(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】バテライトを形成するための石灰の処理のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20230329BHJP
C04B 2/10 20060101ALI20230329BHJP
C04B 28/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C01F11/18 B
C04B2/10
C04B28/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550925
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 US2021019597
(87)【国際公開番号】W WO2021173790
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013654
【氏名又は名称】アレラク, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワイス, マイケル ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ギリアム, ライアン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4G076AA16
4G076AB02
4G076AB04
4G076AB06
4G076BA34
4G076BC02
4G076CA02
4G076DA30
4G112PA02
(57)【要約】
本明細書では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法およびシステムが提供され、この方法は、石灰を、1つまたは複数の沈殿条件下で塩基水溶液に溶解させて、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を生成するステップを含む。前述の態様の一部の実施形態では、焼成は、シャフトキルン、回転炉、または電気炉において行われる。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、石灰は、不完全燃焼石灰、軽焼生石灰、死焼石灰、またはそれらの組合せである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、
(ii)前記石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、
(iii)前記二酸化炭素を含むガスストリームおよび前記アンモニアを含むガスストリームを回収し、前記ガスストリームを1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるステップと、
(iv)前記カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、前記炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記焼成が、シャフトキルン、回転炉、または電気炉において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記石灰が、不完全燃焼石灰、軽焼生石灰、死焼石灰、またはそれらの組合せである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記N含有無機塩が、ハロゲン化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化アンモニウムが、塩化アンモニウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の水溶液が、アンモニアおよび/またはN含有無機塩をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記N含有無機塩:石灰のモル比が、約0.5:1~2:1の間である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の溶解条件が、約30~200℃の間の温度、約0.1~10atmの間の圧力、約0.5~50%の間の水中N含有塩wt%、およびそれらの組合せからなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素および/またはアンモニアの外部供給源が使用されず、前記プロセスが閉ループプロセスである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンモニアを含むガスストリームが、水蒸気をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスストリームが、約20~90%の間の水蒸気をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
外部からの水が、前記冷却プロセスに添加されない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の冷却条件が、約0~100℃の間の温度、約0.5~50atmの間の圧力、約8~12の間の前記水溶液のpH、前記CO
2の流速、約0.1:1~20:1の間のCO
2:NH
3比、またはそれらの組合せを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の水溶液が、カルバミン酸アンモニウムをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の水溶液が、前記ガスの凝縮によって形成される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは複数の沈殿条件が、7~9の間の前記第1の水溶液のpH、20~60℃の間の前記溶液の温度、5~60分の間の滞留時間、またはそれらの組合せからなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の水溶液が、固体をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記処理ステップの前に、濾過および/または遠心分離によって前記第1の水溶液から前記固体を分離するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分離された固体が、フィラーとして前記沈殿物質に添加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記N含有無機塩が前記ハロゲン化アンモニウムである場合、前記分離された固体が、残留ハロゲン化アンモニウムをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
すすぎ、熱分解、pH調整、およびそれらの組合せからなる群から選択される回収プロセスを使用して、前記固体から前記残留ハロゲン化アンモニウムを回収するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固体が、前記第1の水溶液から分離されず、前記第1の水溶液が、前記処理ステップに付されて、前記固体をさらに含む沈殿物質を生成する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記固体が、ケイ酸塩、酸化鉄、アルミナ、またはそれらの組合せを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記固体が、前記水溶液、前記沈殿物質、またはそれらの組合せにおいて、1~40wt%の間で存在する、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記沈殿物質を脱水して、前記上清溶液から前記沈殿物質を分離するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記沈殿物質および前記上清溶液が、残留N含有無機塩を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記残留N含有無機塩が、ハロゲン化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記残留N含有無機塩からアンモニアおよび/もしくはN含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップをさらに含み、前記上清水溶液から前記残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップ、ならびに/または前記沈殿物質から前記残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
熱分解、pH調整、逆浸透、多段フラッシュ、多重効用蒸留、蒸気再圧縮、蒸留、およびそれらの組合せからなる群から選択される回収プロセスを使用して、前記上清水溶液から前記残留N含有無機塩を回収するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記沈殿物質から前記残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップが、前記沈殿物質を約300~360℃の間で加熱して、前記沈殿物質から前記N含有無機塩を蒸発させ、必要に応じて凝縮によって前記N含有無機塩を回収することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記N含有無機塩が、アンモニアガス、塩化水素ガス、塩素ガス、またはそれらの組合せを含む形態で、前記沈殿物質から蒸発する塩化アンモニウムである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記回収された残留アンモニアおよび/またはN含有無機塩を、前記プロセスの前記溶解ステップおよび/または処理ステップに再循環させるステップをさらに含む、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記バテライトが、安定なバテライトまたは反応性バテライトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
反応性バテライトを含む前記沈殿物質に水を添加し、前記バテライトをアラゴナイトに変換するステップをさらに含み、前記アラゴナイトが凝結し、硬化して、セメントまたはセメント製品を形成する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記セメント製品が、石造ユニット、建築パネル、導管、水盤、梁、柱、スラブ、遮音バリア、断熱材料、およびそれらの組合せから選択される、形成された建材である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
反応性バテライトを含む前記沈殿物質に水を添加し、前記バテライトをアラゴナイトに変換するステップをさらに含み、前記アラゴナイトが凝結し、硬化して、非セメント製品を形成する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって形成された、製品。
【請求項38】
バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するように構成された焼成反応器、
(ii)前記石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するように構成された溶解反応器、
(iii)前記二酸化炭素を含むガスストリームおよび前記アンモニアを含むガスストリームを回収し、前記ガスストリームを、1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるように構成された冷却反応器、ならびに
(iv)前記カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、前記炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するように構成された処理反応器
を含む、システム。
【請求項39】
前記溶解反応器が、前記冷却反応器と統合している、請求項38に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月25日出願の米国仮出願番号第62/981,266号の利益を主張するものであり、その全体は本開示において参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
二酸化炭素(CO2)排出は、地球温暖化現象に大きく寄与するものとして特定されている。CO2は、燃焼の副産物であり、操作上の問題、経済的問題および環境問題を引き起こしている。大気中のCO2および他の温室ガスの濃度上昇は、大気中の熱保存をより促進して、地表温度の上昇および急速な気候変動をもたらすおそれがあると予測され得る。さらに、大気中のCO2レベルの上昇は、CO2の溶解および炭酸の形成に起因して、世界海洋をさらに酸性化するおそれもある。気候変化および海洋酸性化の影響は、適時に対処されなければ、経済的に費用が増し、環境にとって有害となる可能性が高くなるおそれがある。気候変化の潜在的リスクを低減するには、様々な人為的プロセスからのCO2の隔離および回避が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、
(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、
(iii)二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームを回収し、ガスストリームを1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるステップと、
(iv)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するステップと
を含む、方法が提供される。
【0004】
前述の態様の一部の実施形態では、焼成は、シャフトキルン、回転炉、または電気炉において行われる。
【0005】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、石灰は、不完全燃焼石灰、軽焼生石灰、死焼石灰、またはそれらの組合せである。
【0006】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、N含有無機塩は、ハロゲン化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは、塩化アンモニウムである。
【0007】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、第1の水溶液は、アンモニアおよび/またはN含有無機塩をさらに含む。
【0008】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、N含有無機塩:石灰のモル比は、約0.5:1~2:1の間である。
【0009】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、1つまたは複数の溶解条件は、約30~200℃の間の温度、約0.1~10atmの間の圧力、約0.5~50%の間の水中N含有塩wt%、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0010】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、二酸化炭素および/またはアンモニアの外部供給源は使用されず、プロセスは閉ループプロセスである。
【0011】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、アンモニアを含むガスストリームは、水蒸気をさらに含む。
【0012】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、ガスストリームは、約20~90%の間の水蒸気をさらに含む。
【0013】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、外部からの水は、冷却プロセスに添加されない。
【0014】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、1つまたは複数の冷却条件は、約0~100℃の間の温度、約0.5~50atmの間の圧力、約8~12の間の水溶液のpH、CO2の流速、約0.1:1~20:1の間のCO2:NH3比、またはそれらの組合せを含む。
【0015】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、第2の水溶液は、カルバミン酸アンモニウムをさらに含む。
【0016】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、第2の水溶液は、ガスの凝縮によって形成される。
【0017】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、1つまたは複数の沈殿条件は、7~9の間の第1の水溶液のpH、20~60℃の間の溶液の温度、5~60分の間の滞留時間、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、第1の水溶液は、固体をさらに含む。
【0019】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、処理ステップの前に、濾過および/または遠心分離によって第1の水溶液から固体を分離するステップをさらに含む。
【0020】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、分離された固体は、フィラーとして沈殿物質に添加される。
【0021】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、N含有無機塩がハロゲン化アンモニウムである場合、分離された固体は、残留ハロゲン化アンモニウムをさらに含む。
【0022】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、すすぎ、熱分解、pH調整、およびそれらの組合せからなる群から選択される回収プロセスを使用して、固体から残留ハロゲン化アンモニウムを回収するステップをさらに含む。
【0023】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、固体は、第1の水溶液から分離されず、第1の水溶液は、処理ステップに付されて、固体をさらに含む沈殿物質を生成する。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、固体は、ケイ酸塩、酸化鉄、アルミナ、またはそれらの組合せを含む。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、固体は、水溶液、沈殿物質、またはそれらの組合せにおいて、1~40wt%の間で存在する。
【0024】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、沈殿物質を脱水して、上清溶液から沈殿物質を分離するステップをさらに含む。
【0025】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、沈殿物質および上清溶液は、残留N含有無機塩を含む。
【0026】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、残留N含有無機塩は、ハロゲン化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む。
【0027】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、残留N含有無機塩からアンモニアおよび/もしくはN含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップ、上清水溶液から残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップ、ならびに/または沈殿物質から残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップをさらに含む。
【0028】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、熱分解、pH調整、逆浸透、多段フラッシュ、多重効用蒸留、蒸気再圧縮、蒸留、およびそれらの組合せからなる群から選択される回収プロセスを使用して、上清水溶液から残留N含有無機塩を回収するステップをさらに含む。
【0029】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、沈殿物質から残留N含有無機塩を除去し、必要に応じて回収するステップは、沈殿物質を約300~360℃の間で加熱して、沈殿物質からN含有無機塩を蒸発させ、必要に応じて凝縮によってN含有無機塩を回収することを含む。
【0030】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、N含有無機塩は、アンモニアガス、塩化水素ガス、塩素ガス、またはそれらの組合せを含む形態で、沈殿物質から蒸発する塩化アンモニウムである。
【0031】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、回収された残留アンモニアおよび/またはN含有無機塩を、プロセスの溶解ステップおよび/または処理ステップに再循環させるステップをさらに含む。
【0032】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、バテライトは、安定なバテライトまたは反応性バテライトである。
【0033】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、反応性バテライトを含む沈殿物質に水を添加し、バテライトをアラゴナイトに変換するステップをさらに含み、そのアラゴナイトは凝結し、硬化して、セメントまたはセメント製品を形成する。
【0034】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、セメント製品は、石造ユニット、建築パネル、導管、水盤(basin)、梁、柱、スラブ、遮音バリア、断熱材料、およびそれらの組合せから選択される、形成された建材である。
【0035】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本方法は、反応性バテライトを含む沈殿物質に水を添加し、バテライトをアラゴナイトに変換するステップをさらに含み、そのアラゴナイトは凝結し、硬化して、非セメント製品を形成する。
【0036】
一態様では、前述の態様および実施形態による方法によって形成された製品が提供される。
【0037】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するように構成された焼成反応器、
(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するように構成された溶解反応器、
(iii)二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームを回収し、ガスストリームを、1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるように構成された冷却反応器、ならびに
(iv)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するように構成された処理反応器
を含む、システムが提供される。
【0038】
前述の態様の一部の実施形態では、溶解反応器は、冷却反応器と統合している。
【0039】
本発明の特色は、添付の特許請求の範囲を用いて具体的に記載される。本発明の特色および利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および以下の添付の図を参照することによって、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0041】
【
図2】
図2は、本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0042】
【
図3】
図3は、本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0043】
【
図4】
図4は、本明細書で提供される統合された反応器を含む方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0044】
【
図5】
図5は、本明細書で提供される統合された反応器を含む方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0045】
【
図6】
図6は、本明細書で提供される統合された反応器を含む方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0046】
【
図7】
図7は、本明細書で提供される統合された反応器を含む方法およびシステムの一部の実施形態を示す。
【0047】
【
図8】
図8は、バテライトからアラゴナイトへの遷移のギブズ自由エネルギー図を示す。
【0048】
【
図9】
図9は、本明細書の実施例4に記載される通り、冷却反応器における形成時のCO
2:NH
3比および凝縮生成物の比の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
説明
本明細書では、本明細書に記載される様々な生成物を形成するために使用することができる炭酸カルシウムのバテライト多形を形成するために石灰を使用する、独特の方法およびシステムが提供される。石灰は、石灰石の焼成から得られる。出願人らは、有益なセメント製品を形成するために石灰を使用するための独特の方法およびシステムを発明した。本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態では、石灰は、水溶液に石灰のカルシウムを可溶化または溶解させるために、塩基水溶液、例えば単なる例として、アンモニウム塩、例えば塩化アンモニウム水溶液で直接処理される。次に、カルシウム塩の形態の溶解したカルシウムは、部分的にまたは完全にバテライト多形形態である炭酸カルシウムを含む沈殿物または沈殿物質を形成するために、二酸化炭素ガス(石灰石の焼成中に発生する)で処理される。
【0050】
