(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】がん治療における抗EpCAM抗体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230330BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230330BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230330BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230330BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20230330BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230330BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00 ZNA
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61K48/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/08
A61P35/04
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527232
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020060746
(87)【国際公開番号】W WO2021097433
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ハン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハオ-ニエン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、抗EpCAM抗体の治療的使用に関する。また、抗EpCAM抗体及びPD-L1免疫チェックポイント阻害剤の併用免疫療法が提供される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EpCAMの細胞外ドメイン(EpEX)内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニストを対象に投与することを含む、対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法。
【請求項2】
EpEX内のEGF様ドメインIが、EGF様ドメインのアミノ酸27~59からなるペプチド、又はEGFRに結合することができるその変異体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAMの発現又は活性を特異的に阻害する及び/又は低減させるリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子又は低分子干渉RNA(siRNA)分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EGFR、AKT、PD-L1及び/若しくはMAPKの発現、及び/又はFOXO3aのリン酸化をノックダウンする、並びに/或いはHtrA2の発現及び/又はFOXO3a核移行を増加させるshRNA又はsiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
shRNAが、GCAAATGGACACAAATTACAA(配列番号1)からなるヌクレオチド配列、又はEpCAMの発現若しくは活性を特異的に阻害する及び/若しくは低減させる変異体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAM活性を部分的又は完全に遮断することができる低分子、ペプチド、抗体又は抗体断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAM中和抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗体が、EpCAMを中和することができるEpAb2-6又は変異体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法であって、それを必要とする対象に、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニスト、及びPD-L1の発現又は活性化を阻害するのに有効な量でPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項10】
PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストがPD-L1チェックポイント阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PD-L1チェックポイント阻害剤が、MEDI4736、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストとともに、間欠的に、同時に、別々に又は連続的に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
がんが、黒色腫、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、慢性若しくは急性白血病、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん又はT細胞リンパ腫である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
がんが、EpCAM過剰発現がん、EGFR過剰発現又は活性化がん、AKT過剰発現又は過剰活性化がん、MAPK過剰発現又は活性化がん、FOXO3a不活性化がん、HtrA2不活性化がん又はPD-L1発現がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
がんが転移がん又は進行がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
がんが、転移性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がん、又は進行性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
対象がEpCAM過剰発現である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
対象が、少なくとも1つの抗がん療法又は抗がん剤で処置されている、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
EpEX内のEGF様ドメインIが、EGF様ドメインのアミノ酸27~59からなるペプチド、又はEGFRに結合することができるその変異体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAMの発現又は活性を特異的に阻害する及び/又は低減させるリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子又は低分子干渉RNA(siRNA)分子である、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EGFR、AKT、PD-L1及び/若しくはMAPKの発現、及び/又はFOXO3aのリン酸化をノックダウンする、並びに/或いはHtrA2の発現及び/又はFOXO3a核移行を増加させるshRNA又はsiRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
shRNAが、GCAAATGGACACAAATTACAA(配列番号1)からなるヌクレオチド配列、又はEpCAMの発現若しくは活性を特異的に阻害する及び/若しくは低減させる変異体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAM活性を部分的又は完全に遮断することができる低分子、ペプチド、抗体又は抗体断片である、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストが、EpCAM中和抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項25】
抗体が、EpCAMを中和することができるEpAb2-6又は変異体である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月14日に出願された米国仮出願第62/935,470号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されている配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年11月16日に作成された前記ASCIIコピーは、G4590-10700PCT_SeqListing.txtと命名され、サイズは2キロバイトである。
【0003】
本開示は、抗EpCAM抗体の治療的使用に関する。特に、抗EpCAM抗体及びPD-L1免疫チェックポイント阻害剤の併用免疫療法を記載する。
【背景技術】
【0004】
上皮細胞接着分子(EpCAM)は最も頻繁に発現する腫瘍関連抗原であり、ヒト腺癌及び扁平上皮癌の大多数で過剰発現し、患者における予後不良と関連付けられる。EpCAMは、腫瘍壊死因子アルファ変換酵素(TACE)とも呼ばれるディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)、並びにγ-セクレターゼによって連続的にプロセシングされる。これらの酵素によるプロセシングは、それぞれ細胞外ドメイン(EpEX)及び細胞内ドメイン(EpICD)を放出する。放出後、EpICDは4つ半のLIMドメインタンパク質2(FHL2)及びβ-カテニンと相互作用して、核に移行し、DNAに結合するLef-1と相互作用する複合体を形成する。EpICD複合体は、再プログラミング遺伝子及び上皮間葉移行(EMT)の上方制御を介して、腫瘍始原細胞(TIC)の腫瘍形成を促進する。加えて、EpEXの放出の増加は、EpICD生成を増強し、再プログラミング及びEMT遺伝子の発現を上方制御する。EpEXはEGFRに直接結合し、EGFRのリン酸化とその下流のシグナル伝達経路を刺激し得ることが報告されていた(5、8、10)。さらに、EpEX誘導性EGFRリン酸化は、ADAM17及びγ-セクレターゼを活性化して、EpEX及びEpICDの排出をさらに増加させることができる(Liang KH、Tso HC、Hung SH、Kuan, II、Lai JK、Ke FYら、Extracellular domain of EpCAM enhances tumor progression through EGFR signaling in colon cancer 16 cells. Cancer Lett 2018年;433巻:165~75頁; Pan M、Schinke H、Luxenburger E、Kranz G、Shakhtour J、Libl Dら、EpCAM ectodomain EpEX is a ligand of EGFR that counteracts EGF-mediated epithelial-mesenchymal transition through modulation of phospho-ERK1/2 in head and neck cancers. PLoS Biol 2018年;16巻:e2006624; Liang K-H、Lai J-K、Kuan, II、Tso H-C、Wu H-C. EpCAM/EpEX regulate tumor progression through EGFR signaling in colon cancer cells. AACR; 2017年)。しかしながら、EGFRに結合し、活性化するEpEXのドメインは、これまでに同定されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は驚くべきことに、EpCAMの細胞外ドメイン(EpEX)内のEGF様ドメインIがEGFRに結合し、AKTとMAPKシグナル伝達との両方を活性化して、それぞれFOXO3a機能を阻害し、PD-L1タンパク質を安定化することを見出した。EpCAM中和抗体による処置は、AKT及びFOXO3aのリン酸化を阻害し、FOXO3a核移行を増加させ、HtrA2発現を上方制御してアポトーシスを促進する一方で、PD-L1タンパク質レベルを減少させてCD8+ T細胞の細胞傷害活性を増強する。本開示における知見は、がんの悪性腫瘍におけるEpCAMシグナル伝達の根底にある分子メカニズムを明らかにするだけでなく、EpCAMの治療的標的化が、現在の免疫療法と組み合わせて良好に作用する可能性も示唆する。抗EpCAM抗体と抗PD-L1抗体との組合せは、転移における対象の腫瘍除去及び生存延長において予期せぬ効果を示し、対象におけるがん免疫療法に対する新しい併用療法を示唆する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニストを対象に投与することを含む、対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法を提供する。
【0007】
一実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIは、EGF様ドメインのアミノ酸27~59からなるペプチド、又はEGFRに結合することができるその変異体を含む。
【0008】
一部の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、EpCAMの発現又は活性を特異的に阻害する及び/又は低減させるリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子又は低分子干渉RNA(siRNA)分子である。一部のさらなる態様では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、EGFR、AKT、PD-L1及び/又はMAPKの発現、及び/又はFOXO3aのリン酸化をノックダウンする、並びに/或いはHtrA2の発現及び/又はFOXO3a核移行を増加させるshRNA又はsiRNAである。さらなる実施形態では、shRNAは、GCAAATGGACACAAATTACAA(配列番号1)からなるヌクレオチド配列、又はEpCAMの発現及び/若しくは活性を特異的に阻害する及び/若しくは低減させる変異体を含む。
