(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-11
(54)【発明の名称】線維症を治療するためのシクロスポリン類似体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/13 20060101AFI20230404BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230404BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230404BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230404BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230404BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230404BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230404BHJP
C07D 213/64 20060101ALN20230404BHJP
C07D 209/14 20060101ALN20230404BHJP
C07D 487/14 20060101ALN20230404BHJP
C07D 239/553 20060101ALN20230404BHJP
C07D 311/62 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
A61K38/13
A61P19/04
A61P17/02
A61P11/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
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A61P17/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P31/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61K9/20
A61P9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/12
A61K31/4412
A61K31/496
A61K31/407
A61K31/513
A61K31/353
A61P43/00 121
C07D213/64
C07D209/14
C07D487/14
C07D239/553 A
C07D311/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549839
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021018639
(87)【国際公開番号】W WO2021168161
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521225214
【氏名又は名称】ヘピオン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウレ ダレン アール
(72)【発明者】
【氏名】トレパニエ ダニエル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マヨ パトリック アール
(72)【発明者】
【氏名】フォスター ロバート ティー
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
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(57)【要約】
線維症の予防、治療又は回復に使用するのに適した方法、組成物、及びキットを開示する。方法は、それを必要とする被験者に、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を投与することを含む。組成物及びキットは、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非肝線維症を治療する方法であって、それを必要とする被験者に、下記式L:
【化1】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である)
のシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記それを必要とする被験者が、非肝線維症を患っている被験者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者の非肝線維症の量を減少させることを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記被験者の非肝線維症の量が、5%、10%、20%、又はそれ以上減少する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記被験者の非肝線維症の形成を減少させることを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者の非肝線維症の形成が、5%、10%、20%、又はそれ以上減少する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非肝線維症が、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、筋、血管、脈管構造の線維症、又はその任意の組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記それを必要とする被験者が、特発性肺線維症(IPF)、心臓線維症、皮膚線維症、腎線維症、又はその組み合わせから成る群より選択される線維性障害を患っている被験者である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
線維症の発生を予防するか又は遅延させる方法であって、それを必要とする被験者に、下記式L:
【化2】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である)
のシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記それを必要とする被験者が、線維症を発症するリスクがある被験者である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記それを必要とする被験者が、線維症の進行がない被験者である、請求項9~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験者の線維症を発症するリスクが、未治療被験者に比べて、少なくとも5%、10%、20%又はそれ以上減少する、請求項10~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
線維症の発生が、前記被験者において少なくとも1カ月、1年、又はそれ以上遅延する、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
線維症形成を減少させることを含み、前記線維症形成が、未治療被験者に比べて、被験者において少なくとも1カ月、1年、又はそれ以上減少する、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
線維症を減少させるか又は線維症を回復させる方法であって、それを必要とする被験者に、下記式L:
【化3】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である)
のシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記それを必要とする被験者が、線維症を患っている被験者である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験者の線維症形成を抑制することを含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記線維症が非肝線維症である、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
非肝線維症が、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、筋、血管、脈管構造の線維症、又はその任意の組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記それを必要とする被験者が、肺線維症、心臓線維症、皮膚線維症、腎線維症、肝線維症、又はその組み合わせから成る群より選択される線維性障害を患っている被験者である、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記それを必要とする被験者が、特発性肺線維症(IPF)を患っている被験者である、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記線維症が肝線維症である、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記肝線維症が肝硬変である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記肝硬変が、ウイルス性肝炎、住血吸虫症及び慢性アルコール症と関連する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式Lのシクロスポリン類似体が、下記CRV431である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【化4】
【請求項26】
前記組成物が、治療的又は予防的に有効な量の式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記非肝線維症又は線維症が、治療薬、損傷、又はその組み合わせによって誘発される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記非肝線維症又は線維症が、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞の過形成、腫瘍、その組み合わせ後に起こる細胞外マトリックス成分の蓄積と関連する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記非肝線維症又は線維症が、主要臓器疾患、線維増殖性障害、外傷に伴う瘢痕、又はその組み合わせと関連する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記線維症が、間質性肺疾患、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、腎疾患、心疾患又は血管疾患、眼疾患、全身性及び局所性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、デュピュイトラン拘縮、手術合併症、化学療法薬誘発線維症、放射線誘発線維症、事故による損傷及び熱傷、後腹膜線維症、腹膜線維症/腹膜瘢痕、又はその組み合わせと関連する、請求項9~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記間質性肺疾患と関連する線維症が、サルコイドーシス、珪肺症、薬物反応、感染症、コラーゲン血管疾患、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症、通常型間質性肺炎、間質性肺疾患、原因不明線維化性肺胞炎、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、又はその組み合わせである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
被験者の線維症形成を、未治療被験者に比べて少なくとも5%、10%、20%、50%、70%、90%、又はそれ以上減少させることを含む、請求項9~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記被験者の線維症形成を、未治療被験者に比べて遅延させることを含む、請求項9~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記被験者が哺乳動物である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記被験者がヒトである、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、1種以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、1種以上の追加治療薬を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記それを必要とする被験者に1種以上の追加治療薬を投与することをさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1種以上の追加治療薬が、追加の抗線維化薬を含む、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記1種以上の追加治療薬が、II型インターフェロン受容体作動薬、ピルフェニドン及びピルフェニドン類似体、ニンテダニブ及びニンテダニブ類似体、抗血管新生薬、抗炎症薬、IL-1拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬及びアルドステロン拮抗薬、マイトマイシンC(MMC)、5-フルオロウラシル(5-FU)、アデニリルシクラーゼ活性化薬、β-アドレナリン受容体(adenoreceptor)作動薬、フラボノイド、マスト細胞安定化薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロシアニジン、又はその組み合わせを含む、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項41】
前記1種以上の追加治療薬の少なくとも1つが、前記被検者に、前記組成物と同時投与される、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記1種以上の追加治療薬の少なくとも1つが、前記被験者に、前記組成物の投与前、前記組成物の投与後、又は前記組成物の投与前後に投与される、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、前記被験者に静脈内投与、経口投与、非経口投与によって投与される、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、粉末、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、カプセル剤、マイクロタブレット含有カプセル剤、液剤、エアロゾル、又はナノ粒子の形態である、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、前記被験者に、10mg~250mgの、前記シクロスポリン類似体又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体の有効な1日用量で投与される、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
線維症の予防若しくは治療に使用するため、又は線維症形成の予防若しくは減少に使用するため、又は線維症の回復に使用するため、又は線維症の量の減少のため、又は線維症の発生の遅延のための、下記式L:
【化5】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である)
のシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む医薬組成物。
【請求項47】
前記シクロスポリン類似体が下記CRV431である、請求項46に記載の医薬組成物。
【化6】
【請求項48】
前記医薬組成物が、静脈内投与、経口投与、又は非経口投与用である、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記医薬組成物が、粉末、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、カプセル剤、マイクロタブレット含有カプセル剤、液剤、エアロゾル、又はナノ粒子の形態である、請求項46~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物;及び
ラベルを含むキットであって、前記ラベルは、下記:
(a)前記キットが、線維症の予防又は治療用であること、
(b)前記キットが、線維症形成の減少又は抑制用であること、
(c)前記キットが、線維症の回復用であること、
(d)前記キットが、線維症の量の減少用であること、及び
(e)前記キットが、線維症の発生の遅延用であること
の1つ以上を示している、前記キット。
【請求項51】
線維症を発症するリスクがある被験者を識別するための説明書、線維症を患っている被験者を識別するための説明書、又は両方をさらに含む、請求項50に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/978,526号及び2020年2月25日に出願された米国仮特許出願第62/981,383号に対する優先権の利益を主張する。これらの関連出願の各内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
分野
本開示は、一般的に分子生物学及び医学の分野に関する。一態様は、シクロフィリン阻害薬で線維症を予防し、治療し、及び回復させることに関する。
【0003】
関連技術の説明
線維症は、線維性結合組織タンパク質の制御されない沈着及びクリアランス低下を特徴とし、最終的に致死的な末期の臓器瘢痕をもたらす病的状態である。組織線維症は、全ての臓器にわたって起こり得る。線維性障害は、臨床的に治療することが非常に困難なままであり、例えば、特発性肺線維症(IPF)及び強皮症のための治療選択肢は極端に限定されている。
非肝線維症を含め、種々の臓器を冒す線維症の予防、治療、及び回復に有効である抗線維化薬を見出す必要がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書の開示は、非肝線維症の治療方法を含む。本方法は、例えば、下記式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含み得る。
【0005】
【0006】
式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である。
【0007】
それを必要とする被験者は、非肝線維症を患っている被験者であり得る。方法は、被験者の非肝線維症の量を減少させることを含み得る。一部の実施形態では、被験者の非肝線維症の量は、5%、10%、20%、又はそれ以上減少する。方法は、被験者の非肝線維症の形成を減少させることを含み得る。一部の実施形態では、被験者の非肝線維症の形成は、5%、10%、20%、又はそれ以上減少する。
非肝線維症の非限定例としては、肺、肝臓、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、筋、血管、脈管構造の線維症、又はその任意の組み合わせがある。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、特発性肺線維症(IPF)、心臓線維症、皮膚線維症、腎線維症、又はその組み合わせから成る群より選択される線維性障害を患っている被験者である。
本明細書には、線維症の発生を予防するか又は遅延させる方法も含まれる。この方法は、例えば、下記式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含み得る。
【0008】
【0009】
式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である。
【0010】
それを必要とする被験者は、例えば、線維症を発症するリスクがある被検者であり得る。一部の実施形態では、被験者の線維症を発症するリスクは、未治療被験者に比べて少なくとも5%、10%、20%又はそれ以上減少する。一部の実施形態では、線維症の発生は、少なくとも1カ月、1年、又はそれ以上遅延する。
一部の実施形態では、方法は、線維症形成を減少させることを含み、線維症形成は、未治療被験者に比べて少なくとも1カ月、1年、又はそれ以上減少する。
本明細書には、線維症を減少させるか又は線維症を回復させる方法も含まれる。この方法は、例えば、下記式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含み得る。
【0011】
【0012】
式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である。
【0013】
一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、線維症を患っている被験者である。一部の実施形態では、方法は、被験者の線維症形成を抑制することを含む。一部の実施形態では、線維症は非肝線維症である。一部の実施形態では、非肝線維症は、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、筋、血管、脈管構造の線維症、又はその任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、肺線維症、心臓線維症、皮膚線維症、腎線維症、肝線維症、又はその組み合わせから成る群より選択される線維性障害を患っている被験者である。
一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、特発性肺線維症(IPF)を患っている被験者である。一部の実施形態では、線維症は肝線維症、例えば肝硬変である。一部の実施形態では、肝硬変はウイルス性肝炎、住血吸虫症及び慢性アルコール症と関連する。
