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特表2023-514660生物学的物質を単離するための装置、システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】生物学的物質を単離するための装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538263
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 SG2021050085
(87)【国際公開番号】W WO2021173075
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/982,259
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244377
【氏名又は名称】ワン バイオメッド ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】レイズマン,ベンジャミン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カハット,エスピール
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミー キュゥン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB20
4B029HA09
(57)【要約】
試料から生物学的物質を単離するための装置が、ハウジング、スライダー、及び乾燥試薬カプセルを含む。ハウジングは、複数のコンパートメント及び複数の流体チャネルを画定する。各コンパートメントは、それぞれの流体チャネルに流体的に接続されるように構成され、各流体チャネルは、ハウジング上に配置されたトラックで終わるそれぞれの端部を含む。スライダーは、トラックに沿って可動であり、そこを通って延びる複数の接続チャネルを含む。接続チャネルのうち選択されたチャネルは、トラックに沿ったスライダーの位置に基づき、流体チャネルのうち選択されたチャネルの端部に接続するように構成される。乾燥試薬カプセルは、ハウジングに取り付けられるように構成され、試料と混ぜ合わせるための少なくとも1つの乾燥試薬を含む。乾燥試薬カプセルは、in-situでそれぞれの流体チャネルに流体的に接続されるようにさらに構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンパートメント及び複数の流体チャネルを画定するハウジングであって、各コンパートメントは、それぞれの流体チャネルに流体的に接続されるように構成され、各流体チャネルは、前記ハウジング上に配置されたトラックで終わるそれぞれの端部を含む、ハウジングと、
前記トラックに沿って可動なスライダーであって、前記スライダーは、そこを通って延びる複数の接続チャネルを含み、前記接続チャネルのうち選択されたチャネルは、前記トラックに沿った前記スライダーの位置に基づき、前記流体チャネルのうち選択されたチャネルの端部に接続するように構成される、スライダーと、
前記ハウジングに取り付けられるように構成された乾燥試薬カプセルであって、前記乾燥試薬カプセルは、試料と混ぜ合わせるための少なくとも1つの乾燥試薬を含み、前記乾燥試薬カプセルは、in-situでそれぞれの流体チャネルに流体的に接続されるようにさらに構成されている、乾燥試薬カプセルと、
を含む、試料から生物学的物質を単離するための装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、第2のハウジング部材に確実に接合される第1のハウジング部材を含み、前記第1のハウジング部材は、前記それぞれの流体チャネルを形成するように配置された溝を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のコンパートメントは、前記試料を受けるように構成された試料コンパートメント、複数の液体試薬コンパートメント、及び廃棄物コンパートメントを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記試料コンパートメント及び前記液体試薬コンパートメントの各々が、前記コンパートメントへの又は前記コンパートメントからの流体の流れを制御するために空気圧源に接続されるように構成されたそれぞれの入口を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記液体試薬コンパートメントのうち1つに配置された第1の空気圧ベントと、前記廃棄物コンパートメントに配置された第2の空気圧ベントとをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の液体試薬コンパートメントは、それぞれの液体試薬で予め充填されている、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記スライダーは、第1の位置において、水和緩衝液を含有する第1の液体試薬コンパートメントを、第1の乾燥試薬を含有する前記乾燥試薬カプセルの第1のチャンバーに接続し、前記水和緩衝液を前記第1の乾燥試薬と混ぜ合わせて第1の溶液を形成するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記スライダーは、第2の位置において、前記第1の液体試薬コンパートメントを、溶解緩衝液を含有する第2の液体試薬コンパートメントに接続し、前記第1の溶液を前記溶解緩衝液と混ぜ合わせて第2の溶液を形成するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記スライダーは、第3の位置において、
前記第2の液体試薬コンパートメントを、第2の乾燥試薬を含有する前記乾燥試薬カプセルの第2のチャンバーに接続し、前記第2の溶液を前記第2の乾燥試薬と混ぜ合わせて第3の溶液を形成し、さらに、
前記乾燥試薬カプセルの第2のチャンバーを前記試料コンパートメントに接続し、前記第3の溶液を前記試料と混ぜ合わせて第4の溶液を形成する
ように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記流体チャネルは結合チャネルを含み、前記スライダーは、第4の位置において、前記試料コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記第4の溶液から前記生物学的物質を抽出し且つ前記抽出した生物学的物質を前記結合チャネルの表面に結合させるために、所定の期間、前記結合チャネルにおいて前記第4の溶液を貯蔵するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スライダーは、第5の位置において、
