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特表2023-514738ニューレグリンの使用による心不全を予防、治療、又は遅延させるための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ニューレグリンの使用による心不全を予防、治療、又は遅延させるための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20230331BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230331BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230331BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230331BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
A61K38/18 ZNA
A61P9/04
G01N33/68
C07K14/47
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550720
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2021076772
(87)【国際公開番号】W WO2021169845
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010174086.5
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010113391.3
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】504274712
【氏名又は名称】ゼンサン (シャンハイ) サイエンス アンド テクノロジー,シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ミングドング ズホウ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA54
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA44
4C084DB52
4C084NA14
4C084ZA36
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒト心不全を予防、治療、又は遅延させるための薬物の製造におけるニューレグリンタンパク質の応用及びヒト心不全を予防、治療、又は遅延させるための薬物の使用方法を提供する。方法は:治療前にまず患者を検査することであって、該検査することがNT-proBNP又はBNPの血漿レベルの検出を含む、前記検査すること;及び続いて検査結果に基づいて適切な治療を提供すること、を含む。検査結果が最適治療範囲内にある場合、患者は有効用量のニューレグリンを投与することによる心不全の治療に適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全(HF)の治療のための医薬の製造におけるNRGの使用であって、心不全を有する患者が、治療前のNT-proBNPの血漿レベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者である、前記使用。
【請求項2】
前記NRGがNRG-1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記NRGがNRG-1のEGF様ドメインを含む、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記NRGが配列番号:1のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
ニューレグリンによる治療に適したHF患者をスクリーニングする方法であって、治療前診断検査を実施すること、及び検査結果に従ってニューレグリン治療に対する該患者の適格性を決定することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記診断検査が、NT-proBNP又はBNPの血漿レベルについての検査である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
女性HF患者が3000fmol/ml以下のNT-proBNPの治療前血漿レベルを有し、診断検査の結果がニューレグリンによる治療に対する適性を示す、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ニューレグリンによる治療に適したHF患者のスクリーニングに使用する診断キットであって、HF患者におけるNT-proBNPの血漿レベルを測定するための免疫アッセイ試薬を含む、前記診断キット。
【請求項9】
女性HF患者が3000fmol/ml以下のNT-proBNPの治療前血漿レベルを有し、診断検査の結果がニューレグリンによる治療に対する適性を示す、請求項8記載の診断キット。
【請求項10】
心不全の治療のためのキットであって、請求項8記載の診断キット及び有効用量のNRGを含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒト心不全を予防、治療、又は遅延させるための医薬の製造におけるニューレグリンの応用及びそのための前記医薬の投与方法に関する。特に、本発明は、心不全を有する患者の特定の集団に対してニューレグリンを含む医薬を投与することにより、ヒト心不全を予防、治療、又は遅延させるための方法を提供する。特に、本発明は、ニューレグリンを含む医薬を使用して心不全を治療するための方法を提供する。前記方法は、治療前の検査及び検査結果に基づく患者に対する適切な治療の決定を伴う。治療前検査の結果が最適な治療範囲にある場合は、心不全を有する患者に有効用量のニューレグリンを投与することは適切である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
心不全(HF)は、様々な心疾患によって引き起こされる心臓機能不全に関連する症候群である。HFを有する患者に対する主な治療であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、血管を拡張させ、血圧を低下させ、かつ心臓負荷を低下させるのに有効である。ACE阻害剤で治療した患者の死亡率(%)が統計的に有意に低下しているにもかかわらず、実際の死亡率の低下はわずか平均3%~4%であり、幾分の副作用の潜在性もある。HFに対する他の予防的又は治療的選択肢にも制限がある。例えば、心臓移植は薬物療法よりも不可避的に費用がかかり、かつ侵襲的であり、また心臓ドナーの利用可能性によって制限される。また、両室ペースメーカーなどの機械装置を用いる治療選択肢も、侵襲的であり、費用がかかる。既存の療法に欠点があるため、新規治療が切迫して要望されている。
【0003】
