(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】補体阻害のためのRNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230330BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230330BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230330BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230330BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230330BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230330BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230330BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230330BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230330BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230330BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230330BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230330BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230330BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230330BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230330BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12P21/02 C
A61K31/713
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61K45/00
A61K38/12
A61K39/395 D
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P7/00
A61P13/02
A61P37/06
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/02
A61P27/02
A61P21/00
A61P21/04
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548899
(86)(22)【出願日】2021-02-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2021018071
(87)【国際公開番号】W WO2021163654
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513283268
【氏名又は名称】アペリス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APELLIS PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホスバッハ, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フルチュ, カトリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA05
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA59
4C084DC50
4C084NA05
4C084ZB072
4C085AA13
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA20
4C086ZA33
4C086ZA51
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】
例えばmiRNAおよびsiRNAなどのRNA、ならびに補体介在性障害の治療におけるその使用が記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むsiRNAであって、前記アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対し、少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列に対して相補的であり、および/または前記センス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対し、少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、siRNA。
【請求項2】
アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むsiRNAであって、前記アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的であり、および/または前記センス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、siRNA。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖が、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である、請求項1または請求項2に記載のsiRNA。
【請求項4】
前記アンチセンス鎖が、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項5】
前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の一方または両方が、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項6】
前記少なくとも一つのオーバーハングが、1、2、3、4、または5個のヌクレオチドのオーバーハングを含む、請求項5に記載のsiRNA。
【請求項7】
前記少なくとも一つのオーバーハングが、3’オーバーハングを含む、請求項5または6に記載のsiRNA。
【請求項8】
前記オーバーハング領域が、配列番号75の断片に対し相補的である、請求項6または7のいずれかに記載のsiRNA。
【請求項9】
前記3’オーバーハングが、2-ヌクレオチドのオーバーハングを含む、請求項7または8に記載のsiRNA。
【請求項10】
前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の一方または両方が、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項11】
前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の一方または両方が、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項12】
前記少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む、請求項11に記載のsiRNA。
【請求項13】
前記少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、(i)前記センス鎖の5’末端、(ii)前記センス鎖の3’末端、(iii)前記アンチセンス鎖の5’末端、および/または(iv)前記アンチセンス鎖の3’末端、の最後の二つ、三つ、または四つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含む、請求項12に記載のsiRNA。
【請求項14】
前記少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、(i)前記センス鎖の5’末端、(ii)前記センス鎖の3’末端、(iii)前記アンチセンス鎖の5’末端、および/または(iv)前記アンチセンス鎖の3’末端、の最後の三つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含む、請求項13に記載のsiRNA。
【請求項15】
前記少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、(i)前記センス鎖の5’末端、(ii)前記センス鎖の3’末端、(iii)前記アンチセンス鎖の5’末端、および(iv)前記アンチセンス鎖の3’末端、の最後の二つ、三つ、または四つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含む、請求項13に記載のsiRNA。
【請求項16】
前記センス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項17】
前記アンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項18】
以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項19】
前記センス鎖の5’末端、前記センス鎖の3’末端、前記アンチセンス鎖の5’末端、および前記アンチセンス鎖の3’末端のうちの一つ以上に結合された少なくとも一つのリガンドをさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項20】
前記リガンドが、少なくとも一つのGalNAc部分を含む、請求項19に記載のsiRNA。
【請求項21】
前記リガンドが、三つのGalNAc部分を含む、請求項20に記載のsiRNA。
【請求項22】
補体介在性障害を有するか、またはそのリスクがある対象を治療する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のsiRNAの有効量を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載のsiRNAをコードする核酸を含む組成物を前記対象に投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物の前記投与後、前記対象における、もしくは前記対象の生体サンプルにおけるC3転写物またはC3タンパク質のレベルが、前記組成物の前記投与前のレベルと比較して低下される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
C3転写物またはC3タンパク質の前記レベルは、前記投与前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、前記対象に静脈内投与または皮下投与される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、前記対象の肝細胞に投与される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、生体外で前記肝細胞に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、インビボで前記肝細胞に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記対象に、第二の剤を投与することをさらに含む、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第二の剤が、抗C3抗体またはコンプスタチン類似体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象は、補体制御に欠損があり、任意で前記欠損は、前記対象の細胞の少なくとも一部による、一つ以上の補体制御タンパク質の異常な低発現を含む、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記補体介在性障害が、慢性障害である、請求項22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記補体介在性障害は、補体介在性の赤血球に対する損傷を含み、任意で前記障害は、発作性夜間血色素尿症または非定型溶血性尿毒症症候群である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記補体介在性障害は、自己免疫疾患であり、任意で前記障害は、多発性硬化症である、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記補体介在性障害は、腎臓が関わり、任意で前記障害は、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、IgA腎症(IgAN)、原発性膜性腎症(原発性MN)、C3糸球体症(C3G)、または急性腎損傷である、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記補体介在性障害は、中枢神経系または末梢神経系または神経筋接合部が関わり、任意で前記障害は、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多巣性運動ニューロパチー、または重症筋無力症である、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~21のいずれか一項に記載のsiRNA、ならびに担体および/または賦形剤を含む、組成物。
【請求項39】
請求項1~18のいずれか一項に記載のsiRNAを一つ以上コードする一つ以上のヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項40】
C3阻害物質(例えば、アプタマー、抗C3抗体、抗C3b抗体、哺乳類補体制御タンパク質、またはミニH因子)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項39に記載の発現ベクター。
【請求項41】
組成物であって、
(i)配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むセンス鎖、ならびに
(ii)配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含む、組成物。
【請求項42】
配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む、アンチセンス核酸。
【請求項43】
細胞における補体C3発現を低下させる方法または阻害する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項38もしくは41に記載の組成物、請求項39もしくは40に記載のベクター、または請求項42に記載のアンチセンス核酸と、前記細胞を接触させることを含む、方法。
【請求項44】
前記接触工程の後、C3転写物またはC3タンパク質の前記レベルは、前記接触工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が、対象内にある、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、ヒトである、請求項22~37または45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、補体介在性障害に罹患する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
対象おいてC3の発現を低下させる方法または阻害する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項38もしくは41に記載の組成物、請求項39もしくは40に記載のベクター、または請求項42に記載のアンチセンス核酸と、前記対象の細胞を接触させることを含む、方法。
【請求項49】
前記接触工程の後、C3転写物またはC3タンパク質の前記レベルは、前記接触工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、ヒトである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、補体介在性障害に罹患する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
対象おいてC3の発現を低下させる方法または阻害する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項38もしくは41に記載の組成物、請求項39もしくは40に記載のベクター、または請求項42に記載のアンチセンス核酸を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記投与工程の後、C3転写物またはC3タンパク質の前記レベルは、前記投与工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、ヒトである、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が、補体介在性障害に罹患する、請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月14日に出願された米国仮特許出願第62/977,012号、2020年2月21日に出願された米国仮特許出願第62/980,100号、および2020年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/062,321号の利益を主張するものであり、その各内容は参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0002】
補体は、30を超える血漿タンパク質および細胞結合型タンパク質からなるシステムであり、自然免疫および適応免疫の両方において重要な役割を果たしている。補体系のタンパク質は、様々なタンパク質相互作用やタンパク質切断事象を通して、一連の酵素カスケードにおいて作用する。補体活性化は、抗体依存性の古典的経路、第二経路、およびマンノース結合レクチン(MBL)経路の三つの主要経路を介して発生する。不適切または過剰な補体活性化は、多くの重篤な疾患および病態の根本的原因または要因であり、過去数十年間にわたり、治療剤として様々な補体阻害剤を探索するためにかなりの努力が払われてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一つの態様では、本開示は、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むsiRNAを特徴とし、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と相補的である。
【0004】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング領域は、配列番号75の断片に対して相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAの3’オーバーハングは、2-ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖と、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない、少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含有するアンチセンス鎖とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、siRNAは、以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、およびアンチセンス鎖の3’末端のうちの一つまたは全てに結合された少なくとも一つのリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、少なくとも一つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、三つのGalNAc部分を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、補体介在性障害を有するか、またはそのリスクがある対象を治療する方法を特徴としており、当該方法は、対象に、有効量のsiRNAを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に、siRNAをコードする核酸を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物の投与後、対象または対象由来の生体サンプル(例えば、血液サンプル、血清サンプルもしくは血漿サンプル、および/または肝細胞を含むサンプル)中のC3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルが、組成物の投与前のレベルと比較して低下する。いくつかの実施形態では、C3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルは、投与前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。
【0013】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象に、静脈内投与または皮下投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象の肝細胞に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、生体外(ex vivo)で肝細胞に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、インビボで肝細胞に投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に第二の剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、第二の剤は、抗C3抗体またはコンプスタチン類似体である。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は、補体制御に欠損があり、任意で当該欠損は、対象の細胞の少なくとも一部による、一つ以上の補体制御タンパク質の異常な低発現を含む。いくつかの実施形態では、補体介在性障害は、慢性障害である。いくつかの実施形態では、補体介在性障害は、補体介在性の赤血球に対する損傷を含み、任意でこの場合において当該障害は、発作性夜間血色素尿症または非定型溶血性尿毒症症候群である。いくつかの実施形態では、補体介在性障害は、自己免疫疾患であり、任意でこの場合において当該障害は、多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、補体介在性障害は、腎臓が関わり、任意でこの場合において当該障害は、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、IgA腎症(IgAN)、原発性膜性腎症(原発性MN)、C3糸球体症(C3G)、または急性腎損傷である。いくつかの実施形態では、補体介在性障害は、中枢神経系または末梢神経系または神経筋接合部が関わり、任意でこの場合において当該障害は、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多巣性運動ニューロパチー、または重症筋無力症である。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は、担体および/または賦形剤を含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるsiRNAのうちの一つ以上をコードする一つ以上のヌクレオチド配列を含む発現ベクターを特徴とする。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、C3阻害物質(例えば、アプタマー、抗C3抗体、抗C3b抗体、哺乳類補体制御タンパク質、またはミニH因子)をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0018】
別の実施形態では、本開示は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス核酸を特徴とする。
【0019】
別の態様では、本開示は、細胞内の補体C3発現を低下させる方法または阻害する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、方法は、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むsiRNAと、細胞を接触させることを含み、この場合においてアンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング領域は、配列番号75の断片に対して相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAの3’オーバーハングは、2-ヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖と、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない、少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含有するアンチセンス鎖とを含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、およびアンチセンス鎖の3’末端のうちの一つまたは全てに結合された少なくとも一つのリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、少なくとも一つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、三つのGalNAc部分を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス核酸と、細胞を接触させることを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される組成物または発現ベクターと、細胞を接触させることを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、接触工程の後、C3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルは、接触工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。いくつかの実施形態では、方法は、補体C3遺伝子のmRNA転写物の分解を得るために充分な時間、細胞を維持して、それにより細胞中の補体C3遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象中にある。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、補体介在性障害に罹患している。
【0024】
別の態様では、本開示は、対象においてC3の発現を低下させる方法または阻害する方法を特徴とし、当該方法は、アンチセンス鎖とセンス鎖を含むsiRNAと、対象の細胞を接触させることを含み、この場合において当該アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング領域は、配列番号75の断片に対して相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAの3’オーバーハングは、2-ヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖と、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない、少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含有するアンチセンス鎖とを含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、およびアンチセンス鎖の3’末端のうちの一つまたは全てに結合された少なくとも一つのリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、少なくとも一つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、三つのGalNAc部分を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス核酸と、細胞を接触させることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される組成物または発現ベクターと、細胞を接触させることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、接触工程の後、C3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルは、接触工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。
【0028】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、補体介在性障害に罹患している。
【0029】
別の態様では、本開示は、対象においてC3の発現を低下させる方法または阻害する方法を特徴とし、当該方法は、アンチセンス鎖とセンス鎖を含むsiRNAを、対象に投与することを含み、この場合において当該アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング領域は、配列番号75の断片に対して相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAの3’オーバーハングは、2-ヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖と、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない、少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含有するアンチセンス鎖とを含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、およびアンチセンス鎖の3’末端のうちの一つまたは全てに結合された少なくとも一つのリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、少なくとも一つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、三つのGalNAc部分を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス核酸を投与することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される組成物または発現ベクターを投与することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、投与工程の後、C3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルは、投与工程前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。
【0033】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、補体介在性障害に罹患している。
【0034】
別の態様では、本開示は、対象において補体を低下させる方法または阻害する方法を特徴とし、当該方法は、アンチセンス鎖とセンス鎖を含むsiRNAを、対象に投与することを含み、この場合において当該アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つに対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列と相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つとは、1、2、3または4個以下のヌクレオチドが異なる配列を含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号76~100のいずれか一つを含むヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、配列番号101~125のいずれか一つを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つのオーバーハング領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのオーバーハングは、3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング領域は、配列番号75の断片に対して相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAの3’オーバーハングは、2-ヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖と、5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端の両方に、配列番号75の断片に対して相補的ではない、少なくとも一つの追加ヌクレオチドを含有するアンチセンス鎖とを含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一つ、または両方は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル基を含むヌクレオチド、2’-フルオロ基を含むヌクレオチド、および/または隣接するヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖は、配列番号76~100、126~150、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、255、259、264、268、272、276、325、326、および327のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、以下の配列番号201/202、203/204、205/206、207/208、209/210、211/212、213/214、215/216、217/218、219/220、221/222、223/224、225/226、227/228、229/230、231/232、233/234、235/236、237/238、239/240、241/242、243/244、245/246、247/248、249/250、251/252、253/254、201/256、255/256、255/257、201/258、255/258、207/260、259/260、259/261、207/262、259/262、217/263、264/263、264/265、217/266、264/266、219/267、268/267、268/269、219/270、268/270、231/271、272/271、272/273、231/274、272/274、243/275、276/275、276/277、243/278、276/278、325/275、326/260、および327/258のセンス/アンチセンスのセットのうちのいずれか一つのセンス鎖ヌクレオチド配列/アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、およびアンチセンス鎖の3’末端のうちの一つまたは全てに結合された少なくとも一つのリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、少なくとも一つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、三つのGalNAc部分を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号101~125、151~200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、257、258、260、261、262、263、265、266、267、269、270、271、273、274、275、277、278、および300~324のいずれか一つのヌクレオチド配列を含むアンチセンス核酸を投与することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される組成物または発現ベクターを投与することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、投与工程の後、補体活性は、投与工程前の補体活性の対照レベルなどの対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。
【0038】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、補体介在性障害に罹患している。
【0039】
定義
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する能力を有する免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンまたはその誘導体を指す。抗体は、例えば、ヒト、齧歯類、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどの任意の種の抗体であってもよい。抗体は、以下のヒトクラスのいずれかを含む、任意の免疫グロブリンクラスの一種であってもよい:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE、または例えばIgG1、IgG2などのそれらのサブクラス。本発明の様々な実施形態において、抗体は、例えば、Fab’、F(ab’)2、scFv(一本鎖可変)、または抗原結合部位を保持する他の断片、または組換え産生された断片を含む組換え産生されたscFv断片などの断片である。例えば、Allen,T.,Nature Reviews Cancer,Vol.2,750-765,2002、および当該文献中の参照文献を参照のこと。抗体は、一価、二価、または多価であり得る。抗体は、例えば、げっ歯類起源の可変ドメインが、ヒト起源の定常ドメインに融合されており、それに伴いげっ歯類抗体の特異性が保持されている、キメラ抗体または「ヒト化」抗体であってもよい。ヒト起源のドメインは、最初にヒトにおいて合成されているという意味で、直接ヒトを起源とする必要はない。むしろ「ヒト」ドメインは、そのゲノムがヒト免疫グロブリン遺伝子を組み込んでいる齧歯類において作製されてもよい。例えば、Vaughan,et al.,(1998),Nature Biotechnology,16:535-539を参照のこと。抗体は、部分的または完全にヒト化されてもよい。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよいが、本発明の目的に対しては、モノクローナル抗体が概して好ましい。事実上、すべての対象分子に特異的に結合する抗体を作製する方法が、当分野に公知である。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、(分子またはその抗原性断片への自然な暴露の後、またはそれらを用いた免疫化の後に)抗体を産生する動物の血液または腹水から精製することができ、細胞培養またはトランスジェニック生物体での組み換え技術を使用して作製することができ、または少なくとも部分的には化学合成により作製することができる。
【0040】
およそ:本明細書で使用される場合、数値に関連した「およそ」または「約」という用語は概して、別段の記載がない限り、または文脈から別段であることが明白でない限り、数値のいずれかの方向(~よりも大きい、または未満)において、5%、10%、15%、または20%の範囲内にある数を含むと捉えられる(当該数が、可能性のある値の0%未満であるか、または100%を超える場合を除く)。
【0041】
相補的:本明細書で使用される場合、当分野で受け入れられている意味に従い、「相補的」とは、特定の塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたは核酸の間で正確に対形成する能力を指す。例えば、アデニン(A)およびウリジン(U)は相補的であり、アデニン(A)およびチミジン(T)は相補的であり、ならびにグアニン(G)およびシトシン(C)は相補的であり、当分野においてワトソン・クリック塩基対と呼称される。第一の核酸配列の特定の位置のヌクレオチドは、当該鎖が逆平行で整列されるときに、第二の核酸配列において反対側に位置するヌクレオチドに対して相補的である場合、当該ヌクレオチドは、相補的な塩基対を形成し、核酸は、当該位置で相補的である。第二の核酸に対する第一の核酸の相補性の割合は、逆平行の方向でそれら核酸を整列させて評価ウィンドウ全体での最大の相補性を得て、当該ウィンドウ内で相補的な塩基対を形成する両鎖中のntの合計数を決定し、当該ウィンドウ内のntの合計数で割り、100を掛けることにより評価されてもよい。例えば、AAAAAAAAおよびTTTGTTATは、合計16ntのうち、12ntが相補的な塩基対で存在しているため、75%相補的である。特定の相補性割合%を達成するために必要とされる相補的なntの数を計算する場合、分数は最も近い整数に四捨五入される。非相補的ヌクレオチドによって占有される位置は、ミスマッチを構成する。すなわちその位置は、非相補的な塩基対によって占有される。特定の実施形態では、評価ウィンドウは、二重鎖部分または標的部分に対して、本明細書に記載される長さを有する。相補的な配列は、第一のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、第二のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの、両ヌクレオチド配列の長さ全体にわたる(両ヌクレオチドが同じ長さの場合)、またはより短い配列の長さ全体にわたる(両ヌクレオチドが異なる長さの場合)、塩基対形成を含む。本明細書ではそのような配列を互いに対して「完全に相補的」(100%相補性)と呼称することができる。評価ウィンドウ上で少なくとも70%相補的な核酸は、当該ウィンドウ上で「実質的に相補的」とみなされる。特定の実施形態では、相補的な核酸は、評価のウィンドウ上で少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%相補的である。本明細書において第一の配列が第二の配列に関して「実質的に相補的」と呼称される場合、その二つの配列は完全に相補的であってもよく、またはその目的とする用途に最も関連する条件下でハイブリダイズする能力は保持しながら、ハイブリダイゼーション時に一つ以上の非合致塩基を含んでもよく、例えばハイブリダイゼーション時に最大で約5%、10%、15%、20%または25%の非合致塩基を含んでもよく、または最大で30塩基対の二本鎖についてはハイブリダイゼーション時に1、2、3、4、5または6個のミスマッチ塩基を含んでもよい。二つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション時に一つ以上の一本鎖オーバーハングを形成するように設計されている場合、当該オーバーハングは、相補性割合の決定に関して、ミスマッチとはみなされず、すなわちペア非形成ヌクレオチドとはみなされない。例えば一方が21ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドで、他方が23ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含むdsRNAの二本鎖は、より長い方のオリゴヌクレオチドが、より短いオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的な21ヌクレオチドの配列と、2ヌクレオチドのオーバーハングを含んでおり、本明細書において、「完全に相補的」と呼称され得る。本明細書で使用される場合、「相補的な」配列は、ハイブリダイズする能力に関する要件を満たしてさえいれば、一つ以上の非ワトソン・クリック塩基対を含んでもよく、ならびに/または非天然ヌクレオチドおよび他の修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含んでもよい。そのような非ワトソン・クリック塩基対としては限定されないが、G:Uの揺らぎ塩基対またはフーグスティーン塩基対形成が挙げられる。当業者であれば、例えばいわゆる「ゆらぎ」規則(例えば、Murphy,FV IV & V Ramakrishnan,V.,Nature Structural and Molecular Biology 11:1251-1252(2004)を参照のこと)に従い、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルは、かかる塩基を担持するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの塩基対形成の性能を実質的に変えることなく、他の塩基と置き換え可能であることを認識するであろう。例えば、イノシンを塩基として含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成することができる。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本明細書に記載される阻害性RNAのヌクレオチド配列において、例えばイノシンを含有するヌクレオチドにより置き換えることができる。「相補的な」、「完全に相補的な」、および「実質的に相補的な」という用語は、任意の二つの核酸間の塩基合致に関して使用することができ、例えばdsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間の塩基合致、またはds阻害性RNA(例えば、siRNA)のアンチセンス鎖と標的配列の間の塩基合致、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドと標的配列の間の塩基合致に関して使用することができることが理解され、文脈から明白であろう。当業者には理解されるように、本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズ」とは、特定の対象条件下で安定的な二本鎖構造が形成されるような相補的な部分を含む、または相補的な部分からなる二つの核酸配列の間の相互作用を指す。
【0042】
補体成分:本明細書で使用される場合、「補体成分」または「補体タンパク質」という用語は、補体系の活性化に関与する、または一つ以上の補体介在性の活性に関与する分子である。古典的補体経路の成分としては例えば、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、およびC5b-9複合体が挙げられ、細胞膜障害性複合体(MAC)や、前述のいずれか(例えば、C3a、C3b、C4a、C4b、C5aなど)の活性断片または酵素切断産物とも呼称される。第二経路の成分としては例えば、B因子、D因子、H因子、およびI因子、ならびにプロペルジン(properdin)が挙げられ、H因子は、当該経路の負の調節因子である。レクチン経路の成分としては例えば、MBL2、MASP-1、およびMASP-2が挙げられる。補体成分には、可溶性補体成分の細胞結合型受容体も含まれる。そのような受容体としては例えば、C5a受容体(C5aR)、C3a受容体(C3aR)、補体受容体1(CR1)、補体受容体2(CR2)、補体受容体3(CR3)などが挙げられる。「補体成分」という用語に、例えば、抗原抗体複合体、微生物または人工物表面上に存在する外来性構造など、補体活性化の「トリガー」としての役割を果たす分子および分子構造を含むことは意図されないことが認識されるであろう。
【0043】
宿主細胞:本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、外因性DNA(組み換え、または別手段による)が導入される細胞を指す。本開示を読む当業者であれば、当該用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫細胞も指すことを理解するであろう。変異または環境的影響のいずれかに起因して特定の修飾がその後の世代に発生する場合があるため、そのような子孫細胞は実際には親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書において使用される場合において、それでも「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は、外因性DNA(例えば、組み換え核酸配列)の発現に適した生物界のいずれかから選択される原核細胞および真核細胞を含む。例示的な細胞としては、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス種、ストレプトマイセス種などの株)、抗酸菌細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)など)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えばハイブリドーマやクアドローマなどの細胞融合体が挙げられる。一部の実施形態において、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウスの細胞である。一部の実施形態において、細胞は、真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えばCHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えばCOS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えばHEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL 3 A細胞、HT1080細胞、ミエローマ細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞から誘導された細胞株。一部の実施形態では、細胞は、一つ以上のウイルス遺伝子を含有する。
