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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ガンのための組換え体治療介入
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20230330BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230330BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230330BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230330BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20230330BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20230330BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
A61K35/74 A
C12N1/21 ZNA
C12N5/078
A61K39/04
A61K31/7084
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P13/10
C12N15/52 Z
C12N15/31
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547296
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2021018007
(87)【国際公開番号】W WO2021163602
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】16/790,161
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム アール ビシャイ
(72)【発明者】
【氏名】トリニティ ジェイ ビヴァラックア
(72)【発明者】
【氏名】アロク シン
(72)【発明者】
【氏名】モナーリ プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】タカヒロ ヨシダ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA36X
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB14
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB032
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C085AA02
4C085BA09
4C085CC07
4C085CC33
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB03
4C086ZB09
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC55
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA56
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB03
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
腫瘍における骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSCs)、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑え、および対象において腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導する方法が記載される。本発明の発現ベクターが含まれるマイコバクテリウム属菌(Mycobacteria)の株を含む薬剤組成物は対象に施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、腫瘍における骨髄由来抑制細胞(MDSC)、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現を抑制し、腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DC)、及びTエフェクター細胞の発現を誘導する方法。
STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能的部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの菌株を含む医薬組成物を、腫瘍を有する対象に投与すること。
腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑制すること;および
腫瘍内のマクロファージ、樹状細胞(DC)およびTエフェクター細胞の発現を誘導することにより、MDSCs、M2マクロファージおよびTreg細胞の発現を抑制し、腫瘍内のマクロファージ、DCおよびTエフェクター細胞の発現を誘導すること。
【請求項2】
腫瘍におけるMDSC、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現の抑制が、マイコバクテリアの菌株を含む医薬組成物を投与していない参照された対象の腫瘍におけるMDSC、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現と比較した場合に観察される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DC)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導することが、マイコバクテリアの株を含む医薬組成物を投与されていない被参照者の腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DC)、およびTエフェクター細胞の発現と比較した場合に観察される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
STINGアゴニストが、3'-5' c-di-AMP(c-di-AMPとしても知られている);3'-5' c-di-GMP(cdi- GMPとしても知られている);3'-3' cGAMP;2'-3' cGAMPおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ベクターが、Rv1354cタンパク質又はその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質又はその機能的部分をコードする第2の核酸配列からなる群より選択される核酸配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能部分をコードする第3の核酸配列;DNA完全性スキャン(DisA)タンパク質またはその機能部分をコードする第4の核酸配列およびそれらの組合せ。
【請求項6】
腫瘍が、上皮性癌、乳癌、非筋層浸潤性膀胱癌、メラノーマ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
腫瘍が非筋肉浸潤性膀胱癌であり、BCG非応答性非筋肉浸潤性膀胱癌(BCG-unresponsive NMIBC)であり、医薬組成物が膀胱内注入によって投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍が非筋肉浸潤性膀胱癌であり、BCGナイーブ非筋肉浸潤性膀胱癌(BCG-naive NMIBC)であり、医薬組成物が膀胱内注入によって投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍が上皮性癌は、結腸癌、子宮癌、子宮頸癌、膣癌、食道癌、鼻咽頭癌、内気管癌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、医薬組成物は上皮性癌の内腔表面に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍が固形腫瘍であり、医薬組成物が腫瘍内、静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)、セミプリマブ(抗PD-1抗体)、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)、アベルマブ(抗PD-L1抗体)、デュルバラム(抗PD-L1抗体)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
誘導されたマクロファージがM1マクロファージである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
Tエフェクター細胞がCD4+T細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
Tエフェクター細胞がCD8+T細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
腫瘍が液体腫瘍であり、医薬組成物が静脈内、皮内、経皮、膀胱内外用、筋肉内または皮下注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2020年2月13日に出願された16/638,943の一部継続(CIP)である米国特許出願第16/790,161号の35合衆国法典第119条(e)に基づく優先権の利益を主張し、これは35合衆国法典第371条の米国である。2018年4月17日に出願された米国仮出願第62/658,661号の利益を主張する2019年3月14日の国際出願PCT/US2019/022341の国内出願であり、前述の各出願の内容は、参照によりその全体がここに組み込まれるものとする。
【配列表の取り込み】
【0002】
添付の配列リストの資料は、参照により本出願に組み込まれる。添付の配列リストのテキストファイルは、JHU4280_2WO_Sequence_Listing.txtという名称で、2021年2月11日に作成され、157kbのファイルである。このファイルは、Windows OSを使用するコンピュータでMicrosoft Wordを使用して評価することができる。
【政府声明文】
【0003】
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes Health)より授与された助成金(Grant nos. AI036973, AI037856, National Institutes of Healthから授与された政府の支援を受けて行われたものである。政府は、この発明について一定の権利を有している。
【発明の背景】
【0004】
膀胱の尿路上皮がんは、北米、南米、欧州、アジアで最も多く見られる膀胱がん(BC)である。非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)は、高い再発率、頻繁な膀胱内治療、進行期への進行リスク、全がんの中で最も高い生涯治療が必要とされている。BCG(Bacillus Calmette Guerin)膀胱内投与は、30年前からNMIBCの標準治療法となっている。60-70%の患者さんに有効である。BCGは、抗原を送達するための非常に効果的な手段であることが示されている。I型インターフェロンとTh1を介した免疫反応に偏った基礎的な免疫反応を裏付ける多くの研究は、有望であることを示している。NMIBCのための組換えBCG(rBCG)株を作製する努力は、これらの抗腫瘍免疫応答を増強する株の開発に重点を置いている。現在までのところ、このような取り組みによって従来のBCGに対する実証的な改善は得られていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、c-di-AMP(3'-5'c-di-AMPともいう);c-di-GMP(3'-5'c-di-GMPともいう)を含むSTINGアゴニストを作るタンパク質又はその機能部分を発現する核酸配列を含むベクターを提供するものである。3'-3'cGAMP(3′-5′、3′-5′cGAMPとしても知られ、ビブリオコレラDncVタンパク質の産物);2'-3'cGAMP(2'-5′、3'-5′cGAMPとしても知られ、ヒトcGASタンパク質の産物)及びそれらの組み合わせが、例として挙げられる。本発明のベクターの中には、Rv1354cタンパク質又はその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'cyclic GMP-AMP synthase(DncV)タンパク質又はその機能的部分をコードする第2の核酸配列からなる群より選択される核酸配列を含むものがある。2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能部分をコードする第3の核酸配列;DNA完全性スキャン(disA)タンパク質またはその機能部分をコードする第4の核酸配列およびこれらの組合せが挙げられる。これらの核酸配列の各々は、本明細書の定義の項に記載のSTINGアゴニストの1つまたは複数を作るタンパク質を発現する。本発明のベクターの中には、上記の1つ以上の配列に加えて、PanCタンパク質およびPanDタンパク質またはその機能的部分をコードする第5核酸配列を含むものがある。PanCタンパク質及びPanDタンパク質又はその機能的部分をコードする核酸配列を含むベクターは、典型的には、抗生物質耐性遺伝子を含まない。本発明で使用される好適なベクターは、複数のコピーでエピソーム的に複製するベクター、またはシングルコピーで細菌染色体に統合するベクター、あるいはその他の方法で細菌細胞内に存在するベクターを含み得る。本発明のベクターは、細菌ゲノムに安定的に統合してもよいし、エピソームプラスミドとして安定的に複製してもよい。好適な第3の核酸配列には、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質のシクラーゼドメインを過剰発現させるものが含まれる。他の好適な第3核酸配列は、非機能的である制御DNA認識能力を有する環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質を発現してもよい。本発明のベクターは、本発明で用いるマイコバクテリアの株のPDE遺伝子の発現をノックアウトする配列またはタンパク質をコードする核酸配列も含むことができる。
【0006】
本発明の別の実施形態は、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能的部分を含むベクターを含む本発明のベクターのいずれか1つを含むマイコバクテリアの菌株を提供する。上述したように、STINGアゴニストの例には、c-di-AMP(3'-5'c-di-AMPとしても知られる);c-di-GMP(3'-5'c-di-GMPとしても知られる。)3'-3'cGAMP(3′-5′、3′-5′cGAMPとしても知られ、ビブリオコレラエDncVタンパク質の産物);2'-3'cGAMP(2'-5′、3'-5′cGAMPとしても知られ、ヒトcGASタンパク質の産物)及びこれらの組み合わせが、例として含まれる。好適な核酸配列の例としては、Rv1354cタンパク質又はその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質又はその機能的部分をコードする第2の核酸配列からなる群から選択される核酸配列;3'-3'cyclic GMP-AMP synthase(DncV)タンパク質又はその機能的部分2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能部分をコードする第3の核酸配列;DNA完全性スキャン(disA)タンパク質またはその機能部分をコードする第4の核酸配列およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明で使用されるマイコバクテリウムの好適な株の例としては、例えば、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス、またはそれらの組合せを挙げることができる。本発明で使用される別の株は、マイコバクテリウム・バシルス・カルメット・ゲラン(BCG)である。本発明で使用されるマイコバクテリアの株は、そのpanCD遺伝子オペロンを欠くBCGのパントテン酸オーソトローであってもよい。panCDオーソトロー株は、機能的PanCおよび/またはPanDタンパク質をコードすることができるゲノム配列を欠いている。いくつかの実施形態では、パントテン酸オーソトロフであるマイコバクテリアの株は、PanCおよびPanDタンパク質またはその機能的部分をコードするpanCD核酸を含む本発明のベクターを含んでいる。panCD核酸配列を含む本発明のベクターは、好ましくは、抗生物質耐性遺伝子または抗生物質耐性をもたらす機能性タンパク質をコードする核酸配列を含まない。本発明のパントテン酸オーソトロフィーであるマイコバクテリアは、好ましくは、ゲノム抗生物質耐性遺伝子を有さないか、または抗生物質耐性を提供する機能性タンパク質をコードすることができない。
【0007】
本発明の別の実施形態は、本発明のマイコバクテリアの菌株のいずれか1つ、及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む、対象において1型インターフェロン応答を誘発し、炎症性サイトカインの発現を増強し、および/または訓練された免疫を誘発する方法を提供する:本発明の株のいずれかを含む医薬組成物を対象に投与すること;および対象において1型インターフェロン応答を誘発し、炎症性サイトカインの発現を増強し、および/または訓練された免疫を誘発すること。ひとつの態様において、医薬組成物は、カテーテルによって被験者の膀胱に投与される。
【0009】
別の実施形態は、対象における癌を治療または予防するために本発明のマイコバクテリアの菌株を使用する方法を提供する。本方法は、STINGアゴニストを作るタンパク質又はその機能的部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの株を含む医薬組成物を、癌を有する対象に投与する工程;及び対象における癌を治療又は予防する工程を含む。本発明は、例として、上皮性癌、乳癌、非筋層浸潤性膀胱癌を含む癌を治療または予防するために使用され得る。いくつかの態様において、癌はBCG非応答性非筋層浸潤性膀胱癌(BCG-unresponsive NMIBC)であり、医薬組成物は膀胱内注入により投与される。いくつかの態様において、癌はBCG未対応非筋層浸潤性膀胱癌(BCG-naive NMIBC)であり、医薬組成物は膀胱内投与により投与される。他の態様では、癌は、結腸癌、子宮癌、子宮頸癌、膣癌、食道癌、鼻咽頭癌、内気管癌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、医薬組成物は、上皮癌の管腔表面へ投与される。いくつかのアスペクトにおいて、癌は、固形腫瘍又は液体腫瘍から選択され、医薬組成物は、腫瘍内注射及び/又は全身注入によって投与される。本発明の方法は、例として、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、またはそれらの組み合わせなどのチェックポイント阻害剤を投与するステップを含んでもよい。別の態様では、癌は膀胱癌であり、医薬組成物はカテーテルを介して投与される。
【0010】
本発明の一実施形態は、Rv1354cタンパク質又はその機能的部分をコードする第1の核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質又はその機能的部分をコードする第2の核酸配列;を含む発現ベクターを提供する。環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能的部分をコードする第3の核酸配列;ジアデニル酸シクラーゼとして機能するDNAインテグリティスキャン(disA)タンパク質またはその機能的部分をコードする第4の核酸配列、またはそれらの組み合わせ。本発明のいくつかの発現ベクターは、基準としてネイティブなRv1354cタンパク質の発現と比較した場合、Rv1354cタンパク質のシクラーゼドメインを過剰発現させる第1の核酸配列を含む。本発明のいくつかの発現ベクターは、ネイティブなDncVタンパク質の発現と比較した場合に、環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質を過剰に発現する第2の核酸配列を含む。本発明のいくつかの発現ベクターは、ネイティブなcGASタンパク質の発現と比較した場合、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質のシクラーゼドメインを過剰発現させる第3の核酸配列を含む。本発明で使用される好適なRv1354タンパク質には、結核菌Rv1354タンパク質が含まれる。本発明で用いられる好適なDncVタンパク質としては、ビブリオ・コレラDncVタンパク質が挙げられる。本発明で用いられる好適なcGASタンパク質には、ホモサピエンスcGASタンパク質が含まれる。本発明で用いられる好適なDisAタンパク質としては、結核菌disAタンパク質が挙げられる。
【0011】
本発明の別の実施形態は、cdnP遺伝子、Rv1354c遺伝子、Rv1357c遺伝子、またはそれらの組み合わせを含むBCGの菌株であって、cdnP遺伝子が機能的な環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CdnP)タンパク質を発現できない、Rv1354c遺伝子が機能的なRv1345cタンパク質を発現できない、および/またはRv1357c遺伝子が機能的なRv1357タンパク質を発現できない菌株を提供する。本発明のBCG株の中には、非機能的なEALドメインを含むRv1354c遺伝子を有するものが存在する場合がある。本発明のBCG株は、本発明の発現ベクターのいずれかを含んでもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む膀胱癌の治療又は予防方法を提供する:本発明の発現ベクターを含むBCGの株を含む医薬組成物を対象の膀胱に投与するステップ;及び医薬組成物を投与されなかった参照対象と比較して、対象において膀胱癌を治療又は予防するステップ。医薬組成物は、カテーテルによるものを含む任意の適切な手段によって投与され得る。
【0013】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む、対象における1型インターフェロン応答を引き出す方法を提供する:本発明の発現ベクターを含むBCGの株を含む医薬組成物を、対象の膀胱などの対象に投与するステップ;および医薬組成物を投与されていない参照対象と比べて、対象における1型インターフェロン応答を増強するステップ。
【0014】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む、対象における癌の治療または予防方法を提供する:癌を有する対象の腫瘍に本発明の発現ベクターを含むBCGの株を含む医薬組成物を投与する;および医薬組成物を投与していない参照対象と比べて、対象における癌を治療または予防する。医薬組成物は、腫瘍への注射を含む任意の適切な手段によって投与され得る。この方法によって治療または予防され得る癌には、乳癌、および/または非筋層浸潤性膀胱癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明に用いられるマイコバクテリアの例としては、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・ボビス・バシルス・カルメット・ゲリン(BCGと称する)、マイコバクテリウム・スメグマティス、マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス、その他の非結核菌(NTM)等がある。STINGアゴニストを過剰発現するものを含む本発明に用いられるBCG株の例としては、BCGパスツール、BCG-パスツール-アエラス、BCGタイス(BCGシカゴともいう)、BCG-コンノート(BCGトロントともいう)、BCGデンマーク、BCG-プラハ(BCGチェコスロバキアともいう).BCGロシア(別名:BCGモスクワ)、BCGモロー(別名:BCGブラジル)、BCGジャパン(別名:BCG東京)、BCGスウェーデン(別名:BCGイエテボリ)、BCGビルホーク、BCGグラクソ、BCGフラピエ(別名:BCGモントリオール)、BCGフィップス、その他入手できるBCG系統のこと。
【0016】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む糖尿病の治療方法を提供する:糖尿病を有する対象に、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの株を含む医薬組成物を投与するステップ;および訓練免疫を与えることにより対象において糖尿病を治療または予防するステップ。訓練された免疫とは、ある抗原刺激によって、後の時期に導入される第2の異なる抗原刺激に対して、より強力な免疫応答を誘発する能力をいう。訓練された免疫は、抗原に依存せず、異種CD4およびCD8メモリの活性化に基づき、サイトカインを介し、エピジェネティックおよび代謝的な変化と関連している。本方法は、訓練された免疫に媒介された解糖のアップレギュレーションをもたらす。前述の解糖のアップレギュレーションは、1型および2型糖尿病の予防および治療に有益である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの株を含む医薬組成物を被験者に投与する工程、および被験者の訓練された免疫を刺激する工程、を含む、被験者の訓練された免疫を刺激する方法を提供する。対象における解糖をアップレギュレートすること、および/または対象におけるヒストンメチル化におけるエピソーム変化を刺激することが、対象における訓練された免疫を媒介する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの株を含む医薬組成物を対象に投与するステップと、対象のウイルス感染を治療または予防するステップとを含む、対象におけるウイルス感染を治療または予防する方法を提供する。被験者の訓練された免疫を刺激することにより、被験者のウイルス感染症を治療または予防する。被験者の解糖をアップレギュレートすること、および/または被験者のヒストンメチル化におけるエピソーム変化を刺激することが、被験者の訓練された免疫を媒介する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの株を含む医薬組成物を被験者に投与するステップと、被験者の細菌感染または薬剤耐性細菌感染を治療または予防するステップとを含む、被験者の細菌感染、または薬剤耐性細菌感染を治療または予防する方法を提供する。被験者の訓練された免疫を刺激することにより、被験者の細菌感染症を治療または予防する。対象における解糖をアップレギュレートすること、および/または対象におけるヒストンメチル化におけるエピソーム変化を刺激することは、対象における訓練された免疫を媒介する。本発明の方法は、本発明のベクターまたは本発明のベクターを含む1つまたは複数の菌株を使用することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態は、腫瘍における骨髄由来抑制細胞(MDSC)、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現を抑制し、腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DC)、及びTエフェクター細胞の発現を誘導する方法を提供する。本方法は、STINGアゴニストを作るタンパク質またはその機能部分を発現するベクターを含むマイコバクテリアの菌株を含む医薬組成物を、腫瘍を有する対象に投与する工程、腫瘍におけるMDSC、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑制する工程、ならびに腫瘍におけるマクロファージ、DC、およびTエフェクター細胞の発現を誘導する工程を包含する。腫瘍において発現が誘導されたM1マクロファージの例としては、M1マクロファージを挙げることができる。腫瘍において発現が誘導されたTエフェクター細胞の例としては、CD4+T細胞及びCD8+T細胞が挙げられる。本発明のベクターを含むマイコバクテリアを投与された被験者の腫瘍におけるMDSC、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現の抑制は、マイコバクテリアの株を含む医薬組成物を投与していない参照被験者の腫瘍におけるMDSC、M2マクロファージ、及びTreg細胞の発現と比較すると、観察される。腫瘍におけるマクロファージ、DC、およびTエフェクター細胞の発現を誘導することは、マイコバクテリアの株を含む医薬組成物を投与されていない参照される対象の腫瘍におけるマクロファージ、DC、およびTエフェクター細胞の発現と比較した場合に観察される。好適なSTINGアゴニストの例には、3'-5'c-di-AMP(c-di-AMPとしても知られる);3'-5'c-di-GMP(cdiGMPとしても知られる);3'-3'cGAMP;2'-3'cGAMPおよびそれらの組合せが含まれる。本発明の好適なベクターは、Rv1354cタンパク質又はその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'cyclicGMP-AMP synthase(DncV)タンパク質又はその機能的部分をコードする第2の核酸配列からなる群より選択される核酸配列を含むことができる。2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能部分をコードする第3の核酸配列;DNA完全性スキャン(DisA)タンパク質またはその機能部分をコードする第4の核酸配列およびこれらの組合せである。腫瘍は、例として、上皮性癌、乳癌、または非筋層浸潤性膀胱癌、およびメラノーマであってもよい。いくつかの態様において、腫瘍は、BCG非応答性非筋肉浸潤性膀胱癌(BCG-unresponsive NMIBC)などの非筋肉浸潤性膀胱癌であってもよく、医薬組成物は膀胱内投与によって投与され得る。他の態様において、腫瘍は、BCG未対応非筋層浸潤性膀胱癌(BCG-naive NMIBC)などの非筋層浸潤性膀胱癌であってもよく、医薬組成物は膀胱内投与により投与することができる。他の態様において、腫瘍は、結腸癌、子宮癌、子宮頸癌、膣癌、食道癌、鼻咽頭癌、内気管癌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される上皮癌であってもよく、医薬組成物は、上皮癌の管腔表面に投与することができる。他の態様において、腫瘍は固形腫瘍であり、医薬組成物は、腫瘍内、静脈内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射により投与される。他の態様では、腫瘍は液体腫瘍であり、医薬組成物は、静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射によって投与される。本発明の方法は、チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含んでもよい。本発明で使用され得る適切なチェックポイント阻害剤には、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)、セミプリマブ(抗PD-1抗体)、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)、アベルマブ(抗PD-L1抗体)、デュルバラム(抗PD-L1抗体)及びそれらの組合せが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本出願は、16/638,943の継続出願(CIP)であり、米国特許出願番号16/638,943の全ての図は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
図1図1A-1B. pSD5BPhsp60::disAプラスミド構築物からdisAを過剰発現するマイコバクテリアは、マクロファージサイトゾルに多量のc-di-AMPを放出し、多量のdisA mRNAを転写させる。図1A.J774マクロファージは、pSD5BPhsp60::disAプラスミドまたは野生型M.tb(CDC1551)を保有するM.tbを1:20のMOIで感染させた。感染24時間後にマクロファージ内のc-di-AMP濃度をLC-MS/MSで測定した。M.tb-disA-OE株は、野生型M.tb(CDC1551)よりも約15倍多くのc-di-AMPを生成していることが分かる。BCG-disA-OE株も同様に高レベルのc-di-AMPを示すと予想される。(データはDey RJ, Cheung LS, Pokkali S, Guo H, Lee JH, Bishai WRより引用。バクテリアの環状ジヌクレオチドは、細胞質監視経路を活性化し、結核に対する自然抵抗性を媒介する。Nat Med. 2015;21:401-6. PMID: 25730264)図1B.pSD5BPhsp60::disAプラスミドを保有するBCG-PasteurまたはBCG-Pasteur-WTを、指数期半ばまで増殖させた。細菌を溶解し、mRNAを調製した。disAmRNAのレベルは、定量的RT-PCRによって決定された。BCG-disA-OE株は、BCG-Pasteur-WTに比べ、約50倍のdisAmRNAを産生することがわかった。
図2図2. disAを過剰発現するBCGは、炎症性サイトカインを増強する。BCG-Pasteurの野生型株およびdisA過剰発現株でチャレンジしたマウスBMDMにおける炎症性サイトカインおよびIFN-βの遺伝子発現プロファイリング(qPCR)を示す。
図3図3.disAを過剰発現したBCGはIRF3シグナル伝達を増強する。RF-SEAP QUANTI Blueレポーターアッセイによって測定されたIRF経路の活性化に対するdisA過剰発現の効果。感染したRAW-Blue ISG細胞の培養上清をIRF活性化についてアッセイした。IRF活性化グラフの下の画像は、QUANTI Blueアッセイプレートとサンプルウェルを表している。ウェルの列の処理パラメータは、ウェルと並んだ上のバーで定義されたものに対応している。この図のBCG-disA-OEは、BCG Pasteurに由来する。
図4図4A-4C. disA過剰発現に応答した炎症性サイトカインの増加。図4Aは、TNF-αの差次的な発現を示す。図4Bは、IL-6の差次的な発現を示す。図4Cは、IL-1βの差次的な発現を示す。マウスBMDMに、BCG-パスツールの野生型株及びdisA過剰発現株をチャレンジさせた。培養上清を、異なるサイトカインについてELISAによってアッセイした。
図5図5. disAを過剰発現したBCGは、ヒト膀胱癌細胞(RT4)において差次的な免疫応答を誘導する。野生型BCG-Pasteur、野生型BCG-Tice株、およびBCG-Pasteur-disA-OEでチャレンジしたヒトRT4膀胱癌細胞における遺伝子発現の差mRNAの発現レベルは、SYBR greenベースの定量リアルタイムPCRを使用して測定された。
図6図6.野生型株とBCG-disA-OE株の相対的な治療効果を試験するワークフローを模式的に示す。
図7図7.未処置またはWTBCGもしくはdisAを過剰発現するrBCGで処置した担癌ラットの腫瘍関与指数(rBCG=BCG-Pasteur-disA-OE; wtBCG=BCG-Pasteur)。
図8図8.MNU誘発フィッシャーラット膀胱腫瘍のBCGの異なる株を用いた膀胱内治療に対する免疫プロファイリング。Mycobacterium bovis BCG-Pasteurの野生型株およびdisA過剰発現株を用いた治療後のラット膀胱腫瘍細胞における遺伝子発現の違い。mRNAの発現量は、TaqManベースの定量的リアルタイムPCRを用いて測定した。BCG-WTはBCG Pasteur、BCG-disA-OEはBCG Pasteurに由来する。
図9図9.MNU腫瘍を有するラットを未処置またはWTもしくはdisAを過剰発現するrBCGで処置した膀胱の遺伝子発現プロファイリングを示す。
図10図10.異なる細胞または組織におけるBCG-disA-OE対BCG-WTによる相対的遺伝子発現のまとめ。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)、ヒト不死化膀胱癌細胞株RT4および5637、およびラット不死化膀胱癌細胞株をBCG-disA-OEおよびBCG-WTで24時間感染させ、細胞からmRNAを調製した。ラットは8週間にわたってMNUに膀胱内投与された後,BCG-disA-OEまたはBCG-WTを8週間膀胱内投与された。16週目の剖検時に膀胱を摘出し、mRNAを調製した。膀胱を16週目の剖検時に摘出し、mRNAを調製した。示されたサイトカインまたはケモカイン遺伝子について定量的RT-PCRを行った。BCG-disA-OEで観察された倍率をBCG-WTで観察された倍率に正規化した変化を示した。BCG-WTはBCG Pasteur、BCG-disA-OEはBCG Pasteurに由来する。
図11図11.BCGに存在する2つの環状ジヌクレオチドシクラーゼおよびホスホジエステラーゼタンパク質の図:BCG_RS07340およびBCG_AHM07112。BCG_RS07340は、CDNシクラーゼ活性とCDNPDE活性の両方を有する二機能性タンパク質である。BCG_AHM07112は、CDNPDEである。ドメインはGAF(制御)、GGDEF(ジグアニル酸シクラーゼ)、EALジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。
図12図12.pSD5BPhsp60::disAプラスミドを保有するM.tb-disA-OEまたはMtb-OEは、野生型M.tb(Mtb-CDC1551)と比較してマウスにおける病原性が著しく減弱している。6-7週齢の雌性BALB/cマウス(各群n=10)に,エアロゾル感染により約3.5log10CFUを上記のように感染させた.日目のCFUカウントを各群3匹のマウスで行い、3.5log10CFU単位の移植を確認した。マウスは死亡するまで飼育された。見ての通り、野生型結核菌の感染では、死亡までの期間の中央値は150.5日であった。一方,同じ接種量のM.tb-disA-OE(Mtb-OE)に感染したマウスは,死亡までの期間の中央値が321.5日だった(p<0.001)。BCG-disA-OEは,BCG-WTと比較して,マウスで同様の病原性の喪失を示すと予想される.(データはDey B, Dey RJ, Cheung LS, Pokkali S, Guo H, Lee JH, and Bishai WRから。バクテリアの環状ジヌクレオチドは、細胞質監視経路を活性化し、結核に対する自然抵抗性を媒介する。Nat Med 2015;21:401-6.PMID:25730264.)
図13図13A-13B他のBCG株も活性を示す。disAを過剰発現するBCG Tice株もまた、disAを過剰発現するBCG Pasteurと同様の炎症性サイトカインの誘導を示す。骨髄由来マクロファージに、BCG PasteurおよびBCG Tice株の両方の野生型およびdisA過剰発現株を1:20のM.O.Iで15時間チャレンジし、培養上清を採取し、ELISAを用いてサイトカインについてプロービングした。図13Aは、TNF-αのdifferentialな発現パターンを示す図である。図13Bは、IL-6の差次的な発現を示す。マウスBMDMを、BCGの2つの異なる株でチャレンジした。BCG-Tice株は、市販のOnco-Tice製品に由来するものであった。
図14図14.BCG-disA-OEに反応するマクロファージにおけるI型インターフェロン応答は、STING依存性である。STING切断マウス(KO)および対照マウスの骨髄由来マクロファージに、BCGパスツールの野生型株およびdisA-OE株を24時間チャレンジさせた。
図15図15は、非筋層浸潤性膀胱癌(NIMBC)のMNU発癌モデルにおいて、BCG-disA-OEの膀胱内投与が最大の抗腫瘍効果(病態の統計的有意な改善)を示すことを示す図である。NIMBCを誘発するために、ラットのグループに最初の8週間で4回のMNU膀胱内投与(2週間ごとに1回投与)を行った。次の8週間は、PBS(未処置)、BCG-WT、BCG-disA-OEのいずれかを4回膀胱内投与した(2週間に1回投与)。16週間の実験の終わりに、ラットは犠牲にされ、膀胱が摘出された。膀胱の一部を固定し、H&E染色を施した後、Board certified urologic pathologistによる盲検法での解釈を行った。腫瘍浸潤スコアと癌病期(T2-3、T1、CIS+乳頭状病変、CIS単独、正常異形成)が決定され、それが示された。BCG-disA-OEを投与した場合、PBS(未処置)よりも腫瘍浸潤度が統計学的に有意に低く、BCG-WTはPBSよりも統計学的に有意な優越性は認められなかったことがおわかりいただけると思う。この16週間の実験は2回行った。図7のデータは、実験1の結果である。この図(図15)のデータは、実験1+実験2の結果を合わせたものである。図8および図9に示すqPCRデータは、実験1終了時の剖検で膀胱組織を用いて得られたものである。
図16図16は、BCG-disA-OEが、マウス合生膀胱癌腫瘍におけるTreg(CD4+CD25+Foxp3+)を減少させることを示している。マウスは、5×106BBN975マウス膀胱癌腫瘍細胞を脇腹に移植された。腫瘍の直径が1.5cmになったとき,マウスはPBS(対照),BCG-WT,またはBCG-disA-OEのいずれかの腫瘍内注射を3回受けた(2日ごとに1回の治療)。最後の腫瘍内投与から2日後にマウスを犠牲にし,脾臓と腫瘍を摘出した.腫瘍細胞を分散させた後、細胞調製物を染色し、フローサイトメトリーに供した。BCG-disA-OEは、腫瘍のCD4+Tregの減少、腫瘍のCD8+Tregの減少、および脾臓のCD4+Tregの減少を引き起こしたことがわかるだろう。
図17図17A~17Bは、BCG-disA-OEが、2つのマウスモデルにおいてBCG-WTよりも安全であることを示す図である。図17Aは、BALB/cマウス(免疫不全)の群を、Glas-Colエアロゾル化チャンバーを使用して、BCG-WTまたはBCG-disA-OEのいずれかの1×103 CFU(マウスの群を犠牲にし、1日目の肺CFU数を決定することによって確認)に曝露したことを示している。4週間後、各群からマウスを犠牲にし、その肺を取り出し、ホモジナイズし、7H11寒天培地プレート上にプレーティングした。図に、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺の平均CFUカウントを示す。見られ得るように、統計的に有意に低い肺CFU負担が、BCG-WTと比較してBCG-disA-OEで観察された。図17Bは、SCIDマウス(免疫抑制)のグループが、Glas-Colエアロゾル化チャンバーを使用して、BCG-WTまたはBCG-disA-OEのいずれかの1×102 CFU(マウスのグループを犠牲にして1日目の肺CFU数を決定することによって確認)に曝露されたことを示している。第3のグループは、感染していなかった。図は、マウスのグループのKaplan-Meier生存曲線を示している。BCG-disA-OE感染マウスは、BCG-WT感染マウスよりも統計的に有意に長い生存時間を有していたことが分かる。
図18図18は、BCG-disA-OEが、CD14+ヒト単球において、BCG-WTよりも統計的に有意に高いレベルの"Trained Immunity immunological and epigenetic marks "を誘発することを示している。「訓練された免疫」とは、最初の免疫学的刺激が、その後に与える抗原的に異なる2つ目の刺激に対する免疫応答の増加を誘導する能力を指す。この実験では、CD14+ヒト単球をアフェレーシスで採取したLeukoPaksから調製した。0日目にBCG-WTまたはBCG-disA-OEに5:1のMOIで3時間感染させた。第3のグループの細胞は感染させなかった。感染後、細胞は複数回(2日ごと)洗浄された。6日間の休息期間の後、単球をTLR1/2アゴニストPAM3CSK4で2時間再刺激した。細胞は繰り返し洗浄され、その後24時間インキュベートされた。分泌されたIL-1βのThレベルは、ELISAによって培養上清中で測定された。見て分かるように、BCG-WT自体は、非感染細胞と比較して、第2の刺激に対して統計的に有意に高いレベルの免疫応答を誘発したが、BCG-disA-OEは、BCG-WTまたは非感染細胞のいずれよりも、統計的に有意に高い応答を誘発することが判明した。
図19図19は、BCG-disA-OEが、BCG-WTよりもIL6およびTNF遺伝子プロモーター領域において大きなヒストン活性化マーク(H3K4-トリメチル化)を惹起することを示している。"訓練された免疫"とは、第1の免疫学的刺激が、その後に与える抗原的に異なる第2の刺激に対する免疫応答の増加を誘導する能力を指す。訓練された免疫は、サイトカインや他の免疫メディエーターのプロモーター領域における、ヒストンメチル化などのエピジェネティックな修飾と関連している。図19に示す実験は、TLR1/2アゴニストPAM3CSK4(略称PAM3)による2回目の刺激の後、細胞を固定して収穫し、クロマチンを架橋し、H3K4-me3ヒストンメチル化マークに対する特異抗体を用いてクロマチン免疫沈降分析(ChIP)のためにDNAを収集したこと以外は、同じセットの細胞で図18で述べた方法と全く同じように実施された。H3K4-me3は、遺伝子活性化マークとして知られている。グラフは、IL6およびTNF遺伝子プロモーター領域のプライマーを用いた定量PCRによって測定した、免疫沈降したDNAの存在量の相対的な倍数変化を示している。BCG-Pasteur-disA-OEとBCG-Tice-disA-OEは、2番目の刺激であるPAM3CSK4のチャレンジ後、対応するBCG-WT株よりもIL6およびTNFプロモーター領域のH3K4ヒストントリメチル化レベルが著しく高くなったことがわかるだろう。
図20図20は、BCG-Tice-disA-OEの構築に成功した様子を示す図である。本発明者らの以前の仕事は、BCG-Pasteurを利用してBCG-Pasteur-disA-OEを構築することであった。この株は、1995年にFrank Collins博士から本発明者の一人に提供されたものである。BCG-Pasteur-Aerasとして知られている株と同じものである。BCG-Ticeは、Merckによって製造・販売されており、米国で入手可能な唯一のFDA承認BCGである。本発明者らは、BCG-Ticeを購入し、エレクトロコンピテントBCG-Ticeを調製し、pSD5-hsp60-MT3692プラスミドをBCG-Ticeにエレクトロポレートした。図面は、形質転換BCG-Ticeの5つのカナマイシン耐性候補クローンに対するコロニーPCRの結果を示し、BCG-TiceにpSD5-hsp65-MT3692プラスミドをエレクトロポレーションすることにより、BCG-Tice-disA-OEを正常に調製したことを確認するものである。命名法に関する注記、本発明者らは以前、この同じプラスミドをpSD5-hsp60-MT3692と呼んでいた。しかし、この株における実際のプロモーターは、M.lepraeのhsp65遺伝子に対するプロモーターである。したがって、本発明者らは現在、このプラスミドをより正確に、pSD5-hsp65-MT3692と呼んでいる。
図21図21は、図20に示した形質転換実験からのBCG-Tice-disA-OEのクローン2がdisA遺伝子を強く発現していることを示す図である。リアルタイムPCRを使用して、4つの異なるBCG-Tice-disA-OEクローンにおけるdisA発現の差異を示した。遺伝子発現は、SYBRグリーンに基づく定量的リアルタイムPCRを用いて対数期培養物を用いて対数期後期培養物から単離した総RNAにおいて測定された。グラフのデータポイントは、3つの独立した実験の平均を表す±標準誤差平均(SEM)。M. tuberculosissigA(Rv2703)を内部コントロールとして使用した。データ解析は、2-ΔΔCT方式で行った。スチューデントのt検定に続き、Welch補正を行った(***P<0.001;**P<0.01)。本発明者らは、BCG-Tice-disA-OEクローン2のシードロットを作成し、以降のすべての作業において、このクローンを単に「BCG-Tice-disA-OE」と呼ぶことにしている。
図22図22は、BCG-Pasteur-disA-OEを感染させたマウス骨髄由来マクロファージにおけるIRF3誘導がBCG-Pasteur-WTと比較して強力かつ統計的に有意に増強されていることを示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージをBCG Pasteurの野生型株およびdisA過剰発現株(20MOI)に3時間感染させた。細胞は温DPBSで洗浄して非内蔵菌を除去し、その後さらに3時間インキュベートした。IRF3の発現は、SYBRgreenベースの定量的リアルタイムPCRを用いて、細胞溶解液から単離された総RNAで測定された。グラフのデータポイントは、3つの独立した実験の平均を表す±標準誤差平均(SEM)。マウスβ-アクチンを内部コントロールとして使用した。データ解析は、2-ΔΔCT方式で行った。スチューデントのt検定に続き、Welch補正を行った(***P<0.001;**P<0.01)。
図23図23は、STINGが、BCG-WTおよびBCG-disA-OEに応答したI型IFN(IFN-β)誘導の増強に必要であることを示している。STING欠損(STING-KO)野生型動物からのマウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージを、BCGの異なる株(MOI=1:20)に3時間感染させた。IFN-βのELISAは、製造者の指示に従い、培養上清で行った。データポイントは、3つの独立した生物学的実験の平均値±標準誤差平均値(S.E.M.)を表す。スチューデントのt検定に続き、Welch補正を行った(**P<0.01)。
図24図24A~24Cは、disA過剰発現BCG株への曝露により、マウスBMDMs、BMDCsおよびJ774.1マクロファージにインターフェロン-βが誘導され、IFN-β反応が、BCG-WT株よりもBCG-Pasteur-disA-OIおよびBCG-Tice-disA-OIで統計的に有意に大きいことを示した図である。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)およびJ774.1マクロファージに、異なるBCG株(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非内包化菌は温めたDPBSで洗浄し、さらに24時間培養した。IFN-βレベルは、製造者の指示に従い、ELISA法を用いて培養上清中で定量した。データポイントは、3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は、不対t検定を用いて行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図24Aは、マウスBMDMsにおけるインターフェロン-βレベルを示す図である。図24Bは、マウスBMDCにおけるインターフェロン-βレベルを示す図である。図24Cは、マウスJ774.1マクロファージにおけるインターフェロン-βレベルを示す図である。
図25図25A~25Cは、disA過剰発現BCG株への曝露に応答して、IL-6がマウスBMDM、BMDCおよびJ774.1マクロファージにおいて誘導され、IL-6応答が、BCG-WT株に対応して、BCG-Pasteur-disA-OIおよびBCG-Tice-disA-OIに対して統計的に有意により大きいことを示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)およびJ774.1マクロファージに、異なるBCG株(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非内蔵菌は温めたDPBSで洗浄し、細胞をさらに24時間培養した。IL-6レベルは、製造者の指示に従い、ELISA法を用いて培養上清中で定量した。データポイントは、3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表している。データ分析は、不対t検定を用いて行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図25Aは、マウスBMDMにおけるIL-6レベルを示す図である。図25Bは、マウスBMDCにおけるIL-6レベルを示す図である。図25Cは、マウスJ774.1マクロファージにおけるIL-6レベルを示す図である。
図26図26A~26Cは、disA過剰発現BCG株への曝露に応答して、マウスBMDM、BMDCおよびJ774.1マクロファージにおいてTNFが誘導され、その応答が、BCG-WT株に対応するよりBCG-Pasteur-disA-MOEおよびBCG-Tice-disA-MOEについて統計的に著しく大きくなることを示す図である。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)およびJ774.1マクロファージに、異なるBCG株(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非内包化菌は温めたDPBSで洗浄し、さらに24時間培養した。TNFレベルは、製造元の指示に従い、ELISA法を用いて培養上清中のTNFレベルを定量化した。データポイントは、3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表している。データ分析は、不対t検定を用いて行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図26Aは、マウスBMDMsにおけるTNFレベルを示す図である。図26Bは、マウスBMDCにおけるTNFレベルを示す図である。図26Cは、マウスJ774.1マクロファージにおけるTNFレベルを示す図である。
図27図27A~27Bは、disA過剰発現BCG株への曝露に応答して、TNFおよびIFN-γがラット膀胱癌NBT-II細胞株において誘導され、2つの応答が、BCG-WT株と対応するBCG-パスツール-disA-OEおよびBCG-チセ-disA-OEの間で統計的に著しく大きくなることを示す図である。NBT-II細胞にBCG野生型株および組換え株を3時間感染させた。非内蔵菌は温DPBSで繰り返し洗浄し、細胞をさらに24時間インキュベートした。データポイントは、3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は、不対t検定を用いて行った(***P<0.0001;**P<0.001;*P<0.05)。図27Aは、NBT-II細胞におけるTNFレベルを示す図である。図27Bは、NBT-II細胞におけるIFN-γレベルを示す図である。
図28図28A~28Dは、disA過剰発現BCG株の曝露に応答して、ヒト移行細胞乳頭腫RT4膀胱癌細胞株において、IFN-β、IFN-γ、TNFおよびIL-1βが誘導されること、および2つの応答が、BCG-WT株の場合よりもBCG-Pasteur-disA-OIおよびBCG-Tice-disA-OIについて大きいこと示す図である。RT4細胞にBCG野生型株および組み換え株を3時間感染させた。非内蔵菌は温DPBSで繰り返し洗浄し、細胞はさらに24時間培養した。データポイントは、2つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は、不対t検定を用いて行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図28Aは、RT4細胞におけるIFN-βレベルを示す図である。図28Bは、RT4細胞におけるIFN-γレベルを示す図である。図28Cは、RT4細胞におけるTNFレベルを示す。図28Dは、RT4細胞におけるIL-1βレベルを示す。
図29図29は、BCG-disA-OEが、複数の膀胱癌細胞株におけるIFN-βレベルの増加を、BCG-WTよりも高い程度で刺激することを示す図である。図面は、BCG-WT、BCG-disA-OE、およびLPSへの曝露後のIFN-βmRNAのレベル(2-ΔΔCT法による相対発現)を示している。5637細胞はヒト筋肉浸潤性膀胱癌細胞、RT4細胞はヒト移行細胞乳頭腫膀胱癌細胞、NBT-II細胞はN-butyl-N-(-4-hydroxybutyl)ニトロサミンで誘導されたラット膀胱癌細胞である。
図30図30A~30Dは、エアロゾル感染後の異なる時点における、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-β、IFN-γ、IL-6、およびTNFについてのサイトカイン応答を示す図である。図面から、ほとんどのサイトカインについて、ほとんどの時点で、BCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEでは対応するBCG-WT株よりも反応が大きいことが明らかである。BALB/cマウスを、図19に記載されるようにエアロゾル経路で感染させた。感染後2,4,6週目にマウスのグループを犠牲にした.肺ホモジネートを調製し、サイトカインレベルを、製造業者のプロトコルに従ってELISAを用いて定量化した(n=4動物/処置群±S.E.M.)。データ分析は、pairedt-testを使用して行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図30Aは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-βレベルを示す図である。図30Bは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-γレベルを示す図である。図30Cは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺におけるIL-6レベルを示す図である。図30Dは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺におけるTNFレベルを示す図である。
図31図31A~31Dは、エアロゾル感染後4週間における、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓のIFN-β、IFN-γ、IL-6およびTNFのサイトカイン応答を示す。この図から、ほとんどのサイトカインについて、BCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEでは対応するBCG-WT株よりも反応が大きいことが明らかである。BALB/cマウスを、図17に記載されるようにエアロゾル経路で感染させた。マウスのグループは、感染後4週目に犠牲にした。脾臓ホモジネートを調製し、サイトカインレベルを、製造業者のプロトコルに従ってELISAを用いて定量化した(n=4動物/処置群±S.E.M.)。データ分析は、pairedt-testを使用して行った(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図31Aは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIFN-βレベルを示す図である。図31Bは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIFN-γレベルを示す図である。図31Cは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIL-6レベルを示す図である。図31Dは、BCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるTNFレベルを示す図である。
図32図32は、「pSD5.hsp65-disA.panCD--No Kan」(SEQ ID NO:31)を生成するために使用されるストラテジーを示す。このスキームは、Kanカセット「pSD5.hsp65-disA.Kan」(SEQ ID NO:30)をpanCDオペロンに置き換えて、「pSD5.hsp65-disA.panCD--No Kan」(SEQ ID NO:31)を生成させる。
図33図33は、SEQ ID NO:32である組換えプラスミド、pJV53の分子構造を示す。
図34図34は、SEQ ID NO:35であるHygカセットを挟むDifサイトを有するプラスミドであるpUC-Hygの分子構造を示す。pUC-Hygを用いてプラスミド「pUC-Hyg-panCD-KO」(SEQ ID NO:36)を作製する。
図35図35は、SEQ ID NO:36であるプラスミド"pUC-Hyg-panCD-KO"の分子構造を示す図である。"pUC-Hyg-panCD-KO"は、Hygカセットの一方のフランクにpanCD5'UTRを500bpクローニングし、他方のフランクにpanCD3'UTRを500bpクローニングして生成されたものである。
図36図36は、SEQ ID NO:30であるプラスミド「pSD5.hsp65-disA.Kan」の分子構造を示す図である。
図37図37は、SEQ ID NO:31であるプラスミド「pSD5.hsp65-disA.panCD-No Kan」の分子構造を示す図である。このプラスミドは、図32に示されるスキームを用いて生成される。
図38図38は、陽性検体数を示す図である。
図39図39A~39Cは、BCG-disA-OEのM.tb-disA過剰発現表現型およびIRFシグナル伝達の誘導の確認を示す図である。図39Aは、カナマイシン遺伝子特異的プライマーを用いたコロニーPCRが、カナマイシン(25μg/mL)に対して選択したBCG-disA-OE(Tice)クローンにおける組換えプラスミドpSD5-hsp60-MT3692の存在を確証することを示す。図39Bは、BCG Tice BCG-disA-OETiceの異なるクローンにおける差分disA発現を示すリアルタイムPCRを示す。転写レベルは、対数期培養を用いて対数期後期培養から単離した総RNAにおいて測定した。M. tuberculosis sigA(Rv2703)を参照遺伝子として用い、2ΔΔCT法により相対発現量を算出した。図39Cは、RAW-LuciaISG細胞の感染24時間後(MOI=1:20)培養上清におけるIRF活性化BY定量をISRE(RLU、相対光単位)に基づき行った測定結果を示す図である。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicates)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図40図40A~40Cは、STING依存的にI型インターフェロンを強く誘導するものとして、c-di-AMPを過剰発現しているBCG株を示す。図40Aは、BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMおよびSTING-KO BMDM(C57BL/6J-Tmem173gt/J)の培養上清におけるIFN-βの定量的測定を示す図である。図40Bは、感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDM、BMDC、J774.1マクロファージ及びヒト単球由来マクロファージ(HMDM)の培養上清中のIFN-βの定量的測定を示す図である。図40Cは、野生型C57BL/6由来BMDMs、BMDCs、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)の培養上清中のIFN-βの感染後24時間の定量測定を示す図である。マクロファージとBCGの感染比率=1:20。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicates)。Student's t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図41図41A~41Dは、c-di-AMPを過剰発現するBCG株が、炎症性サイトカイン、TNF-α、及びIL-6の強力な誘導因子であることを示している。(A-B)野生型C57BL/6由来のBMDM、BMDCs、J774.1マクロファージ、およびヒト単球由来マクロファージ(HMDM)の培養上清中のTNF-αの定量的測定。図41Aは、BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の測定結果を示す。図41Bは、BCG-disA-OE(Pasteur)を用いた感染後24時間の測定値を示す。(C-D)野生型C57BL/6由来のBMDM、BMDC、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDM)の培養上清中のIL-6の定量的測定値。図41Cは、BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の測定結果を示す。図41Dは、BCG-disA-OE(Pasteur)感染後24時間の測定値を示している。マクロファージとBCGの感染比=1:20。データは、平均±SEMを表す(n=3レプリケート)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図42図42は、c-di-AMPを過剰発現するBCGが、STING依存的に炎症性サイトカインTNF-αを強く誘導することを示している。BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMおよびSTING-KOBMDM(C57BL/6J-Tmem173gt/J)の培養上清中のTNF-αの定量的測定。マクロファージとBCGの感染比=1:20。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicate)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図43図43A~43Eは、BCG-disA-OEが、WT BCGと比較して、有意に高いTh1サイトカインおよびケモカインを誘導することを示している。図43Aは、野生型BCG(Tice)およびBCG-disA-OE(Tice)株による感染後6時間のIFN-γ活性化マクロファージにおける異なるサイトカインおよびケモカインの相対的遺伝子発現解析を示す図である。(B-D)野生型BCG(パスツール)株およびBCG-disA-OE(パスツール)株による感染後6時間のIL-6,IL-12およびMCP-1IFN-γ活性化マクロファージの相対遺伝子発現解析。β-actinは参照遺伝子として用い、相対発現量は2ΔΔCT法で算出した。データは平均値±SEM(n=3 replicates)を表す。スチューデントのt-検定(両側)。図43Bは、IL-6の相対的な遺伝子発現を示す。図43Cは、IL-12の相対的な遺伝子発現を示す。図43Dは、MCP-1の相対的な遺伝子発現を示す。図43Eは、BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMの培養上清におけるMCP-1の定量的測定を示す図である。マクロファージとBCGの感染比=1:20。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicate)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図44図44A-44Cは、異なるBCG株の感染後のマウスBMDMsおよびJ774.1マクロファージにおけるアポトーシス誘導の差異を示す図である。(A-B)マウスBMDMsおよびJ774.1マクロファージに、1:10のMOIでWTまたはBCG-disA-OE株を24時間チャレンジし、アポトーシス細胞死をアネキシン染色およびPI染色によりアクセスした。個々の感染アッセイからの代表的なデータ。図44Aは、マウスBMDMにおける測定値を示す。図44Bは、J774.1マクロファージにおける測定値を示す。図44Cは、感染後の後期アポトーシス細胞死の定量化を示す棒グラフである。データは、平均±SEMを表す(n=3複製)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05
図45図45A-45Cは、ヒト尿路上皮癌細胞におけるWT株およびBCG-disA-OE株の内在化および毒性の差異化を示す。(A-C)異なるMOIの野生型BCGに曝露したRT4(グレードIの癌腫を表すヒト膀胱癌細胞株)、5637(グレードIIの癌腫を表すヒト膀胱癌細胞株)およびJ82(グレードIIIを表すヒト膀胱癌細胞株)細胞の細胞生存率を示す。細胞生存率は、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability assayを使用して測定した。図45Aは、RT4細胞の細胞生存率を示す。Fig.45Bは、5637細胞の細胞生存率を示す。Fig.45Cは、J82細胞の細胞生存率を示す。
図46図46A~46Dは、c-di-AMPを過剰発現するBCGタイスが、尿路上皮癌細胞における抗腫瘍サイトカイン応答のより強い誘導体であることを示す。(A-D)異なる野生型BCG(Tice)およびBCG-disA-OE(Tice)株の感染24時間後の異なる尿路上皮癌細胞における、ELISAを用いた差分TNF-α,IL-6,IL-1β and IFN-γレベルの定量的測定。細胞とBCGの感染比=1:20、データは平均値を表す±SEM(n=3 replicates)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001.Fig.46Aは、TNF-αレベルを示す。Fig.46Bは、IL-6レベルを示す。図46Cは、IL-1βレベルを示す。Fig.46Dは、IFN-γレベルを示す。
図47図47A~47Gは、c-di-AMPを過剰発現するBCGパスツールは、尿路上皮癌細胞における抗腫瘍サイトカイン応答のより強い誘導剤であることを示す。(A-G)異なる野生型BCG(Pasteur)およびBCG-disA-OE(Pasteur)株の感染後24時間の異なる尿路上皮癌細胞におけるELISAを用いた差分サイトカインレベルの定量的測定。細胞とBCGの感染比=1:20。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicate)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001.図47Aは、5637細胞におけるTNF-αレベルを示す。Fig.47Bは、BBN975細胞におけるTNF-αのレベルを示す。Fig.47Cは、UPPL1595細胞におけるIl-6レベルを示す。図47Dは、MB49細胞におけるIL-1βレベルを示す。図47Eは、UPPL1595細胞におけるIL-1βレベルを示す。図47Fは、BBN975細胞におけるIFN-γレベルを示す。図47Gは、NBT-II細胞におけるIFN-γレベルを示す。
図48図48A~48Bは、c-di-AMPを過剰発現するBCG株の感染後、M1表現型に向かってより強くマクロファージ再プログラム化することを示す。図48Aは、異なるBCG株で、1:10MOIで24時間感染させた野生型BMDMを示す。細胞表面および細胞内の株化を行い、細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター。棒グラフは、野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG Tice株とPasteur株の感染後のTNF-α陽性抗原提示マウスマクロファージの割合(MHC Class II+CD11b+F4/80+)を示す。データはFlow Joソフトウェア(Tree Star v10)を用いて処理した。図48Bは、抗原産生M1マクロファージの異なる細胞表現型を示す代表的なフロープロットである。データは、平均±SEM(n=3複製)を表す。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図49図49A~49Bは、c-di-AMPを過剰発現するBCG株の感染後、M2マクロファージの再プログラム化がより強くなったことを示している。図49Aは、野生型に感染した後のマウスBMDMマクロファージ(CD11b+F4/80+)上のM2マクロファージ表面マーカー(CD206+CD124+)陽性のパーセンテージである。図49Bは、M2マクロファージ(CD206+CD124+マウスマクロファージ)集団のIL-10産生マクロファージのパーセンテージを示す図である。簡単に言うと、野生型BMDMを、マウスM-CSFの存在下で生成した。マクロファージは、異なるBCG株で、1:10MOIsで24時間感染させた。細胞表面および細胞内の絞込みを行い、細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star V10)を用いて処理した。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicates)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図50図50A~50Bは、野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG株の感染後のマウスBMDMにおいて、IL-10を分泌する単球性MDSCがより強く誘導されることを示す図である。図50Aは、全骨髄系細胞(CD45+)のM-MDSCsの割合を示している。図50Bは、WT株およびBCG-disA-OE株をマウスBMDMに感染させた後のIL-10産生M-MDSCsの割合を示す図である。簡単に言うと、野生型BMDMマクロファージを、異なるBCG株と、1:10MOIで24時間感染させた。細胞表面および細胞内の株化を行い、細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star V10)を用いて処理した。データは平均値を表す±SEM(n=3 replicates)。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図51図51A~51Bは、野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG Ticeの感染後の古典的(炎症性)単球の差次的誘導を示す図である。図51Aは、CD11b集団の古典的単球(CD14+CD16-)のパーセンテージを示す棒グラフである。簡単に言えば、ヒト単球は、異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCから単離された。陰性に選択されたヒト単球を、野生型およびBCG-disA-OE株に24時間感染させた(1:10MOIs)。図51Bは、単球集団の異なる割合を示す代表的なフローサイトメトリープロットである。細胞表面染色を実施し、フローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター)を用いて細胞を分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star V10)を用いて処理した。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図52図52A~52Bは、ヒト単球由来マクロファージにおける炎症性サイトカインの強力な誘導剤として、c-di-AMPを過剰発現させたBCGを示す。図52Aは、TNF-α(TNF-α+HLA-DR+/CD14+CD16-)及びIL-6(IL-6+HLA-DR+/CD14+CD16-)を産生するMHCクラスII陽性古典マクロファージの割合を示すバーダイアグラムである。簡単に言うと、ヒト単球は、異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCから単離された。陰性に選択されたヒト単球はマクロファージに分化させた。マクロファージは、野生型およびBCG-disA-OE株で24時間感染させた(1:10MOIs)。図52Bは、マクロファージ集団の異なる割合を示す代表的なフローサイトメトリープロットである。細胞表面染色を行い、細胞を、フローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star V10)を使用して処理した。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図53図53A~53Cは、c-di-AMPを過剰発現するBCGが、M2マクロファージの表現型を強く抑制することを示す図である。図53Aは、全遷移型(CD14+CD16+)マクロファージのうち、免疫抑制性M2(CD206+CD163+)マクロファージの割合を示す図である。図53Bは、WTおよびBCG-disA-OE Tice株をHMDMに感染させた後の、全M2マクロファージ(CD206+CD163+)のIL-10産生マクロファージのパーセンテージを示す図である。図53Cは、M2細胞表面の表現型とM2マクロファージのIL-10産生細胞を示す代表的なフローサイトメトリープロットである。簡単に言うと、ヒト単球を、異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCから単離した。陰性に選択されたヒト単球は、M-CSFの存在下でM2マクロファージに分化させた。24時間感染させ(1:10MOIs)、細胞表面染色および細胞内染色を行った。データは平均±SEM(健康なヒトドナーからの単球由来マクロファージで行ったn=3レプリケート実験)。Student’s t-test(両側)。*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001,****p<0.0001
図54図54は、BCGを過剰発現したc-di-AMP感染マクロファージが貪食作用を増強したことを示す図である。HMDMをWTBCGおよびBCG-disA-OE株に6時間感染させ、貪食活性を、細胞内のFITC-ラベル化IgG-オプソン化ラテックスビーズを定量することにより測定した。画像は生細胞で取得した。核染色はHoechst.を用いて行った。画像取得はLSM700共焦点顕微鏡を使用し、63倍の倍率で行った。画像はFijiソフトウェアで処理した。細胞とBCGの感染比=1:10。データは平均値±SEM(健康なヒトドナーからの単球由来マクロファージに対して行ったn=3レプリケート実験)である。Student’s t-test(両側)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、***p<0.0001。図54は、蛍光の定量化を示す棒グラフである。
図55図55A~55Bは、c-di-AMPを過剰発現するBCGが、初代ヒト単球における炎症性サイトカインの強力な誘導剤であることを示す。(A-B)BCG-disA-OEは、WTBCGと比較して、初代ヒト単球におけるTNF-αおよびIL-6の有意に高い遺伝子発現を誘導する。TNF-αとIL-6の発現は、qRT-PCRを用いて、異なる健康なドナーから単離された初代ヒト単球でアクセスされた。RNU6Aを参照遺伝子として使用し、相対発現量は2ΔΔCT法で算出した。データは平均値±SEMを表す(n=6人の異なる健常者ドナー)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001.図55Aは、TNF-αレベルを示す。Fig.55Bは、IL-6レベルを示す。
図56図56A~56Eは、訓練後のヒト単球における訓練された免疫エピジェネティックマークのより強い誘導者としてc-di-AMPを過剰発現させたBCGを示す。(A-B)TNF-α及びIL-6遺伝子プロモーター上のエピジェネティック活性クロマチンマークH3K4me3を示す棒グラフである。Pam3CSK4による再刺激後の、異なるドナー(n=4人の異なる健康なドナー)から単離されたBCG訓練されたヒト単球におけるエピジェネティック修飾TNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーターの倍率濃縮度。H3K4-トリメチル化プロモーターを濃縮し、ChIP-PCRを用いて定量化した。図56Aは、TNF-α遺伝子プロモーター上のH3K4me3レベルを示す。図56Bは、IL-6遺伝子プロモーター上のH3K4me3レベルを示す。(C-D)TNF-αとIL-6遺伝子プロモーター上のエピジェネティック不活性クロマチンマーク、H3K9me3を示す棒グラフである。Pam3CSK4による再刺激後、異なるドナー(n=4人の異なる健康なドナー)から分離したBCG訓練ヒト単球におけるエピジェネティックに修飾されたTNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーターの倍率濃縮度。H3K9でトリメチル化されたプロモーターは、ChIP-PCRを用いて濃縮され、定量化された。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。図56Cは、TNF-α遺伝子プロモーター上のH3K9me3レベルを示す図である。図56Dは、IL-6遺伝子プロモーター上のH3K9me3レベルを示す図である。図56Eは、生体外BCGトレーニングの模式図である。
図57図57A~57Cは、NMIBCのMNU発癌性モデルにおいて改善された抗腫瘍活性を示すc-di-AMPを過剰発現するBCGを示す図である。図57Aは、 NMIBCのMNU発癌性モデルにおけるBCGの膀胱内治療戦略の模式図である。図57Bは、腫瘍浸潤指数を示すグラフバーである。図57Cは、腫瘍の病期分類を示すグラフである。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図58図58A~58Cは、インビボで病原性が減弱されたBCG-disA-OE株を示す。図58Aは、BALB/cBCGエアロゾルチャレンジモデルを示す図である。図58Bは、感染後4週間のマウス肺における野生型およびBCG-disA-OE株のBALB/cマウス肺桿菌負担を示す。データは平均±S.E.M.(n=5匹/群)である。図58Cは、BALB/cマウスにおけるエアロゾルチャレンジ後のBCG株の移植(01日目)を示す。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図59図59A~59Cは、エアロゾル感染の重度免疫不全(SCID)マウスモデルにおいて病原性が減弱されたc-di-AMPを過剰発現するBCG株を示す図である。図59Aは、BCGエアロゾル感染のSCIDマウスモデルを示す図である。図59Bは、異なるBCG株で感染した後のSCIDマウス(n=10)の生存率を示す図である。図59Cは、SCIDマウスにおけるエアロゾルチャレンジ後のBCG株の移植(01日目)を示す図である。Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図60図60A~60Dは、c-di-AMPを過剰発現するBCGが、in vivoにおいてTh1サイトカインをより強く誘導することを示している。(A-B)ELISAを用いて、異なるBCG株で感染後4週間におけるBALB/cマウスの肺ホモジネート中のIFN-β、TNF-α、IL-6及びIFN-γの定量的レベルを測定する。図60Aは、WTBCG(Tice)およびBCD-disA-OE(Tice)を用いた結果である。図60Bは、WTBCG(Pasteur)およびBCD-disA-OE(Pasteur)を用いた結果を示す図である。(C-D)ELISA法を用いた、異なるBCG株による感染後4週間のBALB/cマウスの肺ホモジネート中のIFN-β、TNF-α、IL-6およびIFN-γの定量的レベル。図60Cは、WTBCG(Tice)およびBCD-disA-OE(Tice)を用いた結果である。図60Dは、WTBCG(Pasteur)およびBCD-disA-OE(Pasteur)を用いた結果を示す図である。結果は、平均値(pg/ml)±SEMとして表される(n=4動物/群)。スチューデントのt-検定Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
図61図61A~61Bは、膀胱癌のMB49モデルにおいて、より大きな抗腫瘍活性をもたらすc-di-AMPを過剰発現するBCGの治療的腫瘍内注入を示す図である。図61Aは、腫瘍の腫瘍内注入の模式図である。マウスは0日目に1x105 MB 49細胞を移植され、その後、グループの平均が~40mm3になるまで腫瘍体積をアクセスされた。その時点で,マウスを5x106野生型またはBCG-disA-OE株で,総容量50μLまたはPBS単独で3rd日ごとに,合計3回処理した.図61Bは,図61Aに示した処理に続いてビヒクル(PBS),野生型およびBCG-disA-OEで処理したMB49担癌動物の腫瘍伸長を示す.二元配置分散分析(Two-way ANOVA)。
図62図62A~62Dは、c-di-AMPを過剰発現するBCGが、腫瘍内投与後に腫瘍部位にIFN-1FEのより強い浸潤を誘導することを示す図である。(A-B)腫瘍から単離した単一細胞における全CD3集団のCD4またはCD8の割合の相対的存在量を示す点描画。図62Aは、CD4細胞のパーセンテージを示す。図62Bは、CD8細胞のパーセンテージを示す。(C-D)BCG-disA-OEを受けた腫瘍から単離した単一細胞内のインターフェロン-1FE産生CD4T細胞のより高い割合を示すドットプロットである。図62Cは、CD4細胞中のINF-γ+細胞のパーセンテージを示す。図62Dは、CD8細胞中のINF-γ+細胞のパーセンテージを示す。インターフェロン-1D6FE産生CD8T細胞の割合に有意な変化は観察されなかった。簡単に言うと、PBSまたはBCG株を腫瘍内に投与した後、摘出した腫瘍から単細胞を調製した。細胞表面および細胞内サイトカイン染色を行い、フローサイトメトリーで細胞を分析した。スチューデントのt-検定Student’s t-test(two-tailed)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、この発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供するものである。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed.、R. Riegerら(eds.), Springer Verlag (1991); and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に断らない限り、それらに付与された意味を有する。
【0024】
「薬剤」とは、低分子化合物、抗体、核酸分子、ポリペプチド、またはそれらの断片を意味する。
【0025】
「変化」とは、本明細書に記載されるような当技術分野で既知の標準的な方法によって検出される、遺伝子またはポリペプチドの発現レベルまたは活性の変化(増加または減少)を意味する。本明細書で使用されるように、変化には、発現レベルの10%の変化、好ましくは25%の変化、より好ましくは40%の変化、最も好ましくは50%以上の変化が含まれる。
【0026】
「改善する」とは、疾病の発生や進行を減少させる、抑制する、減衰させる、阻止する、安定化させることを意味する。
【0027】
「アナログ」とは、同一ではないが、類似の機能的または構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類似体は、対応する天然に存在するポリペプチドの生物学的活性を保持する一方で、天然に存在するポリペプチドと比較して類似体の機能を増強する特定の生化学的修飾を有する。このような生化学的修飾は、例えば、リガンド結合を変えることなく、アナログのプロテアーゼ耐性、膜透過性、または半減期を増加させることができる。アナログは、別の例では、非天然アミノ酸を含んでいてもよい。
【0028】
「cdnP」とは、1)環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cdnP)タンパク質をコードするcdnP遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼタンパク質のいずれかを意味する。例えば、NCBI Gene ID 888920を有するH37Rv、Rv2837cのM. .tuberculosis cdnP遺伝子や、UniProtKB/Swiss-Prot P71615.2のcdnPタンパク質を挙げることができる。
【0029】
「cGas」とは、1)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質をコードするcGas遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状GMP-AMP合成酵素タンパク質のいずれかを意味する。cGasの例としては、H.sapiensのcGAS遺伝子(NCBI Gene ID:115004)およびこの遺伝子によってコードされるタンパク質(UniProtKB/Swiss-Prot:Q8N884.2)が挙げられる。cGasタンパク質は、2'3'cGMPを作るヒト由来のcyclic GMP-AMP合成酵素である。2'3'cGMPは、ヒトではSTINGアゴニストである。
【0030】
例えばcGASの「シクラーゼドメイン」とは、Kranzuschら(CellReports2013;3:1362-1368PMID23707061)に記載のヒトcGASタンパク質の522アミノ酸の一部又は断片をいう。シクラーゼドメインは、アミノ酸160~330に位置するNTaseコアと、アミノ酸330~522に位置するCドメインである調節センサードメインとを有すると表現することができる。NTアーゼコア配列の変異体および制御センサードメインの変異体は、DNA結合による活性化の通常の要件なしに高レベルのcGAMPを生成するように設計されたcGAMPの構成的活性変異体を生成するために使用されることができる。サイクラーゼドメインの別の例には、NCBI Gene ID:887485のM. tuberculosis Rv1354c、及びこの遺伝子によってコードされるタンパク質(UniProtKB/Swiss-Prot:P9WM13)が含まれ、これは、(そのGGDEFドメイン、アミノ酸201~400を介して)c-ジGMP(環状ジグアニル酸又は環状ジGMP)合成と(そのEALドメイン、アミノ酸401~623を介して)分解との双方ができる623アミノ酸長のタンパク質がエンコードされるものである。GAFドメイン(アミノ酸1-200)は、調節ドメインである。GGDEFドメイン、制御センサーであるGAFドメインの変異体、EALドメイン(ホスホジエステラーゼ活性)を除去したポリペプチドを用いると、高レベルのc-di-GMPを生成するように設計されたRv1354cの構成的活性変種を生成することが可能である。
【0031】
「DisA」または「disA」は、1)DNAインテグリティスキャン(DisA)タンパク質をコードするDisA遺伝子または核酸配列、または2)DNAインテグリティスキャンタンパク質のいずれかを意味する。例えば、NCBI Gene ID:887485のM. tuberculosisdisA遺伝子Rv3586が挙げられ、この遺伝子によってコードされるタンパク質はUniProtKB/Swiss-Prot:P9WNW5.1である。このタンパク質は、Dey & Bishai ら、Nature Medicine 2015;21:401-6に記載された358アミノ酸長のダイアデニル酸シクラーゼである。PMID: 25730264に記載されている。DisAタンパク質は、c-di-AMPを作るジアデニル酸シクラーゼであり、c-di-AMPはSTINGアゴニストである。
【0032】
「病気」とは、細胞、組織、器官の正常な機能を損傷したり、妨げたりするあらゆる状態や障害を意味する。疾患の例としては、膀胱癌が挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
dncVとは、細胞のシグナル伝達におけるセカンドメッセンジャーであるGTPとATPから3'3'-cyclic GMP-AMP (3'3'-cGAMP)を合成するCyclic GMP-AMP synthaseをコードする遺伝子を意味する。dncVは、ATPとGTPからそれぞれc-di-AMPとc-di-GMPを生成することができるが、真核生物が生成する2'3'-cGAMPとは異なり、生体内では3'3'-cGAMPが支配的な分子となる。dncVは、V.choleraeの腸管への効率的な定着に必要であり、定着に影響を与える化学走性プロセスをダウンレギュレートする。dncVはdATP、TTP、UTP、CTPでは活性を示さない。DncVタンパク質は、V.cholerae由来のcyclic GMP-AMP合成酵素であり、3'3'cGAMPを作る。3'3'cGAMPはSTINGアゴニストである。
【0034】
「EALドメイン」とは、多様な細菌のシグナル伝達タンパク質に存在する保存されたタンパク質ドメインを意味する。EALドメインは、ジグアニル酸ホスホジエステラーゼとして機能する可能性があり、セカンドメッセンジャーであるcyclicdi-GMPの分解を促進することが示されている。非機能的なEALドメインは、これらの機能のうちの1つ以上を有さない。EALドメインの例としては、NCBI Gene ID:886815のM. tuberculosis Rv1357c遺伝子があり、この遺伝子がコードする307アミノ酸長のタンパク質は、UniProtKB/Swiss-Prot:P9WM07で、c-di-GMPホスホジエステラーゼ(PDE)をコードし、唯一のEALドメインで構成されている。本酵素の活性は、c-di-GMPホスホジエステラーゼとして、環状ジヌクレオチド(シグナル伝達活性を持つ)を2つのGMP分子(シグナル伝達活性を持たない)に切断するものであることが、表題の論文に記述されている通りである。" A full-length bifunctional protein involved in c-di-GMP turnover is required for long-term survival under nutrient starvation in Mycobacterium smegmatis,," Bharati BK, Sharma IM, Kasetty S, Kumar M, Mukherjee R, Chatterji D. Microbiology. 2012 Jun;158(Pt 6):1415-27。 doi: 10.1099/mic.0.053892-0. Epub 2012 Feb 16.PMID: 22343354.EALドメインの他の例としては、Jain-Dey Bishaiら、Nat Chem Biol. 2017;13:210-217 PMID 28106876によって示された、ヒト2'-3'cGAMP(ヒトcGAS酵素の産物)を加水分解する能力を有するEALドメインからなる、H37Rv(Rv2837c)のM. tuberculosis cdnP遺伝子によってコードされている336アミノ酸長のタンパク質が含まれる。EALドメイン(環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼ活性)およびGGDEFドメイン(環状ジヌクレオチド環化生合成活性)の構造特性は知られており、よく説明されている(例えば、Schirmer T, Jenal U. Structural and mechanistic determinants of c-di-GMP signaling. Nat Rev Microbiol. 2009;7:724-35. PMID: 19756011に記載されている)。
【0035】
「有効量」とは、未治療の患者と比較して、疾患の症状を改善するために必要な量を意味する。疾患の治療的処置のために本発明を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与の方法、被験者の年齢、体重、および一般的な健康状態によって変化する。最終的には、主治医または獣医師が、適切な量および投与レジメンを決定する。このような量は「有効」量と呼ばれる。
【0036】
「dncV」とは、1)環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質をコードするdncV遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状GMP-AMP合成酵素タンパク質のいずれかを意味する。例えば、NCBI Gene ID:2614190のVibrio cholerae dncV遺伝子、及びこの遺伝子によってコードされるタンパク質は、UniProtKB/Swiss-Prot: Q9KVG7.1が挙げられるが、これに限定されるものではない。Q9KVG7.1
【0037】
「断片」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の一部分を意味する。この部分は、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよい。
【0038】
「遺伝子欠失」とは、当業者によく知られた対立遺伝子交換法を用いて、BCGの染色体から目的の遺伝子の全コード領域を欠失させることを意味する。抗生物質耐性カセットなどの選択マーカーによる遺伝子置換は、対立遺伝子交換の一形態であり、実施することができる。また、遺伝子が完全に欠失し、その代わりに選択可能なマーカーが導入されていない無印の欠失(no selectable marker)を作製する技術も利用可能である。
【0039】
「遺伝子ドメイン削除」とは、特定のドメイン(本発明の場合、多機能ポリペプチドのCDNホスホジエステラーゼドメインをコードするRv1354cのEALドメイン)をコードする遺伝子の部分を、ポリペプチドの他の部分をそのまま、フレーム内に残して削除する上記の対立遺伝子交換方法論を使用することを意味する。
【0040】
「H.sapiens」とは、ホモ・サピエンスのことである。
【0041】
「薬剤を入手する」という意味での「入手」は、薬剤の合成、購入、その他の入手方法を意味する。
【0042】
「過剰発現」とは、一般的な意味において、対応するタンパク質を野生型または参照遺伝子よりも大量に発現している遺伝子を意味する。本発明においてタンパク質を過剰発現する遺伝子を作成する例としては、目的の遺伝子をコードするDNAを、Phsp60などのBCGにおける強力なプロモーター、あるいはPtetOFFなどの条件付きで活性の高いプロモーターに融合させることが挙げられる。PtetOFFでは、テトラサイクリン、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリンの存在下で遺伝子発現がOFFになるが、ヒトや動物モデルの免疫療法として組換えBCGを投与すると、目的の遺伝子がONになるという。この条件付き活性化戦略は、環状ジヌクレオチド産生酵素の強い過剰発現がBCG生体に及ぼすかもしれない生存率や成長率への悪影響を、BCGが増殖している間は防止し、BCG免疫療法が哺乳動物宿主に治療として与えられる場合にのみ強い発現(「過剰発現」)を可能にするという利点を有する。
【0043】
Mtbとは、結核菌のことである。
【0044】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の類似体または模倣体であるアミノ酸ポリマーに、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、例えば、炭水化物残基の付加によって修飾され、糖タンパク質を形成することができる。ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」という用語は、糖タンパク質だけでなく、非糖タンパク質も含む。
【0045】
「低減」または「減少」は、例えば、少なくとも約10%、25%、50%、75%、または100%、あるいはその間の任意の割合の負の変化を意味する。
【0046】
「増加」とは、例えば、少なくとも約10%、25%、50%、75%、100%、またはその間の任意の割合の正の変化を意味する。
【0047】
「基準」とは、標準的な、あるいは対照的な状態を意味する。
【0048】
「参照配列」とは、配列比較の基準として使用される定義された配列を意味する。参照配列は、例えば、全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメント、または完全なcDNAまたは遺伝子配列のような、規定された配列のサブセットまたは全体であってもよい。ポリペプチドの場合、参照ポリペプチド配列の長さは、一般に、少なくとも約16アミノ酸、好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、さらに好ましくは約35アミノ酸、約50アミノ酸、または約100アミノ酸であろう。核酸の場合、参照核酸配列の長さは、一般に、少なくとも約50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75ヌクレオチド、さらに好ましくは約100ヌクレオチドもしくは約300ヌクレオチドまたはその前後の任意の整数になるだろう。
【0049】
「参照BCG株」とは、例えば、cdnP機能タンパク質、Rv1354c機能タンパク質、Rv1357c機能タンパク質、またはそれらの組み合わせを発現することができない本発明の発現ベクターおよび/または内在性遺伝子を含まない従来のBCG株を意味する。
【0050】
「制御性DNA認識能力」とは、タンパク質がDNAを検出したり結合したりする能力を意味する。例えば、cGASタンパク質は、細胞質DNAなどのDNAと結合し、GTPとATPの反応を引き起こしてcyclicGMP-AMP(cGAMP)を形成することが知られている。cGAMPはStimulator Interferon Genes(STING)に結合し、TBK1を介してIRF3のリン酸化を誘発させる。
【0051】
「Rv1354c」とは、1)Rv1354cタンパク質をコードするRv1354c遺伝子もしくは核酸配列、または2)Rv1354cタンパク質(例えば、Gupta, Kumar, and Chatterji; PLoS ONE (November, 2010); Vol.5; Issue 11; and Bhariati, Sharma, Kasetty, Kumar, Mukherjee, and Chatterji; Microbiology (2012), 158, 1415-1427)、を意味している。Rv1354cタンパク質は、c-di-GMPを生成するジグアニル酸シクラーゼである。C-di-GMPはSTINGアゴニストである。
【0052】
「Rv1357c」とは、1)環状ジ-GMPホスホジエステラーゼ蛋白質(Rv1357)蛋白質をコードするRv1357遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状ジ-GMPホスホジエステラーゼ蛋白質(e.g. , Gupta, Kumar, and Chatterji; PLoS ONE (November, 2010); Vol.5; Issue 11; and Bhariati, Sharma, Kasetty, Kumar, Mukherjee, and Chatterji; Microbiology(2012), 158, 1415-1427)が知られている。Rv1357cタンパク質は、c-di-GMPを作るジグアニル酸シクラーゼである。C-di-GMPはSTINGアゴニストである。
【0053】
STINGアゴニストとは、STING(インターフェロン遺伝子刺激因子、TMEM173)に結合して活性化し、IRF3-TBK1経路を活性化させて、1型インターフェロンやその他の遺伝子の転写を増加させる分子を意味する。
【0054】
「CDN」とは、3'-5'c-di-AMP、3'-5'c-di-GMP、3'-3'cGAMP(3′-5′,3′-5′cGAMPとも呼ばれる。または2'-3'cGAMP(2'-5'、3'-5'cGAMP、ヒトcGASタンパク質の産物としても知られている)。
【0055】
PAMPとは、Pathogen associated molecular pattern(病原体関連分子パターン)を意味する。PAMPは、自然免疫センサーによって認識される小分子を含む微生物産物である。PAMPの例としては、3'-5' c-di-AMP, 3'-5' c-di-GMP, 3'-3' cGAMPが挙げられる。
【0056】
DAMPとは、danger associated molecular pattern(危険関連分子パターン)を意味する。DAMPは、宿主由来(つまり、ヒト、マウス、または他の哺乳類疾患モデル)の分子であり、感染や正常な生理機能の他の狂いなどの危険を知らせるために産生されるものである。DAMPの一例として、2'-3'cGAMPがある。これは、ウイルスや特定の細胞内細菌に感染した際に、細胞質内の二本鎖DNAを検出すると、宿主のセンサー酵素cGASによって産生されるものである。
【0057】
panCDとは、生合成遺伝子panC(パント酸-β-アラニンリガーゼ酵素活性を有するPanCタンパク質をコードする)および生合成遺伝子panD(アスパラギン酸1-脱炭酸酵素活性を有するPanDタンパク質をコードする)をコードする細菌などの遺伝子オペロンを意味する。PanCとPanDタンパク質は、パントテン酸またはパントテン酸(ビタミンB5(ビタミンBの一種)とも呼ばれる)の生合成に必要である。パントテン酸は水溶性ビタミンで、細菌およびBCGを含むすべてのマイコバクテリアに必須の栄養素である。パントテン酸は、コエンザイムA(CoA)を合成するために、また、タンパク質、炭水化物、脂肪を合成し、代謝するために必要である。
【0058】
「特異的に結合する」とは、例えば、ポリペプチドや核酸配列を認識して結合するが、試料中の他の分子を実質的に認識して結合しない化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、抗体などを意味する。
【0059】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を意味する。好ましくは、このような配列は、比較に使用される配列に対して、アミノ酸レベルまたは核酸で少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、さらに好ましくは90%、95%または99%さえ同一である。配列の同一性は、典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)。このようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、および/または他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列を照合する。保存的置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する例示的なアプローチでは、BLASTプログラムが使用され、e-3~e-100の確率スコアは、密接に関連した配列を示す。
【0060】
「被験者」とは、哺乳動物を意味し、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ネコなどを含むが、これらに限定されない。
【0061】
「感度」とは、特定の疾患を持つ被験者の割合のことである。
【0062】
「特異度」とは、特定の疾患を有すると正しく認識された被験者の割合、すなわち、正常または健康な被験者の割合を意味する。例えば、特異度は、正常な健康な被験者(例えば、非癌の被験者)と比較した、特定の疾患を持つ被験者の数として計算される。
【0063】
「訓練された免疫」とは、ある抗原刺激によって、後に投与される別の抗原に対してより強力な免疫応答を誘発する能力を意味する。訓練された免疫は、抗原に依存せず、異種CD4およびCD8メモリの活性化に基づき、サイトカインを介し、エピジェネティックおよび代謝的な変化と関連している。
【0064】
「Phsp60」または「Phsp65」とは、Mycobacterium leprae Hsp65 5'UTRに由来する強力なマイコバクテリアプロモーターを意味する。
【0065】
「5'UTR」とは、遺伝子の5'非翻訳領域を意味する。
【0066】
3'UTRとは、遺伝子の3'非翻訳領域を意味する。
【0067】
「WT」は、野生型を意味する。
【0068】
「BCG-WT」とは、Mycobacterium bovis bacillus Calmette Guerinの野生型株を意味する。
【0069】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内のすべての値の略記であると理解されるものとする。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9からなる群からの任意の数、数の組合せ、または小範囲を含むと理解されるものである。10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群から選択される任意の数の組合せまたは小範囲を含むものと理解する。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「処置する」、「治療」などは、障害及び/又はそれに関連する症状を軽減又は改善することを指す。妨げられるものではないが、障害または状態を治療することは、障害、状態、またはそれに関連する症状を完全に除去することを必要としないことが理解されよう。
【0071】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、または文脈から明白でない限り、「または」という用語は包括的であると理解される。本明細書で使用される場合、具体的に記載されているか、または文脈から明らかでない限り、用語「a」、「an」、および「the」は、単数または複数であると理解される。
【0072】
特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、用語「約」は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.文脈から明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語で修飾されている。
【0073】
本明細書で使用される「comprise」、「comprising」、「containing」および「having」などは、米国特許法においてそれらに付与された意味を有することができ、「含む」、「含む」などを意味できる。「consisting essentially of」または「consists essentially」は同様に米国特許法において付与された意味を有している。この用語はオープンエンドであり、記載されているものの基本的または新規な特性が記載されているもの以上のものの存在によって変化しない限り、記載されているもの以上のものの存在を許容するが、先行技術の実施形態は除外される。
【0074】
本明細書に提供される任意の組成物または方法は、本明細書に提供される他の組成物および方法のいずれか1つ以上と組み合わせることができる。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「防止する」、「予防的治療」などは、障害または状態を有していないが、障害または状態を生じるリスクがある、または生じやすい対象において、障害または状態を生じる確率を低減することを意味する。
【0076】
そのような治療(手術及び/又は化学療法)は、膀胱癌又は疾患、障害、若しくはその症状に苦しんでいる、持っている、罹りやすい、又はリスクがある対象、特にヒトに好適に実施される。それらの被験者の「リスクがある」という判断は、診断試験または被験者もしくは医療提供者の意見(例えば、、遺伝子試験、酵素またはタンパク質マーカー、マーカー(本明細書に定義される)、家族歴など)による任意の客観的または主観的な判断により行うことができる。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌に罹患しやすい又はそれを有する被験者の決定は、マーカーのうちの少なくとも1つのレベルを測定することによって決定される。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明は、組換えBCG(以下、「rBCG」)株を生成するMycobacterium bovis BCG(以下、「BCG」)の遺伝子改変に関するものである。これらの株は、(i)結核ワクチン及び/又は(ii)非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対する免疫療法として、より大きな効力を有する。本発明のいくつかの実施形態は、マクロファージ、樹状細胞などのヒト貪食細胞から貴重な免疫調節応答を引き出すことが知られている環状ジヌクレオチド(CDN)を高レベルで合成および分泌するBCG株に関するものである。本発明の別の実施形態は、BCGの遺伝子改変を組み合わせて、新規CDN合成遺伝物質の添加および/またはCDNの蓄積および放出を増強する内因性BCGホスホジエステラーゼ遺伝子もしくは遺伝子ドメインの変異を含む多価CDN-過剰発現改変を生成することである。
【0078】
BCG
【0079】
BCG(Bacillus Calmette Guerin)は、1921年にフランスの微生物学者CalmetteとGuerinが、13年間にわたり病原性Mycobacterium bovisを継代して作り出した変異型である。1921年から1960年にかけて、BCGは世界の多くの研究所で連続継代され、その後、定められたシードロットが確立され、標準研究所に保管されるようになった。そのため、BCGパスツール、BCGタイス、BCG東京、BCGデンマーク、BCGモントリオールなど、世界中に何十種類ものBCGが存在する。現在、現存するBCG株の大半は、全ゲノム配列の解読により定義されている。強毒性M.bovisと様々なBCG株の主な違いには、強毒性M. tuberculosisと比較して、BCGではゲノム欠失を構成する少なくとも15の相違領域が欠失されていることが含まれる。BCGの発生における主要な差異領域は、RD1(9.5kbの欠失によりEsx-1分泌系が失われ、抗原ESAT-6およびCFP-10を放出できなくなる)およびRD3(9.2kb欠失)である。RD4-RD11の領域は、強毒性結核菌と比較して、すべてのBCG株で欠損している。
【0080】
1920年代から、BCGは結核予防のためのワクチンとして使用されてきた。2004年には、約1億人の子どもたちにBCGが接種されたと推定されており、導入以来、約50億人の人々に接種され、歴史上最も広く利用されているワクチンといえる。出生時に皮内接種されるのが最も一般的で、現在でも米国、カナダ、欧州の一部を除くほとんどの国で接種されている。BCGは小児播種性結核の発生率を低下させることが示されているが、BCG接種者が結核のリスクから完全に保護されるわけではない。
【0081】
1977年以降、BCGは筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対する癌免疫療法としても広く使用されるようになった。BCGは毎週6週間膀胱内に投与され、高リスクの疾患などでは、初回治療から3、6、12、18、24、30、36カ月後に毎週3週間維持療法として投与される。BCGの膀胱内投与は、(i)CD4T細胞とマクロファージを主体とする単核球浸潤を誘導し、(ii)膀胱におけるインターフェロンγ(IFNγ)の発現を増加させ、(iii)尿中サイトカインのIL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IFNγおよびTNFαレベルを増大することが示されている。
【0082】
BCGは(i)結核のワクチンとして、(ii)NMIBCの免疫療法として、世界的に広く使用されているにもかかわらず、その効果にはかなりの改善の余地があるとされている。結核の場合、BCGは主に小児播種性結核に対して部分的な防御を与えるに過ぎません。NMIBCの場合、患者の約30%がBCG耐性である。これらの患者は、よりリスクの高い全身化学療法を必要とし、より浸潤性の高い膀胱癌に進行する割合も高くなる。
【0083】
尿路上皮がん
【0084】
膀胱の尿路上皮がんは、尿路系の悪性腫瘍の中で最も多く見られるがんである。男性では4番目に多いがんであり、女性では11番目に多いがんである。2017年には米国で約79,000人の膀胱がんが新たに診断され、19,870人が死亡すると推定されている。膀胱がん患者さんの推定5年生存率は78%であるが、局所進行性または転移性の患者さんでは、その割合は劇的に低下する。膀胱がん患者の約75%は、粘膜(Ta期、carcinoma in situ)または粘膜下層(T1期)に限局した病変を呈し、非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)として知られている。経尿道的切除術は、NMIBCの初期治療として選択される。筋層浸潤性膀胱癌(MIBC、T2以上)の患者さんでは、白金製剤を含む化学療法に続いて膀胱を切除することが第一選択の治療法となる。膀胱内治療に反応しないNMIBCの患者さんでは、MIBCに進行するリスクが高くなる。このように、再発率が高く、進行のリスクが大きいため、追加治療の実施が義務付けられている。したがって、高リスクのNMIBC患者の臨床転帰を改善するには、新しい治療法を開発する必要がある。
【0085】
1970年代にNMIBCを対象に開発されたBCG(Bacillus-Calmette Guerin)の膀胱内投与は、確立した固形がんに対する最初の免疫療法として成功し、現在でもNMIBC患者に対する標準治療となっている。(Askeland EJ, Newton MR, O'Donnell MA, Luo Y. Bladder Cancer Immunotherapy:BCGとその先。Adv Urol.2012;2012:181987.PMID: 22778725.BCG:ワクチンの石器時代からの回帰は、膀胱癌免疫療法の道を開いた。Can J Urol.2017;24:8788-8793.PMID: 28646932)に記載されている。Mycobacterium bovisの減菌株であるBCGの抗腫瘍効果の正確なメカニズムは不明であるが、フィブロネクチンおよびインテグリンα5β1を通じて尿路上皮に結合した後、Th1反応を主体とした活発な免疫細胞性および体液性免疫反応を指揮すると考えられている(Redelman-Sidi G, Glickman MS, Bochner BH.膀胱癌に対するBCG療法の作用機序--現在の展望(The mechanism of action of BCG therapy for bladder cancer--a current perspective.Nat Rev Urol.2014;11:153-62.pmid: 24492433)に記載されている。しかし、BCG療法の典型的な完全奏効率は、乳頭状腫瘍で55~65%、carcinoma in situ(CIS)で70~75%である。(Askeland EJ, Newton MR, O'Donnell MA, Luo Y. Bladder Cancer Immunotherapy:膀胱癌免疫療法:BCGとその先。Adv Urol.2012;2012:181987.PMID: 22778725. BCG:ワクチンの石器時代からの回帰は、膀胱癌免疫療法の道を開いた。Can J Urol.2017;24:8788-8793.PMID: 28646932)に記載されている。そのため、BCGが奏効しない患者や再発した患者、治療に不耐性の患者の負担は、NMIBCに対するBCGの有効性をさらに向上させる必要性を促している。
【0086】
CDNは、結核やNMIBCにとって貴重な免疫反応を生み出す重要なPAMPsおよびDAMPsである。
【0087】
細菌性病原体関連分子パターン(PAMPs)。ヒトの細胞は、細胞質監視プログラム(CSP)と呼ばれる自然免疫監視システムを利用して、細胞質内の環状ジヌクレオチドを含む核酸を検出している。当初、CSPはウイルス防御システムとして特徴づけられたが、現在では、特に結核菌、リステリア菌、サルモネラ菌などの細胞内細菌に対する抗菌防御に重要であることが示されている。STING、cGAS、DDX41などの細胞質パターン認識受容体(PRR)は、細胞質CDNや核酸に結合し、それらの活性化につながる。STINGの活性化は、TBK1やIRF3を活性化し、I型インターフェロンの発現を増加させる重要なシグナル伝達イベントである。環状ジヌクレオチドによるSTINGの活性化は、TBK1-IRF3経路とは別に、CCL2やCCL20などのケモカインを誘導するSTAT6の誘導も引き起こす。STINGの活性化は、IκBキナーゼ(IKK)の活性化を介して、転写因子NFκBを活性化するとも考えられている。
【0088】
ヒトの危険関連分子パターン(DAMPs)。サイクリックcGAMP(cGAS)合成酵素は、細胞質DNAを認識する細胞質PRRである。DNAに結合すると、その構造変化を起こし、2'3'cGAMPの生成を触媒する中核的な酵素活性を活性化させる。2'3'cGAMPは強力なDAMPであり、STING-TBK1-IRF3軸を活性化し、1型インターフェロンの発現を増加させ、STAT6の活性化、IKKの活性化を引き起こす。
【0089】
CDNトリガーによる免疫応答のSTING介在機構。I型IFNは、腫瘍の微小環境における自然免疫細胞と腫瘍細胞自身の両方によって産生され、がん免疫編集のすべての段階に介入する能力により、いくつかの悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果を媒介することが知られている。(Zitvogel L, Galluzzi L, Kepp O, Smyth MJ, Kroemer G. Type I interferons in anticancer immunity(抗がん免疫におけるI型インターフェロン).Nat Rev Immunol.2015;15:405-14.pmid: 26027717)。STING(stimulator of interferon genes)は、センサーであるcyclic GMP-AMP synthase(cGAS)による細胞質DNAの認識に続いて、病原体に対するI型IFN自然免疫応答の主要な制御因子である。cGASはcyclic GMP-AMP(cGAMP)の合成を触媒し、このcGAMPはSTINGに結合して活性化するセカンドメッセンジャーとして機能する。(Zhao GN, Jiang DS, Li H. Interferon regulatory factors: at the crossroads of immunity, metabolism, and disease.Biochim Biophys Acta.2015;1852:365-78.pmid:24807060)。そのため、現在、新規腫瘍免疫療法として、組換えI型IFN、I型IFNコード化ベクター、I型IFN発現細胞、STINGアゴニストに基づく新規抗がん免疫療法が開発されている。
【0090】
PAMP免疫調節物質である3'-5'c-di-AMPの過剰発現。3'-5'c-di-AMPは、STING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。BCGを含むマイコバクテリアがDisAタンパク質(BCGではBCGタンパク質WP_010950916.1、M. tuberculosisタンパク質Rv3586またはP9WNW5.1)をコードするdisA遺伝子により産生される。結核菌(M.tb)はc-di-AMPを合成・分泌し、STING-シグナルとcGASを介してインターフェロン制御因子(IRF)経路とI型IFN応答を活性化させる。(Ahmed D, Cassol E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response:腫瘍免疫学と治療へのインプリケーション。Cancer Lett. 2017;409:20-29.PMID: 28888999.)。c-di-AMP過剰発現M.tb株は、マウスモデルで結核の減弱を示した。c-di-AMPは粘膜アジュバントとして、樹状細胞の成熟、共刺激分子のアップレギュレーション、炎症性サイトカインの産生、病原体に対する強いTh1、Th17、CD8T細胞応答を引き起こす免疫刺激作用を発揮する。c-di-AMPを過剰発現するBCG株(rBCG-disAまたはBCG-disA-OE)が構築され、驚くべきことに、BCG自身よりも有意に高いIRFおよびIFN-β応答を生じることがわかった。これは細菌由来のc-di-AMPが、ESX-1タンパク質分泌システムがないにもかかわらず宿主細胞のサイトゾルにアクセスすることを示唆している。(Ahmed D, Cassol E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response:腫瘍の免疫学と治療へのインプリケーション。Cancer Lett. 2017;409:20-29.pmid: 28888999.)に記載されている。これらの知見は、c-di-AMPを過剰発現するように改変されたrBCG株が、BCGそのものよりも膀胱腫瘍に対する優れた防御免疫を誘導し得ることを示唆している。
【0091】
M.tb disA(MT3692)を過剰発現したBCGに対するマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)の炎症性Th1サイトカイン誘導作用M.tbゲノムは、ATPまたはADPからc-di-AMPを合成するジアデニル酸シクラーゼ酵素(DisA、DacAとも呼ばれ、UniProtKB/Swiss-ProtデータベースではP9WNW5.1)をコードしている。BCGタンパク質WP_010950916.1(NCBI参照番号)は、M. tuberculosis DisAと100%同一である。disAを過剰発現したM.tb株は、STING依存性のIFN-β産生を活性化するユニークな細菌PAMPである過剰なc-di-AMPを放出することによりマクロファージを中毒にする。(Ahmed D, Cassol E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response:腫瘍の免疫学と治療へのインプリケーション。Cancer Lett. 2017;409:20-29.pmid: 28888999.)に記載されている。非病原性ワクチン株の抗原レパートリーを拡大するため、BCGパスツールは、M.tbからのdisA遺伝子(M. tuberculosis Rv3586またはMT3692)を保有するカナマイシン耐性(Kan-R)参照プラスミドで形質転換されたM.hsp60このプラスミドをBCG-Pasteurに添加すると、disAmRNAのレベルが50倍増加した(Fig.1b)。近縁のM.tb-disA-OE株は、野生型M.tb.に比べて15倍以上のc-di-AMPをマクロファージサイトゾルに放出する(図1a)ので、BCG-disA-OEも宿主のサイトゾルに著しく多くのc-di-AMPを放出することが予想される。これらのdisA過剰発現組換え体(rBCGまたはBCG-disA-OE)は、親株と比較して、STING依存性IFN-βの優れた誘導体であった。2016年2月10日に出願されたPCT/US2016/017248で報告されたように最も重要なことに、rBCGを接種したモルモットは、病原性M.tbのエアロゾル感染に対して有意に良好に保護され、既存のBCG株よりも保護効果が向上したことが示唆された。
【0092】
図2に示すように、BCG-Pasteur disA-OEによって惹起される免疫応答を、in vitroマクロファージ感染モデルで試験した。BCG-Pasteur disA-OEを感染させたC57BL/6マウスのBMDMは、未感染または野生型BCG感染マクロファージと比較して、IFN-β、TNF-α、IL-6およびIL-2の有意なアップレギュレーションを示していた。
【0093】
図3に示すように、RAWBlue ISGマクロファージではc-di-AMPによるSTING活性化の増強が確認された。RAWBlueマクロファージは、BCG-Pasteur disA-OEを感染させると、親コントロールと比較して、IRF3レベルの増加を示した。
【0094】
図4A-4Cに示すように、BCG-Pasteur-disA-OE感染マウスBMDMの培養上清には、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1β)の有意な増加が認められた。これらの結果は、抗原レパートリーを増やしたBCG-Pasteur-disA-OEがSTINGアゴニストとして作用し、STING依存性のI型IFNを強力に誘導していることを示唆している。さらに、BCG-Pasteur disA-OEに対するマクロファージの免疫応答はTh1型に偏り、この表現型はBCG免疫療法によるNMIBCの制御に大きく寄与していることが示された。
【0095】
図5に示すように、BCG-disA-OEはヒト膀胱癌(RT4)細胞において抗腫瘍免疫応答を惹起する。BCG-Pasteur-disA-OEについては,WT株のBCG-PasteurおよびOncoTICE(現在の免疫療法用BCG株)と比較して,膀胱癌(BC)細胞で同様の免疫応答を惹起するかどうかを検証した.ヒトNMIBC腫瘍由来のヒトRT4BC細胞に、野生型(PasteurとTICEの両方)および組み換えBCG Pasteur disA-OE株を1:20で3時間チャレンジし(RT4::BCG)、非感染細胞との比較で遺伝子発現プロファイルの差異を測定した。その結果、BCG-Pasteur-disA-OE株を投与した膀胱癌細胞では、単球性化学誘引タンパク質1(MCP-1)/CCL2、IFN-β、IL-1βなどの主要免疫メディエーターが野生型株への反応と比較して有意に増加することが明らかとなった。
【0096】
図6に示すように、NMIBCのMNU発癌性モデルにおいて、膀胱内BCG-disA-OE免疫療法がTh1応答の増強および抗腫瘍効果をもたらすかどうかを試験するために実験系が設定された。RT4細胞を用いた前述の実験の結果は、本発明者らに、Bivalacqua研究室で開拓されたin vivoラットNMIBCモデルにおけるBCG-PasteurdisA-OEの相対的な治療効果を試験するよう促した(Kates M, Nirsacha. (Kates M, Nirschl T, Sopko NA, Matsui H, Kochel CM, Reis LO, Netto GJ, Hoque MO, Hahn NM, McConkey DJ, Baras AS, Drake CG, Bivalacqua TJ.In the Intravesical BCG Induced in the NMIBC Model.膀胱癌の免疫コンピテントモデルにおける膀胱内BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer.Cancer Immunol Res. 2017;5:594-603.pmid: 28588015)。本モデルは、発がん性アルキル化剤であるN-methyl-N-nitrosourea(MNU)を用いて、雌のFischerラットに尿路上皮がんを誘発させるものである。
【0097】
図7からわかるように、BCG-disA-OEはラット膀胱がんモデルにおいて顕著な免疫療法効果を発揮する。MNU投与後8週間で尿路上皮形成不全が発生し、最初の投与から16週間目には、すべてのラットにヒト尿路上皮癌に類似した病理組織学的、免疫表現型の特徴を持つ坐位癌、乳頭状Ta、高グレードT1尿路上皮癌が観察されるようになった。このモデルを用いて、膀胱内BCG免疫療法が、尿路上皮におけるCD4+T細胞集団の大規模かつ一過性の増加をもたらすことが示された。(Kates M, Nirschl T, Sopko NA, Matsui H, Kochel CM, Reis LO, Netto GJ, Hoque MO, Hahn NM, McConkey DJ, Baras AS, Drake CG, Bivalacqua TJ.B.)膀胱癌の免疫コンピテントモデルにおける膀胱内BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer.Cancer Immunol Res. 2017;5:594-603.pmid: 28588015)。MNU投与ラットにBCG-disA-OE株を膀胱内投与し、腫瘍が確認できるMNU導入8週後から6週間にわたり毎週順次投与した。膀胱腫瘍は、WHO-ISUP分類に従ってGU病理医により病期分類され、腫瘍浸潤率(Ta、T1、CISの合計)は、記載された基準に従って各グループについて計算された。(Kates M, Nirschl T, Sopko NA, Matsui H, Kochel CM, Reis LO, Netto GJ, Hoque MO, Hahn NM, McConkey DJ, Baras AS, Drake CG, Bivalacqua TJ.The Intravesical BCG Induced in the Cancer of the Cancer and CIS.膀胱癌の免疫コンピテントモデルにおける膀胱内BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer.Cancer Immunol Res. 2017;5:594-603.pmid: 28588015)。BCG-PasteurディスA-OEを投与したラットの腫瘍浸潤指数は、未投与またはBCG-Pasteur投与ラットの膀胱と比較して有意に低下していることが確認された。
【0098】
図8に見られるように、BCG-disA-OEは、免疫療法を受けたラット膀胱に特徴的なサイトカインおよびケモカインのシグネチャを誘導する。BCG-disA-OEで処置したラットの尿膀胱は、未処置またはBCG-Pasteur処置ラットと比較して、IFN-α/β、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、TGF-β、iNOS、IP-10、MCP-1およびMIP-1αの著しい誘発が見られた。
【0099】
図9に示すように、BCG-Pasteur-disA-OEで処理したラットの膀胱では、IL-6とIFN-発現の増加を伴うCCL2+マクロファージ、Nos2+およびIL-1β+M1マクロファージの浸潤増加が証明された。興味深いことに、IP-10の増加が認められ、これはIFN-γの増加とともに、感染および炎症部位での強力なT細胞の動員を促進することが知られている。
【0100】
図10は、初代細胞、がん細胞株、およびラット膀胱がん組織において、BCG-disA-OEとBCG-WTで観察されたサイトカインの発現レベル変化の概要を示したものである。見てわかるように、Th1T細胞およびM1マクロファージの拡大に関連するサイトカイン、2種類の1型インターフェロン、および3種類の炎症性ケモカインは、これらの細胞、細胞株および組織全体で、BCG-WTと比較してBCG-disA-OEによって著しく発現上昇した(2倍から30倍)。一方,Th2 T細胞およびM2マクロファージの増殖に関連するサイトカインは,BCG-WTと比較して,BCG-disA-OEによって概ね低下した(1倍から10倍).
【0101】
BCG免疫療法は、(i)腫瘍特異的細胞傷害性CD8T細胞の生成の増加、(ii)腫瘍抗原に対するマクロファージを介したCD4細胞の活性化を促進するサイトカイン環境、および(iii)殺腫瘍活性の強化を促進するマクロファージM1シフト、という3つの免疫機構を介して有効である可能性がある。本書で報告された知見は、c-di-AMPを過剰発現するBCGが膀胱腫瘍細胞、および腫瘍微小環境に常駐または動員される骨髄系細胞に取り込まれ、STINGおよびタイプIIFN応答の活性化、NF-κBシグナルなどの宿主免疫応答を誘発し、サイトカインおよびケモカインの分泌、マクロファージの動員およびアポトーシス機構が促進され、これらがまとめて腫瘍進行を抑制するという強い示唆を示している。
【0102】
PAMP分子c-di-AMPのレベルを増加させるdisAの過剰発現に加えて、他のPAMPおよびDAMP分子の生産を強化するためにBCGに加えることができる組換えDNA修飾がある。他のCDNシクラーゼの遺伝子--(i)BCG_RS07340タンパク質またはM. tuberculosis Rv1354cタンパク質のGGDEFドメイン(互いに100%同一)、(ii)2'-5'c-GAMPsynthaseであるVibrio cholerae DncVタンパク質、Swiss-ProtではQ9KVG7、および(iii)2'-3'cGAMPsynthaseであるヒトcGASタンパク質Q8N884--がBCGに追加されていても良い。これらの付加されたCDNシクラーゼ遺伝子は、単独で付加されてもよいし、組み合わせて付加されてもよい。このような組み合わせは、多価のCDN過剰発現BCGを示すことになる。また、図11に示すように、BCGは複数のCDNホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含む遺伝子を保有している。これらの内在性ホスホジエステラーゼ遺伝子や遺伝子内ホスホジエステラーゼドメインを除去する組換え技術方法:(i)BCGのCDNPDEをコードするBCGWP_003414507遺伝子は、100%M.tuberculosisRv2837c(CdnPまたはCnpBとも呼ばれる)、(ii)既知のCDNPDEM. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一のタンパク質BCG_RS07340(旧BCG_1416c)のEALドメインをコードするDNA、(iii)既知のCDNPDEM. tuberculosis Rv1357cに相同なBCGAHM07112のコードを持つ遺伝子が含まれている。これらのPDEをコードする遺伝子を除去することは、本明細書に開示されるrBCG株によって産生されるCDNPAMPおよびDAMP分子のレベルをさらに増加させるのに役立つであろう。
【0103】
SEQ ID NO:1
【0104】
BCGおよびその他の関連マイコバクテリア由来Diadenylate cyclase DisA、アミノ酸配列(358アミノ酸; BCG protein AOQ92_RS18745; NCBI Reference Sequence.NZ_Cuwl01000001.1)。NZ_CUWL01000001.1)。同じ配列がBCGの他の株、例えば、結核菌ではタンパク質Rv3586またはMT3692として、Mycobacterium bovisではタンパク質Mb3617として存在している。

