能である。
【0054】
具体的に、軸のモーターが逆転する場合に(例えば、x軸に対するモーター)、モーターが実際に軸を動かし始める前に、モーターにおける「緩み」または「遊び」のために駆動するように構成されているわずかな遅延がある。しかしながら、図2で明確に図示されるように、1つの軸に対するモーターが逆転する点(例えば、この例示におけるx軸に対するモーター13)で、他の軸に対するモーター(つまり、この例示におけるy軸に対するモーター15)は、他の軸が依然として一定の方向(および実質的に一定のピーク速度で)に駆動している。したがって、i)一つの軸が逆転後に実際に動かし始める前の遅延、およびii)他の軸がまだ動いており、プローブのスタイラス24の偏向の範囲は、プローブがターゲット走査線19の周りを動かすにつれて変化することとなる影響を与える組み合わせのためである。
【0055】
図3は、反時計回り方向にとられる円形の特徴の判定された形状に対するプローブ偏向のこの変化の効果を概略的に図示する。図3において、破線38は、特徴の実際の円形形状を図示して、実線は、プローブの出力が軸の想定される位置と組み合わされるか、またはモーターのエンコーダーから判定される位置情報と組み合わされる場合に判定されることになる不格好な円形の特徴を図示する。
【0056】
軸逆誤差は、可変であるため、較正が難しいことがある。例えば、それぞれの軸に対する軸逆転誤差は、位置に依存して異なることがあり、温度などの環境要因によって影響を受けることもある。それにもかかわらず、本願発明の方法(その例示は、より詳細に以下で説明される)は、位置および環境要因にかかわらず、軸逆転誤差の影響を低減することとなる。
【0057】
本明細書で用いられる図は、完全に円形の特徴を想定する。それにもかかわらず、理解されることとなるように、実際には、生産部品の湾曲した特徴は、未知の(例えば、較正されていない)外形/形状を有する。したがって、例えば、円筒形/円形であることを意図する特徴は、製造プロセスにおける不正確さに完全な円形外形を有する可能性が低く、それ故に、軸逆転誤差を見分けることが困難である。それにもかかわらず、本願発明の方法(その例示は、より詳細に以下で説明される)は、それを識別する必要がなく、本質的に軸逆転誤差の影響を低減することとなる。また、本明細書で説明される図は、実際に経験される可能性が高い誤差を大幅に誇張する(且つ、典型的な工作機械装置から通常予想される問題の規模を表現するものではない)。実際に経験された軸逆転によって引き起こされる測定における実際の誤差は、(数ミクロン程度で)非常に小さいため、目に見えることはなく、他の誤差発生源と混在していることがある。それにもかかわらず、本願発明者は、軸の逆転および「ロストモーション」の他の発生源によって引き起こされる誤差が、湾曲した特徴の形状測定に重大な影響を与えることがあると識別した。
【0058】
図4は、本願発明にしたがって、湾曲の形状測定の精度を改善するために(具体的に、ワークピース16の湾曲の形状測定の精度を改善するための)例示的なプロセス50を図示する。この方法は、ステップ52で、工作機械装置2を制御すること、プローブ20に、湾曲した経路に沿った第1の方向にワークピース16の円筒面の周りを測定させること、この実施形態において、円形ターゲット走査線19に沿って測定されることを備える。例えば、上述の実施形態に従って、方法は、x軸およびy軸を制御することを含むことが可能であり、円形運動でテーブル14を動かすことによって、プローブ20が円形ターゲット走査線19に沿って円筒面を時計回り方向に測定する。理解されることとなるように、円形ターゲット走査線に沿ってとられるそれぞれの測定は、円形ターゲット走査線に対して実質的に半径方向に取得される。
【0059】
次に、方法は、ステップ54で、工作機械装置2を制御することを備え、プローブ20に、同一の円形ターゲット走査線19に沿ってワークピース16の円筒面の周りで第2の測定を実行させるが、この場合において、x軸およびy軸は、テーブル14およびワークピース15を円形ターゲット走査線19に沿って動かすように制御されることによって、プローブ20が円形ターゲット走査線19に沿って円筒面を反時計回り方向に測定する。再び、円形ターゲット走査線に沿ってとられるそれぞれの測定は、円形ターゲット走査線に対して実質的に半径方向に取得される。
【0060】
説明される実施形態において、人工物および測定デバイスは、同一の湾曲した経路に沿って位置決め装置によって互いに相対的に動かすことによって、同一のターゲット走査線が時計回りおよび反時計回りの両方の方向で測定されることによって、工作機械装置の動作空間内のターゲット走査線の位置が、時計回りおよび反時計回りの両方の方向で同一である。さらに、説明される実施形態において、測定デバイスおよび人工物の相対的な配向構成は、時計回りおよび反時計回りの走査/測定動作の両方に対して同一である(例えば、ワークピースは、時計回りおよび反時計回りの走査/測定動作の測定の間で回転しない)。
