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▶ トレデガー サーフェイス プロテクション エルエルシーの特許一覧

特表2023-514612接着安定性を向上させたマスキング・フィルム
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  • 特表-接着安定性を向上させたマスキング・フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】接着安定性を向上させたマスキング・フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230330BHJP
   C09J 123/04 20060101ALI20230330BHJP
   C09J 109/06 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J123/04
C09J109/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549697
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 US2021018324
(87)【国際公開番号】W WO2021167947
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,602
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320007631
【氏名又は名称】トレデガー サーフェイス プロテクション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】サントソ リッキー
(72)【発明者】
【氏名】ブラディ ケヴィン エイ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA07
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA04
4J040CA081
4J040DA021
4J040JA09
4J040JB09
(57)【要約】
マスキング・フィルムは、少なくとも1つの水添スチレン・ブロック・コポリマーと、約2.0μmを超える表面粗さ(Sa)を有する接着面とを含む接着層を備える。マスキング・フィルムの接着成立値は、接着層をテクスチャ加工されたポリカーボネート基材に取り付け、85℃に30分間加熱した後、約2.0未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を保護するためのマスキング・フィルムであって、
少なくとも1つの水添スチレン・ブロック・コポリマーと、約2.0μmを超える表面粗さ(Sa)を有する接着面とを含む接着層を備え、
前記マスキング・フィルムの接着成立値は、前記接着層をテクスチャ加工されたポリカーボネート基材に取り付け、85℃に30分間加熱した後、約2.0未満である、マスキング・フィルム。
【請求項2】
前記接着面は、約3.0μm/μmを超える空隙容積(Vv)を有する、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項3】
前記接着面は、約1.0μm/μmを超えるコア空隙容積(Vvc)を有する、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項4】
前記マスキング・フィルムは、室温で約5グラム/インチを超える初期ピール強度を有する、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項5】
前記テクスチャ加工されたポリカーボネート基材は、約0.60μmの表面粗さSaを有する、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項6】
前記水添スチレン・ブロック・コポリマーは、粘着剤を備える、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項7】
前記水添スチレン・ブロック・コポリマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロック・コポリマーである、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項8】
前記接着層は、低密度ポリエチレンをさらに備える、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項9】
前記接着層は、第2の水添スチレン・ブロック・コポリマーをさらに備える、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項10】
前記第2の水添スチレン・ブロック・コポリマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロック・コポリマーである、請求項9に記載のマスキング・フィルム。
【請求項11】
剥離層をさらに備える、請求項1に記載のマスキング・フィルム。
【請求項12】
