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特表2023-5145241-フェニル-テトラリン誘導体の農薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】1-フェニル-テトラリン誘導体の農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/08 20060101AFI20230330BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230330BHJP
   A01N 33/04 20060101ALI20230330BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A01N31/08
A01P3/00
A01N33/04
A01N31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546677
(86)(22)【出願日】2021-01-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 IL2021050110
(87)【国際公開番号】W WO2021152598
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/969,111
(32)【優先日】2020-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522048786
【氏名又は名称】メタボリック インサイツ エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】METABOLIC INSIGHTS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パニック、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】コルマン、イド
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB04
4H011BC07
4H011DA13
4H011DD03
(57)【要約】
1‐フェニル‐テトラリンの誘導体は、いくつかの担子菌、子嚢菌及び不等毛藻)真菌及びPseudomonas属のプロトバクテリア(Protobacteria)に対して高い有効性を有する農薬活性があることが判明した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料の植物病原体の侵襲の事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法であって、植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の少なくとも1種の化学式(I)の化合物若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を適用することを含む、方法:
【化1】
式中、R1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
及びRが、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;かつ
が、水素、メチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシ及びメトキシから選択される。
【請求項2】
1a、R1b、Rが、独立して、水素原子及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
、R、R及びRが水素であり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1a、R1b、Rが、独立して、水素原子及び塩素原子から選択され;
、R、R及びRが水素であり;かつ
が、メチルアミノ基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
及びRが、メチルであり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択され;
及びRが、メチルであり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、ヒドロキシ及びメトキシから選択され;
及びRが、メチルであり;かつ
が、水素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、
5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール;
(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール;
4-(7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール;及び
4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール、
又はそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオールである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が適用される植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌(Basidomycete);Dothideomycetes綱又は、Botrytis属及びFusarium属から選択される、子嚢菌(Ascomycota);並びにOomycota綱の不等毛藻(Heterokontophyta)から選択されるメンバーである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記植物病原体が、Pucciniales目のPucciniomycetes綱植物病原体のメンバーである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記Pucciniales植物病原体がPucciniaceae科のメンバーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Pucciniaceae植物病原体が、Puccinia属種のメンバーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記植物病原体が、Puccinia sorghi及びPuccinia triticinaから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記植物病原体が、Rhizoctonia solani種のRhizoctonia属のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記植物病原体が、Pleosporales目のDothideomycetes綱のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記Pleosporales植物病原体が、Pleosporaceae科のメンバーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記Pleosporaceae植物病原体が、Alternaria属のメンバーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Alternaria植物病原体が、Alternaria alternata及びAlternaria solaniから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記植物病原体が、Botrytis cinerea種のBotrytis属のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記植物病原体が、Fusarium oxysporum種のFusarium属のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記植物病原体が、Peronosporales目の卵菌(Oomycota)のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記Peronosporales植物病原体が、Peronosporaceae科又はPythiaceae科のメンバーである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Peronosporales植物病原体が、Phytophthora属のPeronosporaceae科のメンバーである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記Phytophthora植物病原体が、Phytophthora infestansである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記Peronosporales植物病原体が、Pythium属のPythiaceae科のメンバーである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記Pythium植物病原体が、Pythium aphanidermatumである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が適用される植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌(Basidomycete);Oomycota綱の不等毛藻(Heterokontophyta);及びPseudomonadales目のプロトバクテリウム(protobacterium)から選択されるメンバーである、請求項9に記載の方法。
【請求項30】
前記植物病原体が、Pucciniales目のPucciniomycetes綱のメンバーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記Pucciniales植物病原体が、Pucciniaceae科のメンバーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記Pucciniaceae植物病原体が、Puccinia属種のメンバーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記植物病原体が、Puccinia sorghi及びPuccinia triticinaから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記植物病原体が、Rhizoctonia solani種のRhizoctonia属のメンバーである、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記植物病原体が、Peronosporales目のOomycota綱のメンバーである、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記Peronosporales植物病原体が、Peronosporaceae科又はPythiaceae科のメンバーである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記Peronosporales植物病原体が、Phytophthora属のPeronosporaceae科のメンバーである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記Phytophthora植物病原体が、Phytophthora infestansである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記Peronosporales植物病原体が、Pythium属のPythiaceae科のメンバーである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記Pythium植物病原体が、Pythium aphanidermatumである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記植物病原体が、Pseudomonadaceae科のPseudomonadales目のメンバーである、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記Pseudomonadaceae植物病原体が、Pseudomonas属のものである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記植物病原体が、Pseudomonas syringaeである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物が適用される植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌(Basidomycete);Pythiaceae科の不等毛藻(Heterokontophyta);及びPseudomonadales目のプロトバクテリウム(protobacterium)から選択されるメンバーである、請求項10に記載の方法。
【請求項45】
前記植物病原体が、Pucciniales目のPucciniomycetes綱植物病原体のメンバーである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記Pucciniales植物病原体が、Pucciniaceae科のメンバーである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記Pucciniaceae植物病原体が、Puccinia属種のメンバーである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記植物病原体が、Puccinia sorghi及びPuccinia triticinaから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記植物病原体が、Rhizoctonia solani種のRhizoctonia属のメンバーである、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
前記植物病原体が、Pythium属のPythiaceae科のメンバーである、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記Pythium植物病原体が、Pythium aphanidermatumである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記植物病原体が、Pseudomonadaceae科のPseudomonadales目のメンバーである、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記Pseudomonadaceae植物病原体が、Pseudomonas属のものである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記植物病原体が、Pseudomonas syringaeである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1種の化学式(I)の化合物、その立体異性体又はその農業上許容される塩を含有する、農薬組成物:
【化2】
式中、R1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
及びRが、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【請求項56】
1a、R1b、Rが、独立して、水素原子及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
、R、R及びRが、水素であり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項55に記載の農薬組成物。
【請求項57】
1a、R1b、Rは、独立して、水素原子及び塩素原子から選択され;
、R、R及びRが、水素であり;かつ
が、メチルアミノ基である、請求項56に記載の農薬組成物。
【請求項58】
前記化学式(I)の化合物が、(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリドである、請求項57に記載の農薬組成物。
【請求項59】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
とRが、メチルであり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項55に記載の農薬組成物。
【請求項60】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択され;
及びRが、メチルであり;かつ
が、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される、請求項59に記載の農薬組成物。
【請求項61】
1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、ヒドロキシ、及びメトキシから選択され;
及びRが、メチルであり;かつ
が、水素である、請求項60に記載の農薬組成物。
【請求項62】
前記化学式(I)の化合物が、
5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール;
(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール;
4-(7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール;及び
4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール;又は
それらの組み合わせ、から選択される、請求項61に記載の農薬組成物。
【請求項63】
前記化学式(I)の化合物が、(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオールである、請求項62に記載の農薬組成物。
【請求項64】
前記化学式(I)の化合物が、4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオールである、請求項62に記載の農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は2020年2月2日に出願された米国特許出願第62/969,111号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、概して、農業利用のための殺真菌特性及び殺菌特性を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
植物病害生物は、現代農業の生産性に対する大きな課題である。さび病は、数十の属及び数千の種を含む多様な植物病原体群である。これらは、経済的に非常に重大であり、穀類、トウモロコシ及び大豆の収量に数十パーセントの損失を与える恐れがある(Gessese 2019;Groth et al.,1998;Hershman et al.,2011)。
【0004】
Puccinia属種は、偏性病原性真菌であり、担子菌綱の系統学的系列に属する植物サビ菌類の中の主要な属である。Puccinia属種は、穀類(例えば、コムギにおける黄さび病)及びトウモロコシ(一般的なさび病)において商業的に重大な広範囲の植物病の原因となる(Gessese 2019;Groth et al.,1998)。
【0005】
土壌伝染性植物病原体は、農作物に対して重大な被害をもたらす。植物病原性真菌であるRhizoctonia(リゾクトニア)属種は、担子菌綱の系統学的系列に属し、野菜におけるブラウンパッチ、苗立枯病、根腐れ及び腹腐れ、イネの紋枯れ病などの広範囲の商業的に重大な植物病の原因となる。植物におけるすべてのリゾクトニア病及びその後の二次感染は、防除が難しい(Erlacher et al.,2014)。
【0006】
Pythium属種は、タバコ、トマト、マスタード、トウガラシ及びクレソン実生に広く「立ち枯れ病」(「dumpling off」病)の原因となる卵菌(Oomycetes)と呼ばれる真核微生物の系統学的系列に属する植物病原性の真菌様生物である(Martin & Loper、2010)。
【0007】
Phytophthora属種は、卵菌と呼ばれる真核微生物の系統学的系列に属する偏性植物真菌様病原体である。Phytophthora infestansは、葉腐病及び塊茎の腐敗をもたらすジャガイモの胴枯れ病として知られるジャガイモの深刻な病気である。この病気によって、ジャガイモの収穫が完全に失われることがある(Sedlakova et al.,2012)。Phytophthoraは、多くの植物種の地上部を攻撃し、葉枯れ病、トマト、カボチャ及び他の作物における果実腐れかいよう病(canker fruit rot diseases)の主な原因である。
【0008】
Botrytis属種は、子嚢菌類の系統に属する広範な植物種の遍在性糸状菌病原体である。Botrytisは宿主植物のすべての地上部にある程度感染することができる。Botrytisは、ブドウ、トマト、イチゴ、キュウリ、球根花、切り花及び観葉植物などの、農業上重要な作物及び商品植物の多様な場合において、灰色カビと呼ばれる疾患を引き起こす(J.A.Lvan Kan、2005)。
