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特表2023-514669クランプ固定工作物の振動を抑えるチューニング可能なクランプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】クランプ固定工作物の振動を抑えるチューニング可能なクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20230331BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230331BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F16F15/02 A
B23Q11/00 A
B23Q17/09 A
F16F15/02 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022542255
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 HU2021050003
(87)【国際公開番号】W WO2021144597
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】P2000020
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504111451
【氏名又は名称】ブダペスティ ミーサキ エーシュ ガズダサーグトウドマーニ エジェテム
(74)【代理人】
【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
(72)【発明者】
【氏名】ムノア、ホーキン
(72)【発明者】
【氏名】ドンボーバーリ、ドクター、ゾルターン
(72)【発明者】
【氏名】ミクローシュ、ドクター、アーコシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュテーパーン、ドクター、ガ-ボル
(72)【発明者】
【氏名】トート、アンドラーシュ
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3J048
【Fターム(参考)】
3C011AA04
3C029CC00
3J048AB11
3J048AC08
3J048BE08
3J048CB23
3J048EA07
(57)【要約】
工作機械(10)のテーブルに固定されているか又は工作機械(10)のテーブルの一部である不動部材(2)と、その上に実際の可撓性工作物(11)がクランプ固定される可動テーブル(3)とから構成される、チューニング可能なクランプ装置(1)を提示する。このチューニング可能なクランプ装置(1)は、シリアル動的カップリング又は機械加工プロセスを介したカップリングを提供して工作物(11)に関係する運動エネルギーを間接的に散逸させるという装置の役割を果たすことにより工作物(11)の主モードを制振するために、不動部材(2)と工作機械テーブル(10)との間でチューニングを達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項14】
制御装置(18)の出力信号が、再生的なびびり振動数及び場合によりそれらの変調から求められた必要なスチフネス及び減衰パラメータを表示するように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載のチューニング可能なクランプ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤加工(丸削り)、フライス加工(平削り)、中ぐり(穿孔)加工又は研削加工などの機械加工中の工作機械内で生じる振動の抑制に関する。より具体的には、本発明により提供されるのは、工作機械用のチューニング可能なスチフネス及び制振性をもつクランプ装置、即ち、それ自体のモードと工作物のモードとの間で直接的な最適シリアル(連続)動的カップリング(optimal serial dynamic coupling)又は機械加工プロセスを介した間接的カップリングを確立する、チューニング可能なクランプ装置である。このようにして、このチューニング可能なクランプ装置のチューニングされた動力学(動き)は、機械加工を受ける表面との接触をまったく伴わずに、機械加工中に生ずる振動を減衰させるために工作物の動力学(動き)を変調させる。ここに提案されたチューニング可能なクランプ装置は、独立したスタンドアロン装置として、又は工作機械の内蔵部品として、具体化することができる。
【背景技術】
【0002】
旋盤加工、フライス加工、研削加工又は中ぐりを含む機械加工において再生的な(regenerative)びびり振動(chatter vibration)は最も厄介な問題の一つである。びびり振動により、材料除去速度や機械加工プロセスの効率が制限される上、それが、許容できない表面仕上げや、さらには工作機械や工作物の損傷にもつながることがありうる。
【0003】
