(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】平壁構成用壁システム及びそれを適用した建築キット
(51)【国際特許分類】
E04C 2/12 20060101AFI20230405BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
E04C2/12 Z
E04B1/10 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022521600
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2020059405
(87)【国際公開番号】W WO2021070073
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522142453
【氏名又は名称】ウォーヴ,ベスローテム フェンノートシャップ メット ベペルクテ アーンスプラケリックヘイド
【氏名又は名称原語表記】WOV, BESLOTEN VENNOOTSCHAP MET BEPERKTE AANSPRAKELIJKHEID
【住所又は居所原語表記】Den Beer 18, 9840 De Pinte BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラース,ヴォルフガング ポル ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162BA02
2E162CC02
(57)【要約】
平壁(1)、特に、壁、床、天井又は屋根等を備えた壁システムにおいて、前記壁システムが、相互に長手方向に並行に延びる複数の木製梁(2)を備え、前記木製梁(2)の側縁(3)が、アンカー要素(8)によって幅方向に相互に対向して取り付けられるように構成され、前記アンカー要素(8)が梁(2)の内部又は梁(2)上に設けられ、壁(1)の取り付け状態において、スペーサ(12)によって一定の定められた距離(L)だけ離れた状態に維持され、前記スペーサ(12)が梁(2)内の通路(7)を貫通して延び、前記通路(7)が梁(2)の幅方向(B)に延び、互いの延長線上で接続され、アンカー要素(8)が、通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心とする回転方向に固定されていることを特徴とする壁システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平壁(1)、特に、壁、床、天井又は屋根等を備えた壁システムにおいて、
前記壁システムが、
相互に長手方向に並行に延びる複数の木製梁(2)を備え、
前記木製梁(2)の側縁(3)が、アンカー要素(8)によって幅方向に相互に対向して取り付けられるように構成され、
前記アンカー要素(8)が梁(2)の内部又は梁(2)上に設けられ、壁(1)の取り付け状態において、スペーサ(12)によって一定の定められた距離(L)だけ離れた状態に維持され、
前記スペーサ(12)が梁(2)内の通路(7)を貫通して延び、
前記通路(7)が梁(2)の幅方向(B)に延び、互いの延長線上で接続され、
アンカー要素(8)が、通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心とする回転方向に固定されている
ことを特徴とする壁システム。
【請求項2】
アンカー要素(8)が通路(7)にねじ込まれるねじ込みスリーブであり、
スペーサ(12)が、本体(13)を備え、通路(7)内で相互に延長線上で篏合するロッドで構成され、前記本体(13)の後端に内ネジ(19)が設けられた孔(18)が設けられ、前記本体(13)の前端に補完的ネジ(16)を備えたネジ付きロッド(14)が設けられ、
取付状態において、スペーサ(12)が、前記アンカー要素(8)を貫通して、前端のネジ付きロッド(14)が、アンカー要素(8)の反対側にある次のスペーサ(12)の後端の内ネジ(19)にねじ込まれる
ように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁システム。
【請求項3】
スペーサ(12)の本体(13)の前端及び後端が、アンカー要素(8)をクランプする停止面(15,17)を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の壁システム。
【請求項4】
ネジ付きロッド(14)の断面をスペーサ(12)の本体(13)の断面より小さくすることで前端の停止面(15)が形成され、スペーサ(12)の本体(13)の後端部を垂直端面に形成することで後端の停止面(17)が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の壁システム。
