(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】2本のチューブを同軸上に溶接する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/028 20060101AFI20230330BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20230330BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B23K9/028 B
B23K33/00 A
B23K9/167 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574338
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 NL2021050086
(87)【国際公開番号】W WO2021162547
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522320073
【氏名又は名称】クラネンドンク ベヒアシュマーツハーペイ ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ボクセベルト、マリヌス ヘルマナス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ゲラエルツ、ヨハネス ペトルス フベルトゥス ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ワルメンホーフェン、クリス ヨハネス アストリド マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダム、バルト
【テーマコード(参考)】
4E001
4E081
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB07
4E001BB08
4E001CA01
4E001DC02
4E081AA02
4E081BA02
4E081BA27
4E081BB07
4E081CA08
4E081CA09
4E081CA11
4E081DA05
4E081FA15
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、同軸上で2つのチューブを溶接するための方法を提供する。それぞれのチューブのチューブ壁の軸方向の端部は、それらが段差形状を少なくともチューブ壁厚の第1の部分にわたって有するように機械加工されている。段差形状は、互いに補完し合う。この方法は、(A)第1のチューブおよび第2のチューブを互いに対して同軸上で位置決めするステップであって、機械加工された軸方向の端部が、少なくとも第1のチューブ壁厚の第1の部分および第2のチューブ壁厚の第1の部分の位置で互いに接触し、第1のチューブ壁の軸方向の端部の機械加工された第1の段差形状と第2のチューブ壁の軸方向の端部の機械加工された第2の段差形状とが、互いに嵌合され、シームが、第1のチューブおよび第2のチューブの厚みの第1の部分の間に存在する、位置決めするステップと、(B)シームの円周上の複数の離散的な位置で、第1のチューブおよび第2のチューブを取り付け溶接によって固定するステップと、(C)第1のチューブおよび第2のチューブの全周にわたって、第1のチューブおよび第2のチューブを周方向に溶接するステップであって、周方向の溶接部は、第1のチューブ壁の全厚みおよび第2のチューブ壁の全厚みにわたって延在している、溶接するステップと、を含む。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチューブ壁を有する第1の金属チューブと第2のチューブ壁を有する第2の金属チューブとを同軸上で溶接する方法であって、
前記第1のチューブの内径は、前記第2のチューブの内径に等しく、
前記第1のチューブ壁の軸方向の端部は、長手方向の断面で見たときに、前記第1のチューブ壁の前記軸方向の端部が前記第1のチューブ壁厚の少なくとも第1の部分にわたって第1の段差形状を有するように、機械加工され、当該第1の部分は、前記第1のチューブ壁の内側から延びており、
前記第2のチューブ壁の軸方向の端部は、長手方向の断面で見たときに、前記第2のチューブ壁の前記軸方向の端部が前記第2のチューブ壁厚の少なくとも第1の部分にわたって第2の段差形状を有するように、機械加工されており、当該第1の部分は、前記第2のチューブ壁の内側から延びており、
前記第1の段差形状および前記第2の段差形状は、互いに補完し合い、
前記方法は、
(A)前記第1のチューブおよび前記第2のチューブを互いに対して同軸上で位置決めするステップであって、
前記それぞれの機械加工された軸方向の端部は、少なくとも前記第1のチューブ壁厚の第1の部分および前記第2のチューブ壁厚の第1の部分の位置で互いに接触し、
前記第1のチューブ壁の軸方向の端部の機械加工された前記第1の段差形状と前記第2のチューブ壁の軸方向の端部の機械加工された前記第2の段差形状とが、前記第1の段差形状および前記第2の段差形状の嵌合によって、前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの互いに対する半径方向への移動が阻止されるように、互いに嵌合される、
