(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ナノファイバーを含む滅菌可能な多孔質濾過媒体
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20230330BHJP
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B01D 69/02 20060101ALI20230330BHJP
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D01D 5/08 20060101ALI20230330BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230330BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B01D39/16 A
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B01D69/02
B01D71/16
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B01D71/34
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B01D71/42
B01D71/46
B01D71/48
B01D71/52
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B01D71/68
B01D71/62
D01D5/04
D01D5/08 D
D04H1/728
B32B5/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549461
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021017211
(87)【国際公開番号】W WO2021167814
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サタフ,ニティン
(72)【発明者】
【氏名】カディ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シャオジュウ
(72)【発明者】
【氏名】チャトパディヤイ,サプタルシ
(72)【発明者】
【氏名】トリン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】カス,オヌル・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ニエム,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4F100
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
4D006GA02
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(57)【要約】
滅菌可能な多孔質濾過媒体、並びにそれを製造する方法及びそれを使用する方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を製造するための方法であって、該多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体を、少なくとも1時間該ナノファイバーの少なくともガラス転移温度(T
g)であるが、該ナノファイバーの溶融温度(T
m)以下まで加熱することを含む、方法。
【請求項2】
ポリマー溶液又は溶融物を電界紡糸して、多孔質で不織のポリマーナノファイバーマットを製造することにより、液体濾過媒体が作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体濾過媒体が、滅菌前に少なくとも1時間前記ナノファイバーの少なくともガラス転移温度(T
g)であるが、溶融温度(T
m)以下まで加熱されていない対応する濾過媒体と比較して、液体透過性の滅菌後の変化に抵抗する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体濾過媒体が、5psi~150psiのバブルポイント圧を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体濾過媒体が、ASTM F838-83に従って測定された少なくとも1というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体濾過媒体が、約80%~約95%までの多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体濾過媒体が、約1000LMH/psiを超える液体透過性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体濾過媒体が、滅菌後に液体透過性の40%以下の減少を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ナノファイバーが、約5nm~約1000nmまでの繊維直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記液体濾過媒体が、1)対称ナノファイバーマット、又は2)ナノファイバーマットの1つの層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるように、ナノファイバーマットの厚さにわたって変化する繊維直径を示す非対称ナノファイバーマットのいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
平均繊維直径が、非対称ナノファイバーマットの1つの層から他の層へと連続的に変化する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非対称ナノファイバーマットの1つの層の他の層に対する平均繊維直径の比が少なくとも1.15である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
平均繊維直径が、非対称ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nm~約1000nmである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)及びそれらのコポリマー、誘導体化合物又はブレンドから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが脂肪族ポリアミドである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6,6-6,10、ナイロン-6コポリマー、ナイロン-6,6コポリマー、ナイロン6,6-6,10コポリマー、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーがナイロン-6,6である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ナノファイバーマットをT
mより約1℃~約80℃下まで加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ナノファイバーマットをT
mより約56℃下まで加熱することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ナノファイバーマットをT
mより約75℃下まで加熱することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ナノファイバーマットをT
gより約100℃~約200℃上まで加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
ナノファイバーマットを不活性雰囲気オーブンなどの非酸化環境で加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ナノファイバーマットを少なくとも約1時間~少なくとも約24時間加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体が、多孔質又は非多孔質支持体の表面上に電界紡糸される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
請求項1の方法により製造された液体濾過媒体。
【請求項26】
請求項25に記載の液体濾過媒体を含む液体濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/977,884号の優先権の利益を主張しており、その全内容がそっくりそのまま本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品業界におけるほとんどの濾過用途では、医薬品製造業者が実施する滅菌工程又はフィルター製造業者が実施する滅菌前工程が必要である。滅菌工程には、例えば、スチーム・イン・プレース(steam-in-place)又はオートクレーブ滅菌のいずれかが含まれ得る。これらの滅菌方法は、膜及び濾過装置に高温又は高エネルギーのいずれかを働かせる。さらに、臨界濾過用途に販売されているほとんどの装置は100%の完全性試験を経ており、そのことは販売されている全ての装置が少なくとも1回は試験を受けることを意味する。そのような完全性試験のほとんどは、装置内部の濾過媒体の湿潤、続いて試験及び乾燥が必要である。これらの臨界濾過用途にうまく機能するためには、膜構造がこれらの過酷な条件に耐えることが必要である。残念なことに、現行のナノファイバーベースの液体濾過膜では、膜構造の安定性及び性能は、湿潤/乾燥サイクルにより、加熱あり(オートクレーブ処理など)及び加熱なし(完全性試験など)の両方で負の影響を受ける。
【発明の概要】
【0003】
湿熱滅菌(例えば、オートクレーブ処理、スチーム・イン・プレース滅菌、及び/又はティンダリゼーション(tyndallization))を含む任意の湿潤乾燥プロセス後に高い透過性及び保持を示すナノファイバー構造(例えば、ナノファイバーマット)に関係する方法及び組成物が、本明細書中に提供される。
【0004】
いくつかの態様において、湿熱滅菌に適合する多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を製造する方法であって、多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体を、ナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで、少なくとも温度ランプアップ(ramp-up)及びクールダウンを含まない、加熱媒体との熱平衡を達成するのに必要な時間の間加熱することを含む方法が本明細書に提供される。
【0005】
いくつかの態様において、湿熱滅菌に適合し、ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下の温度で、温度ランプアップ及びクールダウンを含まない、熱平衡に必要な時間の間加熱された多孔質のポリマーナノファイバーマットを含む液体濾過媒体が本明細書に提供される。
【0006】
特定の態様において、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を滅菌する方法であって、液体濾過媒体をポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで少なくとも1時間加熱し、熱処理された液体濾過媒体を、湿熱滅菌を用いて滅菌することを含む方法が本明細書に提供される。
【0007】
さらなる態様において、液体試料から細菌を除去する方法であって、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、ポリマーポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで少なくとも1時間加熱し、液体濾過媒体を、湿熱滅菌を使用して滅菌し、細菌を含有する液体試料を滅菌された液体濾過媒体に通すことを含む方法が本明細書に開示される。
【0008】
本明細書に提供される特定の態様は、液体試料からウイルス粒子を除去する方法を含み、該方法は、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで、少なくとも熱平衡に達するのに必要な時間の間加熱し、液体濾過媒体を、湿熱滅菌を使用して滅菌し、ウイルス粒子を含有する液体試料を滅菌された液体濾過媒体に通すことを含む。
【0009】
したがって、特定の態様において、本明細書に開示された方法に従って調製されるオートクレーブ処理可能な多孔質で不織のナノファイバーの液体濾過媒体、及びそのような液体濾過媒体を含む、臨界濾過用途において使用するための臨界濾過装置が本明細書に提供される。特定の実施形態において、そのような液体濾過媒体は、滅菌濾過(無菌)用途において特に使用される。
【0010】
一態様において、本発明は、完全性試験又は湿熱滅菌などの任意の湿潤及び乾燥プロセスに適合する多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を製造するための方法であって、多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体を、ナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで少なくとも1時間加熱することを含む方法である。
【0011】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ポリマー溶液又は溶融物を電界紡糸して、多孔質で不織のポリマーナノファイバーマットを製造することによって作成される。
【0012】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、滅菌前に少なくとも1時間、ナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで加熱されていない対応する濾過媒体に対して、滅菌後の液体透過性の変化に抵抗する。
【0013】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は5psi~150psi(psig)のバブルポイント圧を示す。
