(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-11
(54)【発明の名称】低架橋のスチレンブタジエンブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20230404BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230404BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L53/02
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CET
C08F297/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022542665
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2021050462
(87)【国際公開番号】W WO2021144251
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516008383
【氏名又は名称】イネオス・スタイロリューション・グループ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒル・ヴェルスウィヴェル
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA22X
4F071AA42
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4J026HE02
(57)【要約】
熱可塑性ポリマー組成物(I)であって、(A)A1:ビニル芳香族モノマー60~95重量%と、A2:共役ジエン5~40重量%とを含むブロックコポリマーA;(B)B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール200~2,500ppm、B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、および/または2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート500~2,500ppm、B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト500~2,000ppmからなる安定剤の組み合わせ;(C)(B1)、(B2)および(B3)とは異なる安定剤0~5,000ppm;(D)場合により、(B)および(C)以外の添加剤および/または加工助剤、(E)場合により、ブロックコポリマーA以外の熱可塑性ポリマーTP、を含む、前記熱可塑性ポリマー組成物、前記組成物を製造する方法、ならびにシュリンクフィルムを製造するための前記組成物の使用が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー組成物(I)であって、成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E):
(A)A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~95重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて5~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)、少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて200~2,500ppm(0.020~0.250重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて500~2,500ppm(0.050~0.250重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて500~2,000ppm(0.050~0.200重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~5,000ppm(0~0.500重量%)の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)場合により、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)場合により、少なくとも1種、好ましくは1、2または3種、より好ましくは1種の、ブロックコポリマーA以外の熱可塑性ポリマーTP
を含む(からなる)、前記熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項2】
安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:200~2,250ppm、好ましくは250~2,100ppm、
B2:750~1,750ppm、好ましくは1,000~1,600ppm、および
B3:750~1,750ppm、好ましくは1,000~1,600ppm
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項3】
安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:500~2,500ppm(0.05~0.250重量%)、
B2:500~2,500ppm(0.050~0.250重量%)、および
B3:500~2,000ppm(0.050~0.200重量%)
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項4】
安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:1,000~2,250ppm(0.100~0.225重量%)、
B2:750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、および
B3:750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項3に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項5】
安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:1,500~2,100ppm(0.150~0.210重量%)、好ましくは1,900~2,100ppm(0.190~0.210重量%)、
B2:1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、好ましくは1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)、および
B3:1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、好ましくは1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項3または4に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項6】
成分Cは、500~1,900ppm、好ましくは750~1,800ppmの量で存在し、成分B1の量は200~1,500ppm(0.020~0.015重量%)、好ましくは250~1,100ppm(0.025~0.110重量%)である、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項7】
成分Cは500~1,500ppm(0.050~0.150重量%)、好ましくは750~1,100ppm(0.075~0.110重量%)、より好ましくは950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)の量で存在し、安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:500~1,500ppm(0.050~0.150重量%)、好ましくは750~1,100ppm(0.075~0.110重量%)、より好ましくは950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)、
B2:1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、好ましくは1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)、および
B3:1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、好ましくは1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項3に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項8】
成分B2は、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレートである、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項9】
成分Cは、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項10】
任意成分Cは存在しない、請求項1~5および8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項11】
ブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~80重量%、好ましくは60~76重量%、最も好ましくは65~76重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて20~40重量%、好ましくは24~40重量%、最も好ましくは24~35重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項12】
ブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー95~100重量%と共役ジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードポリマーブロックS、および場合により、それぞれが共役ジエンとビニル芳香族モノマーとで構成され、B/S-比(=ジエン/ビニル芳香族モノマー-比)<0.25、好ましくは0.1~0.2、より好ましくは0.1~0.15で、ガラス転移温度Tg>37℃である1つまたはそれ以上のハードコポリマーブロック(B/S)、ならびに共役ジエン100重量%で構成される1つもしくはそれ以上のソフトブロックB、および/またはそれぞれがビニル芳香族モノマーと共役ジエンとで構成され、S/B-比(=ビニル芳香族モノマー/ジエン-比)<0.5、好ましくは0.15~0.45、より好ましくは0.2~0.4で、ガラス転移温度Tg<37℃である1つもしくはそれ以上のソフトコポリマーブロック(S/B)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項13】
ハードおよびソフトコポリマーブロック(B/S)および(S/B)は、ランダムコポリマーブロックである、請求項12に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項14】
ブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン95~100重量%と共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードブロックSを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン65~95重量%と共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン35~5重量%とで構成され、ガラス転移温度Tg
Aが40℃~90℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)
Aを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン1~60重量%、好ましくは1~30重量%と、共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン99~40重量%、好ましくは99~70重量%とで構成され、ガラス転移温度Tg
Bが-90℃~-40℃、好ましくは-80℃~-65℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)
Bを含む、請求項12または13に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項15】
ブロックコポリマーAは、星型ブロックコポリマーである、請求項1~14のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項16】
星型ブロックコポリマーAの星型は、
ソフトブロック(B/S)
Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B~の短鎖分岐、および構造(B/S)
A-S
i-(B/S)
B~の長鎖分岐、または、
ソフトブロック(B/S)
Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B~の短鎖分岐、および構造S
e’-(B/S)
A-S
i-(B/S)
B~の長鎖分岐、または、
ブロックS
fにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B-S
f~の短鎖分岐、および構造(B/S)
A-S
i-(B/S)
B-S
f~の長鎖分岐、または、
ブロックS
fにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B-S
f~の短鎖分岐、および構造S
e’-(B/S)
A-S
i-(B/S)
B-S
f~の長鎖分岐
を有し、
S
eおよびS
iは5,000~30,000g/molの数平均モル質量M
nを有するブロックSであり、S
fおよびS
e’は4,000g/mol未満のM
nを有するブロックSであり、(B/S)
Aおよび(B/S)
Bは上で定義した通りであり、ブロック(B/S)
AのM
nは30,000~300,000であり、ブロック(B/S)
BのM
nは5,000~50,000g/molである、
請求項15に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項17】
250℃の温度、100s
-1の一定の剪断で、63分の時間にわたってキャピラリーレオロジーを使用した場合、最終ダイ圧力(長さ16mm、直径1mmのダイ(L/D=16))は2.5MPa以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーTPは、ビニル芳香族ジエンブロックコポリマー(SBC)、標準ポリスチレン(GPPS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)のようなスチレンポリマー、またはPMMAのようなポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリエチレンもしくはポリプロピレンのようなポリオレフィン、またはポリ塩化ビニル(PVC)、半結晶材料、またはポリアクリレート、または熱可塑性エラストマー(TPE)から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項1~17のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項19】
以下の量:
(A)25~99.88重量%、好ましくは25~99.82重量%;
(B)0.120~0.700重量%、好ましくは0.170~0.600重量%の、安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:(0.020~0.250重量%、好ましくは0.020~0.225重量%、
B2:0.050~0.250重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、
B3:0.050~0.200重量%、好ましくは0.075~0.175重量%
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)0~0.50重量%、好ましくは0~0.20重量%;
(D)0~6.00重量%、好ましくは0.01重量%~3.00重量%;
(E)0~74.88重量%、好ましくは0~74.82重量%、の成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E)
を含み(からなり)、
成分(A)、(B)、ならびに存在する場合成分(C)、(D)および/または(E)は合計で100重量%である、
請求項1、2、6および8~18のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項20】
(A)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて25~99.30重量%、好ましくは25~98.89重量%の、少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)0.150~0.700重量%、好ましくは0.250~0.600重量%、より好ましくは0.300~0.550重量%、最も好ましくは0.350~0.500重量%の、安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.05~0.250重量%、好ましくは0.100~0.225重量%、より好ましくは0.150~0.210重量%の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.250重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.200重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0~0.500重量%の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0~6.00重量%、好ましくは0.01重量%~3.00重量%の、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0~74.85重量%、好ましくは0.50~74.85重量%の、ブロックコポリマーA以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーTP
を含み(からなり);
成分(A)、(B)、ならびに存在する場合成分(C)、(D)および/または(E)は合計で100重量%である、
請求項3~5および7~18のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)を製造する方法であって、
i)A1:少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン60~95重量%と、
A2:少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエン5~40重量%と
を含むモノマー組成物の逐次アニオン重合を行って、リビングアニオンポリマー鎖を得る工程;
ii)次いで、工程i)で生成したリビングアニオンポリマー鎖の重合終了またはカップリングにより、直鎖状または星型のブロックコポリマーAを得る工程;
iii)次いで、場合によりアルコール、ならびにCO
2および水を添加する工程;
ならびに
iv)工程ii)またはiii)の後に、安定剤成分(B1)、(B2)、(B3)を添加し、存在する場合安定剤(C)、添加剤および/または加工助剤(D)および/または成分(E)を添加して、組成物(I)を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項22】
シュリンクフィルムを製造する方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)を、熱成形、押出、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、または圧縮成形によってフィルムに形成する、前記方法。
【請求項23】
シュリンクフィルムであって、請求項1~20のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)から製造される、前記シュリンクフィルム。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)の使用であって、フィルム、特にシュリンクフィルムを製造するための、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル芳香族ジエンブロックコポリマーを含む熱可塑性ポリマー組成物、該組成物を製造する方法、およびシュリンクフィルムを製造するための該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族ジエンブロックコポリマー、特にスチレンブタジエンブロックコポリマー(SBC)は、加工中(例えば押出、熱交換およびメルトポンプ)のエネルギー(すなわち熱および剪断)にさらされると架橋する傾向がある。詳細には、ジエンモノマー単位が架橋しやすく、より詳細には1,2-結合ジエン単位のペンダント二重結合が架橋しやすい。通常、ブロックコポリマー中のジエンの量が多いほど、エネルギーが引き起こす架橋度は高くなる。依然としてポリマー溶液中にある場合、架橋されたブロックコポリマーは通常、架橋によるモル質量の増加により、もはや有機溶媒に溶解しなくなっている。
【0003】
架橋されたブロックコポリマーは、経時的なゆっくりとした付着により、生産設備のファウリング(例えば、反応器、熱交換器、スタティックミキサーなどのファウリング)、および加工設備(例えば、射出成形機、押出機、メルトフィルタなど)のファウリングを引き起こす可能性があり、最終的には生産設備および加工設備の閉塞につながる可能性がある。これらの架橋付着物の断片が、生産設備または加工設備から、ポリマー溶融物を介して、ビニル芳香族ジエンブロックコポリマーから製造される成形(造形)品(例えば、ペレット、フィルム、シート、または射出成形部品など)に放出されると、これらの架橋付着物は、「フィッシュアイ」または「ゲル」としても知られている寸法的および光学的欠陥として最終材料に現れる。これは、架橋によって、熱可塑性物質として再形成できない3次元構造が作製されるために起こる。このような寸法的および光学的欠陥は、最終的な透明製品(ボトル、トレイ、箱、フィルムなど)において、最終顧客から不評を買い、印刷不適性のような技術的問題も引き起こされるため、材料の価値が低下する。
