(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】アンテナを備えるグレージング、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20230330BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20230330BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
H01Q1/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550948
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 GB2021050486
(87)【国際公開番号】W WO2021171026
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ バランスキー
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB06
5J046LA02
5J046LA08
5J046UA02
5J047AA03
5J047AB06
5J047EC01
(57)【要約】
本発明は、グレージング材料のプライ11と、外部回路20に接続するための給電点3をその一端に備える少なくとも部分的にグレージング材料のプライ11上に配置されたアンテナ1と、周波数Fを放出するためにグレージング10の上またはその近くに位置する電子デバイス2と、アンテナ1にブリッジ6によって接続され、給電点3に向かってアンテナ1と平行に端7へ延在する周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナ5と、を備えるグレージング10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレージング10であって、
グレージング材料のプライ11と、
少なくとも部分的にグレージング材料のプライ11上に配置されたアンテナ1であって、外部回路20に接続するための給電点3をその一端に備える、アンテナ1と、
周波数Fを放出するためにグレージング10の上またはその近くに位置する電子デバイス2と、
を備え、
前記アンテナ1にブリッジ6によって接続され、前記給電点3に向かって前記アンテナ1と平行に端7へ延在する周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするための、アンチアンテナ5を備える、グレージング10。
【請求項2】
前記ブリッジ6から前記端7までの長さAを前記アンチアンテナ5の第1の短縮係数K1で割った値は、前記周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%である、請求項1に記載のグレージング10。
【請求項3】
前記電子デバイス2は、長さA’と給電点4とを有する第2のアンテナであり、前記長さA’を前記第2のアンテナの第2の短縮係数(K2)で割った値は、前記周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%である、請求項1に記載のグレージング10。
【請求項4】
前記給電点3から前記端7までの距離Bを前記給電点3と前記端7との間の第3の短縮係数K3で割った値は、前記周波数Fの自由空間における2分の1波長の倍数±25%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項5】
前記アンチアンテナ5は、前記周波数Fで前記第2のアンテナ2からの干渉をキャンセルするフィルタであり、または複数のアンチアンテナ5は、複数の周波数Fで複数の電子デバイス2からの干渉をキャンセルするための複数のフィルタである、請求項1から4のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項6】
前記長さAは、対FM機能用に300~500mm、好ましくは360~450mmであり、または対LTE機能用に50~70mm、好ましくは60~65mmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項7】
前記アンテナと前記アンチアンテナとの間のギャップGは、対FM機能用に20mm~40mm、好ましくは28mm~32mmであり、または、前記アンテナ1と前記アンチアンテナ5との間のギャップGは、対LTE機能用に1~6mm、好ましくは3~4mmである、請求項1から6のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項8】
前記アンテナ1は、前記給電点3から前記グレージング材料の第1のプライ11上の接続点9まで延在するコネクタ8をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項9】
前記コネクタ8は、フラットケーブルであり、前記アンチアンテナ5および前記ブリッジ6は、前記フラットケーブル8上に構成される、請求項8に記載のグレージング。