【0009】
Fusarium属種は、子嚢菌類の系統に属する糸状菌の大きな属である。Fusarium属の多くの種は植物に対して病原性であり、経済的に重要な植物、主に野菜の萎凋(wilt)又は「腐れ(rot)」などの深刻な病気を引き起こす。さらに、Fusarium種は、穀類に感染して、トウモロコシにおいて頭枯れ(head blight)及び穂腐れ(ear rot)を引き起こし、ある特定の条件下においてマイコトキシンを蓄積させる(J.E.E.Jenkins,Y.S.Clark and A.E.Buckle,1998)。
【0010】
Alternaria属種は、穀物、果実及び野菜-リンゴ、ジャガイモ、トマト等、を含む農産物に著しい損傷を引き起こす多数の種を有する、遍在性の真菌属である(Patriarca、A.,& Fernandez Pinto,V.2018)。
【0011】
Pseudomonas属種は、多様な作物植物において毒性のある植物病原菌属であり、葉及び茎に著しい病変をもたらす。Pseudomonas属種は、経済的に重要な作物植物及び果樹において以下のような病気の原因となる:パースニップ及びトマトにおける髄壊死、イネにおける褐色斑点病及び葉鞘褐色腐敗病、アーモンドにおける細菌性かいよう病、並びにオリーブにおけるオリーブがんしゅ病(Moore L.W.,1988;Hofte M.and De Vos P.,2006)。
【0012】
作物植物におけるPseudomonas属種の管理について種々の方法が試験された。それらとしては、栽培上の管理、宿主抵抗性、微生物アンタゴニストによる生物学的防除、及び化学的防除が挙げられる。それらのいずれも完全な防除はできない。
【0013】
これらの病気から作物を保護する目的で利用可能な活性成分の数は、害虫の抵抗性が高まっていること、気候条件が不安定であること、及び規制圧力が高まっていることに起因して、年々減少している。環境的に持続可能な新規の作物保護の解決法を開発するために、新しい活性成分が至急必要となっている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一態様は、植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料の植物病原体の侵襲の事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法であって、植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の少なくとも1種の化学式(I)の化合物若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を適用する工程を含む、方法である:
【化1】
式中、R1a、R1b、R、R及びRが、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R及びRが、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;Rが、水素、メチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシ及びメトキシから選択される。
【0015】
特定の実施形態において、本発明の方法において適用される化学式(I)の化合物は:
化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド、
化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール、及び
化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオールである。
【0016】
いくつかの実施形態において、化合物3は、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌(Basidomycete);Dothideomycetes綱の子嚢菌(Ascomycota)又はBotrytis及びFusariumから選択される属;及び、Oomycota綱の不等毛藻(Heterokontophyta)から選択されるメンバーである植物病原体に適用される。
【0017】
他の実施形態において、化合物1は、以下から選択されるメンバーである植物病原体に適用される:Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌;Oomycota綱の不等毛藻;及びPseudomonadales目のプロトバクテリウム(protobacterium)。
【0018】
さらに他の実施形態において、化合物2は、以下から選択されるメンバーである植物病原体に適用される:Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌;Pythiaceae科の不等毛藻;及びPseudomonadales目のプロトバクテリウム。
【0019】
本発明の別の態様では、農薬組成物は、少なくとも1種の化学式(I)若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を含む:
【化2】
式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R及びRは、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;かつRは、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0020】
特定の実施形態において、本発明の組成物の化学式(I)の化合物は:
化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド、
化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール、及び
化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオールである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】Puccinia sorghiによるトウモロコシ葉の感染に対する化合物1の効果を示し、それはこの真菌によって覆われた葉の表面の割合(%)として決定される。***,p<0.001。ppm、百万分率。(実験343)
【0022】
図2】2つの独立した実験における、Puccinia triticina(葉さび病)によるコムギ葉感染に対する化合物1の効果を示し、それは感染10日後の胞子発芽の割合(%)(病害重症度)として求めたものである。Signum(登録商標)(BASF)-26.7% w/wボスカリド及び6.7% w/wピラクロストロビン(陽性対照)を含む参照殺真菌剤。試験例9において-製剤1の配合及び調製を参照;***、p<0.001。(実験952)
図3】2つの独立した実験におけるPuccinia triticina(葉さび病)によるコムギ葉感染に対する化合物1の効果を示しており、感染10日後の胞子発芽(病害重症度)の割合(%)として求めたものである。Signum(登録商標)(BASF)-26.7% w/wのボスカリド及び6.7% w/wのピラクロストロビン(陽性対照)を含む参照殺真菌剤。試験例9-製剤1の配合及び調製を参照;***、p<0.001(実験973)。
【0023】
図4】3つの独立した実験における、Puccinia sorghiによるトウモロコシ葉の感染に対する化合物3の効果を示し、それは真菌によって覆われた葉の表面の割合(%)として決定される。***,p<0.001。製剤1~5-試験例10を参照。(実験270)
図5】3つの独立した実験における、Puccinia sorghiによるトウモロコシ葉の感染に対する化合物3の効果を示し、それは真菌によって覆われた葉の表面の割合(%)として決定される。***,p<0.001。製剤1~5-試験例10を参照。(実験284)
図6】3つの独立した実験における、Puccinia sorghiによるトウモロコシ葉の感染に対する化合物3の効果を示し、それは真菌によって覆われた葉の表面の割合(%)として決定される。***,p<0.001。製剤1~5-試験例10を参照。(実験294)
【0024】
図7】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、胞子発芽の%として決定された感染コムギ植物のPuccinia triticina病の重症度に対する化合物3の効果を示す。製剤2-試験例9を参照;、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-有意差なし(対未処理対照)。(実験135)
図8】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、胞子発芽の%として決定された感染コムギ植物のPuccinia triticina病の重症度に対する化合物3の効果を示す。製剤2-試験例9を参照;、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-有意差なし(対未処理対照)。(実験153)
図9】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、胞子発芽の%として決定された感染コムギ植物のPuccinia triticina病の重症度に対する化合物3の効果を示す。製剤2-試験例9を参照;、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-有意差なし(対未処理対照)。(実験208)
【0025】
図10】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50% ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験254)
図11】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験262a)
図12】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験262b)
図13】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験275a)
図14】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験275b)
図15】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験312a)
図16】治療的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、温室条件下でのトマト植物に対するPhytophthora infestansの病害の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9参照;Acrobat(登録商標)(50%ジメトモルフ、BASF);、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;及びn.s.-未処理対照に対して有意差なし。(実験312b)
【0026】
図17】予防的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、トマト植物に対するAlternaria solani病の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤2-試験例9を参照;はp値が<0.05であることを意味し;**はp値が<0.01であることを意味し;***はp値が<0.001であることを意味し、n.s.は未処理対照に対して有意差がないことを意味する。(実験327)
【0027】
図18】予防的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、トマト植物に対するBotrytis cinerea病の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤1及び2-試験例9を参照;はp値が<0.05であることを意味し;**はp値が<0.01であることを意味し;***はp値が<0.001であることを意味し、n.s.は未処理対照に対して有意差がないことを意味する。(実験314a。)
図19】予防的アプローチ及び噴霧による適用を用いて、トマト植物に対するBotrytis cinerea病の重症度に対する化合物3の効果を、病害の重症度%として決定したものである。製剤1及び2-試験例9を参照;はp値が<0.05であることを意味し;**はp値が<0.01であることを意味し;***はp値が<0.001であることを意味し、n.s.は未処理対照に対して有意差がないことを意味する。(実験314b。)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によれば、下記の化学式(I)の1-フェニル-テトラリン誘導体若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩が、いくつかの担子菌、子嚢菌及び不等毛藻の真菌類並びにPseudomonas属のプロトバクテリウムに対する強力な農薬であることが見出された:
【化3】
式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;
及びRは、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;かつ
は、水素、メチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシ及びメトキシから選択される。
【0029】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、化学式(I)の化合物であり、式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R及びRはメチルであり;かつRは、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0030】
より特定の実施形態において、本発明の化合物は、化学式(I)の化合物であり、式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択され;R及びRはメチルであり;かつRは、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、化学式(I)のコンパウンドであり、化合物であり、式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ及びメトキシから選択され;R及びRはメチルであり;かつRは水素である。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記化合物は以下のものである:
化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール:
【化4】
化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール:
【化5】
化合物4:5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール:
【化6】
化合物5:
4-(7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール:
【化7】
【0033】
さらなる特定の実施形態では、本発明の化合物は、化学式(I)の化合物であり、式中、R1a、R1b、Rは、独立して、水素原子及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R、R、R及びRは水素であり;かつRは水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0034】
なおさらなる特定の実施形態では、本発明の化合物は、化学式(I)の化合物であり、式中、R1a、R1b、Rは、独立して、水素原子及び塩素原子から選択され;R、R、R及びRは水素であり;かつRはメチルアミノ基である。
【0035】
上記実施形態に係る本発明の特定の化合物は:
化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド:
【化8】
【0036】
一般に、化合物1は1-フェニル-テトラリン誘導体であり、これは、1-アリールテトラリンリグナン類の一員である。化合物2は別の1-フェニル-テトラリン誘導体であり、これはまた、1-アリールテトラリンリグナンのクラスのメンバーでもある。化合物3は塩酸セルトラリンとして知られ、選択的セロトニン再取り込み阻害性(SSRI)抗うつ薬である。これらの3つの特定の化合物は、化学式(I)の立体異性体1-フェニル-テトラリン誘導体である。
【0037】
本発明は、1つの態様において、植物、植物器官、植物部分、又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲又はその事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法であって、植物、植物器官、又は植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩の少なくとも1つの化合物を有効農薬成分として適用することを含み、
前記植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌;Dothideomycetes綱の子嚢菌又はBotrytis及びFusariumから選択される属;及び、Oomycota綱の不等毛藻から選択される、方法を提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は、植物、植物器官、植物部分、又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲の事例を防除、予防、低減、又は根絶するための方法であって、植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を適用することを含み、前記植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌;Oomycota綱の不等毛藻;及びPseudomonadales目のプロトバクテリウムから選択される、方法を提供する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、植物、植物器官、植物部分、又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲の事例を防除、予防、低減、又は根絶するための方法であって、植物、植物部分、植物器官、又は植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を適用することを含み、前記植物病原体が、Pucciniomycetes綱又はRhizoctonia属の担子菌;Pythiaceae科の不等毛藻;及びPseudomonadales目のプロトバクテリウムから選択される、方法を提供する。
【0040】
本明細書に開示される実施形態のいずれかによる本発明の処理方法は、例えば、以下の病害に対して有用である:トウモロコシのさび病;オーツ麦及びライグラスの冠さび病;コムギ及びケンタッキーブルーグラスの茎さび病、又は穀物の黒さび病;デイリリー(daylily)さび病;穀類の「小麦さび病」:褐さび病又は赤さび病;穀物の「黄さび病」;サトウキビの「褐さび病」又は「オレンジさび病」;オオムギの葉茎さび病;ジャガイモの胴枯れ病;カカオのPhytophthora palmivora;トマト及びカボチャにおける果実腐れかいよう病(canker fruit rot diseases);Phytophthora属種のナシ状果(pome)及び核果(stone fruit)における冠腐れ及び頸領腐れ病(crown and collar rot disease);Pythium属種によって引き起こされる、タバコ、トマト、キュウリ、マスタード、トウガラシ及びクレソン実生の「立ち枯れ(damping off)」病;食用・ワイン用ブドウ、イチゴ及び野菜の灰色かび病(Botrytis cinerea);Fusarium属種が引き起こす野菜やバナナの萎凋病や「腐れ(rot)」;Fusarium属種が引き起こすトウモロコシの頭枯れや穂枯れ(ear rot)、小穀物の赤かび病(Fusarium graminearum head blight);Rhizoctonia属種が引き起こす野菜のブラウンパッチ、苗立枯病、根腐れと腹腐れ、イネの紋枯れ病など;Alternaria属種が引き起こす葉や果実に斑点、腐れ、胴枯れ病。
【0041】
特定の実施形態では、植物病原体は、Helicobasidiales、Pachnocybales、Platygloeales、Pucciniales及びSeptobasidialesから選択される目のPucciniomycetes綱のメンバーである。特定の実施形態では、植物病原体は、Pucciniales目のメンバーである。
【0042】
いくつかの実施形態において、Pucciniales植物病原体は、Chaconiaceae、Coleosporiaceae、Cronartiaceae、Melampsoraceae、Mikronegeriaceae、Phakopsoraceae、Phragmidiaceae、Pileolariaceae、Pucciniaceae、Pucciniosiraceae、Pucciniastraceae、Raveneliaceae、Sphaerophragmiaceae、Uncolaceae、Uropyxidaceae、mitosporic Pucciniales及びPucciniales incertae sedis.から選択される科のメンバーである。特定の実施形態では、Pucciniales植物病原体は、Pucciniaceae科のメンバーである。