【0014】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は15psi以上のバブルポイントを示す。
【0015】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱されていない同じ液体濾過媒体と比較して、滅菌後のバブルポイントの変化が少ない。
【0016】
本発明の別の態様において、バブルポイントは、湿潤流体としてGalwick(R)を用いて測定する。
【0017】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、少なくとも1というブレブンジモナス・ジミヌタ(Brevundimonas diminuta)の対数減少値(LRV)を示す。
【0018】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、少なくとも4又は少なくとも8というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す。
【0019】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約80%~約95%の多孔度を有する。
【0020】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約1000LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0021】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約100LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0022】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約10LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0023】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱されていない同じ濾過媒体と比較して、滅菌後のより高い液体透過性を示す。
【0024】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、滅菌後に液体透過性の40%以下の減少を示す。
【0025】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、滅菌後に液体透過性の30%以下の減少を示す。
【0026】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、滅菌後に液体透過性の15%以下の減少を示す。
【0027】
本発明の別の態様において、ナノファイバーは、約5nm~約1000nmの繊維直径を有する。
【0028】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、1)対称ナノファイバーマット、又は2)ナノファイバーマットの1つの層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるように、ナノファイバーマットの厚さにわたって変化する繊維直径を示す非対称ナノファイバーマットを含む。
【0029】
本発明の別の態様において、平均繊維直径は、非対称ナノファイバーマットの1つの層から他の層へと連続的に変化する。
【0030】
本発明の別の態様において、非対称ナノファイバーマットの1つの層の他の層に対する平均繊維直径の比は、少なくとも1.15である。
【0031】
本発明の別の態様において、平均繊維直径は、非対称ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nm~約1000nmである。
【0032】
本発明の別の態様において、平均繊維直径は、非対称ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nm~約150nmである。
【0033】
本発明の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約100nmである。
【0034】
本発明の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nmである。
【0035】
本発明の別の態様において、ポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)及びそれらのコポリマー、誘導体化合物又はブレンドから選択される。
【0036】
本発明の別の態様において、ポリマーは脂肪族ポリアミドである。
【0037】
本発明の別の態様において、ポリマーは、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6,6-6,10、ナイロン-6コポリマー、ナイロン-6,6コポリマー、ナイロン6,6-6,10コポリマー、及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0038】
本発明の別の態様において、ポリマーはナイロン-6,6である。
【0039】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットをTmより約1℃~約80℃下まで加熱することを含む。
【0040】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットをTmより約56℃下まで加熱することを含む。
【0041】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットをTmより約75℃下まで加熱することを含む。
【0042】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットをTgよりも約100℃~約200℃上まで加熱することを含む。
【0043】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットをTgよりも約140℃~約158℃上まで加熱することを含む。
【0044】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットを約190℃~約208℃まで加熱することを含む。
【0045】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットを約208℃まで加熱することを含む。
【0046】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットを不活性雰囲気オーブンなどの非酸化環境において加熱することを含む。
【0047】
本発明の別の態様において、この方法は、ナノファイバーマットを少なくとも約1時間~少なくとも約24時間加熱することを含む。
【0048】
本発明の別の態様において、この方法は、濾過媒体を少なくとも約12時間加熱することを含む。
【0049】
本発明の別の態様において、この方法は、完全性試験などの任意の湿潤及び乾燥プロセスを含み、湿熱滅菌はオートクレーブ処理、スチーム・イン・プレース滅菌、及び/又はティンダリゼーションを含む。
【0050】
本発明の別の態様において、多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体は、多孔質支持体又は非多孔質支持体の表面上に電界紡糸される。
【0051】
本発明の別の態様において、ナノファイバーマットは多孔質支持体又は非多孔質支持体の表面上に電界紡糸され、多孔質で不織の支持体の表面の二乗平均平方根高さは約70μm未満である。
【0052】
本発明の別の態様において、支持体は、メルトブローイング(melt-blowing)、ウェットレイング(wet-laying)、スピン結合、カレンダリング、電界紡糸、エレクトロブローイング(electro-blowing)、又はそれらの任意の組合せによって製造される1つ以上の層を含む。
【0053】
本発明の別の態様において、支持体は、熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリマー、ポリマーブレンド、セルロース系及びそれらの組み合わせを含む。
【0054】
本発明の別の態様において、ナノファイバー層の最も目が詰まった孔径は、多孔質の不織支持体の最も目が詰まった孔径よりも小さい。
【0055】
本発明の別の態様において、多孔質支持体は、スパンボンド(spunbonded)不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ(needle punched)不織布、スパンレース(spunlaced)不織布、ウェットレイド不織布、レジンボンド不織布、電界紡糸不織布、エレクトロブロー不織布、織布、ニット布、紙、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の層を含む。
【0056】
別の態様において、本発明は、本発明の方法に従って調製されたオートクレーブ処理可能な多孔質で不織のナノファイバーの液体濾過媒体に関する。
【0057】
一態様において、本発明は、完全性試験又は湿熱滅菌などの任意の湿潤及び乾燥プロセスに適合し、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下である温度で加熱された多孔質ポリマーナノファイバーマットを含む液体濾過媒体である。
【0058】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ポリマー溶液又は溶融物を電界紡糸して、多孔質で不織のポリマーナノファイバーマットを製造することによって作成される。
【0059】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱されていないナノファイバーマットを含む対応する濾過媒体と比較して、滅菌後の液体透過性の変化に対して抵抗性である。
【0060】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、5psi~150psiのバブルポイント圧を示す。
【0061】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は15psi以上のバブルポイントを示す。
【0062】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱されていないナノファイバーマットを含む同じ液体濾過媒体と比較して、滅菌後のバブルポイントの変化が少ない。
【0063】
本発明の別の態様において、バブルポイントは、湿潤流体としてGalwick(R)を用いて測定する。
【0064】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、少なくとも1というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す。
【0065】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、少なくとも4というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す。
【0066】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、少なくとも8というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す。
【0067】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約80%~約95%の多孔度を有する。
【0068】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に約1000LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0069】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に約100LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0070】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に約10LMH/psiを超える液体透過性を示す。
【0071】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱されていないナノファイバーマットを含む対応する液体濾過媒体と比較して、滅菌後により高い液体透過性を示す。
【0072】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に液体透過性の40%以下の減少を示す。
【0073】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に液体透過性の30%以下の減少を示す。
【0074】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に液体透過性の15%以下の減少を示す。
【0075】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、湿熱滅菌後に液体透過性の有意な変化を示さない。
【0076】
液体濾過媒体の別の態様において、液体濾過媒体のナノファイバーマットは、約5nm~約1000nmの繊維直径を有する。
【0077】
液体濾過媒体の別の態様において、液体濾過媒体は、1)非対称なナノファイバーマット又は2)ナノファイバーマットの1つの層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるように、ナノファイバーマットの厚さにわたって変化する繊維直径を示す非対称なナノファイバーマットを含む
【0078】
液体濾過媒体の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの1つの層から他の層へと連続的に変化する。
【0079】
液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットの1つ層の他の層に対する平均繊維直径の比は、少なくとも1.15である。