第1の洗浄緩衝液を含有する第3の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を洗浄し、さらに
前記生物学的物質を有していない第1の廃液を前記廃棄物コンパートメントに廃棄するために、前記結合チャネルを前記廃棄物コンパートメントに接続する
ように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記スライダーは、第6の位置において、
第2の洗浄緩衝液を含有する第4の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を洗浄し、さらに
前記生物学的物質を有していない第2の廃液を前記廃棄物コンパートメントに廃棄するために、前記結合チャネルを前記廃棄物コンパートメントに接続する
ように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記スライダーは、第7の位置において、
溶出緩衝液を含有する第5の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面から前記生物学的物質を溶出し、さらに、
前記溶出した生物学的物質を回収するために、前記結合チャネルを出口に接続する
ように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記スライダーは、第1の位置において、
溶解緩衝液を含有する第1の液体試薬コンパートメントを、前記少なくとも1つの乾燥試薬を含有する前記乾燥試薬カプセルのチャンバーに接続し、前記溶解緩衝液を前記少なくとも1つの乾燥試薬と混ぜ合わせて試薬溶液を形成し、さらに
前記乾燥試薬カプセルのチャンバーを前記試料コンパートメントに接続し、前記試薬溶液を前記試料と混ぜ合わせて試料溶液を形成する
ように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項15】
前記流体チャネルは結合チャネルを含み、前記スライダーは、第2の位置において、前記試料コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記試料溶液から前記生物学的物質を抽出し且つ前記抽出した生物学的物質を前記結合チャネルの表面に結合させるために、所定の期間、前記結合チャネルにおいて前記試料溶液を貯蔵するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記スライダーは、第3の位置において、
第1の洗浄緩衝液を含有する第2の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を洗浄し、さらに、
前記生物学的物質を有していない第1の廃液を前記廃棄物コンパートメントに廃棄するために、前記結合チャネルを前記廃棄物コンパートメントに接続する
ように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記スライダーは、第4の位置において、
第2の洗浄緩衝液を含有する第3の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を洗浄し、さらに
前記生物学的物質を有していない第2の廃液を前記廃棄物コンパートメントに廃棄するために、前記結合チャネルを前記廃棄物コンパートメントに接続する
ように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記スライダーは、第5の位置において、
第3の洗浄緩衝液を含有する第4の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を洗浄し、さらに
前記生物学的物質を有していない第3の廃液を前記廃棄物コンパートメントに廃棄するために、前記結合チャネルを前記廃棄物コンパートメントに接続する
ように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記スライダーは、第6の位置において、
溶出緩衝液を含有する第5の液体試薬コンパートメントを前記結合チャネルに接続して、前記結合チャネルの表面から前記生物学的物質を溶出し、さらに
前記溶出した生物学的物質を回収するために、前記結合チャネルを出口に接続する
ように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの乾燥試薬は、前記生物学的物質に結合するように選択された架橋剤を含有する凍結乾燥ビーズを含み、前記結合チャネルの表面は、前記架橋剤に結合するように選択された官能基で被覆されている、請求項10又は15に記載の装置。
【請求項21】
前記生物学的物質は核酸を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
請求項3に記載の装置を受けるように構成された容器と、
前記試料コンパートメント及び前記液体試薬コンパートメントのうち選択されたコンパートメントへの及びそこからの流体の流れを制御するように構成された圧力源と、
前記トラックに沿って所定の位置まで前記装置のスライダーを動かすように構成されたアクチュエータと、
を含む自動化された生物学的物質抽出システム。
【請求項23】
前記乾燥試薬カプセルに力を及ぼし、前記カプセルの少なくとも1つのチャンバーを覆うシールを破って、in-situで前記カプセルをそれぞれの流体チャネルに流体的に接続するように構成された機構をさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記生物学的物質は核酸を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
試料から生物学的物質を単離する方法であって、
請求項6に記載の装置の前記試料コンパートメント内に前記試料を配置するステップと、
前記乾燥試薬カプセルの少なくとも1つのチャンバーを覆うシールを破って、in-situで前記カプセルをそれぞれの流体チャネルに流体的に接続するステップと、
前記トラックに沿って所定の位置まで前記スライダーを動かして、
前記液体試薬及び前記少なくとも1つの乾燥試薬を前記試料と混ぜ合わせ、前記試料から前記生物学的物質を抽出し、
前記抽出した生物学的物質を、前記装置内に配置された結合チャネルの表面に結合させ、
前記結合チャネルの表面に結合した前記生物学的物質を精製し、さらに
前記精製した生物学的物質を溶出する
ステップと、
を含む方法。
【請求項26】
