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特表2023-514661皮膚上の生体測定用乾式電極及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】皮膚上の生体測定用乾式電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/257 20210101AFI20230331BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20230331BHJP
【FI】
A61B5/257
A61B5/263
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022540839
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 FI2021050029
(87)【国際公開番号】W WO2021148716
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】20205059
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ベルクロ
2.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ルオッツァライネン テーム
(72)【発明者】
【氏名】マッティラ トミ
(72)【発明者】
【氏名】サンドバリ ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンジェ
(72)【発明者】
【氏名】アルピアイネン サンナ
(72)【発明者】
【氏名】マキャフリー コルム
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL02
4C127LL22
4C127LL30
(57)【要約】
皮膚上の生体測定用乾式電極(100)及びその製造方法が開示されている。この乾式電極(100)は、その基部を形成する基板(10)を備える。基板(10)は、金属又は半導体材料を含む。乾式電極(100)は、基板(10)の第1面に設けられた導電膜(20)と、乾式電極を取り付けるための取り付け要素(30)とをさらに備える。導電膜(20)は、基板(10)の第1面に直接成膜される。導電膜(20)は、グラフェン膜である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上の生体測定用乾式電極であって、
当該乾式電極の基部を形成する基板(10)であって、金属又は半導体材料を含む基板(10)と、
前記基板(10)の第1面に設けられた導電膜(20)と、
当該乾式電極を皮膚に取り付けるための取り付け要素(30)と、
を備え、
前記導電膜(20)は、前記基板(10)の前記第1面に直接成膜され、
前記基板は、良好な肌への接触性、柔軟性、及び通気性を容易にするべく、ばね、ウール、メッシュ、ハニカム、又は多孔質として形成され、
前記導電膜(20)はグラフェン膜から構成される、
乾式電極。
【請求項2】
前記取り付け要素(30)は、四肢、手指、手、足、足指、胴、及び首からなる群から選択される2つ以上の異なる位置のいずれか1つに前記乾式電極を保持するように構成される、請求項1に記載の乾式電極。
【請求項3】
前記グラフェン膜は、グラフェンのナノ層から構成される、請求項1又は2に記載の乾式電極。
【請求項4】
前記ナノ層は、グラフェンの単層又はグラフェンの多層を含む、請求項3に記載の乾式電極。
【請求項5】
前記導電膜(20)により、前記基板の面は前記グラフェン膜で均一に被覆される、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項6】
前記導電膜は、前記基板(10)の前記第1面の実質的に全体を覆っている、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項7】
前記取り付け要素(30)は、前記乾式電極を皮膚に取り付けるための接着要素から構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項8】
前記取り付け要素は、皮膚と接触する衣服などのアイテムといった、さらなる物品に前記乾式電極を貼り付けるための要素を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項9】
前記乾式電極は、可撓性を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項10】
前記金属又は半導体材料は、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、コバルト、パラジウム、タングステン、クロム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、錫、鋼、これらの合金、Si、SiO、SiC、Al、Si、SrTiO、又は六方晶窒化ホウ素を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項11】
前記導電膜(20)は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて、前記基板の前記第1面に直接成膜されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項12】
