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特表2023-514642構造化シリカクラッドシリカ光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】構造化シリカクラッドシリカ光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20230330BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G02B6/02 451
G02B6/036
G02B6/02 466
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550961
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2021000109
(87)【国際公開番号】W WO2021171089
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,430
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517002306
【氏名又は名称】バイオリテック ウンテルネーメンスベタイリグングス ツヴァイ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】スクトニク、ボレシュ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルガー、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】グリシュチェンコ、アンドレイ ビー
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AB32
2H250AD15
2H250AF01
2H250AF11
2H250AF30
2H250AF56
2H250AH11
2H250AH33
2H250AH42
2H250AH46
2H250BA32
2H250BA33
(57)【要約】
新しい種類のオールシリカ光ファイバについて説明する。構造化シリカクラッドシリカ(SSCS)光ファイバで、そのクラッドは、コア内部でのモード混合を実現し、及び/又は、平均有効屈折率を有するように構成されている。その断面は、実質的に対称であり、いくつかの目的の中でも特に、ファイバレーザ又は他の限定モードフォトニック源から、よりフラットで、よりスペックルフリーな出力を実現することに使用し得る。新しいファイバ構造を希土類ドープレーザコアの周りに構築することで、クラッド励起用のより良好なファイバレーザ/増幅器が実現される。構造化シリカクラッドは、内部においてダウンドープされたシリカの層に、純粋なシリカ、又はより少なくダウンドープされたシリカ、又はアップドープされたシリカの層が続く対層を含み、対層の数は、典型的には、5から約25であり、一般的に、対層の内部で、シリケートダウンドープシリカの高RI層の厚さの比率は、非常に広く、SSCSファイバの意図された用途に応じて、約0.0625から約16までの間にわたっている。いくつかの形態において、主なコア材がアップドープシリカであり、主な第二成分が純シリカ又はダウンドープシリカであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均屈折率を有する構造化シリカクラッドと、前記構造化シリカクラッドの平均屈折率よりも高い屈折率を有するシリカコアと、を備える、光ファイバ。
【請求項2】
前記構造化シリカクラッドは、ダウンドープシリカと、その次の、より少なくダウンドープされたシリカ、又はアップドープされたシリカ、又は純シリカと、からなる、複数の対層を備え、前記より少なくドープされたシリカ、又はアップドープされたシリカ、又は純シリカの層は、典型的には、前記ダウンドープ層よりも薄い、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記より少なくダウンドープされたシリカの層の厚さに対する前記ダウンドープ層の厚さの比率は、約2から15までの間である、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記対層の数は、約2から30までの間である、請求項2又は3に記載の光ファイバ。
【請求項5】