【請求項5】
スペーサ(12)の本体(13)における停止面(15,17)間の長さ(L)が固定距離である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の壁システム。
【請求項6】
本体(13)が、全長(L)に亘って一定の断面を有し、通路(7)内で篏合的に摺動可能であり、かつ、回転可能である
ことを特徴とする請求項5に記載の壁システム。
【請求項7】
本体(13)の前端の位置で、ネジ付きロッド(14)が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の内径(H)と等しいか又はそれより僅かに小さい外径(K)を有する
ことを特徴とする請求項2~6の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項8】
ネジ付きロッド(14)の長さ(N)が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の軸線方向長さ(F)と、スペーサ(12)の後端における孔(18)の軸線方向深さ(P)との合計よりも短い
ことを特徴とする請求項2~7の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項9】
ネジ付きロッド(14)における前側停止面から一定の長さ(N')にわたる部分が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の内径(H)と等しいか又はそれより僅かに小さい外径(K)を有する平滑部(14')を形成している
ことを特徴とする請求項8に記載の壁システム。
【請求項10】
ネジ付きロッド(14)の平滑部(14')の長さ(N')が、アンカー要素(8)の軸線方向長さ(F)と等しいか、又はそれより短い
ことを特徴とする請求項8に記載の壁システム。
【請求項11】
アンカー要素(8)が、それを梁(2)の通路(7)内にねじ込む手段を備え、前記ねじ込む手段が、例えば、六角レンチ又は他のねじ込み工具用の非円形凹部(11)の形態である
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項12】
スペーサ(12)に、ロッドを互いにねじ込む手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項13】
スペーサ(12)の本体(13)に、全長(L)に亘って又はその一部に、例えば、レンチ又は他のねじ込み工具用の非円形断面を設けることによって前記ねじ込む手段が形成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の壁システム。
【請求項14】
通路(7)内のアンカー要素(8)が、梁(2)の側縁(3)の一定の軸線方向深さの位置で固定されている
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項15】
アンカー要素(8)が、梁(7)の内部又は梁(7)上に予め取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項16】
梁(2)毎に一つのアンカー要素(8)が設けられている
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項17】
アンカー要素(8)及びスペーサ(12)が、金属、好ましくは鋼で形成されている
ことを特徴とする請求項1~16の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の壁システム用の建設キットにおいて、
該建設キットが、
・幅方向に通路(7)が設けられた二つ又はそれ以上の木製梁(2)と、
・前記通路(7)に対して、梁(2)の内部又は梁(2)上に固定されるか、又は、前記通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され得、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心に回転しないように固定され得るアンカー要素(8)と、
・複数のアンカー要素(8)を、固定距離(L)で相互に連結することができるように通路(7)に篏合される固定長(L)を有するスペーサ(12)と
を備えている
ことを特徴とする建設キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平壁構成用の壁システムに関する。
特に、本発明は、壁が意図する荷重の下で形状安定性が要求される壁を形成することを目的とする。
例えば、建物の床、壁、天井及び屋根等のような建築構造物の壁が挙げられるが、例えば、テーブルの天板にも適用でき、また、ブースやステージ等のような架設構造物にも適用され得る。
【背景技術】
【0002】