一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、バテライト多形形態で形成され、または一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウム(PCC)である。PCCは、バテライト、アラゴナイト、方解石、またはそれらの組合せの形態であってもよい。一部の実施形態では、本明細書の方法およびシステムによって形成されたバテライトは、安定なバテライト形態または反応性バテライト形態であり、それらは、共に本明細書に記載されている。一部の実施形態では、反応性バテライトを含む沈殿物質は、限定されるものではないが、高い圧縮強度で凝結しセメント化するアラゴナイトに変換させることによるセメント化特性を含めた、独特な特性を有する。一部の実施形態では、バテライトからアラゴナイトへの変換により、建材および/またはセメント製品、例えば限定されるものではないが、本明細書にさらに記載される形成された建材、例えば建築パネルなどを形成するために使用することができるセメントが得られる。一部の実施形態では、製品におけるバテライトは、安定であり(アラゴナイトに変換しない)、他のセメント、例えば普通ポルトランドセメント(OPC)と混合される場合には、フィラーまたは補助セメント材料(SCM)として使用することができる。バテライトを含む沈殿物質はまた、反応性バテライトを含有する沈殿物質が、水と接触した後にアラゴナイトに変換する骨材として使用することができ、そのアラゴナイトは凝結し、セメント化し、次にセメント化後にその骨材を形成するために粉砕される。炭酸カルシウムがPCCとして形成される一部の実施形態では、PCC材料は、セメント質であり、または紙製品、ポリマー製品、潤滑剤、接着剤、ゴム製品、チョーク、アスファルト製品、塗料、塗料除去のための研磨剤、パーソナルケア製品、化粧品、清浄製品、パーソナル衛生製品、摂取可能な製品、農業製品、土壌改良製品、殺有害生物剤、環境修復製品、およびそれらの組合せなどの製品におけるフィラーとして使用することができる。非セメント製品におけるフィラーとしての炭酸カルシウム沈殿物質のこのような使用は、2010年11月9日発行の米国特許第7,829,053号に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
石灰由来のカルシウムイオンを可溶化するために使用される塩基、例えば限定されるものではないが、N含有無機塩またはN含有有機塩、単なる例として、アンモニウム塩は、沈殿物が形成された後、上清溶液および沈殿物自体に残留N含有無機塩またはN含有有機塩を残すことができる。一部の実施形態では、沈殿物におけるN含有無機塩またはN含有有機塩の含量、例えば限定されるものではないが、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、またはそれらの組合せの含量は、こうして沈殿物質から形成されたセメント製品に有害となるおそれがあるので、沈殿物におけるN含有無機塩またはN含有有機塩の存在は、望ましくない場合がある。例えば、セメント製品における塩化物は、セメント製品と共に使用される金属構造物にとって腐食性となり得る。さらに、残留アンモニアは、製品に悪臭を加えるおそれがある。さらに、沈殿物および上清溶液における、回収されない無駄な残留N含有無機塩またはN含有有機塩は、経済的にも環境的にも実行可能になり得ない。上清溶液および沈殿物からN含有無機塩またはN含有有機塩を除去し、必要に応じて回収するための様々な方法が、本明細書で提供されている。
【0052】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって当然ながら変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を単に記載することを目的とし、限定することを企図されないことも理解されたい。
【0053】
ある範囲の値が提供される場合、状況によって別段明示されない限り、その範囲の上限値と下限値の間に介在する、下限値の単位の10分の1までの各値、および記述されたその範囲内の記述されたいかなる他の値または介在する値も、本発明に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、独立に、そのより小さい範囲に含まれていてよく、これらもまた、記述された範囲における任意の境界が具体的に除外されることを条件として、本発明に包含される。記述された範囲が、境界の一方または両方を含む場合、含まれたそれらの境界の一方または両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0054】
ある特定の範囲は、本明細書では、数値の前に用語「約」が置かれている状態で提示される。用語「約」は、本明細書では、その後に置かれる正確な数、および後に置かれる数に近い数または近似する数について、文字により裏付けるために使用される。ある数が、具体的に記載されている数に近いまたは近似するかどうかを決定する際、近いまたは近似する記載されていない(unrequited)数は、それが提示される状況において、具体的に記載されている数と実質的に等価な数を提供する数であり得る。
【0055】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似のまたは等価な任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することもできるが、本明細書では、代表的な例示的方法および材料が記載される。
【0056】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的に個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、それぞれの引用される刊行物、特許、または特許出願は、その刊行物が引用されるものに関して主題を開示し、記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、その出願日前にそれらを開示するためのものであり、本明細書に記載される本発明が、先行特許に関してこのような刊行物に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行日は、実際の刊行物の公開日とは異なる場合があり、独立に確認される必要があり得る。
【0057】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、状況によって別段明示されない限り、複数の参照物を含むことに留意されたい。さらに、特許請求の範囲は、必要に応じた任意の要素を除外するように書かれる場合があることに留意されたい。したがって、この単数形の記載は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する、「単に(solely)」、「だけ(only)」などの排他的用語の使用、または「消極的」限定の使用のための先行詞として働くことが企図される。
【0058】
本開示を読む際に当業者に明らかになる通り、本明細書に記載され、例示される個々の実施形態のそれぞれは、別個の構成成分および特色を有し、それらは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、その他のいくつかの実施形態のいずれかの特色と容易に分離され得るか、または組み合わされ得る。記載されるいかなる方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で行うことができる。
I.方法およびシステム
【0059】
ある特定の建材の構成成分として有用な特性を有する、炭酸カルシウムのある特定の多形、例えばバテライトを有する沈殿物質を形成するために石灰を利用するための方法およびシステムが提供される。本明細書で提供される方法およびシステムにおいて形成されたバテライトは、安定なバテライトまたは反応性バテライトであってもよい。反応性バテライトは、水に溶解し、再沈殿すると、セメント質の特性を有するアラゴナイトを形成する。本明細書で提供されるバテライトを含有する沈殿物は、限定されるものではないが、セメント繊維ボードなどの適用において完全に、または補助セメント材料(SCM)として部分的に、普通ポルトランドセメント(OPC)を置き換えるために使用することができる。「石灰」は、本明細書で使用される場合、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムに関する。石灰における酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムの存在および量は、石灰形成のための条件に応じて変わるはずである。
【0060】
本明細書で提供される方法およびシステムは、限定されるものではないが、二酸化炭素をプロセスに再び組み込んで、炭酸カルシウムを含む沈殿物を形成することにより、二酸化炭素放出を低減するなどのいくつかの利点を有する。本明細書で提供される方法およびシステムにおける、バテライトを含有する沈殿物の生成は、燃料消費の低減による操作費用の節約、および炭素フットプリントの低減を含めた利点をもたらす。
【0061】
セメントは、世界的な二酸化炭素放出に著しく寄与するものであり、毎年15億メートルトン超が放出されており、これは総放出量の約5%に相当する。セメントによる放出の50%超は、石灰原料の分解(CaCO3→CaO+CO2)由来の二酸化炭素の放出から生じ得る。本明細書で提供される方法およびシステムにおいて、石灰石から石灰への焼成から生じるCO2の放出は、それを取り戻してセメントバテライト材料に戻すことによって回避され得る。二酸化炭素を取り戻すことによって、バテライト生成物には、セメントによる著しい量の二酸化炭素放出およびあらゆる供給源からの世界的な全放出を排除する潜在可能性がある。
【0062】
したがって、一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、石灰を、1つまたは複数の沈殿条件下で塩基水溶液に溶解させて、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を生成するステップを含む方法が提供される。
【0063】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、(i)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下で塩基水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液を生成するステップと、(ii)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で二酸化炭素を含むガスストリームで処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するステップとを含む方法が提供される。前述の態様の一部の実施形態では、二酸化炭素を含むガスストリームは、石灰石を焼成して石灰を形成することによって得られる。
【0064】
本明細書で提供される方法およびシステムの一部の態様および実施形態は、
図1~7に示される通りである。所望の結果に応じて、
図1~7に示されるステップは修正することができ、またはステップの順序は変更することができ、またはさらなるステップを追加もしくは削除することができることを理解されたい。
図1~7に示される通り、石灰を、本明細書で提供される方法およびシステムに付して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質を生成する。
【0065】
焼成または焼成することは、石灰石の熱分解をもたらす熱処理プロセスである。「石灰石」は、本明細書で使用される場合、CaCO3を意味し、石灰石に典型的に存在する他の不純物をさらに含むことができる。石灰石は、自然に存在する鉱物である。この鉱物の化学組成は、地域ごとに変わり、同じ地域の異なる鉱床の間でも変わり得る。したがって、各天然鉱床由来の石灰石を焼成することにより得られる酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを含有する石灰も異なり得る。典型的に、石灰石は、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、鉄(Fe)、硫黄(S)または他の微量元素から構成され得る。
【0066】
石灰石鉱床は、広く分布している。様々な鉱床由来の石灰石は、物理化学特性が異なっている場合があり、それらの化学組成、質感および地質学的形成に従って分類することができる。石灰石は、炭酸塩含量が主に炭酸カルシウムから構成され得、炭酸マグネシウム含量が5%以下である高カルシウムタイプ、炭酸マグネシウムを約5~20%含有するマグネシウムタイプ、または20~45%の間のMgCO3を含有することができ、残量が炭酸カルシウムであるドロマイトタイプに分類することができる。異なる供給源由来の石灰石は、化学組成および物理的構造が大幅に異なり得る。本明細書で提供される方法およびシステムは、先に列挙されるか、または商業的に入手可能な供給源のいずれか由来の石灰石を焼成するすべてのセメント工場に適用されることを理解されたい。採石場には、限定されるものではないが、セメント炉と関連する採石場、コンクリートにおいて使用するための骨材のための石灰岩の採石場、他の目的(道路基盤)のための石灰岩の採石場、および/または石灰炉と関連する採石場が含まれる。
【0067】
石灰石の焼成は、石灰石の分解の化学反応が、
CaCO3 → CaO+CO2(ガス)
となる、分解プロセスである。
【0068】
このステップは、石灰石を焼成して石灰を形成する第1のステップとして
図1~3に示されている。石灰は、条件に応じて、乾燥形態、すなわち酸化カルシウム、および/または湿潤形態、例えば水酸化カルシウムで存在し得る。石灰の生成は、炉のタイプ、焼成条件、および原材料、すなわち石灰石の性質に応じて変わり得る。比較的低い焼成温度では、炉内で形成された生成物は、未燃炭酸塩および石灰の両方を含有している場合があり、不完全燃焼石灰と呼ばれることがある。温度が上昇するにつれて、軽焼生石灰または高反応性石灰が生成され得る。さらにより高い温度では、死焼石灰または低反応性石灰が生成され得る。軽焼生石灰は、反応フロントが、充填された石灰石のコアに達し、存在するすべての炭酸塩を石灰に変換する場合に生成される。高生産性の生成物は、比較的軟質である場合があり、小さい石灰微結晶を含有しており、容易に評価可能な内部を有する開放多孔質構造を有する。このような石灰は、高反応性、高表面積および低バルク密度の最適な特性を有することができる。この段階を超えて焼成度を高めると、石灰微結晶は、より大きい凝集物および焼結物に成長し得る。これにより、表面積、多孔性および反応性が低下し、バルク密度が上昇し得る。この生成物は、死焼石灰または低反応性石灰として公知であり得る。いかなる理論にも拘泥するものではないが、本明細書で提供される方法およびシステムは、前述の石灰のいずれか1つまたは組合せを利用する。したがって、一部の実施形態では、石灰は、死焼、軟焼、不完全燃焼、またはそれらの組合せである。
【0069】
石灰石を焼成することによる石灰の生成は、様々なタイプの炉、例えば限定されるものではないが、シャフトキルンまたは回転炉または電気炉を使用して行うことができる。焼成に電気炉を使用することおよびそれと関連する利点は、2020年6月30日出願の米国仮出願番号第63/046,239号に記載されており、その全体は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0070】
焼成するためのこれらの装置は、数ミリメートルから数十ミリメートルの直径を有する塊の形態の石灰石を焼成するのに適している。セメント工場の廃棄物ストリームには、湿式プロセス工場および乾式プロセス工場の両方から出た廃棄物ストリームが含まれ、それらの工場は、シャフトキルン、回転炉、電気炉、またはそれらの組合せを用いることができ、予備焼成炉を含んでいてもよい。これらの工業用工場は、それぞれ単一燃料を燃焼することができ、または2種もしくはそれよりも多い燃料を、順次もしくは同時に燃焼することができる。
【0071】
図1~3に示される通り、石灰石採石場から得られた石灰石は、セメント工場において焼成に付され、その結果、石灰およびCO
2ガスを形成する。石灰は、乾式炉/セメント化プロセス由来の固体形態の酸化カルシウムであってもよく、かつ/または湿式炉/セメント化プロセス内でスラリー形態の、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの組合せであってもよい。湿式の場合、酸化カルシウム(水中でその水酸化物形態に変換する塩基性無水物としても公知)は、その水和形態、例えば限定されるものではないが、水酸化カルシウムで存在し得る。水酸化カルシウム(消石灰とも呼ばれる)は、酸化カルシウムの一般的な水和形態であるが、他の中間の水和複合体および/または水複合体も、スラリー中に存在することができ、それらはすべて、本明細書で提供される方法およびシステムの範囲内に含まれる。石灰は、本明細書の図の一部ではCaOとして示されるが、Ca(OH)
2またはCaOとCa(OH)
2の組合せとして存在し得ることを理解されたい。
【0072】
石灰は、水に溶けにくいことがある。本明細書で提供される方法およびシステムにおいて、石灰の溶解度は、可溶化剤を用いてそれを処理することによって増大する。
【0073】
本明細書で提供される方法およびシステムにおいて、石灰は、1つまたは複数の溶解条件下で、可溶化剤、例えば塩基水溶液で溶媒和または溶解または可溶化して(
図1~3のステップA)、カルシウム塩を含む第1の水溶液を生成する。単に例示する目的で、図においては、塩基水溶液、例えばN含有無機塩溶液が塩化アンモニウム(NH
4Cl)溶液として示されており、その後のカルシウム塩は、塩化カルシウム(CaCl
2)として示されている。塩基の様々な例が、本明細書で提供されており、すべて本発明の範囲内にある。
【0074】
「塩基」には、本明細書で使用される場合、任意の塩基、または酸の共役塩基が含まれる。一部の実施形態では、塩基は、石灰由来のカルシウムを可溶化または溶解させ、固体不純物を残す可溶化塩基である。塩基には、限定されるものではないが、N含有無機塩、N含有有機塩、またはその組合せが含まれる。
【0075】
「N含有無機塩」は、本明細書で使用される場合、窒素を有する任意の無機塩を含む。N含有無機塩の例として、限定されるものではないが、ハロゲン化アンモニウム(ハロゲン化物は、任意のハロゲンである)、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。一部の実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは、塩化アンモニウムまたは臭化アンモニウムである。一部の実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは、塩化アンモニウムである。
【0076】
「N含有有機塩」は、本明細書で使用される場合、窒素を有する有機化合物の任意の塩を含む。N含有有機化合物の例として、限定されるものではないが、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0077】
「脂肪族アミン」は、本明細書で使用される場合、式(R)n-NH3-nの任意のアルキルアミンを含む(nは、1~3の整数であり、Rは、独立に、C1~C8の間の直鎖または分岐の置換または非置換アルキルである)。式(R)n-NH3-nのアルキルアミンの対応するハロゲン化物塩(塩化物塩、臭化物塩、フッ化物塩、またはヨウ化物塩)の一例は、(R)n-NH4-n
+Cl-である。一部の実施形態では、Rが置換アルキルである場合、この置換アルキルは、独立に、ハロゲン、ヒドロキシル、酸および/またはエステルで置換されている。
【0078】
例えば、Rが、(R)n-NH3-nにおいてアルキルである場合、このアルキルアミンは、単なる例として、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミンなどの第一級アルキルアミンであってもよく、このアルキルアミンは、単なる例として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミンなどの第二級アミンであってもよく、かつ/またはこのアルキルアミンは、単なる例として、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの第三級アミンであってもよい。
【0079】
例えば、Rが、(R)n-NH3-nにおいてヒドロキシルで置換されている置換アルキルである場合、この置換アルキルアミンは、限定されるものではないが、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、またはトリアルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンなどを含めた、アルカノールアミンである。
【0080】
例えば、Rが、(R)n-NH3-nにおいてハロゲンで置換されている置換アルキルである場合、この置換アルキルアミンは、例えば、クロロメチルアミン、ブロモメチルアミン、クロロエチルアミン、ブロモエチルアミンなどである。
【0081】
例えば、Rが、(R)n-NH3-nにおいて酸で置換されている置換アルキルである場合、この置換アルキルアミンは、例えば、アミノ酸である。一部の実施形態では、前述のアミノ酸は、極性の非荷電アルキル鎖を有し、その例として、限定されるものではないが、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、前述のアミノ酸は、荷電アルキル鎖を有し、その例として、限定されるものではないが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、前述のアミノ酸は、グリシン、プロリン、またはそれらの組合せである。
【0082】
「脂環式アミン」は、本明細書で使用される場合、式(R)n-NH3-nの任意の脂環式アミンを含む(nは、1~3の整数であり、Rは、独立に、すべて炭素の1つまたは複数の環であり、その環は、飽和であっても不飽和であってもよいが、芳香族性を有していない)。脂環式化合物は、結合している1つまたは複数の脂肪族側鎖を有することができる。式(R)n-NH3-nの脂環式アミンの対応する塩の一例は、(R)n-NH4-n
+Cl-である。脂環式アミンの例として、限定されるものではないが、シクロアルキルアミン、すなわちシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンなどが挙げられる。
【0083】
「複素環式アミン」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのアミンに結合している少なくとも1つの複素環式芳香環を含む。複素環式環の例として、限定されるものではないが、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピリミジンなどが挙げられる。このような化学物質は、当技術分野で周知であり、商業的に入手可能である。
【0084】
本明細書で提供される方法およびシステムにおいて、石灰は、1つまたは複数の溶解条件下で、可溶化剤、例えば塩基水溶液に溶解または可溶化して(
図1~3のステップA)、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成する。
【0085】
図1~3のステップAに示される通り、塩基は、塩化アンモニウム(NH
4Cl)として示されている。石灰は、生じ得る反応が、
CaO+2NH
4Cl(水溶液) → CaCl
2(水溶液)+2NH
3+H
2O
Ca(OH)
2+2NH
4Cl(水溶液) → 2NH
3+CaCl
2+2H
2O
である場合、NH
4Cl(新しいもの、およびさらに以下に説明される通り再循環されたもの)を用いて処理することによって可溶化される。
【0086】
同様に、塩基がN含有有機塩である場合、反応は、以下の通り示され得る。
CaO+2NH3RCl → CaCl2(水溶液)+2NH2R+H2O
【0087】
一部の実施形態では、塩基またはN含有無機塩、例えば限定されるものではないが、アンモニウム塩、例えば塩化アンモニウム溶液には、溶液中の塩化アンモニウムの最適レベルを維持するために、無水アンモニアまたはアンモニア水溶液が補充され得る。
【0088】
一部の実施形態では、石灰の溶解後に得られたカルシウム塩を含む第1の水溶液は、石灰の供給源に応じて、硫黄を含有し得る。硫黄は、本明細書に記載される塩基のいずれかを用いて石灰を可溶化した後、第1の水溶液に導入することができる。アルカリ性溶液中では、限定されるものではないが、亜硫酸イオン(SO3
2-)、硫酸イオン(SO4
2-)、水硫化物イオン(HS-)、チオ硫酸イオン(S2O3
2-)、ポリスルフィド(Sn
2-)、チオール(RSH)などを含めた、様々な硫黄イオン種を含有する様々な硫黄化合物が、溶液中に存在し得る。「硫黄化合物」には、本明細書で使用される場合、いかなる硫黄イオン含有化合物も含まれる。
【0089】
一部の実施形態では、第1の水溶液は、塩基、例えばアンモニア、および/またはN含有無機塩もしくはN含有有機塩をさらに含む。
【0090】
一部の実施形態では、塩基、例えばN含有無機塩、N含有有機塩、またはそれらの組合せの量は、石灰に対して20%を超える過剰または30%を超える過剰である。一部の実施形態では、塩基:石灰(またはN含有無機塩:石灰またはN含有有機塩:石灰または塩化アンモニウム:石灰)のモル比は、0.5:1~2:1の間、または0.5:1~1.5:1の間、または1:1~1.5:1の間、または1.5:1、または2:1、または2.5:1、または1:1である。
【0091】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、本明細書で提供される沈殿物質および/または製品を形成するために、ポリヒドロキシ化合物は使用されない。
【0092】
本明細書に記載される方法およびシステムの一部の実施形態では、1つまたは複数の溶解条件は、約30~200℃の間、もしくは約30~150℃の間、もしくは約30~100℃の間、もしくは約30~75℃の間、もしくは約30~50℃の間、もしくは約40~200℃の間、もしくは約40~150℃の間、もしくは約40~100℃の間、もしくは約40~75℃の間、もしくは約40~50℃の間、もしくは約50~200℃の間、もしくは約50~150℃の間、もしくは約50~100℃の間の温度、約0.1~50atmの間、もしくは約0.1~40atmの間、もしくは約0.1~30atmの間、もしくは約0.1~20atmの間、もしくは約0.1~10atmの間、もしくは約0.5~20atmの間の圧力、約0.5~50%の間、もしくは約0.5~25%の間、もしくは約0.5~10%の間、もしくは約3~30%の間、もしくは約5~20%の間の水中N含有無機もしくは有機塩wt%、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0093】
