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特表2023-514795がんを処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-11
(54)【発明の名称】がんを処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230404BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230404BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K45/06
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61P35/00
C12N15/13 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551871
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020020846
(87)【国際公開番号】W WO2020180898
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/856,216
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/907,504
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519210572
【氏名又は名称】フュージョン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Fusion Pharmaceuticals Inc.
【住所又は居所原語表記】270 Longwood Road South Hamilton,Ontario L8P 0A6,Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カリー, グレーム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
(57)【要約】
本出願は、チェックポイントインヒビターとの組み合わせにおいてFGFR3インヒビターを使用して、がん(luminal型膀胱がんのような膀胱がんが挙げられる)を処置するための組成物、方法、およびキットを提供する。いくつかの実施形態において、上記がんは、野生型FGFR3を発現する。上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3インヒビター(例えば、アンタゴニスト的FGFR3抗体であり得る。上記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビター(PD1またはPD1リガンド(PD-L1)抗体(例えば、アンタゴニスト的PD1またはPD-L1抗体のような)が挙げられる)であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程を包含する方法。
【請求項2】
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量のアンタゴニスト的FGFR3インヒビターを、治療上有効な量のPD1インヒビターと組み合わせて投与する工程を包含する方法。
【請求項14】
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
野生型FGFR3を発現するがんを有する、必要とする被験体を処置する方法であって、前記方法は、
(a)前記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程;
(b)前記被験体が、前記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーを有するかまたはp53発現を有するかを決定する工程;
(c)前記工程(b)の決定に基づいて、
(i)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有しない場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および
(ii)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程、
を包含する方法。
【請求項22】
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記PD1インヒビターは、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択されるアンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記がんは、luminal型膀胱がんである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年3月1日出願の米国仮特許出願第62/812,929号、2019年6月3日出願の米国仮特許出願第62/856,216号、および2019年9月27日出願の米国仮特許出願第62/907,504号(これらの開示は、図面を含め、それらの全体において本明細書に参考として援用される)に基づく利益を主張する。
【0002】
配列表
本開示は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、その全体において参考として援用される配列表を含む。そのASCIIコピー(作成日:2020年3月3日)は、名称SequenceListing.txtであり、サイズが10キロバイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
尿路上皮細胞癌(UCC)-移行上皮癌(TCC)としても公知-は、尿路系(すなわち、腎臓、膀胱、および付属器官)において起こり、膀胱がんの最も一般的なタイプであり、全膀胱腫瘍のうちの90%を占める(Eble 2004)。それは、米国(US)において第5位の一般的ながん(Costantini 2011)、欧州において第4位の一般的ながん(Jemal 2011)であり;推定74,690件の新たな症例および15,580件の死亡が、米国で2014年に起こっており(American Cancer Society 2018)、推定136,000件の新たな症例および49,000件の死亡が、欧州で2009年に起こっている(Bellmunt 2009)。臨床研究および病理研究によって、膀胱の尿路上皮細胞癌(UCB)の2つのバリアントが同定されており、これは、別個の機構、低グレード乳頭バリアントおよび侵襲性腫瘍バリアントを介して生じる(Wu 2005; Vallot 2010)。上記低グレード乳頭バリアントは、全UCBのうちの80%を占め、尿路上皮過形成から生じる。この腫瘍タイプの5年生存率は、手術および膀胱内免疫療法で処置された場合、90%超である(American Cancer Society 2018)。上記侵襲性腫瘍バリアントは、UCBのうちの20%を表し、予後不良である。dose dense M-VAC(Sternberg 2001)またはゲムシタビン・シスプラチン(von der Maase 2000)のいずれかを伴うシスプラチンベースの化学療法は、侵襲性UCCの標準処置のままである。最初の奏効率が50~70%程度であるにもかかわらず、このがんは、代表的には急速に進行し、メジアン生存は約13~15ヶ月である(von der Maase 2000; Siefker-Radtke 2002)。UCCの新たな治療が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
必要とする被験体においてがん(例えば、転移性尿路上皮がん(mUC)のような膀胱がんおよび上部尿路上皮がんが挙げられる)を処置するある特定の実施形態および方法であって、治療上有効な量のFGFR3インヒビターおよび治療上有効な量のチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)を投与する工程を包含する実施形態および方法が、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3を結合する。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3のリガンド、例えば、FGF1、FGF2、またはFGF9を結合する。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1を含むCDR-H1、配列番号2を含むCDR-H2、配列番号3を含むCDR-H3、配列番号7を含む重鎖可変領域、配列番号9を含む重鎖、配列番号4を含むCDR-L1、配列番号5を含むCDR-L2、配列番号6を含むCDR-L3、配列番号8を含む軽鎖可変領域、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のうちの1またはこれより多くを含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト的抗体は、ボファタマブである。他の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、PRO-001およびIMC-D11からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、低分子汎FGFRインヒビターであり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記汎FGFRインヒビターは、インフィグラチニブ、AZD4547、LY2874455、ペミガチニブ、BGJ398、ロガラチニブ、PRN1371、Debio 1347、ARQ 087、およびJNJ-42756493からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1を結合する。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1のリガンド、例えば、PDL1またはPDL2を結合する。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、CT-011、MEDI-0680、およびRMP1-14からなる群より選択される。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1リガンド抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1リガンド抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される。
【0005】
ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)を含む組成物が、本明細書で提供される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記組成物は、薬学的組成物であり、ある特定の実施形態において、上記組成物は、1またはこれより多くの薬学的に受容可能なキャリアを含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3を結合する。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3のリガンド、例えば、FGF1、FGF2、またはFGF9を結合する。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1を含むCDR-H1、配列番号2を含むCDR-H2、配列番号3を含むCDR-H3、配列番号7を含む重鎖可変領域、配列番号9を含む重鎖、配列番号4を含むCDR-L1、配列番号5を含むCDR-L2、配列番号6を含むCDR-L3、配列番号8を含む軽鎖可変領域、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のうちの1またはこれより多くを含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト的抗体は、ボファタマブである。他の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、PRO-001およびIMC-D11からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、低分子汎FGFRインヒビターであり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記汎FGFRインヒビターは、インフィグラチニブ、AZD4547、LY2874455、ペミガチニブ、BGJ398、ロガラチニブ、PRN1371、Debio 1347、ARQ 087、およびJNJ-42756493からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1を結合する。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1のリガンド、例えば、PDL1またはPDL2を結合する。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、CT-011、MEDI-0680、およびRMP1-14からなる群より選択される。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1リガンド抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1リガンド抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される。
