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▶ エーエスティー アンド サイエンス エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】太陽エネルギーを追跡するシステム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/66 20060101AFI20230330BHJP
   B64G 1/44 20060101ALI20230330BHJP
   B64G 1/24 20060101ALI20230330BHJP
   B64G 1/28 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B64G1/66 C
B64G1/44 300
B64G1/24 400
B64G1/28 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547207
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021070148
(87)【国際公開番号】W WO2021232032
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】62/976,127
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517362118
【氏名又は名称】エーエスティー アンド サイエンス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AST & Science, LLC
【住所又は居所原語表記】100 SE 2nd St,Suite 3500 Miami, Florida 33131, U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ハルペリン アダム エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】セドウィック レイモンド
(57)【要約】
アンテナシステムは、地球の周りの低軌道(LEO)で用いられるために構成されている。このシステムは、フェーズドアレイを形成するように結合された複数のアンテナ衛星を有する。複数のアンテナ衛星の各々は、アンテナおよび太陽電池を有するアンテナ本体を有する。処理装置は、複数のアンテナ衛星の姿勢を決定し、アンテナ本体の太陽に面する太陽電池とアンテナ本体の地球に面するアンテナとの分析に基づく姿勢にフェーズドアレイを配置し、フェーズドアレイのトルク平衡を維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球周辺の低軌道(LEO)で用いられるために構成されたアンテナシステムであって、
フェーズドアレイを形成するために相互に連結された複数のアンテナ衛星であって、それぞれが、アンテナと太陽電池とを含むアンテナ本体を有する複数のアンテナ衛星と、
前記複数のアンテナ衛星の姿勢を決定し、前記アンテナ本体の太陽に面する前記太陽電池と前記アンテナ本体の地球に面する前記アンテナとの分析に基づき前記姿勢に前記フェーズドアレイを配置し、前記フェーズドアレイのトルク平衡を維持する処理装置とを有するアンテナシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記太陽電池で太陽から受ける太陽エネルギーを改善するために、前記姿勢を制御するフライトコンピュータをさらに有する、アンテナシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数のアンテナ衛星の前記トルク平衡を維持するために、前記複数のアンテナ衛星に対して回転運動を発生させるジャイロコンポーネントをさらに有する、アンテナシステム。
【請求項4】
請求項3において、
前記ジャイロコンポーネントは、モーメンタムホイールを含む、アンテナシステム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記ジャイロコンポーネントを制御するフライトコンピュータをさらに有する、アンテナシステム。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかにおいて、
前記回転運動は、ジャイロ効果を用いて重力勾配トルクに対する安定性を提供する、アンテナシステム。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記複数のアンテナ衛星の少なくとも1つに取り付けられた少なくとも1つのアクチュエータをさらに有し、前記アクチュエータは、前記複数のアンテナ衛星の回転運動を生成し、前記複数のアンテナ衛星の前記トルク平衡を維持する、アンテナシステム。
【請求項8】
請求項7において、
前記回転運動は、ジャイロ効果を用いて重力勾配トルクに対する安定性を提供する、アンテナシステム。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記アクチュエータを制御するフライトコンピュータをさらに有する、アンテナシステム。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかにおいて、
前記アクチュエータはトルクロッドを含む、アンテナシステム。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
アンテナアレイを形成するために相互に接続された複数のアンテナをさらに有する、アンテナシステム。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、
前記複数のアンテナ衛星に接続された制御衛星をさらに有し、前記制御衛星が前記処理装置を含む、アンテナシステム。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
前記処理装置は、地上局に配置されている、アンテナシステム。
【請求項14】
請求項1において、
ジャイロトルクを発生させるジャイロコンポーネントをさらに有し、前記処理装置は、前記ジャイロコンポーネントを制御し、前記複数のアンテナ衛星の前記トルク平衡を維持する、アンテナシステム。
【請求項15】
請求項14において、
前記ジャイロコンポーネントは、円筒対称のコンポーネントであり、
前記複数のアンテナ衛星に固定的に取り付けられたジャイロハウジングをさらに有し、前記ジャイロコンポーネントは、前記ハウジングに回転可能に取り付けられている、アンテナシステム。
【請求項16】
請求項14または15において、
前記ジャイロコンポーネントは、前記アンテナ本体に対して回転する、アンテナシステム。
【請求項17】
請求項14ないし16のずれかにおいて、
前記姿勢は、安定した姿勢から制御された角度だけオフセットされており、前記ジャイロコンポーネントは、前記トルク平衡を維持する、アンテナシステム。
【請求項18】
請求項14ないし17のいずれかにおいて、
前記姿勢は非安定であり、前記ジャイロコンポーネントは、前記複数のアンテナ衛星の安定性を維持する、アンテナシステム。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかにおいて、
前記姿勢は、地表に直交する方向からオフセットされた角度に前記アンテナを向ける、アンテナシステム。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかにおいて、
前記アンテナはアンテナ側に位置し、前記太陽電池は太陽側に位置し、前記太陽側は前記アンテナ側と反対側である、アンテナシステム。
【請求項21】