【0004】
したがって、得られたブロックコポリマーの架橋ジエンによるフィッシュアイが少ない、またはないことは、特にSBCシュリンクスリーブ市場において重要な品質要求事項である。
【0005】
特許文献1において、(a)直鎖状スチレン-イソプレン-スチレンのトリブロックコポリマーと、(b)特定の紫外線安定剤(I)、および特定の亜リン酸酸化剤(II)を含む安定剤のセット0.1~5pbwとを含むホットメルト接着剤用の色安定性および耐熱性ブロックコポリマー組成物が記載されている。例示される組み合わせ(b)は、市販の安定剤であるIrgafos(登録商標)168(0.4重量%)およびIrganox(登録商標)565(0.09重量%)、ならびにIrgafos(登録商標)168(0.4重量%)およびSumilizerGM(0.09重量%)である。
【0006】
特許文献2において、シュリンクフィルムを製造するための、特定の星型ブロックコポリマーA1とA2との混合物を含むポリマー組成物が開示されている。0.01~0.7重量%の量の安定剤を使用することが好ましい。安定剤としては、Irganox(登録商標)1010、Songnox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)565およびそれらの混合物のような酸素ラジカルスカベンジャー、Sumilizer(登録商標)GS、Sumilizer(登録商標)GMおよびそれらの混合物のような炭素ラジカルスカベンジャー、ならびに/またはIrgafos(登録商標)168のような二次安定剤が言及されている。実施例では、Irganox(登録商標)1010単独、またはSumilizer(登録商標)GS 0.2重量%およびIrganox(登録商標)1010 0.2重量%が使用されている。
【0007】
前記先行技術の組成物に含まれるブロックコポリマーは、多くの場合、架橋およびフィッシュアイの形成に関する前述の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP0636654A1
【特許文献2】WO2018/153808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、架橋された共役ジエンによるフィッシュアイが少ないか、好ましくはほとんどないブロックコポリマーを提供することである。さらなる目的は、製造中および製造後の加工における架橋が減少したブロックコポリマーを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、熱可塑性ポリマー組成物(I)であって、成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E):
(A)A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~95重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて5~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエンまたはイソプレンの重合単位、を含む(からなる)、少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて200~2,500ppm(0.020~0.250重量%)、多くの場合500~2,500ppm(0.05~0.250重量%)、好ましくは200~2,250ppm(0.020~0.225重量%)、より好ましくは250~2,100ppm(0.025~0.210重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて500~2,500ppm(0.050~0.250重量%)、好ましくは750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、より好ましくは1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて500~2,000ppm(0.050~0.200重量%)、好ましくは750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、より好ましくは1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0~5,000ppm(0~0.500重量%)の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)場合により、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)場合により、少なくとも1種、好ましくは1、2または3種、より好ましくは1種の、ブロックコポリマーA以外の熱可塑性ポリマーTP
を含む(からなる)、前記熱可塑性ポリマー組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Y軸が圧力(MPa)、X軸が時間(分)を示す、ポリマー試料A~Hについて得られた(250℃での)測定値を異なる連続線、破線、点線で示すグラフである。
【
図2】Y軸が圧力(MPa)、X軸が時間(分)を示す、ポリマー試料A;B、D、およびXについて得られた(270℃での)測定値を異なる連続線、破線、点線で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「ppm」は、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づく「百万分率(mg/kg)」を意味する。
【0013】
「ブタジエン」は、1,3-ブタジエンを意味する。
【0014】
任意成分(D)が存在する場合、その最小使用量は、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、0.01重量%である。一般に、成分(D)は、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~6重量%、好ましくは0.01重量%~3重量%、より好ましくは0.01重量%~1重量%の量で使用することができる。
【0015】
成分(C)は、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、0~5,000ppm(0~0.5重量%)、多くの場合0~2,000ppm(0~0.20重量%)、0~1,750ppm(0~0.175重量%)、または0~1,500ppm(0~0.15重量%)、より多くの場合0~1,100ppm(0~0.11重量%)の総量で使用することができる。好ましくは、任意成分(C)は存在しない。
【0016】
多くの場合、任意成分(C)は、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、500~2,000ppm(0.05~0.20重量%)、500~1,750ppm(0.05~0.175重量%)、または500~1,100ppm(0.05~0.11重量%)、より多くの場合750~2,000ppm(0.075~0.20重量%)、750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、または750~1,100ppm(0.075~0.11重量%)、ほとんどの場合950~2,000ppm(0.095~0.20重量%)、950~1,750ppm(0.095~0.175重量%)、または950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)、特に950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)の総量で存在する。成分(C)は、多くの場合、1種のみの安定剤である。
【0017】
任意成分(E)が存在する場合、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、0.5~85重量%、好ましくは1~75重量%、より好ましくは1~55重量%の総量で使用されることが好ましい。
【0018】
多くの場合、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)は、成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E):
(A)A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~95重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて5~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)、少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて500~2,500ppm(0.05~0.250重量%)、好ましくは1,000~2,250ppm(0.100~0.225重量%)、より好ましくは1,500~2,100ppm(0.150~0.210重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて500~2,500ppm(0.050~0.250重量%)、好ましくは750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、より好ましくは1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて500~2,000ppm(0.050~0.200重量%)、好ましくは750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)、より好ましくは1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0~5,000ppm(0~0.500重量%)の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)場合により、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)場合により、少なくとも1種、好ましくは1、2または3種、より好ましくは1種の、ブロックコポリマーA以外の熱可塑性ポリマーTP
を含む(からなる)。
【0019】
好ましくは、熱可塑性ポリマー組成物(I)は、成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E)からなる。
【0020】
より好ましくは、熱可塑性ポリマー組成物(I)は、成分(A)、(B)、ならびに場合により(D)および/または(E)からなる。
【0021】
より好ましくは、熱可塑性ポリマー組成物(I)は、成分(A)および(B)からなる。
【0022】
ブロックコポリマーA
ブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~95重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて5~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)。
【0023】
好ましくは、ブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~80重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて20~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)。