前記基板の第2面上に設けられたコネクタ要素をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項13】
原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて、金属基板の第1面に直接導電膜(20)を成膜させることを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項14】
前記グラフェン膜で前記基板の面を均一に被覆することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、皮膚上の生体測定用乾式電極及びその製造方法に関するものである。特に、本願は、生体インピーダンス測定に加えて、心電図、脳波、筋電図、眼電図信号などの生体電位信号を測定するための乾式電極に関するものであるが、これに限定されるものではない。
【背景】
【0002】
本セクションでは有用な背景技術を説明する。ただし、ここに記載の技術を、代表的な従来技術と見做すものではない。
【0003】
心電図や脳波などの生体測定が、医療や健康管理に広く利用されている。これらの測定に使用される電極は、費用対効果が高く、使いやすく、人間の皮膚に適合するもの(すなわち刺激しないもの)である必要がある。
【0004】
現在、臨床用生体電位記録装置用の電極は、非分極性電極に近く、半電池電位が身体組成に適合することから、プリゲル化Ag/AgCl電極が市場を席巻している。しかし、プリゲル化Ag/AgCl電極には、硬いため長時間使用すると違和感がある、皮膚を刺激して発疹を生じる、電極が動作開始して適切な生体信号を取得するまでに数分かかる、ゲルの乾燥や汗との反応により時間が経つにつれて性能が低下するなどの課題がある。しかも、銀は高価で有毒な素材である。
【0005】
さらに、湿式電極の問題点を解決するために、乾式電極という手段も導入されている。例えば、グラフェンペーストや溶液系塗布プロセスによる電極や、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)により成長したグラフェンを成長基板から電極に転写するプロセスによる電極が提案されている。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の問題を抑制することにある。
【摘要】
【0007】
本発明の実施例の様々な態様が、特許請求の範囲に記載されている。
【0008】
本発明の第1の例示的態様によれば、請求項1に記載の皮膚上の生体測定用乾式電極が提供される。
【0009】
グラフェン膜は、グラフェンの単層又はグラフェンの多層を含む、グラフェンのナノ層で構成されてもよい。
【0010】
導電膜は、基板の第1面の実質的に全体を覆っていてもよい。
【0011】
取り付け要素は、四肢、手指、手、足、足指、胴、及び首からなる群から選択される2つ以上の異なる位置のいずれか1つに前記乾式電極を保持するように構成されてもよい。取り付け位置を可変とすることで、取り付け要素は、皮膚への刺激を低減したり、可変でない場合に生じる皮膚への刺激や損傷を回避したり、着用中の衣服や衣類によって生じる不都合を回避することを可能とし得る。
【0012】
前記取り付け要素は、前記乾式電極を皮膚に取り付けるための接着要素から構成されてもよい。
【0013】
前記取り付け要素は、皮膚と接触する衣服などのアイテムといった、さらなる物品に前記電極を取り付けるための要素を備えてもよい。
【0014】
前記乾式電極は、可撓性を有していてもよい。
【0015】
金属又は半導体材料は、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、コバルト、パラジウム、タングステン、クロム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、錫、鋼、これらの合金、Si、SiO、SiC、Al、Si、SrTiO、又は六方晶窒化ホウ素を含んでもよい。
【0016】
前記導電膜は、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)又は原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて、前記基板の前記第1面に直接成膜されてもよい。
【0017】
前記乾式電極は、前記基板の第2面に設けられたコネクタ要素をさらに備えてもよい。
【0018】
本発明の第2の例示的態様によれば、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)又は原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて、金属基板の第1面に導電膜を直接成膜させることを含む、本発明の第1の例示的態様の乾式電極の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第3の例示的態様によれば、生体測定用乾式電極が提供される。この生体測定用乾式電極は、当該電極の基部を形成する基板であって、金属又は半導体材料を含む基板と、前記基板の第1面に設けられた導電膜と、当該電極を取り付けるための取り付け要素と、を備え、前記導電膜は前記基板の前記第1面に直接成膜されている。前記導電膜は、グラフェン膜であってもよいし、グラフェン膜で構成されてもよい。