【0043】
他の実施形態では、Pucciniaceae植物病原体は、Puccinia sorghi、Puccinia coronate、Puccinia graminis、Puccinia hemerocallidis、Puccinia hemerocallidis、Puccinia persistens subsp. Triticina、Puccinia striiformis、Puccinia melanocephala、Puccinia kuehnii及びHemileia vastatrixなどのPuccinia属のメンバーである。特定の実施形態では、Puccinia植物病原体は、Puccinia sorghi及びPuccinia triticinaから選択される。
【0044】
さらなる態様において、本発明の方法は化合物3、1若しくは2のいずれか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを上記のように適用することにより、上記のPucciniomycetes植物病原体、特にPuccinia sorghi及びPuccinia triticinaのいずれか1つを防除、予防、低減又は根絶するのに有用である。
【0045】
いくつかの実施形態において、植物病原体は、Rhizoctonia属(Cantharellales目のCeratobasidiaceae科に属する)のメンバー、例えば、Rhizoctonia solani、Macrophomina phaseolinaとしても知られるRhizoctonia bataticola、Fibulorhizoctonia carotaeとしても知られるRhizoctonia carotae、Rhizoctonia cerealis、Thanatophytum crocorumとしても知られるRhizoctonia crocorum、Rhizoctonia fragariae、Ceratobasidium cornigerumとしても知られるRhizoctonia goodyerae-repentis、Waitea circinateとしても知られるRhizoctonia oryzae、及びCeratorhiza ramicolaとしても知られるRhizoctonia ramicolaが挙げられる。特定の実施形態において、植物病原体は、Rhizoctonia solaniである。
【0046】
さらなる実施形態では、本発明の方法が化合物3、1若しくは2のいずれか1つ、又はそれらの任意の組合せを上記のように適用することによって、上記のRhizoctonia植物病原体、特にRhizoctoniaのいずれか1つを防除、予防、低減又は根絶するのに有用である。
【0047】
さらにさらなる態様において、植物病原体は、Capnodiales、Dothideales、Myriangiales、Hysteriales、Jahnulales、Mytilinidiales、Pleosporales、Botryosphaeriales、Microthyriales、Patellariales及びTrypethelialesから選択される目のDothideomycetes綱のメンバーである。特定の実施形態では、植物病原体は、Pleosporales目のメンバーである。
【0048】
他の実施態様において、Pleosporales植物病原体は、Aigialaceae、Amniculicolaceae、Cucurbitariaceae、Delitschiaceae、Diademaceae、Didymellaceae、Didymosphaeriaceae、Halojulellaceae、Lentitheciaceae、Leptosphaeriaceae、Lindgomycetaceae、Lophiostomataceae、Massariaceae、Massarinaceae、Melanommataceae、Montagnulaceae、Phaeosphaeriaceae、Phaeotrichaceae、Pleomassariaceae、Pleosporaceae、Sporormiaceae、Venturiaceae、Teichosporaceae、Tetraplosphaeriaceae、Testudinaceae、Trematosphaeriaceae及びZopfiaceaeから選択される科のメンバーである。特定の実施形態では、Pleosporales植物病原体は、Pleosporaceae科のメンバーである。
【0049】
いくつかの実施形態において、Pleosporaceae植物病原体は、Alternaria、Bipolaris、Cochliobolus、Crivellia、Decorospora、Exserohilum、Falciformispora、Kriegeriella、Lewia、Macrospora、Monascostroma、Pithomyces、Platysporoides、Pleospora、Pseudoyuconia、Pyrenophora、Setosphaeria及びZeuctomorphaから選択される属のメンバーである。特定の実施形態では、Pleosporaceae植物病原体は、Alternaria属のメンバーである。
【0050】
さらに他の実施態様において、Alternaria植物病原体は、Alternaria alternata、Alternaria alternantherae、Alternaria arborescens、Alternaria arbusti、Alternaria blumeae、Alternaria brassicae、Alternaria brassicicola、Alternaria burnsii、Alternaria carotiincultae、Alternaria carthami、Alternaria celosiae、Alternaria cinerariae、Alternaria citri、Alternaria conjuncta、種々のウリ科植物で生育するAlternaria cucumerina、Alternaria dauci、Alternaria dianthi、Alternaria dianthicola、Alternaria eichhorniae、Alternaria euphorbiicola、Alternaria gaisen、Alternaria helianthin、Alternaria helianthicola、Alternaria hungarica、Alternaria infectoria、Alternaria japonica、Alternaria limicola、Alternaria linicola、Alternaria longipes、Alternaria mali、Alternaria molesta、Alternaria panax、Alternaria perpunctulata、Alternaria petroselini、Alternaria porri、Alternaria quercicola、Alternaria radicina、Alternaria raphanin、Alternaria saponariae、Alternaria selini、Alternaria senecionis、Alternaria solani、Alternaria smyrnii、Alternaria tenuissima、Alternaria triticina、Alternaria ventricosa及びAlternaria zinniaから選択される。さらなる特定の実施形態では、Alternaria植物病原体は、Alternaria alternata及びAlternaria solaniから選択される。
【0051】
他の実施形態では、本発明の方法は、上記のように適用することによって、上記のDothideomycetes植物病原体のいずれか1つを防除、予防、低減又は根絶するために有用であり、特に上記のように化合物3を適用することによりAlternaria alternataを;上記のように化合物3、1若しくは2のいずれか1つ、又はそれらの任意の組合せを適用することによりAlternaria solaniを防除、予防、低減又は根絶するのに有用である。
【0052】
さらに他の実施形態では、植物病原体は、Cyttariales、Erysiphales、Helotiales、Leotiales及びRhytismatales、Thelebolalesから選択される目のLeotiomycetes綱のメンバーである。
【0053】
さらなる実施形態では、植物病原体は、Helotiales目のメンバーである。さらにさらなる実施態様では、Helotiales植物病原体は、Ascocorticiaceae、Dermateaceae、Helotiaceae、Hemiphacidiaceae、Hyaloscyphaceae、Loramycetaceae、Phacidiaceae、Rutstroemiaceae、Sclerotinaceae及びVibrisseaceaeから選択される科のメンバーである。特定の実施形態では、Helotiales植物病原体は、Sclerotiniaceae科のメンバーである。他の特定の実施形態では、Sclerotiniaceae植物病原体は、Botrytis属のメンバーである。
【0054】
ある実施態様では、Botrytis植物病原体は、Botrytis aclada、Botrytis allii、Botrytis allii-fistulosi、Botrytis ampelophila、Botrytis anacardii、Botrytis anthophila、Botrytis argillacea、Botrytis arisaemae、Botrytis artocarpi、Botrytis bifurcata、Botrytis bryi、Botrytis capsularum、Botrytis carnea、Botrytis caroliniana、Botrytis carthami、Botrytis cercosporaecola、Botrytis cercosporicola、Botrytis cinerea、Botrytis citricola、Botrytis citrina、Botrytis convallariae、Botrytis croci、Botrytis cryptomeriae、Botrytis densa、Botrytis diospyri、Botrytis elliptica、Botrytis fabae、Botrytis fabiopsis、Botrytis galanthina、Botrytis gladioli、Botrytis gossypina、Botrytis hormini、Botrytis hyacinthi、Botrytis isabellina、Botrytis latebricola、Botrytis liliorum、Botrytis limacidae、Botrytis luteobrunnea、Botrytis lutescens、Botrytis mali、Botrytis monilioides、Botrytis necans、Botrytis paeoniae、Botrytis peronosporoides、Botrytis pistiae、Botrytis platensis、Botrytis pruinosa、Botrytis pseudocinerea、Botrytis pyramidalis、Botrytis rivoltae、Botrytis rosea、Botrytis rubescens、Botrytis rudiculoides、Botrytis sekimotoi、Botrytis septospora、Botrytis setuligera、Botrytis sinoallii、Botrytis sonchina、Botrytis splendida、Botrytis squamosa、Botrytis taxi、Botrytis terrestris、Botrytis tracheiphila、Botrytis trifolii、Botrytis tulipae、Botrytis viciae-hirsutae及びBotrytis yuaeから選択される。いくつかの実施形態では、植物病原体は、Botrytis cinereaである。
【0055】
他の実施形態では、植物病原体は、Coronophorales、Glomerellales、Hypocreales、Melanosporales、Microascales、Boliniales、Calosphaeriales、Chaetosphaeriales、Coniochaetales、Diaporthales、Magnaporthales、Ophiostomatales、Sordariales、Xylariales、Koralionastetales、Lulworthiales、Meliolales、Phyllachorales及びTrichosphaerialesから選択される目のSordariomycetes綱のメンバーである。
【0056】
さらに他の実施形態では、植物病原体は、Hypocreales目のメンバーである。特定の実施形態では、Hypocreales植物病原体は、Bionectriaceae、Cordycipitaceae、Clavicipitaceae、Hypocreaceae、Nectriaceae、Niessliaceae、Ophiocordycipitaceae及びStachybotryaceaeから選択される科のメンバーである。特定の実施形態では、Hypocreales植物病原体は、Nectriaceae科のメンバーである。
【0057】
さらなる実施形態では、Nectriaceae植物病原体は、Fusarium属のメンバーである。ある実施形態では、Fusarium植物病原体は、Fusarium acaciae、Fusarium acaciae-mearnsii、Fusarium acutatum、Fusarium aderholdii、Fusarium acremoniopsis、Fusarium affine、Fusarium arthrosporioides、Fusarium avenaceum、Fusarium bubigeum、Fusarium circinatum、Fusarium crookwellense、Fusarium culmorum、Fusarium graminearum、Fusarium incarnatum、Fusarium langsethiae、Fusarium mangiferae、Fusarium merismoides、Fusarium oxysporum、Fusarium pallidoroseum、Fusarium poae、Fusarium proliferatum、Fusarium pseudograminearum、Fusarium redolens、Fusarium sacchari、Fusarium solani、Fusarium sporotrichioides、Fusarium sterilihyphosum、Fusarium subglutinans、Fusarium sulphureum、Fusarium tricinctum、Fusarium venenatum、Fusarium verticillioides及びFusarium virguliformeから選択される。いくつかの実施形態では、植物病原体は、Fusarium oxysporum種である。
【0058】
さらにさらなる実施形態では、植物病原体は、Lagenidiales、Leptomitales、Peronosporales、Rhipidiales及びSaprolegnialesから選択される目のOomycota綱のメンバーである。特定の実施形態では、植物病原体は、Peronosporales目のOomycota綱のメンバーである。
【0059】
いくつかの実施形態では、Peronosporales植物病原体は、Lagenidiaceae、Olpidiosidaceae、Sirolpidiaceae、Leptomitaceae、Albuginaceae、Peronosporaceae、Pythiaceae、Rhipidaceae、Ectrogellaceae、Haliphthoraceae、Leptolegniellaceae及びSaprolegniaceaeから選択される科のメンバーである。特定の実施形態では、植物病原体は、Peronosporaceae又はPythiaceae科のメンバーである。
【0060】
ある実施形態では、Peronosporaceae植物病原体は、Baobabopsis、Basidiophora、Benua、Bremia、Calycofera、Eraphthora、Graminivora、Hyaloperonospora、Nothophytophthora、Novotelnova、Paraperonospora、Perofascia、Peronosclerospora、Peronospora、Phytophthora、Plasmopara、Plasmoverna、Protobremia、Pseudoperonospora、Sclerophthora, Sclerospora及びViennotiaから選択される属のメンバーである。
【0061】
ある実施形態では、Peronosporaceae植物病原体は、Phytophthora属のメンバーである。特定の実施形態では、Phytophthora植物病原体は、Phytophthora acerina、Phytophthora agathidicida、Phytophthora alni、Phytophthora × alni、Phytophthora alticola、Phytophthora amaranthi、Phytophthora amnicola、Phytophthora amnicola × moyootj、Phytophthora andina、Phytophthora aquimorbida、Phytophthora arecae、Phytophthora arenaria、Phytophthora cf. arenaria、Phytophthora aff. arenaria、Phytophthora asiatica、Phytophthora asparagi、Phytophthora aff. asparagi、Phytophthora attenuata、Phytophthora austrocedrae、Phytophthora balyanboodja、Phytophthora batemanensis、Phytophthora bilorbang、Phytophthora bisheria、Phytophthora bishii、Phytophthora boehmeriae、Phytophthora boodjera、Phytophthora borealis、Phytophthora botryosa、Phytophthora cf. botryosa、Phytophthora aff. botryosa、Phytophthora brassicae、Phytophthora cactorum、Phytophthora cactorum var. applanata、Phytophthora cactorum × hedraiandra、Phytophthora cajani、Phytophthora cambivora、Phytophthora capensis、Phytophthora capsici、Phytophthora aff. capsici、Phytophthora captiosa、Phytophthora castaneae、Phytophthora castanetorum、Phytophthora chlamydospora、Phytophthora chrysanthemi、Phytophthora cichorii、Phytophthora aff. cichorii、Phytophthora cinnamomi、Phytophthora cinnamomi var. cinnamomi、Phytophthora cinnamomi var. parvispora、Phytophthora cinnamomi var. robiniae、Phytophthora citricola、Phytophthora aff. citricola、Phytophthora citrophthora、Phytophthora citrophthora var. clementina、Phytophthora aff. citrophthora、Phytophthora clandestina、Phytophthora cocois、Phytophthora colocasiae、Phytophthora condilina、Phytophthora constricta、Phytophthora cooljarloo、Phytophthora crassamura、Phytophthora cryptogea、Phytophthora aff. cryptogea、Phytophthora cuyabensis、Phytophthora cyperi、Phytophthora dauci、Phytophthora aff. dauci、Phytophthora drechsleri、Phytophthora drechsleri var. cajani、Phytophthora elongata、Phytophthora cf. elongata、Phytophthora erythroseptica、Phytophthora erythroseptica var. pisi、Phytophthora aff. erythroseptica、Phytophthora