(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 255/58 20060101AFI20230329BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 5/28 20060101ALI20230329BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230329BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20230329BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230329BHJP
A61P 5/26 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230329BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230329BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230329BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230329BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230329BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230329BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20230329BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/415 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20230329BHJP
C07D 231/16 20060101ALI20230329BHJP
C07D 231/14 20060101ALI20230329BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20230329BHJP
C07D 209/08 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C07C255/58
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P5/28
A61P15/08
A61P15/02
A61P15/10
A61P5/26
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/22
A61P17/14
A61P17/00
A61P13/08
A61P25/18
A61P21/00
A61P9/14
A61P25/02
A61P17/08
A61P17/10
A61K31/415
A61K31/4155
A61K31/277
A61K31/4439
A61K31/405
A61K31/4045
C07D231/16 CSP
C07D231/14
C07D401/12
C07D209/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550924
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021019490
(87)【国際公開番号】W WO2021173731
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504326686
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン, ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ポンヌサミ, タマライ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, デュアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒー, ヤーリー
(72)【発明者】
【氏名】ホワン, ドン-ジン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086BC14
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA44
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC10
4C086ZC41
4C086ZC42
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206HA14
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA05
4C206ZA12
4C206ZA15
4C206ZA18
4C206ZA22
4C206ZA44
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA92
4C206ZA94
4C206ZB26
4C206ZC10
4C206ZC41
4C206ZC42
4H006AA01
4H006AB21
4H006AB27
4H006AB28
4H006QN30
(57)【要約】
本発明は、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト、合成中間体および副生成物および関連化合物、ならびにそれらを含む組成物、ならびに前悪性腫瘍および良性前立腺過形成を含めた前立腺の過剰増殖、前立腺がん、進行前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、トリプルネガティブ乳がん、アンドロゲン受容体を発現する他のがん、男性型脱毛症または他の高アンドロゲン性皮膚疾患、ケネディー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、腹部大動脈瘤(AAA)および子宮筋腫などの、アンドロゲン受容体依存性疾患および状態の処置におけるそれらの使用、ならびにARの病原性または抵抗性変異を含めたアンドロゲン受容体-完全長(AR-FL)、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および病原性ポリグルタミン(polyQ)多型のレベルを低下させるための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造:
【化62】
[式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、-アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、前記アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、あるいは水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、前記アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有し、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員の飽和または不飽和複素環式環を形成する]
によって表される化合物、
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せ。
【請求項2】
前記化合物が、式IIの構造
【化63】
[式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、前記アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、あるいは水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、前記アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有し、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員の飽和または不飽和複素環式環を形成する]
によって表される、請求項1に記載の化合物、もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せ。
【請求項3】
前記化合物が、以下の化合物のうちのいずれか1つの構造
【化64】
【化65】
によって表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記求核剤アクセプター基が、マイケル付加反応のアクセプター、または-NCO、-NCS、-N
3、2-ハロアセチルもしくはハロメチルのうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
aおよびR
dが、同時にHではない、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
化合物15の構造:
【化66】
によって表される化合物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、あるいはそれらの任意の組合せ、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とする対象における、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態を処置する方法であって、前記対象に治療有効量の請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含む、方法。
【請求項10】
前記化合物が、アンドロゲン受容体(AR)に非可逆的に結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象における、前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、AR-スプライスバリアント(AR-SV)分解活性、完全長(AR-FL)分解活性、AR-SV阻害またはAR-FL阻害活性のうちの少なくとも1つに応答する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における乳がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、ARを発現する乳がん、AR-SVを発現する乳がんおよび/またはAR-V7を発現する乳がんを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における、ケネディー病、ざ瘡、皮脂の過剰産生、男性型多毛症または脱毛症である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における女性におけるホルモンの疾患または状態である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
女性における前記ホルモンの疾患または状態が、性的早熟、月経困難、無月経、多胞性子宮症候群、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮異常出血、早発月経、線維嚢胞性乳腺疾患、子宮の類線維腫、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症、妊娠子癇、早期分娩、月経前症候群または膣乾燥のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における男性におけるホルモンの疾患または状態である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
男性における前記ホルモンの疾患または状態が、男性における性腺機能亢進症、色情症、性機能障害、女性化乳房、性的早熟、認知および気分の変化、うつ病、脱毛、高アンドロゲン性皮膚障害、前立腺の前がん状態病変、良性前立腺肥大、前立腺がんおよび/または他のアンドロゲン依存性がんのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における、性的倒錯、色情症、パラフィリア、アンドロゲン精神障害、男性化またはアンドロゲン不応症候群である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における、ARを発現するがんである、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、前記対象における、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、子宮筋腫または腹部大動脈瘤(AAA)である、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記アンドロゲン受容体依存性疾患または状態が、対象において、ポリグルタミン(polyQ)AR多型によって引き起こされる、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前立腺がん(PCa)に罹患している男性対象の前立腺がんを処置する方法またはその生存期間を増大する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、あるいはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
対象における、AR-スプライスバリアントのレベルを低下させる方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、あるいはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する記述
本発明は、R01 CA229164の元、米国国立がん研究所によって助成された、連邦政府の支援によりなされたものであった。連邦政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、前悪性腫瘍および良性前立腺過形成を含めた前立腺の過剰増殖、前立腺がん、進行前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、トリプルネガティブ乳がん、アンドロゲン受容体を発現する他のがん、男性型脱毛症または他の高アンドロゲン性皮膚疾患、ケネディー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、腹部大動脈瘤(AAA)および子宮筋腫などの、アンドロゲン受容体依存性疾患および状態を処置するための、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物、合成中間体、および副生成物、および関連化合物、ならびにそれらを含む組成物、ならびにそれらの使用、ならびにARの病原性または抵抗性変異を含めたアンドロゲン受容体-完全長(AR-FL)、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および病原性ポリグルタミン(polyQ)多型のレベルを低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
前立腺がん(PCa)は、米国において男性の間で最も高い頻度で診断される非皮膚がんのうちの1つであり、米国では、毎年200,000件を超える新規症例および30,000件を超える死亡を伴う、2番目に一般的ながん死亡の原因となっている。PCaの治療剤の市場は、世界で年率15~20%で成長している。
【0004】
アンドロゲン遮断療法(ADT)は、進行PCaの標準処置である。進行前立腺がんを有する患者は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、LHRHアンタゴニスト、または両側精巣摘除術のいずれかによってADTを受ける。ADTに初期応答があるにもかかわらず、疾患進行は不可避であり、がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)として現れる。放射線照射または手術による一次処置を受ける前立腺がんを有する患者の最大で30%が、一次処置の10年以内に転移性疾患を発症する。年間、約50,000名の患者が、転移性CRPC(mCRPC)と呼ばれる転移性疾患を発症する。
【0005】
CRPCを有する患者は、12~18カ月の生存期間中央値を有する。CRPCは、去勢抵抗性であるが、継続的成長のためには、依然としてアンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達軸に依存している。CRPC再出現の主な理由は、1)イントラクラインアンドロゲン合成、2)ARスプライスバリアント(AR-SV)、例えばリガンド結合ドメイン(LBD)が欠如しているAR-SV、3)ARアンタゴニストに抵抗する能力を有するAR-LBD変異(すなわち、ARアンタゴニストによる阻害に感受性のない変異体、および一部の場合、ARアンタゴニストは、これらのLBD変異を有するARのアゴニストとして作用する)、4)腫瘍内のAR遺伝子の増幅(例えば、転写因子のETSファミリーなどの他の遺伝子の融合によって駆動されるようなもの、例えば、PMID:20478527、30033370を参照されたい)、および5)例えば、PMID:27897170に記載されている、腫瘍内のAR遺伝子の再配列などの代替機構によるARの再活性化である。CRPCの処置における進歩への重大な障壁は、LBDを介して作用するダロルタミド、エンザルタミド、ビカルタミドおよびアビラテロンなどのARシグナル伝達阻害剤が、最もよく知られているAR-SVであるAR-V7などの、N末端ドメイン(NTD)依存性の構成的活性型AR-SVによって駆動される成長を阻害することができないことである。CRPC患者においてエンザルタミドおよびアビラテロンを用いる最近の影響力の高い臨床試験により、エンザルタミド(Xtandi)または酢酸アビラテロン(Zytiga)による処置を開始した202名の患者のうち、AR-V7ポジティブ患者の13.9%のみが、上記処置のいずれかへのPSA応答を有することが実証され(Antonarakis ES, et al. J. Clin. Oncol. 2017 April 6. doi: 10.1200/JCO.2016.70.1961)、AR-SVを標的する次世代ARアンタゴニストを必要とすることを示している。さらに、かなり多くのCRPC患者が、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミドなどに不応性となり、これは、次世代ARアンタゴニストの必要性を強調するものである。
【0006】
現在の証拠により、CRPCの成長は、AR-V7などのLBDが欠如しているAR-SVのものを含む構成的活性型ARに依存しており、したがって、従来のアンタゴニストによって阻害することができないことが実証されている。AR LBDとは異なるドメインへの結合によるARの阻害および分解は、CRPCを管理するための代替戦略を提供する。
【0007】
本明細書に記載されている通り、ARのNTDのAF-1領域は、本発明のSARCAが非可逆的に結合していることを特徴とする。本発明のSARCAと共にインキュベートされたAF-1のトリプシン消化物に由来する共有結合により修飾されたペプチドが単離されて、質量分析法によって同定され、SARCAによりARのAF-1の安定な共有結合性付加物が生成したことが間違いなく立証された。さらに、本発明のSARCAによって、転写のAR-V7依存性活性化、すなわちAR-V7トランス活性化の阻害によって明らかにされたように、AF-1の機能活性が阻害された。AF-1とAR-V7のどちらも、従来のARアンタゴニストに必要なLBDが欠如している。さらに、SARCA化合物は、AR完全長(AR FL)およびAR SV分解活性を有した。これは、例えばPCa細胞系、またはin vivoでのアンドロゲン依存性臓器における、wtAR(すなわち、AR FL)の阻害(表1および2のIC50値を参照されたい)、LBDへの結合(表1および2のKi値を参照されたい)、およびin vitroでのAR依存性増殖の阻害(実施例15を参照されたい)などの、ARアンタゴニストの標準的基準に追加されるものであり、これらの基準は、LBD媒介性阻害と同等であった。NTDまたはLBD結合部位を介する低分子アンタゴニストのARへの非可逆的結合、すなわち共有結合性結合の報告は、これまで、不良な薬物動態特性を有する海洋天然生成物の場合にしか見られず、臨床試験では不安定であることが証明された(EPI-506を参照されたい)。アクリルアミドリンカーに組み込まれた、フルタミド、ビカルタミド、エノボサルム、UT-69、UT-155およびUT-34を含む高度に有能なプロパンアミドARリガンドを模倣するSARCA活性によって、AR親和性/選択性および調節可能な弾頭反応性の改善がもたらされ、このことは、本発明のSARCAの場合に観察された著しく幅広いAR拮抗作用のプロファイルを維持すると同時に、前例のないAR-V7阻害効力があることを説明する一助となる。これらのSARCAは、いかなる他のアンタゴニストでも処置不可能なCRPCを処置するための新規治療剤として発展する可能性を有する。AF-1に非可逆的に結合して阻害するこれらの特有の特性によって、AR-V7などのLBDが欠如した、構成的に活性なAR SVを阻害する特有の能力がもたらされる。これらの特有の特性は、AR SVが、前立腺がん患者に課す健康面での帰結に打ち勝つのにかなりの重要性を有する。LBDに非可逆的に結合するSARCAはまた、上で箇条書きされたものなどのCRPCの既知の機構の多数に打ち勝つ新規な特徴を有すると思われる。
【0008】
ARを非可逆的に阻害または分解する分子は、成長因子もしくはシグナル伝達経路を介するいずれの偶発的なAR活性化も、または無差別なリガンド依存性活性化も阻止する。さらに、AR-SVの構成的活性化を阻害する分子は、CRPC患者に広範囲の利益をもたらすのに極めて重要である。
【0009】
現在、非可逆的ARアンタゴニストは、臨床実務において利用可能ではない。LBDの非可逆的な阻害剤は知られておらず、唯一のARアンタゴニストである5N-ビカルタミド(PMID:28981251)だけが、5N-ビカルタミドのアリールニトリルA環によるC784の可逆的アルキル化による可逆性の共有結合性阻害と一致すると、突然変異解析によって特徴付けられている。さらに、例えば、EPI-001、EPI-506、シントカミド、グリセロールエーテルナフェテノン(Naphetenone)B、3E10-AR441 BSAb(二重特異的抗体)などの数種のAF-1結合性ケモタイプしか報告されていない。ニファテノン系(例えば、ニファテノンAおよびニファテノンB)、ビスフェノールA誘導体(例えば、EPI-001、EPI-506およびEPI-002)、シントカミド系(例えば、シントカミドA)およびジサミド系(例えば、ジサミドA)などのポリクロロ化小ペプチドなどの海綿に由来する、このようなAF-1結合性ケモタイプの一部が、PMID:30565725Hにおいて概説されている通り、アルキル化弾頭を有した。しかし、AF-1結合性ケモタイプのいずれも、SARD活性を有するとは報告されなかった。これらの先行技術の薬剤が、AR-NTDに結合し、AR機能およびPCa細胞成長を阻害することが報告されているが、これらの薬剤は、親和性は低く、受容体を分解する能力を有していない。本明細書に記載されているSARCAはまた、AR-NTDに結合して、NTD駆動性(例えば、リガンド非依存性)AR活性を阻害するが、nMの範囲でARの強力な阻害を発揮し、重要なことに、SARD活性を有した。SARDであるニクロサミド、マハニン、ARN-509、AZD-3514およびASC-J9を含む、数種のケモタイプしかARを分解することが知られていない。しかし、これらの分子は、それらの結合係数よりもはるかに高い濃度でARを間接的に分解し、かつ上記の分子は、近年において処置抵抗性CRPCが再発する主な理由となっているAR-SVを分解することができない。
【0010】
本発明は、強力かつ非可逆的にARに結合する、ARを拮抗する、およびARを分解する、特有の薬理学を有する新規なARアンタゴニストを記載する。このような選択的AR共有結合性アンタゴニスト(SARCA)は、分解および(非可逆的な)阻害の二重の機能を有しており、したがって、現在使用されている、または以前に報告された入手可能ないずれのCRPC治療剤とも異なる。これらのSARCA化合物は、増殖するためにAR FLおよびSVに依存するPCa細胞および腫瘍の成長を阻害し、当分野によって公知であり、本明細書において一部が概説されている、幅広いAR依存性またはアンドロゲン依存性の疾患または状態を処置する。
【0011】
ARとPCaとの間の正の相関関係、および広い範囲のCRPC抵抗機構を阻害することが可能な絶対的なARアンタゴニストがないことは、新規もしくは代替機構および/または結合部位を介してAR機能を阻害し、かつ変化した細胞環境内でのアンタゴニスト活性を引き出すことができる分子が必要であることを強調するものである。
【0012】
ダロルタミド、エンザルタミド、ビカルタミドおよびフルタミドなどの従来の抗アンドロゲン、ならびにアンドロゲン遮断療法(ADT)は、前立腺がんへの使用が承認されているが、抗アンドロゲンは、様々な他のホルモン依存性がんおよびホルモン非依存性がんにも使用することができるという重要な証拠が存在する。例えば、抗アンドロゲンは、乳がん(Breast Cancer Res. (2014) 16(1): R7におけるエンザルタミド;ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03004534におけるダロルタミド)、非小細胞肺がん(shRNAi AR)、腎細胞癌(ASC-J9)、性腺腫瘍および精上皮腫などの部分型アンドロゲン不応症候群(PAIS)に関連する悪性腫瘍、進行膵臓がん(World J. Gastroenterology 20(29), 9229)、卵巣、卵管または腹膜のがん、唾液腺のがん(Head and Neck (2016) 38, 724-731;ADTが、ARを発現する再発性/転移性唾液腺がんにおいて試験されており、無増悪生存期間および全生存エンドポイントに対して利益を有することが裏付けられている)、膀胱がん(Oncotarget 6(30), 29860-29876); Int J. Endocrinol (2015)、論文ID384860)、膵臓がん、リンパ腫(マントル細胞を含む)および肝細胞癌において試験されている。これらのがんにおけるSARCAなどの一層強力な抗アンドロゲンの使用は、これらのがんおよび他のがんの進行を一層、効果的に処置することができる。乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、精巣がん、部分型アンドロゲン不応症候群(PAIS)に関連するがん(性腺腫瘍および精上皮腫など)、子宮がん、卵巣がん、卵管もしくは腹膜のがん、唾液腺がん、膀胱がん、泌尿生殖器がん、脳がん、皮膚がん、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝臓がん、肝細胞癌、腎がん、腎細胞癌、骨肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、結腸がん、肛門周囲腺腫、または中枢神経系のがんなどの他のがんもまた、SARCA処置から利益を受けることがある。
【0013】
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびHER2受容体キナーゼの発現が欠如した乳がんのタイプである。したがって、TNBCには、他のタイプの原発性乳がんを処置するために使用される、ホルモンおよびキナーゼによる治療標的がない。これに応じて、化学療法が、TNBCに対する最初の薬物療法となることが多い。興味深いことに、ARは、依然としてTNBCにおいて発現されることが多く、化学療法の代替となるホルモン標的化治療剤を提供することができる。ERポジティブ乳がんでは、ARの活性化は、乳房組織および腫瘍において、ERの作用を制限および/または妨害すると考えられているので、ARは、陽性予後指標となる。しかし、ERの非存在下では、ARは、実際に、乳がんの腫瘍の成長を支持することが可能である。ARの役割は、TNBCでは完全には理解されていないが、ある特定のTNBCのARが、LBDを欠くAR-SVのアンドロゲン非依存性活性化、またはAR完全長のアンドロゲン依存性活性化によって支持され得るという証拠が存在する。したがって、エンザルタミドおよび他のLBD指向性の従来のARアンタゴニストは、これらのTNBCのARにおけるAR-SVを拮抗することができないと思われる。しかし、本発明のSARCAは、AR-SVを破壊し(表1および2、ならびに実施例2および13を参照されたい)、ARのNTDにおける結合部位を介して(実施例4、5、9および10を参照されたい)AR SVを阻害することができる(実施例6および12を参照されたい)ARアンタゴニストであり(実施例3)、AR SV依存性細胞(実施例8を参照されたい)を含めたAR依存性前立腺がん細胞(実施例8および14を参照されたい)およびin vivoでのAR依存性標的臓器(実施例16)において、ARを拮抗することができ(これは、以前にかなりの処置を施されている抗アンドロゲン抵抗性CRPC患者集団および他のARを発現するがんにおいて抗腫瘍作用を実現するために必要と考えられる)、幅広い様々なAR依存性疾患および状態を処置する。
【0014】
ビカルタミドおよびフルタミドなどの従来の抗アンドロゲンは、前立腺がんにおける使用が承認された。後続の検討により、男性型脱毛症(男性型禿髪症)、尋常性ざ瘡および男性型多毛症(例えば、女性の顔の毛におけるもの)などのアンドロゲン依存性皮膚状態における抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリドおよび酢酸クロルマジノン)の有用性が実証されている。思春期前去勢により、皮脂産生および男性型脱毛症が予防されるが、これはテストステロンの使用によって逆転させることができ、そのアンドロゲン依存性が示唆されている。
【0015】
AR遺伝子は、エクソン1内のグルタミンリピート(polyQ)多型を有しており、これが短縮されると、ARトランス活性化が増大し得る(すなわち、アンドロゲン過多症)。短縮されたpolyQの多型は、脱毛症、男性型多毛症およびざ瘡を有するヒトにおいて、一層一般的であることが見出されている。皮膚への投与による従来の抗アンドロゲンは無効であり、それらの長期全身性使用は、女性化乳房症および勃起不全などの有害な性的影響のリスクを高めるので、従来の抗アンドロゲンは、これらの目的には望ましくない。さらに、上で議論したCPRCと同様に、ARは、内在性アンドロゲンであるテストステロン(T)およびジヒドロテストステロン(DHT)以外の様々な細胞因子(成長因子、キナーゼ、コアクチベーターの過剰発現および/または他のホルモン(例えば、エストロゲンまたはグルココルチコイド)による無差別な活性化など)によって活性化され得るので、リガンド依存性AR活性のみの阻害は十分でないことがある。結果として、従来の抗アンドロゲンを用いるTおよびDHTのARへの結合の遮断は、所望の効力を持たせるには十分ではないことがある。
【0016】
新たに出現しつつある概念は、全身性抗アンドロゲン作用をなんら引き起こすことなく、皮膚または他の組織の罹患領域で局所的に非可逆的にARを阻害する、または破壊するSARCAを局所施用することである。この使用のために、皮膚を貫通しない、または急速に代謝されるSARCAが好ましいと思われる。
【0017】
皮膚創傷の治癒が、アンドロゲンによって抑制されることが実証されているという知見が、この手法を支持している。マウスの去勢が、皮膚創傷の治癒を加速する一方、創傷における炎症を軽減する。アンドロゲンレベルと皮膚の治癒および炎症との間の負の相関関係により、高レベルの内在性アンドロゲンが、高アンドロゲン性皮膚状態を悪化させる別の機構が、部分的に説明される。さらに、上記の相関関係により、糖尿病性潰瘍もしくはさらには外傷などの創傷、またはざ瘡もしくは乾癬などの炎症性構成成分を有する皮膚障害の、局所SARCAによる処置に関する理論的根拠が提示される。
【0018】
男性型脱毛症は、中年までに白人男性の約50%、および80歳までに最大で90%に起こる。ミノキシジル(局所血管拡張剤)およびフィナステリド(全身性5アルファレダクターゼII型阻害剤)が、脱毛症に対してFDA承認されているが、治療効果が生じるには4~12カ月の処置を必要とし、30~60%において軽度~中度の毛髪再生を伴い、大部分において脱毛を止めるに過ぎない。現在、利用可能な処置は、個体間で幅広く異なり、望ましくない性的副作用を生じる、効力がゆっくりとし、かつ限定されるので、男性型脱毛症および他の高アンドロゲン性皮膚疾患を処置するための新規手法を見出すことが重要である。
【0019】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの選択的喪失、ならびに筋骨格萎縮を特徴とする、致死性の神経変性疾患である。疫学的および実験的証拠により、ALS病因へのアンドロゲンの関与が示唆されているが(”Anabolic/androgenic steroid nandrolone exacerbates gene expression modifications induced by mutant SOD1 in muscles of mice models of amyotrophic lateral sclerosis.” Galbiati M, et al. Pharmacol. Res. 2012, 65(2), 221-230)、アンドロゲンがALS表現型を改変する機構は不明である。ALSのトランスジェニック動物モデルにより、去勢手術(すなわち、アンドロゲンのアブレーション)をすると、生存期間が改善されることが実証された。アンドロゲンアゴニストであるデカン酸ナンドロロンによるこのような去勢された動物の処置により、疾患兆候が悪化した。去勢によりARレベルが低下し、これが、生存期間の延長の理由となる可能性がある。この生存利益は、アンドロゲンアゴニストによって逆転される(”Androgens affect muscle, motor neuron, and survival in a mouse model of SOD1-related amyotrophic lateral sclerosis.” Aggarwal T, et al. Neurobiol. Aging. 2014 35(8), 1929-1938)。とりわけ、デカン酸ナンドロロンによる刺激によって、タンパク質凝集と一致する知見である、ドデシル硫酸ナトリウムに不溶な生化学的複合体への内在性アンドロゲン受容体の動員が促進された。全体として、これらの結果は、アンドロゲン受容体ホメオスタシスの調節異常によるALS病因の改変剤としてのアンドロゲンの役割を明確にした。抗アンドロゲンは、ウンデカン酸ナンドロロンまたは内在性アンドロゲンの作用を遮断し、AR凝集による毒性を反転させるはずである。さらに、本発明のSARCAなどの、LBD依存性ARアゴニストの作用を遮断して、ARタンパク質レベルを同時に低下させることができる抗アンドロゲンは、ALSにおいて治療作用があると思われる。リルゾールは、ALS処置に利用可能な薬物であるが、それは、短期間作用しか実現しない。ALS患者の生存期間を延長する薬物に対する必要性に迫られている。
【0020】
アンドロゲン受容体の作用により、子宮増殖が促進される。短いpolyQ ARのアンドロゲン過剰は、平滑筋腫または子宮筋腫の増大と関連している(Hsieh YY, et al. J. Assist. Reprod. Genet. 2004, 21(12), 453-457)。ブラジル人女性のこれとは別の検討により、ARのより短いおよびより長い[CAG](n)リピートアレルは、その検討では、平滑筋腫の群に限定されことが見出された(Rosa FE, et al. Clin. Chem. Lab. Med. 2008, 46(6), 814-823)。同様に、アジア系のインド人女性では、長いpolyQ ARは、子宮内膜症および平滑筋腫に関連しており、高リスクマーカーとして見なすことができる。SARCAは、子宮筋腫を有する女性、とりわけ、より短いおよびより長い[CAG](n)リピートアレルを発現する女性において、既存の子宮筋腫を処置する、類線維腫の悪化を阻止する、および/または類線維腫に関連する発癌性を改善するために使用することができる。
【0021】
腹部大動脈瘤(AAA)は、身体に血液を供給する主要血管である大動脈の下位部分における領域の拡大である。ほぼ散水用ホースの厚さをしている大動脈は、心臓から胸部の中心部を通って腹部まで走る。大動脈は、身体の、血液の主な供給源となるので、破裂性腹部大動脈瘤は、生命を脅かす出血を引き起こす恐れがある。腹部大動脈瘤が成長するサイズおよび速度に応じて、処置は、経過観察から緊急手術まで様々となり得る。腹部大動脈瘤が一旦、発見されると、医師は、これを入念にモニタリングし、その結果、必要な場合、手術が計画され得る。破裂性腹部大動脈瘤の緊急手術は、危険度が高い恐れがある。AR遮断(薬理学的または遺伝的)は、AAAを低減する。Davisら(Davis JP, et al. J Vasc Surg (2016) 63(6):1602-1612)は、フルタミド(50mg/kg)またはケトコナゾール(150mg/kg)は、ブタの膵臓エラスターゼ(0.35U/mL)により誘発されたAAAを、ビヒクル(121%)と比べて、84.2%および91.5%、弱化したことを示した。さらに、AR -/- マウスは、野性型に比べると、AAA成長を弱化させた(64.4%)ことを示した(どちらもエラスターゼ処置されている)。こうして、AAAに罹患している患者にSARCAを投与すると、手術が必要になる点までAAAを反転させる、処置する、またはその進行を遅延させる一助となり得る。
【0022】
X連鎖球脊髄性筋萎縮症(SBMA、ケネディー病としても知られている)は、X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子中の欠陥から生じる筋萎縮症である。四肢近位および球筋力低下により、一部の場合、車椅子への依存を含む身体的制約がもたらされる。この変異は、アンドロゲン受容体のN末端ドメインに付加した、突出したポリグルタミン鎖(polyQ AR)をもたらす。内在性アンドロゲン(テストステロンおよびDHT)によるこの延びたpolyQ ARの結合および活性化によって、変異体アンドロゲン受容体のアンフォールディングおよび核移行がもたらされる。アンドロゲン誘発性毒性、およびpolyQ ARタンパク質のアンドロゲン依存性の核への蓄積が、病因の中心のように思われる。したがって、アンドロゲンにより活性化されるpolyQ ARの阻害は、治療選択肢になり得る(A. Baniahmad. Inhibition of the androgen receptor by antiandrogens in spinobulbar muscle atrophy. J. Mol. Neurosci. 2016 58(3), 343-347)。これらの段階が病因に必要であり、トランス活性化機能の部分的喪失(すなわち、アンドロゲン不応)および理解が不十分な神経筋変性をもたらす。抗アンドロゲンの使用を支持するものは、抗アンドロゲンであるフルタミドが、球脊髄性筋委縮症の3つのモデルにおいて、アンドロゲン依存性毒性から雄マウスを防御するという報告に起因している(Renier KJ, et al. Endocrinology 2014, 155(7), 2624-2634)。
【0023】
承認されている薬物の70%を超えるものが、競合的アンタゴニストまたは阻害剤として機能する。このような競合的アンタゴニストの効力は、アゴニストレベルを上昇させることによって低下する恐れがある。水素結合によりAR-LBDに結合してAR活性を阻害する、臨床的に現在使用されているARアンタゴニストはすべて、競合的である。しかし、アゴニストのレベルの上昇は、弱い疎水性結合および水素結合を壊すことによって、アンタゴニストを置き換える。このようなアンタゴニストとアゴニストとの間の競合は、速度論的平衡をもたらし、腫瘍内アンドロゲンを増加させて、アンタゴニストを置き換える代替経路を見つける機会をがんにもたらす。ARなどのタンパク質の非可逆アンタゴニストは、水素結合よりも10~20倍高いエネルギーを有する共有結合によりARに結合し、これによって、アゴニストサージからのいかなる競合も阻止する。タンパク質に恒久的に結合して、タンパク質を不活性な立体構造で固定する、タンパク質への共有結合性結合剤を発見することが非常に望ましい。例えば、CRPCおよび乳がん(BC)、ならびに多数の他のAR依存性疾患および状態は、選択的AR共有結合性アンタゴニスト(SARCA)から利益を得ることができる。
【0024】
共有結合性非可逆アンタゴニストは、タンパク質の再利用によってのみ置き換わることができ、内在性基質のいずれによっても置き換わることができないタンパク質に恒久的に結合する。共有結合性非可逆アンタゴニストの利点は、a)内在性基質との競合が低下するので、生化学的効力が改善されること、b)投与量が少なく、頻度も少なくなり、これによって、全体的な患者負荷の軽減をもたらすこと、c)連続的な標的抑制による、薬物抵抗性を阻止する可能性があることを含む。FDAによって承認された薬物の約30%は、共有結合性結合剤である。共有結合性結合薬物が、発見されて、いくつかの他の標的に承認されているが、核内受容体ファミリーは、標的に共有結合により結合するいかなる薬物も有していない。ホルモン性がんを標的する最も近い共有結合性結合薬は、アビラテロン(Cyp17A1阻害剤)およびフィナステリド(5αレダクターゼ阻害剤)であるが、これらは、アンドロゲン生合成経路における酵素を阻害し、核内受容体内では阻害しない。
AR-SVを分解するこの固有の特性は、極めて重要な健康結果を有する。わずか数種の分子だけが、AR-NTDまたはDNA結合ドメイン(DBD)に結合して、これらを阻害することが報告されている。非可逆的ARアンタゴニストは、依然として承認されていない。大部分の低分子アンタゴニストまたは阻害剤は、疎水性結合および水素結合によって標的タンパク質に結合し、競合的アンタゴニストとして機能する。結合は弱く、過度な競合体によって容易に置き換えられ得る。共有結合により(共有結合は、水素結合よりも少なくとも10倍高いエネルギーを有する)、および非可逆的に結合する分子を発見することが非常に望ましい。本明細書に記載されている選択的AR共有結合性アンタゴニスト(SARCA)により、ARの持続的な阻害、例えば、エンザルタミド(Enza)抵抗性のARおよびPCa腫瘍および処置不応性BCの阻害を実現することができる非可逆的ARアンタゴニストを発見することが重要である。さらに、幅広いアンドロゲン依存性疾患および状態が、ARアンタゴニストによる処置を受けやすいことが本明細書に記載されている。本発明のSARCAは、ARのアルキル化の他に、wtARのin vitroでの強力な阻害をさらに実現し(表1および2中のIC50値を参照されたい)、したがって、従来のARアンタゴニストと同じ範囲の疾患に有効となろう。すなわち、本発明のSARCAが有する新規特性、例えば、NTDにおけるAF-1の結合、NTDまたはLBDにおけるARのアルキル化、またはARの分解は、本発明のARアンタゴニストに感受性のある疾患の範囲を限定しない。代わりに、本発明のSARCAによる処置を克服することができる抵抗機構がより少ないため、これらの新規なARアンタゴニスト特性は、感受性の高いアンドロゲン依存性疾患および状態の範囲を拡大するよう働く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Antonarakis ES, et al. J. Clin. Oncol. 2017 April 6. doi: 10.1200/JCO.2016.70.1961
【非特許文献2】Breast Cancer Res. (2014) 16(1): R7
【非特許文献3】World J. Gastroenterology 20(29), 9229
【非特許文献4】Head and Neck (2016) 38, 724-731
【非特許文献5】Oncotarget 6(30), 29860-29876
【非特許文献6】Int J. Endocrinol (2015)、論文ID384860
【非特許文献7】”Anabolic/androgenic steroid nandrolone exacerbates gene expression modifications induced by mutant SOD1 in muscles of mice models of amyotrophic lateral sclerosis.” Galbiati M, et al. Pharmacol. Res. 2012, 65(2), 221-230
【非特許文献8】”Androgens affect muscle, motor neuron, and survival in a mouse model of SOD1-related amyotrophic lateral sclerosis.”