【0006】
ある特定の実施形態において、必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するがんを処置するための方法であって、上記方法は、上記被験体に、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程を包含する方法をが、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3を結合する。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3のリガンド、例えば、FGF1、FGF2、またはFGF9を結合する。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1を含むCDR-H1、配列番号2を含むCDR-H2、配列番号3を含むCDR-H3、配列番号7を含む重鎖可変領域、配列番号9を含む重鎖、配列番号4を含むCDR-L1、配列番号5を含むCDR-L2、配列番号6を含むCDR-L3、配列番号8を含む軽鎖可変領域、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のうちの1またはこれより多くを含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト的抗体は、ボファタマブである。他の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、PRO-001およびIMC-D11からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、低分子汎FGFRインヒビターであり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記汎FGFRインヒビターは、インフィグラチニブ、AZD4547、LY2874455、ペミガチニブ、BGJ398、ロガラチニブ、PRN1371、Debio 1347、ARQ 087、およびJNJ-42756493からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、上記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記PD1インヒビターは、PD1を結合する。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1のリガンド、例えば、PDL1またはPDL2を結合する。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、CT-011、MEDI-0680、およびRMP1-14からなる群より選択される。他の実施形態において、上記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD1リガンド抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記アンタゴニスト的PD1リガンド抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される。
【0007】
ある特定の実施形態において、野生型FGFR3を発現するがんを有する、必要とする被験体を処置するための方法であって、上記方法は、(a)上記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程、(b)上記被験体が上記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーを有するか、またはp53発現を有するかを決定する工程、(c)工程(b)の決定に基づいて、(i)上記被験体が上記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有さない場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、ならびに(ii)上記被験体が上記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を発現する場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程を包含する方法が、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である。ある特定の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである。ある特定の実施形態において、上記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択されるアンタゴニスト的PD-L1抗体である。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである。ある特定の実施形態において、上記がんは、luminal型膀胱がんである。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、少なくとも以下の遺伝子を含む: FGFR3、TP63、IRS1、SEMA4B、PTPN13、およびTMPRSS4。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、少なくとも以下の遺伝子を含む: KRT5、KRT6A、KRT6B、KRT14、UPK3A、UPK3B、FOXA1、およびPPARG。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、少なくとも以下の遺伝子を含む: ACTC1、ACTG2、NCC1、DES、FLNC、MFAP4、MYH11、およびPCP4。
【0008】
ある特定の実施形態において、膀胱がんの処置において使用するためのFGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)を含むキットが、本明細書で提供される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記キットは、使用説明書をさらに含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、膀胱がんの処置のための医薬の製剤化において使用するためのFGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)の使用が、本明細書で提供される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、1つの医薬に製剤化される。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、互いと組み合わせて投与される別個の医薬に製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ボファタマブ投与前および投与後の2つの予後クラスターを図示する、腫瘍の22のマッチした生検物に対して行った全トランスクリプトームRNAseqの結果を示す。クラスター1は、タイプがほとんどluminal型であり、応答者の大部分を含んだ。クラスター2は、性質がよりbasal型であり、予測奏効率と一致する臨床上の利益を示した。
【0011】
図2図2は、腫瘍の22のマッチした生検物に対して行った全トランスクリプトームRNAseqの結果を示す。basalサブタイプおよびluminalサブタイプを同定するために使用した遺伝子シグナチャーを、22の対になる腫瘍を分子サブタイプに割り当てるために使用した。
【0012】
図3図3は、ボファタマブ処置後の応答者における炎症経路および免疫経路の変更を示す。
【0013】
図4図4は、第2系統mUCにおけるボファタマブ+ペンブロリズマブの効果を調べるフェーズ1b/フェーズ2試験デザインの模式図である。
【0014】
図5図5は、WT 対 Mut/Fusに基づくフェーズ2試験においてRECIST 1.1評価可能患者の応答性を示す。
【0015】
図6図6は、応答者の免疫変化を示す。
【0016】
図7図7は、ボファタマブ(B-701)処置後のベースラインからの病変部の直径の概要(SoD)における変化を示すスパイダープロットである。このプロットは、ボファタマブが、腫瘍サイズにおける最初の見かけ上の増大、続いて、腫瘍容積の急激な低減を誘導するようであることを示す。
【0017】
図8図8は、膀胱がん分子サブタイプの新しい定義を図示する。
【0018】
図9図9は、分子サブグループに基づくフェーズ2試験におけるRECIST 1.1評価可能患者の応答性を示す。
【0019】
図10図10は、分子サブタイプと併用療法への応答との間の関連性を示す。
【0020】
図11図11は、分子サブグループによるフェーズ2試験における処置の継続期間を示す。
【0021】
図12図12は、luminalサブタイプを有する男性mUC患者におけるボファタマブおよびペンブロリズマブの併用処置の結果を示す。
【0022】
図13図13は、WT FGFR3患者 対 Mut/Fus患者の無増悪生存および全生存を示す。
【0023】
図14図14は、ボファタマブおよびペンブロリズマブの併用処置後の生存を示す。p53様腫瘍を有する患者(n=5)は、不十分な生存期間を示した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明の以下の説明は、本発明の種々の実施形態を例証することが意図されるに過ぎない。よって、考察される具体的改変は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。種々の等価物、変更、および改変が、本発明の範囲から逸脱することなくおこなれ得ることは当業者に明らかであり、このような等価な実施形態が本明細書に含まれるべきであることは、理解される。
【0025】
ヒトには、4種の1回膜貫通チロシンキナーゼ線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR1-4)が存在する(Brooks 2012)。FGFRは、多くのがんタイプにおいて、しばしば構成的活性化を付与する変異に起因して過剰発現され、治療介入の魅力的標的になる。例えば、FGFR2b抗体FPA144(FivePrime)は、固形腫瘍、特に胃がんの処置に関して現在開発中である。がん処置に関して早期開発中の他のFGFR2モノクローナル抗体としては、GP369(Aveo)およびHuGAL-FR21(Galaxy)が挙げられる(Zhao 2010; Bai 2010)。ヒト化抗FGFR4はまた、腫瘍増殖を阻害することが報告されている(Bumbaca 2011)。
【0026】
FGFR3は、発がん特性および腫瘍抑制特性の両方を有する。FGFR3は頻繁に、ある特定のがんにおいて変異されるが、いくらかの正常組織においても変異され、それは、細胞増殖を制限し得、細胞分化を促進し得る(Lafitte 2013)。ヒトFGFR3アンタゴニスト的モノクローナル抗体ボファタマブ(ときおり、B-701またはBM2ともいわれる)は、臨床開発に入った最初のFGFR3標的化抗体であった。ボファタマブの可変部分は、ファージディスプレイを通じて元々同定され、次いで、ヒトIgG1骨格と組換えられた。ボファタマブは、野生型および変異型両方のFGFR3(膀胱がんおよび軟骨無形成症において見出される最も多い変異(特に、FGFR3-IIIbR248C、FGFR3-IIIbK652E、FGFR3-IIIY375C、FGFR3-IIIbS249C、およびFGFR3-IIIbG372C)ならびにFGFR3 TACC3およびFGFR3 BAIAP2L1を含む遺伝子融合を含む)に高親和性であるが、他のFGFRと交差反応性を示さずに結合する。ボファタマブは以前、t(4:14)転座多発性骨髄腫を有する患者における安全に関して評価された(Clinical Trial NCT01122875)。臨床開発または前臨床開発中または開発されていた他のFGFR3インヒビター抗体としては、以下が挙げられる: PRO-001(Prochon)、IMC-D11(ImClone)、およびADC LY3076226(Eli Lilly)。がんおよび他の疾患を処置することにおける使用のためのさらなるFGFR3抗体は、例えば、米国特許第8,187,601(Aveo)号および同第7,498,416号(Fibron)に開示されている。
【0027】