estuarina、Phytophthora europaea、Phytophthora fallax、Phytophthora flexuosa、Phytophthora fluvialis、Phytophthora fluvialis × moyootj、Phytophthora foliorum、Phytophthora formosa、Phytophthora formosana、Phytophthora fragariae、Phytophthora fragariaefolia、Phytophthora frigida、Phytophthora gallica、Phytophthora gemini、Phytophthora gibbosa、Phytophthora glovera、Phytophthora gonapodyides、Phytophthora gondwanensis、Phytophthora gregata、Phytophthora cf. gregata、Phytophthora hedraiandra、Phytophthora aff. hedraiandra、Phytophthora × heterohybrida、Phytophthora heveae、Phytophthora hibernalis、Phytophthora himalayensis、Phytophthora himalsilva、Phytophthora aff. himalsilva、Phytophthora humicola、Phytophthora aff. humicola、Phytophthora hydrogena、Phytophthora hydropathica、Phytophthora idaei、Phytophthora ilicis、Phytophthora × incrassata、Phytophthora infestans、Phytophthora aff. infestans、Phytophthora inflata、Phytophthora insolita、Phytophthora cf. insolita、Phytophthora intercalaris、Phytophthora intricata、Phytophthora inundata、Phytophthora ipomoeae、Phytophthora iranica、Phytophthora irrigata、Phytophthora katsurae、Phytophthora kelmania、Phytophthora kernoviae、Phytophthora kwongonina、Phytophthora lactucae、Phytophthora lacustris、Phytophthora lacustris × riparia、Phytophthora lateralis、Phytophthora lilii、Phytophthora litchii、Phytophthora litoralis、Phytophthora litoralis × moyootj、Phytophthora macilentosa、Phytophthora macrochlamydospora、Phytophthora meadii、Phytophthora aff. meadii、Phytophthora medicaginis、Phytophthora medicaginis × cryptogea、Phytophthora megakarya、Phytophthora megasperma、Phytophthora melonis、Phytophthora mengei、Phytophthora mexicana、Phytophthora cf. mexicana、Phytophthora mirabilis、Phytophthora mississippiae、Phytophthora morindae、Phytophthora moyootj、Phytophthora moyootj × fluvialis、Phytophthora moyootj × litoralis、Phytophthora moyootj × thermophila、Phytophthora × multiformis、Phytophthora multivesiculata、Phytophthora multivora、Phytophthora nagaii、Phytophthora nemorosa [11]、Phytophthora nicotianae、Phytophthora nicotianae var. parasitica、Phytophthora nicotianae × cactorum、Phytophthora niederhauserii、Phytophthora cf. niederhauserii、Phytophthora obscura、Phytophthora occultans、Phytophthora oleae、Phytophthora ornamentata、Phytophthora pachypleura、Phytophthora palmivora、Phytophthora palmivora var. palmivora、Phytophthora parasitica、Phytophthora parasitica var. nicotianae、Phytophthora parasitica var. piperina、Phytophthora parsiana、Phytophthora aff. parsiana、Phytophthora parvispora、Phytophthora × pelgrandis、Phytophthora phaseoli、Phytophthora pini、Phytophthora pinifolia、Phytophthora pisi、Phytophthora pistaciae、Phytophthora plurivora、Phytophthora pluvialis、Phytophthora polonica、Phytophthora porri、Phytophthora primulae、Phytophthora aff. primulae、Phytophthora pseudocryptogea、Phytophthora pseudolactucae、Phytophthora pseudorosacearum、Phytophthora pseudosyringae、Phytophthora pseudotsugae、Phytophthora aff. pseudotsugae、Phytophthora psychrophila、Phytophthora quercetorum、Phytophthora quercina、Phytophthora quininea、Phytophthora ramorum、Phytophthora rhizophorae、Phytophthora richardiae、Phytophthora riparia、Phytoph
thora rosacearum、Phytophthora aff. rosacearum、Phytophthora rubi、Phytophthora sansomea、Phytophthora sansomeana、Phytophthora aff. sansomeana、Phytophthora × serendipita、Phytophthora sinensis、Phytophthora siskiyouensis、Phytophthora sojae、Phytophthora stricta、Phytophthora sulawesiensis、Phytophthora syringae、Phytophthora tabaci、Phytophthora tentaculata、Phytophthora terminalis、Phytophthora thermophila、Phytophthora thermophila × amnicola、Phytophthora thermophila × moyootj、Phytophthora trifolii、Phytophthora tropicalis、Phytophthora cf. tropicalis、Phytophthora tubulina、Phytophthora tyrrhenica、Phytophthora uliginosa、Phytophthora undulata、Phytophthora uniformis、Phytophthora vignae、Phytophthora vignae f. sp. adzukicola、Phytophthora virginiana及びPhytophthora vulcanicaから選択される。他の特定の実施形態では、植物病原体は、Phytophthora infestans種である。
【0062】
さらに他の実施形態では、Peronosporaceae植物病原体は、Pythiaceae科のメンバーである。特定の実施形態では、Pythiaceae植物病原体は、Cystosiphon、Diasporangium、Globisporangium、Lagenidium、Myzocytium、Phytophthora、Pythium及びTrachysphaeraから選択される属のメンバーである。
【0063】
さらなる実施形態では、Pythiaceae植物病原体はPythium属のメンバーである。特定の実施形態では、Pythium植物病原体は、Pythium aphanidermatum、Pythium acanthicum、Pythium acanthophoron、Pythium acrogynum、Pythium adhaerens、Pythium amasculinum、Pythium anandrum、Pythium angustatum、Pythium apleroticum、Pythium aquatile、Pythium aristosporum、Pythium arrhenomanes、Pythium attrantheridium、Pythium bifurcatum、Pythium boreale、Pythium buismaniae、Pythium butleri、Pythium camurandrum、Pythium campanulatum、Pythium canariense、Pythium capillosum、Pythium carbonicum、Pythium carolinianum、Pythium catenulatum、Pythium chamaehyphon、Pythium chondricola、Pythium citrinum、Pythium coloratum、Pythium conidiophorum、Pythium contiguanum、Pythium cryptoirregulare、Pythium cucurbitacearum、Pythium cylindrosporum、Pythium cystogenes、Pythium debaryanum、Pythium delicense、Pythium destruens、Pythium diclinum、Pythium dimorphum、Pythium dissimile、Pythium dissotocum、Pythium echinulatum、Pythium emineosum、Pythium erinaceum、Pythium flevoense、Pythium folliculosum、Pythium glomeratum、Pythium graminicola、Pythium grandisporangium、Pythium guiyangense、Pythium helicandrum、Pythium helicoides、Pythium heterothallicum、Pythium hydnosporum、Pythium hypogynum、Pythium indigoferae、Pythium inflatum、Pythium insidiosum、Pythium intermedium、Pythium irregulare、Pythium iwayamae、Pythium jasmonium、Pythium kunmingense、Pythium litorale、Pythium longandrum、Pythium longisporangium、Pythium lutarium、Pythium macrosporum、Pythium mamillatum、Pythium marinum、Pythium marsupium、Pythium mastophorum、Pythium megacarpum、Pythium middletonii、Pythium minus、Pythium monospermum、Pythium montanum、Pythium multisporum、Pythium myriotylum、Pythium nagaii、Pythium nodosum、Pythium nunn、Pythium oedochilum、Pythium okanoganense、Pythium oligandrum、Pythium oopapillum、Pythium ornacarpum、Pythium orthogonon、Pythium ostracodes、Pythium pachycaule、Pythium pachycaule、Pythium paddicum、Pythium paroecandrum、Pythium parvum、Pythium pectinolyticum、Pythium periilum、Pythium periplocum、Pythium perniciosum、Pythium perplexum、Pythium phragmitis、Pythium pleroticum、Pythium plurisporium、Pythium polare、Pythium polymastum、Pythium porphyrae、Pythium prolatum、Pythium proliferatum、Pythium pulchrum、Pythium pyrilobum、Pythium quercum、Pythium radiosum、Pythium ramificatum、Pythium regulare、Pythium rhizo-oryzae、Pythium rhizosaccharum、Pythium rostratifingens、Pythium rostratum、Pythium salpingophorum、Pythium scleroteichum、Pythium segnitium、Pythium speculum、Pythium spinosum、Pythium splendens、Pythium sterilum、Pythium stipitatum、Pythium sulcatum、Pythium terrestris、Pythium torulosum、Pythium tracheiphilum、Pythium ultimum、Pythium ultimum var. ultimum、Pythium uncinulatum、Pythium undulatum、Pythium vanterpoolii、Pythium viniferum、Pythium violae、Pythium volutum、Pythium zingiberis及びPythium zingiberumから選択される。他の特定の実施形態では、植物病原体は、Pythium aphanidermatum種である。
【0064】
本発明の他の実施形態では、本発明の方法は、上記の卵菌(Oomycota)植物病原菌のいずれか1つに適用することにより上記の卵菌植物病原体を防除、予防、低減又は根絶するために有用であり、特に上記の化合物3を適用することによりPhytophthora infestansを、上記の化合物3若しくは1、又はそれらの組み合わせのいずれか1つを適用することによりPythium aphanidermatumを、防除、予防、低減又は根絶するために有用である。
【0065】
さらなる実施形態では、植物病原体は、Pseudomonas aeruginosa及びPseudomonas syringaeなどのPseudomonas属のメンバーである。特定の実施形態では、植物病原体は、Pseudomonas syringae種である。なおさらなる実施形態において、本発明の方法は、上記化合物1若しくは2、又はそれらの組み合わせを上記のように適用することによって、上記のPseudomonas病原体のいずれか1つ、特にPseudomonas syringaeを防除、予防、低減又は根絶するのに有用である。
【0066】
別の局面において、本発明は農薬有効量の少なくとも1つの化学式(I)の化合物若しくはその立体異性体、又はそれらの農業上許容される塩を含む農薬組成物を提供し、
【化9】
式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R及びRは、独立して、水素、メチル及びエチルから選択され;Rはは、水素、メチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシ及びメトキシから選択される。
【0067】
さらなる実施形態では、本発明は化学式(I)の化合物を含有する農薬組成物を提供し、式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、メチル基、ヒドロキシ基及びメトキシ基、並びにハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され、R及びRは、メチルであり、かつRは、水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0068】
さらに別の実施形態では、本発明は化学式(I)の化合物を含有する農薬組成物を提供し、式中、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択され、R及びRはメチルであり、かつRは水素、メチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基及びメトキシ基から選択される。
【0069】
特定の実施形態において、本発明は、化学式(I)の化合物を含有する農薬組成物を提供し、R1a、R1b、R、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ及びメトキシから選択され、R及びRはメチルであり、かつ、Rは水素である。
【0070】
特定の実施形態では、本発明の農薬組成物は、以下を含む:
化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール:
【化10】
又は、
化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール:
【化11】
【0071】
別の実施形態では、本発明は、化学式(I)の化合物を含有する農薬組成物を提供し、式中、R1a、R1b、Rは、独立して水素原子及びハロゲン原子(F、Cl、Br、I)から選択され;R、R、R及びRは水素であり;並びにRは水素、メチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシ及びメトキシ基から選択される。
【0072】
特定の実施形態では、本発明は、化学式(I)の化合物を含有する農薬組成物を提供し、式中、R1a、R1b、Rは、独立して、水素及び塩素原子から選択され;R、R、R及びRは水素であり;Rはメチルアミノ基である。
【0073】
別の具体的な実施形態では、本発明の農薬組成物は、以下を含有する:
化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド:
【化12】
【0074】
特定の実施形態では、上記の実施形態のうちのいずれか1つの農薬組成物又は製剤は、農業上適切な又は許容可能な溶媒又は可溶化剤をさらに含む。他の特定の実施形態では、農業上許容される溶媒又は可溶化剤が1-フェニル-テトラリン化合物を溶解又は可溶化することができる水混和性溶媒である。
【0075】
いくつかの実施形態では、1-フェニル-テトラリン化合物を溶解又は可溶化することができる水混和性溶媒は、アルコール、ケトン、ラクトン、ケトアルコール、グリコール、グリコエーテル、アミド、アルカノールアミン、スルホキシド及びピロリドンなどの極性溶媒である。特定の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つの組成物は、ジメチルスルホキシド又はエタノールから選択される溶媒を含む。特定の実施形態では、組成物は、ポリソルベート20などのポリソルベート型非イオン性界面活性剤をさらに含む。
【0076】
本発明の農薬組成物は、農薬活性成分の適用を容易にするために製剤に製剤化することができる。製剤は、懸濁剤濃縮物(SC)、カプセル懸濁剤(CS)、水分散性顆粒剤(WG)、乳化性濃縮物(EC)、水和剤(wettable powder)(WP)、可溶性(液体)濃縮物(SL)又は水溶剤(soluble powder)(SP)であり得る。
【0077】
本発明の組成物又は製剤は、少なくとも1つのアジュバント、担体、希釈剤、及び/又は界面活性剤をさらに含み得る。アクチベーターアジュバント、例えば、陽イオン性、陰イオン性又は非イオン性界面活性剤;農薬製品の活性を改善できる油及び窒素ベースの肥料である。油は、イネ科植物を防除するために使用される、パラフィン又はナフサベースの石油、乳化可能な石油ベースの油に基づく作物油濃縮物、及び種子油(通常は綿実油、亜麻仁油、大豆油、又はヒマワリ油)から得られる植物油濃縮物であり得る。窒素ベースの肥料は、硫酸アンモニウム又は尿素-硝酸アンモニウムであり得る。
【0078】
