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特表2023-514557動物を予備気絶および/または気絶させるための方法、並びにシステム
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  • 特表-動物を予備気絶および/または気絶させるための方法、並びにシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】動物を予備気絶および/または気絶させるための方法、並びにシステム
(51)【国際特許分類】
   A22B 3/04 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
A22B3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547872
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021053806
(87)【国際公開番号】W WO2021165279
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20158117.0
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522311794
【氏名又は名称】マレル・ミート・アクティエセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Marel Meat A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】リッケ,レイフ
(72)【発明者】
【氏名】ワイヘ,スティーン ハインスゴー
(57)【要約】
予備気絶および/または気絶プロセスの間に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露されたときの動物の反応を低減する方法であって、この方法は、少なくとも1匹の動物を、或る曝露期間の間、予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露することと、その少なくとも1匹の動物を、曝露期間の少なくとも一部の間、特に曝露期間の初期部分の間に、少なくとも1つの匂い添加物に曝露することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備気絶および/または気絶プロセスの間に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露されるときの動物の反応を低減する方法であって、
上記方法は、
- 少なくとも1匹の動物を、或る曝露期間の間、予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露することと、
- 上記少なくとも1匹の動物を、上記曝露期間の少なくとも一部の間、特に上記曝露期間の初期部分の間に、少なくとも1つの匂い添加物に曝露すること
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
上記匂い添加物は、
1つ以上のフェロモン、
フェロモンの化学的類縁体、
上記動物によって香りとして知覚される自然の匂い、
上記動物によって香りとして知覚される自然の匂いの化学的類縁体
の群から選択される、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
上記動物によって香りとして知覚される上記自然の匂いは、フルーティな匂い、特に、甘くフルーティな匂いである、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
上記フルーティな匂いは、林檎の匂い、梨の匂い、マンゴーの匂い、葡萄の匂い、オレンジの匂い、マンダリンの匂い、パパイヤの匂い、桃の匂いの群から選択される、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法において、
上記気絶用ガスは、CO、または、主要量のCOを含むガス混合物である、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法において、
上記予備気絶用緩和ガスは、10%未満のO濃度を含む予備気絶用緩和ガス混合物である、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物を少なくとも1つの匂い添加物に曝露するステップは、上記少なくとも1匹の動物を予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露する前に開始される、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物は、上記匂い添加物と上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスとに対して同時に、少なくとも5秒間、例えば少なくとも10秒間、例えば少なくとも20秒間、例えば少なくとも30秒、例えば少なくとも60秒間、曝露される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物は、上記少なくとも1つの匂い添加物に対して、少なくとも無意識状態に達するまで曝露される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物は、少なくとも2匹の動物、例えば3匹の動物、例えば4匹の動物、例えば7匹若しくは8匹の動物、例えば15匹の動物を含む、動物群である、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物は、上記気絶用ガスと上記匂い添加物とを含む混合物、および/または、上記予備気絶用緩和ガスと上記匂い添加物とを含む混合物に曝露される、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法において、
上記少なくとも1匹の動物を上記匂い添加物に曝露することは、上記匂い添加物を、或る処理用エンクロージャ内で、特にガス、液滴または霧として、分布させることを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載の方法において、
上記匂い添加物は、薬理効果を有さず、上記少なくとも1匹の動物による上記気絶用ガスの知覚をマスクするのみであり、特に上記気絶用ガスの匂いをマスクする、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
動物を予備気絶および/または気絶させるためのシステムであって、
上記システムは、
- 予備気絶および/または気絶されるべき少なくとも1匹の動物を取り囲むように構成されたエンクロージャと、
- 上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段と、
- 上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段と
を備えた、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための上記手段は、上記匂い添加物を投与するための、1つ以上のノズル、霧化装置、または噴霧装置である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14または15に記載のシステムにおいて、
上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための上記手段は、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガス、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの少なくとも1つのガス成分を投与するための、1つ以上のノズル、霧化装置、または噴霧装置である、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備気絶(pre-stunning)および/または気絶(stunning)させるプロセスにおいて、気絶用ガスに対する動物の反応を低減するための方法に関する。特に、本方法は、屠殺場で家畜を予備気絶および/または気絶させる間に使用するためのものである。
【背景技術】
【0002】
