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特表2023-514695カカオバター同等物として適した脂肪組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】カカオバター同等物として適した脂肪組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230331BHJP
   A23G 1/38 20060101ALI20230331BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/38
A23G3/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549805
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 SE2021050101
(87)【国際公開番号】W WO2021167516
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】2050191-2
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515062913
【氏名又は名称】エイエイケイ、アクチボラグ (ピーユービーエル)
【氏名又は名称原語表記】AAK AB (PUBL)
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ユール ビャーネ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG14
4B014GL07
4B014GP01
4B026DC06
4B026DG01
4B026DH01
4B026DH02
4B026DP01
4B026DX02
(57)【要約】
本発明は、カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物に関し、該脂肪組成物はトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatはSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;該脂肪組成物において、St2Oの含有量は40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量は60重量%以下であり、ここで、Oはオレイン酸、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸であり;該脂肪組成物は2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する。該脂肪組成物の使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物であって、
該脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatがSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;
該脂肪組成物において、St2Oの含有量が40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量が60重量%以下であり、ここで、Oがオレイン酸、Stがステアリン酸、Pがパルミチン酸であり;
該脂肪組成物が2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する、
前記脂肪組成物。
【請求項2】
少なくとも2.6、例えば少なくとも2.7、例えば少なくとも2.8、例えば少なくとも2.9、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.2、例えば少なくとも3.4、例えば少なくとも3.6、例えば少なくとも3.8、または例えば少なくとも4のBCI値を有する、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
2.5~6.0、例えば3.0~5.0のBCI値を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
St2Oの含有量が38重量%以下である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
St2Oの含有量が、25~40重量%、例えば25~38重量%、例えば27~38重量%、例えば30~38重量%、または例えば32~38重量%である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
StOP+StPO+St2Oの総含有量が、55重量%以下、例えば52重量%以下、例えば50重量%以下、または例えば45重量%以下である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
StOP+StPO+St2Oの総含有量が、25~60重量%、例えば25~55重量%、例えば25~52重量%、例えば25~50重量%、例えば27~52重量%、または例えば27~50重量%である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
カカオ、マンゴー、シア、イリペ(illipe)、サル(sal)、コクム(kokum)、またはこれらの組み合わせに由来する脂肪および/または油をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
前記脂肪組成物が、20~80重量%の植物性脂肪組成物を含み、該植物性脂肪組成物が、少なくとも60重量%がSat2Oであるトリグリセリドを含み、該植物性脂肪組成物において、SatOSat/SatSatOの比率が12以上であり、POP含有量が25~95重量%である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
前記植物性脂肪組成物が、2.9重量%以下のトリ飽和トリグリセリドを含む、請求項9に記載の脂肪組成物。