【0044】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、例えば核酸分子(例えばDNA分子および/またはRNA分子)の間、および/またはポリペプチド分子の間などのポリマー分子の間の全体的な関連性を指す。一部の実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合、相互に「実質的に同一」であると見なされる。二つの核酸配列またはポリペプチド配列の同一性のパーセントの計算は、例えば、最適比較を目的とした二つの配列のアライメント(例えば、最適アライメントを目的として第一の配列と第二の配列のうちの一つまたは両方にギャップが導入されてもよく、非同一配列は、比較目的に対し、無視されてもよい)を行うことにより実施することができる。特定の実施形態では、比較目的のためにアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次に、対応する位置のヌクレオチドが比較される。第一の配列中の位置が、第二の配列中の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)により占められているとき、当該分子は、当該位置で同一である。二つの配列間の同一性のパーセントは、当該配列によって共有される同一の位置の数の関数であり、当該二配列の最適アライメントを目的として導入が必要なギャップ数、および各ギャップの長さを考慮する。配列の比較、および二配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して実施されてもよい。例えば、二つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、MeyersおよびMiller(CABIOS,1989,4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。一部の例示的な実施形態では、ALIGNプログラムを用いて生成された核酸配列比較は、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティを使用する。あるいは、二つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリクスを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定されてもよい。
【0045】
連結された:本明細書で使用される場合、二つ以上の部分に関して使用されるときの「連結された」という用語は、当該部分が物理的に互いに会合されて、または接続されて、充分に安定的な分子構造を形成し、それにより当該連結が形成される条件下で当該部分が会合を維持することを意味し、好ましくは当該条件は、例えば生理学的条件など、新たな分子構造が使用される条件である。本発明の特定の好ましい実施形態では、連結は、共有結合である。他の実施形態では、連結は、非共有結合性である。部分は、直接的または間接的のいずれかで連結されてもよい。二つの部分が直接連結されているとき、それら部分は、互いに共有結合されているか、または充分に近接し、当該二つの部分の間の分子間力がその会合を維持する。二つの部分が間接的に連結されるとき、それらは各々、共有結合的に、または非共有結合的に第三の部分に連結され、当該二つの部分の会合が維持される。概して二つの部分が「リンカー」または「連結部分」または「連結部分」により連結されると呼称される場合、当該二つの連結部分間の連結は間接的であり、典型的には、連結された各部分はリンカーに共有結合される。リンカーは、部分(条件に応じて保護される)の安定性に合致する条件下で、合理的な期間内、連結される二つの部分と反応する任意の適切な部分であってもよく、合理的な収率をもたらすために充分な量であってもよい。
【0046】
マイクロRNA(miRNA):本明細書で使用される場合、「マイクロRNA」または「miRNA」という用語は、標的遺伝子発現において転写の制御および/または転写後の制御において機能し得る小さな非コードRNA分子を指す。この用語は、成熟miRNA、ならびに一次転写物(pri-miRNA)およびステムループ前駆体(pre-miRNA)を含む前駆体miRNA配列を包含する。自然発生的なmiRNAの生合成は、RNAポリメラーゼII転写によって核内で開始され、一次転写物(pri-miRNA)が生成される。一次転写物は、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素によって切断され、約70ntのステムループ前駆体miRNA(pre-miRNA)が産生される。次いでpre-miRNAは細胞質に能動的に輸送されて、そこでDicerリボヌクレアーゼにより切断されて、成熟miRNAを形成する。成熟miRNAには、「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」(標的配列に対し実質的に相補的な領域を含む)と、「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」(アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含む)が含まれる。当業者であれば、ガイド鎖は、標的RNAの標的領域に対して完全に相補的であってもよく、または標的RNAの標的領域に対して完全ではない相補性であってもよいことを認識するであろう。このmiRNAのガイド鎖は、RNA誘導型サイレンシング誘導体(RISC)内に組み込まれ、miRNAとの塩基対形成を介して標的mRNAを認識し、通常は標的mRNAの翻訳阻害や、不安定化をもたらす。当分野で理解されているように、自然発生的なmiRNAに対し、標的mRNAの認識は、mRNAとの不完全な塩基対形成を介して発生する。いくつかの実施形態では、miRNAは合成または操作されており、標的mRNAの認識は、mRNAとの完全な塩基対形成を介して発生する。典型的には、標的mRNAは、miRNAの「シード」配列に対し相補的な配列を含み、通常、当該配列は、miRNAのヌクレオチド2~8に相当する。miRNA配列に関する情報、ならびにpri-miRNA配列およびpre-miRNA配列に関連する情報は、例えばmiRBase(Griffiths-Jones et al.2008 Nucl Acids Res 36,(Database Issue:D154-D158)や、NCBIヒトゲノムデータベースなどのmiRNAデータベースで入手可能である。
【0047】
動作可能に連結される:本明細書で使用される場合、「操作可能に連結した」という用語は、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を指す。機能性要素に「動作可能に連結される」制御性要素は、当該機能性要素の発現および/または活性が、当該制御性要素に合致した条件下で実現されるような方法で会合される。一部の実施形態では、「動作可能に連結される」制御性要素は、対象のコード要素と連続的である(例えば共有結合されている)。一部の実施形態では、制御性要素は、対象の機能性要素で、トランスで、または別段により作用する。
【0048】
組み換え体:本明細書で使用される場合、「組み換え体」という用語は、例えば宿主細胞内にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド;組み換え体から単離されたポリペプチド;コンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリ;ポリペプチドまたは一つ以上のその構成要素、部分、要素、もしくはドメインをコードする、および/またはその発現を指示する遺伝子または遺伝子構成用に関しトランスジェニックである、または別段によりそれらを発現するよう操作された動物(例えばマウス、ウサギ、ヒツジ、魚など)から単離されたポリペプチド;ならびに/または選択核酸配列要素を互いにスプライシングする、もしくはライゲーションする、選択配列要素を化学合成する、ならびに/またはポリペプチドまたは一つ以上のその構成要素、部分、要素もしくはドメインをコードする、および/またはその発現を指示する核酸を別段で作製することを含む、任意の他の手段により調製、発現、生成、または単離されたポリペプチドなどの組み換え手段により設計され、操作され、調製され、発現され、生成され、製造され、および/または単離されるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、そのような選択配列要素の一つ以上が、自然に存在する。一部の実施形態では、そのような選択配列要素の一つ以上が、インシリコで設計される。一部の実施形態では、一つ以上のそのような選択配列要素は、例えば、対象の供給生物体(例えば、ヒトまたはマウスなど)の生殖細胞系列における、天然源または合成源に由来する公知の配列要素の(例えば、インビトロまたはインビボの)突然変異誘導から生じる。
【0049】
RNA干渉:本明細書で使用される場合、「RNA干渉」または「RNAi」という用語は概して、二本鎖RNA分子または短ヘアピン型RNA分子が実質的な、または完全な相同性を共有する核酸配列の発現を、二本鎖RNA分子または短ヘアピン型RNA分子が低下または阻害するプロセスを指す。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、自然界においてRNAi経路は、Dicerとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによって開始されると考えられている。当該エンドヌクレアーゼは、長い二本鎖RNA(dsRNA)を、典型的には2塩基の3’オーバーハングを有する21~23塩基対の二本鎖断片へと切断する(長さおよびオーバーハングの変動も予期される)。これを「低分子干渉RNA」(siRNA)と呼称する。そのようなsiRNAは、標的配列に対し実質的に相補的な領域を含む「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」と、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含む「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」の二つの一本鎖RNA(ssRNA)を含む。当業者であれば、ガイド鎖は、標的RNAの標的領域に対して完全に相補的であってもよく、または標的RNAの標的領域に対して完全ではない相補性であってもよいことを認識するであろう。
【0050】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」または「被験対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、および/または治療目的のために、本発明に従って提供される化合物または組成物が投与される任意の生物体を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなどの哺乳動物、昆虫、蠕虫など)および植物が挙げられる。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、および/または状態に罹患していてもよく、および/またはそれらに対し感受性であってもよい。
【0051】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象の特徴もしくは特性の全て、もしくはほぼ全ての範囲または程度を示す定性的な状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象が、完了まで到達すること、および/もしくは完全性にまで進展すること、または完全な結果を実現すること、または完全に結果を回避することは滅多にないことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的および/または化学的な現象に固有の完全性の潜在的な欠落を捉えるために本明細書において使用される。
【0052】
~に罹患する:疾患、障害、および/または状態に「罹患している」個体は、疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状で診断され、および/または症状を呈している。
【0053】
標的遺伝子:本明細書で使用される場合、「標的遺伝子」とは、その発現が調節される、例えば、阻害される遺伝子を指す。本明細書で使用される場合、「標的RNA」という用語は、一つ以上のmiRNAを使用して分解される、または翻訳抑制される、または別手段により阻害されるRNAを指す。標的RNAは、標的配列または標的転写物と呼称される場合もある。RNAは、標的遺伝子(例えば、プレmRNA)から転写された一次RNA転写物、またはポリペプチドをコードするmRNAなどのプロセッシング済み転写物であってもよい。本明細書で使用される場合、「標的部分」または「標的領域」という用語は、標的RNAのヌクレオチド配列の連続的な部分を指す。一部の実施形態では、mRNAの標的部分は、適切な阻害性RNAの存在下で、当該部分内でのRNA干渉(RNAi)介在性切断の基質としての機能を果たすのに少なくとも充分な長さである。標的部分は、約8~36ヌクレオチドの長さであってもよく、例えば、約10~20または約15~30ヌクレオチドの長さであってもよい。標的部分の長さは、上述の範囲内の特定の値または部分範囲を有してもよい。例えば、特定の実施形態では、標的部分は、約15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0054】
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤」という文言は、対象に投与されたとき、治療効果を有する、および/または所望の生物学的効果を発揮する、および/または薬理学的効果を発揮する任意の剤を指す。一部の実施形態では、治療剤は、疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状もしくは特性を軽減する、改善する、緩和する、抑制する、予防する、その開始を遅延する、その重症度を低減する、および/またはその発症率を低下するために使用することができる物質である。
【0055】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、治療レジメンの一部として投与されるときに所望の生物学的応答を惹起させる物質(例えば、治療剤、組成物、および/または製剤)の量を意味する。一部の実施形態では、物質の治療有効量は、疾患、障害、および/もしくは状態に罹患しているか、または感受性の対象に投与されたとき、当該疾患、障害、および/または状態を治療、診断、予防、および/または発症遅延させるために充分な量である。当業者であれば理解されるように、物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される物質、標的の細胞または組織等の因子に応じて変化し得る。例えば、疾患、障害、および/または状態を治療するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状または兆候を緩和、改善、軽減、阻害、防止、その発生を遅延、その重症度を低下、および/またはその発生率を低下させる量である。一部の実施形態では、治療有効量は、単回投与量で投与される。一部の実施形態では、治療有効量を送達するために複数の単位用量が必要とされる。
【0056】
治療すること:本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、治療を提供すること、すなわち、任意のタイプの医学的または外科的な対象の管理を提供することを指す。治療は、疾患、障害、もしくは状態を逆転させる、緩和する、進行を阻害する、予防する、また可能性を低下させるために提供されてもよく、または疾患、障害、もしくは状態の一つ以上の症状または発現を逆転させる、緩和する、進行を阻害するもしくは予防する、予防する、または可能性を低下させるために提供されてもよい。「予防する」とは、少なくとも一部の個体において、少なくともある期間、疾患、障害、状態、またはその症状もしくは発現をさせないことを指す。治療することは、補体介在性の状態を示す一つ以上の症状の発生または発現の後に、対象に剤を投与して、例えば状態を逆転させる、緩和する、その重症度を低下させる、および/またはその進行を阻害するもしくは予防する、ならびに/または状態の一つ以上の症状もしくは発現を逆転させる、緩和する、その重症度を低下させる、および/または阻害することを含んでもよい。本開示の組成物は、補体介在性障害を発症した対象、または一般的な集団の人々と比較してそのような障害を発症するリスクが高い対象に投与してもよい。本開示の組成物は、予防的に、すなわち、状態の任意の症状または発現の前に投与されてもよい。この場合、典型的には対象は状態を発症するリスクがある。
【0057】
核酸:「核酸」という用語は、任意のヌクレオチド、その類似体、およびそのポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー型を指す。これらの用語は分子の一次構造を指し、ゆえに二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAを含む。これらの用語には、均等として、限定されないが、メチル化、保護、および/もしくはキャップ化ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドなどのヌクレオチド類似体および修飾ポリヌクレオチドから作製されたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含む。当該用語は、ポリヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド(RNA)およびポリデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴデオキシリボヌクレオチド(DNA)、核酸塩基および/もしくは修飾核酸塩基のN-グリコシドまたはC-グリコシドに由来するRNAまたはDNA、糖および/もしくは修飾糖に由来する核酸、ならびにリン酸架橋および/または修飾リン原子架橋(本明細書において「ヌクレオチド間結合」とも呼称される)に由来する核酸を包含する。当該用語は、核酸塩基、修飾核酸塩基、糖、修飾糖、リン酸架橋、または修飾リン原子架橋の任意の組み合わせを含有する核酸を包含する。例としては限定されるないが、リボース部分を含有する核酸、デオキシ-リボース部分を含有する核酸、リボース部分とデオキシリボース部分の両方を含有する核酸、リボース部分を修飾リボース部分を含有する核酸が挙げられる。一部の実施形態では、接頭辞のポリ-は、2~約10,000個、2~約50,000個、または2~約100,000個のヌクレオチド単量体単位を含有する核酸を指す。一部の実施形態では、接頭辞のオリゴ-は、2~約200個のヌクレオチド単量体単位を含有する核酸を指す。
【0058】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ある種のベクターは、「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがその中にライゲーションされ得る環状二本鎖のDNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このベクターでは追加のDNAセグメントはウイルスゲノム内にライゲーションされ得る。特定のベクターは、自身が導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば細菌複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム性の哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると、宿主細胞のゲノム内に組み込まれることができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに特定のベクターは、操作可能に連結された遺伝子の発現を指示する能力を有する。そのようなベクターは本明細書において、「発現ベクター」と呼称される。
【0059】
組み換えDNA法、オリゴヌクレオチド合成法、および組織培養法、および形質転換法(例えばエレクトロポレーション法、リポフェクション法)に関し、標準的な技術を使用してもよい。酵素反応および精製技術は、メーカーの仕様に従って、または当該技術分野で普遍的に実施されるように、または本明細書に記載されるように実施されうる。前述の技術および手順は、当該技術分野で公知の従来的な方法に従って、および本明細書全体を通して引用および検討される様々な一般的およびより具体的な参照文献中に記載されているように、一般的に実施されることができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。本文献は、任意の目的に対し、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、阻害性RNA(例えば、siRNA)の二重鎖のセンス鎖とアンチセンス鎖に関する例示的な修飾パターン1~5を開示するチャートを示す。
図1において、「2OM」とは、2’-O-メチル修飾を表し、「2F」とは、2’-フルオロ修飾を表し、そして「PS」とは、隣接する3’ヌクレオチドとのホスホロチオエート結合を表す。
【0061】
【
図2】
図2は、約800~約1100個のn、および約40kDのPEGと推定されるペグセタコプラン(pegcetacoplan)(APL-2)の構造を示す。
【0062】
【
図3】
図3は、非ヒト霊長類におけるインビボ試験の結果を示す。3mg/kg、10mg/kg、30mg/kgの用量のsiRNA 58、またはビヒクルを、皮下注射により投与した。グラフは、各群について投与から最大67日間の血清C3タンパク質のレベルの時間経過を示す。血清中のC3タンパク質のレベルは、ELISAアッセイを使用して測定された。-1日目の値を基準として使用した。
【0063】
【
図4】
図4は、非ヒト霊長類におけるインビボ試験のデータを示す。3mg/kg、10mg/kg、30mg/kgの用量のsiRNA 58、またはビヒクルを、皮下注射により投与した。グラフは、注射から15日目の非ヒト霊長類から採取された肝生検におけるC3 mRNAの発現を示す。サンプル中のC3 mRNAのレベルは、定量的PCRアッセイを使用して測定された。これらの実験において、C3 mRNAレベルは、ActB mRNAレベルに対して正規化された。
【0064】
【
図5】
図5は、非ヒト霊長類におけるインビボ試験のデータを示す。3mg/kg、10mg/kg、30mg/kgの用量のsiRNA 58、またはビヒクルを、皮下注射により投与した。グラフは、注射から46日目の非ヒト霊長類から採取された肝生検におけるC3 mRNAの発現を示す。サンプル中のC3 mRNAのレベルは、定量的PCRアッセイを使用して測定された。これらの実験において、C3 mRNAレベルは、ActB mRNAレベルに対して正規化された。
【0065】
【
図6】
図6は、最大で29日目まで収集された、様々な用量のsiRNA 58(3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、またはビヒクル)を注射された非ヒト霊長類からの血清中の第二経路(AH50)活性のレベルの時間経過を表す。第二経路活性(AH50)は、ELISAアッセイを使用して決定された。-1日目の値を基準として使用した。
【0066】
【
図7】
図7は、単回ボーラス投与(A)として、または1日1回x3回のボーラス投与(B)として、siRNA 59を皮下投与した後の血清C3濃度における、基準からの変化割合を示す。ゼロとして表される値は、アッセイのLLOQ未満であった。データは、平均±SEM(n=3)を表す。
【0067】
【
図8】
図8は、ビヒクル(A)、siRNA(-)対照(B)、3mg/kgのsiRNA59(C)、10mg/kgのsiRNA 59(D)、および30mg/kgのsiRNA 59(E)を用いて皮下処置された動物の血清における、ELISA(光学密度測定;OD)を使用した可溶性C5b-9複合体の検出と定量による第二経路活性の測定値を示す。データは、平均±SEM(n=3)を表す。
【0068】
【
図9】
図9は、siRNA 59の単回投与(AおよびB)、または1日1回x3回投与(C)の後、3日(A)および30日(BおよびC)での肝臓組織におけるC3 mRNAのレベルを示す。データは、平均±SEM(n=3)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
I.補体系
本開示の理解を促進するために、本セクションは、補体およびその活性化経路に関する概要を提供するものであり、本発明を限定する意図は全くない。さらなる詳細については、例えば、Kuby Immunology,6th ed.,2006;Paul,W.E.,Fundamental Immunology,Lippincott Williams & Wilkins;6th ed.,2008;およびWalport MJ.,Complement.First of two parts.N Engl J Med.,344(14):1058-66,2001に見出される。
【0070】
補体は、自然免疫系の治療群であり、感染性因子に対する身体の防御に重要な役割を果たしている。補体系は、古典的経路、第二経路、およびレクチン経路として知られる三つの主要な経路に関与する、30を超える血清タンパク質および細胞タンパク質を含む。古典的経路は通常、抗原とIgM抗体またはIgG抗体の複合体をC1に結合させることによって誘発される(ただし特定の他の活性化因子も当該経路を開始することもできる)。活性化されたC1は、C4およびC2を切断して、C4aおよびC4bを生成するとともに、C2aおよびC2bも生成する。C4bとC2aは結合してC3転換酵素を形成し、当該酵素がC3を切断してC3aとC3bを形成する。C3bがC3転換酵素に結合すると、C5転換酵素が生成され、当該酵素がC5をC5aとC5bに切断する。C3a、C4a、およびC5aは、アナフィロトキシンであり、急性炎症性反応において複数の反応を介在する。C3aとC5aはまた走化性因子でもあり、例えば好中球などの免疫系細胞を引き寄せる。初期に使用された「C2a」および「C2b」という名称は、その後、科学文献において入れ替えられたことを理解されたい。
【0071】
第二経路は、例えば、微生物表面や様々な複合的な多糖類によって開始され、増幅される。この経路では、低レベルで自然発生的に起こるC3からC3(H2O)への加水分解により、B因子への結合が生じ、そしてD因子によって切断され、C3をC3aとC3bに切断することによって補体を活性化する液相C3転換酵素を生成する。C3bは、例えば細胞表面などの標的に結合して、B因子と複合体を形成し、これが後にD因子によって切断され、C3転換酵素が生成される。表面結合型C3転換酵素は、追加的なC3分子を切断および活性化し、活性化部位に近接した急速なC3b沈着を生じさせ、追加的なC3転換酵素の形成がもたらされ、その結果として追加的なC3bが生成される。このプロセスにより、C3切断とC3転換酵素の形成のサイクルが生じ、反応を著しく増幅させる。C3の切断と、C3bの別の分子のC3転換酵素への結合は、C5転換酵素を生じさせる。この経路のC3転換酵素とC5転換酵素は、細胞分子のCR1、DAF、MCP、CD59、およびfHによって制御される。これらのタンパク質の作用機序は、崩壊促進活性(すなわち、転換酵素を解離させる能力)、I因子によるC3bまたはC4bの分解における補因子としての役割を果たす能力、またはその両方のいずれかを伴う。通常、細胞表面上には補体制御タンパク質が存在するため、その上での著しい補体活性化は防がれている。
【0072】
両方の経路で産生されるC5転換酵素は、C5を切断してC5aとC5bを産生する。次にC5bは、C6、C7、およびC8に結合してC5b-8を形成し、C9の重合を触媒して、C5b-9細胞膜障害性複合体(MAC)を形成する。MACは標的細胞膜に自身を挿入させ、細胞溶解を引き起こす。細胞膜上の少量のMACによって、細胞死以外の様々な結果となり得る。
【0073】
レクチン補体経路は、マンノース結合レクチン(MBL)およびMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)の炭水化物への結合によって開始される。MB1-1遺伝子(ヒトではLMAN-1として知られる)は、小胞体とゴルジ体の間の中間領域に局在するI型内在性膜タンパク質をコードする。MBL-2遺伝子は、血清中に存在する可溶性マンノース結合タンパク質をコードする。ヒトレクチン経路では、MASP-1とMASP-2が、C4およびC2のタンパク質分解に関与し、上述のC3転換酵素を生じさせる。
【0074】
補体活性は、補体制御タンパク質(CCP)または補体活性化制御因子(RCA)タンパク質(米国特許第6,897,290号)と呼称される様々な哺乳動物タンパク質により制御される。これらのタンパク質は、リガンドの特異性、および補体阻害の機構に関して異なっている。これらは、転換酵素の正常な崩壊を加速させ、および/またはI因子の補因子として機能して、C3bおよび/またはC4bを小さな断片へと酵素的に切断し得る。CCPは、短いコンセンサスリピート(SCR)、補体制御タンパク質(CCP)モジュール、またはSUSHIドメインとして知られる複数の(典型的には4~56個)の相同モチーフの存在を特徴とし、約50~70アミノ酸の長さで、四つのジスルフィド結合システイン(二つのジスルフィド結合)、プロリン、トリプトファン、および多くの疎水性残基を含む保存モチーフを含有する。CCPファミリーには、補体受容体1型(CR1;C3b:C4b受容体)、補体受容体2型(CR2)、膜補因子タンパク質(MCP;CD46)、崩壊加速因子(DAF)、補体因子H(fH)、およびC4b-結合タンパク質(C4bp)が含まれる。CD59は、CCPとは構造的に無関係な、膜結合型補体制御タンパク質である。補体制御タンパク質は通常、哺乳動物、例えばヒト宿主の細胞および組織上で、別段により発生する可能性のある補体活性化を制限する働きをする。したがって、「自己」細胞は通常、別段であれば後に続いて起こる補体活性化がこれら細胞上で進行する有害な作用から保護される。補体制御タンパク質の欠損または欠陥は、例えば本明細書で検討されるように、様々な補体介在性障害の病態に関与する。
【0075】
II.C3に対する阻害性RNA
本開示は、標的遺伝子(例えばC3)により産生されたメッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、その発現を阻害する阻害性RNAである、それを含む、またはそれをコードする、一つ以上のヌクレオチド配列に関連する組成物および方法を含む。阻害性RNAは、一本鎖(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)または二本鎖の核酸であってもよい。一部の実施形態では、阻害性RNAは、例えばマイクロRNA(miRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)などの二本鎖RNAを含有する。一部の実施形態では、阻害性RNAは、siRNAもしくはmiRNA、またはsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターである。
【0076】
一部の実施形態では、阻害性RNAは、ヒトC3に加えて、一種以上の非ヒト種、例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)C3やミドリザル(chlorocebus sabaeus)などの非ヒト霊長類C3などのC3の発現を阻害することができる。カニクイザルC3遺伝子は、NCBI遺伝子ID:102131458を割り当てられており、カニクイザルC3の予測アミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、それぞれNCBI RefSeqアクセッション番号XP_005587776.1およびXM_005587719.2でリスト化されている。一部の実施形態では、阻害性RNAは、ヒトおよびカニクイザルC3転写物において同一である標的部分に対して相補的であるアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、阻害性RNAは、カニクイザルC3転写物中の配列とは1、2または3ヌクレオチド異なるヒトC3転写物の標的部分に対して相補的であるアンチセンス鎖を含む。ヒトC3の発現を阻害する阻害性RNAは、特にC3転写物の保存領域が標的とされている場合には、例えばラットまたはマウスC3などの非霊長類C3の発現も阻害し得ることが理解される。
【0077】
ヒトC3のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は当技術分野で公知であり、公的に利用可能なデータベース、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI) Reference Sequence(RefSeq) データベース中に見出すことができ、当該データベースにおいてそれぞれ、RefSeqアクセッション番号NP_000055(アクセッション.バージョン番号はNP_000055.2)およびNM_000064(アクセッション.バージョン番号は、NM_000064.4)でリスト化されている(「アミノ酸配列」とは、C3ポリペプチドの配列を指し、本文脈において「ヌクレオチド配列」とは、ゲノムDNAにおいて表されているC3 mRNA配列を指す。実際のmRNAヌクレオチド配列は、TではなくUを含有すると理解される)。当業者であれば、上述の配列は、補体C3プレプロタンパク質に関するものであり、切断され、したがって成熟タンパク質中には存在しないシグナル配列が含まれることを理解するであろう。ヒトC3遺伝子は、NCBI遺伝子ID:718に割り当てられており、ゲノムC3配列は、RefSeqアクセッション番号NG_009557(アクセッション.バージョン番号NG_009557.1)を有する。ヒトC3 mRNAのヌクレオチド配列を、以下に示す(RefSeqアクセッション番号NM_000064.3。TはUで置換される。AUG開始コドンは94位に始まる下線部分)。
【0078】
AGAUAAAAAGCCAGCUCCAGCAGGCGCUGCUCACUCCUCCCCAUCCUCUCCCUCUGUCCCUCUGUCCCUCUGACCCUGCACUGUCCCAGCACCAUGGGACCCACCUCAGGUCCCAGCCUGCUGCUCCUGCUACUAACCCACCUCCCCCUGGCUCUGGGGAGUCCCAUGUACUCUAUCAUCACCCCCAACAUCUUGCGGCUGGAGAGCGAGGAGACCAUGGUGCUGGAGGCCCACGACGCGCAAGGGGAUGUUCCAGUCACUGUUACUGUCCACGACUUCCCAGGCAAAAAACUAGUGCUGUCCAGUGAGAAGACUGUGCUGACCCCUGCCACCAACCACAUGGGCAACGUCACCUUCACGAUCCCAGCCAACAGGGAGUUCAAGUCAGAAAAGGGGCGCAACAAGUUCGUGACCGUGCAGGCCACCUUCGGGACCCAAGUGGUGGAGAAGGUGGUGCUGGUCAGCCUGCAGAGCGGGUACCUCUUCAUCCAGACAGACAAGACCAUCUACACCCCUGGCUCCACAGUUCUCUAUCGGAUCUUCACCGUCAACCACAAGCUGCUACCCGUGGGCCGGACGGUCAUGGUCAACAUUGAGAACCCGGAAGGCAUCCCGGUCAAGCAGGACUCCUUGUCUUCUCAGAACCAGCUUGGCGUCUUGCCCUUGUCUUGGGACAUUCCGGAACUCGUCAACAUGGGCCAGUGGAAGAUCCGAGCCUACUAUGAAAACUCACCACAGCAGGUCUUCUCCACUGAGUUUGAGGUGAAGGAGUACGUGCUGCCCAGUUUCGAGGUCAUAGUGGAGCCUACAGAGAAAUUCUACUACAUCUAUAACGAGAAGGGCCUGGAGGUCACCAUCACCGCCAGGUUCCUCUACGGGAAGAAAGUGGAGGGAACUGCCUUUGUCAUCUUCGGGAUCCAGGAUGGCGAACAGAGGAUUUCCCUGCCUGAAUCCCUCAAGCGCAUUCCGAUUGAGGAUGGCUCGGGGGAGGUUGUGCUGAGCCGGAAGGUACUGCUGGACGGGGUGCAGAACCCCCGAGCAGAAGACCUGGUGGGGAAGUCUUUGUACGUGUCUGCCACCGUCAUCUUGCACUCAGGCAGUGACAUGGUGCAGGCAGAGCGCAGCGGGAUCCCCAUCGUGACCUCUCCCUACCAGAUCCACUUCACCAAGACACCCAAGUACUUCAAACCAGGAAUGCCCUUUGACCUCAUGGUGUUCGUGACGAACCCUGAUGGCUCUCCAGCCUACCGAGUCCCCGUGGCAGUCCAGGGCGAGGACACUGUGCAGUCUCUAACCCAGGGAGAUGGCGUGGCCAAACUCAGCAUCAACACACACCCCAGCCAGAAGCCCUUGAGCAUCACGGUGCGCACGAAGAAGCAGGAGCUCUCGGAGGCAGAGCAGGCUACCAGGACCAUGCAGGCUCUGCCCUACAGCACCGUGGGCAACUCCAACAAUUACCUGCAUCUCUCAGUGCUACGUACAGAGCUCAGACCCGGGGAGACCCUCAACGUCAACUUCCUCCUGCGAAUGGACCGCGCCCACGAGGCCAAGAUCCGCUACUACACCUACCUGAUCAUGAACAAGGGCAGGCUGUUGAAGGCGGGACGCCAGGUGCGAGAGCCCGGCCAGGACCUGGUGGUGCUGCCCCUGUCCAUCACCACCGACUUCAUCCCUUCCUUCCGCCUGGUGGCGUACUACACGCUGAUCGGUGCCAGCGGCCAGAGGGAGGUGGUGGCCGACUCCGUGUGGGUGGACGUCAAGGACUCCUGCGUGGGCUCGCUGGUGGUAAAAAGCGGCCAGUCAGAAGACCGGCAGCCUGUACCUGGGCAGCAGAUGACCCUGAAGAUAGAGGGUGACCACGGGGCCCGGGUGGUACUGGUGGCCGUGGACAAGGGCGUGUUCGUGCUGAAUAAGAAGAACAAACUGACGCAGAGUAAGAUCUGGGACGUGGUGGAGAAGGCAGACAUCGGCUGCACCCCGGGCAGUGGGAAGGAUUACGCCGGUGUCUUCUCCGACGCAGGGCUGACCUUCACGAGCAGCAGUGGCCAGCAGACCGCCCAGAGGGCAGAACUUCAGUGCCCGCAGCCAGCCGCCCGCCGACGCCGUUCCGUGCAGCUCACGGAGAAGCGAAUGGACAAAGUCGGCAAGUACCCCAAGGAGCUGCGCAAGUGCUGCGAGGACGGCAUGCGGGAGAACCCCAUGAGGUUCUCGUGCCAGCGCCGGACCCGUUUCAUCUCCCUGGGCGAGGCGUGCAAGAAGGUCUUCCUGGACUGCUGCAACUACAUCACAGAGCUGCGGCGGCAGCACGCGCGGGCCAGCCACCUGGGCCUGGCCAGGAGUAACCUGGAUGAGGACAUCAUUGCAGAAGAGAACAUCGUUUCCCGAAGUGAGUUCCCAGAGAGCUGGCUGUGGAACGUUGAGGACUUGAAAGAGCCACCGAAAAAUGGAAUCUCUACGAAGCUCAUGAAUAUAUUUUUGAAAGACUCCAUCACCACGUGGGAGAUUCUGGCUGUGAGCAUGUCGGACAAGAAAGGGAUCUGUGUGGCAGACCCCUUCGAGGUCACAGUAAUGCAGGACUUCUUCAUCGACCUGCGGCUACCCUACUCUGUUGUUCGAAACGAGCAGGUGGAAAUCCGAGCCGUUCUCUACAAUUACCGGCAGAACCAAGAGCUCAAGGUGAGGGUGGAACUACUCCACAAUCCAGCCUUCUGCAGCCUGGCCACCACCAAGAGGCGUCACCAGCAGACCGUAACCAUCCCCCCCAAGUCCUCGUUGUCCGUUCCAUAUGUCAUCGUGCCGCUAAAGACCGGCCUGCAGGAAGUGGAAGUCAAGGCUGCUGUCUACCAUCAUUUCAUCAGUGACGGUGUCAGGAAGUCCCUGAAGGUCGUGCCGGAAGGAAUCAGAAUGAACAAAACUGUGGCUGUUCGCACCCUGGAUCCAGAACGCCUGGGCCGUGAAGGAGUGCAGAAAGAGGACAUCCCACCUGCAGACCUCAGUGACCAAGUCCCGGACACCGAGUCUGAGACCAGAAUUCUCCUGCAAGGGACCCCAGUGGCCCAGAUGACAGAGGAUGCCGUCGACGCGGAACGGCUGAAGCACCUCAUUGUGACCCCCUCGGGCUGCGGGGAACAGAACAUGAUCGGCAUGACGCCCACGGUCAUCGCUGUGCAUUACCUGGAUGAAACGGAGCAGUGGGAGAAGUUCGGCCUAGAGAAGCGGCAGGGGGCCUUGGAGCUCAUCAAGAAGGGGUACACCCAGCAGCUGGCCUUCAGACAACCCAGCUCUGCCUUUGCGGCCUUCGUGAAACGGGCACCCAGCACCUGGCUGACCGCCUACGUGGUCAAGGUCUUCUCUCUGGCUGUCAACCUCAUCGCCAUCGACUCCCAAGUCCUCUGCGGGGCUGUUAAAUGGCUGAUCCUGGAGAAGCAGAAGCCCGACGGGGUCUUCCAGGAGGAUGCGCCCGUGAUACACCAAGAAAUGAUUGGUGGAUUACGGAACAACAACGAGAAAGACAUGGCCCUCACGGCCUUUGUUCUCAUCUCGCUGCAGGAGGCUAAAGAUAUUUGCGAGGAGCAGGUCAACAGCCUGCCAGGCAGCAUCACUAAAGCAGGAGACUUCCUUGAAGCCAACUACAUGAACCUACAGAGAUCCUACACUGUGGCCAUUGCUGGCUAUGCUCUGGCCCAGAUGGGCAGGCUGAAGGGGCCUCUUCUUAACAAAUUUCUGACCACAGCCAAAGAUAAGAACCGCUGGGAGGACCCUGGUAAGCAGCUCUACAACGUGGAGGCCACAUCCUAUGCCCUCUUGGCCCUACUGCAGCUAAAAGACUUUGACUUUGUGCCUCCCGUCGUGCGUUGGCUCAAUGAACAGAGAUACUACGGUGGUGGCUAUGGCUCUACCCAGGCCACCUUCAUGGUGUUCCAAGCCUUGGCUCAAUACCAAAAGGACGCCCCUGACCACCAGGAACUGAACCUUGAUGUGUCCCUCCAACUGCCCAGCCGCAGCUCCAAGAUCACCCACCGUAUCCACUGGGAAUCUGCCAGCCUCCUGCGAUCAGAAGAGACCAAGGAAAAUGAGGGUUUCACAGUCACAGCUGAAGGAAAAGGCCAAGGCACCUUGUCGGUGGUGACAAUGUACCAUGCUAAGGCCAAAGAUCAACUCACCUGUAAUAAAUUCGACCUCAAGGUCACCAUAAAACCAGCACCGGAAACAGAAAAGAGGCCUCAGGAUGCCAAGAACACUAUGAUCCUUGAGAUCUGUACCAGGUACCGGGGAGACCAGGAUGCCACUAUGUCUAUAUUGGACAUAUCCAUGAUGACUGGCUUUGCUCCAGACACAGAUGACCUGAAGCAGCUGGCCAAUGGUGUUGACAGAUACAUCUCCAAGUAUGAGCUGGACAAAGCCUUCUCCGAUAGGAACACCCUCAUCAUCUACCUGGACAAGGUCUCACACUCUGAGGAUGACUGUCUAGCUUUCAAAGUUCACCAAUACUUUAAUGUAGAGCUUAUCCAGCCUGGAGCAGUCAAGGUCUACGCCUAUUACAACCUGGAGGAAAGCUGUACCCGGUUCUACCAUCCGGAAAAGGAGGAUGGAAAGCUGAACAAGCUCUGCCGUGAUGAACUGUGCCGCUGUGCUGAGGAGAAUUGCUUCAUACAAAAGUCGGAUGACAAGGUCACCCUGGAAGAACGGCUGGACAAGGCCUGUGAGCCAGGAGUGGACUAUGUGUACAAGACCCGACUGGUCAAGGUUCAGCUGUCCAAUGACUUUGACGAGUACAUCAUGGCCAUUGAGCAGACCAUCAAGUCAGGCUCGGAUGAGGUGCAGGUUGGACAGCAGCGCACGUUCAUCAGCCCCAUCAAGUGCAGAGAAGCCCUGAAGCUGGAGGAGAAGAAACACUACCUCAUGUGGGGUCUCUCCUCCGAUUUCUGGGGAGAGAAGCCCAACCUCAGCUACAUCAUCGGGAAGGACACUUGGGUGGAGCACUGGCCCGAGGAGGACGAAUGCCAAGACGAAGAGAACCAGAAACAAUGCCAGGACCUCGGCGCCUUCACCGAGAGCAUGGUUGUCUUUGGGUGCCCCAACUGACCACACCCCCAUUCCCCCACUCCAGAUAAAG
CUUCAGUUAUAUCUCAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号75)
【0079】
一部の実施形態では、阻害性RNAは、例えばC3 mRNAなどのC3転写物の標的部分に相補的である(例えば、配列番号75の標的部分に対し、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列に対して相補的である)核酸鎖を含む。標的部分は、15~30ヌクレオチド長、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であってもよいが、より短い標的部分、および長い標的部分も予期される。一部の実施形態では、標的部分は、以下の表1に列記される配列のいずれか一つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を含む。
【0080】
【0081】
阻害性RNAを投与することで、対象または生体サンプル(例えば、血液サンプル、血清サンプルもしくは血漿サンプル、または肝細胞を含むサンプル)中のC3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルが、組成物の投与前のレベルと比較して低下し得る。一部の実施形態では、C3転写物レベルまたはC3タンパク質レベルは、投与前のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%低下する。C3タンパク質のレベルは、例えば、血液(血清または血漿)サンプル中で測定され得る。
【0082】
III.マイクロRNA
本開示は、マイクロRNAである、マイクロRNAを含有する、またはマイクロRNAをコードする一つ以上のオリゴヌクレオチドに関する組成物および方法も含む。マイクロRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノムDNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されない、高度に保存された低分子RNA種である。天然miRNAは、最初に長いヘアピン含有一次転写物(pri-miRNA)として転写される。一次転写物は、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素によって切断され、およそ70ntのステムループ型前駆体miRNA(pre-miRNA)が生成される。このmiRNAには、「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」(標的配列に対し実質的に相補的な領域を含む)、および「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」(アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含む)が含まれる。次いで、pre-miRNAが細胞質に能動的にエクスポートされ、そこでDicerリボヌクレアーゼによって切断されて成熟miRNAが形成される。処理されたマイクロRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれて成熟型遺伝子サイレンシング複合体を形成し、これが標的mRNAの分解および/または翻訳抑制を誘導する。これまでに特定されたmiRNA配列の数は多く、そして増え続けている。見出され得る例としては例えば、“miRBase:microRIVA sequences,targets and gene nomenclature”Griffiths-Jones S,Grocock RJ,van Dongen S,Bateman A,Enright AJ.NAR,2006,34,Database Issue,D140-D144;“The microRNA Registry”Griffiths-Jones S.NAR,2004,32,Database Issue,D109-D111にある。
