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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ビタミンK2の合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/297 20060101AFI20230330BHJP
   C07C 69/16 20060101ALI20230330BHJP
   C07C 69/773 20060101ALI20230330BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
C07C67/297
C07C69/16
C07C69/773
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543714
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021053706
(87)【国際公開番号】W WO2021170449
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159175.7
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】クエンジ, ロルフ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB10
4H006AC22
4H006BA66
4H006BB11
4H006BB17
4H006BC10
4H006BC19
4H006BJ50
4H006BN30
4H006KA30
4H006KC12
4H006KC14
4H006KC30
4H006KD10
4H039CA10
4H039CD10
(57)【要約】
本発明は、ビタミンK2としても公知であるメナキノン4の新規な製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは、
【化2】

である)
の化合物を製造する方法において、式(II)
【化3】

(式中、Rは、
【化4】

である)
の化合物は、式(III)
【化5】

の化合物と不均一系トリフレート触媒の存在下で反応されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記不均一系触媒は、式(IV)
【化6】

(式中、Mは、Al、Bi又はScである)
の化合物である、請求項1に記載の方法である方法。
【請求項3】
不活性溶媒系中で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
昇温(好ましくは30℃~150℃)で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)及び(III)の化合物は、等モル量で使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(II)の化合物対前記式(III)の化合物のモル比は、1:2~2:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基質対触媒比(前記式(II)の化合物対前記式(IV)の触媒のモル量に基づく)は、2000:1~50000:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基質対触媒比は、1500:1~30000:1である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビタミンK2としても公知であるメナキノン4の新規な製造方法に関する。
【0002】
ビタミンK2又はメナキノンは、ビタミンKの3つの型の1つであり、他の2つは、ビタミンK1(フィロキノン)及びK3(メナジオン)である。K2は、細菌産物であり、通常、発酵食品又は卵、乳製品及び肉などの動物製品並びにチーズ及びヨーグルトなどの発酵食品に見出される。
【0003】
ビタミンK2には、その側鎖におけるイソプレニル単位の数によって決定される9つの化学的バリアントがある。
【0004】
人間の食事で最も一般的であるのは、短鎖メナキノン4(MK-4)であり、これは、通常、ビタミンK1の細菌変換によって生成される。
【0005】
メナキノン4(MK-4)は、以下の化学式
【化1】

を有する。
【0006】
ビタミンK2は、非常に興味深い重要な特性を有する。
【0007】
その特性は、血液凝固及び創傷治癒で役割を果たす。
【0008】
更に、ビタミンK2は、心血管損傷のリスクを低下させ、全体的な心臓の健康を改善し得る。
【0009】
ビタミンK2は、カルシウムを骨に結合するタンパク質であるオステオカルシンをカルボキシル化することにより、健康な骨密度を促進する。
【0010】
2016年の研究では、メタボリックシンドローム、高血糖値並びに不安症、うつ病及び記憶障害の症状を有するラットにおけるビタミンK2の効果が調査された。
【0011】
10週間後、ビタミンKによる治療は、血糖を正常化し、不安症及びうつ病の症状を軽減した。
【0012】
ビタミンK2には、がんの予防に役立ち得る抗酸化特性がある。加えて、調査結果は、K2が、腫瘍の成長につながる遺伝的プロセスを抑制し得ることを示唆している。
【0013】
ビタミンK2は、卵、乳製品及び肉並びにチーズ及びヨーグルトなどの発酵食品に見出すことができる。
【0014】
ビタミンK2は、化学的に製造することもできる。ビタミンK2を製造する先行技術から既知の方法は、ほとんどない。例えば、米国特許出願公開第2007/0060761号明細書又はKozlov,E.I.,Meditsinskaya Promyshlennost SSSR(1965),19(4),16-21)からのものである。
【0015】
しかし、先行技術からの既知の方法には、副反応が存在するという残念な欠点があり、これは、収率の低下及び所望の生成物を反応混合物に取り出すための複雑な分離プロセスにつながる。
【0016】
ビタミンK2の重要性のため、ビタミンK2を得るための新規且つ改良された方法を見出すことが常に必要とされている。
【0017】
したがって、本発明の目的は、メナキノン4(又はメナキノン4の製造に使用できる中間体)を製造する新規な方法を見出すことであった。
【0018】
4-ヒドロキシ-2-メチルナフタレン-1-イルベンゾエート(式(II)の化合物)から出発し、特定の触媒を使用する場合に使用されるビタミンK2合成の中間体を良好な収率で製造できることが見出された。更に、新規な方法は、均一系触媒と比較して容易に分離することができる不均一系触媒を使用する。
【0019】
本発明による方法は、メナキノン4製造における中間体である、式(I)
【化2】