再生的なびびり振動は、切削加工について典型的な自己励振(自励)振動である。「再生的」とは、切削工具が既に仕上がった表面を通過している間に、その表面では前の切削における工具の振動が工作物の表面に複製されることを意味する。その結果、実際のチップ厚みは、現在の切削における工具位置だけではなく、その前の切削における工具位置にも依存し、時間とともに変動するチップ厚みを生ずる。このことは、あらゆる外乱の場合の一定した切削パラメータに対してもあてはまる。切削力はチップ厚みに依存するので、この変動は、特殊な場合には振幅が増大する励振ループにつながり、機械加工プロセスが不安定になりうる。びびり振動が起こるか否かは、切削パラメータ、工作機械及び工作物の動力学、潤滑、冷却などに依存し、従って、安定又は不安定なプロセスの状態は切削加工中に変化する。
【0004】
望ましくない振動を避ける最も伝統的な方法は、一般に、その機械構造の固有振動数を有害な振動数(周波数)から十分に離れるようにチューニングすることである。この方法は、予測可能な強制振動の振動数と予測不能な再生的びびり振動の振動数とが非常に広範囲の帯域のものとなりうる工作機械には適用不可能である。さらに、工作物及び機械それ自体の固有振動数は、機械軸の位置変化のため、又は工作物の質量減少のために、操作中に変動する。
【0005】
別の方法は、変形可能な要素を介して機械に取付けられた1又は2以上の可動物体からなる慣性ダンパー又は振動吸収材を使用することである。パッシブ(受動)型のケースでは、取付点の振動が可動物体の振動を生じさせ、慣性ダンパーの適正なチューニングにより、この振動が取付点の振動と拮抗作用する。慣性ダンパーはまた振動中のエネルギーを散逸させ、従って、これは励振の振動数が既知であるなら振動を避けるための効果的な解決策となる。しかし、パッシブ型ダンパーは、最大振幅の動きを有する制振すべき部材の位置上で、工作機械を通る力の流れに対して平行に配置しなければならないことが知られている。さらに、再生的機械加工プロセスにおいてより一層意義ある役割を果たす、最適の制振を達成するには、そのスチフネス及び制振(減衰、ダンピング)の設計を、そのスタンドアロン固有振動数が、減衰された部材の固有振動数に近くなるようにしなければならない。
【0006】
慣性ダンパーは、パッシブ(受動)型、セミアクティブ(半能動)型、及びアクティブ(能動)型ダンパーとしうる。パッシブ型ダンパーは、パラメータが固定されている受動型要素のみを有し、予め設計された振動数に対してのみ作用する。機械の切削位置は変化し、また工作物の質量は減少していくので、パッシブ型ダンパーはその性能から衰えていく。
【0007】
機械の変動する動力学特性に適合させるために、制振された振動数がその機械の現在の固有振動数に応じて変化するように、ダンパーの変形可能な要素の性質を変化させることができる。このチューニングは、機械加工前又は加工操作中にオペレータが手動で又は自動的に実施することができる。
【0008】
さらに、エネルギー散逸を最適化するために工作機械に作用する力が理論的に自由裁量(arbitrary)であることができるように、機械と慣性物体との間の接続又は連結部としてアクティブ(能動的)要素を使用することも可能である。従って、アクティブ型ダンパーは、パッシブ型及びセミアクティブ型ダンパーより有効であるが、より高価かつ複雑で、さらに耐久性が低い。
【0009】
パッシブ型慣性ダンパーは単純で頑丈であるという利点がある。ただし、それらは、チューニングされたスチフネス及び制振をもたせるために適応性のあるパラメータ選択と組み合わせる必要がある。しかし、チューニング可能な慣性ダンパーは、振動している構造物と平行に可撓性が最も高い部材上に固定する必要がある。これは、可撓性の工作物の場合には実現できない。なぜなら、可撓性が最も高い部材が機械加工を受ける工作物それ自体であるからである。
【0010】
慣性ダンパーとは別に、工作物及び工作機械の静的変形を阻止するためにアクティブ(能動的)制御を備えたクランプ装置が存在する。このような装置では、(プロセスが安定なままであれば)製造精度を向上させることができるが、自己励振型のびびり振動はなお起こりうる。
【0011】
他方、アクティブ型クランプ装置は自己励振型の振動に抗するように作用することができるが、通常、このようなシステムは極めて複雑かつ高価であり、さらに運転には連続的な電力供給が必要である。従って、高い材料除去速度で可撓性の工作物の安定した機械加工を確保するための効果的な装置又は方法がなお求められている。L.Sallese,G.Innocenti,N.Grossi,A.Scippa,R.Flores,M.Basso,G:Campatelli(2017)Mitigation of chatter instabilities in milling using an active fixture with a novel control strategy(新規な制御戦略のアクティブ型固定具を用いたフライス加工におけるびびり不安定性の緩和),The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,2017(非特許文献1)参照。
【0012】
ルネット(lunette、半円形部材)のような触覚ダンペナー(tactile dampener)は、可撓性部材の見かけスチフネス及び制振を増大させることにより、それら部材の減衰を達成する。工作物の可撓性部材の閉ループ緩衝すら達成できるパッシブ型及びアクティブ型の触覚ダンペナーが存在する。触覚ダンペナーを、所望の減衰を達成すると共に、機械加工操作の操作セグメントとの相互作用(干渉)及び/又は衝突を回避するような向きに配置することは、重要な問題点である。多くの場合、ルネットは上述した問題点のために切削ゾーンの近くに配置することはできない。