動物の福祉に対する意識は、今日、例えば屠殺場などで高く尊重されている。動物を気絶させる目的は、例えば殺処分の前などに、痛みを知覚させないことにある。気絶させる手順は、殺処分の前、中、後に、動物が意識を取り戻さず、また、各動物が殺されるまで意識を失い、無感覚であることを保証すべきである。
【0003】
動物をガスで気絶させる場合、意識喪失と麻酔が進行する。そのプロセスは、鎮痛段階(analgesia stage)から始まり、興奮段階(excitation stage)、麻酔段階(anesthesia stage)と続き、最後に崩壊(collapse)というように、段階が連続していると説明され得る。
【0004】
豚を気絶させるために頻繁に使用される気絶させる方法は、COへの曝露を含む。COで気絶される豚の場合、次のことが観察される。鎮痛段階では豚は依然として直立し、興奮段階では豚は横たわり、麻酔段階では豚は角膜反射を示し、深い麻酔段階になると角膜反射は消失し、崩壊段階では豚は反射を全く示さない。
【0005】
上述の気絶させる段階(複数)の間、動物は、典型的には次のような身体的プロセスを経る。すなわち、意識的な動き、めまい/不確かな動き、バランスを崩して横たわる、興奮(無意識)、規則的な呼吸が低下して消失(胸部)、繊毛反射(睫毛反射)が消失、角膜反射が消失、表面的なあえぎ呼吸(横隔膜)、および死である。
【0006】
殺処分の前に屠殺場で例えば豚などの動物を気絶させる先行技術のシステムおよび方法では、気絶プロセスの最初の部分の間、多くの動物について酷い(severe)反応が観察されることがある。このような反応は、豚が最初に例えばCOに曝露されたときに発生する可能性があり、興奮およびストレス行動に至る。
【0007】
これまでの取り組みにもかかわらず、依然として、豚などの動物のストレスレベルを軽減することが求められている。特に、気絶させる手順に関して、動物の福祉をさらに改善することが望まれる。さらに、動物の反応は、打撲傷の原因となり、肉質を低下させる可能性がある。このような背景から、また、気絶プロセスの初期段階において観察される反応は短時間しか続かないにもかかわらず、これらの反応を可能な限り低減させることが望まれる。
【発明の概要】
【0008】
概して、本明細書に開示される方法及びシステムの少なくとも幾つかの実施形態は、先行技術の上述の欠点および/または他の欠点の1つ以上を軽減または排除しようとするものである。
【0009】
一局面では、本明細書に開示されるのは、予備気絶および/または気絶プロセスの間に予備気絶用緩和ガス(pre-stunning relaxation gas)および/または気絶用ガス(stunning gas)に曝露されたときの動物の反応を低減する方法の実施形態であって、
上記方法は、
- 少なくとも1匹の動物を、或る曝露期間の間、予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露することと、
- 上記少なくとも1匹の動物を、上記曝露期間の少なくとも一部の間、特に上記曝露期間の初期部分の間に、少なくとも1つの匂い添加物に曝露すること
を含む。
【0010】
本明細書に記載された方法の実施形態は、豚などの動物の気絶プロセスの初期段階において、他の方法では観察されるかもしれない酷い反応を低減するか、または防止さえする。匂い添加物の存在下で上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露されたときの動物の反応は、非常に低いレベルを示し、または全く興奮しないことさえある。これにより、動物の福祉が向上し、肉の品質が低下するリスクが減少する。このように、上記匂い添加物の存在が上記動物による興奮を引き起こす知覚をかなり減少させることが判明しているという意味で、上記匂い添加物の存在は、予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスをマスクする(覆い隠す)。
【0011】
本開示は、上記および以下に記載される方法、対応する装置、システム、方法、および/または製品を含む、異なる局面(複数)に関する。それら局面の各々が、1つ以上の他の局面に関連して説明される1つ以上の利益および利点をもたらす。それら局面の各々が、1つ以上の他の局面に関連して説明された、および/または、添付の請求項に開示された実施形態に対応する1つ以上の実施形態を有する。
【0012】
特に、一局面によれば、動物を予備気絶および/または気絶させるためのシステムの実施形態は、
- 予備気絶および/または気絶されるべき少なくとも1匹の動物を取り囲むように構成されたエンクロージャと、
- 上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段と、
- 上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段と
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の気絶プロセスおよび/または予備気絶プロセスを模式的に示す図である。
図2】一実施形態の気絶プロセス(予備気絶プロセスを含む)を模式的に示す図である。
図3】一実施形態の、動物を気絶させるためのシステムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示される方法の少なくとも幾つかの実施形態は、気絶用ガスによる気絶プロセスの間の動物の反応を低減する。特に、上記気絶プロセスは、屠殺場で実施され得る。
【0015】
本発明者は、上記気絶用ガスへの曝露の少なくとも一部の間、特に上記気絶用ガスへの曝露の初期部分において、動物が匂い添加物に曝露されると、上記気絶プロセスの間の動物の反応がかなり低減され得ることに気付いた。上記気絶プロセスの間、少なくとも1匹の動物は、気絶曝露期間中、気絶用ガスに曝露される。上記少なくとも1匹の動物は、上記気絶曝露期間の少なくとも一部、特に上記気絶曝露期間の初期部分において、少なくとも1つの匂い添加物に曝露される。
【0016】
匂い添加物の存在は、上記気絶用ガスへの曝露の知覚をマスクすると考えられる。本発明者は、動物が、気絶用ガスへの曝露に加えて匂い添加物に曝露される場合、気絶用ガスに対する動物の反応がかなり減少することを発見した。本発明者は、気絶用ガスに加えて匂い添加物を投与した場合、パニックまたは嫌悪反応は言うまでもなく、酷い反応が回避されることを観察してきている。
【0017】
幾つかの実施形態では、予備気絶プロセスが上記気絶プロセスに先行する。予備気絶プロセスでは、上記気絶されるべき少なくとも1匹の動物が、予備気絶用緩和ガス、特に予備気絶用緩和ガス混合物に曝露される。上記予備気絶用緩和ガスへの曝露は、予備気絶緩和曝露期間にわたって続き得る。本発明者は、動物が、上記予備気絶用緩和ガスへの曝露の少なくとも一部の間、特に上記予備気絶用緩和ガスへの曝露の初期部分の間に匂い添加物に曝露されると、上記予備気絶プロセスおよび/またはそれに続く上記気絶プロセスの間の動物の反応が減少され得ることに気付いた。上記予備気絶プロセスの間、上記少なくとも1匹の動物は、予備気絶緩和曝露期間の間、予備気絶用緩和ガスに曝露され、かつ、上記少なくとも1匹の動物は、少なくとも予備気絶緩和曝露期間の一部の間、特に上記予備気絶緩和曝露期間の初期部分の間に、少なくとも1つの匂い添加物に曝露される。
【0018】
幾つかの実施形態では、上記気絶されるべき少なくとも1匹の動物は、上記予備気絶用緩和ガスへの曝露の少なくとも一部の間、および、上記気絶用ガスへの曝露の少なくとも一部の間に、上記匂い添加物に曝露されてもよい。特に、上記少なくとも1匹の動物の上記匂い添加物への曝露は、上記少なくとも1匹の動物の上記予備気絶用緩和ガスへの曝露の前または曝露中に開始され、かつ、それに続く上記少なくとも1匹の動物の上記気絶用ガスへの曝露の間に継続または反復されてもよい。上記予備気絶の間に使用される匂い添加物は、上記それに続く気絶プロセスの間に使用されるのと同じ匂い添加物であってもよいし、異なる匂い添加物であってもよい。
【0019】
それに代えて、気絶されるべき上記少なくとも1匹の動物は、上記予備気絶用緩和ガスへの曝露の少なくとも一部の間のみか、上記気絶用ガスへの曝露の少なくとも一部の間のみのいずれか一方に、上記匂い添加物に曝露されてもよい。
【0020】
上記少なくとも1匹の動物は、家畜であってもよい。上記少なくとも1匹の動物は、屠殺されるべき動物であってもよい。上記少なくとも1匹の動物は、豚、牛、子羊(lambs)、山羊(goats)、家禽からなる群から選択された動物であってもよい。
【0021】