【0083】
一部の実施形態では、miRNAは、治療目的で合成され、局所的に、または全身的に対象に投与されることができる。miRNAは、成熟分子として、または前駆体(例えば、pri-miRNAまたはpre-miRNA)として設計および/または合成されることができる。一部の実施形態では、pre-miRNAは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖を含み、それらは同じ長さである(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド)。一部の実施形態では、pre-miRNAは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖を含み、それらは異なる長さである(例えば、一つの鎖は約19ヌクレオチドであり、他方は約21ヌクレオチドである)。一部の実施形態では、miRNAは、内因性mRNAのコード領域、5’非翻訳領域、および/または3’非翻訳領域を標的とすることができる。一部の実施形態では、miRNAは、対象の内因性mRNAと充分に配列相補性を有するヌクレオチド配列を含むガイド鎖を含み、当該内因性mRNAとハイブリダイズし、発現を阻害する。
【0084】
一部の実施形態では、miRNAは、配列番号75(例えば、配列番号76~100のいずれか一つ)の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の連続したヌクレオチドに対して完全に相補的な領域を含む核酸鎖を含む。一部の実施形態では、miRNAは、配列番号76~100のいずれか一つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を含む標的部分に対して完全に相補的なヌクレオチド配列を有する成熟ガイド鎖を含む。
【0085】
IV.siRNA
一部の実施形態では、阻害性RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、RNA干渉(RNAi)によりC3発現を阻害する。RNAiは、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスであり、このプロセスによって、例えば標的座位に相同な二本鎖RNA(dsRNA)は、遺伝子機能を特異的に不活化することができる(Hammond et al.,Nature Genet.2001;2:110-119;Sharp,Genes Dev.1999;13:139-141)。このdsRNA誘導型の遺伝子サイレンシングは、長いdsRNAがリボヌクレアーゼIII切断されることにより生成された短い二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)によって介在され得る(Bernstein et al.,Nature 2001;409:363-366およびElbashir et al.,Genes Dev.2001;15:188-200)。RNAi介在性遺伝子サイレンシングは、配列特異的RNAの分解を介して発生すると考えられており、配列特異性は、siRNAと、標的RNA内の相補配列との相互作用によって決定される(例えば、Tuschl,Chem.Biochem.2001;2:239-245を参照のこと)。RNAiは、例えば、siRNA(Elbashir,et al.,Nature 2001;411:494-498)、または折り返しステムループ構造を有する短ヘアピンRNA(shRNAs)(Paddison et al.,Genes Dev.2002;16:948-958;Sui et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;99:5515-5520;Brummelkamp et al.,Science 2002;296:550-553;Paul et al.,Nature Biotechnol.2002;20:505-508)の使用を伴い得る。
【0086】
本開示は、C3転写物、例えばC3 mRNA(配列番号75)を標的とするsiRNA分子を含む。一部の実施形態では、siRNA分子は、配列番号76~100のいずれか一つを含む標的領域に相補的な配列を含む。一部の実施形態では、siRNA分子は、(i)配列番号76~100(またはその一部)のいずれか一つに対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列、および/または(ii)配列番号76~100(またはその一部)のいずれか一つに対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、を含む。
【0087】
一部の実施形態では、本開示のsiRNAは、アニーリングされた相補的な一本鎖核酸分子を含む二本鎖核酸二重鎖(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27塩基対の鎖)である。一部の実施形態では、siRNAは、アニーリングされた相補的な一本鎖RNAを含有する短いdsRNAである。一部の実施形態では、siRNAは、アニーリングされたRNA:DNA二重鎖を含み、当該二重鎖のセンス鎖はDNA分子であり、当該二重鎖のアンチセンス鎖はRNA分子である。一部の実施形態では、siRNAは、配列番号76~100(またはその一部)のいずれか一つに対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を有するセンス鎖を含む。
【0088】
一部の実施形態では、siRNAは、以下の表2の配列番号101~125(またはその一部)のいずれか一つに対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を含む。
【0089】
【0090】
一部の実施形態では、siRNAは、標的とのミスマッチ、二本鎖内のミスマッチ、またはそれらの組み合わせを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域および/または二重鎖部分で発生する場合もある。塩基対は、解離または融解を促進する自身の傾向に基づきランク付けされてもよい(例えば、特定の対形成の結合と解離の自由エネルギーに基づき、最も単純な方法は、個々の対ベースで対を検証することであるが、近傍解析または相似解析も使用され得る)。解離の促進に関して:A:Uは、G:Cよりも好ましい。G:Uは、G:Cよりも好ましい。I:Cは、G:C(I=イノシン)よりも好ましい。
【0091】
一部の実施形態では、siRNAは、A:U、G:U、I:C、およびミスマッチ対からなる群から独立して選択されるアンチセンス鎖の5’末端から、二重鎖部分内の最初の1、2、3、4または5塩基対のうちの少なくとも一つを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖の二重鎖部分内の5’末端から1位のヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTからなる群から選択される。さらに、またはあるいは、アンチセンス鎖の二重鎖部分内の5’末端から最初の1、2または3塩基対のうちの少なくとも一つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の二重鎖部分内の5’末端から最初の塩基対は、AUの塩基対である。
【0092】
一部の実施形態では、センス鎖は、標的配列と同一ではない一つ以上(例えば、2、3、4、または5)のヌクレオチドを3’末端および/または5’末端上に含んでもよく、および/またはアンチセンス鎖は、標的配列に相補的ではない一つ以上(例えば、2、3、4、または5)のヌクレオチドを3’末端および/または5’末端上に含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、以下の表3に列記された配列を含むセンス鎖を含む。表3の配列は、3’末端にアデニン(A)ヌクレオチドを含有し、これは配列の一部においては、標的配列に対して相補的である(例えば、標的配列の次の連続ヌクレオチドに対して相補的である)。表3の配列の一部では、3’末端のアデニン(A)ヌクレオチドは、標的配列に対して相補的ではない(例えば、標的配列の次の連続ヌクレオチドに対して相補的ではない)。
【0093】
【0094】
一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、両端に平滑末端を含む。一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、少なくとも一つのオーバーハング領域を含有する。一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、当該二重鎖のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖上に、1、2、3、4、5または6ヌクレオチドの3’オーバーハングを含有する。一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、当該二重鎖のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖上に、1、2、3、4、5または6ヌクレオチドの5’オーバーハングを含有する。
【0095】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、C3 mRNA転写物(配列番号75)に相補的な一つ以上のヌクレオチドを含むオーバーハングを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、C3 mRNA転写物(配列番号75)に相補的な1、2、3、4、5または6ヌクレオチドを含むオーバーハングを含む。例えば、一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、配列番号300~324のいずれか一つの配列を含むアンチセンス鎖を含む。
【0096】
【0097】
一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、配列番号300~324のいずれか一つの配列を含むが、5’末端で「U」を欠くアンチセンス鎖を含む。
【0098】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、C3 mRNA転写物(配列番号75)に対して相補的ではない一つ以上のヌクレオチドを含むオーバーハングを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、C3 mRNA転写物(配列番号75)に対して相補的ではない1、2、3、4、5または6ヌクレオチドを含むオーバーハングを含む。一つの例では、オーバーハングは、1、2または3個のウラシルヌクレオチドを含む、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖上の3’オーバーハングを含む。一つの例では、オーバーハングは、1、2または3個のアデニンヌクレオチドを含む、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖上の3’オーバーハングを含む。
【0099】
一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、以下の表5に列記された配列を含むアンチセンス鎖を含む。
【0100】
【0101】
一部の実施形態では、二重鎖siRNAは、以下の表6に列記された配列を含むアンチセンス鎖を含む。
【0102】
【0103】
一部の実施形態では、siRNAは、5’-リン酸基および/または3’-ヒドロキシル基を含み(例えば、センス鎖の一端もしくは両端、および/またはアンチセンス鎖の一端もしくは両端)、および/または本明細書に記載される一つ以上の追加の修飾を含んでもよい。
【0104】
V.修飾
一部の実施形態では、本開示の阻害性RNA例えば、siRNAまたはmiRNA)は、一つ以上の天然核酸塩基を含み、および/または天然核酸塩基から誘導された一つ以上の修飾核酸塩基を含む。例としては限定されないが、アシル保護基で保護された各アミノ基を有するウラシル、チミン、アデニン、シトシン、およびグアニン、2-フルオロウラシル、2-フルオロシトシン、5-ブロモウラシル、5-ヨードウラシル、2,6-ジアミノプリン、アザシトシン、ピリミジン類似体、例えばシュードイソシトシンおよびシュードウラシル、ならびに他の修飾核酸塩基、例えば8-置換プリン、キサンチンまたはヒポキサンチン(後者二つは天然分解産物)が挙げられる。修飾核酸塩基の例は、Chiu and Rana,RNA,2003,9,1034-1048,Limbach et al.Nucleic Acids Research,1994,22,2183-2196およびRevankar and Rao,Comprehensive Natural Products Chemistry,vol.7,313に開示されている。
【0105】
修飾核酸塩基はまた、例えばフェニル環などの一つ以上のアリール環が付加されたサイズ拡大された核酸塩基も含む。核酸塩基置換は、Glen Research catalog(www.glenresearch.com);Krueger AT et al,Acc.Chem.Res.,2007,40,141-150;Kool,ET,Acc.Chem.Res.,2002,35,936-943;Benner S.A.,et al.,Nat.Rev.Genet.,2005,6,553-543;Romesberg,F.E.,et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2003,7,723-733;Hirao,I.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2006,10,622-627に記載されており、本明細書に記載されるsiRNA分子に有用であることが予期される。修飾核酸塩基はまた、核酸塩基とはみなされないが、例えば限定されないがコリンまたはポルフィリン誘導環などの他の部分である構造も包含する。ポルフィリン誘導塩基置換は、Morales-Rojas,H and Kool,ET,Org.Lett.,2002,4,4377-4380に記載されている。
【0106】
一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、任意で置換される、以下の構造のうちのいずれか一つである:
【化1】
【0107】
一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、蛍光性である。そのような蛍光修飾核酸塩基の例としては、以下に示されるように、フェナントレン、ピレン、スチルベン、イソキサンチン、イソザントプテリン(isozanthopterin)、テルフェニル、テルチオフェン、ベンゾテルチオフェン、クマリン、ルマジン、テザードスチルベン(tethered stillbene)、ベンゾ-ウラシル、およびナフトウラシルが挙げられる:
【化2】
【0108】
一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、置換されない。一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、置換される。一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、例えば、ヘテロ原子、アルキル基、または蛍光部分、ビオチン部分もしくはアビジン部分、または他のタンパク質もしくはペプチドに結合される連結部分などを含有するよう置換される。一部の実施形態では、修飾核酸塩基は、最も古典的な意味では核酸塩基ではないが、核酸塩基と同様に機能する「ユニバーサル塩基」である。そのようなユニバーサル塩基の代表的な一例は、3-ニトロピロールである。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に記載のsiRNAは、修飾核酸塩基、および/または修飾糖に共有結合した核酸塩基を組み込むヌクレオシドを含む。修飾核酸塩基を組み込むヌクレオシドのいくつかの例としては、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2’-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’-O-メチルシュードウリジン、ベータ、D-ガラクトシルキュエオシン、2’-O-メチルグアノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルシュードウリジン、1-メチルグアノシン、l-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、N7-メチルグアノシン、3-メチル-シチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノエチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、ベータ、D-マンノシルキュエオシン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-ベータ、D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)トレオニン、N-((9-ベータ、D-リボフラノシルプリン-6-イル)-N-メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸(v)、シュードウリジン、キュエオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、および2’-O-メチルウリジンが挙げられる。
【0110】
一部の実施形態では、ヌクレオシドは、6’位に(R)または(S)-キラル性のいずれかを有する6’-修飾二環式ヌクレオシド類似体を含み、米国特許第7,399,845号に記載される類似体が挙げられる。一部の実施形態では、ヌクレオシドは、5’位に(R)または(S)-キラル性のいずれかを有する5’-修飾二環式ヌクレオシド類似体を含み、米国特許出願公開20070287831に記載される類似体が挙げられる。一部の実施形態では、核酸塩基または修飾核酸塩基は、5-ブロモウラシル、5-ヨードウラシル、または2,6-ジアミノプリンである。一部の実施形態では、核酸塩基または修飾核酸塩基は、蛍光部分との置換により修飾される。
【0111】
修飾核酸塩基を作製する方法は、例えば、米国特許第3,687,808号、第4,845,205号、第5,130,30号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,457,191号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、第5,681,941号、第5,750,692号、第6,015,886号、第6,147,200号、第6,166,197号、第6,222,025号、第6,235,887号、第6,380,368号、第6,528,640号、第6,639,062号、第6,617,438号、第7,045,610号、第7,427,672号、および第7,495,088号に記載されている。
【0112】
一部の実施形態では、本明細書に記載のsiRNAは、一つ以上の修飾ヌクレオチドを含み、この場合においてヌクレオチド中のリン酸基または連結リンは、糖または修飾糖の様々な位置に連結される。非限定的な例として、リン酸基または連結リンは、糖または修飾糖の2’、3’、4’、または5’のヒドロキシル部分に連結され得る。本明細書に記載の修飾核酸塩基を組み込むヌクレオチドも、本背景において予期される。
【0113】
他の修飾糖も、siRNA分子内に組み込まれ得る。一部の実施形態では、修飾糖は、2’位に、以下のうちの一つを含む、一つ以上の置換基を含有する:-F、-CF3、-CN、-N3、-NO、-NO2、-OR’、-SR’、もしくは-N(R’)2で、式中、R’は独立して上記に定義され、本明細書に記載される通りである;-O-(C1-C10アルキル)、-S-(C1-C10アルキル)、-NH-(C1-C10アルキル)もしくは-N(C1-C10アルキル)2;-O-(C2-C10アルケニル)、-S-(C2-C10アルケニル)、-NH-(C2-C10アルケニル)もしくは-N(C2-C10アルケニル)2;-O-(C2-C10アルキニル)、-S-(C2-C10アルキニル)、-NH-(C2-C10アルキニル)もしくは-N(C2-C10アルキニル)2;または-O--(C1-C10アルキレン)-O--(C1-C10アルキル)、-O-(C1-C10アルキレン)-NH-(C1-C10アルキル)、もしくは-O-(C1-C10アルキレン)-NH(C1-C10アルキル)2、-NH-(C1-C10アルキレン)-O-(C1-C10アルキル)、もしくは-N(C1-C10アルキル)-(C1-C10アルキレン)-O-(C1-C10アルキル)で、式中、アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニルは、置換されても、置換されなくてもよい。置換基の例としては限定されないが、-O(CH2)nOCH3、および-O(CH2)nNH2が挙げられ、式中、nは、1~約10、MOE、DMAOE、DMAEOEである。また本明細書において、WO2001/088198、およびMartin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486-504に記載される修飾糖も予期される。一部の実施形態では、修飾糖は、置換シリル基、RNA切断基、レポーター基、蛍光標識、インターカレーター、核酸の薬物動態特性を改善するための基、核酸の薬力学特性を改善するための基、または類似の特性を有する他の置換基から選択される一つ以上の基を含む。一部の実施形態では、修飾は、糖または修飾糖の2’、3’、4’、5’、または6’位のうちの一つ以上で行われ、これには、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または5’末端ヌクレオチドの5’位置が含まれる。
【0114】
一部の実施形態では、リボースの2’-OHは、以下のうちの一つを含む置換基で置換される:-H、-F、-CF3、-CN、-N3、-NO、-NO2、-OR’、-SR’、もしくは-N(R’)2で、式中、R’は独立して上記に定義され、本明細書に記載される通りである;-O-(C1-C10アルキル)、-S-(C1-C10アルキル)、-NH-(C1-C10アルキル)もしくは-N(C1-C10アルキル)2;-O-(C2-C10アルケニル)、-S-(C2-C10アルケニル)、-NH-(C2-C10アルケニル)もしくは-N(C2-C10アルケニル)2;-O-(C2-C10アルキニル)、-S-(C2-C10アルキニル)、-NH-(C2-C10アルキニル)もしくは-N(C2-C10アルキニル)2;または-O--(C1-C10アルキレン)-O--(C1-C10アルキル)、-O-(C1-C10アルキレン)-NH-(C1-C10アルキル)、もしくは-O-(C1-C10アルキレン)-NH(C1-C10アルキル)2、-NH-(C1-C10アルキレン)-O-(C1-C10アルキル)、もしくは-N(C1-C10アルキル)-(C1-C10アルキレン)-O-(C1-C10アルキル)で、式中、アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニルは、置換されても、置換されなくてもよい。一部の実施形態では、2’-OHは、-H(デオキシリボース)で置換される。一部の実施形態では、2’-OHは、-Fで置換される。一部の実施形態では、2’-OHは、-OR’で置換される。一部の実施形態では、2’-OHは、-OMeで置換される。一部の実施形態では、2’-OHは、-OCH2CH2OMeで置換される。
【0115】
修飾糖には、ロック核酸(LNA)も含まれる。一部の実施形態では、ロック核酸は、以下に示される構造を有する:以下の構造のロック核酸が示されるが、式中、Baは、本明細書に記載される核酸塩基または修飾核酸塩基を表し、および式中、R
2sは、-OCH
2C4’-である。
【化3】
【0116】
一部の実施形態では、修飾糖は、例えば、Seth et al.,J Am Chem Soc.2010 October 27;132(42):14942-14950に記載されるENAである。一部の実施形態では、修飾糖は、XNA(異種核酸)に見出されるもののいずれか、例えば、アラビノース、アンヒドロヘキシトール、トレオース、2’-フルオロアラビノース、またはシクロヘキセンである。
【0117】
修飾糖には、例えばペントフラノシル糖の代わりのシクロブチル部分またはシクロペンチル部分などの糖模倣体が含まれる(例えば、米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、および第5,359,044号を参照)。予期される修飾糖のいくつかには、リボース環内の酸素原子が窒素、硫黄、セレン、または炭素で置換される糖が含まれる。一部の実施形態では、修飾糖は、リボース環内の酸素原子が窒素で置換され、当該窒素が任意でアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピルなど)で置換される修飾リボースである。
【0118】
修飾糖の非限定的な例にはグリセロールが含まれ、グリセロール核酸(GNA)類似体を形成する。GNA類似体の一例は、Zhang,R et al.,J.Am.Chem.Soc.,2008,130,5846-5847;Zhang L,et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127,4174-4175およびTsai CH et al.,PNAS,2007,14598-14603に記載されている。GNA誘導型の類似体の別の例は、ホルミルグリセロールの混合アセタールアミナルに基づく柔軟性核酸(FNA)であり、Joyce GF et al.,PNAS,1987,84,4398-4402 and Heuberger BD、およびSwitzer C,J.Am.Chem.Soc.,2008,130,412-413に記載されている。修飾糖に関する追加の非限定的な例としては、ヘキソピラノシル(6’~4’)、ペントピラノシル(4’~2’)、ペントピラノシル(4’~3’)、またはテトロフラノシル(3’~2’)の糖が挙げられる。
【0119】
修飾糖および糖模倣体は、限定されないが、以下をはじめとする当技術分野で公知の方法によって作製することができる:A.Eschenmoser,Science(1999),284:2118;M.Bohringer et al,Helv.Chim.Acta(1992),75:1416-1477;M.Egli et al,J.Am.Chem.Soc.(2006),128(33):10847-56;A.Eschenmoser in Chemical Synthesis:Gnosis to Prognosis,C.Chatgilialoglu and V.Sniekus,Ed.,(Kluwer Academic,Netherlands,1996),p.293;K.-U.Schoning et al,Science(2000),290:1347-1351;A.Eschenmoser et al,Helv.Chim.Acta(1992),75:218;J.Hunziker et al,Helv.Chim.Acta(1993),76:259;G.Otting et al,Helv.Chim.Acta(1993),76:2701;K.Groebke et al,Helv.Chim.Acta(1998),81:375;およびA.Eschenmoser,Science(1999),284:2118。2’修飾に対する修飾は、Verma,S.et al.Annu.Rev.Biochem.1998,67,99-134、および当該文献中の全ての参照文献において見出すことができる。リボースに対する特定の修飾は、以下の文献中に見出すことができる:2’-フルオロ(Kawasaki et.al.,J.Med.Chem.,1993,36,831-841)、2’-MOE(Martin,P.Helv.Chim.Acta 1996,79,1930-1938)、「LNA」(Wengel,J.Acc.Chem.Res.1999,32,301-310)、PCT国際特許出願公開WO2012/030683。
【0120】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載の阻害性RNA(例えば、siRNA)のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかにおいて、様々なヌクレオチド修飾またはヌクレオチド修飾パターンを選択的に使用してもよい。例えば、一部の実施形態では、アンチセンス鎖(少なくともその二重鎖部分内)において、非修飾リボヌクレオチドを利用してもよく、一方で、センス鎖の一部の位置またはすべての位置で、修飾ヌクレオチドおよび/または修飾もしくは非修飾デオキシリボヌクレオチドを採用してもよい。一部の実施形態では、特定の修飾パターンが、siRNAの鎖のいずれか、もしくは両方の鎖の一部または全体にわたって採用される。ヌクレオチド修飾は、様々なパターンのいずれかで存在してもよい。例えば、交互のパターンを使用してもよい。例えば、アンチセンス鎖、センス鎖、またはその両方が、一つおきのヌクレオチド上に、2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾を有してもよい。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、少なくとも一つの非修飾ヌクレオチドを含むセンス鎖および/またはアンチセンス鎖を含有する。
【0121】
一部の実施形態では、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、三つの連続的なヌクレオチド上に、三つの同一修飾の一つ以上のモチーフを含む。例えば、一部の実施形態では、二本鎖siRNAは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはその両方において、三つの連続的なヌクレオチド上に、三つの同一修飾の一つ以上のモチーフを含む。いくつかの実施形態では、そのようなモチーフは、いずれかの鎖または両鎖の切断部位で、またはその近くで存在してもよい。そのようなモチーフの例は、米国特許出願公開 20150197746、20150247143、および20160298124に記載されている。
【0122】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、19ヌクレオチドの長さの平滑末端鎖(bluntmer)であり、この場合においてセンス鎖は、5’末端から7位、8位、9位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、20ヌクレオチドの長さの両端平滑末端鎖(double-ended bluntmer)であり、この場合においてセンス鎖は、5’末端から8位、9位、10位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、21ヌクレオチドの長さの両端平滑末端鎖であり、この場合においてセンス鎖は、5’末端から9 位、10 位、11位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。
【0123】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、19ヌクレオチドのセンス鎖と21ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、この場合においてセンス鎖は、5’末端から7位、8位、9位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位で、三つの連続的なヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、この場合において阻害性RNA(例えば、siRNA)の一方の末端は、平滑末端であり、他方の末端は、2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。好ましくは、2ヌクレオチドのオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端にある。2ヌクレオチドのオーバーハングが、アンチセンス鎖の3’末端にあるとき、末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合があってもよく、この場合において当該三つのヌクレオチドのうちの二つは、オーバーハングヌクレオチドであり、三つ目のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドの隣の対形成ヌクレオチドである。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の両方で、末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合をさらに有する。一部の実施形態では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、阻害性RNA(例えば、siRNA)のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の各ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。一部の実施形態では、各残基は独立して、例えば交互のモチーフで、2’-O-メチルまたは3’-フルオロで修飾される。
【0124】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、19ヌクレオチドのセンス鎖と、21ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、この場合において(i)センス鎖は、5’末端から3位、7位、8位、9位、12位および17位で2’-F修飾を含み、(ii)センス鎖は、5’末端から1位、2位、4位、5位、6位、10位、11位、13位、14位、15位、16位、18位および19位で2’-O-メチル修飾を含み、(iii)アンチセンス鎖は、5’末端から2位および14位で2’-F修飾を含み、および(iv)アンチセンス鎖は、5’末端から1位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、17位、18位、19位、20位および21位で2’-O-メチル修飾を含み、この場合において阻害性RNA(例えば、siRNA)の一方の末端は平滑であり、他方の末端は、アンチセンス鎖の3’末端で2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、3’末端で末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むアンチセンス鎖を含み、この場合において当該三つのヌクレオチドのうちの二つは、オーバーハングヌクレオチドであり、三つ目のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドの隣の対形成ヌクレオチドである。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の両方で、末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合をさらに有する。
【0125】
一部の実施形態では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、阻害性RNA(例えば、siRNA)のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の各ヌクレオチドは、修飾されてもよい。各ヌクレオチドは、同じ修飾または異なる修飾で修飾されていてもよく、当該修飾は、非結合リン酸の酸素のうちの一つまたは両方の一つ以上の改変、および/または結合リン酸の酸素のうちの一つ以上の改変;リボース糖の構成要素の改変、例えば、リボース糖上の2’ヒドロキシルの改変;「脱リン酸」リンカーと、リン酸部分の大規模な置換;天然塩基の修飾または置換;およびリボース-リン酸骨格の置換または修飾を含んでもよい。
【0126】
一部の実施形態では、センス鎖の残基およびアンチセンス鎖の残基の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上、例えば100%は独立して、LNA、CRN、cET、UNA、HNA(1,5-アンヒドロヘキシトール核酸)、CeNA(シクロヘキセニル核酸、すなわちデオキシリボースが、6員のシクロヘキセン環で置換されているDNA模倣体)、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシル、または2’-フルオロで修飾される。鎖は、複数の修飾を含有してもよい。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上、例えば100%は独立して、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖上に少なくとも二つの異なる修飾が存在する。これら二つの修飾は、2’-O-メチル修飾もしくは2’-フルオロ修飾、または他の修飾であってもよい。
【0127】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)の二重鎖のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、
図1のパターン1~5として描写される修飾パターンのいずれか一つを含む。
図1において、任意の所与の位置で、「2OM」は、2’-O-メチル修飾を表しており、「2F」は、2’-フルオロ修飾を表している。「PS」は、「PS」で示されている位置でのヌクレオチドと、「PS」で示されている位置に対して3’側の隣接ヌクレオチドとの間のホスホロチオエート結合を表している。一部の実施形態では、配列番号176~200および300~324に開示されるアンチセンス鎖のいずれか一つを、
図1に開示されるアンチセンス鎖(AS)の修飾パターン1~5のいずれか一つに従って修飾してもよい。一部の実施形態では、配列番号126~150に開示されるセンス鎖のいずれか一つを、
図1に開示されるセンス鎖(SS)の修飾パターン1~5のいずれか一つに従って修飾してもよい。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)の二重鎖のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、
図1のパターン1~5として示される修飾パターンのいずれか一つを含むが、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のいずれか1位、2位、3位または4位は、パターン1~5のうちの一つにおける当該1位、2位、3位、または4位で示される修飾を含まない。
【0128】
一部の実施形態では、siRNAは、修飾パターン1~5(
図1に示される)のいずれか一つを含み、さらに(i)センス鎖の5’末端、(ii)センス鎖の3’末端、(iii)アンチセンス鎖の5’末端、および/または(iv)アンチセンス鎖の3’末端、の最後の二つ、三つ、または四つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合も含む。例えば、一部の実施形態では、siRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに/または(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0129】
一部の実施形態では、siRNAは、
図1の修飾パターン1~5のいずれか一つに従って修飾されてもよく、例えば本明細書に記載されるようにリガンドにコンジュゲートされてもよい。一部のかかる事例の場合、リガンドは、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の3’末端または5’末端のいずれかに付加されてもよい。一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、末端(例えば、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の3’末端または5’末端)にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、当該siRNAは、リガンドにコンジュゲートされた末端で、二つ、三つまたは四つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含まない。例えば、一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、センス鎖の5’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含まないセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0130】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含まないセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0131】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、アンチセンス鎖の5’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含まないアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0132】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、アンチセンス鎖の3’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含まないアンチセンス鎖、を含む。
【0133】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、末端(例えば、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の3’末端または5’末端)にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、当該siRNAは、リガンドにコンジュゲートされた末端で、二つ、三つまたは四つのヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含む。
【0134】
例えば、一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、センス鎖の5’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0135】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0136】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、アンチセンス鎖の5’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0137】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、表10および15に列挙されるsiRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、アンチセンス鎖の3’末端にコンジュゲートされたリガンド(例えば、GalNAcリガンド、例えば、本明細書に記載される式XDまたは式XEのGalNAc)を含み、およびsiRNAは、(i)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(ii)3’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および3’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むセンス鎖、(iii)5’末端から1位と2位のヌクレオチドの間、および5’末端から2位と3位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、ならびに(iv)3’末端から1位、2位、3位または4位のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含むアンチセンス鎖、を含む。
【0138】
一部の実施形態では、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、交互パターンの修飾を含む。本明細書で使用される場合、「交互モチーフ」という用語は、一つ以上の修飾を有するモチーフを指し、各修飾は、一つの鎖の一つ以上のヌクレオチドの交互の基に発生する。例えば、交互のヌクレオチドとは、一つおきのヌクレオチド当たりの一つのヌクレオチドを指す場合があり、または三つおきのヌクレオチド当たりの一つのヌクレオチドを指す場合もあり、その類似パターンもある。例えば、A、B、およびCが各々、ヌクレオチドに対するあるタイプの修飾を表す場合、交互のモチーフは、「ABABABABABAB...」、「AABBAABBAABB...」、「AABAABAABAAB...」、「AAABAAABAAAB...」、「AAABBBAAABBB...,」または「ABCABCABCABC...」などであってもよい。
【0139】
交互モチーフに含まれる修飾のタイプは、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、A、B、C、Dが各々、ヌクレオチド上の一つのタイプの修飾を表す場合、交互パターン、すなわち、一つおきのヌクレオチドの修飾は、同じであってもよいが、センス鎖とアンチセンス鎖のそれぞれが、例えば「ABABAB...」、「ACACAC...」、「BDBDBD...」または「CDCDCD...」などの交互モチーフ内のいくつかの可能性のある修飾から選択されてもよい。
【0140】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖上に交互モチーフに対する修飾パターンを含み、当該パターンは、アンチセンス鎖上の交互モチーフに対する修飾パターンに対してシフトされている。シフトは、センス鎖の修飾ヌクレオチド基が、アンチセンス鎖の異なる修飾ヌクレオチド基に対応するようなものであってもよく、逆もまた然りである。例えばdsRNA二重鎖においてアンチセンス鎖とペア形成される場合、当該二重鎖部分内で、センス鎖中の交互モチーフは、当該鎖の5’から3’に向かって「ABABAB」で始まってもよく、当該アンチセンス鎖中の交互モチーフは、当該鎖の5’から3’に向かって「BAB ABA」で始まってもよい。もう一つの例として、二重鎖部分内で、センス鎖中の交互モチーフは、当該鎖の5’から3’に向かって「AABBAABB」で始まってもよく、アンチセンス鎖中の交互モチーフは、当該鎖の5’から3’に向かって「BBAABBAA」で始まってもよい。その結果、センス鎖とアンチセンス鎖の間で修飾パターンの完全なシフトまたは部分的なシフトが存在する。
【0141】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖に2’-O-メチル修飾と2’-F修飾の交互モチーフのパターンを含み、当該パターンは、アンチセンス鎖の2’-O-メチル修飾と2’-F修飾の交互モチーフのパターンに対してシフトしている。すなわち、センス鎖の2’-O-メチル修飾ヌクレオチドが、アンチセンス鎖の2’-F修飾ヌクレオチドと塩基対形成し、逆もまた然りである。センス鎖の1位は、2’-F修飾で始まってもよく、アンチセンス鎖の1位は、2’-O-メチル修飾で始まってもよい。
【0142】
一部の実施形態では、三つの同一修飾の一つ以上のモチーフが、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の三つの連続的ヌクレオチドに導入されて、当該センス鎖および/またはアンチセンス鎖に存在していた初めの修飾パターンを中断させてもよい。一部の実施形態では、三つの連続的ヌクレオチド上の三つの同一修飾のモチーフは、両鎖のいずれかに導入され、当該モチーフの隣のヌクレオチドの修飾は、当該モチーフの修飾とは異なる修飾である。例えば、「...NaYYYNb...」のモチーフを含有する配列部分は、式中、「Y」は、三つの連続的ヌクレオチドの三つの同一修飾のモチーフの修飾を表しており、「Na」および「Nb」は、モチーフ「YYY」の隣のYの修飾とは異なるヌクレオチドに対する修飾を表しており、NaとNbは、同じ修飾であっても、異なる修飾であってもよい。
【0143】
阻害性RNA(例えば、siRNA)はさらに、少なくとも一つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合またはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合を含んでもよい。一部の実施形態では、ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のヌクレオチドごとに存在してもよく、各ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の交互パターン中に存在してもよく、またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、交互パターン中に両方のヌクレオチド間結合修飾を含有してもよい。センス鎖のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであっても、異なってもよい。センス鎖のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンに対してシフトを有してもよい。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、6~8個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合と、3’末端に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖は、5’末端または3’末端のいずれかに少なくとも二つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0144】