外部被膜をさらに備え、前記外部被膜は、純シリカ、高屈折率プラスチック、及びダウンドープシリカ、低屈折率プラスチッククラッド材からなる群から選択される、請求項1から4の何れかに記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記シリカコアの内部に、希土類材料がドープされた、前記コアシリカよりも屈折率が高い最内部コアがあり、前記ドープされた最内部コアが、前記光ファイバを、クラッド励起ファイバレーザ又はファイバ増幅器として機能させる、請求項1から5の何れかに記載の光ファイバ。
【請求項7】
構造化シリカクラッドと高屈折率シリカコアとを有する請求項1に記載の光ファイバの製造方法であって、
ダウンドープ層と、それに続く全体的により薄い高屈折率シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた円形シリカコアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバの製造方法。
【請求項8】
構造化シリカ第2クラッド、シリカ第1クラッド、及び希土類ドープ最内部コアを有する請求項6に記載の光ファイバレーザ/増幅器の製造方法であって、
シリカ第1クラッドによって囲まれ、次いで、ダウンドープ層と、それに続くより厚い純シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた、円形希土類ドープ最内部コアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバレーザ/増幅器の製造方法。
【請求項9】
低モード電力源からのスペックルフリーな出力に特に有用なオールシリカ光ファイバの新しいサブクラスであって、
屈折率又は屈折率プロファイルを有するコアと、
前記コアを囲み、前記コアよりも低い平均屈折率を有する構造化シリカクラッドであって、屈折率及び厚さが異なる、複数の交互層で構成された、構造化シリカクラッドと、
を備え、
前記構造化シリカクラッドは、交互層である対層であって、層の厚さが異なる、低屈折率シリカと高屈折率シリカの層からなる、対層で構成されており、
任意の対層内の高屈折率層の厚さに対する低屈折率層の厚さの比率は、3から20までの範囲内であり、構造化シリカクラッドを構成する対層の数は、5から30までの範囲内である、
光ファイバ。
【請求項10】
前記高屈折率層の厚さに対する前記低屈折率層の厚さの比率は、約7から15までの間である、請求項9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記対層の数は、約10から25までの間である、請求項9に記載の光ファイバ。
【請求項12】
平均屈折率を有する構造化シリカクラッドと、前記構造化シリカクラッドの平均屈折率よりも高い屈折率を有するシリカコアと、を備える、光ファイバ。
【請求項13】
前記構造化シリカクラッドは、ダウンドープシリカと、その次の、より少なくダウンドープされたシリカ、又は純粋なシリカと、からなる、複数の対層を備え、前記より少なくドープされたシリカ、又は純粋なシリカの層は、典型的には、前記ダウンドープ層よりも厚い、請求項12に記載の光ファイバ。
【請求項14】
前記ダウンドープ層の厚さに対する前記高屈折率シリカ層の厚さの比率は、約2から15までの間である、請求項13に記載の光ファイバ。
【請求項15】
前記対層の数は、約2から30までの間である、請求項13又は14に記載の光ファイバ。
【請求項16】
外部被膜をさらに備え、前記外部被膜は、付加純シリカ、高屈折率プラスチック、及びダウンドープシリカ、低屈折率プラスチッククラッド材からなる群から選択される、請求項12から15の何れかに記載の光ファイバ。
【請求項17】
前記シリカコアの内部に、希土類材料がドープされた、前記シリカコアよりも屈折率が高い最内部コアがあり、前記ドープされた最内部コアが、前記光ファイバを、クラッド励起ファイバレーザ又はファイバ増幅器として機能させる、請求項12から16の何れかに記載の光ファイバ。
【請求項18】
構造化シリカクラッドとシリカコアとを有する請求項12に記載の光ファイバの製造方法であって、
ダウンドープ層と、それに続く全体的により厚い高屈折率シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた円形シリカコアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバの製造方法。
