(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-10
(54)【発明の名称】拡張現実画像を表示するための装置および該装置を含むシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230403BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536907
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2020126117
(87)【国際公開番号】W WO2021169383
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010128082.3
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517227998
【氏名又は名称】蘇州蘇大維格科技集団股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】羅明輝
(72)【発明者】
【氏名】喬文
(72)【発明者】
【氏名】成堂東
(72)【発明者】
【氏名】李瑞彬
(72)【発明者】
【氏名】李玲
(72)【発明者】
【氏名】朱平
(72)【発明者】
【氏名】陳林森
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA70
2H199CA75
2H199CA85
2H249AA02
2H249AA06
2H249AA12
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA65
(57)【要約】
本発明は、画像表示技術に関し、特に拡張現実画像を表示するための装置、および該装置を含む拡張現実表示を実現するためのシステムに関する。本発明の1つの方面による装置は、光導波路レンズと、光導波路レンズの表面に位置する第1の2次元光格子アレイと、光導波路レンズの表面に位置する第2の2次元光格子アレイと、を含み、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイは、二者の大きい辺を相対させるように前記光導波路レンズの表面に設置されており、第1の2次元光格子アレイは、第1の2次元光格子アレイに入射された光を第1の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、第2の2次元光格子アレイに伝播させるように配置されており、第2の2次元光格子アレイは、第2の2次元光格子アレイに伝播された光を第2の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、光導波路レンズから出射させるように配置されており、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイは同じ周期を有する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路レンズと、
前記光導波路レンズの表面に位置する第1の2次元光格子アレイと、
前記光導波路レンズの表面に位置する第2の2次元光格子アレイと、を含み、
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、二者の大きい辺を相対させるように、前記光導波路レンズの表面に設置されており、
前記第1の2次元光格子アレイは、前記第1の2次元光格子アレイに入射された光を前記第1の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、前記第2の2次元光格子アレイに伝播させるように配置されており、
前記第2の2次元光格子アレイは、前記第2の2次元光格子アレイに伝播された光を前記第2の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、前記光導波路レンズから出射させるように配置されており、
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、同じ周期を有する、ことを特徴とする拡張現実画像を表示するための装置。
【請求項2】
前記第1の2次元光格子アレイは、前記第1の2次元光格子アレイから出射した光を前記光導波路レンズ内において全反射態様で前記第2の2次元光格子アレイに伝播させるように配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の2次元光格子アレイの2つの光格子の配向の夾角は、前記第2の2次元光格子アレイの中部で高輝度領域を形成することを回避するように、十分に大きく設定されている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記夾角は90°~160°の間にある請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の2次元光格子アレイの光格子は、深さを変更するよう変調される請