請求項20において、
前記太陽側は、複数の太陽電池を有する、アンテナシステム。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれかにおいて、
前記アンテナは、地球上の無線機器と通信する、アンテナシステム。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれかに記載のアンテナ装置に信号を送信することを有する通信方法。
【請求項24】
請求項1ないし23のいずれかに記載のアンテナシステムから信号を受信することを有する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年2月13日に出願された米国仮出願第62/976127号の優先権の利益を主張し、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
米国特許第9,973,266号および米国公開2019/0238216号は、多数の小型衛星アンテナアセンブリを宇宙で組み立てて大型アレイを形成するためのシステムを示している。‘266特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。‘266特許に開示されているように、図1(a)、1(b)は、複数の小型衛星10のアレイ300と中央または制御衛星200とを有する衛星通信システム100を示す。複数の小型衛星10は、地球上のフットプリント400内のエンドユーザ500と通信し、また制御衛星200と通信し、制御衛星200は、次に基地局におけるゲートウェイ600と通信する。複数の小型衛星10はそれぞれ、例えば、処理装置(例えば、プロセッサまたはコントローラ)および1つまたは複数のアンテナ要素を含むことができる。そして、制御衛星200は、処理装置と、1つまたは複数のアンテナまたはアンテナ素子とを含むことができる。このように、大型フラットフェーズアレイ300は、複数の衛星モジュール10によって構成される。
【0003】
Woodsの米国特許公開2016/0065006号は、太陽エネルギー変換および伝送システムおよび方法を示している。Woodsは、太陽電池を、太陽光を受けることができる向きにしているが、それがどのように達成されるのか、あるいはそれがどのような向きであるのかを示していない。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本開示の1つの目的は、一方の面に太陽電池を備え、反対側の面にアンテナを備えた、大型で平坦な宇宙で使用するための構造体を提供することである。本開示のさらなる目的は、このような構造体を、太陽電池側を太陽に向け、アンテナ側を地球に向けるような姿勢にする制御システムおよび方法とともに提供することである。本開示のさらなる目的は、その制御システムが重力勾配トルクをジャイロ的に安定化させることである。本開示のさらに別の目的は、重力勾配が大きく、推進システムのような他の手段によっても容易に克服することができないLEOで動作する、構造および制御システムに関するものである。本開示のさらに別の目的は、ジャイロトルクを使用して重力勾配トルクを打ち消す構造に関し、そうすることで太陽電池によって受信される太陽光が改善され、地上のユーザとのフェーズアレイによる通信を過度に妨げないようにすることである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1(a)】図1(a)は、大型のアレイを示したものである。
図1(b)】図1(b)は、大型のアレイを示したものである。
【0006】
図2図2は、宇宙空間で、衛星軌道を有する大型平面構造物を示す。
【0007】
図3(a)】図3(a)は、第1の安定した姿勢を示す。
【0008】
図3(b)】図3(b)は、第2の安定した姿勢を示す。
【0009】
図3(c)】図3(c)は、非安定な平衡姿勢を示す。
【0010】
図3(d)】図3(d)は、ジャイロスコープにより安定した姿勢を示す。
【0011】
図3(e)】図3(e)は、ジャイロスコープによる安定性がない姿勢を示す。
【0012】
図3(f)】図3(f)は、ジャイロスコープにより安定した姿勢におけるトルクと回転とを示す。
【0013】
図4(a)】図4(a)は、太陽の運動と高周波通信の円錐と非安定な平衡姿勢とを示す。
【0014】
図4(b)】図4(b)は、太陽の運動と高周波通信コーンとジャイロスコープにより安定した姿勢とを示す。
【0015】
図4(c)】図4(c)は、太陽の運動と高周波通信コーンと第1の安定した姿勢とを示す。
【0016】
図4(d)】図4(d)は、太陽の運動と高周波通信コーンと第2の安定した姿勢とを示す。
【0017】
図5図5は、アンテナアセンブリを示す。
【0018】
図6図6は、アンテナアセンブリのブロック図である。
【0019】
図7(a)】図7(a)は、制御衛星のブロック図である。
【0020】
図7(b)】図7(b)は、ジャイロコンポーネントのブロック図である。
【0021】
図8図8は、フローダイアグラムである。
図9図9は、フローダイアグラムである。
【詳細な説明】
【0022】
図面に図示された本開示の例示的、非限定的な実施形態を説明する際に、特定の用語が、明確化のために用いられる。しかしながら、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図しておらず、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様に動作するすべての技術的に同等なものを含むと解される。本開示においていくつかの実施形態は、例示の目的で記載されており、本開示は、図面に具体的に示されていない他の形態で具現化され得ることが理解される。
【0023】
図2に示すように、本開示は、地球を周る衛星軌道(オービットトラック、orbit track)402にある構造体100を含む。一実施形態では、構造体100は、データセンターまたは衛星などの宇宙飛行体、または‘266特許に示されるような大型アンテナまたは衛星アレイであってもよい。構造体100は、図5に示される衛星またはアンテナアセンブリ10のような小型構造体10を多数有し、それらは、相互に(一緒に)強固に接続されて単一のアレイを形成する。
【0024】
図5を参照すると、本開示は、例えば一実施形態では、地球を周回する宇宙飛行体10などのシステムである。一実施形態では、宇宙飛行体は、人工衛星やアンテナなどの構造体である。構造物10は、太陽から太陽エネルギーを受け取り、その構造物で使用するための太陽光発電を行う太陽電池パネルを有する。一例では、構造体10は、アンテナまたは複数のアンテナ素子18を含む通信層12と、剛性構造および電子部品を含む中間層(オプション)16と、1つまたは複数の太陽電池を含む太陽層14とを有するアンテナ本体11を備える。各層は、平らな長方形または正方形のパネルまたはタイルであり、全体の構造は、平らな長方形または正方形である。アンテナ本体11は、内部または内側の空間を有する。
【0025】
図6を参照すると、1つまたは複数のアンテナ構造体10は、処理装置20、フロントエンドモジュール(FEM)22、フライトコンピュータ24、1つまたは複数のセンサ26、1つまたは複数のフライトアクチュエータ28、ソーラーコレクタ、および外部システムへのリンクを含む多数の電子部品を含んでもよい。太陽収集器(ソーラーコレクタ)/電池は、太陽からエネルギーを生成する。太陽電池からの余剰電力によりバッテリーを充電してもよく、および/または、バッテリーが電子部品に電力を供給してもよい。各FEM22は、通信層12のそれぞれのアンテナに関連付けられており、信号を送信/受信する。処理装置20は、FEM22を介した信号の受信/送信を含め、これらの電子部品の全体的な動作を制御する。フライトコンピュータ24は、アンテナ構造体10の姿勢(方向、向き)および位置に関する信号を複数のセンサ26から受信する。受信したセンサ信号により、フライトコンピュータ24は、現在の姿勢および位置を決定し、アクチュエータ28に制御信号を送信してアンテナ構造体10の位置を適切に制御する。