ベルギー特許BE1021698には、互いに縦方向に平行に延びる木製梁で構成された壁システムが開示されており、前記木製梁の側縁は、中間片を用いてお互いに対して幅方向に嵌められるように構成されている。前記中間片には、カラーが設けられており、それらのカラーによって側縁間に一定の隙間を持って固定され、スペーサを用いて相互に連結される。前記スペーサは、梁の通路を介してお互いの延長に取り付けられ、中間片にネジ込まれ、中間片を相互に一定の距離を保つように維持する。
【0003】
この壁システムで生じる問題は、木材が乾燥するにつれて、梁の幅が減少し、梁間の隙間が大きくなり、梁が相対的に緩み、横方向の支持と安定性が低下することにある。これは、壁の支柱剛性に対する欠点であり、例えば、窓の上の壁等は、荷重がかかると圧縮され、その下部は引っ張りに晒されるため、撓む可能性がある。
【0004】
他の横壁を横方向に支える支柱壁の場合、横壁に大きな突風があたると、上部にある支柱壁が傾くことがある。この支柱剛性の不足は、金属梁で補強することで補うことができるが、その分、工事費用が高くなる。
【0005】
他の問題点は、木材に張力をかけるだけの十分な大きさのカラーが必要なことにあり、このため梁に十分な厚みが必要になり、従って、木材の必要量や梁一本当たりのコスト面で不利になる。
【0006】
また、カラーは、例えば、スペーサの張力が原因で反った梁を、カラーが針の木材に引き込まれることなしに真っ直ぐにするための最低限の大きさが必要になる。
【0007】
ベルギー特許BE1021698における中間片には、緊張時又は分解時に、中間片が回転することを防止するために、スペーサに張力がかけられた時に、木材に軸線方向に食い込む軸方向歯が設けられ得る。
【0008】
しかしながら、これらの歯は、乾燥時にスペーサ上で梁が相対的に横ずれして支柱剛性を損なうことを防止することはできない。
【0009】
ブース等の架設壁構造物の場合のように、定期的に分解及び組立を行う再利用の場合、歯が同じ場所に入るとは限らないので、通路が歯の外周に沿って弱くなり、経時的に歯の回転を防止することができなくなる。
【0010】
本発明の目的は、前記及び他の問題点の一つ又は複数に対する解決手段を提供することにある。
【発明の概要】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明は、平壁、特に、壁、床、天井又は屋根等を備えた壁システムであって、該壁システムが、相互に長手方向に並行に延びる複数の木製梁を備え、前記木製梁の側縁が、アンカー要素によって幅方向に相互に対向して取り付けられるように構成され、前記アンカー要素が梁の内部又は梁上に設けられ、スペーサによって一定の定められた距離だけ離れた状態に維持され、前記スペーサが梁内の通路を貫通して延び、前記通路が梁の幅方向に延び、互いの延長線上で接続され、アンカー要素が、通路に対して軸線方向及び径方向に固定され、かつ、通路の軸線方向を中心とする回転方向に固定されている壁システムに関する。
【0012】
従って、壁には、金属製補強部材が設けられ、前記金属製補強部材は梁の長手方向に対して直交する方向に二列又はそれ以上の列で延びている。
【0013】
このようにして、複数の梁の相対位置はアンカー要素のレベルで固定され、アンカー要素は、ノード間の較正された固定対角距離で固定ノードを規定する。実際、梁は、実質的に縦方向に膨張しない特性を有し、梁の長手方向のノードは相互に相対的に移動することはなく、この特性と、横方向のノード間のスペーサの固定距離とが組み合わされている。
【0014】
アンカー要素によって梁が維持されるノード間の対角距離を固定することによって、より良い安定性と支柱剛性が提供される。
【0015】
実用的で、かつ、実現が簡単な実施形態によれば、アンカー要素は、通路にねじ込まれるねじ込みスリーブから成り、スペーサは、通路内で、それらの本体が相互に延長線上で篏合するロッドで構成され、前記本体の後端に内ネジが設けられた孔が設けられ、前記本体の前端に補完的ネジを備えたネジ付きロッドが設けられ、取付状態において、ロッドの前端でネジ付きロッドが、ねじ込みスリーブを介して、ねじ込みスリーブの反対側にある次のロッドの後端の内ネジに螺合される。
【0016】
これらの実施例では、アンカー要素は、予め通路内にねじ込まれ得、粗い外ネジを有するねじ込みスリーブを適切に選択した場合に、緩みに対して、従って、通路内の軸線方向の動きに対しても、木材における壁固定をもたらす。
【0017】
例えば、再使用のためにこのような壁を分解する可能性がある場合でも、アンカー要素が木材に非常に強固に固定されており、スペーサを再び緩めた時にそれらが動くことはないので、アンカー要素はその場に留まることができる。スペーサを次々に緩めても、前のアンカー要素が回転することはない。スペーサが緩められた時に、前のアンカー要素が回転することはない。
【0018】
