(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】改善された特異度を有する子宮内膜症評価のための組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230331BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230331BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230331BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20230331BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230331BHJP
C12N 15/16 20060101ALN20230331BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20230331BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20230331BHJP
C07K 16/26 20060101ALN20230331BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230331BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20230331BHJP
C07K 14/59 20060101ALN20230331BHJP
C07K 14/79 20060101ALN20230331BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230331BHJP
C07K 14/76 20060101ALN20230331BHJP
C07K 17/00 20060101ALN20230331BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20230331BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230331BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 W ZNA
G01N33/53 N
G01N33/53 P
G01N33/53 B
A61K48/00
A61P15/00
A61K38/08
A61K31/513
C12N15/13
C12N15/16
C12N15/19
C07K16/24
C07K16/26
C07K16/28
C07K14/52
C07K14/59
C07K14/79
C07K14/705
C07K14/76
C07K17/00
C12N15/10 110Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550681
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021018462
(87)【国際公開番号】W WO2021168040
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522331367
【氏名又は名称】アスピラ ウィメンズ ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】バルドワジ ニティン
(72)【発明者】
【氏名】パパス トッド
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ ハーバート
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QX02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA23
4C084DB10
4C084NA20
4C084ZA811
4C084ZC032
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA81
4C086ZC03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA60
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA30
4H045DA45
4H045DA50
4H045DA70
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、様々な子宮内膜症タイプ(例えば、子宮内膜症、子宮内膜嚢胞、子宮内膜腫、または子宮内膜の別の良性の状態)を有しかつ様々な疾患状況(例えば、早期段階および後期段階)にある女性における子宮内膜症の非侵襲的評価において、高い感度および高い特異度を提供する組成物および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるアポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)のうちの1つ、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項2】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるβ2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項3】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、トランスフェリン(TRF)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、およびプレアルブミン(PREA)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項4】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびシスタチンC(CST3)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項5】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、およびアポリポタンパク質A1(ApoA1)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項6】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項7】
対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるアポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:α1ミクログロブリン(A1M)、αフェトプロテイン(AFP)、アンジオポエチン2(Ang-2)、アポリポタンパク質B(ApoB)、アポリポタンパク質E(ApoE)、シスタチンC(CST3)、CD40抗原(CD40)、クロモグラニンA(CgA)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、クラステリン(CLU、ApoJ)、エオタキシン1(CCL11)、エンドスタチン、EN-RAGE(S100A12)、脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)、脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)、Fasリガンド受容体(Fas、FasR)、フェリチン(FTL)、ガレクチン3(Gal-3)、成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)、グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、肝細胞増殖因子(HGF)、ハプトグロビン(Hp)、免疫グロブリンE(IgE)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、免疫グロブリンM(IgM)、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)、インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)、カリクレイン5(KLK5)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)、単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)、マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)、ミオグロビン(Mb)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)、肺および活性化制御ケモカイン(Pulmonary and Activation Regulated Chemokine)(PARC)、プロスタシン(PRSS8)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)、幹細胞因子(SCF)、胸腺発現ケモカイン(TECK)、トレフォイル因子3(TFF3)、腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA/PLAT)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)、血管内皮増殖因子(VEGF)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、YKL-40(CHI3L1)のうちの1つもしくは複数、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、パネル。
【請求項8】
前記マーカーが捕捉分子に結合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項9】
前記捕捉分子が基材に結合されている、請求項8記載のパネル。
【請求項10】
捕捉分子のパネルであって、各捕捉分子が、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチドバイオマーカーに結合する、パネル。
【請求項11】
前記捕捉分子が抗体である、請求項8~10のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項12】
前記捕捉分子がポリヌクレオチドである、請求項8~10のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項13】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)のうちの1つもしくは複数からなる群より選択される、方法。
【請求項14】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)からなる群より選択される、方法。
【請求項15】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:α1ミクログロブリン(A1M)、αフェトプロテイン(AFP)、アンジオポエチン2(Ang-2)、アポリポタンパク質B(ApoB)、アポリポタンパク質E(ApoE)、シスタチンC(CST3)、CD40抗原(CD40)、クロモグラニンA(CgA)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、クラステリン(CLU、ApoJ)、エオタキシン1(CCL11)、エンドスタチン、EN-RAGE(S100A12)、脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)、脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)、Fasリガンド受容体(Fas、FasR)、フェリチン(FTL)、ガレクチン3(Gal-3)、成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)、グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、肝細胞増殖因子(HGF)、ハプトグロビン(Hp)、免疫グロブリンE(IgE)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、免疫グロブリンM(IgM)、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)、インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)、カリクレイン5(KLK5)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)、単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)、マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)、ミオグロビン(Mb)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)、肺および活性化制御ケモカイン(PARC)、プロゲステロン(P4)、プロスタシン(PRSS8)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)、幹細胞因子(SCF)、胸腺発現ケモカイン(TECK)、トレフォイル因子3(TFF3)、腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA/PLAT)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)、血管内皮増殖因子(VEGF)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、およびYKL-40(CHI3L1)のうちの1つもしくは複数からなる群より選択される、方法。
【請求項16】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、およびアポリポタンパク質A1(ApoA1)からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、トランスフェリン(TRF)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、およびプレアルブミン(PREA)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびシスタチンC(CST3)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、方法。
【請求項19】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、方法。
【請求項20】
前記対象の年齢を特徴づけることをさらに含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象を閉経前または閉経後と特徴づけることをさらに含む、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
GnRHアンタゴニストが、エラゴリクス、アバレリクス、セトロレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、またはレルゴリクスである、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
GnRHアンタゴニストがエラゴリクスである、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
GnRHアゴニストが、ゴセレリン、ロイプロリド、ナファレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、またはトリプトレリンである、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数の前記マーカーのレベルの増加が、子宮内膜症を非子宮内膜症と区別する、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
1つまたは複数の前記マーカーのレベルの減少が、子宮内膜症を非子宮内膜症と区別する、請求項13~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記参照が、健常対象由来の、対応する生物学的サンプルである、請求項13~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記参照が、より早い時点の同一対象に由来する、請求項13~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記特徴づけるステップが、免疫アッセイまたは親和性捕捉である、請求項13~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
免疫アッセイが、親和性捕捉アッセイ、免疫測定アッセイ、不均一系化学発光免疫測定アッセイ、均一系化学発光免疫測定アッセイ、ELISA、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、磁気免疫アッセイ、リアルタイム免疫定量PCR(iqPCR)、およびSERS無標識アッセイを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
生物学的サンプルのマーカープロファイルを決定するための方法であって、該サンプルにおいて表1のマーカーのレベルを定量する工程を含む、方法。
【請求項32】
前記生物学的サンプルが、血液、血清、および血漿からなる群より選択される生物学的流体である、請求項13~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
プレート、チップ、ビーズ、マイクロ流体プラットフォーム、メンブレン、平面マイクロアレイ、またはサスペンションアレイにおいて実施される、請求項13~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
CA125グリコフォームを検出する、請求項13~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を検出するためのキットであって、該キットが、捕捉分子のセットを含み、該捕捉分子の各々が、表1に記載のまたは請求項1~7のいずれか一項に記載のマーカーに特異的に結合する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月5日に出願された米国仮特許出願第63/146,100号および2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/978,471号の優先権および恩典を主張する国際PCT出願であり、これらすべての全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
子宮内膜症は、診断および管理が困難な、消耗性の婦人科障害である。子宮内膜症は、骨盤腹膜、卵巣、および腸を含む子宮腔外の部位への良性の子宮内膜組織の移転により特徴づけられる。子宮内膜症は、出産年齢の女性の6~10%ならびに痛みおよび/または原因不明不妊を経験した女性の35~50%に影響を与える。症状は、月経困難、性交疼痛、慢性骨盤痛、および妊娠困難を含む。数十年に及ぶ調査にもかかわらず、子宮内膜症の臨床的確認に関しては十分な感度および特異度の兆候および症状も血液検査も存在せず、これが迅速な診断および処置を妨げている。腹腔鏡検査は、子宮内膜症におけるゴールドスタンダードの診断試験であるが、費用が高く、かつ外科的リスクを伴う。
【0003】
子宮内膜症の慢性炎症プロセスに関与する様々な因子、例えば、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、血管新生因子、酸化ストレスマーカー等が、この疾患の病理に関連付けられ、大規模に研究されているが、ほとんどの潜在的バイオマーカーは、調査段階で破棄され、ごくわずかが臨床実務に移行したのみである。したがって、症状、臨床試験、画像化技術または血液検査に基づき子宮内膜症の存在を特徴づけることは可能でなかった。
【0004】
子宮内膜症の処置をより効果的に管理するために使用することができる、高い感度を有するだけでなく、高い特異度も提供する改善された診断方法に対する喫緊の要望が存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、様々な子宮内膜症タイプ(例えば、子宮内膜症、子宮内膜嚢胞、子宮内膜腫、または子宮内膜の別の良性の状態)を有しかつ様々な疾患状況(例えば、早期段階および後期段階)にある閉経前の女性における子宮内膜症の非手術的評価において、高い感度および高い特異性を提供する組成物および方法を提供する。
【0006】
1つの局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルを提供する。1つの局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるアポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)のうちの1つ、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0007】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるβ2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0008】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、トランスフェリン(TRF)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、およびプレアルブミン(PREA)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびシスタチンC(CST3)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0010】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、およびアポリポタンパク質A1(ApoA1)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0011】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーである癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0012】
別の局面において、本発明は、対象の生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるためのパネルであって、ポリペプチドマーカーであるアポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:α1ミクログロブリン(A1M)、αフェトプロテイン(AFP)、アンジオポエチン2(Ang-2)、アポリポタンパク質B(ApoB)、アポリポタンパク質E(ApoE)、シスタチンC(CST3)、CD40抗原(CD40)、クロモグラニンA(CgA)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、クラステリン(CLU、ApoJ)、エオタキシン1(CCL11)、エンドスタチン、EN-RAGE(S100A12)、脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)、脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)、Fasリガンド受容体(Fas、FasR)、フェリチン(FTL)、ガレクチン3(Gal-3)、成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)、グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、肝細胞増殖因子(HGF)、ハプトグロビン(Hp)、免疫グロブリンE(IgE)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、免疫グロブリンM(IgM)、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)、インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)、カリクレイン5(KLK5)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)、単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)、マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)、ミオグロビン(Mb)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)、肺および活性化制御ケモカイン(Pulmonary and Activation Regulated Chemokine)(PARC)、プロスタシン(PRSS8)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)、幹細胞因子(SCF)、胸腺発現ケモカイン(TECK)、トレフォイル因子3(TFF3)、腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA/PLAT)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)、血管内皮増殖因子(VEGF)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、YKL-40(CHI3L1)のうちの1つもしくは複数、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むパネルを提供する。
【0013】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、マーカーは捕捉分子に結合される。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、捕捉分子は基材に結合される。
【0014】
1つの局面において、本発明は、捕捉分子のパネルであって、各捕捉分子が、上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の任意の1つのポリペプチドバイオマーカーに結合する、パネルを提供する。
【0015】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、捕捉分子は抗体である。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、捕捉分子はポリヌクレオチドである。
【0016】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法を提供する。1つの局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)のうちの1つもしくは複数の群より選択される、方法を提供する。
【0017】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)の群より選択される、方法を提供する。