【0013】
パッシブ型ダンパーは、緩衝(制振)すべき構造物の部分上に平行に配置される。Den Hartog,JP(1934)Mechanical Vibrations(機械振動),McGraw-Hill Book Company,New York/Londonに提示された理論によれば、パッシブ型ダンパーの最適パラメータを計算することが可能である。一般に、置かれた物体の質量を増大させることは常に有利に作用する。置かれた質量と制振すべき構造物の見かけモード質量(apparent modal mass)との比に応じて、その組み合わされた機械システムの最大の動剛性(動的スチフネス)を増大させるためのスタンドアロンパッシブ型ダンパーのスチフネス及び減衰を決定することができる。
【0014】
パッシブ型ダンパーは、制振すべき構造物の部分上に平行に配置される。Sims ND(2007)Vibration Absorber for Chatter Suppression:A New Analytical Tuning Methodology(びびり抑制用の振動吸収装置:新規な解析的チューニング方法論),Journal of Sound & Vibration 301:592-607(非特許文献2)には、単純な再生直交型切削モデル(regenerative orthogonal cutting model)について、パッシブ型ダンパーに対する理論化されたチューニングが提示されており、これも置かれた質量と制振すべき構造物の見かけモード質量との質量比に基づいている。置かれた質量と構造物の見かけモード質量との比に応じて、正(負)の方向性因子(directional factor)の場合のコンプライアンス(適応性)振動数応答関数(FRF,frequency response function)の実数部の最小値を増大させる(最大値を減少させる)ためにスタンドアロンパッシブ型ダンパーのチューニング及び制動(減衰)を決定することができる。FRFは、構造物の変位と同じ構造物に作用する励振力との比により決まる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】L.Salleseら,Mitigation of chatter instabilities in milling using an active fixture with a novel control strategy,The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,2017
【非特許文献2】Sims ND(2007)Vibration Absorber for Chatter Suppression:A New Analytical Tuning Methodology,Journal of Sound & Vibration 301:592-607
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6123312号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2708316号
【発明の概要】
【0017】
本発明によると、機械加工プロセスから生ずる可撓性部材を持つ工作物の振動を抑制するためのチューニング可能なクランプ装置が提案される。このチューニング可能なクランプ装置は、工作機械テーブルに固定されているか又は工作機械テーブルそれ自体の一部である不動部材(静止部材)と、可動テーブルと、を含む。可動テーブルは、相対移動が可能に前記不動部材に連結されている。これらの不動部材と可動テーブルは、調節可能なスチフネス要素と調節可能な制振要素(減衰要素)を持つチューニング可能な連結部を備える。不動部材と可動テーブルにはそれぞれ加速度計が連結されている。
【0018】
このチューニング可能なクランプ装置は、従来のパッシブ型ダンパーとは異なり、機械加工を施す表面に接触する必要はない。従来のパッシブ型ダンパーは、振幅運動が最大である機械部分(これは可撓性工作物の場合は機械加工される表面それ自体である蓋然性が最も高い)上に配置すべきものであった。これに対し、本発明のチューニング可能なクランプ装置は、力の流れに平行に連結されているパッシブ型ダンパーとは異なり、工作機械と工作物とクランプ装置とにより閉じられている力の流れにシリアル(連続的)に関与する。
【0019】
本発明のチューニング可能なクランプ装置は、冒頭に述べたそれ自体のモードと工作物の動力学的挙動との間での前記の最適なシリアル動的カップリング又は前記の機械加工プロセスを介したカップリングを確立するのに、そのスチフネス及び制振(減衰)を自動的に選択することができる。これは、獲得された振動状態に従ってスチフネス及び減衰を変動させることによりクランプ装置自体のもつ適応性チューニング(adaptive tuning)のメカニズムにより達成される。この適応性チューニングは、前記の最適シリアル動的カップリングのケースが達成されるか、又は前記の機械加工プロセスを介したカップリングのプロセスを通してカップリングが現れるケースが達成されるまで、前記適応性チューニングが反復して実施される。主目的は、切削プロセスの安定性の増大により生産性を向上させ、こうしてより大きなパス深さ(1パスでの深さ)、従ってより速い材料除去を可能にすることである。第2の利点は、振動の減少による加工精度の向上である。
