(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】構造化シリカセクションを有するスペックルフリー出力光ファイバのプリフォーム、そのプリフォームの製造方法、及び改良されたスペックルフリー出力光ファイバ
(51)【国際特許分類】
C03B 37/018 20060101AFI20230330BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20230330BHJP
C03B 37/027 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C03B37/018 C
G02B6/02 466
G02B6/02 451
C03B37/027 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550959
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2021054740
(87)【国際公開番号】W WO2021170748
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517002306
【氏名又は名称】バイオリテック ウンテルネーメンスベタイリグングス ツヴァイ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルガー、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】グリシュチェンコ、アンドレイ
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AA06
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AB34
2H250AB36
2H250AD13
2H250AF01
2H250AF30
2H250AH11
2H250AH33
2H250AH42
4G021EA03
4G021EB16
4G021HA01
(57)【要約】
線引きしたときに、光ファイバの新しいクラス、改良されたスペックルフリー出力光ファイバが得られるプリフォームの製造及び新しい種類が提示されている。ガウシアン又は少数モードの源からの光のフラットトップ伝送によるスペックルフリーで滑らかな出力を実現する有用なファイバが、本明細書で紹介されたプリフォームから製造される。これらの改良されたプリフォームの固有の製造も提示されている。プリフォーム、ひいては約100μmから1000μmを超えるまでのさまざまなコア寸法で製造されるファイバは、内側コアに隣接する、又は非円形コアの場合にはコア内部にあるモード混合領域の構造化シリカセクションに基づいている。プラズマ気相堆積プロセスが、良好に制御された形態で構造化セクションを実現するために調整されている。構造化セクションは、薄いダウンドープ層と、はるかに厚いコア材層と、が交互に重なった、ある数の層の対で構成されている。ダウンドープ層の厚さに対するコア層の厚さの比率は、約3から25である。対層の数は、典型的には約8から30層対の間である。構造化セクションの有効NAは、構造化シリカセクション及び個々のダウンドープ層の詳細に依存する。円形内側コアの例と非円形コアの例との両方が可能であり、本明細書で論じられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペックルフリー出力光ファイバへ線引きされるプリフォームであって、
当該プリフォームの断面構造は、屈折率又は屈折率プロファイルを有する円形内側コアであって、当該内側コアの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する構造化円形領域によって囲まれた、円形内側コアを備え、
当該プリフォームは、標準的なファイバ線引き技術を使用してスペックルフリー光ファイバへ線引きされることができる、
プリフォーム。
【請求項2】
前記構造的円形領域は、前記コアの材料よりも低い屈折率(RI)を有する最初の層と、それに続く、前記最初の層の材料よりも高いRIを有する次の層と、を有し、前記内側コアから始まる、複数の対層を有し、各層が厚さを有する、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記低RI層がダウンドープ層であり、前記次の層がコア層又はアップドープ層である、請求項2に記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記対層のそれぞれにおいて、前記ダウンドープ層の厚さに対する前記コア層の厚さの比率は、約1から約20である、請求項2又は3に記載のプリフォーム。
【請求項5】
前記対層の数は、約8から約30である、請求項2又は3に記載のプリフォーム。
【請求項6】