(式中、Rは、
【化3】

である)
の化合物の製造に関する。
【0020】
本発明による新規な方法は、式(II)
【化4】

(式中、Rは、
【化5】

である)
の化合物を出発物質として使用した。
【0021】
4-ヒドロキシ-2-メチルナフタレン-1-イルベンゾエートは、市販されているか、又は簡単に製造することができる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,1996,A27,488-506)。
【0022】
式(I)の化合物を得るために、式(I)の化合物は、式(III)
【化6】

の化合物であるゲラニルゲラニオールとの縮合反応で使用される。
【0023】
本発明による新規且つ改良された方法は、不均一系触媒の存在下で行われる。
【0024】
本発明による方法において使用される不均一系触媒は、トリフレート触媒である。好ましいトリフレート触媒は、式(IV)
【化7】

(式中、Mは、Al、Bi又はScである)
のものである。
【0025】
したがって、本発明は、式(I)
【化8】

(式中、Rは、
【化9】

である)
の化合物を製造する方法(P)において、式(II)
【化10】

(式中、Rは、
【化11】

である)
の化合物は、式(III)
【化12】

の化合物と不均一系トリフレート触媒の存在下で反応されることを特徴とする方法(P)に関する。
【0026】
したがって、本発明は、不均一系触媒が、式(IV)
【化13】