MHAVTRPTLREAVARLAPGTGLRDGLERILRGRTGALIVLGHDENVEAICDGGFSLDVRY
AATRLRELCKMDGAVVLSTDGSRIVRANVQLVPDPSIPTDESGTRHRSAERAAIQTGYPV
ISVSHSMNIVTVYVRGERHVLTDSATILSRANQAIATLERYKTRLDEVSRQLSRAEIEDF
VTLRDVMTVVQRLELVRRIGLVIDYDVVELGTDGRQLRLQLDELLGGNDTARELIVRDYH
ANPEPPSTGQINATLDELDALSDGDLLDFTALAKVFGYPTTTEAQDSTLSPRGYRAMAGI
PRLQFAHADLLVRAFGTLQGLLAASAGDLQSVDGIGAMWARHVREGLSQLAESTISDQ
【0105】
SEQ ID NO:2
【0106】
BCGおよびその他の関連マイコバクテリア由来Diadenylate cyclase disA、DNA配列1077 nucleotides [358 codons, 1 stop codon]; encodes BCG gene AOQ92_RS18745; NCBI Reference Sequence:他のBCG株(例えば、Mycobacterium tuberculosisはRv3586またはMT3692、Mycobacterium bovisはMb3617)にも同一の配列が存在する。

1 atgcacgctg tgactcgtcc gaccctgcgt gaggctgtcg cccgcctagc cccgggcact
61 gggctgcggg acggcctgga gcgtatcctg cgcggccgca ctggtgccct gatcgtgctg
121 ggccatgacg agaatgtcga ggccatctgc gatggtggct tctccctcga tgtccgctat
181 gcagcaaccc ggctacgcga gctgtgcaag atggacggcg ccgtggtgct gtccaccgac
241 ggcagccgca tcgtgcgggc caacgtgcaa ctggtaccgg atccgtcgat ccccaccgac
301 gaatcgggga cccggcaccg ctcggccgag cgggccgcga tccagaccgg ttacccggtg
361 atctcagtga gccactcgat gaacatcgtg accgtctacg tccgcgggga acgtcacgta
421 ttgaccgact cggcaaccat cctgtcgcgg gccaaccagg ccatcgcaac cctggagcgg
481 tacaaaacca ggctcgacga ggtcagccgg caactgtcca gggcagaaat cgaggacttc
541 gtcacgctgc gcgatgtgat gacggtggtg caacgcctcg agctggtccg gcgaatcggg
601 ctggtgatcg actacgacgt ggtcgaactc ggcactgatg gtcgtcagct gcggctgcag
661 ctcgacgagt tgctcggcgg caacgacacc gcccgggaat tgatcgtgcg cgattaccac
721 gccaacccgg aaccaccgtc cacggggcaa atcaatgcca ccctggacga actggacgcc
781 ctgtcggacg gcgacctcct cgatttcacc gcgctggcaa aggttttcgg atatccgacg
841 accacggaag cgcaggattc ggcgctgagc ccgcgtggct accgcgcgat ggccggtatc
901 ccccggctcc agttcgccca tgccgacctg ctggtccggg cgttcggaac gttgcagggt
961 ctgctggcgg ccagcgccgg cgatctgcaa tcagtggacg gcatcggcgc catgtgggcc
1021 cgtcatgtgc gcgatgggtt gtcacagctg gcggaatcga ccatcagcga tcaataa
【0107】
SEQ ID NO:3
【0108】
Plasmid pSD5B-Phsp60 ::disA は、Phsp60 プロモーターからBCG disA 遺伝子を過剰発現するエピソーム複製大腸菌シャトルプラ スミドであり、DNA 配列である。 (7742ヌクレオチド;M. leprae hsp65遺伝子のヌクレオチド13から180の一部からなるプロモーターPhsp60DNAに下線を引いてある;disAコード配列ヌクレオチド242から1318;太字で示すATG開始コドンとTAAストップコドン、下線を引いてある)。

GGATCCTTCTAGAATTCCGGAATTGCACTCGCCTTAGGGGAGTGCTAAAAATGATCCTGGCACTCGCGATCAGCGAG1-77
TGCCAGGTCGGGACGGTGAGACCCAGCCAGCAAGCTGTGGTCGTCCGTCGCGGGCACTGCACCCGGCCAGCGTAAGT 78-154
AATGGGGGTTGTCGGCACCCGGTGACCTAGACACATGCATGCATGCTTAATTAATTAAGCGATATCCGGAGGAATCA 155-231
CTTCCATATGATGCACGCTGTGACTCGTCCGACCCTGCGTGAGGCTGTCGCCCGCCTAGCCCCGGGCACTGGGCTGC 232-308
GGGACGGCCTGGAGCGTATCCTGCGCGGCCGCACTGGTGCCCTGATCGTGCTGGGCCATGACGAGAATGTCGAGGCC 309-385
ATCTGCGATGGTGGCTTCTCCCTCGATGTCCGCTATGCAGCAACCCGGCTACGCGAGCTGTGCAAGATGGACGGCGC 386-462
CGTGGTGCTGTCCACCGACGGCAGCCGCATCGTGCGGGCCAACGTGCAACTGGTACCGGATCCGTCGATCCCCACCG 463-539
ACGAATCGGGGACCCGGCACCGCTCGGCCGAGCGGGCCGCGATCCAGACCGGTTACCCGGTGATCTCAGTGAGCCAC 540-616
TCGATGAACATCGTGACCGTCTACGTCCGCGGGGAACGTCACGTATTGACCGACTCGGCAACCATCCTGTCGCGGGC 617-693
CAACCAGGCCATCGCAACCCTGGAGCGGTACAAAACCAGGCTCGACGAGGTCAGCCGGCAACTGTCCAGGGCAGAAA 694-770
TCGAGGACTTCGTCACGCTGCGCGATGTGATGACGGTGGTGCAACGCCTCGAGCTGGTCCGGCGAATCGGGCTGGTG 771-847
ATCGACTACGACGTGGTCGAACTCGGCACTGATGGTCGTCAGCTGCGGCTGCAGCTCGACGAGTTGCTCGGCGGCAA 848-924
CGACACCGCCCGGGAATTGATCGTGCGCGATTACCACGCCAACCCGGAACCACCGTCCACGGGGCAAATCAATGCCA 925-1001
CCCTGGACGAACTGGACGCCCTGTCGGACGGCGACCTCCTCGATTTCACCGCGCTGGCAAAGGTTTTCGGATATCCG 1002-1078
ACGACCACGGAAGCGCAGGATTCGACGCTGAGCCCGCGTGGCTACCGCGCGATGGCCGGTATCCCCCGGCTCCAGTT 1079-1155
CGCCCATGCCGACCTGCTGGTCCGGGCGTTCGGAACGTTGCAGGGTCTGCTGGCGGCCAGCGCCGGCGATCTGCAAT 1156-1232
CAGTGGACGGCATCGGCGCCATGTGGGCCCGTCATGTGCGCGAGGGGTTGTCACAGCTGGCGGAATCGACCATCAGC 1233-1309
GATCAATAAACGCGTTCTGGCGTAATAGCGAAGAGGCCCGCACCGATCGCCCTTCCCAACAGTTGCGCAGCCTGAAT 1310-1386
GGCGAATGGCGCTTTGCCTGGTTTCCGGTCGAAGCTTGGCCGGATCTAAAGTTTTGTCGTCTTTCCAGACGTTAGTA 1387-1463
AATGAATTTTCTGTATGAGGTTTTGCTAAACAACTTTCAACAGTTTCAGCGGAGTGAGAATAGAAAGGAACAACTAA 1464-1540
AGGAATTGCGAATAATAATTTTTTCACGTTGAAAATCTCCAAAAAAAAAGGCTCCAAAAGGAGCCTTTAATTGTATC 1541-1617
GGTTTATCAGCTTGCTTTCGAGGTGAATTTCTTAAACAGCTTGATACCGATAGTTGCGCCGACAATGACAACAACCA 1618-1694
TCGCCCACGCATAACCGATATATTCGGTCGCTGAGGCTTGCAGGGAGTCAAAGGCCGCTTTTGCGGGGATCCGCTCG 1695-1771
GAGGCGCGGTCGCGGCGCGGCTGTGGCATGTCGGGGCGTGCCGCTCCCCCGGCGCCGCCCATCGGCCCGCCCATTGG 1772-1848
CATTCCGCCCATGCCGCCCATCATTCCTGTGGAGCCAGAACTGATCCAGCCTGTGCCACAGCCGACAGGATGGTGAC 1849-1925
CACCATTTGCCCCATATCACCGTCGGTACTGATCCCGTCGTCAATAAACCGAACCGCTACACCCTGAGCATCAAACT 1926-2002
CTTTTATCAGTTGGATCATGTCGGCGGTGTCGCGGCCAAGACGGTCGAGCTTCTTCACCAGAATGACATCACCTTCC 2003-2079
TCCACCTTCATCCTCAGCAAATCCAGCCCTTCCCGATCTGTTGAACTGCCGGATGCCTTGTCGGTAAAGATGCGGTT 2080-2156
AGCTTTTACCCCTGCATCTTTGAGCGCTGAGGTCTGCCTCGTGAAGAAGGTGTTGCTGACTCATACCAGGCCTGAAT 2157-2233
CGCCCCATCATCCAGCCAGAAAGTGAGGGAGCCACGGTTGATGAGAGCTTTGTTGTAGGTGGACCAGTTGGTGATTT 2234-2310
TGAACTTTTGCTTTGCCACGGAACGGTCTGCGTTGTCGGGAAGATGCGTGATCTGATCCTTCAACTCAGCAAAAGTT 2311-2387
CGATTTATTCAACAAAGCCGCCGTCCCGTCAAGTCAGCGTAATGCTCTGCCAGTGTTACAACCAATTAACCAATTCT 2388-2464
GATTAGAAAAACTCATCGAGCATCAAATGAAACTGCAATTTATTCATATCAGGATTATCAATACCATATTTTTGAAA 2465-2541
AAGCCGTTTCTGTAATGAAGGAGAAAACTCACCGAGGCAGTTCCATAGGATGGCAAGATCCTGGTATCGGTCTGCGA 2542-2618
TTCCGACTCGTCCAACATCAATACAACCTATTAATTTCCCCTCGTCAAAAATAAGGTTATCAAGTGAGAAATCACCA 2619-2695
TGAGTGACGACTGAATCCGGTGAGAATGGCAAAAGCTTATGCATTTCTTTCCAGACTTGTTCAACAGGCCAGCCATT 2696-2772
ACGCTCGTCATCAAAATCACTCGCATCAACCAAACCGTTATTCATTCGTGATTGCGCCTGAGCGAGACGAAATACGC 2773-2849
GATCGCTGTTAAAAGGACAATTACAAACAGGAATCGAATGCAACCGGCGCAGGAACACTGCCAGCGCATCAACAATA 2850-2926
TTTTCACCTGAATCAGGATATTCTTCTAATACCTGGAATGCTGTTTTCCCGGGGATCGCAGTGGTGAGTAACCATGC 2927-3003
ATCATCAGGAGTACGGATAAAATGCTTGATGGTCGGAAGAGGCATAAATTCCGTCAGCCAGTTTAGTCTGACCATCT 3004-3080
CATCTGTAACATCATTGGCAACGCTACCTTTGCCATGTTTCAGAAACAACTCTGGCGCATCGGGCTTCCCATACAAT 3081-3157
CGATAGATTGTCGCACCTGATTGCCCGACATTATCGCGAGCCCATTTATACCCATATAAATCAGCATCCATGTTGGA 3158-3234
ATTTAATCGCGGCCTCGAGCAAGACGTTTCCCGTTGAATATGGCTCATAACACCCCTTGTATTACTGTTTATGTAAG 3235-3311
CAGACAGTTTTATTGTTCATGATGATATATTTTTATCTTGTGCAATGTAACATCAGAGATTTTGAGACACAACGTGG 3312-3388
CTTTGTTGAATAAATCGAACTTTTGCTGAGTTGAAGGATCAGATCACGCATCTTCCCGACAACGCAGACCGTTCCGT 3389-3465
GGCAAAGCAAAAGTTCAAAATCACCAACTGGTCCACCTACAACAAAGCTCTCATCAACCGTGGCTCCCTCACTTTCT 3466-3542
GGCTGGATGATGGGGCGATTCAGGCCTGGTATGAGTCAGCAACACCTTCTTCACGAGGCAGACCTCAGCGCTAGCGG 3543-3619
AGTGTATACTGGCTTACTATGTTGGCACTGATGAGGGTGTCAGTGAAGTGCTTCATGTGGCAGGAGAAAAAAGGCTG 3620-3696
CACCGGTGCGTCAGCAGAATATGTGATACAGGATATATTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTACGCTCGGTCGTT 3697-3773
CGACTGCGGCGAGCGGAAATGGCTTACGAACGGGGCGGAGATTTCCTGGAAGATGCCAGGAAGATACTTAACAGGGA 3774-3850
AGTGAGAGGGCCGCGGCAAAGCCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACAAGCATCACGAAATCTGACGCTCAAA 3851-3927
TCAGTGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGCGGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTG 2928-4004
TTCCTGCCTTTCGGTTTACCGGTGTCATTCCGCTGTTATGGCCGCGTTTGTCTCATTCCACGCCTGACACTCAGTTC 4005-4081
CGGGTAGGCAGTTCGCTCCAAGCTGGACTGTATGCACGAACCCCCCGTTCAGTCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTA 4082-4158
ACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGAAAGACATGCAAAAGCACCACTGGCAGCAGCCACTGGTAATTGATTTAGAGGA 4159-4235
GTTAGTCTTGAAGTCATGCGCCGGTTAAGGCTAAACTGAAAGGACAAGTTTTGGTGACTGCGCTCCTCCAAGCCAGT 4236-4312
TACCTCGGTTCAAAGAGTTGGTAGCTCAGAGAACCTTCGAAAAACCGCCCTGCAAGGCGGTTTTTTCGTTTTCAGAG 4313-4389
CAAGAGATTACGCGCAGACCAAAACGATCTCAAGAAGATCATCTTATTAAGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAA 4390-4466
CTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAAAGTGCTCATCATTG 4467-4543
GAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCA 4544-4620
CCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAA 4621-4697
AAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGG 4698-4774
GTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCC 4775-4851
CGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCC 4852-4928
CTTTCGTCTTCAAGAATTCCCAGGCATCAAATAAAACGAAAGGCTCAGTCGAAAGACTGGGCCTTTCGTTTTATCTG 4929-5005
TTGTTTGTCGGTGAACGCTCTCCTGAGTAGGACAAATCCGCCGGGAGCGGATTTGAACGTTGCGAAGCAACGGCCCG 5006-5082
GAGGGTGGCGGGCAGGACGCCCGCCATAAACTGCCAGGGAATTCCCATCGAGCCGAGAACGTTATCGAAGTTGGTCA 5083-5159
TGTGTAATCCCCTCGTTTGAACTTTGGATTAAGCGTAGATACACCCTTGGACAAGCCAGTTGGATTCGGAGACAAGC 5160-5236
AAATTCAGCCTTAAAAAGGGCGAGGCCCTGCGGTGGTGGAACACCGCAGGGCCTCTAACCGCTCGACGCGCTGCACC 5237-5313
AACCAGCCCGCGAACGGCTGGCAGCCAGCGTAAGGCGCGGCTCATCGGGCGGCGTTCGCCACGATGTCCTGCACTTC 5314-5390
GAGCCAAGCCTCGAACACCTGCTGGTGTGCACGACTCACCCGGTTGTTGACACCGCGCGCGGCCGTGCGGGCTCGGT 5391-5467
GGGGCGGCTCTGTCGCCCTTGCCAGCGTGAGTAGCGCGTACCTCACCTCGCCCAACAGGTCGCACACAGCCGATTCG 5468-5544
TACGCCATAAAGCCAGGTGAGCCCACCAGCTCCGTAAGTTCGGGCGCTGTGTGGCTCGTACCCGCGCATTCAGGCGG 5545-5621
CAGGGGGTCTAACGGGTCTAAGGCGGCGTGTACGCGGCCACAGCGGCTCTCAGCGGCCCGGAAACGTCCTCGAAACG 5622-5698
ACGCATGTGTTCCTCCTGGTTGGTACAGGTGGTTGGGGGTGCTCGGCTGTCGCGGTTGTTCCACCACCAGGGCTCGA 5699-5775
CGGGAGAGCGGGGGAGTGTGCAGTTGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATATCTGACTTGGAGCTCGTGTCGGACCATA 5776-5852
CACCGGTGATTAATCGTGGTCTACTACCAAGCGTGAGCCACGTCGCCGACGAATTTGAGCAGCTCTGGCTGCCGTAC 5853-5929
TGGCCGCTGGCAAGCGACGATCTGCTCGAGGGGATCTACCGCCAAAGCCGCGCGTCGGCCCTAGGCCGCCGGTACAT 5930-6006
CGAGGCGAACCCAACAGCGCTGGCAAACCTGCTGGTCGTGGACGTAGACCATCCAGACGCAGCGCTCCGAGCGCTCA 6007-6083
GCGCCCGGGGGTCCCATCCGCTGCCCAACGCGATCGTGGGCAATCGCGCCAACGGCCACGCACACGCAGTGTGGGCA 6084-6160
CTCAACGCCCCTGTTCCACGCACCGAATACGCGCGGCGTAAGCCGCTCGCATACATGGCGGCGTGCGCCGAAGGCCT 6161-6237
TCGGCGGCCGTCGACGGCGACCGCAGTTACTCAGGCCTCATGACCAAAAACCCCGGCCACATCGCCTGGGAAACGGA 6238-6314
ATGGCTCCACTCAGATCTCTACACACTCAGCCACATCGAGGCCGAGCTCGGCGCGAACATGCCACCGCCGCGCTGGC 6315-6391
GTCAGCAGACCACGTACAAAGCGGCTCCGACGCCGCTAGGGCGGAATTGCGCACTGTTCGATTCCGTCAGGTTGTGG 6392-6468
GCCTATCGTCCCGCCCTCATGCGGATCTACCTGCCGACCCGGAACGTGGACGGACTCGGCCGCGCGATCTATGCCGA 6469-6545
GTGCCACGCGCGAAACGCCGAATTCCCGTGCAACGACGTGTGTCCCGGACCGCTACCGGACAGCGAGGTCCGCGCCA 6546-6622
TCGCCAACAGCATTTGGCGTTGGATCACAACCAAGTCGCGCATTTGGGCGGACGGGATCGTGGTCTACGAGGCCACA 6623-6699
CTCAGTGCGCGCCAGTCGGCCATCTCGCGGAAGGGCGCAGCAGCGCGCACGGCGGCGAGCACAGTTGCGCGGCGCGC 6700-6776
AAAGTCCGCGTCAGCCATGGAGGCATTGCTATGAGCGACGGCTACAGCGACGGCTACAGCGACGGCTACAACCGGCA 6777-6853
GCCGACTGTCCGCAAAAAGCCGTGACGCGCCGAAGGCGCTCGAATCACCGGACTATCCGAACGCCACGTCGTCCGGC 6854-6930
TCGTGGCGCAGGAACGCAGCGAGTGGCTCGCCGAGCAGGCTGCACGCGCGCGAAGCATCCGCGCCTATCACGACGAC 6931-7007
GAGGGCCACTCTTGGCCGCAAACGGCCAAACATTTCGGGCTGCATCTGGACACCGTTAAGCGACTCGGCTATCGGGC 7008-7084
GAGGAAAGAGCGTGCGGCAGAACAGGAAGCGGCTCAAAAGGCCCACAACGAAGCCGACAATCCACCGCTGTTCTAAC 7085-7161
GCAATTGGGGACGGGTGTCGCGGGGGTTCCGTGGGGGGTTCCGTTGCAACGGGTCGGACAGGTAAAAGTCCTGGTAG 7162-7238
ACGCTAGTTTTCTGGTTTGGGCCATGCCTGTCTCGTTGCGTGTTTCGTTGCGCCGTTTTGAATACCAGCCAGACGAG 7239-7315
ACGGGGTTCTACGAATCTTGGTCGATACCAAGCCATTTCCGCTGAATATCGGGGAGCTCACCGCCAGAATCGGTGGT 7316-7392
TGTGGTGATGTACGTGGCGAACTCCGTTGTAGTGCCTGTGGTGGCATCCGTGGCCACTCTCGTTGCACGGTTCGTTG 7393-7469
TGCCGTTACAGGCCCCGTTGACAGCTCACCGAACGTAGTTAAAACATGCTGGTCAAACTAGGTTTACCAACGATACG 7470-7546
AGTCAGCTCATCTAGGGCCAGTTCTAGGCGTTGTTCGTTGCGCGGTTCGTTGCGCATGTTTCGTGTGGTTGCTAGAT 7547-7623
GGCTCCGCAACCACACGCTTCGAGGTTGAGTGCTTCCAGCACGGGCGCGATCCAGAAGAACTTCGTCGTGCGACTGT 7624-7700
CCTCGTTGGGATCTAGCCCGCCTAATGAGCGGGCTTTTTTTT 7701-7742
【0109】
disAを過剰発現する結核菌は病原性が減弱している。図12に示すように,pSD5B Phsp60 ::disA プラスミドを保有する結核菌(M.tb-disA-OE または Mtb-OE)または野生型 M.Tuberculosis (Mtb-CDC1551) をエアゾール経路で 3.5 log10 units でマウスに感染させると,動物の死亡までの時間中央値(MTD)に大きな違いがあることが分かる. 野生型結核菌(Mtb-CDC1551)のMTD は 150.5 日であったが,pSD5B Phsp60 ::disA プラスミドを保有する結核菌(M. tb-disA-OE または Mt-OE) は MTD が 321.5 日と著しく弱い病原体であることが分かる.BCG-disA-OEでは,BCG-WTと比較して,同様の病原性の低下が予想される. したがって、BCG-disA-OEをがん免疫療法として使用する場合、BCG-WTと比較して、血流播種率の低下、排尿障害の軽減、切迫感の軽減、倦怠感の軽減が期待されると考えられる。
【0110】
disA以外のCDNシクラーゼ遺伝子のrBCGへの追加
【0111】
タンパク質BCG_RS07340のGGDEFドメインを過剰発現させることにより、PAMP免疫調節因子である3'-5' c-di-GMPを過剰発現させた。 3'-5' c-di-GMPは、STING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。BCGを含むマイコバクテリアがBCG_RS07340(旧BCG_1416c)タンパク質のGGDEFドメインやM. tuberculosis Rv1354c遺伝子により産生する。BCG_RS07340タンパク質(M. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一)は、二重機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ジグアニル酸ホスホジエステラーゼをコードしている。従って、ジグアニル酸シクラーゼとして機能する部分は、BCGの内因性CDN産生酵素である。全長BCG_RS07340ポリペプチドは623アミノ酸であり、そのドメイン構造は以下の通りである。N-terminus-GAF-GGDEF-EAL-C-terminusである。GAFドメイン(約1-190アミノ酸)は、他のドメインの活性に影響を与える調節ドメインである。GGDEFドメイン(約アミノ酸数190-350)は、2 GTP→c-di-GMP + 2 pyrophosphatesの反応を触媒するジグアニル酸シクラーゼである。EALドメイン(約350-623アミノ酸)は、c-di-GMP→2 GMPの反応を触媒するジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。C末端のEALドメインをコードするDNA配列を遺伝学的に除去することにより、GGDEFドメインをコードするDNAを使用して、ジグアヌレートシクラーゼ活性を過剰発現する組換えBCGを作製することが可能である。これは、調節センサーであるGAFドメインをコードするDNAも削除すること、および/またはGAFドメインをコードするDNAに変異を利用して、それが有するかもしれないサイクラーゼ阻害活性を緩和することによって達成され得る。BCG_RS07340タンパク質の構成的に活性な組換え形態を生成するためのこのような技術は、組換えBCGにおいて高レベルのc-di-GMPを生成する。
【0112】
SEQ ID NO:4
【0113】
BCGおよびその他の関連マイコバクテリア由来の二官能性ジグアニル酸シクラーゼ/ホスホジエステラーゼBCG_RS07340 アミノ酸配列(623アミノ酸; BCGタンパク質 BCG_RS07340; NCBI Reference Sequence:NC_008769.1; Protein ID WP 003898837.1; old locus tag BCG_1416c)。同じ配列がBCGの他の株、例えば、Mycobacterium tuberculosisではタンパク質Rv1354cまたはMT1397として、Mycobacterium bovisではタンパク質Mb1389cとして、存在する。 EALドメインはアミノ酸354から623までで、下線が引かれている。

