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特表2023-514654ロイシンリッチリピートキナーゼ2のアロステリック調節因子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ロイシンリッチリピートキナーゼ2のアロステリック調節因子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230330BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230330BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230330BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230330BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230330BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230330BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230330BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230330BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230330BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12Q1/68
A61K39/395 D
A61K39/395 P
A61P25/16
A61P1/04
A61K49/00
A61K35/761
A61K35/76
A61K48/00
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K47/68
G01N33/573 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576233
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2021054339
(87)【国際公開番号】W WO2021170540
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,200
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20165463.9
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20212466.5
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514185600
【氏名又は名称】ブイアイビー ブイゼットダブリュ
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Rijvisschestraat 120, B-9052 Gent, Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】596099561
【氏名又は名称】ブレイエ・ユニバージテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
(71)【出願人】
【識別番号】522337347
【氏名又は名称】ライクスユニバージテイト フローニンゲン
【氏名又は名称原語表記】RIJKSUNIVERSITEIT GRONINGEN
【住所又は居所原語表記】Broerstraat 59712 CP Groningen Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】522337358
【氏名又は名称】ドイジェス ゼントルム フュア ノイロデゲネラティヴェ エルクランクンゲン エー.ヴァウ.
【氏名又は名称原語表記】DEUTSCHES ZENTRUM FUER NEURODEGENERATIVE ERKRANKUNGEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Building 99 Venusberg Campus 153127 Bonn Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルセース,ワイム
(72)【発明者】
【氏名】シング,ランジャン,クマール
(72)【発明者】
【氏名】コルトホルト,アルジャン
(72)【発明者】
【氏名】グレックナー,クリスティアン-ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX01
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC29
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA661
4C084ZC191
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB22
4C085BB31
4C085CC31
4C085DD62
4C085DD88
4C085EE01
4C085EE03
4C085HH01
4C085KA03
4C085KB82
4C085LL05
4C085LL13
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA66
4C087ZC19
4C087ZC20
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】

本発明はヒトロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)の結合薬剤に関する。より具体的には、LRRK2の亜細胞的な局在は影響されずに残しながら、ヒト細胞のLRRK2を標的化するためのLRRK2活性のアロステリック調節因子が同定された。さらにより具体的には、LRRK2キナーゼ活性のアロステリック調節のための蛋白質結合薬剤が開示され、ナノモルの親和性でヒトLRRK2に結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含む。それゆえに、本発明は、パーキンソン病などのLRRK2に関係する病理の処置における使用のための、ならびにインビトロおよびインビボのLRRK2の検出への使用のための、ならびに診断薬としての使用のための、その活性のアロステリック調節による新規のLRRK2標的化アプローチのための手段ならびに方法を明らかにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合が、LRRK2蛋白質を細胞中において微小管と会合させずに残す、ヒトLRRK2に特異的に結合するロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)のアロステリック調節因子。
【請求項2】
LRRK2に結合することのKD値が200nM以下の範囲である、請求項1に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項3】
細胞中においておよび/またはインビトロにおいてLRRK2キナーゼ活性に影響する、請求項1または2のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項4】
低分子、化学的な化合物、蛋白質、ペプチド、ペプチドミメティック、抗体、抗体ミメティック、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、または活性な抗体断片を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項5】
ISVDを含み、前記のISVDが次の式(1)に従う4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(1)。
【請求項6】
ISVDを含み、CDR1、CDR2、およびCDR3領域が、配列番号1から19の配列からなる群から選択される配列のCDR1、CDR2、およびCDR3領域から選択され、CDR領域がKabat、MacCallum、IMGT、AbM、またはChothiaに従ってアノテーションされる、請求項5に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項7】
ISVDを含み、ここでISVD中:
CDR1が、配列番号23~41のCDR1配列の群から選択される配列からなり、
CDR2が、配列番号42~60のCDR2配列の群から選択される配列からなり、
CDR3が、配列番号61~79のCDR3配列の群から選択される配列からなる、
請求項5に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項8】
前記のISVDが、配列番号1から19の配列のいずれか、もしくはそれとの少なくとも85%アミノ酸同一性を有する配列、またはそのヒト化バリアントを含む、請求項6または7に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項9】
細胞中においてLRRK2キナーゼ活性を阻害する、請求項1~8のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項10】
細胞中においてLRRK2基質リン酸化を阻害する、請求項1~8のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項11】
細胞中においてLRRK2キナーゼ活性を増大させる、請求項1~8のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項12】
任意にATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物の存在下にあるときに、細胞中において微小管へのLRRK2会合を防止する、請求項1~8のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2の調節因子の少なくとも1つを含む、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子または請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする、核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含むベクター、好ましくはウイルスベクター、レンチウイルスもしくはアデノウイルスベクター。
【請求項16】
i)請求項5~8のいずれか1項に記載のLRRK2特異的な結合因子とサンプルを相互作用させること、および
ii)LRRK2に結合した前記のLRRK2特異的なISVD結合因子の存在もしくは不在または蛋白質レベルを検出すること、
を含む、サンプルのLRRK2蛋白質の量を検出するためのインビトロの方法。
【請求項17】
i)請求項5~8のいずれか1項に記載のLRRK2特異的な結合因子および/または任意に前記の結合因子の標識された形態と生物学的サンプルを反応させるステップ、ならびに
ii)前記の生物学的サンプルの前記のLRRK2特異的なISVDの局在および分布を検出するステップ、
を含む、生物学的サンプルのヒトLRRK2蛋白質の局在および分布の検出のためのインビトロの方法。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項14に記載の核酸分子、または請求項15に記載のベクターを含む、医薬組成物。
【請求項19】
さらに、ATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
医薬としての使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、または請求項18もしくは19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
LRRK2に関係する障害の処置における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、または請求項18もしくは19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
パーキンソン病またはクローン病の処置における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、または請求項18もしくは19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
診断薬としてのまたはインビボイメージングのための使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項13に記載の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、または請求項18もしくは19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)の結合薬剤に関する。より具体的には、LRRK2の亜細胞的な局在は影響されずに残しながら、ヒト細胞のLRRK2を標的化するためのLRRK2活性のアロステリック調節因子が同定された。さらにより具体的には、LRRK2キナーゼ活性のアロステリック調節のための蛋白質結合薬剤が開示され、ナノモルの親和性でヒトLRRK2に結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含む。それゆえに、本発明は、パーキンソン病などのLRRK2に関係する病理の処置における使用のための、ならびにインビトロおよびインビボのLRRK2の検出への使用のための、ならびに診断薬としての使用のための、その活性のアロステリック調節による新規のLRRK2標的化アプローチのための手段ならびに方法を明らかにする。
【背景技術】
【0002】
ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)をコードする遺伝子の変異は、パーキンソン病(PD)の最も普通の遺伝学的原因であり、常染色体優性の様式で遺伝し[62-64]、LRRK2遺伝子バリアントはPDの特発性形態ともまた関連づけられている[65,66]。PDは神経変性性の運動障害であり[61]、これの有病率は将来にはグローバルに増大することが予想され[58-60]、対症的な処置を除いては、治療オプションの欠如がある。その上、LRRK2の変異はクローン病などの慢性の炎症性状態を包含する他の疾患と関連づけられている[67-68]。LRRK2は大きいマルチドメイン蛋白質(285kDa)であり、ROCO蛋白質ファミリーに属する。蛋白質の酵素コアは活性なGTPaseドメイン(Roc)、二量体化モジュール(COR)、および活性なSer/Thr蛋白質キナーゼドメイン(KD)からなる[13,16,69,70]。いくつかのRab GTPaseがLRRK2キナーゼの生理的な基質として同定されている[25-27]。さらにその上、これはLRRK2の自己リン酸化活性を提供する[28]。LRRK2蛋白質の単量体形態は圧倒的にサイトゾルにおいて生起し、縮減されたキナーゼ活性を有し、膜において形成される二量体LRRK2はより高いキナーゼ活性を示す[19,20,71,72]。LRRK2の最も普通の病原性変異はRoc-CORおよびキナーゼドメイン上にクラスター化している。重要なことに、いくつかのPD変異はGTPaseの減少および/またはキナーゼ活性の増大に至る[16,50,73-78]。特に、セリン1292の自己リン酸化[28]およびRab蛋白質リン酸化[25]が、病原性LRRK2バリアントによって、特にキナーゼドメインに所在する最も普通のG2019S変異によって増大させられる。これらの所見は、LRRK2変異が機能獲得型の機序によってPDを引き起こすという考えを支持し、LRRK2蛋白質機能の調節が有望な薬物標的であり得るということを示唆する[47,79,80]。PD変異体はLRRK2キナーゼ活性の増大をもたらすので、これまでの薬物開発は主にATP結合ポケットを標的化するキナーゼ阻害剤を開発することにフォーカスしている。LRRK2キナーゼ活性について選択的であるいくつかの阻害剤が同定されている。しかしながら、これらのATP競合阻害剤によるLRRK2の長期阻害は、齧歯類における重度の腎臓異常と非ヒト霊長類の肺のII型肺胞上皮細胞におけるラメラ体の蓄積とに至ることが報告されており[46,47,81-83]、現行のLRRK2キナーゼ阻害剤はさらなる最適化および試験を要求するであろう。
【0003】
LRRK2の治療薬標的化のための代替的な経路および結合モードを探求するための出発点として、LRRK2の触媒側の半分の高分解度構造が最近開示されているが[36]、これまでは、全長ヒトLRRK2は記載されず、触媒ドメインなどの蛋白質の一部のみが原子の分解度で明かされている。現行のLRRK2特異的なATP競合阻害剤は主にI型キナーゼ阻害剤であることが示唆され、毒性リスクが著しいことが公知である。かかるオルソステリックなキナーゼ阻害剤の臨床開発にとってのこのハードルは、LRRK2キナーゼ活性のアロステリック調節による異なるアプローチの必要を指示する。これまでは、非ATP競合的な機序によってLRRK2活性を阻害することができる1つの小さい化合物の天然のビタミンB12および誘導体のみが同定されている[43]。これらのビタミンB12化合物はキナーゼドメイン上の接触部位を介してLRRK2に直接的に結合し、LRRK2二量体化の遮断によってLRRK2へのATP結合に影響することができる混合型のアロステリック阻害剤として作用すると思われる。化合物は、化合物のアデノシル部分、コバラミンの嵩高いコリン環、およびDMZ塩基が関わってキナーゼドメインと接触し、LRRK2キナーゼドメインの新規の結合部位をストレッチすることが示されており、それによって、その立体配座および二量体化ステータスを変改し得る。これらのビタミンB12誘導体が縮減された毒性および高い特異性を有する新たな治療薬のクラスを提供するかどうかは、なお分かっていない。
【0004】
そのため、他の疾患の中でもパーキンソンなどのLRRK2に関係する障害の治療目的および処置についての臨床的なハードルを克服するためには、高い特異性および代替的な作用モードを有する代替的なLRRK2調節因子を見出す必要がなおある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ATPポケットよりも外に結合する化合物を用いて、アロステリックなやり方でLRRK2の複数の酵素機能および制御機序を標的化する新規のアプローチに基づき、それによって、増大した選択性およびより低い毒性の利点を探求する[84,85]。本発明は、LRRK2蛋白質のダイナミクス、制御、および活性を調節する免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)抗体(具体的には、本明細書において交換可能に用いられるVHHまたはナノボディ)を提供する。ISVDがヒトLRRK2キナーゼ活性のアロステリック調節因子として同定された。異なるLRRK2ドメインに種々の親和性によって結合する広い範囲のVHHファミリーが、あり得る治療薬または診断薬としてのそれらの有利な特性から選択されている。本発明のVHHのいくつかは、細胞のおよびインビトロのLRRK2キナーゼ活性を両方ともロバストに阻害し、他は細胞のLRRK2活性を有意に増大させる。その上、完全なキナーゼ阻害活性を有しかつRab基質のリン酸化の特異的阻害を有するLRRK2阻害Nbが本明細書において見出される。興味深いことに、Nbのサブセットはキナーゼ活性を阻害しながら、キナーゼドメインに直接的には結合せずに、混合(非競合)型阻害剤として作用し、キナーゼ阻害におけるそれらのNbのアロステリック調節的な役割を実証する。驚くべきことに、現行で利用可能なキナーゼ阻害剤とは対照的に、Nbは細胞の微小管上のLRRK2フィラメントの形成を誘導せず、その上、いくつかのNbはさらにはこの不利な副作用を後退させ、Nbが新規の型のアロステリックなLRRK2調節および結合薬剤を提供し、これらが現行で利用可能なATP競合的なキナーゼ阻害剤などの先に同定された阻害剤とは全く異なって作用し、それによってパーキンソン病に対する戦いにおける新規の治療機会を提供するということを指摘する。
【0006】
そのため、第1の側面では、本発明は、ヒトロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)に特異的に結合する結合薬剤に関し、細胞内における結合はLRRK2を微小管と会合せずに保つ。LRRK2結合ISVDの大きいパネルが異なる蛋白質ドメインへの結合を介してまたは種々のドメインの境界面における結合を介してアロステリックに作用し、キナーゼドメインへのまたはより具体的にはキナーゼドメインの触媒部位への直接的結合が関わらないという事実は、古典的なATP競合的なLRRK2阻害剤とはまたはGTP結合部位を標的化する化合物とは異なり、驚くべきことに、オルソステリックなATP競合的なLRRK2結合因子とは対照的に、微小管におけるLRRK2フィラメントの誘導が起こらないという効果をもたらす。さらにその上、前記のLRRK2結合因子は、ナノモル範囲の、および/または200nM以下の範囲のKD値に対応する、より好ましくはナノからピコモル範囲の、LRRK2に対する結合親和性を有する。具体的な態様では、本発明の前記のLRRK2結合因子は細胞のおよび/またはインビトロのLRRK2キナーゼ活性に影響する。
【0007】
本明細書の具体的な態様はLRRK2のアロステリック調節因子に関し、前記の調節因子は、構造的には、小さい化合物、化学物質、蛋白質、ペプチドもしくはペプチドミメティック、または抗体、抗体ミメティック、単一ドメイン抗体、もしくはより具体的には免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、ナノボディ、もしくはいずれかの活性な抗体断片を含む。
【0008】
より具体的には、LRRK2阻害活性を有する本明細書に記載されるISVDを含むLRRK2のアロステリックな結合因子は、ツールとしてまたは治療薬蛋白質として、さらには核酸としてまたはベクターとして送達されて、これまでのLRRK2に関係する治療薬については記載されていない作用機序を用いて、PDおよび/または他のLRRK2にリンクした疾患(炎症性疾患、例えばIBD、より具体的にはクローン病を包含する)を処置するための新規の治療戦略として有望性がある。
【0009】
1つの態様は、非ATP競合的な結合モードで、すなわちATP触媒部位とは異なる結合部位において、LRRK2に特異的に結合する前記のLRRK2のアロステリック調節因子に関する。好ましくは、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、LRRK2キナーゼ触媒部位にまたはキナーゼドメインに存在するアミノ酸を排他的にまたは専らに含むわけではないLRRK2アミノ酸から構成される結合部位において、LRRK2に特異的に結合する。代替的には、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、キナーゼドメインとは異なる蛋白質ドメインの1つ以上の結合部位において、すなわち、N末端ドメイン(アルマジロ、アンキリンリピート、またはLRR)、Roc、COR、およびWD40ドメインからなるドメインの群から選択される1つ以上の蛋白質ドメインにおいて、LRRK2に選好的に結合する。別の態様では、キナーゼドメインおよび前記の他のドメインのいずれかへの結合の組み合わせが可能である。別の態様では、Nbは、ATP結合部位とは異なる結合部位において、キナーゼドメインに結合し得る。1つの態様では、LRRK2活性を調節する前記のLRRK2結合薬剤は、コントロールと比較してLRRK2キナーゼ活性を増大させ得るか、または代替的には前記の結合薬剤の不在下もしくはコントロールと比較してキナーゼ活性を減少または阻害またはブロックし得る。別の態様では、キナーゼおよびGTP活性は両方とも同じ結合薬剤によって正反対の様式で調節され得る(すなわち、キナーゼを阻害はGTPaseを増大させる、および逆)。
【0010】
1つの態様では、LRRK2の前記のアロステリック調節因子は、ヒトLRRK2に特異的に結合するISVDを含み、4つのフレームワーク領域および3つの相補性決定領域を描写する本明細書の式:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を含む。具体的な態様では、LRRK2キナーゼ活性のアロステリックな調節のための前記のISVDは、配列番号1~19で本明細書において開示されるISVDのCDR1配列の群から選択される配列からなるCDR1(前記のCDR領域は、表3~4の通りまたは代替的には図10で例示される通りアノテーションされる);および配列番号1~19で本明細書において開示されるISVDのCDR2配列の群から選択される配列からなるCDR2、および配列番号1~19で本明細書において開示されるISVDのCDR3配列の群から選択される配列からなるCDR3を含む。それゆえに、ISVDを含むLRRK2特異的なアロステリックな結合因子が本明細書に記載され、CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号1から19の配列の群から選択される配列のCDR1、CDR2、およびCDR3領域から選択され、CDR領域は、Kabat、MacCallum、IMGT、AbM、またはChothiaに従って、本明細書においてさらに定められる通り、当分野において公知の通りアノテーションされる。代替的には、前記のLRRK2結合薬剤は少なくとも1つのISVDを含み:CDR1は、配列番号23~41のCDR1配列の群から選択される配列を含み、CDR2は、配列番号42~60のCDR2配列の群から選択される配列を含み、CDR3は、配列番号61~79のCDR3配列の群から選択される配列を含む。
【0011】
さらなる具体的な態様は、前記のLRRK2特異的なアロステリックな結合薬剤を開示し、ISVDを含み、これは、配列番号1から19の配列、または配列番号1~19の同一のCDR配列とFR領域の置換とを含有するが、少なくとも85%配列同一性を有するそれらのバリアントのいずれかを含む。別の態様は、前記のLRRK2のアロステリック調節因子に関し、ISVDを含み、これは、配列番号1~19の群から選択される配列のいずれかのヒト化バリアント、またはCDR配列が配列番号1~19のCDRと同一であるそれとの少なくとも85%同一性を有するホモログである。別の態様は、本明細書において定められるLRRK2のアロステリックな結合薬剤に関し、ISVDを含み、かつ細胞のLRRK2キナーゼ活性を阻害もしくはブロックおよび/または細胞のLRRK2によって媒介される基質リン酸化を特異的に防止する。具体的な態様は、Rab基質リン酸化を特異的に防止または阻害する薬剤に関する。代替的な態様は、本明細書において定められる前記のLRRK2調節因子に関し、コントロールと比較して細胞のLRRK2キナーゼ活性を増大させるISVDを含む。さらなる態様は、ISVDを含む本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子に関し、これは、とりわけATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物の存在下にあるときに、細胞の微小管へのLRRK2会合を防止する。
【0012】
本発明の別の態様は、LRRK2活性のアロステリック調節因子としての多重特異性のまたは多価の結合薬剤を開示し、これは、本明細書において開示される少なくとも1つのLRRK2のアロステリック調節因子を含む。別の態様は、LRRK2活性のアロステリック調節因子としての前記の多重特異性のまたは多価の結合薬剤を開示し、これは、本明細書において開示される前記のLRRK2のアロステリック調節因子の少なくとも2つを含む。本発明の別の態様は、LRRK2活性のアロステリック調節因子としての多重特異性の結合薬剤を開示し、これは、本明細書において開示される前記のLRRK2のアロステリック調節因子と、異なる標的特異性を有するさらなる結合薬剤または代替的にはLRRK2のさらなる結合薬剤とを含む。具体的な態様では、前記の多重特異性のまたは多価のLRRK2のアロステリックな結合薬剤は、本明細書において開示されるLRRK2に特異的に結合する少なくとも1つのISVDを含む。
【0013】
本発明の別の側面は、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子をコードする核酸分子に関する。他の態様は、本明細書に記載される前記の核酸分子を含有するベクターを含み、これは、クローニングまたは発現ベクター、およびウイルス、レンチウイルス、またはアデノウイルスベクターなどの送達基剤であり得る。
【0014】
さらなる側面は、医薬組成物を提供し、LRRK2のアロステリック調節因子、または本明細書において開示されるLRRK2のアロステリック調節因子を含む多重特異性のLRRK2結合薬剤を含む。代替的には、医薬組成物が提供され、本明細書において開示される前記の(多重特異性の)LRRK2のアロステリック調節因子と、ATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物とを含む。具体的な態様では、前記の医薬組成物が提供され、本明細書において開示される前記の(多重特異性の)LRRK2のアロステリック調節因子と、I型のATP競合的なキナーゼ阻害剤のATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物とを含む。
【0015】
本発明の別の側面は、医薬としての使用のための、本明細書において開示されるLRRK2のアロステリック調節因子、または本明細書において提供される核酸分子もしくはベクター、または本明細書に記載される医薬組成物に関する。具体的な態様は、医薬としての使用のための、またはより具体的にはLRRK2に関係する障害を処置するための対象の処置のような使用のための、本明細書において開示されるLRRK2のアロステリック調節因子、または本明細書において提供される核酸分子もしくはベクター、または本明細書に記載される医薬組成物に関する。そのため、別の具体的な態様は、パーキンソン病の処置における使用のための、本明細書において開示されるLRRK2のアロステリック調節因子、または本明細書において提供される核酸分子もしくはベクター、または本明細書に記載される医薬組成物に関する。
【0016】
さらなる態様は、診断アッセイへのまたは医学的なインビボイメージングへの使用のための、本明細書において開示される前記のLRRK2特異的な結合薬剤もしくはISVD、または本明細書において提供される前記のLRRK2結合薬剤をコードする核酸分子もしくはベクター、または本明細書に記載される医薬組成物に関する。
【0017】
最後の側面は、サンプルの、より具体的には生物学的サンプルのヒトLRRK2蛋白質を検出するインビトロの方法に関する。サンプルのLRRK2を検出する前記の方法は、本明細書において開示される通りLRRK2特異的な結合薬剤またはISVDとサンプルを反応させるステップ、ならびにLRRK2に結合した前記の生物学的サンプルの前記のLRRK2特異的なISVDの局在および分布を検出するステップを含み得る。前記の方法では、本明細書において開示されるLRRK2結合薬剤またはISVDは検出可能な標識またはタグを含み得る。別の態様は、サンプルのLRRK2蛋白質の存在、不在、またはレベルを検出するためのインビトロの方法に関し、方法は:任意に標識を含むLRRK2特異的な結合薬剤またはISVDとサンプルを接触させること、およびそのLRRK2結合部位における前記相互作用もしくは結合しているLRRK2特異的なISVDの存在もしくは不在またはレベルを検出することを含む。任意に、前記のサンプルは、脳脊髄液などの体液であるか、または蛋白質抽出物もしくは細胞ライセートである。
【0018】
最後に、本明細書において開示される結合薬剤は、スクリーニングアッセイに、ツールとして、または創薬にもまた用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
記載される図面は概略的のみであり、限定しない。図面において、要素のいくつかのサイズは、例解目的で誇張され、オンスケールで描かれずにあり得る。
【0020】