【0026】
一実施形態では、制御衛星200は、すべてのセンサデータおよびアクチュエータにアクセスし、それらによりフェーズアレイ(位相アレイ)100の全体的な姿勢を制御する権限を有する。制御衛星のフライトコンピュータ(飛行コンピュータ)224は、全てのセンサデータを読み込み、全てのアクチュエータに命令する。各小型構造体10は、それ自身のセンサデータを読み込んで、フェーズアレイ100内の、それ自信の姿勢を修正しようとするだけである。さらに、FC24、センサ26、およびアクチュエータ28は、それぞれ、2020年2月13日に出願されたシリアル番号62/976107および62/976143の優先権を主張する、審査中の出願に、それぞれ開示されているように、アレイの平面性を確保するために利用することができ、それらの出願の内容全体は参照によりここに組み込まれるものとする。一実施形態では、制御衛星200は、アレイ100とは別れていてもよく、アレイ100に接続されていてもよい。
【0027】
フェーズアレイ(位相アレイ)100の姿勢(向き、方向)は、制御衛星200のフライトコンピュータ224によって制御される。このフライトコンピュータ224は、自身のセンサ群226および他の任意のセンサ26の読み取り値からセンサデータを受け入れ、フェーズアレイ100の姿勢を決定する。フェーズアレイ100の検出された所望の姿勢(望ましい姿勢、求められる姿勢)に基づいて、フライトコンピュータ224は、そのアクチュエータ228、および必要に応じて小型構造物10の複数のアクチュエータ28にコマンドを送り、フェーズアレイ100の姿勢を適切なものとする。一実施形態では、センサ26は、位置データを提供するGPSであってもよい。別の実施形態では、センサ26は、位置データが決定され得る加速度データを提供する、加速度計などのIMUであってもよい。
【0028】
図5に戻ると、通信層12は、ユーザデバイス(例えば、携帯電話)と通信するために、地球(直下、底)に面する複数のアンテナ素子を含む外向きの側面を有する。ソーラー層(太陽層)14は、複数の太陽電池を含む外向きの側面を有し、それらは、図6に示すように、複数の電子部品、例えば、処理装置20、アンテナ、アンテナフロントエンドモジュール22、フライトコンピュータ24、センサ26、およびアクチュエータ28によって使用するための太陽光発電を行う。ソーラー層14の外向きの表面(側面)は、通信層12の外向きの表面とは反対の方向(天頂)に向く。ソーラー層14の外向き側面は、アンテナ構造体10(および結合した構造体100)の上面15を形成し、通信層12の外向きの側面は、アンテナ構造体10(および結合した構造体100)の下面17を形成する。
【0029】
構造体100が地球を周回するとき、構造体のソーラー側は太陽に対して角度を持つ(傾く)ことになる。図4(b)に示されているように、偏角(θ)を適切に設定すると、構造体100の上面の太陽電池は、地球の周りの構造体100の軌道を通して、さらに良く太陽光に露出させることができる。このように、偏角は、構造体100の下面、さらに、それを広げたフェーズアレイ300の、地球のフットプリント400に対して指し示す位置(ポインティング)を制御する。
【0030】
各小型構造体10が強固に(剛体的に)接続されているため、構造体100の姿勢が個々の小型構造体10の姿勢を決定する。衛星軌道(軌道トラック)402は、ほぼ円形の軌道である。速度ベクトルは、構造体100の進行方向を単位ベクトルとする。天頂ベクトルは、宇宙飛行体を中心とし、地球の中心から遠ざかる方向を単位ベクトルとする。また、クロストラックベクトル(トラックに交差するベクトル)は、天頂ベクトルおよび速度ベクトルの双方に直交する方向を単位ベクトルとする。
【0031】
本開示の1つの目標は、3つの要因に基づいて制御された方法で構造体100の姿勢を制御することである。
【0032】
1.第1の要因は、構造体100がその上面15でできるだけ多くの太陽光を受け、その表面にある太陽電池を用いて電気に変換することである。ここでの最終的な目標は、所望の用途(アプリケーション)に依存する。上面15の法線ベクトルが衛星から太陽へのベクトルと平行であれば、その瞬間に可能な最大の太陽光を受けることができる。他の実施形態では、この最大限の太陽光を受ける条件は必要ではなく、一瞬の間だけ達成される。上面15の法線ベクトルが太陽に向いた方向に平行である状態から遠ざかるにつれて、受ける太陽光はより少なくなる。受光がどの程度少なくなるかは設計に依存し、どの程度の太陽光が必要かも設計に依存する。太陽光の十分な量を判断する基準は、衛星がオンの時にどれだけの電力を消費するか、また、どれだけの時間、衛星をオンとオフにすればよいかに依存する。
【0033】
この要因の1つの目標は(他の要因がない場合)、上面15の法線が衛星から太陽へのベクトルに常に平行であることである。この状態から外れると、得られる電力が単調に減少するため平行に近い方が得られる電力は常に高くなるので、平行に近い方が常に良い。しかしながら、衛星の消費電力要求が低い場合(オフ時や消費電力が少ない場合など)、衛星が太陽光の受光量を最大化しなくてもよい場合でも、このファクターを満たすことができる。
【0034】
2.第2の要因は、構造体100がその下面17をできるだけ地球の中心に向けることであり、これにより、フェーズアレイ300の複数のアンテナ素子が地球表面上のユーザ500の領域400に対し無線周波数信号(無線信号)を効果的に放射することができる。(他の2つの要因がない場合)1つの目標は、地球の中心に完全に向けることである。この完璧な姿勢(方向、向き)からの逸脱のコストは、設計に依存する。特に、指し示す方向の5°のずれに対し、指し示す方向の10°のずれは性能を悪化させ、180°(アンテナ側が宇宙を向いている)では機能しない。90°では、地上の一部のユーザとは通信可能であるが、少なくとも半数のユーザは通信が遮断されるため十分とは言えない。
【0035】
しかしながら、いくつかの例外があり、例えば、地上のユーザが均等に配置されている必要はないので、指し示す方向が地球の中心から遠ざかることが常に悪いとは限らない。すべてのユーザが衛星の北側にいるのであれば、アンテナを地球の中心に向けるのではなく、北に向けるのが有効であろう。地球の中心を指すというのは、一般的に適用できるルールである。
【0036】
3.第3の要因は、構造体100のアクティブコントロール(能動的制御)を最小にすることである。機械的に、衛星の姿勢を制御するにはトルクを発生させる作動システムが必要であり、宇宙では、そのような能動的制御を提供するのは面倒なことである。一つの目標は、衛星がトルク平衡状態にあるようにすることであり、これにより能動的制御を最小にできる。その結果、アクチュエータのコストと軌道上での消費電力を削減することができる。トルク平衡は、例えば、ジャイロスコープ(ジャイロ)による安定化によって実現できる。
【0037】
第3の要因をより深く理解するためには、機械的な制御から類推することがよいであろう。直立のホウキの柄を下から支える場合(倒立振子)は、非常に正確に直立していれば最小限の入力制御で済むが、逸脱すると直立を維持するために多大な労力を必要とする。水平なホウキの柄を一方の端で支持する場合は倒れないようにするために非常に大きな反トルクを必要とする、というのは、重力が常に倒れるよう力を加えるからである。この非常に大きなトルクは、ホウキの柄の制御が正確であっても不正確であっても必要となる。一方、上から吊るされたホウキの柄は、重力が自然にその状態(位置)を保とうとするために制御力はほとんど必要ない。