特に、本明細書に開示される方法の幾つかの実施形態は、豚のような、自らの環境、特に自らの環境の変化に対して比較的高い意識および/または感受性を示す動物を気絶させる場合に、特に有用である。豚を気絶させるのにCOを使用する場合、CO濃度が10~20%またはそれより高いとき、ネガティブな反応が観察されることがある。このようなCO濃度に曝露されたとき、豚は後方へ移動または後ずさりすることが観察されている。COへの曝露、特に気絶させる間に一般的に使用される高濃度のCOへの曝露は、豚にストレスを与え、見た目に強い興奮、特に無意識の動きを引き起こす可能性がある。強い興奮は、特にハム(もも肉)における小さな打撲傷という形で、肉質の低下につながることもある。例えばアルゴンのような匂いの無いガスでも、豚がそのような「匂いの無い(smell free)」ガスにさらされると、反応を起こす。また、気絶プロセスの後の段階の間、豚はより興奮し、これはより強い興奮の動き(無意識)につながり、その結果、小さな打撲傷という形で肉質の低下を招く。COへの曝露と興奮開始との間に、例えば約20~30秒間の遅延があり、その間に上記ガスに対する強い反応が見られる。
【0022】
本明細書では、明示的に別段の記載がない限り、ガス濃度のパーセンテージは体積%として理解されるものとする。
【0023】
上記少なくとも1匹の動物は、単一の動物であってもよいし、複数の動物、特に、例えば同じ種(species)などの同じタイプの動物であってもよい。したがって、本明細書に開示される方法の実施形態は、複数の動物を同時に気絶させるために使用されてもよい。上記複数の動物の各動物は、豚、牛、子羊、山羊、家禽からなる群から選択されてもよい。上記複数の動物は、少なくとも2匹の動物、例えば3匹の動物、例えば4匹の動物、例えば7匹若しくは8匹の動物、例えば15匹の動物を含んでいてもよい。例えば牛などの比較的大きな動物については、一度に1匹の動物を気絶させることが典型的であるかもしれない。
【0024】
上記少なくとも1匹の動物を上記気絶用ガスに曝露することは、その動物を気絶用ガス混合物に曝露することを含んでいてもよい。上記気絶用ガス混合物は、例えばCOと1つ以上の他のガスのような、1つ以上の気絶用ガスを含んでいてもよい。
【0025】
上記気絶用ガス混合物は、麻酔効果を有する主要量の気絶用ガスを含むのが望ましい。上記気絶用ガスに加えて、上記気絶用ガス混合物は、例えば窒素、アルゴン、酸素、および、それらの組み合わせのような、大気空気中に通常存在する1つ以上のガスを含んでもよい。上記気絶用ガス混合物は、さらに、例えば大気空気中に通常少量存在するような、少量の他のガスを含んでもよい。
【0026】
上記気絶用ガスは、COであってよく、少なくともCOを含む。特に、上記気絶用ガス混合物は、少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%の濃度で、COを含んでいてもよい。上記COの濃度は、気絶させる動物のタイプに依存することが理解されるだろう。バランスは、大気空気中に通常存在する他のガスであってもよい。上記バランスは、例えば窒素またはアルゴンのような、主要量の生理的に不活性なガスを含んでもよい。上記バランスは、少量の、酸素、および/または、大気中に通常少量存在する他のガス(複数)を含んでもよい。上記他のガス(複数)は、互いに対して、大気中での相対的濃度に対応する、または大気中での相対的濃度とは異なる、相対的な濃度を有することができる。
【0027】
気絶用ガスの他の例は、窒素とアルゴン若しくはそれらの混合物、または、窒素および/若しくはアルゴンとCOとの混合物を含む。幾つかの実施形態では、上記少なくとも1匹の動物を上記気絶用ガスに曝露することは、生理的に有効な濃度、特に麻酔効果を有する濃度の上記気絶用ガスへの曝露を含む。
【0028】
幾つかの実施形態では、上記気絶プロセスの間、上記気絶用ガスの濃度は、開始レベルから最大レベルまで増加される。特に、上記増加は、上記気絶プロセスの初期段階の間に生じてもよい。幾つかの実施形態では、上記増加は、例えば60秒間未満、例えば30秒間未満、例えば15秒間未満のような、比較的短い期間にわたって起こる。上記開始レベルは、大気空気中の上記気絶用ガスの通常の濃度に対応してもよい。例えば、COが気絶用ガスとして使用される場合、上記開始レベルは、10%未満、例えば5%未満、例えば1%未満などであってもよい。上記最大レベルは、50%超、例えば60%超、例えば70%超、例えば80%超などであってもよい。
【0029】
上記増加は、気絶用チャンバのような気絶用エンクロージャの中に気絶用ガスを供給することによって達成されてもよい。その間、上記気絶用エンクロージャの内部に上記少なくとも1匹の動物が配置される。例えば、気絶させる間、上記少なくとも1匹の動物は、エンクロージャ内に配置され、上記エンクロージャの中に、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば約99%の濃度のCOが、上記エンクロージャ内のCO濃度が70%超、好ましくは80%超の濃度に達するまで供給されてもよい。それに代えて、または、それに加えて、上記少なくとも1匹の動物が曝露される上記気絶用ガスの濃度の増加は、上記動物を、低い気絶用ガス濃度の領域から、例えば気絶用ガスで予め充填されたエンクロージャなどの、高い気絶用ガス濃度を有する(気絶用チャンバのような)気絶用エンクロージャの中に移動させることによって、達成され得る。
【0030】
上記匂い添加物は、薬理作用を有しない成分であってもよい。特に、上記匂い添加物は、麻酔作用および/または鎮痛作用を有しない成分であってもよい。このように、上記匂い添加物は、薬理作用を有する上記気絶用ガスの成分に加えて、特に麻酔作用および/または鎮痛作用を有する上記気絶用ガスの成分に加えて、提供される。上記匂い添加物は、上記気絶用ガスの匂いのマスキングまたは知覚の隠蔽、例えば、上記気絶用ガスによって呼び起こされる匂いまたは他の感覚をマスキングするように、選択され得る。したがって、上記匂い添加物は、上記動物が上記気絶用ガスの存在をより良く受け容れることを引き起こす。特に、少なくとも幾つかの実施形態では、上記匂い添加物は、上記動物に対する唯一の効果が、上記気絶用ガスの匂いをマスキングすること、または、さもなければ上記気絶用ガスの存在の知覚を隠蔽することである成分である。例えば、COは刺激的な匂いを有すると認識されることがある一方、上記匂い添加物は、それ自体はいかなる薬理効果も有さないが、COの匂いをマスキングし、上記動物による高濃度COの存在に対する改善された受け容れを提供する。
【0031】
上記匂い添加物は、液体、ペースト、ガスまたは固体であってよく、例えば、上記1匹以上の動物によって知覚可能な1つ以上の揮発性化合物、特に揮発性芳香化合物を含むような、液体、ペーストまたは固体であってもよい。上記匂い添加物は、上記少なくとも1匹の動物の嗅覚系によって知覚可能な1つ以上の匂い物質(odorants)を含んでいてもよい。一般に、上記匂い添加物は、その匂いが、上記少なくとも1匹の動物の嗅覚系によって知覚されるとき、その動物にとって心地よい(pleasing)ものであるか、または、さもなければ鎮静(calming)効果を有するように選択され得る。上記匂い添加物の選択は、気絶されるべき動物の種に依存することが理解されるだろう。
【0032】
匂いの添加物は、1つ以上のフェロモンまたは1つ以上のフェロモンの化学的類縁体を含んでいてもよい。例えば、豚を気絶させる場合、匂い添加物として使用するためのフェロモンの例には、例えば、H.バーセレミーら(H. Barthelemy et al.): “豚アピージングフェロモン:化学的コミュニケーションで豚の福祉を改善する方法(The Pig Appeasing Pheromone: How chemical communication improve the welfare of pigs)”, リサーチ・インスティテュート・イン・セミオケミストリ・アンド・アプライド・エソロジー(Research Institute in Semiochemistry and Applied Ethology) (IRSEA), ル・シェネ(Le Chene), カルチェ・サリニオン(Quartier Salignan) 84400 APT-フランス(APT - FRANCE)、または、US6077867に記載されているような、「母性アピージングフェロモン(Maternal appeasing pheromone)」または「豚アピージングフェロモン(Pig appeasing pheromone)」(PAP)、または、その合成類縁体が含まれる。
【0033】
