(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】カソード材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20230330BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230330BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230330BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537700
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 GB2020053212
(87)【国際公開番号】W WO2021123747
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306561
【氏名又は名称】イーブイ・メタルズ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EV Metals UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ウェール,オリビア ローズ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
リチウムニッケル金属酸化物材料の生成プロセスが、規定された結晶子寸法を持つ粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料と共に提供される。そのような材料は、リチウムイオン二次電池のカソード材料として有用である。本プロセスは、3時間~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度で加熱することを含む第一焼成工程、及び30分間~4時間の期間、約600℃超の温度に加熱することを含むその後の第二焼成工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1に従う組成を有するリチウムニッケル金属酸化物材料の生成プロセスであって:
Li
aNi
xCo
yA
zO
2+b
式1
式中:
Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mg、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.8≦a≦1.2であり
0.7≦x<1であり
0<y≦0.3であり
0≦z≦0.2であり
-0.2≦b≦0.2であり
x+y+z=1であり
前記プロセスは、以下の工程:
(i)ニッケル金属水酸化物前駆体をリチウム含有化合物と混合すること、及び
(ii)前記混合物を焼成して、前記リチウムニッケル金属酸化物材料を形成させること、
を含み、
前記焼成は、3時間~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度で加熱することを含む第一焼成工程と、及び30分間~4時間の期間、約600℃超の温度に加熱することを含むその後の第二焼成工程とを含む、
前記プロセス。
【請求項2】
Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種である、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項3】
Aは、Al及び/またはMgである、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
0.8≦x<0.95であり、及び0<y≦0.2である、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記リチウム含有化合物は、水酸化リチウムである、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第二焼成工程は、温度が約650℃より高温である、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第二焼成工程は、温度が600℃~800℃である、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第二焼成工程は、1時間~4時間の期間行われる、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
さらに、前記リチウムニッケル金属酸化物材料の表面を修飾する工程を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
さらに、前記リチウムニッケル金属酸化物材料を粉砕する工程を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
さらに、前記リチウムニッケル金属酸化物材料を含む電極を形成する工程を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
さらに、前記リチウムニッケル金属酸化物材料を含む電極を備えたバッテリーまたは電気化学的電池を構築する工程を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
式2に従う組成を有する粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料であって:
Li
a1Ni
x1Co
y1A
z1O
2+b1
式2
式中:
Aは、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.8≦a1≦1.2であり
0.7≦x1<1であり
0<y1≦0.3であり
0<z1≦0.2であり
-0.2≦b1≦0.2であり
x1+y1+z1=1であり
前記粒子状リチウムニッケル金属酸化物は、90nm及び200nmも含めて90nm~200nmの範囲に結晶子寸法を有する、前記粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項14】