【0018】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、トランスフェリン(TRF)、トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ならびに以下のポリペプチドマーカー:α1ミクログロブリン(A1M)、αフェトプロテイン(AFP)、アンジオポエチン2(Ang-2)、アポリポタンパク質B(ApoB)、アポリポタンパク質E(ApoE)、シスタチンC(CST3)、CD40抗原(CD40)、クロモグラニンA(CgA)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、クラステリン(CLU、ApoJ)、エオタキシン1(CCL11)、エンドスタチン、EN-RAGE(S100A12)、脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)、脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)、Fasリガンド受容体(Fas、FasR)、フェリチン(FTL)、ガレクチン3(Gal-3)、成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)、グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、肝細胞増殖因子(HGF)、ハプトグロビン(Hp)、免疫グロブリンE(IgE)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、インスリン様増殖因子I(IGF-1)、免疫グロブリンM(IgM)、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)、インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)、カリクレイン5(KLK5)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)、単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)、マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)、ミオグロビン(Mb)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)、肺および活性化制御ケモカイン(PARC)、プロゲステロン(P4)、プロスタシン(PRSS8)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)、幹細胞因子(SCF)、胸腺発現ケモカイン(TECK)、トレフォイル因子3(TFF3)、腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA/PLAT)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)、血管内皮増殖因子(VEGF)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、YKL-40(CHI3L1)のうちの1つもしくは複数の群より選択される、方法を提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、およびアポリポタンパク質A1(ApoA1)の群より選択される、方法を提供する。
【0020】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、トランスフェリン(TRF)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、およびプレアルブミン(PREA)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの群より選択される、方法を提供する。
【0021】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびシスタチンC(CST3)、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、方法を提供する。
【0022】
別の局面において、本発明は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストまたはGnRHアゴニストを対象に投与する工程を含む、選択された対象を処置する方法であって、該対象の生物学的サンプルを、参照と比較してバイオマーカーのレベルの変化を有すると特徴づけることによって、該対象が選択され、該バイオマーカーが、癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、方法を提供する。
【0023】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、本方法は、対象の年齢を特徴づけることを含む。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、本方法は、対象を閉経前または閉経後と特徴づけることを含む。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、GnRHアンタゴニストは、エラゴリクス、アバレリクス、セトロレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、またはレルゴリクスである。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、GnRHアンタゴニストはエラゴリクスである。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、GnRHアゴニストは、ゴセレリン、ロイプロリド、ナファレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、またはトリプトレリンである。
【0024】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、1つまたは複数のマーカーのレベルの増加が、子宮内膜症を非子宮内膜症と区別する。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、1つまたは複数のマーカーのレベルの減少が、子宮内膜症を非子宮内膜症と区別する。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、参照は、健常対象由来の、対応する生物学的サンプルである。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、参照は、より早い時点の同一対象に由来する。
【0025】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、特徴づけるステップは、免疫アッセイまたは親和性捕捉である。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、免疫アッセイは、親和性捕捉アッセイ、免疫測定アッセイ、不均一系化学発光免疫測定アッセイ、均一系化学発光免疫測定アッセイ、ELISA、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、磁気免疫アッセイ、リアルタイム免疫定量PCR(iqPCR)、およびSERS無標識アッセイを含む。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、本方法は、プレート、チップ、ビーズ、マイクロ流体プラットフォーム、メンブレン、平面マイクロアレイ、またはサスペンションアレイにおいて実施される。上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、本方法は、CA125グリコフォームを検出する。
【0026】
1つの局面において、本発明は、生物学的サンプルのマーカープロファイルを決定するための方法を提供する。別の局面において、本発明は、生物学的サンプルのマーカープロファイルを決定するための方法であって、サンプルにおいて表1のマーカーのレベルを定量する工程を含む方法を提供する。
【0027】
上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面の様々な態様において、生物学的サンプルは、血液、血清、および血漿からなる群より選択される生物学的流体である。
【0028】
別の局面において、本発明は、生物学的サンプルにおいて子宮内膜症を検出するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、捕捉分子のセットを含み、捕捉分子の各々は、表1のマーカーに特異的に結合する。いくつかの態様において、キットは、捕捉分子のセットを含み、捕捉分子の各々は、上記局面または本明細書に示される本発明の任意の他の局面のマーカーに特異的に結合する。
【0029】
本明細書に詳細に記載されるように、当技術分野で公知の任意の方法が、バイオマーカーのパネルを測定するために使用され得る。本発明の局面において、バイオマーカーのパネルは、当技術分野で周知の任意の免疫アッセイを用いて測定される。態様において、免疫アッセイは、ELISA、ウェスタンブロット、および放射性免疫アッセイであり得るが、これらに限定されない。
【0030】
定義
別途定義がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される用語の多くについての一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988);The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、それ以外のことが示されていない限り、以下のそれらに帰属する意味を有する。
【0031】
本明細書で使用される「バイオマーカー」または「マーカー」は、概ね、疾患に関連するタンパク質、核酸分子、臨床指標、またはその他の分析物を表す。1つの態様において、子宮内膜症のマーカーは、参照と比較して、子宮内膜症を有するまたは子宮内膜症を発症するリスクのある対象から得られた生物学的サンプル中に差次的に存在する。マーカーは、サンプル中に存在するバイオマーカーのレベルの平均または中央値が参照に存在するレベルと統計的に相違する場合、差次的に存在する。参照レベルは、例えば、健常な対照対象から得られるサンプルに存在するレベル、またはより早い時点、すなわち処置前の当該対象から得られたレベルであり得る。統計的有意性に関する一般的な試験は、特に、t検定、ANOVA、クラスカル・ウォリス、ウィルコクソン、マン・ホイットニーおよびオッズ比を含む。バイオマーカーは単独でまたは組み合わせで、ある対象が関心対象の表現型ステータスに属する相対的可能性についての尺度を提供する。対象サンプルにおける本発明のマーカーの差次的存在は、対象の予後を決定するため、治療効果を評価するため、または処置レジメンを選択する(例えば、子宮内膜症専門の外科医により対象が評価および/または処置されることを選択する)ために、対象を、子宮内膜症を有するとまたは子宮内膜症を発症するリスクがあると特徴づけるのに有用であり得る。
【0032】
1つの態様において、本発明のパネルにおいて有用なマーカーは、例えば、ApoA1、B2M、TRF、TT/PREA、CA125、HE4、およびFSH、ならびにそのようなタンパク質をコードする核酸分子を含む。別の態様において、本発明のパネルにおいて有用なマーカーは、例えば、B2M、CA125、FSH、CCL4/MIP-1β、IgM、LH、MDC/CCL22、およびP4を含む。別の態様において、本発明のパネルにおいて有用なマーカーは、例えば、CA125、ApoA1、TRF、B2M、FSH、HE4、およびPREAを含む。別の態様において、本発明のパネルにおいて有用なマーカーは、例えば、CA125、MDC、P4、EN-RAGE、IgM、HCC4、B2M、FSH、LH、およびCST3を含む。いくつかの態様において、本発明のパネルにおいて有用なマーカーは、CA125、MDC、P4、およびApoA1を含む。別の態様において、本明細書に提供される任意の本発明のパネルは、さらなるバイオマーカーとして年齢を含む。本発明の方法において有用なフラグメントは、そのフラグメントの由来となったタンパク質を特異的に認識する抗体に結合するのに十分なものである。本発明は、下記の配列と実質的に同一であるマーカーを含む。好ましくは、そのような配列は、比較に使用される配列と、アミノ酸レベルまたは核酸レベルで少なくとも85%、90%、95%、さらには99%同一である。
【0033】
「卵胞刺激ホルモン(FSH)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P01225に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつFSHポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0034】
「ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号Q14508に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつHE4ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0035】
「癌抗原125(CA125)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号Q8WX17に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつCA125ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0036】
「トランスサイレチン(プレアルブミン)(TT/PREA)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P02766に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつトランスサイレチンポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0037】
「トランスフェリン(TRF)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P02787に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつトランスフェリンポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0038】
「アポリポタンパク質A1(ApoA1)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P02647に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつApoA1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0039】
「β-2ミクログロブリン(B2M)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P61769に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつB2Mポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0040】
「ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P13236に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつケモカイン4ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0041】
「免疫グロブリンM(IgM)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P0DOX6(免疫グロブリンミュー重鎖)に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつIgMポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0042】
「黄体形成ホルモン(LH)ポリペプチド」は、UniProtアクセッション番号P01229に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつ黄体形成ホルモンポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0043】
「マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)」は、UniProtアクセッション番号O00626に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、かつマクロファージ由来ケモカインポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合するポリペプチドまたはそのフラグメントを意味する。
【0044】
「プロゲステロン(P4)」は、月経周期および妊娠の制御に関与し、かつプロゲステロンに特異的に結合する抗体に結合する性ホルモンを意味する。
【0045】
「作用物質」は、任意の低分子化合物、抗体、核酸分子、もしくはポリペプチド、またはそれらのフラグメントを意味する。
【0046】
「変更」または「変化」は、増加または減少を意味する。変更は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%という小さなもの、または40%、50%、60%のもの、さらに70%、75%、80%、90%、または100%という大きなものであり得る。
【0047】
「生物学的サンプル」は、生物から得られる任意の組織、細胞、流体または他の物質を意味する。
【0048】
「捕捉試薬」は、ある核酸分子またはポリペプチドに特異的に結合し、その核酸分子またはポリペプチドを選択または単離する試薬を意味する。
【0049】
「本明細書で使用される場合、「決定する」、「評価する」、「アッセイする」、「測定する」および「検出する」という用語は、定量的および定性的の両方の決定を表し、したがって「決定する」という用語は、本明細書において「アッセイする」、「測定する」等と交換可能に使用される。定量的決定が意図されている場合、分析物の「量を決定する」等のフレーズが使用される。定性的および/または定量的決定が意図されている場合、分析物の「レベルを決定する」または分析物を「検出する」というフレーズが使用される。
【0050】
「対象」または「患者」という用語は、処置、観察、または実験の対象物である動物を表す。例にすぎないが、対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、またはネコを含むがこれらに限定されない。
【0051】
「マーカープロファイル」は、2つまたはそれ以上のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現または発現レベルの特徴づけを意味する。
【0052】
「子宮内膜症」は、骨盤腹膜、卵巣、および腸を含む子宮腔外の部位への良性の子宮内膜組織の移転により特徴づけられる婦人科障害を意味する。
【0053】
本発明の方法において有用な核酸分子は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする任意の核酸分子を含む。そのような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には、実質的同一性を示すであろう。内因性配列に対する「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的に、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖にハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズ」は、様々なストリンジェンシー条件の下で、相補的なポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される遺伝子)またはその一部分の間で二本鎖分子を形成する対を意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照のこと)。
【0054】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、約750 mM NaClおよび75 mMクエン酸三ナトリウム未満、好ましくは約500 mM NaClおよび50 mMクエン酸三ナトリウム未満、より好ましくは約250 mM NaClおよび25 mMクエン酸三ナトリウム未満である。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの非存在下で達成され得、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%ホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%ホルムアミドの存在下で達成され得る。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含む。変更されるさらなるパラメータ、例えばハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、およびキャリアDNAの添加または不添加は、当業者に周知である。様々なレベルのストリンジェンシーは、これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることによって達成される。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、750 mM NaCl、75 mMクエン酸三ナトリウム、および1% SDS中30℃で行われる。より好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、500 mM NaCl、50 mMクエン酸三ナトリウム、1% SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)中37℃で行われる。最も好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、250 mM NaCl、25 mMクエン酸三ナトリウム、1% SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNA中42℃で行われる。これらの条件の有用なバリエーションは、当業者に直ちに明らかになるであろう。
【0055】
多くの適用例で、ハイブリダイゼーションの後に行なわれる洗浄ステップもまた、ストリンジェンシーごとに異なる。洗浄のストリンジェンシー条件は、塩濃度によりおよび温度により定義され得る。上記のように、洗浄のストリンジェンシーは、塩濃度を減少させることによりまたは温度を上昇させることにより増加し得る。例えば、洗浄ステップにおけるストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30 mM NaClおよび3 mMクエン酸三ナトリウム未満、最も好ましくは約15 mM NaClおよび1.5 mMクエン酸三ナトリウム未満である。洗浄ステップにおけるストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、さらにより好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。好ましい態様において、洗浄ステップは、30 mM NaCl、3 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中25℃で行われる。より好ましい態様において、洗浄ステップは、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中42℃で行われる。より好ましい態様において、洗浄ステップは、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中68℃で行われる。これらの条件のさらなるバリエーションは、当業者に直ちに明らかになるであろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis(Science 196:180, 1977);Grunstein and Hogness(Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001);Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York);およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
【0056】
「実質的に同一」は、あるポリペプチドまたは核酸分子が参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるアミノ酸配列の任意の1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載される核酸配列の任意の1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すことを意味する。好ましくは、そのような配列は、比較に使用される配列に対して、アミノ酸レベルまたは核酸で、少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、より好ましくは90%、95%、さらには99%同一である。
【0057】
配列同一性は典型的に、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705の配列分析ソフトウェアパッケージ、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、および/または他の修飾に対する相同性の程度を割り当てることにより、同一または類似の配列を対比する。保存的置換は典型的に、以下のグループ内での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する例示的なアプローチにおいて、BLASTプログラムが、近い関係の配列を示すe-3~e-100の間の確率スコアで使用され得る。
【0058】
「参照」は、比較上の標準を意味する。例えば、患者サンプルに存在するマーカーレベルは、対応する健常細胞もしくは組織または疾患細胞もしくは組織(例えば、子宮内膜症を有する対象由来の細胞もしくは組織)におけるマーカーのレベルと比較され得る。特定の態様において、患者サンプルに存在するポリペプチドレベルは、より早い時点で(すなわち、処置前に)得られた対応するサンプル、別の良性の状態の細胞または組織に存在する当該ポリペプチドのレベルと比較され得る。本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、生物学的サンプル、例えば、生物に由来する任意の組織、細胞、流体、または他の物質を含む。
【0059】
「特異的に結合する」は、ある化合物(例えば、抗体)が、サンプル、例えば生物学的サンプル中のある分子(例えば、ポリペプチド)を認識し結合するが、他の分子を実質的に認識せず結合しないことを意味する。
【0060】
診断試験の精度は、受信者動作特性曲線(「ROC」曲線)を含むがこれに限定されない当技術分野で周知の任意の方法を用いて特徴づけられ得る。ROC曲線は、感度と特異度の間の関係を示す。感度は、試験により陽性であることが予測される真陽性の比率であり、特異度は、試験により陰性であることが予測される真陰性の比率である。ROCは、診断試験の異なる可能性のあるカットポイントにおける偽陽性率に対する真陽性率のプロットである。したがって、感度の増加は、特異度の減少を伴う。曲線が左軸、その後はROC空間の上縁に近いほど、試験はより高精度である。逆に、曲線がROCグラフの45度対角線に近づくほど、試験はより低精度である。ROC下面積は、試験精度についての尺度である。試験の精度は、その試験が、試験されるグループを関心対象の疾患を有するグループと有さないグループにどの程度上手く分けるかに依存する。(「AUC」と称される)曲線下面積が1であることは、完全な試験を表す。態様において、本発明のバイオマーカーおよび診断方法は、0.50を超える、0.60を超える、0.70を超える、0.80を超える、または0.9を超えるAUCを有する。
【0061】
試験の利用性に関する他の有用な尺度は、陽性的中率(「PPV」)または陰性的中率(「NPV」)である。PPVは、試験で陽性となる実際の陽性の比率である。NPVは、試験で陰性となる実際の陰性の比率である。
【0062】
具体的に言及されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容度の範囲内、例えば、平均の2標準偏差内であることが理解される。約は、言及されている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解され得る。そうでないことが文脈から明白でない限り、本明細書に提供されるすべての数値は、約という用語により修飾される。
