(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ガラス表面を処理する方法及び処理されたガラス物品
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230330BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230330BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F21S2/00 435
C03C17/34 A
G02F1/13357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547901
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021016033
(87)【国際公開番号】W WO2021158470
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】バナージー ジョイ
(72)【発明者】
【氏名】バタチャリア インドラニ
(72)【発明者】
【氏名】マズムダー プランティク
(72)【発明者】
【氏名】ウォルザック ワンダ ジャニナ
【テーマコード(参考)】
2H391
3K244
4G059
【Fターム(参考)】
2H391AA15
2H391AB04
2H391AC29
2H391AC32
2H391DA08
3K244AA01
3K244BA09
3K244BA31
3K244BA48
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3K244LA02
4G059AA01
4G059AA08
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4G059FA05
4G059FA15
4G059FB03
4G059GA01
4G059GA05
4G059GA11
(57)【要約】
第1の主面及び第1の主面の反対側の第2の主面を含むガラス基板を備えるディスプレイバックライトユニットが開示され、第1の主面は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、又はシラン化PMMAのうちの少なくとも1つで被覆され、複数のPMMA含有光抽出ドットは、被覆された第1の主面上に堆積される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と前記第1の主面の反対側の第2の主面とを含むガラス基板を備えるディスプレイバックライトユニットであって、前記第1の主面は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、又はシラン化PMMAのうちの少なくとも1つで被覆され、複数のPMMAを含む光抽出ドットは、前記被覆された第1の主面上に堆積される、
ことを特徴とするディスプレイバックライトユニット。
【請求項2】
前記ガラス基板の少なくとも1つのエッジ面に沿って配置された光源をさらに備える、
請求項1に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項3】
前記光抽出ドットの空間密度、直径、又はこれらの組み合わせは、前記光源から離れる方向に増加する、
請求項2に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項4】
前記被膜は、前記第1の主面に共有結合する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項5】
前記ガラス基板の厚さは、約300マイクロメートルから約2.0ミリメートルの範囲にある、
請求項1から4のいずれか1項に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項6】
前記被膜の厚さは、約500ナノメートル以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項7】
前記被膜の厚さは、約100ナノメートル以下である、
請求項6に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項8】
前記被膜の厚さは、約20ナノメートル以下である、
請求項7に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項9】
60℃及び90%の相対湿度で240時間の暴露後に、前記ガラス基板が示す色ずれdyは、前記ガラス基板を通る300mmの経路長当たり約0.007未満であり、輝度は10%未満だけ変化する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のディスプレイバックライトユニット。
【請求項10】
前記ディスプレイデバイスは、前記ディスプレイバックライトユニットに隣接して配置されたディスプレイパネルを含む、
請求項1から9のいずれか1項の前記ディスプレイバックライトユニットを含むディスプレイデバイス。
【請求項11】
バックライトユニットを作る方法であって、
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、又はシラン化PMMAのうちの少なくとも1つでガラス基板の第1の主面を被覆するステップと、
前記被覆された第1の主面上に複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させるステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1の主表面を被覆した後かつ前記複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させる前に、約10分から約20分の範囲の時間の間、約40℃から約65℃の範囲の温度まで前記ガラス基板を加熱するステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させた後、約5分から約40分の範囲の時間の間、約150℃から約200℃の範囲の温度まで前記ガラス基板を加熱するステップをさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年2月7日出願の米国仮出願第62/971,467号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張し、その開示内容全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ガラス表面を処理する方法に関し、より詳細には、その上に印刷されたパターンの高い接着信頼性を提示する均一に分布した被膜を備えるガラス表面を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
拡散光を生成するのに用いる従来の構成要素は、ディスプレイ業界においていくつかの用途で採用されているポリマーライドガイド及びフィルムを含む拡散構造を含んでいる。これらの用途は、ベゼルフリーのテレビシステム、液晶ディスプレイ(LCD)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、微小電気機械構造(MEMS)ディスプレイ、電子リーダー(e-リーダー)デバイス、及びその他を含む。
【0004】
導光板(LGP)は、ディスプレイパネル、特にテレビなどのディスプレイ製品においてLCDディスプレイに光を分配する工学的構成要素である。LEDによる注入点からLGPの光路長を通る光の自然透過に基づく損失によって、追加の光抽出特徴部をLGPに印刷することができる(典型的には、SiO2又はTiO2粒子を分散させたポリマーインク)。これらの追加のパターン化された特徴部は、LGP内の全内部反射(TIR)の破壊による、縁部点灯LED TVモジュールのLGP全体にわたる光の抽出によって所望のパネル輝度プロフィールを促進する。
【0005】
プラスチック材料は、十分な光透過を提供することができるが、これらは、剛性、熱膨張係数(CTE)及び吸湿性などの比較的低い機械的特性を示す。高透過ガラス、例えばCorning社から商業的に入手可能なガラスのIris(商標)ファミリーは、導光板(LGP)として採用されており、これらは、ポリマーLGPに取って代わる優れた機械的特性を提供することができる。実際に、このようなガラス基板は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ポリスチレン(PS)及びスチレンメチルメタクリレートコポリマー(MS)対応物を上回る剛性、熱膨張係数及び吸湿性の改善をもたらすことができる。