前記生物学的物質は核酸を含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、排他的ではなく、核酸等の生物学的物質を単離するための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の単離は、多くの現代のゲノミクス技術及び応用に対して行われる必要がある第1のステップである。細胞の溶解後、PCR及び配列決定等、後続の下流の処理及び分析のために、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を単離及び精製する必要がある。
【0003】
自動化された核酸抽出システムは、基礎研究並びに臨床検査におけるワークフローを改善し、ばらつきを減少させる可能性がある。多くの自動化されたシステムが市販されているけれども、そのシステムのほとんどが、試料及びバイオ試薬のピペット操作及び分注を含む自動液体処理技術に基づいており、これらは、交差汚染を起こしやすく、エンドユーザによる事前及び事後洗浄等の積極的なメンテナンスを必要とすることがある。
【0004】
従って、上記の問題のうち少なくとも一部に取り組むことができる装置、システム、及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、試料から生物学的物質を単離するための装置を提供する。当該装置は、複数のコンパートメント及び複数の流体チャネルを画定するハウジングであって、各コンパートメントは、それぞれの流体チャネルに流体的に接続されるように構成され、各流体チャネルは、ハウジング上に配置されたトラックで終わるそれぞれの端部を含む、ハウジング;トラックに沿って可動なスライダーであって、スライダーは、そこを通って延びる複数の接続チャネルを含み、接続チャネルのうち選択されたチャネルは、トラックに沿ったスライダーの位置に基づき、流体チャネルのうち選択されたチャネルの端部に接続するように構成される、スライダー;及び、ハウジングに取り付けられるように構成された乾燥試薬カプセルであって、乾燥試薬カプセルは、試料と混ぜ合わせるための少なくとも1つの乾燥試薬を含み、乾燥試薬カプセルは、in-situでそれぞれの流体チャネルに流体的に接続されるようにさらに構成されている、乾燥試薬カプセル;を含む。
【0006】
ハウジングは、第2のハウジング部材に確実に接合される第1のハウジング部材を含んでもよく、第1のハウジング部材は、それぞれの流体チャネルを形成するように配置された溝を含んでもよい。
【0007】
複数のコンパートメントは、試料を受けるように構成された試料コンパートメント、複数の液体試薬コンパートメント、及び廃棄物コンパートメントを含んでもよい。
【0008】
試料コンパートメント及び液体試薬コンパートメントの各々が、該コンパートメントへの又は該コンパートメントからの流体の流れを制御するために空気圧源に接続されるように構成されたそれぞれの入口を含んでもよい。
【0009】
当該装置は、液体試薬コンパートメントのうち1つに配置された第1の空気圧ベントと、廃棄物コンパートメントに配置された第2の空気圧ベントとをさらに含んでもよい。
【0010】
複数の液体試薬コンパートメントは、それぞれの液体試薬で予め充填されてもよい。
【0011】
スライダーは、第1の位置において、水和緩衝液を含有する第1の液体試薬コンパートメントを、第1の乾燥試薬を含有する乾燥試薬カプセルの第1のチャンバーに接続し、水和緩衝液を第1の乾燥試薬と混ぜ合わせて第1の溶液を形成するように構成されてもよい。
【0012】
スライダーは、第2の位置において、第1の液体試薬コンパートメントを、溶解緩衝液を含有する第2の液体試薬コンパートメントに接続し、第1の溶液を溶解緩衝液と混ぜ合わせて第2の溶液を形成するように構成されてもよい。
【0013】
スライダーは、第3の位置において:
第2の液体試薬コンパートメントを、第2の乾燥試薬を含有する乾燥試薬カプセルの第2のチャンバーに接続し、第2の溶液を第2の乾燥試薬と混ぜ合わせて第3の溶液を形成し;さらに、
乾燥試薬カプセルの第2のチャンバーを試料コンパートメントに接続し、第3の溶液を試料と混ぜ合わせて第4の溶液を形成する;
ように構成されてもよい。
【0014】
流体チャネルは結合チャネルを含んでもよく、スライダーは、第4の位置において、試料コンパートメントを結合チャネルに接続して、第4の溶液から生物学的物質を抽出し且つ抽出した生物学的物質を結合チャネルの表面に結合させるために、所定の期間、結合チャネルにおいて第4の溶液を貯蔵するように構成されてもよい。
【0015】
スライダーは、第5の位置において:
第1の洗浄緩衝液を含有する第3の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を洗浄し;さらに
生物学的物質を有していない第1の廃液を廃棄物コンパートメントに廃棄するために、結合チャネルを廃棄物コンパートメントに接続する;
ように構成されてもよい。
【0016】
スライダーは、第6の位置において:
第2の洗浄緩衝液を含有する第4の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を洗浄し;さらに
生物学的物質を有していない第2の廃液を廃棄物コンパートメントに廃棄するために、結合チャネルを廃棄物コンパートメントに接続する;
ように構成されてもよい。
【0017】
スライダーは、第7の位置において:
溶出緩衝液を含有する第5の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面から生物学的物質を溶出し;さらに、
溶出した生物学的物質を回収するために、結合チャネルを出口に接続する;
ように構成されてもよい。
【0018】
スライダーは、代替の第1の位置において:
溶解緩衝液を含有する第1の液体試薬コンパートメントを、少なくとも1つの乾燥試薬を含有する乾燥試薬カプセルのチャンバーに接続し、溶解緩衝液を少なくとも1つの乾燥試薬と混ぜ合わせて試薬溶液を形成し;さらに
乾燥試薬カプセルのチャンバーを試料コンパートメントに接続し、試薬溶液を試料と混ぜ合わせて試料溶液を形成する;
ように構成されてもよい。
【0019】
流体チャネルは結合チャネルを含んでもよく、スライダーは、代替の第2の位置において、試料コンパートメントを結合チャネルに接続して、試料溶液から生物学的物質を抽出し且つ抽出した生物学的物質を結合チャネルの表面に結合させるために、所定の期間、結合チャネルにおいて試料溶液を貯蔵するように構成されてもよい。
【0020】
スライダーは、代替の第3の位置において:
第1の洗浄緩衝液を含有する第2の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を洗浄し;さらに、
生物学的物質を有していない第1の廃液を廃棄物コンパートメントに廃棄するために、結合チャネルを廃棄物コンパートメントに接続する;
ように構成されてもよい。
【0021】