一部の実施形態では、式Lのシクロスポリン類似体は下記CRV431である。
【0014】
【0015】
一部の実施形態では、組成物は、治療又は予防有効量の式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む。
一部の実施形態では、非肝線維症又は線維症は、治療薬、損傷、又はその組み合わせによって誘発される。一部の実施形態では、非肝線維症又は線維症は、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞の過形成、腫瘍、その組み合わせ後に起こる細胞外マトリックス成分の蓄積と関連する。一部の実施形態では、非肝線維症又は線維症は、主要臓器疾患、線維増殖性障害、外傷に伴う瘢痕、又はその組み合わせと関連する。一部の実施形態では、線維症は、間質性肺疾患、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、腎疾患、心疾患又は血管疾患、眼疾患、全身性及び局所性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、デュピュイトラン拘縮、手術合併症、化学療法薬誘発線維症、放射線誘発線維症、事故による損傷及び熱傷、後腹膜線維症、腹膜線維症/腹膜瘢痕、又はその組み合わせと関連する。一部の実施形態では、間質性肺疾患と関連する線維症は、サルコイドーシス、珪肺症、薬物反応、感染症、コラーゲン血管疾患、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症、通常型間質性肺炎、間質性肺疾患、原因不明線維化性肺胞炎、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、又はその組み合わせである。
【0016】
方法は、未治療被験者に比べて、例えば、被験者の線維症形成を少なくとも5%、10%、20%、50%、70%、90%、又はそれ以上減少させ得る。
一部の実施形態では、方法は、被験者の線維症形成を未治療被験者に比べて遅延させることを含む。被験者は、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)であり得る。一部の実施形態では、組成物は、1種以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、組成物は、1種以上の追加治療薬を含む。
一部の実施形態では、方法は、それを必要とする被験者に1種以上の追加治療薬を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、1種以上の追加治療薬は、追加の抗線維化薬を含む。一部の実施形態では、1種以上の追加治療薬は、II型インターフェロン受容体作動薬、ピルフェニドン及びピルフェニドン類似体、ニンテダニブ及びニンテダニブ類似体、抗血管新生薬、抗炎症薬、IL-1拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬及びアルドステロン拮抗薬、マイトマイシンC(MMC)、5-フルオロウラシル(5-FU)、アデニリルシクラーゼ活性化薬、β-アドレナリン受容体(adenoreceptor)作動薬、フラボノイド、マスト細胞安定化薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロシアニジン、又はその組み合わせを含む。
【0017】
一部の実施形態では、1種以上の追加治療薬の少なくとも1つは、被験者に組成物と同時投与される。一部の実施形態では、1種以上の追加治療薬の少なくとも1つは、被験者に組成物の投与前、組成物の投与後、又は組成物の投与前後に投与される。組成物は、例えば、静脈内投与、経口投与、非経口投与によって被験者に投与可能である。組成物は、例えば、粉末、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、カプセル剤、マイクロタブレット含有カプセル剤、液剤、エアロゾル、又はナノ粒子の形態であり得る。一部の実施形態では、組成物は、被験者に10mg~250mgの、シクロスポリン類似体又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体の有効な1日用量で投与される。
本明細書では、線維症の予防若しくは治療に使用するため、又は線維症形成の予防又は減少に使用するため、又は線維症の回復に使用するため、又は線維症の量の減少のため、又は線維症の発生の遅延のための、下記式Lのシクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む医薬組成物をも提供する。
【0018】
【0019】
式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記CRV431である。
【0020】
【0021】
一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与、経口投与、又は非経口投与用である。一部の実施形態では、医薬組成物は、粉末、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、カプセル剤、マイクロタブレット含有カプセル剤、液剤、エアロゾル、又はナノ粒子の形態である。
本明細書では、
本明細書で開示する医薬組成物;及び
ラベルを含むキットであって、このラベルは、下記:
(a)キットが、線維症の予防又は治療用であること、
(b)キットが、線維症形成の減少又は抑制用であること、
(c)キットが、線維症の回復用であること、
(d)キットが、線維症の量の減少用であること、及び
(e)キットが、線維症の発生の遅延用であること
の1つ以上を示している、キット
を開示する。
一部の実施形態では、キットは、線維症を発症するリスクがある被験者を識別するための説明書、線維症を患っている被験者を識別するための説明書、又は両方をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】ヒトLX-2肝星細胞培養におけるCRV431処置に起因するプロコラーゲンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図1B】ヒトLX-2肝星細胞培養におけるCRV431処置に起因するフィブロネクチンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図2A】ヒトIPF肺線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するプロコラーゲンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図2B】ヒトIPF肺線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するフィブロネクチンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図3A】ヒト心臓線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するプロコラーゲンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図3B】ヒト心臓線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するフィブロネクチンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図4A】ヒト腎メサンギウム細胞培養におけるCRV431処置に起因するプロコラーゲンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図4B】ヒト腎メサンギウム細胞培養におけるCRV431処置に起因するフィブロネクチンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図5A】ヒト皮膚線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するプロコラーゲンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図5B】ヒト皮膚線維芽細胞培養におけるCRV431処置に起因するフィブロネクチンの存在量の用量依存的減少を示すヒストグラムである。
【
図6A】培養中のヒト精密切断IPF肺薄片の分泌マーカーに関する日平均変化%を示すプロットである。
【
図6B】同ヒト精密切断IPF肺薄片培養における遺伝子発現を示すプロットである。
【
図7A】腎線維症のマウス片側尿管結紮(UUO)モデルにおけるCRV431の抗線維化活性を示すプロットである。
【
図7B】腎線維症のマウス片側尿管結紮(UUO)モデルにおけるCRV431の抗線維化活性を示すプロットである。
【
図8A】ヒト精密切断肝薄片(PCLS)におけるCRV431の抗線維化活性を示すプロットである。
【
図8B】ヒト精密切断肝薄片(PCLS)におけるCRV431の抗線維化活性を示すプロットである。
【
図8C】ヒト精密切断肝薄片(PCLS)におけるCRV431の抗線維化活性を示すプロットである。
【
図9A】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較するためのサンプル及びドナーの分布を示すPCAプロットである。
【
図9B】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較するためのサンプル及びドナーの分布を示すPCAプロットである。
【
図9C】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較するためのMAプロットである。
【
図10A】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較するために生成したヒートマップである。
【
図10B】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較するために生成したヒートマップである。
【
図11】TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルの群別比較において同定された有意な異なって発現された遺伝子を示すボルケーノプロット(volcano plot)である。
【
図12A】全3名のドナー間の有意な遺伝子オーバーラップを示すベン図である。
【
図12B】全3名のドナー間の有意な遺伝子オーバーラップを示すベン図である。
【
図13A】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較するためのサンプル及びドナーの分布を示すPCAプロットである。
【
図13B】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較するためのサンプル及びドナーの分布を示すPCAプロットである。
【
図13C】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較するためのMAプロットである。
【
図14A】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較するために生成したヒートマップである。
【
図14B】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較するために生成したヒートマップである。
【
図15】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルの群別比較において同定された有意な異なって発現された遺伝子を示すボルケーノプロットである。
【
図16A】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルをドナー別に比較するために全3名のドナー間の有意な遺伝子オーバーラップを示すベン図である。
【
図16B】非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルをドナー別に比較するために全3名のドナー間の有意な遺伝子オーバーラップを示すベン図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
下記詳細な説明では、その一部を形成する添付図面を参照する。図面中、類似記号は、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、典型的に類似成分と同一視する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載の例示実施形態は、限定することを意味しない。他の実施形態を利用してよく、かつ本明細書で提示する主題の精神又は範囲を逸脱することなく、他の変更を加えてよい。本開示の態様は、本明細書に一般的に述べ、図に示すように、種々多様の異なる構成で配置し、置換し、組み合わせ、分離し、及び設計することができ、これらの全ては、本明細書で明示的に企図され、本明細書の開示の一部を形成することは容易に分かるであろう。
本明細書で参照した全ての特許、公開特許出願、他の公表文献、及びGenBankからの配列、並びに他のデータベースは、参照することにより関連技術についてそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いる技術及び科学用語は、本開示が属する当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994);Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor, NY 1989)を参照されたい。本開示の目的のため、下記用語を以下に定義する。
本明細書で使用する場合、「被験者」は治療、観察又は実験の対象である動物を指す。「動物」には、冷血及び温血脊椎動物並びに無脊椎動物、例えば魚類、甲殻類、爬虫類、特に哺乳類が含まれる。哺乳類には、限定するものではないが、マウス;ラット;ウサギ;モルモット;イヌ;ネコ;ヒツジ;ヤギ;ウシ;ウマ;霊長類、例えばサル、チンパンジー、及び類人猿、特に、ヒトが含まれる。
本明細書で使用する場合、「患者」は、特定の疾患若しくは障害を治そうと、又はその影響を少なくとも緩和しようと、又は第一に疾患若しくは障害が発生しないように予防しようと試みるために、医療従事者、例えば医学博士(すなわち、アロパシー医学の医師又はオステオパシー医学の医師)又は獣医学の医師によって治療される被験者を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「投与」又は「投与すること」は、ある投薬量の医薬的に活性な成分を脊椎動物に与える方法を指す。
本明細書で使用する場合、「投薬量」は、活性成分(例えば、CRV431を含めたシクロスポリン類似体)の合計量を指す。
本明細書で使用する場合、「単位投薬量」は、単一用量で患者に投与される治療薬の量を指す。
本明細書で使用する場合、「1日投薬量」は、1日に患者に投与される治療薬の総量を指す。
本明細書で使用する場合、「治療的に有効な量」又は「医薬的に有効な量」は、治療効果がある治療薬の量を意味する。単独又は1種以上の追加治療薬と組み合わせて投与されると治療に役立つ医薬的に活性な成分の投薬量は、治療的に有効な量である。従って、本明細書で使用する場合、治療的に有効な量は、臨床試験結果及び/又はモデル動物研究によって判断される所望の治療効果を生じさせる治療薬の量を意味する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「治療」、又は「治療すること」は、予防及び/又は治療目的で治療薬又は医薬組成物を被験者に投与することを指す。用語「予防的治療」は、まだ疾患若しくは病気の症状を示さないが、特定の疾患若しくは病気になりやすいか、又はそうでなくてもそのリスクがある被験者を治療することを指し、この治療は、患者が疾患若しくは病気を発症する可能性を減じる。用語「治療的治療」は、既に疾患又は病気を患っている被験者に治療を施すことを指す。本明細書で使用する場合、用語「治療効果」は、疾患又は障害の症状の1つ以上をある程度軽減する。例えば、治療効果は、被験者によって伝えられる主観的不快感の減少(例えば、自己投与患者の質問票に記述される不快感の減少)によって観察され得る。
本明細書で使用する場合、用語「予防(「prophylaxis」又は「prevention」)」は、臨床的疾患状態の発生の確率を減じるための、被験者、例えば哺乳動物(ヒトを含む)の無症状の疾患状態の予防的治療を指す。被験者は、母集団に比べて臨床的疾患状態を患うリスクを高めることが分かっている要因に基づく予防療法に合わせて選択される。「予防」療法は、(a)一次予防及び(b)二次予防に分類することができる。一次予防は、まだ臨床的疾患状態を呈していない被験者の治療と定義され、一方で二次予防は、同一又は類似の臨床的疾患状態の二次発生を予防することと定義される。
【0027】
線維症
線維症は、線維性結合組織の過剰蓄積が起こる病的状態である。ある症例では、線維症は、細胞外マトリックス沈着、血管/細管/管/気道開存性の低下及び最終的に臓器不全をもたらす機能障害を特徴とする、組織又は臓器への急性又は慢性ストレスの結果であるとみなされる。臓器又は組織内の過剰の線維性結合組織の形成は、反応過程又は修復過程で起こり得る。反応性線維症は、機能細胞壊死の非存在下で出現する可逆過程であり(すなわち、病的細胞は生きたままである)、一方で修復性線維症は、細胞死後の瘢痕形成を伴う。線維症は、限定するものではないが、心臓、肝臓、肺、骨格筋、腎臓、眼、血管、皮膚、脳、骨髄、胃腸管、腹膜、及び脈管構造を含む全ての組織系及び臓器系を冒し得る。線維症は、世界中の全ての死のほぼ半分に相当する多くの慢性組織疾患の末期に相当する:骨格筋組織(例えば、ジストロフィー型筋疾患)、心臓及び血管組織(例えば、心筋梗塞)、肝臓組織(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患/肝硬変)、肺組織(例えば、特発性肺線維症)及び腎臓組織(例えば、慢性腎疾患/腎線維症)。線維症及び線維性障害は、限定するものではないが、肺、肝臓、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、又はその組み合わせを含めた主要臓器と関連し得る。本明細書に述べるように、線維症は、非肝組織及び肝臓以外の臓器に線維症が存在し、並びに/又は非肝組織及び肝臓以外の臓器を線維症が冒す非肝線維症であり得る。非肝線維症の非限定例としては、心臓、肺、骨格筋、腎臓、眼、血管、皮膚、脳、骨髄、胃腸管、腹膜、及び脈管構造を冒す線維症が挙げられる。非肝線維性障害の例としては、限定するものではないが、肺、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、骨髄、筋(例えば、骨格筋)、血管、脈管構造、又はその任意の組み合わせと関連する線維性状態が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用する場合、線維性疾患又は状態は、過剰の線維性結合組織の形成を特徴とするいずれの疾患又は状態でもある。これらの疾患の共通の特徴は線維化細胞の過剰増殖であり、組織又は臓器線維症には、放射線化学療法及び組織移植術に起因する肺線維症、肝線維症、慢性膵炎、強皮症、糸球体線維症及び多臓器線維症が含まれることが多い。過剰な線維性結合組織の形成は、修復又は反応過程に応答している可能性がある。線維症としては、限定するものではないが、肺線維症、肝線維症, 骨髄線維症、皮膚線維症(例えば、腎性全身性線維症及びケロイド線維症)、縦隔線維症、心臓線維症、腎線維症、間質性線維症、硬膜外線維症、上皮線維症、特発性線維症、肝硬変、及びその任意の組み合わせが挙げられる。
【0029】
一部の実施形態では、線維症は、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞の過形成、及び腫瘍後に起こる細胞外マトリックス成分の蓄積を伴う線維性状態である。線維症及び線維性障害の非限定例としては、限定するものではないが、嚢胞性線維症;限定するものではないが、間質性肺疾患(ILD)、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝線維症)、腎疾患(腎線維症)、心臓又は血管疾患(心臓線維症)及び眼の疾患を含めた主要臓器疾患と関連する線維症及び線維性障害;線維増殖性障害、例えば、限定するものではないが、全身性及び局所性強皮症、ケロイド及び肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、及びデュピュイトラン拘縮等;外傷と関連する瘢痕、例えば、限定するものではないが、手術合併症、化学療法薬誘発線維症(例えばブレオマイシン誘発線維症)、放射線誘発線維症、事故による損傷及び熱傷等;後腹膜線維症(オーモンド病);及び通常は腎臓移植後に腹膜透析を受けた患者の腹膜線維症/腹膜瘢痕が挙げられる。
【0030】
線維症は眼線維症の可能性があり、限定するものではないが、眼線維症は、眼の疾患又は障害、例えば糖尿病性網膜症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、アメーバ感染症、眼外傷、化学性角膜熱傷、温熱性角膜熱傷、翼状片、緑内障、外科手術による外傷、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、増殖性硝子体網膜症(PVR、例えば前側増殖性硝子体網膜症(前側PVR))、又はその組み合わせに起因する。眼線維症は、例えば、網膜線維症、角膜線維症、結膜線維症、線維柱帯網の線維症、又はその組み合わせであり得る。眼線維症は、例えば、角膜の濁り、角膜瘢痕、線維柱帯ブレブ、又はその組み合わせを含み得る。眼線維症は、例えば、角膜熱傷、翼状片(pteygium)、FECD、緑内障、又はその組み合わせに起因し得る。一部の実施形態では、眼線維症は、抗VEGF治療と関連する網膜線維症を含む。
【0031】