【0080】
液体濾過媒体の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nm~約1000nmである。
【0081】
液体濾過媒体の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nm~約100nmである。
【0082】
液体濾過媒体の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約100nmである。
【0083】
液体濾過媒体の別の態様において、平均繊維直径は、ナノファイバーマットの少なくとも1層について約5nmである。
【0084】
液体濾過媒体の別の態様において、ポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)及びそれらのコポリマー、誘導体化合物又はブレンドから選択される。
【0085】
液体濾過媒体の別の態様において、ポリマーは脂肪族ポリアミドである。
【0086】
液体濾過媒体の別の態様において、ポリマーは、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6,6-6,10、ナイロン-6コポリマー、ナイロン-6,6コポリマー、ナイロン6,6-6,10コポリマー、及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0087】
液体濾過媒体の別の態様において、ポリマーはナイロン-6,6である。
【0088】
別の態様において、ナノファイバーマットをTmより約1℃~約80℃下まで加熱した。
【0089】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットをTmより約56℃下まで加熱した。
【0090】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットをTmより約75℃下まで加熱した。
【0091】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットをTgより約100℃~約200℃上まで加熱した。
【0092】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットをTgより約140℃~約158℃上まで加熱した。
【0093】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを約190℃~約208℃まで加熱した。
【0094】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを約208℃まで加熱した。
【0095】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを不活性雰囲気オーブンなどの非酸化性環境で加熱した。
【0096】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを少なくとも約1時間~少なくとも約24時間加熱した。
【0097】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを少なくとも約12時間加熱した。
【0098】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、完全性試験、湿熱滅菌のような湿潤及び乾燥プロセスは、オートクレーブ処理、スチーム・イン・プレース滅菌、及び/又はティンダリゼーションを含む。
【0099】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、多孔質で不織布のナノファイバー含有液体濾過媒体を、多孔質支持体又は非多孔質支持体の表面上に電界紡糸する。
【0100】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバーマットを多孔質支持体又は非多孔質支持体の表面上に電界紡糸し、多孔質で不織の支持体の表面の二乗平均平方根高さは約70μm未満である。
【0101】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、支持体は、メルトブローイング、ウェットレイング、スピン結合、カレンダリング、電界紡糸、エレクトロブローイング、又はそれらの任意の組合せによって製造される1つ以上の層を含む。
【0102】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、支持体は、熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリマー、ポリマーブレンド、セルロース系及びそれらの組み合わせを含む。
【0103】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、ナノファイバー層の最も目が詰まった孔径は、多孔質の不織支持体の最も目が詰まった孔径よりも小さい。
【0104】
本発明の液体濾過媒体の別の態様において、多孔質支持体は、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、ウェットレイド不織布、レジンボンド不織布、電界紡糸不織布、エレクトロブロー不織布、織布、ニット布、紙、及びそれらの組合せからなる群より選択される1以上の層を含む。
【0105】
別の態様において、本発明は、本発明の方法に従って調製されたオートクレーブ可能な多孔質で不織のナノファイバーの液体濾過媒体を含む。
【0106】
別の態様において、本発明は、本発明の多孔質複合媒体の1つ以上の層を含む臨界濾過において使用するための濾過装置を含む。
【0107】
一態様において、本発明は、目が詰まった層及び孔だらけの層を有し、目が詰まった層と孔だらけの層との間にサイズが大きくなる多孔質非対称平板膜プレフィルター、及び多孔質非対称平板膜の目が詰まった層上に位置する請求項48~97のいずれか一項に記載の液体濾過媒体を含む保持層を含み、保持層の孔径は多孔質非対象平板膜プレフィルターの目が詰まった層の孔径より小さい。
【0108】
別の態様において、多孔質複合媒体は、液体で測定された、多孔質平板膜プレフィルター単独のバブルポイントより少なくとも20%大きいバブルポイントを有する。
【0109】
別の態様において、多孔質複合媒体は、約10psi~約130psiの範囲のイソプロパノールに対する平均流れ圧力を有する。
【0110】
別の態様において、多孔質複合媒体は、溶液相反転、熱開始相分離、水蒸気誘起相分離、トラック(track)エッチング、二軸延伸、溶媒エッチング、及びそれらの組合せによって製造される1つ以上の層を含む多孔質非対称ポリマー平板膜を有する。
【0111】
別の態様において、本発明は、本発明の多孔質複合媒体を含む、臨界濾過に使用される濾過装置に関する
【0112】
別の態様において、濾過装置は、多孔質非対称ポリマー平板膜が、濾過の方向において、保持フィルター層の上流にあるように、装置内に配置された複合濾過媒体を有し、それによって多孔質非対称平板膜は試料の予備濾過を提供し、保持フィルター層は試料のさらなる濾過を提供する。
【0113】
一態様において、本発明は、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を滅菌する方法に関し、この方法は、液体濾過媒体を、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで加熱し、熱処理された液体濾過媒体を、湿熱滅菌を使用して滅菌することを含む。
【0114】
一態様において、本発明は、液体試料から細菌を除去する方法であって、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで加熱し、液体濾過媒体を、湿熱滅菌を使用して滅菌し、細菌を含有する液体試料を滅菌された液体濾過媒体に通すことを含む方法に関する。
【0115】
一態様において、本発明は、液体試料からウイルス粒子を除去する方法であって、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、少なくとも1時間ポリマーナノファイバーの少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下まで加熱し、液体濾過媒体を、湿熱滅菌を使用して滅菌し、ウイルス粒子を含有する液体試料を滅菌液体濾過媒体に通すことを含む方法に関する。
【0116】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約6を超えるウイルス対数減少値(LRV)を示す。
【0117】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約3を超えるウイルス対数減少値(LRV)を示す。
【0118】
本発明の別の態様において、液体濾過媒体は、約2を超えるウイルス対数減少値(LRV)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】
図1は、滅菌前の熱処理なし(左)又は滅菌前の熱処理あり(右)のいずれかの、滅菌プロセスの前後における選択されたナノファイバー媒体の水透過性の違いを示している。斜線の棒ラベルは、滅菌後の水透過性の低下率(%)を示す。滅菌条件は3サイクルのオートクレーブ処理で、各サイクルは60分間135℃、その後15分間の乾燥時間となる。
【
図2】
図2は、水透過性の損失パーセントの主効果のプロットを描いたグラフである。各点は、滅菌前の熱処理なし(左)又は滅菌前の熱処理あり(右)のいずれかの各因子の平均損失パーセントを示す。
【
図3】
図3は、滅菌前の熱処理なし(上)又は滅菌前の熱処理あり(下)のいずれかの、滅菌プロセスの前後の選択したナノファイバー媒体の形態を示す代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図4】
図4は、熱処理された非対称ナイロン-66(N66)ナノファイバーマットでは、12回ものオートクレーブ処理サイクルの後でも、水透過性は変化しないままであることを示す。特に、マットのバブルポイント(BP)は最初の3回のオートクレーブ処理サイクル(AC-3x)後に増加し、追加のオートクレーブ処理サイクルの間一定のままである。そのようなマットは、15psiのBPで細菌に対し完全に保持力のあるままで測定された。
【
図5】
図5は、(a)滅菌前、(b)3回のオートクレーブ処理サイクル後、(c)9回のオートクレーブ処理サイクル後及び(d)12回のオートクレーブ処理サイクル後の熱処理された非対称ナイロン-66媒体において、複数のオートクレーブ処理サイクルがナノファイバーの形態を実質的に変化させないことを示す代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。繊維直径は、全ての条件で95~105nmの範囲であった。
【発明を実施するための形態】
【0120】
<概略>
【0121】
典型的には、多孔質濾過媒体は、ICH(International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)(医薬品規制調和国際会議)に示されたガイドラインの一部として、無菌用途前に滅菌される。無菌用途のための多孔質濾過媒体の滅菌に利用可能な全ての方法の中で、加圧下の飽和蒸気(スチーム・イン・プレース滅菌)又はオートクレーブ滅菌の形態の湿熱が最も広く使用されている。水蒸気(湿熱)滅菌は無毒で、安価で、迅速に殺菌し、殺胞子性であり、無菌用途に好ましい滅菌法である。しかし、このような滅菌方法は、無菌用途に重要な媒体の濾過特性に悪影響を及ぼす可能性がある。水蒸気滅菌を行わないナノファイバーベースの液体濾過膜(例えばマット)は、高い液体透過性及び微生物の保持を実証できる。しかし、本明細書で実証されるように、ナノファイバーベースの液体濾過膜の形態は、従来の水蒸気滅菌プロセスを含む湿潤-乾燥プロセスに供された場合に変化し得、潜在的に劇的な水透過性の損失をもたらすことがある。したがって、頑強で、室温での湿潤-乾燥プロセス(完全性試験に使用されるもののように)、水蒸気滅菌プロトコル並びに乾式滅菌プロトコル(例えば、ガンマ線照射)えることができる多孔質濾過媒体を設計することが不可欠である。
【0122】
特定の理論に拘束されることなく、ナノファイバーマットの崩壊は、完全性試験中(オートクレーブ滅菌プロセス前)、又はオートクレーブプロセス中の水蒸気凝縮によるマットへの侵入のいずれかにおいて、湿潤剤(例えば、水又は水及び/又はアルコール)が多孔質ナノファイバーマットの空隙を満たした後の乾燥プロセス中に起こる可能性がある。オートクレーブ滅菌サイクルには、典型的には、滅菌後の乾燥工程が含まれ、これは温度のランプダウン(ramp down)とともに起こる。そのような乾燥工程の間、ナノファイバーマットの細孔内の液面は急速に後退し、後退する液面の表面張力(ラプラス力)はナノファイバーを一緒に引っ張り、その結果、主にマットの厚さ(液体の蒸発方向)を横切って、多細孔質構造の三次元崩壊を生じる。この三次元崩壊はマットを圧縮し、多孔度を減少させ、その結果、水透過性が失われる。より小さな有効孔径を有するナノファイバーマット(すなわち、より細いナノファイバーを有するマット)では、より大きな孔径を有するマット(ナノファイバーがより大きな直径を有するマット)と比較して損失が大きい。このため、湿熱滅菌を含む湿潤及び乾燥プロセスの影響は、より細いナノファイバーを含む濾過媒体及びより高い保持保証を必要とする用途には特に重要である。
【0123】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている濾過媒体及びナノファイバーマットは、該ナノファイバーのポリマー分子量、配向、及び結晶性によって定義されるナノファイバーの機械的弾性率に影響を及ぼすことによって構造的崩壊に対抗する。ナノファイバー媒体の頑強性を高め、滅菌後の水透過性の変化に抵抗する能力を改善するこのような戦略には、例えば、プロセス変更、材料選択、及び/又は構造設計が含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態において、オートクレーブ処理後の影響は、熱処理、適切なナノファイバーポリマーの選択、及び/又は非対称フィルター構造の使用の組合せによって緩和され得る。
【0124】