有望な新規治療は、グリア増殖因子(GGF)又は新規分化因子(NDF)としても知られる分子量440KDのグルコタンパク質であるニューレグリン(NRG、ニューレグリン、へレグリン(HRG))のHFを有する患者又はHFのリスクを有する患者に投与することを含む;NRGは細胞間シグナル伝達に関与するタンパク質であり、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーと結合するリガンドとして作用する。NRGのファミリーは、4つのメンバー: NRG1、NRG2、NRG3、及びNRG4からなる(Fallsらの文献, Exp Cell Res.284:14-30,2003)。NRGは、様々な生体反応: 乳癌細胞の分化及び乳タンパク質の生産の刺激、神経冠細胞のシュワン細胞への分化の誘導、骨格筋細胞におけるアセチルコリン受容体の合成の刺激、並びに心筋細胞の生存及びDNAの合成の促進に関与する。重度のニューレグリン欠損を有するホモ接合マウスの胚におけるインビボ研究の結果から、ニューレグリンは心臓及び神経の発達に不可欠であることが示された。NRG1は神経系、心臓及び乳腺の発達において重要な役割を果たす。いくつかの証拠から、NRG1シグナル伝達は一部の他の臓器/システムの発達及び機能、並びにヒト疾患(統合失調症及び乳癌など)の発病において役割を果たすことが示唆される。NRG1は複数のアイソフォームで存在する。遺伝子突然変異マウス(遺伝子ノックアウトマウス)における研究結果から、アイソフォームのインビボ機能はそのN末端領域又は上皮増殖因子(EGF)類似領域により異なることが示唆される。本発明はニューレグリン1β(NRG-1β)に基づく。
【0004】
ニューレグリン1βは膜貫通タンパク質である(Holmesらの文献、Science 256,1205-1210,1992)。Ig様ドメイン及びEGF様ドメインを含む膜外部分はN末端であり、膜内部分はC末端である。細胞外マトリックスのメタロプロテアーゼの作用の下、ニューレグリンの膜外部分は酵素によって切断され、遊離状態となり得る。それにより、ニューレグリンの周囲の細胞表面にあるErbB受容体との結合が促進され、対応する細胞シグナル伝達が活性化する。
【0005】
ErbBファミリーも4つのメンバー、すなわちErbB1、ErbB2、ErbB3、及びErbB4を有する。それらは全て、分子量およそ180~185KDの膜貫通タンパク質である。ErbB2を例外として、それらは全て、その膜外N末端にリガンド結合ドメインを含み;ErbB3を例外として、それらの膜内C末端は全てタンパク質チロシンキナーゼの活性を有する。ErbB1は上皮増殖因子(EGFR)受容体である一方、ErbB3及びErbB4はニューレグリン受容体である。これらのニューレグリン受容体のうち、ErbB2及びErbB4のみが心臓に高度に発現する(Yardenらの文献、Nat Rev Mol Cell Biol,2:127-137,2001)。
【0006】
ErbB3/ErbB4の膜外部分にニューレグリンが結合すると、ErbB3/ErbB4の他のErbBファミリーメンバー(ErbB2を含むことが多い)とのヘテロ二量体化又はErbB4自体のホモ二量体化が起こり得、それらは膜内部分のリン酸化を担う(Yardenらの文献、Nat Rev Mol Cell Biol,2:127-137,2001)。リン酸化された膜内部分は、複数の細胞内シグナル伝達タンパク質とさらに結合し得、それにより下流のERK又はAKTシグナル伝達経路が活性化され、細胞の増殖、アポトーシス、遊走、分化、又は細胞接着の刺激又は阻害を含む、一連の細胞反応が引き起こされる。
【0007】
ニューレグリンは心臓の発達に特に不可欠である(WO0037095、CN1276381、WO03099300、WO9426298、US6444642、WO9918976、WO0064400、Zhaoらの文献、J.Biol.Chem.273,10261-10269,1998)。胚発生初期において、ニューレグリンの発現は主に心内膜に限定され;ニューレグリンはその後パラクリン経路を介して周囲の心筋細胞に放出され、細胞膜のタンパク質チロシンキナーゼ受容体ErbB4の膜外部分と結合し、かつErbB4は続いてErbB2とのヘテロ二量体を形成する。ErbB4/ErbB2複合体の形成及び活性化は、初期の海綿状心臓における心臓小柱の形成に不可欠である。ニューレグリン、ErbB4及びErbB2のいずれかの遺伝子が欠損すると、発達初期の間に子宮内の胎児の小柱が喪失し、死亡する。WO0037095によれば、ある濃度のニューレグリンはERKシグナル伝達経路を継続的に活性化し、心筋細胞の増殖及び分化を促進し、心筋細胞及び細胞接着における筋節中隔及び細胞フレームワークの再構築を導き、心筋細胞の構造を改善し、心筋細胞の収縮を強化することができる。さらに、WO0037095及びWO003099300には、ニューレグリンを多くの心血管疾患の検出、診断、及び治療に使用することができると記載されている。
【0008】
以下に、本発明に関するいくつかの先行技術文献を列記する: 1. 心筋の機能及び操作:WO0037095、2. 成長因子ニューレグリン及びそのアナログの新規応用:CN1276381;3. 心血管疾患を治療するためのニューレグリンベースの方法及び組成物:WO03099300;4.Zhao YY,Sawyer DR,Baliga RR,Opel DJ,Han X,Marchionni MA及びKelly RAの文献、「ニューレグリンは心筋細胞の生存及び成長を促進する(Neuregulins Promote Survival and Growth of Cardiac Myocytes.)」J.Biol.Chem.273,10261-10269(1998);5. 筋疾患及び障害を治療するための方法:WO9426298;6. ニューレグリンを使用する筋管形成又は生存又は筋細胞の有糸分裂生起、分化、若しくは生存を増加させる方法:US6444642.7. ニューレグリンの使用を含む治療方法:WO9918976; 8. うっ血性心不全の治療方法:WO0064400;9.Holmes WE,Sliwkowski MX,Akita RW,Henzel WJ,Lee J,Park JW,Yansura D,Abadi N,Raab H,Lewis GDらの文献、「へレグリン、特異的活性化因子p185erbB2の同定(Identification of heregulin,a specific activator p185erbB2.)」Science 256,1205-1210(1992);10.Falls DLの文献、「ニューレグリン:機能、形態、及びシグナル伝達戦略(Neuregulins: functions, forms and signaling strategies.)」Experimental Cell Research,284,14-30(2003).11.Yarden Y,Sliwkowski Xの文献、「ErbBシグナル伝達ネットワークを解きほぐす(Untangling the ErbB signaling Network.)」Nature Reviews:Molecular Cell Biology,2127-137(2001)。
【0009】
研究から、NRG1のEGF様ドメインはおよそ50~64アミノ酸を有し、これらの受容体と結合してこれらを活性化するのに十分であることが示されている。過去の研究では、ニューレグリン-1β(NRG-1β)は、高い親和性でErbB3及びErbB4と直接結合できることが示された。オーファン受容体ErbB2は、ErbB3又はErbB4がホモ二量体を形成する際の親和性よりも高い親和性でErbB3又はErbB4とのヘテロ二量体を形成し得る。神経発達研究の結果から、交感神経系の形成には完全なNRG-1β、ErbB2、及びErbB3シグナル伝達系が必要であることが示唆された。NRG-1β又はErbB2又はErbB4のターゲティングによる破壊は、結果としての心臓の発達欠陥のために胎児にとって致死的である。また、最近の研究では、心血管系の発達及び成体の正常な心臓機能の維持におけるNRG-1β、ErbB2及びErbB4の重要な役割が強調された。NRG-1βは、成体心筋細胞のサルコメアの組織構造を強化し得ることが示された。組換えNRG-1β EGF様ドメインの投与は、様々なHF動物モデルにおいて心筋機能の減退を顕著に改善又は防止する可能性があり、同様の結果が臨床試験において観察された。しかしながら、この製品又は組成物の使用方法及び一部の亜集団でより優れた治療効果を得る方法を明確にするには、より多くの研究が必要である。本発明では、ニューレグリンを含む医薬を用いた心不全の治療方法を提供する。前記方法は、治療前の検査及び検査結果に基づく患者に対する適切な治療の決定を伴う。治療前検査の結果が最適な治療範囲にある場合は、心不全を有する患者に有効用量のニューレグリンを投与することは適切である。