(式中、Mは、Al、Bi又はScである)
の化合物である方法(P)である、方法(P’)に関する。
【0027】
上述したように、不均一系触媒は、反応混合物から容易に分離することができる。更に、本発明の触媒であるAl、Bi及びScは、先行技術で使用されるZn触媒よりも効果的である。更に、先行技術と比較した場合、本発明の触媒の必要量は、はるかに少ない。
【0028】
本発明による方法は、通常、不活性溶媒系中で行われる。
【0029】
不活性溶媒系は、無極性溶媒及び極性溶媒又はそのような溶媒の混合物であり得る。
【0030】
好適な溶媒系は、直鎖又は分枝鎖C~C12脂肪族(2-エチルヘキサン、ヘプタン、デカン又はドデカンなど)に基づく無極性相及びエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート(又はエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートの混合物(通常、1:1の混合物))に基づく極性相を有する二相溶媒系である。
【0031】
したがって、本発明は、不活性溶媒系中で行われる、方法(P)又は(P’)である、方法(P1)に関する。
【0032】
したがって、本発明は、溶媒系が、直鎖又は分枝鎖C~C12脂肪族(2-エチルヘキサン、ヘプタン、デカン又はドデカンなど)に基づく無極性相及びエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート(又はエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートの混合物(通常、1:1の混合物))に基づく極性相を有する二相溶媒系である、方法(P1)である、方法(P1’)に関する。
【0033】
したがって、本発明は、無極性溶媒が、2-エチルヘキサン、ヘプタン、デカン及びドデカンからなる群から選択され、極性溶媒が、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートからなる群から選択される、方法(P1)又は(P1’)である、方法(P1’’)に関する。
【0034】
本発明による方法は、通常、昇温で実施される。
【0035】
通常、本発明による方法は、30℃~150℃、好ましくは50℃~120℃の温度で行われる。
【0036】
したがって、本発明は、昇温で行われる方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)又は(P1’’)である、方法(P2)に関する。
【0037】
したがって、本発明は、30℃~150℃の温度で行われる方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)又は(P1’’)である、方法(P2’)に関する。
【0038】
したがって、本発明は、50℃~120℃の温度で行われる方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)又は(P1’’)である、方法(P2’’)に関する。
【0039】
本発明による方法は、通常、周囲気圧下で行われる。
【0040】
したがって、本発明は、周囲気圧下で行われる方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)又は(P2’’)である、方法(P3)に関する。
【0041】
本発明による方法では、式(II)の化合物の化合物及び式(III)の化合物は、等モル量で使用され得る。
【0042】
出発物質(式(II)の化合物及び式(III)の化合物)の1つは、過剰量で使用され得ることも可能である。そのような場合、出発物質の1つの2倍(モル当量)まで使用することが可能である。
【0043】
これは、式(II)の化合物対式(III)の化合物のモル比が1:2~2:1、好ましくは1:1.5~1.5:1であり得ることを意味する。
【0044】
したがって、本発明は、式(II)の化合物及び式(III)の化合物が等モル量で使用される、方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)又は(P3)である、方法(P4)に関する。
【0045】
したがって、本発明は、式(II)の化合物対式(III)の化合物のモル比が1:2~2:1である、方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)又は(P3)である、方法(P4’)に関する。
【0046】
したがって、本発明は、式(II)の化合物対式(III)の化合物のモル比が1:1.5~1.5:1である、方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)又は(P3)である、方法(P4’’)に関する。
【0047】
本発明による触媒(式(IV)の化合物)は、触媒量で使用される。
【0048】
基質対触媒比は、2000:1~50000:1、好ましくは1500:1~30000:1である。この比は、式(II)の化合物対式(IV)の触媒のモル量に基づく。
【0049】
したがって、本発明は、基質対触媒比(式(II)の化合物対式(IV)の触媒のモル量に基づく)が2000:1~50000:1である、方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)又は(P4’’)である、方法(P5)に関する。
【0050】
したがって、本発明は、基質対触媒比(式(II)の化合物対式(IV)の触媒のモル量に基づく)が1500:1~30000:1である、方法(P5)である、方法(P5’)に関する。
【0051】
本発明による方法は、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性は、任意の一般的に使用される不活性ガス(又はその混合物)であり得る。
【0052】
好適なガスは、N又はアルゴンである。
【0053】
したがって、本発明は、不活性ガス雰囲気下で行われる、方法(P)、(P’)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)、(P4’’)、(P5)又は(P5’)である、方法(P6)に関する。
【0054】
したがって、本発明は、不活性ガスが、N又はアルゴンからなる群から選択される、方法(P6)である、方法(P6’)に関する。
【0055】
得られた式(I)の生成物は、単離され得るか、又は反応混合物(反応が終了した後)でビタミンK2を生成することができる。
【0056】
式(I)の化合物からビタミンK2を得る方法は、先行技術から公知である。
【0057】
ビタミンK2を得るために、式(I)の化合物は、けん化後に酸化される。けん化は、NaOH(aq)で行うことができ、酸化は、酸素で行うことができる。
【0058】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つ。
【0059】
[実施例]
[実施例1]
スターラー、アルゴン注入口、投薬注入口、水冷集中凝縮器を備えた水セパレータ及びバブルカウンターを備えた100mLフラスコで、4.22g(99%、15mMol、1.5eq)のメナジオール-1-ベンゾエートを12gのエチレンカーボネート、15mLのn-ヘプタン及び0.949mg(99.9%、2.0μMol、0.0002eq)のAl(OTf)と一緒に計量した。更に、約10mLのn-ヘプタンをセパレータに入れた。100℃で強力に撹拌(約1000rpm)しながら、2時間かけて約2mLのn-ヘプタン中に溶解させた3.23g(90%、10mMol、1eq)のゲラニルゲラニオールの投与を開始した。
【0060】
同じ温度で30分間撹拌し、その後、80℃まで冷却し、15mLのn-ヘプタンを添加した。反応混合物を分液漏斗内に入れ、下部炭酸エチレン相を分離した。
【0061】
有機相をロータリーエバポレーターで40℃において17mbarまで濃縮し、40℃において<0.1mbarまで高真空で30分間脱気する。
【0062】
生成物(式(I)の化合物)は、収率52.5%(変換率>99%、選択性0.52)で得られた。
【0063】
[実施例2]
スターラー、アルゴン注入口、投薬注入口、水冷集中凝縮器を備えた水セパレータ及びバブルカウンターを備えた100mLフラスコで、4.22g(99%、15mMol、1.5eq)のメナジオール-1-ベンゾエートを12gのエチレンカーボネート、15mLのn-ヘプタン及び1.326mg(99.9%、2.0μMol、0.0002eq)のBi(OTf)と一緒に計量した。更に、約10mLのn-ヘプタンをセパレータに入れた。100℃で強力に撹拌(約1000rpm)しながら、2時間かけて約2mLのn-ヘプタン中に溶解させた3.23g(90%、10mMol、1eq)のゲラニルゲラニオールの投与を開始した。
【0064】
同じ温度で30分間撹拌し、その後、80℃まで冷却し、15mLのn-ヘプタンを添加した。反応混合物を分液漏斗内に入れ、下部炭酸エチレン相を分離した。有機相をロータリーエバポレーターで40℃において17mbarまで濃縮し、40℃において<0.1mbarまで高真空で30分間脱気する。生成物(式(I)の化合物)は、収率57.5%の粗生成物(変換率>99%、選択性0.57)で得られた。
【0065】
[実施例3]
スターラー、アルゴン注入口、投薬注入口、水冷集中凝縮器を備えた水セパレータ及びバブルカウンターを備えた100mLフラスコで、3.35g(96.7%、15mMol、1.5eq)のメナジオール-1-アセテートを12gのエチレンカーボネート、15mLのn-ヘプタン及び0.949mg(99.9%、2.0μMol、0.0002eq)のAl(OTf)と一緒に計量した。更に、約10mLのn-ヘプタンをセパレータに入れた。100℃で強力に撹拌(約1000rpm)しながら、2時間かけて約2mLのn-ヘプタン中に溶解させた3.23g(90%、10mMol、1eq)のゲラニルゲラニオールの投与を開始した。
【0066】
同じ温度で30分間撹拌し、その後、80℃まで冷却し、15mLのn-ヘプタンを添加した。反応混合物を分液漏斗内に入れ、下部炭酸エチレン相を分離した。有機相をロータリーエバポレーターで40℃において13mbarまで濃縮し、40℃において<0.1mbarまで高真空で30分間脱気する。生成物(式(I)の化合物)は、収率23.2%の粗生成物(変換率>99%、選択性0.23)で得られた。
【国際調査報告】