プログラムされた細胞死タンパク質1(PD1)は、その2つのリガンドPDL1またはPDL2のいずれかによる活性化後に、組織内のT細胞エフェクター機能を制限するCD28スーパーファミリーに由来する免疫チェックポイントレセプターである(Pardoll 2012)。PD1は、抗原特異的T細胞においてアポトーシスを促進すると同時に、調節性(すなわち、サプレッサー)T細胞におけるアポトーシスを低減することによって、免疫系をダウンレギュレートする。ある特定の腫瘍細胞は、PD1のリガンドをアップレギュレートすることによって、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答を遮断する。PD1経路の遮断は、免疫系を活性化して、腫瘍を攻撃し、種々の腫瘍タイプにおける持続性の腫瘍退縮を誘導することが示された。よって、いくつかのPD1アンタゴニスト抗体は、現在承認されているかまたは臨床開発の種々の段階にある。例えば、完全ヒトIgG4モノクローナルPD1抗体であるニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers SquibbおよびOno Pharmaceutical;ONO-4538、BMS-936558、MDX-1106としても公知)は、もはや他の薬物に応答しない患者における非選択的または転移性の黒色腫んの処置に関して承認されている。ニボルマブはまた、種々の化学療法レジメンとの組み合わせにおいて、非小細胞肺がん(NSCLC)の処置に関して評価されている最中である。ヒト化IgG4 PD1抗体であるペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標), Merck;MK-3475としても公知)は、いくつかのタイプのがん(UCC、NSCLC、および黒色腫が挙げられる)の処置に承認されている。開発中の他のPD1抗体としては、CT-011(Curetech)およびMEDI-0680/AMP-514(AstraZeneca).が挙げられる。
【0028】
種々のPD1リガンド(PDL)抗体はまた、がん処置に関して開発中である。例えば、モノクローナルIgG1k PDL1抗体MEDI-4736(AstraZeneca)は、単独で、またはモノクローナルCTLA4抗体トレメリムマブ(AstraZeneca)またはMEDI-0680との組み合わせにおいてNSCLCの処置に関して現在開発中であり、モノクローナルIgG1k PDL1抗体RG7446(Roche)は、単独で、またはAvastin(登録商標)およびZelboraf(登録商標)との組み合わせにおいて種々のがんを処置することにおける使用に関して開発中であり、完全ヒトモノクローナルIgG4抗体BMS-936559/MDX-1105(BMS)は、NSCLCおよび他のがんタイプの処置に関して現在開発中であり、完全ヒトIgG1 PDL1抗体MSB0010718C(Merck Serono)は、種々のがんタイプの処置に関して開発中であり、Fc改変モノクローナルIgG1抗体MPDL3280A(Genentech)は、NSCLCの処置に関して現在開発中である。
【0029】
本明細書で提供される実験結果に示されるように、FGFR3インヒビターであるボファタマブは、TH1応答および免疫機能における重要なシグナル伝達分子と関連する遺伝子の活性化を誘導することが示されている。これらの結果は、ボファタマブが、免疫細胞トラフィッキング経路と関連する遺伝子を活性化することを示唆する。その結果はまた、ボファタマブが、mUCを有する患者を、ボファタマブおよびチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)との併用処置に対するluminal生物学で感作することを示唆する。本明細書で提供される結果は、がん関連線維芽細胞と関連する遺伝子シグナチャーが、ボファタマブおよびチェックポイントインヒビターの併用に対する耐性と関連するようであること、およびp53様腫瘍を有する患者がまた、併用処置に対する耐性を示したことをさらに示す。これは、がん関連線維芽細胞遺伝子シグナチャーを示すか、またはp53様腫瘍を有する患者が、第3の薬剤、例えば、抗線維化剤(anti-fibrotic agent)をさらに含む併用療法の候補であり得ることを示唆する。
【0030】
ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターを投与する工程を包含する、必要とする被験体においてがんを処置する方法が、本明細書で提供される。必要とする被験体においてがんを処置するためにPD1インヒビターの有効性を増大させる方法であって、上記方法は、FGFR3インヒビターを投与する工程を包含する方法、ならびに必要とする被験体においてがんを処置するためにFGFR3インヒビターの有効性を増大させる方法であって、上記方法は、PD1インヒビターを投与する工程を包含する方法がまた、本明細書で提供される。PD1またはFGFR3インヒビターの有効性の増大とは、いずれかのインヒビターの治療効果の増大、必要とされる投与量、投与頻度、もしくは治療効果の特定のレベルを得るためのいずれかのインヒビターの投与間隔の減少、またはこれらのいくつかの組み合わせに言及し得る。
【0031】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される方法は、固形腫瘍、すなわち、不連続の腫瘍塊を形成するがんを処置するために使用される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記処置されているがんは、膀胱がん(例えば、転移性膀胱がん(mUC)または上部尿路上皮がんが挙げられる)である。
【0032】
用語「処置する(treat)、「処置する(treating)」、および「処置(treatment)」とは、固形がんに関して本明細書で使用される場合、腫瘍増殖の部分的もしくは完全な阻害、腫瘍サイズの縮小、完全もしくは部分的な腫瘍根絶、悪性増殖の低減もしくは防止、がん細胞の部分的もしくは完全な根絶、またはこれらのいくつかの組み合わせに言及し得る。語句「患者(patient)」および「被験体(subject)」は、本明細書で交換可能に使用される。
【0033】
「必要とする被験体(subject in need thereof)」とは、本明細書で使用される場合、がんと診断された、がんを有すると疑われる、および/またはがんと関連する1もしくはこれより多くの症状を示す哺乳動物被験体、好ましくは、ヒトに言及する。ある特定の実施形態において、上記被験体は、がんの処置のために以前受容された1またはこれより多くの治療介入、例えば、化学療法を有し得る。
【0034】
「FGFR3インヒビター(FGFR3 inhibitor)」とは、本明細書で使用される場合、FGFR3の活性を部分的にまたは完全に、のいずれかで阻害する任意の分子に言及する。FGFR3インヒビターは、FGFR3を特異的に阻害してもよいし、FGFR3に加えて、他のタンパク質の活性を阻害してもよい。例えば、FGFR3インヒビターは、他のFGFRの活性も阻害し得る。ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターは、間接的な免疫調節活性を示し得る。例えば、FGFR3インヒビターは、例えば、TNFαまたはIFNγの発現および/または活性を変化させることによって、免疫細胞トラフィッキング経路に対して間接的な効果を有し得る。
【0035】
「アンタゴニスト抗体(antagonist antibody)」とは、本明細書で使用される場合、いずれかの分子上の結合部位および/またはアロステリック部位において、レセプターまたはその同族リガンドへの物理的結合によって、レセプターとその同族リガンドとの間の相互作用を低減する、防止する、またはそうでなければ阻害する抗体に言及する。いくつかの実施形態において、上記アンタゴニスト抗体は、上記同族リガンドによるレセプター活性の生物学的調節に他の点で関与しない特有の結合部位において相互作用する。従って、アンタゴニスト抗体は、上記レセプターまたは上記同族リガンドに対して親和性を有するが、上記レセプターへの上記同族リガンド結合と比較して、いったん結合されると生物的応答を促進するにあたって有効性を有しない。アンタゴニスト抗体の結合は、それによって、上記レセプターと上記同族リガンドとの間の相互作用を妨げ、別の点では、アゴニストの機能を阻害する。
【0036】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3への結合によってFGFR3活性を阻害する。このようなFGFR3インヒビターの例としては、例えば、アンタゴニスト的FGFR3抗体またはその融合タンパク質、上記FGFR3リガンドの不活性形態(例えば、FGFR3リガンドの短縮型または別の方法で変異された形態)またはその融合タンパク質、低分子、siRNA、およびアプタマーが挙げられる。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3を特異的に結合する。これは、上記インヒビターが、他のFGFRへの結合をほとんどまたは全く示さないことを意味する。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3に加えて、1またはこれより多くのFGFRを結合する。
【0037】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の好ましい実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3アンタゴニスト抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、FGFR3を特異的に結合する。用語「抗体(antibody)」とは、本明細書で使用される場合、特異的抗原(例えば、FGFR3またはPD1)に結合する免疫グロブリン分子またはその免疫学的に活性な部分に言及する。本発明の方法、組成物、およびキットにおける使用のための抗体が全長免疫グロブリン分子であるそれら実施形態において、上記抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖であって、各重鎖および軽鎖が、3個の相補性決定領域(CDR)を含むものを含む。上記抗体が免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分であるそれら実施形態において、上記抗体は、例えば、Fab、Fab’、Fv、Fab’、F(ab’)2、ジスルフィド連結したFv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、またはダイアボディーであり得る。本発明の方法、組成物、およびキットにおける使用のための抗体としては、天然の抗体、合成抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、多重特異的抗体、二重特異的抗体(bispecific antibodies)、二重特異的抗体(dual-specific antibodies)、抗イディオタイプ抗体、または特異的抗原(例えば、FGFR3またはPD1)を結合する能力を保持するこれらのフラグメントが挙げられ得る。例示的な抗体としては、IgA、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgMなどが挙げられる。本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の好ましい実施形態において、FGFR3抗体は、IgG2抗体である。
【0038】
ある特定の実施形態において、本発明の方法、組成物、およびキットにおける使用のためのFGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号1~3に示される配列を有する1またはこれより多くの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、これらのCDR配列のうちの全3個を含み、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号5~7に示される配列を有する1またはこれより多くのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、これらのCDR配列のうちの全3個を含み、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号1~3および5~7に示される全6個のCDR配列を含み、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3アンタゴニスト抗体は、配列番号4の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記抗体は、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含むボファタマブである。配列番号7に示される可変領域に加えて、配列番号9の重鎖は、ヒトIgG1を構成する。同様に、配列番号10の軽鎖は、配列番号8に示される可変領域およびヒトIgκ鎖C(UniProt P01834)を含む。
【0039】
配列番号1 (H1-CDR): GFTFTSTGIS.