前記剥離層は、低密度ポリエチレンを備える、請求項11に記載のマスキング・フィルム。
【請求項13】
さらに、前記接着層と前記剥離層との間にコア層をさらに備える、請求項11に記載のマスキング・フィルム。
【請求項14】
前記コア層は、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの配合物を備える、請求項13に記載のマスキング・フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月19日出願の米国特許仮出願第62/978,602号に対する優先権の利益を主張し、この出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、高温での接着安定性が向上した、基材を保護するためのマスキング・フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
表面保護フィルムとしても知られるマスキング・フィルムは、一般に、物理的障壁を提供し、それらが接着されている基材の損傷、汚染、引っ掻き傷、擦り傷、および/または他の傷つきを防止するために使用される。マスキング・フィルムは、電子ディスプレイの構成要素として使用される傷つきやすく繊細な基材へ適用され、製造時、ならびに出荷時、および/または基材の使用前の保管時に、1つまたは複数の後続の処理ステップを介して基材を保護し得る。
【0004】
一般的に使用されるマスキング・フィルムは、例えば、マスキング・フィルムおよび基材がそれぞれ少なくとも1つの非常に平坦かつ均一な表面を有することを必要とするファン・デル・ワールス力によって基材との接着を達成し、マスキング・フィルムは基材に密接に接触することができる。
【0005】
本明細書で言及されるとき、「接着」は、極性結合、イオン結合、および、場合によっては、水素結合、および/またはファン・デル・ワールス二次結合を介して非常に滑らかな表面と別の滑らかな表面との間に存在する自然なブロッキング接着を介した密接な接触による、保護される基材の表面への付着を意味する。「接着剤なしの」接着は、本明細書では、フィルムまたはそれが適用される基材が改質または損傷しないように接着が可逆的である、剥離可能な接着を包含することを意図する。本明細書で使用される「接着」は、基材表面と感圧接着剤を備えるフィルムとの間の接着力としての接着剤の熱結合または架橋機能、またはそのようなフィルムを除去するために必要なピール強度がそのようなフィルム自体の引張強度を超え、基材から剥がれる前に引き裂かれる、または破断する点まで上昇する接着剤の熱結合または架橋機能を含まない。
【0006】
接着量は、マスキング・フィルム表面の組成物を軟化または硬化させることにより増減することができる。接着力が大きすぎると、プロセスの最後に基材からマスキング・フィルムを除去することが困難になる。接着力が小さすぎると、マスキング・フィルムが基材から分離するのが早すぎ、基材はもはや保護されない可能性がある。保護される基材の表面がテクスチャ加工面を有する場合、マスキング・フィルムが基材から分離するのが早すぎることを防ぐために、接着性を向上する必要があり得る。
【0007】
テクスチャ加工面を含む表面を保護するための好適なマスキングまたは表面保護フィルムが、共同所有されている米国特許第10,150,896号に開示されている。そこに開示された表面保護フィルムの接着層は、水添スチレン・ブロック・コポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、および低密度ポリエチレン(LDPE)の配合物を含む。米国特許第10,150,896号の表3は、フィルムをポリカーボネート基材へ積層し、異なる温度へ曝露した後の一連のフィルムについての接着試験結果を列挙する。米国特許第10,150,896号の表3に列挙されたデータは、積層体が高温へ曝露された後、ポリカーボネート基材に対する表面保護フィルムの接着力が増加し、それによって表面保護フィルムの除去をより困難にすることを示し、これはいくつかの用途にとって望ましくない可能性がある。接着力の増加は、「接着成立値(Adhesion Build Value)」によって表され、これは、室温でのピール試験結果に対する高温でのピール試験結果の比である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マスキング・フィルムおよび基材が高温へ曝露されたとしても、マスキング・フィルムが不要になったときに、マスキング・フィルムの使用時または除去時に基材の表面を損傷することなく基材の所望の表面保護を提供するマスキング・フィルムを有することが望ましい。また、マスキング・フィルムが低い接着成立値を有し、それによって、マスキング・フィルムの接着特性が高温で実質的に増加しないことを示すことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、基材を保護するためのマスキング・フィルムが提供される。マスキング・フィルムは、少なくとも1つの水添スチレン・ブロック・コポリマーと、約2.0μmを超える表面粗さ(Sa)を有する接着面とを含む接着層を備える。マスキング・フィルムの接着成立値は、接着層をテクスチャ加工されたポリカーボネート基材へ取り付け、85℃へ30分間加熱した後、約2.0未満である。