【請求項19】
構造化シリカ第2クラッド、シリカ第1クラッド、及び希土類ドープ最内部コアを有する請求項17に記載の光ファイバレーザ/増幅器の製造方法であって、
シリカ第1クラッドによって囲まれ、次いで、ダウンドープ層と、それに続くより厚い純シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた、円形希土類ドープ最内部コアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバレーザ/増幅器の製造方法。
【請求項20】
低モード電力源からのスペックルフリーな出力に特に有用なオールシリカ光ファイバの新しいサブクラスであって、
屈折率又は屈折率プロファイルを有するコアと、
前記コアを囲み、前記コアよりも低い平均屈折率を有する構造化シリカクラッドであって、屈折率及び厚さが異なる、複数の交互層で構成された、構造化シリカクラッドと、
を備え、
前記構造化シリカクラッドは、交互層である対層であって、層の厚さが異なる、低屈折率シリカと高屈折率シリカの層からなる、対層で構成されており、
任意の対層内の低屈折率層の厚さに対する高屈折率層の厚さの比率は、3から20までの範囲内であり、構造化クラッドを構成する対層の数は、5から30までの範囲内である、
光ファイバ。
【請求項21】
前記低屈折率層の厚さに対する前記高屈折率層の厚さの比率は、約7から15までの間である、請求項20に記載の光ファイバ。
【請求項22】
前記対層の数は、約10から25までの間である、請求項20に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
時間が経つにつれて、光ファイバ用のフォトニック源は、より小型に、よりコンパクトになり続け、出力密度が高くなり続けている。多くの医学的及び産業的アプリケーションは、損傷を局所化し、被照射物の温度を被治療表面へ最小化し続けることなどの様々な理由で高出力密度を実現するためにファイバレーザ及びパルスビームを使用している。その過程で、フォトニック源は、大きい散乱ビームから、非常に局所化された少数モード又は単一モードのビームへ変化した。
【0002】
さて、大半の照射ビーム源は、高度にガウシアンであるか、又はさらに制限された形状であり、非常に局所化された、照射が比較的早く低下する高い中心ピークを有している。レーザ切断などの一次元的なアプリケーションについては、これは問題ではなく、むしろ利点になり得る。しかし、原子/分子レベルでは、このような処理は多次元的であり、有害な結果を経験する可能性がある。レーザクリーニング、溶接、機械加工などの2次元以上のアプリケーションについては、大半の場合が、より広くスペックルフリーな出力分布から利益を受ける。よりスペックルフリーな分布へ出力を平滑化することは、アプリケーション処理に利益をもたらす。本明細書で開示された光ファイバは、その基本構造にモード混合を、プリフォームを製造する過程において単純な方法で組み込むことにより、そのような出力が行われる可能性をはるかに高くする。新しい種類のオールシリカ光ファイバが製造される。本明細書に記載されているとおりである。これらは、有効開口数の実現における新しい柔軟性と、新しいモード伝搬/混合性能と、に加えて、オールシリカ光ファイバの全ての利点を備える。
【0003】
さらに、クラッド励起されるべきファイバレーザ自体は、本明細書でも述べるように、レーザコアを構造化シリカクラッド光ファイバの最内部コアとして組み込むことにより利益を受けるであろう。
【背景技術】
【0004】
従来、オールシリカ光ファイバは、コアシリカの周囲にクラッドシリカを有し、コアシリカは、クラッドシリカの屈折率よりも高い屈折率を有し、開口数(NA: Numerical Aperture)は、2つの材料の屈折率(RI: Refractive Index)の、これらの材料の境界面における差のみに関連し、全体的な光学的及び物理的性能は、光ファイバを線引きするために用いられるプリフォームの製造に使用されたシリカの具体的な種類に依存していた。
【0005】
従来、モード混合ファイバを作製する方法は、オフセンターコアの導入、非円形コアの使用、又はファイバの断面の屈折率プロファイルにおける非対称な乱れの導入によって、光ファイバの断面対称性を崩すことであった。過去約40年にわたるこのような取り組みの数多くの例が、特にファイバレーザ及び/又はファイバ増幅器に関する特許及び文献中に、存在する。
【0006】