図1】ELISAを用いる精製されたナノボディのドメイン特異性のマッピング。(A)全長LRRK2、またはRocCOR、Roc、COR-B、もしくはキナーゼ-WD40コンストラクトのいずれかに対してELISAを用いる42個の精製されたNbのドメインマッピング。ELISAプレート上にコーティングされた抗原なしのまたは追加されるNbなしのいずれかの負のコントロールもまた包含される。各ELISAシグナルは3つのELISAセットアップの平均である。(B)(A)で得られた結果の概略的な概要。2つのNbはバックグラウンドよりも上のいずれかの結合を示さなかったということに注意。よって、これらはこのスキームに包含されていない。
図2】HEK293T細胞におけるLRRK2(G2019S)バリアントのキナーゼ活性に対する18個のNbの選択されたセットの影響。(a~c)LRRK2(G2019S)およびそのエフェクターRab29がHEK293T細胞においてGFP融合Nb(「Fluobody」)と一緒に過剰発現された。Nbが過剰発現されない負のコントロール(「Noなし」)もまた包含されている。パネル(a)、(b)、および(c)は実験の3つの繰り返しを示す。「pLRRK2」と標識された横列では、LRRK2 pS1292レベルが、部位特異的な抗pLRRK2(pS1292)抗体(Abcam、ab203181)を用いるウエスタンブロットによって決定されている(異なる発色時間で示されている)。「pRAB1O」と標識された横列では、内在性のpT72-Rab10レベルが、MJFF/Abcam抗体MJF-R21(Abcam、ab230261)を用いるウエスタンブロットによって決定されている(異なる発色時間で示されている)。3つの下側の横列は、LRRK2(ラット抗LRRK2、24D8)、Fluobody(ラット抗GFP)、およびRab10(ウサギ抗Rab10)発現レベルのコントロールを含有する。(d)パネル(a)~(c)の結果に基づくと、Nbは4つの機能群に分けられ得る。群1:細胞のLRRK2自己リン酸化およびRab10リン酸化を両方とも阻害するNb;群2:Rab10リン酸化のみを阻害するNb;群3:LRRK2キナーゼ活性を活性化するNb;群4:LRRK2キナーゼ活性に対する整合した/明瞭な効果を有さないNb。
図3】クロスリンク質量分析を用いるLRRK2上のNbの結合エピトープのマッピング。Nbは、図2dで定められた通りインセルロのLRRK2キナーゼ活性に対するそれらの効果に従って4つの機能群に分けられる。NbおよびLRRK2の間の観察されたクロスリンクは線によって指示され、LRRK2上の対応するリジン残基はそれらの残基番号によって指示されている。先にELISAによって決定されたNbのドメイン特異性が参照としてそれぞれのNbの下に与えられている。
図4-1】LRRK2標的化Nbによるインビトロのキナーゼ活性の調節。(A)蛍光に基づくPhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイを用いて測定された、LRRK2キナーゼ活性に対する選択されたLRRK2標的化Nbの効果。10μMの固定濃度の基質としてのLRRK2最適化されたAQT0615ペプチドをそれぞれ1mMまたは0.1mM ATPの存在下において用いた。Nbが追加されなかったコントロール(「Nbなし」)と比較して、相対的なキナーゼ活性に対する25μMの濃度の異なるNbの影響がプロットされている。追加の負の(25μMの無関係なコントロールNb)および正の(25μMのATP競合的なLRRK2阻害剤MLi-2)コントロールが包含されている。(B)「Nbなし」コントロールと比較して、相対的なキナーゼ活性に対する異なるNbの影響(25μM)がプロットされている。500μM GDP(上側)または500μM GTPγS(底側)のいずれかの存在下。0.2μMのATP競合的なLRRK2阻害剤MLi-2による正のコントロールが包含されている。各バーは3つの独立した測定の平均(±SD)を反映する。
図4-2】LRRK2標的化Nbによるインビトロのキナーゼ活性の調節。(A)蛍光に基づくPhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイを用いて測定された、LRRK2キナーゼ活性に対する選択されたLRRK2標的化Nbの効果。10μMの固定濃度の基質としてのLRRK2最適化されたAQT0615ペプチドをそれぞれ1mMまたは0.1mM ATPの存在下において用いた。Nbが追加されなかったコントロール(「Nbなし」)と比較して、相対的なキナーゼ活性に対する25μMの濃度の異なるNbの影響がプロットされている。追加の負の(25μMの無関係なコントロールNb)および正の(25μMのATP競合的なLRRK2阻害剤MLi-2)コントロールが包含されている。(B)「Nbなし」コントロールと比較して、相対的なキナーゼ活性に対する異なるNbの影響(25μM)がプロットされている。500μM GDP(上側)または500μM GTPγS(底側)のいずれかの存在下。0.2μMのATP競合的なLRRK2阻害剤MLi-2による正のコントロールが包含されている。各バーは3つの独立した測定の平均(±SD)を反映する。
図5】LRRK2の細胞局在に対するLRRK2標的化ナノボディの効果。HEK293細胞が、指示されているGFP-NbおよびmScarlet-LRRK2によって共トランスフェクションされた。正のコントロールとして、mScarlet-LRRK2トランスフェクション細胞が薬理学的なATP競合阻害剤MLi-2によって処置され(1μM MLi-2、90min処置)、微小管上へのLRRK2移行の誘導を示した。フィラメント状の束様の構造として見られ、白色矢印によって指示されている(上側左パネル)。対照的に、GFP-NbおよびmScarlet-LRRK2によって共トランスフェクションされた細胞は、無関係なNbと共トランスフェクションされた細胞に類似に、微小管への移行なしのLRRK2の正常な細胞質分布を示した。スケールバー5μm。
図6】LRRK2のMLi-2によって誘導される微小管移行に対するLRRK2標的化ナノボディの効果。HEK293細胞が、指示されているGFP-NbおよびmScarlet-LRRK2によって共トランスフェクションされ、薬理学的なATP競合阻害剤MLi-2(1μM MLi-2、90min処置)によって処置された。GFPのみ(上側左パネル)または無関係なNb(下側左パネル)とのmScarlett-LRRK2の共トランスフェクションは、微小管上へのLRRK2のMli-2によって誘導される移行を示した。フィラメント状の束様の構造として見られ、白色矢印によって指示されている。GFP-Nbのサブセットとの共トランスフェクションは、MLi-2によって誘導されるLRRK2移行を阻害した。スケールバー5μm。
図7】LRRK2の精製された全長およびドメインコンストラクトを示すSDS-PAGE分析。3μgの各精製された全長LRRK2ならびに本研究に用いられたドメインコンストラクトRocCOR、Roc、(MBP-)COR-B、およびキナーゼ-WD40が、ゲルにローディングされた。マーカー(左)Spectra(商標)マルチカラーハイレンジ蛋白質ラダー(Cat.N°26625;Thermo Scientific(商標));(右)PageRuler(商標)染色済み蛋白質ラダー、10から180kDa(Cat.N°26616;Thermo Scientific(商標))。
図8】LRRK2クロスリンク。免疫化前に、LRRK2がリジン特異的なクロスリンカーDSSによってクロスリンクされた。2つのクロスリンクセットアップが行われ、ここでは、クロスリンクは異なるレベル(AおよびB)まで進むことを許された。LRRK2はGDP(レーン2および3)またはGTPγS(レーン4および5)の存在下において精製された。両方のゲルで、レーン2およびレーン4はクロスリンク前のLRRK2を示し、レーン3および5はDSSクロスリンク後のLRRK2を示す。免疫化2では、レーン5に示されているサンプルの混合物が用いられた。免疫化3では、レーン3に示されているサンプルの混合物が用いられた。マーカー(A)BiozymからのQuad Color蛋白質マーカー;(B)Spectra(商標)マルチカラーハイレンジ蛋白質ラダー(Cat.N° 26625 Thermo Scientific(商標))。
図9図1に示された42個の精製されたナノボディおよび本研究に用いられた無関係なNbのSDS-PAGE。2μgの各ナノボディがゲルにローディングされた(このNbの不良な発現レベルを原因として0.7μgがローディングされているCA16070を例外とする)。マーカー、PageRuler(商標)染色済み蛋白質ラダー、10から180kDa(Cat.N°26616 Thermo Scientific(商標))。
図10】CA12610 Nbのアミノ酸配列およびCDRアノテーション。アミノ酸付番はKabatに従う。本明細書において開示されるNbに可能な異なるCDRアノテーションの例として、代替的なCDRアノテーション(AbM、Chothia、Kabat、IMGT)に対応する領域が、現行で用いられているものと比較して、灰色で標識されている。ラマ生殖細胞系列ホールマーク残基は太字/下線付き。
図11-1】LRRK2標的化Nbによるインビトロキナーゼ活性の調節。A~C、群1 Nb:Nb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)によるインビトロLRRK2キナーゼ活性の阻害の用量反応曲線(上側パネル)。ここでは、Nb濃度は200または150μMから0.006μMまで2倍の段階希釈で変えられた。2つの下側パネルは、ATPの様々な濃度およびペプチド基質(AQT0615)の固定(準飽和)濃度においてかつNb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)の様々な濃度においてLRRK2について得られたミカエリス・メンテン曲線と、ラインウィーバー・バーク法(二重逆数プロット)に従う対応する線形化とを示す。用いられたNb濃度はプロットの下に指示されている。各データ点は3つの独立した測定の平均(±SD)を反映する。3パラメータロジスティック方程式のフィットからもたらされたIC50(±SD)値、ならびに混合型の阻害機序のグローバルフィットからもたらされたKi appおよびα値(±SD)がグラフに指示されている。
図11-2】LRRK2標的化Nbによるインビトロキナーゼ活性の調節。A~C、群1 Nb:Nb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)によるインビトロLRRK2キナーゼ活性の阻害の用量反応曲線(上側パネル)。ここでは、Nb濃度は200または150μMから0.006μMまで2倍の段階希釈で変えられた。2つの下側パネルは、ATPの様々な濃度およびペプチド基質(AQT0615)の固定(準飽和)濃度においてかつNb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)の様々な濃度においてLRRK2について得られたミカエリス・メンテン曲線と、ラインウィーバー・バーク法(二重逆数プロット)に従う対応する線形化とを示す。用いられたNb濃度はプロットの下に指示されている。各データ点は3つの独立した測定の平均(±SD)を反映する。3パラメータロジスティック方程式のフィットからもたらされたIC50(±SD)値、ならびに混合型の阻害機序のグローバルフィットからもたらされたKi appおよびα値(±SD)がグラフに指示されている。
図11-3】LRRK2標的化Nbによるインビトロキナーゼ活性の調節。A~C、群1 Nb:Nb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)によるインビトロLRRK2キナーゼ活性の阻害の用量反応曲線(上側パネル)。ここでは、Nb濃度は200または150μMから0.006μMまで2倍の段階希釈で変えられた。2つの下側パネルは、ATPの様々な濃度およびペプチド基質(AQT0615)の固定(準飽和)濃度においてかつNb1(A)、Nb6(B)、およびNb23(C)の様々な濃度においてLRRK2について得られたミカエリス・メンテン曲線と、ラインウィーバー・バーク法(二重逆数プロット)に従う対応する線形化とを示す。用いられたNb濃度はプロットの下に指示されている。各データ点は3つの独立した測定の平均(±SD)を反映する。3パラメータロジスティック方程式のフィットからもたらされたIC50(±SD)値、ならびに混合型の阻害機序のグローバルフィットからもたらされたKi appおよびα値(±SD)がグラフに指示されている。
図12】ナノボディはLRRK2に結合および免疫沈降する。HEK293細胞が、GFPタグ付きNbおよび(S)trep-(F)lagタグ付きLRRK2コンストラクトによってリシスに先行して48時間にわたって一過的に共トランスフェクションされた。プルダウンアッセイが磁性GFP-Trapビーズの手段によって行われた。SF-LRRK2のみを過剰発現するHEK293細胞ライセートが負のコントロールとして用いられた。NbおよびLRRK2がイムノブロットによって検出された。無関係なNbおよび負のコントロールとは違って、全ての試験されたNbはLRRK2をプルダウンする。ブロットはn=3の代表である。
図13-1】マイクロスケール熱泳動(MST)を用いるLRRK2に対するNbの親和性測定。増大して行く濃度のLRRK2を蛍光(m-TAMRA)標識されたNbに対してタイトレーションすることおよびMSTシグナルを測定することによって得られた結合等温線が示されている。Nbは図2dで定められた通り4つの機能群に分類される。(a)群1 Nb、(b)群2 Nb、(c)群3 Nb、および(d)群4 Nb。パネル(e)では、2つの負のコントロールが示されている。ここでは、LRRK2は遊離のm-TAMRAに対してまたはm-TAMRA標識された無関係なNbに対してのいずれかでタイトレーションされた。GTPγSが用いられたNb42を例外として、全ての測定は500μM GDPの存在下において行われた。結合二次方程式のフィットによって得られた対応する平衡解離定数(Kd±標準誤差)が与えられている(各データ点は3つの独立した測定の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す;NB=検出可能なMST結合シグナルなし)。
図13-2】マイクロスケール熱泳動(MST)を用いるLRRK2に対するNbの親和性測定。増大して行く濃度のLRRK2を蛍光(m-TAMRA)標識されたNbに対してタイトレーションすることおよびMSTシグナルを測定することによって得られた結合等温線が示されている。Nbは図2dで定められた通り4つの機能群に分類される。(a)群1 Nb、(b)群2 Nb、(c)群3 Nb、および(d)群4 Nb。パネル(e)では、2つの負のコントロールが示されている。ここでは、LRRK2は遊離のm-TAMRAに対してまたはm-TAMRA標識された無関係なNbに対してのいずれかでタイトレーションされた。GTPγSが用いられたNb42を例外として、全ての測定は500μM GDPの存在下において行われた。結合二次方程式のフィットによって得られた対応する平衡解離定数(Kd±標準誤差)が与えられている(各データ点は3つの独立した測定の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す;NB=検出可能なMST結合シグナルなし)。
図13-3】マイクロスケール熱泳動(MST)を用いるLRRK2に対するNbの親和性測定。増大して行く濃度のLRRK2を蛍光(m-TAMRA)標識されたNbに対してタイトレーションすることおよびMSTシグナルを測定することによって得られた結合等温線が示されている。Nbは図2dで定められた通り4つの機能群に分類される。(a)群1 Nb、(b)群2 Nb、(c)群3 Nb、および(d)群4 Nb。パネル(e)では、2つの負のコントロールが示されている。ここでは、LRRK2は遊離のm-TAMRAに対してまたはm-TAMRA標識された無関係なNbに対してのいずれかでタイトレーションされた。GTPγSが用いられたNb42を例外として、全ての測定は500μM GDPの存在下において行われた。結合二次方程式のフィットによって得られた対応する平衡解離定数(Kd±標準誤差)が与えられている(各データ点は3つの独立した測定の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す;NB=検出可能なMST結合シグナルなし)。
図14-1】バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いるLRRK2に対するNbの親和性測定。ビオチン化Nb40(またはNb40の親和性測定のケースではNb42)を介してストレプトアビジンバイオセンサー上にトラップされたLRRK2に対して増大して行く濃度のNbをタイトレーションすることと、BLIシグナルを測定することとによって得られた結合等温線が示されている。Nbは図2dで定められた通り4つの機能群に分類される。(a)群1 Nb、(b)群2 Nb、(c)群3 Nb、および(d)群4 Nb。全ての測定は500μM GDPの存在下において行われた。ラングミュア結合方程式のフィットによって得られた対応する平衡解離定数(Kd±標準誤差)が与えられている(各データ点は3つの独立した測定の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す)。
図14-2】バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いるLRRK2に対するNbの親和性測定。ビオチン化Nb40(またはNb40の親和性測定のケースではNb42)を介してストレプトアビジンバイオセンサー上にトラップされたLRRK2に対して増大して行く濃度のNbをタイトレーションすることと、BLIシグナルを測定することとによって得られた結合等温線が示されている。Nbは図2dで定められた通り4つの機能群に分類される。(a)群1 Nb、(b)群2 Nb、(c)群3 Nb、および(d)群4 Nb。全ての測定は500μM GDPの存在下において行われた。ラングミュア結合方程式のフィットによって得られた対応する平衡解離定数(Kd±標準誤差)が与えられている(各データ点は3つの独立した測定の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す)。
図15】ナノボディは内在性のLRRK2に結合および免疫沈降する。RAW264.7細胞に由来するライセートが1.5μMの精製されたHisタグ付きNbとインキュベーションされ、プルダウンが磁性Dynabeadsを用いて行われた。LRRK2がイムノブロットによって検出され、全ての試験されたNbがLRRK2を免疫沈降するということを実証した。ブロットはn=3の代表である。
図16-1】ナノボディは内在性のLRRK2と共局在する。RAW264.7細胞がGFP融合Nbによってトランスフェクションされ、ザイモサンによって30minにわたって処置された。ファゴソームへのLRRK2およびNbのリクルートが免疫蛍光によって分析された。a、Nb38、Nb22、Nb23、Nb40、Nbなし、または無関係な(IRR)Nb処置の画像;b、Nb36、Nb42、Nb17、Nb39、Nb1、およびNb6処置の画像。スケールバー=10μm。
図16-2】ナノボディは内在性のLRRK2と共局在する。RAW264.7細胞がGFP融合Nbによってトランスフェクションされ、ザイモサンによって30minにわたって処置された。ファゴソームへのLRRK2およびNbのリクルートが免疫蛍光によって分析された。a、Nb38、Nb22、Nb23、Nb40、Nbなし、または無関係な(IRR)Nb処置の画像;b、Nb36、Nb42、Nb17、Nb39、Nb1、およびNb6処置の画像。スケールバー=10μm。
図17】ナノボディは先に記載されたLRRK2キナーゼ阻害剤とは異なる結合部位を介してLRRK2に結合する。ATP競合的なキナーゼ阻害剤Mli-2および先に記載された非ATP競合的なLRRK2阻害剤5'デオキシアデノシルコバラミン(AdoCbl=補酵素B12)が群1ナノボディ:Nb1(a)、Nb6(b)、およびNb23(c)と同じ結合部位について競合するかどうかを評価する、競合ELISAタイトレーション実験の結果。LRRK2がELISAプレートのウェルにコーティングされ、それぞれのNbの希釈系列のELISAシグナル(それらのC末端EPEAタグによって検出された)がNb濃度の関数としてプロットされている。大過剰のMLi-2(1μM)、AdoCbl(250μM)、および正の(+)コントロールとしての対応するタグ付けされていないNb(Nb*、9μM)の存在の効果が決定されている。LRRK2がウェルの底側にコーティングされなかった「抗原なしコントロール」もまた包含されている。Nb単独のタイトレーション曲線(「-コントロール」)と比較して、Nb*の追加がELISAタイトレーション曲線の明瞭な右へのシフトを引き起こす正のコントロールとは対照的に、Mli-2もAdoCblも曲線の右へのシフトを示さない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は特定の態様についてかつ特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれらにではなく請求項によってのみ限定される。請求項中のいずれかの参照符号は範囲を限定すると解釈されるべきではない。当然のことながら、必ずしも全ての側面または利点が本発明のいずれかの特定の態様に従って達成され得るわけではないということは理解されるべきである。それゆえに、例えば、当業者は、本明細書において教示される1つの利点または利点の群を達成または最適化する様式で、本明細書において教示または示唆され得る他の側面または利点を必ずしも達成することなしに、本発明が具体化または実施され得るということを認識するであろう。本発明は、機構および作動の方法両方について、その特徴および利点と一緒に、付随する図面と共に読まれるときに次の詳細な記載の参照によって最良に理解され得る。本発明の側面および利点は、以降で本明細書に記載される態様(単数または複数)の参照によって明らかであるかまたは解明されるであろう。本明細書において「1つの態様」または「態様」と言うことは、態様に関連して記載される特定の特徴、構造、または特質が本発明の少なくとも1つの態様に包含されるということを意味する。それゆえに、本明細書の種々の箇所における言い回し「1つの態様では」または「ある態様では」の出現は、必ずしも全てが同じ態様を言っているわけではないが、言い得る。
【0022】
定義
単数形の名詞を参照するときに不定または定冠詞、例えば「a」または「an」、「the」が用いられるところでは、他の何かが具体的に申し立てられない限り、これはその名詞の複数を包含する。用語「含む」が本記載および請求項において用いられるところでは、それは他の要素またはステップを排除しない。さらにその上、記載および請求項における用語の第1、第2、第3、および同類は、必ずしもシークエンス的または年代学的順序を記載するためではなく、類似の要素を区別するために用いられる。そのように用いられる用語は適当な状況においては交換可能であるということと、本明細書に記載される本発明の態様は本明細書において記載または例解されるよりも他のシークエンスでの作動ができるということとは理解されるべきである。次の用語または定義は専ら本発明の理解を補助するために提供される。本明細書において具体的に定められない限り、本明細書において用いられる全ての用語は、本発明の分野の業者にとってそれらが有するであろう同じ意味を有する。当分野の定義および用語について、実施者は特にSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York (2012);およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 114), John Wiley & Sons, New York (2016)に導かれる。別様に定められない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、(例えば、分子生物学、生化学、構造生物学、および/または計算生物学の)当業者によって普通に理解される同じ意味を有する。
【0023】
用語「蛋白質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、さらに本明細書において交換可能に用いられて、アミノ酸残基のポリマーならびにそれのバリアントおよび合成アナログを言う。「ペプチド」は、例えばトリプシン消化後のその元々の蛋白質に由来する部分的なアミノ酸配列ともまた言われ得る。それゆえに、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸、例えば対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログであるアミノ酸ポリマーと、天然に存在するアミノ酸ポリマーとに適用される。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、リン酸化、およびアセチル化をもまた包含する。アミノ酸配列および修飾に基づいて、ポリペプチドの原子または分子質量または重量は(キロ)ダルトン(kDa)で表現される。「単離される」または「精製される」によって、そのネイティブな状態においてそれに正常で付随するコンポーネントを実質的にまたは本質的に不含である材料が意味される。例えば、「単離されたポリペプチド」または「精製されたポリペプチド」は、天然に存在する状態でそれの側にある分子から精製されたポリペプチド、例えば、前記のポリペプチドに隣接する生産ホストなどのサンプルまたは混合物に存在する分子から取り出された本明細書において同定および開示される抗体またはナノボディを言う。単離された蛋白質またはペプチドは、アミノ酸化学合成によって生成され得るか、または組み換え生産によってもしくは複雑なサンプルからの精製によって生成され得る。
【0024】
蛋白質の「ホモログ(homologue)」、「ホモログ(homologues)」は、当該未改変の蛋白質に対して相対的にアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有し、かつそれらが由来する未改変の蛋白質と類似の生物および機能活性を有するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質、および酵素を包摂する。本明細書において用いられる用語「アミノ酸同一性」は、配列が比較ウインドウ上において1アミノ酸ずつの基準で同一である程度を言う。それゆえに、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウインドウ上において比較すること、同一のアミノ酸残基(例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet。本明細書においては1文字コードによってもまた指示される)が両方の配列上に生起する位置数を決定して、マッチした位置数を出すこと、マッチした位置数を比較ウインドウ上のトータルの位置数(すなわち、ウインドウサイズ)によって除算すること、および結果を100によって乗算して配列同一性のパーセンテージを出すことによって計算される。本明細書において用いられる「置換」または「変異」または「バリアント」は、親の蛋白質またはその断片のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して、それぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドによる1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの置き換えからもたらされる。蛋白質またはその断片が、蛋白質の活性に対する効果を実質的に有さない保存的なアミノ酸置換を有し得るということは理解される。
【0025】
「結合する」は、それが直接的または間接的であっても、いずれかの相互作用を意味する。直接的相互作用は、結合パートナー間の接触を含意する。間接的相互作用は、相互作用パートナーが2つよりも多くの分子の複合体において相互作用するいずれかの相互作用を意味する。相互作用は、1つ以上の橋かけ分子の助けによって完全に間接的、または1つ以上の分子の追加の相互作用によって安定化されるパートナー間の直接的接触がなおあるところでは部分的に間接的であり得る。本明細書において用いられる用語「特異的に結合する」によって、特異的標的を認識するがサンプル中の他の分子を実質的に認識または結合しない結合ドメインが意味される。特異的結合は排他的な結合を意味しない。しかしながら、特異的結合は、蛋白質がそれらの結合因子の1つまたは数個に対して特定の増大した親和性または選好性を有するということは意味する。本明細書において用いられる用語「親和性」は、一般的には、リガンド、化学物質、蛋白質、またはペプチドが、単一の蛋白質単量体の平衡をそれらの結合によって形成される複合体の存在の方にシフトさせるようにして別の(標的)蛋白質またはペプチドに結合する度合いを言う。親和性はそのリガンドへの単一の分子の結合の強さである。それは典型的には平衡解離定数(KD)によって測定および報告され、これは二分子相互作用の強さを評価および順位付けするために用いられる。その抗原への抗体の結合は可逆的なプロセスであり、結合反応の速度は反応物の濃度に比例する。平衡においては、[抗体][抗原]複合体形成の速度がそのコンポーネント[抗体]+[抗原]への解離速度に等しい。反応速度定数の測定は平衡または親和性定数(1/KD)を定めるために用いられ得る。要約すると、KD値が小さいほど、その標的に対する抗体の親和性は多大である。反応の両方向の速度定数が名付けられる:会合反応速度定数(Kon)、これは、いかに素早く抗体がその標的に結合するかをキャラクタリゼーションするために用いられる定数の「オンレート」(Kon)を計算するために用いられる反応の一部である。逆に、解離反応速度定数(Koff)は、いかに素早く抗体がその標的から解離するかをキャラクタリゼーションするために用いられる定数の「オフレート」(Koff)を計算するために用いられる反応の一部である。本明細書において示される測定では、傾きが平坦なほど、オフレートは遅いかまたは抗体結合は強い。逆に、より険しい下降はより速いオフレートおよびより弱い抗体結合を指示する。実験測定されたオフおよびオンレートの比(Koff/Kon)がKD値を計算するために用いられる。オンおよびオフレートを測定するためのおよびそのKDを計算するためのいくつかの決定方法が当業者に公知である(下および例を見よ)。よって、これは、標準誤差を考慮に入れて、用いられるアッセイから独立している値として考えられる。本明細書において用いられる用語「蛋白質複合体」または「複合体」または「アセンブリした蛋白質(単数または複数)」は、2つ以上の会合した高分子の群を言い、これによると、高分子の少なくとも1つは蛋白質である。本明細書において用いられる蛋白質複合体は、典型的には、生理条件下において形成され得る高分子の会合を言う。蛋白質複合体の個々の構成員は非共有結合的な相互作用によってリンクされる。
【0026】