【非特許文献9】Aggarwal T, et al. Neurobiol. Aging. 2014 35(8), 1929-1938
【非特許文献10】Hsieh YY, et al. J. Assist. Reprod. Genet. 2004, 21(12), 453-457
【非特許文献11】Rosa FE, et al. Clin. Chem. Lab. Med. 2008, 46(6), 814-823
【非特許文献12】Davis JP, et al. J Vasc Surg (2016) 63(6):1602-1612
【非特許文献13】A. Baniahmad. Inhibition of the androgen receptor by antiandrogens in spinobulbar muscle atrophy. J. Mol. Neurosci. 2016 58(3), 343-347
【非特許文献14】Renier KJ, et al. Endocrinology 2014, 155(7), 2624-2634
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要旨
一態様では、本発明は、式Iの構造によって表される化合物
【化1】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せを提供する。
【0027】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IIの構造
【化2】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せによって表される。
【0028】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、α,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも1つの官能基を含有する。一実施形態では、このようなα,β-不飽和カルボニル官能基は、以下に限定されないが、α,β-不飽和ケトン、アミド、エステル、チオエステル、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物、イミドなどを含む。一実施形態では、α,β-不飽和官能基は、AR内の求核剤に対するマイケル付加反応のアクセプターとして働く。
【0029】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、イソシアナト(-NCO)、イソチオシアナト(-NCS)、シアナト(-CNO)、チオシアナト(-CNS)、アジド(N3)、フッ化スルホニル(-SO2F)、ハロメチル(-CH2-ハライド)、2-ハロアセチル(-NHCOCH2-ハライド)、ハロスルホニル(-NHSO2CH2-ハライド)などのうちの少なくとも1つである。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、AR内の求核剤に対する求核剤アクセプターとして働く。一実施形態では、前記AR求核剤は、NTD内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、AF-1ドメイン内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、LBD内に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Ra基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W1基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W3基またはW4基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Q1、Q2、Q3またはQ4基のうちのいずれか1つに存在する。
【0030】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の化合物のうちのいずれか1つの構造:
【化3】
【化4】
によって表される。
【0031】
一実施形態では、本発明の化合物は、化合物15の構造
【化5】
によって表される。
【0032】
一態様では、本発明は、本発明の化合物またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、あるいはそれらの任意の組合せ、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、本組成物は、局所使用向けに製剤化されている。一実施形態では、本組成物は、溶液剤、ローション剤、軟膏剤(salve)、クリーム剤、軟膏剤(ointment)、リポソーム剤、スプレー剤、ゲル剤、フォーム剤、ローラー状スティック剤、クレンジング用石鹸または棒、エマルション剤、ムース剤、エアロゾル剤、またはシャンプーの形態である。別の実施形態では、本組成物は、経口使用向けに製剤化されている。
【0033】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載されている本発明の化合物を投与するステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明の化合物は、アンドロゲン受容体(AR)に非可逆的に結合する。
【0034】
一実施形態では、対象におけるアンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、AR-スプライスバリアント(AR-SV)分解活性、AR完全長(AR-FL)分解活性、非可逆的もしくは可逆的なAR-SV阻害活性または非可逆的もしくは可逆的AR-FL阻害活性の少なくとも1つに応答する。
【0035】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は乳がんである。
【0036】
一実施形態では、対象は、ARを発現する乳がん、AR-SVを発現する乳がんおよび/またはAR-V7を発現する乳がんを有する。
【0037】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、ケネディー病である。
【0038】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、ざ瘡である。一実施形態では、ざ瘡は、尋常性ざ瘡である。
【0039】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、皮脂の過剰産生である。一実施形態では、皮脂の過剰産生の低減により、脂漏症、脂漏性皮膚炎またはざ瘡のうちの少なくとも1つが処置される。
【0040】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、男性型多毛症または脱毛症である。
【0041】
一実施形態では、脱毛症は、男性型脱毛症、円形脱毛症、化学療法に続発する脱毛症、放射線療法に続発する脱毛症、瘢痕化により誘発される脱毛症またはストレスにより誘発される脱毛症のうちの少なくとも1つである。
【0042】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、女性におけるホルモンの疾患または状態である。一実施形態では、女性におけるホルモンの疾患または状態は、性的早熟、月経困難、無月経、多胞性子宮症候群(multilocular uterus syndrome)、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮異常出血、早発月経、線維嚢胞性乳腺疾患、子宮の類線維腫、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症、妊娠子癇、早期分娩、月経前症候群または膣乾燥のうちの少なくとも1つである。
【0043】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、男性におけるホルモンの疾患または状態である。一実施形態では、男性におけるホルモンの疾患または状態は、男性における性腺機能亢進症、色情症、性機能障害、女性化乳房、性的早熟、認知および気分の変化、うつ病、脱毛、高アンドロゲン性皮膚障害、前立腺の前がん状態病変、良性前立腺肥大、前立腺がんおよび/または他のアンドロゲン依存性がんのうちの少なくとも1つである。
【0044】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、性的倒錯、色情症またはパラフィリアである。
【0045】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、アンドロゲン精神障害である。
【0046】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、男性化である。
【0047】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、アンドロゲン不応症候群である。
【0048】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、前記対象におけるARを発現するがんである。一実施形態では、ARを発現するがんは、乳がん、精巣がん、部分型アンドロゲン不応症候群(PAIS)に関連するがん(性腺腫瘍および精上皮腫など)、子宮がん、卵巣がん、卵管もしくは腹膜のがん、唾液腺がん、膀胱がん、泌尿生殖器がん、脳がん、皮膚がん、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝臓がん、肝細胞癌、腎がん、腎細胞癌、骨肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、結腸がん、肛門周囲腺腫、または中枢神経系のがんのうちの少なくとも1つである。
【0049】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
【0050】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、子宮筋腫である。
【0051】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、腹部大動脈瘤(AAA)である。
【0052】
一実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態は、対象において、ポリグルタミン(polyQ)AR多型によって引き起こされる。一実施形態では、polyQ-ARは、短いpolyQ多型または長いpolyQ多型である。一実施形態では、polyQ-ARは、短いpolyQ多型であり、本方法により、皮膚疾患がさらに処置される。一実施形態では、皮膚疾患は、脱毛症、脂漏症、脂漏性皮膚炎またはざ瘡のうちの少なくとも1つである。別の実施形態では、polyQ-ARは、長いpolyQ多型であり、本方法により、ケネディー病がさらに処置される。
【0053】
別の態様では、本発明は、処置を必要とする男性対象における、前立腺がん(PCa)を処置する方法または生存期間を増大する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載されている本発明の化合物を投与するステップを含む、方法を包含する。前立腺がんには、以下に限定されないが、進行前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、高リスクnmCRPCまたはそれらの任意の組合せが含まれる。本発明の別の実施形態は、アンドロゲン遮断療法(ADT)を実施することをさらに含む方法を包含する。代替的に、本方法は、既知のアンドロゲン受容体アンタゴニスト(複数可)またはADTによる処置に抵抗性の前立腺がんまたは他のがんを処置することができる。別の実施形態では、本方法は、エンザルタミド抵抗性前立腺がんを処置することができる。別の実施形態では、本方法は、アパルタミド抵抗性前立腺がんを処置することができる。別の実施形態では、本方法は、アビラテロン抵抗性前立腺がんを処置することができる。別の実施形態では、本方法は、ダロルタミド抵抗性前立腺がんを処置することができる。本発明のさらに別の実施形態は、本明細書に記載されている本発明の化合物により、前立腺がんまたは他のARアンタゴニスト抵抗性がんを処置する方法であって、アンドロゲン受容体アンタゴニスト(複数可)が、ダロルタミド、アパルタミド、エンザルタミド、ビカルタミド、アビラテロン、EPI-001、EPI-506、AZD-3514、ガレテロン、ASC-J9、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾールまたはスピロノラクトンのうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0054】
さらに、本発明の別の実施形態は、本発明の化合物を使用する、前立腺がんまたは他のARを発現するがんを処置する方法であって、他のがんが、乳がん(トリプルネガティブ乳がん(TNBC)など)、精巣がん、部分型アンドロゲン不応症候群(PAIS)に関連するがん(性腺腫瘍および精上皮腫など)、子宮がん、卵巣がん、卵管もしくは腹膜のがん、唾液腺がん、膀胱がん、泌尿生殖器がん、脳がん、皮膚がん、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝臓がん、肝細胞癌、腎がん、腎細胞癌、骨肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、結腸がん、肛門周囲腺腫、または中枢神経系のがんから選択される、方法を包含する。別の実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。
【0055】
本発明は、対象における、AR-スプライスバリアントのレベルを低下させる方法であって、対象に、治療有効量の本発明の化合物、またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、あるいはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法を包含する。本方法は、対象におけるAR-完全長(AR-FL)のレベルをさらに低下させるステップを含むことができる。
【0056】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結論部分において具体的に指摘され、明白に特許請求されている。しかし、本発明は、操作の統合および方法の両方に関して、その目的、特徴および利点と併せて、添付の図面と共に一読した場合、以下の詳細説明を参照することにより、最良に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、化合物1および4のARアンタゴニスト作用を図示する。ARトランス活性化アッセイは、AR、GRE-LUCおよびCMV-ウミシイタケ-LUCを用いてCOS細胞に行った。
【0058】
【
図2】
図2は、Schildプロットを使用して、1および4が共有結合性非可逆アンタゴニストであることを図示する。ARトランス活性化は、R1881の用量-応答および3回の用量のARアンタゴニストを用いて行った。競合的アンタゴニストであるエンザルタミドは、曲線が右側にシフトし、Hillの傾き1を有することを示す。1および4はどちらも、E
maxを低下させて、Hillの傾きは、1に近くはなかった。
【0059】
【
図3】
図3は、プロテオミクス質量分析法を使用して、1の共有結合性結合を図示している。1を、AR AF-1タンパク質と共にインキュベートし、タンパク質複合体は、トリプシン消化させた。質量分析法を行い、1のAF-1への結合を判定した。1は、パネル中に表示されているペプチドに結合した。上側のペプチドの338.08ダルトン分のM.Wt.のシフトは、1のM.Wt.に相当する。同様に、1の3つの分子は下側のペプチドと共有結合により相互作用し、M.Wt.は、998.75のシフトに対応する。
【0060】
【
図4】
図4は、1がAR-V7トランス活性化を阻害したことを図示する。トランス活性化検討は、AR-V7およびGRE-LUCおよびp65およびNFkB-LUCを用いて行った。細胞は、1またはエンザルタミドにより処理した。ルシフェラーゼアッセイは、処理の24時間後に行った。1は、AR-V7トランス活性化を阻害したが、NFkBトランス活性化を阻害しなかった。
【0061】
【
図5】
図5は、1がPCa細胞増殖を阻害したことを図示する。PCa細胞は、96ウェルプレートにおいてプレート培養し、図に表示されている通りに処理した。3日後、培地を交換し、細胞を再度処理した。6日間の処理の終了時に、SRBアッセイを行って、生存細胞数を測定した。1は、LNCaPおよび22RV1細胞の増殖を阻害した。より多い用量では、1は、COS細胞の増殖を阻害した。
【0062】
【
図6】
図6は、本発明のSARCA化合物は、完全長野性型ARをin vitroで阻害するが、この化合物の効力は、LBD結合性抗アンドロゲンであるエンザルタミド(約300nM)に比べて、9と同等であるか、またはそれより弱い(図中の10および他のすべて)ことを図示する。ARトランス活性化:COS7細胞を、フェノールレッドを含まないDME+5% csFBS中、40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、Lipofectamine試薬を使用して、0.25μgのGRE-LUC、0.01μgのCMV-LUC、0.025μgのCMV-hARをトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を0.1nMのR1881の存在下で、用量-応答分の化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0063】
【
図7】
図7は、6が、トリプリンペプチドに非可逆的に結合する、SARCA化合物であることを図示する。質量スペクトルの検討:AR AF-1を、6(共有結合性結合剤)単独と共に、または6およびUT-34(UT-34は、AF-1の非共有結合性結合剤である)と共にインキュベートした。AF-1は、200μMのUT-34と共に、2時間、次に、6(100μM)と共に事前インキュベートした。
【0064】
【
図8】
図8は、Schildプロット解析を使用して、エンザルタミドは可逆性AR阻害剤である一方、SARCA6および8は非可逆的なAR阻害剤であったことを図示する。
【0065】
【
図9】
図9は、ステロイド受容体全体にわたる6の阻害の選択性を図示する。公知の超強力ステロイドアンタゴニストであるRU486は、nM未満の範囲において、GRとPRの両方を阻害する。同一アッセイ中のSARCA6は、低い効力のGR活性(約20%)となることを実証し、PR活性は、10μMまで観察されなかった。このSARCAと試験した他のステロイド受容体とには、極めて小さな交差反応性しかなかった。GRおよびPRトランス活性化。COS7細胞は、フェノールレッドを含まないDME+5% csFBS中、40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、Lipofectamine試薬を使用して、0.25μgのGRE-LUC、0.01μgのCMV-LUC、0.025μgのpCR3.1ラットGRまたはラットPRをトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を0.1nMのR1881の存在下で、用量-応答分の化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0066】
【
図10】
図10は、1および6などの、NTD(AR-V7に存在する)に非可逆的に結合したSARCAは、AR-V7の転写活性化を有意に阻害することができたことを図示する。
【0067】
【
図11】
図11は、6および8がARに非可逆的に結合することを、Schildプロット解析を使用して図示する。エンザルタミドにより、R1881のEC
50がシフトし、競合的結合であることが示唆された一方、6および8により、R1881のE
maxが低下し、非可逆的な結合であることを示唆する。
【0068】
【
図12】
図12は、化合物UT-34(AF-1の非共有結合性結合剤)は、AF-1タンパク質をアルキル化しなかった一方、SARCA1は、AF-1に非可逆的に結合したことを図示する。UT-34の実験は、ネガティブ対照として働き、AF-1結合剤のすべてが、AF-1に非可逆的に結合するとは限らないことを実証する。これは、「LENPLADYGSA…」ペプチドの2番目の列(または、消化されたペプチドがわずかに異なって切断された場合、C20(4番目の列を参照されたい))に示されている通り、システインC18に結合している1とは対照的である。1はまた、C9において、「GLEGESLGCS…」ペプチドに結合する。1は、スライドの底部に近い「GDC…」ペプチドのC3にさらに結合した(6の場合には観察されなかった)。
【0069】
【
図13】
図13は、「GLEGESLGSC…」および「LENPLDYGSA…」ペプチド(6および1のような)、やはりまた「GDC…」ペプチド(1のような)のアルキル化を示す、SARCA4による質量スペクトルの検討を図示しているが、さらに、K5は、ペプチドGGYTK(固有)においてアルキル化された。
【0070】
【
図14】
図14は、1および4は、LBDをアルキル化しなかったので、その非可逆的な活性は、単に、AF-1アルキル化に基づくものであることを図示している。
【0071】
【
図15】
図15は、4および6は、マウス肝臓ミクロソームによる、in vitroでの代謝に安定であったことを図示している。
【0072】
【
図16】
図16は、SARCA1は、LNCaP細胞(非SARCA AF-1結合性化合物155である[(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(5-フルオロ-1H-インドール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド]およびエンザルタミドと同様であるが、効力は改善している)および22RV1細胞(155よりも強力である;enzaは、効力を有さなかった)において抗増殖活性を有したが、その成長がARに依存しないCOS7細胞系では、ある程度の非特異的な毒性も有することを図示する。22RV1細胞はAR-V7を高度に発現するので、22RV1細胞における抗増殖効力および有効性の改善は、AR-V7トランス活性化の阻害の改善と一致する、SARCAの別の利点である(
図10)。抗増殖効力および効力の改善は、AR FLしか発現しないLNCaP細胞にも観察された。
【0073】
【
図17】
図17は、10μMの1および4は、AR(完全長)およびAR SV(AR-V7)の分解剤として働いたことを図示する。2および5のAR分解活性も示される。
【0074】
【
図18】
図18は、1、4およびエンザルタミドは、三重水素化したR1881を用量依存的に置き換えた一方、ビヒクル(ネガティブ対照)は、三重水素化したR1881を置き換えなかったことを図示する。LBD(ベクター)の非存在下では、三重水素化したR1881の無視できる程度の結合しか観察されなかった。この実験は、非可逆的なNTD結合(MSおよびSchildの分析)に加えて、これらのSARCAは、LBDにもまた可逆的かつ競合的に結合することを実証した。COS細胞を24ウェルプレートにプレート培養した。細胞に、AR LBDをトランスフェクトした。1nMの
3H-R1881の存在下で4時間、図中に表示されている通りに細胞を処理した。細胞を冷PBSにより洗浄し、氷冷100%エタノールを使用して細胞内放射活性および細胞のタンパク質を抽出した。シンチレーションカクテルを加え、取り込まれた放射活性をシンチレーションカウンターで計数した。
【0075】
【
図19】
図19は、LNCaP-V7細胞が、ドキシサイクリン(Dox)の添加によって、AR-V7を誘導的に発現したことを図示する。
図19(左上)は、Doxの非存在下で、AR-V7は発現しなかった(左側パネル)が、次に、Doxを添加すると、AR-V7発現が観察されたことを実証する。1および4は、ARおよびAR-V7を分解した。
図19(上部右)は、22RV1細胞において、1は、1μMおよび3μMでAR(上部のバンドを参照されたい)およびAR-V7(中央のバンドを参照されたい)を分解したことを実証する。AR-V7がARと共に内在的に共発現された22RV1細胞では、1と4の両方が、AR FLおよびAR-V7のAR分解活性があることを実証した。
図19(下側)は、AR-V7の発現を欠いた親LNCaP細胞系において、1および4によって、AR FL(T877A)が分解したことを示している。
【0076】
【
図20】
図20は、1が、ラット肝臓ミクロソーム(RLM)において>60分間、安定であったことを図示する。第I相安定性に関する推定される半減期は、約84分間であった。
【0077】
【
図21】
図21は、1は、マウス肝臓ミクロソーム(MLM)では、41分間の半減期を有したことを図示する。
【0078】
【
図22】
図22は、SARCA1および4が、ARとAR-V7の両方を分解したことを図示する。LNCaP-V7(LNCaP細胞にAR-V7を安定的にトランスフェクトした)細胞を、60mmの皿でプレート培養した。細胞を増殖培地中で24時間、処理した。細胞を回収して、タンパク質を抽出し、ARおよびAR-V7に関するウェスタンブロットを行った。
【0079】
【
図23】
図23は、4(630nM)および1(776nM)は、中程度から弱いGRの阻害剤であった一方、2および6は、GRを顕著に阻害しなかったことを実証することを図示する。これは、他のステロイド受容体において、4と1にある程度の交差反応性があることを示唆している。SARCA1および4のGRおよびARの共拮抗作用は、そのAR軸がGRによって再活性化される、前立腺がんの処置には好都合である。2と6との間に対する1と4との間の構造的な差異を鑑みると、1および4は、nMレベルの効力のGR拮抗作用を有するとは予想外である。
【0080】
【
図24】
図24は、全体として、AF-1ドメインおよびAR FLにおける、3つのアルキル化されたシステイン残基マップをダイアグラム形式で図示している。C267およびC327は、転写活性化単位-1(Tau-1)内にあり、C407は、Tau-5内にある。
【0081】
【
図25A】
図25Aおよび25Bは、SARCA4(
図25A)が、E
max値を低下させた(非可逆的)一方、UT-34(AF-1結合剤の非共有結合性結合剤)(
図25B)は、EC
50値を上昇させた(可逆的競合的)ことを図示する。4はAF-1をアルキル化したが、UT-34は、AF-1をアルキル化しなかったことを考慮すると、これらの結果は予想される通りである。
【
図25B】
図25Aおよび25Bは、SARCA4(
図25A)が、E
max値を低下させた(非可逆的)一方、UT-34(AF-1結合剤の非共有結合性結合剤)(
図25B)は、EC
50値を上昇させた(可逆的競合的)ことを図示する。4はAF-1をアルキル化したが、UT-34は、AF-1をアルキル化しなかったことを考慮すると、これらの結果は予想される通りである。
【0082】
【
図26】
図26は、4は、GRの弱いアンタゴニスト(1431nM)であり、中程度の効力のPR(125nM)アンタゴニストであったことを図示する。これらの結果は、先行技術を鑑みると予想外のことであり、そのAR軸がPRまたはGRによって再活性化される前立腺がんの処置には好都合である。PR、GRおよびARの共拮抗作用は、これらの前立腺がんにおける4の予想外の程度の有利な特徴である。
【0083】
【
図27】
図27は、11のSchild分析を図示する。他のSARCAと同様に、傾向が右側にシフトし、E
maxが低下したことは、本発明の他のSARCAと同様に、非可逆的なNTD結合と可逆的なLBD結合の混合型であることを示唆している。
【0084】
【
図28】
図28は、AR-V7トランス活性化実験において、3μM(列表示中の最初の数は、μMでの濃度であり、例えば、10Enzaは、10μMのエンザルタミドであり、3-1は、3μMの化合物1などである)および10μMの1により有意に阻害されたこと、10μMの11および6により部分阻害されたこと、ならびに10μMの7により有意に阻害されたことを図示する。これは、AR-V7阻害が、SARCAの一般化可能な活性である一方、エンザルタミドおよびビヒクルは活性がなく、AR-V7(ベクター)の非存在下では、活性化が観察されないことを実証するものである。さらに、エンザルタミドは、エンザルタミド結合に必要なLBDが欠如したAR-V7を阻害することができなかった。
【0085】
【
図29】
図29は、11、6およびエンザルタミドは、ARトランス活性化アッセイにおいて、ARをin vitroで阻害したことを図示する。
【0086】
【
図30】
図30は、6(164nM)は、エンザルタミド(149nM)とほとんど等価な効力であった一方、7は、わずかに低い効力(256nM)であったことを図示する。
【0087】
【
図31】
図31は、エンザルタミド(左上)は、AR-V7を阻害することができなかったが、SARCA7(上部右)、1(下部左)および6(下部右)は、それぞれ、用量依存的にAR-V7を阻害したことを図示する。1は、最も強力である(0.3μMと低い)が、6および7は、10μMにおいて一層大きな最大効力となることを実証した。
【0088】
【
図32】
図32は、1によってアルキル化された3つのシステイン残基を図示し、それらをAF-1ドメインにマッピングしている。
図32は、
図24中と同じ結果を報告したものであり、グラフ形式でデータを提示している。このデータは、SARCA(この実施例では1)が、ARのNTDのAR-1に非可逆的に結合したことを間違いなく実証した。
【0089】
【
図33】
図33は、1によってアルキル化された3つのシステイン残基を図示し、それらをAF-1ドメインにマッピングしている。
【0090】
【
図34】
図34は、4によってアルキル化された3つのシステインを図示する。
【0091】
【
図35】
図35は、4および1は、AF-1の同じ3つのシステイン残基をアルキル化した一方、UT-34(AF-1の非共有結合性結合剤)は、AF-1をアルキル化しなかったことを図示する。さらに、1および4は、GSTにおけるシステイン残基をアルキル化した。
【0092】
【
図36】
図36は、6の場合、AF-1中のシステインのうちの2つ、すなわちC327およびC407がアルキル化されたことを図示する。
【0093】
【
図37】
図37は、AF-1の同じ2つのシステインが、AF-1の非共有結合性結合剤であるUT-34の存在下または非存在下で、アルキル化されたことを図示しており、6の場合、GST中の両方のシステインがアルキル化されたことをさらに実証する。
【0094】
【
図38】
図38は、1および6、ならびにある程度にエンザルタミドは、0.1nMのR1881により誘発されるAR依存性LNCaP増殖に打ち勝つことができたことを図示する。1および6は、それぞれ、1μMおよび10μMで、抗増殖効力が完全な用量依存的阻害を実証した一方、エンザルタミドは、1、3および10μMにおいて、ほぼ40%の効力しか到達しなかった。
【0095】
【
図39】
図39は、LNCaP細胞においてPSAおよびFKBP5のAR依存的遺伝子発現は、エンザルタミドと同様に、1および6によって用量依存的に低下したことを図示する。このデータは、転写活性化アッセイにおいて観察されたAR拮抗作用は、AR依存性前立腺がん細胞でのAR拮抗作用に転じたことを裏付けるものである。
【0096】
【
図40】
図40Aおよび40Bは、無傷のスプラーグドーリーラットにおいて、SARCA6によってin vivoでAR拮抗作用があることが実証されたことを図示する。前立腺および精嚢の重量は、ビヒクルとして示されている無傷対照(0%低下)に比べて、約45%および60%低下した。S.D.ラットを14日間、20mg/kg/日の経口用量の6により処置した。平均値+/-標準偏差
*=0.05;
**=0.01;
***=0.001)。
【0097】
【
図41】
図41は、13および14のARアンタゴニスト作用を図示する。左上のパネルは、この転写活性化実験において、公知のアゴニストであるR1881が転写を活性化したことを実証するポジティブ対照実験であった。右上のパネルは、13と14の両方が、ARトランス活性化を阻害したことを実証した。左下パネルは、13と14のどちらも、in vitroにおいて、なんら固有のアゴニスト活性を有さないことを実証した。右下のパネルは、グラフの生データである。このデータは、13および14が、左側の芳香環またはその近傍に窒素原子がないが、それらは依然として、wt ARの強力な阻害剤であることを実証する。
【0098】
【
図42】
図42は、「GLEGESLGSC…」および「LENPLDYGSA…」ペプチド(6および1のような)、やはりまた新規ペプチド「EASGA…」(固有)のアルキル化を示す、SARCA7による質量スペクトルの検討を図示する。
【0099】
【
図43】
図43は、それぞれ、2852nM、6525nMおよび850.7nMのIC
50値でwtARを阻害した、15、8および4のアンタゴニスト作用を図示する。
【0100】
【
図44】
図44は、化合物18が、AR AF-1に共有結合していることを図示する。
【0101】
【
図45】
図45は、化合物1および6のARアンタゴニスト活性を図示する。
【0102】
【
図46A】
図46Aおよび46Bは、化合物1および6が、AR-V7のトランス活性化を阻害した(
図46A)が、NFkBのトランス活性化を阻害しなかった(
図46B)ことを図示する。
【
図46B】
図46Aおよび46Bは、化合物1および6が、AR-V7のトランス活性化を阻害した(
図46A)が、NFkBのトランス活性化を阻害しなかった(
図46B)ことを図示する。
【0103】
【
図47】
図47は、化合物6が、前立腺がん細胞において、AR標的遺伝子発現を阻害したことを図示する。
【0104】
【
図48】
図48は、化合物6が、前立腺がんの細胞増殖を阻害したことを図示する。
【0105】
【
図49】
図49は、化合物1および6が、AR-スプライスバリアント(AR-SV)を発現した前立腺がん細胞の増殖を阻害したことを図示する。
【0106】
【
図50-1】
図50A~50Cは、化合物1および6が、AR-SVを発現した前立腺がんの細胞増殖を阻害したが、非がん性細胞を阻害しなかったことを図示する。
図50A:22RV1増殖(化合物6);
図50B:22RV1増殖(化合物1);および
図50C:COS7増殖(化合物6)。
【
図50-2】
図50A~50Cは、化合物1および6が、AR-SVを発現した前立腺がんの細胞増殖を阻害したが、非がん性細胞を阻害しなかったことを図示する。
図50A:22RV1増殖(化合物6);
図50B:22RV1増殖(化合物1);および
図50C:COS7増殖(化合物6)。
【0107】
【
図51】
図51は、化合物6は、野性型AR-V7トランス活性化を阻害したが、3つのシステイン(C267、C327およびC406)が変異されたAR-V7のトランス活性化は阻害しなかったことを図示する。
【0108】
【
図52】
図52は、個々のシステインの変異は、化合物6の活性に影響を及ぼさなかったが、AR-V7の機能には影響を及ぼしたことを図示する。個々のシステインがアラニンに変異すると、AR-V7活性が低下したが、SARCA(例えば、化合物6)の阻害活性に及ぼす影響は、最小限から全くなかった。
【0109】
【
図53A】
図53Aおよび53Bは、化合物1および6は、AR標的組織前立腺および精嚢を阻害したことを図示する。
図53A:体重に正規化したS.V.重量;および
図53B:体重に正規化した前立腺重量。
【
図53B】
図53Aおよび53Bは、化合物1および6は、AR標的組織前立腺および精嚢を阻害したことを図示する。
図53A:体重に正規化したS.V.重量;および
図53B:体重に正規化した前立腺重量。
【0110】
【
図54】
図54は、化合物6が、ラットにおいて長い半減期を有したことを図示する。雄スプラーグドーリーラット(n=3/時間点;80~100グラム)を、20mg/kgのSARCAで経口処置した。血液を表示時間点に採取した。血清中に存在する薬物の量は、LC-MS/MSを使用して測定した。
【0111】
【
図55】
図55Aおよび55Bは、化合物6が、NSGマウスにおいて、前立腺がんの成長、およびトリプルネガティブ乳がんの異種移植片の成長を阻害したことを図示する。
図55A:無傷のNSGマウスにおけるLNCaP-AR異種移植片;および
図55B:NSGマウスにおける、MDA-MB-453 TNBC異種移植片。
【0112】
【
図56-1】
図56A~56Dは、化合物1および6によって修飾されたペプチドの定量を提供する。
図56A:化合物6によるAR AF-1の修飾;
図56B:化合物1によるAR AF-1の修飾;
図56C:化合物6によるAR AF-1およびLBDの修飾;および
図56D:化合物1によるAR AF-1およびLBDの修飾。
【
図56-2】
図56A~56Dは、化合物1および6によって修飾されたペプチドの定量を提供する。
図56A:化合物6によるAR AF-1の修飾;
図56B:化合物1によるAR AF-1の修飾;
図56C:化合物6によるAR AF-1およびLBDの修飾;および
図56D:化合物1によるAR AF-1およびLBDの修飾。
【0113】
【
図57】
図57A~57Cは、C406、C327およびC267は、AR-V7安定性にとって重要であったことを図示する。
【0114】
【
図58】
図58Aおよび58Bは、化合物1および6は、GSTとの交差反応が最小限であったことを図示する。
【0115】
【
図59-1】
図59A~59Dは、UT-105およびUT-34が、AF-1への結合に関して、1および6と競合したことを図示する。
図59A:化合物6単独、またはUT-34(C406)との組合せ;
図59B:化合物6単独、またはUT-34(C327)との組合せ;
図59C:化合物6単独、またはUT-105との組合せ;および
図59D:化合物6単独、またはUT-105との組合せ。
【
図59-2】
図59A~59Dは、UT-105およびUT-34が、AF-1への結合に関して、1および6と競合したことを図示する。
図59A:化合物6単独、またはUT-34(C406)との組合せ;
図59B:化合物6単独、またはUT-34(C327)との組合せ;
図59C:化合物6単独、またはUT-105との組合せ;および
図59D:化合物6単独、またはUT-105との組合せ。
【発明を実施するための形態】
【0116】
例示を単純および明確にするため、図面中に示されている要素は、必ずしも縮尺通りに図示されていないことが理解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明確にするため、他の要素に比べて、誇大されていることがある。さらに、適切と考えられる場合、参照番号は、対応する要素または類似の要素を表示するよう、図面中に繰り返されていることがある。
【0117】
本発明の詳細な説明
以下の詳細な説明において、多くの具体的な詳細が、本発明の完全な理解をもたらすよう説明されている。しかし、本発明が、これらの特定の詳細説明なしに実施することができることが、当業者によって理解される。他の例において、周知の方法、手順および構成要素は、本発明を不明瞭にしないよう、詳細に記載されていない。
【0118】
アンドロゲンは、転写因子のステロイド受容体スーパーファミリーのメンバーであるARに結合することによって細胞内で作用する。前立腺がん(PCa)の成長および維持は、循環するアンドロゲンによって主に制御されるので、PCaの処置は、ARを標的とする処置法に大きく依存する。受容体活性化を妨害するための、ダロルタミド、アパルタミド、エンザルタミド、アビラテロン(間接的アンタゴニスト)、ビカルタミドまたはヒドロキシフルタミドなどのARアンタゴニストによる処置が、PCaの成長を低下させるために、過去において首尾よく使用されてきた。現在、利用可能なすべての直接的なARアンタゴニストは、ARに競合的に結合し、NCoRおよびSMRTなどのコリプレッサーを動員して、標的遺伝子の転写を抑制する。しかし、変更された細胞内シグナル伝達、AR変異およびコアクチベーターの発現の増加は、アンタゴニストの機能障害を、またはアンタゴニストのアゴニストへの変換さえももたらす。検討により、AR内のW741およびT877の変異が、ビカルタミドおよびヒドロキシフルタミドをそれぞれアゴニストに変換することが実証された。同様に、増加した細胞内サイトカインは、AR応答性プロモーターに対するコリプレッサーの代わりにコアクチベーターを動員し、続いてビカルタミドをアゴニストに変換する。同様に、エンザルタミド、アパルタミドおよびアビラテロンの抵抗性にリンクした変異は、F876、H874、T877、および二変異体T877/S888、T877/D890、F876/T877(すなわち、MR49細胞)、およびH874/T877を含む(Genome Biol. (2016) 17:10 (doi: 10.1186/s13059-015-0864-1))。アビラテロン抵抗性変異はL702H変異を含み、L702H変異は、プレドニゾンなどのグルココルチコイドによってARの活性化をもたらし、これは、アビラテロンが、通常、プレドニゾンと組み合わせて処方されるので、アビラテロンへの抵抗性を引き起こす。抵抗性が、エンザルタミドに対して発生する場合には、多くの場合、患者は、アビラテロンに対して、またアパルタミドに対しても不応性となり、その逆も真である。または奏効期間は、非常に短い。ダロルタミドはまた、CRPCでは、効力および作用期間が限定されている。この状況は、進行前立腺がんにおけるAR再活性化を予防する、決定的なアンドロゲンアブレーション治療法の必要性を強調するものである。
【0119】
PCa疾患進行は、アンドロゲン遮断療法(ADT)に初期応答があるにもかかわらず、不可避であり、がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)として現れる。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が再発生する主な理由は、以下:
(a)イントラクラインアンドロゲン合成
(b)例えば、リガンド結合ドメイン(LBD)が欠如した、ARスプライスバリアント(AR-SV)の発現
(c)アンタゴニストに抵抗する可能性を有するAR-LBD変異
(d)例えば、AR遺伝子増幅またはAR変異による、低アンドロゲンレベルに対するARの高い感作
(e)腫瘍内のAR遺伝子の増幅、および
(f)コアクチベーターの過剰発現、および/または細胞内シグナル伝達の変更
などの代替機構による、アンドロゲン受容体(AR)の再活性化である。
【0120】
本発明は、式Iにより包含される新規選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物を包含し、この化合物は、増殖するために病原性変異および抵抗性変異および野性型を含むAR完全長(AR-FL)ならびに/またはARスプライスバリアント(AR-SV)に依存する、前立腺がん(PCa)細胞および腫瘍の成長を阻害する。
【0121】
本明細書で使用する場合、特に定義しない限り、「選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト」(SARCA)化合物は、増殖するために、AR-完全長(AR-FL)および/またはARスプライスバリアント(AR-SV)に依存する、PCa細胞および腫瘍の成長を阻害することが可能なアンドロゲン受容体アンタゴニストである。代替的に、「選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト」(SARCA)化合物は、様々な病原性の変異バリアントARおよび野性型ARの分解を引きこすことができるアンドロゲン受容体アンタゴニストであり、したがって、本発明において具現化される疾患状態において見出される幅広い病原性の変化した細胞環境において、抗アンドロゲン作用を発揮することができる。
【0122】
選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)は、ARに共有結合により結合し、その活性を非可逆的に阻害する。一部のSARCA化合物は、AR AF-1ドメインに非可逆的におよび共有結合により結合し、これは、本明細書に記載されている質量分析法の実験により実証される。他のSARCA化合物は、ARのLBDに結合することができる。
【0123】
本SARCA化合物は、ARのN末端ドメイン(NTD)に;ARの交代結合および分解ドメイン(BDD)に;ARリガンド結合ドメイン(LBD)と交代結合および分解ドメイン(BDD)の両方に、またはARのN末端ドメイン(NTD)とリガンド結合ドメイン(LBD)の両方に結合することができる。一実施形態では、BDDは、NTDに位置し得る。一実施形態では、BDDは、NTDのAF-1領域に位置する。代替的に、本SARCA化合物は、N末端ドメイン(NTD)依存性の構成的に活性なAR-SVによって駆動される成長を阻害すること、またはAR LBDとは区別されるドメインに結合することによりARを阻害することが可能となり得る。同様に、本SARCA化合物は、強力な(すなわち、非常に効力が高く、非常に効果的である)選択的アンドロゲン受容体アンタゴニストとなり得、これは、他の公知のARアンタゴニスト(例えば、ダロルタミド、アパルタミド、エンザルタミド、ビカルタミドおよびアビラテロン)よりも強力にARを拮抗する。
【0124】
本SARCA化合物は、従来のアンタゴニストによって阻害され得ない、ARーSVを標的とする選択的アンドロゲン受容体アンタゴニストとすることができる。本SARCA化合物は、以下に限定されないが、AR-SV分解活性;AR-FL分解活性;AR-SV阻害活性(すなわち、AR-SVアンタゴニストである);AR-FL阻害活性(すなわち、AR-FLアンタゴニストである);AR-SVの構成的活性化の阻害、またはAR-FLの構成的活性化の阻害を含めた、いくつかの活性のいずれか1つを示すことができる。代替的に、本SARCA化合物は、デュアルAR-SV分解およびAR-SV阻害機能、ならびに/またはデュアルAR-FL分解およびAR-FL阻害機能を有することができるか、あるいは代替として、これらの活性の4つすべてを有することができる。
【0125】
本SARCA化合物はまた、AR-FLおよびAR-SVを分解することができる。本SARCA化合物は、AR LBDとは区別されるドメインに結合することによって、ARを分解することができる。本SARCA化合物は、分解およびAR-SV阻害の二重の機能を有することができ、利用可能ないずれのCRPC治療剤とも異なる。本SARCA化合物は、イントラクラインアンドロゲン合成、リガンド結合ドメイン(LBD)が欠如したAR-SVの発現、およびアンタゴニストに抵抗性する能力を有するAR-LBD変異などの、代替機構によるARの再活性化を阻害すること、または変化した病原性細胞環境に存在するアンドロゲン受容体の再活性化を阻害することができる。
【0126】