本発明に記載された新規なオールシリカファイバは、いくつかの目的の中でも特に、良好なモード混合ファイバであるオールシリカ光ファイバに、ファイバに沿った対称な断面を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
主な目的は、構造化シリカクラッドを有する新しい(新規な)オールシリカ光ファイバ構造を提供することであり、構成要素内のドーピングレベルを変えるのではなく、シリカ層の構造を変えることによって、開口数(NA)をプリフォームごとに変えることができる。
【0008】
他の目的は、実質的に対称な円形断面構造を有するモード混合光ファイバに新しいアプローチを提供することである。
【0009】
さらに他の目的は、ファイバレーザ、ファイバ増幅器などに、改善されたクラッド励起性能を提供することであり、ファイバレーザ、ファイバ増幅器などは、実質的に対称な断面構造を有する。
【0010】
さらに、目的は、光ファイバに、よりスペックルフリーな出力、遠隔地への光ファイバ伝送により適合する断面を提供することである。
【0011】
さらに、目的は、ファイバレーザ光源を医学的アプリケーションにおける実際の治療用の標準的な光ファイバに接続するために使用できる特殊ファイバを提供することである。
【0012】
さらに他の目的は、標準的な光ファイバと互換性があり、産業上又は軍事上のアプリケーションで使用される特殊光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
新しい種類のオールシリカ光ファイバについて説明する。構造化シリカクラッドシリカ(SSCS: Structured Silica Clad Silica)光ファイバで、そのクラッドは、コアにおいてモード混合を実現するように構成されている。その断面は、実質的に対称である。この光ファイバは、ファイバレーザ又は他の限定モードフォトニック源から、よりフラットで、よりスペックルフリーな出力を実現するために使用し得る。新しいファイバ構造をレーザコアの周りに構築することで、クラッド励起用のより良好なファイバレーザ/増幅器が実現される。構造化シリカクラッドは、内部においてダウンドープシリカ層に、純粋なシリカ、又はより少なくダウンドープされたシリカの層が続く対層を含み、対層の数は、好ましくは、5から約25であり、一般的に、対層の内部で、ダウンドープシリカに対する純シリカの厚さの比率は、かなり広く、SSCSファイバの意図された用途に応じて、約0.0625から16までの間にわたっている。いくつかの形態において、主なコア材がアップドープシリカであり、第二成分が純シリカ又はダウンドープシリカであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プリフォーム及び線引きされたファイバの基本断面を示す図である。
図2図1のファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
図3】基本的なSSCS構造の周囲に純低ドープシリカを有するファイバの断面図である。
図4】本発明に係る新しいファイバレーザ又はファイバ増幅器の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、類似した内部構造を有するプリフォームから線引きされた、新しい種類のオールシリカ光ファイバ構造について説明する。プリフォーム及び得られた光ファイバにおいて、クラッドは、対層と呼ばれる、純粋な低屈折率(クラッドタイプ)材料と純粋な高屈折率(コアタイプ)材料との交互層で構成され、いくつかの例において、前記クラッドタイプ層は、一般的に前記コアタイプ層と同じ厚さであるか、又はより厚い。この新しいクラッドは、構造化シリカクラッド(SSC: Structured Silica Cladding)と呼ばれ、最も一般的には、純粋なシリカ又は高屈折率材料のコアを囲み/被覆し、光ファイバの基本的なSSCS構造を生じさせる。多くの例では、オールシリカ光ファイバの静的又は動的疲労に対する耐性を高めるために、得られた光ファイバに保護被膜/ジャケットを被せる前に、付加低屈折率(RI)材料をSSCの上に付加している。
【0016】