【請求項11】
SatOSat/SatSatOの比率が、少なくとも14、例えば少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17、例えば少なくとも18、例えば少なくとも20、例えば少なくとも21、例えば少なくとも22、例えば少なくとも23、例えば少なくとも24、または例えば少なくとも25である、請求項9~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項12】
前記植物性脂肪組成物中のトリ飽和トリグリセリドの総含有量が、0.01~2.9重量%、例えば0.05~2.9重量%、例えば0.1~2.9重量%、例えば0.5~2.9重量%、例えば0.5~1.9重量%、例えば0.5~1.5重量%、または例えば0.5~1.2重量%である、請求項9~11のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項13】
前記植物性脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの50~95重量%、例えば50~90重量%、例えば55~90重量%、例えば55~85重量%、例えば60~85重量%、または例えば60~80重量%がSat2Oである、請求項9~12のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項14】
前記植物性脂肪組成物のPOP含有量が、30~95重量%、例えば30~90重量%、例えば30~80重量%、例えば40~75重量%、または例えば45~70重量%である、請求項9~13のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項15】
前記植物性脂肪組成物が、モノグリセリド(MAG)とジグリセリド(DAG)とを、10重量%以下、例えば8重量%以下、例えば6重量%以下、例えば5重量%以下、または例えば4重量%以下の総量で含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項16】
カカオバター同等物(CBE)である、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項17】
人が摂取するための食品の製造における、前記請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項18】
食品の材料としての、請求項1~16のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項19】
前記食品が菓子製品である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記菓子製品がチョコレートまたはチョコレート様の製品またはフィリングである、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、好ましくはビューラー結晶化指数(BCI)値が2.5以上であることを特徴とする、カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、前記脂肪組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
チョコレートの重要な製造パラメータは、安定した結晶形態で速く結晶化するその能力である。チョコレートにそのような能力を付加するカカオバターの能力は、多くの場合、いわゆるビューラー結晶化指数(BCI)で評価されている。得られたBCI値は、カカオバターの結晶化挙動を迅速に予測するために、チョコレートおよび油脂業界で使用されている。これは経験値であり、3.5を上回る値は、結晶化挙動に関して良質のカカオバターであると広く認められている。したがって、BCI値は当業界で知られた経験値である。
【0004】
チョコレートの製造において、カカオバターは、完全にまたは部分的にカカオバター同等物(CBE)に置き換えることができ、このCBEは、多くの場合、StOStの含有量が高い(30%を超える)植物性脂肪とPOPの含有量が高い(40%を超える)植物性脂肪とを、例えば20:80から80:20の比率で、混合することにより製造される。カカオバターを他の物理的パラメータで1:1に置き換えたカカオバター同等物(CBE)のBCI値は2.5未満であることが多く、そのため、カカオバターのBCI値よりも、BCI値がかなり低くなる。したがって、当技術分野では、カカオバターと同様の物理的特性を有し、かつ2.5を上回るBCI値を有するCBEとして使用するのに適した脂肪組成物が求められている。それに応じて、本発明の主な目的は、そのようなCBEを提供することにある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、カカオバター同等物(CBE)として使用するのに適した脂肪組成物に関し、該脂肪組成物はトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatはSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;該脂肪組成物において、St2Oの含有量は40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量は60重量%以下であり、ここで、Oはオレイン酸、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸であり;該脂肪組成物は2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する。
【0006】
一態様では、本発明は、好ましくは2.5以上のBCI値を有する、CBEとして使用するのに適した脂肪組成物に関し、該脂肪組成物は20~80重量%の植物性脂肪組成物を含み、該植物性脂肪組成物は、少なくとも60重量%がSat2Oであるトリグリセリドを含み、該植物性脂肪組成物において、SatOSat/SatSatOの比率は12以上であり、かつPOP含有量は25~95重量%である。
【0007】