純シリカのチューブが、前記プリフォームの上に、前記チューブの内面と前記第2のクラッドとの間の界面に隙間又は気泡を生じさせることなく折り畳まれて、スペックルフリー出力光ファイバへの線引きプリフォームが形成される、請求項1から5の何れか一項に記載のプリフォーム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のプリフォームから線引きされた光ファイバであって、当該光ファイバの断面が前記プリフォームの断面に比例し、高出力低モードフォトニック源の当該光ファイバの出力/伝送が低減されたスペックルを有している、光ファイバ。
【請求項8】
前記構造的円形領域は、請求項2から5の何れか一項に記載されたとおりである、請求項7に記載の光ファイバ。
【請求項9】
請求項1から6の何れかに記載のプリフォームの製造方法であって、前記請求項に記載の前記プリフォームの前記断面のセクション及びその層を製造するためにプラズマ気相堆積が使用される、プリフォームの製造方法。
【請求項10】
プリフォームであって、当該プリフォームからスペックルフリー出力光ファイバを線引きされることができる、プリフォームの断面構造は、
反射クラッドタイプ材料によって囲まれた複合非円形コアを備え、前記複合非円形コアは、
屈折率を有するコア材の多角形のセクションと、
前記多角形のコアのセクションの内部の、前記コア材の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する構造化シリカ円形領域の円弧セグメントと、
をさらに備え、
前記反射クラッドタイプ材料は、前記コア材の屈折率よりも低い屈折率を有し、
当該プリフォームは、標準的なファイバ光線引き技術を使用してスペックルフリー出力光ファイバへ線引きされることができる、
プリフォーム。
【請求項11】
前記構造的円形領域は、ダウンドープ層と、それに続くコア層とを備え、前記内側コアから始まる層の対を有し、各層が厚さを有する、請求項10に記載のプリフォーム。
【請求項12】
前記対層のそれぞれにおいて、前記ダウンドープ層の厚さに対する前記コア層の厚さの比率は、約1から約20である、請求項10又は11に記載のプリフォーム。
【請求項13】
前記対層の数は、約8から約30である、請求項10又は11に記載のプリフォーム。
【請求項14】
前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、十角形、及び十二角形の群から選択される、請求項10から13の何れか一項に記載のプリフォーム。
【請求項15】
前記多角形のコアのセクションは、4辺を有する多角形のための長方形/正方形のコア、又は他の全ての多角形のための略扇形のコアである、請求項10から14の何れか一項に記載のプリフォーム。
【請求項16】
前記構造化シリカ円形領域の前記円弧セグメントは、異なる多角形コア形状について異なり、前記多角形における辺の数によって分割された前記円形領域の略一部である、請求項15に記載のプリフォーム。
【請求項17】
長方形/正方形のコアの内部の前記構造化シリカ円形領域の前記円弧セグメントは、前駆的な元の長方形コアが、一度だけ、前駆的な長方形コアの長辺を通って、前記非円形コアの周りに前記反射クラッド層を堆積する前に切断された場合、半円形状を有する、請求項16に記載のプリフォーム。
【請求項18】
請求項10から17の何れか1項に記載のプリフォームから線引きされた光ファイバであって、当該光ファイバの断面は、前記プリフォームの断面に比例し、高出力低モードフォトニック源の当該光ファイバの出力/伝送は、スペックルフリー出力である、光ファイバ。
【請求項19】
前記構造的円形領域は、請求項10から17の何れかに記載されたとおりである、請求項18に記載の光ファイバ。
【請求項20】
請求項10から17の何れかに記載のプリフォームの製造方法であって、前記請求項に記載の前記プリフォームの前記断面のセクション及びその層を製造するためにプラズマ気相堆積が使用される、プリフォームの製造方法。
【請求項21】
光ファイバが、線引きされたとき、光ファイバレーザ/増幅器又はセンシング媒体として使用できるように、高屈折率希土類ドープ材料の最内部コアをさらに備える、請求項1から6又は請求項10から17の何れか1項に記載のプリフォーム。
【請求項22】
光ファイバであって、当該ファイバが、ファイバレーザ/増幅器として、又はセンシング目的で機能できるように、対応する前記プリフォームが、希土類ドープ材料の最内部コアを有する、請求項7から8又は請求項18から19の何れか一項に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザ及びファイバレーザを使用する多くのアプリケーションでは、レーザ源から得られる典型的なガウス分布の代わりに、スペックルフリーな出力をファイバシステムの遠位出力端において有することが好ましい。このような出力は、しばしばトップハット分布又はフラットトップ分布と呼ばれる。一般的に、大半のシステム/アプリケーションでは、うまく機能するために、効率的なモード混合ファイバセクションが必要である。他のアプリケーションでは、例えばレーザクリーニング用に、又は空間検知センサ用にスペックルフリーな発光を実現するためにスペックルフリーな出力が必要とされる。本明細書では、製造方法と、出力面全体にわたってスペックルフリーな出力を有する所望の光ファイバへ線引きすることができるプリフォーム構造と、を開示する。