特定の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、WO/2015/089368のp.59(20行目)からp.65(15行目)、または米国特許出願公開20160298124の対応する段落[0469]~[0537]、または当該公開文献のいずれかもしくは両方の請求の範囲に記載される配置および/または修飾パターンのいずれかを有してもよい。例えば、一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、この場合において当該センス鎖は、当該アンチセンス鎖に相補的であり、当該アンチセンス鎖は、C3(例えば、本明細書に記載される標的領域)をコードするmRNAの一部に相補的な領域を含み、各鎖は約14~約30ヌクレオチドの長さであり、当該物質は、式(III)で表され:
センス:5’-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-(X’X’X’)k-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-(Z’Z’Z’)l-Na’-nq’5’
【0145】
式中、i、j、kおよび1はそれぞれ独立して、0または1であり、p、p’、qおよびq’はそれぞれ独立して0~6であり、各NaおよびNa’は独立して、修飾もしくは非修飾またはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも二つの異なる修飾がなされたヌクレオチドを含み、NbおよびNb’の各々は独立して、修飾もしくは非修飾またはそれらの組み合わせのいずれかである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、np、np’、nq、およびnq’は、各々存在する場合としない場合があり、それぞれ独立してオーバーハングヌクレオチドを表し、XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して、三つの連続的なヌクレオチドの三つの同一修飾の一つのモチーフを表しており、Nbの修飾は、Yの修飾とは異なり、そしてNb’の修飾は、Y’の修飾とは異なり、当該センス鎖は、少なくとも一つのリガンドにコンジュゲートされている。一部の実施形態では、iは0であるか、jは0であるか、iは1であるか、jは1であるか、iとjの両方が0であるか、またはiとjの両方が1である。一部の実施形態では、XXXは、X’X’X’に対して相補的であり、YYYは、Y’Y’Y’に対して相補的であり、およびZZZは、Z’Z’Z’に対して相補的である。各Xが同じ修飾を含む限りにおいて、各Xは異なる塩基を含み得ることを理解されたい。例えば、XXXは、AGCを表してもよく、この場合、各ヌクレオチドは、2-F修飾を含む。同様に、各X’、各Y、各Y’、各Zおよび各Z’は、異なっていてもよい。
【0146】
一部の実施形態では、式(III)は、式(IIIa)によって表される:
【0147】
センス:5’np-Na-YYY-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-Y’Y’Y’-Na’-nq’5’
【0148】
または式(III)は、式(IIIb)によって表される:
【0149】
センス:5’np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na’-nq’5’
【0150】
式中、NbおよびNb’の各々は独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。または式(III)は、式(IIIc)によって表される:
【0151】
センス:5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Na’-nq’5’
【0152】
式中、NbおよびNb’の各々は独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。または式(III)は、式(IIId)によって表される:
【0153】
センス:5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na’-nq’5
【0154】
式中、NbおよびNb’は各々独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、NaおよびNa’は各々独立して、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0155】
一部の実施形態では、ヌクレオチドの修飾は、LNA、CRN、cET、UNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0156】
一部の実施形態では、ヌクレオチドの修飾は、2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾である。一部の実施形態では、リガンドは、二価または三価の分岐リンカーを介して結合される一つ以上のGalNAc誘導体である。一部の実施形態では、リガンドは、式XA、式XB、または式XCで表され、または以下に示される別のGalNAc構造で表される。
【0157】
一部の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端に結合される。一部の実施形態では、結合は、以下に示される式XDに示されるとおりである。
【0158】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)はさらに、少なくとも一つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合またはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合を含む。
【0159】
一部の実施形態では、p’>0、またはp’=2である。
【0160】
一部の実施形態では、q’=0、p=0、q=0であり、およびp’オーバーハングヌクレオチドは、C3 mRNAに対して相補的である。一部の実施形態では、q’=0、p=0、q=0であり、およびp’オーバーハングヌクレオチドは、C3 mRNAに対して相補的ではない。
【0161】
一部の実施形態では、少なくとも一つのnp’が、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合される。
【0162】
一部の実施形態では、リガンドは、肝細胞に核酸分子を標的化する。例えば一部の実施形態では、リガンドは、肝細胞特異的アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR:asialoglycoprotein receptor)に結合し、例えば、リガンドは、GalNAcなどのガラクトース誘導体を含む。
【0163】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、一つ以上の部分にコンジュゲートされるか、または別手段により物理的に関連付けられ、当該部分は、阻害性RNA(例えば、siRNA)の活性、安定性、細胞分布および/または細胞取込みを強化するなどの調節を行う、および/または例えば電荷や溶解性などの阻害性RNA(例えば、siRNA)の一つ以上の物理的特性を変化させるなどの調節を行う。一部の実施形態では、部分は、抗体またはリガンドを含んでもよい。リガンドは、炭水化物、レクチン、タンパク質、糖タンパク質、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、核酸ホルモン、成長因子、または受容体であってもよい。一部の実施形態では、天然由来のホルモン、成長因子、または他のリガンドの生物学的に不活性なバリアントを使用してもよい。一部の実施形態では、部分は、阻害性RNA(例えば、siRNA)を、例えば肝細胞などの特定の細胞型に標的化する標的化部分を含む。一部の実施形態では、標的化部分は、肝細胞特異的アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合する。
【0164】
一部の実施形態では、部分は、可逆的な連結を介して阻害性RNA(例えば、siRNA)に結合される。「可逆的な連結」は、可逆的結合を含む連結である。「可逆的結合」(不安定結合または切断可能結合とも呼ばれる)は、選択された条件下で、分子中の他の結合よりも迅速に選択的に破壊され得る、または切断され得る、水素原子への共有結合以外の共有結合であり、当該結合は、同じ分子中の他の共有結合を実質的に破壊または切断しない条件下で、選択的に破壊または切断され得る。結合の切断または不安定性は、結合切断の半減期(t1/2)を単位として記載され得る(結合の半分が切断されるために必要な時間)。別段の示唆が無い限り、本明細書において対象の可逆的な結合は、「生理学的に可逆的な結合」であり、当該結合は、通常遭遇する条件下、または哺乳動物体内で遭遇する条件と類似した条件下で切断可能であることを意味する。生理学的に可逆的な連結は、少なくとも一つの生理学的に可逆的な結合を含む連結である。一部の実施形態では、生理学的に可逆的な結合は、哺乳動物の細胞内条件下で可逆的であり、当該条件には、例えば哺乳動物細胞内で存在する、または存在するものと類似したpH、温度、酸化もしくは還元の条件または物質、および塩濃度などの化学的条件が含まれる。哺乳動物の細胞内条件には、例えばタンパク質分解酵素または加水分解酵素などに由来する、哺乳動物細胞中に通常存在する酵素活性の存在も含まれる。酵素的に不安定な結合は、例えば細胞内酵素などの体内の酵素により切断される。pH不安定な結合は、7.0以下のpHで切断される。可逆的な結合および連結の例、ならびに阻害性RNA(例えば、siRNA)に部分をコンジュゲートさせるためのその使用は、例えば、米国特許出願公開20130281685および20150273081に記載されている。
【0165】
一部の実施形態では、部分は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD:protein transduction domain)を含む。タンパク質形質導入ドメインは、当該ドメインに結合した異種分子の取り込みを促進するポリペプチドまたは部分である(当該異種分子は、「カーゴ」と呼称される場合もある)。ペプチドであるタンパク質形質導入ドメインは、細胞貫通ペプチド(CPP:cell penetrating peptide)と呼称される場合もある。多数のタンパク質形質導入ドメイン/ペプチドが当分野で公知である。PTDは、様々な天然型または合成のアルギニンリッチペプチドを含む。アルギニンリッチペプチドは、少なくとも30%のアルギニン残基、例えば少なくとも40%、50%、60%、またはそれ以上のアルギニン残基を含有するペプチドである。PTDの例としては、TAT(少なくともアミノ酸49~56)、アンテナペディアホメオドメイン(Antennopedia homeodomain)、HSV VP22、およびポリアルギニンが挙げられる。かかるペプチドは、カチオン性、疎水性、または両親媒性のペプチドであってもよく、非標準アミノ酸、および/または様々な修飾もしくはバリエーション、例えば循環置換、インベルソ(inverso)、レトロ(retro)、レトロ-インベルソ、またはペプチド模倣性のバージョンを含んでもよい。PTDとカーゴの結合は、共有結合または非共有結合であってもよい。
【0166】
使用され得る例示的なPTDは、米国特許出願公開20090093026、20090093425、20120142763、20150238516、および20160215022に記載されている。PTDは、二つ以上のPTD(例えば、2~10個のPTD)を含んでもよく、それらは同じであっても、異なっていてもよい。PTDは、互いに直接連結されてもよく、または連結部分により分離されていてもよく、連結部分は、一つ以上のアミノ酸および/または一つ以上の非アミノ酸部分、例えばアルキル鎖またはオリゴエチレングリコール部分を含んでもよい。
【0167】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、アニオン性電荷中和部分を含むか、またはそれに物理的に関連付けられている。アニオン性電荷中和部分とは、当該部分が物理的に関連付けられている核酸の全体的な正味アニオン電荷を低下させることができる分子または化学基を指す。一つ以上のアニオン性電荷中和分子または基が、核酸と関連付けられてもよく、この場合において、各々が独立して、アニオン電荷の低下、およびまたはカチオン電荷の増加に寄与する。電荷中和とは、核酸のアニオン電荷が低下すること、中和されること、またはアニオン性電荷中和分子または基の非存在下での同核酸よりもカチオン性が高いことを意味する。ホスホジエステル保護基および/またはホスホチオエート保護基は、アニオン性電荷中和基の例である。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、負に荷電した基を含有する主鎖(例えば、ホスホジエステル主鎖またはホスホロチオエート主鎖)の正味のアニオン電荷を低下させる、一つ以上の位置で保護基を含む。一部の実施形態では、負に荷電されたホスホジエステル主鎖は、生物学的に可逆的なホスホトリエステル保護基を用いた合成によって中和され、当該保護基は、細胞質チオエステラーゼの作用によって細胞内の荷電ホスホジエステル結合に転換される。その結果、RNAiを介在することができる例えば阻害性RNA(siRNA)など、発現阻害について生物学的に活性な物質が得られる。そのような物質は、低分子干渉リボ核酸ニュートラル(siRNN:short interfering ribonucleic neutral)と呼称される場合もあり、siRNAプロドラッグとしての役割も果たし得る。主鎖は完全に中和される(すなわち、完全に非荷電である)必要はないことを理解されたい。一部の実施形態では、リン酸基の5%~100%、例えば25%~50%または50%~75%または75%~100%が保護される。特定の実施形態では、一方の鎖または両鎖のリン酸基のうちの少なくとも5、6、7、8、9、または10個が保護される。有用なホスホジエステル保護基および/またはホスホチオエート保護基の例、それらの作製方法、および核酸におけるそれらの用途(例えば、RNAi剤プロドラッグを作製するため)は、米国特許出願公開20110294869、20090093425、20120142763、および20150238516に記載されている。様々な実施形態では、siRNAは、本明細書に記載される修飾のいずれかを含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、siRNAは、2’糖修飾(例えば、2’-F、2’-O-Me)を含有してもよい。さらにsiRNNは、本明細書に記載される配置または修飾パターンのいずれかを有してもよい。
【0168】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)に付加される部分は、炭水化物を含む。代表的な炭水化物としては、約4、5、6、7、8、または9個の単糖単位を含有する単糖、二糖、三糖、およびオリゴ糖が挙げられる。特定の実施形態では、炭水化物は、ガラクトースまたはガラクトース誘導体、例えばガラクトサミン、N-ホルミル-ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-プロピオニル-ガラクトサミン、N-n-ブタノイル-ガラクトサミン、およびN-イソ-ブタノイルガラクトサミンを含む。特定の対象のある実施形態では、ガラクトース誘導体は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む。特定の実施形態では、部分は、複数のガラクトースまたはガラクトース誘導体の実体、例えば、複数のN-アセチルガラクトサミン部分、例えば、3個のGalNAc部分を含む。本明細書で使用される場合、「ガラクトース誘導体」という用語は、ガラクトースとガラクトース誘導体の両方を含み、ガラクトース誘導体は、ガラクトースと同等かそれ以上のアシアロ糖タンパク質受容体に対するアフィニティを有する。「ガラクトースクラスター」という用語は、少なくとも2個のガラクトース誘導体を含む構造を指し、当該誘導体は、典型的には別の部分に共有結合されることによって、互いに物理的に関連付けられる。一部の実施形態では、ガラクトースクラスターは、2~10個(例えば、6個)、または2~4個(例えば、3個)の末端ガラクトース誘導体を有する。末端ガラクトース誘導体は、ガラクトース誘導体のC-1炭素を介して別の部分に付加されてもよい。一部の実施形態では、二つ以上、例えば、三つのガラクトース誘導体が、分岐点としての機能を果たすことができ、および阻害性RNA(例えば、siRNA)に付加されることができる部分に付加される。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体は、リンカーまたはスペーサーを介して分岐点として機能する部分に連結される。一部の実施形態では、分岐点として機能する部分は、リンカーまたはスペーサーを介して阻害性RNA(例えば、siRNA)に付加されてもよい。例えば、一部の実施形態では、ガラクトース誘導体は、アミド、カルボニル、アルキル、オリゴエチレングリコール部分、またはそれらの組み合わせを含むリンカーまたはスペーサーを介して分岐点に付加される。一部の実施形態では、各ガラクトース誘導体に結合されるリンカーまたはスペーサーは、同一である。一部の実施形態では、ガラクトースクラスターは、三つの末端ガラクトサミンまたはガラクトサミン誘導体(例えば、GalNAc)を有し、各々がアシアロ糖タンパク質受容体に対するアフィニティを有する。3個の末端GalNAc部分が、(例えば、糖のC-1炭素を介して)、分岐点として機能する部分に付加される構造を、三アンテナ型(tri-antennary)N-アセチルガラクトサミン(GalNAc3)と呼称する場合もある。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体を含む一つ以上の単量体単位が、部位特異的に阻害性RNA(例えば、siRNA)に組み込まれてもよい。そのようなガラクトース誘導体を含有する単量体単位は、ヌクレオシド部分または非ヌクレオシド部分に付加された例えばGalNAcなどのガラクトース誘導体を含んでもよい。一部の実施形態では、少なくとも3個のヌクレオシド-GalNAc単量体または少なくとも3個の非ヌクレオシド-GalNAc単量体は、部位特異的に阻害性RNA(例えば、siRNA)に組み込まれる。一部の実施形態では、かかる組み込みは、ホスホラミダイト化学法を使用した固相合成中に、または合成後のコンジュゲーションを介して行われてもよい。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体を含有する単量体単位は、ホスホジエステル結合を介して互いに結合され、および/またはガラクトース誘導体が付加していない阻害性RNA(例えば、siRNA)のヌクレオシドに結合される。一部の実施形態では、2、3個またはそれ以上のガラクトース誘導体を含有する単量体単位は、連続的に配置される。すなわち、ガラクトース誘導体を持たない介在単位をいずれも伴わずに配置される。一部の実施形態では、炭水化物、例えば、ガラクトースクラスター、例えば、三アンテナ型N-アセチルガラクトサミン、または二つ以上のGalNAcを含有する単量体単位は、センス鎖の3’末端またはアンチセンス鎖の5’末端など、鎖の末端に存在する。例示的な炭水化物(例えば、ガラクトースクラスター)、ガラクトース誘導体を含有する単量体単位、炭水化物修飾阻害性RNA、ならびにそれらの製造方法および使用方法は、米国特許出願公開20090203135、20090239814、20110207799、20120157509、20150247143、US Pub.‘124;Nair,JK,et al.,J.Am.Chem.Soc.136,16958-16961(2014);Matsuda,S.,et al.,ACS Chem.Biol.10,1181-1187(2015);Rajeev,K.,et al.,ChemBioChem 16,903-908(2015);Migawa,MT.,et al.,Bioorg Med Chem Lett.26(9):2194-7(2016);Prakash,TP,et al.,J Med Chem.59(6):2718-33(2016)に記載されている。例示的なガラクトースクラスターを、以下に示す。
【0169】
【0170】
式XA
【0171】
【0172】
式XB
【0173】
【0174】
式XC
【0175】
追加的なGalNAc構造を、以下に示す(およびSharma et al.,Bioconjug.Chem.29:2478-2488(2018)に記載されるように合成することができる)。
【化7】
一部の実施形態では、m=0およびn=2である。一部の実施形態では、m=1およびn=1である。一部の実施形態では、m=1およびn=2である。一部の実施形態では、m=1およびn=3である。
【化8】
【0176】
当業者であれば、各GalNAcと分岐点を接続する連結部分の構造は変化し得ることを認識している。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、以下に示すようにGalNAcにコンジュゲートされる:
【化9】
【0177】
式XD(式中、当該GalNAcは、3’末端または5’末端でいずれかの鎖(例えばセンス鎖)にコンジュゲートされ得る)。
【化10】
【0178】
式XE
【0179】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA、例えば、表10および15に列挙さsれるsiRNA:1~57のいずれかなど、例えば、siRNA22、32、および53)は、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEのGalNAc)にコンジュゲートされる。
【0180】
一部の実施形態では、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEに示される)は、siRNA(例えば、siRNA:1~57のいずれか一つ、例えば、siRNA22、32、および53)のセンス鎖またはアンチセンス鎖の3’末端ヌクレオチドにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEに示される)は、siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位置にコンジュゲートされる。
【0181】
一部の実施形態では、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEに示される)は、siRNA(例えば、siRNA:1~57のいずれか一つ、例えば、siRNA22、32、および53)のセンス鎖またはアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEに示される)は、siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドの5’位置にコンジュゲートされる。
【0182】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、配列番号1~57のsiRNA、例えば、siRNA22、32、および53)がリガンド(例えば、GalNAcリガンド)にコンジュゲートされる場合、当該阻害性RNAは、当該リガンドにコンジュゲートされているヌクレオチドに対する修飾(例えば、ホスホロチオエート結合「PS」)を含まなくてもよい。
【0183】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、siRNA:1~57のいずれか、例えば、siRNA22、32、および53)は、センス鎖またはアンチセンス鎖の一つの末端で、GalNAcリガンド(例えば、式XDまたは式XEに示される)にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcリガンドにコンジュゲートされない他の三つの末端は、例えばホスホロチオエート結合(PS)などの修飾を含有する。一部の実施形態では、修飾は、最も5’側または最も3’側の2個、3個または4個のヌクレオチドの間にPS結合を含む。一部の実施形態では、GalNAcリガンドにコンジュゲートされる末端は、二つ、三つ、または四つの最も5’側または3’側のヌクレオチドの間にホスホロチオエート結合を含有しない。
【0184】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるsiRNAは、以下に示されるガラクトース構造にコンジュゲートされることができる:
【化11】
【0185】
一部の実施形態では、リンカーは、アミド、カルボニル、アルキル、オリゴエチレングリコール部分、またはそれらの組み合わせを含む。
【0186】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるsiRNAは、以下に示されるガラクトース構造にコンジュゲートされることができる:
【化12】
【0187】
一部の実施形態では、リンカーは、アミド、カルボニル、アルキル、オリゴエチレングリコール部分、またはそれらの組み合わせを含む。
【0188】
GalNAcリガンドを合成する方法、GalNAcリガンドを阻害性RNAにコンジュゲートする方法、および追加的なGalNAcリガンドは、当分野で公知であり、例えば、WO2017/021385、WO2017/178656、WO2018/215391、WO2019/145543、WO2017/084987、WO2017/055423、およびWO2012/083046に記載されるものが挙げられる。それら文献は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、以下に示すようにリガンドにコンジュゲートされ:
【化13】
【0190】
式中、Xは、OまたはSである。ほとんどの実施形態では、Xは、Oである。当業者であれば、ガラクトースクラスターをリン酸基に接続させる連結部分の構造は変化し得ることを認識するであろう。
【0191】
特定の実施形態では、部分は、親油性部分を含む。一部の実施形態では、親油性部分は、トコフェロール、例えばアルファ-トコフェロールを含む。一部の実施形態では、親油性部分は、コレステロールを含む。一部の実施形態では、親油性化合物は、アルキル基またはヘテロアルキル基を含む。一部の実施形態では、親油性化合物は、パルミトイル、ヘキサデカ-8-エノイル、オレイル、(9E,12E)-オクタデカ-9,12-ジエノイル、ジオクタノイル、またはC16-C20アシルを含む。一部の実施形態では、親油性部分は、少なくとも16個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、親油性部分は、-(CH)
n-NH-(C=O)-(CH)
m-CH
3を含む。一部の実施形態では、nおよびmは、それぞれ独立して1~20である。一部の実施形態では、n+mは、少なくとも10、12、14、または16である。一部の実施形態では、親油性部分は、以下に示されるとおりであるか、および/または以下に示されるように糖部分に付加される。
【化14】
【0192】
概して、部分は、阻害性RNA(例えば、siRNA)の末端または内部のサブユニットに付加されてもよい。一部の実施形態では、部分は、阻害性RNA(例えば、siRNA)の修飾サブユニットに付加される。当業者であれば、コンジュゲートされた部分を有する核酸の製造に適した方法を認識している。反応性官能基を含む修飾ヌクレオチドを含む核酸鎖は、第二の反応性官能基を含む部分と反応してもよく、この場合において当該第一および第二の反応性官能基は、当該核酸鎖の構造維持に適合性がある条件下で、互いに反応することができる。一部の実施形態では、部分は、センス鎖またはアンチセンス鎖に付加されてもよく、その後に、当該鎖とそれぞれ相補的なアンチセンス鎖またはセンス鎖とハイブリダイゼーションを行ってもよい。一部の実施形態では、鎖は、二重鎖を形成するようにハイブリダイズされてもよく、その後に部分を組み込んでもよい。概して、本明細書に記載される様々なコンジュゲーション法を使用してもよい。例えば、Hermanson,G.,Bioconjugate Techniques,2nd ed.,Academic Press,San Diego,2008を参照のこと。
【0193】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、siRNA)は、キメラsiRNAである。本明細書で使用される場合、「キメラ」siRNAは、二つ以上の化学的に別個の領域を含み、各領域は、少なくとも一つの単量体単位から構成され、この場合において領域は化合物に別個の特性を付与する。一部の実施形態では、少なくとも一つの領域が修飾されて、siRNAに、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取込みの増加、および/または標的核酸に対する結合アフィニティの増加を与える。siRNAの少なくとも一つの追加的領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAのハイブリッドを切断することができる酵素(例えば、RNase H)の基質として機能してもよい。一部の実施形態では、siRNAの少なくとも一つの領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAのハイブリッドを切断することができる酵素(例えば、RNase H)の基質として機能してもよく、少なくとも一つの領域は、立体的阻害によって翻訳を阻害してもよい。
【0194】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(例えば、siRNA)は、アニーリングされた二重鎖siRNAとして標的細胞に導入されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(例えば、siRNA)は、一本鎖のセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列として標的細胞に導入され、標的細胞内に入った時点で、阻害性RNA(例えば、siRNA)二重鎖を形成するようにアニーリングする。あるいは、阻害性RNA(例えば、siRNA)のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、標的細胞に導入される発現ベクター(例えば、本明細書に記載される発現ベクターなど)によってコードされてもよい。標的細胞内で発現されると、転写されたセンス鎖とアンチセンス鎖がアニーリングして、阻害性RNA(例えば、siRNA)を再構築することができる。
【0195】
本明細書に記載される阻害性RNA(例えば、siRNAもしくはmiRNA、またはsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、当分野で公知の標準的な方法、例えば、自動合成器を使用することによって、合成することができる。そのような方法論により作製されるRNAは、純度が高く、効率的にアニーリングして阻害性RNA(例えば、siRNA)二重鎖を形成する傾向がある。化学合成の後、一本鎖RNA分子を脱保護し、アニーリングさせて、siRNAを形成させ、(例えば、ゲル電気泳動またはHPLCにより)精製することができる。あるいは、例えば、一つ以上のRNAポリメラーゼプロモーター配列(例えば、T7またはSP6 RNAポリメラーゼプロモーター配列)を担持するなど、標準的な手順を使用して、DNA鋳型からRNAのインビトロ転写を行うことができる。T7 RNAポリメラーゼを使用したsiRNAの作製のためのプロトコルは、当該技術分野で公知である(例えば、Donze and Picard,Nucleic Acids Res.2002;30:e46、およびYu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;99:6047-6052を参照のこと)。センス転写物およびアンチセンス転写物を、二つの独立した反応において合成して、後にアニーリングしてもよく、または一つの反応で同時に合成してもよい。
【0196】
阻害性RNA(例えば、siRNAまたはmiRNA)は、細胞内に導入された発現構築物からのRNAの転写によって、細胞内で形成されてもよい(例えば、Yu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;99:6047-6052を参照のこと)。阻害性RNA(例えば、siRNA)のインビボ生産のための発現構築物は、例えば、プロモーター因子および転写終結シグナルを含む、siRNAコード配列の妥当な転写に必要な因子に動作可能に連結された一つ以上のsiRNAコード配列を含んでもよい。そのような発現構築物での使用に好ましいプロモーターとしては、ポリメラーゼ-III HI-RNAプロモーター(例えば、Brummelkamp et al.,Science 2002;296:550-553を参照のこと)、およびU6 ポリメラーゼ-IIIプロモーター(例えば、Sui et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;Paul et al.,Nature Biotechnol.2002;20:505-508;およびYu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;99:6047-6052を参照のこと)。siRNA発現構築物はさらに、発現構築物のクローニングを促進する一つ以上のベクター配列を含んでもよい。使用され得る標準ベクターとしては、例えば、pSilencer 2.0-U6 vector(Ambion Inc.テキサス州オースティン)が挙げられる。
【0197】
VI.発現ベクター
一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNAは、発現ベクターを使用して対象(例えば、対象の細胞、例えば、対象の肝臓細胞)に送達される。本明細書に記載される阻害性RNAを送達するために、多くの形態のベクターを使用することができる。発現ベクターの非限定的な例としては、ウイルスベクター(例えば、遺伝子療法に適したベクター)、プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミド、ファージミド、人工染色体などが挙げられる。
【0198】
一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列は、ウイルスベクターに組み込まれる。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ラウス肉腫ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バールウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、およびポリオウイルスが挙げられる。
【0199】
インビボでは、C3を含む多くの補体タンパク質が主に肝臓で合成される。したがって一部の実施形態では、肝細胞が、本明細書に記載の阻害性RNAの送達の標的である。レトロウイルスベクター(例えば、Axelrod et al.,PNAS 87:5173-5177(1990);Kay et al.,Hum.Gene Ther.3:641-647(1992);Van den Driessche et al.,PNAS 96:10379-10384(1999);Xu et al.,ASAIO J.49:407-416(2003);およびXu et al.,PNAS 102:6080-6085(2005)を参照のこと)、レンチウイルスベクター(例えば、McKay et al.,Curr.Pharm.Des.17:2528-2541(2011);Brown et al.,Blood 109:2797-2805(2007);およびMatrai et al.,Hepatology 53:1696-1707(2011)を参照のこと)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、Herzog et al.,Blood 91:4600-4607(1998)を参照のこと)、およびアデノウイルスベクター(例えば、Brown et al.,Blood 103:804-810(2004)およびEhrhardt et al.,Blood 99:3923-3930(2002)を参照のこと)を含む、数種のウイルスベクターが、遺伝子療法構築物の肝臓標的送達の能力を有していることが示されている。
【0200】
レトロウイルスは、レトロウイルス科に属するエンベロープ型ウイルスである。宿主細胞内に入ると、ウイルスは、ウイルス逆転写酵素酵素を使用して自身のRNAをDNAに転写することによって複製する。レトロウイルスのDNAは、宿主ゲノムの一部として複製され、プロウイルスと呼ばれる。選択核酸は、当該技術分野で公知の技術を使用して、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。複製欠損レトロウイルスの作製のためのプロトコルは当該技術分野で公知である(例えば、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990) and Murry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)を参照のこと)。次いで組換えウイルスを単離し、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達してもよい。多くのレトロウイルス系が当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,994,136号、第6,165,782号、および第6,428,953号を参照のこと。レトロウイルスには、アルファレトロウイルス属(例えば、ニワトリ白血病ウイルス)、ベータレトロウイルス属(例えば、マウス乳腺腫瘍ウイルス)、デルタレトロウイルス属(例えば、ウシ白血病ウイルスおよびヒトTリンパ球向性ウイルス)、イプシロンレトロウイルス属(例えば、ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス)、およびレンチウイルス属が含まれる。
【0201】
一部の実施形態では、レトロウイルスは、レトロウイルス科のレンチウイルスである。レンチウイルスベクターは、非増殖細胞を形質導入し、低免疫原性を示し得る。一部の例では、レンチウイルスは限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2)、サル免疫不全ウイルス(S1V)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血(EIA)、およびビスナウイルスである。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで相当なレベルの核酸伝達を実現することができる。
【0202】
一部の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクターである。アデノウイルスは、二本鎖DNAを含有する巨大なウイルス科である。アデノウイルスは宿主細胞の核内で複製し、宿主の細胞機構を使用してウイルスのRNA、DNA、およびタンパク質を合成する。アデノウイルスは、当分野において、複製細胞および非複製細胞の両方に感染し、巨大な導入遺伝子を収容し、宿主細胞ゲノム内に統合されることなくタンパク質をコードすることが知られている。
【0203】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAV系は当該技術分野で一般的に公知である(例えば、Kelleher and Vos,Biotechniques,17(6):1110-17(1994);Cotten et al.,P.N.A.S.U.S.A.,89(13):6094-98(1992);Curiel,Nat Immun,13(2-3):141-64(1994);Muzyczka,Curr Top Microbiol Immunol,158:97-129(1992);およびAsokan A,et al.,Mol.Ther.,20(4):699-708(2012)を参照のこと。組み換えAAVベクター(rAAV)を作製および使用するための方法は、例えば、米国特 第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
【0204】
AAV1、AAV2、AAV3(例えば、AAV3B)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11、ならびにそれらのバリアントを含む、いくつかのAAV血清型が特徴解析されている。概して、任意のAAV血清型を使用して、本明細書に記載される阻害性RNAを送達してもよい。しかしながら血清型は、異なる指向性を有しており、例えば、血清型は異なる組織に優先的に感染する。一つの実施形態では、補体タンパク質は肝臓で産生されるため、AAV血清型は、肝臓指向性に基づいて選択され、肝臓指向性は少なくとも血清型AAV2、AAV3(例えば、AAV3B)、AAV5、AAV7、AAV8、およびAAV9において見出されている(例えば、Shaoyong et al.,Mol.Ther.23:1867-1876(2015)を参照のこと)。
【0205】
rAAVベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性の5’および3’末端逆位リピート配列を含む(例えば、B.J.Carter,in“Handbook of Parvoviruses”,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照のこと)。ITR配列は約145bpの長さである。一部の実施形態では、実質的にITRをコードする配列全体がrAAVベクターで使用されるが、これら配列のある程度の軽微な改変は許容される。これらのITR配列を改変する技能は、当分野の技能の範囲内である。(例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989);and K.Fisher et al.,J Virol.,70:520 532(1996)などの書籍を参照のこと)。本開示のrAAVベクターの例は、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載される阻害性RNAをコードする核酸)を含有する「シス作用型」プラスミドであり、その中で選択された導入遺伝子配列および関連する制御エレメントは、5’および3’のAAV ITR配列に隣接される。AAV ITR配列は、現在特定されている哺乳動物AAV型を含む、任意の公知のAAVから取得されてもよい。
【0206】
ベクターは、rAAVベクターについて上記で特定された主要なエレメントに加えて、ベクターでトランスフェクトされた細胞、または本開示により産生されたウイルスに感染した細胞におけるその転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で、導入遺伝子に動作可能に連結された従来的な制御エレメントも含み得る。発現制御配列には、適切な転写の開始、終結、プロモーターおよびエンハンサーの配列、例えばスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的RNAプロセッシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザック配列)、タンパク質安定性を強化する配列、および望ましい場合には、コードされる生成物の分泌を強化する配列が含まれる。天然、構造的、誘導性および/または組織特異的であるプロモーターを含む、多数の発現制御配列が当技術分野で公知であり、本明細書に記載されるベクターに含まれ得る。一部の実施形態では、動作可能に連結されたコード配列は、機能性RNA(例えば、miRNAまたはsiRNA)を生じさせる。
【0207】
構造的プロモーターの例としては、限定されないが、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意でRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意でCMVエンハンサーを伴う)、SV40プロモーター、およびジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターは遺伝子発現の制御を可能にし、外因性に供給される化合物、例えば温度などの環境要因、または例えば急性期などの特定の生理学的状態、細胞の特定の分化状態、または複製細胞のみにより制御されることができる。誘導性プロモーターおよび誘導性システムは、限定されないが、Invitrogen社、Clontech社およびAriad社をはじめとする様々な商業的供給源から入手可能である。多くの他のシステムが報告されており、当業者によって容易に選択することができる。外因性に供給されるプロモーターによって制御される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、テトラサイクリン誘導系、RU486-誘導系、およびラパマイシン誘導系が挙げられる。本背景において有用であり得る誘導性プロモーターのさらに他のタイプは、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞のみによって制御されるプロモーターである。別の実施形態では、導入遺伝子用の天然プロモーターまたはその断片が使用される。さらなる実施形態では、例えばエンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、またはコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御要素を使用して、天然発現を模倣してもよい。
【0208】
一部の実施形態では、制御配列は、組織特異的な遺伝子発現能力を付与する。一部の事例では、組織特異的な調節配列は、組織特異的な様式で転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。そうした組織特異的な調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は、当技術分野で周知である。一部の実施形態では、プロモーターは、ニワトリβ-アクチンプロモーター、pol IIプロモーター、またはpol IIIプロモーターである。
【0209】
一部の実施形態では、rAAVは、肝細胞において本明細書に記載される阻害性RNAを発現するよう設計され、rAAVは、一つ以上の肝臓特異的調節エレメントを含み、それらエレメントは阻害性RNAの発現を肝細胞に実質的に限定する。概して、肝臓特異的調節因子は、肝臓で排他的に発現されることが知られている任意の遺伝子に由来し得る。WO2009/130208は、肝臓に特異的な様式で発現されるいくつかの遺伝子を特定しており、serpin peptidase inhibitor,clade A member 1、α-アンチトリプシンとしても知られる(SERPINA1;GeneID 5265)、アポリポプロテインC-I(APOC1;GeneID 341)、アポリポプロテインC-IV(APOC4;GeneID 346)、アポリポプロテインH(APOH;GeneID 350)、トランスサイレチン(TTR;GeneID 7276)、アルブミン(ALB;GeneID 213)、アルドラーゼB(ALDOB;GeneID 229)、チトクロームP450、ファミリー2、サブファミリーE、ポリペプチド1(CYP2E1;GeneID 1571)、フィブリノーゲンアルファ鎖(FGA;GeneID 2243)、トランスフェリン(TF;GeneID 7018)、およびハプトグロビン関連タンパク質(HPR;GeneID 3250)が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、これらタンパク質の一つ以上のゲノム座位に由来する肝臓特異的調節因子を含む。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーターのサイロキシン結合グロブリン(TBG:thyroxin binding globulin)であってもよい。あるいは他の肝特異的プロモーターを使用してもよい(例えば、Liver Specific Gene Promoter Database、Cold Spring Harbor、http://rulai.cshl.edu/LSPD/、例えば、alpha 1 anti-trypsin(A1AT);ヒトアルブミン(Miyatake et al.,J.Virol.71:5124 32(1997));humA1b;B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et al.,Gene Ther.3:1002 9(1996));またはLSP1を参照。追加のベクターおよび制御因子は、例えばBaruteau et al.,J.Inherit.Metab.Dis.40:497-517(2017)に記載されている)。
【0210】
一部の実施形態では、ウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)は、本明細書に記載される阻害性RNAをコードするDNA配列を含む。
【0211】