全体として、本発明による脂肪組成物は、CBEとして使用するのに適しており、カカオバターのBCI値によく似たBCI値である、2.5に等しいかそれを上回るBCI値を有することを特徴とする。これは、当技術分野で求められてきた品質である。
【0008】
本発明はさらに、カカオバター同等物(CBE)として使用するのに適した脂肪組成物の、人が摂取するための食品の製造における使用に関し、該脂肪組成物はトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatはSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;該脂肪組成物において、St2Oの含有量は40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量は60重量%以下であり、ここで、Oはオレイン酸、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸であり;該脂肪組成物は2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する。
【0009】
本発明はまた、カカオバター同等物(CBE)として使用するのに適した脂肪組成物の、チョコレートまたはチョコレート様の製品またはフィリングといった菓子製品などの、食品の材料としての使用に関し、該脂肪組成物はトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatはSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;該脂肪組成物において、St2Oの含有量は40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量は60重量%以下であり、ここで、Oはオレイン酸、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸であり;該脂肪組成物は2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する。
【0010】
定義
本発明において、以下の用語は、本明細書の他の箇所で定義されていない限り、以下を含むことを意味する。
【0011】
用語「約」(about)、「ほぼ」(around)、または「およそ」(approximately)は、例えば、当技術分野において一般的に経験される測定の不確かさを示すことを意味し、これは、例えば±1、2、5、10%くらいの大きさであり得る。
【0012】
用語「含む」(「comprising」または「to comprise」)は、記載された部品、工程、特徴、または構成要素の存在を特定するものと解釈されるが、1つまたは複数の追加の部品、工程、特徴、または構成要素の存在を排除するものではない。
【0013】
用語「油」および「脂肪」は、脂肪酸とグリセロールとのエステルに使用される。1分子のグリセロールが1、2、または3個の脂肪酸分子にエステル化されると、それぞれモノグリセリド(MAG)、ジグリセリド(DAG)、またはトリグリセリド(TAG)が生成される。通常、脂肪は、主にトリグリセリドと少量のレシチン、ステロールなどから構成される。脂肪が室温で液体である場合、それは通常、油と呼ばれる。脂肪が室温で半固体であり、外来起源のものである場合、それはバターと呼ばれ、例えばシアバターなどがある。室温で固体のものは、脂肪と呼ばれる。
【0014】
本明細書で使用する「植物油」および「植物性脂肪」は、特に指定されない限り、交換可能に使用される。本明細書において、「植物性」という用語は、植物に由来して、その元の化学構造/組成を保持すると理解されるものとする。したがって、植物性脂肪または植物性トリグリセリドは、その脂肪成分またはトリグリセリドの化学構造が変化しない限り、分別などの後でも植物性脂肪または植物性トリグリセリドとして理解されるべきである。植物性トリグリセリドが例えばエステル交換される場合は、それらが本明細書においてもはや植物性トリグリセリドとして理解されることはない。
【0015】
この状況での油、脂肪、および関連製品に関しては、“Physical and Chemical Characteristics of Oils, Fats and Waxes”, AOCS, 1996、および“Lipid Glossary 2”, F.D. Gunstone, The Oily Press, 2004を参照されたい。
【0016】
Satは飽和脂肪酸を意味し、Uは不飽和脂肪酸を意味する。式Sat2U、SatUSatなどのトリグリセリドに含まれる脂肪酸は、同一の飽和および不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和および不飽和脂肪酸であってもよい。具体的には、本発明においてSatは、C16:0および/またはC18:0飽和脂肪酸から選択される。
【0017】
Stはステアリン酸/ステアレート(C18:0)を意味し、Oはオレイン酸/オレエート(C18:1)を意味し、Pはパルミチン酸(C16:0)を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「トリグリセリド」は、用語「トリアシルグリセリド」と交換可能に使用することができ、グリセロールと3個の脂肪酸から誘導されるエステルとして理解されるべきである。「トリグリセリド」は、TGまたはTAGと略記することができる。
【0019】
トリグリセリド(TAG)の%量は、植物油中のトリグリセリドをHPLCで測定するための標準法であるAOCS Ce 5b-89法を用いて測定される。この方法では、所定のTAGの異なる位置異性体を区別しないため、例えば、PPOとPOPは1つのものとして測定される。
【0020】
個々の位置異性体を決定する(例えば、SatOSat/SatSatOの比率を決定する)必要性がある態様では、当業者は、例えば蒸発光散乱検出器(ELSD)と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、位置異性体を決定する方法を知っているはずである。サンプルの調製は、不飽和脂肪酸の二重結合をエポキシ化することから成る。あるいは、該比率を決定するには、銀イオンカラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、ELSDで検出することができる。これらの方法は公知であり、Reading Scientific Services Ltd.およびMylnefield Lipid Analysisなどの民間検査機関で適切な方法を利用することができる。