【0009】
一部の他の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、EpCAM活性を部分的又は完全に遮断することができる低分子、ペプチド、抗体又は抗体断片である。
【0010】
一部の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、EpCAM中和抗体である。好ましくは、抗体は、EpCAMを中和することができるEpAb2-6又は変異体である。
【0011】
別の態様では、本開示は、対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニスト、及びPD-L1の発現又は活性化を阻害するのに有効な量でPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストを投与することを含む。
【0012】
一実施形態では、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、PD-L1チェックポイント阻害剤である。一部の実施形態では、PD-L1チェックポイント阻害剤は、MEDI4736、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブである。
【0013】
一部の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストとともに、間欠的に、同時に、別々に又は連続的に投与される。
【0014】
一部の実施形態では、がんは、黒色腫、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、慢性若しくは急性白血病、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん又はT細胞リンパ腫である。
【0015】
一実施形態では、がんは、EpCAM過剰発現がん、EGFR過剰発現又は活性化がん、AKT過剰発現又は過剰活性化がん、MAPK過剰発現又は活性化がん、FOXO3a不活性化がん、HtrA2不活性化がん又はPD-L1発現がんである。
【0016】
さらなる実施形態では、がんは転移がん又は進行がんである。さらなる実施形態では、がんは、転移性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がん、又は進行性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がんである。
【0017】
一実施形態では、対象は、EpCAM過剰発現である。一実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗がん療法又は抗がん剤で処置されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1A~1H:EpEXは、EGFRにそのEGF様ドメインIを介して結合する。(
図1A)HCT116細胞由来のEGFRに結合した親和性架橋EpEX-Fcの免疫沈降(IP)。
【
図1B】(
図1B)EpEX-FcをEGFR
ECD被覆ELISAプレートに添加し、TMB比色ペルオキシダーゼアッセイにより検出した。
【
図1C】(
図1C)293T細胞をEGFR-Flag及びEpCAM-V5でトランスフェクトした。IPは、抗V5抗体(左側パネル)又は抗Flag抗体(右側パネル)を用いて行われ、続いてウエスタンブロットを行った。
【
図1D】(
図1D)293T細胞は、EGFR-Flag及びEGFドメイン欠失突然変異体EpCAM-V5でトランスフェクトされた。タンパク質相互作用は、抗V5抗体を用いたIP及び抗Flag抗体を用いたウエスタンブロットによりプロービングされた。
【
図1E】(
図1E)EGFR
ECD-Flag及びEpEX-Fcトランスフェクションを用いた293T細胞由来の培地において、IPは、Dynabeads(登録商標)プロテインGで行われ、抗Flag抗体を用いたウエスタンブロットにより検出された。
【
図1F】(
図1F)293T細胞は、EGFR
ECD-Flag及びEGFドメイン欠失突然変異体EpEX-Fcで一時的にトランスフェクトされた。EGFRECD-Flag及び突然変異体EpEX-Fc相互作用は、Dynabeads(登録商標)プロテインGを用いたIP及び抗Flag抗体を用いたウエスタンブロットにより調べられた。
【
図1G】(
図1G)精製EGFR
ECD-6×His及びEGFドメイン欠失突然変異体EpEX-Fcはインキュベートされ、IPはDynabeads(登録商標)プロテインGを用いて行われ、ウエスタンブロットにより検出された。
【
図1H】(
図1H)HCT116細胞を飢餓状態にし、野生型又はEGFドメイン欠失突然変異体EpEXで処置し、EGFRシグナル伝達をウエスタンブロットにより分析した。N=3回の独立した実験。グラフデータは平均値±SEMで示される。
***p<0.001、両側スチューデントt検定。
【
図2A】
図2A~2H:EpEXは結腸がん細胞におけるFOXO3aの阻害を介して細胞アポトーシスを阻害する。(
図2A)HCT116細胞を飢餓状態にし、次に、指示された時間の間、2.5μg/mlのEpEX-Fcで処置した。全細胞溶解物をウエスタンブロットにより調べた。
【
図2B】(
図2B)AG1478(5μM)又はウォルトマンニン(1μM)で1時間処置した後、細胞をEpEX(2.5μg/ml)に1時間曝露した。FOXO3aのリン酸化をウエスタンブロットにより調べた。
【
図2C】(
図2C)EpEX処置された細胞の核画分中のFOXO3aのレベルをプローブした(上段パネル)。血清飢餓HCT116細胞をEpEX-Fcで2時間処置し、FOXO3aの位置を免疫蛍光により評価した(下段パネル)。
【
図2D】(
図2D)HCT116細胞を飢餓状態にし、20μg/mlのEpAb2-6で前処置し、次にEpEXで15分間処置した。AKT及びFOXO3aのリン酸化をウエスタンブロットにより分析した。
【
図2E】(
図2E)HCT116細胞を20μg/mlのEpAb2-6で6時間処置し、β-カテニン及びFOXO3aをHCT116細胞の核画分中に検出した。
【
図2F】(
図2F)対照IgG又はEpAb2-6処置したHCT116細胞におけるFOXO3a関連遺伝子発現(BIM、p21及びFasL)のqPCR分析。
【
図2G】(
図2G)HCT116細胞株をEpAb2-6で処置し(インビトロ)、(
図2H)HCT116皮下異種移植片を有するマウスをEpAb2-6で処置した(インビボ)。矢印は核におけるFOXO3aの細胞内局在を示す。核FOXO3a及びβ-カテニンによる細胞数の定量化を、EpAb2-6で処置したインビトロ(
図2G)及びインビボ(
図2H)で示す(平均値±SD、N=各群において200~300細胞、
*p<0.05)。棒グラフは平均値±SEMを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図2H】(
図2G)HCT116細胞株をEpAb2-6で処置し(インビトロ)、(
図2H)HCT116皮下異種移植片を有するマウスをEpAb2-6で処置した(インビボ)。矢印は核におけるFOXO3aの細胞内局在を示す。核FOXO3a及びβ-カテニンによる細胞数の定量化を、EpAb2-6で処置したインビトロ(
図2G)及びインビボ(
図2H)で示す(平均値±SD、N=各群において200~300細胞、
*p<0.05)。棒グラフは平均値±SEMを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図3A】
図3A~3H:EpEXは、FOXO3a媒介性HtrA2発現を阻害することによってアポトーシスを妨げる。(
図3A)HCT116細胞を対照IgG又はEpAb2-6で6時間処置し、アポトーシス関連タンパク質をヒトアポトーシスアレイキットによりプロービングした。
【
図3B】(
図3B)HtrA2の発現をイムノブロッティング及びqPCR分析により調べた。
【
図3C】(
図3C)EpAb2-6は、結腸がん細胞においてミトコンドリアのアポトーシスタンパク質であるHtrA2及びシトクロムcの放出を誘導した。
【
図3D】(
図3D)ミトコンドリア膜電位(Δψm)脱分極を有する細胞のパーセンテージをEpAb2-6処置後に測定した。
【
図3E】(
図3E)ヒトHtrA2近位プロモーター駆動ルシフェラーゼレポーターのトランスフェクションを伴うHCT116細胞を対照IgG又はEpAb2-6で処置した。ルシフェラーゼ活性アッセイを行って、HtrA2プロモーターの活性を評価した。結果は、IgG対照と比較した倍数誘導として表される。統計的差異は、一方向ANOVA及びBonferroni多重比較検定により決定された。
【
図3F】(
図3F)HtrA2プロモーターへのFOXO3a結合の定量的ChIP分析を行った。
【
図3G】(
図3G)HtrA2ノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、アポトーシス細胞をフルオレセインアネキシンV-FITC/PI二重標識により定量化した。統計的差異は、一方向ANOVA及びBonferroni多重比較検定により決定された。
【
図3H】(
図3H)HtrA2ノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、ミトコンドリア膜電位(Δψm)脱分極を有する細胞のパーセンテージを測定した。統計的差異は、一方向ANOVA及びBonferroni多重比較検定により決定された。N=3回の独立した実験。グラフデータは11の平均値±SEMで示される。
*p<0.05、
**p<0.01、
****p<0.001。
【
図4A】
図4A~4L:EpCAMはPD-L1発現と相関する。(
図4A)PBMC注入の有無にかかわらず、NSGマウスにおけるshLuc又はshEpCAM H441細胞の腫瘍増殖。
【
図4B】(
図4B)相対的腫瘍サイズを評価し、重量をグラフに示す。
【
図4C】(
図4C)腫瘍組織におけるCD8+ T細胞の評価。
【
図4D】H460及びH441細胞におけるPD-L1の(
図4D)ウエスタンブロット及び(
図4E)qRT-PCR分析。
【
図4E】H460及びH441細胞におけるD-L1の(
図4D)ウエスタンブロット及び(
図4E)qRT-PCR分析。
【
図4F】(
図4F)H460及びH441細胞におけるPD-L1及びEpCAMのフローサイトメトリー分析。
【
図4G】(
図4G)H460及びH441細胞を、指示された間隔について50μMシクロヘキシミド(CHX)で処置し、ウエスタンブロットにより分析した。経時的なタンパク質発現をグラフに示す。
【
図4H】(
図4H)EpCAMノックダウンH441細胞におけるPD-L1のタンパク質及びmRNAレベルを、それぞれウエスタンブロット及びqRT-PCRにより分析した。
【
図4I】(
図4I)EpCAMノックダウンH441細胞を指示された間隔で50μM CHXで処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。経時的なタンパク質発現をグラフに示す。
【
図4J】(
図4J)EpCAMノックダウンH441細胞における外因性PD-L1の発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図4K】(
図4K)肺がん組織アレイでEpCAMとPD-L1との免疫組織化学染色を行い、肺がん患者におけるEpCAMとPD-L1発現との間の正の相関が示される。
【
図4L】(
図4L)肺がん標本におけるT細胞活性化及び増殖のGSEA濃縮プロファイル。
【
図5A】
図5A~5J:EpEXは、EGFR-MEKシグナル伝達を介してPD-L1タンパク質を安定化する。(
図5A)H441細胞をTAPI(ADAM17阻害剤)又はDAPT(γ-セクレターゼ阻害剤)で24時間処置し、PD-L1発現をウエスタンブロット(左側)及びqRT-PCR(右側)により分析した。
【
図5B】(
図5B)H441細胞を指示された濃度のEpEX又はEGFで1時間処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図5C】(
図5C)EpEX(45nM)又はEGF(16.5nM)で指示された間隔で処置した後、PD-L1発現をウエスタンブロット(左側)又はqRT-PCR(右側)により分析した。
【
図5D】(
図5D)EGFRノックダウンH441細胞をEpEX又はEGFで1時間処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図5E】(
図5E)PD-L1をゲフィチニブ、U1026又はウォルトマンニンで1時間前処置し、続いてEpEX又はEGFで1時間処置したH441細胞におけるウエスタンブロットにより測定した。
【
図5F】(
図5F)H441細胞をEpAb2-6又はアイソタイプで16時間処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した(上段パネル)。PD-L1発現は、EpAb2-6又はアイソタイプで処置したH441由来の異種移植片腫瘍において分析された(下段パネル)。
【
図5G】(
図5G)細胞をEpAb2-6とともに16時間インキュベートした後、PD-L1のタンパク質半減期は、指示された間隔で50μM CHXで処置し、ウエスタンブロット分析により測定された。経時的なタンパク質発現をグラフに示す。
【
図5H】(
図5H)PD-L1-eGFP-Flagを発現するH441細胞をEpAb2-6で16時間、及びMG132で5時間処置した。PD-L1-eGFP-Flagのポリユビキチン化を抗Flagによる免疫沈降後にウエスタンブロットにより分析した。
【
図5I】(
図5I)MCF7、BT474及びCal27細胞をEpAb2-6又はアイソタイプで16時間処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図5J】(
図5J)EpAb2-6又はアイソタイプで16時間処置した後、H441細胞をT細胞と16時間共培養し、アポトーシス細胞をフルオレセインアネキシンV-FITC/DAPI二重染色により定量化した。