【0063】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内のすべての値を簡略表示したものであることが理解される。例えば、1~50という範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群のあらゆる数字、数字の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0064】
本明細書に提供されるあらゆる化合物、組成物、または方法は、本明細書に提供される任意の他の組成物および方法の1つまたは複数と組み合わされ得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明白に示していない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「1つのバイオマーカー(a biomarker)」への言及は、2つ以上のバイオマーカーへの言及を含む。
【0066】
具体的に言及されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的であることが理解される。
【0067】
「含む(including)」という用語は、本明細書において、「含むがそれに限定されない」というフレーズを意味するよう使用され、それと交換可能に使用される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、「有する」等の用語は、米国特許法におけるそれらに帰属する意味を有し得、「含む(include)」、「含む(including)」等を意味し得;「から本質的になる」または「から本質的になる」も同様に、米国特許法におけるそれらに帰属する意味を有し得、この用語はオープンエンド型であり、言及されているものの基本的または新規の特徴が、言及されている以外のものの存在により変化しない限り、言及されている以外のものの存在を許容するが、先行技術の態様は排除する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1-1】
図1は、本発明のバイオマーカーの分析におけるマーカー値の正規化に使用される倍率の表である。
【
図2】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してA1Mが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図3】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してAFPが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図4】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してAng-2が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図5】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してApoBが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図6】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してApoEが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図7】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してB2Mが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図8】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCST3が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図9】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCA125が増加していることを示すグラフ表示である。
【
図10】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCD40が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図11】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCgAが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図12】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCCL4が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図13】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCLUが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図14】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCCL11が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図15】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してエンドスタチンが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図16】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してEN-RAGEが増加していることを示すグラフ表示である。
【
図17】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してFABP4が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図18】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してH-FABPが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図19】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してFasRが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図20】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してFTLが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図21】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してFSHが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図22】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してGal-3が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図23】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してGHが増加していることを示すグラフ表示である。
【
図24】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してGSTαが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図25】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してhCGが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図26】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してHGFが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図27】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してHpが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図28】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIgEが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図29】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIGFBP4が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図30】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIGF-Iが増加していることを示すグラフ表示である。
【
図31】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIgMが増加していることを示すグラフ表示である。
【
図32】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIL-8が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図33】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してIP-10が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図34】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してI-TACが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図35】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してKLK5が増加していることを示すグラフ表示である。
【
図36】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してLEPが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図37】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してLHが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図38】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMCP-1が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図39】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMCP-4が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図40】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMDCが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図41】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMigが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図42】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMIP-1αが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図43】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMMP-3が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図44】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してMbが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図45】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してNT-proBNPが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図46】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してOPGが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図47】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してPARCが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図48】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してP4が増加していることを示すグラフ表示である。
【
図49】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してPRSS8が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図50】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してPSATが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図51】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してSCFが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図52】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してTECKが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図53】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してTFF3が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図54】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してTNFαが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図55】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してTNFR1が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図56】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してTNFR2が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図57】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してtPAが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図58】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してuPAが増加していることを示すグラフ表示である。
【
図59】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してuPARが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図60】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してVEGFが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図61】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してVWFが減少していることを示すグラフ表示である。
【
図62】子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有するものと比較してCHI3L1が減少していることを示すグラフ表示である。
【
図63-1】
図63は、本発明の方法において有用な、選択されたポリペプチドの例示的な配列を提供する。
【
図64】ランダムフォレスト(RF)およびサポートベクターマシン(SVM)法(それぞれ、上および下パネル)を用いた511のデータ点についての頻度 対 感度および選択度(それぞれ、左および右パネル)を示す4つのヒストグラムに示される分類器および性能再現性を示す。
【
図65-1】
図65は、FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータスおよび年齢を含む、全データセットにおける特徴分布を示す。
【
図66-1】
図66は、FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータスおよび年齢を含む、等サイズセットにおける特徴分布を示す。
【
図67-1】
図67は、FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータスおよび年齢を含む、閉経前ステータスセットにおける特徴分布を示す。
【
図68】ランダムフォレスト(RF)およびサポートベクターマシン(SVM)法(それぞれ、上および下パネル)を用いたデータ点についての頻度 対 感度および選択度(それぞれ、左および右パネル)を示す4つのヒストグラムに示される分類器および性能再現性を示す。
【
図69】2つのオペレーター(早期および再実行)ならびにランダムフォレスト(RF)およびサポートベクターマシン(SVM)法を用いたデータセットからの性能比較を示す。
【
図70】RF、SVM、Adaboost、xgbDART、MARS、およびMARS
*を含む異なる分類器を用いたデータにおける特異度および感度性能の結果を示す。
【
図71】様々な事前処理および分類器を用いた特異度 対 感度のプロットならびに特異度および感度の上位の結果を強調する対応する表である。
【
図72】
図71のプロットを再掲し、上位の結果であるYeoJohnson、単純ベースについての真陽性率 対 偽陽性率のプロットを示す。
【
図73】パーセプトロンがどのようにディープニューラルネットワーク(深層学習)へとリンクするかおよびCorrelogicデータセットを分析するためにディープニューラルネットワークを用いて得られた代表的な結果を示す図である。
図73に示される結果は、
図76に列挙されるバイオマーカー:MDC、年齢、プロゲステロン、CA125、HCC4、FSH、B2M、EN RAGE、シスタチンC、LH、IGM、およびプレアルブミンを用いて得た。
【
図74】Bristowおよび522データセットにおいて得られた感度および特異度をまとめたプロットおよび表を提供する。
【
図75】Correlogicデータセットにおいて得られた感度および特異度をまとめたプロットおよび表を提供する。
【
図76】子宮内膜症陽性および陰性の両方の患者における、バイオマーカーである年齢(特徴0)、HCC4(特徴1)、CA125(特徴2)、ENRAGE(特徴3)、B2M(特徴4)、FSH(特徴5)、IGM(特徴6)、PREA(特徴7)、MDC(特徴8)、プロゲステロン(特徴9)、LH(特徴10)、およびシスタチンC(特徴11)のディープニューラルネットワークにおける特徴重要度をまとめた棒グラフを提供する。
【
図77A】
図77Aおよび77Bは、機械語(ML)分類器を示すフローチャートである。
図77Aは、データ統合および分類器モデルの開発において使用するための2つの別のデータセットからのフィルタリングを記載するフローチャートである。
【
図77B】
図77Aおよび77Bは、機械語(ML)分類器を示すフローチャートである。
図77Bは、モデル開発の代表的なワークフローおよび試験例を示すフローチャートである。
【
図78】研究Iにおける事前処理技術および分類アルゴリズムの組み合わせの選択されたセットについての平均特異度および感度を示すプロットグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
発明の詳細な説明
本発明は、バイオマーカーのパネルおよび子宮内膜症を特徴づけるためのそのようなパネルの使用を含む。
【0071】
本発明は、少なくとも一部、子宮内膜症の非侵襲的特徴づけに有用なバイオマーカーの発見に基づいている。いくつかの態様において、本発明のパネルは、以下のポリペプチドバイオマーカー:B2M、ApoA1、トランスフェリン、トランスサイレチン、CA125、FSH、および/もしくはHE4、またはそのようなバイオマーカーをコードするポリヌクレオチドのうちの1つまたは複数を含む。他の態様において、本発明のパネルは、B2M、ApoA1、トランスフェリン、トランスサイレチン、CA125、FSH、および/もしくはHE4、またはそのようなバイオマーカーをコードするポリヌクレオチド、ならびに以下のポリペプチドマーカー:
αフェトプロテイン(AFP)、
アンジオポエチン2(Ang-2)、
アポリポタンパク質A1(ApoA1)、
アポリポタンパク質B(ApoB)、
アポリポタンパク質E(ApoE)、
β2ミクログロブリン(B2M)、
シスタチンC(CST3)、
癌抗原125(CA125、MUC16)、
CD40抗原(CD40)、
クロモグラニンA(CgA)、
ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、
クラステリン(CLU、ApoJ)、
エオタキシン1(CCL11)、
エンドスタチン、
EN-RAGE(S100A12)、
脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)、
脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)、
Fasリガンド受容体(Fas、FasR)、
フェリチン(FTL)、
卵胞刺激ホルモン(FSH)、
ガレクチン3(Gal-3)、
成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)、
グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4、WFDC2)、
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、
肝細胞増殖因子(HGF)、
ハプトグロビン(Hp)、
免疫グロブリンE(IgE)、
インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、
インスリン様増殖因子I(IGF-I)、
免疫グロブリンM(IgM)、
インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、
インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)、
インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)、
カリクレイン5(KLK5)ポリペプチド、
レプチン(LEP)ポリペプチド、
黄体形成ホルモン(LH)、
単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)、
単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)、
マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、
γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)、
マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)、
マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)、
ミオグロビン(Mb)、
脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、
オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)、
肺および活性化制御ケモカイン(PARC)、
プロゲステロン(P4)、
プロスタシン(PRSS8)、
ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)、
幹細胞因子(SCF)、
トランスフェリン(TRF)、
トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、
胸腺発現ケモカイン(TECK)、
トレフォイル因子3(TFF3)、
腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)、
腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、
組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA、PLAT)、
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)、
血管内皮増殖因子(VEGF)、
フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、
YKL-40(CHI3L1)
のうちの任意の1つまたは複数、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0072】
いくつかの態様において、以下のパネルが、子宮内膜症を特徴づけるために使用される:トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)、アポリポタンパク質A-1(ApoA1)、β2ミクログロブリン(B2M)、トランスフェリン(TRF)、癌抗原125(CA125)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、および/または卵胞刺激ホルモン(FSH);ならびにβ2ミクログロブリン(B2M)、癌抗原125(CA125)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)、免疫グロブリンM(IgM)、黄体形成ホルモン(LH)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、およびプロゲステロン(P4)。
【0073】
いくつかの態様において、以下のパネルが、子宮内膜症を特徴づけるために使用される:癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A-1(ApoA1)、トランスフェリン(TRF)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、およびプレアルブミン(PREA)。いくつかの態様において、以下のパネルが、子宮内膜症を特徴づけるために使用される:癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびシスタチンC(CST3)。いくつかの態様において、以下のパネルが、子宮内膜症を特徴づけるために使用される:癌抗原125(CA125)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、およびアポリポタンパク質A-1(ApoA1)。いくつかの態様において、以下のパネルが、子宮内膜症を特徴づけるために使用される:癌抗原125(CA125)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)、プロゲステロン(P4)、EN-RAGE(S100A12)、免疫グロブリンM(IgM)、ケモカイン4(CCL4、MIP-1β、HCC4)、β2ミクログロブリン(B2M)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、および黄体形成ホルモン(LH)。いくつかの態様において、子宮内膜症を特徴づけるために使用される任意のパネルは、年齢を含む。