位置決めするステップと、
(B)シームの円周上の複数の離散的な位置で、前記第1のチューブおよび前記第2のチューブを取り付け溶接によって固定するステップと、
(C)前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの全周にわたって、前記第1のチューブおよび前記第2のチューブを周方向に溶接するステップであって、
周方向の溶接部は、前記第1のチューブ壁の全厚みおよび前記第2のチューブ壁の全厚みにわたって延在している、
溶接するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記段差形状は、前記第1のチューブの軸方向で見て、0.01mmと1.50mmとの間、好ましくは0.10mmと1.00mmとの間、より好ましくは0.15mmと0.75mmとの間の大きさを有する長さ内で延びている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のチューブ壁厚の第1の部分は、前記第1のチューブの前記半径方向で見て、2.0mmと12mmとの間、好ましくは2.5mmと10mmとの間、さらに好ましくは3.0mmと8.0mmとの間の大きさを有する長さ内で延びている、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の段差形状は、外側環状端面および内側環状端面を有し、
前記外側環状端面および前記内側環状端面は、前記第1のチューブの前記軸方向に見て、互いに距離をおいて配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記外側環状端面および/または前記内側環状端面は、前記第1のチューブの前記軸方向に対して垂直に向いた半径方向の平面に平行に延びている、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のチューブ壁の第1の部分は、前記第1のチューブ壁の厚み全体にわたって延在し、および/または前記第2のチューブ壁の第1の部分は、前記第2のチューブ壁の厚み全体にわたって延在する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のチューブ壁の機械加工された端部は、半径方向に見て、前記第1のチューブ壁厚の第1の部分の外側において、前記第1のチューブ壁の第1の部分と接続する前記第1のチューブ壁厚の第2の部分にわたって、さらに機械加工されており、
前記第2のチューブ壁の機械加工された端部は、前記第2のチューブ壁厚の第1の部分の外側において、前記第2のチューブ壁の第1の部分と接続する前記第2のチューブ壁厚の第2の部分にわたって、さらに機械加工されており、
ステップAを行った後、前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの厚みの第2の部分の間において、開いたシームが存在する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記開いたシームは、長手方向の断面で見たとき、実質的にV字形またはU字形である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの厚みの第1の部分は、前記軸方向に見たとき、前記開いたシームの最大軸寸法内に、好ましくは前記開いたシームの最大軸寸法の中央50%内に、より好ましくは前記開いたシームの最大軸寸法の中央10%内に配置されている、
請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ステップAの前に、前記第1のチューブ壁および前記第2のチューブ壁の機械加工された端部を得るために、前記第1のチューブ壁および前記第2のチューブ壁の軸方向の端部をフライス加工するステップを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップCを行うとき、単一の溶接層が、少なくとも前記第1のチューブ壁厚および前記第2のチューブ壁厚の前記第1の部分の全体にわたって延在するように溶接される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップCを行うとき、前記第1のチューブ壁厚および前記第2のチューブ壁厚の第1の部分にわたって延びる前記周方向の溶接部の少なくとも一部が、TIG溶接によって溶接される、
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶接供給材料が、自動化された方法で、好ましくは予熱された状態で、前記TIG溶接の間に、ワイヤとして溶接プールに供給される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップCを行う間、溶接トーチが、ステップBにおいて互いに固定された前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの間のシームに対して固定位置に配置され、