【
図6A】
図6A~6H:EpAb2-6は、転移及び同所性CRCモデルにおける生存期間中央値を延長し、PBMC-CDX異種移植モデルにおける抗PD-L1療法の有効性を改善する。(
図6A)GFPを一時的に発現するHCT116細胞は、EpAb2-6を用いてSCIDマウスの尾静脈に注射された。対照群のマウス(EpAb2-6処置なし)に、同用量の対照IgGを注射した。N=3回の独立した実験。データは平均値±SDで示される。
**p<0.01。
【
図6B】(
図6B)NOD/SCIDマウスに1×10
6個のSW620細胞を静脈内注射し、続いて対照IgG又はEpAb2-6のいずれかで処置した(N=6)。生存曲線によれば、EpAb2-6で処置されたマウスは、対照IgGで処置されたマウスよりも高い生存率を示した。
【
図6C】(
図6C)NSGマウスにHCT116-Luc細胞を同所移植し、次に、腫瘍接種後の8日目に開始して対照IgG又はEpAb2-6で処置した。抗体注射は、尾静脈を介して2日ごとに16日間行われた。IVIS 200イメージングシステムを用いて生物発光を調べることにより、腫瘍増殖をモニタリングした。
【
図6D】(
図6D)Kaplan-Meier生存プロット及び生存期間中央値は、両処置群(N=各群8)で示される(P<0.005、ログランク検定)。
【
図6E】(
図6E)PBMC細胞株由来の異種移植片(CDX)モデルにおけるEpAb2-6及び/又はアテゾリズマブの処置効果を評価するための実験に関するスキーマ。
【
図6F】(
図6F)EpAb2-6及び/又はアテゾリズマブ処置されたPBMC-CDXマウスにおけるH441細胞の腫瘍増殖。
【
図6H】(
図6H)腫瘍組織中のCD8+ T細胞を定量化した。
【
図7】EpCAMシグナル伝達は腫瘍進行を制御する。
【
図8A】
図8A~8C:EGFR-AKTシグナル伝達経路は、FOXO3aの核局在を減少させる。(
図8A及び8B)HCT116細胞を血清飢餓状態にし、次に10μM MG132の有無にかかわらず1時間前処置した後、EGF(100ng/ml)で処置し、指示された時間に抽出した。核画分及び細胞質画分は、指示された抗体を用いたイムノブロッティングにより分析された。
【
図8B】(
図8A及び8B)HCT116細胞を血清飢餓状態にし、次に10μM MG132の有無にかかわらず1時間前処置した後、EGF(100ng/ml)で処置し、指示された時間に抽出した。核画分及び細胞質画分は、指示された抗体を用いたイムノブロッティングにより分析された。
【
図8C】(
図8C)HCT116細胞をEGFで2時間処置し、FOXO3aの細胞内局在を免疫蛍光染色により評価した。
【
図9A】
図9A~9G:EpAb2-6は、EpICDの放出及びβ-カテニンの核移行を減少させる。HCT116細胞を対照IgG(20μg/ml)又はEpAb2-6(20μg/ml)のいずれかで24時間処置した。続いて、細胞タンパク質を(
図9A)γ-セクレターゼ及び(
図9B)TACE活性アッセイキットを用いて調べた。
【
図9B】HCT116細胞を対照IgG(20μg/ml)又はEpAb2-6(20μg/ml)のいずれかで24時間処置した。続いて、細胞タンパク質を(
図9A)γ-セクレターゼ及び(
図9B)TACE活性アッセイキットを用いて調べた。
【
図9C】(
図9C)HCT116細胞をEpAb2-6(0~20μg/ml)で24時間処置し、培養上清を抗EpEX抗体でイムノブロットした。
【
図9D】(
図9D)HCT116細胞をEpAb2-6(20μg/ml)で6時間処置し、活性β-カテニンの細胞内局在を免疫蛍光染色により評価した。
【
図9E】(
図9E)EpAb2-6処置されたHCT116細胞における再プログラミング及びEMT遺伝子のリアルタイムqPCR分析mRNAレベル。
【
図9F】(
図9F)結腸がん細胞におけるEpAb2-6の効果を固定-非依存性アッセイにより調べた。各群の代表的な1フィールドの結果を示す。コロニー形成データの結果の定量化を示す。
【
図9G】(
図9G)結腸がん細胞におけるEpAb2-6の効果をスフェロイド形成により調べた。結腸がん細胞からの球状体形成を3回カウントした。IgG又はEpAb2-6で処置した後の腫瘍球の代表的な画像を示す。バー、5mm。N=3回の独立した実験。誤差バーは±SDを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図10A】
図10A~10D:EGFR、AKT又はFOXO3aノックダウン及びEpCAMノックアウトは、EpAb2-6誘導性アポトーシスを減少させる。(
図10A)EpCAMノックアウト(KO)、(
図10B)EGFR-、(
図10C)AKT-、(
図10D)FOXO3aノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、アポトーシス細胞をフルオレセインコンジュゲートしたアネキシンV-FITC/PI二重標識により定量化した。
【
図10B】(
図10A)EpCAMノックアウト(KO)、(
図10B)EGFR-、(
図10C)AKT-、(
図10D)FOXO3aノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、アポトーシス細胞をフルオレセインコンジュゲートしたアネキシンV-FITC/PI二重標識により定量化した。N=3回の独立した実験。棒グラフは平均値±SEMを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図10C】(
図10A)EpCAMノックアウト(KO)、(
図10B)EGFR-、(
図10C)AKT-、(
図10D)FOXO3aノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、アポトーシス細胞をフルオレセインコンジュゲートしたアネキシンV-FITC/PI二重標識により定量化した。N=3回の独立した実験。棒グラフは平均値±SEMを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図10D】(
図10A)EpCAMノックアウト(KO)、(
図10B)EGFR-、(
図10C)AKT-、(
図10D)FOXO3aノックダウンHCT116細胞をEpAb2-6で処置し、アポトーシス細胞をフルオレセインコンジュゲートしたアネキシンV-FITC/PI二重標識により定量化した。N=3回の独立した実験。棒グラフは平均値±SEMを示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図11A】
図11A~11C:EpCAM発現は、H460細胞においてPD-L1タンパク質を安定化する。ビヒクル又はEpCAM発現ベクターでのトランスフェクション後、PD-L1タンパク質及びmRNA発現レベルを(
図11A)ウエスタンブロット又は(
図11B)qRT-PCRにより分析した。
【
図11B】ビヒクル又はEpCAM発現ベクターでのトランスフェクション後、PD-L1タンパク質及びmRNA発現レベルを(
図11A)ウエスタンブロット又は(
図11B)qRT-PCRにより分析した。
【
図11C】(
図11C)H460細胞を指示された間隔で50μM CHXで処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。経時的なタンパク質発現をグラフに示す。
【
図12】
図12A~12B:結腸腫瘍組織アレイにおけるEpCAM及びPD-L1の発現。(
図12A)EpCAM及び(
図12B)PD-L1の免疫組織化学的染色を結腸腫瘍組織アレイ上で行った。
【
図13A】
図13A~13D:EpCAMはPD-L1タンパク質発現に重要である。(
図13A、B)飢餓及びIFNγで16時間処置した後、H441細胞をEpEX又はEGFで1時間処置し、PD-L1発現を(
図13A)qRT-PCR及び(
図13B)ウエスタンブロットにより分析した。
【
図13B】(
図13A、B)飢餓及びIFNγで16時間処置した後、H441細胞をEpEX又はEGFで1時間処置し、PD-L1発現を(
図13A)qRT-PCR及び(
図13B)ウエスタンブロットにより分析した。
【
図13C】(
図13C、D)H441をTAPI、DAPT及びIFNγの有無にかかわらず24時間処置し、PD-L1発現を(
図13C)qRT-PCR及び(
図13D)ウエスタンブロットにより分析した。
【
図13D】(
図13C、D)H441をTAPI、DAPT及びIFNγの有無にかかわらず24時間処置し、PD-L1発現を(
図13C)qRT-PCR及び(
図13D)ウエスタンブロットにより分析した。
【
図14A】
図14A~14F:MAPK経路はPD-L1タンパク質の安定性を増加させる。(
図14A)H441細胞は、指示された間隔でDMSO、U1026又はウォルトマンニンで処置され、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図14B】(
図14B)H441細胞をU0126で6時間処置し、CHXで指示された間隔で処置し、PD-L1発現をウエスタンブロットにより分析した。
【
図14C】(
図14C)PD-L1-Mycを発現するH441細胞は、トラメチニブ、U0126又はSCH772984で6時間処置され、全細胞溶解物をウエスタンブロットに供した。
【
図14D】(
図14D)PD-L1-eGFP-Flagを発現するH441細胞をMG132で5時間処置した。全細胞溶解物を抗Flag抗体で免疫沈降させ、PD-L1-eGFP-Flagのポリユビキチンをウエスタンブロットにより分析した。
【
図14E】(
図14E)PD-L1発現は、ウエスタンブロット法によりshLuc又はshGSK3βを発現する細胞で分析した。
【
図14F】(
図14F)shLuc又はshGSK3β細胞を16時間、飢餓状態にし、次にEpEX又はEGFで1時間処置した。全細胞溶解物をウエスタンブロットに供した。
【
図15】EpAb2-6処置は、HCT116-Luc腫瘍を有する同所性モデルにおいて有意な体重変化を示さない。各群の平均体重を指示された日に示す。誤差バーは平均値±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語及びその他の用語の追加定義は、本明細書を通して記載することができる。以下に記載する用語の定義が、参照により組み込まれる出願又は特許における定義と矛盾する場合、この出願に記載される定義は、その用語の意味を理解するために使用されるべきである。
【0020】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に他の意味を示さない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、用語「又は」は、文脈が明確に他の意味を示さない限り、「及び」を含むことを意図している。本開示の実施又は試験において、本明細書に記載されたものと類似又は同等の方法及び材料を使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、包含的論理和を表すことを意図している。すなわち、「X及び/又はY」は、例えば、X若しくはY又は両方を意味することが意図される。さらなる例として、「X、Y及び/又はZ」は、X若しくはY若しくはZ、又はそれらの任意の組合せを意味することが意図される。
【0022】
本明細書で使用する場合、本明細書で言及される用語「阻害すること」、「除去すること」、「減少すること」、「低減すること」若しくは「防げること」、又はこれらの用語の任意の変形は、所望の結果を達成するための測定可能な減少又は完全な阻害を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用される場合、用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、それらの断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、一本鎖(ScFv)、それらの突然変異体、抗体部分(例えば、ドメイン抗体)を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態も包含する。抗体は、任意のクラスの抗体、例えば、IgG、IgA又はIgM(又はそのサブクラス)を含み、抗体は任意の特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分類してもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構造は周知である。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「個体」又は「対象」は、脊椎動物、例えば、ヒト又は非ヒト動物、例えば、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜、スポーツ動物、げっ歯類及びペットが含まれる。非ヒト動物対象の非限定的な例としては、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター及びモルモット;ウサギ;イヌ;ネコ;ヒツジ;ブタ;ヤギ;ウシ;ウマ;並びに非ヒト霊長類、例えば、類人猿及びサルが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「処置すること」又は「処置」(及びその文法上の変形、例えば、「処置する」)とは、処置される個体又は細胞の疾患経過を変更させる試みにおける臨床的介入を指し、予防のために又は臨床病理学の経過中のいずれかに行うことができる。処置の治療効果には、限定されないが、疾患の発生又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行速度を減少させること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」(又は「治療有効量」)は、処置に際して有益又は所望の臨床結果に影響を与えるのに十分な量である。ある種の実施形態では、治療有効量とは、抗がん効果、生存の延長及び/又は再発までの期間の延長のうちの1つ以上を達成することができる量を指す。例えば、限定されないが、治療有効量は、がんの症状を最小化し、予防し、低減し、及び/若しくは軽減する阻害剤又はアンタゴニストの量であり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「抗がん効果」は、凝集がん細胞量の低減、がん細胞増殖速度の低減、がん進行の低減、がん細胞増殖の低減、腫瘍量の低減、腫瘍体積の低減、腫瘍細胞増殖の低減、腫瘍増殖速度の低減及び/又は腫瘍転移の低減のうちの1つ以上を指す。ある種の実施形態では、抗がん効果は、がんと診断された患者において、完全奏効、部分奏効、安定疾患(進行又は再発を伴わない)、後の再発又は無増悪生存を伴う奏効を指すことができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「転移がん」とは、それが開始された身体の部位(原発部位)から身体の他の部位に広がったがんを指す。がん細胞が腫瘍を離れた場合、血流又はリンパ系を介して生体の他の部位に移動することがあり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「進行がん」は、治すことができないがんを記載するために最もしばしば使用される。これは、処置によって完全に消えることはなく、完全に消失することがないがんを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「相乗的」は、単一の治療法の相加的効果よりも効果的である治療法の組合せを指す。