【発明の概要】
【0010】
(発明の概要)
(A. 簡単な概要)
ニューレグリンを用いたHFの治療についての臨床試験の間、本件出願人はニューレグリン療法がニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能分類による等級付け又は患者の血漿中のNT-proBNP若しくはBNPレベルの測定によってスクリーニングされたHF患者において顕著な治療効果を達成することを発見した。これらの治療結果は、死亡率の顕著な減少が含まれていた。これらの治療結果は、治療のための再入院の顕著な減少が含まれた。さらに、研究により、様々なHFの動物モデル及びHFを有する患者において、NRGが心筋機能の低下を顕著に改善又は予防することが示された。ニューレグリン、ニューレグリンポリペプチド、ニューレグリンバリアント、ニューレグリン誘導体、NRG様機能的ドメイン(複数可)を含む組成物、又はニューレグリンと類似した活性を有する化合物は全て、本発明の範囲内にある。
【0011】
本発明の第1の態様において、心不全の治療のための有効用量のニューレグリンを含む薬物組成物を提供する。その薬物組成物による治療を受けた患者は、顕著な治療結果を達成した。いくつかの実施態様において、治療効果は死亡率の顕著な減少として表れた。いくつかの実施態様において、治療効果は治療のための再入院の顕著な減少として表れた。いくつかの実施態様において、治療効果はバイオマーカーのレベルの減少として表れ、慢性心不全が改善されたことを示していた。いくつかの実施態様において、薬物組成物は導入レジメンのために患者に投与された。いくつかの実施態様において、導入レジメンは少なくとも連続する3、5、7又は10日間にわたる薬物組成物の反復投与を含んでいた。いくつかの好ましい実施態様において、薬物組成物の投与は導入レジメン後少なくとも3、6又は12月にわたり維持された。いくつかの好ましい実施態様において、維持レジメンは、3、5、7又は10日ごとに薬物組成物を投与することを含んでいた。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は女性であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は、血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者、及び血漿中のNT-proBNPレベルが1600fmol/ml以下である男性HF患者であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者であった。
【0012】
本発明の別の態様において、方法は慢性HF患者の生存率の向上又は死亡率の低下をもたらし、方法は慢性HF患者に有効用量のニューレグリンを含む薬物組成物の投与を含む。いくつかの実施態様において、薬物組成物は導入レジメンのために患者に投与された。いくつかの好ましい実施態様において、導入レジメンは少なくとも連続する3、5、7又は10日間にわたる薬物組成物の反復投与を含んでいた。いくつかの好ましい実施態様において、薬物組成物の投与は導入レジメン後少なくとも3、6又は12月にわたり維持された。いくつかの好ましい実施態様において、維持レジメンは3、5、7又は10日ごとに薬物組成物を投与することを含んでいた。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は女性であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は、血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者、及び血漿中のNT-proBNPレベルが1600fmol/ml以下である男性HF患者であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者であった。
【0013】
本発明の別の態様において、薬物調製物中のニューレグリンの適用に関する情報を提供する。薬物は、慢性心不全患者に長期的な利益を提供し得る。一実施態様において、長期的な利益は、生存率の向上を意味する。一実施態様において、長期的な利益は、再入院率の低下を意味する。別の実施態様において、長期的な利益はバイオマーカーの改善(低下)を意味し、これによりHFの長期的な予後を予測することができる。いくつかの実施態様において、薬物は導入レジメンのために患者に投与された。いくつかの好ましい実施態様において、導入レジメンは少なくとも連続する3、5、7又は10日間にわたる薬物の反復投与を含む。いくつかの好ましい実施態様において、患者は導入レジメンの後に少なくとも3、6又は12月にわたる維持投与を受けた。いくつかの好ましい実施態様において、維持レジメンは3、5、7、又は10日ごとの薬物投与を含んでいた。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は女性であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は、血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者、及び血漿中のNT-proBNPレベルが1600fmol/ml以下である男性HF患者であった。好ましい実施態様において、治療されるHF患者は血漿中のNT-proBNPレベルが3000fmol/ml以下である女性HF患者であった。
【0014】
本発明の別の態様において、ニューレグリンによる治療に適するHF患者をスクリーニングするための方法を提供する。方法は、患者のNT-proBNP血漿レベルの測定を含む。一実施態様において、4000fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルは、HF患者がニューレグリンによる治療に適することを示すことが実証された。別の実施態様において、1600fmol/ml~4000fmol/mlの範囲内のNT-proBNP血漿レベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の実施態様において、1600fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の好ましい実施態様において、3000fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルを有する女性HF患者におけるHFが、ニューレグリンによる治療に適することが示された。別の好ましい実施態様において、3000fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルを有する女性HF患者及び1600fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルを有する男性HF患者が、ニューレグリンによる治療に適することが示された。別の好ましい実施態様において、女性HF患者は、NT-proBNP血漿レベルに関係なく、ニューレグリンによる治療に適することが示された。
【0015】
本発明の別の態様において、ニューレグリンによる治療に適するHF患者をスクリーニングするための方法を提供する。方法は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能分類に従い患者の心臓機能を評価することを含む。一実施態様において、NYHAクラスIIは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の実施態様において、NYHAクラスIIIは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。
【0016】