層状シリカ構造は、対層において、より薄い低屈折率層に続いてより厚い高屈折率層を有することも可能であり、これにより、上述のものよりもコアに近い平均屈折率を有する構造化セクションが得られるであろう。屈折率の差が低いことは、光ファイバ/プリフォームのコアセクションの内部に構造化シリカセクションを有する機能強化モード混合ファイバとして主に設計されたファイバ/プリフォームにおいて、より有益である。後者は、本発明の発明者のうち2人による関連特許出願であり、出願番号が62/981151である米国特許出願に記載され、特許請求されている。関連特許出願において、光ファイバは、コアの内部に構造化シリカセクションを有し、本発明に記載された本発明の光プリフォーム及びファイバの対称円形断面と大きく異なる非対称コア又は非円形コア光ファイバである。
【0017】
新しいSSCS光ファイバは、1980年代に本発明の発明者の1人が発見したハードクラッドシリカファイバが改良型プラスチッククラッドファイバを提供したのとほぼ同じ方法で、新しいオールシリカ光ファイバを提供する(米国特許第4,511,208号公報、B.J. Skutnikを参照)。本願において、新しいファイバ及びそれらが線引きされる新しいプリフォームは、他の異なる性能の中でも特に、より良好なモード混合出力と、より良好なクラッド励起ファイバレーザ、ファイバ増幅器などを作製する能力と、を提供する。
【0018】
SSCSファイバ内では、低屈折率層の化学組成を変えるという従来の方法以外に、材料を変えることなく有効開口数を調整することができる。むしろ、光プリフォームの製造において、高屈折率シリカ層の厚さに対する低ドープシリカ層の相対的な厚さが、構造化シリカクラッドの有効屈折率を変え得る。構造化シリカクラッドの使用は、このように、光ファイバの設計に、他の新しい性能に加えて、付加自由度を効果的に提供する。
【0019】
対層の数は、必要な個々の層の実際の厚さと同様に、具体的なアプリケーションにおけるエバネッセント場構造と、当該アプリケーションで使用される光ファイバのコアサイズと、に依存する。コアサイズが小さい、すなわち100μmに近い又はそれより小さい、いくつかの場合では、プリフォーム及び光ファイバの構造が、線引きされた光ファイバに保護被膜を付加する前に、SSC上に付加クラッド材を有すると有益である。モード混合性能の有効性及びクラッド効率も、SSC内部の個々の層の厚さに加えて、任意のアプリケーションで使用される光の波長と、対層の数と、にやや依存する。
【0020】
議論を容易にするために、本明細書では、全体的に、コア材(高屈折率材料)に純シリカを、ダウンドープ材料(低屈折率材料)にフッ素ドープシリコンを使用した。本発明は、グレーデッドインデックスコア材と同様に、ゲルマニウムドープシリコンなどのアップドープシリカで構成されたコアを用いた場合にも同じくらい良好に機能する。コア材としての高RIドープシリコンとの組み合わせにおいて、クラッドすなわち低RIドープ材料は、純粋なシリコンであってもよい。
【0021】
新しいファイバは、その構造的特徴がプリフォームに注意深く設計されているため、高い精度で製造することが可能である。ファイバの線引きプロセスにおいては、一般的に、大きなドローダウン比が使用され、これにより、非常に明確に規定された層及び構造が可能になる。本発明の鍵は、プリフォームが、プラズマ気相堆積(PVD: Plasma Vapor Deposition)法により製造されることであり、外部気相(POVD)法と閉鎖気相(PCVD)法の何れを用いてもよい。プリフォームの構造化シリカクラッドセクションの内部に明確に画定された層を形成するためには、蒸気組成の精密な制御が、特に、屈折率が異なる材料の間で変化させる場合において重要である。プリフォームを標準的なファイバ線引き塔及び技術を用いて慎重に線引きすることにより、線引きされた光ファイバが、プリフォームの対称性と比例的に同等な対称性を有することになる。これらの構造化シリカクラッドシリカ光ファイバは、ファイバレーザなどの低モード、高出力な源のためのスペックルフリーな出力、遠位の出力を実現する点で優れている。これらは、最内部アクティブコアを適切に選択することで、ファイバレーザ及び増幅器の設計においても有用である。
【0022】
本発明のいくつかの例は、マルチモード伝送を担う大~中程度のNAを有する光ファイバである。これらのファイバにおいて、基本的な構造は、各対層内で、より厚い低屈折率層に高屈折率層が続く構造である。高RI層に対する低RI層の厚さ比率は、約2から15までの範囲内である。実際の厚さは、手元にあるプラズマ気相堆積装置/プロセスの状態及び性能に依存するであろう。大半のモード混合タイプのアプリケーションにおいて、対層の数の範囲は、使用された光源を含むファイバの適用領域にやや依存する。一般的に、対の有用な数は、約5から30までの範囲内である。これらのパラメータのより好ましい範囲は、厚さ比率が7から15までの範囲内であり、対層の数が約10から25までの範囲内であろう。