【0020】
最適シリアル動的カップリングの場合、取付けられた可撓性部材(工作物)の主要振動モードは、可撓性支持体(テーブル)の主要振動モードに合致する。これは、これら2つの結合された振動モードの間でエネルギー移動が起こる可能性をもたらし、より有利な連合した動き(ダイナミクス)を生じさせる。その際、取付けられた可撓性部材(工作物)の振動の振幅は、同じ可撓性部材(工作物)に作用する励振力下で減少する。このことは、目的が支持体(テーブル)の振動を減少させることである周知のパッシブ型ダンパーの技術思想とは反対である。シリアル動的カップリングは、2つのモードの固有振動数並びに可撓性支持体(テーブル)の付与された制振に対して特別の相対値がセットされるなら最適となる。
【0021】
機械加工プロセスを介したカップリング(結合)は、再生的な効果が再生的なびびり振動の振動数(周波数)の変調を通してカップリング(結合)を確立するときに起こり、このようなモード間でのエネルギー移動が、追加の安定なドメインを助長することにより製造プロセスを安定化させることが確保される。この機械加工プロセスを介したカップリングは、例えば、力変調の激しい励振を受けることのあるフライス削りプロセスで効果を発揮する。
【0022】
クランプ装置の解決手段
提案された本発明は、1方向に調節可能なスチフネスを持った可撓性要素と渦電流に基づいた制振要素とによりチューニング可能なクランプ装置のスチフネス及び減衰(制振)をチューニングすることを可能にする。この発明は請求項1に記載されている。
【0023】
本発明に係るチューニング可能なクランプ装置は、工作機械に固定されているか又は工作機械の一部である前記不動部材(固定部材)と、その上に実際の工作物がクランプ固定される前記テーブルである可動部材とを備える。このチューニング可能なクランプ装置は、前記シリアル動的カップリング又は前記プロセスを通したカップリングを確立して工作物に関係する運動エネルギーを間接的に消散させるという装置の役割を果たすことにより工作物の主モードを減衰させるために、前記不動部材とテーブルとの間でチューニングを達成する。
【0024】
チューニング可能なクランプ装置の前記不動部材とテーブルとの間には異方性スチフネスを持つ可撓性要素が、この可撓性要素が電気モータ又は他のアクチュエータにより任意の所望の角度位置に回転させることができるように配置されている。不動部材に対するテーブルの相対移動は1方向に制限することができ、こうしてチューニング可能なクランプ装置のスチフネスを異方性スチフネスの可撓性性要素の角度位置により直接制御することができる。調節可能なスチフネスを達成するには他の解決策も可能であり、例えば、ボールネジのような片持ち(カンチレバー)ビームがある。この例では、不動部材と可動テーブルとの間の結合点の位置が連結のスチフネスを規定する。この場合は1方向の制約は必要ないかもしれない。連結部(19)のチューニングは、テーブル(3)の複数方向での相対移動でも可能となるかもしれない。調節可能スチフネス要素の装着は、この要素が、チューニング可能な連結部の必要な利用可能スチフネス範囲を達成するために交換可能な装着とすることが好ましい。
【0025】
対をなす磁石と導電性プレートが前記不動部材と可動テーブルに相互に取り付けられ、接触なしに渦電流によって減衰力を発生させる。導電性プレートと磁石との間隔を制御するか、又は導電性プレートと磁石との重なり面積を制御するか、又は磁石を電磁石に置換することにより、減衰強度の制御が可能となる。
【0026】
クランプ固定された工作物の主振動挙動を捕捉することができる加速度計が可動テーブルに配置される。工作機械から伝わる振動を捕捉するために別の加速度計が不動部材に配置される。
【0027】
スチフネス及び減衰の計算
本装置では、機械加工プロセスに先立って及びプロセス中にそのスチフネス及び減衰を計算された最適値に制御することが可能となるので、前記シリアル動的カップリング又は前記のプロセスを通したカップリングを確立して工作物に関係する運動エネルギーを間接的に消散させるという連結の役割を果たすことにより工作物の主モードを減衰させるために、作業現場においてシステムの固有振動数及び他の条件が変動するにつれて、いつでも最適チューニングが確保される。
【0028】
本発明のチューニング可能なクランプ装置の必要な減衰及びスチフネスのパラメータを調節するのに異なる複数の操作モードがある。前記の最適シリアル動的カップリング又は前記の機械加工プロセスを介したカップリングのための反復的又は直接的解決策を確立してもよく、或いは以前の測定及び/又はシミュレーションから導出された、例えば自動照合表(ルックアップテーブル)を使用することもできる。本発明は、前記不動部材と可動テーブルとの間でのチューニング可能な連結部のチューニングを半能動的(セミアクティブ)なやり方で可能にし、こうして、スチフネス及び制振要素を調節するためだけにエネルギーが必要となるが、放散されたエネルギーは連結のパッシブ型要素を通って流れる。
