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特表2023-514902巻線端部支持体を製造する方法及び巻線端部支持体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】巻線端部支持体を製造する方法及び巻線端部支持体
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230405BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20230405BHJP
   H02K 3/51 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K15/12 C
H02K3/51 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022520972
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 AT2020060430
(87)【国際公開番号】W WO2021163739
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】A50130/2020
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519072903
【氏名又は名称】アンドリッツ ハイドロ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノイマイアー、フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャントシュナー、オリヴァー
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC02
5H604CC05
5H604QA06
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS16
5H615SS25
5H615TT16
(57)【要約】
本発明は、回転電気機械の回転子(1)のための巻線端部支持体を製造する方法に関する。特に大きい巻線端部支持体の製造も、同時に簡単な方法で可能にするために、本発明によれば、巻線端部支持体が付加製造法を使用して、特にアークワイヤ肉盛溶接によって形成されることが企図されている。本発明はさらに巻線端部支持体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気機械の回転子のための巻線端部支持体を製造する方法において、前記巻線端部支持体が付加製造法を使用して、特にアークワイヤ肉盛溶接によって形成される、方法。
【請求項2】
前記巻線端部支持体がリングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加製造法によってオーステナイト組織が形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記巻線端部支持体が金属の複数の層を溶接して形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記巻線端部支持体は、動かされる、特に回転軸線を中心に回転する担持要素に材料を付与して形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
巻線端部支持体は、材料結合的に接続される複数の層が重ね合わせて配置されることにより形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
層は、最初に前記層の内側境界と外側境界が形成され、その後、前記内側境界と前記外側境界との間の空間に材料が充填されることにより形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記巻線端部支持体の前記形成が、前記巻線端部支持体において酸化物層を回避するために、保護ガスを使用して行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記巻線端部支持体が、6%~32%、殊に10%~28%、特に18%~24%のクロム当量を有する鋼で形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記巻線端部支持体が、10%~40%、殊に16%~32%、特に24%~29%のニッケル当量を有する鋼で形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