腎線維症は、腎組織の感染が原因で蓄積された瘢痕に線維症が生じ、腎臓の一部が硬化してその機能を失う線維性状態である。腎臓の硬化は、慢性腎不全を引き起こす可能性があり、貧血、凝固障害、高血圧、心肺臓器及び胃腸管の種々の合併症及び感染症を伴う可能性がある。例えば、正常の15パーセント未満に腎機能が低下すると、腎臓は、あまりエリスロポエチンを生成せず、結果として赤血球生成が減少する。さらに、不活発な尿分泌によって引き起こされる尿毒症は、赤血球の寿命を短くし、強い貧血を引き起こす。さらに、尿毒症の発生は、敗血症の発症の主要因である全身感染症の可能性を高める。ある症例では、腎疾患(糖尿病と関連し得る)は、腎臓に損傷を与え、傷痕を残し、機能の進行性消失、及び高血圧疾患をも引き起こす可能性がある。腎線維症は、慢性腎疾患(CKD)から末期腎疾患(ESRD)までの腎疾患のいずれの段階でも起こり得る。腎線維症は、両方とも腎機能に莫大な歪みを加え、線維化反応を促す高血圧症又は糖尿病のような心血管疾患の結果として発症し得る。ある症例では、腎線維症は、特発性(原因不明)であることもあり、特定のミトコンドリア遺伝子疾患も腎線維症の徴候及び関連症状を呈する。
【0032】
肺の線維性障害としては、例えば、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常型間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患(ILD)、原因不明線維化性肺胞炎(CFA)、閉塞性細気管支炎、及び気管支拡張症が挙げられる。間質性肺疾患(ILD)には、肺の炎症及び線維症が病態の最後の共通経路である障害、例えば、サルコイドーシス、珪肺症、薬物反応、感染症及びコラーゲン血管疾患、例えば関節リウマチ及び全身性硬化症(強皮症)が含まれる。IPFは、最も一般的なタイプのILDである。IPFは、上皮細胞又はゴブレット細胞を連続的に刺激すことによって引き起こされる損傷部位の治癒過程の異常に起因することが知られているが、その刺激因子は分かっていない。肺の炎症は、肺線維症を直接引き起こさないかもしれないが、肺線維症は、肺の炎症後の正常組織への治癒過程における特発性肺線維症の患者と健常人との間の差が原因で生じることが知られている。線維症の別の機序は、Tヘルパー2型サイトカインによる線維芽細胞の活性化及び増殖を介した細胞外マトリックスの沈着及び線維形成である。
【0033】
肝臓の線維症(肝線維症)は、肝臓の慢性炎症に起因する細胞外マトリックスの過剰沈着と定義することができる。細胞外マトリックスのこのような過剰沈着が原因で慢性肝疾患が持続すると、肝臓の内部構造の歪み及び肝細胞の減少が原因で最終的に肝硬変になる。肝線維症に関与する代表的細胞としては、肝星細胞、クッパー細胞、及び内皮細胞が挙げられる。活性化肝星細胞は、細胞外マトリックス産生の主要源であり、肝星細胞は、コラーゲンを含む種々の細胞外マトリックスの産生を増やすことに関与する。クッパー細胞は、肝臓の類洞空間内にあり、活性化クッパー細胞によって産生された物質が肝細胞、内皮細胞、及び肝星細胞の周囲で作用し、それによって肝線維症を促進する。内皮細胞は、肝臓内の血流の調節において重要な役割を果たすのみならず、炎症又は肝線維症による肝星細胞の増殖に関与する成長因子及び細胞外マトリックスの産生にも関与する。肝線維症に影響を与えるサイトカインとしては、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)及び血小板由来成長因子(PDGF)がある。TGFβは、肝星細胞の繊維形成を促進する最強サイトカインであり、肝星細胞自体がTGFβの主要源である。PDGFは、肝星細胞の分割及び増殖を促進する最強サイトカインである。従来、肝線維形成過程は不可逆現象と認識されていたが、最近、可逆的に変化することが報告された。従って、それは動的過程であり得る。従って、該変化を正確に測定することが臨床的に重要になる。一部の実施形態では、肝線維症は肝硬変であり、これには、例えば、ウイルス性肝炎、住血吸虫症及び慢性アルコール症と関連する肝硬変が含まれる。
【0034】
一部の実施形態では、線維症は、心疾患、眼疾患、又はその組み合わせと関連する。心疾患は、心臓のポンピング能力を障害する瘢痕組織をもたらす可能性がある。心臓の線維性状態の非限定例としては、心房線維症、心内膜心筋線維症、及びその組み合わせが挙げられる。眼疾患としては、限定するものではないが、黄斑変性症並びに網膜及び硝子体網膜症があり、視力を損なう恐れがある。線維症は、筋線維症、例えば反応性筋線維症であり得る。筋線維症は心臓線維症であり得、これには、限定するものではないが、間質性心臓線維症、血管周囲性心臓線維症、骨格筋線維症、及びその組み合わせが含まれる。
心臓線維症は、患者の心疾患の病態形成において種々の異なる機序を経て重要な役割を果たし得る。線維化心筋リモデリングは、駆出率が保たれた心不全の発症に寄与する心室拡張機能を障害し得る。心房線維症の発症は、被験者を心房頻拍にかかりやすくし得る。さらに、心室心筋内のコラーゲン沈着は、代謝異常個体で観察される心室性不整脈及び突然死の発生率上昇に寄与し得る。さらに、一部の患者において、右心室の線維性変化の発生が右心室機能を乱す可能性がある。さらに、梗塞後の修復線維化反応の代謝異常関連調節が、これらの被験者に梗塞後心不全を発症させやすくする可能性がある。新陳代謝の変化を有する被験者の心疾患罹患率及び死亡率を下げるためには線維症を軽減することが有利であり得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、線維性障害は、例えば、線維性血管疾患、嚢胞性線維症、肺線維症、特発性肺線維症、筋骨格線維症、腎線維性疾患、HIV関連リンパ節線維症、炎症性肺線維症、膵線維症、肝線維症、心筋線維症、又はその組み合わせであり得る。
線維症は、加齢に伴う(例えば、組織損傷又は心血管疾患の結果として)か、又は損傷によって誘発されるか、又はストレスに誘発される可能性がある。加齢に伴う線維症は、心臓、腎臓、血管、肝臓、脳、腸、皮膚、膵臓及び肺、又はその任意の組み合わせの加齢に伴う線維症であり得る。線維症は、例えば、心臓線維症、肝線維症、脳線維症、腎線維症、血管線維症、肺線維症、皮膚線維症、又はその任意の組み合わせであり得る。皮膚線維性障害の非限定例としては、異常な創傷治癒、皺、セルライト及び皮膚腫瘍性線維症、脈管障害、血管炎、過剰増殖性熱傷創傷治癒、糖尿病性足病変症候群、関節線維症、ペイロニー病、及びその任意の組み合わせが挙げられる。脳線維性状態の非限定例にはグリア性瘢痕が含まれる。一部の実施形態では、線維性状態は、動脈硬直、関節線維症、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、縦隔線維症、骨髄線維症、ペイロニー病(PD)、腎性全身性線維症、進行性塊状線維症、後腹膜線維症、熱傷瘢痕、任意の臓器の術後線維症、尿道線維症、糖尿病性腎症、強皮症/全身性硬化症、又はその任意の組み合わせである。線維性状態は、胃腸系の臓器、例えば、肝臓、小腸、大腸、又は膵臓;呼吸器系の臓器、例えば、肺;心血管系の臓器、例えば、心臓又は血管;皮膚;神経系の臓器、例えば脳;泌尿器系の臓器、例えば、腎臓;及び/又は筋骨格系の臓器、例えば、筋組織と関わり得る。一部の実施形態では、線維症又は線維性状態は、既知の原因及び/又はトリガー、例えば、皮膚熱傷、術後線維症、又はその組み合わせを有する。一部の実施形態では、線維症又は線維性状態は、既知の原因及び/又はトリガーを持たない。
【0036】
予防及び治療方法
本明細書では、線維症(例えば、1種以上の線維性疾患/障害)を治療するための方法、組成物、及びキットを開示する。本方法、組成物、及びキットは、例えば、それを必要とする被験者の線維症の1つ以上の症状を軽減又は改善する。本明細書では、線維症(例えば、1種以上の線維性疾患/障害)を予防(一次予防及び二次予防を含む)するための方法、組成物、及びキットをも開示する。さらに、線維症の発生を予防するか又は遅延させるための方法、組成物、及びキットを提供する。本明細書で開示する方法、組成物、及びキットは、一部の実施形態では、被験者の線維症を回復させ、線維症形成を減少させ若しくは抑制し、及び/又は線維症の量を減少させ得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。
【0037】
一部の実施形態では、方法は、線維症を有する被験者を識別することを含む。一部の実施形態では、方法は、線維症を発症するリスクがある被験者を識別することを含む。キットは、線維症を有する被験者を識別するための説明書、線維症を発症するリスクがある被験者を識別するための説明書、又は両方を含み得る。
方法は、例えば、それを必要とする被験者に、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物を投与することを含み得る。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、線維症を発症するリスクがある被験者である。一部の実施形態では、被験者は、線維症を発症していない。例えば、被験者は、予防措置(例えば、本明細書で開示する線維症予防方法又は線維症予防組成物で治療されること)の非存在下で線維症を発症する可能性があるか、又は発症することになる個体である。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、線維症を患っている被験者である。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、線維症の1つ以上の症状を有する被験者である。一部の実施形態では、それを必要とする被験者は、最近線維症を患ったことがある被験者である。
【0038】
例えば、本明細書で開示する方法、組成物及びキットを用いて、線維症を発症するリスクがある被験者(例えば、線維症予防的治療の非存在下で、線維症を発症する可能性があるか、又は線維症を発症することになる被験者)の線維症の発生を予防することができる。さらに、本明細書で開示する方法、組成物及びキットを用いて、線維症を発症するリスクがある被験者(例えば、線維症予防的治療の非存在下で、その時以前に線維症を発症したであろう被験者)の線維症の発生を遅延させ得る。本明細書で記述する場合、線維症を発症するリスクがある被験者は、まだ線維症を患っていない被験者なので、被験者において線維症は進行していない。一部の実施形態では、線維症の発生が遅延する。遅延は、例えば、1秒以上、1分以上、1時間以上、1日以上、1週間以上、1カ月以上、又は1年以上であり得る。一部の実施形態では、治療被験者における遅延は、治療を受けなかった同被験者に対するものである。一部の実施形態では、治療被験者における遅延は、未治療被験者に対するものである。一部の実施形態では、線維症の発生は、5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、250、300、350、又は約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、250、300、350、又はこれらの任意の値間の範囲の日数遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又はこれらの任意の値間の範囲の月数若しくは年数遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ月若しくは年、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ月若しくは年遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間、若しくはそれ以上の時間、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間、若しくはそれ以上の時間遅延する。
【0039】
一部の実施形態では、被験者において線維症(例えば、組織線維症)が回復する。回復は、被験者に存在する線維症の1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、回復は、被験者に存在する線維症の少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。
【0040】
一部の実施形態では、被験者において線維症(例えば、組織線維症)の量が減少する。被験者において、線維症の量の減少は、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、被験者において、線維症の量の減少は、少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。
【0041】
一部の実施形態では、被験者において線維症(例えば、組織線維症)の形成が減少する。線維症形成の減少は、被験者において、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、線維症形成の減少は、被験者において、少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。治療被験者における線維症形成の減少は、治療を受けなかった同被験者に対するものである。一部の実施形態では、治療被験者における線維症形成の減少は、未治療被験者に対するものである。
【0042】
本明細書で開示する1種以上のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体の治療有効性は、被験者の線維症(例えば、罹患臓器、組織又はエリア内の線維症)の量を測定することで知られている方法を用いて決定することができる。被験者は、例えば、線維症を患っている患者又は最近線維症を患った患者であり得る。被験者の線維症の量は、線維症の量を測定することで当業者に知られている方法によって測定することができる。例えば、限定するものではないが、線維症の量は、被験者から筋バイオプシーを採取し、筋をスライド上で薄片にし、当技術分野で既知の染色技術(例えば、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色及び/又はマッソントリクローム染色)によって明らかにされる線維症の量を評価することによって決定することができる。別の例として、磁気共鳴画像法(MRI)を利用することによって線維症の量をin vivoで決定することができる。
【0043】
本明細書で開示する組成物、方法又はキットによって達成できる例示治療エンドポイントは、本明細書で開示する1種以上のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、及び任意的に1種以上の追加治療薬(例えば、抗線維化薬)を投与されている被験者の線維症の量の減少であり得る。被験者の線維症の相対量は、例えば、組織バイオプシー及びその後の組織学的検査によって、例えば、限定するものではないが、筋線維又は細胞損傷の尺度としてのエバンスブルー色素取込みを定量化することによって(例えばHeydemann et al., Neuromuscular Disorders 15(9-10): 601-9 (2005)に記載)、又はSwaggart et al., Physiol Genomics 43: 24-31 (2011)に記載されているヒドロキシプロリン含量の定量化によって、又は両方によって定量化し得る。一部の実施形態では、本明細書で開示する1種以上のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、及び任意的に1種以上の追加治療薬(例えば、抗線維化薬)を投与されている被験者の線維症の量は、そのように治療されていない患者に比べて、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又は約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又は1%~100%以内の任意の値、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲減少する。一部の実施形態では、本明細書で開示する1種以上のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、及び任意的に1種以上の追加治療薬(例えば、抗線維化薬)を投与されている被験者の線維症の量は、そのように治療されていない患者に比べて、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%減少し、又は少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%減少する。
【0044】
機能アッセイを利用して、例えば、線維症の治療、線維症の予防、線維症の回復、線維症の量の減少、線維症の発生の遅延、線維症形成の減少若しくは抑制、又はその任意の組み合わせにおける本明細書で開示する化合物の有効性を決定することができる。例えば、筋線維芽細胞を線維芽細胞と区別する筋線維芽細胞の特徴的機能である筋線維芽細胞収縮性の尺度としてコラーゲンゲル収縮を抑制することに関して化合物を試験することができる。コラーゲンゲルに線維芽細胞を充填し、TGFβ1による刺激後に収縮を測定した。有効な化合物は、コラーゲンのTGFβ1誘導収縮を抑制すると予想される。筋線維芽細胞の重要な特徴的機能の1つであるECMタンパク質産生を抑制することに関して化合物の有効性を試験することもできる。
【0045】
本明細書で開示する方法は、例えば、臓器不全、瘢痕、正常な細胞外マトリックスバランスの変化、コラーゲン沈着の増加、コラーゲン体積分率上昇、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化、マトリックスメタロプロテイナーゼレベル低下及びマトリックスメタロプロテイナーゼの組織インヒビターレベル上昇、I型プロコラーゲンのN末端プロペプチド又はC末端プロペプチド(PINP又はPICP)のどちらかのレベル上昇、I型コラーゲンのC末端テロペプチド(telepeptide)(CTP又はCITP)のレベル低下、コラーゲン沈着増加及び種々の非侵襲性画像処理技術で測定される心機能障害、並びにタンパク尿(proteinurea)及びアルブミン尿(albuminurea)増加、糸球体濾過率低下又はクレアチニンレベルの倍増によって計測される腎機能障害を有する被験者の治療に適用することができる。
【0046】
治療薬
本明細書で使用する場合、用語「抗線維化薬」は、哺乳動物において抗線維化活性(例えば、線維症を予防し、減少させ又は回復させる)を有する薬剤(例えば、化学物質又は生化学的薬剤)を指す。抗線維化薬は、様々な作用機序を有することができ、例えば、コラーゲン又は別のタンパク質の形成を減少させるものもあれば、体の患部内のコラーゲンの異化又は除去を促すものもある。線維性組織の存在の減少に活性を有する抗線維化薬は、該薬剤がそれぞれ機能する特定の作用機序に関係なく、本明細書に含められる。抗線維化薬のいくつかの非限定例は、参照することにより本明細書に援用する米国特許第5,720,950号に記載されている。追加抗線維化薬として、限定するものではないが、II型インターフェロン受容体作動薬(例えば、インターフェロンγ);ピルフェニドン及びピルフェニドン類似体;抗血管新生薬、例えばVEGF拮抗薬、VEGF受容体拮抗薬、bFGF拮抗薬、bFGF受容体拮抗薬、TGFβ拮抗薬、TGFβ受容体拮抗薬;抗炎症薬、IL-1拮抗薬、例えばIL-1Ra、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬及びアルドステロン拮抗薬が挙げられる。
【0047】
本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む抗線維化薬は、被験者の線維症(例えば、線維性障害)を治療するため、又は線維症(例えば、線維性障害)の一次予防若しくは二次予防のために使用することができる。シクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、例えば、被験者(例えば、線維症を発症するリスクがある被験者)における線維症の発生を遅延させることができる。シクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、例えば、被験者の線維症を回復させ得る。シクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、被験者における線維症形成を減少させるか又は抑制するために使用することができる。シクロスポリン類似体、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、被験者の線維症の量を減少させるために使用することができる。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。
【0048】
本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、線維症(例えば、組織線維症)が生じないように予防することができる。例えば、これらの抗線維化薬は、被検者における線維症形成を妨げることができ、被験者における線維症の発生を遅延させることができ、又は両方できる。遅延は、例えば、1秒以上、1分以上、1時間以上、1日以上、1週間以上、1カ月以上、又は1年以上であり得る。治療被験者における遅延は、治療を受けなかった同被験者に対するものであるか、又は未治療被験者に対するものであり得る。一部の実施形態では、線維症の発生は、5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、250、300、350、又は約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、250、300、350、又はこれらの値のいずれかの間の範囲の日数遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又はこれらの値のいずれかの間の範囲の月数若しくは年数遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ月若しくは年、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ月若しくは年遅延する。一部の実施形態では、線維症の発生は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくはそれ以上の時間、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくはそれ以上の時間遅延する。