【0061】
次に、方法は、ステップ56で、第1および第2の測定から得られるデータを用いて、具体的に、ワークピース16の円筒面の真円度の形状を判定することを備える。ステップ56は、PC8で実行されるプロセスによって実行されることが可能であるが、理解されることとなるように、これは、必ずしもそうである必要性はない。例えば、測定データは、別のプロセッサデバイス(図示せず)に転送されることが可能であり、ステップ56は、その他のプロセッサデバイスによって実行されることが可能である。第1および第2の測定からのデータが円形を判定するためにどのように用いられるかは、以下でより詳細に説明される。
【0062】
図5のグラフは、テーブルが時計回り方向の移動がとられ、ワークピース16の内側円筒面のターゲット走査線19に沿って取得される第1のデータポイントのセットを表現する第1の線60を図示する。図5は、また、第1の測定として、ワークピース16の円筒面の同一のターゲット走査線19に沿って取得されるが、テーブル14が反時計回り方向に移動がとられ、データポイントの第2のセットを表現する第2の線62を図示する。示されるように、これらのそれぞれのデータポイントのセットは、軸逆転誤差の影響を含み、ワークピース16の円筒面の不格好な表現をもたらす。
【0063】
本願発明のある実施形態にしたがって、時計回りおよび反時計回りの動作の間に取得されるデータポイントは、第1および第2のデータセットによって表現される表面間の中間表面に存在する第3のデータポイントのセットを取得することに用いられ、次に、真円度は、第3のデータポイントのセットから判定されることが可能である。例えば、(x1n,y1n)=時計回りのデータポイント、(x2n,y2n)=反時計回りのデータポイント、(xn,yn)=中間表面の第3のデータポイントのセット
【0064】
図6を参照すると、図示されるように、時計回り60と反時計回り62のデータポイントとの間に1:1の対応がないことがある。ある例示の実施形態にしたがって、(xn,yn)データポイントは、以下のよう算定されることが可能である。データセット(例えば、反時計回りのデータセット)のうちの1つのそれぞれの点(x1n,y1n)に対して、同一の角度θに対して最も近い他のデータセット(例えば、時計回りのデータセット)から点(x2m,y2m)を選択する。次に、以下のような(xn,yn)データポイントを取得する。
【0065】
【数1】
【0066】
図6は、3つの例示的な派生データポイントを図示する。真円度は、すべてのnにわたって(xn,yn)を用いて算定されることが可能である。(x1n,y1n)と(x2m,y2m)との間のわずかな角度の差は、点(xn,yn)が依然として所望の表面に存在するため、形状/真円度値に実質的に影響を与えることとはならない。上記の説明されるプロセスは、測定されるデータセット(例えば、反時計回りのデータセット)のうちの1つのそれぞれおよびそれぞれの測定データポイントに対して派生されたデータポイントを見出すが、これは、必ずしもそうである必要性はない。例えば、本願方法は、測定されるデータセットのうちの1つの点のサブセット(例えば、反時計回りのデータセット)に対して、例えば、測定されるデータセットのうちの1つのそれぞれの他の点に対して、派生されたデータポイントを派生することを備えることが可能である。
【0067】
図5に戻って参照すると、第3のデータポイントのセットを表現する中間表面を表現して、これは、第1および第2のデータセットを表現する表面/線60、62から等距離である点線および破線64が図示される。図に示されるように、中間線64は、第1の線60および第2の線62よりも円形である。したがって、第3のデータポイントのセットから判定される形状/真円度測定は、第1および第2のデータセットのいずれかから判定される形状/真円度測定よりも、ワークピース16の円筒面をより表現する真円度測定を提供することとなる。
【0068】
上記のプロセスは、第3のデータポイントのセットを判定することを含むが、理解されることとなるように、これは必ずしもそうである必要性はない。例えば、方法は、湾曲を適合することを含むことが可能であることによって、第1および第2のデータポイントのセット間に等距離である。例示的な実施形態において、湾曲は、第1および第2のデータポイントのセットのそれぞれを通過させることが可能であり、次に、第3の湾曲は、適合されることが可能であることによって、第1および第2の湾曲間に等距離である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】