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの構造形態は、円柱状、円錐状、方形、および台形からなる群のうちの一種である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは大体矩形である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の2次元光格子アレイの前記第2の2次元光格子アレイに向いた辺の中間部は、両端と比べて、前記第2の2次元光格子アレイから離れている請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の2次元光格子アレイの前記第2の2次元光格子アレイに向いた辺は、前記第2の2次元光格子アレイの少なくとも一部を取り囲む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの表面に直接形成されている請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、中間層により前記光導波路レンズの表面に形成されている請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの同じ表面に位置する請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの相対する2つの表面に位置する請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの相対する2つの表面にそれぞれ位置する1次元光格子アレイを含み、前記第2の2次元光格子アレイは前記相対する2つの表面のうちの1つに位置する請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの間には間隔がある請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは隣接している請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記光導波路レンズの端面には、光吸収層が塗布されている請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの光格子の周期は200nm~600nmである請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの光格子の深さは50nm~600nmである請求項1に記載の装置。
【請求項20】
画像情報を含む光を提供するように配置されている画像源と、
請求項1~19の何れか一項に記載の拡張現実画像を表示するための装置と、を含むことを特徴とする拡張現実表示を実現するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示技術に関し、特に拡張現実画像を表示するための装置および該装置を含む拡張現実表示を実現するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(AR)技術は、真実の世界情報と仮想世界情報を「シームレス」に統合する新型の表示技術である。それは真実の世界の情報、さらに仮想情報を同時に表示することにより、2種の情報の相互補充と重ね合わせを実現する。視覚化された拡張現実において、ヘルメット表示器により真実の世界とコンピューターにより生成された仮想画像を重ね合わせた混合画像をユーザに表示する。
【0003】
目下の主流のニアアイ(near-eye)式の拡張現実表示装置には、光導波路原理が多く採用されている。例えば、典型的な拡張現実表示装置において、マイクロ表示空間光変調器(例えばLCOS)上の画像は、三枚のホログラフィック光格子を通して光導波路に結合し、続いて三枚の光導波路によってそれぞれ伝送し、最後に人の目の正面前方で対応したホログラフィック光格子により結合出力して人の目に投射する。カラー投射を実現するために、多層の光導波路の態様を採用することができる。
【0004】
拡張現実表示設備の普及、応用の過程において、寸法、性能と価格は普及程度を制約する重要な要素である。従って、如何にしてこれらの要素を両立させ、コストパフォーマンスの高いプロダクトを提供するかというのは業界では注目される課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、構造が簡単で、かつコンパクトで、製造のコストが低いという利点を有する、拡張現実画像を表示するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様による拡張現実画像を表示するための装置は、
光導波路レンズと、
前記光導波路レンズの表面に位置する第1の2次元光格子アレイと、
前記光導波路レンズの表面に位置する第2の2次元光格子アレイと、を含み、
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、二者の大きい辺を相対させるように、前記光導波路レンズの表面に設置されており、