【0040】
配列番号2 (H2-CDR): GRIYPTSGSTNYADSVKG.
【0041】
配列番号3 (H3-CDR): ARTYGIYDLYVDYTEYVMDY.
【0042】
配列番号4 (L1-CDR): RASQDVDTSLA.
【0043】
配列番号5 (L2-CDR): SASFLYS.
【0044】
配列番号6 (L3-CDR): QQSTGHPQT.
【0045】
配列番号7:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTSTGISWVRQAPGKGLEWVGRIYPTSGSTNYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARTYGIYDLYVDYTEYVMDYWGQGTLV.
【0046】
配列番号8:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVDTSLAWYKQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSTGHPQTFGQGTKVEIKR.
【0047】
配列番号9:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTSTGISWVRQAPGKGLEWVGRIYPTSGSTNYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARTYGIYDLYVDYTEYVMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK.
【0048】
配列番号10:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVDTSLAWYKQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSTGHPQTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC.
【0049】
他の実施形態において、本発明の方法、組成物、およびキットにおける使用のためのFGFR3アンタゴニスト抗体は、PRO-001、IMC-D11、または米国特許第8,187,601号(Aveo)もしくは同第7,498,416号(Fibron)で開示されるとおりのFGFR3アンタゴニスト的抗体であり得る。ある特定の実施形態において、本発明の方法、組成物、およびキットにおける使用のためのFGFR3アンタゴニスト抗体は、凍結乾燥され得る。
【0050】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、FGFR3のリガンド、例えば、FGF1、FGF2、またはFGF9への結合によって、FGFR3活性を阻害する。このようなFGFR3インヒビターの例としては、例えば、FGFR3リガンドを特異的に結合する抗体またはその融合タンパク質、FGFR3細胞外ドメインの全てもしくは一部を含むFGFR3の可溶性形態またはその融合タンパク質、下流のシグナル伝達に必要とされる細胞内ドメインの全てもしくは一部を欠くFGFR3の短縮化形態またはその融合タンパク質、低分子、siRNA、およびアプタマーが挙げられる。
【0051】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、汎FGFRインヒビターであり、これは、汎FGFRインヒビターが、FGFR3に加えて、1またはこれより多くのFGFRに結合しその活性を阻害することを意味する。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3インヒビターは、インフィグラチニブ(BGJ398, Novartis)、AZD4547(AstraZeneca)、LY2874455(Eli Lilly)、Debio 1347(Debiopharm)、ARQ 087(ArQule)、JNJ-42756493(Janssen)、およびPRN1371(Principia)からなる群より選択される低分子汎FGFRインヒビターであり得る。
【0052】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、下流のチロシンキナーゼ活性を遮断することによって、FGFR3活性を阻害する。例えば、非選択的チロシンキナーゼインヒビター(例えば、ドビチニブ(dovitinib)、ルシチニブ(lucitinib)、ポナチニブ、ニンテダニブ、ポナチニブ、またはENMD-2076)は、FGFR3インヒビターとして利用され得る。
【0053】
「PD1インヒビター(PD1 inhibitor)」とは、本明細書で使用される場合、PD1の活性を、部分的にまたは完全に、のいずれかで阻害する任意の分子に言及する。PD1インヒビターは、PD1を特異的に阻害してもよいし、PD1に加えて、他のタンパク質の活性を阻害してもよい。例えば、PD1インヒビターはまた、他の免疫チェックポイント分子の活性を阻害してもよい。
【0054】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1への結合によって、PD1活性を阻害する。このようなPD1インヒビターの例としては、例えば、アンタゴニスト的PD1抗体またはその融合タンパク質、PD1リガンドの不活性形態(例えば、PDL1もしくはPDL2の短縮化もしくはそうでなければ変異形態)またはその融合タンパク質(例えば、AMP-224(GlaxoSmithKline, Amplimmune))、低分子、siRNA、およびアプタマーが挙げられる。
【0055】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記PD1アンタゴニスト抗体は、PD1を特異的に結合する。ある特定の実施形態において、上記PD1アンタゴニスト的抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、CT-011、MEDI-0680、およびRMP1-14からなる群より選択される。
【0056】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1の1またはこれより多くのリガンド(すなわち、PDL1またはPDL2)への結合によって、PD1活性を阻害する。このようなPD1インヒビターの例としては、例えば、PD1リガンド抗体またはその融合タンパク質、PD1細胞外ドメインの全てもしくは一部を含むPD1の可溶性形態またはその融合タンパク質、下流のシグナル伝達に必要とされる細胞内ドメインの全てもしくは一部を欠くPD1の短縮化形態またはその融合タンパク質、低分子、siRNA、およびアプタマーが挙げられる。
【0057】
本明細書で提供される方法、組成物、およびキットのある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、PD1リガンド抗体であり、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記PD1リガンド抗体は、上記PD1リガンドを特異的に結合する。ある特定の実施形態において、上記PD1リガンド抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される。
【0058】
本明細書で提供される方法のある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、同じ組成物の一部として一緒に投与される。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、別個に、すなわち、別個の組成物として投与される。これらの実施形態において、上記インヒビターは、同時にまたは順次投与されてもよく、同じ投与経路または異なる投与経路を介して投与されてもよい、上記インヒビターが順次投与されるそれら実施形態において、それらは、同じ間隔または異なる間隔で投与されてもよい。例えば、一方のインヒビターは、他方より頻繁に投与されてもよいし、より長い過程にわたって投与されてもよい。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、一方のインヒビターは、第2のインヒビターの第1の投与より前に。1またはこれより多くの回数、投与されてもよい。第2のインヒビターの投与が開始される場合、第1のインヒビターの投与は、第2のインヒビターの投与の過程の全てまたは一部にわたって中止または継続されてもよい。上記FGFR3インヒビターがFGFR3アンタゴニスト抗体であるある特定の実施形態において、上記抗体は、1日あたり2回またはこれより多く、毎日、1週間あたり2回またはこれより多く、1週間に1回、2週間に1回(すなわち、隔週)、3週間に1回、または1ヶ月に1回投与され得る。ある特定の実施形態において、上記抗体は、1週間に1回、2週間に1回、または3週間に1回投与される。上記PD1インヒビターがPD1アンタゴニスト抗体である、ある特定の実施形態において、上記抗体は、1日あたり2回またはこれより多く、毎日、1週間あたり2回またはこれより多く、1週間に1回、2週間に1回(すなわち、隔週)、3週間に1回、または1ヶ月に1回投与され得る。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、2週間に1回投与される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよび/または上記PD1インヒビターは、予め決定された特定の過程にわたって投与され得る。例えば、上記FGFR3および/またはPD1インヒビターは、1日間、2日間、1週間、2週間、4週間、または8週間という過程にわたって投与され得る。他の実施形態において、上記FGFR3および/またはPD1インヒビターは、無期限に、または具体的な治療上のベンチマークが達成されるまで投与され得る。例えば、上記FGFR3および/またはPD1インヒビターは、腫瘍増殖が停止もしくは改善されるまで、1もしくはこれより多くの腫瘍が排除されるまで、またはがん細胞の数が特定のレベルに低減されるまで投与され得る。
【0059】
組成物の「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」は、本明細書で使用される場合、がんを処置中であるような被験体において所望の治療効果を生じる組成物の量である。ある特定の実施形態において、上記治療上有効な量は、最大治療効果を生じる組成物の量である。他の実施形態において、上記治療上有効な量は、最大治療効果未満である治療効果を生じる。例えば、治療上有効な量は、最大治療効果を生じる投与量と関連する1またはこれより多くの副作用を回避すると同時に、治療効果を生じる量であり得る。特定の組成物に関する治療上有効な量は、種々の要因(治療用組成物の特徴(例えば、活性、薬物動態、薬力学、およびバイオアベイラビリティー)、被験体の生理学的状態(例えば、年齢、体重、性別、疾患タイプおよびステージ、医療歴、全身的な身体的状態、所定の投与量に対する応答性、および他の現在の薬物療法)、組成物中の任意の薬学的に受容可能なキャリアの性質、ならびに投与経路が挙げられるが、これらに限定されない)に基づいて変動する。臨床分野および薬理学分野の当業者は、慣用的な実験を通じて、すなわち、組成物の投与への被験体の応答をモニターし、それに応じて投与量を調節することによって、治療上有効な量を決定し得る。さらなるガイダンスについては、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第22版, Pharmaceutical Press, London, 2012、およびGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第12版, McGraw-Hill, New York, NY, 2011(これらの開示全体は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0060】