Aは、Mg、ならびに任意選択でV、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Sr、及びCaのうちの1種または複数種である、請求項13に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項15】
Aは、Mgである、請求項13に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項16】
0.8≦x1<1であり、0<y1<0.2であり、及び0<z1<0.2である、請求項13から14のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項17】
0.85≦x1<1であり、0<y1<0.15であり、及び0<z1<0.15である、請求項13から16のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項18】
前記結晶子寸法は、90~160nm、または90~120nmである、請求項13から17のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料。
【請求項19】
請求項13から18のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル金属酸化物、または請求項1から10のいずれか1項に記載のプロセスにより得ることが可能な粒子状リチウムニッケル金属酸化物を含む、電極。
【請求項20】
請求項19に記載の電極を含む電気化学的電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムニッケル金属酸化物材料、及びリチウムニッケル金属酸化物材料の改善された作製プロセスに関し、このリチウムニッケル金属酸化物材料は、リチウムイオン二次電池のカソード材料としての有用性がある。
【背景技術】
【0002】
層状構造を有するリチウムニッケル金属酸化物材料は、リチウムイオン二次電池のカソード材料として有用である。そのような材料では、ニッケル含量を高くすることで(例えば、70mol%超)放電容量を高くすることが可能であるが、そのような材料は、例えば、充放電サイクルの繰り返し後に、電気化学的安定性が不良になる可能性がある。他の金属を様々な量で含有することで、電気化学的安定性を改善することが可能である。しかしながら、ニッケル以外の元素を含有することは、放電容量の低下を招く可能性がある。
【0003】
典型的には、リチウムニッケル金属酸化物材料は、ニッケル金属水酸化物前駆体をリチウム源と混合し、次いで混合物を焼成して、所望の層状結晶構造体を形成させることにより、製造される。焼成プロセスの間、ニッケル金属水酸化物は、リチウムと反応して、中間相を介して結晶構造の変換を起こし、所望の層状LiNiO2構造体を形成する。同時に、一次結晶は、一緒に焼結されて、結晶寸法の成長をもたらす。所望の結晶相の形成は、典型的には、材料を長時間高温(少なくとも700℃)に維持して、完全な相変換を確実にすることにより行われる。この高温維持は、製造規模では多大なエネルギー消費を必要とする。
【0004】
例えば、WO2013/025328A2は、リチウムニッケル金属酸化物材料の作製法を記載している。実施例1は、Li1.05Mg0.025Ni0.92Co0.08O2.05の調製を記載している。前駆材料(Ni0.92Co0.08(OH)2)を、Li(OH)2、LiNO3、及びMg(OH)2と混合する。次いで、混合物を毎分5℃の速度で約450℃に加熱し、約450℃で約2時間維持する。次いで、温度を毎分2℃の速度で約700℃に加熱し、約6時間維持する。
【0005】
WO2017/189887A1は、電気化学的活性粒子の製造法を記載しており、この方法は、水酸化リチウムまたはその水和物とニッケル含有前駆水酸化物とを含む第一混合物の生成、及び第一混合物を最高温度700℃で焼成することを含む。実施例1は、多結晶2Dα-NaFeO2型層状構造粒子の2種の試料の調製を記載している。前駆水酸化物を、LiOHと混合し、次いでソーク時間を2時間として、毎分5℃の速度で25℃から450℃に加熱し、続いて第二ランプを、ソーク時間を6時間として、毎分2℃で最高温度700℃(または680℃)まで加熱する。
【0006】
リチウムニッケル金属酸化物材料を作製する改善されたプロセス、及び電気化学的性質の改善されたリチウムニッケル金属酸化物材料は、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、所望のリチウムニッケル酸化物結晶相の形成が、約460℃~約540℃の温度での焼成工程、及びそれに続く600℃超の温度での焼成工程が関与する焼成プロセスにより達成可能であることを見出した。本明細書に記載されるとおりのプロセスは、リチウムニッケル金属酸化物材料の形成中の高温を必要とする時間の減少をもたらし、したがって、エネルギー消費の減少をもたらす。本明細書に記載されるプロセスは、改善された電気化学的性質、例えば、低下した内部抵抗及びより高い放電容量など、を持つリチウムニッケル金属酸化物材料の形成ももたらすことができる。
【0008】
したがって、本発明の第一の態様において、提供されるのは、式1に従う組成を有するリチウムニッケル金属酸化物材料の製造プロセスであって:
LiaNixCoyAzO2+b
式1
式中:
Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mg、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.8≦a≦1.2であり
0.7≦x<1であり
0<y≦0.3であり
0≦z≦0.2であり
-0.2≦b≦0.2であり
x+y+z=1であり
前記プロセスは、以下の工程:
(i)ニッケル金属水酸化物前駆体をリチウム含有化合物と混合すること、及び
(ii)混合物を焼成して、リチウムニッケル金属酸化物材料を形成させること、
を含み、