本実施形態の組成物においてチキソトロピー剤としても使用される多糖アジュバントの非限定的な例は、キサンタンガム(CP Kelcoにより商標KELZAN(登録商標)で市販されている)が挙げられ、これは、発酵プロセスを使用して単糖から製造され、使用されるバクテリア種Xanthomonas campestrisにその名称が由来する。アジュバントとして使用される油は、パラフィン又はナフサベースの石油、乳化可能な石油ベースの油に基づく作物油濃縮物、及び種子油(通常は綿実油、亜麻仁油、大豆油、又はヒマワリ油)から得られる植物油濃縮物であり得る。窒素ベースの肥料は、硫酸アンモニウム又は尿素-硝酸アンモニウムであり得る。
【0079】
可溶化剤又は溶媒の非限定的な例は、石油系溶媒、前述の油、脂肪酸の液体混合物、エタノール、グリセロール及びジメチルスルホキシドが挙げられる。農業上許容される溶媒又は可溶化剤は、1-フェニル-テトラリン化合物を溶解又は可溶化することができる水混和性溶媒、例えば、極性溶媒、例えば、アルコール、ケトン、ラクトン、ケトアルコール、グリコール、グリコエーテル、アミド、アルカノールアミン、スルホキシド及びピロリドンであり得る。担体の非限定的な例は、沈降シリカ、コロイダルシリカ、アタパルジャイト、チャイナクレー、タルク、カオリン及びそれらの組合せである。
【0080】
本発明の農薬組成物又は製剤は、ラクトース、デンプン、尿素、水溶性無機塩及びそれらの組み合わせなどの希釈剤をさらに含んでもよい。農薬組成物又は製剤は、例えばポリソルベート型非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート20又はトリシロキサン非イオン性界面活性剤、スチレンアクリル分散剤ポリマー、酸性樹脂共重合体ベースの分散剤、ポリカルボン酸カリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムブレンド、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩、リグニンスルホン酸塩及びそれらの組み合わせなどの1つ以上の界面活性剤をさらに含み得る。
【0081】
トリシロキサン非イオン性界面活性剤又はポリエーテルジメチルシロキサン(PEMS)は、しばしばスーパースプレッダ又はスーパーウェッタと呼ばれ、農薬に添加して、葉の疎水性表面上への迅速な広がりを促進することによって活性物質の活性を促進し、雨に対する堅牢性を高める。変性トリシロキサンタイプのいくつかのスプレッダーは、超低分子量のトリシロキサンをポリエーテル基と組み合わせ、表面張力を低減し、濡れにくい表面でも急速に展着させることができる。
【0082】
活性剤、組成物、又はそれを含む製剤は、上記実施形態のいずれか1つの方法において、植物若しくはその部分、器官又は植物繁殖材料に、噴霧、浸漬、包帯、コーティング、ペレット化又は浸漬によって適用される。
【0083】
特定の実施形態では、本発明の1-フェニル-テトラリン化合物の、それを含む組成物又は製剤中の濃度は、10~2000、10~1500、10~1000、10~900、10~800、10~700、10~600、10~500、10~400、10~300、10~200、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20、20~2000、20~1500、20~1000、20~900、20~800、20~700、20~600、20~500、20~400、20~300、20~200、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~40、20~30、20~20、30~2000、30~1500、30~1000、30~900、30~800、30~700、30~600、30~500、30~400、30~300、30~200、30~100、30~0、30~100、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、40~2000、40~1500、40~1000、40~900、40~800、40~700、40~600、40~500、40~400、40~300、40~200、40~100、40~90、40~80、40~70、40~60、40~50、50~2000、50~1500、50~1000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~500、50~400、50~300、50~200、50~100、50~90、50~80、50~70、50~60、60~2000、60~1500、60~1000、60~900、60~800、60~700、60~600、60~500、60~400、60~300、60~200、60~100、60~90、60~80、60~70、70~2000、70~1500、70~1000、70~900、70~800、70~700、70~600、70~500、70~400、70~300、70~200、70~100、70~90、70~80、80~2000、80~1500、80~1000、80~900、80~800、80~700、80~600、80~500、80~400、80~300、80~200、80~100、80~90、90~2000、90~1500、90~1000、90~900、90~800、90~700、90~600、90~500、90~400、90~300、90~200、90~100、100~2000、100~1500、100~1000、100~900、100~800、100~700、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、200~2000、200~1500、200~1000、200~900、200~800、200~700、200~600、200~500、200~400、200~300、300~2000、300~1500、300~1000、300~900、300~800、300~700、300~600、300~500、300~400、400~2000、400~1500、400~1000、400~900、400~800、400~700、400~600、400~500、500~2000、500~1500、500~1000、500~900、500~800、500~700、500~600、600~2000、600~1500、600~1000、600~900、600~800、600~700、700~2000、700~1500、700~1000、700~900、700~800、800~2000、800~1500、800~1000、800~900、900~2000、900~1500、900~1000、1000~2000又は1000~1500ppmの範囲であり得る。
【0084】
特に、1-フェニル-テトラリン化合物を含有する組成物又は製剤における1-フェニル-テトラリン化合物の濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、1000、1500又は2000ppmであり得る。
【0085】
上記の濃度範囲又は濃度のいずれか1つは、上記の病原体のいずれか1つに対するもの及び組成物又は製剤を適用するいずれか1つの上記手段によるものを含む、上記実施形態のいずれか1つに従って使用することができる。
【0086】
定義
本明細書で使用される「植物器官」という用語は、葉、茎、根、及び生殖構造を指す。用語「植物部分」は本明細書で使用される場合、挿し木若しくは塊茎などの栄養性植物材料;葉、花、樹皮又は茎のことを指す。本明細書で使用される「植物繁殖材料」という用語は、種子、根、果実、塊茎、鱗茎、根茎、又は植物の一部のことを指す。本明細書で使用される「農薬有効量」という用語は、少なくとも1つの有害生物(pest)を死滅させることができるか、又は有害生物の成長、摂食又は正常な生理学的発達を顕著に減少させることができる農薬の量を指す。「綱」、「目」、「科」、「属」、及び「種」という用語は、本明細書において、藻類、真菌、及び植物に対する国際命名規約のArt3.1に従って本明細書中で使用される。
【0087】
特許請求の範囲で使用される「含む」という語は「オープンエンド」であり、記載のエレメント又はそれらの構造若しくは機能の等価物に加え、記載されていない他の任意のエレメントを意味する。それは、本明細書中以後列挙される意味に限定されると解釈されるべきでなく;他のエレメント又は工程を排除しない。それは、述べられている特徴、整数、工程又は構成要素の存在を言及されているとおりに明示していると解釈される必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。したがって、「x及びzを含む組成物」という表現の範囲は、化合物x及びzだけからなる組成物に限定されるべきでない。また、「工程x及びzを含む方法」という表現の範囲は、これらの工程だけからなる方法に限定されるべきでない。
【0088】
特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書で使用する場合、「約」という用語は当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内であると理解される。一実施形態では、「約」という語がそれが使用されている番号の報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内の手段である。例えば、「約」という用語は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として直ちに理解することができる。他の実施形態では、用語「約」は、例えば、使用される実験技術に応じて、より高い変動許容度を意味することができる。特定の値の前記変形は、当業者によって理解され、本発明の文脈内である。例示として、「約1~約5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3、及び4などの個々の値、並びに、例えば、1~3、2~4、及び3~5、並びに1、2、3、4、5、又は6の部分範囲が個々に含まれる。この同じ原理は、最小値又は最大値として1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。
【0089】
文脈から他に明らかでない限り、本明細書に提供される全ての数値は、用語「約」によって修飾される。「実質的に」、「一般的に」、「まで」などの他の同様の用語は、絶対的ではないように用語又は値を修正するものとして解釈されるべきである。そのような用語はそれらの用語が当業者によって理解されるように、それらが修飾する状況及び用語によって定義される。これには、少なくとも、所与の実験、技法又は値を測定するために使用される器具に関する予想される実験誤差、技術誤差及び器具誤差の程度が含まれる。
【0090】
本明細書中で使用されるとき、用語「及び/又は」は、列挙されている関連項目の1つ以上の任意の組み合わせ及びすべての組み合わせを含む。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての用語(専門用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義されている用語などの用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致した意味を有すると解釈されるべきであって、理想的な意味又は過度に正式な意味として本明細書中で明確に定義されない限り、そのように解釈されるべきでない。周知の機能又は構成は、簡潔及び/又は明確にするために詳細に記載されていないかもしれない。
【0091】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0092】
略語一覧:
RPM-毎分回転数
RCF-相対遠心力
CFU-コロニー形成単位
PDBC-20μg/mlクロラムフェニコールを含むポテトデキストロースブロス
PDAC-20μg/mlクロラムフェニコールを含むポテトデキストロース寒天
PDAT-12μg/mlテトラサイクリンを含むポテトデキストロース寒天
DMSO-ジメチルスルホキシド
LB-LBブロス
LBA-LB寒天
SCH-Schmittner培地
2:PDBC-滅菌蒸留水によって2倍に希釈したPDBC
PDA-ポテトデキストロース寒天培地
PDBT-12μg/mlのテトラサイクリンを含むポテトデキストロースブロス
【0093】
試験例1.Puccinia sorghiに対する1-フェニル‐テトラリン化合物の生物活性のマイクロプレートによるアッセイ
背景: Puccinia sorghiは担子菌類に属する真菌であり、空気感染性の病原体である。栽培室内でPuccinia胞子をトウモロコシ植物上で生育させ、各実験のために感染したトウモロコシ葉から新鮮な胞子懸濁液を調製した。Puccinia sorghiは必要的病原体(obligatory pathogen)であり、合成培地上では増殖しないので、1-フェニル-テトラリン化合物の生物活性の指標として胞子の発芽をモニターした。
【0094】
要旨:DMSOで希釈した1-フェニル-テトラリン化合物(化合物1:(5R,6R,7R)-5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオール、化合物2:4-((1R,2R,3R)-7-ヒドロキシ-6-メトキシ-2,3-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)ベンゼン-1,2-ジオール、及び化合物3:(1S,4R)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-アミニウムクロリド)をマイクロプレートの各ウェルに加え、新鮮な調製胞子懸濁液と混合して使用した。胞子の発芽を、顕微鏡下での目視によってモニターした。
【0095】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0096】
材料:Tween(登録商標)20(Tidea Company INC)非イオン性洗浄剤、DMSO-ジメチルスルホキシド(J.T.Baker-ポーランド)溶液、クロラムフェニコール(Alfa Aesar-英国)
【0097】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター、顕微鏡、濾過システム
【0098】
方法:
A.Puccinia胞子の調製
接種用トウモロコシ苗の調製:
1)120×80×80mmのポットを使用する。
2)肥料を含む標準的な庭用土壌を使用する。
3)感受性品種のトウモロコシ種子を使用する。
4)ポットを小さなトレーに入れる。
5)ポットの上まで土を入れる。
6)種子のための小さな丸い溝を作る。
7)各ポットに約10種のトウモロコシを植える。
8)種子を追加の土で覆う。
9)トレーに水を入れる。ポットごとに約100mlである。土壌は湿らせ、24時間後に水がトレーに残らないようにする。
10)2番目の葉が出現するまで、トウモロコシを22℃の栽培室で7日間栽培する。
【0099】
B.接種及び発芽試験のための[トウモロコシ葉からの]胞子懸濁液の調製
1)胞子付きのトウモロコシの葉20枚を滅菌した50mlのチューブに入れる。
2)氷冷した0.05% Tween(登録商標)20溶液50mlを加える。
3)チューブを密閉した氷冷のプラスチック製ボックスに挿入する。
4)300RPMで15分間、振盪機を用いてボックスを振盪する。
5)懸濁液(葉を含まない)を清潔な滅菌50mlチューブに移す。
6)胞子懸濁液の入ったチューブを氷上に置いておく。
【0100】
C.接種製剤
1)冷0.05% Tween(登録商標)20水溶液を用いて胞子懸濁液を300mlに希釈する。
2)懸濁液中の胞子濃度を確認する-濃度は約600胞子/mlで、懸濁液は淡褐色であるべきである。
3)胞子の懸濁液を氷上に保つ。
【0101】
D.発芽評価
1)5ミクロンのメンブレンを備えた濾過システムを準備し、滅菌した冷水でメンブレンを洗浄する。
2)胞子懸濁液を50mlチューブから濾過システムの膜の中心にゆっくりと懸濁・デカントする-胞子は膜上に蓄積するはずである。
3)胞子を洗浄し、細菌や他の菌類の胞子を捨て、真空を止め、冷滅菌水をスプレーして胞子を懸濁し、洗浄し、真空を再開する。
4)胞子の洗浄をさらに2回繰り返す。
5)胞子を含むメンブレンを30mlの滅菌冷0.05% Tween(登録商標)20の入ったチューブに挿入し、チューブを手で振盪する。
6)メンブレンを取り出し、廃棄する。
7)濾過された液体を流しにデカントし、濾過システムを水道水で洗浄し、乾燥させる。
8)30μlのクロラムフェニコール原液(20mg/ml)を胞子懸濁液に最終濃度20μg/mlで添加する。
9)8層のガーゼを通して胞子懸濁液を50mlチューブに濾過する。
10)懸濁液中の胞子濃度を確認する-濃度は約7.5×10胞子/mlであり、褐色であるべきである。30mlの胞子懸濁液は、20個のマイクロプレートのスクリーニングに十分であるべきである。
11)胞子の懸濁液を氷上に保つ。
【0102】
E.実生の感染
1)胞子懸濁液を250mlビーカーに移す。
2)撹拌機を用いて胞子の懸濁液を500RPMで混合し、胞子を懸濁させたままにする。
3)ポット内のすべての実生の葉を胞子懸濁液に10分間浸漬する。
4)接種した苗を入れたポットを、22℃、湿度99%の温水を入れた湿ったチャンバーに24時間入れる(水は32℃に加熱)。
5)24時間後、ポットを栽培室に移し、実生をプラスチック袋で覆う
6)22℃の栽培室でトウモロコシを育成する。
7)接種から7日後には、葉に褐色斑点が観察されるはずである。
8)接種から11日後、菌類の混入を防ぐためにビニール袋を取り除き、輪ゴムで苗を固定する。
9)接種から12日後、胞子のついた葉を、胞子懸濁液調製のために収集することができる。
【0103】
F.Puccinia胞子の発芽アッセイに基づく生物活性スクリーニングのためのマイクロプレートの調製
1)-20℃の冷凍庫からDMSO溶媒に1% 1-フェニル-テトラリン化合物を溶かした原液をプレートにとり、少なくとも20分間卓上で解凍する。
2)また、-20℃の冷凍庫から材料を含む対照プレートを取り出し、少なくとも20分間、卓上で解凍する。
3)全てのマイクロプレートは、10μlの1-フェニル-テトラリン化合物の原液を含むべきである。
4)15μlのPuccinia胞子懸濁液をマイクロプレートの全てのウェルに添加する。25ppmの最終濃度を得るために、胞子懸濁液をウェルに移す前に、ピペットで胞子を懸濁させる(上下)。
5)すべてのプレートを透明シーラーで密閉する。
6)全ての試験プレートを1000RCFで1秒間遠心分離し、停止してプレートの底部に液体を収集する。
7)すべてのプレートを1000RPMで10秒間振盪し、ウェル中の胞子の分散をチェックする。
8)すべてのプレートをプラスチック製の箱に入れ、25℃で一晩インキュベーターに入れる。
【0104】
G.プレートのスクリーニング
1)10×10倍率の顕微鏡を用いて、懸濁液調製後12~24時間のプレートをスクリーニングする。
2)各ウェルの胞子発芽を、対照プレートウェル(市販の殺菌剤又は0.5% DMSO溶液を含有するウェル)の胞子発芽と比較する。
3)エクセルシートにより胞子発芽をレポートする:
タイプ1-胞子が正常に発芽した場合(正常な管伸長);
タイプ2-胞子が発芽不良であるか、又は何らかの形で正常でない場合(非常に短い発芽管、胞子の発芽の頻度が低い、管が損傷している);
タイプ3-胞子が全く発芽していない場合(健全な胞子、管なし)。
4)各材料のスコア2又は3の反復数を計算する。
5)各材料のスコア2と3の合計を計算する。
6)最良スコア:反復数=4、スコアの合計=12。
試験例9の結果を参照のこと。
【0105】
試験例2.Rhizoctonia solaniに対する1‐フェニル‐テトラリン化合物の生理活性のマイクロプレートに基づくアッセイ
まとめ:DMSOで希釈した1-フェニル-テトラリン化合物(化合物1、2又は3)を別々にマイクロプレートウェルに添加し、50μlの菌糸懸濁液と混合し、混合菌糸から出発して、プレートリーダー及び目視によって真菌の増殖をモニターした。
【0106】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0107】
材料:PDAC、PDBC、DMSO。
【0108】
装置:プレートリーダー、遠心機、振盪機、インキュベーター。
【0109】
方法:
A.Rhizoctonia solani菌糸の接種調製物
1)RhizoctoniaをPDAC上で90mmペトリ皿で培養し、1~4日以内に成長する菌糸を得る。
2)PDBC培地50mlを滅菌250mlエルレンマイヤーフラスコに加える。
3)メスで固体培地を数個の小片に切断し、エルレンマイヤーフラスコに入れる。
4)27℃、150RPMで振盪機を用いて2~4日間培養する。
5)液体を捨て、空のペトリ皿に菌糸を注ぐ。
6)メスを使用して菌糸から多数の小片を切断し、滅菌250mlエルレンマイヤーフラスコに入れ、50mlのPDBC培地を加える。
7)4本のボトルを培養して調製し、150RPMで27℃で振とうしながら3日間増殖させる。
8)冷蔵庫で培養液を1時間冷やす。
9)冷たい培養液を250mlのビーカーに入れる。
10)混合物がブレンダーナイフを覆うように、20mlの冷PDBCを添加する。
11)氷上で最高速度で2分間、ブレンダーを数回上下に動かしながら、培養物を混合する。
12)混合物を氷上に保持する。
13)ブレンドした混合物約5mlを氷上の15mlチューブに移す。
14)必要に応じてチューブを上下に動かしながら、培養物を15mlチューブ中で、氷上で2分間ホモジナイズする。
15)必要量を調製するために、上記のように5mlのいくつかのバッチをホモジナイズする(5mlのホモジナイズした培養物で、約100mlの接種物ができる)。
16)ホモジネートの一部を10倍に希釈し、ホモジネートの濃度を確認する。懸濁液の濃度は、4×10CFU/mlとする(10倍希釈濃度は4000CFU/mlとなるはずである)。
17)接種材料ストックをPDBCで1:20に希釈-1mlを20mlに希釈するか、又は必要な希釈率を計算して、2000CFU/mlの最終濃度を調製する。各ウェル中の量は約100CFUであるべきである。