【0006】
残念ながら、ポリマー導光板上のポリマー(例えば、PMMA)光抽出特徴部の堆積物の周りにデザインされた製造業者のプロセスは、典型的には、光抽出特徴部を印刷するのに用いるPMMAの化学的性質が未処理のガラス表面への不十分な接着を有するので、ガラス導光板に取って代わるとき不都合である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、第1の主面及び第1の主面の反対側の第2の主面を含むガラス基板を備えるディスプレイバックライトユニットが開示され、第1の主面は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、又はシラン化PMMAのうちの少なくとも1つで被覆され、複数のPMMAを含む光抽出ドットは、第1の主面上に堆積される。
【0008】
ディスプレイバックライトは、ガラス基板の少なくとも1つのエッジ面に沿って配置された光源をさらに備えることができる。
【0009】
一部の実施形態では、光抽出ドットの空間密度、直径、又はこれらの組み合わせは、光源から離れる方向に増加することができる。
【0010】
一部の実施形態では、被膜は、第1の主面に共有結合することができる。
【0011】
一部の実施形態では、ガラス基板の厚さは、約300マイクロメートルから約2.0ミリメートルの範囲とすることができる。被膜の厚さは、約500ナノメートル以下、例えば、約100ナノメートル以下、又は約20ナノメートル以下とすることができる。
【0012】
種々の実施形態によれば、光抽出ドットは、「剥離試験」を受ける際に剥離しない。種々の実施形態によれば、60℃及び90%の相対湿度で240時間の暴露後、ガラス基板が示す色ずれdyは、ガラス基板を通る300mmの経路長当たり約0.007未満であり、輝度は10%未満だけ変化する。
【0013】
他の実施形態では、バックライトユニットを作る方法が開示され、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、又はシラン化PMMAのうちの少なくとも1つでガラス基板の第1の主面を被覆するステップと、被覆された第1の主面上に複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させるステップとを含む。
【0014】
一部の実施形態では、ディスプレイデバイスが開示され、ディスプレイデバイスは、ユーザが閲覧可能な画像を表示するように構成されたディスプレイパネル、例えばLCDディスプレイパネルと、ディスプレイデバイスのビューアーに対してディスプレイパネルに隣接して背後に配置された本明細書で説明するようなディスプレイバックライトユニットとを備える。
【0015】
本方法は、第1の主表面を被覆した後かつ複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させる前に、約10分から約20分の範囲の時間の間、約50℃から約60℃などの約40℃から約65℃の範囲、例えば、約45℃から約60℃の範囲の温度までガラス基板を加熱するステップをさらに含むことができる。種々の実施形態では、被膜の厚さは、約500ナノメートル以下、例えば、約100ナノメートル以下、又は約20ナノメートル以下とすることができる。
【0016】
本方法は、複数のPMMA含有光抽出ドットを堆積させた後、約5分から約40分、例えば、約10分から約40分、約15分から約40分、約20分から約40分、約30分から約40分、約5分から35分、又は約10分から約30分の範囲の時間の間、約150℃から約200℃の範囲の温度までガラス基板を加熱するステップをさらに含むことができる。
【0017】
本明細書で開示する実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明で述べられることになり、一部は、その説明から当業者に明らかになる、又は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書で説明する実施形態を実施することによって認識されることになる。
【0018】
上述の概要及び上述の詳細な説明の両方は、本明細書に開示する実施形態の本質及び特徴を理解するための概観又は枠組を提供することが意図された実施形態を提示することを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するように含まれ、本明細書の一部に組み込まれてそれを構成する。図面は、本開示の種々の実施形態を示し、明細書と共に、その原理及び実施を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施形態による例示的なLCDディスプレイの側断面図である。
【
図2A】
図1のディスプレイデバイスに使用するために構成された例示的な導光板の平面図である。
【
図2B】
図1のディスプレイデバイスに使用するために構成された別の例示的な導光板の平面図である。
【
図3】本開示の実施形態によるガラス基板を処理するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本開示の実施形態に対する参照が詳細に行われ、その実施例は、添付の図面に示されている。可能であれば、図面全体にわたって同じ参照番号は、同じ又は同様の要素を指すように用いられることになる。しかしながら、本開示は、多くの様々な形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性が、正確ではない及びそうである必要もないが、必要に応じて、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に公知の他の要因を反映して、近似する及び/又はより大きく又はより小さくすることができることを意味する。
【0022】
本明細書では、範囲は「約」1つの値から及び/又は「約」別の値まで表すことができる。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの値から他方の値まで含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、その値は別の実施形態を形成することを理解されたい。範囲の各々の終点は、他の終点との関連で及び他の終点とは無関係に有意であることをさらに理解されたい。
【0023】
本明細書で使用される場合方向を示す用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上部、下部は、描画された図面を参照してもたらされるに過ぎず、絶対的な向きを暗示することを意図するものではない。
【0024】
特に明示されない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが特定の順序で実行されることを要求すると解釈されること、及びいかなる装置においても、特定の方向性を要求することは、決して意図されていない。従って、方法の請求項がそのステップに従うべき順序を実際に記載していない場合、または装置の請求項が個々の構成要素に対する順序または向きを実際に記載していない場合、またはステップが特定の順序に限定されることが請求項または説明において他に明確に述べられていない場合、または装置の構成要素に対する特定の順序または向きが記載されていない場合、順序または向きがいかなる点においても推測されることは決して意図されていない。これは、ステップの配置、操作の流れ、構成要素の順序、または構成要素の向きに関する論理の問題、文法的構成または句読点から得られる平易な意味、および明細書に記載された実施形態の数または種類など、解釈に関するあらゆる非表現的根拠について当てはまるものである。
【0025】
本明細書で使用される場合、複数形ではない要素は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形を含む。従って、例えば、複数であることが特定されない要素は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、2又は3以上のこのような要素を有する態様を含む。
【0026】