【0023】
アプリケーションが中~小程度のNAにより利益を受ける場合、高屈折率層がより厚く、低屈折率層がより薄いと構造化シリカクラッドにとって有益である。各対層内における低RI層と比較した高RI層のより大きい相対的な厚さに利益をもたらすために、同じ出発原料を使うものの厚さ比率を変える。構造化シリカクラッドの有効屈折率がコア材の有効屈折率に近づいたときに、非常に低いNAを有する光ファイバが、適切に設計されたプリフォームから線引きされ得る。
【0024】
あるいは、高RI構造化シリカセクションは、高RI層としてアップドープシリカを、低RI層にフルオロケイ酸塩を用い、相対的厚さを調整して所望の非常に低いファイバの有効NAを実現することで実現し得る。
【0025】
低RI層に対する高RI層の比率は、約3から20までの範囲内で有用であり得る。対の数の一般的に有用な範囲は、5から30までの範囲内である。これらのパラメータのより好ましい範囲は、厚さ比率については7から15までの範囲内であり、対層の数については約10から25までの範囲内であろう。
【0026】
特にモード混合アプリケーションでは、わずかに異なる断面が、状況を有利にする可能性がある。コア材の上に薄い層を付加し、付加された層は、コア材の屈折率よりも高い屈折率を有し、この付加された層に、選択された低屈折率層などから始まって、上述した通常の構造化シリカクラッドなどが続いている。この構成は、エバネッセント場効果を増大させて、構造化シリカクラッドのモード混合の効率を向上させ得る。
【0027】
図1から図4には、後述するように、構造化シリカクラッドの各対層の内部に、厚い高RI層と比較して薄い低RI層を有するいくつかの例が描かれている。
【0028】
純シリカコアロッド101がPOVDチャンバ内に配置され、ダウンドープ層123と純シリカ層121とが交互に重なった一連の層が付加され、図1に示す構造化セクション103が実現される。純シリカコアの直径102と構造化シリカクラッドの直径104との間の差が、モード混合構造化シリカクラッド103の全体の厚さを規定する。クラッド103の内部には、ある数の層状対120があり、これは場合によって異なり得、一般的に8対から30対までの範囲内である。各層状対120の内部において、純シリカの層121は、しばしば、ダウンドープシリカの層123よりもはるかに厚い。2つの厚さの比率の範囲は、一般的に約3から20である。これは、図1及び図1(A)に要約されている。これらの2つのパラメータの特に有用な範囲は、対層の内部における厚さ比率については7から13であり、対層の数については12から20である。
【0029】
当然のこととして、適切なサイズのシリカコアから始めるために、内側コア101、201、・・・は、いくつかの場合において所望のコア直径を実現するために付加純シリカのプラズマ堆積により純シリカが上に堆積される、より薄いシリカロッドから作製されてもよい。
【0030】
図2は、断面におけるプリフォーム100の屈折率(RI)プロファイルを示す。図2(A)及び図2(B)は、断面にわたってRIがどのように変化するかを示す。線は、コア材の屈折率との間のダウンドープシリカ層の屈折率の低下を表す。RIの変化の急激性は、堆積の過程における材料の急激な変化を示し、スペックルフリーな底部は、各ダウンドープ層におけるドーパントレベルのスペックルフリーさを証明している。ある一連の例では、Δn=5×10-3である。
【0031】
図3では、コア301のRIよりも小さく、構造化シリカクラッド303の平均RIよりも全体的に小さい一定のRIを有するクラッド型層307を付加した。本件の場合、これは、プリフォームの製造の過程で堆積されたフルオロケイ酸塩堆積物と、ファイバの線引きプロセス中に付加され、前記SSCS光ファイバを透過した光を封じ込めるための追加のバリアを提供するプラスチッククラッドと、の何れかである。
【0032】
本発明に係るクラッド励起ファイバレーザ/増幅器の断面のスケッチが図4に図示されている。希土類ドープコア410は、純シリカコア/クラッド401によって囲まれ、「第2の」クラッド、SSC403は、純シリカの最初のクラッドを囲み、より効率の高いクラッド励起デバイスを実現する。
【0033】