【0049】
本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、被験者の線維症(例えば、組織線維症)を回復させることができる。回復は、被験者に存在する線維症の1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、回復は、被験者に存在する線維症の少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。
【0050】
本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、被験者の線維症(例えば、組織線維症)の量を減少させることができる。線維症の量の減少は、被験者において、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、線維症の量の減少は、被験者において、少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。
【0051】
本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体は、被験者における線維症(例えば、組織線維症)の形成を減少させることができる。線維症形成の減少は、被験者において、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。一部の実施形態では、線維症形成の減少は、被験者において少なくとも1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上、又は少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくはそれ以上であり得る。線維症は、一部の実施形態では、非肝線維症である。治療被験者の線維症形成の減少は、治療を受けなかった同被験者に対するものであるか、又は未治療被験者に対するものである。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記式Lの化合物である。
【0052】
【0053】
式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. H;
ii. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
iii. N置換又は非置換アシル保護アミン;
iv. N置換又は非置換アミン;
v. カルボン酸;
vi. ニトリル;
vii. エステル;
viii. ケトン;
ix. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
x. 置換又は非置換アリール;
xi. 任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、ハロゲン、及びオキソから成る群より選択される置換基を含有してよい飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖;
xii. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基を含有する芳香族基;及び
xiii. (xi)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖及び(xii)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R1-R2は、下記基から成る群より選択される。
【0054】
【0055】
一部の実施形態では、R1-R2は、任意に、水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、ハロゲン、オキソ、カルボン酸、エステル、及び1,3-ジオキソランから成る群より選択される置換基で置換されていてもよい、2と5の間の炭素数の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族鎖を含む。
一部の実施形態では、R2は、下記基:
【0056】
【0057】
から成る群より選択され;R5は、1と10の間の炭素長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;及びR6は、1と10の間の炭素長のモノヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、トリヒドロキシル化又はポリヒドロキシル化飽和又は不飽和の直鎖又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R23は、下記基から成る群より選択される。
【0058】
【0059】
一部の実施形態では、R23は、任意に置換されていてもよいアルキル、例えば任意に置換されていてもよいC1-C3アルキルである。アルキルは、アミノで置換されることがあり、かつC1-C3-Alaを含んでよく、この場合、化合物は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3のD-エピマーを含む。一部の実施形態では、R23はMeAlaであり得る。一部の実施形態では、R23は、1~6、1~5、1~4、1~3又は2炭素長の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、式Lの
【0060】
【0061】
は、下記基から成る群より選択される。
【0062】
【0063】
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記式L:
【0064】
【0065】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
ii. カルボン酸;
iii. ニトリル;
iv. エステル;
v. ケトン;
vi. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;及び
vii. 置換又は非置換アリール;
viii. ケトン、ヒドロキシ、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、及びオキソから成る群より選択される置換基で置換された飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖;
ix. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基で置換された芳香族基;及び
x. viii)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖及びix)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、非置換C1-C3アルキルである)
の化合物である。
一部の実施形態では、R’はHである。
一部の実施形態では、R1は、5~8炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R2は、下記基:
【0066】
【0067】
から成る群より選択され;
R5は、1と10の間の炭素長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;かつR6は、1と10の間の炭素長のモノヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、トリヒドロキシル化、又はポリヒドロキシル化飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R1-R2は、下記基から成る群より選択される。
【0068】
【0069】
一部の実施形態では、R1-R2は、ケトン、ヒドロキシ、ニトリル、オキソ、カルボン酸、エステル、及び1,3-ジオキソランから成る群より選択される置換基で置換される。一部の実施形態では、R1-R2は、少なくとも6炭素原子長である。
一部の実施形態では、式Lの
【0070】
【0071】
は、下記基から成る群より選択される。
【0072】
【0073】
一部の実施形態では、
R23は、下記基から成る群より選択される。
【0074】
【0075】
一部の実施形態では、R23はメチルである。一部の実施形態では、化合物は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3のD-エピマーを含む。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記化合物から成る群より選択される化合物である。
【0076】
【0077】
式中:
Rは、
【0078】
【0079】
であり;
R’はH又はアセチルであり;かつ
異性体は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3の異性形態である。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記式L:
【0080】
【0081】
(式中:
a. R’は、H又はアセチルであり;
b. R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
c. R2は、下記:
i. 非置換、N置換、又はN,N二置換アミド;
ii. カルボン酸;
iii. ニトリル;
iv. エステル;
v. ケトン;
vi. ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、又はポリヒドロキシアルキル;
vii. 置換又は非置換アリール;
viii. ケトン、ヒドロキシ、ニトリル、カルボン酸、エステル、1,3-ジオキソラン、及びオキソから成る群より選択される置換基で置換された飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖;
ix. ハロゲン、エステル、及びニトロから成る群より選択される置換基で置換された芳香族基;及び
x. (viii)の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖及び(ix)の芳香族基の組み合わせ
から成る群より選択され;及び
d. R23は、飽和又は不飽和の直線状又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖であり、
R1-R2は、少なくとも6炭素原子長である)
の化合物である。
一部の実施形態では、R’はHである。
一部の実施形態では、R1は、5~8炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R1-R2は、下記基から成る群より選択される。
【0082】
【0083】
一部の実施形態では、R1-R2は、ケトン、ヒドロキシ、ニトリル、オキソ、カルボン酸、エステル、及び1,3-ジオキソランから成る群より選択される置換基で置換される。
一部の実施形態では、R23は、下記基から成る群より選択される。
【0084】
【0085】
一部の実施形態では、R23は、任意に置換されていてもよいC1-C3アルキルを含む。一部の実施形態では、R23は、アミノで置換される。一部の実施形態では、R23はC1-C3アルキルであり、化合物は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3のD-エピマーを含む。一部の実施形態では、R23はメチルである。一部の実施形態では、R23は、1~6炭素長の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、式Lの
【0086】
【0087】
は、下記基から成る群より選択される。
【0088】
【0089】
一部の実施形態では、R1-R2は、
【0090】
【0091】
であり、R23はメチルであり、かつ化合物は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3のD-エピマーである。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記式L:
【0092】
【0093】
(式中:
R’は、H又はアセチルであり;
R1は、2~15炭素原子長の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐脂肪族炭素鎖であり;
R2は、N置換又は非置換アシル保護アミンであり;かつ
R23は、メチル又はエチルである)
の化合物である。
一部の実施形態では、R’はHである。
一部の実施形態では、R1は、5~8炭素原子長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R2は、
【0094】
【0095】
であり;R5は、1と10の間の炭素長の飽和又は不飽和の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R1-R2は、下記基から成る群より選択される。
【0096】
【0097】
一部の実施形態では、R23はメチルである。
一部の実施形態では、式Lの
【0098】
【0099】
は、下記基である。
【0100】
【0101】
一部の実施形態では、R’、R1-R2、及びR23並びに前記化合物の異性体は、下記から選択される。
【0102】
【0103】
ここで、異性体は、R23が付着されるアミノ酸であるアミノ酸3の異性形態である。
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、下記式L:
【0104】
【0105】
(式中:
R’は、H又はアセチルであり;
R1-R2は、下記基:
【0106】
【0107】
から成る群より選択され;かつ
R23は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐した任意に置換されていてもよい脂肪族炭素鎖である)
の化合物である。
一部の実施形態では、R’はHである。
一部の実施形態では、R1-R2は、下記基である。
【0108】
【0109】
一部の実施形態では、式Lの
【0110】
【0111】
は、下記基である。
【0112】
【0113】
一部の実施形態では、R23は、下記基から成る群より選択される。
【0114】
【0115】
一部の実施形態では、R23は、下記基である。
【0116】
【0117】
一部の実施形態では、R23は、下記基である。
【0118】
【0119】
一部の実施形態では、R23は、(a)任意に置換されていてもよいC1-C3アルキルを含み;(b)アミノで置換され;(c)C1-C3-Alaであり、かつ前記化合物は、D-エピマーを含み;(d)MeAlaであり;及び/又は(e)1~6、1~5、1~4、1~3又は2炭素長の直線状又は分岐脂肪族炭素鎖である。
一部の実施形態では、R’、R1-R2及びR23並びに前記化合物の異性体は下記から選択される。
【0120】
【0121】
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体は、11個のアミノ酸から成り、アミノ酸1及び3が化学的に修飾されている中性環状ペプチドである、シクロスポリンA(CsA)の誘導体である小分子シクロフィリン阻害薬CRV431(以下に示す)である。
【0122】
【0123】
CRV431は、肝線維症及び肝細胞癌を含めた肝疾患の治療のために臨床開発されている小分子シクロフィリン阻害薬である。前臨床研究において、CRV431は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、及びHIVを含めた多数のウイルスに対する抗ウイルス活性を示し、かつ多数のin vivoモデルで肝臓における抗線維化活性を示す。CRV431は、非アルコール性脂肪性肝炎(「NASH」)から生じる肝線維症及びNASHの実験モデルにおける肝細胞癌腫瘍負荷(tumor burden)を減少させることができる。
in vitro研究を含め、本明細書で開示するように、CRV431は、種々の異なる臓器由来の線維芽細胞からの細胞外マトリックス(ECM)分子、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生を減少させ得る。これらの型の細胞からのコラーゲン及びフィブロネクチンの過剰産生は、損傷臓器の線維性瘢痕を引き起こし、CRV431は、複数の細胞型からのコラーゲン及びフィブロネクチンの産生を減少させ得る。これらの結果は、CRV431等のCsAの誘導体が、様々な疾患並びに様々な細胞、組織及び臓器にわたって抗線維化活性を発揮できることを実証する。
【0124】
例えば、本明細書で述べるように、CRV431は、特発性肺線維症(「IPF」)患者からの肺線維芽細胞、心線維芽細胞、皮膚線維芽細胞、腎メサンギウム細胞、及びLX2肝星細胞株を含む5つの細胞型由来の線維芽細胞からの細胞外マトリックス(ECM)分子、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生を減少させることができる。IPFは、新しい治療を非常に必要としている侵襲性の線維性疾患であることが知られている。本明細書で述べるように、CRV431は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、同程度の大きさを有する全ての細胞型からのプロコラーゲン及びフィブロネクチンの分泌を用量依存的に減少させた。ECM合成への直接的作用と一致する線維化促進因子であるトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)で細胞が刺激されたか否かにかかわらず、抑制の程度は同様だった。CRV431は、臨床的に意義のある濃度で、細胞生存率の如何なる低下をも引き起こすことなく用量依存的にECM産生を55%まで減少させた。本明細書で開示するように、CRV431を用いて、シクロフィリンBを阻害することによってECM産生を減少させることができ、この知見と一致して、低分子干渉RNA(siRNA)によるシクロフィリンBの下方制御が同様にプロコラーゲン及びフィブロネクチン分泌を減少させた。
【0125】
線維性瘢痕化は、肝硬変、IPF、慢性腎疾患、及び重症心臓病を含め、多くの疾患における臓器不全の主要な病理学的特徴及びドライバーである。それにもかかわらず、瘢痕化を弱めるのに利用できる治療はほとんどない。多くの治療は、線維芽細胞の刺激を標的にすることによって線維症を減少させようとするが、これらのシグナル伝達現象は、患者、線維性疾患のタイプ、又は病期によって異なり得る。如何なる特定理論にも限定されるものではないが、一部の実施形態では、CRV431の効果は、刺激性シグナルのタイプに無関係なので、線維性疾患(肝臓のみならず、肝臓以外の臓器においても)の治療のためにCRV431を使用することが有利である。
【0126】
一部の実施形態では、方法は、それを必要とする被験者に1種以上の追加治療薬を投与することを含む。例えば、組成物は、1種以上の追加抗線維化薬を含むことができる。抗線維化薬の非限定例としては、II型インターフェロン受容体作動薬(例えば、インターフェロンγ);ピルフェニドン及びピルフェニドン類似体;ニンテダニブ及びニンテダニブ類似体、抗血管新生薬、例えばVEGF拮抗薬、VEGF受容体拮抗薬、bFGF拮抗薬、bFGF受容体拮抗薬、TGFβ拮抗薬、TGFβ受容体拮抗薬;抗炎症薬、IL-1拮抗薬、例えばIL-1Ra、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬及びアルドステロン拮抗薬、マイトマイシンC(MMC)、5-フルオロウラシル(5-FU)、アデニリルシクラーゼ活性化薬、β-アドレナリン受容体(adenoreceptor)作動薬、フラボノイド、マスト細胞安定化薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬及びプロシアニジン、並びにその任意の組み合わせが挙げられる。
【0127】
一部の実施形態では、追加治療薬(例えば、追加抗線維化薬)は、被験者に、本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の1種以上、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物と同時投与される。一部の実施形態では、追加治療薬は、被験者に、本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の1種以上、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物の投与前、及び/又は本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の1種以上、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物の投与後に投与される。
【0128】
キット、組成物及び投与方法
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、及びキットの使用を指示するラベルを含むキットを提供する。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者の線維症、例えば線維性障害の予防用であることを示す。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者の線維症、例えば線維性障害の治療用であることを示す。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者の線維症の量の減少用であることを示す。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者における線維症の発生の遅延用であることを示す。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者における線維症形成の減少又は抑制用であることを示す。一部の実施形態では、ラベルは、キットが被験者の線維症の回復用であることを示す。
本明細書では、一部の実施形態において、線維症(例えば、線維性障害)の予防、線維症(例えば、線維性障害)の治療、線維症の量の減少、線維症の発生の遅延、線維症形成の減少若しくは抑制、線維症の回復、又はその任意の組み合わせに用いるための、本明細書で開示するシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の1種以上、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む組成物をも提供する。