【0010】
一実施形態では、接着面は、約3.0μm/μmを超える空隙容積(Vv)を有する。
【0011】
一実施形態では、接着面は、約1.0μm/μmを超えるコア空隙容積(Vvc)を有する。
【0012】
一実施形態では、マスキング・フィルムは、室温で約5グラム/インチを超える初期ピール強度を有する。
【0013】
一実施形態では、テクスチャ加工されたポリカーボネート基材は、約0.60μmの表面粗さSaを有する。
【0014】
一実施形態では、水添スチレン・ブロック・コポリマーは、粘着剤を含む。
【0015】
一実施形態では、水添スチレン・ブロック・コポリマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロック・コポリマーである。
【0016】
一実施形態では、接着層はまた、低密度ポリエチレンを含む。
【0017】
一実施形態では、接着層はまた、第2の水添スチレン・ブロック・コポリマーを含む。一実施形態では、第2の水添スチレン・ブロック・コポリマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロック・コポリマーである。
【0018】
一実施形態では、マスキング・フィルムはまた、剥離層を含む。一実施形態では、剥離層は、低密度ポリエチレンを含む。
【0019】
一実施形態では、マスキング・フィルムはまた、接着層と剥離層との間にコア層を含む。一実施形態では、コア層は、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの配合物を含む。
【0020】
本発明のこれらおよび他の態様、特性、および特徴、ならびに構造の関連要素の作業方法および機能、部品の組合せおよび製造の経済性は、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮するとより明らかになり、これらのすべてが本明細書の一部を形成する。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的とし、本発明の限界の画定を意図するものではないことが明示的に理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
以下の図の構成要素は、本開示の一般原則を強調するために図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】基材へ接着された本発明の実施形態によるマスキング・フィルムを模式的に示す図である。
図2】テクスチャ加工面を有するポリカーボネート基材へ接着された後の図1のマスキング・フィルムの接着面の表面粗さ(Sa)の関数としての、室温でのピール強度試験結果を示すグラフである。
図3】テクスチャ加工面を有するポリカーボネート基材へ接着された後の図1のマスキング・フィルムの接着面の表面粗さ(Sa)の関数としての、85℃での30分後のピール強度試験結果を示すグラフである。
図4】テクスチャ加工面を有するポリカーボネート基材へ接着された後の図1のマスキング・フィルムの接着面の表面粗さ(Sa)の関数としての、接着成立値を示すグラフである。
図5】テクスチャ加工面を有するポリカーボネート基材へ接着された後の図1のマスキング・フィルムの接着面の空隙容積(Vv)の関数としての、接着成立値を示すグラフである。
図6】テクスチャ加工面を有するポリカーボネート基材へ接着された後の図1のマスキング・フィルムの接着面のコア空隙容積(Vvc)の関数としての、接着成立値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態によるマスキング・フィルム100を模式的に示す。図示するように、マスキング・フィルム100は、外側剥離面112を有する剥離層110、コア層120、およびコア層120の、剥離層110とは反対側の接着層130を含む多層フィルムである。接着層130は外側接着面132を含む。接着層130の外側接着面132は、マスキング・フィルム100、例えば、電子装置のディスプレイ用の光学フィルムによって保護される基材150の表面152に接触するように構成されている。
【0024】
一実施形態では、マスキング・フィルム100は、約30μmから約70μmの間の厚さを有してもよい。一実施形態では、マスキング・フィルム100は、約40μmから約60μmの間の厚さを有してもよい。一実施形態では、マスキング・フィルム100は、約50μmの厚さを有してもよい。一実施形態では、3つの層110、120、130の厚さ比は、約15:65:20、すなわち、15%剥離層110、65%コア層120、および20%接着層130であってもよい。
【0025】
本明細書で論じるように、表面の粗さは、ANSI/ASME試験方法B46.1-1985に準拠した表面形状測定装置によって測定された表面の中心線に対する表面のマイクロピークおよびマイクロバレーの算術平均高さ(Ra)、以下「表面粗さ(Ra)」と称する、またはISO25178に準拠したコネチカット州ミドルフィールドのZygo Corporationによって製造されたもののような3D光学表面形状測定装置で測定された表面の算術平均高さ、以下「表面粗さ(Sa)」と称する、のいずれかとして定義される。表面粗さ(Ra)および表面粗さ(Sa)はどちらも、典型的には、マイクロメートルもしくはミクロン(μm)、またはマイクロインチ(10-6インチ)の単位で表される。