【0029】
前記の最適シリアル動的カップリングはあらゆる切削操作(ブローチ削り、研削、旋削、フライス削り、平削りなど)に効果的であり、一方、前記の機械加工プロセスを介したカップリングは、機械加工操作が著しい倍音(高調波)を有する場合(フライス削り操作、非対称ドリル穿孔、変動スピンドル速度型アイデアルドリル穿孔など)に使用することができる。あらゆる切削加工プロセスが、特異的な2組の振動数ピークを包含する複数の特異スペクトルを有する。一方で、固定ピーク類は回転運動の特異振動数を考慮するだけで操作の前に予測することができる。他方、機械加工プロセスが事前に予測不可能に終わる時やその安定性を過度に失っている時には自己励振型のピークが出現する。この支配的な自己励振型ピークがびびり振動数と呼ばれる。
【0030】
・最適シリアル動的カップリングの場合、操作前に、外部励振を、例えば単純なハンマーで加えることによって、テーブルと不動部材との間の相対的加速度信号を用いて、取り付けられた工作物の固有振動数を検出する。
【0031】
・前記テーブル及び前記不動部材上で獲得された加速度信号を用いて、機械加工操作時の回転運動に直接関係する固定振動の振動数を完全に排除することにより、振動の主要なびびり振動数を記録することができる。試験中、チューニング可能なクランプ装置は、それ自体のスチフネスを順応して(適合させて)変動させることによりこの前記びびり振動数を達成する傾向がある。前記のびびり振動は取り付けられた工作物の主固有振動数に近いので、近似最適シリアル動的カップリングを達成することができる。可変制振要素を制御することにより最適な減衰も達成される。適応制御が、遂行された機械加工プロセス中に反復的にスチフネス及び減衰のための近似最適パラメータを見いだす。
【0032】
・第2の操作モードでは、チューニング可能なクランプ装置の前記テーブルに配置された加速度センサーが操作中の機械加工スペクトルを記録する。このセンサーが、切削プロセスの回転運動に関係する信号の前記主周期性(周波数)を決定する。固定した倍音を考慮することにより、該センサーは前記びびり振動数及びその変調を決定する。前記チューニング可能なクランプ装置の主モードを前記びびり振動数の主変調に合わせることにより機械加工プロセスを介したカップリングを達成するために可動テーブルのスチフネスをチューニングする。この作用モードでは、制振はスチフネスを最適にセットした後に著しく増大させるように迎え入れられる。このチューニングは、前記主周期性及び前記びびり振動数を知ることによる直接チューニングである。
【0033】
利点
本発明のチューニング可能なクランプ装置の主要な革新的な特色は、パッシブ型ダンパー又は触覚ダンペナー(ルネットのような)との連結を実際に行わずに、装置にクランプ固定された可撓性部材を有する工作物の振動を弱めることができることである。これにより、機械加工操作のために機械加工された表面への完全なアクセスが可能となる。
【0034】
本発明のチューニング可能なクランプ装置は、機械加工操作中、その上にクランプ固定された可撓性部材を持つ工作物の変動する動力学(動き)の影響に対し、そのチューニングを行いながら、完全に追随することができる。
【0035】
このチューニング可能なクランプ装置は、渦電流に基づく直線制振が電磁石に基づくものであるなら、一定の磁束を確立するのにしか電力を使用しないパッシブ型装置として動作するチューニング可能なクランプ装置を、スチフネス及び減衰パラメータでセットした後は、そのパラメータを反復的に変化させるだけであるので、それでも本装置は、あらゆるアクティブ型システムに比べて低コストの、セミアクティブ型の解決策として考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】工作機械において加工中の本発明に係るチューニング可能なクランプ装置の概略図を示す。
図2】異なる肉厚の壁を持つ可変スチフネスH型スプリングの概略図を示す。
図3】可変スチフネスの片持ちビームスプリングの概略図を示す。
図4】可変制振要素の3種類の異なる解決策を示す。
図5】チューニング可能なクランプ装置の一つの可能な実施態様を示す。
図6】工作機械におけるチューニング可能なクランプ装置の異なる垂直型、水平型、ビルトイン型及び装着可能型の配置を示す。
図7】チューニング可能なクランプ装置のコントローラのチューニング性能に対する一つの可能な解決策を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
チューニング可能なクランプ装置1の可能な1実施態様が図1に提示されている。工作物11を保持している本クランプ装置1は、固定ベース2aと外側ケーシング2bとを含む不動部材(固定部材)2と、可動テーブル3と、不動部材と可動テーブルとの間のチューニング可能な連結部19と、から構成される。可動テーブル3の主要なスチフネス(剛性)は一定スチフネスの弾性要素6により付与され、相対移動方向27に添った可動テーブル3の1方向性の自由移動が案内要素21により与えられる。加速度計4がテーブル3に取り付けられ、別の加速度計5が固定ベース2aに取り付けられている。固定ベース2aは工作機械10と本チューニング可能なクランプ装置1との間のインターフェースとして作用することができ、或いは、それは工作機械10の一部であることもできる。