したがって、特定の態様において、本明細書に開示された方法及び濾過媒体は、特にバイオ医薬品産業に密接な関係を有する。特定の態様において、水蒸気滅菌プロトコル(例えば、オートクレーブ処理)を含む湿潤-乾燥プロセスに耐えるのに十分に頑強なフィルター媒体を製造するために、及びその際に、特定の無菌濾過プロセスの処理時間及びコストを減少させるために、紡糸したままの多孔質濾過媒体と共に使用することができる方法が本明細書に提供される。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、湿熱滅菌後の崩壊に抵抗する(例えば、構造的完全性を保持する)ナノファイバー構造を作るために使用することができる。
【0125】
<定義>
【0126】
便宜上、本明細書、実施例及び添付の請求項において用いた特定の用語をここに集めた。
【0127】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図する。
【0128】
用語「約」とは、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味する。本明細書中で用いられる場合、「約」とは、与えられた値の10%以内の量を意味する。換言すれば、これらの値にはその値のまわりに0~10%の変動(X±10%)を持って、述べられた値が含まれる。
【0129】
ナノファイバーの「非対称な」配列又は「非対称なナノファイバーマット」は、濾過媒体(例えば、繊維状マット又は支持体)の1層のナノファイバーの平均直径が、この濾過媒体の他の層のナノファイバーの平均直径とかなり異なることを意味し得、又はナノファイバーマットの1層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるように、ナノファイバーマットの厚さを横切って繊維直径を変化させることを特徴とし得る。ナノファイバーマットの厚さ又は断面を横切る繊維直径の勾配は、「砂時計」構造によっても説明することができ、又はナノファイバーマットの厚さを横切る繊維直径が変化し、ナノファイバーマットの1層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるような非対称性を有することを特徴とうる。例えば、ナノファイバーマットは、少なくとも2層を有するシート(例えば、複合ナノファイバーマットのような複合濾過媒体)の形態であり得、1層(すなわち、「上層」)がシートの上面に配置され、別の層(すなわち、「下層」)がシートの下面に配置され、任意に1層以上の追加の層(すなわち、「中間層」)がナノファイバーマットの上層と下層の間に配置され、ここで、これらの層の少なくとも1つを構成するナノファイバーは、別の層のナノファイバーの平均繊維直径とは異なる平均繊維直径を有する。「非対称」濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)はまた、ナノファイバーの平均直径が媒体の一方の表面から他方の表面まで連続的に増加する構造を含む(それぞれ、「目が詰まった」層及び「孔だらけの」層と呼ばれることがある)。例えば、本発明のナノファイバーマットを含む濾過媒体は、2つ以上の異なる平均繊維直径のナノファイバーを不織構造に同時に又は連続的に形成することによって形成することができる。異なるナノファイバーが形成される相対速度を変化させることにより、繊維直径が1つの表面から反対側の表面へと連続的に変化する非対称構造を作り出すことができる。繊維支持体の厚さを通る平均繊維直径の変化率は、「緩やか」又は比較的急激であり得る。用語「層」は、平均繊維直径が比較的一定であるが、明確に規定する必要がない媒体の領域を指すことが認識される。代替の実施形態において、ナノファイバーの非対称配置は、濾過媒体内の異なる充填密度で同じ平均繊維直径のナノファイバーを含む。例えば、複合濾過媒体(例えば、複合ナノファイバーマット)の層は、ナノファイバーが占める各層の全体積のパーセンテージが異なる可能性があることを除いて、本質的に同じ平均繊維直径のナノファイバーから調製することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第4,261,834号及び米国特許第4,629,563号を参照されたい。
【0130】
本明細書中で使用される場合、「電界紡糸」又は「電界紡糸された」という用語は、ポリマー溶液又は懸濁液又は溶融物から、このような溶液に電位を印加することによってナノファイバーを生成する静電紡糸プロセスを指す。静電紡糸プロセスを実施するのに適した装置を含む、濾過媒体用の電界紡糸ナノファイバーマットを作成するための静電紡糸プロセスは、それぞれが参照により本明細書に完全に援用され、それぞれがチェコ共和国リベレツのElmarcoに譲渡された国際公開第WO2005/024101号、WO2006/131081号、WO2008/106903号に開示されている。「エレクトロブローイング」とは、紡糸ノズルから放出されたポリマー溶液をガス注入ノズルから放出された吹きつけガスで吹きつけて、繊維の繊維状ウェブを形成する静電紡糸プロセスを記述する。
【0131】
本明細書中で互換的に使用される用語「濾液」又は「透過生成物」は、フィルター又は膜、例えば、本明細書で使用される電界紡糸ナノファイバー組成物を通過する溶液及びフィルター又は膜を既に通過した溶液を指す。
【0132】
用語「含むこと(including)」、「含む(includes)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」又はそれらの変形例は、用語「含む(comprising)」と同様の方法で包括的である。用語「本質的に~からなること(consisting essentially of)」又は「本質的に~からなる(consists essentially of)」は、特定された材料又は工程を含む実施形態、及び実施形態の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響しない材料及び工程を含む実施形態を包含する。
【0133】
本明細書中で使用される場合、用語「対数減少値」又は「LRV」は、標準化された条件下で測定される、濾液中の粒子濃度に対する供給物中の粒子濃度の比の常用対数(10進法)を指す。
【0134】
「バブルポイント試験」は有効孔径を測定する簡便な方法を提供する。有効孔径は以下の式から計算される。
【0135】
【0136】
式中、Pはバブルポイント圧、γはプローブ流体の表面張力、rは細孔半径、θは液体-固体接触角である。最大孔径(又は最初のバブルポイント)は、試料を通るガス流が検出されたときに記録され、平均流れ孔径は、湿潤曲線と半乾燥曲線が出会う圧力で計算された孔径(全ガス流量の50%を占める孔径で対応する)に対応する。
【0137】
膜の製造業者は、その保持特性に基づいた公称孔径の評価を市販の膜フィルターに割り当てている。本明細書で報告する場合、最大孔径は、2011年に再承認されASTM指定書F316-03「Standard Test Methods for Pore Size Characteristic of Membrane Filters by Bubble Point and Mean Flow Pore Test」に定められているバブルポイント試験により決定され、ナノメートル(nm)で報告される。特に記載のない限り、いずれのBPも湿潤液としてGalwick(R)(Porous Materials Incorporated、イタカ、ニューヨ-ク州)を用いて測定する。
【0138】
本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバー」は、平均直径又は断面が1000nm未満の繊維を指す。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるナノファイバーは、800nm未満、700nm未満、600nm未満、500nm未満、400nm未満、又は200nm未満の数平均断面を有する。特定の実施形態において、本明細書で開示されるナノファイバーは、少なくとも5nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、又は少なくとも50nmの数平均直径を有する。特定の実施形態において、本明細書で開示されるナノファイバーは、5nm~500nmの間、5nm~200nmの間、5nm~100nmの間、5nm~50nmの間、50nm~500nmの間、又は50nm~200nmの間の数平均直径を有する。本明細書で使用される場合、用語直径は、非丸形の最大断面を含む。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバーマット」は、マットの厚さが、典型的にはマット中の単一繊維の直径より少なくとも約10倍大きいような、複数のナノファイバーの集合を指す。ナノファイバーはマット内にランダムに配列されても、1本又は複数の軸に沿って並べられてもよい。
【0140】
用語「不織布」は、複数のランダムに分布した繊維を含むウェブを意味する。この繊維は一般に互いに結合していることも、結合していないこともある。繊維はステープル繊維又は連続繊維である。繊維は、異なる繊維の組み合わせとして、又は各々が異なる材料から構成される類似の繊維の組み合わせとして、単一の材料又は多数の材料を含むことができる。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「透過性」は、フィルターを横切る一定の圧力降下において、一定の領域の濾過媒体中を一定の容量の液体が通過する速度を指す。透過性の一般的な単位は、圧力降下の各psiについての1時間当たり1平方メートル当たりのリットルであり、LMH/psiと略記される。このような測定値は、一定の領域を有する前記フィルター媒体試料中に脱イオン水を通すことによって取得される。水圧(圧力水頭)又は空気圧(水の上の空気圧)を用いて試料に水を強制的に通す。
【0142】
用語「ポリマー」又は「ポリマーの」とは、天然又は合成の比較的高分子量の有機化合物を指し、その構造は、反復小単位であるモノマーによって表され得る(例えば、ナイロン、ポリエチレン、ゴム、セルロース)。DNA及び蛋白質のような天然生体ポリマーは、生物学的構造及び機能の基本である。合成ポリマーは典型的には、モノマーの付加又は縮合重合によって形成される。ナイロン-6は、本明細書ではナイロン-6又はN6と呼ばれる。N66は同義的にN6,6、N6/6又はN66と呼ばれる。
【0143】
用語「多孔度」は、本明細書では、材料中の空隙の程度を表すために使用され、全体積分の空隙の体積の割合である。多孔度のパーセンテージは、次の式に基づいて計算される。%多孔度=100×[1-(基本重量/(マットの厚さ×ポリマーの密度))]、式中、基本重量の単位はg/m2であり、ポリマーの密度の単位はg/m3であり、マットの厚さの単位はmである。
【0144】
本明細書中で使用される場合、用語「リテンテート(retentate)」とは、保持され、フィルター又は膜を通過しない溶液の成分又は部分、例えば、本明細書で使用される電界紡糸ナノファイバー組成物のほか、フィルター又は膜をまだ通過していない溶液の成分又は部分を指す。撹拌セルを使用する場合、撹拌セル中のフィルター又は膜上流層上に残る溶質を含む液を「リテンテート」と呼ぶ。TFFカセット又は螺旋装置の場合、カセット又は螺旋装置の供給物/リテンテートチャネルを流れ、装置から供給タンクに戻る液体をリテンテートと呼ぶ。
【0145】
本明細書で使用される「半結晶性」ポリマーは、固体状態で存在する場合、多相構造、すなわち、同一の化学組成であるが物理的特性が相違する非晶質相及び結晶性部分を含むポリマーを指す。加熱すると、そのようなポリマーは通常、非晶質相ではガラス転移温度(Tg)を示し、結晶相では融点温度(Tm)を示すが、非晶質ポリマーはTgのみを有し、Tmは持たない。
【0146】
用語「変動」及び「変動係数」は、本明細書では同義で使用され、確率分布又は頻度分布の分散の標準化された尺度を指す。それは多くの場合パーセンテージとして表され、平均に対する標準偏差の比として定義される。
【0147】
<滅菌可能な不織ナノファイバー構造を製造する方法>
【0148】
特定の態様において、湿熱滅菌に適合する多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を製造するための方法が、本明細書で提供される。特定の実施形態において、そのような方法は、例えば、正確な熱処理、ポリマー選択、及び/又は特定のナノファイバー構造を含むパラメータの独特な組み合わせを用いることにより、当該技術分野で知られているような「紡糸したままの」ナノファイバー構造を湿熱滅菌可能な形態にアップグレードすることを含む。同様に、特定の態様において、本明細書に開示される(例えば、本明細書に開示される方法のいずれかによって調製される)多孔質ポリマーナノファイバーマットを含む、湿熱滅菌に適合する液体濾過媒体が本明細書に提供される。
【0149】
いくつかの実施形態において、多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体(又は少なくとも該濾過媒体を含むナノファイバーマット)は、熱処理を受け、該熱処理ではそれらはポリマーナノファイバー(例えば、1つ以上のポリマーを含むナノファイバー)の少なくともガラス転移温度(Tg)であるが、溶融温度(Tm)以下までに加熱される。そのような熱処理は、本明細書に記載されているように、非酸化雰囲気中で行うことが好ましい。例えば、熱処理は、当技術分野で知られているように、嫌気性又は不活性雰囲気オーブンなどで行うことができる。特定の例示的ポリマーの転移温度及び溶融温度を表1に提供するが、当該技術分野で知られている。ガラス転移温度又は溶融温度が範囲として提供される場合には、本明細書の目的で、範囲の中点をそれぞれの温度として扱うものとする。
【0150】
【0151】