AR-スプライスバリアントの例には、以下に限定されないが、AR-V7およびARv567es(別名AR-V12;S. Sun, et al. Castration resistance in human prostate cancer is conferred by a frequently occurring androgen receptor splice variant. J Clin Invest. (2010) 120(8), 2715-2730)が含まれる。抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR変異の非限定例は、W741L、T877AおよびF876L(J. D. Joseph et al. A clinically relevant androgen receptor mutation confers resistance to second-generation antiandrogens enzalutamide and ARN-509. Cancer Discov. (2013) 3(9), 1020-1029)変異である。LBD抵抗性を付与する他の多数の変異が、当分野で公知であり、引き続き発見されている。AR-V7は、LBDが欠如したARのスプライスバリアントである(A. H. Bryce & E. S. Antonarakis. Androgen receptor splice variant 7 in castration-resistant prostate cancer: Clinical considerations. Int J Urol. (2016 June 3) 23(8), 646-53. doi: 10.1111/iju.13134)。AR-V7は、構成的に活性であり、侵襲性PCaを担い、内分泌療法に抵抗することが実証されている。
【0127】
本発明は、交代結合および分解ドメイン(BDD)、例えば、NTDまたはAF-1を介してARに結合する、式I~XXの新規な選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物を包含する。本SARCAは、ARリガンド結合ドメイン(LBD)にさらに結合することができる。SARCA化合物は、AR内部に由来する求核剤を受容するよう意図されている、求核剤アクセプター基を有する。NTD結合またはLBD結合のどちらか一方は、非可逆的となり得る。
【0128】
本SARCA化合物は、他のいずれのアンタゴニストによっても処置することができない、CRPCの処置に使用することができる。本SARCA化合物は、AR-SVを非可逆的に阻害すること、またはAR-SVを分解することによって、CRPCを処置することができる。本SARCA化合物は、ARアンタゴニストをアゴニストに正常に変換するAR変異体において、それらのアンタゴニスト活性を維持することができる。例えば、本SARCA化合物は、AR変異体であるW741L、T877AおよびF876Lに対するそのアンタゴニスト活性を維持することが期待される(J. D. Joseph et al. A clinically relevant androgen receptor mutation confers resistance to second-generation antiandrogens enzalutamide and ARN-509. Cancer Discov. (2013) 3(9), 1020-1029)。代替的に、本SARCA化合物は、LBDを標的とする薬剤が有効ではない、またはNTD依存性AR活性が構成的に活性な、変化した細胞環境内でアンタゴニスト活性を誘発する。
選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物
【0129】
本明細書に記載されている本発明の化合物は、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物である。本明細書に記載されているSARCA化合物は、FLもしくはSVアンドロゲン受容体に非可逆的に結合することができるか、FLもしくはSVアンドロゲン受容体を分解することができるか、またはNTDおよび/もしくはLBDに可逆的に結合することができる。
【0130】
一態様では、本発明は、式Iの構造によって表される化合物
【化6】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せを包含する。
【0131】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IIの構造
【化7】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、またはそれらの任意の組合せによって表される。
【0132】
式IまたはIIの構造の一部の実施形態では、Ra、W1、W2、W3、W4またはQ1~Q4のうちの少なくとも1つは、例えば、ケトン、アミド、エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、イミドなどのα,β-不飽和カルボニル、またはAR内に由来する求核剤のアクセプターとして働く、別の求核剤アクセプター基を含有する。
【0133】
式IまたはIIの構造の一部の実施形態では、RaおよびRdは、同時にHではない。
【0134】
一部の実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、α,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも1つの官能基を含有する。一実施形態では、このようなα,β-不飽和カルボニル官能基は、以下に限定されないが、α,β-不飽和ケトン、アミド、エステル、チオエステル、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物、イミドなどを含む。一実施形態では、α,β-不飽和官能基は、AR内の求核剤に対するマイケル付加のアクセプターとして働く。
【0135】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、イソシアナト(-NCO)、イソチオシアナト(-NCS)、シアナト(-CNO)、チオシアナト(-CNS)、アジド(N3)、フッ化スルホニル(-SO2F)、ハロメチル(-CH2-ハライド)、2-ハロアセチル(-NHCOCH2-ハライド)、ハロスルホニル(-NHSO2CH2-ハライド)などのうちの少なくとも1つである。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、AR内の求核剤に対する求核剤アクセプターとして働く。一実施形態では、前記AR求核剤は、NTD内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、AF-1ドメイン内に存在する。実施形態では、前記AR求核剤は、LBD内に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Ra基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W1基内に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W3基またはW4基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Q1、Q2、Q3またはQ4基のうちのいずれか1つに存在する。
【0136】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IIIの構造:
【化8】
によって表される。
【0137】
一実施形態では、X、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0138】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IVの構造:
【化9】
によって表される。
【0139】
一実施形態では、X、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0140】
一実施形態では、本発明の化合物は、式Vの構造:
【化10】
によって表される。
【0141】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0142】
一実施形態では、本発明の化合物は、式VIの構造:
【化11】
によって表される。
【0143】
一実施形態では、Y、Z、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0144】
一実施形態では、本発明の化合物は、式VIIの構造:
【化12】
によって表される。
【0145】
一実施形態では、Ra、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0146】
一実施形態では、本発明の化合物において、W1およびW2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW5W6基を形成する。一実施形態では、W1は、ORdである。一実施形態では、W1およびW2のうちの一方は、W3およびW4のうちの一方と共に、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成する。
【0147】
一実施形態では、本発明の化合物は、式VIIIの構造:
【化13】
によって表される。
【0148】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W5、W6、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0149】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IXの構造:
【化14】
によって表される。
【0150】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0151】
一実施形態では、式IXの化合物において、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、CN、NO2、CF3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、COR、アルキル、アルコキシ、または置換もしくは無置換フェニルにより必要に応じて置換されている、5員または6員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されているインドール基を形成する。一実施形態では、インドール基は、ハロゲンまたはCNにより置換されている。
【0152】
一実施形態では、式IXの化合物において、Rbは、Hであり、Rcは、CN、NO2、CF3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されている、アリールまたはヘテロアリールである。
【0153】
一実施形態では、本発明の化合物は、式Xの構造:
【化15】
(式中、Q
3は、水素、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキル、アルコキシ、または置換もしくは無置換フェニルである)によって表される。
【0154】
一実施形態では、Y、Z、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0155】
一実施形態では、式Xの化合物中、Q3はFである。一実施形態では、Q3はCNである。一実施形態では、W3およびW4は、Hである。
【0156】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XIの構造:
【化16】
(式中、Q
3は、水素、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキル、アルコキシ、または置換もしくは無置換フェニルである)によって表される。
【0157】
一実施形態では、Y、Z、Ra、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0158】
一実施形態では、式XIの化合物中、W3およびW4はHである。一実施形態では、Raは、-CH2-C(COOR)=CH2である。一実施形態では、W1はORdであり、Rdは、H、-CH2-CH=CH-COORまたは-CH2-C(COOR)=CH2である。
【0159】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XIIの構造:
【化17】
によって表される。
【0160】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W2およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0161】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XIIIの構造:
【化18】
によって表される。
【0162】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W2およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0163】
一実施形態では、式XIIIの化合物中、W2はHである。一実施形態では、W4は、CH3である。一実施形態では、式XIIIの化合物中、W2およびW4はHである。
【0164】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XIVの構造:
【化19】
によって表される。
【0165】
一実施形態では、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0166】
一実施形態では、式XIVの化合物中、W1はORdである。一実施形態では、Rdは、H、-CH2-CH=CH-COORまたは-CH2-C(COOR)=CH2である。一実施形態では、W2は、CH3である。一実施形態では、Yは、CF3であり、Zは、CNである。
【0167】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XVの構造:
【化20】
によって表される。
【0168】
一実施形態では、Y、Z、A、W1、W2、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0169】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XVIの構造:
【化21】
によって表される。
【0170】
一実施形態では、Y、Z、Ra、A、W2およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0171】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XVIIの構造:
【化22】
によって表される。
【0172】
一実施形態では、Y、Z、Ra、A、W2およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0173】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XVIIIの構造:
【化23】
によって表される。
【0174】
一実施形態では、Y、Z、A、W5、W6、W3およびW4は、本明細書のどこかに定義されている。
【0175】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XIXの構造:
【化24】
によって表される。
【0176】
一実施形態では、X、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1およびW2は、本明細書のどこかに定義されている。式XIXの構造の一部の実施形態では、RaおよびRdは、同時にHではない。
【0177】
一実施形態では、Xは、CHである。別の実施形態では、Xは、Nである。
【0178】
一実施形態では、Yは、CF3である。一実施形態では、Zは、CNである。
【0179】
一実施形態では、Raは、Hである。一実施形態では、Raは、-CH2-C(COOR)=CH2である。
【0180】
一実施形態では、W1は、Hである。一実施形態では、W1は、ORdである。一実施形態では、Rdは、H、-CH2-CH=CH-COORまたは-CH2-C(COOR)=CH2である。一実施形態では、W2は、CH3である。一実施形態では、W3は、Hである。一実施形態では、W4は、Hである。
【0181】
一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、CONHR、COORまたはCORからそれぞれ独立して選択されるQ1、Q2、Q3およびQ4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、ハロアルキル、F、Cl、Br、I、CN、NO2またはORにより必要に応じて置換されている、5~10員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、CF3、F、Cl、Br、I、CN、NO2、OHまたはOCH3により必要に応じて置換されている、5員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、5員の不飽和複素環式環は、ピロール、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾールまたはトリアゾールである。
【0182】
一実施形態では、本発明の化合物は、式XXの構造:
【化25】
によって表される。
【0183】
一実施形態では、X、Y、Z、Ra、Rb、Rc、W1およびW2は、本明細書のどこかに定義されている。式XXの構造の一部の実施形態では、RaおよびRdは、同時にHではない。
【0184】
一実施形態では、Xは、CHである。別の実施形態では、Xは、Nである。
【0185】
一実施形態では、Yは、CF3である。一実施形態では、Zは、CNである。
【0186】
一実施形態では、Raは、Hである。一実施形態では、Raは、-CH2-C(COOR)=CH2である。
【0187】
一実施形態では、W1は、Hである。一実施形態では、W1は、ORdである。一実施形態では、Rdは、H、-CH2-CH=CH-COORまたは-CH2-C(COOR)=CH2である。一実施形態では、W2は、CH3である。一実施形態では、W3は、Hである。一実施形態では、W4は、Hである。
【0188】
一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、CONHR、COORまたはCORからそれぞれ独立して選択されるQ1、Q2、Q3およびQ4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、ハロアルキル、F、Cl、Br、I、CN、NO2またはORにより必要に応じて置換されている、5~10員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、CF3、F、Cl、Br、I、CN、NO2、OHまたはOCH3により必要に応じて置換されている、5員の不飽和複素環式環を形成する。一実施形態では、5員の不飽和複素環式環は、ピロール、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾールまたはトリアゾールである。
【0189】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の化合物のうちのいずれか1つの構造:
【化26】
【化27】
によって表される。
【0190】
一実施形態では、本発明の化合物は、化合物15の構造
【化28】
によって表される。
【0191】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Xは、CHである。一部の実施形態では、Xは、Nである。
【0192】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Yは、Hである。一部の実施形態では、Yは、CF3である。一部の実施形態では、Yは、Fである。一部の実施形態では、Yは、Iである。一部の実施形態では、Yは、Brである。一部の実施形態では、Yは、Clである。一部の実施形態では、Yは、CNである。一部の実施形態では、Yは、C(R)3である。
【0193】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Zは、Hである。一部の実施形態では、Zは、NO2である。一部の実施形態では、Zは、CNである。一部の実施形態では、Zは、ハライドである。一部の実施形態では、Zは、Fである。一部の実施形態では、Zは、Clである。一部の実施形態では、Zは、Brである。一部の実施形態では、Zは、Iである。一部の実施形態では、Zは、COOHである。一部の実施形態では、Zは、CORである。一部の実施形態では、Zは、NHCORである。一部の実施形態では、Zは、CONHRである。
【0194】
一部の実施形態では、YおよびZは、フェニルとの縮合環を形成する。他の実施形態では、フェニルとの縮合環は、5~8員の環である。他の実施形態では、フェニルとの縮合環は、5員環または6員環である。他の実施形態では、環は、炭素環式または複素環式である。他の実施形態では、YおよびZは、フェニルと一緒になって、ナフチル、キノリニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、インデニルまたはキナゾリニルを形成する。
【0195】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Aは、少なくとも1個の窒素原子を有する5員もしくは6員の飽和または不飽和環である。別の実施形態では、Aは、置換もしくは無置換のピロール、ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、モルホリン、または他の複素環式環である。それぞれは、本発明の個別の実施形態を表す。別の実施形態では、Aは、5員または6員の複素環式環である。別の実施形態では、5員もしくは6員の飽和または不飽和環の窒素原子は、分子の主鎖構造に結合している。別の実施形態では、5員もしくは6員の飽和または不飽和環の炭素原子は、分子の主鎖構造に結合している。本発明の化合物の一部の実施形態では、Aは、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、CONHR、COORまたはCORからそれぞれ独立して選択されるQ1、Q2、Q3またはQ4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員のアリール基またはヘテロアリール基である。
【0196】
本発明の化合物の一部の実施形態では、本発明の化合物のAは、NRbRcである。一実施形態では、RbはHである。別の実施形態では、Rbは、アルキルであり、アルキルは、OR、NO2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されている。一実施形態では、Rcは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO2、CF3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されている。一実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環であって、水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、CONHR、COORまたはCORからそれぞれ独立して選択されるQ1、Q2、Q3およびQ4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている、5~10員の飽和または不飽和複素環式環を形成する。
【0197】
本発明の化合物の一部の実施形態では、RbおよびRcは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換もしくは無置換のピロール、ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、モルホリン、または他の複素環式環を形成する。それぞれは、本発明の個別の実施形態を表す。
【0198】
一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、水素である。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、CNである。他の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、Fである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、NCSである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、マレイミドである。一部の実施形態では、Q1は、NHCOORである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、N(R)2である。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、CONHRである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、NHCORである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、Clである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、Brである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、Iである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、NO2である。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、フェニルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、4-フルオロフェニルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、CF3である。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、置換または無置換アルキルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、置換または無置換シクロアルキルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、置換または無置換ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、ハロアルキルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、置換または無置換アリールである。一部の実施形態では、Q1は、ヒドロキシルである。Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、アルコキシである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、ORである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、アリールアルキルである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、アミンである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、アミドである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、COORである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、CORである。一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3およびQ4のうちの1つは、ケトである。
【0199】
一部の実施形態では、Q3は、CNである。一部の実施形態では、Q3は、Fである。一部の実施形態では、Q3は、NCSである。一部の実施形態では、Q3は、マレイミドである。一部の実施形態では、Q3は、NHCOORである。一部の実施形態では、Q3は、N(R)2である。一部の実施形態では、Q3は、CONHRである。一部の実施形態では、Q3は、NHCORである。一部の実施形態では、Q3は、水素である。一部の実施形態では、Q3は、ケトである。一部の実施形態では、Q3は、Clである。一部の実施形態では、Q3は、Brである。一部の実施形態では、Q3は、Iである。一部の実施形態では、Q3は、NO2である。一部の実施形態では、Q3は、フェニルである。一部の実施形態では、Q3は、4-フルオロフェニルである。一部の実施形態では、Q3は、CF3である。一部の実施形態では、Q3は、置換または無置換アルキルである。一部の実施形態では、Q3は、置換または無置換シクロアルキルである。一部の実施形態では、Q3は、置換または無置換ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Q3は、ハロアルキルである。一部の実施形態では、Q3は、置換または無置換アリールである。一部の実施形態では、Q3は、ヒドロキシルである。一部の実施形態では、Q3は、アルコキシである。一部の実施形態では、Q3は、ORである。一部の実施形態では、Q3は、アリールアルキルである。一部の実施形態では、Q3は、アミンである。一部の実施形態では、Q3は、アミドである。一部の実施形態では、Q3は、COORである。一部の実施形態では、Q3は、CORである。
【0200】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Q1は、H、CN、CF3、フェニル、4-フルオロフェニル、F、Br、Cl、I、COMe、NHCOOMe、NHCOMeまたはNHCOOC(CH3)3である。
【0201】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Q2は、H、CN、CF3、フェニル、4-フルオロフェニル、F、Br、Cl、I、COMe、NHCOOMe、NHCOMeまたはNHCOOC(CH3)3である。
【0202】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Q3は、H、CN、CF3、フェニル、4-フルオロフェニル、F、Br、Cl、I、COMe、NHCOOMe、NHCOMeまたはNHCOOC(CH3)3である。
【0203】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Q4は、H、CN、CF3、フェニル、4-フルオロフェニル、F、Br、Cl、I、COMe、NHCOOMe、NHCOMeまたはNHCOOC(CH3)3である。
【0204】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Rは、Hである。一部の実施形態では、Rは、アルキルである。一部の実施形態では、Rは、アルケニルである。一部の実施形態では、Rは、ハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、アルコールである。一部の実施形態では、Rは、CH2CH2OHである。一部の実施形態では、Rは、CF3である。一部の実施形態では、Rは、CH2Clである。一部の実施形態では、Rは、CH2CH2Clである。一部の実施形態では、Rは、アリールである。一部の実施形態では、Rは、Fである。一部の実施形態では、Rは、Clである。一部の実施形態では、Rは、Brである。一部の実施形態では、Rは、Iである。一部の実施形態では、Rは、OHである。
【0205】
本発明の化合物の一部の実施形態では、Raは、Hである。一部の実施形態では、Raは、-CH2-CH=CH-COORである。一部の実施形態では、Raは、-CH2-C(COOR)=CH2である。一部の実施形態では、Raは、-CH2-CH=CH-CONHRである。一部の実施形態では、Raは、-CH2-C(CONHR)=CH2である。一部の実施形態では、Raは、-CH2-CH=CH-CON(R)2である。一部の実施形態では、Raは、-CH2-C(CON(R)2)=CH2である。
【0206】
本発明の化合物の一部の実施形態では、W1は、Hである。一部の実施形態では、W1は、ORdである。一部の実施形態では、Rdは、Hである。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-CH=CH-COORである。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-C(COOR)=CH2である。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-CH=CH-CONHRである。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-C(CONHR)=CH2である。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-CH=CH-CON(R)2である。一部の実施形態では、Rdは、-CH2-C(CON(R)2)=CH2である。
【0207】
本発明の化合物の一部の実施形態では、W2は、CH3である。一部の実施形態では、W2は、CH2Fである。一部の実施形態では、W2は、CHF2である。一部の実施形態では、W2は、CF3である。一部の実施形態では、W2は、CH2CH3である。一部の実施形態では、W2は、CF2CF3である。一部の実施形態では、W2は、CH2Aである。
【0208】
本発明の化合物の一部の実施形態では、W1およびW2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW5W6基を形成し、W5およびW6は、それぞれ、Hまたはアルキルである。一部の実施形態では、W5は、Hである。一部の実施形態では、W5は、アルキルである。一部の実施形態では、W6は、Hである。一部の実施形態では、W6は、アルキルである。一部の実施形態では、W5およびW6は、どちらもHである。一部の実施形態では、W5は、Hであり、W6は、アルキルである。一部の実施形態では、W5は、アルキルであり、W6は、Hである。一部の実施形態では、W5およびW6は、どちらもアルキルである。
【0209】
本発明の化合物の一部の実施形態では、W3およびW4は、個々に、H、OHまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されている。一部の実施形態では、W3は、Hである。一部の実施形態では、W3は、OHである。一部の実施形態では、W3は、アルキルである。一部の実施形態では、W4は、Hである。一部の実施形態では、W4は、アルキルである。一部の実施形態では、W3およびW4は、どちらもHである。一部の実施形態では、W3は、Hであり、W4は、アルキルである。一部の実施形態では、W3は、アルキルであり、W4は、Hである。一部の実施形態では、W3は、OHであり、W4は、アルキルである。一部の実施形態では、W3は、アルキルであり、W4は、OHである。一部の実施形態では、W3およびW4は、どちらもアルキルである。一部の実施形態では、W3が、アルキルである、および/またはW4が、アルキルである場合、アルキルは、OR、NO2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されている。
【0210】
本発明の化合物の一部の実施形態では、W1およびW2のうちの一方は、W3およびW4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成する。例えば、W1とW3、またはW1とW4、またはW2とW3、またはW2とW4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成する。
【0211】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、α,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも1つの官能基を含有する。一実施形態では、このようなα,β-不飽和カルボニル官能基は、以下に限定されないが、α,β-不飽和ケトン、アミド、エステル、チオエステル、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物、イミドなどを含む。一実施形態では、α,β-不飽和官能基は、AR内の求核剤に対するマイケル付加反応のアクセプターとして働く。
【0212】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、イソシアナト(-NCO)、イソチオシアナト(-NCS)、シアナト(-CNO)、チオシアナト(-CNS)、アジド(N3)、フッ化スルホニル(-SO2F)、ハロメチル(-CH2-ハライド)、2-ハロアセチル(-NHCOCH2-ハライド)、ハロスルホニル(-NHSO2CH2-ハライド)などのうちの少なくとも1つである。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、AR内の求核剤に対する求核剤アクセプターとして働く。一実施形態では、前記AR求核剤は、NTD内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、AF-1ドメイン内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、LBD内に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Ra基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W1基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W3基またはW4基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Q1、Q2、Q3またはQ4基のうちのいずれか1つに存在する。
【0213】
本発明は、以下の構造のうちのいずれか1つ:
【化29】
【化30】
から選択される、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物を包含する。
【0214】
一実施形態では、本発明の化合物は、化合物15の構造
【化31】
によって表される。
【0215】
本明細書で使用する場合、用語「複素環」または「複素環式環」基は、環の部分として、炭素原子の他に、硫黄、酸素、窒素のうちの少なくとも1個の原子、またはそれらの任意の組合せを含む環構造を指す。複素環は、3~12員環;4~8員環;5~7員環;または6員環とすることができる。好ましくは、複素環は、5~6員の環である。複素環の典型例には、以下に限定されないが、ピペリジン、ピリジン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、ピラジン、ピペラジンまたはピリミジンが含まれる。C5~C8複素環式環の例には、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロール、ピラジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピリミジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミドン、ピラゾール、ジヒドロピラゾール、テトラヒドロピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、モルホリン、チオモルホリン、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾールなどが含まれる。複素環は、別の飽和もしくは不飽和シクロアルキルまたは飽和もしくは不飽和複素環式環に縮合していてもよい。複素環が置換されている場合、置換基は、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、シアノ、ニトロ、CO2H、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオールまたはチオアルキルのうちの少なくとも1つを含む。
【0216】
用語「アニリン環系」とは、本文書における構造の左側に表されている、保存されている環(conserved ring)であって、X、Yおよび/またはZによって置換されている、保存されている環を指す。
【0217】
用語「シクロアルキル」とは、炭素原子および水素原子を含む、非芳香族の単環式または多環式環を指す。シクロアルキル基は、二重結合が存在することによって環が芳香族にならない限り、その環内に1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有することができる。シクロアルキル基の例には、以下に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどの(C3~C7)シクロアルキル基、ならびに飽和環式および二環式テルペン、ならびにシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニルなどの(C3~C7)シクロアルケニル基、ならびに不飽和環式および二環式テルペンが含まれる。C5~C8炭素環式の例には、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサンおよびシクロヘキセン環が含まれる。シクロアルキル基は、無置換とすることができるか、または少なくとも1つの置換基により置換され得る。好ましくは、シクロアルキル基は、単環式環または二環式環である。
【0218】
用語「アルキル」とは、直鎖および分岐鎖を含めた、飽和脂肪族炭化水素を指す。通常、アルキル基は、1~12個の炭素原子、1~7個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有する。分岐アルキルは、1~5個の炭素のアルキル側鎖によって置換されているアルキルである。分岐アルキルは、C1~C5ハロアルキルによって置換されているアルキルを有することができる。さらに、アルキル基は、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオまたはチオアルキルのうちの少なくとも1つによって置換されていてもよい。
【0219】
「アリールアルキル」基は、アリールに結合したアルキルを指し、アルキルおよびアリールは、本明細書において定義されている通りである。アリールアルキル基の一例は、ベンジル基である。
【0220】
「アルケニル」基は、1つまたは複数の二重結合を有する直鎖および分岐鎖を含む、不飽和炭化水素を指す。アルケニル基は、2~12個の炭素を有してもよく、好ましくは、アルケニル基は、2~6個の炭素または2~4個の炭素を有する。アルケニル基の例には、以下に限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルなどが含まれる。アルケニル基は、少なくとも1つのハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオまたはチオアルキルによって置換されていてもよい。
【0221】
本明細書で使用する場合、用語「アリール」基とは、少なくとも1つの炭素環式芳香族基または複素環式芳香族基を有する芳香族基を指し、これらは、無置換であってもよく、または置換されていてもよい。置換基が、存在する場合、これは、以下に限定されないが、少なくとも1つのハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシまたはチオまたはチオアルキルを含む。アリール環の非限定例は、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリルなどである。アリール基は、4~12員環であってもよく、好ましくは、アリール基は、4~8員環である。同様に、アリール基は、6員環または5員環であってもよい。
【0222】
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する、芳香族基を指す。一実施形態では、ヘテロアリールは、環の部分として、硫黄、酸素、窒素、ケイ素、リンなどの少なくとも1個のヘテロ原子、またはそれらの任意の組合せを含む。別の実施形態では、ヘテロアリールは、無置換であってもよく、あるいはハロゲン、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシまたはチオまたはチオアルキルから選択される、1つまたは複数の基によって置換されていてもよい。ヘテロアリール環の非限定例は、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、インドリル、イミダゾリル、イソオキサゾリルなどである。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5~12員環である。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5員環である。一実施形態では、ヘテロアリール基は、6員環である。別の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~8員環である。別の実施形態では、ヘテロアリール基は、1~4つの縮合した環を含む。一実施形態では、ヘテロアリール基は、1,2,3-トリアゾールである。一実施形態では、ヘテロアリールは、ピリジルである。一実施形態では、ヘテロアリールは、ビピリジルである。一実施形態では、ヘテロアリールは、テルピリジルである。
【0223】
本明細書で使用する場合、用語「ハロアルキル」基は、1個または複数のハロゲン原子により、例えばF、Cl、BrまたはIにより置換されているアルキル基を指す。
【0224】
「ヒドロキシル」基は、OH基を指す。本発明の化合物中のT、Q1、Q2、Q3またはQ4が、ORである場合、Rは、OHではないことが当業者によって理解される。
【0225】
用語「ハロゲン」または「ハロ」または「ハライド」は、ハロゲン;F、Cl、BrまたはIを指す。
【0226】
一実施形態では、本発明は、化合物および/もしくはその使用、および/もしくはその誘導体、および/もしくはその合成中間体、および/もしくはその合成副生成物、またはそれらの異性体、光学異性体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、水和物、N-オキシド、プロドラッグ、多形、結晶、またはそれらの組合せを提供する。
【0227】
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の化合物を酸または塩基と反応させることによって生成することができる、本化合物の「薬学的に許容される塩」を使用する。