例えば、ホットスポットおよびコールドスポットを排除することによって、溶解反応器内で塩基水溶液を用いて石灰の溶解を行うために、かき混ぜを使用することができる。一部の実施形態では、石灰の水中濃度は、1~10g/Lの間、10~20g/Lの間、20~30g/Lの間、30~40g/Lの間、40~80g/Lの間、80~160g/Lの間、160~320g/Lの間、320~640g/Lの間、または640~1280g/Lの間であり得る。石灰の溶解/溶媒和を最適化するために、高せん断混合、湿式ミル粉砕、および/または超音波処理を使用して、石灰を破壊することができる。高せん断混合および/または湿式ミル粉砕の間または後に、石灰の懸濁液は、塩基で処理され得る。
【0094】
一部の実施形態では、塩基(例えば塩化アンモニウムとして示される)を用いる石灰の溶解により、カルシウム塩を含む第1の水溶液および固体が形成される。一部の実施形態では、固体不溶性不純物は、カルシウム塩の第1の水溶液から除去することができ(
図1~3のステップB)、その後、その水溶液は、そのプロセスにおいて二酸化炭素で処理される。固体は、必要に応じて、濾過および/または遠心分離技術によって水溶液から除去され得る。
【0095】
図1~3のステップBは、必要に応じたものであり、一部の実施形態では、固体は、水溶液から除去されなくてもよく(
図1~3に示されず)、カルシウム塩を含有する水溶液および固体は、二酸化炭素と接触させられて(
図1~3のステップC)、沈殿物を形成することを理解されたい。このような実施形態では、沈殿物質は、固体をさらに含む。
【0096】
一部の実施形態では、石灰の溶解から得られた固体(
図1~3に不溶性不純物として示される)は、カルシウムが枯渇した固体であり、セメント代用物(例えば、ポルトランドセメントの代用物)として使用することができる。一部の実施形態では、固体は、ケイ酸塩、酸化鉄、アルミナ、またはそれらの組合せを含む。ケイ酸塩には、限定されるものではないが、粘土(フィロケイ酸塩)、アルミノケイ酸塩などが含まれる。
【0097】
一部の実施形態では、固体は、水溶液、沈殿物質、またはそれらの組合せにおいて、1~40wt%の間、または1~30wt%の間、または1~20wt%の間、または1~10wt%の間、または1~5wt%の間、または1~2wt%の間で存在する。
【0098】
図1のステップCに示される通り、カルシウム塩を含む第1の水溶液(および必要に応じて固体)ならびに溶解したアンモニアおよび/またはアンモニウム塩は、それぞれのプロセスの焼成ステップから再循環させられた二酸化炭素を含むガスストリームと、1つまたは複数の沈殿条件下で接触させられて、以下の反応に示されるバテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成する。
CaCl
2(水溶液)+2NH
3(水溶液)+CO
2(ガス)+H
2O → CaCO
3(固体)+2NH
4Cl(水溶液)
【0099】
第1の水溶液へのCO2の吸収により、炭酸水素塩および炭酸塩の両方と平衡状態の種である、炭酸を含有するCO2充填水が生成される。沈殿物質は、バテライト含有材料またはPCC材料を形成するのに適した1つまたは複数の沈殿条件(本明細書に記載される通り)下で調製される。
【0100】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下で塩基水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、(iii)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームで処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するステップとを含む、方法が提供される。この態様は、
図2に示されており、ここで、焼成ステップ由来のCO
2を含むガスストリームおよびプロセスのステップA由来のNH
3を含むガスストリームは、沈殿物質の形成のために沈殿反応器に再循環させられる(ステップC)。
図2の残りのステップは、
図1のステップと同一である。
図1および
図2両方のプロセスはまた、塩基、例えばN含有無機塩またはN含有有機塩および必要に応じてアンモニアが、第1の水溶液中に部分的に存在し、ガスストリーム中に部分的に存在し得るように、同時に行うことができることを理解されたい。
【0101】
前述の態様において行われる反応は、以下の通り示され得る。
CaCl2(水溶液)+2NH3(ガス)+CO2(ガス)+H2O → CaCO3(固体)+2NH4Cl(水溶液)
【0102】
本明細書で提供される態様および実施形態の一部の実施形態では、アンモニアを含むガスストリームは、外部供給源由来のアンモニアを有することができ、かつ/またはプロセスのステップAから回収され、再循環させられる。
【0103】
ガスストリームがアンモニアを含み、かつ/またはガスストリームが二酸化炭素を含む、本明細書で提供される態様および実施形態の一部の実施形態では、二酸化炭素および/またはアンモニアの外部供給源は使用されず、プロセスは閉ループプロセスである。このような閉ループプロセスは、本明細書に記載される図に示されている。
【0104】
一部の実施形態では、N含有有機塩の一部を用いる石灰の溶解は、アンモニアガスの形成をもたらさない場合があり、または形成されるアンモニアガスの量は、実質的でない場合がある。アンモニアガスが形成されないか、または実質的な量で形成されない実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液が二酸化炭素ガスで処理される、
図1に示される方法およびシステムが適用可能である。このような実施形態では、有機アミン塩は、水溶液に完全にもしくは部分的に溶解した状態のままであり得るか、または以下の反応に示される通り、有機アミン層として分離し得る。
CaO+2NH
3R
+Cl
- → CaCl
2(水溶液)+2NH
2R+H
2O
【0105】
沈殿後に上清溶液に残ったN含有有機塩またはN含有有機化合物は、残留N含有有機塩または残留N含有有機化合物と呼ばれ得る。本方法およびシステムは、本明細書では、沈殿物および上清溶液由来の残留化合物を回収することが記載されている。
【0106】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液またはN含有有機塩溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、(iii)二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームを回収し、ガスストリームを1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるステップと、(iv)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するステップとを含む、方法が提供される。この態様は、
図3に示されており、ここで、焼成ステップ由来のCO
2を含むガスストリームおよびプロセスのステップA由来のNH
3を含むガスストリームは、本明細書で以下の反応にさらに示される通り、炭酸塩および炭酸水素塩溶液の形成のために冷却反応器/反応に再循環させられる(ステップF)。
図3の残りのステップは、
図1および2のステップと同一である。
【0107】
図3に示される前述の態様は、
図1および/または
図2に示される態様と組み合わせることができ、したがって、沈殿ステップCは、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理すること(
図3に示される)、ならびにカルシウム塩を含む第1の水溶液を、二酸化炭素を含むガスストリームで処理すること(
図1に示される)、ならびに/またはカルシウム塩を含む第1の水溶液を、二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームで処理すること(
図2に示される)を含むことを理解されたい。このような実施形態では、二酸化炭素を含むガスストリームは、冷却プロセスに向かうストリームと、沈殿プロセスに向かうストリームに分かれる。同様に、このような実施形態では、アンモニアを含むガスストリームは、冷却プロセスに向かうストリームと、沈殿プロセスに向かうストリームに分かれる。
図1~3に図示されるプロセスのいかなる組合せも可能であり、すべて本開示の範囲内にある。
【0108】
前述の態様の一部の実施形態では、第2の水溶液は、カルバミン酸アンモニウムをさらに含む。カルバミン酸アンモニウムは、アンモニウムイオンNH4
+、およびカルバミン酸イオンH2NCO2
-からなる式NH4[H2NCO2]を有する。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、第2の水溶液は、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む。
【0109】
第2の水溶液におけるこれらの凝縮生成物の組合せは、冷却条件の1つまたは複数に依存して決まり得る。以下に提示される表1は、第2の水溶液における凝縮生成物の様々な組合せを示す。
【表1】
【0110】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、ガスストリーム(例えば、冷却反応/反応器に向かうガスストリーム(
図1~3のステップF))は、水蒸気をさらに含む。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、ガスストリームは、約20~90%の間、または約20~80%の間、または約20~70%の間、または約20~60%の間、または約20~55%の間、または約20~50%の間、または約20~40%の間、または約20~30%の間、または約20~25%の間、または約30~90%の間、または約30~80%の間、または約30~70%の間、または約30~60%の間、または約30~50%の間、または約30~40%の間、または約40~90%の間、または約40~80%の間、または約40~70%の間、または約40~60%の間、または約40~50%の間、または約50~90%の間、または約50~80%の間、または約50~70%の間、または約50~60%の間、または約60~90%の間、または約60~80%の間、または約60~70%の間、または約70~90%の間、または約70~80%の間、または約80~90%の間の水蒸気をさらに含む。
【0111】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、外部からの水は、冷却プロセスに添加されない。冷却プロセスは、既存の水蒸気におけるガスの凝縮に類似しており(しかし、ガスの吸収には類似していない)、したがって、ガスは水には吸収されず、それ自体が水蒸気と一緒に冷却されることを理解されたい。液体ストリームへのガスの凝縮は、蒸気の吸収と比較してプロセス制御の利点を提供することができる。単なる例として、液体ストリームへのガスの凝縮は、液体ストリームを沈殿ステップにポンプ注入することを可能にし得る。液体ストリームのポンプ注入は、蒸気ストリームを吸収プロセスに圧縮するよりもコストを抑えることができる。
【0112】
冷却反応/反応器の中間ステップは、以下の反応によって、炭酸アンモニウムおよび/または炭酸水素アンモニウムおよび/またはカルバミン酸アンモニウムの形成を含むことができる。
2NH3+CO2+H2O → (NH4)2CO3
NH3+CO2+H2O → (NH4)HCO3
2NH3+CO2 → (NH4)NH2CO2
【0113】
類似の反応が、N含有有機塩についても示され得る。
2NH2R+CO2+H2O → (NH3R)2CO3
NH2R+CO2+H2O → (NH3R)HCO3
【0114】
冷却反応/反応器においてアンモニアを冷却することの利点は、アンモニアが、溶解反応の気相中で制限された蒸気圧を有し得るということである。アンモニアをCO2と反応させることによって、先の反応に示される通り、蒸気空間から一部のアンモニアを除去して、より多くのアンモニアを溶解溶液に残すことができる。
【0115】
次に、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、(および必要に応じてカルバミン酸アンモニウム)またはそれらの組合せ(
図3の冷却反応/反応器を出る)を含む第2の水溶液を、沈殿反応/反応器内で、溶解反応/反応器由来のカルシウム塩を含む第1の水溶液で処理して(ステップC)、バテライトを含む沈殿物質を形成する。
(NH
4)
2CO
3+CaCl
2 → CaCO
3(バテライト)+2NH
4Cl
(NH
4)HCO
3+NH
3+CaCl
2 → CaCO
3(バテライト)+2NH
4Cl+H
2O
2(NH
4)HCO
3+CaCl
2 → CaCO
3(バテライト)+2NH
4Cl+H
2O+CO
2
(NH
4)NH
2CO
2+H
2O+CaCl
2 → CaCO
3(バテライト)+2NH
4Cl
【0116】
いかなる中間ステップとも独立に、反応の組合せは、以下の全体的プロセスケミストリーに至る。
CaO(石灰) → CaCO3(バテライト)
【0117】
本明細書で提供される態様および実施形態の一部の実施形態では、1つまたは複数の冷却条件は、約0~200℃の間、または約0~150℃の間、または約0~75℃の間、または約0~100℃の間、または約0~80℃の間、または約0~60℃の間、または約0~50℃の間、または約0~40℃の間、または約0~30℃の間、または約0~20℃の間、または約0~10℃の間、または約10~100℃の間、または約10~80℃の間、または約10~60℃の間、または約10~50℃の間、または約10~40℃の間、または約10~30℃の間、または約20~100℃の間、または約20~80℃の間、または約20~60℃の間、または約20~50℃の間、または約20~40℃の間、または約20~30℃の間、または約30~100℃の間、または約30~80℃の間、または約30~60℃の間、または約30~50℃の間、または約30~40℃の間、または約40~100℃の間、または約40~80℃の間、または約40~60℃の間、または約50~100℃の間、または約50~80℃の間、または約60~100℃の間、または約60~80℃の間、または約70~100℃の間、または約70~80℃の間の温度を含む。
【0118】
本明細書で提供される態様および実施形態の一部の実施形態では、1つまたは複数の冷却条件は、約0.5~50atmの間、または約0.5~25atmの間、または約0.5~10atmの間、または約0.1~10atmの間、または約0.5~1.5atmの間、または約0.3~3atmの間の圧力を含む。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法およびシステムにおいて形成された反応性バテライトの形成および質は、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液における凝縮生成物の量および/または比に依存して決まる。
【0120】
一部の実施形態では、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液における凝縮生成物の存在または非存在または分布は、反応性バテライトの形成を最大限にし、かつ/または所望の粒径分布を得るために、最適化することができる。この最適化は、1つまたは複数の冷却条件、例えば冷却反応器における水溶液のpH、CO
2およびNH
3ガスの流速、ならびに/またはCO
2:NH
3ガスの比に基づくことができる。冷却反応器(
図3のF)への流入物は、二酸化炭素(CO
2(ガス))、アンモニア(NH
3(ガス))を含有する溶解反応器の排ガス、水蒸気、および必要に応じて新しい補給水(または何らかの他の希釈用水ストリーム)であり得る。流出物は、反応器の再循環流体(第2の水溶液)のスリップストリームであり得、そのストリームは、第1の水溶液ならびに必要に応じて追加の二酸化炭素および/またはアンモニアと接触させるために、沈殿反応器に向かわせられる。システムのpHは、冷却反応器へのCO
2およびNH
3の流速を調節することによって制御することができる。システムの伝導率は、冷却反応器に希釈用補給水を添加することによって制御することができる。体積は、冷却反応器またはそのリザーバーのレベル検出器を使用することによって一定に維持することができる。
【0121】
一部の実施形態では、冷却反応器内の水溶液のより高いpH(より高い流速のアンモニアによって達成され得る)は、カルバミン酸塩の形成にとって都合が良い場合がある一方、冷却反応器内の水溶液のより低いpH(より低い流速のアンモニアによって達成され得る)は、炭酸塩および/または炭酸水素塩の形成にとって都合が良い場合がある。一部の実施形態では、1つまたは複数の冷却条件には、冷却反応器内で形成された水溶液のpHが、約8~12の間、または約8~11の間、または約8~10の間、または約8~9の間であることが含まれる。
【0122】
一部の実施形態では、二酸化炭素の流速は、冷却反応器を出る第2の水溶液の所望のpHを達成するために修正することができる。例えば、第2の水溶液のpHが高い場合、二酸化炭素の流速を増大してpHを低下させることができ、または第2の水溶液のpHが低い場合、二酸化炭素の流速を低減してpHを上昇させることができる。第2の水溶液のpHおよびカルバミン酸塩:炭酸塩:炭酸水素塩の形成の比に対するCO2の流速の効果は、本明細書で提供される実施例3に示され得る。同様に、第2の水溶液のpHおよびカルバミン酸塩:炭酸塩:炭酸水素塩の形成の比に対するCO2:NH3の比の効果は、本明細書で提供される実施例4に示され得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の冷却条件には、冷却反応器内の、約0.1:1~20:1の間、または約0.1:1~1:1の間、または約0.1:1~2:1の間、または約5:1~10:1の間、または約1:1~5:1の間、または約2:1~5:1の間のCO2:NH3の比が含まれる。
【0123】
図3は別個の冷却反応/反応器を示しているが、一部の実施形態では、溶解反応/反応器は、
図4~7に示される通り、冷却反応/反応器と統合され得ることを理解されたい。例えば、溶解反応器は、冷却反応器として作用する凝縮器と統合することができる。石灰および塩基水溶液(
図4~7においてNH
4Clとして示される)は、カルシウム塩(CaCl
2として示される)を含む第1の水溶液が形成される場合、共に溶解反応/反応器に供給される。この溶液は、必要に応じて固体不純物を含有していてもよく、その固体不純物は、溶解反応器の底部に留まる。カルシウム塩(CaCl
2として示される)を含む第1の水溶液は、沈殿のためにさらに処理するために、溶解反応/反応器から引き出される。アンモニアおよび水蒸気を含むガスストリームは、溶解反応器の上部セクション(すなわち、
図4~7に示される冷却反応器)を通過し、そこで二酸化炭素と共に冷却されて、第2の水溶液に凝縮される。二酸化炭素は、石灰石が石灰および二酸化炭素に焼成される工場から得ることができる。次に、二酸化炭素は、冷却反応器の気相に供給される。炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液は、例えば1つまたは複数のトレイなどの様々な手段を使用して、冷却反応器から収集される(例えば
図4に示される通り)。
【0124】
一態様では、統合された反応器が提供され、その反応器は、
冷却反応器に統合された溶解反応器を含み、この溶解反応器は、冷却反応器の下に位置しており、
この溶解反応器は、石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液またはN含有有機塩溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、ならびにアンモニアおよび水蒸気を含むガスストリームを生成するように構成されており、そして
この冷却反応器は、溶解反応器に操作可能に接続されており、1つまたは複数の冷却条件下で、溶解反応器由来のアンモニアおよび水蒸気を含むガスストリーム、ならびに石灰石から石灰への焼成由来の二酸化炭素を含むガスストリームを受け、凝縮し、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を形成するように構成されている。
【0125】
前述の統合された反応器の他の様々な立体配置は、
図5~7に示される通りである。
図5は、
図4の別の例示である。
図6は、充填材料で充填される冷却反応器の蒸気空間へのCO
2の導入をさらに示す。充填材料は、蒸気から液相へのNH
3およびCO
2の物質移動を助けるために使用される、いかなる不活性材料であってもよい。充填は、ランダム充填または規則充填であり得る。ランダム充填材料は、容器または反応器に充填された個々の部分を有する、いかなる材料であってもよい。規則充填材料は、表面積を提供し、物質移動を増強するように成形されている個々のモノリスを有する、いかなる材料であってもよい。緩いまたは不規則またはランダム充填材料の例として、限定されるものではないが、ラシヒリング(例えばセラミック材料の)、ポールリング(例えば金属およびプラスチックの)、レッシングリング、Michael Bialeckiリング(例えば金属の)、ベルルサドル、インタロックスサドル(例えばセラミックの)、スーパーインタロックスサドル、tellerette(登録商標)リング(例えばポリマー材料のらせん形状)などが挙げられる。
【0126】
規則充填材料の例として、限定されるものではないが、比表面積を有する様々な形状の、薄型波形金属プレートまたはガーゼ(ハニカム構造)が挙げられる。規則充填材料は、反応器の直径に適合し得る直径を有する環もしくは層、または環もしくは層のスタックとして使用され得る。環は、反応器を完全に充填する個々の環または環のスタックであり得る。一部の実施形態では、反応器において規則充填によって残された間隙は、不規則またはランダム充填材料で充填される。
【0127】
規則充填材料の例として、限定されるものではないが、Flexipac(登録商標)、Intalox(登録商標)、Flexipac(登録商標)HC(登録商標)などが挙げられる。規則充填材料において、気相のための流路を作り出すために、波形シートを十字型のパターンに配列することができる。波形シートの交差点は、液相および気相のための混合点を作り出すことができる。規則充填材料は、蒸気ストリームおよび液体ストリームを交差混合し、あらゆる方向に発散させるために、カラム(反応器)軸の周りを回転することができる。規則充填材料は、様々な波形サイズで使用することができ、反応器の最も高い効率、能力、および圧力低下要件を得るために、充填立体配置を最適化することができる。規則充填材料は、限定されるものではないが、チタン、ステンレス鋼合金、炭素鋼、アルミニウム、ニッケル合金、銅合金、ジルコニウム、熱可塑性物質などを含めた建築の材料から作製され得る。限定されるものではないが、水平から45°の傾斜角度を有するYと指定された充填または水平から60°の傾斜角度を有するXと指定された充填を含めた、規則充填材料における波形のしわは、いかなるサイズであってもよい。X充填は、同じ表面積について理論的段階ごとにより低い圧力低下を提供することができる。規則充填の比表面積は、50~800m2/m3の間、または75~350m2/m3の間、または200~800m2/m3の間、または150~800m2/m3の間、または500~800m2/m3の間であり得る。
【0128】
一部の実施形態では、冷却反応器は、スクラビング流体、例えば塩化アンモニウム溶液(
図6)または水(
図7)などを、冷却反応器の充填材料の最上部に導入するための流入口をさらに含む。スクラビング流体、例えば塩化アンモニウム溶液、またはアンモニア溶液、または水などは、凝縮生成物、例えば炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せの形成を促進する。スクラビング流体は、ガスの凝縮のためにより多くの液体体積を提供することができる。一部の実施形態では、スクラビング流体は、予冷される場合には、凝集プロセスをさらに助けることができる。スクラビング流体が塩化アンモニウム溶液である場合(
図6)、塩化アンモニウム溶液は、溶解反応器に供給される塩化アンモニウム溶液の一部であってよい。一部の実施形態では、冷却反応器由来の凝縮液から収集された、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液は、凝縮プロセスをさらに促進するために、スクラビング流体として冷却反応器に再循環され得る。一部の実施形態では、第2の水溶液は、冷却反応器に再循環させられる前に、熱交換器で冷却され得る。
【0129】
二酸化炭素を含むガスストリーム(焼成プロセスから得られる)における排煙などの他のガスは、冷却反応器から出ることができる(
図4~7に示される)。
【0130】
前述の態様では、必要なガスを受け、水性ストリームを収集するために、溶解反応器および冷却反応器の両方に、流入口および流出口が備え付けられる。前述の態様の一部の実施形態では、溶解反応器は、石灰を塩基水溶液と混合するための撹拌装置を含む。撹拌装置はまた、ガスの上方への移動を促進することができる。前述の態様の一部の実施形態では、溶解反応器は、カルシウム塩を含む第1の水溶液を除去した後に反応器の底部に沈降した固体を収集するように構成される。前述の態様の一部の実施形態では、冷却塔は、凝縮された第2の水溶液を捕らえ、収集し、第2の水溶液が溶解反応器に再び落下しないように構成された1つまたは複数のトレイを含む。したがって、冷却/凝縮は、注入器、バブラー、流体ベンチュリ反応器、スパージャー、ガスフィルター、スプレー、トレイ、または充填カラム反応器などを使用することによって達成され得る。
【0131】
一部の実施形態では、冷却反応器は、反応器内に熱交換器または熱交換表面を含む。熱交換器は、1つまたは複数の管を含むことができ、その管の内側を冷流体が循環し、したがって、冷流体は、冷却反応器における気相から単離されるが、ガスの凝縮のための冷却反応器の温度低下を促進する。冷流体は、冷却水、前述のスクラビング溶液などであってもよい。一部の実施形態では、冷却反応器を出る第2の水溶液は、スクラビング溶液として使用される前に、熱交換器によって冷却される。
【0132】
図1~2のステップCに示される通り、本明細書に記載される塩基、例えばアンモニウム塩またはハロゲン化アンモニウムなどを用いる石灰の処理から得られた、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、カルシウム塩を含む第1の水溶液が1つまたは複数の沈殿条件(すなわち、沈殿物質の沈殿を可能にする条件)に付される前、その間、またはその後、いつでもCO
2および必要に応じてステップA由来のNH
3と接触させられる。同様に、
図3のステップCに示される通り、ステップAについて本明細書に記載される塩基、例えばアンモニウム塩またはハロゲン化アンモニウムなどを用いる石灰の処理から得られた、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、カルシウム塩を含む第1の水溶液が1つまたは複数の沈殿条件(すなわち、沈殿物質の沈殿を可能にする条件)に付される前、その間、またはその後、いつでも冷却反応/反応器由来の炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液と接触させられる。