「結合薬剤」は、別の分子に結合することができる分子に関し、前記の結合は好ましくは特異的結合であり、定められた結合部位、ポケット、またはエピトープを認識する。結合薬剤はいずれかの性質または型であり得、その起源に依存的ではない。結合薬剤は、化学合成され、天然に存在し、組み換え的に生産され(および精製され)、ならびに設計および合成的に生産され得る。ゆえに、前記の結合薬剤は、とりわけ、低分子、化学物質、ペプチド、ポリペプチド、抗体、またはそれらのいずれかの誘導体、例えばペプチドミメティック、抗体ミメティック、活性な断片、化学的な誘導体であり得る。用語「結合ポケット」または「結合部位」は、その形状および電荷の結果として、別の化学的実体、化合物、蛋白質、ペプチド、抗体、またはNbと好都合に会合する分子または分子複合体の領域を言う。用語「ポケット」はクレフト、チャネル、または部位を包含するが、これに限定されない。用語「結合ポケット/部位の一部」は、結合ポケットまたは結合部位を定めるアミノ酸残基の全てよりも少しを言う。例えば、残基の部分は、リガンド結合に役割を演ずる鍵の残基であり得るか、または空間的に関係し、結合ポケットの三次元コンパートメントを定める残基であり得る。残基は一次配列上において一続きであるかまたは一続きでなくあり得る。抗体に関係する分子について、用語「エピトープ」は、本明細書において交換可能に用いられる結合部位を記載するためにもまた用いられる。「エピトープ」は、LRRK2蛋白質などの標的分子上の結合部位または結合ポケット、より具体的にはISVDまたはVHHにとってアクセス可能なLRRK2ドメイン上の結合ポケットを構成するポリペプチドの抗原決定基を言う。エピトープはエピトープに特有である空間的立体配座の3アミノ酸を含み得る。一般的に、エピトープは少なくとも4、5、6、7つのかかるアミノ酸からなり、より通常では、少なくとも8、9、10個のかかるアミノ酸からなる。アミノ酸の空間的な立体配座を決定する方法は当分野において公知であり、例えばX線結晶学および多次元核磁気共鳴を包含する。本明細書において用いられる「立体配座エピトープ」は、ポリペプチドの折り畳まれた3次元立体配座に特有である空間的な立体配座のアミノ酸を含むエピトープを言う。一般的に、立体配座エピトープは、線形の配列上では不連続であるが蛋白質の折り畳まれた構造上では一緒になるアミノ酸からなる。しかしながら、立体配座エピトープは、ポリペプチドの折り畳まれた3次元立体配座に特有である(かつ変性状態では存在しない)立体配座をとるアミノ酸の線形の配列からもまたなり得る。蛋白質複合体において、立体配座エピトープは、1つ以上のポリペプチドの線形の配列上では不連続であるアミノ酸からなり、これらが、異なる折り畳まれたポリペプチドの折り畳みおよび特有の四次構造でのそれらの会合によって一緒になる。蛋白質の用語「立体配座」または「立体配座状態」は、一般的に、蛋白質が時間のいずれかの瞬間にとり得る構造の範囲を言う。それゆえに、立体配座エピトープはLRRK2蛋白質の異なる蛋白質ドメインからのアミノ酸相互作用を含み得る。当業者は、立体配座または立体配座状態の決定因子が、蛋白質のアミノ酸配列(改変されたアミノ酸を包含する)に反映される蛋白質の一次構造および蛋白質の周囲の環境を包含するということを認識するであろう。蛋白質の立体配座または立体配座状態は、構造的特徴、例えば蛋白質二次構造(例えば、とりわけ、αヘリックス、βシート)、三次構造(例えば、ポリペプチド鎖の三次元折り畳み)、および四次構造(例えば、他の蛋白質サブユニットとのポリペプチド鎖の相互作用)にもまた関する。ポリペプチド鎖の翻訳後および他の修飾、例えば、とりわけ、リガンド結合、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、または疎水性基の取り付けが、蛋白質の立体配座に影響を及ぼし得る。さらにその上、環境的な因子、例えば、とりわけ、周囲の溶液のpH、塩濃度、イオン強度、および浸透圧、ならびに他の蛋白質および補因子との相互作用は、蛋白質立体配座に影響し得る。蛋白質の立体配座状態は、他の方法のなかでも、活性もしくは別の分子への結合についての機能アッセイによって、または物理学的方法、例えばX線結晶学、NMR、またはスピンラベルの手段によってのいずれかで決定され得る。蛋白質立体配座および立体配座状態の一般的な議論については、Cantor and Schimmel, Biophysical Chemistry, Part I: The Conformation of Biological. Macromolecules, W.H. Freeman and Company, 1980およびCreighton, Proteins: Structures and Molecular Properties, W.H. Freeman and Company, 1993を参照せよ。
【0027】
本明細書において用いられる用語「抗体」、「抗体断片」、および「活性な抗体断片」は、抗原、このケースではLRRK2蛋白質に特異的に結合することができる免疫グロブリン(Ig)ドメインまたは抗原結合ドメインを含む蛋白質を言う。「抗体」は、さらに、天然のソースまたは組み換えソースに由来するインタクトな免疫グロブリンであり得、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性の部分であり得る。抗体は典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。用語「活性な抗体断片」は、抗原決定基またはエピトープに対する高い親和性を独力で有し、かかる特異性を担う1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含有するいずれかの抗体または抗体様構造の部分を言う。限定しない例は、免疫グロブリンドメイン、Fab、F(ab)'2、scFv、重-軽鎖二量体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ナノボディ、ドメイン抗体、および一本鎖構造、例えば完全な軽鎖または完全な重鎖を包含する。前記の断片の「活性」についての追加の要件は、本発明に照らして、前記の断片がLRRK2に結合することができ、好ましくはLRRK2のアロステリック調節因子であり、より好ましくは対象のLRRK2活性を増大または減少させることができるということである。用語「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」またはより具体的には「免疫グロブリン可変ドメイン」(「IVD」と略称される)は、本質的に、当分野においておよび下で本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」または「FR1」;「フレームワーク領域2」または「FR2」;「フレームワーク領域3」または「FR3」;および「フレームワーク領域4」または「FR4」と言われる4つの「フレームワーク領域」からなる免疫グロブリンドメインを意味し;これらのフレームワーク領域は、当分野においておよび下で本明細書においてそれぞれ「相補性決定領域1」または「CDR1」;「相補性決定領域2」または「CDR2」;および「相補性決定領域3」または「CDR3」と言われる3つの「相補性決定領域」または「CDR」によって中断される。それゆえに、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造または配列は次の通り指示され得る:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗原結合部位を保有することによって抗原に対する特異性を抗体に授けるのは、免疫グロブリン可変ドメイン(単数または複数)(IVD)である。典型的には、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)が相互作用して抗原結合部位を形成する。このケースでは、VHおよびVL両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与するであろう。すなわち、トータルで6つのCDRが抗原結合部位形成に関わるであろう。上の定義から、従来の4鎖抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE分子;当分野において公知)のあるいはかかる従来の4鎖抗体に由来するFab断片、F(ab')2断片、Fv断片、例えばジスルフィドリンクされたFvもしくはscFv断片、またはダイアボディ(全て当分野において公知)の抗原結合ドメインは、軽および重鎖可変ドメインなどの(関連する)免疫グロブリンドメインのペアによる、すなわち免疫グロブリンドメインのVH-VLペアによる抗原のそれぞれのエピトープへの結合によって、共同でそれぞれの抗原のエピトープに結合するであろう。本明細書において用いられる免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のフォーマットに従う4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を有する蛋白質を言う。本発明の「免疫グロブリンドメイン」は、用語「単一可変ドメイン」と同等の「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISVD」と略称される)をもまた言い、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、それによって形成される分子を定める。これは、免疫グロブリン単一可変ドメインを、2つの免疫グロブリンドメインが特定の2つの可変ドメインにおいて相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリンまたはそれらの断片とは別にする。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は単一のVH/VHHまたはVLドメインによって形成される。ゆえに、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位はせいぜい3つのCDRによって形成される。そのため、それが単一の抗原結合単位(すなわち、単一の抗原結合ドメインが、機能的な抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用することを必要としないようにして、本質的に単一可変ドメインからなる機能的な抗原結合単位)を形成することができる限り、単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)もしくはその好適な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列またはVHH配列)もしくはその好適な断片であり得る。
【0028】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインはナノボディ(登録商標)(本明細書において定められる通り)またはその好適な断片であり得る。注意:ナノボディ(登録商標)、ナノボディズ(登録商標)、およびNanoclone(登録商標)はAblynx N.V.(a Sanofi Company)の登録商標である。ナノボディの一般的な記載については、下のさらなる記載と、例えば、例えばW02008/020079に記載される本明細書において引用される従来技術との参照がなされる。VHH、VHHドメイン、VHH抗体断片、およびVHH抗体としてもまた公知の「VHHドメイン」は、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を持たない抗体」;Hamers-Casterman et al (1993) Nature 363: 446-448)の抗原結合免疫グロブリン(Ig)(可変)ドメインとして元々記載された。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(これらは本明細書において「VHドメイン」と言われる)および従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(これらは本明細書において「VLドメイン」と言われる)から区別するために選ばれている。VHHおよびナノボディのさらなる記載については、Muyldermansによる総説記事(Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302, 2001)および次の特許出願の参照がなされる。これらは一般的な背景技術として言及される:Vrije Universiteit BrusselのWO94/04678、WO95/04079、およびWO96/34103;UnileverのWO94/25591、WO99/37681、WO00/40968、WO00/43507、WO00/65057、WO01/40310、WO01/44301、EP1134231、およびWO02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)のWO97/49805、WO01/21817、WO03/035694、WO03/054016、およびWO03/055527;Algonomics N.V.およびAblynx N.V.のWO03/050531;National Research Council of CanadaによるWO01/90190;Institute of AntibodiesによるWO03/025020(=EP1433793);ならびにAblynx N.V.によるWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787、およびWO06/122825、ならびにAblynx N.V.によるさらなる公開特許出願。これらの参照に記載されている通り、ナノボディ(特にVHH配列および部分的ヒト化ナノボディ)は、特に、フレームワーク配列の1つ以上における1つ以上の「ホールマーク残基」の存在によってキャラクタリゼーションされ得る。ナノボディのヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の改変、一部または断片、誘導体または「ナノボディ融合体」、多価または多重特異性コンストラクト(リンカー配列のいくつかの限定しない例を包含する)、およびナノボディの半減期を増大させるための異なる改変、およびそれらの調製物を包含するナノボディのさらなる記載は、例えばWO08/101985ならびにWO08/142164に見出され得る。ナノボディは、全長抗体の結合親和性および特異性を完全に保持する最も小さい抗原結合断片を形成する。Nbは例外的に長い相補性決定領域3(CDR3)ループと凸状のパラトープとを所有し、これらは、それらが標的抗原の隠された穴部に侵入することを許す。
【0029】
本明細書において用いられる用語「決定する」、「測定する」、「評価する」、「同定する」、「スクリーニングする」、および「アッセイする」は交換可能に用いられ、定量的および定性的決定を両方とも包含する。
【0030】
本明細書において交換可能に用いられる用語「対象」、「個体」、または「患者」は、脊椎動物などのいずれかの生物、特に、診断、治療、または予防が望まれるヒトおよび別の哺乳動物両方を包含するいずれかの哺乳動物、例えば、齧歯類、ウサギ、牛、羊、馬、犬、猫、ラマ、豚、または非ヒト霊長類(例えばサル)などの動物に関する。齧歯類はマウス、ラット、ハムスター、モルモット、またはチンチラであり得る。1つの態様では、対象はヒト、ラット、または非ヒト霊長類である。好ましくは、対象はヒトである。1つの態様では、対象は、疾患または障害、特に本明細書において開示される疾患または障害を有するかまたは有することを疑われる対象であり、本明細書においては「患者」ともまた呼ばれる。しかしながら、前述の用語は症状が存在するということを含意しないということは理解されるであろう。用語「処置」または「処置すること」または「処置する」は交換可能に用いられ得、徴候、症状、障害、状態、または疾患の進行または重症度を遅めるか、中断するか、阻止するか、コントロールするか、止めるか、縮減するか、または後退させるが、必ずしも全ての疾患に関係する徴候、症状、状態、または障害のトータルの消失は関わらない治療介入によって定められる。
【0031】
本明細書において用いられる用語「医薬」は、治療に、すなわち疾患または障害の防止または処置に用いられる物質/組成物を言う。本発明に従うと、用語「疾患」または「障害」は、いずれかの病理的状態を、特に本明細書において定められる疾患または障害を言う。
【0032】
詳細な記載
本発明は、ヒトLRRK2蛋白質の天然に存在しない蛋白質系の結合薬剤、具体的にはLRRK2活性のアロステリック調節因子に関する。パーキンソン病(PD)に関連する蛋白質のロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)の変異は、普通は、GTPase活性の縮減およびキナーゼ活性の増大に至る。G2019Sが最も高有病率のものであるLRRK2(優性)変異は、Rab蛋白質の増大したリン酸化によって媒介される遅発性パーキンソン病を引き起こす。そのため、キナーゼ活性の阻害および/またはGTPase活性の増大は治療上有益なアウトカムを提供する。実に、LRRK2キナーゼ活性の公知のATP競合阻害剤はPD処置におけるあり得る治療上の利益を実証しているが、LRRK2 ATP結合ポケットを指向するキナーゼ阻害剤の使用に関連するあり得る不利益な副作用についての懸念が依然としてある[46,81-82]。オルソステリックな機序で作用するさらなる世代の化合物が臨床試験段階にあるが、より良好な安全性プロファイルを有する化合物の必要は、新規のアプローチのかつ本開示の範囲のものとしてLRRK2活性のアロステリックな調節による代替的なアプローチを要求する。
【0033】
本発明は、キナーゼドメイン上のATP触媒結合部位とは異なるドメイン上の立体配座エピトープを介して、および/またはその活性部位についてATPと直接的には競合せずに、LRRK2のもしくは具体的にはLRRK2キナーゼドメインの公知の結合薬剤とも競合せずに、LRRK2に圧倒的に結合するアロステリックな結合薬剤に関する。本明細書に記載される結合薬剤のスペクトルは、LRRK2の何重ものアロステリックな調節を包摂し、これは新規のファースト・イン・クラスのLRRK2治療薬の創出を支持するであろう。特に、本発明の結合薬剤は、全てが、LRRK2過剰発現によっておよび内在性のLRRK2発現レベルにおいて両方で細胞ライセートからのLRRK2に効率的に結合し、これは、10から200nMの範囲であるKD値を出した2つの独立した生物物理学的方法によって確認される高親和性結合を反映する。さらなる親和性成熟、多重パラトープコンストラクトの生成、および/またはヒト化は、このヒトLRRK2蛋白質結合親和性をサブナノモルの親和性までも増大させ得る。
【0034】
さらにその上、LRRK2特異的な免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、アロステリックな機序によって作用しかつ混合(非競合)型の阻害機序によってLRRK2活性に作用する最初の蛋白質系のLRRK2結合因子を提供する。5つの普通のPD変異のうち4つに類似に、1型ATP競合阻害剤による処置はLRRK2の微小管会合を引き起こすことが示されている。微小管上のLRRK2のオリゴマー化のこの現象は、微小管関連モーター蛋白質の付随的なブロックによって、LRRK2病理の裏にある原因の1つとして示唆されている[36]。驚くべきことに、本明細書に記載されるISVDに基づくLRRK2特異的な結合因子のいずれも微小管とのLRRK2会合を誘導せず、いくつかはさらにはI型ATP競合キナーゼ阻害剤MLI-2によって誘導されるLRRK2移行を後退させる。これらの観察は、本発明のLRRK2結合因子の差別的な効果を提供し、現行で存在する阻害剤とは異なる作用モードおよび細胞プロファイルを有するLRRK2調節因子へのさらなる開発の候補としてそれらを位置付ける。
【0035】
そのため、本発明はアロステリックなLRRK2蛋白質結合薬剤を提供し、これらは、蛋白質のその亜細胞的な局在に影響することなしに、細胞のヒトLRRK2に結合し、その細胞分布を保ち、それゆえに、LRRK2を微小管から離されてまたはそれと会合せずに保持する。そのため、1つの態様では、本明細書に記載されるLRRK2特異的な結合薬剤または調節因子は微小管上のLRRK2蓄積を誘導しない。さらにその上、本明細書において開示されるISVDに基づくLRRK2のアロステリックな結合薬剤は、当業者に公知のまたは本明細書において例示される方法を用いて決定され得る結合親和性を提供し、これらは、500nM以下、好ましくは200nM以下の、より好ましくは、150nMと10倍低いか、または100倍低いか、または1,000倍低いか、または10,000倍低い値との間の本明細書において定められるKD値に関する。
【0036】
より具体的には、結合薬剤は、最も好ましくは細胞のおよび/またはインビトロのLRRK2キナーゼ活性をアロステリックに調節する。キナーゼ活性の調節はLRRK2の単量体/二量体化サイクルにおよび蛋白質のGTPase活性にリンクされ得るが、本明細書に記載されるLRRK2調節因子は、一方では、LRRK2を標的化するためにISVDを適用することの本来の有利な効果に、他方では、結合位置に依存してキナーゼ活性調節をもたらす立体配座的な様式の高親和性結合によって得られるそれらの効果にフォーカスする。
【0037】
そのため、具体的な側面では、LRRK2のアロステリックな結合薬剤は、本明細書において交換可能に用いられる免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)またはVHHまたはナノボディを含み、これらは立体配座エピトープに結合してLRRK2蛋白質立体配座を調節し、これらはそれによってその活性に影響し得る。それらの効果は18個の異なるISVDファミリーのより広いパネルについてインセルロで分析された。これらのISVDは、LRRK2のインセルロのアロステリック調節の共通の特徴を提供するそれらの調節プロファイル(LRRK2の亜細胞的な局在、キナーゼ活性阻害、または活性化)および結合モード(異なる立体配座エピトープおよび結合部位)に従って分類された。その上、LRRK2とのそれらの相互作用は、圧倒的にキナーゼドメインよりも外に所在することが同定され、全ての公知のATP競合キナーゼ阻害剤から、さらには天然化合物5'-デオキシアデノシルコバラミン(AdoCbl;ビタミンB12の生理的な形態;[43];例10に示される通り)から、これらの高度に特異的な蛋白質系結合薬剤を多様化する。1つの態様では、本発明は、高い親和性によってLRRK2蛋白質に特異的に結合するヒトLRRK2のアロステリック調節因子に関し、前記の調節因子は、天然に存在するLRRK2調節因子または結合因子、例えばコバラミンの生理的な形態のビタミンB12、またはそれらの誘導体とは異なるか、またはそれらを含んでいない。
【0038】
その上、従来のLRRK2特異的な抗体とは対照的に、本発明のLRRK2調節ISVDは小さい薬剤であり、よって、生細胞の内在性のLRRK2の動的局在を研究するためにも適用され得る(インビボイメージング)。
【0039】
ゆえに、本発明は、細胞のLRRK2蛋白質の移行などのさらなる不都合な効果を回避することができる機序によって、その活性をアロステリックに調節する高度に特異的なLRRK2結合薬剤を初めて明らかにする。かかるアロステリックな結合因子はLRRK2に対する活性化または阻害効果が著しくあり得る。これのためには、現行では、キナーゼ阻害剤が治療上最も該当すると考えられている。アロステリックな様式で阻害する唯一の報告された小さい化合物はビタミンB12誘導体であるが[43]、その結合部位は圧倒的にLRRK2キナーゼドメインに所在し、それによって、本明細書において開示されるアロステリックなISVDと比較して少なくとも部分的に異なる結合部位および異なる作用機序を提供する。さらにその上、ISVDは、Rocドメイン、CORドメイン、キナーゼドメイン、WD40ドメイン、ならびに/またはN末端(アルマジロ、アンキリンリピート、LRR)ドメインおよびキナーゼまたはWD40ドメインを包含する種々のLRRK2ドメインの境界面に特異的に結合することが実証された。全長LRRK2の高分解度の構造を欠き、精密なエピトープ結合部位はまだ確証されないが、ELISAおよびクロスリンク質量分析データからの知見は、最大で35オングストロームの距離で、蛋白質間の前記のクロスリンクによって、どこにアロステリックなISVDが結合しているか指示する領域を提供した。この情報から、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子の大部分が、圧倒的にキナーゼドメインよりも外に所在するおよび/またはそのエピトープ結合部位残基が少なくともキナーゼ活性部位よりも外に所在する立体配座エピトープに結合することによって機能するということが結論された。
【0040】
本明細書に記載されるアロステリック調節因子は、本明細書において交換可能に用いられる「天然でない」、「天然に存在しない」、または「非天然の」結合薬剤である。これは、これらの結合薬剤または調節因子がそのままでは天然に存在せず、すなわち、技術的なステップまたはプロセス、例えば免疫化が、かかる高度に特異的なアロステリック調節因子結合薬剤を得るために要求されるという事実を言う。対照的に、LRRK2のキナーゼドメインに結合する報告されたビタミンB12誘導体化合物は、コバラミンとして4つの形態で天然に存在することが公知である。コバラミンは、実際には、機能のためにコバルト(Co)を要求する複雑な化学的に近縁の補因子の群を言う。ヒドロキシコバラミンは細菌によって生産され、シアノコバラミン(CNCbl)は治療または栄養補助目的でのヒドロキシコバラミン(OHCbl)の精製の間に由来する形態である。両方とも体内でさらに代謝されて、活性な形態のアデノシルコバラミン(AdoCbl)およびメチルコバラミン(MeCbl)を形成する。
【0041】
本明細書において用いられる用語「アロステリックな調節」、「アロステリックな活性」、または「アロステリックな制御」は、蛋白質の酵素活性部位または触媒部位とは異なる部位であり、そのため、オルソステリックな結合因子の結合部位とは異なるアロステリックまたは制御部位における前記薬剤の結合を言う。LRRK2のかかる触媒部位はキナーゼドメイン活性部位およびGTPaseドメイン活性部位を含む。「調節因子」は正、負、または中立的のいずれかである。「正のアロステリック調節因子」は、アゴニストまたはリガンド、例えばATPもしくはGTPがLRRK2に結合するであろう確率を増大させること(すなわち、親和性を増大させること)、またはLRRK2を活性化するその能力を増大させること(すなわち、効力を増大させること)、のいずれかあるいは両方によって、LRRK2の活性あるいは応答を増大させる。「負のアロステリック調節因子」はアゴニスト親和性および/または効力を減少させる。「中立的なアロステリック調節因子」はアゴニスト活性には影響しないが、他の調節因子がアロステリック部位に結合することを止め得る。いくつかの調節因子はアロステリックなアゴニストとしてもまた働き得る。アロステリックな結合薬剤は、例えば、結合によるLRRK2蛋白質の立体配座変化の誘導によってLRRK2活性に影響または調節し得る。1つの態様では、LRRK2活性の前記のアロステリックな阻害剤は天然に存在しない分子であり、よって、(代謝する)ヒトのコバラミン誘導体などの天然に存在する化合物とは異なる。そのため、具体的な態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、コバラミンまたはコバラミン誘導体ではないLRRK2阻害剤である。本明細書において用いられる用語「誘導体」は、コバラミン誘導体AdoCbl、MeCbl、OHCbl、およびCNCbl、ならびに/またはいずれかのコバラミン骨格含有天然化合物を包含するが、これらに限定されない。好ましくは、LRRK2に特異的に結合する前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、細胞、生物、または対象に存在するときに、ヘテロ接合のまたは外来性の化合物である。
【0042】
本発明は具体的にはヒトLRRK2のアロステリック調節因子に関する。細菌起源のLRRK2蛋白質は、一次構造またはアミノ酸配列からのみならず二次および三次構造からもまた、例えば細菌LRRK2がキナーゼドメインを欠くという事実において、ヒトLRRK2蛋白質(配列番号21)と比較して極めて多様化しているということは当業者には明瞭である。ヒトLRRK2は複雑なかつより大きい蛋白質であり、ヒトLRRK2活性に強く影響することができる特異的な結合因子を生成するためには完璧な設計を含意する。本明細書に記載される結合薬剤またはISVDおよびアロステリック調節因子は、良く定められた免疫化および選択戦略によって得られ、高い治療上のポテンシャルの新規の立体配座エピトープによる新規の結合薬剤を提供する。ISVDまたはより具体的にはナノボディは、構造生物学分析においては安定化因子またはシャペロンとして作用することが公知であり、その上、治療薬としても開発されている。アロステリックなISVDもしくはNbまたはそれに由来する活性な抗体断片によってヒトLRRK2を標的化することは先には示されていない。それらの治療上のポテンシャルは、LRRK2の細胞内標的化とPD処置のために脳に到達することのハードルとからより複雑であり得るが、それらの結合モードは、LRRK2薬物を改善するための新規の化合物を生産および選択するいくつかの特有のアプローチを提供する。事実、それらの立体配座エピトープは新規のドラッガブルなポケットを提供し、加えて、それらの高特異性のかつアロステリックな効果は、保持されたLRRK2細胞局在を有するそれらの巧みな作用モードとの組み合わせによって、おそらく縮減された毒性リスクをもたらし得る。薬物送達については、さらに本明細書に記載される通り、それらの小さいサイズは、血液脳関門を横断することを補助するために、またはそれらをカーゴにリンクし、もしくはBBBを横断する基剤によって捕捉するために有利である。最後に、ナノボディはイントラボディとしてもまた治療上適用され得、遺伝子治療を用いて適用され得る。
【0043】
1つの態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、特異的にかつ圧倒的にLRRK2のRocドメインに結合する結合薬剤を含む。別の態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、LRRK2のCOR(-B)ドメインに特異的にかつ圧倒的に結合する結合薬剤を含む。別の態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、LRRK2のWD40ドメインに特異的にかつ圧倒的に結合する結合薬剤を含む。別の態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、LRRK2のキナーゼドメインに特異的にかつ圧倒的に結合する結合薬剤を含む。別の態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、種々のLRRK2ドメインの境界面に特異的に結合する結合薬剤を含み、いくつかのドメイン上の残基に結合することを意味し、N末端(アルマジロ、アンキリンリピート、LRR)ドメインおよびキナーゼまたはWD40ドメインを包含し得る。いくつかの態様では、前記のLRRK2のアロステリック調節因子は、前記のドメインのいずれかに存在する残基の組み合わせに特異的に結合する。好ましい態様では、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子はLRRK2のキナーゼまたはGTPaseドメインの活性部位に結合しない。より好ましい態様では、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子は、キナーゼドメインアミノ酸残基には結合せず、LRRK2の他の蛋白質ドメインに属するアミノ酸残基を含むLRRK2結合部位に特異的に結合する。
【0044】
別の態様では、LRRK2蛋白質に特異的に結合する前記のアロステリック調節因子は、そのキナーゼ活性を増大および/またはそのGTPase活性を減少させ得る。他の態様では、LRRK2蛋白質に特異的に結合するアロステリック調節因子は、そのキナーゼ活性を減少、阻害、もしくはブロックおよび/またはそのGTPase活性を増大させ得る。用語「増大させる」、「増強する」、または「活性化する」は本明細書においては交換可能に用いられ、アロステリック調節因子なしのコントロールまたは負のもしくは無関係なコントロール薬剤と比較して、その活性の少なくとも5%の増加を言う。用語「増大させる」、「増強する」、または「活性化する」は、さらに、アロステリック調節因子なしのコントロールまたは負の無関係な基剤コントロールと比較して、その活性の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、または50%よりも多くの増加を言う。本明細書において交換可能に用いられる用語「減少した」、「縮減された」、または「阻害」、または「防止すること」は、アロステリック調節因子なしのコントロールまたは負のもしくは無関係なコントロールと比較して、その活性の少なくとも5%の縮減を言う。用語「減少した」、「縮減された」、「防止する」、または「阻害する」は、さらに、アロステリック調節因子なしのコントロールまたは負のコントロールと比較して、その活性の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、または50%よりも多くの縮減を言う。LRRK2活性の用語「ブロック」は、アロステリック調節因子なしのコントロールまたは負のコントロールと比較して、非検出可能なレベルへのその活性の縮減を言う。本明細書において言われる「負のコントロール」または「無関係なコントロール」または「コントロール」または「基剤コントロール」は、LRRK2に結合されないかまたはLRRK2に結合されるがその活性にいずれかの効果を有さないことが公知である類似の性質の結合薬剤(例えば無関係なNb)を意味される。「コントロール」は、LRRK2に対する効果を有さないことが公知の分子の1つの型または分子のプールであり得る(無関係なNbまたは化合物など)。
【0045】
LRRK2のキナーゼ活性の阻害と言うときは、本明細書においては、自己リン酸化するおよび/またはその基質をリン酸化するその能力が縮減されるということが意味される。逆に、本明細書に記載されるLRRK2のキナーゼ活性の活性化または増大と言うときには、LRRK2がアロステリック調節因子によって影響されて自己リン酸化および/または基質リン酸化の増大をもたらすということが意味される。本明細書において言われる基質は、例において参照されるRab蛋白質を包含するが、これに限定されず、市販のインビトロアッセイに用いられるペプチドをもまた包含する。自己リン酸化は、従来技術から当業者には公知である通り、いくつかのLRRK2アミノ酸位置において報告されている。