【0074】
本発明はさらに、子宮内膜症を特徴づけるためのそのようなパネルの使用を特徴とする。特に、そのようなパネルの使用は、対象において子宮内膜症を非侵襲的に特徴づけるための方法を提供する。
【0075】
子宮内膜症
子宮内膜症は、消耗性のエストロゲン依存的な婦人科障害である。子宮内膜症の程度は、American Society of Reproductive Medicineの分類体系に従い、軽度、中等度、および重度疾患にステージ分類される。その原因は完全には明らかにされていないが、有力な説はSampsonの逆行性月経説である。
【0076】
子宮内膜症は治癒しないが、中等度から重度の痛みは、例えば、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストであるエラゴリクスを用いて管理することができる。他の処置は、アバレリクス、セトロレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、およびレルゴリクスのようなGnRHアンタゴニスト、ならびにブセレリン、ゴナドレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、ロイプロレリン、ナファレリン、およびトリプトレリンのようなGnRHアゴニストを含む。
【0077】
本発明は、GnRHアゴニストおよびアンタゴニストを用いた処置に関する対象の選択のための組成物および方法を提供する。
【0078】
バイオマーカー
特定の態様において、バイオマーカーは、1つの表現型ステータスを有する(例えば疾患、例えば子宮内膜症を有する)対象から採取されたサンプルにおいて、別の表現型ステータス(例えば、疾患を有さない)と比較して差次的に存在する有機生体分子である。バイオマーカーは、異なるグループにおけるバイオマーカーの発現レベルの平均または中央値が統計的に有意であると計算される場合、異なる表現型ステータスの間で差次的に存在する。統計的有意性に関する一般的な試験は、特に、t検定、ANOVA、クラスカル・ウォリス、ウィルコクソン、マン・ホイットニーおよびオッズ比を含む。バイオマーカーは単独でまたは組み合わせで、対象が1つの表現型ステータスまたは別のものに属する相対的なリスクについての尺度を提供する。したがって、それらは疾患(例えば、子宮内膜症)を特徴づけるマーカーとして有用である。
【0079】
子宮内膜症のバイオマーカー
本発明は、子宮内膜症を有する対象において差次的に存在するポリペプチドバイオマーカーのパネル、およびそのようなパネルを用いて対象由来の生物学的サンプルを特徴づける方法を提供する。本発明のバイオマーカーは、子宮内膜症を有する対象 対 子宮内膜症を有さない対象を含む、子宮内膜症ステータスに依存して、差次的に存在する。
【0080】
本発明のバイオマーカーパネルは、以下の表1に示されるバイオマーカーのうちの1つまたは複数を含む。
【0081】
【0082】
理解されるように、本明細書における表1のバイオマーカー、バイオマーカーのパネルへの言及、または他の同様のフレーズは、表1に示されるまたは本明細書の他所に記載されるバイオマーカーのうちの1つまたは複数を含む。
【0083】
本発明のバイオマーカーは、血液、血清、血漿、唾液、尿、腹水、嚢胞液、均一化された組織サンプル(例えば、生検により得られる組織サンプル)、患者サンプルから単離された細胞等を含むがこれらに限定されない対象の生物学的サンプル(例えば、組織、体液)において検出され得る。
【0084】
本発明は、単離されたバイオマーカーを含むパネルを提供する。バイオマーカーは、生物学的流体、例えば尿または血清から単離され得る。それらは、当技術分野で公知の任意の方法により単離され得る。特定の態様において、この単離は、マーカーの質量および/または結合特性を用いて達成される。例えば、生体分子を含むサンプルは、クロマトグラフィー分画に供され得、そして例えばアクリルアミドゲル電気泳動によるさらなる分離に供され得る。バイオマーカーの正体が分かっていれば、免疫親和性クロマトグラフィーによるそれらの単離も可能である。「単離されたバイオマーカー」は、重量で少なくとも60%が、自然状態でそのマーカーに付随するタンパク質および天然有機分子から解放されていることを意味する。好ましくは、調製物は、少なくとも75%、より好ましくは80、85、90もしくは95%純粋である、または重量で少なくとも99%が精製されたマーカーである。
【0085】
α1ミクログロブリン(A1M)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはA1Mである。A1Mは、人間を含むすべての脊椎動物において見出されるヘムおよびラジカル結合タンパク質であり、ヘモグロビンから放出されたヘム基およびフリーラジカルを細胞質ゾルおよび血管外液から迅速に取り除くことにより作用する。A1Mは、インビトロで白血球の免疫学的機能を阻害し、その分布はインビボでの抗炎症的および保護的役割と一致する。A1Mは、183アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02760)であり、α-1ミクログロブリン/ビクニン前駆体(AMBP)の切断産物である。本発明の局面において、A1Mは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0086】
αフェトプロテイン(AFP)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはAFPである。AFPは、胎児により多量に合成されるいくつかの癌胎児タンパク質の1つである。合成は出生直後に大きく低下するが、成体においても少量のAFPが産生され続ける。AFPの機能は不明であるが、最近の研究は、それが免疫調節特性を有し得るならびに/または細胞増殖および成長に影響し得る可能性を示唆している。エストロゲンに対するAFPの高い親和性は重要な生物学的機能を有している可能性があるが、この結合の意義は未だ明確に定義されていない。妊娠、肝障害、特に慢性肝炎、ならびに様々な悪性物、特にヘパトーマ、テラトーマ、および原腸起源のそれらを含む、様々な臨床的場面において、AFPのレベルの増加が見られる。AFPは、591アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02771)である。本発明の局面において、AFPは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0087】
アンジオポエチン2(Ang-2)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはAng-2である。Ang-2は、内皮と血管周囲細胞の間の連結を破壊し、細胞死および血管退行を促進する。しかし、VEGFと共に、Ang-2は新血管形成を促進する。したがって、アンジオポエチンは、腫瘍進行の際の血管新生スイッチにおいて重要な役割を果たす。Ang-2は、496アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P015123)である。本発明の局面において、Ang-2は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0088】
アポリポタンパク質B(ApoB)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはApoBである。血漿リポタンパク質代謝は、apoE、apoB、apoA-I、apoA-II、apoA-IV、apoC-I、apoC-II、およびapoC-IIIを含む主要なアポリポタンパク質により制御および調節される。特定のアポリポタンパク質は、リポタンパク質代謝の制御において機能する。ApoBは、4563アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P04114)である。本発明の局面において、ApoBは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0089】
アポリポタンパク質E(ApoE)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはApoEである。脂質代謝および神経生物学において中心的役割を有する多機能性タンパク質であるApoEは、脂質恒常性および神経生物学に対する効果が異なる3つの一般的なアイソフォーム(apoE2、apoE3、およびapoE4)を有する。apoE3と異なり、最も一般的なアイソフォームであるapoE4は、アルツハイマー病(AD)および他の神経変性障害を発症するリスクの増加に関連する。ApoBは、299アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02649)である。本発明の局面において、ApoEは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0090】
β2ミクログロブリン(B2M)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはB2Mである。B2Mは、免疫グロブリンに対する配列相同性を有する低分子量タンパク質である。HLA複合体の一部として、このタンパク質は、重要な細胞表面構造である。通常の条件下で、B2Mは、多くの細胞、特にリンパ球により合成および放出され、正常な個体の循環中で検出可能である。B2Mは、99アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P61769)である。例示的なB2Mポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。本発明の局面において、B2Mは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。β2ミクログロブリンは、抗体により認識される。そのような抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、例えばAbcam(カタログAB759)(www.abcam.com, Cambridge, MA)から商業的に購入することもできる。
【0091】
シスタチンC(CST3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはシスタチンCである。シスタチンスーパーファミリーは、複数のシスタチン様配列を含むタンパク質を包含する。メンバーのいくつかは活性システインプロテアーゼ阻害因子であり、他はこの阻害活性を喪失しているまたはおそらく獲得していない。このスーパーファミリーには、1型シスタチン(ステフィン)、2型シスタチン、およびキニノゲンを含む3つの阻害性ファミリーがある。2型シスタチンタンパク質は、様々なヒト体液および分泌物において見出されるシステインプロテアーゼ阻害因子のクラスであり、それらは保護的機能を提供するようである。血管壁平滑筋細胞におけるこのタンパク質の発現は、アテローム性および動脈瘤性の両方の動脈病変部で大きく減少し、これにより、血管疾患におけるその役割が確認された。加えて、このタンパク質は、抗微生物機能を有し、単純ヘルペスウイルスの複製を阻害することが示されている。シスタチンは、120アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P01034)である。本発明の局面において、シスタチンは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0092】
癌抗原125(CA125、MUC16)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはCA125である。MUC16としても公知のCA125は、最も一般的には卵巣癌のバイオマーカーとして公知であるが、他の癌および多くの良性の状態もまた、血清レベルを増加させる。CA125は、眼表面、呼吸器、および女性生殖器の上皮の成分である。CA125は、22152アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q8WX17)である。例示的なCA125ポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。本発明の局面において、CA125は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0093】
CD40抗原(CD40)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはCD40である。免疫におけるその必須の役割から、受容体CD40は、最も特徴づけられている共刺激分子の1つである。腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーであるこの受容体は、B細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、ならびに非免疫細胞および腫瘍により発現される。CD40は、277アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P24952)である。本発明の局面において、CD40は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0094】
クロモグラニンA(CgA)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはCgAである。CgAは、すべての内分泌および神経内分泌細胞において発現される酸性分泌性糖タンパク質のグラミンファミリーの主要なメンバーである。グラニンは、分泌プロセスにおいて複数の役割を果たしていると考えられている。CgA分子内にコードされる様々な生物学的に活性なペプチド、例えばバソスタチン、β-グラニン、クロモスタチン、パンクレアスタチン、およびパラスタチンは、主として、自己分泌または傍分泌様式でのホルモンおよび神経伝達物質の放出を阻害するよう作用する。CgAは、457アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P10645)である。本発明の局面において、CgAは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0095】
ケモカイン4(CCL4、MIP-1β)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはCCL4である。CCL4は、制御性T細胞の特徴的な表現型であるCD4+CD25+ T細胞集団の最も強力な走化性因子であった。制御性T細胞またはCCL4のいずれかの欠乏は、調節解除された液性応答を引き起こし、ついには自己抗体の産生に至る。これにより、CCL4による制御性T細胞のB細胞およびAPCへの動員が、T細胞および液性応答の正常な開始において重要な役割を果たしていること、およびこれが行われないと自己免疫が活性化されることが示唆された。CCL4は、92アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P13236)である。本発明の局面において、CCL4は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0096】
クラステリン(CLU、ApoJ)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはCLUである。CLUタンパク質は、いくつかのストレス条件下で細胞の細胞質ゾルにおいても見出され得る分泌型シャペロンである。それは、いくつかの基本的な生物学的現象、例えば細胞死、腫瘍進行、および神経変性障害に関与することが示唆されている。CLUは、449アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P10909)である。本発明の局面において、CLUは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0097】
エオタキシン1(CCL11)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはエオタキシンである。エオタキシンは、喘息および腫瘍に対する宿主応答のげっ歯類モデルにおいて最近同定された好酸球特異的走化性因子である。CCL11は、97アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P51671)である。本発明の局面において、CCL11は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0098】
エンドスタチン
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはエンドスタチンである。コラーゲンXVIIIは、基底膜(BM)の成分であり、コラーゲンおよびプロテオグリカンの両方の構造的特性を有する。そのC末端ドメイン内でのタンパク質分解切断は、抗血管新生効果を有することが報告されているフラグメントであるエンドスタチンを放出する。コラーゲンXVIIIのタンパク質分解切断産物であるエンドスタチンは、184アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P39060)である。本発明の局面において、エンドスタチンは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0099】
EN-RAGE(S100A12)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはEN-RAGEである。EN-RAGEは、終末糖化産物(RAGE)の受容体に対するリガンドであり、糖尿病性大血管症および微小血管症の進展に関与し得る。EN-RAGEは、92アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P80511)である。本発明の局面において、EN-RAGEは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0100】
脂肪酸結合タンパク質(脂肪細胞)(FABP4)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはFABP4である。FABP4は、脂肪細胞において見出される脂肪酸結合タンパク質をコードする。脂肪酸結合タンパク質は、長鎖脂肪酸および他の疎水性リガンドに結合する小さな、高度に保存された、細胞質タンパク質のファミリーである。FABP4の役割は、脂肪酸の取り込み、輸送、および代謝を含むと考えられている。FABP4は、132アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P15090)である。本発明の局面において、FABP4は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0101】
脂肪酸結合タンパク質(心臓)(H-FABP、FABP3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはH-FABPである。FABP3としても公知のH-FABPは、心臓、骨格筋、筋肉、脳、腎皮質、肺、精巣、大動脈、副腎、乳腺、胎盤、卵巣および褐色脂肪組織を含む幅広い範囲の組織から単離されている。H-FABP欠損マウスにおける研究は、その心臓および骨格筋において脂肪酸の取り込みが大きく阻害され、遊離脂肪酸の血漿濃度が増加することを示した。心筋および骨格筋代謝は、十分な量の脂肪酸を得ることができない場合、脂肪酸酸化をグルコース酸化に切り替えることが報告されている。結果として、H-FABP欠損マウスは、運動により急激に疲労および消耗し、身体活動に対して低下した忍耐性を示す。限局性心肥大もまた、その高齢の動物において観察された。FABP3は、133アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P05413)である。本発明の局面において、FABP3は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0102】
Fasリガンド受容体(Fas、FasR)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはFasである。この遺伝子によりコードされるタンパク質は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。この受容体は、死ドメインを含む。それは、プログラムされた細胞死の生理学的制御において中心的な役割を果たすことが示されており、様々な悪性物および免疫系の疾患の発病機序への関与が示唆されている。Fasは、335アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P25445)である。本発明の局面において、Fasは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0103】
フェリチン(FTL)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはフェリチンである。フェリチンは、身体が利用可能な鉄の量の調節の鍵である。フェリチンは、鉄を貯蔵しそれを調節された様式で放出するタンパク質である。それによって、身体は、鉄不足に対する(血液が少なすぎる鉄を有する場合、フェリチンはより多くを放出し得る)、およびそれより小規模であるが、鉄過剰に対する(身体の血液および組織が多すぎる鉄を有する場合、フェリチンは過剰な鉄を貯蔵するのを助け得る)「バッファー」を有する。フェリチンは、175アミノ酸のタンパク質(FTL UniProtアクセッション番号P02792)または183アミノ酸のタンパク質(FTH1 UniProtアクセッション番号P02794)である。本発明の局面において、フェリチンは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0104】
卵胞刺激ホルモン(FSH)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはFSHである。FSHは、卵胞の成熟を刺激する。ヒトおよび動物へのFSHの投与は、「過剰排卵」、または通常以上の数の成熟卵胞の発生、したがって、成熟配偶子の数の増加を誘導する。FSHはまた、精子の生産にも重要である。それは、セルトリ細胞の機能を支援し、それによって精子細胞の成熟の多くの局面を支援する。FSHは、116アミノ酸のαサブユニット(CGA UniProtアクセッション番号P01215)および129アミノ酸のβサブユニット(FSHB UniProtアクセッション番号P01225)を含むヘテロ二量体タンパク質である。例示的なFSHポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。FSHに対する抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、また例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.(例えば、カタログ番号sc-57149)(www.scbt.com, Santa Cruz, CA)から購入することができる。本発明の局面において、FSHは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0105】
ガレクチン3(Gal-3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはGal-3である。Gal-3は、様々なタイプの細胞および組織間に広く分布しており、核および細胞質において細胞内で見いだされる、または非古典的経路を通じて細胞外に分泌され、したがって細胞表面上でもしくは細胞外空間で見いだされる。様々な細胞内および細胞外タンパク質との特異的相互作用を通じて、ガレクチン-3は、多くの生物学的プロセスに影響し、様々な生理学的および病態生理学的状態、例えば発生、免疫反応、ならびに腫瘍性形質転換および転移に関与するようである。Gal-3は、250アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P17931)である。本発明の局面において、Gal-3は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0106】
成長ホルモン(GH、ソマトトロピン、ヒト成長ホルモン、HGH)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはGHである。ソマトトロピンまたはヒト成長ホルモンとも呼ばれるGHは、下垂体の前葉により分泌されるペプチドホルモンである。それは、骨を含む身体の本質的にすべての組織の成長を刺激する。GHは、このホルモンを1日あたり1~2ミリグラム放出する成長ホルモン分泌細胞と呼ばれる下垂体前葉細胞により合成および分泌される。GHは、子供における正常な身体の成長に重要であり、そのレベルは、子供時代に徐々に増加し、思春期に起こる成長スパートの間にピークに達する。GHは、217アミノ酸のタンパク質(GH1 UniProtアクセッション番号P01241)である。本発明の局面において、GHは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0107】
グルタチオンSトランスフェラーゼα(GSTα)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはGSTαである。グルタチオントランスフェラーゼ(GST;グルタチオンS-トランスフェラーゼとしても公知)は、主として細胞質ゾルにおいて見いだされる主要な第II相解毒酵素である。グルタチオン(GSH)への求電子基質の結合を触媒するそれらの役割に加えて、これらの酵素はまた、様々な他の機能も有している。それらは、ペルオキシダーゼおよびイソメラーゼ活性を有し、Jun N末端キナーゼを阻害し得(したがって、H2O2誘導細胞死から細胞を保護し得)、かつ非触媒的に幅広い内因性および外因性リガンドに結合することができる。GSTαは、222アミノ酸のタンパク質(GSTA1 UniProtアクセッション番号P08263)である。本発明の局面において、GSTαは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0108】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはhCGである。hCGは、主として妊娠および胎児発生において活性を示す。新たな証拠は、排卵および受精、着床、胎座、ならびに妊娠の成功を支援する他の活動への関与を含む、これまでhCGに属していなかった内因性機能を明らかにした。hCGは、116アミノ酸のαサブユニット(CGA UniProtアクセッション番号P01215)および165アミノ酸のβサブユニット(CBG2 UniProtアクセッション番号P01233)を含むヘテロ二量体タンパク質である。本発明の局面において、hCGは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0109】
肝細胞増殖因子(HGF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはHGFである。この遺伝子は、肝細胞増殖因子受容体に結合して多くの細胞および組織型における細胞の成長、細胞の運動性、および形態形成を制御するタンパク質をコードする。選択的スプライシングにより複数の転写変種が生じ、その少なくとも1つは、成熟ヘテロ二量体を形成するαおよびβ鎖を生成するようタンパク質分解プロセシングを受けるプレプロタンパク質をコードする。このタンパク質は、間葉細胞により分泌され、多くの上皮起源の細胞に対して多機能性サイトカインとして作用する。このタンパク質はまた、血管新生、腫瘍形成、および組織再生においても役割を果たす。HGFは、728アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P14210)である。本発明の局面において、HGFは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0110】