スライダーは、代替の第4の位置において:
第2の洗浄緩衝液を含有する第3の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を洗浄し;さらに
生物学的物質を有していない第2の廃液を廃棄物コンパートメントに廃棄するために、結合チャネルを廃棄物コンパートメントに接続する;
ように構成されてもよい。
【0022】
スライダーは、代替の第5の位置において:
第3の洗浄緩衝液を含有する第4の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を洗浄し;さらに
生物学的物質を有していない第3の廃液を廃棄物コンパートメントに廃棄するために、結合チャネルを廃棄物コンパートメントに接続する;
ように構成されてもよい。
【0023】
スライダーは、代替の第6の位置において:
溶出緩衝液を含有する第5の液体試薬コンパートメントを結合チャネルに接続して、結合チャネルの表面から生物学的物質を溶出し;さらに
溶出した生物学的物質を回収するために、結合チャネルを出口に接続する;
ように構成されてもよい。
【0024】
少なくとも1つの乾燥試薬は、生物学的物質に結合するように選択された架橋剤を含有する凍結乾燥ビーズを含んでもよく、結合チャネルの表面は、架橋剤に結合するように選択された官能基で被覆されてもよい。
【0025】
生物学的物質は核酸を含んでもよい。
【0026】
本開示の別の態様は、自動化された生物学的物質抽出システムを提供し、当該システムは:
上記の装置を受けるように構成された容器;
試料コンパートメント及び液体試薬コンパートメントのうち選択されたコンパートメントへの及びそこからの流体の流れを制御するように構成された圧力源;並びに
トラックに沿って所定の位置まで装置のスライダーを動かすように構成されたアクチュエータ;
を含む。
【0027】
乾燥試薬カプセルに力を及ぼし、カプセルの少なくとも1つのチャンバーを覆うシールを破って、in-situでカプセルをそれぞれの流体チャネルに流体的に接続するように構成された機構を当該システムはさらに含んでもよい。
【0028】
生物学的物質は核酸を含んでもよい。
【0029】
本開示の別の態様は、試料から生物学的物質を単離する方法を提供し、当該方法は:
上記の装置の試料コンパートメント内に試料を配置するステップ;
乾燥試薬カプセルの少なくとも1つのチャンバーを覆うシールを破って、in-situでカプセルをそれぞれの流体チャネルに流体的に接続するステップ;
トラックに沿って所定の位置までスライダーを動かして:
液体試薬及び少なくとも1つの乾燥試薬を試料と混ぜ合わせ、試料から生物学的物質を抽出し;
抽出した生物学的物質を、装置内に配置された結合チャネルの表面に結合させ;
結合チャネルの表面に結合した生物学的物質を精製し;さらに
精製した生物学的物質を溶出する;
ステップ;
を含む。
【0030】
生物学的物質は核酸を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
実施形態は、単なる例として且つ図面と組み合わせて以下に記載された説明から、当業者にはより良く理解され、容易に明らかになる。
図1A】例となる実施形態に従った、生物学的物質を単離するための装置の上面斜視図である。
図1B図1Aの装置の底面斜視図である。
図1C図1Aの装置の分解組立上面図である。
図1D図1Aの装置の分解組立底面図である。
図2A図1Aの装置の第1のハウジング部材の斜視図である。
図2B図2Aの第1のハウジング部材の上面図である。
図2C図2Aの第1のハウジング部材の第1の底面図である。
図2D図2Aの第1のハウジング部材の第2の底面図である。
図2E図2Aの第1のハウジング部材の第3の底面図である。
図3A図1Aの装置の第2のハウジング部材の上面図である。
図3B図3Aの第2のハウジング部材の底面図である。
図4図1Aの装置の乾燥剤カプセルの様々な図である。
図5図1Aの装置のスライダーの上面図及び底面図である。
図6A】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6B1】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6B2】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6C】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6D】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6E】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6F】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6G】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6H】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6I】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図6J】トラックに沿った図5のスライダーの異なる位置及びそれぞれの流体の流れを示した図である。
図7図7Aは、別の例となる実施形態に従った、生物学的物質を単離するための装置の上面斜視図であり、図7Bは、図7Aの装置の底面斜視図である。
図8図8Aは、図7Aの装置の第1のハウジング部材の斜視図であり、図8Bは、図8Aの第1のハウジング部材の底面図である。
図9図7Aの装置の第2のハウジング部材の上面斜視図である。
図10図7Aの装置のスライダーの底面図である。
図11図7Aの装置の乾燥剤カプセルの様々な図である。
図12】例となる実施形態に従った、試料から生物学的物質を単離する方法を例示した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、閉鎖系において試料から、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)のような核酸等、生物学的物質の抽出及び精製を行うための装置を提供する。当該装置の一例は、スライドバルブを有する使い捨てカートリッジである。試薬流体は、任意のあり得る流体/流体蒸気から凍結乾燥ビーズを分離するホイルシールカプセルと共に、オンボードで貯蔵される。カートリッジが機器に搭載されると、この機器はスライドバルブを作動させて、特有のチャネルを試薬ウェルからの出口と整列させる。バルブは、移動の開始及び終了時に「オフ」位置を有するように構成される。エアーノズルが、各試薬ウェル内に置かれ、外部の圧力源/アクチュエータに接続されて、流体の流れを制御している。ベントエアーノズルは、液体試薬の漏出を防ぐために疎水性フィルタでシールされ、次に、デッドエンドチムニーに対してホイルでシールされ、いかなる流体も保護疎水性ベントを濡らさないよう防いでいる。機器は、カートリッジが挿入されると、このホイルに穴をあける。ホイルシールカプセルは、凍結乾燥ビーズ又は乾燥試薬を含有している。カプセルは、圧入ポストによってカートリッジ上で保持される。機器が下方に作動するに従い、カプセルの底部ホイルは、ドラフトポストによって穴があけられ、ポストは、次に、垂直チャネル上でシールする。これらは、流体がカプセル内に流入するのを可能にする位置にスライドバルブが動かされるまで、スライドバルブによって分離される。