この焼成は、3~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度で加熱することを含む第一焼成工程、及び30分間~4時間の期間、約600℃超の温度に加熱することを含むその後の第二焼成工程を含む、前記プロセスである。
【0009】
本発明の第二の態様において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりのプロセスにより得られたまたは得ることが可能な粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料である。
【0010】
本明細書に記載されるとおりの方法により生成した材料の分析及び検査から、異なる焼成プロファイル中に生成した結晶子の寸法が様々であること、ならびにある特定の結晶子寸法範囲内にある材料は、低下した内部抵抗及び改善された放電容量をもたらすことが特定された。
【0011】
したがって、本発明の第三の態様において提供されるのは、式2に従う組成を有する材料であり:
Lia1Nix1Coy1Az1O2+b1
式2
式中:
Aは、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.8≦a1≦1.2であり
0.7≦x1<1であり
0<y1<0.3であり
0<z1≦0.2であり
-0.2≦b1≦0.2であり
x1+y1+z1=1であり
この粒子状リチウムニッケル金属酸化物は、結晶子寸法が90~200nmである。
【0012】
本明細書に記載されるとおりの材料は、リチウムイオン二次電池のカソード材料として有用である。したがって、本発明の第四の態様において提供されるのは、第三の態様に従う材料または第一の態様に従うプロセスにより得られたもしくは得ることが可能な材料を含む電極である。本発明の第五の態様において提供されるのは、第四の態様に従う電極を含む電気化学的電池である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】in situ XRD実験の結果であり、500℃維持を含む焼成中に存在する相変化を示す。
【
図2】実施例1~7を電気化学的にCレート試験した結果を示す。
【
図3】実施例1~7を電気化学的に容量保持試験した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な及び/または任意選択の特徴を、ここから表記する。本発明のどの態様であっても、文脈から特に要求されない限り、本発明の他の任意の態様と組み合わせることができる。どの態様の好適な及び/または任意選択の特徴のどれであっても、文脈から特に要求されない限り、本発明の他の任意の態様と、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、組み合わせることができる。
【0015】
本発明は、上記に定義されるとおりの式Iに従う組成を有するリチウムニッケル金属酸化物材料の製造プロセスを提供する。
【0016】
式I中、0.8≦a≦1.2である。aは、0.9以上であるか、0.95以上であることが好ましい場合がある。aは、1.1以下であるか、1.05以下であることが好ましい場合がある。0.90≦a≦1.10、例えば、0.95≦a≦1.05であることが好ましい場合がある。a=1であることが好ましい場合がある。
【0017】
式I中、0.7≦x<1である。0.75≦x<1、0.8≦x<1、0.85≦x<1、または0.9≦x<1であることが好ましい場合がある。xは、0.99、0.98、0.97、0.96、または0.95以下であることが好ましい場合がある。0.75≦x≦1、例えば、0.75≦x≦0.99、0.75≦x≦0.98、0.75≦x≦0.97、0.75≦x≦0.96、または0.75≦x≦0.95であることが好ましい場合がある。0.8≦x<1、例えば、0.8≦x≦0.99、0.8≦x≦0.98、0.8≦x≦0.97、0.8≦x≦0.96、または0.8≦x≦0.95であることがさらに好ましい場合がある。0.85≦x<1、例えば、0.85≦x≦0.99、0.85≦x≦0.98、0.85≦x≦0.97、0.85≦x≦0.96、または0.85≦x≦0.95であることもまた好ましい場合がある。
【0018】
式1中、0<y≦0.3である。yは、0.01、0.02、または0.03以上であることが好ましい場合がある。yは、0.2、0.15、0.1、または0.05以下であることが好ましい場合がある。0.01≦y≦0.3、0.02≦y≦0.3、0.03≦y≦0.3、0.01≦y≦0.25、0.01≦y≦0.2、0.01≦y≦0.15、0.01≦y≦0.1、または0.03≦y≦0.1であることもまた好ましい場合がある。
【0019】
Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mg、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種である。Aは、Mnではなく、したがって、Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であることが好ましい場合がある。Aは、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であることがさらに好ましい場合がある。好ましくは、Aは、少なくともMg及び/またはAlであるか、あるいはAは、Al及び/またはMgである。より好ましくは、Aは、Mgである。Aが1種より多い元素を含む場合、zは、Aを構成する各元素の合計量である。
【0020】
式I中、0≦z≦0.2である。0≦z≦0.15、0≦z≦0.10、0≦z≦0.05、0≦z≦0.04、0≦z≦0.03、または0≦z≦0.02であるか、あるいはzは、0であることが好ましい場合がある。
【0021】
式I中、-0.2≦b≦0.2である。bは、-0.1以上であることが好ましい場合がある。0.1以下であることもまた好ましい場合がある。-0.1≦b≦0.1であるか、あるいはbは、0または約0であることがさらに好ましい場合がある。
【0022】