【背景技術】
【0002】
さまざまなアプリケーションで、レーザ溶接又は接合が、非常に大きなビジネスになっている。多くの場合、これらのプロセスの利益を最大限に享受するためには、表面が、原子/分子レベルに至るまで非常にクリーンで非常に滑らかであることが重要である。再塗装などのための表面準備に加えて、精密溶接及び長寿命溶接のための表面準備において、レーザクリーニングが選択される手法になっている。
【0003】
スペックルフリー出力ファイバ出力に対するニーズとそれゆえの追求は、ここしばらく、特にレーザ及びファイバレーザ源が多くのアプリケーションで使用され始めて以後、存在している。改良された溶接及び接合のための超清浄表面に対するニーズに加え、高密度出力用の単一モード又は少数モードの源に対する要求とともに、さまざまな撮影光学デバイスの小型化の進展によって、大小の部品のレーザ処理システムにおけるスペックルフリービームに対するニーズが高まっている。レーザ溶接、レーザクリーニング、レーザ接合/封着手順の何れであっても、それぞれが、スペックルフリーではないビームにより悪影響を被る可能性がある。例えば、スペックルを含む出力のレーザでクリーニングした後の表面に波打ちがあると、通常の接合は実現されるが、レーザ接合/溶接が実現できるような理想的な密着した、連続的な、又は欠陥の無い接合は実現されない。さらに、高出力(CW又はパルス)源では、局所的なパワーピークが、ファイバ自体の破壊につながる可能性がある。これを避けることが、特に高出力アプリケーションにおいて非常に望ましい。
【0004】
光ファイバは、レーザ放射をレーザ源から離れた領域へ伝送し分配するためにしばしば使用される。これは、源を保護すること、より大きなワーキングビームを実現すること、及び/又は、より柔軟であり、さまざまな表面ターゲットに到達することのためであり得る。一般的に、これらの利点は、大きなコアを有し、レーザエネルギーの伝送用の多くのモードを有するマルチモード光ファイバの使用によるものである。
【0005】
光ファイバは、一般的にプリフォームから線引きされる。プリフォームの断面構造が、線引きされたファイバの断面構造を決定する。プリフォームの製造は、いくつかのプロセスで行うことができるが、本明細書で説明するプロセスは、プラズマ外部気相堆積(POVD: Plasma Outside Vapor Deposition)である。ここで、プリフォームは、コアロッドから、材料の連続した層を堆積させてクラッド及びガラスジャケットを実現することにより構築される。クラッドの堆積が完了した後、プリフォームの上に純シリカのチューブを融合し、外径を所望の厚さにすることもある。このようなプロセスにおいて、コア、クラッド、及び外側の純シリカは、何れも互いに同軸である。非円形のコアから始めて、円形のコアの場合と同様にクラッド及びジャケット層を堆積させることにより、同様の方法で多角形のコアプリフォームを製造することができる。標準的な寸法の光ファイバは、出発材料プリフォームの形状に応じて、円形又は非円形のコアを有する、このようなプリフォームから線引きすることができる。
【0006】
レーザ接合:エレクトロニクス及びハイテク小型化において、スペックルフリーでクリーニングされた表面に対する高いニーズがある。モード混合ファイバは、真のフラットトップ出力につながるとは必ずしも限らず、分子スケールで表面に波打ちを生じさせたり残したりして、その影響がデバイスの動作又は超音速ジェット機、高価な航空機部品、宇宙アプリケーションなどのハイテクアプリケーションの動作を実際に損傷/低下させる。デバイスが小さいほど、伝送ファイバの出力表面領域全体にわたるビーム出力の高いスペックルフリー性がより望ましい。そうでなければ、処理された部品の表面全体にわたって深刻な悪影響が発生する可能性がある。有効なクラッド励起ファイバレーザを得るために必要なモード混合は、例えば小型~超小型の電子デバイスにおけるレーザ加工のニーズと比較して、要求が比較的少ない。単なる非対称コア又は非円形コアは、広い範囲の入力源にわたって真にスペックルフリーな出力である本物のトップハット出力を実現するために必要な混合のレベルには十分ではない。
【0007】
その結果、レーザクリーニング、レーザ接合、及びレーザ溶接における重要なアプリケーションの多くに必要とされるのは、スペックルフリー出力を実現するための優れたモード混合を有する光ファイバである。理想的には、このような光ファイバは、必要なサイズの光ファイバのドローダウン比に比例した、最終的な光ファイバの全ての必要な特徴を有する適切に構築されたプリフォームから単純に線引きされる。