要約すると、構造化シリカクラッドは対層を含み、例えば、ある種類のSSCSファイバでは、低屈折率層に、より薄い純シリカの層が続く。対層の数は、典型的には、3から約30であり、一般的に、対層の内部において、高屈折率材料の厚さに対する低屈折率材料の厚さの比率は、2から20までの間である。
【0034】
SSCSファイバの他の変形例では、SSCSにおいて低~非常に低い有効NAが所望されている場合、対層の内部における厚さは、同一又は逆であってもよい。すなわち、薄い(ダウンドープ)低屈折率層に、より厚い高屈折率(例えば純シリカ)材料が続く。ここで対層の内部における厚さの比率は、より厚い高RI層に対する相対的なものであり、低屈折率層に対する高屈折率層の比率は、典型的には、2から20までの間である。対層の数は、一般的に、約3から30である。
【0035】
何れの形態においても、光ファイバは、機械的保護のために光ファイバに外部ジャケットを付加するとともに、線引きの過程で、構造化シリカクラッドの上に付加された低屈折率高分子材料を有し得る。
【0036】
本発明のいくつかの形態において、プリフォームの構造化シリカクラッド領域は、ダウンドープシリカ又は他の反射被膜の層でさらに囲まれ、光ファイバに、それがプリフォームから線引きされるときに、低屈折率材料を付加してもよい。全てのファイバは、一般的に、アプリケーション/使用における機械的保護のための最外部被膜を有している。
【0037】
純シリカ(Si)がコア材として主に想定され、ダウンドープシリカはフルオロシリカであるものの、アップドープシリカ又はグレーデッドインデックスシリカなどの他の材料を、「ダウンドープ」材料のような純シリカと対をなすコア材に使用することも可能である。意図された用途に応じて、フルオロシリカ(F-Si)の代わりに他のダウンドープシリカを使用することもできる。
【0038】
(付記)
(付記1)
平均屈折率を有する構造化シリカクラッドと、前記構造化シリカクラッドの平均屈折率よりも高い屈折率を有するシリカコアと、を備える、光ファイバ。
【0039】
(付記2)
前記構造化シリカクラッドは、ダウンドープシリカと、その次の、より少なくダウンドープされたシリカ、又はアップドープされたシリカ、又は純シリカと、からなる、複数の対層を備え、前記より少なくドープされたシリカ、又はアップドープされたシリカ、又は純シリカの層は、典型的には、前記ダウンドープ層よりも薄い、付記1に記載の光ファイバ。
【0040】
(付記3)
前記より少なくダウンドープされたシリカの層の厚さに対する前記ダウンドープ層の厚さの比率は、約2から15までの間である、付記2に記載の光ファイバ。
【0041】
(付記4)
前記対層の数は、約2から30までの間である、付記2又は3に記載の光ファイバ。
【0042】
(付記5)
外部被膜をさらに備え、前記外部被膜は、純シリカ、高屈折率プラスチック、及びダウンドープシリカ、低屈折率プラスチッククラッド材からなる群から選択される、付記1から4の何れかに記載の光ファイバ。
【0043】
(付記6)
前記シリカコアの内部に、希土類材料がドープされた、前記コアシリカよりも屈折率が高い最内部コアがあり、前記ドープされた最内部コアが、前記光ファイバを、クラッド励起ファイバレーザ又はファイバ増幅器として機能させる、付記1から5の何れかに記載の光ファイバ。
【0044】
(付記7)
構造化シリカクラッドと高屈折率シリカコアとを有する付記1に記載の光ファイバの製造方法であって、
ダウンドープ層と、それに続く全体的により薄い高屈折率シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた円形シリカコアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバの製造方法。
【0045】
(付記8)
構造化シリカ第2クラッド、シリカ第1クラッド、及び希土類ドープ最内部コアを有する付記6に記載の光ファイバレーザ/増幅器の製造方法であって、
シリカ第1クラッドによって囲まれ、次いで、ダウンドープ層と、それに続くより厚い純シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた、円形希土類ドープ最内部コアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバレーザ/増幅器の製造方法。
【0046】
(付記9)
低モード電力源からのスペックルフリーな出力に特に有用なオールシリカ光ファイバの新しいサブクラスであって、
屈折率又は屈折率プロファイルを有するコアと、