前記第1の2次元光格子アレイは、前記第1の2次元光格子アレイに入射された光を前記第1の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、前記第2の2次元光格子アレイに伝播させるように配置されており、
前記第2の2次元光格子アレイは、前記第2の2次元光格子アレイに伝播された光を前記第2の2次元光格子アレイ全体に拡張させる一方、前記光導波路レンズから出射させるように配置されており、
前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは同じ周期を有する。
【0007】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイは、前記第1の2次元光格子アレイから出射した光を前記光導波路レンズ内において全反射態様で前記第2の2次元光格子アレイに伝播させるように配置されている。
【0008】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイの2つの光格子の配向(orientation)の夾角は、前記第2の2次元光格子アレイの中部で高輝度領域を形成することを回避するように十分に大きく設定されている。
【0009】
好ましくは、前記装置において、前記夾角は90°~160°の間にある。
【0010】
好ましくは、前記装置において、前記第2の2次元光格子アレイの光格子は深さを変更するよう変調される。
【0011】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの構造形態は、円柱状、円錐状、方形、および台形からなる群のうちの一種である。
【0012】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは大体矩形である。
【0013】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイの前記第2の2次元光格子アレイに向いた辺の中間部は、両端と比べて、前記第2の2次元光格子アレイから離れている。
【0014】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイの前記第2の2次元光格子アレイに向いた辺は、前記第2の2次元光格子アレイの少なくとも一部を取り囲む。
【0015】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの表面に直接形成されている。
【0016】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、中間層により前記光導波路レンズの表面に形成されている。
【0017】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの同じ表面に位置する。
【0018】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの相対する2つの表面に位置する。
【0019】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイは、前記光導波路レンズの相対する2つの表面にそれぞれ位置する1次元光格子アレイを含み、前記第2の2次元光格子アレイは前記相対する2つの表面のうちの1つに位置する。
【0020】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの間には、間隔がある。
【0021】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイは隣接している。
【0022】
好ましくは、前記装置において、前記光導波路レンズの端面には、光吸収層が塗布されている。
【0023】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの光格子の周期は200nm~600nmである。
【0024】
好ましくは、前記装置において、前記第1の2次元光格子アレイと前記第2の2次元光格子アレイの光格子の深さは50nm~600nmである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、増大した出射瞳ウィンドウを有することにより、レンズの表面の利用率を向上させることができる、拡張現実表示を実現するためのシステムを提供することである。
【0026】
本発明の別の態様による拡張現実表示を実現するためのシステムは、
画像情報を含む光を提供するように配置されている画像源と、