【0020】
本発明の異なる非限定的な例示的態様及び実施形態を上述した。上述の実施形態は、単に本発明の実施に利用され得る選択された態様又は工程を説明するために使用されるものである。一部の実施形態は、本発明の特定の例示的態様を参照してのみ提示され得る。対応する実施形態は、他の例示的態様にも適用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の例示的な実施形態のより完全な理解のために、以下の説明を参照されたい。以下の図を説明において参照する。
図1】本発明の一実施形態に係る生体測定用乾式電極の概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生体測定用乾式電極の概略正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る生体測定用乾式電極の製造方法のフロー図である。
【図面の詳細説明】
【0022】
本発明とその潜在的な利点は、図1から図3を参照することによって理解される。本明細書では、同様の参照符号は、同様の部分又は工程を示す。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る生体測定用乾式電極100の概略側面図、図2はその正面図である。乾式電極100は、当該乾式電極の基部、すなわち土台を形成する基板10を含む。基板10は、金属や半導体材料などの導電性材料で構成される。実施形態によっては、基板10は、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、コバルト、パラジウム、タングステン、クロム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、錫、鋼、又はこれらの合金、Si、SiO、SiC、Al、Si、SrTiO、又は六方晶窒化ホウ素を含む。
【0024】
乾式電極100は、基板10の第1面に設けられた導電膜20をさらに備える。実施形態によっては、導電膜20は、グラフェン膜で構成される。なお、以下では、グラフェン膜20を参照するが、さらなる実施形態では、導電膜は、ZnO、Ru、Pt、TiN、TiC、ZrC、VC、HfC、Cr、Cr、CoC、MgTe、AlSb、Si、SiC、TiS、CuSe、GaN、GaAs、GaSb、Rh、CdSe、InP、InSe、InAs、InSb、Lu、WC、WN、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される材料を含む。
【0025】
グラフェン膜20は、適切な成膜方法を用いて、基板の第1面に直接成膜されるか、又は成長させられる。当業者には、実施形態によっては、基板10は、グラフェン膜が成膜されたより大きな基板から、例えば切断によって取り出されることが理解されよう。すなわち直接成膜の場合、基板10が成膜時にその最終的な形状及び/又はサイズとなる必要はないのである。別の実施形態において、基板10は、くぼみ及び/又は突起などの三次元構造を有する。さらなる実施形態では、基板10は、ばね状要素の形態となるか、ウールのような繊維状材料に似た構造、又はメッシュもしくはハニカムに似た多孔質構造を有する。
【0026】
グラフェン膜を直接成膜することによる技術的効果としては、グラフェン膜をまず別の基板上に成膜し、その後、複雑な多段階プロセスで電極上に転写する従来の方式とは異なり、乾式電極の製造プロセスを大幅に単純化すること、グラフェン膜の基板への接着を改善すること、基板の面をグラフェン膜で均一に被覆することが挙げられる。
【0027】
実施形態によっては、グラフェン膜20は、グラフェンのナノ層、例えば基板10の表面上で成長したグラフェンの単層から構成される。さらなる実施形態では、グラフェンのナノ層は、多層成長を含む。
【0028】
実施形態によっては、グラフェン膜20は、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)、又はスパッタリングを用いて直接成膜される。実施形態によっては、本明細書で述べた成膜方法と同等の膜の均一性及び基板への密着性が実現される限り、適切な別の成膜方法が使用され得る。
【0029】
グラフェン膜20は、従来知られているように、乾式電極と皮膚との間の低インピーダンスを実現する。グラフェン膜を密着性と均一性を高めて基板上に直接成膜することで、グラフェン膜が基板を保護する効果も呈するため、乾式電極は優れた信号品質と耐腐食性を実現する。さらに、グラフェン膜は有毒ではなく、皮膚と乾式電極との間のあらゆる化学反応を最小限に抑えることが可能である。
【0030】
実施形態によっては、基板10とグラフェン膜20、ひいては乾式電極100は柔軟性を有する。したがって、乾式電極はユーザの使いやすさや快適さを損ねることなく、様々な位置の皮膚や、また衣服などその他物品に対して、容易に取り付け可能であるという技術的効果を呈する。
【0031】
実施形態によっては、乾式電極100は、さらに、取り付け要素30を備える。実施形態によっては、取り付け要素30は、乾式電極100を測定対象者の皮膚に取り付けるために構成された接着要素から構成される。乾式電極100は、グラフェンナノ層が直接成膜されたことで、軽量かつ肉薄である。したがって、接着要素は強い接着力を持つ必要がない。すなわち、より肌に優しく、刺激の少ない接着剤を使用することができる。実施形態によっては、接着要素は、基板10及び/又はグラフェン膜20を取り囲む。さらなる例では、接着要素は、皮膚への接触面を利用可能に残すように、グラフェン膜20上に存在し、これと部分的に重なる。