本明細書で提供される方法のある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターまたはPD1インヒビターの治療上有効な量は、上記分子が、単剤療法として、すなわち、単独で投与される場合に治療応答(例えば、腫瘍増殖の低減または排除)を生成し得る投与量であり得る。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記治療上有効な量は、がん処置に最適またはほぼ最適であることが以前に決定された投与量であり得る。例えば、上記FGFR3インヒビターがボファタマブである場合、上記抗体は、2~4週間ごとに約10~50mg/kgの投与量で投与され得、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記抗体は、2~4週間ごとに約20~40mg/kgの投与量で、または3週間ごとに約30mg/kgの投与量で、投与され得る。他の実施形態において、FGFR3インヒビターまたはPD1インヒビターの治療上有効な量は、上記分子が単剤療法としての使用のために通常投与される投与量より低くてもよい(すなわち、最適未満の用量)。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、FGFR3またはPD1インヒビターの最適未満の投与量の投与は、単独で投与される場合の標準的投与量に対して、減少した副作用を生じ得る。例えば、FGFR3またはPD1インヒビターの最適未満の投与量の投与は、いずれかのインヒビター単独の最適投与量の投与に対して、掻痒、大腸炎、または肺炎の発生または重篤度の減少を生じ得る。ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターのうちの一方は、単独で投与される場合のがん処置に最適であると決定された投与量において投与され得る一方で、他方は、単独で投与される場合の処置の最適未満である投与量で投与される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターまたはPD1インヒビターの投与量は、処置レジメンの過程にわたって変化し得る。例えば、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターのうちの一方または両方は、処置の開始時により高い投与量で投与され得(例えば、負荷フェーズ)、続いて、処置において、後により低い投与量で投与され得る。
【0061】
FGFR3インヒビター、PD1インヒビター、またはFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターの両方を含む組成物は、当該分野で公知の任意の投与経路(非経口、経口、エアロゾル、経腸、鼻、眼科的、非経口、または経皮(例えば、局所クリーム剤または軟膏、パッチ)が挙げられるが、これらに限定されない)によって被験体に送達され得る。「非経口(parenteral)」とは、注射と概して関連付けられる投与経路(静脈内、腹腔内、皮下、眼窩下、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、肺内、髄腔内、胸骨内、気管内、子宮内、くも膜下、被膜下、経粘膜、または経気管が挙げられる)に言及する。上記FGFR3インヒビターがFGFR3アンタゴニスト抗体(例えば、ボファタマブが挙げられる)である、ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、静脈内投与される。上記PD1インヒビターがPD1アンタゴニスト抗体である、ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、腹腔内投与される。
【0062】
ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビター、PD1インヒビター、またはFGFR3およびPD1インヒビターの両方を含む組成物は、経口投与単位(例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤のような)へと形成され得る。ある特定の実施形態において、FGFR3インヒビター、PD1インヒビター、またはFGFR3およびPD1インヒビター組成物は、時間放出送達ビヒクル(例えば、時間放出カプセル剤のような)を介して投与され得る。「時間放出ビヒクル(time release vehicle)」とは、本明細書で使用される場合、投与の際に直ちにではなく、ある期間にわたって活性薬剤を放出する任意の送達ビヒクルに言及する。他の実施形態において、FGFR3インヒビター、PD1インヒビター、またはFGFR3およびPD1インヒビター組成物は、即時放出送達ビヒクルを介して投与され得る。
【0063】
本明細書で提供される方法のある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターを受容する被験体は、FGFR3およびPD1インヒビターでの処置の前、処置の間、または処置の後に、さらなる治療(例えば、化学療法または免疫療法が挙げられる)、または第3の薬剤(例えば、抗線維化剤)を受容し得る。上記被験体がFGFR3およびPD1インヒビターでの処置の間にさらなる治療を受容するそれら実施形態において、上記さらなる治療は、上記FGFR3インヒビターおよび/またはPD1インヒビターと同時にまたは順次投与され得る、
【0064】
ある特定の実施形態において、治療上有効な量のFGFR3インヒビターおよび治療上有効な量のPD1インヒビターを含む組成物が、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、これらの組成物は、1もしくはこれより多くの薬学的に受容可能なキャリアをさらに含むか、または1もしくはこれより多くの薬学的に受容可能なキャリアとの投与のために製剤化される。本明細書で開示される方法を行うことにおける使用のための、例えば、がんを処置するためのFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターを含むキットがまた、本明細書で提供される。
【0065】
本明細書で提供される組成物およびキットのある特定の実施形態において、FGFR3インヒビターまたはPD1インヒビターは、単独で投与される場合に、治療応答を生じ(例えば、腫瘍増殖を低減または排除し)得る投与量において、上記組成物またはキットに存在し得る。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3またはPD1インヒビターは、がん処置に最適またはほぼ最適であることが以前に決定された投与量で存在し得る。例えば、上記FGFR3インヒビターがボファタマブである場合、上記組成物またはキットは、上記被験体に対して約10~50mg/kgのボファタマブの投与量を送達するために製剤化され得、これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記組成物またはキットは、上記被験体に対して約20~40mg/kgまたは約30mg/kgのボファタマブの投与量を送達するために製剤化され得る。他の実施形態において、上記FGFR3またはPD1インヒビターは、これががん処置のための組成物またはキット中に通常存在するより低い投与量で存在し得る(すなわち、最適未満の用量)。
【0066】
「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、本明細書で使用される場合、身体の1つの組織、器官、または部分から身体の別の組織、器官、または部分へと、目的の化合物または分子を運ぶかまたは輸送することに関与する薬学的に受容可能な物質、組成物、またはビヒクルに言及する。薬学的に受容可能なキャリアは、種々の構成要素(液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、緩衝化剤、被包化物質、界面活性剤、安定化剤、結合剤、もしくは顔料、またはこれらのいくつかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。上記キャリアの各構成要素は、これが上記組成物の他の成分と適合性でなければならず、かつこれが遭遇し得る身体の任意の組織、器官、または部分との接触に適切でなければならないという点で、「薬学的に受容可能」でなければならず、このことは、上記キャリアの各構成要素が、その治療上の利益を過度に上回る毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または任意の他の合併症のリスクを有してはならないことを意味する。
【0067】
本明細書で提供される組成物とともに使用され得る薬学的に受容可能なキャリアの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: (1)糖(例えば、ラクトース、グルコース、スクロース、またはマンニトール);(2)デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン);(3)セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤用ワックス);(9)油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油);(10)グリコール(例えば、プロピレングリコール);(11)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);(12)エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル(ethyl aurate));(13)崩壊剤(例えば、アガーまたは炭酸カルシウム);(14)緩衝化剤またはpH調節剤(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カルシウム、およびリン酸緩衝液);(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)アルコール(例えば、エチルアルコールおよびプロパンアルコール);(20)パラフィン;(21)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、またはラウリル硫酸ナトリウム);(22)着色剤または顔料;(23)滑剤(例えば、コロイド性二酸化ケイ素、タルク、およびデンプンまたは三塩基性リン酸カルシウム);(24)薬学的組成物において使用される他の非毒性適合性物質(例えば、アセトン);ならびに(25)これらの組み合わせ。
【0068】
FGFR3インヒビター、PD1インヒビター、またはFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターの組み合わせを含む組成物は、適切な投与形態(例えば、水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁物、水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョン、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ、散剤、粒剤、エリキシル剤もしくはシロップ剤、または香錠が挙げられる)へと製剤化され得る。ある特定の実施形態において、上記組成物は、時間放出送達ビヒクル(例えば、時間放出カプセル剤のような)として製剤化され得る。「時間放出ビヒクル」とは、本明細書で使用される場合、投与の際に直ちにではなく、ある期間にわたって活性薬剤を放出する任意の送達ビヒクルに言及する。他の実施形態において、上記組成物は、即時放出送達ビヒクルを介して製剤化され得る。