【0228】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩に変換されてもよい。薬学的に許容される塩は、化合物を酸または塩基と反応させることによって生成することができる。
【0229】
アミンの好適な薬学的に許容される塩は、無機酸からまたは有機酸から調製されてもよい。アミンの無機塩の例には、以下に限定されないが、硫酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、塩化物、ヘミ硫酸塩、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩(ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、イソチオネート、硝酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、スルホン酸(アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ハロゲン置換アルキルスルホン酸塩、ハロゲン置換アリールスルホン酸塩)、スルホン酸塩、またはチオシアン酸塩が含まれる。
【0230】
アミンの有機塩の例には、有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸のクラスから選択することができ、この例は、酢酸塩、アルギニン、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、アントラニル酸塩、アルゲン酸塩、アルカンカルボン酸塩、置換アルカンカルボン酸塩、アルギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ブチル酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、カルボン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、桂皮酸塩、ジカルボン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、二塩酸塩、デカン酸塩、エナント酸塩、エタンスルホン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、フッ化物、ガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルセプト酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、グルタル酸塩、グルタミン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、ヒドロキシカルボン酸、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、フッ化水素酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メチレンビス(ベータ-オキシナフトエ酸塩)、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル(methylbromide)、メチル硝酸塩、メチルスルホン酸塩、マレイン酸一カリウム塩、ムチン酸塩、モノカルボン酸塩、硝酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、ナプシル酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、ピクリン酸塩、フェニル安息香酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、フタル酸塩、ペクチン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、ピルビン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、ステアリン酸塩、スルファニル酸塩、塩基性酢酸塩、酒石酸塩、テオフィリン酢酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、テレフタル酸塩、タンニン酸塩、テオクル酸塩、トリハロ酢酸塩、トリエチオジド、トリカルボン酸塩、ウンデカン酸塩および吉草酸塩である。カルボン酸またはフェノールの無機塩の例は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択されてもよい。アルカリ金属には、以下に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムが含まれる。アルカリ土類金属には、以下に限定されないが、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム;亜鉛、バリウム、コリンまたは第四級アンモニウムが含まれる。カルボン酸またはフェノールの有機塩の例は、アルギニン、脂肪族有機アミン、脂環式有機アミン、芳香族有機アミン、ベンザチン、t-ブチルアミン、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヒドラバミン、イミダゾール、リジン、メチルアミン、メグラミン、N-メチル-D-グルカミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ニコチンアミド、有機アミン、オルニチン、ピリジン、ピコリン、ピペラジン、プロカイン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トロメタミンおよび尿素を含めた有機アミンから選択することができる。
【0231】
様々な実施形態では、本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、HCl塩、シュウ酸塩、L-(+)-酒石酸塩、HBr塩およびコハク酸塩が含まれる。それぞれは、本発明の個別の実施形態となる。
【0232】
塩は、従来の手段によって、例えば、塩が不溶性である溶媒もしくは媒体中、または真空でもしくは凍結乾燥によって除去される水などの溶媒中、生成物の遊離塩基または遊離酸形態を1当量もしくはそれより多い当量の適切な酸または塩基と反応させることによって、または既存の塩のイオンを別のイオンもしくは好適なイオン交換樹脂と交換することによって形成することができる。
【0233】
本発明の方法は、非荷電化合物、または該化合物の薬学的に許容される塩を使用してもよい。特に、本方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の薬学的に許容される塩を使用する。薬学的に許容される塩は、アミン塩であってもよく、または本明細書に記載されている本発明の化合物のフェノールの塩であってもよい。
【0234】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の遊離塩基、遊離酸、非荷電化合物もしくは非複合化合物、および/またはその異性体、医薬生成物、水和物、多形、あるいはそれらの組合せを使用する。
【0235】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の光学異性体を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の異性体を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の医薬生成物を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の水和物を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の多形を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物の代謝産物を使用する。別の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている本発明の化合物を含む組成物、または別の実施形態では、本明細書に記載されている本発明の化合物の異性体、代謝産物、医薬生成物、水和物、多形の組合せを含む、組成物を使用する。
【0236】
本明細書で使用する場合、用語「合成副生成物」は、求核剤アクセプター基を含有するSARCA化合物と共に合成された化合物であって、この化合物自体、求核剤アクセプター基を有さない化合物である。合成副生成物は、それ自体、wtARの強力な阻害、またはARもしくはAR SVの分解を含めた、重要かつ有用な特性を有することができることが当業者によって理解されよう。
【0237】
本明細書で使用する場合、用語「異性体」は、以下に限定されないが、光学異性体、構造異性体または立体構造異性体を含む。
【0238】
用語「異性体」は、本SARCA化合物の光学異性体を包含することが意図されている。本発明のSARCAは、少なくとも1個のキラル中心を含有することが当業者によって理解される。したがって、本化合物は、光学的に活性な形態((R)異性体または(S)異性体など)またはラセミ形態として存在することができる。光学的に活性な化合物は、鏡像異性体に富む混合物として存在し得る。一部の化合物はまた、多形を示すことがある。本発明は、ラセミ体、光学活性体、多形体もしくは立体異性体、またはそれらの混合物のいずれも包含することが理解されるべきである。したがって、本発明は、SARCA化合物を純粋な(R)-異性体として、または純粋な(S)-異性体として包含することができる。光学活性体を調製する方法は、当分野で公知である。例えば、再結晶技法によるラセミ体の分割による、光学活性な出発原料からの合成による、キラル合成による、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離による。
【0239】
本発明の化合物は、該化合物の水和物であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「水和物」には、以下に限定されないが、半水和物、一水和物、二水和物または三水和物が含まれる。本発明はまた、本明細書において記載されている化合物のアミノ置換基のN-オキシドの使用を含む。
【0240】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている化合物の代謝産物の使用を提供する。一実施形態では、「代謝産物」は、代謝または代謝過程によって別の物質から生成する任意の物質を意味する。
【0241】
一実施形態では、本発明の化合物は、例えば、実施例1に準拠して、本明細書に記載されている通りに調製される。
選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストの生物活性
【0242】
本発明の化合物は、AR AF-1またはLBDに共有結合により、および非可逆的に結合する、ならびにARおよびAR-SVの機能を阻害する、ならびに/またはARおよびAR-SVを分解する、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)である。
【0243】
本発明のSARCA化合物は、前立腺がん(PCa)に罹患している男性対象の前立腺がんを処置するため、またはその生存期間を増大するために使用することができ、この方法は、対象に、式Iの構造:
【化32】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
によって表される、治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、合成副生成物、水和物またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む。
【0244】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IIの構造:
【化33】
(式中、
Xは、CHまたはNであり、
Yは、H、CF
3、F、Br、Cl、I、CNまたはC(R)
3であり、
Zは、H、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COOH、COR、NHCORまたはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5~8員の縮合環を形成し、
Rは、H、アルキル、アルケニル、CH
2CH
2OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、IまたはOHであり、
R
aは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、ハライドは、F、Cl、BrまたはIであり、
W
1は、HまたはOR
dであり、R
dは、H、アルキル-NCO、アルキル-NCS、アルキル-SCN、アルキル-OCN、アルキル-N
3、アルキル-SO
2F、アルキル-CH
2ハライド、アルキル-NHCOCH
2ハライド、アルキル-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2であり、
W
2は、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、CH
2CH
3、CF
2CF
3またはCH
2Aであるか、
あるいはW
1およびW
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=CW
5W
6基を形成し、W
5およびW
6は、それぞれ、Hまたはアルキルであり、
W
3およびW
4は、個々に、H、OH、アルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCOR、CONHR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2ハライド、-NHSO
2CH
2ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2により必要に応じて置換されているか、
あるいはW
1およびW
2のうちの一方は、W
3およびW
4のうちの一方と、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C=C結合を形成し、
Aは、NR
bR
c、または5~10員のアリール基もしくはヘテロアリール基(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)であり、
R
bは、Hまたはアルキルであり、アルキルは、OR、NO
2、CN、F、Br、Cl、I、COR、NHCORまたはCONHRにより必要に応じて置換されており、
R
cは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、アルキルまたはアルコキシにより必要に応じて置換されているか、
あるいはR
bおよびR
cは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1個の窒素原子および0、1つまたは2つの二重結合を有する5~10員の飽和または不飽和複素環式環(水素、ケト、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、CF
3、置換もしくは無置換アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、ヒドロキシル、アルコキシ、OR、ベンジル、NCS、マレイミド、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、COR、-NCO、-NCS、-SCN、-OCN、-N
3、-SO
2F、-CH
2ハライド、-NHCOCH
2-ハライド、-NHSO
2CH
2-ハライド、-CH
2-CH=CH-COOR、-CH
2-C(COOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHR、-CH
2-C(CONHR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CONHCOR、-CH
2-C(CONHCOR)=CH
2、-CH
2-CH=CH-CON(R)
2または-CH
2-C(CON(R)
2)=CH
2からそれぞれ独立して選択されるQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4のうちの少なくとも1つにより必要に応じて置換されている)を形成する)
もしくはその異性体、光学異性体、ラセミ混合物、薬学的に許容される塩、医薬生成物、合成副生成物、水和物またはそれらの任意の組合せによって表される。
【0245】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、α,β-不飽和カルボニルを有する少なくとも1つの官能基を含有する。一実施形態では、このようなα,β-不飽和カルボニル官能基は、以下に限定されないが、α,β-不飽和ケトン、アミド、エステル、チオエステル、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物、イミドなどを含む。一実施形態では、α,β-不飽和官能基は、AR内の求核剤に対するマイケル付加反応のアクセプターとして働く。
【0246】
一実施形態では、式Iまたは式IIの構造によって表される本発明の化合物は、少なくとも1つの求核剤アクセプター基を含有する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、イソシアナト(-NCO)、イソチオシアナト(-NCS)、シアナト(-CNO)、チオシアナト(-CNS)、アジド(N3)、フッ化スルホニル(-SO2F)、ハロメチル(-CH2-ハライド)、2-ハロアセチル(-NHCOCH2-ハライド)、ハロスルホニル(-NHSO2CH2-ハライド)などのうちの少なくとも1つである。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、AR内の求核剤に対する求核剤アクセプターとして働く。一実施形態では、前記AR求核剤は、NTD内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、AF-1ドメイン内に存在する。別の実施形態では、前記AR求核剤は、LBD内に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Ra基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W1基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、W3基またはW4基に存在する。一実施形態では、求核剤アクセプター基は、Q1、Q2、Q3またはQ4基のうちのいずれか1つに存在する。
【0247】
本発明は、前立腺がん(PCa)に罹患している男性対象の前立腺がんを処置する方法またはその生存期間を増大する方法であって、対象に、本明細書に記載されている本発明の化合物によって代表される、治療有効量の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または異性体を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0248】
前立腺がんは、進行前立腺がん、不応性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、高リスクnmCRPCまたはそれらの任意の組合せとすることができる。
【0249】
前立腺がんは、増殖するため、AR-FLおよび/またはAR-SVに依存することがある。前立腺がんまたは他のがんは、アンドロゲン受容体アンタゴニストによる処置に抵抗性であってもよい。前立腺がんまたは他のがんは、エンザルタミド、ビカルタミド、アビラテロン、ARN-509、ODM-201、EPI-001、EPI-506、AZD-3514、ガレテロン、ASC-J9、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、スピロノラクトンまたはそれらの任意の組合せによる処置に抵抗性であってもよい。本方法は、AR、AR-FL、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異を有するAR-FL、AR-SV、遺伝子増幅されたAR、またはそれらの任意の組合せのレベルを低下させることもできる。
【0250】
一実施形態では、本発明は、エンザルタミド抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に、治療有効量の本発明の化合物もしくはその異性体、光学異性体、異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0251】
一実施形態では、本発明は、アビラテロン抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に、治療有効量の本発明の化合物もしくはその異性体、光学異性体、異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0252】
一実施形態では、本発明は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本発明の化合物もしくはその異性体、光学異性体、異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0253】
本方法は、アンドロゲン遮断療法(ADT)またはLHRHアゴニストまたはアンタゴニストなどの第2の治療をさらに含むことができる。LHRHアゴニストには、以下に限定されないが、リュープロリド酢酸塩が含まれる。
【0254】
本発明は、前立腺(PCa)がんに罹患している男性対象に、治療有効量のSARCA化合物または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、該対象の前立腺がんを処置する方法もしくはその進行を阻害する方法、または該対象の生存期間を増大する方法であって、化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0255】
本発明は、不応性前立腺がん(PCa)に罹患している男性対象に、治療有効量のSARCA化合物または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、該対象の不応性前立腺がんを処置する方法もしくはその進行を阻害する方法、または該対象の生存期間を増大する方法であって、化合物が、式I~XXの化合物によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0256】
本発明は、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に罹患している男性対象に治療有効量のSARCAを投与するステップを含む、該対象を処置する方法または該対象の生存期間を増大する方法であって、化合物が、式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つによって表される、方法を包含する。
【0257】
本方法は、対象にアンドロゲン遮断療法を行うステップをさらに含むことができる。
【0258】
本発明は、エンザルタミド抵抗性前立腺がん(PCa)に罹患している男性対象に、治療有効量のSARCA化合物または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、該対象のエンザルタミド抵抗性前立腺がんを処置する方法もしくはその進行を阻害する方法、または該対象の生存期間を増大する方法であって、化合物が、式I~XXの化合物によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0259】
本方法は、対象にアンドロゲン遮断療法を行うステップをさらに含むことができる。
【0260】
本発明は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に罹患している女性対象に、治療有効量のSARCA化合物または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、該対象のトリプルネガティブ乳がんを処置する方法もしくはその進行を阻害する方法、または該対象の生存期間を増大する方法であって、化合物が、式I~XXの化合物によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0261】
本発明は、それを必要とする対象における、乳がんを処置する方法であって、前記対象が、ARを発現する乳がん、AR-SVを発現する乳がんおよび/またはAR-V7を発現する乳がんを有しており、前記方法が、対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含み、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0262】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、ARを発現する乳がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0263】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、AR-SVを発現する乳がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0264】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、AR-V7を発現する乳がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0265】
本明細書で使用する場合、用語「生存期間の増大」とは、対象の生存期間を説明する場合、時間が延びることを指す。したがって、この文脈では、本発明の化合物は、進行前立腺がん、不応性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC);転移性CRPC(mCRPC);非転移性CRPC(nmCRPC);もしくは高リスクnmCRPCを有する男性、またはTNBCを有する女性の生存期間を増大するために使用することができる。
【0266】
代替的に、本明細書で使用する場合、用語「増大する」、「増大すること」または「増大した」は、互換的に使用されてもよく、次第に大きくなる実体(サイズ、量、数または強度のような)を指し、この場合、例えば、実体は、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)または前立腺特異抗原(PSA)である。
【0267】
本発明の化合物および組成物は、非転移性前立腺がんに罹患している対象における、無転移生存期間(MFS)を増大させるために使用され得る。非転移性前立腺がんは、非転移性進行前立腺がん、非転移性CRPC(nmCRPC)または高リスクnmCRPCとすることができる。
【0268】
本明細書に記載されているSARCA化合物を使用して、デュアル作用を実現することができる。例えば、本SARCA化合物は前立腺がんを処置して、転移を予防することができる。前立腺がんは、不応性前立腺がん;進行前立腺がん;去勢抵抗性前立腺がん(CRPC);転移性CRPC(mCRPC);非転移性CRPC(nmCRPC);または高リスクnmCRPCとすることができる。
【0269】
本明細書に記載されているSARCA化合物を使用して、デュアル作用を実現することができる。例えば、本SARCA化合物は、TNBCを処置して、転移を予防することができる。
【0270】
進行前立腺がんを有する男性であって、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に進行するリスクが高い男性は、20ng/dLより高い血清中総テストステロン濃度でADTを受けている男性、またはADTの開始時に、(1)Gleasonパターンが4または5の前立腺がんであることが確認された、(2)転移性前立腺がん、(3)<3カ月のPSA倍加時間、(4)PSA≧20ng/mL、もしくは(5)限定的な局所治療法(根治的前立腺切除または放射線療法)の後に、<3年間のPSA再発のいずれかを有する、進行前立腺がんを有する男性である。
【0271】
前立腺特異抗原(PSA)の正常なレベルは、とりわけ、男性対象の年齢、およびその前立腺のサイズなどのいくつかの因子に依存する。2.5~10ng/mLの間の範囲のPSAレベルが、「高境界値」と考えられる一方、10ng/mLより高いPSAレベルは、「高い」と考えられる。0.75/年より大きな変化速度または「PSA速度」が、高速であると考えられる。PSAレベルは、継続中のADTもしくはADT歴、外科的去勢にも関わらず、または抗アンドロゲンおよび/またはLHRHアゴニストによる処置にもかかわらず、増大することがある。
【0272】
高リスク非転移性去勢抵抗性前立腺がん(高リスクnmCRPC)を有する男性は、約18カ月またはそれ未満の予測される無憎悪生存期間を有する、迅速なPSA倍加時間を有する男性を含むことができる(Miller K, Moul JW, Gleave M, et al. 2013. “Phase III, randomized, placebo-controlled study of once-daily oral zibotentan (ZD4054) in patients with non-metastatic castration-resistant prostate cancer,” Prostate Canc Prost Dis. Feb; 16:187-192)。このような比較的に迅速なそれらの疾患の進行は、これらの個体に対する新規な治療法の重要性を強調するものである。
【0273】
本発明の方法は、高リスクnmCRPCを罹患している、8ng/mLより高いPSAレベルを有する対象を処置することができる。患者集団は、nmCRPCに罹患している対象であって、PSAが、8カ月未満または10カ月未満に2倍になる、対象を含む。本方法はまた、高リスクnmCRPCに罹患している対象において、全血清テストステロンレベルが20ng/mLより高い、患者集団を処置することができる。一例では、血清中の遊離テストステロンレベルは、高リスクnmCRPCに罹患している対象において、精巣摘除術を受けた男性において観察されるレベルより高い。
【0274】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのLHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、抗アンドロゲン、抗プログラム死受容体1(抗PD-1)薬または抗PD-L1薬をさらに含んでもよい。LHRHアゴニストには、以下に限定されないが、リュープロリド酢酸塩(Lupron(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれている、US5,480,656;US5,575,987;5,631,020;5,643,607;5,716,640;5,814,342;6,036,976)または酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれているUS7,118,552;7,220,247;7,500,964)が含まれる。LHRHアンタゴニストには、以下に限定されないが、デガレリクスまたはアバレリックスが含まれる。抗アンドロゲンには、以下に限定されないが、ビカルタミド、フルタミド、アパルタミド、フィナステリド、デュタステリド、エンザルタミド、ニルタミド、クロルマジノン、アビラテロンまたはそれらの任意の組合せが含まれる。抗PD-1薬には、以下に限定されないが、AMP-224、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブおよびAMP-554が含まれる。抗PD-L1薬には、以下に限定されないが、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブおよびMPDL3280Aが含まれる。抗CTLA-4薬には、以下に限定されないが、イピリムマブおよびトレメリムマブが含まれる。
【0275】
前立腺がん、進行前立腺がん、CRPC、mCRPCおよび/またはnmCRPCの処置は、前立腺がんの関連症状、機能および/または生存期間の臨床的に有意な改善をもたらすことができる。臨床的に有意な改善は、とりわけ、がんが転移性である場合、レントゲンによる無増悪生存期間(rPFS)の増大、またはがんが非転移性である場合、無転移生存期間(MFS)の増大によって判定することができる。
【0276】
本発明は、治療有効量のSARCA化合物を投与するステップを含む、前立腺がん、進行前立腺がん、転移性前立腺がんまたは去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に罹患している男性対象における、血清中の前立腺特異抗原(PSA)のレベルを低下させる方法であって、化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0277】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に罹患している男性対象における、血清中PSAを低下させる二次ホルモン治療の方法を包含するか、または化合物は、去勢抵抗性前立腺がんに罹患している男性対象における血清中PSAを低下させる、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0278】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、それを必要とする対象における腫瘍内の、AR、AR完全長(AR-FL)、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異を有するAR-FL、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および/またはAR遺伝子の増幅のレベルを低下させる方法を包含するか、または化合物が、腫瘍内のAR、AR完全長(AR-FL)、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異もしくは他のAR変異を有するAR-FL、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および/またはAR遺伝子の増幅のレベルを低下させる、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0279】
本方法は、レントゲン写真による無増悪生存期間(rPFS)、また無転移生存期間(MFS)を増大することができる。
【0280】
対象は、非転移性がんを有すること、アンドロゲン遮断療法(ADT)に成功しなかったこと、精巣摘除術を受けること、または高いもしくは上昇している前立腺特異抗原(PSA)レベルを有することがある。対象は、前立腺がん、進行前立腺がん、不応性前立腺がんを有する患者、CRPC患者、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者または非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)患者とすることができる。これらの対象では、不応性は、エンザルタミド抵抗性前立腺がんとすることができる。これらの対象では、nmCRPCは、高リスクnmCRPCであってもよい。さらに、対象は、全Tの去勢レベルの有無にかかわらず、アンドロゲン遮断療法(ADT)を受けていてもよい。
【0281】
本明細書で使用する場合、語句「去勢抵抗性前立腺がんに罹患している対象」とは、以下の特徴:アンドロゲン遮断療法(ADT)により以前に処置されている;ADTに応答し、現在、血清中PSAが、>2ng/mLまたは>2ng/mLを有し、かつADTで達成される底値よりも25%高いことを表す;アンドロゲン遮断療法に維持されているにもかかわらず、血清中PSAが上昇していると診断された対象;血清中の全テストステロンが去勢レベル(<50ng/dL)、または血清中の全テストステロンが去勢レベル(<20ng/dL)にある、のうちの少なくとも1つを有する対象を指す。対象は、少なくとも2週間の間隔で、2回の連続する評価に対して、血清中PSAの増大を有すること、ADTにより効果的に処置されていること、またはADTの開始後、血清中のPSA応答歴を有することができる。
【0282】
本明細書で使用する場合、用語「血清中PSAの増大」とは、アンドロゲン遮断療法(ADT)の開始後の、血清中PSAの25%またはそれより大きな上昇、および底値からの2ng/mlまたはそれより大きな絶対的上昇;または血清中PSAが>2ng/mL、または>2ng/mLかつ底値より25%の上昇を指す。用語「底値」とは、患者がADTを受けている間の、最低PSAレベルを指す。
【0283】
用語「血清中PSAの応答」とは、以下:ADTの開始前から血清中PSA値の少なくとも90%の低下、任意の時点における<10ng/mLとなる検出不可能なレベルの血清中PSA(<0.2ng/mL)、血清中PSAのベースラインからの少なくとも50%の低下、血清中PSAのベースラインからの少なくとも90%の低下、血清中PSAのベースラインからの少なくとも30%の低下、または血清中PSAのベースラインからの少なくとも10%の低下のうちの少なくとも1つを指す。
【0284】
本発明の方法は、ADTの形態と本発明の化合物との組合せを投与するステップを含む。ADTの形態は、LHRHアゴニストを含む。LHRHアゴニストには、以下に限定されないが、リュープロリド酢酸塩(Lupron(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれている、US5,480,656;US5,575,987;5,631,020;5,643,607;5,716,640;5,814,342;6,036,976)または酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれているUS7,118,552;7,220,247;7,500,964)が含まれる。ADTの形態には、以下に限定されないが、LHRHアンタゴニスト、可逆性抗アンドロゲンまたは両側精巣摘除術が含まれる。LHRHアンタゴニストには、以下に限定されないが、デガレリクスおよびアバレリックスが含まれる。抗アンドロゲンには、以下に限定されないが、ビカルタミド、フルタミド、アパルタミド、フィナステリド、デュタステリド、エンザルタミド、EPI-001、EPI-506、ARN-509、ODM-201、ニルタミド、クロルマジノン、アビラテロンまたはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0285】
本発明の方法は、少なくとも1つの本発明の化合物およびリアーゼ阻害剤(例えば、アビラテロン)を投与するステップを包含する。
【0286】
用語「進行前立腺がん」とは、前立腺に起源があり、精嚢、骨盤リンパ節または骨を含めた周囲組織などの前立腺を越えて、または身体の他の部分へと広く転移した転移性がんを指す。前立腺がんの病理は、悪性度の増加する順に1~5のGleason等級付けにより等級付けされる。進行疾患および/または前立腺がんに起因する死亡の大きなリスクを有する患者は、その定義に含まれるべきであり、IIBという低い疾患期の前立腺カプセルの外側にがんを有するいかなる患者も、明らかに「進行した」疾患を有する。「進行前立腺がん」は、局所的な進行前立腺がんを指すことができる。同様に、「進行乳がん」とは、乳房に起源があり、乳房を越えて周囲組織、または肝臓、脳、肺もしくは骨などの身体の他の部分へと広く転移した転移性がんを指す。
【0287】
用語「不応性」とは、処置に応答しないがんを指すことができる。例えば、前立腺がんまたは乳がんは、処置の開始時に抵抗性であってもよく、または処置の間に抵抗性になってもよい。「不応性がん」は、本明細書において、「抵抗性がん」と称されてもよい。
【0288】
用語「去勢抵抗性前立腺がん」(CRPC)は、患者が依然としてADTもしくは他の治療中である間に、悪化または進行してテストステロンを低下させる進行前立腺がん、あるいはホルモン不応性、ホルモンナイーブ、アンドロゲン非依存性、または化学的もしくは外科的去勢抵抗性と考えられる前立腺がんを指す。CRPCは、イントラクラインアンドロゲン合成によるAR活性化の結果、リガンド結合ドメイン(LBD)を欠くARスプライスバリアント(AR-SV)の発現、またはアンタゴニストに抵抗する能力を有するAR-LBDまたは他のAR変異の発現の結果とすることができる。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、進行中のADTおよび/または外科的去勢があるにもかかわらず、発症した進行前立腺がんである。去勢抵抗性前立腺がんは、前立腺特異抗原(PSA)の血清中レベルの上昇もしくは一層高いこと、転移、骨転移、疼痛、リンパ節の関与、腫瘍成長のサイズまたは血清中マーカーの増大、予後の診断マーカーもしくは患者の状態の悪化によって証明される通り、以前の外科的去勢、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(例えば、リュープロリド)もしくはアンタゴニスト(例えば、デガレリクスまたはアバレリックス)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド、アパルタミド、エンザルタミド、ケトコナゾール、アミノグルテタミド)、化学療法剤(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、アドリアマイシン、ミトキサントロン、エストラムスチン、シクロホスファミド)、キナーゼ阻害剤(イマチニブ(Gleevec(登録商標))もしくはゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、カボザンチニブ(Cometriq(商標)、XL184としても知られている)、または他の前立腺がん療法(例えば、ワクチン(シプリューセル-T(Provenge(登録商標))、GVAXなど)、ハーブ(PC-SPES)およびリアーゼ阻害剤(アビラテロン))による継続処置にもかかわらず、進行もしくは悪化を続けるか、または患者の健康に悪影響を及ぼす前立腺がんとして定義される。
【0289】
去勢抵抗性前立腺がんは、ホルモンにナイーブな前立腺がんとして定義されてもよい。去勢抵抗性前立腺がんを有する男性では、腫瘍細胞は、アンドロゲン(男性の性別の特徴の発生および維持を促進するホルモン)の非存在下で成長する能力を有することができる。
【0290】
多数の早期前立腺がんは、成長のためにアンドロゲンを必要とするが、進行前立腺がんは、アンドロゲン非依存性またはホルモンナイーブである。
【0291】
用語「アンドロゲン遮断療法」(ADT)は、精巣摘除術、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログの投与、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストの投与、5α-レダクターゼ阻害剤の投与、抗アンドロゲンの投与、テストステロン生合成の阻害剤の投与、エストロゲンの投与、または17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ(CYP17A1)阻害剤の投与を含むことができる。LHRH薬は、睾丸によって産生されるテストステロンの量を低下させる。米国において利用可能なLHRHアナログの例には、リュープロリド(Lupron(登録商標)、Viadur(登録商標)、Eligard(登録商標))、ゴセレリン(Zoladex(登録商標))、トリプトレリン(Trelstar(登録商標))およびヒストレリン(Vantas(登録商標))が含まれる。抗アンドロゲンは、アンドロゲンのいずれかを身体が使用する能力を遮断する。抗アンドロゲン薬の例には、エンザルタミド(Xtandi(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、アパルタミド(Erleada(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))およびニルタミド(Nilandron(登録商標))が含まれる。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストには、アバレリックス(Plenaxis(登録商標))またはデガレリクス(Firmagon(登録商標))(進行前立腺がんを処置するため、2008年にFDAによって使用が承認された)が含まれる。5α-レダクターゼ阻害剤は、テストステロンを一層活性なアンドロゲン、5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に変換する身体の能力を阻害し、フィナステリド(Proscar(登録商標))およびデュタステリド(Avodart(登録商標))などの薬物を含む。テストステロン生合成の阻害剤は、ケトコナゾール(Nizoral(登録商標))などの薬物を含む。エストロゲンは、ジエチルスチルベストロールまたは17α-エストラジオールを含む。17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ(CYP17A1)阻害剤は、アビラテロン(Zytiga(登録商標))を含む。
【0292】
本発明は、抗アンドロゲン-抵抗性前立腺がんを処置する方法を包含する。抗アンドロゲンは、以下に限定されないが、ビカルタミド、ヒドロキシフルタミド、フルタミド、アパルタミド、エンザルタミド、ダロルタミドまたはアビラテロンを含むことができる。
【0293】
本発明は、それを必要とする対象における、前立腺がんを処置する方法であって、前記対象が、再配列したAR、ARを過剰発現する前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7を発現する前立腺がんまたはd567ESを発現する前立腺がんを有しており、前記方法が、対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含み、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18の少なくとも1つである、方法を包含する。
【0294】
一実施形態では、去勢抵抗性前立腺がんは、再配列したAR、ARを過剰発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7を発現する去勢抵抗性前立腺がん、d567ESを発現する去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである。
【0295】
一実施形態では、去勢感受性前立腺がんは、F876L変異を発現する去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである。
【0296】
一実施形態では、去勢感受性前立腺がんの処置は、非去勢背景において、または単剤療法として、または去勢感受性前立腺がんの腫瘍が、エンザルタミド、アパルタミドおよび/またはアビラテロンに抵抗性である場合に行われる。