前記固定された第1のチューブおよび第2のチューブは、それらの同軸の軸を中心に回転する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の金属チューブを同軸上に溶接する方法に関する。本明細書において、チューブとは、直線のチューブだけでなく、コーナー、Tピース、レデューサなどの類似品も指す。本発明は、たとえば、石油化学設備、船舶または海洋構造物における液体輸送のための配管の製造のために実施できる。このような液体は、たとえば、(廃棄物または飲料用の)水または石油のような処理液である。このような配管は、互いに溶接されたチューブおよびTピース、コーナー、レデューサ、フランジなどの類似品の組み合わせによって形成される、いわゆるスプールから組み立てることが知られている。このようなスプールは、通常、最大で約4mの長さを有し、たとえば51mm~305mm(2インチ~12インチ)の直径を有し、2mm~15mmの壁厚を有する多数の鋼チューブを含み、これらのチューブは互いに溶接されている。スプールは、生産現場で溶接できる。その後、現場でスプール同士を溶接して配管を製作する。
【背景技術】
【0002】
良好な溶接溶け込みを得るために、同軸チューブおよび/または類似品の間にV字型またはU字型の溶接シームを適用することが知られている。チューブは、チューブが互いに円周に溶接される前に、溶接シームの底部でチューブ間にたとえば1.0mmまたは1.2mmのスリットを有するように、互いに小さな距離をおいて取り付け溶接によって固定されている。チューブの周方向の溶接は、非常に繊細なプロセスであり、その結果、この溶接プロセスが手動で実施される場合、これは高度に熟練した溶接工を必要とし、この溶接プロセスが自動化または少なくとも機械化されている場合、溶接エラーの比較的大きなリスクが残る。
【0003】
UK656,696A公報より、たとえば、最初に上記チューブを互いに対向させて、2つのチューブを同軸上で溶接することが知られている。互いに向かい合うチューブの溶接シームは、チューブの半径方向の最内部に配置され、溶接シーム自体に対して前方だけでなく内方にも突出した突出部を有する。この突出部は、その端面に段差形状を有する。溶接シームは、互いに離れるように傾斜している。このため、チューブを対向させると、上述のU字型またはV字型のスリットが発生する。このスリットに溶接材料を充填して、チューブを同軸上で溶接する。溶接が完了すると、突出部全体が取り除かれる。
【0004】
AT12413号U1公報にも、2本のチューブを同軸上に溶接する方法が開示されている。互いに向かい合うチューブの溶接シームは、その半径方向の最内部に、チューブの溶接シームに対して前方に突出する段差形状を有する。溶接シームは、傾斜しており、チューブを対向させるとU字型またはV字型のスリットができる。このスリットに溶接材料を充填することにより、チューブは同軸上に溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第656,696号明細書
【特許文献2】墺国実用新案12413号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、不適切な溶接溶け込み、および逆に溶接シームを通して溶接プールを壊すような溶接エラーの可能性が低減される方法を提供することを目的とする。したがって、本発明は、請求項1に記載の方法を提供する。軸方向の端部が、それぞれ相補的な段差形状を有するチューブ壁を有するチューブを使用することによって、上記チューブを非常に容易に互いに対して正しく位置合わせすることができ、さらに自動化された方法で比較的確実に溶接できることが見出された。本明細書では、ステップBによって互いに固定され、続いてステップCによって周方向に溶接される前に、相補的な段差形状によってチューブの正確な相互位置合わせが保証される。
【0007】
一実施形態において、第1の段差形状は、第1のチューブの軸方向で見た場合、0.01mmから1.50mmの間の大きさを有する長さの範囲内で延びている。この幅の範囲内で、一方では、第1のチューブと第2のチューブとを互いに整列して正しく配置でき、他方では、適切な溶接溶け込みを得ることが可能である。さらなる実施形態では、上記長さの大きさは、0.10mmと1.00mmとの間、より具体的には、0.15mmと0.75mmとの間である。上記幅の下側の境界では、周方向の溶接の前にチューブが互いに対して正しく位置決めされないリスクが増加する。上記幅の境界側では、溶接エラーのリスクが増加する。
【0008】
溶接接合部の品質は、特に、第1のチューブの半径方向で見たときに、第1のチューブ壁厚の第1の部分が、2.0mmと12mmとの間の大きさを有する長さ内で延びる場合に、確保されるように思われる。さらなる実施形態では、上記大きさは、2.5mmと10mmとの間、より具体的には3.0mmと8.0mmとの間である。
【0009】