製造は、前記巻線端部支持体のすでに形成された部分を冷却して行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記巻線端部支持体のすでに形成された部分及び/又は前記巻線端部支持体と熱的に接続された主体に流体、特に空気、CO又は水を付与することによって冷却が行われ、前記流体は、前記巻線端部支持体の前記形成された部分より低い温度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記巻線端部支持体が前記製造中にプラットフォーム上に配置されていて、前記プラットフォームは、特に流体、殊に水で冷却される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記付加製造法の実行後、前記巻線端部支持体の形成された部分が熱処理され、熱処理は、特に溶体化焼鈍、焼入れ及び/又は応力除去焼鈍を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記付加製造法の実行後、前記巻線端部支持体の形成された部分が切削製造法を受ける、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
電気機械の回転子のための巻線端部支持体において、前記巻線端部支持体が、付加製造法によって、特に請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって形成される、巻線端部支持体。
【請求項17】
前記巻線端部支持体は、1つ又は複数のリングを有する、請求項16に記載の巻線端部支持体。
【請求項18】
前記巻線端部支持体は、1mを超える、殊に4mを超える、特に6mを超える内径を有するリングを備える、請求項17に記載の巻線端部支持体。
【請求項19】
固定子と回転子を備えた電気機械であって、前記回転子が端側に少なくとも1つの巻線端部を有し、前記巻線端部支持体が、動作時に発生する遠心力を受け止めるために設けられている、電気機械において、請求項16から18のいずれか一項に記載の巻線端部支持体が形成されている、電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気機械の回転子のための巻線端部支持体(Wickelkopfabstuetzung)を製造する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、電気機械の回転子のための巻線端部支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
電気機械の回転子のための巻線端部支持体及びこれを製造する方法は、従来技術から知られている。このような巻線端部支持体は、回転にもとづいて回転子の巻線端部に作用する遠心力を受け止めるために設けられ、それにより巻線端部の許されない変形が回避される。従来技術の巻線端部支持体は、通常、高強度の材料、殊に高強度で磁化可能でない鋼によって形成され、多くの場合、例えば文献オーストリア国特許出願公開第508622号明細書に記載されるように、1つ又は2つのリングを有し、対応するリングは、通常、鍛造及び圧延、及び場合によっては特に高い強度を達成するための別の方法によって形成される。
【0004】
しかしながら、そのような巻線端部支持体は、所与の圧延装置によって予め定められた最大サイズまでしか形成することができない。さらに、そのような巻線端部支持体の最大サイズは、製造設備から電気機械が運転されることになる場所、通常は発電所への輸送ルートによっても制限される。したがって、これまでのところ、巻線端部支持体は、約6mまでの最大内径までしか製造できず、それによって巻線端部支持体は機械設計時の制限要因にもなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このことを出発点とする。本発明の課題は、鍛造又は圧延装置によって予め定められた制限とは無関係に巻線端部支持体を製造することができる冒頭で述べた種類の方法を提供することである。
【0006】
このような巻線端部支持体もさらに提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の課題は、本発明によれば、巻線端部支持体が付加製造法(additives Herstellungsverfahren)、特にアークワイヤ肉盛溶接(Lichtbogendraht-Auftragsschweissen)によって形成される冒頭で述べた種類の方法によって解決される。
【0008】
本発明の範囲内で、驚くべきことに付加製造法で製造された対象物でも相応に高い強度を達成できることが認識された。したがって、巻線端部支持体を形成するために鍛造及び圧延のための装置が必要でなくなり、それによって製造を必ず鍛造又は圧延装置を有する製造設備で行う必要がなくなる。したがって、現場、例えば発電所が建設される場所でも対応する巻線端部支持体の製造が可能である。
【0009】