【0021】
本明細書で使用する「重量%」は、重量パーセント、すなわちwt%、wt.%またはwt.-%に関する。脂肪組成物中の所定の重量による量は、約100%のトリグリセリドを含む組成物から計算されるが、遊離脂肪酸、モノ-および/またはジグリセリドのようなマイナーな成分を10wt%まで含む組成物も含まれ得る。
【0022】
SatOSat/SatSatOの比率とは、全てのSatOSat TAGの総重量(合計)を全てのSatSatO TAGの総重量(合計)で割ったものを意味する。
【0023】
本明細書で使用する「チョコレート」は、チョコレート製品および/またはチョコレート様製品として理解されたい。チョコレート様製品とは、消費者が少なくともチョコレートとして、またはチョコレートに共通した、例えば溶融プロファイル、味などの、感覚属性を有する菓子製品として経験する製品を意味する。一部のチョコレートはカカオバターを、通常はかなりの量で含んでいるが、一部のチョコレート様製品は、例えばカカオバターをカカオバター同等物、カカオバター代替品などで置き換えることによって、少量のカカオバターを用いて、またはカカオバターなしでさえ、製造することができる。さらに、多くのチョコレート製品はカカオパウダーまたはカカオマスを含んでいるが、典型的なホワイトチョコレートのように、一部のチョコレート製品は、カカオパウダーを使用せず、例えばカカオバターからそのチョコレート味を引き出して、製造されることもある。国および/または地域によっては、チョコレートとして販売できる製品に様々な制限事項が存在し得る。
【0024】
前記チョコレートは、乳脂肪を含むチョコレートであってもよいが、「ミルクチョコレート」と表示されることはない。ヨーロッパの法律では、チョコレートをミルクチョコレートと表示するためには、チョコレートレシピ全体の重量に対して最低でも3.5重量%の乳脂肪を含む必要があると規定されており、これは、脂肪含有量に応じて、標準的なチョコレートの脂肪組成の7~14重量%に相当する。
【0025】
本明細書で使用する「カカオバター同等物」またはCBEは、カカオバター(CB)と非常に類似した化学的・物理的特性を有し、かつCBと適合しうる食用脂肪を意味することが意図される。CBおよびCBEのいずれにおいても、主な脂肪酸は通常、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸である。トリグリセリドは通常、2-オレオ-ジ飽和(Sat2O)である。カカオバター同等物は、例えば、パームミッドフラクションと、シアステアリンのステアリン画分またはSatOSatトリグリセリドに富む他の油画分との混合物から作られ、ここで、Satは、C16以上、例えばC16および/またはC18、の鎖長を有する飽和脂肪酸である。
【0026】
「テクスチャー」は、物体の外表面によってもたらされる、コンシステンシーおよび感覚に保持される特性を指す。テクスチャーの特性評価は、一般に、2つのグループに大別され、最初のグループは、訓練を受けた評価者のパネルによって実施される官能分析に基づくものであり、2番目のグループは機器分析の方法に基づくものである。
【0027】
官能分析には、指だけでなく、唇と、訓練を受けた評価者の口の中の舌および歯の使用が含まれる。広く使用されている機器による方法は、円錐(コーン)または針(ニードル)の侵入試験である。使用される自動分析装置は、通常、テクスチャーアナライザーと呼ばれている。
【0028】
本発明で使用されるテクスチャーアナライザーはTexture Analyzer TA-XT2iであり、使用されるプローブは5mm侵入に設定したP2Nニードルである。測定された侵入力はグラム単位で表示される。
【0029】
「食品」は、人が摂取するための製品を含む。重要な製品群は、カカオバターおよびカカオバター様脂肪が使用されているものである。
【0030】
菓子製造分野の製品および製法については、“Chocolate, Cocoa and Confectionery”, B. W. Minifie, Aspen Publishers Inc., 3. Edition 1999を参照されたい。
【0031】
パームミッドフラクション(PMF)は、パーム油の複数回の分別により製造される。その主な特徴は、対称型ジ飽和トリグリセリド(主にPOP)の非常に高い含有量である。本開示では、パームミッドフラクションとPMFは交換可能に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物に関し、該脂肪組成物はトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatはSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;該脂肪組成物において、St2Oの含有量は40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量は60重量%以下であり、ここで、Oはオレイン酸、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸であり;該脂肪組成物は2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する。
【0033】
BCI値は、例えばビューラー社製のMultiTherm TCで測定された、制御冷却速度に基づいて算出された経験的な値である。チョコレート業界での経験では、カカオバターのBCI値は、チョコレートの一般的な結晶化特性とよく相関しており、すなわち、BCI値が高いほど、テンパリングが容易で、テンパリング能力が高く、結晶化が速いことを示している。多くのチョコレート製造業者は、カカオバターとして受け入れることができる最小値として3.5の値を使用している。CBEはカカオバターと同様の物理的特性を備えているものの、標準的なCBEは比較的低いBCI値を有し、しばしば2.5を下回るというのが事実である。本発明は、例えばBCI値が2.5以上である、改善された特性を有する新規CBEに関する。