【0024】
より好ましくは、ブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~76重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位-ブロックコポリマーAに基づいて24~40重量%
を含む(からなる)。
【0025】
より好ましいブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて65~76重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて24~35重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)。
【0026】
一般に、ブロックコポリマーAは、アニオン重合プロセスによって得られる。好ましくは、ブロックコポリマーAは、1、2または3つの開始工程、ならびに逐次モノマー添加および重合を伴うアニオン重合プロセスによって得られる。
【0027】
ブロックコポリマーAは、直鎖状または星型のブロックコポリマーであり得る。逐次アニオン重合によるこのようなブロックコポリマーの製造は、一般に知られている(例えば、US6,593,430、col.3、l.1~col.4、l.45参照)。
【0028】
一般に好適なブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー95~100重量%と、共役ジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードポリマーブロックS、および場合により、それぞれが共役ジエンと、ビニル芳香族モノマーとで構成され、B/S-比(=ジエン/ビニル芳香族モノマー-比)<0.25、好ましくは0.1~0.2、より好ましくは0.1~0.15で、ガラス転移温度Tg>37℃である1つまたはそれ以上のハードコポリマーブロック(B/S)、ならびに共役ジエン100重量%で構成される1つもしくはそれ以上のソフトブロックB、および/またはそれぞれがビニル芳香族モノマーと、共役ジエンとで構成され、S/B-比(=ビニル芳香族モノマー/ジエン-比)<0.5、好ましくは0.15~0.45、より好ましくは0.2~0.4で、ガラス転移温度Tg<37℃である1つもしくはそれ以上のソフトコポリマーブロック(S/B)を含む。
【0029】
ハードおよびソフトコポリマーブロック(B/S)および(S/B)は、ランダムコポリマーブロックでもテーパードコポリマーブロックでもよく、好ましくは、コポリマーブロック(B/S)および(S/B)はランダムコポリマーブロックである。
【0030】
コポリマーブロック(B/S)、(S/B)、SまたはBは、それぞれn、それぞれ1つまたはそれ以上、好ましくは1~10の異なるまたは同一のコポリマーブロック(B/S)、(S/B)、SまたはBからなるブロック[(B/S)]n、[(S/B)]n、SnまたはBnであってもよく、ブロック(B/S)または(S/B)は、モル質量および/またはビニル芳香族/ジエン比において異なっていてもよい。
【0031】
好ましくは、ブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー95~100重量%と、共役ジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードポリマーブロックSを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー65~95重量%と、共役ジエン35~5重量%とで構成され、ガラス転移温度TgAが40℃~90℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)Aを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー1~60重量%、好ましくは1~30重量%と、共役ジエン99~40重量%、好ましくは99~70重量%とで構成され、ガラス転移温度TgBが-90℃~-40℃、好ましくは-80℃~-65℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)Bを含む。
【0032】
ガラス転移温度は、モノマーの性質、構成、および分布に影響され、示差走査熱量測定(DSC)、示差機械熱分析(differential mechanical thermal analysis)(DMTA)により、あるいはモノマーの分布がランダムである場合にはFox式により求めることができる。精密なDSC測定は、通常、ISO11357-2に基づき、加熱速度20K/minで2サイクル目の評価を行う。
【0033】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)において使用される前述の好ましいブロックコポリマーAは、ハードブロックとして機能する少なくとも1つのポリマーブロックSおよびコポリマーブロック(B/S)A、ならびにソフトブロックとして機能する少なくとも1つのブロック(B/S)Bを有する。一般に、ブロックコポリマーAは、好ましくはシュリンクフィルムの製造に使用することができる強靭な材料である。
【0034】
好ましくは、ブロックS、(B/S)Bおよび(B/S)Aの製造に使用されるビニル芳香族モノマーはスチレンであり、ブロック(B/S)Bおよび(B/S)Aの製造に使用される共役ジエンは、好ましくはイソプレンまたはブタジエン、より好ましくはブタジエンである。
【0035】
より好ましくは、ブロックコポリマーAは星型である。
【0036】
ポリマーブロックSは、末端(=外側ブロック、最初の開始後における最初のブロック)(ブロック(Se)と呼ばれる)、またブロック(B/S)Aと(B/S)Bとの間(ブロック(Si)と呼ばれる)(=内側ブロック)に発生することができる。ブロックコポリマーAのハードポリマーブロックS、特にブロックSeおよびSiの数平均モル質量Mnは、一般に2,000~30,000g/molの範囲である。
【0037】
Siブロックにより、ハードブロック(B/S)Aと、ソフト相として機能するホモポリマーまたはコポリマーソフトブロック(B/S)Bとの非相溶性が最大となる。これは、ポリマーマトリックス中のハード相とソフト相との間に形成される中間相を少なく抑えられることを意味する。
【0038】
したがって、室温、すなわち10~40℃の範囲で軟化する相の重量での割合を小さく抑えることができ、このことは、40℃未満の温度における自然収縮を小さく抑えるのに有利である。
【0039】
さらに、短いポリマーブロックSは、重合の最後(重合終了またはカップリングの前)に最終ポリマーブロック(ブロック(Sf)と呼ばれる)として、および/または重合開始時(最初の開始後)に形成される短い最初のポリマーブロック(Se’)として発生することができる。
【0040】
短いポリマーブロックS、特にSfおよびSe’の数平均モル質量Mnは、互いに独立して、4,000g/mol未満である。
【0041】
コポリマーブロック(B/S)Aの数平均モル質量Mnは、一般に30,000~300,000g/molの範囲、好ましくは35,000~150,000g/molの範囲、より好ましくは40,000~100,000g/molの範囲である。
【0042】
分子量は通常、ポリスチレンを標準として使用した、THFを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる。アニオン重合の場合、重量平均分子量は、数平均分子量およびピーク分子量とほぼ一致するか、ポリマーが成長する場合はピーク分子量が増加する。ポリブタジエンセグメントの分子量は、ポリスチレン標準を使用してキャリブレーションを行ったゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合、モノマー量と開始剤との比率から導かれる理論値と比較して、一般に1.7倍程度過大評価される。
【0043】
本発明に従って使用されるブロックコポリマーAは、アニオン的に製造されるため、モノマー量と開始剤量との比率によって分子量を制御することができる。また、モノマーの供給が行われた後に開始剤を繰り返し添加することも可能であり、その結果、二峰性または多峰性の分布が得られる。
【0044】
コポリマーブロック(B/S)Aおよび(B/S)Bは、それぞれn、それぞれ1つまたはそれ以上、好ましくは1~10の異なるまたは同一のコポリマーブロック(B/S)Aまたは(B/S)Bからなるブロック[(B/S)A]nまたは[(B/S)B]nであってもよく、ブロック(B/S)Aおよび(B/S)Bは、モル質量および/またはビニル芳香族/ジエン比において異なっていてもよい。
【0045】
好ましくは、ブロック(B/S)Aまたは(B/S)Bは、単一ブロックである。コポリマーブロック(B/S)Aが、ビニル芳香族モノマー、特にスチレン85~93重量%、およびジエン、特にイソプレンまたはブタジエン7~15重量%から作製されることが好ましい。特に好ましいのはブタジエンである。コポリマーブロック(B/S)Aのガラス転移温度は、好ましくは50~80℃、特に好ましくは60~75℃の範囲である。
【0046】
ブロックコポリマーAのコポリマーブロック(B/S)Bおよび(B/S)Aにおけるビニル芳香族モノマーおよびジエンの重合単位の分布は、好ましくはランダムである。これらは、例えば、テトラヒドロフラン、またはカリウム塩のようなランダマイザーの存在下においてアルキルリチウム化合物を使用したアニオン重合によって得ることができる。アニオン開始剤とカリウム塩とのモル比が25:1~60:1、特に好ましくは30:1~40:1の範囲であるカリウム塩の使用が好ましい。本方法は、同時に、ブタジエン単位の1,2結合の低い割合を達成することができる。好適なカリウム塩は、Kアルコラート、特に重合溶媒に可溶なもの、例えばtert-アミルアルコラートまたはトリエチルカルビノラート、または他のCリッチな第三級アルコラートである。
【0047】
ブタジエン単位の1,2結合の割合は、好ましくは、1,2結合、1,4-シス結合、および1,4-トランス結合全体に基づいて、8~15%の範囲である。
【0048】
コポリマーブロック(B/S)Bの数平均モル質量Mnは、一般に5,000~50,000g/mol、好ましくは10,000~40,000g/mol、より好ましくは12,000~35,000g/molの範囲である。
【0049】
ブロック(B/S)Bが、ビニル芳香族モノマー、特にスチレン1~30重量%、より好ましくは5~28重量%、最も好ましくは10~28重量%、およびジエン、好ましくはイソプレンまたはブタジエン、特にブタジエン99~70重量%、より好ましくは95~72重量%、最も好ましくは90~72重量%から作製されたコポリマーブロックであることが好ましい。
【0050】
ホモポリマーまたはコポリマーブロック(B/S)Bのガラス転移温度TgBは、好ましくは-80~-65℃の範囲である。
【0051】
好ましくは、ブロックコポリマーAは、星型ブロックコポリマーである。逐次アニオン重合による星型ブロックコポリマーの製造は、一般に知られている(例えば、US6,593,430、col.3、l.1~col.4、l.45)。
【0052】
通常、カップリング剤によるカップリングは、最後に添加されたモノマーが最後に付加された後、および完全に重合した後に行われ、したがって複数のリビングアニオンポリマー鎖末端が互いに結合し、星型の分子構造を有するブロックコポリマーAが形成される。
【0053】