【0129】
線維症は、心臓、肝臓、肺、骨格筋、腎臓、眼、血管、皮膚、脳、骨髄、胃腸管、腹膜、脈管構造、又はその任意の組み合わせを冒す線維症であり得る。一部の実施形態では、線維症は非肝線維症である。線維性障害は、本明細書で開示する線維性障害のいずれであってもよく、限定するものではないが、網膜線維症、角膜線維症、結膜線維症、線維柱帯網の線維症、腎線維症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常型間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患(ILD)、原因不明線維化性肺胞炎(CFA)、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肝硬変、肝線維症、線維性血管疾患、嚢胞性線維症、肺線維症、特発性肺線維症、筋骨格線維症、腎線維性疾患、HIVと関連するリンパ節線維症、炎症性肺線維症、膵線維症、心臓線維症、血管線維症、心筋線維症、又はその組み合わせが挙げられる。
【0130】
一部の実施形態では、組成物は、シクロスポリンAの誘導体若しくは類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む安定自己マイクロ乳化薬物送達システム(self-microemulsifying drug delivery system)(「SMEDDS」)製剤である。組成物は、例えば、シクロスポリンAの誘導体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体の良好な溶解性を可能にし、ヒトにおける顕著な血液曝露を可能にする。一部の実施形態では、組成物は、さらにポリオキシルヒマシ油(ポリオキシル40硬化ヒマシ油、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、及びPEG-40硬化ヒマシ油、例えばCremophor(登録商標)RH40及びKolliphor(登録商標)RH40としても知られる)を含む。一部の実施形態では、組成物は、エタノールを含む。一部の実施形態では、組成物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、例えばTranscutol(登録商標)としても知られる)を含む。一部の実施形態では、組成物は、プロピレングリコール(PG)を含む。一部の実施形態では、組成物は、グリセリルモノリノレアート、例えばMaisine(登録商標)CCを含む。一部の実施形態では、組成物は、ビタミンEを含む。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩を含む種々の医薬組成物/薬物送達システム(例えば、SMEDDS製剤)が、WO 2020/112562として公開され、その内容全体を参照することにより本明細書に援用するPCT特許出願に記載されている。
【0131】
一部の実施形態では、システムは、ビタミンE、Maisine(登録商標)CC、プロピレングリコール、Transcutol(登録商標)、エタノール、及びCremophor(登録商標)RH40を1/1/5/5/2.4/4又は1/1.5/2.5/5/2.4/5で含む。システムは、例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を、約10mg/mL~約90mg/mL、例えば10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、これらの値の任意の2つの間の範囲、又は10mg/mL~90mg/mL内の任意の値等の濃度で含み得る。一部の実施形態では、システムは、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を約90mg/mLの濃度で含む。一部の実施形態では、システムは、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を70mg/mL又は約70mg/mLの濃度で含む。
【0132】
組成物は、例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、及び1種以上の医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であり得る。一部の実施形態では、組成物は、被験者に静脈内投与、鼻腔投与、肺内投与、経口投与、又は非経口投与によって投与される。一部の実施形態では、組成物は、粉末、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、カプセル剤、マイクロタブレット含有カプセル剤、液剤、エアロゾル、懸濁液、又はナノ粒子の形態である。一部の実施形態では、組成物は、被験者に1日1回、2回又は3回投与される。一部の実施形態では、組成物は、被験者に、緊急事態(例えば、手術進行中)に1回又は2回投与される。一部の実施形態では、組成物は、被験者に少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも1週間、又はそれ以上にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物は、被験者に、10mg~250mgの、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体の有効な1日用量で投与される。
【0133】
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の治療的に有効な量及び投与頻度、並びにシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)による治療の長さは、癌等の増殖性疾患の性質及び重症度、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の効力、投与モード、被験者の年齢、体重、健康全般、性別及び食事制限、並びに被験者の治療への反応を含めた種々の要因によって決まり、治療医師が決めることができる。一部の実施形態では、癌等の増殖性疾患を治療若しくは予防するため、又は本明細書に記載の増殖性疾患の1つ以上の症状を減少させ若しくは抑制するためのシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の治療的に有効な量は、約0.1~200mg、0.1~150mg、0.1~100mg、0.1~50mg、0.1~30mg、0.5~20mg、0.5~10mg若しくは1~10mg(例えば、1日当たり又は1用量当たり)であり、又は治療医師が適切と判断した場合には、単一用量若しくは分割用量で投与できる。一部の実施形態では、癌等の増殖性疾患を治療若しくは予防するため、又は本明細書に記載の増殖性疾患の1つ以上の症状を減少させ若しくは抑制するためのシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の治療的に有効な用量(例えば、1日当たり又は1用量当たり)は、約0.1~1mg(例えば、約0.1mg、0.5mg又は1mg)、約1~5mg(例えば、約1mg、2mg、3mg、4mg又は5mg)、約5~10mg(例えば、約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mg)、約10~20mg(例えば、約10mg、15mg又は20mg)、約20~30mg(例えば、約20mg、25mg又は30mg)、約30~40mg(例えば、約30mg、35mg又は40mg)、約40~50mg(例えば、約40mg、45mg又は50mg)、約50~100mg(例えば、約50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mg)、約100~150mg(例えば、約100mg、125mg又は150mg)、又は約150~200mg(例えば、約150mg、175mg又は200mg)である。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の治療的に有効な用量は、1日1回以上(例えば、2回、3回若しくは4回以上)、又は2日若しくは3日に1回、又は1週間に1回、2回若しくは3回、又は治療医師が適切と判断したとおりに投与される。一部の実施形態では、組成物は、治療的又は予防的に有効な量のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体を含む。
【0134】
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、不規則な様式で投与することもできる。例えば、30分、1時間、2時間又はそれ以上の間に1回、2回又は3回、不規則な様式でシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を投与することができる。さらに、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、必要に応じて摂取することができる。例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、規則的であろうと不規則な様式であろうと、増殖性疾患/状態(例えば、癌)が改善するまで1、2、3、4、5回又はそれ以上投与することができる。増殖性疾患/状態(例えば、癌)からの解放が一旦達成されたら、場合によってはシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の投与を中断することができる。疾患の障害/状態が戻った場合、規則的であろうと不規則な様式であろうと、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の投与を再開することができる。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の適切な投薬量、投与頻度及びシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)による治療の長さは、治療医師が決めることができる。
【0135】
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を予防的に用いて、癌等の増殖性疾患を治療若しくは予防し、又は増殖性疾患(例えば、線維症)の1つ以上の症状を予防し若しくは減少させ、又は増殖性疾患(例えば、線維症)の1つ以上の症状の発生を減少させ若しくは抑制することができる。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の予防的に有効な量は、本明細書に記載のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)のいずれの治療的に有効な量でもあり得る。
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、いずれの適切な経路でも投与することができる。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の可能性のある投与経路としては、限定するものではないが、経口、非経口(筋肉内、皮下、皮内、血管内、静脈内、動脈内、髄内及びくも膜下腔内を含む)、腔内、腹腔内、及び局所(皮膚/皮膚上、経皮、粘膜、経粘膜、鼻腔内[例えば、鼻スプレー又は点鼻薬による]、眼内[例えば、点眼薬による]、肺[例えば、経口又は経鼻吸入による]、バッカル、舌下、直腸内及び腟内を含む)が挙げられる。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は経口(例えば、場合によっては腸溶コーティングを有するカプセル剤又は錠剤として)投与される。他の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は非経口(例えば、静脈内、皮下又は皮内)投与される。さらなる実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は局所(例えば、皮膚、皮膚上、経皮、粘膜、経粘膜、バッカル又は舌下)投与される。
【0136】
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、食物なしで投与される。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、食事の少なくとも約1時間又は2時間前又は後に投与される。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、夕食後少なくとも約2時間で投与される。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、実質的に食事と同時に(例えば、食事の前若しくは後約0.5、1若しくは2時間以内、又は食事と共に)摂取することもできる。
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の治療レベルのより迅速な確立が望ましい一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、負荷用量の投与後に、(i)1以上の追加負荷用量、次に1以上の治療的に有効な維持用量が投与され、又は(ii)治療医師が適切と判断した場合には、追加の負荷用量なしで1以上の治療的に有効な維持用量が投与される投与計画のもとで投与される。薬物の負荷用量は、典型的にその後の維持用量より多く(例えば、約1.5、2、3、4又は5倍多い)、より迅速に薬物の治療レベルを確立するようにデザインされる。1以上の治療的に有効な維持用量は、本明細書に記載のいずれの治療的に有効な用量であってもよい。一部の実施形態では、負荷用量は、維持用量より約3倍多い。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の負荷用量の投与後、適切な時間後(例えば、約12又は24時間後)及びその後、治療の持続期間にわたって維持用量のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)が投与される。例えば、負荷用量のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)が1日目に投与され、2日目及びその後治療の持続期間にわたって維持用量が投与される。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、1日目に約1.5、3、15又は30mg(例えば、3×約0.5、1、5又は10mg)の負荷用量で経口(例えば、錠剤として)投与された後、約0.5、1、5又は10mgの維持用量が、経口で(例えば、錠剤として)1日1回、場合によっては就寝前に、少なくとも約2週間、1カ月(4週間)、6週間、2カ月、10週間、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、1.5年、2年、3年又はそれ以上(例えば、少なくとも約6週間、2カ月、3カ月又は6カ月)にわたって投与される。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、1日目に約15mg(例えば、3×約5mg)の負荷用量で経口(例えば、錠剤として)投与された後、約5mgの維持用量が、経口で(例えば、錠剤として)1日1回、場合によっては就寝前に、少なくとも約2週間、1カ月、6週間、2カ月、3カ月、6カ月、1年、1.5年、2年、3年又はそれ以上(例えば、少なくとも約6週間、2カ月、3カ月又は6カ月)にわったて投与される。
一部の実施形態では、最初の負荷用量のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)が1日目に投与され、2回目の負荷用量が2日目に投与され、維持用量が3日目及びその後治療の持続期間にわたって投与される。一部の実施形態では、最初の負荷用量は、維持用量より約3倍多く、2回目の負荷用量は、維持用量より約2倍多い。
【0137】
本明細書で開示するように、治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))は、生理学的に許容される表面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁剤、膜形成物質、コーティング助剤、又はその組み合わせを含む医薬組成物での投与用に製剤され得る。一部の実施形態では、治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))は、医薬的に許容される担体又は希釈剤と共に投与するために製剤される。治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))は、医薬分野においてルーチン的である標準的な医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む薬物として製剤され得る。製剤の正確な性質は、所望の投与経路を含めたいくつかの要因によって決まる。一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、経口、静脈内、胃内、血管内又は腹膜内投与用に製剤される。標準的な医薬製剤技術は、例えば参照することによるその全体を本明細書に援用するRemington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)に開示された技術を利用することができる。
【0138】
用語「医薬的に許容される担体」又は「医薬的に許容される賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。医薬活性物質のために該媒体及び薬剤を使用することは技術上周知である。いずれの通常の媒体又は薬剤も活性成分と不適合性でない限り、治療組成物でのその使用が企図される。さらに、当該技術分野で一般的に使用されるような種々のアジュバンを含めてよい。医薬組成物に種々の成分を含めるために考慮すべき事項は、例えば、参照することによりその全体を本明細書に援用するGilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman' s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Pressに記載されている。
医薬的に許容される担体又はその成分として役立ち得る物質のいくつかの例は、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;固体滑沢剤、例えばステアリン酸及びステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;植物油、例えばピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コム油(com oil)及びカカオ脂;ポリオール、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチルエングリコール;アルギン酸;乳化剤、例えばTWEENS;湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム;着色剤;香味剤;錠剤化剤、安定剤;抗酸化剤;防腐剤;発熱性物質除去水;等張食塩水;及びリン酸緩衝液である。
対象治療薬と併用すべき医薬的に許容される担体の選択は、基本的に組成物が投与される方法によって決まる。
【0139】
本明細書に記載の組成物は、好ましくは単位剤形で提供される。本明細書で使用する場合、「単位剤形」は、良い医療行為に従って、動物、好ましくは哺乳動物被験者に、単一用量で投与するのに適した量の治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))を含有する組成物である。しかしながら単一又は単位剤形の調製は、その剤形が1日1回又は治療コース当たり1回投与されることを意味しない。該剤形は、1日1回、2回、3回若しくはそれ以上投与されるよう企図され、ある時間(例えば、約30分から約2~6時間まで)にわたる注入として投与され、又は連続注入として投与されてよく、かつ治療コース中に複数回与えられることもあるが、単回投与が明確に排除されるわけではない。熟練職人であれば、該製剤は、治療の全コースを明確に企図するものではなく、該判断は製剤よりむしろ治療の当業者のために残されていることを認識する。
【0140】
上述したように有用な組成物は、種々の投与経路、例えば、経口、経鼻、直腸、局所(経皮を含む)、眼、脳内、頭蓋内、くも膜下腔内、動脈内、静脈内、筋肉内、又は他の非経口(parental)投与経路に適した種々の形態のいずれであってもよい。熟練職人であれば、経口及び経鼻組成物には、吸入によって投与される組成物が含まれ、利用可能な方法論を用いて作られることを理解する。望まれる特定投与経路に応じて、技術上周知の種々の医薬的に許容される担体を使用してよい。医薬的に許容される担体としては、例えば、固体若しくは液体フィラー、希釈剤、ヒドロトロピー、表面活性剤、及び被包物質が挙げられる。実質的に治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))の阻害活性を妨害しない任意的な医薬的に活性な材料を含めてもよい。治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))と組み合わせて用いる担体の量は、治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))の単位用量当たりの投与のために実用的量の材料を与えれば十分である。本明細書に記載の方法に有用な剤形を作製するための技術及び組成物は、参照することにより本明細書に援用する下記参考文献に記載されている:Modern Pharmaceutics, 4th Ed., Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, editors, 2002);Lieberman et al, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1989)、及びAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 8th Edition (2004)。