本発明の別の態様において、方法は、ニューレグリンによる慢性心不全の治療を提供した。方法は、治療前評価手順、及び評価結果に従うニューレグリンによる治療を受ける患者の適格性の決定を含む。いくつかの実施態様において、評価手順には、慢性HF患者のNYHA機能クラスの等級付けを含めた。別の実施態様において、評価手順には、全ての慢性HF患者の血漿NT-proBNP又はBNPレベルの決定を含めた。
【0017】
本発明の別の態様において、ニューレグリンによる治療に適するHF患者のスクリーニングのための診断試薬キットを提供する。一実施態様において、試薬キットはHF患者のNT-proBNP血漿レベルを測定するための免疫アッセイ試薬(複数可)を含む。4000fmol/ml以下のレベルは、患者がニューレグリンによるHFの治療に適することを示す。別の実施態様において、1600fmol/ml~4000fmol/mlの範囲内のNT-proBNP血漿レベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の実施態様において、1600fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の好ましい実施態様において、3000fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルを有する女性HF患者におけるHFが、ニューレグリンによる治療に適することが示された。
【0018】
本発明の別の態様において、ニューレグリンによる慢性HFの治療のための、付随する診断検査を提供する。N-末端脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を診断検査のためのバイオマーカーとして、使用する。いくつかの実施態様において、4000fmol/ml以下のレベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の実施態様において、1600fmol/ml~4000fmol/mlのレベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することが示した。別の実施態様において、1600fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルは、患者のHFがニューレグリンによる治療に適することを示した。別の好ましい実施態様において、3000fmol/ml以下のNT-proBNP血漿レベルを有する女性HF患者におけるHFが、ニューレグリンによる治療に適することが示された。
【0019】
本発明の別の態様において、ニューレグリンによる治療を受けるHF患者の適格性を決定するための付随診断キットを提供する。付随診断キットには、血漿NT-proBNP又はBNPレベルを決定するための試薬キット及び検査結果に従い患者のニューレグリン治療を受ける適格性を決定するための取扱説明書を含む。
【0020】
本発明の別の態様において、キットを提供する。キットは、有効用量のニューレグリンの1以上の容器を含む。タンパク質は単独で提供しても、他の相溶性のある薬物/物質と組み合わせて組成物を形成してもよい。好ましい薬物剤形は、滅菌生理食塩水、グルコース溶液、緩衝液又は他の相溶性滅菌溶液と組み合わせて使用することができる。任意に、組成物は凍結乾燥させても、乾燥させてもよい。一実施態様において、本発明のキットは注射用の、好ましくは滅菌包装中の針又はシリンジ及び/又は包装されたアルコールコットンボール(alcohol cotton ball)をさらに含む。別の実施態様において、本発明におけるキットは状況に応じて薬物組成物の使用方法に関する医師又は患者への指示を有し得る取扱説明書をさらに含む。別の好ましい実施態様において、本発明におけるキットは有効用量のNRG及び試薬キットを含み、診断キットはHF患者のNT-proBNP血漿レベルを測定するための免疫アッセイ試薬(複数可)を含む。
【0021】
本発明の別の態様において、ニューレグリンは治療前に治療に適切な範囲のNT-proBNP血漿レベルを有する慢性HF患者に有効用量で投与する。一実施態様において、治療に適切な範囲は4000fmol/ml以下であった。別の実施態様において、治療に適切な範囲は1600fmol/ml~4000fmol/mlであった。別の実施態様において、治療に適切な範囲は1600fmol/ml以下であった。別の好ましい実施態様において、女性HF患者が治療を受けるのに適切な範囲は3000fmol/ml以下であった。別の好ましい実施態様において、血漿レベルは免疫アッセイによって決定した。
【0022】
本発明の別の態様において、ニューレグリンはその心臓機能がニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能分類により等級付けられた慢性HF患者に有効用量で投与する。いくつかの実施態様において、特定の機能クラスはNYHAクラスIIであった。いくつかの実施態様において、特定の機能クラスはNYHAクラスIIIであった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(B.定義)
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語は、本発明の属する分野の一般的な技術者によって理解されているものと同じ意味を有する。全ての特許文献、特許出願文献、公開特許文献及び他の刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に記載の定義が、上記のいずれかの参考文献における対応する定義と一致せず、又は対立する場合、本明細書における定義が優先されるものとする。
【0024】
文脈において明確に示されない限り、全ての単数及び複数の限定詞/名詞(例えば、a、an、the、theseなど)は互換的であり、「少なくとも1つ」及び「1以上」は互換的である。
【0025】
本明細書で使用する「ニューレグリン」又は「NRG」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらのヘテロ二量体又はホモ二量体と結合し、かつこれらを活性化させるタンパク質又はポリペプチドであって、ニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンのEGF様ドメイン、ニューレグリンEGF様ドメイン(複数可)を含むポリペプチド、ニューレグリンバリアント又は誘導体、及び上記受容体を活性化させることができる他のニューレグリン様遺伝子産物を含む、前記タンパク質又はポリペプチドを指す。また、ニューレグリンは、NRG1、NRG2、NRG3及びNRG4タンパク質、NRG様の機能を有するポリペプチド、断片及び複合体を含む。好ましくは、ニューレグリンはErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体と結合し、かつこれらを活性化させることができるタンパク質又はポリペプチドである。限定的な例ではなく、説明的な例に言及するため、本発明のニューレグリンはNRG-1β2アイソフォームの断片、すなわちEGF様ドメインを含む位置177~位置237のアミノ酸の断片である。断片は、以下のアミノ酸配列を有する:
【化1】
。本発明で使用するニューレグリンは、上記受容体を活性化させ、それらの生体機能を調節することができる;例えば、ニューレグリンは骨格筋細胞におけるアセチルコリン受容体の合成を刺激し、心筋細胞の分化、生存及びDNA合成を促進することができる。また、ニューレグリンには、実質的にタンパク質の生体機能に影響を及ぼさない保存的突然変異を有するニューレグリンバリアントがある。当該分野の一般的な技術者によく理解されているように、決定的でない領域における単一のアミノ酸突然変異は一般的にタンパク質又はポリペプチドの生体機能を変化させない(Watsonらの文献、「遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)」,第4版,1987,The Bejacmin/Cummings Pub.co.,224頁を参照されたい)。本発明において使用するニューレグリンは、天然の供給源から単離し、又は遺伝子組換え、人工合成又は他のアプローチを通じて取得することができる。