【0008】
従来技術では、非対称コア、非円形コア、新しい材料若しくは空気の局所セクションを付加することによる屈折率の分断変化を含むクラッドを使用し、線引きプロセスの過程で線引きパラメータを調整することで長さにわたって光ファイバの長軸に沿った異なるスポットで断面を変化させることによって非対称なコア断面を作るために取られたいくつかのアプローチがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プリフォーム構造における我々の技術的進歩は、本明細書に記載されたプリフォームから線引きされた光ファイバを必要とする遠隔プロセスの、より良好で、よりスペックルフリーなパフォーマンスの可能性を向上させるとともに、要求されるスペックルフリー出力性能を、これらのプリフォームから線引きされたファイバにおいて実現し提供するための新しい製造技術を改良する。主要な目的は、ガウシアン出力源又はスペックルフリー断面出力の無い他の源の伝送においてスペックルフリー出力であるさまざまなサイズの光ファイバを線引きすることを可能にすることに、本質的により良好な(理想的に)適した構造を有する光プリフォームを設計し作製することである。
【0010】
他の目的は、標準的な線引き加工を用いてスペックルフリー出力ファイバへ線引きすることができ、従って線引きプロセスからのアウトプットにおけるロスを防止でき、追加コストをプリフォーム製造プロセス内のみに留めることができるスペックルフリー出力光ファイバのプリフォームを提供することである。
【0011】
他の目的は、スペックルフリー出力光ファイバを作製するために使用し得るプリフォームの製造プロセスを提供することである。
【0012】
さらなる目的は、レーザクリーニング、レーザ加工、及びレーザ溶接を含む、さまざまな材料のレーザ加工用のスペックルフリー出力光ファイバを提供することである。これらの目的を満たす円形コアプリフォーム構造は、本特許の目的である。スペックルフリー出力光ファイバへ成功裏に線引きすることもできる非円形コアプリフォーム構造の製造及び加工も、本特許出願の目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
要約すると、新しい種類の円形コアと、同等の断面を有するスペックルフリー出力光ファイバを線引きするための非円形コアプリフォームと、これらの製造方法と、について説明する。これらのプリフォームは、より良好なスペックルフリー出力光ファイバを生じるように設計されている。100μmから1000μm以上までのコアサイズを有する、さまざまな寸法のファイバであって、ガウシアン又は低モード光源出力を、フラットトップ出力などのスペックルフリー作業表面出力へ効果的に変換する。これらのプリフォームから作られた、新しい、改良されたスペックルフリー出力光ファイバ製品は、トップハット型出力から利益を受ける他のアプリケーションに加えて、表面のレーザクリーニング及び重要な表面のレーザ溶接を含むレーザ加工アプリケーションにおける使用に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)に見られるように、コアを有し、構造化シリカ層で囲まれた初期プリフォームの基本構造を示す図である。
【
図2】初期プリフォームの断面における屈折率プロファイルを示す図であり、
図2(A)及び
図2(B)は、さらなる詳細を示す図である。
【
図3】斜線で示した非対称領域が削り取られた中間プリフォームを示す図である。
図4に示すように、得られたプリフォームにとって内側コアが非対称になる。
【
図4】反射層によって囲まれ、スペックルフリー出力光ファイバを線引きする準備が整った
図3の内部中間プリフォームを示す図である。
【
図5】非円形コア光ファイバの中間プリフォームの前段階を、
図1の初期プリフォームとの関連で示す図である。
【
図6】
図5に示した中間プリフォームから製造された2つのプリフォームのうちの1つであって、非円形コアスペックルフリー出力光ファイバへ線引きする準備が整ったプリフォームを示す図である。
【
図7】平坦な表面と、非円形コアを有する4つの線引きプリフォームのコアを作製するための2組の切断線と、を有するプリフォームを基本的に示す図である。
【
図8】
図7の初期プリフォームから製造された4つのプリフォームのうちの1つであって、非円形コアスペックルフリー出力光ファイバへ線引きする準備が整ったプリフォームを示す図である。
【
図9】プラズマ外部気相堆積(POVD)の断面図である。
【
図10】右側に、コア直径が300μmである本発明の円形コア光ファイバの近接場画像及びプロットを有し、左側に、コア直径が300μmである先行技術の標準的な円形コア光ファイバの近接場画像及びプロットを有する図である。