MCNDTATPQLEELVTTVANQLMTVDAATSAEVSQRVLAYLVEQL
GVDVSFLRHNDRDRRATRLVAEWPPRLNIPDPDPLRLIYFADADPVFALCEHAKEPLV
FRPEPATEDYQRLIEEARGVPVTSAAAVPLVSGEITTGLLGFIKFGDRKWHEAELNAL
MTIATLFAQVQARVAAEARLRYLADHDDLTGLHNRRALLQHLDQRLAPGQPGPVAALF
LDLDRLKAINDYLGHAAGDQFIHVFAQRIGDALVGESLIARLGGDEFVLIPASPMSAD
AAQPLAERLRDQLKDHVAIGGEVLTRTVSIGVASGTPGQHTPSDLLRRADQAALAAKH
AGGDSVAIFTADMSVSGELRNDIELHLRRGIESDALRLVYLPEVDLRTGDIVGTEALV
RWQHPTRGLLAPGCFIPVAESINLAGELDRWVLRRACNEFSEWQSAGLGHDALLRINV
SAGQLVTGGFVDFVADTIGQHGLDASSVCLEITENVVVQDLHTARATLARLKEVGVHI
AIDDFGTGYSAISLLQTLPIDTLKIDKTFVRQLGTNTSDLVIVRGIMTLAEGFQLDVV
AEGVETEAAARILLDQRCYRAQGFLFSRPVPGEAMRHMLSARRLPPTCIPATDPALS
【0114】
SEQ ID NO:5
【0115】
Bifunctional diguanylate cyclase/phosphodiesterase BCG_RS07340 BCGおよび他の関連マイコバクテリア由来、DNA配列(1872 nucleotides [623 codons + 1 stop codons]; encodes BCG protein BCG_RS07340; NCBI Reference Sequence: NC_008769.1; Protein ID WP 003898837.1; old locus tag BCG_1416c; DNA from NC_008769.1:c1548390-1546519 Mycobacterium bovis BCG Pasteur 1173P2)のDNA。BCGの他の株、例えばMycobacterium tuberculosisではタンパク質Rv1354cまたはMT1397として、Mycobacterium bovisではタンパク質Mb1389cとして、同一の配列が存在する。EALドメインはヌクレオチド1060から1872までコードされており、下線が引かれている。


ATGTGCAACGACACCGCGACGCCGCAGCTTGAGGAGCTCGTCACCACCGTAGCCAACCAGCTCATGACAG
TCGACGCTGCCACGTCAGCCGAAGTCAGTCAGCGCGTTTTGGCCTATCTAGTGGAACAGCTGGGCGTAGA
TGTCAGCTTTTTGCGTCATAACGATCGCGACAGGCGCGCGACGAGGCTGGTGGCCGAATGGCCACCTCGC
CTCAACATACCGGACCCCGATCCGCTCAGGCTGATCTACTTCGCTGATGCCGACCCGGTGTTTGCGCTAT
GCGAACACGCCAAAGAGCCTCTCGTGTTCCGGCCCGAGCCGGCCACCGAGGACTATCAACGCCTCATCGA
AGAAGCCCGCGGGGTTCCGGTAACGTCGGCTGCCGCCGTGCCGCTGGTATCTGGCGAGATCACCACTGGA
CTGCTGGGGTTCATCAAGTTCGGTGATCGGAAATGGCACGAGGCCGAGCTTAACGCCCTCATGACCATCG
CTACACTCTTCGCCCAGGTGCAGGCTCGCGTCGCCGCCGAGGCGCGGCTTCGCTATCTGGCCGACCATGA
CGATCTGACCGGACTGCATAACCGTCGCGCGTTGCTGCAGCACCTGGACCAAAGACTGGCCCCCGGACAA
CCTGGCCCGGTCGCGGCGCTATTTCTCGACTTGGACCGCCTCAAGGCCATCAACGACTACCTGGGCCACG
CCGCCGGTGACCAGTTCATCCATGTGTTCGCCCAACGGATCGGTGACGCACTCGTTGGCGAGAGCCTGAT
CGCCCGACTCGGCGGCGACGAATTCGTCCTCATACCCGCATCTCCAATGAGTGCCGATGCCGCTCAACCG
CTCGCCGAACGTCTTCGCGACCAGCTCAAGGACCACGTCGCTATCGGCGGTGAGGTGCTCACCCGCACCG
TCAGTATCGGTGTCGCCTCAGGGACTCCCGGACAGCACACACCGTCGGACCTCCTGCGCCGAGCCGACCA
AGCCGCTCTGGCAGCCAAACACGCCGGCGGAGATAGCGTCGCGATTTTCACCGCGGACATGTCGGTCAGC
GGCGAACTGCGCAACGATATTGAACTACACCTTCGACGTGGTATCGAATCCGACGCCCTTCGCCTGGTCT
ACCTACCCGAGGTCGACCTACGGACCGGCGACATTGTCGGGACCGAGGCATTGGTCCGGTGGCAGCACCC
CACCCGTGGGCTGCTGGCACCGGGCTGCTTCATCCCTGTGGCCGAATCCATCAACCTTGCAGGCGAATTG
GATAGATGGGTGCTGCGGAGGGCCTGCAATGAATTCTCCGAGTGGCAGTCAGCCGGTTTGGGCCACGACG
CGCTGCTGCGTATCAACGTCTCAGCTGGACAGCTGGTGACGGGCGGGTTTGTTGACTTCGTCGCAGACAC
GATCGGCCAGCACGGTCTGGACGCCTCGTCCGTGTGTTTGGAAATCACCGAAAACGTTGTGGTGCAAGAC
CTACATACCGCCAGAGCCACCCTGGCTCGACTCAAAGAAGTCGGCGTTCACATCGCTATCGACGATTTCG
GCACCGGCTATAGCGCCATATCACTGTTGCAGACGCTACCGATCGACACGCTCAAGATCGACAAAACATT
CGTGCGGCAACTCGGAACCAACACTAGCGATCTGGTCATTGTGCGCGGCATCATGACACTCGCCGAAGGC
TTCCAACTCGATGTAGTAGCCGAAGGCGTCGAGACCGAGGCTGCCGCCAGAATTCTATTGGATCAGCGCT
GTTACCGTGCGCAAGGCTTCTTGTTCTCCCGGCCTGTCCCCGGGGAGGCCATGCGGCACATGTTGTCCGC
ACGACGACTACCGCCGACCTGCATACCTGCAACTGACCCGGCGTTATCTTGA
【0116】
SEQ ID NO:6
【0117】
BCGおよび他の関連マイコバクテリア由来の修飾された二機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ホスホジエステラーゼで、単機能性ジグアニル酸シクラーゼとして働くようにEALドメインが削除されている、アミノ酸配列(353アミノ酸; BCGタンパク質 BCG_RS07340; NCBI Reference Sequenceの断片)。NC_008769.1; Protein ID WP 003898837.1; old locus tag BCG_1416c)。 同じ配列断片は、BCGの他の株、例えば、Mycobacterium tuberculosisではタンパク質Rv1354cまたはMT1397として、Mycobacterium bovisではタンパク質Mb1389cとして存在する。

MCNDTATPQLEELVTTVANQLMTVDAATSAEVSQRVLAYLVEQL
GVDVSFLRHNDRDRRATRLVAEWPPRLNIPDPDPLRLIYFADADPVFALCEHAKEPLV
FRPEPATEDYQRLIEEARGVPVTSAAAVPLVSGEITTGLLGFIKFGDRKWHEAELNAL
MTIATLFAQVQARVAAEARLRYLADHDDLTGLHNRRALLQHLDQRLAPGQPGPVAALF
LDLDRLKAINDYLGHAAGDQFIHVFAQRIGDALVGESLIARLGGDEFVLIPASPMSAD
AAQPLAERLRDQLKDHVAIGGEVLTRTVSIGVASGTPGQHTPSDLLRRADQAALAAKH
AGGDSVAIFTADMSVSGEL
【0118】
SEQ ID NO:7
【0119】
BCGおよび他の関連マイコバクテリアから得た、修飾された、二機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ホスホジエステラーゼで、そのEALドメインをコードする配列を削除して、一機能性ジグアニル酸シクラーゼをコードする、DNA配列(1059塩基[353コドン+0ストップコドン];BCGタンパク質 BCG_RS07340; NCBI Reference Sequenceのフラグメントをコードしています。NC_008769.1; Protein ID WP 003898837.1; old locus tag BCG_1416c; DNA from NC_008769.1:c1548390-1546519 Mycobacterium bovis BCG Pasteur 1173P2)のDNA。BCGの他の株、例えばMycobacterium tuberculosisでは遺伝子Rv1354cまたはMT1397の断片として、Mycobacterium bovisでは遺伝子Mb1389cの断片として、同一の配列が存在する。


ATGTGCAACGACACCGCGACGCCGCAGCTTGAGGAGCTCGTCACCACCGTAGCCAACCAGCTCATGACAG
TCGACGCTGCCACGTCAGCCGAAGTCAGTCAGCGCGTTTTGGCCTATCTAGTGGAACAGCTGGGCGTAGA
TGTCAGCTTTTTGCGTCATAACGATCGCGACAGGCGCGCGACGAGGCTGGTGGCCGAATGGCCACCTCGC
CTCAACATACCGGACCCCGATCCGCTCAGGCTGATCTACTTCGCTGATGCCGACCCGGTGTTTGCGCTAT
GCGAACACGCCAAAGAGCCTCTCGTGTTCCGGCCCGAGCCGGCCACCGAGGACTATCAACGCCTCATCGA
AGAAGCCCGCGGGGTTCCGGTAACGTCGGCTGCCGCCGTGCCGCTGGTATCTGGCGAGATCACCACTGGA
CTGCTGGGGTTCATCAAGTTCGGTGATCGGAAATGGCACGAGGCCGAGCTTAACGCCCTCATGACCATCG
CTACACTCTTCGCCCAGGTGCAGGCTCGCGTCGCCGCCGAGGCGCGGCTTCGCTATCTGGCCGACCATGA
CGATCTGACCGGACTGCATAACCGTCGCGCGTTGCTGCAGCACCTGGACCAAAGACTGGCCCCCGGACAA
CCTGGCCCGGTCGCGGCGCTATTTCTCGACTTGGACCGCCTCAAGGCCATCAACGACTACCTGGGCCACG
CCGCCGGTGACCAGTTCATCCATGTGTTCGCCCAACGGATCGGTGACGCACTCGTTGGCGAGAGCCTGAT
CGCCCGACTCGGCGGCGACGAATTCGTCCTCATACCCGCATCTCCAATGAGTGCCGATGCCGCTCAACCG
CTCGCCGAACGTCTTCGCGACCAGCTCAAGGACCACGTCGCTATCGGCGGTGAGGTGCTCACCCGCACCG
TCAGTATCGGTGTCGCCTCAGGGACTCCCGGACAGCACACACCGTCGGACCTCCTGCGCCGAGCCGACCA
AGCCGCTCTGGCAGCCAAACACGCCGGCGGAGATAGCGTCGCGATTTTCACCGCGGACATGTCGGTCAGC
GGCGAACTG
【0120】
PAMP免疫調節因子である2'-5'c-GAMP合成酵素の過剰発現。Q9KVG7 (Swiss-Prot)。 2'-5' c-GAMPはSTING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。dncV遺伝子にコードされるVibrio cholerae Q9KVG7タンパク質(436アミノ酸)は、2'-5'c-GAMP合成酵素であることが知られています。BCGにコドン最適化されたリコンビナントdncV遺伝子を作製することが可能である。コドン最適化された構造遺伝子は、強力なプロモーター(Phsp60など)やPTET-offなどの条件付き活性強力プロモーターと融合させることにより、BCGで過剰発現させることが可能である。このようなQ9KVG7タンパク質の構成的に活性な組換え体を作製する技術は、組換えBCGにおいて高レベルの2'-5'c-GAMPを生成することになる。
【0121】
SEQ ID NO:8
【0122】
Vibrio cholerae由来Cyclic GMP-AMP synthase, DncV, アミノ酸配列 (436 アミノ酸; UniProtKB/Swiss-Prot Protein ID Q9KVG7.1).

MRMTWNFHQYYTNRNDGLMGKLVLTDEEKNNLKALRKIIRLRTRDVFEEAKGIAKAVKKSALTFEIIQEK
VSTTQIKHLSDSEQREVAKLIYEMDDDARDEFLGLTPRFWTQGSFQYDTLNRPFQPGQEMDIDDGTYMPM
PIFESEPKIGHSLLILLVDASLKSLVAENHGWKFEAKQTCGRIKIEAEKTHIDVPMYAIPKDEFQKKQIA
LEANRSFVKGAIFESYVADSITDDSETYELDSENVNLALREGDRKWINSDPKIVEDWFNDSCIRIGKHLR
KVCRFMKAWRDAQWDVGGPSSISLMAATVNILDSVAHDASDLGETMKIIAKHLPSEFARGVESPDSTDEK
PLFPPSYKHGPREMDIMSKLERLPEILSSAESADSKSEALKKINMAFGNRVTNSELIVLAKALPAFAQEP
SSASKPEKISSTMVSG
【0123】
SEQ ID NO:9
【0124】
Vibrio cholerae由来Cyclic GMP-AMP synthase, DncV, DNA配列(1311 nucleotides [436 codons + 1 stop codon]; encodes UniProtKB/Swiss-Prot Protein ID Q9KVG7.1; NCBI Reference Sequence.を含む)。NC_002505.1。ビブリオコレラエ O1 ビオバー エル・トールstr.N16961染色体I、完全配列、ヌクレオチド180419-181729)


GTGAGAATGACTTGGAACTTTCACCAGTACTACACAAACCGAAATGATGGCTTGATGGGCAAGCTAGTTC
TTACAGACGAGGAGAAGAACAATCTAAAGGCATTGCGTAAGATCATCCGCTTAAGAACACGAGATGTATT
TGAAGAAGCTAAGGGTATTGCCAAGGCTGTGAAAAAAAGTGCTCTTACGTTTGAAATTATTCAGGAAAAG
GTGTCAACGACCCAAATTAAGCACCTTTCTGACAGCGAACAACGAGAAGTGGCTAAGCTTATTTACGAGA
TGGATGATGATGCTCGTGATGAGTTTTTGGGATTGACACCTCGCTTTTGGACTCAGGGAAGCTTTCAGTA
TGACACGCTGAATCGCCCGTTTCAGCCTGGTCAAGAAATGGATATTGATGATGGAACCTATATGCCAATG
CCTATTTTTGAGTCAGAGCCTAAGATTGGTCATTCTTTACTAATTCTTCTTGTTGACGCGTCACTTAAGT
CACTTGTAGCTGAAAATCATGGCTGGAAATTTGAAGCTAAGCAGACTTGTGGGAGGATTAAGATTGAGGC
AGAGAAAACACATATTGATGTACCAATGTATGCAATCCCTAAAGATGAGTTCCAGAAAAAGCAAATAGCT
TTAGAAGCAAATAGATCATTTGTTAAAGGTGCCATTTTTGAATCATATGTTGCAGATTCAATTACTGACG
ATAGTGAAACTTATGAATTAGATTCAGAAAACGTAAACCTTGCTCTTCGTGAAGGTGATCGGAAGTGGAT
CAATAGCGACCCCAAAATAGTTGAAGATTGGTTCAACGATAGTTGTATACGTATTGGTAAACATCTTCGT
AAGGTTTGTCGCTTTATGAAAGCGTGGAGAGATGCGCAGTGGGATGTTGGAGGTCCGTCATCGATTAGTC
TTATGGCTGCAACGGTAAATATTCTTGATAGCGTTGCTCATGATGCTAGTGATCTCGGAGAAACAATGAA
GATAATTGCTAAGCATTTACCTAGTGAGTTTGCTAGGGGAGTAGAGAGCCCTGACAGTACCGATGAAAAG
CCACTCTTCCCACCCTCTTATAAGCATGGCCCTCGGGAGATGGACATTATGAGCAAACTAGAGCGTTTGC
CAGAGATTCTGTCATCTGCTGAGTCAGCTGACTCTAAGTCAGAGGCCTTGAAAAAGATTAATATGGCGTT
TGGGAATCGTGTTACTAATAGCGAGCTTATTGTTTTGGCAAAGGCTTTACCGGCTTTCGCTCAAGAACCT
AGTTCAGCCTCGAAACCTGAAAAAATCAGCAGCACAATGGTAAGTGGCTGA
【0125】
DAMP免疫調節因子である2'-3'cGAMP合成酵素の過剰発現。Q8N884 (Swiss-Prot)。2'-3' cGAMP はSTING-TBK1-IRF3 軸の強力な誘導因子である。cGASタンパク質は、ヒトcGAS遺伝子によって産生され、細胞質DNAを感知し、2'-3' cGAMP合成酵素として機能する522アミノ酸のポリペプチドを生成する。cGASの合成酵素あるいはシクラーゼドメインは、cGASがDNAに結合することで活性化される。このサイクラーゼドメインのみを含むリコンビナントcGAS遺伝子を作製することが可能であり、この遺伝子は構成的な活性を有しています。この遺伝子は、BCG用にコドン最適化することも可能である。コドン最適化された構造遺伝子は、強力プロモーター(Phsp60など)またはPTET-offなどの条件付き活性強力プロモーターとの融合により、BCGで過剰発現させることができる。このようなcGASタンパク質の構成的に活性な組換え体を生成する技術は、組換えBCGにおいて高レベルの2'-3'c-GAMPを生成することになる。
【0126】
SEQ ID NO:10
【0127】
Homo sapiens 由来のCyclic 2'3'-GMP-AMP synthase, cGAS, アミノ酸配列 (522 アミノ酸, UniProtKB/Swiss-Prot Protein ID Q8N884.2) を掲載。

MQPWHGKAMQRASEAGATAPKASARNARGAPMDPTESPAAPEAALPKAGKFGPARKSGSRQKKSAPDTQE
RPPVRATGARAKKAPQRAQDTQPSDATSAPGAEGLEPPAAREPALSRAGSCRQRGARCSTKPRPPPGPWD
VPSPGLPVSAPILVRRDAAPGASKLRAVLEKLKLSRDDISTAAGMVKGVVDHLLLRLKCDSAFRGVGLLN
TGSYYEHVKISAPNEFDVMFKLEVPRIQLEEYSNTRAYYFVKFKRNPKENPLSQFLEGEILSASKMLSKF
RKIIKEEINDIKDTDVIMKRKRGGSPAVTLLISEKISVDITLALESKSSWPASTQEGLRIQNWLSAKVRK
QLRLKPFYLVPKHAKEGNGFQEETWRLSFSHIEKEILNNHGKSKTCCENKEEKCCRKDCLKLMKYLLEQL
KERFKDKKHLDKFSSYHVKTAFFHVCTQNPQDSQWDRKDLGLCFDNCVTYFLQCLRTEKLENYFIPEFNL
FSSNLIDKRSKEFLTKQIEYERNNEFPVFDEF
【0128】
SEQ ID NO:11
【0129】
環状2'3'-GMP-AMP合成酵素、cGAS、Homo sapiens由来、Uの代わりにヌクレオチドTを用いたmRNAのDNA配列(1802 nucleotides; UniProtKB/Swiss-Prot Protein ID Q8N884.2; NCBI Reference Sequenceをコードしている)。NM_138441.2。コード配列は1569ヌクレオチド[522コドン、1ストップコドン]、ヌクレオチド140に開始コドンATG[太字下線];ヌクレオチド1706に停止コドンTGA(太字、下線)]である)。

AGCCTGGGGTTCCCCTTCGGGTCGCAGACTCTTGTGTGCCCGCCAGTAGTGCTTGGTTTCCAACAGCTGC
TGCTGGCTCTTCCTCTTGCGGCCTTTTCCTGAAACGGATTCTTCTTTCGGGGAACAGAAAGCGCCAGCCA
TGCAGCCTTGGCACGGAAAGGCCATGCAGAGAGCTTCCGAGGCCGGAGCCACTGCCCCCAAGGCTTCCGC
ACGGAATGCCAGGGGCGCCCCGATGGATCCCACCGAGTCTCCGGCTGCCCCCGAGGCCGCCCTGCCTAAG
GCGGGAAAGTTCGGCCCCGCCAGGAAGTCGGGATCCCGGCAGAAAAAGAGCGCCCCGGACACCCAGGAGA
GGCCGCCCGTCCGCGCAACTGGGGCCCGCGCCAAAAAGGCCCCTCAGCGCGCCCAGGACACGCAGCCGTC
TGACGCCACCAGCGCCCCTGGGGCAGAGGGGCTGGAGCCTCCTGCGGCTCGGGAGCCGGCTCTTTCCAGG
GCTGGTTCTTGCCGCCAGAGGGGCGCGCGCTGCTCCACGAAGCCAAGACCTCCGCCCGGGCCCTGGGACG
TGCCCAGCCCCGGCCTGCCGGTCTCGGCCCCCATTCTCGTACGGAGGGATGCGGCGCCTGGGGCCTCGAA
GCTCCGGGCGGTTTTGGAGAAGTTGAAGCTCAGCCGCGATGATATCTCCACGGCGGCGGGGATGGTGAAA
GGGGTTGTGGACCACCTGCTGCTCAGACTGAAGTGCGACTCCGCGTTCAGAGGCGTCGGGCTGCTGAACA
CCGGGAGCTACTATGAGCACGTGAAGATTTCTGCACCTAATGAATTTGATGTCATGTTTAAACTGGAAGT
CCCCAGAATTCAACTAGAAGAATATTCCAACACTCGTGCATATTACTTTGTGAAATTTAAAAGAAATCCG
AAAGAAAATCCTCTGAGTCAGTTTTTAGAAGGTGAAATATTATCAGCTTCTAAGATGCTGTCAAAGTTTA
GGAAAATCATTAAGGAAGAAATTAACGACATTAAAGATACAGATGTCATCATGAAGAGGAAAAGAGGAGG
GAGCCCTGCTGTAACACTTCTTATTAGTGAAAAAATATCTGTGGATATAACCCTGGCTTTGGAATCAAAA
AGTAGCTGGCCTGCTAGCACCCAAGAAGGCCTGCGCATTCAAAACTGGCTTTCAGCAAAAGTTAGGAAGC
AACTACGACTAAAGCCATTTTACCTTGTACCCAAGCATGCAAAGGAAGGAAATGGTTTCCAAGAAGAAAC
ATGGCGGCTATCCTTCTCTCACATCGAAAAGGAAATTTTGAACAATCATGGAAAATCTAAAACGTGCTGT
GAAAACAAAGAAGAGAAATGTTGCAGGAAAGATTGTTTAAAACTAATGAAATACCTTTTAGAACAGCTGA
AAGAAAGGTTTAAAGACAAAAAACATCTGGATAAATTCTCTTCTTATCATGTGAAAACTGCCTTCTTTCA
CGTATGTACCCAGAACCCTCAAGACAGTCAGTGGGACCGCAAAGACCTGGGCCTCTGCTTTGATAACTGC
GTGACATACTTTCTTCAGTGCCTCAGGACAGAAAAACTTGAGAATTATTTTATTCCTGAATTCAATCTAT
TCTCTAGCAACTTAATTGACAAAAGAAGTAAGGAATTTCTGACAAAGCAAATTGAATATGAAAGAAACAA
TGAGTTTCCAGTTTTTGATGAATTTTGAGATTGTATTTTTAGAAAGATCTAAGAACTAGAGTCACCCTAA
ATCCTGGAGAATACAAGAAAAATTTGAAAAGGGGCCAGACGCTGTGGCTCAC
【0130】
SEQ ID NO:12
【0131】
マイコバクテリアのコドン最適化を行ったホモサピエンス由来環状2'3'-GMP-AMP合成酵素、cGAS、DNA配列。(1569 nucleotides [522 codons, 1 stop codon]; UniProtKB/Swiss-Prot Protein ID Q8N884.2 をコードする)。
ATGCAACCATGGCACGGGAAAGCCATGCAGCGTGCGAGCGAAGCCGGGGCGACGGCCCCCAAGGCGTCGGCGCGTAACGCGCG
GGGTGCGCCCATGGACCCGACGGAGTCCCCCGCGGCGCCGGAGGCGGCCCTGCCGAAAGCGGGTAAGTTCGGTCCAGCGCGGA
AAAGCGGGAGCCGCCAAAAGAAGTCCGCGCCCGACACCCAGGAGCGTCCCCCGGTCCGGGCCACCGGCGCGCGTGCCAAAAAA
GCCCCGCAACGGGCGCAAGATACGCAGCCAAGCGATGCGACCTCCGCCCCCGGGGCGGAGGGTCTGGAGCCCCCGGCCGCCCG
GGAGCCAGCGCTCTCGCGCGCGGGTTCCTGCCGTCAGCGGGGCGCGCGGTGTTCCACGAAACCCCGTCCCCCACCAGGTCCCT
GGGACGTGCCGTCGCCGGGTTTGCCGGTGAGCGCGCCAATCCTGGTCCGGCGCGACGCGGCCCCGGGGGCGTCGAAATTGCGT
GCGGTGCTCGAGAAATTGAAGTTGTCGCGCGACGACATCTCCACGGCCGCGGGTATGGTCAAGGGCGTGGTCGATCATTTGTT
GTTGCGGCTCAAGTGTGATTCGGCGTTCCGCGGGGTGGGCTTGCTGAACACGGGGTCCTACTATGAGCATGTCAAAATCAGCG
CCCCCAACGAATTTGACGTGATGTTTAAGCTGGAAGTGCCACGTATCCAATTGGAAGAGTATTCCAATACCCGTGCGTATTAT
TTCGTCAAATTTAAGCGCAATCCGAAGGAAAATCCACTCAGCCAATTCTTGGAGGGCGAAATTCTGTCGGCCTCGAAAATGCT
CTCCAAATTTCGTAAGATTATCAAGGAGGAGATCAACGACATTAAGGACACGGATGTGATCATGAAACGTAAACGTGGCGGTT
CCCCCGCGGTGACGCTCCTCATTTCGGAAAAAATTTCGGTGGACATTACCCTGGCGTTGGAATCGAAGTCCAGCTGGCCGGCG
TCGACCCAGGAGGGCCTGCGGATTCAAAACTGGTTGAGCGCCAAAGTGCGGAAGCAGCTGCGTCTCAAACCCTTTTATTTGGTC
CCGAAACATGCCAAAGAGGGTAACGGTTTTCAAGAGGAAACCTGGCGTTTGAGCTTCTCCCACATTGAGAAGGAGATTTTGAAC
AACCATGGTAAGTCCAAAACGTGCTGCGAGAATAAGGAAGAAAAATGTTGTCGCAAAGATTGTCTCAAATTGATGAAATATTTG
CTGGAACAACTCAAAGAGCGTTTTAAGGACAAGAAGCATCTCGACAAGTTCTCCTCGTATCACGTCAAGACCGCCTTCTTTCAT
GTCTGTACGCAGAACCCGCAAGATAGCCAGTGGGATCGCAAGGACTTGGGGTTGTGTTTTGACAATTGCGTCACCTATTTCTTG
CAATGTTTGCGGACCGAGAAATTGGAGAACTACTTTATTCCAGAATTCAACTTGTTTTCCTCGAATCTGATTGACAAACGCTCC
AAAGAGTTTCTGACGAAGCAGATTGAATACGAGCGTAACAATGAGTTTCCGGTCTTTGACGAGTTTTGA
【0132】
SEQ ID NO:13
【0133】
Plasmid pMH94H-Phsp60 ::disA::hcGASco::mCherry これは、BCG disA 遺伝子、ヒトcGAS 遺伝子(マイコバクテリアコドン最適化)、およびmCherry を Phsp60 プロモータ、DNA 配列から過剰発現させた大腸菌-マイコバクテリアシャトル プラスミドである。 このプラスミドは、BCG、M. tuberculosis、M. bovisまたは高度に関連した株に導入すると、マイコバクテリア染色体に1コピーとして組み込まれる(10842 nucleotides; プロモーターPhsp60 DNAはM. lepraeのhsp65遺伝子の一部から構成される)。leprae hsp65遺伝子のヌクレオチド901から1068に下線を引き;disAコード配列はヌクレオチド1069から2145まで;マイコバクテリアコドン最適化配列を有するヒトcGASはヌクレオチド2158から3726まで;ATG開始コドンとTAAまたはTGA停止コドンは太字、下線にて示す)。

TCGCGCGTTTCGGTGATGACGGTGAAAACCTCTGACACATGCAGCTCCCGGAGACGGTCACAGCTTGTCTGTAAGCGGATGCC 1-83
GGGAGCAGACAAGCCCGTCAGGGCGCGTCAGCGGGTGTTGGCGGGTGTCGGGGCTGGCTTAACTATGCGGCATCAGAGCAGAT 84-166
TGTACTGAGAGTGCACCAAAATTGTAAACGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTT 167-249
AACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGCCCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGA 250-331
ACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAA 332-414
CCATCACCCAAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGC 415-497
TTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAG 498-580
CGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTACTATGGTTGCTTTGACGTGCGG 581-663
TGTGAAATACCGCACAGATGCGTAAGGAGAAAATACCGCATCAGGCGCCATTCGCCATTCAGGCTGCGCAACTGTTGGGAAGG 664-746
GCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGCCAGCTGGCGAAAGGGGGATGTGCTGCAAGGCGATTAAGTTGGGTAACGCCAG 747-829
GGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGAATTCGAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGAAATTCCGGAATT 830-912
GCACTCGCCTTAGGGGAGTGCTAAAAATGATCCTGGCACTCGCGATCAGCGAGTGCCAGGTCGGGACGGTGAGACCCAGCCAG913-995
CAAGCTGTGGTCGTCCGTCGCGGGCACTGCACCCGGCCAGCGTAAGTAATGGGGGTTGTCGGCACCCGGTGACATGCACGCTG 996-1078
TGACTCGTCCGACCCTGCGTGAGGCTGTCGCCCGCCTAGCCCCGGGCACTGGGCTGCGGGACGGCCTGGAGCGTATCCTGCGC 1079-1161
GGCCGCACTGGTGCCCTGATCGTGCTGGGCCATGACGAGAATGTCGAGGCCATCTGCGATGGTGGCTTCTCCCTCGATGTCCG 1162-1244
CTATGCAGCAACCCGGCTACGCGAGCTGTGCAAGATGGACGGCGCCGTGGTGCTGTCCACCGACGGCAGCCGCATCGTGCGGG 1245-1327
CCAACGTGCAACTGGTACCGGATCCGTCGATCCCCACCGACGAATCGGGGACCCGGCACCGCTCGGCCGAGCGGGCCGCGATC 1228-1410
CAGACCGGTTACCCGGTGATCTCAGTGAGCCACTCGATGAACATCGTGACCGTCTACGTCCGCGGGGAACGTCACGTATTGAC 1411-1493
CGACTCGGCAACCATCCTGTCGCGGGCCAACCAGGCCATCGCAACCCTGGAGCGGTACAAAACCAGGCTCGACGAGGTCAGCC 1494-1576
GGCAACTGTCCAGGGCAGAAATCGAGGACTTCGTCACGCTGCGCGATGTGATGACGGTGGTGCAACGCCTCGAGCTGGTCCGG 1577-1659
CGAATCGGGCTGGTGATCGACTACGACGTGGTCGAACTCGGCACTGATGGTCGTCAGCTGCGGCTGCAGCTCGACGAGTTGCT 1660-1742
CGGCGGCAACGACACCGCCCGGGAATTGATCGTGCGCGATTACCACGCCAACCCGGAACCACCGTCCACGGGGCAAATCAATG 1743-1825
CCACCCTGGACGAACTGGACGCCCTGTCGGACGGCGACCTCCTCGATTTCACCGCGCTGGCAAAGGTTTTCGGATATCCGACG 1826-1908
ACCACGGAAGCGCAGGATTCGACGCTGAGCCCGCGTGGCTACCGCGCGATGGCCGGTATCCCCCGGCTCCAGTTCGCCCATGC 1909-1991
CGACCTGCTGGTCCGGGCGTTCGGAACGTTGCAGGGTCTGCTGGCGGCCAGCGCCGGCGATCTGCAATCAGTGGACGGCATCG 1992-2074
GCGCCATGTGGGCCCGTCATGTGCGCGAGGGGTTGTCACAGCTGGCGGAATCGACCATCAGCGATCAATAAGAGCACATCGAT 2075-2157
ATGCAACCATGGCACGGGAAAGCCATGCAGCGTGCGAGCGAAGCCGGGGCGACGGCCCCCAAGGCGTCGGCGCGTAACGCGCG 2158-2240
GGGTGCGCCCATGGACCCGACGGAGTCCCCCGCGGCGCCGGAGGCGGCCCTGCCGAAAGCGGGTAAGTTCGGTCCAGCGCGGA 2241-2323
AAAGCGGGAGCCGCCAAAAGAAGTCCGCGCCCGACACCCAGGAGCGTCCCCCGGTCCGGGCCACCGGCGCGCGTGCCAAAAAA 2324-2406
GCCCCGCAACGGGCGCAAGATACGCAGCCAAGCGATGCGACCTCCGCCCCCGGGGCGGAGGGTCTGGAGCCCCCGGCCGCCCG 2407-2489
GGAGCCAGCGCTCTCGCGCGCGGGTTCCTGCCGTCAGCGGGGCGCGCGGTGTTCCACGAAACCCCGTCCCCCACCAGGTCCCT 2490-2572
GGGACGTGCCGTCGCCGGGTTTGCCGGTGAGCGCGCCAATCCTGGTCCGGCGCGACGCGGCCCCGGGGGCGTCGAAATTGCGT 2573-2655
GCGGTGCTCGAGAAATTGAAGTTGTCGCGCGACGACATCTCCACGGCCGCGGGTATGGTCAAGGGCGTGGTCGATCATTTGTT 2656-2738
GTTGCGGCTCAAGTGTGATTCGGCGTTCCGCGGGGTGGGCTTGCTGAACACGGGGTCCTACTATGAGCATGTCAAAATCAGCG 2739-2821
CCCCCAACGAATTTGACGTGATGTTTAAGCTGGAAGTGCCACGTATCCAATTGGAAGAGTATTCCAATACCCGTGCGTATTAT 2822-2904
TTCGTCAAATTTAAGCGCAATCCGAAGGAAAATCCACTCAGCCAATTCTTGGAGGGCGAAATTCTGTCGGCCTCGAAAATGCT 2905-2987
CTCCAAATTTCGTAAGATTATCAAGGAGGAGATCAACGACATTAAGGACACGGATGTGATCATGAAACGTAAACGTGGCGGTT 2988-3070
CCCCCGCGGTGACGCTCCTCATTTCGGAAAAAATTTCGGTGGACATTACCCTGGCGTTGGAATCGAAGTCCAGCTGGCCGGCG 3071-3153
TCGACCCAGGAGGGCCTGCGGATTCAAAACTGGTTGAGCGCCAAAGTGCGGAAGCAGCTGCGTCTCAAACCCTTTTATTTGGTC 3154-3237
CCGAAACATGCCAAAGAGGGTAACGGTTTTCAAGAGGAAACCTGGCGTTTGAGCTTCTCCCACATTGAGAAGGAGATTTTGAAC 3238-3321
AACCATGGTAAGTCCAAAACGTGCTGCGAGAATAAGGAAGAAAAATGTTGTCGCAAAGATTGTCTCAAATTGATGAAATATTTG 3322-3405
CTGGAACAACTCAAAGAGCGTTTTAAGGACAAGAAGCATCTCGACAAGTTCTCCTCGTATCACGTCAAGACCGCCTTCTTTCAT 3406-3489
GTCTGTACGCAGAACCCGCAAGATAGCCAGTGGGATCGCAAGGACTTGGGGTTGTGTTTTGACAATTGCGTCACCTATTTCTTG 3490-3573
CAATGTTTGCGGACCGAGAAATTGGAGAACTACTTTATTCCAGAATTCAACTTGTTTTCCTCGAATCTGATTGACAAACGCTCC 3574-3657
AAAGAGTTTCTGACGAAGCAGATTGAATACGAGCGTAACAATGAGTTTCCGGTCTTTGACGAGTTTTGAAAGCTTGAGATGGTG 3658-3741
AGCAAGGGCGAGGAGGATAACATGGCCATCATCAAGGAGTTCATGCGCTTCAAGGTGCACATGGAGGGCTCCGTGAACGGCCAC 3742-3825
GAGTTCGAGATCGAGGGCGAGGGCGAGGGCCGCCCCTACGAGGGCACCCAGACCGCCAAGCTGAAGGTGACCAAGGGTGGCCCC 3826-3909
CTGCCCTTCGCCTGGGACATCCTGTCCCCTCAGTTCATGTACGGCTCCAAGGCCTACGTGAAGCACCCCGCCGACATCCCCGAC 3919-3993
TACTTGAAGCTGTCCTTCCCCGAGGGCTTCAAGTGGGAGCGCGTGATGAACTTCGAGGACGGCGGCGTGGTGACCGTGACCCAG 3994-4077
GACTCCTCCCTGCAGGACGGCGAGTTCATCTACAAGGTGAAGCTGCGCGGCACCAACTTCCCCTCCGACGGCCCCGTAATGCAG 4078-4161
AAGAAGACCATGGGCTGGGAGGCCTCCTCCGAGCGGATGTACCCCGAGGACGGCGCCCTGAAGGGCGAGATCAAGCAGAGGCTG 4162-4225
AAGCTGAAGGACGGCGGCCACTACGACGCTGAGGTCAAGACCACCTACAAGGCCAAGAAGCCCGTGCAGCTGCCCGGCGCCTAC 4226-4329
AACGTCAACATCAAGTTGGACATCACCTCCCACAACGAGGACTACACCATCGTGGAACAGTACGAACGCGCCGAGGGCCGCCAC 4330-4413
TCCACCGGCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAGACTAGTTGCCTGGCGGCAGTAGCGCGGTGGTCCCACCTGACCCCATGCCGA 4414-4497
ACTCAGAAGTGAAACGCCGTAGCGCCGATGGTAGTGTGGGGTCTCCCCATGCGAGAGTAGGGAACTGCCAGGCATCAAATAAAA 4498-4581
CGAAAGGCTCAGTCGAAAGACTGGGCCTTTCGTTTTATCTGTTGTTTGTCGGTGAACGCTCTCCTGAGTAGGACAAATCCGCCG 4582-4665
GGAGCGGATTTGAACGTTGCGAAGCAACGGCCCGGAAGGGTGGCGGGCAGGACGCCCGCCATAAACTGCCAGGCATCAAATTAA 4667-4749
GCAGAAGGCCATCCTGACGGATGGCCTTTTTTCTAGAGTCGACCACCAAGGGCACCATCTCTGCTTGGGCCACCCCGTTGGCCG 4750-4833
CAGCCAGCTCGCTGAGAGCCGTGAACGACAGGGCGAACGCCAGCCCGCCGACGGCGAGGGTTCCGACCGCTGCAACTCCCGGTG 4834-4917
CAACCTTGTCCCGGTCTATTCTCTTCACTGCACCAGCTCCAATCTGGTGTGAATGCCCCTCGTCTGTTCGCGCAGGCGGGGGGC 4918-5001
TCTATTCGTTTGTCAGCATCGAAAGTAGCCAGATCAGGGATGCGTTGCAACCGCGTATGCCCAGGTCAGAAGAGTCGCACAAGA 5002-5085
GTTGCAGACCCCTGGAAAGAAAAATGGCCAGAGGGCGAAAACACCCTCTGACCAGCGGAGCGGGCGACGGGAATCGAACCCGCG 5086-5169
TAGCTAGTTTGGAAGAATGGGTGTCTGCCGACCACATATGGGCCGGTCAAGATAGGTTTTTACCCCCTCTCGGCTGCATCCTCT 5170-5253
AAGTGGAAAGAAATTGCAGGTCGTAGAAGCGCGTTGAAGCCTGAGAGTTGCACAGGAGTTGCAACCCGGTAGCCTTGTTCACGA 5254-5337
CGAGAGGAGACCTAGTTGGCACGTCGCGGATGGGGATCGCTGAAGACTCAGCGCAGCGGGAGGATCCAAGCCTCATACGTCAAC 5338-5421
CCGCAGGACGGTGTGAGGTACTACGCGCTGCAGACCTACGACAACAAGATGGACGCCGAAGCCTGGCTCGCGGGCGAGAAGCGG 5422-5505
CTCATCGAGATGGAGACCTGGACCCCTCCACAGGACCGGGCGAAGAAGGCAGCCGCCAGCGCCATCACGCTGGAGGAGTACACC 5506-5589
CGGAAGTGGCTCGTGGAGCGCGACCTCGCAGACGGCACCAGGGATCTGTACAGCGGGCACGCGGAGCGCCGCATCTACCCGGTG 5590-5673
CTAGGTGAAGTGGCGGTCACAGAGATGACGCCAGCTCTGGTGCGTGCGTGGTGGGCCGGGATGGGTAGGAAGCACCCGACTGCC 5674-5757
CGCCGGCATGCCTACAACGTCCTCCGGGCGGTGATGAACACAGCGGTCGAGGACAAGCTGATCGCAGAGAACCCGTGCCGGATC 5768-5841
GAGCAGAAGGCAGCCGATGAGCGCGACGTAGAGGCGCTGACGCCTGAGGAGCTGGACATCGTCGCCGCTGAGATCTTCGAGCAC 5842-5925
TACCGGATCGCGGCATACATCCTGGCGTGGACGAGCCTCCGGTTCGGAGAGCTGATCGAGCTTCGCCGCAAGGACATCGTGGAC 5926-6009
GACGGCATGACGATGAAGCTCCGGGTGCGCCGTGGCGCTTCCCGCGTGGGGAACAAGATCGTCGTTGGCAACGCCAAGACCGTC 6010-6093
CGGTCGAAGCGTCCTGTGACGGTTCCGCCTCACGTCGCGGAGATGATCCGAGCGCACATGAAGGACCGTACGAAGATGAACAAG 6094-6177
GGCCCCGAGGCATTCCTGGTGACCACGACGCAGGGCAACCGGCTGTCGAAGTCCGCGTTCACCAAGTCGCTGAAGCGTGGCTAC 6178-6261
GCCAAGATCGGTCGGCCGGAACTCCGCATCCACGACCTCCGCGCTGTCGGCGCTACGTTCGCCGCTCAGGCAGGTGCGACGACC 6262-6345
AAGGAGCTGATGGCCCGTCTCGGTCACACGACTCCTAGGATGGCGATGAAGTACCAGATGGCGTCTGAGGCCCGCGACGAGGCT 6346-6429
ATCGCTGAGGCGATGTCCAAGCTGGCCAAGACCTCCTGAAACGCAAAAAGCCCCCCTCCCAAGGACACTGAGTCCTAAAGAGGG 6430-6513
GGGTTTCTTGTCAGTACGCGAAGAACCACGCCTGGCCGCGAGCGCCAGCACCGCCGCTCTGTGCGGAGACCTGGGCACCAGCCC 6514-6597
CGCCGCCGCCAGGAGCATTGCCGTTCCCGCCAGCTGAGTTCTGTTGTGCGCCGCCTATGTAGAGCTGGTCGTTGTAGGTCCGA 6598-6680
TCTCCAGGCGACTTTCCGGCGACGCTGAGGATGTCGATCACAGAGCCTCCGGGACCGCCGGTTGCGGTCAAACCTGACCATCC 6681-6763
GACAGCGGACGCCGTGGTGTTTCCTCCAGGGCCTCCGGCCTTGCCTGAGAATACAGAGCCAGCTCCCGCTGCGCCTCCAGCTC 6764-6846
CGACGAGCCCGGTGATCGTCTTGGTCGACCTGCAGGCATGCAAAAGCTGATCCTTGCCGAGCTGGGATGGAAGCCCGGCCGAC 6847-6929
CCACCCTGGAGGAGATGATCGAGGATGCCAGGGCCTTTCACGCCCGCCGCTGCTGAGCGTCCGCCGCCGGGCCCGCACCGCCG 6830-7012
TCGGCCGGCCCGCTCCGGGCTCGCAGCAGCGGGCTTCGGCGCGGGCCCGGGGCTCCCGGGCCGCCGGGCGGGGCTCCGCCCGG 7013-7095
CGGCCGCCGGGGGCCGGGGGCGGCGCCGGGCGGCCCGGGGCGTCAGGCGCCGGGGGCGGTGTCCGGCGGCCCCCAGAGGAACT 7096-7178
GCGCCAGTTCCTCCGGATCGGTGAAGCCGGAGAGATCCAGCGGGGTCTCCTCGAACACCTCGAAGTCGTGCAGGAAGGTGAAG 7179-7261
GCGAGCAGTTCGCGGGCGAAGTCCTCGGTCCGCTTCCACTGCGCCCCGTCGAGCAGCGCGGCCAGGATCTCGCGGTCGCCCCG 7262-7344
GAAGGCGTTGAGATGCAGTTGCACCAGGCTGTAGCGGGAGTCTCCCGCATAGACGTCGGTGAAGTCGACGATCCCGGTGACCT 7345-7427
CGGTCGCGGCCAGGTCCACGAAGATGTTGGTCCCGTGCAGGTCGCCGTGGACGAACCGGGGTTCGCGGCCGGCCAGCAGCGTG 7428-7510
TCCACGTCCGGCAGCCAGTCCTCCAGGCGGTCCAGCAGCCGGGGCGAGAGGTAGCCCCACCCGCGGTGGTCCTCGACGGTCGC 7511-7593
CGCGCGGCGTTCCCGCAGCAGTTCCGGGAAGACCTCGGAATGGGGGGTGAGCACGGTGTTCCCGGTCAGCGGCACCCTGTGCA 7594-7676
GCCGGCCGAGCACCCGGCCGAGTTCGCGGGCCAGGGCGAGCAGCGCGTTCCGGTCGGTCGTGCCGTCCATCGCGGACCGCCAG 7677-7759
GTGGTGCCGGTCATCCGGCTCATCACCAGGTAGGGCCACGGCCAGGCTCCGGTGCCGGGCCGCAGCTCGCCGCGGCCGAGGAG 7760-7842
GCGGGGCACCGGCACCGGGGCGTCCGCCAGGACCGCGTACGCCTCCGACTCCGACGCGAGGCTCTCCGGACCGCACCAGTGCT 7743-7925
CGCCGAACAGCTTGATCACCGGGCCGGGCTCGCCGACCAGTACGGGGTTGGTGCTCTCGCCGGGCACCCGCAGCACCGGCGGC 7926-8008
ACCGGCAGCCCGAGCTCCTCCAGGGCTCGGCGGGCCAGCGGCTCCCAGAATTCCTGGTCGTTCCGCAGGCTCGCGTAGGAATC 8009-8091
ATCCGAATCAATACGGTCGAGAAGTAACAGGGATTCTTGTGTCACAGCGGACCTCTATTCACAGGGTACGGGCCGGCTTAATT 8092-8174
CCGCACGGCCGGTCGCGACACGGCCTGTCCGCACCGCGGATCAGGCGTTGACGATGACGGGCTGGTCGGCCACGTCGGGGACG 8175-8257
TTCTCGGTGGTGCTGCGGTCGGGATCGCCAATCTCTACGGGCCGACCGAGGCGACGGTGTACGCCACCGCCTGGTTCTGCGAC 8258-8340
GGCGAGGCGCCGTCCCAGGCCCCGCCGATCCCCGTCCCCCGCGTCGTCGAGCGCGGTGCCGACGACACCGCCGCGTGGCTCGT 8341-8423
CACGGAGGCCGTCCCCGGCGTCGCGGCGGCCGAGGAGTGGCCCGAGCACCAGCGGTTCGCCGTGGTCGAGGCGATGGCGGAGC 8424-8506
TGGCCCGCGCCCTCCACGAGCTGCCCGTGGAGGACTGCCCCTTCGACCGGCGCCTCGACGCGGCGGTCGCCGAGGCCCGGCGG 8507-8589
AACGTCGCCGAGGGCCTGTGGACCTCGACGACCTGCAGGCATGCAAGCTAGCTTTTGTTATCCGCTCACAATTCCACACAACA 8590-8672
TACGAGCCGGAAGCATAAAGTGTAAAGCCTGGGGTGCCTAATGAGTGAGCTAACTCACATTAATTGCGTTGCGCTCACTGCCC 8673-8755
GCTTTCCAGTCGGGAAACCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATGAATCGGCCAACGCGCGGGGAGAGGCGGTTTGCGTATTGGGCG 8756-8838
CTCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAA 8839-8921
TACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAG 8922-9004
GCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAA 9005-9087
CCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCG 9088-9170
GATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCAATGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTC 9171-9253
GTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTC 9254-9336
CAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTA 9337-9419
CAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGGACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACC 9420-9502
TTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGAT 9503-9585
TACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTT 9586-9668
AAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAA 9669-9751
AGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTC 8752-9834
ATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATAC 9835-9917
CGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCA 9918-10000
ACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTT 10001-10085
GTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGA 10086-10169
GTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTG 10170-10253
TTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTAC 10254-10337
TCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACAT 10338-10421
AGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGT 10422-10505
TCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGG 10506-10589
CAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATT 10590-10673
TATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCC 10674-10757
CGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCCCTTTCGT 10758-10841
C 10842-10842
【0134】
CDN PAMPおよびDAMPレベルを増加させるために、内在性BCGホスホジエステラーゼ遺伝子およびホスホジエステラーゼドメインをコードする遺伝子内セグメントをノックアウトする。
【0135】

内在性BCGホスホジエステラーゼをノックアウトしてCDNを過剰発現。WP_003414507
【0136】

BCG AHM08589.1タンパク質は、C末端316アミノ酸にわたってM. tuberculosis Rv2837cと100%同一であるBCGの内因性二機能性c-di-AMPおよびcGAMPホモデイステラーゼ(CdnP、CnpB、3'~5'オリゴリボヌクレアーゼA、二機能性オリゴリボヌクレアーゼまたはPAPホスファターゼNrnAとも呼ばれる)をコードしている。結核菌Rv2837cタンパク質は、3'-5'c-di-AMP(細菌のPAMP分子)と2'-3'cGAMP(宿主のDAMP分子)の両方を加水分解することが知られている。BCGタンパク質はC末端の315アミノ酸にわたって100%同一であるため、BCG AHM08589.1タンパク質をノックアウト(遺伝子置換)すると、組み換えBCGのCDN(3'-5'c-di-AMPおよび2'-3'cGAMP)レベルが増加することになる。
【0137】
SEQ ID NO:14
【0138】
Bifunctional c-di-AMP and cGAMP phosphodiesterase CdnP (CnpB, 3'-to-5' oligoribonuclease A, bifunctional oligoribonuclease, PAP phosphatase NrnAとも呼ばれる) from BCG, amino acid sequence (316 amino acids; BCG protein AHM08589.1 ; NCBI Reference DNA Sequence: BCG株ATCC 35743由来のCP003494.1; NCBI Reference Protein Identifier WP_003414507)。 同様の配列は、Mycobacterium tuberculosisではタンパク質Rv2837cまたはMT2903として、Mycobacterium bovisではタンパク質Mb2862cとして存在する。


MDAVGAAALLSAAARVGVVCHVHPDADTIGAGLALALVLDGCGKRVEVSFAAPATLPESLRSLPGCHLLVRPEVMRRDVDLVVTVDIPSVDRLGALGDLTDSGRELLVIDHHASNDLFGTANFIDPSADSTTTMVAEILDAWGKPIDPRVAHCIYAGLATDTGSFRWASVRGYRLAARLVEIGVDNATVSRTLMDSHPFTWLPLLSRVLGSAQLVSEAVGGRGLVYVVVDNREWVAARSEEVESIVDIVRTTQQAEVAAVFKEVEPHRWSVSMRAKTVNLAAVASGFGGGGHRLAAGYTTTGSIDDAVASLRAALG
【0139】
SEQ ID NO:15
【0140】
BCG由来の二機能性c-di-AMPおよびcGAMPホスホジエステラーゼ遺伝子、cdnP(cnpBまたは3'-to-5'オリゴリボヌクレアーゼA、二機能性オリゴリボヌクレアーゼまたはPAPホスファターゼNrnAの遺伝子ともいう)、DNA配列(951塩基[316コドンおよび1ストップコドン];BCGタンパク質AHM08589.1をコード;NCBI Reference Sequence.を参照)。 BCG株ATCC 35743由来のCP003494.1)。 同様の配列は、タンパク質Rv2837cまたはMT2903をコードするMycobacterium tuberculosis、およびタンパク質Mb2862cをコードするMycobacterium bovisに存在する。


GTGGACGCCGTCGGTGCCGCTGCGCTGTTGTCGGCCGCTGCCAGGGTCGGGGTAGTCTGCCACGTCCACCCCGATGCCGACACCATCGGCGCCGGATTGGCATTGGCATTGGTGTTGGACGGGTGCGGCAAGCGGGTAGAGGTCAGCTTTGCCGCGCCGGCGACACTGCCCGAGTCGCTGCGTTCGCTGCCGGGCTGCCATCTGCTGGTCCGCCCTGAGGTGATGCGCCGCGATGTCGATTTGGTTGTGACTGTTGACATTCCGAGTGTTGATCGGCTCGGTGCTCTGGGCGATCTAACTGATTCCGGGCGGGAGCTCCTGGTAATCGACCATCACGCCTCCAACGACCTGTTCGGCACCGCGAATTTCATTGACCCGTCGGCGGATTCCACCACGACGATGGTTGCCGAGATCCTCGACGCGTGGGGGAAACCGATAGACCCGCGCGTCGCGCACTGCATCTACGCCGGGTTGGCGACCGACACGGGGTCGTTTCGCTGGGCCAGTGTGCGGGGGTATCGGCTGGCGGCGCGGCTGGTAGAGATCGGTGTGGACAACGCCACCGTCAGCAGGACCTTGATGGACAGCCATCCCTTCACCTGGTTGCCGTTGCTATCGCGGGTGTTGGGTTCGGCGCAGCTGGTGTCCGAGGCGGTCGGTGGCCGCGGGCTGGTTTACGTCGTCGTCGACAACCGGGAGTGGGTCGCTGCGCGCTCGGAGGAAGTGGAAAGCATCGTCGACATCGTCCGCACCACGCAACAAGCCGAGGTCGCGGCGGTGTTCAAGGAGGTCGAACCGCATCGGTGGTCGGTGTCGATGCGGGCTAAGACCGTGAATTTGGCCGCGGTTGCCTCTGGGTTCGGTGGCGGTGGTCACCGGCTGGCCGCGGGGTATACGACCACCGGCTCGATCGACGACGCTGTGGCGTCGTTGCGCGCGGCGCTTGGTTAG
【0141】
SEQ ID NO:16
【0142】
Mycobacterium tuberculosis 由来の Bifunctional c-di-AMP and cGAMP phosphodiesterase CdnP (CnpB, Rv2837c, or MT2903, 3'-to-5' oligoribonuclease A, bifunctional oligoribonuclease, PAP phosphatase NrnA とも呼ばれる), amino acid sequence (336 amino acids; M.tuberculosis protein WP_003905944.1; NCBI/GenBank Reference Sequence:AL123456 from M. tuberculosis strain H37Rv )。 M.tuberculosisタンパク質は、BCGタンパク質(SEQ ID NO:14)と比較して、そのN末端に20個のアミノ酸を追加しており、それらは下線と太字で示されている。

MTTIDPRSELVDGRRRAGARVDAVGAAALLSAAARVGVVCHVHPDADTIGAGLALALVLD
GCGKRVEVSFAAPATLPESLRSLPGCHLLVRPEVMRRDVDLVVTVDIPSVDRLGALGDLT
DSGRELLVIDHHASNDLFGTANFIDPSADSTTTMVAEILDAWGKPIDPRVAHCIYAGLAT
DTGSFRWASVRGYRLAARLVEIGVDNATVSRTLMDSHPFTWLPLLSRVLGSAQLVSEAVG
GRGLVYVVVDNREWVAARSEEVESIVDIVRTTQQAEVAAVFKEVEPHRWSVSMRAKTVNL
AAVASGFGGGGHRLAAGYTTTGSIDDAVASLRAALG
【0143】

内在性BCGホスホジエステラーゼドメインをノックアウトすることによりCDNを過剰発現させたもの。タンパク質BCG_RS07340のEALドメイン(以前はBCG_1416c)。BCG_RS07340タンパク質(SEQ ID NO:4)は、SEQ ID NO:5に示すDNA配列によってコードされている。BCG_RS07340タンパク質は、M. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一であり、BCGにおける内因性CDNPDEである。全長ポリペプチドは623アミノ酸長であり、二機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ジグアニル酸ホスホジエステラーゼをコードしている。ドメイン構造はN-末端-GAF-GGDEF-EAL-C-末端は図の通りである。GAFドメイン(約1-190アミノ酸)は、他のドメインの活性に影響を与える調節ドメインである。GGDEFドメイン(約アミノ酸数190-350)は、2GTP→c-di-GMP+2ピロリン酸の反応を触媒するジグアニル酸シクラーゼである。EALドメイン(アミノ酸354~623、SEQIDNo:4でハイライト)は、反応c-di-GMP→2GMPを触媒するジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。このタンパク質のEALドメインは3'-5'c-di-GMPを切断することが知られているので、この内因性環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼドメインをノックアウトすると、BCGによって生成するc-di-GMPのレベルが増加することになる。EALドメインの標的化ノックアウトは、完全長WTBCG_RS07340遺伝子をアミノ酸1~353(GAF-GGDEFドメイン)のみをコードするものと遺伝子置換すること、すなわちアミノ酸354~623をコードする配列(SEQ ID NO:5中の下線DNA配列として示す)を除外するように遺伝子のコード配列を切り捨て、適切なストップコドンおよび転写終了配列を含むことによって達成することができる。BCG_RS07340のEALドメインを欠く組換えBCGは、CDNPAMPc-di-GMPのレベルを増加させることになる。
【0144】
BCG内在性ホスホジエステラーゼ:BCG AHM07112をノックアウトしてCDNを過剰発現させた。BCG_AHM07112タンパク質は、BCGの内因性ジグアニル酸ホスホジエステラーゼである(307アミノ酸のM. tuberculosis Rv1357cタンパク質と相同性あり)。BCGには、BCG_AHM07112を全く持たない株と、BCG TiceのようにBCG_AHM07112を保持する株がある。このポリペプチドを有するBCG株のうち、タンパク質の長さは288アミノ酸(BCG ATCC 35743など)または307アミノ酸(BCG Pasteur 1173 P2など)である場合がある。BCG ATCC 35743由来のBCG_AHM07112タンパク質は、長さ288アミノ酸であり、そのC末端287アミノ酸にわたって、M. tuberculosis Rv1357cタンパク質と100%同一である。BCG_AHM07112のドメイン構造は、1つのEALドメインである。 結核菌Rv1357cタンパク質は3'-5' c-di-GMPを切断することが知られているので、BCGタンパク質も同じ反応を行っている可能性が高い。 BCGのこの内因性環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼをノックアウトすると、BCGが産生するc-di-GMPのレベルが増加することが予想される。EALドメインの標的ノックアウトは、全長WT BCG_AHM07112遺伝子の遺伝子置換とそれに続く無標の欠失の生成によって達成されうる。
【0145】
SEQ ID NO:17
【0146】
BCGおよびその他の関連マイコバクテリア由来ジグアニル酸ホスホジエステラーゼAHM07112.1、アミノ酸配列(288アミノ酸;GenBank Reference Sequence:CP003494.1;BCG株ATCC 35743由来)。 AHM07112.1は、Mycobacterium tuberculosisのタンパク質Rv1357cまたはMT1400、Mycobacterium bovisのタンパク質Mb1392cとしてのジグアニル酸リン酸化酵素のC末端の287アミノ酸と100%同一である。
MIDYEEMFRGAMQARAMVANPDQWADSDRDQVNTRHYLSTSMRVALDRGEFFLVYQPIIRLADNRIIGAE
ALLRWEHPTLGTLLPGRFIDRAENNGLMVPLTAFVLEQACRHVRSWRDHSTDPQPFVSVNVSASTICDPG
FLVLVEGVLGETGLPAHALQLELAEDARLSRDEKAVTRLQELSALGVGIAIDDFGIGFSSLAYLPRLPVD
VVKLGGKFIECLDGDIQARLANEQITRAMIDLGDKLGITVTAKLVESPSQAARLRAFGCKAAQGWHFAKA
LPVDFFRE
【0147】
SEQ ID NO:18
【0148】
BCGおよびその他の関連マイコバクテリア由来ジグアニル酸ホスホジエステラーゼAHM07112.1、DNA配列(867塩基[288コドン、1ストップコドン];GenBank Reference Sequence:CP003494.1;BCG株ATCC 35743由来)。 AHM07112.1は、Mycobacterium tuberculosisのタンパク質Rv1357cまたはMT1400、およびMycobacterium bovisのタンパク質Mb1392cとしてのジグアニル酸リン酸エステラーゼのC末端287アミノ酸と100%同じである。


1 ttgatcgact acgaagagat gtttaggggc gcgatgcaag cgcgagcgat ggtagccaat
61 cctgaccaat gggcggactc cgaccgcgac caggtcaaca ctcgccatta tctgtccact
121 tcgatgcgcg tggcactgga tcgcggtgaa ttcttcctcg tctaccagcc aatcatccgg
181 cttgccgaca accgcatcat cggcgccgag gccctgctgc gctgggaaca cccgacgttg
241 ggcacgctac tcccgggccg gttcatcgac cgtgccgaga acaacggact gatggtgccg
301 ctcacggcct tcgtgctcga gcaggcctgc cgccacgtcc gcagttggcg tgaccacagc
361 accgacccgc aaccgtttgt cagcgtcaac gtctccgcca gcaccatctg cgatcccggc
421 ttcctggtgc tggtcgaagg tgtgctcggc gaaaccggcc tgcccgccca tgccctgcag
481 ctcgaactgg ccgaggacgc gcgccttagc agagacgaga aggcggtgac caggctacaa
541 gaattgtccg ctctcggcgt cggcatcgcc atcgacgact tcggcattgg attctccagc
601 ctcgcctacc ttccccgcct ccccgtcgac gtggtcaaac tcgggggaaa gttcatcgag
661 tgcctcgatg gcgacattca agctcggctg gccaacgaac agatcacccg ggcaatgatc
721 gaccttggcg acaagctcgg tatcaccgtc actgcaaagc tagtcgaaag ccccagccaa
781 gccgcccggt tgcgcgcctt cggctgtaaa gccgcacaag gctggcactt tgccaaggca
841 ctgccggtcg actttttcag agagtag
【0149】
SEQ ID NO:19
【0150】
Mycobacterium tuberculosis および BCG Pasteur 1173 P2 由来のジグアニル酸ホスホジエステラーゼ Rv1357c または MT1400、アミノ酸配列(307 アミノ酸、NCBI/GenBank Reference Sequence:M. tuberculosis strain H37Rv由来のAL123456)。 N末端19アミノ酸は、M. tuberculosisとBCG Pasteur 1173 P2株には存在するが、他のいくつかのBCG株には存在しない。 19アミノ酸のN-末端伸長部には下線を引き、太字で示した。 M. tuberculosis Rv1357cのC末端287アミノ酸は、BCGジグアニル酸ホスホジエステラーゼAHM07112.1と100%同一である。