0.8≦a≦1.2であり、0.75≦x<1であり、0<y≦0.25であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、及びx+y+z=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.75≦x<1であり、0<y≦0.25であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.75≦x<1であり、0<y≦0.25であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。
【0023】
0.8≦a≦1.2であり、0.8≦x<1であり、0<y≦0.2であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、及びx+y+z=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.8≦x<1であり、0<y≦0.2であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.8≦x<1であり、0<y≦0.2であり、0≦z≦0.2であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。
【0024】
0.8≦a≦1.2であり、0.85≦x<1であり、0<y≦0.15であり、0≦z≦0.15であり、-0.2≦b≦0.2であり、及びx+y+z=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.85≦x<1であり、0<y≦0.15であり、0≦z≦0.15であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、Mn、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。0.8≦a≦1.2であり、0.85≦x<1であり、0<y≦0.15であり、0≦z≦0.15であり、-0.2≦b≦0.2であり、x+y+z=1であり、M=Coであり、及びA=MgのみあるいはMgとAl、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Sr、及びCaのうちの1種または複数種との組み合わせであることもまた好ましい場合がある。
【0025】
リチウムニッケル金属酸化物は、式2に従う式を有することがさらに好ましい場合があり:
Lia1Nix1Coy1Az1O2+b1
式2
式中:
Aは、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.8≦a1≦1.2であり
0.7≦x1<1であり
0<y1<0.3であり
0<z1≦0.2であり
-0.2≦b1≦0.2であり
x1+y1+z1=1である。
【0026】
式2中、Aは、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種である。Aは、Mgならびに任意選択で、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Ga、Si、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であることが好ましい場合がある。A=Mgであることがさらに好ましい。
【0027】
式2中、0.8≦a1≦1.2である。a1は、0.9以上、または0.95以上であることが好ましい場合がある。a1は、1.1以下、または1.05以下であることが好ましい場合がある。0.90≦a1≦1.10、例えば、0.95≦a1≦1.05であるか、またはa1=1であることが好ましい場合がある。
【0028】
式2中、0.7≦x1<1である。0.75≦x1<1、0.8≦x1<1、0.85≦x1<1、または0.9≦x1<1であることが好ましい場合がある。x1は、0.99、0.98、0.97、0.96、または0.95以下であることが好ましい場合がある。0.75≦x1<1、例えば、0.75≦x1≦0.99、0.75≦x1≦0.98、0.75≦x1≦0.97、0.75≦x1≦0.96、または0.75≦x1≦0.95であることが好ましい場合がある。0.8≦x1<1、例えば、0.8≦x1≦0.99、0.8≦x1≦0.98、0.8≦x1≦0.97、0.8≦x1≦0.96、または0.8≦x1≦0.95であることがさらに好ましい場合がある。0.85≦x1<1、例えば、0.85≦x1≦0.99、0.85≦x1≦0.98、0.85≦x1≦0.97、0.85≦x1≦0.96、または0.85≦x1≦0.95であることもまた好ましい場合がある。
【0029】
式2中、0<y1<0.3である。y1は、0.01、0.02、または0.03以上であることが好ましい場合がある。y1は、0.2、0.15、0.1、または0.05未満であることが好ましい場合がある。0.01≦y1<0.3、0.02≦y1<0.3、0.03≦y1<0.3、0.01≦y1≦0.25、0.01≦y1≦0.2、0.01≦y1≦0.15、0.01≦y1≦0.1、または0.03≦y1≦0.1であることもまた好ましい場合がある。
【0030】
式2中、0<z1≦0.2である。0<z1≦0.15、0<z1≦0.10、0<z1≦0.05、0<z1≦0.04、0<z1≦0.03、または0<z1≦0.02であることが好ましい場合がある。
【0031】
式2中、-0.2≦b1≦0.2である。b1は、-0.1以上であることが好ましい場合がある。b1は、0.1以下であることもまた好ましい場合がある。-0.1≦b1≦0.1であるか、あるいはb1は、0または約0であることがさらに好ましい場合がある。
【0032】
0.8≦a1≦1.2であり、0.75≦x1<1であり、0<y1<0.25であり、0<z1≦0.2であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a1≦1.2であり、0.75≦x1<1であり、0<y1<0.25であり、0<z1≦0.1であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることがさらに好ましい場合がある。