【0141】
錠剤、カプセル剤、及び顆粒剤のような固体形態を含め、種々の経口剤形を使用することができる。錠剤は、適切な結合剤、潤沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、流れ誘導剤、及び溶融剤を含有する、圧縮された粉薬錠剤、腸溶錠、糖衣錠、フィルムコート錠、又は多重圧縮錠剤であり得る。液体経口剤形には、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、溶融剤、着色剤及び香味剤を含有する水溶液、エマルション、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成される溶液及び/又は懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成される発泡性製剤が含まれる。
経口投与用単位剤形の調製に適した医薬的に許容される担体は技術上周知である。錠剤は、典型的に不活性な希釈剤として通常の医薬的に適合性のアジュバント、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース及びセルロース;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン及びスクロース;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸及びクロスカルメロース;潤沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びタルクを含む。二酸化ケイ素等の流動促進剤を用いて粉末混合物の流れ特性を改善することができる。外観のためFD&C色素等の着色剤を添加することができる。甘味料及び香味剤、例えばアスパルテーム、サッカリン、メントール、ペッパーミント、及び果実フレーバーは、咀嚼錠に有用なアジュバントである。カプセル剤は、典型的に1種以上の上記固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、重要でない味覚、コスト、及び貯蔵性のような二次的考慮事項によって決まり、当業者なら容易に行うことができる。
【0142】
経口組成物には、溶液、エマルション、懸濁液等も含まれる。該組成物の調製に適した医薬的に許容される担体は技術上周知である。シロップ剤、エリキシル剤、エマルション及び懸濁液用担体の典型的成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール及び水が挙げられる。懸濁液については、典型的懸濁剤として、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、AVICEL RC-591、トラガント及びアルギン酸ナトリウム;典型的湿潤剤としては、レシチン及びポリソルベート80があり;典型的防腐剤としては、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムがある。経口液体組成物は、上記甘味料、香味剤及び着色料等の1種以上の成分を含有してもよい。
【0143】
対象治療薬の送達システムを達成するために有用な他の組成物としては、舌下、バッカル及び経鼻剤形がある。該組成物は典型的に可溶性フィラー物質、例えばスクロース、ソルビトール及びマンニトール;並びに結合剤、例えばアラビアガム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの1種以上を含む。上記流動促進剤、潤沢剤、甘味料、着色料、抗酸化剤及び香味剤を含めてもよい。
局所使用のためには、本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))を含有するクリーム、軟膏、ゲル、溶液又は懸濁液等が利用される。局所製剤は、一般的に医薬担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐系、及び皮膚軟化剤を含んでよい。
【0144】
静脈内投与のために、本明細書に記載の治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))及び組成物を、医薬的に許容される希釈剤、例えば生理食塩水又はデキストロース溶液に溶解又は分散させてよい。限定するものではないが、例えばNaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HC1、及びクエン酸等の適切な賦形剤を含めて所望のpHを達成し得る。種々の実施形態では、最終組成物のpHは、2~8、好ましくは4~7の範囲である。抗酸化賦形剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、アセトン亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルホキシラート、チオ尿素、及びEDTAが挙げられる。最終静脈内組成物に見られる適切な賦形剤の他の非限定例としては、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、並びに炭水化物、例えばデキストロース、マンニトール、及びデキストランが挙げられる。さらなる許容される賦形剤は、Powell, et al., Compendium of Excipients for Parenteral Formulations, PDA J Pharm Sci and Tech 1998, 52 238-31 1及びNema et al., Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions, PDA J Pharm Sci and Tech 2011, 65 287-332に記載されている。両文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。限定するものではないが、例えばフェニル水銀硝酸塩、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、及びクロロブタノール等の抗菌剤を含めて、静細菌性又は静真菌性溶液を得てもよい。
【0145】
投与の少し前に滅菌水、生理食塩水又は水中デキストロース等の適切な希釈剤で再構成される1種以上の固体の形態で介護者に静脈内投与用組成物を提供してよい。他の実施形態では、組成物は、すぐに非経口投与できる溶液で提供される。さらに他の実施形態では、組成物は、投与前にさらに希釈される溶液で提供される。本明細書に記載の治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))と別の薬剤の組み合わせを投与することを含む実施形態では、組み合わせを混合物として介護者に提供してよく、又は介護者が投与前に2つの薬剤を混合してよく、又は2つの薬剤を別々に投与してもよい。
非ヒト動物研究では、可能性のある製品の適用をより高い投薬量レベルで開始し、もはや所望効果が達成されないか又は有害な副作用が消失するまで投薬量を減らしていく。投薬量は、所望効果及び治療指標に応じて、広い範囲であり得る。典型的に、投薬量は、約0.1mg/kg(体重)と4000mg/kg(体重)の間、好ましくは、約80mg/kg(体重)と1600mg/kg(体重)の間であり得る。或いは当業者なら分かるように、患者の表面積に基づいて投薬量を計算することができる。
【0146】
治療すべき状態の重症度及び反応性によっては、数日から数週間持続する治療の経過と共に又は治癒がもたらされるか若しくは疾患状態の減少が達成されるまで、投薬が徐放組成物の単一投与であることもある。投与すべき組成物の量は、当然に、治療される被検者、苦痛の重症度、投与方法、処方医師の判断を含めた多くの要因によって決まることになる。本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わせを1日当たり患者の体重1kg当たり0.1mg~4000mgの用量で経口投与又は注射によって投与してよい。成人の用量範囲は、一般的に1g~100g/日である。錠剤又は個別単位で提供される他の提示形態は、便宜上、該投薬量で有効であるか又は複数の同じ例えば、1g~60g(例えば、約5g~20g、約10g~50g、約20~40g、又は約25g~35g)を含有する単位として有効である量の、本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わせを含有する。患者に投与される治療薬の正確な量は主治医の責任である。しかしながら、使用用量は、患者の年齢及び性別、治療される正確な障害、及びその重症度を含めた多数の要因によって決まることになる。さらに、投与経路は、状態及びその重症度に応じて異なり得る。治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))の典型的用量は、該パラメーターに応じて、体重1kg当たり0.02g~1.25g、例えば体重1kg当たり0.1g~0.5gであり得る。一部の実施形態では、治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))の投薬量は、1g~100g、例えば、10g~80g、15g~60g、20g~40g、又は25g~35gであり得る。医師は、いずれの特定被験者についても治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))の所要投薬量を決めることができる。
【0147】
本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わせの医薬組成物のための的確な製剤、投与経路及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。典型的に、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.1~約4000mgであり得る。投薬量は、患者の必要に応じて、1日以上の経過中に与えられる単一投薬量又は一連の2以上の投薬量であり得る。少なくともいくつかの状態について治療薬のヒト投薬量が確立されている場合には、本開示は、それらの同じ投薬量、又は確立されたヒト投薬量の約0.1%と約5000%の間、さらに好ましくは約25%と約1000%の間の投薬量を使用することになる。新たに発見された医薬化合物の場合のように、ヒト投薬量が確立されていない場合、適切なヒト投薬量は、ED50若しくはID50値から、又は動物の毒性研究及び有効性研究によって認定されるin vitro若しくはin vivo研究から導かれる他の適切な値から推測することができる。
【0148】
主治医は、毒性又は臓器不全のため、どのように及びいつ投与を停止、中断、又は調整するかが分かることに留意すべきである。逆に、主治医は、臨床反応が適切でなかった(毒性を排除しなかった)場合に、より高いレベルに治療を調整することも知っている。興味ある障害の管理において投与用量の大きさは、治療すべき状態の重症度及び投与経路によって異なるであろう。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価方法によって、部分的に評価し得る。さらに、用量及びおそらく投薬回数は、個々の患者の年齢、体重、及び反応によっても異なる。上記プログラムに匹敵するプログラムを獣医学で使用してよい。
的確な投薬量は、薬物ごとに決められるが、ほとんどの場合、投薬量に関してある程度一般化することができる。医薬的に許容される塩の投与の場合、投薬量は遊離塩基として計算してよい。一部の実施形態では、組成物は、1日1~4回投与される。或いは本明細書で開示する組成物は、連続静脈内注入によって、例えば、1日当たり100gまでの各活性成分の用量で投与され得る。当業者には明らかなように、ある一定の状況では、特に侵襲性の疾患又は感染症を効果的かつ積極的に治療するため、本明細書で開示する組成物を上記好ましい投薬量範囲を超え、又はさらにずっと超える量で投与する必要があり得る。一部の実施形態では、本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わせは、連続治療の期間にわったて、例えば1週間以上にわたって、又は数カ月若しくは数年にわたって投与されることになる。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わの投与計画は、例えば、少なくとも約1週間~少なくとも約4週間、少なくとも約4週間~少なくとも約8週間、少なくとも約4週間~少なくとも約12週間、少なくとも約4週間~少なくとも約16週間、又はそれ以上の期間であり得る期間にわたって実施される。本明細書で開示する治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))又は治療薬の組み合わの投与計画は、1日3回、1日2回、毎日、1日置き、1週間に3回、1週間置き、月3回、月1回、実質的に連続的又は連続的に実施し得る。
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、単独で又は組成物(例えば、医薬組成物)の形態で投与し得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、クラスレート、多形、プロドラッグ又は代謝物、及び1種以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む。組成物は、任意に、本明細書に記載の1種以上の追加治療薬を含有し得る。医薬組成物は、治療的に有効な量の治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))及び1種以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含み、治療的使用のための被験者への投与用に製剤される。医薬組成物の内容という意味では、用語「治療薬」、「活性成分」、「活性薬」及び「薬物」は、プロドラッグを包含する。
【0150】
医薬組成物は、実質的に純粋な形態で治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))を含有する。一部の実施形態では、治療薬の純度は、少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%である。一部の実施形態では、治療薬の純度は、少なくとも約98%又は99%である。さらに、医薬組成物は、実質的に汚染物質又は不純物を含まない。一部の実施形態では、医薬組成物中の残留溶媒以外の汚染物質又は不純物のレベルは、意図した活性成分及び不活性成分の合計質量に対して約5%、4%、3%、2%又は1%以下である。一部の実施形態では、医薬組成物中の残留溶媒以外の汚染物質又は不純物のレベルは、意図した活性成分及び不活性成分の合計質量に対して約2%又は1%以下である。医薬組成物は、一般的に、例えば、Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)§501(a)(2)(B)及びInternational Conference on Harmonisation Q7 Guidelineによって推奨及び要求されるように、現在の適正製造基準(GMP)に従って調製される。
【0151】
医薬的に許容される担体及び賦形剤には、医薬的に許容される材料、ビヒクル及び物質が含まれる。賦形剤の非限定例としては、液体及び固体フィラー、希釈剤、結合剤、潤沢剤、流動促進剤、可溶化剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤、増粘剤、溶媒、等張剤、緩衝剤、pH調整剤、安定剤、防腐剤、抗酸化剤、抗菌剤、抗細菌剤、抗真菌剤、吸収遅延剤、甘未剤、香味剤、着色剤、アジュバント、被包材及びコーティング材が挙げられる。医薬製剤に該賦形剤を使用することは技術上周知である。例えば、通常のビヒクル及び担体としては、限定するものではないが、油(例えば、植物油、例えばゴマ油)、水性溶媒(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水[PBS]及び等張溶液[例えば、リンゲル溶液])、及び溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド[DMSO]及びアルコール[例えば、エタノール、グリセロール及びプロピレングリコール])が挙げられる。いずれの通常の担体又は賦形剤も活性成分と不適合性でない限り、本開示は、治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431))を含有する製剤における通常の担体及び賦形剤の使用を包含する。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (Philadelphia, Pennsylvania [2005]);Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th Ed., Rowe et al., Eds., The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association (2005);Handbook of Pharmaceutical Additives, 3rd Ed., Ash and Ash, Eds., Gower Publishing Co. (2007);及びPharmaceutical Preformulation and Formulation, Gibson, Ed., CRC Press (Boca Raton, Florida, 2004)を参照されたい。
【0152】
適切な製剤は、種々の要因、例えば選択した投与モードによって決まり得る。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含む医薬組成物の投与の可能性のあるモードとしては、限定するものではないが、経口、非経口(筋肉内、皮下、皮内、血管内、静脈内、動脈内、腹腔内、髄内、くも膜下腔内及び局所を含む)、腔内、及び局所(皮膚/皮膚上、経皮、粘膜、経粘膜、鼻腔内[例えば、鼻スプレー又は点鼻薬による]、肺内[例えば、経口又は経鼻吸入による]、バッカル、舌下、直腸内[例えば、坐剤による]、及び膣内[例えば、坐剤による])が挙げられる。
例として、経口投与に適したシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の製剤は、例えば、ボーラス;錠剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤又はロレンジ剤として;粉末又は顆粒として;半固体、舐剤、ペースト又はゲルとして;水性液体及び/又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルションとして提供され得る。
【0153】
錠剤は、例えば、フィラー又は不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、マンニトール又は微結晶性セルロース)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸若しくはその塩、又は微結晶性セルロース)、潤沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク又は二酸化ケイ素)、及び崩壊剤(例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム又はコロイダルシリカ)、及び場合によっては界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)との混合物にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含有することができる。錠剤は、無コートであってよく、又は例えば、胃の酸性環境から活性成分を保護する腸溶コーティングで、又は胃腸管内での活性成分の崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長い期間にわたる持続性作用を与える材料でコーティングされ得る。一部の実施形態では、錠剤は、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、マンニトール、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、並びに場合によってはラクトース一水和物を含み、錠剤は、場合によってはフィルムコーティング(例えば、Opadry(登録商標)で)される。
【0154】
プッシュフィットカプセル剤又はツーピースハードゼラチンカプセル剤は、例えば、フィラー又は不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン又はラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、流動促進剤又は潤沢剤(例えば、タルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び崩壊剤(例えば、クロスポビドン)、並びに場合によっては安定剤及び/又は防腐剤との混合物にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含有し得る。ソフトカプセル剤又はシングルピースゼラチンカプセル剤のためには、適切な液体(例えば、液体ポリエチレングリコール又は油媒体、例えば脂肪油、ピーナッツ油、オリーブ油又は液体パラフィン)にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を溶解又は懸濁させることができ、液体充填カプセル剤は、1種以上の他の液体賦形剤又は/及び半固体賦形剤、例えば安定剤又は/及び両親媒性薬剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトールの脂肪酸エステル)を含有し得る。