【0133】
したがって、一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、その水溶液が、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の形成に都合が良い1つまたは複数の沈殿条件に付される前に、CO
2(および
図2の場合にはNH
3または
図3の場合には第2の水溶液)と接触させられる。一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、その水溶液が、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の形成に都合が良い1つまたは複数の沈殿条件に付されている間に、CO
2(および
図2の場合にはNH
3または
図3の場合には第2の水溶液)と接触させられる。一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、その水溶液が、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の形成に都合が良い1つまたは複数の沈殿条件に付される前および付されている間に、CO
2(および
図2の場合にはNH
3または
図3の場合には第2の水溶液)と接触させられる。一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、その水溶液が、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の形成に都合が良い1つまたは複数の沈殿条件に付された後に、CO
2(および
図2の場合にはNH
3または
図3の場合には第2の水溶液)と接触させられる。
【0134】
一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、二酸化炭素および必要に応じてアンモニアまたは第2の水溶液と接触させるステップは、本明細書に記載される好都合なプロトコール(沈殿条件)を使用して、所望のpH範囲、所望の温度範囲、および/または所望の二価のカチオン濃度を達成し、維持するように第1の水溶液を接触させることによって達成される。一部の実施形態では、本システムは、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、二酸化炭素および必要に応じてプロセスのステップA由来のアンモニアと接触させるように構成された沈殿反応器を含み、または本システムは、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、(必要に応じてカルバミン酸アンモニウム)、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液と接触させるように構成された沈殿反応器を含む。
【0135】
一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液は、沈殿反応器内に入れることができ、ここで、添加されるカルシウム塩を含む第1の水溶液の量は、そのpHを、所望のレベル(例えば、沈殿物質の沈殿を誘発するpH)、例えばpH7~9、pH7~8.7、pH7~8.5、pH7~8、pH7.5~8、pH8~8.5、pH8.5~9、pH9~14、pH10~14、pH11~14、pH12~14、またはpH13~14に上昇させるのに十分な量である。一部の実施形態では、カルシウム塩を含む第1の水溶液のpHは、二酸化炭素および必要に応じてNH3または第2の水溶液と接触させられる場合、安定なバテライト、反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質を形成するために、7~9の間または7~8.7の間または7~8.5の間または7.5~8.5の間または7~8の間、または7.6~8.5の間、または8~8.5の間、または7.5~9.5の間に維持される。
【0136】
一部の実施形態では、第1の水溶液は、カラムまたは床に固定される(沈殿反応器の立体配置の例)。このような実施形態では、水は、水のpHを所望のpHまたは特定の二価のカチオン(Ca2+)濃度に上昇させるのに十分な量のカルシウム塩溶液を介して、またはその上に通過させられる。一部の実施形態では、第1の水溶液は、1回より多く循環させられてもよく、ここで第1の沈殿サイクルは、主に炭酸カルシウム鉱物を除去し、アルカリ溶液を残し、その溶液にカルシウム塩を含む追加の第1の水溶液が添加され得る。二酸化炭素および必要に応じてNH3を含むガスストリーム、または第2の水溶液は、水溶液の再循環溶液と接触させられると、さらなる炭酸カルシウムおよび/または炭酸水素塩化合物の沈殿を可能にする。これらの実施形態では、第1の沈殿サイクル後の水溶液は、カルシウム塩を含む第1の水溶液が添加される前、その間、および/またはその後に、CO2および必要に応じてNH3を含むガスストリームと(または第2の水溶液と)接触させられ得ることを認識されよう。これらの実施形態では、水は再循環させることができ、または新しく導入することができる。したがって、CO2および必要に応じてNH3を含むガスストリーム、およびカルシウム塩を含む第1の水溶液の添加順は、変わり得る。例えば、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、例えばブライン、海水、または淡水に添加した後に、CO2および必要に応じてNH3を含むガスストリーム、または第2の水溶液を添加することができる。別の例では、CO2および必要に応じてNH3を含むガスストリーム、または第2の水溶液を、例えばブライン、海水、または淡水に添加した後に、カルシウム塩を含む第1の水溶液を添加することができる。別の例では、CO2および必要に応じてNH3を含むガスストリーム、または第2の水溶液は、カルシウム塩を含む第1の水溶液に直接添加することができる。
【0137】
カルシウム塩を含む第1の水溶液は、任意の便利なプロトコールを使用してCO2および必要に応じてNH3を含むガスストリームと接触させることができる。目的の接触プロトコールには、限定されるものではないが、直接接触プロトコール(例えば、第1の水溶液を介するガスの発泡)、同時接触手段(すなわち、一方向流の気相ストリームと液相ストリームの接触)、向流手段(すなわち、逆流の気相ストリームと液相ストリームの接触)などが含まれる。したがって、接触は、沈殿反応器内で注入器、バブラー、流体ベンチュリ反応器、スパージャー、ガスフィルター、スプレー、トレイ、または充填カラム反応器などを使用することによって達成され得る。一部の実施形態では、ガスと液体の接触は、フラットジェットノズルを用いて溶液の液膜を形成することによって達成され、ここでガスおよび液膜は、向流、並流もしくは逆流方向で、または任意の他の適切な方式で移動する。一部の実施形態では、ガスと液体の接触は、平均直径500マイクロメートルまたはそれ未満、例えば100マイクロメートルまたはそれ未満を有する溶液の液滴を、ガス供給源と接触させることによって達成される。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書の図に例示されるプロセスのステップAによって生成された、実質的に(例えば、80%もしくはそれを超える、または90%または99.9%または100%)すべてのCO2ガス(焼成由来)および必要に応じてNH3廃棄物ストリームが、沈殿物質の沈殿に用いられる。一部の実施形態では、CO2ガスおよび必要に応じてNH3廃棄物ストリームの一部が、沈殿物質の沈殿に用いられ、廃ガスストリームの75%またはそれ未満、例えば50%およびそれ未満を含めた60%またはそれ未満であり得る。
【0139】
本明細書に記載されるガスと液体の接触プロトコールは、何回利用してもよい。ガスと液体の接触または液体と液体の接触は、沈殿反応混合物のpHが最適になるまで継続され(例えば、反応性バテライトを含む沈殿物質を形成するのに最適な様々なpH値が、本明細書に記載されている)、その後、沈殿反応混合物を撹拌することができる。pHが低下する速度は、ガスと液体の接触または液体と液体の接触中に、カルシウム塩を含む第1の水溶液をさらに添加することによって制御することができる。さらに、追加の第1の水溶液は、沈殿物質の一部またはすべてを沈殿させるための塩基性レベルにpHを上昇させて戻すようにスパージした後に、添加することができる。いずれの場合も、沈殿物質は、沈殿反応混合物中のある特定の種からプロトンを除去する際に、形成され得る。次に、炭酸塩を含む沈殿物質は、分離され、必要に応じてさらに処理され得る。
【0140】
pHが低下する速度は、ガスと液体の接触または液体と液体の接触中に、追加の上清、またはカルシウム塩を含む第1の水溶液を添加することによって制御することができる。さらに、追加の上清、またはカルシウム塩を含む第1の水溶液は、沈殿物質の一部またはすべてを沈殿させるための塩基性レベル(例えば、7~9の間または7~8.5の間または7~8の間または8~9の間)にpHを上昇させて戻すようにガスと液体または液体と液体を接触させた後に、添加することができる。
【0141】
本明細書で提供される方法およびシステムにおいて、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、CO
2および必要に応じてNH
3を含むガスストリームと接触させることによって生成された水溶液、またはカルシウム塩を含む第1の水溶液を、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、(必要に応じてカルバミン酸アンモニウム)もしくはそれらの組合せを含む第2の水溶液と接触させることによって生成された水溶液は、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質、および上清(すなわち、沈殿物質の沈殿後に残る溶液の一部)を生成するのに十分な沈殿条件の1つまたは複数に付される(
図1~3のステップC)。1つまたは複数の沈殿条件は、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の生成にとって都合が良い。
【0142】
1つまたは複数の沈殿条件には、沈殿反応混合物の環境をモジュレートして、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む所望の沈殿物質を生成する条件が含まれる。本明細書に記載される方法およびシステムの態様および実施形態において使用することができる、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含有する沈殿物質を形成するのに適したこのような1つまたは複数の沈殿条件には、限定されるものではないが、温度、pH、圧力、イオン比、沈殿速度、添加物の存在、イオン種の存在、添加物およびイオン種の濃度、撹拌、滞留時間、混合速度、超音波などのかき混ぜ形態、種結晶、触媒、膜または下地の存在、脱水、乾燥、ボールミル粉砕などが含まれる。一部の実施形態では、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCの平均粒径もまた、沈殿物質の沈殿において使用される1つまたは複数の沈殿条件に応じて変わり得る。一部の実施形態では、沈殿物質における安定なまたは反応性バテライトのパーセンテージもまた、沈殿プロセスで使用される1つまたは複数の沈殿条件に応じて変わり得る。
【0143】
例えば、沈殿反応の温度は、所望の沈殿物質の沈殿に適した量が得られる温度に上昇させることができる。このような実施形態では、沈殿反応の温度は、20℃~60℃などの、25℃~60℃、または30℃~60℃、または35℃~60℃、または40℃~60℃、または50℃~60℃、または25℃~50℃、または30℃~50℃、または35℃~50℃、または40℃~50℃、または25℃~40℃、または30℃~40℃、または25℃~30℃を含めた値に上昇させることができる。一部の実施形態では、沈殿反応の温度は、低二酸化炭素またはゼロ二酸化炭素排出源から生じるエネルギー(例えば、太陽エネルギー源、風力エネルギー源、水力発電エネルギー源、炭素排出物の排煙から得られる廃熱など)を使用して上昇させられる。
【0144】
沈殿反応のpHもまた、所望の沈殿物質の沈殿に適した量に上昇させることができる。このような実施形態では、沈殿反応のpHは、沈殿に合ったアルカリ性レベルに上昇させることができる。一部の実施形態では、二酸化炭素ガスおよび必要に応じてNH3ガスを含むガスストリームと(または第2の水溶液と)接触させられるカルシウム塩を含む第1の水溶液のpHは、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCの形成に対して効果を有する。一部の実施形態では、沈殿物質を形成するために必要な沈殿条件には、沈殿物質を形成するために、7よりも高いpHすなわちpH8、またはpH7.1~8.5の間もしくはpH7.5~8の間もしくは7.5~8.5の間もしくは8~8.5の間もしくは8~9の間もしくは7.6~8.4の間のカルシウム塩を含む第1の水溶液を用いて、二酸化炭素ガスおよび必要に応じてNH3ガスを含むガスストリーム(または第2の水溶液)を沈殿させるステップを実施することが含まれる。pHは、pH11もしくはそれよりも高いpH、またはpH12.5もしくはそれよりも高いpHを含めた、pH9またはそれよりも高いpH、例えばpH10またはそれよりも高いpHに上昇させることができる。
【0145】
沈殿中の主なイオン比の調整は、沈殿物質の性質に対して影響を及ぼし得る。主なイオン比は、多形形成に対してかなりの影響を有することができる。例えば、水中のマグネシウム:カルシウム比が増大すると、アラゴナイトは、低マグネシウムバテライトを上回って、沈殿物質における炭酸カルシウムの主な多形になり得る。低マグネシウム:カルシウム比では、低マグネシウム方解石が、主な多形になり得る。一部の実施形態では、Ca2+およびMg2+が共に存在する場合、沈殿物質におけるMg2+に対するCa2+の比(すなわち、Ca2+:Mg2+)は、1:1~1:2.5、1:2.5~1:5、1:5~1:10、1:10~1:25、1:25~1:50、1:50~1:100、1:100~1:150、1:150~1:200、1:200~1:250、1:250~1:500、または1:500~1:1000である。一部の実施形態では、沈殿物質におけるCa2+に対するMg2+の比(すなわち、Mg2+:Ca2+)は、1:1~1:2.5、1:2.5~1:5、1:5~1:10、1:10~1:25、1:25~1:50、1:50~1:100、1:100~1:150、1:150~1:200、1:200~1:250、1:250~1:500、または1:500~1:1000である。
【0146】
沈殿速度も、沈殿物質の形成に対して効果を有することができ、最も急速な沈殿速度は、溶液に所望の相を播種することによって達成される。播種しない場合、急速な沈殿は、沈殿反応混合物のpHを急速に上昇させることによって達成することができ、それによってより非晶質の構成物がもたらされ得る。pHが高いほど急速に沈殿し、それによってより非晶質の沈殿物質がもたらされ得る。
【0147】
第1の水溶液を二酸化炭素ガスおよび必要に応じてNH3ガスを含むガスストリームと(または第2の水溶液と)接触させた後の沈殿反応の滞留時間も、沈殿物質の形成に対して効果を有することができる。例えば、一部の実施形態では、より長い滞留時間により、反応混合物において反応性バテライトからアラゴナイト/方解石への変換が生じ得る。一部の実施形態では、滞留時間が短すぎると、反応混合物における反応性バテライトの形成が不完全になり得る。したがって、滞留時間は、反応性バテライトの沈殿にとって非常に重要となり得る。さらに、滞留時間は、沈殿物の粒径にも影響を及ぼし得る。例えば、滞留時間が長すぎると、粒子が凝集して大きいサイズの粒子を形成することがあり、これはPCC形成にとって望ましくない。したがって、一部の実施形態では、反応滞留時間は、約5~60分の間、または約5~15分の間、または約10~60分の間、または約15~60分の間、または約15~45分の間、または約15~30分の間、または約30~60分の間である。
【0148】
一部の実施形態では、沈殿反応から所望の沈殿物質を生成するための1つまたは複数の沈殿条件には、前述の通り、温度およびpH、ならびにある場合には、水中の添加剤およびイオン種の濃度が含まれ得る。添加剤は、本明細書で以下に記載されている。添加剤の存在および添加剤の濃度も、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCの形成にとって都合が良い場合がある。一部の実施形態では、PCCを形成するために、中鎖または長鎖脂肪酸エステルを、沈殿中に第1の水溶液に添加することができる。脂肪酸エステルの例として、限定されるものではないが、セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムもしくはクエン酸カリウム、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸ナトリウムもしくはステアリン酸カリウム、リン酸塩、例えばリン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸エステル、EDTA、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、PCCを形成するために、ステアリン酸エステルおよびクエン酸エステルの組合せを、プロセスの沈殿ステップ中に添加することができる。
【0149】
1つまたは複数の沈殿条件には、混合速度、超音波などのかき混ぜ形態、および種結晶、触媒、膜または下地の存在などの因子も含まれ得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の沈殿条件には、過飽和条件、温度、pHおよび/もしくは濃度勾配、またはこれらのパラメータのいずれかの循環もしくは変化が挙げられる。沈殿物質を調製するために用いられるプロトコールは、バッチ、半バッチ、または連続プロトコールであり得る。連続流システムにおいて沈殿材料を生成するための1つまたは複数の沈殿条件は、半バッチまたはバッチシステムと比較して異なる場合がある。
【0150】
本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態では、安定なまたは反応性バテライトを含む沈殿物質の形成は、骨材の表面上で促進され得る。水溶液が、1つまたは複数の沈殿条件下で、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、CO
2および必要に応じてNH
3を含むガスストリームと接触させることによって生成されるか(
図1~3のステップC)、または水溶液が、カルシウム塩を含む第1の水溶液を、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、(必要に応じてカルバミン酸アンモニウム)もしくはそれらの組合せを含む第2の水溶液と接触させることによって生成される、本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施形態では、本方法およびシステムは、骨材を水溶液に添加し、骨材の表面上に、安定なまたは反応性バテライトを含む沈殿物質を形成するステップをさらに含む。
【0151】
用語「骨材」には、本明細書で使用される場合、コンクリート、モルタルおよび他の材料、例えば、路盤、アスファルト、および他の構造において使用される微粒子組成物が含まれ、骨材は、このような構造において使用するのに適している。骨材は、一部の実施形態では、細骨材または粗骨材として分類され得る微粒子組成物である。細骨材には、一般に、天然の砂または破砕された石が含まれ、ほとんどの粒子が3/8インチのふるいを通過する。粗骨材は、一般に、0.19インチを超える任意の粒子であるが、一般に3/8~1.5インチの間の範囲の直径である。砂利は、コンクリートにおいて使用される粗骨材を構成することができ、破砕された石が残りを補う。一部の実施形態では、骨材は、破砕された石灰岩である。一部の実施形態では、骨材は、別の目的で使用されるか、または再使用されるコンクリートである。本明細書で提供される方法およびシステムは、古いプロジェクトから別の目的で使用されるコンクリートに、再利用可能性または価値を付加する(より良好な結合特徴を有することによって)。
【0152】
前述の方法およびシステムでは、骨材が沈殿ステップCに添加される場合、沈殿物質は、骨材の表面を取り囲む外層を形成し、それによって、不活性骨材材料の表面を活性化する。水(本明細書で以下に説明される、バテライトからアラゴナイトへの溶解再沈殿プロセス)およびセメントと接触させられることになる、骨材(反応性バテライトを含む)の活性化されたこの表面は、バテライトから、セメントに結合するアラゴナイトに変換する。こうして活性化された骨材は、セメントにより良好に結合する。
【0153】
したがって、一部の実施形態では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、
(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下で塩基水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、
(iii)骨材を第1の水溶液に添加するステップと、
(iv)カルシウム塩を含む第1の水溶液および骨材を、1つまたは複数の沈殿条件下で、二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームで処理して、骨材の表面上に、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質を形成するステップと
を含む方法が提供される。
【0154】
一部の実施形態では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するための方法であって、
(i)石灰石を焼成して、石灰、および二酸化炭素を含むガスストリームを形成するステップと、
(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するステップと、
(iii)二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームを回収し、ガスストリームを1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるステップと、
(iv)骨材を第1の水溶液に添加するステップと、
(v)カルシウム塩を含む第1の水溶液および骨材を、1つまたは複数の沈殿条件下で、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、骨材の表面上に、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質を形成するステップと
を含む、方法が提供される。
【0155】
前述の実施形態の一部の実施形態では、第2の水溶液は、カルバミン酸アンモニウムをさらに含む。炭酸カルシウムを含む沈殿物質が、骨材の表面上に形成される一方、一部の沈殿物質は水溶液中で形成されることがあり、その沈殿物質は、活性化された骨材と共に上清溶液から分離されることを理解されたい。一部の実施形態では、沈殿反応器におけるカルシウム塩を含む第1の水溶液の量は、骨材の表面上の反応性バテライトを選択的に沈殿させるか、または水溶液中で沈殿物質を選択的に沈殿させるか、またはその両方のために最適化され得る。前述の方法およびシステムでは、炭酸カルシウムを含む沈殿物質は、反応性バテライトを含む。前述の方法およびシステムでは、骨材は、細骨材または粗骨材であり得る。前述の方法およびシステムの一部の実施形態では、骨材は、プロセスのステップ(i)で使用されるものと同じ石灰石であるか、またはステップ(i)の石灰石の破砕された形態であってもよい。
【0156】
一部の実施形態では、沈殿反応器を出たガス(
図1~3に「スクラビングされたガス」として示される)は、スクラビングプロセスのためにガス処理ユニットに向かう。ガス処理ユニットのための質量平衡および装置設計は、ガスの特性に応じて変わり得る。一部の実施形態では、ガス処理ユニットは、CO
2吸収、沈殿ステップからガスにより運ばれ得る排ガスストリーム中の少量のNH
3を回収するために、HClスクラバーを組み込むことができる。NH
3は、HCl溶液によって、
NH
3(ガス)+HCl(水溶液) → NH
4Cl(水溶液)
を介して捕捉され得る。
【0157】
HClスクラバー由来のNH4Cl(水溶液)は、溶解ステップAに再循環させることができる。
【0158】
一部の実施形態では、アンモニアを含む排ガスストリーム(
図1~3に「スクラビングされたガス」と示される)は、スクラビングプロセスに付すことができ、ここで、アンモニアを含む排ガスストリームは、アンモニア溶液を生成するために工業プロセス由来の二酸化炭素および水でスクラビングされる。スクラバーへの流入物は、二酸化炭素(CO
2(ガス))、アンモニア(NH
3(ガス))を含有する反応器の廃ガス、および新しい補給水(または何らかの他の希釈用水ストリーム)であり得る。流出物は、スクラバーの再循環流体(例えばH
3N-CO
2(水溶液)またはカルバメート)のスリップストリームであり得、それらは、必要に応じて二酸化炭素および沈殿物と接触させるために、主要反応器に戻され得る。システムのpHは、スクラバーへのCO
2(ガス)の流速を調節することによって制御することができる。システムの伝導率は、スクラバーに希釈用補給水を添加することによって制御することができる。体積は、スクラバーまたはそのリザーバーのレベル検出器を使用することによって一定に維持することができる。アンモニアは塩基性ガスであり、一方、二酸化炭素ガスは酸性ガスである。一部の実施形態では、酸性ガスおよび塩基性ガスは、それらの溶解度を増大するように互いにイオン化することができる。
【0159】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、以下の反応
NH3(水溶液)+CO2(水溶液)+H2O → HCO3
-+NH4
+
が、スクラバー内で生じ得ることが意図される。
【0160】
カルシウム塩を含む第1の水溶液は、1つまたは複数の沈殿条件下で、CO2ガスおよび必要に応じてNH3ガスを含むガスストリームと(または第2の水溶液と)接触させられると、炭酸カルシウムの沈殿を生じる。このプロセスにおいて安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを形成する1つまたは複数の沈殿条件は、本明細書で以下に記載されている。
【0161】