【0046】
別の態様では、LRRK2蛋白質活性の前記のアロステリック調節因子は、化合物、化学物質、蛋白質、ペプチドもしくはペプチドミメティック、抗体、抗体ミメティック、単一ドメイン抗体ISVD、またはいずれかの活性な抗体断片を含む。本明細書において用いられる用語「化合物」は、スクリーニングアッセイもしくは創薬アッセイなどのアッセイにおいて、または具体的にはLRRK2活性を調節することができる化合物を同定するための方法において、設計、同定、スクリーニング、または生成され、試験され得る天然に存在するかまたは合成のいずれかであるあらゆる分子を記載する。そのため、これらの化合物は有機および無機化合物を含む。高スループット目的では、試験化合物ライブラリー、例えば十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルまたはランダム化ライブラリーが用いられ得る。例は、天然化合物ライブラリー、アロステリック化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体断片ライブラリー、合成化合物ライブラリー、断片に基づくライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、および同類を包含するが、これらに限定されない。かかる化合物は結合薬剤ともまた言われ得る;本明細書において言われるこれらは「低分子」または「小さい化合物」であり得、これは低分子量(例えば<900Daまたは<500Da)有機化合物を言う。アロステリック調節因子は、低い分子量によってキャラクタリゼーションされる化学物質、および化合物、例えばポリヌクレオチド、脂質、またはホルモンアナログをもまた包含する。他のバイオポリマー系の有機試験化合物は、小さいペプチドもしくはペプチド様分子、またはそれらの誘導体、例えば、約2から約40アミノ酸を含む合成アミノ酸(ペプチドミメティック)を含有するペプチドミメティックを包含する。
【0047】
本発明の化合物は、本発明のISVDについて具体的に本明細書において定められる通り、スクリーニング方法を用いて設計または同定されるもの、およびLRRK2に立体配座的に結合することができるものを両方とも包含する。かかる化合物は、本明細書において提示される通り本発明のISVDとの複合体でのLRRK2について得られる構造的な立体配座の使用に基づくスクリーニング方法を用いてもまた生産され得る。本発明の方法を用いて同定または設計される候補化合物および/または化合物は、合成のまたは天然に存在する、好ましくは合成のいずれかの好適な化合物であり得る。1つの態様では、本発明の方法によって選択または設計される合成化合物は、好ましくは、約5000、4000、3000、2000、1000よりも少ないかもしくは等しい、またはより好ましくは約500Daよりも少ない分子量を有するか、あるいは好ましくはペプチドである。本発明の化合物は好ましくは生理条件下において可溶性である。かかる化合物は、蛋白質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み得、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの化学官能基を包含する。化合物は、上の官能基の1つ以上によって置換された環状炭素もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含み得る。化合物は、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログ、またはそれらの組み合わせを包含するバイオ分子をもまた含み得る。化合物は、例えば:(1)ペプチド、例えば、Igテール融合ペプチドを包含する可溶性ペプチドまたはペプチドミメティック、ならびにDおよび/もしくはL立体配置アミノ酸および/もしくは立体配座的に拘束されたアミノ酸誘導体から作られたランダムペプチドライブラリーおよびコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリーの構成員;(2)ホスホペプチド(例えば、ランダムなおよび部分的に縮重した指向型のホスホペプチドライブラリーの構成員、(3)抗体(例えばポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、および一本鎖抗体、ナノボディ、ならびにFab、(Fab)2、Fab発現ライブラリー、および抗体のエピトープ結合断片);(4)非免疫グロブリン結合蛋白質、例えばアビマー、DARPin、およびリポカリンだが、これらに制限されない;(5)核酸に基づくアプタマー;ならびに(6)有機および無機低分子を包含し得る。
【0048】
合成化合物ライブラリーは、例えばMaybridge Chemical Co.(ティンタジェル、コーンウォール、UK)、AMRI(ブダペスト、ハンガリー)、およびChemDiv(サンディエゴ、Calif.)、Specs(デルフト、オランダ)、ZINC15(カリフォルニア大)から市販で利用可能である。加えて、広い種々の有機化合物およびバイオ分子のランダムおよび指向型合成のための数々の手段が利用可能であり、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を包含する。代替的には、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが難なく生産され得る。加えて、天然または合成化合物ライブラリーおよび化合物が従来の化学的、物理学的、および生化学的手段によって難なく改変され得、コンビナトリアルライブラリーを生産するために用いられ得る。加えて、コンビナトリアルライブラリーを生産する数々の方法が当分野において公知であり、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能なパラレル固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを要求する合成ライブラリー方法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法が関わるものを包含する。生物学的ライブラリーアプローチはポリペプチドまたはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、化合物のポリペプチド、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または低分子ライブラリーに適用可能である。化合物は、断片に基づく薬物設計によって生成されるリードから合成され得るものをもまた包含し、かかる化学物質断片の結合は、かかるスクリーニング断片を本発明によって提供される結晶へとソーキングまたは共結晶化すること、ならびにそれからこれらをX線ビームに付すことおよび回折データを得ることによって評価される。
【0049】
さらに、本発明の方法を用いて同定または設計される化合物はペプチドまたはそのミメティックであり得る。本発明の単離されたペプチドまたはミメティックは、立体配座的に制約された分子、または代替的には立体配座的に制約されない分子、例えば、例えば制約されないペプチド配列であり得る。用語「立体配座的に制約された分子」は、立体配座的に制約されたペプチドならびに立体配座的に制約されたペプチドアナログおよび誘導体を意味する。加えて、アミノ酸は、種々のコードされないまたは修飾されたアミノ酸、例えば対応するD-アミノ酸またはN-メチルアミノ酸によって置き換えられ得る。他の修飾は、化学的に類似の基によるヒドロキシ、チオール、アミノ、およびカルボキシル官能基の置換を包含する。ペプチドおよびそれらのミメティックについて、他の非天然アミノ酸または化学的なアミノ酸アナログ/誘導体のなお他の例は、置換または追加として導入され得る。また、ペプチドミメティックが用いられ得る。ペプチドミメティックは、ペプチドの生物活性を模倣するが、化学的性質がもはやペプチド性ではない分子である。厳密な定義では、ペプチドミメティックは、いずれかのペプチド結合(つまり、アミノ酸間のアミド結合)をもはや含有しない分子である。しかしながら、用語のペプチドミメティックは、場合によっては、性質がもはや完全にはペプチド性でない分子、例えばシュードペプチド、半ペプチド、およびペプトイドを記載するために用いられる。完全にまたは部分的に非ペプチドかどうかにかかわらず、本発明への使用のためのペプチドミメティックは、ペプチドミメティックが基づくペプチド上の活性な基の三次元配置に酷似する反応性の化学部分の空間配置を提供する。例えば、ペプチドまたはペプチドミメティックは、本明細書に記載されるISVDのパラトープまたはCDRを模倣するように設計され得る。典型的には、この類似の活性部位幾何学の結果として、ペプチドミメティックは、ペプチドの生物活性に類似である生物学的システムに対する効果を有する。場合によっては、ペプチドそれ自体よりもむしろ所与のペプチドのミメティックを用いることに利点がある。なぜなら、ペプチドは普通は2つの望ましくない特性:(1)不良なバイオアベイラビリティ;および(2)短い作用持続時間を見せるからである。ペプチドミメティックはこれらの2つの主要な障害物の明白な迂回路をオファーする。なぜなら、関係する分子が、経口的に活性であることおよび長い作用持続時間を有すること両方のために十分に小さいからである。ペプチドミメティックに関連するかなりのコスト節約および改善された患者コンプライアンスもまたある。なぜなら、それらはペプチドの非経口投与と比較して経口投与され得るからである。さらにその上、ペプチドミメティックは一般的にペプチドよりも生産することが安上がりである。当然のこととして、当業者は、ペプチドミメティックの設計が、本発明の方法を用いて設計または同定された化学構造の軽微な構造変改または調整を要求し得るということを認識するであろう。一般的には、本発明のISVDに基づいて同定または設計される化学的な化合物またはペプチドは、化学合成され、それから本明細書に記載される方法のいずれかを用いてLRRK2活性に結合および調節する能力について試験され得る。
【0050】
アロステリック調節因子は、先に本明細書に記載された通り、約40から約500アミノ酸を含むより大きいポリペプチド、例えば抗体、抗体ミメティック、抗体断片、または抗体コンジュゲートをもまた含み得る。LRRK2結合薬剤は、好ましくはLRRK2への結合によってアロステリックな活性またはアロステリックな調節活性を有する蛋白質結合薬剤および/あるいは結合薬剤を包含し、これらのアロステリック化合物を、その(キナーゼ)活性を増大させるときにはLRRK2の正のアロステリック調節因子(PAM)として、あるいは逆に減少したLRRK2(キナーゼ)活性をもたらすかまたはLRRK2活性を阻害もしくはブロックするLRRK2活性の負のアロステリック調節因子(NAM)として機能するアロステリック調節因子として定める。具体的な態様では、本明細書において定められる通り抗体または活性な抗体断片を含むLRRK2のアロステリック調節因子を提供することが想定される。前記のアロステリック調節因子は、好ましくは、LRRK2に特異的に結合しかつ4つのフレームワーク領域および3つのCDR領域を含有するISVDを含む。
【0051】
より具体的には、前記のISVD、ナノボディ、もしくはVHH、または活性な抗体断片は、配列番号1~19のISVDのCDRについて提供されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列、またはその前記のCDR配列のいずれかの組み合わせを含む。本明細書に記載される各Nb配列のCDR領域アノテーションが、現行の分析に用いられた具体的なCDRアノテーションについて表3に示されている。代替的には、当分野において公知の軽微に異なるCDRアノテーションがCDR領域を定めるためにここで適用され得、AbM(AbMはhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.htmlに記載されているOxford Molecular Ltd.の抗体モデリングパッケージである)、Chothia(Chothia and Lesk, 1987; J Mol Biol. 196:901-17)、Kabat(Kabat et al., 1991; Sequences of Proteins of Immunological Interest. 5th edition, NIH publication 91-3242)、またはIMGT(LeFranc, 2014; Frontiers in Immunology. 5 (22): 1-22)アノテーションに関する。これらは、全てが、配列番号1~19の本明細書において開示されるISVDのCDR領域を同定するために適用可能である。前記の代替的なアノテーションによってカバーされる正確な配列を明確化するために、CDRが、例として表3の現行で適用されたアノテーションに対して相対的にCA12610 Nbについて図10で提供される。
【0052】
VHドメインおよびVHHドメインについて当分野において周知である通り、CDRのそれぞれのトータルのアミノ酸残基数は変わり得、Kabat付番によって指示されるトータルのアミノ酸残基数に対応せずにあり得る(つまり、Kabat付番に従う1つ以上の位置が実際の配列上においては占められずにあり得るか、または実際の配列はKabat付番によって許される数よりも多くのアミノ酸残基を含有し得る)ということは注意されるべきである。これは、一般的には、Kabatに従う付番が実際の配列のアミノ酸残基の実際の付番に対応し得るかまたはせずにあり得るということを意味する。VHドメインおよびVHHドメインのトータルのアミノ酸残基数は、通常は110から120の、多くの場合には112および115の間の範囲であろう。しかしながら、より小さいおよびより大きい配列もまた本明細書に記載される目的にとって好適であり得るということは注意されるべきである。
【0053】
具体的な態様では、LRRK2に特異的に結合する前記のISVDまたはNbは細胞のキナーゼ活性に影響する(例および特に図2をもまた見よ)。効果は、具体的な態様では、LRRK2キナーゼ酵素活性に直接的にまたは間接的に作用することによるキナーゼ阻害効果として想定され得、LRRK2自己リン酸化の阻害および/またはインセルロの基質(Rab10)リン酸化の阻害および/またはペプチド基質に対するインビトロのLRRK2キナーゼ活性阻害として観察される。そのため、1つの態様では、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子は細胞のキナーゼ活性を阻害する。
【0054】
より具体的には、全てのかかる試験されたLRRK2キナーゼ活性を阻害すること、すなわちLRRK2自己リン酸化の阻害およびインセルロの基質(Rab10)リン酸化の阻害および/またはペプチド基質に対するインビトロLRRK2キナーゼ活性阻害の機能性を有する本明細書において例示されるNbのパネル(Nb1、Nb6、Nb23、およびNb42)は、それゆえに、LRRK2キナーゼ活性それ自体をブロックする。それは細胞のLRRK2自己リン酸化およびRabリン酸化に対する強い阻害効果を有するので、Nb42もまたこの群に分類されたが、インビトロのキナーゼ活性の効果はNb42の存在下では示され得なかった。そのため、本明細書において例示されるNbを想定する具体的な態様では、LRRK2キナーゼ活性それ自体の阻害剤であるLRRK2のアロステリック調節因子は、本明細書においては、CDR1、CDR2、およびCDR3が配列番号1、2、3、または6のCDRからなるISVDを含むとして定められ、CDR領域は本明細書において開示される表3~4または図10の通り定められる。これらのキナーゼ阻害Nbはそれらの結合エピトープに基づいて2つのカテゴリーを提供する。Nb1(配列番号1)およびNb6(配列番号2)は排他的にCORドメインのC末端部(COR-B)に結合するが、Nb23(配列番号3)はキナーゼドメインのC末端ローブ上のK2078およびK2091とクロスリンクする。後者の残基は互いに対しておよびS1292自己リン酸化部位に対して近い近位に所在するが、ATP結合ポケットからは極めて遠くに所在する。これらのNbのいずれもキナーゼのATP結合ポケットに結合せず、Nb1およびNb6はさらにはキナーゼドメインよりも外に結合するという観察は、これらのNbがATP競合的な機序によって作用しないということを指示する。対応して、速度論的分析は、全ての3つのNbが混合型の阻害機序によって作用し、「ATPに結合した」立体配座よりも「ATP不含の」LRRK2立体配座に結合する選好性を有するということを示す。とりわけ、COR-BドメインはLRRK2構造の中心に所在するということを考えると、これは、これらのNbがLRRK2蛋白質をより「開いた」触媒能がない立体配座へと押しやるということを指示し得る。それにもかかわらず、ATP競合的な1型阻害剤とは対照的に、これらのNbのいずれもLRRK2の微小管移行を誘導しなかった。
【0055】
本明細書において想定されるNbの第2の群(Nb17、Nb36、Nb38、Nb40、およびNb41)は、細胞のRab基質リン酸化を阻害しながら、自己リン酸化およびペプチドリン酸化は影響されずに残し、これらのNbがより大きいRab基質の結合に立体的に干渉するか、またはRab結合を排除する立体配座にLRRK2を固定するかのいずれかであるということを示唆する。そのため、本明細書において例示されるNbを想定する具体的な態様では、それらが基質リン酸化を防止するという点でLRRK2キナーゼ活性の阻害剤であるLRRK2のアロステリック調節因子は、CDR1、CDR2、およびCDR3が配列番号4、5、7、8、または12のCDRからなるISVDを含むとして本明細書において定められ、CDR領域は、本明細書において開示される表3~4または図10の通り定められる。
【0056】
さらなる態様は、第3の群のNb(Nb22、Nb28)に関し、これらは細胞の(および少なくともNb22について示される通りインビトロの)両方のLRRK2キナーゼ活性を増大させることによってLRRK2を調節する。そのため、本明細書において例示されるNbを想定する具体的な態様では、LRRK2キナーゼ活性を活性化しようとするLRRK2のアロステリック調節因子は、本明細書においては、CDR1、CDR2、およびCDR3が配列番号9または配列番号18のCDRからなるISVDを含むとして定められ、CDR領域は、本明細書において開示される表3~4または図10の通り定められる。
【0057】
最後に、Nbの第4の群が想定され得る(Nb3、Nb9、Nb10、Nb13、Nb31、Nb37、およびNb39)。これはLRRK2キナーゼ活性に影響を及ぼすようには見えないが、これらもまた高い親和性(ナノモルの範囲)によってATP結合ポケットよりも外においてLRRK2に結合し、かつその細胞質分布を保持するという先に言及された効果をなお提供する。これらのキナーゼ中立的な結合薬剤は、LRRK2結合を要求する検出もしくは診断アッセイへの使用に、または代替的にはこれらのNbによる結合によってアクセス可能なLRRK2立体配座を要求するスクリーニングアッセイへの使用に特に適し得る。そのため、本明細書において例示されるNbを想定する具体的な態様では、高い親和性を有するキナーゼ中立的な結合因子であるLRRK2 Nbは、本明細書においては、CDR1、CDR2、およびCDR3が配列番号10、11、および配列番号13~17のCDRからなるISVDを含むとして定められ、CDR領域は、本明細書において開示される表3~4または図10の通り定められる。
【0058】
その上、ATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤化合物が同じ細胞に存在するときであっても、LRRK2を細胞の微小管への会合から防止するLRRK2のアロステリック調節因子のパネルが本明細書において提供される。前記のATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤は、本明細書において、LRRK2のオルソステリックな結合因子としてもまた定められ得る。そのため、本明細書において例示されるNbを想定する具体的な態様では、高い親和性によって結合し、微小管へのかかる移行が正常では(すなわち、調節因子の不在下では)(例えば、1型のATP競合的なキナーゼ阻害剤の存在によって)誘発されるときに細胞のLRRK2の移行をブロックするLRRK2のアロステリック調節因子は、本明細書において、CDR1、CDR2、およびCDR3が配列番号3、4、5および9のCDRからなるISVDを含むとして定められ、CDR領域は、本明細書において開示される表3~4または図10の通り定められる。
【0059】
別の態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~19からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含む。別の態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~19の配列のいずれかとの少なくとも85%同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~19のCDRと同一であり、違いはフレームワーク残基に存在し得る。具体的な態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~19の配列のいずれかとの少なくとも85%同一性、またはそれとの少なくとも90%同一性、またはそれとの少なくとも95%同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~19のCDRと同一であり、違いはフレームワーク残基に存在し得、前記のフレームワーク領域に存在するラマ生殖細胞系列ホールマーク残基を例外とする。より具体的には、変改されるべきではない後者のFR残基は、例えば配列番号1の残基39に対応する残基37(Kabat N°;FまたはY)、配列番号1の残基46~47に対応する残基44~45(Kabat N°;QR、ER、またはDR)、配列番号1の残基49に対応する残基47(Kabat N°;L、T、またはF)、配列番号1の残基80に対応する残基78(Kabat N°;GまたはV)、および例えば配列番号1の残基89に対応する残基84(Kabat N°;P)に対応する(図10、最初の配列の下線付き/太字残基をもまた見よ)。別の態様では、前記のLRRK2調節因子は、配列番号1~19の配列のいずれかのヒト化バリアント、または配列番号1~19との少なくとも85%同一性、もしくは配列番号1~19との少なくとも90%同一性、もしくは配列番号1~19との少なくとも95%同一性を有する配列のいずれかのヒト化バリアントからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~19のCDRのいずれか1つと同一であり、FRホールマーク残基は配列番号1~19のいずれか1つのものと同一であり、FR領域の他所の残基に違いを提供するヒト化置換を有する。
【0060】
ドメイン抗体およびナノボディ(登録商標)(VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメインの用語「ヒト化バリアント」は、すなわち最も近いヒト生殖細胞系列配列との配列同一性の度合いを増大させるための、ヒト化に付されるアウトカムを表す前記のISVDのアミノ酸配列を言う。特に、ヒト化免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばナノボディ(登録商標)(VHHドメインを包含する)は、ヒト化置換(本明細書においてさらに定められる通り)であるおよび/またはそれに対応する少なくとも1つのアミノ酸残基(特に、少なくとも1つのフレームワーク残基)が存在する免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る。可能性として有用なヒト化置換は、天然に存在するVHH配列のフレームワーク領域の配列を、1つ以上のごく近縁のヒトVH配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって確かめられ得る。これの後に、それゆえに決定された可能性として有用なヒト化置換(またはそれらの組み合わせ)の1つ以上が、(さらに本明細書に記載される通り、それ自体公知のいずれかの様式で)前記のVHH配列に導入され得、もたらされるヒト化VHH配列は、標的に対する親和性について、安定性について、発現の容易さおよびレベルについて、ならびに/または他の所望の特性について試験され得る。このやり方で、限定された度合いの試行錯誤の手段によって、他のまたはさらに好適なヒト化置換(またはそれらの好適な組み合わせ)が当業者によって決定され得る。また、前に記載されていることに基づいて、ナノボディ(登録商標)(VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメイン(のフレームワーク領域)は部分的ヒト化または完全ヒト化され得る。ヒト化された免疫グロブリン単一可変ドメイン、特にナノボディは、対応する天然に存在するVHHドメインと比較して縮減された免疫原性などのいくつかの利点を有し得る。概要として、ヒト化置換は、ISVDおよび/またはVHHのもたらされるヒト化アミノ酸配列が好都合な特性、例えば抗原結合能力およびアロステリックな調節能力をなお保持するようにして選ばれるべきである。当業者は、一方ではヒト化置換によって提供される好都合な特性と他方では天然に存在するVHHドメインの好都合な特性との間の所望のまたは好適なバランスを最適化または達成するヒト化置換またはヒト化置換の好適な組み合わせを選択する能力があるであろう。かかる方法は当業者には公知である。ヒトコンセンサス配列がヒト化のための標的配列として用いられ得るが、他の手段もまた当分野において公知である。1つの代替は、当業者が、例えば、例えばIGHV3アレルのアラインメントなどだがこれに限定されないいくつものヒト生殖細胞系列アレルをアラインメントして、前記のアラインメントを標的配列上のヒト化にとって好適な残基の同定に用いる方法を包含する。また、標的配列に対して最も相同なヒト生殖細胞系列アレルのサブセットが、好適なヒト化残基を同定するための出発点としてアラインメントされ得る。代替的には、VHHが、ヒトアレルにおけるその最も近いホモログを同定するように分析され、ヒト化コンストラクト設計に用いられる。ラクダ科VHHに適用されるヒト化技術は、単独でのまたは組み合わせでのいずれかの具体的なアミノ酸の置き換えを含む方法によってもまた行われ得る。前記の置き換えは、文献から、公知のヒト化作業から、およびヒトコンセンサス配列から公知であることに基づいて、天然のVHH配列または当該VHH配列に最も類似のヒトアレルと比較して選択され得る。WO08/020079の表A-5~A-8で与えられているVHHエントロピーおよびVHH可変性についてのデータから見られ得る通り、フレームワーク領域のいくつかのアミノ酸残基(すなわち、図10の太字/下線付きのホールマーク残基)は他よりもヒトおよびラクダ科の間において保存されている。一般的に、本発明はその最も幅広い意味においてそれに限定されないが、いずれかの置換、欠失、または挿入は、好ましくは、より保存されていない位置においてなされる。また、一般的に、アミノ酸置換はアミノ酸欠失または挿入よりも好ましい。例えば、ラクダ科単一ドメイン抗体のヒト様のクラスは、ヒト起源のまたは他の種からの従来の抗体に典型的に見出される疎水性のFR2残基を含有するが、親水性のこの損失を、二本鎖抗体のVHに存在する保存されたトリプトファン残基を置換する位置103における他の置換によって補償している。そのため、これらの2つのクラスに属するペプチドはヒトVHフレームワーク領域に対する高いアミノ酸配列相同性を示し、前記のペプチドは、それからの不要の免疫応答の予想なしにかつさらなるヒト化の手間なしに、直接的にヒトに投与され得る。実に、いくつかのラクダ科VHH配列はヒトVHフレームワーク領域に対する高い配列相同性を呈し、よって、前記のVHHは、それからの免疫応答の予想なしにかつヒト化の追加の手間なしに、直接的に患者に投与され得る。好適な変異、特に置換が、ヒト化の間に、既存の抗体への縮減された結合を有するポリペプチドを生成するために(例えばWO2012/175741およびWO2015/173325の参照がなされる)、例えば位置:11、13、14、15、40、41、42、82、82a、82b、83、84、85、87、88、89、103、または108の少なくとも1つにおいて導入され得る。本発明のアミノ酸配列および/またはVHHは、いずれかのフレームワーク残基(単数または複数)において、例えば1つ以上のホールマーク残基(本明細書において定められる通り)において、もしくは好ましくは1つ以上の他のフレームワーク残基(すなわち、非ホールマーク残基)、またはそれらのいずれかの好適な組み合わせにおいて、好適にヒト化され得る。当業者の能力内であろう通り、本発明のアミノ酸配列、ISVD、VHH、またはポリペプチドを発現するために用いられるホスト生物に依存して、かかる欠失および/または置換は、翻訳後修飾のための1つ以上の部位(例えば、G、A、もしくはSによって置き換えられるべきアスパラギンにおける1つ以上のグリコシル化部位;および/またはメチオニン酸化部位)が除去されるようなやり方でもまた設計され得る。代替的には、例えば部位特異的なPEG化を許すために、官能基の取り付けのための1つ以上の部位を導入するようにして、置換または挿入が設計され得る。いくつかのケースでは、位置37、44、45、および/または47の親水性の特質を有する典型的なラクダ科ホールマーク残基の少なくとも1つが置き換えられる(Kabat N°;W02008/020079の表A-03を見よ)。ヒト化の別の例は、FR1、例えば位置1、5、11、14、16、および/または23、および/または28;FR2、例えば位置40および/または43;FR3、例えば位置60~64、73、74、75、76、78、79、81、82b、83、84、85、93、および/または94;ならびにFR4、例えば位置103、104、105、108、および/または111の残基の置換を包含する(W02008/020079の表A-05~A08を見よ;全ての付番はKabatに従う)。1つの態様では、前記のヒト化バリアントは、次の位置における置換の群から選択される配列番号1~19を含むISVDのいずれか1つにおける少なくとも1つの置換を包含する(Kabat N°に従う):EまたはDへの残基1置換;Pへの残基14;Aへの残基23;Aへの40;Kへの43;Aへの60;Dへの61;Sへの62;Vへの63;Kへの64;Aへの73;Nへの76;Qへの81;Rへの83;Eへの85;Wへの103;Qへの105、および/またはLへの108。より好ましくは、前記のヒト化バリアントは、次の位置における置換の群から選択される配列番号1~19を含むISVDのいずれか1つにおける少なくとも1つの置換を包含する(Kabat N°に従う):EまたはDへの残基1置換;Pへの残基14;Aへの73;Qへの81;Rへの83;Eへの85;Qへの105、および/またはLへの108。別の具体的な態様では、本明細書に記載される少なくとも配列番号1および/または配列番号2のヒト化置換は、少なくともFR3の数残基の置換、特に位置60~62および/または60~64の置換を(特に配列番号2について)もたらす。
【0061】
別の態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含む。別の態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~10の配列のいずれかとの少なくとも85%同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~10のCDRと同一であり、違いはフレームワーク残基に存在し得る。具体的な態様では、LRRK2のアロステリック調節因子は、配列番号1~10の配列のいずれかとの少なくとも85%同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~10のCDRと同一であり、前記のフレームワーク領域に存在するラマ生殖細胞系列ホールマーク残基を例外として、違いはフレームワーク残基に存在し得る。別の態様では、前記のLRRK2調節因子は、配列番号1~10の配列のいずれかのヒト化バリアントまたは配列番号1~10との85%同一性を有する配列のいずれかのヒト化バリアントからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むISVDを含み、CDRは配列番号1~10のCDRと同一であり、違いはFR領域に存在し得る。
【0062】