用語「例示的な」、「実施例」、又はこれらの種々の形態は、実施例、例、又は例示として機能することを意味するのに本明細書で使用される。「例示的な」又は「実施例」として本明細書で説明する何らかの態様又は設計は、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈すべきではない。さらに、実施例は、明確化及び理解の目的のためにのみ提供され、何らかの方法で開示の主題又は本開示の関連する部分を限定又は制限することを意図しない。様々な範囲の無数の追加の又は代替の実施例を提示することができるが、簡略化するために省略されていることを認識されたい。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「備える」及び「含む」、並びにこれらの変形形態は、特に示されない限り、同義でありオープンエンドであると解釈されるものとする。移行句「備える」又は「含む」に続く要素のリストは、リストに具体的に列挙されたもの以外の要素も存在することができるような、非排他的なリストであり、
【0028】
本明細書で使用される用語「実質的な」、「実質的に」、及びこれらの変形形態は、記載される特徴が値又は説明に等しいか又はほぼ等しいことを表すことが意図される。例えば、「実質的に平面の」表面は、平面の又はほぼ平面の表面を表すことが意図される。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか又はほぼ等しいことを表すことが意図される。一部の実施形態では、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内、又は互いの約2%以内の値を表すことができる。
【0029】
図1には、液晶ディスプレイ(LCD)パネル12と、LCDパネル12のビューアー16の反対側でディスプレイパネル12に隣接して配置されたバックライトユニット14とを備える例示的な液晶ディスプレイデバイス10の断面側面図が示されている。バックライトユニット14は、ガラス基板20を含む導光板(LGP)18を備えることができる。バックライトユニット14は、LGP18の主面の間に延びる導光板18の少なくとも1つのエッジ面24に近接して及びそれに沿って配置された光源22、例えば、1又は2以上の発光ダイオードをさらに備えることができる。一部の実施形態では、バックライトユニット14は、ビューアー16に対してLGP18の背後に配置され、LGP18の後面から放出された光をLGP18及びLCDパネル12に向かって戻る方向に変える反射器26をさらに備えることができる。
【0030】
ガラス基板20は、LCDパネル12に対して所望の配光を生成するのに適した何らかの所望のサイズ及び/又は形状とすることができる。ガラス基板20は、第1の主面28及び第1の主面28の反対側に第2の主面30を備える。一部の実施形態では、第1及び第2の主面28、30は、平面又は実質的に平面、例えば、実質的に平坦である。種々の実施形態の第1及び第2の主面28、30は、平行又は実質的に平行とすることができる。一部の実施形態のガラス基板20は、第1及び第2の主面28、30の間に延びる4つのエッジ面(例えば、エッジ面24)を含むか、又はガラス基板20は、4つよりも多くのエッジ面、例えば、多面多角形を備えることができる。他の実施形態では、ガラス基板20は、4未満のエッジ面、例えば三角形を備えることができる。種々の実施形態の導光板は、4つのエッジ面を有する矩形、正方形、又は菱形シートを備えるが、他の形状及び構成を用いることができる。ガラス基板20は、出力面(例えば、第2の主面30)からの光をディスプレイパネル12に向かう方向に向けるように構成及び配置される。
【0031】
ガラス基板20は、ディスプレイデバイスに使用するために本技術分野で公知の何らかの材料を含むことができる。例示的な実施形態では、ガラス基板20は、アルミノケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、アルカリアルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰、又は他の適切なガラスを含むことができる。一部の実施形態では、ガラスは、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、又はソーダ石灰ガラスから選択することができる。ガラス導光板に使用するのに適した商業的に入手可能なガラスの実施例は、限定されるものではないが、Corning社のIris(商標)及びGorilla(登録商標)ガラスを含む。
【0032】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モルパーセント(モル%)で、
50-90モル%のSiO2、
0-20モル%のAl2O3、
0-20モル%のB2O3、
0-25モル%のRxO、
の範囲の酸化物を含むことができ、ここで、xは2であり、RはLi、Na、K、Rb、Cs、及びこれらの組み合わせから選択され、又はxは1であり、RはZn、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの組み合わせから選択され、ガラス基板は、Li2O、Na2O、K2O及びMgOから選択された1つの酸化物の0.5-20モル%を含む。1又は2以上の実施形態では、ガラス基板は、モル%酸化物ベースで、Li2O、Na2O、K2O及びMgOから選択された1つの酸化物の少なくとも3.5-20モル%、5-20モル%、10-20モル%を含む。
【0033】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板は、Li2O、Na2O、K2O及びアルカリ土類酸化物、例えばCaO及びMgOなどのアルカリ酸化物から選択された少なくとも1つの酸化物を含むアルミノケイ酸塩ガラスを含むことができ、ガラス基板を本明細書に記載のエージング条件に暴露すると風化生成物の影響を受けやすい状態にする。1又は2以上の実施形態では、ガラス基板は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含む:
SiO2:約65モル%から約85モル%、
Al2O3:約0モル%から約13モル%、
B2O3:約0モル%から約12モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約0モル%から約14モル%、
K2O:約0モル%から約12モル%、
ZnO:約0モル%から約4モル%、
MgO:約0モル%から約12モル%、
CaO:約0モル%から約5モル%、
SrO:約0モル%から約7モル%、
BaO:約0モル%から約5モル%、及び
SnO2:約0.01モル%から約1モル%。
【0034】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含むことができる:
SiO2:約70モル%から約85モル%、
Al2O3:約0モル%から約5モル%、
B2O3:約0モル%から約5モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約0モル%から約10モル%、
K2O:約0モル%から約12モル%、
ZnO:約0モル%から約4モル%、
MgO:約3モル%から約12モル%、
CaO:約0モル%から約5モル%、
SrO:約0モル%から約3モル%、
BaO:約0モル%から約3モル%、及び
SnO2:約0.01モル%から約0.5モル%。
【0035】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含むことができる:
SiO2:約72モル%から約82モル%、
Al2O3:約0モル%から約4.8モル%、
B2O3:約0モル%から約2.8モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約0モル%から約9.3モル%、
K2O:約0モル%から約10.6モル%、
ZnO:約0モル%から約2.9モル%、
MgO:約3.1モル%から約10.6モル%、
CaO:約0モル%から約4.8モル%、
SrO:約0モル%から約1.6モル%、
BaO:約0モル%から約3モル%、及び
SnO2:約0.01モル%から約0.15モル%。
【0036】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含むことができる:
SiO2:約80モル%から約85モル%、
Al2O3:約0モル%から約0.5モル%、