上記のような拡張現実画像を表示するための装置と、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明による1つのまたは複数の実施例において、光導波路レンズの表面には、結合入射増強領域としての第1の2次元光格子アレイと結合出射領域としての第2の2次元光格子アレイを設置し、第1の2次元光格子アレイは、拡張の作用とガイドの作用を兼ね備えている。光を結合出射領域にガイドするためのガイド領域を省いたため、装置全体の構造をより簡単で、コンパクトにさせ、製造コストも低下させた。なお、専用のガイド領域を省くことも、結合出射領域の面積を拡大し、出射瞳ウィンドウ面積を増大させ、より良好な視覚効果を提供するのに役立つ。また、第1の2次元光格子アレイにおける2つの光格子の配向の夾角を十分に大きくすることにより、特定の方向における高強度光成分が第2の2次元光格子アレイの中に入ることを回避し、視野画像の光学効率の不均衡の問題を抑制または解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1Aは、本発明の1つの実施例による拡張現実画像を表示するための装置の平面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の1つの実施例による拡張現実画像を表示するための装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、光が拡張現実画像を表示するための装置10に入った後の伝播経路の概略図である。
【
図3】
図3は、
図1Aと1Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の断面図で、その断面が
図1BのX~Z平面内に位置する。
【
図4】
図4は、
図1Aと1Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の断面図で、その断面が
図1BのY~Z平面内に位置する。
【
図5】
図5は、
図1Aと1Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の改善形式の断面図である。
【
図6】
図6は、2次元光格子アレイの光に対する回折作用の概略図である。
【
図7】
図7は、視野内において明るい光柱を生成する場合を示す。
【
図8A】
図8Aは、異なる配向夾角を有する2次元光格子アレイの概略図である。
【
図8B】
図8Bは、異なる配向夾角を有する2次元光格子アレイの概略図である。
【
図8C】
図8Cは、異なる配向夾角を有する2次元光格子アレイの概略図である。
【
図9】
図9は、ボウタイ型設計が採用された第1の2次元光格子アレイの概略図である。
【
図11】
図11は、
図9に示す2次元光格子アレイを採用する場合の光伝導の斜視図である。
【
図12】
図12は、蝶のような型の設計が採用された第1の2次元光格子アレイの概略図である。
【
図13A】
図13Aは、本発明の別の実施例における拡張現実画像を表示するための装置の平面図である。
【
図13B】
図13Bは、本発明の別の実施例における拡張現実画像を表示するための装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の例示的実施例を示す図面を参照して、本発明をより包括的に説明する。しかしながら、本発明は、本明細書に記載された各実施例に限定されるものではなく、異なる形態で実施することができる。上述した各実施例は、本発明の保護範囲をより包括的に当業者に伝達するために、本明細書の開示を完全にすることを目的としている。
【0030】
本明細書において、「含む」のような用語は、明細書及び特許請求の範囲において直接的かつ明確に記載されたユニット及びステップを有する以外に、本発明の技術案は、直接的または明確に記載されていない他の単位及びステップがあることも排除しないことを意味する。
【0031】
「第1」および「第2」のような用語は、時間、空間、大きさなどのユニットの順序を表すものではなく、各ユニットを区別するためのものに過ぎない。
【0032】
従来技術では、視野画像を拡大するために入射光を水平方向と垂直方向に拡張し、拡張された光を専用の折曲領域を用いて結合出射領域にガイドする必要がある。これは、複雑な構造設計と高精度の製造プロセスを採用することが求められている。
【0033】
本発明の1つのまたは複数の実施例では、光導波路レンズの表面において、結合入射およびガイド領域としての第1の2次元光格子アレイと結合出射領域としての第2の2次元光格子アレイを設ける。光が第1の2次元光格子アレイに入射すると、第1の2次元光格子アレイによる作用で、光は第1の2次元光格子アレイ全体に拡張する一方、第2の2次元光格子アレイに伝播する。つまり、第1の2次元光格子アレイは、光を拡張する作用と光を指定された領域にガイドする作用を兼ね備える。光を結合出射領域にガイドするための専用のガイド領域または光学機能構造を省略したので、装置全体の構造をより簡単で、コンパクトにすることができ、マイクロ化の応用の必要を満たすのに役立つと同時に、精度への要求も低下した。なお、専用のガイド領域の省略は、結合出射領域の面積の拡大に利することにより、出射瞳ウィンドウの面積も増大した。
【0034】
本発明の1つのまたは複数の実施例では、光導波路レンズの表面に設置される第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイの位置は、柔軟に設定可能で、十分な光を第1の2次元光格子アレイから第2の2次元光格子アレイに伝播できればよい。好ましくは、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイの大きい辺を相対させることによって、第1の2次元光格子アレイから第2の2次元光格子アレイにできるだけ多くの光を伝播させることができる。