別の態様は、多重特異性の薬剤としてのLRRK2のアロステリック調節因子に関し、本明細書に記載される少なくとも1つのアロステリックなLRRK2調節因子を含み、LRRK2のいくつかの異なる結合部位に結合する多重パラトープLRRK2調節因子、またはLRRK2に結合するためのアビディティを増大させ得る多価のLRRK2調節因子、または異なる標的特異性を有する結合薬剤を包含する多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子の別の形態をもたらす。例えば、LRRK2のアロステリックなISVDの「多重特異性の」形態は、その少なくとも1つが異なる特異性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを一緒に結合することによって形成される。多重特異性のコンストラクトの限定しない例は、「二重特異性」コンストラクト、「三重特異性」コンストラクト、「四重特異性」コンストラクトなどを包含する。これをさらに例解するために、本発明のいずれかの多価のまたは多重特異性の(本明細書において定められる通り)蛋白質結合薬剤は、好適には、同じ抗原上の2つ以上の異なるエピトープを、例えばLRRK2の1つのドメイン上のエピトープ1および別のドメイン上のエピトープ2を指向し得るか;または2つ以上の異なる抗原を、例えばLRRK2および血清アルブミンに対する半減期延長としてのものを指向し得る。医薬蛋白質の半減期を増大および/または免疫原性を縮減するための最も広く用いられる技術の1つは、好適な薬理学的に許容可能なポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体(例えば、メトキシポリエチレングリコール(mPEG))の取り付けを含む。結合ドメインの半減期を増大させるための別の技術は、二機能性または二重特異性ドメイン(例えば、LRRK2に対する1つ以上のISVDまたは活性な抗体断片が、半減期を延ばすことを補助する血清アルブミンに対する1つのISVDまたは活性な抗体断片にカップリングされる))への、またはペプチド(例えば、アルブミンなどの血清蛋白質に対するペプチド)との抗体断片、特に免疫グロブリン単一可変ドメインの融合体への操作を含み得る。追加の部分へのカップリングは、さらに本明細書において開示される通り多重特異性の結合薬剤をもたらすであろう。
【0063】
本発明の多価のまたは多重特異性の結合薬剤は、所望のLRRK2相互作用のためのおよび/またはかかる多価のもしくは多重特異性の結合薬剤の使用によって得られ得るいずれかの他の所望の特性もしくは所望の特性の組み合わせのための、増大したアビディティおよび/または改善された選択性をもまた有し(またはそのために操作および/もしくは選択され)得る。例えば、本明細書に記載されるエピトープ1に結合する1つ以上のISVDおよびエピトープ2に結合する1つ以上のISVDの組み合わせは、より高い調節活性を有する本発明の多重特異性の結合薬剤をもたらす。前記の多重特異性の結合薬剤は、少なくとも、エピトープ1およびエピトープ2を指向する前記の結合薬剤を含み、これらはリンカー、スペーサーを介してカップリングされ得る。LRRK2に結合することによって、前記の多重特異性の結合薬剤または多価のISVDは、LRRK2のアロステリック調節活性に対する相加的または相乗的なインパクトを有し得る。本発明の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子は、官能部分、標的化部分、半減期延長部分、または細胞透過担体にカップリングされ得る。
【0064】
LRRK2活性の調節がいくつもの神経学的障害を処置する上で望まれるということから判断して、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子は、限定しない例として、血液脳関門を横断する能力がある機能部分を含み得るか、または例えば受容体介在性トランスサイトーシスによって血液脳関門を横断する能力がある部分にさらに融合もしくは化学的にカップリングされ得る。実に、血液脳境界面は医薬薬剤および化合物の脳バイオアベイラビリティを重度に制限する。例えば抗体、活性な抗体断片、または低分子の限定された透過ゆえに、所望の効力を得るためには、多量が投与されることを必要とする。患者の末梢副作用を誘導する多量投与のリスクだけでなく、かかるアプローチは、とりわけ、バイオロジカルズの製造が重要な制限要因であり得る数百万の患者を有するパーキンソン病およびアルツハイマー病などのより大きい適応症においては、経済的に、社会的コストおよび大量生産能力の必要からもまた望ましくない。BBBを越えて化合物を効率的に運ぶためのいくつもの手段および方法が報告されているが(例えばWO2015031673A2;W02014033074A1;WO2015124540A1;WO2015191934A2)、BBB横断機能部分の型はなお1ケースずつのかつ試行錯誤のアプローチによって選択されるであろう。それゆえに、本発明は、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子を提供し、これは血液脳関門(BBB)受容体を標的化する例えば(単一ドメイン)抗体を含み得る。この多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子が静脈注射され得、これの後に、BBB受容体標的化抗体(または単一可変ドメイン抗体)がBBBを横切って複合体を運ぶであろう。しかし、好適であり得るさらなる送達方法および基剤は、ナノ粒子による送達、または脂質に基づく送達システム、例えば人工エクソソームを含み、これらは細胞特異的でもまたあり得、蛋白質としてのまたは前記の結合薬剤もしくは調節因子をコードするためのDNA(核酸、ベクター)の形態での結合薬剤または多重特異性の結合薬剤の送達にとって好適であり得る[48-49]。
【0065】
実に、本発明の別の側面は、本明細書に記載されるLRRK2結合薬剤またはアロステリック調節因子をコードする核酸配列を含む核酸分子に関する。本明細書において用いられる「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」または「核酸分子(単数または複数)」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を言う。この用語は分子の一次構造のみを言う。それゆえに、この用語は二本および一本鎖DNA、(逆)相補DNA、ならびにRNAを包含する。それは、公知の型の修飾、例えばメチル化、「キャップ」、アナログによる天然に存在するヌクレオチドの1つ以上の置換をもまた包含する。「核酸コンストラクト」によって、天然では一緒に見出されない1つ以上の機能単位を含むように構築された核酸配列が意味される。例は、環状の、線形の、二本鎖の、染色体外のDNA分子(プラスミド)、コスミド(ラムダファージからのCOS配列を含有するプラスミド)、非ネイティブな核酸配列を含むウイルスゲノム、および同類を包含する。「コード配列」は、適当な制御配列のコントロール下に置かれるときに、mRNAに転写および/またはポリペプチドに翻訳されるヌクレオチド配列である。コード配列の境界線は5'末端の翻訳開始コドンおよび3'末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、mRNA、cDNA、組み換えヌクレオチド配列、またはゲノムDNAを包含し得るが、これに限定されず、イントロンも特定の状況下において存在し得る。
【0066】
1つの態様は、前記の核酸分子を含む発現カセットを開示する。より具体的な態様は、細胞または組織特異的な発現のための要素が存在する発現カセットを開示する。「発現カセット」は、発現カセットのプロモーターに作動可能にリンクされている当該遺伝子/コード配列の発現を導くことができるいずれかの核酸コンストラクトを含む。発現カセットは一般的にはDNAコンストラクトであり、好ましくは(転写の方向に5'から3'):プロモーター領域、転写開始領域に作動可能にリンクされたポリヌクレオチド配列、ホモログ、バリアント、またはその断片、ならびにRNAポリメラーゼの終止シグナルおよびポリアデニル化シグナルを包含する終結配列を包含する。これらの領域の全ては、形質転換されるべき原核または真核細胞などの生物学的な細胞において作動することができるべきであるということは理解される。好ましくはRNAポリメラーゼ結合部位を包含する転写開始領域を含むプロモーター領域とポリアデニル化シグナルとは、形質転換されるべき生物学的な細胞にとってネイティブであり得るか、または代替的なソースに由来し得、ここで、領域は生物学的な細胞において機能的である。かかるカセットは「ベクター」として構築され得る。さらなる態様は、その配列が本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子をコードする前記の発現カセットまたは前記の核酸分子を含むベクターに関する。
【0067】
本明細書において用いられる用語「ベクター」、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、または「遺伝子移入ベクター」は、それがリンクされた別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を言うことを意図される。より具体的には、前記のベクターは当業者に公知のいずれかのベクターを包含し得る。いずれかの好適な型を包含するが、例えばプラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばラムダファージ、ウイルスベクター、さらにより具体的にはレンチウイルス、アデノウイルス、AAV、もしくはバキュロウイルスベクター、または人工染色体ベクター、例えば細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、またはP1人工染色体(PAC)に限定されない。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般的には、所望のコード配列と、特定のホスト生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫、または哺乳動物)またはインビトロ発現システムにおける作動可能にリンクされたコード配列の発現に必要な適当なDNA配列とを含有する。クローニングベクターは、特定の所望のDNA断片を操作および増幅するために一般的に用いられ、所望のDNA断片の発現に必要とされる機能的な配列を欠き得る。細胞をトランスフェクションすることへの使用のための発現ベクターの構築もまた当分野において周知であり、それゆえに標準的な技術によって達成され得る(例えば、Sambrook, Fritsch, and Maniatis, in: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989;Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E. J. Murray, The Humana Press Inc., Clif ton, N.J.を見よ)およびAmbion 1998カタログ(Ambion、オースティン、Tex.)。
【0068】
さらにその上、代替的な態様は、イントラボディとしての生産のための前記のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする本明細書に記載される前記の核酸分子、発現カセット、またはベクターの使用に関する。細胞内抗体または「イントラボディ」は、細胞内トラフィックシグナルのインフレーム組み込みによって可能にされるプロセスの、指定された細胞内コンパートメント内で異種的に発現される抗体または抗体の活性な断片である。イントラボディは標的抗原との精巧に特異的な相互作用によってそれらの機能を行使する。これは標的蛋白質の生物学的機能の中断または改変をもたらす。イントラボディはインタクトなIgG分子またはFab断片などのいずれかの形状または形態で発現され得る。より頻繁には、イントラボディは、scFvイントラボディ、単一ドメインイントラボディ、または二重特異性の四価イントラダイアボディの遺伝子操作された抗体断片フォーマットおよび構造で用いられる。総説については、Zhu, and Marasco, 2008(Therapeutic Antibodies. Handbook of Experimental Pharmacology 181. _c Springer-Verlag Berlin Heidelberg)を見よ。ことによっては本明細書に記載される通り核酸分子もしくは発現カセットによってコードされるかまたはベクター上に存在し、好適なホストシステム内の発現によってイントラボディをもたらす本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子は、LRRK2シグナル伝達をさらに検討するためのツールとして、診断薬として、インビボイメージングのために、または遺伝子送達の適用可能な形態が同定されるときには治療薬としてもまた用をなし得る。当業者は投与および送達の現行で適用される方法論を知っている(Zhu and Marasco 2008をもまた見よ)。
【0069】
神経系のための遺伝子治療の分野はここ5年で爆発的成長を経過しており、進行中の遺伝子補充のためのヒト治験と脊髄性筋萎縮症のための遺伝子治療の最近の承認とを有する[86]。アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくシステムはますます治験に用いられている。なぜなら、それらは分裂および非分裂細胞両方に効率的に形質導入し、長期トランスジーン発現を(単回投与後に)提供し、低い固有の毒性を有するからである[87]。種々の遺伝子治療戦略がPDのために開発されている[88]。前記の(多重特異性の)LRRK2のアロステリック調節因子が核酸またはベクターとして提供されるところでは、調節因子は遺伝子治療によって投与されるということが特に想定される。本明細書において用いられる「遺伝子治療」は、対象への発現されるかまたは発現可能な核酸の投与によって行われる治療を言う。かかる適用では、本明細書に記載される核酸分子またはベクターは、細胞内におけるLRRK2のアロステリック調節因子の生産を許す。遺伝子治療のための多数の方法が当分野において利用可能であり、例えば(アデノ随伴)ウイルスによって媒介される遺伝子サイレンシング、またはウイルスによって媒介される遺伝子治療を包含する(例えば、US20040023390;Mendell et al. 2017, N Eng J Med 377:1713-1722)。色々な送達方法が当業者に周知であり、ウイルス送達システム、DNAプラスミドのマイクロインジェクション、裸の核酸のバイオリスティック法、リポソームの使用を包含するが、これらに限定されない。個々の患者への投与によるインビボ送達は典型的には全身投与によって生起する(例えば静脈、腹腔内輸液、または脳注射;例えばMendell et al 2017, N Eng J Med 377:1713-1722)。前記の(多重特異性の)LRRK2のアロステリック調節因子が核酸またはベクターとして提供されるところでは、より具体的には、調節因子は、ナノ粒子または脂質に基づく送達システム、例えば人工エクソソームを含む送達方法および基剤によって投与されるということもまた想定される。これらは細胞特異的でもまたあり得、イントラボディとしてのまたは前記の結合薬剤もしくは調節因子をコードするためのDNAの形態での結合薬剤または多重特異性の結合薬剤の送達にとって好適であり得る[48-49]。
【0070】
別の態様では、例えば、LRRK2シグナル伝達研究においてまたはLRRK2の構造生物学および生化学分析のためにツールとして適用するために、本明細書に記載される精製された蛋白質としての、核酸または発現カセットまたはベクターとしてのLRRK2結合薬剤、ISVD、および/またはアロステリック調節因子もまたキットに包含され得る。
【0071】
さらなる側面は、診断薬としての使用のための、本明細書に記載される前記のLRRK2特異的なISVD、前記のLRRK2特異的な結合薬剤をコードする核酸分子もしくはベクター、またはこれらを含む医薬組成物に関する。
【0072】
特定の態様では、キットが提供され、これらは、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子もしくは結合薬剤またはISVDを包含するLRRK2蛋白質を検出するための手段を含有し、インビトロまたはインビボシステムであり得るシステムのLRRK2シグナル伝達を検出または調節することを許す。これらのキットは、特定の目的で、例えばLRRK2を調節するために、またはインビボイメージングのために、または対象における変改されたLRRK2の量、応答、もしくは効果の診断のために提供されるということが想定される。別の態様では、本明細書に記載される核酸分子、ベクター、または組成物を包含する手段を含有する前記のキットが提供される。キットによってさらに提供される手段は、適用に用いられる方法論に、およびキットの目的に依存するであろう。例えば、核酸もしくは蛋白質レベルでのLRRK2定量にとって望まれ得る本明細書に記載される標識されたLRRK2のアロステリック調節因子または結合薬剤、ISVD、もしくは核酸分子の検出である。蛋白質に基づく検出のためには、キットは、典型的には、標識またはカップリングされたLRRK2結合薬剤、例えばISVDを含有するであろう。同様に、核酸レベルでの検出のためには、キットはプライマーまたはプローブなどの核酸のための標識を含有し得る。さらに、コントロール薬剤、抗体、または核酸もまたキットによって提供され得る。参照または比較のための標準、LRRK2基質もしくはシグナル伝達コンポーネント、レポーター遺伝子もしくは蛋白質、またはキットを用いるための他の手段もまた包含され得る。当然のことながら、キットは、さらに、薬学的に許容可能な賦形剤、緩衝液、基剤または送達手段、説明マニュアルなどを含み得る。
【0073】
本発明の別の側面は、サンプルのLRRK2蛋白質の存在、不在、またはレベルを検出するための方法を提供し、方法は:本明細書に記載されるLRRK2結合薬剤またはISVDをサンプルと接触させること、および存在もしくは不在またはレベルを検出すること、すなわち任意に標識されるか、コンジュゲート化されるか、または多重特異性のLRRK2結合薬剤である結合したLRRK2 ISVDを定量することを含む。本明細書において用いられるサンプルは、体から単離されたサンプル、例えば、とりわけ、血液、血清、脳脊髄液を包含する体液であり得るか、または抽出物、例えば蛋白質抽出物、細胞ライセートなどであり得る。
【0074】
さらにその上、本明細書に記載される特にLRRK2特異的なISVDを含むLRRK2のアロステリック調節因子または結合薬剤、核酸分子、ベクター、または前記のLRRK2特異的な結合薬剤を含む医薬組成物は、インビボイメージングにもまた用いられ得る。
【0075】
インビトロまたはインビボの検出および/またはイメージングの目的のためには、本明細書に記載されるLRRK2特異的なISVDを含むLRRK2結合薬剤は、さらに、いくつかの態様では、検出薬剤、例えばタグまたは標識を含み得る。例えば、本明細書において例示されるISVD、VHH、またはNbは6-His-EPEA二重タグによってもまたタグ付けされた(配列番号20で提示される;EPEAタグについては:W02011/147890A1をもまた見よ)。かかるタグは本発明の抗体または活性な抗体断片のアフィニティー精製および検出を許す。
【0076】
いくつかの態様は、さらに標識またはタグを含むLRRK2結合薬剤、ISVD、もしくはアロステリック調節因子、またはより具体的には検出可能なマーカーによって標識されたLRRK2結合薬剤を含む。本明細書において用いられる用語の検出可能な標識またはタグは、本明細書に記載されるLRRK2調節因子または結合薬剤の検出および/または定量を許す検出可能な標識またはタグを言い、これらの目的のための当分野において公知のいずれかの標識/タグを包含することを意味される。特に、アフィニティータグ、例えばキチン結合蛋白質(CBP)、マルトース結合蛋白質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリ(His)(例えば6×HisまたはHis6)、ビオチンまたはストレプトアビジン、例えばStrepタグ(登録商標)、StrepタグII(登録商標)、およびTwin-Strepタグ(登録商標);可溶化タグ、例えばチオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)およびSUMO;クロマトグラフィータグ、例えばFLAGタグ;エピトープタグ、例えばV5タグ、mycタグ、およびFIAタグ;蛍光標識またはタグ(すなわち、フルオロクローム/フォア)、例えば蛍光蛋白質(例えばGFP、YFP、RFPなど)および蛍光色素(例えばFITC、TRITC、クマリンおよびシアニン);発光標識またはタグ、例えばルシフェラーゼ、生物発光、または化学発光化合物(例えば、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ジオキセタン、またはGFPおよびそのアナログ);燐光標識;金属キレート剤;ならびに(他の)酵素標識(例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、またはグルコースオキシダーゼ);放射性同位体が好ましいが、限定しない。また、前述の標識またはタグのいずれかの組み合わせが包含される。標識されたポリペプチドおよび蛋白質を生成するためのテクノロジーは当分野において周知である。標識またはタグにカップリングされるかまたはさらに含む本発明のLRRK2特異的なISVDを含むLRRK2のアロステリック調節因子または結合薬剤は、前記の結合したLRRK2特異的な薬剤の例えば免疫に基づく検出を許す。免疫に基づく検出は当分野において周知であり、数々のアプローチの適用によって達成され得る。これらの方法は、一般的には、例えば上に記載されている標識またはマーカーの検出に基づく。例えば、U.S.Pat.No.3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149;および4,366,241を見よ。複数の抗体が単一のアレイと反応させられるケースでは、各抗体は同時検出のための別個の標識またはタグによって標識され得る。さらに別の態様は、本発明の標識またはタグ付けされたLRRK2のアロステリック調節因子または結合薬剤の意図される使用に依存して、1つ以上の検出可能な標識あるいは他のシグナル生成基もしくは部分またはタグの導入を含み得る。他の好適な標識は当業者には明瞭であり、例えばNMRまたはESR分光法を用いて検出され得る部分を包含するであろう。かかる標識されたLRRK2のアロステリック調節因子、例えば本明細書に記載されるLRRK2特異的なISVDまたはナノボディは、例えば、インビトロ、インビボ、またはインサイチュアッセイ(それ自体公知のイムノアッセイ、例えばELISA、RIA、EIA、および他の「サンドイッチアッセイ」などを包含する)、およびインビボイメージング目的のために、具体的な標識の選択肢に依存して用いられ得る。
【0077】
そのため、別の側面では、生物学的サンプルのヒトLRRK2蛋白質の局在および分布の検出のためのインビトロの方法が開示され:本明細書に記載されるLRRK特異的なISVDを含むLRRK2結合薬剤とサンプルを反応させるステップ、ならびに前記の生物学的サンプルの前記のLRRK2結合の局在および分布を検出するステップを含む。本明細書において用いられる生物学的サンプルは、生物学的システムに由来するいずれかのサンプルを想定し得、例えば、脳組織の細胞もしくは抽出物もしくはインビトロサンプル、または脳脊髄液もしくは血液などの体液を含み得る。
【0078】
本発明の別の側面は医薬組成物に関し、本明細書に記載される1つ以上のLRRK2のアロステリック調節因子を含むか、または本明細書に記載される核酸分子もしくはベクター、および任意に薬学的に許容可能な担体もしくは希釈剤を含む。これらの医薬組成物は、それを必要とする患者への投与によって所望の薬理学的効果を達成するために利用され得る。化合物または結合薬剤または組成物の「薬学的または治療上有効量」は、好ましくは、処置されようとする特定の状態に対して、結果を生ずるかまたは影響を行使する量である。本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子または医薬組成物は、「治療上活性な薬剤」としてもまた機能し得る。これは、(本明細書にさらに記載される通り)疾患の処置の文脈において治療効果(すなわち、治癒または安定化効果)を有するかまたは有し得るいずれかの分子を言うために用いられる。好ましくは、治療上活性な薬剤は、疾患修飾薬剤および/または疾患に対する治癒効果を有する薬剤である。「薬学的に許容可能」によって、生物学的にまたは別様に望ましくなくはない材料が意味される。すなわち、材料は、いずれかの望ましくない生物学的効果を引き起こすことまたはそれが含有される医薬組成物の他のコンポーネントのいずれかと有害な様式で相互作用することなしに、化合物と併せて個体に投与され得る。薬学的に許容可能な担体は、好ましくは、担体に帰せられ得るいずれかの副作用が活性成分の有益な効果を損なわないようにして、活性成分の有効な活性と整合する濃度において、患者にとって比較的非毒性かつ無害である担体である。好適な担体またはアジュバントは、典型的には、次の非網羅的なリストに包含される化合物の1つ以上を含む:大きい遅く代謝される高分子、例えば蛋白質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性なウイルス粒子。かかる成分および手続は次の参照に記載されるものを包含し、これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる:Powell, M. F. et al.("Compendium of Excipients for Parenteral Formulations" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1998, 52(5), 238-311)、Strickley, R.G("Parenteral Formulations of Small Molecule Therapeutics Marketed in the United States (1999)-Part-1" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1999, 53(6), 324- 349)、およびNema, S. et al.("Excipients and Their Use in Injectable Products" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1997, 51 (4), 166-171)。本明細書において用いられる用語「賦形剤」は、医薬組成物に存在し得るかつ活性成分ではない全ての物質、例えば塩、結合剤(例えばラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール)、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、保存料、乳化剤、緩衝物質、安定化剤、香料、または着色料を包含することを意図される。「希釈剤」、特に「薬学的に許容可能な基剤」は、例えば水、食塩水、生理食塩溶液、グリセロール、エタノールなどの基剤を包含する。補助的な物質、例えば濡れまたは乳化剤、pH緩衝物質、保存料がかかる基剤に包含され得る。前記のLRRK2のアロステリック調節因子を含むかかる医薬組成物は、本明細書において論じられる通りナノ粒子含有組成物または脂質に基づくエクソソーム送達基剤にもまた関し得る[48-49]。
【0079】
本明細書に記載されるアロステリック調節因子もしくは結合薬剤または医薬組成物は、LRRK2に関係する疾患を処置することに有益なときに、治療上活性な薬剤として作用し得る。本明細書に記載される医薬組成物は、対象に投与されるときに有利な追加の官能基または部分を含有し得るかまたはそれにカップリングされ得る多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をもまた含み得る。
【0080】
その上、LRRK2のアロステリック調節因子を含む本明細書に記載される医薬組成物は、さらに、LRRK2キナーゼ活性阻害剤として公知の化合物、好ましくはI型キナーゼ阻害剤を含み得る。キナーゼのI型阻害の前記の公知のLRRK2キナーゼ阻害剤は、上に記載されている通り微小管へのLRRK2移行を誘導することもまた公知である[36]。
【0081】
これらの従来技術のI型ATP競合的なキナーゼ阻害剤とは対照的に、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子、例えば本明細書において開示されるISVDは、LRRK2蛋白質の微小管再分布を誘導しない(例えば例6を見よ)。さらにその上、LRRK2蛋白質の増大した微小管結合または移行は、ATP競合的なキナーゼ阻害剤が細胞のLRRK2に結合しているときのみならず、色々な病理的なLRRK2変異体の過剰発現によってもまた観察される。最近の報告は、かかるLRRK2移行事象を微小管上の可能性としてブロックされた輸送と関連づけている[36,40]。本発明のLRRK2特異的なISVDを含むLRRK2のアロステリック調節因子は、それらがLRRK2の移行に関与しないという意味で異なる。これは、本明細書において開示されるLRRK2のアロステリック調節因子またはISVDが、細胞内における立体配座的なLRRK2結合を提供するということをさらに確証する。これは「古典的な」ATP競合的なまたは公知のI型キナーゼ阻害剤と比較して異なる。その上、本明細書に記載されるLRRK2のアロステリック調節因子のパネルは、微小管に移動したLRRK2蛋白質(例えば、I型阻害剤としてLRRK2キナーゼ活性に結合および阻害する小さい化合物による先行する処置を原因とするか、またはPD変異体LRRK2を原因とする)を含む細胞に追加されるときに、微小管局在を減少またはレスキューすることに機能する。ISVDの前記のサブセットがさらにはATP競合的なキナーゼ阻害剤による阻害によるLRRK2の微小管再分布を後退させ得るという驚くべき所見は、これらのLRRK2のアロステリック調節因子を(組み合わせ)治療薬として適用するためのさらなる機会を提供する。なぜなら、これはLRRK2阻害剤による処置によるいずれかの望まれない効果を回避するために有益であり得るからである。
【0082】
別の態様は、医薬としての使用のための、より具体的にはLRRK2に関係するかまたは関連する障害または疾患の処置における使用のための、本明細書に記載される前記のLRRK2のアロステリック調節因子、本明細書に記載される核酸分子、ベクター、または医薬組成物に関する。本明細書において用いられる「LRRK2に関係する障害」は、LRRK2活性の変化に関連しそれによってインパクトを及ぼされるかまたはそれによって引き起こされることが現行で公知の疾患を含む。最も顕著には、パーキンソン病(Zimprich A, et al. (2004) Neuron 44:601-607;Paisan-Ruiz C, et al. (2004) Neuron 44:595-600)およびクローン病(Ridler C. (2018) Nat Rev Neurol. 14(3):126;Hui KY et al (2018) Sci Transl Med. 10(423);Rivas MA et al (2018) PLoS Genet. 14(5):el007329)を包含し;さらに、「病原体に対するホスト応答」として免疫応答に(Gardet A et al (2010) J Immunol. 185(9):5577-85);癌の増大したリスク(Saunders-Pullman et al (2010) Mov Disord. 25(15): 2536-2541;Bjorg Johanne Waro & Jan O. Aasly (2018) Brain Behav. 8(1): e00858)およびアルツハイマー病(Zhao Y (2011) Neurobiol Aging. 2011 Nov;32(11):1990-3)に関連し得る。
【0083】
具体的な態様は、パーキンソン病の処置における使用のための、本明細書に記載される前記のLRRK2のアロステリック調節因子、本明細書に記載される核酸分子、ベクター、または医薬組成物に関する。
【0084】
特定の態様、具体的な立体配置、ならびに材料および/または分子が、本開示に従う方法、サンプル、およびバイオマーカー産物について本明細書において論じられたが、形式上のおよび詳細な種々の変化または改変が、本発明の範囲から逸脱することなしになされ得るということは理解されるべきである。次の例は特定の態様をより良く例解するために提供され、それらは本願を限定すると本願を限定すると考えられるべきではない。本願は請求項によってのみ限定される。
【実施例
【0085】
例1.LRRK2特異的なナノボディの生成.