【0031】
EpEX、EGFR、AKT、FOXO3及びHtrA2内のEGF様ドメインI間のクロストーク
EpCAMを過剰発現する癌腫細胞は幹細胞様の特徴を有し、それらの存在は高い再発率、転移率及び薬剤耐性率をもたらす。AKTは、アポトーシス促進タンパク質を不活性化することによって部分的に細胞生存を促進するEGFRシグナル伝達の主要なメディエーターである。AKTリン酸化によって不活性化されるこのような1つのアポトーシス促進タンパク質は、フォークヘッド転写因子O3a(FOXO3a)である。FOXO3aはFKHRL-1とも呼ばれ、フォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーである。FOXOタンパク質によって活性化された遺伝子は、一般に、細胞増殖を制限し、死を促進するように機能するため、このファミリーは、腫瘍抑制因子と考えられる。活性化された場合、FOXO3aは核に蓄積し、アポトーシス、及び細胞周期制御、例えば、BIM、FasL及びp21に関与する様々な遺伝子の転写を増強する。さらに、AKT不活性化はアノイキス(anoikis)において必須のステップであり、PI3K/AKT経路によるFOXO3a調節はこの不活性化に必須である可能性がある。
【0032】
本開示は、EpEX内のEGF様ドメインIがEGFRに結合し、AKTとERK1/2経路との両方を活性化することを報告する。EpEX誘導性AKT活性化はFOXO3a活性を阻害し、HtrA2転写を減少させる。さらに、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニスト(例えば、EpCAMに対する治療抗体(好ましくは、EpAb2-6))は、FOXO3aの核移行を促進し、HtrA2発現を増加させる。したがって、本開示は、対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法を提供し、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニストを対象に投与することを含む。
【0033】
当業者は、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストの適切な投薬量を決定することができる。必要とされる正確な量は、対象によって、対象の病態、身体的条件、年齢、性別、種及び体重、組成物の具体的な同一性及び製剤化などに応じて変化する。至適な治療応答を誘導するために、投薬レジメンを調整することができる。例えば、数回の分割用量を毎日投与することができるか、又は治療状況の緊急性によって指示されるように用量を比例的に低減させることができる。適切な有効量は、通常の実験のみを用いて当業者であれば決定することができる。
【0034】
EGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニスト
EpCAM細胞外ドメインでは、それはアミノ酸27~59(第1のEGF様ドメイン)及びアミノ酸66~135 (第2のEGF様ドメイン)に2つのEGF様ドメイン、並びにシステイン不含モチーフを含有する(Schnell U、Kuipers J、Giepmans BN. EpCAM proteolysis: new fragments with distinct functions? Bioscience reports 2013頁;33巻:e00030)。驚くべきことに、EGF様ドメインI欠失EpCAM突然変異体(EpCAMΔEGFI)はEGFRへの減少した結合を示し、一方、EGF様ドメインII欠失EpCAM突然変異体(EpCAMΔEGFII)はEGFRとの増強した相互作用を示した。本開示のある種の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIは、EGF様ドメインのアミノ酸27~59からなるペプチド、又はEGFRに結合することができるその変異体を含む。
【0035】
EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストには、EGF様ドメインIを標的化する化合物、分子、化学物質、ポリペプチド及びタンパク質が含まれ、それらはAKTとERK1/2経路との両方を活性化することができる。また、本開示は、EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストが、腫瘍球形成の阻害を介してがんの悪性腫瘍を抑制することができることを予期せずに見出した。さらに、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストの処置は、転移及びがんにおける対象の生存を顕著に延長する。
【0036】
EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストの非限定的な例としては、EpCAMの発現又は活性を特異的に阻害する及び/又は低減させるリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子及び低分子干渉RNA(siRNA)分子が挙げられる。EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストは、EGFR、AKT、PD-L1及び/若しくはMAPKの発現、及び/又はFOXO3aのリン酸化をノックダウンする、並びに/或いはHtrA2の発現及び/若しくはFOXO3a核移行を増加させる。いくつかの例では、EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストは、EpCAMの発現又は活性を阻害する及び/又は低減させる、EGFR、AKT、PD-L1及び/若しくはMAPKの発現及び/又はFOXO3aのリン酸化をノックダウンする、並びに/或いはHtrA2の発現及び/又はFOXO3a核移行を増加させる、EGF様ドメインI核酸配列の少なくとも一部と相同なアンチセンス、shRNA又はsiRNA核酸配列である。EGF様ドメインI配列に対する部分の相同性は、少なくとも約75%若しくは少なくとも約80%若しくは少なくとも約85%若しくは少なくとも約90%若しくは少なくとも約95%若しくは少なくとも約98%であり、相同性パーセントは、例えば、BLAST又はFASTAソフトウエアによって決定することができる。ある種の非限定的な実施形態では、相補的部分は、少なくとも10ヌクレオチド若しくは少なくとも15ヌクレオチド若しくは少なくとも20ヌクレオチド若しくは少なくとも25ヌクレオチド若しくは少なくとも30ヌクレオチドを構成することができ、アンチセンス核酸、shRNA又はsiRNA分子は、長さが最大15若しくは最大20若しくは最大25若しくは最大30若しくは最大35若しくは最大40若しくは最大45若しくは最大50若しくは最大75若しくは最大100ヌクレオチドであり得る。アンチセンス、shRNA又はsiRNA分子は、DNA又は非定型若しくは天然に存在しない残基、例えば、限定されないが、ホスホロチオネート残基を含むことができる。好ましくは、shRNAは、GCAAATGGACACAAATTACAA(配列番号1)からなるヌクレオチド配列、又はEpCAMの発現及び/若しくは活性を特異的に阻害する及び/若しくは
低減させる変異体を含む。
【0037】
本開示のRNA分子は、ベクターから発現され得るか又は化学的若しくは合成的に産生され得る。適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、その配列が公知である遺伝子について当該技術分野において周知である。
【0038】
ある種の非限定的な実施形態では、EGF様ドメインIの阻害剤又はアンタゴニストは、EpCAM活性を部分的又は完全に遮断することができる低分子、ペプチド、抗体又は抗体断片であり得る。EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、ドメインIを標的化するEpCAM中和抗体であり得る。好ましくは、抗体は、ドメインIを標的化し、EpCAMを中和することができるEpAb2-6(UniProt ID: P16422)又は変異体である。
【0039】
EpAb2-6はEpEXを標的化して、それを遮断し、アポトーシスを誘導する(Liang KH、Tso HC、Hung SH、Kuan, II、Lai JK、Ke FYら、Extracellular domain of EpCAM enhances tumor progression through EGFR signaling in colon cancer 16 cells. Cancer Lett 2018年;433巻:165~75頁; Liao MY、Lai JK、Kuo MY、Lu RM、Lin CW、Cheng PCら、An anti-EpCAM antibody EpAb2-6 for the treatment of colon cancer. Oncotarget 2015年;6巻:24947~68頁)。EpEXの機能を遮断することにより、EpAb2-6処置はEpEX/EGFR/ADAM17軸を中断し、これはEpCAM切断を促進する正のフィードバックループを表し、その後EpEX及びEpICD産生を増加させる。本開示は、驚くべきことに、EpAb2-6処置が腫瘍球形成を阻害し、したがってEpAb2-6ががん悪性腫瘍を抑制することができることを見出した。
【0040】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニスト、及びPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストの組合せ
生存シグナルの媒介に加えて、EGFRの活性化は免疫回避を誘発するために重要である。EGFR活性化突然変異は、EGFR駆動肺がんのマウスモデル及び突然変異EGFRの発現を伴う気管支上皮細胞におけるPD-L1発現の増加と関連付けられることが報告された。さらに、EGFR阻害薬は、活性化EGFRを有するNSCLC細胞株におけるPD-L1発現を低減させることができ、EGFRシグナル伝達が免疫回避を引き起こす可能性があることを示唆する。さらなる研究は、EGFRリガンド、例えば、EGFは、主に翻訳後修飾のレベルでPD-L1発現を誘導することを示した。EGFは、PD-L1グリコシル化を誘導することによりPD-L1を安定化することが示され、β-TrCPによるPD-L1のGSK3依存性プロテアソーム分解を妨げる。
【0041】
さらに、EGFRシグナル伝達の別の重要な軸であるMAPKシグナル伝達経路は、PD-L1 mRNA発現と関連付けられる。EGFR活性化はp-ERK1/2/p-c-Junを介してPD-L1発現を増加させることが報告された。PD-L1転写を促進することに加えて、MAPKシグナル伝達は、TPP活性を減弱させることによってPD-L1 mRNAも安定化する。EpCAMはEGFRシグナル伝達の活性化因子であるため、EpCAMは免疫監視からの回避を促進する可能性がある。しかしながら、EpCAM媒介性免疫抑制とそのメカニズムは完全に解明されておらず、不明確のままである。
【0042】
全ての抗体ベースの免疫療法のうち、抗PD-1/PD-L1療法は種々の悪性腫瘍の処置において最も有益な結果を有する。この事実は、PD-L1発現を制御するプロセスを深く理解することの重要性を強調する。本開示はまた驚くべきことに、EpCAM媒介性PD-L1安定化がEpEX-EGFR-ERKシグナル伝達軸を介して免疫監視から回避することをもたらし; EpCAMがPD-1/PD-L1経路を活性化してT細胞機能を抑制することによって抗腫瘍免疫を阻害することを見出した。EpEXは、mRNAレベルではなくPD-L1タンパク質の安定性を増加させるが、EGFR又はMAPKシグナル伝達経路の遮断は、EpEX媒介性PD-L1タンパク質の安定化を減弱させる。さらに、抗PD-L1抗体とEpCAM中和抗体との組合せは、増強された治療効果及び高いレベルの腫瘍局在性CD8+ T細胞を示す。
【0043】
したがって、本開示は、対象におけるがんを処置、阻害又は除去する方法を提供し、それを必要とする対象に、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する有効量の阻害剤又はアンタゴニスト、及びPD-L1の発現又は活性化を阻害するのに有効な量でPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストを投与することを含む。
【0044】
一実施形態では、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、PD-L1チェックポイント阻害剤である。
【0045】
一部の実施形態では、PD-L1チェックポイント阻害剤には、限定されないが、PD-L1と、その結合パートナー、例えば、PD-1及びB7-1の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少し、遮断し、阻害し、抑制し、又は干渉する分子が含まれる。一部の実施形態では、PD-L1チェックポイント阻害剤は、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。一部の実施形態では、PD-L1チェックポイント阻害剤は、PD-L1の、PD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。