【0026】
本明細書で使用する「表皮成長因子様ドメイン」又は「EGF様ドメイン」は、ニューレグリン遺伝子によってコードされ、ErbB2、ErbB3、ErbB4、又はそれらのヘテロ二量体若しくはホモ二量体と結合し、かつこれらを活性化させることができ、並びに以下の参考文献: WO 00/64400、Holmesらの文献、Science,256:1205-1210 (1992), 米国特許第5,530,109号及び第5,716,930号, Hijaziらの文献、Int.J.Oncol.,13:1061-1067 (1998), Changらの文献、Nature, 387:509-512 (1997), Carrawayらの文献、Nature, 387:512-516 (1997), Higashiyamaらの文献、J.Biochem.,122:675-680 (1997)、及びWO 97/09425に記載されるEGF受容体結合ドメインと構造的に類似するポリペプチド断片を指す。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体と結合し、かつこれらを活性化させる。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはNRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはNRG-1の位置177~226、位置177~237、又は位置177~240のアミノ酸を指す。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはNRG-2の受容体結合ドメインのアミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはNRG-3の受容体結合ドメインのアミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインはNRG-4の受容体結合ドメインのアミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、EGF様ドメインは米国特許第5,834,229号に記載の以下のアミノ酸配列: Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Proを含む。
【0027】
ニューレグリンタンパク質の剤形、用量及び投与経路、並びにより優れた医薬組成物形態は、当該技術分野で公知の方法に従い決定することができる(例えば、「レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」, Alfonso R. Gennaro (編者) Mack Publishing Company, 1997.4; 「治療用ペプチド及びタンパク質:製剤、処理及び送達システム(Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing,and Delivery Systems)」, Banga, 1999; 「ペプチド及びタンパク質の医薬製剤開発(Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins)」, Hovgaard及びFrkjr (編),Taylor & Francis,Inc., 2000; 「リポソームの医学応用(Medical Applications of Liposomes)」, Lasic and Papahadjopoulos (編), Elsevier Science, 1998, 「遺伝子治療の教本(Textbook of Gene Therapy)」, Jain,Hogrefe & Huber Publishers, 1998; 「アデノウイルス:遺伝子治療のための基礎生物学(Adenoviruses: Basic Biology to Gene Therapy)」,Vol.15,Seth, Landes Bioscience,1999; 「生物医薬薬物設計及び創薬(Biopharmaceutical Drug Design and Development)」,Wu-Pong及びRojanasakul (編), Humana Press,1999; 「治療的血管新生:基礎科学から臨床まで(Therapeutic Angiogenesis: From Basic Science to the Clinic)」, Vol. 28, Doleら(編), SpringerVerlag New York,1999を参照されたい)。
【0028】
ニューレグリンタンパク質は、経口、直腸、局所、吸入、頬側(舌下)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、又は静脈内)、経皮又は他の適切な投与経路に調製することができる。これらの全ての投与様式のうち、最も適切なものは疾患の性質及び重症度、並びに使用する特殊なニューレグリンタンパク質の特性に応じて決定することができる。ニューレグリンタンパク質は単独で投与してもよいし;又はより適切には薬物に相溶性の担体若しくは賦形剤とともに共投与してもよい。現在任意の適切な薬物を許容し得る担体又は賦形剤を現在の方法において使用することができる(例えば、「レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」,Alfonso R.Gennaro (編者) Mack Publishing Company,April 1997を参照されたい)。
【0029】
本発明によると、ニューレグリンタンパク質の単独、又は他の媒体、担体、賦形剤を用いて作製される様々なその製品は、空洞内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、経口又は頬側投与などの多数の適切な投与経路に対し使用することができる。ニューレグリンは、防腐剤を加えたアンプル中の単位剤形又は複数回用量容器において投与することができる。ニューレグリンは、懸濁剤、液剤、水性又はバター性エマルションなどの剤形に作製することができ、かつ懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤を加えることができる;あるいは、活性成分は使用前は粉末形態とすることができ、適切な媒体、例えば滅菌かつノンパイロジェン水又は他の溶媒に溶解させる。本発明の薬物は、局所製品として使用する場合、起泡性組成物、ゲル、膏薬、経皮パッチ、又はパスタ(pasta)などに調製することができる。
【0030】
本発明の薬物について、許容し得る成分及び投与の様式は、これらに限定はされないが、米国特許第5,736,154号、第6,197,801B1号、第5,741,511号、第5,886,039号、第5,941,868号、第6,258,374B1号、及び第5,686,102号において公開された成分及び様式を含む。
【0031】
治療又は予防における治療用量の大きさは、治療する状態の重症度及び投与の経路によって異なる。また、用量及びおそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、状態、及び反応によって異なる。
【0032】
主治医は毒性又は有害反応が表れた場合、いつ、どのように治療を終了し、若しくは中断するか、又は投薬量を調整/減量するかを知る義務があることに留意されたい。また反対に、臨床反応が不十分である場合、医師はいつ、どのように用量を高レベルに調整するかを知るべきである。
【0033】