【0033】
当該装置は、生物学的試料、環境試料等の試料からの核酸の抽出及び単離を処理するように構成される。カートリッジは、試料から核酸を抽出するために試薬を試料と混ぜ合わせて、流体チャネルにおいて核酸を結合/単離させ、さらに核酸を溶出するように構成される。
【0034】
一例において、流体チャネルは、架橋剤(例えば、ホモ二官能性イミドエステル等)を使用して抽出された核酸を捕捉するために、化学官能基(例えば、アミノ(-NH)基等)で被覆される。当該装置は、核酸が表面に結合されている間に、細胞及びタンパク質残基、任意の他の汚染物質を洗い流す、及び、オンボードの廃棄物ウェル内に液体廃棄物を貯蔵するように構成される。当該装置は、流体チャネルから核酸を放出する溶出緩衝液(例えば、pH>10.6の緩衝溶液等)で流体チャネルを処理することによって、精製された核酸を溶出するように構成される。次に、溶出された核酸は、エッペンドルフチューブ等の外部容器に分注されて、下流のプロセス及び/又は分析に使用されることになる。
【0035】
以下の説明において、当該装置及び方法は、試料からの核酸の単離に関連して記載されるが、装置の構造及びその作動原理は、他の生物学的物質の単離に適用され得るということが正しく理解されることになる。
【0036】
図1A~1Dは、例となる実施形態に従った、核酸(NA)抽出カートリッジ1の形態の、生物学的物質を単離するための装置の様々な図を示している。NA抽出カートリッジ1は、第1のハウジング部材10(以下、本体10とも呼ばれる)、第2のハウジング部材20(以下、蓋板20とも呼ばれる)、スライダー30(以下、スライドバルブ30とも呼ばれる)、及び乾燥試薬カプセル40を含む。これらの部品は、典型的には、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(HDPE又はLDPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、環状オレフィン共重合体(COC)、熱可塑性エラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、SMMA、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等を含むプラスチックで作られるが、これらに限定されない。
【0037】
本体10は、試料コンパートメント11と、試薬リザーバ12と、廃棄物コンパートメント13とを含む。流体密封の様式で試料コンパートメント11をシールするように構成されたキャップ14が、ヒンジ16を介してカートリッジ1の本体10に取り付けられている。試薬リザーバ12の試薬コンパートメントは、(以下においてさらに詳細に記載されるように)試料からNA分子を抽出及び精製するための様々な液体試薬を含有し、ホイル60でシールされている。ホイル60は、典型的には、マイラーホイル及び金属化プラスチックフィルム等、ヒートシール性の防湿フィルムである湿気不透過性の膜を含む。出口50は、溶出されたNAをエッペンドルフチューブ等の容器に分注するように構成されている。
【0038】
図6A~6Jを参照して以下において論じられるように、スライドバルブ30は、異なる位置までスライドバルブチャネル又はトラック15に沿って横方向に動いて、NA抽出/精製プロセスの異なる段階に対する流体接続を可能にすることができる。
【0039】
NA結合チャネル18が、本体10のNA結合溝17と、蓋板20の対応するNA結合リッジ22とによって形成される。チャネルは、メインカートリッジ10の底部側に蓋板20を結合することによって形成される。化学的(接着)結合、溶剤結合、レーザー溶接、超音波溶接等の様々な結合方法を使用して、2つの部品を結合することができる。代替の実施形態において、NA結合チャネル18は、本体10又は蓋板20のいずれかに形成されてもよい。
【0040】
ベント式吸気口は、液体試薬の漏出を防ぐための疎水性フィルタを含むそれぞれの液体不透過性膜70-72で覆われ、次に、貯蔵の間にいかなる流体も保護疎水性ベントを濡らさないよう防ぐために、ホイル63、64でシールされる。この機器は、カートリッジ1が挿入されると、ホイル63、64に穴をあける。
【0041】
図1A~1Dに示されている実施形態において、乾燥試薬カプセル40は、2つのカラムを有して、凍結乾燥ビーズを貯蔵している。乾燥試薬カプセル40の底部側及び上部側は、それぞれホイル61及び62で覆われて、貯蔵の間に乾燥試薬を保護するための防湿を提供している。カートリッジが機器に挿入されると、機器は下方に作動し、カプセル40の底部ホイル61はポストによって穴があけられ、ポストは次に垂直チャネル上でシールする。
【0042】
図2A~2Eは、NA抽出カートリッジ1の第1のハウジング部材又は本体10の様々な図を示し、図3A~3Bは、カートリッジ1の第2のハウジング部材又は蓋板20の様々な図を示している。試薬リザーバ12は、予め充填される様々な液体試薬を含有する複数のコンパートメント又はウェル12a~12fに分割される。一例において、それぞれ、コンパートメント12aは乾燥ビーズに対する水和緩衝液を含有し、コンパートメント12bは溶解緩衝液を含有し、コンパートメント12cはDNaseを含有し、コンパートメント12dは洗浄緩衝液1を含有し、コンパートメント12eは洗浄緩衝液2を含有し、さらに、コンパートメント12fは溶出緩衝液を含有している。用途によっては、コンパートメント12cは空で使用中ではないことがあるが、エンドユーザは任意的に所望の試薬を加えることができるということが正しく理解されることになる。
【0043】