【0033】
0.8≦a1≦1.2であり、0.8≦x1<1であり、0<y1<0.2であり、0<z1<0.2であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a1≦1.2であり、0.8≦x1<1であり、0<y1<0.2であり、0<z1≦0.1であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることがさらに好ましい場合がある。
【0034】
0.8≦a1≦1.2であり、0.85≦x1<1であり、0<y1<0.15であり、0<z1<0.15であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることが好ましい場合がある。0.8≦a1≦1.2であり、0.85≦x1<1であり、0<y1<0.15であり、0<z1≦0.1であり、-0.2≦b1≦0.2であり、及びx1+y1+z1=1であることがさらに好ましい場合がある。
【0035】
好ましくは、上記で定義されるとおりの式2に従う粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料は、結晶子寸法が、90nm及び200nmも含めて90nm~200nmの範囲にある。そのような材料は、結晶子寸法が90nm未満である材料に比べて、低下した内部抵抗を提供する可能性がある。結晶子寸法が増大して200nmを超えると、リチウムイオン拡散速度の低下及び初期容量の低下を招く可能性がある。上記で定義されるとおりの式2に従う粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料は、結晶子寸法が、90~190nm、90~180nm、90~170nm、90~160nm、90~150nm、90~140nm、90~130nmであることがさらに好ましい場合がある。上記で定義されるとおりの式2に従う粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料は、結晶子寸法が90~120nmであることがさらに好ましい場合がある。そのような材料は、特に高い放電容量をもたらす。
【0036】
上記で定義されるとおりの式2に従う粒子状リチウムニッケル金属酸化物材料は、結晶子寸法が、110~200nm、110~190nm、または110~180nmであることもまた好ましい場合がある。
【0037】
結晶子寸法は、リチウムニッケル金属酸化物材料の粉末X線回折パターンのリートベルト解析を用いて特定される。
【0038】
リチウムニッケル金属酸化物材料は、結晶材料または実質的に結晶材料である。これは、α-NaFeO2型構造を有する場合がある。
【0039】
典型的には、リチウムニッケル金属酸化物材料は、複数の一次粒子(1つまたは複数の結晶子で構成される)を含む二次粒子の形状をしている。そのような二次粒子は、典型的には、D50粒径が少なくとも1μm、例えば、少なくとも2μm、少なくとも4μm、または少なくとも5μmである。リチウムニッケル金属酸化物の粒子は、典型的には、D50粒径が30μm以下、例えば、20μm以下、または15μm以下である。表面修飾リチウムニッケル金属酸化物の粒子は、D50が1μm~30μm、例えば、2μm~20μm、または5μm~15μmであることが好ましい場合がある。D50という用語は、本明細書で使用される場合、体積重み付けした分布の中央粒径を示す。D50は、レーザー回折法を用いることにより(例えば、粒子を水に分散させて、Malvern Mastersizer 2000を用いて解析することにより)、特定することができる。
【0040】
本明細書に記載されるとおりのプロセスは、ニッケル金属水酸化物前駆体を、リチウム含有化合物と混合する第一工程を含む。
【0041】
ニッケル金属水酸化物前駆体は、式3に従う化合物を含むことが好ましい場合があり:
[Nix2Coy2Az2][Op(OH)q]α
式3
式中:
Aは、Al、V、Ti、B、Zr、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、Zn、Mn、Mg、Sr、及びCaのうちの1種または複数種であり、
0.7≦x2≦1であり
0≦y2≦0.3であり
0≦z2≦0.2であり
式中、pは、0≦p<1の範囲にあり;qは、0<q≦2の範囲にあり;x2+y2+z2=1であり;及びαは、合計電荷バランスが0であるように選択される。
【0042】
好ましくは、pは0であり、qは2である。言い換えると、好ましくは、ニッケル金属水酸化物前駆体は、一般式[Nix1Coy1Az1][(OH)2]αを有する純金属水酸化物である。
【0043】
上記で検討されるとおり、αは、合計電荷バランスが0であるように選択される。したがって、αは、0.5≦α≦1.5を満たす場合がある。例えば、αは、1の場合がある。Aが、+2価状態を持たない、すなわち+2価状態で存在しない金属を1種または複数種含む場合、αは、1以外の場合がある。
【0044】
当業者には当然のことながら、x2、y2、及びz2という値、ならびにAという元素(複数可)は、本明細書に記載されるとおりのプロセス後に、式1の所望の組成を達成するように選択される。
【0045】
例えば、ニッケル金属水酸化物前駆体は、式Ni0.90Co0.05Mg0.05(OH)2、Ni0.90Co0.06Mg0.04(OH)2、Ni0.90Co0.07Mg0.03(OH)2、Ni0.91Co0.08Mg0.01(OH)2、Ni0.88Co0.08Mg0.04(OH)2、Ni0.90Co0.08Mg0.02(OH)2、またはNi0.93Co0.06Mg0.01(OH)2の化合物である場合がある。
【0046】
ニッケル金属水酸化物前駆体は、粒子形状をしている場合がある。ニッケル金属水酸化物前駆体は、当該分野で既知であるプロセスにより、例えば、塩基性条件下で金属塩を水酸化ナトリウムと反応させることによるニッケル金属水酸化物の(共)沈殿法により、調製することができる。
【0047】