【0034】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、少なくとも2.6のBCI値を有し、例えば少なくとも2.7、例えば少なくとも2.8、例えば少なくとも2.9、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.2、例えば少なくとも3.4、例えば少なくとも3.6、例えば少なくとも3.8、または例えば少なくとも4のBCI値を有する。
【0035】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、2.5~6.0、例えば3.0~5.0のBCI値を有する。
【0036】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、2.8~6.0、例えば2.7~6.0、または例えば3.0~6.0のBCI値を有する。
【0037】
一つ以上の態様では、St2Oの含有量は、38重量%以下である。
【0038】
一つ以上の態様では、St2Oの含有量は、25~40重量%、例えば25~38重量%、例えば27~38重量%、例えば30~38重量%、または例えば32~38重量%である。
【0039】
一つ以上の態様では、StOP+StPO+St2Oの総含有量は、55重量%以下、例えば52重量%以下、例えば50重量%以下、または例えば45重量%以下である。StOP+StPO+St2Oの重量による総含有量は、StOPとStPOとSt2Oの重量の合計として、すなわち、重量によるΣStOP+StPO+St2Oトリグリセリドとして計算される。
【0040】
一つ以上の態様では、StOP+StPO+St2Oの総含有量は、25~60重量%、例えば25~55重量%、例えば25~52重量%、例えば25~50重量%、例えば27~52重量%、または例えば27~50重量%である。
【0041】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、カカオ、マンゴー、シア、イリペ(illipe)、サル(sal)、コクム(kokum)、またはこれらの組み合わせに由来する脂肪および/または油をさらに含む。
【0042】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、20~80重量%の植物性脂肪組成物を含み、ここで、該植物性脂肪組成物は、少なくとも60重量%がSat2Oであるトリグリセリドを含み、該植物性脂肪組成物において、SatOSat/SatSatOの比率は12以上であり、POP含有量は25~95重量%である。
【0043】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物中のトリグリセリドの少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%は、Sat2Oである。
【0044】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物は、50~95重量%、例えば50~90重量%、例えば55~90重量%、例えば55~85重量%、例えば60~85重量%、または例えば60~80重量%がSat2Oであるトリグリセリドを含む。
【0045】
一つ以上の態様では、SatOSat/SatSatOの比率は、少なくとも14、例えば少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17、例えば少なくとも18、例えば少なくとも20、例えば少なくとも21、例えば少なくとも22、例えば少なくとも23、例えば少なくとも24、または例えば少なくとも25である。
【0046】
一つ以上の態様では、SatOSat/SatSatOの比率は、12~50、例えば14~50、例えば15~50、例えば16~50、例えば17~50、例えば18~50、例えば20~50、例えば21~50、例えば22~50、例えば23~50、例えば24~50、例えば25~50である。
【0047】
SatOSat/SatSatOのより高い比率が、CBEのBCI値に、ひいてはテンパリング特性と脂肪成分の結晶化速度に、いかに大きな影響を与えるかは、驚くべきことであった。
【0048】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、30~95重量%、例えば30~90重量%、例えば30~80重量%、例えば40~75重量%、または例えば45~70重量%である。
【0049】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、30~95重量%、例えば30~90重量%、例えば30~80重量%、例えば30~75重量%、または例えば30~70重量%である。
【0050】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、40~95重量%、例えば40~90重量%、例えば40~80重量%、例えば40~75重量%、または例えば40~70重量%である。
【0051】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、45~95重量%、例えば45~90重量%、例えば45~80重量%、例えば45~75重量%、または例えば45~70重量%である。
【0052】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、35~75重量%、例えば40~75重量%、例えば45~75重量%、または例えば50~75重量%である。
【0053】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物のPOP含有量は、35~70重量%、例えば40~70重量%、例えば45~70重量%、または例えば50~70重量%である。
【0054】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物は、トリ飽和トリグリセリドを2.9重量%以下、例えば2.0重量%以下、例えば1.0重量%以下、または例えば0.5重量%以下含む。