それぞれの段差形状を実施する好適な方法は、外側環状端面と内側環状端面とを有する第1の段差形状を実施することであり、これらの外側環状端面と内側環状端面とは、第1のチューブの軸方向に見た場合、互いに距離をおいて配置される。「内側」および「外側」という表現は、それぞれのチューブの軸に関する。このような段差形状は、有利には、たとえば3軸のフライス盤を使用して、それぞれのチューブのチューブ壁の軸方向の端部をフライス加工することによって得られる。
【0010】
段差形状を作るためにも、溶接プロセス自体のためにも、好ましくは、上記外側環状端面および/または上記内側環状端面は、上記第1のチューブの軸方向に対して垂直に向いた半径方向の平面に平行に延びている。このようにすると、溶接接合部が剪断するリスクが低くなる。
【0011】
さらなる実施形態では、第1のチューブ壁の第1の部分は、第1のチューブ壁の厚み全体にわたって延在する、および/または第2のチューブ壁の第1の部分は、第2のチューブ壁の厚み全体にわたって延在する。これにより、それぞれのチューブのチューブ壁の軸方向の端部は、厚み全体にわたって互いに接触できる。このような実施形態は、主に、それぞれのチューブ壁の厚みが最大で8mmである場合に有利となり得る。このような壁厚の場合、適切な溶接技術により、1つの溶接層で完全に溶け込んだ溶接を実現できる。
【0012】
主に、6.0mm以上の壁厚を有するチューブを接続するために、さらなる実施形態において、第1のチューブ壁の機械加工された端部は、半径方向に見て、第1のチューブ壁厚の第1の部分の外側において、第1のチューブ壁厚の第1の部分に接続する第1のチューブ壁厚の第2の部分にわたってさらに機械加工され、同様に、第2のチューブ壁の機械加工された端部は、第2のチューブ壁厚の第1の部分の外側において、第2のチューブ壁厚の第1の部分に接続する第2のチューブ壁の第2の部分にわたって機械加工されている。ステップAを行った後に、第1のチューブおよび第2のチューブの壁厚の第2の部分の間に、開いたシームが生じる。このようなチューブ間の周方向の溶接接合部は、一般に、複数の溶接層で構築される。
【0013】
上記開いたシームは、その長手方向の断面で見たとき、実質的にV字形またはU字形であってよい。
【0014】
適切な溶接溶込みと比較的狭い溶接接合部を得るために、さらなる実施形態では、第1のチューブおよび第2のチューブの厚みの第1の部分は、軸方向に見たときに、開いたシームの軸方向の最大寸法内に配置される。より具体的な実施形態では、上記第1の部分は、上記開いたシームの軸方向の最大寸法の中央50%以内、またはさらに具体的には、上記開いたシームの軸方向の最大寸法の中央10%以内に配置される。
【0015】
さらなる実施形態では、方法は、ステップAの前に、第1のチューブ壁および第2のチューブ壁の軸方向の端部をフライス加工して、第1のチューブ壁および第2のチューブ壁の機械加工された端部を得るステップをさらに含む。フライス加工は、たとえば、比較的簡単な3軸のフライス装置を用いて実施できる。
【0016】
2つのチューブを一緒に溶接する効率的な方法は、本発明によれば、ステップCを行う間に、第1のチューブ壁厚および第2のチューブ壁厚の第1の部分の少なくとも全体にわたって延びる単一の溶接層が溶接されるときに達成され得る。
【0017】
さらなる実施形態では、ステップCを行う間、第1のチューブ壁厚および第2のチューブ壁厚の第1の部分にわたって延びる周方向の溶接の少なくとも一部が、TIG溶接によって溶接される。TIG溶接により、比較的深い溶け込みが得られる。Fronius社は、いわゆるArcTIGプロセスを提供する。このTIGプロセスは、本発明の実施に適していることが証明されている。
【0018】
溶接供給材料が、TIG溶接中に自動化された方法で、ワイヤとして、場合によっては予熱された状態で溶接プールに供給されると、溶接プロセスにとってさらに有益である。
【0019】
溶接プロセスを自動化された方法で行うために、本方法のさらなる実施形態では、ステップCを行いながら、ステップBの間に互いに固定された第1のチューブと第2のチューブとの間のシームに対して溶接トーチを固定位置に配置し、互いに固定されている第1のチューブおよび第2のチューブをそれらの同軸の軸を中心に回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、図を参照して本発明に係る方法のいくつかの実施形態の説明により、本発明をさらに解明する。
【
図1】
図1は、本発明に係る方法の実施のための、互いに対して同軸上に配置される2つのチューブを軸方向の断面で示す。
【
図2a】
図2aは、溶接されていない状態における
図1の囲まれた領域IIaを示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る方法の実施のための、互いに対して同軸上に配置された2つの他のチューブを軸方向の断面で示す図である。
【
図4a】
図4aは、溶接されていない状態における
図3において囲まれた領域IVaを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、それぞれ外径114.3mm(4インチ)の2本の鋼チューブ1,2を示す。チューブ1,2は、互いに対して同軸上に配置され、それぞれ円筒状のチューブ壁3,4を有する。チューブ壁3,4の厚みは、互いに等しく、