このようにして、工作機械10の工具12と、方向26に可撓性の工作物11と、可動テーブル3と、チューニング可能な連結部19と、不動部材2と、工作機械10とが、閉じられた連続した力の流れ(closed,serial force flow)を形成し、シリアル動的(連続動的)システムを形成することになる。チューニング可能な連結部19は、調節可能なスチフネス要素7(例えば、スプリング)と、非接触の好ましくは渦電流に基づく調節可能な制振要素(damping element)20とから構成され、制振要素20は、磁石9と導電性プレート15(図4、5)とから構成される。こうして、固定ベース2aと可動テーブル3との間の連結部のスチフネスは、スチフネスが固定された一定スチフネス弾性要素6と調節可能スチフネス要素7の合わさった結果となる。加速度計4が可動テーブル3に取り付けられ、別の加速度計5が不動部材2に取り付けられていて、制御装置18により必要なスチフネス及び減衰パラメータを算出することができるようにするため、これらの加速度計でシステムの振動を検出することができる。制御装置18は、調節可能スチフネス要素7及び調節可能制振要素20をアクチュエータにより調節することができる。
【0038】
一つの可能な実施態様が図2に調節可能スチフネス要素7について提案されている。図中、異方性弾性要素はH型スプリングである。可動テーブル3と不動部材2は、一定スチフネスの弾性要素6と平行な、この調節可能スチフネスの可撓性要素7を介して互いに連結されている。この調節可能スチフネスの可撓性要素7は、図2に示すように、そのスチフネスが異方性となるように設計された、2つの垂直方向の異なる厚みの壁面7.1、7.2を持つ。可動テーブル3の移動は、案内要素21により1方向(相対移動方向27に添った方向)に制限され、従って、調節可能スチフネス要素7の向きを変えると、相対移動方向27における連結部のスチフネスの変化を生じる。電気モータ又は他のアクチュエータ装置で、調節可能スチフネス要素7の角度位置を直接又は伝動装置(トランスミッション)を介して変化させることができる。
【0039】
図3に示した別の可能な実施態様では、調節可能スチフネス要素7は片持ち(カンチレバー)ビーム51として構成されていて、その支点52は、電気モータ8によって、支点52の並進位置28bを駆動システム24(これはボールスクリュー51又は任意の他の伝達機構でよい)により変化させることによって変化させることができる。相対移動方向27における不動部材2に対する可動テーブル3の1方向移動は、案内要素21によってやはり達成される。案内要素21は、例えば、ローラートラックとして実現することができる。図2及び図3に係るいずれの実施態様においても、スチフネスの変動はシャフトの角度位置28をセットするアクチュエータによって達成することができる。
【0040】
次に、調節可能な制振要素20の減衰(制振)強度を制御するための3つの可能な実施態様を提案する。図4i)に示した実施態様では、永久磁石54と鋼製カバー53とからなる1つの磁石9と、導電性プレート15とが、磁石9とプレート15との間の隙間の大きさを、方向29bにおける相対位置により調節することができるように配置されている。磁石9とプレート15は互いに対して変位可能なように装置1の部材に固定されているので、導電性プレート15は、永久磁石54により誘起された磁界内で動き、その内部で渦電流とエネルギー散逸とを生ずる。方向29bにおける隙間の大きさの変化は、プレート15内の渦電流の強度に影響を及ぼし、方向29bにおける磁石9とプレート15との相対位置に依存して強度が変動可能な制振を生ずる。
【0041】
図4ii)に示した別の実施態様では、調節可能な制振要素20は、導電性プレート15と、それぞれ永久磁石54及び鋼製カバー53からなる一対の磁石9とから構成される。2つの磁石9とプレート15は互いに対して相対的な移動で変位可能なように装置1の部材に固定されているので、導電性プレート15は、永久磁石54により誘起された磁界内で動き、その内部で渦電流とエネルギー散逸とを生ずる。プレート15の位置は、図示の方向29bにおいて両磁石9に対して調節することができるので、磁石9とプレート15との間の重なり面積が変化し、所望の可変性の減衰比(damping ratio)を生ずる。
【0042】
図4iii)に示した第3の実施態様では、磁石9は、鋼製カバー53と内部を制御された電流が流れるコイル30とを有する電磁石であって、その隣に導電性プレート15が配置される。調節可能な制振要素20の減衰比は、電磁石のコイル30を通って流れる電流の調節により変化させることができる。電流の変化が磁界の強度を変化させ、それが渦電流の強度、即ち、調節可能な制振要素20の減衰比、を変化させる。
【0043】