任意の適切な投与経路を使用することができる。薬物は、錠剤、薬用ドロップ、カシェ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、カプセル、パッチなどの剤形にすることができる。「レミントン薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」を参照されたい。実用において、ニューレグリンタンパク質は、単独で、又は他の薬剤との組合わせで、密接な混合物において活性体として従来の医薬調合技術に従い医薬担体又は賦形剤、例えばβ-シクロデキストリン及び2-ヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンと組合わせることができる。担体は、局所又は非経口投与に望ましい幅広い形態の調製物とすることができる。静脈内注射又は輸液などの非経口剤形のための組成物の調製において、当業者に公知の類似した医薬媒体、水、グリコール、油、緩衝剤、糖、防腐剤、リポソームなどを利用することができる。そのような非経口組成物の例には、これらに限定はされないが、デキストロース5% w/v、標準生理食塩水又は他の溶液がある。投与すべきニューレグリンタンパク質の総用量は、単独で、又は他の薬剤との組合わせで、約1ml~2000mlの範囲の静脈内液のバイアルで投与することができる。希釈液の体積は、投与する総用量によって異なる。
【0034】
また、本発明は、治療レジメンを実施するためのキットを提供する。キットには、有効用量のニューレグリンタンパク質の1以上の容器を含む。タンパク質は単独で、又は組成物を形成するための他の許容し得る薬物/物質との組合わせで提供することができる。好ましい医薬形態は、滅菌生理食塩水、デキストロース溶液、若しくは緩衝液、又は他の医薬として許容し得る滅菌液と組み合わせる。あるいは、組成物は凍結乾燥させ、又は乾燥させることができる;この場合、キットは任意に容器中に複合体を再構成して注射用の溶液を形成させるための、好ましくは滅菌された医薬として許容し得る溶液をさらに含む。例示的な医薬として許容し得る溶液は、生理食塩水及びデキストロース溶液である。
【0035】
本明細書における「療法」又は「治療」は、状態、障害又は疾患の症状が改善され、又はそうでなくとも有益に変化する任意の様式を指す。効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという観点で予防的であり、かつ/又は疾患及び/又は疾患に帰せられる有害な効果の部分的又は完全な治癒の観点で治療的であり得る。また、治療は、本明細書の組成物のあらゆる医薬としての使用を包含する。
【0036】
本明細書で使用する「心不全」は、心臓が代謝組織の要求に必要な速度で血液を拍出しない心臓機能の異常を意味する。心不全には、広範囲の疾患状態、例えばうっ血性心不全、心筋梗塞、頻脈性不整脈、家族性肥大型心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、及び心筋炎などがある。心不全は、限定はされないが、虚血性、先天性、リウマチ性、ウイルス性、毒性、又は特発性形態を含むいくつもの要因によって引き起こされ得る。慢性心肥大は、うっ血性心不全及び心停止の前兆である、重大な疾患状態である。
【0037】
文脈において別途特定されない限り、本明細書で使用する「タンパク質」及び「ポリペプチド」、「ペプチド」は、同じ意味を有する。
【0038】
文脈において別途特定されない限り、本明細書で使用する「血漿」及び「血清」は同じ意味を有する。
【0039】
文脈において別途特定されない限り、本明細書で使用する「以下(not more than)」は「以下(less than or equal to)」を指す。
【0040】
本明細書で使用する「長期的な利益」は、治療又は干渉後の短い期間では観察することができない治療又は干渉によって引き起こされる利益を意味する。慢性心不全患者について、長期的な利益は生存率の改善、再入院の減少、長期的な予後を示すバイオマーカーの改善であり得る。いくつかの実施態様において、利益の観察期間は約6月である。いくつかの実施態様において、利益の観察期間は約1年である。いくつかの実施態様において、利益の観察期間は約2年である。そして他の実施態様において、利益の観察期間は約3年、5年、10年以上である。
【0041】
本明細書で使用する「生存」は、1の対象が生きたまま又は生存したままとなり得る時間又は確率を意味する。それは、生存期間又は生存率と表現することもできる。生存期間は、診断又は治療から開始して、生命の終了までの期間である。生存率は、診断又は治療後の所与の期間に生存している人々のパーセンテージを意味する。各対象について、治療又は干渉に起因する生存期間の延長を、利益とみなすことができる。対象の群又は大集団について、平均生存期間の延長又は生存率の増加は、利益とみなすことができる。
【0042】
本明細書で使用する「再入院」は、所与の期間内に病院に入院した患者の回数又は頻度を意味する。病院への入院は、全ての状態が原因であっても、治療されている同じ状態のみが原因であってもよい。各対象について、所与の期間内の再入院の回数の低下は、利益とみなすことができる。そして対象の群又は大集団について、再入院の総回数又は平均回数の低下は、利益とみなすことができる。
【0043】
本明細書で使用する「N-末端脳性ナトリウム利尿ペプチド」又は「NT-proBNP」は不活性の残存するN-末端proBNPを意味し、後者は主に左室壁の心筋細胞から放出されるホルモンとして活性を有するナトリウム利尿ペプチドであるBNPのプロホルモンである。心筋壁の伸び及び張りに反応して、プロホルモンproBNPはBNP及びホルモンとして不活性の残存NT-proBNPへと、タンパク質分解切断により分離される。
【0044】
BNP及びNT-proBNPの血漿レベルは、疑いの段階の、又は確立された心不全の日々の管理に有望なツールである。臨床的実践におけるBNP及びNT-proBNPの使用に関するほとんどの研究がその診断特性に取り組んでおり、BNP及びNT-proBNPの予後における価値を裏付けるますます多くの量の証拠が利用可能である。NT-proBNPはBNPよりも血中半減期が約6倍長いため、心不全の診断マーカー又は予後マーカーとしてより広く使用されている。血漿NT-proBNPレベルは市販のキットにより分析することができる。例えば、限定はされないが、Roche社又はBiomedica社製の商業用キットがある。
【0045】
血漿中のBNP及びNT-proBNPのレベルの両方は、両方のマーカーとも典型的により不良な転帰の患者においてより高くなるため、心不全のスクリーニング及び予後に使用されており、心不全の予後の確立に有用である。そして、本発明においては、BNP又はNT-proBNPの血漿レベルが、患者がニューレグリンによる心不全治療に適することを示すことを発見している。
【0046】
本明細書で使用する、「ニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能分類」又は「NYHA」心臓機能分類は、心不全の程度を分類する簡単な方法である。この分類は、患者が身体活動中にどれだけの制限を受けているかに基づいて患者を4つのカテゴリーのうちの1つに位置づける;制限/症状は、正常な呼吸及び様々な程度の息切れ及び/又は狭心症痛に関係づけられる: I、通常の身体活動における症状及び制限、例えば歩行時、階段を上る際などの息切れがない;II、通常の活動中に軽い症状(軽い息切れ及び/又は狭心症)及びわずかな制限がある;III、通常の活動よりも軽い活動、例えば短距離(20~100m)の歩行時でさえも、症状により活動が著しく制限され、休息時にのみ安定する;並びにIV、休息時さえも症状を経験する、重度の制限、大抵は寝たきりの患者。
【0047】