【0297】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、ARを過剰発現する前立腺がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0298】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。一実施形態では、去勢抵抗性前立腺がんは、再配列したAR、ARを過剰発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7を発現する去勢抵抗性前立腺がん、d567ESを発現する去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである。
【0299】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、去勢感受性前立腺がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。一実施形態では、去勢感受性前立腺がんは、F876L変異を発現する去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである。一実施形態では、去勢感受性前立腺がんの処置は、非去勢背景において、または単剤療法として、または去勢感受性前立腺がんの腫瘍が、エンザルタミド、アパルタミドおよび/またはアビラテロンに抵抗性である場合に行われる。
【0300】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、AR-V7を発現する前立腺がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0301】
本発明は、それを必要とする対象に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、対象における、d567ESを発現する前立腺がんを処置する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の処置
【0302】
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびHER2受容体キナーゼの発現が欠如した乳がんのタイプである。したがって、TNBCには、他のタイプの原発性乳がんを処置するために使用される、ホルモンおよびキナーゼによる治療標的がない。これに応じて、化学療法が、TNBCに対する最初の薬物療法となることが多い。興味深いことに、ARは、依然としてTNBCにおいて発現されることが多く、化学療法の代替となるホルモン標的化治療剤を提供することができる。ERポジティブ乳がんでは、ARの活性化は、乳房組織および腫瘍において、ERの作用を制限および/または妨害すると考えられているので、ARは、陽性予後指標となる。しかし、ERの非存在下では、ARは、実際に、乳がんの腫瘍の成長を支持することが可能である。ARの役割は、TNBCでは完全には理解されていないが、ある特定のTNBCのARが、LBDを欠くAR-SVのアンドロゲン非依存性活性化、またはAR完全長のアンドロゲン依存性活性化によって支持され得るという証拠が存在する。したがって、エンザルタミドおよび他のLBD指向性の従来のARアンタゴニストは、これらのTNBCのARにおけるAR-SVを拮抗することができないと思われる。しかし、本発明のSARCAは、これらのTNBCにおいて、ARのNTDにおける結合部位を介して、ARを拮抗し、抗腫瘍作用をもたらすことができると思われる。
ケネディー病の処置
【0303】
筋委縮(MA)は、筋肉の消耗または減損、および筋質量の減少を特徴とする。例えば、ポリオ後MAは、ポリオ後症候群(PPS)の一部として起こる筋消耗である。萎縮には、脆弱、筋肉疲労および疼痛が含まれる。別のタイプのMAは、X連鎖球脊髄性筋萎縮症(SBMA-ケネディ病としても知られる)である。この疾患は、X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子内の欠損から生じ、男性にしか罹患せず、その発症は、後期青年期から成人期において生じる。四肢近位および球筋力低下により、一部の場合、車椅子への依存を含む身体的制約がもたらされる。この変異は、アンドロゲン受容体のN末端ドメインにおいて、伸長ポリグルタミン鎖をもたらす(polyQ AR)。
【0304】
内在性アンドロゲン(テストステロンおよびDHT)によるpolyQ ARの結合および活性化は、変異体アンドロゲン受容体のアンフォールディングおよび核移行をもたらす。アンドロゲン誘発性毒性、およびpolyQ ARタンパク質のアンドロゲン依存性の核への蓄積が、病因の中心のように思われる。したがって、アンドロゲンにより活性化されるpolyQ ARの阻害は、治療選択肢になり得る(A. Baniahmad. Inhibition of the androgen receptor by antiandrogens in spinobulbar muscle atrophy. J. Mol. Neurosci. 2016 58(3), 343-347)。これらの段階が病因に必要であり、トランス活性化機能の部分的喪失(すなわち、アンドロゲン不応)および理解が不十分な神経筋変性をもたらす。末梢polyQ ARアンチセンス治療法は、SBMAのマウスモデルでは、疾患をレスキューする(Cell Reports 7, 774-784, May 8, 2014)。抗アンドロゲンの使用をさらに支持するものは、抗アンドロゲンであるフルタミドが、球脊髄性筋委縮症の3つのモデルにおいて、アンドロゲン依存性毒性から雄マウスを防御するという報告に起因している(Renier KJ, Troxell-Smith SM, Johansen JA, Katsuno M, Adachi H, Sobue G, Chua JP, Sun Kim H, Lieberman AP, Breedlove SM, Jordan CL. Endocrinology 2014, 155(7), 2624-2634)。これらの段階が病因に必要であり、トランス活性化機能の部分的喪失(すなわち、アンドロゲン不応)および理解が不十分な神経筋変性をもたらす。現在、疾患修飾処置は存在せず、むしろ症状に指向された処置しか存在しない。細胞機構を利用してその分解を促進することによってpolyQ ARを毒性の近位メディエーターとして標的とする取り組みが、治療的介入にとって有望である。
【0305】
本明細書において報告されているものなどの選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストは、現在まで試験されたすべてのアンドロゲン受容体(完全長、スプライスバリアント、抗アンドロゲン抵抗性変異体など)に結合して、トランス活性化を阻害してこれらを分解し、このことは、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストは、その病因がアンドロゲン依存性であるSBMAなどの疾患の処置にとって有望な道筋となることを示している。
【0306】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、ケネディー病を処置する方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0307】
用語「アンドロゲン受容体依存性疾患または状態」とは、病理的起源を有する、またはアンドロゲン受容体の活性の変更、増大、調節異常もしくは異常によって増殖した疾患または状態を指す。一部の実施形態では、アンドロゲン受容体は、完全長アンドロゲン受容体である。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、野性型完全長アンドロゲン受容体(AR-FL)である。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、完全長アンドロゲン受容体の点突然変異である。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、polyQ多型である。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、アンドロゲン受容体のスプライス-バリアント(AR-SV)である。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、上記のいずれか、またはそれらの組合せである。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、上記のいずれかであり、さらに過剰発現される。別の実施形態では、アンドロゲン受容体は、上記のいずれかであり、別の遺伝子とさらに組換えが行われて、融合タンパク質を形成する。一般的なAR融合タンパク質の例は、以下に限定されないが、TMPRSS2または転写因子のETSファミリーを含む。一部の実施形態では、アンドロゲン受容体は、上記のいずれかであり、病理学的に変化した細胞環境に存在する。別の実施形態では、アンドロゲン受容体の活性の変更、増大、調節異常または異常は、アンドロゲン受容体において作用する内在性アンドロゲンによって引き起こされる。別の実施形態では、アンドロゲン受容体の活性の変更、増大、調節異常または異常は、アンドロゲン受容体において作用する外因的に投与された化合物によって引き起こされる。別の実施形態では、アンドロゲン受容体の活性の変更、増大、調節異常または異常は、リガンド非依存性である。別の実施形態では、リガンド非依存活性は、アンドロゲン受容体の構成的な活性によって引き起こされる。別の実施形態では、リガンド非依存活性は、アンドロゲン受容体の構成的に活性な変異体によって引き起こされる。別の実施形態では、リガンド非依存活性は、病理学的な細胞環境によって引き起こされる。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、アンドロゲン受容体アンタゴニストの投与によって改善される。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、本明細書に記載されているアンドロゲン遮断療法(ADT)の実施によって改善される。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、アンドロゲン受容体アゴニストの投与によって悪化する。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、生化学処置によってアンドロゲン受容体の発現を低下させることにより改善される。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、ホルモン平衡異常の結果である。別の実施形態では、対象におけるホルモン平衡異常は、老化の結果、または他の実施形態では、疾患の結果である。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、抗アンドロゲンなどのアンドロゲン受容体アンタゴニストの投与に応答する。別の実施形態では、これらのアンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、アンドロゲン受容体の活性によってモジュレートされた、またはそれらの病因がアンドロゲン受容体の活性に依存する、状態、疾患または障害である。
【0308】
一実施形態では、「アンドロゲン受容体依存性疾患または状態」とは、一部または全体が、アンドロゲン活性または身体におけるAR軸の活性化の存在に依存する、またはその存在に感受性が高い、医療状態のことである。別の実施形態では、「アンドロゲン受容体依存性疾患または状態」は、ARアンタゴニストによって処置されること、阻害されること、予防されること、または抑制されることが知られている、任意の疾患または状態である。
【0309】
一部の実施形態では、アンドロゲン受容体依存性疾患および状態は、本発明の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストの投与によって改善される。一部の実施形態では、本発明の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストの利益は、アンドロゲン受容体の少なくとも1つの形態のその分解である。一部の実施形態では、本発明の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストの利益は、アンドロゲン受容体の少なくとも1つの形態のその阻害である。一部の実施形態では、本発明の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニストの利益は、アンドロゲン受容体の少なくとも1つの形態のその分解および阻害である。
【0310】
アンドロゲン受容体依存性疾患および状態の多数の例が、本明細書に記載されており、これらには、以下に限定されないが、各々が本明細書の以下に詳細に記載されている、前立腺がん、乳がん、ホルモン依存性がん、ホルモン非依存性がん、ARを発現するがんおよびホルモン依存性がんの前駆体;各々が本明細書の以下に詳細に記載されている、皮膚障害、男性のホルモン状態または女性のホルモン状態;以下に詳細に記載されているアンドロゲン不全症候群;子宮筋腫、ケネディー病(SBMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、腹部大動脈瘤(AAA)、創傷治癒の改善、性的倒錯、色情症、パラフィリア、アンドロゲン精神障害および男性化などが含まれる。
【0311】
本明細書で使用する場合、用語「アンドロゲン受容体関連状態」または「アンドロゲン感受性疾患または障害」または「アンドロゲン依存性疾患または障害」とは、アンドロゲン受容体の活性によってモジュレートされる、またはその病因が、アンドロゲン受容体の活性に依存する、状態、疾患または障害のことである。アンドロゲン受容体は、身体の大部分の組織において発現されるが、とりわけ前立腺および皮膚において過剰発現される。ADTは、長年にわたり、前立腺がん処置の主軸であり、SARCAは、様々な前立腺がん、良性前立腺肥大、前立腺肥大(prostamegaly)、および前立腺の他の病気の処置にも有用となり得る。
【0312】
本発明は、治療有効量の式I~XXの少なくとも1つの化合物を投与するステップを含む、良性前立腺肥大症を処置する方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0313】
本発明は、治療有効量の式I~XXの少なくとも1つの化合物を投与するステップを含む、前立腺肥大を処置する方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0314】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、過剰増殖性前立腺障害および疾患を処置する方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。
【0315】
皮膚に及ぼすARの影響は、十代および早期成年に一般的な性的二形および思春期関連性の皮膚科学的問題において明白である。思春期の高アンドロゲン作用は、硬毛成長、皮脂産生を刺激し、十代男性をざ瘡、尋常性ざ瘡、脂漏症、過剰皮脂、化膿性汗腺炎、男性型多毛症、多毛症、高有毛症(hyperpilosity)、男性型脱毛症、男性型禿髪症、および他の皮膚科学的病気に罹患させやすい。抗アンドロゲンは、理論的に、議論される高アンドロゲン作用性皮膚科学的疾患を予防するはずであるが、それらは、局所的に施用された場合、毒性、性的副作用および効力の欠如によって制限される。本発明のSARCAは、リガンド依存性およびリガンド非依存性AR活性化を強力に阻害し、(場合により)血清中の短い生物学的半減期を有しており、局所的に製剤化された本発明のSARCAは、全身的副作用のリスクなしに、ざ瘡、脂漏性皮膚炎および/または男性型多毛症を罹患した領域に施用することができることを示唆する。
【0316】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物または化合物1~18のいずれかを投与するステップを含む、ざ瘡、尋常性ざ瘡、脂漏症、脂漏性皮膚炎、汗腺腫瘍、男性型多毛症、多毛症、高有毛症または脱毛症を処置する方法を包含する。
【0317】
本明細書に記載されている化合物および/または組成物は、脱毛、脱毛症、男性型脱毛症、円形脱毛症、化学療法に続発する脱毛症、放射線療法に続発する脱毛症、瘢痕化によって誘発される脱毛症、またはストレスにより誘発される脱毛症を処置するために使用されてもよい。一般に、「脱毛」または「脱毛症」は、男性型禿髪症の非常に共通したタイプにあるような禿頭症を指す。禿髪症は、通常、頭皮上のパッチ脱毛から始まり、時として、完全禿髪症およびさらには体毛の喪失へと進行する。脱毛は、男性および女性の両方が罹患する。
【0318】
本発明は、治療有効量の式I~XXの化合物または化合物1~18のいずれかを投与するステップを含む、男性型脱毛症を処置する方法を包含する。
【0319】
本発明は、それを必要とする男性に、治療有効量の選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物もしくはその異性体、薬学的に許容される塩、医薬生成物、多形、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、該対象における、ホルモン状態を処置する方法、それを抑制する方法、その出現率を低下させる方法、その重症度を軽減する方法、またはその進行を阻害する方法であって、前記SARCA化合物が、式I~XXの構造によって表されるか、または化合物が、化合物1~18のうちの少なくとも1つである、方法を包含する。
【0320】
一実施形態では、状態は、男性における性腺機能亢進症、色情症、性機能障害、女性化乳房、性的早熟、認知および気分の変化、うつ病、脱毛、高アンドロゲン性皮膚障害、前立腺の前がん状態病変、良性前立腺肥大、前立腺がんおよび/または他のアンドロゲン依存性がんである。
【0321】
本発明のSARCAはまた、性的早熟、思春期早発症、月経困難、無月経、多胞性子宮症候群、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮異常出血、早発月経、線維嚢胞性乳腺疾患、子宮の類線維腫、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症、妊娠子癇、早期分娩、月経前症候群および/または膣乾燥などの高アンドロゲン作用性病因を有する恐れがある、女性におけるホルモン状態の処置に有用となり得る。
【0322】
本発明は、性的早熟または思春期早発症、月経困難または無月経、多胞性子宮症候群、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮異常出血、高アンドロゲン性疾患(多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など)、線維嚢胞性乳腺疾患、子宮の類線維腫、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症、妊娠子癇、早期分娩、月経前症候群または膣乾燥を処置する方法であって、治療有効量の式I~XXの化合物または化合物1~18のいずれかを投与するステップを含む、方法を包含する。
【0323】
本発明のSARCAはまた、性的倒錯、色情症、パラフィリア、アンドロゲン精神障害、男性化、アンドロゲン不応症候群(AIS)(完全型AIS(CAIS)および部分型AIS(PAIS)など)の処置、および動物における排卵の改善に有用性を見出すことができる。
【0324】
本発明は、性的倒錯、色情症、パラフィリア、アンドロゲン精神障害、男性化、アンドロゲン不応症候群を処置する方法、排卵を増加させる、またはモジュレートする、もしくは改善する方法であって、治療有効量の式I~XXの化合物または化合物1~18のいずれかを投与するステップを含む、方法を包含する。
【0325】
本発明のSARCAはまた、前立腺がん、乳がん、精巣がん、卵巣がん、肝細胞癌、泌尿生殖器がんなどのホルモン依存性がんを処置するのに有用となり得る。別の実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。さらに、局所または全身性SARCA投与は、前立腺上皮内腫瘍(PIN)および異型小腺房増殖(ASAP)などのホルモン依存性がんの前駆体の処置に有用である。
【0326】
本発明は、乳がん、精巣がん、子宮がん、卵巣がん、泌尿生殖器がん、前立腺がんの前駆体、またはAR関連固形腫瘍もしくはARを発現する固形腫瘍を処置する方法であって、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18の少なくとも1つである。前立腺がんの前駆体は、前立腺上皮内腫瘍(PIN)または異型小腺房増殖(ASAP)であり得る。腫瘍は、肝細胞癌(HCC)または膀胱がんであってもよい。血清中テストステロンは、HCCの発症に正にリンクしている可能性がある。疫学的、実験観察、およびとりわけ男性が女性よりもかなり高い膀胱がんのリスクを有するという事実に基づくと、アンドロゲンおよび/またはARはまた、膀胱がんの始まりにもある役割を果たし得る。
【0327】
エンザルタミド、ビカルタミドおよびフルタミドなどの従来の抗アンドロゲン、ならびにアンドロゲン遮断療法(ADT)(リュープロリドなど)は、前立腺がんへの使用に承認されているが、抗アンドロゲンは、様々な他のホルモン依存性がんおよびホルモン非依存性がんにも使用することができるという重要な証拠が存在する。例えば、抗アンドロゲンは、以下に記載される幅広いARを発現するがんに使用することができる。例えば、抗アンドロゲンは、乳がん(エンザルタミド;Breast Cancer Res (2014) 16(1): R7)、非小細胞肺がん(shRNAi AR)、腎細胞癌(ASC-J9)、性腺腫瘍および精上皮腫などの部分型アンドロゲン不応に関連する悪性腫瘍、進行膵臓がん(World J Gastroenterology 20(29):9229)、卵巣、卵管または腹膜のがん、唾液腺のがん(Head and Neck (2016) 38: 724-731;ADTは、ARを発現する再発性/転移性唾液腺がんにおいて試験されており、無増悪生存期間および全生存エンドポイントに対して利益を有することが確認された)、膀胱がん(Oncotarget 6 (30): 29860-29876); Int J Endocrinol (2015)、論文ID384860)、膵臓がん、リンパ腫(マントル細胞を含む)および肝細胞癌における試験に成功を収めている。これらのがんにおけるSARCAなどの一層強力な抗アンドロゲンの使用は、これらのがんおよび他のがんの進行を処置することができる。精巣がん、子宮がん、卵巣がん、泌尿生殖器がん、乳がん、脳がん、皮膚がん、リンパ腫、肝臓がん、腎がん、骨肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸がん、肛門周囲腺腫または中枢神経系のがんなどの他のがんもまた、SARCA処置から利益を得ることができる。
【0328】
本発明のSARCAはまた、胸部、脳、皮膚、卵巣、膀胱、リンパ腫、肝臓、腎臓、膵臓、子宮内膜、肺(例えば、NSCLC)、結腸、肛門周囲腺腫、骨肉腫、CNS、黒色腫、悪性の過カルシウム血症および転移性骨疾患などの、ARを含有する他のがんを処置するのに有用となり得る。
【0329】
したがって、本発明は、悪性の過カルシウム血症、転移性骨疾患、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、リンパ腫、肝臓がん、腎がん、骨肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、肺がん、中枢神経系のがん、胃がん、結腸がん、黒色腫、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および/または子宮筋腫を処置する方法であって、治療有効量の式I~XXの化合物または化合物1~18のいずれかを投与するステップを含む、方法を包含する。肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)であってもよい。
【0330】
本発明のSARCAはまた、非ホルモン依存性がんを処置するのに有用となり得る。非ホルモン依存性がんには、肝臓、唾液管などが含まれる。
【0331】
別の実施形態では、本発明のSARCAは、胃がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、唾液管癌を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、膀胱がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、食道がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、膵臓がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、結腸がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、非小細胞肺がんを処置するために使用される。別の実施形態では、本発明のSARCAは、腎細胞癌を処置するために使用される。
【0332】
ARは、肝細胞癌(HCC)における、がんの始まりにある役割を果たす。したがって、ARを標的とするとは、早期HCCを有する患者にとって適切な処置となり得る。後期HCC疾患では、転移はアンドロゲンによって抑制されるという証拠が存在する。別の実施形態では、本発明のSARCAは、肝細胞癌(HCC)を処置するために使用される。
【0333】
Locatiらは、Head & Neck, 2016, 724-731において、ARを発現する再発性/転移性唾液腺がんにおいて、アンドロゲン遮断療法(ADT)の使用を実証し、ADTにより、無増悪生存期間および全生存エンドポイントが改善されることが確認された。別の実施形態では、本発明のSARCAは、唾液腺がんを処置するために使用される。
【0334】
Kawaharaらは、Oncotarget, 2015, Vol 6 (30), 29860-29876において、ELK1阻害が、ARの不活性化と共に、膀胱がんの治療的手法になる可能性を有することを実証した。McBeth et al. Int J Endocrinology, 2015, Vol 2015、論文ID384860は、このようながんとして膀胱がんの処置としての抗アンドロゲン治療法とグルココルチコイドとの組合せは、炎症の病因を有すると考えられることを示唆した。別の実施形態では、本発明のSARCAは、必要に応じて、グルココルチコイドと組み合わせて、膀胱がんを処置するために使用される。
腹部大動脈瘤(AAA)
【0335】
腹部大動脈瘤(AAA)は、身体に血液を供給する主要血管である、大動脈の下位部分における領域の拡大である。ほぼ散水用ホースの厚さをしている大動脈は、心臓から胸部の中心部を通って腹部まで走る。大動脈は、身体の、血液の主な供給源となるので、破裂性腹部大動脈瘤は、生命を脅かす出血を引き起こす恐れがある。腹部大動脈瘤が成長するサイズおよび速度に応じて、処置は、経過観察から緊急手術まで様々となり得る。腹部大動脈瘤が一旦、発見されると、医師は、これを入念にモニタリングし、その結果、必要な場合、手術が計画され得る。破裂性腹部大動脈瘤の緊急手術は、危険度が高い恐れがある。AR遮断(薬理学的または遺伝的)は、AAAを低減する。Davisら(Davis JP, et al. J Vasc Surg (2016) 63(6):1602-1612)は、フルタミド(50mg/kg)またはケトコナゾール(150mg/kg)は、ブタの膵臓エラスターゼ(0.35U/mL)により誘発されたAAAを、ビヒクル(121%)と比べて、84.2%および91.5%、弱化したことを示した。さらに、AR -/- マウスは、野性型に比べると、AAA成長を弱化させた(64.4%)ことを示した(どちらもエラスターゼ処置されている)。こうして、AAAに罹患している患者にSARCAを投与すると、手術が必要になる点までAAAを反転させる、処置する、またはその進行を遅延させる一助となり得る。
創傷の処置
【0336】
創傷および/または潰瘍は、通常、皮膚から突出して、または粘膜表面上に、または臓器内の梗塞の結果として見出される。創傷は、軟部組織の欠陥もしくは病変、または基礎疾患の結果であり得る。用語「創傷」は、組織構造の正常な完全性の崩壊を伴う身体傷害、傷、病変、壊死および/または潰瘍を表す。用語「傷」は、皮膚または粘膜の任意の病変を指し、用語「潰瘍」は、臓器または組織の表面の局所欠陥または陥没を指し、壊死組織の崩壊によって生じる。「病変」は、一般に、任意の組織欠陥を含む。「壊死」は、感染、傷害、炎症または梗塞から生じる死亡組織を指す。これらはすべて、用語「創傷」によって包含され、これは、いずれかの治癒が始まる前、または外科的切開のような特定の創傷が形成される前の段階(予防的処置)をも含めた、治癒過程における任意の特定の段階にある任意の創傷を表す。
【0337】
本発明により処置され得る創傷の例は、非感染創、挫創、切開創、裂傷、非貫通創(すなわち、皮膚の断裂はないが、基底構造への傷害がある創傷)、開放創、貫通創、穿通創、穿刺創、感染創、皮下創などである。傷の例には、以下に限定されないが、床擦れ、口内炎、クロム性の傷(chrome sore)、口唇ヘルペス、褥瘡などが含まれる。潰瘍の例には、以下に限定されないが、消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、痛風潰瘍、糖尿病性潰瘍、高血圧虚血性潰瘍、うっ血性潰瘍、下腿潰瘍(静脈性潰瘍)、舌下潰瘍、粘膜下潰瘍、症候性潰瘍、栄養障害性潰瘍、熱帯潰瘍、例えば淋病によって引き起こされる性病性潰瘍(尿道炎、子宮頚内膜炎および直腸炎を含む)が含まれる。本発明により首尾よく処置され得る創傷または傷に関連する状態には、以下に限定されないが、火傷、炭疽症、破傷風、ガス壊疽、猩紅熱、丹毒、鬚毛瘡、毛嚢炎、伝染性膿痂疹、水疱性膿痂疹などが含まれる。「創傷」と「潰瘍」、または「創傷」と「傷」という用語の使用の間には、重複する部分があることがあり、さらに、これらの用語は、多くの場合ランダムに使用されることが理解される。
【0338】
本発明により処置される創傷の種類は、やはり、以下:i)例えば、手術創、外傷、感染創、虚血性創傷、熱傷、化学創傷および水疱性創傷などの一般創傷、ii)例えば、抜歯後創傷、とりわけ嚢腫および膿瘍の処置に関連する歯内創傷、細菌性、ウイルス性または自己免疫起源の潰瘍および病変、機械的創傷、化学的創傷、熱的創傷、感染性創傷および苔状創傷などの口腔に特有の創傷;ヘルペス性潰瘍、アフタ性口内炎、急性壊死性潰瘍性歯肉炎および口腔灼熱症候群が、具体的な例である;ならびにiii)例えば、新生物、火傷(例えば、化学的、熱的)、病変(細菌性、ウイルス性、自己免疫学的)、咬傷および外科的切開などの皮膚表面の創傷を含む。創傷を分類する別の方法は、組織喪失によるものである(この場合、i)小さな組織喪失(外科的切開、小さな摩耗および小さな咬傷に起因する)またはii)大きな組織喪失である)。後者の群には、虚血性潰瘍、褥瘡、瘻孔、裂傷、重症な咬傷、熱傷およびドナー部位創傷(軟部組織および硬部組織中)、ならびに梗塞が含まれる。他の創傷には、虚血性潰瘍、褥瘡、瘻孔、重症な咬傷、熱傷またはドナー部位創傷が含まれる。
【0339】
虚血性潰瘍および褥瘡は、通常は、非常にゆっくり治癒する創傷であり、とりわけこのような場合、改善したより急速な治癒が、患者にとって非常に重要である。さらに、このような創傷を負っている患者の処置に関与する費用は、治癒が改善され、より急速に起こる場合に著しく低減する。
【0340】
ドナー部位創傷は、例えば、身体の一部分から身体の別の部分への硬部組織の除去に関連して、例えば、移植に関連して起こる創傷である。このような手術から生じる創傷は、非常に痛く、したがって、治癒の改善が、最も価値がある。
【0341】
一例では、処置される創傷は、非感染創、梗塞、挫創、切開創、裂傷、非穿通創、開放創、貫通創、穿通創、穿刺創、感染創および皮下創からなる群から選択される。
【0342】
本発明は、創傷を負う対象を処置する方法であって、対象に、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つ、もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの医薬組成物である。
【0343】
本発明は、火傷を負う対象を処置する方法であって、対象に、治療有効量の式I~XXの化合物を投与するステップを含む、方法を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つ、もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの医薬組成物である。
【0344】
用語「皮膚」は、非常に広義に使用され、皮膚の表皮層、および皮膚表面が多少傷害されている場合は皮膚の真皮層も包含する。角質層とは別に、皮膚の表皮層は、外部(上皮)層であり、皮膚のより深い結合組織層が真皮と呼ばれる。
【0345】
皮膚は、身体の最も露出した部分であるため、例えば、裂傷、切傷、擦傷、火傷および凍傷などの様々な種類の傷害、または様々な疾患から生じる傷害を特に受けやすい。さらに、多くの皮膚が、事故において破壊されることが多い。しかし、皮膚の重要な障壁および生理的機能により、皮膚の完全性は、個体の健康に重要であり、いかなる破傷または裂傷も、その継続した存在を保護するために身体によって満たされなければならない脅威を表す。
【0346】
皮膚表面の傷害とは別に、あらゆる種類の組織(すなわち、軟部組織および硬部組織)に傷害が存在することがある。粘膜および/または皮膚を含む軟部組織上の傷害は、とりわけ、本発明と関連する。
【0347】
皮膚上または粘膜上の創傷の治癒は、一連の段階を受けて、皮膚もしくは粘膜の修復または再生のいずれかをもたらす。近年、再生および修復は、起こり得る2種のタイプの治癒として区別されてきた。再生は、喪失した組織の構造および機能が完全に新生される生物学的過程として定義することができる。一方、修復は、崩壊した組織の継続性が、喪失した組織の構造および機能を複製しない新たな組織によって回復される生物学的過程である。
【0348】
創傷の大部分は、修復を通じて治癒し、形成された新たな組織が、元の組織(瘢痕組織)とは構造的かつ化学的に異なることを意味する。組織修復の早期において、ほぼ常に関与する1つの過程は、組織傷害の領域における一過性の結合組織の形成である。この過程は、線維芽細胞による新たな細胞外コラーゲンマトリクスの形成によって開始する。次いで、この新たな細胞外コラーゲンマトリクスは、最終治癒過程中の結合組織のための支持体となる。最終治癒は、大部分の組織において、結合組織を含有する瘢痕形成である。例えば、皮膚および骨などの再生特性を有する組織では、最終治癒には、元の組織の再生が含まれる。この再生された組織はまた、いくつかの瘢痕特徴、例えば、治癒した骨折の厚化を頻繁に有する。
【0349】
通常の状況下で、身体は、皮膚障壁または粘膜の完全性を回復するために、損傷した皮膚または粘膜を治癒するための機構を提供する。小さな裂傷または創傷でさえもその修復過程は、数時間および数日から数週間までに及ぶ期間がかかることがある。しかし、潰瘍形成では、治癒は、非常に遅くなる恐れがあり、創傷が、長期間、すなわち数カ月、または数年さえ続くことがある。
【0350】
火傷は、低減したテストステロンレベルに関連しており、性腺機能不全症は、創傷治癒の遅延と関連する。本発明は、本発明による少なくとも1つのSARCA化合物の投与による、創傷または火傷を負っている対象を処置する方法を包含する。SARCAは、火傷もしくは創傷の解消を促進するか、または火傷もしくは創傷の治癒過程に関与するか、または火傷もしくは創傷の二次的合併症を処置することができる。
【0351】
火傷または創傷の処置は、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)(酸性線維芽細胞成長因子(α-FGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(β-FGF)を含む)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)およびインスリン様成長因子(IGF-1およびIGF-2)、またはそれらの任意の組合せなどの、少なくとも1つの成長因子をさらに使用してもよく、これらは、創傷治癒を促進する。
【0352】
創傷治癒は、以下に限定されないが、創傷引張強度、ヒドロキシプロリンまたはコラーゲン含有量、プロコラーゲン発現、および再上皮化を含む、当分野において公知の多数の手順によって測定することができる。例として、本明細書に記載されているSARCAは、1日あたり約0.1~100mgの投与量で経口または局所投与され得る。治療有効性は、SARCA化合物が存在しない場合と比べた、創傷治癒を強化する有効性として測定される。強化された創傷治癒は、治癒時間の短縮、コラーゲン密度の増加、ヒドロキシプロリンの増加、合併症の低減、引張強度の増加、および瘢痕組織の細胞充実度の増加などの公知技法によって測定することができる。
【0353】
用語「病因を低減する」は、特定の疾患、障害または状態と関連する組織損傷または臓器損傷の低減を包含することが理解されるべきである。この用語は、問題の疾患、障害もしくは状態を含めた、関連するこれらの出現率または重症度を低減すること、または示されている症状またはそれに関連する症状を含めた、関連する疾患、障害もしくは状態の数の低減を含むことができる。
医薬組成物
【0354】
本発明の化合物は、医薬組成物に使用されてもよい。本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、本化合物または活性成分の薬学的に許容される塩のどちらか一方を意味する。「治療有効量」とは、本明細書で使用する場合、所与の適応症および投与レジメンに対して治療作用を実現する量を指す。
【0355】
本明細書で使用する場合、用語「投与する」とは、本発明の化合物に対象を接触させることを指す。本明細書で使用する場合、投与は、in vitroで、すなわち試験管中で、またはin vivoで、すなわち生存生物、例えばヒトの細胞または組織中で行うことができる。対象は、男性または女性の対象であってもよく、または両方であってもよい。
【0356】
本発明の化合物の投与に好適な、様々な組成物または製剤を調製するための手順を記載する、多数の標準参考文献が入手可能である。製剤および調製物を作製する方法の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association(現行版);Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (Lieberman, Lachman and Schwartz, editors)現行版、Marcel Dekker, Inc.による出版、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences (Arthur Osol, editor), 1553-1593(現行版)に見出すことができる。
【0357】
投与様式および剤形は、所与の処置用途にとって望ましくかつ有効な、治療量の化合物または組成物に密接に関連する。
【0358】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の任意の方法によって対象に投与することができる。これらの方法は、以下に限定されないが、経口、非経口、脈管内、がん周辺(paracancerally)、粘膜内、経皮、筋肉内、鼻内、静脈内、皮内、皮下、舌下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、膣内、吸入により、直腸内または腫瘍内を含む。これらの方法は、組成物を組織に送達することができる任意の手段(例えば、ニードルまたはカテーテル)を含む。代替的に、局所投与は、皮膚、眼または粘膜表面への施用に望ましいものとなり得る。投与の別の方法は、吸引またはエアロゾル製剤による。本医薬組成物は、身体表面に局所投与されてもよく、したがって、局所投与に好適な形態で製剤化される。好適な局所用製剤は、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、点眼剤などを含む。局所投与の場合、本組成物は、医薬用担体と共に、またはこれを使用しないで、生理的に許容される希釈剤中の溶液剤、懸濁液剤またはエマルション剤として調製されて施用される。
【0359】
好適な剤形には、以下に限定されないが、経口、直腸、舌下、粘膜、鼻腔、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、脊髄内、鞘内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支内、リンパ系および子宮内投与、および活性成分の全身性送達向けの他の剤形が含まれる。適応症に応じて、経口または局所投与に好適な製剤が好ましい。
【0360】
局所投与:式I~XXの化合物または化合物1~18の少なくとも1つが、局所投与されてもよい。本明細書で使用する場合、「局所投与」とは、式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つ(および必要に応じた担体)の、皮膚および/または毛髪への直接施用を指す。本局所用組成物は、溶液剤、ローション剤、軟膏剤(salve)、クリーム剤、軟膏剤(ointment)、リポソーム剤、噴霧剤、ゲル剤、フォーム剤、ローラー状スティック剤、および皮膚科学において慣用的に使用される任意の他の製剤の形態であり得る。
【0361】
局所投与は、男性型多毛症、脱毛症、ざ瘡および過剰皮脂などの皮膚表面に見出される適応症に使用される。用量は様々となるが、一般的なガイドラインとして、本化合物は、約0.01~50w/w%、およびさらに典型的には、約0.1~10w/w%の量で、皮膚科学的に許容される担体中に存在する。通常、皮膚科学調製物は、毎日、1~4回、罹患領域に施用される。「皮膚科学的に許容される」とは、皮膚または毛髪に施用することができる担体であって、薬物を作用部位に拡散させる担体を指す。より詳細には、「作用部位」は、アンドロゲン受容体の阻害またはアンドロゲン受容体の分解が望ましい、部位を指す。
【0362】
式I~XXの化合物、または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、脱毛症、とりわけ男性型脱毛症を緩和するために、局所使用されてもよい。アンドロゲンは、毛髪成長と脱毛の両方に対して、大きな効果を有する。あごひげおよび陰部の皮膚などの身体の大部分の部位において、アンドロゲンは、毛周期の成長相(成長期)を延長して毛包サイズを増大することによって毛髪成長を刺激する。頭皮表面の毛髪成長はアンドロゲンを必要としないが、逆説的には、アンドロゲンは、遺伝学的に罹患しやすい個体(男性型脱毛症)において、頭皮表面の禿髪に必要であり、この場合、成長期の期間および毛包サイズが進行的に退行する。男性型脱毛症は、女性にも一般的であり、この場合、それは、男性に見られるパターン化を示すのではなく、むしろびまん性脱毛を、通常、呈する。
【0363】
式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、最も典型的には、男性型脱毛症を軽減するために使用されるが、本化合物は、任意のタイプの脱毛症を軽減するために使用されてもよい。非男性型脱毛症の例には、以下に限定されないが、円形脱毛症、放射線治療または化学療法による脱毛症、瘢痕化脱毛症またはストレスに関連する脱毛症が含まれる。
【0364】
式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、禿髪を予防または処置するために、頭皮および毛髪に局所施用することができる。さらに、式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、頭皮表面の毛髪の成長もしくは再成長を誘発または促進するために、局所施用することができる。
【0365】
本発明はまた、化合物は、このような毛髪成長が望ましくない領域における毛髪の成長を処置または予防するために、式I~XXの化合物を局所投与するステップを包含するか、または化合物1~18のうちの少なくとも1つである。このような使用の1つは、男性型多毛症を軽減する。男性型多毛症は、通常、毛髪を有さない領域(例えば、女性の顔面)における過剰な毛髪成長である。このような不適切な毛髪成長は、女性において最も一般に起こり、更年期には頻繁に見られる。式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つの局所投与により、このような状態が軽減されて、この不適切なもしくは望ましくない毛髪成長の減少がもたらされるか、またはなくなる。
【0366】
式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、局所使用して皮脂産生を低下させることもできる。皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、脂肪酸、ステロールエステルおよびスクワレンからなる。皮脂は、皮脂腺の腺房細胞において産生され、これらの細胞の加齢とともに蓄積する。成熟時には、腺房細胞は溶解して、内腔管に皮脂を放出し、その結果、皮脂は、皮膚の表面に堆積する。
【0367】
一部の個体では、過量の皮脂が皮膚表面に分泌される。これは、いくつかの有害結果を有する恐れがある。皮脂は、ざ瘡の原因因子であるPropionbacterium acnesの主要な食餌源であるため、ざ瘡を悪化させる恐れがある。皮脂により皮膚が脂ぎった外観となる恐れがあり、通常、美容的に魅力がないと考えられる。
【0368】
皮脂の形成は、成長因子およびアンドロゲンを含む様々なホルモンによって調節される。アンドロゲンが皮脂腺に影響を及ぼす細胞機構および分子機構は、完全に解明されていない。しかし、臨床経験により、アンドロゲンが皮脂産生に及ぼす影響が証明されている。皮脂産生は、アンドロゲンレベルが最高となる思春期の間に著しく増加する。式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つは、皮脂の分泌を阻害し、こうして、皮膚の表面の皮脂量を低下させる。式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つを使用して、ざ瘡または脂漏性皮膚炎などの様々な皮膚疾患を処置することができる。
【0369】
過剰皮脂産生と関連する疾患の処置に加えて、式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つを使用して、美容的効果を達成することもできる。一部の消費者は、自分たちが、過剰活性皮脂腺に罹患していると考えている。それらの消費者は、皮膚が脂性であり、こうして、魅力的でないと感じている。このような個体は、式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つを使用して皮膚上の皮脂量を低下させることができる。皮脂の分泌を減少させると、このような状態に罹患している個体における脂性皮膚が軽減される。
【0370】