従って、通路にダメージが与えられることはなく、壁システムは、数回にわたって分解及び再組立をするのに適したものになる。
【0019】
この壁システムは、梁を互いに対して緊張させるカラーを必要としないので、梁及びアンカー要素を薄くすることができ、コストダウンにつながる。
【0020】
本発明はまた、先の請求項の何れか一項に記載の壁システム用の建設キットにおいて、
該建設キットが、
・幅方向に通路(7)が設けられた二つ又はそれ以上の木製梁(2)と、
・前記通路(7)に対して、梁(2)の内部又は梁(2)上に固定されるか、又は、前記通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され得、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心に回転しないように固定され得るアンカー要素(8)と、
・複数のアンカー要素(8)を、固定距離(L)で相互に連結することができるように通路(7)に篏合される固定長(L)を有するスペーサ(12)と
を備えている
ことを特徴とする建設キットに関する。
【0021】
本発明の特徴をより良く示すために、本発明による壁システムの幾つかの好ましい実施形態を、添付図面を参照して、限定的なものでない実施例を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る壁システムを概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図1の壁システムの施工状態を示す図である。
【
図4】
図3の幾つかの構成要素のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図4の断面図において、構成要素が相互にネジ込まれている状態を示す図である。
【
図8】
図1の壁システムの構成要素の変形例を示す図である。
【
図10】別の実施例における
図9の断面図に相当する図である。
【
図11】本発明による壁システムの変形例を示す図である。
【
図13】
図10においてF13で示された部分を示す図である。
【
図14】
図10においてF17で示された部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す平壁は、本発明による壁システムを用いて構築されており、長さA及び幅Bを有し、かつ、例えば、縦方向に大きな伸縮がなく、縦方向の寸法が安定しているように形成された平行な複数の縦木製梁2で構成されている。
【0024】
この実施例では、梁は互いに縦方向に平行に延び、それらの側縁3は互いに横方向に対向して設けられている。これら側縁3には舌部4及び溝部5が設けられており、それにより、梁が横方向に互いに嵌り込むようにされ、場合によっては、周囲の湿度に応じて一定の横方向クリアランス6をもって嵌まり込むようにされている。
【0025】
梁2には、直径Dを有する複数の通路7が設けられており、これらの通路7は、相互に中心距離Cの位置に設けられ、軸線方向通路方向X-X’に従って梁2の幅Bにわたって延び、かつ、壁1の取付け状態において、二つ以上の連続した横方向チャネルにおいて互いの延長上に位置する。
【0026】
各通路7における梁2の側縁3から一定の深さEにはアンカー要素8が設けられている。
【0027】
図3~
図6の実施例では、アンカー要素8は、通路7の内径Dより大きい外径Gを有する粗い外ねじ部9と内径Hを有する滑らかな内壁10とを備える長さFのネジ込みスリーブとして構成されている。
【0028】
好ましくは、アンカー要素8は、例えば、アンカー要素8の内壁部10に形成された相補的な非円形凹部11に嵌合する六角レンチヘッドを備えた強力なドライバーを用いて、通路7内に軸方向にねじ込むことによって、通路7内に予め取り付けられる。
【0029】
壁システムには、さらに、スペーサ12が設けられている。これらスペーサ12は、アンカー要素8間で通路7を横切って取り付けられ、それらを一定の距離Lに保ち、固定する。
【0030】
この実施例では、スペーサ12は、前記長さLを有する本体13を備えたロッドで構成されており、前記本体13は、この実施例では、その直径Mが通路7の内径Dにほぼ等しい規定円周を有する六角形の断面を有する。
【0031】
本体13の前端には、ねじ付きロッド14が軸線方向に設けられており、前記ネジ付きロッド14は、アンカー要素8の内径Hにほぼ等しく、かつ、本体13の規定円周の直径Mよりも小さい直径Kを有し、この前端が前部停止面15を形成している。
【0032】
ネジ付きロッド14は、ネジ付きロッド14の足元から長さN'の円柱部14'と、円柱部14'の直径Kと同じかそれ以下の外径を有する細ネジ部16を備えた長さN''の部分14''に分割された長さNを有する。
【0033】