本明細書で使用する「活性単位」又は「EU」又は「U」は、最大反応の50%を誘導し得る標準品の量を意味する。言い換えると、所与の活性薬剤の活性単位を決定するためには、EC50を測定しなくてはならない。例えば、あるバッチの製品のEC50が0.1pgであった場合、それが1単位となる。さらに、その製品を1pg使用する場合、10EU(1/0.1)使用することとなる。EC50は、本発明者らが採用した方法を含め、当該技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。この活性単位の決定は、遺伝子操作された製品及び臨床的に使用される薬物の品質管理に重要であり、異なる製薬会社で製造された製品及び/又は異なるバッチ番号の製品を一律の基準で定量化することを可能にする。
【0048】
以下は、NRGの細胞表面ErbB3/ErbB4分子との結合及びErbB2リン酸化による間接的な仲介を通じた、NRG-1の生物活性を決定するための例示的、迅速、高感度、高流束及び定量的方法である(例えば、Michael D. Sadickらの文献、1996, Analytical Biochemistry, 235:207-214及びWO03/099300を参照されたい)。
【0049】
簡潔に説明すると、キナーゼ受容体活性化酵素結合免疫吸着アッセイ(KIRA-ELISA)と呼ばれるこのアッセイは、2つの別個のマイクロタイタープレートからなり、一方を細胞培養、リガンド刺激、及び細胞溶解/受容体可溶化用とし、かつ他方のプレートを受容体捕捉及びホスホチロシンELISA用とする。NRGにより誘導されるErbB2活性化の分析のための、接着性乳癌細胞株MCF-7表面のインタクトな受容体の刺激を利用する、アッセイを開発した。膜タンパク質をTriton X-100溶解によって可溶化し、ErbB2特異的で、ErbB3又はErbB4との交差反応をしない抗体でコーティングされたELISAウェル中で、受容体を捕捉する。続いて、受容体リン酸化の程度を、抗ホスホチロシンELISAによって定量化する。へレグリンβ1(177-244)のEC50およそ360pMを用いて、再現性のある標準曲線を作成する。HRGβ1(177-244)の同一の試料をKIRA-ELISA及び定量的抗ホスホチロシンウェスタンブロット分析の両方によって分析すると、結果は互いに非常に密接に相関する。本報告に記載するアッセイは、HRGのErbB3及び/又はErbB4との相互作用に起因するErbB2のチロシンリン酸化を特異的に定量化することが可能である。
【0050】
遺伝子操作された医薬のほとんどはタンパク質及びポリペプチドであるため、それらの活性はそれらのアミノ酸配列又はそれらの立体構造によって形成される活性中心によって決定され得る。タンパク質及びポリペプチドの活性力価はそれらの絶対的な質と一致しないため、化学薬物の活性力価のように重量単位を用いて決定することはできない。しかしながら、遺伝子操作された医薬の生物活性は、一般にそれらの薬力学特性と一致し、所与の生物活性を通じて確立される力価決定系は、その力価単位を決定し得る。従って、生物活性の決定は生物活性を有する物質の用量設定プロセスの一部となり得、遺伝子操作された製品の品質管理の重要な構成要素となる。遺伝子操作された製品及び臨床において使用される薬物の品質管理のための生物活性基準を決定することは、重要である。
【0051】
最大反応の50%を誘導し得る標準品の量を、活性単位(1EU)として定義する。従って、異なる製薬会社で製造された製品及び異なるバッチ番号の製品を、一律の基準で定量化することができる。
【実施例
【0052】
(発明の詳細な説明)
(実施態様1: 標準治療に基づく慢性心不全を有する患者における、組換えヒトニューレグリンの無作為化二重盲検多施設プラセボ対照生存試験(試験209)(試験209))
慢性心不全の治療における注射用組換えヒトニューレグリン(rhNRG-1)の有効性を評価するため、第II相二重盲検多施設プラセボ対照標準治療ベースの試験を、中国の複数の臨床センターで実施した。NYHAクラスIII又はクラスIVの慢性心不全を有する総計351名の患者を登録し、プラセボ群又はrhNRG-1群(0.6μg/kg)に無作為化した。群間に、人口統計及びバックグラウンド治療の点での大きな差はなかった。患者を入院させ、計画通り連続する10日間にわたり薬物を投与し、第11日に退院させた。第3週から第25週まで、患者は外来病棟で週1回用量の投与を受けた。治療前及び各回の投与後に、血液試料を患者から採取した。コアラボラトリーによる血漿中NT-proBNPレベルの決定(Biomedica社製の試薬キットを使用)。試験の第52週に、患者の生存情報を収集した。
【0053】
治験品:
仕様:rhNRG-1、61アミノ酸ポリペプチドは、ニューレグリン-1β2アイソフォームのEGF様ドメインを含み、分子量は7054 Dalである(1pg=0.14nmol)。
プラセボ:
仕様:rhNRG-1用賦形剤(活性組換えヒトニューレグリン-1タンパク質を含まない250pg/バイアル)。
投薬レジメン:
【表1】
【0054】
臨床試験への参加基準には、比較的安定した臨床状態(臨床徴候、症状、及び1か月超にわたる標的用量での、又は最大許容量でのCHFに対する承認された標準治療を含む)にあるCHFを有する患者(18歳から65歳の年齢でNYHAクラスIII又はIV、LVEF≦40%)を含めた。主な除外基準には、急性心筋梗塞、肥大型心筋症、収縮性心膜炎、著しい弁疾患又は先天性心疾患、重度の肺高血圧症、収縮期血圧<90mmHg又は>160mmHg、重度の心室性不整脈、心臓手術、又は過去6ヵ月以内の脳血管イベント、閉所恐怖症又は妊娠中女性対象を含めた。全ての患者が書面による同意証を提供した。
【0055】
(実施態様2: 標準治療に基づく慢性心不全を有する患者における組換えヒトニューレグリンの多施設無作為化二重盲検プラセボ対照生存試験(試験301))
慢性心不全の治療における注射用組換えヒトニューレグリン(rhNRG-1)の有効性を評価するために、第III相二重盲検多施設プラセボ対照標準治療ベースの試験を、中国の複数の臨床センターで実施した。NYHAクラスIII又はクラスIVの慢性心不全を有する総計331名の患者を登録し、プラセボ群又はrhNRG-1群(0.6μg/kg)又はrhNRG-1群(1.0μg/kg)に無作為化した。群間に、人口統計及びバックグラウンド治療の点での大きな差はなかった。患者を入院させ、計画通り連続する10日間にわたり薬物を投与し、第11日に退院させた。第3週から第25週まで、患者は外来病棟で週1回用量の投与を受けた。治療前及び各回の投与後に、血液試料を患者から採取した。コアラボラトリーによる血漿中NT-proBNPレベルの決定(Biomedica社製の試薬キットを使用)。試験の第52週に、患者の生存情報を収集した。
【0056】
治験品:
仕様:rhNRG-1、61アミノ酸ポリペプチドは、ニューレグリン-1β2アイソフォームのEGF様ドメインを含み、分子量は7054 Dalである(1pg=0.14nmol)。
プラセボ:
仕様:rhNRG-1用賦形剤(活性組換えヒトニューレグリン-1タンパク質を含まない250pg/バイアル)。
投薬レジメン:
【表2】
【0057】
臨床試験への参加基準には、比較的安定した臨床状態(臨床徴候、症状、及び1か月超にわたる標的用量での、又は最大許容量でのCHFに対する承認された標準治療を含む)にある18歳から80歳の年齢で、LVEF≦40%のCHF(NYHAクラスIII又はIV)を有する患者を含めた。主な除外基準には、急性心筋梗塞、肥大型心筋症、収縮性心膜炎、著しい弁疾患又は先天性心疾患、重度の肺高血圧症、収縮期血圧<90mmHg又は>160mmHg、重度の心室性不整脈、心臓手術、又は過去6ヵ月以内の脳血管イベント、閉所恐怖症又は妊娠中女性対象を含めた。全ての患者が書面による同意証を提供した。
【0058】
(実施態様3:標準治療に基づく慢性心不全を有する患者における組換えヒトニューレグリンの多施設無作為化二重盲検プラセボ対照生存試験(試験305))