【0069】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される方法を行うためのキットが、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるキットは、FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターを含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、単一の組成物でキットに存在し得る。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、別個の組成物中に存在し得る。上記キットは、さらなる治療用または非治療用の組成物を含み得る。ある特定の実施形態において、上記キットは、有形媒体の中に説明書を含む。
【0070】
ある特定の実施形態において、がんの処置における使用のためのFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターが、本明細書で提供される。PD1インヒビターとの組み合わせでのがんの処置における使用のためのFGFR3インヒビター、およびFGFR3インヒビターとの組み合わせでのがんの処置における使用のためのPD1インヒビターが、本明細書で提供される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記がんは、尿路上皮がん(例えば、mUC)である。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記がんは、luminal型膀胱がんである。例えば、ある特定の遺伝子シグナチャーを有するがんの処置を必要とする被験体は、本開示のFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターでの処置の候補であり得る。別の例として、別のある特定の遺伝子シグナチャーを有するがんの処置を必要とする被験体は、本開示のFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターでの処置の候補でなくてもよく、むしろ本開示の第3の薬剤を含む処置を有してもよい。いくつかの実施形態において、上記別のある特定の遺伝子シグナチャーは、がん関連線維芽細胞と関連する遺伝子シグナチャー、およびp53様腫瘍を含む。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、FGFR3遺伝子シグナチャーであり、少なくとも以下の遺伝子: FGFR3、TP63、IRS1、SEMA4B、PTPN13、およびTMPRSS4を含む。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、p53様遺伝子シグナチャーであり、少なくとも以下の遺伝子: KRT5、KRT6A、KRT6B、KRT14、UPK3A、UPK3B、FOXA1、およびPPARGを含む。ある特定の実施形態において、上記遺伝子シグナチャーは、がん関連線維芽細胞(CAF)遺伝子シグナチャーであり、少なくとも以下の遺伝子: ACTC1、ACTG2、NCC1、DES、FLNC、MFAP4、MYH11、およびPCP4を含む。
【0071】
ある特定の実施形態において、野生型FGFR3を発現するがんを有する、必要とする被験体を処置するための方法であって、上記方法は、(a)上記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーまたはp53発現に関してスクリーニングする工程、(b)上記被験体が1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーを有するか、またはp53発現を有するかを決定する工程、(c)工程(b)の決定に基づいて、(i)上記被験体が上記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有しない場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および(ii)上記被験体が遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程を包含する方法が、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である。ある特定の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態において、上記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである。ある特定の実施形態において、上記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択されるアンタゴニスト的PD-L1抗体である。ある特定の実施形態において、上記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである。ある特定の実施形態において、上記がんは、luminal型膀胱がんである。
【0072】
ある特定の実施形態において、がんを処置するための医薬の製造におけるFGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターの使用が、本明細書で提供される。PD1インヒビターとの組み合わせにおいてがんを処置するための医薬の製造におけるFGFR3インヒビターの使用、およびFGFR3インヒビターとの組み合わせにおいてがんを処置するための医薬の製造におけるPD1インヒビターの使用がまた、本明細書で提供される。
【0073】
用語「約(about)」とは、本明細書で使用される場合、述べられた値または値の範囲の10%以内を意味する。
【0074】
当業者は、本明細書で記載される種々の実施形態が、組み合わされ得ることを認識する。例えば、本明細書で開示される処置の種々の方法からの工程は、処置の満足のいくレベルまたは改善されたレベルを達成するために組み合わされ得る。
【0075】
前述から、本発明の特定の実施形態が例証のために本明細書で記載されているが、種々の改変が本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、認識される。よって、本発明は、添付の請求項によるとおり以外に限定されない。
【0076】
以下の実施例は、特許請求される発明をよりよく例証するために提供され、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及される程度まで、実施例は例証を目的とするに過ぎず、本発明を限定することは意図されない。当業者は、発明能力の行使なしに、および本発明の範囲から逸脱することなく、等価な手段または反応物を開発し得る。多くのバリエーションが本明細書で記載される手順において行われ得ると同時に本発明の境界内になお留まることは、理解される。このようなバリエーションが、本発明の範囲内に含まれることは、本発明者らの意図である。
【実施例
【0077】
実施例1: ボファタマブおよびペンブロリズマブでの併用療法で処置された野生型および変異FGFR3転移性尿路上皮がんにおける遺伝子発現プロフィール
転移性尿路上皮がん(mUC)を有する患者の中で、FGFR3変異(mutFGFR3)は、膀胱がん患者のうちの15~20%および上部尿路がんのうちのおよそ35%に存在する。研究から、これらの腫瘍が、免疫療法に対してよりFGFR阻害に対してより良好に応答し得ることが示唆される。
【0078】
mUCの以前の処置に失敗した患者を、ボファタマブで処置した。患者を、処置前および処置の14日後に生検をして、ボファタマブの負荷用量(25mg/kg)で処置し、続いて、mutFGFR3または遺伝子注入ありおよびなしの患者のコホートに、ペンブロリズマブでの併用療法を行った。コア生検物(2×18Gまたは3~4×20G)を、10% 中性緩衝化ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋した。次いで、上記生検のコアを、これらのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルのパラフィンブロックから単離した。
【0079】
DNAおよびRNAを、Ion Torrent platformで全トランスクリプトームRNAseqおよびDNA配列決定のためにサンプルから単離した。全トランスクリプトームRNAseqを、Ion Torrent’s AmpliSeqRNAプラットフォーム(Thermo Fisher, Inc.)およびIon Proton sequencer(Thermo Fisher, Inc)を使用して、処置前のおよび処置後の生検物をマッチさせて、22名の患者(17名はWT、5名はMut Fusion)に由来するサンプルに対して行った。次いで、RNAを、SuperScript(登録商標) VILOTMキットを使用して、cDNAへと転写した。cDNAを、Ion Ampliseq Transcriptome Human Gene Expression Coreパネルを使用して増幅し、続いて、アンプリコンへのアダプターおよびバーコードのライゲーションならびに精製を行った。精製したライブラリーを、Ion Library Quantificationキット(Thermo Fisher, Inc.)を使用して定量した。次いで、ライブラリーを100pMへと希釈し、プールし、エマルジョンPCRを使用してIon SphereTM粒子(ISP)上で増幅させ、IonChef(Thermo Fisher, Inc)に対して富化した。テンプレート陽性ISPを、その後、Ion PIチップへと載せ、Proton機器で実行した。がん関連遺伝子の標的化DNA配列決定を、AmpliSeq Comprehensive Cancerパネル(409腫瘍抑制遺伝子およびFGFR3を含むがん遺伝子)またはIon AmpliSeqTM Cancer Hotspotパネル v2を使用して行った。
【0080】
RNA-Seq遺伝子発現分析を、Torrent Suite SoftwareにおいてAmpliSeqRNA分析プラグインを使用して行った。このプラグインは、生の配列リードを、Torrent Mapping Alignment Program(TMAP)を使用して、20,802 RefSeq転写物を含むヒト参照ゲノム(hg19 Ampliseq Transcriptome_ERCC_V1.fasta)に対して整列させる。次いで、1遺伝子あたりにマッピングされたリードの数を計数して、生のカウントファイルを生成し、1遺伝子あたりのリードを、100万個のマップされた遺伝子あたり(RPM)のファイルに正規化した。腫瘍サブタイプ割り当てを、MD Anderson 1近傍法(oneNN)分類子を使用して行った。8個の腫瘍が部分奏効(PR)を示し、4個が病状安定化(SD)を示し、7個が症状進行(PD)を示し、3個が分類されなかった(図1)。
【0081】