【請求項10】
前記外部回路20は、前記給電点3に接続され前記グレージング10の上またはその近くに位置する増幅器を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項11】
前記第2のアンテナ2は、車両のバンパーまたは車両のルーフに配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項12】
前記グレージング材料の第1のプライ11は、強化ガラスである、請求項1から11のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項13】
積層ガラスを形成するために、中間層材料のプライ13によって前記グレージング材料の第1のプライ11に結合されたグレージング材料の第2のプライ12をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項14】
グレージング材料のプライ11を提供するステップと、
アンテナ1を少なくとも部分的に前記グレージング材料のプライ11の上に配置するステップであって、前記アンテナ1は、
前記アンテナ1の端に外部回路20に接続するための給電点3を備える、
アンテナ1を少なくとも部分的に前記グレージング材料のプライ11の上に配置するステップと、
周波数Fを放出するために前記グレージング10の上またはその近くに電子デバイス2を配するステップと、
を含み、
前記アンテナ1にブリッジ6によって接続され、前記給電点3に向かって前記アンテナ1と平行に端7へ延在する周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするための、アンチアンテナ5を提供するステップを含む、
請求項1に記載のグレージング10を製造する方法。
【請求項15】
請求項1に記載のグレージング10の、建物または車両の窓、フロントガラス、サイドウィンドウ、リアウィンドウまたはルーフウィンドウとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを有するグレージングおよび当該グレージングを製造する方法に関する。本発明は、電子デバイスからの干渉による問題を解決する。
【背景技術】
【0002】
電磁波を受信または送信するためのアンテナを有するグレージングが知られている。車両におけるそのようなグレージングは、ラジオ(AM、FM)、モバイルネットワーク「Long Term Evolution」(LTE)、デジタルオーディオ放送(DAB)、テレビ(TV)、地上波デジタルビデオ放送(DVB-t)、電話(GSM)、ナビゲーション(GPS)、WLAN、リモートキーレスエントリー(RKE)、車対車通信および車対インフラ通信(car2X)およびページングシステム用のアンテナを備える。グレージング上のアンテナは、グレージングまたはその他の場所に位置する電子デバイス(そのアンテナまたはその他の導体)から放出される電磁干渉(EMI)のために、性能が不良であり得る。
【0003】
国際公開第2011077142号(Paulus)は、スロットアンテナを画定する導電性パネルと電磁放射を放出する装置とを有する積層車両用グレージングを開示する。導電性パネルに電気的に接続または容量結合されデバイスを少なくとも部分的に取り囲む導電性ワイヤまたは導電性プリントは、スロットアンテナでのEMIを低減するように機能する。
【0004】
国際公開第2014087142号(Baranski)は、グレージング内の2つのアンテナを開示し、各アンテナは、結合電極に接続され、結合電極間で交流結合が生じるように配置される。カップリング電極と他の導体との間の望ましくない直流接触は、絶縁を使用することによって回避される。
【0005】
欧州特許第3534457号明細書(Nagata)は、電子デバイスが近くに配置される窓ガラスを開示し、ガラス板上のアンテナとやはりガラス板上の線形キャンセラーとを備え、アンテナが電子デバイスからノイズを受信するのを抑制する。
【0006】
本発明の目的は、他のアンテナまたは電子デバイスからの望ましくない干渉を低減するアンテナを有するグレージングを提供することである。別の目的は、当該グレージングを製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項1による第1の態様において、グレージング材料のプライと、外部回路に接続するための給電点をその一端に備える少なくとも部分的にグレージング材料のプライ上に配置されたアンテナと、周波数Fを放出するためにグレージングの上またはその近くに位置する電子デバイスと、アンテナにブリッジによって接続され給電点に向かってアンテナと平行に端へ延在する周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナと、を備えるグレージングを提供する。
【0008】
好ましくは、ブリッジから端までの長さAをアンチアンテナの第1の短縮係数K1で割った値は、周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%である。