それに代えて、または、それに加えて、上記匂い添加物は、例えば、フルーティ(fruity)な匂い、特に甘くフルーティな匂い、好ましくは天然の果実の匂いなどの、上記少なくとも1匹の動物によって、香り(pleasant smell)として知覚される匂い(odor)またはアロマ(aroma)を引き起こす1つ以上の匂い物質を含んでいてもよい。特に、果実の匂い、特に甘い果実の匂い、例えば林檎の匂い、特に甘い林檎の匂い、または、マンゴー、桃、若しくは類似の果物の匂いを有する匂い添加物は、豚を気絶させる間の強い反応を低減することが判明している。
【0034】
幾つかの実施形態では、上記匂い添加物は、例えばジュースまたは他の液体植物抽出物、例えば果汁、特に濃縮果汁、または他のタイプの果実抽出物のような、1つ以上の植物抽出物を含む。上記果実抽出物などの植物抽出物は、上記植物または果実の匂い、好ましくは上記植物または果実の自然な匂いとして知覚可能な1つ以上の揮発性芳香化合物を含むのが望ましい。
【0035】
天然植物抽出物、特に果汁などの天然果実抽出物は市販されており、また、例えば圧搾および/または発酵および/または他の適切なプロセスなどを含む、公知の伝統的なプロセスを用いて容易に製造され得る。したがって、天然植物抽出物に基づく匂い添加物は安価である。また、それらは、取り扱いが簡単であり、毒性もない。
【0036】
幾つかの実施形態では、上記匂い添加物は、植物または果実の匂いとして知覚可能な揮発性芳香化合物の1つ以上の化学的類縁体、および/または他の適切な合成の匂い物質を含む。
【0037】
幾つかの実施形態では、上記フルーティな匂いは、林檎の匂い、梨の匂い、マンゴーの匂い、葡萄の匂い、オレンジの匂い、マンダリンの匂い、パパイヤの匂い、桃の匂いからなる群から選択される。
【0038】
上記匂い添加物は、気絶又は予備気絶に使用される上記エンクロージャの内部に分布されてもよい。上記匂い添加物は、例えば、ガスの形態で、または液滴の形態で、例えば液滴の霧として、特に霧状で投与されてもよい。例えば、上記匂い添加物は、液体の形態にある濃縮され霧化された果汁、および/または、液体若しくは固形の形態、例えばペーストの形態にある1つ以上のフェロモンであるのが望ましい。
【0039】
果物の匂い、特に林檎の匂いは、多くの動物、特に多くの豚がCOへの曝露に気付かないように、すなわち、気絶プロセスの初期段階(例えば横たわる前)の間、動物が処理に気付かないように、COへの曝露を効果的に隠すことが発見されている。
【0040】
好ましくは、上記少なくとも1匹の動物は、上記動物によって知覚可能で、かつ鎮静効果をもつのに十分な、並びに/または、上記気絶用ガスおよび/若しくは気絶用予備ガスの存在を隠すのに十分な、量または濃度の匂い添加物に曝されるべきである。上記匂いの添加物の適切な量は、上記動物が気絶および/または予備気絶プロセスを受ける上記エンクロージャのサイズ、同時に何匹の動物が気絶させられ又は予備気絶プロセスで処理されるか、動物のタイプ、並びに、匂い添加物のタイプに依存することが理解されるだろう。上記匂い添加物の適切な量は、簡単な試験によって決定され得る。一例として、豚(複数)のCO気絶プロセスの間、1gから10gの間の濃縮林檎ジュースが動物の反応を減少させるのに十分である、ということが判明している。しかしながら、例えば、処理用エンクロージャのサイズに応じて、上記匂い添加物の分布の効果に応じて、および/または、匂い添加物のタイプに応じて、より少ない量又はより多い量が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、上記処理用エンクロージャにおける、例えば濃縮果汁(例えばリンゴ果汁)などの上記匂い添加物の濃度は、5mg/mと5000mg/mとの間、例えば50mg/mと1000mg/mとの間、例えば50mg/mと500mg/mとの間である。上記少なくとも1匹の動物が曝露される上記匂い添加物の量または濃度は、上記曝露の大部分を通して実質的に一定であってもよく、あるいは、上記量または濃度は、上記曝露の全体を通して変化してもよい。
【0041】
より詳細に以下に説明されるように、上記少なくとも1匹の動物は、上記気絶用ガスおよび/または上記予備気絶用緩和ガスに対して、処理用エンクロージャ内、特に気絶用エンクロージャおよび/または予備気絶用エンクロージャ内で、曝露されてもよい。上記匂い添加物は、上記少なくとも1匹の動物が上記処理用エンクロージャの内部にいるとき、上記匂い添加物が上記少なくとも1匹の動物によって知覚され得るように、上記処理用エンクロージャ中に投与されてもよい。この目的のために、上記匂い添加物は、適切な投与装置によって、上記処理用エンクロージャの中に投与されてもよい。特に、上記匂い添加物は、上記処理用エンクロージャの全体にわたって分布されてもよいし、あるいは、上記処理用エンクロージャの少なくとも、上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露される部分にわたって分布されてもよい。
【0042】
液体の形態にある匂い添加物は、上記処理用エンクロージャの内部の雰囲気の中に噴霧され、および/または、上記処理用エンクロージャの内部の適切な表面に噴霧されてもよい。上記匂い添加物は、霧として、または、さもなければ他の小滴として、特に霧化された形態で噴霧されてもよい。それに代えて、上記匂い添加物は、異なる態様で、例えば、液体、ペースト、または固体材料のような、匂い投与材料を収容している匂い容器を設けることによって、投与されてもよい。上記投与装置は、ガス吸入口及びガス排出口を含み、ホストガスをエア吸入口の中に引き込み、例えば多孔質又は孔あき材料を通して上記匂い投与材料を通過させ、上記ガス排気口を通して上記処理用エンクロージャの中に上記匂い添加物を含む上記ホストガスを投与するように構成されてもよい。上記ホストガスは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガス、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分であってもよい。または、上記ホストガスは、上記処理用エンクロージャの内部の雰囲気ガス(上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスを含む)であってもよい。また、上記処理用エンクロージャに上記匂い添加物を投与するための他の投与装置が用いられ得ることは、理解されるだろう。
【0043】
上記匂い添加物は、上記気絶用ガスおよび/または上記予備気絶用緩和ガスとともに上記処理用エンクロージャの中に投与されてもよい。この目的のために、上記匂い添加物は、例えば、混合物を上記処理用エンクロージャの中に投与するのに先立って、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスに添加されてもよく、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分に添加されてもよい。特に、上記匂い添加物は、上記気絶用ガスおよび/若しくは上記予備気絶用緩和ガスと混合されてもよく、または、それらのガス成分と混合されてもよい。そして、上記匂い添加物と上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスとの混合物、または、上記匂い添加物と上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分との混合物は、上記処理用エンクロージャの中に投与されてもよい。それに代えて、または、それに加えて、上記匂い添加物は、上記気絶用ガスおよび/または上記予備気絶用緩和ガスとは別に、並びに、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスの如何なるガス成分とも別に、上記処理用エンクロージャの中に投与されてもよい。別々に投与される場合でも、上記匂い添加物は、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスと同時に、並びに/または、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスに先立って、上記処理用エンクロージャの中に投与され得るし、あるいは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分と同時に、並びに/または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分に先立って、上記処理用エンクロージャの中に投与され得る。この目的のために、上記匂い添加物は、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスを吐出するための、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分を吐出するための吐出口とは別の、ノズル、穴あき材料、多孔質材料などの1つ以上の吐出開口部を通して投与されてもよい。上記匂い添加物は、霧化装置(misting device)または噴霧装置(atomizer device)によって投与されてもよい。