一部の実施形態では、沈殿物質は、安定なバテライトおよび/もしくは反応性バテライトまたはPCCを含む。「安定なバテライト」またはその文法的等価物は、本明細書で使用される場合、水中での溶解再沈殿プロセス中および/またはその後に、アラゴナイトまたは方解石に変換しないバテライトを含む。「反応性バテライト」または「活性化されたバテライト」またはその文法的等価物は、本明細書で使用される場合、水中での溶解再沈殿プロセス中および/またはその後に、アラゴナイトを形成するバテライトを含む。「軽質炭酸カルシウム」または「PCC」には、本明細書で使用される場合、高純度の、ミクロンまたはそれ未満のサイズの粒子を有する従来のPCCが含まれる。PCCは、限定されるものではないが、バテライト、アラゴナイト、方解石、またはそれらの組合せを含めた、いかなる多形形態の炭酸カルシウムであってもよい。一部の実施形態では、PCCは、ナノメートルまたは0.001~5ミクロンの間の粒径を有する。
【0162】
一部の実施形態では、沈殿物質におけるかつ/または骨材の表面上のバテライトは、バテライトが、水中での溶解沈殿プロセス時(セメント化中)に反応性であり、アラゴナイトに変換するように、適切な条件下で形成され得る。アラゴナイトは、限定されるものではないが、高い圧縮強度、複雑な微細網目構造、中性pHなどを含めた、1つまたは複数の独特の特徴を製品に付与し得る。一部の実施形態では、沈殿物質におけるバテライトは、バテライトが安定であり、様々な適用においてフィラーとして使用されるように、適切な条件下で形成され得る。一部の実施形態では、沈殿物質におけるPCCは、PCCが高度に純粋であり、非常に小さいサイズの粒子を有するように、適切な条件下で形成され得る。
【0163】
反応性バテライトを含む沈殿物質(本明細書に記載される固体を必要に応じて含む)は、アラゴナイトに変換し、凝結し、セメント製品(
図1~3に生成物(A)として示される)に硬化し、その固体は、セメント製品に組み込まれ得る。これは、固体を除去するステップが1つ減り、塩基の喪失、例えばNH
4Cl喪失を最小限に抑え、潜在的な廃棄物ストリームを排除し、それによって効率を増大し、そのプロセスの経済的側面を改善するという追加の利点を提供する。一部の実施形態では、固体不純物は、バテライトからアラゴナイトへの変換および/または反応性に有害な影響を及ぼさない。一部の実施形態では、固体不純物は、セメント製品の強度(例えば、圧縮強度または曲げ強度)に有害な影響を及ぼさない。
【0164】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法およびシステムは、脱水によって水溶液から沈殿物質を分離して(
図1~3のステップD)、炭酸カルシウムケーキを形成するステップをさらに含む(
図1~3に示される通り)。炭酸カルシウムケーキは、必要に応じてすすぎ、および必要に応じて乾燥に付され得る(
図1~3のステップE)。次に、乾燥させた沈殿物質または乾燥させた炭酸カルシウムケーキを使用して、セメント製品または非セメント製品を作製することができる(
図1~3の生成物(B)に示される)。一部の実施形態では、炭酸カルシウムケーキは、アンモニウム(NH
4
+)イオン、硫黄イオン、および/または塩化物(Cl
-)イオンの不純物(例えば、1~2重量%またはそれよりも多い)を含有し得る。炭酸カルシウムケーキのすすぎにより、アンモニウム塩および/または硫黄化合物の一部またはすべてが除去され得ると同時に、希釈濃度のアンモニウム塩(上清における)がもたらされ得、その塩は、プロセスに再循環して戻される前に濃縮する必要がある場合がある。
【0165】
本明細書で提供される方法およびシステムは、沈殿物が形成された後、上清溶液および沈殿物自体に、残留塩基、例えば残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩を残すことができる。残留塩基、例えばN含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩(例えば残留NH
4Cl)には、本明細書で使用される場合、溶液中に存在するアンモニウムイオン、および限定されるものではないが、ハロゲンイオン、例えば塩化物イオン、硝酸イオンまたは亜硝酸イオン、および硫黄イオン、例えば硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、硫化水素イオンなどを含めたアニオンによって形成され得るいかなる塩も含まれる。一部の実施形態では、残留N含有無機塩は、ハロゲン化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、またはそれらの組合せを含む。上清溶液および沈殿物から残留塩を除去し、必要に応じて回収するための様々な方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩(例えば残留NH
4Cl)をさらに含む上清溶液は、石灰の溶解のための溶解反応器に(
図1~3のステップAに)再循環させられる。
【0166】
脱水およびすすぎストリームから得られた残留塩基溶液、例えばN含有無機塩溶液またはN含有有機塩溶液、例えば残留アンモニウム塩溶液(例えば残留NH4Cl)は、必要に応じて濃縮された後、石灰の溶解のために再循環して戻すことができる。さらなる塩基、例えば塩化アンモニウムおよび/またはアンモニア(無水または水溶液)などは、プロセス中に、塩化アンモニウムの喪失を補うために、再循環させられた溶液に添加され、塩化アンモニウムの濃度を最適レベルにすることができる。
【0167】
一部の実施形態では、残留N含有無機またはN含有有機塩溶液、例えば残留アンモニウム塩溶液(例えば残留NH
4Cl)は、
図1~3に示される通り、上清水溶液から回収され、回収プロセス、例えば限定されるものではないが、熱分解、pH調整、逆浸透、多段フラッシュ、多重効用蒸留、蒸気再圧縮、蒸留、またはそれらの組合せを使用して濃縮され得る。これらのプロセスを行うように構成されたシステムは、商業的に入手可能である。例えば、溶液のpHを上昇させることができる(例えばNaOHのような強塩基を用いる)。これにより、揮発性アンモニアの方に平衡(NH
3(水溶液)/NH
3(ガス))をシフトすることができる。除去速度および全除去率は、共に、溶液を加熱することによって改善することができた。
【0168】
一部の実施形態では、残留N含有無機またはN含有有機塩溶液、例えば残留アンモニウム塩溶液(例えば残留NH
4Cl)は、熱分解プロセスによって沈殿物から分離され、回収され得る。このプロセスは、CaCO
3沈殿物の分離時(ステップD)および/または乾燥させたCaCO
3沈殿物もしくは粉末のステップ(ステップE)後、
図1~3に示されるプロセスに組み込まれ得る。
【0169】
典型的に、固体NH4Clは、338℃でアンモニア(NH3)ガスおよび塩化水素(HCl)ガスに分解することができる。一方、固体CaCO3は、840℃で酸化カルシウム(CaO)固体および二酸化炭素(CO2)ガスに分解する。
NH4Cl(固体) ←→ NH3(ガス)+HCl(ガス)
CaCO3(固体) ←→ CaO(固体)+CO2(ガス)
【0170】
一部の実施形態では、CaCO3沈殿物および/または乾燥CaCO3沈殿物における残留アンモニウム塩、例えば限定されるものではないが、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、またはそれらの組合せは、338~840℃の間の温度で熱分解することによって除去することができる。これは、通常の濾過ケーキの乾燥プロセス中、および/または第2の乾燥後熱処理として、行うことができる。沈殿物における残留アンモニウム塩を分解すると同時に、沈殿物質における反応性バテライトのセメント特性を保存し、したがって反応性バテライトが、加熱後に反応性バテライトとして残留し、水と合わされた後にアラゴナイトに首尾よく変換してセメント製品を形成する、温度範囲が望ましい。
【0171】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、沈殿物質から残留N含有無機またはN含有有機塩、例えばアンモニウム塩などを除去し、必要に応じて回収するステップは、沈殿物質を、約290~375℃の間または約300~360℃の間または約300~350℃の間または約310~345℃の間または約320~345℃の間または約330~345℃の間または約300~345℃の間で加熱して、沈殿物質から残留N含有無機またはN含有有機塩を蒸発させ、必要に応じて残留N含有無機またはN含有有機塩を凝縮させることによって回収することを含む。
【0172】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、沈殿物質から残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩などを除去し、必要に応じて回収するステップは、沈殿物質を、約10分を超えるもしくは約15分を超えるもしくは約5分を超える期間、または約10分~約1時間の間もしくは約10分~約1.5時間の間もしくは約10分~約2時間の間もしくは約10分~約5時間の間もしくは約10分~約10時間の間の期間にわたって加熱することを含む。
【0173】
一部の実施形態では、沈殿物質を脱水し(上清水溶液を除去するため)、乾燥させて水を除去した(例えば約100℃またはそれを上回って加熱することによって)後、沈殿物質を前述の加熱ステップに付して、残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩を除去し、必要に応じて回収する。一部の実施形態では、沈殿物質を部分的に脱水し(上清水溶液のバルクを除去するため)、部分的に乾燥させて水を除去した(または乾燥ステップを回避した)後、沈殿物質を加熱ステップに付して、残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩を除去し、必要に応じて回収する。一部の実施形態では、沈殿物質における反応性バテライトは、加熱後に反応性バテライトとして残留する。前述の実施形態の一部の実施形態では、沈殿物質における反応性バテライトが反応性バテライトとして残留し、したがって材料のセメント特性が保存されることが望ましい。一部の実施形態では、アンモニウム塩は、アンモニアガス、塩化水素ガス、塩素ガス、またはそれらの組合せを含む形態で、沈殿物質から蒸発する。出願人らは、一部の実施形態において、加熱温度および加熱期間の量の組合せを維持することが、沈殿物質からアンモニウム塩を除去すると同時に、反応性バテライト材料のセメント特性を保存するのに非常に重要となり得ることを見出した。従来、反応性バテライトは、非常に不安定であり、アラゴナイト/方解石に容易に変換する。しかし出願人らは、反応性バテライトの変換を最小限に抑える加熱期間と必要に応じて組み合わせることによって、材料から残留アンモニウム塩が除去される温度範囲を見出した。前述の実施形態の一部の実施形態では、残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩の除去後、沈殿物質におけるバテライトは、反応性バテライトとして残留し、それが水と合わされるとアラゴナイトに変換し(溶解再沈殿プロセス)、それが凝結し、セメント化して、セメント製品を形成する。こうして形成されたセメント製品は、塩化物含量が最小限であるか、または塩化物含量を全く有しておらず、アンモニアまたは硫黄の悪臭が全くない。一部の実施形態では、塩化物含量は、ほぼ、セメント製品について許容されるASTM基準値であるか、またはそれ未満である。
【0174】
一部の実施形態では、加熱期間と必要に応じて組み合わされた、先に記載される温度条件は、残留N含有無機またはN含有有機塩、例えば残留アンモニウム塩の分解の熱力学を改善するための駆動力を提供する圧力条件と組み合わせることができる。例えば、沈殿物質の加熱は、ヘッドスペースが大気圧よりも低い圧力であるシステムで行うことができる。大気圧よりも低い圧力は、気相中の反応物の分圧を低減することによって、気相生成物(例えば限定されるものではないが、アンモニアガス、塩化水素ガス、塩素ガス、またはそれらの組合せ)を伴う加熱反応のための駆動力を生じることができる。減圧下または真空下で操作することの別の利点は、より低い圧力では、一部の昇華反応がより低温で生じ、それによって加熱反応のエネルギー必要量を改善できるということである。
【0175】
前述の熱分解プロセスの一部の実施形態では、アンモニアガスおよびHClガスの形態の分離された塩化アンモニウムは、熱的に発生したガスの組合せを再結晶させるか、またはガスを水性媒体に吸収させることによって、再使用のために回収することができる。それらの機序は、共に、
図1~3に示されるプロセスで再使用するために十分に濃縮され得るNH
4Cl生成物をもたらすことができる。
【0176】
一部の実施形態では、アンモニウム塩は、前述のプロセスにおいて、アンモニウム塩からpHを調整してNH
3ガスを発生させることによって、分離し、回収することができる。このプロセスは、CaCO
3ケーキの分離時に、
図1~3に示されるプロセスに組み込むことができる。濾過ケーキにおける水の最終pHは、典型的に約7.5であり得る。このpHでは、NH
4
+(pKa=9.25)は、主な種となり得る。この水のpHを上昇させると、以下の等式に記載される酸塩基平衡をNH
3ガスの方に駆動することができる。
NH
4
+ ←→ H
++NH
3(ガス)
【0177】
いかなるアルカリ性供給源も、濾過ケーキ水のpHを上昇させるために使用することができる。一部の実施形態では、酸化カルシウムおよび/もしくは水酸化カルシウムの水溶液または石灰スラリーは、高いアルカリ性供給源を提供することができる。一部の実施形態では、石灰の水性画分は、脱水プロセスのすすぎ段階(例えば濾過ケーキのステップ)に統合して、システムのpHを上昇させ、NH
3ガスの発生を駆動することができる。アンモニアは、水にかなり溶解するので、熱および/または真空圧を適用して、ガス相の方に平衡をさらに駆動することができる。アンモニアは、アンモニアを塩化物で再結晶させることによって、またはアンモニアを水性媒体に吸収させることによって、再使用のために回収することができる。それらの機序は、共に、
図1~3に示されるプロセスで再使用するために十分に濃縮され得るアンモニア溶液またはNH
4Cl生成物をもたらすことができる。
【0178】
炭酸カルシウムケーキ(例えばバテライトまたはPCC)は、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含有する炭酸カルシウム粉末を形成するために、乾燥機に送ることができる(
図1のステップE)。安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の粉末形態は、本明細書に記載される通り、生成物を形成するための適用において、さらに使用することができる。ケーキは、当技術分野で公知の任意の乾燥技術、例えば限定されるものではないが、流動床乾燥機またはスワールフルイダイザー(swirl fluidizer)を使用して乾燥させることができる。次に、生じた固体粉末を、添加剤と混合して、本明細書に記載される様々な生成物を作製することができる。一部の実施形態では、減少した水を含むスラリー形態または沈殿物質のケーキ形態は、本明細書に記載される通り、建築パネルなどの製品を形成するために直接使用される。
【0179】
必要に応じて、分離された固体は、乾燥させ、ポゾランとして使用することができる。一部の実施形態では、分離された固体は、フィラーまたは補助セメント材料として、バテライトを含む沈殿物質の粉末形態に添加することができる。
【0180】
本明細書で提供されるシステムにおいて、分離または脱水ステップDは、分離ステーションで行われ得る。沈殿物質は、沈殿後かつ分離前に、一定期間にわたって上清に保存され得る。例えば、沈殿物質は、上清に、数分から数時間、1~1000日またはそれよりも長期間、例えば1~10日またはそれよりも長期間の範囲の期間にわたって、1℃~40℃、例えば20℃~25℃の範囲の温度で保存され得る。沈殿反応混合物からの沈殿物質の分離または脱水は、排水(例えば、沈殿物質の重力沈降の後に排水)、デカンテーション、濾過(例えば、重力濾過、真空濾過、強制空気を使用する濾過)、遠心分離、加圧、またはそれらの任意の組合せを含めた、いくつかの便利な手法のいずれかを使用して達成され得る。沈殿物質からのバルク水の分離により、沈殿物質の湿潤ケーキ、すなわち脱水された沈殿物質が生成される。液体-固体分離装置、例えばEpuramat製のExtrem-Separator(「ExSep」)液体-固体分離装置、Xerox PARC製のスパイラル選鉱機、またはEpuramat製のExSepもしくはXerox PARC製のスパイラル選鉱機のいずれかの改変装置は、沈殿反応から沈殿物質を分離するのに有用となり得る。
【0181】
一部の実施形態では、生じた脱水された沈殿物質、例えば湿潤ケーキ材料(N含有塩を例えば熱的に除去した後)は、本明細書に記載される生成物(A)を生成するために直接使用され得る。例えば、脱水された沈殿物質の湿潤ケーキは、本明細書に記載される1種または複数種の添加剤と混合され、コンベヤベルト上に広げられ、そこで沈殿物質における反応性バテライトまたはPCCは、アラゴナイトに変換し、凝結し、硬化する(アンモニウム塩は、熱的に除去される)。次に、硬化した材料は、所望の形状、例えば本明細書に記載されるボードまたはパネルに切断される。一部の実施形態では、湿潤ケーキは、コンベヤベルトの最上部の紙シート上に注がれる。もう1枚の紙を、湿潤ケーキ上に置くことができ、次にそれを圧縮すると、過剰の水が除去される。沈殿物質が凝結し、硬化した後(バテライトからアラゴナイトの変換)、材料は、所望の形状、例えばセメント羽目板および乾式壁などに切断される。一部の実施形態では、1種または複数種の添加剤の量は、バテライトからアラゴナイトへの変換に必要な所望の時間(以下に記載される)に応じて最適化され得る。例えば、一部の適用では、材料が急速に変換することが望ましい場合があり、ある特定の他の場合には、緩慢な変換が望ましい場合がある。一部の実施形態では、湿潤ケーキは、バテライトからアラゴナイトへの変換を速めるために、コンベヤベルト上で加熱され得る。一部の実施形態では、湿潤ケーキは、所望の形状の型に注ぐことができ、次にバテライトからアラゴナイトへの変換を速めるため(および残留塩を除去するため)に、その型は、オートクレーブ内で加熱される。したがって、連続流プロセス、バッチプロセスまたは半バッチプロセスはすべて、本発明の範囲に十分に含まれる。
【0182】
一部の実施形態では、バテライトを含む沈殿物質を、沈殿反応から分離したら、淡水で洗浄し、次に濾過圧縮機に入れて、30~60%固体を含む濾過ケーキを生成する。次に、この濾過ケーキを、任意の便利な手段、例えば液圧圧縮機を使用して、例えば5~5000psi、例えば1000~5000psiの範囲の十分な圧力で型の中で機械的に圧縮して、形成された固体、例えば長方形のレンガを生成する。次に、生じたこれらの固体は、例えば屋外に置いて保存すること、高レベルの湿度および熱に付されるチャンバに入れることなどによって、養生させられる。次に、生じたこれらの養生した固体は、建材自体として使用され、または骨材を生成するために破砕される。
【0183】
温度および圧力の使用を伴うプロセスにおいて、脱水された沈殿物ケーキを乾燥させることができる。次に、ケーキは、再給水と高温および/または高圧の組合せに、一定期間にわたって曝露される。添加して戻される水の量、温度、圧力および曝露時間の組合せ、ならびにケーキの厚さは、出発材料の組成および所望の結果に従って変わり得る。
【0184】
材料を温度および圧力に曝露するいくつかの異なるやり方が、本明細書に記載されるが、便利ないかなる方法も使用され得ることを認識されよう。ケーキの厚さおよびサイズは、所望通りに調整され得るが、厚さは、一部の実施形態では、0.05インチ~5インチ、例えば0.1~2インチ、または0.3~1インチで変わり得る。一部の実施形態では、ケーキは、0.5インチ~6フィートまたはそれより厚くてもよい。次に、ケーキは、任意の便利な方法によって、例えばプラテン圧縮機において加熱したプラテンを使用して、所与の時間にわたって高温および/または高圧に曝露される。例えば、プラテンのために温度を上昇させるための熱は、例えば、工業廃ガスストリーム、例えば排煙ストリーム由来の熱によって提供することができる。その温度は、任意の適切な温度であり得るが、一般に、ケーキが厚いほど高い温度が望ましく、温度範囲の例は、40~150℃、例えば60~120℃、例えば70~110℃、または80~100℃である。同様に、圧力は、所望の結果をもたらすのに適したいかなる圧力であってもよく、例示的な圧力として、2000~50,000psi、または2000~25,000psi、または2000~20,000psi、または3000~5000psiを含めた、1000~100,000ポンド毎平方インチ(psi)が挙げられる。最後に、ケーキが圧縮される時間は、任意の適切な時間、例えば1~100秒、または1~100分、または1~50分、または2~25分、または1~10,000日であってよい。次に、生じた硬質平板(tablet)は、必要に応じて、例えば屋外に置いて保存すること、高レベルの湿度および熱に付されるチャンバに入れることなどによって、養生させることができる。次に、必要に応じて養生したこれらの硬質平版は、建材自体として使用され、または骨材を生成するために破砕される。
【0185】
温度および圧力を提供する別の方法は、圧縮機の使用である。適切な圧縮機、例えばプラテン圧縮機を使用して、所望の温度において(例えば排煙によって、または例えば電気化学的方法に由来する、沈殿物を生成するためのプロセスの他のステップによって供給される熱を使用する)、所望の時間にわたって圧力を提供することができる。一組のローラーも、同様に使用することができる。
【0186】
ケーキを高温および高圧に曝露する別のやり方は、押出機、例えばスクリュー型押出機を用いることによるやり方である。押出機のバレルは、高温を達成するために、例えばジャケットを備えることによって装備することができ、この高温は、例えば、排煙などによって供給することができる。圧縮操作の前に、原料を予熱し乾燥させる手段として、押出しを使用することができる。このような圧縮は、圧縮型を用いることによって、ローラーを介して、成形された押込み型(事実上いかなる所望の形状の骨材も提供することができる)を有するローラーを介して、移動するときに圧縮を提供するベルトの間で、または任意の他の便利な方法によって実施することができる。あるいは、押出機を使用して、ダイを介して材料を押し出し、ダイを介して押し出されるときにその材料を圧力に曝露し、任意の所望の形状を与えることができる。一部の実施形態では、炭酸塩沈殿物は、淡水と混合され、次に、回転スクリュー押出機の供給セクション内に置かれる。押出機および/または出口のダイは、そのプロセスをさらに補助するために加熱することができる。スクリューの回転は、その長さに沿って材料を運搬し、ねじ山の高さ(flite)が低くなるにつれて、材料を圧縮する。押出機のスクリューおよびバレルは、バレルにベントをさらに含むことができ、スクリューの減圧帯域は、そのバレルのベント開口と合致している。特に、加熱押出機の場合には、これらのベント付きの領域は、運搬される塊から蒸気を放出させて、材料から水を除去することができる。
【0187】
次に、スクリューにより運搬された材料は、材料をさらに圧縮し成形するダイセクションを介して、押し出される。ダイの典型的な開口は、円形、楕円形、四角形、長方形、台形などであり得るが、最終的な骨材に望まれるいかなる形状も、開口の形状を調整することによって作製することができる。ダイを出る材料は、任意の便利な方法によって、例えばフライングナイフ(fly knife)によって、任意の便利な長さに切断され得る。加熱されたダイセクションの使用は、炭酸塩鉱物から硬質の安定な形態への遷移を加速することによって、生成物の形成をさらに補助することができる。バインダーの場合には、加熱されたダイを使用してバインダーを硬化または凝結させることもできる。加熱されたダイセクションにおいては、一般に100℃~600℃の温度が使用される。
【0188】
さらなる他の実施形態では、沈殿物は、その場または現場形成(form-in-place)構造物の製作のために用いることができる。例えば、道路、舗装領域、または他の構造物は、例えば前述の沈殿物の層を、下地、例えば地面、路床などに適用し、次に、沈殿物を、例えば雨の形態などで自然に適用される水に曝露することによって、または灌水によって水和することによって、沈殿物から製作することができる。水和により、沈殿物は、所望のその場または現場形成構造物、例えば道路、舗装領域などに固化する。そのプロセスは、例えば、その場で形成された構造物のより厚い層が望ましい場合には反復してもよい。
【0189】
一部の実施形態では、沈殿物質および生成物の生成は、同じ施設内で行われる。一部の実施形態では、沈殿物質は、ある施設内で生成され、最終製品を作製するために別の施設に輸送される。沈殿物質は、スラリー形態、湿潤ケーキ形態、または乾燥粉末形態で輸送され得る。
【0190】
一部の実施形態では、分離ステーションから得られた、生じた脱水された沈殿物質は、安定なもしくは反応性バテライトまたはPCCを含む沈殿物質の粉末形態を生成するために、乾燥ステーションで乾燥させられる。乾燥は、沈殿物質を空気乾燥させることによって達成され得る。ある特定の実施形態では、乾燥は、フリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)によって達成され、ここで、沈殿物質は凍結され、周囲圧力は低減され、沈殿物質における凍結水をガスに直接昇華させるのに十分な熱が加えられる。さらに別の実施形態では、沈殿物質は、沈殿物質を乾燥させるために噴霧乾燥させられ、ここで、沈殿物質を含有する液体は、高温ガス(例えば、発電所由来の廃ガスストリーム)を介して供給することによって乾燥させられ、供給液体は、主な乾燥チャンバにアトマイザを介してポンプで送られ、高温ガスは、アトマイザ方向に対して並流または向流として通過する。システムの特定の乾燥プロトコールに応じて、乾燥ステーションは、濾過要素、フリーズドライ構造体、噴霧乾燥構造体などを含み得る。一部の実施形態では、沈殿物は、流動床乾燥機によって乾燥させることができる。ある特定の実施形態では、適切な場合、発電所または類似の操作由来の廃熱を使用して、乾燥ステップを実施することができる。例えば、一部の実施形態では、乾燥生成物は、高温(例えば、発電所の廃熱由来)、圧力、またはそれらの組合せを使用することによって生成される。次に、沈殿物質の乾燥後、その物質を高温で加熱して、本明細書に記載される通り、残留N含有塩、例えば残留アンモニウム塩を除去することができる。
【0191】
沈殿プロセスから生じた上清または沈殿物質のスラリーは、所望通りに処理することもできる。例えば、上清またはスラリーは、第1の水溶液に、または別の場所に戻すことができる。一部の実施形態では、上清は、さらなるCO2を捕捉するために、本明細書に記載される通りCO2および必要に応じてアンモニアガスを含むガスストリームと接触させることができる。例えば、上清が沈殿反応器に戻されるべき実施形態においては、上清は、上清中に存在する炭酸イオンの濃度を増大するのに十分な方式で、CO2および必要に応じてアンモニアガスのガスストリームと接触させることができる。前述の通り、接触は、任意の便利なプロトコールを使用して実施することができる。一部の実施形態では、上清は、アルカリ性pHを有し、CO2ガスとの接触は、pH5~9の間、pH6~8.5の間、またはpH7.5~8.7の間の範囲にpHを低減するのに十分な方式で行われる。