図2aに文字dで示されている。本実施形態では、dは、6.0mmに等しい。また、チューブ1,2の内径は、チューブ1,2の外径と同様に、互いに等しい。互いに対向して配置されるチューブ1,2の間、より具体的には、互いに対向するそれぞれのチューブ1,2のチューブ壁3,4の軸方向端面の間には、シーム5が存在し、より具体的には、溶接シーム5が存在する。
【0022】
図2aに示すように軸方向の断面で見た場合、溶接シーム5は、互いに向き合うチューブ壁3,4の軸方向の端部がそれぞれ段差形状を有しているため、段差形状を有している。これらのそれぞれの段差形状は、
図1のようにチューブ1,2が互いに同軸上に配置されたときに軸方向の上記端部が互いに嵌り合う結果、互いに補完し合う。チューブ1,2は、チューブ1,2が互いに対して半径方向に動くことができないように、半径方向で互いにロックし、それゆえ、互いに同軸のままである。
【0023】
チューブ壁3,4の軸方向の端部の上記段差形状は、フライス加工によって得られる。より具体的には、軸方向の端面の上記段差形状は、チューブ3のそれぞれの軸方向の端部が内側環状端面6と外側環状端面7とを有する結果である。チューブ壁3の端面6,7は、チューブ1の軸方向に見たとき、互いに距離tをおいて配置されている。選択された例では、tは、0.25mmに等しい。選択された実施形態における内側環状端面6の半径方向の寸法d1は、4.5mmであり、外側環状端面7の半径方向の寸法d2、は1.5mmである。
図1,2a,2bの実施形態では、dは、d1+d2に等しい。内側環状端面6は、チューブ壁3のそれぞれの軸方向の端部に突出部を形成している。一般に、d1とd2との間の移行がチューブの外径に比較的近いように、d2がd1より小さいと有利であり、これは作られる溶接接合部の信頼性のために有利である。一方、d2が小さくなりすぎると、それぞれの突出部が損傷しやすくなると不利になることがある。一般に、d2は、0.5mmより大きく、あるいは1.0mmより大きいものを選択することが好ましい。
【0024】
壁面チューブ4も、軸方向に互いに距離tをおいて配置された内側環状端面8および外側環状端面9を有する。端面8,9の径方向の寸法は、それぞれd1,d2に等しい。外側環状端面9は、チューブ壁4のそれぞれの軸方向の端部に設けられた突出部の一部である。
【0025】
以上の説明から、互いに向かい合うチューブ壁3,4の軸方向の端部の段差形状は、互いに補完し合う。
【0026】
チューブ3,4の溶接は、たとえば、TIG溶接プロセスによって行われ得る。チューブ3,4を互いに溶接するために、チューブ1,2の共通軸10が水平に方向を合わせられ、チューブ1,2は、溶接シーム5の外側の複数の離散的で互いにほぼ等距離の位置において、取り付け溶接によって互いに固定される。この固定された状態において、チューブ1,2の一方は、取り付けられたチューブ1,2をその共通軸10を中心に回転させることができる回転装置にクランプされている。軸10に平行な方向に見て、溶接トーチは、その後、12時の方向で溶接シーム5の真上に置かれる。その後、溶接プロセスが開始され、溶接トーチはその位置または実質的にその位置に留まり、溶接シーム5は軸10を中心に360°回転する。溶接は、たとえば300A以上の比較的高いアンペア数で、たとえば毎分25~30cmの比較的大きい速度で行われてよい。溶接の結果、
図2bに示すような溶接層21が形成される。溶接層21は、溶接溶け込みであり、チューブ壁3,4の内側だけでなく、その外側の両方においても延在している。
図2bでは、分かりやすくするために、また本発明の説明のために、チューブ壁3,4の軸方向の端部の段差形状を示しているが、溶接層21の内側のチューブ1,2の全ての材料が溶融したことは、当業者にとって明らかであろう。溶接層21の溶接と取り付け溶接の溶接には、同じ溶接プロセスを用いることが有利である。
【0027】
図3は、互いに同軸で、溶接シーム35を間に挟んで互いに対向して配置された2本の鋼チューブ31,32を示す。チューブ31,32は、それぞれの厚みが等しいが、チューブ3,4の厚みdよりも大きい円筒状のチューブ壁33,34を有している。本実施形態では、チューブ壁33,34の厚みDは、約10mmに等しい。溶接シーム35は、少なくとも軸方向の断面において、チューブ壁33,34の内側に、溶接シーム5の段差形状と等しい段差形状を有している。より具体的には、D1=d1、D2=d2、T=tである。チューブ壁33,34の外側では、溶接シーム35は開いており、より具体的には、溶接シーム35は実質的にU字形状である。U字形の底部は半径Rで丸められ、U字形の脚部は発散して40度の大きさを有する角度αを囲んでいる。溶接シーム35の内側の部分の段差形状は、軸方向に見た場合、チューブ33,34の外周部におけるU字形の中央10%以内である。
【0028】
図4bは、
図4aに係る断面を溶接した状態で示す図である。溶接シーム35は、ベース溶接層51と、その上の溶接層52と、チューブ壁33,34の両側に延びる第3溶接層53とによって、チューブ壁33,34の厚みD全体にわたって溶接される。ベース溶接層51上に配置される溶接層52、53は、有利には、溶接シームをより速く埋めることができるように、MIG/MAGプロセスのような、異なる溶接プロセスで溶接されてよい。
【国際調査報告】