典型的には、ニッケル金属水酸化物前駆体は、粉末形状をしており、この粉末は、体積平均粒径D50が2~50μm、適切には2~30μm、適切には5~20μm、適切には8~15μmである前駆体粒子を含む。
【0048】
リチウム含有化合物は、リチウムイオン及び適切な無機または有機カウンターイオンを含む。適切には、リチウム源は、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、及び過酸化リチウムから選択される1種または複数のリチウム化合物を含む。リチウム源は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち1種または複数から選択されることが好ましい場合がある。リチウム源は、水酸化リチウムであることがさらに好ましい場合がある。リチウム源が水酸化リチウムである場合に、本発明は特別な利点を提供することができる。リチウム遷移金属酸化物材料が、マンガンを低レベルで含有する(例えば、リチウムニッケル金属酸化物材料中の遷移金属のモルを基準として10mol%未満、5mol%未満、または1mol%未満)、及び/またはマンガンをまったく含有しない場合、水酸化リチウムは、特に適切なリチウム源である。
【0049】
次いで、ニッケル金属水酸化物前駆体とリチウム含有化合物の混合物を、焼成に供する。この焼成は、3時間~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度で加熱することを含む第一焼成工程を含む。
【0050】
第一焼成工程は、典型的には、温度が上昇する加熱段階、及び温度が高レベルで維持される維持段階を含む。第一焼成工程の維持段階は、460~540℃、470~530℃、480~520℃、490~510℃、または約500℃の温度で行われる場合がある。
【0051】
第一焼成工程の維持段階は、3時間~10時間の期間、例えば、3時間~9時間、3時間~8時間、4時間~8時間、または5時間~7時間行われる。
【0052】
第一焼成工程の加熱段階の間、温度は、1℃/分~20℃/分、例えば、2℃/分~10℃/分、例えば、3℃/分~8℃/分の速度で上昇する場合がある。
【0053】
焼成は、第二焼成工程を含み、第二焼成工程は、約600℃超の温度で加熱することを含む。第二焼成工程は、典型的には、温度が上昇する加熱段階、及び温度が高レベルで維持される維持段階を含む。第二焼成工程の維持段階は、少なくとも600℃、少なくとも625℃、少なくとも650℃、少なくとも670℃、または少なくとも680℃の温度で行われる場合がある。第二焼成工程の維持段階は、典型的には、1000℃以下、900℃以下、850℃以下、800℃以下、または750℃以下の温度で行われる。例えば、第二焼成工程の維持段階は、600~1000℃、600~800℃、650~800℃、650~750℃、または670~750℃の範囲の温度で行われる場合がある。
【0054】
第二焼成工程の維持段階は、30分間以上、例えば、1時間以上、または1.5時間以上の期間行われる。第二焼成工程の維持段階は、4時間以下、例えば、3時間以下の期間行われる。例えば、第二焼成工程の維持段階は、30分間~4時間の期間、例えば、1時間~4時間の期間、または1.5時間~3時間の期間行われる場合がある。
【0055】
例えば、第二焼成工程は、30分間~4時間の期間、例えば、1時間~4時間の期間で、600~800℃の範囲の温度で行われる場合がある。
【0056】
第二焼成工程の加熱段階の間、温度は、1℃/分~20℃/分、例えば、1℃/分~10℃/分、例えば、1℃/分~5℃/分の速度で上昇する場合がある。
【0057】
焼成は、3時間~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度に加熱することを含む第一焼成工程と、30分間~4時間の期間、例えば、1時間~4時間の期間、約600~約800℃の範囲の温度に加熱することを含む第二焼成工程と、を含むことが好ましい場合がある。
【0058】
焼成は、(i)1℃/分~20℃/分の速度で約460℃~約540℃の温度に加熱することと、(ii)3時間~10時間の期間、約460℃~約540℃の温度に維持することと、(iii)1℃/分~20℃/分の速度で少なくとも600℃の温度に加熱することと、(iv)30分間~4時間の期間、600~800℃の範囲の温度に維持することと、を含むことがさらに好ましい場合がある。
【0059】
焼成は、当業者に既知である任意の適切な炉、例えば、静置型のキルン(例えば、チューブ炉またはマッフル炉など)、トンネル炉(材料の固定床が移動して炉を通過する、例えば、ローラー炉床キルンもしくは押出し炉など)、またはロータリー炉(スクリュー供給型もしくはオーガ供給型ロータリー炉を含む)などで行うことができる。焼成に使用される炉は、典型的には、制御されたガス雰囲気下で操作可能なものである。材料の固定床を備えた炉、例えば、静置炉またはトンネル炉(例えば、ローラー炉床キルンもしくは押出し炉など)中で焼成工程を行うことが好ましい場合がある。焼成は、単一炉で行われることが好ましい。このことは、プロセスの経済性に利益をもたらす可能性がある。
【0060】
焼成が材料の固定床を備えた炉で行われる場合、ニッケル金属水酸化物前駆体とリチウム含有化合物の混合物は、典型的には、高温焼成の前に、焼成容器(例えば、匣鉢または他の適切なるつぼ)中に載荷される。
【0061】
焼成工程は、CO2不含雰囲気下で行われる場合がある。CO2不含空気は、例えば、酸素と窒素の混合物である場合がある。好ましくは、CO2不含雰囲気は、酸化雰囲気である。本明細書で使用される場合、「CO2不含」という用語は、100ppm未満のCO2、例えば50ppm未満のCO2、20ppm未満のCO2、または10ppm未満のCO2を含む雰囲気を含むことを意図する。このようなCO2レベルは、CO2スクラバーを用いてCO2を除去することにより、達成することができる。
【0062】
CO2不含雰囲気は、O2とN2の混合物を含むことが好ましい場合がある。混合物は、O2よりもN2を多量に含む、例えば、混合物は、N2及びO2を、50:50~90:10、例えば、60:40~90:10、例えば、約80:20の比で含むことがさらに好ましい場合がある。あるいは、二酸化炭素不含雰囲気は、酸素(例えば、純酸素)の場合がある。