【0192】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法によって生成された沈殿物質は、構築環境においてCO2が有効に捕捉されるように、建材(例えば、ビルディング、道路、橋、ダムなどの一部のタイプの人工構造物のための建築材料)として用いられる。基礎、駐車場構造物、家、オフィスビルディング、商業事務所、政府のビルディング、インフラストラクチャー(例えば、舗道、道路、橋、陸橋、壁、ゲートのための足場、フェンスおよびポールなど)などのいかなる人工構造物も、構築環境の一部とみなされる。モルタルは、建築ブロック(例えば、レンガ)を一緒に結合し、建築ブロックの間の間隙を充填するのに使用される。モルタルは、他の使用の中でも、既存の構造物を修復するため(例えば、元のモルタルが傷付いている、または侵食されている部分を置き換えるため)に使用することもできる。
【0193】
一部の実施形態では、反応性バテライトを含む沈殿物質の粉末形態が、セメントとして用いられ、それがアラゴナイトに変換し(溶解再沈殿プロセス)、水と合わせた後に凝結し、硬化する。一部の実施形態では、骨材の表面上の反応性バテライトを含む沈殿物質は、水と合わせた後にアラゴナイトに変換し(溶解再沈殿プロセス)、共に混合されるセメントに結合する。
【0194】
一部の実施形態では、骨材自体は、生じた沈殿物質から生成される。乾燥プロセスにより、所望のサイズの粒子が生成されるこのような実施形態では、骨材を生成するために必要とされる追加の処理は、あったとしてもほとんどない。さらなる他の実施形態では、所望の骨材を生成するために、沈殿物質のさらなる処理が実施される。例えば、沈殿物質は、沈殿物が固体生成物を形成するのに十分な方式で淡水と合わせることができ、ここで反応性バテライトがアラゴナイトに変換する。湿潤材料の含水量を制御することによって、最終的な骨材の多孔性、ならびに最終的な強度および密度を制御することができる。典型的に、湿潤ケーキは、40~60体積%が水であってよい。より密度が高い骨材については、湿潤ケーキは、<50%が水であってよく、密度がより低いケーキについては、湿潤ケーキは、>50%が水であってよい。次に、硬化後に生じた固体生成物は、機械的に処理され得、例えば破砕されるか、またはその他の方法で破壊され得、所望の特徴、例えばサイズ、特定の形状などの骨材を生成するために分類され得る。これらのプロセスにおいて、凝結および機械的処理ステップは、実質的に連続的に、または時間を隔てて実施され得る。ある特定の実施形態では、大きい体積の沈殿物は、沈殿物が大気に曝露される開放環境で保存することができる。凝結ステップでは、沈殿物は、凝結生成物を生成するために、淡水で便利に灌水することができ、または自然に雨水に付すことができる。次に、凝結生成物は、前述の通り、機械的に処理することができる。沈殿物の生成後に、沈殿物は、所望の骨材を生成するために処理される。一部の実施形態では、沈殿物は、天水の安定化反応を引き起こして沈殿物を硬化させて骨材を形成するために、淡水供給源として雨水を使用することができる屋外に置くことができる。
【0195】
必要に応じて残留塩を除去した後、本明細書の方法およびシステムにおいて形成された沈殿物または沈殿物質は、バテライトまたはPCCを含む。安定なバテライトには、溶解再沈殿プロセス中および/またはその後に、アラゴナイトまたは方解石に変換しないバテライトが含まれる。反応性バテライトまたは活性化されたバテライトには、溶解再沈殿プロセス中および/またはその後に、アラゴナイトを形成するバテライトが含まれる。一部の実施形態では、形成されたPCCは、バテライト形態である。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、沈殿物質(乾燥形態または湿潤形態)を水と接触させ、反応性バテライトをアラゴナイトに変換するステップをさらに含む。一部の実施形態では、安定なバテライトは、水と接触させられても、アラゴナイトに変換せず、バテライト形態のままであるか、または長期間にわたって方解石に変換する。
【0196】
典型的に、炭酸カルシウムが沈殿する際、最初に、非晶質炭酸カルシウム(ACC)が沈殿し得、そのより安定な3つの相(バテライト、アラゴナイト、または方解石)のうちの1つまたは複数に変換することができる。不安定な相をより安定な相に変換するために、熱力学的駆動力が存在してもよい。この理由から、炭酸カルシウム相は、ACCからバテライト、アラゴナイト、および方解石の順序で変換し、ここで、中間体相は存在することもあり、存在しないこともある。この変換中、
図8によって示される通り、過剰のエネルギーが放出される。この固有エネルギーは、凝集および凝結またはセメント化をもたらし得る強力な集合傾向および表面の相互作用を生じさせるために利用することができる。
図8に報告された値は、当技術分野で周知であり、変わり得ることを理解されたい。
【0197】
本明細書で提供される方法およびシステムは、沈殿物質を、バテライト形態で、またはバテライト、アラゴナイトもしくは方解石形態で存在し得るPCC形態で、生成または単離する。沈殿物質は、湿潤形態、スラリー形態、または乾燥粉末形態であってもよい。この沈殿物質は、他のいかなる多形にも容易に変換しない安定なバテライト形態を有することができ、または溶解再沈殿時にアラゴナイト形態に変換する反応性バテライト形態を有することもできる。アラゴナイト形態は、より安定な方解石形態にはそれ以上変換しないかもしれない。アラゴナイト形態の沈殿物を含有する生成物は、限定されるものではないが、高圧縮強度、高多孔性(低密度または軽量)、中性pH(下記の人工岩礁として有用)、微細網目構造などを含めた、1つまたは複数の予期されなかった特性を示す。
【0198】
バテライトに加えて炭酸塩を含有する沈殿物質中に存在し得る少量の他の多形形態の炭酸カルシウムには、限定されるものではないが、非晶質炭酸カルシウム、アラゴナイト、方解石、バテライトの前駆相、アラゴナイトの前駆相、方解石よりも不安定な中間相、これらの多形の間の多形体、またはそれらの組合せが含まれる。
【0199】
バテライトは、単分散形態または凝集形態で存在することができ、球形、楕円形、プレート様形状、または六方晶系であり得る。バテライトは、典型的に、六方晶結晶構造を有し、成長の際に多結晶の球形粒子を形成する。バテライトの前駆形態は、バテライトのナノクラスタを含み、アラゴナイトの前駆形態は、サブミクロンからナノクラスタの針状アラゴナイトを含む。アラゴナイトは、バテライトと共に組成物中に存在する場合、針形状、円柱状、または斜方系の結晶であり得る。方解石は、バテライトと共に組成物中に存在する場合、立方晶、紡錘形、または六方晶系の結晶であり得る。方解石よりも不安定な中間相は、バテライトと方解石の間の相、バテライトの前駆体と方解石の間の相、アラゴナイトと方解石の間の相、および/またはアラゴナイトの前駆体と方解石の間の相であり得る。
【0200】
炭酸カルシウム多形間の変換は、固体状態の遷移を介して生じることができ、溶液によって媒介されてもよく、またはその両方であってもよい。一部の実施形態では、溶液媒介性変換は、熱活性化された固体状態の遷移よりもエネルギーが少なくて済むので、変換は、溶液媒介性である。バテライトは、準安定であり、炭酸カルシウム多形の熱力学的安定性の差は、溶解度の差として現れる場合があり、ここで、最も安定性が低い相は、最も可溶性が高い。したがって、バテライトは、溶液に容易に溶解し、より安定な多形、例えばアラゴナイトに都合良く変換することができる。炭酸カルシウムのような多形系では、準安定な相の溶解および安定な相の成長の2つの動的プロセスが、溶液中に同時に存在することができる。一部の実施形態では、バテライトが水性媒体への溶解を起こしている間に、アラゴナイト結晶が成長し得る。
【0201】
一態様では、反応性バテライトが、溶解再沈殿プロセス中にアラゴナイトへの経路に至り、方解石への経路に至らないように、反応性バテライトを活性化することができる。一部の実施形態では、反応性バテライトを含有する組成物は、溶解再沈殿プロセス後に、アラゴナイトの形成が増強され、方解石の形成が抑止されるようなやり方で活性化される。反応性バテライトを含有する組成物の活性化により、アラゴナイトの形成および結晶の成長を制御することができる。バテライトを含有する組成物の活性化は、様々なプロセスによって達成され得る。バテライトの活性化の様々な例、例えば限定されるものではないが、核活性化、熱活性化、機械的活性化、化学的活性化、またはそれらの組合せが、本明細書に記載される。一部の実施形態では、バテライトは、アラゴナイトの形成およびその形態、ならびに/または結晶の成長が、バテライトを含有する組成物と水の反応時に制御され得るように、様々なプロセスを介して活性化される。形成されたアラゴナイトは、反応性バテライトから形成された製品に、より高い引張強度および耐破壊性をもたらす。
【0202】
一部の実施形態では、反応性バテライトは、本明細書に記載される通り、機械的手段によって活性化され得る。例えば、反応性バテライトを含有する組成物は、アラゴナイトの形成が加速されるように、バテライト組成物上に表面欠損を生じることによって活性化され得る。一部の実施形態では、活性化されたバテライトは、ボールミル粉砕された反応性バテライトであるか、またはアラゴナイトの形成経路が促進されるような表面欠損を有する反応性バテライトである。
【0203】
反応性バテライトを含有する組成物は、バテライト組成物を化学的活性化または核活性化することによっても活性化され得る。このような化学的活性化または核活性化は、アラゴナイト種晶、無機添加物、または有機添加物の1つまたは複数によって提供され得る。本明細書で提供される組成物中に存在するアラゴナイト種晶は、天然または合成供給源から得ることができる。天然供給源には、限定されるものではないが、岩礁の砂、石灰、斧足類、腹足類、軟体動物の殻、ならびに温水および冷水珊瑚の石灰性内骨格を含めた、ある特定の淡水および海生無脊椎生物の硬質骨格材料、真珠、岩、堆積物、鉱石鉱物(例えば、蛇紋石)などが含まれる。合成供給源には、限定されるものではないが、例えば炭酸ナトリウムおよび塩化カルシウムから形成された沈殿アラゴナイト、またはバテライトからアラゴナイトへの変換によって形成されたアラゴナイト、例えば本明細書に記載される変換したバテライトが含まれる。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物における無機添加物または有機添加物は、反応性バテライトを活性化するいかなる添加物であってもよい。本明細書で提供される組成物における無機添加物または有機添加物の一部の例として、限定されるものではないが、デシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸、ラウリン酸のナトリウム塩、尿素、クエン酸、クエン酸のナトリウム塩、フタル酸、フタル酸のナトリウム塩、タウリン、クレアチン、ブドウ糖、ポリ(n-ビニル-1-ピロリドン)、アスパラギン酸、アスパラギン酸のナトリウム塩、塩化マグネシウム、酢酸、酢酸のナトリウム塩、グルタミン酸、グルタミン酸のナトリウム塩、塩化ストロンチウム、石こう、塩化リチウム、塩化ナトリウム、グリシン、クエン酸ナトリウム無水和物、炭酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ナトリウムポリスチレン、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物における無機添加物または有機添加物には、限定されるものではないが、タウリン、クレアチン、ポリ(n-ビニル-1-ピロリドン)、ラウリン酸、ラウリン酸のナトリウム塩、尿素、塩化マグネシウム、酢酸、酢酸のナトリウム塩、塩化ストロンチウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、またはそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物における無機添加物または有機添加物には、限定されるものではないが、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、またはそれらの組合せが含まれる。
【0205】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、ボールミル粉砕による、あるいはアラゴナイト種晶、無機添加物もしくは有機添加物またはそれらの組合せを添加することによるバテライトの活性化により、活性化された反応性バテライトの溶解再沈殿プロセス中に、限定されるものではないが、多形、形態、粒径、架橋、凝集、凝固、集合、沈降、結晶構造解析、結晶のある特定の面に沿って成長を抑制すること、結晶のある特定の面に沿って成長を可能にすること、またはそれらの組合せなどの特性の制御を含めて、アラゴナイトの形成が制御され得ることが意図される。例えば、アラゴナイト種晶、無機添加物または有機添加物は、アラゴナイトの形態を選択的に標的にし得、方解石の成長を抑制し得、一般に動態学的に不都合な場合があるアラゴナイトの形成を促進し得る。
【0206】
一部の実施形態では、1種または複数種の無機添加剤は、バテライトからアラゴナイトへの変換を促進するために添加され得る。1種または複数種の添加剤は、プロセスのいかなるステップ中にも添加され得る。例えば、1種または複数種の添加剤は、カルシウム塩を含む第1の水溶液と二酸化炭素ガスおよび必要に応じてアンモニアガスまたは第2の水溶液の接触中、カルシウム塩を含む第1の水溶液と二酸化炭素ガスおよび必要に応じてアンモニアガスまたは第2の水溶液の接触後、沈殿物質の沈殿中、スラリーにおける沈殿物質の沈殿後に、沈殿物質の脱水後のスラリーに、スラリーの乾燥後の粉末に、粉末沈殿物質と混合されることになる水溶液に、もしくは水を用いて粉末化沈殿物質から作製されたスラリーに、またはそれらの任意の組合せに、添加され得る。一部の実施形態では、沈殿物質を作製するプロセスで使用される水は、予め、1種もしくは複数の添加剤または1つもしくは複数の添加物イオンを含有していてもよい。例えば、プロセスで海水が使用される場合には、添加物イオンは、予め、海水中に存在していてもよい。
【0207】
前述の方法の一部の実施形態では、本プロセス中に添加される1種または複数種の添加剤の量は、0.1重量%超、または0.5重量%超、または1重量%超、または1.5重量%超、または1.6重量%超、または1.7重量%超、または1.8重量%超、または1.9重量%超、または2重量%超、または2.1重量%超、または2.2重量%超、または2.3重量%超、または2.4重量%超、または2.5重量%超、または2.6重量%超、または2.7重量%超、または2.8重量%超、または2.9重量%超、または3重量%超、または3.5重量%超、または4重量%超、または4.5重量%超、または5重量%超、または0.5~5重量%の間、または0.5~4重量%の間、または0.5~3重量%の間、または0.5~2重量%の間、または0.5~1重量%の間、または1~3重量%の間、または1~2.5重量%の間、または1~2重量%の間、または1.5~2.5重量%の間、または2~3重量%の間、または2.5~3重量%の間、または0.5重量%、または1重量%、または1.5重量%、または2重量%、または2.5重量%、または3重量%、または3.5重量%、または4重量%、または4.5重量%、または5重量%である。前述の方法の一部の実施形態では、本プロセス中に添加される1種または複数種の添加剤の量は、0.5~3重量%の間または1.5~2.5重量%の間である。
【0208】
一部の実施形態では、沈殿物質は、粉末形態である。一部の実施形態では、沈殿物質は、乾燥粉末形態である。一部の実施形態では、沈殿物質は、無秩序であり、または秩序配列ではなく、または粉末化形態である。さらなる一部の実施形態では、沈殿物質は、部分的または完全に水和した形態である。さらなる一部の実施形態では、沈殿物質は、塩水または淡水中に存在する。さらなる一部の実施形態では、沈殿物質は、塩化ナトリウムを含有する水中に存在する。さらなる一部の実施形態では、沈殿物質は、アルカリ土類金属イオン、例えば限定されるものではないが、カルシウム、マグネシウムなどを含有する水中に存在する。一部の実施形態では、沈殿物質は、医療用ではなく、医療手順のためのものでもない。
【0209】
本明細書で提供される組成物または沈殿物質から生成された製品は、高い圧縮強度、高い耐久性、高い多孔性(軽量)、高い曲げ強度、およびより低い維持コストなどの1つまたは複数の特性を示す。一部の実施形態では、水と組み合わされると凝結し、硬化する、反応性バテライトを含む組成物または沈殿物質は、少なくとも3MPa(メガパスカル)、または少なくとも7MPa、または少なくとも10MPa、または一部の実施形態では、3~30MPaの間、または14~80MPaの間、または14~35MPaの間の圧縮強度を有する。
【0210】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、組成物または沈殿物質は、少なくとも10w/w%のバテライト、または少なくとも20w/w%のバテライト、または少なくとも30w/w%のバテライト、または少なくとも40w/w%のバテライト、または少なくとも50w/w%のバテライト、または少なくとも60w/w%のバテライト、または少なくとも70w/w%のバテライト、または少なくとも80w/w%のバテライト、または少なくとも90w/w%のバテライト、または少なくとも95w/w%のバテライト、または少なくとも99w/w%のバテライト、または10w/w%~99w/w%のバテライト、または10w/w%~90w/w%のバテライト、または10w/w%~80w/w%のバテライト、または10w/w%~70w/w%のバテライト、または10w/w%~60w/w%のバテライト、または10w/w%~50w/w%のバテライト、または10w/w%~40w/w%のバテライト、または10w/w%~30w/w%のバテライト、または10w/w%~20w/w%のバテライト、または20w/w%~99w/w%のバテライト、または20w/w%~95w/w%のバテライト、または20w/w%~90w/w%のバテライト、または20w/w%~75w/w%のバテライト、または20w/w%~50w/w%のバテライト、または30w/w%~99w/w%のバテライト、または30w/w%~95w/w%のバテライト、または30w/w%~90w/w%のバテライト、または30w/w%~75w/w%のバテライト、または30w/w%~50w/w%のバテライト、または40w/w%~99w/w%のバテライト、または40w/w%~95w/w%のバテライト、または40w/w%~90w/w%のバテライト、または40w/w%~75w/w%のバテライト、または50w/w%~99w/w%のバテライト、または50w/w%~95w/w%のバテライト、または50w/w%~90w/w%のバテライト、または50w/w%~75w/w%のバテライト、または60w/w%~99w/w%のバテライト、または60w/w%~95w/w%のバテライト、または60w/w%~90w/w%のバテライト、または70w/w%~99w/w%のバテライト、または70w/w%~95w/w%のバテライト、または70w/w%~90w/w%のバテライト、または80w/w%~99w/w%のバテライト、または80w/w%~95w/w%のバテライト、または80w/w%~90w/w%のバテライト、または90w/w%~99w/w%のバテライト、または10w/w%のバテライト、または20w/w%のバテライト、または30w/w%のバテライト、または40w/w%のバテライト、または50w/w%のバテライト、または60w/w%のバテライト、または70w/w%のバテライト、または75w/w%のバテライト、または80w/w%のバテライト、または85w/w%のバテライト、または90w/w%のバテライト、または95w/w%のバテライト、または99w/w%のバテライトを含む。バテライト(vatreite)は、安定なバテライトまたは反応性バテライトまたはPCCであり得る。
【0211】
前述の態様および前述の実施形態の一部の実施形態では、水と組み合された後に凝結し、硬化する(すなわちアラゴナイトに変換する)、反応性バテライトを含む沈殿物質、またはセメントおよび水と混合され、凝結し、硬化した後の安定なバテライトを含む沈殿物質は、少なくとも3MPa、少なくとも7MPa、少なくとも14MPa、または少なくとも16MPa、または少なくとも18MPa、または少なくとも20MPa、または少なくとも25MPa、または少なくとも30MPa、または少なくとも35MPa、または少なくとも40MPa、または少なくとも45MPa、または少なくとも50MPa、または少なくとも55MPa、または少なくとも60MPa、または少なくとも65MPa、または少なくとも70MPa、または少なくとも75MPa、または少なくとも80MPa、または少なくとも85MPa、または少なくとも90MPa、または少なくとも95MPa、または少なくとも100MPa、または3~50MPa、または3~25MPa、または3~15MPa、または3~10MPa、または14~25MPa、または14~100MPa、または14~80MPa、または14~75MPa、または14~50MPa、または14~25MPa、または17~35MPa、または17~25MPa、または20~100MPa、または20~75MPa、または20~50MPa、または20~40MPa、または30~90MPa、または30~75MPa、または30~60MPa、または40~90MPa、または40~75MPa、または50~90MPa、または50~75MPa、または60~90MPa、または60~75MPa、または70~90MPa、または70~80MPa、または70~75MPa、または80~100MPa、または90~100MPa、または90~95MPa、または14MPa、または3MPa、または7MPa、または16MPa、または18MPa、または20MPa、または25MPa、または30MPa、または35MPa、または40MPa、または45MPaの圧縮強度を有する。例えば、前述の態様および前述の実施形態の一部の実施形態では、凝結し、硬化した後の組成物および沈殿物質は、3MPa~25MPa、または14MPa~40MPa、または17MPa~40MPa、または20MPa~40MPa、または30MPa~40MPa、または35MPa~40MPaの圧縮強度を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される圧縮強度は、1日、または3日、または7日、または28日、または56日、またはそれよりも長期間経過した後の圧縮強度である。
【0212】
一部の実施形態では、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む沈殿物質は、0.1~100ミクロンの平均粒径を有する微粒子組成物である。平均粒径(または平均粒子直径)は、任意の従来の粒径決定方法、例えば限定されるものではないが、マルチ検出器レーザー散乱またはレーザー回折またはふるい分けを使用して決定され得る。ある特定の実施形態では、単峰性(unimodel)または多峰性、例えば二峰性または他の分布が存在する。二峰性分布は、表面積を最小限にし、したがって組成物が水と混合される場合により低い液体/固体質量比を可能にしながらも、初期反応のためにより小さい反応性粒子を提供することができる。一部の実施形態では、本明細書で提供されるバテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、0.1~1000ミクロン、または0.1~500ミクロン、または0.1~100ミクロン、または0.1~50ミクロン、または0.1~20ミクロン、または0.1~10ミクロン、または0.1~5ミクロン、または1~50ミクロン、または1~25ミクロン、または1~20ミクロン、または1~10ミクロン、または1~5ミクロン、または5~70ミクロン、または5~50ミクロン、または5~20ミクロン、または5~10ミクロン、または10~100ミクロン、または10~50ミクロン、または10~20ミクロン、または10~15ミクロン、または15~50ミクロン、または15~30ミクロン、または15~20ミクロン、または20~50ミクロン、または20~30ミクロン、または30~50ミクロン、または40~50ミクロン、または50~100ミクロン、または50~60ミクロン、または60~100ミクロン、または60~70ミクロン、または70~100ミクロン、または70~80ミクロン、または80~100ミクロン、または80~90ミクロン、または0.1ミクロン、または0.5ミクロン、または1ミクロン、または2ミクロン、または3ミクロン、または4ミクロン、または5ミクロン、または8ミクロン、または10ミクロン、または15ミクロン、または20ミクロン、または30ミクロン、または40ミクロン、または50ミクロン、または60ミクロン、または70ミクロン、または80ミクロン、または100ミクロンの平均粒径を有する微粒子組成物である。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供されるバテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、0.1~20ミクロン、または0.1~15ミクロン、または0.1~10ミクロン、または0.1~8ミクロン、または0.1~5ミクロン、または1~25ミクロン、または1~20ミクロン、または1~15ミクロン、または1~10ミクロン、または1~5ミクロン、または5~20ミクロン、または5~10ミクロンの平均粒径を有する微粒子組成物である。一部の実施形態では、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、組成物または沈殿物質において2個もしくはそれよりも多い、または3個もしくはそれよりも多い、または4個もしくはそれよりも多い、または5個もしくはそれよりも多い、または10個もしくはそれよりも多い、または20個もしくはそれよりも多い、または3~20個、または4~10個の異なるサイズの粒子を含む。例えば、組成物または沈殿物質は、0.1~10ミクロン、10~50ミクロン、50~100ミクロン、100~200ミクロン、200~500ミクロン、500~1000ミクロンの範囲および/またはサブミクロンの粒径の、2個もしくはそれよりも多い、または3個もしくはそれよりも多い、または3~20個の間の粒子を含むことができる。一部の実施形態では、沈殿物質におけるPCCは、0.1ミクロン未満、例えば0.001ミクロン~1ミクロンの間またはそれよりも大きい平均粒径を有することができる。一部の実施形態では、PCCは、ナノメートルの粒径であってもよい。
【0213】