基本的に、対応する巻線端部支持体を形成するために、極めて多様な付加製造法、例えばレーザを使用する溶接法又はサブマージアーク溶接法(Unterpulverschweissverfahren)も使用することができる。しかし、巻線端部支持体がアークワイヤ肉盛溶接によって形成される場合が、高強度を達成するために特に有利であることが明らかになった。そのような製造方法は、ワイヤアーク付加製造(Wire-Arc-Additive-Manufacturing)とも呼ばれる。その場合、対応するワイヤの選択により、巻線端部支持体の特性に簡単に影響を及ぼすことができる。磁化可能でないと同時に高強度の巻線端部支持体を達成するために、通常、対応する方法で、形成された溶接継ぎ目若しくは巻線端部支持体においてオーステナイト組織を達成することができるワイヤが使用される。
【0010】
原則的に、そのような巻線ヘッド支持体は個々の着脱可能に互いに接続されたセグメントによって形成することもできるが、好ましくは、巻線端部支持体がリング状に形成されることが企図される。したがって、対応する巻線端部支持体が回転子の巻線端部を安定させることができる1つ又は複数のリングを有することが好ましい。対応するリング状の巻線端部支持体を、例えば複数の互いに接続されたリング状の溶接継ぎ目によって簡単に形成することができ、続いて巻線端部を遠心力に対して支持するために、巻線端部の外側又は内側に配置することができる。
【0011】
基本的に、巻線端部支持体は、それぞれの機械で要求される機械的、熱的、及び磁気的特性が達成されるあらゆる材料、すなわちプラスチック、セラミック、又はそれに類するものによっても形成することができる。しかし、付加製造法によって完全にオーステナイトの組織が形成される場合、要求される特性を簡単に、かつ同時に高い信頼性で達成することができる。
【0012】
巻線端部支持体は基本的に、例えば金属粉末粒子が互いに結合される3Dプリンティング法又は焼結法によって形成することもできるが、特に高い強度を達成するために、巻線端部支持体が金属の複数の層を溶接して形成され、溶接された層が、好ましくは完全にオーステナイトの構造を有することが好ましい。その場合、金属はワイヤとして溶接継ぎ目に好ましくは連続的に供給される。したがって、通常、リングとして形成された、若しくは1つ又は複数のリングを有する巻線端部支持体は、複数の重ね合わせて配置された溶接継ぎ目を付与することによって層また層と製造され、個々の溶接継ぎ目は、通常、円形若しくはリング状に形成される。形成されたリング若しくは形成された巻線端部支持体の完全にオーステナイトの構造は、磁気特性にもとづいて電気機械において使用するために特に有利である。
【0013】
巻線端部支持体が、動かされる、特に回転軸線を中心に回転する担持要素に材料を付与して形成される場合に、特に簡単な製造方法が達成される。
【0014】
例えば、アークワイヤ肉盛溶接によって巻線端部支持体が形成される溶接装置が、溶接物をリングの異なった半径方向及び軸方向位置に付与するためにわずかに動かされるだけでも、非常に大きい直径のリングでさえも簡単に形成することができる。したがって、例えば回転するプラットフォーム上に配置され得る担持要素が相応に動かされる場合、溶接装置をリングの円周にわたって動かす必要がない。それによって、対応する巻線端部支持体を製造するための装置を非常に簡単に、かつ安価に形成することができる。さらに、それによりリング若しくはリング状の巻線端部支持体の製造が高精度で可能である。
【0015】
担持要素は、基本的に、巻線端部支持体と同じ材料から形成することができる。しかし、担持要素が、別の材料、例えば巻線端部支持体より低い強度の材料から形成されていることを企図することもできる。この場合、均質な巻線端部支持体を達成するために、巻線端部支持体が巻線端部支持体の少なくとも1つの層の形成後、特に巻線端部支持体の製造後に担持要素から取り外されることが企図され得る。したがって、このように形成された巻線端部支持体は、好ましくは金属からなる担持要素と材料結合的に接続されている。
【0016】
したがって巻線端部支持体を担持要素から取り外すために、これを担持要素から例えば切断することができる。
【0017】
材料結合的に接続される複数の層が重ね合わせて配置されることにより巻線端部支持体が形成される場合に高強度の巻線端部支持体が達成される。このことは、複数の溶接継ぎ目を重ね合わせて付与することによって簡単に行うことができ、個々の溶接継ぎ目は、好ましくは同じ材料から形成されている。したがって、層は、1つの溶接継ぎ目、あるいは複数の並べて、及び/又は重ね合わせて配置された溶接継ぎ目を備えることができる。層は、製造される巻線端部支持体の横断面全体にわたって、例えばリングの横断面全体にわたって延在し、10cm未満、特に5cm未満の高さを有する。このことは、巻線端部支持体の安定した、及び層状の構造を保証する。
【0018】
これに関連して、最初に層の内側境界と外側境界が形成され、その後、内側境界と外側境界との間の空間に材料が充填されることにより層が形成される場合が有利である。特に丸い巻線端部支持体若しくはアンバランスが特に小さい巻線端部支持体を達成するために、対応する肉盛溶接によって形成されたリングを、当然、電気機械における使用の前に、例えば旋削加工、フライス加工、又は研削加工によってさらに加工することができはするが、内側境界が巻線端部支持体を形成するリングの内径を形成し、外側境界がこのリングの外形を形成することができる。
【0019】