【0063】
焼成の間、CO2不含空気を、加熱中及び任意選択で冷却中に、材料上に流すことができる。CO2不含空気の流速は、少なくとも2L/分/kg、例えば、2~40L/分/kgの場合がある。
【0064】
任意選択で、焼成後にリチウムニッケル金属酸化物材料に表面修飾工程を行い、粒子の表面または表面近くにある1種または複数の元素の濃度を上昇させる。表面修飾工程は、リチウムニッケル金属酸化物を、1種または複数の金属元素を含む組成物と接触させることを含む場合がある。1種または複数の金属元素は、好ましくは、コバルト、アルミニウム、チタン、及びジルコニウムから選択された1種または複数である場合がある。
【0065】
1種または複数の金属元素の組成物は、水溶液として提供される場合がある。適切には、1種または複数の金属元素は、1種または複数の金属元素の塩の水溶液、例えば、1種または複数の金属元素の硝酸塩または硫酸塩として、提供される場合がある。表面修飾工程は、典型的には、リチウムニッケル金属酸化物粒子を水溶液に浸漬するまたは別途接触させる工程、固体を分離する工程、及び任意選択で材料を乾燥させる工程を含む。分離は、濾過により適切に行われるか、あるいは分離及び乾燥を、噴霧乾燥により同時に行うこともできる。1種または複数の金属元素の組成物は、固体粉末として提供される場合もあり、この固体粉末は、リチウムニッケル金属酸化物材料と乾式混合される。リチウムニッケル金属酸化物粒子の表面の処理後、表面修飾された材料は、その後の加熱工程に供される場合がある。
【0066】
本プロセスは、1つまたは複数の粉砕工程を含む場合があり、粉砕工程は、焼成後に行われる場合がある。粉砕装置の性質は、特に限定されない。例えば、粉砕装置は、ボールミル、遊星ボールミル、またはローリングベッドミルの場合がある。粉砕は、粒子が所望の寸法に達するまで行われる場合がある。例えば、リチウムニッケル金属酸化物材料の粒子が、D50粒径が少なくとも5μm、例えば、少なくとも5.5μm、少なくとも6μm、または少なくとも6.5μmであるような体積粒径分布を有するまで、それら粒子を粉砕する場合がある。リチウムニッケル金属酸化物材料の粒子が、D50粒径が15μm以下、例えば、14μm以下、または13μm以下であるような体積粒径分布を有するまで、それら粒子を粉砕する場合がある。
【0067】
本発明のプロセスは、さらに、リチウムニッケル金属酸化物材料を含む電極(典型的には、カソード)を形成する工程を含むことができる。典型的には、これは、リチウムニッケル金属酸化物材料のスラリーを形成すること、スラリーを集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面に塗布すること、及び任意選択で処理(例えば、カレンダー加工)して電極の密度を上昇させることにより行われる。スラリーは、溶媒、結合剤、炭素材料、及びさらなる添加剤を1種または複数含む場合がある。
【0068】
典型的には、本発明の電極は、電極密度が少なくとも2.5g/cm3、少なくとも2.8g/cm3、または少なくとも3g/cm3となる。本発明の電極は、電極密度が4.5g/cm3以下、または4g/cm3以下である場合がある。電極密度とは、電極の電極密度(質量/体積)であって、電極が形成されている集電体を含まない。したがって、電極密度には、活物質、あらゆる添加剤、あらゆる添加炭素材料、及びあらゆる残存結合剤からの寄与が含まれる。
【0069】
本発明のプロセスは、さらに、リチウムニッケル金属酸化物材料を含む電極を備えたバッテリーまたは電気化学的電池を構築することを含むことができる。バッテリーまたは電池は、典型的には、さらに、アノード及び電解質を含む。バッテリーまたは電池は、典型的には、二次(充電式)リチウム(例えば、リチウムイオン)バッテリーである場合がある。
【0070】
ここから、本発明を以下の実施例を参照して説明するが、実施例は、本発明の理解を支援するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0071】
実施例1:500℃で4時間の焼成工程を用いる、Li1.0Ni0.92Co0.08Mg0.01O2の形成。
シェーカーミキサーを用いて、前駆材料(Ni0.91Co0.08Mg0.01(OH)2、65g、Brunp)と無水LiOH(17.1g)を、空気中で10分間、混合した。ブレンドした混合物を、アルミナるつぼに移し(床載荷量0.8g/cm2)、カーボライト炉の内部に入れた。CO2除去空気を31L/分/kgで流しながら、以下の焼成プロファイルを用いて材料を加熱した:(i)速度5℃/分で500℃に加熱;(ii)4時間、500℃に維持;(iii)2℃/分のランプ速度で700℃に加熱;(iv)2時間、700℃に維持。焼成が終了して温度が150℃未満に低下してから、るつぼを、炉から取り出した。
【0072】
形成されたリチウムニッケル金属酸化物材料は、組成がLi1.0Ni0.92Co0.08Mg0.01O2であること(誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)による解析を通じて)、及びD50が10.5μmである二次粒子から形成されていること(レーザー回折式粒度分布測定による)がわかった。
【0073】
実施例2:500℃で6時間の焼成工程を用いる、Li1.0Ni0.92Co0.08Mg0.01O2の形成。
500℃の維持時間を6時間に延長して、実施例1の実験を繰り返した。形成されたリチウムニッケル金属酸化物材料は、組成がLi1.0Ni0.92Co0.08Mg0.01O2であること(誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)による解析を通じて)、及びD50が10.2μmである二次粒子から形成されていること(レーザー回折式粒度分布測定による)がわかった。
【0074】
実施例3~6:様々な焼成条件
焼成条件を変化させながら(表1に示すとおり)、実施例1の実験を繰り返した。
【表1】
【0075】
実施例7(比較例)