【0044】
上記少なくとも1匹の動物を上記気絶用ガスへの曝露によって気絶させる場合、上記少なくとも1匹の動物は、気絶曝露期間の間、上記気絶用ガスに曝露される。上記気絶曝露期間の長さは、上記動物の種類、上記気絶用ガスの種類、および上記気絶用ガスの濃度に依存し得る。例えば、少なくとも80%のCO濃度でCO気絶を使用して屠殺のために豚を気絶させる場合、豚は、60秒間以上、例えば90秒間以上、例えば120秒間以上の気絶曝露期間の間、COに曝露され得る。同様に、予備気絶プロセスの間、少なくとも1匹の動物を予備気絶用緩和ガスに曝露する場合、上記少なくとも1匹の動物は、予備気絶緩和曝露期間の間、予備気絶用緩和ガスに曝露される。上記気絶曝露期間と上記予備気絶緩和曝露期間とは、同じ長さを有する必要はない。本明細書では、これらは、簡潔に「曝露期間」とも表記される。
【0045】
上記少なくとも1匹の動物は、上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和ガスおよび/または上記気絶用ガスに曝露される上記曝露期間の少なくとも一部、特に初期部分の間、上記匂い添加物に曝露される。幾つかの実施形態では、上記匂い添加物への曝露は、上記少なくとも1匹の動物の上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスへの曝露の前に、または、上記少なくとも1匹の動物の上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスへの、少なくとも上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの目標濃度、特に最大濃度での曝露の前に、開始される。例えば、幾つかの実施形態では、上記匂い添加物の曝露は、上記少なくとも1匹の動物が曝露される上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスの濃度が、例えば10%以下のようなトリガ閾値に達する前に、開始される。
【0046】
幾つかの実施形態では、上記少なくとも1匹の動物を少なくとも1つの匂い添加物に曝露することは、上記少なくとも1匹の動物を予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露することを開始する前に、開始される。この目的のために、上記処理用エンクロージャの中に上記匂い添加物を投与することは、上記処理用エンクロージャの中に上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスを投与するのに先立って、または、上記処理用エンクロージャの中に上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分を投与するのに先立って、開始され得る。それに代えて、例えば、上記少なくとも1匹の動物が予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスで充填された処理用エンクロージャに入る実施形態では、上記匂い添加物は、上記処理用エンクロージャの入口領域で投与されてもよい。そこでは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスへの曝露が無いか又は少ない、例えば、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または上記気絶用ガスの濃度が低い。上記少なくとも1匹の動物が、例えばエレベータなどのコンベア装置によって上記処理用エンクロージャの中に搬送される場合、上記コンベア装置は、上記匂い添加物を投与するための投与装置を含んでいてもよい。それによって、上記少なくとも1匹の動物は、上記コンベア装置に配置されたとき、上記コンベア装置が上記処理用エンクロージャの中に移動するのに先立って、上記匂い添加物に曝露される。幾つかの実施形態では、上記匂い添加物は、さらに、保持領域から上記処理用エンクロージャへの経路に沿って、または、上記保持領域においてさえ、投与されてもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、上記匂い添加物への曝露は、上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスに曝露されている間、開始または継続される。したがって、上記匂い添加物は、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの投与と同時に、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスのガス成分の投与と同時に、上記処理用エンクロージャの中に投与され得る。それに代えて、上記匂い添加物は、上記少なくとも1匹の動物が上記処理用エンクロージャに入るのに先立って、または、入るのと同時に、予め充填された処理用エンクロージャに投与されてもよい。上記匂い添加物への曝露が、予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスへの曝露に先立って開始されるか、または曝露と同時に開始されるかにかかわらず、上記匂い添加物は、上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスに曝露される上記曝露期間の少なくとも一部の間、例えば、上記曝露期間の少なくとも一部にわたって匂い添加物の十分な高濃度を維持するように、連続的または断続的に投与され得る。
【0048】
幾つかの実施形態では、上記匂い添加物は、上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスへの曝露全体を通して十分に高濃度の匂い添加物に曝露されるのを保証するように、上記曝露期間全体を通して投与される。このことは、例えば、動物が処理用チャンバに連続的に進められるような、連続的動作を用いる実施形態にも適用され得る。それに代えて、上記匂い添加物の投与は、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスへの曝露が終了する前に、終了されてもよい。
【0049】
上記匂い添加物への曝露期間は、上記匂い添加物の種類、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスの種類、並びに、動物のタイプに依存し得る。例えば、動物を気絶させる場合、気絶されるべき上記少なくとも1匹の動物は、上記少なくとも1匹の動物が無意識状態に達し、および/または、横たわるまで、上記匂い添加物に曝露され得る。この期間は、上記気絶用ガスの種類や濃度、動物のタイプに依存し得る。例えば、少なくとも80%のCO濃度で豚を気絶させる場合、殆どの豚は約30秒間のCOへの曝露後に横たわる。したがって、上記匂い添加物への曝露は、少なくとも30秒後、例えば、少なくとも60秒後などに、終了され得る。上記匂い添加物への曝露、特に、上記匂い添加物の投与は、より早く終了され得ることが理解されるだろう。幾つかの実施形態では、上記匂い添加物の投与は、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスへの曝露の開始から5秒後に、例えば、上記予備気絶緩和用ガスおよび/または気絶用ガスへの曝露の開始から10秒後、20秒後、30秒後、60秒後などに、終了され得る。例えば、投与された後に匂い添加物が動物に知覚される時間が長いほど、また、上記匂い添加物の濃度が上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスの知覚をマスクするのに十分高く残るほど、より早く上記匂い添加物の投与は終了され得る。通常、幾つかの実施形態では、上記少なくとも1匹の動物は、上記匂い添加物と上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスとに対して同時に、少なくとも5秒間、例えば、少なくとも10秒間、少なくとも20秒間、少なくとも30秒間、少なくとも60秒間、曝露される。
【0050】