慢性心不全の治療における注射用組換えヒトニューレグリン(rhNRG-1)の有効性を評価するために、二重盲検多施設プラセボ対照標準治療ベースの試験を、中国の複数の臨床センターで実施した。NYHAクラスII又はクラスIIIの慢性心不全を有する総計679名の患者を登録し、プラセボ群又はrhNRG-1群(0.6μg/kg)に無作為化した。群間に、人口統計及びバックグラウンド治療の点での大きな差はなかった。患者を入院させ、計画通り連続する10日間にわたり薬物を投与し、第11日に退院させた。第3週から第25週まで、患者は外来病棟で週1回用量の投与を受けた。治療前及び各回の投与後に、血液試料を患者から採取した。コアラボラトリーによる血漿中NT-proBNPレベルの決定(Biomedica社製の試薬キットを使用)。試験の第52週に、患者の生存情報を収集した。
【0059】
治験品:
仕様:rhNRG-1、61アミノ酸ポリペプチドは、ニューレグリン-1β2アイソフォームのEGF様ドメインを含み、分子量は7054 Dalである(1pg=0.14nmol)。
プラセボ:
仕様:rhNRG-1用賦形剤(活性組換えヒトニューレグリン-1タンパク質を含まない250pg/バイアル)。
投薬レジメン:
【表3】
【0060】
臨床試験の包含基準:1か月超にわたる標的用量レベルでの、又は最大許容量でのHF基礎的標準治療を受けている、臨床症状の安定した(臨床症状、身体的徴候を含む)18歳から75歳の年齢で、LVEF≦40%の慢性HF患者(NYHA機能クラスII又はクラスIII)。除外基準:急性心筋梗塞、肥大型心筋症、狭窄性心膜炎、著しい弁病理学的変化又は先天性心疾患、重度の肺動脈高血圧、収縮期圧力<90mmHg又は>160mmHg、重度の心室性不整脈、試験の6ヵ月以内に心臓外科処置を受けた患者、又は脳血管障害を経験した患者、閉所恐怖症又は妊娠中女性。全ての患者は、インフォームド・コンセント用紙を理解し、これに署名する必要がある。
【0061】
本件出願人は、3つの別個の臨床試験から得たデータの統計解析を実施した。全ての女性対象(NYHAクラスII~IVの軽度、中程度、重度の患者)における3つの別個の臨床試験からのプールされたデータの解析結果:治療群の女性は、治療ベースのプラセボ対照群の標準の患者と比較して、統計的に有意な生存利益(P=0.016)を達成した。試験期間中、対象の全原因死亡率は50%以上低下した。別個の試験それぞれにおいて、治療群の全ての女性が生存利益を達成し、3つの試験からプールされたデータの解析から得た傾向と一致する傾向を示した。
【0062】
プールされたデータの解析から得た結果:一般的に、試験期間中、対象のベースラインNT-proBNPレベルが低いほど、その生存利益(全原因死亡率の相対的な低下)が大きくなった;ベースラインでのNT-proBNPレベルが3000fmol/mL以下であった女性対象のうち、治療群の対象は死亡率が0%であった;対照的に、治療ベースのプラセボ対照群の標準の対象の全原因死亡率はほぼ10%であった;治療群の対象は、統計的に非常に有意な生存利益を達成した(P<0.001)。別個の試験の全てにおいて、女性対象は生存利益の傾向を示し、プールされたデータの解析における傾向と一致していた。
【0063】
臨床結果から、rhNRG-1により軽度から中程度の心不全を有する患者をより効果的に特定することができることが明らかになり、このことは大動脈縮窄症によって誘導されるHFラットモデルにおける研究結果に沿っている。心臓が湾曲し、血液拍出機能が破綻して、HFがより深刻なステージに進行すると、ErbB2及びErbB4受容体の発現が顕著に低下することが示された。これに鑑みるに、初期のステージのHF、すなわちErbB2/ErbB4受容体発現の下方調節前であれば、組換えヒトニューレグリンは患者により大きな利益をもたらすことができる。
【0064】
表1:全原因死亡率―亜群解析のまとめ:(試験209/301/305からのデータのプール解析)
【表4】
略語: LVEF=左室駆出率、N=解析した対象の総数、n=特定のカテゴリーの対象の数、NYHA=ニューヨーク心臓協会
【0065】
アッセイの結果から、ベースラインNT-proBNPが≦1600fmol/mlであることが明らかとなった場合、rhNRG-1は対象の性別に関係なく対象の死亡率を有意に低下させる潜在性を示した(表1);しかしながら、この結論は、ベースラインNT-proBNPがより高い両性の対象からのプールされたデータの解析にはあてはまらない。さらなる解析から、rhNRG-1は全ての試験女性対象において、統計的に有意に低い死亡率をもたらすことが明らかとなった(表1)。表2に示すように、女性が同じ傾向を示すことが、個別の試験209、301及び305において見いだされた。
【0066】
表2:全原因死亡率―亜群解析のまとめ: 単一臨床試験(検査209/301/305の解析)
【表5】
略語: LVEF=左室駆出率、N=解析した対象の総数、n=特定のカテゴリーの対象の数、NYHA=ニューヨーク心臓協会
【0067】
女性対象はプールされた試験及び個別の試験の両方においてより優れた改善を示したため、ベースラインNT-proBNPパーセンタイルを、女性対象についてさらなる亜群解析に供した。これらの亜群を、表3に示すように、NT-proBNP≦1600fmol/ml(~50%)、NT-proBNP≦3000fmol/ml(~75%)の患者及び全ての女性患者に対して、プール及び単一解析に供した。
【0068】
3つの臨床試験209、301及び305のプール解析から、rhNRG-1治療を受けている女性対象の3つの亜群、すなわち治療を受けているNT-proBNP≦1600の亜群、NT-Pro BNP≦3000fmol/mlの亜群、及び全ての女性患者において、女性対象の死亡率がそれぞれ0%、0%及び7.1%であることが明らかとなった。プラセボを受けている対象の3つの対応する亜群における死亡率は、それぞれ8.4%、10.4%及び16.1%であった; rhNRG-1は、特にNT-proBNP≦3000fmol/ml亜群において有意に死亡率を低下させることができることが示され、表3に示すように、この亜群の女性対象は登録した女性対象の75%を占めていた。
【0069】
試験209、301及び305の個別の解析により、表3に示されるように、試験のNRG-1治療群におけるNT-proBNP≦3000fmol/ml亜群について女性対象の死亡率は、それぞれ0%、0%及び0%であり、一方対応するプラセボ群における死亡率は21.4%、8.3%及び6.3%であることが明らかとなった。
【0070】
男性患者について、NT-proBNP≦4000fmol/ml又はNT-proBNP≦3000fmol/ml亜群において、一部の臨床試験では、rhNRG-1治療群の死亡率がプラセボ群よりも優れていることが示された。より好ましくは、試験209、301及び305においてNT-proBNP≦1600fmol/mlの男性対象のプール解析により、rhNRG-1治療群における死亡率はプラセボ群よりも大幅に低いことが明らかとなった(2.6%対5.6%)。この低下は、両性の全ての対象の包括的な解析に沿っていた。
【0071】
表3:全原因死亡率―女性亜群解析のまとめ:(試験209/301/305からのデータのプール解析及び個別解析)
【表6】
【0072】
上記解析に鑑みて、3つの臨床試験のいずれかにおけるNT-proBNP≦3000fmol/mlの女性対象及びNT-proBNP≦1600fmol/mlの男性対象の個別及びプール解析を、表4に示すように実施した。これらのプールされた男性及び女性対象について、rhNRG-1治療群における死亡率改善の結果はプラセボ群におけるよりも顕著に優れていた。
【0073】
表4:全原因死亡率―亜群解析のまとめ: (試験209/301/305からのデータのプール解析及び個別解析)
【表7】
【0074】
上記の実施態様は、試験の保護範囲を限定しない。当業者であれば、本発明の目的及び範囲から逸脱することなく本発明を調整し、かつ改変することができる。従って、本発明の保護範囲は、特定の実施形態ではなく、権利及び要件に従って定義すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023514738000001.app
【国際調査報告】