【
図11】右側に、コア直径が600μmである本発明の円形コア光ファイバの近接場画像及びプロットを有し、左側に、コア直径が600μmである先行技術の標準的な円形コア光ファイバの近接場画像及びプロットを有する図である。
【
図12】右側に、コア寸法が100μm×100μmである本発明の非円形コア光ファイバの近接場画像及びプロットを有する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、
図1から
図8に図示された構成で、下2桁が同一の数字は類似のアイテムであり、例えば101、201、301、401・・・などは、内側コアを構成する純シリカコアであり、103、203、303、403、503・・・などは、それぞれ、ダウンドープシリカと純シリカ堆積とから構築された構造化シリカモード混合領域であり、後述するように、これらは、それぞれの場合において図全体にわたって内側コアを囲んでいる。本明細書に記載された堆積の大半は、プラズマ外部気相堆積(POVD)プロセスを使用しているものの、通常の理由で所望される場合、プラズマ化学気相堆積(PCVD: Plasma Chemical Vapor Deposition)プロセスも、本明細書に記載された異なる堆積ステップにおいて使用することができる。プラズマ堆積に対する言及は、本明細書において、特記されない限り、何れのプロセスも言及し得る。純シリカコアロッド101がPOVDチャンバ内に配置され、ダウンドープ層123と純シリカ層121とが交互に重なった一連の層が付加され、
図1に示す構造化セクション103が実現される。純シリカコアの直径102と構造化シリカセクションの直径104との間の差が、モード混合構造化シリカセクション103の全体の厚さを規定する。セクション103の内部には、ある数の層状対120があり、これは場合によって異なり得、一般的に8対から30対までの範囲内である。各層状対120の内部において、純シリカの層121は、しばしば、ダウンドープシリカの層123よりもはるかに厚い。2つの厚さの比率の範囲は、一般的に約1から20である。これは、
図1及び
図1(A)に要約されている。これらの2つのパラメータの特に有用な範囲は、対層の内部における厚さ比率については7から13であり、対層の数については12から20である。
【0016】
当然のこととして、適切なサイズのシリカコアから始めるために、内側コア101、201は、いくつかの場合において所望のコア直径を実現するために付加純シリカのプラズマ堆積により純シリカが上に堆積される、より薄いシリカロッドから作製されてもよい。
【0017】
図2は、断面におけるプリフォーム100の屈折率(RI: Refractive Index)プロファイルを示す。
図2(A)及び
図2(B)は、断面にわたってRIがどのように変化するかを示す。線は、コア材料の屈折率との間のダウンドープシリカ層の屈折率の低下を表す。RIの変化の急激性は、堆積の過程における材料の急激な変化を示し、スペックルフリーな底部は、各ダウンドープ層におけるドーパントレベルのスペックルフリーさを証明している。ある一連の例では、Δn=5×10
-3である。
【0018】
図1の予備形態をとった後、それに付加純シリカ305が堆積され、
図3に図示された、直径325を有するプリフォームが作製される。次のステップでは、初期プリフォーム直径325の部分307を、新しく研削された形状の中心からオフセットされ、内側コア301を囲む構造化シリカセクション303を新しいプリフォーム形状が有するように、好ましくはプリフォームの一辺まで削り取ることによって、非対称内側コアを有するプリフォームが作製される。
【0019】
図3は、外側材料307の非対称な除去を図示しており、ここで、内側コア301は、外側コア305の内部で中心からずれている。コア301は、構造化シリカ領域303によって同心円状に囲まれており、内側コアの直径302及び構造化シリカの直径304が、後者の領域の全体の厚さを規定している。
【0020】
図4は、スペックルフリー出力光ファイバへ線引きする準備が整った、完成したプリフォームの断面図である。内側コア401は、構造化シリカ404の直径と内側コア402の直径との差によって規定された厚さを有する構造化シリカ403によって同心円状に囲まれている。最外部コア405は、POVD/PCVDで堆積されたダウンドープシリカなどの反射層409によって囲まれている。なお、内側コア401の中心は、外側コア405内で差411だけオフセットされている。一例において、411は、4mmであった。
【0021】
上述したプリフォームから線引きされた光ファイバの断面を最初に示すために
図4を用いることもできる。この場合、反射層409は、光ファイバが線引きされるときに付加され得、ひいてはシリコーン、硬質プラスチッククラッド、他の高分子クラッド材料から選択し得る。スペックルフリー出力光ファイバの反射層409は、複合化されてもよく、すなわち、反射層がプリフォームの上にある状態で、線引きプロセスの過程で反射層を付加してファイバを線引きしてもよい。