一般に、任意の多官能性化合物をカップリング剤として使用することが可能である。カップリング剤は、エポキシ化植物油、例えばエポキシ化アマニ油またはエポキシ化大豆油;シラン、例えばアルコキシシラン、例えばSi(OMe)4、クロロシラン、例えばSiCl4、Si(アルキル)2Cl2、Si(アルキル)Cl3(式中、アルキルはC1~C4-アルキル部分、好ましくはメチル);脂肪族炭化水素のハロゲン化物、例えばジブロモメタンまたはビスクロロメチルベンゼン;四塩化スズ;多官能性アルデヒド、例えばテレフタルアルデヒド;多官能性ケトン;多官能性エステル、例えばカルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチルまたはアジピン酸ジエチル;多官能性無水物;オリゴエポキシド、例えば1,4-ブタンジオールグリシジルエーテル;活性化ジオレフィン、例えばジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼンまたはジスチリルベンゼン;から選択されていることが好ましい。好適なカップリング剤は、エポキシ化植物油、例えばエポキシ化アマニ油またはエポキシ化大豆油、例えば、BASF AGのEfka(登録商標)PL5382(旧Dehysol(登録商標)D82)またはArkemaのVikoflex(登録商標)7170である。
【0054】
カップリング剤は、リビングアニオン鎖末端と、上記カップリング剤のうちの1つとの反応によって形成されるカップリング中心Xを形成する。
【0055】
好ましいのは、星型が、ソフトブロック(B/S)Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造Se-(B/S)B~の短鎖分岐、および構造(B/S)A-Si-(B/S)B~の長鎖分岐を有する、星型ブロックコポリマーAである。
【0056】
さらに好ましいのは、星型が、ソフトブロック(B/S)Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造Se-(B/S)B~の短鎖分岐、および構造Se’-(B/S)A-Si-(B/S)B~の長鎖分岐を有する、星型ブロックコポリマーAである。
【0057】
結合前に、場合により、短いポリスチレンブロックSfをリビングポリマー鎖に組み込んで、カップリング効率を向上させることができる。このタイプの星型ブロックコポリマーAとしてさらに好ましいものは:
星型が、ブロックSfにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造Se-(B/S)B-Sf~の短鎖分岐、および構造(B/S)A-Si-(B/S)B-Sf~の長鎖分岐を有する、星型ブロックコポリマーA;
ならびに星型が、ブロックSfにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造Se-(B/S)B-Sf~の短鎖分岐、および構造Se’-(B/S)A-Si-(B/S)B-Sf~の長鎖分岐を有する、星型ブロックコポリマーAである。
【0058】
前述の好ましい星型ブロックコポリマーAは、二重開始を使用した逐次アニオン重合法により製造される。前記好ましい星型ブロックコポリマーAのポリマーブロックSeおよびSiは、同一の構成および数平均モル質量Mnを有する。
【0059】
前記好ましい星型ブロックコポリマーAにおいて、ブロック(B/S)B全体の割合は、好ましくは、ブロックコポリマーA全体に基づいて、26~37重量%である。
【0060】
特に好ましいのは、ブロック(B/S)B全体の割合が、星型ブロックコポリマーA全体に基づいて、30~37重量%、好ましくは31~35重量%、より好ましくは32~33重量%である、星型ブロックコポリマーAである。
【0061】
より好ましいのは、上に記載したような星型ブロックコポリマーAであって、(ハード)ポリマーブロックSe、Si、ならびに存在する場合、Sfおよび/またはSe’は、ビニル芳香族モノマー95~100重量%、およびジエン0~5重量%から作製され、ブロックSeおよびSiの数平均モル質量Mnは、5,000~30,000g/molの範囲であり、存在する場合、ブロックSfおよび/またはSe’の数平均モル質量Mnは、4,000g/mol未満であり;(ハード)コポリマーブロック(B/S)Aは、ビニル芳香族モノマー65~95重量%、およびジエン35~5重量%から作製され、ガラス転移温度TgAは40~90℃の範囲、数平均モル質量Mnは30,000~100,000g/molの範囲であり、(ソフト)ホモポリマーまたはコポリマーブロック(B/S)Bはそれぞれ、ビニル芳香族モノマー1~30重量%、好ましくは5~28重量%、およびジエン99~70重量%、好ましくは95~72重量%から作製され、ガラス転移温度TgBは-90~-60℃、好ましくは-80~-65℃の範囲の数平均モル質量Mnは5,000~50,000g/molの範囲である、星型ブロックコポリマーAである。
【0062】
特に好ましいのは、ブロック(B/S)B全体の割合が、星型ブロックコポリマー全体に基づいて、30~37重量%、好ましくは31~35重量%、より好ましくは32~33重量%である、前述の星型ブロックコポリマーAである。
【0063】
特に好適な星型ブロックコポリマーAは、各場合のブロックコポリマー全体に基づいて、ビニル芳香族モノマー、特にスチレン60~80重量%、好ましくは60~76重量%、およびジエン、特にブタジエンまたはイソプレン20~40重量%、好ましくは24~40重量%から作製される。
【0064】
好ましい一実施形態によれば、ブロックコポリマーAは、以下の星型構造:
【化1】
[式中、S
e、S
i、S
f、S
e’、(B/S)
Aおよび(B/S)
Bは上で定義した通りであり、Xはカップリング中心である]
のうちの1つを有し、リビングアニオンポリマー鎖末端と、多官能性カップリング剤との反応によって形成される(=ブロック(B/S)
BまたはS
fにおいて結合される)。前記多官能性カップリング剤は、一般に、任意の好適な多官能性化合物であり得る。多官能性カップリング剤は、例えば、多官能性アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、またはエポキシドであり得る。多官能性カップリング剤は、好ましくは、エポキシ化植物油、特にエポキシ化アマニ油、またはエポキシ化大豆油から選択される。
【0065】
上に示した一般式の星型ブロックコポリマーは、さまざまな組成であってもよく、対称的(例えば、2つの長鎖分枝と2つの短鎖分枝とを有する)または非対称的(例えば、1つの長鎖分枝と3つの短鎖分枝とを有する)であってもよい。対称的な星型ブロックコポリマーの製造は、WO2018/153808において詳細に記載されている(15ページ、28行目~16ページ、30行目参照)。
【0066】
安定剤の組み合わせ(B)
安定剤の組み合わせ(B)は、一般に、熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、1,200~7,000ppm(0.120~0.700重量%)、多くの場合1,500~7,000ppm(0.150~0.700重量%)、好ましくは1,700~6,000ppm、多くの場合、好ましくは2,500~6,000ppm(0.250~0.600重量%)、より好ましくは2,250~5,500ppm(0.225~0.550重量%)、多くの場合、より好ましくは3,000~5,500ppm(0.300~0.550重量%)、最も好ましくは3,200~5,000ppm(0.320~0.500重量%)、多くの場合、最も好ましくは3,500~5,000ppm(0.350~0.500重量%)の量で使用される。
【0067】
好ましくは、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて200~2,250ppm(0.020~0.225重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
からなる。
【0068】
多くの場合、好ましくは、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて1,000~2,250ppm(0.100~0.225重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて750~1,750ppm(0.075~0.175重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
からなる。
【0069】
より好ましくは、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール250~2,100ppm(0.025~0.210重量%)、
B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、および
B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)
からなる。
【0070】
多くの場合、より好ましくは、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール1,500~2,100ppm(0.150~0.210重量%)、
B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)、および
B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)
からなる。
【0071】
多くの場合、最も好ましくは、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール1,900~2,100ppm(0.190~0.210重量%)、特に2,000ppm(0.200重量%)、
B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート1,400~1,600ppm(0.140~、0.160重量%)、特に1,500ppm(0.150重量%)、および
B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)、特に1,500ppm(0.150重量%)
からなる。
【0072】
成分B1、B2およびB3の前述の量は、それぞれ熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づく。
【0073】
好ましくは、成分B2は、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレートである。
【0074】
O-ラジカル用フリーラジカルスカベンジャーである成分B1は、例えばドイツのBASF SEから入手可能なIrganox(登録商標)565として市販されている。
【0075】
C-ラジカル用フリーラジカルスカベンジャーである成分B2は:
2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレートが、例えば、ドイツのBASF SEのSumilizer(登録商標)GS、DBCのChinox(登録商標)GS、またはZikoのZikanox(登録商標)549として;および
2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートが、例えばドイツのBASF SEのSumilizer(登録商標)GMとして
市販されている。
【0076】
二次酸化防止剤である成分B3は、例えばドイツのBASF SEから入手可能なIrgafos(登録商標)168、またはSongwonから入手可能なSongnox(登録商標)168FFとして市販されている。
【0077】
成分C