これらの局所適応症を処置するため、本発明は、式I~XXの化合物のうちの少なくとも1つを含む、化粧用組成物または医薬組成物(皮膚科学的組成物など)を包含するか、または化合物は、化合物1~18のうちの少なくとも1つである。このような皮膚科学的組成物は、皮膚科学的に許容される担体との混合物中に、0.001%~10%(w/w%)の化合物(複数可)、より典型的には、0.1~5w/w%の化合物を含有する。このような組成物は、通常、毎日、1~4回、施用される。このような製剤を調製する方法の議論について、読み手の注意をRemington’s Pharmaceutical Science, Edition 17, Mark Publishing Co., Easton, PAに向ける。
【0371】
本発明の組成物はまた、クレンジング用石鹸または棒などの、固形調製物を含んでもよい。これらの組成物は、当分野において公知の方法に準拠して調製される。
【0372】
水溶液剤、アルコール性溶液剤もしくは水性アルコール溶液剤、またはクリーム剤、ゲル剤、エマルジョン剤もしくはムース剤などの製剤、あるいは噴射剤を含むエアロゾル組成物を使用して、毛髪が存在する場所に発生する適応症を処置することができる。したがって、本組成物は、ヘアケア組成物とすることもできる。このようなヘアケア組成物には、以下に限定されないが、シャンプー、ヘアセットローション、トリートメントローション、スタイリングクリームまたはジェル、染料組成物、または脱毛を予防するローションもしくはジェルが含まれる。皮膚科学的組成物中の様々な構成物質の量は、考えられる分野において慣用的に使用される量である。
【0373】
式I~XXの化合物または化合物1~18のうちの少なくとも1つを含有する医療剤および化粧剤は、小売りで流通させるために、通常、包装される(すなわち、製造物品)。このような物品は、患者が本製品を使用する方法を指示するようラベルが貼られて、包装される。このような使用説明書は、処置される状態、処置期間、投与スケージュールなどを含む。
【0374】
フィナステリドまたはフルタミドなどの抗アンドロゲンは、皮膚においてある程度、アンドロゲンレベルを低下させる、またはアンドロゲン作用を遮断するが、望ましくない全身作用を被ることが示されてきた。代替手法は、選択的アンドロゲン受容体共有結合性アンタゴニスト(SARCA)化合物を罹患領域に局所施用することである。このようなSARCA化合物は、強力であるが局所的なAR活性の阻害を示し、ARの局所分解は、対象の体循環に進入することはないか、または血液中への進入時に急速に代謝されると思われ、全身性曝露が限定される。
【0375】
このような医薬剤形を調製するために、活性成分を、従来の薬学的コンパウンド技法に準拠して、医薬用担体と混合することができる。担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、幅広い形態をとることができる。
【0376】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体または希釈剤」は、当業者に周知である。担体または希釈剤は、固形製剤のための固体担体もしくは希釈剤、液体製剤のための液体担体もしくは希釈剤、またはそれらの混合物であり得る。
【0377】
固体担体/希釈剤には、以下に限定されないが、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース物質(例えばマイクロクリスタリンセルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルクまたはそれらの混合物が含まれる。
【0378】
経口および非経口投与:経口剤形の組成物を調製する際に、通常の医薬品用媒体のいずれが使用されてもよい。したがって、懸濁液剤、エリキシル剤および溶液剤などの液状経口調製物の場合、好適な担体および添加物には、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などが含まれる。散剤、カプセル剤および錠剤などの固形経口調製物の場合、好適な担体および添加物には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。投与が容易であるので、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形態に代表される。所望の場合、錠剤は、標準技法によって、糖コーティングされていてもよく、または腸溶コーティングされていてもよい。
【0379】
非経口製剤の場合、担体は、通常、滅菌水を含むが、溶解を助けるため、または保存するための成分などの他の成分が含まれてもよい。注射溶液もまた調製されてもよく、この場合、適切な安定化剤が使用されてもよい。
【0380】
一部の用途では、リポソームもしくは他の封入媒体中への活性剤のカプセル封入、または、例えば、タンパク質、リポタンパク質、グリコタンパク質および多糖から選択されるものなどの好適な生体分子への共有結合、キレート形成もしくは会合性配位による活性剤の固定化などによって、「ベクトル化」形態の活性剤を利用することが有利となり得る。
【0381】
経口投与に好適な製剤を使用する処置の方法は、カプセル剤、カシェ剤、錠剤またはロゼンジ剤などの別個の単位として供給されてもよく、各々が、所定量の活性成分を含有する。必要に応じて、シロップ剤、エリキシル剤、エマルション剤またはドラフト剤などの水性アルコールまたは非水性液体中の懸濁液剤が使用されてもよい。
【0382】
錠剤は、必要に応じて1種または複数種の副成分と共に、圧縮もしくは型成形、または湿式造粒によって作製され得る。圧縮錠剤は、好適な機械において、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性剤または取り出し剤(discharging agent)と必要に応じて混合された、粉末または顆粒などの自由流動形態にある活性化合物と共に圧縮することによって調製することができる。粉末状活性化合物と好適な担体との混合物からなる成形錠剤は、好適な機械で型成形することによって作製することができる。
【0383】
シロップ剤は、活性化合物を、糖、例えばスクロースの濃水溶液に添加することによって作製することができ、これに任意の副成分(複数可)が添加されてもよい。このような副成分(複数可)には、着香剤、好適な保存剤、糖の結晶化を遅延させる作用剤、およびポリヒドロキシアルコールなどの任意の他の成分の溶解度を高めるための作用剤、例えばグリセロールまたはソルビトールが含まれ得る。
【0384】
非経口投与に好適な製剤は、レシピエントの血液と好ましくは等張性となる、活性化合物の滅菌水性調製物(例えば、生理食塩水溶液)を含んでもよい。このような製剤には、化合物が血液構成成分または1つもしくは複数の臓器を標的とするように設計されている、懸濁化剤、および増粘剤、およびリポソーム、または他のマイクロ微粒子系が含まれ得る。これらの製剤は、単位用量形態または多回用量形態で供給され得る。
【0385】
非経口投与は、全身送達の任意の好適な形態を含むことができる。投与は、例えば、静脈内、動脈内、鞘内、筋肉内、皮下、筋肉内、腹部内(例えば、腹腔内)などとすることができ、注入ポンプ(外部型または埋込型)または望ましい投与モダリティに適切な任意の他の好適な手段によって行うことができる。
【0386】
経鼻および他の粘膜スプレー製剤(例えば、吸入形態)は、活性化合物の精製水溶液を、保存剤および等張剤と共に含むことができる。このような製剤は、好ましくは、鼻膜または他の粘膜と適合するpHおよび等張性状態に調整される。代替的に、それらは、ガス担体中に懸濁された微細化固形散剤の形態であり得る。このような製剤は、任意の好適な手段または方法によって、例えば、ネブライザー、噴霧器、計量吸入器などによって送達することができる。
【0387】
直腸投与向け製剤は、カカオ脂、硬化脂肪または硬化脂肪カルボン酸などの好適な担体と共に坐薬として供給され得る。
【0388】
経皮製剤は、活性剤を、セルロース媒体、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどのチキソトロピックな担体またはゼラチン質担体に組み込むことによって調製することができ、得られた製剤は、次に、着用者の皮膚と皮膚接触して固定されるように適合させた経皮デバイス内に包まれる。
【0389】
上記の成分に加えて、本発明の製剤は、希釈剤、緩衝化剤、着香剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択される1種または複数種の成分をさらに含んでもよい。
【0390】
本製剤は、即時放出、持続放出、遅延発生放出、または当業者に公知の任意の他の放出プロファイルのものであり得る。
【0391】
哺乳動物、特にヒトへの投与の場合、医師が、個体にとって最も好適となり、かつ特定の個体の年齢、体重、遺伝学的特徴および/または応答に応じて変わり得る、実際の投与量および処置期間を決定することが予期される。
【0392】
本発明の方法は、治療有効量での化合物の投与を含む。治療有効量は、様々な投与量を含んでもよい。
【0393】
一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり1~3000mgの投与量で投与される。追加的な実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり1~10mg、1日あたり3~26mg、1日あたり3~60mg、1日あたり3~16mg、1日あたり3~30mg、1日あたり10~26mg、15~60mg、1日あたり50~100mg、1日あたり50~200mg、1日あたり100~250mg、1日あたり125~300mg、1日あたり20~50mg、1日あたり5~50mg、1日あたり200~500mg、1日あたり125~500mg、1日あたり500~1000mg、1日あたり200~1000mg、1日あたり1000~2000mg、1日あたり1000~3000mg、1日あたり125~3000mg、1日あたり2000~3000mg、1日あたり300~1500mg、または1日あたり100~1000mgの用量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり25mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり40mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり50mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり67.5mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり75mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり80mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり100mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり125mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり250mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり300mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり500mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり600mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり1000mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり1500mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり2000mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり2500mgの投与量で投与される。一実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり3000mgの投与量で投与される。
【0394】
本方法は、様々な投与量で化合物を投与するステップを含むことができる。例えば、本化合物は、3mg、10mg、30mg、40mg、50mg、80mg、100mg、120mg、125mg、200mg、250mg、300mg、450mg、500mg、600mg、900mg、1000mg、1500mg、2000mg、2500mgまたは3000mgの投与量で投与されてもよい。
【0395】
代替的に、本化合物は、0.1mg/kg/日の投与量で投与されてもよい。本化合物は、0.2~30mg/kg/日の間、または0.2mg/kg/日、0.3mg/kg/日、1mg/kg/日、3mg/kg/日、5mg/kg/日、10mg/kg/日、20mg/kg/日、30mg/kg/日、50mg/kg/日、もしくは100mg/kg/日の投与量で投与されてもよい。
【0396】
本医薬組成物は、固形剤形、溶液剤または経皮パッチ剤であってもよい。固形剤形には、以下に限定されないが、錠剤およびカプセル剤が含まれる。
【0397】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を一層完全に例示するために提示されている。しかし、以下の実施例は、本発明の幅広い範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0398】
(実施例1)
SARCAの化合物の合成
【化34】
2-(ブロモメチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(C
12H
8BrF
3N
2O)(1-a)
【化35】
2-(ブロモメチル)アクリル酸(3.00g、0.0181829mol)を塩化チオニル(2.60g、0.02182mol)、トリメチルアミン(2.39g、0.023638mol)および4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(3.38g、0.0181829mol)と反応させると、表題化合物が得られた。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、5.16g(84%)の表題化合物が明褐色固体として得られた。
【0399】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.36 (s, 1H, NH), 8.10 (s, 1H, ArH), 8.02-8.00 (m, 1H, ArH), 7.83-7.80 (m, 1H, ArH), 6.11 (s, 1H, C=CH), 5.96 (s, 1H, C=CH), 4.41 (s, 2H, CH
2).質量(ESI、ポジティブ):333.04[M+H]
+。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-((4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)アクリルアミド(C
15H
10F
4N
4O)(1)
【化36】
【0400】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.41g、0.004803mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.58g、0.01441mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、2-(ブロモメチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(1-a)(1.60g、0.004803mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温(RT)で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.10g(6%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0401】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.80 (s, 1H, NH), 8.34 (s, 1H, ArH), 8.14-8.13 (m, 2H, ArH), 7.91-7.90 (m, 1H, ピラゾール-H), 7.52-7.51 (m, 1H, ピラゾール-H), 6.15 (s, 1H, C=CH), 5.59 (s, 1H, C=CH), 4.49 (s, 2H, CH
2).HRMS[C
15H
11F
4N
4O
+]:計算値339.0869、実測値339.0892[M+H]
+。純度:97.18%(HPLC)。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-((4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)プロパンアミド(C
18H
13F
5N
6O)(2)
【化37】
【0402】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.41g、0.004803mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.58g、0.01441mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、2-(ブロモメチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(1-a)(1.60g、0.004803mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびエチルメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.20g(10%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0403】
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6) δ 10.81 (s, 1H, NH), 8.17 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.09 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.87 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.85-7.84 (m, 2H, ピラゾール-H), 7.49-7.48 (m, 2H, ピラゾール-H), 4.41-4.36 (m, 1H, CH
2), 4.26-4.21 (m, 1H, CH
2), 3.61-3.57 (m, 1H, CH).HRMS[C
18H
14F
5N
6O
+]:計算値524.1149、実測値425.1157[M+H]
+。純度:95.50%(HPLC)。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-(((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)メチル)アクリルアミド(C
20H
12F
6N
4O)(3)
【化38】
【0404】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.41g、0.004803mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.58g、0.01441mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に1-a(1.60g、0.004803mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.10g(5%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0405】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.74 (s, 1H, NH), 8.40 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.19-8.12 (m, 2H, ArH), 7.76 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 7.65-7.62 (m, 1H, ArH), 7.10 (br s, 1H, NH), 6.89 (d, J = 8.0 Hz, 1H, ArH), 6.07 (s, 1H, C=CH), 5.76 (s, 1H, C=CH), 4.18 (d, J = 6.0 Hz, 2H, CH
2).HRMS[C
20H
12F
6N
4O
+]:計算値439.0999、実測値439.0999[M+H]
+。純度:95.55%(HPLC)。
【化39】
2-((4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(C
16H
10F
3N
5O)(4)
【化40】
【0406】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.45g、0.004833mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.58g、0.01450mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に1-a(1.61g、0.004833mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.060g(3.6%)の表題化合物が黄色がかった固体として得られた。
【0407】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.82 (s, 1H, NH), 8.62 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.33 (s, 1H, ArH), 8.15-8.13 (m, 2H, ArH), 8.10 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.23 (s, 1H, C=CH), 5.73 (s, 1H, C=CH), 5.14 (s, 2H, CH
2).HRMS[C
16H
11F
3N
5O
+]:計算値346.0916、実測値346.0927[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-((4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(C
20H
13F
3N
8O)(5)
【化41】
【0408】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.45g、0.004833mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.58g、0.01450mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に1-a(1.61g、0.004833mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびエチルメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.155g(7.35%)の表題化合物が黄色がかった固体として得られた。
【0409】
1H NMR (400MHz, DMSO-d
6) δ 10.87 (s, 1H, NH), 8.57 (m, 2H, ピラゾール-H), 8.12 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.05 (m, 2H, ピラゾール-H), 7.85 (dd, J = 8.2 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 4.58-4.53 (m, 1H, CH
2), 4.48-4.43 (m, 1H, CH
2), 3.71-3.67 (m, 1H, CH).HRMS[C
20H
14F
3N
8O
+]:計算値439.1243、実測値439.1244[M+H]
+。純度:86.17%(HPLC)。
(S)-メチル2-(((3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-1-((6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)アミノ)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(C
20H
17F
3N
6O
4)(6)
【化42】
【0410】
2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(0.2mL、0.74mmol)の5mLのメタノール溶液を、室温で10分間かけて、小分けにした(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(200mg、0.54mmol)で処理した。次に、この溶液を室温で、撹拌した。次に、この溶液を室温で一晩、撹拌し、この溶液を真空で濃縮した。次に、この残留物を水に溶解し、酢酸エチルにより4回、抽出した。合わせた酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウムにより洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、ろ過して濃縮した。次に、ヘキサン/酢酸エチル1:1により溶出したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残留物を精製すると、所望の生成物が白色固体(収率52%)として得られた。
【0411】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 10.61 (bs, 1H, NH-C(O)), 9.17 (s, 1H), 8.89 (s, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.72 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.08 (s, 1H), 4.55 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 4.41 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 4.36 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.09 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H, O-CH
3), 1.59 (s, 3H, CH
3);
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz) δ 171.61, 167.86, 144.47, 142.90, 142.00, 137.52, 136.30, 132.23, 131.14 (q, J = 33.5 Hz), 125.00, 123.87 (d, J = 4.8 Hz), 123.02, 120.29, 114.42, 113.13, 92.78, 80.96, 65.63, 59.73, 53.11, 18.27.
19F NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ -62.15. MS (ESI) m/z 461.23 [M - H]
-; 463.27 [M + H]
+; 485.21 [M + Na]
+; HRMS (ESI) m/z C
20H
17F
3N
6O
4計算値463.1342 [M + H]
+ 、実測値463.1342 [M + H]
+。
(S)-メチル2-((3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド)メチル)アクリレート(C
20H
17F
3N
6O
4)(7)
【化43】
【0412】
2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(0.2mL、0.74mmol)の5mLのTHF溶液を、室温において10分間かけて、小分けにした(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(200mg、0.54mmol)で処理した。次に、この溶液を室温で、撹拌した。次に、この溶液を室温で一晩、撹拌し、この溶液を真空で濃縮した。次に、この残留物を水に溶解し、酢酸エチルにより4回、抽出した。合わせた酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウムにより洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、ろ過して濃縮した。次に、ヘキサン/酢酸エチル1:1により溶出したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残留物を精製すると、所望の生成物が黄色がかった油状物(収率48%)として得られた。
【0413】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 7.96 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 6.37 (s, 1H), 6.10 (s, 1H), 5.79 (s, 1H), 5.31 (s, 1H) 4.78 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.67 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 4.25 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.96 (bs, 1H, OH), 3.79 (s, 3H, O-CH
3), 1.67 (s, 3H, CH
3);
19F NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ -62.07; MS (ESI) m/z 461.20 [M - H]
-; 463.23 [M + H]
+; HRMS (ESI) m/z C
20H
17F
3N
6O
4計算値463.1342 [M + H]
+ 、実測値463.1326 [M + H]
+、485.1152 [M + Na]
+。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-((5-フルオロ-1H-インドール-1-イル)メチル)アクリルアミド(C
20H
13F
4N
3O)(8)
【化44】
【0414】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、5-フルオロ-インドール(0.33g、0.002462mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.30g、0.007385mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に1-a(0.82g、0.002462mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、30mg(3.2%)の表題化合物が黄色がかった固体として得られた。
【0415】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.74 (s, 1H, NH), 8.32 (s, 1H, ArH), 8.31-8.09 (m, 2H, ArH), 7.50-7.46 (m, 2H, ArH), 7.43(d, J = 3.2 Hz, 1H, ArH), 7.32 (dd, J = 10.0 Hz, J = 1.8 Hz, 1H, ArH), 7.00-6.95 (m, 2H, ArH), 6.45 (d, J = 3.2 Hz, 1H, ArH), 6.05 (s, 1H, C=CH), 5.35 (s, 1H, C=CH), 5.14 (s, 2H, CH
2).HRMS[C
20H
14F
4N
3O
+]:計算値338.1073、実測値338.1070[M+H]
+。純度:91.87%(HPLC)。
4-(((5-フルオロ-1H-インドール-1-イル)メチル)アミノ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(C
17H
11F
4N
3)(15)
【化45】
【0416】
8の場合と同じ合成に従い、15および16も副生成物として合成された。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.28 (t, J = 6.4 Hz, 1H, NH), 7.77 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.71-7.68 (m, 1H, Indole-H), 7.66 (d, J = 3.2 Hz, 1H, Indole-H), 7.31 (dd, J = 9.6 Hz, J = 1.8 Hz, 1H, Indole-H), 7.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.13 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.02 (dt, J = 9.2 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, Indole-H), 6.42 (d, J = 2.8 Hz, 1H, Indole-H), 5.73 (d, J = 6.8 Hz, 2H, CH
2).HRMS[C
17H
11F
4N
3Na
+]:計算値356.0787、実測値356.0789[M+H]
+。純度:96.79%(HPLC)。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(5-フルオロ-1H-インドール-1-イル)-2-((5-フルオロ-1H-インドール-1-イル)メチル)プロパンアミド(C
28H
19F
5N
4O)(16)
【化46】
【0417】
8の場合と同じ合成に従い、15および16も副生成物として合成された。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.87 (s, 1H, NH), 8.57 (m, 2H, ピラゾール-H), 8.12 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.05 (m, 2H, ピラゾール-H), 7.85 (dd, J = 8.2 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 4.58-4.53 (m, 1H, CH
2), 4.48-4.43 (m, 1H, CH
2), 3.71-3.67 (m, 1H, CH).HRMS[C
28H
20F
5N
4O
+]:計算値523.1557、実測値[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
(Z)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-ヨードブタ-2-エンアミド(C
12H
8F
3IN
2O)(1-b)
【化47】
【0418】
(Z)-3-ヨードブタ-2-エン酸(2.50g、0.011973mol)を塩化チオニル(1.68g、0.014152mol)、トリメチルアミン(1.55g、0.01533mol)および4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(2.20g、0.011973mol)と反応させると、表題化合物が得られた。溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、2.54g(56.7%)の表題化合物が明褐色油状物として得られた。
【0419】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.98 (s, 1H, NH), 8.31 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.09 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.98 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 6.65 (d, J = 1.6 Hz, 1H, C=CH), 2.71 (s, 3H, CH
3).HRMS[C
12H
9F
3IN
2O
+]:計算値380.9712、実測値380.9704[M+H]
+。純度:95.89%(HPLC)。
(E)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ブタ-2-エンアミド(C
15H
10F
4N
4O)(9)
【化48】
【0420】
無水トルエン(5mL)中の4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.103g、0.0012mol)の混合物に、アルゴン雰囲気下、室温で、1-b(0.228g、0.0006mol)、KOBu-t(0.081g、0.00072mol)、Pd(OAc)2(14mg、0.00006mol)および(R)-(+)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン(BINAP、38mg、0.00006mol)を加えた。この反応混合物をアルゴン雰囲気下、5~6時間、加熱して還流した。反応の終了をTLCによって確定した後、反応を水によってクエンチし、酢酸エチルにより抽出した。有機層をMgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1~9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、15mg(7.4%)の所望の化合物が黄色がかった固体として得られた。
【0421】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.97 (s, 1H, NH), 8.47 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ピラゾール-H), 8.36 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 7.99 (dd, J = 8.4 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 7.96 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.81 (s, 1H, C=CH), 2.71 (s, 3H, CH
3).HRMS[C
15H
11F
4N
4O
+]:計算値339.0869、実測値339.0868[M+H]
+。純度:99.30%(HPLC)。
(Z)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ブタ-2-エンアミド(C
15H
10F
4N
4O)(10)
【化49】
【0422】
無水トルエン(5mL)中の4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.103g、0.0012mol)の混合物に、アルゴン雰囲気下、室温で、1-b(0.228g、0.0006mol)、KOBu-t(0.081g、0.00072mol)、Pd(OAc)2(14mg、0.00006mol)および(R)-(+)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン(BINAP、38mg、0.00006mol)を加えた。この反応混合物をアルゴン雰囲気下、5~6時間、加熱して還流した。反応の終了をTLCによって確定した後、反応を水によってクエンチし、酢酸エチルにより抽出した。有機層をMgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1~9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、37mg(18.2%)の所望の化合物がピンク色がかった固体として得られた。
【0423】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.83 (s, 1H, NH), 8.31 (d, J = 8.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 8.24 (s, 1H, ArH), 8.08 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.93 (dd, J = 8.2 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 7.73 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ピラゾール-H), 5.91 (d, J = 1.2 Hz, 1H, C=CH), 2.30 (s, 3H, CH3).HRMS[C15H11F4N4O+]:計算値339.0869、実測値339.0876[M+H]+。純度:99.81%(HPLC)。
【0424】
(S)-メチル2-(((1-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(C
20H
18F
4N
4O
4)(11)
【化50】
【0425】
2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(0.61mL、4.9mmol)の10mLのTHF溶液を、室温において10分間かけて、小分けにした(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(529mg、1.48mmol)で処理した。次に、この溶液を室温で、撹拌した。次に、この溶液を室温で一晩、撹拌し、この溶液を真空で濃縮した。次に、この残留物を水に溶解し、酢酸エチルにより4回、抽出した。合わせた酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウムにより洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、ろ過して濃縮した。次に、ヘキサン/酢酸エチル1:1により溶出したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残留物を精製すると、所望の生成物が無色油状物として得られた。
【0426】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 10.27 (bs, 1H, NH-C(O)), 8.29 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.21 (dd, J = 8.8, 2.0 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 6.45 (s, 1H), 6.02 (s, 1H), 4.39 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.32 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.36 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.07 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 3.91 (s, 3H, O-CH
3), 1.52 (s, 3H, CH
3);
19F NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ -62.30, -176.86. MS (ESI) m/z 455.13 [M + H]
+; HRMS (ESI) m/z C
20H
18F
4N
4O
4計算値455.1342 [M + H]
+、実測値463.1333 [M + H]
+。
(E)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)アクリルアミド(C
14H
8F
4N
4O)(12)
【化51】
【0427】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.103g、0.00116mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.14g、0.003479mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(E)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(0.37g、0.00116mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.143g(38%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0428】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.00 (s, 1H, NH), 8.39 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 8.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.13 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 8.08 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH=C), 8.04 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.98 (d, J = 4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.72 (d, J = 13.6 Hz, 1H, C=CH).