B2O3:約0モル%から約0.5モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約0モル%から約0.5モル%、
K2O:約8モル%から約11モル%、
ZnO:約0.01モル%から約4モル%、
MgO:約6モル%から約10モル%、
CaO:約0モル%から約4.8モル%、
SrO:約0モル%から約0.5モル%、
BaO:約0モル%から約0.5モル%、及び
SnO2:約0.01モル%から約0.11モル%。
【0037】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含むことができる:
SiO2:約65.8モル%から約78.2モル%、
Al2O3:約2.9モル%から約12.1モル%、
B2O3:約0モル%から約11.2モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約3.5モル%から約13.3モル%、
K2O:約0モル%から約4.8モル%、
ZnO:約0モル%から約3モル%、
MgO:約0モル%から約8.7モル%、
CaO:約0モル%から約4.2モル%、
SrO:約0モル%から約6.2モル%、
BaO:約0モル%から約4.3モル%、及び
SnO2:約0.07モル%から約0.11モル%。
【0038】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、モル%で、以下の酸化物の範囲を含むことができる:
SiO2:約66モル%から約78モル%、
Al2O3:約4モル%から約11モル%、
B2O3:約40モル%から約11モル%、
Li2O:約0モル%から約2モル%、
Na2O:約4モル%から約12モル%、
K2O:約0モル%から約2モル%、
ZnO:約0モル%から約2モル%、
MgO:約0モル%から約5モル%、
CaO:約0モル%から約2モル%、
SrO:約0モル%から約5モル%、
BaO:約0モル%から約2モル%、及び
SnO2:約0.07モル%から約0.11モル%。
【0039】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、本明細書で提供する組成物を含むことができ、比色計によって測定すると0.008未満又は0.005未満の色ずれを示す場合がある。1又は2以上の実施形態では、本明細書で提供する組成物は、約0.95から約3.23の範囲のRxO/Al2O3によって特徴付けることができ、ここで、x=2であり、Rは、Li、Na、K、Rb、又はCsのうちのいずれかの1又は2以上である。1又は2以上の実施形態では、Rは、Zn、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれかの1つとすることができ、x=1であり、RxO/Al2O3は約0.95から約3.23の範囲にある。1又は2以上の実施形態では、Rは、Li、Na、K、Rb、又はCsのうちのいずれかの1又は2以上とすることができ、x=2であり、RxO/Al2O3は約1.18から約5.68の範囲にある。1又は2以上の実施形態では、Rは、Zn、Mg、Ca、SR、又はBaのうちのいずれかの1又は2以上とすることができ、x=1であり、RxO/Al2O3は、1.18から5.68の範囲にある。1又は2以上の実施形態によるガラス基板に適した具体的組成物は、国際公開番号第WO2017/070066号で説明されている。
【0040】
1又は2以上の実施形態では、ガラス基板20は、何らかのアルカリ成分を含有することができ、例えば、ガラス基板は、無アルカリガラスではない場合がある。本明細書で使用される場合、「無アルカリガラス」は、0.1モルパーセント未満又はそれに等しい総アルカリ金属濃度を有するガラスであり、ここで、総アルカリ金属濃度は、Na2O、K2O、及びLi2O濃度の合計である。一部の実施形態では、ガラスは、約0から約3.0モル%の範囲、約0から約2.0モル%の範囲、又は約0から約1.0モル%の範囲、及びこれらの間の全ての部分範囲のLi2Oを含むことができる。他の実施形態では、ガラスは、Li2Oを実質的に含まない場合がある。他の実施形態では、ガラスは、約0モル%から約10モル%の範囲、約0モル%から約9.28モル%の範囲、約0から約5モル%の範囲、約0から約3モル%の範囲、又は約0から約0.5モル%の範囲、及びこれらの間の全ての部分範囲のNa2Oを含むことができる。他の実施形態では、ガラスは、Na2Oを実質的に含まない場合がある。一部の実施形態では、ガラスは、約0から約12.0モル%の範囲、約8から約11モル%の範囲、約0.58から約10.58モル%の範囲、及びこれらの間の全ての部分範囲のK2Oを含むことができる。
【0041】
一部の実施形態では、ガラス基板20は、高透過率のアルミノケイ酸塩ガラスなどの高透過率ガラスとすることができる。特定の実施形態では、導光板は、400ナノメートル(nm)から700nmの波長範囲にわたって、少なくとも1つの主面に垂直な90%より大きい透過率を示すことができる。例えば、導光板は、全ての範囲及びこれらの間の部分範囲を含む400nmから700nmまでの波長範囲にわたって、少なくとも1つの主面に垂直な約91%より大きい透過率、少なくとも1つの主面に垂直な約92%より大きい透過率、少なくとも1つの主面に垂直な約93%より大きい透過率、少なくとも1つの主面に垂直な約94%より大きい透過率、又は少なくとも1つの主面に垂直な約95%より大きい透過率を示す場合がある。
【0042】
特定の実施形態では、光源22から光を受け取るように構成されたガラス基板20のエッジ面24は、透過において12.8度の半値全幅(FWHM)未満の角度内で光を散乱させる。一部の実施形態では、光源22から光を受け取るように構成されたエッジ面24は、例えば、米国出願公開第2015/0368146号に開示されるように、研磨することなく縁部を研削することによって、又は当業者に公知のLGPを処理するための他の方法によって処理することができる。一部の実施形態では、エッジ面24は、面取りエッジ面とすることができ、エッジ面の隅部は、他の表面との接触からのチッピングを低減するように研削されるか又はそうでなければ除去される。代わりに、LGPは、最小限の面取りを備えるか又は全く備えない場合がある。例えば、エッジ面24(又は、適切な光源からの光のため注入部位として機能する何らかの他のエッジ面)は、第1及び第2の主面28、30に直交する又は実質的に直交する実質的に平面とすることができる。
【0043】
一部の実施形態のガラス基板20は、例えば、イオン交換によって化学的に強化することができる。イオン交換プロセス中に、ガラス物品の表面での又はその近くのガラス物品内のイオンは、例えば、塩浴からのより大きな金属イオンと交換することができる。ガラス表面へのより大きなイオンの取り込みは、表面近くの領域において圧縮応力を作り出すことによってガラス表面を強化することができる。対応する引張応力は、圧縮応力のバランスを取るようにガラスの中心領域の中に生じさせることができる。
【0044】
上述のように、バックライトユニット14は、ガラス基板20の少なくとも1つ縁部、例えば、第1の主面28と第2の主面30との間に延びるエッジ面24に沿って配置された光源22を含むことができる。光源22は、エッジ面24を通ってガラス基板20の中に光を注入するように構成することができ、注入光は、第1及び第2の主面28及び30の間の全内部反射(TIR)によってガラス基板20を伝播する。
【0045】
光源22からLGPの中に注入された光は、それが臨界角未満の入射角で界面に当たるまで、矢印32で示されるように全内部反射(TIR)によってLGPの長さL(
図2A、2Bを参照)に沿って伝播することができる。TIRは、第1の屈折率の第1の材料(例えば、ガラス、プラスチックなど)の中を伝播する光が、第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率の第2の材料(例えば、空気など)との界面で完全に反射することができる現象である。TIRはスネルの法則を用いて説明することができる。すなわち、
であり、これは、様々な屈折率の2つの材料の間の界面での光の屈折を説明する。スネルの法則によれば、n
1は第1の材料の屈折率であり、n
2は第2の材料の屈折率であり、θ
iは、界面の法線に対する界面での入射光の角度(入射角)であり、θ
rは、法線に対する屈折光の屈折角である。屈折角(θ
r)が90°、例えばsin(θ
r)=1の場合、スネルの法則は次のように表すことができる。
【0046】