成分Cとして使用することができる好適な安定剤は、B1、B2およびB3以外の安定剤である。例としては、他のフリーラジカルスカベンジャー、例えば、α-トコフェロール(ビタミンE)のような他のC-ラジカルスカベンジャー、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](CAS番号:6683-19-8、例えば、Irganox(登録商標)1010、Songnox(登録商標)1010)、2-ヘキサデカン-2-イル-4,6-ジメチルフェノール(例えば、Irganox1141)、および/またはオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS番号:2082-79-3)(例えば、Irganox1076)、エチレンビス[3,3-ビス[3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]ブタノエート](例えば、Hostanox(登録商標)O3)のような他のO-ラジカルスカベンジャー、ジオクタデシルジスルフィド(例えば、Hostanox(登録商標)SE10)のようなチオエーテル系共安定剤がある。さらに、成分Cとして、トリイソノニルフェニルホスファイト(TNPP)のような、ホスファイトベースの他の二次酸化防止剤を使用することができる。
【0078】
成分Cが存在する場合、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、Irganox(登録商標)1010、Songnox(登録商標)1010)の使用が好ましい。
【0079】
成分C、特にペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が存在する場合、それぞれ熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、成分Cの量は、好ましくは500~1,900ppm(0.050~0.190重量%)、より好ましくは750~1,800ppm(0.075~0.180重量%)、特に950~1,800ppm(0.095~0.180重量%)、多くの場合750~1,100ppm、多くの場合1,500~1,800ppm、より多くの場合950~1,050ppm、またはより多くの場合1,650~1,800ppmであり、成分B1の量は、好ましくは200~1,500ppm(0.020~0.015重量%)、より好ましくは250~1,100ppm(0.025~0.110重量%)、特に250~1,050ppm(0.025~0.105重量%)、多くの場合750~1,100ppm、多くの場合200~500ppm、より多くの場合950~1,050ppm、またはより多くの場合250~350ppmである。
【0080】
成分C、特にペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が存在する際の多くの場合、それぞれ熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて、成分Cの量は、好ましくは500~1,500ppm(0.050~0.150重量%)、より好ましくは750~1,100ppm(0.075~0.110重量%)、特に950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)であり、成分B1の量は、好ましくは500~1,500ppm(0.050~0.015重量%)、より好ましくは750~1,100ppm(0.075~0.110重量%)、特に950~1,050ppm(0.095~0.105重量%)である。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、上記熱可塑性ポリマー組成物(I)において、成分C、特にペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、750~1,100ppm、特に950~1,050ppmの量で存在し、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール500~1,500ppm、好ましくは750~1,100ppm、より好ましくは950~1,050ppm、
B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート1,000~1,600ppm、特に1,400~1,600ppm、および
B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト1,000~1,600ppm、特に1,400~1,600ppm
からなる。
【0082】
本発明のさらなる実施形態によれば、上記熱可塑性ポリマー組成物(I)において、成分C、特にペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、1,500~1,800ppm、特に1600~1,800ppmの量で存在し、安定剤の組み合わせ(B)は:
B1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール200~500ppm、好ましくは250~350ppm、
B2:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、またはそれらの混合物、好ましくは2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート1,000~1,600ppm、特に1,400~1,600ppm、および
B3:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト1,000~1,600ppm、特に1,400~1,600ppm
からなる。
【0083】
好ましくは、成分(C)は存在しない。
【0084】
添加剤および/または加工助剤D
成分(D)として使用することができる好適な加工助剤および添加剤は、ブロッキング防止剤、染料、紫外線吸収剤、可塑剤およびワックス(潤滑剤)などである。可塑剤および/またはワックス(潤滑剤)を使用することが好ましい。
【0085】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)において可塑剤として好ましく使用されるのは、均一に混和する油または油混合物、特に鉱油(もしくはホワイトオイル)またはアジピン酸ジオクチルである。前述の可塑剤は、熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて、0.05~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%の量で好ましくは使用される。
【0086】
熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて、好ましくは0.05~0.2重量%の量で使用することができるワックス(潤滑剤)の例は、ステアリン酸またはベヘン酸のような、14~22個の炭素原子を有する脂肪酸、それらの塩(例えば、ステアリン酸カルシウムもしくは亜鉛)、またはエステル(例えば、ステアリン酸ステアリルもしくはテトラステアリン酸ペンタエリスリチル)、また14~22個の炭素原子を有する脂肪酸のアミド誘導体(例えば、エチレンビスステアリルアミド)である。
【0087】
より良い加工のために、鉱物系ブロッキング防止剤を本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)に添加してもよい。例としては、非晶質または結晶質シリカ、炭酸カルシウム、またはケイ酸アルミニウムが挙げられる。
【0088】
ブロッキング防止剤の最大濃度は、熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて、1重量%未満、好ましくは最大0.1重量%である。
【0089】
熱可塑性ポリマーTP(=成分(E))
特に好適な熱可塑性ポリマーTPは、ブロックコポリマーAとは異なるビニル-芳香族ジエンブロックコポリマー(SBC)、標準ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)のようなスチレンポリマー、またはPMMAのようなポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリエチレンもしくはポリプロピレンのようなポリオレフィン、またはポリ塩化ビニル(PVC)、または半結晶材料である。好ましくは、スチレン系ポリマー、特にSBC、GPPSおよびHIPSが使用される。
【0090】
また、ポリ-n-ブチルアクリレート(PnBA)のようなポリアクリレート、および他のアクリレートゴム、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)などを使用することも可能である。熱可塑性ポリマーTPは、剛性、耐溶剤性、印刷適性、ブロッキング防止特性、リサイクル性、付着特性などを向上させるために混合してもよい。
【0091】
熱可塑性エラストマー(TPE)、例えばブロックコポリマーA以外の直鎖状または星型の、水素添加または非水素添加スチレン-ブタジエンまたはスチレン-イソプレンブロックコポリマーを使用することも可能である。好適なブロックコポリマーは、Kraton(登録商標)Gとして市販されている。熱可塑性エラストマーの添加により、一般に本発明のポリマー組成物の強靭性が向上する。
【0092】
熱可塑性ポリマー組成物(I)
多くの場合、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)は:
(A)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて25~99.88重量%、好ましくは25~99.82重量%の、上記少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)0.120~0.700重量%、好ましくは0.170~0.600重量%、より好ましくは0.225~0.550重量%の、安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.020~0.250重量%、好ましくは0.020~0.225重量%、より好ましくは0.025~0.210重量%の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.250重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.200重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~0.50重量%、好ましくは0~0.20重量%の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~6.00重量%、好ましくは0.01重量%~3.00重量%の、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~74.88重量%、好ましくは0~74.82重量%の、ブロックコポリマーA以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーTP
を含み(からなり);
成分(A)、(B)、ならびに存在する場合成分(C)、(D)および/または(E)は合計で100重量%である。
【0093】
さらに多くの場合、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)は:
(A)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて25~99.30重量%、好ましくは25~98.89重量%の、上記少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)0.150~0.700重量%、好ましくは0.250~0.600重量%、より好ましくは0.300~0.550重量%、最も好ましくは0.350~0.500重量%の、安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0.05~0.250重量%、好ましくは0.100~0.225重量%、より好ましくは0.150~0.210重量%の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.250重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:熱可塑性ポリマー組成物(I)に基づいて0.050~0.200重量%、好ましくは0.075~0.175重量%、より好ましくは0.100~0.160重量%の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~0.500重量%の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~6.00重量%、好ましくは0.01重量%~3.00重量%の、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~74.85重量%、好ましくは0.50~74.85重量%の、ブロックコポリマーA以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーTP
を含み(からなり);
成分(A)、(B)、ならびに存在する場合成分(C)、(D)および/または(E)は合計で100重量%である。
【0094】
本発明のさらなる一態様は、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)を製造する方法である。上記のように、少なくとも1種のブロックコポリマー(A)は一般に、アニオン重合プロセスによって得られる。好ましくは、ブロックコポリマーAは、1、2または3つの開始工程、ならびに逐次モノマー添加および重合を伴うアニオン重合プロセスによって得られる。
【0095】
逐次アニオン重合によるこのようなブロックコポリマーの製造は、一般に知られている(例えば、US6,593,430、col.3、l.1~col.4、l.45参照)。
【0096】
好ましい星型ブロックコポリマー(A)は、二重または三重開始を使用した逐次アニオン重合法により製造される。重合終了後、またはリビングアニオンポリマー鎖末端のカップリング後、得られた直鎖状または星型のブロックコポリマーをさらに集成させることができる。場合により、タンク内の付着物の形成および生成物の変色を避け、溶液の粘度を下げるために、イソプロパノールのような少量のアルコールを使用し、重合終了またはカップリング工程で生成した可能性のある少量の残留カルバニオンおよびポリマー結合アルコラートをプロトン化することが可能であり、その後に得られる生成物が色みを伴わないガラスのように透明度が高いものとなるように、さらなる集成前に、従来の方法でCO2/水を使用して生成物をわずかに酸性化することが可能である。
【0097】
好ましくは、重合終了後、またはリビングアニオンポリマー鎖末端のカップリング後、ならびに場合により、上に記載したようなアルコール、ならびにCO2および水の添加後、得られた直鎖状または星型のブロックコポリマー(A)は、上に記載した、安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる安定剤の組み合わせ(B)、ならびに場合により、上に記載した(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤(C)で安定化される。安定剤成分(B1)、(B2)、(B3)および任意の安定剤(C)は、熱可塑性ポリマー組成物(I)を製造する方法の後半で添加することもできる。任意成分(D)および/または(E)は、重合終了後またはリビングアニオンポリマー鎖末端のカップリング後に添加することもできるが、熱可塑性ポリマー組成物(I)を製造する方法の後半で添加することもできる。
【0098】
次いで、好ましくは、溶媒を従来の方法を使用して除去してもよく、場合により、得られた熱可塑性ポリマー組成物(I)を従来の方法を使用して押出し、ペレット化してもよい(例えば、WO2018/153808A1、p.12、l.1~38参照)。
【0099】
特に熱可塑性ポリマーTP(成分(E))が存在する場合、本発明の熱可塑性成形用組成物(I)は、成分A、B、E、ならびに任意成分Cおよび/またはDを公知の任意の方法で混合することにより得ることができる。ただし、成分が溶融混合、例えば共押出、混練、好ましくは二軸押出機、より好ましくは異方向二軸押出機によって混合される場合が好ましい。この方法のために、ブロックコポリマーAを、上に記載したような成分B、ならびにさらなる任意成分Cおよび/またはDとの予備混合物として使用し、成分Eの添加により、上に記載したように混合することができる。混合は、通常160℃~300℃、好ましくは180℃~250℃、特に200~220℃の範囲の温度で行われる。
【0100】
キャピラリーレオロジー試験により、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)が低架橋度を有し、低いゲル/フィッシュアイ含有量を示すことが示されている。熱可塑性ポリマー組成物(I)は、250℃の温度、100s-1の一定の剪断で、63分の時間にわたってキャピラリーレオロジーを使用した場合、最終ダイ圧力(長さ16mm、直径1mmのダイ(L/D=16))が2.5MPa以下である。
【0101】
本発明のさらなる態様は、フィルム、特にシュリンクフィルムを製造するための、熱可塑性ポリマー組成物(I)の使用である。本発明のさらなる態様は、本発明の熱可塑性ポリマー組成物(I)から製造されたシュリンクフィルムである。
【0102】
シュリンクフィルムの製造は、一般に知られている。加工は、熱可塑性ポリマー、特にSBCを加工するための公知の方法を使用して実施してもよく、特に製造は、熱成形、押出、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、または圧縮成形によって、好ましくは押出によって、熱可塑性ポリマー組成物(I)をフィルムにすることができる。
【0103】
本発明を、特許請求の範囲および以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0104】
スチレン-ブタジエンブロックコポリマーA
バッチ式反応器(ステンレス鋼製反応器、撹拌式、50m3)において、40℃のシクロヘキサン21,300Lを初期装入材料として使用し、スチレン(S1)165Lを20m3/時で添加した。S1 16Lが投入された時点で、1.4Msec-ブチルリチウム溶液(BuLi1)30.00Lを開始剤として、シクロヘキサン中5重量%カリウムtert-アミラート溶液3.88Lをランダマイザーとして一度に投入した。この反応を、連続的な撹拌下で、モノマーの消費が完了するまで進行させた(反応混合物の温度がそれ以上上昇しないことによって確認された)。
【0105】
次の工程において、スチレン(S2)3,139Lおよびブタジエン(B1)538Lを一緒に添加し、重合反応を、連続的な撹拌下で、モノマーの消費が完了するまで実行させた(反応混合物の温度がそれ以上上昇しないことによって確認された)。モノマーが完全に消費された後、重合混合物を、還流冷却によって70℃未満の温度まで冷却した。
【0106】
次の工程において、1.4Msec-ブチルリチウム溶液(BuLi2)65.26Lを開始剤として、シクロヘキサン中5重量%カリウムtert-アミラート溶液8.73Lをランダマイザーとして一度に投入した。
【0107】
次の工程において、スチレン(S3)1,758Lを添加し、重合反応を、連続的な撹拌下で、モノマーの消費が完了するまで実行させた(反応混合物の温度がそれ以上上昇しないことによって確認された)。モノマーが完全に消費された後、重合混合物を、還流冷却によって56℃未満の温度まで冷却した。
【0108】
次の工程において、スチレン(S4)677Lおよびブタジエン(B2)2,956Lを一緒に添加し、重合反応を、連続的な撹拌下で、モノマーの消費が完了するまで実行させた(反応混合物の温度がそれ以上上昇しないことによって確認された)。モノマーが完全に消費された後、重合混合物を、還流冷却によって90℃未満の温度まで冷却した。
【0109】
次の工程において、スチレン(S5)121Lを添加し、重合反応を、連続的な撹拌下で、モノマーの消費が完了するまで実行させた(反応混合物の温度がそれ以上上昇しないことによって確認された)。
【0110】
次いで、最後のモノマー消費完了の10分後に、Edenol(登録商標)D82(エポキシ化大豆油)12.7Lをブロックコポリマー溶液に添加し、撹拌しながら10分間反応させた。
【0111】
次いで、この反応混合物を、脱塩水0.06phm(=モノマー100gあたりの部(g))、およびCO2ガス流体0.43phmで酸性化して、安定化した。
【0112】
次の工程において、このブロックコポリマー溶液の試料を採取した。次いで、各ポリマー試料に、表1に示す量(溶液中のポリマー含有量に基づく)の安定剤を添加し、各試料を撹拌によって均質化して、表1に明示されるブロックコポリマー組成物を得た。その後、同方向脱気二軸押出機で、ブロックコポリマー組成物からシクロヘキサン溶媒を除去した。
【0113】
Irganox(登録商標)1010、Sumilizer(登録商標)GS、Irgafos(登録商標)168、Irganox(登録商標)1141、およびIrganox(登録商標)565は、ドイツのBASF SEから入手したものである。Hostanox(登録商標)O3およびHostanoxSE10は、スイスのClariant International Ltd.から入手したものである。CPD-650は、Guangdong Xinhuayue Petrochemical Incorporated Companyから入手したものである。
【0114】
【0115】
次の工程において、安定化したブロックコポリマー試料をキャピラリーレオロジー実験に供して、エネルギーを受けた際の、架橋に対する生成物の耐性を評価した。材料を250℃のキャピラリーレオメーターのバレルに装填し、3分間予熱した(実施例A、B、Cおよび比較例D~H)。次いで、63分の間、100s-1の一定の剪断速度で、長さ16mm、直径1mm(L/D=16)のダイを通してプランジャー(ピストン)で材料を押し出すように力を加えた。この実験中、この剪断速度を維持するために、ダイ圧力を測定した。実験中、試料に架橋が現れるほど、一定の剪断速度でダイを通して材料を押し出すことが難しくなる。これは、ダイでの圧力上昇として反映される。したがって、ダイ圧力は、試料の架橋度と直接的な相関関係がある。最終的な圧力が高いほど、架橋度は高くなる。
【0116】
さらに、実施例A、B、比較例D、および実施例Xの試料を、それぞれ270℃でキャピラリーレオメーターのバレルに装填し、3分間予熱した後、上に記載したように、各試料に力を加えた。
【0117】
試料ごとの最終圧力は、表1および
図1、
図2に記載されている。
【0118】
試料AおよびBは同じ組成であり、実験の一貫性を示している。表1および
図1、
図2により、試料A、B、CおよびXによる実施例の最終圧力は、比較例(試料D~H)について得られた最終圧力より著しく低いことが示されている。
【0119】