LRRK2は大きいかつ複雑な蛋白質であり、いくつかのドメイン:アルマジロドメイン、アンキリンリピートドメイン、ロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン、RocCOR(複雑な蛋白質のRas/RocのC末端)スープラドメイン、キナーゼドメイン、およびWD40ドメインを含有する(図1B)[13-15]。そのため、蛋白質は、2つの触媒活性:Rocドメインによって媒介されるGTPase活性およびSer/Thr蛋白質キナーゼ活性のかなり特有の組み合わせを持つ[16]。LRRK2の機序はなお大きくは未知であるが、それは複雑なやり方で制御され、その機能サイクルにおいて大きい立体配座変化を経過するということが予想される。LRRK2の立体配座変化の1つのソースはそのRocCORドメインへのヌクレオチド(GDP vs. GTP)結合によって媒介される。実に、細菌LRRK2ホモログについての我々の先の研究は、GTP結合がLRRK2二量体の単量体化に至り、各サブユニット内の二次ドメインの動きに関連するということを示した[17,18]。その上、最近のインビトロおよびインセルロデータは、ヒトLRRK2もまた単量体および二量体形態の間を循環し得るということを示したが、これらの立体配座変化の正確な性質は依然として捕らえにくい[19-22]。ここで、我々は、その立体配座状態の1つのLRRK2に特異的に結合することによってLRRK2活性を調節し得るNbを同定することにした。トータルで、異なるラマを用いる3つの免疫化を、LRRK2の異なる蛋白質コンストラクトまたは立体配座状態を用いて行った(図7)。第1の免疫化戦略(免疫化1)では、我々はラマをLRRK2 RocCORコンストラクトによって免疫化し、免疫化後に、Nbを、ベイト蛋白質として全長LRRK2を用いるファージディスプレイパニングアプローチを用いて選択した。爾後に、特異的なヌクレオチドによって誘導される立体配座のLRRK2に結合するNbを得る見込みを増大させるために、我々は、大過剰のGTPγS(非加水分解性のGTPアナログ)に結合したかつその存在下のLRRK2(免疫化2)、または大過剰のGDPに結合したかつその存在下のLRRK2(免疫化3)のいずれかを用いて、2つの追加の免疫化を行った。その上、免疫化の際に蛋白質をそのヌクレオチド特異的な立体配座に「トラップする」ために、我々はリジン特異的なクロスリンカーDSSを用いて軽度のクロスリンクを行った(図8)。免疫化後に、過剰のGTPγS(免疫化2起源のライブラリーからの選択)またはGDP(免疫化3起源のライブラリーからの選択)のいずれかの存在下においてクロスリンクされていない全長LRRK2を用いるファージディスプレイパニングを用いて、Nbを選択した。加えて、Rocドメインに結合するNbを濃縮するために、Nbライブラリーを、GTPγSまたはGDPのいずれかに結合したRoc蛋白質を用いる2または3ラウンドのファージディスプレイに付した。
【0086】
これらの異なる戦略は、最後に、pMESy4ベクターにクローニングされた選択されたNb ORFのライブラリーをもたらした。これらのベクターをシーケンシングに送り、CDR3配列に基づいて、Nbを異なる配列ファミリーに分類した(各Nbファミリーは特有のCDR3配列を呈する)。これは、免疫化1起源の49個のNbファミリー、LRRK2-GTPγSに対する選択による免疫化2起源の70個のNbファミリー、Roc-GTPγSに対する選択による免疫化2起源の4つのNbファミリー、LRRK2-GDPに対する選択による免疫化3起源の44個のNbファミリー、およびRoc-GDPに対する選択による免疫化3起源の1つのNbファミリーをもたらした。
【0087】
Nbのさらなる選択はELISAスクリーニングステップに基づいた。シーケンシングされたNbの大きいサブセットを96ディープウェルプレートフォーマットの小スケールでE. coliにおいて発現した。細胞リシス後に、クルードな細胞ライセートを用いて、ELISAプレートの底側にコーティングされた全長LRRK2に対するELISAにおける結合を試験した。最後に、異なるファミリーからのかつ異なる免疫化および選択戦略からもたらされた42個のNbを、ELISAにおける良好なシグナルに基づいて選択した(表1)。これらのNbをより大スケールでE. coliにおいて発現し、均質に精製した(図9)。
【0088】
表1.精製されたLRRK2特異的なNbのリスト.
(1)RocCOR(RocCOR-GppNHp)による免疫化1および全長LRRK2による選択、(2)クロスリンクされたLRRK2-GTPγS(LRRK2-GTPγS(XL))による免疫化2およびLRRK2-GTPγSまたはRoc-GTPγSのいずれかによる選択、ならびに(3)クロスリンクされたLRRK2-GDP(LRRK2-GDP(XL))による免疫化3およびLRRK2-GDPまたはRoc-GDPのいずれかによる選択からもたらされたNbの選択。ELISAまたはクロスリンクMSから決定されたドメイン特異性(Nbのサブセットについてのみ)もまた指示されている。
【表1-1】

【表1-2】
【0089】
例2.LRRK2を指向するNbのドメイン特異性の決定.
我々は、LRRK2のRocCOR、Roc、COR-B、およびキナーゼ-WD40(K-WD40)ドメインコンストラクトを組み換え発現および精製した(図7)。爾後に、我々はELISAを行った。これにおいては、全てのこれらのドメインコンストラクトが同じELISAプレート上において互いの隣に平行してコーティングされ、ここでは、我々は爾後に42個の精製されたNbの結合を検出した。図1はこのELISAの結果を示す。予想される通り、ほとんどのNbは用いられたLRRK2および/またはドメインコンストラクトの少なくとも1つへの結合を示す。しかしながら、2つのNb(CA13614およびCA13618)はいずれかの結合を示さず、それ以上構わない(表1をもまた見よ)。RocCORドメインコンストラクトによる免疫化(免疫化1)からもたらされた全ての精製されたNb(7つのNb)は、CORドメインのC末端サブドメイン(COR-B)に特異的に結合することが分かる。全長LRRK2による免疫化および選択から得られたNbのうち、大多数は蛋白質のK-WD40部において結合する(18個のNb)。これらの免疫化からもたらされたNbの別のサブセット(10個のNb)はLRRK2へのロバストな結合を示すが、個々のLRRK2ドメインコンストラクトのいずれかへの結合は観察されない。よって、我々は、これらのNbはELISAにおいて個々のドメインによってカバーされなかったLRRK2のN末端領域(アルマジロ-アンキリン-LRRドメイン)に結合するということ、またはこれらのNbは2つ以上のドメインの境界面にエピトープを有するということのいずれかを憶測する。よって、我々はNbを「全長LRRK2結合因子」として分類する。Rocドメインを指向するNbを濃縮するために、我々は具体的にはRoc-GTPγSまたはRoc-GDPのいずれかによる選択ステップを包含した。これはRocドメインを指向する5つのNbをもたらした(Nb32(CA16069)、Nb33(CA16070)、Nb34(CA16071)、Nb35(CA16072)、Nb42(CA14259))。これらの5つのうち4つは、ELISAにおいてもまたRocドメインで強いシグナルを与えた。第5のNb(Nb42、CA14259)では、Rocへの結合は分析サイズ排除クロマトグラフィーを用いて確認された(データは示さない)。エピトープマッピングの結果は図1Bにまとめられている。
【0090】
例3.細胞のLRRK2キナーゼ活性は異なるLRRK2ドメインを標的化するナノボディによって調節される.
爾後に、我々は、LRRK2を指向するNbのいずれかがLRRK2に結合およびLRRK2(キナーゼ)活性を調節する能力を有するかどうかを、LRRK2を過剰発現するヒトHEK293T細胞において試験することを欲した。よって、我々は、3つの異なる免疫化戦略起源のかつ異なるLRRK2ドメイン(すなわち、「全長LRRK2」、Roc、COR-B、およびキナーゼ-WD40)を標的化するNbをカバーするように配慮して、41個の精製されたNbのうち18個のサブセットを選択した。我々は、負のコントロールとして、完全に無関係な細菌蛋白質に対する自前で生成されたNbをもまた包含した(「無関係なNb」)。これらのNbをヒトLRRK2(野生型)過剰発現HEK293細胞において発現するために、Nbオープンリーディングフレームを最初にpEGFPベクターに再クローニングし、そのC末端において強化型GFP分子に融合されたNbの発現をもたらした(いわゆる「fluobody」)[23,24]。細胞のLRRK2への結合を試験するために、プルダウン実験を磁性GFP-nanotrapビーズを用いて行った。この実験は、全ての試験されたNbがこれらの条件下においてLRRK2をプルダウンする能力があるということを示した。それゆえに、これは、これらの18個のNbがヒト細胞の細胞質の文脈においてイントラボディとして機能的であり、それらの標的蛋白質をプルダウンするための十分に高い親和性を有するということを指示する(図12)。
【0091】
LRRK2キナーゼ活性に対するNbの影響を評価するために、我々は、LRRK2の2つの生理的におよび疾患に該当する活性:位置T72における内在性の基質Rab10のリン酸化および位置S1292におけるLRRK2自己リン酸化をモニタリングした[25-30]。両方の活性は、普通のG2019S変異体を包含する最も該当するLRRK2 PD変異体において増大していることが先に示されている。それゆえに、我々の細胞アッセイでは、我々はLRRK2(G2019S)、Rab29、および異なるNb-GFP融合体をHEK293T細胞において共発現した(図2a~c)。Rab29共発現はLRRK2自己リン酸化およびRab10リン酸化をブーストすることが先に示されている[31]。18個の選択されたNbのうち、我々はコントロールと比較してLRRK2キナーゼ活性に対する影響を有さない群を検出したが(すなわち、Nb3(CA12614)、Nb9(CA13598)、Nb10(CA13599)、Nb13(CA13602)、Nb31(CA13620)、Nb37(CA14131)、およびNb39(CA14134)(図2d)、他はLRRK2自己リン酸化および/またはRab10リン酸化を強く減少させた(Nb1(CA12610)、Nb6(CA12618)、Nb23(CA13612)、Nb42(CA14259)、Nb17(CA13606)、Nb36(CA14130)、Nb38(CA14133)、Nb40(CA14135)、およびNb41(CA14136))(図2)。加えて、いくつかのNbはLRRK2キナーゼ活性の有意な増大に至り、これはNb28(CA13617)およびNb22(CA13611)で最も顕著である。興味深いことに、NbはLRRK2自己リン酸化およびRab10リン酸化に異なって影響を及ぼすように見える。結合因子のいくつかはRab10リン酸化およびS1292におけるLRRK2自己リン酸化を両方とも阻害するが(例えば、COR-B結合因子Nb1(CA12610)およびNb6(CA12618)、Roc結合因子Nb42(CA14259)、またはキナーゼ-WD40結合因子Nb23(CA13612))、他はRab10リン酸化を阻害しながらS1292リン酸化はより少ない程度に阻害するように見える(例えば「全長LRRK2」結合因子Nb17(CA13606)、Nb36(CA14130)、Nb38(CA14133)、または「K-WD40」結合因子Nb40(CA14135)およびNb41(CA14136))。対照的に、他の結合因子は、LRRK2自己リン酸化に対する幾分か強い阻害効果を示す(例えば、「全長LRRK2」結合因子Nb37(CA14131)またはCOR-B結合因子Nb3(CA12614))。
【0092】
例4.クロスリンク質量分析(CL-MS)によるエピトープマッピングは活性調節Nbの結合エピトープを明らかにする.
上の結果をフォローアップして、我々は、より徹底したインビトロのキャラクタリゼーションのために、細胞のLRRK2(G2019S)活性を調節する10個のNbを選択することを決めた。次のNbをさらなるキャラクタリゼーションのために選んだ:Nb17(CA13606)、Nb36(CA14130)、Nb38(CA14133)(「全長LRRK2」を指向し、細胞のRab10リン酸化を阻害する)、Nb39(CA14134)(「全長LRRK2」を指向する)、Nb42(CA14259)(Rocドメインを指向し、細胞のRab10および自己リン酸化を阻害する)、Nb1(CA12610)、Nb6(CA12618)(COR-Bドメインを指向し、細胞のRab10リン酸化および自己リン酸化を阻害する)、Nb22(CA13611)(キナーゼ-WD40ドメインを指向し、細胞のRab10リン酸化を活性化する)、Nb40(CA14135)、およびNb23(CA13612)(キナーゼ-WD40ドメインを指向し、それぞれ細胞のRab10リン酸化ならびにRab10および自己リン酸化を阻害する)(図2d)。
【0093】
最初に、我々はクロスリンクMSアプローチを用いて、これらの10個のNbの正確な結合エピトープについてのより詳細な知見を得た。クロスリンク質量分析(CL-MS)は構造検討のための強力なツールとして出現し、我々は先にCL-MSによってLRRK2を検討し、この蛋白質のための条件を最適化した[2]。その上、質量分析による標的ペプチドのシーケンシングによって後続されるLRRK2-Nb複合体の化学的クロスリンクは、高い信頼度でNb結合エピトープの敏感なマッピングを許すための汎用的な方法でもまたある[11,32]。CL-MSデータは、異なるNbが、圧倒的に、βストランドC"およびDを接続するループに所在するNbのフレームワーク3領域上の1つの保存されたリジン残基を介するLRRK2への蛋白質間クロスリンクを示すということを明らかにした[33]。対応してクロスリンクデータが得られ得なかったNb6(CA12618)を例外として、このリジン残基は全ての選択されたNbに存在する。他のNbでは、結合エピトープに依存して、このリジン残基はLRRK2上のいくつかのリジン残基へのロバストなリンクを示した(図3)。
【0094】
総体的には、CL-MSデータはELISAを用いるドメインマッピングの結果と非常に良く一致する。ELISA実験に基づいて、NbのNb17(CA13606)、Nb36(CA14130)、Nb38(CA14133)、およびNb39(CA14134)は「全長LRRK2結合因子」とフラグ付けされた。なぜなら、それらは全長LRRK2への結合のみを示し、試験された個々のドメインコンストラクトのいずれかへの有意な結合が観察されなかったからである。対応して、CL-MSは、全てのこれらのNbがLRRK2のN末端LRRドメインと、CORのC末端の端部(CA14134)、キナーゼドメイン(CA13606およびCA14133)、ならびにキナーゼおよびWD40ドメイン両方(CA14130)を包含するC末端部との複数の接触をするということを明らかにしている。この所見は、実に、確証された結合因子の有意な部分が、短い線形のペプチドストレッチに結合する代わりに立体配座エピトープを特異的に認識するということを明瞭に実証する。その上、これは、LRRドメインがLRRK2のC末端ドメインに「折り返し」、それに対して近い近位にあるということを指示する。Nb42(CA14259)では、Rocドメイン上のリジン(K1502)との1つのクロスリンクのみが同定され、ELISAにおけるドメインマッピングと良く一致する。Nb22(CA13611)、Nb23(CA13612)、およびNb40(CA14135)は全てがELISAにおいてキナーゼ-WD40結合因子として同定された。対応して、クロスリンクデータは、それぞれこれらの3つのNbについて、WD40ドメイン、キナーゼドメイン、ならびにWD40ドメインおよびCOR-BのC末端の端部両方との相互作用を明らかにしている。興味深いことに、ELISAにおいてCOR-B結合因子として同定されたNb1(CA12610)は、LRRK2蛋白質の異なる一部の種々のリジンとのクロスリンクをする。ELISAデータと一致して、COR-B上のK1833とのクロスリンクが見出されるが、隣接するキナーゼドメインおよびロイシンリッチリピートをもまた包含する他のLRRK2ドメイン上の残基とのクロスリンクもまた見出される。この所見は、コンパクトなLRRK2二量体の低分解度の構造モデルにおけるCORドメインの非常に中心的な局在と良く一致する[2]。それゆえに、我々は、COR-BドメインへのCA12610の結合は、ほとんどの他のLRRK2ドメインに対して比較的近い近位において、それをLRRK2構造の中心穴部に置くという仮説を立て得る。
【0095】
例5.マイクロスケール熱泳動(MST)およびバイオレイヤー干渉法(BLI)によって決定されるLRRK2に対するNb結合親和性.
LRRK2に対する10個のNbの結合親和性(解離定数KD)を決定するために、2つの方法:マイクロスケール熱泳動(MST)およびバイオレイヤー干渉法(BLI)を平行して用いた。MST実験では、我々は、ソルターゼによって媒介されるカップリングを用いて、10個のNbをそのC末端においてm-TAMRAフルオロフォアによって部位特異的に標識し[51]、それから、増大して行く量の全長LRRK2をこれらのNbに対してタイトレーションした(図13)。LRRK2への結合によって熱泳動挙動の変化を生成しなかったNb23を例外として、全ての10個のNbについて、MSTシグナルが観察された。他のNbでは、KD値は25nM~150nMの範囲に見出される(表2)。BLI実験では、トラップ剤としてビオチン化Nb40を用いて(Nb40の結合を評価するためを例外とする。ここでは、Nb42がトラップ剤として用いられた)、LRRK2をストレプトアビジンコーティングされたバイオセンサー上に最初にトラップし、これの後に、LRRK2への全てのNbの結合を決定した。明瞭な結合シグナルが全てのNb(Nb23を包含する)について得られ、KD値は10nM~200nMの範囲であった(図14)。総体的には、両方の方法は同じ傾向および親和性範囲を示す。しかしながら、一般的には、BLIではMSTと比較して軽微に高い親和性が得られる。これらの違いは、溶液中のLRRK2を用いるMSTおよび第2のNbの手段によって表面にトラップされたLRRK2を用いるBLIの実験セットアップをおそらく原因とする。
【0096】
表2.平行して2つの方法:マイクロスケール熱泳動(MST)およびバイオレイヤー干渉法(BLI)によって評価された、LRRK2への10個のNbのセットの結合の平衡解離定数(KD).
【表2-1】

【表2-2】
【0097】
例6.いくつかのLRRK2活性調節Nbは、異なる(アロステリックな)機序を用いてインビトロのLRRK2キナーゼ活性を阻害する.
次に、我々は、インビトロLRRK2(野生型)キナーゼ活性に対する10個の選択されたNbの影響をスクリーニングした。これに、我々は蛍光に基づくPhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイ(AssayQuant Technologies Inc.)を用い、LRRK2に最適化されたAQT0615ペプチドを基質として10μMの固定濃度で用いた。LRRK2によって触媒されるペプチドリン酸化を原因とする蛍光の増大(λexc:360nm;λemm:485nm)を、0.1および1mMのいずれかのATP濃度における初期速度条件下で時間的に連続測定した。爾後に、10個のNbを25μMの終濃度で追加し、初期速度に対する効果を三重で決定した(図4A)。Nbなしまたは無関係なNbが追加されたものかいずれかである2つの負のコントロールをもまた包含した。その上、LRRK2特異的なATP競合阻害剤MLi-2[34]を正のコントロールとして25μMで追加した。加えて、これらの実験を大過剰(500μM)のGDPまたはGTPγS(図4B)のいずれかの存在下のLRRK2によって行ったが、阻害プロファイルに対するヌクレオチドの有意な影響は観察されなかった。
【0098】
インセルロのデータと整合して、WD40ドメイン結合Nb22(CA13611)はインビトロのLRRK2のキナーゼ活性を活性化し、25μMのNbの追加はコントロールと比較して約30から50%のキナーゼ活性の増大に至る。この時点では、我々は、Nb22がWD40ドメインとの観察された相互作用とは別にキナーゼドメインともまた相互作用するということを排除し得ないが、この観察はキナーゼおよびWD40ドメイン間の制御的な相互影響を指示する。これは、7つのC末端アミノ酸の欠失がLRRK2キナーゼ活性の遮断に至るということを示す先の報告ともまた良く一致する[35]。その上、LRRK2の触媒側の半分(Roc-COR-キナーゼ-WD40)の非常に最近決定されたクライオEM構造は、WD40ドメインに後続するLRRK2の終わりの28アミノ酸によって形成されるαヘリックスが、キナーゼドメイン上に折り返し、それと密接に相互作用するということを示している[36]。
【0099】
対照的に、NbのNb17(CA13606)、Nb36(CA14130)、Nb38(CA14133)、およびNb40(CA14135)の追加は、AQT0615リン酸化の非常に軽度の阻害のみに至る(コントロールの70%および95%の間の範囲である初期速度)。これは、後者のNbのLRRK2によって媒介されるRab10リン酸化の観察された阻害が、キナーゼ活性それ自体に対する直接的効果を原因としないということを指示する。これらのNbが細胞のRab10リン酸化に重度に影響しながら、位置S1292における自己リン酸化に対してはより著しくない効果を有し、そのため、Rabリン酸化にかなり特異的に影響を及ぼしたという観察によってもまた示唆される通りである。1つの例外はNb42であるように見える。これは細胞のLRRK2自己リン酸化およびRabリン酸化を両方とも阻害したが、阻害効果はインビトロでは観察され得なかった。
【0100】
最後に、3つの他のNbのNb1(CA12610)、Nb6(CA12618)および(それほどではないが)Nb23(CA13612)は、インビトロLRRK2キナーゼ活性の非常に明瞭な有意な阻害効果を有する。これはCA12610およびCA12618で最も著しく、これらは、このアッセイにおいて「Nbなし」および「無関係なNb」コントロールのものの20から30%のみかつMLi-2コントロールの活性よりもぎりぎり上のみであるレベルまでキナーゼ活性を縮減する。これは、全ての3つのNbが細胞のRab10および自己リン酸化を重度に阻害し、トータルのLRRK2キナーゼ活性の真の阻害剤として作用するという観察と整合する。興味深いことに、CA13612はキナーゼドメイン上に直接的に結合することが見出されたが、CA12610およびCA12618はCOR-Bドメインに結合することによってこの効果を達成する。
【0101】
我々はNb1(CA12610)、Nb6(CA12618)、およびNb23(CA13612)がインビトロのLRRK2キナーゼ活性を有意に阻害するということを見出したので、我々は連続してこれらの3つのNbによる用量反応分析を行った。ペプチドおよびATP基質濃度をそれぞれ10μMおよび1mMで一定に保ちながら、Nb濃度を200または150μMから0.006μMまで2倍の段階希釈で変えた(図11A~C)。これらの用量反応曲線のフィットは、それぞれNb1およびNb6については8±2μMおよび14±3μMというIC50値、ならびにNb23については65μMという概算IC50値を出した。
【0102】
例7.LRRK2阻害Nbはアロステリックな機序によって作用する.