【0038】
星追尾装置(スタートラッカー)のような利用可能な技術により構造体100について高い精度で姿勢に関する情報を得ることができるので、安定した姿勢(上から吊るされたホウキの柄のように)(図3(a))であっても、非安定(不安定)な平衡姿勢(平衡状態)(直立のホウキの柄を下から保持したように)(図3(b))であっても、要因3を満たすようにすることができる。任意の非平衡な姿勢(例えば、図3(c))では、(水平なホウキの柄を一端で支持するように)一定の補正トルクを必要とし、通常、一定のトルクは、空間(宇宙空間)で動かす(動作させる)という環境では提供するのが難しい。この環境において、例外的にジャイロスコピックトルク(ジャイロトルク)を得ること(ジャイロによりトルクを得ること)は可能であるが、本質的に限界がある。ジャイロトルクは垂直な回転軸によって発生するため、すべてのケースに普遍的に適用できるわけではない。例えば、慣性的に安定した物体(太陽や星に対して回転していないもの)は、回転していないため、ジャイロトルクを発生させることができない。
【0039】
構造体100に対し最終的なトルク(実質的なトルク、正味のトルク、ネットトルク)が作用していないければ、平衡な(均衡な、つり合いの取れた)姿勢となる。しかしながら、ジャイロスコープトルク(ジャイロトルク)を使用することにより、特定の非平衡な姿勢(構造体にネットトルクが作用している姿勢(向き、方向))を平衡にすることができる。ジャイロトルクが外部トルク(例えば、重力勾配)を正確に打ち消すならば、構造体にかかる正味のトルク(ネットトルク)をゼロにすることができる。ジャイロトルクを用いることで平衡な状態(構造体に作用するネットトルクがゼロの状態)にすることができる姿勢の部類を、ジャイロにより安定した姿勢と称する(として参照する)。
【0040】
図3(e)は、重力勾配トルクをジャイロトルクで打ち消すことができない姿勢を示す。図3(e)の姿勢は、図3(a)に示した姿勢と同様であるが、衛星がクロストラックベクトル(軌道と交差するベクトル)の周りに回転している。図3(a)は安定した姿勢(ホウキの柄を上から吊るしたような)であるのに対し、図3(e)は非安定な姿勢(ホウキの柄をその一端で支持したような)になる。この非安定な姿勢を維持するためには、外部トルク(重力勾配)を常に打ち消す必要がある。しかしながら、重力勾配トルクと軌道運動とはともに軌道と交差するベクトルの周りに作用するものであるため、この目的にジャイロトルクを用いることはできない(ジャイロトルクは常に回転軸に垂直な方向である)。
【0041】
図3(f)に示した姿勢では、重力勾配トルクと、平坦な本体に対し、自然に発生するジャイロトルクとが速度ベクトルの周りに存在する。ジャイロトルクを意図的に制御しなければ、構造体100は(ホウキの柄を一端で保持したように)位置がずれててしまうことになる。ジャイロトルクを意図的に操作することで、重力勾配トルクを正確に打ち消し、構造体100を平衡にすることができる。ジャイロトルクを意図的に操作するには、2つの手段がある。
1)構造体100を回転させて回転運動をさらに発生させ、重力勾配トルクを打ち消すようにネットジャイロトルクを変化させる。
2)内部部品を回転させることで回転運動をさらに発生させ、ネットジャイロトルクを変化させて重力勾配トルクを打ち消す。
【0042】
いずれの場合も、構造体100の姿勢が正確に分かっている場合には、構造体100を平衡状態にすることで、容易に制御することができる。このバランスは、図3(f)に示す角度θに関係なく達成することができ、0°から360°の間で異なる角度θを持つ無限の姿勢を維持できる。これらのジャイロにより安定した姿勢は、構造体100の軌道に対する太陽の方位に応じて、ジャイロスコープを安定化のために用いなくてもよい安定な状態(図3(a)~(b))および非安定な平衡姿勢(図3(c))よりも、要因1~3を満たすことができる。
宇宙空間における大きな平面構造体の姿勢
【0043】
構造体100の用途(アプリケーション)は、地球の表面との無線周波数通信(無線通信)を要するものである。これは、要因2の定義の基礎であり、構造体100が衛星軌道(オービットトラック)402(図2)により地球を周回するときに、軌道に沿って回転するとともに、その下面17が地球400の表面を指し示すようにその姿勢を変えなければならないことを意味する。このため、地球400上の通信のためのフットプリント(無線の到達範囲、到達領域)を構造体100に対して同じ位置に保ち、構造体100の姿勢を記述するために最も適した状態となるように回転基準座標系を作成する。回転基準座標系は、速度ベクトル(構造物100の進行方向)、天頂ベクトル(地球の中心から構造物100の中心を通るベクトル)、クロストラックベクトル(軌道と交差するベクトル、速度ベクトルおよび天頂ベクトルに直交するベクトル)に基づいており、図3(a)~(f)および図4(a)、(b)で使用されるものである。回転基準座標系により、どの姿勢(方位)が要因1~3を満足するかを決定することができる。
【0044】
図3(a)、図4(c)に示す第1の安定した姿勢では、構造体100の下面17の法線は、速度ベクトル(または、等価な鏡面方向の、速度ベクトルとは逆)の方向である。それは下面が地球のフットプリント400から90°の方向を指している(すなわち、下面17がページの中に向いている)ことを意味し、要因2(下側の通信側表面17が地球を向いている)の条件は満たされない。
【0045】
基準座標の天頂、速度、クロストラック中の太陽は、1周ごとに円錐パターンを描く。この円錐の半角(α)は、ベータ角によって決定される。ベータ角は軌道と太陽の地球に対する位置とにより決まり、ベータ角は天頂ベクトルと太陽ベクトル(衛星から太陽の中心を指すベクトル)の間の最接近角である。軌道の選択は他の要因(衛星が地球のどの領域を周回するかなど)により行われるため、ベータ角は制御可能な変数とは考えられない。
【0046】
ベータ角が小さいときの太陽の見かけ上の運動は、広い円錐形で、速度、直下、逆速度、天頂ベクトルの近くを、軌道ごとに繰り返しながら通過する。図3(a)に示す第一の安定な姿勢に関して次のような結論を得ることができる。太陽が、逆速度ベクトル(または等価な鏡面の方向の速度ベクトル)の近くにあるとき、上面15は、1つの軌道に1回、大量の太陽光を浴びることになる。ベータ角が大きい場合、太陽の見かけ上の運動は狭い円錐パターンになり、上面15に垂直なクロストラックベクトルに近い位置に留まることになる。この場合、上面にはほとんど太陽光が届かなくなる。ベータ角の大きな軌道の場合、要因1は満たされない。これは、制御の必要がほとんどない安定な姿勢であるため、要因3は明らかに満たされている(ホウキの柄を上から吊り下げるようなもの)。
【0047】
図3(b)に示す第2の安定姿勢では、下面の法線がクロストラックベクトル(または、等価な鏡面方向の逆クロストラックベクトル)と一致する。これは、(第1の安定姿勢と同様に)下面17が地球のフットプリント400から90°を向いており、要因2(下側の通信側表面17が地球を向いている)を満たさないことを意味している。図4(d)に示すように、上面15の法線は、逆クロストラックベクトル(または、等価な鏡面方向のクロストラックベクトル)と一致する(一直線上にある)。これは、ベータ角が小さい場合は、太陽は上面15に垂直となり、太陽光はほとんど太陽電池に到達しないことを意味する。ベータ角が大きい場合は、太陽は上面の法線と一直線上にあり、太陽光を豊富に受けることができる。ベータ角が小さい軌道では、要因1を満たさない。要因3は明らかに満たされる、というのは、制御の必要がほとんどない安定した姿勢(ホウキの柄を上から吊り下げるようなもの)であるためである。
【0048】