一部の実施形態では、ベクター(例えば、ウイルスベクター)は、例えばC3 mRNA(配列番号75)などのC3転写物の標的部分に対して相補的な核酸鎖を含む複数(例えば、2、3、4、5個、またはそれ以上)のmiRNAまたはsiRNAをコードする一つ以上のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ベクターは複数のヌクレオチド配列を含み、各ヌクレオチド配列は本明細書に記載される様々な阻害性RNAをコードする。一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも二つの異なる阻害性RNAをコードする複数のヌクレオチド配列を含み、当該ヌクレオチド配列のうちの少なくとも二つは、本明細書に記載される同じ阻害性RNAのコピーである。
【0212】
一部の実施形態では、本明細書に記載される一つ以上の阻害性RNAをコードする一つ以上の配列に加えて、ベクター(例えば、ウイルスベクター)は、例えば本明細書に記載されるC3阻害物質などのC3阻害物質を一つ以上コードする追加のヌクレオチド配列を一つ以上含む。例えば、C3阻害物質は、ポリペプチド阻害物質および/または核酸アプタマーであってもよい(例えば、米国特許出願公開20030191084を参照のこと)。例示的なポリペプチド阻害物質としては、コンプスタチン類似体(例えば、遺伝子的にコード可能なアミノ酸を含む、本明細書に記載のコンプスタチン類似体)、抗C3抗体もしくは抗C3b抗体(例えば、scFvまたは単一ドメイン抗体、例えばナノボディ)、C3もしくはC3bを分解する酵素(例えば、米国特許第6,676,943号を参照のこと)、または哺乳類補体制御タンパク質(例えば、CR1、DAF、MCP、CFH、CFI、C1阻害物質(C1-INH)、補体受容体1の可溶型(sCR1:soluble form of complement receptor 1)、TP10もしくはTP20(Avant Therapeutics社)、またはそれらの一部が挙げられる。追加的なポリペプチド阻害物質としては、ミニ因子H(例えば、米国特許出願公開20150110766)、黄色ブドウ球菌由来のEfbタンパク質もしくは補体阻害物質(SCIN)タンパク質、またはそれらのバリアントもしくは誘導体もしくは模倣体(例えば、米国特許出願公開20140371133を参照のこと)が挙げられる。
【0213】
一部の実施形態では、ポリペプチド阻害物質は、分泌シグナル配列に連結され、宿主細胞から発現ポリペプチド阻害物質が分泌される。
【0214】
VII.発現ベクターの作製
例えばrAAVなどの発現ベクターを得るための方法は、当分野で公知である。典型的には、方法は、AAVカプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列、機能性rep遺伝子、AAV末端逆位リピート(ITR)と導入遺伝子から構成される組換えAAVベクター、および/または組換えAAVベクターをAAVカプシドタンパク質内にパッケージングさせるために充分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。
【0215】
AAVカプシドにrAAVベクターをパッケージングするために、宿主細胞中で培養される構成要素を、トランスで宿主細胞に提供してもよい。あるいは、任意の一つ以上の必要な構成要素(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、キャップ配列、および/またはヘルパー機能)は、当業者に公知の方法を使用して、当該一つ以上の必要な構成要素を含有するように操作された安定宿主細胞により提供されてもよい。一部の実施形態では、かかる安定宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で必要とされる構成要素を含有する。他の実施形態では、必要とされる構成要素は、構造的プロモーターの制御下であってもよい。他の実施形態では、選択された安定宿主細胞は、構造的プロモーターの制御下で選択構成要素を含有してもよく、および一つ以上の誘導性プロモーターの制御下で他の選択構成要素を含有してもよい。例えば、293細胞(構造的プロモーターの制御下のE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下にあるrepタンパク質および/またはcapタンパク質を含有する安定宿主細胞が作製されてもよい。他の安定宿主細胞は、日常的な方法を使用して当業者により作製され得る。
【0216】
本開示のrAAVを作製するために必要な組換えAAVベクター、rep配列、キャップ配列、およびヘルパー機能は、任意の適切な遺伝子要素(例えば、ベクター)を使用してパッケージング宿主細胞へと送達されてもよい。選択された遺伝子要素は、遺伝子操作、組み換え操作および合成技術を含む当技術分野で公知の任意の適切な方法によって、例えば、核酸操作の技能を有する当業者に公知の任意の適切な方法よって送達されてもよい(例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。同様に、rAAVビリオンを作製する方法も公知であり、任意の適切な方法を本開示とともに使用することができる(例えば、K.Fisher et al,J.Virol.,70:520-532(1993) and U.S.Pat.No.5,478,745を参照のこと)。
【0217】
一部の実施形態では、組換えAAVは、トリプルトランスフェクション法(例えば、米国特許第6,001,650号に記載される)を使用して作製されてもよい。一部の実施形態では、組換えAAVは、組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)を用いて宿主細胞をトランスフェクトすることによって作製され、AAV粒子、AAVヘルパー機能性ベクター、およびアクセサリー機能性ベクターにパッケージングされる。AAVヘルパー機能性ベクターは、「AAVヘルパー機能性」配列(すなわちrepおよびcap)をコードしており、生産的なAAVの複製およびカプシド内包にトランスで機能する。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能性ベクターは、検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能性rep遺伝子およびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)を産生することなく、効率的なAAVベクターの産生をサポートする。本開示での使用に適したベクターの非限定的な例としては、pHLP19ベクター(例えば、米国特許第6,001,650号)およびpRep6cap6ベクター(例えば、米国特許第6,156,303号)が挙げられる。アクセサリー機能性ベクターは、AAVが複製に依存する、非AAVに由来するウイルス機能および/または細胞機能に関するヌクレオチド配列をコードする。アクセサリー機能には、AAV複製に必要な機能が含まれ、限定されないが、AAV遺伝子転写の活性化、ステージ特異的なAAV mRNAのスプライシング、AAV DNAの複製、キャップ発現産物の合成、およびAAVカプシドのアセンブリに関与する部分が挙げられる。ウイルス系のアクセサリー機能は、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルスなどの任意の公知のヘルパーウイルスから誘導することができる。
【0218】
一部の実施形態では、本開示は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来性DNAの取り込みを指し、細胞は、外来性DNAが細胞膜の内側に導入されたときに、「トランスフェクト」される。多数のトランスフェクション技術が当該技術分野において一般的に公知である(例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456;Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier;およびChu et al.(1981)Gene 13:197)を参照のこと)。かかる技術を使用して、例えばヌクレオチド統合ベクターおよび他の核酸分子などの一つ以上の外来性核酸を、好適な宿主細胞に導入することができる。
【0219】
一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、AAVミニ遺伝子プラスミド、アクセサリー機能ベクター、および/または組換えAAVの産生に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用され得る。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫細胞を含む。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」とは、外来性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す場合がある。単一の親細胞の子孫細胞は、自然の、偶発的な、または意図的な変異によって、かならずしも元の親と形態またはゲノムまたは総合的なDNA相補体において完全に同一であるとは限らない場合がある。
【0220】
対象への送達に適したAAVウイルスベクターの作製および単離に関するさらなる方法は、例えば、米国特許第7,790,449号、米国特許第7,282,199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、および米国特許第7,588,772号に記載されている。一つのシステムでは、産生細胞株は、ITRに隣接した導入遺伝子をコードする構築物、ならびにrepおよびcapをコードする構築物で一過性にトランスフェクトされる。別のシステムでは、repおよびcapを安定的に供給するパッケージング細胞株が、ITRに隣接した導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトされる。これらの各システムでは、AAVビリオンはヘルパーのアデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染に応答して産生され、そしてrAAVは混入ウイルスから分離される。他のシステムはAAVを回復させるためのヘルパーウイルスの感染を必要としない。つまりヘルパーの機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、およびE4、またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52およびUL29ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)も、当該システムによりトランスで供給される。そのようなシステムでは、ヘルパー機能は、ヘルパー機能をコードする構築物を用いて細胞を一過性にトランスフェクトすることによって供給されることができる。または細胞を操作して、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定的に含有させることができ、その発現は、転写レベルまたは転写後レベルで制御されることができる。
【0221】
さらに別のシステムでは、ITRに隣接される導入遺伝子、およびrep/cap遺伝子は、バキュロウイルス系ベクターの感染により、昆虫宿主細胞に導入される。そのような生産システムは当該技術分野で公知である(例えば、Zhang et al.,2009,Human Gene Therapy 20:922-929を参照のこと)。これらのAAV産生システムおよび他のAAV産生システムの作製方法ならびに使用方法は、米国特許第5,139,941号、第5,741,683号、第6,057,152号、第6,204,059号、第6,268,213号、第6,491,907号、第6,660,514号、第6,951,753号、第7,094,604号、第7,172,893号、第7,201,898号、第7,229,823号、および第7,439,065号にも記載される。
【0222】
組換えベクターを作製するための前述の方法は、限定であることは意図されず、他の好適な方法も当業者には明らかであろう。
【0223】
VIII.組成物および投与
阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを使用して、本明細書に記載される補体介在性の疾患または障害に罹患している、または感受性がある対象など、補体介在性の疾患または障害を治療することができる。本明細書に記載される阻害性RNAの投与経路および/または投与様式は、望まれる結果に応じて変化し得る。当業者、すなわち医師は、投薬レジメンが、例えば治療応答などの望ましい応答をもたらすように調整され得ることを認識している。投与方法としては限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、大脳内、髄腔内(例えば、嚢内、または腰椎穿刺を介して)、膣内、経皮、直腸、吸入または局所、特に耳、鼻、眼または皮膚に対する局所投与が挙げられる。一部の実施形態では、阻害性RNAの組成物は、中枢神経系(CNS)に送達され、例えば、脳室内投与を介して送達される。投与方法は、医師の判断に委ねられる。
【0224】
当業者であれば、阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)、または本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、(例えば髄腔内投与を介して)CNSに送達されて、例えば、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、他の慢性脱髄性疾患(例えば、視神経脊髄炎)、筋萎縮性側索硬化症、慢性疼痛、脳卒中、アレルギー性神経炎、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症(すなわち、レビー小体を伴う認知症、またはパーキンソン病認知症)、前頭側頭型認知症、外傷性脳損傷、外傷性脊髄損傷、多系統萎縮症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、および軟髄膜転移などのCNSに影響を及ぼす疾患または障害を治療し得ることを理解するであろう。
【0225】
本明細書に記載される阻害性RNA(例えば、siRNA)の細胞への送達は、多くの様々な方法で実現することができる。インビボ送達は、阻害性RNAを含む組成物を、例えば非経口投与経路、例えば、皮下投与または静脈内投与または筋肉内投与によって対象に投与することによって実行されてもよい。
【0226】
一部の実施形態では、阻害性RNAは、送達剤と関連付けられている。「送達剤」とは、阻害性RNAと非共有結合的に、または共有結合的に関連付けられて、または阻害性RNAと同時投与されて、送達剤の非存在下で生物活性剤が送達される(対象に投与される)場合の結果を超えて、生物活性剤の安定性および/または有効性を高める一つ以上の機能を果たす物質または実体を指す。例えば、送達剤は、阻害性RNAを(例えば、血液中での)分解から保護してもよく、阻害性RNAの細胞内への進入を促進してもよく、または対象の細胞区画(例えば、細胞質)への進入を促進してもよく、および/または調節される分子標的を含有する特定の細胞との関連性を強化してもよい。当業者であれば、例えばsiRNAなどの阻害性RNAを送達するために使用され得る多くの送達剤を認識している。当該技術のいくつかについての概要は、Kanasty,R.,et al.Nat Mater.12(11):967-77(2013)を参照のこと。一部の実施形態では、阻害性RNAを全身投与するために、阻害性RNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達システムなどの送達剤と関連付けられ得る。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、正電荷のカチオン性送達システムは、負電荷の阻害性RNAの結合を促進し、さらに負電荷の細胞膜での相互作用も強化して、阻害性RNAを効率的に細胞に取り込ませると考えられている。脂質(例えば、カチオン性脂質、または中性脂質)、デンドリマー、またはポリマーを、阻害性RNAに結合させてもよく、または阻害性RNAを封入する小胞もしくはミセルを形成させてもよい。カチオン性の剤および阻害性RNAを含む複合体を作製および投与する方法は、当分野で公知である。一部の実施形態では、特に、米国特許出願公開 20160298124に記載される送達剤のいずれかを使用することが予期される。一部の実施形態では、阻害性RNAは、全身投与のためにシクロデキストリンと複合体を形成する。一部の実施形態では、阻害性RNAは、脂質または脂質含有粒子に関連付けられて投与される。一部の実施形態では、阻害性RNAは、カチオン性ポリマー(ポリペプチドまたは非ポリペプチドポリマーであってもよい)、脂質、ペプチド、PEG、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせと関連付けられて投与され、ナノ粒子もしくはマイクロ粒子の形態であってもよい。脂質またはペプチドは、カチオン性であってもよい。「ナノ粒子」とは、1ナノメートル(nm)より大きく、約150nmより小さい、例えば、20nm~50nmまたは50nm~100nmの二次元または三次元の長さを有する粒子を指す。「マイクロ粒子」とは、150nmより大きく、約1000nmより小さい、二次元または三次元の長さを有する粒子を指す。ナノ粒子は、標的化部分を有してもよく、および/またはは細胞膜透過部分を有してもよく、もしくは膜活性部分を有してもよく、それらはナノ粒子に共有結合または非共有結合される。例えば脂質ナノ粒子などのナノ粒子は、Tatiparti et al.,Nanomaterials 7:77(2017)に記載されている。阻害性RNAの送達における例示的な送達剤、製造方法及び使用方法は、米国特許第7,427,605号、第8,158,601号、第9,012,498号、第9,415,109号、第9,062,021号、第9,402,816号に記載されている。一部の実施形態では、当分野において「スマーティクル(Smarticles)」として知られる送達技術を使用することが予期される。一部の実施形態では、当分野において「安定的核酸脂質粒子(SNALPs:stable nucleic acid lipid particle)」として知られる送達技術を使用することが予期され、この場合において送達される核酸は、カチオン性脂質と融合性脂質の混合物を含有する脂質二重層中に封入され、中性で親水性の外部を提供する拡散性ポリエチレングリコール-脂質(PEG-脂質)コンジュゲートでもコーティングされる。
【0227】
一部の実施形態では、送達剤は、例えば、米国特許第9,044,512に記載されるものなど、一つ以上のアミノアルコールカチオン性脂質を含む。
【0228】
一部の実施形態では、送達剤は、一つ以上のアミノ酸脂質を含む。アミノ酸脂質は、アミノ酸残基(例えば、アルギニン、ホモアルギニン、ノルアルギニン、ノル-ノルアルギニン、オルニチン、リシン、ホモリシン、ヒスチジン、1-メチルヒスチジン、ピリジルアラニン、アスパラギン、N-エチルアスパラギン、グルタミン、4-アミノフェニルアラニン、そのN-メチル化型、およびその側鎖修飾誘導体)と、一つ以上の親油性尾部を含有する分子である。例示的なアミノ酸脂質、および核酸を送達するためのその使用は、米国特許出願公開20110117125、ならびに米国特許第8,877,729号、第9,139,554号、および第9,339,461号に記載されている。一部の実施形態では、例えば米国特許出願公開20130289207に記載されるものなどの膜溶解性ポリ(アミドアミン)ポリマーおよびポリコンジュゲートを使用してもよい。一部の実施形態では、送達剤は、中心ペプチドを含み、各末端に親油性の基が付加されているリポペプチド化合物を含む。一部の実施形態では、親油性の基は、天然由来の脂質から誘導され得る。一部の実施形態では、親油性の基は、C(1-22)アルキル、C(6-12)シクロアルキル、C(6-12)シクロアルキル-アルキル、C(3-18)アルケニル、C(3-18)アルキニル、C(1-5)アルコキシ-C(1-5)アルキル、またはスフィンガニン、または(2R,3R)-2-アミノ-1,3-オクタデカンジオール、イコサスフィンガニン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンまたはシス-4-スフィンゲニンを含んでもよい。中心ペプチドは、カチオン性または両親媒性のアミノ酸配列を含んでもよい。そのようなリポペプチド、および核酸を送達するためのそれらの使用の例は、例えば、米国特許第9,220,785に記載されている。
【0229】
「マスキング部分」とは、別の剤(例えば、ポリマー)と物理的に関連付けられたときに、一つ以上の特性(生物物理学的特性または生化学的特性)または薬の活性を遮蔽、阻害もしくは不活化する分子または基を意味する。一部の実施形態では、マスキング部分は、阻害性RNAに共有結合的に、または非共有結合的に付加されてもよい。マスキング部分は、可逆的であってもよい。これは、マスキング部分は、阻害性RNAに付加されて、阻害性RNAを可逆的な連結を介してマスキングすることを意味する。当業者であれば理解するように、望ましいレベルの不活化を実現するために、充分な数のマスキング部分が、マスキングされる阻害性RNAに連結される。
【0230】
一部の実施形態では、阻害性RNAは、ポリマーである送達剤にコンジュゲートされる。有用な送達ポリマーとしては、例えば、ポリ(アクリル酸)ポリマー(例えば、米国特許出願公開20150104408を参照)、ポリ(ビニルエステル)ポリマー(例えば、米国特許出願公開20150110732を参照)、および特定のポリペプチドが挙げられる。一部の実施形態では、送達ポリマーは、可逆的にマスキングされた膜活性ポリマーである。一部の実施形態では、阻害性RNAもしくはポリマー、またはその両方は、標的化部分がコンジュゲートされる。一部の実施形態では、阻害性RNA、または阻害性RNA-標的化部分コンジュゲートは、送達ポリマーと同時投与されるが、ポリマーにコンジュゲートされない。この文脈において「同時投与される」とは、阻害性RNAと送達ポリマーが、重複する期間、対象に存在するように、対象に投与されることを意味する。阻害性RNA-標的化部分コンジュゲートと送達ポリマーは、同時に投与されてもよく、または連続的に送達されてもよい。同時投与について、それらは投与前に混合されてもよい。連続的投与について、阻害性RNAまたは送達ポリマーのいずれが、最初に投与されてもよい。阻害性RNAと送達ポリマーは、同じ組成物中で投与されてもよく、または細胞への阻害性RNAの細胞質送達が、ポリマーの投与を伴わずに行われる細胞質送達と比較して強化されるような時間で、互いに充分に密接して別々に投与されてもよい。一部の実施形態では、阻害性RNAと送達ポリマーは、15分以下、30分以下、60分以下、または120分以下をあけて投与される。一部の実施形態では、送達ポリマーは、標的化され、可逆的にマスキングされた膜活性ポリマーである。ポリマーは、標的化部分が付加されて、阻害性RNAの細胞質送達の強化が望まれる細胞にポリマーを標的化させる。阻害性RNAは、同じ細胞に標的化されてもよく、任意で同じ標的化部分を使用してもよい。すなわち、阻害性RNAは、阻害性RNA-標的化部分コンジュゲートとして投与されてもよい。本明細書で使用される場合、膜活性ポリマーは、表面活性のある両親媒性ポリマーであり、生体膜に以下の効果の一つ以上を誘導することができる:膜を変化または破壊して、非膜透過性分子を細胞に進入させる、または膜を横断させること、膜に孔を形成させること、膜を分裂させること、または膜を破壊もしくは溶解させること。本明細書で使用される場合、膜、または細胞膜は、脂質二重層を含む。膜の変化または破壊は、以下のアッセイの少なくとも一つにおけるポリマーの活性により機能的に規定されることができる:赤血球溶解(溶血)、リポソーム漏出、リポソーム融合、細胞融合、細胞溶解、およびエンドソーム放出。膜活性ポリマーは、細胞膜または内部小胞膜(例えばエンドソームまたはリソソームなど)を、破壊または不安定化することにより、細胞へのポリヌクレオチドの送達を強化してもよく、例えば膜に孔を形成することにより、またはエンドソーム小胞もしくはリソソーム小胞を破壊して小胞内容物を細胞質内へと放出させることにより、細胞へのポリヌクレオチドの送達を強化してもよい。一部の実施形態では、標的化された、可逆的にマスキングされた膜活性ポリマーは、エンドソーム溶解性ポリマーである。エンドソーム溶解性ポリマーは、pHの変化に応答して、エンドソームの破壊もしくは溶解を生じさせることができるポリマーであるか、または別手段により例えばポリヌクレオチドまたはタンパク質などの通常は細胞膜不透過性の化合物を、例えばエンドソームまたはリソソームなどの細胞内部膜-封入小胞から放出させることができるポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、可逆的に修飾された両親媒性膜活性ポリアミンであり、この場合において可逆的修飾は、膜活性を阻害し、ポリアミンを中和して、正電荷を減少させ、ほぼ中性の電荷ポリマーを形成させる。可逆的な修飾は、ポリマーの細胞型特異的標的化を提供してもよく、および/または非特異的相互作用を阻害してもよい。ポリアミンは、ポリアミン上のアミンの可逆的な修飾を介して可逆的に修飾されてもよい。可逆的にマスキングされた膜活性ポリマーは、マスキングされているときは実質的に膜活性ではないが、マスキングが外れたときには膜活性となる。マスキング部分は概して、生理学的に可逆的な連結を介して膜活性ポリマーに共有結合される。生理学的に可逆的な連結を使用することにより、マスキング部分はインビボでポリマーから切り離されることができ、それに伴いポリマーのマスキングが外れ、マスキングが外れたポリマーの活性は回復する。適切な可逆的連結を選択することによって、膜活性ポリマーの活性は、望ましい細胞型もしくは細胞位置にコンジュゲートが送達または標的化された後に、回復する。連結の可逆性は、膜活性ポリマーの選択的な活性化を提供する。生理学的に可逆的な結合は、哺乳動物の細胞内条件下で可逆的であり、当該条件には、例えば哺乳動物細胞内で存在する、または存在するものと類似したpH、温度、酸化もしくは還元の条件または物質、および塩濃度などの化学的条件が含まれる。一部の実施形態では、標的化部分、例えば、ASGPR標的化部分は、マスキング部分として機能し得る。一部の実施形態では、ASGPR標的化部分は、親油性部分がコンジュゲートされている。例示的な標的化部分(例えば、ASGPR標的化部分)、生理学的に不安定な結合(例えば、酵素的に不安定な結合、pH不安定な結合)、マスキング部分、膜活性ポリマー(例えば、エンドソーム溶解性に活性なポリマー)、親油性部分、RNAi剤-標的化部分コンジュゲート、送達剤-標的化部分コンジュゲート、RNAi剤、標的化部分および送達剤を含むコンジュゲート、ならびに細胞(例えば、肝細胞)に核酸を送達する方法は、米国特許出願公開20130245091、20130317079、20120157509、20120165393、20120172412、20120230938、20140135380、20140135381、20150104408、および20150110732に記載されている。一部の実施形態では、阻害性RNAは、例えば、米国特許出願公開20120165393に記載されるメリチン(mellitin)ペプチドと同時投与される。阻害性RNA、メリチンペプチド、またはその両方は、任意で可逆的連結を介して標的化部分をコンジュゲートしていてもよい。一部の実施形態では、マスキング部分は、例えば、米国特許出願公開20150110732に記載されるジペプチド-アミドベンジル-炭酸塩または二置換無水マレイン酸のマスキング部分を含む。
【0231】
一部の実施形態では、阻害性RNAは、「裸の」形態で投与されてもよく、すなわち、送達剤の非存在下で投与されてもよい。裸の阻害性RNAは、適切な緩衝溶液中にあってもよい。緩衝溶液は、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩もしくはリン酸塩、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。一部の実施形態では、緩衝溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。緩衝溶液のpHおよびオスモル濃度は、対象への投与に適合するように調整することができる。一部の実施形態では、阻害性RNAは、脂質または脂質含有粒子に物理的に関連付けられずに投与される。一部の実施形態では、阻害性RNAは、ナノ粒子またはマイクロ粒子に物理的に関連付けられずに投与される。一部の実施形態では、阻害性RNAは、カチオン性ポリマーに物理的に関連付けられずに投与される。一部の実施形態では、阻害性RNAは、シクロデキストリンに物理的に関連付けられずに投与される。一部の実施形態では、「裸の」形態で投与される阻害性RNAは、標的化部分を含む。
【0232】
阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、医薬組成物に組み込まれてもよい。かかる医薬組成物は、特に、インビボまたは生体外での対象への投与および送達に有用である。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤も含有する。かかる賦形剤は、任意の医薬品、例えば、組成物を投与される個体に対して有害な免疫反応をそれ自体は誘導しない医薬品であって、過度の毒性を伴わずに投与され得る医薬品を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」および「生理学的に許容可能な」という用語は、生物学的に許容可能な製剤、気体、液体もしくは固体、またはそれらの混合物を意味し、一つ以上の投与経路、インビボでの送達、または接触に適している。薬学的に許容可能な賦形剤には限定されないが、例えば水、生理食塩水、グリセロール、糖、およびエタノールなどの液体が含まれる。薬学的に許容可能な塩は、その中に、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのミネラル酸塩、および例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩も含まれ得る。さらに、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、そうしたビヒクル中に存在し得る。
【0233】
医薬組成物は、塩として提供されてもよく、および限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などをはじめとする多くの酸で形成されてもよい。塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性または他のプロトン性溶媒での溶解性が高い傾向にある。一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥粉末であってもよい。
【0234】
医薬組成物には、医薬投与またはインビボ接触または送達に適合性がある、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルション(例えば、水中油または油中水)、懸濁液、シロップ、エリキシル、分散媒体および懸濁媒体、コーティング、等張剤、および吸収促進剤または遅延剤が含まれてもよい。水性溶媒および非水性溶媒、溶液、ならびに懸濁液は、懸濁剤および増粘剤を含み得る。そのような薬学的に許容可能な担体には、錠剤(コーティングまたは非コーティング)、カプセル(硬質または軟質)、マイクロビーズ、粉末、顆粒、および結晶が含まれる。補足的な活性化合物(例えば、保存剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、および抗真菌剤)も、組成物に組み込まれ得る。
【0235】
医薬組成物は、本明細書に明記される、または当業者に公知の特定の投与経路または送達経路と適合性があるように製剤化され得る。したがって、医薬組成物は、様々な経路による投与に適した担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0236】
非経口投与に適した組成物は、活性化合物の水溶液および非水性溶液、懸濁液、またはエマルションを含んでもよく、それら調製物は、典型的には滅菌されており、目的のレシピエントの血液と等張であり得る。非限定的な例には、水、緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、デキストロース、フルクトース、エタノール、動物油、植物油または合成油が挙げられる。水性注射懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油注入懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性の溶媒またはビヒクルは、例えばゴマ油などの脂肪酸、または例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。任意選択で、懸濁液は、溶解性を増加させて、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする好適な安定剤または薬剤も含有し得る。
【0237】
共溶媒およびアジュバントを製剤に添加してもよい。共溶媒の非限定的な例は、ヒドロキシル基または他の極性基、例えばイソプロピルアルコールなどのアルコール;例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテルなどのグリコール;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含有する。アジュバントとしては、例えば、例えば大豆レシチンおよびオレイン酸などの界面活性剤;ソルビタンエステル、例えばトリオレイン酸ソルビタン;およびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0238】
医薬組成物が調製された後、それらを適切な容器に入れ、処置に関してラベリングしてもよい。そのようなラベリングは、投与の量、頻度、および方法を含み得る。
【0239】
本開示の組成物、方法および使用に適切な医薬組成物および送達系は、当技術分野で公知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy.21st Edition.Philadelphia,PA.Lippincott Williams & Wilkins,2005を参照のこと)。
【0240】
本開示は、阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを、細胞または動物内に導入する方法も提供する。一部の実施形態では、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、対象(例えば、対象の細胞または組織)と接触させて、または対象(例えば、哺乳動物などの対象)に投与して、当該阻害性RNAを、対象(例えば、対象の細胞または組織)において発現させることを含む。別の実施形態では、方法は、個体(例えば、哺乳動物などの患者または対象)の細胞に、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を提供し、当該阻害性RNAを、当該個体において発現させることを含む。
【0241】
本明細書に記載の阻害性RNAの組成物(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、rAAVベクター))は、その必要のある対象に、充分な量または有効量で投与され得る。用量は、治療が指示される疾患の種類、発症、進行、重症度、頻度、期間、または確率、望ましい臨床エンドポイント、過去の治療または同時治療、対象の全般的な健康状態、年齢、性別、人種、または免疫能力、および当業者によって認識される他の要因によって変化し、依存し得る。投与の量、回数、頻度、または期間は、治療または療法の任意の有害な副作用、合併症、または他のリスク要因、および対象の状態によって示唆される場合に、比例的に増加または減少させてもよい。当業者であれば、治療的または予防的な利益を提供するのに十分な量を提供するために必要な投薬量およびタイミングに影響を与え得る要因を認識するであろう。
【0242】
治療効果を実現する用量、例えば、体重キログロム当たりのベクターゲノムの単位(vg/kg)での用量(例えば、ベクター系送達の場合)、またはmg/体重kgの単位(mg/kg)での用量は、限定されないが、投与経路、治療効果を実現するために必要な阻害性RNA発現のレベル、治療される特定の疾患、ウイルスベクターに対する任意の宿主免疫応答、異種阻害性RNAに対する宿主免疫応答、および発現される阻害性RNAの安定性を含むいくつかの因子に応じて変化する。当業者は、阻害性RNAのベクター系送達に関し、AAV/ベクターゲノムの用量範囲を決定し、前述の因子ならびに他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を治療することができる。概して、治療効果を得るための用量は、対象の体重1キログラム当たり、少なくとも1x108以上、例えば、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、またはそれ以上のベクターゲノム(vg/kg)の範囲である。
【0243】
一部の実施形態では、阻害性RNAの組成物は、0.01mg/kg~50mg/kgの量で対象に投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、または約50mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、量は、0.01mg/kg~0.1mg/kg、0.01mg/kg~0.1mg/kg、0.1mg/kg~1.0mg/kg、1.0mg/kg~2.5mg/kg、2.5mg/kg~5.0mg/kg、5.0mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~40mg/kg、または40mg/kg~50mg/kgである。一部の実施形態では、固定された用量が投与される。一部の実施形態では、用量は、5mg~1.0g、例えば5mg~10mg、10mg~20mg、20mg~40mg、40mg~80mg、80mg~160mg、160mg~320mg、320mg~640mg、640mg~1gである。一部の実施形態では、用量は、約1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgである。一部の実施形態では、用量は、1日用量である。一部の実施形態では、用量は、少なくとも2日、例えば、少なくとも7日、例えば、約2、3、4、6、または8週間の投与間隔を伴う投与レジメンに従い投与される。例えば、一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、少なくとも7日間の投与間隔を伴う投与レジメンに従い投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、毎日、毎週、毎月、または2、3、4、5、もしくは6か月以上毎に、投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される用量および/または投与レジメンのいずれかは、皮下投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA組成物は、一度投与され、その後に阻害レベルが測定される。阻害レベルが特定のレベルまで低下した時点で、阻害組成物の後続の用量が投与される。
【0244】
一部の実施形態では、対象は、投与から少なくとも2日間、例えば、少なくとも7日間、例えば、約2、3、4、6、8、10、12、16、または20週間の期間、(例えば肝臓組織における、例えば肝生検における)C3 mRNA発現により測定されるC3の持続的な阻害を呈する。一部の実施形態では、対象は、血清C3のレベル低下を呈し、血清C3のレベル低下は、投与から少なくとも2日間、例えば、少なくとも7日間、例えば、約2、3、4、6、8、10、12、16、または20週間の期間、維持される。
【0245】
有効量または充分な量は、単回投与で提供されてもよく(しかし必須ではない)、複数回の投与を必要としてもよく、単独で、または別の組成物(例えば本明細書に記載される別の補体阻害剤)と組み合わせて投与されてもよい(しかし必須ではない)。例えば、量は、治療を必要とする対象、治療される疾患のタイプ、状態および重症度、または治療の副作用(もしあれば)により指摘される場合、比例的に増加されてもよい。有効とみなされる量には、本明細書に記載される別の補体阻害剤の投与など、別の治療、治療レジメン、またはプロトコルの使用の減少をもたらす量も含まれる。
【0246】
したがって、本開示の医薬組成物は、活性成分が、意図される治療目的を実現するのに有効な量で含有される組成物を含む。治療有効用量の決定は、本開示に提供される技術およびガイダンスを使用した医師の能力の範囲内にある。治療用量は、他の因子の中でも特に、対象の年齢および一般状態、補体介在性疾患または障害の重症度、および本明細書に記載される阻害性RNAの発現レベルを調節する制御配列の強度に依存し得る。したがって、ヒトにおける治療有効量は、比較的広範な範囲に収まり、ベクター系治療に対する個々の患者の応答に基づいて、医師により決定され得る。医薬組成物は、遺伝子系治療および/または細胞系治療により、または患者細胞もしくはドナー細胞の生体外改変により、対象に送達されて、インビボでの本明細書に記載される阻害性RNAの産生が可能になる。
【0247】
本開示の方法および使用には、全身的、局部的、局所的、または任意の経路による、例えば、注射または点滴による送達および投与が含まれる。インビボでの医薬組成物の送達は概して、従来的なシリンジを使用した注射を介して達成され得るが、例えば対流強化送達などの他の送達方法も使用され得る(例えば、米国特許第5,720,720号を参照のこと)。例えば、組成物は、皮下、表皮、皮内、髄腔内、眼窩内、粘膜内、腹腔内、静脈内、胸膜内、動脈内、口腔、肝内、脳室内(例えば、脳室内注射を介して)、門脈を介して、または筋肉内に送達されてもよい。他の投与様式には、経口投与および肺投与、座薬、ならびに経皮塗布が含まれる。補体介在性障害を有する患者の治療に特化した臨床医は、阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターの投与に関する最適な経路を決定し得る。
【0248】
一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、日、週、2週ごと、3週ごと、もしくは4週間ごとに1回、またはより長い間隔で、対象に投与されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、(i)日、週、2週ごと、3週ごと、もしくは4週間ごとに1回、またはより長い間隔での初期投与、その後に、(ii)例えば、1、2、3、4、5、6、8、もしくは10か月間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10年間、投与を行わない期間、を含む投与レジメンに従って投与されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、(i)最大で2、4、または6週以下の初期期間中に1回以上投与され、その後に、(ii)例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年間、投与を行わない期間があってもよい。一部の実施形態では、対象は、例えば第二経路アッセイ、古典的経路アッセイ、またはその両方を使用して測定される、C3の発現および/または活性のレベルに関し、治療の前および/または後にモニタリングされる。適切なアッセイは当該技術分野で公知であり、例えば、溶血アッセイが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、C3の発現および/または活性の測定レベルが、対照対象におけるC3の発現および/または活性の測定レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、またはそれ以上高い場合、治療され、または再治療される。
【0249】
IX.疾患、障害、および状態
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、器官、組織、または細胞に対する補体介在性の損傷を患うか、またはそのリスクがある対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチドを含むベクター)は、器官、組織、または細胞に対する補体介在性の損傷を患うか、またはそのリスクがある対象に、一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、生体外で器官、組織、または細胞と接触する。器官、組織、または細胞は、対象内に導入されてもよく、レシピエントの補体系によって別手段で引き起こされた損傷から保護されてもよい。
【0250】
対象の特定の用途としては、以下が挙げられる:(1)例えば発作性夜間血色素尿症、非定型溶血性尿毒症症候群、または補体介在性のRBC溶解を特徴とする他の障害などの障害を有する個体において、補体介在性損傷から赤血球(RBC)を保護すること、(2)移植された器官、組織および細胞を、補体介在性損傷から保護すること、(3)(例えば、外傷、血管閉塞、心筋梗塞、またはI/R損傷が発生し得る他の状況を患う個体において)虚血/再灌流(I/R)損傷を低下させること、および(4)様々な異なる補体介在性障害のいずれかにおいて、補体成分に曝される可能性のある様々な身体構造(例えば、網膜)や膜(例えば、滑膜)を補体介在性損傷から保護すること。細胞または他の身体構造の表面での補体活性化を阻害することによる有益な効果は、直接的な補体介在性損傷に対して細胞または構造それ自体を保護することから直接生じるもの(例えば、細胞溶解の予防)に限定されない。例えば、補体活性化を阻害することによって、アナフィロトキシンの生成と、その結果生じる好中球および他の炎症促進事象の流入/活性化を低下させ、および/または有害な可能性のある細胞内含有物の放出を低下させて、遠隔の器官系または全身に有益な効果をもたらす可能性がある。
【0251】
A.血液細胞の保護
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用されて、または単独で使用されて、補体介在性損傷から血液細胞を保護する。血液細胞は、血液の任意の細胞成分であってもよく、例えば、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、および/または血小板であってもよい。様々な障害が、血液細胞に対する補体介在性損傷と関連している。そのような障害は、例えば、個体の細胞性CRPまたは可溶性CRPのうちの一つ以上における欠乏または欠陥から生じることがあり、例えば、(a)そのようなタンパク質をコードする遺伝子における変異、(b)一つ以上のCRPの産生に必要な遺伝子または適切な機能に必要な遺伝子における変異、および/または(c)一つ以上のCRPに対する自己抗体の存在に起因する場合がある。補体介在性のRBC溶解は、RBC抗原に対する自己抗体の存在から生じる場合があり、自己抗体は多様な原因(多くの場合、特発性)によって生じ得る。CRPをコードする遺伝子にそのような変異を有する個体、および/またはCRPに対する抗体を有する個体、または自身のRBCに対する抗体を有する個体は、補体介在性RBC損傷を伴う障害のリスクが高い。障害の特徴である症状の発現が1回以上ある個体は、再発のリスクが高い。
【0252】
発作性夜間血色素尿症(PNH)は、補体介在性の血管内溶血、血色素尿症、骨髄不全、および血栓形成傾向(血栓を発症する傾向)を特徴とする後天性の溶血性貧血を含む比較的まれな障害である。世界中で100万人当たり推定16人が罹患し、男女両方に発症する。あらゆる年齢で発症し、若年成人に多く発症し得る(Bessler,M.& Hiken,J.,Hematology Am Soc Hematol Educ Program,104-110(2008);Hillmen,P.Hematology Am Soc Hematol Educ Program,116-123(2008))。PNHは、慢性的で消耗性の疾患であるが、急性の溶血性発作によって急変し、著しく高い死亡率と、平均余命の減少をもたらす。貧血に加えて、多くの患者は、腹痛、嚥下障害、勃起障害、および肺高血圧を経験し、腎不全および血栓塞栓事象のリスクが高い。
【0253】
PNHは1800年代に初めて別個の疾患として報告されたが、補体活性化の第二経路の発見とともに、PNHの溶血の原因が確立されたのは1950年代のことであった(Parker CJ.Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:an historical overview.Hematology Am Soc Hematol Educ Program.93-103(2008))。CD55およびCD59は通常、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー(特定のタンパク質を細胞膜に固定する糖脂質構造)を介して細胞膜に結合されている。PNHは、GPIアンカーの合成に関与するタンパク質をコードするPIGA遺伝子に体細胞変異を有している造血系幹細胞の非悪性クローン性の拡張の結果として生じる(Takeda J,et al.Deficiency of the GPI anchor caused by a somatic mutation of the PIG-A gene in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria.Cell.73:703-711(1993))。そのような幹細胞の子孫細胞は、CD55およびCD59を含むGPIアンカータンパク質を欠損している。この欠損によって、これらの細胞は、補体介在性のRBC溶解に感受性となる。診断には、GPIアンカータンパク質に対する抗体を使用したフローサイトメトリー解析がよく使用される。その方法によって、細胞表面のGPIアンカータンパク質の欠損を検出し、欠損の程度と影響を受けた細胞の割合を決定することができる(Brodsky RA. Advances in the diagnosis and therapy of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria.Blood Rev.22(2):65-74(2008)。PNH III型のRBCは、GPI連結タンパク質が完全に欠損しており、補体に対する感受性が高い。一方でPNH II型のRBCは部分的な欠損であり、感受性は低い。FLAERは、蛍光標識されたプロアエロリシン(GPIアンカーに結合する細菌毒素)の不活性バリアントであり、PNHの診断にフローサイトメトリーと共に使用されることが増加している。顆粒球へのFLAERの結合が無ければ、PNHの診断には充分である。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、C3bの沈着からPNH RBCを保護する。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、PNHに罹患する対象において、血管内溶血および血管外溶血を阻害する。