【0032】
さらなる実施形態において、取り付け要素30は、衣服などのさらなる物品に乾式電極100を取り付けるための要素を含む。実施形態によっては、このような要素は、例えば、ベルクロ(マジックテープの一種)、ボタン、又は磁気要素などの要素を含む。
【0033】
さらに別の実施形態では、取り付け要素30は、四肢、手指、手、足、胴、又は首のいずれか1つ以上の周囲の少なくとも一部に係合する、剛性又は可撓性のバンド又は構造体を含む。この構造体は人体の全周にわたって延在する必要はないが、これは対象によって異なり得る。例えば、部分的に剛性又は可撓性のバンドは、手首を1周以上するように延在するが、首の全周にわたって延在しなくもよい。足又は手の指への取り付けのために、リングが取り付け要素30又はその一部として使用され得る。乾式電極100はさらに、例えば、磁気接続、形状フィッティング接続、摩擦フィッティング接続、及び/又は接着剤接続を用いて、ユーザによって取り付け要素30に取り外し可能に取り付けられ得る。乾式電極100及び/又は取り付け要素30は、工具を使用せずに着脱できるように、着脱構成を一体的に有していてもよい。
【0034】
実施形態によっては、取り付け要素30は、四肢、手指、手、足、足指、胴、及び首からなる群から選択される2つ以上の異なる位置のいずれか1つに乾式電極100を保持するように構成される。取り付け位置を可変とすることで、取り付け要素は、皮膚への刺激を低減したり、可変でない場合に生じる皮膚への刺激や損傷を回避したり、着用中の衣服や衣類によって生じる不都合を回避することを可能とし得る。例えば、一部の衣服、スポーツ時、皮膚の損傷などの要因により、乾式電極をある任意の位置に保持して使用することが困難となり得る。
【0035】
実施形態によっては、乾式電極100は、乾式電極100を測定器に接続するためのコネクタ要素40をさらに備える。実施形態によっては、コネクタ要素は、基板10の第2面に配置される。実施形態によっては、コネクタ要素は、スナップファスナー、導電性ベルクロ、又は磁気コネクタなど、測定器のリード線又はワイヤを接続するためのコネクタを含む。
【0036】
以下に、乾式電極100の寸法の一例を示す。例示的な実施形態では、接着要素30を含む乾式電極100の半径は40mmであり、電極要素、すなわちグラフェン膜20及び基板10の半径は20mmである。グラフェン膜20のグラフェン単層の厚さが0.335nmであるのに対して、銅からなる基板10の厚さは50μmである。接着層30としては、キネシオテープと同様の粘着剤など、厚さ150μmの、肌に優しい粘着剤が使用される。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態に係る乾式電極の製造方法のフローチャートである。310では、乾式電極100の基部として機能するように構成された基板10が設けられる。例えば、銅基板が設けられる。320では、基板10上にグラフェン膜20を成長させるための成膜工程、例えばCVDやALDの成膜工程が行われる。成膜のパラメータはグラフェン膜20の所望の厚さに依存する。実施形態によって、グラフェン膜20は単層であるか、又は複数のグラフェン層から構成される。330では、基板10との密着性に優れたグラフェン膜が均一に成膜される。実施形態によっては、340では、接着要素が、例えばグラフェン膜の上に、部分的に被覆するように、乾式電極100に取り付けられる。
【0038】
本発明者らは、本明細書に記載のとおりにすると、乾式電極を容易かつ費用対効果が高く製造し得ることを見出した。まず金属基板上にグラフェンを成長させた後、ウェットエッチングで電極に転写する従来の方法では、複数の工程を要し、低コストで製造しやすく、均一で電極との密着性が高い最終製品を得ることができない。
【0039】
本発明の実施形態による乾式電極100の所定の実施形態に関連するいくつかの使用例が、以下に提示される。第1の使用例では、乾式電極100は人間の皮膚に直接使用される。軽量で、刺激の少ない粘着力により、快適で刺激のない装着感を実現することができる。
【0040】
第2の使用例では、乾式電極100は、ウェアラブル測定システムに使用される。乾式電極100は、薄さと柔軟性により、容易に装着及び収容される。
【0041】
第3の使用例では、メッシュタイプの電極素子10、20をキネシオテープなどの粘着性部材の下側に取り付ける。この方式により、身体の自然治癒プロセスを促進し、筋肉や関節にサポートと安定性を提供しながら、生体電位信号の測定を可能にする。
【0042】
第4の使用例では、乾式電極100は、例えば自転車、ローイングマシン、ステッパー、ランニングマシン、ハンドルバーなどのスポーツ用品、又は自動車のハンドルに使用され、オンライン測定を可能にする。
【0043】
第5の使用例では、乾式電極100は、身体組成測定装置に使用される。
【0044】