層の作製時に有利な温度と同時に、巻線端部支持体の製造の高い速度を達成するために、最初に層の内側境界と外側境界が形成されることが有効であることが分かった。同時に、内側境界と外側境界との間の領域を埋めることによって、高い強度と均質性を有し、細孔や空隙などの溶接継ぎ目の欠陥のない材料を簡単に達成することができる。
【0020】
通常、内側境界と外側境界を形成した後に、内側境界と外側境界との間に一貫した層を達成するために、内側境界と外側境界との間の空間が、外側境界から始まってさらなる溶接継ぎ目で満たされる。内側境界と外側境界の形成後、まず1つ又は2つの溶接継ぎ目が内側境界又は外側境界に隣接して配置され、その後、内側境界と外側境界との間の空間を埋めるために、外側境界又は内側境界から始まって、さらなる溶接継ぎ目が配置されることを企図することもできる。それによって、隣接してさらなる溶接継ぎ目が設けられる溶接継ぎ目がすでにわずかに冷却されていることが達成され、溶接プロセス中の亀裂のリスクが最小化される。1つの層は、例えば2~5つ、特に3つの重ね合わせて配置された溶接継ぎ目の高さを有することができる。
【0021】
巻線端部支持体の高い均質性と強度を達成するために、好ましくは、巻線端部支持体における酸化物層を回避するために、巻線端部支持体の形成が保護ガスを使用して行われることが企図されている。
【0022】
巻線端部支持体が、6%~32%、殊に10%~28%、特に18%~24%のクロム当量を有する鋼で形成される場合に、巻線端部支持体の有利な機械的及び磁気的特性を簡単に達成することができる。
【0023】
クロム当量は以下のように算出される。
クロム当量=%Cr+%Mo+1.5%Si+0.5%Nb。
さらに、巻線端部支持体が有利な機械的及び磁気的特性を達成するために、10%~40%、殊に16%~32%、特に24~29%のニッケル当量を有する鋼で形成される場合が有利であることが分かった。鋼のニッケル当量は以下のように算出される。
ニッケル当量=%Ni+30%C+0.5%Mn
これに代えて、又はこれに加えて、オーステナイト系Mn鋼又はオーステナイト系Mn-N鋼が使用されることも企図することができる。
【0024】
対応する鋼は、通常、巻線端部を形成するために、アークワイヤ肉盛溶接法でワイヤとして付与される。
【0025】
このような鋼は高い熱間割れの傾向を示すことから、別の層若しくは溶接継ぎ目が付与される層若しくは担持要素を、新たな層若しくは新たな溶接継ぎ目が付与される前に冷却される、殊に1,250℃未満、特に好ましくは500℃未満、特に100℃未満の温度に冷却することが望ましい。したがって、製造は、巻線端部支持体のすでに形成された部分を冷却して行われる場合が有利である。
【0026】
冷却は、基本的に極めて多様な方法で行うことができる。冷却が、ガス又は液体、特に空気、CO又は水などの流体を巻線端部支持体のすでに形成された部分に、ならびに/あるいは巻線端部支持体と熱的に接続された主体に、特にノズルを用いて付与することによって行われる場合が特に効率的であり、流体は巻線端部支持体の形成された部分より低い温度を有する。
【0027】
例えば、冷流体を巻線端部支持体の形成された部分、特に形成された溶接継ぎ目に直接付与してこの部分を冷却することができる。
【0028】
これに代えて、又はこれに加えて、冷却のために、巻線端部支持体が、製造中にプラットフォーム上に配置されていて、プラットフォームが、特に流体、殊に水で冷却されることを企図することもできる。したがって、例えばリング状の巻線端部支持体を簡単に形成するために動く、特に回転するプラットフォームを、プラットフォーム上に配置されてこれと面接触により接続された巻線端部支持体を伝導によって冷却することができる。このために、プラットフォームは、例えば水浴中に配置されるか、又は動作時にプラットフォームを冷却するための水が流れる冷却配管を備えることができる。当然のことながら、巻線端部支持体の伝導による冷却に代えて、又はさらに加えて、特に巻線端部支持体の形成された部分に流体を付与してプラットフォームの冷却を行うことができる。
【0029】
特に有利な機械的特性を達成するために、付加製造法の実行後に巻線端部支持体の形成された部分が熱処理され、熱処理は、巻線端部支持体の一部若しくは全部の特に溶体化焼鈍、焼入れ及び/又は応力除去焼鈍を含むことができる。例えば、有利な耐食性を達成するため、及び内部応力を低減するために、付加製造法によって形成された巻線端部支持体の部分、特に形成されたリングは、その部分が溶体化焼鈍され、及び水で焼入れされ、その後、場合によってさらに応力除去焼鈍が行われることにより熱処理され得る。
【0030】
特に正確に定義された寸法を達成するために、付加製造法の実行後に巻線端部支持体の形成された部分が切削製造法、特に旋削加工、フライス加工及び/又は研削加工を受ける場合が有利であり得る。それによって、巻線端部支持体の例えばリング状の部分における特に小さいアンバランスも達成することができる。
【0031】