動物を気絶させる場合、気絶されるべき上記少なくとも1匹の動物が気絶プロセス開始から横たわるまで、上記匂い添加物に曝露されるのが望ましい。というのも、これは、上記動物がCOのような気絶用ガスに曝されるときに最も反応が出やすい時期だからである。したがって、上記匂い添加物は、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または予備気絶用ガスと一緒に、または、それらに加えて、投与されてもよい。だから、動物を気絶させる場合、上記匂い添加物は、気絶プロセスの少なくとも初期段階の間、例えば、動物が横たわるまで、または、意識を失うまで、繰り返しまたは連続的に投与されてもよい。上記匂い添加物の投与は、気絶されるべき動物が横たわったら、終了され得る。
【0051】
幾つかの実施形態では、上記匂い添加物の投与は、比較的低い投与速度で、すなわち、投与されるガスの比較的低い流速で、上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスの投与と組み合わされてもよい。特に、ガスの導入は、0m/sより大きく、かつ4m/sを下回る低い流速で行われてもよい。このことは、例えば、入ってくるガスを低い流速で広い面積に分配し得る綿のパイプを使用することによって達成されるかもしれない。それによって、より多くの豚を実質的に同時に曝露することができる。
【0052】
図1は、動物を気絶および/または予備気絶させるための方法の一例を示すフローチャートである。
【0053】
ステップS11では、少なくとも1匹の動物に例えばCOなどの気絶用ガスおよび/または予備気絶用ガスが曝露される。このとき同時に、上記少なくとも1匹の動物は、例えば林檎の匂いや他の種類の果物の匂いなどの、少なくとも1つの匂い添加物に曝露される。この目標を達成するために、上記少なくとも1匹の動物は、十分に高い濃度の気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガスで予め充填された処理用チャンバのような処理用エンクロージャの中に移動されてもよい。上記少なくとも1匹の動物が上記処理用エンクロージャに入るのに先立って又は上記処理用エンクロージャに入るのと同時に、上記処理用エンクロージャの内部に匂い添加物が投与されてもよい。それに代えて、上記少なくとも1匹の動物は、上記処理用エンクロージャが大気空気で満たされている間に、上記処理用エンクロージャの中に移動されてもよい。上記処理用エンクロージャの内部に上記少なくとも1匹の動物が一旦配置されたら、気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガス(または気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスのガス成分)が上記処理用エンクロージャ内に投与され、また、匂い添加物も上記処理用エンクロージャの中に投与される。上記匂い添加物の投与は、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスの投与に先立って、または投与と同時に(あるいは、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスのガス成分の投与と同時に)開始されてもよい。さらに、上記匂い添加物の投与は、上記動物が上記処理用エンクロージャに入る前に開始されてもよい。
【0054】
ステップS12では、上記少なくとも1匹の動物が上記気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガスに曝露されたまま、上記匂い添加物の投与が、初期曝露期間の間、継続または繰り返される。例えば、幾つかの実施形態では、上記少なくとも1匹の動物が上記気絶用ガスに曝露されているとき、上記少なくとも1匹の動物が無意識状態に達するまで、上記匂い添加物の投与が繰り返されるか又は継続され得る。
【0055】
ステップS13では、上記気絶用ガスおよび/または上記予備気絶用緩和ガスへの曝露が、追加曝露期間の間、継続される。任意に、この追加曝露期間中に、上記匂い添加物の投与が継続または繰り返されてもよい。
【0056】
ステップS14では、上記処理用エンクロージャから、上記少なくとも1匹の動物が取り出される。しかしながら、予備気絶および気絶させるのが同じ処理用エンクロージャ内で実行されてもよいことは理解されるだろう。その場合、上記少なくとも1匹の動物は、両方のプロセスが完了した後に、上記処理用エンクロージャから取り出され得る。
【0057】
上述したように、上記気絶プロセスは、予備気絶プロセス、特に、気絶されるべき上記少なくとも1匹の動物が予備気絶用緩和ガスに曝露される予備気絶緩和プロセスによって先行されてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、予備気絶緩和は、上記少なくとも1匹の動物を、予備気絶用緩和ガス、例えば10%未満の濃度でOを含むガス混合物に曝露することによって実行され得る。上述のO濃度は、動物にとって麻酔を引き起こす濃度よりも高い、酸素濃度の最小レベルより上であってもよい。上記ガス混合物中の酸素濃度の最小レベルは、動物種によって異なってもよく、3~10%であってもよい。好ましくは、上記酸素濃度は、10%未満で、4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上などである。特に、豚については、予備気絶用緩和ガス混合物の酸素濃度の最小レベルは、動物のストレスレベルが低減され、かつ麻酔されない状態を確保するために、6%程度であるのが望ましい。
【0059】
上記予備気絶用緩和ガス混合物は、例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素及びそれらの組み合わせなどの、大気空気中に通常存在する1つ以上の他のガスを含んでもよい。上記予備気絶用緩和ガス混合物は、さらに、例えば大気中の空気に通常少量存在する、少量の他のガスを含んでもよい。上記予備気絶用緩和ガスは、例えば窒素および/またはアルゴンおよび/またはキセノンなどの、主要量の1つ以上の生理的に不活性なガスを含んでいるのが望ましい。ここでいう生理的に不活性なガスとは、処理対象となる動物に対して生理的に不活性なガスであることが意図されている。
【0060】
幾つかの実施形態では、上記予備気絶用緩和ガスは、COを含まないか、または、少なくとも処理される動物のストレスレベルを増加させない量のCOのみを含む。幾つかの実施形態では、上記予備気絶用緩和ガス混合物中の二酸化炭素の濃度は、5%未満、好ましくは1%未満、例えば0.5%未満、例えば0.1%未満などである。上記ガス混合物中の二酸化炭素のこの最大濃度は、牛については、例えば21%未満、例えば15%未満、例えば10%未満など、より高くてもよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、上記予備気絶プロセスの間、酸素レベルは、例えば通常の大気中の酸素濃度である最大レベルから、動物にとって麻酔を引き起こす濃度より高くてもよい最小レベルまで、減少され、特に徐々に減少される。一実施形態では、酸素の最大レベルは、17~25%、好ましくは19~23%、好ましくは21%程度である。
【0062】
上記予備気絶プロセスの間、上記少なくとも1つの生理的に不活性なガスの濃度は、最小レベルから最大レベルまで上昇されてもよい。
【0063】
一実施形態では、上記少なくとも1つの生理学的に不活性なガスの濃度の最小濃度は、75~83%、好ましくは77~81%、好ましくは約79%である。一実施形態では、上記少なくとも1つの不活性なガスの濃度の最大濃度は、90~97%の間、好ましくは92~96%の間、好ましくは約94%程度である。
【0064】
上記生理的に不活性なガスの濃度の増加および上記酸素の濃度の減少は、上記予備気絶プロセスが実行される予備緩和エンクロージャの中に上記生理的に不活性なガスを投与することによって達成される。
【0065】
一実施形態では、最初の曝露されるガス混合物は大気空気である。
【0066】
一実施形態では、上記少なくとも1つの生理的に不活性なガスは、Nガスおよび/またはArを含む。
【0067】
一実施形態では、上記ガス混合物は、COを含み、上記COの濃度は、0.1%から最大濃度レベルまでの範囲であり、上記最大濃度レベルは、動物に麻酔を引き起こす濃度レベルより低い。予備気絶用緩和ガス中のこの最大CO濃度レベルは、21%より低くてもよい。
【0068】