図2A及び2Eにおいて示されているように、エアーノズル80aが、試料コンパートメント11内に配置され、エアーノズル80b~80fが、試薬リザーバ12の各試薬ウェル内に置かれている。エアーノズル80a~80fは、本体10の上部側から底部側まで、次に、蓋板20の上部側から蓋板20の底部側まで、抽出カートリッジ1を貫通している(図3A及び3B)。図面には示されていないけれども、エアーノズル80a~80fは、関連するウェルへの又は関連するウェルからの流体の流れを制御するために、シリンジポンプ又は適した空気圧源等、外部の圧力源/アクチュエータに接続され、それによって、液体を試料コンパートメント、試薬コンパートメント、及びNA結合チャネルまで押すか又はそこから引いている。さらに、エアーベント81aが試薬リザーバ12の試薬ウェルの1つに配置され、別のエアーベント81bが廃棄物コンパートメント13に配置されて、それぞれ、流体移動を可能にしている。
【0044】
また、図1を参照して記載されるように、中空ポストの形態の垂直チャネル41a~41cが、乾燥試薬カプセル40と接続するために本体10上に設けられている。カートリッジ1が機器に挿入されると、この機器は下方に作動し、カプセル40の底部ホイルは、これらの中空ポストによって穴があけられ、これらのポストは、次に、垂直チャネル41a~41c上でシールする。言い換えると、例となる実施形態において乾燥試薬カプセル40は、in-situでそれぞれの流体チャネルに流体的に接続される。
【0045】
図4を参照すると、この例における乾燥試薬カプセル40はチャンバー51、52を含み、各々が、凍結乾燥ビーズの形態のそれぞれの乾燥試薬を含有するように構成されている。異なる数のチャンバーが、代替の実施形態では使用されてもよい。さらに、孔53、54、及び55が、それぞれ垂直チャネル41a、41b、及び41cに接続するために、チャンバー51、52の底部に設けられている。
【0046】
垂直チャネルの配置は、図2B及び2Cにおいて示されている。複数の垂直チャネル90a~90yが、本体10の上部側から底部まで及んでいる。加えて、図2Dにおいて示されているように、複数の水平溝100a~100lが本体10の底部側に画定されており、水平溝100m(図2B)が本体10の上部側に画定されている。水平の流体チャネルが、本体10の底部側に蓋板20を結合することによって形成される。各溝100a~100mは、垂直チャネル90a~90kのうち選択されたチャネルを、垂直チャネル90l~90y及びNA出口50のうち選択された1つに接続するように構成されている。例えば、溝100aは、垂直チャネル90aを垂直チャネル90lに接続している。
【0047】
また、図2A~2Eから、試料コンパートメント11及び試薬リザーバの各コンパートメントは、それぞれの流体チャネルに流体的に接続されるように構成され、各流体チャネルは、本体10上に配置された溝又はトラック15で終わるそれぞれの端部を有していることが分かる。例えば、垂直チャネル90l~90yは、スライドバルブ30がトラック15内に配置されているとき、スライドバルブ30の下に位置している。
【0048】
図5は、例となる実施形態に従ったスライドバルブ30の様々な図を示している。スライドバルブ30は、複数の垂直チャネル(90l~90y)と整列する複数の異なるチャネル120を有している。スライドバルブ30は、ホルダー121により引っ張ることによって、トラック15の一端から他端へスライドすることができる。例えば、自動化されたシステムでは、トラック15に沿ったスライダー30の位置に基づき、接続チャネル120のうち選択されたチャネルが、水平溝100a~100lによって形成された流体チャネルのうち選択されたチャネルの端部に接続することができるように、アクチュエータを使用して、スライドバルブ30を正確な距離にわたって駆動することができる。
【0049】
図6A~6Jを参照して、核酸抽出及び精製のためのカートリッジ1の例となる動作が次に記載される。試料が、試料コンパートメント11に配置される。この動作では、エアーノズル80a~80f(図3A~3B)に接続された外部の空気圧/圧力源を使用して、流体の流れをもたらすことができる。当該装置を、例えば試薬の適切な変更によって、他の生物学的物質の単離に使用することもできるということが正しく理解されることになる。
【0050】
図6A(位置A)では、スライダー又はスライドバルブ30は、全てのチャネルが閉じられている最初の位置又は基準の位置にある。例えば、カートリッジ1は、スライダー30がこの位置にある状態で機器又はシステムに挿入されてもよい。この位置から、スライダー30を、一連の別々のステップにおいて他の位置まで動かすことができる。
【0051】
後続の動作の間、空気圧が、エアーノズル80a~80fを介して試薬ウェル又はコンパートメントに等しく印加される。しかし、液体/試薬は、スライドバルブ30を動かすことによって開いた特定の流体チャネルに沿ってのみ流れる。
【0052】
図6B1及び6B2(位置B1及びB2)において、スライドバルブ30は、流体通路がコンパートメント12aと乾燥試薬チャンバー51との間に形成されるように、垂直チャネル90lと垂直チャネル90mとの間にチャネルを作るように位置している。水和緩衝液が、コンパートメント12aから、(垂直チャネル90a及び垂直チャネル90lに接続された)水平チャネル100a、(垂直チャネル90m及び垂直チャネル90bに接続された)水平チャネル100b、及び乾燥試薬カプセルチャンバー51の底部の孔53(図4)を通って乾燥試薬チャンバー51まで押されて、チャンバー51内の凍結乾燥ビーズの形態の第1の乾燥試薬(好ましくは、ジメチルアジピミダート(DMA)又は適したホモ二官能性イミドエステル架橋剤)を溶解し、次に、コンパートメント12aまで引き戻される。例えば、水和緩衝液がチャンバー51に到達すると、エアーノズル80bを介して外部の圧力源によって印加される正及び負の圧力の組み合わせによって、溶液がコンパートメント12aまで引き出される前に、水和緩衝液と乾燥試薬との混合が生じ得る。
【0053】
図6C(位置C)において、スライドバルブ30は、流体通路がコンパートメント12aとコンパートメント12bとの間に形成されるように、垂直チャネル90lと垂直チャネル90nとの間にチャネルを作るように位置している。架橋剤溶液が、(垂直チャネル90a及び垂直チャネル90lに接続された)水平チャネル100a及び(垂直チャネル90c及び垂直チャネル90nに接続された)水平チャネル100cを通って、コンパートメント12aから、溶解緩衝液を含有するコンパートメント12bまで押されて、溶解緩衝液と混ぜ合わされる。外部圧力が、エアーノズル80bを介して提供され、エアーベント81aが、コンパートメント12bの内側の圧力を解放することによって流体移動を促進することができる。
【0054】