本体13の後端は、真っ直ぐに切断されて後部停止面17を形成し、ネジ付きロッド14のネジ部16と相補的なネジ18を備えた長さPの軸方向孔18が設けられ、ネジ付きロッド14を孔17にねじ込むことができるように構成されている。
【0034】
好ましくは、ネジ付きロッド14の長さNは、ネジ込みスリーブ8の軸線方向長さFと孔18の長さPとの和よりも短く、かつ、平滑部(円柱部)14'の長さN'はアンカー要素8の長さFと同じかそれよりも短い。そして、ネジ付きロッド14は、
図5に示すように、アンカー要素8の一方側のスペーサ12の前部停止面15と他方側のスペーサ12の後部停止面17との間で、アンカー要素8をクランプしながら、アンカー要素8を貫通して孔18に十分に深くねじ込まれ得る。
【0035】
スペーサの本体13の六角形断面の寸法は、アンカー要素8をクランプしながら二つのスペーサを互いにねじ込むために、標準的なキーが本体に適合するようにされている。ねじ込み工具を使用するための他の解決手段を除外するものではない。
【0036】
スペーサとアンカー要素との間に、工具を必要としないねじ継手を適用することは排除されない。例えば、取り外す部品をお互いに対して半回転させる必要があるバヨネット継手のような種類の継手は排除されない。
【0037】
図6は、二つの同一の梁2の側縁3が、一連の同一のアンカー要素8及び同一のスペーサ12を用いて、本発明による壁システムで互いに対向して取り付けられる状況を示す図である。
【0038】
アンカー要素8は、
図7に示すように、スペーサ間の固定距離L、アンカー要素8の固定長F及び梁2の長手方向の寸法安定性による梁2における通路7間の寸法的に安定した中心距離Cのために、ノード20を有する規則的な矩形のノードパターン上にそれらの中心がくるように配置される。
【0039】
従って、ノード20間の対角線距離は固定され、梁2がノードにそのまま取り付けられるので、壁システムの支柱剛性が確保される。従って、湿度の増減による梁2幅方向Bの膨張又は収縮にかかわらず、梁2の相対位置は固定される。
【0040】
長さL及びFは、梁2の木材湿度が最も高く、従って、梁2の幅方向Bの膨張が最も大きい場合に、梁2間のクリアランスに取付ブラケットが存在することを考慮して、最小クリアランスS及びS'が常に梁間に残るように選択される。この長さは、木材の厚み及び木材の種類に依存し得、木材は、必ずしも無垢材である必要はなく、集成材や合板や他の種類の木材であってもよい。
【0041】
壁1を分解するために、壁1の一端でスペーサ12を、それが回転しないように保持しながら、壁1の他端でスペーサ12が緩められ得る。第一スペーサ8は、アンカー要素12を緩めることなく、したがって通路7を損傷することなく緩められる。従って、アンカー要素8が予め取り付けられた梁2は、新しい壁に再利用され得る。
【0042】
本発明による壁システムは、
・幅方向Bに通路7が設けられ、前記通路にアンカー要素8が予め取り付けられ、梁2内の通路7内でアンカー留めされる一連の木製梁2と、
・通路7内で摺動及び回転され得る固定長を有するスペーサ12と
を備えたモジュール式建設キットとして現場に運ばれる。
【0043】
図8及び
図9は、金属等で一体的に形成されたアンカー要素8及びスペーサ12の変形例を示している。
【0044】
この実施例では、スペーサ12は、一端に外ネジ16を備え、他端に相補的な内ネジ19を備えたロッド又はチューブで構成され、該チューブに設けられたピニオンがアンカー要素8として機能し、この目的のために、前記ピニオンには、複数の孔21が設けられ得、ピニオンがネジ22を用いて梁2の側縁3に対してネジ止めし、それをビームに対して軸方向に固定し、かつ、回転方向に固定するようにされている。
【0045】
この実施例では、建築キットにおけるアンカー要素は、梁2に予め取り付けられることはない。
【0046】
図10は、
図8及び
図9に示した実施例の変形例を示しており、この実施例では、スペーサ12の本体13には孔21が設けられており、前記孔21は、アンカー要素8を備えたスペーサ12の端部に設けられ、スペーサ12の軸線方向中心線に対して角度T、例えば、40°の角度をなしている。
【0047】
孔21は、角度をなしてねじ込まれる単一のネジ22を用いて、そのアンカー要素8と共にスペーサ12を、梁2の通路7に対して軸方向及び回転方向に固定するためのものである。これにより、ユーロコード(Eurocode)連結の要件を満たす連結が実現される。
【0048】
図9のようなネジ21との組み合わせであろうとなかろうと、このような角度のついたネジを複数適用し得ることは明らかである。
【0049】
図10は、本発明による壁システム1のさらに別の実施例を示しており、該壁システム1は、アンカー要素8を用いて側縁3間に横方向のクリアランス6をもって相互に連結される梁2を備え、前記アンカー要素8は、スペーサ12によって相互に距離Lに保たれ、前記スペーサ12は、側縁3を接続する通路7を通って延びている。