【0155】
水性液体若しくは/及び非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルションとして経口投与用組成物を製剤することもできる。シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の分散性粉末又は顆粒を水性液体、有機溶媒又は/及び油及び任意の適切な賦形剤(例えば、分散剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤又は/及び防腐剤の任意の組み合わせ)の任意の適切な組み合わせと混合して、溶液、懸濁液又はエマルションを形成することができる。
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を注射又は注入による非経口投与用に製剤して、胃腸吸収及び初回通過代謝を回避することもできる。代表的な非経口投与経路は、静脈内経路である。
【0156】
静脈内投与のさらなる利点としては、迅速な全身作用を達成するための治療薬の体循環への直接投与、並びに必要に応じて薬剤を連続的又は/及び大量に投与する能力がある。注射又は注入用製剤は、例えば、油性又は水性ビヒクル中の溶液、懸濁液又はエマルションの形態であってよく、懸濁剤、分散剤又は/及び安定剤等の賦形剤を含有することができる。例えば、水性又は非水性(例えば、油性)の無菌注射液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤に被験者の血液との等張性を与える溶質のような賦形剤と共にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含有し得る。水性又は非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤、並びに場合によっては安定剤及びシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の溶解度を高めてより濃縮された溶液又は懸濁液の調製を可能にする薬剤のような賦形剤と共にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含有し得る。別の例として、注射又は注入(例えば、皮下又は静脈内)用の無菌水溶液は、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、NaCl、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、メタ-クレゾール)、及び場合によってはpHを調整するための塩基(例えば、NaOH)又は/及び酸(例えば、HC1)を含有し得る。
【0157】
局所投与のため、例えば、バッカル錠若しくは舌下錠又は丸剤としてシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を製剤することができる。バッカル錠若しくは舌下錠又は丸剤は、初回通過代謝を回避し、胃腸吸収を迂回し得る。体循環中にそれをより迅速に取り込むためにシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)のより速い放出を実現するようにバッカル錠若しくは舌下錠又は丸剤をデザインすることができる。治療的に有効な量のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)に加えて、バッカル錠若しくは舌下錠又は丸剤は、限定するものではないが、フィラー及び希釈剤(例えば、マンニトール及びソルビトール)、結合剤(例えば、炭酸ナトリウム)、湿潤剤(例えば、炭酸ナトリウム)、崩壊剤(例えば、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウム)、潤沢剤(例えば、二酸化ケイ素[コロイド状二酸化ケイ素を含む]及びフマル酸ステアリルナトリウム)、安定剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)、香味剤(例えば、スペアミントフレーバー)、甘未剤(例えば、スクラロース)、及び着色剤(例えば、黄色酸化鉄)の任意の組み合わせを含めた適切な賦形剤を含有することができる。
【0158】
局所投与のため、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を鼻腔内投与用に製剤することもできる。鼻粘膜は、大表面積、多孔性内皮、高血管性上皮下層及び高吸収率を与えるので、高いバイオアベイラビリティを可能にする。さらに、鼻腔内投与は、初回通過代謝を回避し、かなりの濃度のシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を中枢神経系に導入することができ、迷走神経求心性神経が終結する延髄の咳中枢において孤束核による中枢咳反射をシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)が遮断できるようにする。鼻腔内溶液又は懸濁液製剤は、溶解度向上剤(例えば、プロピレングリコール)、湿潤剤(例えば、マンニトール又はソルビトール)、緩衝剤及び水、並びに場合によっては防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、粘膜付着剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)又は/及び浸透促進剤のような賦形剤と共にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含み得る。一部の実施形態では、鼻スプレー製剤は、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デキストロース及び水、並びに場合によってはpHを調整するための酸(例えば、HC1)を含む。限定するものではないが、ドロッパー、ピペット、又は例えば、定量噴霧スプレーポンプを用いるスプレーを含め、いずれの適切な手段によっても鼻腔内溶液又は懸濁液製剤を鼻腔に投与することができる。さらなる局所投与モードは、経口吸入及び経鼻吸入を含めた肺内投与である。
【0159】
一部の実施形態では、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)は、徐放組成物から送達される。本明細書で使用する場合、用語「徐放(sustained-release)組成物」は、徐放、持続放出(prolonged-release、extended-release、slow-release)及び制御放出組成物、システム及びデバイスを包含する。徐放組成物の使用は、治療的に有効な量の薬物又はその活性代謝物の長期間にわたる送達を含め、ある期間にわたって標的部位に送達される薬物又はその活性代謝物の量のプロファイル改善のような利益を有し得る。一部の実施形態では、徐放組成物は、少なくとも約1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月又はそれ以上の期間にわたってシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を送達する。一部の実施形態では、徐放組成物は、薬物被包システム、例えば、生分解性ポリマー又は/及びヒドロゲルで作られたナノ粒子、マイクロ粒子又はカプセル等である。一部の実施形態では、徐放組成物はヒドロゲルを含む。ヒドロゲルを構成し得るポリマーの非限定例としては、ポリビニルアルコール、アクリラートポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、並びに比較的多数の親水性基(例えば、ヒドロキシル又は/及びカルボキシラート基)を有する他のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、徐放薬物被包システムは、膜に囲まれたリザーバーを含み、このリザーバーは薬物を含有し、膜は薬物に対して透過性である。該薬物送達システムは、例えば、経皮パッチの形態であり得る。
【0160】
一部の実施形態では、徐放組成物は、経口剤形、例えば錠剤又はカプセル剤である。例えば、薬物を、不溶性多孔性マトリックス内に、溶解薬物が胃腸管を通って吸収され得る前にマトリックスから出るその道を作るに違いないように埋め込むことができる。或いは、膨潤して、薬物が通って出るゲルを形成するマトリックス内に薬物を埋め込むことができる。徐放は、単層又は多層浸透圧性制御放出経口送達システム(OROS)を手段として達成することもできる。OROSは、半透過性外膜及び中に1つ以上の小さいレーザードリル穴を有する錠剤である。錠剤が体内を通過しながら、浸透により水が半透膜を通って吸収され、結果として生じる浸透圧が錠剤の穴から胃腸管の中へ薬物を押し出し、そこで薬物が吸収され得る。
【0161】
徐放組成物をポリマーナノ粒子又はマイクロ粒子として製剤することができ、ポリマー粒子は、例えば、吸入若しくは注射によって又はインプラントから送達され得る。一部の実施形態では、ポリマーインプラント又はポリマーナノ粒子若しくはマイクロ粒子は、生分解性ポリマーで構成される。一部の実施形態では、生分解性ポリマーは、乳酸又は/及びグリコール酸[例えば、L-乳酸系コポリマー、例えばポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)又はポリ(L-乳酸-co-D,L-2-ヒドロキシオクタン酸)]を含む。例えば、ポリ乳酸又は/及びポリグリコール酸で構成された生分解性ポリマーミクロスフェアは、徐放肺薬物送達システムとして働くことができる。ポリマーインプラント又はポリマーナノ粒子若しくはマイクロ粒子の生分解性ポリマーは、治療期間の終了が予想される頃にポリマーが実質的に完全に分解するように、かつポリマーの分解の副生物、例えばポリマーが生体適合性であるように選択可能である。
【0162】
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)の遅延放出又は徐放のため、例えば、筋肉内又は皮下的に被験者に移植又は注射できるデポーとして組成物を製剤することもできる。より長期間にわたって、例えば、少なくとも約1週間、2週間、3週間、1カ月、6週間、2カ月、3カ月又はそれ以上の期間にわたって、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を送達するようにデポー製剤をデザインすることができる。例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)をポリマー材料(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)若しくはポリグリコール酸(PGA)、又はそのコポリマー(例えば、PLGA))、疎水性材料(例えば、油中エマルションとして)又は/及びイオン交換樹脂、又は難溶性誘導体(例えば、難溶性塩)と共に製剤することができる。説明に役立つ例として、PLGAで構成された徐放性マイクロ粒子にシクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を組み入れるか又は埋め込み、1カ月続くデポーとして製剤することができる。
【0163】
シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)をマトリックス材料中に含有又は分散させることもできる。マトリックス材料はポリマー(例えば、エチレン-酢酸ビニル)を含んでよく、化合物の溶解又は/及び例えば、リザーバーからの化合物の拡散を制御することによって放出を制御し、リザーバーに包含されながら化合物の安定性を高めることができる。該放出システムを徐放システムとしてデザインすることができ、例えば、経皮又は経粘膜パッチとして形成することができ、化合物の放出を加速できる賦形剤、例えば、化合物のリザーバーからの排出を助ける水膨潤性材料(例えば、ヒドロゲル)を含有し得る。
放出システムは、血漿レベルの時間変化が望ましいときには時間的に調節される放出プロファイル(例えば、パルス放出)を実現し、或いは一定の血漿レベルが望ましいときにはより連続的又は一貫した放出を実現することができる。パルス放出は、個々のリザーバーから又は複数のリザーバーから達成され得る。例えば、各リザーバーが単一パルスを与える場合、複数パルス(「パルス状」放出)は、複数の各リザーバーからの単一パルス放出を重ならないように時間的にずらすことによって達成される。
【0164】
さらに、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含む医薬組成物を、徐放用にデザインするか否かにかかわらず、例えば、リポソーム、ミセル(例えば、生分解性天然ポリマー又は/及び生分解性合成ポリマー、例えばラクトソームで構成されたもの)、ミクロスフェア、マイクロ粒子又はナノ粒子として製剤することができる。
技術上周知のいずれの適切な様式でも、例えば、従来の混合、溶解、懸濁化、顆粒化、糖衣錠作製、研和(levigating)、乳化、被包、封入又は圧縮プロセスを利用して医薬組成物を製造することができる。
全ての活性成分及び不活性成分を適切なシステム内で混ぜ合わせ、投与すべき組成物を形成するために成分を混合する必要がない単一用量として単位剤形で医薬組成物を提供することができる。単位剤形は、有効用量、又はその適切な分率の治療薬(例えば、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)を含有し得る。単位剤形の代表例としては、経口投与用の錠剤、カプセル剤又は丸剤、及び経口又は経鼻吸入用のバイアル又はアンプル中の粉末が挙げられる。
【0165】
活性成分、賦形剤及び担体(例えば、溶媒)が2つ以上の別々の容器(例えば、アンプル、バイアル、チューブ、ボトル又はシリンジ)で提供され、投与すべき組成物を形成するために混ぜ合わせる必要があるキットとして、本明細書で開示する医薬組成物を提供することができる。キットは、組成物(例えば、静脈内注射すべき溶液)を貯蔵、調製及び投与するための説明書を含有し得る。
キットは、全ての活性成分及び不活性成分を単位剤形に含有するか又は活性成分及び不活性成分を2つ以上の別々の容器に含有することができ、医薬組成物を使用するための説明書を含有し得る。一部の実施形態では、キットは、シクロスポリン類似体(例えば、CRV431)又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、クラスレート、多形、プロドラッグ又は代謝物、及び化合物を投与するための説明書を含む。
【実施例】
【0166】
実施例
上記実施形態のいくつかの態様について下記実施例でさらに詳細に開示するが、これらは、決して本開示の範囲を限定する意図ではない。
実施例1
複数の異なる臓器からの線維芽細胞におけるCRV431の抗線維化活性の判定
本実施例では、(1)特発性肺線維症(「IPF」)患者からの肺線維芽細胞、(2)心臓線維芽細胞、(3)皮膚線維芽細胞、(4)腎メサンギウム細胞、及び(5)LX2肝星細胞株を含む5つの異なるタイプの線維芽細胞を用いて、ECM分子、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生を減少させることに関するCRV431の能力を判定した。
この実施例で示すように、CRV431は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、同様の大きさを有する5つ全てのタイプの線維芽細胞からのプロコラーゲン及びフィブロネクチンの分泌を用量依存的に減少させた。抑制の程度は、線維化促進因子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)による細胞の刺激の有無に関わりなく同様であり、ECM合成への直接効果と一致した。さらに、CRV431は、臨床的に意義のある濃度で、細胞生存率の如何なる低下をも生じさせることなく、用量依存的にECM産生を55%まで減少させた。本明細書で開示するように、CRV431を用いてシクロフィリンBを阻害することによってECM産生を減少させることができ、この仮定に一致して、低分子干渉RNA(siRNA)によるシクロフィリンBの下方制御がプロコラーゲン及びフィブロネクチンの分泌を同様に減少させた。
【0167】
ヒトLX-2肝星細胞(Millipore-Sigma, Cat. # SCC064)を96ウェルプレートで培養した。三通りのウェルで処置を24時間施した(1ウェル当たり100ulの処置を実施)。細胞は処置開始時にほぼコンフルエンスだった。処置終了時の細胞生存率分析はCRV431処置が細胞生存率に影響しないことを示した。処置終了時に収集した使用済み培地をプロコラーゲン及びフィブロネクチンについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(AbcamからのプロコラーゲンELISA抗体ペア(ab216064)及びフィブロネクチンELISA抗体ペア(ab222262))によってアッセイした。細胞に適用しなかった培地ではプロコラーゲン及びフィブロネクチンは検出されなかった。培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンのレベルは3つのレプリケートウェル(白丸)からの平均±SD(バー)によって表される。
図1A及び1Bに示すように、CRV431は、0.1ng/mlのTGFβの非存在下でも存在下でも培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンの存在量を用量依存的に減少させた。
【0168】
特発性肺線維症(IPF)患者からのヒト肺線維芽細胞(Lonza Bioscience, Cat. # CC-7231)を96ウェルプレートで培養した。三通りのウェルで処置を6日間施した(1ウェル当たり100ulの処置を実施)。細胞は処置開始時にほぼコンフルエンスだった。処置終了時の細胞生存率分析は、CRV431処置が細胞生存率に影響しないことを示した。処置終了時に収集した使用済み培地をプロコラーゲン及びフィブロネクチンについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(AbcamからのプロコラーゲンELISA抗体ペア(ab216064)及びフィブロネクチンELISA抗体ペア(ab222262))によってアッセイした。細胞に適用しなかった培地ではプロコラーゲン及びフィブロネクチンは検出されなかった。培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンのレベルは、3つのレプリケートウェル(白丸)からの平均±SD(バー)によって表される。
図2A及び2Bに示すように、CRV431は、0.4ng/mlのTGFβの非存在下でも存在下でも培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンの存在量を用量依存的に減少させた。
【0169】
ヒト心臓線維芽細胞(Lonza Bioscience, Cat. #CC-2903)を96ウェルプレートで培養した。三通りのウェルで処置を6日間施した(1ウェル当たり100ulの処置を実施)。細胞は処置開始時にほぼコンフルエンスだった。処置終了時の細胞生存率分析は、CRV431処置が細胞生存率に影響しないことを示した。処置終了時に収集した使用済み培地をプロコラーゲン及びフィブロネクチンについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(AbcamからのプロコラーゲンELISA抗体ペア(ab216064)及びフィブロネクチンELISA抗体ペア(ab222262))によってアッセイした。細胞に適用しなかった培地ではプロコラーゲン及びフィブロネクチンは検出されなかった。培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンのレベルは、3つのレプリケートウェル(白丸)からの平均±SD(バー)によって表される。
図3A及び3Bに示すように、CRV431は、0.4ng/mlのTGFβの非存在下でも存在下でも培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンの存在量を用量依存的に減少させた。
【0170】
ヒト腎メサンギウム細胞(ScienCell, Cat. # 4200(SC))を96ウェルプレートで培養した。三通りのウェルで処置を2日間施してから(1ウェル当たり100ulの処置を実施)、さらに2日間再実施した。細胞は処置開始時にほぼコンフルエンスだった。4日の処置終了時の細胞生存率分析は、CRV431処置が細胞生存率に影響しないことを示した。処置の2日目~4日目に収集した使用済み培地をプロコラーゲン及びフィブロネクチンについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(AbcamからのプロコラーゲンELISA抗体ペア(ab216064)及びフィブロネクチンELISA抗体ペア(ab222262))によってアッセイした。細胞に適用しなかった培地ではプロコラーゲン及びフィブロネクチンは検出されなかった。培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンのレベルは、3つのレプリケートウェル(白丸)からの平均±SD(バー)によって表される。
図4A及び4Bに示すように、CRV431は、0.4ng/mlのTGFβの非存在下でも存在下でも培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンの存在量を用量依存的に減少させた。
【0171】
ヒト成体皮膚線維芽細胞(Lonza Bioscience, Cat. # CC-2511)を96ウェルプレートで培養した。三通りのウェルで処置を1日間施してから(1ウェル当たり100ulの処置を実施)、さらに1日間再実施した。細胞は処置開始時にほぼコンフルエンスだった。4日の処置終了時の細胞生存率分析は、CRV431処置が細胞生存率に影響しないことを示した。処置の1日目~2日目に収集した使用済み培地をプロコラーゲン及びフィブロネクチンについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(AbcamからのプロコラーゲンELISA抗体ペア(ab216064)及びフィブロネクチンELISA抗体ペア(ab222262))によってアッセイした。細胞に適用しなかった培地ではプロコラーゲン及びフィブロネクチンは検出されなかった。培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンのレベルは、3つのレプリケートウェル(白丸)からの平均±SD(バー)によって表される。