特定の実施形態において、液体濾過媒体(例えば、紡糸したままのナノファイバーマット)は、媒体中のポリマーナノファイバーのTm未満の温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTmよりも約1℃~約80℃低い温度まで加熱される。特定の実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTmより約1℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、又は約80℃低い温度まで加熱される。いくつかのそのような実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTmより約5℃~約15℃、約10℃~約20℃、約15℃~約25℃、約20℃~約30℃、約25℃~約35℃、約30℃~約40℃、約35℃~約45℃、約40℃~約50℃、約45℃~約55℃、約50℃~約60℃、約55℃~約65℃、約60℃~約70℃、約65℃~約75℃、又は約70℃~約80℃低く加熱され得る。いくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTmよりも約56℃下まで加熱される。特定の実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTmよりも約75℃下まで加熱される。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されたポリマーナノファイバーを含む液体濾過媒体(又は少なくとも当該濾過媒体を含むナノファイバーマット)は、媒体内のポリマーナノファイバーのTgより上の温度まで加熱された。特定の実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTgよりも約100℃~約200℃高い温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTgよりも約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃、約135℃、約140℃、約145℃、約150℃、約155℃、約160℃、約165℃、約170℃、約175℃、約180℃、約185℃、約190℃、約195℃、又は約200℃上まで加熱される。いくつかのそのような実施形態において、液体濾過媒体は、ポリマーナノファイバーのTgよりも約100℃~約110℃、約105℃~約115℃、約110℃~約120℃、約115℃~約125℃、約120℃~約130℃、約125℃~約135℃、約130℃~約140℃、約135℃~約145℃、約140℃~約150℃、約145℃~約155℃、約150℃~約160℃、約155℃~約165℃、約160℃~約170℃、約165℃~約175℃、約170℃~約180℃、約175℃~約185℃、約180℃~約190℃、約185℃~約195℃、又は約190℃~~約200℃高い温度まで加熱される。特定の実施形態において、液体濾過媒体(例えば、ポリマーナノファイバー)は、ポリマーナノファイバーのTgよりも約140℃~約158℃上まで加熱される。
【0153】
いくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、ナイロン6/6ポリマーナノファイバーを含み、約190℃~約210℃の温度まで(例えば、少なくとも1時間)加熱される。いくつかの実施形態において、ナイロン6/6ポリマーナノファイバーを含む液体濾過媒体は、約208℃の温度まで(例えば、少なくとも1時間)加熱される。
【0154】
特定の実施形態において、ナノファイバー媒体は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、又は少なくとも24時間熱処理される。いくつかの実施形態において、ナノファイバー媒体は、2日以内、36時間以内、24時間以内、23時間以内、22時間以内、21時間以内、20時間以内、19時間以内、18時間以内、17時間以内、16時間以内、15時間以内、14時間以内、13時間以内、12時間以内、11時間以内、10時間以内、9時間以内、8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、又は1時間以内の間熱処理される。特定の実施形態において、ナノファイバー媒体は、約1時間、約2時間、約3時間、約1時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間又は約24時間熱処理される。特定の実施形態において、ナノファイバー媒体は、1時間~21時間、1時間~18時間、1時間~12時間、又は1時間~6時間熱処理される。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される液体濾過媒体は、ナノファイバーマットの1つの層の平均繊維直径がナノファイバーマットの他の層のものとは異なるように、ナノファイバーマットの厚さにわたって変化する繊維直径を示す非対称ナノファイバーマットから構成される。あるいは、非対称ナノファイバー構造は、複合多層構造であってもよく、一つの層の層(複数)が他の層の層(複数)とは異なる平均繊維直径を有することができる。2つの「外部」表面の層が「内部」層とは異なる平均繊維直径を有する層。「外部」表面は、紡糸基材と接触するか、又はナノファイバー生成電極と対向するものと定義される。2つの外部表面の間にあるものは全て内層と定義される。特定の実施形態において、非対称ナノファイバーマットの1つ層の他の層に対する平均繊維直径の比は、少なくとも1~2である。いくつかの実施形態において、平均繊維直径の前記比は、少なくとも1~1.75、1~1.5、1~1.25、又は1~1.15である。したがって、特定の実施形態において、非対称ナノファイバーマットの1つの層の他の層に対する平均繊維直径の比は、少なくとも1.15である。
【0156】
本明細書に開示されている非対称ナノファイバー構造は、少なくとも1つの層について約5nm~約1,000nmの平均繊維直径を有し得る。したがって、非対称ナノファイバー構造は、少なくとも1つの層について、約1000nm、950nm、900nm、850nm、800nm、750nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、又は20nmのナノファイバー直径を有し得る。いくつかの実施形態において、ナノファイバーの平均直径は、少なくとも1つの層について、5nm~20nm、15nm~25nm、20nm~30nm、25nm~35nm、30nm~40nm、35nm~45nm、40nm~50nm、45nm~55nm、50nm~60nm、55nm~65nm、60nm~70nm、65nm~75nm、70nm~80nm、75nm~85nm、80nm~90nm、85nm~95nm、90nm~100nm、95nm~105nm、100nm~110nm、105nm~115nm、115nm~120nm、115nm~125nm、120nm~130nm、125nm~135nm、130nm~140nm、135nm~145nm、140nm~150nm、145nm~155nm、150nm~160nm、155nm~165nm、160nm~170nm、165nm~175nm、170nm~180nm、175nm~185nm、180nm~190nm、185nm~195nm、190nm~200nm、195nm~205nm、200nm~210nm、205nm~215nm、210nm~220nm、215nm~225nm、220nm~230nm、225nm~235nm、230nm~240nm、235nm~245nm、240nm~250nm、245nm~255nm、250nm~260nm、255nm~265nm、260nm~270nm、265nm~275nm、270nm~280nm、275nm~285nm、280nm~290nm、285nm~295nm、290nm~300nm、295nm~305nm、300nm~310nm、305nm~315nm、310nm~320nm、315nm~325nm、320nm~330nm、325nm~335nm、330nm~340nm、335nm~345nm、340nm~350nm、345nm~355nm、350nm~360nm、355nm~365nm、360nm~370nm、365nm~375nm、370nm~380nm、375nm~385nm、380nm~390nm、385nm~395nm、390nm~400nm、395nm~405nm、400nm~410nm、405nm~415nm、410nm~420nm、415nm~425nm、420nm~430nm、425nm~435nm、430nm~440nm、435nm~445nm、440nm~450nm、445nm~455nm、450nm~460nm、455nm~465nm、460nm~470nm、465nm~475nm、470nm~480nm、475nm~485nm、480nm~490nm、485nm~495nm、490nm~500nm、500nm~550nm、525nm~575nm、550nm~600nm、575nm~625nm、600nm~650nm、625nm~675nm、650nm~700nm、675nm~725nm、700nm~750nm、725nm~775nm、750nm~800nm、775nm~825nm、800nm~850nm、825nm~875nm、850nm~900nm、925nm~975nm又は950nm~1000nmである。さらに別の実施形態において、平均繊維直径は、非対称ナノファイバー構造の少なくとも1層について約5nm未満である。
【0157】
いくつかの実施形態において、ナノファイバー及び/又はそれらが紡がれる(又は吹き込まれる)溶液は、ポリマー又はポリマーブレンドを含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマー又はポリマーブレンドは半結晶性ポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリマー又はポリマーブレンドは、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6,6-6,10、ナイロン-6コポリマー、ナイロン-6,6コポリマー、ナイロン6,6-6,10コポリマー、及びそれらの任意の混合物である。特定の実施形態において、ポリマーはナイロン6又はナイロン6,6である。いくつかの実施形態において、ポリマーはナイロン6,6である。
【0158】
いくつかの実施形態において、ポリマー又はポリマーブレンドは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)及びそれらのコポリマー、誘導体化合物又はブレンドから選択される。本明細書中で使用される用語「ナイロン」は、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6,6-6,10並びにそれらのコポリマー、誘導体化合物、ブレンド及び組み合わせを含み得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、ポリマー又はポリマーブレンドは、ナイロン-6、ナイロン-4,6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,6-6,10、ポリアラミド、ポリウレタン(PU)、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル(PEVA)、PEVA/PLA、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PMMA/テトラヒドロペルフルオロオクチルアクリレート(TAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、コラーゲン-PEO、ポリスチレン(PS)、ポリアニリン(PANI)/PEO、PANI/PS、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリル酸-ポリピレンメタノール(PAA-PM)、ポリアミド(PA)、絹/PEO、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、酢酸セルロース(CA)、PAA-PM/PU、ポリビニルアルコール(PVA)/シリカ、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)、ポリ(ビニリデンジフルオライド)(PVDF)、PVDF/PMMA、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(poy)(フェロセニルジメチルシラン)(PFDMS)、ナイロン6/モンモリロナイト(Mt)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリアクリルニトリル(PAN)/TiO2、ポリカプロラクトン(PCL)/金属、ポリビニルピロリドン(porrolidone)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン-12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリビニルブチラール(PVB)、PET/PEN、及びそれらのコポリマー、誘導体化合物又はブレンドから選択される。
【0160】
本明細書に開示された液体濾過媒体は、ナノファイバーマットのような多孔質で不織のポリマーナノファイバー構造を生じるために、ポリマー溶液又は溶融物を電界紡糸又はエレクトロブローすることによって製造され得る。好ましくは、液体濾過媒体は電界紡糸によって作製され、得られた多孔質で不織のポリマーナノファイバーマットは、1種以上のポリマーを含む。電界紡糸は、ポリマーの混合物、例えば、ポリマー溶液、懸濁液又はポリマー溶融物からナノファイバーを製造するプロセスである。このプロセスは、そのようなポリマー溶液又はポリマー溶融物に電位を印加することを含む。静電紡糸プロセスを実施するための適切な装置を含む、電界紡糸ナノファイバーマット又は膜を作るための電界紡糸プロセスの特定の詳細は、国際特許出願公開公報WO2005/024101号、WO2006/131081号、及びWO2008/106903号に記載されており、これらの各々はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0161】
電界紡糸プロセスでは、電極及びポリマー溶液に高電圧を印加することによって紡糸電極から繊維を発生させ、そこで繊維を帯電させ、集合電極に向かって紡糸し、電極間の基材上に多孔性の高い不織マットとして集める。また、紡糸ノズルから放出されたポリマー溶液をガス注入ノズルから基材に放出された吹きつけガスで吹きつける場合、これをエレクトロブローイングと呼ぶ。
【0162】