図6D(位置D)において、スライドバルブ30は、流体通路がコンパートメント12bと、乾燥試薬チャンバー52と、試料コンパートメント11との間に形成されるように、垂直チャネル90nと90oとの間、及び垂直チャネル90pと90qとの間にチャネルを作るように位置している。コンパートメント12bからの架橋剤溶液+溶解緩衝液が、(垂直チャネル90c及び垂直チャネル90nに接続された)水平チャネル100c、(垂直チャネル90o及び垂直チャネル90dに接続された)水平チャネル100d、及び乾燥試薬カプセルチャンバー52の底部の孔54(図4)を通って乾燥試薬チャンバー52まで押されて、凍結乾燥ビーズの形態の第2の乾燥試薬(好ましくは、プロテイナーゼK)を溶解する。次に、混合溶液は、乾燥試薬チャンバー52から、孔55(図4)、(垂直チャネル90e及び垂直チャネル90pに接続された)水平チャネル100e、及び(垂直チャネル90f及び垂直チャネル90qに接続された)水平チャネル100fを通って試料コンパートメント11まで押されて、試料コンパートメント11に含有される試料と混ぜ合わされる。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80aを介して印加される。
【0055】
図6E(位置E)において、スライドバルブ30は、流体通路が試料コンパートメント11とNA結合チャネル18との間に形成されるように、垂直チャネル90qと90rとの間及び垂直チャネル90sと90tとの間にチャネルを作るように位置している。溶解緩衝液+試料の混合溶液が、試料コンパートメント11から、(垂直チャネル90f及び垂直チャネル90qに接続された)水平チャネル100fを通って、次に垂直チャネル90rを介してNA結合チャネル18まで押される。NA結合チャネル18は、垂直チャネル90sを介して、次に(垂直チャネル90t及び廃棄物コンパートメント13に接続された)水平チャネル100gを通って、廃棄物コンパートメント13に接続される。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80aを介して印加される。エアーベント81bが、試料コンパートメント11の内側の圧力を解放することによって流体移動を促進する。次に、外部の圧力源のスイッチがオフにされ、従って、液体は廃棄物コンパートメント13まで動くことなく、試料溶液は、所定の時間(例えば、10分等)インキュベートされて、細胞を溶解し、さらに、抽出されたNAをNA結合チャネル18の表面に結合させる。チャネル18を、任意的に、カートリッジ1の下に位置し且つカートリッジ1が挿入される機器が提供されたヒーターによって加熱することができる。インキュベーション期間は、代替の実施形態において、例えば試料の物質に応じて変わってもよい。
【0056】
図6F(位置F)において、スライドバルブ30は、流体通路が試薬コンパートメント12cと、NA結合チャネル18と、廃棄物コンパートメント13との間に形成されるように、垂直チャネル90uと90rとの間及び垂直チャネル90sと90tとの間にチャネルを作るように位置している。試薬コンパートメント12cからの液体試薬(DNase)が、(垂直チャネル90g及び垂直チャネル90uに接続された)水平チャネル100hを通って、次に垂直チャネル90rを介してNA結合チャネル18まで押されて、表面に結合したNAと反応する。残りの試料溶液(溶解試料からNA分子を差し引いたもの)が、NA結合チャネル18から、垂直チャネル90sを介して、次に(垂直チャネル90t及び廃棄物ウェル13に接続された)水平チャネル100gを通って廃棄物コンパートメント13まで押される。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80cを介して印加される。一部の実施形態において、DNase処理の使用は任意であってもよく、スキップすることができる。
【0057】
図6G(位置G)において、スライドバルブ30は、流体通路が試薬コンパートメント12dと、NA結合チャネル18と、廃棄物コンパートメント13との間に形成されるように、垂直チャネル90vと90rとの間及び垂直チャネル90sと90tとの間にチャネルを作るように位置している。第1の洗浄緩衝液が、試薬コンパートメント12dから、(垂直チャネル90h及び垂直チャネル90vに接続された)水平チャネル100iを通って、次に垂直チャネル90rを介してNA結合チャネル18まで押されて、表面に結合したNAを洗浄する。NA結合チャネル18からの残りの試料溶液(溶解試料からNA分子を差し引いたもの)が、垂直チャネル90sを介して、次に、(垂直チャネル90t及び廃棄物ウェル13に接続された)水平チャネル100gを通って廃棄物コンパートメント13まで押される。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80dを介して印加される。
【0058】
図6H(位置H)において、スライドバルブ30は、流体通路が試薬コンパートメント12eと、NA結合チャネル18と、廃棄物コンパートメント13との間に形成されるように、垂直チャネル90wと90rとの間及び垂直チャネル90sと90tとの間にチャネルを作るように位置している。第2の洗浄緩衝液が、試薬コンパートメント12eから、(垂直チャネル90i及び垂直チャネル90wに接続された)水平チャネル100jを通って、次に、垂直チャネル90rを介してNA結合チャネル18まで押されて、表面に結合したNAを洗浄する。NA結合チャネル18からの残りの試料溶液(溶解試料からNA分子を差し引いたもの)は、垂直チャネル90sを介して、次に、(垂直チャネル90t及び廃棄物ウェル13に接続された)水平チャネル100gを通って廃棄物コンパートメント13まで押される。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80eを介して印加される。
【0059】
図6I(位置I)において、スライドバルブ30は、流体通路が試薬コンパートメント12fと、NA結合チャネル18と、出口50との間に形成されるように、垂直チャネル90xと90rとの間及び垂直チャネル90sと90yとの間にチャネルを作るように位置している。溶出緩衝液が、試薬コンパートメント12fから、(垂直チャネル90j及び垂直チャネル90xに接続された)水平チャネル100kを通って、次に、垂直チャネル90rを介してNA結合チャネル18まで押されて、結合チャネル18からNAを溶出する。次に、NA結合チャネル18からの溶出されたNAが、垂直チャネル90sを介して、次に、(垂直チャネル90k及び垂直チャネル90yに接続された)水平チャネル100l及び(垂直チャネル90k及びNA出口50に接続された)水平チャネル100mを通ってNA出口50まで押される。溶出されたNAを、適した手段によって出口50において回収することができる。この位置において、外部圧力は、エアーノズル80fを介して印加される。
【0060】
プロセスの終わりにある図6J(位置J)において、スライドバルブ30は、全ての垂直チャネルを閉じるように位置している。この位置において、カートリッジ1を、機器から引き出し、適切に配置することができる。
【0061】