【0022】
もう一点、付言しなければならない。シリカガラスファイバーは、線引きされたときは非常に強固であるものの、時間が経つにつれて、ガラス表面がアプリケーションにおけるさまざまな状態から損傷しやすく、これにより、最外層のガラス質層が損なわれる可能性がある。従って、大半の産業的又は医学的アプリケーションで見られるような開放環境で使用される光ファイバは、一般的に、本明細書で図示されていない1つ以上の保護外被(ジャケット)を有することがよく知られている。これらの外被は、通常、線引きプロセスの過程で付加されるが、これらを、さらに下流の工程において付加してもよい。
【0023】
図5から
図8は、非円形コアを有する、スペックルフリー出力用のプリフォーム及び光ファイバの作製の態様を例示する。まず、
図1に図示されているような初期プリフォームが、付加コア材で大きくされ、内側コア501と、構造化シリカ領域503と、構造化シリカ領域の周りの第2のコアと、を有し、直径525を有する、より大きなプリフォームが形成される。第2のコアは、全てプラズマ堆積プロセスによって作製してもよいし、あるいは、初期プリフォームの直径に内径寸法が密着する純シリカチューブをスリーブし、そして、2つを接着し、気泡のない、所望の直径525を有する、より大きなプリフォームにすることによって作製してもよい。より大きなプリフォームは、その幅515が実現され、その幅に関連した特定の高さになるまで研削されて、材料507が除去される。より大きなプリフォームは、第2のコア材の一部が構造化シリカ領域503全体の上に残されるように研削される。大半の例において、内側コア501及び外側の(第2の)コア505は、共に純シリカ材料である。研削されたプリフォームは、それぞれスペックルフリー出力光ファイバへ線引きすることが可能な2つの新しいプリフォームの2つの非円形コアを作製するために、切断線513に沿って切断される。
【0024】
図6では、
図5の各複合コアが、その角619を丸めた後、プラズマ堆積装置内にセットアップされ、反射被膜609が複合非円形コアの上に堆積される。コア材601及び605は、全体的に同一であり、コアは、その内部に、構造化シリカの半円形領域603を有する。その幅615は、図示したとおりである。この特定の例において、幅と高さとは、実質的に等しい長さであり、非円形コアは、正方形の形状である。長方形、三角形、台形、六角形、八角形などの他の形状も可能である。
【0025】
このプリフォームから線引きされた光ファイバは、プリフォームに比例した実際のサイズを有する同等の断面を有することになる。プリフォームの一例において、内側コア501の直径は15mmであり、構造化シリカ503の直径は17mmであり、構造化シリカ503,603の厚さが2mmになる。幅と高さとは、等しく18.5mmであり、プリフォームの直径525は51mmであった。
【0026】
図7及び
図8は、非円形コアを有する研削された初期プリフォームを4つの同等な正方形コアへ分割することと、
図8に示すような断面を有する4つの新しいプリフォームを作製することと、を図示している。従って、
図7において、内側コア701は、構造化シリカ703によって囲まれており、構造化シリカ703は、付加コア材705によって囲まれている。初期プリフォームは、直径725を有する。初期の堆積の後、プリフォームは、材料707を除去することによって長円形複合コアへ研削され、次に、得られた長円形コアを、辺寸法735を有する4つの非円形コアピースへ、切断線713に沿って切断する。これらのピースは、次に、角を丸められ、反射層709が堆積され、
図8に図示されたような4つの同等なプリフォームが作製される。前と同様に、内側コア701と第2のコア705とは、全体的に同一の材料であり、純シリカである可能性が最も高い。
【0027】
図8に示すように、最終プリフォームは、コア材801とコア材805との間に挟まれた構造化シリカ803の円弧を、この例では、丸められた角819を有する正方形コアの内部に有し、前記コアを囲む反射材料809が堆積されて、又は他の方法で付加されて、最終プリフォームが作製される。前記非円形コア835の幅は、この例ではコアが正方形であるため、前記コアの高さに等しい。非円形コアの他の可能な形状は、上述したとおりである。線引きされたときの光ファイバ内における相対的な面積は、ファイバ断面がプリフォームの断面と形状が同等になるため、
図8に図示されたプリフォームの面積に比例することになる。
【0028】
一例において、純シリカ内側コア701の直径は15mmであり、周りの構造化シリカ703の直径は17mmであり、構造化シリカ703,803の厚さが2mmになった。直径725は、51mmであった。4つの非円形コアは、それぞれ、18.5mm×18.5mmの辺寸法735,835を有していた。
【0029】
典型的なPOVDセットアップが