【0046】
抗PD-L1抗体の非限定的な例としては、MEDI4736、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブが挙げられる。
【0047】
EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、組み合わせて存在することができ、及び/又は治療有効量で、一部の実施形態では、阻害剤又はアンタゴニストがPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストとともに投与される場合、相乗効果を生じる治療有効量で患者に投与することができる。このような有効量は、性別、大きさ、年齢、がんタイプ、がんの病期、投与経路、患者の耐性、毒性又は副作用、及び適切な患者の投薬量を確立する場合に熟練した医師が考慮する他の因子を含む、患者の特性に応じて変化し得る。
【0048】
治療の組合せの相乗効果は、がん腫瘍を有する患者への、治療剤のうちの1つ以上のより低い投薬量の使用及び/又はより少ない頻度の前記治療剤の投与を可能にする。より低い投薬量の治療剤を利用する能力及び/又は前記療法をより少ない頻度で投与する能力は、固形肺がん腫瘍の処置における前記療法の効力を低減させることなく、対象への前記療法の投与に関連付けられる毒性を低減させる。加えて、相乗効果は、がん腫瘍の管理、処置又は改善における治療剤の改善された効力をもたらすことができる。治療剤の組合せの相乗効果は、いずれかの単独療法の使用に関連付けられる有害な又は望ましくない副作用を回避又は低減させることができる。
【0049】
組合せ(併用)
また、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニスト、及びPD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストを含む、がん免疫療法のための組合せが提供される。一部の実施形態では、EpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストは、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニスト、又はEpEX内のEGF様ドメインIを標的化する阻害剤又はアンタゴニストとともに製剤化することができ、PD-L1を標的化する阻害剤又はアンタゴニストを別々に製剤化することができる。組合せの各成分は、別個の個別の容器に供給することができる。
【0050】
ある種の非限定的な実施態様では、医薬組合せは、経口投与に適した当該技術分野において周知である薬学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。このような担体は、医薬組成物を、処置される患者による経口又は鼻腔摂取のために、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。ある種の実施形態では、医薬組合せは固体投与剤形であり得る。ある種の実施形態では、錠剤は即放性錠剤であり得る。或いは又は追加的に、錠剤は、長期又は制御放出錠剤であり得る。ある種の実施形態では、固体投薬量は、即時放出部分と、長期又は制御放出部分との両方を含むことができる。
【0051】
ある種の実施形態では、医薬組合せは、非経口投与に適した当該技術分野において周知である薬学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。用語「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、本明細書で使用される場合、経腸及び局所投与ではなく、通常は注射による投与様式を指し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射並びに注入が含まれる。例えば、限定されないが、本開示の組合せは、薬学的に許容される担体、例えば、生理食塩水中で患者に静脈内投与することができる。
【0052】
がんの処置
本開示の方法及び組合せは、対象におけるがんを処置するために使用することができる。
【0053】
処置のための好ましいがんの非限定的な例としては、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん及び肺がんが挙げられる。本発明の方法を用いて処置され得る他のがんの例としては、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、慢性若しくは急性白血病、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓又は尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境的に誘導されたがん、例えば、アスベストによって誘導されたもの、及び前記がんの組合せが挙げられる。
【0054】
一部の実施形態では、がんは、EpCAM過剰発現がん、EGFR過剰発現又は活性化がん、AKT過剰発現又は過剰活性化がん、MAPK過剰発現又は活性化がん、FOXO3a不活性化がん、HtrA2不活性化がん又はPD-L1発現がんである。さらなる実施形態では、がんは転移がん又は進行がんである。さらなる実施形態では、がんは、転移性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がん、又は進行性結腸直腸がん若しくは小細胞肺がんである。
【0055】
したがって、本明細書に記載される組合せは、第2、第3、第4、第5、第6又はそれ以上の処置ラインとして、それを必要とする対象に投与することができる。一実施形態では、対象は、EpCAM過剰発現である。本明細書に記載される組合せは、少なくとも1つの抗がん療法又は抗がん剤で処置されている対象に投与することができる。ある種の例では、対象は、例えば、化学療法、放射線療法、手術、標的療法、免疫療法又はそれらの組合せを含む少なくとも1つの抗がん療法を受けたことがある。対象は、少なくとも1つの抗がん剤での処置に対して抵抗性/不応性のがんを有することができる。
【0056】
本発明の実施は、特に断らない限り、十分に当業者の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学免疫組織化学及び免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、文献、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版 (Sambrook、1989年); 「Oligonucleotide Synthesis」 (Gait、1984年); 「Animal Cell Culture」 (Freshney、1987年); 「Methods in Enzymology」 「Handbook of Experimental Immunology」 (Weir、1996年); 「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」 (Miller及びCalos、1987年); 「Current Protocols in Molecular Biology」 (Ausubel、1987年); 「PCR: The Polymerase Chain Reaction」、(Mullis、1994年); 「Current Protocols in Immunology」 (Coligan、1991年)において十分に説明される。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの作製に適用可能であり、それ自体、本発明の作製及び実施において考慮され得る。続くセクションでは、特定の実施形態のための特に有用な技術について検討する。
【0057】
本開示は、以下の実施例によってさらに例証されるが、さらに限定するものと解釈されるべきではない。本出願を通じて引用される全ての図並びに全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0058】
[実施例]
材料及び方法
化学物質及び抗体
ヒトEpCAM及びp84に対する抗体をAbcamから購入し、β-カテニンに対する抗体をSanta Cruzから購入した。抗α-チューブリン抗体はSigma-Aldrichから購入した。総ERK及びThr202/Tyr204-リン酸化ERK、総AKT及びSer473-リン酸化AKT、総FOXO3a、Ser253-リン酸化FOXO3a、Ser318/321-リン酸化FOXO3a、及びThe32-リン酸化FOXO3a、活性(非リン酸化Ser33/Ser37/Thr41)β-カテニン、HtrA2、チトクロームc、COX IV、XIAP及びPD-L1を検出するポリクローナル抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。U0126(MEK阻害剤)、ウォルトマンニン(PI3K阻害剤)及びMG132(プロテアソーム阻害剤)をSelleck Chemicalsから入手した。
【0059】
細胞培養
ヒト肺腺癌細胞(H441)、肺癌細胞(H460)、胚腎細胞(HEK293T)、結腸直腸癌細胞(HCT116)、結腸直腸腺癌細胞(SW620)をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。H441及びH460をRPMI 1640培地(Gibico)中で培養し、HEK293T、HCT116及びSW620細胞をDMEM(Gibico)中で培養した。全ての細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS; Gibco)及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン(P/S; Gibco)を添加した馴化培地中、37℃で5%CO2の加湿インキュベーターに維持された。
【0060】
ウエスタンブロット
細胞は、プロテアーゼ阻害剤(Roche)及びホスファターゼ阻害剤(Roche)を含有するRIPA緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1% Nonidet P-40、1%デオキシコール酸ナトリウム、2.5mMピロリン酸ナトリウム)で溶解して、全細胞溶解物を抽出した。次に、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)を用いて溶解物を定量化した。溶解物を5×試料緩衝液(50mM Tris-HCl、pH6.8、2% SDS、β-メルカプトエタノール、0.1%ブロモフェノールブルー、10%グリセロール)と混合し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、PVDF膜(Millipore)に転写した。PVDF膜上の非特異的抗体結合部位は、TBS-T(0.1% Tween 20を含有するTBS緩衝液)中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングされ、膜は、指示された抗体とともに一晩、4℃でインキュベートされ、続いて、HRPコンジュゲートした二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)とともに室温(RT)で1時間インキュベートされた。その後、タンパク質バンドを化学発光試薬(Millipore)で可視化し、UVP BioSpectrum 600 Imagine(UVP)で検出した。タンパク質発現は、Gel-Proanalyzer 3.1(Media Cybernetics)により定量化した。
【0061】
EpEX-6×His組換えタンパク質の産生及び精製
EpEXをコードするDNA断片(EpCAMのアミノ酸24~262)は、PfuTurbo DNAポリメラーゼを用いたPCRにより増幅され、C末端6×Hisタグを用いてpSecTag2ベクターにクローニングされて、pSecTag2-EpEX-6×Hisを生成した。EpEX-6×His融合タンパク質は、Expi293F(商標)発現システム(Thermo)を用いて産生され、Niアフィニティーカラム(GEヘルスケア)で精製された。
【0062】
EpEX-FcとEGFRとの間の細胞外相互作用
HCT116細胞をPBS中の10mM EDTAで採取し、EpEX-Fcで1時間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、2mM DTSSP(Thermo)を架橋剤として用いて、EpEX-FcとEGFRとの間の相互作用を安定化した。架橋反応を停止させるために、Tris、pH7.5を最終濃度20mMになるように添加した。膜タンパク質は、Mem-PER真核生物膜タンパク質抽出試薬キット(Thermo)を用いて抽出された。最後に、EpEX-Fc-EGFR複合体をDynabeads(登録商標)プロテインG(Invitrogen)でプルダウンし、ウエスタンブロットによりプロービングした。
【0063】
EpCAM EGF様ドメイン欠失の構築
EpCAMは、その細胞外ドメインにおいて、アミノ酸27~59(第1のEGF様ドメイン)及び66~135(第2のEGF様ドメイン)で2つのEGF様ドメイン、並びにシステイン不含モチーフ(Schnell U、Kuipers J、Giepmans BN. EpCAM proteolysis: new fragments with distinct functions? Bioscience reports 2013年;33巻:e00030)を含有する。EpCAM EGF様ドメイン欠失は、標準的なQuikChange(商標)欠失突然変異システムを用いて、第1のフォワード突然変異誘発欠失プライマー(5'-GCAGCTCAGGAAGAATCAAAGCTGGCTGCC-3')(配列番号2)、第1のリバース突然変異誘発欠失プライマー(5'-GGCAGCCAGCTTTGATTCTTCCTGAGCTGC-3')(配列番号3)、第2のフォワードプライマー(5'-AAGCTGGCTGCCAAATCTGAGCGAGTGAGA-3')(配列番号4)及び第2のリバースプライマー(5'-TCTCACTCGCTCAGATTTGGCAGCCAGCTT-3')(配列番号5)により生成された。PCR増幅はKAPA HiFi Hot Start DNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems)を用いて行われ、産物を制限酵素DpnI(Thermo Scientific)で処理してメチル化親DNAを消化した。