図7A~7Bは、代替の実施形態に従った、核酸(NA)抽出カートリッジ700の形態の、生物学的物質を単離するための装置の上面斜視図及び底面斜視図を示している。NA抽出カートリッジ700は、図1~6を参照した上記のNA抽出カートリッジとほぼ同じであり、第1のハウジング部材710(以下、本体710とも呼ばれる)、第2のハウジング部材720(以下、蓋板720とも呼ばれる)、スライダー730(以下、スライドバルブ730とも呼ばれる)、乾燥試薬カプセル740、及びキャップ750を含んでいる。図8A~8Bは、第1のハウジング部材710の斜視図及び底面図を示している。図9は、第2のハウジング部材720の上面斜視図を示している。図10は、スライダー730の底面図を示し、図11は、乾燥剤カプセル740の様々な図を示している。
【0062】
図8Aを参照すると、第1のハウジング部材710は、いくつかの特徴において上記の第1のハウジング部材10とは異なっている。第一に、第1のハウジング部材710の試薬コンパートメント又はウェルの数が5に減らされている。一例において、それぞれ、コンパートメント712aは溶解緩衝液を含有し、コンパートメント712bは第1の洗浄緩衝液を含有し、コンパートメント712cは第2の洗浄緩衝液を含有し、コンパートメント712dは第3の洗浄緩衝液を含有し、さらにコンパートメント712eは溶出緩衝液を含有している。言い換えると、水和緩衝液チャンバーは、この実施形態において必要とされない。第二に、乾燥試薬カプセル740の乾燥試薬チャンバーの数が1であるため(図10における751を参照)、乾燥試薬カプセル740と接続するために第1のハウジング部材710上に設けられた中空ポストの形態の垂直チャネルの数が3から2に減らされている(図8Aにおける741a及び741bを参照)。例えば、チャンバー751は、凍結乾燥ビーズの形態で少なくとも1つの乾燥試薬(例えば、第1の乾燥試薬及び第2の乾燥試薬の両方)を含有することができる。従って、第1のハウジング部材710の水平チャネル及びスライダー730の接続チャネルの数及び位置は、上記の変更に適応するように構成される。
【0063】
NA抽出カートリッジ10と比較したNA抽出カートリッジ700における他の変更は、リッジの代わりに、第2のハウジング部材720における溝722によってNA結合チャネル718を形成すること(図9を参照)を含む。
【0064】
NA抽出カートリッジ700の動作は、図6B1~6B2、6C、及び6Dを参照した上記のステップが組み合わされて単一のステップにすることを除いて、NA抽出カートリッジ10の動作と類似している。このステップでは、コンパートメント712aからの溶解緩衝液が、それぞれの流体チャネル及びその間の接続チャネルを通って乾燥試薬チャンバー751まで押され、そこで溶解緩衝液は、チャンバー内に存在する1つ又は多数の乾燥試薬を溶解することができる。例えば、溶解緩衝液がチャンバー751に到達すると、エアーノズルを介して外部の圧力源によって印加される正及び負の圧力の組み合わせによって、溶液が試料コンパートメント711まで引き出されて試料コンパートメント711に含有される試料と混ぜ合わされる前に、溶解緩衝液と乾燥試薬との混合が生じ得る。垂直チャネル741a、741bのうち一方が、チャンバー751内に溶解緩衝液を注入するために使用され、もう一方は、チャンバー751から混合溶液を引き出すために使用される。この実施形態における溶解緩衝液は、例えば、図1~6における実施形態の溶解緩衝液及び水和緩衝液の混合物、又は凍結乾燥ビーズを溶解し且つ試料内の生体分子を溶解することができる新しいレシピであり得る。言い換えると、この実施形態は、溶解緩衝液及び乾燥試薬の適切な組み合わせを選択することによって試薬溶液の調製を簡略化することができ、結果として、2つのステップの減少が生じる。
【0065】
その後、NA抽出カートリッジ700を、NA抽出カートリッジ10と同じ方法で動作させることができる。この実施形態では、(図6Fを参照した上記の)DNase処理ステップをスキップし、所望に応じてさらなる洗浄ステップ、すなわち、それぞれ第1、第2、及び第3の洗浄緩衝液を使用した3つの洗浄ステップと交換することができる。洗浄緩衝液の組成は、試料内に存在する標的分子及び体液に応じて異なり得る。洗浄緩衝液は、この実施形態と図1~6の第1の実施形態との間で交換可能であり、特に、第1の実施形態におけるDNase処理ステップに対する試料コンパートメントが、代わりに洗浄緩衝液を含有するために使用される場合に交換可能である。簡潔にするために、洗浄及び溶出ステップはここでは繰り返されない。
【0066】
図12は、例となる実施形態に従った、試料から生物学的物質を単離する方法を例示した流れ図1200を示している。ステップ1202において、試料は、上記の装置の試料コンパートメント内に配置される。ステップ1204において、乾燥試薬カプセルの少なくとも1つのチャンバーを覆うシールが破かれて、in-situでカプセルをそれぞれの流体チャネルに流体的に接続する。ステップ1206において、スライダーがトラックに沿って所定の位置まで動かされて、順々に、試料から生物学的物質を抽出するために少なくとも1つの液体試薬及び少なくとも1つの乾燥試薬を試料と混ぜ合わせ、抽出された生物学的物質を、装置内に配置された結合チャネルの表面に結合させ、結合チャネルの表面に結合された生物学的物質を精製し、さらに、精製された生物学的物質を溶出する。
【0067】
記載されているように、核酸の単離を、プロセスの前に機器に挿入され且つプロセスが完了すると機器から取り外され得るカートリッジの形態であるコンパクトで自己充足の装置を使用して行うことができる。言い換えると、関連する液体及び乾燥試薬は装置内に既に存在しており、外部の液体の取り扱いは必要ではない。交差汚染及びメンテナンスを著しく減少させることができる。さらに、装置の流体チャネルに選択的に接続するためのスライダーの直線移動と共に、統合された接続チャネルを有する単一のスライダーを使用することは、可動部品の数を減らし、自動化された動作を可能にし得る。
【0068】
広く記載される本発明の範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されている本発明に多数のバリエーション及び/又は修正を加えることができるということが当業者によって正しく理解されることになる。例えば、異なるタイプの生物学的物質の単離のために装置を適応させるように、試薬又は動作の順序に対して適した調整を行うことができる。従って、本実施形態は、あらゆる点において、例示的であり、限定的ではないと考慮されることになる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B1
図6B2
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】