【0110】
B.1-フェニル-テトラリン化合物の生物活性実験のためのマイクロプレート調製
1)-20℃の冷凍庫から精製1% 1-フェニル-テトラリン化合物をDMSOに溶かした原液を取り出し、卓上で解凍する。
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した250ppm 1-フェニル-テトラリン化合物溶液10μlを、マルチピペットを用いてマイクロプレートのウェルに入れる。
4)40μlの激しく混合した胞子液を、マルチピペットを用いてマイクロプレートの各ウェルに加える。
5)2000RPMで10分間プレートを振とうし、1-フェニル-テトラリン化合物を菌糸懸濁液と混合する。
6)プレートを1000RCFで1秒間遠心して停止し、プレートの底の液体を回収する。
7)プレートリーダーで読み取るまで、マイクロプレートを卓上に置いておく。
8)プレートリーダーを使用してプレートを読み取る。
9)プレートを卓上に回収する。
10)回収したプレートを布で覆ったプラスチックボックスに入れ、27℃のインキュベーターに入れる。
【0111】
C.プレートのスクリーニング
1)プレートのスクリーニングをもう3日実施する:アッセイ開始後、3d、7d、14d及び21d。
2)各スクリーンとゼロ時間での読み取りとの間の吸光度の差を計算する。
3)各時点での各ウェルの増殖阻害率を計算する。対照プレートのDMSO処理の結果を100%増殖として使用する。
試験例9の結果を参照のこと。
【0112】
試験例3.Pythium aphanidermatumに対する生物活性が期待できる1‐フェニル-テラリン(teralin)化合物のマイクロプレートベースのスクリーニング
要旨:DMSOで希釈した1-フェニル-テトラリン化合物(化合物1、2又は3)を別々にマイクロプレートの各ウェルに別々に添加し、PDBC懸濁液中の遊走子50μlと混合し、遊走子から出発して真菌の増殖をプレートリーダー及び目視によってモニターした。
【0113】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0114】
材料:SCH、PDBC、DMSO。
【0115】
装置:プレートリーダー、遠心機、振盪機、インキュベーター。
【0116】
方法:
A.Pythium菌糸の接種材料調製
1)Pythium aphanidermatumを90mmペトリ皿でSCH上に増殖させ、胞子形成菌糸を得る。各プレートは50mlの遊走子懸濁液を生成し、これは10個の96ウェルプレートの生物活性スクリーニングに十分である。
2)滅菌水60mlを滅菌250mlエルレンマイヤーフラスコに加える。
3)プレート2枚の固体培地をメスで12枚(各プレート)に切断し、エルレンマイヤーフラスコに入れる(固体は水で覆う)。
4)菌糸を17℃で一晩胞子形成させる。
5)エルレンマイヤーフラスコを手で振り、遊走子を懸濁させる。
6)懸濁液を16層ガーゼを通して50mlチューブに濾過する。
7)懸濁液を滅菌500mlボトルに移す。
8)固形物を捨て、次亜塩素酸塩でエルレンマイヤーフラスコを消毒する。
9)遊走子懸濁液を氷上で冷却する。
10)懸濁液中の遊走子濃度を評価する(濃度は1000~4000胞子/mlであるべきである)。
11)滅菌冷蔵蒸留水を滅菌500mlボトルに入れて、懸濁液を希釈する。
12)500~2000胞子/mlの接種材料を得るために、滅菌済みの冷蔵庫で冷やした2:PDBCを((懸濁液と)同じ量加える。この希釈は、各ウェル中に25~100個の遊走子の量をもたらす。
13)遊走子懸濁液接種材料を氷上に保持する。
【0117】
B.1-フェニル-テトラリン化合物の生物活性実験のためのマイクロプレート調製
1)精製した1% 1-フェニル-テトラリン化合物(1、2又は3)のDMSO原液をとり、卓上で少なくとも20分間解凍する。
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した(250ppm)1-フェニル-テトラリン化合物溶液10μlを、マルチピペットを用いてマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを使用して、40μlの遊走子懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに添加する。胞子懸濁液を手で激しく混合し、1枚のプレート(5ml)に必要な量をデカントして、遊走子を十分に懸濁させておく。
5)透明シーラーでプレートを密閉する。
6)2000RPMで10分間プレートを振盪して、1-フェニル-テトラリン化合物を菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心分離し、停止して、プレートの底部の液体を回収する。
8)プレートリーダーがマイクロプレートを読み取るまで、マイクロプレートを卓上に置いておく。
9)プレートリーダーを使用してプレートを読み取る。
10)プレートを卓上に回収する。
11)回収したプレートを布で覆ったプラスチックボックスに入れ、27℃のインキュベーターに入れる。
【0118】
C.プレートのスクリーニング
1)アッセイ開始後、さらに3日:3d、7d、14d及び21dにプレートを読み取る。
2)各読み出しとゼロ時間における読み出しとの間の吸光度の差を計算する。
3)各時点での各ウェルの増殖阻害率を計算する。対照プレートのDMSO処理の結果を100%増殖として使用する。
試験例9の結果を参照のこと。
【0119】
試験例4.Botrytis cinereaに対する生物活性が期待される1-フェニル-テトラリン化合物のマイクロプレートベースのスクリーニング
要旨:DMSOで希釈した化合物1、2又は3を含むマイクロプレートを凍結胞子懸濁液と混合し、凍結胞子から開始した真菌の増殖を目視によりモニターした。
【0120】
背景:Botrytis cinereaは子嚢菌類に属する真菌であり、空気感染性の病原体である。Botrytis胞子は-20℃の60%グリセロール液中で生存し、大量生産することは非常に容易である。したがって、本発明者らは、それぞれの実験のために新鮮な胞子を調製するのではなく、生物活性スクリーニング実験において凍結胞子のストックを使用した。
【0121】
目的:1-フェニル-テトラリン化合物がBotrytisの生存及び増殖に及ぼす影響を決定すること。
【0122】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
材料:PDAC、PDBC、DMSO。
機器:遠心機-Eppendorf 5810R;振盪機-Scientific Industries、Multi Microplate Genie;インキュベーター-Pol-Eco Aparatura;プレートリーダー。
【0123】
方法:
A.Botrytis胞子懸濁液の調製
1)PDAC平板の中央にBotrytisのPDACブロックを置き、22℃で12日間培養する。
2)プレートは冷蔵庫で少なくとも1時間冷やす。
3)冷蔵庫で冷やした滅菌済みの60%グリセロール溶液25mlをチューブに加える。
4)菌糸と胞子を入れた寒天を8個に切断し、50mlの滅菌チューブに入れる。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)すべての過程で胞子は氷上に置いておく。
7)新しい50ml滅菌チューブに液体を移し、約25mlを回収する。
8)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過して菌糸を廃棄する:約20mlを回収すべきである。
9)胞子濃度を計算し、2×10胞子/mlとなるように、冷やした滅菌60%グリセロール溶液で希釈する。
10)1mlの胞子懸濁液を1.5mlの試験管に分注する。各アリコートは、スクリーニング用の20枚のプレートに十分な量とする。
11)胞子懸濁液は-20℃で保存する。
【0124】
B.スクリーニング用の胞子懸濁液の調製
1)凍結した胞子懸濁液200μlを冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)胞子懸濁液を氷冷PDBC20mlと50mlチューブ中で混合し、1mlあたり2×10個の胞子液を作製し、4マイクロプレート分とする。
3)この懸濁液をスクリーニング実験に使用する。
【0125】
C.オートクレーブで滅菌する:50mlチューブ×36、リザーバ×4、400ml PDBC。
【0126】
D.1-フェニル-テトラリン化合物の生物活性実験のためのマイクロプレート調製
1)DMSO中の精製1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液を取り、それを卓上で少なくとも20分間解凍する
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した(250ppm)1-フェニル-テトラリン化合物溶液10μlを、マルチピペットを用いてマイクロプレートのウェルに入れる。
4)40μlの胞子懸濁接種材料をマイクロプレートのウェルに添加し、胞子懸濁液を手で激しく混合し、1つのプレート(5ml)に必要な量をデカントし、胞子を十分に懸濁した状態に保つ。
5)透明シーラーでプレートを密閉する。
6)2000RPMで10分間プレートを振とうして、材料を菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心分離して停止し、プレートの底部の液体を回収する。
8)プレートリーダーで読み取るまで、マイクロプレートを卓上に置いておく。
9)プレートリーダー及び目視を用いて、プレートの真菌増殖を評価する。
10)プレートを卓上に回収する。
11)回収したプレートを布で覆ったプラスチックボックスに入れ、22℃のインキュベーターに入れる。
【0127】
E.プレートの読み出し
1)アッセイ開始後、もう3日測定し、プレートの読み取り値を取得する:3d、7d、14d、及び21d。
2)各測定点の読み取り値とゼロ点における読み取り値との間の吸光度の差を計算する。
3)各時点における各ウェルの増殖阻害率を計算し、対照プレートのDMSO処理の結果を100%増殖として使用する。
4)「ヒット」は、DMSO 0.5%溶液と比較して、4回繰り返して「清澄なウェル」を有するか、又は病原体増殖が20%未満である化合物である。
試験例9の結果を参照のこと。
【0128】
試験例5.Fusarium oxysporumに対する生物活性が期待できる1-フェニル-テトラリン化合物のマイクロプレートベースのスクリーニング
要旨:DMSOで希釈した化合物1、2又は3をマイクロプレートウェルに添加し、新しく調製した胞子懸濁液と混合し、凍結胞子から出発した真菌の増殖をて、プレートリーダーを使用して、目視によりモニターした。
【0129】
背景:Fusariumは子嚢菌類に属する菌類であり、土壌媒介病原菌である。Fusariumの胞子を大量に生産することは非常に容易であり、60%グリセロールの液体中で-20℃で生存する。したがって、本発明者らは、それぞれの実験のために新鮮な胞子を調製するのではなく、生物活性スクリーニング実験において凍結した胞子のストックを使用した。
目的:Fusariumの生存と成長に対する1-フェニル-テトラリン化合物の効果を決定すること。
以下の材料、方法及び装置を使用した:
材料:PDAC、PDBC、DMSO。
装置:プレートリーダー、遠心分離機、振盪機、インキュベーター。
方法:
A.Fusarium胞子懸濁液の調製
1)PDACプレートの中央に、PDAC上に生育中のFusariumの寒天ブロックを置き、25℃で9日間生育させる。
2)冷蔵庫のプレートを少なくとも1時間冷やす。
3)冷凍冷蔵60%グリセロール溶液30mlを50mlチューブに加える。
4)菌糸と胞子を含む寒天を1枚のプレートから小片にメスで切り、60%グリセロール30mlの入った50mlチューブに入れる。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)すべての過程で胞子を氷上に置いておく。
7)新しい50ml滅菌チューブに液体を移し、約25mlを回収する。
8)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過し、菌糸を廃棄する。
9)胞子濃度(40×10倍率)を計算し、冷滅菌60%グリセロール溶液で希釈して、2×10胞子/mlを得る。
10)1mlの胞子懸濁液を1.5mlの試験管に分注する-各アリコートは、スクリーニング用プレート20枚が得られるはずである。
11)胞子懸濁液は-20℃で保存する。
【0130】
B.スクリーニング用の胞子懸濁液の調製
1)冷凍庫から冷凍胞子懸濁液1mlをとり、氷上で解凍する。
2)50mlチューブ中で200μlの胞子懸濁液を冷蔵庫で冷やした20ml PDBCと混合し、2000胞子/ml懸濁液を作製する。
3)この量を用いて、ウェル当たり100個の胞子を有する4つのマイクロプレートをスクリーニングする。
【0131】
C.1-フェニル-テトラリン化合物の生物活性実験のためのマイクロプレートの調製
1)DMSO中の精製1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液を取り、それを卓上で少なくとも20分間解凍する。
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した(250ppm)1-フェニル-テトラリン化合物溶液10μlを、マルチピペットを用いてマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを使用して、40μlの胞子懸濁接種材料をマイクロプレートのウェルに添加する。
5)胞子懸濁液を手で激しく混合し、1枚のプレート(5ml)に必要な量をデカントし、胞子をよく懸濁させておく
6)透明シーラーでプレートを密閉する
7)2000RPMで10分間プレートを振盪して、材料を菌糸懸濁液と混合する
8)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止してプレートの下部に液体を回収する
9)プレートリーダーで読み取るまで、マイクロプレートを卓上に置いておく
10)プレートリーダーを使用してプレートを読み取る
11)プレートを卓上に回収する
12)回収したプレートを布で覆ったプラスチックボックスに入れ、25℃のインキュベーターに入れる。
【0132】
D.プレートの読み出し
アッセイ開始後、さらに3日、プレートの読み取り値を取得する:3d、7d、14d及び21d
1)各読み取り値とゼロ点での読み取り値との間の吸光度の差を計算する
2)各時点における各ウェルの増殖阻害のパーセンテージを計算する。対照プレートのDMSO処理の結果を100%成長として使用する。
試験例9の結果を参照のこと。
【0133】
試験例6.Phytophthora infestansに対する生物活性が期待される1-フェニル-テトラリン化合物のマイクロプレートベースのスクリーニング
背景:Phytophthora infestansは、合成培地での増殖が非常に困難な卵菌由来の偏性病原体である。そこで、剥離したトマト葉から調製したリーフディスクに基づく生物活性スクリーニングシステムを使用した。
【0134】
要旨:Phytophthoraに感染したトマトのリーフディスクにDMSOで希釈した化合物1、2又は3を添加し、目視により疾患の進行をモニターした。
【0135】
一般的説明:トマト葉への接種及び維持、胞子懸濁液の調製、マイクロプレートにおけるリーフディスク上でのそれらの増殖、及びPhytophthora infestansの感染重症度の拡大鏡による検査。
【0136】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0137】
方法:
A.接種用の葉の生産のためのトマト苗の調製
1)120×80×80サイズの苗鉢を使用する。
2)肥料を含む標準的な土壌を使用する。
3)4週齢のトマト苗を使用する。
4)小さなトレーに6ポット入れる。
5)1つのポットに1つの苗を入れる。
6)トレーに水を入れる。ポットごとに約100mlである。土は湿った状態で、24時間後に水はトレーに残らないようにする。
7)トマト植物は22℃、16時間の明/暗条件で、栽培室で生育させる
8)植物が成長したら(植え付け4週間後)、5Lのポットに移し、1週間毎に施肥する。
【0138】
B.接種用トマト葉の調製
1)滅菌紙2枚を四角シャーレに入れる。
2)無菌状態で作業する。
3)5週齢以上のトマトの葉を使用する。
4)無菌メスで葉を切断する。
5)20mlの滅菌蒸留水を加えて、濾紙を濡らす(濾紙は最大限に濡らすが、水滴が垂れないようにする)。
6)四角いシャーレに、およそ6枚の葉を(葉の下側を上にして)濡れた紙の上に置く。
7)プレートを蓋で覆う。
【0139】
C.接種材料の準備及びリーフディスク感染
胞子嚢懸濁液の調製
1)Phytophthoraに感染させたトマト葉10葉(感染4~6日後)を滅菌した50mlチューブに入れ、冷たい滅菌蒸留水40mlを入れる。
2)チューブを手で穏やかに混合し、葉の崩壊はしないように胞子嚢を水中に移す。
3)16層のガーゼを通して胞子懸濁液を50mlのチューブに濾過する。
4)胞子濃度を計算する-200×倍率の顕微鏡を使用する。6000胞子嚢/mlの濃度が予想される。
5)氷上でチューブを冷やす。
【0140】
D.胞子嚢の洗浄・濾過濃縮
1)メンブレン(0.65ミクロン~5ミクロン)で濾過システムを調製し、滅菌冷水でメンブレンを洗浄する。
2)胞子懸濁液を50mlチューブからゆっくりと懸濁し、濾過システムに移す。低真空を使用し、メンブレンを乾燥させない。フィルター上に4mlの未濾過懸濁液を残す。
3)胞子を洗い、細菌や他の菌類の胞子を捨てる(洗浄には40mlの水を用いる)-冷滅菌水を噴霧して胞子を懸濁し、洗浄する。
4)胞子の洗浄をさらに5回繰り返す。メンブレンを乾燥させない。4mlの未濾過懸濁液を残す。
5)1000μlピペッターを用いて胞子懸濁液を清浄な50mlチューブに回収する。
6)50mlの試験管に静かに膜を挿入し、膜に付着した胞子嚢を浮遊させる。
7)オートクレーブ処理する膜を廃棄する。
8)液体を捨て、次亜塩素酸塩を用いて濾過システムを30分間消毒する。
9)濾過システムを水道水で洗浄し、濾過システムをプラスチック製バスケットの中で、紙の上で乾燥させる。
10)胞子嚢濃度を計算する-倍率200Xの顕微鏡を使用する-10,000~50,000胞子嚢/mlの濃度が期待される。
11)胞子嚢の懸濁液を氷上に置く。
【0141】
E.Phytophthoraの維持のための剥離葉への胞子の接種
1)Phytophthoraの胞子懸濁液1000μlを1つの正方形の皿の葉のすべてに噴霧し、ディッシュを覆う。
2)葉に菌を感染させ、17℃の暗インキュベーターに24時間静置する。
3)胞子嚢の増殖するように、プレートを22℃、12時間照明のインキュベーターに移し、さらに3~5日間置く。
【0142】
F.スクリーニング用のトマトリーフディスクマイクロプレートの調製
1)48ウェルプレートを用意する。
2)滅菌水寒天0.5%を調製し、予熱し、だが冷たいものを使用する。
3)100μlの滅菌水寒天0.5%をマイクロプレートウェルに加える。
4)第3、第4又は第5葉から調製されたトマトリーフディスクをマイクロプレートウェルに入れる。ディスクを軽く押して、液体寒天溶液と確実に最大限に接触させる。
【0143】
G.材料スクリーニングのためのリーフディスクマイクロプレートへの胞子の接種
1)試験用マイクロプレートに胞子懸濁液を入れる。
2)化学薬品マイクロプレートを透明シーラーで密封する。
3)マイクロプレートを2000RPMで10分間振盪し、材料と添加した胞子懸濁液を混合する。
4)マイクロプレートを1000RCFで1秒間遠心分離し、停止して、プレートの底部に液体を回収する。
5)5μlの胞子懸濁液をマイクロプレートの各ディスクの中央に加える。
6)透明シーラーでリーフディスクを密封する。
7)密封したリーフディスクプレートを、暗所で17℃で24時間、次に22℃で、12時間の明暗条件で3~5日間、インキュベーターに入れる。
8)生物活性評価を行う。
【0144】
H.生物活性評価
1)1つの時点(×5倍率ガラスを用いた懸濁液調製の5日後)でプレートスクリーニングする
2)感染したディスクをエクセルシートでレポートする:
タイプ1-ディスクが完全に感染している場合;
タイプ2-不確定;
タイプ3-ディスクが全く感染していない場合。
3)各材料について3のスコアの繰り返しの数を計算する。
4)各材料のスコア3の合計を計算する。
5)ベストスコアは以下のように計算した:反復数=4、スコアの合計=12。
6)「ヒット」は4又は3回の繰り返し、及び合計が6~12回の材料である。
試験例9の結果を参照のこと。
【0145】
試験例7.Pseudomonas syringaeに対して生物活性を期待できる1-フェニル-テトラリン化合物のマイクロプレートに基づくスクリーニング
背景:Pseudomonasは桿状のグラム陰性細菌である。60%グリセロール中の凍結細菌ストックを、生物活性スクリーニング実験のための接種材料として使用した。
【0146】
要旨:DMSOで希釈した化合物1又は2をマイクロプレートのウェルに添加し、凍結細菌懸濁液と混合し、Pseudomonasの増殖を目視によりモニターした。
【0147】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0148】
材料:LB、LBA、DMSO。
【0149】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター。
【0150】
方法:
A.Pseudomonas懸濁液の調製:
1)LBAプレート上で28℃で2日間Pseudomonasを増殖させ、単一のコロニーを得る。
2)5mlのLBを入れた50ml滅菌チューブに滅菌爪楊枝を用いて単一コロニーを移し、28℃、150RPMで24時間増殖させる。