【0064】
シクロヘキシミドチェイスアッセイ
タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドを用いてPD-L1の安定性を評価した。細胞をシクロヘキシミドで0、2、4又は6時間処理した。タンパク質を抽出し、ウエスタンブロットを行ってPD-L1タンパク質レベルを検出した。
【0065】
免疫沈降アッセイ
細胞は、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含む溶解緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.4、150mM NaCl、1%NP-40)中で溶解された。免疫沈降(IP)について、細胞溶解物を抗体とともに6時間、4℃でインキュベートした。次に、20μlのDynabeads(登録商標)プロテインGを添加し、混合物を2時間、4℃でインキュベートして、抗体結合タンパク質をプルダウンした。IP試料をPBSで3回洗浄し、試料緩衝液中で変性させ、ウエスタンブロットにより分析した。
【0066】
モノクローナル抗体の生成及びIgGの精製
EpAb2-6及び対照IgGの生成は、以前に記載されているように行われた(Liao MY、Lai JK、Kuo MY、Lu RM、Lin CW、Cheng PCら、An anti-EpCAM antibody EpAb2-6 for the treatment of colon cancer. Oncotarget 2015年;6巻:24947~68頁)。このプロトコールは、Academia Sinicaの動物実験倫理委員会により承認された(ASIACUC: 11-04-166)。
【0067】
レンチウイルス媒介性短鎖ヘアピンRNA(shRNA)ノックダウン
レンチウイルスshRNA構築物は全て、Academia Sinica(Taipei, Taiwan)のRNAi Core Facilityから購入された。レンチウイルスの産生、感染及び選択は、RNAi Consortium (Academia Sinica, Taiwan)からのプロトコールに従って行われた。レンチウイルスを産生するために、HEK293T細胞は、PolyJet DNAトランスフェクション試薬(SignaGen Laboratories)を用いて、shRNAプラスミド、パッケージング(pCMV-ΔR8.91)及びエンベロープ(pMD.G)発現プラスミドで一時的に共トランスフェクトされた。翌日、ウイルス産生を改善するために、トランスフェクション溶液を1%BSA含有培地に置き換えた。トランスフェクションの2日後、レンチウイルスを含有する培地を回収した。細胞は、8μg/mlポリブレンを添加したレンチウイルス含有培地でさらに48時間培養した。形質導入細胞を2μg/mlピューロマイシンで4日間選択し、ノックダウン効率をウエスタンブロットにより測定した。ヒトEpCAM特異的shRNAの標的配列は、shRNA、5'-GCAAATGGACACAAATTACAA-3'(配列番号1)であった。陰性対照としてルシフェラーゼshRNA(shLuc)を用いた。
【0068】
RNA抽出、cDNA合成、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)
総RNA抽出、第1鎖cDNA合成、及びSYBR-グリーンベースのリアルタイムPCRは、製造業者の説明書に記載されるとおりに行われた。総RNAを抽出するために、細胞をTRIzol試薬(Invitrogen)を用いて溶解し、クロロホルムを用いてTRIzolからタンパク質及びフェノールを除去した。遠心分離後、上部無色層を回収し、イソプロパノールと混合してRNAペレットを沈殿させた。次に、RNAペレットを70%エタノールで洗浄し、室温で空気乾燥させ、RNase不含水に溶解した。第1鎖cDNA合成については、50℃で60分間、オリゴ(dT)プライマー及びSuperScriptIII逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、5μgの総RNAを逆転写に使用した。LightCycler 480 SYBR Green I Master Mix(Roche)及びLightCycler 480 System(Roche)を用いて、定量PCR(qPCR)により標的遺伝子レベルを評価した。全てのqPCR反応を正規化するために、GAPDH mRNA発現を内因性ハウスキーピング対照として測定した。qPCR反応は95℃で5分間であり、続いて、95℃で10秒間の40サイクルの変性、60℃で10秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長とした。最終結果は3つの独立した実験から計算された。
【0069】
免疫蛍光アッセイ
免疫蛍光法については、2×104細胞を24ウェル培養プレート中の12mmカバースライド上に播種し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100でインキュベートして細胞膜の透過性を増加させた。次に、試料を1%BSAで1時間、室温にてブロッキングし、一次抗体を用いて4℃で一晩染色した。スライドを洗浄し、FITC又はAlexa568コンジュゲートした二次抗体及びDAPIで40分間染色した。次に、カバースライドをPBSで洗浄し、マウント溶液(Vector Laboratories)にマウントした。スライドを共焦点顕微鏡(Leica TCS-4 SP5)で調べた。
【0070】
アポトーシスタンパク質アレイ
HCT116細胞を20μg/mlのEpAb2-6で6時間刺激し、アポトーシスアレイを製造者の指示に従って行った(R&Dシステム; ARY009)。膜(アレイ)は、UVP BioSpectrum 600 Imagine(UVP)によって検出された。アレイをGel-Proアナライザー3.1(Media Cybernetics, Inc.)で定量化した。
【0071】
フローサイトメトリー分析
細胞を採取し、洗浄し、FACS緩衝液(1%FBSを含むPBS)に懸濁し、105細胞を96ウェルシュリルベースプレートに移した。細胞を1時間、4℃で、異なる抗体で染色し、その後、指示されたフィコエリトリン(PE)コンジュゲートした二次抗体で1時間、4℃で染色した。次に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、400μlのFACS緩衝液に懸濁した。蛍光シグナルをフローサイトメトリー(BD FASCSCanto(商標)II)を用いて分析し、FCS Express V3ソフトウエアで測定した。3つの独立した実験からデータを回収した。
【0072】
クロマチン免疫沈降
要約すると、HCT116細胞(1×105)を20μg/mlのEpAb2-6で6時間処理し、続いて1%ホルムアルデヒド中で架橋固定した。最終濃度200mMになるようにグリシンを添加することにより固定を停止させ、次に固定されたクロマチン複合体をMISONIXソニケーター3000を用いて平均長250塩基対に超音波処理した。超音波処理されたタンパク質-DNA複合体は、2μgのFOXO3aに対する抗体を用いた免疫沈降に供された。免疫沈降されたDNAをPCR精製キット(Qiagen)により回収し、PCRにより標的DNA量を検出した。
【0073】
二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ
領域-1628~+86及び700~+86をカバーするヒトHtrA2近位プロモーター断片(転写開始部位は+1と示される)をPCR増幅し、次に、ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドpGL4.18ベクター(Promega)にクローニングした。HtrA2プロモーター活性におけるEpA2-6の影響を評価するために、24ウェルディッシュ上に播種されたHCT116及びSW620細胞(1×104/ウェル)は、PolyJetトランスフェクション試薬(SignaGen Laboratories, USA)を用いて、ウミシイタケルシフェラーゼを発現するプラスミドと組み合わせてHtrA2プロモーターレポーター構築物で24時間、一時的にトランスフェクションし、続いて20μg/mlのEpAb2-6を6時間刺激した。細胞溶解物を調製し、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイキット(Promega, USA)を用いてルシフェラーゼ活性アッセイに供した。ホタルルシフェラーゼ活性は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に正規化され、最終データはEpAb2-6-IgG対照と比較してルシフェラーゼ活性の倍数誘導として提示される。データは3つの独立した実験から平均±SDとして表した。
【0074】
アポトーシス及びミトコンドリア膜電位アッセイ
細胞(2×105)を24ウェルディッシュに播種し、20μg/mlの対照IgG又はEpAb2-6で6時間処理した。アポトーシス細胞及びミトコンドリア膜電位は、それぞれFITCアネキシンVアポトーシス検出キット(BD Biosciences)及びMitoStatus Red(BD Biosciences)を用いて検出された。アポトーシス細胞及びミトコンドリア膜電位は、フローサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)を用いて分析された。再現性を確保するため、各測定を少なくとも3回行った。EpAb2-6誘導性アポトーシスにおける遺伝子ノックダウンの効果は補足材料である表1であった。
【0075】
【0076】
免疫組織化学
ヒト肺がん組織マイクロアレイをSuper BioChipから購入した。内因性過酸化水素をメタノール中の3%過酸化水素で30分間消耗させた後、組織マイクロアレイを1% BSAで1時間ブロッキングし、抗PD-L1(クローン28-2、abcam)又はEpAb3-5(Liao MY、Lai JK、Kuo MY、Lu RM、Lin CW、Cheng PCら、An anti-EpCAM antibody EpAb2-6 for the treatment of colon cancer. Oncotarget 2015年;6巻:24947~68頁)に4℃で一晩曝露した。PBSTで洗浄した後、組織マイクロアレイを、Super Sentivie(商標) IHC検出システム(BioGenex)の標準手順を用いて処理し、DABで染色した。核は、Mayerのヘマトキシリン溶液(Wako)で染色した。
【0077】
PBMC及びT細胞の単離並びに培養
PBMCを用いた実験については、健常ドナーから血液試料を採取し、抗凝固剤EDTA(BD Bioscience)を含有する10mlのVacutainer(登録商標)チューブに回収した。1500rpmで10分間遠心分離した後、血漿を試料から除去し、等体積のPBSと混合した。混合物をFicoll-Paqueプラス(Ficoll:血液=1:2)上に層状にし、1500rpmで30分間遠心分離した。PBMC層(バフィーコート)を回収し、0.5% BSA、2mM EDTAを含むPBSで2回洗浄した。精製CD3+ T細胞を得るために、PBMCは、標準プロトコールに従って、抗CD3磁気ビーズ(MACS)により正に選択された。10%FBS、100μg/ml P/S、12.5ng/ml IL-2(Gibico)、及び1ng/ml IL-15(MACS)を添加したRPMI 1640中で、25μlの抗CD3/抗CD28被覆ダイナビーズ(Invitrogen)によって48時間培養し、活性化した。プロトコールは、Academia Sinicaの治験審査委員会により承認された(AS IRB: AS-IRB01-19049)。
【0078】
インビボでの細胞生存アッセイ
NOD/SCIDマウスにHCT116-GFP細胞を静脈内注射し、循環HCT116-GFP細胞を有するマウスに、細胞注射の1時間後にEpAb2-6又は等投薬量の対照IgGを静脈内投与した(抗体は20mg/kgで送達した)。次に、マウスの顔面静脈から血液試料を得、全血の蛍光強度を指示された時点で定量化した。蛍光は、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax M5)を用いて、355nmの励起波長及び440nmの発光波長で測定した。
【0079】
ヒトの皮下結腸直腸がん研究
皮下研究は、以前に報告されたように行われた(Liao MY、Lai JK、Kuo MY、Lu RM、Lin CW、Cheng PCら、An anti-EpCAM antibody EpAb2-6 for the treatment of colon cancer. Oncotarget 2015年;6巻:24947~68)。プロトコールは、Academia Sinicaの動物実験倫理委員会により承認された(ASIACUC: 11-04-166)。
【0080】
同所移植及び治療研究
同所性試験は、以前に報告されたように行われた(Wu CH、Kuo YH、Hong RL、Wu HC. alpha-Enolase-binding peptide enhances drug delivery efficiency and therapeutic efficacy against colorectal cancer. Sci Transl 7 Med 2015年;7巻:290ra91)。簡単に述べると、NSGマウス(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)は、以前にLenti-lucウイルス(ルシフェラーゼ遺伝子を含有するレンチウイルス)に感染させたHCT116細胞の同所移植に使用した。マウスは、250mg/kgの用量でAvertin、2,2,2-トリブロモ-エタノール(Sigma-Aldrich)のi.p.注射により麻酔された。腫瘍発生は、生物発光イメージングによりモニタリングされた。同所性治療研究については、腫瘍担持マウスを対照IgG又はEpAb2-6(20mg/kg)で処置した。腫瘍の進行は、生物発光の定量化によってモニタリングされた。マウスの体重及び生存率を測定した。動物実験は、台湾のAcademia Sinicaのガイドラインに従って行われた。プロトコールは、Academia Sinicaの動物実験倫理委員会により承認された(ASIACUC: 11-04-166)。
【0081】
遺伝子セット濃縮分析、GSEA