図3(c)に示す非安定(不安定)な平衡姿勢では、下面17の法線が地球のフットプリント(通信対象領域)400を直に指し示しており要因2を満たしている(すなわち、下部の通信側の表面17が地球を向いている)。このままの姿勢では重力勾配トルクは発生しないが、この点(状態、姿勢)から外れると、構造体100をこの位置から引き離すような重力勾配トルクが発生する。すなわち、構造物100が図示のままの姿勢であれば、構造物の各部分は地球の中心からほぼ等距離にあり、重力は表面全体に等しく作用する。構造体100がこの位置(姿勢)からずれると、その構造体の一部が地球に近づき、他の部分が遠ざかることになる。重力は地球の中心からの距離の二乗で作用するので、構造物の近い部分は遠い部分よりも大きな重力の引力に晒されることになる。この重力のかかり方に差があるとトルクが発生し、構造物が回転することになる。この挙動が、この姿勢を非安定な平衡点としている。
【0049】
構造体100を正確にアクティブ制御(能動制御)することにより、構造体100の姿勢を、トルクを常に加えなくても維持することができ、要因3(すなわち、能動制御を最小にする)を満足する。図4(a)に見られるように、見かけ上の太陽の動き、さらに、構造体100の上面が受ける太陽光の範囲もベータ角(β)の関数である。ベータ角が小さい場合、要因1(すなわち、上部の太陽側表面15が太陽を向く)を満たすことができるが、ベータ角が大きくなり90°に近づくと要因1を満たさなくなる。
【0050】
図3(d)に、ジャイロにより安定した姿勢を示しており、構造体100は、図3(c)の姿勢から制御された角度(θ)だけ偏位している。無線信号を形成するフェーズアレイ300の仕様上の制限より、この偏差角(θ)が小さい場合、偏差があっても要因2(すなわち、下部の通信側表面17が地球を向く)を満たすことができる。
【0051】
図4(b)に、ベータ角が大きいときに、構造体100の上面15の太陽光への露出を改善した、偏差の状態を示しており、要因1をよりよく満足させている(もちろん、ベータに対する偏差角の最良の関係は、θがベータに等しい場合である)。しかしながら、図3(f)に示すように、重力勾配トルク(τ∇gravity)が、構造体100の姿勢に起因して発生する。この重力勾配トルクは、速度ベクトルの周りに発生し、構造物100を回転させることになり、図3(b)に示す姿勢に引き戻される。速度ベクトルは、人工衛星100の軌道回転に対して垂直であるため、ジャイロトルク(ジャイロスコピックトルク、τgyroscopic)を用いて重力勾配トルクを打ち消すことが可能である。ジャイロトルクを用いることで、構造体100の姿勢制御系に煩雑な要求をすることなく重力勾配を打ち消すことができるので、要因3(すなわち、アクティブ制御を最小にする)を満たすことができる。
【0052】
このような構造体の公転を利用するジャイロトルクは、理想的には、いかなる入力(電力、制御など)もなしに永久に発生し続けることができる。実際には、ジャイロトルクは内部摩擦などの影響を受けながらも回転数(回転率)を維持するために、ある程度のメンテナンスが必要である。このメンテナンスは、宇宙で一定のトルクを発生させるための既存の代替手段(電気推進、化学推進、電磁トルクなど)を採用するコストと比較すると僅かであり、これらはLEO軌道の大型構造物では実際的ではない。
【0053】
図3(e)に示したジャイロによる安定化なしの姿勢では、クロストラックベクトルの周りに重力勾配が発生し、クロストラックベクトルが回転軸となる。ジャイロトルクは回転に対して垂直にしか発生しないので、クロストラックベクトルを中心とした回転では、クロストラックベクトルを中心としたジャイロトルクを発生させることができない。この場合、ジャイロトルクはシステムを安定化させることができず、要因3(アクティブ制御の最小化)は満たされない。
宇宙空間における大型平面構造体の制御
【0054】
宇宙における大型平面構造体(構造物)100の制御には、構造体100がそれ自身の向き(方向)を測定するプロセスである姿勢を決定することが要求される。図7(a)に示すように、制御衛星200は、構造物100の姿勢(方向)を決定するために使用される単一のセンサまたは複数のセンサ群(センサースイート)226(例えば、星追跡器、太陽センサ、慣性測定ユニット)を有してもよい。この姿勢の情報は、フライトコンピュータ224によって解釈され、フライトコンピュータ224は、アクチュエータまたはアクチュエータ群(アクチュエータスイート)228(例えば、トルクロッド、リアクションホイール、モーメンタムホイール(運動量ホイール))に対してコマンド信号を出力し、必要に応じて、回転運動を増加、減少、または除去する。一実施形態では、飛行制御装置(フライトコントローラ)224は、プロセッサまたはコントローラなどの処理装置である。飛行制御装置224は、処理装置220として異なる構成要素として示されているが、飛行制御装置224は、処理装置220と組み合わせたものであってもよい。
【0055】
先に説明したように、安定した姿勢(方向、向き)を保持するためには、構造体(構造物)100がそれらの姿勢に向かって自然に引き寄せられるので、最小限の制御を行うだけでよい。しかしながら、構造体100の安定した姿勢では、要因2(すなわち、下部の通信側表面17が地球を向いていること)を満たすことができない。ジャイロ安定化なしの非安定な姿勢は常にトルクを必要とし、アクチュエータシステムへの要求が過剰となり、要因3(アクティブ制御を最小にする)を満たすことができない。図3(c)に示す非安定の平衡姿勢または図3(d)に示すジャイロにより安定した姿勢により、全ての要因1~3を満たすことができるかもしれない。ジャイロにより安定した姿勢では、重力勾配トルクと、その相殺(カウンタバランス)に必要なジャイロトルクを定義することが不可欠である。
【0056】
重力勾配トルク(グラビティグラディエントトルク、gravity gradient torque)は、構造体全体にかかる不均衡な重力の結果であり、以下の式で計算される。係数αは軌道の半主軸(主軸(長軸)の半分)である。μは地球の標準重力パラメータ、ベクトルerは構造体の質量中心から地球の中心へ向けた単位ベクトル、そして、Iは構造体100の慣性行列である。
【0057】
重力勾配トルクの式からわかるように、重力勾配の大きさは半主軸の3乗で増減する。つまり、地球の中心から約7,000kmの距離(半主軸)にある低軌道(LEO)の構造体は、地球の中心から約42,164kmの距離(半主軸)にある静止軌道(GEO)の構造体に比べて約200倍の重力勾配トルクを発生させることになる。
【0058】
ジャイロトルクは、1つの物体に2つの回転軸が同時にあることで発生する。ジャイロ安定化がない場合、図3(f)に示すような姿勢に置かれると、大きな平面構造体は、自然にある程度のジャイロトルクを示すことになる。しかしながら、このジャイロトルクが重力勾配トルクを自然に打ち消すためには、非常に特殊な構造形状に限られる。一般に、重力勾配に対抗する(重力勾配と平衡させる)ジャイロトルクを発生させるためには、第2の回転軸に対するアクティブ制御(能動的な制御)が必要である。
【0059】
構造体100がその法線ベクトルに対して対称である場合、法線ベクトルの周り(を中心)に回転することができ、図3(d)、図7(b)に示すジャイロにより安定した姿勢を維持できる。このようなタイプの回転(ωX)(フリスビーのような回転)は、重力勾配に対抗することができるジャイロトルクを生成する第1の手段である。構造体100がジャイロトルクを発生させる第2の手段は、法線ベクトルの周りの(を中心とした)内部成分(例えば、モーメンタムホイール(運動量ホイール))の回転(ωwheel)により、構造体100が法線ベクトルに対して対称であるか否かに関わらず、ジャイロによる構造体100の安定化を可能にすることである。回転(ωX)(ωwheel)は、1分間に数千回転することであってもよい。