【0035】
本発明の1つのまたは複数の実施例では、第1の2次元光格子アレイに関しては、適当な構造パラメータを選択することによって、第1の2次元光格子アレイから出射した光を光導波路レンズ内において全反射態様で第2の2次元光格子アレイに伝播させることができる。
【0036】
2次元光格子アレイは、二回の単光束群の重ね合わせ露光により形成してもよく、例示的に、まず、露光光源と導波路位置を固定し第一回の露光を行うことにより、1次元光格子構造を形成し、次に、露光光源の位置をそのままで、導波路を中心に沿って所定の角度で回転させ、2回目の露光を完了して2次元光格子アレイ構造を形成する。2回の露光の回転の角度は、形成された2次元光格子アレイ構造における2本の光格子の配向の間における夾角に対応し、好ましくは、2つの光格子の配向の夾角は90°~160°である。
【0037】
好ましくは、前記二回の単光束群の重ね合わせ露光のプロセスにおいて、露光光源は2本の平面波を提供し露光干渉面を形成する。また、ほかのプロセスで2次元光格子アレイを形成することもできる。例えば、4本の平面波を露光光源により同時に提供することができる。これらは2つの群に分けられ、各群が1つの露光干渉面に対応し、これにより、1回の露光によって2次元光格子アレイを得ることができる。形成された2次元光格子アレイの構造形態は、円柱状、円錐状、四角状、台形などの各種の形状を含むが、これらに限られず、2つの方向においてドットアレイ状で周期分布し、つまり、2次元光格子アレイが2つの光格子の配向を有する。この2つの光格子の配向は、2回の露光干渉面の露光方向と一致する。容易に理解できるように、2次元光格子アレイの2つの光格子の配向は、それぞれ第1の配向G1と第2の配向G2とする。
【0038】
本発明の1つのまたは複数の実施例において、第1の2次元光格子アレイの2つの光格子の配向の夾角を十分に大きくさせることにより(例えば、夾角を90°~160°にさせる)、特定な方向の高強度の光成分(例えば、光格子ベクトルに沿って出射した光成分)が2次元光格子アレイに入った後、第2の2次元光格子アレイの中部で高輝度領域を形成することを回避することができる。
【0039】
本発明の1つのまたは複数の実施例では、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイの形状に関しては、制限がない。好ましくは、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイは大体矩形であり、または、好ましくは、第1の2次元光格子アレイの第2の2次元光格子アレイに向いた辺を湾曲させ、または折り曲げさせることができ(例えば、辺の中段は両端と比べて、第2の2次元光格子アレイから離れている)、または、好ましく、第1の2次元光格子アレイの第2の2次元光格子アレイに向いた辺は、第2の2次元光格子アレイの少なくとも一部を取り囲む。
【0040】
本発明の1つのまたは複数の実施例では、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイの間における間隔に関しては、制限がない。好ましくは、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイの間には間隔が存在し、この時、二者の間に滑らかな導波路領域があるため、人の目による結合出射領域を観察する効率を最大化させ、不必要な回折減衰を回避することができる。好ましくは、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイは、一体化されたものであってもよく、または隣接するものであってもよい。
【0041】
以下、図面により本発明の実施例について説明する。
【0042】
図1Aと1Bはそれぞれ本発明1つの実施例による拡張現実画像を表示するための装置の平面図と斜視図である。例示的に、本実施例の拡張現実画像を表示するための装置は、眼鏡の形式を採用する。
【0043】
図1Aと1Bを参照し、本実施例の拡張現実画像を表示するための装置10は、光導波路レンズ110と、光導波路レンズの表面に設置された第1の2次元光格子アレイ121および第2の2次元光格子アレイ122と、を含む。
【0044】
好ましくは、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122は、光導波路レンズ110の表面に直接形成することができる。または、好ましくは、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122は、中間層を介して光導波路レンズ110の表面に形成することもできる。
【0045】
好ましくは、光導波路レンズ110は、可視光周波数帯において高透過率の光導波路を有し、屈折率範囲が1.4よりも大きく、厚みが2mm以下である。
【0046】