細胞のLRRK2自己リン酸化およびRabリン酸化活性ならびにインビトロのペプチドおよびRab基質に対するLRRK2キナーゼ活性をロバストに阻害するとして同定された3つのNb(Nb1(CA12610)、Nb6(CA12618)、Nb23(CA13612))について、結果は、これらのNbがLRRK2キナーゼ活性それ自体を標的化するということを示唆する。興味深いことに、ELISAおよびCL-MS実験はNb23(CA13612)がキナーゼドメインに結合するということを示唆したが、Nb1(CA12610)およびNb6(CA12618)はCORドメインに結合する。これは、少なくとも後者の2つのNbがアロステリックなキナーゼ阻害剤として作用するということを強く示唆する。これをさらに確認するために、我々は、アウトプットとして我々のペプチドリン酸化アッセイを用いて、基質としてのATPについてこれらの3つのNbの阻害機序(競合的vs.不競合的vs.混合型/非競合的)を決定することにした。このために、完全なミカエリス・メンテン曲線をペプチド基質の固定(おそらく準飽和)濃度(10μM)およびATPの様々な濃度において得た(図11)。CA12610およびCA12618では、ラインウィーバー・バークプロットを用いる曲線の線形化は、Y軸の左の交差する線を明瞭に示し、混合型の阻害を指示する。これは、これらのNbが結合についてATPと競合していないということと、それらがアロステリック部位に結合することによって反応を阻害するということとを確認する。これはELISAおよびCL-MSエピトープマッピングデータと一致する。線形化された曲線がX軸よりも上で横断するという観察は、これらのNbが、ATPに結合した形態(より高い見かけ上のKiU app)よりもLRRK2のATPに結合していない状態(より低い見かけ上のKiC app)への結合の選好性を有するということをもまた指示する。CA12610では、従って、混合型阻害モデルを用いる速度論データのグローバルフィットは1.8±0.5のα値によって16±4μMのKi appを与え、16μMのKiC app(=アポLRRK2についての親和性)および30μMのKiU app(=ATPに結合したLRRK2に対する親和性)に対応する。CA12618では、同じモデルのフィットは1.6±0.4のα値によって5±1μMというKi appを出し、5μMのKiC appおよび8μMのKiU appに対応する。キナーゼドメイン結合CA13612では、線形化された曲線はY軸のより近くで交差し、よりATP競合的様である機序を指示する。だが、線は正確にY軸上で交差はせず、増大して行くNb濃度によるVmax app値の系統立った減少が観察される。これは、ここでもまた混合型阻害機序を指示する。CA13612についての混合型阻害モデルのフィットは、7.5±1.9のα値によって9±1μMのKi appを与え、9μMのKiC appおよび66μMのKiU appに対応する。ATPに結合した形態よりもLRRK2アポ形態に対するCA13612の強い選好性は、NbがATP結合と完全には競合していないが、ATPおよびCA13612結合が相互に互いを嫌うということを示している。これは、このNbがATP結合ポケットの近くに結合しているということまたはNb23結合がATP結合と相容れない立体配座にLRRK2を強いるということを示唆する。
【0103】
例8.Nbは内在性のレベルでLRRK2と係合および共局在する.
10個の選択されたNbの高親和性結合を考えて、我々はそれらのNbがLRRK2を内在性の/生理的な発現レベルでもまたプルダウンする能力があるかどうかを次に試験した。よって、我々はLRRK2を比較的高いレベルで発現するマウスRAW264.7細胞のライセートに目を向けた[52]。興味深いことに、我々は、全ての10個のNbがこれらのライセートに追加されるときにLRRK2を効率的にプルダウンするということを見出し(図15)、(1)NbがマウスLRRK2に対して交差反応性であり、(2)それらの親和性が細胞ライセートからの内在性のレベルのLRRK2をプルダウンするために十分に高いということを示している。
【0104】
Nbが固定された細胞において内在性のLRRK2をトレースおよび視覚化し得るかどうかを試験するために、我々は前に記載された通り緑色蛍光蛋白質(GFP)-Nb融合体(fluobody)を生成した[23,53,54]。最近、LRRK2は免疫細胞においてファゴサイトーシスの誘導によってファゴソームにリクルートされるということが示された[55,56]。よって、RAW264.7細胞をこれらのfluobodyによってトランスフェクションし、死んだ酵母バイオ粒子「ザイモサン」によって処置して、ファゴサイトーシスを誘導した。固定された細胞の共焦点イメージングは、LRRK2ならびにNb36およびNb42が内在性のLRRK2と共局在しないということを示し、ファゴソームへのLRRK2リクルートはNb1、Nb6、Nb17、およびNb39によってトランスフェクションされた細胞においては軽微に検出可能であった(図16b)。重要なことに、試験されたfluobodyの4つ(Nb22、Nb23、Nb38、およびNb40)は、ザイモサン含有ファゴソーム上においてLRRK2と明瞭に共局在し(図16a)、細胞内の内在性のLRRK2をトレースするこれらのNbの能力を実証した。
【0105】
例9.LRRK2標的化ナノボディの発現は微小管へのLRRK2移行をもたらさず、これらのナノボディのサブセットはMLi-2によって誘導される移行を阻害する.
異なる構造クラスのLRRK2の薬理学的なキナーゼ阻害剤は、5つの主要なPDを引き起こす変異のうち4つに類似に、微小管へのLRRK2の細胞性のリクルートを誘導する[37-40]。微小管へのLRRK2の結合は、爾後に、微小管上のキネシンおよびダイニンによって媒介される輸送を縮減する[36]。我々の10個の同定されたLRRK2キナーゼ調節Nbが類似の表現型をもたらすかどうかを検討するために、HEK293細胞をmScarlet-LRRK2およびGFP-Nbをコードするコンストラクトによって共トランスフェクションした。分析された全ての10個のNbについて、共焦点顕微鏡法分析は、LRRK2がNbによる共トランスフェクションの48hr後にその細胞質分布を維持したということを示し、微小管への移行は観察されず、Nbが古典的な阻害剤と比較して異なる立体配座にLRRK2をトラップするということを指示する(図5)。
【0106】
次に、我々は、LRRK2標的化Nbが、特異的なATP競合阻害剤MLi-2によるLRRK2キナーゼ活性の阻害によって誘導される微小管へのLRRK2のリクルートを変改する能力を有するかどうかを検討することを欲した[41]。それをするために、mScarlet-LRRK2およびGFP-Nbコンストラクトによって共トランスフェクションされたHEK293細胞を、1μMのMLi-2によって処置した(図6)。興味深いことに、試験されたNbのサブセットによって共トランスフェクションされた細胞は微小管へのMLi-2によって誘導されるリクルートを示さず、LRRK2の細胞質における遮断は維持された。このレスキュー効果はNb CA13606、CA13611、CA13612、およびCA14135で最も顕著である。最近の構造情報はLRRK2微小管移行をキナーゼドメインの立体配座にリンクし、閉じた立体配座は微小管へのLRRK2結合を好む[36]。帰結として、普通に用いられるATP競合的なI型LRRK2阻害剤はこの効果を誘発する。加えて、WD40ドメインはLRRK2-微小管会合に不可欠であるということが前に示された[40]。その上、最近、微小管のLRRK2装飾にはWD40:WD40二量体化境界面が関わり、この蛋白質-蛋白質相互作用の遮断は微小管へのLRRK2移行に対するMLi-2の効果を廃するということが報告された[42]。興味深いことに、我々のELISAおよびCL-MS実験は、MLi-2によって誘導される微小管局在を阻害する全てのNbがキナーゼまたはWD40ドメインのいずれかと相互作用するということを示した。よって、これらのNbは「キナーゼが開いた」立体配座またはWD40:WD40境界面をマスクする立体配座のいずれかにLRRK2をトラップするということが想像される。
【0107】
例10.Nbは先に記載されたLRRK2キナーゼ阻害剤とは異なる結合部位を介してLRRK2を阻害する.
ほとんどの現行で記載されるLRRK2阻害剤はキナーゼドメインのATP結合ポケットに直接的に結合する。しかし、ビタミンB12の生理的な形態は、ATP結合ポケットとオーバーラップしないキナーゼドメインの領域に結合することによってLRRK2キナーゼ活性を阻害することが報告された[43]。本明細書に記載されるインビトロキナーゼ活性阻害Nbの2つ(Nb1およびNb6)は、圧倒的にCOR-Bドメインとの相互作用によってLRRK2に結合し、それゆえに新規の作用機序を提唱し、それによって、全てがキナーゼドメインと直接的に相互作用するこれらの先に記載されたLRRK2キナーゼ阻害剤に類似の阻害機序を排除する。他方で、ELISAおよびクロスリンクMS実験は、第3のインビトロキナーゼ活性阻害Nb(Nb23)がキナーゼドメインを介してLRRK2に結合するということを示したが、ここで、速度論的分析はNb23が混合型(非ATP競合的)阻害剤であるということをもまた示した。Nb1、Nb6、およびNb23が、いずれかの公知の低分子キナーゼ阻害剤とは異なる、それゆえに報告されたビタミンB12形態ともまた異なるモードでLRRK2に結合するということを検証および確認するために、競合ELISAタイトレーション実験を行った(図17)。この実験セットアップでは、ELISA実験を、ELISAプレートの底側にコーティングされた固定濃度のLRRK2を用いて、450nMから0.2nMの範囲である3つのNbのいずれかの希釈系列を用いて行った。ELISAにおけるNb結合の検出はそれらのC末端EPEAタグを用いて行われ、Nbの見かけ上の親和性を反映する用量反応タイトレーション曲線をもたらす。爾後に、セットアップの繰り返しを、大過剰のATP競合阻害剤MLi-2(1μM)[34]または非ATP競合的なVitB12誘導体5'デオキシアデノシルコバラミン(AdoCbl、250μM)[43]のいずれかの存在下において行った。加えて、正のコントロールとして、セットアップの繰り返しを過剰(9μM)の対応するタグ付けされていないNbの存在下において行った。予想される通り、直接的なオルソステリックな競合因子としての対応するタグ付けされていないNbを追加するときには、タイトレーション曲線の非常に顕著な右へのシフトが観察されるが、右へのシフトはMLi-2またはAdoCblのいずれかの存在下においては3つのNbのいずれについても観察されない。それゆえに、これは、さらに、(1)本明細書に記載されるこれらの3つの群1 NbのいずれもI型ATP競合阻害剤MLi-2と同じポケットにおいては結合せず、それゆえにこれらのNbが非ATP競合的なアロステリックな阻害機序によって作用するということを確認し、(2)NbのいずれもAdoCblと同じエピトープには結合せず、それらが完全に新規のアロステリックな機序によって作用するということを示すということを証明する。
【0108】
例11.親和性および力価を増大させるための多価および多重パラトープナノボディを創り出す.
異なるドメイン上の異なるオーバーラップしないエピトープを標的化することによってLRRK2に結合およびLRRK2キナーゼ活性を阻害するアロステリックなNbのパネルが同定された。それゆえに、これは、異なるLRRK2エピトープを標的化するかかるNbの組み合わせを遺伝子融合し、多価/多重パラトープ(すなわち、同じ標的の異なるエピトープに結合する)Nbをもたらすポテンシャルがある。この多価性を創り出すことは、相加的なおよび協働的な(アビディティ)効果両方を原因とする有意に増大した(見かけ上の)親和性をもたらすことが予想される。その上、類似に、多重パラトープNbの組み合わせは個々のNbの混合物と比較してキナーゼ阻害の力価を相乗的に増大させるであろうということが予想される[44,45]。これは、COR-B(例えばCA12610およびC12618)およびキナーゼドメイン(例えばCA13612)などだがこれらに制限されない異なるドメインを介する結合によってキナーゼ活性を阻害するNbについてとりわけ真である。
【0109】
異なるナノボディビルディングブロックを組み合わせるために、フレキシブルな(G4S)xリンカーが、リピートxの数を変えることによって種々の長さで用いられ得る。2つ以上の異なるNbのいずれかの組み合わせがpMESY4ベクター上に作られ得る。その上、リンカー長さを変えることとは別に、融合体上のNbの順序もまた変えられ得る。もたらされる多重パラトープNbは個々のNbと類似のやり方で発現および精製され得る。最初に、多重パラトープコンストラクトのIC50値が上に記載されている通りPhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイを用いて決定され、対応する個々のNbのカクテルと比較されて、遺伝子のリンクの相乗効果を検出する。第2に、多重パラトープNbの(見かけ上の)KD値をもまた決定し、本明細書に記載される通りMSTまたはBLI法を用い、これらを個々のNbのKD値と比較し得る。最も有望なNbは爾後に細胞のLRRK2キナーゼ活性に対するそれらの効果について試験される。
【0110】
材料および方法
蛋白質発現および精製
全長ヒトLRRK2を、先に開発されたプロトコール[1,2]に基づいて小変更で発現および精製して、特定のヌクレオチド:グアノシン-5'-(γ-チオ)-三リン酸(GTPγS)またはグアノシン-5'-二リン酸(GDP)のいずれかに結合した状態のLRRK2を得た。手短には、全長LRRK2を、N末端Twin-StrepタグおよびFLAGタグ(NSF)を有する蛋白質をコードするN-Strep/Flag-TAP(N-SF-TAP)pcDNA3.0ベクターにクローニングした[3]。HEK293T細胞(CRL-11268;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)を50%および70%コンフルエンスの間で8μgのプラスミドDNA/14cm培養皿によってポリエチレンイミン(PEI)25kDa(Polysciences)を用いてトランスフェクションし、トランスフェクション後に48hrにわたって14cm皿において10%(vol/vol)FBS(Sigma-Aldrich)および適当な抗生物質を補ったDMEM(Sigma-Aldrich)によって培養した。培地の除去後に、50mM HEPES(pH8.0)、150mM NaCl、5mM MgCl2、2mM DTT、5%グリセロールを含有しかつ0.55%(v/v) Nonidet P-40、コンプリートプロテアーゼ阻害剤(Roche)、および1mM GTPγSまたは1mM GDPのいずれかを補ったリシス緩衝液(1mL/14cm皿)に細胞を再懸濁した。細胞リシスが1hにわたって4℃において旋回振盪機(10rpm)上で進むことを許し、細胞デブリおよび核を10minの10,000×gでの遠心によって除去した。ライセートをStrep-Tactinビーズ(IBA、500μlベッドボリューム/15mL細胞ライセート)と2hにわたって4℃において旋回振盪機上でインキュベーションした。ビーズをマイクロスピンカラム(GE Healthcare)に移入し、1mM GTPγSまたはGDPのいずれかを含有する洗浄緩衝液(50mM HEPES(pH8.0)、100mM NaCl、1mM DTT、5mM MgCl2、0.5mM EDTA、10%[vol/vol]グリセロール)によって入念に5回洗浄した。溶出は2.5mMのD-デスチオビオチン(IBA)および1mMのGTPγSまたはGDPのいずれかを含有する700~800μLの同じ洗浄緩衝液によって行った。
【0111】
当初は、RocおよびCORドメイン(RocCOR)にまたがるLRRK2のドメインコンストラクトを、N末端Twin-StrepタグおよびC末端His10タグに融合されたa.a.残基1334~1840にまたがる蛋白質をコードするpBADcLICベクターから発現した。後のステージにおいては、pDEST-566ベクターにクローニングされかつN末端His6-MBP(マルトース結合蛋白質)タグを有する蛋白質をコードする残基1293~1840にまたがるコンストラクトを用いた。pBADcLICベクターから発現された蛋白質を免疫化およびほとんどのスクリーニング実験に用いたが、pDEST-566ベクターから発現された蛋白質をもまた特定のスクリーニング実験に用いた。His6-MBPタグ付きRocCORの発現および精製はCOR-Bコンストラクトの精製に類似に行った(さらに見よ)。RocCORコード領域を含有するpBADcLICベクターを、E. coli株(E. coli RCEv9)に形質転換した。これは、RocCOR蛋白質の最適な発現のためにMC1061ΔacrB株から出発して自前でカスタムで考案され、先に記載されたプロトコールを用いた[4,5]。一晩培養を用いて、4LのTB培地(37℃)に接種し、約0.7のODに到達したときに、蛋白質発現を0.01%のアラビノースによって誘導し、20℃で一晩進むことを許した。細胞を収穫し、50mM Tris-HCl pH7.5、500mM NaCl、10mM MgCl2、2mM β-メルカプトエタノール、および20mMイミダゾールを含有しかつ1mMのPMSF、1μg/mLのロイペプチン、0.1μg/mLのAEBSF、および50μg/mLのDNaseIを補った緩衝液に再懸濁した。最後に、0.5mM GDPまたは0.5mMグアノシン-5'-[(β,γ)-イミド]三リン酸(GppNHp)のいずれかを細胞リシスに先行して緩衝液に追加した。細胞をCell Disrupter(Constant Systems Ltd.)を用いてリシスし、遠心による清澄化後に、細胞ライセートを5mL Ni-NTAカラムにローディングした。最初に、カラムマトリックスを300mM KClおよび5mM ATPを補った10カラム体積(CV)の再懸濁緩衝液によって洗浄して、シャペロンによるコンタミネーションを縮減した。爾後に、カラムを50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、10mM MgCl2、20mMイミダゾール、5%グリセロール、2mM β-メルカプトエタノール、および0.5mM GDPまたはGppNHpのいずれかを含有する10CVの緩衝液によって洗浄し、蛋白質を、300mMイミダゾールを供給された同じ緩衝液によって溶出した。濃縮ステップ後に、最後の精製ステップはSuperdex S20010/300カラムによるゲル濾過からなり、30mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、5mM MgCl2、5%グリセロール、1mM DTTを緩衝液として用い、0.5mM GDPまたはGppNHpのいずれかを補った。
【0112】
残基1329~1520にまたがるRocドメインのコンストラクトをN末端His6タグを提供するpET-28aベクターにクローニングし、ベクターをE. coli BL21(DE3)株に形質転換した。一晩培養を用いて4LのTB培地(37℃)に接種し、約0.7のODに到達したときに、蛋白質発現を0.1mMイソプロピルβ-D-l-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導し、20℃で一晩進むことを許した。細胞を収穫し、30mM HEPES pH7.5、250mM NaCl、10mM MgCl2、10mMグリシン、および20mMイミダゾールを含有しかつ1mMのPMSF、1μg/mLのロイペプチン、0.1μg/mLのAEBSF、および50μg/mLのDNaseIを補った緩衝液に再懸濁した。細胞をCell Disrupter(Constant Systems Ltd.)を用いてリシスし、遠心による清澄化後に、細胞ライセートを5mL Ni-NTA カラムにローディングした。10CVの再懸濁緩衝液による入念な洗浄後に、蛋白質を300mMイミダゾールを含有する同じ緩衝液によって溶出した。最後の精製ステップはSuperdex S75 10/300カラムによるゲル濾過からなり、30mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、5mM MgCl2、5%グリセロール、1mM DTTを緩衝液として用いた。
【0113】
残基1672~1840にまたがるCORドメインのC末端部(COR-B)のコンストラクトを、N末端His6-MBPタグを提供するpDEST-566ベクターにクローニングし、ベクターをE. coli BL21(DE3)株に形質転換した。一晩培養を用いて4LのTB培地(37℃)に接種し、約0.7のODに到達したときに、蛋白質発現を0.5mM IPTGによって誘導し、20℃で2hにわたって進むことを許した。細胞を収穫し、1mMのPMSF、1μg/mLのロイペプチン、0.1μg/mLのAEBSF、および50μg/mLのDNaseIを補った30mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、1mM EDTA、および1mM DTTを含有する緩衝液に再懸濁した。細胞をCell Disrupter(Constant Systems Ltd.)を用いてリシスし、遠心による清澄化後に、細胞ライセートを5mL MBPTrapカラム(GE Healthcare)にローディングした。10CVの再懸濁緩衝液による洗浄後に、蛋白質を10mMマルトースを含有する同じ緩衝液によって溶出した。最後の精製ステップはSuperdex S200 10/300カラムによるゲル濾過からなり、30mM HEPES pH7.5、150mM NaClを緩衝液として用いた。
【0114】
キナーゼおよびWD40ドメイン(K-WD40)を含有しかつ残基1876~2527にまたがるLRRK2のドメインコンストラクトを、N末端Hisタグを有する蛋白質をコードするpFastBacベクター(Invitrogen)にクローニングした。蛋白質をSf9細胞(Invitrogen)によって発現し、先に記載された通りNi-NTAマトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した[6]。最後の精製ステップはSuperdex S75 10/300カラムによるゲル濾過からなり、50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、5mM MgCl2、2mM β-メルカプトエタノール、および0.1mM GDPを緩衝液として用いた。
【0115】
ナノボディ(Nb)発現および精製は先に記載された通り行った[7]。pMESy4ベクター(さらに見よ)にクローニングされたNbをコードするオープンリーディングフレームを、非サプレッサーE. coli WK6(Su)細胞に形質転換した。細胞を37℃でテリフィックブロス(TB)培地によって成長させ、蛋白質発現を1mM IPTGによって誘導した。28℃での一晩の発現後に、細胞を遠心によって収穫し、浸透圧ショックに付してペリプラズム抽出物を得た。爾後に、20mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaClからなる緩衝液に対する透析ステップによって後続されるNi2+-NTAセファロースによるアフィニティー精製ステップを用いて、Nbを精製した。
【0116】
免疫化
トータルで、3つのラマ免疫化を:(1)ヒトLRRK2のRocCORドメインコンストラクトによって;(2)GTPγSの存在下の全長LRRK2によって;および(3)GDPの存在下の全長LRRK2によって行った。特定のヌクレオチドに結合した状態(GDP対GTPγS)のLRRK2を得るために、全ての精製ステップは過剰のそれぞれのヌクレオチドの存在下において行った(上を見よ)。その上、蛋白質が免疫化の際および後に特定のヌクレオチドに結合した状態に依然としてあるということを保証するために、軽度のクロスリンクを免疫化に先行して蛋白質に対して行った。よって、1mM GTPgSまたは1mM GDPのいずれかをローディングされたLRRK2蛋白質を、第1級アミン特異的なクロスリンカーのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)と1:20モル比で30分にわたってインキュベーションし、これの後に、過剰のTrisを追加することによって反応をクエンチした。
【0117】
全ての3つの独立した免疫化戦略では、GERBUアジュバントの存在下における毎週の免疫化による6週プロトコールを踏襲した。全ての動物ワクチン接種はグッドプラクティスおよびEU動物福祉法に厳密に従って行われた。免疫化戦略(1)では、RocCORドメインコンストラクトを10mM GppNHpの存在下において免疫化に用いた。200μgの蛋白質を最初の2週に、100μgを終わりの2週に注射した。10mM GTPγS(免疫化(2))または10mM GDP(免疫化(3))の存在下の全長の(部分的にクロスリンクされた)LRRK2による免疫化は次のスキームに従って行った:300μg蛋白質を第1週に注射、200μg蛋白質を第2週に注射、100μg蛋白質を第3~6週に注射。血液を終わりの注射の4日後に収集した。
【0118】
ナノボディ生成
免疫ライブラリーの構築およびファージディスプレイによるNb選択を行った。先に記載されたプロトコール[7]を用い、LRRK2の異なるヌクレオチド形態に特異的に結合するNbを選択する見込みを最大化するための改変を有した。手短には、それぞれRocCORドメイン(免疫化1)、GTPγSの存在下のLRRK2(免疫化2)、およびGDPの存在下のLRRK2(免疫化3)による免疫化後のラマから収集された血液から出発して、重鎖抗体レパートリーの可変ドメインをpMESy4ファージディスプレイベクターにクローニングした。これは蛋白質発現の際にC末端His6タグおよびEPEAタグ(=CaptureSelect(商標)Cタグ)を追加する。これはそれぞれ8.3×108、1.8×109、および1.3×109形質転換体の3つの独立した免疫ライブラリーをもたらした。このNbレパートリーはVCSM13ヘルパーファージによるレスキュー後に繊維状ファージの先端に発現された。免疫化1では、連続2ラウンドのファージディスプレイ選択を、固相コーティングされた全長LRRK2または抗flag M2 Ab(Merck)によってビーズ上にトラップされた全長LRRK2のいずれかに対して行った。LRRK2のコーティングは、100μMのGDPを補った50mM HEPES pH8.0、150mM NaCl、5mM MgCl2、5%グリセロールを含有するコーティング緩衝液中で行い、ブロッキングを2%BSAによって行った。全ての結合および洗浄ステップは、100μM GDPを補った50mM HEPES pH8.0、150mM NaCl、5mM MgCl2、5%グリセロール、および0.05%Tween20を含有する洗浄緩衝液中で行った。免疫化2では、連続2ラウンドのファージディスプレイ選択を、固相コーティングされた全長LRRK2を用いて行った。加えて、連続3ラウンドのファージディスプレイ選択を固相コーティングされたLRRK2 Rocドメインを用いて行った。コーティングステップにおいては、コーティング緩衝液に1mM GTPγSを補い、結合および洗浄ステップにおいては、洗浄緩衝液に100μM GTPγSを補った。免疫化3では、1ラウンドのファージディスプレイ選択を固相コーティングされた全長LRRK2を用いて行った。加えて、連続2ラウンドのファージディスプレイ選択を固相コーティングされたLRRK2 Rocドメインを用いて行った。コーティングステップにおいては、コーティング緩衝液に1mM GDPを補い、結合および洗浄ステップにおいては、洗浄緩衝液に100μM GDPを補った。いくつかのシングルコロニーをファージディスプレイ選択の各ラウンド後に拾い、配列分析を用いて、もたらされたNbクローンをそれらのCDR3配列に基づいて配列ファミリーに分類した。HEK293T細胞における蛍光(eGFP)標識されたイントラボディ(Fluobody)としてのNbの発現を許すために、Nb ORFをHindIIIおよびBamHI制限部位を用いてpEGFP-N1ベクターに再クローニングした。これはそれらのC末端においてeGFPに融合されたNbの発現をもたらすであろう(Nb-GFP)。GFPなしでHEK293T細胞におけるNbの発現を許すために、終止コドンをNbおよびGFPコード配列の間に導入した。
【0119】
ELISA実験
Nb精製前に、それぞれのNbを発現するE. coli細胞のクルードな抽出物によるELISAスクリーニングを用いて、LRRK2へのNbの結合を確認した。全長LRRK2をELISAウェルの底側に固相コーティングし、コーティング、ブロッキング、結合、および洗浄緩衝液はファージディスプレイ実験と同じに保ち、該当するヌクレオチド(GTPγSまたはGDP)を補った。LRRK2へのNbの結合はそれらのEPEAタグによって検出し、1:4000 CaptureSelect(商標)ビオチン抗Cタグコンジュゲート(Thermo Fischer Scientific)を1:1000ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(Promega)との組み合わせで用いた。100μlの4mg/mL 4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム溶液(DNPP、Sigma-Aldrich)を追加することによって色を発色させ、405nmで測定した。
【0120】
上に記載されている通り選択されたNbの精製後に、ELISA実験を行って、それらのドメイン特異性を決定した。全長LRRK2ならびにRoc、COR-B、RocCOR、およびK-WD40ドメインコンストラクトを96ウェルELISAプレートに固相コーティングした。コーティング、結合、および洗浄緩衝液はファージディスプレイ実験と同じに保ち、100μM GDPを補った。ELISAは上に記載されている同じやり方で発色させた。
【0121】
インセルロのホスホRabアッセイ