MDRCCQRATAFACALRPTKLIDYEEMFRGAMQARAMVANPDQWADSDRDQVNTRHYLSTS
MRVALDRGEFFLVYQPIIRLADNRIIGAEALLRWEHPTLGTLLPGRFIDRAENNGLMVPL
TAFVLEQACRHVRSWRDHSTDPQPFVSVNVSASTICDPGFLVLVEGVLGETGLPAHALQL
ELAEDARLSRDEKAVTRLQELSALGVGIAIDDFGIGFSSLAYLPRLPVDVVKLGGKFIEC
LDGDIQARLANEQITRAMIDLGDKLGITVTAKLVETPSQAARLRAFGCKAAQGWHFAKAL
PVDFFRE
【0151】
本願で参照した配列を以下の表1にまとめている。
[表1]
【0152】
一実施形態では、本発明は、Rv1354cタンパク質またはその機能的部分をコードする核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質またはその機能的部分をコードする核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能的部分をコードする核酸配列;あるいはそれらの組み合わせを含む発現カセットまたは発現ベクターに関連する。いくつかの態様において、発現ベクターまたは発現カセットは、ジアデニル酸シクラーゼとして機能するDNAインテグリティスキャン(disA)タンパク質をコードする核酸配列、またはその機能的部分をさらに含む。他の態様において、Rv1354cタンパク質をコードする核酸配列は、ホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含まない。いくつかの態様において、発現ベクターまたは発現カセットは、ホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含有しない。
【0153】
発現ベクターおよび発現カセットを生成し、マイコバクテリアを形質転換し、そしてそれを単離するための方法が記載されている。いくつかの実施形態において、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは、核酸の転写を制御または影響する本発明の核酸に作動可能に連結された1つまたは複数の調節配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントを含んでいる。いくつかの態様において、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは、転写の終結、転写後切断、および/またはポリアデニル化を指示する本発明の核酸に作動可能に連結した1つまたは複数の配列を含む。いくつかの態様において、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは、本発明の核酸に作動可能に連結された可変長介在配列および/または選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0154】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の本発明の発現ベクターまたは発現カセットを含むマイコバクテリウムの株に関する。いくつかの態様において、Mycobacteriumの株は、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium bovis、またはそれらの組合せである。他の局面では、マイコバクテリウムの株は、BCGである。いくつかの態様において、菌株は、SEQ ID NO:13のプラスミドを含む。
【0155】
別の実施形態では、本発明は、ダイアデニル酸シクラーゼを発現または過剰発現する、および/または1つ以上の他のシクラーゼ遺伝子もしくはドメイン(例えば、本明細書に記載されるもの)を発現または過剰発現するマイコバクテリアの株に関する。いくつかの態様において、発現または過剰発現は、1つ以上のSTINGアゴニスト(例えば、c-di-AMP、c-di-GMP、2'-3'cGAMP、および/または3'-3'cGAMP)の放出に帰着する。いくつかの態様において、本発明は、ダイアデニル酸シクラーゼを発現または過剰発現する、および/またはSTINGアゴニストを加水分解するホスホジエステラーゼ(PDE)を発現しない(例えば、STINGアゴニストを加水分解するPDE遺伝子の欠失を含む)Mycobacteriumの菌株に関連する。いくつかの態様において、マイコバクテリウムの株は、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス、またはそれらの組合せである。いくつかの態様において、Mycobacteriumの株は、BCGである。
【0156】
ラットMNU膀胱癌モデルにおけるBCG-disA-OEによる統計学的に有意な抗腫瘍効果
【0157】
ラットMNU膀胱癌モデルは、膀胱癌の有効なモデルであり、膀胱内BCGの投与が治療的であることを示すことができる(図6およびKatesら、PMID28588015)。本発明者らは、図7に示されたBCG-disA-OE対BCG-WTの治療効果に関する彼らの以前の知見を拡張した。本発明者らは、現在、16週齢のラットMNUモデルを2回行った。図7は、実験1に基づいており、BCG-disA-OEがBCG-WTに対してより良い結果を示す傾向を示していることを示すものであった。実験2を実施し、そのデータを実験1と組み合わせた後、現在、BCG-disA-OEは無処置に対して統計的に有意に優れている(p=0.048)のに対し、BCG-WTは無処置に対して統計的に有意に優れていない(図15に示すデータ)ことが示されている。
【0158】
マウス滑液包性膀胱癌腫瘍モデルにおけるBCG-disA-OEによる腫瘍抑制性Treg細胞の減少
【0159】
MNUラット膀胱癌モデルでは、16週間の実験終了時の膀胱組織の量が少なく、フローサイトメトリーを行うには不十分である。BCG-disA-OEによって誘発される細胞集団の変化を研究するために、BBN975細胞を用いたマウス同系膀胱癌腫瘍モデルが開発された。このモデルでは、マウスの脇腹に大きな腫瘍(直径1.5cm以上)を発生させることができる。マウスは、腫瘍内注射によりBCG-disA-OEおよびBCG-WTで処理された。図16に示すように、BCG-disA-OEの使用は、腫瘍関連CD4+Treg細胞、腫瘍関連CD8+Treg細胞、及び脾臓CD4+Treg細胞のレベルの減少をもたらした。
【0160】
BCG-disA-OEは、細胞内からSTINGアゴニストを持続的に供給する。
【0161】
BCGの膀胱への残留性
【0162】
Bowyerら(膀胱癌に対する膀胱内投与後の膀胱内カルメット菌の残存について。Brit J Urol.1995; 75: 188-192. PMID 7850324)は、1986年から1992年にかけてBCGを膀胱内に投与された125人の膀胱癌患者を評価した。患者は毎月尿を採取され、マイコバクテリアの培養に送られた。90人の患者が生存し、月1回の尿採取を遵守していた。90人中4人(4.4%)の患者の尿中にBCGが残留し、そのうち1人は最長16.5カ月間残留していた。5人目の患者は、膀胱内BCG治療終了から7週間後に膀胱摘出術を必要とし、顕微鏡検査で膀胱内に抗酸菌が確認された。
【0163】
Durekら(膀胱内注入後のBacillus Calmette-Guerinの運命)。J Urol.2001; 165:1765-1768.PMID 11342972)は、膀胱内BCG投与後に連続尿培養を行った49名の患者を調査した。2時間後に96.4%、24時間後に67.9%の検体でBCGが尿中に検出された。陽性検体数は減少し、次の注入直前の7日目には27.1%であった(図38)。研究者らはまた、6thの注入後1週間以内に、膀胱生検のマイコバクテリアDNAをPCRで評価した(注入は毎月行われた)。44個の膀胱生検のうち14個(31.8%)でマイコバクテリアのリボソームDNAが検出された。さらに、マイコバクテリアDNAのPCR陽性は、調査した生検の4.2%から37.5%の間で24ヶ月まで明らかになった。
【0164】
BCGが膀胱組織に留まることが知られているという事実は、がんにおけるSTINGアゴニスト送達のためのBCG-disA-OE戦略の重要な利点を表している。低分子のSTINGアゴニストを生成する技術は数多くあるが、そのような薬剤は比較的曝露時間が短い。一方、細胞内微生物であるBCGは、BowyerとDurekの研究で示されたように、細胞や組織内で何週間も存続する。BCG-disA-OEが組織内に留まることで、STINGアゴニストを腫瘍の微小環境に長期にわたって持続的に送達することができる。
【0165】
BCG-disA-OEは、2つの別々のマウスモデルにおいてBCG-WTよりも安全性が高い。
【0166】
ヒトにおけるBCG膀胱内投与は、投与された患者に排尿障害、疲労、倦怠感を伴いる。さらに重篤な副作用として、BCGによる持続性膀胱炎と播種性BCG症がある。BCGの患者安全性については、O'Donnellら(Up-to-date,2019)で広範囲にレビューされている。膀胱内注入後のBCGの血流への播種発生率は、1/15,000人と推定されている。
【0167】
BCG-WTと比較したBCG-disA-OEの安全性を試験するために、本発明者らは、BCG株を免疫担当のBABL/cマウスまたは免疫担当のSCIDマウスの肺にエアロゾル化したBCG感染の2つのマウスモデルを用いている。図17A~17Bに示すように、BCG-disA-OEは、BCG-WTよりも免疫不全マウスの肺における増殖能力が低く、免疫抑制マウスにおける時間-死亡アッセイにおいて致死性が低かった。
【0168】
BCGは、固形がんや液状がん、糖尿病に対する治療効果に関連する訓練された免疫を誘発することが示されている。STINGアゴニスト過剰発現BCG株は、BCG-WT株よりも強い訓練された免疫の変化を誘発する。
【0169】
訓練された免疫力訓練された免疫とは、ある抗原刺激によって、第2の異なる抗原に対してより強力な免疫応答を誘発する能力を指す。訓練された免疫は、抗原に依存せず、異種CD4およびCD8メモリの活性化に基づき、サイトカインを介し、エピジェネティックおよび代謝的な変化と関連している。BCGは、腫瘍、ウイルス感染、または薬剤耐性細菌感染などの後続の抗原刺激に対する訓練された免疫を引き出す最初の抗原刺激として、強力なツールである(Neaら、Trained immunity: a program of innate immune memory in health and disease.サイエンス2016.PMID 27102489; and Arts et al. BCG vaccination protects against experimental viral infection in humans through the induction of cytokines associated with trained immunity.Cell Host Microbe 2018. pmid 29324233)を参照。
【0170】
固形および液状腫瘍に対するBCG。BCGは、ヒトの固形および液体腫瘍の両方に対する免疫療法として、治療上有益であるという長い歴史がある(Hershら、BCG as adjuvant immunotherapy for neoplasia. Annu Rev Med 1977.PMID 324372)。メラノーマ、非小細胞肺癌(NSCLC)、および急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む悪性腫瘍に対して全身的および腫瘍内的に使用されてきた。最近では、膀胱がんに対してBCGとチェックポイント阻害剤を併用した臨床試験が行われている。
【0171】
糖尿病に対するBCG。BCG接種は、最近、1型糖尿病を含む様々な糖尿病のグルコースコントロールに治療効果があることが示されている(Stienstra and Netea. Firing up glycolysis: 1型糖尿病に対するBCGワクチン接種の効果。Trends Endoc Metab 2018. pmid: 30327169)。この効果は、BCGの訓練された免疫効果によって、炎症性サイトカインの発現だけでなく、糖化のための酵素などの代謝酵素の発現を促進するエピジェネティック修飾をもたらすと考えられている。
【0172】
BCG-disA-OEと訓練された免疫。BCGのSTINGアゴニスト過剰発現株が訓練された免疫を刺激する能力を調べるために、本発明者らは、6日前にBCG株に曝露した後の安静なヒト単球において、第二抗原刺激の増強を誘発するBCG-WT vs BCG-disA-OEの能力を検査した。第一の抗原は、0日目のBCG株であり、6日間の安静の後、第二の抗原は、無関係のTLR-1/2抗原PAM3CSK4であった。図18に見られるように、第二の刺激を受けると、試験した免疫応答(IL-1βの分泌)は、BCG-WTおよびBCG-disA-OEの両方で増強されたが、BCG-disA-OEによる刺激の程度は、第一刺激としてBCGなしまたはBCG-WTのいずれよりも、統計的に著しく大きかった。このことから、BCG-disA-OEなどのSTING過剰発現BCG株は、BCG-WTよりも強力な訓練免疫の刺激因子であることが明らかとなった。
【0173】
関連する実験において、本発明者らは、ヒト単球を用いて、同じBCG-1次刺激/6日休息/TLR-1、PAM3CSK4による2次抗原刺激実験を実施した。実験の最後に細胞DNAを採取し、H3K4ヒストン・メチル化マークに対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)に供した。H3K4マークは、転写活性化マークとして知られている。免疫沈降したDNAのIL-6プロモーター領域を定量PCRで増幅したところ、BCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEは、それぞれのBCG-WT株と比較して、IL-6プロモーター(IL-6は炎症性サイトカイン)のH3K4マーク誘発力が統計的に有意であることが示された。これらの結果は、BCG-disA-OEなどのSTING過剰発現BCG株は、BCG-WT株よりも訓練された免疫に関連するエピジェネティックな変化をより強力に刺激するものであることを示している。
【0174】
BCG-Tice-disA-OEはBCG-WTに比べdisA遺伝子を非常に多く発現している
【0175】
図21に見られるように、BCG-Tice-disA-OEクローン2(シードロット調製および保存用に選択された)の相対発現量は2-ΔΔCTの比較法を用いて300:1であった。これは、disAがマルチコピープラスミド上にあり、pSD5-hsp65-MT3692プラスミド中のM.lepraehsp65プロモーターによって駆動されることによって、強く過剰発現されることを示すものである。この強力な過剰発現により、STINGアゴニストであるc-di-AMPの放出量が非常に高くなる。
【0176】
BCG-disA-OEなどのSTINGアゴニスト過剰発現BCG株は、複数のモデル系においてシグナル伝達経路やサイトカイン分泌プロファイルに炎症性の変化を引き起こす。
【0177】
本発明者らは、炎症性サイトカインの変化を誘発する相対的な能力を評価するために、複数のモデル系でBCG-WTと比較してBCG-disA-OEのようなSTINGアゴニスト過剰発現株を試験した。BCG-disA-OEは、その試験の大部分において、BCG-WTよりも統計的に有意に優れていた。また,統計的に有意でない比較では,BCG-disA-OEが2つの反応のうち強いものを与えた.
【0178】
図23は、BCG-disA-OEとBCG-WTの両方におけるタイプ1IFN分泌の上昇がSTING依存的であることも示している。
【0179】
要約すると、BCG-disA-OEはBCG-WTよりも強力な炎症性サイトカイン発現および炎症性経路誘導の刺激因子であることが判明した
【0180】
下表は、そのデータをまとめたものである。
【0181】
[表2]
【0182】
STINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現させた抗生物質遺伝子カセットフリーの組換えBCGの製造方法
【0183】
disA過剰発現プラスミドpSD5-hsp65-MT3692は、抗生物質カナマイシンに耐性を付与するカン耐性遺伝子カセットを担持している。本発明者らは、STINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現する抗生物質遺伝子カセットフリーの組換えBCGを作製する方法を開示している。
【0184】
マイコバクテリアの遺伝子オペロンpanCDは、生合成遺伝子panC(パント酸--β-アラニンリガーゼ遺伝子)とpanD(アスパラギン酸1-デカルボキシラーゼ遺伝子)をコードしている。遺伝子産物PanCとPanDは、ビタミンB5(ビタミンB群)とも呼ばれるパントテン酸の生合成に必要である。パントテン酸は水溶性ビタミンで、BCGなどのマイコバクテリアにとって必須栄養素である。動物は、コエンザイムA(CoA)を合成するため、また、タンパク質、炭水化物、脂肪を合成し代謝するために、パントテン酸を必要とする。陰イオンはパントテン酸と呼ばれる。
【0185】
マイコバクテリアのpanCDを遺伝的に欠失させると、パントテン酸の添加された状態でのみ増殖する変異株が得られることが示されている。この株は、パントテン酸を補食している。結核菌のΔpanCD変異株は、パントテン酸が利用できない哺乳類の組織で増殖できないため、動物感染において非常に減弱し、速やかに除去されることが示されている。
【0186】
本発明者らは、BCGの無印(抗生物質遺伝子カセットなし)ΔpanCD欠失変異体を生成するための詳細な方法を開示している。この変異体は、パントテン酸の存在下でのみ増殖することができ、感染中に生存することも、STINGアゴニスト発現のための有効な送達ベクターとなることも期待されないであろう。
【0187】
本発明者らは、マイコバクテリアpanCD遺伝子とSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現コンストラクト(disA遺伝子を過剰発現し、過剰なSTINGアゴニスト、c-di-AMPを放出するphsp65::disAコンストラクト等)を保有するシャトルプラスミドを生成する詳細な方法を開示する。シャトルプラスミドは、大腸菌やマイコバクテリアで複製することができる。このプラスミドは抗生物質カセットを保持しており、レアカット制限酵素による切断と再ライゲーションにより簡便に除去することが可能である。あるいは、シャトルプラスミドは、末端にユニークな制限部位を生成する抗生物質耐性カセットを除いたプラスミドのバックボーンをPCR増幅し、その末端に同じユニークな制限部位を有する増幅panCDオペロンからなるPCR産物をライゲーションすることにより生成してもよい。いずれの方法でも、抗生物質耐性遺伝子フリーシャトルプラスミド(ライゲーション産物)をBCGまたは大腸菌オーストトロフにエレクトロポレーションし、パントテン酸フリー寒天培地プレート上で選択することができる。
本開示の最後の態様において、本発明者らは、マイコバクテリアpanCD遺伝子を保有する抗生物質カセットを含まないプラスミド、およびSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現構築物(Phsp65::disA構築物など)を無標BCGΔpanCD変異体に導入する方法を示している。最終結果は、抗生物質耐性遺伝子を持たず、STINGアゴニスト生合成遺伝子(複数可)を強く過剰発現するBCG株である。哺乳類宿主やヒトでは、このようなBCG株は、プラスミドからのpanCD相補性を要求されるため、プラスミドを保持する強い選択圧を受けることになるであろう。
【0188】
本開示の別の態様において、panCDカセットおよびSTINGアゴニストの生合成のための構築物(Phsp65::disA構築物など)は、pMH94などの染色体積分ベクターに導入され得る。同様の方法で、pMH94から抗生物質カセットを除去することができる。この染色体統合プラスミドを無標のBCGΔpanCD変異体に導入すれば、抗生物質耐性遺伝子を持たず、STINGアゴニスト生合成遺伝子を強く過剰発現するBCG株も得られるだろう。この戦略の欠点は、過剰発現コンストラクトがプラスミド上のマルチコピーではなく、細菌染色体上のシングルコピーであることであり、これはSTINGアゴニスト放出のレベルを低下させることになりかねない。
【0189】
BCG-Tice(ATCC35743)は天然のパントテン酸強酸性菌である。
【0190】
本発明者らは、Mycobacterium bovis BCG Tice株(ATCC35743)が天然のパントテン酸オーソトローであることを開示している。この株は、そのpanC遺伝子の塩基対739-743に5bpのDNA挿入を有する。この挿入変異の変化は、PanCの246thアミノ酸の後にフレームシフト変異をもたらす(野生型PanCは309アミノ酸の長さである)。5bpの挿入変異の結果、Mycobacterium bovis BCG Tice株(ATCC35743)の変異PanCポリペプチドは、そのN末に野生型PanC配列の246アミノ酸があり、そのC末に478アミノ酸のナンセンスポリペプチドがあるものである。この変異型PanCポリペプチドは、機能的なパント酸--β-アラニンリガーゼ活性(PanCの正常な酵素機能)を保持している可能性は極めて低い。さらに、BCG Tice(ATCC35743)のPanDポリペプチドは、PanC遺伝子の停止コドン(野生型配列のPanD翻訳開始のATGと重なる)が枠外にあるため、翻訳される可能性が非常に低い。野生型panCDオペロンでは、PanCのリボソームによる翻訳終結は、PanDのリボソームによる翻訳開始と連動している。panDの開始コドンのすぐ上流にはリボソームによる終止がないので、panD遺伝子の翻訳のリボソームによる開始は起こる可能性は極めて低い。
【0191】
本発明者らは、この天然補酵素により、STINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現させた抗生物質遺伝子カセットフリーの組み換えBCGをより迅速に構築できることを開示している。
【0192】
本発明者らは、マイコバクテリアpanCD遺伝子およびSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現コンストラクト(Phsp65::disAコンストラクトなど)を有する抗生物質カセットフリーのプラスミドを、BCG-Tice(ATCC 35743)に直接導入する方法を開示している。
【0193】
pSD5-hsp60-MT3692は、pSD5-hsp65-MT3692と同じである。本発明者らは、以前、この同じプラスミドをpSD5-hsp60-MT3692と呼んでいた。しかし、この株における実際のプロモーターは、M. lepraeのhsp65遺伝子のプロモーターである。従って、本発明者らは、プラスミドpSD-hsp60-MT3692をpSD5-hsp65-MT3692と呼ぶことがある。
【0194】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、又は株と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0195】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の発現ベクター、発現カセット、株、または医薬組成物を対象に投与することを含む、癌を治療および/または予防するための方法および/または組成物に関する。いくつかの態様において、癌は、膀胱癌(例えば、非筋層浸潤性膀胱癌(NMIBC))、乳癌、又は固形腫瘍である。本開示の追加の実施形態は、1型インターフェロン(IFN)応答の調節が直接的または間接的に関連する膀胱癌を治療および/または予防するための方法および/または組成物に関する。特定の局面において、NMIBCなどの膀胱癌を有する個体は、1型インターフェロン応答のモジュレーターで治療され、いくつかの局面において、膀胱癌を有する個体は、その発現の誘導剤などの、発現1型インターフェロン発現のモジュレーターを提供される。
【0196】
特定の態様において、1型インターフェロン発現の誘導剤が1型インターフェロンの発現を増加させるレベルは、非筋層浸潤性膀胱癌(NMIBC)を含む膀胱癌の少なくとも1つの症状の改善をもたらす限り、任意のレベルであってよい。型インターフェロンの発現レベルは、少なくともいくつかの場合において、標準の発現レベルと比較して、少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100、1000、又はそれ以上の発現倍率で増加することができる。個体は、例えばノーザンアッセイまたは定量PCRなどの当技術分野の標準的な方法を用いて、1型インターフェロンの発現レベルをモニターすることができる。
【0197】
膀胱癌を有することが知られている個体、膀胱癌を有することが疑われる個体、または膀胱癌を有する危険性のある個体に、有効量の1型インターフェロン発現誘導剤を提供してもよく、それには本発明の発現ベクターを含む本発明のBCG株を含む。発現ベクターは、RV1354cタンパク質、又はその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、又はその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、又はその機能的部分;変性環状酵素として機能するDNA完全性走査(disA)タンパク質、又はその機能的部分;あるいはそれらの組み合わせを発現するものである。本発明の発現ベクターを含む本発明のBCG株が被験者の膀胱に投与され、発現されたタンパク質が膀胱における1型インターフェロンの発現を増強することが好ましい。膀胱癌のリスクを有する者は、例えば、1つ以上の遺伝的要因を有する者、年齢が進んでいる者、及び/又は家族歴がある者であってもよい。
【0198】
本開示の特定の態様において、個体は、本発明の1つまたは複数の1型インターフェロンの誘導剤に加えて、膀胱癌治療のための薬剤を投与される。そのような追加の療法は、例えば、マイトマイシンC、シクロホスファミド、またはそれらの組み合わせのような膀胱内化学療法を含み得る。併用療法を採用する場合、1種以上の1型インターフェロンの誘導剤(例えば、以下のタンパク質の1種以上を発現するBCG株など。RV1354cタンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能的部分;脱塩環状酵素として機能するDNA完全性スキャン(disA)タンパク質またはその機能的部分)の1つ以上を発現するBCG株と併用する場合は、追加療法は、第1種のインターフェロンの誘導剤の前、それと同時、またはそれに引き続いて投与することも可能である。
【0199】
いくつかの態様において、本明細書に記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、医薬組成物、及び/又は方法は、非組換えBCGと比較して、安全性の向上、許容性の向上(例えば、排尿困難、切迫、又は倦怠感の減少)、並びに血流感染又は播種性血流感染を引き起こす可能性の減少を有している。
【0200】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、および/または医薬組成物を対象に投与することを含む、癌を治療および/または予防する方法に関し、この投与は、非組換えBCGと比較して、安全プロファイルの増加、許容度の増加(例えば、排尿困難、切迫、または倦怠感の減少)、および/または血流内感染または播種性血流感染症の可能性の減少をもたらす。いくつかの態様において、癌は、例えば、膀胱癌(例えば、非筋層浸潤性膀胱癌(NMIBC))、乳癌、または固形腫瘍である。他の態様において、固形腫瘍は、例えば、肉腫、癌腫、またはリンパ腫である。
【0201】
いくつかの実施形態において、本発明は、非組換えBCGと比較して、安全性を高め、忍容性を高め(例えば、排尿困難、切迫感、又は倦怠感を減少させ)、及び/又は血流感染又は播種性血流感染を引き起こす可能性を減少させる方法に関し、被験者に、本明細書に記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、及び/若しくは医薬組成物を投与することを含んでいる。
【0202】
医薬品
【0203】
本発明の医薬組成物は、以下のタンパク質の1つ以上を発現するBCG株などの1種以上の1型インターフェロンの発現誘導剤の有効量を含む。RV1354cタンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能的部分;変性シクラーゼとして機能するDNA完全性走査(disA)タンパク質またはその機能的部分、などの1つ以上のタンパク質を、薬学的に許容される担体に溶解または分散させたものである。医薬」または「薬学的に許容される」という語句は、例えばヒトなどの動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応またはその他の不快な反応を生じない分子実体および組成物を適宜意味するものである。型インターフェロンの発現の少なくとも1つの誘導剤または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、Remingtonによって例示されるように、本開示に照らして当業者に公知であろう。The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed.Lippincott Williams and Wilkins, 2005に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、FDA生物学的標準室が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0204】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、。抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬剤、薬剤安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味剤、染料、このような材料およびそれらの組み合わせなど、当業者に知られているであろうものを含む(例えば、Remington' Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.Mack Printing Company, 1990, pp.1289-1329を参照、参照により本明細書に組み込まれる)。任意の従来の担体が活性成分と不適合である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0205】
型インターフェロンの発現誘導物質(例えば、以下のタンパク質の1つ以上を発現するBCG株など。RV1354cタンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質またはその機能的部分;変性シクラーゼとして機能するDNA完全性スキャン(disA)タンパク質、またはその機能的部分)は、固体、液体またはエアゾール形態で投与されるべきか、注射などの投与経路に対して無菌である必要があるかによって異なる型のキャリアから構成されてもよい。いくつかの態様において、本発明(例えば、発現ベクター、株、または医薬組成物)は、静脈内、皮内、経皮、皮内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、腹腔内(e.例えば、膀胱に直接投与、例えば、注射により、または膀胱内注入により)、腫瘍内、局所、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所、局所、吸入(例えば、。エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接、カテーテルを介して、洗浄液を介して、クリーム中、脂質組成物中(例えば、リポソーム)、または他の方法もしくは当業者に知られているような前述の任意の組み合わせによって(例えば、レミントンのPharmaceutical Sciences, 18th Ed.Mack Printing Company, 1990、およびFrancicaら、TNFαおよび放射線耐性間質細胞は、非免疫原性腫瘍における環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストの治療効果に必須である。Cancer Immunol Res. 2018 Feb 22.PMID:29472271、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0206】
薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、または、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などの有機酸で形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から誘導することができる。製剤化すると、溶液は、投与製剤に適合した方法で、治療上有効であるような量で投与される。製剤は、注射用溶液のような非経口投与用に製剤化されたもの、または肺に送達するためのエアロゾル、または薬物放出カプセルなどのような消化管投与用に製剤化されたものなど、種々の投与形態で容易に投与される。
【0207】
さらに本開示に従って、投与に適した本発明の組成物は、不活性希釈剤とともに、または不活性希釈剤なしで、薬学的に許容される担体中で提供される。担体は同化可能であるべきであり、液体、半固体、すなわちペースト、または固体担体を含む。任意の従来の媒体、薬剤、希釈剤または担体が、レシピエントまたはそこに含まれる組成物の治療効果に有害である場合を除き、本発明の方法の実施に用いるための投与可能な組成物におけるその使用は適切である。担体又は希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤等、又はそれらの組合せが挙げられる。また、組成物は、1つ以上の成分の酸化を遅延させるために、種々の抗酸化剤を含んでもよい。さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、種々の抗菌および抗真菌剤などの保存料によってもたらされ得る。
【0208】
本発明に従って、組成物は、任意の便利で実用的な方法、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混和、カプセル化、吸収等によって担体と組み合わされる。このような手順は、当業者にとって日常的なものである。
【0209】
本発明の特定の態様において、組成物は、半固体または固体担体と組み合わされるか、または徹底的に混合される。混合は、粉砕のような任意の便利な方法で実施することができる。治療活性の損失、すなわち胃での変性から組成物を保護するために、安定化剤も混合工程で添加することができる。組成物に使用するための安定化剤の例としては、緩衝剤、グリシンおよびリジンのようなアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールのような炭水化物、等がある。
【0210】
さらなる態様において、本発明は、1型インターフェロンの発現誘導剤、1つ以上の脂質、及び水性溶媒を含む医薬脂質ビヒクル組成物の使用を含む。本明細書で使用されるように、用語「脂質」は、特徴的に水に不溶であり、有機溶媒で抽出可能である広範な物質のいずれかを含む。この広範なクラスの化合物は、当業者によく知られており、本明細書において「脂質」という用語が使用されているように、特定の構造に限定されるものではない。例としては、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在するものであってもよいし、合成(すなわち、人により設計又は生産されたもの)であってもよい。しかし、脂質は通常、生物学的物質である。生体脂質は当該技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、グリコスフィンゴ脂質、糖脂質、スルファチド、脂肪酸がエステル結合した脂質および重合性脂質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。もちろん、本明細書に具体的に記載されたもの以外の化合物で、当業者によって脂質と理解されるものも、本発明の組成物および方法に包含される。
【0211】
当業者であれば、組成物を脂質ビヒクル中に分散させるために採用し得る技術の範囲に精通しているであろう。例えば、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤は、脂質を含む溶液に分散させてもよく、脂質と溶解させてもよく、脂質と乳化させてもよく、脂質と混合してもよく、脂質と結合してもよく、脂質に共有結合してもよく、脂質中に懸濁物として含んでもよく、ミセルまたはリポソームに含有または複合化してもよく、あるいは当業者に知られた任意の手段で脂質または脂質構造に結合させてもよい。分散液は、リポソームの形成をもたらすことももたらさないこともある。
【0212】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療される疾患の種類、以前のまたは同時の治療介入、患者の特質、および投与経路上のような物理的および生理学的要因によって決定することができる。投与量及び投与経路に応じて、好ましい投与量及び/又は有効量の投与回数は、被験者の反応に応じて変化し得る。投与を担当する医師は、いかなる場合においても、組成物中の有効成分の濃度および個々の被験者に対する適切な投与量を決定する。
【0213】
特定の態様において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでもよい。他の局面では、活性化合物は、例えば、単位の重量の約2%~約75%、または約25%~約60%、およびそこに派生する任意の範囲を含んでもよい。当然ながら、各治療上有用な組成物中の活性化合物(複数可)の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投与量が得られるような方法で調製することができる。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命、ならびに他の薬学的考察などの要因は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって熟考され、そのように、種々の投与量および治療レジメンが望まれ得るであろう。
【0214】
他の非限定的な例では、用量はまた、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重からなることができる。約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重、から約1000mg/kg/体重またはそれ以上の投与当たりおよびそこから派生する任意の範囲のものである。本明細書に記載された数値から導出可能な範囲の非限定的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重等の範囲を投与することができる。
【0215】
A.消化器官用組成物および製剤
【0216】
本開示の1つの実施形態では、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤は、消化器系ルートを介して投与されるように製剤化される。消化器経路は、組成物が消化管と直接接触する、可能な全ての投与経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、経口、頬側、直腸側、または舌下投与され得る。このように、これらの組成物は、不活性希釈剤と共に、又は同化可能な食用担体と共に配合されてもよく、硬殻又は軟殻ゼラチンカプセルに封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよく、又は食事の食品と直接組み合わされてもよい。
【0217】
特定の態様において、活性化合物は賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、頬当、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で使用されてもよい(Mathiowitz E, Jacob JS, Jong YS, Carino GP, Chickering DE, Chaturvedi P, Santos CA, Vijayaraghavan K, Montgomery S, Bassett M, Morrell C. Biologically erodable microsphere as potential oral drug delivery system.Nature.1997;386:410-4.PMID: 9121559; Hwang MJ, Ni X, Waldman M, Ewig CS, Hagler AT.クラス II 力場の導出。VI.炭水化物化合物とアノメリック効果。Biopolymers.1998;45:435-68.PMID: 9538697; Hwang JS, Chae SY, Lee MK, Bae YH.を用いたスルホニル尿素共役型コポリマーの合成とランゲルハンス島からのインスリン分泌におけるin vitro 短期生理活性。Biomaterials.1998;19:1189-95.このような場合、「痒いところに手が届く」「痒いところに手が届く」「痒いところに手が届く」「痒いところに手が届く」「痒いところに手が届く」。を参照。1998;15:243-84.PMID: 9699081; U.S. Pat.第5,641,515号;第5,580,579号;および第5,792,451号、それぞれ参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。また、錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものを含んでもよい。例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはそれらの組み合わせなどの結合剤;例えばリン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはそれらの組み合わせなどの賦形剤。例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸またはそれらの組み合わせなどの崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;例えばスクロース、ラクトース、サッカリンまたはそれらの組み合わせなどの甘味剤;例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー香料、オレンジ香料などの香味剤などである。投与単位形態がカプセルの場合、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含んでもよい。コーティングとして、またはその他の方法で投与単位の物理的形態を変更するために、様々な他の材料が存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、シェラック、砂糖、またはその両方でコーティングされてもよい。剤形がカプセルの場合、上記の種類の材料に加えて、液体担体のような担体を含んでもよい。ゼラチンカプセル、錠剤、または丸薬は、腸溶性コーティングされていてもよい。腸溶性コーティングは、pHが酸性である胃または上部腸で組成物が変性するのを防ぐ。例えば、米国特許第5,629,001号明細書を参照されたい。第5,629,001号を参照されたい。小腸に到達すると、そこでの塩基性pHはコーティングを溶解し、組成物が特殊な細胞、例えば上皮腸細胞およびパイエル板M細胞によって放出および吸収されることを可能にする。エリキシルのシロップは、甘味剤としての活性化合物スクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素及び香料、例えばチェリー又はオレンジ風味を含んでもよい。もちろん、任意の投与単位形態の調製に使用される材料は、採用される量において薬学的に純粋であり、実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性調製物および製剤に組み入れることができる。
【0218】
経口投与のために、本開示の組成物は、代替的に、洗口剤、歯磨剤、頬錠、口腔スプレー、または舌下経口投与製剤の形態で1つまたは複数の賦形剤と組み合わされてもよい。例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(Dobell's Solution)などの適切な溶媒中に必要量の活性成分を組み込んだ洗口液を調製することができる。あるいは、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウムを含むものなどの口腔内溶液に組み込むか、歯磨剤に分散させるか、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤および保湿剤を含み得る組成物に治療上有効な量で添加することができる。あるいは、組成物は、舌下に置くか、さもなければ口腔内で溶解させることができる錠剤または溶液の形態に加工することができる。
【0219】
他の消化管投与の様式に適した追加の製剤には、坐剤が含まれる。坐薬は、直腸に挿入するための、様々な重量および形状の固体剤形であり、通常は薬用である。挿入後、坐薬は軟化するか、溶けるか、または腔液に溶ける。一般に、坐剤について、従来の担体は、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはそれらの組合せを含むことができる。特定の局面では、坐薬は、例えば、約0.5%~約10%、好ましくは約1%~約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成されてもよい。
【0220】
B.非経口投与用組成物および製剤
【0221】
さらなる実施形態において、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤は、非経口経路を介して投与され得る。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、消化管を迂回する経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内に投与され得る。例えば、米国特許No.第6,7537,514号;第6,613,308号;第5,466,468号;第5,543,158号;第5,641,515号;および第5,399,363号(それぞれ参照によりその全体がここに具体的に組み込まれる)を参照されたい。
【0222】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合した水中に調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中に調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。注射使用に適した医薬形態には、無菌水溶液または分散液および無菌注射用溶液または分散液の即席調製のための無菌粉末(米国特許第5,466,468号、特に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が含まれる。すべての場合において、その形態は無菌でなければならず、容易な注射性が存在する程度に流動的でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの各種抗菌剤、抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
【0223】
水溶液での非経口投与の場合、例えば、必要に応じて溶液を適切に緩衝化し、液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張化する必要がある。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者には既知であろう。例えば、1つの投与量を等張NaCl溶液に溶解し、皮下注射液を加えるか、または注入予定部位に注入することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038ページおよび1570~1580ページを参照されたい)。投与量は、治療される被験者の状態によって、必然的に多少の変動が生じる。いずれにせよ、個々の被験者に対する適切な投与量を決定するのは、投与に携わる者である。さらに、ヒトに投与する場合、製剤はFDA生物製剤局の基準で要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たす必要がある。
【0224】
無菌注射液は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に、必要に応じて上記に列挙した他の成分のいくつかと一緒に取り込み、その後、濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒と上記に列挙した成分のうち必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに、様々な滅菌活性成分を取り込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ無菌濾過した溶液から活性成分+任意の追加所望成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。粉末状の組成物は、安定化剤とともに、または安定化剤なしで、例えば、水または生理食塩水のような液体担体と組み合わされる。
【0225】
C.その他の医薬組成物および製剤
【0226】
本発明のいくつかの態様において、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤の活性化合物は、種々の雑多な経路、例えば、局所(すなわち、経皮)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣など)および/または吸入による投与のために製剤化することができる。局所投与のための医薬組成物は、軟膏、ペースト、クリームまたは粉末などの薬用塗布のために配合された活性化合物を含むことができる。軟膏には、局所投与用の油脂性、吸着性、乳剤性及び水溶性ベースの組成物が全て含まれ、クリーム及びローションは、乳剤性ベースのみを含む組成物である。局所投与薬には、有効成分の皮膚からの吸着を促進するために、浸透促進剤を含有させてもよい。好適な浸透促進剤としては、グリセリン、アルコール類、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、ルアロカプラムなどが挙げられる。局所適用用組成物のための可能な基剤には、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびペトロラタム、ならびに他の任意の適切な吸収、乳剤または水溶性軟膏の基剤が含まれる。外用剤には、活性成分を保存し、均一な混合物を提供するために、必要に応じて乳化剤、ゲル化剤、抗菌防腐剤も含まれ得る。本発明の経皮投与は、「パッチ」の使用も含むことができる。例えば、パッチは、1つまたは複数の活性物質を所定の速度で、一定期間にわたって連続的に供給してもよい。
【0227】
特定の実施形態では、医薬組成物は、点眼、鼻腔内スプレー、吸入、及び/又は他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。鼻腔内エアロゾルスプレーを介して組成物を肺に直接送達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,806,353号に記載されている。第5,756,353号および第5,804,212号(それぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)において記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂を用いた薬物の送達(Takenaga M, Serizawa Y, Azechi Y, Ochiai A, Kosaka Y, Igarashi R, Mizushima Y. Microparticle resins as a potential nasal drug delivery system for insulin.J
【0228】
コントロールリリース。1998;52:81-7.PMID:9685938)およびリゾホスファチジルグリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、特にその全体が参照により本明細書に組み込まれる)もまた、医薬技術においてよく知られている。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,080号明細書に記載されている。第5,780,045号(特に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。エアロゾルという用語は、液化または加圧ガス推進剤中に分散された液体粒子の細かく分割された固体コロイド系を指す。吸入のための本発明の典型的なエアロゾルは、液体推進剤または液体推進剤と適切な溶媒との混合物中の活性成分の懸濁液からなるであろう。適切な推進剤には、炭化水素および炭化水素エーテルが含まれる。適切な容器は、推進剤の圧力要件によって異なる。エアロゾルの投与は、被験者の年齢、体重、症状の重さおよび反応によって異なる。
【0229】
ディスクロージャーのキット
【0230】
本明細書に記載される組成物のいずれも、キットに含まれ得る。非限定的な例では、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤(例えば、RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;変性環状酵素として機能するDNA完全性走査(disA)タンパク質、またはその機能的部分の1または複数を発現するBCG株)は、キットの中に含まれていてもよい。
【0231】
キットは、適切に分注された本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤、及び場合により1つ以上の追加の薬剤を含んでいてもよい。キットの成分(複数可)は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかで包装されてもよい。キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器または他の容器手段を含み、その中に成分を入れることができ、好ましくは、好適に分注される。キット中に複数の成分が含まれる場合、キットは一般に、追加の成分を別々に入れることができる第2、第3または他の追加の容器をも含むであろう。しかしながら、成分の様々な組み合わせがバイアルに含まれることがある。本発明のキットはまた、一般に、本発明の1型インターフェロンの発現誘導剤および任意の他の試薬容器を商業的販売のために密閉して収容するための手段を含むことになる。そのような容器は、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を含むことができる。
【0232】
キットの成分が1種及び/又は2種以上の液体溶液で提供される場合、液体溶液は水溶液であり、無菌水溶液が特に好ましい。本発明組成物の1型インターフェロンの発現誘導剤は、シリンジ可能な組成物に製剤化してもよい。この場合、容器手段はそれ自体がシリンジ、ピペット、および/または他のそのような器具であってもよく、そこから製剤を身体の感染部位に適用し、動物に注射し、および/またはさらにキットの他の成分に適用しおよび/または混合することができる。
【0233】
しかし、キットの成分は乾燥粉末として提供されることもある。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒は、別の容器で提供されることも想定される。
【0234】
上記の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための当業者への指針を提供するために含まれたものである。本開示及び当業者の一般的な技術水準に照らして、当業者は、上記の実施例が例示的であることのみを意図しており、多数の変更、修正、及び改変が、本開示の主題の範囲から逸脱することなく採用され得ることを理解し得る。上記の実施例は、例示のために提供されたものであり、限定するためのものではない。
【0235】
本書に引用された刊行物、特許出願、特許を含むすべての文献は、各文献が参照により組み込まれることが個別にかつ明確に示され、その全体が本書に記載された場合と同じ程度まで、参照により組み込まれるものとする。
【0236】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において別途指示されない限り、範囲内に入る各別の値を個別に参照するための略記法として役立つことを単に意図しており、各別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く照明することを意図しており、特に主張しない限り、本発明の範囲に制限をもたらすものでない。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であると示すものと解釈されるべきではない。
【0237】
この発明の好ましい実施形態が、この発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含めて、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法律によって許可される、添付の請求項に記載された主題のすべての変更および等価物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別途示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0238】
以下に提示されるのは、議論された用途のために企図された、PAMP分子環状ジAMPを過剰発現する再設計BCGによる訓練免疫の増強について議論する例である。以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。これらは使用され得るものの典型であるが、当業者に知られている他の手順、方法論、または技術が代替的に使用され得る。
【0239】
実施例
【実施例
【0240】
材料と方法
【0241】
図39~62を参照して、提示された結果を得るために使用された方法の詳細について、以下の資料および方法を提供する。
【0242】
細菌株と培養条件
【0243】
Mycobacterium bovis (M. bovis) Bacillus Calmette- Guerin (BCG) Pasteur (BCG-WT Pasteur) (Dr. Frank Collins [FDA] からの寛大な贈り物で、Pasteur Institute からTMC No. 1011として1967年にトルドー研究所に提供された BCG-Pasteur と同じもの) と市販のBCG-Tice (Onco-Tice(登録商標), Merck) はc-di-AMP 過剰発現組み換え BCG株の生成に使用されました。disA(MT3692/Rv3586)のPCR増幅にはMycobacterium tuberculosis(M.tb)株CDC1551のゲノムDNAを使用した。オレイン酸-アルブミン-デキストロース-カタラーゼ(OADC)(Cat.B11886、Fisher Scientific)を添加した7H11プレート上で成長する単一の単離細菌コロニーを選び、(OADC)(Cat.B11886、Fisher Scientific),0.5% glycerol(Cat.G55116, Sigma)及び 0.05% Tween-80(Cat.BP338, Fisher Scientific)を添加した7H9 Middlebrook液体培地で増殖させた。クローニング実験は、大腸菌DH5-α株(Cat. 18258012, Fisher Scientific)を用いて行い、LBブロスでルーチンに維持された。disA過剰発現BCGの作製には、大腸菌-マイコバクテリアシャトルベクター(pSD5.hsp60)を用い、強力マイコバクテリアプロモーターhsp60下でM.tb遺伝子MT3692またはRv3586のクローニングを行った。クローンは遺伝子配列決定により確認し、エレクトロポレーション法による細菌形質転換に使用した。組換え株はカナマイシンカセットに対するコロニーPCRで確認し、全ゲノム配列決定とqPCR解析に供した。すべての細菌株、プラスミド、コンストラクトの詳細を表3に示す。
【0244】
[表3]
【0245】
哺乳類細胞培養
【0246】
細胞株細胞ベースのin vitro感染アッセイでは、J774.1 (American Type Culture Collection-ATCC(登録商標) TIB67TM, Manassas, VA, USA) マウスマクロファージ細胞株を、10%熱不活性化牛胎児血清 (FBS) (Cat. 10082147, Fischer Scientific) と1% ストレプトマイシン/ペニシリン添加RPMI-Glutamax (Cat. 61870-036, Fischer Scientific) において37℃, 5% CO2で培養した。尿路上皮癌細胞株 5637 (ATCC(登録商標) HTB-9TM), ヒト高悪性度尿路上皮癌; RT4 (ATCC (登録商標) HTB-2TM), ヒト移行細胞性低悪性度尿路上皮癌。J82 (ATCC(登録商標) HTB-1TM), ヒト高悪性度尿路上皮癌; およびNBT II (ATCC(登録商標) CRL-1655TM), N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine induced tumor cell line in Rattus norvegicus Nara Bladder Tumor No.2、UPPL1595(Uroplakin-Cre駆動PTEN/P53ノックアウト遺伝子改変マウスにおける自然原発膀胱腫瘍から樹立した内腔細胞株であり、Dr. William Kim(UNC Mapel)から寛大に提供されたものである)。William Kim (UNC Chapel Hill)., BBN975 (基底細胞株) , 0.05% N-Butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) induced murine urothelial cancer model, Dr. William Kim (UNC Chapel Hill) から提供されたものである.William Kim(UNC Chapel Hill)、MB49(マウス尿路上皮がん細胞、7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA、EMD Millipore、Cat. SSC148)を単層として、1%熱不活化牛胎児血清(FBS)を添加したRPMI1640培地で37℃、5%CO2で維持しました。マウス繊維芽細胞株 NCTC clone 929 [L cell, L-929, derivative of Strain L] (ATCC(登録商標) CCL-1TM) は、1%ストレプトマイシン/ペニシリン含有10%熱不活性化牛胎児血清(FBS)添加 DMEM培地で単層として日常的に維持し、37℃, 5%CO2で培養した。すべての細胞株は10回以上の継代サイクルを維持せず、細胞が培養されている間、定期的にマイコプラズマ検査を行った。レポーターマウス細胞株、RAW-Lucia ISG (InvivoGen, CA, USA)は、製造者の指示に従ってカスタム調製した培地中で培養した。
【0247】
初代細胞(マクロファージ、樹状細胞)
【0248】
マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)および樹状細胞(BMDC)の生成のために、4週齢の野生型(WT)C57BL/6J(Charles River laboratories, North Wilmington, Mass)およびSTING-KOマウス(C57BL/6J-Tmem173gt/J、Jackson laboratories)から骨髄(BM)細胞を単離した。複数の骨髄細胞のバイアルを、10% DMSO (Cat. D2650; Sigma) と90% heat inactivated FBS (Cat. 10082147, Fischer Scientific) を含む冷凍保存培地で、液体窒素中に保存した。BM細胞をマクロファージまたはDCに分化させるために、ランダムに凍結保存したバイアルを選択し、10%FBS、1%MEMアミノ酸(Cat. 11130051, Thermo Fisher Scientific)、1%MEM非必須アミノ酸(Cat.11140050, Thermo Fisher Scientific)、1%ピルビン酸ナトリウム(Cat. 11360070, Thermo Fisher Scientific)、1%MEMビタミン(Cat. 11120052, Thermo Fisher Scientific)および抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン溶液)に30%の滅菌マウス線維芽細胞L929(ATCC(登録商標) CCL-1TM)調整培地を添加し、作製しました。BM細胞からDCへの分化は、低付着性の10mm細胞培養ディッシュで、組み換えマウス顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Cat. 315-03, Peprotech)存在下、48時間行った。非付着細胞を洗浄し、緩く付着した細胞を次の6日間BMDCに分化させた。細胞表面染色とフローサイトメトリー解析により、マクロファージとDCのマーカーを確認した。ヒト初代単球とヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)は、細胞ベースのin vitro感染アッセイに使用した。ヒト単球(HM)またはヒト単球由来マクロファージ(HMDM)の単離には、18~30歳の健康な男性ドナーから分離した末梢血由来単核球(PBMC)を使用した。血液成分の分離とバフィーコートの分離には、RPMI-1640で希釈した血液をFicoll-PaqueTMPlus試薬 (Cat. 17-1440-02, GE Healthcare, Piscataway, NJ) 上で密度勾配遠心(400 × g at 18°C, 30 min) を行った。細胞は1 x PBSで数回洗浄した後、血球計数器を用いて計数した。一旦計数されたCD14+ヒト単球は、磁気標識(Monocyte Isolation Kit II, Cat. 130-091-153, Miltenyi Biotec, San Diego, CA)と磁気カラムを用いて製造者の指示に従ってPBMCから分離された。単離したCD14+細胞の純度は、メーカー推奨の単球マーカーに対する蛍光色素結合抗体で染色した細胞画分を使用して確認し、BD-LSR2フローサイトメーターを使用して細胞を解析した。ヒト単球を播種した(10%FBSと1%ストレプトマイシン/ペニシリンを添加したRPMI1640培地で2.0 - 3.0 X 105 cells / ml、37℃、5%CO2)。CD14+単球の単層は、次の7日間、M1[GM-CSF(20ng/ml、ペプロテック、ロッキーヒル、NJ)およびIFN-γ(20ng/ml、ペプロテック、ロッキーヒル、NJペプロテック)]またはM2[M-CSF(20ng/ml、ペプロテック、ロッキーヒル、NJペプロテック)およびIL-4(20ng/ml、ペプロテック、ロッキーヒル、NJペプロテック)]へ分化させられた。
【0249】
動物たち
【0250】
生きた動物を用いる実験手順は、The Johns Hopkins University School of MedicineのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認されたプロトコルに準拠して実施された。動物感染プロトコルのために、病原体を含まない4~6週齢の雌のC57BL/6J(Charles River Laboratories, North Wilmington, Mass)およびFox Chase SCIDマウス(Charles River Laboratories North Wilmington, Mass)を購入して、交差換気のない動物バイオセーフティレベル3の動物施設において病原体を含まない条件下で収容された。8週齢のFischer 344雌ラット(Harlan、平均体重160g)は、BSL2動物施設に収容した。動物には水と標準的な餌が自由に与えられ、獣医の専門家により一般的な行動と外観が毎日監視された。
【0251】
In vitro感染アッセイ
【0252】
In vitro 感染アッセイでは、細胞株または初代細胞を 6 ウェル組織培養プレートまたは 10 mm ペトリ皿に必要な細胞密度で播種した。感染には、対数増殖期の野生型およびBCG-disA-OE株を遠心分離により採取し、DPBSで2回洗浄して残留する洗剤とBSAを除去した後、10%FBS添加の抗生物質不含RPMI1640培地に懸濁した。感染アッセイでは、細菌をあらかじめ較正された感染倍率(MOI)で寄託した。感染させた細胞は、4時間後に温めたDPBSで繰り返し洗浄し、非内包化細菌を除去した。感染した細胞は、10% FBSと抗生物質を添加したRPMI-1640培地の存在下で、エンドポイントまでインキュベートされた。
【0253】
毒性アッセイ
【0254】
ヒト尿路上皮癌細胞株、RT4、5637およびJ82は、抗生物質を含まない10%FBS含有RPMI1640中、5%CO2下、37℃で培養した。細胞毒性測定のため、96ウェル組織処理プレートに、RT4は3000個、5637とJ82は1500個をそれぞれ3連で播種した。播種から24時間後に、細胞に対して表示された比率のBCGで72時間処理した。細胞生存率を測定するために,CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega, Madison, WI, USA) およびFLUOstar OPTIMA (BMG Labtech, Ortenberg, Germany) を製造者のプロトコルにしたがって使用した.相対的な細胞生存率は、表示された比率の生存率をコントロールの生存率で割ることによって計算された。
【0255】
Annexin-PI染色は、6ウェルプレートにJ774.1細胞およびBMDMを1ウェルあたり0.5万個プレーティングし、物理的に付着させた。細胞は、TiceとPasteurの野生型とBCG-disA-OE株を用いて1:10 MOIで24時間曝露し、曝露後のBCG細胞毒性を決定した。感染または処理の終点で、細胞を0.02% EDTA-PBS溶液を用いて非酵素的に除去した。細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、FITC Annexin V Apoptosis Detection Kit I (Cat. 556547, BD Biosciences) を用いて製造者の指示に従いFITC-annexin-PIを行った。フローサイトメトリーは、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のフローサイトメトリー・コアファシリティーのBD LSR IIフローサイトメーターを用いて実施した)。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star v10)を用いて処理した。
【0256】
定量的リアルタイムqPCR
【0257】
遺伝子発現プロファイリングは、細胞株または初代細胞から単離したtotal RNAを用いて実施した。ラット膀胱からのRNA単離は、膀胱全体のサンプルの一部を切り出し、採取後すぐに液体窒素でスナップ冷凍し、RNAlater(Cat. AM7021、Ambion)中で-80℃にて保存した。Total RNAの単離は、RNeasy system(Cat.74106、Qiagen)を用いて実施した。Real-time qPCRは、StepOnePlus system (Applied Biosystems)を用いて実施した。細胞株や初代細胞での遺伝子発現解析には、SYBR Fast green 二本鎖 DNA 結合色素(Cat. 4085612, Applied Biosystems)を用いた。ラット膀胱組織における遺伝子発現解析は、TaqMan遺伝子発現アッセイを使用して行った。遺伝子特異的qPCRプライマーはIntegrated DNA Technologies社から購入し、すべてのTaqMan遺伝子発現アッセイはThermo Fischer Scientific社から購入した。RNU6a、β-actin、GAPDHの増幅は、それぞれヒト、マウス、ラットの細胞/組織由来のRNAサンプルの内因性コントロールとして使用した。すべての実験は少なくとも3回行い、データ解析は 2-ΔΔCT 法で行った。NCBI 遺伝子識別子の詳細とプライマー配列を表 4 に示す。
【0258】
[表4:]
【0259】
ELISA
【0260】
培養上清および肺、脾臓、膀胱の動物組織中のサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6、IFN-β、IL-1β、MCP-1/CCL2)測定用にサンドイッチELISAを実施した。組織および培養上清は、採取後直ちに液体窒素で瞬間凍結し、-80℃で保存した。動物組織は、マイクロ組織ホモジナイザー(Cat.1215D61、Kimble)を用いてホモジナイズし、フィルター滅菌して、製造者の推奨に従ってサンドイッチELISA法を用いて各種サイトカイン蛋白質の発現レベルを測定した。すべてのELISAキットおよび付属試薬の詳細は、表4に示す。
【0261】
マルチカラー共焦点顕微鏡
【0262】
マルチカラーレーザー共焦点顕微鏡実験を行い、尿路上皮がん細胞と初代マクロファージにおける貪食、オートファジー、コロカライゼーションの研究を実施した。細胞は6ウェル組織培養プレートに置かれた滅菌ガラス製カバースリップ上に付着させ、あらかじめ較正されたMOIで感染を実施した。対数期の細菌培養物はFITC (Cat. F7250, Sigma) を用いて標識した。感染および処理条件の後、細胞を固定し、透過処理し、ブロックした後、LC3B(Cat. NB100-2220、Novus)またはp62/SQSTM1(Cat. P0067、Sigma-Aldrich)に対する一次抗体と推奨希釈で4℃で一晩インキュベートした。細胞を洗浄し、Alexa Flour 647結合二次抗体(Cat. A32733, Thermo Fisher Scientific)とともに暗所で4 ℃、1時間インキュベートした。DNA染色は、Hoechst 33342 (Cat.62249, Thermo Fisher Scientific)を用いて5分間実施した。画像は、ジョンズ・ホプキンス医科大学の顕微鏡施設において、Zeiss LSM700シングルポイント、レーザースキャン共焦点顕微鏡を用い、63Xの倍率で取得した。画像処理と解析は、オープンソースのFijiソフトウェアを用いて行った。LC3Bまたはp62の定量化については、Imaris 9.5.0を使用して、異なるフィールドで最低100個の細胞で核周囲のLC3Bパンクタ(スポット)をカウントした。定量は、GraphPad Prism ソフトウェアを使用して行った。
【0263】
ファゴサイトーシスアッセイ
【0264】
IgG-FITC結合ラテックスビーズ貪食アッセイキット(商品番号500290、Cayman Chemicals、米国)を貪食試験に使用した。HMDMを滅菌済みガラスカバースリップ上に置き、付着させた。感染は、5:1(HMDM対BCG)の比率で3時間行った後、温RPMI1640培地中に1:400希釈でIgG-FITCビーズを3時間添加した。核染色はHoechst 33342 (Cat.62249, Thermo Scientific) を用いて行い、細胞はZeiss LSM700シングルポイント、レーザースキャン共焦点顕微鏡を用いてビーズ貪食を可視化した。ビーズの定量は、オープンソースのFiji Softwareを用いた平均蛍光強度(M.F.I.)計算により測定した。
【0265】
マルチカラーフローサイトメトリー
【0266】
J774.1、マウスBMDMs、ヒトHMDMs、マウスMB49腫瘍および脾臓由来の単一細胞について、細胞表面および細胞内の染色を実施した。フローサイトメトリーパネルは、マウス骨髄系細胞、リンパ系細胞、ヒト骨髄系細胞についてデザインし、必要に応じて修正した。すべての抗体の詳細と使用した希釈倍率を表3に示す。in vitro感染アッセイでは、推奨希釈でタンパク質輸送阻害剤カクテル(Cat. 00-4980-03、eBioscience)を、単層細胞を採取する12時間前に使用した。最後に、細胞剥離用緩衝液(氷冷PBS-10mM EDTA溶液)を用いて細胞を回収した。単細胞の分離は、剖検後に腫瘍や脾臓を採取して、動物組織を用いて行った。簡単に言えば、組織を手作業で破壊してから、RMPI中のコラゲナーゼI型(Gibco)およびDNase(Roche)中で37℃、30分間インキュベートした。腫瘍と脾臓の細胞を70μmのフィルターを通して解離させ、PBSで洗浄した。赤血球溶解は、ACK溶解バッファー(Cat. A1049201, Thermo Fisher Scientific)を用いて室温で5分間行った。氷冷したPBSで細胞を2回洗浄し、Zombie AquaTM Fixable Viability Kit(Cat.423101, Biolegend)を用いて染色を行った。細胞を洗浄し、FACSバッファ(PBS中1% BSA、2mM EDTA)に再懸濁し、Fcブロック(TruStain FcXTM、Cat.101320、およびTrue-Stain Monocyte BlockerTM Cat.426102 Biolegend)、製造元のプロトコールに従ってコンジュゲート一次抗体で染色した。細胞内染色は、固定化および透過化(Fixation and Permeabilization Buffer Set, eBioscience)後に行った。細胞は洗浄後、フローバッファーに再懸濁し、BD LSRII with FACSDiva Softwareで取得。解析はFlowJo (v10) (TreeStar)を用いて行った。
【0267】
骨髄系細胞およびリンパ系細胞の染色には、以下の抗体を使用した。
【0268】
マウスBMDM抗CD45(クローン30-F11)、抗CD124(クローンI015F8)、抗I-A/I-E(クローン107630)、抗Ly6C(クローンHK1.4)、抗CD11b(クローンM1/70)、抗F4/80(クローンBM8)、抗Ly6G(クローン1A8)、抗CD206(クローンC068C2)、抗TNF(クローンMP6-XT22)すべてBiolegend、抗IL-10((Clone JES5-16E3 eBiosciences)である。
【0269】
ヒトHMDM:抗CD16(クローン3G8)、抗CD14(クローン63D3)、抗HLA-DR(クローンL243)、抗CD11b(クローンICRF44)、抗CD206(クローン15-2)、抗CD163(クローンGHI/61)、抗TNF(クローンMAb11)、すべてBiolegend社製。
【0270】
マウスマクロファージ(尿路上皮癌のシンジェニックMB49モデル)。CD45(clone 30-F11、Biolegend)、CD124(IL-4Ra)(clone I015F8、Biolegend)、I-a/I-e(clone M5/114.15.2、Biolegend)、F4/80(clone BM8、Biolegend)、CD206(clone C068C2、Biolegend)、TNF(clone MP6-XT22, Thermo Fisher),IL-10(clone JES5-16E3, Thermo Fisher)。
【0271】
ママウスT細胞(尿路上皮癌のシンジェニックMB49モデル)。CD45(clone PerCP, Biolegend)、CD25(clone PC61, Biolegend)、CD3(clone 17A2, Biolegend)、CD4(clone GK1.5, Biolegend)、CD8a(clone 53-6.7, Biolegend)、FOXP3(clone MF-14, Biolegend)、マウスIFN-γ(clone XMG1.2, Biolegend)とFOXP3(clone MF-14 Biolegend)。
【0272】
In vitro単球訓練免疫実験
【0273】
初代ヒト単球のin vitroでの養成は、先に述べたように行った47。PBMCは健康なドナー(leukopaks)から単離された。磁気分離後、CD14+単球を10mm3の組織培養皿に、10%FBSを添加した温RPMI1640培地中、37℃、5%CO2で3時間播種した。非接着細胞は、温PBSを用いた細胞洗浄により除去した。ヒト単球の単層培養物を、10%FBSを補充したRPMI 1640の存在下で、5:1(単球対BCG)MOIで4時間BCG-WT株およびBCG-disA-OE株に感染させた。非内蔵菌は温PBSで洗浄し、その後24時間インキュベートした。細胞は再び温PBSで洗浄し、新しい温RPMI1640培地を加えた。 その後5日間、2日ごとにPBS洗浄と新しい培地の添加を行い、細胞を休ませた。6日目に、10% FBSを添加したRPMI1640(ネガティブコントロール、トレーニングなし)またはTLR1/2アゴニスト、Pam3Cys(Cat. tlrl-pms, InvivoGen)で細胞を再刺激した。刺激後、24時間、培養上清を回収し、フィルター滅菌し、サイトカイン測定のために迅速にスナップ凍結(-80℃)した。遺伝子プロモーター上のエピジェネティックな変化を測定するために、細胞をクロマチン免疫沈降(ChIP)実験のために採取した。
【0274】
クロマチン免疫沈降法(ChIP)。ヒト単球を最終濃度1%のホルムアルデヒドで室温で10分間固定した。125 mMグリシン(Cat no. 50046, Sigma-Aldrich, USA)を用いて細胞固定を停止した後、Qsonica Sonicator Q125(Cat. 15338283, Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞DNAを平均サイズ300から600 bpに断片化するために超音波照射を行った。超音波処理した細胞ライセートを、推奨濃度の一次抗体[(Histone H3K9me3 (H3K9 Trimethyl) Polyclonal Antibody cat.)と一晩インキュベーションして、免疫沈降(IP)に供した。A-4036-100, epigentek); Anti-Histone H3 (tri methyl K4) antibody - ChIP Grade (ab8580), abcam)] を、磁気Dynabeads (Cat no. 10004D, Thermo Fisher Scientific, USA) 存在下で4℃、1晩インキュベートした。非結合物は、ライシスバッファ、クロマチンIP(ChIP)洗浄バッファ、Tris-EDTA(TEバッファ)でDynabeadsを順次洗浄することにより除去した。DNAの溶出は、ChIP溶出バッファーで行った。免疫遺伝子の制御領域の異なるセグメントの増幅は、特異的なプライマーを用いてqPCRで実施した。反応はインプットDNAで正規化し、ビーズはネガティブコントロールとして使用した。すべての一次抗体の詳細とプライマーの配列を表4に示す。
【0275】
LC-MS/MSによるターゲット代謝物分析
【0276】
標的代謝物の分析は、先に述べたように液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて行った48。細胞またはスナップ凍結した異種移植腫瘍組織からの代謝物を、-80℃で平衡化した80%(v/v)メタノール溶液で抽出し、代謝物を含む上清を窒素ガス下で乾燥させた。乾燥した試料を50%(v/v)アセトニトリル溶液に再懸濁し、各試料4mlを5500 QTRAP triple quadrupole mass spectrometer (AB Sciex) とProminence ultra-fast liquid chromatography (UFLC) system (Shimadzu)に結合して注入し解析した。装置は、説明したように正負のイオンをスイッチングする選択反応モニタリング(SRM)モードで動作させました。このターゲットメタボロミクス法により、3msのドウェルタイムで25分間のLC-MS測定から200種類以上の代謝物を分析することができ、これらの分析代謝物はすべての主要代謝経路をカバーしている。最適化されたMSパラメータは以下の通りである。ESI電圧はポジティブイオンモードで+5,000V、ネガティブイオンモードで-4,500V、滞留時間はSRM遷移ごとに3ms、全サイクル時間は1.57秒でした。親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)分離は、アミドカラム(Waters XBridge BEH Amide, 2.1 x 150 mm, 2.5μm)を用いて島津製作所のUFLCシステムで実施した。LCパラメータは以下の通り:カラム温度40℃、流速0.30ml/min。溶媒Aは0.1%ギ酸を含む水、溶媒Bは0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、99%Bから45%Bまでの非線形グラジェントを25分で行い、ポストランタイムを5分とした。SRMトランジションにおける各標的代謝物のピーク積分はMultiQuantソフトウェア(v2.1,ABSciex)で処理された。統合ピーク面積を含む前処理済みデータをMultiQuantからエクスポートし、Metaboanalystソフトウェアに再インポートして、統計解析および主成分分析を含むさらなるデータ解析を行いた。
【0277】
組織学的解析と免疫組織化学(IHC)
【0278】
組織学的解析のために、膀胱の一部をホルマリン固定し、パラフィン包埋した。膀胱の一部をホルマリン固定し、パラフィン包埋後、スライドグラスに5μの厚さで切り出し、ヘマトキシリン・エオジン染色し、先に述べたWHO/国際泌尿器病理学会のコンセンサスに従って分類した27。腫瘍の病期分類は、2名の泌尿器科認定病理医(A.S.B.、A.M.)によって行われた。標本は、異常組織への浸潤の割合に基づいて分類された(1=10%浸潤、2=20%浸潤、など)。IHC染色は、Trilogy(Cell Marque社)にスライドを浸し、高温抗原賦活(18-23psi/126℃)を実施した。内因性ペルオキシダーゼ活性は、Dual Endogenous Enzyme Block (Cat.S2003, Dako)を用いて5分間ブロックした。一次抗体には、Ki67 (1:50, Cat. ab16667; Abcam), CD68 (1:250, Cat. MCA341R; Serotec), CD86 (1:100, Cat. bs-1035R; Bioss) and CD206 (1:10K, Cat. ab64693; Abcam) を使用した。Ki67については、スライドをImmPACT DAB (Vector Labs) で3分間染色し、ヘマトキシリン (Richard-Allen) でカウンターステインした。CD68/CD206およびCD68/CD86の二重染色は、CD68をImpact DAB (Vector Labs)で最初に染色し、次にCD86またはCD206のいずれかで上記のように二次抗原回収およびインキュベーションし、ImmPACT AEC (Vector Labs) で可視化することで達成された。各セクションについて、Ki67発現は、尿路上皮における陽性細胞のパーセンテージとしてスコア化した。 CD68/CD86およびCD68/CD206の二重染色は、各マーカーの細胞の陽性クラスターに基づいてスコア化した(0=染色なし、1=まれに孤立した細胞が陽性、2=最大10個の陽性細胞のクラスター、3=10個以上の陽性細胞のクラスター)。