一部の実施形態では、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、OPCまたはポルトランドセメントクリンカーをさらに含むことができる。ポルトランドセメント構成成分の量は変わってもよく、10~95w/w%、または10~90w/w%、または10~80w/w%、または10~70w/w%、または10~60w/w%、または10~50w/w%、または10~40w/w%、または10~30w/w%、または10~20w/w%、または20~90w/w%、または20~80w/w%、または20~70w/w%、または20~60w/w%、または20~50w/w%、または20~40w/w%、または20~30w/w%、または30~90w/w%、または30~80w/w%、または30~70w/w%、または30~60w/w%、または30~50w/w%、または30~40w/w%、または40~90w/w%、または40~80w/w%、または40~70w/w%、または40~60w/w%、または40~50w/w%、または50~90w/w%、または50~80w/w%、または50~70w/w%、または50~60w/w%、または60~90w/w%、または60~80w/w%、または60~70w/w%、または70~90w/w%、または70~80w/w%の範囲であってもよい。例えば、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、75%のOPCおよび25%の組成物、または80%のOPCおよび20%の組成物、または85%のOPCおよび15%の組成物、または90%のOPCおよび10%の組成物、または95%のOPCおよび5%の組成物のブレンドを含むことができる。
【0214】
ある特定の実施形態では、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、骨材をさらに含むことができる。骨材は、細骨材を含むモルタルおよび粗骨材も含むコンクリートを提供するために、組成物または沈殿物質に含まれ得る。細骨材は、ほぼ全体的に4号のふるい(ASTM C125およびASTM C33)を通過する材料、例えばシリカサンドである。粗骨材は、主に4号のふるい(ASTM C125およびASTM C33)に保持される材料、例えばシリカ、石英、破砕された丸い大理石、ガラス球、花崗岩、石灰、方解石、長石、沖積砂、砂または任意の他の耐久性がある骨材、およびそれらの混合物である。したがって、骨材は、限定されるものではないが、砂、砂利、破砕された石、スラグ、およびリサイクルされたコンクリートを含めた、粗いものおよび細かいもの両方のいくつかの異なる種類の微粒子材料を指すために、広範に使用される。一部の実施形態では、沈殿物質に添加された骨材は、沈殿物質によって表面上で活性化された、活性化された骨材である(この実施形態は、本明細書において初期に記載されている)。骨材の量および性質は、広く変わり得る。一部の実施形態では、骨材の量は、組成物および骨材の両方から生成された全組成物の25~80w/w%、例えば40~70w/w%、および50~70w/w%を含めた範囲であり得る。
【0215】
一部の実施形態では、前述の方法によって調製される反応性バテライトを含む組成物または沈殿物質は、1つまたは複数の適切な条件下で水性媒体を用いて処理した後に、凝結し、硬化する。水性媒体には、限定されるものではないが、必要に応じて添加剤を含有する淡水またはブラインが含まれる。一部の実施形態では、1つまたは複数の適切な条件には、限定されるものではないが、温度、圧力、凝結のための期間、水性媒体の組成物に対する比、およびそれらの組合せが含まれる。温度は、水性媒体の温度に関する温度であってよい。一部の実施形態では、温度は、0~110℃、または0~80℃、または0~60℃、または0~40℃、または25~100℃、または25~75℃、または25~50℃、または37~100℃、または37~60℃、または40~100℃、または40~60℃、または50~100℃、または50~80℃、または60~100℃、または60~80℃、または80~100℃の範囲である。一部の実施形態では、圧力は、大気圧であるか、または大気圧を上回る。一部の実施形態では、セメント製品を凝結するための期間は、30分~48時間、または30分~24時間、または30分~12時間、または30分~8時間、または30分~4時間、または30分~2時間、2~48時間、または2~24時間、または2~12時間、または2~8時間、または2~4時間、5~48時間、または5~24時間、または5~12時間、または5~8時間、または5~4時間、または5~2時間、10~48時間、または10~24時間、または24~48時間である。
【0216】
組成物または沈殿物質を水性媒体と混合する間、沈殿物を、高せん断ミキサーにかけることができる。混合後、沈殿物を再び脱水し、予め形成された型に入れて、形成された建材を作製することができ、または当技術分野で周知のもしくは本明細書に記載される通りのプロセスを使用して、形成された建材を作製するために使用することができる。あるいは、沈殿物は、水と混合することができ、凝結させることができる。沈殿物は、数日間にわたって凝結することができ、次に、例えば40℃で、または40℃~60℃、または40℃~50℃、または40℃~100℃、または50℃~60℃、または50℃~80℃、または50℃~100℃、または60℃~80℃、または60℃~100℃で乾燥させるためにオーブンに入れることができる。沈殿物は、50℃~60℃、または50℃~80℃、または50℃~100℃、または60℃~80℃、または60℃~100℃、または60℃、または80℃~100℃などの高温において、高い湿度で、例えば30%、または40%、または50%、または60%の湿度で養生させることができる。
【0217】
本明細書に記載される方法によって生成された製品は、骨材または建材または予め打設された材料または形成された建材であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成された製品には、非セメント材料、例えば紙、塗料、PVCなどが含まれる。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成された製品には、人工岩礁が含まれる。これらの製品は、本明細書に記載されている。
【0218】
一部の実施形態では、湿潤形態または乾燥形態のバテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む沈殿物質は、限定されるものではないが、強度、曲げ強度、圧縮強度、多孔性、熱伝導率などを含めた1つまたは複数の特性を製品に付与するために、1つまたは複数の混和剤と混合することができる。用いられる混和剤の量は、混和剤の性質に応じて変わり得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の混和剤の量は、1~50w/w%、例えば1~30w/w%、または1~25w/w%、または1~20w/w%/、または2~10w/w%の範囲である。混和剤の例として、限定されるものではないが、凝結促進剤、凝結遅延剤、空気連行剤、発泡剤、消泡剤、アルカリ反応性低減剤、結合混和剤、分散剤、着色混和剤、腐食抑制剤、防湿混和剤、ガス形成剤、浸透性低減剤、圧送助剤、収縮補正混和剤、殺真菌混和剤、殺菌混和剤、殺虫混和剤、レオロジー変性剤、微粉砕された鉱物混和剤、ポゾラン、骨材、湿潤剤、強度増強剤、撥水剤、強化材料、例えば繊維、および任意の他の混和剤が挙げられる。混和剤が使用される場合、混和剤原料が導入される組成物または沈殿物質は、組成物中に混和剤原料を比較的均一に分散させるのに十分な時間にわたって混合される。
【0219】
凝結促進剤は、セメントの凝結および初期強度成長を加速するために使用することができる。使用することができる凝結促進剤の例として、限定されるものではないが、非塩化物タイプの凝結促進剤であるPOZZOLITH(登録商標)NC534および/または亜硝酸カルシウムベースの腐食抑制剤であるRHEOCRETE(登録商標)CNIが挙げられ、それらは共に、オハイオ州クリーブランドのBASF Admixtures Inc.によって前述の商標で販売されている。遅延凝結または水和制御としても公知の凝結を遅らせる混和剤は、セメントの凝結速度を遅らせ、遅延し、または緩徐するために使用される。ほとんどの凝結遅延剤は、低レベルの減水剤として作用することができ、いくらかの空気を製品に連行するために使用することもできる。遅延剤の一例は、オハイオ州クリーブランドのBASF Admixtures Inc.によるDELVO(登録商標)である。空気連行剤は、組成物に空気を連行する任意の物質を含む。一部の空気連行剤は、組成物の表面張力を低濃度で低減することもできる。空気連行混和剤は、微視的な空気の気泡をセメントに意図的に連行するために使用される。空気の連行は、そのミックスの加工性を増大すると同時に、分離およびブリーディングを排除または低減することができる。これらの所望の効果を達成するために使用される材料は、木材樹脂、天然樹脂、合成樹脂、スルホン化リグニン、石油酸、タンパク性材料、脂肪酸、樹脂酸、アルキルベンゼンスルホネート、スルホン化炭化水素、ビンソール(vinsol)樹脂、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、天然ロジン、合成ロジン、無機空気連行剤、合成洗浄剤、およびそれらの対応する塩、ならびにそれらの混合物から選択することができる。空気連行剤は、セメント組成物中に所望のレベルの空気をもたらす量で添加される。混和剤システムにおいて利用することができる空気連行剤の例として、限定されるものではないが、MB AE90、MB VRおよびMICRO AIR(登録商標)が挙げられ、それらはすべて、オハイオ州クリーブランドのBASF Admixtures Inc.から入手可能である。
【0220】
一部の実施形態では、沈殿物質は、発泡剤と混合される。発泡剤は、多量の空気細孔/多孔性を組み込み、材料密度の低減を促進する。発泡剤の例として、限定されるものではないが、石けん、洗浄剤(アルキルエーテルサルフェート)、millifoam(商標)(アルキルエーテルサルフェート)、cedepal(商標)(アンモニウムアルキルエトキシサルフェート)、witcolate(商標)12760などが挙げられる。
【0221】
消泡剤も、混和剤として対象になる。消泡剤は、セメント組成物における空気含量を低減するために使用される。分散剤も、混和剤として対象になる。分散剤には、限定されるものではないが、ポリエーテル単位を含むまたは含まないポリカルボキシレート分散剤が含まれる。分散剤という用語は、組成物のための可塑剤、減水剤、例えば高範囲減水剤、流動化剤、抗凝集剤、または超可塑剤(superplasticizer)としても機能する化学物質、例えばリグニンスルホネート、スルホン化ナフタレンスルホネート縮合物の塩、スルホン化メラミンスルホネート縮合物の塩、ベータナフタレンスルホネート、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物樹脂、例えばLOMAR D(登録商標)分散剤(Cognis Inc.、オハイオ州シンシナティ)、ポリアスパラギン酸、またはオリゴマー分散剤を含むことも意味する。ポリカルボキシレート分散剤を使用することができ、これは、側鎖の少なくとも一部がカルボキシル基またはエーテル基を介して骨格に結合している、ペンダント側鎖を含む炭素骨格を有する分散剤を意味する。
【0222】
天然および合成混和剤は、美的理由および安全性の理由で、製品を着色するために使用することができる。これらの着色混和剤は、顔料から構成されてもよく、それには、カーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニン、アンバー、酸化クロム、酸化チタン、コバルトブルー、および有機着色剤が含まれる。腐食抑制剤も、混和剤として対象になる。腐食抑制剤は、包埋された鉄筋を腐食から保護するために働くことができる。腐食を抑制するために一般に使用される材料は、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ある特定のリン酸塩またはフルオロケイ酸塩、フッ化アルミン酸塩(fluoroaluminite)、アミン、および関連化学物質である。防湿混和剤も、対象になる。防湿混和剤は、低セメント含量、高い水-セメント比、または骨材の細粒欠損を有する製品の浸透性を低減する。これらの混和剤は、乾燥製品に湿気が浸透するのを遅らせるものであり、それには、ある特定の石けん、ステアリン酸塩、および石油製品が含まれる。ガス形成混和剤も、対象になる。ガス形成剤、すなわちガスを形成する薬剤は、時として、硬化の前にわずかに膨張を引き起こすためにミックスに添加される。膨張量は、使用されるガス形成性材料の量および新しい混和剤の温度に依存して決まる。アルミニウム粉末、樹脂石けん、および植物性または動物性の糊、サポニンまたは加水分解タンパク質は、ガス形成剤として使用することができる。浸透性低減剤も、対象になる。浸透性低減剤は、圧力下で水がミックス中を伝わる速度を低減することができる。シリカフューム、フライアッシュ、粉砕スラグ、天然ポゾラン、減水剤、およびラテックスは、ミックスの浸透性を低減するために用いることができる。
【0223】
レオロジー変性剤の混和剤も、対象になる。レオロジー変性剤は、組成物の粘度を増大するために使用することができる。レオロジー変性剤の適切な例として、硬化シリカ、コロイドシリカ、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、フライアッシュ(ASTM C618において定義される)、鉱物油(例えば軽質ナフテン)、粘土、例えばヘクトライト粘土、ポリオキシアルキレン、多糖類、天然ガム、またはそれらの混合物が挙げられる。鉱物増量剤の一部、例えば限定されるものではないが、海泡石粘土は、レオロジー変性剤である。
【0224】
収縮補正混和剤も、対象になる。TETRAGUARD(登録商標)は、収縮低減剤の一例であり、オハイオ州クリーブランドのBASF Admixtures Inc.から入手可能である。硬化した製品の表面または中での細菌および真菌の成長は、殺真菌混和剤および殺菌混和剤の使用により、部分的に制御することができる。これらを目的とした材料には、限定されるものではないが、ポリハロゲン化フェノール、ディルドリン(dialdrin)エマルジョン、および銅化合物が含まれる。一部の実施形態では、加工性改善混和剤も、対象になる。連行された空気は、潤滑剤のように作用し、加工性を改善する作用物質として使用することができる。他の加工剤は、減水剤およびある特定の微粉砕混和剤である。
【0225】
一部の実施形態では、バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む組成物または沈殿物質は、例えば繊維強化製品が望ましい場合には、強化材料、例えば繊維と共に用いられる。繊維は、ジルコニア含有材料、アルミニウム、ガラス、鋼、炭素、セラミック、草、竹、木材、ガラス繊維、または合成材料、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、レーヨン、高強度アラミド(すなわちKevlar(登録商標))、またはそれらの混合物から作製することができる。強化材料は、2012年7月27日出願の米国特許出願第13/560,246号に記載されており、本開示において、その全体は本明細書に組み込まれる。
【0226】
バテライト(安定なまたは反応性)またはPCCを含む沈殿物質の構成成分は、任意の適切なプロトコールを使用して合わせることができる。各材料は、作業時に混合することができ、または材料の一部もしくはすべてを、前もって混合することができる。あるいは、材料の一部は、混和剤、例えば高範囲減水混和剤と共にまたはそれなしに、水と混合され、次に、それと残りの材料を混合することができる。混合装置として、従来のいかなる装置も使用することができる。例えば、Hobartミキサー、スラントシリンダーミキサー、Omniミキサー、Henschelミキサー、V型ミキサー、およびNautaミキサーを用いることができる。
【0227】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、(i)石灰を、1つまたは複数の沈殿条件下で塩基水溶液に溶解させて、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を生成するように構成された溶解反応器を含む、システムが提供される。
【0228】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、(i)石灰石を焼成して、石灰および二酸化炭素のガスストリームを形成するように構成された焼成反応器、(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下で塩基水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するように構成された溶解反応器、ならびに(iii)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームで処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するように構成された処理反応器を含む、システムが提供される。
【0229】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、(i)石灰石を石灰および二酸化炭素のガスストリームに焼成するように構成された焼成反応器、(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するように構成された溶解反応器、ならびに(iii)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームで処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するように構成された処理反応器を含む、システムが提供される。
【0230】
一態様では、バテライトを含む炭酸カルシウムを形成するためのシステムであって、(i)石灰石を石灰および二酸化炭素のガスストリームに焼成するように構成された焼成反応器、(ii)石灰を、1つまたは複数の溶解条件下でN含有無機塩水溶液に溶解させて、カルシウム塩を含む第1の水溶液、およびアンモニアを含むガスストリームを生成するように構成された溶解反応器、(iii)二酸化炭素を含むガスストリームおよびアンモニアを含むガスストリームを回収し、ガスストリームを、1つまたは複数の冷却条件下で冷却プロセスに付して、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニア、またはそれらの組合せを含む第2の水溶液を凝縮させるように構成された冷却反応器、ならびに(iv)カルシウム塩を含む第1の水溶液を、1つまたは複数の沈殿条件下で、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、カルバミン酸アンモニウムまたはそれらの組合せを含む第2の水溶液で処理して、バテライトを含む炭酸カルシウムを含む沈殿物質および上清溶液を形成するように構成された処理反応器を含む、システムが提供される。前述の態様の一部の実施形態では、バテライトは、安定なバテライト、反応性バテライトまたはPCCである。前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、溶解反応器は、冷却反応器に統合している(
図4~7に示され、本明細書に記載される通り)。
【0231】
前述の態様および実施形態の一部の実施形態では、本システムは、水溶液から塩基を回収して、溶解反応器に再循環して戻すための回収システムをさらに含む。回収システムは、本明細書で前述の通り、熱分解、逆浸透、多段フラッシュ、多重効用蒸留、蒸気再圧縮、蒸留、およびそれらの組合せを行うように構成されたシステムである。
【0232】
本明細書で提供される方法およびシステムは、陸地で(例えば、石灰石採石場に近い場所、または容易に経済的に輸送される場所で)、海で、または海洋中で行うことができる。一部の実施形態では、石灰を焼成するセメント工場は、沈殿物質を形成し、さらに、沈殿物質から製品を形成するために、本明細書に記載されるシステムを追加導入することができる。
【0233】
いくつかの態様は、本明細書に記載される方法を実施するための、処理工場または製造所を含めたシステムを含む。システムは、目的の特定の生成方法を実施可能にする、いかなる立体配置も有することができる。
【0234】
ある特定の実施形態では、本システムは、石灰の供給源、および塩基水溶液のための投入口を有する構造体を含む。例えば、システムは、本明細書に記載される通りの塩基水溶液のパイプラインまたは類似の供給部を含むことができる。システムはさらに、CO2のための投入口、および沈殿反応器の前または沈殿反応器において、これらの供給源を水(必要に応じて水溶液、例えば水、ブラインまたは海水)と合わせるための構成成分を含む。一部の実施形態では、ガスと液体の接触装置は、1日当たり1トン、10トン、100トン、1,000トン、または10,000トンを超える沈殿物質を生成するのに十分なCO2を接触させるように構成される。
【0235】
システムはさらに、沈殿反応器に導入された水を、1つまたは複数の沈殿条件(本明細書に記載される)に付し、沈殿物質および上清を生成する、沈殿反応器を含む。一部の実施形態では、沈殿反応器は、1日当たり1トン、10トン、100トン、1,000トン、または10,000トンを超える沈殿物質を生成するのに十分な水を保持するように構成される。沈殿反応器は、いくつかの異なる要素、例えば温度モジュレーション要素(例えば、水を所望の温度に加熱するように構成される)、化学添加要素(例えば、添加剤などを沈殿反応混合物に導入するように構成される)、コンピューター自動化などのいずれかを含むように構成することもできる。
【0236】
CO2および必要に応じてNH3を含む廃ガスストリームは、任意の便利な方式で、沈殿反応器および/または冷却反応器に提供することができる。一部の実施形態では、廃ガスストリームは、溶解反応器から沈殿反応器および/または冷却反応器に走行するガスコンベヤ(例えば、ダクト)を用いて提供される。
【0237】
沈殿物質を生成するためにシステムによって処理される水供給源が、海水である場合、例えば、投入口が、海水から地上システムまたは船体の流入ポートへのパイプラインまたは供給管であるような場合、例えばシステムが、例えば海上システムにおける船舶の一部である場合には、投入口は、海水供給源と流体連結している。
【0238】
本方法およびシステムは、塩基水溶液、石灰、および/または二酸化炭素をモニタリングするように構成された1つまたは複数の検出器(図示されず)を含むこともできる。モニタリングには、限定されるものではないが、水または二酸化炭素ガスの圧力、温度および組成に関するデータの収集が含まれ得る。検出器は、モニタリングするように構成された任意の便利なデバイス、例えば、圧力センサー(例えば、電磁圧力センサー、電位差圧力センサーなど)、温度センサー(抵抗温度検出器、熱電対、ガス温度計、サーミスタ、高温計、赤外放射線センサーなど)、体積センサー(例えば、地球物理学的な回折断層撮影法、X線断層撮影法、水中音響探査機など)、および水または二酸化炭素ガスの化学構成を決定するためのデバイス(例えば、IR分光計、NMR分光計、UV-vis分光光度計、高速液体クロマトグラフ、誘導結合プラズマ発光分光計、誘導結合プラズマ質量分析計、イオンクロマトグラフ、X線回折計、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフィー-質量分析計、フローインジェクション分析、シンチレーションカウンター、酸滴定、およびフレーム発光分光計など)であってよい。
【0239】
一部の実施形態では、検出器は、使用者に、塩基水溶液、石灰、および/または二酸化炭素/アンモニアガスに関して収集されたデータを提供するように構成されている、コンピューターインターフェースを含むこともできる。一部の実施形態では、概要は、コンピューター可読データファイルとして保存することができ、または使用者可読文書として印刷することができる。
【0240】
一部の実施形態では、検出器は、リアルタイムデータ(例えば、内部圧力、温度など)を収集できるように、モニタリングデバイスであってもよい。他の実施形態では、検出器は、塩基水溶液、石灰、および/または二酸化炭素ガスのパラメータを定期的に決定するように、例えばその組成を1分毎、5分毎、10分毎、30分毎、60分毎、100分毎、200分毎、500分毎、または何らかの他の間隔で決定するために構成された、1つまたは複数の検出器であってもよい。
【0241】
ある特定の実施形態では、本システムは、沈殿物からセメントまたは骨材などの建材を調製するためのステーションをさらに含むことができる。形成された建材および/または非セメント材料などの他の材料も、沈殿物から形成することができ、その調製に適したステーションを使用することができる。
【0242】
先に示される通り、本システムは、地上または海上に存在することができる。例えば、システムは、例えば海水供給源に近い沿岸部、またはさらには水が水供給源、例えば海洋からシステムにパイプで送られる内陸の場所にある、地上システムであり得る。あるいは、システムは、水系システム、すなわち水上または水中に存在するシステムである。このようなシステムは、ボート、海洋系プラットフォームなどの上に、所望通りに存在することができる。
【0243】
炭酸カルシウムスラリーは、一部の実施形態では濾過ステップの後に噴霧乾燥を含む、乾燥システムに、ポンプを介して送られる。乾燥システムから分離された水は、放出されるか、または反応器に再循環させられる。乾燥システムから生じた固体または粉末は、建材を生成するためのセメントまたは骨材として利用される。固体または粉末は、非セメント製品、例えば紙、プラスチック、塗料などにおけるPCCフィラーとして使用することもできる。固体または粉末は、形成された建材、例えば乾式壁、セメントボードなどの形成において使用することもできる。
【0244】
一部の実施形態では、本システムは、沈殿装置または溶解反応器に運搬される塩基水溶液の量および/もしくは石灰の量;分離装置に運搬される沈殿物の量;乾燥ステーションに運搬される沈殿物の量;ならびに/または精製ステーションに運搬される沈殿物の量を制御するように構成されている制御ステーションを含むことができる。制御ステーションは、手作業で、機械的にもしくはデジタルで制御される一組の弁もしくは複数弁システムを含むことができ、または任意の他の便利な流量調節プロトコールを用いることができる。ある場合には、制御ステーションは、前述の通り、使用者に、量を制御するための入力および出力パラメータを提供するように構成されているコンピューターインターフェースを含むことができる(調節は、コンピューター支援されるか、またはコンピューターによって完全に制御される)。
II.製品
【0245】
本明細書では、石灰を塩基水溶液に溶解させて、バテライトおよび/またはアラゴナイト多形形態の炭酸カルシウムを含む沈殿物質を生成することによって、石灰石の焼成から形成された石灰を利用するための方法およびシステムであって、バテライトがアラゴナイトに変換し、セメントを形成する、方法およびシステムが提供される。本明細書では、石灰石の焼成由来の廃ガスストリームのCO2を除去または分離し、CO2を、保存安定性のある非ガス形態(例えば、ビルディングおよびインフラストラクチャーなどの構造物の建築のための材料、ならびに構造物自体または形成された建材、例えば乾式壁、または非セメント材料、例えば紙、塗料、プラスチックなど、または人工岩礁)に固定し、したがってCO2が大気に逃げないようにする、環境に優しい方法およびシステムが提供される。