これらの条件下の入射角θiは、臨界角θcと呼ばれる場合もある。臨界角よりも大きな入射角(θi>θc)を有する光は、第1の材料内で完全に内部で反射されることになるのに対して、臨界角に等しいか又はそれ未満の入射角(θi≦θc)を有する光は、第1の材料によって大部分は透過されることになる。
【0047】
空気(n1=1)とガラス(n2=1.5)との間の例示的な界面の場合に、臨界角(θc)は、41度と計算することができる。従って、ガラス中を伝播する光が41度以上の入射角で空気-ガラス界面に当たる場合、全ての入射光は、入射角に等しい角度で界面から反射されることになる。反射光が第1の界面と同一の屈折率関係を含む第2の界面に遭遇する場合、第2の界面上の光入射は、この場合も同様に入射角に等しい反射角で反射されることになる。
【0048】
ガラス基板20を伝播する光を抽出するために、ガラス基板20は、ランダムパターン(
図2A)、所定の規則的な(幾何学的、例えば周期的)パターン(
図2B)、又は両方のうちの1又は2以上で、第1の主面28上に置かれた複数の光抽出ドット34をさらに備えることができる。例えば、一部の実施形態では、光抽出ドット34は、光抽出ドットの空間密度が光源22からの距離の関数として増加するように配置することができる(
図2A)。すなわち、光源22からの距離が光源から離れる方向32に増加するにつれて、光抽出ドット(単位面積当たりのドット)の空間密度は増大する。光がガラス基板20を伝播するにつれて、光強度が低下する。光抽出ドット34は、光抽出ドットと交差する光を散乱させ、第2の主面30を通ってディスプレイパネル12に向かってガラス基板から外に伝播光を向けるのに役立つ。光強度が方向32で減少するにつれて、光抽出ドットの増加した空間密度は、光抽出を増加させ、それによって、減少した光強度を補償する。他の実施形態では、光抽出ドットのサイズ(例えば、直径)は、
図2Bに示すように、光源からの距離の関数として増加することができる。さらなる他の実施形態では、光抽出ドットの空間密度及びサイズの両方は、光源からの距離の関数として変化することができる。例えば、光抽出ドットのサイズ及び空間密度は、光源からの距離の関数として増加することができる。
【0049】
ディスプレイ用途(例えば、コンピュータモニタ又はテレビ)におけるLGP18のための現在の技術は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル基板である。このような導光板は、少なくとも1つの主面上にスクリーン印刷の光抽出パターンを含むことができる。印刷供給業者は、PMMA互換性インクでPMMA上に光抽出ドットをスクリーン印刷するプロセスを何十年もかけて完成させている。PMMA LGP基板に代わる手段としてのガラス導光板の導入は、未処理ガラス上に直接印刷することに関連する課題を引き起こした。
【0050】
光抽出パターンを印刷するためのインク中の2つの成分は、基板への接着を促進するための光散乱粒子及び結合剤である。PMMA基板上に印刷するために最適なインク中の結合剤は、典型的には、完全重合PMMAである。これは、PMMA基板とインクのPMMA鎖の間の容易な溶解及び絡み合いにつながり、基板へのインクの信頼できる接着につながる。しかしながら、このような絡み合い結合は、高密度ガラス基板では不可能であり、PMMA調合インクをガラス表面上に直接用いる場合、不十分な接着性つながる。例えば、印刷された光抽出パターンは、風化試験中に、例えば、10日間60℃の温度及び90%の相対湿度(RH)で暴露中に、ガラス表面から容易に剥離する可能性がある。接着性を評価するために、「剥離試験」は、周囲条件下で印刷した1日後に3M Scotch(登録商標)600軽量包装テープで行うことができる。「剥離試験」中に、少なくとも1インチ長の所定の長さのテープを切断し、印刷面に貼り付け、5秒間指で拭いてテープの下の全ての気泡を除去し、テープと光抽出ドットとの間の良好な接着性を保証する。サンプルを3分間そのままにし、次に、テープを印刷面に対して90度の角度で剥離させる。この試験の目的で単一の光抽出ドットの除去、剥離、又は排除は、試験サンプルの「不合格」指定を表す。
【0051】
より良好な接着性を有するガラス基板のための新しいインクを開発する試みがなされている。しかしながら、このようなインクは、スクリーン印刷機のメッシュスクリーンへの固着をもたらし、PMMAベースのインクよりもメッシュスクリーンのより頻繁な洗浄を必要とする。従って、接着性は改善されるが、処理能力の低下にもつながる可能性がある。
【0052】
高い表面自由エネルギー及び反応性により、ガラス表面は、PMMAと比較して高度な取扱い、洗浄、及び保管を必要とし、これは、収率及びプロセス処理能力に影響を与える。徹底的な洗浄の後でも、粒子、例えば、ガラス粒子、微粉、又は他の異物は、PMMA上の粒子よりもガラスに強力に接着する可能性がある。PMMAからの粒子は、空気ジェット又はリントローラーによって容易に除去することができるが、PMMAからよりもガラスから粒子を除去するにはさらなる努力が必要である。これは、ガラスに対する信頼性を欠いて不均一な印刷パターンに、続いて不十分な光学性能につながる。ガラス表面に対する別の厄介な汚染は、炭化水素によるガラス表面の不注意な汚染である。炭化水素汚染は、ガラス表面に濡れ特性が大きく異なる不連続な斑点を発生させる可能性があるので、特に問題である。例えば、清浄なガラス表面は、約5度未満の水接触角を有するはずであるが、経時的に(例えば、数日)、周囲空気と接触するガラス表面は、約30°の接触角を示すのに十分な有機汚染物質を取得する可能性がある。ガラス表面が炭化水素で、例えば、偶然の接触又は処理汚染(例えば、PDMSリントローラーが汚れを拾い上げる)に起因して激しく汚染されている場合、汚染領域の接触角は40度を超え、約70度まで高くなる可能性がある。光抽出ドットが、ドットの周囲が低濡れ領域と高濡れ領域の両方に遭遇するガラス表面の領域に印刷される場合、欠陥のある非円形の幾何学形状が生じる可能性がある。比較のために、PMMA基板上の水接触角は約70度になる可能性がある。従って、たとえPMMA LGPが有機物質によって汚染されても、導光板の濡れ性はガラス表面ほど著しく変化しない。
【0053】
従って、ガラス(例えば、機械的剛性及び熱安定性)及びポリマー基板(例えば、光抽出ドット印刷の容易さ)の両方の有利な特性をもつことができるLGPが開示される。LGPは、有機分子で被覆された主面を含むガラス基板で構成され、上記の風化試験の後でもガラスとインクとの間に強力な接着性を示しながら、PMMAに最適なインクでガラス表面上に光抽出パターンを印刷することができるようになっている。加えて、ガラス表面は、汚染に耐え、良好な洗浄性を示し、劣化特性が優れており、これは印刷業者に魅力的である。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「乾燥接着」エネルギーは、乾燥した低湿度雰囲気でガラス基板及びポリマーインクドットを分離するのに必要な仕事を指す。「湿潤接着」エネルギーは、極性環境(10日間60℃及び90%のRHで風化させるなどの)又は非極性環境(イソプロピルアルコール浸漬ワイプによる摩耗試験中などの)のいずれかの、インク印刷ガラスが第3の物質の存在下で風化する場合の分離の仕事を指す。ポリマーインクとガラス基板との間の相互作用エネルギーが、もっぱらファンデルワール力による場合(化学結合又は特異的相互作用又は物理的絡み合いがない場合)、乾燥エネルギーW
dry及び湿潤接着エネルギーW
wetの式は、以下通りである。
【0055】
表面エネルギー値を分散成分及び極性成分の線形結合として表現すると、
であり、γ
G、γ
P、γ
GP、γ
GL、γ
PLは、それぞれガラス-空気、ポリマー-空気、ガラス-ポリマー、ガラス-液体、及びポリマー-液体界面の自由表面エネルギーである。上付き文字D及びPは、自由表面エネルギーの分散成分及び極性成分を指す。
【0056】
これらの式から分かるように、乾燥接着エネルギーは、ガラス、ポリマーのどちらか、又は両方の表面エネルギー成分の増加とともに増加する。しかしながら、湿潤接着エネルギー値は、ガラス表面の極性エネルギー成分
の増加と、ガラス表面と極性液体との間の引力相互作用である大きな相互作用エネルギー項
により減少する可能性がある。
の高い値に関して、W
wet値は、マイナスになる可能性もあり、ガラス表面からインクが自然の剥離することが示唆される。ガラス界面におけるPMMAインクの良好な接着信頼性を得るために、W
dry及びW