【0009】
好ましくは、電子デバイスは、長さA’と給電点とを有する第2のアンテナであり、長さA’を第2のアンテナの第2の短縮係数K2で割った値は、周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%である。
【0010】
好ましくは、給電点から端までの距離Bを給電点と端との間の第3の短縮係数K3で割った値は、周波数Fの自由空間における2分の1波長の倍数±25%である。
【0011】
積層ガラスの場合、第1、第2または第3の短縮係数K1、K2、K3は、通常0.6であり、モノリシック強化ガラスの場合は、通常0.7である。
【0012】
好ましくは、アンチアンテナは、周波数Fで第2のアンテナからの干渉をキャンセルするフィルタであり、または複数のアンチアンテナは、複数の周波数Fで複数の電子デバイスからの干渉をキャンセルするための複数のフィルタである。
【0013】
一実施形態では、長さAは、対FM機能(anti-FM function)用に、300~500mm、好ましくは360~40mmである。別の実施形態では、長さAは、対LTE機能(anti-LTE function)用に、好ましくは50~70mm、より好ましくは60~65mmである。
【0014】
一実施形態では、アンテナとアンチアンテナとの間のギャップGは、対FM機能用に、20~40mm、好ましくは28~32mmであり、または、アンテナとアンチアンテナとの間のギャップGは、対LTE機能用に、1~6mm、好ましくは3~4mmである。
【0015】
好ましくは、アンテナは、給電点からグレージング材料の第1のプライの上の接続点まで延在するコネクタをさらに備える。
【0016】
好ましくは、当該コネクタは、フラットケーブルであり、アンチアンテナおよびブリッジは、フラットケーブル上に構成される。
【0017】
好ましくは、外部回路は、給電点に接続され、グレージングの上またはその近くに位置する増幅器を備える。
【0018】
好ましくは、第2のアンテナは、車両のバンパーまたは車両のルーフに配置される。
【0019】
好ましくは、グレージング材料の第1のプライは、強化ガラスである。
【0020】
好ましくは、グレージングは、積層ガラスを形成するために、中間層材料のプライによってグレージング材料の第1のプライに結合されたグレージング材料の第2のプライをさらに備える。
【0021】
グレージングは、例えば台形、長方形または三角形などの任意の適切な形状を有し得る。すべてのグレージング材料、中間層材料および導体を含むグレージングの厚さは、任意の厚さ、例えば、2.5mm~10.6mm、好ましくは2.6mm~3.8mm、より好ましくは2.7mm~3.2mmであり得る。グレージング材料は、例えばソーダ石灰シリカガラスまたはホウケイ酸ガラスなどの任意の適切な材料であり得る。好ましくは、アンチアンテナ、ブリッジおよびアンテナは、直径0.05~0.15mmの銅線または厚さ0.1~2mmの銀印刷である。ブリッジとアンテナとは、ガルバニック接続され得、または容量性カップリングによって接続され得る。
【0022】
第1および第2のガラスシートは、フロートプロセスによって形成され得、焼鈍され得る。ガラスシートは、熱強化または焼き戻し(強化)され得る。積層ガラスでは、第1のガラスシートは、グレージング材料の内側のプライであり得、第2のガラスシートは、グレージング材料の外側のプライであり得、またはその逆であり得る。
【0023】
グレージングは、例えばポリビニルブチラール(PVB)などの中間層材料の1つ以上のプライを備え得、これはガラスへの積層後に良好な接着性を示すため、有利である。中間層材料は、例えば0.76mmなど、任意の厚さを有し得る。
【0024】
本発明は、請求項14による第2の態様において、グレージング材料のプライを提供するステップと、外部回路に接続するためのアンテナの端の給電点を備えるアンテナを少なくとも部分的にグレージング材料のプライの上に配置するステップと、周波数Fを放出するためにグレージングの上またはその近くに電子デバイスを配するステップと、アンテナにブリッジによって接続され給電点に向かってアンテナと平行に端へ延在する周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナを提供するステップと、を含む、グレージングを製造する方法を提供する。
【0025】
本発明は、請求項15による第3の態様において、建物または車両の窓、フロントガラス、サイドウィンドウ、リアウィンドウまたはルーフウィンドウとしてのグレージングの使用を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、グレージング上に少なくとも部分的に配置されたアンテナとグレージングの上または近くの電子デバイスによる周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナとを有するグレージングを提供する。本発明は、アンテナの給電点での信号がアンチアンテナによってフィルタリングされて干渉がキャンセルされ、それによって給電点に接続された外部回路の信号対雑音比が改善されるため、非常に有利である。