【0279】
In vivoでの実験
【0280】
発がん性物質誘発NMIBCラットモデルにおけるBCG膀胱内投与
【0281】
ラットの尿路上皮癌の誘発とその後のBCG膀胱内投与が行われた。N-methyl-N-nitrosourea(MNU)注射を隔週で計4回行った。Fischer 344雌ラット7週齢(Harlan、平均体重160g)を3%イソフルランで麻酔した。完全麻酔後、20Gの血管カテーテルをラットの尿道内に設置した。その後、0.9.%塩化ナトリウムに溶解したMNU(1.5mg/kg)(Spectrum)を注入し、カテーテルを抜去し、自発排尿を防ぎ吸収させるために60分間鎮静を継続した。最初のMNU注入から18週間後、PBSまたは各BCG株の5×106CFU(20Gアンギオカテーテルを介して0.3ml)による膀胱内治療を毎週、合計6回投与した。最後の膀胱内投与から2日後に屠殺し、最後のBCG投与から48時間以内に膀胱を採取し、mRNAおよびタンパク質の発現解析と組織学的評価を行った。
【0282】
BALB/cマウスのBCG感染とCFUの計数
【0283】
野生型およびBCG-disA-OE株の肺桿菌負担を測定するために、6週齢の雌BALB/cマウスを、グラスコール吸入曝露システム(Glasscol)のエアゾール経路を使用して曝露した。雌BALB/cマウスの1日目(各群n=3)の肺に移植された接種物は、カルベニシリン(50mg/ml)、トリメトプリム(20mg/ml)、ポリミキシンB(25mg/ml)およびシクロヘキシミド(10mg/ml)を含む7H11選択プレートに全肺ホモジネートをプレーティングして決定された。感染後、マウスの肺を採取し(n=5匹/群)、滅菌PBSで全体をホモジナイズし、異なる希釈度で7H11選択性プレート上にプレーティングした。7H11選択プレートは37℃でインキュベートし、3週目と4週目にシングルコロニーを計数した。シングルコロニーは、臓器あたりのlogCFUで表した。
【0284】
SCID Mouseのtime to death試験
【0285】
BCG-WT株およびBCG-disA-OE株の病原性試験は,先に述べたように重症免疫不全マウスエアロゾル感染モデルで行った.日目に肺に移植された接種物(各群n=3匹)は,全肺ホモジネートを7H11選択プレートにプレーティングすることによって決定された.死亡までの時間解析のため(各群n=10匹)、感染動物を死亡するまで観察した。
【0286】
尿路上皮癌の遺伝子組み換えMB49モデル
【0287】
MB49腫瘍細胞は、成体C57BL/6マウスの初代膀胱上皮細胞摘出物を7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)に24時間暴露し、その後長期培養して得られた尿路上皮癌細胞株79である。移植前に、MB49細胞は10%FBSと1%ストレプトマイシン/ペニシリンを添加したRPMI1640培地で単層培養し、37℃、5%CO2で培養した。細胞はトリプシン法で採取し、トリパンブルー染料を用いて細胞生存率を測定した。MB49生細胞は滅菌PBSに再懸濁し、100μlあたり1×105生細胞で調整した。年齢4-6週の雌のC57BL/6Jマウス(Charles River Laboratories)に、後肢の右脇腹に1×105 MB49細胞を皮下注射した。2日おきに腫瘍の成長を観察し、治療開始時の腫瘍負荷の増加を観察した。触知可能な腫瘍が発生したら(7~9日,平均体積~30 mm3),1 x 106 BCG-WT またはBCG-disA-OE の菌体を合計50 μl PBS に溶解して腫瘍内に注射した(Fig. 41)。3 日目ごとにBCG を合計 4 回、腫瘍内に注射した。腫瘍を電子ノギスで測定し、腫瘍体積を以下の式で算出した:腫瘍体積=長さ×幅×高さ×0.5326。マウスは所定の時間に殺し、剖検後に腫瘍と脾臓を採取し、単細胞調製を行った。
【実施例
【0288】
BCG-disA-OEはBCG-WTよりもマクロファージにおいて大きな炎症性サイトカイン応答を誘発する。
【0289】
BCG-disA-OEは、内在性のジアデニル酸シクラーゼ遺伝子であるdisAを強力なプロモーターに融合させ、disAを300倍過剰発現させ、cyclic diAMPの生成を15倍増加させた遺伝子組み換えBCG株である(図39)。BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは、IRF3誘導で測定したマクロファージにおけるSTING経路の活性化を有意に増加させた(図39)。BCG-disA-OEとBCG-WTの2つのバージョンを作成し、BCG-TiceとBCG-Pasteurを使用した。その結果,Tice版とPasteur版の間に有意差は認められなかった.
【0290】
BCG-disA-OEとBCG-WTの訓練された免疫誘導能を特徴づけるために,ヒト単球由来マクロファージ(HMDM),マウス初代骨髄由来マクロファージ(BMDM),樹状細胞(BMDC)およびマクロファージ細胞株(J774.1)におけるサイトカイン発現誘導能が評価された.BCG-disA-OEに応答して、すべての骨髄系細胞でIRF3、IFN-β、TNF-α、IL-6の一貫した誘導が認められ、これはBCG-WT-刺激細胞で認められたものよりも有意に高かった(図40および図43)。ヒトMDMおよびマウスBMDMでは、細胞がIFN-γ刺激されてもこの差が認められた(図43)。これらの違いは、STING-/-マウスのBMDMを用いて確認したように、厳密にSTING依存的であった(Fig.40)。STING活性化は、TBK1-IRF3経路を介してNF-κBのアップレギュレーションを導くので、同じパネルの細胞におけるTNF-αおよびIL-6の両方の発現は、IFN-βのそれと平行して、BCG-disA-OEに曝露した後に、BCG-WTと比較して有意に高いことが判明した(図41および図43)。環状ジ-AMPを含む環状ジヌクレオチドは、iNOSと同様にいくつかのケモカイン(CXCL9、CXCL10[IP-10]、CXCL22、およびMCP-1)の強力な誘導物質であることが知られている。これと一致して、IFN-γでプライムしたBMDMは、BCG-WT株よりもBCG-disA-OE株にチャレンジするとこれらのケモカインおよびiNOSのより強い誘導が見られた(図41)。細胞毒性もアネキシン-PI染色を用いて評価し、BMDMおよびJ774.1マクロファージの両方においてBCG-disA-OE曝露で後期アポトーシス細胞死がベースラインにとどまったのに対し、BCG-WT曝露ではBMDM細胞で有意に高いレベルのアポトーシス細胞死を誘発することがわかった(Fig.44)。これらの観察から,BCG-disA-OEは,ヒト初代MDM,マウス初代マクロファージおよびマクロファージ細胞株において,BCG-WTよりも強力に炎症性サイトカインの発現を惹起することが明らかとなった.
【実施例
【0291】
マクロファージの炎症性極性化は、BCG-disA-OEの方がBCG-WTよりも大きい。
【0292】
訓練された免疫は、マクロファージの炎症性表現型への偏向と、それに伴う抗炎症状態からの脱却に関連している。マクロファージの極性を調べるために、BCG-disA-OEまたはBCGWTに24時間暴露した後のマウスおよびヒト初代マクロファージの表現型シフトをフローサイトメトリーで観察した。まず、MHCクラスII発現CD45+ CD11b+ F4/80+ マウスBMDM集団に着目し、ゲーティングスキームを用いてin vitro BCG曝露後に、BMDM集団を観察した。図 50 および図 48 に見られるように、TNF-αを発現するCD11b+ F4/80+ (M1) マウスBMDM の有意に大きな拡大が BCG-disA-OE への暴露後にBCG-WT と比較して観察された。次に、CD45+ CD11b+ F4/80+ マクロファージのうち、M2 表面受容体 CD206+ およびCD124+ を発現する細胞についてゲーティングを行い、この集団のBCG- disA-OE による減少がBCGWT に対するものよりも大きかった(図 50 および図49)。この免疫抑制細胞集団の中で、BCG-WT曝露マクロファージでは、IL10発現CD206+CD124+ 細胞の割合が高かったが、IL-10発現細胞はBCG- disA-OE曝露に反応して著しく減少した(図50図49)。これらの結果は,BCG-WT と比較して,BCG- disA-OE 暴露は,抗原提示(MHC クラス II 発現)および TNF-α 発現の増加を示す炎症性M1 マクロファージの拡大,および IL-10 を発現する免疫抑制性M2 マクロファージの縮小を伴うより広範囲なマクロファージの再プログラム化を誘発することを示している。
【0293】
骨髄由来抑制細胞(MDSCs)は、免疫抑制を促進することが知られている未熟な骨髄系細胞の不均一な集団である。そこで、マウス初代BMDMを用い、単球系ミエロイド由来抑制細胞であるM-MDSCの誘導について検討した(CD45+ Ly6Chi Ly6G- CD11b+ F4/80- )。BCG-WT 曝露後、M-MDSCs の著しい拡大が観察されたが、対照的にこの同じ集団はBCG-disA-OE 曝露後、最小限の拡大を示した(図50)。 さらに、BCG-WTによって誘発されたMMDSCsは、高いIL-10発現を示したが、IL-10発現MMDSCsは、BCG-disA-OE曝露後には事実上存在しなかった(図50)。これらの観察から、BCG-WTは免疫抑制特性を持つM-MDSCの拡大に寄与することが示唆される。しかし、BCGによる炎症性PAMP cyclic di-AMPの強制過剰発現はM-MDSC拡大を阻止する。
【0294】
次に、複数の独立した健常人ドナーから分離したHMDMにおけるマクロファージ活性化表現型の特徴を調べた。BCG-WT株とBCG-disA-OE株はともに、古典的マクロファージ(CD11b+CD14+CD16-)の増加を誘発したが、これらの誘導はBCG-disA-OEに反応して比較的高かった(図51および図52)。+-+BCG-disA-OEに暴露すると、BCG-WTに比べてTNF-αおよびIL6を産生するHLA-DR+細胞の割合が有意に増加した(図52および図53)。M2表面マーカーであるCD206+およびCD163+は、移行型または中間型マクロファージ(CD11b+CD14+CD16+)でも調べられ、BCG-disA-OE曝露後はBCG-WTと比較して一貫して大きな減少が見られた(図51図53)。M2表面マーカーとIL-10を発現するこれらの中間マクロファージの割合も、BCG-disA-OEへの曝露に反応して、BCG-WTよりも著しく低下した(図53)。以上より,マウスおよびヒト初代マクロファージのexvivoモデルを用いて,BCG-disA-OEはBCG-WTと比較して,マクロファージのM1表現型(炎症性)への活性化をより促進し,同時にM-MDSCを含む免疫抑制能を有する細胞の出現を抑制することが明らかとなった.
【実施例
【0295】
bcgに曝されたマクロファージdisaoeは、bcg-wtと比較してより貪食性が高い。
【0296】
環状ジヌクレオチドは、高い貪食能力を持つ炎症性マクロファージをリクルートすることが報告されている。その結果、cyclic di-AMPを導入したHMDMは、モックを導入した集団と比較して、貪食能が向上し、樹状突起が伸長していることが確認された。次に、異なるBCG株に曝露した後のHMDMの貪食特性を評価したところ、BCG-disA-OEに曝露したマクロファージによるIgG-opsonized FITC-latexビーズの貪食がBCG-WTと比較して著しく大きいことがわかった(Fig.53)。オートファジーの増強におけるSTING経路の活性化の役割が以前に確立されたのと同様に、IFN-γで活性化した初代BMDMでは、細胞内のBCG-disA-OE菌の大部分がLC3Bと共局在化したが、BCG-WTではオートファジー誘導が有意に低いことが判明した。また,BCG-disA-OE菌は,BCG-WTと比較して,オートファジーアダプタータンパク質p62と有意に共局在化することが明らかとなった.これらの結果から、BCG-disA-OEはBCGWTよりもマクロファージ内の貪食およびオートファジー処理のレベルを高め、MHC class-II分子へのペプチド抗原提示の増強と関連する現象があることが明らかになった。
【実施例
【0297】
bcgdisaoeはマクロファージをエピジェネティックに再プログラムし、bcg-wtよりも高い程度に訓練された免疫力を増強する
【0298】
BCGが主要な炎症性遺伝子のエピジェネティック修飾を通じて訓練された免疫を強力に誘導することを示す最近のデータに鑑み、標準BCGにcyclic di-AMP過剰発現を加えることにより、ヒト初代単球のエピジェネティック修飾を増強する可能性があると仮定した。BCG-disA-OEがBCG-WTよりも強力にマクロファージTNF-αとIL6の分泌を誘導することを既に確立していたので、6人の健常人グループの初代ヒト単球でこのことを確認した。従来のBCGの訓練された免疫を引き出す能力は、炎症性遺伝子発現を増加させるエピジェネティックマークの変化と相関している。そこで、BCG-disA-OEによって誘発されるTNF-αおよびIL-6の発現誘導がBCG-WTと比較して増強されることが、エピジェネティックな媒介によるものかどうかを検討した。そこで、TNF-αおよびIL-6遺伝子のプロモーター領域について、抗原非依存的なエピジェネティックな変化を評価した。このアッセイでは、24時間BCGに曝露したヒト単球を5日間休ませた後、6日目に異種抗原であるTLR1/2アゴニストPam3CSK4でチャレンジした(図56)。クロマチン免疫沈降-ポリメラーゼ連鎖反応(ChIP-PCR)アッセイを用いて、TNF-αおよびIL-6プロモーターに存在する活性化ヒストンメチル化マークH3K4me3を定量化した。BCG-disA-OEへの曝露により、異種2次刺激(すなわち、6日目にRPMI培地のみを添加)なしでも、BCG-WTよりもこのマークがより濃縮されることが観察された。6日目にPam3CSK4で再刺激すると,活性化エピジェネティックマークの存在量は両BCG株でさらに増加したが,BCG-disA-OE前処理ではBCG-WTよりも顕著に濃縮された(図56).同様に、同じ2つのプロモーターにおけるクロマチン抑制マークH3K9me3を調べたところ、両方のBCG株によってH3K9me3のレベルが低下する(Pam3CSK4の添加によってさらに顕著になる)が、最初の曝露時、休息および再刺激後の両方で、BCG-disA-OEによって仲介される低下の程度はBCG-WTによる仲介よりも常に大きい(図56)ことが判明した。Pam3CSK4による非特異的刺激後のBCG訓練培養上清中のTNF-αおよびIL-6の同時測定により,BCG-disA-OEで訓練したマクロファージはBCG-WTで訓練したものより有意に高いレベルのこれらの炎症性サイトカインを産生することが明らかとなった.これらの結果は、PAMP分子であるcyclic di-AMPを過剰発現する増強型BCGが、訓練された免疫に関連する古典的なエピジェネティック変化を著しく強固にすることを示す。
【実施例
【0299】
BCG-disA-OEはBCG-WTに比べ、マクロファージの免疫代謝状態をより炎症性シグネチャーに再プログラムする。
【0300】
BCGトレーニングは、フマル酸の蓄積を伴うグルタミンの補充を通じて、トリカルボン酸サイクルだけでなく解糖も刺激することが報告されている。cyclicdi-AMPの過剰発現の付加がBCGによるメタボロームシフトを変化させるかどうかを調べるために、LC-MSを用いて、2種類のBCG株に曝露したヒトおよびマウスの初代マクロファージの主要代謝物の特性を明らかにした。HMDMまたはBMDMは、BCG-disA-OEに24時間暴露した後、BCG-WTよりも高度に異化署名の増加(細胞内グルコースと乳酸の上昇)を示した。また,TCAサイクル代謝物であるイタコン酸およびフマル酸も,BCG--WTよりもBCG-disA-OEでより上昇した.これらの結果は,BCG-disA-OEに感染したマクロファージでは,BCG-WTよりも炎症性生体エネルギープロファイルに一致するATP生成のための炭素基質の異化が大きいことを示唆している。
【0301】
トリプトファンデヒドロゲナーゼとインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)によるキヌレニンへの過剰なトリプトファン異化は、免疫抑制と強く関連している。IDO阻害剤は、様々な感染症や腫瘍疾患における免疫賦活剤として期待されている。BCG-disA-OEに暴露した後のマクロファージでは,BCG-WTで見られた値よりもキヌレニン値が劇的に低く,予想通りトリプトファン値はBCG-disA-OEによって上昇したが,BCG-WTではトリプトファン値は熱殺BCG対照で見られた基準値と同じになった.また、BCG-disA-OEでは、BCG-WTよりもシトルリンレベルが高く、プトレシンレベルが低かった。これは、一酸化窒素合成酵素を介したアルギニンのNO(炎症促進)およびシトルリンへの変換がBCG-disA-OEによってより強く誘導されたことを示唆している。最後に,マクロファージが作るイソクエン酸リアーゼ阻害剤であり,抗菌活性を示すイタコン酸が,BCG-disA-OEによってBCG-WTよりも強く誘導されたことは興味あることであった.このように,BCG-disA-OEは,BCG-WTと比較して,キヌレニン蓄積量の減少,解糖系代謝物,NOS産物およびイタコン酸産生の増加を伴う,より炎症性の高いメタボロームサインを惹起することがわかった.
【実施例
【0302】
生体内での機能的効果:BCG-DISA-OEは、雨天時免疫の関連動物モデルで優れた免疫療法効果を示す。
【0303】
BCGは結核ワクチンのほか、1970年代半ばから非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療の第一選択免疫療法として使用されている。最近の研究では、BCGは訓練された免疫機構を介して抗腫瘍効果を発揮することが示唆されている。BCGに過剰なcyclicdi-AMPを放出させると、in vitroの一連のアッセイにおいて訓練された免疫パラメータが改善することが示され、この効果がin vivoで実証されるかどうかが追求された。
【0304】
まず、ヒトの非浸潤性尿路上皮癌と同様に膀胱内に治療薬を導入できる発癌性物質誘発NMIBCモデルにおいて、BCG-disA-OE対BCG-WTを検証した。ラットN-methyl-N-nitrosourea(MNU)モデル膀胱癌(BC)を図に示した。57このモデルでは、MNUの最初の膀胱内注入後14週目に尿路上皮形成不全が生じ、24週目には、ヒト膀胱癌で観察されるものと類似した病理組織学的および免疫表現型の特徴を持つ、in-situ癌(CIS)、乳頭状Ta(表在型)、高位T1-T2尿路上皮癌などの異なる形態のUthelial Cancer severityが現れる。.MNUを4サイクル(wk0,wk2,wk4,wk6)投与して発癌物質を介した腫瘍を誘発した後、ラットのグループは18-23週目に毎週6回のBCG(- disA-OE, BCG-WT, or no treatment)を膀胱内投与された。24週目に犠牲となったラットの膀胱は、(i)RT-PCR分析、および(ii)盲検の泌尿生殖器病理医による腫瘍の病期分類を含む組織学的分析のために半分に分けられた。24週目に摘出した膀胱全体の転写解析では、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、IL-1β、CXCL10、MCP-1、MIP-1αおよびiNOS転写量が著しく増加し、免疫抑制サイトカインIL-10およびTGF-βのmRNAレベルが両BCG株によって減少した(図57).これらのサイトカイン発現パターンは、TNF-αIL-2、およびIFN-γのELISAを用いてタンパク質レベルで確認され、ラット脾臓のIFN-γのレベルをBCG-WTが増加しないのに対し、BCG-disA-OEを膀胱内投与すると強く増加することが指摘された。また,BCG-disA-OEを投与したラットでは,病理学的悪性度,腫瘍浸潤指数および腫瘍病期の最高値が未投与に比べ有意に低下した(Fig.57).腫瘍浸潤指数では、BCG-disA-OEは無処置に対して統計的に有意に優れており(p<0.001)、BCG-WTに対しても優れていた(p<0.05)が、BCG-WTは無処置に対して改善傾向を示すのみであった。重要なことは、BCG-disA-OE投与ラットで観察された最も高い腫瘍期はCISであったのに対し、BCG-WT投与ラットではT1、無処置ラットではT2であり、またBCG-DisA-OE投与ラットでは53.3%が無癌化(p=0.009)したのに対し、BCG-WTでは31.2%および無処置ラットの0%が癌化(図57)したことである.免疫組織化学的分析により、BCG-disA-OE処理MNUラット膀胱のKi67染色は、未処理(p<0.01)およびBCG-WT(p<0.05)と比較して有意に減少し、腫瘍増殖の減少を示唆した。ラット膀胱のCD68染色は、未処置のコントロールと比較して、BCG-disA-OE処置ラットでは腫瘍の促進に関連するCD206+M2様マクロファージの有意な減少および炎症性M1様CD86+マクロファージの増加傾向を伴うマクロファージの動員レベルの有意な上昇を示した。これらのことから、BCG-disA-OEを投与した担癌ラットの膀胱におけるI型IFNおよびその他の炎症性シグネチャーの誘導の増強は、組み換えBCG株の抗腫瘍活性の増強と相関していることが示された。
【0305】
BCG-disA-OEの機能的有効性は、MB49尿路上皮がん細胞を用いたマウス異所性同胞膀胱がんモデルでも検証された。MB49腫瘍細胞を脇腹に移植した後,Fig.61に示すように,マウスは9日間にわたって4回の腫瘍内治療を受けた.このモデルにおいても,BCG-disA-OEはBCG-WTと比較して,BCG-disA-OEの胸腔内注入後の腫瘍体積および重量で測定されたように,より強固な免疫療法効果を示した(図61).病理組織学的に,BCG-DisA-OEを投与したMB49腫瘍は,BCG-WTおよび未投与と比較して,広範な壊死と鬱血が確認された.BCGを投与したマウスの体重に有意な変化はなかったが,脾臓の重量は両BCG株で有意に増加した.さらに、腫瘍微小環境(TME)におけるマクロファージの極性化および活性化T細胞の動員に対する処置の影響を特徴づけた。図61に示すように、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは、未処理およびBCG-WTと比較して、免疫抑制性M2マクロファージの存在量を著しく減少させ、炎症性M1マクロファージを著しく(p<0.01)増加させた。同様に,BCG-disA-OEは,BCG-WTと比較して,有意に多くのIFN-γ産生CD4+T細胞を勧誘し,両BCG株はIFN-γ産生CD8+T細胞を増加させた.両BCG株は,腫瘍にCD4+およびCD8+をより多く動員したが,BCG-disA-OEは処理動物の脾臓にCD8+T細胞を特異的に多く動員していた.BCG-disA-OEはまた,腫瘍と脾臓の両方で,BCG-WTよりも有意に腫瘍関連T調節(Treg)細胞を減少させた.さらに,BCG-WTと比較して,BCG-disA-OEは,さまざまな腫瘍ステージのヒト尿路上皮癌細胞において,より強力なサイトカイン応答とオートファジーを誘発することも明らかにした.これらの結果は,この尿路上皮癌のマウスモデルにおいて,BCG-disA-OEはBCG-WTよりも優れた抗腫瘍効果を示し,その効果はマクロファージのM1への偏光シフト,CD4+およびCD8+T細胞の活性化の増加,腫瘍内および全身の局所Treg細胞集団の減少に関連することを示している.
【実施例
【0306】
安全性:2つのマウスモデルにおいて、bcg-disa-oeはbcg-wtより低い催吐性を示す。
【0307】
BCG-disA-OEによって惹起される炎症性免疫反応の亢進が、有害作用につながるのではないかという懸念に対処するため、2つの別々のマウスモデルにおける安全性が評価された。エアロゾル曝露の免疫無能力BALB/cマウスモデルを使用し、適応免疫応答が最大となる4週間後の肺桿菌負担を測定した(図58)。2つのBCG株の移植1日目は同等であったが,BCG-disA-OEはマウスの肺でBCG-WTより0.43log10コロニー形成単位の差で有意に低い程度に増殖したことが観察された(図58).細胞ベースのモデルで以前に観察されたように、肺と脾臓の両方で炎症性サイトカインレベルは、BCG-WTを受けたマウスよりもBCG-disA-OEを受けたマウスで有意に高かった(図60)。ここでも、低用量エアロゾル暴露モデル(図59)を用いて、BCG-WTと比較してBCG-disA-OEで統計的に有意な生存期間の延長が観察された(図59)。したがって、多数のモデル系でより深い炎症シグネチャーを誘発するにもかかわらず、BCG-disA-OEは、これら2つのマウスモデル系においてBCG-WTよりも病原性が低い。
【実施例
【0308】
ディスカッション
【0309】
長年にわたり、数多くの組み換えBCG株が作製され、試験されてきた。これらの研究は、一般に結核予防効果や膀胱癌免疫療法の向上を目的として行われたが、場合によっては他の感染症の予防を目的とすることもある。一般的には、抗原を過剰発現させて疾患特異的な免疫を獲得したり、サイトカイン遺伝子を過剰発現させて局所的な宿主応答を高めたりすることが行われてきた。多くの改変BCGが前臨床モデルで有効性を示したが、ヒトでの臨床試験に進んでいるものはほとんどない。現在までに、ファゴソーム透過性を高め、BCG抗原が細胞質MHCクラスI抗原処理にさらされるように設計されたBCG、BCGΔureC::hly(VPM1002)だけが、結核の後期臨床試験に進んでいる。これは、PAMP分子であるcyclic-di-AMPを過剰発現させ、STING経路の関与を高めることにより、訓練された免疫力を向上させるという特別な目的でBCGを再設計した最初のものである。
【0310】
BCG-disA-OEとBCG-WTを比較し,訓練された免疫パラメータが増加するかどうかを調べるために,一連のin vitroアッセイで試験を行った.ヒトおよびマウス初代細胞におけるサイトカイン放出プロファイル,マクロファージ極性化,オートファジー,食作用,エピジェネティック修飾,代謝リモデリングが評価された.各アッセイ系で,BCG-disA-OEはBCG-WTよりも炎症反応の強力な増強剤であった。cyclic-di-AMP発現BCGはさらに,鍛えられた免疫のin vivo機能アッセイ,すなわち膀胱癌免疫療法でテストされた。2つの別々の尿路上皮がんモデルにおいて、BCG-disA-OEはBCG-WTよりも高い免疫療法効果を示した。これは、我々のin vitroの結果が、関連する動物モデルにおける機能的効果を予測するものであることを示している。また,興味深いことに,BCG-disA-OEは,in vitroのアッセイ系でより強力な炎症反応を誘発したにもかかわらず,BCG感染やBCGosisの2つの動物モデルで過剰な病原性を生じなかった.
【0311】
また、BCG-WTは一様に炎症性反応を引き起こすわけではないことも観察された。例えば、マウスのマクロファージをBCG-WTで処理すると、未処理のコントロールと比較して、実際にはM-MDSCの割合が高くなり(抗炎症)(図50)、同様にBCG-WTによって抗炎症代謝物キヌレニンのレベルが高くなることが観察された。BCG-WTのある種の抗炎症作用の結果は、結核予防のためにBCGを定期的に使用している国々で、ワクチン接種者が喘息やアトピー性皮膚炎のレベルを低下させているという観察と相関している可能性がある。一方、BCG-WTによるマクロファージ内のM-MDSCsの拡大は、cyclicdi-AMPの過剰発現によって逆転した。これは、STING経路の活性化が、特定の癌におけるMDSCsの誘導を減少させるという最近の研究結果と一致している。
【0312】
BCGによって誘発される訓練された免疫の変化は、がん予防におけるBCGの免疫療法効果の根底にある可能性がある。そこで、本研究のもう一つの目的は、NMIBC免疫療法としてのBCG-disA-OEの有用な効果が、STING経路の関与とBCGによる訓練された免疫の変化を介するかどうかを評価することであった。NMIBCのラットモデルでは,未治療の担癌ラット(腫瘍の最高悪性度はT2)およびBCG-WT処置動物(腫瘍の最高悪性度はT1)では浸潤性腫瘍が発生したが,BCG-disA-OEを投与したラットでは浸潤性膀胱癌が完全に消失した.同様に,MB49マウス膀胱癌モデルでは,BCG-disA-OEはBCG-WTよりも腫瘍増殖の抑制に優れ,それに伴って腫瘍壊死が増加し,これらの効果は,腫瘍におけるM1マクロファージの動員,IFN-γ産生CD4細胞の増加およびTreg細胞の蓄積の減少を伴うものであった.BCG-disA-OEを投与した担癌動物の膀胱では,BCG-WTと比較して炎症性サイトカインおよびケモカインのレベルが上昇していることが観察された.非免疫細胞も免疫記憶を持つことが示されていることからこのサイトカイン応答は、TME内の骨髄系細胞や腫瘍細胞自体に由来する可能性が検討された。その結果、BCG-disA-OEはBCG-WTと比較して、初代マクロファージおよび様々な腫瘍ステージのヒト尿路上皮癌細胞において、より強力なサイトカイン応答を誘発することが明らかとなった。STING-/-マウスのBMDMにおける発現が劇的に減少したことから,これはSTING活性化の下流の結果であるように思われた.さらに、外因性STINGアゴニストによる刺激で他の研究で観察されたように、いくつかのケモカインの強力な誘導が見られた。
【0313】
本発明は、上記の実施例を参照して説明されたが、修正および変形が本発明の精神および範囲内に包含されることは理解されるであろう。従って、本発明は、以下の請求項によってのみ限定される。
【0314】
本発明は、上記の実施例を参照して説明されたが、修正および変形が本発明の精神および範囲内に包含されることは理解されるであろう。従って、本発明は、以下の請求項によってのみ限定される。
図1
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【配列表】
2023514553000001.app
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-12-16
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
この出願は、2020年2月13日に出願された米国特許出願第16/790,161号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、それは2020年2月13日に出願された16/638,943の一部継続(CIP)、すなわち国際出願PCT/US2019/022341の35 U.S.C.§371 U.S.の国内出願であり、2019年3月14日の国際出願日を有し、それは米国仮出願第62/658,661号の利益を主張し、2018年4月17日に出願され、前述のそれぞれの出願の内容は、それらの全体が参照によりここに組み込まれる。
シーケンスリスティングの組込み
【0002】
添付のシーケンスリスティングにおける資料は、参照によりこれによってこの出願中に組み込まれる。添付の配列リストのテキストファイルは、JHU4280_2WO_Sequence_Listing.txtと名付け、2021年2月11日に作り出し、および157kbである。ファイルはWindows OSを使用するコンピュータでMicrosoft Wordを使用して評価することができる。
政府権益の表明
【0003】
この発明は、the National Institutes of Health(米国国立衛生研究所)によって与えられた認可番号AI036973、AI037856下で政府支援により行われた。政府は本発明について一定の権利を有する。
本発明の背景
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膀胱の尿路上皮性ガンは、北米、南米、欧州およびアジアにおける膀胱ガン(BC)の最も一般的なタイプである。筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC)は、高い再発率、頻繁な膀胱内処置、進行期への進行のリスクおよびすべてのガンの中で最も高い生涯処置と関連している。膀胱内BCG(bacillus Calmette Guerin(バシルス・カルメット・ゲラン))注入は、30年間NMIBCのためのケア処置の標準であった。それは60-70%の患者において有効である。BCGは抗原をデリバリーするための非常に効果的なビヒクルであることが示された。I型インターフェロンおよびTh1誘導媒介免疫反応に向かって偏った基礎的な免疫反応を裏付ける多くの研究は、有望であることを示す。NMIBCのための組換えBCG(rBCG)株を生成する努力は、これらの抗腫瘍免疫応答を増強する株の開発に重点を置いた。今日までそのような努力は伝統的なBCGを超える実証可能な改善をもたらしていない。
本発明の概略
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、例として、c-di-AMP(また3'-5'c-di-AMPとしても知られる);c-di-GMP(また3'-5'c-di-GMPとしても知られる);3'-3'cGAMP(また3'-5',3'-5'cGAMP、Vibrio cholerae(ビブリオ・コレラエ)DncVタンパク質の生産物としても知られる);2'-3'cGAMP(また2'-5',3'-5'cGAMP、ヒトcGASタンパク質の生産物としても知られる)およびそれらの組合せを含めてSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分を発現する核酸配列を含むベクターを提供する。本発明のいくらかのベクターには、Rv1354cタンパク質、またはその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第2の核酸配列;2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第3の核酸配列;DNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第4の核酸配列およびそれらの組合せからなる群より選ばれる核酸配列が含まれる。これらの核酸配列の各々は、本明細の定義のセクションに記載するようにSTINGアゴニストの1以上を作成するタンパク質を発現する。本発明のいくらかのベクターには、上に挙げる1以上の配列に加えて、PanCタンパク質およびPanDタンパク質またはそれらの機能的部分をコードする第5の核酸配列が含まれる。PanCタンパク質およびPanDタンパク質またはそれらの機能的部分をコードする核酸配列を含むベクターは典型的に、抗生物質耐性遺伝子を含まない。本発明において使用する好適なベクターには、複数コピーにおいてエピソーム的に複製するベクター、または単一コピーにおいて細菌染色体中に統合し、あるいは別なふうに細菌細胞において存在するベクターが含まれ得る。本発明のベクターは、細菌ゲノム中に安定的に統合し得、またはそれはエピソームプラスミドとして安定的に複製し得る。好適な第3の核酸配列には、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質のシクラーゼドメインを過剰発現するものが含まれる。他の好適な第3の核酸配列は、非機能的である調節性DNA認識能力(regulatory DNA recognition capability)を有する環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質を発現し得る。本発明のベクターはまた、本発明において使用するマイコバクテリウム属菌(Mycobacteria)の株のPDE遺伝子の発現をノックアウトする配列またはタンパク質をコードする核酸配列も含み得る。
【0006】
本発明の別の実施形態はSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が含まれるベクターを含む本発明のベクターのいずれか1つが含まれるMycobacteria(マイコバクテリア属菌)の株を提供する。上述したように、STINGアゴニストの例には、例として、c-di-AMP(3'-5'c-di-AMPとしても知られる);c-di-GMP(3'-5'c-di-GMPとしても知られる);3'-3'cGAMP(3'-5',3'-5'cGAMP、Vibrio cholerae DncVタンパク質の生産物としても知られる);2'-3'cGAMP(2'-5',3'5'cGAMP、ヒトcGASタンパク質の生産物としても知られる)およびそれらの組合せが含まれる。好適な核酸配列の例には、Rv1354cタンパク質、またはその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第2の核酸配列;2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第3の核酸配列;DNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第4の核酸配列およびそれらの組合せがからなる群より選ばれる核酸配列が含まれる。本発明で使用されるMycobacterium(マイコバクテリウム属菌)の好適な株の例には、例えば、Mycobacterium tuberculosis(マイコバクテリウム・ツベルクローシス、結核菌)、Mycobacterium bovis(マイコバクテリウム・ボービス)、またはそれらの組合せが含まれる。本発明で使用される別の株は、Mycobacterium bacillus Calmette Guerin(マイコバクテリウム・バシルス・カルメット・ゲラン)(BCG)である。本発明において使用されるMycobacteriaの株は、そのpanCD遺伝子オペロンを欠くBCGのパンソテナート栄養要求体(panthothenate auxotroph)であり得る。panCDオーソトフ(auxotoph)株は機能的PanCおよび/またはPanDタンパク質をコードすることが可能なゲノム配列を欠く。いくらかの実施形態では、パントテン酸(pantothenate)栄養要求体であるMycobacteriaの株には、PanCおよびPanDタンパク質またはそれらの機能的部分をコードするpanCD核酸を含む本発明のベクターが含まれる。panCD核酸配列を含む本発明のベクターはなるべくなら、抗生物質耐性遺伝子または抗生物質耐性をもたらす機能的タンパク質をコードする核酸配列を含まない。本発明のパントテン酸栄養要求体であるMycobacteriaはなるべくなら、ゲノム抗生物質耐性遺伝子を含まないか、または抗生物質耐性を提供する機能的タンパク質をコードすることが可能でない。
【0007】
本発明の別の実施形態は、本発明のMycobacteriaの株のいずれか1つ、および薬学的に許容可能な担体を含む、薬剤組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、1型インターフェロン応答を誘発し、炎症促進性サイトカインの発現を増強し、および/またはトレーニングされた免疫を誘発する対象における方法を提供し、以下のステップ:本発明の株のいずれか1つが含まれる薬剤組成物を対象中に施すこと;および対象において1型インターフェロン応答を誘発すること、炎症促進性サイトカインの発現を増強すること、および/またはトレーニングされた免疫を誘発することが含まれる。ある態様において、薬剤組成物はカテーテルによって対象の膀胱中に投与される。
【0009】
別の実施形態は、対象におけるガンを処理または防止するために本発明のMycobacteriaの株を使用する方法を提供する。方法には、以下のステップ:ガンを有する対象にSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を施すこと;および対象におけるガンを処理または防止することが含まれる。本発明は、例として、上皮性ガン、乳ガン、筋層非浸潤性膀胱ガンが含まれるガンを処理または防止するために使用され得る。いくらかの態様において、ガンはBCG非応答性筋層非浸潤性膀胱ガン(BCG非応答性NMIBC)であり、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施される。いくらかの態様において、ガンはBCGナイーブ筋層非浸潤性膀胱ガン(BCGナイーブNMIBC)であり、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施される。他の態様では、ガンは結腸ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、膣ガン、食道ガン、鼻咽頭ガン、気管支内ガン、およびそれらの組合せからなる群より選ばれ、および薬剤組成物は上皮性ガンの管腔側に施される。いくらかの態様において、ガンは、固形腫瘍または液状腫瘍から選ばれ、および薬剤組成物は腫瘍内注射および/または全身インフュージョンによって施される。本発明の方法は、例として、チェックポイントインヒビター、例えば、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、またはそれらの組合せなどのようなものを施すステップを含み得る。別の態様では、ガンは膀胱ガンであり、および薬剤組成物はカテーテルを介して施される。
【0010】
本発明の一実施形態は、Rv1354cタンパク質、またはその機能的部分をコードする第1の核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第2の核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第3の核酸配列;ジアデニル酸シクラーゼとして機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第4の核酸配列、またはそれらの組合せを含む発現ベクターを提供する。本発明のいくらかの発現ベクターは、Rv1354cタンパク質のシクラーゼドメインを参照としてのネイティブなRv1354cタンパク質の発現と比較するとき過剰発現する第1の核酸配列を含む。本発明のいくらかの発現ベクターは、環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質をネイティブなDncVタンパク質の発現と比較するとき過剰発現する第2の核酸配列を含む。本発明のいくらかの発現ベクターは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質のシクラーゼドメインをネイティブなcGASタンパク質の発現と比較するとき過剰発現する第3の核酸配列を含む。本発明で使用される好適なRv1354タンパク質には、Mycobacterium tuberculosis Rv1354タンパク質が含まれる。本発明で用いられる好適なDncVタンパク質には、Vibrio cholera DncVタンパク質が含まれる。本発明で用いられる好適なcGASタンパク質には、Homo sapiens(ホモ・サピエンス)cGASタンパク質が含まれる。本発明で使用される好適なDisAタンパク質には、Mycobacterium tuberculosis disAタンパク質が含まれる。
【0011】
本発明の別の実施形態は、cdnP遺伝子、Rv1354c遺伝子、Rv1357c遺伝子、またはそれらの組合せが含まれるBCGの株を提供し、そこでcdnP遺伝子は機能的な環状ジヌクレオチドホストジエステラーゼ(CdnP)タンパク質を発現することが可能でなく、Rv1354c遺伝子は機能的なRv1345cタンパク質を発現することが可能でなく、および/またはRv1357c遺伝子は機能的なRv1357タンパク質を発現することが可能でない。本発明のいくらかのBCG株は非機能的なEALドメインを含むRv1354c遺伝子を有し得る。本発明のBCG株は本発明の発現ベクターのいずれかを含み得る。
【0012】
本発明の別の実施形態は膀胱ガンを処理または防止する方法を提供し、以下のステップ:対象の膀胱中に本発明の発現ベクターを含むBCG株が含まれる薬剤組成物を施すこと;および対象において薬剤組成物を施されなかった参照対象と比較するとき膀胱ガンを処理または防止することが含まれる。薬剤組成物はカテーテルによるものを含む任意の適切な手段によって施され得る。
【0013】
本発明の別の実施形態は対象における1型インターフェロン応答を誘発する方法を提供し、以下のステップ:対象の膀胱中に本発明の発現ベクターを含むBCGの株が含まれる薬剤組成物を施すこと;および対象において薬剤組成物を施されない参照対象(reference subject)と比較して1型インターフェロン応答を増強させることが含まれる。
【0014】
本発明の別の実施形態は対象におけるガンを処理または防止する方法を提供し、以下のステップ:ガンを有する対象の腫瘍中に本発明の発現ベクターを含むBCGの株が含まれる薬剤組成物を施すこと;および対象において薬剤組成物を施していない参照対象と比較するときガンを処理または防止することが含まれる。薬剤組成物は腫瘍への注射を含む任意の適切な手段によって施され得る。この方法によって処理または防止され得るガンは、制限されないが、乳ガン、および/または筋層非浸潤性膀胱ガンが含まれる。
【0015】
本発明に用いられるマイコバクテリアの例には、Mycobacterium tuberculosisMycobacterium bovisMycobacterium bovis Bacillus Calmette Guerin(マイコバクテリウム・ボービス・バシルス・カルメット・ゲラン)(BCGと称される)、Mycobacterium smegmatis(マイコバクテリウム・スメグマティス)、Mycobacterium avium complex(マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス、非定型抗酸菌複合体とも言う)、および他の非結核性マイコバクテリウム属菌(non-tuberculous mycobacteria)(NTM)が含まれる。STINGアゴニストを過剰発現するものが含まれる本発明に用いられるBCG株の例には、BCG Pasteur(BCGパスツール)、BCG-Pasteur-Aeras(BCG-パスツール-アエラス)、BCG Tice(BCGタイス)(またBCG Chicago(BCGシカゴ)としても知られる)、BCG-Connaught(BCG-コンノート)(またBCG Toronto(BCGトロント)としても知られる)、BCG Danish(BCGデーニッシュ)、BCG-Prague(BCG-プラハ)(またBCG Czechoslovakian(BCGチェコスロバキアン)としても知られる)、BCG Russia(BCGロシア)(またBCG Moscow(BCGモスクワ)としても知られる)、BCG Moreau(BCGモロー)(またBCG Brazil(BCGブラジル)としても知られる)、BCG Japan(BCGジャパン)(またBCG Tokyo(BCGトウキョー)としても知られる)、BCG Sweden(BCGスウェーデン)(またBCG Gothenburg(BCGイェーテボリ)としても知られる)、BCG Birkhaug(BCGビルカウ)、BCG Glaxo(BCGグラクソ)、BCG Frappier(BCGフラピエ)(またBCG Montreal(BCGモントリオール)としても知られる)、BCG Phipps(BCGフィップス)、または他の入手可能なBCG株が含まれる。
【0016】
本発明の別の実施形態は糖尿病を処理する方法を提供し、以下のステップ:糖尿病を有する対象にSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を施すこと;およびトレーニングされた免疫を提供することによって対象における糖尿病を処理または防止することが含まれる。トレーニングされた免疫は一の抗原刺激が第2の、後の時期に導入される異なる抗原刺激に対してより一層強力な免疫応答を誘発する能力に言及する。トレーニングされた免疫は、異種CD4およびCD8メモリの活性化、媒介されたサイトカインに基づき、抗原非依存性であり、ならびにエピジェネティックなおよび代謝的な変化と関係する。本方法はトレーニングされた免疫によって媒介された解糖のアップレギュレーションをもたらす。前述の解糖のアップレギュレーションは1型および2型真性糖尿病を防止および処理するのに有益である。
【0017】
本発明の別の実施形態は対象におけるトレーニングされた免疫を刺激する方法を提供し、以下のステップ:STINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を対象に施すこと;および対象におけるトレーニングされた免疫を刺激することが含まれる。対象における解糖をアップレギュレートすること、および/または対象におけるヒストンメチル化においてエピソーム変化を刺激することは、対象におけるトレーニングされた免疫を媒介する。
【0018】
本発明の別の実施形態は対象におけるウイルス感染を処理または防止する方法を提供し、以下のステップ:STINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を対象に施すこと;および対象におけるウイルス感染を処理または防止することが含まれる。対象におけるトレーニングされた免疫を刺激することは、対象のウイルス感染症を処理または防止する。対象における解糖をアップレギュレートすること、および/または対象におけるヒストンメチル化においてエピソーム変化を刺激することは、対象におけるトレーニングされた免疫を媒介する。
【0019】
本発明の別の実施形態は対象における細菌感染、または薬剤耐性細菌感染を処理または防止する方法を提供し、以下のステップ:STINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を対象に施すこと;および対象における細菌感染または薬剤耐性細菌感染を処理または防止することが含まれる。対象におけるトレーニングされた免疫を刺激することは、対象における細菌感染を処理または防止する。対象における解糖をアップレギュレートすること、および/または対象におけるヒストンメチル化においてエピソーム変化を刺激することは、対象におけるトレーニングされた免疫を媒介する。本発明の方法は1以上の本発明のベクターまたは本発明のベクターが含まれる1以上の株を使用し得る。
【0020】
本発明の別の実施形態は、腫瘍における骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSCs)、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑え、および腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導する方法を提供する。本方法には、腫瘍を有する対象にSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むMycobacteriaの株が含まれる薬剤組成物を施すステップ;腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑えるステップ;および腫瘍におけるマクロファージ、DCs、およびTエフェクター細胞の発現を誘導するステップが包含される。腫瘍における誘導された発現を有するM1マクロファージの例には、M1マクロファージが含まれる。腫瘍において誘導された発現を有するTエフェクター細胞の例には、CD4+T細胞およびCD8+T細胞が含まれる。本発明のベクターを含むMycobacteriaが施された対象の腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑えることは、Mycobacteriaの株を含む薬剤組成物が施されていない参照される対象(referenced subject)の腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現と比較するとき観察される。腫瘍におけるマクロファージ、DCs、およびTエフェクター細胞の発現を誘導することは、Mycobacteriaの株を含む薬剤組成物が施されていない参照される対象の腫瘍におけるマクロファージ、DCs、およびTエフェクター細胞の発現と比較するとき観察される。好適なSTINGアゴニストの例には、3'-5'c-di-AMP(またc-di-AMPとしても知られる);3'-5'c-di-GMP(またc-diGMPとしても知られる);3'-3'cGAMP;2'-3'cGAMPおよびそれらの組合せが含まれる。本発明の好適なベクターには、Rv1354cタンパク質、またはその機能的部分をコードする第1の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質またはその機能的部分をコードする第2の核酸配列;2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第3の核酸配列;DNAインテグリティースキャニング(DisA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第4の核酸配列およびこれらの組合せからなる群より選ばれる核酸配列を含み得る。腫瘍は、例として、上皮性ガン、乳ガン、または筋層非浸潤性膀胱ガン、およびメラノーマであり得る。いくらかの態様において、腫瘍は筋層非浸潤性膀胱ガン、例えば、BCG非応答性筋層非浸潤性膀胱ガン(BCG非応答性NMIBC)などのようなものであり得、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施すことができる。他の態様において、腫瘍は筋層非浸潤性膀胱ガン、例えば、BCGナイーブ筋層非浸潤性膀胱ガン(BCGナイーブNMIBC)などのようなものであり得、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施すことができる。他の態様において、腫瘍は結腸ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、膣ガン、食道ガン、鼻咽頭ガン(nasopharyngeal cancer)、気管支内ガン(endobronchial cancer)、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる上皮性ガンであり得、および薬剤組成物は上皮性ガンの管腔側(luminal surface)に施すことができる。他の態様において、腫瘍は固形腫瘍であり、および薬剤組成物は腫瘍内、静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射により施される。他の態様では、腫瘍は液状腫瘍であり、および薬剤組成物は静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射によって施される。本発明の方法は、チェックポイントインヒビターを施すステップをさらに含み得る。本発明において使用され得る適切なチェックポイントインヒビターには、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)、セミプリマブ(抗PD-1抗体)、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)、アベルマブ(抗PD-L1抗体)、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)およびそれらの組合せが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
この出願は、16/638,943の一部継続(CIP)であり、USシリアル番号16/638,943からのすべての図はそれらの全体が参照によってここに組み込まれる。
図1図1A-1BのpSD5B Phsp60::disAプラスミド構築物からdisAを過剰発現するMycobacteriaは、マクロファージサイトゾル中に多量のc-di-AMPを放出し、および高レベルのdisA mRNAを転写する。図1A.J774マクロファージに、pSD5B Phsp60::disAプラスミドまたは野生型M.tb(CDC1551)を1:20のMOIにて保有するM.tbを感染させた。感染の24時間後にマクロファージ内のc-di-AMP濃度をLC-MS/MSで測定した。見ることができるように、M.tb-disA-OE株は、野生型M.tb(CDC1551)よりも~(「約」の別表示として使用)15倍多くのc-di-AMPを生成する。BCG-disA-OE株は高レベルのc-di-AMPを同様に示すと予想される。(データはDey(デイ)B, Dey RJ, Cheung(チャン)LS, Pokkali(ポッカリ)S, Guo(グオ)H, Lee(リー)JH, Bishai(ビシャイ)WR.からによる。細菌の環状ジヌクレオチドは細胞質ゾル監視経路を活性化し、および結核に対する生得的抵抗性(innate resistance)を媒介する。Nat Med.(ネイチャー・メディシン)2015;21:401-6. PMID: 25730264)。図1B.pSD5B Phsp60::disAプラスミドを保有するBCG-PasteurまたはBCG-Pasteur-WTはミッド対数期(mid-exponential phase)まで増殖させた。細菌を溶解し、およびmRNAを調製した。disA mRNAのレベルは定量的RT-PCRによって定めた。BCG-disA-OE株はBCG-Pasteur-WTよりも~50倍多くのdisA mRNAを生産する。
図2disAを過剰発現するBCGは炎症促進性サイトカインを増大させる。BCG-Pasteurの野生型およびdisA過剰発現株により負荷した(challenged)マウスBMDMsにおける炎症促進性サイトカインおよびIFN-βの遺伝子発現プロファイリング(qPCR)である。
図3disAを過剰発現するBCGはIRF3シグナル伝達を増大させる。IRF-SEAP QUANTI Blue(IRF-SEAPクオンティ・ブルー)レポーターアッセイによって測定されたIRF経路の活性化に対するdisA過剰発現の効果である。感染したRAW(ロー)-Blue ISG細胞の培養上清をIRF活性化についてアッセイした。IRF活性化グラフの下の画像は、QUANTI Blueアッセイプレートおよびサンプルウェルを表し;ウェルの列についての処理パラメータは、ウェルと並んだ上のバーのために規定されたものに対応する。この図におけるBCG-disA-OEはBCG Pasteurに由来する。
図4図4A-4C.disA過剰発現に応答した炎症促進性サイトカインの増加である。図4AはTNF-αの差次的発現を示す。図4BはIL-6の差次的発現を示す。図4CはIL-1βの差次的発現を示す。マウスBMDMsに、BCG-Pasteurの野生型およびdisA過剰発現の株を負荷した。異なるサイトカインについて培養上清をELISAによってアッセイした。
図5disAを過剰発現するBCGはヒト膀胱ガン細胞(RT4)において差次的な免疫応答を誘導する。mRNAの野生型BCG-Pasteur、野生型BCG-Tice株、およびBCG-Pasteur-disA-OEの発現レベルにより負荷したヒトRT4膀胱ガン細胞における差次的遺伝子発現は、SYBR(サイバー)グリーンベースの定量リアルタイムPCRを使用して測定した。
図6】野生型およびBCG-disA OEの株の相対的な治療上の有効性を試験する概略的なワークフローである。
図7】WT BCGまたはdisAを過剰発現するrBCG(rBCG=BCG-Pasteur-disA-OE;wtBCG=BCG-Pasteur)による未処理または処理した担腫瘍ラットの腫瘍浸潤指数である。
図8】異なる株のBCGを用いた膀胱内療法に対応するMNU誘発フィッシャーラット泌尿器膀胱腫瘍の免疫プロファイリングである。Mycobacterium bovis BCG-Pasteurの野生型株およびdisA過剰発現株による治療後のラット膀胱腫瘍細胞における遺伝子発現の差違を示す。mRNAの発現レベルはTaqMan(タックマン)ベースの定量的リアルタイムPCRを用いて測定した。BCG-WTはBCG Pasteurであり、およびBCG-disA-OEはBCG Pasteurから導き出される。
図9disAを過剰発現するWTまたはrBCGによる未処理または処理したMNU腫瘍担持(tumor bearing)ラットからの膀胱の遺伝子発現プロファイリングである。
図10】異なる細胞または組織におけるBCG-disA-OE対BCG-WTによる相対的な遺伝子発現の概要である。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)、ヒト不死化膀胱ガン細胞系RT4および5637、およびラット不死化膀胱ガン細胞系をBCG-disA-OEおよびBCG-WTにより24時間感染させ、およびmRNAを細胞から調製した。ラットは8週間にわたって膀胱内注入によってMNUに曝し、および次いで8週間膀胱内注入によっていずれかのBCG-disA-OEまたはBCG-WTにより処理した。16週目の剖検にて膀胱を取り出し、およびmRNAを調製した。指し示されたサイトカインまたはケモカイン遺伝子について定量的RT-PCRを実行した。示された変化は、BCG-WTにより見られるものに正規化したBCG-disA-OEにより観察された倍率誘導または減少である。BCG-WTはBCG Pasteurであり、およびBCG-disA-OEはBCG Pasteurから導き出された。
図11】BCG:BCG_RS07340およびBCG_AHM07112において存在する2つの環状ジヌクレオチドシクラーゼおよびホスホジエステラーゼタンパク質の図である。BCG_RS07340はCDNシクラーゼおよびCDN PDE活性の両方を有する二機能性タンパク質である。BCG_AHM07112はCDN PDEである。ドメインは以下の:GAF(調節)、GGDEF(ジグアニル酸シクラーゼ)、およびEALジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。
図12】pSD5B Phsp60::disAプラスミドを保有するM. tuberculosis(M.ツベルクローシス)(M.tb-disA-OEまたはMtb-OE)は、野生型M.tb(Mtb-CDC1551)と比較してマウスにおける病原性が著しく減弱される。6-7週齢の雌性BALB/cマウス(各グループあたりn=10)をエアロゾル感染によって~3.5log10CFUにより上記のように感染させた。1日目のCFUカウントを各グループにおいて3匹のマウスで実行し、および3.5log10CFU単位の移植を確認した。マウスは死亡するまで保持した。見ることができるように、野生型M. tuberculosisの感染について死亡までの中位時間は150.5日であった。対照的に、同じ接種材料のM.tb-disA-OE(Mtb-OE)により感染させたマウスは、死亡までの中位時間が321.5日だった(p<0.001)。BCG-disA-OEはBCG-WTと比較してマウスにおいて同様の病原性の喪失を示すと予想される。(データはDey B, Dey RJ, Cheung LS, Pokkali S, Guo H, Lee JH,およびBishai WRからである。バクテリアの環状ジヌクレオチドは、細胞質ゾル監視経路を活性化し、および結核に対する生得的抵抗性を媒介する。Nat Med. 2015; 21: 401-6. PMID: 25730264)。
図13図13A-13B.他のBCG株もまた活性である:disAを過剰発現するBCG Tice株もまたdisAを過剰発現するBCG Pasteurと同様の炎症促進性サイトカインの誘導を示す。骨髄由来マクロファージに、BCG PasteurおよびBCG Tice株の両方の野生型およびdisA過剰発現株を1:20のM.O.Iにて15時間負荷した。培養上清を収穫し、およびELISAを用いてサイトカインについて探索した。図13AはTNF-αのBdifferential(ビーディファレンシャル)な発現パターンを示す。図13BはIL-6の差次的発現を示す。マウスBMDMはBCGの2つの異なる株により負荷した。BCG-Tice株は商業上入手可能なOnco-Tice(オンコ-タイス)生産物からであった。
図14】BCG-disA-OEに応答するマクロファージにおけるタイプIインターフェロン応答はSTING依存性である。STING切除(KO)およびコントロールマウスからの骨髄由来マクロファージは、BCG Pasteurの野生型およびdisA OE株により24時間負荷した。培養上清はELISAを用いてIFN-βレベルについて探索した。
図15】BCG-disA-OEの膀胱内注入が筋層非浸潤性膀胱ガン(NIMBC)のMNU発ガン性物質モデルにおいて最大の抗腫瘍有効性(病態における統計的に有意な改善)を表示することが示される。NIMBCを誘発するために、ラットのグループに最初の8週間で4回のMNU膀胱内処理(2週間毎に1回処理)を受けさせた。次の8週間にわたり、それらにPBS(未処置)、BCG-WT、またはBCG-disA-OEのいずれかにより4回の膀胱内処理を受けさせた(2週間毎に1回処理)。16週間の実験の終わりに、ラットを犠牲にし、およびそれらの膀胱を取り出した。膀胱の一部分を固定し、およびH&E染色を施し、および次いで正式の泌尿器病理学(Board-certified urologic pathologist)によって盲検様式において解釈した。腫瘍浸潤スコアおよびガンステージ(T2-3、T1、CIS+乳頭状病変、CIS単独、または正常-異形成)を決定し、および示した。見られ得るようにBCG-disA-OE注入は、PBS(未処置)よりも統計学的に有意に低い腫瘍浸潤指数をもたらし、その一方でBCG-WTはPBSよりも統計学的に有意に優れていなかった。この16週間の実験は2回実行した。図7でのデータは実験1の結果を提示する。この図(図15)でのデータは実験1プラス実験2の組み合わせた結果を提示する。図8および図9に示すqPCRデータは実験1の終わりからの剖検にて膀胱組織を用いて得られた。
図16】BCG-disA-OEがネズミ同系膀胱ガン腫瘍においてTregs(CD4+CD25+Foxp3+)を減少させることを示す。マウスは5×106個のBBN975マウス膀胱ガン腫瘍細胞を脇腹(flank、フランク、側面などとも言う)に移植した。腫瘍の直径が1.5cmになったとき、マウスはPBS(コントロール)、BCG-WT、またはBCG-disA-OEのいずれかを腫瘍内注射した(2日毎に1回処理)。最後の腫瘍内処理から2日後にマウスを犠牲にし、およびそれらの脾臓と腫瘍とを取り出した。腫瘍細胞の分散後、細胞調製物を染色し、およびフローサイトメトリーにかけた。見られ得るようにBCG-disA-OEは、腫瘍CD4+Tregの減少、腫瘍CD8+Tregの減少、および脾臓CD4+Tregの減少につながった。
図17図17A-17Bは、BCG-disA-OEが2匹のマウスモデルにおいてBCG-WTよりも安全であることを示す。図17AはBALB/cマウス(免疫コンピテント)のグループが、Glas-Colエアロゾル化チャンバーを用いて、1×103CFU(マウスのグループを犠牲にすること、および1日目の肺CFUカウントを決定することによって確認した)のBCG-WTまたはBCG-disA-OEのいずれかに曝露されたことを示す。4週間後、各グループからマウスを犠牲にし、それらの肺を取り出し、ホモジナイズし、および7H11寒天プレート上に播いた。図はBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺についての平均CFUカウントを示す。見られ得るように、統計的に有意に低い肺CFU負担がBCG-WTと比較してBCG-disA-OEにより観察された。図17BはSCIDマウス(免疫抑制性)のグループが、Glas-Col(グラス-コル)エアロゾル化チャンバーを用いて、1×102CFU(マウスの群を犠牲にすること、および1日目の肺CFUカウントを決定することによって確認)のBCG-WTまたはBCG-disA-OEのいずれかに曝露されたことを示す。第3のグループは感染させなかった。図はマウスのグループについてのKaplan-Meier(カプラン-マイヤー)生存曲線を示す。見られ得るように、BCG-disA-OE感染マウスはBCG-WT感染マウスよりも統計的に有意に長い生存時間を有した。
図18】BCG-disA-OEがCD14+ヒト単球において、BCG-WTでのものよりも統計的に有意に高いレベルの「トレーニングされた免疫応答の免疫学的およびエピジェネティックなマーク(Trained Immunity immunological and epigenetic marks)」を誘発することを示す。「トレーニングされた免疫」は最初の免疫学的刺激がその後に与える抗原的に異なる第二の刺激に対する免疫応答の増加を誘導する能力に言及する。この実験では、CD14+ヒト単球をアフェレーシス(apheresis、血液成分除去法などとも言う)で採取したLeukoPaks(ロイコパックス)から調製した。0日目にそれらにいずれかのBCG-WTまたはBCG-disA-OEによりMOIの5:1にて3時間感染させた。第三のグループの細胞は感染させなかった。感染後、細胞を複数回洗浄した(2日ごと)。6日間の休息期間の後、単球をTLR1/2アゴニストPAM3CSK4により2時間再刺激した。細胞を繰り返し洗浄し、およびその後24時間インキュベーションした。分泌されたIL-1βのThレベルは、ELISAによって培養上清において測定した。見られ得るように、BCG-WTそれ自体は非感染細胞と比べて第二の刺激に対して統計的に有意に高いレベルの免疫応答を誘発したが、BCG-disA-OEはBCG-WTまたは非感染細胞のいずれよりも統計的に有意に高い応答を誘発する。
図19】BCG-disA-OEがIL6およびTNF遺伝子プロモーター領域において、BCG-WTよりも大きなヒストン活性化マーク(H3K4-トリメチル化)を誘発することを示す。「トレーニングされた免疫」は第一の免疫学的刺激がその後に与える抗原的に異なる第二の刺激に対する免疫応答の増加を誘導する能力に言及する。トレーニングされた免疫は、サイトカインおよび他の免疫メディエーターのプロモーター領域において、エピジェネティック修飾、例えば、ヒストンメチル化などのようなものと関係した。図19において示す実験は、TLR1/2アゴニストPAM3CSK4(略称PAM3)による2回目の刺激の後、細胞を固定して収穫し(cells were harvested fixed)、染色質を架橋し、およびH3K4-me3ヒストンメチル化マークに対する特異抗体を用いて染色質免疫沈降分析(ChIP)のためにDNAを収集したこと以外は、同じセットの細胞および図18で説明したのとまったく同じ仕方において実行した。H3K4-me3は遺伝子活性化マークとして知られる。グラフはIL6およびTNF遺伝子プロモーター領域のためのプライマーを用いた定量PCRによって測定されるように大量の免疫沈降したDNAの相対的な倍率変化を示す。見られ得るように、BCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEの両方は、第二の刺激、PAM3CSK4による負荷に次いでそれらの対応するBCG-WT株で行ったよりもIL6およびTNFプロモーター領域におけるH3K4ヒストントリメチル化のレベルが著しく大きなレベルに導かれた。
図20】BCG-Tice-disA-OEの好首尾な構築物を示す。本発明者らの以前の作業はBCG-Pasteur-disA-OEを構築するためBCG-Pasteurを利用した。この株は1995年にFrank Collins(フランク・コリンズ)博士によって本発明者の一名に提供された。それはBCG-Pasteur-Aeras(アエラス)として知られる同じ株である。BCG-TiceはMerck(メルク社)によって製造および販売され、および合衆国において入手可能な唯一のFDA承認BCGである。本発明者らはBCG-Ticeを購入し、エレクトロコンピテントBCG-Ticeを調製し、およびpSD5-hsp60-MT3692プラスミドをBCG-Tice中にエレクトロポレーションした。図面は形質転換BCG-Ticeの5つのカナマイシン耐性候補クローンについてのコロニーPCRsの結果を示し、およびBCG-Tice中にpSD5-hsp65-MT3692プラスミドをエレクトロポレーションすることによってBCG-Tice-disA-OEの好首尾な調製を確認する。命名法に関して注記すると、本発明者らは以前にこの同じプラスミドをpSD5-hsp60-MT3692と称した。しかしながら、この株における実際のプロモーターはM. leprae(マイコバクテリウム・レプラエ、らい菌などとも言う)のhsp65遺伝子についてのプロモーターである。このように、本発明者らはプラスミドをpSD5-hsp65-MT3692としてより一層正確に今回言及する。
図21図20において示した形質転換実験からのBCG-Tice-disA-OEのクローン2がdisA遺伝子を強く発現することを示す。リアルタイムPCRは、4つの異なるBCG-Tice-disA-OEクローンにおける差次的disA発現を示すために使用した。遺伝子発現は、SYBRグリーンに基づく定量的リアルタイムPCRを用いる対数期培養物を用いて対数期後期培養物から分離した合計RNAにおいて測定した。グラフのデータポイントは3つの独立した実験の平均±標準誤差平均(SEM)を表す。M. tuberculosis sigA(Rv2703)は内部コントロールとして用いた。データ解析は、2-ΔΔCT法を用いて実行した。スチューデントのt検定(Student's t test)次いでWelch correction(ウエルチ修正)を続けた(***P<0.001;**P<0.01)。本発明者らはBCG-Tice-disA-OEクローン2のシードロット(seedlots)を作り出し、およびこのクローンを以降のすべての作業において単に「BCG-Tice-disA-OE」と称する。
図22】BCG-Pasteur-disA-OEにより感染したマウス骨髄由来マクロファージにおけるBCG-Pasteur-WTと比較して強力で統計的に著しく増強されたIRF3誘導を示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージをBCG Pasteurの野生型株およびdisA過剰発現株(20 MOI)により3時間感染させた。細胞は非インターナライズド桿菌を除去するために温DPBSにより洗浄し、およびその後別の3時間インキュベーションした。IRF3の発現はSYBRグリーンベースの定量的リアルタイムPCRを用いて細胞溶解液から分離した合計RNAにおいて測定した。グラフのデータポイントは3つの独立した実験の平均±標準誤差平均(SEM)を表す。マウスのベータ-アクチンは内部コントロールとして使用した。データ解析は2-ΔΔCT法を用いて実行した。スチューデントのt検定次いでWelch修正を続けた(***P<0.001;**P<0.01)。
図23】STINGがBCG-WTおよびBCG-disA-OEに応じて増強したI型IFN(IFN-β)誘導のために必要であることを示す。STING欠損(STING-KO)野生型動物からのマウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージは、異なる株のBCG(MOI=1:20)により3時間感染させた。細胞は除去した非インターナライズド桿菌に対して温DPBSを用いて洗浄し、および続いて別の24時間のインキュベーションをしてから培養上清を収穫した。IFN-βについてのELISAは製造主の指示に従い培養上清において実行した。データポイントは3つの独立した生物学的実験の平均値±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。スチューデントのt検定次いでWelch修正を続けた(**P<0.01)。
図24図24A-24Cはインターフェロン-βがdisA過剰発現BCG株への曝露に際して誘導されるネズミBMDMs、BMDCsおよびJ774.1マクロファージであること、およびIFN-β応答がBCG- Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株についてのものよりも統計的に有意に大きいことを示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)、およびJ774.1マクロファージは、異なるBCG株(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非インターナライズド桿菌は温DPBSを用いて洗浄し、および細胞は別の24時間インキュベーションした。IFN-βレベルは製造主の指示に従いELISA法を用いて培養上清において定量した。データポイントは3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は独立t検定(unpaired t-test)を用いて実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図24AはネズミBMDMsにおけるインターフェロン-βレベルを示す。図24BはネズミBMDCsにおけるインターフェロン-βレベルを示す。図24CはネズミJ774.1マクロファージにおけるインターフェロン-βレベルを示す。
図25図25A-25CはIL-6がdisA過剰発現BCG株への曝露に応じてマウスBMDMs、BMDCsおよびJ774.1マクロファージにおいて誘導されること、およびIL-6応答がBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株についてより統計的に有意に大きいことを示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)、およびJ774.1マクロファージは異なる株のBCG(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非インターナライズド桿菌は温DPBSを用いて洗浄し、および細胞を別の24時間培養した。IL-6レベルは製造主の指示に従いELISA法を用いて培養上清において定量した。データポイントは3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は独立t検定を用いて実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図25AはネズミBMDMsにおけるIL-6レベルを示す。図25BはネズミBMDCsにおけるIL-6レベルを示す。図25CはネズミJ774.1マクロファージにおけるIL-6レベルを示す。
図26図26A-26CはTNFがdisA過剰発現BCG株への曝露に応じてマウスBMDMs、BMDCsおよびJ774.1マクロファージにおいて誘導されること、および応答がBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株についてよりも統計的に著しく大きいことを示す。マウス(C57BL/6)骨髄由来マクロファージ(BMDMs)、およびJ774.1マクロファージはBCGの異なる株(MOI:20)を用いて3時間感染させた。非インターナライズド桿菌は温DPBSを用いて洗浄し、および別の24時間インキュベーションした。TNFレベルは製造主の指示に従いELISA法を用いて培養上清においてTNFレベルを定量化した。データポイントは3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は独立t検定を用いて実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図26AはネズミBMDMにおけるTNFレベルを示す。図26BはネズミBMDCsにおけるTNFレベルを示す。図26CはネズミJ774.1マクロファージにおけるTNFレベルを示す。
図27図27A-27BはTNFおよびIFN-γがdisA過剰発現BCG株への曝露に応じてラット膀胱カルシノマNBT-II細胞系において誘導されること、および2つの応答がBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株についてよりも統計的に有意に大きいことを示す。NBT-II細胞はBCGの野生型および組換え株により3時間感染させた。非インターナライズド桿菌は温DPBSを用いて繰り返し洗浄し、および細胞は別の24時間インキュベーションした。培養上清はTNFおよびIFN-γの定量化のために用いた。データポイントは3つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は独立t検定を用いて実行した(***P<0.0001;**P<0.001;*P<0.05)。図27AはNBT-II細胞におけるTNFレベルを示す。図27BはNBT-II細胞におけるIFN-γレベルを示す。
図28図28A-28DはIFN-β、IFN-γ、TNFおよびIL-1βのうち、disA過剰発現BCG株への曝露に応答してヒト移行細胞乳頭腫RT4膀胱ガン細胞系に誘導されること(that of IFN-β, IFN-y, TNF and IL-IP in are induced the in the human transitional cell papilloma RT4 bladder cancer cell line in response to exposure to disA overexpressing BCG strains)、および二つの応答がBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株のものについてより大きいことを示す。RT4細胞はBCGの野生型および組換え株により3時間感染させた。非インターナライズド桿菌は温DPBSを用いて繰り返し洗浄し、および細胞は別の24時間インキュベーションした。培養上清は製造主に従いサイトカインの定量のために使用した。データポイントは2つの独立した生物学的実験±標準誤差平均(S.E.M.)を表す。データ分析は独立t検定を用いて実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図28AはRT4細胞におけるIFN-βレベルを示す。図28BはRT4細胞におけるIFN-γレベルを示す。図28CはRT4細胞におけるTNFレベルを示す。図28DはRT4細胞におけるIL-1βレベルを示す。
図29】BCG-disA-OEが複数の膀胱ガン細胞系における増加したIFN-βレベルをBCG-WTよりも大きな程度にまで刺激することを示す。図面はBCG-WT、BCG-disA-OE、およびLPSへの曝露に次いでのIFN-βmRNAのレベル(2-ΔΔCT法による相対発現)を示す。5637細胞はヒト筋肉浸潤性(muscle-invasive)膀胱ガン細胞であり、RT4細胞はヒト移行細胞乳頭腫膀胱ガン細胞であり、およびNBT-II細胞はN-ブチル-N-(-4-ヒドロキシブチル)ニトロサミンによって誘導されたラット膀胱ガン細胞である。
図30図30A-30Dはエアロゾル感染に次いでの異なる時点でのBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-β、IFN-γ、IL-6、およびTNFについてのサイトカイン応答を示す。図面はほとんどのサイトカインについてほとんどの時点にてBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて対応するBCG-WT株についてのものよりも反応が大きいことを明らかにする。BALB/cマウスは図19に記載するようにエアロゾル経路によって感染させた。マウスのグループは感染後2、4、および6週目に犠牲にした。肺ホモジナートを調製し、およびサイトカインレベルを製造主のプロトコルに従ってELISAを用いて定量化した(n=4動物/処理グループ±S.E.M.)。データ分析は対応t検定(paired t-test)を使用して実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図30AはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-βレベルを示す。図30BはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス肺におけるIFN-γレベルを示す。図30CはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺におけるIL-6レベルを示す。図30DはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウスの肺におけるTNFレベルを示す。
図31図31A-31Dはエアロゾル感染に次いで4週間でのBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIFN-β、IFN-γ、IL-6、およびTNFについてのサイトカイン応答を示す。図面はほとんどのサイトカインにとって、BCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEについて反応が対応するBCG-WT株についてよりも大きいことを明らかにする。BALB/cマウスは図17に記載するようにエアロゾル経路によって感染させた。マウスのグループは感染後4週目に犠牲にした。脾臓ホモジナートを調製し、およびサイトカインレベルは製造主のプロトコルに従ってELISAを用いて定量化した(n=4動物/処理群±S.E.M.)。データ分析は対応t検定を使用して実行した(***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05)。図31AはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIFN-βレベルを示す。図31BはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIFN-γレベルを示す。図31CはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるIL-6レベルを示す。図31DはBCG-WTおよびBCG-disA-OE感染マウス脾臓におけるTNFレベルを示す。
図32】「pSD5.hsp65-disA.panCD--No Kan」(配列番号31)を生成するのに用いたストラテジーを示す。スキームは「pSD5.hsp65-disA.panCD--No Kan」(配列番号31)を生成させるために、Kanカセット「pSD5.hsp65-disA.Kan」(配列番号30)をpanCDオペロンに置き換える。
図33】pJV53、組換え用プラスミド(recombineering plasmid)の分子構造を示し、それは配列番号32である。
図34】pUC-Hyg、Hygカセットをフランキングする(flanking)dif部位を有するプラスミドの分子構造を示し、それは配列番号35である。pUC-Hygはプラスミド「pUC-Hyg-panCD-KO」(配列番号36)を生成するために使用する。
図35】プラスミド「pUC-Hyg-panCD-KO」の分子構造であり、それは配列番号36である。「pUC-Hyg-panCD-KO」はHygカセットの一方のフランクに500bpのpanCD 5'UTRをクローニングし、および他方のフランクに500bpのpanCD 3'UTRをクローニングすることによって生成する。
図36】プラスミド「pSD5.hsp65-disA.Kan」の分子構造であり、それは配列番号30である。
図37】プラスミド「pSD5.hsp65-disA.panCD-No Kan」の分子構造を示し、それは配列番号31である。このプラスミドは図32に例示するスキームを用いて生成される。
図38】陽性標本の数を示す。