開示されたナノファイバーマットは、約1μm~約500μmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、ナノファイバーマットは、少なくとも5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μm、115μm、120μm、125μm、130μm、135μm、140μm、145μm、150μm、155μm、160μm、165μm、170μm、175μm、180μm、185μm、190μm、195μm、200μm、205μm、210μm、215μm、220μm、225μm、230μm、235μm、240μm、245μm、250μm、255μm、260μm、265μm、270μm、275μm、280μm、285μm、290μm、295μm、300μm、305μm、310μm、315μm、320μm、325μm、330μm、335μm、340μm、345μm、350μm、355μm、360μm、365μm、370μm、375μm、380μm、385μm、390μm、395μm、400μm、405μm、410μm、415μm、420μm、425μm、430μm、435μm、440μm、445μm、450μm、455μm、460μm、465μm、470μm、475μm、480μm、485μm、490μm、495μm又は500μmの厚さを有し得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)の作製されたナノファイバー構造は、約5nm~約1,000nmの平均繊維直径を有する。繊維直径は、16~36%CoVの広い分布を有し得る。いくつかのそのような実施形態において、平均ナノファイバー直径は、1000nm、950nm、900nm、850nm、800nm、750nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、又は20nm以下である。いくつかの実施形態において、平均ナノファイバー直径は、5nm~20nm、15nm~25nm、20nm~30nm、25nm~35nm、30nm~40nm、35nm~45nm、40nm~50nm、45nm~55nm、50nm~60nm、55nm~65nm、60nm~70nm、65nm~75nm、70nm~80nm、75nm~85nm、80m~90nm、85nm~95nm、90nm~100nm、95nm~105nm、100nm~110nm、105nm~115nm、110nm~120nm、115nm~125nm、120nm~130nm、125nm~135nm、130~140nm、135~145nm、140nm~150nm、145~155nm、150nm~160nm、155nm~165nm、160nm~170nm、165nm~175nm、170nm~180nm、175nm~185nm、180nm~190nm、185nm~195nm、190nm~200nm、195nm~205nm、200nm~210nm、205nm~215nm、210nm~220nm、215nm~225nm、220nm~230nm、225nm~235nm、230nm~240nm、235nm~245nm、240nm~250nm、245nm~255nm、250nm~260nm、255nm~265nm、260nm~270nm、265nm~275nm、270nm~280nm、275nm~285nm、280m~290nm、285nm~295nm、290nm~300nm、295nm~305nm、300nm~310nm、305nm~315nm、310nm~320nm、315nm~325nm、320nm~330nm、325nm~335nm、330nm~340nm、335nm~345nm、340nm~350nm、345nm~355nm、350nm~360nm、355nm~365nm、360nm~370nm、365nm~375nm、370nm~380nm、375nm~385nm、380m~390nm、385nm~395nm、390nm~400nm、395nm~405nm、400nm~410nm、405nm~415nm、410nm~420nm、415nm~425nm、420nm~435nm、425nm~435nm、430nm~440nm、435nm~445nm、440nm~450nm、445nm~455nm、450nm~460nm、455nm~465nm、460nm~470nm、465nm~475nm、470nm~480nm、475nm~485nm、480m~490nm、485nm~495nm、490nm~500nm、500nm~550nm、525nm~575nm、550nm~600nm、575nm~625nm、600nm~650nm、625nm~675nm、650nm~700nm、675nm~725nm、700nm~750nm、725nm~775nm、750nm~800nm、775nm~825nm、800nm~850nm、825nm~875nm、850nm~900nm、925nm~975nm又は950nm~1000nmである。さらに別の実施形態において、平均繊維直径は約5nm未満である。
【0164】
液体濾過膜の2つの望ましい特徴は、高い透過性及び確実な保持である。特定の実施形態において、本明細書に開示された電界紡糸ナノファイバー媒体は高多孔性ポリマー材料であり、ここで、「孔」径は繊維直径に直線的に比例し、一方、多孔度は繊維直径とは比較的無関係である。特定の実施形態において、電界紡糸ナノファイバー媒体の多孔度は、約70%~95%(例えば、約75%~95%、約80%~95%)の範囲に入る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される電界紡糸ナノファイバー媒体は、同様の厚さ及び孔径評価を有する浸漬流延膜よりも有意に高い透過性を有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)は、湿潤流体としてGalwick(R)を用いた、5psi~150psi、例えば、10psi、11psi、12psi、13psi、14psi、15psi、16psi、17psi、18psi、19psi、20psi、21psi、22psi、23psi、24psi、25psi、50psi、75psi、100psi、125psi又は150psiのバブルポイント(BP)(すなわち、2011年に再承認されASTM指定書F316-03「Stanard Test Methods for Pore Size Characteristic of Membrane Filters by Bubble Point and Mean Flow Pore Test」に定められたバブルポイント試験により決定される。)を有する。
【0166】
いくつかの実施形態において、ナノファイバー構造(例えば、ナノファイバーマット)は、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、又は50nm以下のバブルポイント試験によって決定される最大孔径を有する。いくつかの実施形態において、製造されたナノファイバー構造(例えば、ナノファイバーマット)は、5nm~20nm、15nm~25nm、20nm~30nm、25nm~35nm、30nm~40nm、35nm~45nm、40nm~50nm、45nm~55nm、50nm~60nm、55nm~65nm、60nm~70nm、65nm~75nm、70nm~80nm、75nm~85nm、80m~90nm、85nm~95nm、90nm~100nm、95nm~105nm、100nm~110nm、105nm~115nm、110nm~120nm、115nm~125nm、120nm~130nm、125nm~135nm、130~140nm、135~145nm、140nm~150nm、145~155nm、150nm~160nm、155nm~165nm、160nm~170nm、165nm~175nm、170nm~180nm、175nm~185nm、180nm~190nm、185nm~195nm、190nm~200nm、195nm~205nm、200nm~210nm、205nm~215nm、210nm~220nm、215nm~225nm、220nm~230nm、225nm~235nm、230nm~240nm、235nm~245nm、240nm~250nm、245nm~255nm、250nm~260nm、255nm~265nm、260nm~270nm、265nm~275nm、270nm~280nm、275nm~285nm、280m~290nm、285nm~295nm、290nm~300nm、295nm~305nm、300nm~310nm、305nm~315nm、310nm~320nm、315nm~325nm、320nm~330nm、325nm~335nm、330nm~340nm、335nm~345nm、340nm~350nm、345nm~355nm、350nm~360nm、355nm~365nm、360nm~370nm、365nm~375nm、370nm~380nm、375nm~385nm、380m~390nm、385nm~395nm、390nm~400nm、395nm~405nm、400nm~410nm、405nm~415nm、410nm~420nm、415nm~425nm、420nm~430nm、425nm~435nm、430nm~440nm、435nm~445nm、440nm~450nm、445nm~455nm、450nm~460nm、455nm~465nm、460nm~470nm、465nm~475nm、470nm~480nm、475nm~485nm、480m~490nm、485nm~495nm又は490nm~500nmのバブルポイント試験で決定された最大孔径を有する。
【0167】
いくつかの実施形態において、液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)は、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の多孔度を有する。いくつかの実施形態において、多孔度は70%~95%、75%~95%、80%~95%、85%~95%又は90%~95%である。
【0168】
いくつかの実施形態において、液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)は、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下の繊維直径の変動を有する。
【0169】
いくつかの実施形態において、液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)は、少なくとも10LMH/psi~20,000LMH/psiの透過性を有する。いくつかの実施形態において、液体濾過媒体(例えば、ナノファイバーマット)は、少なくとも10LMH/psi~20,000LMH/psiの透過性を有する。そのようないくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、少なくとも6000LMH/psi、少なくとも5750LMH/psi、少なくとも5500LMH/psi、少なくとも5250LMH/psi、少なくとも5000LMH/psi、少なくとも4750LMH/psi、少なくとも4500LMH/psi、少なくとも4250LMH/psi、少なくとも4000LMH/psi、少なくとも3750LMH/psi、少なくとも3500LMH/psi、少なくとも3250LMH/psi、少なくとも3000LMH/psi、少なくとも2750LMH/psi、少なくとも2500LMH/psi、少なくとも2250LMH/psi、少なくとも2000LMH/psi、少なくとも1750LMH/psi、少なくとも1500LMH/psi、少なくとも1250LMH/psi、少なくとも1000LMH/psi、少なくとも975LMH/psi、少なくとも950LMH/psi、少なくとも925LMH/psi、少なくとも900LMH/psi、少なくとも875LMH/psi、少なくとも850LMH/psi、少なくとも825LMH/psi、少なくとも800LMH/psi、少なくとも775LMH/psi、少なくとも750LMH/psi、少なくとも725LMH/psi、少なくとも700LMH/psi、少なくとも675LMH/psi、少なくとも650LMH/psi、少なくとも625LMH/psi、少なくとも600LMH/psi、少なくとも575LMH/psi、少なくとも550LMH/psi、少なくとも525LMH/psi、少なくとも500LMH/psi、少なくとも475LMH/psi、少なくとも450LMH/psi、少なくとも425LMH/psi、少なくとも400LMH/psi、少なくとも375LMH/psi、少なくとも350LMH/psi、少なくとも325LMH/psi、又は少なくとも300LMH/psi又は少なくとも100LMH/psi又は少なくとも10LMH/psiの透過性を有する。