【0026】
表面の様々な容積パラメータは、また、ISO25178に準拠した3D光学表面形状測定装置で測定されてもよく、典型的には、面積の平方マイクロメートル当たり立方マイクロメートル(μm3/μm2)の単位で表される。典型的なフィルタリング技術は、3D光学表面形状測定装置に関連するソフトウェアと共に使用されて高周波読み取り値(「ノイズ」)および/または低周波読み取り値(「うねり」)をフィルタリングしてもよい。ソフトウェアはまた、3D光学表面形状測定装置のトレースを積分することによって材料比曲線(アボット-ファイアストーン曲線としても知られる)を計算してもよく、そして材料比曲線から、本明細書において「空隙容積(Vv)」として報告されている測定値の10%であった、選択された材料比より下の空隙容積を決定してもよい。80%の材料比での空隙容積は、本明細書では「デールズ空隙容積(Vvv)」と称し、10%の材料比での空隙容積(Vv)と80%の材料比でのデールズ空隙容積(Vvv)との差を本明細書において「コア空隙容積(Vvc)」と称する。
【0027】
剥離層
剥離層110は、1つまたは複数のポリオレフィン、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)、ランダム・コポリマー・ポリプロピレン、ポリプロピレン・インパクト・コポリマー、またはメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマ、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸メチル)、環状オレフィン・ポリマー、ポリアミド、ポリ(エチレン-コ-n-アクリル酸ブチル)、およびこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、剥離層110は、60:40~40:60の重量比で低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)の好適なポリオレフィン混合物を含んでもよい。一実施形態では、剥離層110は、LDPEを含んでもよいが、HDPEを含まない。一実施形態では、酸化防止剤などの1つまたは複数の添加剤が剥離層110に含まれてもよい。
【0028】
剥離層110の厚さは、約1μmから約20μmの間、例えば、約5μmから約12μmの間、例えば、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、または約12μmであってもよい。
【0029】
コア層
コア層120は、1つまたは複数のポリオレフィン、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ランダム・コポリマー・ポリプロピレン、ポリプロピレン・インパクト・コポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマ、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸メチル)、環状オレフィン・ポリマー、ポリアミド、ポリ(エチレン-コ-n-アクリル酸ブチル)、およびこれらの混合物を含んでもよい。1つの好適なポリオレフィン混合物は、低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)を60:40~40:60の重量比で含む。コア層120は、酸化防止剤などの1つまたは複数の添加剤を含んでもよい。
【0030】
本発明の実施形態によるマスキング・フィルム100のコア層120の厚さは、約10μmから約50μmの間、例えば、約20μmから約40μmの間、例えば、約20μm、約21μm、約22μm、約23μm、約24μm、約25μm、約26μm、約27μm、約28μm、約29μm、約30μm、約31μm、約32μm、約33μm、約34μm、約35μm、約36μm、約37μm、約38μm、約39μmまたは約40μmであってもよい。
【0031】
接着層
マスキング・フィルム100の実施形態による接着層130は、1つまたは複数の水添スチレン・ブロック・コポリマーと、任意選択で1つまたは複数のポリオレフィン、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)および/または高密度ポリエチレン(HDPE)の配合物を含む。好適な水添スチレン・ブロック・コポリマーは、水素化の前にポリスチレン・ブロック-ポリジエン・ブロック・ポリマー構造を有する。水添ブロック・コポリマーは、水素化の前は、直鎖状または放射状であってもよい。水添スチレン・ブロック・コポリマーに好適なポリジエンは、ポリブタジエン(1,3-ブタジエン)、ポリイソプレンおよびこれらの混合物を含む。ポリスチレン・ブロック-ポリジエン・ブロック構造の水素化は、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン・ポリマー構造、あるいは「SEBS」、またはスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、あるいは「SEPS」をもたらし得る。本発明の実施形態では、水添スチレン・ブロック・コポリマーのスチレン含有量は、10重量%から70重量%の間であってもよい。