本チューニング可能なクランプ装置1の実施可能な1実施態様が図5に示されている。本装置1は、一緒に不動部材2を構成するベース2a及び外側ケーシング2bと、可動テーブル3と、チューニング可能な連結部とを備える。チューニング可能な連結部は、案内要素21の役割も果たす一定スチフネスの弾性要素6、回転可能なH型異方性スチフネスの調節可能スチフネス要素7、及び制振要素20(これは一対の磁石9と導電性プレート15とから構成される)を備えている。調節可能スチフネス要素7は、伝動装置24を介して電気モータ8により回転させることができ、実際の角度位置28はエンコーダ16から読み取ることができる。制振要素20の減衰比の調節は、電気モータ22により、プレート15に対する磁石9の位置をボールねじ25により方向29b内で変動させることができるようにすることで可能となる。プレート15は可動テーブル3に連結されている一方で、磁石9は不動部材2に連結されており、こうして可動テーブル3の相対移動により、磁石9に対するプレート15の相対移動が生ずる。この相対移動が、プレート15と磁石9の相対速度及び重なり面積に比例した強度を持つ渦電流を生ずる。最適スチフネス及び減衰の計算のための入力として振動加速度を測定するのを可能にするために、加速度計4が可動テーブル3に取り付けられ、同時に別の加速度計5が不動部材2に取り付けられている。
【0044】
本チューニング可能なクランプ装置1の可能な1実施態様は、鋼製矩形形状プレートの一定スチフネス弾性要素6を有している。この矩形形状プレートは、その長辺縁部に沿ってクランプ固定されたときに、上縁部の中間点に作用する横断方向ユニット力の作用下で上縁部の中間点で測定した横方向変位が少なくとも0.12mmである。交換可能なH型の調節可能スチフネス要素7は、最低スチフネスの操作方向において少なくとも2000N/mmに達する適正操作のためのスチフネス範囲を持たせるために、その操作可能スチフネスの最低値と最高値の比が少なくとも8である。これにより、本チューニング可能なクランプ装置1は、100~500Hzの無負荷周波数(振動数)範囲で操作できるようになる。図4ii)に対応する調節可能な制振要素20においては、導電性プレート15に沿ってその両側に複数の永久磁石9が配置され、プレート15を横断する垂直磁束を発生させる。一方、隣接する磁石9及びプレート15の反対側にある磁石9は、交番する磁極で配置されており、プレート15を通る交番する磁束方向を生ずる。磁石9に対する導電性プレート15の相対移動方向27は、本チューニング可能なクランプ装置1の主振動モードの方向と同じである。一定スチフネス弾性要素6、導電性プレート15及び2列配置の磁石9は、H型スプリングとして形成された調節可能スチフネス要素7の回転軸に対して対称的に平行に配置されている。
【0045】
本チューニング可能なクランプ装置1は、工作機械10の主スピンドルに対して各種方向を向くことができる。図6は、この向きについての可能な4つの異なる配置を示しているが、それらに限定されるものではない。図6i)では、装置1は工作機械10のビルトイン部材であり、可動テーブル3の相対移動は水平面の方向の一つである。工作物11は工作機械に一般的な任意の方法で装置1に取り付けられる。図6ii)では、装置1は工作機械10の一部ではなく、工作機械テーブルに取り付けられているが、可動テーブル3の相対移動は水平面の方向の一つで可能である。図6iii)及び図6iv)では、装置1は工作機械10のビルトイン部材であるか、又はそれに取り付けられていて、不動部材2に対する可動テーブル3の相対移動は垂直面における方向の一つで可能である。
【0046】
本チューニング可能なクランプ装置1は、最適のスチフネス及び制振(減衰)パラメータを、前記の最適シリアル動的カップリング又は前記の機械加工プロセスを通したカップリング又は任意の他の好ましい方法に従って決定することができる。図7は制御装置18により実施される制御アルゴリズムに対する可能な1実施態様を示す。工作物11の振動の振幅を弱めるためのシリアル動的システムの動力学特性を最適化するためには任意の他の好ましい方法を実施することも可能であるかもしれない。制御装置18は、テーブル加速度計4及びベース加速度計5を用いて、テーブル加速度信号31及びベース加速度信号32を得る。この例では、信号31、32はプレ信号処理装置33で前処理される。制御装置18の選択された操作モード、機械加工プロセスが運転中であるか否かに応じて、制御装置18は、非運転制御39及び運転制御50を実施できる。非運転制御の場合には、制御装置18は、例えば単純なハンマーによる外部励振を用いることにより、工作物11の方向26における主モードを決定する。それは非運転モード用のフィルター40及びスペクトル分析34を利用する。その後、主モード検出ユニット35で、工作物11の主モードを検出することができる。レンジ・フィージビリティー(実行可能性範囲)分析36が、チューニングが可能であるか否かを決定する。結果がNoであれば、非運転チューニング39は可能ではなく、Yesであれば非運転チューニングユニット37により前記の最適シリアル動的カップリングに到達するためにパラメータが決定され、同時にパラメータ調節が工程38で実施される。運転制御50の場合には、スペクトル分析34の前に運転フィルター41が適用される。既知のスピンドル信号42を用いて定常解43を除去することにより、工程44で主びびり振動数が求められ、工程45でそれらの変調が算出される。工程46においてチューニング実施可能性に基づいて決定がなされ、工程47において前記の最適シリアル動的カップリング又は前記の機械加工プロセスを通したカップリングが達成される。工程47に従って、工程38においてスチフネス及び制振が調節される。チューニングの品質が工程48で決定され、その結果で工程49において新たな繰り返しサイクルを開始させるか、又はチューニングを受け入れることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