いくつかの実施形態において、液体濾過媒体は、少なくとも300LMH/psi~少なくとも400LMH/psi、少なくとも450LMH/psi~少なくとも550LMH/psi、少なくとも400LMH/psi~少なくとも500LMH/psi、少なくとも550LMH/psi~少なくとも650LMH/psi、少なくとも700LMH/psi~少なくとも800LMH/psi、少なくとも750LMH/psi~少なくとも850LMH/psi、少なくとも900LMH/psi~少なくとも1000LMH/psi、少なくとも850LMH/psi~少なくとも950LMH/psi、少なくとも1000LMH/psi~少なくとも1050LMH/psi、少なくとも1100LMH/psi~少なくとも1200LMH/psi、少なくとも1150LMH/psi~少なくとも1250LMH/psi、少なくとも1200LMH/psi~少なくとも1300LMH/psi、少なくとも1250LMH/psi~少なくとも1350LMH/psi、少なくとも1300LMH/psi~少なくとも1400LMH/psi、少なくとも1350LMH/psi~少なくとも1450LMH/psi、少なくとも1400LMH/psi~少なくとも1500LMH/psi、少なくとも1450LMH/psi~少なくとも1550LMH/psi、少なくとも1500LMH/psi~少なくとも1600LMH/psi、少なくとも1550LMH/psi~少なくとも1650LMH/psi、少なくとも1600LMH/psi~少なくとも1700LMH/psi、少なくとも1650LMH/psi~少なくとも1750LMH/psi、少なくとも1700LMH/psi~少なくとも1800LMH/psi、少なくとも1750LMH/psi~少なくとも1850LMH/psi、少なくとも1900LMH/psi~少なくとも2000LMH/psi、少なくとも1950LMH/psi~少なくとも2050LMH/psi、少なくとも2100LMH/psi~少なくとも2200LMH/psi、少なくとも2150LMH/psi~少なくとも2250LMH/psi、少なくとも2200LMH/psi~少なくとも2300LMH/psi、少なくとも2250LMH/psi~少なくとも2350LMH/psi、少なくとも2300LMH/psi~少なくとも2400LMH/psi、少なくとも2350LMH/psi~少なくとも2450LMH/psi、少なくとも2400LMH/psi~少なくとも2500LMH/psi、少なくとも2450LMH/psi~少なくとも2550LMH/psi、少なくとも2500LMH/psi~少なくとも2600LMH/psi、少なくとも2550LMH/psi~少なくとも2650LMH/psi、少なくとも2600LMH/psi~少なくとも2700LMH/psi、少なくとも2650LMH/psi~少なくとも2750LMH/psi、少なくとも2700LMH/psi~少なくとも2800LMH/psi、少なくとも2750LMH/psi~少なくとも2850LMH/psi、少なくとも2900LMH/psi~少なくとも3000LMH/psi、少なくとも2950LMH/psi~少なくとも3050LMH/psi、少なくとも3100LMH/psi~少なくとも3200LMH/psi、少なくとも3150LMH/psi~少なくとも3250LMH/psi、少なくとも3200LMH/psi~少なくとも3300LMH/psi、少なくとも3250LMH/psi~少なくとも3350LMH/psi、少なくとも3300LMH/psi~少なくとも3400LMH/psi、少なくとも3350LMH/psi~少なくとも3450LMH/psi、少なくとも3400LMH/psi~少なくとも3500LMH/psi、少なくとも3450LMH/psi~少なくとも3550LMH/psi、少なくとも3500LMH/psi~少なくとも3600LMH/psi、少なくとも3550LMH/psi~少なくとも3650LMH/psi、少なくとも3600LMH/psi~少なくとも3700LMH/psi、少なくとも3650LMH/psi~少なくとも3750LMH/psi、少なくとも3700LMH/psi~少なくとも3800LMH/psi、少なくとも3750LMH/psi~少なくとも3850LMH/psi、少なくとも3900LMH/psi~少なくとも4000LMH/psi、少なくとも3950LMH/psi~少なくとも4050LMH/psi、少なくとも4100LMH/psi~少なくとも4200LMH/psi、少なくとも4150LMH/psi~少なくとも4250LMH/psi、少なくとも4200LMH/psi~少なくとも4300LMH/psi、少なくとも4250LMH/psi~少なくとも4350LMH/psi、少なくとも4300LMH/psi~少なくとも4400LMH/psi、少なくとも4350LMH/psi~少なくとも4450LMH/psi、少なくとも4400LMH/psi~少なくとも4500LMH/psi、少なくとも4450LMH/psi~少なくとも4550LMH/psi、少なくとも4500LMH/psi~少なくとも4600LMH/psi、少なくとも4550LMH/psi~少なくとも4650LMH/psi、少なくとも4600LMH/psi~少なくとも4700LMH/psi、少なくとも4650LMH/psi~少なくとも4750LMH/psi、少なくとも4700LMH/psi~少なくとも4800LMH/psi、少なくとも4750LMH/psi~少なくとも4850LMH/psi、少なくとも4900LMH/psi~少なくとも5000LMH/psi、少なくとも4950LMH/psi~少なくとも5050LMH/psi、少なくとも5100LMH/psi~少なくとも5200LMH/psi、少なくとも5150LMH/psi~少なくとも5250LMH/psi、少なくとも5200LMH/psi~少なくとも5300LMH/psi、少なくとも5250LMH/psi~少なくとも5350LMH/psi、少なくとも5300LMH/psi~少なくとも5400LMH/psi、少なくとも5350LMH/psi~少なくとも5450LMH/psi、少なくとも5400LMH/psi~少なくとも5500LMH/psi、少なくとも5450LMH/psi~少なくとも5550LMH/psi、少なくとも5500LMH/psi~少なくとも5600LMH/psi、少なくとも5550LMH/psi~少なくとも5650LMH/psi、少なくとも5600LMH/psi~少なくとも5700LMH/psi、少なくとも5650LMH/psi~少なくとも5750LMH/psi、少なくとも5700LMH/psi~少なくとも5800LMH/psi、少なくとも5750LMH/psi~少なくとも5850LMH/psi、少なくとも5900LMH/psi~少なくとも6000LMH/psi、又は少なくとも5950LMH/psi、少なくとも6000LMH/psi、少なくとも7000LMH/psi、少なくとも8000LMH/psi、少なくとも9000LMH/psi、少なくとも10,000LMH/psi、少なくとも12,000LMH/psi、少なくとも14,000LMH/psi、少なくとも16,000LMH/psi、少なくとも18,000LMH/psi、少なくとも20,000LMH/psiの透過性を有する。
【0170】
濾過膜による微生物保持の定量的尺度は、通例、対数減少値として表され、時に対数保持値又はLRVと呼ばれる。LRVは、フィルター流出物中の粒子濃度に対するチャレンジ溶液中の粒子濃度の比:LRV=Log{[CFU]challenge/[CFU]effluent}の対数である。
【0171】
フィルターが試験条件下で全ての微生物を保持する場合には、通例、1個の微生物がフィルターを通過したときに得られる値を超えるLRVを報告する。例えば、チャレンジ粒子濃度4.77×107CFU/cm2では、実効フィルター面積13.8cm2の装置で最大測定可能LRVは8.22となる。粒子がフィルターを通過しない場合、LRVを8.22より大きいと報告する。
【0172】
膜の孔径評価は、該膜が関連する標準化された細菌負荷試験に膜が成功裏に合格したことを示す指標である。最も一般的な孔径の評価は0.22μmであり、これは液体濾過に利用される薄膜フィルターの細菌保持を測定するための標準試験法(ASTM F838-83試験)に合格した膜に割り当てられ、≧107CFU/cm2のブレブンジモナス・ジミヌタでチャレンジした後、滅菌流出物を生成するために認証することができる。以前はシュードモナス(Pseudomonas)・ジミヌタとして知られていたブレブンジモナス・ジミヌタ(ATTC#19146)は好気性グラム陰性菌(桿菌)である。B.ジミヌタはそのサイズが小さいため、滅菌用薄膜フィルター等の検証のための標準微生物である。したがって、本明細書に開示される液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された少なくとも1というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を有する。あるいは、本明細書に開示される液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された少なくとも8というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を有する。好ましくは、液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された、微生物、例えばブレブンジモナス・ジミヌタの完全な保持を示す。特定の実施形態において、液体濾過媒体はウイルス粒子でチャレンジされ、約6を超えるウイルス対数減少値(LRV)を示す。特定の他の実施形態において、本明細書に開示される液体濾過媒体は、ワクチン中に見出されるようなウイルス様粒子、タンパク質、及び結合多糖類を含む、対象となる生物学的材料を精製することが可能である。一般に、生物学的材料は約500KDa以上の分子量を有する。したがって、本明細書に開示される液体濾過媒体は、「デキストランふるい分け」のような標準的な方法におけるデキストランの使用のような、一定の大きさの標準化された高分子及び/又は粒子の保持を示すことができる。
【0173】
いくつかの実施形態において、液体濾過媒体(例えば、多孔質で不織のナノファイバー含有液体濾過媒体)は、さらに多孔質不織支持体を含む。ナノファイバーは、多孔質不織支持体の表面上に電界紡糸又はエレクトロブローすることができ、ここで、多孔質不織支持体の表面の二乗平均平方根高さは、約70μm未満である。いくつかのそのような実施形態において、支持体は、メルトブローイング、ウェットレイング、スパンボンド、カレンダリング、電界紡糸、エレクトロブローイング、又はそれらの任意の組合せによって製造される1つ以上の層を含む。支持体は、熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、それらのコポリマー、ポリマーブレンド、又は任意の組合せを含み得る。好ましくは、ナノファイバー層の最も目が詰まった孔径は、多孔質不織支持体の最も目が詰まった孔径よりも小さい。
【0174】
いくつかの実施形態において、多孔質支持体は、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、ウェットレイド不織布、レジンボンド不織布、電界紡糸、エレクトロブローイング、織布、ニット布、紙(表面修飾紙を含む)、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される1つ以上の層を含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、多孔質非対称ポリエーテルスルホン(PES)平板薄膜プレフィルターと、本明細書で開示された方法のいずれかによって調製される液体濾過媒体を含む保持層とを含む多孔質複合媒体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、多孔質非対称PES平板膜プレフィルターは、目が詰まった層及び孔だらけの層を有し、目が詰まった層と穴だらけの層との間でサイズが大きくなる孔径を有する。本明細書に開示される液体濾過媒体を含む前記保持層は、多孔質非対称PES平板膜の目が詰まった層上に配置されてもよい。好ましい実施形態において、保持層の孔径は、多孔質非対称PES平板膜プレフィルターの目が詰まった層の孔径よりも小さい。いくつかのそのような実施形態において、多孔質複合媒体は、液体を用いて測定された、多孔質平板膜プレフィルター単独のバブルポイントよりも少なくとも20%大きいバブルポイントを有する。好ましくは、多孔質複合媒体は、約10psi~約130psiの範囲の、イソプロパノールに対する平均流れバブルポイントを有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される多孔質非対称PES平板膜は、溶液相反転、熱開始相分離、水蒸気誘導相分離、トラックエッチング、二軸延伸、溶媒エッチング、及びそれらの組合せによって製造される1つ以上の層を含む。したがって、本明細書で開示されるそのような多孔質複合媒体を含む、臨界濾過において使用するための濾過装置が本明細書に提供される。そのような臨界濾過装置では、多孔質非対称PES平板膜は、試料の予備濾過を提供することができ、一方、保持フィルター層は、該試料のさらなる濾過を提供する。いくつかのそのような実施形態において、多孔質複合濾過媒体は、多孔質非対称PES平板膜が、濾過の方向において保持フィルター層の上流にあるように配置することが好ましい。
【0176】
特に、本明細書中に開示される液体濾過媒体(例えば、熱処理された多孔質で不織の非対称ポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体)は、湿熱滅菌に適合する。湿熱は、典型的には、例えば、バイオ医薬品業界で一般に実施されているような無菌用途に関連して使用される。当技術分野で知られているような湿熱滅菌法を含む湿潤-乾燥プロセスのそのような影響には、圧力下で流れる飽和水蒸気(すなわち、スチーム・イン・プレース滅菌)、オートクレーブ滅菌、及びティンダリゼーションが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、液体濾過媒体は、それらが本明細書に記載されるナノファイバー構造(例えば、ナノファイバー形態)及び濾過パラメータ(例えば、透過性、多孔度、LRV、及びBP)の変化に抵抗するようにオートクレーブ滅菌に適合する。
【0177】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される液体濾過媒体は、半結晶性ポリマーナノファイバーを含まない、非対称ナノファイバー構造を含まない、熱処理されていない、又はそれらの任意の組み合わせの対応する濾過媒体に対する滅菌後の液体透過性の変化に抵抗する。いくつかのそのような実施形態において、滅菌された液体濾過媒体は、滅菌後に液体透過性の15%以下の減少を示す。例えば、本発明のオートクレーブ処理された液体濾過媒体(例えば、少なくとも1回又は少なくとも12回までオートクレーブ処理された)は、液体透過性の変化を示さない。好ましくは、そのような滅菌された液体濾過媒体は、液体透過性の1%~15%以下の減少、例えば、液体透過性の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、又は15%の減少を示す。より好ましくは、開示された滅菌された液体濾過媒体は、液体透過性の11%以下の減少を示す。最も好ましい実施形態において、滅菌された液体濾過媒体(例えば、少なくとも1回又は少なくとも12回までオートクレーブ処理された)は、液体透過性の少なくとも1%~6%増加などの液体透過性の増加を示す。好ましくは、滅菌された液体濾過媒体は、少なくとも6%の液体透過性の増加を示す。
【0178】
同様に、滅菌された液体濾過媒体(例えば、少なくとも1回又は少なくとも12回までオートクレーブ処理された)は、本明細書に開示されているように、バブルポイント(BP)の変化に抵抗する。いくつかのそのような実施形態において、滅菌された液体濾過媒体は、BPの変化を示さない。例えば、滅菌された液体濾過媒体は、限定するわけではないが、5psi~150psiのBPを示すか、又は維持する。好ましくは、滅菌された液体濾過媒体は、20psi以上のバブルポイントを示し、又は維持する。最も好ましくは、液体濾過媒体は、半結晶性ポリマーナノファイバーを含まない、非対称ナノファイバー構造を含まない、熱処理されていない、又はそれらの任意の組み合わせの対応する濾過媒体と比較して、滅菌後のBPの変化が少ない。いくつかのそのような実施形態において、BPは水を用いて測定される。好ましい態様において、BPはアルコール(例えば、エタノール及び/又はイソプロピルアルコール)を用いて測定される。より好ましい実施形態において、BPは、水及びアルコールを含む溶液を用いて測定される。最も好ましくは、BPはGalwick(R)湿潤液を用いて測定される。