(E)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロフェニル)-2-メチルアクリルアミド(C
18H
12F
4N
2O)(13)
【化52】
【0429】
(E)-3-(4-フルオロフェニル)-2-メチルアクリル酸(1.00g、5.55mmol)を10mLの乾燥THFに溶解した。反応温度を10℃未満に維持しながら、反応混合物に塩化チオニル(0.99g、0.61mL、8.325mmol)を10分間かけてゆっくりと加えた。この反応混合物を、2時間、撹拌した。この反応物を0℃に冷却した。反応混合物に、温度を10℃未満に維持ながらトリエチルアミン(1.68g、2.32mL、0.01665mol)をゆっくりと加えた。次に、この回分に4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(1.03g、5.55mmol)およびTHF(5mL)を投入した。次に、この回分を50±5℃まで加熱して、2時間、撹拌した。次に、この回分を20±5℃まで冷却し、次いで、水(20mL)および酢酸エチル(20mL)を加えた。短時間、撹拌した後、層を分離した。有機層を水(15mL)により洗浄した。次に、この回分を濃縮乾固し、溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製し、1.22g(63.2%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0430】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.57 (s, 1H, NH), 8.45 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.29 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.21 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.64-7.61 (m, 2H, ArH), 7.46 (s, 1H, C=CH), 7.39-7.34 (m, 2H, ArH), 2.18 (d, J = 0.8 Hz, 3H, CH
3).
【化53】
エチル3-(4-フルオロフェニル)ブタ-2-エノエート(C
12H
13FO
2)(1-c)
【化54】
【0431】
水素化ナトリウム(1.30g、0.032576mol、1.5当量、鉱物油中の60%)をTHF(100mL)に溶解し、この懸濁液にアルゴン下、0℃でトリエチルホスホノアセテート(6.846g、0.032576mol、1.5当量)を滴下して加えた。ガス放出が止むまで、この混合物を撹拌した。次に、THF(10mL)中の1-(4-フルオロフェニル)エタノン(3.00g、0.21717mol、1.0当量)をシリンジによって加えた。この反応物を、室温において撹拌し、TLCによりモニタリングした。この反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液によりクエンチした。有機相を分離して、水層をEtOAcにより抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO
4により乾燥し、真空圧下で濃縮した。ヘキサンおよび酢酸エチル(4:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって生成物を精製すると、4.30g(95%)のエチル3-(4-フルオロフェニル)ブタ-2-エノエートが油状物として得られた。
3-(4-フルオロフェニル)ブタ-2-エン酸(C
10H
9FO
2)(1-d)
【化55】
【0432】
1-c(2.00g、0.009605mol)の20mLのEtOH溶液に、アルゴン下、室温でNaOH水溶液(10%、40mL)を加えた。原料物質がTLCによってモニタリングされなくなるまで、得られた反応混合物を撹拌した。この混合物を1N HClにより酸性にして、次に、ジエチルエーテルにより抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4により乾燥して真空圧下で濃縮した。生成物を再結晶(CH
2Cl
2対Et
2O)することによって精製し、1.56g(90%)の3-(4-フルオロフェニル)ブタ-2-エン酸が白色固体として得られた。
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロフェニル)ブタ-2-エンアミド(C
18H
12F
4N
2O)(14)
【化56】
【0433】
1-d(1.00g、5.55mmol)を10mLの乾燥THFに溶解した。反応温度を10℃未満に維持しながら、反応混合物に塩化チオニル(0.99g、0.61mL、8.325mmol)を10分間かけてゆっくりと加えると、1-eが生成した。この反応混合物を2時間、撹拌した。この反応物を0℃に冷却した。1-eを単離せず、反応混合物に、温度を10℃未満に維持しながらトリエチルアミン(1.68g、2.32mL、0.01665mol)をゆっくりと加えた。次に、この回分に4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(1.03g、5.55mmol)およびTHF(5mL)を投入した。次に、この回分を50±5℃まで加熱して、2時間、撹拌した。次に、この回分を20±5℃まで冷却し、次いで、水(20mL)および酢酸エチル(20mL)を加えた。短時間、撹拌した後、層を分離した。次に、有機層を水(15mL)により洗浄した。次に、この回分を濃縮乾固し、溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製し、0.44g(23%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0434】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.85 (s, 1H, NH), 8.35 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.99 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.64-7.61 (m, 2H, ArH), 7.31-7.27 (m, 2H, ArH), 6.39 (d, J = 1.2 Hz, 1H, C=CH), 2.56 (d, J = 0.8 Hz, 3H, CH3).
【0435】
【0436】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、5-フルオロ-インドール(0.33g、0.002462mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散体、0.30g、0.007385mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、2-(ブロモメチル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド(0.82g、0.002462mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、26mg(2.05%)の表題化合物が黄色がかった固体として得られた。
【0437】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.87 (s, 1H, NH), 8.57 (m, 2H, ピラゾール-H), 8.12 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.05 (m, 2H, ピラゾール-H), 7.85 (dd, J = 8.2 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 4.58-4.53 (m, 2H, CH2), 4.48-4.43 (m, 2H, CH2), 3.71-3.67 (m, 1H, CH); HRMS [C28H20F5N4O +]:計算値523.1557、実測値[M+H]+。
【0438】
(S)-メチル2-(((1-((6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)アミノ)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(17)および(S)-メチル2-(((3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-1-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(18)の調製
【0439】
2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(0.71mL、5.7mmol)の10mLのTHF溶液を、氷浴で10分間かけて小分けにしたアリールプロパンアミド(620mg、1.27mmol)で処理し、この溶液を室温まで昇温して、次に、室温で一晩、撹拌し、この溶液を真空で濃縮した。次に、この残留物を水に溶解し、酢酸エチルにより3回、抽出した。合わせた酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウムにより洗浄し、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し、ろ過して濃縮した。次に、ヘキサン/酢酸エチル(1:1、v/v)より溶出したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残留物を精製すると、所望の生成物が得られた。
【0440】
(S)-メチル2-(((1-((6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)アミノ)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(17)
【化58】
【0441】
アリールプロパンアミドの場合:(S)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド-収率=49%(無色油状物として);UVmax:196.45、275.45;HPLC:tR3.25分、純度98.57%;MS(ESI)m/z456.07[M+H]+;478.05[M+Na]+;
【0442】
HRMS(ESI)m/z計算値C19H17F4N5O4 正確な質量:456.1295C19H17F4N5O4 実測値456.1295[M+H]+;
【0443】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 10.53 (bs, 1H, NH-C(O)), 9.14 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.88 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 6.47 (s, H), 6.05 (s, 1H), 4.39 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.32 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.29 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.08 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.91 (s, 3H, O-CH3), 1.54 (s, 3H, CH3);
【0444】
19F NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -62.16, -176.77;
【0445】
13C NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 172.13, 167.80, 150.88, 148.43, 144. 47, 137.67, 134.95, 131.75, 131.11 (q, J = 34 Hz), 126.71, 126.58, 124.76 (d, J = 2.0 Hz), 123.75 (q, J = 4.0 Hz), 121.68 (q, J = 275.0 Hz), 117.05, 116.77, 114.42, 81.52, 65.49, 60.19, 52.91, 18.14.
【0446】
(S)-メチル2-(((3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-1-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アクリレート(18)
【化59】
アリールプロパンアミドの場合:(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド - 収率=52%(無色油状物として);UV max:196.45、271.45;HPLC:t
R3.16分、純度96.38%;MS(ESI)m/z462.07[M+H]
+;484.06[M+Na]
+;HRMS(ESI)m/z 計算値C
21H
18F
3N
5O
4 462.1389[M+H]
+ 実測値462.1396[M+H]
+;484.1215[M+Na]
+;
【0447】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 10.31 (bs, 1H, NH-C(O)), 8.30 (s, 1H), 8.17 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.80 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.70 (s, H), 6.48 (s, 1H), 6.04 (s, 1H), 4.53 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.42 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.35 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.06 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.94 (s, 3H, O-CH3), 1.56 (s, 3H, CH3);
【0448】
19F NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -62.30;
【0449】
13C NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 170.85, 167.56, 142.10, 141.95, 136.15, 135.76, 134.85, 133.59 (q, J = 36 Hz), 131.76, 122.23 (q, J = 272 Hz), 122.20, 117.91 (q, J = 5 Hz), 115.69, 133.20, 104.45, 92.70, 81.01, 65.46, 59.59, 52.89, 18.34.
(実施例2)
アンドロゲン受容体結合、トランス活性化、分解および代謝リガンド結合アッセイ(Ki値)
【0450】
目的:AR-LBDへのSARCAの結合親和性の決定。
【0451】
方法:リガンド結合アッセイ(ki):hAR-LBD(633-919)をpGex4t.1にクローニングした。GSTをタグ付けしたAR-LBDを大スケールで調製し、GSTカラムを使用して精製した。組換えAR-LBDを、緩衝液A(10mM Tris、pH7.4、1.5mM EDTA二ナトリウム、0.25Mスクロース、10mM モリブデン酸ナトリウム、1mM PMSF)中で、[3H]ミボレロン(PerkinElmer、Waltham、MA)と一緒にし、[3H]ミボレロンの平衡解離定数(Kd)を決定した。全結合および非特異的結合を決定するため、高濃度の非標識ミボレロンと共に、およびこれを使用しないで、漸増濃度の[3H]ミボレロンと、タンパク質を4℃で18時間、インキュベートした。次に、非特異的結合を全結合から減算して、特異的結合、および部位の1つが飽和したリガンド結合曲線の非線形回帰を求めて、ミボレロンのKdを決定した。
【0452】
上記の条件を使用し、漸増濃度のSARCAまたはDHT(範囲:10-12~10-2M)を[3H]ミボレロンおよびAR LBDと共にインキュベートした。インキュベート後、リガンドが結合したAR-LBD複合体を、Bio Gel HT(登録商標)ヒドロキシアパタイトを使用して単離し、洗浄してシンチレーションカクテルを加えた後にシンチレーションカウンターで計数した。値は、Kiとして表す。
wt ARによるトランス活性化アッセイ(IC50値):アンドロゲンにより誘発されたAR野性型(wt)のトランス活性化に及ぼすSARCAの効果を決定すること。
【0453】
方法:フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中で、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり125,000個の細胞でプレート培養した。Lipofectamineトランスフェクト試薬を使用し、optiMEM培地中で、細胞に0.25μgのGRE-LUC、10ngのCMV-ウミシイタケLUCおよび50ngのCMV-hAR(wt)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBSに培地を交換し、用量応答の様々な薬物(1pM~10μM)で処理した。SARCAおよびアンタゴニストは、0.1nM R1881と合わせて処理した。Biotek synergy4プレートリーダーで、処理の24時間後に、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。
プラスミド構築物および一過性トランスフェクト。
【0454】
CMVベクターバックボーンにクローニングしたヒトARをトランス活性化検討に使用した。DME+5%csFBS中、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり120,000個の細胞でプレート培養した。Lipofectamine(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用し、この細胞に0.25μgのGRE-LUC、0.01μgのCMV-LUC(ウミシイタケルシフェラーゼ)および25ngのARをトランスフェクトした。図に示されている通り、トランスフェクトして24時間後に細胞を処理し、トランスフェクトして48時間後にルシフェラーゼアッセイを行った。データは、4パラメータのロジスティクス曲線から得たIC50として表す。
LNCaP遺伝子発現アッセイ。
【0455】
方法:フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS中で、LNCaP細胞を96ウェルプレートのウェルあたり15,000個の細胞でプレート培養した。プレート培養して48時間後、細胞を用量応答のSARCAで処理した。処理の24時間後に、cells-to-ct試薬を使用してRNAを単離し、cDNAを合成して、taqmanプライマーおよびプローブを使用して、リアルタイムrtPCR(ABI7900)によって様々な遺伝子の発現を測定した。遺伝子発現結果をGAPDHに正規化した(以下の実施例14における結果を参照されたい)。
LNCaP成長アッセイ。
【0456】
方法:フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS中で、LNCaP細胞を96ウェルプレートのウェルあたり10,000個の細胞でプレート培養した。細胞を用量応答のSARCAで処理した。処理の3日後、細胞を再度、処理した。処理の6日後に細胞を固定し、SRBアッセイによって細胞生存率を測定した。
LNCaPまたはAD1分解(AR FL)。
【0457】
方法:完全長ARを発現するLNCaPまたはAD1細胞を、増殖培地(RPMI+10%FBS)中の6ウェルプレートのウェルあたり750,000~1,000,000個の細胞でプレート培養した。プレート培養の24時間後、培地を、フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBSに交換し、この培地中で2日間、維持した。フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBSに培地を再度、交換し、0.1nMのR1881と合わせたSARCA(1nM~10μM)で細胞を処理した。処理の24時間後に、細胞を冷PBSで洗浄して回収した。塩を含有する溶解緩衝液を使用し、3回の凍結-解凍サイクルでタンパク質を抽出した。タンパク質濃度を推定し、5マイクログラムの全タンパク質をSDS-PAGEにロードして分画し、PVDF膜に転写した。この膜をSantaCruz製のAR N-20抗体およびSigma製のアクチン抗体でプローブした。
22RV1およびD567es分解(AR SV)。
【0458】
方法:増殖培地(RPMI+10%FBS)中、ARスプライスバリアントを発現する22RV1およびD567es細胞を6ウェルプレートのウェルあたり750,000~1,000,000個の細胞でプレート培養した。プレート培養して24時間後に、培地を交換して処理した。処理の24~30時間後に、細胞を冷PBSで洗浄して回収した。塩を含有する溶解緩衝液を使用し、3回の凍結-解凍サイクルでタンパク質を抽出した。タンパク質濃度を推定し、5マイクログラムの全タンパク質をSDS-PAGEにロードして分画して、PVDF膜に転写した。この膜をSantaCruz製のAR N-20抗体およびSigma製のアクチン抗体でプローブした。
22RV1の成長および遺伝子発現。
【0459】
方法:SRBアッセイによって、先に記載した通り、細胞成長を評価した。96ウェルプレートにおいて、全血清中で細胞をプレート培養し、3日後に培地を交換して6日間、処理した。遺伝子発現検討は、96ウェルプレートにおいて、RPMI+10%FBS中、10,000個の細胞/ウェルでプレート培養した22RV1細胞で行った。プレート培養して24時間後、細胞を3日間、処理し、遺伝子発現検討を先に記載した通りに行った。
一過性トランスフェクト(IC50)
【0460】
方法:CMVベクターバックボーンにクローニングしたヒトARをトランス活性化検討に使用した。DME+5%csFBS中、COS7細胞を24ウェルプレートのウェルあたり30,000個の細胞でプレート培養した。Lipofectamine(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用し、この細胞に0.25μgのGRE-LUC、0.02μgのCMV-LUC(ウミシイタケルシフェラーゼ)および25ngのARをトランスフェクトした。図に示されている通り、トランスフェクトして24時間後に細胞を処理し、ルシフェラーゼアッセイをトランスフェクトして48時間後に行った。データは、4パラメータのロジスティクス曲線から得たIC50として表す。
ARおよびAR-SV分解
【0461】
方法:LNCaP細胞(AR)および22RV1細胞(AR-SV)を、フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS培地でプレート培養した。プレート培養して2日後に細胞を処理し、処理をして24時間後に細胞を回収した。タンパク質を抽出し、ARおよびAR-SVに関するウェスタンブロットを行った。各列の下の数は、ビヒクルからの変化%を表す。バンドは、画像ソフトウエアを使用して定量した。各列に関して、ARのバンドをGAPDHのバンドにより除算し、ビヒクルからの差異%を算出し、各列の下に表示した。示されている数は、0(分解がない)、またはGAPDHレベルに対して正規化したARレベルの低下として表されている(値の一部は、正として表されているが、依然として分解があることを示している)。
試験化合物の代謝安定性(in vitroでのCLint)の決定
第I相代謝
【0462】
このアッセイは、二連(n=2)で、最終体積0.5ml中で行った。試験化合物(1μM)を、0.5mg/mlの肝臓ミクロソームタンパク質を含有する100mM Tris-HCl(pH7.5)中、37℃で10分間、事前インキュベートした。事前インキュベート後、1mM NADPH(37℃で事前インキュベートした)を添加することによって反応を開始した。インキュベートは三連で、および様々な時間点(0、5、10、15、30および60分間)で行った。100μlの一定分量を抜き取り、内部標準を含有する100μlのアセトニトリルでクエンチした。試料をボルテックス混合し、4000rpmで10分間、遠心分離にかけた。上清を96ウェルプレートに移送し、LC-MS/MS分析に供した。対照として、NADPHの非存在下で行った試料のインキュベート物を含ませた。%PCR(残留親化合物%)から、化合物の消失速度を求め(傾き)、in vitroでのCLint(μL/分/mgタンパク質)を計算した。
第I相および第II相の経路における代謝安定性
【0463】
このアッセイでは、試験化合物を肝臓ミクロソームと共にインキュベートし、薬物の消失をdiscovery grade LC-MS/MSを使用して決定した。第II相の代謝経路(グルクロン酸化)を刺激するため、UDPGAおよびアラメチシンをアッセイに含ませた。
LC-MS/MS分析
【0464】
検討下にある化合物の分析は、MDS/Sciex 4000 Q-Trap(商標)質量分析計を備えたAgilent 1100HPLCからなる、LC-MS/MSシステムを使用して行った。分離は、C18ガードカートリッジシステム(4.6mm IDのカラム用のSecurityGuard(商標)ULTRAカートリッジUHPLC、Phenomenex)によって保護したC18分析用カラム(Alltima(商標)、2.1×100mm、3μm)を使用して達成した。移動相は、チャネルA(95%アセトニトリル+5%水+0.1%ギ酸)およびチャネルC(95%水+5%アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなり、0.4mL/分の流速で流した。アセトニトリルと水との体積比は、分析対象の各々に最適化した。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、各化合物に対して最適化した、カーテンガス、衝突ガス、ネブライザーガスおよび補助ガス、ならびに550℃のソース温度で行った。-4200V(ネガティブモード)のイオンスプレー電圧を使用して、分子イオンを形成させた。デクラスタリング電位、エントランス電位、衝突エネルギー、生成物イオン質量およびセルイグジット電位を各化合物に対して最適化した。
ラット血清濃度を決定するためのLC-MS/MS分析
【0465】
最後の用量の24~30時間後に血清を採取した。100μLの血清を200μLのアセトニトリル/内部標準と混合した。100μLのラット血清を用いて、標準品の段階希釈液(nM)(濃度は、1000、500、250、125、62.5、31.2、15.6、7.8、3.9、1.9、0.97および0とした)によって標準曲線を調製した。標準品を200μLのアセトニトリル/内部標準を用いて抽出した。これらの実験の内部標準は、(S)-3-(4-シアノフェノキシ)-N-(3-(クロロ)-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドとした。
【0466】
分析対象であるSARCAの機器分析は、MDS/Sciex4000 Q-Trap(商標)質量分析計を備えたAgilent1100 HPLCからなる、LC-MS/MSシステムを使用して行った。この分離は、C18ガードカラム(Phenomenex(商標)、ホルダーを備える4.6mm IDカートリッジ)によって保護したC18分析用カラム(Alltima(商標)、2.1×100mm、3μm)を使用して達成した。移動相は、チャネルA(95%アセトニトリル+5%水+0.1%ギ酸)およびチャネルC(95%水+5%アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなり、A70%およびB30%で0.4mL/分の流速の定組成で流した。分析対象であるSARCAに関する全稼働時間を最適化したが、一般に、2~4分間であり、注入量は10μLとした。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、カーテンガス10、中度の衝突ガス、ネブライザーガス60.0および補助ガス60.0、およびソース温度550℃で行った。4200(ネガティブモード)のイオンスプレー電圧(IS)を使用して、分子イオンを形成させた。デクラスタリング電位(DP)、エントランス電位(EP)、衝突エネルギー(CE)、生成物イオン質量およびセルイグジット電位(CXP)は、観察された質量ペアに関する分析対象である各SARCAに対して最適化した。
LogP:オクタノール-水分配係数(LogP)
LogPは、特定の分子が生物膜を通過する可能性があるかどうかのおおまかな推定値として、創薬の早期に一般に使用される、オクタノール-水の分配係数のlogである。LogPは、ChemDraw Ultraバージョン12.0.2.1016(Perkin-Elmer、Waltham、Massachusetts02451)を使用して計算した。計算したLogP値は、表1中の「LogP(-0.4~+5.6)」と記された列に報告されている。Lipinskiのルールオブファイブは、経口生体利用率を予測することが意図されている一連の基準である。経口生体利用率に関するこれらの基準の1つは、LogPが、列の見出し(-0.4(相対的に親水性)~+5.6(相対的に親油性)の範囲)に示されている値の間、またはさらに一般には、<5と明記されるものである。
【0467】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
(実施例3)
本発明のSARCAはARアンタゴニスト(IC
50)であり、LBDに可逆的に結合することができる(Ki)
【0468】
1および4をARトランス活性化アッセイで評価した。ARトランス活性化アッセイは、AR、GRE-LUCおよびCMV-ウミシイタケ-LUCを用いてCOS細胞に行った。2つの化合物は、共有結合性非可逆アンタゴニストとして必要な、炭素-炭素二重結合部分を有する。この分子がAR機能になんらかの影響を及ぼすかどうかについて、この分子を評価した。wtARトランス活性化アッセイにより、これらの2つの分子は、マイクロモル濃度未満の範囲のIC
50値を有することが示唆された(この実験では、それぞれ、799nMおよび461nM)(
図1)。
【0469】
図6は、9がwtARを阻害(364nM)した一方、その異性体である10は、wtARのかなり弱い阻害剤(マイクロモル濃度の範囲)であったことを実証した。
【0470】
図29は、6および11が、低い程度から中程度のnM範囲(それぞれ、177nMおよび400nM)のIC
50値でwtARを阻害したことを実証した。
【0471】
図30は、別の実験において、6およびその異性体7が、低い程度から中程度のnM範囲(それぞれ、164nMおよび256nM)のIC
50値でwtARを阻害したことを実証した。
【0472】
図41は、13およびその異性体14は、それぞれ、732nMおよび18nMというIC
50値で、wtARを阻害したことを実証し、固有のアゴニスト活性を有していないことを実証した。このデータにより、ピラゾール中のような左側のN原子は、阻害に必要でないことが示唆される。
【0473】
図43は、15、8および4が、それぞれ、2852nM、6525nMおよび850.7nMのIC
50値でwtARを阻害したことを実証した。
【0474】
図18は、本発明のSARCAは、wtARの阻害に加え、一部の場合、ARのLBDと可逆的に結合したことを実証した(表1のKiの列)。この競合的結合はまた、1、4およびエンザルタミド(ポジティブ対照)の場合も
図18において実証される。本発明のSARCAの弾頭のないピラゾールおよびインドールは、AF-1に可逆的に結合することが以前に実証された。弾頭を有する本発明のSARCAは、AR-1(または、可能性としてLBD)に非可逆的に結合することを本明細書において実証する。非可逆的なAR阻害は、AR-V7阻害、およびその成長がAR-V7もしくは別のAR SVに依存する細胞、またはその発現がAR-V7もしくは別のAR SVに依存する遺伝子を阻害する能力などの本発明のSARCAに新規な特性をもたらすことが予期され得る。
(実施例4)
化合物1および4は共有結合性非可逆的ARアンタゴニストである
【0475】
Schildプロットを使用して、分子が競合的アンタゴニストであるか非可逆的な共有結合性アンタゴニストであるかを判定した。
【0476】
Schildプロット:24ウェルプレートにおいて、フェノールレッドを含まないDME+5% csFBSに、40,000個の細胞/ウェルでプレート培養したCOS細胞に、OptiMEM培地中で、Lipofectamine試薬を使用して、0.25μgのGRE-LUC、25ngのCMV-hARおよび10ngのCMV-ウミシイタケLUCをトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に、様々な用量のARアンタゴニストの非存在下または存在下、用量-応答のR1881(10-12M~10-5M)で細胞を処理した。処理の24時間後、細胞を溶解し、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega、Madison、WI)を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。GraphPad prismにデータをプロットし、Schildプロットをプロットした。
【0477】
この実験では、化合物は、用量-応答の競合アゴニストを用いて、少量の用量で試験する。この曲線が、アゴニスト用量の増加と共に右側にシフトした場合、および傾きが1に近づく場合、この分子は、競合的アンタゴニストである。一方、曲線が右側にシフトしないが、E
maxが、下方向にシフトした場合、および傾きが1に近づかない場合、その分子は、共有結合性非可逆アンタゴニストである。上記のARトランス活性化アッセイを使用してSchildプロットを作成し、1および4が共有結合性アンタゴニストであるかどうかを評価した。エンザルタミドの曲線が、R1881の用量の増加と共に右側にシフトし、競合的非共有結合拮抗作用があることを示している。一方、R1881のE
max値は、増量した1および4の用量の存在下では、低下する(
図2)。このSchildプロットにより、1および4は共有結合性非可逆アンタゴニストであることが示唆される。同様に、
図25は、4の場合、E
maxの低下を実証した。
(実施例5)
化合物1および4は、ARのAF-1ドメインに共有結合により結合する
トリプシン分解物の質量分析法によるアルキル化
【0478】
質量分析法:AR AF-1(A.A.141-486)をpGEX 6pにクローニングし、E.coliに発現させた。GST樹脂、次に、FPLCにより、タンパク質を大きな細菌培養物から精製した。精製したAF-1タンパク質を、SARCAの存在下、4℃で一晩、インキュベートした。一晩のインキュベート後、このタンパク質を質量分析法のグレードのトリプシンの存在下、室温(RT)で一晩、インキュベートした。質量分析計(Orbitrap Fusion Lumos、Thermo Fisher)に取り付けたHPLC(Ultimate 3000RSLCnano、Thermo Fisher)を使用し、このタンパク質を分析した。Acclaim PepMap100カラムをHPLCに使用した。機器条件および分析情報を以下に提示する。
【0479】
注入あたりの試料量:消化後タンパク質を0.1μg。
【0480】
HPLC:Ultimate 3000RSLCnano、Thermo Fisher;カラム:Acclaim PepMap RSLC、75μM×500mm(ID×長さ)、C-18、2μM、100Å、Thermo Fisher;トラップカラム:Acclaim PepMap 100、75μM×20mm、C18、3μM、100Å、Thermo Fisher;溶媒A:水中の0.1%ギ酸、LC/MSグレード、Thermo Fisher;溶媒B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、LC/MSグレード、Thermo Fisher;流速:300nL/分;カラム温度:40℃;注入量/モード:5μL/μL PickUp;LCグラジエント:0分-3%のB、4分-3%のB、5分-5%のB、55分-25%のB、60分-30%のB、63分-90%のB、73分-90%のB、76分-3%のB、100分-3%のB
【0481】
MS:Orbitrap Fusion Lumos、Thermo Fisher;データ依存分析(DDA):3秒のサイクル;MSスキャン(全体):分析器-Orbitrap、分解能-120,000(m/z=200におけるFWHM);スキャンフィルター:MIPSモード - ペプチド;強度≧10,000;電荷状態 - 2~6;ダイナミックエクスクルージョン - 30秒;MS2スキャン(全体):四重極分離ウインド-0.7m/z、アクティベーション-HCD(30%);分析器-イオントラップ、ラピッドスキャン
【0482】
取得後分析
【0483】