幾つかの実施形態では、上記予備気絶用緩和ガスへの曝露に先立って、および/または、予備気絶用緩和ガスへの曝露と同時に、上記少なくとも1匹の動物が匂い添加物に曝露される。例として、匂い添加物は、処理されるべき上記少なくとも1匹の動物が配置される、例えばチャンバまたは部屋、例えば密閉されたチャンバまたは部屋、特に、気密なチャンバまたは部屋などの、予備気絶用緩和エンクロージャの内部に、投与され得る。上記匂い添加物は、予備気絶用緩和エンクロージャの内部で液体の匂い添加物を噴霧することによって投与されてもよい。(通常の大気空気と比較して)低下されたO濃度をもつ雰囲気への、および、匂い添加物への曝露は、動物にリラックス効果をもたらす。
【0069】
一実施形態では、上記少なくとも1つの予備気絶用緩和エンクロージャは、動物が生活する部屋、または、動物がさらなるプロセスのために待機する部屋若しくはチャンバであってもよい。上記少なくとも1つのチャンバは、動物を気絶用チャンバに搬送するための搬送コンベヤシステム上の搬送エンクロージャであってもよい。また、上記少なくとも1つのチャンバは、気絶させる設備の前に配置されたチャンバ、または、気絶させる設備の一部であってもよい。少なくとも1匹の動物のストレスレベルを低減させるためのチャンバ内で、上記予備気絶用緩和ガス混合物は、上記少なくとも1匹の動物を囲むチャンバに供給され得る。また、上記酸素の最小レベルおよび上記少なくとも1つの不活性ガスの最大レベルは、上記チャンバ内で、予備気絶緩和曝露期間の間、維持され得る。
【0070】
別の実施形態では、少なくとも1つの予備気絶用緩和エンクロージャは、上記動物が受け取られる第1の位置から、上記少なくとも1つの後続プロセス、特に上記気絶プロセスが行われる第2の位置まで延在する。上記予備気絶用緩和ガスへの曝露は、上記少なくとも1匹の動物が上記第1の位置から上記第2の位置に向かって移動する間に行われる。上記第1の位置は、上記酸素の濃度が最大で、上記少なくとも1つの不活性ガスの濃度が最小である位置であり、上記第2の位置は、上記酸素の濃度が最小で、上記少なくとも1つの不活性ガスの濃度が最大である位置である。一例として、上記第1の位置は、動物が例えばグループで上記少なくとも1つのチャンバの中に入れられる保持エリア位置であり、そこでは、適切な機構が上記動物に上記第2の位置に向かって移動するよう促すか、または自動的に移動させ、その結果、上記第2の位置に到達したときに、予備気絶用緩和レベルが最大に達しているようにしてもよい。一例として、上記第2の位置には、気絶させる装置があってもよい。すなわち、上記第2の位置に到達すると、上記動物は上記気絶用エンクロージャの中に搬送されてもよい。
【0071】
別の実施形態では、上記動物を上記ガス混合物に曝露するステップは、上記動物が止まっている間である。
【0072】
図2は、上記プロセスが予備気絶プロセスを含む、動物を気絶させる方法の一例を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS21では、少なくとも1匹の動物は、予備気絶用緩和ガスに、および、例えば林檎の匂いまたは別の種類の果実の匂いなどの少なくとも1つの匂い添加物に、曝露される。この目的のために、上記少なくとも1匹の動物は、例えば予備気絶用緩和チャンバなどの予備気絶用緩和エンクロージャの中に移動されてもよい。上記少なくとも1匹の動物が上記予備気絶用緩和エンクロージャ内に一旦配置されると、上記動物は、例えば、上記予備気絶用緩和エンクロージャの内部で、生理的に不活性なガスの濃度を増加し、かつ、酸素の濃度を低下させることによって、予備気絶用緩和ガスに曝される。この目的のために、上記予備気絶用緩和エンクロージャは、周囲の大気空気が上記予備気絶用緩和エンクロージャに入らないように密閉されてもよい。また、上記少なくとも1匹の動物は、例えば、上記予備気絶用緩和エンクロージャの中に匂い添加物を投与することによって、上記匂い添加物に曝される。上記匂いの添加物の投与は、上記予備気絶用緩和ガスへの曝露に先立って開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。さらに、上記匂いの添加物の投与は、上記動物が上記予備気絶用緩和エンクロージャに入る前に開始されてもよい。
【0074】
ステップS22では、例えば図1に関して説明したように、上記気絶プロセスが開始される。この目的のために、上記少なくとも1匹の動物が、上記予備気絶用緩和エンクロージャから別の気絶用エンクロージャの中に移動されてもよい。それに代えて、上記気絶プロセスは、例えば、気絶用ガスを現在予備気絶用緩和ガス混合物で満たされている上記予備気絶用緩和エンクロージャの中に投与することによって、同じエンクロージャ内で実行されてもよい。上記匂い添加物の投与は、例えば図1に関して説明したように、少なくとも上記気絶プロセスの上記初期期間の間、繰り返されてもよく、または継続されてもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、上記予備気絶プロセス、特に上記予備気絶用緩和ガスへの曝露は、上記気絶プロセス、特に、上記少なくとも1匹の動物の上記気絶用ガスへの曝露の開始に先立って、終了される。それに代えて、上記予備気絶プロセスと上記気絶プロセスとは、重なってもよい。したがって、幾つかの実施形態では、上記予備気絶プロセス、特に上記予備気絶用緩和ガスへの曝露は、上記気絶プロセスを開始した後、上記少なくとも1匹の動物の上記気絶用ガスへの曝露の初期部分または全体を通して、継続してもよい。
【0076】
概して、動物を予備気絶および/または気絶させるためのシステムの実施形態は、
- 予備気絶および/または気絶されるべき少なくとも1匹の動物を取り囲むように構成されたエンクロージャと、
- 上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段と、
- 上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段と
を備える。
【0077】
上記エンクロージャ(それは処理用エンクロージャとも呼ばれる)は、チャンバまたは他のタイプのエンクロージャであってもよい。上記少なくとも1匹の動物は、それ自身が上記処理用エンクロージャの中に移動してもよいし、例えば、エレベータ等の適切なコンベア装置によって上記処理用エンクロージャの中に搬送されてもよい。上記処理エクロージャは、上記気絶および/または予備気絶プロセスの間、特に気密に密封されてもよい。それに代えて、上記処理用エンクロージャは、部分的に開いていてもよい。例えば、上記気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガスが空気よりも高い比重を有する場合、上記処理用エンクロージャは、上方に開いた容器またはピットであってもよい。上記上方に開いた容器は、有効濃度の気絶用ガスおよび/または予備気絶用ガスで満たされ、その中に、上記少なくとも1匹の動物が、例えばエレベータまたは他のタイプのコンベア装置によって、沈められてもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、上記気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガスは、例えばU字状またはストレート状などのダクト内に投与される。上記ダクトは、動物の出入りのために、一端または両端で開いていてもよい。上記ダクトは、窪んだ部分、特に窪んだ中央部を有していてもよい。高濃度の気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガス、例えば、麻酔および/または崩壊さえ誘導する濃度の気絶用ガスが、上記ダクトの中央部で維持されてもよく、それにより、上記中央部で、効果的な麻酔および/または予備気絶緩和が生じる。動物は、収容ペンから、例えば大径パイプや滑らかな金属で作られた通路を通り、上記ダクトを通して上記動物を移動させるコンベア装置上に駆られる。上記動物は、例えば上記コンベヤ装置と同期した機械的なインペラによって、上記コンベヤ装置上で区分けされてもよく、そうでなければ、上記動物は、混雑するのを防止されてもよい。
【0079】