図39図39A-39CはBCG-disA-OEのM.tb-disA過剰発現表現型およびIRFシグナル伝達の誘導の確認を示す。図39Aはカナマイシン遺伝子特異的プライマーを用いたコロニーPCRがカナマイシン(25μg/mL)に対して選ばれるBCG-disA-OE(Tice)クローンにおける組換えプラスミドpSD5-hsp60-MT3692の存在を確認することを示す。図39BはBCG Tice BCG-disA-OE Ticeの異なるクローンにおける差次的disA発現が示されるリアルタイムPCRを示す。対数期培養を用いて対数期後期培養物から分離した合計RNAにおいて転写レベルを測定した。M. tuberculosis sigA(Rv2703)を参照遺伝子として用い、および2ΔΔCT法によって相対的発現を算出した。図39CはRAW-Lucia(ルシア)ISG細胞の感染24時間後(MOI=1:20)の培養上清におけるIRF活性化BY定量の測定をISRE(RLU、相対光単位)に基づき示す。データは平均±SEMを表す(n=3反復(replicates))。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図40図40A-40CはSTING依存的マナーにおいてI型インターフェロンの強い誘導因子として、c-di-AMPを過剰発現するBCG株を示す。図40AはBCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMsおよびSTING-KO BMDM(C57BL/6J-Tmem173gt/J)の培養上清におけるIFN-βの定量的測定を示す。図40Bは感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMs、BMDCs、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)の培養上清におけるIFN-βの定量的測定を示す。図40Cは感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMs、BMDCs、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)の培養上清におけるIFN-βの定量的測定を示す。マクロファージ対BCGの感染比率=1:20。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図41図41A-41Dはc-di-AMPを過剰発現するBCG株が炎症促進性サイトカイン、TNF-α、およびIL-6の強い誘導因子であることを示す。(A-B)野生型C57BL/6由来のBMDMs、BMDCs、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)の培養上清におけるTNF-αの定量的測定である。図41AはBCG-disA-OE(Tice)による感染後24時間の測定を示す。図41BはBCG-disA-OE(Pasteur)による感染後24時間の測定を示す。(C-D)野生型C57BL/6由来のBMDMs、BMDCs、J774.1マクロファージおよびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)の培養上清におけるIL-6の定量的測定である。図41CはBCG-disA-OE(Tice)による感染後24時間の測定を示す。図41DはBCG-disA-OE(Pasteur)による感染後24時間の測定を示す。マクロファージ対BCGの感染比=1:20。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図42】c-di-AMPを過剰発現するBCGがSTING依存的様式において炎症促進性サイトカインTNF-αを強く誘導することを示す。BCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMsおよびSTING-KO BMDM(C57BL/6J-Tmem173gt/J)の培養上清におけるTNF-αの定量的測定である。マクロファージ対BCGの感染比=1:20。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図43図43A-43EはBCG-disA-OEがWT BCGと比較して著しく高いTh1サイトカインおよびケモカインを誘導することを示す。図43Aは野生型BCG(Tice)およびBCG-disA-OE(Tice)株による感染後6時間のIFN-γ活性化マクロファージにおける異なるサイトカインおよびケモカインの相対遺伝子発現分析を示す。(B-D)野生型BCG(Pasteur)およびBCG-disA-OE(Pasteur)株による感染後6時間でのIL-6、IL-12およびMCP-1 IFN-γ活性化マクロファージの相対的遺伝子発現分析である。β-アクチンは参照遺伝子として用い、および2ΔΔCT法によって相対的発現を算出した。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)。図43BはIL-6の相対的な遺伝子発現を示す。図43CはIL-12の相対的な遺伝子発現を示す。図43DはMCP-1の相対的な遺伝子発現を示す。図43EはBCG-disA-OE(Tice)感染後24時間の野生型C57BL/6由来BMDMsの培養上清におけるMCP-1の定量的測定を示す。マクロファージ対BCGの感染比=1:20。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図44図44A-44Cは異なるBCG株による感染後のネズミBMDMsおよびJ774.1マクロファージにおける差次的アポトーシス誘導を示す。(A-B)ネズミBMDMsおよびJ774.1マクロファージはWTまたはBCG-disA-OE株により1:10のMOIにて24時間負荷し、およびアポトーシス細胞死をアネキシンおよびPI染色によってアクセスした。個々の感染アッセイからの代表的なデータである。図44AはネズミBMDMsにおける測定を示す。図44BはJ774.1マクロファージにおける測定を示す。図44Cは感染に次いで後期アポトーシス細胞死の定量化を示す棒グラフである。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05
図45図45A-45Cはヒト尿路上皮ガン細胞におけるWTおよびBCG-disA-OE株の内部移行(internalization)および差次的毒性を示す。(A-C)異なるMOIsの野生型BCGに曝露したRT4(グレードIのカルシノマ(carcinoma、ガン腫などとも言う)を表すヒト膀胱ガン細胞系)、5637(グレードIIのカルシノマを表すヒト膀胱ガン細胞系)およびJ82(グレードIIIを表すヒト膀胱ガン細胞系)細胞の細胞生存率である。細胞生存率はCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability assay(セルタイター-グロ・ルミネッセント・セル・バイアビリティー・アッセイ)を使用して測定した。図45AはRT4細胞の細胞生存率を示す。図45Bは5637細胞の細胞生存率を示す。図45CはJ82細胞の細胞生存率を示す。
図46図46A-46Dは尿路上皮カルシノマ細胞における抗腫瘍サイトカイン応答のより一層強い誘導因子としてc-di-AMPを過剰発現するBCG Ticeを示す。(A-D)異なる野生型BCG(Tice)およびBCG-disA-OE(Tice)株による感染24時間後の異なる尿路上皮カルシノマ細胞におけるELISAを用いた差次的TNF-α、IL-6、IL-1βおよびIFN-γレベルの定量的測定である。細胞対BCGの感染比=1:20、データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001.図46AはTNF-αレベルを示す。図46BはIL-6レベルを示す。図46CはIL-1βレベルを示す。図46DはIFN-γレベルを示す。
図47図47A-47Gは尿路上皮カルシノマ細胞における抗腫瘍サイトカイン応答のより強い誘導因子としてc-di-AMPを過剰発現するBCG Pasteurを示す。(A-G)異なる野生型BCG(Pasteur)およびBCG-disA-OE(Pasteur)株の感染後24時間の異なる尿路上皮ガン細胞におけるELISAを用いた差次的サイトカインレベルの定量的測定である。細胞対BCGの感染比=1:20.データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001.図47Aは5637細胞におけるTNF-αレベルを示す。図47BはBBN975細胞におけるTNF-αレベルを示す。図47CはUPPL1595細胞におけるIL-6レベルを示す。図47DはMB49細胞におけるIL-1βレベルを示す。図47EはUPPL1595細胞におけるIL-1βレベルを示す。図47FはBBN975細胞におけるIFN-γレベルを示す。図47GはNBT-II細胞におけるIFN-γレベルを示す。
図48図48A-48Bはc-di-AMPを過剰発現するBCG株による感染後、M1表現型に向かって再プログラムするより一層強いマクロファージを示す。図48Aは異なるBCG株により1:10のMOIsにて24時間感染させた野生型BMDMsを示す。細胞表面および細胞内のストレイニング(straining)を行い、および細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーターを用いて分析した。野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG TiceおよびPasteur株による感染に次いでのTNF-α陽性抗原提示マウスマクロファージ(MHC Class II+CD11b+F4/80+(MHCクラスII+CD11b+F4/80+))の割合を示す棒グラフである。データはFlowJo(フロージョー)ソフトウェア(Tree Star v10(ツリー・スターv10))を用いて加工した。図48Bは抗原生産M1マクロファージの異なる細胞表現型を示す代表的なフロープロットである。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図49図49A-49Bはc-di-AMPを過剰発現するBCG株により感染させた後のM2マクロファージのより一層強い再プログラミングを示す。図49Aは野生型による感染後のマウスBMDMマクロファージ(CD11b+F4/80+)上のM2マクロファージ表面マーカー(CD206+CD124+)陽性の割合である。図49BはM2マクロファージ(CD206+CD124+マウスマクロファージ)集団のIL-10生産マクロファージの割合を示す。簡潔には、野生型BMDMsをネズミM-CSFの存在下に生成させた。マクロファージは異なるBCG株により、および1:10 MOIsにて24時間感染させた。細胞表面および細胞内のストレイニングを行い、および細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーターを用いて分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star v10)を用いて加工した。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図50図50A-50Bは野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG株による感染後のネズミBMDMsにおけるIL-10を分泌する単球性MDSCsのより一層強い誘導を示す。図50Aは合計骨髄系細胞(CD45+)のM-MDSCsの割合を示す。図50BはWTおよびBCG-disA-OE株によるネズミBMDMsの感染後のIL-10生産M-MDSCsの割合を示す。簡単に言うと、野生型BMDMマクロファージは異なるBCG株により、および1:10 MOIsにて24時間感染させた。細胞表面および細胞内のストレイニングを行い、および細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーターを用いて分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star v10)を用いて加工した。データは平均±SEMを表す(n=3反復)。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図51図51A-51Bは野生型およびc-di-AMP過剰発現BCG Ticeによる感染後の古典的(炎症性)単球の差次的誘導を示す。図51AはCD11b集団の古典的単球(CD14+CD16-)の割合を示す棒グラフである。簡単には、ヒト単球は異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCsから分離した。陰性に選ばれたヒト単球は、野生型およびBCG-disA-OE株により24時間感染させた(1:10 MOIs)。図51Bは単球集団の異なる割合を示す代表的なフローサイトメトリープロットを示す。細胞表面染色を行い、および細胞はフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーター)を用いて分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star v10)を用いて加工した。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図52図52A-52Bはヒト単球由来マクロファージにおける炎症促進性サイトカインの強力な誘導因子としてc-di-AMPが過剰発現されるBCGを示す。図52AはTNF-α(TNF-α+HLA-DR+/CD14+CD16-)およびIL-6(IL-6+HLA-DR+/CD14+CD16-)を生成するMHCクラスII陽性古典的マクロファージの割合を示す棒グラフ(bar diagram)である。簡単には、ヒト単球は異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCsから分離した。陰性に選ばれたヒト単球をマクロファージに分化させた。マクロファージは野生型およびBCG-disA-OE株により24時間感染させた(1:10 MOIs)。図52Bはマクロファージ集団の異なる割合を示す代表的なフローサイトメトリープロットである。細胞表面染色を行い、および細胞をフローサイトメトリー(BD LSR IIフローサイトメーターを用いて分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star v10)を使用して処理した。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図53図53A-53CはM2マクロファージの表現型を強く抑えるc-di-AMPを過剰発現するBCGを示す。図53Aは合計遷移性(CD14+CD16+)マクロファージの免疫抑制性M2(CD206+CD163+)マクロファージの割合を示す。図53BはWTおよびBCG-disA-OE Tice株によるHMDMsの感染後の合計M2マクロファージ(CD206+CD163+)のIL-10生産マクロファージの割合を示す。図53CはM2細胞表面の表現型およびM2マクロファージのIL-10生産細胞を示す代表的なフローサイトメトリープロットを示す。簡単に言うと、ヒト単球は異なる健康な血液ドナーから採取したPBMCsから分離した。陰性に選ばれたヒト単球はM-CSFの存在下でM2マクロファージに分化させた。感染は24時間行い(1:10 MOIs)、細胞表面染色および細胞内染色を実行した。データは平均±SEM(健康なヒトドナーからの単球由来マクロファージで行ったn=3反復実験)である。スチューデントのt検定(両側).*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001
図54】c-di-AMPを過剰発現したBCG感染マクロファージが食作用を強化したことを示す。HMDMsはWT BCGおよびBCG-disA-OE株により6時間感染させ、および食作用活性は細胞内のFITC-ラベル化IgG-オプソニン化ラテックスビーズを定量することによって測定した。画像は生細胞で取得した。核染色はHoechst(ヘキスト)を用いて行った。画像取得はLSM700共焦点顕微鏡を使用して63倍の倍率にて遂行した。画像はFiji(フィジー)ソフトウェアを用いて加工した。細胞対BCGの感染比=1:10.データは平均±SEM(健康なヒトドナーからの単球由来マクロファージで行ったn=3反復実験)である。スチューデントのt検定(両側).*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001.図54は蛍光の定量化を示す棒グラフである。
図55図55A-55Bは初代ヒト単球における炎症促進性サイトカインの強力な誘導因子としてc-di-AMPを過剰発現させるBCGを示す。(A-B)BCG-disA-OEはWT BCGと比較して初代ヒト単球におけるTNF-αおよびIL-6の著しくより一層高い遺伝子発現を誘導する。TNF-αおよびIL-6の発現はqRT-PCRを用いる異なる健康なドナーから分離された初代ヒト単球においてアクセスした。RNU6Aは参照遺伝子として使用し、および相対的発現は2ΔΔCT法によって算出した。データは平均±SEMを表す(n=6異なる健常ドナー)。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001.図55AはTNF-αレベルを示す。図55BはIL-6レベルを示す。
図56図56A-56Eはトレーニング後のヒト単球におけるトレーニングされた免疫エピジェネティックマークのより一層強い誘導因子としてc-di-AMPを過剰発現させるBCGを示す。(A-B)TNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーター上のエピジェネティック活性染色質マークH3K4me3を示す棒グラフである。Pam3CSK4による再刺激に次いでの異なるドナー(n=4の異なる健康なドナー)から分離されたBCGトレーニングされたヒト単球におけるエピジェネティックに修飾されたTNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーターの倍率濃縮度(Fold enrichment)である。H3K4-トリメチル化プロモーターは濃縮し、およびChIP-PCRを用いて定量した。図56AはTNF-α遺伝子プロモーター上のH3K4me3レベルを示す。図56BはIL-6遺伝子プロモーター上のH3K4me3レベルを示す。(C-D)TNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーター上のエピジェネティック不活性染色質マーク、H3K9me3を示す棒グラフである。異なるドナー(n=4異なる健康ドナー)から分離したBCGトレーニングされたヒト単球におけるPam3CSK4による再刺激に次いでエピジェネティックに修飾されたTNF-αおよびIL-6遺伝子プロモーターの倍率濃縮度である。H3K9トリメチル化されたプロモーターは濃縮し、およびChIP-PCRを用いて定量した。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、**P<0.001、****P<0.0001.図56CはTNF-α遺伝子プロモーター上のH3K9me3レベルを示す。図56DはIL-6遺伝子プロモーター上のH3K9me3レベルを示す。図56EはエクスビボBCGトレーニングの略図表示(schematic representation)である。
図57図57A-57Cは、c-di-AMPを過剰発現するBCGを示し、NMIBCのMNU発ガン性モデルにおいて改善された抗腫瘍活性を例示する。図57AはNMIBCのMNU発ガン性モデルにおけるBCGの膀胱内処理ストラテジーの概略図である。図57Bは腫瘍浸潤指数を示すグラフバーである。図57Cは腫瘍の病期分類を示すグラフである。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図58図58A-58Cはインビボで病原性を減弱されたBCG-disA-OE株を示す。図58AはBALB/c BCGエアロゾル負荷モデルを例示する。図58Bは感染後4週間のマウス肺における野生型およびBCG-disA-OE株のBALB/cマウス肺桿菌負担を示す。データは平均±S.E.M.である(n=5動物/グループ)。図58CはBALB/cマウスにおけるエアロゾル負荷に次いでのBCG株の移植(01日目)を示す。スチューデントのt検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図59図59A-59Cはエアロゾル感染の重度免疫不全(SCID)マウスモデルにおいて病原性が減弱したc-di-AMPを過剰発現するBCG株を示す。図59AはBCGエアロゾル感染のSCIDマウスモデルを例示する。図59Bは異なるBCG株による感染後のSCIDマウス(n=10)の生存を示す。図59CはSCIDマウスにおけるエアロゾル負荷後のBCG株の移植(01日目)を示す。スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図60図60A-60DはインビボでTh1サイトカインのより一層強い誘導因子としてc-di-AMPが過剰発現されるBCGを示す。(A-B)ELISAを用いて異なるBCG株による感染後4週間におけるBALB/cマウスからの肺ホモジナートでのIFN-β、TNF-α、IL-6およびIFN-γの定量的レベルである。図60AはWT BCG(Tice)およびBCD-disA-OE(Tice)を用いた結果を示す。図60BはWT BCG(Pasteur)およびBCD-disA-OE(Pasteur)を用いた結果を示す。(C-D)ELISAを用いた異なるBCG株による感染後4週間でのBALB/cマウスの肺ホモジナートにおけるIFN-β、TNF-α、IL-6およびIFN-γの定量的レベルである。図60CはWT BCG(Tice)およびBCD-disA-OE(Tice)を用いた結果を示す。図60DはWT BCG(Pasteur)およびBCD-disA-OE(Pasteur)を用いた結果を示す。結果は平均値(pg/ml)±SEMとして表される(n=4動物/グループ)。スチューデントのt-検定.スチューデントのt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001
図61図61A-61Bは、c-di-AMPが過剰発現されるBCGの治療上の腫瘍内注射を示し、膀胱ガンのMB49モデルにおいてより一層大きな抗腫瘍活性がもたらされる。図61Aは腫瘍の腫瘍内注射の略図表示である。マウスは0日目に1×105MB49細胞により移植され、次いでグループが平均して~40mm3になるまで腫瘍容量についてアクセスされた。その時点で、マウスを5×106野生型またはBCG-disA-OE株により合計容量の50μLにおいて処理し、またはPBS単独で3日ごとに合計の3回処理した。図61B図61Aにおいて示すような処理に続いて、ビヒクル(PBS)、野生型およびBCG-disA-OEにより処理した担MB49動物の腫瘍伸長(tumor outgrowth)を示す。二元配置分散分析(Two-way ANOVA).
図62図62A-62Dはc-di-AMPが過剰発現するBCGを示し、腫瘍内投与に次いで腫瘍部位にてIFN-γのより一層強い浸潤が誘導される。(A-B)腫瘍から分離した単一細胞における合計CD3集団のCD4またはCD8の割合の相対的存在量を示すドットプロットである。図62AはCD4細胞の割合を示す。図62BはCD8細胞の割合を示す。(C-D)BCG-disA-OEを受けた腫瘍から分離した単一細胞内のインターフェロン-γ生産CD4 T細胞のより一層高い割合を示すドットプロットである。図62CはCD4細胞の中のINF-γ+細胞の割合を示す。図62DはCD8細胞の中のINF-γ+細胞の割合を示す。インターフェロン-γ生産CD8 T細胞の割合における有意な変化は観察されなかった。簡単に言うと、単細胞は、PBSまたはBCG株の腫瘍内投与後摘出した腫瘍から調製した。細胞表面および細胞内サイトカイン染色を実行し、および細胞はフローサイトメトリーを用いて分析した。スチューデントのt-検定.スチューデントt-検定(両側)*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001 本発明の詳細な記載
【発明を実施するための形態】
【0022】
別なふうに規定されない限り、ここで使用するすべての技術的および科学的な用語はこの発明が属する技術における熟練した人びとによって普通に理解される意味を有する。以下の参考文献はこの発明において使用される多くの用語の一般的な規定を熟練の者に提供する:Singleton(シングルトン)ら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994)(微生物および分子生物学の辞典(第2版1994年));The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988)(科学および技術のケンブリッジ辞典(ウォーカー編、1988年));The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991)(遺伝学の用語集、第5版、R. リーガーら(編集)、シュプリンガー・フェアラーク(1991年));およびHale & Marham(ヘイル&マーハム)、The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)(生物学のハーパー・コリンズ辞典(1991年))。ここで使用するように、以下の用語は別なふうに特定しない限り、下記のそれらのものに付与された意味を有する。
【0023】
「薬剤」は任意の小分子化学的化合物、抗体、核酸分子、またはポリペプチド、またはそれらの断片を意味する。
【0024】
「変動」は当技術において既知の標準的な方法、例えば、ここに記載されるものなどのようなものによって検出されるような遺伝子またはポリペプチドの発現レベルまたは活性における変化(増加または減少)を意味する。ここで使用されるように、変動には、発現レベルにおいての10%変化、なるべくなら発現レベルにおいての25%の変化、より一層なるべくなら40%の変化、および最もなるべくなら50%またはそれよりも多くの変化が含まれる。
【0025】
「改善する」は疾患の発生または進行を減少させる、抑制する、減衰させる、縮小させる、阻止する、または安定化させることを意味する。
【0026】
「類似体(analog)」は同一ではないが、類似の機能的または構造的特長を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類似体は対応する自然に発生するポリペプチドの生物学的活性を保持し、その一方自然に発生するポリペプチドに関して類似体の機能を高める一定の生化学的修飾を有する。そのような生化学的修飾は例えば、リガンド結合を変えることなく、類似体のプロテアーゼ耐性、膜透過性、または半減期を増加させることができた。類似体は別の例において、非自然アミノ酸を含み得る。
【0027】
「cdnP」はいずれかの1)環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cdnP)タンパク質をコードするcdnP遺伝子または核酸配列、または2)環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼタンパク質も意味する。例には、NCBI Gene(NCBIジーン)ID 888920を有するH37Rv、Rv2837cにおけるM. tuberculosis cdnP遺伝子、およびUniProt(ユニ・プロト)KB/Swiss(KB/スイス)-Prot(プロト)P71615.2のcdnPタンパク質が含まれる。
【0028】
「cGas」はいずれかの1)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質をコードするcGas遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状GMP-AMP合成酵素タンパク質も意味する。cGasの例には、H. sapiens(H.サピエンス)のcGAS遺伝子(NCBI Gene ID: 115004)およびこの遺伝子によってコードされるタンパク質(UniProtKB/Swiss-Prot: Q8N884.2)が含まれる。cGasタンパク質は2'3'cGMPを作成するヒトからの環状GMP-AMP合成酵素である。2'3'cGMPはヒトではSTINGアゴニストである。
【0029】
cGASの「シクラーゼドメイン」は例えば、Kranzusch(クランズシュ)ら(Cell Reports(セル・リポーツ)2013; 3:1362-1368 PMID 23707061)に記載のヒトcGASタンパク質の522アミノ酸の一部分または断片に言及する。シクラーゼドメインはアミノ酸160-330に位置するNTaseコア、およびアミノ酸330-522に位置するCドメインである調節センサ(regulatory-sensor)ドメインを有するとして記載し得る。NTaseコア配列の変種(Mutants)ならびに調節センサードメインの変種はDNA結合による活性化のための正常な要求なく高レベルのcGAMPを生産するように設計されたcGAMPの構成的活性変種を生成するために使用することができる。サイクラーゼドメインの別の例には、NCBI Gene ID:887485のM. tuberculosis Rv1354c、およびこの遺伝子によってコードされるタンパク質(UniProtKB/Swiss-Prot:P9WM13)が含まれ、それはc-di-GMP(環状ジグアニル酸または環状-di-GMP)(そのGGDEFドメイン、アミノ酸201-400を介して)の合成および分解(そのEALドメイン、アミノ酸401-623を介して)の両方が可能な623アミノ酸長のタンパク質をコードする。GAFドメイン(アミノ酸1-200)は調節ドメインである。GGDEFドメインならびに調節センサGAFドメインの変種およびEALドメイン(ホスホジエステラーゼ活性)を除去するために切り詰めたポリペプチドは、高レベルのc-di-GMPを生産するように設計されたRv1354cの構成的に活性な変種を生成するために使用することができる。
【0030】
「DisA」または「disA」は1)DNAインテグリティースキャニング(DNA integrity scanning)(DisA)タンパク質をコードするDis A遺伝子または核酸配列、または2)DNAインテグリティースキャニングタンパク質のいずれかを意味する。例には、NCBI Gene ID:887485のM. tuberculosis disA遺伝子Rv3586が含まれ、およびこの遺伝子によってコードされるタンパク質はUniProtKB/Swiss-Prot: P9WNW5.1である。タンパク質はDey & BishaiらNature Medicine(ネイチャー・メディシン)2015;21:401-6. PMID: 25730264によって記載される358アミノ酸長のジアデニル酸シクラーゼである。DisAタンパク質はc-di-AMPを作るジアデニル酸シクラーゼである。c-di-AMPはSTINGアゴニストである。
【0031】
「疾患」は細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷または妨害するあらゆる状態または障害を意味する。疾患の例には、制限されないが、膀胱ガンが含まれる。
【0032】
dncV」は環状GMP-AMP合成酵素をコードする遺伝子を意味し、それは細胞のシグナル伝達におけるGTPおよびATP、二次メッセンジャーから3'3'-環状GMP-AMP(3'3'-cGAMP)の合成を触媒する。dncVはATPとGTPからそれぞれc-di-AMPとc-di-GMPを生成することが可能である(isalso);しかしながら、真核生物によって生産される2'3'-cGAMPとは反対に、3'3'-cGAMPはインビボにおいてdncVによって生産される支配的な分子である。dncVはV. choleraeの腸管への効率的な定着に必要であり、および定着に影響を与える化学走性プロセスをダウンレギュレートする。dncVはdATP、TTP、UTP、およびCTPでは活性を示さない。DncVタンパク質はV. choleraeからの環状GMP-AMP合成酵素であり、それは3'3'cGAMPを作成する。3'3'cGAMPはSTINGアゴニストである。
【0033】
「EALドメイン」は保存されたタンパク質ドメインを意味し、それは多様な細菌シグナル伝達タンパク質において見出される。EALドメインはジグアニル酸ホスホジエステラーゼとして機能し得、および二次メッセンジャー、環状di-GMPの分解を刺激することが示された。非機能的なEALドメインはこれらの機能の1またはそれよりも多く(「1またはそれよりも多く」は1以上とも言う)を有さない。EALドメインの例には、NCBI Gene ID: 886815のM. tuberculosis Rv1357c遺伝子が含まれ、およびこの遺伝子によってコードされる307アミノ酸長のタンパク質はUniProtKB/Swiss-Prot:P9WM07であり、それはc-di-GMPホスホジエステラーゼ(PDE)をコードし、および唯一のEALドメインから構成される。この酵素の活性はc-di-GMPホスホジエステラーゼとしてはたらくことであり、環状ジヌクレオチド(それはシグナル伝達活性をもつ)が、表題「A full-length bifunctional protein involved in c-di-GMP turnover is required for long-term survival under nutrient starvation in Mycobacterium smegmatis(マイコバクテリウム・スメグマティスの栄養飢餓下での長期生存には、c-di-GMPターンオーバーに関与する完全長の二機能性タンパク質が必要である)」の論文、Bharati(バラティ)BK, Sharma(シャルマ)IM, Kasetty(カセティ)S, Kumar(クマール)M, Mukherjee(ムヘルジー)R, Chatterji(チャテルジー)D. Microbiology(マイクロバイオロジー). 2012 Jun;158(Pt 6):1415-27. doi: 10.1099/mic.0.053892-0. Epub 2012 Feb 16.PMID: 22343354に記述されているように、2つのGMP分子(シグナル伝達活性をもたない)に開裂される。EALドメインの別の例には、H37Rv(Rv2837c)においてM. tuberculosis cdnP遺伝子によってコードされる336アミノ酸長のタンパク質、Jain(ジャイン)-Dey Bishaiら、Nat Chem Biol.(ネイチャー・ケミカル・バイオロジー)2017;13:210-217 PMID 28106876によって示されるように、ヒト2'-3'cGAMP(ヒトcGAS酵素の生産物)を加水分解する能力を有するEALドメインを含むc-di-GAMPホスホジエステラーゼが含まれる。EALドメイン(環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼ活性)およびGGDEFドメイン(環状ジヌクレオチド環化生合成活性)の構造的特徴は知られ、およびよく説明されている(例えば、Schirmer(シャーマー)T, Jenal(ジェナル)U. Structural and mechanistic determinants of c-di-GMP signaling(c-di-GMPシグナル伝達の構造的および機構的決定因子).Nat Rev Microbiol.(ネイチャー・レビューズ・ミクロバイオロジー)2009;7:724-35. PMID: 19756011において)。
【0034】
「有効量」は疾患の症状が未処理のペイシェント(人間で言う患者)に関して改善するために必要な量を意味する。疾患の治療上の処理のために本発明を実行するために用いられる活性化合物(s(複数形のこと))の有効量は投与のマナー、対象の齢、体重、および全体的な健康状態によって変動する。最終的には、主治医(attending physician)または獣医師が適切な量および投与レジメンを決定する。そのような量は「有効」量と称される。
【0035】
「dncV」はいずれかの1)環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質をコードするdncV遺伝子もしくは核酸配列、または2)環状GMP-AMP合成酵素タンパク質も意味する。例には、制限されないが、NCBI Gene ID:2614190のVibrio cholerae dncV遺伝子が含まれ、およびこの遺伝子によってコードされるタンパク質はUniProtKB/Swiss-Prot:Q9KVG7.1である。
【0036】
「断片」はポリペプチドまたは核酸分子の一部分を意味する。この部分はなるべくなら、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよい。
【0037】
「遺伝子欠失」は当技術における熟練した者によく知られた対立遺伝子交換方法論を用いて、BCGの染色体から興味ある遺伝子の全遺伝子コード領域を欠失させることを意味する。選定可能なマーカー、例えば、抗生物質耐性カセットなどのようなものによる遺伝子置換は対立遺伝子交換の一形態であり、および実行し得る。また、遺伝子が完全に欠失し、およびその代わりに選定可能なマーカーが導入されていない無標識欠失(選定可能なマーカーがない)を生成する技術も利用可能である。
【0038】
「遺伝子ドメイン欠失」は特定のドメイン(本発明の場合、多機能ポリペプチドのCDNホスホジエステラーゼドメインがコードされるRv1354cのEALドメイン)をコードする遺伝子の部分が、上記の対立遺伝子交換方法論を使用してポリペプチドの他の部分をそのまま、および枠内に残して除去されることを意味する。
【0039】
H. sapiens」はHomo sapiens(ホモ・サピエンス)を意味する。
【0040】
「薬剤を取得する」でのような「取得する」は薬剤を合成すること、購入すること、または別なふうに得ることを意味する。
【0041】
「過剰発現」は一般的な意味において、野生型または参照遺伝子よりも多量にその対応するタンパク質を遺伝子発現することを意味する。本発明においてタンパク質を過剰発現する遺伝子を作り出す例には、興味ある遺伝子をコードするDNAをBCGにおける強力なプロモーター、例えば、Phsp60などのようなものに、または強い条件付き活性プロモーター、例えば、PtetOFFなどのようなものに融合させることが含まれる。PtetOFFでは、遺伝子発現は、テトラサイクリン、アンヒドロテトラサイクリン、またはドキシサイクリンの存在下で止められ;しかしながら、ヒトまたは動物モデルにおいて免疫療法として組換えBCGを施すとき、興味ある遺伝子はオンにされる。この条件付き活性化戦略は、環状ジヌクレオチド生産酵素の強い過剰発現が、BCGが増殖している間BCG有機体に予定されるかもしれない生存率または増殖率への任意の悪影響を防止し、およびそれがBCG免疫療法を哺乳動物宿主に治療用物質として与えられるときだけに強い発現(「過剰発現」)を可能にする利点をもつ。
【0042】
Mtb」はMycobacterium tuberculosisを意味する。
【0043】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」はアミノ酸残基のポリマーに言及するためにここにおいて互換的に使用される。用語は1以上のアミノ酸残基が対応する自然に発生するアミノ酸の類似体またはミメティックであるアミノ酸ポリマーに、ならびに自然に発生するアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、例は、糖タンパク質を形成するために、炭水化物残基の付加によって修飾することができる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、糖タンパク質、ならびに非糖タンパク質が含まれる。
【0044】
「減少」または「低下」は例えば、少なくとも約10%、25%、50%、75%、または100%、またはそれらの間の任意のパーセンテージの負の変動を意味する。
【0045】
「増加」は例えば、少なくとも約10%、25%、50%、75%、または100%、またはそれらの間の任意のパーセンテージの正の変動を意味する。
【0046】
「参照」は標準またはコントロール条件を意味する。
【0047】
「参照配列(reference sequence)」は配列比較のための基礎として使用される規定された配列を意味する。参照配列は特定された配列、例えば、全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメント、または完全なcDNAもしくは遺伝子配列の部分集合または全体であってもよい。ポリペプチドについて、参照ポリペプチド配列の長さは大抵、少なくとも約16アミノ酸、なるべくなら少なくとも約20アミノ酸、より一層なるべくなら少なくとも約25アミノ酸、およびさらにより一層なるべくなら約35アミノ酸、約50アミノ酸、または約100アミノ酸であろう。核酸について、参照核酸配列の長さは概して、少なくとも約50ヌクレオチド、なるべくなら少なくとも約60ヌクレオチド、より一層なるべくなら少なくとも約75ヌクレオチド、およびさらにより一層なるべくなら約100ヌクレオチドもしくは約300ヌクレオチドまたはそれくらいもしくはそれらの間の任意の整数であろう。
【0048】
「参照BCG株」は例えば、cdnP機能タンパク質、Rv1354c機能タンパク質、Rv1357c機能タンパク質、またはそれらの組合せを発現することが可能でない本発明の発現ベクターおよび/または内因性遺伝子を含まない慣習的なBCG株を意味する。
【0049】
「調節性DNA認識能力」はタンパク質がDNAを検出または結合する能力を意味する。例えば、cGASタンパク質はDNA、例えば、細胞質ゾルDNAなどのようなものと結合し、および環状GMP-AMP(cGAMP)を形成するためにGTPおよびATPの反応を引き起こすことが知られる。cGAMPは刺激因子インターフェロン遺伝子(Stimulator Interferon Genes)(STING)に結合し、それはTBK1を介してIRF3のリン酸化を引き起こす。
【0050】
「Rv1354c」はいずれかの1)Rv1354cタンパク質をコードするRv1354c遺伝子もしくは核酸配列、または2)Rv1354cタンパク質(例は、Gupta(グプタ)、Kumar、およびChatterji; PLoS ONE(プロス・ワン)(11月、2010年);Vol.5(第5巻);Issue 11(第11刷);およびBhariati(バリアティ), Sharma, Kasetty, Kumar, Mukherjee、およびChatterji; Microbiology (2012), 158, 1415-1427)をも意味する。Rv1354cタンパク質はc-di-GMPを作成するジグアニル酸シクラーゼである。C-di-GMPはSTINGアゴニストである。
【0051】
「Rv1357c」はいずれかの1)Rv1357遺伝子もしくは核酸配列で、それは環状-di-GMPホスホジエステラーゼタンパク質(Rv1357)タンパク質をコードし、または2)環状-di-GMPホスホジエステラーゼタンパク質(例は、Gupta, Kumar, and Chatterji; PLoS ONE (November, 2010); Vol.5; Issue 11;およびBhariati, Sharma, Kasetty, Kumar, Mukherjee, and Chatterji; Microbiology(2012), 158, 1415-1427)も意味する。Rv1357cタンパク質はc-di-GMPを作るジグアニル酸シクラーゼである。C-di-GMPはSTINGアゴニストである。
【0052】
「STINGアゴニスト」はSTING(インターフェロン遺伝子の刺激因子、またはTMEM173)に結合し、それを活性化し、および1型インターフェロンおよび他の遺伝子の転写を増大させるIRF3-TBK1経路の活性化を引き起こす分子を意味する。
【0053】
「CDN」によって、環状ジヌクレオチド、例えば、3'-5'c-di-AMP、3'-5'c-di-GMP、3'-3'cGAMP(また3'-5', 3'-5'cGAMP、Vibrio cholerae DncVタンパク質の生産物としても知られる)、または2'-3'cGAMP(また2'-5', 3'-5' cGAMP、ヒトcGASタンパク質の生産物としても知られる)のようなものが意味される。
【0054】
「PAMP」は病原体関連分子パターンを意味する。PAMPsは生得的免疫センサによって認識される小分子を含む微生物産物である。PAMPsの例は3'-5'c-di-AMP、3'-5'c-di-GMP、3'-3'cGAMPである。
【0055】
「DAMP」は危険関連分子パターンを意味する。DAMPsは宿主由来(すなわち、ヒト、マウス、または他の哺乳類疾患モデル)の分子であり、それらは危険、例えば、感染または正常な生理機能の他のかく乱などのようなものを知らせるために生産される。DAMPの例は2'-3'cGAMPであり、それはウイルスまたは一定の細胞内細菌の感染の間に起こるようなサイトゾルにおける二本鎖DNAの検出の際に宿主のセンサ酵素cGASによって生産される。
【0056】
「panCD」は細菌または他の種由来の遺伝子オペロンを意味し、生合成遺伝子panC(パントアート-ベータ-アラニンリガーゼ酵素活性を有するPanCタンパク質をコードする)および生合成遺伝子panD(アスパルタート-1-デカルボキシラーゼ酵素活性を有するPanDタンパク質をコードする)をコードする。PanCおよびPanDタンパク質はパントテン酸またはパントテナートまたビタミンB5(あるBビタミン)とも呼ばれるものの生合成に必要である。パントテン酸、水溶性ビタミンは、細菌にとって、およびBCGを含め、すべてのMycobacteriaにとって必須栄養素である。パントテン酸はコエンザイムA(CoA)を合成するために、ならびにタンパク質、炭水化物、および脂肪を合成し、および代謝するために必要である。
【0057】
「特異的に結合する」は例えば、ポリペプチドまたは核酸配列を認識し、および結合するが、それはサンプルにおける他の分子を実質認識および結合しない化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、または抗体を意味する。
【0058】
「実質同一」は参照アミノ酸配列(例えば、ここに説明するアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、ここに説明する核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を見せるポリペプチドまたは核酸分子を意味する。なるべくならそのような配列は比較に使用される配列に対して、アミノ酸レベルまたは核酸にて少なくとも60%、より一層なるべくなら80%または85%、およびより一層なるべくなら90%、95%または99%同一でさえある。配列の同一性は典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group(ジェネティックス・コンピューター・グループのシーケンス・アナリシス・ソフトウェア・パッケージ), University of Wisconsin Biotechnology Center(ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター), 1710 University Avenue(ユニバーシティアベニュー), Madison(マディソン), Wis.(ウィスコンシン州)53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。そのようなソフトウェアは様々な置換、欠失、および/または他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列を適合させる。保存的置換は典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する模範的なアプローチでは、BLASTプログラムが使用され得、e-3およびe-100間の確率スコアは密接に関連する配列を示す。
【0059】
「対象」は、哺乳動物、制限されないが、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ属、ウマ科、イヌ科、ヒツジ、またはネコ科を含めるものを意味する。
【0060】
「感受性」は特定の疾患を有する対象の割合を意味する。
【0061】
「特異性」は特定の疾患を有すると正しく同定された対象、すなわち、正常または健康な対象の割合を意味する。例えば、特異性は正常な健康な対象(例は、非ガンの対象)と比較して、特定の疾患を有する対象の数として計算される。
【0062】
「トレーニングされた免疫(trained immunity)」はある抗原刺激によって、後の時間に投与される第二の、異なる抗原に対してより一層強力な免疫応答を誘発する能力を意味する。トレーニングされた免疫は抗原非依存性(antigen independent)であり、異種CD4およびCD8メモリの活性化、媒介したサイトカインに基づき、ならびにエピジェネティック(epigenetic、後成的ななどとも言う)なおよび代謝の変化に関係する。
【0063】
「Phsp60」または「Phsp65」によって、Mycobacterium leprae(マイコバクテリウム・レプラエ)Hsp65 5'UTRから導き出される強力なMycobacterialプロモーターが意味される。
【0064】
「5'UTR」は遺伝子の5'非翻訳領域を意味する。
【0065】
「3'UTR」は遺伝子の3'非翻訳領域を意味する。
【0066】
「WT」は野生型を意味する。
【0067】
「BCG-WT」はMycobacterium bovis bacillus Calmette Guerinの野生型株を意味する。
【0068】
ここで提供される範囲はその範囲内のすべての値の略記であると理解される。例えば、1ないし50の範囲は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群よりの任意の数、数の組合せ、またはサブ範囲を含むと理解される。
【0069】
ここで使用されるように、用語「処理する」、「処置すること」、「処理」、およびその他同種類のものは障害および/またはそれに関係する症状を軽減または改善することに言及する。排除されるものではないが、障害または状態を処理することは、障害、状態またはそれに関係する症状が完全に除去されることを必要としないことが認められよう。
【0070】
ここで使用されるように、具体的に述べられていないかまたは文脈から明らかでない限り、「または」という用語は包括的であると理解される。ここで使用されるように、具体的に述べられていないかまたは文脈から明らかでない限り、用語「a」、「an」、および「the」は単数または複数であると理解される。
【0071】
ここで使用されるように、具体的に述べられていないか、または文脈から明らかでない限り、用語「約」は当技術における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内と理解される。約は述べられる値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解することができる。別なふうに文脈から明らかでない限り、ここで提供されるすべての数値は約という用語によって修飾される。
【0072】
ここで使用されるように、「含む(comprises、構成要素として含む)」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(containing、一定の枠内に含むこと)」および「有すること(having)」およびその他同種類のものは米国特許法においてそれらに付与された意味を有することができ、および「includes」、「including」、およびその他同種類のものを意味することができ;「から本質的になること(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」は同様に米国特許法において付与された意味を有し、および用語はオープンエンドであり、列挙されているものよりも多くのものの存在について列挙されているものの基本的または新規な特性が列挙されているものよりも多くのものの存在を変化させない限り許容されるが、先行技術の実施形態は除外される。
【0073】
ここで提供される任意の組成物または方法はここで提供される他の組成物および方法のいずれか1以上と組合せることができる。
【0074】
ここで使用されるように、用語「防ぐ」、「防ぐこと」、「防止」、「予防的処理」およびその他同種類のものは障害または状態を有さないが、障害または状態を発症するリスクがあるか、または感受性がある対象において、障害または状態を発症する確率を低減することに言及する。
【0075】
そのような処理(手術および/または化学療法)は膀胱ガンまたはその疾患、障害、若しくは症状に罹患している、有している、罹患しやすい、またはそのリスクがある対象、特にヒトに好適に施される。それらの対象の「リスクがある」という判断は診断テストまたは対象もしくは医療提供者の意見(例は、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、マーカー(ここに規定されるようなもの)、家族歴、およびその他同種類のもの)による任意の客観的または主観的な判断によって行うことができる。いくらかの実施形態では、尿路上皮ガンに罹患しやすいまたはそれを有する対象の決定はマーカーのうちの少なくとも1つのレベルを測定することによって決定される。
【0076】
いくらかの実施形態において、本発明はMycobacterium bovis BCG(以下、「BCG」)の遺伝子改変に関連し、それは組換えBCG(以下、「rBCG」)株を生成する。これらの株は(i)結核ワクチンおよび/または(ii)筋層非浸潤性膀胱ガン(non-muscle invasive bladder cancer)(NMIBC)に対する免疫療法として、より一層大きな能力を有する。本発明のいくらかの実施形態はヒト貪食細胞、例えば、マクロファージ、樹状細胞、およびその他などのようなものから価値のある免疫調節応答を引き出すことが知られている環状ジヌクレオチド(CDNs)を高レベルで合成および分泌するBCG株に関する。この発明の別の実施形態は、新規CDN合成遺伝物質の添加および/または内因性BCGホスホジエステラーゼ遺伝子もしくはCDNの蓄積および放出を増強する遺伝子ドメインの変異を含む多価CDN-過剰発現修飾を生成するために、BCGの遺伝子修飾を組み合わせることである。
【0077】
BCG
【0078】
BCG(bacillus Calmette Guerin)は1921年においてフランスの微生物学者Calmette(カルメット)およびGuerin(ゲラン)によって、13年間にわたる病原性M. bovisの連続継代によって生成されたMycobacterium bovisの変種バージョンである。1921年から1960年にかけて、BCGは世界の非常に多くの研究所で連続継代され、それは、定められたシードロットが確立され、およびリファレンスラボラトリーに保管されるようになるまでであった。そのようなものとして、世界中に何十種類もの変種のBCG、例えば、BCG Pasteur、BCG Tice、BCG Tokyo、BCG Danish、BCG Montreal、などのようなものが存在する。目下、存在するBCG株の大半は全ゲノム配列決定によって規定されている。病原性M. bovisおよび様々なBCG株間の主な違いは病原性M. tuberculosisと比較してBCGにおいて、ゲノム欠失を構成する少なくとも15の相違領域の欠失が含まれる。BCGの発生における違いのキー領域はRD1(9.5kbの欠失によりEsx-1分泌系が失われ、および抗原ESAT-6およびCFP-10を放出できなくなる)およびRD3(9.2kb欠失)である。相違RD4-RD11の領域は病原性M. tuberculosisと比較してすべてのBCG株において不存在である。
【0079】
1920年代以来、BCGは結核(TB)の防止のためのワクチンとして使用されてきた。2004年には、BCGは約1億人の子供に与えられたと推定され、それゆえ、BCGはその導入以来、約50億人の人間に与えられ、およびそのようなものとして、歴史上最も広く利用されたワクチンである。出生時に皮内接種されるのが最も一般的で、および今日までのところいまだに合衆国、カナダ、および一部の欧州を除くほとんどの国で接種されている。BCGは小児期播種性TBの発生を減少させることが示されているが、BCGワクチン接種個体はTBのリスクから十分には保護されてない。
【0080】
1977年以来、BCGはまた筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC)についてガン免疫療法として広く使用されるようになった。それは毎週6週間膀胱内に与えられ、およびいくらかの例、例えば、高リスクの疾患などのようなものにおいて、初期の処理から3、6、12、18、24、30、および36か月後に毎週3週間維持療法としてそれが与えられる。膀胱内BCGは(i)CD4 T細胞およびマクロファージから主に構成される単核細胞浸潤を誘導し、(ii)膀胱におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現を増加させ、および(iii)IL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IFNγ、およびTNFαの尿中サイトカインレベルを増加させることが示されてきた。
【0081】
(i)TBのためのワクチンおよび(ii)NMIBCのための免疫療法としてBCGが広く世界的に使用されているにもかかわらず、その有効性には、かなりの改善の余地が存在する。TBについて、BCGは小児期播種性結核に対して主に部分的な防御を与えるに過ぎない。NMIBCについて、ペイシェントのおよそ30%がBCG耐性疾患を有する。これらの個体は全身化学療法によるより一層高いリスクの処理を必要とし、およびより一層高い浸潤性の形態の膀胱ガンに進行する割合がより一層高い。
【0082】
尿路上皮ガン
【0083】
膀胱の尿路上皮ガンは尿路の最も一般的な悪性腫瘍である。それは雄性では4番目に最も普通のガンであり、および雌性では11番目に最も普通である。2017年に米国においておよそ79,000例の膀胱ガンが新たに診断され、19,870人の死亡に関連すると推定される。膀胱ガン患者の推定5年生存率は78%であるが、局所進行性または転移性の患者ではその割合は劇的に低下する。膀胱ガンを有する患者のおよそ75%は粘膜(Ta期、カルシノマ・インサイツ(carcinoma in situ))または粘膜下組織(T1期)に限局する病変を呈し、筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC)として知られる。経尿道的切除術はNMIBCについてのえり抜きの初期処理である。筋層浸潤性膀胱ガン(MIBC;T2またはそれよりも上)を有する患者では白金含有化学療法が最重要の処理選択であり、次いで膀胱切除が続く。膀胱内処理に反応しないNMIBCを有するそれらの患者では、MIBCに進行するリスクが高くなる。このように、再発の高い率および進行の著しいリスクは、追加療法が履行されることを義務付ける。したがって、高リスクのNMIBCを有する患者のため臨床成績を改善することは、新規処理の開発を必要とする。
【0084】
Bacillus-Calmette Guerin(BCG)の膀胱内投与、1970年代にNMIBCのために開発されたものは、確立した固形ガンに対する最初の好首尾な免疫療法をもたらし、およびそれはNMIBCを有する患者のためのケアの標準にとどまる。(Askeland(アスケランド)EJ, Newton(ニュートン)MR, O'Donnell(オドンネル)MA, Luo(ルオ)Y. Bladder Cancer Immunotherapy: BCG and Beyond(膀胱がん免疫療法:BCGとその先).Adv Urol.(アドバンシーズ・イン・ユロロジー)2012; 2012: 181987. PMID: 22778725.Morales(モラレス)A. BCG: A throwback from the stone age of vaccines opened the path for bladder cancer immunotherapy(BCG:ワクチンの石器時代からの回帰は膀胱ガン免疫療法の道を開いた).Can J Urol.(ザ・カナディアン・ジャーナル・オブ・ユロロジー)2017; 24: 8788-8793. PMID: 28646932).Mycobacterium bovisの弱毒化株であるBCGの抗腫瘍効果の正確なメカニズムは不明なままであるが、フィブロネクチンおよびインテグリンα5β1を通じて尿路上皮に結合した後、Th1反応を主体とした活発な免疫細胞性および体液性免疫応答を編成すると考えられる(Redelman-Sidi(レデルマン-シジ)G, Glickman(グリックマン)MS, Bochner(ボクナー)BH. The mechanism of action of BCG therapy for bladder cancer--a current perspective(膀胱がんについてのBCG療法の作用機序--現在の展望).Nat Rev Urol.(ネイチャー・レビューズ.ユロロジー)2014;11:153-62. PMID: 24492433)。しかしながら、BCG処理のための典型的な完全奏効率は乳頭状腫瘍について55-65%、およびカルシノマ・インサイツ(carcinoma in situ)(CIS)について70-75%である。(Askeland EJ, Newton MR, O'Donnell MA, Luo Y. Bladder Cancer Immunotherapy: BCG and Beyond. Adv Urol. 2012; 2012: 181987. PMID: 22778725. Morales A. BCG: A throwback from the stone age of vaccines opened the path for bladder cancer immunotherapy. Can J Urol. 2017; 24: 8788-8793. PMID: 28646932).したがって、BCG非応答性および再発性疾患を有する患者の、および処理に不耐性のものの負担は、NMIBCに対するBCGの有効性をさらに向上させる必要性を促す。
【0085】
CDNsはTBおよびNMIBCについて価値のある免疫応答を生成する重要なPAMPsおよびDAMPsである。
【0086】
細菌病原体関連分子パターン(PAMPs)。ヒト細胞は、サイトゾルにおける環状ジヌクレオチドを含む核酸を検出するために細胞質ゾル監視(cytosolic surveillance)プログラム(CSP)として知られる生得的免疫監視システムを利用する。当初、CSPはウイルス防御システムとして特徴付けられたが、今回は特に、細胞内細菌、例えば、Mycobacterium tuberculosisListeria monocytogenesSalmonella species(サルモネラ菌種)、およびその他などのようなものに対する抗菌防御において重要であることが示された。STING、cGAS、DDX41および多くの他のものを含め細胞質ゾルパターン認識受容体(PRRs)は細胞質ゾルCDNsおよび核酸に結合し、それらの活性化につながる。重要なシグナル伝達イベントはSTINGの活性化であり、それはTBK1およびIRF3の活性化およびI型インターフェロン発現のその後のアップレギュレーションを導く。環状ジヌクレオチドによるSTINGの活性化はまた、TBK1-IRF3経路とは無関係に、ケモカイン、例えば、CCL2およびCCL20などのようなものを誘導するSTAT6の誘導をも導く。STING活性化はまたIκBキナーゼ(IKK)活性化を通して転写因子NFκBを活性化すると考えられる。
【0087】
ヒト危険関連分子パターン(DAMPs).環状cGAMP(cGAS)合成酵素は細胞質ゾルDNAを認識する細胞質ゾルPRRである。DNAに結合するとそれは立体構造変化を起こし、それは2'3'cGAMPの形成を触媒するコア酵素活性を活性化する。2'3'cGAMPは次にはSTING-TBK1-IRF3軸を活性化する強力なDAMPであり、それは増大したタイプ1インターフェロンの発現ならびにSTAT6の活性化およびIKKの活性化が導かれる。
【0088】
CDNトリガード免疫応答のSTING媒介機構.腫瘍微小環境における生得的免疫細胞によって、および腫瘍細胞自体によっての両方に生産されるI型IFNsは、ガン免疫編集のすべての相に介入するそれらの能力により、いくつかの悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を媒介することが知られている。(Zitvogel(ジトフォーゲル)L, Galluzzi(ガルーツィ)L, Kepp(ケップ)O, Smyth(スマイス)MJ, Kroemer(クレーマー)G. Type I interferons in anticancer immunity(抗ガン剤免疫におけるI型インターフェロン).Nat Rev Immunol.(ネイチャー・レビューズ・イムノロジー)2015;15:405-14. PMID: 26027717).STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)は、病原体に対するI型IFN生得的免疫応答の主要な調節因子(regulator)であり、次いでセンサの環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)による細胞質ゾルDNAの認識が続く。cGASは環状GMP-AMP(cGAMP)の合成を触媒し、それは次にはSTINGに結合し、および活性化するセカンドメッセンジャーとして機能する。(Zhao(ザオ)GN, Jiang(ジャン)DS, Li H. Interferon regulatory factors: at the crossroads of immunity, metabolism, and disease(インターフェロン調節因子:免疫、代謝、および疾患のクロスロード). Biochim Biophys Acta(バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ). 2015;1852:365-78. PMID:24807060).したがって、新規腫瘍免疫療法として、組換えI型IFNs、I型IFNコード化ベクター、I型IFN発現細胞、およびSTINGアゴニストに基づく新規抗ガン免疫療法が、目下開発中である。
【0089】
PAMP免疫調節因子、3'-5'c-di-AMPの過剰発現.3'-5'c-di-AMPはSTING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。それはBCGを含めMycobacteriaによってDisAタンパク質(BCGにおけるBCGタンパク質WP_010950916.1、M. tuberculosisタンパク質Rv3586またはP9WNW5.1)をコードするdisA遺伝子により生産される。Mycobacterium tuberculosisM.tb)はc-di-AMPを合成および分泌し、それはSTING-シグナル伝達およびcGASを通してインターフェロン調節因子(IRF)経路およびI型IFN応答を活性化させる。(Ahmed(アフメト)D, Cassol(カッソル)E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response: Implications for tumour immunology and treatment(I型インターフェロン応答を調節することにおける細胞代謝の役割:腫瘍の免疫学および処理のための意義). Cancer Lett.(キャンサー・レターズ) 2017;409:20-29. PMID: 28888999.).c-di-AMPを過剰発現するM.tb株はマウスモデルにおいてTBの減弱を示した。c-di-AMPは粘膜アジュバントとして、樹状細胞の成熟、共刺激分子のアップレギュレーションおよび炎症促進性サイトカインの生産、ならびに病原体に対する強いTh1、Th17およびCD8 T細胞応答を引き起こす免疫刺激作用を発揮する。c-di-AMPを過剰発現するBCG株(rBCG-disAまたはBCG-disA-OE)が構築され、および驚くべきことに、それがBCGそれ自体よりも著しく高いIRFおよびIFN-β応答を生じることが見出され、細菌由来のc-di-AMPがESX-1タンパク質分泌システムの不存在にもかかわらず宿主細胞のサイトゾルにアクセスすることが指し示される。(Ahmed D, Cassol E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response: Implications for tumour immunology and treatment. Cancer Lett. 2017;409:20-29. PMID: 28888999.).これらの知見はc-di-AMPを過剰発現するように修飾されたrBCG株がBCG自体よりも膀胱腫瘍に対して良好な防御免疫を誘導することができたことを示唆する。
【0090】
M.tb disA(MT3692)を過剰発現するBCGに応答したマウス骨髄由来マクロファージ(BMDMs)における炎症促進性Th1サイトカインの誘導:M. tbゲノムはATPまたはADPからc-di-AMPを合成するジアデニル酸シクラーゼ酵素(DisA、DacAとも呼ばれ、UniProtKB/Swiss-ProtデータベースにおけるP9WNW5.1)をコードする。BCGタンパク質WP_010950916.1(NCBI参照番号)はM. tuberculosis DisAと100%同一である。disAを過剰発現するM. tb株は過剰なc-di-AMP、STING依存性のIFN-β生産を活性化するユニークな細菌PAMPを放出することによってマクロファージを中毒にする(intoxicate)。(Ahmed D, Cassol E. Role of cellular metabolism in regulating type I interferon response: Implications for tumour immunology and treatment. Cancer Lett. 2017;409:20-29. PMID: 28888999.).非病原性ワクチン株の抗原レパートリーを拡大するために、BCG Pasteurは強力なMycobacteriaプロモーター、Phsp60に融合したM. tbからのdisA遺伝子(M. tuberculosis Rv3586またはMT3692)を保有するカナマイシン耐性(Kan-R)コンファリングプラスミド(conferring plasmid)により形質転換された(M. tbおよびBCG disA遺伝子は100%同一である)。このプラスミドのBCG-Pasteurへの添加は、disA mRNAのレベルを50倍まで増加させた(図1b)。密に関連するM.tb-disA-OE株は野生型M.tb.に比べて15倍より多くのc-di-AMPをマクロファージサイトゾルに放出し(図1a)、およびそれゆえBCG-disA-OEも宿主のサイトゾルに著しくより一層多くのc-di-AMPを放出することが予想される。これらのdisA過剰発現体(overexpressor)組換え体(rBCGまたはBCG-disA-OE)は親株と比較して、STING依存性IFN-βのより一層良好な誘導因子であった。2016年2月10日に出願されたPCT/US2016/017248で報告されるように最も重要なことには、rBCGによりワクチン接種されたモルモットは病原性M.tbによるエアロゾル感染に対して著しく良好に保護され、既存のBCG株を超えて保護有効性が改善されたことが示唆される。
【0091】
図2に示すように、BCG-Pasteur disA-OEによって誘発される免疫応答はインビトロマクロファージ感染モデルでテストされた。BCG-Pasteur disA-OEにより感染したC57BL/6マウスからのBMDMsは、未感染または野生型BCG感染マクロファージと比較してIFN-β、TNF-α、IL-6およびIL-2の著しいアップレギュレーションを示した。
【0092】
図3に示すように、RAW Blue ISGマクロファージにおいて、c-di-AMPによるSTING活性化の増強が確認された。RAW BlueマクロファージはBCG-Pasteur disA-OEにより感染させるとき親コントロールと比較してIRF3レベルを増加させた。
【0093】
図4A-4Cに示すように、BCG-Pasteur-disA-OE感染マウスBMDMsの培養上清において分泌された炎症促進性サイトカイン(TNF-α、IL-6およびIL-1β)における著しい増加が見出された。これらの知見は抗原レパートリーを増やしたBCG-Pasteur-disA-OEがSTINGアゴニスト、およびそれゆえSTING依存性のI型IFNsの強力な誘導のようにふるまうことを指し示す。さらに、BCG-Pasteur disA-OEに応答するマクロファージにおける免疫応答は、Th1、BCG免疫療法によるNMIBCの制御に大きく起因する表現型に偏っていた。
【0094】
図5に示すように、BCG-disA-OEはヒト膀胱ガン(RT4)細胞において抗腫瘍免疫応答を誘発する。BCG-Pasteur-disA-OEは、WT株BCG-PasteurおよびOncoTICE(目下の免疫療法BCG株)と比較してそれが膀胱ガン(BC)細胞において同様の免疫応答を誘発するかどうかを定めるためにテストした。ヒトNMIBC腫瘍由来のヒトRT4 BC細胞は、野生型(PasteurおよびTICEの両方)および組換えBCG Pasteur disA-OE株により1:20(RT4::BCG)にて3時間負荷し、および差次的(differential)遺伝子発現プロファイルを非感染細胞と比較して定めた。重要な免疫メディエーター、例えば、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)/CCL2、IFN-βおよびIL-1βなどのようなものは、BCG-Pasteur-disA-OE株に曝露された膀胱ガン細胞において野生型株に対する応答と比較して有意に増加することが見出された。
【0095】
図6に示すように、実験系は、膀胱内BCG-disA-OE免疫療法がNMIBCのMNU発ガンモデルにおいて高められたTh1応答および抗腫瘍有効性を導くかどうかをテストするために設定した。RT4細胞による前述の実験からの結果は、本発明者らに、インビボラットNMIBCモデル、Bivalacqua lab(ビバラクア研究室)において開拓されたものにおけるBCG-Pasteur-disA-OEの相対的な治療有効性をテストするよう促した。(Kates(ケイトス)M, Nirsacha(ニルサシャ)T, Sopko(ソプコ)NA, Matsui(マツイ)H, Kochel(ケッヘル)CM, Reis(レイス)LO, Netto(ネット)GJ, Hoque(ホク)MO, Hahn(ハーン)NM, McConkey(マコンキー)DJ, Baras(バラス)AS, Drake(ドレーク)CG, Bivalacqua TJ. Intravesical BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer(膀胱内BCGは膀胱がんの免疫コンピテントモデルにおいてCD4(+)T細胞増大を誘導する). Cancer Immunol Res.(キャンサー・イムノロジー・リサーチ)2017; 5: 594-603. PMID: 28588015).このモデルでは、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)、発ガン性アルキル化薬は、雌性のFischer(フィッシャー)ラットに尿路上皮ガンを誘導するために用いる。
【0096】
図7からわかるように、BCG-disA-OEはラット膀胱ガンモデルにおいて著しい免疫療法効果を有する。MNU注入(instillation)の8週間以内に尿路上皮異形成が発生し、および最初の注入後16週目までに、すべてのラットは病理組織学的および免疫表現型的特長で、ヒト尿路上皮ガンにおいて観察されるものと同様のものを有するカルシノマ-インサイツ(carcinoma-in-situ)、乳頭状Ta、または高グレードT1尿路上皮カルシノマを表わす。このモデルを用いることで、膀胱内BCG免疫療法が尿路上皮におけるCD4+T細胞集団での大きな、一時的な上昇を導くことが示された。(Kates M, Nirschl T, Sopko NA, Matsui H, Kochel CM, Reis LO, Netto GJ, Hoque MO, Hahn NM, McConkey DJ, Baras AS, Drake CG, Bivalacqua TJ. Intravesical BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer. Cancer Immunol Res. 20 17;5 :594-603. PMID: 28588015).BCG-disA-OE株の膀胱内注入(intravesical instillation)をMNU処理ラットにおいて実行し、腫瘍が視覚化できるときMNU誘導の8週後から始めて6週間にわたり毎週順次投与した。膀胱腫瘍は説明された基準に従って各グループについて計算された腫瘍浸潤率(Ta、T1およびCISの合計)と共にWHO-ISUP分類に従ってGU病理学によって段階分けする。(Kates M, Nirschl T, Sopko NA, Matsui H, Kochel CM, Reis LO, Netto GJ, Hoque MO, Hahn NM, McConkey DJ, Baras AS, Drake CG, Bivalacqua TJ. Intravesical BCG Induces CD4(+) T-Cell Expansion in an Immune Competent Model of Bladder Cancer. Cancer Immunol Res. 20 17;5 :594-603. PMID: 28588015).BCG-Pasteur disA-OEにより処理したラットにおける腫瘍浸潤指数(tumor involvement index)での著しい減少が未処理またはBCG-Pasteur処理ラットからの膀胱と比較して見出された。
【0097】
図8に見ることができるように、BCG-disA-OEは免疫療法を受けるラットの膀胱において特徴的なサイトカインおよびケモカインのシグネチャーを誘導する。BCG-disA-OEにより処理したラットからのラット泌尿器膀胱は、未処理またはBCG-Pasteur処理ラットと比較してIFN-α/β、IFN-γ、IL-1β、TNFα、TGF-β、iNOS、IP-10、MCP-1およびMIP-1αの著しい誘導を示した。
【0098】
図9に示すように、BCG-Pasteur-disA-OEにより処理したラットの膀胱において、IL-6およびIFN-発現の増加を伴うCCL2+マクロファージ、Nos2+およびIL-1β+M1マクロファージの増加した浸潤について証拠が見出された。興味深いことに、IP-10の増加したレベルが見出され、それは増加したIFN-γと一緒に、感染および炎症の部位にて強力なT細胞のリクルートメントを促進することが知られる。
【0099】
図10は初代細胞、ガン細胞系において、およびラット膀胱ガン組織において、BCG-disA-OE対BCG-WTにより観察されたサイトカイン発現レベルの変化の概要を示す。見ることができるように、Th1 T細胞およびM1マクロファージの増大に関係するサイトカイン、2種類の1型インターフェロン、および3つの炎症促進性ケモカインは、これらの細胞、細胞系および組織全体でBCG-WTと比較してBCG-disA-OEによって著しくアップレギュレーションされた(2倍より30倍まで)。対照的に、Th2 T細胞およびM2マクロファージの増大に関係するサイトカインは、BCG-WTと比較してBCG-disA-OEによって概してダウンレギュレーションされた(1倍より10倍まで)。
【0100】
BCG免疫療法は次の:(i)腫瘍特異的細胞傷害性CD8 T細胞の増加した生成、(ii)腫瘍抗原に対するマクロファージ媒介CD4細胞活性化を促進するサイトカイン環境、および(iii)高められた殺腫瘍活性を促進するマクロファージM1シフトの3つの免疫機構を介して有効であり得る。ここで報告された知見は、c-di-AMPを過剰発現するBCGが膀胱腫瘍細胞、および腫瘍微小環境に常駐し、またはリクルートされるかのいずれか(either resident or recruited)でもある骨髄系細胞に取り込まれ、ならびにSTINGおよびI型IFN応答およびNF-κBシグナル伝達の活性化を含めて宿主免疫応答を誘導し、それはサイトカインおよびケモカインの分泌、マクロファージのリクルートメントおよびアポトーシス機構を促進し、それらのすべてはまとめて腫瘍進行を低減することを強く示唆する。
【0101】
PAMP分子c-di-AMPの増加したレベルを生成するdisAの過剰発現に加えて、他のPAMPおよびDAMP分子のその生産を強化するためにBCGに対して行われ得る追加の組換えDNA修飾が存在する。他のCDNシクラーゼについての遺伝子--(i)BCG_RS07340タンパク質またはM. tuberculosis Rv1354cタンパク質のGGDEFドメイン(互いに100%同一)、(ii)2'-5'c-GAMP合成酵素であるVibrio cholerae DncVタンパク質、Swiss-ProtにおいてQ9KVG7、および(iii)2'-3'cGAMP合成酵素であるSwiss-ProtにおけるヒトcGASタンパク質Q8N884--がBCGに追加されていてもよい。これらの付加されたCDNシクラーゼ遺伝子は単独で付加または組み合わせ得る。そのような組合せは多価のCDN過剰発現BCGを示すであろう。また、図11に示すように、BCGはいくつかのCDNホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含む遺伝子を保有する。これらの内在性ホスホジエステラーゼ遺伝子および遺伝子内ホスホジエステラーゼドメインを除去するための組換え技術方法は以下のものである:(i)M. tuberculosis Rv2837cと100%同一であるBCGにおけるCDN PDEをコードするBCG WP_003414507遺伝子(またCdnPまたはCnpBとも呼ばれる)、(ii)既知のCDN PDE M. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一であるタンパク質BCG_RS07340(以前のBCG_1416c)のEALドメインをコードするDNA、(iii)既知のCDN PDE M. tuberculosis Rv1357cに相同なBCG AHM07112をコードする遺伝子。これらのPDEsをコードする遺伝子を除去することは、ここに開示されるrBCG株によって生産されるCDN PAMPおよびDAMP分子のレベルをさらに増加させるように働くであろう。
【0102】
【0103】
【0104】
【化1-1】
【化1-2】
【0105】
disAを過剰発現するMycobacteriaは病原性について減弱する。図12に示すように、pSD5B Phsp60::disAプラスミドを保有するM. tuberculosisM.tb-disA-OEまたはMtb-OE)または野生型M. tuberculosis(Mtb-CDC1551)のいずれかのエアロゾル経路によって3.5 log10単位でマウスに感染させるとき、動物の死亡までの中位時間(median time)(MTD)にきわめて大きな差がある。見ることができるように、野生型M. tuberculosis(Mtb-CDC1551)は150.5日のMTDを与え、一方、pSD5B Phsp60::disAプラスミドを保有するM. tuberculosisM.tb-disA-OEまたはMtb-OE)は321.5日のMTDを与える著しく弱い病原体であった.病原性における同様の低下は、BCG-disA-OEによりBCG-WTと比較して予想される。ゆえに、BCG-disA-OEをガン免疫療法として使用する場合、BCG-WTと比較して血流播種率の低下、排尿障害の軽減、切迫感の軽減および倦怠感の軽減が予想されると考えられる。
【0106】
disA以外のCDNシクラーゼ遺伝子のrBCGへの付加
【0107】
タンパク質BCG_RS07340のGGDEFドメインを過剰発現させることによるPAMP免疫調節物質、3'-5'c-di-GMPの過剰発現.3'-5'c-di-GMPはSTING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。それはBCGを含むmycobacteriaがタンパク質BCG_RS07340(以前のBCG_1416c)のGGDEFドメインによって、およびM. tuberculosis Rv1354c遺伝子によって生産される。BCG_RS07340タンパク質(M. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一)は二重機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ジグアニル酸ホスホジエステラーゼをコードする。それゆえ、ジグアニル酸シクラーゼとして機能する部分はBCGにおいての内因性CDN生産酵素である。全長BCG_RS07340ポリペプチドは長さで623アミノ酸であり、およびそのドメイン構造は以下の:N-末端-GAF-GGDEF-EAL-C-末端である。GAFドメイン(およそアミノ酸1-190)は他のドメインの活性に影響を与える調節ドメインである。GGDEFドメイン(およそアミノ酸190-350)は2GTP→c-di-GMP+2ピロリン酸の反応を触媒するジグアニル酸シクラーゼである。EALドメイン(およそアミノ酸350-623)はc-di-GMP→2GMPの反応を触媒するジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。C末端のEALドメインをコードするDNA配列を遺伝学的に除去することにより、GGDEFドメインをコードするDNAを使用して、ジグアヌレートシクラーゼ活性を過剰発現する組換えBCGを生成することが可能である。これは調節センサであるGAFドメインをコードするDNAも削除すること、および/またはGAFドメインをコードするDNAにおいて変異を用いて、それが保有するかもしれない何らかのサイクラーゼ抑制活性を緩和することによって達成され得る。BCG_RS07340タンパク質の構成的に活性な組換え形態を生成するためのそのような技術は、組換えBCGにおいて高レベルのc-di-GMPを生成することになる。
【0108】
【化2-1】
【化2-2】
【0109】
【化3-1】
【化3-2】
【0110】
【0111】
【0112】
PAMP免疫調節因子、2'-5'c-GAMP合成酵素:Q9KVG7(Swiss-Prot)の過剰発現.2'-5'c-GAMPはSTING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。dncV遺伝子によってコードされるVibrio cholerae Q9KVG7タンパク質(436アミノ酸)は既知の2'-5'c-GAMP合成酵素である。BCGについてコドン最適化された組換えdncV遺伝子を生成することが可能である。コドン最適化された構造遺伝子は強力なプロモーター(例えば、Phsp60などのようなもの)または条件付き活性強力プロモーター、例えば、PTET-offなどのようなものと融合させることによってBCGにおいて過剰発現させ得る。Q9KVG7タンパク質の構成的に活性な組換え型を生成するためのそのような技術は、組換えBCGにおいて高レベルの2'-5'c-GAMPを生成する。
【0113】
【0114】