処置前腫瘍と処置後腫瘍との間で差次的発現(DE)に関する試験を行うために、BioconductorパッケージDESeqと負の二項回帰モデル(Negative Binomial model)とを使用した。Benjamini-Hochberg法を使用して、偽発見率(FDR)を制御した。ベースライン組織の目的変数なしのクラスター分析(unsupervised cluster analysis)から、2つのクラスターの存在が明らかになった: クラスター1は、クラスター2(2個のPR、4個のSD、6個のPD)と比較して、応答者(6個のPR、1個のSD)に関して富化された(図1)。クラスター1および2に由来する有意に差次的に発現された遺伝子を抽出し、Ingenuity Pathway Analysis(Sigma)によって分析した。
【0082】
経路分析を行うために、免疫浸潤の公開された遺伝子発現シグナチャー特性、炎症性細胞トラフィッキング、IFN経路活性か、TH1経路活性化、およびFGFR3遺伝子発現シグナチャーを評価した。機能分析および経路分析を、ゲノムデータにおいて目的のネットワークおよび経路を同定するためのデータベースを含む、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェア(Ingenuity(登録商標) Systems, CA)を使用して行った。IPA内の「上流の調節因子における分子タイプとしての転写因子(transcriptional factors as molecule type in upstream regulator)」カテゴリーを使用して、膀胱腫瘍サブタイプの生物学的特性を解釈した。上流の調節因子分析のために、IPAは、重複p値(overlap p value)および活性化zスコアに関する統計分析を行う。IPA知識データベースに基づいて、p値およびzスコアを、各転写因子のどの程度多くの標的が重複しているか(p値)および遺伝子リスト中の標的の既知の効果(活性化または阻害)の一致の程度(zスコア)に基づいて計算し得る。
【0083】
basalおよびluminalサブタイプを同定するために使用される遺伝子シグナチャーを、22個の対化した腫瘍を分子サブタイプに割り当てるために、ベースライン組織に対して使用した(図2)。応答する腫瘍のうち、6個がluminalであり、2個がbasalであった(図2);Denrauer 2014もまた参照のこと。応答者における差次的発現分析は、ボファタマブが、炎症および免疫経路、ならびに免疫細胞トラフィッキングに影響を与えることを示した(図3)。
【0084】
まとめると、これらのデータは、luminal生物学が、mutFGFR3の存在または非存在にかかわらず、ボファタマブおよびペンブロリズマブでの併用処置に対して被験体を感作し得ることを示す。このことは、wtFGFR3 mUCにおけるこの組み合わせの役割を示唆する。basal生物学を有する腫瘍に対するその組み合わせの効果はまた、有効性を確認した。これらの生物学的効果はまた、早期ステージ膀胱がん、例えば、筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)において重要であり得る。ボファタマブが免疫細胞トラフィッキングに対して効果を有する場合、それはまた、BCG処置後またはBCG処置との組み合わせのいずれかにおいて、NMIBCでの利益を示し得る。
【0085】
実施例2: mUCを有する被験体におけるボファタマブ単剤療法およびペンブロリズマブとの併用療法の臨床評価
FIERCE-22フェーズ1b/2臨床試験を、ペンブロリズマブとの組み合わせにおけるボファタマブを評価するためにデザインした。図4は、その試験の模式図を示す。被験体は、生検前および生検後を対にして、2週間の導入期間にわたってボファタマブ単剤療法を受け、続いて、併用療法を開始した。導入期間後、併用療法を開始した。
【0086】
最初の中間分析を、26名の患者の登録後に計画した。28名の患者が試験に登録した。2回目の中間分析を、52名の患者の登録後に計画する。登録の資格を得るために、mUC患者は、抗PD-/L1ナイーブであるとともに、測定可能な疾患、2より大きいECOG、および以前の白金ベースの化学療法の1またはこれより多くの系統に際しても進行する、または(ネオ)補助化学療法の12ヶ月間以内の再発が必要であった。最初の28名の患者の人数構成および処置履歴を、表1に示す。
表1: ベースライン人数構成および処置履歴:
【表1】
【0087】
主要エンドポイントは、安全性および有効性であった。全奏功率(ORR)を、RECIST 1.1を使用して調査者が評価した。任意の生検した病変は、非標的とみなして評価を開始した。最初の28名の患者の性質を、表2に示す。メジアン処置曝露を、患者の大部分は8回またはこれより多くの処置サイクルを開始して延長した。
表2: 性質-フェーズ2:
【表2】
* 貧血増悪および気管気管支炎
【0088】
フェーズ2の最初の28名の患者の臨床応答を表3に示し、RECIST 1.1からの評価可能な集団の臨床応答を表4に示す。
表3: 臨床応答-フェーズ2:
【表3】
表4: 臨床応答-RECIST 1.1 評価可能集団:
【表4】
* 1名の患者は、PRを確認する前に同意を撤回し、1名の患者は、次のスキャン時に偽性進行を有した。
¶ mut/fusにおける患者は、追跡がおよそ4ヶ月短い。
【0089】
フェーズ1bおよび2における36名の患者のうちの15%超または少なくとも15%で最も一般的に起こる処置により発現した有害事象(TEAE)を表5に示す。高リン酸血症または眼もしくは爪の毒性の症例は報告されなかった。TEAEの大部分は、主にグレード1であり、試験に際して早期に起こり、試験処置の途中で解決した。
表5: フェーズ1b/2の患者のうちの≧15%において一般に起こるTEAE:
【表5】
* 8名のフェーズ1b患者を含む。
¶ 4名のうちの1名は、フェーズ1bにおいて起こった。
【0090】
フェーズ1bおよび2の36名の患者のうちの15%超または少なくとも15%において最も一般に起こるボファタマブ関連TEAEを表6に示す。グレード3またはこれより大きいボファタマブ関連TEAEは報告されなかった。最も一般的なボファタマブ関連TEAEは、疲労および下痢であった。
表6: フェーズ1b/2の患者のうちの≧15%におけるボファタマブ関連TEAE
【表6】
* 8名のフェーズ1b患者を含む。
【0091】
ボファタマブの導入期間は、十分に寛容され、対にした生検物は、患者の大部分(80%)から安全に得られた。ペンブロリズマブとの併用療法はまた、十分に寛容された。ボファタマブの用量低減は起こらず、中断は、303サイクルにわたって6回の中断で希であった。≧2名の患者において起こる重篤なAEは、尿路感染症(n=2; 6%)および急性腎障害(n=2; 6%)であった。全ての重篤なSEは、ボファタマブとは関連しなかった。
【0092】
RECIST 1.1-評価可能フェーズ2試験集団において、ORRは、ペンブロリズマブ単独のもののおよそ2倍であった。評価可能な病変を有する全22名の患者のORRは、40%であった(22名のうち9名)。WTのORRは、40%(15名のうち6名)であり、Mut/Fusに関しては43%(7名のうちの3名)であった。従って、応答は、FGFR3 Mut/FusまたはWT状態にかかわらず、同様であった(図5図13)。無増悪生存(PFS)傾向は、併用療法で処置した患者にとって有利であるようである(5.9ヶ月; 95% CI 3.6, 8.0) 対 ペンブロリズマブ単独(2.1ヶ月; 95% CI 2.0, 2.2)。DORは、CPI単独で以前に報告されたものより短く、OSを推測するものではないようである。メジアンOSは達成されておらず、全WT患者が少なくとも12ヶ月の追跡期間にわたって追跡されている。
【0093】
導入期間のボファタマブ単剤療法は、応答者における炎症応答および免疫変化、ならびに免疫経路変更と関連する遺伝子のアップレギュレーションを誘導した(図6)。臨床応答は、分子サブグループと相関し、増大した奏功率(8名のうちの6名)は、luminal下位群において(すなわち、免疫学的に非炎症性(immunologically cold)であった腫瘍を有する被験体において)観察された(図7~12)。これは、併用療法が、このサブタイプにとって特に有効であり得ることを示唆する。がん関連線維芽細胞(CAF)の存在は、応答の欠如と関連する考えられる機構であるようである。p53様腫瘍を有する患者は、不十分にしか応答しないようである(図14)。
【0094】
ボファタマブは、FGFR3阻害を通じて免疫学的変化を生じる。予備的サブタイプ試験において、ボファタマブとペンブロリズマブとの併用は、p53様群を除いて膀胱がんサブタイプにおける応答を改善する。処置に対する耐性は、患者のp53様下位群と関連し得る。いくらかの患者は、RECIST 1.1進行を超える処置から継続した臨床上の利益を得た。
参考文献
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023514795000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組み合わせ物であって、FGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビターを含む、組み合わせ物
【請求項2】
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターである、請求項1に記載の組み合わせ物
【請求項3】
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項2に記載の組み合わせ物
【請求項4】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む、請求項3に記載の組み合わせ物
【請求項5】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項4に記載の組み合わせ物
【請求項6】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、請求項3に記載の組み合わせ物
【請求項7】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の組み合わせ物
【請求項8】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項1に記載の組み合わせ物
【請求項9】
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、請求項1に記載の組み合わせ物
【請求項10】
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項9に記載の組み合わせ物
【請求項11】
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、請求項10に記載の組み合わせ物
【請求項12】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項9に記載の組み合わせ物
【請求項13】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組み合わせ物であって、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターを含む、組み合わせ物
【請求項14】
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項13に記載の組み合わせ物
【請求項15】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項14に記載の組み合わせ物
【請求項16】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項14に記載の組み合わせ物