上記処理用エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段は、上記匂い添加物を投与するための1つ以上のノズル、または、上記匂い添加物を投与するための他の適切な装置を備えていてもよい。上記匂いの添加物は、適切な制御手段によって制御された量または濃度で、噴霧またはその他の方法で投与されてもよい。幾つかの実施形態では、上記システムは、少なくとも1つの匂い添加物および/または少なくとも1つのホストガスの供給を制御するための、制御ユニットおよび/または他の制御手段を備える。上記ホストガスは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガス、または、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスのガス成分であってもよい。幾つかの実施形態では、上記制御ユニットは、匂い添加物と混合された上記ホストガスの供給を制御するためのものである。上記制御手段は、調節可能なバルブ、調節可能なノズル、調節可能なポンプ若しくは換気装置、または投与される匂い添加物の量を制御するための別の装置を含んでいてもよい。
【0080】
予備気絶用ガスおよび/または気絶用ガスを上記エンクロージャの内部に供給するための手段は、1つ以上のノズル、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスを上記エンクロージャの中に投与するための、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの1以上のガス成分を上記エンクロージャの中に投与するための他の開口部を備えていてもよい。予備気絶用ガスおよび/または気絶用ガスを上記エンクロージャの内部に供給するための手段は、少なくとも1つの匂い添加物を上記エンクロージャに供給するための手段とは別であってもよいし、少なくとも部分的に組み合わされていてもよい。
【0081】
幾つかの実施形態では、上記少なくとも1つの匂い添加物を上記エンクロージャに供給するための手段、および、予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを上記エンクロージャの内部に供給するための手段が、上記匂い添加物とホストガスの混合物を投与するための1つ以上のノズルまたは他の開口部を備える。上記ホストガスは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガス、または、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用ガスのガス成分であってもよい。したがって、上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段は、上記エンクロージャの中に上記ホストガスを投与するのに先立って、上記匂い添加物を上記ホストガスと混合するための混合器を含んでいてもよい。
【0082】
それに代えて、または、それに加えて、上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段は、上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段とは別であってもよい。例えば、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガス、またはそれらのガス成分は、第1の組の導管および/若しくは開口部を通して上記エンクロージャの中に供給されてもよい。上記匂い添加物は、上記第1の組の導管および/若しくは開口部とは別の、第2の組の導管および/若しくは開口部、または他の投与機構を通して、上記筐体に供給されてもよい。したがって、このような実施形態では、上記匂い添加物と上記予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスとが上記エンクロージャの内部で混合される。
【0083】
図3は、動物を気絶および/または予備気絶させるためのシステムの一例を模式的に示している。特に、上記システムは、気絶用ガスおよび/または予備気絶用緩和ガスに対する動物の反応を低減させるためのものである。
【0084】
図3のシステムは、予備気絶プロセスにおいて気絶または処理されるべき1匹の動物を取り囲むように構成された処理用エンクロージャ100と、上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための手段200と、上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段300と、を備えている。
【0085】
上記エンクロージャに少なくとも1つの匂いの添加物を供給するための手段は、匂い添加物を貯蔵するためのリザーバ210と、上記処理用エンクロージャ100の内部に上記匂い添加物を投与するための投与装置220とを含んでいてもよい。リザーバ210は、匂い添加物、例えば液体の匂い添加物の供給を保つように構成され得る。上記リザーバは、例えば加圧容器などの容器であってもよい。投与装置220は、1つ以上のノズル221または他の開口部と、上記1つ以上のノズルまたは他の開口部をリザーバ210と流体的に接続するための1つ以上の導管222と、投与動作を制御するための制御装置223とを含んでいてもよい。制御装置223は、例えば、上記リザーバから上記1つ以上のノズルへの匂い添加物の流れを制御するためのバルブまたは他の適切な装置を含んでいてもよい。リザーバ210が加圧されていない実施形態では、上記投与装置は、上記匂い添加物を上記気絶用チャンバの中に移動させるためのポンプまたは他の流体移動装置を含んでいてもよい。
【0086】
同様に、上記エンクロージャの内部に予備気絶用緩和ガスおよび/または気絶用ガスを供給するための手段300は、リザーバ310と、投与装置320とを含んでいてもよい。リザーバ310は、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガス、並びに/または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの1つ以上のガス成分を貯蔵するように構成されている。投与装置320は、上記処理用エンクロージャ100の内部に上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガスを投与するように、または、上記処理用エンクロージャ100の内部に上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは気絶用ガスの1つ以上のガス成分を投与するように構成されている。リザーバ310は、1つ以上の加圧容器を含んでもよい。投与装置320は、1つ以上のノズル321または他の開口部と、上記1つ以上のノズルまたは他の開口部をリザーバ310と流体的に接続するための1つ以上の導管322と、投与動作を制御するための制御装置323とを含んでいてもよい。制御装置323は、例えば、上記リザーバから上記1つ以上のノズルまたは他の開口部への、気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用緩和ガス、または、それらの1つ以上のガス成分の流れを制御するための、バルブまたは他の適切な装置を含んでいてもよい。
【0087】
上記エンクロージャに少なくとも1つの匂い添加物を供給するための他の手段が使用されてもよいことが理解されるだろう。例えば、幾つかの実施形態では、ホストガスは、匂い添加物の供給を保つリザーバを通して、または通り越して、導かれ、それによって、上記匂い添加物の揮発性化合物が上記ホストガスと混合されることを可能にしてもよい。その後、上記匂い添加物を含む上記ホストガスは、上記エンクロージャの中に投与される。さらに、それに代えて、または、それに加えて、上記匂い添加物と、上記気絶用ガスおよび/若しくは予備気絶用ガスまたはそれらのガス成分との、他のタイプの混合が使用されてもよい。例えば、上記処理用エンクロージャに匂い添加物と混合した上記ホストガスを投与するのに先立って、ホストガスの流れの中に或る量の匂い添加物を注入することによって、である。上記ホストガスは、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは上記気絶用ガス、または、上記予備気絶用緩和ガスおよび/若しくは上記気絶用ガスのガス成分であってもよい。
【0088】
本発明の実施形態が図面及び前述の説明で詳細に例示及び説明されたが、このような例示及び説明は、例示的又は代表的であるとみなされ、制限的ではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の請求項の検討から、クレームされた発明を実施する当業者によって理解および実現され得る。特許請求の範囲において、「含む」(単語comprising)は、他の要素またはステップを除外せず、「或る」(不定冠詞「a」または「an」)は、複数を除外しない。一定の手段(複数)が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】