【0060】
図7(b)および図3(d-f)に示すように、両方の例(フェーズアレイ全体が回転する(ジャイロホイールがない)場合、およびジャイロ成分(ジャイロスコープ部品)が回転する(フェーズアレイは回転しない)場合)では、構造体はx軸およびy軸に関するスピン成分(図示)を有し、それらは以下の式で定義される。ホイール(第2の実施例における)は、同じく示されているx軸を中心に回転するが、フェーズアレイ300および制御衛星200全体は、回転座標内で静止している(静止状態である)(すなわち、地球を周回する際、その軌道を通して図4(b)に示す姿勢を維持するように(軌道ごとに1回)回転する)。自転するのはジャイロ成分であり、制御衛星の中だけである。
【0061】
構造体100のジャイロ安定化の第1の手段は、特定の組み合わせの構造体100を回転(所定の回転速度)させることによるものである。図3(f)でわかるように、速度ベクトル、天頂ベクトル、およびクロストラックベクトルによって定義される回転基準座標系において、構造体100は、慣性回転軸に対する傾き(θ)に影響を与えることなく、その法線ベクトルを中心に回転(フリスビーのように)することができる。この基準座標全体も、構造体100の軌道運動によって動かされ、軌道ごとに1回、地球の周りを構造体100とともに回転する。これら2つの回転の組み合わせで、制御されたジャイロトルクを発生させることができる。基準座標の回転は、軌道の挙動によって行われ、必ずしも制御することはできないが、その法線ベクトルの周りに回転する構造体の回転は直に制御することができ、ネットジャイロトルク(正味、実際のジャイロトルク)が重力勾配トルクと相殺し、回転基準座標系の中において構造体100の平衡を作り出すことが可能である。重力勾配トルクおよびジャイロスコープトルクは、慣性基準座標系では釣り合わないことに留意すべきである。
【0062】
天頂ベクトルと法線ベクトルのなす角度をθと定義する。x軸は上面の法線ベクトルと共線になるように定義される。z軸は、速度ベクトルと一直線上にあるものと定義する。y軸は、右手の法則を用いてx軸およびz軸に対し直交するように定義する。
【0063】
この制御の第1の例では、構造体100の回転が重力勾配トルクと相殺するジャイロトルクを生成し、法線ベクトルの周りの(を中心とした)構造体の回転は(ωX)であり、以下の式で定義される。Ix、Iy、そしてIZは、それぞれx、y、z方向の構造体の慣性モーメントである。ωorbitは軌道上の回転速度である。ωx、ωy、そしてωZは宇宙の構造体のx、y、z軸周りの回転速度である。この式は、以下の場合にのみ有効である。Iy=IZ=Ix/2、これは、z軸の周り(z軸中心)に対称な大きな平面構造物の特性である。
【0064】
構造体100全体の回転は、その法線ベクトルを中心とするフリスビーのようなスピンを除いて、図3(d)に示される回転基準座標系において安定したままである。これらの方程式が単純であることは些細なことではなく、重力勾配、軌道力学、ジャイロ歳差運動がすべて地球の標準重力パラメータ(μ)、軌道の半主軸(α)、および構造体の慣性モーメント(Ix、Iy、IZ)の関数であることの結果である。
【0065】
したがって、このジャイロにより安定している第1の例では、ジャイロ部品229は存在しない。その代わりに、磁気トルクロッド(228の一例)がフェーズアレイにトルクを与え、フェーズアレイ全体が回転する。
【0066】
ジャイロにより安定している第2の例は、構造体100自体の回転の代わりに、構造体100に内蔵された運動量ホイール229を使用する。この例では、構造体100は、図3(d)に示される回転基準座標において完全に静止したままである。運動量ホイールの回転と構造体100の軌道回転の組み合わせが、重力勾配トルクを相殺するために能動的に制御することができるジャイロトルクを生成する。回転基準座標では静止しているが、構造体100は、その形状によっては、それ自体のジャイロトルクを自然に発生させてもよいことに留意されたい。
【0067】
制御の第2の例では、その法線ベクトルを中心とした構造体100全体の回転は、同じ軸を中心とした内部成分(内部部品、内部構成要素)の回転に置き換えられる。衛星構造体の内部のモーメンタムホイール229は回転し、機能的に等価なジャイロトルクを発生させる。モーメンタムホイールが必要とする角運動量(Lwheel)と、使用する回転速度(回転数)は以下の式で決定される。
【0068】
このジャイロにより安定する(ジャイロ安定化の)第2の例は、回転基準座標で、構造物全体を完全に静止させる(フリスビーのようなスピンもしない)ことを可能にし、IZ≠Iyの非対称構造100であってもジャイロにより安定した姿勢の保持を可能にするものである。
【0069】
図4(a)、(b)に示すように、ジャイロにより安定した姿勢では、構造体100の上面をより良く太陽に晒すことができるが、偏向角(θ)は、構造体100の下面を地球のフットプリント400の方に向けるという要件によって制限される。ベータ角(β)の角度オフセットがゼロでない場合は、構造体100の上面において太陽電池により生成される電力は予測された通りに増加させることができるが、フェーズアレイ300の地球フットプリント400との無線通信は非線形な設計仕様通りに劣化することになる。
【0070】
この第2の例の一実施形態では、制御衛星200は、構造体100の平衡を確立し維持するジャイロ力を生成するために使用されるジャイロコンポーネント(ジャイロ部品、ジャイロ成分)229を含む。ジャイロコンポーネント229は、ジャイロコンポーネント229の動作を制御するフライトコンピュータ224および/またはプロセッサ220に接続される。一実施形態では、ジャイロコンポーネント229は、モーメンタムホイールとすることができ、フライトコンピュータ224および/またはプロセッサ220は、ジャイロコンポーネント229がオンおよびオフし、また、所望の速度(回転数)で回転するように制御する。ジャイロコンポーネント229は、制御衛星200の内部に配置され得る。一実施形態では、制御衛星200は、フェーズアレイ300のほぼ中央に配置され、フェーズアレイ300に固定的に取り付けられる。モーメンタムホイールは、制御衛星200の内部で制御衛星のハウジング(筐体)に対して回転する。
【0071】
例えば、モーメンタムホイールは、制御衛星200のハウジングに歯車によって回転可能に取り付けられる車軸を中心に回転することができる。したがって、制御衛星200のハウジングは、フェーズアレイ300に対して回転しないが、モーメンタムホイールは、ハウジングに対して回転する。しかしながら、フェーズアレイ300全体は、それが軌道を周回する間、地球に対して静止したままである(ただし、同じ姿勢を維持するために回転する(図3(d)))。ジャイロコンポーネント229は、磁気トルクロッド(228の一部)により提供されるカウンタートルクに対しゆっくりと(数時間から数日まで)回転する。別の実施形態では、モーメンタムホイールは、制御衛星ハウジングの内部にある必要はなく、フェーズドアレイ300の中心などにおいて、フェーズドアレイ300に固定的に取り付けられる独自のハウジングを有することができ、または、共通の衛星構造10のうちの1つまたはそれ以上の内部にあってもよい。
アプリケーション
【0072】
宇宙船の姿勢制御(特に大規模な場合)は、リアクションホイールシステム(RWS)および/または制御モーメントジャイロ(CMG)を用いて頻繁に行われるが、電気推進、化学推進、またh電磁トルカを用いて制御することも可能である。RWSは姿勢制御のためのアクチュエータとして使用できるが、永続的に一定のトルクを提供するように命令されると飽和する。飽和とは、アクチュエータがある方向にできる限りのトルクを発生し、それを超えるとその方向のトルクを提供できなくなる状態のことである。CMGはRWSと同じように飽和による制限を受け、推進システムは有限な燃料源による制限を受ける。電磁トルカは本質的な制限はないが、大きなトルクを発生させるためには大きな装置が必要であり、地球の磁場の方向によって許される場所以外ではトルクを発生することができない。