【0050】
可撓性圧縮可能シール23が、梁2間に設けられ、梁2間の隙間をシールし、風や雨を止めるように構成されている。
【0051】
この実施例では、スペーサ12は、六角形断面を有する本体13を備え、本体13の一端には、外ネジ16を備えた同軸ネジ付きロッド14が設けられ、その他端には、対応する内ネジ19を備えた同軸孔18が設けられている。
【0052】
この実施例では、アンカー要素8は、
図12に示すように別体のプレートによって形成され、前記プレート8は、スペーサ12のネジ付きロッド部14用の中央通路24と、
図10に示すようにプレートを溝5にネジ止めするためのネジ22用の複数の孔21とを備えている。
【0053】
取り付け前に、プレート8は、中央通路24を梁2の通路7と一致させた状態で、梁2の溝5にねじ止めされる。
【0054】
その後、梁2は、スペーサ12を用いて、スペーサ12のネジ付きロッド部14を最後の梁2の通路7を介して、最後の梁のプレート8の中央通路24に貫通させ、次いで、ネジ付きロッド部14を前のスペーサ12の孔18のネジ19に完全に締め付けることで一つずつ相互に取り付けられる。
【0055】
スペーサ12の本体13の長さによって、アンカー要素8間の前記固定距離Lが決まり、それにより、本体13は、二つの連続するアンカー要素8間でその停止面15及び17によってクランプされる。
【0056】
プレートを溝5に取り付ける代わりに、プレートを舌部4の端部に対して設けてもよい。
【0057】
プレートは、梁2に他の方法で取り付けることができることは理解される。
【0058】
本発明は、図面に示され、一例として説明された実施例に限定されるものではなく、本発明による壁システム及び付属の建設キットは、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる種類の形態及び寸法で実現することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
このようにして、複数の梁の相対位置はアンカー要素の位置で固定され、アンカー要素は、ノード間の較正された固定対角距離で固定ノードを規定する。実際、梁は、実質的に縦方向に膨張しない特性を有し、梁の長手方向のノードは相互に相対的に移動することはなく、この特性と、横方向のノード間のスペーサの固定距離とが組み合わされている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
図11は、本発明による壁システム1のさらに別の実施例を示しており、該壁システム1は、アンカー要素8を用いて側縁3間に横方向のクリアランス6をもって相互に連結される梁2を備え、前記アンカー要素8は、スペーサ12によって相互に距離Lに保たれ、前記スペーサ12は、側縁3を接続する通路7を通って延びている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平壁(1)、特に、壁、床、天井又は屋根等を備えた壁システムにおいて、
前記壁システムが、
相互に長手方向に並行に延び
、側縁(3)を備えた複数の木製梁(2)を備え、
前記側縁(3)が、それらの間に最小限の横方向クリアランス(S,S',6)を設けて互いに対向するように設けられ、
前記梁(2)が、アンカー要素(8)によって取り付けられ、
前記アンカー要素(8)が梁(2)の内部又は梁(2)上に設けられ、壁(1)の取り付け状態において、スペーサ(12)によって一定の定められた距離(L)だけ離れた状態に維持され、
前記スペーサ(12)が梁(2)内の通路(7)を貫通して延び、
前記通路(7)が梁(2)の幅方向(B)に延び、互いの延長線上で接続され、
アンカー要素(8)が、通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心とする回転方向に固定され、
前記アンカー要素(8)が、梁(2)の固定ノードを、それらの間の距離を固定して画定する
ことを特徴とする壁システム。
【請求項2】
アンカー要素(8)が通路(7)にねじ込まれるねじ込みスリーブであり、
スペーサ(12)が、本体(13)を備え、通路(7)内で相互に延長線上で篏合するロッドで構成され、前記本体(13)の後端に内ネジ(19)が設けられた孔(18)が設けられ、前記本体(13)の前端に補完的ネジ(16)を備えたネジ付きロッド(14)が設けられ、
取付状態において、スペーサ(12)が、前記アンカー要素(8)を貫通して、前端のネジ付きロッド(14)が、アンカー要素(8)の反対側にある次のスペーサ(12)の後端の内ネジ(19)にねじ込まれる
ように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁システム。
【請求項3】