図5A及び5Bに示すように、CRV431は、10ng/mlの上皮成長因子(EGF)又は0.4ng/mlのTGFβの非存在下でも存在下でも培地中のプロコラーゲン及びフィブロネクチンの存在量を用量依存的に減少させた。
【0172】
実施例2
培養中のヒト精密切断IPF肺薄片のCRV431を用いた処置
この実施例は、精密切断肺薄片で行った研究を記述する。バイオプシー確認された特発性肺線維症(IPF)患者由来の外植肺組織からの精密切断薄片を6日間培養した。培養2日目に処置毎に6つのレプリケート薄片に処置を施し、培養の3日目、4日目、及び5日目に毎日交換した。
図6Aに示す分泌マーカーの結果(日平均変化%)を作成するため、使用済み培地(24時間間隔)を3日目、4日目、5日目、及び6日目に収集して、炎症及び線維症の6つのマーカー:単球走化性タンパク質(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、マトリックスメタロプロテアーゼ-7(MMP-7)、メタロプロテイナーゼ-1の組織インヒビター(TIMP1)、ヒアルロン酸、及びコラーゲン1α1の分泌をELISAによって測定した。各薬物処置について6つのレプリケート薄片からの分泌の平均レベルを毎日の処置についてDMSOビヒクル処置に対する変化百分率として表してから、4つの1日処置間隔からの平均変化百分率を計算した。
【0173】
図6Bに示す遺伝子発現の結果を作成するため、薬物又はビヒクル処置の4日後の培養の6日目に処置毎にプールした6つの肺薄片からRNAを単離し、炎症及び線維症の6つのマーカー:MCP-1、IL-6、TGFβ、TIMP1、コラーゲン1α1、及びα平滑筋アクチン(αSMA)について逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって評価した。βアクチンを参照遺伝子として用いて各標的遺伝子RNAの相対的レベルを計算した。5μM濃度で適用したCRV431は、Alk5i(TGFβ受容体キナーゼの阻害薬)、ピルフェニドン(IPFのために認可された治療薬)、及びニンテダニブ(IPFのために認可された治療薬)と同様に、全てのマーカーの平均日分泌及び遺伝子発現を減少させた。
【0174】
実施例3
マウス片側尿管結紮(UUO)モデルにおけるCRV431を用いた腎線維症の治療
この実施例は、腎線維症のマウス片側尿管結紮(UUO)モデルで行った研究を記述する。この研究では7週齢雌性C57BL/6マウスを用いた(n=8マウス/群)。偽群マウスはUUOを受けなかった。残りのマウスは、左尿管の外科的完全結紮を受けた。外科術の日に始めて13日間50mg/kg/日でビヒクル及びCRV431を毎日強制経口投与した。14日目にマウスを屠殺し、左腎を組織学的に処理し、線維化コラーゲンをシリウスレッドで染色した。各腎臓からの5切片においてシリウスレッド染色を有する各組織切片の百分率を形態計測学的に測定した。結果を
図7A(個々の組織切片のシリウスレッドを示す)及び
図7B(個々のマウス(5組織切片/マウス)のシリウスレッドを示す)に示す。一元配置ANOVAとテューキーの多重比較により、切片毎及び動物毎の両方でデータを提示すると、CRV431治療がシリウスレッド染色の統計的に有意な減少をもたらしたことを実証した。
【0175】
実施例4
ヒト精密切断肝薄片(PCLS)におけるCRV431の抗線維化活性
この実施例は、CRV431の抗線維化活性を判定するためにヒトPCLSで行った研究を記述し、全5名のヒトドナーからのPCLSは、TGFβ+PDGF-BB刺激によって分画エリア近辺で7~11%まで増加したいくらかの既存線維症を有することが観察された。CRV431は、TGFβ+PDGF-BB誘発組織線維症の予防における5つのNASH薬物候補のうちで最も有効だった。ほとんどのCRV431処置薄片は、外因性TGFβ+PDGF-BBの非存在下での6日の培養後にビヒクル処置薄片より少ない線維症をも示した。組織線維症減少は、コラーゲン1α1、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、IL-6、及びMCP-1の分泌減少、並びにqRT-PCRによって実証されるコラーゲン1α1、αSMA、TIMP1、IL-6、及びMCP-1のRNAレベルの低下を伴った。RNA-Seq分析は、同様にCRV431が、多くの線維症関連遺伝子、例えば10超のコラーゲン遺伝子、コラーゲンヒドロキシラーゼ及びオキシダーゼ、ACTA2、VEGF、及びTIMPs等の発現を減少させることを示した。全てのドナーにおいて200未満の遺伝子の発現がCRV431によって例外なく変化したように、遺伝子発現はドナーによってかなり異なった。これらのパンドナー(pan-donor)の転写変化の多くは、文献に遺伝子に関して記載されている抗NASH、抗線維化、及び抗癌活性と一致した。TGFβ+PDGF-BBの非存在下で例外なくCRV431によって影響を受けた注目すべき遺伝子は、ESM1(RNAが2.2倍減少;-2.2)、NCOA3(-2.7)、IFI44L(-4.8)、mIR-194-2(-7.9)、及びDKK1(RNAが3.8倍増加;+3.8)だった。外因性TGFβ+PDGF-BBの存在下では、例外なくCRV431によって影響を受けた注目すべき遺伝子は、LOXL2(-1.9)、UBD/FAT10(-2.0)、ESM1(-2.6)、STRA6(-3.1)、RCCD1(-3.6)、及びDUOX2(-4.5)だった。如何なる特定の理論によっても束縛されるものではないが、本明細書に記載の結果は、CRV431には線維症形成を予防し、線維症を回復させる能力があることを示唆していると考えられる。
【0176】
肝臓癌の切除術を受けた5名のヒトドナーからPCLSを得た。健康な切除マージンからレプリケート薄片を収集し、実験プロトコルに応じて4又は6日間培養した。非刺激プロトコルでは薄片を6日間培養し、全期間にわたってDMSOビヒクル又は5μMのCRV431で処置した。刺激プロトコルでは薄片を1日休ませてから3日間、サイトカイン、TGFβ及びPDGF-BBを投与して炎症及び線維症を刺激した。刺激プロトコルではTGFβ+PDGF-BBと同時に薬物処置としてDMSOビヒクル、CRV431(1及び5μM)、Alk5i(10μM)、オベチコール酸(5μM)、エラフィブラノール(5μM)、レスメチロム(resmetirom)(5μM)、及びアラムコール(Aramchol)(5μM)を個々に投与した。培地処置薬は毎日交換した。
PCLSについて下記4タイプの評価を行った:(a)炎症及び線維症のバイオマーカーの培地中への分泌、(b)組織線維症の尺度としての組織学的染色及びシリウスレッドの定量化、(c)炎症及び線維症のバイオマーカーのRT-PCRによる遺伝子発現及び(d)完全トランスクリプトームのRNA配列決定(RNA-Seq)。4タイプの各評価について以下に述べる。
【0177】
(a)バイオマーカー分泌。各処置用の二つ組薄片から使用済み培地を毎日収集した。ELISAを利用して単球走化性タンパク質(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、メタロプロテイナーゼ1の組織インヒビター(TIMP1)、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、及びコラーゲン1α1の分泌を定量化した。各ドナーについて各処置群のバイオマーカー分泌の平均レベルをDMSOビヒクルに対する変化百分率として表し、全てのドナーについて百分率の平均値を出し、最後に全ての評価日から日変化平均百分率を計算した。結果を
図8Aに示す(分泌マーカー-日平均変化%)。
(b)シリウスレッド組織学的染色。実験終了時にPCLSを組織学的に処理し、シリウスレッドで染色して組織線維症を実証した。組織学的切片において各処置からの10枚の切片にシリウスレッド染色のある面積百分率として形態計測学的にシリウスレッドを定量化した。非刺激プロトコルではビヒクル群に対してシリウスレッド染色の量を表した。刺激プロトコルでは非刺激PCLS(0%)及びTGFβ+PDGF-BB刺激+ビヒクルPCLS(100%)に対してシリウスレッド染色の量を表した。結果を
図8Bに示す(組織線維症に対するシリシウスレッド染色)。
【0178】
(c)RT-PCRによる遺伝子発現。実験終了時に処置毎の二つ組肝薄片からRNAを単離し、炎症及び線維症の5つのマーカー:MCP-1、IL-6、TIMP1、αSMA、及びコラーゲン1α1についてRT-PCRによって評価した。βアクチンを参照遺伝子として用いて各標的遺伝子RNAの相対的レベルを計算した。5μM濃度で適用したCRV431は、Alk5i(TGFβ受容体キナーゼの阻害薬)、ピルフェニドン(IPFのために認可された治療薬)、及びニンテダニブ(IPFのために認可された治療薬)と同様に全てのマーカーの日平均分泌及び遺伝子発現を減少させた。結果を
図8C(RT-PCRによる遺伝子)に示す。
(d)RNA-Seqによる遺伝子発現。3名のドナーからのビヒクル及び5μMのCRV431処置群について非刺激及び刺激の両プロトコルから完全トランスクリプトームのRNA配列決定(1サンプル当たり3000万リード)を行った。バイオインフォマティクスソフトウェアプログラムによってデータを分析し、ビヒクル処置とCRV431処置との間で差次的に発現された遺伝子を同定した。
(d)について行う評価のため、4つの異なる処置を受けた3名の異なるドナースライドに相当する12個のサンプルを調べた。この分析では下記比較を行った:(1)TGFb/PDGF+CRV対TGFb/PDGF+Vehicle(V)、及び(2)非刺激+CRV対非刺激+ビヒクル。下表1は、サンプルID及び対応する処置を示す。
【0179】
【0180】
全てのサンプルについて品質管理チェックを行った。全てのサンプルは、3000万超のリードを有し、配列中のほとんど全ての塩基について品質平均スコア>35を有した。RNA配列決定の実情では、重複レベルが予想され、同一RNAの異なるコピーがサンプルに存在すると予想される。全てのサンプルは、良い量のリード及び品質を有したので、全てのサンプルは、チェックしたQCをパスし、分析に含められた。
TGFb/PDGF+CRV431対TGFb/PDGF+ビヒクルを群別に比較した。主成分分析(PCA)プロットを作成してサンプルの分布を分析した(
図9A)。それは、それらはドナーに基づいてクラスター化するように、ドナーの強い影響を示すが、
図9Bに示すようにPCAプロットではそれらは分かれるので、処置間の差もある。
図9CのMAプロットでは、対数倍率変化(log fold change)に対して平均カウントをプロットした。TGFb/PDGF+CRVとTGFb/PDGF+ビヒクルの比較(p値調整<0.05)で異なって発現された有意な遺伝子を赤で示している。
【0181】
TGFb/PDGF+CRVとTGFb/PDGF+ビヒクルの比較のためにヒートマップをも作成して、有意な異なって発現された遺伝子をプロットした(p値調整<0.05、対数倍率変化>0.5)。群内に存在する異なる発現パターンを観察するため、群別にグループ化したサンプルによるヒートマップを
図10Aに示す(青=ビヒクル:赤=CRV)。同一の有意な遺伝子をも別のヒートマップにプロットしたが(
図10B)、ドナー間の差を観察するために今度はドナー別にグループ化してサンプルをプロットしている(青=ビヒクル;赤=CRV)。
さらに、ボルケーノプロットに有意なヒットをプロットし(
図11)、有意な遺伝子を赤でプロットし、それらの対応記号IDを表示した。下方制御及び上方制御はCRV処置に対するものである。
TGFb/PDGF+CRVとTGFb/PDGF+ビヒクルの比較(p値調整>0.05、対数倍率変化>0.5)で同定された有意な異なって発現された遺伝子を下表2に示す。倍率変化は処置(CRV)に対するものである。
【0182】
【0183】
PCA分析に示すように、ドナーの強い影響がある。従って各ドナーを個々に分析した。カウント比較をTGFb/PDGF+CRV341対TGFb/PDGF+ビヒクルについてドナー別に行った。最初に、カウント数に差がある遺伝子(TGFb/PDGF+ビヒクル-TGFb/PDGF+CRV)<-300を選択した。従ってビヒクル群はCRV処置より少なくとも300個少ないコピーを有した。言い換えれば、この処置はビヒクルより少なくとも300個多いコピーを有した。各ドナーについて個々にこの選択を行った後、ベン図をプロットして、全3名のドナー間のオーバーラップを示した。
図12Aに示すように、117個の遺伝子は、CRV処置サンプルにビヒクル処置サンプルより少なくとも300個多いコピーを有した。
次に、カウント数に差がある(TGFb/PDGF+ビヒクル-TGFb/PDGF+CRV)>300の遺伝子、従ってCRV処置に比べて、ビヒクルサンプルに少なくとも300個多いコピーを有する遺伝子を選択した。つまり、それらは、CVR処置にビヒクルに比べて少なくとも300個少ないコピーを有した。各ドナーについてこの選択を個々に行った後、ベン図をプロットして、全3名のドナー間のオーバーラップを示した。
図12Bに示すように、279個の遺伝子は、CRV処置においてビヒクルより少なくとも300個少ないコピーを有した。
【0184】
次に非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルを群別に比較した。主成分分析(PCA)プロットを作成してサンプルの分布を分析した(
図13A)。予想どおりに、それらは、処置ではなくドナーに基づいてクラスター化するように、ドナーの強い影響が観察された。しなしながらPCAプロット(
図13B)ではそれらは分かれるので処置間に差がある。
図13Cに示すMAプロットのために、対数倍率変化に対して平均カウントをプロットした。非刺激+CRVと非刺激+ビヒクルの比較で異なって発現された有意な遺伝子(enes)を赤で示している(p値調整<0.05)。
非刺激+CRVと非刺激+ビヒクルの比較のために有意な異なって発現された遺伝子をプロットすることによってヒートマップを作成した(p値調整<0.05、対数倍率変化>0.5)。最初に、群内に存在する異なる発現パターンを観察するため、群別にグループ化したサンプルによるヒートマップ(
図14A)を示す(青=ビヒクル;赤=CRV)。次に、同じ有意な遺伝子をヒートマップにプロットしたが(
図14B)、ドナー間の差を観察するために今度はドナー別にグループ化してサンプルをプロットしている(青=ビヒクル;赤=CRV)。
ボルケーノプロットに有意なヒットをプロットした(
図15)。有意な遺伝子を赤でプロットし、その対応記号IDを表示する。下方制御及び上方制御遺伝子は処置CRVに対するものである。
非刺激+CRVと非刺激+ビヒクルの比較(p値調整>0.05、対数倍率変化>0.5)で同定された有意な異なって発現された遺伝子を下表3に示す。示した倍率変化は処置CRVに対するものである。
【0185】
【0186】
次に非刺激+CRV431対非刺激+ビヒクルをドナー別に比較した。PCAに示すように、ドナーの強い影響があった。そこで、以前の比較と同様に分析を繰り返した。最初に、カウント数に差がある(非刺激+ビヒクル-非刺激+CRV)<-300、従ってビヒクル群がCRV処置より少なくとも300個少ないコピーを有する遺伝子を選択した。言い換えれば、処置CRVにはビヒクルより少なくとも300個多いコピーがあった。各ドナーについて個々にこの選択を行った後、ベン図をプロットして全3名のドナー間のオーバーラップを示した。
図16Aに示すように、210個の遺伝子は、CRV処置においてビヒクルより少なくとも300個多いコピーを有した。次に、カント数に差がある(非刺激+ビヒクル-非刺激+CRV)>300、従ってCRV処置に比べて、ビヒクルサンプルに少なくとも300個多いコピーを有する遺伝子を選択した。つまり、処置群にはビヒクル群に比べて少なくとも300個少ないコピーがある。各ドナーについて個々にこの選択を行った後、ベン図をプロットして全3名のドナー間のオーバーラップを示した。
図16Bに示すように、255個の遺伝子は、CRV処置においてビヒクル中より300個以下のコピーを有した。
【0187】
前述の実施形態の少なくとも一部では、ある実施形態に用いた1種以上の要素を別の実施形態で互換的に使用することは、該交換が技術的にできなくない限り、可能である。当業者には明らかなように、請求項に係る主題の範囲を逸脱しなければ、上記方法及び構造に種々の他の省略、追加及び修正を行ってよい。全てのこのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される主題の範囲内に入るよう意図される。
本明細書における実質的にいずれの複数及び/又は単数の用語の使用に関しても、当業者なら文脈及び/又は本出願に妥当なように複数から単数に及び/又は単数から複数に置き換えることができる。本明細書では分かりやすくするために種々の単数/複数の置換を明示的に示すことがある。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、複数の言及が含まれる。本明細書におけるいずれの「又は」への言及も、特に明記しない限り「及び/又は」を包含する意図である。
【0188】
一般的に、本明細書、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の主部)で使用する用語は、一般的に「オープンな」用語として企図されることを当業者なら理解するであろう(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「…を含んでいるが、それに限定されない」と解釈すべきであり、用語「有する」は、「少なくとも…を有する」と解釈すべきであり、用語「含む(include)」は、「…を含むが、それに限定されない」と解釈すべきである等)。さらに、特定数の導入請求項列挙が意図される場合、該意図は請求項に明示的に列挙されることになり、該列挙の非存在下では該意図は存在しないことを当業者なら理解するであろう。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の用法を含有して請求項列挙を導入してよい。しかしながら、該句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項列挙の導入が、このような導入請求項列挙を含有するいずれの特定の請求項をも、同請求項が導入句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び不定冠詞、例えば「a」又は「an」を含むときでさえ、1つの該列挙だけを含有する実施形態に限定することになると解釈すべきでなく(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈すべきである);請求項列挙を導入するための定冠詞の使用についても同じことが言える。さらに、特定数の導入請求項列挙がたとえ明示的に記載されているとしても、該列挙は、少なくともその列挙された数を意味すると解釈すべきであることを当業者なら認めるであろう(例えば、他の修飾語のない「2つの列挙」というただそれだけの列挙は、少なくとも2つの列挙、又は2つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、及びCの少なくとも1つ等」に類似の慣例を使用する場合、一般的に該構成は、当業者がこの慣例を理解することになるという意味に企図される(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAと、Bと、Cを一緒に有するシステムを含むことになるが、これらに限定されない等)。「A、B、又はCの少なくとも1つ等」に類似の慣例が使用される場合、一般的に該構成は、当業者がこの慣例を理解することになるという意味に企図される(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAと、Bと、Cを一緒に有するシステムを含むことになるが、これらに限定されない等)。さらに、事実上2つ以上の代替用語を提示しているいずれの離接的な語及び/又は句も、本説明、特許請求の範囲、又は図面であろうが、それらの用語の1つの用語、どちらかの用語、又は両方の用語を含む可能性を企図するものと理解すべきであることが当業者なら分かるだろう。
【0189】
さらに、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記述されている場合、それによって本開示はマーカッシュ群のいずれの個々のメンバー又はサブグループのメンバーの観点でも記述されていることを当業者なら認識するであろう。
当業者には明らかなように、ありとあらゆる目的で、このような文章化した記述の観点から、本明細書で開示する全ての範囲は、ありとあらゆる可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組み合わせをも包含する。いずれの記載した範囲をも十分に記述していると容易に認めることができ、同範囲を少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分けることが可能である。非限定例として、本明細書に記載の各範囲を下部3分の1、中部3分の1及び上部3分の1等に容易に分けることができる。同様に当業者には明らかなように、例えば「まで(up to)」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」等の全ての言語は、列挙した数を含み、上述したように、その後サブグループに分けることができる範囲を指す。最後に、当業者には明らかなように、ある範囲には各個々のメンバーが含まれる。従って、例えば、1~3個の項目を有する群は、1、2、又は3個の項目を有する群を指す。同様に、1~5個の項目を有する群は、1、2、3、4、又は5個の項目を有する群を指す等である。
【0190】
本明細書では種々の態様及び実施形態を開示したが、当業者には他の態様及び実施形態が明白であろう。本明細書で開示した種々の態様及び実施形態は説明のためであり、限定する意図ではなく、真の範囲及び精神は、下記特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】