【0027】
ブリッジから給電点に向かってアンテナと平行に端まで延在するアンチアンテナは、先行技術には開示されていない。ブリッジは、アンチアンテナをアンテナの分岐点に接続する。給電点に向かって延在させることによって、アンテナの端が給電点から離れているという技術的不利益を克服する。驚くべきことに、本発明は、周波数Fをキャンセルするためのアンチアンテナの一部として給電点に近い端と、他の周波数を受信するための給電点から離れた端と、を有するアンテナを提供する。
【0028】
本発明は、周波数Fをキャンセルするために、アンチアンテナを給電点に向かって延在するという驚くべきステップを有する、グレージングを製造する方法を提供する。この方法によって、給電点または外部回路に代替の信号処理部品を設けるステップが回避される。
【0029】
本発明によるグレージングを建物および車両に使用することは、標準的な外部回路、例えばアンプを給電点に接続し得、使用中の他の電子デバイスからの電磁干渉を抑制するための信号処理に必要な労力が少なくて済むため、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】グレージング上のアンテナおよびアンチアンテナとグレージングの近くの電子デバイスとを有する、本発明によるグレージングの平面図。
【
図2】部分的にグレージング上におよび部分的にコネクタ上にアンテナを有し、アンチアンテナがコネクタ上にある、本発明によるグレージングの平面図である。
【
図3】アンチアンテナがグレージング上にある、
図2と同様の本発明によるグレージングの平面図である。
【
図4】電子デバイスがグレージング上の第2のアンテナである、
図3と同様の本発明によるグレージングの平面図である。
【
図5A】グレージングが積層ガラスである、
図1から
図4と同様の本発明によるグレージングの断面図である。
【
図5B】グレージングが積層ガラスである、
図1から
図4と同様の本発明によるグレージングの断面図である。
【
図6】グレージングがモノリシックガラスである、
図1から
図4と同様の本発明によるグレージングの断面図である。
【
図7】アンテナおよび第2のアンテナが複雑な形状を有する、
図4と同様の本発明によるグレージングの平面図である。
【
図8】比較例C-Exおよび3mmのギャップGを有する本発明の実施形態についての放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図9】それぞれ3mm、2mmおよび1mmのギャップGを有する本発明の3つの実施形態についての放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図10】100mmの長さを有する本発明の実施形態の放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図11】80mmの長さを有する本発明の実施形態の放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図12】60mmの長さを有する本発明の実施形態の放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図13】40mmの長さを有する本発明の実施形態の放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図14】
図10、
図11、
図12および
図13に個別に示される、アンチアンテナ長がそれぞれ100mm、80mm、60mmおよび40mmである本発明の4つの実施形態についての放射効率(dB)対周波数(GHz)のグラフである。
【
図15】アンチアンテナが複雑な形状を有する、
図2と同様の本発明によるグレージングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
下記に、同様の参照番号が使用される図面を参照して本発明の説明を記載する。本発明の実施形態は、非限定的な例として説明される。
【0032】
図1は、グレージング材料のプライ11を備えるグレージング10を開示する。アンテナ1は、グレージング材料のプライ11上に配置され、外部回路20に接続するための給電点3を一端に備える。電子デバイス2は、周波数Fを放出するためにグレージング10上またはその近くに位置する。周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナ5は、ブリッジ6によってアンテナ1に接続され、給電点3に向かってアンテナ1と平行に端7へ延在する。
【0033】
アンチアンテナ5は、ブリッジ6から端7までの長さAを有する。距離Bは、端7から給電点3までである。ギャップGは、アンテナ1とアンチアンテナ5との間にある。電子デバイス2は、第2の給電点4および長さA’を有する第2のアンテナ2であり得る。電子デバイス(2)は、建物の一部または車両の一部、例えばバンパーまたはルーフ上にあり得る。