ハプトグロビン(Hp)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはHpである。Hpは、ヘモグロビンに結合し、それによって鉄の欠乏および腎臓へのダメージを防ぐことができる急性期タンパク質である。ハプトグロビンはまた、抗酸化物質としても作用し、抗細菌活性を有し、急性期応答の多くの局面の調整において役割を果たす。Hp(1-1)、Hp(2-1)およびHp(2-2)という3つの主要なハプトグロビン表現型がある。特定の表現型の所持は、様々な一般的障害(例えば、心血管疾患、自己免疫障害、悪性物)に関連づけられており、この事実は、特定の表現型の所持がこれらの障害の進展に対して何らかの保護を提供するという考えによってのみ説明することができる。Hpは、406アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P00738)である。本発明の局面において、Hpは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0111】
免疫グロブリンE(IgE)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIgEである。IgEは、主として寄生生物に対する免疫応答に関与する哺乳動物において見いだされる抗体の一タイプである。それはまた、過敏症における役割も有し、このことがそれを多くのアレルギー反応における中心選手にしている。本発明の局面において、IgEは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0112】
インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIGFBP4である。この遺伝子は、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)ファミリーのメンバーであり、IGFBPドメインおよびサイログロブリンI型ドメインを有するタンパク質をコードする。このタンパク質は、インスリン様増殖因子(IGF)IおよびIIの両方に結合し、グリコシル化および非グリコシル化の両方の形態で血漿中を循環する。このタンパク質の結合は、IGFの半減期を延長し、細胞表面受容体とのそれらの相互作用を変化させる。IGFBP4は、258アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P22692)である。本発明の局面において、IGFBP4は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0113】
インスリン様増殖因子I(IGF-I)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIGF-Iである。IGF-IおよびIGF-II、それらの結合タンパク質(IGFBP)、ならびにそれらのシグナル伝達を媒介する受容体(IおよびII型IGF-IR)は、正常な発生、成長、代謝、および恒常性において重要な役割を果たしている。IGF-I経路は、哺乳動物の生物学に対して多様な影響を与えており、その機能の範囲は今理解され始めたばかりである。それは、げっ歯類における寿命の決定および酸化ストレスへの対処のような基本的プロセスにおいてほのめかされている。IGF-Iは、195アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P05019)である。本発明の局面において、IGF-Iは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0114】
免疫グロブリンM(IgM)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIgMである。IgMは、B細胞により生産される抗体であり免疫系の一部である。それは、免疫応答において生産される最早期の抗体の1つである。本発明の局面において、IgMは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0115】
インターロイキン8(IL-8、CXCL8)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIL-8である。IL-8は、様々な組織および血液細胞により生産される化学走化性サイトカインである。多くの他のサイトカインと異なり、それは好中球に対する明確な標的特異性を有し、他の血液細胞に対しては弱い効果しか有さない。IL-8は、炎症領域に好中球を誘引し、活性化させる。IL-8は、99アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P10145)である。本発明の局面において、IL-8は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0116】
インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10、CXCL10)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはIP-10またはCXCL10である。サイトカインのサブファミリーであるケモカインは、免疫細胞を含む幅広い細胞に対する走化性因子として作用する。CXCL10は、「炎症性」ケモカインとして定義され、CXCR3に結合して、白血球、例えばT細胞、好酸球、単球およびNK細胞の活性化および動員を通じた免疫応答を媒介する小さなタンパク質である。IP-10は、98アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02778)である。本発明の局面において、IP-10は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0117】
インターフェロン誘導性T細胞α走化性因子(I-TAC、CXCL11)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはI-TACである。この新しいケモカインは、インターフェロン(IFN)により制御され、IL-2活性化T細胞に対する強力な化学走化性活性を有する。I-TACは、神経炎症障害の病態生理に関与するエフェクターT細胞に対する主要な走化性因子であると考えられるが、I-TACはまた、IFN優位の免疫応答における活性化T細胞の遊走においても役割を果たし得る。I-TACは94アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号O14625)である。本発明の局面において、I-TACは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0118】
カリクレイン5(KLK5)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはKLK5である。正常なヒト組織において、KLK5は、皮膚、乳腺および精巣で高度に発現される。KLK5は、293アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q9Y337)である。本発明の局面において、KLK5は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0119】
レプチン(LEP)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはレプチンである。レプチンは、食物取り込みおよびエネルギー恒常性の主要な制御因子として作用する脂肪細胞由来ホルモンである。レプチン欠乏または抵抗性は、ヒトにおいて重度の肥満、糖尿病、および不妊の原因となり得る。その発見以来、レプチンの生物学的機能に関する我々の理解は、抗肥満から生殖、恒常性、血管新生、血圧、骨量、リンパ器官の恒常性、およびTリンパ球系に対する幅広い効果にまで拡大している。LEPは、167アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P41159)である。LEPは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0120】
黄体形成ホルモン(LH)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはLHである。両方の性別において、LHは、性腺からの性ステロイドの分泌を刺激する。精巣において、LHはライディッヒ細胞上の受容体に結合し、テストステロンの合成および分泌を刺激する。卵巣において莢膜細胞はテストステロンの分泌によるLH刺激に応答し、これは隣接する顆粒膜細胞によりエストロゲンに変換される。黄体形成ホルモンという名前は、この卵胞の黄体形成を誘導する効果に由来する。LHは、116アミノ酸のαサブユニット(CGA UniProtアクセッション番号P01215)および141アミノ酸のβサブユニット(LHB UniProtアクセッション番号P01229)を含むヘテロ二量体タンパク質である。本発明の局面において、LHは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0121】
単球走化性タンパク質1(MCP-1、CCL2)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMCP-1である。CCL2としても公知のMCP-1は、単球/マクロファージの遊走および浸潤を制御する鍵となるケモカインの1つである。CCL2およびその受容体であるCCR2は両方とも、様々な疾患において誘導されそれらに関与することが示されている。血管内皮をまたぐ血流からの単球の遊走は、日常的な組織の免疫学的監視のために、および炎症に応答して必要とされる。MCP-1は、99アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P13500)である。本発明の局面において、MCP-1は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0122】
単球走化性タンパク質4(MCP-4、CCL13)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMCP-4である。MCP-4は、単球およびT細胞の重要な走化性因子である。最近のデータは、腎臓の炎症における役割を示している。MCP-4の発現は、炎症促進性サイトカインであるTNF-αおよびIFN-γに応答して上方制御された。MCP-4は、98アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q99616)である。本発明の局面において、MCP-4は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0123】
マクロファージ由来ケモカイン(MDC、CCL22)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMDCである。MDCは、ケモカイン免疫生物学が新たに発生する局面に典型的なCCケモカインである。それは構成的に発現されるが、微生物生産物およびサイトカインはその発現を制御し、II型(IL-4およびIL-13)サイトカインとI型(インターフェロン)サイトカインで効果が相違する。ジペプチジルペプチダーゼIV/CD26による成熟タンパク質のプロセシングは、さらなるレベルの制御を提供する。それは、樹状細胞(DC)、NK細胞、およびT細胞サブセットを含む多様な細胞標的に対して作用する。これらの中で、MDCは、CCR4を発現する極性化Th2およびTc2細胞の強力な誘引因子であり、証拠は極性化II型応答の増幅ループとしてのこのケモカインの役割を示している。MDCは、93アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号O00626)である。本発明の局面において、MDCは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0124】
γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(Mig、CXCL9)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMigである。インターフェロン-γによって誘導されるモノカインであるMigは、活性化T細胞に対する走化性因子としての活性を有するCXCケモカインである。Migは、機能的にインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)に関連し、それと受容体であるCXCR3を共有している。以前に、IP-10は、インビボで抗腫瘍活性を有することが見出された。Migは、125アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q07325)である。本発明の局面において、Migは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0125】
マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、CCL3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMIP-1αである。MIP-1αおよびMIP-1βは、CCケモカインサブファミリーの高度に関連するメンバーである。それらの構造的類似性にもかかわらず、MIP-1αおよびMIP-1βは異なるシグナル伝達能を示す。MIP-1サブタイプおよびそのNH2末端プロセシングに依存して、CCケモカイン受容体であるCCR1、CCR2、CCR3およびCCR5の1つまたは複数が認識される。ヒトMIP-1αサブタイプ(LD78αおよびLD78β)ならびにMIP-1βは両方ともM向性HIV-1株に対する主要な共受容体であるCCR5を通じてシグナル伝達するので、これらのケモカインは、易感染性細胞においてHIV-1感染を阻害することができる。MIP-1αは、92アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P10147)である。本発明の局面において、MIP-1αは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0126】
マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはMMP-3である。マトリックスメタロプロテイナーゼは、細胞外マトリックスおよび基底膜成分を分解する厳格に制御される酵素ファミリーである。最近の証拠は、これらのプロテアーゼおよびそれらの特異的阻害因子が正常な発生プロセスにおいておよび病理学的状態において重要な役割を果たすことを示唆している。興味深いことに、メタロプロテイナーゼ制御に関する我々の理解を向上させるために設計された実験は、増殖因子および癌原遺伝子が生物学的プロセスを制御し得るメカニズムに関する新しい見識ももたらした。MMP-3は、477アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P08254)である。本発明の局面において、MMP-3は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0127】
ミオグロビン(Mb)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはミオグロビンである。ミオグロビンは、そのヘム残基であるポルフィリン環:鉄イオン錯体によりO2に可逆的に結合する、心筋細胞および酸化性骨格筋線維においてのみ発現される細胞質ヘムタンパク質である。40年以上前のその構造の最初の発見以降、多くの研究者による幅広い調査が、重要なことに、その機能および制御に関する我々の理解を増やしている。機能的に、ミオグロビンは、低酸素症または酸素欠乏症の期間にO2を放出することができる、筋肉におけるO2貯蔵タンパク質としてよく知られている。ミオグロビンはまた、筋肉の活動が増加したときに細胞内O2濃度のバッファーとなり、溶解したO2の単純拡散を増強する並列経路を提供することにより細胞内O2拡散を促進すると考えられている。遺伝子標的化および他の分子生物学的技術の使用は、ミオグロビンの発生的および環境的制御に関する重要な新しい見識を示し、このヘムタンパク質のさらなる機能、例えば一酸化窒素および活性O2種の清掃を提供した。Mbは、154アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02144)である。本発明の局面において、Mbは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0128】
脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはNT-proBNPである。NT-proBNP試験は、急性非代償性心不全の診断に有用である。NT-proBNPは、134アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P16860)である。本発明の局面において、NT-proBNPは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0129】
オステオプロテゲリン(OPG、TNFRSF11B)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはOPGである。OPGは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。OPGは、OPG(-/-)マウスが重度の骨粗鬆症を有するという事実により示されるように、骨の保護因子としての重要な機能を有する。OPGは、デコイ受容体として作用し、RANKリガンド(RANKL)に結合して、NF-カッパB受容体活性化因子(RANK)とRANKLの間の相互作用を妨げる。この相互作用は、機能的に活性な破骨細胞の発生に必要とされる。OPGは、401アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号O00300)である。本発明の局面において、OPGは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0130】
肺および活性化制御ケモカイン(PARC)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーは、現在はCC-ケモカインリガンド18(CCL18)に指名されている肺および活性化制御ケモカイン(PARC)である。CCL18は、炎症または疾患を制限または支援する炎症促進的または免疫抑制的様式で様々な組織損傷および疾患の病理において重要な役割を果たすことが示されている。PARCは、89アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P55774)である。本発明の局面において、PARCは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0131】
プロゲステロン(P4)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはプロゲステロン(CAS Registry番号57-83-0)である。プロゲステロンは、月経周期および妊娠の制御に関与する性ホルモンである。本発明の局面において、プロゲステロンは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0132】
プロスタシン(PRSS8)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはプロスタシンである。プロスタシンは、前立腺、腎臓、気管支、結腸、肝臓、肺、膵臓、および唾液腺において見出されるグリコホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質である。それは、1994年に精液から最初に精製されたトリプシン様基質特異性を有するセリンプロテアーゼである。ここ十年の間に、様々な生物学的および生理学的プロセスにおけるその多様な役割が解明された。今日までになされた多くの研究は、プロスタシンが哺乳動物において上皮ナトリウムチャネルを制御するいくつかの膜ペプチダーゼの1つであることを示唆している。プロスタシンは、343アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q16651)である。本発明の局面において、プロスタシンは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0133】
ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはPSATである。PSATは、セリンの合成における触媒酵素である。PSATは、370アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q9Y617)である。本発明の局面において、PSATは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0134】
幹細胞因子(SCF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはSCFである。SCFは、他のサイトカインと相互作用して造血幹および前駆細胞の生存性を保全し、それらの細胞周期への移行に影響し、それらの増殖および分化を促進する必須の造血性サイトカインである。SCFは、単独では、非周期性の造血前駆細胞を細胞周期に誘導することができないが、それらのアポトーシス死を防ぐ。SCFは、他のサイトカインと組み合わさることで、すべての系統からの造血前駆細胞のクローン化効率を増大させる。SCFはまた、急性骨髄性白血病(AML)を有するほとんどの患者由来のCD34+白血病前駆細胞の成長を刺激する。SCFは、273アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P21583)である。本発明の局面において、SCFは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0135】
胸腺発現ケモカイン(TECK)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTECKである。この抗微生物遺伝子は、小サイトカインCC遺伝子のサブファミリーに属する。サイトカインは、免疫調節および炎症プロセスに関与する分泌タンパク質のファミリーである。CCサイトカインは、2つの隣接するシステインにより特徴づけられるタンパク質である。この遺伝子によりコードされるサイトカインは、樹状細胞、胸腺細胞、および活性化マクロファージに対する走化活性を示すが、末梢血リンパ球および好中球に対しては不活性である。この遺伝子の産物は、ケモカイン受容体であるCCR9に結合する。選択的スプライシングにより、複数の転写変種が生じる。TECKは、150アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号O15444)である。本発明の局面において、TECKは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0136】
トレフォイル因子3(TFF3)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTFFである。トレフォイル因子は、ムチン生産細胞の分泌産物である。それらは、口腔粘膜の表面完全性の維持において鍵となる役割を果たし、修復(resitution)と呼ばれるプロセスにより胃腸粘膜の治癒を増進する。TFFは、胃ペプチド(TFF1)、鎮痙性ペプチド(TFF2)、および腸トレフォイル因子(TFF3)を含む。それらは、胃腸管内の上皮修復において重要かつ必須の役割を有する。人間の母乳中には有意な量のTFFが存在する。TFF3は、94アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号O07654)である。本発明の局面において、TFF3は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0137】
腫瘍壊死因子α(TNFα、TNF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTNFαである。TNFαは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する多機能性炎症促進性サイトカインである。このサイトカインは、主としてマクロファージにより分泌される。それは、その受容体であるTNFRSF1A/TNFR1およびTNFRSF1B/TNFBRに結合することができ、したがってそれらを通じて機能する。このサイトカインは、細胞増殖、分化、アポトーシス、脂質代謝、および凝固を含む広範囲の生物学的プロセスの制御に関与する。TNFαは、233アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P01375)である。本発明の局面において、TNFαは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0138】
腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTNFR1である。TNFR1は、TNFαを含む腫瘍壊死因子ファミリーのいくつかのタンパク質に結合する結合タンパク質である。TNFR1は、455アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P19438)である。本発明の局面において、TNFR1は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0139】
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTNFR2である。TNFR2は、TNFαを含む腫瘍壊死因子ファミリーのいくつかのタンパク質に結合する結合タンパク質である。TNFR2は、461アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P20333)である。本発明の局面において、TNFR2は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0140】
組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA、PLAT)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはtPAである。tPAは、5つの機能的ドメインから構成されるセリンプロテアーゼであり、これらを通じて異なる基質、結合タンパク質、および受容体と相互作用する。近年、中枢神経系の様々な疾患、特に脳卒中におけるtPAの標的化の臨床的妥当性に関して大きな関心が寄せられている。中枢神経系におけるその報告されている機能の中で、tPAは、神経栄養性および神経毒性の両方の効果を示す。tPAは、562アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P00750)である。本発明の局面において、tPAは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0141】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはuPAである。uPAおよびその阻害因子であるPAI-Iは、腫瘍浸潤および転移において鍵となる役割を果たす。それらは、乳癌におけるそれらの臨床利用に関して最高レベルの証拠(LOE I)で検証された最初の新規の腫瘍生物学的因子であった。それらの抗原レベルは、標準化され、品質が保証されている免疫アッセイ(ELISA)により腫瘍組織抽出物において決定された。1980年代後半以降、多くの独立した研究により、それらの原発性腫瘍組織に低レベルのuPAおよびPAI-Iを有する患者が、いずれかの因子を高レベルで有する患者よりも有意に良好な生存性を有することが示された。uPAは、431アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P00749)である。本発明の局面において、uPAは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して増加している。
【0142】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはuPARである。uPARは、プラスミノーゲン活性化に関与し、かつタンパク質分解の制御に関与する。それはまた、多くの悪性腫瘍において高度に発現されることが見出されている。uPARは、335アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q03405)である。本発明の局面において、uPARは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0143】