前記コアを囲み、前記コアよりも低い平均屈折率を有する構造化シリカクラッドであって、屈折率及び厚さが異なる、複数の交互層で構成された、構造化シリカクラッドと、
を備え、
前記構造化シリカクラッドは、交互層である対層であって、層の厚さが異なる、低屈折率シリカと高屈折率シリカの層からなる、対層で構成されており、
任意の対層内の高屈折率層の厚さに対する低屈折率層の厚さの比率は、3から20までの範囲内であり、構造化シリカクラッドを構成する対層の数は、5から30までの範囲内である、
光ファイバ。
【0047】
(付記10)
前記高屈折率層の厚さに対する前記低屈折率層の厚さの比率は、約7から15までの間である、付記9に記載の光ファイバ。
【0048】
(付記11)
前記対層の数は、約10から25までの間である、付記9に記載の光ファイバ。
【0049】
(付記12)
平均屈折率を有する構造化シリカクラッドと、前記構造化シリカクラッドの平均屈折率よりも高い屈折率を有するシリカコアと、を備える、光ファイバ。
【0050】
(付記13)
前記構造化シリカクラッドは、ダウンドープシリカと、その次の、より少なくダウンドープされたシリカ、又は純粋なシリカと、からなる、複数の対層を備え、前記より少なくドープされたシリカ、又は純粋なシリカの層は、典型的には、前記ダウンドープ層よりも厚い、付記12に記載の光ファイバ。
【0051】
(付記14)
前記ダウンドープ層の厚さに対する前記 高屈折率シリカ層の厚さの比率は、約2から15までの間である、付記13に記載の光ファイバ。
【0052】
(付記15)
前記対層の数は、約2から30までの間である、付記13又は14に記載の光ファイバ。
【0053】
(付記16)
外部被膜をさらに備え、前記外部被膜は、付加純シリカ、高屈折率プラスチック、及びダウンドープシリカ、低屈折率プラスチッククラッド材からなる群から選択される、付記12から15の何れかに記載の光ファイバ。
【0054】
(付記17)
前記シリカコアの内部に、希土類材料がドープされた、前記シリカコアよりも屈折率が高い最内部コアがあり、前記ドープされた最内部コアが、前記光ファイバを、クラッド励起ファイバレーザ又はファイバ増幅器として機能させる、付記12から16の何れかに記載の光ファイバ。
【0055】
(付記18)
構造化シリカクラッドとシリカコアとを有する付記12に記載の光ファイバの製造方法であって、
ダウンドープ層と、それに続く全体的により厚い高屈折率シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた円形シリカコアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバの製造方法。
【0056】
(付記19)
構造化シリカ第2クラッド、シリカ第1クラッド、及び希土類ドープ最内部コアを有する付記17に記載の光ファイバレーザ/増幅器の製造方法であって、
シリカ第1クラッドによって囲まれ、次いで、ダウンドープ層と、それに続くより厚い純シリカ層と、からなる円形層状対のセクションによって囲まれた、円形希土類ドープ最内部コアを有するプリフォームを作製することと、
前記プリフォームを標準線引きパラメータで線引きして、選択されたファイバコア寸法を有する光ファイバを作製することと、
を含む、
光ファイバレーザ/増幅器の製造方法。
【0057】
(付記20)
低モード電力源からのスペックルフリーな出力に特に有用なオールシリカ光ファイバの新しいサブクラスであって、
屈折率又は屈折率プロファイルを有するコアと、
前記コアを囲み、前記コアよりも低い平均屈折率を有する構造化シリカクラッドであって、屈折率及び厚さが異なる、複数の交互層で構成された、構造化シリカクラッドと、
を備え、
前記構造化シリカクラッドは、交互層である対層であって、層の厚さが異なる、低屈折率シリカと高屈折率シリカの層からなる、対層で構成されており、
任意の対層内の低屈折率層の厚さに対する高屈折率層の厚さの比率は、3から20までの範囲内であり、構造化クラッドを構成する対層の数は、5から30までの範囲内である、
光ファイバ。
【0058】
(付記21)
前記低屈折率層の厚さに対する前記高屈折率層の厚さの比率は、約7から15までの間である、付記20に記載の光ファイバ。
【0059】
(付記22)
前記対層の数は、約10から25までの間である、付記20に記載の光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】