以下の特許請求の範囲、解釈、又は適用を何ら制限することなく、本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態の技術的効果は、本明細書で先に説明した技術的効果に加えて、簡単で費用対効果の高い乾式電極を提供することである。本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態の別の技術的効果は、安価な大量生産に適した乾式電極の提供である。本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態のさらに別の技術的効果は、低インピーダンスレベルによる信号品質の改善である。本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態のさらに別の技術的効果は、乾燥を防止するための強力な接着剤や水分バリアが不要であるため、柔軟性と通気性に優れて快適に着用できる乾式電極を提供することである。本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態のさらに別の技術的効果は、良好な肌への接触性、柔軟性、及び通気性を促進するべく、導電要素としての乾式電極の形状及び構造を、グラフェン成膜の前又は後に、ばね、ウール、メッシュ、ハニカム、又は多孔質などの様々な形状に切断して形成することである。本明細書に開示された1つ以上の例示的な実施形態のさらなる技術的効果は、化学薬品が不要であるため、使い捨ての乾式電極を提供することである。
【0045】
本発明の様々な態様は独立請求項に記載されているが、本発明の他の態様は、記載された実施形態及び/又は従属請求項からの特徴と独立請求項の特徴との他の組合せからなり、これは請求項に明示的に記載された組合せのみではない。
【0046】
また、本明細書では、本発明の例示的な実施形態を説明しているが、これらの説明を限定的に解すべきではないことに留意されたい。むしろ、添付の請求項に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変形及び修正を行うことができる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上の生体測定用乾式電極であって、
当該乾式電極の基部を形成する基板(10)であって、金属又は半導体材料を含む基板(10)と、
前記基板(10)の第1面に設けられた導電膜(20)と、
当該乾式電極を皮膚に取り付けるための取り付け要素(30)と、
を備え、
前記導電膜(20)は、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)又は原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて前記基板(10)の前記第1面に直接成膜され、
前記基板は、良好な肌への接触性、柔軟性、及び通気性を容易にするべく、ばねメッシュ、又はハニカムとして形成され、
前記導電膜(20)はグラフェン膜である
乾式電極。
【請求項2】
前記取り付け要素(30)は、四肢、手指、手、足、足指、胴、及び首からなる群から選択される2つ以上の異なる位置のいずれか1つに前記乾式電極を保持するように構成される、請求項1に記載の乾式電極。
【請求項3】
前記グラフェン膜は、グラフェンのナノ層から構成される、請求項1又は2に記載の乾式電極。
【請求項4】
前記ナノ層は、グラフェンの単層又はグラフェンの多層を含む、請求項3に記載の乾式電極。
【請求項5】
前記導電膜(20)により、前記基板の面は前記グラフェン膜で均一に被覆される、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項6】
前記導電膜は、前記基板(10)の前記第1面の実質的に全体を覆っている、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項7】
前記取り付け要素(30)は、前記乾式電極を皮膚に取り付けるための接着要素から構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項8】
前記取り付け要素は、皮膚と接触する衣服などのアイテムといった、さらなる物品に前記乾式電極を貼り付けるための要素を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項9】
前記乾式電極は、可撓性を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項10】
前記金属又は半導体材料は、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、コバルト、パラジウム、タングステン、クロム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、錫、鋼、これらの合金、Si、SiO、SiC、Al、Si、SrTiO、又は六方晶窒化ホウ素を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項11】
前記基板の第2面上に設けられたコネクタ要素をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の乾式電極。
【請求項12】
原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いて、金属基板の第1面に直接導電膜(20)を成膜させることを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項13】
前記グラフェン膜で前記基板の面を均一に被覆することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】