図9に示されており、901はスクリーニングボックスであり、902は基板ロッドであり、903はガラス旋盤であり、904はプラズマトーチであり、905は、基板ロッド902に取り付けられたハンドルである。多くの例において、プラズマトーチ904は、5.28MHz及び50kWの電力レベルで動作する。上述したように、異なる場合において、何れかのプラズマ気相堆積、すなわちPOVD又はPCVD。
【0030】
構造化シリカセクション及び反射被膜の内部のコア材として使用できる材料の範囲は多い。多くの場合、純シリカがコア材及びスリーブ用として選択されるものの、ゲルマニウムドープシリコン(Ge-Si)などのアップドープシリコン、又はグレーデッドインデックスシリカベースコアを使用してもよい。反射層は、ほとんどの場合、フルオロケイ酸塩であるものの、ホウケイ酸塩などの他の低屈折率シリカを使用してもよい。ファイバの線引きの後に付加される反射/クラッドタイプ被膜には、フルオロアクリレート及びシリコーンプラスチック材料が含まれる。コア材の選択は、構造化シリカセクションの対層の材料の実行可能な選択に影響を及ぼすことになる。例えば、純シリカをコア材として使用すると、選択されたフッ素ドーパントレベルを有するフルオロシリカなどのダウンドープ(低RI)シリカが対層内の第1の層になり、高RIの第2の層は、純シリカ、又はより低くドープされたフルオロシリカ、又はGe-Siなどのアップドープシリカ、又は、光ファイバに要求されるように、構造化シリカセクションの合計屈折率がコアの屈折率よりも低い限り、同様の材料から選択され得る。対内の何れかの層のうち1つ以上がアップドープシリカに変更された場合、構造化シリカセクションの屈折率がコア屈折率よりも低いままである限り、特殊な効果が生じ得るであろう。
【0031】
好ましい組み合わせ、対層内部の厚さ比率、及び対層の数は多く、意図されたアプリケーション、利用可能なプリフォーム装置及び材料、並びにコア要件に依存する。層の数及び対層内部における層の間の厚さ比率のより有用ないくつかの範囲について上述した。
【0032】
これとは別に、ファイバレーザ又は増幅器を製造するために、希土類ドープ最内部コアを、プリフォームにおいて、ひいては線引きされた光ファイバにおいて、シリカ又は他のコア材の構造内に組み込むことができ、構造化シリカなどの構造が付加される。あるいは、チューブ型プリフォームを製造し、その後、希土類コア又はクラッド希土類コアロッドの上にスリーブしてもよい。
【0033】
図10から
図12は、プリフォームであって、当該プリフォームのコアの内部に収容された構造化シリカセクションを有するプリフォームから作られたファイバのいくつかの代表的な結果を示している。具体的に、各図は、300μmの円形コア、600μmの円形コア、100μm×100μmの非円形正方形コアをそれぞれ有する3つのサンプルファイバについて、右側に近接場画像を有し、対応する出力プロットを下に有している。比較のため、
図10及び
図11では、左半分に、それぞれ標準的な300μm及び600μmのコアの光ファイバについて、対応する近接場画像及びプロットを示している。
【0034】
出願の時点では、300μmコア、600μmコア又はより大きなコアのファイバが、本発明の好ましい例の一つであろう。非円形コアファイバについては、好ましい非円形コア形態は、構造化シリカの半円弧又は構造化シリカの4分の1円弧セグメントを有する正方形又は長方形コアの何れかであろう。
【0035】
さらなる有用である可能性がある構成は、上述した構造化シリカセクションに先行若しくは後続する薄いアップドープ層を有するか、又は上述した構造化シリカセクションの前及び後に薄いアップドープ層を有する。このアップドープ層の厚さは、対層の低RI層と同じ薄さであるか、より薄くなければならない。
【0036】
(付記)
(付記1)
スペックルフリー出力光ファイバへ線引きされるプリフォームであって、
当該プリフォームの断面構造は、屈折率又は屈折率プロファイルを有する円形内側コアであって、当該内側コアの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する構造化円形領域によって囲まれた、円形内側コアを備え、
当該プリフォームは、標準的なファイバ線引き技術を使用してスペックルフリー光ファイバへ線引きされることができる、
プリフォーム。
【0037】
(付記2)
前記構造的円形領域は、前記コアの材料よりも低い屈折率(RI)を有する最初の層と、それに続く、前記最初の層の材料よりも高いRIを有する次の層と、を有し、前記内側コアから始まる、複数の対層を有し、各層が厚さを有する、付記1に記載のプリフォーム。
【0038】
(付記3)
前記低RI層がダウンドープ層であり、前記次の層がコア層又はアップドープ層である、付記2に記載のプリフォーム。
【0039】
(付記4)