【0073】
LEOにある大型構造体では、一定の重力勾配トルクに対抗するため(拮抗するため、平衡をとるため)に、煩雑な推進システムや電磁トルクシステムを用いるか、あるいは前述のようなジャイロによる安定化を用いることができる。GEO衛星の場合、LEO衛星とでは軌道により半主軸が異なるため、重力勾配トルクによる負担が大幅に軽減される(200分の1)。このため、GEO衛星は、重力勾配トルクを相殺するトルクを常に印加できるような代替手段(例えば、推進システム)を追求することができる。しかしながら、これらの代替手段は、LEOの構造体に影響を与える重力勾配トルクの増加を打ち消すための十分な力を提供できないので、LEOでの使用には適していない。
【0074】
本開示の一実施形態では、アクチュエータ群とセンサ群とが制御衛星200に存在する(図1(a))。図7に示すように、制御衛星200は、処理装置220、フライトコンピュータ224、1つまたは複数のセンサ226、および1つまたは複数のアクチュエータ228を含む。制御アクチュエータ228は、例えば、リアクションホイール、モーメンタムホイール、及び電磁トルクロッドなどを含むことができる。制御センサ226は、例えば、星追跡装置、太陽センサ、慣性測定ユニット、およびグローバル・ポジション・システム・ユニットを含むことができる。
【0075】
衛星構造物10(図5図6)において、1つまたは複数の構造体アクチュエータ28は、例えば、電磁トルクロッドを含み、1つまたは複数の構造体センサ26は、例えば、慣性測定ユニットおよびグローバルポジションシステムユニットを含む。
【0076】
制御衛星200と小型衛星10との集合的な協調制御の主たるものは、構造物100全体の姿勢と回転速度を制御するために使用される。制御衛星200内のモーメンタムホイールは構造物100の法線ベクトルを中心に所定の速度で回転され、構造物100の軌道上の回転と組み合わされて、構造物100を平衡状態にする。ジャイロトルクは、モーメンタムホイールの運動量状態と軌道上の回転とによって発生する。この発生したジャイロトルクは、重力勾配のネットトルクと構造物の自然なジャイロトルクとを打ち消さなければならない。
【0077】
ωは構造体の回転であり、Iwheelはホイールの慣性モーメント(アクチュエータがどれだけ大きいかを示す)、ωwheelは前記ホイールの回転数(この場合、特定の回転数で保持される)、そしてLwheelはホイールの角運動量(慣性モーメントにホイールの回転速度をかけたもの)である。
【0078】
構造物の自然なジャイロトルクは、オイラーの剛体方程式で定義される。
【0079】
重力勾配トルクはあらかじめ定義される。
【0080】
200からのリアクションホイールとトルクロッドとは、構造物の微調整に使用される。所望の姿勢(予定の姿勢)からの小さな偏差は、これらのシステムを用いて修正される。センサー群200(星追跡装置、太陽センサ、IMU(加速度計)、およびGPS)は、構造物の姿勢(向き)と位置とを決定するために使用される。これらのセンサは、構造物100が所望の姿勢(方向)から逸脱(変位)しているかどうかを判断する。衛星10のセンサ群は、制御衛星200に対するフェーズアレイの形状および向きを決定する。
【0081】
一実施形態では、各衛星10に2つのセンサ(1つのIMUと、1つのGPS)、および0~2つのトルクロッドがある。センサ26およびアクチュエータ18は、モード解析に基づいて、構造の振動モードを最もよく打ち消すように分布させることができる。
【0082】
フライトコンピュータ(FC)224は、構造物全体の姿勢を制御する役割を担っている。それは、それら複数のセンサ226からすべてのセンサデータを直接受信し、そのアクチュエータ228に命令することができる。また、それ(224)は、各共通衛星10から処理されたセンサデータを受信し、間接的にアクチュエータ28に命令することができる(FC224がFC24に命令を送り、FC24がその命令をアクチュエータ28に渡す)。このように、各アクチュエータ28は、アクチュエータ228の延長であるかのように動作する。FC224は、構造物の姿勢が所望から逸脱しているかどうかを判断し、姿勢を修正するために、いずれか、またはすべてのアクチュエータに命令することができる。
【0083】
アクチュエータ群228に含まれるホイール(リアクションおよびモーメンタム(反力と運動量))は、それらの回転速度を変えることで構造体を制御することができる。ホイールは、抵抗を最小限に抑え、制御性を向上させるために、理想的には低い回転速度に保たれるが、高い速度で回転させることもでき、したがって、大きな運動量を保持することも可能であり、それによりジャイロトルクを(ジャイロコンポーネント229が用いる原理により)発生させることができる。この目的のために設計されたホイールはモーメンタムホイール(運動量ホイール)と称され、それは高速回転することによって高い運動量状態を保持するからである。200は構造体100に剛体的に取り付けられているので、回転するモーメンタムホイールは、軌道運動と組み合わせて、200内にトルクを発生させ、(剛体接続により)構造体100全体に対する重力勾配を打ち消すことができる。フライトコンピュータ224は、保持すべき所望の角度θを決定する必要があり、その角度(所定のジャイロおよび重力勾配のトルクに対し)に必要な回転速度を決定し、次に、ジャイロコンポーネント229として機能する(複数の)モーメンタムホイールに、その速度で回転するよう命令する。
【0084】
したがって、受動的な目的とは、一定のジャイロトルクで重力勾配を打ち消すことである。衛星を回転させたり、モーメンタムホイールを回転させ、構造体の角度θが変わるまで回転を継続させることが可能である。能動的な目的は、望ましい姿勢を維持することであり、そのためには、常に姿勢を感知し、アクチュエータにより姿勢を微調整する必要がある。
【0085】
図8は、姿勢(方向)50を維持する過程(「アクティブ」タスク、能動的な役割)を示すフローチャートである。ステップ52では、すべてのセンサデータがFC224に供給され、ステップ53ではFC224が、姿勢(オリエンテーション)がオフセットされているかを判断し、オフセットされている場合、ステップ54で、FC224が、任意のまたはすべてのアクチュエータのためのコマンドを生成し、ステップ56においてアクチュエータ228はそれらのコマンドを実行する。さらにFC24はコマンドを中継し、ステップ57において、アクチュエータ28がそれらのコマンドを実行できるようにする。
【0086】
図9は、ジャイロトルク70が生成される過程を示すフローチャートである。ステップ72において、FC224は、所望の角度(予定の角度、要求された角度)θを決定し(ベータ角度と、地上制御から送られてくるであろう入力コマンドに基づいて)、ステップ74で、そのときの重力勾配を決定し、それに対し必要なジャイロトルクを決定する。ステップ76で、FC224は次に、アクチュエータにコマンドを送り、ステップ78において、正しい姿勢に回転運動(構造体の全体または1つまたは複数のモーメンタムホイール(複数可)のいずれか)を生成する。
【0087】