wetの両方ができるだけ高いことが望まれる。しかしながら、ファンデルワール相互作用のみが存在する場合、これら2つの項は反作用的であり、独立して最大化することはできない。実際には、W
dryを増加させるための表面処理(ガラスの高い表面エネルギーが好ましい)は、多くの場合、W
wetの減少につながり、従って、最適化が必要である。他方では、極性環境における接着信頼性のためにW
wetが最適化される場合(例えば、表面エネルギーの極性成分を減少させることによって)、非極性環境に対して本質的に脆弱になる可能性がある(例えば、イソプロピルアルコール耐性試験中に)。従って、インクによる濡れ性並びに接着信頼性を保証するために、乾燥接着エネルギー及び湿潤接着エネルギーを同時に最適化することが望ましい。
【0057】
極性液体の侵入に対するPMMA-ガラス界面の信頼性を高めることへの1つのアプローチは、ファンデルワール相互作用を通してのみPMMAと相互作用するガラス表面の疎水性被覆によるものである。しかしながら、現在の用途に対して生じる可能性がある少なくとも2つの問題がある。すなわち、(1)ファンデルワール相互作用は、弱すぎて接着テープによる「剥離試験」に耐えることができない、及び/又は(2)疎水化は、たとえガラスとポリマーインクとの間の水の自然侵入を防止するとしても、この方式では、ほとんどの非フッ素化疎水性被覆に対して濡れ性が高いIPAなどの非極性液体の侵入を防止することができない。
【0058】
乾燥サンプルの「剥離試験」、風化後の「剥離試験」に合格し、IPAによる溶媒摩耗試験にさらに合格することになる、ポリマーインクとガラス基板との間の接着強度を達成するために、以下の特徴のうちの少なくとも1つを促進することになる表面機能化又は被膜が説明される。すなわち、(1)ポリマーインクと表面機能化又は被膜との間の化学的結合、(2)ポリマーインクと表面機能化又は被膜との間の特定の相互作用、又は(3)ポリマーインクと表面機能化又は被膜との間の物理的相互嵌合又は絡み合い、である。
【0059】
従って、ガラス基板20は、ガラス基板への光抽出ドット34の接着を助ける、ガラス基板20と光抽出ドット34との間で第1の主面28上に堆積された被膜40をさらに備えることができる。すなわち、第1の主面28は、被膜40で被覆することができ、光抽出ドット34は、被膜40の上に印刷することができる。光抽出ドット34は、スクリーン印刷とすることができるが、さらなる実施形態では、光抽出ドット34は、インクジェット印刷とすることができる。一部の実施形態では、被膜40は、シラン被膜、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)又は3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)とすることができる。
【0060】
他の実施形態では、被膜40は、ガラス表面上に共有結合で接合されたPMMAなどの共有結合ポリマーとすることができる。共有結合ポリマーは、ポリマー被膜とインク分子の相互拡散及び/又は絡み合いを促進する。このために、PMMAと相溶性があるポリマーを含む被膜が望ましい。これは、例えば、結合剤、例えば、MPTMS又は3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)などのシラン含有化合物でガラス表面を前処理することによって、又はシラン化PMMAなどのPMMAを含むシラン官能基を用いることによってガラス表面上に堆積したPMMA薄膜で達成することができる。光学的歪みを最小限に抑えるために、被膜40は、約500nm以下、例えば、約100nm以下、例えば、約20nm以下の厚さを有することができる。
【0061】
被膜40は、ガラス基板の清浄で乾燥した表面に施工する必要がある。従って、ガラス基板は、適切な洗剤で清浄化し、次に、例えば脱イオン(DI)水で洗浄して、洗剤の残留物を除去することができる。一部の実施形態では、ガラス基板は、例えば、ガラス基板を乾燥窒素雰囲気に暴露することによって水分を除去するために乾燥及び/又は熱処理することができる。ガラス基板は、被膜40によるガラス基板20の被覆前又はその間に真空乾燥機で処理することができる。一部の実施形態では、被膜40は、ワイピング又は塗装、噴霧、浸漬、又はスピニングによって施工することができる。一部の実施形態では、被覆基板をオーブン内で、例えば、約100℃から約200℃の範囲の温度で、約30分から約24時間の範囲の時間、例えば、200℃で30分の間焼くことを利用して光抽出ドットの接着性を高めることができる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
1つの実施例では、10.2cm×10.2cm(4×4インチ)のCorning(登録商標)Iris(商標)ガラス基板のサンプルを、40℃で20分間1%のSemiclean KG洗剤溶液で清浄化し、脱イオン水で洗浄し、次に乾燥した超高純度のN2ガスで乾燥させた。次に、ガラスサンプルを、真空チャンバ内で3分間高出力空気プラズマに暴露させた。MPTMSの薄層、例えば、10ナノメートル(nm)未満がガラスサンプルの清浄なガラス表面上で被覆された。1つの実験では、プラズマ処理されたガラスサンプルを、W.A.Hammond Drierite社製のIndicating Drieriteを含む真空乾燥機内に置いた。MPTMSの数滴を、乾燥機の床上に位置する時計皿に置いた。真空ポンプで乾燥機内を0.2Torrまで真空にした。次に、乾燥機を一晩中真空下に放置した。翌日、表面処理されたガラスサンプルの3つの10.2センチメートル(cm)×10.2cmのサンプルセットを、水接触角を測定することによる表面エネルギー測定のために試験した。別のサンプルセットを、PMMAインク(Infochem ID 8、A+B混合物)を用いて複数の光抽出ドットをスクリーン印刷し、次に、印刷後200℃で30分間焼いた。
【0063】
乾燥接着性を、第1のセットのサンプルについて、合計5つのサンプル上のサンプルごとに6つの位置で「剥離試験」によって測定した(30位置で試験した)。5cm長の3M-600テープを切断して印刷面に貼り付け、5秒間指で拭いて気泡を除去し、3分待った後、テープを、ガラス表面から90°の角度で引き離した。光抽出ドットは、乾燥接着試験では剥離しなかった。第2のセットの印刷されたサンプルを、60℃及び90%の相対湿度(RH)に維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、第2のセットのサンプルで行い風化の影響を観察した。MPTMSで処理されたガラスサンプルでは、風化後に光抽出ドットは剥離せず、印刷インクの濡れ性を与えると同時に水分子の浸透を防止する、ガラス-インク界面の最適な疎水化を示した。
【0064】
(実施例2)
別の実験では、厚さ1.5mmのGen 2 Iris(商標)ガラス基板の370ミリメートル(mm)×470mmの10個のサンプルを、生産ラインでParker 225X洗剤で洗浄した。ガラスサンプルを、MPTMSで被覆した。
図3を参照すると、被覆プロセスは、容器の底から約5cm(2インチ)まで液体MPTMS 104で満たされた密閉され温度制御されたステンレス鋼容器102を含む装置100を備える。液体MPTMSは、容器の底に近接して液化MPTMS内に配置された冷却管108を通して温度制御された流体106(例えば、水)を循環させることにより、被覆プロセスの全期間にわたって50℃に維持した。容器102は、ガス供給源(例えば、空気)110と流体連通しており、複数のガス搬送ラインを通してガスを容器102に搬送するように構成されたガス搬送ラインを備えていた。第1のガス搬送ライン112は、液体MPTMS内に配置された第1の分配マニホルド114にガスを搬送し、第1の分配マニホルド114は、気泡が液体MPTMSに形成されたように容器102の底に向けられた開口を備えている。また、ガス供給源(例えば、空気)と流体連通している第2のガス搬送ライン116は、液体MPTMS104の自由表面より上の容器102の上部に配置された第2の分配マニホルド118を通って容器102の中にキャリアガスを搬送するように配置され、ガス流は、MPTMS蒸気及び/又はエアロゾル液滴を同伴した。この場合、第1及び第2のガス搬送ライン112、116を通して提供されるキャリアガスは、空気であったが窒素などの他のガスもまた適切である。一部の実施形態では、第1及び第2のガス搬送ライン112、116及びそれぞれのガス分配マニホルド114、118は、例えば、主ガス供給導管120を通って同じガス供給源から供給することができる。主ガス供給導管120は、ガス110を加熱するように構成された加熱器122を含むことができる。加えて、ガス110の圧力は、圧力調節器124で調節することができる。