建材
【0246】
本明細書で使用される「建材」には、建築に使用される材料が含まれる。一態様では、例えば反応性バテライトがアラゴナイトに変換している沈殿物質、または凝結し、硬化するPCCの、凝結し硬化した形態を含む、構造物または建材が提供される。アラゴナイト形態(反応性バテライトの溶解再沈殿によって形成されたアラゴナイト)の沈殿物を含有する製品(図の生成物(A)または(B))は、限定されるものではないが、高圧縮強度、高多孔性(低密度または軽量)、中性pH(例えば人工岩礁として有用である)、微細網目構造などを含めた、予期されなかった1つまたは複数の特性を示す。
【0247】
このような構造物または建材の例として、限定されるものではないが、ビルディング、ドライブウェイ、基礎、キッチンスラブ、家具、舗道、道路、橋、高速道路、陸橋、駐車場構造物、レンガ、ブロック、壁、ゲートのための足場、フェンス、またはポール、およびそれらの組合せが挙げられる。
形成された建材
【0248】
本明細書で使用される「形成された建材」には、定義された物理的形状を有する構造物に成形された(例えば、成型された、打設された、切断された、またはその他の方法で生成された)材料が含まれる。形成された建材は、予め打設された建材、例えば、予め打設されたセメントまたはコンクリート製品であり得る。形成された建材および形成された建材を作製し使用する方法は、2009年9月30日出願の米国特許出願第12/571,398号に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。形成された建材は、大幅に変わり得、定義された物理的形状、すなわち立体配置を有する構造物に成形された(例えば、成型された、打設された、切断された、またはその他の方法で生成された)材料を含む。形成された建材は、定義された安定な形状を有しておらず、むしろそれらが保持される容器、例えばバッグまたは他の容器に適合する非晶質建材(例えば、粉末、ペースト、スラリーなど)とは異なる。形成された建材は、形成された建材が、例えばビルディングにおける形成された建材の使用を可能にする仕様に従って生成されるという点で、不規則にまたは不正確に形成された材料(例えば、廃棄される骨材、バルク形態など)とも異なる。形成された建材は、沈殿物質がこのような材料の作製において用いられることを除いて、このような構造物のための従来の製造プロトコールに従って調製することができる。
【0249】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法およびシステムは、反応性バテライト(反応性バテライトは、アラゴナイトに変換している)または凝結し硬化したPPCを含む沈殿物質を凝結し、硬化し、形成された建材を形成するステップをさらに含む。
【0250】
一部の実施形態では、沈殿物質から作製された、形成された建材は、少なくとも3MPa、少なくとも10MPaもしくは少なくとも14MPa、または3~30MPaの間もしくは約14~100MPaの間もしくは約14~45MPaの間の圧縮強度または曲げ強度を有し、あるいは本明細書に記載される通り凝結し、硬化した後の沈殿物質の圧縮強度を有する。
【0251】
前述の方法およびシステムによって生成することができる形成された建材の例として、限定されるものではないが、石造ユニット、単に例として、レンガ、ブロック、および限定されるものではないが、天井タイルを含めたタイル;建築パネル、単に例として、セメントボード(セメントから従来作製されているボード、例えば繊維セメントボード)および/もしくは乾式壁(石こうから従来作製されているボード);導管;水盤;梁;柱、スラブ;遮音バリア;断熱材料;またはそれらの組合せが挙げられる。建築パネルは、長さおよび幅が実質的に厚さよりも大きいことを特徴とする任意の非耐力構造要素に言及するために、広範な意味で用いられる形成された建材である。したがって、パネルは、厚板、ボード、屋根板、および/またはタイルであってもよい。本明細書で提供される沈殿物質から形成された例示的な建築パネルとして、セメントボードおよび/または乾式壁が挙げられる。建築パネルは、それらの所期の使用に応じて大幅に変わる寸法を有する多角形構造物である。建築パネルの寸法は、100~300cm、例えば250cmを含めた50~500cmの長さ;75~150cm、例えば100cmを含めた25~200cmの幅;7~20mm、10~15mmを含めた5~25mmの厚さの範囲であり得る。
【0252】
一部の実施形態では、セメントボードおよび/または乾式壁は、異なる種類のボード、例えば限定されるものではないが、紙張りボード(例えば、セルロース繊維を用いる表面強化)、ガラス繊維張りもしくはガラスマット張りボード(例えば、ガラス繊維マットを用いる表面強化)、ガラス繊維メッシュ強化ボード(例えば、ガラスメッシュを用いる表面強化)、および/または繊維強化ボード(例えば、セルロース、ガラス、繊維などを用いるセメント強化)の作製において使用することができる。これらのボードは、限定されるものではないが、羽目板、例えば繊維-セメント羽目板、屋根ふき、下端、シージング、クラッディング、デッキ、天井、シャフトライナー、壁ボード、バッカー、トリム、フリーズ、屋根板、およびファスキア(fascia)、ならびに/または下張りを含めた様々な適用において使用することができる。
【0253】
セメントボードは、従来、セメント、例えばOPC、酸化マグネシウムセメントおよび/またはケイ酸カルシウムセメントから作製される。本明細書で提供される方法およびシステムによって作製されたセメントボードは、ボードにおける従来のセメントを部分的または完全に置き換える沈殿物質から作製される。一部の実施形態では、セメントボードは、アラゴナイトセメント(バテライトがアラゴナイトに変換するときに凝結し、硬化する)と繊維および/またはガラス繊維の組合せとして調製された建築パネルを含むことができ、ボードの両面が追加の繊維および/またはガラス繊維で強化されていてもよい。
【0254】
セメントボードは、一部の実施形態では、浴室タイル、キッチンカウンター、バックスプラッシュなどの裏側に用いることができるセラミックのためのバッカーボードとして使用される、形成された建材であり、100~200cmの範囲の長さを有することができる。セメントボードは、物理的特性および機械的特性が変わり得る。一部の実施形態では、曲げ強度は、2~6MPa、例えば5MPaを含めた1~7.5MPaの間の範囲で変わり得る。また圧縮強度は、10~30MPa、例えば15~20MPaを含めた5~50MPaの範囲で変わり得る。一部の実施形態では、セメントボードは、湿気に広範に曝露される環境(例えば、商業用サウナ)において用いることができる。本明細書に記載される組成物または沈殿物質は、セメントボードを形成するのに望ましい形状およびサイズを生成するために使用することができる。さらに、限定されるものではないが、可塑剤、粘土、発泡剤、促進剤、遅延剤および空気連行添加剤を含めた、様々なさらなる構成成分を、セメントボードに添加することができる。次に、組成物は、シート型に注がれ、またはローラーを使用して、所望の厚さのシートを形成することができる。成形された組成物は、ローラー圧縮、液圧圧力、振動圧縮、または共鳴ショック圧縮によってさらに圧縮することができる。次に、シートは、所望の寸法のセメントボードに切断される。
【0255】
本明細書に記載される組成物または沈殿物質から形成される別のタイプの建築パネルは、バッカーボードである。バッカーボードは、インテリアおよび/またはエクステリアの床、壁および天井の建築のために使用することができる。いくつかの実施形態では、バッカーボードは、沈殿物質から部分的または完全に作製される。
【0256】
本組成物または沈殿物質から形成される別のタイプの建築パネルは、乾式壁である。乾式壁には、インテリアおよび/またはエクステリアの床、壁および天井の建築のために使用されるボードが含まれる。従来、乾式壁は、石こうから形成される(紙張りボードと呼ばれる)。いくつかの実施形態では、乾式壁は、炭酸塩沈殿物質から部分的または完全に作製され、それによって乾式壁製品から石こうを置き換える。一部の実施形態では、乾式壁は、アラゴナイトセメント(バテライトがアラゴナイトに変換するときに凝結し、硬化する)とセルロース、繊維および/またはガラス繊維の組合せとして調製された建築パネルを含むことができ、ボードの両面が追加の紙、繊維、ガラス繊維メッシュおよび/またはガラス繊維マットで強化されていてもよい。乾式壁製品を作製するための様々なプロセスは、当技術分野で周知であり、十分に本発明の範囲内にある。一部の例として、限定されるものではないが、湿式プロセス、半乾式プロセス、押出しプロセス、wonderborad(登録商標)プロセスなどが挙げられ、それらは本明細書に記載されている。
【0257】
一部の実施形態では、乾式壁は、内側コアの周りを包むペーパーライナーから作製されたパネルである。例えば、一部の実施形態では、沈殿物質から乾式壁製品を作製するプロセス中、バテライトを含む沈殿物質のスラリーが、紙シートにわたって注がれる。次に、もう1枚の紙が沈殿物質の上部に置かれ、したがって沈殿物質には、両側に紙が配置される(生じた組成物は、2枚の外側材料、例えば厚紙またはガラス繊維マットの間に挟まれている)。次に、沈殿物質におけるバテライトを、アラゴナイトに変換し(添加剤および/または熱を使用して)、次に、そのアラゴナイトが凝結し、硬化する。コアが凝結し、大型乾燥チャンバ内で乾燥させられると、サンドイッチ状パネルは、建材として使用するのに十分剛性かつ強力になる。次に、乾式壁シートは切断され、分離される。
【0258】
沈殿物質から形成された乾式壁の曲げおよび圧縮強度は、軟質建築材料であることが公知の、石こうプラスターを用いて調製された従来の乾式壁と同じか、またはそれよりも高い。一部の実施形態では、曲げ強度は、0.5~2MPa、例えば1.5MPaを含めた0.1~3MPaの間の範囲であり得る。圧縮強度も変わり得、ある場合には5~15MPa、例えば8~10MPaを含めた1~20MPaの範囲であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法およびシステムによって生成された、形成された建材、例えば建築パネル、例えば限定されるものではないが、セメントボードおよび乾式壁は、低密度および高多孔性であり、それにより軽量断熱適用に適したものになる。高多孔性および軽量の形成された建材、例えば建築パネルは、バテライトがアラゴナイトに変換するときにアラゴナイト微細構造が生じることに起因し得る。溶解/再沈殿プロセス中のバテライトの変換により、マイクロ多孔性が生じ得ると同時に、形成されたアラゴナイト結晶の間に生じた空隙は、ナノ多孔性を提供し得、それによって高多孔質の軽量構造をもたらし得る。変換プロセス中、限定されるものではないが、発泡剤、レオロジー変性剤および鉱物増量剤、例えば限定されるものではないが、粘土、デンプンなどのある特定の混和剤を添加することができ、それにより、発泡剤が混合物中に空気を連行することができるので、製品に多孔性が加えられ、全体的な密度を低減することができ、また、セピオライト粘土などの鉱物増量剤は、混合物の粘度を増大し、それによって沈殿物質と水の分離を防止することができる。
【0259】
セメントボードまたは乾式壁の適用の1つは、繊維セメント羽目板である。本明細書で提供される方法およびシステムによって形成された繊維-セメント羽目板は、アラゴナイトセメント、骨材、織り合わされたセルロース、および/またはポリマー繊維の組合せとして調製された建築パネルを含み、木材に似た質感および可撓性を有することができる。
【0260】
一部の実施形態では、形成された建材は、石造ユニットである。石造ユニットは、一般にモルタル、グラウトなどを使用して組み立てられる耐力構造物および非耐力構造物の建築において使用される、形成された建材である。本組成物から形成された例示的な石造ユニットとして、レンガ、ブロック、およびタイルが挙げられる。
【0261】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、導管である。導管は、ガスまたは液体を、ある場所から別の場所に運搬するように構成されている管または類似構造物である。導管は、限定されるものではないが、パイプ、カルバート、ボックスカルバート、排水路およびポータル、流入口構造物、取水塔、ゲートウェル、流出口構造物などを含めた、液体またはガスの運搬に使用される多くの異なる構造物のいずれかを含むことができる。
【0262】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、水盤である。水盤という用語は、液体、例えば水を保持するために使用される、いかなる構成の容器も含み得る。したがって、水盤には、限定されるものではないが、井戸、回収ボックス、公衆衛生マンホール、浄化槽、排水枡(catch basin)、グリーストラップ/分離装置、雨水収集貯水槽などの構造物が含まれ得る。
【0263】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、梁であり、これは広範な意味では、大きい曲げ強度および圧縮強度を有する水平耐力構造物を指す。梁は、四角形十字型、Cチャネル型、L型断面の縁梁、I型梁、スパンドレル梁、H型梁であってもよく、逆T設計などを有する。また梁は、限定されるものではないが、根太、まぐさ石、アーチ道および片持ち梁を含めた、水平耐力ユニットであってもよい。
【0264】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、柱であり、これは広範な意味では、主に軸圧縮による荷重に耐え、圧縮部材などの構造要素を含む、縦型の耐力構造物を指す。本発明の他の縦型圧縮部材には、限定されるものではないが、支柱、橋脚、台座、または杭が含まれ得る。
【0265】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、コンクリートスラブである。コンクリートスラブは、予め製作された基礎、床および壁パネルの建築において使用される建材である。ある場合には、コンクリートスラブは、床ユニット(例えば、中空厚板ユニットまたはダブルティー設計)として用いることができる。
【0266】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、遮音バリアであり、これは、音の減衰または吸収のためのバリアとして使用される構造物を指す。したがって、遮音バリアには、限定されるものではないが、防音パネル、反射バリア、吸収バリア、反応性バリアなどの構造物が含まれ得る。
【0267】
本明細書に記載される沈殿物質から形成される、別の形成された建材は、断熱材料であり、これは、熱伝導を減弱または抑制するために使用される材料を指す。また断熱材には、放射伝熱を低減または抑制する材料が含まれ得る。
【0268】
一部の実施形態では、その他の形成された建材、例えば予め打設されたコンクリート製品には、限定されるものではないが、バンカーサイロ、家畜飼料桶、家畜脱出防止格子(cattle grid)、農業用フェンス、H型寝棚、J型寝棚、家畜用スラット、家畜用給水槽、建築用パネル壁、クラッディング(レンガ)、ビルディング用トリム、基礎、土間のスラブを含めた床、壁、二重壁の予め打設されたサンドイッチ状パネル、水路、力学的に安定化されたアースパネル(earth panel)、ボックスカルバート、3面カルバート、橋システム、鉄道踏切(RR crossing)、枕木(RR tie)、防音壁/バリア、ジャージーバリア、トンネルセグメント、強化コンクリートボックス、公共施設(utillity)保護構造物、ハンドホール、中空コア製品、照明ポールベース、メーターボックス、パネル式貯蔵室(panel vault)、プルボックス、電気通信構造物、変圧器パッド、変圧器室、トレンチ、公共施設の貯蔵室(utility vault)、電柱、制御環境室、地下壕、霊廟、墓石、棺、危険物貯蔵容器、貯留室(detention vault)、排水枡、マンホール、通気システム、分電ボックス、ドージンングタンク、ドライウェル、グリース阻集器、浸出ピット、砂-油/油-水分離器、浄化槽、水/下水保存タンク、ウェットウェル、防火水槽、浮桟橋、水中インフラストラクチャー、デッキ、柵(railing)、防波堤、屋根瓦、敷石、地域用擁壁、住宅用擁壁、モジュール式ブロックシステム、および補強式(segmental)擁壁が含まれる。
非セメント組成物
【0269】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法およびシステムは、限定されるものではないが、紙、ポリマー製品、潤滑剤、接着剤、ゴム製品、チョーク、アスファルト製品、塗料、塗料除去のための研磨剤、パーソナルケア製品、化粧品、清浄製品、パーソナル衛生製品、摂取可能な製品、農業製品、土壌改良製品、殺有害生物剤、環境修復製品、およびそれらの組合せを含めた非セメント組成物を含む他の製品を、本明細書に記載される沈殿物質から作製するステップを含む。このような組成物は、2010年11月9日発行の米国特許第7,829,053号に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
人工海洋構造物
【0270】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、限定されるものではないが、人工珊瑚および岩礁を含めた人工海洋構造物を、本明細書に記載される沈殿物質から作製するステップを含む。一部の実施形態では、人工構造物は、水族館または海で使用することができる。一部の実施形態では、これらの製品は、凝結し硬化した後にアラゴナイトに変換する反応性バテライトを含む沈殿物質から作製される。アラゴナイトセメントは、海洋生物の維持および成長を助長し得る中性pHまたは中性に近いpHを提供する。アラゴナイト岩礁は、海生種に適した生息環境を提供することができる。
【0271】
以下の実施例は、本発明をどのように作製し使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するように記載されており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を制限することを企図するものでも、以下の実験が、実施されたすべての実験または唯一の実験であると示すことを企図するものでもない。使用される数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保するよう努めてきたが、いくらかの実験誤差および偏差は考慮されるべきである。
【実施例】
【0272】
(実施例1)
石灰からの沈殿物質の形成および変換
NH4Clを水に溶解させる。石灰を水溶液に添加し、蒸気流出管を有する容器中、80℃で混合する。蒸気は、流出管を介して容器を離れ、その蒸気はCO2と共に20℃で凝縮して、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、および炭酸アンモニウムを含有する水溶液を、第1の折り畳み式の気密バッグ内で形成する。容器に残った固体および液体混合物を、20℃に冷却し、真空濾過して、不溶性不純物を除去する。CaCl2を含有する透明濾液を、第2の折り畳み式の気密バッグに移す。両方のバッグを水浴に浸し、それによって溶液を35℃に予熱する。沈殿反応器は、バッフル、pH電極、熱電対、タービンインペラ、ならびに液体供給物および生成物スラリーのための流入ポートおよび流出ポートを備えたアクリルシリンダーである。起動中に、第2のバッグ内のCaCl2含有溶液を、固定流速で反応器にポンプ注入する。ミキサーを撹拌しながら、別個のポンプによって、第1のバッグ内の溶液を導入する。コンピューター自動化制御ループにより、第1のバッグからの炭酸アンモニウム含有溶液の連続流入流を制御して、pHを7~9の間に維持する。反応性バテライトスラリーが形成される。生じた反応性バテライトスラリーを、保持容器に連続的に収集する。スラリーを真空濾過する。反応性バテライト濾過ケーキを100℃でオーブン乾燥させる。ケーキは、5ミクロンの平均粒径を有する100%バテライトを示す。再生されたNH4Clを含有する透明な濾液を、その後の実験に再循環させる。
【0273】
乾燥させた反応性バテライト固体を、水と混合してペーストにする。1日経過した後のペーストのXRDは、99.9%アラゴナイトを示す(バテライトはアラゴナイトに完全に変換した)。ペーストを、2インチ×2インチ×2インチの立方体に打設し、それを60℃および80%の相対湿度に設定した湿度チャンバ内で7日間凝結させ、硬化させる。セメント化立方体を、100℃のオーブン内で乾燥させる。破壊試験により、立方体の圧縮強度は4600psi(約31MPa)であることが決定される。
(実施例2)
石灰からの沈殿物質の形成および変換
【0274】
NH4Clを水に溶解させる。石灰を水溶液に添加し、蒸気およびスラリーの流出口を有する溶解容器中、圧力下で120℃で混合する。不溶性不純物を含有するスラリーは、底部流出口を介して離れ、フィルターを通過して固体を除去する。CaCl2を含有する透明な濾液を、30℃に冷却し、沈殿反応器にポンプ注入する。沈殿反応器は、バッフル、ガススパージャー、pH電極、熱電対、タービンインペラ、ならびに液体およびガス供給物ならびに生成物スラリーのための流入口および流出口を備えたアクリルシリンダーである。アンモニアを含有する蒸気は、溶解反応器から、沈殿反応器内に位置するスパージャーに通過する。CO2も、沈殿反応器に通過する。コンピューター自動化制御ループにより、CaCl2含有溶液の連続流入流を制御して、pHを7~9の間に維持する。生じた反応性バテライトスラリーを、保持容器に連続的に収集する。スラリーを真空濾過する。反応性バテライト濾過ケーキを100℃でオーブン乾燥させる。ケーキは、5ミクロンの平均粒径を有する100%バテライトを示す。再生されたNH4Clを含有する透明な濾液を、その後の実験に再循環させる。
【0275】
乾燥させた反応性バテライト固体を、水を使用してペーストに混合する。1日経過した後のペーストのXRDは、99.9%アラゴナイトを示す(バテライトはアラゴナイトに完全に変換した)。ペーストを、2インチ×2インチ×2インチの立方体に打設し、それを60℃および80%の相対湿度に設定した湿度チャンバ内で7日間凝結させ、硬化させる。セメント化立方体を、100℃のオーブン内で乾燥させる。破壊試験により、立方体の圧縮強度は4600psi(約31MPa)であることが決定される。
(実施例3)
冷却反応器における生成物の形成の制御
【0276】
NH4Clを水に溶解させる。石灰を水溶液に添加し、蒸気流出管を有する容器中、80℃で混合する。アンモニアを含む蒸気は、流出管を介して容器を離れ、その蒸気はCO2(および水蒸気)と共に20℃で凝縮して、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、およびカルバミン酸アンモニウムを含有する水溶液を、第1の折り畳み式の気密バッグ内で形成する。凝縮生成物の形成は、水溶液のpHに基づいてCO2流を制御することによって制御することができる。
【0277】
このプロセスのシミュレーションにより、(i)10.3の流出口pHが得られるまでCO2流を変えることによって、カルバミン酸塩:炭酸塩:炭酸水素塩比が45%:35%:20%のストリームが得られたこと、(ii)9.7の流出口pHが得られるまでCO2流を変えることによって、カルバミン酸塩:炭酸塩:炭酸水素塩比が35%:25%:40%のストリームが得られたこと、および(iii)8.7の流出口pHが得られるまでCO2流を変えることによって、カルバミン酸塩:炭酸塩:炭酸水素塩比が20%:10%:70%のストリームが得られたことが実証された。
【0278】
したがって、システムのpHが、CO2の流速を調節することによって低下させられた場合、カルバミン酸塩よりも炭酸水素塩の量が都合が良く、システムのpHが、CO2の流速を調節することによって上昇させられた場合、炭酸水素塩および炭酸塩よりもカルバミン酸塩の量が都合が良い。
(実施例4)
冷却反応器における生成物の形成の制御
【0279】
NH4Clを水に溶解させる。石灰を水溶液に添加し、蒸気流出管を有する容器中、80℃で混合する。アンモニアを含む蒸気は、流出管を介して容器を離れ、その蒸気はCO2(および水蒸気)と共に20℃で凝縮して、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、およびカルバミン酸アンモニウムを含有する水溶液を、第1の折り畳み式の気密バッグ内で形成する。凝縮生成物の形成は、CO2:NH3の比を制御することによって制御することができる。
【0280】
このプロセスのシミュレーションにより、(i)CO
2:NH
3の質量比が0.2:1になるようにCO
2流を選択することによって、スペシエーションが98%超の炭酸塩に至ること、(ii)CO
2:NH
3の質量比が1:1になるようにCO
2流を選択することによって、スペシエーションが15.6%超のカルバミン酸塩に至ること、ならびに(iii)CO
2:NH
3の質量比が20:1になるようにCO
2流を選択することによって、スペシエーションが90%超の炭酸水素塩に至ることが実証された。データは、以下の表Iおよび
図9に示される。データにより、CO
2:NH
3の比は、冷却反応器において形成された生成物の比に直接影響を及ぼすことが実証された。
【表I】
【0281】
前述の本発明を、明確な理解を目的として、例示および実施例によっていくらか詳細に説明してきたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および修正がそれに加えられ得ることが、当業者には容易に明らかになるはずである。したがって、前述のものは、単に本発明の原理を例示するものである。当業者は、本明細書に明確に記載されても示されてもいないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる様々な取合せを考案することができることを認識されよう。さらに、本明細書に記載されるすべての実施例および条件の文言は、主に、本発明の原理、および当技術分野を推進するために本発明者らによって与えられた概念を理解する際に、読者の助けとすることを企図され、このような具体的に記載された実施例および条件に限定することなく解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様および実施形態、ならびにその具体例を記載する本明細書のすべての記述は、その構造的均等物および機能的均等物の両方を包含することを企図される。さらに、このような均等物は、現在公知の均等物および将来開発される均等物の両方、すなわち構造に関係なく同じ機能を発揮する、開発された任意の要素を含むことが企図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され記載された例示的な実施形態に限定されることを企図されない。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することが企図され、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物は、それによって保護されることが企図される。
【国際調査報告】