【0254】
一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、非定型溶血症候群(aHUS)に罹患する対象に投与される。aHUSは、微小血管性溶血性貧血、血小板減少症、および急性腎不全により特徴付けられる慢性障害であり、不適切な補体活性化によって生じ、多くの場合、補体制御タンパク質をコードする遺伝子における変異が原因である(Warwicker,P.,et al..Kidney Int 53,836-844(1998);Kavanagh,D.& Goodship,T.Pediatr Nephrol 25,2431-2442(2010)。補体H因子(CFH)遺伝子における変異が、aHUS患者において最も多い遺伝子異常であり、60~70%のaHUS患者が疾患発症から1年以内に死亡するか、または末期の腎不全へと進行する(Kavanagh & Goodship、上記)。I因子、B因子、C3、H因子関連タンパク質1~5、およびトロンボモジュリンにおける変異も報告されている。aHUSの他の原因としては、例えばCFHなどの補体制御タンパク質に対する自己抗体が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、I因子、B因子、C3、H因子関連タンパク質1~5、またはトロンボモジュリンに変異を有すると特定された対象に投与され、または例えばCFHなどの補体制御タンパク質に対する自己抗体を有すると特定された対象に投与される。
【0255】
補体介在性溶血は、RBCに結合する抗体が関与して、補体介在性溶血が発生する自己免疫性溶血性貧血を含む多様な他の疾患群で発生する。例えばそのような溶血は、原発性慢性寒冷凝集素症、および薬剤や他の外来性物質に対する特定の反応において発生する可能性がある(Berentsen,S.,et al.,Hematology 12,361-370(2007);Rosse,W.F.,Hillmen,P.& Schreiber,A.D.Hematology Am Soc Hematol Educ Program,48-62(2004))。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、慢性寒冷凝集素症に罹患する対象、またはそのリスクのある対象に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で使用されて、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用されて、HELLP症候群に罹患する対象、またはそのリスクのある対象が治療される。当該症候群は、溶血、肝臓酵素の上昇、および低血小板数の存在により規定され、少なくとも一部の対象では、補体制御タンパク質における変異と関連している(Fakhouri,F.,et al.,112:4542-4545(2008))。
【0256】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、温式自己免疫性溶血性貧血に罹患する対象、またはそのリスクのある対象に投与される。
【0257】
他の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で使用されて、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用されて、対象内に輸注されるRBCまたは血液の他の細胞成分を保護する。かかる使用の特定の例については、以下でさらに検討する。
【0258】
B.移植
移植は、外傷、疾患または他の状態により損傷を受けた器官および組織を置き換える手段を提供する治療法であり、重要性が増している。腎臓、肝臓、肺、膵臓、および心臓は、特に移植が成功し得る器官である。頻繁に移植される組織としては、骨、軟骨、腱、角膜、皮膚、心臓弁、および血管が挙げられる。膵島または膵島細胞の移植は、例えばI型糖尿病などの糖尿病の治療に対する有望な方法である。本発明の目的に対し、移植される、移植されつつある、もしくは移植された器官、組織、または細胞(または細胞集団)は、「移植片」と呼称される場合がある。本明細書の目的に対し、輸血は、「移植片」とみなされる。
【0259】
移植によって、移植片は様々なダメージを受ける事象および刺激に曝され、それら事象および刺激は、移植片の機能不全、さらに潜在的な移植不全の原因ともなり得る。例えば、虚血再灌流(I/R)損傷は、多くの移植片(特に固形器官)の症例において、罹患および死亡の普遍的で重大な原因であり、移植片生着の可能性の主要な決定因子となり得る。移植拒絶反応は、遺伝的に異なる個体間の移植に関連する主要なリスクの一つであり、移植不全に繋がり、レシピエントから移植片を除去する必要に迫られる可能性がある。
【0260】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用されて、または単独で使用されて、補体介在性損傷から移植片を保護する。例えば、細胞反応性コンプスタチン類似体は、移植片の細胞と反応して細胞に共有結合し、補体活性化を阻害する。細胞標的化されたコンプスタチン類似体は、移植片中の標的分子(例えば、内皮細胞または移植片中の他の細胞によって発現される)に結合して、補体活性化を阻害する。標的分子は、例えば、その発現が、傷害や炎症などの刺激によって誘導され、または刺激される分子、レシピエントによって「非自己」として認識される分子、血液型抗原または異種抗原など、抗体がヒトに普遍的に存在する例えばアルファ-Galエピトープを含む分子などの炭水化物異種抗原であってもよい。一部の実施形態では、補体活性化の低下は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)と単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて接触された移植片の血管における、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)と単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて接触されなかった移植片におけるC4d沈着の平均レベル(例えば、移植片に関して、および彼らが受ける他の治療に関してマッチングした対象におけるレベル)と比較した、平均C4d沈着の低下によって示すことができる。
【0261】
本開示の様々な実施形態おいて、移植片は、移植の前に、移植中に、および/または移植後に、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)と単独で、またはC3発現を阻害する本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、接触されてもよい。例えば、移植前に、ドナーから取り出された移植片を、細胞反応性、長時間作用型、または標的化されたコンプスタチン類似体を含む液体と接触させてもよい。例えば、移植片は、溶液に浸漬されてもよく、および/または溶液でかん流されてもよい。別の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植片を取り出す前にドナーに投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植片を導入する間に、および/または導入した後に、レシピエントに投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植された移植片に局所的に送達される。一部の実施形態では、細胞反応性、長時間作用型、または標的化されたコンプスタチン類似体は、たとえな静脈内投与または皮下投与など、全身投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植片を導入する前に、レシピエントに投与される。一部の実施形態では、対象は、移植を受けた後に、阻害性RNA、阻害性RNAをコードするベクター、および/または一つ以上の追加的な補体阻害剤の1回以上の追加投与を受ける。
【0262】
本開示は、(a)単離された移植片、および(b)C3発現を阻害する本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)、を含む組成物を提供する。本開示はさらに、(a)単離された移植片、および(b)細胞反応性、長時間作用型、または標的化されたコンプスタチン類似体、および(c)C3発現を阻害する本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)、を含む組成物も提供する。一部の実施形態では、組成物はさらに、例えばドナーから取り出され、レシピエントへの移殖を待つ単離移植片などの移植片(例えば、器官)の接触に適した(例えば、リンス、洗浄、浸漬、かん流、維持、または保管に適した)溶液を含む。一部の実施形態では、本開示は、(a)移植片(例えば、器官)の接触に適した溶液、および(b)C3発現を阻害する本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)、を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、細胞反応性、長時間作用型、または標的化されたコンプスタチン類似体をさらに含む。溶液は、移植片に対して生理学的に許容可能であり(例えば、好適な浸透圧組成、非細胞毒性であり)、その後のレシピエントへの移植片の導入に関して医学的に許容可能であり(例えば、好ましくは滅菌され、または少なくとも合理的に微生物もしくは他の汚染物質を含まない)、細胞反応性コンプスタチン類似体との適合性があり(すなわち、コンプスタチン類似体の反応性を破壊しない)、または長時間作用型もしくは標的化されたコンプスタチン類似体との適合性がある任意の溶液であってもよい。一部の実施形態では、溶液は、当分野で公知の任意の溶液である。一部の実施形態では、溶液は、Marshall’sまたはHyperosmolar Citrate(Soltran(登録商標)、Baxter Healthcare社)、University of Wisconsin(UW)溶液(ViaSpan(商標)、Bristol Myers Squibb社)、Histidine Tryptophan Ketoglutarate(HTK)溶液(Custodial(登録商標)、Kohler Medical Limited)、EuroCollins(Fresenius社)、およびCelsior(登録商標)(Sangstat Medical社)、Polysol、IGL-1、またはAQIX(登録商標)RS-1である。もちろん、例えば、同等または類似の成分を同じ濃度または異なる濃度で含有する他の溶液も、生理学的に許容可能な組成物の範囲内で使用され得る。一部の実施形態では、溶液は、細胞反応性コンプスタチン類似体が、著しく反応すると予測される成分を含まない。任意の溶液を、そのような成分を含まないように改変または設計してもよい。一部の実施形態では、細胞反応性コンプスタチン類似体は、例えば、0.01mg/ml~100mg/mlの濃度で移植片適合溶液中に存在し、またはそのような濃度に到達するように溶液に添加されてもよい。
【0263】
一部の実施形態では、移植片は、例えば、腎臓、肝臓、肺、膵臓、または心臓などの固形器官であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、移植片は、骨、軟骨、筋膜、腱、靭帯、角膜、強膜、心膜、皮膚、心臓弁、血管、羊膜、または硬膜であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、移植片は、例えば、心臓-肺または膵臓-腎臓の移植片など、複数の器官を含む。一部の実施形態では、移植片は、完全な器官または組織よりも少ない。例えば、移植片は、器官または組織の一部、例えば、肝葉、血管の一片、皮膚弁、または心臓弁を含んでもよい。一部の実施形態では、移植片は、その起源の組織から単離され、しかし例えば膵島など、少なくとも一部の組織構造を保持している単離された細胞または組織の断片を含む調製物を含む。一部の実施形態では、調製物は、結合組織を介して互いに結合されていない単離細胞を含み、例えば、末梢血および/もしくは臍帯血に由来する造血幹細胞または前駆細胞、または全血、または例えば赤血球(RBC)もしくは血小板などの任意の細胞含有血液製品を含む。一部の実施形態では、移植片は、死亡したドナー(例えば、「脳死後提供」(DBD)のドナー、または「心臓死後の提供」のドナー)から取得される。一部の実施形態では、特定の移植片のタイプに応じて、移植片は生きているドナーから取得される。例えば、腎臓、肝臓切片、血液細胞は、しばしば生きているドナーから取得されることができるタイプの移植片であり、ドナーに対する過度のリスクがなく、安全な医療慣行と合致している。
【0264】
一部の実施形態では、移植片は、異種移植片である(すなわち、ドナーとレシピエントは異なる種である)。一部の実施形態では、移植片は、自家移植片である(すなわち、同じ個体の身体のある部分から別の部分への移植片)。一部の実施形態では、移植片は、イソ移植片(isograft)である(すなわち、ドナーとレシピエントは、遺伝子的に同一である)。多くの実施形態では、移植片は、同種移植片(allograft)である(すなわち、ドナーとレシピエントは、同じ種の遺伝子的に非同一の者である)。同種移植片の場合、ドナーとレシピエントは、遺伝子的に関連する場合もあれば、関連しない場合もある(例えば、家族)。典型的には、ドナーとレシピエントは、互換性のある血液型(少なくともABOの適合性、および任意でRh、Kellおよび/または他の血液細胞抗原の適合性)を有する。レシピエントの血液は、移植片ならびに/またはレシピエントおよびドナーに対する同種抗体についてスクリーニングされてもよい。なぜなら、そのような抗体が存在すると、超急性拒絶反応(すなわち、移植片がレシピエントの血液と接触してから数分以内に、ほぼ即時に開始される拒絶反応)が発生する可能性があるためである。補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを使用して、抗HLA抗体について対象の血清をスクリーニングしてもよい。血清は、HLA表現型が判明しているリンパ球パネルと共にインキュベートされる。血清が、標的細胞上のHLA分子に対する抗体を含有する場合、補体介在性溶解による細胞死が発生する。標的細胞の選択パネルを使用することで、検出された抗体に特異性を割り当てることができる。抗HLA抗体の存在の有無を決定するのに有用な他の技術、および任意でそれらのHLA特異性を決定するのに有用な他の技術としては、ELISAアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、マイクロビーズアレイ技術(例えば、Luminex技術)が挙げられる。これらのアッセイを実施するための方法論は公知であり、実施するための様々なキットが市販されている。
【0265】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、補体介在性拒絶反応を阻害する。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、超急性拒絶反応を阻害する。超急性拒絶反応は、少なくとも部分的にはレシピエントの古典的経路を介した補体系の抗体介在性活性化、およびその結果としての移植片上のMAC沈着によって引き起こされる。典型的には、移植片と反応するレシピエントの既存抗体の存在から生じる。移植前に適切なマッチングを行うことにより超急性拒絶反応を回避することを試みることが望ましいが、例えば、時間および/またはリソースの制約のために、常にそうすることが可能ではない場合がある。さらに、一部のレシピエント(例えば、複数回の輸血を受けた個体、過去に移植を受けたことがある個体、複数回妊娠した女性)は、すでに非常に多くの抗体が形成されている。その中には典型的には検査されない抗原に対する抗体も含まれている可能性があり、タイムリーに適合性のある移植片を信頼性を伴って取得することは困難、またはおそらくはほぼ不可能であり得る。そのような個体は、超急性拒絶反応のリスクが高い。
【0266】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、急性拒絶反応または移殖不全を阻害する。本明細書で使用される場合、「急性拒絶反応」とは、移植から少なくとも24時間の間、典型的には少なくとも数日から一週間、最大で移植から6カ月の間に発生する拒絶反応を指す。急性抗体介在性拒絶反応(AMR:acute antibody-mediated rejection)は、移植後の最初の数週間で、ドナー特異的な同種抗体(DSA:donor-specific alloantibody)の急速な発生を伴うことが多い。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、既存の形質細胞、および/またはメモリーB細胞の新しい形質細胞への転換が、DSA産生の増加に関与する可能性がある。かかる抗体は、移植片に対する補体介在性損傷を生じさせる可能性があり、当該損傷は、移植片と細胞反応性コンプスタチン類似体とを接触させることにより阻害することができる。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、移植片での補体活性化を阻害することによって、急性移植不全のもう一つの要因である白血球(例えば、好中球)の浸潤を低下させ得る。
【0267】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植片に対する補体介在性のI/R損傷を阻害する。以下でさらに検討されるように、I/R損傷は、血液供給が一時的に断絶された組織の再かん流時に発生し、移植された器官にも同様に発生し得る。I/R損傷を低下させることによって、急性移植片機能不全の可能性が低下し、またはその重症度が低下して、急性移植不全の可能性も低下する。
【0268】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、慢性拒絶反応および/または慢性移植不全を阻害する。本明細書で使用される場合、「慢性拒絶反応または慢性移植不全」とは、移植後少なくとも6か月、例えば、移植後6か月から1、2、3、4、5年、またはそれ以上の間に発生する拒絶反応または不全を指し、多くの場合、数か月から数年にわたり良好に移植片が機能した後に発生する。移植片に対する慢性的な炎症および免疫反応によって、慢性拒絶反応または慢性移植不全は引き起こされる。本明細書の目的に対し、慢性拒絶反応には、慢性的な同種移植片の血管障害が含まれ得、これは移植された組織の内部血管の線維症を指すために使用される用語である。免疫抑制的なレジメンによって、急性拒絶反応の発生率が減少したことから、慢性拒絶反応が、移植片機能不全および移植不全の原因として目立つようになっている。B細胞の同種抗体産生が、慢性拒絶反応および慢性移植不全の発生における重要な要素であるという証拠が増加している(Kwun J.and Knechtle SJ,Transplantation,88(8):955-61(2009)。移植片に対する早期の損傷は、例えば最終的に慢性拒絶反応につながり得る線維症などの慢性的なプロセスにつながる要因となり得る。したがって、細胞反応性コンプスタチン類似体を使用して、そのような早期損傷を阻害することによって、慢性移植片拒絶反応を遅らせ、および/またはその可能性もしくは重症度を低下させ得る。
【0269】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、移植片レシピエントに投与され、移植片拒絶反応および/または移植不全を阻害する。
【0270】
C.虚血/再灌流性の損傷
虚血-再灌流(I/R)損傷は、外傷後の組織損傷の重要な原因であり、例えば心筋梗塞、脳卒中、重度の感染症、血管疾患、動脈瘤修復、心肺バイパス、および移植などの血流の一時的な断絶に関連する他の状態における組織損傷の重要な原因である。
【0271】
外傷の場合では、挫傷、コンパートメント症候群、および血管損傷から生じる全身的な低酸素血症、低血圧、および局所的な血液供給の遮断は、代謝的に活性な組織を損傷する虚血を引き起こす。血液供給の回復は、非常に激しい全身性の炎症反応を誘発し、しばしば虚血それ自体よりも有害である。虚血領域が再灌流されると、産生され、放出される因子が局所的に循環系に入り、遠隔地に到達して、例えば肺および腸など、元々の虚血性障害に影響を受けていない器官に対し、重大な損傷を引き起こして、単一器官、および複数器官の機能不全につながる場合がある。補体活性化は再灌流の直後に発生し、直接的な虚血後損傷、および好中球に対するその化学誘引効果および刺激効果を通じた虚血後損傷の両方にとって重要なメディエーターである。三つの主要な補体経路すべてが活性化され、協働的にまたは独立して作用して、I/R関連有害事象に関与し、多数の器官系に影響を及ぼす。本開示の一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、最近(例えば、過去2、4、8、12、24または48時間以内)に外傷を受けた対象、例えば全身的な低酸素血症、低血圧、および/または局所的な血液供給の遮断など、対象をI/R傷害のリスクがある状態にさせる外傷を受けた対象に投与される。一部の実施形態では、細胞反応性コンプスタチン類似体は、血管内、任意で損傷を受けた身体部分に供給する血管内に、または身体部分に直接的に投与されてもよい。一部の実施形態では、対象は、脊髄損傷、外傷性脳損傷、熱傷、および/または出血性ショックに罹患する。
【0272】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、外科手術、例えば一時的に組織、器官、または身体部分に対する血流を断絶させると予測される外科手術の前に、その間に、または後に、対象に投与される。そのような手術の例としては、心肺バイパス術、血管形成術、心臓弁の修復/交換、動脈瘤修復、または他の血管外科手術が挙げられる。本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、外科手術の前、後、および/または外科手術と重複する期間の間、投与されてもよい。
【0273】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、MI、血栓塞栓性脳卒中、深部静脈血栓症、または肺塞栓に罹患した対象に投与される。本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)(例えば、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)、テネクテプラーゼ(TNKase))、アニストレプラーゼ(Eminase)、ストレプトキナーゼ(Kabikinase、Streptase)、またはウロキナーゼ(Abbokinase)などの血栓溶解剤と組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、血栓溶解剤の前、後、および/または血栓溶解剤と重複する期間の間、投与されてもよい。
【0274】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて対象に投与されて、I/R傷害を治療する。
【0275】
D.他の補体介在性障害
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、例えば黄斑変性症(例えば、加齢黄斑変性(AMD)およびスタルガルト黄斑ジストロフィー)、糖尿病性網膜症、緑内障、またはブドウ膜炎などの眼の障害の治療のために、眼内に導入される。例えば、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、AMDの罹患する対象またはAMDのリスクのある対象の治療のために、硝子体腔内に(例えば、硝子体内注射により)導入されてもよく、または網膜下腔内に(例えば網膜下注射により)導入されてもよい。一部の実施形態では、AMDは、新生血管型(滲出型)AMDである。一部の実施形態では、AMDは、萎縮型(dry)AMDである。当業者に認識されるように、萎縮型AMDは、地図状萎縮(GA)、中間型AMD、および早期AMDを包含する。一部の実施形態では、GAを有する対象は、疾患の進行を遅延または停止させるために治療される。例えば、一部の実施形態では、GAを有する対象の治療は、網膜細胞死の速度を低下させる。網膜細胞死の速度の低下は、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて用いて治療された患者におけるGA病変の増殖速度における、対照(例えば、偽薬投与を受けた患者)と比較した場合の低下により実証されてもよい。一部の実施形態では、対象は、中間型AMDを有する。一部の実施形態では、対象は、早期型AMDを有する。一部の実施形態では、中間型AMDまたは早期型AMDを有する対象は、疾患の進行を遅延または停止させるために治療される。例えば、一部の実施形態では、中間型AMDを有する対象の治療は、進行型のAMD(新生血管型AMDまたはGA)への進行を遅らせるか、または予防し得る。一部の実施形態では、早期型AMDを有する対象の治療は、中間型AMDへの進行を遅らせるか、または予防し得る。一部の実施形態では、眼は、GAおよび新生血管型AMDの両方を有する。一部の実施形態では、眼は、GAを有するが、滲出型AMDは有さない。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、例えば黄斑変性症(例えば、加齢黄斑変性(AMD)およびスタルガルト黄斑ジストロフィー)、糖尿病性網膜症、緑内障、またはブドウ膜炎などの眼の障害の治療のために、例えば脈絡膜注射により、脈絡膜上腔に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、硝子体内注射により、または網膜下注射により投与されて、緑内障、ブドウ膜炎(例えば、後部ブドウ膜炎)、または糖尿病性網膜症を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、前房内に導入され、例えば前部ブドウ膜炎などを治療する。
【0276】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、例えば一つ以上の自己抗原に対する抗体により少なくとも部分的に介在される自己免疫疾患などの自己免疫疾患に罹患する、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0277】
本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、例えば関節炎(例えば、リウマチ性関節炎)に罹患する対象の滑液腔内に導入されてもよい。
【0278】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、脳内出血に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0279】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、重症筋無力症(例えば、全身性重症筋無力症)に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0280】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、化膿性汗腺炎に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0281】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、免疫介在性壊死性ミオパチーに罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0282】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、視神経脊髄炎(NMO)に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0283】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、例えば腎臓の糸球体など、腎臓に影響を及ぼす障害に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、障害は、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、例えば、MPGN I型、MPGN II型、またはMPGN III型である。一部の実施形態では、障害は、IgA腎症(IgAN)である。一部の実施形態では、障害は、原発性膜性腎症である。一部の実施形態では、障害は、C3糸球体症である。一部の実施形態では、障害は、例えばC3bなどの補体活性化産物を腎臓に一つ以上含有する糸球体沈着物を特徴とする。一部の実施形態では、本明細書に記載の治療は、そのような沈着物のレベルを低下させる。一部の実施形態では、補体介在性腎臓障害に罹患する対象は、蛋白尿(尿中に異常に高いレベルのタンパク質)および/または異常に低い糸球体濾過量(GFR)を患う。一部の実施形態では、本明細書に記載される治療は、蛋白尿の減少および/またはGFRの増加もしくは安定化をもたらす。
【0284】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、神経変性疾患に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、神経因性疼痛に罹患する対象、または神経因性疼痛を発症するリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、鼻副鼻腔炎または鼻ポリープに罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、がんに罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、敗血症に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、成人呼吸窮迫症候群に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。
【0285】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、アナフィラキシーまたは注入反応に罹患する対象、またはそのリスクのある対象を治療する。例えば、一部の実施形態では、対象は、アナフィラキシーまたは注入反応を引き起こし得る薬剤またはビヒクルの投与の前、投与の間、または投与の後に治療されてもよい。一部の実施形態では、対象は、食物(例えば、ピーナッツ、甲殻類、または他の食物アレルゲン)、虫刺され(例えば、ミツバチ、カリバチ)からアナフィラキシーのリスクがある、またはアナフィラキシーに罹患する対象は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で用いて、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて用いて、治療される。
【0286】
本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、本開示の様々な実施形態において、局所投与または全身投与されてもよい。
【0287】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、例えば喘息、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)、または特発性肺線維症などの呼吸器疾患を治療する。本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載の一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、様々な実施形態において、例えば、乾燥粉末として、または噴霧を介して吸入により気道に投与されてもよく、または例えば、静脈内、筋肉内もしくは皮下などの注射により投与されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて使用され、例えば気管支拡張剤および/または吸入コルチコステロイド剤により充分に制御されない喘息など、重度の喘息を治療する。
【0288】
一部の態様では、例えば慢性的な補体介在性障害などの補体介在性障害を治療する方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。一部の態様では、Th17関連障害を治療する方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0289】
一部の態様では、「慢性障害」は、少なくとも3カ月間持続し、および/または当分野において慢性障害であると受け入れられている障害である。多くの実施形態では、慢性障害は、少なくとも6カ月間、例えば、少なくとも1年間、またはそれ以上、例えば、無期限に持続する。当業者であれば、様々な慢性障害の少なくともいくつかの徴候が、断続的であり得ること、および/または経時的に重症度が増大および減衰し得ることを認識する。慢性障害は、進行性であってもよく、例えば、経時的により重度になる傾向、またはより広い領域に影響を及ぼす傾向を有する。多数の慢性的な補体介在性障害が本明細書において検討される。慢性的な補体介在性障害は、補体活性化(例えば、過剰または不適切な補体の活性化)が、要因として関与する、および/または少なくとも部分的に原因要素として関与する任意の慢性障害であってもよい。便宜上、障害は、当該障害に罹患する対象において特に影響を受けることが多い器官またはシステムを参照することによってグループ化される場合もある。当然ながら多くの障害は、複数の器官またはシステムに影響を及ぼすことができ、そのような分類は、決して限定ではないことが認識される。さらに、多くの兆候(例えば、症状)が、多くの異なる障害のいずれかに罹患する対象において発生し得る。本明細書の対象の障害に関する非限定的な情報は、例えば、Cecil Textbook of Medicine(例えば、第23版)、Harrison’s Principles of Internal Medicine(例えば、第17版)などの内科の標準的な教科書、ならびに/または特定の医学領域、特定の身体系もしくは器官、および/または特定の障害に焦点を当てた標準的な教科書に見出され得る。
【0290】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、Th2関連障害である。本明細書で使用される場合、Th2関連障害は、身体またはその一部、例えば少なくとも一つの組織、器官または臓器における、過剰な数、および/または過剰もしくは不適切な活性のTh2サブタイプのCD4+TヘルパーT細胞(Th2細胞)を特徴とする障害である。例えば、障害により影響を受ける少なくとも一つの組織、器官または構造において、Th1サブタイプのCD4+ヘルパーT細胞(Th1)と比較して、Th2細胞が優勢となっている場合がある。当分野で公知のように、Th2細胞は典型的には、例えばインターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、およびインターロイキン-13(IL-13)などの特徴的なサイトカインを分泌し、一方でTh1細胞は典型的には、インターフェロン-γ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子β(TNFβ)を分泌する。一部の実施形態では、Th2関連障害は、少なくとも一部、少なくとも一つの組織、器官または構造において、IFN-γおよび/またはTNFβと比較し、IL-4、IL-5および/またはIL-13が過剰に産生され、および/または過剰量であることを特徴とする。
【0291】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、Th17関連障害である。一部の態様では、2012年6月22日に出願された「Methods of Treating Chronic Disorders with Complement Inhibitors」というタイトルのPCT/US2012/043845に詳述されるように、樹状細胞と抗体を伴い、様々な障害の根底にある病的な免疫学的微小環境の維持に寄与するサイクルに、補体活性化とTh17細胞が関与している。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、病的な免疫学的微小環境は、いったん確立されると自立して、細胞および組織の損傷の原因となる。一部の態様では、長時間作用型コンプスタチン類似体は、Th17関連障害の治療に使用される。
【0292】
本明細書で使用される場合、Th17関連障害は、身体またはその一部、例えば少なくとも一つの組織、器官または臓器における、過剰な数、および/または過剰もしくは不適切な活性のTh17サブタイプのCD4+TヘルパーT細胞(Th17細胞)を特徴とする障害である。例えば、障害により影響を受ける少なくとも一つの組織、器官または構造において、Th1細胞および/またはTh2細胞と比較して、Th17細胞が優勢となっている場合がある。一部の実施形態では、Th17細胞の優勢は、相対的な優勢であり、例えば、Th17細胞とTh1細胞の比率、および/またはTh17細胞とTh2細胞の比率が、正常値と比較して高まっている。一部の実施形態では、Th17細胞とT制御性細胞(CD4+CD25+制御性T細胞、またTreg細胞とも称される)の比率は、正常値と比較して高まっている。Th17細胞の形成、および/またはTh17細胞の活性化は、様々なサイトカイン、例えば、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン21(IL-21)、インターロイキン23(IL-23)、および/またはインターロイキン1β(IL-1β)によって促進される。Th17細胞の形成は、例えば未感作CD4+ T細胞などの前駆細胞が、Th17表現型細胞へと分化すること、および機能的Th17細胞へのそれら成熟を包含する。一部の実施形態では、Th17細胞の形成は、Th17細胞の発生、増殖(拡張)、生存、および/または成熟の任意の態様を包含する。一部の実施形態では、Th17関連障害は、IL-6、IL-21、IL-23、および/またはIL-1βの過剰な産生および/または量によって特徴付けられる。Th17細胞は、典型的には、例えばインターロイキン-17A(IL-17A)、インターロイキン-17F(IL-17F)、インターロイキン-21(IL-21)、およびインターロイキン-22(IL-22)などの特徴的なサイトカインを分泌する。一部の実施形態では、Th17-関連障害は、例えば、IL-17A、IL-17F、IL-21、および/またはIL-22などのTh17エフェクターサイトカインの過剰な産生および/または量によって特徴付けられる。一部の実施形態では、サイトカインの過剰な産生または量は、血液中で検出可能である。一部の実施形態では、サイトカインの過剰な産生または量は、例えば、少なくとも一つの組織、器官、または構造など、局所的に検出可能である。一部の実施形態では、Th17-関連障害は、Tregの数の減少、および/またはTreg関連サイトカインの量の減少と関連付けられる。一部の実施形態では、Th17障害は、任意の慢性的な炎症性疾患であり、当該用語は、様々な組織に対する自己持続的な免疫による損傷を特徴とする広範な病気を包含し、当該損傷を引き起こした最初の損傷からは関係がないように見える(知られていない可能性がある)。一部の実施形態では、Th17-関連障害は、任意の自己免疫疾患である。ほとんどではないにしても多くの「慢性炎症性疾患」が、実際には自己免疫疾患である可能性がある。Th17-関連障害の例としては、例えば乾癬およびアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患;全身性の強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎など);ベーチェット病;皮膚筋炎;多発性筋炎;多発性硬化症(MS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;骨関節炎;ループス腎炎;リウマチ性関節炎(RA);シェーグレン症候群、多発性硬化症、血管炎;中枢神経系(CNS)の炎症性障害、慢性肝炎;慢性膵炎、糸球体腎炎;サルコイドーシス;甲状腺炎、組織/臓器移植に対する病的な拒絶反応(例えば、移植拒絶反応);COPD、喘息、細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、歯周炎、および歯肉炎が挙げられる。一部の実施形態では、Th17疾患は、例えばI型糖尿病または乾癬などの古典的な公知の自己免疫疾患である。一部の実施形態では、Th17-関連障害は、加齢黄斑変性である。
【0293】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、IgE関連障害である。本明細書で使用される場合、「IgE関連障害」は、IgEの過剰および/もしくは不適切な産生ならびに/または量、IgE産生細胞(例えば、IgE産生B細胞または形質細胞)の過剰もしくは不適切な活性、ならびに/または例えば好酸球もしくはマスト細胞などのIgE応答細胞の過剰および/もしくは不適切な活性を特徴とする障害である。一部の実施形態では、IgE関連障害は、総IgEレベルの上昇を特徴とし、および/または一部の実施形態では、対象の血漿中および/または局所的なアレルゲン特異的IgEのレベル上昇を特徴とする。
【0294】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、体内の自己抗体および/または免疫複合体の存在を特徴とし、これらは例えば古典的経路を介して補体を活性化し得る。自己抗体は、例えば、体内の細胞または組織上の自己抗原に結合し得る。一部の実施形態では、自己抗体は、血管、皮膚、神経、筋肉、結合組織、心臓、腎臓、甲状腺などの中の抗原に結合する。一部の実施形態では、対象は、視神経脊髄炎を有しており、アクアポリン4(aquaporin 4)に対する自己抗体(例えば、IgG自己抗体)を産生する。一部の実施形態では、対象は、類天疱瘡を有し、ヘミデスモソーム(例えば、膜貫通型コラーゲンXVII(BP180またはBPAG2)および/またはプラキンファミリータンパク質BP230(BPAG1)の構造構成要素に対する自己抗体(例えば、IgG自己抗体またはIgE自己抗体)を産生する。一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、自己抗体および/または免疫複合体を特徴としない。
【0295】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、呼吸障害である。一部の実施形態では、慢性的な呼吸障害は、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。一部の実施形態では、慢性呼吸障害は、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、放射線誘発性肺損傷、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎(アレルギー性肺胞炎としても知られる)、好酸球性肺炎、間質性肺炎、サルコイド、ウェゲナー肉芽腫症、または閉塞性細気管支炎である。一部の実施形態では、本開示は、慢性呼吸障害の治療を必要とする対象を治療する方法を提供するものであり、慢性呼吸障害としては例えば、喘息、COPD、肺線維症、放射線誘発性肺損傷、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎(アレルギー性肺胞炎としても知られる)、好酸球性肺炎、間質性肺炎、サルコイド、ウェゲナー肉芽腫症、または閉塞性細気管支炎があり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0296】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、アレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔炎、または鼻ポリープである。一部の実施形態では、本開示は、アレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔炎または鼻ポリープの治療を必要とする対象を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0297】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、筋骨格系に影響を及ぼす障害である。そのような障害の例としては、炎症性関節疾患(例えば、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、ライター症候群、痛風)が挙げられる。一部の実施形態では、筋骨格系の障害は、例えば疼痛、凝り、および/または影響を受けた身体部分の動きの制限などの症状をもたらす。炎症性ミオパチーには、皮膚筋炎、多発性筋炎、および筋力低下をもたらす病因が未知の慢性的な筋肉炎症の障害である様々な他の筋炎が含まれる。一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、重症筋無力症である。一部の実施形態では、本開示は、筋骨格系に影響を及ぼす前述の障害のいずれかを治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0298】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、外皮系に影響を及ぼす障害である。そのような障害の例としては、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、類天疱瘡、天疱瘡、全身性紅斑性狼瘡、皮膚筋炎、強皮症、強皮皮膚筋炎、シェーグレン症候群、および慢性じんま疹が挙げられる。一部の態様では、本開示は、外皮系に影響を及ぼす前述の障害のいずれかを治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0299】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、例えば中枢神経系(CNS)および/または末梢神経系(PNS)等の神経系に影響を及ぼす。そのような障害の例としては、例えば、多発性硬化症、他の慢性脱髄性疾患(例えば、視神経脊髄炎、または綿製炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP))、筋萎縮性側索硬化症、慢性疼痛、脳卒中、アレルギー性神経炎、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症(すなわち、レビー小体を伴う認知症、またはパーキンソン病型認知症)、前頭側頭型認知症、外傷性脳外傷、外傷性脊髄損傷、多系統萎縮症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、および軟膜転移が挙げられる。一部の実施形態では、本開示は、神経系に影響を及ぼす前述の障害のいずれかを治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0300】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、循環系に影響を及ぼす。例えば、一部の実施形態では、障害は、血管炎、または例えば、血管および/またはリンパ管の炎症などの管系の炎症に関連する他の障害である。一部の実施形態では、血管炎は、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、顕微鏡的多発性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、高安動脈炎、川崎病、またはベーチェット病である。一部の実施形態では、例えば血管炎の治療を必要とする対象などの対象は、抗好中球細胞質抗体(ANCA:antineutrophil cytoplasmic antibody)が陽性である。
【0301】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、消化管系に影響を及ぼす。例えば、障害は、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患であってもよい。一部の実施形態では、本開示は、消化管系に影響を及ぼす慢性的な補体介在性障害を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、当該障害の治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0302】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、産後甲状腺炎)、心筋炎、肝炎(例えば、C型肝炎)、膵炎、糸球体腎炎(例えば、膜性増殖性糸球体腎炎または膜性糸球体腎炎)、または脂肪織炎である。
【0303】