【0065】
本実施例では、ガス搬送ライン112、116の両方は、0.3MPaの圧力で作動させた。第3のガス搬送ライン126は、容器102の上部から、ガスライン126を通って容器102の上部と流体連通しているノズル130の前に垂直に配置されたガラスサンプル128にMPTMS蒸気及びエアロゾルを搬送した。ガラスサンプルは、100パス(例えば、約15分)、ノズル130の前で往復させた。ガラスサンプルの半分を、被覆プロセス後、15分間50℃の活性化温度で加熱した。MPTMSに100パス、暴露した後に達成された水接触角は、約22度から約33度の範囲にあったが、「活性化」サンプルの水接触角は、約41度から約52度の範囲に増加した。10のサンプルセット(5つの活性化サンプル及び5つの非活性化サンプル)を、Infochem ID 8、A+B混合物MMAインクを用いて複数の光抽出ドットでスクリーン印刷し、次に、200℃で30分間焼いた。
【0066】
以下の接着試験では、単一の光抽出ドット剥離は、「不合格」指定をもたらした。乾燥接着性は、第1のセットのサンプルについて、合計5つのサンプル上のサンプル当たり6つの位置で「剥離試験」によって測定した(30位置を試験した)。約5cm(2インチ)長の3M-600テープを切断して印刷面に貼り付け、5秒間指で拭いて気泡を除去し、3分間待った後、テープを印刷面から90°の角度で引っ張った。被覆サンプル(熱活性化及び非活性化の両方)に対する乾燥接着試験では、光抽出ドットは剥離しなかったが、MPTMS被覆されていないガラスサンプルでは、光抽出ドットの有意な剥離が観察された。印刷されたサンプルは、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、合計5つのサンプル上のサンプル当たり6つの位置で行い(30位置を試験した)、風化の影響を観察した。MPTMSで処理したガラスサンプルは、風化後に光抽出ドットが剥離しなかったが、MPTMS被覆されていないガラスサンプルでは、風化後に複数の光抽出ドットが剥離した。
【0067】
また、風化前の印刷されたサンプルを、TX1039 AlphaSatクリーンルームワイプ(70%IPA、30%DI水)で耐摩耗性に関して試験した。印刷された光抽出ドットを有するサンプルを、ワイプ上に置かれた500グラムの荷重で、約2.5センチメートルの長い経路長にわたって100パス、手動で摩耗させた。MPTMSで処理されたガラスサンプルでは、光抽出ドットはIPA摩耗後に剥離せず、IPA分子の浸透を防止すると同時に摩耗に耐える、ガラス-インク界面での最適な接着性を示した。印刷された光抽出ドットを有する未処理ガラス(MPTMS被覆されていないガラスサンプル)では、IPA摩耗試験でドットのほとんどが剥離した。
【0068】
(実施例3)
さらに別の実験では、厚さ1.1mmのCorning(登録商標)Iris(商標)ガラスの100mm×300mmのサンプルを、1%SemiClean KG洗剤溶液を用いて70℃で12分間、37kHz超音波で洗浄し、その後、70℃で24分間、DI水リンスし、38-54kHz超音波で、70℃で7分間、DI水リンスし、62℃空気乾燥に12分間、暴露させた。MPTMS被覆プロセスは、RPX540(Integrated Surface Technologies社製)被覆システムを用いて、チャンバ温度40℃及び約0.1atmの圧力で実施した。ガラスサンプルを、最初に、約2気圧(atm)の圧力及び約1分の時間でIPA及び水の混合物(Integrated Surface Technologies社製のZorrix(商標))に暴露させ、MPTMS暴露のために表面を準備した。次に、ガラスサンプルを、約0.25atmの圧力及び1分、5分、30分、及び60分の時間でMPTMSに暴露させた。8のサンプルを、各時間間隔で被覆した。様々な暴露時間の間のDI水接触角は、1分-32度、5分-37度、30分-38度、60分-46度であった。次に、これらのサンプルを、Infochem ID-8 A+Bインクを用いて複数の光抽出ドットでスクリーン印刷し、次に、200℃で30分間、空気中で加熱した。
【0069】
以下の接着試験では、単一のドット剥離は、「不合格」指定をもたらした。乾燥接着性は、第1のセットのサンプルについて、合計2つのサンプル上のサンプル当たり3つの位置で「剥離試験」によって測定した(6位置を試験した)。約5cm(2インチ)長の3M-600テープを切断して印刷面に貼り付けら、5秒間指で拭いて気泡を除去し、3分間待った後、テープをサンプル表面から90°の角度で引っ張った。30分及び60分の暴露時間の乾燥接着試験では、光抽出ドットは剥離されなかったが、1分及び5分の暴露時間では、6つの位置のうちの1つに光抽出ドットの剥離があり、被覆されていない対照サンプルは、6つの位置のうちの3つが不合格であった。第2のセットの印刷されたサンプルは、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、第2のセットのサンプルで、合計2つのサンプル上のサンプル当たり3つの位置で行い(6位置を試験した)、風化条件の影響を観察した。5、30、60分暴露のMPTMSで処理されたガラスサンプルでは、風化後に光抽出ドットは剥離せず、印刷インクの濡れ性を可能にすると同時に水分子の浸透を防止し、ガラス-インク界面の最適な疎水化を示した。1分暴露のMPTMSで処理されたガラスサンプル及び被覆されていないガラスサンプルでは、複数の不合格領域が検出され、これは印刷インクの濡れ性は可能するが水分子の浸透を防止しない、ガラス-インク界面の最適以下の疎水化を示した。
【0070】
また、印刷されたサンプルを、「テーバー」研磨器(米国ニューヨーク州所在のTaber Industries社製)に取り付けられたTX1039 AlphaSatクリーンルームワイプ(70%IPA、30%DI水)で耐摩耗性に関して試験した。印刷された光抽出ドットを有するサンプルを、毎分40サイクル及び2.5cmの摩耗長で加えられる500グラムの荷重で50回摩耗させた。5、30及び60分暴露のMPTMSで処理されたガラスサンプルでは、光抽出ドットは、耐摩耗性試験後に剥離せず、印刷インクの濡れ性を可能にすると同時にIPA分子の浸透を防止する、ガラス-インク界面の最適な疎水化を示した。1分暴露のMPTMSで処理されたガラス及び被覆されていないガラスでは、複数の不合格領域が検出され、印刷インクの濡れ性は可能にするが、IPA分子の浸透を防止しない、ガラス-インク界面の最適以下の疎水化を示した。
【0071】
エージング前後に幅100mm、長さ300mm、及び厚さ1.1mmのサイズのMPTMS被覆ガラスの色ずれを、Radiant Imaging PMi16撮像比色計を用いて試験し、エージング前後で<0.004の測定値を得た。ここで、色ずれ差の基準は、被覆されていない、エージングされていない、印刷されたままのガラスサンプルであった。
【0072】
(実施例4)
別の実施例では、MPTMS被膜を、浸漬被覆法によりガラスサンプルに施工した。プラズマ処理されたガラスサンプルを、15分間トルエン中の2%MPTMSの溶液に浸漬した。余分な溶液は、乾燥した超高純度のN2で吹き飛ばした。次に、サンプルを、光抽出ドットを印刷する前に120℃で30分間焼いた。第1のセットのサンプルについて、乾燥接着信頼性を、周囲条件下で印刷した1日後に「剥離試験」によって試験した。乾燥接着試験中に光抽出ドットは剥離しなかった。第2のセットの印刷されたサンプルについて、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、第2のセットのサンプルで行い、風化の影響を観察した。MPTMS処理ガラスサンプルでは、風化前後でドットの剥離は観察されなかった。
【0073】
また、印刷されたサンプルは、イソプロピルアルコール(IPA)で耐摩耗性に関して試験した。IPAに浸漬されたクリーンルームクロスを、「テーバー」研磨器に取り付けた。ドットが印刷されたサンプルは、約2.5cmの摩耗長で加えられた500グラムの荷重で100回摩耗させた。100℃で焼いたサンプルはIPAワイプ試験に合格しなかったが、200℃で焼いた後、ドットは剥離しなかった。
【0074】
(実施例5)