前記対層のそれぞれにおいて、前記ダウンドープ層の厚さに対する前記コア層の厚さの比率は、約1から約20である、付記2又は3に記載のプリフォーム。
【0040】
(付記5)
前記対層の数は、約8から約30である、付記2又は3に記載のプリフォーム。
【0041】
(付記6)
純シリカのチューブが、前記プリフォームの上に、前記チューブの内面と前記第2のクラッドとの間の界面に隙間又は気泡を生じさせることなく折り畳まれて、スペックルフリー出力光ファイバへの線引きプリフォームが形成される、付記1から5の何れか一つに記載のプリフォーム。
【0042】
(付記7)
付記1から6の何れか1つに記載のプリフォームから線引きされた光ファイバであって、当該光ファイバの断面が前記プリフォームの断面に比例し、高出力低モードフォトニック源の当該光ファイバの出力/伝送が低減されたスペックルを有している、光ファイバ。
【0043】
(付記8)
前記構造的円形領域は、付記2から5の何れか一つに記載されたとおりである、付記7に記載の光ファイバ。
【0044】
(付記9)
付記1から6の何れかに記載のプリフォームの製造方法であって、前記付記に記載の前記プリフォームの前記断面のセクション及びその層を製造するためにプラズマ気相堆積が使用される、プリフォームの製造方法。
【0045】
(付記10)
プリフォームであって、当該プリフォームからスペックルフリー出力光ファイバを線引きされることができる、プリフォームの断面構造は、
反射クラッドタイプ材料によって囲まれた複合非円形コアを備え、前記複合非円形コアは、
屈折率を有するコア材の多角形のセクションと、
前記多角形のコアのセクションの内部の、前記コア材の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する構造化シリカ円形領域の円弧セグメントと、
をさらに備え、
前記反射クラッドタイプ材料は、前記コア材の屈折率よりも低い屈折率を有し、
当該プリフォームは、標準的なファイバ光線引き技術を使用してスペックルフリー出力光ファイバへ線引きされることができる、
プリフォーム。
【0046】
(付記11)
前記構造的円形領域は、ダウンドープ層と、それに続くコア層とを備え、前記内側コアから始まる層の対を有し、各層が厚さを有する、付記10に記載のプリフォーム。
【0047】
(付記12)
前記対層のそれぞれにおいて、前記ダウンドープ層の厚さに対する前記コア層の厚さの比率は、約1から約20である、付記10又は11に記載のプリフォーム。
【0048】
(付記13)
前記対層の数は、約8から約30である、付記10又は11に記載のプリフォーム。
【0049】
(付記14)
前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、十角形、及び十二角形の群から選択される、付記10から13の何れか一つに記載のプリフォーム。
【0050】
(付記15)
前記多角形のコアのセクションは、4辺を有する多角形のための長方形/正方形のコア、又は他の全ての多角形のための略扇形のコアである、付記10から14の何れか一つに記載のプリフォーム。
【0051】
(付記16)
前記構造化シリカ円形領域の前記円弧セグメントは、異なる多角形コア形状について異なり、前記多角形における辺の数によって分割された前記円形領域の略一部である、付記15に記載のプリフォーム。
【0052】
(付記17)
長方形/正方形のコアの内部の前記構造化シリカ円形領域の前記円弧セグメントは、前駆的な元の長方形コアが、一度だけ、前駆的な長方形コアの長辺を通って、前記非円形コアの周りに前記反射クラッド層を堆積する前に切断された場合、半円形状を有する、付記16に記載のプリフォーム。
【0053】
(付記18)
付記10から17の何れか1つに記載のプリフォームから線引きされた光ファイバであって、当該光ファバイの断面は、前記プリフォームの断面に比例し、高出力低モードフォトニック源の当該光ファイバの出力/伝送は、スペックルフリー出力である、光ファイバ。
【0054】
(付記19)
前記構造的円形領域は、付記10から17の何れかに記載されたとおりである、付記18に記載の光ファイバ。
【0055】
(付記20)
付記10から17の何れかに記載のプリフォームの製造方法であって、前記付記に記載の前記プリフォームの前記断面のセクション及びその層を製造するためにプラズマ気相堆積が使用される、プリフォームの製造方法。
【0056】
(付記21)
光ファイバが、線引きされたとき、光ファイバレーザ/増幅器又はセンシング媒体として使用できるように、高屈折率希土類ドープ材料の最内部コアをさらに備える、付記1から6又は付記10から17の何れか1つに記載のプリフォーム。
【0057】
(付記22)
光ファイバであって、当該ファイバが、ファイバレーザ/増幅器として、又はセンシング目的で機能できるように、対応する前記プリフォームが、希土類ドープ材料の最内部コアを有する、付記7から8又は付記18から19の何れか一つに記載の光ファイバ。
【国際調査報告】