【0115】
DAMP免疫調節因子、2'-3'cGAMP合成酵素:Q8N884(Swiss-Prot)の過剰発現.2'-3'cGAMPはSTING-TBK1-IRF3軸の強力な誘導因子である。cGASタンパク質は、細胞質ゾルDNAを感知し、および2'-3'cGAMP合成酵素として機能する522アミノ酸のポリペプチドを産生するために、ヒトcGAS遺伝子によって生産される。cGASの合成酵素あるいはシクラーゼドメインはcGASがDNAと結合するとき活性化される。サイクラーゼドメインだけを含む組換えcGAS遺伝子を生成することが可能であり、およびそれゆえ構成的に活性である。この組換え遺伝子はまたBCG用にコドン最適化することもできる。コドン最適化された構造遺伝子は、強力プロモーター(例えば、Phsp60などのようなもの)または条件付き活性強力プロモーター、例えば、PTET-offなどのようなものとの融合によってBCGにおいて過剰発現させ得る。cGASタンパク質の構成的に活性な組換え型を生成するためのそのような技術は、組換えBCGにおいて高レベルの2'-3'c-GAMPを生成する。
【0116】
【0117】
【0118】
【化4】
【0119】
【化5-1】
【0120】
【化5-2】
【0121】
【化5-3】
【0122】
CDN PAMPおよびDAMPレベルを増加させるために、内因性BCGホスホジエステラーゼ遺伝子およびホスホジエステラーゼドメインをコードする遺伝子内セグメントをノックアウトすること
【0123】
内因性BCGホスホジエステラーゼ:WP_003414507をノックアウトすることによるCDNの過剰発現
【0124】
BCG AHM08589.1タンパク質は、C末端316アミノ酸にわたってM. tuberculosis Rv2837cと100%同一であるBCGでの316アミノ酸内因性二機能性c-di-AMPおよびcGAMPホストジエステラーゼ(またCdnP、CnpB、3'-to-5'オリゴリボヌクレアーゼA、二機能性オリゴリボヌクレアーゼ、またはPAPホスファターゼNrnAとも呼ばれる)をコードする。M. tuberculosis Rv2837cタンパク質は3'-5'c-di-AMP(細菌PAMP分子)および2'-3'cGAMP(宿主DAMP分子)の両方を加水分解することが知られる。BCGタンパク質はC末端315アミノ酸にわたって100%同一であるため、BCG AHM08589.1タンパク質をノックアウト(遺伝子置換)すると、組換えBCGにおけるCDNs(3'-5'c-di-AMPおよび2'-3'cGAMP)のレベルが増加することになる。
【0125】
【0126】
【0127】
【化6】
【0128】
内在性BCGホスホジエステラーゼドメイン:タンパク質BCG_RS07340のEALドメイン(以前はBCG_1416c)をノックアウトすることによるCDNsの過剰発現.BCG_RS07340タンパク質(配列番号4)は配列番号5に示すDNA配列によってコードされる。BCG_RS07340タンパク質はM. tuberculosis Rv1354cタンパク質と100%同一であり、およびBCGにおける内因性CDN PDEである。全長ポリペプチドは623アミノ酸長であり、およびそれは二機能性ジグアニル酸シクラーゼ/ジグアニル酸ホスホジエステラーゼをコードする。ドメイン構造は次の:示されるようなN-末端-GAF-GGDEF-EAL-C-末端である。GAFドメイン(およそ1-190アミノ酸)は他のドメインの活性に影響を与える調節ドメインである。GGDEFドメイン(およそアミノ酸190-350)は2GTP→c-di-GMP+2ピロリン酸の反応を触媒するジグアニル酸シクラーゼである。EALドメイン(アミノ酸354より623まで、配列番号4において強調するもの)は反応c-di-GMP→2GMPを触媒するジグアニル酸ホスホジエステラーゼである。このタンパク質のEALドメインは3'-5'c-di-GMPを開裂することが知られているので、この内因性環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼドメインをノックアウトすると、BCGによって生産されるc-di-GMPのレベルが増加する。EALドメインの標的化ノックアウトは完全長WT BCG_RS07340遺伝子をアミノ酸1-353(GAF-GGDEFドメイン)のみをコードするものと遺伝子置換すること、すなわちアミノ酸354-623をコードする配列(配列番号5中の下線DNA配列として示す)を除外するように遺伝子のコード配列を切り捨てること、および適切なストップコドンおよび転写終了配列を含めることによって達成し得る。BCG_RS07340のEALドメインを欠く組換えBCGはCDN PAMPc-di-GMPのレベルを増加させることになる。
【0129】
内在性BCGホスホジエステラーゼ:BCG AHM07112をノックアウトすることによるCDNsの過剰発現.BCG_AHM07112タンパク質はBCGにおける内因性ジグアニル酸ホスホジエステラーゼである(307アミノ酸のM. tuberculosis Rv1357cタンパク質と相同性)。BCGのいくらかの株は、BCG_AHM07112をまったく欠き、その一方で他のもの、例えば、BCG Ticeなどのようなものはそれを保有する。このポリペプチドを有するBCG株のうち、タンパク質は288アミノ酸の長さ(例えば、BCG ATCC 35743においてなどのようなもの)または307アミノ酸の長さ(例えば、BCG Pasteur 1173 P2においてなどのようなもの)であり得る。BCG ATCC 35743からのBCG_AHM07112タンパク質は長さ288アミノ酸であり、およびそのC末端287アミノ酸にわたってM. tuberculosis Rv1357cタンパク質と100%同一である。BCG_AHM07112のドメイン構造は単一のEALドメインのものである。M. tuberculosis Rv1357cタンパク質は3'-5'c-di-GMPを開裂することが知られているので、BCGタンパク質は同じ反応を行っている可能性が高い。BCGにおけるこの内因性環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼをノックアウトすると、BCGによって生産されるc-di-GMPのレベルが増加すると認められる。EALドメインの標的化されたノックアウトは全長WT BCG_AHM07112遺伝子の遺伝子置換およびそれに続くマーク解除した欠失の生成によって達成され得る。
【0130】
【0131】
配列番号18
【0132】
【化7】
【0133】
本出願において参照する配列を以下の表1において概略する。
【表1-1】
【表1-2】
【0134】
一実施形態において、本発明はRv1354cタンパク質、もしくはその機能的部分をコードする核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、もしくはその機能的部分をコードする核酸配列;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、もしくはその機能的部分をコードする核酸配列;またはそれらの組合せを含む発現カセットまたは発現ベクターに関する。いくらかの態様において、発現ベクターまたは発現カセットはジアデニル酸シクラーゼとして機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする核酸配列をさらに含む。他の態様において、Rv1354cタンパク質をコードする核酸配列はホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含まない。いくらかの態様において、発現ベクターまたは発現カセットはホスホジエステラーゼ遺伝子またはホスホジエステラーゼドメインを含まない。
【0135】
発現ベクターおよび発現カセットを生成し、Mycobacteriaを形質転換し、およびそれを分離するための方法が記載された。いくらかの実施形態では、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは1以上の調節配列、例は、核酸の転写を制御またはそれに影響を及ぼす本発明の核酸に作動可能に連結したプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントを含む。いくらかの態様において、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは転写の終結、転写後開裂、および/またはポリアデニル化を指向する本発明の核酸に作動可能に連結される1以上の配列を含む。いくらかの態様において、本発明の発現ベクターまたは発現カセットは本発明の核酸に作動可能に連結された可変長介在配列および/または選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0136】
一実施形態において、本発明はここに記載の本発明の発現ベクターまたは発現カセットを含むMycobacteriumの株に関する。いくらかの態様において、Mycobacteriumの株はMycobacterium tuberculosisMycobacterium bovis、またはそれらの組合せである。他の態様では、Mycobacteriumの株はBCGである。いくらかの態様では、株は配列番号13のプラスミドを含む。
【0137】
別の実施形態では、本発明はジアデニル酸シクラーゼを発現または過剰発現する、および/または1以上の他のシクラーゼ遺伝子もしくはドメイン(例は、ここに記載されるもの)を発現または過剰発現するMycobacteriumの株に関する。いくらかの態様において、発現または過剰発現は1以上のSTINGアゴニスト(例は、c-di-AMP、c-di-GMP、2'-3'cGAMP、および/または3'-3'cGAMP)の放出をもたらす。いくらかの態様において、本発明はジアデニル酸シクラーゼを発現または過剰発現し、および/またはSTINGアゴニストを加水分解するホスホジエステラーゼ(PDE)を発現しない(例は、STINGアゴニストを加水分解するPDE遺伝子の欠失を含む)Mycobacteriumの株に関連する。いくらかの態様において、Mycobacteriumの株はMycobacterium tuberculosisMycobacterium bovis、またはそれらの組合せである。いくらかの態様において、Mycobacteriumの株はBCGである。
【0138】
ラットMNU膀胱ガンモデルにおけるBCG-disA-OEによる統計学的に有意な抗腫瘍効果
【0139】
ラットMNU膀胱ガンモデルはBCGの膀胱内投与が治療に役立つことを示すことができる膀胱ガンの検証されたモデルである(図6およびKatesら、PMID 28588015)。本発明者らは図7に示されたBCG-disA-OE対BCG-WTの治療効果に関するそれらの者の以前の知見を拡張した。本発明者らは今回、16週齢のラットMNUモデルを2回実行した。図7は実験1に基づき、およびBCG-disA-OEがBCG-WTに対してより良好な成果に向けた傾向を表示することを示す。実験2を実行し、およびそのデータを実験1と組み合わせた後、今回、BCG-disA-OEは無処理に対して統計的に有意に優れ(p=0.048)、これに対し、BCG-WTは無処置に対して統計的に有意に優れない(図15に示すデータ)ことが示される。
【0140】
マウス合生膀胱ガン腫瘍モデルにおけるBCG-disA-OEによる腫瘍抑制性Treg細胞の減少.
【0141】
MNUラット膀胱ガンモデルにおいて、16週間の実験終了時での膀胱組織の量はフローサイトメトリーを実行するには不十分である。BCG-disA-OEによって誘発される細胞集団の変化を調査するために、BBN975細胞を用いたネズミ同系膀胱ガン腫瘍(murine syngeneic bladder cancer tumor)モデルが開発された。モデルでは、マウスの脇腹に大きな腫瘍(直径で>1.5cm)を発達させることができる。マウスは腫瘍内注射によってBCG-disA-OEおよびBCG-WTにより処理された。図16に示すように、BCG-disA-OEの使用は腫瘍関連CD4+Treg細胞、腫瘍関連CD8+Treg細胞、および脾臓CD4+Treg細胞のレベルの減少を導いた。
【0142】
BCG-disA-OEは細胞内コンパートメントから持続的にSTINGアゴニストを送り出す。
【0143】
BCGの膀胱における持続性.
【0144】
Bowyer(ボウヤー)ら(The persistence of bacilli Calmette-Guerin in the bladder after intravesical treatment for bladder cancer(膀胱がんの膀胱内処置後の膀胱内のバシルス・カルメット-ゲランの残存). Brit J Urol.(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ユロロジー)1995; 75: 188-192. PMID 7850324)は、1986から-1992年に膀胱内BCGを受けた125体の膀胱ガンペイシェントを評価した。ペイシェントは毎月尿サンプルを提供し、次いでそれをmycobacteria培養に送るように依頼された。90体のペイシェントは生存し、および月1回の尿サンプル採取を遵守した。4/90(4.4%)のペイシェントはそれらの尿中に持続性BCGを有し、1体は最長で16.5か月間までであった。5体目のペイシェントは膀胱内BCG処理終了7週間後に膀胱切除術を必要とし、および顕微鏡検査によって膀胱内に抗酸菌の顕微鏡観察の証拠が確認された。
【0145】
Durek(デュレック)ら(The fate of bacillus Calmette-Guerin after intravesical instillation(膀胱内注入後のバシルス・カルメット-ゲランの運命). J Urol.(ザ・ジャーナル・オブ・ユロロジー)2001; 165: 1765-1768. PMID 11342972)は、膀胱内BCG投与後に連続尿培養を伴った49体のペイシェントを調査した。注入後の2時間後に96.4%、および24時間後に67.9%の検体でBCGが尿中に検出された。陽性検体数は減少し、および次の注入直前の7日目には27.1%であった(図38)。研究者らはまた、6回目の注入後1週間以内に、膀胱生検のmycobacterial DNAをPCRによって評価した(注入は毎月行った)。44の膀胱生検のうち14(31.8%)においてmycobacteriaのリボソームDNAが見出された。さらに、mycobacteriaのDNAについての陽性PCRsは調査した生検の4.2%および37.5%の間において24か月まで明白であった。
【0146】
BCGが膀胱組織に残存することが知られているという事実は、ガンにおけるSTINGアゴニストデリバリーのためのBCG-disA-OE戦略の重要な利益を表す。非常に多数の技術が小分子STINGアゴニストの生成に焦点を当てているが、そのような薬剤は比較的短い曝露時間を有する。それに対し、細胞内微生物として、およびBowyerとDurekの調査によって例示されるように、BCGは細胞および組織内で何週間も存続する。組織におけるBCG-disA-OEの持続性は腫瘍の微小環境におけるSTINGアゴニストの持続的な長期デリバリーを提供する。
【0147】
BCG-disA-OEは2つの別々のマウスモデルにおいてBCG-WTより安全である
【0148】
ヒトにおける膀胱内BCG処理は処理された患者において排尿障害、疲労、および倦怠を伴う。さらにより一層重篤な副作用は、BCGによる持続性膀胱炎および播種性BCG感染(disseminated BCGosis)である。BCGのペイシェント安全性については、O'Donnellら(Up-to-date(最新), 2019)で広範囲にレビューされる。膀胱内注入後の血流へのBCGの播種発生率は1/15,000ペイシェントと推定される。
【0149】
BCG-WTと比較したBCG-disA-OEの安全性をテストするために、本発明者らはBCG株が免疫コンピテント(immunocompetent、免疫適格性などとも言う)BABL/cマウスまたは免疫抑制性SCIDマウスの肺中にエアロゾル化されたBCG感染の二つのマウスモデルを使用した。図17A-17Bに示すように、BCG-disA-OEはBCG-WTよりも免疫コンピテントマウスの肺での増殖能力が低く、およびそれは免疫抑制性マウスにおける時間対死亡アッセイではより一層低い致死性であった。
【0150】
BCGは固形および液状腫瘍において、および糖尿病に対するその治療上の有用性と関係したトレーニングされた免疫を誘発することが示された。STINGアゴニスト過剰発現BCG株はBCG-WTよりも強いトレーニングされた免疫の変化を引き出す
【0151】
トレーニングされた免疫.トレーニングされた免疫は、ある抗原刺激によって、第二の、異なる抗原に対してより一層強力な免疫応答を誘発する能力に言及する。トレーニングされた免疫は抗原非依存性であり、異種CD4およびCD8メモリの活性化に基づき、サイトカインを介し、ならびにエピジェネティックおよび代謝の変化と関係する。BCGは後続の抗原刺激、例えば、腫瘍、ウイルス感染、または薬剤耐性細菌感染などのようなものに対するトレーニングされた免疫を引き出す最初の抗原刺激として強力なツールである(Netea(ネテア)らTrained immunity: a program of innate immune memory in health and disease(トレーニングされた免疫:健康と病気における生得的免疫記憶のプログラム). Science(サイエンス)2016. PMID 27102489;およびArts(アーツ)らBCG vaccination protects against experimental viral infection in humans through the induction of cytokines associated with trained immunity(BCGワクチン接種はトレーニングされた免疫に関係するサイトカインの誘導を通してヒトにおいて実験的ウイルス感染に対して保護する). Cell Host Microbe(セル・ホスト&マイクローブ)2018. PMID 29324233)。
【0152】
固形および液状腫瘍についてのBCG.BCGはヒトにおける固形および液状腫瘍の両方についての免疫療法として治療上の利益の長い歴史を有する(Hersh(ハーシュ)ら、BCG as adjuvant immunotherapy for neoplasia(新生物についてのアジュバント免疫療法としてのBCG). Annu Rev Med(アニュアル・レビュー・オブ・メディシン)1977. PMID 324372)。それはメラノーマ、非小細胞肺ガン(NSCLC)、および急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む悪性腫瘍について全身的および腫瘍内的にの両方に使用された。最近では、膀胱ガンの形態についてBCGと一緒にチェックポイントインヒビターの試行(trials)があった。
【0153】
糖尿病についてのBCG.BCGワクチン接種は最近、1型真性糖尿病を含む様々な形態の真性糖尿病についてのグルコースコントロールにおいて治療上の利益を有することが示された(Stienstra(スティエンストラ)およびNetea. Firing up glycolysis: BCG vaccination effects on Type 1 diabetes mellitus(解糖の始動:1型真性糖尿病に対するBCGワクチン接種の効果). Trends Endoc Metab(トレンヅ・イン・エンドクリノロジー&メタボリズム)2018. PMID: 30327169)。効果は代謝酵素、例えば、グリコロシス(glycolosis)のための酵素などのようなものの発現と同様に、炎症促進性サイトカインの発現を促進するエピジェネティックな修飾につながることが示されたBCGのトレーニングされた免疫効果によって媒介されると考えられる。
【0154】
BCG-disA-OEおよびトレーニングされた免疫.BCGのSTINGアゴニスト過剰発現株がトレーニングされた免疫を刺激する能力を調べるために、本発明者らは6日前にBCG株に曝露した後の安静なヒト単球における第二抗原刺激の増強を誘発するBCG-WT対BCG-disA-OEの能力をテストした。第一の抗原は0日目のBCG株であり、および6日間の安静の後、第二の抗原は無関係のTLR-1/2抗原PAM3CSK4であった。図18に見られ得るように、第二の刺激を受けると、テストした免疫応答(IL-1βの分泌)はBCG-WTおよびBCG-disA-OEの両方によって増強されたが、BCG-disA-OEによる刺激の程度はBCGの第一刺激なし、または第一刺激としてBCG-WTのいずれのものよりも統計的に著しく大きかった。このことはSTING過剰発現BCG株、例えば、BCG-disA-OEなどのようなものが、BCG-WTよりもトレーニングされた免疫の強力な刺激因子であることを明らかにする。
【0155】
関連する実験において、本発明者らはヒト単球を用いて、同じBCG-第一刺激/6日休息/PAM3CSK4によるTLR-1,2第二抗原刺激実験を行った。実験の最後に細胞DNAを収集し、およびH3K4ヒストンメチル化マークについての抗体を用いた染色質免疫沈降(ChIP)に提供した。H3K4マークは既知の転写活性化マークである。免疫沈降したDNAのIL-6プロモーター領域の定量PCR増幅により、結果はBCG-Pasteur-disA-OEおよびBCG-Tice-disA-OEがIL-6プロモーター(IL-6は炎症促進性サイトカインである)におけるH3K4マークを誘発することで、それらのそれぞれのBCG-WT株と比較して統計的に有意であることが示された。これらの結果はSTING過剰発現BCG株、例えば、BCG-disA-OEなどのようなものが、BCG-WTよりもトレーニングされた免疫に関連するエピジェネティックな変化の強力な刺激因子であることを示した。
【0156】
BCG-Tice-disA-OEはBCG-WTよりもはるかに高いレベルのdisA遺伝子を発現する
【0157】
図21に見られ得るように、BCG-Tice-disA-OEクローン2(それは種子ロット調製および貯蔵のために選択した)の相対発現は、2-ΔΔCT法による比較で300:1であった。これはdisAがマルチコピープラスミド上に存在すること、およびpSD5-hsp65-MT3692プラスミドにおけるM. leprae hsp65プロモーターにより駆動されることによって、強く過剰発現されることを指し示す。この強力な過剰発現はSTINGアゴニスト、c-di-AMPのはるかにより一層高いレベルの放出を導く。
【0158】
STINGアゴニスト過剰発現BCG株、例えば、BCG-disA-OEなどのようなものは複数のモデル系において、シグナル伝達経路およびサイトカイン分泌プロファイルにおける炎症促進性変化を引き出す。
【0159】
本発明者らは、STINGアゴニスト過剰発現株、例えば、BCG-disA-OEなどのようなものを複数のモデル系においてBCG-WTと比較して炎症促進性サイトカイン変化を誘発するその相対的能力を評価するためにテストした。BCG-disA-OEは、BCG-WTよりもそれらのテストの大部分において統計的に有意に優れていた。比較が統計的に有意でなかったとき、BCG-disA-OEは2つの応答のうちより一層強い応答を与えた。
【0160】
図23はまた、BCG-disA-OEおよびBCG-WTの両方における1型IFN分泌の上昇が、STING依存性であることを示す。
【0161】
要約すると、BCG-disA-OEはBCG-WTよりも炎症促進性サイトカイン発現および炎症促進性経路誘導の強力な刺激因子である
【0162】
以下の表はデータを要約する:
【0163】
【表2】
【0164】
STINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現する抗生物質遺伝子カセットフリーの組換えBCGを生産する方法.
【0165】
disA過剰発現プラスミドpSD5-hsp65-MT3692は抗生物質カナマイシンに耐性を付与するKan耐性遺伝子カセットを運ぶ。本発明者らはSTINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現する抗生物質遺伝子カセットフリーの組換えBCGを生成する方法を開示する。
【0166】
mycobacteriaの遺伝子オペロンpanCDは生合成遺伝子panC(パントアート--β-アラニンリガーゼ遺伝子)およびpanD(アスパルタート1-デカルボキシラーゼ遺伝子)をコードする。遺伝子産物PanCおよびPanDはビタミンB5(ビタミンBの一種)とも呼ばれるパントテン酸の生合成に必要である。パントテン酸、水溶性ビタミンは、mycobacteria、例えば、BCGなどのようなものに必須の栄養素である。動物はコエンザイムA(CoA)を合成するために、ならびにタンパク質、炭水化物、および脂肪を合成および代謝するためにパントテン酸を必要とする。陰イオンはパントテナートと呼ばれる。
【0167】
mycobacteriaでのpanCDを遺伝的に欠失させると、添加されたパントテン酸の存在下でだけ増殖することができる変異株が産生されることが示された。そのようなものはパントテナートについての栄養要求体である。Mycobacterium tuberculosisのΔpanCD変種は、動物感染においてパントテナートがそれらに利用できない哺乳類の組織において増殖するためのそれらの無能力のため、非常に減弱し、速やかに取り除かれることが示された。
【0168】
本発明者らはBCGのマークされてない(抗生物質遺伝子カセットなしの)ΔpanCD欠失変種を生成するための詳細な方法を開示する。この変種はパントテン酸の存在下でだけ増殖することが可能であり、および感染中に生存することも、またはSTINGアゴニスト発現のための有効なデリバリーベクターであることも期待されない。
【0169】
本発明者らはmycobacteriaのpanCD遺伝子ならびにSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現構築物(例えば、disA遺伝子を過剰発現し、および過剰のSTINGアゴニスト、c-di-AMPを放出するphsp65::disA構築物などのようなもの)を保有するシャトルプラスミドを生成するための詳細な方法を開示する。シャトルプラスミドはE. coliにおいて、またはmycobacteriaにおいて複製する能力がある。それは抗生物質カセットを保有し、それはレアカッティング制限酵素(rare-cutting restriction enzyme)による開裂および再連結により簡便に除去することができる。あるいはまた、シャトルプラスミドは末端に独特な制限部位を生成する抗生物質耐性カセットを除いたプラスミドの主鎖のPCR増幅、およびその末端に同じ独特な制限部位を有する増幅されたpanCDオペロンからなるPCR産物において連結することによって生成し得る。いずれのマナーにおいても、抗生物質耐性遺伝子フリーのシャトルプラスミド(連結産物)をBCGまたはE. coli栄養要求体中にエレクトロポレーションし、およびパントテナートフリーの寒天プレート上で選定し得る。
【0170】
本開示の最終的な表明において、本発明者らはmycobacteriaのpanCD遺伝子を保有する抗生物質カセットフリーのプラスミド、ならびにSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現構築物(例えば、Phsp65::disA構築物などのようなもの)を無標識BCGΔpanCD変種中に導入する方法を示す。最後の結果は抗生物質耐性遺伝子を所有せず、およびSTINGアゴニスト生合成遺伝子(複数形)を強く過剰発現するBCG株である。哺乳類宿主またはヒトにおいて、そのようなBCG株はプラスミドからのpanCD相補性のためのその要求のために、プラスミドを保持する強い選択的圧力を受けるであろう。
【0171】
本開示の別の表明において、panCDカセットおよびSTINGアゴニストの生合成のための構築物(例えば、Phsp65::disA構築物などのようなもの)は染色体統合ベクター(chromosomally integrating vector)、例えば、pMH94などのようなものに導入することができた。同様の方法を用い、pMH94から抗生物質カセットを排除することができた。この染色体統合プラスミドの無標識BCGΔpanCD変種への導入は、抗生物質耐性遺伝子を保有せず、およびSTINGアゴニスト生合成遺伝子(複数形)を強く過剰発現するBCG株もまた産生するであろう。この戦略の欠点は過剰発現構築物がプラスミド上のマルチコピーにおいてであるよりはむしろ、細菌染色体上のシングルコピーにおいてあることであり、およびこれはSTINGアゴニスト放出のレベルを低下させることになりかねない。
【0172】
BCG-Tice(ATCC 35743)は天然のパントテナート栄養要求体である。
【0173】
本発明者らはMycobacterium bovis BCG Tice株(ATCC 35743)が自然のパントテナート栄養要求体であることを開示する。この株はそのpanC遺伝子での塩基対739-743にて5bpのDNA挿入を伴う。この挿入変異の変化はPanCの246番目のアミノ酸の後にフレームシフト変異をもたらす(野生型PanCは309アミノ酸の長さである)。5bpの挿入変異の結果として、Mycobacterium bovis BCG Tice株(ATCC 35743)での変種PanCポリペプチドはそのN末に野生型PanC配列の246アミノ酸があり、次いでC末に478アミノ酸のナンセンスポリペプチドが続いて構成される。この変種PanCポリペプチドは任意の機能的なパントアート--β-アラニンリガーゼ活性(PanCの正常な酵素機能)を保持している可能性は極めて低い。さらに、BCG Tice(ATCC 35743)でのPanDポリペプチドはpanC遺伝子についての停止コドン(それは野生型配列においてpanD翻訳開始のためのATGと重なる)が枠外であるため、翻訳される可能性が非常に低い。PanC翻訳のリボソームによる終結は野生型panCDオペロンにおいてPanD翻訳のリボソームによる開始とカップリングする。panD開始コドンのすぐ上流にはリボソームによる終結が存在しないので、panD遺伝子の翻訳のリボソームによる開始が起こる可能性は極めて低い。
【0174】
本発明者らはこの自然な栄養要求体により、STINGアゴニスト生合成遺伝子を過剰発現する抗生物質遺伝子カセットフリーの組換えBCGのより一層迅速な構築を可能にすることを開示する。
【0175】
本発明者らはmycobacteriaのpanCD遺伝子を保有する抗生物質カセットフリーのプラスミド、ならびにSTINGアゴニストの生合成のための過剰発現構築物(例えば、Phsp65::disA構築物などのようなもの)をBCG-Tice(ATCC 35743)中に直接導入するための方法を開示する。
【0176】
pSD5-hsp60-MT3692はpSD5-hsp65-MT3692と同じである。本発明者らは以前、この同じプラスミドをpSD5-hsp60-MT3692と称した。しかし、この株における実際のプロモーターはM. lepraehsp65遺伝子のためのプロモーターである。それゆえ、本発明者らはプラスミドpSD-hsp60-MT3692をpSD5-hsp65-MT3692に言及し得る。
【0177】
一実施形態において、本発明はここに記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、または株および薬学的に許容可能な担体を含む薬剤組成物に関する。
【0178】
別の実施形態では、本発明はここに記載の発現ベクター、発現カセット、株または薬剤組成物を対象に施すことを含む、ガンを処理および/または防止するための方法および/または組成物に関する。いくらかの態様において、ガンは膀胱ガン(例は、筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC))、胸部ガン(breast cancer、乳がんなど)、または固形腫瘍である。本開示の追加の実施形態は1型インターフェロン(IFN)応答の調節が直接的または間接的に関連する膀胱ガンを処理および/または防止するための方法および/または組成物に関する。一定の態様では、膀胱ガン、例えば、NMIBCなどのようなものを有する個体は、1型インターフェロン応答の調節因子により処理され、およびいくらかの態様では、膀胱ガンを有する個体は、発現1型インターフェロン発現の調節因子、例えば、その発現の誘導因子などのようなものを提供される。
【0179】
一定の態様において、1型インターフェロン発現の誘導因子が1型インターフェロン発現を増加させるレベルは筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC)を含む膀胱ガンの少なくとも1つの症状の改善をもたらす限り、いかなるレベルであってもよい。1型インターフェロンの発現のレベルは少なくともいくつかの場合において標準での発現レベルと比較して、少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100、1000、またはそれよりも高い発現倍率によって増加し得る。個体は、当技術における標準的な方法、例えば、ノーザンアッセイまたは定量PCRなどのようなものを用いて1型インターフェロンの発現レベルをモニターし得る。
【0180】
膀胱ガンを有することが知られ、膀胱ガンを有することが疑われ、または膀胱ガンを有することにリスクがある個体は、有効量の1型インターフェロン発現の誘導因子を提供され得、それには、本発明の発現ベクターを含む本発明のBCG株が含まれる。発現ベクターは、RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;ア・デニラートシクラーゼ(a denylate cyclase)として機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分;あるいはそれらの組合せを発現する。本発明の発現ベクターを含む本発明のBCG株が対象の膀胱に施されること、および発現されたタンパク質(複数形)が膀胱における1型インターフェロンの発現を増強することが好ましい。膀胱ガンについてのリスクがある者は例えば、1以上の遺伝的要因を有するそれらの個体であり得、進行した齢であってもよく、および/または家族歴を有し得る。
【0181】
本開示の特定の態様において、個体は本発明の1以上の1型インターフェロンの誘導因子に加えて、膀胱ガン治療のための薬剤を与えられる。そのような追加療法には例えば、膀胱内化学療法、例えば、マイトマイシンC、シクロホスファミド、またはそれらの組合せなどのようなものを含まれ得る。組合せ療法を採用するとき、1以上の1型インターフェロンの誘導因子(例えば、以下のタンパク質の1以上:RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;ア・デニラートシクラーゼとして機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分を発現するBCG株などのようなもの)と共に採用するとき、追加療法は1型インターフェロンの誘導因子に先立ち、それと同時に、および/またはそれに引き続いて与えられ得る。
【0182】
いくらかの態様において、ここに記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、薬剤組成物、および/または方法は、非組換えBCGと比較して、安全性の向上、許容性の向上(例は、排尿困難、切迫、または倦怠感の減少)、および/または血流での感染もしくは播種性血流感染を引き起こす可能性の減少を有する。
【0183】
一実施形態では、本発明はここに記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、および/または薬剤組成物を対象に施すことを含む、ガンを処理および/または防止する方法に関し、そこでは、投与は非組換えBCGと比較して、安全プロファイルの増加、許容度の増加(例は、排尿困難、衝動、または倦怠感の減少)、および/または血流での感染または播種性血流感染の可能性低下をもたらす。いくらかの態様において、ガンは例えば、膀胱ガン(例は、筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC))、胸部ガン、または固形腫瘍である。他の態様において、固形腫瘍は例えば、肉腫、カルシノマ、またはリンパ腫である。
【0184】
いくらかの実施形態において、本発明は非組換えBCGと比較して、安全性を高め、忍容性を高め(例は、排尿困難、切迫感、または倦怠感を減少させ)、および/または血流での感染または播種性血流感染を引き起こす可能性を減少させる方法に関し、それには、対象に、ここに記載の本発明の発現ベクター、発現カセット、株、および/または薬剤組成物を施すことを含む。
【0185】
薬剤調製物
【0186】
本発明の薬剤組成物は、1型インターフェロンの発現の1以上の誘導因子、例えば、以下のタンパク質の1以上:RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;ア・デニラートシクラーゼとして機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分を発現する、例えば、BCG株などのようなもの(such as such as a BCG strain)の有効量を薬学的に許容可能な担体において溶解または分散させて含む。「薬剤」または「薬学的に許容可能な」という語句は、動物、例えば、適切には、人間などのようなものに施すとき、有害反応、アレルギー反応またはその他の都合が悪い反応を生じさせない分子実体および組成物に言及する。1型インターフェロンの発現の少なくとも1つの誘導因子または追加の活性原料を含む薬剤組成物の調製は参照によってここに組み込まれるRemington(レミントン):The Science and Practice of Pharmacy(薬学の科学および実践), 21st Ed(第21版). Lippincott Williams and Wilkins(リッピンコット・ウィリアムズおよびウィルキンズ), 2005)によって例示されるように、本開示に照らして当技術において熟練の者に既知であろう。さらに、動物(例は、ヒト)投与について、調製物はFDAオフィスの生物学的標準室(FDA Office of Biological Standards)が要求する滅菌、発熱性、一般的安全性および純度の標準を満たすべきであることが理解されよう。
【0187】
ここで使用するように、「薬学的に許容可能な担体」は任意の、およびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例は、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味剤、染料、そのような種の材料およびそれらの組合せが、当技術において通常の技量の者に知られているであろうように含まれる(例えば、参照によりここに組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの薬科学), 18th Ed.(第18版)Mack Printing Company(マック・プリンティング・カンパニー), 1990, pp.1289-1329を参照)。任意の慣習的な担体は、活性原料と不適合である場合を除き、薬剤組成物におけるその使用が熟慮される。
【0188】
1型インターフェロンの発現の誘導因子(例えば、以下のタンパク質の1以上:RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;デニラート(a denylate)シクラーゼとして機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分を発現するBCG株などのようなもの)はそれが固形、液状またはエアロゾルの形で投与されるべきか、およびそれが注射などの投与経路に対して滅菌する必要があるかによって異なる種類の担体を構成してもよい。いくらかの態様において、本発明(例は、発現ベクター、株、または薬剤組成物)は静脈内、皮内、経皮、髄内(intrathecally)、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、膀胱内(例は。膀胱に直接投与、例は、注射によって、または膀胱内注入によって)、腫瘍内、局所、筋肉内、皮下、粘膜による、経口、局所に、局在的に、吸入(例は、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、限局性環流浴を標的細胞に直接的に、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリームにおいて、脂質組成物において(例は、リポソーム)、または他の方法もしくは当技術において通常の技量の者に知られるような前述の任意の組合せによって施すことができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990、およびFrancica(フランチカ)らTNFα and radio-resistant stromal cells are essential for therapeutic of cyclic dinucleotide STING agonists in non-immunogenic tumors(TNFαおよび放射線耐性間質細胞は非免疫原性腫瘍における環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストの治療効力に必須である). Cancer Immunol Res. 2018 Feb 22. PMID: 29472271が参照され、参照によってここに組み込まれる)。
【0189】
薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩、例は、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成されるものが含まれ、またはそれらは無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸などのようなもの、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などのようなもの;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から導き出すことができる。調剤物によると、溶液は投薬調剤物に適合した仕方において、および治療上有効であるような量において投与される。調剤物は様々な剤形、例えば、非経口投与、例えば、注射可能な溶液などのようなもの用に調剤されたもの、または肺へのデリバリーのためのエアロゾル、または食餌性投与(alimentary administrations)、例えば、薬物放出カプセルなどのようなもの用に調剤されたものなどのようなものにおいて難なく投与される。
【0190】
さらに本開示に従って、投与に適する本発明の組成物は不活性希釈剤を伴う、または伴わない薬学的に許容可能な担体において提供される。担体は同化可能であるべきであり、および液体、半固体、即ち、ペースト、または固形担体を含む。任意の慣習的な媒体、薬剤、希釈剤または担体が、レシピエントに、またはそこに含まれる組成物の治療効果に有害である場合を除き、本発明の方法の実践において用いるための投与可能な組成物におけるその使用は適切である。担体または希釈剤の例には、脂肪、油、水、セーリーン溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤およびその他同種類のもの、またはそれらの組合せが含まれる。組成物はまた、1以上の成分の酸化を遅らせるために、種々の抗酸化剤を含み得る。さらに、微生物の作用の防止は保存料、例えば、種々の抗菌および抗真菌剤などのようなもの、制限されないが、パラベン(例は、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組合せを含め、それらによってもたらされることができる。
【0191】
本発明に従って、組成物は任意の便利な、および実用的な仕方において、即ち、溶液、懸濁物、乳化、混和、カプセル化、吸収およびその他同種類のものによって、担体と組み合わされる。そのような手順は当技術において熟練の者にとって日常的なものである。
【0192】
本発明の特定の態様において、組成物は半固形または固形の担体と組み合わされ、または十分に混合される。混合は任意の便利な仕方、例えば、粉砕などのようなものにおいて行うことができる。治療活性の損失、即ち、胃での変性から組成物を保護するために、安定化剤もまた、混合処理において添加することができる。組成物における使用のための安定化剤の例には、緩衝剤、アミノ酸、例えば、グリシンおよびリジンなどのようなもの、炭水化物、例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどのようなもの、等が含まれる。
【0193】
さらなる態様において、本発明は1型インターフェロンの発現の誘導因子、1以上の脂質、および水性溶媒を含む薬剤脂質ビヒクル組成物の使用を含む。ここで使用するように、用語「脂質」は特徴的に水に不溶であり、および有機溶媒により抽出可能である任意の広範な範囲の物質を含む。この広範なクラスの化合物は当技術における熟練の者によく知られており、およびここにおいて「脂質」という用語が使用されるとき、それは任意の特定の構造に制限されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含む化合物が含まれる。脂質は自然に生じるものであっても、または合成(即ち、人により設計または生産されたもの)であってもよい。しかし、脂質は通常、生物学的物質である。生物学的脂質は当技術においてよく知られており、および例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、グリコスフィンゴ脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル連結した脂肪酸を有する脂質および重合性脂質、ならびにそれらの組合せが含まれる。もちろん、当技術において熟練の者によって脂質として理解されるここに具体的に記載されたもの以外の化合物も、本発明の組成物および方法によって包含される。
【0194】
当技術において通常の技量の者であれば、脂質ビヒクルにおいて組成物を分散させるために採用することができる技術の範囲に精通しているであろう。例えば、本発明の1型インターフェロンの発現の誘導因子は脂質を含む溶液において分散させ、脂質と溶解させ、脂質と乳化させ、脂質と混合し、脂質と組み合わせ、脂質に共有結合させ、脂質において懸濁物として含ませ、ミセルまたはリポソームに含有またはそれと複合化させ、または別なふうに当技術において通常の技量の者に知られる任意の手段によって脂質または脂質構造と関係させてもよい。分散はリポソームの形成をもたらし、またはもたらさないこともある。
【0195】
動物ペイシェントに投与される本発明の組成物の実際の投薬量は、物理的および生理学的要因、例えば、体重、状態の重症度、処理される疾患のタイプ、前もって、または同時の治療介入、ペイシェントの特発性、および投与の経路上などのようなものによって定めることができる。投薬および投与の経路に応じて、好ましい投薬および/または有効量の投与の回数は、対象の反応に応じて変動させ得る。投与を担当する開業医は、とにかく、組成物における活性原料(複数形)の濃度および個々の対象に対する適切な用量(複数形)を定める。
【0196】
一定の態様において、薬剤組成物は例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の態様では、活性化合物は例えば、単位の重量の約2%より約75%までの間、または約25%より約60%までの間、および例えば、そこに派生可能な任意の範囲を含んでもよい。本来、各治療上有用な組成物における活性化合物(複数形)の量は、化合物の任意の与えられる単位用量において適切な投薬が得られるようである方法で(is such a way that)調製し得る。要因、例えば、溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与の経路、製品の貯蔵寿命、ならびに他の薬理学的考察は、そのような薬剤調剤物を調製する当技術において熟練者によって熟慮され、およびそのようなものとして、様々な投薬および処理レジメンが望まれ得る。
【0197】
他の非制限的な例では、用量はまた、投与あたり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれより多くの、およびそこに派生可能な任意の範囲までを含み得る。ここに挙げられた数値から派生可能な範囲の非制限的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重より約100mg/kg/体重まで、約5マイクログラム/kg/体重より約500ミリグラム/kg/体重までの範囲、等を投与することができる。
【0198】
A.食餌性組成物および調剤物
【0199】
本開示の一実施形態において、本発明の1型インターフェロンの発現の誘導因子の発現の誘導因子(the inducers of expression of inducer of expression of type 1 interferon of the present invention)は、食餌性経路を介して投与されるように調剤される。食餌性経路は組成物が消化管(alimentary tract)と直接接触する可能なすべての投与の経路を含む。具体的には、ここに開示される薬剤組成物は経口、頬側に、直腸に、または舌下に投与され得る。そのようなものとして、これらの組成物は不活性希釈剤と共に、または同化可能な食用担体と共に調剤されてもよく、またはそれらは硬質または軟質シェルゼラチンカプセルにおいて封入されてもよく、またはそれらは錠剤に圧縮されてもよく、またはそれらは食餌の食物と共に直接組み込んでもよい。
【0200】
一定の態様において、活性化合物は賦形剤と共に組み込まれ、および摂取可能な錠剤、頬側錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウェーハ、およびその他同種類のもの形態において使用されてもよい(Mathiowitz(マティオヴィッツ)E, Jacob(ジェーコブ)JS, Jong(ジョング)YS, Carino(カリーノ)GP, Chickering(チッカリング)DE, Chaturvedi(チャトゥルヴェディ)P, Santos(サントス)CA, Vijayaraghavan(ヴィジャヤラガヴァン)K, Montgomery(モントゴメリー)S, Bassett(バセット)M, Morrell(モレル)C. Biologically erodable microsphere as potential oral drug delivery system(潜在的な経口薬物デリバリーシステムとしての生物学的に侵食可能なミクロスフェア).Nature(ネイチャー). 1997;386:410-4. PMID: 9121559; Hwang(ウォン)MJ, Ni X, Waldman(ヴァルドマン)M, Ewig(エーヴィヒ)CS, Hagler(ハグラー)AT. Derivation of class II force fields. VI. Carbohydrate compounds and anomeric effects(クラスII力場の導出.VI.炭水化物化合物およびアノマー効果). Biopolymers(バイオポリマーズ). 1998;45:435-68. PMID: 9538697; Hwang JS, Chae(チェ)SY, Lee MK, Bae(ベイ)YH. Synthesis of sulfonylurea conjugated copolymer via PEO spacer and its in vitro short-term bioactivity in insulin secretion from islets of Langerhans(PEOスペーサーを介するスルホニル尿素共役型コポリマーの合成およびランゲルハンス島からのインスリン分泌におけるそのインビトロ短期生理活性). Biomaterials(バイオマテリアルズ). 1998;19:1189-95. PMID: 9720902; Hwang SJ, Park(パーク)H, Park K. Gastric retentive drug-delivery systems(胃保持薬物デリバリーシステム). Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.(クリティカル・レビューズ・イン・セラピューティック・ドラッグ・キャリヤー・システムズ)1998;15:243-84. PMID: 9699081; U.S. Pat.(米国特許)第5,641,515号;第5,580,579号;および第5,792,451号、それぞれ参照によってその全体がここに具体的に組み込まれる)。また、錠剤、トローチ、丸薬、カプセルおよびその他同種類のものなどは、以下のものを含んでもよい:結合剤、例えば、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはそれらの組合せなどのようなもの;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはそれらの組合せなどのようなもの;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸またはそれらの組合せなどのようなもの;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどのようなもの;甘味剤、例えば、スクロース、ラクトース、サッカリンまたはそれらの組合せなどのようなもの;香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーンの油、チェリー香料、オレンジ香料などのようなものである。投薬単位形態がカプセルであるとき、それは上記のタイプの材料に加えて、液状担体を含んでもよい。コーティングとして、または別なふうに投薬単位の物理的形態を修飾するために、様々な他の材料が存在してもよい。例として、錠剤、丸薬、またはカプセルはシェラック、糖、またはその両方によりコーティングされてもよい。剤形がカプセルであるとき、それは上記のタイプの材料に加えて、液状担体のような担体を含んでもよい。ゼラチンカプセル、錠剤、または丸薬は腸溶性コーティングされ得る。腸溶性コーティングはpHが酸性である胃または上部腸において組成物が変性するのを防ぐ。例は、米国特許第5,629,001号を参照。小腸に到達すると、そこでの塩基性pHはコーティングを溶解し、および組成物が特殊な細胞、例は、上皮性腸細胞およびパイエル板M細胞によって放出および吸収されることを可能にする。エリキシルのシロップは甘味剤としての活性化合物スクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素および香料、例えば、チェリーまたはオレンジ風味を含んでもよい。もちろん、任意の投薬単位形態における調製において使用される任意の材料は、採用される量において薬学的に純粋であり、および実質非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性調製物および調剤物に組み入れ得る。
【0201】
経口投与のために、本開示の組成物は代替的に、洗口剤、歯磨剤、バッカル錠、口腔スプレー、または舌下経口投与される調剤物(sublingual orally-administered formulation)の形態において1以上の賦形剤と共に組み入れられ得る。洗口液は、適切な溶媒、例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(Dobell's Solution(ドーベル液))などのようなものにおいて必要量における活性原料を組み込んで調製し得る。あるいはまた、活性原料は、経口溶液、例えば、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウムを含むものなどのようなもの中に組み込むか、または歯磨剤において分散させるか、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、および保湿剤を含み得る組成物に治療上有効な量において添加し得る。あるいはまた、組成物は舌の下に置くか、別なふうに口の中で溶解させ得る錠剤または溶液の形態に形作り得る。
【0202】
他の食餌性投与の様式に適する追加の調剤物には、坐剤が含まれる。坐薬は直腸中への挿入のための、様々な重量および形状の、通常、薬用の固形剤形である。挿入後、坐薬は軟化し、溶け、または腔液(cavity fluids)において溶解する。概して、坐剤について、伝統的な担体には、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはそれらの組合せが含まれ得る。一定の態様では、坐薬は例えば、約0.5%より約10%まで、およびなるべくなら約1%より約2%までの範囲の活性原料を含む混合物から形成され得る。
【0203】
B.非経口組成物および調剤物
【0204】
さらなる実施形態において、本発明の1型インターフェロンの発現の誘導因子は非経口経路を介して施され得る。ここで使用されるように、用語「非経口」は消化管を迂回する経路を含む。具体的には、ここに開示される薬剤組成物は例えば、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内に投与され得る。例は、U.S. Pat. 第6,7537,514号;第6,613,308号;第5,466,468号;第5,543,158号;第5,641,515号;および第5,399,363号参照(それぞれ、参照によってその全体がここに具体的に組み込まれる)。
【0205】
遊離塩基または薬学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどのようなものと好適に混合した水において調製し得る。分散物はまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油において調製し得る。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。注射可能な使用に適する薬剤形態には、滅菌水溶液または分散物および滅菌注射可能な溶液または分散物の即時の調製のための滅菌粉体が含まれる(米国特許第5,466,468号、参照によってその全体がここに具体的に組み込まれる)。すべての場合において、形態は滅菌したものでなければならず、および安易な注射可能性が存在する程度にまで流動的でなければならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、および微生物、例えば、細菌および真菌などのようなものの汚染作用に対して保護されなければならない。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(即ち、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコール、およびその他同種類のものなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含め、溶媒または分散媒体とすることができる。適切な流動性は例えば、コーティング、例えば、レシチンなどのようなものの使用によって、分散物の場合には、必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持し得る。微生物の作用の防止は例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、およびその他同種類のものなどの種々の抗菌剤および抗真菌剤によってもたらすことができる。多くの場合、等張性薬剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間の吸収は吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらすことができる。
【0206】
水溶液での非経口投与の場合、例えば、必要であれば溶液を適切に緩衝化し、および液状希釈剤を十分なセーリーンまたはグルコースによりまず等張にすべきである。これらの特定の水溶液は静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適する。これに関連して、採用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当技術における熟練の者には既知であろう。例えば、1つの投薬量を等張NaCl溶液に溶解し、および皮下点注入流体を加えるか、または注入の提案部位に注入するかのいずれでもあり得る(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」15th Edition、ページ1035-1038および1570-1580参照)。投薬量は処理される対象の状態により、必然的にいくらかの変動が生じる。とにかく、投与に携わる人は個々の対象に対する適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒト投与について、調製物はFDAオフィスの生物製剤のスタンダード(Biologics standards)によって要求される滅菌性、発熱性、および一般的な安全性および純度の規準を満たす必要がある。
【0207】
滅菌注射可能液は必要な量での活性化合物を適切な溶媒において、必要に応じて上記に列挙した他の原料の幾つかと共に取り込むことによって、必要により次いでろ過滅菌することによって調製される。概して、分散物は種々の滅菌された活性原料が、基本的な分散媒体および上記に列挙した原料のうち必要な他の原料を含む滅菌ビヒクルに取り込まれることによって調製される。滅菌注射可能な溶液の調製のための滅菌粉体の場合、好ましい調製方法は活性原料プラス任意の追加の望ましい原料の粉体をあらかじめ滅菌ろ過したその溶液から産生する減圧乾燥および凍結乾燥技術である。粉体化された組成物は、安定化剤の有無にかかわらず、液状担体、例えば、水またはセーリーンなどのようなものと組み合わされる。
【0208】
C.多面的な薬剤組成物および調剤物
【0209】
本発明のいくらかの態様において、本発明の1型インターフェロンの発現の活性化合物誘導因子は例えば、局所(即ち、経皮)投与、粘膜投与(経鼻、膣、等)および/または吸入などの種々の多面的な経路を介する投与のために調剤化し得る。局所投与のための薬剤組成物は薬用塗布(medicated application)、例えば、軟膏、ペースト、クリームまたは粉体などのようなもののために調剤された活性化合物を含み得る。軟膏には、局所適用のための油性、吸着性、エマルションおよび水溶性ベースの組成物がすべて含まれ、その一方でクリームおよびローションはエマルションベースを含むだけのそれらの組成物である。局所投与された投薬には、活性原料の皮膚を通した吸着を促進するために、浸透エンハンサーを含み得る。好適な浸透エンハンサーには、グリセリン、アルコール類、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、およびルアロカプラム(luarocapram)が含まれる。局所適用のための組成物についての可能な基剤には、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびペトロラタム、ならびに他の任意の適切な吸収、エマルションまたは水溶性軟膏の基剤が含まれる。局所の調製物にはまた、活性原料を保存し、および均一な混合物を提供するために、必要に応じて乳化剤、ゲル化剤、および抗菌保存剤も含まれ得る。本発明の経皮投与は「パッチ」の使用も含み得る。例えば、パッチは1以上の活性物質をあらかじめ定める速度にて、および固定された期間にわたって連続的な仕方において供給してもよい。
【0210】
一定の実施形態では、薬剤組成物は点眼、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾルデリバリービヒクルによって送られてもよい。鼻エアロゾルスプレーを介して組成物を肺に直接送るための方法は、例は、U.S. Pat.第5,756,353号および第5,804,212号に記載されている(それぞれ、参照によってその全体がここに具体的に組み込まれる)。同様に、鼻腔内微粒子樹脂を用いた薬物のデリバリー(Takenaga(タケナガ)M, Serizawa(セリザワ)Y, Azechi(アゼチ)Y, Ochiai(オチアイ)A, Kosaka(コサカ)Y, Igarashi(イガラシ)R, Mizushima(ミズシマ)Y. Microparticle resins as a potential nasal drug delivery system for insulin(インスリンの潜在的な経鼻薬物デリバリーシステムとしての微粒子樹脂). J
【0211】
Control Release(ジャーナル・オブ・コントロール・リリース). 1998;52:81-7. PMID: 9685938)、およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(U.S. Pat.第5,725,871号、特にその全体が参照によってここに組み込まれる)もまた、薬剤技術においてよく知られる。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリクスの形態での経粘膜薬物デリバリーはU.S. Pat.第5,780,045号に記載されている(特に、その全体が参照によってここに組み込まれる)。エアロゾルという用語は液状化または加圧ガス推進体において分散された液状粒子(liquid particles)の細かく分けられたコロイド系に言及する。吸入のための本発明の典型的なエアロゾルは液状推進体または液状推進体と適切な溶媒との混合物における活性原料の懸濁物からなるであろう。適切な推進体には、炭化水素および炭化水素エーテルが含まれる。適切な容器は推進体の圧力要件によって変動するであろう。エアロゾルの投与は対象の齢、重量ならびに症状の激しさおよび反応に応じて変動するであろう。
【0212】
開示のキット
【0213】
ここに記載する組成物のいずれも、キットにおいて構成し得る。非制限的な例では、本発明の1型インターフェロンの発現の誘導因子(例えば、以下のタンパク質:RV1354cタンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分;環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分;ア・デニラートシクラーゼ(a denylate cyclase)として機能するDNAインテグリティースキャニング(disA)タンパク質、またはその機能的部分の1以上を発現するBCG株などのようなもの)はキットにおいて含まれ得る。
【0214】
キットは本発明の1型インターフェロンの発現の適切に等分された誘導因子、場合によっては、1以上の追加の薬剤を含み得る。キットの成分(複数形)は水性媒体においてまたは凍結乾燥形態においてのいずれかで包装され得る。キットの容器手段は概して、少なくとも1のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射筒または他の容器手段を含み、その中に成分を配置し、およびなるべくなら、適切に等分され得る。キットにおいて一よりも多くの成分がある場合、キットはまた概して、追加の成分を別々に入れることができる第2、第3または他の追加の容器をも含むであろう。しかしながら、成分の種々の組合せがバイアルにおいて含まれ得る。本発明のキットはまた典型的に、本発明の1型インターフェロンの発現の誘導因子および任意の他の試薬容器を商業上の販売のために密閉して収容するための手段を含むであろう。そのような容器は望ましいバイアルが保持される射出またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0215】
キットの成分が1および/またはより一層多くの液状溶液において提供されるとき、液状溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。本発明組成物(複数形)の1型インターフェロンの発現の誘導因子は注入可能な(syringeable)組成物に調剤物化し得る。その場合、容器手段はそれ自体、注射筒、ピペット、および/または他のそのような器具であり得、そこから調剤物を身体の感染領域に適用し、動物に注射し、および/またはさらにキットの他の成分に適用し、および/または混合し得る。
【0216】
しかしながら、キットの成分は乾燥粉体(複数形)として提供されてもよい。試薬および/または成分が乾燥粉体として提供されるとき、粉体は適切な溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段において提供され得ることが想定される。
【0217】
上記の例は本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための当技術における通常の技量の者への指針を提供するために含まれ。本開示および当技術における熟練の一般的な水準に照らして、熟練の者は上記の例が例示的であることだけを意図し、および非常に多くの変化、修飾および改変が、本開示の主題の範囲から離れることなく採用することができることを認めることができる。上記の例は例示として提供され、および制限としてのものではない。
【0218】
ここで引用した出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は各参考文献が個別に、および具体的に指し示され、およびその全体がここに記載された場合と同じ程度に、参照によって組み込まれる。
【0219】
ここにおける値の範囲の列挙はここにおいて別なふうに指し示されない限り、範囲内に入る各別々の値を個別に参照する略記法として役立つことを単に意図し、および各別々の値はそれがここに個別に記載されたかのように本明細に組み入れられる。ここに記載されるすべての方法は、ここに別なふうに指し示され、または文脈によって別なふうに明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。ここで提供される任意のおよびすべての例、または模範的な言語(例は、「などのようなもの」)の使用は本発明をより一層良好に照明することを単に意図し、および別なふうに主張しない限り、本発明の範囲に制限をもたらさない。本明細におけるいかなる文言も、請求されていない要素を本発明の実行に必須であると指し示すものとして解釈されるべきではない。
【0220】
この発明の好ましい実施形態は本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含めて、ここに記載する。それらの好ましい実施形態の変形は前述の説明を読めば、当技術における通常の技量の者には明らかになり得る。本発明者らは熟練の職人がそのような変形を適宜採用することを期待し、および本発明者らはここに具体的に記載された以外の方法で本発明が実行されることを意図される。したがって、この発明は適用可能な法律によって許されるように、ここに添付する請求の範囲に列挙した主題のすべての修飾および等価物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述した要素の任意の組合せはここに別なふうに指し示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0221】
以下に提示するのは、PAMP分子環状di-AMPを過剰発現する再設計BCGによるトレーニングされた免疫の増強について議論する例であり、議論された用途のために熟慮された。以下の例は本発明の実施形態をさらに説明するために提供するが、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。それらは使用され得るものの典型であるが、当技術における熟練の者に知られる他の手順、方法論、または技術が代替的に使用され得る。