3)チューブを冷蔵庫で1時間冷やす。
4)7.5mlの冷蔵庫で冷やしたグリセロール溶液をチューブに加え、60%グリセロール溶液を得る。
5)十分にしかしおだやかに混合し、完全な混合する-1000RPMのボルテックスを使用する。
6)60%グリセロール中の細菌懸濁液100μlを1.5mlの試験管に分注する。各アリコートは10枚のマイクロプレートのスクリーニングに十分である。
7)バクテリアの60%グリセロール懸濁液を-20℃で保存する。
【0151】
B.生理活性スクリーニング実験用Pseudomonas懸濁液の調製:
1)凍結したPseudomonas懸濁液100μlを入れた1.5mlの試験管を冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)フード内にて、50mlのチューブに40mlの冷蔵庫で冷やしたLBでを入れたものを調製する。
3)40μlの細菌懸濁液を、50mlチューブ中の40mlの冷蔵庫で冷やしたLBと混合する。この量は、10個のマイクロプレートの活性スクリーニングに十分である。
4)この懸濁液を生物活性スクリーニング実験に使用する。
【0152】
C.生物活性スクリーニング実験用マイクロプレート調製物:
1)DMSO中の精製1% 1-フェニル-テトラリン化合物1又は2の原液を取り、それを卓上で少なくとも20分間解凍する。
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した(250ppm)1-フェニル-テトラリン化合物溶液10μlを、マルチピペットを用いてマイクロプレートのウェルに分注する。
4)マルチピペットを使用して、増殖培地を含む細菌懸濁液80μlをマイクロプレートの各ウェルに添加する。
5)透明シーラーでプレートを密閉する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、1-フェニル-テトラリン化合物を細菌懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心分離し、停止して、プレートの底部に液体を回収する。
8)プレートをカバー付きのプラスチックボックスに入れ、28℃のインキュベーターに入れる。
【0153】
D.マイクロプレートの生物活性スクリーニング:
1)5日においてマイクロプレートをスクリーニングする:接種後3、5、7、14、21日。
2)ランプを使用して、細菌の増殖を目視で評価する。
3)スクリーニング用のプレートを調製する:2000RPMで2分間プレートを振とうして細菌を懸濁させ、次いで1000 RCFで数秒間プレートを遠心分離する。
4)マイクロプレートのカバーを外した後、カバーに液体が付いている場合は(内側から)、60℃の加熱ブロックを使用して液体を蒸発させてスクリーニングする。
5)各ウェルの透明度を対照ウェル(対照殺菌剤又は0.5% DMSO溶液を含むウェル)の透明度と比較する。
6)以下の解釈を用いて結果を記録する:清澄=3(細菌の増殖なし)、混濁=1(正常な細菌増殖)、不確定=2(0.5% DMSO溶液中での増殖と比較して非常に低い濁度)。
試験例9の結果を参照のこと。
【0154】
試験例8.Alternaria alternataに対する期待される生物活性についての1-フェニル-テトラリン化合物のマイクロプレートベースの試験
背景: Alternaria alternataは主要な植物病原体であり、多くの農作物に大きな被害をもたらす。Alternaria alternataは子嚢菌類に属する菌類で、空気感染性の病原体である。Alternaria alternataの胞子を大量に生産することは非常に容易であり、-20℃の液体60%グリセロール中で生存することから、このスクリーニングでは、各実験のために新鮮な胞子を調製するのではなく、凍結胞子ストックを使用することを決定した。
【0155】
要旨:DMSOで希釈した化合物1、2又は3をマイクロプレートウェルに添加し、凍結細菌懸濁液と混合し、Alternariaの増殖を目視によりモニターした。
【0156】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0157】
材料:LB、LBA、DMSO。
【0158】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター。
【0159】
方法:
A.Alternaria胞子懸濁液の調製
1)AlternariaのPDATブロックをPDATプレートの中央に置き、シリカゲルを入れた箱の中で25℃で21日間増殖させる。
2)プレートを冷蔵庫で少なくとも1時間冷やす。
3)冷蔵庫で冷やした滅菌水25mlを加える。
4)1枚のプレートから1枚の菌糸と胞子のついた寒天をメスで8個に切断し、50mlの滅菌チューブに入れる。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)すべての過程で胞子は氷上に置いておく。
7)新しい50ml滅菌チューブに液体を移す-約25mlが回収されるはずである
8)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な無菌の50mlチューブに直接濾過する。菌糸が約20ml回収されるはずである。
9)胞子の予想濃度は25,000胞子/mlである。
10)胞子の入った50mlチューブを4500RCFで5分間遠心分離すると、試験管の底部に小さな暗色のペレットが見られるはずである。
11)液体を静かに捨て、各チューブに約3mlの液体が入った状態で胞子のペレットを保つ。
12)氷上に置く。
13)ボルテックスで胞子を浮遊させる。
14)すべてのチューブから懸濁液を1本の50mlチューブに採取する。
15)胞子濃度を計算する(20×10倍率で、×10希釈した物をカウント)。
16)胞子の入った50mlチューブを4500RCFで5分間遠心分離すると、試験管の底部に小さな暗色のペレットが見られるはずである。
17)遠心後の胞子濃度を調整する(計算には体積比を使用する)。濃度は5×10とし、水を加えるか、又は胞子ペレットが入ったチューブの水の量を減らすことにより、胞子の濃度を調整する。
18)冷滅菌グリセロール(100%)を加え、60%グリセロール溶液を得る。最終的な胞子濃度は2×10とする。
19)胞子懸濁液をよく混ぜる。
20)1mlの胞子懸濁液のアリコートを1.5mlチューブに分注する。
21)胞子懸濁液は-20℃で保存する。
【0160】
B.スクリーニング用の胞子懸濁液の調製
1)凍結した胞子懸濁液400μlを冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)胞子懸濁液を氷冷したPDBC20mlと50ml試験管中で混合し、1mlあたり2×10個の胞子の濃度とし、マイクロプレート4枚に使用する。
3)この懸濁液をスクリーニング実験に使用する。
【0161】
C.50mlチューブ×36本、リザーバ×4本、PDBC400mlをオートクレーブで蒸気滅菌する。
【0162】
D.スクリーニング実験のためのマイクロプレート調製
1)精製した1% 1-フェニル-テトラリン化合物のDMSO原液を-20℃の冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1% 1-フェニル-テトラリン化合物の原液1μlをとり、水39μlで250ppmまで希釈する。
3)希釈した(250ppm)1-フェニル-テトラリン化合物溶液を、マルチピペットを用いて10μlずつマイクロプレートのウェルに入れる。
4)激しく混合した胞子懸濁接種材料を、マルチピペットを用いて40μlずつマイクロプレートのウェルに添加し、透明シーラーでプレートを密封する。
5)2000RPMで10分間プレートを振盪して、材料を菌糸懸濁液と混合する。
6)プレートを1000RCFで1秒間遠心分離した後、停止して、プレートの底部の液体を回収する。
7)すべてのプレートの培養の準備ができるまで、卓上のプレートを回収する。
8)回収したプレートをプラスチックボックスに入れ、25℃のインキュベーターに入れる。
【0163】
E.プレートのスクリーニング
1)3日においてスクリーニングする:摂取後7、14、21日後。
2)経時的な真菌増殖に対する化合物の影響を視覚的に評価するためにランプを使用する。
3)プレートのカバーを外した後に、カバーに液体がある場合(内側から)、60℃のヘッドブロックで液体を蒸発させ、スクリーニングする。
4)各ウェルの菌糸成長を、対照プレートウェル(市販の殺菌剤又は0.5% DMSO溶液を含有するウェル)の菌糸成長と比較する。
5)結果は以下のグレードを用いて解釈した:清澄=3(菌糸の成長なし)、正常な菌糸構造=0(正常な成長)、不確定=2(予想外のタイプの固体構造、又は領域の部分的被覆)。
試験例9の結果を参照のこと。
【0164】
試験例9.試験例1~8のプロトコールに基づくインビトロ実験の結果
インビトロスクリーニングマトリックス
1-フェニル-テトラリン化合物を、選択された農業有害生物に対してスクリーニングした(以下の表に示す)。生物活性値は%であり、標的有害生物を根絶する可能性を反映する。
生物活性の相対値の算出規則(最大値に対する%で表示)
a.Puccinia sorghi、Phytophthora infestans-活性グレード(1/2/3)×反復数#/12(最大値3×4=12)×100
b.Alternaria alternata、Botrytis cinerea、Rhizoctonia solani、Sclerotinia sclerotiorum、Fusarium oxysporum、Pythium aphanidermatum -活性グレード(1/2/3)×反復数#×活性の日数/252(最大値3×4×21=252)×100
c.Pseudomonas syringae、Pectobacterium caratovorum-活性グレード(1/2/3)×反復数#×活性の日数/168(最大値3×4×14=168)×100
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
要約すると、1-フェニル-テトラリン化合物は、以下の有害生物に対して有効な農薬であることが実証された:Puccinia sorghi(植物内の結果の項でポジティブな結果を示す)、Phytophthora infestans(トマト剥離葉検証実験及び温室でのインビボ検証実験でポジティブな結果を示す)、Rhizoctonia solani、Pythium aphanidermatum、Alternaria alternata、Botrytis cinerea(温室条件下でのトマトインビボ検証実験でポジティブな結果を示す)、Fusarium oxysporum及びPseudomonas syringae。
【0169】
検証実験に用いる統計解析
対照植物(感染しているが処理されていない)と比較して、感染植物における試験化合物の効果を評価するために、スチューデントのt検定によりデータを分析し、p値を算出した。各実験における反復の最小数は3であった。結果はp<0.05であれば有意とした。データは、生物学的レプリケートの平均の標準誤差平均で示した。はp値が<0.05であることを示す、**はp値が<0.01であることを示す、***はp値が<0.001であることを示す、#はp値が<0.1であることを示す、n.sは対照に対して有意でない効果であることを示す。
【0170】
バリデーション実験に用いる製剤処方
製剤1の調製
400ppmでの最終1-フェニル-テトラリン化合物製剤調製のために3種類の原液を使用した(製剤1):
(A)1-フェニル-テトラリン化合物の水・酢酸溶液。
1-フェニル-テトラリン化合物を水に溶解して0.2%水溶液を得た後、2%酢酸を添加した。最終溶液を室温で5分間超音波処理した。溶液は透明で無色であるはずである。
(B)0.4%キサンタンガム水溶液(w/w)。
(C)水中0.6% Silwet(登録商標)(w/w)。トウモロコシ植物に適用された最終製剤は、20%の原液A、10%の原液B及びC、並びに60%の水から構成される。
最終的に配合された1-フェニル-テトラリン化合物を400ppmとして、又は必要な濃度に希釈して植物に適用した。
【0171】
製剤2の調製
400ppm 1-フェニル-テトラリン化合物製剤の最終調製のために3種類の原液を使用した:
(A)水中の1-フェニル-テトラリン化合物の水懸濁液。
1-フェニル-テトラリン化合物をグラインダーを用いて粉砕し、粉砕した化合物を用いて滅菌水中の化合物の1%懸濁液を得た。1-フェニル-テトラリン化合物原体の重量は50mgであるべきである。1-フェニル-テトラリン化合物を1mlの体積(50振動/秒、1分間)で粉砕し、5回繰り返して、5mlの懸濁液の最終体積及び1%の最終濃度を得た。
(B)0.4%キサンタンガム水溶液(w/w)。
(C)0.6% Silwet(登録商標)水溶液(w/w)。
コムギ植物に適用された最終製剤は:
原液(A)4%、原液(B)10%、原液(C)3.3%、水82.7%。
最終的に製剤化された1-フェニル-テトラリン化合物は、400ppmとして、又は必要な濃度に希釈して植物に適用した。
【0172】
試験例10.トウモロコシの植物での検証
プロトコール名:トウモロコシ実生試験におけるPuccinia sorghi感染
一般的説明:トウモロコシへの接種、回収、Puccinia sorghi胞子懸濁液の調製及びPuccinia sorghiに対する1-フェニル-テトラリン化合物1又は3の生物活性評価。
【0173】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0174】
方法:
A.接種用トウモロコシ実生の調製
1)120×80×80mmポット、標準的な園芸用土壌、肥料、さび病感受性品種のトウモロコシの種子を使用する。
2)ポットをトレーに入れ、ポットの上まで土を入れる。
3)種子のために小さな溝を作る。
4)各ポットに約10種のトウモロコシを植える。
5)種子を追加の土で覆う。
6トレーに水を入れる。1つのポットにつき約100ml(トレーを3回満タンにする)。
7)22℃の栽培室で8日間トウモロコシを生育させる(第2葉が出現するまで)。
【0175】
B.接種のための[トウモロコシ葉からの]胞子懸濁液の調製
1)胞子の付いた20枚の感染トウモロコシ葉を滅菌した50mlのチューブに入れる。
2)冷0.05% Tween(登録商標)20溶液50mlを加える。
3)チューブを密閉された氷の冷たいプラスチック製の箱に挿入する。
4)3000RPMで15分間、振盪機を用いてボックスを振盪する。
5)懸濁液(葉を含まない)を清潔な滅菌50mlチューブに移す。
6)16層のガーゼを通して、胞子懸濁液を別の滅菌50mlチューブに濾過する。
7)胞子懸濁液の入ったチューブを氷上に置いておく。
8)胞子を洗浄し、5ミクロンのメンブレンフィルターで濃縮する。氷冷した滅菌水で4回洗浄し、胞子を0.05% Tween(登録商標)20溶液に採取する。
9)接種のために、胞子懸濁溶液を冷0.05% Tween(登録商標)20溶液を用いて希釈し、8000胞子/mlの胞子を得る。
【0176】
C.栽培室実験
1)上記のように調製した8日齢の実生を使用する。
2)噴霧処理剤を植物あたり1ml程度準備する。
3)Tween(登録商標)20を0.05%まで処理剤に添加する。
4)処理剤を十分に飽和するまで(スプレーボトルを使用)葉に噴霧し、栽培室で乾燥させる。
5)2日目に再度散布し、乾燥させる。
6)2日目(処理剤散布から約4時間後)に、Puccinia胞子懸濁液を植物に接種する。
7)スプレーボトルを用いて、9日齢のトウモロコシ実生の葉に約1ml(完全に飽和するまで)の胞子懸濁液を散布する。
8)接種した実生を入れたポットを、暗い湿潤チャンバーに入れ、底部に温水を入れる。チャンバーは、室内で湿度99%の22℃が24時間保持されるべきである(加熱された水温は32℃であるべきである)。
9)24時間後、ポットを成長室に移す。
10)22℃の栽培室でトウモロコシを栽培する。
11)接種から7日後、葉に褐色斑点が見られるはずである。
12)接種から9日後のPuccinia褐色斑点の葉被覆率を記録する。
13)処理実生の葉被覆率を水処理実生と比較する。
【0177】
実験343のための化合物1製剤(図1を参照)
化合物1を、1:9の重量対重量比でジメチルスルホキシド溶媒に溶解し、次いで、二重蒸留水で検証に使用する最終体積にした。噴霧前に、非イオン性界面活性剤Tween(登録商標)20を0.05%の最終濃度となるように添加した。
【0178】
実験270,284、294用の化合物3製剤1~5(図4~6参照)
化合物3を、1:36の重量対重量比の無水エタノール又は1:17の重量対重量比を有するジメチルスルホキシドに溶解し、5分間超音波処理し、次いで、化合物3に対する重量対重量比1:4.5のTween(登録商標)20又は化合物3に対する重量対重量比1:1のSilwet(登録商標)のいずれかの非イオン性界面活性剤を別途追加し、最終的な製剤とした。場合によっては、NaCOを使用してpHを6に調整した。
【0179】
結果
栽培室において、いくつかの実験を制御された環境下で行い、化合物1及び化合物3のトウモロコシ植物におけるPuccinia sorghiを予防及び防除する可能性を推定した(図1、4、5及び6)。化合物1及び化合物3は非常に良好に機能し、制御された生育条件下で非常に良好な効果を示した。Puccinia sorghiの予防及び防除における1-フェニル-テトラリン化合物の平均有効率は、200ppmで95.17%、400ppmで97.06%であった。
【0180】
試験例11.葉さび病(Puccinia triticina)に感染したコムギにおけるグロースチャンバー条件下での植物体実験による検証
一般的説明:コムギに葉さび病菌の接種、感染を制御するために潜在的に生理活性のある化合物の噴霧、感染レベルを評価するための手順。
【0181】
方法:
A.接種用コムギ実生の調製
1)使用:90×80×80の大きさの苗鉢、肥料を含む標準的な園芸用土、及び高感受性品種のコムギ種子(バイト・ハシタ農場、イスラエル)。
2)12ポットを大きなトレーに入れ、ポットの上部に土を入れる。
3)250mlのボトルを使用して種子のための溝を作る。
4)各ポット(円形内)にコムギ10個を入れる。
5)種子を土で覆い、強く押す。
6)トレーに水を入れる。1つの容器につき約100ml(トレーを3回満タンにする)。
7)接種前に24℃の栽培室で2週間、コムギを生育させる。
【0182】
B.胞子懸濁液の調製
1)無菌の50mlチューブに、胞子をもつコムギの葉30個を入れる。
2)冷0.05% Tween(登録商標)20溶液40mlを加える。
3)ボルテックス上でチューブを最大速度で2分間振る。
4)懸濁液(葉を含まない)を、氷上の清潔な無菌の50mlチューブに移す。
5)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過し、菌糸を廃棄する-約30mlを回収する。
6)胞子を5ミクロンの孔のメンブレンで洗浄し、細菌や他の真菌の胞子を捨てる。真空ポンプを止め、冷滅菌水をスプレーして胞子を浮遊させ、洗浄し、真空ポンプを再び始動する。
7)胞子洗浄をもう一度繰り返す。
8)胞子を10mlの滅菌冷0.05% Tween(登録商標)20溶液で50mlチューブに懸濁する-胞子を含むメンブレンをTween(登録商標)20溶液の入ったチューブに挿入し、手でチューブをゆする。
9)メンブレンを取り除き、廃棄する。
10)濾過された液体を流しに落とし、濾過システムを上水で洗浄し、乾燥させる。
11)[任意]最終濃度20μg/mlでクロラムフェニコール原液(20mg/ml)10μlを添加する。
12)懸濁液中の胞子濃度を確認する-濃度は約30,000胞子/mlであり、褐色であるべきである。
13)冷0.05% Tween(登録商標)20溶液を用いて、胞子懸濁溶液を4000胞子/mlに希釈する。
14)胞子の懸濁液を氷上に保つ。
【0183】
C.感染実験のためのコムギ植物への接種
1)第1葉が完全に発育するまで、約2週間植物を育成する。
2)9~10の植物を入れたポットを使用する。
3)胞子懸濁液4000胞子/mlを植物当たり0.1mlでコムギ植物に噴霧する。
4)0.5mmオリフィスのコンプレッサーペイントブラシシステムを使用して、40PSIで胞子懸濁液を噴霧し、回転トレー上に4ポットを一度に噴霧し、それを2回行う。
5)コムギを接種した植物のポットを、20℃[温水30℃、室温は18℃]の湿潤チャンバーに一晩入れる。
6)湿潤チャンバーの直後、シリンダーをポットに載せ、栽培室に移す。
7)室温24℃、16時間明期/8時間暗期でコムギを栽培する。
【0184】
D.感染レベルの分析
1)約2週間後に感染レベルの分析を行う。
2)最初の葉だけの感染レベルを分析する。
3)感染レベルは胞子パッチの葉被覆度に従ってスコア化する。
4)胞子パッチの100%の被覆率を実験前に決定しておき、そのような葉の写真を感染レベルの評価に用いる。
【0185】
E.試験化合物の適用
1)スプレーによる接種の1日前に製剤化された化合物1の処理を行った。
2)各植物に、製剤化された化合物1(試験例9参照)100ulずつ散布した。
3)各処理には、ポットあたり9~10個の植物を有する4つのポットが含まれる。
【0186】
結果
栽培室の制御された環境下で2つの実験を行い、化合物1のトウモロコシ植物におけるPuccinia sorghiの予防及び防除に対する生物活性の可能性を評価した(図2及び3)。化合物1は非常に良好に機能し、制御された成長条件下で非常に良好な有効性を示した。Puccinia triticinaの予防及び防除における化合物1の平均有効率は、200ppmで95.17%、400ppmで97.06%であった。
【0187】
試験例12.Phytophthora infestansに感染したトマト剥離葉を用いた検証実験
概要:トマトの剥離葉を1‐フェニル‐テトラリン化合物で処理し、Phytophthora infestansの胞子に感染させた。
【0188】