血管内皮増殖因子(VEGF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはVEGFである。VEGFは、強力な血管新生因子であり、当初、血管内皮細胞にとっての必須の増殖因子として報告された。VEGFは、多くの腫瘍において上方制御され、腫瘍の血管新生に対するその寄与は十分に定義されている。内皮細胞に加えて、VEGFおよびVEGF受容体は、腫瘍細胞を含む多くの非内皮細胞において発現される。VEGFは、232アミノ酸のタンパク質(VEGFA UniProtアクセッション番号P15692)である。本発明の局面において、VEGFは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0144】
フォン・ヴィレブランド因子(VWF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはVWFである。VWFは、正常な恒常性に必要とされる血中糖タンパク質であり、VWFの欠乏またはフォン・ヴィレブランド病(VWD)は、最も一般的な遺伝性出血障害である。VWFは、特定の血小板膜糖タンパク質および露出した結合組織の成分に結合することにより、血管損傷部位への血小板の接着を媒介する。これらの活性は、アロステリック機構によりおよびおそらくは流体力学的せん断力により制御されるようである。VWFはまた、血液凝固因子VIIIのキャリアタンパク質であり、この相互作用は、循環中での正常な第VIII因子の生存に必要とされる。VWFは、2813アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P04275)である。本発明の局面において、VWFは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0145】
YKL-40(CHI3L1)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはYKL-40である。YKL-40は、マクロファージ、好中球、線維芽細胞様滑液細胞、軟骨細胞、血管平滑筋細胞および肝星細胞により発現および分泌される。その発現パターンは、炎症、細胞外組織リモデリング、線維症および固形癌に関する病原性プロセスに関連する。YKL-40は、癌細胞増殖、生存、浸潤においておよび細胞・マトリックス相互作用の制御において役割を果たしていると考えられている。YKL-40は、383アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P36222)である。本発明の局面において、YKL-40は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して減少している。
【0146】
アポリポタンパク質A1(ApoA1)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはApoA1である。ApoA1は、267アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02647)である。例示的なApoA1ポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。アポリポタンパク質A1に対する抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、また例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.(カタログ番号sc-130503)(www.scbt.com, Santa Cruz, CA)から購入することができる。本発明の局面において、ApoA1は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して変化/若干減少している。
【0147】
トランスフェリン(TRF)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはTRFである。TRFは、698アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02787)である。例示的なTRFポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。トランスフェリンに対する抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、また例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.(カタログ番号sc-52256)(www.scbt.com, Santa Cruz, CA)から購入することができる。本発明の局面において、TRFは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して変化している。
【0148】
トランスサイレチン(TT)/プレアルブミン(PREA)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはトランスサイレチンである。TTは、147アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号P02766)である。例示的なTTポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。トランスサイレチンに対する抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、また例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.(カタログ番号sc-13098)(www.scbt.com, Santa Cruz, CA)から購入することができる。本発明の局面において、TTは、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して変化している。
【0149】
ヒト精巣上体タンパク質4(HE4、WFDC2)
本発明のパネルに存在する1つの例示的なバイオマーカーはHE4である。HE4は、124アミノ酸のタンパク質(UniProtアクセッション番号Q14508)である。例示的なHE4ポリペプチドのアミノ酸配列が
図63に示されている。HE4に対する抗体は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて作製することができ、また例えばSanta Cruz Biotechnology, Inc.(カタログ番号sc-27570)(www.scbt.com, Santa Cruz, CA)から購入することができる。本発明の局面において、HE4は、子宮内膜症を有する対象において、他の良性の状態を有する者と比較して変化している。
【0150】
バイオマーカーおよびタンパク質の異なる形態
タンパク質は、しばしば、複数の異なる形態でサンプル中に存在する。これらの形態は、翻訳前および/または翻訳後修飾により生じ得る。翻訳前修飾形態は、対立遺伝子変種、スプライス変種およびRNA編集形態を含む。翻訳後修飾形態は、タンパク質分解切断(例えば、シグナル配列または親タンパク質のフラグメントの切断)、グリコシル化、リン酸化、脂質化、酸化、メチル化、システイン化、スルホン化およびアセチル化により生じる形態を含む。あるサンプル中のあるタンパク質を検出または測定する場合、バイオマーカーのレベルを決定するために任意もしくはすべての形態が測定され得るまたは関心対象の形態が測定される。あるタンパク質の異なる形態間を区別する能力は、その相違の性質およびそのタンパク質を検出もしくは測定するために使用される方法に依存する。例えば、モノクローナル抗体を用いる免疫アッセイは、そのエピトープを含むすべての形態のタンパク質を検出し、それらの間を区別しない。しかし、あるタンパク質上の異なるエピトープに対する2つの抗体を使用するサンドイッチ免疫アッセイは、両方のエピトープを含むすべての形態のタンパク質を検出し、一方のエピトープのみを含む形態を検出しない。ある分析物の異なる形態を区別することまたはある分析物の特定の形態を特異的に検出することは、その分析物を「解像する(resolving)」と称される。
【0151】
質量分析は、あるタンパク質の異なる形態を解像する上で、異なる形態が典型的に質量分析により解像され得る異なる質量を有するため、特に強力な方法である。したがって、あるタンパク質の1つの形態がある疾患に関してそのバイオマーカーの別の形態よりも優れたバイオマーカーであるとき、質量分析は、伝統的な免疫アッセイがその形態を区別できず、有用なバイオマーカーを特異的に検出できない場合に、その有用な形態を特異的に検出し測定することができることがある。
【0152】
1つの有用な方法は、質量分析と免疫アッセイとを組み合わせたものである。例えば、バイオ特異的捕捉試薬(例えば、バイオマーカーおよびそれの他の形態を認識する抗体、アプタマー、Affibody等)が、関心対象のバイオマーカーを捕捉するために使用される。態様において、バイオ特異的捕捉試薬は、固相、例えば、ビーズ、プレート、メンブレンまたはアレイに結合される。非結合物質が洗い流された後、捕捉された分析物が質量分析により検出および/または測定される。この方法はまた、そのタンパク質に結合するまたはそれ以外の様式で抗体により認識され、かつそれ自身がバイオマーカーであり得るタンパク質相互作用物質も捕捉する。伝統的なMALDIまたはSELDI、エレクトロスプレーイオン化等のレーザー脱離アプローチを含む様々な形態の質量分析が、タンパク質形態の検出に有用である。
【0153】
したがって、本明細書において特定のタンパク質の検出または特定のタンパク質の量の測定に対して言及がなされる場合、それは、そのタンパク質を、タンパク質の様々な形態を解像しつつまたは解像せずに検出および測定することを意味する。例えば、「β-2ミクログロブリンを検出する」ステップは、そのタンパク質の様々な形態を区別しない手段(例えば、特定の免疫アッセイ)によって、およびいくつかの形態と他の形態とを区別するまたはそのタンパク質の特定の形態を測定する手段によってβ-2ミクログロブリンを測定することを含む。
【0154】
子宮内膜症のバイオマーカーの検出
本発明のバイオマーカーは、任意の適切な方法により検出され得る。本明細書に記載される方法は、個別にまたはバイオマーカーのより正確な検出のために組み合わせて(例えば、バイオチップと質量分析の組み合わせ、免疫アッセイと質量分析の組み合わせ等)使用され得る。
【0155】
本発明において用いられ得る検出例は、光学法、電気化学法(ボルタンメトリーおよびアンペロメトリー技術)、原子間力顕微鏡、ならびに高周波法、例えば、多重極共鳴分光を含むがこれらに限定されない。光学法の例は、共焦点および非共焦点の両方の顕微鏡に加えて、蛍光、発光、化学発光、吸収、反射、透過、および複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析、共鳴ミラー法、グレーティングカプラー導波管法または干渉分光法)である。
【0156】
これらおよびさらなる方法は、以下に記載されている。
【0157】
免疫アッセイによる検出
特定の態様において、本発明のバイオマーカーは、免疫アッセイにより測定される。免疫アッセイは典型的に、サンプル中のバイオマーカーの存在またはレベルを検出するために抗体(またはマーカーに特異的に結合する他の作用物質)を利用する。抗体は、当技術分野で周知の方法により、例えば、そのバイオマーカーで動物を免疫刺激することにより作製され得る。バイオマーカーは、それらの結合特性に基づきサンプルから単離され得る。あるいは、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が分かっている場合、そのポリペプチドが合成され、当技術分野で周知の方法により抗体を作製するために使用され得る。
【0158】
本発明は、例えば、ウェスタンブロット、ELISAおよび他の酵素免疫アッセイを含むサンドイッチ免疫アッセイ、蛍光ベースの免疫アッセイ、ならびに化学発光を含む伝統的な免疫アッセイを想定している。ネフェロメトリーは、液体相中で行われるアッセイであり、抗体は溶液中に存在する。抗体への抗原の結合は、吸光度を変化させ、これが測定される。他の形態の免疫アッセイは、磁気免疫アッセイ、放射免疫アッセイ、およびリアルタイム免疫定量PCR(iqPCR)を含む。
【0159】
免疫アッセイは、固体基材(例えば、チップ、ビーズ、マイクロ流体プラットフォーム、メンブレン)上でまたはマーカーへの抗体の結合およびその後の検出を支援する任意の他の形式で行われ得る。一度に一つのマーカーが検出され得る、または多重化形式が使用され得る。多重化免疫分析は、平坦なマイクロアレイ(タンパク質チップ)およびビーズベースのマイクロアレイ(サスペンションアレイ)を用い得る。
【0160】
SELDIベイズの免疫アッセイにおいて、バイオマーカーに対するバイオ特異的捕捉試薬は、MSプローブ、例えば、事前に活性化されたプロテインチップアレイの表面に付加される。その後、バイオマーカーは、この試薬を通じてバイオチップ上で特異的に捕捉され、捕捉されたバイオマーカーが質量分析により検出される。
【0161】
バイオチップによる検出
本発明の局面において、サンプルは、バイオチップ(マイクロアレイとしても公知)により分析される。本発明のポリペプチドおよび核酸分子は、バイオチップにおけるハイブリダイズ可能なアレイ要素として有用である。バイオチップは、通常、固体基材を含み、かつ概ね平坦な表面を有し、そこに捕捉試薬(吸着剤または親和性試薬とも呼ばれる)が付加される。しばしば、バイオチップの表面は、複数のアドレス指定可能な位置を含み、それらの各々に捕捉試薬が結合される。
【0162】
アレイ要素は、各要素が基材上の指定された位置に存在するよう秩序ある様式で組織化される。有用な基材の材料は、紙、ナイロンまたは他の材料から作製されたメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド、および他の固体支持体を含む。アレイ要素の秩序ある配置は、ハイブリダイゼーションパターンおよび強度を、特定の遺伝子またはタンパク質の発現レベルとして解釈することを可能にする。核酸マイクロアレイを作製する方法は、当業者に公知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,837,832号、Lockhart, et al.(Nat. Biotech. 14:1675-1680, 1996)、およびSchena, et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619, 1996)に記載されている。ポリペプチドマイクロアレイを作製する方法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるGe(Nucleic Acids Res. 28: e3. i-e3. vii, 2000)、MacBeath et al.,(Science 289:1760-1763, 2000)、Zhu et al.(Nature Genet. 26:283-289)、および米国特許第6,436,665号に記載されている。
【0163】
タンパク質バイオチップによる検出
本発明の局面において、サンプルは、タンパク質バイオチップ(タンパク質マイクロアレイとしても公知)により分析される。そのようなバイオチップは、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントの発現または翻訳後修飾の変化を同定するための高スループット低コストスクリーンに有用である。態様において、本発明のタンパク質バイオチップは、対象サンプル中に存在するバイオマーカーに結合し、そのバイオマーカーのレベルの変化を検出する。典型的に、タンパク質バイオチップは、固体支持体に結合されたタンパク質またはそのフラグメントを特徴とする。適切な固体支持体は、メンブレン(例えば、ニトロセルロース、紙、もしくは他の材料から作製されるメンブレン)、ポリマーベースのフィルム(例えば、ポリスチレン)、ビーズ、またはガラススライドを含む。いくつかの用途で、タンパク質(例えば、本発明のマーカーに結合する抗体)は、当業者に公知の任意の従来的方法を用いて(例えば、手作業によりまたはインクジェットプリンターにより)基材上にスポットされる。
【0164】
態様において、タンパク質バイオチップは、検出可能なプローブとハイブリダイズされる。そのようなプローブは、ポリペプチド、核酸分子、抗体、または低分子であり得る。いくつかの用途で、ポリペプチドおよび核酸分子プローブは、患者から採取された生物学的サンプル、例えば、体液(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、腹水、嚢胞液等);均一化された組織サンプル(例えば、生検により得られる組織サンプル);または患者サンプルから単離される細胞から得られる。プローブはまた、ペプチド、核酸、または化合物ライブラリから得られる抗体、候補ペプチド、核酸、または低分子化合物を含み得る。ハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、pH、タンパク質濃度、およびイオン強度)は、特異的相互作用を促進するよう最適化される。そのような条件は、当業者に公知であり、例えば、Harlow, E. and Lane, D., Using Antibodies : A Laboratory Manual. 1998, New York: Cold Spring Harbor Laboratoriesに記載されている。非特異的プローブの除去後、特異的に結合したプローブが、例えば、蛍光、酵素活性(例えば、酵素連結比色アッセイ)、直接免疫アッセイ、放射測定アッセイ、または当業者に公知の任意の適切な検出可能な方法により検出される。
【0165】
多くのタンパク質バイオチップが、当技術分野で報告されている。これらは、例えば、Ciphergen Biosystems, Inc.(Fremont, CA)、Zyomyx(Hayward, CA)、Packard BioScience Company(Meriden, CT)、Phylos(Lexington, MA)、Invitrogen(Carlsbad, CA)、Biacore(Uppsala, Sweden)およびProcognia(Berkshire, UK)により製造されるタンパク質バイオチップを含む。そのようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または公開された特許出願に記載されている:米国特許第6,225,047号;同第6,537,749号;同第6,329,209号;および同第5,242,828号;PCT国際公開第WO 00/56934号;同第WO 03/048768号;および同第99/51773号。
【0166】
核酸バイオチップによる検出
本発明の局面において、サンプルは、核酸バイオチップ(核酸マイクロアレイとしても公知)により分析される。核酸バイオチップを作製するために、PCT出願W095/251116(Baldeschweiler et al.)に記載されるように、オリゴヌクレオチドが合成され得るまたは化学カップリング手法およびインクジェット適用装置を用いて基材の表面に結合され得る。あるいは、真空系、熱、UV、機械的または化学的結合手法を用いて基材の表面にcDNAフラグメントまたはオリゴヌクレオチドを配置し連結させるためにグリッド付アレイが使用され得る。
【0167】
本明細書に記載されるハイブリダイゼーションプローブを作製するために、生物学的サンプルから得られる核酸分子(例えば、RNAまたはDNA)が使用され得る。生物学的サンプルは、通常、患者、例えば、体液(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、腹水、嚢胞液等);均一化された組織サンプル(例えば、生検により得られる組織サンプル);または患者サンプルから単離される細胞から得られる。いくつかの用途では、培養細胞または他の組織調製物が使用され得る。mRNAが標準的な方法に従い単離され、cDNAが作製され、ハイブリダイゼーションに適した相補的なRNAを作製するためのテンプレートとして使用される。そのような方法は、当技術分野で周知である。RNAは、蛍光ヌクレオチドの存在下で増幅され、その後、標識されたプローブは、そのプローブ配列を、バイオチップに結合された相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせるため、マイクロアレイと共にインキュベートされる。
【0168】
インキュベーション条件は、正確な相補性適合でまたは用いられるストリンジェンシーの程度に依存する様々な程度の低相補性の下でハイブリダイゼーションが起こるよう調節される。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、約750 mM NaClおよび75 mMクエン酸三ナトリウム未満、約500 mM NaClおよび50 mMクエン酸三ナトリウム未満、または約250 mM NaClおよび25 mMクエン酸三ナトリウム未満である。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの非存在下で得ることができ、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%ホルムアミド、最も好ましくは少なくとも約50%ホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃の、少なくとも約37℃の、または少なくとも約42℃の温度を含む。さらなるパラメータ、例えばハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、およびキャリアDNAの添加または排除、の変更は、当業者に周知である。様々なレベルのストリンジェンシーは、これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることによって達成される。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、750 mM NaCl、75 mMクエン酸三ナトリウム、および1% SDS中30℃で行われる。態様において、ハイブリダイゼーションは、500 mM NaCl、50 mMクエン酸三ナトリウム、1% SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)中37℃で行われる。他の態様において、ハイブリダイゼーションは、250 mM NaCl、25 mMクエン酸三ナトリウム、1% SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNA中42℃で行われる。これらの条件に関する有用なバリエーションは、当業者に直ちに明らかになるであろう。
【0169】
ハイブリダイズしていないプローブの除去は、例えば、洗浄により達成され得る。ハイブリダイゼーション後の洗浄ステップもまた、ストリンジェンシーにより異なり得る。洗浄のストリンジェンシー条件は、塩濃度によりおよび温度により定義され得る。上記のように、洗浄のストリンジェンシーは、塩濃度を減少させることによりまたは温度を上昇させることにより増加し得る。例えば、洗浄ステップのためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30 mM NaClおよび3 mMクエン酸三ナトリウム未満、最もこのましくは、約15 mM NaClおよび1.5 mMクエン酸三ナトリウム未満である。洗浄ステップのためのストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約25℃の、少なくとも約42℃の、または少なくとも約68℃の温度を含む。態様において、洗浄ステップは、30 mM NaCl、3 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中25℃で行われる。より好ましい態様において、洗浄ステップは、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中42℃で行われる。他の態様において、洗浄ステップは、15 mM NaCl、1.5 mMクエン酸三ナトリウム、および0.1% SDS中68℃で行われる。これらの条件に関するさらなるバリエーションは、当業者に直ちに明らかになるであろう。
【0170】
個別の核酸配列のすべてについてハイブリダイゼーションの非存在、存在、および量を測定する検出システムは、当技術分野で周知である。例えば、同時検出は、Heller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150-2155, 1997に記載されている。態様において、蛍光のレベルおよびパターンを決定するためにスキャナが使用される。
【0171】
質量分析による検出
本発明の局面において、本発明のバイオマーカーは、質量分析(MS)により検出される。質量分析は、質量分析装置を用いて気相イオンを検出する、化合物を分析するための周知のツールである。質量分析装置は、当技術分野で周知であり、飛行時間型、磁気セクター型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、静電セクター型の分析装置およびこれらのハイブリッドを含むがこれらに限定されない。この方法は、自動化(Villanueva, et al., Nature Protocols (2006) 1(2):880-891)または準自動化形式で行なわれ得る。これは、例えば、液体クロマトグラフィー装置(LC-MS/MSもしくはLC-MS)またはガスクロマトグラフィー装置(GC-MSもしくはGC-MS/MS)に機能的に連結された質量分析装置を用いて達成され得る。質量分析を行う方法は周知であり、例えば、米国特許出願公開第20050023454号、同第20050035286号、米国特許第5,800,979号、およびそれらの中で開示されている参考文献に開示されている。
【0172】
レーザー脱離/イオン化
態様において、質量分析装置は、レーザー脱離/イオン化質量分析装置である。レーザー脱離/イオン化質量分析において、分析物は、質量分析装置のプローブインターフェースに連結し、分析物にイオン化および質量分析装置への導入のためのイオン化エネルギーを提供するよう適合された装置である質量分析プローブの表面上に配置される。レーザー脱離質量分析装置は、分析物を表面から脱着させ、それらを揮発およびイオン化させて、質量分析装置のイオン光学部がそれらを利用できるようにするために、典型的に紫外線レーザー由来であるが、赤外線レーザー由来でもあるレーザーエネルギーを用いる。LDIによるタンパク質の分析は、MALDIまたはSELDIの形式をとり得る。LDIによるタンパク質の分析は、MALDIまたはSELDIの形式をとり得る。
【0173】
単一の飛行時間型機器におけるレーザー脱離/イオン化は典型的に、線形引き出し様式で行われる。タンデム質量分析装置は、直交引き出し様式を用い得る。
【0174】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)
態様において、本発明で使用する質量分析技術は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)である。関連する態様において、その手法は、MALDIと飛行時間(TOF)分析の組み合わせであり、これはMALDI-TOF MSとして公知である。これは、用いられる特定の波長において入射光を強く吸収する作用物質を含むマトリックスをメンブレン上で形成することを含む。サンプルは、MALDI質量分析装置においてUVまたはIRレーザー光により励起され気相に入る。この気化によりイオンが生成され、イオンプルームを形成する。これらのイオンは電場で加速され、所定距離におけるそれらの移動時間に従い分離され、それによって非常に高精度かつ高感度の質量/電荷(m/z)読み取りが提供される。MALDI分光装置は当技術分野で周知であり、例えば、PerSeptive Biosystems, Inc.(Framingham, Mass., USA)から市販されている。
【0175】
磁気ベースの血清処理が、伝統的なMALDI-TOFと組み合わされ得る。このアプローチを通して、マトリックスの混合およびMALDI標的プレートにおけるサンプルの沈着の前に改善されたペプチド捕捉が達成される。したがって、態様において、ペプチド捕捉の方法は、誘導体化された磁気ビーズベースのサンプル処理の使用を通じて補強される。
【0176】
MALDI-TOF MSは、多数のタンパク質のフラグメントの同時スキャンを可能にする。したがって、多数のタンパク質が同時にポリアクリルアミドゲル上で泳動され、本発明の方法に供されて、収集メンブレン上にスポットのアレイが生成され得、そしてそのアレイが分析され得る。その後、コンピュータに適した形式でデータを生成するサーバ(例えば、ExPASy)を用いることによって結果の自動出力が提供される。
【0177】