[実施例]
例1
材料および方法
【0222】
特に図39-62を参照すると、以下の材料および方法が、提示された結果を得るために使用された方法の詳細について提供される。
【0223】
菌種および培養条件:
【0224】
Mycobacterium bovis(M. bovis)Bacillus Calmette-Guerin(BCG)Pasteur(BCG-WT Pasteur)(Dr. Frank Collins博士[FDA]からの寛大な贈り物で、およびPasteur Institute(パスツール研究所)からTrudeau Institute(トルドー研究所)によってTMC番号1011として1967に提供されたBCG-Pasteurと同一である)および市販のBCG-Tice(Onco-Tice(R)(R)は米国等での登録商標を示す), Merck)をc-di-AMP過剰発現組換えBCG株の生成について用いた。Mycobacterium tuberculosis(M. tb)株CDC1551からのゲノムDNAをdisA(MT3692/Rv3586)のPCR増幅のために使用した。オレイン酸-アルブミン-デキストロース-カタラーゼ(oleic-albumin-dextrose-catalase)(OADC)(Cat.B11886(カタログBP338)、Fisher Scientific(フィッシャー・サイエンティフィック))を補充した7H11プレート上で増殖している単一の分離細菌コロニーを抜き取り、および(OADC)(Cat.B11886、Fisher Scientific)、0.5%グリセロール(Cat.G55116、Sigma(シグマ))および0.05% Tween-80(Cat.BP338, Fisher Scientific)を補充した7H9 Middlebrook(ミドルブルック)液状培地において繁殖させた。クローニング実験はE. coli株DH5-α(Cat. 18258012, Fisher Scientific)を用いて実行し、およびLBブロスにおいて日常的に維持した。disA過剰発現BCGの生成には、E. coli-mycobacteriaのシャトルベクター(pSD5.hsp60)を用い、強力なmycobacteriaのプロモーターhsp60下でM.tb遺伝子MT3692またはRv3586をクローニングした。クローンは遺伝子配列決定によって確認し、およびエレクトロポレーション法によって細菌形質転換のために使用した。組換え株はカナマイシンカセットに対するコロニーPCRを用いて確認し、全ゲノム配列決定およびqPCR解析を受けさせた。すべての菌種、プラスミドおよび構築物の詳細を表3にリストする。
【0225】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0226】
哺乳類細胞培養:
【0227】
細胞系:細胞ベースのインビトロ感染アッセイのために、J774.1(American Type Culture Collection(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)-ATCC(R) TIB67TMTMは米国等でのトレードマーク表示), Manassas(マナッサス)、VA(バージニア州)、USA(アメリカ合衆国))ネズミマクロファージ細胞系を10%熱不活性化牛胎仔血清(FBS)(Cat. 10082147、Fischer Scientific(フィッシャー・サイエンティフィック))を補充したRPMI-Glutamax(グルタマックス)(Cat. 61870-036, Fischer Scientific)において1%ストレプトマイシン/ペニシリンと共に37℃にて5%CO2を添加して培養した。尿路上皮カルシノマ細胞系5637(ATCC(R) HTB-9TM)、ヒト高度尿路上皮ガン;RT4(ATCC(R) HTB-2TM)、ヒト移行細胞低度尿路上皮ガン;J82(ATCC(R) HTB-1TM)、ヒト高度尿路上皮ガン;およびNBT II(ATCC(R) CRL-1655TM)、ドブネズミ・ナラ・膀胱腫瘍番号2におけるN-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロソアミン誘導腫瘍細胞系、UPPL1595(Uroplakin-Cre駆動PTEN/P53ノックアウト遺伝学的操作マウスにおける自然原発(spontaneous primary)膀胱腫瘍から確立された管腔細胞系であり、およびDr. William Kim(ウイリアム・キム)(UNC(ユニバーシティ・オブ・ノース・カロライナ)Chapel Hill(チャペルヒル))によって寛大に提供された。Dr, William Kim (UNC Chapel Hill).、BBN975(0.05% N-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロソアミン(BBN)誘導ネズミ尿路上皮ガンモデルから確立された基底細胞系)であり、およびMB49であった(ネズミ尿路上皮カルシノマ細胞、7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA、EMD Millipore、Cat. SSC148)を単層として、10%熱不活化牛胎仔血清(FBS)を補充したRPMI1640培地において、37℃の1%ストレプトマイシン/ペニシリンと共に、5%CO2により維持した。マウス繊維芽細胞系NCTCクローン929[L細胞、L-929、株Lの派生物](ATCC(R) CCL-1TM)は、1%ストレプトマイシン/ペニシリンと共に10%熱不活性化牛胎仔血清(FBS)を有するDMEM培地において単層として37℃にて5%CO2により日常的に維持した。すべての細胞系は10回の継代サイクルを超えては維持せず、および細胞が培養されている間、定期的にマイコプラズマ試験を行った。レポーターマウス細胞系、RAW-Lucia ISG(InvivoGen、CA(カリフォルニア州)、USA)は製造主の指示に従い、カスタム調製した培地において養成した。
【0228】
初代細胞(マクロファージおよび樹状細胞):
【0229】
ネズミ骨髄由来マクロファージ(BMDMs)および樹状細胞(BMDCs)の生成のために、4週齢の野生型(WT)C57BL/6J(Charles River laboratories(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ)、North Wilmington(ノース・ウィルミントン)、Mass(マサチューセッツ州))およびSTING-KOマウス(C57BL/6J-Tmem173gt/J、Jackson laboratories(ジャクソン・ラボラトリーズ))から骨髄(BM)細胞を分離した。骨髄細胞の複数のバイアルを10%DMSO(Cat. D2650; Sigma)および90%熱不活性化FBS(Cat. 10082147, Fischer Scientific)を含む低温保存培地(cryopreservation media)において液体窒素中に保存した。BM細胞のマクロファージまたはDCsへの分化のために、ランダムに低温保存したバイアルを選定し、および10%FBS、1%MEMアミノ酸(Cat. 11130051、Thermo Fisher Scientific)、1%MEM非必須アミノ酸(Cat. 11140050、Thermo Fisher Scientific)、1%ピルビン酸ナトリウム(Cat. 11360070、Thermo Fisher Scientific)、1%MEMビタミン(Cat. 11120052、Thermo Fisher Scientific)および抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン溶液)に30%の滅菌マウス線維芽細胞L929(ATCC(R) CCL-1TM)馴化培地を添加し作成したBMDM-分化培地において6日間分化させた。BM細胞からDCsへの分化は低付着性の10mm細胞培養ディッシュにおいて組換えネズミ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Cat. 315-03, Peprotech(ペプロテク))存在下48時間行った。非付着細胞を洗浄し、および緩く付着した細胞を次の6日間BMDCsに分化させた。細胞表面染色およびフローサイトメトリー解析を用いてマクロファージおよびDCマーカーについて細胞を特徴付けた。ヒト初代単球およびヒト単球由来マクロファージ(HMDMs)は細胞ベースのインビトロ感染アッセイのために使用した。ヒト単球(HM)またはヒト単球由来マクロファージ(HMDM)の分離のためには、18-30の健康な雄性ドナーから分離した末梢血由来単核球(PBMCs)を使用した。血液成分を分けるため、およびRPMI-1640で希釈した血液のFicoll-PaqueTM Plus(フィコール-パック・プラス)試薬(Cat. 17-1440-02, GE Healthcare(GEヘルスケア)、Piscataway(ピスカタウェイ)、NJ(ニュージャージー州))上でバフィーコート分離密度勾配遠心(18℃での400×g、30分)の分離を行った。細胞は1×PBSを用いて数回洗浄し、および血球計数器を用いて計数した。一旦計数されたCD14+ヒト単球は磁気標識(Monocyte Isolation Kit(単球分離キット)II, Cat. 130-091-153, Miltenyi Biotec(ミルテニー・バイオテク)、San Diego(サンディエゴ)、CA)および磁気カラムを用いて製造主の指示に従ってPBMCsから分離した。分離したCD14+細胞の純度は製造主によって推奨されるように単球マーカーに対する蛍光色素コンジュゲーテッド抗体により染色した細胞の画分を使用して確認し、およびBD-LSR2フローサイトメーターを使用して細胞を解析した。ヒト単球を播種した(10%FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリンを添加したRPMI1640培地において2.0-3.0×105細胞/ml、37℃にて5%CO2を用いる)。CD14+単球の単層を次の7日間M1へ分化させた[GM-CSF(20ng/ml、PeproTech、Rocky Hill(ロッキーヒル), NJ)およびIFN-γ(20ng/ml, PeproTech, Rocky Hill, NJ PeproTech)]またはM2[M-CSF(20ng/ml, PeproTech, Rocky Hill, NJ)およびIL-4(20ng/ml, PeproTech, Rocky Hill, NJ PeproTech)]。
【0230】
動物:
【0231】
生きた動物を含む実験手順は、The Johns Hopkins University School of Medicine(ザ・ジョンズ・ホプキンス医科大学)にてInstitutional Animal Care and Use Committee(動物実験委員会)(IACUC)により承認されたプロトコルに一致して行った。動物感染プロトコルのために、病原体を含まない齢4-6週の雌性のC57BL/6J(Charles River Laboratories, North Wilmington, Mass)およびFox Chase(フォックス・チェイス)SCIDマウス(Charles River Laboratories North Wilmington, Mass)を購入し、および交差換気のない動物バイオ安全レベル3の動物施設にて病原体を含まない条件下に収容した。8週齢のFischer 344雌性ラット(Harlan(ハーラン)、平均重量160g)はBSL2動物施設に収容した。動物は水および標準的な餌に自由にアクセスでき、および獣医の専門家により一般的な行動および外観を毎日モニターした。
【0232】
インビトロ感染アッセイ:
【0233】
インビトロ感染アッセイでは、細胞系または初代細胞を6ウェル組織培養プレートまたは10mmペトリ皿に必要な細胞密度で播種した。感染のために、対数期の野生型およびBCG-disA-OE株を遠心分離によって採取し、および残留する洗剤およびBSAを除去するために、DPBSを用いて2回洗浄し、および次いで10%FBSを添加した抗生物質フリーのRPMI1640培地において懸濁させた。感染アッセイでは、細菌をあらかじめ較正された感染倍率(MOI)にて沈着させた。感染した細胞は4時間後に、非インターナライズド(non-internalized)細菌を除去するために、温めたDPBSを用いて繰り返し洗浄した。感染した細胞は、10%FBSおよび抗生物質を補充したRPMI-1640培地の存在下でエンドポイントまでインキュベーションした。
【0234】
毒性アッセイ:
【0235】
ヒト尿路上皮ガン細胞系、RT4、5637、およびJ82は、抗生物質を伴わない10%FBSを含むRPMI1640において5%CO2下で37℃にて培養した。細胞毒性アッセイのために、RT4については3000細胞ならびに5637およびJ82については1500細胞を96ウェルの組織処理プレートにおいてそれぞれ3重で播種した。播種から24時間後に、細胞は細胞に対して表示された比率のBCGにより72時間処理した。細胞生存率を測定するために、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(セルタイター-GLOルミネセント・セル・バイアビリティー・アッセイ)(Promega(プロメガ), Madison, WI(ウィスコンシン州), USA)およびFLUOstar(FLUOスター)OPTIMA(BMG Labtech(BMGラブテク), Ortenberg(オルテンベルク), Germany(ドイツ))を製造主のプロトコルに従って使用した。相対的な細胞生存率は示された比率の生存率をコントロールの生存率で割ることによって計算した。
【0236】
Annexin(アネキシン)-PI染色については、物理的付着のために、6ウェルプレートに1ウェルあたり0.5百万個のJ774.1細胞およびBMDMsをプレーティングした。細胞はTiceおよびPasteurの野生型およびBCG-disA-OE株を用いて、曝露後のBCG細胞毒性を定めるために、1:10 MOIsにて24時間曝露した。感染または処理の終点で、細胞を0.02% EDTA-PBS溶液を用いて非酵素的に除去した。細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、FITC Annexin V Apoptosis Detection Kit I(FITCアネキシンVアポプトーシス・デテクション・キットI)(Cat. 556547, BD Biosciences(BDバイオサイエンシーズ))を用いて製造主の指示に従いFITC-アネキシン-PIを行った。フローサイトメトリーはthe Flow Cytometry Core Facility at The Bloomberg School of Public Health, Johns Hopkins University(ブルームバーグ公衆衛生大学院、ジョンズ・ホプキンス大学でのフローサイトメトリー・コアファシリティーのBD LSR IIフローサイトメーターを用いて実行した)。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star(ツリー・スター)v10)を用いて加工した。
【0237】
定量的リアルタイムqPCR:
【0238】
遺伝子発現プロファイリングは細胞系または初代細胞から分離した合計RNAを用いて行った。ラット膀胱からのRNA分離のために、全膀胱サンプルの断片を切り取り、採取後直ちに液体窒素においてスナップ凍結し(snap frozen、瞬間凍結しとも言う)、RNAlater(RNAレーター)(Cat. AM7021、Ambion(アンビオン))において-80℃にて貯蔵した。合計RNAの分離はRNeasy(RNイージー)システム(Cat.74106、Qiagen(キアゲン))を用いて行った。リアルタイムqPCRはStepOnePlus(ステップワンプラス)システム(Applied Biosystems)を用いて実行した。細胞系および初代細胞における遺伝子発現解析のために、SYBR Fast green(SYBRファスト・グリーン)二本鎖DNA結合色素(Cat. 4085612, Applied Biosystems)を用いた。ラット膀胱組織における遺伝子発現解析はTaqMan遺伝子発現アッセイを使用して実行した。遺伝子特異的qPCRプライマーはIntegrated DNA Technologies(インテグレーテッドDNAテクノロジーズ)から購入し、およびすべてのTaqMan遺伝子発現アッセイはThermo Fischer Scientific社から購入した。RNU6a、β-actin、GAPDHの増幅はそれぞれヒト、マウスおよびラットの細胞/組織から導き出されるRNAサンプルのための内因性コントロールとして使用した。すべての実験は少なくとも3重で実行し、およびデータ解析は2-ΔΔCT法を用いて行った。NCBI遺伝子識別子の詳細およびプライマー配列を表4において与える。
【0239】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0240】
ELISA:
【0241】
肺、脾臓または膀胱からの培養上清および動物組織におけるサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6、IFN-β、IL-1βおよびMCP-1/CCL2)測定についてサンドイッチELISAを実行した。組織および培養上清は採取後直ちに液体窒素でフラッシュ冷凍し(flash frozen、急速冷凍しとも言う)、および-80℃で貯蔵した。動物組織はマイクロ組織ホモジナイザー(Cat. 1215D61、Kimble(キンブル))を用いてホモジナイズし、および製造主の推奨に従ってサンドイッチELISAを用いて各種サイトカインタンパク質の発現レベルの測定のためにフィルタ滅菌した。すべてのELISAキットおよび付属試薬の詳細は表4において与える。
【0242】
マルチカラー共焦点顕微鏡法:
【0243】
マルチカラーレーザー共焦点顕微鏡実験は尿路上皮ガン細胞および初代マクロファージにおける食作用、オートファジー、および共局在調査を定めるために実行した。細胞は6ウェル組織培養プレートに置かれた滅菌ガラス製カバースリップ上に付着させ、およびあらかじめ較正されたMOIにて感染を行った。対数期の細菌培養物はFITC(Cat. F7250, Sigma)を用いて標識した。感染および処理条件付けの後、細胞を固定し、透過処理し、およびブロックした後、LC3B(Cat. NB100-2220、Novus(ノバス))またはp62/SQSTM1(Cat. P0067、Sigma-Aldrich)に対する一次抗体と共に推奨希釈にて4℃で夜通しインキュベーションした。細胞を洗浄し、およびAlexa Flour(アレクサ・フラウアー)647コンジュゲーテッド二次抗体(Cat. A32733, Thermo Fisher Scientific)と共に暗所で4℃にて1時間インキュベーションした。DNA染色はHoechst 33342 (Cat.62249, Thermo Fisher Scientific)を用いて5分間行った。画像はthe Microscope Facility, Johns Hopkins School of Medicine(顕微鏡施設、ジョンズ・ホプキンス・スクール・オブ・メディシンにて、Zeiss(ツァイス)LSM700シングルポイント、レーザースキャニング共焦点顕微鏡を用いて63Xの倍率で取得した。画像加工および解析はオープンソースのFiji(フィジー)ソフトウェアを用いて行った。LC3Bまたはp62の定量化については、異なるフィールド使用およびImaris 9.5.0にわたり最低100の細胞において核周囲のLC3B斑点(LC3B puncta)(スポット)をカウントした。GraphPad Prism(グラフパッド・プリズム)ソフトウェアを用いて定量化を行った。
【0244】
食作用アッセイ:
【0245】
IgG-FITCコンジュゲーテッドラテックスビーズ食作用アッセイキット(Item No.(商品番号)500290、Cayman Chemicals(ケイマン・ケミカルズ)、USA)を食作用調査のために使用した。HMDMsは付着のため滅菌ガラスカバースリップ上に置いた。感染は5:1(HMDM対BCG)の比率で3時間行った後、温RPMI1640培地において1:400希釈にてIgG-FITCビーズを3時間添加した。核染色はHoechst 33342(Cat. 62249, Thermo Scientific)を用いて行い、および細胞はZeiss LSM700シングルポイント、レーザースキャニング共焦点顕微鏡を用いてビーズ食作用について視覚化した。ビーズの定量はオープンソースのFijiソフトウェアを用いた平均蛍光強度(M.F.I.)計算によって測定した。
【0246】
マルチカラーフローサイトメトリー:
【0247】
細胞表面および細胞内の染色はJ774.1、ネズミBMDMs、ヒトHMDMsならびにネズミMB49腫瘍および脾臓から導き出される単一細胞上で行った。フローサイトメトリーパネルはネズミ骨髄系およびリンパ系細胞、およびヒト骨髄系細胞について設計し、および必要に応じて修飾した。すべての抗体および使用した希釈の詳細を表3に与える。インビトロ感染アッセイでは、推奨希釈でのタンパク質輸送インヒビターカクテル(Cat. 00-4980-03、eBioscience)は、単層の細胞を採取する12時間前のものである。終点にて、細胞剥離用緩衝剤(氷冷PBS-10mM EDTA溶液)を用いて細胞を採取した。単一細胞の分離は剖検後に腫瘍および脾臓を採取することによって動物組織を用いて実行した。簡単に言えば、組織を手作業で破壊してから、RMPIにおいてコラゲナーゼI型(Gibco(ギブコ))およびDNase(デオキシリボヌクレアーゼ)(Roche(ロシュ))中で37℃にて30分間インキュベートした。腫瘍および脾臓の細胞を70μmのフィルタを通して解離させ、およびPBSにより洗浄した。RBC(赤血球)溶解はACK溶解緩衝剤(Cat. A1049201, Thermo Fisher Scientific)を用いて室温で5分間実行した。氷冷PBSを用いて細胞を2回洗浄し、およびZombie AquaTMFixable Viability Kit(Cat.423101, Biolegend)を用いて染色した。細胞を洗浄し、およびFACS緩衝剤(PBSにおける1% BSA、2mM EDTA)に再懸濁し、Fcブロックし(TruStain FcXTM、Cat. 101320、およびTrue-Stain Monocyte BlockerTMCat. 426102 Biolegend)、および製造元のプロトコルに従ってコンジュゲート一次抗体により染色した。細胞内染色は固定化および透過化(Fixation and Permeabilization Buffer Set, eBioscience)後に実行した。細胞を洗浄し、およびフロー緩衝剤に再懸濁し、およびFACSDiva(FACSディーバ)ソフトウェアと共にBD LSRIIを用いて取得した。解析はFlowJo(v10)(TreeStar)を用いて実行した。
【0248】
以下の抗体は骨髄系およびリンパ系細胞を染色するために使用した:
【0249】
マウスBMDMs:抗CD45(クローン30-F11)、抗CD124(クローンI015F8)、抗I-A/I-E(クローン107630)、抗Ly6C(クローンHK1.4)、抗CD11b(クローンM1/70)、抗F4/80(クローンBM8)、抗Ly6G(クローン1A8)、抗CD206(クローンC068C2)、抗TNF(クローンMP6-XT22)すべてBiolegendおよび抗IL-10(クローンJES5-16E3 eBiosciences)である。
【0250】
ヒトHMDMs:抗CD16(クローン3G8)、抗CD14(クローン63D3)、抗HLA-DR(クローンL243)、抗CD11b(クローンICRF44)、抗CD206(クローン15-2)、抗CD163(クローンGHI/61)、抗TNF(クローンMAb11)および抗TNF(クローンMAb11)いずれもBiolegendである。
【0251】
マウスマクロファージ(尿路上皮ガンの同系MB49モデル):CD45(クローン30-F11、Biolegend)、CD124(IL-4Ra)(クローンI015F8、Biolegend)、I-a/I-e(クローンM5/114.15.2、Biolegend)、F4/80(クローンBM8、Biolegend)、CD206(クローンC068C2、Biolegend)、TNF(クローンMP6-XT22、Thermo Fisher)、IL-10(クローンJES5-16E3、Thermo Fisher)。
【0252】
マウスT細胞(尿路上皮ガンの同系MB49モデル):CD45(クローンPerCP、Biolegend)、CD25(クローンPC61、Biolegend)、CD3(クローン17A2、Biolegend)、CD4(クローンGK1.5、Biolegend)、CD8a(クローン53-6.7、Biolegend)、FOXP3(クローンMF-14、Biolegend)マウスIFN-γ(クローンXMG1.2、Biolegend)およびFOXP3(クローンMF-14 Biolegend)である。
【0253】
インビトロ単球トレーニング免疫実験:
【0254】
初代ヒト単球のインビトロトレーニングは先に記載したように実行した47。PBMCsは健康なドナー(leukopaks(ロイコパック))から分離した。磁気分離後、CD14+単球を10mm3の組織培養皿における10%FBSを補充した温RPMI1640媒体において37℃にて5%CO2により3時間播種した。非接着細胞は温PBSを用いた細胞洗浄によって除去した。ヒト単球の単層培養物は、10%FBSを補充したRPMI1640の存在下で、5:1(単球対BCG)MOIsにて4時間BCG-WT株およびBCG-disA-OE株に感染させた。非インターナライズド桿菌は温PBSを用いて洗い流し、およびその後24時間インキュベートした。細胞は再び温PBSを用いて洗浄し、および新しい温RPMI1640媒体を加えた。その後5日間、2日ごとにPBS洗浄および新しい媒体の添加により細胞を休ませた。6日目に、10% FBSを補充したRPMI1640(陰性コントロール、トレーニングなし)またはTLR1/2アゴニスト、Pam3Cys(Cat. tlrl-pms, InvivoGen)により細胞を再刺激させた。刺激後、24時間、培養上清を収集し、フィルタ滅菌し、およびサイトカイン測定のために迅速にスナップ凍結(-80℃)した。細胞は、遺伝子プロモーター上のエピジェネティックな変化を測定するために染色質免疫沈降(ChIP)実験用に採取した。
【0255】
染色質免疫沈降(ChIP):ヒト単球を終濃度1%のホルムアルデヒドにより室温で10分間固定した。細胞固定は125mMグリシン(Cat No.50046、Sigma-Aldrich、USA)を用いて停止し、次いでQsonica Sonicator(キューソニカ・ソニケーター)Q125(Cat.15338283, Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞DNAを300より600bpまでの間の平均サイズに断片化するために音波処理を続けた。音波処理した細胞溶解物を推奨濃度の一次抗体[(Histone H3K9me3 (H3K9 Trimethyl) Polyclonal Antibody cat. A-4036-100, epigentek);Anti-Histone H3 (tri methyl K4) antibody - ChIP Grade (ab8580), abcam)]と共に磁気Dynabeads(ダイナビーズ)(Cat no. 10004D, Thermo Fisher Scientific, USA)存在下で4℃にて夜通しインキュベーションすることによって免疫沈降(IP)を受けさせた。非結合物質は溶解緩衝剤、染色質(chromatin、クロマチン)IP(ChIP)洗浄緩衝剤およびTris(トリス)-EDTA(TE緩衝剤)でDynabeadsを順次洗浄することによって除去した。DNAの溶出はChIP溶出緩衝剤を用いて行った。免疫遺伝子の調節領域の異なるセグメントの増幅は特異的なプライマーを用いるqPCRを用いて実行した。反応はインプットDNAにより正規化し、その一方ビーズは陰性コントロールとしてはたらいた。すべての一次抗体の詳細およびプライマーの配列は表4に与えた。
【0256】
LC-MS/MSを用いた標的代謝物分析:
【0257】
標的代謝物分析は先に述べた48のように液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて実行した。細胞またはスナップ凍結した異種移植腫瘍組織からの代謝物は、-80℃にて平衡化した80%(v/v)メタノール溶液により抽出し、および代謝物含有上清を窒素ガス下で乾燥させた。乾燥したサンプルを50%(v/v)アセトニトリル溶液に再懸濁し、および各サンプルの4mlを5500 QTRAP三連四重極質量分析計(AB Sciex(ABサイエックス))およびProminence ultra-fast liquid chromatography(プロミネンス・ウルトラ-ファスト液体クロマトグラフィー)(UFLC)システム(Shimadzu(島津))にカップリングさせて注入および解析した。装置は説明したように正および負のイオンをスイッチングするモードによる選択反応モニタリング(SRM)において動作させた。この標的メタボロミクス法により、3msの滞留時間で25分間の単一LC-MS取得から200種類より多くの代謝物を分析することができ、およびこれらの分析代謝物はすべての主要代謝経路をカバーする。最適化されたMSパラメータは以下の通りである:ESI電圧はポジティブイオンモードにおいて+5,000V、およびネガティブイオンモードにおいて-4,500Vであり;滞留時間はSRMトランジションごとに3msであり、および合計サイクル時間は1.57秒であった。親水性相互作用クロマトグラフィー (HILIC)分離はアミドカラム(Waters XBridge BEH Amide(ウォーターズXブリッジBEHアミド), 2.1 x 150 mm, 2.5μm)を用いてShimadzuのUFLCシステム上で実行した。LCパラメータは以下の通りであった:カラム温度40℃;流速、0.30ml/分であった。溶媒Aは0.1%ギ酸含有水;溶媒Bは0.1%ギ酸含有アセトニトリル;99%Bから45%Bまでの非線形勾配を25分で行い、ポストランタイムを5分とした。SRMトランジションにおける各標的代謝物についてのピーク積分はMultiQuant(マルチクアント)ソフトウェア(v2.1, AB Sciex)により加工された。ピーク面積を統合した前処理済みデータをMultiQuantからエクスポートし、および統計的および主成分解析を含むさらなるデータ分析のためのMetaboanalyst(メタボアナリスト)ソフトウェア中に再インポートした。
【0258】
組織学的分析および免疫組織化学(IHC):
【0259】
組織学的分析のために、膀胱の一部分をホルマリン固定し、およびパラフィン包埋した。スライドガラス上の厚さ5μの切片は、先の27に述べたようにthe World Health Organization/International Society of Urological Pathological consensus(世界保健機関/国際泌尿器科病理学会のコンセンサス)に従った分類のためにヘマトキシリン-エオジンにより染色した。腫瘍の病期分類(Tumor staging)は2ボードの泌尿生殖器科認定病理学者(board certified genitourinary pathologists)(A.S.B.、A.M.)によって実行された。標本は異常組織への関与の割合に基づいて分類した(1=10%関与、2=20%関与、およびその他など)。IHC染色については、Trilogy(トリロジー)(Cell Marque(セル・マルク))においてスライドを浸すことによって高温抗原賦活化(antigen retrieval)(18-23psi/126℃)を実行した。内因性ペルオキシダーゼ活性はDual Endogenous Enzyme Block(デュアル・エンドジナス・エンザイム・ブロック)(Cat.S2003, Dako(ダコ))を用いることで5分間ブロックした。用いた一次抗体には、Ki67(1:50, Cat. ab16667; Abcam)、CD68(1:250, Cat. MCA341R; Serotec(セロテック)), CD86(1:100, Cat. bs-1035R; Bioss(バイオス))およびCD206(1:10K, Cat. ab64693; Abcam)が含まれた。Ki67について、スライドをImmPACT DAB(Vector Labs(ベクター・ラブズ))で3分間染色し、およびヘマトキシリン(Richard-Allen(リチャード・アレン))により対比染色した。CD68/CD206およびCD68/CD86についての二重染色はCD68をImpact(インパクト)DAB(Vector Labs)により最初に染色することによって、次いでCD86またはCD206のいずれかで上記のように二次抗原賦活化およびインキュベーションを続け、ImmPACT AEC (Vector Labs)により視覚化することによって達成した。各セクションについて、Ki67発現は尿路上皮における陽性細胞のパーセンテージとしてスコア化した。CD68/CD86およびCD68/CD206についての二重染色は各マーカーに対する細胞の陽性クラスターに基づいてスコア化した(0=染色なし、1=レアアイソレーテッド細胞陽性、2=10個までの陽性細胞のクラスター、3=10個を超える陽性細胞のクラスター)。
【0260】
インビボ実験:
【0261】
発ガン性物質誘発NMIBCラットモデルにおける膀胱内BCG処理:
【0262】
ラットにおける尿路上皮ガンの誘発および膀胱内BCGのその後の処理を実行した。N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)の注入は隔週で合計4回の注入について与えた。Fischer 344雌性ラット7週齢(Harlan(ハーラン)、平均重量160g)を3%イソフルランにより麻酔した。十分な麻酔の後、20Gの脈管カテーテル(angiocatheter)をラットの尿道中に設置した。次いで、0.9.%塩化ナトリウムにおいて溶解したMNU(1.5mg/kg)(Spectrum)を注入し、およびカテーテルを取り去り、自発排尿を防ぎ、および吸収させるために60分間鎮静を継続した。最初のMNU注入から18週間後、PBSまたは各BCG株の5×106 CFU(20G脈管カテーテルを介して0.3ml)と共に膀胱内処理を合計6回用量について投与した。齧歯動物は最後の膀胱内処理から2日後に犠牲にし、および膀胱は最後のBCG注入の48時間以内にmRNAおよびタンパク質の発現解析ならびに組織学的評価のために採取した。
【0263】
BALB/cマウスのBCG感染およびCFUの計数:
【0264】
野生型およびBCG-disA-OE株の肺桿菌負担(bacillary burden)を定めるために、6週齢の雌性BALB/cマウスを、Glasscol(グラスコール)吸入曝露システム(Glasscol)においてエアロゾルルートを用いて曝露した。雌性BALB/cマウスにおける1日目(各群n=3)の肺において移植された接種物は、カルベニシリン(50mg/ml)、トリメトプリム(20mg/ml)、ポリミキシンB(25mg/ml)およびシクロヘキシミド(10mg/ml)を含む7H11選択プレート上に全肺ホモジナートをプレーティングすることによって定めた。感染後、マウスの肺を採取し(n=5匹/グループ)、滅菌PBSにおいてそれらの全体をホモジナイズし、および異なる希釈度で7H11選択プレート上にプレーティングした。7H11選択プレートは37℃でインキュベーションし、および3週目と4週目に単一コロニーを数えた。単一コロニーは器官あたりの対数CFUで表した。
【0265】
SCIDマウスの死亡までの時間調査:
【0266】
BCG-WTおよびBCG-disA-OE株の病原性テストは先に記載したように、重症易感染性抑制性免疫不全(severely compromised immunodeficient)マウスエアロゾル感染モデルで行った。1日目に肺に移植された接種物(グループあたりn=3)は全肺ホモジナートを7H11選択プレート上にプレーティングすることによって定めた。死亡までの時間分析(グループあたりn=10動物)について、感染動物をそれらの死亡までモニターした。
【0267】
尿路上皮ガンの同系MB49モデル:
【0268】
MB49腫瘍細胞は初代膀胱上皮細胞外植片(explant)を7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)に24時間曝露し、次いで長期培養79を続けることによって成体C57BL/6マウスから導き出される尿路上皮カルシノマ系である。移植前に、MB49細胞は10%FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリンを補充したRPMI1640培地において単層として37℃にて5%CO2により培養した。細胞はトリプシン処理を用いて採取し、およびトリパンブルー色素を用いて細胞生存率を定めた。MB49の生細胞を滅菌PBSにおいて再懸濁し、および100μlあたり1×105個の生細胞にて調整した。4-6週齢の雌性のC57BL/6Jマウス(Charles River Laboratories)は後肢の右脇腹に1×105 MB49細胞により皮下注射した。2日おきに腫瘍の成長を観察し、処理開始時の腫瘍負荷の増加を観察した。触知可能な腫瘍が発生したら(7より9日まで、平均容量~30mm3)、BCG-WTまたはBCG-disA-OEの1×106桿菌を合計50μl PBSにおいて腫瘍内に注射した(図41)。3日目ごとに合計4回のBCGの腫瘍内注射を与えた。腫瘍を電子キャリパー(electronic caliper)によって測定し、および腫瘍容量を以下の式で算出した:腫瘍容量=長さ×幅×高さ×0.5326。マウスを特定の時間に殺し、および単細胞調製のために剖検後に腫瘍および脾臓を採取した。
例2
BCG-DISA-OEはマクロファージにおいてBCG-WTより大きな炎症促進性サイトカイン応答を誘発する。
【0269】
BCG-disA-OEは内因性ジアデニル酸シクラーゼ遺伝子、disAが強プロモーターに融合され、disAの300倍の過剰発現および環状di AMPの15倍の生産増加が導かれる遺伝子工学的BCG株である(図39)。BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEはIRF3誘導によって測定されるようにマクロファージにおけるSTING経路の活性化を有意に増加させた(図39)。非常に多くのBCG株が世界中で使用され、およびそれらの臨床学的有効性における変動性が説明されているという事実をコントロールするために、BCG disA-OEの2つのバージョンおよび対応するBCG-WTが生成した:1つはBCG-Ticeを使用し、およびもう1つはBCGPasteurを使用する。TiceおよびPasteurバージョン間に有意な差は検出されなかった。
【0270】
BCG-disA-OE対BCG-WTのトレーニングされた免疫誘導能を特徴付けるために、ヒト単球由来マクロファージ(HMDM)、初代マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)および樹状細胞(BMDCs)ならびにマクロファージ細胞系(J774.1)におけるサイトカイン発現誘導するそれらの能力を評価した。BCG-disA-OEに応答して、すべての骨髄系細胞におけるIRF3、IFN-β、TNF-αおよびIL-6の一貫した誘導が見出され、それはBCG-WT-曝露細胞により見られたものより著しく高く(図40および図43)、およびこの違いはヒトMDMおよびネズミBMDMにおいて、細胞をIFN-γプライムしたときでさえ観察された(図43)。これらの違いはSTING-/-マウスからのBMDMを用いて確認されるように、厳密にSTING依存的であった(図40)。STINGの活性化はTBK1-IRF3経路を介してNF-κBのアップレギュレーションを導くので、同じパネルの細胞におけるTNF-αおよびIL-6の両方の発現はIFN-βのそれと平行し、およびBCG disA-OEの曝露後にBCG-WTと比較して有意に高いことが見出された(図41および図43)。環状-di-AMPを含む環状ジヌクレオチドは、iNOSと同様にいくつかのケモカイン(CXCL9、CXCL10[IP-10]、CXCL22、およびMCP-1)の強力な誘導因子として知られ;これと一致し、IFN-γでプライムしたBMDMsはBCG-WT株と比較してBCG-disA-OE株により負荷するとき、これらのケモカインおよびiNOSのよりローバストな誘導を示した(図41)。また、アネキシン-PI染色を用いて細胞毒性を評価し、およびBMDMとJ774.1マクロファージの両方において、BCG-disA-OE曝露では後期アポトーシス細胞死がベースラインに留まったのに対し、BCG-WT曝露はBMDM細胞において有意に高いレベルのアポトーシス細胞死を誘発したことが見出された(図44)。これらの観察結果はBCG-disA-OEが、ヒト初代MDM、ならびにネズミ初代マクロファージおよびマクロファージ細胞系においてBCG-WTよりも強力に炎症促進性サイトカインの発現を誘発することを実証する。
例3
マクロファージの炎症促進性極性化はBCG-WTによるよりもBCG-DISA-OEを用いてより大きくなる。
【0271】
トレーニングされた免疫は抗炎症状態からの移行を伴う炎症促進性表現型へのマクロファージの極性化(polarization)と関係する。マクロファージ極性化を調べるために、フローサイトメトリーを使用し、BCG-disA-OEまたはBCG-WTに24時間曝露した後のネズミおよびヒトの両方の初代マクロファージの表現型シフトを監視した。まず、ゲーティングスキームを用いるインビトロBCG曝露後に、MHCクラスII発現CD45+CD11b+F4/80+ネズミBMDM集団に焦点を合わせた。図50および図48に見られるように、TNF-α発現CD11b+F4/80+(M1)ネズミBMDMsの有意に大きな拡大は、BCG-WTを用いるよりもBCG-disA-OEへの曝露後に観察された。次に、CD45+CD11b+F4/80+マクロファージのうちM2表面受容体CD206+およびCD124+を発現する細胞をゲーティングし、およびこの集団の大きな減少が、BCG-WTによるよりもBCG-disA-OEを用いて観察した(図50および図49)。この免疫抑制細胞集団の中で、BCG-WT曝露マクロファージにおいて、IL-10発現CD206+CD124+細胞のより一層高い割合があったが、IL-10発現細胞はBCG-disA-OE曝露に反応して著しく減少した(図50および図49)。これらの結果は、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OE曝露が抗原提示(MHCクラスII発現)およびTNF-α発現の増加を示す炎症促進性M1マクロファージの拡大およびIL-10を発現する免疫抑制M2マクロファージの縮小を伴うより広範囲なマクロファージの再プログラム化を誘発することを実証する。
【0272】
骨髄系由来サプレッサー細胞(Myeloid-derived suppressor cells)(MDSCs)は免疫抑制を促すことが知られている未熟な骨髄系細胞の不均一な集団である。したがって、単球性骨髄系派生サプレッサー細胞、M-MDSCsの誘導は、示されたゲーティングスキームを用い初代ネズミBMDMsを使用して調べた(CD45+Ly6Chi Ly6G- CD11b+ F4/80-)。BCG-WT曝露後、M-MDSCsの著しい拡大が観察されたが、対照的に、この同じ集団はBCG-disA-OE曝露後最小限の拡大を示した(図50)。さらに、BCG-WTによって誘発されたM-MDSCsは、より一層高いIL-10発現を見せたが、IL-10発現M-MDSCsはBCG-disA-OE曝露後には事実上不存在であった(図50)。これらの観察結果はBCG-WTが免疫抑制特性を有するM-MDSCsの拡大に寄与することを示唆し;しかしながら、BCGによる炎症促進性PAMP環状di-AMPの強制された過剰発現はM-MDSCの拡大を防止する。
【0273】
次に、いくつかの無関係な健康ヒトドナーから分離されたHMDMsにおけるマクロファージ活性化表現型を特徴付けた。BCG-WTおよびBCG-disA-OE株は両方とも、古典的マクロファージ(CD11b+CD14+CD16-)の集団における増加を誘発したが、これらの誘導はBCG-disA-OEに反応して比較的より一層高かった(図51および図52)。古典的に活性化された抗原提示マクロファージ(CD14+CD16-HLA-DR+)およびTNF-αまたはIL-6を生産するそれらの能力を検査し、およびそれがBCG-disA-OEへの曝露後、BCG-WTと比較して、TNF-αおよびIL6を産生するHLA-DR+細胞の有意に増加した割合を見出された(図52および図53)。M2表面マーカー、CD206+およびCD163+はまた、移行型または中間型(transitional or intermediate)マクロファージ(CD11b+CD14+CD16+)でも研究され、およびBCG-WTによるよりもBCG-disA-OE曝露後にそれらにおいて一貫して大きく減少することが見出された(図51図53)。M2表面マーカーおよびIL-10を発現するこれらの中間型マクロファージのフラクションもまた、BCG-disA-OEへの曝露に反応して、BCG-WTによるよりも著しく低下した(図53)。要約すると、両方のマウスおよびヒト初代マクロファージエクスビボ(ex vivo)モデルを使用して、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEはM1表現型(炎症性)へのより一層大きなマクロファージ活性化を促進し、および同時に、M-MDSCsを含め、免疫抑制能力を有する細胞の出現を低減することが見出された。
例4
BCG-DISA-OEに曝露されたマクロファージはBCG-WTを有するものよりも食作用性が大きい。
【0274】
環状ジヌクレオチドは高い食作用を表す炎症性マクロファージをリクルートすることが報告された。これらの観察結果と一致して、我々は環状di-AMPによりトランスフェクションされたHMDMsが、モック-トランスフェクションされた集団と比較して増加した食作用を示し、および伸長した樹状突起を見せたことを確認した(it waswe confirmed that)。次いで、異なるBCG株への曝露後、HMDMsの食作用特性を評価し、およびBCG-disA-OEに曝露したマクロファージによるIgG-オプソニン化(opsonized)FITC-ラテックスビーズの食作用がBCG-WTと比較して著しく大きいことが見出された(図54)。オートファジーの増強における STING経路の活性化の役割が以前に確立されたのと調和して、IFN-γで活性化した初代BMDMsにおいて、細胞内BCG-disA-OE桿菌の大部分がLC3Bと共局在化し、一方でBCG-WTにおけるオートファジー誘導が著しく低いことが見出された。また、BCG-disA-OE桿菌はBCG-WTと比較して、オートファジーアダプタータンパク質p62と著しく高く共局在化することが見出された。これらの結果から、BCG-disA-OEはマクロファージ内の食作用およびオートファジー処理のレベルをBCG-WTよりも大きく増加させ、現象がMHCクラス-II分子への増強ペプチド抗原提示と関係することを明らかにする。
例5
BCG-DISA-OEはマクロファージをエピジェネティックに再プログラムし、およびBCG-WTよりも高い程度にまでトレーニングされた免疫を強化する。
【0275】
BCGが重要な炎症促進性遺伝子のエピジェネティックな修飾を通じてトレーニングされた免疫の強力な誘導因子であることを示す最近のデータに照らして、標準BCGに環状di-AMP過剰発現を加えることにより、ヒト初代単球のエピジェネティック修飾が強化されるかもしれないことが仮定された。BCG-disA-OEがBCG-WTよりも強力なマクロファージTNF-αおよびIL-6分泌の誘導因子であることを既に確立していたので、6名の健常ヒト対象のグループからの初代ヒト単球でこのことを確認した。伝統的なBCGのトレーニングされた免疫を誘発する能力は、炎症促進性遺伝子発現を増加させるエピジェネティックマークにおける変化と相互に関係がある。このように、BCG-disA-OEによって誘発されるTNF-αおよびIL-6発現の高められた誘導がBCG-WTと比較してエピジェネティックに媒介されるかどうかを問うた(asked)。この目的のために、BCG株に24時間曝露したヒト単球を5日間休ませたアッセイを用いて、6日目に異種抗原、TLR1/2アゴニストPam3CSK4により負荷(チャレンジ)する前に、TNF-αおよびIL-6遺伝子のプロモーター領域の持続的で、抗原非依存のエピゲノム変化を評価した(図56)。染色質免疫沈降-ポリメラーゼ連鎖反応(ChIP-PCR)アッセイを用い、TNF-αおよびIL-6プロモーターにおいて存在する活性化ヒストンメチル化マークH3K4me3を定量化した。BCG-disA-OEへの曝露により、異種2次刺激なし(即ち、6日目にRPMI媒体単独を添加)でも、BCG-WTよりもこのマークのより一層高い濃縮が導かれることが観察された。6日目にPam3CSK4により再刺激すると、活性化エピジェネティックマークの存在量は両BCG株によってさらに増加したが、BCG-disA-OE前処理ではBCG-WTよりも顕著に濃縮された(図56)。同様に、同じ2つのプロモーターでの染色質抑制マーク(chromatin repression mark)H3K9me3を調べたところ、両方のBCG株によってH3K9me3の低下したレベルが導かれた(それはPam3CSK4の添加によってさらに顕著になった)が、最初の曝露時および休息と再刺激後の双方で、BCG-disA-OEによって媒介される低下の程度はBCG-WTによって媒介されるものよりも矛盾なく大きかった(図56)。Pam3CSK4による非特異的刺激後のBCGトレーニング培養上清におけるTNF-αおよびIL-6の同時測定により、BCG-disA-OEトレーニングしたマクロファージはBCG-WTによりトレーニングしたものよりも著しく高いレベルのこれらの炎症促進性サイトカインを生産することが明らかとなった。これらの結果はPAMP分子の環状di-AMPを過剰発現する増強されたBCGがトレーニングされた免疫に古典的に関係する著しくより一層ローバストなエピジェネティック変化を導くことを指し示す。
例6
BCG-DISA-OEはマクロファージの免疫代謝状態を炎症促進性シグネチャーに向けBCG-WTよりも大きな程度まで再プログラムする
【0276】
BCGトレーニングは解糖ならびにフマラートの蓄積を伴うグルタミン補充を通したトリカルボン酸サイクルを刺激することが報告された。環状di-AMPの過剰発現の付加がBCG媒介メタボロームシフトを変動させるかどうかに取り組むために、LC-MSを用いて2つのBCG株に曝露した初代ヒトおよびネズミマクロファージの重要な代謝物を特徴付けた。HMDMsまたはBMDMsはBCG-disA-OEに24時間曝露した後、BCG-WTによるよりも増加した異化シグネチャー(細胞内グルコースおよびラクタートの上昇)を示した。また、TCAサイクルの代謝物のイタコナートおよびフマラートもBCG-disA-OEではBCG-WTによるよりも高く上昇した。これらの観察結果はBCG-disA-OEにより感染したマクロファージにおいて、BCG-WTによるよりも炎症促進性生体エネルギープロファイルと一致するATP生成についての炭素基質のより一層大きな異化を示唆する。
【0277】
トリプトファンデヒドロゲナーゼおよびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)によるキヌレニンへの過剰なトリプトファン異化は免疫抑制と強く関係し、およびIDOインヒビターは様々な感染性および腫瘍学疾患における免疫活性化因子としての可能性を示した。BCG-disA-OE曝露後のマクロファージにおけるキヌレニンレベルはBCG-WTで見られたものよりも劇的に低く、および予想されるようにトリプトファンレベルはBCG-disA-OEによって上昇したが、BCG-WTではトリプトファンレベルが熱殺BCGコントロールにより見られたベースラインと同等であるトリプトファンレベルに導いた。シトルリンレベルもまたBCG-disA-OEによりBCG-WTよるよりも高い一方、プトレッシンレベルはより一層低く、一酸化窒素合成酵素媒介のアルギニンのNO(炎症促進)およびシトルリンへの変換がBCG-disA-OEによってより一層強く誘導されたことが示唆される。最後に、マクロファージによって作成されるイソクエン酸リアーゼインヒビターは、抗菌活性を有することが示され、BCG-disA-OEによってBCG-WTよりも強力に誘導されたことは興味深かった。このように、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは減少したキヌレニン蓄積および解糖系代謝物、NOS産物、およびイタコン酸生産における増加によりより一層高い炎症促進性のメタボロームシグネチャーを誘発した。
例7
インビボでの機能的有効性:BCG-DISA-OEはトレーニングされた免疫の関連する動物モデルにおいて優れた免疫療上の成果を実証する
【0278】
TBワクチンとして使用されることに加えて、BCGは1970年代半ば以来、筋層非浸潤性膀胱ガン(NMIBC)の処理のための第一線の免疫療法としてはたらいた。最近の研究は、BCGがトレーニングされた免疫機構を介して抗腫瘍効果を発揮することが指し示された。BCGを過剰な環状-di-AMP放出により増強することは、一連のインビトロアッセイにわたって(across a battery of in vitro assays)トレーニングされた免疫パラメータの改善につながることが実証されたので、これらの効果がインビボで実証されることができたかどうかを決定することが追求された。
【0279】
まず、BCG-disA-OE対BCG-WTは、NMIBCの発ガン性物質誘導モデルにおいてテストされ、そこでは膀胱内療法はそれらが非浸潤性尿路上皮ガンを有するヒトにおけるように膀胱中に導入することができる。ラットN-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)モデルの膀胱ガン(BC)を図57に図式化する。このモデルでは、MNUの最初の膀胱内投入後14週目に尿路上皮異形成が生じ、および24週目までには、ヒト膀胱ガンにおいて観察される病理組織学的および免疫表現型の特色と類似したものを有する、カルシノマ-インサイツ(CIS)、乳頭状Ta(表在性)、または高グレードT1-T2尿路上皮ガンを含め、異なる形態の尿路上皮ガン重症度を表示する。MNUの4サイクル(wk 0、wk 2、wk 4、wk6)による発ガン性物質媒介腫瘍誘導の後、ラットのグループは、18-23週からの、6の毎週用量の膀胱内BCG-disA-OE、BCG-WTにより処理され、または無処理であった。24週での犠牲により、ラットの膀胱は、(i)RT-PCR分析、および(ii)盲検の泌尿生殖器科病理学者(blinded genitourinary pathologist)による腫瘍の病期分類を含む組織学的分析用に半分に分けられた。24週目に摘出した膀胱全体の転写分析により、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、IL-1β、CXCL10、MCP-1、MIP-1α、およびiNOS転写の著しく増加したレベルを誘発し、一方で免疫抑制サイトカインIL-10およびTGF-βのmRNAレベルが両BCG株によって低下したことが示された(図57)。これらのサイトカイン発現のパターンはTNF-αIL-2、およびIFN-γについてのELISAを用いてタンパク質レベルで確認され、および膀胱内BCG-disA-OEが、ラットの脾臓におけるIFN-γのレベルを強く増加させたのに対し、BCG-WTは増加させなかったことが注目された。相応じて、BCG-disA-OEにより処理したラットでは、最高病理学的グレード、腫瘍浸潤指数および最高腫瘍ステージでの著しい減少が未処理に比べて見出された(図57)。腫瘍浸潤指数では、BCG-disA-OEは無処置に対して(p<0.001)およびBCG-WTに対しても(p<0.05)統計的に有意に優れていたが、BCG-WTは無処置に対して改善傾向を示しただけであった。重要なことに、BCG-disA-OE処理ラットにおいて観察された最も高い腫瘍期はCISであったが、BCG-WTを受けたそれらではそれはT1であり、および無処理ラットではT2であり、およびBCG-WTの31.2%および無処理ラットの0%と比較して、BCG-disA-OE処理ラットの53.3%がガンを有しない(p=0.009)(図57)。免疫組織化学的分析により、BCG-disA-OE処理MNUラット膀胱におけるKi67染色は未処理(p<0.01)およびBCG-WT(p<0.05)と比較するとき著しい減少を明らかにし、減少した腫瘍増殖が示唆された。ラット膀胱のCD68染色は未処理コントロールと比較して、BCG-disA-OE処置ラットにおいて、炎症促進性M1様CD86+マクロファージの上昇に向けた傾向および腫瘍促進に関係するCD206+M2様マクロファージにおける著しい減少を伴うマクロファージのリクルートメントの著しくより一層高いレベルを示した。これらの観察結果はBCG-disA-OEにより処理した担腫瘍(tumor-bearing)ラットの膀胱におけるI型IFNおよび他の炎症促進性シグネチャーの増強された誘導が組換えBCG株の増強された抗腫瘍活性と相関したことを指し示す。
【0280】
BCG-disA-OEの機能的有効性はまた、MB49尿路上皮ガン細胞を用いたネズミ異所性、同系膀胱ガンモデルにおいてテストした。MB49腫瘍細胞による脇腹移植の後、図61に示すように、マウスは9日間にわたって4回の腫瘍内処理を受けた。このモデルにおいても、BCG-disA-OEはBCG-WTと比較するとき、BCG-disA-OEの腫瘍内注射後の腫瘍容量および重量によって測定されるように、BCG-WTよりローバストな免疫療法上の有効性を示した(図61)。組織病理学はBCG-disA-OEにより処理されたMB49腫瘍において、BCG-WTおよび未処理と比較するとき、広範な壊死およびうっ血を実証した。BCGを受けさせたマウスの体重において有意な変化はなかったが、脾臓の重量は両BCG株によって著しく増加した。さらに、我々は腫瘍微小環境(TME)におけるマクロファージの極性化および活性化T細胞のリクルートメントに対する処置の影響を特徴付けた。図61に示すように、BCG-WTと比較して、BCG-disA-OEは未処理およびBCG-WTと比較するとき、免疫抑制性マクロファージの存在量を著しく減少させ、および炎症促進性M1マクロファージを著しく(p<0.01)増加させた。同様に、BCG-disA-OEはBCG-WTと比較するとき著しく多くのIFN-γ生産CD4+T細胞を補充し、および両BCG株はIFN-γ生産CD8+T細胞を増加させた。両BCG株はより一層多くのCD4+およびCD8+細胞を腫瘍に対して補充したが、BCG-disA-OEはより一層多くのCD8+T細胞を処理動物の脾臓に対して特異的に補充した。BCG-disA-OEはまた、腫瘍および脾臓の両方において、腫瘍関連T調節(Treg)細胞をBCG-WTよりも大きな程度にまで著しく減少させた。さらに、我々の先の知見と調和して、我々はBCG-WTと比較し、BCG-disA-OEは種々の腫瘍ステージを表示するヒト尿路上皮ガン細胞においてより一層強力なサイトカイン応答およびオートファジーを誘発することも見出した。これらの結果はこの尿路上皮ガンのネズミモデルにおいて、BCG-disA-OEがBCG-WTよりも優れた抗腫瘍効果を有し、およびその有効性はマクロファージのM1への極性化におけるシフト、CD4+およびCD8+T細胞の両方の増加した活性化、ならびに局所的な腫瘍内および全身のTreg細胞集団の減少に相関することを指し示す。
例8
安全性:BCG-DISA-EEは2つのマウスモデルにおいてBCG-WTよりも病原性が低い。
【0281】
BCG-disA-OEによって誘発される炎症促進性免疫応答の増強が有害作用につながるかもしれないという懸念に対処するために、2つの別々のマウスモデルにおける安全性を評価した。エアロゾル曝露の免疫コンピテントBALB/cマウスモデルを使用し、および適応免疫応答が最大となるとき4週間後の肺桿菌負担を測定した(図58)。2つのBCG株の移植1日目は同等であったが、我々はBCG-disA-OEがネズミの肺においてBCG-WTより0.43log10コロニー形成単位のマージンで著しく低い程度にしか増殖しなかったことを観察した(図58)。細胞ベースのモデルにおいて以前に観察したように、肺および脾臓の両方における炎症促進性サイトカインレベルはBCG-WTを受けたマウスよりもBCG-disA-OEにさらされたものにおいて著しく高かった(図60)。2つの株は免疫不全状態SCIDであり、それはBCGにより感染を生き延びず、それがテストされた。再度、低用量エアロゾル曝露モデルを用い(図59)、それによりBCG-WTと比較してBCG-disA-OEによる統計的に有意な生存期間の延長が観察された(図59)。そのように、非常に多くのモデルシステムにおいてより一層深い炎症シグネチャーを誘発するにもかかわらず、BCG-disA-OEはこれらの2つのネズミモデルシステムにおいてBCG-WTより病原性が低い。
例9
考察
【0282】
非常に多くの組換えBCG株は長年にわたって生成され、およびテストされた。これらの研究は概して、TB防御効力または膀胱ガン免疫療法のいずれかを改善する目的と共に行われたが、ある場合には、他の感染症の防止が目的であった。共通の戦略は、疾患特異的な免疫を誘発するための抗原または局所的な宿主応答を高めるためのサイトカイン遺伝子を過剰発現させることであった。多くの修飾BCGsが前臨床モデルにおいて有効性を示したが、ヒトでの臨床テストに進んでいるものはほとんどない。現在までに、BCGΔureC::hly(VPM1002)、ファゴソーム透過性を高めるために設計されたBCG、細胞質MHCクラスI抗原加工に対するBCG抗原の曝露だけが、結核のために後期臨床テストに進んだ。これはSTING経路の関与を増やすためにPAMP分子環状-di-AMPを過剰発現させることによってトレーニングされた免疫を改善するという特定の目標と共にBCGを具体的に再設計した最初のものである。
【0283】
トレーニングされた免疫パラメータが増加し得るかどうかを定めるために、BCG-disA-OE対BCG-WTを一連のインビトロアッセイにおいてテストした。ヒトおよびネズミの初代細胞におけるサイトカイン放出プロファイル、マクロファージ極性化、オートファジー、食作用、エピジェネティック修飾、および代謝リモデリングを評価した。各アッセイシステムにおいて、BCG-disA-OEはBCG-WTよりも炎症促進性反応のより一層強力な増強物質であった。環状-di-AMP発現BCGはさらに、トレーニングされた免疫のインビボ機能アッセイ、すなわち膀胱ガン免疫療法でテストした。2つの別々の尿路上皮ガンのモデルにおいて、BCG-disA-OEはBCG-WTを行ったよりも高い免疫療法有効性を有し、我々のインビトロの結果が関連する動物モデルにおける機能的有効性を予測したことを指し示す。興味深いことに、我々のインビトロアッセイシステムにおける著しくより一層強力な炎症促進性反応を誘発したにもかかわらず、BCG-disA-OEはBCG感染またはBCGosisの2つの動物モデルにおいて過剰な病原性を生じなかった。
【0284】
また、BCG-WTは一様に炎症促進性応答を誘発しないことが観察された。例えば、ネズミマクロファージをBCG-WTで処理することは、実際には、未処理のコントロールと比較してより一層高い割合のM-MDSCs(抗炎症性)を誘導し(図50)、および同様にBCG-WTは抗炎症代謝物キヌレニンの上昇レベルを導くことが観察された。BCG-WTのある種の抗炎症作用の成り行きのこれらの知見はTB防止のためにBCGを定期的に使用する国々においてワクチン接種体が喘息およびアトピー性皮膚炎の低下したレベルを表示するという観察結果と相関し得る。対照的に、BCG-WTによるマクロファージにおけるM-MDSCsのこの拡張は環状di-AMPの過剰発現によって逆転されたが、それはSTING経路活性化が一定のガンにおけるMDSCsの誘導を低減することを示す最近の研究と一致する。
【0285】
BCGによって誘発されるトレーニングされた免疫の変化はガン防止におけるBCGの免疫療法効果の根底にあり得る。したがって、この研究の別の目的はNMIBC免疫療法としてのBCG-disA-OEの有益な効果がSTING経路の関与を通して媒介され、およびBCG媒介のトレーニングされた免疫を調節するかどうかを評価することであった。NMIBCのラットモデルにおいて、未処理の担腫瘍ラット(T2の最高腫瘍グレード)ならびにBCG-WT処理動物(T1の最高腫瘍グレード)では浸潤性腫瘍が発生したが、BCG-disA-OEにより処理されたラットでは浸潤性膀胱ガンが十分に欠いていた。同様に、膀胱ガンのMB49マウスモデルでは、BCG-disA-OEはBCG-WTに対し腫瘍増殖の低減において腫瘍壊死における関係した増加と共に優れ、およびこれらの効果は腫瘍におけるM1マクロファージの著しく高いリクルートメント、IFN-γ生産CD4細胞、およびTreg細胞の減少した蓄積を伴った。BCG-WTと比較して炎症促進性サイトカインおよびケモカインの上昇したレベルがBCG-disA-OEにより処理した担腫瘍動物からの膀胱において観察された.非免疫細胞もまた免疫学的記憶を所有することが示されているので、このサイトカイン応答がTMEにおける骨髄系細胞および/または腫瘍細胞それら自体に由来し得る可能性が考えられた。実際、BCG-disA-OEはBCG-WTと比較して、初代マクロファージおよび様々な腫瘍ステージを表すヒト尿路上皮ガン細胞の両方でより強力なサイトカイン応答を誘発することが見出された。これはSTING活性化の下流の成果であるように思われ、それは我々がSTING-/-マウスからのBMDMsにおける劇的に減少した発現を見出したからである。さらに、外因性STINGアゴニストを用いた刺激による他の研究において観察されたようないくつかのケモカインの強固な誘導が見出された。
【0286】
本発明は上記の例を参照して説明したが、修飾および変形が本発明の精神および範囲内に包含されることは理解されるであろう。したがって、本発明は以下のクレームによってだけ制限される。
【0287】
本発明は上記の例を参照して説明したが、修飾および変形が本発明の精神および範囲内に包含されることは理解されるであろう。したがって、本発明は以下のクレームによってだ制限される。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍における骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSCs)、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑え、および腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導するにあたり、以下のステップ:
腫瘍を有する対象にSTINGアゴニストを作成するタンパク質またはその機能的部分が発現されるベクターを含むマイコバクテリウム属菌の株が含まれる薬剤組成物を施すこと;
腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑えること;および
腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導することであり、それによってMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現を抑えること、および腫瘍におけるマクロファージ、DCs、およびTエフェクター細胞の発現を誘導すること
を含む、方法。
【請求項2】
腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現の抑制は、マイコバクテリウム属菌の株が含まれる薬剤組成物を施されていない参照される対象の腫瘍におけるMDSCs、M2マクロファージ、およびTreg細胞の発現と比較するとき観察される、請求項1の方法。
【請求項3】
腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現を誘導することは、マイコバクテリウム属菌の株が含まれる薬剤組成物を施されていない参照される対象の腫瘍におけるマクロファージ、樹状細胞(DCs)、およびTエフェクター細胞の発現と比較するとき観察される、請求項1の方法。
【請求項4】
STINGアゴニストは、3'-5'c-di-AMP(またc-di-AMPとしても知られる);3'-5'c-di-GMP(またc-di-GMPとしても知られる);3'-3'cGAMP;2'-3'cGAMPおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項1の方法。
【請求項5】
ベクターは、Rv1354cタンパク質、またはその機能的部分をコードする第一の核酸配列;3'-3'環状GMP-AMP合成酵素(DncV)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第二の核酸配列;2'-3'環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第三の核酸配列;DNAインテグリティースキャニング(DisA)タンパク質、またはその機能的部分をコードする第四の核酸配列およびそれらの組合せからなる群より選ばれる核酸配列を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
腫瘍は、上皮性ガン、乳ガン、筋層非浸潤性膀胱ガン、メラノーマ、およびそれらの組合せからなる群より選ばれるガンである、請求項1の方法。
【請求項7】
腫瘍は筋層非浸潤性膀胱ガンであり、およびBCG非応答性筋層非浸潤性膀胱ガン(BCG非応答性NMIBC)であり、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施される、請求項6の方法。
【請求項8】
腫瘍は筋層非浸潤性膀胱ガンであり、およびBCGナイーブ筋層非浸潤性膀胱ガン(BCGナイーブNMIBC)であり、および薬剤組成物は膀胱内注入によって施される、請求項6の方法。
【請求項9】
腫瘍は上皮性ガンであって結腸ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、膣ガン、食道ガン、鼻咽頭ガン、気管支内ガン、およびそれらの組合せからなる群より選ばれ、および薬剤組成物は上皮性ガンの管腔側に施される、請求項6の方法。
【請求項10】
腫瘍は固形腫瘍であり、および薬剤組成物は、腫瘍内、静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射によって施される、請求項1の方法。
【請求項11】
チェックポイントインヒビターを施すステップがさらに含まれる、請求項1の方法。
【請求項12】
チェックポイントインヒビターは、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)、セミプリマブ(抗PD-1抗体)、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)、アベルマブ(抗PD-L1抗体)、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)およびそれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項11の方法。
【請求項13】
誘導されたマクロファージはM1マクロファージである、請求項1の方法。
【請求項14】
Tエフェクター細胞はCD4+T細胞である、請求項1の方法。
【請求項15】
Tエフェクター細胞はCD8+T細胞である、請求項1の方法。
【請求項16】
腫瘍は液状腫瘍であり、および薬剤組成物は静脈内、皮内、経皮、膀胱内局所、筋肉内または皮下注射によって施される、請求項1の方法。
【国際調査報告】