巻線端部支持体若しくはその一部が上述のように熱処理を受ける場合、熱処理は、通常、巻線端部支持体若しくはその一部分が切削製造法を受ける前に行われる。それにより、熱処理の範囲で、例えば熱膨張によって生じ得る形状変化も切削加工の範囲で補償することができる。
【0032】
別の課題は、本発明によれば、冒頭で述べた種類の巻線端部支持体によって解決され、巻線端部支持体は、付加製造法によって、特に本発明による方法によって形成される。
【0033】
通常、対応する巻線端部支持体は、オーステナイト系、殊に磁化不可能な材料からなる。
【0034】
好ましくは、巻線端部支持体がリングとして形成されている、あるいは1つ又は複数のリングを有し、これらを巻線端部に簡単に取り付けることができることが企図されている。
【0035】
本発明による方法をもってすれば、基本的に、巻線端部支持体を任意のサイズで形成することができ、それによりこれらを、例えば大規模な水力発電所の発電機のために使用することができる。通常、このような巻線端部支持体は、1mを超える、殊に4mを超える、特に6mを超える内径を有するリングを備える。
【0036】
固定子と回転子を備えた電気機械であって、回転子が片側に少なくとも1つの巻線端部を有し、巻線端部支持体が、動作時に発生する遠心力を受け止めるために設けられている、電気機械では、本発明に従って巻線端部支持体が形成されていることが有利である。それによって、大型の電気機械でさえも従来の製造設備の外で比較的簡単に巻線端部支持体を備えて形成することができる。このような電気機械は、例えば非同期発電機として形成することができ、水力発電所で使用することができる。
【0037】
このような機械は、各巻線端部に、それぞれ本発明による方法で形成される内側リングと外側リングを有することが好ましい。その場合、外側リングが巻線端部に焼き嵌めされ、文献オーストリア国特許出願公開第508622号明細書に従って、巻線端部の領域において機械の内側リング及び巻線棒状体と結合体を形成することを企図することもできる。
【0038】
本発明の他の特徴、利点、及び効果は、以下に説明される実施例をもとにして明らかになる。参照される図面は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】非同期機として形成された電気機械の図である。
図2】巻線端部支持体を製造するための装置の図である。
図3】巻線端部支持体を製造するための別の装置の図である。
図4】巻線端部支持体を製造するための別の装置の図である。
図5】巻線端部支持体を製造するための別の装置の図である。
図6】巻線端部支持体を製造するための別の装置の図である。
図7】巻線端部支持体の細部の断面図である。
図8】巻線端部支持体の細部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、水力発電所でモータ又は発電機として使用され得る、ここでは非同期機として形成された電気機械の回転子1を示す。回転子1は、回転子軸と、回転子巻線が配置された回転子積層鉄心3とを有する。回転子巻線は、端側で回転子積層鉄心3を越えて突き出し、それによって巻線端部が形成される。動作時に回転軸線4を中心とした回転子の回転によって発生する遠心力に対して巻線端部を支持するために、リング状に形成された巻線端部支持体が設けられている。巻線端部支持体は、外側リングと内側リングを有し、図1には外側リング2のみが見て取れる。外側リング2と内側リングを有する巻線端部支持体の基本構造は、例えば文献オーストリア国特許出願公開第508622号明細書から知られている。
【0041】
本発明によれば、巻線端部支持体、あるいは対応する巻線端部支持体の内側リング及び/又は外側リング2は、もはや鍛造、圧延、場合によっては、従来技術から知られるような冷間硬化によって形成されず、付加製造法を使用して製造される。
【0042】
図2は、本発明による方法を実行するための装置7を示し、リング状の巻線端部支持体が、模式的に示される溶接装置8を用いてアークワイヤ肉盛溶接によって形成される。装置7は、図示されない駆動装置を用いて回転軸線12を中心に回転可能なプラットフォーム5を有し、例えば図1に示される電気機械の外側リング2として使用することができるリング状の巻線端部支持体を、担持要素6上に周方向に沿って複数の溶接継ぎ目を設けることによって形成するために、担持要素6がプラットフォーム上に着脱可能に配置されている。担持要素6は、同様にそのような方法で製造され得るか、又は設けられる溶接物とのみ接続可能な別の材料からなり得る。後者の場合、巻線端部支持体の製造後に担持要素6が巻線端部支持体から分離されることが企図され得る。
【0043】
プラットフォーム5を回転軸線12を中心に回転させた後、巻線端部支持体の半径方向及び軸方向の延在を形成するのに必要な範囲内でだけ、溶接装置8が回転軸12に相対して軸方向及び半径方向に動かされれば十分である。したがって、プラットフォーム5が担持要素6と一緒に回転軸12を中心に回転することにより、回転軸線12を中心とした溶接装置8の周方向の動きは必要でなく、そのため、そのような装置7を用いて、例えば6mを超える非常に大きい内径のリング14も、溶接装置8をわずかに動かすことにより簡単に形成することができる。このような装置7は簡単に組み立てられ、したがって基本的に、電気機械が使用される場所でも組み立てることができる。それによって、巻線端部支持体の製造は現場でも可能であり、それによって輸送ルートにもとづく巻線端部支持体の最大サイズの制限も関係なくなる。