図1Aと1Bに示すように、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122は、大体矩形であり、光導波路レンズ110における位置は、それぞれの長辺が相対するように設置されている。
【0047】
本実施例では、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122は同じ周期を有する。1つの2次元光格子アレイは、2つの方向において周期性を有する。従って、ここで言う同じ周期は、2つの方向においていずれも同じ周期を有することを指す。好ましくは、異なる波長光の回折効率に基づき、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122に関して、適当な周期を選択する(例えば、200nm~600nmの範囲において選択する)。
【0048】
上記のように、第1の2次元光格子アレイにおける2つの光格子の配向の夾角を十分に大きくさせることにより、特定方向の高い強度の光成分が第2の2次元光格子アレイの中部で高輝度領域を形成することを回避することができる。本実施例では、好ましくは、該夾角は、90°~160°の範囲内で選択することができる。
【0049】
本実施例では、好ましくは、光格子の深さとデューティ比による回折効率的への影響に基づき、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122に関して、適当な光格子の深さ(例えば、50nm~600nmの範囲内において選択する)とデューティ比を選択する。また、第2の2次元光格子アレイの輝度を等化するために、第2の2次元光格子アレイの光格子の深さに対して、深さを変更するよう変調することができる。
【0050】
本実施例では、好ましくは、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122の構造形態は、円柱状、円錐状、方形と台形を含む各種の形状であるが、これに限られていない。
【0051】
本実施例では、好ましくは、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122は、光導波路レンズ110の同じ表面に位置することができる。しかし、光導波路レンズ110の2つの相対する表面にそれぞれに位置することも可能である。
【0052】
以下、
図1Aと1Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の作動原理について説明する。
【0053】
図2は、光が拡張現実画像を表示するための装置10に入った後の伝播経路概略図である。本実施例では、
図2に示すように、画像源からの光は紙面と一定の夾角を成す方向(例えば、紙面に垂直な方向)に沿って第1の2次元光格子アレイ121に入射し、第1の2次元光格子アレイ121の回折により複数の1級と-1級の回折光を形成する。第1の2次元光格子アレイによって入射結合されたこれらの光は、光導波路レンズ110の上下面間で反射し、水平方向(図中のX軸方向)に沿って光を拡張する(以下、
図3及び
図4に基づいてよりさらに説明する)。
【0054】
一方、
図2に示すように、第1の2次元光格子アレイ121は、光導波路レンズ110の表面に位置するため、回折光が光導波路レンズ内を伝播する際に第1の2次元光格子アレイ121に複数回到達し、そのうち、一部の回折光が反射式の回折を形成すると同時に方位角を変えて、第2の2次元光格子アレイ122に伝播する(図中の紙面を下方向に)。
【0055】
第2の2次元光格子アレイ122に近づく方向に沿って伝播する光は、第2の2次元光格子アレイ122に到達すると、光導波路レンズ110の上下面の間で反射され、水平方向に沿って光を拡張させる(以下、
図3及び
図4に基づいてよりさらに説明する)。
【0056】
一方、第2の2次元光格子アレイ122が光導波路レンズ110の表面に位置するため、回折光は光導波路レンズ内を伝播する際に、第2の2次元光格子アレイ122に複数回到達し、一部の回折光が透過回折を形成するとともに方位角を変えることにより、紙面に対して一定の角度をなす方向(例えば、図中の紙面に対して垂直な方向)に沿って光導波路レンズ110から出射または出射結合するので、人の眼は、第2の2次元格子アレイ122の領域全体において明瞭な画像を見ることができる。
【0057】
図3は、断面が
図1BのX~Z平面内に位置する、
図1A及び
図1Bに示された拡張現実画像を表示する装置の断面図である。
図4は、断面が
図1BのY~Z平面内に位置する、
図1A及び
図1Bに示された拡張現実画像を表示する装置の断面図である。
【0058】
図3を参照すると、画像源からの光は、第1の2次元光格子アレイ121に到達する。第1の2次元光格子アレイ121の回折により、光は光導波路レンズ110に入射結合され、
図3のX軸方向に沿って拡張する。第1の2次元光格子アレイ121を適切な角度で傾斜させることにより、光の入射結合の回折効率を向上させることができる。
図4に示すように、回折光は光導波路レンズ内を伝播すると、第1の2次元光格子アレイ121によって方位角が一部変更され、
図4のY軸方向に沿って導光レンズ110内で複数回反射され第2次元光格子アレイ122に到達する。