一部の実施形態では、本開示は、慢性疼痛を患う対象を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される阻害性RNA(または本明細書に記載される阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、神経因性疼痛に罹患する。神経因性疼痛は、神経系の原発病変または機能障害により始まる、またはそれを原因とする疼痛と定義され、特に体性感覚系に影響を及ぼす病変または疾患の直接的な結果として生じる疼痛と定義される。例えば、神経因性疼痛は、末梢神経の細径線維に対する損傷、および/またはCNSの脊椎-視床皮質系に対する損傷を伴う体性感覚経路を含む病変から生じる場合もある。一部の実施形態では、神経因性疼痛は、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)、代謝疾患(例えば、糖尿病)、感染症(例えば、帯状疱疹またはHIVなどのウイルス疾患)、血管疾患(例えば、脳卒中)、外傷(例えば、怪我、手術)、または癌から生じる。例えば、神経因性疼痛は、怪我の治癒後、もしくは末梢神経終末の刺激の停止後にも持続する疼痛、または神経への損傷に起因して生じる疼痛であってもよい。神経因性疼痛に関連する状態の例としては、疼痛を伴う糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛(例えば、急性の帯状疱疹の部位で、急性発作から3カ月以上持続する、または再発する疼痛)、三叉神経痛、がん関連の神経因性疼痛、化学療法に関連する神経因性疼痛、HIVが関連する神経因性疼痛(例えば、HIV神経障害に由来する)、中枢/脳卒中後神経因性疼痛、例えば腰痛などの背痛に関連する神経障害(例えば、腰部神経根の圧迫などの脊髄神経根の圧迫などの神経根障害に由来する。それら圧迫は、椎間板ヘルニアに起因して生じ得る)、脊椎狭窄、末梢神経損傷の疼痛、幻肢痛、多発性神経障害、脊髄損傷に関連した疼痛、脊髄症、および多発性硬化症が挙げられる。本開示の特定の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、投与スケジュールに従い投与され、前述の状態の一つ以上を有する対象において神経因性疼痛を治療する。
【0304】
一部の実施形態では、慢性的な補体介在性障害は、慢性的な眼の障害である。一部の実施形態では、慢性的な眼の障害は、黄斑変性、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜血管新生(RNV)、眼の炎症、または前述の任意の組み合わせを特徴とする。黄斑変性、CNV、RNV、および/または眼の炎症は、障害を決定付ける特徴であってもよく、および/または診断的な特徴であってもよい。これらの特徴のうちの一つ以上によって特徴付けられる障害の例としては、限定されないが、黄斑変性に関連する状態、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、角膜炎、結膜炎、および強膜炎が挙げられる。黄斑変性に関連する状態としては、例えば、加齢黄斑変性(AMD)およびスタルガルト黄斑ジストロフィーが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、滲出型AMDの治療を必要とする。一部の実施形態では、対象は、萎縮型AMDの治療を必要とする。一部の実施形態では、対象は、地図上萎縮(GA)の治療を必要とする。一部の実施形態では、対象は、眼の炎症の治療を必要とする。眼の炎症は、例えば、結膜(結膜炎)、角膜(角膜炎)、上強膜、強膜(強膜炎)、ブドウ膜、網膜、血管構造、および/または視神経などの多数の眼構造に影響を及ぼす可能性がある。眼炎症の兆候としてはは、例えば白血球(例えば、好中球、マクロファージ)などの炎症関連細胞の眼内の存在、内因性炎症メディエーターの存在、例えば、眼痛、発赤、光感受性、かすみ目、および目の濁りなどの一つ以上の症状が挙げられる。ブドウ膜炎は、例えば、虹彩、毛様体または脈絡膜を含むブドウ膜の構造のいずれかにおける、眼のブドウ膜の炎症を指す一般的な用語である。特定のタイプのブドウ膜炎には、虹彩炎、虹彩毛様体炎、毛様体炎、扁平部炎、および脈絡膜炎が含まれる。一部の実施形態では、慢性的な眼の障害は、例えば緑内障などの視神経損傷(例えば、視神経変性)を特徴とする目の障害である。
【0305】
上述のように、一部の実施形態では、慢性的な呼吸器疾患は、喘息である。喘息のリスク因子、疫学、病因、診断、現在の管理法などに関する情報は、例えば、“Expert Panel Report 3:Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma”.National Heart Lung and Blood Institute.2007.http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.pdf.(“NHLBI Guidelines”;www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.htm)、Global Initiative for Asthma,Global Strategy for Asthma Management and Prevention 2010 “GINA Report”)および/もしくは例えばCecil Textbook of Medicine(第20版)、Harrison’s Principles of Internal Medicine(第17版)などの標準的な内科学の教科書、ならびに/または肺医学に焦点を置いた標準的な教科書などに見出され得る。喘息は、気道の慢性的な炎症性障害であり、例えばマスト細胞、好酸球、Tリンパ球、マクロファージ、好中球、および上皮細胞などの多くの細胞および細胞エレメントが役割を果たしている。喘息患者は、例えば、喘鳴、息切れ(呼吸困難または息切れ(shortness of breath)とも呼ばれる)、胸苦しさ、および咳などの症状に関連する再発性の発作を経験する。これらの発作は通常、自然に、または治療によって可逆性であることが多い、広範だが変化しやすい気道閉塞に関連している。また炎症は、様々な刺激に対して前から存在する気管支の過敏反応性を、随伴的に増加させる。気道の過敏反応性(刺激に対する誇大な気管支収縮反応)は、喘息の典型的な特徴である。概して、気流制限は、気管支狭窄と気道浮腫から生じる。気流制限の可逆性は、一部の喘息患者では不完全な場合がある。例えば、気道リモデリングによって、気道狭小化の固定に繋がり得る。構造的変化には、基底膜下の膜の肥厚、上皮下線維症、気道平滑筋の肥大および過形成、血管の増殖および拡張、ならびに粘液腺の過形成と過分泌が含まれ得る。
【0306】
喘息患者は、増悪を経験する場合があり、増悪は、個々の過去の状態からの変化により特徴付けられる事象として特定される。重度の喘息増悪は、例えば入院や、喘息による死亡などの重篤な転帰を防ぐために、個人および医師側での緊急措置を必要とする事象として定義され得る。例えば、重度の喘息増悪は、通常はOCSを伴わずに良好に制御されていた喘息を有する対象において、全身的なコルチコステロイド(例えば、経口コルチコステロイド)の使用を必要とする場合があり、または安定維持用量の増加を必要とする場合がある。中等度の喘息増悪は、対象にとって困難な事象として定義することができ、治療の変更の必要性を迫られるが、重度ではない。これらの事象は、対象の日常的な喘息の変動性の通例の範囲を逸脱することにより、臨床的に特定される。
【0307】
現在の喘息治療薬は、典型的には以下の二つの一般分類にカテゴライズされる:長期制御型医薬品(コントローラー医薬品)、例えば、吸入式コルチコステロイド(ICS)、経口コルチコステロイド(OCS)、長期作用型気管支拡張薬(LABA)、ロイコトリエン修飾剤(例えば、ロイコトリエン受容体アンタゴニストまたはロイコトリエン合成阻害剤、抗IgE抗体(オマリズマブ(Xolair(登録商標)))、クロモリンおよびネドクロミル(それらは持続型喘息のコントロールを実現および維持するために使用される)、そしてクイックリリーフ医薬品、例えば短期作用型気管支拡張薬(SABA)(急性症状および増悪を治療するために使用される)。本発明の目的に対し、これらの治療は、「従来的な療法」と呼称される場合がある。増悪の治療には、コントローラー医薬品療法の用量および/または強度の増加も含まれ得る。例えば、1クールのOCSを使用して、喘息のコントロールを取り戻すことができる。現行のガイドラインでは、コントローラー医薬品の毎日の投与が義務付けられており、多くの症例において、持続型喘息の対象に対し、毎日コントローラー医薬品の複数用量を投与することが義務付けられている(Xolairは除く。当該医薬品は、2~4週間ごとに投与される)。
【0308】
対象が、平均して週に2回よりも多く症状に苦しむ場合、および/または典型的には症状のコントロールのために週に2回よりも多くクイックリリーフ医薬品(例えば、SABA)を使用する場合、対象は概して、持続型喘息を有するとみなされる。関連する併存疾患が治療され、吸入技術および順守が最適化された時点で、「喘息の重症度」は、対象の喘息をコントロールするために必要な治療の強度に基づいて分類することができる(例えば、GINA Report;Taylor,DR,Eur Respir J 2008;32:545-554を参照のこと)。治療強度に関する記載は、例えばNHLBI Guidelines 2007、GINA Report、およびそれらの先行ガイドライン、ならびに/または標準的な医学教科書などのガイドラインに見出される段階的治療アルゴリズムで推奨される医薬品および用量に基づくことができる。例えば、喘息は、表7に示されるように、断続的、軽度、中等度、または重度に分類することができ、この場合において、「治療」は、対象の喘息コントロールの最良レベルを実現するのに充分な治療を指す。軽度、中等度、および重度の喘息のカテゴリーは、概して、断続的な喘息よりもむしろ持続性を示唆していることが理解される。当業者であれば、表7は例示であり、これらの医薬品のすべてが、すべての医療システムで利用可能ではなく、それらは一部の環境下で喘息の重症度の評価に影響を与え得ることを理解するであろう。他の新たに出現した方法、または新規方法も、軽度/中等度の喘息の分類に影響を与え得ることが認識されるであろう。しかしながら、軽度の喘息は、非常に低強度の治療法を使用して良好なコントロールを実現できることにより規定される、および重度の喘息は、高強度の治療法を必要とすることにより規定されるという同じ原理を適用することもできる。喘息の重症度も、代替的に、治療を受けない場合の疾患の本来の強度に基づいて分類することができる(例えば、NHBLI Guidelines 2007を参照のこと)。評価は、現行の肺活量測定と、患者の過去2~4週間にわたる症状の想起に基づいて行うことができる。現在の機能障害および将来的なリスクのパラメータが評価されてもよく、それらを喘息重症度のレベルの決定に含めてもよい。一部の実施形態では、喘息の重症度は、それぞれ0~4歳、5~11歳、または12歳以上の個人について、NHBLIガイドラインの
図3.4(a)、3.4(b)、3.4(c)に示されるように規定される。
【0309】
【0310】
「喘息のコントロール」とは、喘息の徴候が治療によって低下する、または取り除かれる程度を指す(薬理学的または非薬理学的)。喘息のコントロールは、例えば、症状の頻度、夜間の症状、肺活量測定パラメータなどの肺機能の客観的尺度(例えば、予測される%FEV
1、FEV
1の変動性、症状コントロールのためにSABAを使用する使用要件など)などの因子に基づいて評価することができる。現在の機能障害および将来的なリスクに関するパラメータを評価して、喘息コントロールのレベルの判定に含めてもよい。一部の実施形態では、喘息コントロールは、それぞれ0~4歳、5~11歳、または12歳以上の個人について、NHBLIガイドラインの
図4.3(a)、4.3(b)、または4.3(c)に示されるように規定される。
【0311】
概して当業者であれば、喘息の重症度レベルおよび/またはコントロールの程度を決定する適切な手段を選択することができ、および当業者により合理的とみなされる任意の分類スキームを使用することができる。
【0312】
本開示の一部の実施形態では、持続型喘息に罹患する対象は、投与レジメンを使用して、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて用いて治療される。一部の実施形態では、対象は、軽度または中等度の喘息に罹患する。一部の実施形態では、対象は、重度の喘息に罹患する。一部の実施形態では、対象は、従来の治療法を使用しても充分にはコントロールされない喘息を有する。一部の実施形態では、対象は、従来の治療法を使用して治療されるときに、充分なコントロールのためにICSの使用を必要とする喘息を有する。一部の実施形態では、対象は、ICSを使用しても充分にはコントロールされない喘息を有する。一部の実施形態では、対象は、従来の治療法を使用して治療された場合、充分なコントロールのためにOCSの使用を必要とするであろう喘息を有する。一部の実施形態では、対象は、OCSを含む高強度な従来の治療法を使用しても充分にはコントロールされない喘息を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)は、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わされて、コントローラー医薬品として投与され、または対象に、従来のコントローラー医薬品の使用を回避させる、またはその用量を低下させる。
【0313】
一部の実施形態では、対象は、アレルギー性喘息に罹患し、ほとんどの喘息の個体がアレルギー性喘息である。一部の実施形態では、喘息の対象は、喘息の非アレルギー性のトリガー(例えば、風邪、運動)が判明していない場合、および/または標準的な診断評価で特定されない場合、アレルギー性喘息を有するとみなされる。一部の実施形態では、対象が、(i)感受性であるアレルゲンに暴露された後、再現性をもって喘息症状(または喘息症状の悪化)を発現させる場合、(ii)感受性であるアレルゲンに特異的なIgEを呈する場合、(iii)感受性であるアレルゲンに対し、皮膚プリックテスト陽性を示す場合、および/または(iv)例えばアレルギー性鼻炎、湿疹もしくは総血清IgEの上昇などのアトピーと合致する特徴の他の症状を呈する場合、喘息の対象は、アレルギー性喘息を有するとみなされる。特定のアレルギー性のトリガーが特定されない場合もあるが、対象が、例えば特定の環境下で症状悪化を経験する場合、アレルギー性のトリガーが疑われ、または推測され得ると理解されるであろう。
【0314】
吸入によるアレルゲンチャレンジは、アレルギー性気道疾患の評価において広く使用されている技術である。アレルゲンを吸入すると、例えばマスト細胞および好塩基球のIgE受容体に結合したアレルゲン特異的IgEの架橋が発生する。分泌経路の活性化が生じ、その結果、気管支収縮と血管透過性のメディエーターが放出される。アレルギー性喘息を有する個体は、アレルゲンチャレンジの後に、例えば、早期喘息応答(EAR:early asthmatic response)、後期喘息応答(LAR:late asthmatic response)、気道過反応性(AHR:airway hyperreactivity)、および気道好酸球増多などの様々な兆候を発現する場合があり、それらは各々、当分野に知られているように検出され、定量されることができる。例えば、気道好酸球増多は、痰および/またはBAL液中の好酸球の増加として検出されてもよい。EARは、即時型喘息反応(IAR:immediate asthmatic response)と呼称される場合もあり、吸入によるアレルゲンチャレンジに対する応答であり、吸入後すぐ、典型的には吸入から10分以内に例えばFEV1の低下として検出可能となる。EARは、典型的には30分以内に最大に達し、チャレンジから2~3時間以内に回復する。例えば、対象は、基準FEV1と比較して、この時間枠内に自身のFEV1が少なくとも15%、例えば少なくとも20%まで減少する場合、「陽性」を呈するとみなされ得る(本文脈において「基準」とは、チャレンジ前の状態、例えば喘息の憎悪を経験せず、対象が感受性のあるアレルギー刺激に曝されていないときの対象の通常の状態と同等の状態を指す)。後期喘息反応(LAR)は、典型的には、チャレンジから3時間~8時間の間に始まり、気道の細胞性の炎症、気管支血管透過性の増加、および粘液分泌を特徴とする。典型的には、FEV1の減少として検出され、EAR関連よりも減少の程度が大きく、潜在的に臨床的重要性が高い可能性がある。例えば、対象は、基準FEV1と比較して関連期間内に、自身のFEV1が基準FEV1に対して少なくとも15%、例えば少なくとも20%減少する場合、「陽性」を呈するとみなされ得る。遅延型気道応答(DAR:delayed airway response)は、約26~32時間の間に始まり、約32~48時間の間に最大に達し、チャレンジから約56時間以内に回復し得る(Pelikan,Z.Ann Allergy Asthma Immunol.2010,104(5):394-404)。
【0315】
一部の実施形態では、慢性的な呼吸障害は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。COPDは、気流制限によって特徴付けられる状態のスペクトラムを包含し、治療を受けても完全には可逆性ではなく、通常は進行性である。COPDの症状には、呼吸困難(息切れ)、運動耐容能の低下、咳、痰産生、喘鳴、および胸苦しさが含まれる。COPDの患者は、急性(例えば、1週間未満の経過で発現し、多くの場合、24時間以内の経過で発現する)の症状悪化の出現(COPD増悪と呼ばれる)を経験することがある。その出現の頻度および期間は変化する可能性があり、重大な病的状態と関連している。これらは、例えば呼吸器感染、有害粒子への曝露などの事象によって誘発される場合もあり、さもなければ病因が未知である場合もある。喫煙はCOPDの最も多い危険因子であり、他の吸入曝露も疾患の発症および進行に寄与し得る。COPDにおける遺伝的要因の役割は、活発に研究が為されている領域である。少数のCOPD患者は、セリンプロテアーゼの主要な循環阻害物質であるアルファ-1抗トリプシンの遺伝性の欠損を有しており、この欠損は、急速な進行型の疾患をもたらす可能性がある。
【0316】
COPDの特徴的な病態生理学的な性質としては、末梢気道の狭窄および構造変化、ならびに肺実質(特に肺胞周辺)の破壊が挙げられ、慢性炎症が最も普遍的な原因である。通常、COPDで観察される慢性的な気流制限はこれらの因子が絡み合い、気流制限および症状に対する寄与における相対的な重要性は、ヒトによって異なる。「肺気腫」という用語は、終末細気管支より遠位の気腔(肺胞)の拡張を指し、壁の破壊を伴う。「肺気腫」という用語はしばしば、そのような病的変化に関連した医学的状態を指すために臨床的に使用されることに注意されたい。COPD患者の一部は慢性気管支炎を有し、慢性気管支炎は、1年のうちの3カ月間の大半の日で、2年連続して痰の産生を伴う咳があるとして臨床用語で定義されている。リスク因子、疫学、病因、診断、およびCOPDの現行の管理法に関するさらなる情報は、例えば、「GOLD Report」とも呼称される、Global Initiative on Chronic Obstructive Pulmonary Disease,Inc.(GOLD)ウェブサイト(www.goldcopd.org)上で利用可能な“Global Strategy for the Diagnosis,Management,and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease”(2009年最新版)、www.thoracic.org/clinical/copd-guidelines/resources/copddoc.pdfのATSウェブサイトで利用可能な、本明細書において「ATC/ERS COPD Guidelines」との呼称されるAmerican Thoracic Society/European Respiratory Society Guidelines(2004)、および例えばCecil Textbook of Medicine(第20版)、Harrison’s Principles of Internal Medicine(第17版)などの内科学の標準的な教科書、および/または肺医学に焦点を当てた標準的な教科書に見出され得る。
【0317】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、上記で検討された上で論じたDC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルを阻害する(干渉する、破壊する)。例えば、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を、単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて投与することによって、補体がDC細胞を刺激してTh17表現型を促進するサイクルを壊してもよい。結果として、Th17細胞の数および/または活性が減衰し、そしてTh17介在性のB細胞刺激と、ポリクローナル抗体の産生の量が低下する。一部の実施形態では、これらの効果は、免疫学的微小環境を「リセット」して、より正常で、病的状態を低下させる。PCT/US2012/043845(WO/2012/178083)の実施例1、および米国特許出願公開 20140371133に記載されるように、補体を阻害することにより、Th17関連サイトカイン産生に対する長期的な阻害効果が発揮されることをサポートする証拠は、喘息の動物モデルにおいて取得されている。
【0318】
一部の実施形態では、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルの阻害は、疾患修飾性効果を有する。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、単に障害の症状を治療するだけではなく、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルを阻害することで、たとえ症状が充分にコントロールされているときでさえ継続的な組織損傷を与え得る、および/または疾患の憎悪に寄与し得る根本的な病理学的機序に干渉し得る。一部の実施形態では、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルの阻害は、慢性障害を寛解させる。一部の実施形態では、寛解とは、慢性障害を有する対象において、疾患再発の可能性は伴うが、疾患の活動が無い状態、または実質的に無い状態を指す。一部の実施形態では、寛解は、継続療法の非存在下、または用量減少で、または投与間隔増加で、長期間(例えば、少なくとも6か月、例えば、6~12か月、12~24か月、またはそれ以上)維持され得る。一部の態様では、補体の阻害は、Th17細胞が豊富な組織の免疫学的微小環境を変化させ、制御性T細胞(Treg)が豊富な微小環境へと改変し得る。そうすることで、免疫系それ自体を「リセット」し、寛解状態に移行させることができる。一部の実施形態では、寛解は、トリガー事象の発生まで維持され得る。トリガー事象は、例えば、感染(感染性物質および自己タンパク質の両方と反応するポリクローナル抗体の産生を生じさせ得る)、特定の環境条件(例えば、オゾンまたは粒子状物質または煙成分、例えばたばこの煙、アレルゲンなどの高レベルの空気汚染物質)への暴露であってもよい。遺伝的因子が役割を果たす場合もある。例えば、補体成分をコードする遺伝子の特定のアレルを有する個体は、補体活性の基準レベルが高く、補体系の反応性が高く、および/または内因性の補体制御タンパク質の活性の基準レベルが低い場合がある。一部の実施形態では、個体は、AMDのリスク増加と関連する遺伝子型を有する。例えば、対象は、補体タンパク質または補体制御タンパク質、例えば、CFH、C3、B因子をコードする遺伝子中に多型を有する場合があり、この場合において当該多型は、AMDのリスク増加と関連している。
【0319】
一部の実施形態では、例えばまだ慢性障害の症状を発現していない対象において、または障害を発現し、本明細書に記載される治療を受けた対象において、免疫学的微小環境が経時的に病的状態へと進行性に偏る場合がある。そのような移行は、確率的に(例えば、抗体レベルおよび/または抗体アフィニティにおける見かけ上のランダムな変動に少なくとも部分的に起因して)、および/または障害の症候性の勃発を誘発するのに充分な強度ではない「閾値下」のトリガー事象の蓄積の結果として、発生する場合がある。
【0320】
一部の実施形態では、本明細書に記載の阻害性RNA(または本明細書に記載の阻害性RNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクター)を単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせた、比較的短いクール、例えば、1週間~6週間、例えば、約2~4週間が、長期間継続する利益を提供する場合がある。一部の実施形態では、寛解は、長期間、例えば、1~3ヵ月、3~6ヵ月、6~12ヵ月、12~24ヵ月、またはそれ以上にわたって実現される。一部の実施形態では、対象は、症状の再発の前に、モニタリングされてもよく、および/または予防的に治療されてもよい。例えば、対象は、トリガー事象への曝露の前、または暴露時に治療されてもよい。一部の実施形態では、対象は、Th17細胞もしくはTh17細胞活性、または補体活性化の指標を含むバイオマーカーなどのバイオマーカーにおける増加についてモニタリングされてもよく、そのようなバイオマーカーのレベル上昇時に治療されてもよい。さらなる検討については、例えば、PCT/US2012/043845を参照のこと。
【0321】
X.併用治療
一部の態様では、本開示の方法は、本明細書に記載される阻害性RNAを単独で、または本明細書に記載される一つ以上の追加的な補体阻害剤と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態では、阻害性RNAは、別の補体阻害剤を用いた治療をすでに受けている対象に投与される。一部の実施形態では、別の補体阻害剤は、阻害性RNAを受けている対象に投与される。一部の実施形態では、阻害性RNAと別の補体阻害剤の両方が、対象に投与される。
【0322】
一部の実施形態では、阻害性RNAの投与によって、単剤療法として第二の補体阻害剤を投与した場合と比較して、低用量レジメン(例えば、個々の用量における量が少ないこいと、投与頻度が少ないこと、投与回数が少ないこと、および/または全体的な暴露が低下すること、を含む)の第二の補体阻害剤の投与が可能となり得る。任意の理論に拘束されることは望まないが、一部の実施形態では、低用量レジメンの第二の補体阻害剤は、別段で発生し得る一つ以上の望ましくない有害な作用を回避し得る。
【0323】
一部の態様では、第二の補体阻害剤と組み合わされた阻害性RNAを投与することによって、充分に対象の血中C3量を低下させることができ、その結果、望ましい程度の補体阻害を達成するために、低用量レジメンの阻害性RNAおよび/または第二の補体阻害剤が必要とされる。
【0324】
一部の態様では、第二の補体阻害剤と組み合わされた阻害性RNAを投与することによって、充分に対象の血中C3量を低下させることができ、その結果、補体介在性障害の一つ以上の兆候、症状、バイオマーカーまたは転帰尺度の望ましいレベル、またはそれらの望ましい改善量を達成するために、低用量レジメンの阻害性RNAおよび/または第二の補体阻害剤が必要とされる。
【0325】
一部の実施形態では、そのような低用量は、単剤療法として阻害性RNAまたは第二の補体阻害剤を投与した場合と比較して、少ない体積で投与されることができ、または低濃度で投与されることができ、または長い投与間隔で投与されることができ、または前述の任意の組み合わせで投与されることができる。
【0326】
任意の補体阻害剤、例えば当分野で公知の補体阻害剤は、本明細書に記載される阻害性RNAと組み合わされて投与されることができる。一部の実施形態では、補体阻害剤は、コンプスタチンまたはコンプスタチン類似体である。
【0327】
コンプスタチン(Compstatin)は、C3に結合し、補体活性化を阻害する環状ペプチドである。米国特許第6,319,897号において、配列Ile- [Cys-Val-Val-Gln-Asp-Trp-Gly-His-His-Arg-Cys]-Thr(配列番号1)を有するペプチドが記載されており、二つのシステイン間のジスルフィド結合は、括弧で示される。米国特許第6,319,897号において、「コンプスタチン」という名称は使用されていないが、その後に科学文献および特許文献において採用され(例えば、Morikis,et al.,Protein Sci.,7(3):619-27,1998を参照)、米国特許第6,319,897号に開示される配列番号2と同じ配列を有するが、C末端でアミド化されているペプチドを指している。「コンプスタチン」という用語は、本明細書において、当該使用と合致して使用される。補体阻害活性がコンプスタチンよりも高いコンプスタチン類似体が開発されている。例えば、WO2004/026328(PCT/US2003/029653)、Morikis,D.,et al.,Biochem Soc Trans.32(Pt 1):28-32,2004, Mallik,B.,et al.,J.Med.Chem.,274-286,2005;Katragadda,M.,et al.J.Med.Chem.,49:4616-4622,2006;WO2007062249(PCT/US2006/045539)、WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593)、WO/2010/127336(PCT/US2010/033345)を参照のこと。
【0328】
本明細書で使用される場合、「コンプスタチン類似体」という用語は、コンプスタチンおよびその任意の補体阻害性類似体を含む。「コンプスタチン類似体」という用語は、コンプスタチン、およびコンプスタチンに基づいて設計または特定された他の化合物を包含し、その補体阻害活性は、例えば当分野で受け入れられている任意の補体活性アッセイ、または実質的に類似した、もしくは均等のアッセイを使用して測定されたとき、コンプスタチンの活性の少なくとも50%の大きさである。特定の好適なアッセイは、米国特許第6,319,897号、WO2004/026328、Morikis、上記、Mallik、上記Katragadda 2006、上記、WO2007062249(PCT/US2006/045539)、WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593)、および/またはWO/2010/127336(PCT/US2010/033345)に記載されている。アッセイは、例えば、第二経路または古典経路介在性の赤血球溶解を測定してもよく、またはELISAアッセイであってもよい。一部の実施形態では、WO/2010/135717(PCT/US2010/035871)に記載されるアッセイが使用される。
【0329】
表8は、本開示に有用なコンプスタチン類似体の非限定的なリストを提供する。類似体は、親ペプチドであるコンプスタチンと比較した指定位置(1~13)での特定の修飾を示すことによって、左列において略語形で称される。当分野での使用と合致して、本明細書で使用される場合、「コンプスタチン」、および本明細書に記載されるコンプスタチン類似体のコンプスタチンと比較した活性は、C末端でアミド化されたコンプスタチンペプチドを指す。別段の示唆が無い限り、表8のペプチドは、C末端でアミド化されている。太字は、特定の変更を示すために使用される。コンプスタチンと比較した活性は、公開データ、および本明細書に記載されるアッセイに基づいている(WO2004/026328、WO2007044668、Mallik,2005;Katragadda,2006)。特定の実施形態では、表8に列挙されるペプチドは、本開示の治療用組成物および方法で使用されるとき、二つのCys残基間のジスルフィド結合を介して環化される。ペプチドを環化するための代替手段も本開示の範囲内である。
【0330】
【0331】
本開示の組成物および方法の特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列9~36から選択される配列を有する。一つの実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列番号28の配列を有する。本明細書で使用される場合、「L-アミノ酸」とは、タンパク質中に通常存在する天然の左旋性アルファ-アミノ酸、またはそれらアルファ-アミノ酸のアルキルエステルのいずれかを指す。「D-アミノ酸」という用語は、右旋性アルファ-アミノ酸を指す。特段の指定がない限り、本明細書で言及される全てのアミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0332】
一部の実施形態では、コンプスタチン類似体(例えば、本明細書に開示されるコンプスタチン類似体のいずれか)の一つ以上のアミノ酸が、N-アルキルアミノ酸(例えば、N-メチルアミノ酸)であってもよい。例えば限定されないが、ペプチドの環状部分の内の少なくとも一つのアミノ酸、環状部分に対してN末端の少なくとも一つのアミノ酸、および/または環状部分に対しC末端の少なくとも一つのアミノ酸は、N-アルキルアミノ酸、例えば、N-メチルアミノ酸であってもよい。一部の実施形態では、例えば、コンプスタチン類似体は、N-メチルグリシンを、例えば、コンプスタチンの8位に相当する位置で、および/またはコンプスタチンの13位に相当する位置で、含む。本発明の一部の実施形態では、表8のコンプスタチン類似体のうちの一つ以上は、少なくとも一つのN-メチルグリシンを、例えば、コンプスタチンの8位に相当する位置で、および/またはコンプスタチンの13位に相当する位置で、含む。本発明の一部の実施形態では、表8のコンプスタチン類似体のうちの一つ以上は、少なくとも一つのN-メチルグリシンを、例えば、コンプスタチンの13位に相当する位置で、含む。例えば、その配列が表8に列挙されているペプチド、または任意の他のコンプスタチン類似体配列のC末端のThr、またはC末端近傍のThrは、NメチルIleにより置換されてもよい。理解されように、一部の実施形態では、N-メチル化アミノ酸は、8位でN-メチルGly、13位でN-メチルIleを含む。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体(例えば、表8に列記されるコンプスタチン類似体のいずれか一つ)は、配列番号8の3位に相当する位置で、本明細書に記載される一つ以上の置換の代わりに、またはそれに加えて、イソロイシンを含む。例えば、一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列番号8~36のいずれか一つの配列を含み、またはそれからなり、この場合において3位は、イソロイシンである。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列番号25、33または36のいずれか一つの配列を含み、またはそれからなり、この場合において4位は、イソロイシンである。追加的なコンプスタチン類似体は、例えばWO2019/166411に記載される。
【0333】
コンプスタチン類似体は、例えば従来的なペプチド合成法に従い、アミノ酸残基の縮合を介して、当分野に公知のペプチド合成に関する様々な合成方法により作製されてもよく、当分野に公知の方法を使用してそれらをコードする適切な核酸配列から、インビトロで、または生細胞において発現させることにより作製されてもよい。例えばペプチドは、Malik、上記、Katragadda、上記、WO2004026328、および/またはWO2007062249に記載されるように標準的な固相方法論を使用して合成されてもよい。例えばアミノ基やカルボキシル基などの潜在的な反応性部分、反応性官能基などが保護されてもよく、その後に当技術分野で公知の様々な保護基および方法論を使用して脱保護されてもよい。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999を参照のこと。ペプチドは、逆相HPLCなどの標準的な方法を使用して精製されてもよい。所望の場合には、逆相HPLCなどの公知の方法を使用してジアステレオマーペプチドの分離が実施されてもよい。所望の場合には、調製物は凍結乾燥されてもよく、その後、例えば水などの適切な溶媒中に溶解される。得られた溶液のpHは、例えばNaOHなどの塩基を使用して生理学的なpHに調整されてもよい。ペプチド調製物は、所望の場合には例えば質量分析により特徴解析され、質量および/またはジスルフィド結合の形成が確認されてもよい。例えば、Mallik,2005,and Katragadda,2006を参照のこと。
【0334】
コンプスタチン類似体は、例えばポリエチレングリコール(PEG)などの分子を加えることにより改変され、化合物を安定化し、その免疫原性を低下させ、体内でその寿命を延ばし、その溶解性を上昇もしくは低下させ、および/または分解に対するその耐性を増大させることができる。PEG化の方法は当該技術分野で公知である(Veronese,F.M.& Harris,Adv.Drug Deliv.Rev.54,453-456,2002;Davis,F.F.,Adv.Drug Deliv.Rev.54,457-458,2002);Hinds,K.D.& Kim,S.W.Adv.Drug Deliv.Rev.54,505-530(2002;Roberts,M.J.,Bentley,M.D.& Harris,J.M.Adv.Drug Deliv.Rev.54,459-476;2002);Wang,Y.S.et al.Adv.Drug Deliv.Rev.54,547-570,2002を参照のこと)。ポリペプチドが簡単に付加され得る誘導体化PEGを含む、PEGおよび改変PEGなどの様々なポリマーが、Nektar Advanced Pegylation 2005-2006 Product Catalog、Nektar Therapeutics社、カリフォルニア州サンカルロスに記載されている。当該文献は、適切なコンジュゲーション手順の詳細も提示している。
【0335】
一部の実施形態では、配列番号9~36のいずれかのコンプスタチン類似体は、N末端、C末端またはその両方で一つ以上のアミノ酸によって伸長され、この場合においてアミノ酸の少なくとも一つは、例えば一級アミンもしくは二級アミン、スルフヒドリル基、カルボキシル基(カルボン酸基として存在してもよい)、グアニジノ基、フェノール基、インドール環、チオエーテル、またはイミダゾール環などの反応性官能基を含む側鎖を有し、それらは反応性官能基とのコンジュゲーションを促進して、コンプスタチン類似体にPEGを付加させる。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、例えばLys残基などの一級アミンまたは二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸を含む。例えば、Lys残基、またはLys残基を含む配列が、本明細書に記載されるコンプスタチン類似体(例えば、配列番号9~36のいずれか一つを含むコンプスタチン類似体)のN末端および/またはC末端に付加される。
【0336】
一部の実施形態では、Lys残基は、硬直性スペーサーまたは可塑性スペーサーによりコンプスタチン類似体の環状部分から分離される。スペーサーは、例えば、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和のアルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖、および/または例えばリンカーに関して本明細書に記載されるような他の部分を含み得る。鎖の長さは、例えば、2~20個の炭素原子であってもよい。他の実施形態では、スペーサーは、ペプチドである。ペプチドスペーサーは、例えば、1~20アミノ酸の長さ、例えば、4~20アミノ酸の長さであってもよい。好適なスペーサーは、例えば、複数のGly残基、Ser残基、またはその両方を含むか、またはそれからなり得る。任意選択で、一級アミンまたは二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸、および/またはスペーサー中の少なくとも一つのアミノ酸は、D-アミノ酸である。様々なポリマー骨格またはスキャホールドのいずれを使用してもよい。例えば、ポリマー骨格またはスキャホールドは、ポリアミド、多糖類、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリペプチド、ポリエチレン酸化物、またはデンドリマーであり得る。好適な方法およびポリマー骨格は、例えばWO98/46270(PCT/US98/07171)またはWO98/47002(PCT/US98/06963)に記載される。一つの実施形態では、ポリマー骨格またはスキャホールドは、例えばカルボン酸、無水物、またはスクシンイミド基などの複数の反応性官能基を含む。ポリマー骨格またはスキャホールドは、コンプスタチン類似体と反応する。一つの実施形態では、コンプスタチン類似体は、例えばカルボン酸、無水物、またはスクシンイミド基などの多数の異なる反応性官能基のいずれかを含み、それらはポリマー骨格上の適切な基と反応する。あるいはポリマー骨格またはスキャホールドを形成するために互いに結合され得る単量体単位は、最初にコンプスタチン類似体と反応し、そして生じた単量体が重合される。別の実施形態では、短い鎖は前もって重合され、官能化され、次いで異なる組成の短い鎖の混合物が、長いポリマーへと組み立てられる。
【0337】
一部の実施形態では、コンプスタチン類似体部分は、線形PEGの各末端に付加される。鎖の各末端に反応性官能基を有する二官能性PEGは、例えば、本明細書に記載されるように使用され得る。一部の実施形態では、反応性官能基は同一であるが、一部の実施形態では、各末端に異なる反応性官能基が存在する。
【0338】
概して、本明細書に示される化合物では、ポリエチレングリコール部分は、反復単位の右側または反復単位の左側の酸素原子とともに描かれる。一つの方向のみが描かれる場合でも、本開示は、所与の化合物もしくは属に対するポリエチレングリコール部分の両方の方向性(すなわち、(CH2CH2O)nおよび(OCH2CH2)n)を包含する。または化合物もしくは属が複数のポリエチレングリコール部分を含有する場合、方向性の全ての組み合わせが本開示に包含される。
【0339】
一部の実施形態では、二官能性線形PEGは、その各末端で反応性官能基を含む部分を含む。反応性官能基は、同一であっても(ホモ二官能性)、異なっていてもよい(ヘテロ二官能性)。一部の実施形態では、二官能性PEGの構造は、対称的であってもよく、この場合において同じ部分を使用して、-(CH2CH2O)n鎖の各末端の酸素原子に反応性官能基を連結する。一部の実施形態では、異なる部分を使用して、分子のPEG部分に二つの反応性官能基を連結する。例示的な二官能性PEGの構造を、以下に示す。例示的な目的のために、反応性官能基がNHSエステルを含む式が記載されているが、他の反応性官能基も使用され得る。
【0340】
一部の実施形態では、二官能性線形PEGは、以下の式Aである:
【化15】
式中、各Tおよび「反応性官能基」は独立して、以下に定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりであり、nは、上記に定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されるとおりである。
各Tは独立して、共有結合またはC
1-12の直鎖または分岐鎖の炭水化物鎖であり、この場合においてTの一つ以上の炭素単位は、任意で、および独立して、-O-、-S-、-N(R
x)-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-N(R
x)C(O)-、-C(O)N(R
x)-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N(R
x)SO
2-、または-SO
2N(R
x)-により置換され、および
各R
xは、独立して、水素またはC
1-6脂肪族である。
反応性官能基は、-COO-NHS構造を有する。
【0341】
式Aの例示的な二官能性PEGとしては以下が挙げられる:
【化16】
【0342】
一部の実施形態では、コンプスタチン類似体上の官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、またはチオール基)は、本明細書に記載される「反応性官能基」を有するPEG含有化合物と反応して、当該コンジュゲートを生成する。例示として、式Iは、以下の構造を有するコンプスタチン類似体コンジュゲートを形成し得る:
【化17】
式中、
【化18】
は、コンプスタチン類似体上のアミン基の結合点を表す。特定の実施形態では、アミン基は、リシン側鎖基である。
【0343】
特定の実施形態では、当該コンジュゲートのPEG構成要素は、約5kD、約10kD、約15kD、約20kD、約30kD、または約40kDの平均分子量を有する。特定の実施形態では、当該コンジュゲートのPEG構成要素は、約40kDの平均分子量を有する。
【0344】
「二官能性」または「二官能基化」という用語は、本明細書において、PEGに連結された二つのコンプスタチン類似体部分を含む化合物を指すために使用される場合がある。そのような化合物は、「BF」という文字で指定される場合がある。一部の実施形態では、二官能基化化合物は、対称性である。一部の実施形態では、二官能基化化合物のPEGと各コンプスタチン類似体部分の間の連結は、同一である。一部の実施形態では、二官能基化化合物のPEGとコンプスタチン類似体の間の各連結は、カルバミン酸塩を含む。一部の実施形態では、二官能基化化合物のPEGとコンプスタチン類似体の間の各連結は、カルバミン酸塩を含み、エステルを含まない。一部の実施形態では、二官能基化化合物の各コンプスタチン類似体は、カルバミン酸塩を介して直接PEGに連結される。一部の実施形態では、二官能基化化合物の各コンプスタチン類似体は、カルバミン酸塩を介して直接PEGに連結され、二官能基化化合物は、以下の構造を有する。
【化19】
【0345】
本明細書に記載される実施形態、および式の一部の実施形態において、
【化20】
は、以下の構造を有するコンプスタチン類似体中のリシン側鎖基の結合点を表す:
【化21】
式中、
【化22】
という記号は、分子または化学式の残りの部分への化学的部分の結合点を示す。
【0346】
一つ以上の反応性官能基を含むPEGは、一部の実施形態では、例えば特にNOF America Corp.ニューヨーク州ホワイトプレインズ、またはBOC Sciences社 45-16 Ramsey Road Shirley,NY 11967、米国から取得されてもよく、または当分野に公知の方法を使用して作製されてもよい。
【0347】
一部の実施形態では、リンカーを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体と本明細書に記載のPEGを結合させる。コンプスタチン類似体とPEGを結合させるのに適したリンカーは、上記、および本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて、詳述される。一部の実施形態では、リンカーは、複数の官能基を有し、この場合において一つの官能基はコンプスタチン類似体に結合され、別の官能基はPEG部分に結合される。一部の実施形態では、リンカーは、二官能性化合物である。一部の実施形態では、リンカーは、NH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OHの構造を有し、nは、1~1000である。一部の実施形態では、リンカーは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)である。一部の実施形態では、リンカーは、コンプスタチン類似体のポリマー部分または官能基とのコンジュゲーションのために活性化される。例えば、一部の実施形態では、AEEAcのカルボキシル基が活性化され、その後にリシン基の側鎖のアミン基とコンジュゲーションされる。
【0348】
一部の実施形態では、コンプスタチン類似体上の適切な官能基(例えば、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、またはカルボン酸基)は、直接的に、またはリンカーを介して、PEG部分とのコンジュゲーションに使用される。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、アミン基を通じ、リンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アミン基は、アミノ酸残基のα-アミノ基である。一部の実施形態では、アミン基は、リシン側鎖のアミン基である。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、リシン側鎖のアミノ基(ε-アミノ基)を通じ、NH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OHの構造を有するリンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされ、式中、nは1~1000である。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、リシン側鎖のアミノ基を通じ、AEEAcリンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、NH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OHリンカーは、コンジュゲーション後にコンプスタチンのリシン側鎖上に-NH(CH2CH2O)nCH2C(=O)-部分を導入する。一部の実施形態では、AEEAcリンカーは、コンジュゲーション後にコンプスタチンのリシン側鎖上に-NH(CH2CH2O)2CH2C(=O)-部分を導入する。
【0349】