【0034】
アンチアンテナ5は、アンチアンテナ5の第1の短縮係数K1で割った値が周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%に等しい、ブリッジ6から端7までの長さAを有し得る。
【0035】
第2のアンテナ2は、長さA’および給電点4を有し得、ここで、長さA’を第2のアンテナ2の第2の短縮係数K2で割った値は、周波数Fの自由空間における4分の1波長の奇数倍±25%である。
【0036】
給電点3から端7までの距離Bを、給電点3と端7との間の第3の短縮係数K3で割った値は、周波数Fの自由空間における2分の1波長の倍数±25%である。
【0037】
図2は、
図1と同様のグレージング10を開示するが、ただし、アンテナ1は、グレージング材料のプライ11上に部分的に配置され、コネクタ8上に部分的に配置される。接続点9は、コネクタ8上のアンテナ1の一部をグレージング材料のプライ11上のアンテナ1の一部と接続するように機能する。給電点3は、コネクタ8上にあり、外部回路20に接続し、これは、建物の窓フレームまたは車両の本体上にあり得る。周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナ5は、コネクタ8上に位置し、ブリッジ6によってアンテナ1に接続され、給電点3に向かってアンテナ1と平行に端7へと延在する。
【0038】
図3は、
図2と同様のグレージング10を開示するが、ただし、周波数Fを少なくとも部分的にキャンセルするためのアンチアンテナ5は、グレージング材料のプライ11上に位置し、ブリッジ6によってアンテナ1に接続され、給電点3に向かってアンテナ1と平行に端7まで延在する。
【0039】
図4は、
図3と同様のグレージング10を開示するが、ただし、電子デバイス2は、第2のアンテナ2であり、グレージング10上に位置する。アンテナ1および第2のアンテナ2の短縮係数K1、K2は、この実施形態では同様であるため、長さA、A’も同様である。
【0040】
図5Aは、
図4と同様のグレージング10の線X-Xに沿った断面を開示し、ここで、グレージング材料の第1のプライ11は、積層ガラスを形成するために中間層材料のプライ13によってグレージング材料の第2のプライ12に接合され、アンテナ1は、埋め込まれたワイヤである。
図5Bは、
図5Aと同様であるが、アンテナ1は、表面4に印刷され、外側から番号が付けられている。
【0041】
図6は、グレージング材料の第1のプライ11が強化ガラスのモノリシック(単一プライ)である、
図4と同様のガラス(10)のX-X線断面図を開示する。
【0042】
図7は、
図4と同様のグレージング10を開示するが、ただし、アンテナ1および第2のアンテナ2は、複雑な形状を有する。
【0043】
例えば、アンテナ1は、複数の屈曲点を介して給電点3から離れて延在し得る。
図7は、接続点9、接続点9とアンチアンテナ5の端7の間の点、およびブリッジ6がアンテナ1へ接続する分岐点の3つの屈曲点を示す。
【実施例】
【0044】
(実施例1および比較例)
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、これによって限定されない。比較例についても説明する。
【0045】
図8は、モノポールアンテナ1を有するグレージング10の比較例(C-Ex)ならびに本発明によるアンチアンテナ5および3mmのギャップGをさらに有する実施例1の放射性能を示す。
【0046】
アンテナ1は、自由空間において0.725mに相当する長さを有する。比較例(C-Ex)および実施例1について、ピーク放射効率が生じる最低周波数は、その長さが4分の1波長、すなわち波長が2.900mおよび周波数103MHz、すなわちFMラジオ波であるときである。
【0047】
比較例(C-Ex)の場合、同様のピーク放射効率はまた、約720MHzの高調波周波数でも発生する。電子デバイス2、例えば携帯電話アンテナによって送信されるLTE信号は、アンテナ1の給電点3で干渉として受信されるため、高調波周波数ピークは望ましくない。LTE帯域は、公称700MHzである。ユーザー機器は、703~748MHzを送信し、758~803MHzを受信する。
【0048】
実施例1は、自由空間において0.100mに相当する長さAを有するアンチアンテナ5を備える。アンチアンテナ5において共振が発生する最低周波数は、長さAが波長の4分の1、つまり波長が0.400mおよび周波数750MHzのときである。
【0049】
アンテナ1に隣接して位置し、そこから3mmのギャップGによって分離されたアンチアンテナ5は、720MHzで-22dBの放射効率のピーク減衰を引き起こす。減衰は、630~810MHzで生じる。すなわち、フィルタ帯域幅は、180MHzである。
【0050】
(実施例2および3)
図9は、それぞれ3mm、2mmおよび1mmのギャップGを有する実施例1、実施例2および実施例3の放射効率(dB)を開示する。
【0051】
ギャップGが狭くなるほど減衰が強くなる。1mmのギャップGを有する実施例3では、放射効率が-29dBに低下する。
【0052】