Proteome Discoverer2.2、Thermo Fisher;ペプチド/タンパク質同定;サーチエンジン:Sequest HT;データベース:SwissProt、TaxID9606(ホモサピエンス)、v.2017-10-25、42252エントリー;酵素:トリプシン(全体);動的修飾:Metの酸化;UT-34(AF-1の非共有結合性結合剤)、またはSARCA1もしくは4によるCysおよび/またはLysの修飾;前駆体およびフラグメントイオン質量許容差:それぞれ10ppmおよび0.6Da;PSMのバリデーションおよびフィルタリング(q値):パーコレータ、FDR≦0.01;ペプチド配列のバリデーションおよびフィルタリング(q値):Qvalityアルゴリズム、FDR≦0.01;タンパク質またはタンパク質群の同定:タンパク質またはタンパク質群に特有の少なくとも1つのバリデートしたペプチド配列:タンパク質群:厳密な節約の原理を適用。
【0484】
タンパク質IDのバリデーション:Qvalityアルゴリズム、厳密 - FDR≦0.01、緩和 - FDR≦0。特徴検出 - 最小トレース長さ:5;最少同位体数:2;同位体パターンの最大ΔRT:0.2分間;ペプチド存在量:MSのピーク面積
【0485】
これらの分子がARのAF-1ドメインに結合するかどうかを判定するため、AR-AF-1精製タンパク質を4℃で16時間、1と共にインキュベートし、トリプシン消化させた。このペプチドをMALDI TOF質量分析計を使用して評価し、1のAF-1への結合を判定した。1は、パネルに表示したペプチドに結合した(
図3)。上部のペプチドの338.08ダルトンのM.Wtのシフトは、1のM.Wt.に相当する。同様に、1の3つの分子は、998.75のシフトに対応するM.Wt.を有する下のペプチドと共有結合により相互作用した。この結果は、1は、それ自体、ARのAF-1ドメイン中のシステインおよびリジンに共有結合により結合したことを示している(
図3)。1は、AF-1に結合した一方、ネガティブ対照であるエンザルタミドは、いかなる結合も示すことができなかった。
【0486】
1または4によるAF-1におけるARのアルキル化は、
図12、13および32~36などにおいて、この同じ方法の変形で複数回、実証された。各場合において、アルキル化された(SARCAにより共有結合により修飾された)アミノ酸は、NTDのAF-1領域に存在した。さらに、
図14は、1および4は、LBDをアルキル化しないことを示唆している。ヒトアンドロゲン受容体のNTD(hAR NTD)中のリジン(K)およびシステイン(C)残基の概略が、
図24(上部)に示されており、完全長hARおよびスプライスバリアントhAR(hAR SV)のドメイントポロジーもまた示されている。DBDは、DNA結合ドメインである;Hinは、ヒンジ領域である;LBDは、リガンド結合ドメインである;Tauは、転写活性化単位であり、2つのTauが、図に注釈されている(Tau-1およびTau-5)。Uは、スプライスバリアントARに見出される、隠れた構造の未知領域である。同じ3つのC残基は、本発明の複数のSARCAによって共有結合により修飾されている。
(実施例6)
化合物1は、AR-V7機能を阻害した
【0487】
1が、ARのAF-1ドメインに共有結合により結合した場合、1は、AR-V7活性を阻害するはずである。トランス活性化検討を、COS細胞におけるAR-V7で行った。1は、AR-V7がGRE-LUCを活性化する能力を有意に阻害したが、エンザルタミドは、不活性であった(
図4)。NF-kBトランス活性化を、ネガティブ対照として含ませた。予想通り、1は、NF-kB誘発性トランス活性化を(結合または)阻害することができなかった。
【0488】
AR-V7トランス活性化:24ウェルプレートにおいて、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBSに、40,000個の細胞/ウェルでプレート培養したCOS細胞に、OptiMEM培地中で、Lipofectamine試薬を使用して、0.25μgのGRE-LUC、25ngのpCDN3 AR-V7および10ngのCMV-ウミシイタケLUCをトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に細胞を処理した。処理の24時間後、細胞を溶解し、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega、Madison、WI)を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。データをGraphPad Prismにプロットした。
【0489】
1と別の構成的に活性なタンパク質との交差反応性を判定するため、NFkBトランス活性化において1を試験した。1は、NFkBトランス活性化を阻害せず、1は選択的であることを示した(
図4)。
(実施例7)
化合物1は他の受容体と交差反応したが、化合物6は交差反応しなかった
【0490】
1および4中にマイケル付加を受容する官能基が露出されており、こうして、他のタンパク質に無作為に結合する可能性を有する。これを確認するために、1および4がGRおよびPR(表2)ならびにPPAR-γ(図示せず)の活性を阻害する能力を試験した。1および4(
図26)は、3つの受容体のすべてのトランス活性化を阻害し、それらに交差反応性があることが確認された(表2)。GRにおいて、1および4が、776nmおよび630nMのIC
50値を有する
図23、および4のIC
50値が、1431nM(GR)および125nM(PR)であった
図26も参照されたい。一方、6は、それぞれ、
図9および23に示されている通り、GRおよびPRとは交差反応性がほとんどないことを実証した。
【0491】
目的:グルココルチコイドにより誘発されたGR野性型(wt)のトランス活性化に及ぼすSARCAの効果を判定すること。
【0492】
方法:フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中で、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり125,000個の細胞でプレート培養した。Lipofectamineトランスフェクト試薬を使用し、optiMEM培地中で、細胞に0.25μgのGRE-LUC、10ngのCMV-ウミシイタケLUCおよび50ngのpCR3.1-ラットGR(wt)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBSに培地を交換し、用量応答の様々な薬物(1pM~10mM)で処理した。SARCAおよびアンタゴニストは、0.1nMのデキサメタゾンと合わせて処理した。Biotek synergy4プレートリーダーで、処理の24時間後に、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。
【0493】
目的:プロゲステロンにより誘発されたPR野性型(wt)のトランス活性化に及ぼすSARCAの効果を判定すること。
【0494】
方法:フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中で、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり125,000個の細胞でプレート培養した。Lipofectamineトランスフェクト試薬を使用し、optiMEM培地中で、細胞に0.25μgのGRE-LUC、10ngのCMV-ウミシイタケLUCおよび50ngのpCR3.1-hPR(wt)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBSに培地を交換し、用量応答の様々な薬物(1pM~10mM)で処理した。SARCAおよびアンタゴニストは、0.1nMのプロゲステロンと合わせて処理した。Biotek synergy4プレートリーダーで、処理の24時間後に、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。
(実施例8)
化合物1は、PCa細胞系の増殖を阻害した
【0495】
LNCaPおよび22RV1細胞を全血清中で培養し、
図5に示されている通りに処理した。細胞を6日間、処理し、SRBアッセイを行って、生存細胞数を測定した。1は、LNCaPおよび22RV1細胞の増殖を阻害した一方、エンザルタミドは、LNCaP細胞にのみわずかな効果を有した(
図5および16)。
【0496】
本発明の共有結合性非可逆的ARアンタゴニストは、かなり低いIC
50値で合成され、これは、ARに対して高い選択性である。さらに、質量分析法検討により、本明細書において開示されている本発明の化合物、例えば、1および4は、AF-1領域において、ARに結合したことが見出された。
図2のSchildプロットにより、1および4は、ARの非可逆的アンタゴニストであったこと、およびこれらの薬剤はまた、AR-SVを遮断したことが示唆される。
(実施例9)
6および7の共有結合性結合を判定するための質量分析法実験
【0497】
AR AF-1タンパク質を分子と4℃で一晩、インキュベートした。タンパク質を室温で一晩、トリプシンにより消化させて、質量分析法を使用して評価した。共有結合性分子は、システインおよびリジンに結合する。分子が、ペプチドに共有結合により結合した場合、ペプチドの分子量は、その分子の分子量分、増加することになる。例えば、トリプシンにより消化したペプチドのM.Wt.が、1000ダルトンであり、インキュベートした分子のM.Wt.が250ダルトンである場合、共有結合により結合したペプチドのM.Wt.は、約1250ダルトンになろう。2つの分子が、ペプチドに結合した場合、M.Wt.は、それに応じて、約1500ダルトンに増加するであろう。
【0498】
AR AF-1を、6(共有結合性結合剤)単独と共に、または6およびUT-34(UT-34は、非共有結合性AF-1結合剤である)と共にインキュベートした。AF-1は、200μMのUT-34と共に、2時間、次に、6(100μM)と共に事前インキュベートした。
【0499】
図7に例示される通り、6は、トリプシンペプチドに非可逆的に結合したSARCAである。
【化60】
【0500】
別の実験からの
図36および
図37において確認される通り、6は、再度、AF-1、やはりまたアルキル化されたGSTにも共有結合(アルキル化)し、非可逆的な結合の選択性の改善が依然として必要であることを示唆する。
【0501】
図42は、7もまた、AF-1に非可逆的に結合することを間違いなく実証している。
(実施例10)
化合物6、8および11は、ARに非可逆的に結合した
【0502】
Schildプロットは、非可逆的な拮抗作用を検出するアッセイである。エンザルタミドのような分子が競合的アンタゴニストである場合、その用量を増加させると、R1881またはアゴニストの曲線は右側にシフトするであろう。分子が非可逆的アンタゴニストである場合、曲線は、Emaxの低下に伴って下方向にシフトするであろう。
【0503】
ARトランス活性化を0.25μgのGRE-LUC、0.01μgのCMV-LUCおよび0.025μgのCMV-hARを用いて行った。細胞を、表示濃度(モル濃度)の化合物の存在下、用量-応答のR1881で処理した。細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイを行った。
【0504】
図8は、Schildプロット解析を使用すると、エンザルタミドは可逆性AR阻害剤である一方、SARCA6および8は、非可逆的なAR阻害剤であったことを図示する。
【0505】
図8の左上のパネルは、エンザルタミド濃度の上昇によって、R1881アゴニスト活性は、R1881のE
maxが低下することなく、右側(効力がより弱くなる、すなわちEC
50が上昇)にシフトしたことを実証する。これにより、エンザルタミドが、AR(完全長)に対して、R1881(アゴニスト)との可逆的な結合に競合する、AR阻害剤であったことが裏付けられる。この結果は、これらの薬剤の既知のLBD結合部位から予測された。EC
50値が上昇したことは、この阻害が解除可能(すなわち、可逆的)であったことを実証する。したがって、これは、SchildプロットはAR完全長との可逆的な競合的阻害を実証することができることを実証する対照実験として働く。
【0506】
図8の右上のパネルは、SARCA6の濃度の上昇に伴って、R1881アゴニスト活性が右側にシフト(より高いEC
50値)すること、やはりまたE
max値が、低下することを実証している。同様に、
図8の下部パネルは、SARCAの濃度の上昇に伴って、8によって、E
maxが低下したことを実証している。E
max値の低下は、阻害が解除不能である(すなわち、非可逆的)ことを実証する。したがって、6および8は、Schildプロットにより、非可逆的な阻害剤の挙動を示した。同様に、
図11は、6および8の場合、E
maxの低下を実証した。
図27は、11もまた、E
max値が低下したことを実証したことを示唆する。
(実施例12)
SARCAは、AR-V7の阻害において、先例がないほど強力である
【0507】
AR-V7トランス活性化。COS7細胞は、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中、40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、Lipofectamine試薬を使用して、0.25μgのGRE-LUC、0.01μgのCMV-LUC、0.025μgのpCR3.1 hAR-V7をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0508】
AR-V7を完全長野性型ARの代わりに細胞にトランスフェクトした。
図10に示されている通り、図中の右側の棒(ベクター)は、AR-V7の非存在下、このアッセイは、転写を活性化しなかった(光は生成しなかったか、または0相対発光量(RLU)である)ことを実証している。これは、ネガティブ対照実験として働く。表の下の棒は、AR-V7が、これらの細胞の各々にトランスフェクトされたことを示している。左側の棒(ビヒクル)により、阻害剤の非存在下で、AR-V7は、転写を活性化することができたこと、およびLBD結合性抗アンドロゲンであるエンザルタミド(Enza)を10μM添加しても、この転写が有意に低下しなかった(AR-V7は、LBDがないので)ことが示される。対照的に、NTD(AR-V7に存在する)に非可逆的に結合した本発明のSARCA、およびこれらのSARCA、例えば1および6は、AR-V7の転写活性化を有意に阻害することができた。1は、用量依存的(10μMよりも3μMの方が、阻害が大きい)であった一方、6は、この実験では、用量依存的な挙動を実証しない。
【0509】
図28は、3μMおよび10μMにおいて1によって有意な阻害、10μMにおいて11および6によって部分的な阻害、および10μMにおいて7によって有意な阻害を示した、AR-V7トランス活性化実験の阻害を説明する。
図28は、AR-V7阻害が、SARCAの一般化可能な活性である一方、エンザルタミドおよびビヒクルは活性がなく、AR-V7(ベクター)の非存在下では、活性化が観察されなかったことを実証する。
【0510】
図31は、AR-V7転写活性化実験の阻害について説明する。エンザルタミドは、AR-V7を阻害することができなかった(
図31A)が、SARCA7、1および6はそれぞれ、用量依存的に、AR-V7を阻害した。1は、最も効力が高く、0.3μMという低い濃度で活性があることを実証し、6および7は、10μMにおいて一層大きな最大有効性があることを実証した。
(実施例13)
22RV1細胞におけるARおよびAR-V7分解に及ぼす効果
【0511】
LNCaP、LNCaP-V7(LNCaP細胞にAR-V7を安定的にトランスフェクトした)、22RV1細胞を、60mmの皿でプレート培養した。細胞を、増殖培地、または0.1nMのR1881を補給したRPMI中で24時間、処理した。細胞を回収して、タンパク質を抽出し、ARおよびAR-V7に関するウェスタンブロットを行った。
【0512】
図17は、10μMにおける1および4は、AR(完全長)およびAR SV(AR-V7)の分解剤として働いた一方、2および5のAR分解活性は、この実験では、それほど堅固ではなかったことを実証している。同様に、
図22において、1および4は、22RV1細胞において、ARおよびAR-V7分解剤であることが裏付けられた。
【0513】
LNCaP-V7細胞は、ドキシサイクリン(Dox)の添加によって、AR-V7を誘導的に発現する。
図19は、Doxの非存在下で、AR-V7は発現しなかった(左側パネル)が、次に、Doxを添加すると、AR-V7発現が観察された(「全血清+Dox」として表示されている左上パネルの右側のゲルを参照されたい)ことを実証する。右側のゲルは、Doxによって誘発されたLNCaP-V7細胞において、1は、1μMおよび3μMでAR(上部のブロットを参照されたい)およびAR-V7(上部ブロットを参照されたい)を分解したことをさらに実証する。AR-V7がARと共に内在的に共発現された22RV1細胞では(右上のパネル)、1と4の両方が、ARおよびAR-V7のどちらも分解した。
(実施例14)
SARCAは、AR依存性LNCaP増殖を阻害した
【0514】
増殖アッセイ:LNCaP細胞を、96ウェルプレートにおいて、増殖培地にプレート培養した。細胞を、表示用量の化合物、表示したnMのR1881および本発明のARアンタゴニストで6日間、処理し、3日後に培地交換および再処理を行った。細胞を固定し、スルホローダミンブルー(SRB)により染色した。比色計を用いて、細胞数に比例する染色を決定した。
【0515】
図38において示される通り、1および6、ならびにエンザルタミドはある程度、0.1nMのR1881誘発性のAR依存性LNCaP増殖に打ち勝つことができた。1および6は、それぞれ、1μMおよび10μMで、抗増殖効力が完全な用量依存的阻害を実証した一方、エンザルタミドは、1、3および10μMにおいて、ほぼ40%の効力しか到達しなかった。
【0516】
図39は、LNCaP細胞においてPSAおよびFKBP5のAR依存的遺伝子発現は、エンザルタミドと同様に、1および6によって用量依存的に低下したことを説明する。このデータは、転写活性化アッセイにおいて観察されたAR拮抗作用は、AR依存性前立腺がん細胞でのAR拮抗作用に転じたことを裏付けるものである(上記の実施例2に記載されている方法を参照されたい)。
(実施例15)
マウスおよびラット肝臓ミクロソーム(MLMおよびRLM)におけるin vitroでの代謝安定性
【0517】
図15は、4および6は、第I相およびII相の代謝を模倣した条件下で、マウス肝臓ミクロソーム(MLM)と共にin vitroでインキュベートした場合、少なくとも60分間、安定であることを図示する(実施例2における方法の記載を参照されたい)。
【0518】
図20は、1が、ラット肝臓ミクロソーム(RLM)において>60分間、安定であったことを図示する。第I相安定性に関する推定される半減期は、約84分間であった一方、
図21は、1が、第I相およびII相の条件において、MLM中、41分間の半減期を有したことを図示する。
【0519】
予想外なことに、これらの安定性データにより、本発明のSARCAは、本質的に反応性の弾頭官能基を有するにもかかわらず、げっ歯類モデルでは十分に安定であり、SARCAのAR拮抗作用をin vivoで試験することが可能であることが示唆される。SARCAは、血流中で安定であり、ARへの結合後しか反応しない場合、これらのSARCAは、in vivoにおいて、先例のないARアンタゴニスト薬力学プロファイルを有することを期待することができる。
(実施例16)
in vivoでのAR拮抗作用
【0520】
in vivoでのAR拮抗作用を、SARCA6を用いて、無傷のスプラーグドーリーラットにおいて実証した(
図41Aおよび41B)。20mg/kgの6を14日間、毎日、投与することは、アンドロゲン依存性二次性臓器の重量を低下させるのに十分であった。前立腺重量は、約40%低下し、精嚢の重量は、約60%低下し、このような低下は、統計学的に有意であった。本発明のSARCA化合物は、経口による生体利用が可能であり、前立腺および精嚢に到達するのに血流中で十分に安定であることが示唆され、SARCAが、AR標的臓器に対して薬力学効果を発揮するのに十分強力であることがさらに確認される。したがって、SARCAは、身体全体の幅広い細胞タイプにおいて、AR軸を抑制すること、および本明細書に記載されている幅広いAR依存性もしくはアンドロゲン依存性疾患および状態において、治療的な抗アンドロゲン作用を発揮することができる。本発明のさらなるSARCAは、その成長がAR-V7依存性であるか、または他のAR変異もしくは切断に依存性のものを含めた、幅広い範囲の去勢抵抗性前立腺がん腫瘍または不応性乳がん腫瘍を抑制することが期待される。
(実施例17)
SARCAの共有結合性結合を判定するための質量分析法実験
【0521】
AR AF-1タンパク質を分子と4℃で一晩、インキュベートした。タンパク質を室温で一晩、トリプシンにより消化させて、質量分析法を使用して評価した。共有結合性分子は、システインおよびリジンに結合するが、アミノ酸との相互作用を検出した。分子がペプチドに共有結合により結合した場合、ペプチドの分子量は、その分子の分子量分、増加することになる。例えば、トリプシンにより消化したペプチドのM.Wt.が、1000ダルトンであり、インキュベートした分子のM.Wt.が250ダルトンである場合、共有結合により結合したペプチドのM.Wt.は、約1250ダルトンになろう。2つの分子が、ペプチドに結合した場合、M.Wt.は、それに応じて、約1500ダルトンに増加するであろう。
図44は、化合物18が、AR AF-1に共有結合により結合したことを図示しており、表は、化合物18が、選択したシステインを含有したペプチドに結合したことを示している。
(実施例18)
SARCA化合物の活性
【0522】
方法:フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中、40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに、COS7細胞をプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、lipofectamine試薬を使用して、0.25ugのGRE-LUC、0.01ugのCMV-LUC、0.025ugのCMV-hARをトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を0.1nMのR1881の存在下で、用量-応答分の化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0523】
結果:
図45は、化合物1および6のARアンタゴニスト活性を図示する。
【0524】
方法:COS7細胞は、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中、40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、lipofectamine試薬を使用して、0.25ugのGRE-LUC、0.01ugのCMV-LUC、0.025ugのpCR3.1 hAR-V7をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0525】
結果:
図46Aおよび46Bにおいて示されている通り、化合物1および6は、AR-V7のトランス活性化を阻害した(
図46A)が、NFkBのトランス活性化を阻害しなかった(
図46B)。
【0526】
方法:96ウェルプレートにおいて、フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS培地中で、ARを過剰発現するLNCaP細胞をプレート培養した。この培地に細胞を2日間、維持し、次に、図に表示されている通りに処理した。処理の24時間後、細胞を回収してRNAを単離し、リアルタイムPCRを使用して遺伝子の発現を定量した。
【0527】
結果:化合物6は、
図47に実証されている通り、前立腺がん細胞におけるAR標的遺伝子発現を阻害した。
【0528】
方法:96ウェルプレートにおいて、フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS培地中で、LNCaP-AR細胞をプレート培養した。細胞を表示用量の化合物で6日間、処理し、3日後に培地交換および再処理を行った。細胞を固定し、スルホローダミンブルー(SRB)により染色した。比色計を用いて、細胞数に比例する染色を決定した。
【0529】
結果:
図48に示されている通り、化合物6は、前立腺がんの細胞増殖を阻害した。
【0530】
方法:22RV1細胞を、96ウェルプレートにおいて、増殖培地にプレート培養した。細胞を表示用量の化合物で6日間、処理し、3日後に培地交換および再処理を行った。細胞を固定し、スルホローダミンブルー(SRB)により染色した。比色計を用いて、細胞数に比例する染色を決定した。
【0531】
結果:
図49に示されている通り、化合物1および6は、AR-スプライスバリアント(AR-SV)を発現した、前立腺がん細胞の増殖を阻害した。
【0532】
方法:96ウェルプレートにおいて、表示細胞を増殖培地にプレート培養した。細胞を表示用量の化合物で6日間、処理し、3日後に培地交換および再処理を行った。細胞を固定し、スルホローダミンブルー(SRB)により染色した。比色計を用いて、細胞数に比例する染色を決定した。
【0533】
結果:化合物1および6は、AR-SVを発現した前立腺がん細胞の増殖を阻害したが、非がん性細胞を阻害しなかった(
図50A~50C)。
(実施例19)
変異したシステインC267、C327およびC406によるAR-V7のトランス活性化
【0534】
方法:24ウェルプレートにおいて、COS7細胞を、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中、40,000個の細胞/ウェルでプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、lipofectamine試薬を使用して、0.25ugのGRE-LUC、0.01ugのCMV-LUC、0.025ugのpCDNA3.1 hAR-V7または変異体AR-V7(3つのシステイン(C267、C327およびC406)が変異したもの)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表す。
【0535】
結果:
図51に実証される通り、化合物6は、野性型AR-V7トランス活性化を阻害したが、3つのシステイン(C267、C327およびC406)が変異したAR-V7のトランス活性化を阻害しなかった。このデータにより、3つのシステインに結合することが、SARCAの機能にとって重要であることが裏付けられる。同様に、これらの3つのシステインは、AR-V7機能にとって重要である。
(実施例20)
個々のシステインの変異は、SARCA活性に影響を及ぼさなかった
【0536】
方法:24ウェルプレートにおいて、COS7細胞を、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中、40,000個の細胞/ウェルでプレート培養した。プレート培養して24時間後、これらの細胞に、optiMEM培地中、lipofectamine試薬を使用して、0.25ugのGRE-LUC、0.01ugのCMV-LUC、0.025ugのpCDNA3.1 hAR-V7または変異体AR-V7(システイン(C327およびC406)が変異したもの)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後、細胞を化合物により処理した。処理の24時間後、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタル値は、ウミシイタケ数によって除算し、この値を相対発光量(RLU)として表した。
【0537】
結果:
図52は、個々のシステインの変異は、化合物6の活性に影響を及ぼさなかったが、AR-V7の機能には影響を及ぼしたことを実証する。システインが個々にアラニンに変異すると、AR-V7活性が低下したが、SARCAの阻害活性への影響は最小限から皆無であった。
(実施例21)
SARCAは、AR標的組織である前立腺および精嚢を阻害した
【0538】
方法:代表的な化合物の体重変化を検討するHershbergerアッセイ結果。無傷のスプラーグドーリーラット(100~120gの体重)(n=6/群)に、13日間、20mg/kgを投与した。投与用溶液は、20% DMSO+80% PEG中に調製した。処置を開始して14日後に、動物を犠牲にして、組織重量を記録した。1日目および犠牲にした時に体重を測定した。組織重量を体重に正規化し、ビヒクル処置した動物からの変化率として表した。
【0539】
結果:
図53Aおよび53Bに提示されている通り、化合物1および6は、AR標的組織である前立腺および精嚢を阻害した。
(実施例22)
SARCAは、前立腺がんおよびTNBCの成長を阻害した
【0540】
方法:ARを過剰発現するLNCaP細胞(5百万個;マトリゲルと1:1)を雄NSGマウス(n=8~10/群)の皮下に埋め込んだ。一旦、腫瘍が100~300mm3に成長すると、動物を無作為化し、ビヒクル、30mpkのenzaまたは60mpkのSARCAにより処置した。腫瘍体積を1日2回、測定した。処置を開始して28日後に、動物を犠牲にして、さらに分析するため腫瘍を処理した。TNBC:MDA-MB-453細胞(5百万個;マトリゲルと1:1)を雌NSGマウス(n=8~10/群)の皮下に埋め込んだ。一旦、腫瘍が100~300mm3に成長すると、動物を無作為化し、ビヒクルまたは60mpkのSARCAにより処置した。腫瘍体積を1日2回、測定した。処置を開始して28日後に、動物を犠牲にして、さらに分析するため腫瘍を処理した。
【0541】
結果:化合物6は、NSGマウスにおける、前立腺がんの成長およびトリプルネガティブ乳がんの異種移植片の成長を阻害した(
図55Aおよび55B)。
(実施例23)
SARCAによって修飾したペプチドの定量
【0542】
方法:精製したAF-1タンパク質をビヒクルまたは100μMの1および6と一晩、インキュベートし、タンパク質をトリプシン処理した。トリプシン処理したペプチドをHPLC-質量分析計(LC-MS)によって分析した。共有結合性化合物は、非可逆的にタンパク質に結合するので、MSの過酷な条件によって、タンパク質から分子が解離することはない。LC-MSにおけるペプチドの分析によって、1および6は、AF-1ドメインにおける2つのシステイン(C406およびC327)に強固に結合しており、1つのシステイン(C267)には、非常に弱く一貫性なく結合していることが示された。共有結合性結合の利点は、結合が分子の分子量に対応するペプチドの分子量変化によって容易に検出することができることである。AF-1中に8つのシステインおよび11のリジンが存在しているにも関わらず、分子は、C406およびC327に選択的に結合した。1および6は、AF-1に共有結合により結合した一方、他の非特異的な化合物(エノボサルムの共有結合性修飾)は、AF-1に結合することができず、AF-1との相互作用に関して、構造活性関係があることを提示した。1および6と共有結合性エノボサルムとの構造の間に75%を超える相同性があるにも関わらず、AF-1への結合における顕著な差異は、AF-1へのこのような足場の結合にとって、ピラゾール環が重要であることを明確に示すものである。修飾残基の定量によって、1および6は、C406およびC327をコードするペプチドの60~80%(およびC267の数パーセント)を修飾したことが示された。1および6と他の精製タンパク質との交差反応性を評価した。1が、AF-1修飾のほぼ50%でLBDと、および約10%でグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)と交差反応した一方、6は、AF-1に対して選択的であり、非常にわずかな2~5%の修飾しか、LBDおよびGSTに観察されなかった。これらの実験はすべて、100μMで行った。これらの結果により、6が、AF-1に、とりわけC327およびC406のアミノ酸に非常に選択的であることがやはり裏付けられる。
【0543】
化合物1および6の用量応答は、精製したAF-1タンパク質を用いて行った。1と6はどちらも、30μMおよび100μMのどちらでもC406およびC327に有意に結合をすること、および10μMの濃度では、わずかな修飾をすることを実証した。100μMより低い濃度では、AF-1以外のタンパク質(PR-LBD、GSTまたはAR-LBD)の修飾は、6の場合、観察されなかった。
【0544】
結果:
図56A~56Dは、化合物1および6によって修飾されたペプチドの定量を説明する。
(実施例24)
C406およびC327の単一点突然変異により、AR-V7活性および安定性が低下した
【0545】
本明細書における実施例において実証される通り、ARおよびAR-V7機能の阻害をもたらした、1および6のC406、C327およびC267への選択的な結合により、ARおよびAR-V7機能にとって、これらの3つのアミノ酸およびこの領域が重要であることが示唆される。
【0546】
3つのアミノ酸が変異しており(3CーA)、AR-V7発現に及ぼす変異の効果を評価した。野性型または3C-A(C406、C327およびC267がアラニンに変異した場合)AR-V7が、COS7細胞に発現し、このタンパク質におけるAR-V7の発現およびmRNAレベルを、それぞれ、ウェスタンブロットおよびリアルタイムPCRによって測定した。興味深いことに、3つのアミノ酸が完全に変異すると、AR-V7タンパク質が不安定化され、AR-V7タンパク質は、3C-A AR-V7をトランスフェクトした細胞では検出されなかった。AR-V7 mRNAは、野性型AR-V7トランスフェクト細胞中よりも、3C-A AR-V7トランスフェクト細胞中の方が高いレベルで検出された。これらの結果は、これらの3つのアミノ酸が、AR-V7安定性にとって非常に重要であるが、AR安定性にとっては重要ではないことを示唆している。
【0547】
C406およびC327の単一点突然変異により、AR-V7活性および安定性が低下した。三重C-A変異により、AR-V7トランス活性化の50%を超える低下が引き起こされたので、C406およびC327の単一点突然変異を生成し、AR-V7および点変異体AR-V7の安定性をウェスタンブロット解析によって評価した。C406およびC327の単一点突然変異は、AR-V7 mRNAの大きな変質を伴うことなく、AR-V7タンパク質レベルの80~90%を超える低下をもたらした。これらの結果は、C406およびC327が、AR-V7の安定性によってかなり重要であること、ならびにそれらのいずれか1つを変異させるまたは遮断すると、その不安定化および機能喪失がもたらされることを明確に実証している。
【0548】
結果:
図57A~57Cは、C406、C327およびC267は、AR-V7安定性にとって重要であったことを実証する。
(実施例25)
SARCAは、GSTとの交差反応は最小限であった
【0549】
1および6の交差反応性は、他の精製タンパク質を用いて評価した。1が、AF-1修飾のほぼ50%でLBDと、および約10%でグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)と交差反応したが、6は、AF-1に対して選択的であり、非常にわずかな2~5%の修飾が、LBDおよびGSTに観察された。これらの実験はすべて、100μMで行った。これらの結果により、6が、AF-1に、とりわけC327およびC406のアミノ酸に非常に選択的であることがやはり裏付けられる。
【0550】
結果:
図58Aおよび58Bは、化合物1および6は、GSTとの交差反応が最小限であったことを実証する。
(実施例26)
SARCAは、UT-105およびUT-34と競合した
【0551】
UT-34およびUT-105が結合に関して6と競合する可能性を評価した。
【化61】
【0552】
方法:AF-1タンパク質を100μMのUT-34またはUT-105と2時間、次に、30μMの6と事前インキュベートした。トリプシンにより消化されたペプチドをLC-MSによって分析した。6に依存性のC406およびC327修飾が、UT-34によって有意に反転された。これは、これらの分子が、C406およびC327、またはこれらの2つのシステインを関与させるポケットを含むAF-1に対して、同等の結合立体構造を有することを示唆している。C407、C327およびC267の変異により、AF-1への6の結合が完全に失われ、このことは、6が、これらの3つのアミノ酸の非存在下では、他のシステインまたはリジンに結合しないことを示唆する。まとめると、これらの結果は、ARおよびAR-SVを標的するための適切な化学的足場により利用され得る結合領域が、AF-1に存在することを確実に実証している。これらの3つのシステインが、互いに隣接していないことを考慮すると、共有結合性分子は、これらのアミノ酸への結合をもたらす三次元構造をAF-1に生成するはずである。
【0553】
M.S.検討を上に示す通りに行った。未修飾システインに対する修飾システインの割合を定量して、グラフとしてプロットした。
【0554】
結果:
図59A~59Dに実証される通り、UT-105およびUT-34は、AF-1への結合に関して1および6と競合した(UT-105とUT-34のどちらも、AF-1の非共有結合性結合剤である)。
【0555】
本発明のある種の特徴が本明細書に例示および記載されているが、多数の改変、置き換え、変更および均等物を、当業者は思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に収まるすべてのこのような改変および変更に及ぶことが意図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】