【0055】
トリ飽和トリグリセリドは、一態様では、パルミチン酸とステアリン酸のみを含む全てのトリ飽和トリグリセリドの合計、すなわち、ΣPPP、PPSt、PStP、PStSt、StPSt、およびStStStトリグリセリドを指している。
【0056】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物中のトリ飽和トリグリセリドの総含有量は、0.01~2.9重量%、例えば0.05~2.9重量%、例えば0.1~2.9重量%、例えば0.5~2.9重量%、例えば0.5~1.9重量%、例えば0.5~1.5重量%、例えば0.5~1.2重量%である。
【0057】
前記植物性脂肪組成物中のトリ飽和TAGの量は、標準的な多形の植物性脂肪組成物中よりも少なくなっている。脂肪成分中のトリ飽和TAGの含有量がCBEのBCI値にいかに大きな影響を与えるかは、驚くべきことであった。
【0058】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物は、モノグリセリド(MAG)とジグリセリド(DAG)とを、10重量%以下、例えば8重量%以下、例えば6重量%以下、例えば5重量%以下、または例えば4重量%以下の総量で含んでいる。
【0059】
一つ以上の態様では、前記脂肪組成物は、カカオバター同等物(CBE)である。
【0060】
本発明の脂肪組成物は、遊離脂肪酸、モノおよび/またはジグリセリドのような、マイナーな成分を10重量%まで含有することができる。
【0061】
本発明はまた、本明細書に開示および記載される脂肪組成物であって、CBEである脂肪組成物に関する。
【0062】
本発明はまた、人が摂取するための食品の製造における、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0063】
本発明はまた、食品の材料としての、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0064】
本発明はまた、菓子製品の材料としての、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0065】
本発明はまた、チョコレートまたはチョコレート様の製品またはフィリングの材料としての、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0066】
本発明はまた、菓子製品におけるフィリング脂肪としての、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0067】
本発明はまた、チョコレートまたはチョコレート様の製品におけるフィリング脂肪としての、本明細書に開示および記載される脂肪組成物の使用に関する。
【0068】
一つ以上の態様では、前記植物性脂肪組成物は、カカオバター同等物(CBE)を製造するために、マンゴー、シア、イリペ、サル、コクム、またはこれらの組み合わせに由来する油と混合される。
【実施例
【0069】
実施例1 - カカオバター同等物(CBE)
使用した材料は全て、以下の表1で特定した植物性脂肪を除いて、同じバッチのものである。
【0070】
表1は、2つの脂肪成分の組成を示す。
【0071】
標準脂肪成分(脂肪F)は、パームミッドフラクションとしてごく普通の組成を有するが、代替脂肪成分(脂肪G)は、トリ飽和TAGの含有量が著しく低く、SatOSat/SatSatOの比率が大幅に高くなっている。使用した代替脂肪(脂肪G)は、標準的なPMFを改良したもので、トリ飽和TAGの大部分と非対称型モノ不飽和TAGの一部を、エクストラトップ分別(extra top fractionation)によって除去したものである。
【0072】
【表1】
分析は、民間検査機関で公知の任意の方法により行うことができる。
トリグリセリド(TAG)の%量は、植物油中のトリグリセリドをHPLCで測定する標準法であるAOCS Ce 5b-89法を用いて測定される。
【0073】
表1からの2つの脂肪成分(脂肪Fと脂肪G)を用いて、2つの単純な標準CBEを製造するために、2つの脂肪をシアステアリンIV 36およびイリペ油と混合して、POP、POSt、StOStがほぼ同じ含有量の2つの比較可能なCBEを得た(表2参照)。
【0074】
【表2】
分析は、民間検査機関で公知の任意の方法により行うことができる。
トリグリセリド(TAG)の%量は、植物油中のトリグリセリドをHPLCで測定する標準法であるAOCS Ce 5b-89法を用いて測定される。
MultiTherm(商標)T/TC機器。この方法は、この機器のメーカーであるビューラー社によって記載されている。
【0075】
結論
実施例1は、SatOSat/SatSatOの比率を高め、かつトリ飽和TAGの含有量を低くした本発明の代替脂肪成分を使用することによって、カカオバター同等物(CBE)のBCI値を改善することが可能であることを示している。
【0076】
SatOSat/SatSatOの比率が高く、トリ飽和TAGの含有量が少ないCBEは、かなり高いBCI値を有するCBEを提供すると結論付けることができ、このようなCBEは、多くのチョコレート製造業者の意見と経験では、BCI値に関してより高品質のカカオバターに対応している。
【0077】
高品質は、テンパリングが容易で、テンパリング能力が高く、結晶化が速いことと密接に関係している。
【0078】
実施例2 - カカオバター同等物(CBE)
次の実施例は、POSt含有量がより高いCBEに関してBCI値の同じ改善を示す。
【0079】
この実施例では、表1に示したものと同じ脂肪を使用するが、別の比率で混合して(表3参照)、脂肪成分Fから脂肪成分Gに変更した場合のCBEのBCI値に及ぼす一般的効果を実証する。2つのブレンドは、Sat2O含有量が同等になるように調整される。
【0080】
【表3】
分析は、民間検査機関で公知の任意の方法により行うことができる。
トリグリセリド(TAG)の%量は、植物油中のトリグリセリドをHPLCで測定する標準法であるAOCS Ce 5b-89法を用いて測定される。
MultiTherm(商標)T/TC機器。この方法は、この機器のメーカーであるビューラー社によって記載されている。