スペーサ(12)の本体(13)の前端及び後端が、アンカー要素(8)をクランプする停止面(15,17)を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の壁システム。
【請求項4】
ネジ付きロッド(14)の断面をスペーサ(12)の本体(13)の断面より小さくすることで前端の停止面(15)が形成され、スペーサ(12)の本体(13)の後端部を垂直端面に形成することで後端の停止面(17)が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の壁システム。
【請求項5】
スペーサ(12)の本体(13)における停止面(15,17)間の長さ(L)が固定距離である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の壁システム。
【請求項6】
本体(13)が、全長(L)に亘って一定の断面を有し、通路(7)内で篏合的に摺動可能であり、かつ、回転可能である
ことを特徴とする請求項5に記載の壁システム。
【請求項7】
本体(13)の前端の位置で、ネジ付きロッド(14)が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の内径(H)と等しいか又はそれより僅かに小さい外径(K)を有する
ことを特徴とする請求項2~6の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項8】
ネジ付きロッド(14)の長さ(N)が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の軸線方向長さ(F)と、スペーサ(12)の後端における孔(18)の軸線方向深さ(P)との合計よりも短い
ことを特徴とする請求項2~7の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項9】
ネジ付きロッド(14)における前側停止面から一定の長さ(N')にわたる部分が、ねじ込みスリーブとして形成されているアンカー要素(8)の内径(H)と等しいか又はそれより僅かに小さい外径(K)を有する平滑部(14')を形成している
ことを特徴とする請求項8に記載の壁システム。
【請求項10】
ネジ付きロッド(14)の平滑部(14')の長さ(N')が、アンカー要素(8)の軸線方向長さ(F)と等しいか、又はそれより短い
ことを特徴とする請求項8に記載の壁システム。
【請求項11】
アンカー要素(8)が、それを梁(2)の通路(7)内にねじ込む手段を備え、前記ねじ込む手段が、例えば、六角レンチ又は他のねじ込み工具用の非円形凹部(11)の形態である
ことを特徴とする請求項
2~10の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項12】
スペーサ(12)に、ロッドを互いにねじ込む手段が設けられている
ことを特徴とする請求項
2~11の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項13】
スペーサ(12)の本体(13)に、全長(L)に亘って又はその一部に、例えば、レンチ又は他のねじ込み工具用の非円形断面を設けることによって前記ねじ込む手段が形成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の壁システム。
【請求項14】
通路(7)内のアンカー要素(8)が、梁(2)の側縁(3)の一定の軸線方向深さの位置で固定されている
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項15】
アンカー要素(8)が、梁(7)の内部又は梁(7)上に予め取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項16】
梁(2)毎に一つのアンカー要素(8)が設けられている
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項17】
アンカー要素(8)及びスペーサ(12)が、金属、好ましくは鋼で形成されている
ことを特徴とする請求項1~16の何れか一項に記載の壁システム。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の壁システム用の建設キットにおいて、
該建設キットが、
・幅方向に通路(7)が設けられた二つ又はそれ以上の木製梁(2)と、
・前記通路(7)に対して、梁(2)の内部又は梁(2)上に固定されるか、又は、前記通路(7)に対して軸線方向及び径方向に固定され得、かつ、通路(7)の軸線方向(X-X')を中心に回転しないように固定され得るアンカー要素(8)と、
・複数のアンカー要素(8)を、固定距離(L)で相互に連結することができるように通路(7)に篏合される固定長(L)を有するスペーサ(12)と
を備えている
ことを特徴とする建設キット。
【国際調査報告】