別の実施例では、APTMS被膜を、浸漬被覆法によりガラスサンプルに施工した。厚さ1.5mmのプラズマ処理された10cm×10cmのIris(商標)ガラスサンプルを、水中で2重量パーセント(wt%)APTMSの溶液に15分間浸漬した。サンプルを、1から2秒DI水でリンスし、次に、乾燥した超高純度のN2で乾燥させた。次に、ガラスサンプルを、光抽出ドットを印刷する前に120℃で15分間焼いた。APTMS水溶液で処理した後達成された水接触角は、約20度から約50度であった。10のサンプルセットに、Infochem ID 8、A+B混合物PMMAインクを用いて複数の光抽出ドットをスクリーン印刷し、次に、200℃で30分間焼いた。
【0075】
以下の接着試験では、単一のドット剥離は、「不合格」指定をもたらした。乾燥接着性は、第1のセットのサンプルについて、周囲条件下で印刷した1日後に、合計10のサンプル上のサンプル当たり3つの位置で「剥離試験」によって測定した(30位置で試験した)。約10cm(4インチ)長の3M-600テープを切断して印刷面に貼り付け、5秒間指で拭いて気泡を除去し、3分間待った後、テープをガラス表面から90°の角度で引っ張った。APTMS暴露サンプルでは、光抽出ドットは乾燥接着試験で剥離しなかったが、印刷された光抽出ドットを有する未処理ガラスサンプルでは、有意な剥離が観察された。別のセットの印刷されたサンプルを、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、合計10のサンプル上のサンプル当たり3つの位置で行い(30位置で試験した)、風化条件の影響を観察した。APTMSで処理されたガラスサンプルでは、風化後に光抽出ドットは剥離しなかったが、被覆されていないガラスサンプルでは、風化後、複数の光抽出ドットが剥離した。
【0076】
また、風化前の印刷されたAPTMS暴露サンプルを、TX1039 AlphaSatクリーンルームワイプでIPA耐摩耗性に関して試験した。ドットが印刷されたサンプルは、約2.5cm(1インチ)の経路長にわたって加えられた500グラムの荷重で100パス、「テーバー」研磨器で摩耗させた。APTMSで処理されたガラスサンプルでは、IPA摩耗中に光抽出ドットは剥離せず、摩耗に耐えると同時にIPA分子の浸透を防止する、ガラス-インク界面の最適な接着を示した。APTMS被膜がないガラスでは、IPA摩耗試験でほとんどのドットが剥離した。
【0077】
(実施例6)
別の実験では、厚さ1.5mmのGen2、370mm×470mmのCorning(登録商標)Iris(商標)ガラスサンプルを、生産スケールの洗浄ラインで洗浄した。ガラスサンプルを、高処理能力の生産スケールの洗浄ラインにおいて0.2wt%のAPTMS水溶液(約9から約12の範囲のpH)に暴露させた。APTMS溶液に暴露させた後、サンプルをDI水リンス有り及び無しでも試験した。加えて、シラン分子の印刷前の熱活性化が接着性能に及ぼす影響も調査した。
【0078】
全てのサンプルは、Poly420スクリーンマスク(420メッシュ/インチ、27マイクロメートルの線径、開放率31%)を用いてInfochem ID 8 PMMAインクでスクリーン印刷した。印刷後、印刷されたサンプルは、60℃で30分間硬化させた。硬化後、サンプルは、3つのセットに分けた。第1のセットはさらなる熱処理を受けず、第2のセットは200℃で5分間、熱処理し、第3のセットは200℃で30分間、熱処理した。
【0079】
以下の接着試験では、単一のドット剥離は、「不合格」指定をもたらした。乾燥接着性は、一連のサンプルについて、周囲条件下で印刷した1日後、3M-600軽量包装テープを用いた「剥離試験」によってサンプル当たり3つの位置で測定した。約5cm長の3M-600テープを切断して印刷面に貼り付け、5秒間指で拭いて気泡を除去し、3分間待った後、ガラス表面からサンプル表面に対して90°の角度で引っ張った。乾燥接着試験において、DI水リンス、DI水リンスなし、被覆後熱活性化、及び非活性化の全ての条件で光抽出ドットは剥離しなかった。未処理の(被覆されていない)ガラスサンプルでは、有意な剥離が観察された。しかしながら、基準ガラスは、乾燥接着及び湿潤接着試験には合格したが、IPA摩耗試験には不合格であった。別のセットの印刷されたサンプルは、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、別の「剥離試験」を、サンプル当たり3つの位置で行い、風化条件の影響を観察した。APTMSで処理されたガラスサンプル(DI水リンスなし、200℃の熱処理の有/無)では、風化後に光抽出ドットは剥離しなかった。
【0080】
また、風化前の印刷されたサンプルを、TX1039 AlphaSatクリーンルームワイプでIPA耐摩耗性に関して試験した。印刷された光抽出ドットを有するサンプルは、約2.5cmの長い経路長にわたって加えられた500グラムの荷重で100パス、「テーバー」研磨器で摩耗させた。APTMSで処理されたガラスサンプルでは、IPA摩耗試験後に光抽出ドットは剥離せず、摩耗に耐えると同時にIPA分子の浸透を防止する、ガラス-インク界面の最適な接着を示した。未処理(表面処理なし)のガラスに印刷された光抽出ドットでは、IPA摩耗試験中にドットのほとんどが剥離した。
【0081】
印刷されたサンプルの光学特性を、200℃での熱処理前、熱処理後(200℃で5分間又は200℃で30分間)、及び風化後に測定した。APTMS処理したサンプル(DI水リンス有り、無しの両方)の輝度を、「トプコンSRシリーズ分光放射計」(日本国、東京都板橋区所在のTopcon Technohouse社製)で試験し、約14,700nitsから約15,100nitsの範囲にあることが分かったが、未処理ガラスサンプルは、14,921nitsの輝度を有することが分かった。これらの値は、測定誤差の範囲にある。200℃の印刷後熱処理ステップの前に、同じ器具を用いて色ずれ(CS)値も測定し、全てのサンプルで約0.009から約0.010の範囲にあることが分かった。
【0082】
200℃の熱処理後、未処理(被覆されていないが印刷されている)ガラスの輝度変化は、約-1.6%であったが、APTMS処理されたサンプルの輝度変化は、依然として輝度性能の許容範囲にある平均して約-2.3%であった。色ずれについては、未処理ガラスでは、約0.009から約0.011の範囲の増加を示すが、APTMS処理されたサンプルでは、色ずれは、この場合も許容範囲の約0.010から約0.012の範囲に増加した。
【0083】
(実施例7)
さらに別の実施例では、シラン化PMMAを、表面処理に用いた。クリーンルームクロスを、シラン化PMMA溶液に浸漬し、プラズマ処理されたガラスサンプル上を拭いて均一な被膜を作成した。サンプルは、周囲条件でフードの下で20分間乾燥させた。サンプルは、光抽出ドットで印刷した後、100℃で30分間焼いた。乾燥接着性は、周囲条件(室温及び約40%の相対湿度)で印刷した1日後に、3M-600テープを用いる「剥離試験」によって試験した。光抽出ドットは、乾燥接着試験中に剥離しなかった。第2のセットのスクリーン印刷ガラスサンプルを、60℃及び90%のRHに維持された風化チャンバに保管した。約10日(240時間)後、第2のセットのサンプルについて、「剥離試験」を行い、風化の影響を観察した。シラン化PMMA処理されたガラスサンプルでは、風化後に光抽出ドットは剥離せず、印刷インクの濡れを可能にすると同時に水分子の浸透を防止する、ガラス-インク界面の疎水化を示した。また、表面被膜により、インク分子の表面被膜のPMMAネットワークへの浸透が可能になり、それによって、乾燥接着エネルギー及び湿潤接着エネルギーの両方がさらに増加したと考えられる。
【0084】
印刷ガラスサンプルは、耐摩耗性についても試験した。イソプロピルアルコールに浸漬されたクリーンルームクロスを、500グラムの荷重をかけた「テーバー」研磨器に取り付けた。印刷された光抽出ドットを有するガラスサンプルは、約2.5cmの摩耗長で100回摩耗させた。印刷後100℃で熱処理したガラスサンプルは、IPA摩耗試験に合格しなかったが、第2のガラスサンプルの200℃での熱処理後、第2のサンプルではドットは剥離しなかった。
【0085】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく本開示の実施形態に対して種々の修正及び変形形態を加えることができることは、当業者には明らかであろう。従って、本開示は、これらが添付の特許請求の範囲及びこれらの均等物の範囲内にあるならば、このような修正及び変形形態を包含することが意図される。
【国際調査報告】