【0044】
オーステナイト組織を有する巻線端部支持体を達成するために、巻線端部支持体を、通常、アークワイヤ肉盛法で形成するためのワイヤとして、クロム当量が16%~24%、ニッケル当量が22%~29%の鋼を使用することが好ましい。これに代えて、別のオーステナイト鋼、特にオーステナイトMn鋼、又はオーステナイトMn-N鋼を使用することもできる。このような鋼は、高強度であると同時に、電気機械の巻線端部のための磁気的に有利な特性を有する。このような材料は高い高温割れの傾向も示すので、好ましくは、巻線端部支持体がその形成中に冷却されることが企図されている。
【0045】
このために、流体、特に空気、CO、又は水若しくは水蒸気で冷却を行うことができ、これが巻線端部支持体若しくは巻線端部支持体の形成されたリング14のすでに形成された部分に付与され、対流によってこの部分が冷却される。リング14からの熱の排出を簡単な方法で可能にするために、図3に示されるように、リング14を部分的に覆うハウジング9を設けることができる。
【0046】
さらに、リング14の製造が行われる領域が熱交換器によって常に低い温度に保たれることを企図することもできる。この場合、好ましくは、閉じたハウジング9内で巻線端部支持体の製造が行われることが企図されている。このことが図4に模式的に示されている。ここに見て取れるように、リングの内側に配置された熱交換器のための接続部、すなわちハウジング内に配置され、ここに図示されない熱交換器を通して送られる媒体、例えば水のための往路10と復路11がハウジング9から突出する。
【0047】
これに代えて、又はこれに加えて、製造を行うための装置7が冷却されることを企図することもできる。例えば、リング14が形成されるプラットフォーム5を、例えば水などの液体で冷却することができる。このことは、図5に例示的に示され、プラットフォーム5は、水浴13で取り囲まれている。この場合も、冷水を水浴13に連続的に供給、及び加熱された水を水浴13から導出できるようにするために往路10と復路11が設けられている。
【0048】
当然、プラットフォーム5、したがってここでは例示的にリング14によってなり、プラットフォーム5上に配置された巻線端部支持体を冷却するために、プラットフォーム5自体に冷却配管18が設けられていることも可能である。このことが図6に模式的に示されている。この場合も、冷却配管18を通る流れを保証できるようにするために管路10と復路11が設けられている。
【0049】
図5及び図6において、巻線端部支持体の相応に製造されたリング14の内径19も見て取れ、これは本発明に従って製造されるリング14の場合、製造方法が鍛造装置又は輸送可方式と無関係であるため、内径が6mを超えることも問題なく可能である。
【0050】
図7は、担持要素6上に配置された、非同期モータのための本発明に従って形成された巻線端部支持体のリング14を通る断面の細部を示し、リング14の層17の溶接継ぎ目W1、W2、W3、W4、W5、W6、W7、W8、W9、W10、W11、W12、W13、W14も示されている。本発明に従って形成された巻線端部支持体は、通常、複数の層17を有し、図7には担持要素6上に配置された最下層17のみが示されている。各層17は、さらなる溶接継ぎ目W7、W8、W9、W10、W11、W12、W13、W14が間に配置されている内側境界15と外側境界16とを有し、かつここではリング14の横断面全体にわたって回転軸線12に対して法線方向に延在する。
【0051】
図7に示されるリング14の層17を作製する場合、最初に、最下層17の内側境界15を形成する3つの内側溶接継ぎ目W1、W2、W3が形成され、その後、層17の外側境界16を形成する3つの外側溶接継ぎ目W4、W5、W6が形成される。当然のことながら、図1による装置7を用いてリング14を製造する場合に、外側境界16の回転軸線12からの距離は内側境界15より大きい。内側境界15と外側境界16を形成した後、続いて、内側境界15と外側境界16との間に残った空間が、最下溶接継ぎ目W7、W8、W9、W10で埋められ、まず外側境界16に隣接して下外側溶接継ぎ目W7が付与され、その後、下外側溶接継ぎ目W7に隣接して別の下溶接継ぎ目W8が付与され、その後、内側境界16に隣接して下内側溶接継ぎ目W9が付与され、その後、下内側溶接継ぎ目W9と別の下溶接継ぎ目W8との間に最後の下溶接継ぎ目W10が付与される。
【0052】
続いて、下溶接継ぎ目W7、W8、W9、W10上に上溶接継ぎ目W11、W12、W13、W14が配置され、内側境界15で始まり、まず上内側溶接継ぎ目W11、続いて別の上内側溶接継ぎ目W12が付与され、その後、外側境界16から始まり、別の溶接継ぎ目W13及びW14が付与され、外側境界16と内側境界15との間の空間が埋められる。