【0059】
図4を参照すると、第2の2次元光格子アレイ122による作用で、一部の回折光は、透射式回折を形成すると同時に方位角を変え、よって、
図4中のZ軸方向に沿って光導波路レンズ110から出射または出射結合することにより拡張現実の画像をユーザに表示する。
【0060】
本実施形態では、
図5に示すように、光吸収層130を光導波路レンズ110の端面または周囲に塗布することができる。この光吸収層は、光導波路レンズ端面に到達する光を吸収することによって、光導波路レンズ内を伝播される光への、端面反射による干渉を回避することができる。
【0061】
図6は、光に対する2次元光格子アレイの回折作用の概念図であり、
図7に示す2次元光格子アレイの2つの光格子の配向の夾角は120°である。
【0062】
以下の説明では、
図6に示す2次元光格子アレイは、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122であり、かつ第2の2次元光格子アレイ122が第1の2次元光格子アレイ121の下方(
図7において、Y軸の矢印方向は下向き方向である)に位置する。
図6に示すように、2次元光格子アレイのアレイ点Aに光1が入射すると、光格子の回折作用により、光格子アレイの第1の配向G1の方向に沿った光3と光5と、光格子アレイの第2の配向G2の方向に沿った光2と光4という4方向の回折光が発生する。
図6に示す場合には、光3と光4は、第2の2次元光格子アレイまたは結合出射領域から離間する方向に伝播し、光5は、光格子アレイの第1の配向G1に沿って結合出射領域に近づく方向に伝播する。同時に、光2は、光格子アレイの第2の配向G2の方向に沿ってアレイ点Bに伝播し、アレイ構造の作用により、光6、光7、光8、光9が発生し、その中で、光格子アレイの第2の配向G2の方向に沿って結合出射領域の方向に伝播する光7が光2のエネルギーの大部分を占め、光6が光格子アレイの第1の配向G1の方向に沿って結合出射領域から離間する方向に伝播し、光9がZ軸に沿って2次元光格子アレイから透過回折方式で出射し、光8が、格子アレイ点Dまで、光格子アレイの第1の配向G1の方向に伝播する。
図6の他の光についても、二次元回折格子アレイの作用下で類似した変化が生じる。
【0063】
図6に示す場合、反射式回折に対して、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122という2つの光格子の配向に沿って伝播する光成分は大きい強度を有することにより、第1の2次元光格子アレイ121と第2の2次元光格子アレイ122において2つの明るい柱状領域が生じる。2つの光格子の配向の夾角が小さい時には、柱状領域は第2の2次元光格子アレイ122の中に位置することにより、観察領域内で輝度が明らかに不均一である現象が観察できる。
図7を参照し、観察領域内に明るい光柱が生じる場合が概略的に示されている。
【0064】
図8A、
図8Bと
図8Cは、異なる配向の夾角を有する2次元光格子アレイの概略図であり、そのうち、
図8Aに示す2次元格子アレイの2つの光格子の配向の夾角が90°であり、
図8Bに示す2次元格子アレイの2つの光格子の配向の夾角が120°であり、
図8Cに示す2次元格子アレイの2つの光格子の配向の夾角が160°である。
図8A~8Cに示す2次元格子アレイでは、入射光は複数回の全反射と回折により、画像拡張と光伝導を実現することができ、大きな配向夾角が観察領域の観察を満たすとともに、
図7に示す視野輝度の不均一な現象を回避することができる。
【0065】
本実施例では、第1の2次元光格子アレイと第2の2次元光格子アレイは大体矩形である。好ましくは、
図1Aと1B中に示す第1の2次元光格子アレイは
図9に示すボウタイ型として設計することができる。
【0066】
図9を参照し、第2の2次元光格子アレイ122は大体矩形であり、第1の2次元光格子アレイ121の長辺は湾曲または折り曲げたものである。特に、第1の2次元光格子アレイ121の第2の2次元光格子アレイ122に向いた辺の中間部は両端と比べて、第2の2次元光格子アレイ122から離れている。
【0067】
図10は、
図1Aに示す2次元光格子アレイを採用する時の光伝導の斜視図である。
図11は、
図9に示す2次元光格子アレイを採用した時の光伝導の斜視図である。比較により分かるように、伝導角度が大きくなるに従って、
図11に示す第1の2次元光格子アレイはボウタイ型の設計が採用されているため、中心からずれた光は依然として第1の2次元格子アレイ内で伝導することができ、つまり、中心からずれた光は依然として第1の2次元格子アレイによる作用で角度偏向して第2の2次元格子アレイに入ることができるので、光の散逸損失を防止または抑制した。
【0068】
本実施例では、好ましくは、
図12に示す第1の2次元光格子アレイにより、
図1Aと1B中に示す第1の2次元光格子アレイを置き替えることもできる。
【0069】
図12を参照し、第2の2次元光格子アレイ122は大体矩形であり、第1の2次元光格子アレイ121の第2の2次元光格子アレイ122に向いた辺は、第2の2次元光格子アレイの少なくとも一部を取り囲む。
図12に示す第2の2次元光格子アレイの中で、