収集メンブレン上に得られたタンパク質のフラグメントを分析するために、MALDI-TOF MSの質量精度および感度を改善する他の技術が使用され得る。これらは、遅延イオン引き出し、エネルギーリフレクター、イオントラップモジュール等の使用を含むがこれらに限定されない。加えて、ポストソース分解およびMS-MS分析が、さらなる構造分析を提供するのに有用である。ESIを用いる場合、サンプルは液相にあり、分析はイオントラップ、TOF、シングル四重極、マルチ四重極質量分析装置等により得る。(シングル四重極以外の)そのような装置の使用は、MS-MSまたはMSn分析を実施可能にする。タンデム質量分析は、複数の反応を同時に観察できるようにする。
【0178】
キャピラリー注入は、例えば、真空を破壊することなく少量のサンプルを質量分析装置に効率よく導入することができるため、マーカーを所望の質量分析装置の実機に導入するために使用され得る。キャピラリーカラムは、質量分析装置のイオン化源をガスクロマトグラフィー(GC)および液体クロマトグラフィー(LC)を含むがこれらに限定されない他の分離技術と接続するために慣用的に使用されている。GCおよびLCは、質量分析前に溶液をその異なる成分に分離する役割を果たし得る。そのような技術は、質量分析と容易に組み合わされる。この技術の1つのバリエーションは、統合されたサンプル分離および質量分析装置による分析のための質量分析装置への高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の連結である。
【0179】
本発明を実施するために、四重極質量分析装置もまた、必要に応じて使用され得る。フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTMS)もまた、いくつかの本発明の態様において使用され得る。それは高い解像度およびタンデム質量分析実験の能力を提供する。FTMSは、磁場の存在下で軌道周回する荷電粒子の原理に基づく。ESIおよびMALDIへの連結により、FTMSは、0.001%という低いエラー率の高い精度を提供する。
【0180】
表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)
態様において、本発明において使用される質量分析技術は、例えば両方ともHutchensおよびYipに対する米国特許第5,719,060号および同第6,225,047号に記載される「表面増強レーザー脱離およびイオン化」または「SELDI」である。これは、分析物(したがって、バイオマーカーの1つまたは複数)をSELDI質量分析プローブの表面上で捕捉する脱離/イオン化気相イオン分光分析(例えば、質量分析)の方法を表す。
【0181】
SELDIは、「親和性捕捉質量分析」とも呼ばれていた。それは、「表面増強親和性捕捉」または「SEAC」とも呼ばれる。このバージョンは、分析物との間の非共有結合性親和性相互作用(吸着)を通じて分析物を捕捉する物質をプローブ表面上に有するプローブを使用する。この物質は、「吸着剤」、「捕捉試薬」、「親和性試薬」または「結合部分」と様々に呼ばれる。そのようなプローブは、「親和性捕捉プローブ」と称され、かつ「吸着表面」を有すると称され得る。捕捉試薬は、分析物に結合することができる任意の物質であり得る。捕捉試薬は、物理吸着または化学吸着によりプローブ表面に付加される。特定の態様において、プローブは、表面にすでに付加されている捕捉試薬を有する。他の態様において、プローブは事前活性化され、例えば共有結合または配位共有結合を形成する反応を通じて、捕捉試薬に結合することができる反応性部分を含む。エポキシドおよびアシル-イミジゾール(imidizole)は、ポリペプチド捕捉試薬、例えば抗体または細胞受容体に共有結合により結合する有用な反応性部分である。ニトリロ三酢酸およびイミノ二酢酸は、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用する金属イオンに結合するキレート剤として機能する有用な反応性部分である。吸着剤は、通常、クロマトグラフィー吸着剤およびバイオ特異的吸着剤に分類される。
【0182】
「クロマトグラフィー吸着剤」は、典型的にクロマトグラフィーで使用される吸着物質を表す。クロマトグラフィー吸着剤は、例えば、イオン交換物質、金属キレート体(例えば、ニトリロ三酢酸またはイミノ二酢酸)、固定化金属キレート、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、色素、単純生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖および脂肪酸)ならびに混合型吸着剤(例えば、疎水性誘引/静電反発吸着剤)を含む。
【0183】
「バイオ特異的吸着剤」は、生体分子、例えば、核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖、脂質、ステロイドまたはこれらの結合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)タンパク質結合体)を含む吸着剤を表す。特定の例において、バイオ特異的吸着剤は、高分子構造体、例えば、多タンパク質複合体、生体膜またはウイルスであり得る。バイオ特異的吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質および核酸である。バイオ特異的吸着剤は、典型的に、標的分析物に対してクロマトグラフィー吸着剤よりも高い特異性を有する。SELDIにおいて使用される吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号において見いだされ得る。「バイオ選択的吸着剤」は、少なくとも10-8 Mの親和性で分析物に結合する吸着剤を表す。
【0184】
Ciphergenにより製造されるタンパク質バイオチップは、アドレス指定可能な位置にクロマトグラフィーまたはバイオ特異的吸着剤が付加された表面を含む。CiphergenのProteinChip(登録商標)アレイは、NP20(親水性);H4およびH50(疎水性);SAX-2、Q-10および(アニオン交換);WCX-2およびCM-10(カチオン交換);IMAC-3、IMAC-30およびIMAC-50(金属キレート);ならびにPS-10、PS-20(アシル-イミダゾール、エポキシドを有する反応性表面)およびPG-20(アシル-イミダゾールを通じて連結されたプロテインG)を含む。疎水性タンパク質チップアレイは、イソプロピルまたはノニルフェノキシ-ポリ(エチレングリコール)メタクリレート官能基を有する。アニオン交換タンパク質チップアレイは、第四級アンモニウム官能基を有する。カチオン交換タンパク質チップアレイは、カルボキシレート官能基を有する。固定化金属キレートタンパク質チップアレイは、キレート化により遷移金属イオン、例えば銅、ニッケル、亜鉛およびガリウムに吸着するニトリロ三酢酸官能基(IMAC 3およびIMAC 30)またはO-メタクリロイル-N,N-ビス-カルボキシメチルチロシン官能基(IMAC 50)を有する。事前活性化タンパク質チップアレイは、共有結合のためにタンパク質上の基と反応することができるアシル-イミダゾールまたはエポキシド官能基を有する。
【0185】
そのようなバイオチップは、米国特許第6,579,719号(Hutchens and Yip, “Retentate Chromatography”, 2003年6月17日);米国特許第6,897,072号(Rich et al., “Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer”, 2005年5月24日);米国特許第6,555,813号(Beecher et al., “Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer”, 2003年4月29日);米国特許公開第2003-0032043 A1号(Pohl and Papanu, “Latex Based Adsorbent Chip”, 2002年7月16日);ならびにPCT国際公開第WO 03/040700号(Umet al., “Hydrophobic Surface Chip”, 2003年5月15日);米国特許出願公開第US 2003/-0218130 A1号(Boschetti et al., “Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide-Based Hydrogels”, 2003年4月14日);ならびに米国特許第7,045,366号(Huang et al., “Photocrosslinked Hydrogel Blend Surface Coatings”, 2006年5月16日)にさらに記載されている。
【0186】
一般に、吸着表面を有するプローブは、サンプル中に存在し得るバイオマーカーを吸着剤に結合させるのに十分な期間、サンプルと接触させられる。インキュベーション期間の後、未結合の物質を除去するために基材が洗浄される。任意の適切な洗浄溶液が使用され得、好ましくは水性溶液が使用される。どの程度の分子が結合した状態で維持されるかは、洗浄のストリンジェンシーを調節することにより操作され得る。洗浄溶液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、界面活性剤の強度、および温度に依存し得る。プローブが(本明細書に記載されるように)SEACおよびSENDの両方の特性を有さない場合、バイオマーカーが結合した基材にエネルギー吸収分子が適用される。
【0187】
さらに別の方法において、当業者は、バイオマーカーに結合する抗体を有する固相結合免疫吸着剤を用いてバイオマーカーを捕捉することができる。吸着剤を洗浄して未結合物質を除去した後、バイオマーカーが固相から溶出され、そのバイオマーカーに結合するSELDIバイオチップに適用し、SELDIにより分析することにより検出される。
【0188】
基材に結合したバイオマーカーは、気相イオン分光分析、例えば飛行時間質量分析で検出される。バイオマーカーは、イオン化源、例えばレーザーによりイオン化され、生成されたイオンがイオン光学アセンブリにより収集され、質量分析装置が通過するイオンを分散および分析する。その後に検出装置が検出されたイオンの情報を質量対電荷比に変換する。バイオマーカーの検出は、典型的に、シグナル強度の検出を用いる。したがって、バイオマーカーの数量および質量の両方が決定され得る。
【0189】
本発明の方法
本発明のバイオマーカーを含むパネルは、対象が一般外科医により診察されるべきかまたは婦人科医により評価および/もしくは処置されるべきかを決定するため、対象において子宮内膜症を特徴づけるために使用される。他の態様において、本発明のパネルは、子宮内膜症の分子プロファイルを決定することにより子宮内膜症を診断するまたはステージ分類するために使用される。特定の態様において、本発明のパネルは、対象のための処置コースを選択するために使用される。「子宮内膜症ステータス」というフレーズは、非疾患を含む、この疾患の任意の区別可能な症状発現を含む。このステータスに基づき、追加の診断試験または治療手順もしくはレジメンを含むさらなる手順が示され得る。
【0190】
本発明の局面において、本発明のバイオマーカーは、対象において早期段階の子宮内膜症を特定するための診断試験において使用され得る。
【0191】
試験結果と子宮内膜症の関連づけは、その結果に何らかの種類の分類アルゴリズムを適用してそのステータスを生成することをともなう。分類アルゴリズムは、表1に列挙されるマーカーの量が特定のカットオフ数を上回るもしくは下回るかまたはそうでないかを決定するという単純なものであり得る。複数のバイオマーカーが使用される場合、分類アルゴリズムは、線形回帰式であり得る。あるいは、分類アルゴリズムは、本明細書に記載される多くの学習アルゴリズムのいずれかを掛け合わせたものであり得る。
【0192】
複合的な分類アルゴリズムの場合、コンピュータ、例えばプログラム可能なデジタルコンピュータを用いてデータに対してアルゴリズムを実行し、それによって分類を決定することが必要であり得る。いずれの場合も、当業者は、その後、そのステータスを有形の媒体に、例えば、コンピュータ読み取り可能な形式、例えばメモリドライブもしくはディスクに記録し得る、または単純に紙面上に印刷し得る。結果はまた、コンピュータスクリーン上に報告され得る。
【0193】
本発明のバイオマーカー
個々のバイオマーカーが、有用な診断バイオマーカーである。加えて、実施例に記載されるように、特定のバイオマーカーの組み合わせが、任意の単一のバイオマーカー単独または以前に同定されたバイオマーカーの任意の他の組み合わせよりも高い、特定のステータスの予測値を提供することが見いだされた。詳細に、サンプルにおける複数のバイオマーカーの検出は、試験の感度、精度および特異度を高め得る。
【0194】
本明細書に記載される各バイオマーカーは、子宮内膜症において差次的に存在し得、したがって各々は個別に子宮内膜症ステータスの決定を支援する上で有用である。この方法は、第1に、本明細書に記載される方法、例えばSELDIバイオチップ上での捕捉とその後の質量分析による検出を含むがこれに限定されない当技術分野で周知の任意の方法を用いて対象サンプルにおいて選択されたバイオマーカーを測定する工程、および第2に、測定値を、陽性の子宮内膜症ステータスと陰性の子宮内膜症ステータスとを区別する診断量またはカットオフと比較する工程を含む。診断量は、それを上回るまたは下回る場合に対象が特定の子宮内膜症ステータスを有すると分類されるバイオマーカーの測定量を表す。例えば、バイオマーカーが子宮内膜症の間に正常時と比較して上方制御される場合、診断カットオフを上回る測定量が、子宮内膜症の診断を提供する。あるいは、バイオマーカーが子宮内膜症の間に下方制御される場合、診断カットオフを下回る測定量が、子宮内膜症の診断を提供する。当技術分野で十分理解されているように、アッセイで使用される特定の診断カットオフを調節することにより、当業者は、診断医の好みに応じて診断アッセイの感度または特異度を高めることができる。特定の診断カットオフは、例えば、本明細書でなされているように、統計的に有意な数の、異なる子宮内膜症ステータスを有する対象由来のサンプルにおいてバイオマーカーの量を測定し、診断医の所望の特異度および感度のレベルに適するようカットオフを線引きすることにより決定され得る。
【0195】
(単独でまたは組み合わせて使用される)本発明のバイオマーカーは、少なくともp≦0.05、p≦10-2、p≦10-3、p≦10-4、またはp≦10-5の異なる子宮内膜症ステータスの統計差を示す。これらのバイオマーカーを単独でまたは組み合わせて使用する診断試験は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または約100%の感度および特異度を示す。
【0196】
疾患の経過(進行/寛解)の決定
1つの態様において、本発明は、対象において疾患の経過を決定する方法を提供する。疾患経過は、疾患進行(悪化)および疾患寛解(改善)を含む疾患ステータスの経時的な変化を表す。時間と共に、バイオマーカーの量または相対量(例えば、パターン)は変化する。したがって、この方法は、少なくとも2つの異なる時点、例えば第1の時点および第2の時点で対象においてバイオマーカーのパネルを測定する工程、ならびに存在する場合、量の変化を比較する工程を含む。(例えば、治療中の)疾患の経過は、これらの比較に基づき決定される。
【0197】
ステータスの報告
本発明のさらなる態様は、例えば技術者、医師または患者へのアッセイ結果もしくは診断または両方の伝達に関する。特定の態様において、関心を持つ一団、例えば医師および彼らの患者にアッセイ結果もしくは診断または両方を伝達するために、コンピュータが使用され得る。いくつかの態様において、その結果または診断を伝達された国または司法管轄区とは異なる国または司法管轄区においてアッセイが実施される、またはアッセイ結果が分析される。
【0198】
本発明の好ましい態様において、表1のバイオマーカーの試験対象における差次的な存在または非存在に基づく診断は、その診断が得られた後可能な限り早く対象に伝達される。診断は、対象を処置している医師により対象に伝達され得る。あるいは、診断は、電子メールにより試験対象に送信され得るまたは電話により対象に伝達され得る。電子メールまたは電話により診断を伝達するためにコンピュータが使用され得る。特定の態様において、電気通信分野の当業者に知られているコンピュータハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて、診断試験の結果を含むメッセージが作成され得、そして対象に自動的に送達され得る。ヘルスケア向けコミュニケーションシステムの1つの例は、米国特許第6,283,761号に記載されているが、本発明は、この特定のコミュニケーションシステムを利用する方法に限定されない。本発明の方法の特定の態様において、サンプルのアッセイ、疾患の診断、およびアッセイ結果または診断の伝達を含む方法のステップのすべてまたは一部は、異なる(例えば、外国の)司法管轄区において実施され得る。
【0199】
対象の管理
特定の態様において、本発明の方法は、対象の処置をそのステータスに基づき管理することを含む。そのような管理は、例えば、婦人科専門医への委託を含む。1つの態様において、医師が子宮内膜症の診断を行う場合、特定の処置レジメン、例えば治療剤(例えば、GnRHアゴニスト/アンタゴニスト)の処方または投与につながり得る。あるいは、非子宮内膜症の診断は、患者が罹患している可能性のある具体的疾患を決定するためのさらなる試験につながり得る。また、診断試験が子宮内膜症ステータスに関して非結論的な結果を提供する場合、さらなる試験が求められ得る。
【0200】
本発明のさらなる態様は、例えば技術者、医師または患者へのアッセイ結果もしくは診断または両方の伝達に関する。特定の態様において、関心を持つ一団、例えば医師および彼らの患者にアッセイ結果もしくは診断または両方を伝達するために、コンピュータが使用され得る。いくつかの態様において、その結果または診断を伝達された国または司法管轄区とは異なる国または司法管轄区においてアッセイが実施される、またはアッセイ結果が分析される。
【0201】
ハードウェアおよびソフトウェア
本明細書に記載される任意の方法、バイオマーカーの測定を子宮内膜症と関連づけるステップは、一般用途のまたは特別にプログラムされたハードウェアまたはソフトウェア上で行われ得る。
【0202】
局面において、分析は、ソフトウェア分類アルゴリズムにより行われる。本明細書に記載される方法を含むがこれに限定されない当技術分野で周知の任意の検出方法による分析物の分析は、データ処理に供される結果を生成する。データ処理は、ソフトウェア分類アルゴリズムにより行われ得る。そのようなソフトウェア分類アルゴリズムは、当技術分野で周知であり、当業者は、特定の検出方法から得られた結果を分析するために適切なソフトウェアを容易に選択および使用することができる。
【0203】
局面において、分析は、コンピュータ読み取り可能な媒体により行われる。コンピュータ読み取り可能な媒体は、非一時的および/または有形であり得る。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ等)または不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、光学ディスク、ペーパーテーブル、パンチカード等)であり得る。
【0204】
例えば、飛行時間質量分析による分析物の分析は、飛行時間スペクトルを生成する。最終的に分析された飛行時間スペクトルは、典型的に、サンプルに対するイオン化エネルギーの単一のパルスからのシグナルではなく、多数のパルスからのシグナルの集合である。これは、ノイズを減少させ、ダイナミックレンジを増加させる。この飛行時間データは、その後、データ処理に供される。例示的なソフトウェアは、CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアを含むがこれに限定されず、データ処理は典型的に、質量スペクトルを生成するTOFからM/Zへの変換、機器オフセットを除去するベースライン減算および高周波ノイズを減少させる高周波ノイズフィルタリングを含む。
【0205】
バイオマーカーの脱離および検出により生成されるデータは、プログラム可能デジタルコンピュータの使用により分析され得る。コンピュータプログラムは、検出されたバイオマーカーの数、ならびに任意でシグナルの強度および検出された各バイオマーカーについての決定された分子量を示すよう、データを分析する。データ分析は、バイオマーカーのシグナル強度を決定するステップおよび既定の統計的分布から逸脱しているデータを除くステップを含み得る。例えば、観察されたピークは、ある参照に対する各ピークの高さを計算することにより正規化され得る。参照は、機器および化合物、例えばエネルギー吸収分子により生成されるバックグラウンドノイズであり得、これがその尺度におけるゼロに設定される。
【0206】
コンピュータは、得られたデータを表示用の様々な形式に変換し得る。標準的なスペクトルが表示され得るが、1つの有用な形式では、ピークの高さおよび質量情報のみがスペクトル像から維持され、より簡略化された画像が生成され、ほぼ同一の分子量を有するバイオマーカーをより容易に見ることができるようにされる。別の有用な形式において、2つまたはそれ以上のスペクトルが比較され、適宜、特有のバイオマーカーおよびサンプル間で上方または下方制御されるバイオマーカーが強調される。これらの形式のいずれかを用いて、当業者は特定のバイオマーカーがサンプル中に存在するかどうかを容易に決定することができる。
【0207】
分析は通常、分析物からのシグナルを表すスペクトル中のピークの特定を含む。ピークの選択は視覚的に行われ得るが、ピークの検出を自動化することができるソフトウェアが、例えばCiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアパッケージの一部として、利用可能である。このソフトウェアは、選択されたしきい値を上回るシグナル対ノイズ比を有するシグナルを特定し、そのピークシグナルの重心でピークの質量を標識することにより機能する。態様において、多数のスペクトルが比較され、ある選択された比率の質量スペクトルに存在する同一のピークが特定される。このソフトウェアの1つのバージョンは、様々なスペクトルにおいて見られる定義された質量範囲内のすべてのピークをクラスター化し、その質量(M/Z)クラスターの中点付近のすべてのピークに質量(N/Z)を割り当てる。
【0208】
局面において、データを分析するために使用されるソフトウェアは、結果の分析(例えば、そのシグナルが本発明に従うバイオマーカーに対応するシグナルのピークを表すかどうかを決定するために、シグナル)にアルゴリズムを適用するコードを含み得る。ソフトウェアはまた、試験下にある特定の臨床パラメータのステータスを示すバイオマーカーのピークまたはバイオマーカーのピークの組み合わせが存在するかどうかを決定するために、観察されたバイオマーカーのピークに関するデータを、分類木またはANN分析に供し得る。データの分析は、サンプルの質量スペクトル分析から直接的または間接的のいずれかで得られる様々なパラメータを「錠」にしたものであり得る。これらのパラメータは、1つまたは複数のピークの存在または非存在、ピークまたはピークのグループの形状、1つまたは複数のピークの高さ、1つまたは複数のピークの高さの対数、およびピークの高さのデータの他の計算操作されたものを含むがこれらに限定されない。
【0209】
子宮内膜症ステータスを規定するための分類アルゴリズム
いくつかの態様において、サンプル、例えば「既知のサンプル」を用いて生成されるアッセイ(例えば、ELISAアッセイ)から得られるデータは、分類モデルを「訓練」するために使用され得る。「既知のサンプル」は、事前に分類されているサンプルである。スペクトルから得られ、分類モデルを形成するために使用されるデータは、「訓練データセット」と称され得る。訓練後に、分類モデルは、不明のサンプルを用いて生成されるスペクトルから得られるデータにおいてパターンを認識することができる。分類モデルはその後、不明のサンプルをクラスに分類するために使用され得る。これは、例えば、特定の生物学的サンプルが特定の生物学的状態に関連するかどうか(例えば、疾患 対 非疾患)を予測する上で有用であり得る。
【0210】
分類モデルを形成するために使用される訓練データセットは、生データまたは事前処理されたデータを含み得る。いくつかの態様において、生データは、飛行時間スペクトルまたは質量スペクトルから直接入手され得、その後に任意で上記のようにして「事前処理」され得る。
【0211】
分類モデルは、一群のデータをそのデータ内に存在する客観的パラメータに基づきクラスに分けることを試みる任意の適切な統計分類(または「学習」)方法を用いて形成され得る。分類方法は、教師ありまたは教師なしのいずれかであり得る。教師ありおよび教師なし分類プロセスの例は、Jain, “Statistical Pattern Recognition: A Review”, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, January 2000に記載されており、その教示は参照により組み入れられる。
【0212】
教師あり分類において、既知のカテゴリーの例を含む訓練データが学習メカニズムに提示され、学習メカニズムは既知のクラスの各々を定義する1つまたは複数の関係性のセットを学習する。その後、新しいデータが学習メカニズムに適用され得、学習メカニズムはその後、学習した関係性を用いて新しいデータを分類する。教師あり分類プロセスの例は、線形回帰プロセス(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分的最小二乗(PLS)回帰および主成分回帰(PCR))、二分決定木(例えば、再帰分割プロセス、例えばCART分類および回帰木)、人工ニューラルネットワーク、例えば、バックプロパゲーションネットワーク、判別分析(例えば、ベイズ分類器またはフィッシャー分析)、ロジスティック分類器、およびサポートベクター分類器(サポートベクターマシン)を含む。
【0213】
態様において、教師あり分類方法は、再帰分割プロセスである。再帰分割プロセスは、不明のサンプルから得られるスペクトルを分類するために再帰分割木を使用する。再帰分割プロセスに関するさらなる詳細は、Paulseらの米国特許出願第2002 0138208 A1号、“Method for analyzing mass spectra”に提供されている。
【0214】
他の態様において、構築される分類方法は、教師なし学習方法を用いて形成され得る。教師なし分類は、訓練データセットの元となったスペクトルを事前分類することなく、訓練データセット内での類似性に基づき分類を学習することを試みる。教師なし学習方法は、クラスター分析を含む。クラスター分析は、データを、理想的には相互に非常に類似する、および他のクラスターのメンバーと非常に相違するメンバーを有する「クラスター」またはグループに分けることを試みる。その後、データ項間の距離を測定し、相互に近いデータ項をクラスター化してひとまとめにするいくつかの距離メトリックを用いて類似性が測定される。クラスター化技術は、MacQueenのK-meansアルゴリズムおよびKohonenの Self-Organizing Mapアルゴリズムを含む。
【0215】
生物学的情報の分類における使用について言及されている学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開第WO 01/31580号(Barnhill et al., “Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof”)、米国特許出願第2002 0193950 A1号(Gavin et al., “Method or analyzing mass spectra”)、米国特許出願第2003 0004402 A1号(Hitt et al., “Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data”)、および米国特許出願第2003 0055615 A1号(Zhang and Zhang, “Systems and methods for processing biological expression data”)に記載されている。
【0216】
分類モデルは、任意の適切なデジタルコンピュータ上で形成され得、使用され得る。適切なデジタルコンピュータは、任意の標準的なまたは専用のオペレーティングシステム、例えば、Unix、Windows(商標)またはLinux(商標)ベースのオペレーティングシステムを用いるマイクロ、ミニ、または大型コンピュータを含む。使用されるデジタルコンピュータは、関心対象のスペクトルを生成するために使用される質量分析装置から物理的に隔離され得る、またはそれは質量分析装置に接続され得る。
【0217】
本発明の態様に従う訓練データセットおよび分類モデルは、デジタルコンピュータにより実行または使用されるコンピュータコードにより具現化され得る。コンピュータコードは、光学または磁気ディスク、スティック、テープ等を含む任意の適切なコンピュータ読み取り可能な媒体に保存され得、C、C++、ビジュアルベーシック等を含む任意の適切なコンピュータプログラミング言語で記述され得る。
【0218】