TCGAにおけるLUADプロジェクトから遺伝子発現マトリックスを得た。EpCAM発現が最も高い試料の25%を「EpCAM_High」グループと定義し、EpCAM発現が最も少ない試料の25%を「EpCAM_Low」グループと定義した。次に、GSEAウェブサイトによって提供されたT細胞活性化及びT細胞増殖遺伝子セットを用いて、データを分析した。
【0082】
統計解析
全てのデータは、少なくとも3つの独立した実験からの平均±標準偏差(SD)として提示される。特記しない限り、スチューデントt検定を用いて、各実験条件についてそれぞれの対照との有意差を計算した。P値<0.05(*)、<0.01(**)又は<0.001(***)が有意であることを示す。生存分析はログランク検定を用いて行われた。相関係数はスペアマン分析を用いて計算された。
【0083】
[実施例1]
EpEXは、EGFRにそのEGF様ドメインIを介して結合する
EpEXがEGFRと相互作用することを検証するために、本発明者らはEpEX-EGFR複合体を安定化するために架橋剤DTSSPを用いた。EpEXのEGFRへの結合は、IP及びウエスタンブロット法によって確認された(
図1A)。組換えEpEXのEGFRの細胞外ドメイン(EGFR
ECD)への直接的結合を評価するために、本発明者らは、精製EpEXとEGFR
ECDタンパク質との間の直接的相互作用をプロービングするためにELISAを行った(
図1B)。
【0084】
膜結合EpCAMがEGFRに結合することができるかどうかを調べるために、本発明者らは、EpCAM-V5及びEGFR-Flagを過剰発現するHEK293T細胞を用いて免疫沈降実験を行った。外因性EpCAMとEGFRとの間の相互作用は、co-IPによって検出された(
図1C)。EpCAM細胞外ドメインでは、それはアミノ酸27~59(第1のEGF様ドメイン)及びアミノ酸66~135(第2のEGF様ドメイン)に2つのEGF様ドメイン、及びシステイン不含モチーフを含有する。EGFRに結合するEpEXの特異的領域を同定するために、本発明者らは、異なるEGF様ドメイン欠失EpCAM突然変異体を構築した。驚くべきことに、EGF様ドメインI欠失EpCAM突然変異体(EpCAM
ΔEGFI)は、EGFRへの減少した結合を示したが、EGF様ドメインII欠失EpCAM突然変異体(EpCAM
ΔEGFII)は、EGFRとの増強した相互作用を示した(
図1D)。可溶性EpEXのEGFR
ECDへの結合をさらに評価するために、HEK293T細胞に可溶性EGFR
ECD-Flag又はEpEX-Fcを発現する異なるベクターを共トランスフェクトし、培地中でタンパク質複合体を調べた(
図1E)。可溶性EGF様ドメインII欠失EpEX-Fc(EpEX
ΔEGFII-Fc)は有意に増加した親和性を示したが、EGF様ドメインI欠失EpEX-Fc(EpEX
ΔEGFI-Fc)はEpEX-Fcと比較してEGFR
ECD-Flagに対して減少した親和性を示した(
図1F)。全体的に、本発明者らは、膜結合EpCAMと分泌EpEXとの両方がEGFRに結合し、EGFドメインIの欠失がこの結合を減少させることを見出した(
図1C~1F)。
【0085】
同様の結果が、精製野生型又は突然変異体EpEX及びEGFR
ECD組換えタンパク質を用いて観察された。組換えEpEX
ΔEGFIIタンパク質は野生型対照よりもEGFR
ECDに対して強い結合親和性を有し、EpEX
ΔEGFIタンパク質はEGFR
ECDに結合する能力を失った(
図1G)。さらに、EpEX
ΔEGFIIタンパク質は野生型対照と同様にEGFRシグナル伝達を誘導したが、EpEX
ΔEGFIタンパク質は誘導しなかった(
図1H)。これらの結果は、EpEXにおけるEGF様ドメインIがEpEX-EGFR相互作用及びEGFRシグナル伝達の活性化に関与する主要ドメインであることを示唆する。
【0086】
[実施例2]
EpEXの阻害はFOXO3aの核蓄積を増加させ、アポトーシスを誘導する
本発明者らは、EpEXがEpEXドメインIを介してEGFRを活性化することを見出したため、本発明者らは、EpEX媒介性EGFR活性化ががんの進行に重要であるかどうかをさらに調査した。AKTは、EGFRの主要な下流エフェクターであり、FOXO3aを不活性化することによって細胞生存を部分的に促進する。AKT/FOXO3aシグナル伝達の阻害は、アポトーシスにおける必須のステップであることが示唆されており、SKOV3卵巣がん細胞株の腫瘍球形成を阻害する可能性がある。EpEXがFOXO3a機能に影響するかどうかを評価するために、本発明者らは、FOXO3aリン酸化及び細胞内位置を調べた。免疫ブロッティング分析は、EpEXが時間依存的にAKT及びFOXO3aのリン酸化を誘導し(
図2A)、EpEX誘導性FOXO3aのリン酸化がAG1478(EGFR阻害剤)又はウォルトマンニン(PI3K阻害剤)によって阻害されることを示した(
図2B)。さらに、EpEX処置後、FOXO3aは核から細胞質へ移行した(
図2C)。EpEXはEGFRを介して作用するため、本発明者らは、EGFRの周知のリガンドであるEGFを誘導物質として使用した。EpEX処置と同様に、EGFはFOXO3aの核排除を誘導した(
図8A~8C)。したがって、本発明者らは、EpEXはEGFR-AKT経路を介してFOXO3a活性を阻害すると結論付ける。
【0087】
以前に、本発明者らは、EpEXを標的化し、アポトーシスを誘導する中和抗体EpAb2-6を開発した(Liang KH、Tso HC、Hung SH、Kuan, II、Lai JK、Ke FYら、Extracellular domain of EpCAM enhances tumor progression through EGFR signaling in colon cancer 16 cells. Cancer Lett 2018年;433巻:165~755頁; Liao MY、Lai JK、Kuo MY、Lu RM、Lin CW、Cheng PCら、An anti-EpCAM antibody EpAb2-6 for the treatment of colon cancer. Oncotarget 2015年;6巻:24947~68頁)。EpAb2-6はEpEXを遮断するために採用された。EpEXの機能を遮断することにより、EpAb2-6処理はEpEX/EGFR/ADAM17軸(axis)を中断することが公知であり、これはEpCAM切断を促進する正のフィードバックループを表し、その後EpEX及びEpICD産生を増加させる (Liang KH、Tso HC、Hung SH、Kuan, II、Lai JK、Ke FYら、Extracellular domain of EpCAM enhances tumor progression through EGFR signaling in colon cancer 16 cells. Cancer Lett 2018年;433巻:165~75頁)。実際、ADAM17及びγ-セクレターゼ活性及び可溶性EpEX放出の減少は、EpAb2-6処理後に観察された(
図9A~9C)。さらに、核活性化β-カテニン、並びに再プログラミング遺伝子及びEMT関連遺伝子を含む下流遺伝子はまたEpAb2-6処理された細胞において減少した(
図9D及び9E)。次に、本発明者らは、EpCAMが足場非依存性増殖に寄与するかどうかを調べた。この目的では、結腸がん細胞株を用いて軟寒天コロニー形成アッセイを行った。EpAb2-6処理された細胞は、対照細胞と比較して、有意により小さく、より少ないコロニーを形成した(
図9F)。さらに、本発明者らは、これらの付着結腸がん細胞を腫瘍球に培養し、EpAb2-6処理が腫瘍球形成を阻害することを見出した(
図9G)。これらの結果は、EpCAMを特異的抗体EpAb2-6で標的化することが、結腸がん悪性腫瘍を抑制するための潜在的に実施可能な戦略であることを示唆する。
【0088】
FOXO3aの核蓄積は、種々の化学療法薬又はEGFR阻害薬による処理後にがん細胞のアポトーシスを促進する。したがって、本発明者らは、EpEXの機能を阻害することが核FOXO3a蓄積を促進するかどうかを明確にすることを望んだ。EpAb2-6処理によるEpEXの機能の遮断はまた、AKT及びFOXO3aのリン酸化を減少させ(
図2D)、その後、FOXO3aの核蓄積を増加させたが、β-カテニンの核移行は減少した(
図2E)。FOXO3aの下流遺伝子(BIM、p21、及びFASL)はまた、IgG対照と比較してEpAb2-6処理を用いたHCT116細胞において上方制御された(
図2F)。免疫蛍光染色を用いて、FOXO3a及びβ-カテニンは結腸がん細胞の細胞質と核との両方で検出された。しかしながら、EpAb2-6処理後、FOXO3aは核で増加したが、核β-カテニンはインビトロ(
図2G)とインビボ(
図2H)との両方で減少した。このように、EpEXの阻害は、FOXO3aの核移行を増強し、結果として、アポトーシスの促進に関与する下流遺伝子を上方制御する。
【0089】
EpAb2-6がEGFR/AKT/FOXO3aを介してアポトーシスを誘導するかどうかを評価するために、本発明者らは、結腸がん細胞におけるEGFR、AKT及びFOXO3a発現をノックダウンするためにshRNAを使用し、がん細胞アポトーシスにおけるEpAb2-6の効果を調べた。EGFR-、AKT-及びFOXO3aノックダウン細胞は全て、対照細胞よりもEpAb2-6誘導性アポトーシスに対して感受性が低く、EpAb2-6誘導性アポトーシスは、EpCAMノックアウト(KO)細胞において完全に抑制された(
図10A~10D)。まとめると、本発明者らのデータは、EpEXがFOXO3aのリン酸化を誘導し、その生物学的機能を不活性化し;一方、EpEXの機能の遮断は、FOXO3aのリン酸化を阻害して、FOXO3aの核蓄積を促進し、その下流のプロアポトーシス遺伝子の発現を活性化することを示した。
【0090】
[実施例3]
HtrA2はFOXO3aの下流に作用し、EpAb2-6誘導性アポトーシスに寄与する
EpAb2-6誘導性アポトーシスのメカニズムのさらなる洞察を得るために、本発明者らは、対照IgG及びEpAb2-6処置結腸がん細胞における35個のアポトーシス関連シグナル伝達タンパク質の発現を比較した。本発明者らは、35個のアポトーシス関連タンパク質のうち、2つがIgG対照と比較してEpAb2-6処置後に発現の実質的な増加を示したことを見出した。これらのタンパク質は高温要求性A2(HtrA2)及びX連鎖アポトーシス阻害タンパク質(XIAP)であった(
図3A)。
【0091】
免疫ブロッティング及びqPCR実験は、EpAb2-6処理がHCT116細胞におけるHtrA2のタンパク質及びmRNA発現を増強することを示した(
図3B)。以前の研究によれば、HtrA2は細胞質に放出され得、そこでアポトーシスに寄与する(Bhuiyan MS、Fukunaga K、Mitochondrial serine protease HtrA2/Omi as a potential therapeutic target. Curr Drug Targets 2009年;10巻:372~83頁)。予想通り、本発明者らは、EpAb2-6はミトコンドリアから細胞質ゾルへのシトクロムcとHtrA2との放出を誘導することを見出した(
図3C)。さらに、EpAb2-6処置はミトコンドリア膜電位の消散を誘導した(
図3D)。
【0092】
HtrA2 mRNAレベルはEpAb2-6処理後に増加し、HtrA2遺伝子の転写調節がEpAb2-6によって誘導されることを明示した。この仮説を調べるために、HCT116細胞にHtrA2プロモーターについてのレポーターを一時的にトランスフェクトし;HtrA2翻訳開始部位の上流1704塩基を含む領域を用いて、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(pGL4.18-HtrA2-1)の発現を駆動した(
図3E)。EpAb2-6処置は、IgG対照と比較して、HtrA2プロモーター活性の約4倍の誘導をもたらし、HtrA2遺伝子が実際にEpAb2-6誘導性シグナル伝達の転写標的であることを示した(
図3E)。HtrA2遺伝子転写を制御する分子メカニズムをさらに解明するために、HtrA2プロモーター配列をPROMO仮想実験室ウェブサイトを用いて分析した。この解析により、FOXO転写因子の推定シス作用性応答エレメント(-1283~-1299)が明らかになった。興味深いことに、本発明者らの知る限り、FOXO3aがHtrA2プロモーター活性を制御することを示す以前に発表された証拠はない。
【0093】
したがって、本発明者らは、HtrA2プロモーター活性が、
図3Eに示されるように、FOXO3a応答エレメント(pGL4.18-HtrA2-2)を伴わないレポーター構築物を生成することにより、FOXO3aにより制御されるかどうかを調べた。実際、EpAb2-6が誘導するルシフェラーゼ活性の増加は、FOXO3a応答エレメントの非存在下では消失した(
図3E)。
【0094】
FOXO3aがHtrA2プロモーターを直接制御するかどうかをさらに解明するために、推定FOXO3a応答エレメント(-1283~-1299)に隣接するプライマーを用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)分析を行った。FOXO3aはEpAb2-6処理後にHtrA2プロモーターを占有し、FOXO3aノックダウン細胞では観察されなかった(
図3F)。これらの結果は、FOXO3aがHtrA2プロモーターへの直接結合を介してHtrA2転写を増加させることを示した。次に、本発明者らは、HtrA2がEpAb2-6誘導性細胞死において重要な役割を果たすかどうかを調査した。この実験では、本発明者らは、結腸がん細胞におけるHtrA2発現をノックダウンするためにshRNAを用いた。HtrA2ノックダウン細胞では、EpAb2-6処理は、shLuc(対照ノックダウン)細胞よりもアポトーシス細胞(
図3G)及びミトコンドリア膜電位の破壊(
図3H)を少なく誘導した。よって、FOXO3a媒介性HtrA2転写はEpAb2-6誘導性アポトーシスに関与すると考えられる。
【0095】
[実施例4]
EpCAM発現はPD-L1安定化と正に相関する
EGFRの活性化は、EGFR誘発性肺がんのマウスモデル、及び突然変異体EGFR発現を伴う気管支上皮細胞におけるPD-L1発現の増加と関連していることが報告されており、EGFRシグナル伝達が免疫回避の誘発に重要であることが示唆されている。次に、さらなる研究により、EGFRシグナル伝達の増加が、様々なメカニズムによりPD-L1発現を上方制御することが示された。さらに、EpCAMはEGFR活性化において重要な役割を果たす。これらの知見に基づき、本発明者らは、EpCAMがEGFR活性化を介してPD-L1発現を制御するかどうかを調査することに決定した。PD-L1のHCT116細胞発現は極めて低いため、さらなる研究のための実験モデルとして、PD-L1の高発現を有するH441細胞をHCT116細胞に置き換えた。