【0081】
結論
SatOSat/SatSatOの比率が高く、トリ飽和TAGの含有量が少ないPOStリッチCBEなどの、代替脂肪成分(代替PMF)を使用すると、結果的に、かなり高いBCI値を有するCBEになると結論付けることができ、このようなCBEは、多くのチョコレート製造業者の意見と経験では、BCI値に関してより高品質のカカオバターに対応している。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物であって、
該脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat2Oであり、ここで、SatがSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;
該脂肪組成物において、St2Oの含有量が40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St2Oの総含有量が60重量%以下であり、ここで、Oがオレイン酸、Stがステアリン酸、Pがパルミチン酸であり;
該脂肪組成物が3.2以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する、
前記脂肪組成物。
【請求項2】
なくとも3.4、少なくとも3.6、なくとも3.8、またはなくとも4のBCI値を有する、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
3.2~6.0、または3.2~5.0のBCI値を有する、請求項1または2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
St2Oの含有量が38重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
St2Oの含有量が、25~40重量%、25~38重量%、27~38重量%、30~38重量%、または32~38重量%である、求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
StOP+StPO+St2Oの総含有量が、55重量%以下、52重量%以下、50重量%以下、または45重量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
StOP+StPO+St2Oの総含有量が、25~60重量%、25~55重量%、25~52重量%、25~50重量%、27~52重量%、または27~50重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
カカオ、マンゴー、シア、イリペ(illipe)、サル(sal)、コクム(kokum)、またはこれらの組み合わせに由来する脂肪および/または油をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
前記脂肪組成物が、20~80重量%の植物性脂肪組成物を含み、該植物性脂肪組成物が、少なくとも60重量%がSat2Oであるトリグリセリドを含み、該植物性脂肪組成物において、SatOSat/SatSatOの比率が12以上であり、POP含有量が25~95重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
前記植物性脂肪組成物が、2.9重量%以下のトリ飽和トリグリセリドを含む、請求項9に記載の脂肪組成物。
【請求項11】
SatOSat/SatSatOの比率が、少なくとも14、なくとも15、なくとも16、なくとも17、なくとも18、なくとも20、なくとも21、なくとも22、なくとも23、なくとも24、またはなくとも25である、請求項9~10のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項12】
前記植物性脂肪組成物中のトリ飽和トリグリセリドの総含有量が、0.01~2.9重量%、0.05~2.9重量%、0.1~2.9重量%、0.5~2.9重量%、0.5~1.9重量%、0.5~1.5重量%、または0.5~1.2重量%である、請求項9~11のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項13】
前記植物性脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの50~95重量%、50~90重量%、55~90重量%、55~85重量%、60~85重量%、または60~80重量%がSat2Oである、請求項9~12のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項14】
前記植物性脂肪組成物のPOP含有量が、30~95重量%、30~90重量%、30~80重量%、40~75重量%、または45~70重量%である、請求項9~13のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項15】
前記植物性脂肪組成物が、モノグリセリド(MAG)とジグリセリド(DAG)とを、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下の総量で含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項16】
カカオバター同等物(CBE)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項17】
人が摂取するための食品の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項18】
食品の材料としての、請求項1~16のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項19】
前記食品が菓子製品である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記菓子製品がチョコレートまたはチョコレート様の製品またはフィリングである、請求項19に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