HEK293T細胞をDMEM(10%ウシ胎児血清、25mM L-グルタミン、および0.5%Pen/Strepを補った)によって培養した。アッセイでは、細胞を6ウェルプレートに播種し、50~70%のコンフルエンシーにおいて、個々のNb-GFP発現コンストラクト、SFタグ付きLRRK2(G2019S)、およびFLAG-HA Rab29によって、自家製のポリエチレンイミン(PEI)に基づくトランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションした[8]。48hr後に、細胞をリシス緩衝液[30mM Tris-HCL(pH7.4)、150mM NaCl、0.5%Nonident-P40、コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル、ホスファターゼ阻害剤カクテルII&III(全てSigma)]によってリシスした。ライセートを10,000×gでの遠心によって清澄化し、1×Laemmli緩衝液中に1μg/μlの蛋白質濃度に調整した。サンプルを爾後にSDS PAGEおよびウエスタンブロット分析に付して、下に記載される通りLRRK2 pS1292およびRab10 T72リン酸化レベルを決定した。トータルのLRRK2およびRab10レベルを参照として決定した。
【0122】
ウエスタンブロット分析では、蛋白質サンプルをNuPAGE 10%Bis-Trisゲル(Invitrogen)を用いるSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜(Thermo Fisher)にトランスファーした。一方ではLRRK2ならびに他方ではRabおよびNb-GFP融合体についての同時プロービングを許すために、膜を140kDa MWマーカーバンドで水平にカットした。TBST(1h、RT)(25mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、0.1%Tween-20)中の5%無脂肪ドライミルクによって非特異的な結合部位をブロッキングした後に、膜を一晩4℃で一次抗体と下で規定される希釈でインキュベーションした。ホスホ特異的な抗体はTBST/5%BSA(Roth GmbH)によって希釈した。非ホスホ特異的な抗体はTBST/5%無脂肪ドライミルク粉末(BioRad)によって希釈した。ホスホRab10レベルは部位特異的なウサギモノクローナル抗体の抗pRAB10(pT73)(Abcam、ab230261)によって決定し、LRRK2自己リン酸化は部位特異的なウサギモノクローナル抗体の抗pLRRK2(pS1292)(Abcam、ab203181)によって、両方とも1:2,000の希釈で決定した。トータルのLRRK2レベルは自前のラットモノクローナル抗体の抗汎LRRK2(クローン24D8;1:10,000)によって決定した[9]。トータルのRab10レベルはウサギモノクローナル抗体の抗RAB10/ERP13424(Abcam、ab181367)によって1:5,000の希釈で決定した。Nb-GFP融合蛋白質はラットモノクローナル抗体の抗GFP(クローン3H9、ChromoTec)を1:2,000の希釈で用いて検出した。検出には、ヤギ抗ラットIgGまたは抗ウサギIgG HRPカップリング二次抗体(Jackson ImmunoResearch)をTBST/5%無脂肪ドライミルク粉末中に1:15,000の希釈で用いた。抗体-抗原複合体をECL plus化学発光検出システム(GE Healthcare)を用いてHyperfilm(GE Healthcare)上で視覚化した。
【0123】
化学的クロスリンク/質量分析(CL-MS)
化学的クロスリンクのために、LRRK2蛋白質溶液を3μM(0.86mg/mL)の濃度に調整した。Tris緩衝液を除去するための入念な透析後に、各ナノボディを、精製されたLRRK2にLRRK2溶出緩衝液(蛋白質精製の項を見よ)中において2:1の終モル比で追加した。複合体形成を許すために、蛋白質混合物を1hにわたって4℃で一定の混合下においてインキュベーションした。それから、クロスリンク反応を、NHS-エステルに基づくかつCID切断可能な試薬ジスクシンイミジルスルホキシド(DSSO;Thermo Fisher)[10]をモル過剰の60:1(ナノボディを参照する)で用いて行った。クロスリンク反応は30minにわたって室温で一定の混合下において実施した。それから、Tris-HCl(pH7.5)溶液を10mMの終濃度で追加することと室温での15minのインキュベーションとによって、反応を止めた。蛋白質を最後にクロロホルム/メタノールによって沈降し、爾後に、[8]に記載されている通りトリプシン蛋白質分解に付した。トリプシンペプチド溶液をStageTipによってクリーンアップし、SEC分離に付して、クロスリンクされたペプチドを以前に記載された通り濃縮した[2]。クロスリンクされたペプチドを含有する真空乾燥画分を、Orbitrap Fusion質量分析計(Thermo Fisher)によってMS2_MS3断片化法をデフォルト設定で用いて個々に分析した(ver. 3.0、ビルド2041)。MSI走査はOrbitrap(FTMS、分解度=60K)によって375~1500のm/z範囲で行った。MS2はCIDによって行い(CE=25%)、スペクトルをOrbitap(FTMS)によって30K分解度で取得した。MS3走査はHCDによって行い(CE=30%)、スペクトルをリニアイオントラップによって取得した。Thermo Rawファイルを、Proteome Discoverer 2.4によって提供されるMS2_MS3ワークフローによって分析した。これはXlinkX(ver. 2.4)[11]をクロスリンクされたペプチドの検出に用いる。手短には、MS2スペクトルのグローバルサーチを、Sequest HTによって、ナノボディの配列を補ったSwissprotデータベースのヒトサブセット(v. 2019_02;20417エントリー)に対して行った。Target Decoy PSM validatorによるFDR分析(FDR=0.01)が後続した。Sequest分析では、次の設定が用いられた:トリプシンが酵素として用いられた。システインのカルバミル化が固定された修飾として用いられ、メチオニン酸化、DSSO加水分解(K+176.014 Da)、DSSO Tris(K+279.078 Da)およびn末端アセチル化が可変の修飾として許された。
【0124】
XlinkX検出ノードによるクロスリンクされたペプチドの検出では、取得戦略はMS2_MS3に設定され、DSSO(158.004;K)がクロスリンカーとして1.5の最小S/Nで用いられた。XlinkXデータベース検索では、次のパラメータが用いられた:トリプシンが酵素として用いられた。前駆体および断片の質量許容差はそれぞれ10ppm(前駆体)、20ppm(FTMS)、および0.5Da(ITMS)に設定された。検索はLRRK2配列および全ての用いられたナノボディの個々の配列を含有するデータベースを用いて行われた。カルバミドメチルが固定された修飾として用いられ、メチオニン酸化が可変の修飾として許された。FDRに基づく分析(XlinkX validatorノード)は0.01のFDR閾値でPerculator設定を用いて行った。
【0125】
コンセンサスステップでは、同定されたクロスリンクを同定スコア≧20(デフォルト値)でフィルタリングして、偽陽性ヒット数を縮減した。フィルタリングされたクロスリンクデータをエクスポートし、xiNetで視覚化した[12]。
【0126】
インビトロペプチドリン酸化(キナーゼ)アッセイ
LRRK2キナーゼ活性に対する精製されたNbの影響を、PhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイ(AssayQuant Technologies Inc.)を用いて、最適化されたLRRK2 AQT0615ペプチドを基質として用い、製造者の説明書に従って決定した。連続的なキナーゼアッセイを黒色ハーフエリア96ウェルプレート上で50μLのトータル体積で行った。各反応混合物は、10μM AQT0615ペプチド基質/プローブ、0.1mMまたは1mM ATPのいずれか、および500μMのGDPまたはGTPγSのいずれかを、50mM HEPES pH7.5、0.1%Brij-35、50mM NaCl、および10mM MgCl2からなる緩衝液中に含有した。反応は25μM Nbの不在下または存在下のいずれかで終濃度80nMのLRRK2の追加によって開始した。追加に先行して、LRRK2およびNbを30分にわたって氷上でプレインキュベーションした。ペプチド基質/プローブのLRRK2によって触媒されるリン酸化が、それぞれ360nmおよび485nmの励起および発光波長によってプレートリーダー上で30℃において連続的に追跡された。タイムトレースは、「LRRK2なし」コントロールをサブトラクションすることによって補正した。初期速度を曲線の線形部分の傾きから決定した。
【0127】
IC50値を決定するために、Nb濃度は150μMから0.006μMまで2倍の段階希釈を用いて変えられた。これらのアッセイでは、150nMのLRRK2終濃度および1mMのATP濃度を用いた。相対的なLRRK2活性(「ナノボディなし」コントロールと比較して)を対数Nb濃度に対してプロットし、GraphPad Prismソフトウェアによって3パラメータlog(阻害剤)vs反応方程式にフィットした。全てのタイムトレースは三重で収集した。
【0128】
共焦点顕微鏡法および微小管局在
HEK293細胞株を完全培地(高グルコースのダルベッコの改変イーグル培地、10%ウシ胎児血清、およびペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco))によって培養した。細胞を8ウェルμ-Slide(Ibidi)に播種し、50~70%のコンフルエンシーにおいて、GFP-NbおよびmScarlet-LRRK2コンストラクトによって、JetPEI試薬(Polyplus Transfection)を用いてトランスフェクションした。24hr後に、細胞をDMSOまたは1μMのLRRK2キナーゼ阻害剤(MLi-2、cat.no. 5756、TOCRIS)のいずれかによって90minにわたって処置し、それから局在について調べた。データ取得はZeiss LSM800共焦点レーザー走査顕微鏡によって×100油浸対物でされた。z走査の画像分析はZeiss顕微鏡ソフトウェアZENを用いてされた。
【0129】
キナーゼ阻害機序の決定
CA12610、CA12618、CA13612の阻害機序および見かけ上のKi(Ki app)値を決定するために、PhosphoSens(登録商標)蛋白質キナーゼアッセイ(AssayQuant Technologies Inc.)をAQT0615ペプチド基質との組み合わせで用いた。異なるNb濃度の存在下における完全なミカエリス・メンテン曲線(相対的な速度対[ATP])を、30℃で、50mM HEPES pH7.5、0.1%Brij-35、50mM NaCl、10mM MgCl2、および500mM GDPからなる緩衝液中において、固定濃度のAQT0615(10μM)および様々な濃度のATPを用いて収集した。初期速度(線形の蛍光対時間曲線)が得られるようにしてLRRK2濃度を選び、ペプチド基質を追加することによって反応を始めることに先行して、LRRK2、ATP、およびNbを30minにわたって4℃でプレインキュベーションした。異なるNb濃度のミカエリス・メンテン曲線を、GraphPad Prismを用いて、方程式:
【数1】

(Kic app=Ki appかつKiu app=a.Ki app
に従って、混合型阻害モデルにグローバルフィットした。
【0130】
加えて、診断ツールとして、ミカエリス・メンテン曲線をラインウィーバー・バーク(二重逆数)プロットを用いて線形化した。
【0131】
プルダウン実験
SFタグ付きLRRK2およびGFPタグ付きNbを過剰発現するHEK293細胞の新鮮なライセートを、コンプリートEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich Cat # 11836170001)およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、cat. no. P-2714)を含有する100μL氷冷リシス緩衝液(10mM Tris/HCl pH7.5、150mM NaCl、0.5mM EDTA、0.5%NP-40)によって調製した。GFP-Nbを磁性GFP nanotrapビーズ(ChromoTek)によって免疫沈降した。免疫複合体を10mM Tris/HCl pH7.5によって2回洗浄し、還元剤を有するサンプル緩衝液中でサンプルを煮沸することによってイムノブロット分析に付した。サンプルを4~15%Tris-グリシンゲル(Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)プレキャストゲル、Bio-rad)によって分離し、ニトロセルロース膜(GE Lifesciences)にトランスファーし、ウエスタン分析のために処理した。膜をTris緩衝食塩水プラスTween-20中の5%ドライミルクによって1時間にわたってブロッキングした。LRRK2およびNbの別々の検出を許すために、膜を180kDaで水平にカットし、上側部をラットモノクローナル抗LRRK2(クローン24D8、1:1000、Gloeckner lab)によってプロービングし、下側部はウサギ抗GFP抗体1:2500(MA5-15256、Invitrogen)によってプロービングし、穏やかな振盪によって4℃で一晩インキュベーションした。それから、膜を0.1%または0.05%Tween-20を含有するPBSによって室温で10minにわたって3回洗浄し、それから、LRRK2では抗ラットIgG-HRP(sc-2750、Santa Cruz Biotechnology)、GFP-Nbでは抗ウサギHRPコンジュゲート化(#7074、Cell Signaling、1:5000)と1時間にわたってインキュベーションした。膜を再び0.1%または0.05 Tween-20を含有するPBSによって室温で10minにわたって3回洗浄した。膜を増強化学発光(ECL)試薬(WesternSure PREMIUM、Li-COR biosciences)によってコーティングし、蛋白質をC-Digitイメージングシステム(Li-COR Biosciences)を用いて検出した。
【0132】
内在性の(マウス)LRRK2とのNbの結合について試験するために、RAW264.7細胞の新鮮なライセートを、コンプリートEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich Cat#11836170001)およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、cat. no. P-2714)を補った10mM Tris/HCl pH7.5;150mM NaCl;0.5%NP-40中に調製した。精製されたHisタグ付きNbを1.5mMの終濃度でライセートに追加し、混合物が4℃で一晩旋回することを許した。Hisタグ付きNbを磁性Dynabeads(Invitrogen)によってプルダウンした。免疫複合体を10mM Tris/HCl pH7.5によって2回洗浄し、上に記載されている類似のやり方でイムノブロット分析に付した。LRRK2およびNbの別々の検出を許すために、膜を180kDaで水平にカットし、上側部はウサギモノクローナル抗LRRK2 1:1000([MJFF2(c41-2)]、ab133474、Abcam)によってプロービングし、下側部はマウス抗ヒスチジンタグ抗体1:1000(AD1.1.10、Bio-rad)によってプロービングし、穏やかな振盪によって4℃で一晩インキュベーションした。それから、膜を0.1%または0.05%Tween 20を含有するPBSによって室温で10minにわたって3回洗浄し、それから、少なくとも1時間にわたって二次抗体:抗ウサギHRPコンジュゲート化(#7074、Cell Signaling、1:500)またはHRPにコンジュゲート化されたマウスIgGカッパ結合蛋白質(m-IgGk BP)(sc-516102、Santa Cruz Biotechnology、1:5000)とインキュベーションした。膜を再び0.1%または0.05%Tween-20を含有するPBSによって室温で10minにわたって3回洗浄した。膜を増強化学発光(ECL)試薬(WesternSure PREMIUM、Li-COR biosciences)によってコーティングし、蛋白質をC-Digit Imaging System(Li-COR Biosciences)によって検出した。
【0133】
マイクロスケール熱泳動およびバイオレイヤー干渉法測定
FL-LRRK2へのNb結合の平衡結合親和性(KD)を決定するためのマイクロスケール熱泳動(MST)実験を行った。よって、Nbを、ソルターゼによって媒介されるペプチド交換を用いて、それらのC末端においてm-TAMRAによって部位特異的に標識した[57]。NbをpHEN29ベクターに再クローニングした。これは爾後にC末端LPETGG-His6-EPEAタグを有するNbを発現および精製するために用いられる。m-TAMRA標識GGGYKペプチド(GenicBio、上海、中国)との後者のペプチドの交換をソルターゼを用いて行い、未標識のNbおよび組み込まれなかったペプチドをそれぞれNi-NTAおよびSEC精製ステップを用いて除去した。MST測定は、Monolith NT.115装置(Nanotemper technologies)を用いて、固定濃度のm-TAMRA標識Nb(Nbの親和性に依存して50~100nM)を様々な濃度のLRRK2(16点、3:1 希釈系列)によってタイトレーションすることによって行った。実験は50mM HEPES pH8.0、150mM NaCl、10mM MgCl2、5%グリセロール、0.1%BSA、0.05%Tween、および500μM GDP中で行った(500μM GTPγSが用いられたNb42を例外とする)。30minの4℃におけるインキュベーション後に、サンプルをキャピラリーにローディングし、測定は25℃で50~70%LED出力および80%レーザー強度を用いて行った(レーザーオン時間:30s、レーザーオフ時間:5s)。全ての実験は三重で行った。初期に、データはMO親和性分析ソフトウェアを用いて処理され、最後のKD値が、MSTシグナル(5~15sオン時間)対[LRRK2]曲線をGraphPad Prism 7によって二次結合等温線にフィットすることによって得られた。
【0134】
バイオレイヤー干渉法(BLI)測定は、Octet Red96(Forte Bio, Inc.)システムを用いて、50mM HEPES pH8.0、150mM NaCl、10mM MgCl2、5%グリセロール、0.1%BSA、0.05%Tweenを含有する緩衝液中において、25℃でかつ振盪スピード1000rpmによって行った。FL-LRRK2へのNbの結合は、最初に、高親和性のLRRK2特異的なビオチン化Nb(Nb40またはNb42のいずれか)の手段によって、ストレプトアビジンコーティングされた(SA)バイオセンサー上にLRRK2をトラップすることによって行われた。ビオチン化Nbは、最初に、予め平衡化されたSAバイオセンサー上に5μg/mLの濃度でローディングされた。それから、このNbをローディングされたセンサーを用いて、50nM LRRK2溶液からFL-LRRK2をトラップした。最後に、このセンサーを用いて、Nbの全部のセットの会合(600sから1000s)および解離(600sから1000s)をモニタリングした(Nb40の結合を評価するためには、Nb42をトラップ剤とするセンサーが用いられ、全ての他のNbでは、Nb40がトラップ剤として用いられた)。全ての実験は三重で行った。平衡解離定数(KD)は、100sから800s(Nbの会合速度に依存する)での会合シグナル対Nb濃度をプロットすることからもたらされた用量反応曲線を、GraphPad Prism 7によってラングミュア方程式にフィットすることによって得られた。
【0135】
免疫染色
RAW264.7細胞(ATCC(登録商標)SC-6003(商標))を、peGFP-Nbコンストラクトによって、JetOPTIMUS(Polyplus tranfection)を用いて24hrにわたってトランスフェクションし、それからザイモサン粒子(Sigma Aldrich)によって30minにわたって刺激した(50mg/mL)。LRRK2の免疫染色は前に報告された通り行った[78]。手短には、細胞は4%(w/v)パラホルムアルデヒドによって30minにわたって固定され、-20℃における100%EtOHによる処置が後続した。サンプルはPBS/0.5%Triton X-100によって透過処理し、3%BSAによってブロッキングした。一次抗体(ウサギ抗LRRK2、c41-2、Abcamおよびマウス抗GFP、G6539、Sigma Aldrich)を3%BSAおよび0.5%Triton X-100を含有するPBSによって希釈し、4℃で一晩インキュベーションした。PBSによる3つの5min洗浄後に、蛍光標識二次抗体(抗ウサギ-Alexa fluor 568および抗マウス-Alexa fluor 488、Invitrogen)を一次抗体に類似の様式で追加し、1時間にわたって室温でインキュベーションした。細胞を1×PBSによって2回洗浄し、DAPI(SigmaAldrich)を有するFluroshield退色防止試薬によってマウントした。画像はZeiss LSM800共焦点レーザー走査顕微鏡によって取得された。z走査の画像分析はZeiss顕微鏡ソフトウェアZENを用いてされた。
【0136】
競合ELISA
ナノボディNb1、Nb6、またはNb23の結合およびMli-2または5'デオキシアデノシルコバラミン(AdoCbl)のいずれかの間の何らかのあり得る競合を評価するために、競合ELISA実験を行った。ELISA実験は上に記載されている通り類似に行った。ELISAプレートの底側にコーティングされた固定濃度のLRRK2を用い、450nMから0.2nMの範囲であるNb1、Nb6、またはNb23の1:4希釈系列を用いた。Nb結合の検出は前に記載された通りNbのC末端EPEAタグを用いて行い、Nbの見かけ上の親和性を反映する用量反応タイトレーション曲線をもたらした。このセットアップは、大過剰のATP競合阻害剤MLi-2(1μM)、非ATP競合的なVitB12誘導体5'デオキシアデノシルコバラミン(AdoCbl、250μM)、または過剰の対応するタグなしNb(9μm)のいずれかの不在下もしくは存在下のいずれかにおいて各希釈系列で行った。LRRK2がウェルの底側にコーティングされない「抗原なしコントロール」もまた包含された。吸光度シグナル(A405nm)を異なる時点で読み取り、0.5h(Nb6およびNb23)または10h(Nb1)におけるA405nmをNb濃度の関数でプロットした。Mli-2およびAdoCblの存在下における測定が三重でされた(二重でされたAdoCblの存在下におけるNb1を例外とする)。
【0137】
配列表
配列番号1~19:LRRK2ナノボディ配列(6×His/EPEA C末端タグなし)(表3)
>配列番号20:6×ヒスチジンおよびEPEA C末端タグ
>配列番号21:ヒトロイシンリッチリピートキナーゼ2アミノ酸配列(本明細書において用いられるQ17RV3_UniProtのT1647S変異体;2527aa)
>配列番号22:配列番号21(N末端Metなし)のヒトLRRK2発現に用いられたN末端SFタグ(flagおよびtwin-strep)。
ヒトLRRK2をコードするために本明細書において用いられたcDNAは[50]に最初に記載され、N末端SFタグ(配列番号22)を包含するコンストラクトは[1]に最初に記載された。
>配列番号23~79:配列番号1~19のNbのCDR1、CDR2、およびCDR3配列。表3でアノテーションされる通り、かつ表4で提供される通り。
【0138】
表3.LRRK2特異的なナノボディ配列.
例において提供されたナノボディは配列番号1~19の対応する配列とC末端6×His/EPEAタグとを含有する。CDRアノテーションは本明細書においては現行の分析(+表4)に従って標識されている(代替的なアノテーションについては図10をもまた見よ)。
【表3】
【0139】
表4.配列番号1~19について表3でアノテーションされたCDR1、CDR2、およびCDR3領域の配列.
【表4】
【0140】
本開示の側面
ヒトLRRK2に特異的に結合するロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)の非天然のアロステリック調節因子。
【0141】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、コバラミン誘導体を含まないもの。
【0142】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、LRRK2活性を阻害または増大させるもの。
【0143】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、LRRK2のATP触媒部位とは異なるヒトLRRK2の結合部位に特異的に結合するもの。
【0144】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、キナーゼドメインを排他的に含むわけではないヒトLRRK2の結合部位、またはキナーゼドメインとは異なる結合部位に特異的に結合するもの。
【0145】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、低分子、化学的な化合物、蛋白質、ペプチド、ペプチドミメティック、抗体、抗体ミメティック、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、または活性な抗体断片を含むもの。
【0146】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、ISVDを含み、前記のISVDが次の式(1)に従う4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を含むもの:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(1)。
【0147】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、ISVDを含み、ここでISVD中:
CDR1が、配列番号1から19のCDR1配列の群から選択される配列からなり、
CDR2が、配列番号1から19のCDR2配列の群から選択される配列からなり、
CDR3が、配列番号1から19のCDR3配列の群から選択される配列からなるもの。
【0148】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子であって、ISVDを含み、前記のISVDが、配列番号1から19の配列のいずれか、もしくはそれとの少なくとも85%アミノ酸同一性を有する配列、またはそのヒト化バリアントを含むもの。
【0149】
多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子であって、本明細書において規定される前記の調節因子の少なくとも1つを含むもの。
【0150】
サンプルのLRRK2蛋白質の量を検出するためのインビトロの方法であって:
前記のLRRK2特異的なISVDと、またはLRRK2特異的なISVDを含む前記の多重特異性の薬剤とサンプルを相互作用させること;および
前記の相互作用したLRRK2特異的なISVDの存在もしくは不在またはレベルを検出すること、
を含む、前記方法。
【0151】
医薬組成物であって、LRRK2のアロステリック調節因子、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、LRRK2のアロステリック調節因子もしくは多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする核酸分子、または前記の核酸分子を含むベクターを含むもの。
【0152】
前記の医薬組成物であって、さらに、ATP競合的なLRRK2キナーゼ阻害剤である化合物を含むもの。
【0153】
医薬としての使用のための、または診断薬としてのもしくはインビボイメージングのための使用のための、前記のLRRK2のアロステリック調節因子、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、LRRK2のアロステリック調節因子もしくは多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする核酸分子、前記の核酸分子を含むベクター、または医薬組成物。
【0154】
LRRK2に関係する障害の処置における使用のための、具体的にはパーキンソン病の処置における使用のための、前記のLRRK2のアロステリック調節因子、多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子、LRRK2のアロステリック調節因子もしくは多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする核酸分子、前記の核酸分子を含むベクター、または医薬組成物。
【0155】
生物学的サンプルのヒトLRRK2蛋白質の局在および分布の検出のためのインビトロの方法であって:
前記のLRRK2特異的なISVD、またはLRRK2特異的なISVDを含む多重特異性の薬剤と生物学的サンプルを反応させるステップ、ならびに
前記の生物学的サンプルの前記のLRRK2特異的なISVDの局在および分布を検出するステップ、
を含む、前記方法。
【0156】
前記のLRRK2のアロステリック調節因子または前記の多重特異性のLRRK2のアロステリック調節因子をコードする核酸分子。
【0157】
前記の核酸分子を含むベクター、好ましくはウイルスベクター、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクター。
【0158】
参照
【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表5-4】

【表5-5】

【表5-6】

【表5-7】

【表5-8】
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14-1】
図14-2】
図15
図16-1】
図16-2】
図17
【配列表】
2023514654000001.app
【国際調査報告】