【0096】
第1に、本発明者らは、EpCAMが免疫監視からの逃避に関与しているかどうかを明確にすることを望んだ。免疫細胞を再構成するために、左側にshLuc H441異種移植片、及び右側にshEpCAM H441異種移植片を有する免疫不全NSGマウスにPBMCを静脈内注射した。EpCAMノックダウン細胞は腫瘍重量の減少を示し、EpCAMが腫瘍進行を促進することが確認された(
図4A及び4B)。興味深いことに、PBMC注射を受けたマウスにおけるshLuc腫瘍は、PBMCのないマウスにおけるshLuc腫瘍と異ならなかった。しかしながら、PBMCを伴うshEpCAM腫瘍は、PBMCを伴わない腫瘍よりも小さく、EpCAMが抗腫瘍免疫を阻害する可能性を明示している(
図4A及び4B)。フローサイトメトリー分析により、本発明者らは、CD8
+ T細胞がshEpCAM腫瘍組織(
図4C)に富んでいることを見出し、ウエスタンブロット分析により、shEpCAM腫瘍組織(
図4D)においてPD-L1発現が減少していることが示された。これらの結果は、EpCAMがインビボでPD-L1発現を促進し、腫瘍関連CD8
+ T細胞を減少させることを示す。
【0097】
EpCAMとPD-L1発現との間の相関を調査するために、本発明者らは、2つのNSCLC細胞株: H441(高EpCAM発現)及びH460(非EpCAM発現)におけるPD-L1 mRNA発現を分析した。H441細胞と比較して、H460細胞はより高いレベルのPD-L1 mRNAを示したが、PD-L1タンパク質のレベルはより低かった(
図4E)。PD-L1及びEpCAMのフローサイトメトリー分析により、この所見が確認された(
図4F)。PD-L1の安定性はタンパク質レベルの重要な調節因子として役立つ可能性がある。実際、シクロヘキシミドチェイスアッセイは、H460細胞におけるPD-L1の半減期がH441細胞におけるそれと比較して低減することを示した(
図4G)。これらの知見は、H460細胞における低いPD-L1タンパク質レベルがPD-L1タンパク質の低減した安定性に起因することを示唆する。
【0098】
EpCAMがPD-L1タンパク質安定性に影響するかどうかを調査するために、本発明者らは、H460細胞においてEpCAMを過剰発現させた(低内因性PD-L1発現及びEpCAM発現なし)。本発明者らは、EpCAM発現はPD-L1タンパク質レベルを増加させたが、そのmRNAレベルを変化させなかったことを見出した(
図11A及び11B)。シクロヘキシミドチェイスアッセイにより、PD-L1タンパク質の半減期がEpCAM過剰発現によって増加することが確認された(
図11C)。さらに、H441細胞におけるEpCAMのノックダウン(高内因性EpCAM発現)は、PD-L1タンパク質レベル及びタンパク質半減期を減少させたが、mRNAレベルを変化させなかった(
図4H及び4I)。この考えと一致して、内因性調節エレメント、例えば、PD-L1プロモーター、3'UTR及び5'UTRを欠くPD-L1-MycのCMVプロモーター駆動性過剰発現を有するH441細胞はまた、EpCAMをノックダウンした場合にPD-L1タンパク質の減少を示した(
図4J)。さらに、ヒトがん患者からの試料における本発明者らの所見を検証するために、PD-L1及びEpCAMタンパク質レベルを肺と結腸腫瘍標本との両方において調べた。肺がん細胞株における本発明者らの結果と同様に、PD-L1タンパク質レベルは、肺腫瘍組織アレイにおけるEpCAM発現と高度に相関していた(
図4K)。一方、結腸組織アレイの標本の大部分はPD-L1に対して弱い染色しか示さなかったため、EpCAMに対するシグナルは強力であったにもかかわらず、本発明者らは明確な結論を下すことができなかった(
図12A~12B)。さらに、GSEA分析は、肺がん標本の低EpCAM発現におけるT細胞活性化及び増殖濃縮の関連遺伝子を示した(
図4L)。したがって、本発明者らは、EpCAM発現がPD-L1タンパク質安定性と正に相関すると結論付けた。
【0099】
[実施例5]
EpEXはEGFR-ERK経路を介してPD-L1を安定化する
EGFRシグナル伝達経路の活性化は、様々なメカニズムを介してPD-L1発現を増加させることができる。このように、EpEXは、EGFRシグナル伝達を介してPD-L1発現を制御する可能性がある。さらに、EpICDは、核に移行し、下流遺伝子を転写する複合体において、FHL2及びβ-カテニンと会合する。したがって、本発明者らは、EpEX又はEpICDがPD-L1安定化を引き起こすのに十分かどうかを試験した。内因性EpEX又はEpICDがPD-L1タンパク質安定化に必要かどうかを試験するために、ADAM17阻害剤(TAPI)及びγ-セクレターゼ阻害剤(DAPT)をそれぞれ内因性EpEX及びEpICDの生成を防止するために利用した。EpICDではなく内因性EpEXの排出の遮断は、PD-L1タンパク質レベルの低減を引き起こした。特に、PD-L1 mRNAレベルの変化は観察されず、内因性EpEXがPD-L1タンパク質安定性に重要であることが示唆された(
図5A)。さらに、本発明者らの結果は、H441細胞をEpEX又はEGFで処理した後、PD-L1タンパク質レベルが用量依存的及び時間依存的に増加することを示した(
図5B及び5C)。PD-L1 mRNAレベルは、EpEX又はEGF処理後に増加しなかった(
図5C)。これらの結果は、EpEXがPD-L1タンパク質レベルを増加させることができるが、EpICDは増加させることができないことを示唆する。
【0100】
IFN-γは、STATファミリー媒介性転写を介してPD-L1発現を誘導することが公知である。次に、本発明者らは、内因性EpEX及びEpICDがまたIFN-γ媒介性PD-L1上方制御に関与するかどうかを検討した。PD-L1 mRNAは、IFN-γ及びDMSO、IFN-γ及びTAPI、並びにIFN-γ及びDAPTで処理されたH441細胞において上方制御された(
図13A)。
【0101】
驚くべきことに、PD-L1タンパク質レベルは、IFN-γ及びDMSO処理された細胞におけるものと同様に、TAPIの存在下ではそれほど増加しなかった(
図13B)。換言すると、PD-L1 mRNA発現がIFN-γ刺激により上昇したという事実にもかかわらず、タンパク質レベルはEpEXの生成なしには完全に上方制御することができなかった。加えて、PD-L1タンパク質発現は、IFN-γ及びDAPT処理された細胞において損なわれなかった(
図13B)。PD-L1 mRNAレベルは、IFN-γ処理を受けた全ての細胞において増加したが、タンパク質レベルは、IFN-γ及びEpEX又はIFN-γ及びEGF処理を受けた細胞においてのみ上方制御された(
図13C及び13D)。このように、EpEXはPD-L1タンパク質上方制御の必須因子であると考えられる。
【0102】
EGFRシグナル伝達経路はがん細胞におけるPD-L1発現に重要であり、本発明者らの以前の研究はEpEXがEGFRシグナル伝達を誘導することができることを示した。したがって、本発明者らは、EpEXはEGFRシグナル伝達を介して作用して、PD-L1分解を防止する可能性があると推測した。実際、H441細胞におけるEGFRのshRNAノックダウンは、EpEX又はEGF増強PD-L1レベルを減弱させた(
図5D)。次に、本発明者らは、EGFR-下流シグナル伝達経路がPD-L1のEpEX及びEGF媒介性上方制御に関与するかどうかを調査した。ゲフィチニブによる処理は、PD-L1タンパク質レベルのEpEXとEGF誘導性上方制御との両方を抑制した。重要なことに、MEK阻害剤であるがAKT阻害剤ではないU0126は、PD-L1のEpEX媒介性上方制御も同様に消失させた(
図5E)。これらの結果は、EGFと同様に、PD-L1のEpEX媒介性上方制御はMAPK経路を介するシグナル伝達を必要とすることを明示した。
【0103】
ERK及びAKTシグナル伝達はいずれも、異なるメカニズムを介してPD-L1発現を制御することができた。よって、本発明者らは、本発明者らのシステムにおけるPD-L1発現にとって、どのシグナル伝達経路がより重要であるかを知ることを望んだ。ERKシグナル伝達の阻害はPD-L1発現を時間依存的に減少させたが、AKTシグナル伝達の阻害は減少させなかった(
図14A)。次に、本発明者らはMAPK経路がPD-L1タンパク質の安定性に影響することを検証することを試みた。U0126及びシクロヘキシミドの存在下では、PD-L1の代謝回転率はDMSO対照よりも高かった(
図14B)。次に、非特異的標的化による効果の誤解釈を防止するために、異なる阻害剤を用いてMAPK経路を遮断した。実際、異なるMEK阻害薬であるトラメチニブとU0126、及びERK阻害薬であるSCH772984は全て、PD-L1タンパク質レベルを減少させ、PD-L1のポリユビキチン化を増加させた(
図14C及び14D)。
【0104】
N192、N200及びN219におけるPD-L1のグリコシル化はGSK3β結合に拮抗し、通常はβ-TrCPによるPD-L1のリン酸化依存性プロテアソーム分解を誘導する。このように、グリコシル化されていないPD-L1は、グリコシル化されたPD-L1と比較して不安定である。このメカニズムと一致して、PD-L1はGSK3βノックダウン細胞において上方制御された(
図14E)。しかしながら、EpEX及びEGFはいずれもGSK3βノックダウン細胞においてPD-L1の上方制御を誘導する可能性があり(
図14F)、GSK3βはEpEX又はEGF媒介性PD-L1の安定化には不要であることを示唆している。
【0105】
次に、本発明者らは、EpAb2-6がPD-L1上方制御及びEpEX産生を減弱させるかどうかを試験した。EpAb2-6処置後、PD-L1タンパク質レベルはインビトロとインビボとの両方で下方制御された(
図5F)。本発明者らの他の所見と一致して、EpAb2-6はまたPD-L1タンパク質の安定性を減少させ、PD-L1のポリユビキチン化を増加させた(
図5G及び5H)。特に、EpAb2-6処理は、肺がん細胞、並びに乳がん(BT474及びMCF7)及び口腔がん(Cal27)を含む他のEpCAM陽性がんタイプに由来する細胞株においてPD-L1タンパク質レベルを阻害した(
図5I)。さらに、アポトーシスアッセイを用いて、本発明者らは、EpAb2-6又はT細胞のいずれかとともにがん細胞を共培養すると、がん細胞アポトーシスが誘導され、EpAb2-6とT細胞との両方の存在下でがん細胞を共培養すると、アポトーシスを誘導するのにより効果的であることを見出した(
図5J)。
【0106】
[実施例6]
EpAb2-6は転移性及び同所性マウスモデルの生存期間を延長し、PBMC細胞株由来異種移植片(CDX)モデルにおける抗PD-L1療法の有効性を改善する
次に、本発明者らは、転移性結腸癌の動物モデルを用いて、EpAb2-6処置が転移性腫瘍担持マウスの全生存期間中央値を増加させる可能性があるかどうかを試験した。EpAb2-6は、循環HCT116-GFP細胞を有するマウス血液の蛍光強度を低減させ、EpAb2-6がインビボでマウス血管中のHCT116-GFP細胞数を減少させることを示唆した(
図6A)。NOD/SCIDマウスにSW620細胞を静脈内注射し、次に、細胞注射の24及び96時間後にEpAb2-6、又は同体積の対照IgGで静脈内処置した(抗体は、総用量40mg/kgに対して20mg/kg/用量で送達された)。EpAb2-6処置群の生存期間中央値は、対照IgG群と比較して有意に増加した(
図6B、ログランク検定によりP<0.005)。
【0107】
皮下モデルはヒト結腸がん生物学を正確に再現できない可能性があるため、結腸直腸がんの同所性マウスモデルはまた、結腸直腸腫瘍微小環境における本発明者らの治療抗体の有効性を研究するために確立された。本発明者らは、ホタルルシフェラーゼを安定的に発現するHCT116-Luc腫瘍の同所性モデルにおけるEpAb2-6の抗腫瘍能を調査した。1回目の治療的注入前(腫瘍細胞移植から8日後)、増殖する同所性腫瘍を生物発光イメージングによりモニタリングした(
図6C)。マウスを対照IgG又はEpAb2-6(20mg/kg)のいずれかで2日ごとに16日間処置した。特に、EpAb2-6処置群は55日で転移を示したが、対照群は45日で転移を示した(
図6C)。また、処置期間中、体重に有意な変化は観察されなかった(
図15)。研究終了時、対照IgG又はEpAb2-6処置群の生存期間中央値は、それぞれ50日及び116.5日であった(
図6D)。これらの結果から、本発明者らは、EpAb2-6処置は腫瘍担持マウスの生存を延長することができると結論付ける。
【0108】
EpAb2-6処置がインビトロ及びインビボでPD-L1発現を減少させるという本発明者らの観察に基づき、本発明者らは、EpAb2-6がインビボでの抗PD-L1処置の治療効果を改善することができるかどうかをさらに評価することを望んだ。EpAb2-6はマウスEpCAMとの交差反応を備えていないため、同系マウスモデルを用いて免疫療法に対するEpAb2-6の治療効果を評価することはできない。
図6Eに示されるように、H441細胞をNSGマウスに皮下注射して、PBMC-H441異種移植マウスモデルを確立した。2週間後、マウスに10
7個のPBMC細胞を静脈内注射し、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ、及びEpAb2-6を週2回、1ヵ月間投与した。アテゾリズマブ又はEpAb2-6単独による処置は、PBMC-H441マウスの腫瘍増殖を阻害し、併用療法ははるかに良好な腫瘍抑制効果をもたらした(
図6F及び6G)。処置終了時に、腫瘍組織を回収し、CD8
+ T細胞をフローサイトメトリーにより分析した。併用療法を受けたマウスでは、CD8
+ T細胞集団が増加した(
図6H)。まとめると、これらのデータは、EpAb2-6によるEpCAMの阻害が、PBMC-H441異種移植マウスにおける抗PD-L1治療薬の有効性を増強し得ることを示す。
【0109】
これは、EpCAMの阻害がHtrA2遺伝子発現の増加と相関することを示す最初の研究である。さらに、この上方制御はFOXO3aを介して生じ、アポトーシスを誘導する。EpEXはPD-L1タンパク質の安定性を増加させ、抗EpCAM及び抗PD-L1抗体の併用免疫療法は、がん治療のための新規戦略を提供する。
【配列表】
【国際調査報告】