ギャップGが狭くなるにつれて、より狭い周波数範囲で減衰が発生する。実施例3では、減衰は、690~810MHzで発生する。つまり、フィルタ帯域幅は、120MHzである。
【0053】
帯域幅が狭いため、アンチアンテナ5は、FM/DAB/TVに影響を与えない。
【0054】
(実施例4、5、6および7)
4つの実施例のセットでは、3.15mmの厚さを有するグレージング材料のプライ11と、厚さ0.01mm、幅1mm、長さ0.7mを有する銀印刷として堆積されたアンテナ1と、を使用する。アンチアンテナ5は、10mmのギャップGを有して、それに平行に配置される。
【0055】
図10、
図11、
図12および
図13は、それぞれ実施例4、5、6および7を開示し、アンチアンテナの長さAは、それぞれ100mm、80mm、60mmおよび40mmである。
【0056】
図14は、フィルタリングされる所定の周波数Fに適した長さAの選択を支援するために、4つの例を共に示す。例えば、デジタルTV帯域は公称800MHzであるが、ユーザー機器は、791~821MHzを受信する。デジタルTVからの干渉を減衰するためには、40mmのアンチアンテナ長Aを選択して、減衰-15dBを達成すべきである。
【0057】
40mmを選択した場合(実施例7)、
図13の個別グラフから、アンチアンテナがFMラジオ(88~108MHz)またはDAB(174~240MHz)に影響を与えないことが確認される。
【0058】
TV送出が750~800MHzの場合、
図14から、アンチアンテナ長Aは、約50mmと推測され得、これは、60mm(590~720MHz、実施例6)と40mm(760~1,000MHz、実施例7)との中間である。
【0059】
長さAは、グレージング材料のプライ11またはアンチアンテナ5の基板として機能するコネクタ8の誘電率に依存する。サンプルを作成するために、第1の短縮係数K1は、強化ガラスの場合は、0.7、積層ガラスの場合は0.6、またはレーザーエッチングラインを使用したコーティングガラスの場合は0.5と見積もられ得る。サンプルは、無響室でテストして、フィルタリングされた実際の周波数を測定すべきである。プロトタイプを作成するには、フィルタリングされた実際の周波数を、第1の短縮係数K1の修正された推定値に従って短くまたは長くした所定の周波数Fおよび長さAと比較すべきである。同様の推定および試験を、第2のアンテナ2の長さA’、距離Bおよび対応する第2および第3の短縮係数K2、K3に使用され得る。
【0060】
(実施例8)
実施例8は、
図1の積層グレージング10である。端7から給電点3までの距離Bを、第3の短縮係数K3で割った値は、周波数Fの自由空間における2分の1波長のn倍数±25%であり、ここで、nは、任意の整数(0、1、2...)である。LTE信号を減衰させるためには、距離Bは、125mmであり、0.6で割ると208mmであり、全波長は、0.416m、すなわち周波数720MHzである。
【0061】
(複数のアンチアンテナ)
アンテナ1上に、所定の周波数F1、F2などをキャンセルする長さA1、A2などを各々有する複数のアンチアンテナ5を設け得る。これは、増幅器20への給電点3で複数の望ましくない周波数をフィルタリングするのに有利である。
【0062】
(複雑な形状のアンチアンテナ)
図15は、
図2と同様のグレージング10を開示するが、ただし、アンチアンテナ5がアンテナ1の複雑な形状に対応する複雑な形状を有する。
【0063】
参照により援用される国際公開第2017194961号(Baranski)は、アンテナがコネクタ上で複雑な形状を形成する複数の屈曲点を有するグレージングを開示する。
【0064】
図15において、アンテナ1は、第1のグレージング材料のプライ11上の給電点3から接続点9まで延在するコネクタ(8)を備える。本発明によれば、アンテナ1の屈曲点に対応する屈曲点を有するアンチアンテナ5がコネクタ8上に位置する。
【0065】
複雑な形状を有するアンチアンテナ5の全長は、部分の合計、例えば長さA1、A2を有する2つの部分の合計である。長さA1は、ブリッジ6から屈曲点までである。長さA2は、屈曲点からアンチアンテナ5の端7までである。屈曲点とは、2つの直線部分の間の湾曲部を意味する。
【符号の説明】
【0066】
1 アンテナ
2 電子デバイス
3 アンテナの給電点
4 電子デバイスの給電点
5 アンチアンテナ
6 ブリッジ
7 アンチアンテナの端
8 コネクタ
9 接続点
10 グレージング
11 グレージング材料の第1のプライ
12 グレージング材料の第2のプライ
13 中間層材料のプライ
15 フレーム
20 外部回路
A アンチアンテナの長さ
A1 部分の長さ
A2 部分の長さ
A’ 電子デバイスの長さ
B 給電点からアンチアンテナの端までの距離
F 電子デバイスによって放出される周波数
G アンテナとアンチアンテナとの間のギャップ
K1 第1の短縮係数
K2 第2の短縮係数
K3 第3の短縮係数
【手続補正書】
【提出日】2022-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】