【0179】
いくつかの実施形態において、滅菌された液体濾過媒体(例えば、少なくとも1回又は少なくとも12回までオートクレーブ処理された)は、多孔度の変化に抵抗する。好ましくは、そのような滅菌された液体濾過媒体は、約80%~約95%の多孔度を示すか、又は維持する。
【0180】
いくつかの実施形態において、滅菌された液体濾過媒体(例えば、少なくとも1回又は少なくとも12回までオートクレーブ処理された)は、その対数減少値(LRV)を有するか、又は維持する。好ましい実施形態において、滅菌された液体濾過媒体は、ASTM F838-83に従って測定された少なくとも8というブレブンジモナス・ジミヌタのLRVを有する。より好ましくは、滅菌された液体濾過媒体は、微生物の完全な保持を示す。
【0181】
本発明のさらなる態様において、液体試料から細菌を除去する方法であって、本明細書に開示されるように、本明細書に開示された多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱することを含む方法が本明細書に開示される。例えば、熱処理は少なくとも1時間、好ましくは不活性雰囲気オーブンのような非酸化環境で行うことができる。次いで、熱処理された液体濾過媒体をオートクレーブ滅菌などの湿熱滅菌を使用して滅菌し、細菌を含有する液体試料を滅菌された液体濾過媒体に通す。好ましい実施形態において、液体濾過媒体は、オートクレーブ滅菌前及び/又は後にASTM F838-83に従って測定された少なくとも8というブレブンジモナス・ジミヌタの対数減少値(LRV)を示す。
【0182】
同様に、本発明の特定の態様は、液体試料からウイルス粒子を除去する方法を含み、該方法は、本明細書に開示されるように、本明細書に開示された多孔質で不織のポリマーナノファイバー含有液体濾過媒体を、ポリマーナノファイバーの少なくともTgであるが、Tm以下まで加熱することを含む。例えば、このような熱処理は、少なくとも1時間、好ましくは不活性雰囲気オーブンのような非酸化環境で行うことができる。同様に、熱処理された液体濾過媒体を、次いで、オートクレーブ滅菌などの湿熱滅菌を使用して滅菌し、ウイルス粒子を含有する液体試料を滅菌された液体濾過媒体に通す。いくつかのそのような実施形態において、液体濾過媒体は、オートクレーブ滅菌の前及び/又は後に、約6を超えるウイルス対数減少値(LRV)を示す。
【0183】
<試験方法>
【0184】
本明細書に報告する場合、基本重量はASTM手順D-3776/D3776M-09a(2017)「Standard Test Methods for Mass Per Unit Area (Weight) of Fabric」に従って決定し、g/m2で報告する。
【0185】
本明細書に報告する場合、多孔度は、g/m2で表される試料の基本重量をg/cm3で表されるポリマー密度で割って、マイクロメートルで表される試料の厚さで割って、100を乗じ、100から得られた数を差し引くこと、すなわち、%多孔度=100-[基準重量/(密度×厚さ)×100]によって計算する。
【0186】
本明細書に報告する場合、繊維直径は以下のように決定される。ナノファイバーマット試料の各層で(例えば、20,000、40,000又は60,000倍の倍率で)走査型電子顕微鏡(SEM)画像を撮影した。少なくとも10個の明瞭に識別可能なナノファイバーの直径を各SEM画像から測定し、記録する。不規則なこと(すなわち、ナノファイバーの塊、ポリマー滴、ナノファイバーの交差など)は繊維直径の決定に含まなかった。
【0187】
本明細書に報告する場合、ナノファイバーマット厚さは、ASTM手順01777-96「Standard Test Methods for Thickness of Textile Materials」に従って測定し、ナノメートル(nm)又はマイクロメートル(μm)で報告する。
【0188】
本明細書に報告する場合、最大孔径は、2011年に再承認されたASTM指定書F316-03「Standard Test Methods for Pore Size Characteristic of Membrane Filters by Bubble Point and Mean Flow Pore Test」に定められているバブルポイント試験により決定し、ナノメートル(nm)で報告される。
【0189】
本明細書に報告する場合、細菌対数減少値(LRV)は、ASTM F838-83「Standardd Test Method for Determining Bacterial Retention of Membrane FIlers Utilized For Liquid Filtration」の標準試験方法に従って決定する。
【0190】
特に記載のない限り、全てのBPは湿潤液としてGalwick(R)(Porous Materials Incorporated、イタカ、ニューヨーク州)を用いて測定する。
【実施例】
【0191】
[実施例1]
【0192】
構造、材料及びプロセスから選択した品質の特有の組合せを用いて、紡糸したままの電界紡糸ナノファイバーマット(出発物質)をオートクレーブ滅菌可能タイプに性能向上するための研究を行った。
【0193】
4種のナノファイバーマットを試験した。各々、紡糸電極から不織基材にポリマー溶液を電界紡糸する方法を用いた(すなわち、製造スケールの電界紡糸装置を用いた)。前記マットの特性を、いかなる改変も行わずに製造直後に報告した(本明細書中で「紡糸したままの」特性評価として言及する)。
【0194】
表2は、4つのナノファイバーマット及びその関連特性を述べたものである。全ての選択された膜は、ASTM F838-83に従って測定された、サイズに基づく分離により、濾過媒体がブレブンジモナス・ジミヌタの完全な保持を示すように、少なくともフィルターマットの1つの層について100nmに近い繊維直径を有していた。また、全ての膜は、85~95%の範囲の多孔度、少なくとも15psi(psig)のGalwick(R)バブルポイント(完全な保持に適切と考えられる)、及び3000LMH/psiを超える液体透過性を示した。ナノファイバーマットの最大孔径は、ASTM指定書F316-03に定められたバブルポイント試験により、湿潤流体としてGalwick(R)を用いて決定する。
【0195】
【0196】
ナノファイバーマットタイプ(表2に記載)を、「熱処理なし」(
図1、左側パネル参照)又は「熱処理あり」(
図1、右側パネル参照)のいずれかに分類した。熱処理工程は、ナノファイバーマットロールを非酸化環境(例えば、嫌気性/不活性雰囲気オーブン中)で、208℃で12時間まで加熱することを含んだ。
【0197】
オートクレーブ処理(又は熱処理及びオートクレーブ処理)の前に、表2に記載した全てのナノファイバー膜を、水又はイソプロピル-水溶液中での湿潤及び80℃で12時間の乾燥を含む追加の湿潤-乾燥工程に付した。典型的には、濾過装置(例えば、工業的に適用される濾過装置)は、顧客の現場(適用前に滅菌する)に到達する前に完全性試験の間に湿潤-乾燥プロセスを経る。したがって、このような工程を含めることにより、乾燥の影響の全ての考えられる影響が説明されることを保証した。
【0198】
オートクレーブ処理を、135℃で60分間、続く15分間の乾燥時間の1サイクル以上の加熱を含む積極的条件下で行った。一般に、このようなオートクレーブ処理パラメータは、典型的には126℃で実施される、工業的に実践されている滅菌手順を超えている。
【0199】
<結果>
【0200】
この滅菌プロセスは、全ての未処理マットタイプにわたって、水透過性の有意な(そして予想される)低下をもたらした(
図1、左側パネル、白色と交差斜線を比較)。特に、ポリマーは、ナノファイバーを製造するために使用される場合、強力な溶媒の使用及び電界紡糸プロセスによって必要とされる高温(80℃、6時間)のために、ポリマー溶解工程中に分子切断を受ける。電界紡糸プロセス自体が静電力による分子鎖分解に寄与している可能性がある。ナノファイバーポリマーの固有粘度は、天然ポリマーの粘度よりも有意に低く、これは、繊維強度に対する溶媒及び電界紡糸プロセスの有害な影響を示す。高熱で湿度の高い環境下では、オートクレーブでさらに分解が起こる。これは、一般に加水分解不安定性(すなわち、高い湿度及び温度に曝露された場合に半固体又は液体の形態に戻ることに対する硬化ポリマー材料の抵抗性の欠如)と呼ばれる現象に類似する。
【0201】
対照的に、オートクレーブ処理前に熱処理を受けたほとんどのナノファイバーマットは、水透過性の顕著に小さな低下を示した。ただし、水透過性の改善を実際に示したナイロン-66の熱処理された非対称対対称のナノファイバーマットは、顕著な例外であった(
図1、右側パネル、特に「非対称-N66」参照)。
【0202】
固体重合はナイロンのような縮合ポリマー内で起こることができ、そこでは固体のプレポリマー(及び乾燥モノマー)が末端基官能基を用いた段階的成長化学に従い、より高い分子量が得られる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、熱処理は固体縮合を用いて分子量を増大させることができる。固体プレポリマー結晶は不活性ガス(すなわち非酸化環境)下で融点(Tm)より低い温度で反応し、モノマー単結晶を高配向多結晶性ポリマー凝集体に変換する。熱処理によるポリマーの分子量の増加は、ポリマー材料の平均分子量と相関することが知られているゼロ剪断溶融粘度データにより確認した。さらに、熱処理工程は、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより証明されたように、ポリマー結晶性を改善することが分かった。分子量及び結晶性の両方がナノファイバーマットの強度に影響する。熱処理前後のナノファイバーマットの「湿潤性」は変化しなかったことに注意すべきである。
【0203】
このようなデータは、ナノファイバーマットの機械的特性の変化が観察された頑強性の原因であることを示唆している。
【0204】
[実施例2]
【0205】
構造、ポリマー材料、プロセスの組合せ(非対称対対称、N66、熱処理など)の意義と透過性損失の軽減におけるそれらの相対的寄与を理解するために、以下の分析を行った。表3は、まず「プロセス」、次に「材料」、次いで「構造」によって分類された実験設計のレイアウトを記述している。次に、各因子、及び組み合わせ因子が(
図1に示すように)水透過性の損失に及ぼす影響を評価した。特に、この種の仕分け順序を制定することによって、ナノファイバーマットは、観察された水透過性の損失によって、小さい順に自動的に配置され、これらのパラメータの相対的寄与の相違を示している(表3の「出力」欄参照)。
【0206】
【0207】
主要効果プロット(
図2参照)を用いて、各プロセスパラメータでの平均応答値を、実験の様々な要因の影響の相対強度と比較した。簡潔に言うと、列が水平(x軸に平行)の場合、主要効果はない。因子の各レベルは同じように応答に影響し、応答平均%透過性損失は全ての因子レベルにわたって同じである。しかし、列が水平でないときには、その因子が結果(すなわち、透過性)に影響する。因子のレベルが違うと、応答に異なる影響が出る。さらに、列の傾きが急勾配になるほど、主効果の大きさは大きくなる。
図2は、影響の観点から、プロセス>材料>構造の順が明らかであることを明確に示している。追加分析は、3つの効果全てが透過性損失に統計学的に有意な影響を及ぼすことを確認した。
【0208】
[実施例3]
【0209】
また、非対称ナノファイバーマットの形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により研究し、前記非対称マットを少なくとも3つのラウンドのオートクレーブ処理(AC3x)に供した。ナイロン-6(N6)を含み、熱処理なしで処理したマットは、最も劇的な構造変化を示した。
図3のSEM顕微鏡写真は、滅菌前に直線状に配向した繊維が波状になり、繊維の交差部でより多くの融合を含むように見えることを示している(上側パネル参照)。一方、熱処理を施したナイロン-66(N66)ナノファイバーは、滅菌前後で有意な形態学的相違を示さず(下側パネルを参照)、(あるとしても)水透過性の最小の損失から明らかなように、観察されたマットの頑強性と一致する。
【0210】
[実施例4]
【0211】
水透過性の著しい改善を伴う熱処理された非対称N66ナノファイバーマットを、3サイクルを超えるオートクレーブ滅菌に供した。3つの因子(熱処理されたナイロン-66の非対称)全てが実施されると、ナノファイバーマットは12回のオートクレーブサイクルまで耐えるに十分に頑強であり、水透過性に有意な負の影響を示さなかった(
図4参照)。観察された水透過性の改善に加えて、マットの保持特性の尺度であるバブルポイント(又はBP、湿潤液としてGalwick(R)を用いる)は、オートクレーブ滅菌の最初の3サイクルの後に増加し、その後のオートクレーブサイクルでは一定のままである。このようなBPの上昇は、マット保持挙動にさらなる保証を与える。
【0212】
さらに、複数のオートクレーブサイクルは、12オートクレーブサイクル(12×AC)によってさえ、最良性能マット(すなわち、熱処理された非対称のナイロン-66マット)におけるナノファイバーの形態にほとんど影響を及ぼさないようであった(
図5参照)。このデータは、熱処理された非対称N66マットが湿熱滅菌の面で頑健であることを示唆する。そのようなナノファイバーマットは、12回ものオートクレーブサイクルの後、水透過性の中程度の改善への低下を示さない。
【0213】
参照による援用
【0214】
本明細書で言及される全ての出版物、特許、及び特許出願は、参照により援用される各々の個々の出版物、特許又は特許出願が具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により援用される。不一致の場合には、本明細書のあらゆる定義も含めて、本願が支配的である。
【0215】
均等物
【0216】
当業者は、本明細書に記載された具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は単なる日常的な実験を使用するだけで確認することができる。このような均等物は添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】