上記の学習アルゴリズムは、すでに発見されているバイオマーカーに対する分類アルゴリズムを開発するため、または新しい子宮内膜症バイオマーカーを発見するための両方で有用である。分類アルゴリズムは、したがって、単独でまたは組み合わせて使用されるバイオマーカーについての診断値(例えば、カットオフ点)を提供することにより、診断試験の基礎を形成する。
【0219】
子宮内膜症のバイオマーカーの検出のためのキット
別の局面において、本発明は、子宮内膜症の診断を支援する(例えば、子宮内膜症ステータスを特定する、子宮内膜症を検出する、子宮内膜症のステージを特定する、子宮内膜症を有するリスクがある対象のための処置方法を選択する等)ためのキットを提供し、このキットは、本発明に従うバイオマーカーを検出するために使用される。1つの態様において、キットは、表1で特定されるバイオマーカーを特異的に認識する作用物質を含む。関連する態様において、作用物質は抗体である。キットは、各々が表1に示されるバイオマーカーのうちの1つを特異的に認識する、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なる抗体を含み得る。
【0220】
別の態様において、キットは、本発明のバイオマーカーに結合する捕捉試薬が付加された固体支持体、例えば、チップ、マイクロタイタープレートもしくはビーズまたは樹脂を含む。したがって、例えば、本発明のキットは、SELDI用の質量分析プローブ、例えば、ProteinChip(登録商標)アレイを含み得る。バイオ特異的捕捉試薬の場合、キットは、反応性表面を有する固体支持体、およびバイオ特異的試薬を含む容器を含み得る。
【0221】
キットはまた、洗浄溶液または洗浄溶液を作成するための指示書を含み得、捕捉試薬および洗浄溶液の組み合わせが、例えば質量分析によるその後の検出のための固体支持体上でのバイオマーカーの捕捉を可能にする。キットは、各々が異なる固体支持体上に存在する複数タイプの吸着剤を含み得る。
【0222】
さらなる態様において、そのようなキットは、本明細書に記載される任意の方法における使用のための指示書を含み得る。態様において、指示書は、ラベルまたは独立した同封物の形式で適切な操作パラメータを提供する。例えば、指示書は、消費者に、どのようにしてサンプルを収集するか、どのようにしてプローブまたは検出したい特定のバイオマーカーを洗浄するかに関する情報を提供し得る。
【0223】
さらに別の態様において、キットは、較正のための標準として使用される対照(例えば、バイオマーカーサンプル)を含む1つまたは複数の容器を含み得る。
【実施例】
【0224】
実施例1:子宮内膜症に関連する血清タンパク質
子宮内膜症に関連する血清バイオマーカーを決定するために、付属器腫瘤を有する患者のコホートを分析した。この分析における総コホートサイズは、501名の対象であり、(実施例6に記載される)Correlogicデータベースから得た。これらの中で、53名の対象は、子宮内膜症を有する、すなわち、以下:子宮内膜症、子宮内膜嚢胞、子宮内膜腫、または子宮内膜の別の良性の状態の少なくとも1つを有すると報告されていた。298名の対象は、別の、非子宮内膜症性の、良性の状態を有していた。145名の対象は、子宮内膜症を伴わない卵巣悪性物を有しており、該対象は分析から除外した。5名の対象は、病理データを有しておらず、該対象もまた分析から除外した。
【0225】
53名の子宮内膜症を有する対象の中で、6名の対象は、卵巣癌とも診断されていた。5名の対象は、非卵巣悪性物を有すると診断されており、その中の1名は、卵巣癌および非卵巣悪性物の両方を有していると注記されていた。これらの対象を分析に含めた。子宮内膜症を有さない対象における非卵巣悪性物は、対象を「他の良性の」コホートに含めたときには無視した。
【0226】
分析のために、<低>と報告されているバイオマーカーレベルを、NAで置き換えた。>[数字]で報告されているレベルは、数字で置き換えた。本明細書に示されるすべてのプロットは、log10変換を用いて正規化されたバイオマーカーレベルを反映している。最小値が≧1.0であることを確実にするために、必要に応じて、1.0を下回るレベルを有するマーカーを、
図1において見出される倍率を用いて乗算した。
【0227】
それ以外のことが示されていない限り、本明細書に示される研究における対照集団は、既知の子宮内膜または婦人科状態を有さない対象からなるものとした。バイオマーカー分析の結果を
図2~62に示す。
【0228】
実施例2:機械学習を用いて子宮内膜症 対 非子宮内膜症を分類するデータセット1
このデータセットは、511名の対象を含み、54名が子宮内膜症(EMコード1)と分類され、457名が非子宮内膜症(EMコード0)と分類された。これらの511名の対象の中で、224名は閉経後(コード1)であり、287名は閉経前(コード0)であった。これらの287名の閉経前対象の中で、41名が子宮内膜症対象であり、246名が非子宮内膜症対象であった。この分析では、以下の9つ特徴を使用してモデルを構築した:ApoA1、B2M、CA125、TRF、TT/PREA、HE4、FSH、閉経ステータス、および年齢。
【0229】
分類器および性能再現性の結果が、
図64の4つのヒストグラムに示されており、これらは、ランダムフォレスト(RF)およびサポートベクターマシン(SVM)法(それぞれ、上および下パネル)を用いた頻度 対 感度および特異度(それぞれ、左および右パネル)を示す。平均感度は、RFで71.3%、SVMで76.3%であった。平均特異度は、RFで73.5%、SVMで68.9%であった。
【0230】
FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータス、および年齢に関して、全データセットを用いた特徴分布結果が
図65に示されている。上位4つの特徴は、CA125、HE4、年齢、およびFSHであった。
【0231】
FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータス、および年齢に関して、等サイズデータセットを用いた特徴分布結果が
図66に示されている。
【0232】
FSH、HE4、TRF、B2M、ApoA1、CA125、TT、閉経ステータス、および年齢に関して、閉経前ステータスのみを用いた特徴分布結果が
図67に示されている。
【0233】
実施例3:機械学習を用いて子宮内膜症 対 非子宮内膜症を分類するデータセット2
Bristowおよび522(実施例5に記載)という2つのデータセットを統合した。522データセットは、1159名の子宮内膜症を有さない良性対象(コード1)、および92名の癌対象(コード2)、および156名の子宮内膜症を有する良性対象(コード3)を含んだ。Bristowデータセットは、357名の子宮内膜症を有さない良性対象、および96名の癌対象、および58名の子宮内膜症を有する良性対象を含んだ。
【0234】
したがって統合データセットは、1516名の子宮内膜症を有さない良性対象、および188名の癌対象、および214名の子宮内膜症を有する良性対象を含んだ。閉経後であるまたは閉経状況が不明である対象を除いて、186名の子宮内膜症対象および931名の非子宮内膜症対象を含む最終データセットを得た。以下の特徴を使用してモデルを構築した:ApoA1、B2M、CA125、TRF、TT/PREA、HE4、FSH、閉経ステータス、年齢、OVA1、およびOVERA。
【0235】
標準偏差により除算するスケール変換を用いて、150名の子宮内膜症対象および150名の非子宮内膜症対象の訓練セットを作成した。ランダムフォレスト(RF)およびサポートベクターマシン(SVM)を用いて100回の反復を行った。
【0236】
分類器および性能再現性の結果が、
図68の4つのヒストグラムに示されており、これらは、RFおよびSVM法(それぞれ、上および下パネル)を用いた頻度 対 感度および特異度(それぞれ、左および右パネル)を示す。平均感度は、RFで72.5%、SVMで68.0%であった。平均特異度は、RFで76.1%、SVMで74.6%であった。
【0237】
図69は、データセット1における2つの異なるオペレーター(早期、再実行)についての再現性分析および性能比較、ならびにデータセット2での性能比較を示している。データセット2におけるRFは、74.1%の感度および77.5%の特異度という、統合データにおける最も高くバランスのとれた性能を提供した。
【0238】
図70は、RF、SVM、Adaboost、xgbDART、MARS、およびMARS
*を含む異なる分類器を用いたデータにおける特異度および感度性能の結果を示している。
【0239】
図71は、様々な事前処理および分類器を用いた特異度 対 感度のプロットならびに特異度および感度の上位の結果を強調する対応する表を示しており、BoxCox、rdaが、90.6%の感度および71.3%の特異度を示した。
【0240】
図72は、真陽性率 対 偽陽性率のプロットとして、YeoJohnson、単純ベイズの分類器のAUCを示している。
【0241】
実施例4:より少ないバイオマーカーを用いて子宮内膜症を分類するニューラルネットワーク
子宮内膜症を分類する上で重要なバイオマーカーを、Bristow、522、およびCorrelogicデータセットを用いて特定した。分類に最も重要なバイオマーカーを用いてニューラルネットワークを形成した(
図73を参照のこと)。子宮内膜症の分類における各バイオマーカーの重要度は、4つの方法でバイオマーカーの重要度を決定することにより特定した。
【0242】
Bristowおよび522データセットは、186名の子宮内膜症患者および931名の非子宮内膜症患者を有する。臨床試験の間に、相当数の良性物が子宮内膜腫または子宮内膜嚢胞であることが観察された。Bristowおよび522データセットを用いて、AdaBoost M1、C5.0、単純ベイズ分類器、およびExtreme勾配ブースト木分類器法の感度および特異度を決定した(
図74)。Bristowおよび522データセットにおける子宮内膜症の分類で使用された様々なバイオマーカーの重要度を決定した(表2)。特徴重要度を、R Borutaパッケージを用いて決定した。4つすべての示されているアルゴリズムにまたがる平均を計算した。
【0243】
(表2)Bristowおよび522データセットのバイオマーカーの特徴重要度
【0244】
Correlogicデータセットは、53例の既知の子宮内膜症例(42例の閉経前)および多数の様々なバイオマーカーを有する。Correlogicデータセットを用いて、AdaBoost M1、C5.0、単純ベイズ分類器、およびExtreme勾配ブースト木分類器法の感度および特異度を決定した(
図75)。Correlogicデータセットにおける子宮内膜症の分類に使用した様々なバイオマーカーの重要度を決定した(表3)。特徴重要度を、R Borutaパッケージを用いて決定した。4つすべての示されているアルゴリズムにまたがる平均を計算した。
【0245】
(表3)Correlogicデータセットのバイオマーカーの特徴重要度
【0246】
上記計算に基づき、子宮内膜症の分類における様々なバイオマーカーの相対重要度を決定した(
図76)。バイオマーカーの重要度を、
図71および72のアルゴリズム方法のいくつかを用いて決定し、
図73および76に対応するディープニューラルネットワーク計算と比較した。目的は、
図74および75の計算において見られた特徴重要度が
図76の計算においても真であるかどうかを決定することであった。子宮内膜症の分類に対する年齢、CA125、MDC、プロゲステロン、およびAPOA1の重要度に基づき、これらのバイオマーカーを用いてニューラルネットワークを形成した。得られたニューラルネットワークは、0.2772のモデル損失、0.8968のモデル精度、0.9063のモデル感度、および0.8466のモデル特異度を有していた。
【0247】
実施例5:研究I - Bristowおよび522データセット(骨盤内腫瘤を有する患者における子宮内膜症および子宮内膜腫のための機械学習分類器)
サンプルの特徴:OVA2-001-CO3研究およびPS110001という2つの研究からの、独立して前向きに収集された検体セット由来の保管血清サンプルを使用した。これらのデータは、もともと、どちらも付属器腫瘤を示す女性における卵巣癌のリスクを検出する多変量インデックスアッセイであるOVA1およびOveraという2つのFDA通過試験を検証するために収集された。内部倫理委員会の承認の下、両方の研究の参加基準を満たした継続患者を、全米の施設から前向きに登録した。すべての登録臨床医は非婦人科癌専門実務出身であったが、患者は婦人科癌専門医の助言を得ていたまたは婦人科癌専門医による手術を受けていた可能性がある。参加基準は、以下の通りであった:インフォームドコンセントに署名し、静脈切開術に同意し、外科的介入が計画されている明白な骨盤内腫瘤を有している18歳以上の女性。骨盤内腫瘤は、登録前に画像化(コンピュータ断層撮影、超音波検査、または磁気共鳴画像化)により確認した。除外基準は、過去5年間における悪性物(非黒色腫皮膚癌を除く)の診断を含んだ。閉経は、12カ月以上の連続月の月経の非存在または50歳以上の年齢と定義した。すべての患者が、診断の外科病理学ベースの確認を受けた(独立した研究病理学者により確認された)。表4は、研究Iにおける患者人口動態のまとめを提供する。
【0248】
(表4)研究Iにおける患者人口動態のまとめ(閉経前のみ)
【0249】
アッセイメトリクス:≦80 mLの実験前血液サンプルを、収集から1~6時間以内に処理し、収集場所で血清を凍結させた。血清サンプルを保管施設(PrecisionMed Inc, Solana Beach, CA)に輸送し、そこでそれらを解凍した後にアリコート分けし、試験の間にすべて消費した。血清バイオマーカー濃度は、製造元の説明書に従いc501およびe601モジュールを用いてRoche cobas 6000臨床アナライザにより決定した。c501モジュールは、均一系免疫アッセイ用の光度検出モジュールでありe601モジュールは、不均一免疫アッセイ用の電気化学発光検出モジュールである。すべての測定を、Division of Clinical Chemistry, Department of Pathology, Johns Hopkins Medical InstitutionのClinical Laboratory Improvement Amendments-/College of American Pathologists-認証研究室にて、(患者人口動態または病理学結果について伏せられた)コード化サンプルにおいて行った。アポリポタンパク質A-1(APOA1)、B2M、CA125、HE4、FSH、プレアルブミン(PREA)およびTRFについてのバイオマーカー濃度をcobasアッセイから決定した。
【0250】
臨床メトリクス:卵巣癌悪性物リスクに関して確立されたバイオマーカーが子宮内膜症/子宮内膜腫患者の特定において有用性を示すどうかを決定するため、機械語(ML)分類器を、これらのバイオマーカーおよび概念実証研究の基礎をなす他のデータ(例えば、年齢)を組み込んで使用した(
図77Aおよび77B)。2つの試験からのデータを統合して、Bristowおよび522統合データセットを生成した。閉経後であるまたは不明の閉経ステータスである患者を除いて、悪性物を有する患者もそのようにした。このフィルタリングにより931名の非子宮内膜症患者および186名の子宮内膜症/子宮内膜腫患者となった。
【0251】
分析メトリクス:R統計プログラミング言語のCaretパッケージを用いて変換(データ正規化)および分類器作成を行った。幅広いアルゴリズム範囲を調査するため、7つのデータ正規化法および18の分類モデルを使用し、合計で126の異なる変換/分類器の組み合わせとした。各々の変換/分類器の組み合わせについて、150名の非子宮内膜症患者および150名の子宮内膜症/子宮内膜腫患者のセットを訓練セットとして使用して、感度と特異度の間でバランスのとれたモデルを作成し、残りの36名の陽性患者および781名の陰性患者を、試験セットを形成するために残した。性能のロバスト推定のために、100回のそのような反復についての平均感度および特異度を報告した。訓練および試験患者内の対象は各反復で異なり、無作為に選択した。
【0252】
上位のモデルの結果が
図78および表5に示されている。最良の前処理は、Yeo-JohnsonおよびBox-Coxべき変換(power transformation)を用いて見いだされた。単純ベイズおよびモデル平均化ニューラルネットワークは、他のモデルよりも良い性能を示した。最良のモデルによる性能は、88.5%の感度および74.8%の特異度を記録し、これによりこれらのバイオマーカーがこの集団内の子宮内膜症例を判別する力を十分に有していることが示された。
【0253】
(表5)複数の機械学習アルゴリズムおよびデータ前処理変換を用いた子宮内膜症分類の感度および特異度
【0254】
実施例6:研究II - Correlogicデータセット(骨盤内腫瘤を有する患者における子宮内膜症および子宮内膜腫の統計的特徴選択およびディープニューラルネットワーク分類)
研究IIは、研究Iを2つの局面で改善する:1)追加の生物学的に関連するバイオマーカーを含める、および2)子宮内膜症の疾患状況と非疾患状況を分類する上での性能を改善するためにより多くの分類技術を調査する、ために実施した。
【0255】
サンプルの特徴:この研究のために、血清サンプルを、Correlogic Systems, Inc.により、具体的には卵巣癌試験を開発およびその性能を検証するために行われた前向き収集から得た。すべてのサンプルが、統一されたプロトコルの下で、IRB承認を遵守した11の異なる施設から収集された。この研究の参加基準は、少なくとも18歳の、National Comprehensive Cancer Network (NCCN) Ovarian Cancer Treatment Guidelines for Patients (Agarwal SK, et al. Clinical diagnosis of endometriosis: a call to action. Am J Obstet Gynecol. 2019)に従う卵巣癌の兆候を示す、骨盤内腫瘤を有するまたは有さない女性であった。参加者は、彼女らが卵巣癌を有することを考慮して婦人科手術を計画されなければならず、疾患ステータスの臨床的真実を確認するために卵巣および切除組織の術後病理学的評価が必要とされた。参加基準に適合しないか、インフォームドコンセントを提供することができないか、妊娠中であるか、または過去に卵巣癌の処置を受けた女性は、除外された。この研究の各々の参加者について、書面上のインフォームドコンセントを得た。
【0256】
アッセイメトリクス:研究IIデータ(Correlogicデータセット)は、53例の子宮内膜症および124例の非子宮内膜症患者サンプルを含んでいた。表6は、研究IIの患者人口動態のまとめを含む。各サンプルについて、10 mlの血液収集物を室温で少なくとも30分間凝固させ、3,500gで10分間遠心分離し、取り出した血清を-80℃のクリオチューブ内で凍結させた。採血から凍結までの処理を2時間以内に完了させた。バイオマーカーの決定のために、非特定化サンプルをMyriad Rules-Based Medicine, Inc.(RBM; Austin, TX)に輸送した。合計259個の異なる血清バイオマーカーを、彼らのCLIA承認研究室においてRBMで同社の多重化免疫アッセイ(Human DiscoveryMAP(登録商標)v1.0およびHuman OncologyMAP(登録商標)v1.0)のセットを用いて測定した。各々のアッセイを、二重で実施した8点標準曲線を用いて較正した。
【0257】
【0258】
分析メトリクス:研究Iと同様、利用可能なデータを訓練セットと試験セットに分けることによる無作為化ホールドアウト・交差検証戦略により、患者データからのバイオマーカー濃度および他の臨床特徴を用いて分類アルゴリズムを構築した。感度および特異度に関して報告される値は、試験データ分割におけるアルゴリズム予測であった。
【0259】
研究Iは特定のバイオマーカーセットにおいて機械学習アルゴリズムを開発することに焦点を当てたのに対して、研究IIは、259個のバイオマーカーのリストの中に、アルゴリズムのさらなる開発に使用することができる追加のバイオマーカーが存在するかどうかを決定することを意図していた。この理由で、R Borutaパッケージを用いて統計的特徴選択を行った。変量重要度の測定値を、ランダムフォレスト(RV)を用いて比較した。
【0260】
研究Iのバイオマーカーのすべてを含む、研究IIの259個のバイオマーカーを、変量重要度について比較した。30.00またはそれを超える平均重要度(最終カラム)を有するバイオマーカーを表7に示す。試験した様々なアルゴリズムを、表7の中間の4つのカラムに列挙する。研究Iと同様、CA125および年齢が、2つの最も傑出した特徴であり(表7)、これによりそれらがモデル性能を改善し得ることが示唆された。プロゲステロン(PROG)および免疫グロブリンM(IgM)という2つの追加のバイオマーカーは、研究Iにおけるそれらとは異なり、高い寄与を示し、さらなるアルゴリズム開発のために含めることが選択された。これらの2つのバイオマーカーを、他の7個のバイオマーカーと並行してRoche cobasプラットフォームにおいて試験し、これらはすべてFDAで合格した。マクロファージ由来ケモカイン(MDC)およびEN-RAGE(S100A12受容体バイオマーカー)もまた、高い重要度を有したが、同じ臨床試験プラットフォームでのFDA合格試験を行わず、したがって最終分析に含めなかった。研究IIからの特徴重要度はまた、独立して別のアルゴリズム(DeepLIFT)を用いても確認し、それによってこれらのバイオマーカーの妥当性の確信が高まった(データ示さず)。
【0261】
変量重要度分析の後、研究Iからの7つのバイオマーカーの中の6つ(APOA1、B2M、CA125、HE4、FSH、およびTRF)ならびにプロゲステロン(PROG)およびIgMを研究IIに追加してディープニューラルネットワーク(DNN)を訓練した。プレアルブミンは、両方の研究において低い重要度を示したため、モデル構築に含めなかった。このデータを、60%訓練セット、40%試験セットに分割した。研究Iと同様、Yeo-Johnson変換を用いて特徴を事前処理し、正規化した。
【0262】
(表7)研究IIからのデータにおけるタンパク質バイオマーカーの重要度
【0263】
研究IIデータにおける確認された子宮内膜症例の低い有病率を補償するために、合成マイノリティオーバーサンプリング技術(SMOTE)アルゴリズムを使用した。訓練データにおけるマイノリティクラス(子宮内膜症の発現)を無作為に200%オーバーサンプリングした。SMOTEアルゴリズムを実行した後、DNNを、Python 用TensorFlow Kerasライブラリを用いて訓練し、そして独立した無作為化データ分割を用いて200回訓練した。
【0264】
DNNは、研究Iにおいて観察されたものよりも高い平均感度および特異度値を報告した(表8)。この性能の向上は、より生物学的に有意義なバイオマーカーを含めることが、子宮内膜症を有するコホートにおいてさえも二次診断として診断能力を向上させることを示した。
【0265】
(表8)研究IIにおける試験データ分割に対するディープニューラルネットワークの平均感度および特異度
【0266】
実施例7:研究III(腹腔鏡目視検査を通じて確認された子宮内膜症患者に対するモデル性能)
使用目的の集団をより代表するコホートに対するモデルの性能を検証するため、研究IIIを行った。Bristow、522およびCorrelogicデータセットは、既知の付属器腫瘤を有し、卵巣癌の兆候(すなわち、骨盤痛)を示す検体を使用したが、研究IIIは、外科的腹腔鏡目視検査により確認された新しい女性のコホートからの陽性の子宮内膜症検体を含めた。一次診断としての子宮内膜症を有するサンプルの追加は、これをより妥当な集団セットにし、モデル構築の間により高い不均一性を導入し、それによって分類モデルの予測力を拡大させる利点を提供した。
【0267】
サンプルの特徴:150例の陽性サンプル(そのうちの100例が新しいコホート由来であり、残りの50例の検体がこのモデルにおけるばらつきを増やすためにCorrelogic陽性セットから無作為に選択された)を調査した。研究IIIにおける100例の新しい陽性サンプルは、二重盲検、無作為化、6ヵ月研究に登録された患者由来であった。表9は、研究IIIにおける追加の患者人口動態のまとめを含んでいる。検体は、2012年7月から2015年7月にかけて、米国およびカナダの様々な施設から収集した。検体は、過去10年の間に中等度から重度の子宮内膜症関連痛の報告後に子宮内膜症の外科的目視検査ベースの診断を受けた18歳~49歳の閉経前女性から得た(Taylor, Hugh S., et al. “Treatment of Endometriosis-Associated Pain with Elagolix, an Oral GnRH Antagonist.” New England Journal of Medicine 377, no. 1 (May 19, 2017))。バランスのとれた陰性セットを作成するため、研究IIから同数の陰性検体(150例)を無作為に選択した。
【0268】
(表9)研究IIIにおける患者人口動態のまとめ - 腹腔内目視検査により確認された既知の子宮内膜症検体(閉経前のみ)
【0269】
アッセイメトリクス:100例の新しい陽性サンプルは、二重盲検研究の終了後に-80℃のクリオチューブ内で凍結された元の患者サンプルの325μLアリコートであった。研究IIIのために、患者サンプルを解凍し、新しいチューブに移し、ドライアイス上で輸送した。アリコートを受け取り、試験まで-20℃で保管した。血清バイオマーカー濃度を、研究Iと同じモジュール、プロトコル、および資料を用いたRoche cobas 6000臨床アナライザを用いて決定した。研究IIで試験したのと同じバイオマーカーを測定した:APOA1、B2M、CA125、HE4、免疫グロブリンM(IgM)、FSH、プロゲステロン(PROG)、およびTRF。
【0270】
分析メトリクス:データを訓練セット(70%)と試験セット(30%)に分けることによる無作為化ホールドアウト・交差検証戦略により、患者データ(150例の陽性サンプルおよび150例の陰性サンプル)からのバイオマーカー濃度および他の臨床特徴を用いて分類アルゴリズムを構築した。感度および特異度に関して報告される値は、100回の反復について平均化された試験データにおけるアルゴリズム予測であった。
【0271】
DNNの訓練および試験への試験IIIにおける陽性サンプルの追加は、感度を96.7%に、特異度を92.5%に増加させた(表10)。学説により拘束されることを望まないが、より高い性能は、Correlogicデータにおける53に対して150という、陽性データ点の量および質の両方の改善、ならびに卵巣癌の兆候を示し、子宮内膜疾患の組織知見も示した骨盤内腫瘤を有する女性に対して、腹腔鏡目視検査により確認された、特に子宮内膜症について処置されている女性を使用したことに起因し得る。
【0272】
(表10)アルゴリズムの訓練および試験における研究III検体の試験データ分割に対するディープニューラルネットワークの平均感度および特異度
メトリクスは、100回の無作為化データ分割および独立したアルゴリズム訓練イベントの平均である。
【0273】
まとめ:全体として、アルゴリズムの性能は、開発フェーズごとに向上し、使用目的の集団において試験されたとき、腹腔鏡外科評価からみて広範囲に及ぶ性能の最高位に達した。研究IIIにおける使用目的の陽性は、この疾患のよりばらつきのある代表的なコホート上で構築された分類器の力を証明した。実際、研究IIIの、より関連するより不均一なデータを含める有用性を評価するために、研究IIにおいて構築された分類モデルを追加データに対して使用(すなわち、研究IIデータで訓練および研究IIIデータで試験)した。予想されたように、研究IIデータで構築されたモデルは、研究IIIサンプルにおいてより低い性能を示し、これにより、それが使用目的のグループに一般化されなかったことが示唆された(データ示さず)。このことは、多様な訓練データで構築されたアルゴリズムが、サンプリングおよび診断法の違いを超えてより高い一貫性を示すことを示している。
【0274】
他の態様
上記記載から、本明細書に記載される発明に対して、それを様々な用途および条件に適応させるようバリエーションおよび改変が加えられ得ることが明らかであろう。そのような態様もまた、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0275】
本明細書において任意の可変要素の定義の中で要素のリストが示されることは、その可変要素が、列挙されている要素の中の任意の単一の要素または組み合わせ(もしくは部分的組み合わせ)であるとする定義を含む。本明細書においてある態様が示されることは、任意の単独の態様としてのその態様または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わされたその態様を含む。
【0276】
本明細書で言及されているすべての特許、刊行物、およびアクセッション番号は、各々個々の特許、刊行物、およびアクセッション番号が、具体的にかつ個別に、参照により組み入れられることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】