残りのアクチュエータおよびセンサは、図3(d)に示されるジャイロにより安定した姿勢における構造体の正確な姿勢(方向)を確保するために使用される。制御衛星200および/または小型衛星10上の制御センサ226、26によって測定された情報に基づいて、フライトコンピュータ224、24は、構造体100の現在の測定された姿勢に対し、それらの関連するアクチュエータ228、28にコマンドを提供することが可能である。これらのコマンドは、アクチュエータ228、28によって実行され、構造体100を、その現在の姿勢から所望の姿勢(予期された姿勢、予定の姿勢)に移行させることができる実際のトルクを構造体100上に対し生成する。この状況により、LEO衛星は、構造体100全体のジャイロ的に安定化された姿勢を継続的に維持することができる。
【0088】
示される実施形態において、複数の小型衛星10および/または中央衛星200は、本開示のシステムおよび方法に従って様々な機能および動作を実行するための処理装置を含んでもよく、例えば、処理装置20、220および飛行コンピュータ24、224を含んでもよい。処理装置は、例えば、コンピューティングデバイス、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはコントローラであってもよい。処理装置は、例えば、有線または無線通信リンク、および/または、アナログ若しくはデジタルメモリ若しくはデータベースなどの1つまたは複数の記憶装置を含む多種多様な構成要素またはサブシステムのうちの1つまたは複数を備えてもよい。このシステムおよび方法において用いられる、システム、プロセス、および/またはデータの全てまたは一部は、記憶装置上に記憶されるか、または記憶装置から読み出されてもよい。処理デバイスは、記憶デバイスに格納され得るソフトウェアを実行することができる。他に示されない限り、プロセスは、好ましくは、プロセッサによって実質的にリアルタイムで遅れなく自動的に実施される。
【0089】
したがって、このシステムは、感知されたデータを評価し、飛行パターンを生成し、アクチュエータを動作させてその飛行パターン(フライトパターン)を実施する。フラットフェーズドアンテナアレイ300を配置する(向きを決める)ための3つの主要な姿勢がある。図3(a)および図3(b)に示される最初の2つは安定しているが、底面(アンテナ)は地球から90°離れて向けるので、それらは良い選択肢ではない。第3は、図3(c)に示されており、非安定(不安定)であり、フェーズドアレイ300のような、従来の一番下側を飛行する衛星のデフォルトの位置である。
【0090】
本開示では、フェーズドアレイ300を図3(d)および図4(b)に示すような姿勢に維持する。この姿勢は、β=0°の場合を除き、全ての場合において、太陽電池層14の表面で発生する電力を増加させることができる。オフセット角θが比較的小さければ、RF(無線通信)の観点から許容可能であり、すなわち、フェーズドアレイの通信層12上のアンテナから地球との間で信頼性の高い通信を提供することができる。いかなるオフセットもRFに対して負の意味を持つので、角度の選択は、電力とRFの間のトレードオフである。
【0091】
しかしながら、図3(d)の姿勢は本来は平衡状態ではないので安定させる必要がある。平衡状態にすることで、永続的に保持することができる。しかしながら、重力勾配と自然ジャイロトルクは、慣性モーメントと軌道高度に依存するため、平衡状態に持っていくことは容易ではない。構造体300は大きく平らなので、慣性モーメントが大きい。さらに、重力勾配とジャイロトルクが大きいLEO軌道で運用される(軌道周期が早いため)。したがって、フェーズドアレイ300を平衡状態に保つために、ジャイロトルクが生成される。特に、フェーズアレイ構造300全体は、その中心の周りに(すなわち、例えばピザのように、法線ベクトルを中心に)回転される。フライトコンピュータ224は、フライトアクチュエータ228にコマンドを送り、構造体全体を回転/スピンさせる。これは、(アクチュエータ228内の)磁気トルクロッドにより数時間または数日にわたって達成される。
【0092】
別の実施形態では、内部ジャイロスコープ構成要素229が提供されており、モーメンタムホイール(例えば、平坦なディスクのような円筒対称の構成要素(部品)であって、制御衛星200の内部に配置され、フライトコンピュータ224またはプロセッサ220によって制御される)が法線ベクトルを中心に回転される。
【0093】
ジャイロトルクを使用するのは、一定のトルクを発生させるためである。一度回転運動を起こせばジャイロトルクを継続的に発生させることができ、最小限の電力で、アレイ300を安定させることができる。これは、太陽の角度(β)を参照しながら、無線通信対(VS)太陽光発電のシステム固有のトレードオフから、使用するオフセット角度θを見つけることにより実施できる。
【0094】
本開示のさらに別の実施形態において、データ(位置および姿勢など)は、衛星10および/または200から(例えば、処理デバイス20および/または220によって)地上局に送信されてもよい。次いで、地上局の処理装置は、必要なジャイロトルクおよび/または他のフライトインフォメーション(飛行情報)を決定し、地上局のアンテナを介して、制御信号を衛星10および/または200(例えば、処理装置20および/または220)に送信して、フライトパターンを制御してもよい(例えば、アクチュエータ28および/または228を使用することによって)。
【0095】
一例では、本開示のシステムは、複数の小型衛星10のアレイ300を形成するためなど、アンテナアセンブリのアレイに用いることができる。構造体がアンテナアレイとして構成される場合、それ(例えば、複数のアンテナまたはアンテナ要素)は、例えばユーザデバイス(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ)および/または地上局など、地球上の処理デバイスと通信する。本開示はまた、地球上の処理デバイスと通信するためにアンテナを利用する方法を含む。本開示は、地球上の処理デバイスがアンテナを用いて通信する方法も含む。さらに、アンテナは、低地球軌道(LEO)において、または他の軌道において、または他の用途のために使用することができる。さらに、システムおよび方法は、アンテナアセンブリのアレイに対して説明されてきたが、システムおよび方法は、例えばデータセンター、反射器、および宇宙または地上の両方で実装される他の構造体などの他の用途に利用することが可能である。
【0096】
さらに、本明細書および請求項では、平面、上面、下面、側面、平行、法線、表面、および平坦などのいくつかの幾何学的または関係的用語、およびいくつかの方向または位置を定める用語が使用されていることに留意されたい。それらの用語は、単に、図に示された実施形態に基づく説明を容易にするための便宜的なものである。それらの用語は、本開示を限定することを意図していない。したがって、それらの幾何学的、関係的、方向的、または位置決めの用語を用いずに、他の方法でシステムを説明することができることを認識されたい。さらに、幾何学的または関係的な用語は、厳密でない場合がある。例えば、壁は、互いに正確に垂直又は平行でなくても、実質的に垂直又は平行であると見なされる場合がある。そして、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の適切な幾何学的形状及び関係を提供することができる。
【0097】
前述の説明および図面は、本開示の原理の例示に過ぎないと考えるべきであり、本開示は様々な方法で構成され得、本明細書に記載された実施形態によって限定されることを意図していない。本開示の多数の応用は、当業者にとって容易に想起されるであろう。したがって、開示された特定の例、または示され説明された正確な構造および動作に本開示を限定することは望まれない。むしろ、本開示の範囲内に入る、全ての好適な修正および等価物に頼ることができる。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図3(f)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
【国際調査報告】