Phytophthora胞子懸濁液調製物:試験例6に従って胞子を調製し、水によって1000胞子/mlに希釈する。
【0189】
A.接種用トマト葉の調製:
1)滅菌紙2枚を四角シャーレに入れる。
2)無菌状態で作業する。
3)上から3~5枚目の葉を使用する。
4)滅菌蒸留水を加えて濾紙を濡らす。
5)無菌メスで葉から小片を切り取る。
6)四角いシャーレに10枚の葉を入れ、湿った濾紙の上に、葉の下側が濾紙に向くように置く。
7)プレートを蓋で覆う。
【0190】
B.剥離葉上の胞子の処理と接種
1)1枚の正方形のディッシュのすべての葉に1mlの処理液を(スプレーシリンジを用いて)葉の上側にスプレーし、葉を化学フード内で乾燥させる。
2)1mlのPhytophthora胞子懸濁液を、1枚の正方形のディッシュの全ての葉の上側に(スプレーツールを用いて)スプレーする。
3)ディッシュに蓋をして、伸縮ナイロンで密封し、試験例6に従って葉上で真菌を増殖させ、7日後の感染レベルを記録する。
【0191】
実験487、492、500で使用した製剤の製法(下記表4~6参照)
化合物3を、1:36の重量対重量比の無水エタノール又は1:17の重量対重量比のジメチルスルホキシドで溶解し、5分間超音波処理し、次いで、化合物3に対する重量対重量比1:4.5のTween(登録商標)20又は化合物3に対する重量対重量比1:1のSilwet(登録商標)のいずれかの非イオン性界面活性剤を別途添加し、最終的な製剤とした。適宜、炭酸ナトリウム(NaCO)を用いてpHを6に調整した。
【0192】
結果
3つの独立した実験を、トマトの剥離葉において実施し、そこで、化合物3のPhytophthora infestansに対する予防及び防除の生物活性の可能性を推定した(以下の表4~6の結果を参照されたい)。Phytophthoraによる感染の重症度を、真菌に覆われた葉の面積を表す以下のグレードを用いて評価した:0=透明;1=低被覆;2=中被覆;3=高被覆。
化合物3は、200ppmで73%~83%の間の有効性でPhytophthora感染を制御した。
【0193】
【表4】
【0194】
【表5】
【0195】
【表6】
【0196】
試験例13.温室条件下でPuccinia trititcinaに感染したコムギにおけるインビボ実験による検証
一般的説明:葉さび病のコロニーを有するコムギの葉に、配合された化合物3を噴霧し(処理)、胞子発芽の割合を、処理後の3つの時点(1、7及び14d)で評価した。
【0197】
サブプロトコール:1)胞子堆(pustule)発芽;2)コムギへのPuccinia接種。
【0198】
方法:
1)高感受性品種由来のコムギ植物(バイト・ハシタ、ハザラ、イスラエル)にPuccinia triticinaを事前接種し、温室又は栽培室/温室/圃場に移した。異なる年齢及び成熟からのコロニー/胞子堆が生じた。
2)製剤化された化合物3を、対応する濃度で、葉を完全に流すまで散布した(5ml/ポット)。詳細については、下記参照のこと。
3)処理後の1d、7d、14dにおいて、葉を回収し、湿潤チャンバーに保管し、分析のために実験室に送る。
4)胞子発芽アッセイ用96ウェルプレートの調製:
a)採取した葉から20コロニー(胞子堆)/処理を行う。各コロニーは、実験用メスで別々に切断されるべきである。
b)胞子の発芽には96ウェルプレートを用いる。
c)各ウェルにPucciniaの胞子堆を1つずつ挿入する。各処理で試験したコロニー数が20であることを確認する。
d)対照として、化合物3で処理せずに実験室で栽培したP.triticinaが増殖したコムギの葉を採取する。
e)それぞれのウェルに150μlの0.05% Tween(登録商標)20溶液を入れる。
f)プレートをプレートカバーで密封し、2000rpmで10分間、振盪機にかける。
g)各ウェルから葉を取り出す。
h)溶液120μlを取り出し、各ウェルに25~30ulを残す。
i)プレートは振らないこと。
5)17℃暗所で一晩インキュベートする。
6)翌日、対照サンプル中で胞子が発芽したことを確認する。
7)顕微鏡(×10倍)を用いて、各ウェル中の10個の胞子のうちの発芽胞子の数をカウントする。各ウェルのすべての胞子を数えないで、測定する胞子を10個だけ選び、選んだ10個の中から発芽した胞子を数える。
8)発芽胞子/処理の平均パーセンテージを計算する。
9)全20試料/処理の平均値を実行する。
10)未処理対照と比較して統計解析を行う。
【0199】
A.P.triticinaを予め接種した植物の作製のためのコムギ実生の作製
1)120×80×80サイズの苗鉢を使用する。
2)肥料(ココナッツ50%、ピット44%、石英6%、スターター18-24-5肥料5kg/m、徐放14-14-14肥料)を混合した標準的な園芸用土を使用する。
3)感受性品種のコムギ種子(バイト・ハシタ農場から使用)を使用する。
4)12個のポットを大きなトレーに入れ、ポットの上に土を入れ、少し押す。
5)種子のための溝を作る。
6)1つのポットに12種のトウモロコシの種子を入れ(丸で囲んで)、追加の土壌混合物で種子を覆い、強くおさえる。
7)トレーに水を入れる-1ポットにつき約100ml(トレーを3回満タンにする)。
8)接種前にコムギを24℃の栽培室で3週間生育させる。
9)コムギの苗を温に移し、さらに成長させる。
10)清潔な場所(周囲に病気や接種した植物がいない)で苗を育てる。
【0200】
B.P.triticinaを予め接種したコムギ植物の調製
1)30~40枚の感染コムギの葉と胞子を滅菌した50mlの試験管に入れる。
2)冷0.05% Tween(登録商標)20溶液40mlを加える。
3)チューブをボルテックス上で最大速度で2分間振る。
4)懸濁液(葉を含まない)を、氷上の清潔な無菌の50mlチューブに移す。
5)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過し、菌糸を廃棄する(約30mlを回収すべきである)。
6)真空ポンプを用いて5ミクロンの孔のメンブレン上に胞子を洗浄し、細菌及び他の真菌胞子を捨てる-真空ポンプを停止し、冷滅菌水を噴霧して胞子を懸濁及び洗浄し、その後、真空ポンプを再び開始する。
7)胞子洗浄をもう一度繰り返す。
8)メンブレンを注意深くポンプから新しい50mlチューブに移し、10mlの滅菌冷0.05% Tween(登録商標)20溶液で胞子を懸濁し、チューブを手で振り、胞子を膜から放出させる。
9)メンブレンを除去し、廃棄する。
10)濾過された液体を流しにデカントし、濾過システムを上水で洗浄し、乾燥させる。
11)[任意]最終濃度20μg/mlのクロラムフェニコール原液(20mg/ml)10μlを添加する。
12)懸濁液中の胞子濃度を顕微鏡下で血球計数盤を用いて確認する。濃度は約30,000胞子/mlであるべきであり、胞子は褐色のはずである。
13)冷0.05% Tween(登録商標)20溶液を用いて、胞子懸濁溶液を4000胞子/mlに希釈する。
14)胞子の懸濁液を氷上に保つ。
15)3週間のコムギ実生に胞子懸濁液(1ml/実生)を噴霧する。
16)噴霧された実生を、暗い湿気のあるチャンバーに一晩移動させる。
17)植物を暗い湿気のある箱から取り出す。各ポットを透明なプラスチック製の円筒で覆い、コムギの葉の周囲を湿潤にする。感染した実生をグロースチャンバーに移し、さらに生育させる。
18)7~10日以内にP.triticinaの胞子堆がコムギの葉に観察されるはずである。
【0201】
製剤の調製
試験例9の製剤の項の製剤2の調製を参照のこと。
【0202】
結果
化合物3のPuccinia triticina胞子の発芽を阻害する生物活性の可能性を推定する3つの実験を温室条件下で行った(図7~10)。化合物3は非常に良好に奏功し、温室条件下で非常に良好な有効性を示した。化合物3のPuccinia triticina胞子発芽抑制における有効性は、400ppmで最大72.8%であった。
【0203】
試験例14.温室条件下でPhytophthora infestansに感染したトマトにおけるインビボ実験による検証
一般的記述:Phytophtora infestansによる晩枯病の重症度を、1‐フェニル‐テトラリン誘導体処理後に評価した。胞子嚢を用いて、1-フェニル-テトラリン誘導体による治療的処理後に3~4週齢のトマト幼植物に感染させた。
【0204】
A.病原体胞子嚢の調製(プレート/固形培地上で増殖させたもの)
胞子嚢懸濁液の調製
1)4日齢のPhytophthora感染トマト葉10葉を滅菌50mlチューブに入れる。
2)冷滅菌蒸留水4mlを40mlをチューブに充填する
3)水中に胞子嚢を放出するが葉組織に損傷を与えないように、チューブを手で穏やかに混合する
4)胞子懸濁液を16層のミラクロスを通して50mlチューブに濾過する。
5)200×倍率の顕微鏡を用いて胞子濃度を算出する。3000胞子嚢/mlと予想される。
6)氷上でチューブを冷やす。
【0205】
B.胞子嚢の洗浄・濾過による濃縮
1)濾過膜(孔径0.45μM~5μMの範囲)を用いて濾過システムを調製し、滅菌冷水で膜を洗浄する。
2)胞子懸濁液を50mlチューブから濾過システムにゆっくりと懸濁し、デカントする。低真空を使用し、メンブレンを乾燥させないように、フィルター上に4mlの未濾過懸濁液を残す。
3)胞子を洗浄し、細菌及び他の真菌胞子を滅菌冷却蒸留水40mlで捨てる。
4)洗浄工程を5回繰り返す。洗浄ステップの間にメンブレンが乾燥しないことを確かめておく。
5)胞子懸濁液を清潔な50mlチューブに集める。
6)濾過用のメンブレンを胞子嚢と共に試験管に挿入し、メンブレン上に残った胞子嚢を静かに浮遊させる。
7)メンブレンを捨て、次亜塩素酸溶液(0.1%)で濾過真空システムを洗浄・滅菌する-次亜塩素酸塩溶液中に少なくとも1時間放置する。
8)×200倍率の顕微鏡用血球計算盤スライドを用いて胞子嚢の濃度を計算する。接種に必要な最終濃度は6000胞子/mlである。
9)冷蔵庫に胞子嚢を保存する。
【0206】
C.植物/実生の発芽条件
1)トマトIkram/Brigade/Shani栽培品種(Phytophthora感受性)を、標準的な温室用土壌混合物を用いて育苗トレー中で発芽させた。12時間明期/12時間暗記条件下で、温度24℃、清浄なグロースチャンバーで実生を生育させた。4本の本葉を有する3~4週齢の実生を実験に使用した。
2)各処理に必要な植物を、育苗トレーから専用の実験トレーに移した。
3)各実生上の2枚の葉を小さなプラスチックタグで標識した。標識された各葉について、最も大きいほうから3つの葉を実験に使用した。
【0207】
D.接種適用(治療的アプローチ)
1)実験手順のために、若いトマト実生を温室に移動させた。
2)治療的アプローチでは、接種材料を適用し、次いで、接種の24時間後に、処理を適用した:
a)10μlのPhytophtora infestansを各標識した小葉に滴下した。
b)ラベル付けされた接種葉を有するトレーを、湿潤状態の暗箱に入れ、底部に低水位で水を張った。箱を17℃で24時間保持した。
c)24時間後、接種された植物をいれたトレーを温室のテーブルに移動させて、疾患を発症させた。
【0208】
E.治療適用(治療的アプローチ)
1)1-フェニル-テトラリン化合物を、接種の24時間後に適用した。植物を湿潤な箱から取り出した。
2)1-フェニル-テトラリン化合物製剤を、トマト葉が完全に排液されるまで、ハンドスプレーを用いて適用した。処理は、葉の上面及び下面に施された。
3)各2植物につき3.5mlの製剤化処理を適用した。
4)初回処理の24時間後、再度処理を行った。
【0209】
F.接種用途(予防的アプローチ)
予防的アプローチでは、化合物3による2回の反復処理の後に接種を適用した:
a)10μlの新しく調製したPhytophthora infestans胞子懸濁液(6000胞子/ml)を滴下し、ラベルされた各小葉(各植物上の6つの小葉)に適用した。
b)接種した植物を湿潤な箱に24時間入れた。
c)24時間後、接種された植物を有するトレーを湿潤な箱から取り出し、温室に置いて、さらに生育及び疾患発症を進めた。
【0210】
G.処理剤の適用(予防的アプローチ)
1)4週齢の健康なトマト実生(4本の本葉を有する)を使用した。各植物上の2つの成熟葉の最新の最も大きい3つの葉を、小さなプラスチックタグでラベルした。
2)接種の48時間前(-2日目)に、ハンドスプレーを用いて、植物を葉の上面及び下面にトマト葉(1ml/植物)が完全に排出されるまで、製剤化された化合物3及びそれぞれの対照で処理を行った。
3)接種24時間前(-1日目)に、再度同じ処理を行った。
【0211】
H.生育と分析
1)処理及び接種後、植物を通常の温室条件下で生育させ、必要に応じて給水した。
2)接種5日後、ラベル葉に病害が観察された。
3)ラベルした葉を切り取って採取し、それぞれの処理を別々に行い、実験室に移動させ、疾患重症度(%)として、腐敗率を測定した。
4)晩枯病の症状は感染した地点上に現れる褐緑色の斑点として観察され、その後、葉の広い領域が完全に褐色に変色するはずである。
【0212】
製剤の調製
試験例9の製剤の項の製剤調製を参照のこと。
【0213】
結果
Phytophthoraに感染したトマト植物において7回の独立した実験を実施し、Phytophthora infestansを予防及び防除する化合物3の可能性を推定した(図10~16)。
化合物3は、最大100%の有効性でPhytophthora感染を制御した。
【0214】
試験例15.温室条件下でAlternaria solaniに感染したトマトにおけるインビボ実験による検証
一般的記述:化合物3による処理後に、Alternaria solaniに起因する早期立枯病の重症度を評価した。1‐フェニル‐テルトラリン(tertralin)化合物による予防的処理後の3~4週齢のトマト幼植物の葉に胞子分離物を用いて感染させた。
【0215】
A.Alternaria胞子懸濁液の調製
1)AlternariaのPDATブロックをPDATプレートの中央に置き、25℃で9日以上増殖させる。
2)冷蔵庫で冷やした無菌PDB25mlを50mlチューブに加える。
3)菌糸と胞子を含む寒天をメスで1枚から8枚に切り、50ml滅菌チューブに挿入する。
4)1分間振盪する。
5)すべての過程で胞子を氷上に置いておく。
6)新しい50ml滅菌チューブに液体を移し、約25mlを回収する。
7)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過し、菌糸を捨てる(約20mlを回収する)。
8)胞子濃度を計算し(20×10倍率で×10希釈をカウント)、記録する。
9)濃度は10~10胞子/mlとなるはずである。
【0216】
B.トマト植物の調製
1)Alternariaに感受性のトマトIkram/Brigade/Shani栽培品種を、一般的な温室用土壌混合物(土壌の構成:44%のピス(pith)、50%のココナッツ、6%の石英、長期肥料[オスモコート14:14:14]及びNPK肥料18:24:5 5kg/M)を用いた育苗トレーで試験の4週間前に発芽させた。実生の発芽と成長は、24℃の清浄なグロースチャンバー内で、12時間明期/12時間暗期で行われる。3~4週齢の実生(4本の本葉を有する)を実験に使用する。
2)実験に必要な植物を専用の実験トレーに移した。
3)各トマト植物上の2枚の葉を小さなプラスチックタグでラベルした。ラベルされた葉の最新の最大の3つの葉を、実験に使用した。
【0217】
C.処理へ適用(予防的アプローチ)
1)4週齢のトマト実生で、4本の本葉を有し、清潔で健康なものを、実験操作のために温室に移動させた。
2)接種48時間前(-2日目)に、実験計画に従って適切な処理を施した。
3)実験計画は、化合物3を含み、上記の濃度で適用した。化学的参照処理及び非処理植物もまた、実験に含めた。
4)製剤化された化合物3を、トマト葉が完全に排液されるまで(1ml/植物)、ハンドスプレーを使用して噴霧により植物に適用した。処理は、葉の上面及び下面に適用した。
5)接種の24時間前(-1日目)に、第2の処理を植物に適用した。
6)平均値、標準誤差の算出及び統計分析を行った。
【0218】
D.成長と分析
1)接種及び処理の後、植物を通常の温室条件に移し、季節に応じて必要に応じて、給水レジームで生育させた。
2)接種10~14日後に、ラベルした葉に病害が観察された。
3)ラベルした葉はそれぞれの処理から別々に採取され、病斑発生に関するデータを収集するために実験室に移した。
4)初期の立枯症状(Alternaria)は、感染斑点上に現れた黄褐色の斑点として観察された。ラベルされた各小葉上の腐敗の黄褐色直径を測定した。全体の小葉サイズも同様に測定した。
5)各ラベルされた小葉上の腐敗の黄褐色の直径及び疾患の重症度を、ラベルされた葉の総面積に対する腐敗面積の割合として推定した。
【0219】
製剤調製
試験例9の製剤の項の製剤2の調製を参照のこと。
【0220】
結果
実験はAlternariaに感染したトマト植物において行われ、そこでは化合物3のAlternaria solaniの予防及び防除の生物活性の可能性が推定された(図17参照)。
化合物3は、Alternaria感染を最大75.8%の有効性で防除した。
【0221】
試験例16.温室条件下でBotrytis cinereaに感染させたトマトにおけるインビボ実験による検証
A.Botrytis胞子懸濁液の調製
1)BotrytisのPDATブロックを小さなペトリPDATプレートの中央に置き、23℃で12日間増殖させる。蓋をしたプレートを逆さまにしておく(乾燥の影響を受け、胞子形成を促進する)。B.cinerea菌糸は、分生子がプレート全体にわたって成長した後、増殖し(白色-淡灰色)、接種物上の胞子を発達させる(灰色)はずである。
2)プレートを冷蔵庫で1時間冷やす。
3)1枚のプレートから菌糸と胞子をメスで寒天を8個に切断し、50mlの滅菌チューブに入れる。
4)冷凍冷蔵8X-PDB溶液25mlをチューブに加える。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)処理中は胞子を氷の上に置いておく。
7)新しい50ml滅菌チューブに液体を移す-約25mlが回収されるはずである。
8)16層のガーゼ布を通して胞子懸濁液を清潔な滅菌50mlチューブに直接濾過し、菌糸を廃棄する-約20mlが回収されるはずである。
9)胞子濃度(40×10倍率で計数×10希釈)を計算し、冷滅菌8×-PDB溶液で希釈して、2×10胞子/mlの原液を得る(希釈前の濃度は3×10個であると予想される)。
10)8×PDB溶液で希釈し、接種胞子懸濁溶液1×10胞子/mlを得る。
11)直ちにトマトの葉に感染させるか、4℃で最長1週間保管する。
【0222】
B.植物/苗の発芽条件
1)トマトIkram/Brigade/Shani栽培品種を、通常の温室用土壌混合物(土壌の構成は:44%ピス(Pith)、50%ココナッツ、6%石英、長期肥料[オスモコート14:14:14]及びNPK肥料18:24:5 5kg/M)を用いて育苗トレーで発芽させた。温度24℃、12時間明期/12時間暗期条件の清浄な栽培室で実生の発芽と成長を行う。4つの本葉を有する3~4週齢の実生を実験に使用した。
2)各処理に必要な植物を専用の実験トレーに移した。
3)各実生上の2枚の葉を小さなプラスチックタグでラベルした。最後の3つの小葉を実験に使用した。
【0223】
C.治療適用(予防的アプローチ)
4)4本の本葉を有する4週齢のトマト実生で、清潔で健康なものを、実験手順のために温室に移動させた。各植物の2つの成熟葉の最後の3つの葉をプラスチックタグでラベルした。
5)接種の48時間前(-2日目)に、実験計画に従って適切な濃度で製剤化した化合物3で植物を処理した。
6)化学的参照処理及び非処理植物もまた、実験に含めた。
7)製剤化された化合物3を、トマト葉(5ml/2植物)から完全に排液されるまで、ハンドスプレーを用いて植物に適用した。処理は、葉の上面及び下面に施された。
8)接種の24時間前(-1日目)に、2回目の噴霧を植物に適用した。
【0224】
D.接種適用
1)ラベルの付いた各小葉に、細いマーカーで黒い点をつける。
2)200μlのチップを使用し、葉を引き裂かないように、ラベルの付いた箇所の近くにやさしく小さな傷をつける。
3)治療的アプローチでは、接種を適用し、次いで接種後72時間後に、以下のMI処理を適用する:
a)ラベルされた各小葉上の黒点に、Botrytis cinerea 10μlを滴下する。液滴を組織に浸すために、30分間放置する。
b)ラベルされた植物を入れたトレーを、箱の底に水を貼った湿潤な箱に入れる。接種した植物を箱に入れて72時間放置する。
c)3日後、箱の蓋をゆっくり開き(半開)、箱と環境との間の湿度レベルの違いをゆっくりと均衡させる。湿度をバランスさせた後、植物のトレーを取り出し、処理を適用する。
【0225】
E.治療適用(治療的アプローチ)
1)接種72時間後に処理を行った。
2)製剤化された化合物3を、トマトの葉から完全に排液されるまで、ハンドスプレーを使用して植物に散布した。処理は、葉の上面及び下面に施された。
【0226】
F.生育及び分析
1)処理及び接種の後、植物を栽培テーブルに移動させ、通常の温室条件下、季節に応じて必要に応じて給水方式で維持した。
2)接種10~14日後に、ラベルした葉に病害が観察された。
3)ラベルした葉は、各処理から別々に回収され、各葉のサイズ及び腐敗サイズを測定するために実験室に移した。
4)灰色かび病(Botrytis)症状は、古い葉に観察され、緑色又は緑黄色の染みがあり、それが壊死に発展する。
5)各小葉の病変の直径及び小葉のサイズを測定した。
6)平均値、標準誤差の算出及び統計分析を行った。
【0227】
製剤調製
試験例9の製剤の項の製剤1及び2の調製を参照のこと。
【0228】
結果
Botrytisに感染したトマト植物を用いて2つの独立した実験を実施し、化合物3のBotrytis cinereaを予防及び防除する可能性が推測された(図18~19参照)。
化合物3はBotrytis感染を最大100%の有効性で防除した。
【0229】
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【国際調査報告】