【請求項17】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項13に記載の組み合わせ物
【請求項18】
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項13に記載の組み合わせ物
【請求項19】
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、請求項18に記載の組み合わせ物
【請求項20】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項13に記載の組み合わせ物
【請求項21】
野生型FGFR3を発現するがんを有する、処置を必要とする被験体を処置する方法において使用するための組み合わせ物であって、FGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビターを含み、前記方法は、
(a)前記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程;
(b)前記被験体が、前記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する前記遺伝子シグナチャーを有するかまたはp53発現を有するかを決定する工程;
(c)工程(b)の前記決定に基づいて、
(i)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーp53発現有しない場合、治療上有効な量の前記FGFR3インヒビターを、治療上有効な量の前記チェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および
(ii)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量の前記FGFR3インヒビターを、治療上有効な量の前記チェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程、
を包含する、組み合わせ物
【請求項22】
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項23】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項24】
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項25】
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項26】
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項27】
前記PD1インヒビターは、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択されるアンタゴニスト的PD-L1抗体である、請求項26に記載の組み合わせ物
【請求項28】
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項29】
前記がんは、luminal型膀胱がんである、請求項21に記載の組み合わせ物
【請求項30】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組成物であって、FGFR3インヒビターを含み、前記組成物は、チェックポイントインヒビターと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項31】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組成物であって、チェックポイントインヒビターを含み、前記組成物は、FGFR3インヒビターと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項32】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組成物であって、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターを含み、前記組成物は、PD1インヒビターと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項33】
野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんの処置を必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置するための組成物であって、PD1インヒビターを含み、前記組成物は、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項34】
野生型FGFR3を発現するがんを有する、処置を必要とする被験体を処置する方法において使用するための組成物であって、FGFR3インヒビターを含み、前記方法は、
(a)前記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程;
(b)前記被験体が、前記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する前記遺伝子シグナチャーを有するかまたはp53発現を有するかを決定する工程;
(c)工程(b)の前記決定に基づいて、
(i)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーもp53発現も有しない場合、治療上有効な量の前記FGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および
(ii)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量の前記FGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程、
を包含する、組成物。
【請求項35】
野生型FGFR3を発現するがんを有する、処置を必要とする被験体を処置する方法において使用するための組成物であって、チェックポイントインヒビターを含み、前記方法は、
(a)前記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程;
(b)前記被験体が、前記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する前記遺伝子シグナチャーを有するかまたはp53発現を有するかを決定する工程;
(c)工程(b)の前記決定に基づいて、
(i)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーもp53発現も有しない場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量の前記チェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および
(ii)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量の前記チェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程、
を包含する、組成物。

【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
ある特定の実施形態において、膀胱がんの処置のための医薬の製剤化において使用するためのFGFR3インヒビターおよびチェックポイントインヒビター(例えば、PD1インヒビター)の使用が、本明細書で提供される。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、1つの医薬に製剤化される。他の実施形態において、上記FGFR3インヒビターおよびPD1インヒビターは、互いと組み合わせて投与される別個の医薬に製剤化される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程を包含する方法。
(項目2)
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3インヒビターである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、項目9に記載の方法。
(項目13)
必要とする被験体において野生型FGFR3を発現するluminal型膀胱がんを処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量のアンタゴニスト的FGFR3インヒビターを、治療上有効な量のPD1インヒビターと組み合わせて投与する工程を包含する方法。
(項目14)
前記アンタゴニスト的FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記PD1インヒビターは、アンタゴニスト的PD-L1抗体である、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記アンタゴニスト的PD-L1抗体は、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、項目13に記載の方法。
(項目21)
野生型FGFR3を発現するがんを有する、必要とする被験体を処置する方法であって、前記方法は、
(a)前記被験体を、1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーに関してまたはp53発現に関してスクリーニングする工程;
(b)前記被験体が、前記1もしくはこれより多くのがん関連線維芽細胞と相関する遺伝子シグナチャーを有するかまたはp53発現を有するかを決定する工程;
(c)前記工程(b)の決定に基づいて、
(i)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有しない場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターと組み合わせて投与する工程、および
(ii)前記被験体が前記遺伝子シグナチャーまたはp53発現を有する場合、治療上有効な量のFGFR3インヒビターを、治療上有効な量のチェックポイントインヒビターおよびさらなる抗がん剤と組み合わせて投与する工程、
を包含する方法。
(項目22)
前記FGFR3インヒビターは、アンタゴニスト的FGFR3抗体である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記アンタゴニスト的FGFR3抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記FGFR3インヒビターは、ボファタマブである、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記チェックポイントインヒビターは、PD1インヒビターである、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記PD1インヒビターは、MEDI-4736、RG7446、BMS-936559、MSB0010718C、およびMPDL3280Aからなる群より選択されるアンタゴニスト的PD-L1抗体である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記PD1インヒビターは、ペンブロリズマブである、項目21に記載の方法。
(項目29)
前記がんは、luminal型膀胱がんである、項目21に記載の方法。
【国際調査報告】