図9に示すボウタイ型の設計と類似しているように、中心からずれた光は依然として第1の2次元光格子アレイによる作用で角度偏向し第2の2次元光格子アレイに入るので、光の散逸損失を防止または抑制した。
【0070】
図13Aと13Bはそれぞれ本発明の別の実施例の拡張現実画像を表示するための装置の平面図と斜視図である。例示的に、本実施例の拡張現実画像を表示するための装置は、眼鏡の形式を採用することができる。
【0071】
図13Aと13Bを参照し、本実施例の拡張現実画像を表示するための装置10は、光導波路レンズ110と、光導波路レンズの表面に設置された第1の2次元光格子アレイ121および第2の2次元光格子アレイ122と、を含む。
図1Aおよび1Bに示す実施例と異なるのは、本実施例では、第1の2次元光格子アレイ121に含まれた2つの1次元光格子アレイ121A、121Bは、光導波路レンズ110における相対する2つの表面(図中の光導波路レンズの上下面)それぞれに位置し、そのうち、1次元光格子アレイ121A、121Bは異なる配向を有する。
図13Aと13Bに示すように、第2の2次元光格子アレイ122は、相対する2つの表面のうちの1つに位置する(例えば、図中の光導波路レンズの上面である)。
【0072】
前記相違のほか、本実施例では、
図1Aと1Bに示す実施例の各種の特徴を採用することができる。贅言しないように、以下、主に相違に関連する方面について説明する。
【0073】
図13Bを参照し、画像源からの光は、光導波路レンズ110の上面に位置する1次元光格子アレイ121Aに入射し、当該1次元光格子アレイの回折作用により回折光を形成する。これらの入射結合された回折光は、光導波路レンズ110の上下面の間で反射されることにより、水平方向(図中のX軸方向)に沿って光を拡張させる。回折光は、光導波路レンズ内に伝播される時に1次元光格子アレイ121Aに複数回到達し、その中で、一部の回折光は、反射式回折を形成すると同時に方位角を変えて、第2の2次元光格子アレイ122に伝播する。
【0074】
一方、画像源からの光は、一部が1次元光格子アレイ121Aによる回折作用なしで下面に位置する1次元光格子アレイ121Bに到達し、1次元光格子アレイ121Bの回折作用により回折光を形成する。これらの回折光は同様に光導波路レンズ110の上下面の間で反射することにより、水平方向(図中のX軸方向)に沿って光を拡張させ、また、方位角を変えるので、第2の2次元光格子アレイ122に伝播する。
【0075】
1次元光格子アレイ121Aと121Bに適当な構造パラメータを選択することにより、これらの回折光の回折角を光導波路レンズの全反射条件を満足させることにより、光導波路レンズ内に全反射態様で伝播することができる。
【0076】
図14は、
図13Aと13Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の断面図で、前記断面が
図13BのX~Z平面内に位置する。
図15は、
図13Aと13Bに示す拡張現実画像を表示するための装置の断面図で、その断面が
図13BのY~Z平面内に位置する。
【0077】
図14を参照し、画像源からの光は1次元光格子アレイ121Aに到達する。1次元光格子アレイ121Aの回折作用により回折光を形成する(図面において実線で示す)。該回折光は、光導波路レンズ110の上下面の間で複数回の反射が生じることにより、光の
図14中のX軸方向に沿った拡張を実現する。一方、画像源からの光の一部は、1次元光格子アレイ121Aによる回折作用なしで1次元光格子アレイ121Bに到達し、該一部の光は1次元光格子アレイ121Bの回折作用により回折光を形成し(図面において破線で示す)、該回折光は光導波路レンズ110の上下面の間で複数回の反射が生じることにより、
図14中のX軸方向に沿って拡張する。
【0078】
図15に示すように、1次元光格子アレイ121A、121Bの作用により形成された回折光は、光導波路レンズ110内において伝播する時、1次元光格子アレイ121A、121Bによる作用で一部が方位角を変える。方位角を変えた光成分は、光導波路レンズ110内で複数回反射され第2の2次元光格子アレイ122に到達する。
【0079】
導波路レンズ110内で光の双方向伝導が実現されるので、観察領域範囲が増大されると同時に、表示効率も向上された。
【0080】
図15を引き続き参照し、第2の2次元光格子アレイ122による作用で、一部の回折光は、透射式回折を形成すると同時に方位角を変えることにより、
図15中のZ軸方向に沿って光導波路レンズ110から出射または出射結合され、ユーザに拡張現実の画像を表示する。
【0081】
以上、本発明の原理と好ましい実施例について説明した。しかしながら、本発明は、検討された特定の実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。上記の好ましい実施例は、限定的なものではなく、説明的なものと考えるべきである。また、当業者は、以下の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態において変更することができることを理解すべきである。
【国際調査報告】