実施例1に記載されるものと類似の経路により、式Li1.0Ni0.92Co0.08Mg0.01O2のリチウムニッケル金属酸化物材料を調製したが、以下の焼成プロファイルを用いた:
(i)5℃/分の速度で450℃に加熱;(ii)2時間、450℃に維持;(iii)2℃/分のランプ速度で700℃に加熱;(iv)6時間、700℃に維持。床載荷量を1.3g/cm2とし、CO2除去空気流を20L/分/kgとして、アルミナるつぼ中で焼成を行った。
【0076】
粉末X線回折(PXRD)
実施例1及び実施例2で生成した材料を、PXRDにより解析した。PXRDは、各材料がα-NaFeO2型構造を有することを示した。
【0077】
実施例1~7の焼成プロファイルにより生成した材料の結晶子寸法を、以下のとおり決定した。Bruker AXS D8回折計を使用し、CuKα線(λ=1.5406+1.5444Å)を用いて、反射配置のPXRDデータを収集した。データセットは、2θ=10~130°の間で0.02°刻みで収集した。相の同定は、Bruker AXS Diffrac Eva V5(2019)を使用しPDF-4+データベースを参照して行い、観察された散乱が全て、既知の結晶構造に帰属できるようにした。Bruker-AXS Topas 5を使用して、2θ=17~70°の間でリートベルト法を行った。この場合、装置のパラメーターは、NIST660 LaB
6で収集された参照データを用いる基本パラメーターアプローチを使用して決定した。容積加重カラム高さ(volume weighted column height)LVol-IB法を用いて、帰属された相の結晶子寸法を計算した。
【表2】
【0078】
実施例8
In situ温度可変X線回折
Ni0.91Co0.08Mg0.01(OH)2とLiOHの混合物(実施例1と同等な比)を、温度可変X線回折計中、80%窒素:20%酸素の雰囲気下で加熱して、以下の焼成プロファイル中の中間相の形成について調べた:(i)速度5℃/分で500℃に加熱;(ii)8時間、500℃に維持;(iii)2℃/分のランプ速度で700℃に加熱;(iv)2時間、700℃に維持;(v)30℃に冷却。
【0079】
図1は、焼成プロセス中の材料の相変化を示す。これは、温度500℃への加熱が、Ni(OH)
2相及びLiOH相の消失ならびに中間リチウムニッケル酸化物型相(単数/複数)の形成をもたらすことを示す。500℃で8時間の維持期間中、2種のモデル化中間体の相対量は、一定を維持している。500℃で8時間維持した後、温度を600℃超に上昇させると、所望のLiNiO
2構造への迅速な変換がもたらされる。
【0080】
このin situ XRD試験は、焼成中に500℃に維持することが、600℃を超える高温で所望のLiNiO2構造への迅速な変換を可能にしたことを示した。
【0081】
電気化学試験
試験プロトコル
94重量%のリチウムニッケル金属酸化物活物質、導電性添加剤として3重量%のSuper-C、及び結合剤として3重量%のポリビニリデンフルオリド(PVDF)を、溶媒としてN-メチル-2-ピロリジン(NMP)にブレンドすることにより、電極を調製した。スラリーをリザーバーに加え、125μmドクターブレードコーティング(Erichsen)をアルミニウム箔に塗装した。電極を、120℃で1時間乾燥させてから、プレスして密度を3.0g/cm3にした。典型的には、活物質の添加は、9mg/cm2である。プレスした電極を切断して14mmディスクにし、さらに、120℃、真空下で12時間乾燥させた。
【0082】
CR2025コイン電池型を用いて電気化学試験を行った。このコイン電池は、アルゴン充填したグローブボックス(MBraun)中で組み立てた。リチウム箔をアノードとして用いた。多孔質ポリプロピレン膜(Celgard 2400)を、セパレータとして用いた。1MのLiPF6を含有する炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、及び炭酸エチルメチル(EMC)の1:1:1混合物+1%の炭酸ビニル(VC)を電解質として用いた。
【0083】
電池は、MACCOR 4000シリーズを使用して、Cレート試験及び保持試験を用いて、3.0~4.3Vの電圧範囲で試験した。Cレート試験では、0.1C及び5C(0.1C=200mAh/g)で電池の充電及び放電を行った。容量保持試験は、1Cで、試料に50サイクルの充放電を行って実施した。容量保持試験中に、満充電状態で、それぞれ5サイクルごとに3Cで10秒及び1秒の交互パルスを用いてDCIR抵抗を測定した。両試験とも23℃で行った。
【0084】
電気化学試験結果
図1は、実施例1~7で生成した材料のCレート試験の結果を示す。表3は、実施例1~7で生成した材料の0.1C放電容量を示す。
【0085】
このデータは、比較例7に比べて、500℃での維持を伴う各実施例が、650℃を超える温度での高温での時間が顕著に少なかったとしても、少なくとも同等な材料性能を達成することを示す。また、このデータは、500℃で6時間維持することが、Cレートの範囲において電気化学的性能の向上をもたらし、最も高い放電容量をもたらすことも示す
【表3】
【0086】
図2は、実施例1~7で生成した材料の放電容量保持試験の結果を示す。表4は、実施例1~7の放電容量保持試験の結果を示す。このデータは、比較例7に比べて、各実施例が、少なくとも同等な材料性能を達成することを示す。最も高い1回目のサイクル容量は、500℃で6時間の維持を伴う方法により生成した材料で達成される。50サイクル後の放電容量は、500℃を伴う方法により生成した各実施例の方が、比較例7の方法により生成したものよりも高かった。
【表4】
【0087】
表5は、実施例1、2、及び4~7の初期直流内部抵抗(DCIR)パラメーターを示す。500℃維持での焼成を用いて生成した試料は、比較例7に比べて低下した内部抵抗を有した。500℃で6時間維持することにより、最も低いDCIR値を持つ材料が得られた。DCIR値は、90~200nmの範囲にある結晶子寸法が、結晶子寸法90nm未満の試料(比較例7)で観察されたものより低い内部抵抗値をもたらしたことを示した。
【表5】
【国際調査報告】