【0032】
スチレン・ブロック・コポリマーなどの熱可塑性樹脂のメルト・フロー・レート(「MFR」)は、熱可塑性樹脂の粘度へ逆相関している。高MFRは、熱可塑性樹脂が低粘度を有することを意味し、その逆も同様である。本明細書に使用されているように、「MFR」は、特に断りのない限り、ASTM D-1238に従って、230℃で2.16kgの質量下で決定され、10分当たりのグラムで測定されるメルト・フロー・レートを意味するものとする。接着層130に好適な水添スチレン・ブロック・コポリマーは、約0.1g/10分から約100g/10分の間であり得る。
【0033】
本発明の様々な実施形態では、接着層130は、50重量%~100重量%の水添スチレン・ブロック・コポリマーを備えてもよい。これらの実施形態では、接着層130はまた、0重量%~50重量%のLDPEおよび/またはHDPEを備えてもよい。
【0034】
本発明の実施形態によるマスキング・フィルム100の接着層130の厚さは、約1μmから約20μmの間、例えば、約3μmから約15μmの間、例えば、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、または約15μmであってもよい。
【0035】
基材
本発明のマスキング・フィルム100は任意の基材150へ適用され得る一方、典型的な基材は、例示のみを目的として、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリイミド、ガラス、セラミックおよび金属を含む。このような基材は、典型的には、約0マイクロインチ(0μm)から約150マイクロインチ(3.81μm)の間の範囲の平均表面粗さ(Ra)を有する。基材150は、平滑面152を有してもよい(すなわち、約0マイクロインチ(0μm)~約5マイクロインチ(0.127μm)の範囲の平均表面粗さ(Ra)を有する表面、または約5マイクロインチ(0.127μm)~約150マイクロインチ(3.81μm)の範囲の平均表面粗さ(Ra)を有するテクスチャ加工面152)。
【0036】
マスキング・フィルムの基材への適用
様々な従来の方法のいずれかが、多層マスキング・フィルム100を基材150へ適用するために、および適用されたマスキング・フィルム100を基材150の表面152に押し付けるために利用することができる。一般的に言えば、マスキング・フィルム100は、マスキング・フィルム100および基材150が通過するニップ・ロールまたは同様のシステムによってロールから取り出され基材150へ直接適用されてもよい。マスキング・フィルム100がロールから引き抜かれるにつれて、ロール上のマスキング・フィルム100の螺旋状の配向は、接着層130の外側接着面132を剥離層110の外面112から外し、いずれの層またはマスキング・フィルム100全体を損傷することがない。
【実施例
【0037】
一連の3層マスキング・フィルム100を、同じ条件を使用して共押出キャスト・フィルム・ライン上に押出した。各フィルム100の目標総厚みは約50μmであり、剥離層110へ帰属する総厚みの15%、コア層120へ帰属する総厚みの約65%、および接着層130へ帰属する総厚みの約20%であった。各フィルム100の剥離層110は、本質的にLDPEからなっていた。各フィルム100のコア層120は、約60重量%のHDPEおよび約40重量%のLDPEの配合物であった。接着層130については、異なる水添スチレン・ブロック・コポリマーが使用された。具体的には、Kraton Performance Polymers,Inc.によって製造されたKraton(商標)MD6951のスチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)型水添スチレン・ブロック・コポリマー、およびPolyOne Corporationによって製造されたVersaflex(商標)PF MD6666Nのスチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)型水添スチレン・ブロック・コポリマーが、接着層130に使用された。Versaflex(商標)PF MD6666Nはまた、粘着剤を含む。
【0038】
2つの配合物を、接着層130として使用するために調査した。「配合物A」は、55重量%のVersaflex(商標)PF MD6666N、20重量%のKraton(商標)MD6951、および25重量%のLDPEの配合物であった。「配合物B」は、75重量%のVersaflex(商標)PF MD6666Nおよび25重量%のKraton(商標)MD6951の配合物であった。比較例については、55重量%のVersaflex(商標)PF MD6666N、20重量%のKraton(商標)MD6951、15重量%のLDPE、および10重量%のHDPEの配合物(「配合物C」)を接着層に使用した。
【0039】