パームミッドフラクション(PMF)は、パーム油の複数回の分別により製造される。その主な特徴は、対称型ジ飽和トリグリセリド(主にPOP)の非常に高い含有量である。本開示では、パームミッドフラクションとPMFは交換可能に使用される。
[本発明1001]
カカオバター同等物として使用するのに適した脂肪組成物であって、
該脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの60重量%以上がSat 2 Oであり、ここで、SatがSt、P、またはこれらの組み合わせから選択され;
該脂肪組成物において、St 2 Oの含有量が40重量%以下であり、かつStOP+StPO+St 2 Oの総含有量が60重量%以下であり、ここで、Oがオレイン酸、Stがステアリン酸、Pがパルミチン酸であり;
該脂肪組成物が2.5以上のビューラー結晶化指数(BCI)値を有する、
前記脂肪組成物。
[本発明1002]
少なくとも2.6、例えば少なくとも2.7、例えば少なくとも2.8、例えば少なくとも2.9、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.2、例えば少なくとも3.4、例えば少なくとも3.6、例えば少なくとも3.8、または例えば少なくとも4のBCI値を有する、本発明1001の脂肪組成物。
[本発明1003]
2.5~6.0、例えば3.0~5.0のBCI値を有する、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1004]
St 2 Oの含有量が38重量%以下である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1005]
St 2 Oの含有量が、25~40重量%、例えば25~38重量%、例えば27~38重量%、例えば30~38重量%、または例えば32~38重量%である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1006]
StOP+StPO+St 2 Oの総含有量が、55重量%以下、例えば52重量%以下、例えば50重量%以下、または例えば45重量%以下である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1007]
StOP+StPO+St 2 Oの総含有量が、25~60重量%、例えば25~55重量%、例えば25~52重量%、例えば25~50重量%、例えば27~52重量%、または例えば27~50重量%である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1008]
カカオ、マンゴー、シア、イリペ(illipe)、サル(sal)、コクム(kokum)、またはこれらの組み合わせに由来する脂肪および/または油をさらに含む、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1009]
前記脂肪組成物が、20~80重量%の植物性脂肪組成物を含み、該植物性脂肪組成物が、少なくとも60重量%がSat 2 Oであるトリグリセリドを含み、該植物性脂肪組成物において、SatOSat/SatSatOの比率が12以上であり、POP含有量が25~95重量%である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1010]
前記植物性脂肪組成物が、2.9重量%以下のトリ飽和トリグリセリドを含む、本発明1009の脂肪組成物。
[本発明1011]
SatOSat/SatSatOの比率が、少なくとも14、例えば少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17、例えば少なくとも18、例えば少なくとも20、例えば少なくとも21、例えば少なくとも22、例えば少なくとも23、例えば少なくとも24、または例えば少なくとも25である、本発明1009~1010のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1012]
前記植物性脂肪組成物中のトリ飽和トリグリセリドの総含有量が、0.01~2.9重量%、例えば0.05~2.9重量%、例えば0.1~2.9重量%、例えば0.5~2.9重量%、例えば0.5~1.9重量%、例えば0.5~1.5重量%、または例えば0.5~1.2重量%である、本発明1009~1011のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1013]
前記植物性脂肪組成物がトリグリセリドを含み、トリグリセリドの50~95重量%、例えば50~90重量%、例えば55~90重量%、例えば55~85重量%、例えば60~85重量%、または例えば60~80重量%がSat 2 Oである、本発明1009~1012のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1014]
前記植物性脂肪組成物のPOP含有量が、30~95重量%、例えば30~90重量%、例えば30~80重量%、例えば40~75重量%、または例えば45~70重量%である、本発明1009~1013のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1015]
前記植物性脂肪組成物が、モノグリセリド(MAG)とジグリセリド(DAG)とを、10重量%以下、例えば8重量%以下、例えば6重量%以下、例えば5重量%以下、または例えば4重量%以下の総量で含む、本発明1009~1014のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1016]
カカオバター同等物(CBE)である、前記本発明のいずれかの脂肪組成物。
[本発明1017]
人が摂取するための食品の製造における、前記本発明のいずれかの脂肪組成物の使用。
[本発明1018]
食品の材料としての、本発明1001~1016のいずれかの脂肪組成物の使用。
[本発明1019]
前記食品が菓子製品である、本発明1017の使用。
[本発明1020]
前記菓子製品がチョコレートまたはチョコレート様の製品またはフィリングである、本発明1019の使用。
【国際調査報告】