ここに提案したチューニング可能なクランプ装置1は、工作機械10(図6)に適用可能であり、ここで、工作機械10の一部がそれらの工作物テーブル(図6i)又は工作物カラム(図6iv)の役割を果たしているか、或いは別の装置が主工作物テーブル(図6ii)又は工作物カラム(図6iii)に固定されている。すべての配置例において、チューニング可能なクランプ装置1はクランプ固定された工作物11の方向26における本質的振動モードの影響を解消することができる。本発明に係るチューニング可能なクランプ装置1は、機械加工運転中に可撓性部材を持つ工作物11の主モードの可変性を可変性チューニングによって連続的に追従することができる。提案された本発明は、クランプ固定された工作物11の特に可撓性セグメント周辺での材料除去速度を著しく増大させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1:チューニング可能なクランプ装置
2:不動部材、2a:固定ベース、2b:外側ケーシング
3:可動テーブル
4、5:加速度計
6:一定スチフネス弾性要素
7:調節可能なスチフネス要素
8、22:電気モータ
9:磁石
10:工作機械
11:工作物
12:ツール
15:導電性プレート
16:エンコーダ
18:制御装置
19:連結部
20:調節可能な制振要素
21:案内要素(拘束要素)
24:駆動システム(回転機構、トランスミッション)
25:ボールねじ
27:相対移動方向
30:コイル
31、32:加速度信号
33:加速度信号前処理
34:スペクトル分析
35:主モード検出ユニット
36:レンジ・フィージビリティー分析
37:非運転チューニングユニット
38:スチフネス及び減衰パラメータ調節
39:非運転制御モード
40:非運転モード用フィルター
41:運転モード用フィルター
42:スピンドル信号
43:定常解
44:主びびり振動数決定工程
45:上記振動数変調算出
46:チューニング実施可能性決定
47:カップリング工程
48:チューニング品質決定
49:チューニング受容又は再開決定
50:運転制御モード
51:片持ちビーム
52:支点
53:鋼製カバー
54:永久磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
望ましくない振動を避ける最も伝統的な方法は、一般に、その機械構造の固有振動数を有害な振動数(周波数)から十分に離れるようにチューニングするか、又は衝撃吸収材で振動を遮断することである。米国特許第6123312号は、振動遮断システムのスチフネス及び/又は制振特性を、この振動遮断システムにより支持されている少なくとも1つの機械の可動コンポーネントの動き状況を表示する機械の制御信号に基づいて変動させる方法及び装置を開示している。これらの方法は、予測可能な強制振動の振動数と予測不能な再生的びびり振動の振動数とが非常に広範囲の帯域のものとなりうる工作機械には適用不可能である。さらに、工作物及び機械それ自体の固有振動数は、機械軸の位置変化のため、又は工作物の質量減少のために、操作中に変動する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
さらに、エネルギー散逸を最適化するために工作機械に作用する力が理論的に自由裁量(arbitrary)であることができるように、機械と慣性物体との間の接続又は連結部としてアクティブ(能動的)要素を使用することも可能である。そのようなアクティブ型ダンパーは欧州特許出願公開公報第2708316号公報に開示されている。このダンパーは、内部に懸架された慣性物体が収容されている外側ケーシング、この慣性物体の内部に配置されているエンコーダと連係しているモータにより回転される弾性要素から構成され、前記慣性物体と連係する複数対の磁石が配置されている。各対の磁石は、外側ケーシングに固定された導電体プレートにより隔てられ、プレートに対する相対移動による制振を生ずる磁界が磁石間に発生するようになっている。このダンパーの主な特色は、それ自体のスチフネス及び制振を自動的に同定することができることである。2つの加速度計で測定された振動は機械加工プロセス中に処理され、これら2つの測定値の間の比から慣性物体と構造物とを結合するスチフネス及び制振を算出することができる。従って、アクティブ型ダンパーは、パッシブ型及びセミアクティブ型ダンパーより有効であるが、より高価かつ複雑で、さらに耐久性が低い。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
工作機械(10)のテーブルに固定するのに適しているか又は工作機械(10)のテーブルの一部として形成されている不動部材(2)と、この不動部材(2)に連結され、ある相対移動方向(27)に沿って移動するように構成された可動テーブル(3)とを備えた、クランプ止めされた工作物(11)の振動を抑制するためのチューニング可能なクランプ装置(1)であって、不動部材(2)と可動テーブル(3)が、調節可能スチフネス要素(7)と調節可能制振要素(20)とを有するチューニング可能な連結部(19)によって連結されており、ここで加速度計(5、4)がそれぞれ不動部材(2)及び可動テーブル(3)に連結されていることを特徴とする、チューニング可能なクランプ装置(1)。
【国際調査報告】