マスキング・フィルム100の製造時のキャスト・ロールの表面粗さ(Ra)、およびマスキング・フィルム100の接着面132の得られた表面特徴も調査した。具体的には、表面粗さ(Ra)値が24マイクロインチ(0.61μm)、100マイクロインチ(2.54μm)、207マイクロインチ(5.26μm)、および600マイクロインチ(15.24μm)のキャスト・ロールを使用してサンプルを作成した。表面粗さ(Ra)が0.5マイクロインチ(0.0127μm)の比較的平滑なキャスト・ロールを比較例に使用した。比較例を含む、9つの異なるサンプルを作成するために使用したキャスト・ロールの配合物および表面粗さ(Ra)の概要を、以下の表Iに示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表Iに列挙したフィルム・サンプルのそれぞれを、上述した試験方法を使用して表面粗さ(Sa)、空隙容積(Vv)およびデールズ空隙容積(Vvv)について試験し、コア空隙容積(Vvc)を、空隙容積(Vv)からデールズ空隙容積(Vvv)を差し引くことによって計算した。以下の表IIは、表面粗さ(Sa)、空隙容積(Vv)、デールズ空隙容積(Vvv)およびコア空隙容積(Vvc)を含む、各フィルム・サンプルの接着面の表面特徴を列挙する。
【0042】
【表2】
【0043】
フィルムのそれぞれを、周囲条件下(例えば、約23℃)で2週間エージングした後、表面粗さ(Sa)が約23.6マイクロインチ(0.60μm)のテクスチャ加工面152を有するポリカーボネート基材150上へ積層し、接着層130の接着面132をポリカーボネート基材150のテクスチャ加工面152に接触させた。積層体試料を幅1インチに切断し、室温(例えば、約23℃)で1時間、または85℃のオーブンに30分間放置した。Texture Technologies Corp.によって製造されたTA.XTPlusテクスチャ分析器を使用して、5mm/秒の速度でグラム/インチにおける180°ピール力(「ピール力値」)を測定した。
【0044】
各サンプルの接着成立値は、サンプルが85℃に30分間曝露された後のピール力値を室温でのピール力値で割ることによって計算された。以下の表IIIは、計算された接着成立値を含むピール力試験の結果を列挙する。接着成立値は約2.0以下であることが望ましい。また、ピール力が約50グラム/インチ未満であることも望ましい。
【0045】
【表3】
【0046】
図2は、各マスキング・フィルム100の接着面132の表面粗さ(Sa)の関数としてのサンプルの室温でのピール力値、ならびに接着層130に使用された配合物を示す。予測通り、配合物Bは、Versaflex(商標)PF MD6666Nの含有量がより高いので、粘着剤は、配合物Aまたは配合物Cを含む接着層を有するマスキング・フィルムよりも大きなピール強度を示す接着層を有するマスキング・フィルムを提供した。また、接着面の表面粗さ(Sa)を大きくすると、対応するマスキング・フィルムのピール強度が低下した。
【0047】
図3は、各マスキング・フィルム100の接着面132の表面粗さ(Sa)の関数としての、サンプルを85℃へ30分間曝露した後のサンプルのピール力値、ならびに接着層130に使用された配合物を示す。図示のとおり、表面粗さ(Sa)が比較的低い、すなわち1.0μm未満の接着面を有するマスキング・フィルムのピール強度は、表面粗さ(Sa)が約2.0μmを超える接着面を有するマスキング・フィルムのピール強度よりもはるかに大きかった。
【0048】
図4は、各マスキング・フィルム100の接着面132の表面粗さ(Sa)の関数としてのサンプルの接着成立値、ならびに接着層130に使用された配合物を示す。上述のように、マスキング・フィルムは、約2.0未満の接着成立値を有することが望ましい。約2.0μmを超える表面粗さ(Sa)を有する接着面を含むマスキング・フィルムのそれぞれは、配合物にかかわらず、約2.0未満の接着成立値を有していた。
【0049】
図5は、各マスキング・フィルム100の接着面132の空隙容積(Vv)の関数としてのサンプルの接着成立値、ならびに接着層130に使用された配合物を示す。図示のとおり、3.0μm/μmを超える空隙容積(Vv)を有する接着面を含むマスキング・フィルムのそれぞれは、配合物に関係なく、約2.0未満の接着成立値を有していた。
【0050】
図6は、各マスキング・フィルム100の接着面132のコア空隙容積(Vvc)の関数としてのサンプルの接着成立値、ならびに接着層130に使用された配合物を示す。図示のとおり、約1.0μm/μmを超えるコア空隙容積(Vvc)を有する接着面を含むマスキング・フィルムのそれぞれは、配合物に関係なく、約2.0未満の接着成立値を有していた。
【0051】
上述した試験結果は、接着層130のための配合物、ならびに接着面132の表面粗さ(Sa)および/または空隙容積(Vv)およびコア空隙容積(Vvc)が、望ましい初期ピール強度および接着成立値を達成するように調整され得ることを示す。
【0052】
本明細書に記載される実施形態は、複数の可能な実施および実施例を表し、本開示を任意の特定の実施形態へ必ずしも限定することを意図するものではない。その代わりに、様々な変更が、当業者によって理解されるように、これらの実施形態へなされることができる。任意のそのような変更は、本開示の精神および範囲内に含まれることを意図し、以下の特許請求の範囲によって保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】