【0053】
対応する順序で、続いて図7に示される最下層17上に別の層17が形成される。図8は、このようにして形成されたリング14を通る断面を示し、個々の溶接継ぎ目W1~W110の昇順の参照符号から個々の溶接継ぎ目W1~W110が付与された順序が分かる。
【0054】
当然、溶接継ぎ目W1~W110が付与される別の順序も基本的に可能ではあるが、対応する順序は、製造時の有利な温度にもとづいて、対応するリング14の特に安定した細孔のない、かつ空隙のない構造をもたらす。
【0055】
巻線端部支持体の強度のために不都合であろう酸化物層を回避するために、溶接継ぎ目は、通常、保護ガス下で付与される。
【0056】
本発明に従って形成された巻線端部を用いることにより、回転子直径が非常に大きい発電機若しくは電気機械も、利用可能な鍛造及び/又は圧延に関する既存の設備能力とは無関係に、従来の製造設備の外で、若しくは現場でも形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気機械の回転子のための巻線端部支持体を製造する方法であって、前記巻線端部支持体は4mを超える内径を有する1つ又は複数のリングを備え、且つ、付加製造法を使用して形成され、特にアークワイヤ肉盛溶接によって形成され、前記巻線端部支持体は金属の複数の層を肉盛溶接して形成される、方法。
【請求項2】
前記巻線端部支持体がリングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加製造法によってオーステナイト組織が形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記巻線端部支持体は、動かされる、特に回転軸線を中心に回転する担持要素に材料を付与して形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記巻線端部支持体は、複数の層が互いに上に重ね合わせて配置されることで形成され前記複数の層は材料結合的に接続されている、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
層は、最初に前記層の内側境界と外側境界が形成され、その後、前記内側境界と前記外側境界との間の空間に材料が充填されることにより形成される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記巻線端部支持体の前記形成が、前記巻線端部支持体において酸化物層を回避するために、保護ガスを使用して行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記巻線端部支持体が、6%~32%、好ましくは10%~28%、特に18%~24%のクロム当量を有する鋼で形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記巻線端部支持体が、10%~40%、好ましくは16%~32%、特に24%~29%のニッケル当量を有する鋼で形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製造は、前記巻線端部支持体のすでに形成された部分を冷却して行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記巻線端部支持体のすでに形成された部分及び/又は前記巻線端部支持体と熱的に接続された主体に流体、特に空気、CO又は水を付与することによって前記冷却が行われ、前記流体は、前記巻線端部支持体の前記形成された部分より低い温度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記巻線端部支持体が前記製造中にプラットフォーム上に配置されていて、前記プラットフォームは、特に流体、好ましくは水で冷却される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記付加製造法の実行後、前記巻線端部支持体の形成された部分が熱処理され、熱処理は、特に溶体化焼鈍、焼入れ及び/又は応力除去焼鈍を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記付加製造法の実行後、前記巻線端部支持体の形成された部分が切削製造法を受ける、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
電気機械の回転子のための巻線端部支持体であって、前記巻線端部支持体は、請求項1~14のいずれか一項に記載の付加製造法によって成され、且つ、4mを超える内径を有する1つ又は複数のリングを備える、巻線端部支持体。
【請求項16】
少なくとも1つの前記リングは6mを超える内径を有する請求項15に記載の巻線端部支持体。
【請求項17】
固定子と回転子を備えた電気機械であって、前記回転子が端側に少なくとも1つの巻線端部を有し、線端部支持体が、動作時に発生する遠心力を受け止めるために設けられており求項15または16に記載の巻線端部支持体が具現化されている、電気機械。
【国際調査報告】