一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、リンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされ、この場合においてリンカーは、AEEAc部分とアミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体は、リンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされ、この場合においてリンカーは、AEEAc部分とリシン残基を含む。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に結合され、AEEAcのC末端は、リシン残基に結合される。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に結合され、AEEAcのC末端は、リシン残基のα-アミノ基に結合される。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に結合され、AEEAcのC末端は、リシン残基のα-アミノ基に結合され、そしてPEG部分は、当該リシン残基のε-アミノ基を通じてコンジュゲートされる。一部の実施形態では、リシン残基のC末端は、改変される。一部の実施形態では、リシン残基のC末端は、アミド化によって改変される。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体のN末端は、改変される。一部の実施形態では、コンプスタチン類似体のN末端は、アセチル化される。
【0350】
特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、M-AEEAc-Lys-B2として表されてもよく、式中、B2は、ブロッキング部分、例えばNH2であり、Mは、配列番号9~36のいずれかを表す。ただし配列番号9~36のいずれかのC末端アミノ酸は、ペプチド結合を介してAEEAc-Lys-B2に連結されるものとする。一官能性または多官能性(例えば、二官能性)PEGのNHS部分は、リシン側鎖の遊離アミンと反応して、一官能基化(一つのコンプスタチン類似体部分)または多官能基化(複数のコンプスタチン類似体部分)のPEG化コンプスタチン類似体を生成する。様々な実施形態では、反応性官能基を含む側鎖を含む任意のアミノ酸を、Lysの代わりに(またはLysに加えて)使用してもよい。好適な反応性官能基を含む一官能性PEGまたは多官能性EGは、NHS-エステル活性化PEGとLysの反応に似た様式で、そうした側鎖と反応し得る。
【0351】
上述の式および構造のいずれかに関して、コンプスタチン類似体の構成要素が、本明細書に記載される任意のコンプスタチン類似体のいずれか、例えば、配列番号9~36のいずれかのコンプスタチン類似体を含む実施形態が、明示的に開示されていることが理解される。例えば、限定されないが、コンプスタチン類似体は、配列番号28のアミノ酸配列を含んでもよい。コンプスタチン類似体構成要素が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、例示的なPEG化コンプスタチン類似体は、
図2に示される。PEG部分は、本明細書に記載の様々な実施形態において、様々な異なる分子量または平均分子量を有し得ることが理解される。特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、約800~約1100のn、および約40kDの平均分子量を有するPEGを伴う
図2の化合物の構造を有する、ペグセタコプラン(APL-2)である。ペグセタコプランは、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-、N-アセチル-L-イソロイシル-L-システイニル-L-バリル-1-メチル-L-トリプトフィル-L-グルタミニル-L-α-アスパルチル-L-トリプトフィルグリシル-L-アラニル-L-ヒスチジル-L-アルギニル-L-システイニル-L-スレオニル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-N
6-カルボキシ-L-リシンアミドとの15,15’-ジエステル環状(2-->12)-(ジスルフィド);またはO,O’-ビス[(S
2,S
12-シクロ{N-アセチル-L-イソロイシル-L-システイニル-L-バリル-1-メチル-L-トリプトフィル-L-グルタミニル-L-α-アスパルチル-L-トリプトフィルグリシル-L-アラニル-L-ヒスチジル-L-アルギニル-L-システイニル-L-スレオニル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-L-リシンアミド})-N
6.15-カルボニル]ポリエチレングリコール(n=800~1100)とも呼称される。追加的なコンプスタチン類似体は、例えば、WO2012/155107およびWO2014/078731に記載される。
【0352】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるコンプスタチン類似体は、週に2回、または3日ごとに、約800mg~約1200mg、例えば、約1060mg~約1100mg、例えば、約1070mg~約1090mg、例えば、約1075mg~約1085mg、例えば、約1080mgの用量で、約4週間、約8週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間、約28週間、約32週間、約36週間、約40週間、約44週間、約48週間、約52週間、約1.2年、1.4年、1.6年、1.8年、2年、3年、4年、5年、またはそれ以上の間投与される。
【0353】
一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)を含む組成物、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む組成物は、コンプスタチン類似体と組み合わされて対象に投与され、当該コンプスタチン類似体および/または阻害性RNAの組成物は、低い頻度で、および/または低用量で投与される。一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、本明細書に記載されるsiRNAまたはmiRNA)を含む組成物、または本明細書に記載されるsiRNAもしくはmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む組成物は、コンプスタチン類似体と組み合わされて対象に投与され、当該コンプスタチン類似体は、週に1回、2週ごとに1回、月に1回、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、またはそれ以上ごとに1回、約800mg~約1200mg、例えば、約1060mg~約1100mg、例えば、約1070mg~約1090mg、例えば、約1075mg~約1085mg、例えば、約1080mgの用量で、投与される。
【0354】
一部の実施形態では、補体阻害剤は、例えば、抗C3お抗体よび/または抗C5抗体などの抗体、またはその断片である。一部の実施形態では、抗体断片を使用して、C3またはC5の活性化を阻害してもよい。断片化された抗C3抗体または抗C5抗体は、Fab’、Fab’(2)、Fv、または一本鎖Fvであってもよい。一部の実施形態では、抗C3抗体または抗C5抗体は、モノクローナルである。一部の実施形態では、抗C3抗体または抗C5抗体は、ポリクローナルである。一部の実施形態では、抗C3抗体または抗C5抗体は、脱免疫化される。一部の実施形態では、抗C3抗体または抗C5抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗C5抗体は、エクリズマブである。一部の実施形態では、補体阻害剤は、例えば、抗C3お抗体よび/または抗C5抗体などの抗体、またはその断片である。
【0355】
一部の実施形態では、補体阻害剤は、ポリペプチド阻害剤および/または核酸アプタマーである(例えば、米国特許出願公開20030191084を参照のこと)。例示的なポリペプチド阻害剤としては、C3またはC3bを分解する酵素が挙げられる(例えば、米国特許第6,676,943号を参照のこと)。追加的なポリペプチド阻害剤としては、ミニ因子H(例えば、米国特許出願公開20150110766を参照のこと)、Efbタンパク質、または黄色ブドウ球菌由来の補体阻害(SCIN)タンパク質、またはそれらのバリアントもしくは誘導体、またはそれらの模倣体が挙げられる(例えば、米国特許出願公開20140371133を参照のこと)。
【0356】
本開示の様々な実施形態で、様々な他の補体阻害剤も使用され得る。一部の実施形態では、補体阻害剤は、天然の哺乳動物補体制御タンパク質またはその断片もしくは誘導体である。例えば、補体制御タンパク質は、CR1、DAF、MCP、CFH、またはCFIであってもよい。一部の実施形態では、補体制御ポリペプチドは、通常、その自然発生状態では膜結合型であるポリペプチドである。一部の実施形態では、膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインの一部または全てを欠く、当該ポリペプチドの断片が使用される。例えば、補体受容体1の可溶型(sCR1)も使用され得る。例えば、TP10またはTP20(Avant Therapeutics社)として知られる化合物が使用され得る。C1阻害剤(C1-INH)も、使用され得る。一部の実施形態では、可溶性補体対照タンパク質、例えば、CFHが使用される。
【0357】
C1s阻害剤も使用され得る。例えば、米国特許第6,515,002号は、C1sを阻害する化合物(フラニルアミジンおよびチエニルアミジン、複素環式アミジン、ならびにグアニジン)を記載している。米国特許第6,515,002号および第7,138,530号は、C1sを阻害する複素環式アミジンを記載している。米国特許第7,049,282号は、古典的経路の活性化を阻害するペプチドを記載している。特定のペプチドは、WESNGQPENN(配列番号73)もしくはKTISKAKGQPREPQVYT(配列番号74)、またはそれらに対して、高い配列同一性および/または三次元構造の類似性を有するペプチドを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、これらのペプチドは、IgG分子またはIgM分子の一部分と同一であるか、または実質的に同一である。米国特許第7,041,796号は、補体活性化を阻害する、C3b/C4b補体受容体様分子およびその使用を開示している。米国特許第6,998,468号は、補体活性化の抗C2/C2a阻害剤を開示している。米国特許第6,676,943号は、肺炎連鎖球菌に由来するヒト補体C3分解タンパク質を開示している。
【0358】
GenBankアクセッション番号を含む、本明細書において言及されるすべての公表文献、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体で組み込まれる。さらに材料、方法および実施例は、解説のみを目的としており、限定であることは意図されない。別段の規定が無い限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または均等の方法および材料を、本発明の実施または検証に使用することができるが、本明細書では公的な方法および材料を記載する。
【0359】
本開示は、以下の実施例によってさらに解説される。実施例は、例示のみを目的として提供される。実施例は、本開示の範囲または内容をいかなる方法によっても限定していると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0360】
XI.例証
実施例1:siRNAを使用した、HeLa細胞におけるC3発現のノックダウン
細胞培養
HeLa細胞は、ATCC(LGC Standards、ドイツ、ウェーゼルと協力関係にあるATCC、カタログ番号ATCC-CRM-CCL-2)から取得され、10%ウシ胎児血清(#1248D,Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(#A2213、Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)を含有するように補充されたHAM’s F12(#FG0815、Biochrom社、ドイツ、ベルリン)中、加湿インキュベーターにおいて5%CO2を含む空気中、37℃で培養された。siRNAを用いたHeLa細胞のトランスフェクションについては、96ウェル組織培養プレート(#655180、GBO、ドイツ)に15,000個の細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。
【0361】
siRNA
mRNA転写物の異なる領域を標的とするように177個のsiRNAを設計および合成した。この実験では、各siRNAのセンス鎖は、C3転写物(配列番号75)上の標的領域配列と同一である18個のヌクレオチドと、3’末端に追加のアデニンヌクレオチドを1個含有した。さらに、この実験では、アンチセンス鎖は、C3転写物(配列番号75)上の標的領域配列に対して相補的な18個のヌクレオチドと、5’末端に追加のウラシルヌクレオチドを1個、および3’末端に追加のウラシルヌクレオチドを2個含有した。
【0362】
この実験では、siRNAは、センス鎖の修飾を含有し、以下の修飾パターンを含んだ:
【0363】
xsxsXfxxxXfXfXfxxXfxxxxXfxa
【0364】
アンチセンス鎖は、以下の修飾パターンを含んだ:
【0365】
usXfsxxxxxxxxxxxXfxxxxxsusu
【0366】
式中、「x」は、任意のヌクレオチドを表し、小文字は、2’-O-メチル基で修飾されたヌクレオチドを表す。「Xf」は、2’-フルオロ基で修飾されたヌクレオチド(「X」は任意のヌクレオチドであり得る)を表す。例えば、「Af」は、2’-フルオロ基で修飾されたアデニンヌクレオチドを表す。「s」は、ホスホロチオエート結合を表す。
【0367】
siRNAのトランスフェクションおよびC3活性アッセイ-二重用量実験
siRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen/Life Technologies社、ドイツ、カールスルーエ)を用いて、逆トランスフェクションに関するメーカーの説明書に従い実施した。この実験において、二重用量スクリーニングは、10nMおよび0.5nMのsiRNAをそれぞれ四重で用いて実施された。Aha1を標的とするsiRNAは、C3標的mRNA発現に対する非特異対照として、および陽性対照としての役割を同時に果たし、Aha1 mRNAレベルに関するトランスフェクション効率を分析した。ホタル-ルシフェラーゼおよびウミシイタケ-ルシフェラーゼをモックトランスフェクションとして使用した。
【0368】
siRNAを用いたインキュベーションから24時間後、培地を取り除いて、150μlの培地-溶解混合物(1体積の溶解混合物、2体積の細胞培養培地)中で細胞を溶解させ、次いで53℃で30分間インキュベートした。ヒトC3を標的とするプローブセット(アクセッション# NM_000064、塩基106と塩基907の間)を用いてメーカーの説明書に従い、bDNAアッセイ(ThermoFisher QuantiGene RNAアッセイ)を実施した。このアッセイは、ThermoFisher Scientific社により設計され、Metabion International AG社(ドイツ、プラネック)により合成された。室温、暗所で30分間インキュベートした後、1420 Luminescence Counter(WALLAC VICTOR Light、Perkin Elmer社、ドイツ、ロートガウ-ユゲスハイム)を使用して発光を読み取った。
【0369】
Aha1プローブセットを用いてインキュベーションすることにより、他の二つの標的非特異対照(ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ)は、Aha1 mRNAレベルの対照としての役割を果たした。各96ウェルプレートのトランスフェクション効率、および二重用量スクリーニングにおける両用量のトランスフェクション効率を、
【0370】
対照を用いて得られたAha1レベルに対して、ウェル中のAha1レベルとAha1-siRNA(GapDHに対して正規化)を関連付けることにより計算した。10nM用量のsiAha1でのトランスフェクション効率は、約90%であった。0.5nM用量でのトランスフェクション効率は、約85%であった。
【0371】
siRNAの活性は、各標的の最小蛍光または最小mRNA濃度割合により測定された。各ウェルについて、標的mRNAレベルは、それぞれのGAPDH mRNAレベルに対して正規化された。所与のsiRNAの活性は、対照ウェル間で平均化された標的mRNA濃度(GAPDH mRNAに対して正規化)と比較した、処置細胞における各標的のmRNA濃度割合(GAPDH mRNAに対して正規化)として表された。
【0372】
活性に基づく上位24個のsiRNAに関する二重用量スクリーニングの結果を、以下の表9に示す。これらのsiRNAの配列は、以下の表10に示す。
【0373】
【0374】
【0375】
用量反応性実験
両用量で最も良い活性を有する上位12個のsiRNAを選択し、用量反応性実験(DRC:dose response experiment)で検証した。用量反応性実験は、トランスフェクトされた10個の濃度のsiRNAを用いて四重で行われ、100nMから始まり、6倍段階希釈で10fMまでとした。モックトランスフェクトされた細胞は、DRC実験において対照として使用された。
【0376】
各ウェルについて、標的mRNAレベルは、それぞれのGAPDH mRNAレベルに対して正規化された。所与のsiRNAの活性は、モックトランスフェクトされた細胞(DRC)間で平均化された標的mRNA濃度(GAPDH mRNAに対して正規化)と比較した、処置細胞における各標的のmRNA濃度割合(GAPDH mRNAに対して正規化)として表された。
【0377】
DRC実験からのIC50値およびIC80値、ならびに二重用量実験(10nm用量)からの最大KDの結果を、以下の表11に示す。
【0378】
【0379】
実施例2:siRNAを使用した、HepG2細胞におけるC3発現のノックダウン
実施例1の二重用量実験を、実証された活性に基づく上位50個のsiRNA(実施例1)について、HepG2細胞において繰り返した。
【0380】
HepG2細胞は、ATCC(LGC Standards、ドイツ、ウェーゼルと協力関係にあるATCC、カタログ番号ATCC-HB-8065)から取得され、10%ウシ胎児血清(#1248D、Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)、1x非必須アミノ酸(#K0293;Biochrom社、ドイツ、ベルリン)、4mM L-グルタミン(#K0283、Biochrom社、ドイツ、ベルリン)および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(#A2213、Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)を含有するように補充されたMEM Eagle(#M2279、Sigma-Aldrich社、ドイツ)中、加湿インキュベーターにおいて5%CO2を含む空気中、37℃で培養された。
【0381】
siRNAのトランスフェクションおよびC3活性アッセイ-二重用量実験
siRNAを用いたHepG2細胞のトランスフェクションについては、コラーゲンコーティングされた96ウェル組織培養プレート(#655150、GBO、ドイツ)に15,000個の細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。siRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen/Life Technologies社、ドイツ、カールスルーエ)を用いて、播種後の直接的な逆トランスフェクションに関するメーカーの説明書に従い実施した。この実験において、二重用量スクリーニングは、10nMおよび0.1nMのsiRNAをそれぞれ四重で用いて実施された。Aha1を標的とするsiRNAは、C3標的mRNA発現に対する非特異対照として、および陽性対照としての役割を同時に果たし、Aha1 mRNAレベルに関するトランスフェクション効率を分析した。ホタル-ルシフェラーゼおよびウミシイタケ-ルシフェラーゼをモックトランスフェクションとして使用した。
【0382】
siRNAを用いたインキュベーションから24時間後、培地を取り除いて、150μlの培地-溶解混合物(1体積の溶解混合物、2体積の細胞培養培地)中で細胞を溶解させ、次いで53℃で30分間インキュベートした。ヒトC3を標的とするプローブセット(アクセッション# NM_000064、塩基106と塩基907の間)を用いてメーカーの説明書に従い、bDNAアッセイ(ThermoFisher QuantiGene RNAアッセイ)を実施した。このアッセイは、ThermoFisher Scientific社により設計され、Metabion International AG社(ドイツ、プラネック)により合成された。室温、暗所で30分間インキュベートした後、1420 Luminescence Counter(WALLAC VICTOR Light、Perkin Elmer社、ドイツ、ロートガウ-ユゲスハイム)を使用して発光を読み取った。
【0383】
Aha1-siRNAは、C3 mRNA発現に対する非特異対照として、および陽性対照としての役割を果たし、Aha1プローブセットを用いたハイブリダイゼーションによってAha1 mRNAレベルを測定することにより、トランスフェクション効率を分析した。使用されたAha1-siRNAは、以前に候補siRNAのビッグセットから選択されたものであり、インビボおよびインビトロで非常に活性であることが知られている。各96ウェルプレートのトランスフェクション効率は、非特異的対照と比較した、Aha1-siRNAでのAha1ノックダウン(GAPDHに対して正規化)を分析することにより計算された。対照を用いて得られたAha1レベルに対して、ウェル中のAha1レベルとAha1-siRNA(GapDHに対して正規化)を関連付けることにより計算した。10nM用量のsiAha1でのトランスフェクション効率は、約90%であった。0.5nM用量でのトランスフェクション効率は、約85%であった。
【0384】
siRNAの活性は、各標的の蛍光またはmRNA濃度割合により測定された。各ウェルについて、標的mRNAレベルは、それぞれのGAPDH mRNAレベルに対して正規化された。所与のsiRNAの活性は、対照ウェル間で平均化された標的mRNA濃度(GAPDH mRNAに対して正規化)と比較した、処置細胞における各標的のmRNA濃度割合(GAPDH mRNAに対して正規化)として表された。
【0385】
活性に基づく上位12個のsiRNAに関する二重用量スクリーニングの結果を、10nmおよび0.1nmの用量について、それぞれ以下の表12および13に示す。
【0386】
【0387】
【0388】
実施例3:様々な修飾パターンを有するsiRNAを使用した、HepG2細胞におけるC3ノックダウン発現
実施例1および2からの上位6個のsiRNAの修飾について、検証した。
【0389】
細胞培養
【0390】
HepG2細胞は、ATCC(LGC Standards、ドイツ、ウェーゼルと協力関係にあるATCC、カタログ番号ATCC-HB-8065)から取得され、10%ウシ胎児血清(#1248D、Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)、1x非必須アミノ酸(#K0293;Biochrom社、ドイツ、ベルリン)、4mM L-グルタミン(#K0283、Biochrom社、ドイツ、ベルリン)および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(#A2213、Biochrom GmbH、ドイツ、ベルリン)を含有するように補充されたMEM Eagle(#M2279、Sigma-Aldrich社、ドイツ)中、加湿インキュベーターにおいて5%CO2を含む空気中、37℃で培養された。
【0391】
siRNA
siRNAは、実施例1および2から、活性の点で上位のsiRNAのヌクレオチド配列に基づき、異なる修飾パターンを用いて設計および合成された(siRNA ID:1、4、9、10、16、および22)。上位のsiRNAヌクレオチド配列のそれぞれについて、5個の「バリアント」が設計および合成され、各二重鎖は、どの修飾が行われたかに基づき、「バリアント1」、「バリアント2」、「バリアント3」、「バリアント4」、「バリアント5」と指定されている。実施例1および2からのsiRNA(siRNA ID:1、4、9、10、16、および22)は、「バリアント0」と指定されている。
【0392】
siRNA ID 1、4、9、10、16、および22のそれぞれのセンス鎖について、以下の修飾パターン(5’から3’)が使用された。
【0393】
xsxsXfxxxXfXfXfxxXfxxxxXfxa(「バリアント0」、ならびに「バリアント1」および「バリアント5」でもで使用されたパターン)
【0394】
XfsxsXfxXfxXfxXfxXfxXfxXfxXfxAf(「バリアント2」、「バリアント3」、および「バリアント4」で使用されたパターン)
【0395】
アンチセンス鎖は、以下の修飾パターン(5’から3’)が使用された。
【0396】
usXfsxxxxxxxxxxxXfxxxxxsusu(「バリアント0」で使用されたパターン)
【0397】
usXfsxxxxxxxxxxxXfxxxxxsxsx(「バリアント1」および「バリアント3」で使用されたパターン。C3 mRNA転写物、すなわち配列番号75に対して、最後の2ヌクレオチドが相補的であることを除き、「バリアント0」で使用されたものと同じパターンである)
【0398】
usXfsxXfxXfxXfxXfxXfxXfxXfxXfxsxsx(「バリアント2」で使用されたパターン)
【0399】
usXfsxxxXfxxxxxxxXfxXfxxxsxsx(「バリアント4」および「バリアント5」で使用されたパターン)
【0400】
式中、「x」は、任意のヌクレオチドを表し、小文字は、2’-O-メチル基で修飾されたヌクレオチドを表す。「Xf」は、2’-フルオロ基で修飾されたヌクレオチド(「X」は任意のヌクレオチドであり得る)を表す。例えば、「Af」は、2’-フルオロ基で修飾されたアデニンヌクレオチドを表す。「s」は、ホスホロチオエート結合を表す。
【0401】
用量反応性実験
siRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen/Life Technologies社、ドイツ、カールスルーエ)を用いて、逆トランスフェクションに関するメーカーの説明書に従い実施した。
【0402】
各siRNAを、HepG2細胞における用量反応性実験(DRC)を使用して検証した。C3発現をノックダウンすることが知られている二つの追加のsiRNA(siRNA ID 26および27)を陽性対照として使用した。
【0403】
用量反応性実験は、トランスフェクトされた10個の濃度のsiRNAを用いて四重で行われ、100nMから始まり、6倍段階希釈で10fMまでとした。モックトランスフェクトされた細胞は、陰性対照として使用された。
【0404】
各ウェルについて、標的mRNAレベルは、それぞれのGAPDH mRNAレベルに対して正規化された。所与のsiRNAの活性は、モックトランスフェクトされた細胞(DRC)間で平均化された標的mRNA濃度(GAPDH mRNAに対して正規化)と比較した、処置細胞における各標的のmRNA濃度割合(GAPDH mRNAに対して正規化)として表された。
【0405】
DRC実験からのIC50値、IC80値、および最大KDを、以下の表14に示す。これらのsiRNAの配列は、以下の表15に示す。
【0406】
【0407】
【0408】
表14のIC50値およびIC80値は、修飾パターンは性能を変化させたことを示している。例えば、siRNA ID:32(「バリアント5」で指定される修飾パターンを使用している)は、siRNA ID:1(バリアント0)、28(バリアント1)、29(バリアント2)、30(バリアント3)、および31(バリアント4)よりも優れた活性(それぞれ、0.018nMと0.108nMのIC50値とIC80値)を有しているが、これらsiRNAのそれぞれは、同じヌクレオチド配列に基づき、C3転写物の同じ領域を標的としているものである。
【0409】
さらに、修飾パターンの性能(すなわち、異なるバリアント)は、siRNAヌクレオチド配列(すなわち、C3転写物の標的領域)によっても変化すると思われた。例えば、「バリアント5」は、siRNA1のヌクレオチド配列に基づくsiRNAの中で、C3ノックダウンにおいて最も効果が高いことが示された(siRNA ID:1(バリアント0)と比較した、siRNA ID:32(バリアント5)を参照)。一方で、siRNA 22のヌクレオチド配列に基づくsiRNAの中で、「バリアント0」は、C3ノックダウンにおいて最も効果が高いと思われた(例えば、siRNA:55(バリアント3)と比較した、siRNA ID:22(バリアント0)を参照)。
【0410】
実施例4:非ヒト霊長類におけるsiRNA58のインビボ評価
siRNA構築物
実施例3のsiRNA53を選択し、以下に記載されるようにさらに修飾して、siRNA58を生成した。
【0411】
【0412】
さらに、siRNAは、siRNA58のセンス鎖の5’末端で、NHC6リンカーを介して、以下に示されるGalNAc構造にコンジュゲートされた。
【化23】
【0413】
式XE
【0414】
次いで、修飾siRNA(以下、siRNA 58と称する)を、非ヒト霊長類において評価した。
【0415】
試験デザイン
未感作のオスのカニクイザル(各群でn=3)に、3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのsiRNA58、またはビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)のいずれかの単回用量を1日目に皮下(SC)投与した。
【0416】
血清サンプルは、-5、-1、3、8、15、22、29、40、57、67、82、97、112、127、142、157、172、および184日で採取されるように計画が立てられた(陰性対照は、siRNA 58またはビヒクルを注射される前の日に相当する)。血清中のC3タンパク質のレベルは、ELISAアッセイを使用して測定された。さらに、血清サンプルは、補体第二経路の活性(AH50)についても分析された。-1日目の値を基準として使用した。
【0417】
肝臓針生検を、15、46および79日目に実施した。サンプル中のC3 mRNAのレベルは、定量的PCRアッセイを使用して測定された。これらの実験において、C3 mRNAレベルは、ActB mRNAレベルに対して正規化された。
【0418】
結果
図3は、各群について投与から最大67日間の血清C3タンパク質のレベルの時間経過を示す。結果から、siRNA58の単回SC投与によって、基準値と比較し、29日目までに3mg/kg用量で77%まで、10mg/kg用量で85%まで、および30mg/kg用量で90%まで血清C3タンパク質レベルを低下させたことが示され、15日目までに、これらレベルに近い低下が明白であった。さらに、
図3のデータは、低下が67日目まで持続したことを示す。
【0419】
図4は、siRNA58の単回投与によって、ビヒクル対照と比較して、15日目までに、3mg/kg用量で89%まで、10mg/kg用量で97%まで、および30mg/kg用量で99%まで、肝臓C3 mRNAを低下させたことが示される。低下は、46日目でも維持された(
図5)。
【0420】
図6は、67日目まで回収された血清中の補体第二経路(AH50)活性のレベルに関する時間経過を示す。結果から、siRNA58の単回SC投与によって、基準値と比較し、29日目までに3mg/kg用量で65%まで、10mg/kg用量で82%まで、および30mg/kg用量で92%まで補体第二経路の活性レベルが低下したことが示され、15日目までに、低下はこれらレベルに達していた。さらに、活性の低下は67日目でも維持されており、基準値と比較して、活性は、3mg/kg用量で68%まで、10mg/kg用量で91%まで、30mg/kg用量で98%まで低下していた。
【0421】
実施例5:非ヒト霊長類におけるsiRNA60のインビボ評価
siRNA構築物
実施例3のsiRNA32を選択し、以下に記載されるようにさらに修飾して、siRNA60を生成する。
【0422】
【0423】
さらに、siRNAを、siRNA60のセンス鎖の5’末端で、NHC6リンカーを介して、以下に示されるGalNAc構造にコンジュゲートする。
【化24】
【0424】
式XE
【0425】
修飾siRNA(以下、siRNA 60と称する)を、非ヒト霊長類において評価する。
【0426】
試験デザイン
未感作のオスカニクイザル(各群でn=3)に、3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのsiRNA60、またはビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)のいずれかの単回用量を1日目に皮下(SC)投与する。
【0427】
血清サンプルは、-5、-1、3、8、15、22、29、40、57、67、82、97、112、127、142、157、172、および184日で採取される(陰性対照は、siRNA 60またはビヒクルを注射される前の日に相当する)。血清中のC3タンパク質のレベルは、ELISAアッセイを使用して測定される。さらに、血清サンプルは、補体第二経路の活性(AH50)についても分析される。-1日目の値を基準として使用する。
【0428】
肝臓針生検を、15、46および79日目に実施する。サンプル中のC3 mRNAのレベルは、定量的PCRアッセイを使用して測定される。これらの実験において、C3 mRNAレベルは、ActB mRNAレベルに対して正規化される。
【0429】
実施例6:siRNA 58のオフターゲット分析および安全性
siRNA 58のセンス鎖およびアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を、潜在的なオフターゲット活性について分析した(Lindow et al.2012)。センス鎖およびアンチセンス鎖の潜在的なオフターゲット活性は、成熟ヒトRNAおよび一次ヒトRNAにおいて分析された。
【0430】
方法
分析された配列は以下の通りであった。
アンチセンス(ガイド)鎖:5’-uguagguucauguaguuggcu-3’(配列番号321)
センス(パッセンジャー)鎖:5’-ccaacuacaugaaccuaca-3’(配列番号147)
【0431】
アンチセンス鎖(成熟ヒトRNA):潜在的なオフターゲット遺伝子を特定するために、以下のパラメータを用いて、FASTAパッケージ(v36;Pearson 2000)中のSmith-Watermanのギャップ化ローカルアラインメント(sSearch)を使用して類似性検索を実施した。
-E E値は、5000未満。Eは、このサイズのデータベースを検索するときに偶然判明することが予測され得る検索ヒット数に相当する。比較的高い数を使用することで、すべての潜在的なハイブリダイゼーションオフターゲット配列が確実に検出されるようになる。
-W(アライメントに隣接する位置の数)は、5に設定される
-n 核酸検索用
-fおよび-gは、ギャップ生成用であり、伸長ペナルティを1000に設定し、ギャップ化アライメントを回避する
ssearch36-n-W 5-E 5000-f 1000-g 1000 query refMrna.fa
【0432】
アンチセンス鎖(一次ヒトRNA):核内の潜在的なオフターゲット効果を伴う遺伝子を特定するために、オリゴヌクレオチド配列と一次RNA(スプライシングされておらず、イントロンを含有する)のマッチングをプローブした。具体的には、以下のパラメータを用いて、ヒトゲノム(バージョンhg38)に対し、FASTAパッケージ(v36;Pearson 2000)中のSmith-Watermanのギャップ化ローカルアラインメント(sSearch)を使用してこれら類似性検索を実施した。
-E E値は、5000未満。Eは、このサイズのデータベースを検索するときに偶然判明することが予測され得る検索ヒット数に相当する。比較的高い数を使用することで、すべての潜在的なハイブリダイゼーションオフターゲット配列が確実に検出されるようになる。
-W(アライメントに隣接する位置の数)は、5に設定される
-n 核酸検索用
-fおよび-gは、ギャップ生成用であり、伸長ペナルティを1000に設定し、ギャップ化アライメントを回避する
ssearch36 -n -W 5-E 5000-f 1000-g 1000 query refGene.fa
【0433】
ゲノムアライメントは、各配列が見出された参照ゲノム中の位置を特定することができるが、参照ゲノムそれ自体は、遺伝子および遺伝子体の位置を含有していない。したがって、どの遺伝子がハイブリダイゼーションの可能性を有するかについての情報を得るために、アライメントを行った後、ヒットのsSearchゲノム座標をbedファイル形式に変換し、bedtools(v2.28.0)インターセクトを使用して、遺伝子内ヒットをそれら遺伝子にアノテーションした。遺伝子の位置は、UCSC genome browser Table Viewer for Gencodev32、およびhg38から、「Gene and gene predictions table」より取得した。以下のコマンドを、bedtoolsを用いたアノテーションに使用した:
bedtools intersect-a hitBedFile.bed-b geneBedFile.bed-wo
-aおよび-bは、入力を記号で表している
-woは、遺伝子名を取得するために必要なヒットと完全アノテーションの両方についての元の位置を書き出している
【0434】
センス鎖(成熟ヒトRNA):潜在的なオフターゲット遺伝子を特定するために、以下のパラメータを用いて、FASTAパッケージ(v36;Pearson 2000)中のSmith-Watermanのギャップ化ローカルアラインメント(sSearch)を使用して類似性検索を実施した。
-E E値は、5000未満。Eは、このサイズのデータベースを検索するときに偶然判明することが予測され得る検索ヒット数に相当する。比較的高い数を使用することで、すべての潜在的なハイブリダイゼーションオフターゲット配列が確実に検出されるようになる。
-W(アライメントに隣接する位置の数)は、5に設定される
-n 核酸検索用
-fおよび-gは、ギャップ生成用であり、伸長ペナルティを1000に設定し、ギャップ化アライメントを回避する
【0435】
検索は、(1)11を超える最長の連続相補性(短いセンス配列であるために、13から低下)、および16を超えるマッチング数(2個または1個のミスマッチ)、ならびに/または(2)16個のマッチング(3個のミスマッチ)を有する14bp以上の連続相補性、を有する成熟RNA配列を探索するために実施された。
【0436】
センス鎖(一次ヒトRNA):核内の潜在的なオフターゲット効果を伴う遺伝子を特定するために、オリゴヌクレオチド配列と一次RNA(スプライシングされておらず、イントロンを含有する)のマッチングをプローブした。具体的には、以下のパラメータを用いて、ヒトゲノム(バージョンhg38)に対し、FASTAパッケージ(v36;Pearson 2000)中のSmith-Watermanのギャップ化ローカルアラインメント(sSearch)を使用してこれら類似性検索を実施した。
-E E値は、5000未満。Eは、このサイズのデータベースを検索するときに偶然判明することが予測され得る検索ヒット数に相当する。比較的高い数を使用することで、すべての潜在的なハイブリダイゼーションオフターゲット配列が確実に検出されるようになる。
-W(アライメントに隣接する位置の数)は、5に設定される
-n 核酸検索用
-fおよび-gは、ギャップ生成用であり、伸長ペナルティを1000に設定し、ギャップ化アライメントを回避する
ssearch36-n-W 5-E 5000-f 1000-g 1000 query refGene.fa
【0437】
Argonautによって、どの遺伝子が一次mRNAについてオフターゲット切断の可能性を有するかについての情報を得るために、アライメントを行った後、ヒットのsSearchゲノム座標をbedファイル形式に変換し、bedtools(v2.28.0)インターセクトを使用して、遺伝子内ヒットをそれら遺伝子にアノテーションした。遺伝子の位置は、UCSC genome browser Table Viewer for Gencodev32、およびhg38から、「Gene and gene predictions table」より取得した。以下のコマンドを、bedtoolsを用いたアノテーションに使用した:
bedtools intersect-a hitBedFile.bed-b geneBedFile.bed-wo
-aおよび-bは、入力を記号で表している
-woは、遺伝子名を取得するために必要なヒットと完全アノテーションの両方についての元の位置を書き出している
【0438】
遺伝子解析:上記の検索に基づいて特定された遺伝子をさらに分析して、なんらかの潜在的な安全性リスクについて解明した。オリゴヌクレオチド薬剤蓄積の主要器官、すなわち肝臓および腎臓における遺伝子発現を評価した。GTExヒト組織発現アトラス(GTEx Consortium 2013)を使用して、GTExの各対象における各遺伝子について、log2変換された100万当たりの転写物(TPM)発現値を計算し、各遺伝子についての中央値を得た。値:3未満は、非常に低い発現を示す。3~4は、低い発現を示す。4~6は、中程度の発現を示し、6を超えると、高い発現を示す。
【0439】
次に、各標的の完全なノックダウンまたは部分的なノックダウンと疾患の関連性のエビデンスについての検索を行った。標的の完全なノックダウンの存在下での疾患のエビデンスを検証するために、Online Mendelian Inheritance of Manデータベース(OMIM;Hamosh et al.2002)を使用して、稀な生殖系列細胞変異とヒト遺伝子障害との関連性を見出した。特に、上位の遺伝子オフターゲットヒットのほとんどが、RNAi効率を著しく減弱させるミスマッチを複数含有していた。ほとんどのヒト常染色体遺伝子は、投薬特異的ではなく(Rice & McLysaght 2017)、一つのアレルの不活化を行ってもいずれの表現型も導かれないが、投薬特異的効果のエビデンスに関する追加的な検索を、ClinGen(https://search.clinicalgenome.org/)を使用して実施した。ClinGenは、ハプロ不全と、トリプロ感受性(triplosensitivite)の投薬特異的遺伝子の両方についての情報を収集している。
【0440】
結果:
アンチセンス鎖:siRNA 58のアンチセンス鎖の唯一の完璧な相補性ヒットは、標的のC3である。一次RNAと成熟RNAの中で次位のベストマッチはすべて3個以上のミスマッチを有していたことから、ハイブリダイゼーション依存性のオフターゲット効果は著しく低減すると予想される。上位のオフターゲット候補のほとんどが、肝臓および腎臓で低発現を呈し、および/またはヒトの遺伝的障害との関連性を示さなかった。唯一の例外はRABL3であり、特異的な機能獲得性の切断突然変異が、ある家族における遺伝性膵癌症候群と関連していた。siRNA58によるRABL3のノックダウンの可能性は、この新規機能獲得性の突然変異を模倣するとは予想されない。
【0441】
センス鎖:siRNA58のセンス鎖に対して相補的な配列の中で、一次ヒトRNAおよび成熟ヒトRNAの中で完全な相補性合致はなかった。センス鎖に対する相補性を有する遺伝子のほとんどは、ヒトの肝臓でも腎臓でも明白には発現しておらず、センスオリゴヌクレオチドに対して一つのミスマッチのみを有するGPR173を含み、公知の遺伝的障害にも関連していなかった。
【0442】
実施例7:ラットにおけるsiRNA 59のインビボ評価
siRNA構築物
実施例3のsiRNA33を、以下に記載されるようにさらに修飾して、siRNA59を生成した。
【0443】
【0444】
さらに、siRNAは、siRNA59のセンス鎖の5’末端で、NHC6リンカーを介して、以下に示されるGalNAc構造にコンジュゲートされた。
【化25】
【0445】
式XE
【0446】
次いで、修飾siRNA(以下、「siRNA 59」と称する)を、Sprague-Dawleyラットにおいて評価した。
【0447】
目的:この試験の目的は、Sprague-Dawleyラットに単回皮下注射として投与したときの、三つの用量レベルでのsiRNA 59の血漿薬物動態(PK)および限定的な組織分布を判定することであった。本試験の第二の目的は、単回皮下注射として投与されたsiRNA59の三つの用量レベルについて、薬理学的効果を、三日間(一日一回投与)にわたって投与された同等用量と比較することであった。
【0448】
方法
【0449】
【0450】
投与:1~3群および8群の動物に、PBSビヒクル、または3、10もしくは30mg/kgのsiRNA59の単回皮下注射を投与した。それぞれ、PBS中、0.6、2および6mg/mlの濃度で製剤化され、5mlの投与体積であった。4~7群の動物に、10mg/mlのsiRNA(-)対照、または1、3.3もしくは10mg/mlのsiRNA59を3回、1日1回の皮下注射で投与した。それぞれ、PBS中、0.2、0.6、および2mg/mlの濃度で製剤化され、5mlの投与体積であった。
【0451】
サンプリング:PD解析については、血漿サンプルおよび血清サンプルを、基準時、ならびに投与から3、8、15、22および29日目に収集した。 血漿サンプルを、投与から15分、ならびに1、4、8、24、48および72時間で採取した。 投与から3日目および30日目の解剖時に、肝臓サンプルを採取した。
【0452】
生物学的分析方法:血漿PDサンプルを、メーカーの説明書(Eagle Biosciences社、1:10,000の血漿希釈)に従い、二重抗体サンドイッチELISAキットを使用して、Confluence Discovery Technologies社(USA、ミズーリ州)でC3タンパク質濃度について分析した。
【0453】
血清PDサンプルは、AP Wieslab assay(Eagle Biosciences社、Cat# COMPL AP330)を使用して、Confluence Discovery Technologies社(USA、ミズーリ州)で第二経路(AP)補体活性化について分析した。
【0454】
PD組織サンプルを、EpigenDx社(USA、マサチューセッツ州)で、半実証(semi-validated)RT-qPCR法を使用してC3 mRNAレベルについて分析した。
【0455】
結果
循環C3:血漿を5つの時点で採取し、C3濃度の変化を評価した。siRNAに対する明白な用量依存性応答が、用量群全体で認められた(
図7)。C3タンパク質低下の最大値は、すべての用量群について試験8日目までに達成された。血漿C3濃度データは、単回投与処置群とQDx3同等用量群との間で、同等であった。血漿C3タンパク質の基準レベルへの完全回復は、3mg/kg用量群のみで観察された。10および30mg/kgの用量群は、29日目の最終採血まで、それぞれの基準C3タンパク質レベルにまで完全には回復していないように思われた。
【0456】
第二経路補体活性:siRNA 59およびビヒクルの単回投与で処置された各動物の血清、ならびに複数用量のsiRNA(-)対照処置動物の血清を、AP Wieslabアッセイで使用した。当該アッセイは、ELISAベースのアッセイであり、第二経路活性化後のC5b-9の形成を測定して、補体活性化を評価するものである(
図8)。
図8は、ビヒクル(A)、siRNA(-)対照(B)、3mg/kgのsiRNA59(C)、10mg/kgのsiRNA 59(D)、および30mg/kgのsiRNA 59(E)を用いて皮下処置された動物の血清における、ELISA(光学密度測定;OD)を使用した可溶性C5b-9複合体の検出と定量による第二経路活性の測定値を示す。データは、平均±SEM(n=3)を表す。血清APの補体活性は、対照群間で変動が大きかった。高用量のsiRNA59群の血清は、第二経路活性において約90%の平均低下であり、投与後8日目から15日目まで持続した。
【0457】
肝臓組織におけるC3転写物:本試験の両方の最終時点で、肝臓におけるC3 mRNAの低下が、用量依存的に観察された(
図9)。処置から3日目の単回投与PK動物群における肝臓C3 mRNAのレベルは、ビヒクル対照におけるC3発現と比較して有意に低下した。30mg/kgのsiRNA59で処置された動物では、肝臓における平均C3発現は、ビヒクル処置群における遺伝子発現の3%であり、30日目までに25%に上昇した。30日目の試験終了までにC3発現が完全に回復した処置動物はいなかった。
【0458】
考察:siRNA59の皮下投与後に、血漿中のC3タンパク質、および肝臓組織内のC3 mRNAの明白な用量依存性の低下が観察された。それに加えて、siRNA59を単回の皮下ボーラスとして投与したとき、および3日間にわたり1日1回の注射として投与したときに観察された用量反応性も類似していた。C3血漿タンパク質濃度および肝臓のmRNA発現は、それぞれ29日目および30日目までに低用量群のみで回復した。
【0459】
C3の血漿タンパク質レベルおよび肝臓遺伝子発現は、単回投与群と、その複数投与同等群の間で、全ての時点で同等であった。10mg/kgの投与後、C3血漿タンパク質濃度が約90%低下したにもかかわらず、高用量動物の血清を除き、いずれの投与群でもAP Wieslab活性の変化は観察されなかった。いずれの処置群の動物でも、苦痛または行動の変化の兆候は見られず、TA投与後に体重減少は観察されなかったことから、本試験で使用された用量は忍容性良好であることが示唆された。
【0460】
これらの結果は、C3を標的とするGalNAcタグ付けsiRNAを用いた治療後、全身循環C3タンパク質は用量依存性にサイレンシングされ得ることを示す。
【0461】
均等
当分野の当業者であれば、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多数の均等物を、通常の実験の範囲内で認識することができ、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることは意図されず、以下の請求の範囲に記載される。
【配列表】
【国際調査報告】