したがって、本発明のブロックコポリマー組成物(試料A、B、CおよびX)に使用されたような安定剤の組み合わせの使用によって、ブロックコポリマーの架橋を減少させることができることが証明された。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー組成物(I)であって、成分(A)、(B)、ならびに場合により(C)、(D)および/または(E):
(A)A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~95重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて5~40重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)、少なくとも1種のブロックコポリマーA;
(B)安定剤成分(B1)、(B2)および(B3):
B1:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて1,500~2,100ppm(0.150~0.210重量%)の、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(CAS番号:991-84-4)、
B2:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(CAS番号:123968-25-2)もしくは2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(CAS番号:61167-58-6)またはそれらの混合物、および
B3:該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて1,000~1,600ppm(0.100~0.160重量%)の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号:31570-04-4)
からなる安定剤の組み合わせ;
(C)該熱可塑性ポリマー組成物(I)全体に基づいて0~5,000ppm(0~0.500重量%)の、(B1)、(B2)および(B3)とは異なる1種またはそれ以上の安定剤;
(D)場合により、(B)および(C)以外の1種またはそれ以上の添加剤および/または加工助剤;
(E)場合により、少なくとも1種、好ましくは1、2または3種、より好ましくは1種の、ブロックコポリマーA以外の熱可塑性ポリマーTP
を含む(からなる)、前記熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項2】
安定剤の組み合わせ(B)は、以下の量:
B1:1,900~2,100ppm(0.190~0.210重量%)、
B2:1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)、および
B3:1,400~1,600ppm(0.140~0.160重量%)
の安定剤成分(B1)、(B2)および(B3)からなる、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項3】
成分B2は、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレートである、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項4】
成分Cは、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項5】
任意成分Cは存在しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項6】
ブロックコポリマーAは、
A1:ブロックコポリマーAに基づいて60~80重量%、好ましくは60~76重量%、最も好ましくは65~76重量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、特にスチレンの重合単位、および
A2:ブロックコポリマーAに基づいて20~40重量%、好ましくは24~40重量%、最も好ましくは24~35重量%の、少なくとも1種の共役ジエン、特にブタジエンまたはイソプレンの重合単位
を含む(からなる)、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項7】
ブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー95~100重量%と共役ジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードポリマーブロックS、および場合により、それぞれが共役ジエンとビニル芳香族モノマーとで構成され、B/S-比(=ジエン/ビニル芳香族モノマー-比)<0.25、好ましくは0.1~0.2、より好ましくは0.1~0.15で、ガラス転移温度Tg(ISO11357-2)>37℃である1つまたはそれ以上のハードコポリマーブロック(B/S)、ならびに共役ジエン100重量%で構成される1つもしくはそれ以上のソフトブロックB、および/またはそれぞれがビニル芳香族モノマーと共役ジエンとで構成され、S/B-比(=ビニル芳香族モノマー/ジエン-比)<0.5、好ましくは0.15~0.45、より好ましくは0.2~0.4で、ガラス転移温度Tg<37℃である1つもしくはそれ以上のソフトコポリマーブロック(S/B)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項8】
ハードおよびソフトコポリマーブロック(B/S)および(S/B)は、ランダムコポリマーブロックである、請求項7に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項9】
ブロックコポリマーAは、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン95~100重量%と共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン0~5重量%とで構成される少なくとも1つのハードブロックSを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン65~95重量%と共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン35~5重量%とで構成され、ガラス転移温度Tg
Aが40℃~90℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)
Aを含み、それぞれがビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン1~60重量%、好ましくは1~30重量%と、共役ジエン、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエン99~40重量%、好ましくは99~70重量%とで構成され、ガラス転移温度Tg
Bが-90℃~-40℃、好ましくは-80℃~-65℃の範囲である1つまたはそれ以上のコポリマーブロック(B/S)
Bを含む、請求項7または8に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項10】
ブロックコポリマーAは、星型ブロックコポリマーである、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項11】
星型ブロックコポリマーAの星型は、
ソフトブロック(B/S)
Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B~の短鎖分岐、および構造(B/S)
A-S
i-(B/S)
B~の長鎖分岐、または、
ソフトブロック(B/S)
Bにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B~の短鎖分岐、および構造S
e’-(B/S)
A-S
i-(B/S)
B~の長鎖分岐、または、
ブロックS
fにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B-S
f~の短鎖分岐、および構造(B/S)
A-S
i-(B/S)
B-S
f~の長鎖分岐、または、
ブロックS
fにおいてカップリング剤を介して互いに結合している構造S
e-(B/S)
B-S
f~の短鎖分岐、および構造S
e’-(B/S)
A-S
i-(B/S)
B-S
f~の長鎖分岐を有し、
S
eおよびS
iは5,000~30,000g/molの数平均モル質量(ポリスチレンを標準として使用した、THFでのゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる)M
nを有するブロックSであり、S
fおよびS
e’は4,000g/mol未満のM
nを有するブロックSであり、(B/S)
Aおよび(B/S)
Bは上で定義した通りであり、ブロック(B/S)
AのM
nは30,000~300,000であり、ブロック(B/S)
BのM
nは5,000~50,000g/molである、請求項10に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項12】
熱可塑性ポリマーTPは、ビニル芳香族ジエンブロックコポリマー(SBC)、標準ポリスチレン(GPPS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)のようなスチレンポリマー、またはPMMAのようなポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリエチレンもしくはポリプロピレンのようなポリオレフィン、またはポリ塩化ビニル(PVC)、半結晶材料、またはポリアクリレート、または熱可塑性エラストマー(TPE)から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)を製造する方法であって、
i)A1:少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン60~95重量%と、
A2:少なくとも1種の共役ジエン、好ましくはブタジエン5~40重量%と
を含むモノマー組成物の逐次アニオン重合を行って、リビングアニオンポリマー鎖を得る工程;
ii)次いで、工程i)で生成したリビングアニオンポリマー鎖の重合終了またはカップリングにより、直鎖状または星型のブロックコポリマーAを得る工程;
iii)次いで、場合によりアルコール、ならびにCO
2および水を添加する工程;
ならびに
iv)工程ii)またはiii)の後に、安定剤成分(B1)、(B2)、(B3)を添加し、存在する場合安定剤(C)、添加剤および/または加工助剤(D)および/または成分(E)を添加して、組成物(I)を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
シュリンクフィルムを製造する方法であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)を、熱成形、押出、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、または圧縮成形によってフィルムに形成する、前記方法。
【請求項15】
シュリンクフィルムであって、請求項1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)から製造される、前記シュリンクフィルム。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー組成物(I)の使用であって、フィルム、特にシュリンクフィルムを製造するための、前記使用。
【国際調査報告】